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2014.3.26 働く女性のガラスの天井とジェンダーの関係を事例で示す → 事実を知って原因を取り除き、本質的な解決をすべきだ
 
「セクハラ系」と「やっかみ系」の記事満載の週刊新潮・週刊文春の電車の中吊り広告だが、この
 ような悪しき”文化”が無批判な人々の脳裏に刻み込まれていくのは、いろいろな点で問題だ。

(1)女性登用の実態
 *1-1のように、日本の女性議員割合は、2014年1月1日現在では127位になり、2013年2月1日の122位からさらに順位を落として先進国の中で最低水準になったそうだ。

 また、*1-2のように、内閣府が「コーポレートガバナンス報告書」をもとに女性登用の現状をまとめたところ、指導的地位にある女性の割合を2020年までに全体の30%にする目標を定めているにもかかわらず、取締役に1人以上の女性がいるのは、日本全体でわずか4.1%の企業だったそうだ。しかし、女性の昇進差別と妊娠・出産・育児のハンディは必ずしも関係がない。何故なら、独身・DINKS・両親の協力などで、男性と同じ働き方をしてきた女性にもジェンダーによる昇進差別が存在し、こちらの方が根深いからである。これは、*1-3で、保育所に待ち行列がなく、子育てへの両親の協力も得やすい九州でも、課長級以上の管理職に占める女性の割合は4・7%にすぎず、全国の企業を対象にした7・5%を下回り、九州では全国よりも女性の登用が進んでいない現状から明らかである。

 なお、こういう場合、企業は必ず、「女性従業員は昇進意欲が低い」などの女性側の理由を挙げるが、それならば、昇進意欲が高い女性には男性と機会均等で平等な評価によって報いてきたのか、「生意気だ」「性格が悪い」「使いにくい」などとして退職に追い込むことがなかったのかについては、何でも女性のせいにしており、卑怯である。

 そして、この現象は、*3-2の小保方晴子博士のSTAP細胞批判にも見られ、利害相反関係になった共同研究者の証言によって、STAP細胞の存在とは関係のない「別マウスの遺伝子検出」のようなことまで、荒探しして批判しているわけである。また、上の写真の週刊誌記事のセクハラ度は、放っておくべきではないレベルに達している。そして、このようなことは、欧米ではあまりなく、女性の軽やかな成功を認めたがらない日本独特の現象だ。

(2)女性の活躍の場について
 *1-3には、「女性活躍の場、どう拡大」と書かれているが、これは、男女雇用機会均等法に定められているとおり、男性か女性かで採用・配置・昇進・退職における差別を行わず、普通に仕事を与えて男性と同じ知識と経験を持つ女性を増やし、その女性たちをジェンダーで歪んでいない公正な目で評価すれば解決すると断言する。 そして、その知識と経験のある女性たちは、女性のニーズがわかっているため、自然と女性目線での商品開発やサービス向上を行い、女性の活躍の場をさらに増やしていく。

(3)女性の登用は可能か
 *2-1のように、安倍首相は、「すべての上場企業が女性の登用を進め、執行役員、取締役などの役員のうち1人は女性を登用すること」を経団連に要請してくれた。ここでもやはり、古いタイプの米倉会長は、「欧米と違ってパイが少ないということもあり、結婚すると育児に専念したいという方々も多い。これをどうやって労働市場に誘い込むかということが非常に大きな問題だ」と指摘したそうだが、結婚しても働きたい人を差別なく気持ちよく働かせれば、首相の要請は簡単に達成できると断言する。

 これまで、経済界は、「雇用のパイが少ないから」として男性を優遇し、女性には機会を与えない状況を続けてきたが、まさにそれが時代のニーズにあったパイを増やすことができずに、大きな財政赤字を作って愚鈍な景気対策を続けても景気がよくならなかった理由である。そのため、能力に応じてFairに機会を与えるのが、すべてを解決する唯一の方法である。

(4)女性管理職に対するUnfairな要求
 *2-2のような女性の管理職登用を奨める記事でさえ、「しなやか(注:セクハラ用語)に駆ける」「女性らしさ(注:ジェンダー用語)が強み」などと題して、佐川急便の南福岡店長である大西さんに、「男と女は違う(注:違いの内容によっては女性差別とジェンダー)。トップダウンの命令ではなく気配りと協調性で束ねたい(注:ジェンダーによる決め付け)」と言わせており、要約すれば、「女性は時間をかけて信頼を得ても、トップダウンのリーダーシップを発揮すべきではない」というメッセージを発している。
 
 さらに、「男性は期限を決めて顧客を一気に攻略。女性はじっくり話を聞き顧客の利益も考える。時間はかかるが一旦信頼関係を築くと次々契約を取り、中長期的な成績は同じ」としているが、これは個人差であって男女差ではない。そのため、短時間で一気に攻略して成功できる女性と顧客の利益を考える男性の双方に対して失礼な内容になっている。また、「共感性や協調性の高さなどが女性の武器」などと書かれているが、男性にも共感性や協調性は重要だし、女性だからといって「共感性」と「協調性」しか武器が無いわけではない。にもかかわらず、こういう決め付け方をするのが、まさにジェンダーであり、ガラスの天井の原因なのである。

 なお、「行動経済学では『女性はリスクを避けたがる』『男性は自信過剰で競争を好む』」というのも、聞いたことのない学説だ。実際には、家計に重い責任を持っている男性の方がリスクを避けたがり、マウンティング(行動学用語)で決まった上下関係による順位を重んじる傾向がある(集団における協調性)。

(5)女性差別は教育や評価にも存在するので、直すべきである
 *3-1で、「理工系学部では近年、女子の受験生が増加」と書かれているが、周囲が何と言おうと自分の信念を貫いた私たちを除き、女性は、ともすれば良妻賢母教育へと教育段階から進路で差別された。つまり、上昇志向の仕事に直結する法学部、経済学部、医学部、工学部などに進む女性は少なく、文学部、家政学部、芸術学部などに行く女性が多いため、企業に就職しても、昇進するために必要な知識に欠け、家庭を選択せざるを得なくなるケースが多いのだ。そのため、本人が働きたければ努力が実って昇進し、やりがいを持って気持ち良く働けるための教育と均等な機会を女性にも与えるべきである。

 また、*3-2のように、せっかく勉強して人がやらない仕事をしても、本質とは関係のないことで荒探しをして足を引っ張ったり、上の写真のように男女関係に結びつけたりしていると、*3-3に記載されているように、米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授のような人でさえ、「日本女性と関係するとややこしいことになるから、今後は日本女性と共同研究するのは避けよう」と考えるようになり、日本女性の機会が奪われるので、気をつけてもらいたい。世界は、貴方の周りだけではなく、貴方の常識が世界標準でも、世界最先端でもないのだ。

*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2642559.article.html
(佐賀新聞 2014年3月5日) 女性議員の割合、日本127位 / 先進国で最低水準続く
 【ジュネーブ共同】世界の国会議員らが参加する列国議会同盟(本部ジュネーブ)は4日、各国・地域の議会に占める女性の割合調査を公表し、日本は今年1月1日現在で127位だった。昨年2月1日現在の122位からさらに順位を落とし、先進国の中で最低水準が続いた。順位は日本のような二院制の国については下院(日本は衆議院)のデータに基づいている。日本の女性議員の割合は約8%と横ばいだった一方、世界の平均は約22%と過去最高になった。アフリカや中南米諸国などを中心に、女性議員が増加したことが要因。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140207&ng=DGKDASFS0602H_W4A200C1EE8000 (日経新聞 2014.12.7) 女性登用の実態開示、上場企業の17% 内閣府調査 「取締役に女性」は4.1%
 内閣府は6日、上場企業に提出が義務づけられている「コーポレートガバナンス報告書」をもとに女性登用の現状をまとめた。役員の男女別の構成のほか女性の活躍推進の目標などを開示した企業は17.6%にとどまった。取締役に1人以上の女性がいるとした企業は4.1%だった。安倍晋三政権は昨年4月、コーポレートガバナンス報告書に女性登用の実態を開示するよう求めた。それ以降に報告書を更新した2995社を調べると、女性が活躍している状況などを記した企業は526社だった。東京証券取引所の17業種のうち最も記載が多かったのは銀行の45.6%。少なかったのは建設・資材の11.3%だった。昨年6月の成長戦略はすべての上場企業に1人の女性役員を置く目標を掲げたが、女性の取締役がいると記した企業は124社にとどまった。成長戦略は官民の指導的地位にある女性の割合を2020年までに全体の30%にする目標を定めている。政府は働く女性のために結婚や妊娠・出産、育児などに応じた支援策を打ち出しているが、登用に十分結びついていないのが現状だ。

*1-3:http://qbiz.jp/article/34042/1/ (西日本新聞 2014年3月20日) 九州の主要企業、女性管理職4・7% 80社アンケート、男性の育休1%
 西日本新聞が九州の主要企業に女性の登用についてアンケートしたところ、回答企業80社で課長級以上の管理職に占める女性の割合が4・7%だった。全国の100人以上の企業を対象にした2013年の厚生労働省調査(7・5%)を下回り、全国に比べ九州では女性の登用が進んでいない現状が浮き彫りになった。政府は20年までに指導的立場に占める女性の割合を30%以上にする目標を掲げており、各企業の取り組みが課題になっている。アンケートで女性管理職登用に向けた課題(複数回答)を尋ねたところ、56社が「昇進意欲の醸成」を挙げ、女性側の意識変革を求める声が最も多かった。ただ「女性社員の職域拡大」(40社)「時間外労働削減や有休取得率向上」(30社)などの意見も目立ち、女性の昇進に向けた職場環境整備の重要性を認識していることがうかがえた。政府が上場企業役員のうち1人は女性を登用するよう経済界に求めている点について、アンケートでは女性役員がいる企業が8社(10・0%)にとどまり、役員全体に占める女性の人数は0・9%だった。育児休業関連では、回答企業全体でみた過去3年間の育休取得率は女性が86・3%だったのに対し、男性は1・0%と、依然として男性の育児参加が進んでいない現状が分かった。男性社員が育休を取得した企業は18社(22・5%)だった。アンケートは女性の活躍に関する九州の地場企業の取り組みを探るため初めて実施。2月10日から25日まで、上場企業など209社に回答を依頼し、回答率は38・2%だった。
◆女性活躍の場 どう拡大
 「女性の活躍」が、九州の企業にとって大きなテーマになっている。これまで各企業では、女性が結婚・出産後も働き続け、管理職に昇進する道筋を付ける取り組みが必ずしも十分ではなかった。しかし少子高齢化や経済のグローバル化が進み、人材活用への意識も変わりつつある。
■有能な人材確保
 「女性社員チームが企画した、国産原料を使った新商品が売れている」(理研農産加工)。西日本新聞が実施した地場企業へのアンケートに、こうした声が寄せられた。女性目線での商品開発やサービス向上は、企業の成長に欠かせない。育児関連制度の運用や女性社員登用の状況は近年、女子学生の会社選びの重要なポイントにもなっている。「(社内で)フォーラムを開催し、女性が働く上での問題点について意見を出し合い、改善策を話し合ってきた」(マックスバリュ九州)など、女性が活躍できる環境づくりは、有能な人材の確保にもつながる。
■成長戦略に明記
 政府は成長戦略で、女性の管理職登用の推進など女性の活躍を明記し、経済成長の原動力と位置付けている。背景にあるのは、少子高齢化に伴う労働力人口の減少への危機感だ。15〜64歳の全国の労働力人口は、2013年で6577万人。内閣府は女性の労働参加などが進まなければ、30年に約900万人減ると推計する。男女とも大学・短大進学率は55・6%(2012年度)と差はなく、女性の就業率も海外の主要国とほぼ同水準。しかし、女性の労働力人口の割合は、出産や育児が重なる30代で一度減少する、いわゆる「M字カーブ」を描く。非婚化・晩婚化で減少幅は縮小しているが、非正規雇用が多いのも課題だ。せっかく採用した女性が活躍しないのは、企業にとって経営資源の“無駄遣い”でもある。「女性社員のキャリア継続のため、配偶者の海外転勤に伴う休職制度を導入予定」(TOTO)などの回答にみられるように、雇用を継続する環境を整えることは、企業間競争に備える狙いでもある。
■取り組み開示も
 そうした中、女性の活躍に向けた企業の取り組みを開示するよう求める動きも出ている。内閣府は1月末、上場企業の女性の登用状況などをホームページ上で公開。上場企業の32・4%(2月14日現在)が情報を開示している。今回の西日本新聞によるアンケートも、女性の活躍が地域経済の活性化に寄与する、という視点で企画した。回答率は4割弱で「当社は女性が少ない」など回答を控えた企業も少なくなかったが、積極的な姿勢を示す企業も目に付いた。現場で働く女性社員のニーズを組み入れた地元の各企業の取り組みが、さらに他の企業に波及していくかが、女性活躍の鍵を握っている。
◆優遇せず仕事任せて−福岡女子大・塩次教授
 経済発展や人口減少を考えると労働力不足は目前にある。それには女性の活躍が欠かせない。企業が女性を活用すれば、組織としての活力を生み出す。グローバル化の中、企業内の多様性をどう管理するかが重要になる。サービス業の一部で女性の感性を必要とする業種もあるが、基本的には女性もプラスマイナスなく男性と同じ労働力だ。企業はもっと女性に仕事を任せ、管理職に登用してみるといい。手を抜かず責任感を持ってやるとすぐに分かる。その時、女性だから優遇するやり方は、男性も怒るし女性も重荷になる。ごく普通に登用すべきだ。それには、女性を特別視しない男性側の意識変革も迫られている。「ガラスの天井(女性の昇進を妨げる見えない障壁)」という問題もある。一方で、昇進を望まずに企業内で安住する女性もいる。女性には自らを駆り立て能力を磨き、仕事を任されたらチャレンジしてほしい。そのことで新しい自分を発見し、人生が豊かになる。そういう女性を企業は求めている。塩次喜代明・福岡女子大学教授 九州大学経済学部教授として九大ビジネススクール長などを歴任し、2012年から現職。企業の女性リーダーや候補者を対象に、日本経営協会九州本部が13年に始めた「NOMA女性ビジネス・スクール」で塾長を務めた。

*2-1:http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MLHJ0K6TTDTB01.html (Bloomberg.co.jp 2013/4/19 ) 安倍首相:上場企業は役員に1人は女性登用を-経団連などに要請
 4月19日(ブルームバーグ):安倍晋三首相は19日昼、官邸で日本経団連の米倉弘昌会長ら経済3団体幹部と会い、すべての上場企業が女性の登用を進め、執行役員、取締役などの役員のうち1人は女性を登用するよう要請した。意見交換会には米倉氏のほか、経済同友会の長谷川閑史代表幹事、日本商工会議所の岡村正会頭らが出席した。首相は女性の登用について「指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度とする政府目標の達成に向けて全上場企業において積極的に役員、管理職に女性を登用してほしい。まずは役員に1人は女性を登用してほしい」と語った。首相はこのほか、大学新卒者の採用活動の後ろ倒しや子どもが3歳になるまでの間は男女とも育児休業や短期間勤務ができるような環境整備を求めた。会合に同席した西村康稔内閣府副大臣は、首相の要請は3団体に「前向きに受け止めてもらった」との認識を示した。また、米倉氏は女性の幹部登用について「欧米と違ってパイが少ないということもあり、結婚すると育児に専念したいという方々も多い。これをどうやって労働市場に誘い込むかということが非常に大きな問題だ」と指摘した。西村、米倉両氏はともに会合後、記者団に語った。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140222&ng=DGKDASGG1401C_Z10C14A2MM8000
(日経新聞 2014.2.22) しなやかに駆ける(3)「らしさ」が強み 共感・協調経験糧に
 「今日も無事故で気を付けて」とハイタッチ。佐川急便の南福岡店長、大西由希子(37)は毎朝駐車場で、集配に出る約50人のトラック運転手全員と交わす。「スキンシップは仲間意識を高める効果があると聞いたから」。昨年6月に就任して以来の恒例行事だ。運転手からすれば店長は声をかけるのもはばかられる、上下関係に厳しい男社会。軽トラック運転手からたたき上げの大西も、そこで16年働いてきた。「男と女は違う。トップダウンの命令ではなく、気配りと協調性で束ねたい」
●営業所苦情減る
 同社を傘下に持つSGホールディングス。ここ3年で女性を約3千5百人増やし社員の約25%にした。「対応がいい」「気遣いが細やか」と顧客の評判も上々。女性中心に切り替えた営業所では苦情が減った。「女性らしさが新風を吹き込んでいる」(人事部)。昨年11月に日本経済新聞社が20~50代の男女千人に聞いた調査では57%が「仕事上で男女差を感じる」と回答。女性が上回っているものとして、細やかな配慮やコミュニケーション能力、協調性などが挙がった。「どうして男性は取引額が小さい顧客を後回しにするの?」。2月上旬の平日夜、東京都内の会議室で金融機関や化学メーカーなど別々の会社の女性営業職7人が悩みを共有した。ネットワーク「営業部女子課」を主催する人材組織コンサルタントの太田彩子(38)は元リクルート営業職。当時から男女の営業手法の違いが気になった。
●時間かけ信頼
 男性は期限を決めて顧客を一気に攻略。女性はじっくり話を聞き顧客の利益も考える。時間はかかるが一旦信頼関係を築くと次々契約を取り、中長期的な成績は同じ。「共感性や協調性の高さなどが女性の武器。男性をまねなくても結果は出せる」と太田は話す。山科裕子(50)は今年1月、オリックスの女性初の執行役員に就いた。法令順守担当で、女性の資質が生きると感じる。率直な発言は山科のセールスポイント。課長時代、部下のパートの時給を巡り「これが相場」と渋る人事部相手に能力に見合った待遇を勝ち取った。「おかしいところを女性は黙っていられない」。もっとも利点ばかりでもない。行動経済学では「女性はリスクを避けたがる」「男性は自信過剰で競争を好む」といった性差があるとされる。大阪大教授の大竹文雄は「男性の自信過剰傾向が投資や挑戦を促し、革新的な商品やサービスを生み出してきた側面もある」と指摘する。そもそも「らしさ」の定義は難しい。個人差もあるし、性別で固定されるものでもない。紙おむつ「パンパース」を開きやすく改良したのは育児休業中に使いにくいと感じた男性社員。ミサワホームの家事や子育てしやすいという住宅も共働き男性社員の提案だ。「らしさ」と混同しがちな「経験の違い」が強みになることもある。これまで来た道と違ったとしても、押し付けられる「らしさ」ではなく素直に優れた面を生かす道が、さらなる高みにつながる。(敬称略)

*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140225&ng=DGKDASDG2402B_V20C14A2CC0000
(日経新聞 2014.2.25) 理系女子になりたい 受験生、憧れ胸に 国公立大2次試験始まる
 国公立大2次試験の前期日程が25日、全国で始まった。理工系学部では近年、女子の受験生が増加。「就職に有利」という思惑に加え、第一線で活躍する女性研究者の姿も理系志望を後押ししているようだ。少子化が進むなか、大学や国も優秀な女子を理工系学部に呼び込もうと力を入れている。東京大理科2類を受験する東京都杉並区の高校3年の女子生徒(18)は薬学部志望。「自分がアレルギー体質でひどいとじんましんが出る。副作用のない薬や肌に優しい化粧品を開発して人の役に立ちたい」という夢がある。「理系は就職にも有利と聞く。卒業後は大手の製薬会社や化粧品会社を目指したい」。東大理科1類を目指す東京都港区の女性(19)は「学習塾で科学史を教えてくれた物理の講師へのあこがれ」が出発点。「材料工学や環境の分野を学び、将来は大学で研究者になりたい」と意気込んでいる。大手予備校の河合塾によると、理工農学部系の大学1年生の女性比率は1990年の9.3%から2013年の19.7%に倍増した。模試受験者の志望先は6年前と比べ、文系はほぼ横ばいだが、理系は2割増。特に医療分野や工学の「建築・土木」「機械・航空」などで女子の増加が目立つという。文部科学省人材政策推進室は「理系分野に進む女性の先輩が増えたことや、高校が理数系の教育に力を入れるようになってきたことが背景にあるのではないか」とみる。東北大は「少子化が進むなか、優秀な女子学生を積極的に呼び込みたい」(女性研究者育成支援推進室)と、06年から地域の進学校で女子大学院生による出前授業を続けている。「研究面でハンディがないことや企業が女性採用に積極的なことを丁寧に説明している」。東北大では自然科学系学部の女性比率が7年間で5ポイント上昇し、12年度は約22%を占めた。京都大工学部も10年度から夏のオープンキャンパスで女子高生限定イベント「テク女子」を開催。女子学生が学生生活や卒業後の進路を説明する企画が人気で「100人の定員は募集開始直後に埋まる」という。理系を志す女子が増えてきたとはいえ、文科省によると日本の女性研究者は14%にとどまり、先進国最低レベル。政府が第4期科学技術基本計画で掲げる「30%」の目標はまだ遠い。文科省人材政策推進室は「多様な発想や視点を取り入れて日本の科学技術を発展させるには女性の力が不可欠。研究活動とプライベートを両立できる研究環境の整備を急ぎたい」としている。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11049166.html?iref=comkiji_redirect
(朝日新聞 2014年3月26日) 別マウスの遺伝子検出 STAP細胞実験、新たな疑問浮上
 STAP細胞論文をめぐる問題で、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーが共同研究者に提供した細胞から、実験に使われていたはずのマウスとは異なる遺伝子が検出されたことがわかった。STAP細胞をつくる実験のデータに、新たな疑問が浮かんだことで、理研が詳しく調べる。理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)が25日、明らかにした。CDBによると、山梨大の若山照彦教授らが、遺伝子解析の結果をCDBの複数の研究者に報告した。英科学誌ネイチャーに論文が掲載された研究では、若山さんは、小保方さんが「STAP細胞」と説明した細胞の提供をうけ、特殊なマウスを作ることで万能細胞だと証明する作業を担った。若山さんらが解析したのは、小保方さんから提供され、その後も保存していた2種類の細胞。論文で書いたものとは別の実験で、小保方さんはいずれの株についても「129」と呼ばれる系統のマウス由来の細胞だとして若山さんに提供した。しかし遺伝子を調べたところ、「B6」というマウスと、B6と129の子どものマウスに由来する細胞とわかったという。ただ、これだけでSTAP細胞の存在が疑われるかどうかは判断できない。CDBの竹市雅俊センター長は同夜、「まだ予備的な解析の段階であるため、今後、詳細な検証を若山教授と協力しながら進めていきます」とのコメントを出した。

*3-3:http://digital.asahi.com/articles/ASG3P1S83G3PUHBI001.html?iref=comkiji_redirect&ref=reca
(朝日新聞 2014年3月22日) STAP細胞、米教授強気の理由 発想に自負、異端視も
 新しい万能細胞「STAP細胞」の論文は、主要著者のうち米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授だけが撤回に反対している。弟と15年前に研究に着手していて、「アイデアを生んだのは自分」との自負がある。STAP細胞について独自の作製方法を公表、強気な姿勢を崩していない。2月に論文データに疑惑が見つかって以降、バカンティ教授は公の場に姿を現さず、日本メディアの取材にも応じていない。ハーバード大学医学部の関連病院で麻酔科部長を務め、再生医療工学の第一人者としても知られる。人間の耳のような組織を背中にはやしたマウスを1997年に発表し、注目された。ハーバード大に留学した小保方晴子・理化学研究所ユニットリーダーを指導し、今回の論文では総合プロデューサーのような役割を果たした。弟のマーティン・バカンティ氏も米国の病院に勤務する病理医で、英科学誌ネイチャー発表の論文では著者の一人になっている。
■15年前に「確信」
 日本では、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーらが1月末、神戸市内で記者会見を開いて発表した。これに対し、バカンティ教授は直後の朝日新聞の取材に「まずはっきりさせておきたいのは、STAP細胞のもともとの発想は自分と弟のマーティンから出たことだ」と語った。同教授が論文発表前に共著者らに送った手紙では、「私とマーティンが15年前、他に例のない変わった細胞を発見した。当時から万能性を持っているという確信はあった」と述べている。ハーバード大の地元で発刊される米紙ボストン・グローブによれば、事故やけがで下半身まひになる脊髄(せきずい)損傷の治療に使える新しい細胞を探していたという。この論文は2001年に発表。極端な低酸素状態でも生き延びる「胞子のような細胞」があり、「病気や事故で失った組織を再生させる潜在性を持っている」と報告した。当時所属していた大学に異端視されたことなどから、ハーバード大に移ったという。08年に渡米した小保方さんに今回の研究テーマを与えたのもバカンティ教授だ。
■共著者らと距離
 直接の取材には応じない一方で、病院を通し「データが誤りである証拠がない以上、撤回すべきだとは考えない」(3月14日)との声明を発表。強気の姿勢を見せつつ、日本の共著者らとは距離を置きつつある。今月5日に理研がSTAP細胞の詳しい作製方法を発表すると、バカンティ教授らは「細いガラス管に通すことが極めて重要」などとする独自の方法をウェブサイトで公表した。10日に主要著者の一人、山梨大の若山照彦教授が論文撤回を提案した際も、米紙ウォールストリート・ジャーナルに「重要な論文が同僚研究者の圧力で撤回されたとなればとても残念なこと」とコメントした。バカンティ教授のグループは、すでにサルの脊髄損傷でSTAP細胞の移植実験を進め、臨床試験も準備中と言われる。米国のある再生医療の研究者は「今回の論文を取り下げればこの15年間の研究の信頼を失いかねないという危機感があるのではないか」と語る。(ボストン〈米マサチューセッツ州〉=小宮山亮磨、ワシントン=行方史郎)
■「日本と温度差」
 ハーバード大で7年間の研究歴がある内科医の大西睦子さんによると、STAP細胞の問題は、現地では新聞以外でとりあげられることは少なく、「日本とは温度差がある」という。ハーバード大医学部の広報担当者は、「すべての懸念について、徹底的に検討する」などとする声明を出している。ただ、具体的な検討項目は明らかにされていない。大西さんは、「大学が調査をしているとしても、発表までは時間がかかる。それまでに米国のメディアの報道は、さらに沈静化するのではないか」と推測する。肩身の狭さを感じている日本人研究者もいる。大西さんによると、ハーバード大への留学から帰国し、今後の共同研究を計画している研究者や、これから留学しようとしている学生から、「受け入れてもらえるかどうか不安だ」との相談を受けているという。
    ◇
〈STAP細胞〉 体のどんな組織にでも育てる「万能性」を持っているとされる細胞。マウスの体の細胞を、酸性の液体に浸すことで作れる。理化学研究所は、小保方晴子ユニットリーダーがバカンティ教授のもとに留学中に着想を得て作製法を見つけた、と1月末に発表した。ただ英科学誌ネイチャーに掲載した論文に画像の二重使用や他人の論文のコピーが見つかり、日本側の主要著者は撤回に同意している。

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