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2014,03,10, Monday
*4-1より *4-2より *5-1より イチゴ収穫ロボ 耕うんロボ 私は理科系の人間で、遺伝子や生命科学に関心を持って東大理科Ⅱ類に入学し、医学部保健学科を卒業した。そのため、生物学・疫学・栄養学・公衆衛生学・人類生態学・環境・精神衛生学などに詳しい。しかし、男女雇用機会均等法もなく、女性差別やセクハラ、アカハラも普通に存在していた時代に大学を卒業したので、結婚しても生涯にわたってやり甲斐を持って働くために再勉強して公認会計士となり、外資系のプライスウォーターハウス(現在ビッグ4の一つで、当時はビッグ8の一つ)に入って監査業務・税務業務に従事した(後は、プロフィール参照)。 つまり、私は、このような経歴から、会計学・監査論・商法・税法・経済学・法律などの文科系の知識にも詳しく、理系と文系の両方の知識を持っており、監査実務と税務実務の経験を持って発言しているのである。しかし、発言の背景を説明するためにこういうことを書くと、わが国では、「(女のくせに)生意気だ」「謙虚でない」「嘘!」「完全な人などいない筈だ→いてはならない」等の批判をされることが少なくない。これは、上昇志向の女性をやりにくくしている、”日本文化”の名の下に行われるジェンダーだ。 (1)原発が産業を支えているのではない 私は、1982年に公認会計士二次試験合格後、プライス・ウォーターハウスに入社し、それこそいろいろな会社の監査チームに入れてもらったが、日本軽金属(株)の監査チームにも入れてもらっていた。日本軽金属は、*1で「去りゆく企業が、また一つ出て、アルミ製錬の二の舞いになろうとしている」書かれているアルミ製錬会社で、日本でのアルミ製錬から撤退してカナダのアルキャンと提携した。当時、私は、会社の担当者と話をしていて、「アルミは電気の塊ですから、日本の電気料金ではナイアガラの滝で発電して精錬しているアルキャンにはかないません」と言われたのを覚えている。この時期、日本ではすでに原子力発電が行われており、燃料が何であれ、燃料を使って発電する限り、自然エネルギーにはかなわず、まして、運賃をかけて外国産の燃料を購入すれば、どの産業でも負荷が大きいのは当然だ。 それに加えて、私がこのブログの原発や資源エネルギーのカテゴリーに何度も記載したように、日本では電力会社が地域独占であり、高コスト構造だ。そのため、*1の「原発停止に伴う燃料輸入増は付加価値を生まない純粋な国富流出で、日本経済の体力は日々弱まっている」という主張は、電力の構造改革をせずに輸入化石燃料か輸入核燃料かの二者択一で比較した点で、本質を見誤っている。 さらに、「鉄鋼原料のくず鉄を溶かす時に大量の電気を使う電炉業は、原価の2~3割を電気料金が占めるので、電気料金値上げが打撃となり生き残りは難しい」と書かれているが、それなら、他の方法でくず鉄を溶かすか、他の方法で電力を調達するか、廃業するか、政治に働き掛けるかを選択すべきだ。 なお、日本軽金属の監査では、もう一つ、面白い経験をした。それは、倉庫で実地棚卸の立会をしていた時に、薄暗い倉庫に入ったら光で発電していた電卓がすーっと消えたことである。私は、この時に光発電の実力を知り、1994~1995年頃、現在の太陽光発電の提言をした。 (2)再生可能エネルギーは、年間100億kWhのペースで増加している *2のように、太陽光発電を中心として再生可能エネルギーの発電設備が続々と運転を開始し、年間の発電量が、電力会社10社の総販売量の10%を超える規模になったそうだ。 再生可能エネルギーには、太陽光のほかに、中小水力、風力、地熱、汐潮、バイオマスなどがあり、固定価格買取制度が始まった2012年7月から1年5カ月の間に発電規模が3割以上拡大し、100億kWhに近づいて、比率は1年に1ポイント以上、上昇する見込みだそうだ。今後も同様のペースで増えれば、再生可能エネルギーの比率は毎年1ポイントを上回る勢いで上昇するとのことだが、再生可能エネルギーの利点は、国内にある資源を使うためエネルギー自給率が100%であり、燃料費は無料で、環境負荷も小さいことである。 (3)農業の挑戦は効果が大きい 1)圃場での太陽光発電 *3のように、電気も作物と考え、太陽光を作物と分け合って営農を続けながら同時に発電し、安定した副収入を得るという考え方が広まってきたのは期待できる。何故なら、圃場は広く、営農活性化、耕作放棄地再生、二酸化炭素排出抑制に繋がり、安定的副収入を得られるからだ。そのため、営農型発電施設に補助する方が農業の所得補償をするよりも、エネルギーと食料自給率向上にメリットがあると思うが、そのためには、太陽光を作物と分け合える太陽光発電機器のさらなる進歩が望まれる。 また、*4-1のように、太陽光発電の遮光性を積極的に活用し、林間などでの栽培が適しているセンリョウ、薬草、シイタケなどで太陽光発電を取り入れたり、日射量の多い広い圃場で栽培される水稲やかんきつ園で導入したりもしている。そして、*4-2のように、一本脚型施設へと進んできているが、どういう設置の仕方をしても太陽の向きにかかわらず発電量が大きくなるよう、鏡かレンズを使って太陽光を一点に集めた上、より狭い面積の多結晶型シリコンで発電できる機器ができないのだろうか。 2)ハウスでの太陽光発電 東日本大震災に伴う原発事故を契機に、福島県は復興への主要施策として再生可能エネルギーの推進に力を入れており、全エネルギーに占める割合を基準年度(2009年度)の21.2%から40年度には100%として、その後は、それ以上を目指しているそうだ。 そのうち太陽光パネルメーカーであるソーラーフロンティアの事業は、天窓にパネルを取り付けて1334平方メートルのハウスでイチゴとトマトを栽培するもので、40.5キロワットの出力があり、ハウス内の植物の生育に影響はないとのことである。そのため、地中熱やヒートポンプと組み合わせれば輸入重油も不要にできるので、ハウスの燃油に補助するよりも、次世代型ハウスの建設や太陽光パネルの設置に補助した方が、日本のエネルギーと食料の自給率向上に資すると思う。 このような中、*5-3のように、関東甲信、東北を中心に発生した記録的な大雪で、ビニールハウスの損壊が24都府県で約9500件に上った。そのため、ハウスの再建時には、ハウスを次世代型にするため、太陽光パネルや自動化機械の設置にも補助をつけた方がよい。 3)ロボット化 *5-2のように、手間がかかっていたイチゴのパック詰めを素早くできるロボットが登場し、佐賀県白石町でお披露目されたそうだが、農作業ロボットは、大規模化した農業を効率化し、農業の生産性を向上させるKeyとなる。そのため、性能のよいロボットの開発と安価な普及が望まれるが、そのロボットは、自家発電の電気を動力とすべきだ。 (4)「エネルギーを得るためなら何でもあり」は、もう古い *6のように、大分県宇佐市は、市景観審議会に対して、大規模太陽光発電所(メガソーラー)進出への対応策を検討するよう諮問したそうで、市として良好な景観を維持しながら進出に対応していく方策を探ることになったのは、大変よいことだ。 これまで日本では、石炭、原油、原子力など、「エネルギーを得るためなら何でもあり」という価値観が続いてきた。しかし、これに、大規模太陽光発電所による太陽光発電が加わることのないよう、ゼロエミッション住宅や営農と両立する田園発電などによる太陽光発電を促す仕組みにしたいものである。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140309&ng=DGKDZO68006420Z00C14A3MM8000 (朝日新聞 2014.3.9) 去りゆく企業 またひとつ 雪なお深い北海道小樽市東部の銭函工業団地。創業約80年の製鉄会社が9日、ひっそりと操業を停止する。新日鉄住金系の電炉メーカー、新北海鋼業の本社工場だ。 ●値上げで廃業 鉄鋼原料のくず鉄を溶かす時に大量の電気を使う電炉業は、原価の2~3割を電気料金が占める。昨年9月からの電気料金上げが打撃となり「生き残りは難しい」(同社幹部)と判断。2月19日に事業停止の検討に入っている。原子力発電所の稼働停止が、企業の活動をむしばみ始めている。1キロワット時の発電に必要な燃料費は原発が1円に対し、石炭が4円、液化天然ガス(LNG)が13円、石油が18円。原発を止めたことで燃料を年3.6兆円余計に輸入するようになった結果、全国の電力料金は上昇。特に、企業向けは3~4割上がったとみられる。いまの日本の電気料金は米国のおよそ3倍、中国の1.5倍。国際エネルギー機関(IEA)の長期予測は、電気料金の格差が残れば鉄鋼、化学など素材産業での日本のシェアは7%から2035年に4%に下がり、中国や米国が伸ばすと指摘する。現実の動きはもっと早いかもしれない。「アルミ製錬の二の舞いになろうとしている」。チタン製錬大手、大阪チタニウムテクノロジーズの西沢庄蔵社長は、1970年代のオイルショック後の電力料金高騰で業界各社が相次ぎ国内拠点を閉鎖したアルミニウム業の歴史にチタンの現状を重ねる。売上高の2割にあたる電気料金の上昇が響き、同社の今3月期の営業利益は前期の約6分の1に減る見通しだ。航空機用として高い評価を受ける日本勢のチタン原料は世界シェアの3割を握るが、新興国企業との競争も激しい。今3月期に53億円の営業赤字に転落する見込みの東邦チタニウムは1月、サウジアラビアに現地企業との合弁で製錬拠点を新設すると決めた。決め手は「日本の半分以下」(杉内清信社長)の安い電力だった。「東京電力は韓国より15%高くガスを買っている」。4月に東電会長に就く数土文夫JFEホールディングス相談役は、燃料部門の企業提携や割安な北米産シェールガスの導入を進め、年3兆円近くに膨らんだ燃料費の調達価格を2割程度引き下げることをめざす考え。だが、シェールガスの導入は早くても17年。調達改革には時間がかかる。燃料費がかさむ火力発電に全体の9割を依存する現状を改めなければ電気料金は高止まりし、企業の競争力が揺らぐ構図が続く。 ●輸入10兆円増 昨年の日本の貿易赤字は前年比65%増の11.5兆円。化石燃料の輸入が震災前の10年より10兆円増える一方、輸出が伸び悩んだ。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「原発停止に伴う燃料輸入増は付加価値を生まない純粋な国富流出。足元の景気は回復しているが、日本経済の体力は日々弱まっている」と心配する。「小樽がまた寂しくなる」。5日、小樽の新北海鋼業本社近くで出会った地元の初老の男性が嘆いた。原発再稼働には安全審査が最も重要だが、電気料金上昇のあおりで地域経済の担い手を失う悲痛もまた、日本が目をそらすことのできない現実だ。古谷茂久、原田逸策、小山隆史、中村元が担当した。 *2:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1402/26/news017.html (スマートジャパン 2014年2月26日) 電力の10%を超えた再生可能エネルギー、年間100億kWhのペースで増加 太陽光を中心に再生可能エネルギーの発電設備が続々と運転を開始した結果、年間の発電量が電力会社10社の総販売量の10%を超える規模になってきた。2013年に運転を開始した設備だけで100億kWhの水準に達する見込みで、再生可能エネルギーの比率は1年間に1ポイント以上も上昇する。資源エネルギー庁が集計した再生可能エネルギーの導入状況によると、2013年11月末時点で運転を開始した設備の発電規模は累計で2705万kWに達した。太陽光が全体の4割以上を占め、次いで固定価格買取制度の以前から数多くの設備が稼働している中小水力が35%程度にのぼる(図1)。そのほか風力とバイオマスが1割ずつといった状況だ。固定価格買取制度が始まった2012年7月から1年5カ月のあいだに、再生可能エネルギーの発電規模は3割以上も拡大したことになる。この間に増加した645万kWのうち、太陽光が626万kWと圧倒的に多く、バイオマスが12万kW、風力が7万kWで、中小水力と地熱は1万kW未満にとどまった。それぞれの再生可能エネルギーの発電規模をもとに、年間に生み出せる電力量を計算すると、合計で877億kWhになる(図2)。発電規模(最大出力)に対する平均の発電量を太陽光12%、風力20%、中小水力60%、バイオマス80%、地熱70%の標準値で想定した。一方で電力会社10社が販売する電力量は減り続けていて、2012年度に8516億kWhまで低下した。さらに2013年度は減少する見通しであることから、再生可能エネルギーによる電力の比率は10%を超える水準まで高まる。このうち2013年に新たに運転を開始した設備に限ると、集計が完了している11月までで89億kWhの年間発電量になる。12月に運転を開始した設備を加えれば100億kWhに近づく見込みだ。今後も同様のペースで増えていけば、再生可能エネルギーの比率は毎年1ポイントを上回る勢いで上昇していく。2020年には20%前後に到達して、欧米の先進国並みになる。 *3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26376 (日本農業新聞 2014/2/27) [営農発電・最前線 1] 電気も作物 安定的副収入が魅力 太陽光を作物と分け合い、営農を続けながら発電も同時にする「営農型発電」が普及し始めた。安定した副収入が魅力で“電気も作物”という考え方が広がっている。営農活性化や耕作放棄地再生だけでなく、炭酸ガス排出や原発の抑制にもつながる。営農的な太陽光発電の最前線を追った。 ◇ 三重県伊賀市の山あい。三山悦史さん(67)が発電パネルの下で春を待ちかね水田をトラクターで耕していた。2013年3月、農水省が優良農地での太陽光発電を認め、三山さんは13年5月、転用許可を受け全国でその第1号になった。 ●水田に施設設置 60アールの水田を経営し、そのうち20アールに発電施設を設置した。扇港電機(四日市市)が開発した「ソーラーほ場」太陽光発電システムを導入。建築基準法に触れない高さ4メートル以内、内部は高さが3メートル。トラクターで作業できる。震度7にも耐える頑丈な架台が特徴だ。400枚のパネルが30度の角度で南を向き、太陽光を効率良く受け止める。発電容量は96キロワット。7月5日から売電。12年度に経済産業省の認定を受けたので売電価格は出力10キロワット以上の施設に対応する価格で、1キロワット時が税込みで42円。年間発電量11万キロワット時超を見込み、10アールに換算すれば収入は235万円になる。事業費5700万円はJAいがほくぶから全額20年ローンで借りた。損害保険代と中部電気保安協会への支払いを含め毎月約28万円を払う。これまでの売電実績は月額34万~55万円。平均48万円で差し引きが毎月の収入だ。三山さんは「安定収入を確保できるというので取り組んだ」という。三山さんが利用する「再生エネルギー固定価格買取制度(FIT)」の魅力は、高い売電価格、それに20年間契約時と同額で売れる安定性だ。制度の根拠となる「再生可能エネルギー電気特別措置法」は付則第7条で「3年間を限り、調達価格を定めるにあたり、利潤に特に配慮する」としている。この制度で電気の買い取り価格を決める調達価格等算定委員会は12年に、太陽光発電の投資額に対する税引き前利回りを6%に設定した。この額が投資者に戻る。経産省は建設費などの費用を調べ、毎年度買い取り価格を改訂する。太陽光発電のブームが起きた一因は、利回り6%の“威力”といえる。 ●収量確保が条件 優良農地に太陽光発電施設を設置する場合、農水省は平均10アール収を8割以上確保するなどの条件を付けた。三山さんの施設は同市の水稲農家、和田満さん(55)が先行して、メーカーと12年に実証試験をし、遮光率40%の下で「コシヒカリ」と「キヌヒカリ」が一般水田対比80%以上の収量を確認し、実用化を果たした。東日本大震災の後、再生可能エネルギーへの関心が高まった11年から営農型発電の準備を進めてきた。農地転用にあたって、行政との調整役を務めた和田さんは「農作物は毎年単価が上下するが発電は変わらない。経営にすごくプラスになる」と有利性を強調する。三山さんは今年は短かん品種に代え、施肥を抑えてみる。営農発電に対応して日射量が少なくても収量が確保できる技術を見つけるつもりだ。 〈ことば〉 再生可能エネルギーの固定価格買取制度 略称「FIT」。再生エネルギー電気特別措置法に基づいて12年7月にスタートした。電力会社への売電価格は政府が年度ごとに決め、電力会社は20年間同じ価格で買い取る。 *4-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26212 (日本農業新聞 2014/2/27) 広がる営農型発電 許可件数、24県で69に 日本農業新聞調べ 農地で営農を続けながら、その上では太陽光発電をして売電する「営農型発電」をするための農地の一時転用許可件数が、全国で69件になったことが、日本農業新聞の都道府県に対する取材で26日までに分かった。野菜、稲作、果樹など幅広い作物で取り組まれている。兵庫県のJAあいおいが農地の有効活用モデルとして実証圃場(ほじょう)の設置を計画するなど地域農業の活性化に向け新たな動きが生まれている。 ●JAがモデル圃場設置も 営農型発電は24県で許可され、既に発電を始めた施設もある。作物はフキ、ミョウガなど野菜が多い。遮光を積極的に活用し、林間などでの栽培が適しているセンリョウ、薬草、シイタケなどで取り入れている半面、日射量の多い広い圃場で栽培される水稲やかんきつ園での導入例 もある。中にはメガソーラーと呼ばれる巨大な発電施設の開設計画もある。新潟では牧草地1.8ヘクタールに1メガワットの施設が計画されている。遊休地の再生を狙った取り組みもある。JAあいおいは同JAが開く市民農園「海のみえるやさい畑」(23.4アール、45区画)に、ソーラーパネルの下の土地を有効活用しやすい一本足型の設備4基(出力17.6キロワット)を設置、7月から売電する。徳島県の11件は4人の農家が有限責任事業組合(LLP法人)「国府花園薬草倶楽部(くらぶ)」を組織。合計3.7ヘクタールで3メガワットを計画する。大学と組んで薬草の生産体系を開発する。69件中1件は届け出で転用できる市街化区域内の案件。関係者は「営農継続の強い意向があった。専用の発電所で農地の固定資産税が増額するのを避ける意味もあるのではないか」とみる。農地の一時転用とは別に、太陽光発電の導入に伴い農地を永久転用する面積は44県で918ヘクタールあることが分かった。農水省の調査では、11年4月から13年8月までで2585件、592ヘクタールだったので、調査時点より一層転用が進んでいることが分かった。今回は都道府県により集計期間が異なる他、数県がとりまとめ中だったため、厳密な面積ではないが、最大の県は131.5ヘクタール、最少は0.3ヘクタールだった。 ★メモ:農地法では農地の転用を厳しく制限。発電施設の設置も当初は第2種農地、第3種農地、転用が届け出制の市街化区域内農地に限られてきた。転用が認められない優良農地(農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地)では、農地に支柱を立て発電パネルの下で営農を継続するタイプの太陽光発電設備が実用化してから、行政の対応が変わった。農水省は13年3月31日、(1)生育できる日照量を確保(2)地域の平均10アール収を8割以上確保(3)下部で農作業できる(4)周辺の営農に支障がない(5)毎年1回報告――などの条件を決め優良農地での営農型発電施設の設置を認めた。砂利採取などで最大3年の転用を認める1次転用の仕組みを活用。柱の敷地だけ一時転用し、営農継続を条件に更新を認め、再生可能エネルギー固定買取制度(FIT)の買取期間である20年に対応した。 *4-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26364 (日本農業新聞 2014/3/7) [営農発電・最前線 5] 一本脚型施設 正面受光で効率的に 2013年度の天皇杯に輝いた(有)とまとランドいわき(福島県いわき市)は営農型発電施設を設置するため、2月に農地の一時転用許可を受けた。約1.5ヘクタールに1本脚型の「追尾型太陽光発電システム」75基(出力420キロワット)を設置し発電事業を始める。鯨岡千春社長は「作業性と発電効率が良く、陰が少ないので導入した」と説明する。同時に宅地に570キロワットの地上型施設を計画、大型発電事業者に加わる。1本脚型発電システムの下では加工用イチジクを栽培。現在の経営の柱、トマト(2.3ヘクタール)の養液栽培や観光イチゴ園に加え、新たに加工事業も手掛け、経営を多角化する考えだ。 ●少ない陰が利点 営農型発電は農地に架台を設け農作業できる空間を確保し、上部に太陽光パネルをすのこ状に隙間を空けて設置する屋根型が主流だ。1本脚型は太陽光パネルメーカーのフジプレアム(兵庫県姫路市)が開発した。太陽を追尾し屋根型の1.4~1.5倍の発電量がある。「陰になる部分が少なく作物への影響度が低い」とPRする。同社の創業者、松本實藏会長は農家で、05年に実験農場を設けハウスを建てた。屋根に太陽光パネルを付け発電量や作物への影響を調べた。だが「ハウスではコストも含め実用化に限界がある」(大川拓志専務)という結論に達した。そこで日本では風の影響とコスト高から普及していないものの欧州で普及している追尾型を開発、2009年に農場の水田に設置し試験した。同システムは横7.9メートル、縦4.9メートルの大きな受光部にパネルを20枚取り付け、コンクリートの基礎から立ち上げた直径30~40センチ、髙さ約5メートルの柱で支える。電線は地下に埋設する。パネルの設置角度は、緯度と同じ角度が一番効率が良いとされる。しかし、陰が干渉するため、発電量や地形などを勘案し実態は10~30度になっている。 ●水稲収量を確保 同システムは、あらかじめ入力したデータから季節ごと、時間ごとの太陽の位置を算出し、いつも太陽光を正面から受け止める。その結果、発電量が多くなる。陰の延べ面積は一日を通しても20%未満と少なく、「ヒノヒカリ」での試験では一般水田対比で95%の収量を確保した。同社は昨年、姫路市と共同研究を始めた。水田12アールに4基(出力17.6キロワット)を設置している。営農組織の(株)アグリ香寺に管理を委託し、水稲を栽培する。同市では後継者不足で耕作放棄地が増えているだけに「3年間かけ収入を検証したい」(農政総務課)と期待する。昨年はいもち病で収量が360キロにとどまった。当初は陰の影響を心配したが「周辺の水田と変わりなかった」とみている。兵庫県のJAあいおいが導入するのも1本脚型だ。JAの山本潔参事は「発電効率が良く、市民農園に設置するので陰が少ない点を評価した」と話している。 *5-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26338 (日本農業新聞 2014/3/6) 営農発電・最前線 4] 復興へ再エネ推進 ハウス上でも手応え 東日本大震災に伴う原発事故を契機に、福島県は復興への主要施策として再生可能エネルギー(再エネ)の推進に力を入れている。1次エネルギーに占める再エネの割合を基準年度(2009年度)の21.2%から40年度に100%とし、その後それ以上を目指す。風力発電と並ぶ柱が太陽光発電だ。 ●原発2基分目標 震災前から推進ビジョンを策定し再エネ先駆けの地を目指してきた。震災後の12年3月、目標を上方修正する改訂版を策定した。太陽光発電は基準年に対し30年度に51・4倍、原発2基分に相当する200万キロワット(設備容量)にするという挑戦的な導入目標を掲げた。実現するため国の補助を受けて「福島実証モデル事業」を実施している。12年度に公募し採択した20事業の中に営農型発電が二つある。太陽光パネルメーカーのソーラーフロンティア(東京都港区)と、発電事業者のフォーハーフ(兵庫県加西市)がそれぞれ南相馬市で試験している。フォーハーフの事業は、農地に支柱を立てて発電パネルをすのこ状に設置する方式。一方、ソーラーフロンティアの事業は野菜ハウスの上にパネルを設置した。それぞれ違うタイプの営農型発電を試験している。南相馬市でソーラーフロンティアが事業展開する方式は、全国的にも珍しい。農水省が営農型発電施設に関する通知を出す前の13年3月21日、同市の農家、西一信さん(69)の農地に、農地法3条による空中地上権を設定する許可を取得し、同社が再エネの固定価格買取制度の契約期間に対応する20年間、空中地上権を借りた。1334平方メートルのハウスを建て、息子の達也さん(41)がイチゴとトマトを栽培している。パネルは天窓に取り付けた。遮光率は同社と提携しているドイツの建設会社が欧州で大規模に施工しているハウスと同じ25%を採用した。出力は40.5キロワットで8月14日から売電した。9~12月の発電実績と売電実績は合計で1万4538キロワット時と58万1503円(税抜き)。発電量の予測値を15%上回る好結果だった。同社社長室の重山直樹副室長は「年間平均で20%近く上回り売電収入は年間240万~250万円が見込まれる。建設費は確定していないものの税引き前で7.7%の高い利回りになる」という。 ●生育に影響なし イチゴは「とちおとめ」の購入苗を10月17日に定植し1月7日から収穫した。生育、収量、果実品質への影響を東京農工大学の荻原勲教授が、パネル直下とそうでない部分を比較して11月下旬から1月下旬に調査。「光強度、温度などの環境、収量および生育から判断して太陽光パネルによる影響はほとんどないと考えられた」とまとめた。達也さんは水田20ヘクタールと水稲育苗ハウスで花苗などを生産する。風評被害もあり、売り上げの7割を占める米収入を原発事故で失い、自力で復興したいとモデル事業に乗った。「売電しながら良い作物ができれば経営安定になる *5-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26104 (日本農業新聞 2014/2/22) イチゴ パック詰め自動化 効率、手作業の2倍 農研機構など開発 手間がかかっていたイチゴのパック詰めが、素早くできるロボットが21日、登場した。農研機構・生研センターとヤンマーグリーンシステム(株)(大阪市)などが開発し、佐賀県白石町でお披露目された。30個入り平詰めパックに1分以内に果実を並べ、手作業の約2倍の能力がある。500万円台での販売を目指す。ロボットのキャッチフレーズは「人手をかけずやさしくすばやくパッキング」。吸着ハンドで選果ラインの搬送容器から最大でイチゴ6個を同時に吸い上げ、向きをそろえてパックに並べる。30、24、20個入りに対応、果実を傷めないよう、へたを吸着する。イチゴ生産に占める選別出荷作業は3割に上り、近年は生産者の負担を軽減しようとパッケージセンターの設置が増加。だが、期間雇用のため熟練者の確保が難しい現状にある。ロボットは2011年~13年度の農水省の農業機械等緊急開発事業(緊プロ事業)で開発。担当した同センターの山本聡史主任研究員は「新品種が次々と開発され、市場ニーズも高まっている。出荷作業の省力化で、生産拡大に貢献できるよう製品化に向けて改良していきたい」と展望する。 *5-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26098 (日本農業新聞 2014/2/21) 大雪被害 ハウス9500件、農作物160ヘクタール 農水省は20日、関東甲信、東北を中心に発生した記録的な大雪で、ビニールハウスの損壊が24都府県で約9500件、農作物などの損傷が13府県で約160ヘクタールに上ることを明らかにした。19日時点の各都府県の報告を元に同省が集計した。調査中のところもあり、今後さらに増えるとみられる。林芳正農相が、衆院農林水産委員会で明らかにした。林農相は、日本政策金融公庫による融資や園芸施設共済の早期支払で支援する考えを説明。過去に例のない被害が生じた場合や、激甚指定された場合にビニールハウスなどの再建や修繕、機械の再導入に掛かる費用を10分の3以内で助成する「経営体育成支援事業」が適用できないか検討するとした。 ●対策中央本部 全中が設置 JA全中は20日付で、「平成26年豪雪災害対策中央本部」を設置した。関東甲信越 地方を中心に農作物や農業関係施設、農地などに大きな被害が出ていることを受け、被害状況を的確に把握し、必要な対策を講じる。本部長は全中会長が務める。さまざまな課題に円滑に対応するため、JA全国機関の常勤役員で構成する幹事会も必要に応じて開く。 *6:http://qbiz.jp/article/33482/1/ (西日本新聞 2014年3月8日) メガソーラー対応、景観審議会に諮問 宇佐市 大分県宇佐市は7日、市景観審議会(会長=小林祐司・大分大工学部准教授)に対して、大規模太陽光発電所(メガソーラー)進出への対応策を検討するよう諮問した。審議会は県の職員や市民団体代表、学識経験者など15人で構成。市内へのメガソーラー進出は、市が非公式に把握しているだけで8件。工事中が1件。さらに業者からの問い合わせも数件あり、今後も進出が続くと予想されることから、市として良好な景観を維持しながら進出に対応していく方策を探ることになった。この日の会合では、市が進出の現状や他自治体の取り組みなどを報告。今後、現地視察なども行いながら、進出抑制地域の選定や、市景観条例に業者側の届け出義務を盛り込めるか、などを協議していく。 PS(2014.3.14追加):*7のような洋上風力発電は、太陽光発電と組み合わせたりして、養殖漁業でも電気も作物として漁業収量に影響させないように工夫しながら、洋上に設置することが可能だ。 *7:http://qbiz.jp/article/33755/1/ (西日本新聞 2014年3月14日) 北九州市、新電力に出資へ 響灘地区の洋上風力「70基設置可能」 北九州市は13日、若松区響灘地区に火力と洋上風力の発電所を集積させる構想に絡み、洋上風力発電では「響灘沖に7千キロワット級の発電施設を最大70基設置できる」とする試算結果を明らかにした。発電した電力を買い取り、企業に供給する「地域エネルギー会社」を2016年度に設立し、市が出資する方針も新たに示した。同日の「地域エネルギー推進会議」で、市側が説明した。洋上風力発電では、船の航路を除く水深50メートル以内で試算したところ、響灘沖約15キロに70カ所の設置が可能と分かったという。市は出力計約50万キロワット分の誘致を進める。別に、出力30万キロワットの中規模火力発電所を誘致し、既存の送電線の容量限度(計約80万キロワット)の発電を目指す。地域エネルギー会社は、電力を安く売る特定規模電気事業者(新電力)を想定。民間資本による設立を呼び掛け、市も出資する。響灘地区では、西部ガスが出力160万キロワット級の火力発電所の建設▽オリックスが廃材などを燃料とする11万2千キロワットの火力発電所の建設−を計画。市は「九州電力が送電設備を拡大すれば、300万キロワットまで送電可能」との見通しも示した。
| 資源・エネルギー::2013.10~2014.10 | 11:46 AM | comments (x) | trackback (x) |
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