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2014,02,13, Thursday
(1)「夢だから」「理想だから」「常識でないから」と言って、実現不可能と考えるのは間違い 実現不可能なことは夢や理想とは呼ばず、妄想と呼ぶべきであろう。また「理想と現実は違うから理想は実現不可能」と言う人もいるが、人類は、実現不可能と考えられていた理想を現実にしてきたからこそ、現在がある。そして、そのツールが科学や技術であり、人類が科学を通して知っていることは、まだ全体のほんの一部にすぎない。そのため、「夢や理想は実現できない」「常識はいつの時代にも常識である」と考えるのはそもそも間違いであり、新しく問題解決ができれば、理想が実現でき、常識も変る。 (2)再生医療について *1には、「理化学研究所の小保方晴子さんが、『STAP(スタップ)細胞』の作製に成功した」「STAP細胞の特徴は、弱酸性の液体に浸すなど細胞を外から刺激することで、万能細胞を簡単につくれるところだ」「一昨年英科学誌ネイチャーに論文を投稿した当初は、『何百年にもわたる細胞生物学の歴史を愚弄している』と激しく突き返された」と書かれている。 けれども、私は、「下等動物の細胞では普通にやっていることが、高等動物の細胞になると絶対にできなくなる」という、証明されたわけでもない細胞生物学の“常識”自体が不自然で、何かのスイッチを入れればできる筈だと思っていたため、1995年くらいに再生医療を提案し、2005年~2009年の衆議院議員時代に、再生医療を、経産省、文科省、厚労省が省の枠を超えて協力する国家プロジェクトにした。その理由は、再生医療が実用化すれば、今まで治らなかった病気を治すことができ、免疫を抑えながら他人の臓器を移植しなくてもすむようになるからである。そのスイッチが、『STAP(スタップ)細胞』では酸などのストレスであり、iPS細胞では遺伝子であり、ES細胞は受精によりスイッチの入った卵子を使うということなのだ。 しかし、すでに再生医療が国家プロジェクトになっている環境の下では、周囲の研究者の理解も進んでおり、むしろ追い風と言える状況なので、小保方さんは恵まれている方であり、失敗して泣き明かす時間があったら他の解決方法を探るべきである。*5に書かれているように、遺伝子の二重らせん構造を発見する時代の女性研究者は、ノーベル賞級の成果があっても成果を認められなかった上、人格否定されているくらいなのであり、日本では、現在でもそういう傾向があるため、油断や甘えは禁物だ。 なお、*1には、「教科書を学ぶ学習を卒業し、教科書を書き換える研究の道に進む。強い信念と柔らかな発想に満ちた若い世代の飛躍を、もっともっと応援したい」とも書かれているが、教科書を書き換えるほどの研究は、教科書を学ぶ基礎学習をした上で、それに疑問を突き付けて解決することによって成立するものだ。そして、若い人が研究できるためには、それまでの積み重ねがあったのだということを、決して忘れさせてはならず、これは初等・中等教育レベルの道徳教育で教えるべきである。 (3)STAP細胞の今後の研究について *2のように、米ハーバード大のチームは、既に「STAP細胞」を使って脊髄損傷のサルを治療する研究を始めているそうだ。人間の細胞を使った作製も研究しているとのことで、これが、間髪をいれずに、速やかに次の段階に進んだ姿である。そして、*3には、共同研究者のチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授が米公共放送(PBS)のニュース番組で、「霊長類や人間の細胞でもマウスと同様にSTAP細胞を作れることを示唆する初期のデータが得られた」と打ち明け、既に複数の大学などで人間のSTAP細胞を作る研究が始まっているそうだ。 しかし、日本では、*3のように、STAP細胞応用へ過熱したり、性急な国家事業は逆効果と書かれており、*4のように、厚労省が、安全の確保を目指して、効果が不確かな再生医療を大幅に制限する見通しになったなどとされている。これでは、新しい治療法の開発ができないのは当然であり、ここは教育の問題であるため、文科系の事務官でも、その科学技術の意味がわかる程度の科学的知識を持っていなければ、国を発展させることはできないということだ。 なお、私は、研究者同士の競合があるため、「STAP細胞」の研究は、iPS細胞研究のプロジェクトに組み込むのではなく、別組織を作ってあらゆる方面から行うのがよいと思うし、その価値があると考える。そうしなければ、「STAP細胞」の研究でも、日本は遅れるだろう。 (4)DNAの二重らせん構造の発見 *5に書かれているように、1962年のノーベル生理学・医学賞は、DNAの構造が二重らせんであることを発見した功績で、ジェームス・ワトソン、フランシス・クリック、モーリス・ウィルキンスの三人に与えられたが、このDNAの二重らせん構造の発見は、その後の生物学への発展に貢献し、生物学のパラダイム変換となった。 私は、生命科学に関心を持っていたので、20代の頃にワトソンの『二重らせん』という本を読み、「DNAの構造を明らかにするX線回折データをとったのは、ロザリンド・フランクリンという女性研究者だ」とワトソン自身が書いていたのを知っているが、ワトソンは自分で書いている分だけ、多くの日本人男性より卑怯ではなく潔いと思った。1960年代のイギリスでは、女性研究者がマイノリティーで地位も低かったのだろうが、日本は、現在でも、この領域の中にあることを忘れてはならない。 *1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S10953905.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞社説 2014年1月31日) 新万能細胞 常識を突破する若い力 輝かしい新星が現れた。理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダー(30)らのグループが、まったく新しい万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の作製に成功した。筋肉や神経など、さまざまな細胞に変化できるのが万能細胞だ。万能性があるのは、生命の初期である受精卵など、特殊な細胞に限られるというのが生物学の常識だった。だが近年、万能細胞を人の手で生み出す研究が進み、すでに、受精卵を壊してつくるES細胞、山中伸弥・京都大教授らが遺伝子を導入する方法で開発したiPS細胞がある。STAP細胞の大きな特徴は、弱酸性の液体に浸すなど細胞を外から刺激することで、ずっと簡単につくれるところだ。一昨年英科学誌ネイチャーに論文を投稿した当初は突き返された。だが追加の証拠をそろえ、掲載にこぎ着けた。最初に拒絶した専門家は「何百年にもわたる細胞生物学の歴史を愚弄している」と激しい意見を付けてきた。これはいまや最大級の賛辞と読まれるべきだろう。まさに教科書を書き換えるような大発見である。博士号をとってわずか3年。若い小保方さんの研究過程は、決して順風満帆ではなかった。「誰も信じてくれない中で、説得できるデータをとるのは難しかった」「泣き明かした夜も数知れないですが、今日一日、明日一日だけ頑張ろうと思ってやっていた」と振り返る。化学畑の出身で、生物学の既成概念にとらわれず、自らの実験データを信じた。一人また一人と周囲の研究者を味方につけ、数々の壁を乗り越えた。変わってきたとはいえ女性の働きづらさが指摘される日本で、これほど信念に満ちた研究成果を上げた小保方さん、そして彼女を支えた共同研究者のみなさんはすばらしい。「21世紀は生命科学の時代」といわれ、日本政府も力を入れる。小保方さんの属する理研の発生・再生科学総合研究センターは00年に神戸市にできた。基礎研究から治療への応用まで、再生医学を総合的に進める態勢づくりが結実したようだ。特大ホームランを放った小保方さんに限らず、きっと同じように「もう一日だけ」と頑張っている研究者がたくさんいるだろう。そう考えると、日本の科学への希望も膨らむ。教科書を学ぶ学習を卒業し、教科書を書き換える研究の道に進む。強い信念と柔らかな発想に満ちた若い世代の飛躍を、もっともっと応援したい。 *2:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2617021.article.html (佐賀新聞 2014年1月30日) STAP細胞使い、サルで実験 / 米チーム、脊髄損傷に 細胞に刺激を与えることで、さまざまな種類の細胞に変化できる能力を持たせた新しい万能細胞「STAP細胞」を使い、米ハーバード大のチームが脊髄損傷のサルを治療する研究を始めていることが30日、分かった。人間の細胞を使った作製も研究しているという。マウスの細胞で世界初の作製を報告した30日付英科学誌の論文を理化学研究所チームと共同で執筆したハーバード大のチャールズ・バカンティ教授が共同通信の取材に答えた。人工的に脊髄を損傷してまひを起こさせた複数のサルからSTAP細胞を作製し、移植に利用する実験を2011年から始めているという。 *3:http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG0600D_W4A200C1000000/?dg=1 (日経新聞 2014/2/10) STAP細胞、応用へ過熱 性急な国家事業は逆効果 理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーらが新しい万能細胞「STAP細胞」を作製し、世界が追試や再生医療への応用研究に動き出した。2006年に京都大学の山中伸弥教授が最初にiPS細胞を発表した時以上の注目が集まっている。一方で、国家プロジェクトなどが動き出すと小保方さんの研究が束縛を受けるのではないかと懸念する声もある。小保方さんの柔軟な発想がSTAP細胞の作製をもたらした。 ■日本版NIHの目玉に? 共同研究者のチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授は米公共放送(PBS)のニュース番組で、「霊長類や人間の細胞でもマウスと同様にSTAP細胞を作れることを示唆する初期のデータが得られた」と打ち明けた。米紙などの報道によると、既に複数の大学などで人間のSTAP細胞を作る研究が始まっているようだ。日本でも安倍晋三首相が小保方さんの成果を称賛。下村博文文部科学相は政府の研究支援強化に前向きの姿勢を示し、加藤勝信官房副長官は再生医療への応用に期待を表明した。iPS細胞研究を軸に進めてきた再生医療関連の国のプロジェクトに、STAP細胞の応用研究も組み込まれる可能性が高い。基礎研究を臨床に素早くつなげようと、政府が米国立衛生研究所(NIH)を手本に15年春に設立を目指す日本版NIHの目玉プロジェクトになるかもしれない。iPS細胞の場合は、難病患者らの治療に一刻も早く生かすために「オールジャパン」の研究体制づくりが急務とされ、山中教授が先頭に立って全体計画のとりまとめなどを進めた。研究費集めにも奔走、関係省庁や国会の協力を取り付けた。山中教授に会うと、いつも「研究に力を入れたい」と話していたが、現実には調整・管理業務などが多く研究の時間が取りにくかったようだ。もちろん京大のiPS細胞研究所(CiRA)にはまな弟子の高橋和利講師をはじめ、優秀な研究者が大勢いる。皮膚細胞などにいくつかの遺伝子を入れることによってiPS細胞ができるメカニズムの解明を試みる論文も、いくつも出ている。慶応義塾大などと協力し、がんを起こさず再生医療などに安全に使えるiPS細胞の作製法の研究も進む。 *4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S10962708.html?iref=comkiji_redirect (朝日新聞 2014年2月5日) 再生医療の審査を厳格化 厚労省案、安全の確保目指す 効果が不確かな再生医療が大幅に制限される見通しになった。安全確保を目指した新法の規制対象がまとまり、細胞を使う治療の大半が、厳格な審査委員会の承認を得なければ実施できない位置づけとされた。委員は専門家、法律家や生命倫理の有識者ら8人以上とし、第三者の立場で内容や手順を確認する。昨秋成立した再生医療安全性確保法は、治療をリスクに応じ高中低に3区分し審査の仕組みを定める。11月の施行を前に、厚生労働省が政省令に盛り込む具体的な対象の案をまとめた。「高」はiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚〈はい〉性幹細胞)、他人の細胞を使う治療など安全性と有効性が未知の場合が対象。これ以外で細胞に手を加える場合などはいずれも「中」とした。体外での培養や、脂肪由来の幹細胞を糖尿病やがんの治療に使う場合があてはまる。「低」は、患者自身の細胞を、同じ種類の組織や臓器にそのまま用いる場合に限った。自分の脂肪の幹細胞を豊胸手術やしわ取りに用いるケースが入る。審査委は病院や大学、NPO法人や学術団体が設置し、国が認定する。「中」以上の審査委は、法律家や生命倫理の有識者ら8人以上とし、独立性の保障も求めて厳格にする。「高」はさらに国も治療計画をチェックし、変更を命じられる。一方、「低」は5人以上で、独立性の保障までは求めない。再生医療は、iPS細胞などの応用に期待が高まる一方、根拠が不明確な治療法を提供する民間施設もあり、朝日新聞の昨年の調べでは少なくとも20カ所以上。安全性や信頼性の確保が課題になっていた。 ■再生医療のリスク区分 <リスク・高> 【対象の例】iPS細胞、他人の細胞による治療 【審査委員会】8人以上、高い独立性 【国の審査】あり * <リスク・中> 【対象の例】自分の幹細胞による体の機能の再生 【審査委員会】8人以上、高い独立性 【国の審査】なし * <リスク・低> 【対象の例】自分の脂肪幹細胞によるしわ取り 【審査委員会】5人以上 【国の審査】なし *5:http://thomas.s301.xrea.com/thinking/20seikisaidainohakken.pdf#search='DNA%E7%99%BA%E8%A6%8B%E8%80%85' 20世紀最大の発見-二重らせんの裏側 1962年のノーベル生理学・医学賞は、DNA の構造が二重らせんであることを発見した功績で、ジェームス・ワトソン、フランシス・クリック、モーリス・ウィルキンスの三人にもたらされた。二重らせんとは、二本のDNA鎖がらせん状になった構造のことである。DNA 構造の発見は20 世紀最大の発見といわれている。その理由は、この発見により遺伝情報がどのように伝えられるかという最大のなぞが解明されたからである。当時、DNAが遺伝物質であるということが実験的に確かめられていたが、複雑な遺伝情報を、単純な物質であるDNAがすべてになっているという考えには批判も多かったのである。そして、複雑なタンパク質こそが、複雑な遺伝情報を伝えるのではないかという考えもあった。DNAの構造が発見されたことで、遺伝がDNAの複製によって起こることや、塩基配列が遺伝情報であることがみごとに説明された。いまでは、この事実は、高校の教科書でも扱っている。塩基の種類ATGCを覚えたひともあるだろう。アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)である。DNA の構造発見は、その後の分子生物学への発展にも大きく貢献し、生物学のパラダイム変換となった。 ところで、DNAの模型は、分子模型を構築する手法を用いて、1953年にワトソンとクリックによって提唱されNature(vol. 171, pp.737-738, 1953)に発表されている。このDNA構造発見の経緯は、発見者のひとりワトソンが、『二重らせん』という本を1968年に上梓したことで、一般のひとにも感動をもって迎えられた。この本は、日本でも訳書が発売され、ベストセラーとなっている。実は、20世紀最大の成果と呼ばれる二重らせん構造の発見は、科学史上まれにみる剽窃事件とも捉えられている。ノーベル賞受賞者をけなすことはできないという遠慮から、それほど大きく取り上げられないが、ワトソンの人間性の下劣さも加わって、いまだに非難の声は絶えない。 この謎をとく鍵は、なぜ、ノーベル賞の決定版となったNatureの論文の著者がワトソンとクリックのふたりだけだったにもかかわらず、ウィルキンスにもノーベル賞が授与されたのかという事実である。分子構造は、資料もなしに、頭の中で簡単に構築できるものではない。実験データがあってはじめて考えられるものである。この貴重なX線回折データをワトソンらに与えたのが、ウィルキンスというわけである。これが、ウィルキンスにもノーベル賞が与えられた理由である。しかし、ここで疑問が生じる。なぜ、ワトソンはウィルキンスをNature の共著者にしなかったのだろうか。そして、ノーベル委員会は、なぜ、ウィルキンスを論文の共著者でもないのに、ノーベル賞に選んだのだろうか。ところで、ノーベル賞対象となったワトソンとクリックによるNature論文は、参考文献のない、まれに見る美しい論文として語り継がれている。しかし、少しでも科学論文に関わったことのある人間ならば、これは嘘であることは明白である。科学の重要な発見は、突然、出てくるものではない。その前に、数多くの仕事があって、そのうえに成り立つものである。参考文献がないというのは、なにか、その裏に意図が隠されているはずである。 実は、DNAの構造を明らかにする決定的な証拠となるX線回折データをとったのは、ロザリンド・フランクリンという女性研究者である。ワトソンは、卑怯にも、彼女の実験データをこっそりと盗み見ていたのである。このことは、上品な表現ながら、彼自身が語っている。これでは、参考文献をかけるはずがない。しかし、ノーベル委員会にも、構造を決定するには、実験データが必要だということを知っていた人間がいたのにちがいない。その結果、登場したのがウィルキンスである。では、なぜ、フランクリンではなかったのだろうか。彼女は、1958年に37歳の若さでなくなっている。1962年には、この世にいなかったのである。一説には、実験でX線を浴び続けてきたためにガンになったと言われている。とすれば、フランクリンという女性研究者の功績を三人の不埒な男が奪って、ノーベル賞を獲得したことになる。 ノーベル賞を受賞したワトソンは、1968年に意気揚々と「二重らせん」という本を上梓する。用意周到にも、ワトソンはノーベル賞級の研究成果を上げたらこうした本を上梓することをあらかじめもくろみ、日々の記録をとっていたのだそうだ。まさに死人に口なしとはよく言ったものである。ワトソンは、この本のなかで、ロザリンド・フランクリンを意地の悪い女としてけちょんけちょんにけなしている。その実験成果を盗んだうえに、人格まで否定する。にもかかわらず、世の中のひとはワトソンを現代のヒーローとして賞賛するのである。かわいそうなのは、この本のなかで、フランクリンと対立していたと書かれたウィルキンスである。彼は、フランクリンに無断で、ワトソンにDNAのX線回折データをみせたとされている。ワトソンは、自分の剽窃の罪を、巧妙にウィルキンスになすりつけたのである。おかげで、ウィルキンスは悪者にしたてあげられた。しかも、ノーベル賞の受賞理由が、部下のデータをライバルのワトソンに渡した功績というのだから研究者としては、最大の侮辱であろう(以下略)。
| STAP細胞::2014.1~ | 09:38 AM | comments (x) | trackback (x) |
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