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2014.4.18 原発と周辺自治体の権利 (2014.4.19追加あり)
   
                2014.4.12西日本新聞より 

(1)「原発回帰」を望んでいるのは誰?
 *1-1に書かれているとおり、閣議決定されたエネルギー基本計画では、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、原発稼働ゼロの方針を転換して、原発を「昼夜を問わず低い発電コストで動かせるベースロード電源」としたが、実際には、原発は、「昼夜を問わず動かせる」というよりは、「一旦、動かし始めたら夜になっても止められない」電源であり、安全対策のための投資を含めれば、経済的な優位性を持ち得ない電源という方が正しい。

 しかし、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)をはじめとする旧電力会社、経済産業省の配下にある産業界及び原発推進派の学者が、このエネルギー基本計画を歓迎している。

 一方、*1-2のように、世論調査では国民の半数以上が脱原発を求めており、高レベル放射性廃棄物の最終処分場が決まっていないだけでなく、福島第一原発事故の汚染水への対応を見ても、技術もモラルもなく、その場しのぎの対応や説明が多く、安全性への懸念は全く払拭されていない。従って、エネルギー基本計画は、国民に背を向けていると言わざるを得ない。

(2)原発の立地には、最低30キロ圏内の同意は必要である
 *2-1のように、北海道函館市が2014年4月3日、青森県大間町で建設中の大間原発建設差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。函館市は津軽海峡を挟んで大間原発の対岸で、市の一部は原発事故に備えた避難の準備などが必要な30キロ圏の防災対策の重点区域に入るため、危険だけを押しつけられて、発言権がない理不尽さを訴えたいそうだ。

 しかし、*2-2のように、「組織である自治体(函館市)は、放射能汚染の被害を受ける利害当事者として認められるか否かが大きな争点になる」などと、馬鹿なことが議論されるそうである。会社は組織だが、利害当事者として原告になれるので、自治体は組織だから原告適格が焦点になるなどというのは、おかしい。これに関する判例で、住環境破壊を防ぐ目的の自治体訴訟は公益のためと見なされ、自治体限定の利益ではないとして、原告適格を認めていないというのも変だが、環境破壊されれば、住民が住めなくなるだけでなく、農林漁業を始めとする産業も破壊され、自治体の税収が減るとともに、その存続すら危ぶまれるため、狭い解釈をしたとしても自治体に原告適格はあるだろう。

 北海道函館市の提訴について、*2-3のように、市内のほぼ全域が原発30キロ圏に入るため、九州電力に事前了解権を安全協定に盛り込むよう求めている伊万里市の塚部市長は、「広域に被害をもたらす原発事故への対策が万全でないのに新設が進むことに対する抗議で共感できる」と語ったそうだ。

 中国電力島根原発(松江市)から西へ最短9キロの島根県出雲市でも、市民の7割に当たる約12万人が30キロ圏内で暮らしており、出雲市は周辺の同県雲南市などと連携して、事前了解を含む協定を締結するよう中国電力に要求しているそうだが、原発で事故があれば出雲市が警戒区域や立入禁止区域になる可能性もあり、日本は、そうまでして原発を動かす必要があるのかと思う。

 また、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)の周辺30キロ圏の人口は90万人超で、全国最多であり、東海村は、周辺10市町と歩調を合わせ、事前了解権を周辺自治体に広げるよう日本原子力発電に要求しているそうだ。

 さらに、*2-4によれば、放射性物質が広範囲に拡散した未曽有の事故を教訓に、京都府や京都市は福井県内で原発事故を想定した避難計画などを策定したが、京都府が関西電力に求めた原発立地自治体並みの安全協定締結は協議開始から2年半たっても進展がないそうである。京都も原発事故で警戒区域や立入禁止区域になれば、日本史や観光の面からも被害甚大であり、そうまでして原発で発電する必要があるのかと思う。

(3)事故時には30キロ圏外でも被害を受ける
 *3-1のように、茨城県取手市は、フクイチの事故で、放射性物質の汚染状況重点調査地域に指定されたが、3年後の2014年3月6日に、やっと住宅の除染作業が始まったそうである。フクイチから200km以上離れた埼玉県ふじみ野市にある私の自宅でも、地面は毎時0.23~0.3マイクロシーベルトあり、風が吹く度に放射性物質も舞い上がるので、事故時に30キロ圏内の住民を一時的に避難させさえすればよいというのは、楽観的すぎる。

 そのため、*3-2のように、年間被ばく線量20㍉シーベルト以下の避難指示解除準備区域で、除染後も政府が年間限度に掲げる1㍉シーベルトを上回る田村市都路地区の避難指示が4月1日に解除されたのは、除染が、住宅や道路など生活圏の周辺と森林の一部に限られていることを考えれば、安全とは言えない。その上、解除後の慰謝料は、避難住民には、現在、精神的損害への慰謝料(1人月額10万円)が支払われているが、避難指示解除後は、1年以内に戻った住民には慰謝料を1人90万円追加し、避難を続ける人への慰謝料は1年で打ち切るというのでは、「住民の健康より地域振興」という方針が明確に打ち出されており、不安が増加する。

(4)創作された原発の経済的優位性
 *4-1に書かれているように、エネルギー基本計画は、原発再稼働に結びつけるため、フクイチの後、全国の原子力発電所が停止し、火力発電のために必要になった原油やガスなど化石燃料の輸入が増加したことが、貿易収支を悪化させたと強調した。

 これに対し、大和総研はリーマン・ショック後の急激な円高をきっかけに進み、モノづくり拠点が海外に移ったため輸出が減る産業空洞化が主因だと指摘しており、斎藤勉エコノミストは「原発が再稼働しても、大幅な貿易赤字は解消しない」としたそうである。しかし、本当は、産業空洞化は、リーマン・ショック後ではなく、社会主義国、共産主義国が市場経済に参入した1990年以降に既に始まっていた。

 そして、世界のグローバル企業は、グローバリズムとローカリズムを組み合わせて経営し、それぞれの企業は、利益を最大にする方法を地球規模で考えながら(グローバリズム)、それぞれの地域に決定権を与えて地域に合った財やサービスを提供するようにしている(ローカリズム)。例えば、大市場であるインドで売る車は、その市場の中で生産し、開発にも現地の人を参加させて、その地域で求められるものを作って売るということだ。この時、日本の工場は、要(かなめ)の部品を輸出し、割安でできたものを輸入するという形になる。

 このように高コスト構造になっているわが国では、京都大学経済学部の植田和弘教授が述べているように、新エネルギー産業の振興で新しい経済モデルを作ったり、今まで世界になかった高付加価値のものを作ったり、今まで輸出していなかったものを輸出したりする必要がある。ただし、今まで輸出していなかったものを輸出すると言っても、わが国が武器や原発を輸出すべきではないので、もっと知恵を絞ってもらいたい。

(5)公害における国と企業の責任
 *4-2のように、原発被害者を支援する弁護団などでつくる実行委が主催して、「第2回 原発と人権 全国研究・交流集会 in 福島」で、集団訴訟や賠償、脱原発などの5分科会が開催されたそうだ。

 また、水俣病訴訟に1次提訴から携わっている馬奈木昭雄弁護士(福岡県弁護士会)は、国を相手取った集団訴訟の先例として、水俣病訴訟の経験から、「国と加害企業がすることは、原因の隠蔽と責任逃れだ」と厳しく批判したそうだが、フクシマの事例では、汚染された海水から採集される海産物が水俣の事例と似ており、詳しくは書かないが、私も同感である。

(6)九州の夏の電力予測
 *4-3のように、九州電力は、今夏、原発なしで供給予備率3・0%を確保できる見通しで、それには、周波数が異なる東京電力を含む他電力からの融通と、太陽光発電の急速な普及による需給の安定が貢献しているそうだ。

 また、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の導入で急増する太陽光発電が、この夏は存在感を増し、九電は、九州で稼働する太陽光の設備容量を1年前の2倍の327万キロワットと想定しており、夏の真昼には原発1基分に相当する94万キロワットの発電を見込むが、太陽光発電は真昼に出力がピークになることもあって猛暑の電力安定供給に欠かせない電源となるそうだ。

 しかし、九電は、いつまでも蓄電池を装備せず、同じ問題を繰り返し述べるだけで解決していないので、太陽光発電に対する積極性はないようだ。

*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1100H_R10C14A4MM0000/ (日経新聞 2014/4/11) 「原発ゼロ」転換決定 エネ基本計画、重要電源と明記 、将来の比率は示さず
 政府は11日、国のエネルギー政策の指針となるエネルギー基本計画を閣議決定した。原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけて再評価したのが最大の特徴だ。民主党政権が2012年に打ち出した原発稼働ゼロの方針を転換したが、電源全体に占める比率は示さなかった。太陽光など再生可能エネルギーを最大限、推進する姿勢を強調した。エネルギー基本計画を改定するのは10年以来となり、東日本大震災後は初めて。民主党政権は12年9月に「30年代の原発稼働ゼロ」を盛り込んだエネルギー・環境戦略をつくったが、閣議決定はできなかった。政権交代後、自公連立政権はエネルギー基本計画を改定する議論を進めていた。政府は新計画で、原発を昼夜を問わず低い発電コストで動かせるベースロード電源と位置づけた。石炭と共に重要な電源とし、原子力規制委員会の安全審査に合格した原発の「再稼働を進める」とも明記した。政府が地元自治体などに再稼働への理解を求める姿勢も示し、短期的には原発を動かす方針を明示した。電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は11日、「方針は大変意義がある」と歓迎するコメントを発表した。中長期的な原発の位置づけは曖昧さを残した。原発依存度は「可能な限り低減させる」としつつ、原発を将来どれほど動かすかの目安となる将来の電源比率は示さなかった。原発の新増設をどうするかも明記しなかった。茂木敏充経済産業相は11日の記者会見で「(比率は)できるだけ早く設定する。新増設は次のステップの議論で、現段階において具体的に想定していない」と語った。使用済みの核燃料の再利用を目指す政策は推進する。ただ、高速増殖炉「もんじゅ」はトラブルが続く状況を踏まえて、放射性廃棄物を減らすための研究拠点と役割を修正した。

*1-2: http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-223459-storytopic-11.html
(琉球新報 2014年4月13日) エネルギー計画 被災地と国民への背信行為
 福島第1原発事故の惨状や教訓を忘れ去ってしまったのか。原発再稼働になし崩し的に突き進む安倍政権の姿勢は到底容認できない。政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働を進める方針を明記したエネルギー基本計画を閣議決定した。事故後、初の基本計画であり、民主党政権が掲げた「原発ゼロ」方針との決別宣言となる。安倍政権はフクシマの現実から目を背けてはならない。汚染水漏れなど事故の収束には程遠く、長引く避難生活など復興も遅々として進んでいない。世論調査でも国民の半数以上が脱原発を求めている状況に変わりはない。原発回帰は見切り発車以外の何物でもなく、被災地と国民への背信行為だと認識すべきだ。安倍政権が再稼働に前のめりになるのは、電力会社をはじめ産業界の強い要望があるからだが、経済を最優先し、「安全神話」を妄信していた時代に時計を巻き戻す愚行というほかない。基本計画への疑問は多い。原発回帰を鮮明にする一方、「核のごみ」問題への対処は今回も明確に示されなかった。原発は高レベル放射性廃棄物の最終処分場が決まらない状況から、「トイレなきマンション」と揶揄(やゆ)されるが、“不都合な真実”には依然目をつぶったままだ。国民を欺こうとする記述も目立つ。原発依存度を可能な限り低減させるとしたが、具体的な比率は示さなかった。むしろ「確保していく規模を見極める」と、新増設に含みを持たせたのが実態だ。トラブルが頻発し、公明党が廃止を求めていた高速増殖炉原型炉もんじゅの項目もそうだ。高レベル放射性廃棄物の量を減らす「減容化」などの国際的な研究拠点化を前面に出したが、増殖炉の活用方針をカムフラージュし、延命を企図したものにすぎない。原発推進路線を維持したい経済産業省の思惑もにじむ。そもそも計画案自体が、原発推進派の学者や大企業幹部らの意見が色濃く反映されている。もはや、原発の利権に群がる「原子力ムラ」の復活と言っても過言ではない。モラルはないのか。安全対策への膨大な投資を迫られる原発は、もはや経済的な優位性を持ち得ない。最大の問題は安全性への懸念が何ら払拭(ふっしょく)されていないことだ。民意に背を向けた基本計画は画餅でしかない。

*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11066597.html (朝日新聞 2014年4月4日) 大間原発、函館市が提訴 自治体で初、建設中止求める 30キロ圏「発言権ない」
 北海道函館市は3日、青森県大間町で建設中の大間原発について、事業者のJパワー(電源開発)と国を相手取り、建設差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。原発差し止め訴訟で自治体が原告になるのは初めて。訴状を提出した工藤寿樹市長は「危険だけを押しつけられて、(建設の同意手続きの対象外のため)発言権がない理不尽さを訴えたい」と語った。函館市は津軽海峡を挟んで大間原発の対岸にあり、市域の一部は原発事故に備えた避難の準備などが必要な30キロ圏の防災対策の重点区域(UPZ)に入る。東京電力福島第一原発事故では深刻な被害が30キロ圏に及んだ。函館市は「大間原発で過酷事故が起きれば、27万人超の市民の迅速な避難は不可能。市が壊滅状態になる事態も予想される」と訴え、「市民の生活を守り、生活支援の役割を担う自治体を維持する権利がある」と主張する。その上で、立地市町村とその都道府県にある建設の同意手続きが、周辺自治体にはないことを問題視。同意手続きの対象に30キロ圏の自治体を含めるべきで、国が2008年4月に出した大間原発の原子炉設置許可は、福島原発事故前の基準で不備があり、許可も無効と指摘する。今回の提訴は、函館市議会が今年3月に全会一致で認めた。弁護団の河合弘之弁護士は「市長が議会の承認を得て起こした裁判で、その重さは裁判官にも伝わるだろう」と語った。大間原発の建設は提訴後も続く見通しだ。Jパワーは「裁判を通じて計画の意義や安全対策の考えを主張していく。函館市に丁寧に情報提供や説明をしながら計画を推進していきたい」とのコメントを出した。大間町の金沢満春町長は「他の自治体が決めたことにコメントはできない。町は今まで通り『推進』ということで地域一丸になって頑張る」とコメントした。
◆キーワード
<大間原発> 津軽海峡に面する青森県・下北半島の北端で建設が進む。使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた燃料(MOX燃料)を100%使う世界初の「フルMOX原発」として2008年5月に着工。建設工事は東日本大震災で中断したが、12年10月に再開した。工事の進捗(しんちょく)率は37・6%。完成すれば出力は約138万キロワット。

*2-2:http://mainichi.jp/select/news/20140404k0000m040140000c.html
(毎日新聞 2014年4月3日) 大間原発:提訴 自治体・函館市の原告適格が焦点に
 北海道函館市が3日に起こした大間原発をめぐる裁判は、原発建設差し止め訴訟で自治体が原告となった初めてのケースだ。人ではなく、組織である自治体が、放射能汚染の被害を受ける利害当事者として認められるかが大きな争点になる。函館市は、自治体には市民の生活と安全を守る活動を行う権利「地方自治権」が憲法94条で保障されていると指摘。原発事故が起きれば自治体の存続が危うくなるため、利害当事者としての権利があると主張している。行政事件訴訟法は、自治体が訴訟を起こす資格「原告適格」について、「損害を受けるおそれのある者」または「法律上の利益を有する者」と規定。判例では、住環境破壊を防ぐ目的の自治体訴訟は公益のためと見なされ、自治体限定の利益ではないとして、原告適格を認めていない。行政事件訴訟に詳しい大阪大の大久保規子教授(行政法学)は「公益保護のための自治体提訴は海外で広く認められており、日本は特殊」とし、「原発事故で市有地の所有権が侵害されるなど、守るべき法律上の権利や利益を有している」と話し、原告適格はあるとの見方を示している。広域汚染をめぐる問題で自治体を訴訟当事者と認めるか否か。福島第1原発事故後の日本の司法の在り方が問われる。

*2-3:http://qbiz.jp/article/35034/1/
(西日本新聞 2014年4月4日)  事前了解要求、全国で 伊万里市長「提訴に共感」
 原発に事故があると被害を受けるのに、立地自治体並みに電力会社にもの申せないのはおかしい−。安倍政権が原発の再稼働へ前のめりとなる中、全国の原発30キロ圏の周辺自治体で立地自治体並みの権限を盛り込んだ安全協定締結を求め、電力会社と粘り強く交渉を続けるところが出ている。「広域に被害をもたらす原発事故への対策が万全でないのに新設が進むことに対する抗議で共感できる」。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)から最短12キロで30キロ圏内にほぼ全域が含まれる同県伊万里市の塚部芳和市長は北海道函館市の提訴についてそう語る。原発施設の大きな変更時に「拒否権」ともなる事前了解権を安全協定に盛り込むよう求めている伊万里市。そのため玄海、川内両原発から30キロ圏の九州の自治体で唯一、協定締結に至っていない。九電とは月2回、定期的に協議を続けているが、内容は「平行線」という。市は「事前了解権を得れば、市民が納得するまで九電に説明を求められる。安全対策の拡充要請も可能になる」と主張する。原発事故に備え、市は2014年度から防災行政無線の整備に着手したが、総事業費約8億円の負担が重く、6年間で整備する方針。さらに避難道路の拡幅や改修に総額36億円を見込むが、厳しい財政事情で事業はなかなかはかどらない。中国電力島根原発(松江市)から西へ最短9キロの島根県出雲市では、市民の7割に当たる約12万人が30キロ圏で暮らす。出雲市は周辺の同県雲南市などと連携し、事前了解を含む協定を締結するよう中国電に要求している。出雲市は「そもそも、国が周辺自治体の意向を反映する制度を早急に設けるべきだ。その暫定措置として、立地並みの安全協定を中国電に求めている」と説明する。同原発から東に約17キロの鳥取県は、中国電と11年に安全協定を結んだものの、内容が不十分として事前了解を含んだ中身に改定するよう交渉中。中国電から「立地自治体と同様の対応を行う」との文言まで交渉で引き出したが、明確に事前了解権が盛り込まれるまで訴え続ける構えだ。日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)。周辺30キロ圏の人口は90万人超で、全国最多。東海村は、周辺10市町と歩調を合わせ、事前了解権を周辺自治体に広げるよう同社に要求している。

*2-4:http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20140310000152 (京都新聞 2014年3月10日) 原発安全協定協議、進展せず 京都府・市なお課題山積印刷用画面を開く
 福島第1原発事故を引き起こした東日本大震災から11日で3年を迎える。放射性物質が広範囲に拡散した未曽有の事故を教訓に、京都府や京都市は福井県内での原発事故を想定した避難計画などを策定した。しかし、府が関西電力に求める原発立地自治体並みの安全協定締結は協議開始から2年半たっても進展がないなど解決すべき課題が山積している。
■避難所計画も未整備
 福井県の若狭湾に林立する原発で、半径30キロ圏に府域が入るのは高浜原発(同県高浜町)と大飯原発(同県おおい町)。最も近い高浜原発の場合、府内では府北中部から京都市にかけて約12万8千人が暮らす。避難が必要な事態になれば、住民は府県境や市町境を越えて移動に迫られるため、府や関西広域連合は避難元と避難先の自治体の組み合わせを調整し、公表している。緊急時にスムーズな避難を実現するには、避難所ごとの受け入れ人数など詳細な計画が必要になるが、まだ決まっていない。特に舞鶴市から6万5千人もの避難者を受け入れる京都市は、市街地だけに自家用車で避難してくる人が多ければ駐車場はとうてい用意できず、避難所まで送り届ける手だてが課題となっている。福井県など立地自治体は、安全協定によって原発再稼働について関電と事前協議が行えるなど強い権限を持つ。府は半径5キロ圏に舞鶴市が入る高浜原発で同県に準じた権限を求め、11年9月に関電と協議入りし、12年3月末までの合意を目指したが、協議は前進していない。高浜原発から30キロ圏の人口では、福井県の5万4千人より府の方が2倍以上多く、府は「府の置かれている状況から安全協定は必要だ。協議は難航しているが、府民の安全安心の点から中途半端な内容では結ぶわけにはいかない」と強調する。今夏にも両原発が再稼働するとの見通しもある。府は早期締結も目指しているが、打開策は見つかっていない。

*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20140307/CK2014030702000154.html (東京新聞 2014年3月7日) 放射性物質の汚染重点調査地域 取手で除染作業始まる
 東京電力福島第一原発事故で、放射性物質の汚染状況重点調査地域に指定された取手市で六日、住宅の除染作業が始まった。除染が必要な住宅は約五千五百軒程度と見込まれ、市は今年七月をめどに市内全域の除染を終える予定だ。この日、除染作業が行われたのは、倉持行雄さん(79)宅(中内)。市の事前調査で、敷地の南西隅一カ所で、地上一メートルの空間放射線量が除染対象となる基準値を上回った。除染作業は約一平方メートルの表土を三十センチ掘削し、上層十センチを下層二十センチの下に入れる「天地返し」方式で実施。その結果、地上一メートルの空間放射線量は、作業前の毎時〇・二三マイクロシーベルトから〇・一八マイクロシーベルトに下がった。「市が測定するまで、放射線量が高いとは知らなかった」と、厳しい表情で作業を見守っていた倉持さん。市職員から放射線量の低下を知らされると「これで一安心です」と笑顔を見せた。二月二十日現在、対象住宅約三万五千軒のうち約一万七千六百軒の空間放射線量を測定、約千三百軒が除染対象となった。市は測定を終えた住宅が一定数に達した段階で、順次、除染作業を進める。

*3-2:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=318125&nwIW=1&nwVt=knd
(高知新聞 2014年4月3日) 【避難指示初解除】住民不安は消えていない
 東京電力福島第1原発事故のため、原発20㌔圏内に政府が出している避難指示のうち、田村市都路(みやこじ)地区の指示が1日解除された。原発から北西方向に広がっている放射線量が高い地域と20㌔圏内で避難指示解除は初めてだ。国の除染作業が昨年6月に終わり、「放射線量が下がった」として解除に踏み切った。だが、この解除を手放しで喜べる状況では決してない。除染は、住宅や道路など生活圏の周辺と森林の一部に限られている。都路地区は年間被ばく線量が20㍉シーベルト以下の避難指示解除準備区域だったが、除染後も政府が年間限度に掲げる1㍉シーベルトを上回る地域が多い。こうした中、古里に不安を持つ住民がいて当然だ。地区には約110世帯350人ほどが暮らしていた。子どもを持つ世帯の中には健康を心配し、帰還に踏み切れない家族が多い。授業を再開する小中学校に戻るのは児童生徒の約4割だという。2月に開かれた政府の説明会でも多くの住民が解除は「時期尚早」と反対した。健康への不安を抱え、古里に戻りたくても戻れない住民が多くいることを、政府は重く受け止めるべきだ。おかしいのは、解除後の慰謝料などの問題だ。避難住民には現在、精神的損害への慰謝料(1人月額10万円)が支払われている。解除後1年以内に戻った住民には、1人90万円追加するという。避難を続ける人への慰謝料は、1年で打ち切られる。政府は「帰還は強制ではない」と説明する。むろん強制は許されない。だが帰還か避難継続かで揺れる住民に、こうした対応はどう映るだろう。古里からの避難を強いられた同じ住民の慰謝料に差が生じてしまう。森林など完全な除染が見通せない状況で、住民に決断を迫るような政府の姿勢は適切だろうか。慰謝料を指示解除後1年で打ち切れば、確かに東電の賠償額は減る。一方で帰還後も放射線への不安の中で暮らす住民の精神的損害に終わりはない。打ち切りが住民の納得を得ているとは決して言えない。政府は別の地域でも指示解除へ向けた住民協議を始める予定だが、肝心な除染は着実に進んでいるだろうか。追加除染を含め、安心して住民が帰還できる古里再生が第一だ。

*4-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014041202000109.html (東京新聞 2014年4月12日) 原発停止が主因じゃない 貿易赤字
 エネルギー基本計画は、東京電力福島第一原発の事故後、全国の原子力発電所が停止し、火力発電のために必要になった原油やガスなど「化石燃料の輸入が増加」したことが、貿易収支を悪化させたと強調した。原発の停止により、輸出でお金を稼ぐ日本の経済成長モデルが崩れてしまった、という理屈だ。だが、民間シンクタンクは貿易収支の悪化の原因が原発停止ではなく、企業が海外生産を増やした産業構造の変化の影響だと分析する。政府の説明からは、原発停止の影響を強調し再稼働に結びつけたい思惑がにじむ。日本の貿易収支は二〇一一年に輸入額が輸出額を上回り三十一年ぶりに赤字に転落し、一三年の赤字幅は過去最大の一一・五兆円となった。赤字の理由について、エネルギー基本計画は化石燃料の輸入増加以外の大きな理由を記載していない。原発停止による電気料金の値上がりの影響も強調し、企業の負担増が業績悪化につながり、「海外への生産移転などの悪影響が生じ始めている」と書いた。だが、大和総研はリーマン・ショック後の急激な円高をきっかけに進んだ産業空洞化が主因だと指摘する。材料費や人件費などの費用を少なくしようと国内のモノづくり拠点が海外に移ったため輸出が減る一方、海外からさまざまな製品の輸入が増え、試算では原発が稼働していても収支を七兆円も押し下げている。一二年から一三年にかけた円安の進行は、輸入額の増加という影響を大きくし、貿易収支は三兆円悪化。燃料の輸入増加で四兆円の影響も加わるが、斎藤勉エコノミストは「原発が再稼働しても、大幅な貿易赤字は解消しない」という。京都大学経済学部の植田和弘(うえたかずひろ)教授は「新エネルギー産業の振興など、新しい経済モデルを模索するべき時期に来ている」と分析。「エネルギー戦略も新しいモデルに合わせて練るべきで、貿易赤字だから原発を再稼働しようというのは本末転倒だ」と再稼働ありきの政府の姿勢を批判した。

*4-2:http://www.minyu-net.com/news/news/0407/news2.html
(2014年4月7日 福島民友ニュース) 集団訴訟、賠償に理解 「原発と人権」全国研究集会
 第2回原発と人権全国研究・交流集会in福島は最終日の6日、福島市の福島大で集団訴訟や賠償問題、脱原発など5分科会を開いた。原発被害者を支援する弁護団などでつくる実行委の主催。分科会のうち、福島地裁に2千人規模の集団訴訟を起こしている「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団は「被害者訴訟原告団・みんなで交流―私たちが求めるもの、私たちが目指すもの」をテーマに開催。国を相手取った集団訴訟の先例として、水俣病訴訟に1次提訴から携わる馬奈木(まなぎ)昭雄弁護士(福岡県弁護士会)は水俣病訴訟の経験から「国と加害企業がすることは、原因の隠蔽(いんぺい)と責任逃れだ」と厳しく批判。また「国は原発事故の原因を隠すことで、東電1社を守りたいのではなく、利権構造や、さらには『原発ムラ』の構造を守っている」と指摘した。分科会には全国で原発事故の集団訴訟を起こしている原告団や弁護団が参加し、それぞれの訴訟の現状や取り組みを紹介した。

*4-3:http://qbiz.jp/article/35978/1/
(西日本新聞 2014年4月18日) 九電、夏の余力3・0% 最低限確保も他社頼み 
 九州電力が今夏、電力の安定供給に最低限必要な供給予備率3・0%を確保できる見通しを示した。原発再稼働が見込めない中、東京電力を含む他電力からの融通頼みの構図は強まるが、太陽光発電の急速な普及も需給の安定を下支えする。需給切迫時には追加融通や市場調達の道も残されており、予期せぬ深刻な発電所トラブルや気温上昇がなければ、原発ゼロでこの夏を乗り切れそうだ。九電の今夏の需給見通しによると、最大需要は昨夏並みの猛暑想定で1671万キロワット。景気回復が需要を17万キロワット押し上げるなどとして、全体では昨夏実績を37万キロワット上回ると試算。節電効果は昨夏実績の約9割の161万キロワットを織り込んだ。供給力の頼みの綱は、周波数が異なる東電からの融通だ。電源開発(Jパワー)の松浦火力発電所2号機(長崎県松浦市)の事故で西日本の供給力低下が見込まれるため、九電と関西電力は東電から計58万キロワットを受け取る。東電からの融通がなければ、九電の予備率は1・3%に落ち、関電とともに電力不足が現実味を帯びるところだった。今後、懸念されるのはフル稼働を見込む火力発電所のトラブル。九電は夏を前に設備の点検・補修を集中的に進めるが、「酷使続きでトラブルのリスクが高まっている」(九電)。仮に出力70万キロワットの大型火力が停止してピーク時を迎えれば、揚水発電への影響と合わせ供給力が140万キロワット不足する計算になる。他電力のトラブルで融通を確保できなくなる恐れもある。九電は緊急時には、東電を含む他電力からの融通積み増しや卸電力取引市場からの調達で供給力をカバーする構えで、契約に基づいて大口企業の電力使用を抑えてもらう手段もある。今夏の需給状況が「昨夏以上に厳しい」(山崎尚電力輸送本部長)のは確かで、利用者の節電努力がまず必要となる。
◆太陽光倍増、供給上積み
 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の導入で急増する太陽光発電がこの夏は存在感を増しそうだ。九州電力は、九州で稼働する太陽光の設備容量は1年前の2倍の327万キロワットと想定。夏の真昼には原発1基分に相当する94万キロワットの発電を見込む。発電量が安定せず、発電コストが高い弱点はあるものの、猛暑の電力安定供給に欠かせない電源となる。太陽光発電は真昼に出力がピークになる。九電は、過去の実績や節電の影響を踏まえ、昨年まで午後2時台としてきたピーク需要の予想を今年は同4時台に変更する。太陽光発電の出力は夕方に向けて徐々に落ちるが、それでも33万キロワットを供給力に織り込んだ。また、昼間に太陽光発電が貢献する分、ピーク時の供給力として欠かせない揚水発電を温存できる効果もある。需要がピークを迎える時間帯の揚水発電の供給力は、太陽光発電のおかげで昨年より55万キロワット多い221万キロワットに上積みできるという。この夏のピーク時の、太陽光発電の貢献は合わせて88万キロワットで、供給力の約5%を占める。「天気任せで頼りにならない」とされてきた太陽光発電への見方が変わりそうだ。


PS(2014.4.19追加):九電は、玄海原発及び川内原発の安全対策費を1千億円追加して3千数百億円にするそうだが、これは、電気料金として電力の消費者に課せられる。そのため、原発事業部を別にして原発の経費をきっちりと区別し、正しい原発の発電コストを把握すべきだ。

*5:http://qbiz.jp/article/36107/1/
(西日本新聞 2014年4月19日) 玄海、川内原発の安全対策1000億円増 九電が見通し
 九州電力の瓜生道明社長は18日、都内であった電気事業連合会の会見で、川内(鹿児島県薩摩川内市)、玄海(佐賀県玄海町)両原発の安全対策費について、従来よりも1千億円増え、3千数百億円になるとの見通しを明らかにした。九電は、原子力規制委員会による審査に基づき、川内原発1、2号機と玄海原発3、4号機で火災の延焼を防ぐ仕切りの設置や火災検知器の追加など安全対策を拡充。最大規模の津波高さ(基準津波)を引き上げた川内原発1、2号機では、海水ポンプを守る防護壁や防護堤の設置も進めており費用が拡大している。現在、原子力規制委は川内原発1、2号機の審査を優先的に進め、再稼働が現実味を帯びる。審査終了後の手続きは不透明だが、瓜生社長は「エネルギー基本計画をベースに、国も原発の必要性を説明した方が、地元も理解してもらえるのではないか」と話した。一方、玄海原発1、2号機の廃炉についての質問には「運転期間延長の申請は来年7月がリミット。秋口くらいまでにはどうするのか、検討していきたい」と述べた。

| 環境::2012.12~2015.4 | 03:52 PM | comments (x) | trackback (x) |

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