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2014.2.14 先端科学の農林漁業への導入と遺伝子組み換え作物
  
   蛍光蚕             蛍光繭と蛍光絹糸        蛍光絹布のドレス

(1)遺伝子工学、医療、IT、ロボット工学など先端科学の農業への利用
 *1のように、遺伝子工学、医療との連携、ITの活用、ロボットの活用などにより、農林水産業は、日本の長所を活かした成長産業にすることができる。

 例えば、*2及び上の写真の蛍光絹糸は、遺伝子工学を使ってクラゲの緑色蛍光タンパク質やサンゴの赤色蛍光タンパク質を絹糸に発現して作られたもので、帯、帯上げ、帯締めなどに使っても面白そうだ。このほかに、抗菌性やクモ糸なみの強さを持つ絹糸も開発中とのことで、このブログの2014.2.13に記載したSTAP細胞を使うと、同じ遺伝情報を持つ蚕を大量に作ることもできるようになると思う。

 なお、農作業は、IT化やロボット化できる部分も多いため、農機具の進歩やその安価な普及が望まれる。また、医療や栄養学と連携すれば、栄養管理や介護食の開発も可能で、付加価値が高くなる。

(2)生命科学を使った品種改良
 *3のように、近年は、畜産でも生命科学を使って、乳用牛の繁殖性、肉用牛の成長速度や味、豚の繁殖性、鶏の卵質などをターゲットにして、遺伝子情報を取り入れた育種を行い、従来よりも短時間で効率的な育種が進められているそうだ。これらは、その動物が従来から持っている遺伝情報を選別しているだけであるため、食べる人に害はない。

 また、林業でも、*4のように、花粉をまき散らさない杉が誕生し、従来の杉との植え変えが進んでいる。もう一歩進んで、花粉を作らない樹木ができれば、花粉症の防止になるだけでなく、花粉を作るためのエネルギーも成長にまわせるためその樹木の成長は早くなるだろう。さらに、その他の必要な性質を持つ樹木を育種することも、生命科学を使えば効率的にできる筈だ。

(3)遺伝子組換食品について
 食品とする農産物の遺伝子組換については、*5のように、山形大学医学部が見解を出しているが、害虫抵抗性や除草剤抵抗性のある農作物が多く、害虫を殺せる物質が人体にだけ無害とは信じにくい。少量なら無害でも、食べ続けるとどうなるのかは心配だ。

 また、経済性も高いとは限らず、食品は身体に入れるものであるため、私は基本的に反対であり、消費者が選択しやすいように、最低でも、スウェーデンやEU並みの食品表示による情報公開と遺伝子組み換えでない食品を選べるという選択肢の存在が必要だと考えている。

*1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=25816
(日本農業新聞 2014/2/5)  農業、食品分野 成長産業に 民間の研究後押し 農水省
 農水省は、遺伝子工学や医療、IT、ロボット工学など異分野の技術を活用して、農林水産業・食品産業分野の成長産業化を目指す。消費者らのニーズを把握した上で、民間企業や大学などが手掛ける研究の支援に乗り出す。同省は、民間活力を生かした研究の推進に2014年度予算案で11億1300万円、13年度補正予算案で30億円を新たに計上した。国内の農林水産・食品分野の研究投資は他の産業より活発ではなく、新たな技術の開発や事業化が遅れていると指摘。民間企業の研究開発支援に乗り出した。具体的には農林水産業の生産現場や、民間のニーズに合う研究課題を設定する。アレルギーがある人でも食べられる農産物の加工品作りや、希少価値のある薬用作物を効率的に栽培する生産システムの開発などを想定する。事業を委託する企業などが研究に成功した場合は、委託費の100%、成功しなかった場合には10%返済する仕組みを設け、研究に必要な企業の負担を低減する。農林水産分野は天候によって生産量が左右されやすい特徴を考慮し、委託費を全額返済する場合も返済期間を5~10年とした。新たな技術・製品は、開発した企業が優先的に使える。ただ、同省は「税金を使っているため、社会還元ができるよう他企業でも活用できるようにする」(研究推進課)としている。並行して、大学や研究機関などとの連携も強める。医療、工学系の大学などに研究拠点を置き、異分野の共同研究を支援する。テーマは和食の機能性効果やウイルス対策、情報通信技術(ICT)を活用する農業など。2月中に第1回の検討会を開き、公募を経て研究拠点を決める。また、全国に配置した研究機関などのOBが務める「コーディネーター」が、生産現場や消費者が求める情報を収集する。現場が求めることと研究内容が一致するよう、コーディネーターと情報を共有しながら研究を進める。

*2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=25851
(日本農業新聞 2014/2/7)  蛍光絹糸GM蚕 試験飼育承認へ 農水省
 農水省は6日、緑色に光る蛍光絹糸を生産する遺伝子組み換え(GM)蚕の農家段階の生産を目指した試験飼育が承認される方向だと発表した。農業生物資源研究所(生物研)が開発した蚕で、付加価値の高い絹糸の生産を目指す。実験室や工場などの閉鎖環境ではなく、一般農家での生産につながる「第1種使用」と呼ばれる区分での承認で、GM蚕が同区分で飼養されれば国内初となる。試験飼育は生物研が茨城県つくば市で行う。蚕と交雑する可能性がある野生のクワコが侵入するのを防ぐ対策を取った隔離施設で飼育。試験で野生生物への影響などの問題がないことを確認した後、農家での飼育を申請する予定だ。GM蚕を飼育するには、GM生物の販売・流通を規制するカルタヘナ法に基づき、承認を受ける必要がある。同法ではGM生物の利用を、一般圃場での生産や流通を想定した「第1種使用」と、閉鎖環境で生産する「第2種使用」に区分。農水省と環境省は同日までに専門家による検討会を開き、生物研が申請した「第1種使用」のGM蚕の試験飼育を認める内容の意見をまとめた。

*3:http://www.nlbc.go.jp/g_tyousa/iden/idenshiikusyu.asp
(家畜改良センター 2013年8月19日) 遺伝子育種
 育種とは、特徴ある家畜、具体的には人にとって望ましい能力(泌乳量、産子数、肉質など)を向上させた個体や集団を作り出すことです。これまでは、血統などから優秀な能力を持つと考えられる父親と母親を選び出して交配させ、生まれた子畜から、次の世代の父親、母親となるものを選抜してきました。一方、1990年頃から身長や体重などのように連続的な数値で表示される形質(量的形質)に関与する複数の遺伝子が染色体上のどの位置(遺伝子座)にあるのかを、DNA配列の個体間で異なる部分(DNAマーカー)を使って探索する方法が開発され、家畜においても、繁殖性、成長速度および肉質などの経済的に重要な形質を支配する遺伝子座を特定することが可能になりました。このように家畜の生産性や畜産物の品質などと関連のある遺伝子座を特定することができれば、特定した遺伝子座の情報を用いて家畜の選抜を行うことができます。現在は、血縁や家畜個体の成績を統計学による分析に基づき、個々の遺伝子の作用ではなく遺伝子の集まりの特性を調べて、育種(改良)が行われていますが、上述のような個々の遺伝子情報を取り入れた育種手法は、従来の育種に必要であった時間、人員や施設等の経済面において飛躍的に効率化が図られるものと期待されています。マーカーアシスト選抜は、様々な経済形質の向上を目的とした育種に力を発揮する手法と考えられています。現在のところ、乳用牛では繁殖性、肉用牛では成長や食味、豚では繁殖性及び鶏では卵質などの形質をターゲットに調査研究を進めています。

*4:http://www.bioportal.jp/ja/column/604
(Jabion 2008年5月1日、要点のみ) 花粉の出ないスギ「爽春」の誕生
 今年の3月に、林木育種センターが開発した花粉の出ないスギ「爽春:そうしゅん」が新品種として登録され、全国に挿し木苗として普及させる動きが進んでいます。しかし、その効果が期待できるのは、スギが成長して開花するのに10~20年かかりますから、まだ先のようです。
●花粉症を誘発する植物の花粉
 日本のスギ(Cryptomeria japonica)は英名をJapanese Cedarと呼び、日本にしか分布しない固有種です。世界中には、北米、東アジア、タスマニアなど、和名でアケボノズギやヤナギスギと呼ばれる樹種が存在しますが、分類学的には属レベルで異なり、日本のように大規模な植林は行われていません。
●雄性不稔性のスギ
 今回話題となった「爽春」は、雄花を付けますが花粉が成熟できず、花粉散布が起こらない突然変異の個体で、これを 雄性不稔性といいます。この品種は、40年前に林業用として、材質の良い品種を開発する目的で、全国から様々な特性のある個体を集め、茨城県内の国有林に人為的に樹木を植栽した人工林で、日本では建築材として加工されるスギやヒノキが植栽され、ほとんどの人工林が針葉樹林を形成します。そうした中から、 長い年月を経て モニタリングした結果、林業に最適な個体を見つけては、その個体の枝先を切って(穂木)、苗床で根を生やす(挿し木)が行われてきました。「爽春」も、こうした挿し木によってつくられた品種です。
 一方で、挿し木ではなく、細胞培養から増やす研究も進められていますが、こちらは野外に移して、正常に生育し、材質が林業的に価値のあるものかどうか調査する必要があり、まだまだこれからです。さらに、短期間で確実な品種改良を行うために、遺伝子解析が進んでいますが、遺伝子領域の解読は断片的で、形態変異に関係する領域は一部のみで、現在、解析中です。一般的に樹木はスギを含めゲノム数が大きく、現在の少ない予算枠では、断片的な遺伝子配列の解析や他の樹種の遺伝子情報が集まるのを待ちつつ解析せざるをえないのが現状です。
●林業の現状
 さて、「爽春」の全国普及が実現できるかどうかですが、まず、国内の林業を活性化しなければ、難しいと言えます。現在、日本のスギ林の多くは 北山杉などの有名なスギの産地を除いて、管理されず放置されているのが現状です。その原因は根が深く、スギの植林は、昭和30年代に国の補助政策により、全国各地で盛んに行われましたが、昭和40年頃から、木材の流通は海外市場が中心となり植林業者が激減しました。そのため、枝打ちなどの管理も行き届かなくなりました。また、昭和50年頃までは、枝打ちした廃材はその現場で焼却処分などを行っていましたが、現在では環境問題の配慮から、枝打ちしたものはすべて産廃場で処理することが指導されており、その処理費の出費が林業者を圧迫しています。植林して40年経過したスギでさえ、伐採して木材にすると管理費や運搬経費等がかさみ赤字になるため、多くのスギ林が枝打ちもできず放置されています。こうした状況の中で、「爽春」をいかに全国に広げるか、行政と民間企業の緊密な連携がなくては難しいところです。また、スギ花粉だけでなく、花粉症に関する多方面にわたる研究開発も必要でしょうから、爽快な日本の春の訪れは今しばらく遠いようです。

*5:http://www.id.yamagata-u.ac.jp/EPC/15mirai/01kumikae/kumikae.html#5
(山形大学医学部)
1. 遺伝子とその利用
a. 遺伝子とは
 ヒトをはじめとし、動物、植物、細菌など全ての生物はそれぞれの姿、形、性質を親から子へと次世代に伝える仕組みを持っています。全ての生物の構成単位は細胞からなり、どんな生物の細胞も基本的な構造はほとんど同じようなものです。細胞膜に包まれた細胞の中には核があり、核の中には染色体が入っています。この染色体に「親から子へ遺伝する」という形で受け継がれていく遺伝の基本単位、すなわち「遺伝子」が含まれています。遺伝子の本体は「DNA(デオキシリボ核酸)」という物質でできています。DNAはA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)と呼ばれる4種類の物質(塩基)がたくさんつながり、1本の鎖のような形をしています。この塩基の並び方が一種の暗号になっており、例えば、G-T-Cという並び方は、「グルタミン」というアミノ酸を意味します。このように、塩基3個の並び方が1つのアミノ酸に対応しており、この暗号どおりに、アミノ酸をつなげていくと、最終的に蛋白質ができあがります。蛋白質は生物の発生・分化・成長等の調節をしたり、酵素などとして働きます。
b. 従来の方法による品種改良
 人類は昔から植物や動物を交配することによって品種を改良し、酒や味噌などの食品を作るために微生物を利用したりなど、生物の持つ機能を上手に活用してきました。 農林水産、食品の分野でも交配を重ねることによって優れた品種を作りだしてきました。従来の品種改良では自然交配が可能な同種の生物、あるいはごく近縁の生物同士を交配することによって遺伝子の導入を行なってきました。交配によって遺伝子が組み換えられた結果、様々な性質を持った個体が出現しますが、そのうちの有用な性質を持った個体のみを選抜して改良を重ねてきたわけです。今日私たちが日常の生活で食べている米、野菜、肉などのほとんどは、このような様々な交配によって作り上げられてきたものです。
c. バイオテクノロジーによる品種改良
 しかし、現在ではバイオテクノロジー(バイオロジー + テクノロジー、生物学 + 科学技術)と呼ばれる方法を用い、生物の組織や細胞さらには遺伝子を利用して、優れた形質を持つ生命体を誕生させることができるようになりました。細胞と細胞を人工的に融合させて両方の性質を持つ細胞を作る「細胞融合技術」や、植物の細胞や組織(同じ種類の細胞の集まり)を養分のある液に植えつけて、一つの植物にまで成長させる「細胞・組織培養技術」、そして「組換えDNA技術」などです。
2. 遺伝子組み換え技術とその応用
 遺伝子組み換え技術とは細菌などの遺伝子の一部を切り取って、その構成要素の並び方を変えてもとの生物の遺伝子に戻したり、別の種類の生物の遺伝子に組み入れたりする技術です。この技術を利用すれば、特定の生物がもっている遺伝子を異なる種の生物に組みこんで、必要とする性質を持ったタンパク質をつくらせることができます。農作物や細菌などに、本来作り得ない、有用な酵素などを作らせることもできます。動物の遺伝子を植物の細胞に組みこむことすら可能な技術です。
a. 組み換え技術
●アグロバクテリウム法
 最初に開発された方法はアグロバクテリウム法という土壌細菌を使って植物に遺伝子を組み込む方法です。アグロバクテリウムには、「核外遺伝子」(プラスミド)と呼ばれる小さな環状のDNAが存在し、その内部には「T-DNA」という領域があり、アグロバクテリウムが作物に感染すると、その作物の細胞のDNAに入り込むという性質を持っております。そこでこの性質を利用し、プラスミドの一部を切りとって、そのかわりに取り入れたい遺伝子をプラスミドにつなぎ合わせた後、T-DAN領域内に「プロモーターに連結した目的遺伝子」を導入すれば、目的遺伝子が作物細胞中のDNAに組み込まれ、目的のタンパク質を作るようになります。プロモーターとは遺伝子の機能を開始させ、タンパク質を作らせるスイッチとなる働きを持つ、特定のDNA領域です。なお、プラスミドは、遺伝子を運ぶ役目をするので、運び屋DNAとも言われています。
●エレクトロポレーション法
 次に、電気を使って遺伝子を取り入れるエレクトロポレーション法が開発されました。エレクトロポレーション法では、まず、植物細胞の固い細胞壁を酵素で溶かして取り除き、プロトプラストと呼ばれる裸の状態の細胞にして、遺伝子が入りやすいようにします。次に、このプロトプラストに、短時間の電気刺激(電気パレス)をかけて穴をあけ、ここから取り入れたいDNAの断片を入れることにより、役に立つ遺伝子を改良したい植物に組み込むことができます。
●パーティクルガン法
 10年ほど前に、アメリカのコーネル大学で開発された方法です。パーティクルガン法とは、金やタングステンの微粒子に取り入れたい役に立つ遺伝子をまぶし、これを高圧ガスで改良したい植物細胞に打ち込む方法です。
b. 遺伝子組換え技術を用いて作られたもの及び研究開発中のもの
 1. 農林水産・食品分野
  農林水産・食品分野では植物、家畜、魚介類、昆虫、微生物といった主要な生物種が対象 となっており、実用化を目指した広範な研究開発が進行中です。各分野における実用化及び 研究開発状況は以下のようになっています。
 a)植物分野
  (1) 実用化されている技術
  細胞・組織培養:
  病気に侵されていないイチゴ苗、優良な系統のラン苗等の大量生産
  イネ、イチゴ、ネギ、ユリ、カンキツ等の新品種の作出
  薬用人参を成分とする飲料の大量生産
  組換えDNA技術:
  我が国では、組換えDNA技術を利用して作出された色変わり(青っぽい藤色)カーネー  ションが平成9年10月から販売されています。 米国等では組換えDNA技術により日持ち  をよくしたトマト、除草剤耐性のナタネ、ダイズ及び害虫抵抗性のジャガイモ、トウモロ  コシ、ワタなどが商品化されています。
  (2) 研究開発の状況
  細胞・組織培養 :
  花粉の少ないスギ品種、低リグニンのパルプ用に適した樹木、難育苗樹種の組織培養によ  る苗木の大量増殖技術の開発
  組換えDNA技術:
  病気に強いイネ、トマト、メロン、ペチュニア、低アレルゲン、酒造用の低タンパク質の  イネなどの作出に成功。これらは、隔離ほ場での栽培試験が終了し、一般ほ場での栽培が  可能となっている(ただし、製品化には至っていない)。
  耐寒性、耐乾燥性、耐塩性等を有し極限環境でも生育できる作物、光合成や窒素固定の能  力を向上させ生産性を飛躍的に高めた作物、機能性成分に富む作物、化石燃料に替わり効  率的なエネルギー生産を行う作物の開発を目指した研究に取り組んでいる。
  組換えDNA技術を用いた画期的な新品種開発の基盤となるイネの全遺伝子の配列及び機  能を解明するゲノムプロジェクトが進行中。
 b)家畜分野
 (1) 実用化されている技術
  卵子、胚の利用 :
  優良な雌牛から一度に大量の受精卵を取り出し、他の雌牛に移植することによる優良な子  牛の生産(受精卵移植)
  組換えDNA技術:
  医薬品開発等のための組換え実験動物(マウス等)の生産(米国では組換え生ワクチンが商品  化されている。)
 (2) 研究開発の状況
  卵子・胚の利用 :
  1つの受精卵や成体細胞から同じ性質を持つクローン牛を生産する技術の開発
  組換えDNA技術:
  牛白血病の組換え生ワクチン接種試験の開始
  有用物質生産のための組換え家畜や臓器移植用の組換えブタの試験的作出
  ウシ、ブタを中心に家畜ゲノムの解析研究を実施中。
  DNA鑑定:
  受精卵のDNAを調べることによる雌雄の産分け
 c)水産分野
 (1) 実用化されている技術
  卵子・胚の利用:
  大きな魚介類(三倍体魚、全雌魚)の生産
  新素材の開発:
  エビ・カニの甲羅を素材とした手術用糸の生産
  組換えDNA技術:
  真珠養殖用のフィブロネクチンの生産
 (2) 研究開発の状況
  卵子・胚の利用 :
  ウナギ稚魚の人工養殖技術の開発
  組換えDNA技術:
  遺伝子組換えニジマスの作出に成功しており、世界的水準にある。
 d)昆虫分野
 (1) 実用化されている技術
  組換えDNA技術:
  カイコを用いたネコ用インターフェロンの生産
 (2) 研究開発の状況
  昆虫の高度利用
  昆虫の有用成分を利用した新素材(抗菌性物質、抗血液凝固物質、ワックス、人工皮膚   等)の開発、昆虫機能を利用したバイオセンサー、バイオマイクロマシン等の開発
 e)微生物分野
 (1) 実用化されている技術
  細胞融合 :
  冷凍保存が可能なパン生地用酵母
  微生物・酵素の高度利用:
  バイオリアクターを利用した糖類、酒類の製造
  欧米では組換え微生物により生産されたチーズ製造用酵素の商品化。
  米国では組換え微生物により生産されたウシ成長ホルモンの商品化。
 (2) 研究開発の状況
  組換えDNA技術:
  耐熱性酵素等の開発
  微生物の高度利用:
  微生物を利用した環境浄化技術(バイオリメディエーション)の開発
2. 医薬品、工業用酵素、試薬(実験や検査等に使う薬剤)
  具体的には、ヒトの医薬品としてインターフェロンやインスリン、衣料用洗剤の酵素など があり、大きな市場となっています。また、実験用の疾患モデルマウスの生産なども実用化 されています。
3. 遺伝子組換え技術を使うメリット
 農林水産業・食品産業等では遺伝子組換え技術の応用により、画期的な新品種の作出や、生産工程の効率化等といったことが可能です。21世紀半ばには世界の総人口は100億人の時代になります。食糧不足と地球環境の破壊はますます深刻になることが予想されます。遺伝子組換え技術は今後の食料問題、地球環境問題等を解決するためのキーテクノロジーの一つとして期待されます。
 遺伝子組換え技術の利用により、ある生物から有用な遺伝子を取り出し、他の生物に導入することで、農作物の品種改良の範囲を大幅に拡大することができます。農作物を利用して自然の状態で分解するプラスチック製品を作ることやエネルギー資源として用いることも可能です。これまでと全く異なった農作物の利用形態が浮上してくることでしょう。
 具体的には、次のような課題への対応を可能にする技術といえます。
1. 消費者の好み・要望にそった農林水産物・食品の生産
  栄養成分や機能性成分(抗ガン効果等)に富む農作物、日持ちの良い農作物、アレルギー  原因物質を除いた食品の生産
2. 生産力の飛躍的向上
  超多収農作物、低温・乾燥・塩害などの不良環境や病虫害に強い農作物の開発
3. 環境・資源問題の解決への貢献
  生分解性プラスチック、環境浄化微生物、病虫害抵抗性を付与することによる農薬使用量  の減少、生物エネルギー等の開発
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4. 遺伝子組み換え作物
 すでに商品化されている遺伝子組み換え作物の種類はいろいろありますが、現在までにアメリカやカナダで商品化されている遺伝子組み換え作物の代表的な機能としては、除草剤に対する耐性、害虫に対する抵抗性、日もち向上性の3点があげられます。その他、雄性不捻性・不捻性回復性の組み込みや、鉄分などの人体に有用な成分を多く含む作物、効率的なエネルギー生産を行う作物、きびしい環境下でも生育できる作物などの開発をめざした研究が進んでいます。
a. 除草剤の影響を受けない農作物
 除草剤の影響を受けない農作物には、特定の除草剤の影響を受けなくするタンパク質を作る遺伝子が組み込まれています。そのため、その除草剤をまいても枯れない農作物を作ることができます。農作物を作るときには、雑草や農作物の種類に合わせて数種類の除草剤を何回もまかなくてはなりませんが、この除草剤の影響を受けない農作物を栽培することによって除草剤の使用回数や使用量を減らすことが可能になります。現在、除草剤耐性遺伝子を導入した作物にはダイズやナタネなどがあり、グリホサートやグルホシネート、オキシニル系などの除草剤に強い性質をもつ品種が作られています。除草剤の影響を受けないバクテリアや、除草剤を分解してしまう性質を持つバクテリアから、その部分のDNAを取り出して植物のDNAに組込み、除草剤に強い植物が作られます。
 (1) グリホサート耐性作物
 グリホサートは、植物や微生物に特有なアミノ酸合成経路に必要なEPSPS蛋白質の働きを阻害するため、植物は生育に必要なアミノ酸を合成できずに枯れてしまいます。そこで、植物が元々持っているEPSPS遺伝子を部分的に変化させたmEPSPS遺伝子を挿入することにより、グリホサートの影響を受けないmEPSPS蛋白質ができるので、グリホサートを散布しても植物は枯れずに生き残ることができます。
 (2) グルホシネート耐性作物
 植物は生きるために窒素を利用していますが、その結果、アンモニアという有害物質が組織内にたまってしまいます。このアンモニアを無毒化する酵素を植物はもっているのですが、グルホシネートの有効成分であるPPTは、この酵素の働きを阻害するため、アンモニアがたまって植物は枯れてしまいます。そこで、このPPTの働きを阻害する酵素を発現する遺伝子を植物に導入することにより、グルホシネートを散布しても、植物は枯れずに生き残ることができます。
 (3) オキシニル系除草剤耐性作物
 オキシニル系除草剤は、植物が光合成を行うときの電子の流れを遮断することで、植物の生育を阻害しますが、オキシニル系除草剤耐性作物には、オキシニル類を活性成分とする除草剤を加水分解するnitrilase蛋白質を発現するoxy遺伝子を導入しているので、オキシニル系除草剤の影響を受けずに生育できます。
b. 害虫抵抗性農作物
 害虫をよせつけない農作物とは、害虫の天敵である微生物から、特定の害虫だけを殺すタンパク質を作る遺伝子を取り出して、これを農作物に取り入れたものです。遺伝子組み換えの技術によって害虫をよせつけないよう改良された農作物としてよく知られているのがトウモロコシです。トウモロコシにとっての害虫はガやコガネムシの仲間です。これらの害虫に対抗するためにトウモロコシに取り入れられた遺伝子は、ガやコガネムシの天敵微生物である「バチルス・テューリンゲンシス菌」(通称:Bt)のもで、このBtが持つタンパク質が殺虫力を示すのは特定の種類の害虫だけだとされており、そのためこのBtタンパク質は環境に優しい農薬として20年以上も前から使われています。このBtタンパク質をトウモロコシに組み込んだのが、通称Btコーンと呼ばれている組み換え作物で、このBtコーンを害虫が食べると、まず害虫の体内にBtタンパク質が取り込まれます。しかし、昆虫の消化器内はアルカリ性になっているため、このBtタンパク質は害虫の体内では完全には消化されず、毒性を持つ特定のプチペド(タンパク質が部分的に消化されたもの)が残ります。このプチペドが害虫の腸の粘膜にあるレセプター(受容体)と結びついて、虫の腸管細胞を破壊し、害虫は死んでしまいます。なお、人間などのほ乳類では、胃液が酸性であるためにBtタンパク質は消化されてしまい、仮にプチペドが体内に存在したとしてもほ乳類にはレセプターがなく、生体には影響がないとされています。Bt菌は土壌中に常在しており、特定の種類の害虫以外に影響をおよぼすことは少ないと考えられています。また、殺虫剤の散布回数や使用量を減らすことができ、労力とコストの削減にもなります。
c. 日もちを向上した農作物
 遺伝子組み換えの技術によって日持ちがよくなるよう改良された農作物として、トマトやカーネーションが知られています。これらには、果実が熟する時に働く酵素が現れるのをおさえる遺伝子や、果実の成熟や植物の老化をすすめる植物ホルモンが現れるのを抑える遺伝子が取り入れられています。日持ちのよいトマトには「畑で完熟してから収穫できる」という利点があり、日持ちのよいカーネーションは「いままでより長い間花を楽しめる」という利点があります。日もち向上性を獲得させたトマトは1994年にアメリカではじめて認可され、市場に出まわりました。トマトは実が熟すと「ポリガラクチュロナーゼ」と呼ばれる酵素が働いて、ペクチンが分解され、果皮がやわらかくなります。日もち向上性のトマトでは、トマトのポリガラクチュロテーゼを生成させる遺伝子の一部を逆向きにして元の遺伝子に組みこむことにより、遺伝子本来のはたらきをおさえる「アンチセンス法」とよばれる方法が用いられます。その結果、ポリガラクチュロナーゼの生成が抑制され、熟しても果皮がやわらかくなりにくく、畑で完熟させてから収穫できるので風味もよく、カビなどの発生も少なくなります。
d. 雄性不捻性・不捻性回復性
 雄性不稔性とは、植物の雄性器官である花粉や胚のうに異常があるために、受粉・受精や種子形成が行われないことをいいます。花に雄シベと雌シベが共についていると、植物は自家受粉を行うことができ、他の品種の花粉を受け付けにくくなるので、雑種強勢(雑種の植物は純粋なものよりも生命力が強く、収穫量が上がる)の特徴を利用する雑種第1代を育成することが困難になりますが、雄性不稔を用いるとこれが可能になります。しかし、できた種子の次代が雄性不稔のままでは、受粉ができず収穫量が減るので、花粉親となる植物には、雄性不稔遺伝子を働かなくする稔性回復遺伝子を組み込んでおきます。
e. 色変わりの花
 遺伝子組み換えの技術によって、色変わりのカーネーションなども開発されております。ペニチュアという花から青の色素(アントシアニン)をつくりだす遺伝子を取り出してカーネーションに取り入れ、今までにない藤色の花が咲くようにした色変わりのカーネーションは日本でも平成9年10月から販売が開始されております。濃い青紫色のカーネーションも平成11年6月下旬から販売されております。
5. 遺伝子組み換え大豆の意外なマイナス面
 雑 草管理が楽になり、収穫量が増える」「除草剤の使用が減る」と言われてきた 遺伝子組換え農作物ですが、実際にはその逆であるという専門家のリポートが米国で相次いで発表され、大きな反響を呼んでいます。名古屋大理学部の河田昌東助手(分子生物学)はリポートの一つを日本語に翻訳して紹介しております。
以下、河田昌東先生のリポートから、その要点をご紹介させて頂きます。
a. リポートの要旨
 リポートをまとめたのは、病害虫専門家で元米国科学アカデミー農業委員会 委員長のチャールズ・ベンブロック氏です。「ラウンドアップ・レディ大豆の収量低下の程度とその 結果」(ラウンドアップ・レディは除草剤の商品名)という内容は昨年夏に翻訳・公表されました。調査は八つの州立大学の試験栽培地で行われた結果を分析したもので、それ によると、在来品種と組み換え品種を比較したところ、平均収穫量は8州のう ち7州で在来品種の方が高く、1エーカー(約4000平方メートル)当たりの収穫量で見ると、組み換え品種の方が約7%低かった。遺伝的に収量性の高い5品種を選んで比較しても、組み換え品種の方が約6%低かった。組み換え大豆の栽培では除草剤を1、2回まくだけで雑草が枯れるため、これまで除草剤の使用量は減るとされてきた。ところが、農場での使用状況を調べた結果、組み換え大豆が登場する前に比べ、1エーカー当たり約2~5倍の除草剤を使っている所があり、使用量は減っていないと結論づけている。除草剤の使用が増えた理由として、「散布するだけで雑草が枯れるため、安易にまく傾向がある」「雑草に耐性ができて、結果的に散布量が増える」の二つが考えられるという。
b. メーカー巻き込む論争
 一方、米国のネブラスカ大農業資源研究所は今春、過去2年間にわたって調査した結果、「ラウンドアップ・レディをまいても枯れない組み換え大豆の方が従来の大豆に比べ、6~11%収穫量が少ない」という研究リポートを発表した。この調査はベンブロック・リポートを支持する内容だけに、米国では除草剤メーカーを巻き込んでの論争となっている。調査結果を学会や公開討論会で積極的に発表しているベンブロック氏は「組み換え大豆は経済的にも収入減をもたらし、決して夢の技術ではない」と米国農業の未来に懸念を抱いているという。ベンブロック・リポートを訳した河田さんは「このリポートは、日本の消費者や生産者にも重大な問題を提起している。組み換え大豆の収量が低くなるメカニズムは分かっていないが、外から遺伝子を組み込まれて除草剤に強くなった分、大豆自体の健康度、生命力みたいなものが低下したのではないか。今年の米国での組み換え大豆の栽培面積は昨年に比べて減るだろう」と語る。
c. メーカーは反論
 これに対し、「ラウンドアップ・レディ」のメーカーである米国モンサント社の日本法人は「もともと収量の増加をうたい文句にしていない。しかも、除草剤の使用が増えたという根拠がはっきりと示されていない。雑草に耐性ができたという話も聞いたことがない」などと反論している。
【米8州の平均収穫量の比較】
 州    在来種 組み換え
イリノイ   58   60
アイオワ   61   57
ミシガン   66   64
ミネソタ   66   61
ネブラスカ  66   51
オハイオ   60   58
南ダコタ   49   44
ウィスコンシン71   69
※数字は1エーカー当たりの収穫量(単位はブッシェル。1ブッシェルは約27キログラム)
河田先生のリポートは中部よつ葉会で冊子としてまとめられております。 
 取り扱い:中部よつ葉会=電話052・937・481 7
6. 遺伝子組み換え食品とその安全性
a. 遺伝子組み換え食品とは
 遺伝子組み換え食品とは「遺伝子組み換え技術を用いて開発された農作物と、それを加工した食品」を指します。現在、厚生省が安全性を確認したものとしてはとうもろこし、なたね、じゃがいも等の農作物29品種と、キモシン、α-アミラーゼ等の食品添加物6品目があります。日本で販売されている食用油や豆腐、醤油、スナック菓子などにはアメリカやカナダから輸入された原料が使われることが多いことから、組み換え食品である可能性があります。
b. 遺伝子組み換え食品の安全性
 遺伝子組み換え食品の開発とその安全性について日本で賛否両論が飛びかうようになったのは、1996年ころからです。賛成派は「遺伝子組み換え食品は従来の食品と同等に安全である」と考えるのに対し、反対派は「予期しない事態を生む可能性があるにもかかわらず、安全性が評価されているか疑わしい」としております。遺伝子組み換え食品としての安全性の確認には以下の3点があります。
1. 導入された遺伝子が新たに作り出すタンパク質が人体に安全かどうか
2. 新たに作り出されるタンパク質にアレルギーを引き起こす作用がないか
3. 目的遺伝子とともに導入されることの多い抗生物質耐性遺伝子が作り出す酵素が、人体に影響しないかどうか
 1989年にアメリカで遺伝子を組み換えた枯草菌を利用して生産されたトリプトファンを食べた人々に、筋肉の痛みや呼吸困難、せき、発疹などの症状がみられました。トリプトファンは必須アミノ酸の一つであり、この製品は不眠症などにも効果がある食品として販売されていたものです。調査の結果、商品中に予期されなかった2種類の有害物質が混入していたことが判明しました。それらの有害物質が遺伝子組み換えによる副産物であるかどうかは不明ですが、安全性がよく確認されないまま市場に出まわったとして問題視されました。
c. 遺伝子組み替え食品の安全性に疑問を投じた二つの論文
1. 1998年8月イギリスのアーパド・バズタイ博士は「遺伝子組み換えによる害虫抵抗性ジャガイモをラットに与えたところ腎臓や、脾臓、胸腺、胃などの組織における成長障害と免疫力の低下がみられた」とテレビ番組で公表しました。この報告は「世間に誤解を与えるものである」として博士は停職処分を受け、事件はいったん解決したかのように思われましたが、その後も賛否両論が噴出し、最終的に明確な結論は得られておりません。
2. アメリカのコーネル大学のJ. ローシー助教授がアワノメイガという害虫を防除するために「Bt (バチルス・チューリンゲンシス)」というバクテリアの遺伝子を組みこんだトウモロコシの花粉を、オオカバマダラというチョウの幼虫に食べさせる実験を行いました。その結果、4日間でチョウの幼虫のうちの44%が死んだという論文が科学雑誌「ネイチャー」(1999年5月20日号)で発表されました。「害虫が死ぬトウモロコシを人間が食べてほんとうに害はないのか」といった疑問が大きな波紋をよび、遺伝子組み換え作物に対する反対運動がおきるきっかけとなりました。
 これに対して、開発した企業や科学者らからは、「アワノメイガとオオカバマダラは同じ鱗翅目の昆虫なので、Bt作物にある程度影響を受けてもおかしくない」、「昆虫は自分がえさにする植物を決めているのでトウモロコシをえさとしないオオカバマダラで死ぬものがいても当然」などと、反論がでました。1999年11月にはこの問題を検証するシンポジウムが開かれ、「現段階では、自然環境に対する影響は心配ない」との結論になっております。
d. 遺伝子組み換え食品、賛成派の主張
(1)遺伝子組み換え作物は食品として安全である。
 OECD(経済協力開発機構)が1993年に出した報告書の中で述べられている「遺伝子組み換え作物は、従来(非組み換え)の作物と基本的に同じである」という考えが大前提にある。また、遺伝子を組み換えるに当たっては性質の明らかな遺伝子を、一般によく知られている農作物に組み込むので、安全上予想もしないような事態はほとんど発生しない。万が一、予想もしなかったような物質が出てきても、現在の安全性評価の基準においてチェックできるようになっている。
(2)遺伝子組み換え作物は農薬・害虫に強い。
 現在、作物には病気と害虫と雑草という3つの敵がある。これに対して、いままでは品種改良という方法をとっていたが、これは長い時間がかかってしまう。これに対して組み換え作物は、病気や害虫に強い遺伝子を組み込むだけで、短い時間で確実に問題が解決できる。
(3)人口爆発による食糧危機の対応策となる。
 組み換え作物は耕地を増やさなくても、害虫や病気に強いものを作ることによって確実に生産量を増やす事が出来、発展途上国の食糧問題の解決に大きく貢献できる
(4)遺伝子を組み換える事は自然の摂理に反していない。
遺伝子組み換え作物も、科学的にみれば通常の品種改良で行われている事と同じであり、将来に渡って食料の品質や生産性を高め、私達の生活を豊かにするためのものであるという点においても、これまで行なってきた品種改良と同じものであるといえる。よって、遺伝子の組み換えはやり方は違うが今までの改良技術の考え方の延長線上にあるものであり、自然の摂理には反していない。
e. 遺伝子組み換え食品、反対派の主張
(1)遺伝子組み換え作物は食品として安全ではない。
遺伝子組み換え作物は人が無理矢理ほかの種類の生物の遺伝子を植物に組み込んだものである。それは自然界には絶対に存在しない植物であり、その点において従来の作物とは明らかに違うものである。遺伝子を組み換える事によって、今まで眠っていた遺伝子が目覚めたり、逆に遺伝子が働かなくなったりと、いろいろな事が起こる可能性があるのだ。結局、実際に食べたらどうなるかは私達の体で試される事となる。
(2)生態系への影響が懸念される。
 遺伝子組み換え作物は人間が作り出したもので、自然界には存在しない。そのため、生態系への影響が問題になっている。組み換え作物は人間のコントロールを超えてはびこり、植物や昆虫の生態系を変えてしまう危険性がある。
(3)人口爆発による食糧危機の対応策にはならない。
 単に収穫量が多いとか、砂漠でも成長できるとか、そういう技術に依存しても食糧不足の問題は解決できない。食糧不足の原因である人口の増加は、世界の北と南の経済格差、南北問題が主な原因である。この南北問題を解決しない限り、食糧不足の問題も解決しない。
(4)遺伝子を組み換える事は自然の摂理に反する。
 自然界には「種の壁」という基本的なルールのもとに成り立っている。人間が他の動物とは交配できないのと同じように、大豆は大豆としか交配できない。だが、遺伝子組み換えは「種の壁」を超える技術である。例えば、大豆に微生物の遺伝子を切りとって組み込んだり、人工的に作った遺伝子を組み込んだりする。理論的には、人間の遺伝子を犬や猫に組み込み、人間の遺伝子を持つ犬や猫を作る事も可能である。生命の設計図ともいわれる遺伝子を人間が勝手に操作して、「種の壁」というルールを破っても良いのかどうか、現時点ではほとんど論じられていない。
(5)特定企業による農業支配が起こる恐れがある。
 現在、遺伝子組み換え作物を開発しているのは先進国の一部の企業である。それらの企業は、自分たちが開発した組み換え作物の種子、販売権、特許などを持っている。もしこのまま遺伝子組み換え作物が世界中に広まっていけば、これらの企業が世界中の農業を支配してしまうだろう。
7. 遺伝子組み換え食品の安全性の評価ならびに評価の確認
 日本における食品の安全性の確保は、「食品衛生法」などに従って、まず製造者または輸入者が自らの責任において実施することになっています。遺伝子組み換え食品についても同じで、組み換え食品の製造者は、厚生省の作成した「組み換えDNA技術応用食品の安全性評価指針」(以下安全性評価指針と略す)などに従い、自らの責任において製造した組み換え食品の安全性の確認を行ないます。国の機関が直接組み換え食品の安全性を審査する事はありません。
a. 製造者による安全性評価
 製造者はまず、
・ 科学技術庁の「組み換えDNA実験指針」に基づいて、遺伝子組み換え作物を実験室で開発し、そこで作物に新しく組み込んだ性質をチェックすると共に、従来の植物と成分・性質を比較します。
・ 次に、開発された遺伝子組み換え作物は実用化の段階に入りますが、ここでは農林水産省の「農林水産分野における組み換え体利用のための指針」に基づき、隔離された田畑で、他の生物に与える影響など、環境に対する安全性の評価が行なわれます。
・ 食品としての実用化の段階では厚生省の安全性評価指針にしたがって、従来の食品と栄養成分を比較し、また組み込まれた遺伝子が作り出すタンパク質の安全性などを検査します。
 このようにして組み換え食品の製造者は、製造した食品の環境に対する安全性、食品としての安全性等を検査します。このような検査がすんだあと、製造者は厚生省に、開発した組み換え食品の安全性検査の確認を申請しなければなりません。
b. 厚生省による安全性評価の確認
 製造者の安全性検査の確認申請をうけて、厚生省は開発者が安全性評価指針に沿ってきちんと組み換え食品の安全性を検査しているかどうかを確認します。まず厚生省の食品衛生調査会に回され、専門家の委員で構成されているバイオテクノロジー特別部会に審議を依頼し、その組み換え食品が安全性評価指針に合っているかどうか審議が行なわれます。次に専門家の他、生産者、消費者の代表で委員が構成されている食品衛生調査会常任委員会で安全性などが審議され、その結果が厚生省に伝えられます。審議の結果、その組み換え食品の安全性評価が適切に行われていると判断されれば、その組み換え食品は商品化され、私たちの食卓に並ぶことになる。食品衛生調査会において、人体への健康上の影響が疑われたり、確認された場合には、食品衛生法に基づき、販売停止などの措置がとられます。厚生省の安全性評価指針では、製造された遺伝子組み換え食品と既存の食品との成分を比較し、
1.タンパク質などの主要食品成分の割合が既存の食品と同程度である
2.組み換えにより新たなアレルゲン(アレルギーの原因)が生じていない
 等が確認されれば、既存の食品と同様に安全であると考えます。
c. 遺伝子組み換え食品の安全性確認義務化について
 遺伝子組み換え食品の安全性確認を輸入業者や開発業者に義務づける制度が定められる予定です。この法律は2001年4月から施行される予定で、これによって業者は、国の安全性審査をうける義務を課され、安全性審査をうけていない組み換え食品の販売、輸入、製造は禁止されることになります。この新制度では、「遺伝子組み換え食品は安全性審査を経たものでなくてはならない」などと定め、この基準に合わない食品の製造、販売、輸入は禁止される他、市場に出回った場合は、その食品の廃棄、回収、輸出国への積みもどし命令などの行政処分もできます。
8. 遺伝子組み換え食品表示義務化について
 これまでに厚生省が安全性を確認し、国内で流通している遺伝子組み換え作物は、トウモロコシ、大豆、ジャガイモ、なたね、わたの五つです。厚生省は、これら遺伝子組み換え作物を原料に使った食品について、メーカーに表示を義務づける方針で検討をしています。重量が全体の5%未満である時など、少量しか遺伝子組み換え作物を使っていないものは除くものの、原則として遺伝子組み換え作物を含んだ全ての食品を表示対象とする予定です。農水省がこれまで表示対象にしていなかった、醤油やコーンフレーク、マッシュポテトなどの食品にも表示の義務が課せられることになります。農水省では日本農林規格(JAS)法に基づく品質表示基準で、遺伝子組み換え作物を主な原料とする30食品を対象に表示義務を課していますが、表示義務のある食品は、遺伝子組み換え作物が全原材料中の重量で上位三品目のなかに入っていて、しかも重量が全体の5%以上のものだけとされています。さらに、油は表示の対象外です。このため、豆腐、おから、納豆などは入っているが、醤油や大豆などは入っておりません。具体的な遺伝子組み換え食品の表示方法は、「遺伝子組み換え」「遺伝子組み換え不分別(遺伝子組み換え作物を使用しているか分からない)」「非遺伝子組み換え(組み換え作物は使用していない)」の3区分とする方法のほか、原材料中の組み換え作物の混入率を示す方法も考えられております。2000年6月をめどに遺伝子組み換え技術で作られた米の安全性の審査が申請される予定です。
9. 遺伝子組み換え食品の世界的動向
 遺伝子組み換え作物を大々的に生産し、その主要輸出国でもあるアメリカは、外国への輸出拡大をねらい、遺伝子組み換え作物の貿易自由化を主張しています。一方ヨーロッパ諸国では、まだ遺伝子組み換え食品が敬遠されがちであるという理由以外に、自国の農業を保護するためにその輸入を制限しようとしています。遺伝子組み換え作物は本来低コスト・高品質な作物なので、国内に大量に輸入されると、国内でとれた農作物が売れなくなってしまう懸念があるためです。農作物の輸入国である日本も、農業はただ「食糧を生産する」という役割だけでなく、環境を守ったり、美しい景観をもたらすといった役割を果たしていると主張し、自国の農業保護を訴えているので遺伝子組み換え作物の輸入自由化にも慎重な態度をとっております。また、現在のところ安全性に不安が残っているため、遺伝子組み換え作物の需要はあまり高くありません。
●EU(ヨーロッパ連合)
 EUはこれまで、18種類の遺伝子組み換え食品を認めてきたが、健康や環境への不安の声が高まってきて、3年前からあらたに承認することが止められている。そして、EUに加盟する国に共通のルールがいくつかある。スウェーデンでは、実際に売られる遺伝子組み換え作物はつくられてないが、試験的には栽培されており、遺伝子組み換え作物をふくむ食品も出回っている。その出回っている食品については、EU共通のルールにしたがって、「遺伝子組み換え作物が原材料の1%以上の食品には、その表示をしなければならない」ことになっている。また、EUが許可した遺伝子組み換え食品を、スウェーデンが勝手に輸入禁止にすることはできないし、EUが許可した遺伝子組み換え作物を、スウェーデンが勝手に栽培を禁止することもできないことになっている。スウェーデンでは「スウェーデン環境党」が先頭にたって、「GMOフリー自治体(遺伝子組み換え食品のない自治体)」の運動がすすめられている。自治体だけでは進められない政策もあるが、「GMOフリー自治体」は、次のような取り組みをしている。
 *自治体が所有する土地には遺伝子組み換え作物の作付けを許さない。
 *自治体が学校、保育所、福祉施設、政治家の会議などで食事を用意する場合、遺伝子組み換え
   食品をさける。
 *スーパーで売られる遺伝子組み換え食品の表示が正しくおこなわれているかをチェックする。
 *遺伝子組み換え食品をさける努力をしている店を応援する。
 このような「GMOフリー自治体」の活動は、ほかの国でもおこなわれていて、とくにイタリアでは77以上の自治体が取り組んでいるそうだ。そのようななか、2001年の2月に開かれたEUの議会では、「遺伝子組み換え食品の生産と販売に関する規制」が認められた。この規制では、遺伝子を組み換えた食品や飼料、種子、医薬品について、今までよりもきびしく表示をすることや、きびしくとりしまることが決められた。またアレルギーを引き起こす可能性がある「抗生物質」をふくむ食品は、これから8年の間につくらないようにすることになった。しかし、EUに加盟している15の国すべてが賛成しないと、この規制は実現しない。
●アメリカ・カナダ
 アメリカ合衆国やその隣国のカナダは、遺伝子組み換え作物を他の国々に先がけて大規模に栽培し、それを輸出しています。アメリカでは遺伝子組み換え大豆、トウモロコシを主に輸出し、カナダでは遺伝子組み換え菜種、綿花、ジャガイモ、カボチャなどを輸出しています。これらの国では、遺伝子組み換え作物を原料に使った食品の表示義務はありません。
●オーストラリア・ニュージーランド
 オーストラリアやニュージーランドは、アメリカ・カナダと同じく農産物の輸出国です。其れ故、ヨーロッパとは違い、遺伝子組み換え食品に対する表示義務化については、農産物の生産者から強い反対の声が挙がってます。 一方、消費者の間では、やはり遺伝子組み換えに対する不信感も強く、各地のスーパーマーケットなどに遺伝子組み換え食品をおかないように求める運動も起きています。オーストラリアでは1998年7月、政府の基準を満たしていない遺伝子組み換え食品は販売禁止になりました。また12月には、遺伝子組み換え食品の味・色・栄養価や使用方法が元の食品と違うものについては、その表示が義務づけられることになりました。しかしそれ以外の表示については見送られております。ニュージーランドでも、遺伝子組み換え食品を販売するには、その安全性や栄養などに関して、政府が作った評価基準を満たして、その販売の許可を取らなければなりません。また、オーストラリアと同じく、元の食品と味・栄養などが変わったものについては表示も義務づけられる事になりました。
●韓国
 日本のお隣、韓国では、アメリカの遺伝子組み換え大豆とトウモロコシの輸入が認められています。しかし、消費者の遺伝子組み換え食品に対する不安感もあり、1999年7月、「農水物品質管理法」が施行され、これにより、韓国でも遺伝子組み換え食品の表示が義務づけられることになりました。
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10. 私達のこれからの対応
 私達は日々の生活において食事に限らずあらゆる行動・活動で、ある程度のリスクを負って生きております。現代生活ではプラスとマイナス、安全性と危険性とのバランスで、知らず知らずのうちに物事を選択することを行なっていることが日常茶飯事です。遺伝子組み換え食品の安全性をどのような基準できめるかは重要な課題ではありますが、最終的には利用者(消費者)が利益とリスクを天秤にかけて選択しなければならないケースが増えそうです。そのためにも私達は遺伝子組み換え食品に対する正しい知識と、最新の情報を持つことが必要です。もちろん行政府や組み換え食品を提供する業界が十分な情報を公開してくれることが必要条件になりますが。

| 農林漁業::2014.2~7 | 02:52 PM | comments (x) | trackback (x) |

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