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2014.9.16 雇用をはじめ、あらゆる場面における女性に対する間接差別について
   
   図1      図2         図3             図4

(1)女性の管理職登用には、間接差別も法規制すべきである
 図1、図2、図3でわかるように、日本では、就業者に占める女性の割合は他国に比べて突出して低くはないが、管理職(課長相当以上)に占める女性の割合は10%ちょっとにすぎず、役員以上は1.23%しかおらず、世界で突出して低い。その理由を、*1-2は、①長時間労働で仕事と家庭の両立が難しく、子どもを持つ段階で仕事か家庭かの二者択一を迫られて退職する女性が多い ②一度職場を離れると非正規以外の好条件での再就職が難しい ③カギを握るのは長時間労働を見直して職場環境を変えること ④フレックスタイムや在宅勤務など柔軟な働き方を広めること ⑤時間ではなく成果で評価する仕組みをつくること ⑥男性はもっと家庭に と説明しており、こういう説明は多い。

 私は、①はもっともで、それだからこそ保育所・学童保育・家事サポートサービスの充実が必要であり、②の理由で女性労働からの搾取が起こっているため改善すべきだが、③④については、職場の全員を巻き込まなくても、そうしたい人がそうすればよいと考える。その際に大切なことは、⑤の公正な評価が行われることであり、日本企業はこれができていないのが問題なのだ。なお、⑥も、そうしたい人がそうできる職場であればよいが、日本企業では公正な評価が行われていないので、これもやりにくい。

 私がこう考える理由は、*1-1に書かれているように、ワークライフバランスの問題は、「男性は家計、女性は家事育児に主たる責任がある」という「家庭内の伝統的性別役割分業」が働く女性に仕事と家庭の役割の二重負担を強いることにより起こるのであり、それを解決すればよいからである。そして、本当は、男女とも、寝る間も惜しんで仕事に没頭し、仕事が面白くなるから能力がついて成功するという事例が多く、そのくらいでなければ国際競争力の出ない仕事が多い。

 また、*1-1は、①勤続年数が同じでも男女の昇格に大きな差がある ②大卒女性より高卒男性の方が課長割合が高い ③女性のみ長時間労働が昇進率に大きな影響を与える と結論しており、これが、1982年から公認会計士・税理士・国会議員等としてずっと働き続けてきた私の肌感覚と一致する。

 つまり、*1-1に書かれているように、厚生労働省の企業アンケート調査では、日本で指導的地位につく女性の割合が低いのは、①現時点で必要な知識や経験、判断力を有する女性がいないと過半数の企業が挙げている ②将来管理職に就く可能性のある女性はいるが、現在管理職に就くための在職年数などを満たしている者はいない ③勤続年数が短く管理職になるまでに退職する としており、企業から見ると「女性は経験不足だから」という理由だが、実際には、i)勤続年数が同じでも管理職への昇進率は女性が著しく低い ii)高卒男性の方が大卒女性より課長以上の割合が高く、女性は高学歴でも昇進しない など、教育や努力ではなく性差で社会的機会が決まっており、iii) 労働時間も女性にのみ長時間労働が管理職資格要件となっている iv) 女性は人事考課の結果によらず昇進率の低い職に配置される などの「間接差別」があるという結果になっている。

 さらに、*1-1では、v)組織内に伝統的性別役割分業意識があり、「男性はリーダー役、女性は補佐役に適任」という固定観念により、本来は「個人の適材適所」で考えるべき人事に性別がからんで大多数の女性を一般職として管理職候補から外したり vi)男性は管理職への昇進率が高いポジションに女性は管理職への昇進率の低いポジションに配置したりする慣行がはびこり vii)組織内の伝統的性別役割分業意識が女性の管理職昇進や企業内での意思決定参加を阻んできた と書かれているが、これも私の肌感覚と一致しており、本来、このようなことは、企業アンケートをとった厚労省が同時に調査・分析を行うのが当然なのである。

 しかし、2002年の最高裁事務総局の通達でも、「同期同給与年齢の男女間に8対2の昇格比率の差があっても、男女職員間の全体的な昇格比率は、それだけで差別を根拠づけるものとは言えない」としているそうで、全体として、日本政府は、これまで女性を管理職として登用する気はなく、その理由は後からこじつけたもので、働く女性に対しては搾取と嫌がらせこそあれ配慮などはなかったため、これらをすべて直さなければ女性が遣り甲斐を持って生き生きと働き続けられる社会にはならないということだ。

 そのため、*1-1に書かれているとおり、女性の活躍には、組織内の伝統的な性別役割分業の根本的見直しが必要で、それと同時に、既に存在する様々な間接差別的制度を法的に禁止することが重要である。なお、2006年の法制化時は、私が中心になって行い、女子差別撤廃条約違反や差別の意図がなくても男女差別を生み出す間接差別も禁止しようとしたが、自民党内からの突拍子もない反対のための反対が多く、間接差別という言葉を入れるだけで精一杯だった。しかし、自民党という与党にいたから間接差別という言葉だけでも入れることができたというのも事実だ。

 今は、*1-3のように、佐賀県でも、企業や社会の意識改革を進めるべく「輝く女性応援会議in佐賀」が開かれる時代になったが、その内容は、「人材派遣(“柔軟な働き方”と称する管理職にはなれず、使い捨てにされる女性の搾取労働)」「育児・家事支援の施策や制度整備」が中心だ。また、松尾建設の担当者が営業や設計部門への女性登用について、「現場経験のなさが逆に顧客目線での営業につながって評判もいい」と報告しているのは、「女性が優れている部分は現場経験がないからだ」という女性蔑視の固定観念があり、顧客として、及び仕事の両面で現場経験が豊富だからこそよいアイデアが出ている女性に対して失礼千万である。

 なお、私が国会議員として佐賀新聞主催の催しに出席した際にも、佐賀新聞社は、私を“一般の人(普通の人?)”と同列に扱って他の男性議員よりも冷遇したし、佐賀新聞記事の中にも事実に反する女性蔑視の失礼な“評価”や描写が多かった。これらは、既に管理職に登用されている女性に対してさえメディアが行っている女性蔑視(女性差別)の典型であり、一般の人の先入観を作って選挙や評価に影響し、間接差別を助長するため、早急に改善されるべきである。

 また、*1-3で、行政や社会への注文として「少子化で企業にとって人こそ財産。経営者は辞めさせない覚悟を持つべき」などの意見が出ていたと書かれているのは、ただでさえ*2-1、*2-2、*2-3のような考えの人が多い中、能力と公正な評価で女性を登用してもらうのであり、どんな人でも終身雇用する時代ではないため、甘えすぎだ。原則として、企業は、価値ある仕事ができる人材は辞めさせないが、実力もないのに要求ばかりしている女性は、他の女性の足まで引っ張ることになるため、どんな時代になっても甘えるのはいい加減にすべきである。

 なお、*1-4のように、女性目線で新風を吹き込むため、農水省も「女性の職業選択肢に農家を加える」との目標を掲げており、よいことだとは思うが、農業・水産業は食品製造業であり、女性の視点が特に役立つにもかかわらず、これまで経営や農協理事・漁協理事として活躍する女性が少なかったのは、異常なくらいだ。

(2)女性登用目標についてのよくある反対意見
 *2-1のとおり、「a.女性登用の目標は男性に不公平で、女性3割にこだわると上位の男性より下位の女性が採用されて、公務員全体の能力が低下する」「b.政権が指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げるという目標を立てたのも、女性の割合ありきで納得できない」「c.採用後の昇進や昇格も、男女の別なく能力で決めるべきだ」という意見があり、このような意見は多い。

 これについては、女性は戦後、高等教育を受ける機会や働く機会を与えられて働き続けてきたが、(1)に記載したとおり、社会や組織内にある伝統的性別役割分業意識によって差別され、管理職は10%程度しかおらず、女性管理職3割というのは図4の他のアジア諸国と比べても男性差別になるほど高すぎる目標ではないこと、また、(3)に書く理由から女性管理職が増えれば公務員全体の能力はむしろ上がること、及び、採用後の昇進・昇格を男女の別なく能力で決めるべきというのは全くそのとおりだが現在そうなっていないのが問題なのであること、そのため、これらが改まるまで女性管理職割合の最低目標を決めるべきだというのが、その答えである。

 また、*2-2の「A.女性の管理職の比率向上を目標にする人事は、企業の本来の目的とは必ずしも一致しない」「B.企業にとって不変のルールは『適材適所』」「C.企業が行うべきは、女性に能力を発揮する機会を提供すること」「D.労働環境の整備、成果に対する公正な評価と透明性の確保が重要」というのも、*1-1に書かれているとおり、現在は組織内の性別役割分担意識から適材の女性でも登用されにくく、同意識から公正な評価も行われないため、管理職の女性割合が増えて、その考え方が改まるまで最低目標を決めるべきだということなのである。

 なお、*2-3では、「女性幹部の増加より雇用促進」と題して、「イ.指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げるという目標が、なぜ日本を成長させるのか分からない」「ロ.女性の就業希望者は全国に328万人おり、既に職に就いている人の中から複数人を幹部にするより、まず、この328万人の女性に働く機会を作り、働きやすい環境を整えることこそ、安倍政権が優先して取り組むべき課題だ」としている。しかし、指導的地位に占める女性割合の目標を定める意味は上記のとおりで、指導的地位に占める女性割合が増えれば、その328万人の女性の働く機会は増えることがあっても減ることはないため、この論は何とか女性の登用を止めたいばかりの意味のない論理だ。

(3)男性中心で作った愚策の事例
 *2-1で、「女性3割にこだわると上位の男性より下位の女性が採用されて、公務員全体の能力が低下する」と書かれているが、そもそも公務員は、男性に下駄をはかせて男性優先で採用してきたため、現在でも優秀な女性が意思決定できる立場に少なく、男性中心で作った愚策が多いのである。そのため、ここでは、その中のごく一部を紹介する。

1)気仙沼の巨大防潮堤計画
 *3-1の巨大防潮堤計画は、陸から海への栄養塩の流れを止めて生態系に悪影響を与えるとともに、景観を損ね、津谷川をさかのぼる津波には意味がない。そのため、私がこのブログの2011.4.19には既に記載し、2013.7.7にも再記載しているとおり、住民が高台移転し、高速道路を防潮堤として利用して、高速道路より海側は耕作や牧畜等の生産地帯にするのが合理的なのだが、景気対策と称して税金を湯水のように使う巨大防潮堤計画ができ、宮城県の担当者は反対意見には耳を貸さない。

2)東日本大震災から3年半後も、8.9万人が仮設住宅住まい
 *3-2のように、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の49市町村で、毎週国会議員が現地を訪問しているにもかかわらず(現地を訪問しているというアピールだけなら、時間と旅費の無駄遣い以外の何物でもない)、まだ仮設住宅で約8万9千人が暮らしている。完成のめどが立たない復興住宅もあり、避難している人はいつ定住できるかわからない。民間借り上げ住宅、公営住宅、移住など、より被災者の立場に立った対応がある筈だと思うが、時間ばかりかけた結果、体調不良を訴える被災者も出ており、よいことは何もない。

3)国家予算
 *3-3のように、来年度は、消費税を10%に上げ、景気対策に1兆円を確保して、大規模な公共事業や中小企業向けの補助金など経済対策のためなら自由に使うことができる財源を用意するということだ。しかし、その前に、デフレ脱却として称して金融緩和を行い、毎年2%以上の物価上昇を作り出した上、円安により34%(106/79%-100%=34%)の輸入物価上昇も起こったため、生活者は購買数量を減らしても購買金額が増え、表面的には買い控えの影響が低く出るが、経済学的にはそんなわけがない。

 このように、男性中心で作った政策は、「本当に必要なものは何か」というアイデアに乏しいため、生産性や付加価値が低く、その結果、我が国企業の利益率も低くなっている。そして、それをカバーするために大々的な景気対策を行いながら生活を犠牲にするという政策を繰り返してきたが、意思決定者が30%女性になれば、生活の現場に役立つ付加価値の高い生産を、時間ばかりかけずに行い、もっと実のある政策を実行できると考える。

<女性登用への取り組み>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140829&ng=DGKDZO76284210Y4A820C1KE8000 (日経新聞 2014.8.29) 企業の間接差別、法規制を、山口一男 シカゴ大学教授
〈ポイント〉
○勤続年数が同じでも男女の昇格に大きな差
○大卒女性より高卒男性の方が課長割合高い
○女性のみ長時間労働が昇進率に大きな影響
 2030年までに政治や経済で指導的な地位に就く人の女性割合を30%にするという政府の計画にもかかわらず、女性活躍の進展は極めて遅い。管理職の女性割合は、経済協力開発機構(OECD)諸国の中では米国が43%と高く、欧州諸国の多くは30~40%なのに対して、日本は約10%と低い。本稿では日本でなぜ指導的地位につく女性の割合が低いのか考えてみたい。
 厚生労働省の企業アンケート調査によると、女性の管理職がいない・少ない「3大理由」とされるものがある。第一の理由が「現時点では、必要な知識や経験、判断力を有する女性がいない」というもので過半数の企業が挙げている。第二、第三は「将来管理職に就く可能性のある女性はいるが、現在管理職に就くための在職年数などを満たしている者はいない」「勤続年数が短く、管理職になるまでに退職する」というもので、共に勤続年数の短さを挙げている。企業から見れば「女性は経験不足だから」というわけだが、それは事実だろうか?
 図1は経済産業研究所が09年に行った調査データの分析を最近筆者が「日本労働研究雑誌」(14年7月号)に発表したもので、ホワイトカラーの正規雇用者に限った結果である。勤続年数が同じでも、男女の管理職への昇進率は著しく異なる。女性正社員が31年以上その企業に勤めて達成できる課長以上割合(20%)を、男性正社員は11~15年目に達成している。また係長以上では、女性正社員が31年以上勤めて達成できる割合(50%)を、男性正社員は6~10年目に達成してしまう。ただ、この分析は男女の教育差を考慮していないという批判があるだろう。かつて女性は短大卒が多く、大卒割合は男性よりはるかに低かった。その疑問に答えるのが図2である。結果は驚くべきことに、高卒男性の方が、大卒女性よりはるかに課長以上割合が高い。社会学では生まれによる属性で社会的機会が定まるのが前近代社会、教育など達成の属性で定まるのを近代社会というが、わが国はこの点で近代社会とはいえない。
 ちなみに米国で管理職になるには、大卒や経営学修士(MBA)など、学歴が性別によらず最も強く影響する。筆者の前記論文での分析では、日本で男女の教育・年齢・勤続年数の差で説明できる男女格差は係長以上割合では30%、課長以上割合ではわずか21%であった。男女格差を説明するほかの要因に、労働時間、特に通常週49時間以上働いているか否かがある。労働時間差をさらに説明要因に加えると、男女格差を説明できる度合いは係長以上割合で43%に、課長以上割合で39%へと大幅に増大する。また長時間働くほど管理職の割合が高まる関係は女性の方が男性より強い。
 この事実と関連し、男女の管理職格差の原因について、加藤隆夫・米コルゲート大学教授と川口大司・一橋大学教授、大湾秀雄・東京大学教授の最近の企業内人事についてのパネル調査データ分析は、以下の二つの重要な事実を明らかにした。
 一つは、長時間労働は男性の昇進率を高めないが、女性では昇進率に大きく影響するという事実である。これは長時間労働が女性にのみ管理職資格要件となっていることを示唆する。二つ目の発見は、高い人事考課結果が男性では昇進率を高めるのに、女性では高めないという事実である。これは、女性には人事考課の結果によらず昇進率の低い職に配置するという「間接差別」の結果と考えられる。企業による配置を通じた女性への昇進差別は米国でも1970年代には多くみられたが、後述する間接差別への強い法規制もあり、現在はほとんどない。ただし職業選択の性差による男女の職業分離は米国でも残り、男女の賃金差の一因となっている。筆者は女性の活躍についてワークライフバランス(WLB=仕事と生活の調和)の達成できる社会の重要性を訴えてきた。WLBの欠如のため女性の6割以上が結婚・育児を理由に離職し、正規雇用が新卒者優先のわが国で、彼女たちの再就職の大半はキャリアの進展性のない非正規雇用になる。また離職を理由に企業が女性を男性と同等に扱わない慣行が女性の継続就業意欲を奪い、結果として離職率を高めるという「予言の自己成就」ともなっている。今回、長時間労働が女性にのみ管理職登用への条件として重要視されるという、WLB達成と矛盾する企業慣行の存在も明らかになった。成果でなく長時間労働が主な基準なら、女性の管理職登用推進は難しい。WLB問題は「男性は家計に、女性は家事育児に主たる責任がある」という「家庭内の伝統的性別役割分業」が、働く女性に仕事と家庭の役割の二重負担を強いることが根本原因だが、日本の職場は特に女性管理職にその負担を強めている。
 さらに、WLB問題とは別の大きな障害があることも明らかになった。それはいわば「組織内の伝統的な性別役割分業」ともいえるもので「男性はリーダー役に、女性は補佐役に適任」という固定観念である。その意識によって、本来「個人の適材適所」を考えるべき人事判断に性別が大きくからむ。大多数の女性を一般職として管理職候補から外すコース制や、男性は管理職への昇進率の高いラインポジションに、女性は有能でも管理職率の低いスタッフポジションに配置というような慣行がはびこる。そして女性の管理職昇進や企業内の意思決定参加を阻んできたと考えられる。その結果、女性は人事考課が優れていても昇進せず、高卒男性の方が大卒女性よりも管理職昇進率が高いという世界的にみて異常な状態を生み出してきたのだ。女性の活躍には、このような組織内の伝統的な性別役割分業の根本的見直しが必要であり、同時に、既に存在する様々な間接差別的制度を法的に禁止することが重要となる。わが国は06年の雇用機会均等法の改正で間接差別について法制化したが、わが国も批准した女子差別撤廃条約や、米国や欧州連合(EU)の法制度と異なり、差別の意図がなくてもその効果において男女格差を生み出す機能を持つ制度を間接差別とはしていない。それどころか02年の最高裁事務総局の通達では「同期同給与年齢の男女間に八対二の昇格比率の差があった場合、非合理な差別が存在しているといえるか」という仮想質問に対して「男女職員間の全体的な昇格比率というものは、それだけで差別を根拠づけるものとは言えず」とお墨付きを与えている。米国では、資格の同等な男女で女性の採用率や昇進率が男性の80%に満たない場合、企業の制度が格差を生んだと判断する「80%ルール」を確立し、その後、仮に80%以上でも統計的に有意な格差があれば同様に判断できる「有意ルール」という基準も採用している。ルール違反の場合、企業が正当な理由を提示できなければ、提訴された場合に損害賠償責任が生じる。間接差別についてわが国の司法上の規定や通念は世界から逸脱している。女性活躍の推進のためには、企業の間接差別的慣行の自主的廃止とともに、法改正が強く望まれる。
*やまぐち・かずお 46年生まれ。経済産業研究所客員研究員。専門は社会統計学

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGKDZO74837100Y4A720C1PE8000/
(日経新聞 2014/7/28) 女性登用には働き方改革が必要だ
 管理職や役員になる女性を増やそうと、行動計画を立てる企業が増えてきた。具体的な数値目標をあげる企業も目立つ。企業の「本気度」を社内外にアピールし、女性の登用や育成を着実に進めていくための手段として、前向きに評価できる。ただ、それには、長時間労働の見直しなど、働き方の抜本的な改革が不可欠だ。男女ともに当事者となり、職場を変えていくチャンスとしたい。
●管理職なお1割程度
 女性の登用を後押しする動きが相次いでいる。経団連は会員企業に自主行動計画をまとめるよう呼びかけ、まず約50社分をホームページで公開した。「女性管理職数を2020年に3倍、30年に5倍に」(トヨタ自動車)、「20年度までに女性役員2人以上」(全日本空輸)などの目標が並ぶ。政府も6月の成長戦略で、女性の活躍推進を柱に据えた。実効性を高めるために、企業に行動計画づくりなどを促す新しい法律を制定する方針も打ち出した。日本の女性はどこまで職場で活躍しているのか。足元の数字は厳しい。14年の男女共同参画白書によると、就業者に占める女性の割合は、日本は欧米各国に比べて著しく低いわけではない。しかし管理的な立場の人に限ると、1割程度の日本に対し、米国は4割を超える。フランスやスウェーデンなども3割を超えており、日本のかなり先を行っている。政府は指導的地位に占める女性の割合を20年に30%にする目標を掲げている。日本の現状との隔たりは大きい。男女問わず意欲と能力のある人が力を発揮できるようにすることは、企業の成長にとって欠かせないテーマだ。単に労働力不足を補うためではない。多様な経験と価値観を持つ人材がいる職場は、より創造性の高い職場になりうる。もちろん、すべての働き手が管理職を目指すわけではないだろう。しかし意欲を阻む壁があるなら取り除いていくことが必要だ。まずは育成に向けた地道な取り組みを進めたい。管理職向けに女性社員の育て方を教える研修を開いたり、女性を対象にキャリア意識向上の研修を開いたりする企業は多い。特に管理職の役割は重大だ。同じように接しているつもりでも、つい男性の部下にだけ目を向けたり、女性に過剰な配慮をして能力を伸ばせなかったりすることもあるからだ。取り組むべき課題は、さらにある。女性管理職が少ない理由としてよく「本人が希望しない」という声が聞かれる。しかし女性側の意識の問題だけなのだろうか。背景をよく見ていくと、長時間労働や、仕事と家庭の両立が難しいことが、女性を尻込みさせている例も少なくない。そもそも子どもを持つ段階で仕事か家庭かの二者択一を迫られ、退職する女性は今なお多い。一度職場を離れると好条件での再就職は難しい。これでは管理職候補となる女性の数は限られてしまう。良質な保育サービスの拡充が就業継続の支えになることはもちろんだが、それだけでは不十分だ。カギを握るのは、長時間労働を見直し、職場環境そのものを変えていくことだ。子育てによる時間的制約があっても、仕事の内容や進め方を見直し、効率的に働けるような工夫をすることはできる。
●男性はもっと家庭に
 フレックスタイムや在宅勤務など柔軟な働き方を広めることや、時間ではなく成果で評価する仕組みをつくることもあわせて必要になる。再雇用制度や中途採用などにより、女性の再チャレンジを後押しすることも大事だろう。同時に、男性がもっと家庭で役割を果たせるようにすることも欠かせない。日本の男性が育児や家事にかける時間は、欧米に比べ短い。育児休業からの復帰セミナーに夫婦そろっての参加を呼びかけたり、男性社員に短期間であっても育児休業の取得を促したりする企業もある。こうした取り組みはもっと広がっていい。高齢化が進む日本では、今後、男女問わず親の介護に直面する働き盛りの人が増える。女性が育児や家事、介護を担い、男性が長時間労働に没頭する。このモデルではもはや乗り切れない。女性の登用に向けた取り組みは、女性のためだけではない。時間的な制約の有無を含め、様々な属性を持つ人材がそれぞれの力を発揮できるよう、職場環境を変えていくことにつなげたい。多様性を包み込む、柔軟で力強い職場にしていくための一里塚だ。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/102428
(佐賀新聞 2014年9月9日) 企業、社会の意識改革を 「輝く女性応援会議in佐賀」
 企業などで活躍する女性と支援する関係者らが意見を交わす「輝く女性応援会議in佐賀」(内閣官房、内閣府、県主催、佐賀新聞社共催)が8日、佐賀市内で開かれた。銀行やホテル、人材派遣会社、農業法人で働く女性ら8人が登壇。企業や社会の意識改革を求め、子育て支援メニューの充実など、女性が能力を発揮できる環境づくりに必要な方策を探った。同会議は、安倍政権の成長戦略の中核に掲げている「女性の活躍促進」を図ろうと、佐賀を含む全国5カ所で開催。県内外から約280人が参加した。内閣府男女共同参画局の武川恵子局長が基調講演。女性の就業率上昇や登用推進に向け、育児・家事支援の施策や制度整備などの取り組みを紹介した。この後、佐賀新聞社の富吉賢太郎編集局長をコーディネーターに、佐賀や福岡、長崎の企業などで働く女性4人と、女性の雇用や子育て支援に取り組む企業の関係者4人が自身の経験や会社での取り組みを報告。働く女性からは「結婚や出産を機に希望しない異動を受け、女性への理解不足があると感じた」「農家の嫁は夫の付属品みたいな扱いで、人と違ったことをすると、自分だけではなく夫も非難された」などと赤裸々な経験談も出された。働く女性支援の取り組みでは、松尾建設(佐賀市)の担当者が営業や設計部門への女性登用について紹介し、「現場経験のなさが逆に顧客目線での営業につながって、評判もいい」と報告。湯江タクシー(諫早市)は、保護者に代わって子どもの保育園や病院などへの送り迎えを請け負う「子育てタクシー」事業を説明し、「企業を含め、社会の中に子育て支援のメニューがもっとあっていい」と提言した。行政や社会への注文では「少子化で、企業にとって人こそ財産。経営者は辞めさせない覚悟を持つべき」などの意見が出ていた。

*1-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29789  (日本農業新聞 2014/9/12) 女子目線で新風を 地域の活力創造協議会 取り組み成果報告 農水省
 農水省は11日、農林水産関係団体らでつくる全国農林水産業・地域の活力創造協議会で、「農業女子プロジェクト」の成果を報告した。「女性の職業選択肢に農家を加える」との目標を掲げ、昨年11月の発足以来、181人の女性農家が参加。一般企業と連携し、女性目線で使いやすさを追求した軽トラックの開発、女性向けの農業機械研修などの実績を紹介した。安倍政権は「女性の活躍」を重要課題に位置付けており、同省としても同プロジェクトなどを通して活躍の場づくりを支援していく考え。プロジェクトに参加する農家数は昨年11月の発足時点で37人だったが、今年9月1日現在で181人になった。メディアで取り上げられることも多く、9カ月間で5倍近くに増えた。年齢制限は設けておらず、農業女子のホームページから希望者が自分で登録する。年齢構成は30代が42%とトップ。次に40代が29%、20代が18%と続き、40~20代の若手主体で構成する。農家の息子と結婚した人や実家の農業を継いだ人、農外からの新規就農者が多い。これまでの成果として、自動車メーカーのダイハツ工業と連携した「農業女子的軽トラック」を紹介。「車高を下げる」「収納スペースを増やす」などの要望を出し、女性農業者にとって乗りやすい軽トラックの開発に協力した。「農機の研修会は夫が参加することが多く、自分は参加しにくい」との声を受け、農機メーカーの井関農機と連携し、農機の使い方やメンテナンスの研修会も開いた。農水省は「女性農業者の存在感を高めて、女性の職業選択肢に農家を加えたい」(女性・高齢者活動推進室)と意気込む。現在、13社と個別に企画を進めており、女性目線で農業の魅力を広く発信していく考えだ。

<女性登用への反対意見>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11265454.html?ref=reca
(朝日新聞 2014年7月26日) 声:無職 本市信長(茨城県 76) 女性登用の目標は男性に不公平
 安倍政権は国家公務員の採用数の3割を女性にする方針のようだが、私は反対だ。男女雇用機会均等の面から見てもおかしいと思う。男女を問わず、採用試験の上位から必要数を採用すべきだ。最初から、女性の数を決めるのは、男性側から見れば不公平だ。女性3割にこだわると、上位の男性より下位の女性が採用されて、公務員全体の能力が低下し、国の損失につながる。政権は成長戦略で「指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げる」という目標も立てた。これも、まず女性の割合ありきで納得できない。採用後の昇進や昇格も、男女の別なく能力で決めるべきだ。一方、政権の成長戦略を受けて、経団連も役員企業47社の女性登用計画をまとめて発表した。約6割にあたる27社で、女性管理職を2020年に3倍にするといった目標が掲げられている。「人口減少で働き手が少なくなり、女性の登用は企業にとって戦略上欠かせないから」だという。これは、民間企業にとって深刻な問題なので、国家公務員の採用、処遇とは分けて考えるべきだろう。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11265455.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2014年7月26日)声:経営コンサルタント 久野厚夫(千葉県 73) 企業は先を見た女性活用策を
 アベノミクスの成長戦略の一つに女性の活用が挙げられています。この動きを受けて、経団連は会員企業に対し、女性登用計画をつくるよう呼びかけました。企業の側も急激に進む生産年齢人口の減少を考えれば、女性の登用は今や待ったなしの状況にあります。ただし、女性の管理職の比率向上を目標にする人事は、企業の本来の目的とは必ずしも一致しないのではないでしょうか。企業にとって不変のルールは「適材適所」。欧米などを基準にした比率の改善を急ぐ必要はありません。今、企業が行うべきは、女性に能力を発揮する機会を提供すること、労働環境の整備、成果に対する公正な評価と透明性の確保です。そのために現状の検証も必要です。さらに、女性社員の能力を高められるような、新たな企業価値の醸成です。将来、企業環境が激変して経営が苦境に陥った時、早々と女性登用の看板を下ろすような底の浅い人事施策であってはなりません。経営者はじっくりと腰をすえて、「人づくり百年の計」を見据え、女性登用策に取り組んで欲しいと思います。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11265453.html?ref=pcviewpage
(朝日新聞 2014年7月26日) 声:無職 藤丸善基(埼玉県 76) 女性幹部の増加より雇用促進
 安倍政権が成長戦略で「指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げる」という目標を立て、率先垂範とばかり、中央省庁の幹部に女性を積極登用した。経団連も企業側に女性登用を促しているようだ。しかし、これがなぜ日本を成長させるのか。私には、さっぱり分からない。総務省の最新データによると、女性の就業希望者は全国に328万人いるそうだ。既に職に就いている人の中から複数人を幹部にするよりも、まず、この328万人の女性に働く機会を作り、働きやすい環境を整えることこそ、安倍政権が優先して取り組むべき課題ではないだろうか。行政や民間企業の女性幹部、管理職を増やしたとしても、その数は知れている。だが、328万人が働けるようになれば、この新たな雇用で、今は収入のない女性たちが収入を得ることができる。それは消費の増加につながるだろう。納税額、社会保険料なども増えて、よほど経済の成長につながると思う。行政や民間企業の幹部を増やすより、ずっと難しいだろう。しかし、どちらが日本の成長に寄与するかは明らかだ。

<男が作った愚策集>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014091002000240.html (東京新聞 2014年9月10日) 気仙沼の巨大防潮堤計画 急ぐ行政、募る住民不満
 東日本大震災後に計画された宮城県内で最も高い14.7メートルの防潮堤建設をめぐり、予定地の気仙沼市本吉町で住民と行政との考え方の溝が埋まらないままだ。震災から11日で3年半。国の集中復興期間の2015年度末をにらみ建設を急ぐ県に対し、住民の間には「生活再建で手いっぱいだった時期に計画が進められてしまった」との不満がくすぶっている。「夕方来るのが好きなんです。娘たちとも買い物の帰りに立ち寄っていろんな話をしたり」。同市本吉町小泉地区の中島海岸で風を受けながら、菅原圭子さん(48)は、いとおしそうに海を見つめた。震災時、この海岸を二十メートル超の津波が襲った。津波は津谷川をさかのぼり、海岸から約五キロ離れた本吉町津谷地区の菅原さんの自宅周辺も被害に遭った。小泉、津谷両地区で五百七十三戸が流失、五十一人が亡くなった。防潮堤も壊れた。震災直後は防潮堤整備に疑問を感じなかった。県が事業費約二百三十億円をかけて、高さ一四・七メートル、幅九十メートルの防潮堤を建設する案を示したのは二〇一二年七月。その後、七回ほど開かれた住民説明会の開催案内は、菅原さんたちの津谷地区には届かなかった。不安を覚えたのは昨年三月、会員制交流サイトでの議論を見てから。震災では高い防潮堤で海の様子が見えなかったために逃げ遅れた人がいること、震災後ようやく戻ってきた砂浜や生態系が壊される恐れが強いこと…。「避難道を整備して訓練することや、経験を伝えていくことの方が大切では」と思い始めた。しかし、説明会では住民組織の振興会長らが早々に賛意を示し、県は昨年十一月「住民合意が得られた」と結論づけた。防潮堤建設に際して、隣の岩手県は、国が示した高さの基準をたたき台にしながらも、住民の意向や高台移転の計画などを考慮して二十カ所で高さを見直した。同県でまちづくりに取り組むNPO法人東北開墾の高橋博之代表理事(40)は「住民の意見への耳の傾け方が事業の進捗(しんちょく)の差につながっている」と指摘する。菅原さんがメンバーの「小泉海岸及び津谷川の災害復旧事業を学び合う会」は、既にかさ上げして造られた高速道などを防潮堤とみなすことなどを提案してきたが、宮城県の計画に反映されることはなかった。
◆高校生の意見、説明会で罵声
 七月の最終説明会では、着工を急ぐ県の姿勢が際立った。男子高校生が建設に反対する立場で意見を述べると、罵声が飛び、失笑が漏れた。多くの人が意見を言おうと手を挙げたが、県の担当者の「時間切れですのでこれをもって終了いたします」との言葉で会は閉じられた。急ぐ理由を県は「復興の遅れにつながる」とする。だが、菅原さんは「高台移転や避難道の整備などをまずやった上で、それでも防潮堤が必要かどうか検討するべきでは」と疑問を投げ掛ける。宮城県など被災地の知事らは七月、国に集中復興期間の延長を求める要望書を提出した。菅原さんは「復興期間の延長が認められれば、計画見直しもできるのではないか。焦って造ろうとせず意見に耳を傾けてほしい」。仲間らと五百人以上の署名を集め、今月中にあらためて、県知事に申し入れる予定だ。
<被災地の防潮堤建設> 東日本大震災を受け、国は数十年から百数十年に一度の「頻度の高い津波」に対応できるよう整備方針を決定。2011年7月、政府の中央防災会議の方針に基づき、高さの基準を各県に通知した。計画地は東北の被災3県で約450カ所、総延長約400キロ。15年度末までの集中復興期間内の国の予算を使うため、各県は同年度末までの整備を目指している。現在の着工率は宮城県が263カ所中56%、岩手県が134カ所中78%。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11344637.html
(朝日新聞 2014年9月11日) 仮設住まい、今も8.9万人 東日本大震災3年半
 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の49市町村では、プレハブ仮設住宅約4万1千戸に約8万9千人が暮らす。阪神大震災では仮設住宅が5年で解消されたが、東日本大震災では5年を超える見通しだ。復興庁の6月末現在のまとめでは、仮設を建てた市町村のうち、震災から5年となる2015年度までに復興住宅や集団移転地の整備が終わる見込みなのは18市町村。他の市町村について内閣府は「移る先の住宅が整わなければ仮設住宅を1年ごとに延長する」という。被災世帯が最多の宮城県石巻市は、7660戸分の宅地と復興住宅を用意する予定だが、15年度までにできるのは53%。集団移転地の造成が終わるのは17年度と見込まれ、「それまで仮設を残さざるを得ない」と担当者は話す。福島県では、13市町で用地交渉が終わらないなど完成のめどが立たない復興住宅がある。原発周辺地域では除染やインフラ復旧が進まず、仮設に避難する人がいつ帰れるのかもわからない。仮住まいの被災者は、3県で民間借り上げ住宅や公営住宅の「みなし仮設」約3万8千戸にも約9万人いる。仮設入居期間は本来2年。11日に震災発生から3年半となるなか、プレハブ仮設は老朽化が進み、体調不良を訴える被災者もいる。

*3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140821&ng=DGKDZO75938840R20C14A8MM8000 (日経新聞 2014.8.21) 
来年度予算、景気対策に1兆円確保、消費税10%に備え政府検討
 政府は2015年度予算で、経済対策に使える予備費を1兆円程度計上する検討を始めた。15年10月に消費税率を10%に引き上げた際に、景気に悪影響が広がらないように機動的に経済対策を実施できるようにする。消費増税は安倍晋三首相が今年12月初めにも最終判断する。安全網をあらかじめ用意して、増税の判断に向けた環境を整える。政府は今月内にまとめる概算要求など来年度予算の編成作業を進めている。今回検討する経済対策予備費は、年度途中に景気が冷え込む場合に備え、財源をあらかじめ用意しておく措置。大規模な公共事業や中小企業向けの補助金など、経済対策のためであれば自由に使うことができる。このため、経済状況にあわせて柔軟に政策を打ち出せるという利点がある。過去には08年のリーマン・ショックを受け、当時の麻生太郎政権が09年度の当初予算に1兆円の経済対策予備費を計上。その後誕生した民主党政権も、日本経済が長いデフレに苦しむなか、同様の費用を予算に組み込んできた。デフレからの出口がようやくみえてきたこともあり、第2次安倍政権は13年度、14年度の経済対策予備費計上を見送った。15年度は年度途中の10月に消費税率を8%から10%に上げる予定がある。消費の落ち込みによる景気の悪化を避けるため、3年ぶりの計上を検討することにした。財政健全化と両立させるため、今回の経済対策予備費は1兆円程度にとどめる見通し。15年度は、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を10年度比で半減するという健全化目標があるためだ。増税後の景気低迷が予想より大きく予備費だけで足りない場合、14年度予算の使い残しや税収の上振れ分も活用した大規模な補正予算を組むことも別途、検討する。増税を判断する際には足元の景気情勢が重要な材料となる。4月の消費増税による消費の反動減などで、4~6月の実質国内総生産(GDP)が前期比年率で6.8%減少。民間予測では年後半に緩やかな成長軌道に戻る見通しだが、次の消費増税の影響を不安視する声は政権内にも残る。1兆円規模の予備費計上を検討する背景には、景気の下振れに対する安全網をあらかじめ用意することで、過度な悲観論を抑える狙いもある。甘利明経済財政・再生相は20日、都内で記者団に次の消費増税について「ベストシナリオは予定通り上げること」と述べた。増税を見送った場合も「無期限延期はあり得ない」と語った。
▼予備費 自然災害や急激な景気悪化など不測の事態に政府が柔軟に対応できるよう、あらかじめ使い道を決めずに予算に計上しておく費用。国会審議が必要な補正予算に比べて素早く財政出動でき、使い方は内閣の裁量で決められる。

| 男女平等::2014.7~2015.5 | 10:11 AM | comments (x) | trackback (x) |

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