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2014.9.23 小渕優子経産相の原発への対応と女性閣僚の意味 (2014.9.24、25日追加あり)
   
  *2-3より        *4-2より       *5-1より

(1)フクシマ汚染水の海への流出について
 *1-1のように、小渕優子経産相が、9月7日、東京電力福島第1原発を視察して、「汚染水は、全体としてコントロールされていると考えている」と述べたそうだが、これは、安倍首相の見解をなぞっただけである。そして、実際には、*1-3のように、米原子力規制委員会のグレゴリー・ヤツコ前委員長が、「汚染水は制御不能で、地下水はコントロールできない」「問題をここまで悪化させたことが驚きだ」と述べており、私もそのとおりだと思う。そして、これは、海産物を通じて関東はじめ日本全国に影響があるため、単に安倍首相の見解を踏襲するだけでは、群馬県選出の幼い子どもの母親でもある女性衆議院議員が閣僚になった意味は小さくなる。

 また、*1-2のように、東電の資料から、2013年8月~2014年5月にかけて港湾内の1~4号機取水口北側で測定したストロンチウム90とセシウム137の平均濃度を基に試算した、ストロンチウム90とセシウム137の1日当たりの流出量は合わせて2兆ベクレルを超え、事故直後からの累計では相当の数値になり、これが港湾内にのみ留まって海への影響がないわけがない。そのため、*1-4のように、福島第1原発の地下水放出に、漁業者が反発しているのだ。

(2)フクシマの放射線被曝と補償
 *2-1のように、東京電力福島第1原発事故による健康への影響を調べている福島県は、甲状腺検査の途中経過を公表し、「現時点で放射線の影響はみられない」という従来通りの見解を示した。しかし、甲状腺検査では、甲状腺癌の「確定」が57人、「疑い」が46人となっており、10代の甲状腺癌の「100万人に1~9人」いう通常の頻度よりかなり高い割合となっている。また、チェルノブイリ原発事故では、甲状腺癌が急増したのは4~5年後で、消化器、呼吸器、泌尿器の癌、免疫機能低下、心筋異常などの疾患も見られ、低線量被曝には未解明な点が多い。さらに、フクシマは、被曝線量を推計に頼っているため、原発事故による健康被害について、「今までも、現在も、将来も問題ないと約束する」とは言えない。

 そのため、*2-2のように、日本学術会議は9月19日、「事故直後の放射性物質の拡散をめぐる情報がまだ十分公開されていない」として、「政府や研究機関は関連する情報を直ちに公開すべき」と訴えたそうだが、国民を護るつもりがあるのなら、公開するのが当然である。そして、それを踏まえなければ、避難者の帰還判断や除染について、科学者が地域の決定や住民の選択を正しく支援することはできない。

 また、*2-3のように、住宅の除染を計画した東北、関東の74市町村のうち計画分を未完了としているのは、6月末時点で半数超の40市町村に上り、少なくとも計約31万1700戸分に上ることが、毎日新聞のアンケートで分かったとのことである。これ以外にも、埼玉県のように線量を全県で3か所しか測定しておらず、除染計画が全くない県もある。自民党政権になった後の経産相は、茂木氏(栃木県選出)と小渕氏(群馬県選出)だが、地元からの要望はないのだろうか、それとも要望を無視してきたのだろうか。

(3)原発地元での再稼働反対例
 *3のように、原発の地元では、日本で初めて原子力の火が灯った茨城県東海村でさえ「脱原発集会」が開かれ、「JCO臨界事故から十五年、原発再稼働を許すな」をテーマ掲げ、事故時に自身の判断で住民避難を決めた元村長の村上達也さん、JCO健康被害訴訟元原告の大泉恵子さん、各地の原発訴訟に詳しい弁護士の青木秀樹さんの三人が意見を交わし、デモ行進も行うそうである。そして、これは一例に過ぎない。

(4)意図的な試算と原発政策への誘導
 *4-1に書かれているとおり、小渕経産相は9月21日のNHK日曜討論で、「資源の乏しい日本はエネルギーについて良いバランスを取っていくことが大事で、原子力を持たない選択をするということは難しい」と述べたが、これは10~50年前から同じことを言っており、経産省のペーパーを暗記して語ったにすぎない。現在では、資源の採掘方法や発電方法が進歩したため10年前と同じでもなく、経産省が意図的で遅れているのだ。また、“バランス”と言う人も多いが、現在、蒸気機関車の割合が殆ど0であるのと同様、何でも少しずつあるのがバランスがよいわけではなく、時代によって0になる技術もあるのだ。

 しかし、小渕経産相は「原子力規制委員会の安全審査に合格した原子力発電所を再稼働させていく」という政府の方針を暗記しているかのように改めて述べ、「古くなった火力発電所をフルに使ってエネルギーを作り出しているので、決して安心できる状況ではない」とも語ったが、原発か火力かという選択こそ変えるべきなのであり、それは今なら可能である。

 さらに、小渕経産相は、「化石燃料の輸入増が電気料金の上昇につながり、中小企業などの経営を圧迫している」とも述べたが、これは、*4-2、*4-3に記載されているとおり、原発停止の影響を過大評価しており、実際には原発再稼働の効果は小さい上、*4-4のように、米国の試算では「再生可能エネルギーのコストの低下で、原発による電力は風力より高く、太陽光発電(公害がない)と同レベル」になっているのだ。

(5)電力自由化に逆行して大規模事業者を優遇する経産省
 *5-1のように、経産省は、2016年4月に家庭向け電力小売りを自由化する際、「消費者を保護するため」と称して、小売りに参入する企業を審査して十分な供給能力がない企業の販売を認めない規制を行うそうだ。また、太陽光や風力など、気象条件で供給力が変わる発電所に依存する企業は、供給を安定させるため、(蓄電池ではなく)火力発電所を確保しているかを審査するそうで、これは、消費者保護と称する既存電力会社保護策であり、独占禁止法に違反するとともに、電力自由化にも逆行する。

 また、*5-2のように、経産省は総合資源エネルギー調査会の小委員会に、大手電力など原発事業者の優遇策を提案したそうだが、これは原発由来の電力に優遇策を与え、電力小売り自由化の趣旨に反している。経産省は、エネルギー基本計画で「原発は運転コストが低い」と位置付け、「重要なベースロード電源」として再稼働推進を打ち出したのであるから、こんどの提案は自己矛盾だ。

(6)原発事故時の補償は、メーカーを免責する(!?)
 *6-1のように、原発を持つ国同士が重大事故時の賠償金を支援する「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」承認案を29日に召集される臨時国会に提出するそうだが、この条約は異常に巨大な天災の場合を除き、賠償責任は全て事故発生国の電力会社が負い、加盟国は事故発生国に対して支援金を支払う仕組みである。そのため、輸出先が加盟国なら、原発メーカーは免責され事故時の損害賠償リスクが減るが、その分は国民のリスクが高まるのだ。なぜ、そこまでして原発を輸出しなければならないのか、そこが今、明確にして議論すべき問題である。

 また、*6-2-1のように、原発事故の賠償を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を巡り、原発事故による避難で死亡した場合の慰謝料は「一律に50%」で算定しており、これは、*6-2-2のように、原発賠償の算定基準そのものだそうである。その内部文書には、「死亡慰謝料を低めにする必要はないか」など、被災者にとって看過できない記載もあり、すべて非公開の内容ばかりであるため、早急に開示して地元住民に対する説明が必要だろう。

(7)経済成長を助けるのは、どういう女性か
 *7で、米ジョージタウン大の女性・平和・安全保障研究所所長 メラニー・バービアー氏が述べているとおり、世界で女性が経済成長を促していることは事実で、女性の社会進出は様々な場所で見られ、女性が職場で働くことによって国内総生産(GDP)が上がり、女性が自らの収入を自分のコミュニティーや健康維持、家族、子供たちの教育に振り向ける傾向が強い結果、その社会の生活水準が上がるという意見に、私は全く同感だ。しかし、女性の起業家にも、社会の意識、銀行、行政、司法など多数のバリアがあり、賃金格差は女性差別のほんの一例にすぎない。

 そのような中、人口の半分を占める才能(女性)が自由に能力を発揮できるようにしなければならないのは当然だが、管理職以上に推挙される女性は、とかく小渕優子経産相のように男性が作った枠からはみ出さない人が多い。これは、男性が自分の想定内で動く女性を推挙するからだろうが、それでは女性が大臣になっても、原発を推進して再生可能エネルギーによるイノベーションを抑えるというように、経済成長を促さず、雇用も増えない。そのため、もう、このパラドックスにも目を向けるべきである。

<フクシマ汚染水の海への流出について>
*1-1:http://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2014/09/133911.php
(Newsweek 2014年9月8日) 小渕経産相、福島第1原発の汚染水問題「コントロールされている」
 小渕優子経済産業相は7日、東京電力福島第1原発を就任後初めて視察した。視察後、記者団に対し、汚染水問題がコントロール下にあるかとの質問に対して「全体として状況はコントロールされているものと考えている」と述べた。小渕経産相は「個別の事象は発生しているが、モニタリングの結果、発電所の港湾内で放射性物質の影響は完全にブロックされている」と話した。1年前にブエノスアイレスで行われた国際オリンピック委員会(ICO)総会での2020年東京五輪誘致スピーチで安倍晋三首相は、福島第1原発の汚染水問題について「アンダー・コントロール」と発言した経緯がある。今月3日に経産相に就任したばかりの小渕氏だが、最重要課題のひとつである汚染水問題で従来の政府見解を踏襲した形だ。

*1-2:http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014090700093
(時事ドットコム 2014/9/8) 海流出、さらに2兆ベクレル=ストロンチウムとセシウム-福島第1
 東京電力福島第1原発から放射性物質が海に流出している問題で、今年5月までの10カ月間に第1原発の港湾内に出たストロンチウム90とセシウム137が計約2兆ベクレルに上る可能性が高いことが7日、東電の資料などで分かった。二つの放射性物質だけで、第1原発の事故前の放出管理目標値の10倍を超える。事故に伴う深刻な海洋汚染が続いていることが浮き彫りとなった。第1原発では、汚染された地下水が海に流出しているほか、高濃度汚染水がたまった建屋のトレンチ(ケーブルなどの地下管路)から直接港湾内に漏れている可能性も指摘されている。東電の資料によると、昨年8月から今年5月にかけ、港湾内の1~4号機取水口北側で測定したストロンチウム90とセシウム137の平均濃度を基に試算した1日当たりの流出量は、約48億ベクレルと約20億ベクレル。10カ月間の総流出量はそれぞれ約1兆4600億ベクレルと約6100億ベクレルの計算になる。合わせると2兆ベクレルを超えるが、汚染水には他の放射性物質も含まれており、港湾内の汚染はより深刻とみられる。

*1-3:http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/09/24/kiji/K20130924006679480.html (スポニチ 2013年9月24日) 「汚染水は制御不能」米規制委の前委員長が指摘
 米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ前委員長は24日、日本外国特派員協会で記者会見し、東京電力福島第1原発の汚染水問題について「東京に影響はないが、汚染水は制御不能だ」と述べた。ヤツコ氏は、安倍晋三首相が国際オリンピック委員会総会で「状況はコントロールされている」などと発言したことに「現場では努力しているが、事態は制御不能なところまで来ている。地下水はコントロールできない。できることは影響を和らげることだけだ」と指摘、監視強化の必要性を訴えた。さらに、汚染水が海に流出し続けている現状を踏まえ「問題をここまで悪化させたことが驚きだ。なぜもっと力を注いでこなかったのか」と、政府と東電の対応を批判した。

*1-4:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201409/20140919_63008.html
(河北新報 2014年9月19日) 福島第1・地下水放出に漁業者反発 東電説明
 東京電力が福島第1原発の汚染水対策として建屋周辺の井戸「サブドレン」から地下水をくみ上げ、最終的に海に放出する計画で、福島県漁連は18日、いわき市漁協の組合員を対象に説明会を同市内で開いた。東電の説明に漁業者から反発が相次いだが、県漁連の野崎哲会長は終了後、報道陣に「計画の必要性はかなり高い。執行部として組合員に理解を求めていきたい」と述べ、容認に前向きな考えを示した。漁業者約100人が参加し、東電福島復興本社の新妻常正副代表らが計画を説明。参加者からは「試験操業の魚種が増え、前に進もうとしているのに、トラブルが起きたら立ち直れない」「東電には不信感しかない」など反対の声が続出した。狭い会場に入れない組合員が多数いたため、説明会は途中で打ち切られ、後日、あらためて開くことになった。野崎会長は終了後、「廃炉作業の進展と漁業の復興は車の両輪だ」と述べ、計画に理解を示した。一方、建屋内などの高濃度汚染水については「浄化後も海洋放出は認められない」と述べた。いわき市四倉の佐藤芳紀さん(55)は取材に「東電は半年間ぐらいデータを集め、足場を固めるべきだ。現状では納得できない」と強調。同市永崎の作山浩之さん(50)も「今回の計画を認めたら、いずれ建屋に入った汚染水の放出につながりかねない」と批判した。相双漁協の組合員向けの説明会も相馬市で19日に開かれる。

<フクシマの放射線被曝と補償>
*2-1:http://www.shinmai.co.jp/news/20140826/KT140825ETI090007000.php
(信濃毎日新聞 2014年8月26日) 被ばく検査 これからが大切になる
 現時点で放射線の影響はみられない―。東京電力福島第1原発の事故による健康への影響を調べている福島県が、甲状腺検査の途中経過を公表し、従来通りの見解を示した。国連放射線影響科学委員会や国際がん研究機関といった専門機関も、事故の影響には否定的だ。半面、長期にわたる継続的な調査の必要性も訴えている。何より、被ばくした住民の多くが今も健康不安を抱えている。国は福島県を積極的に支援し、甲状腺に限らず、住民が希望する診療を受けられるよう、体制の拡充に努めなければならない。甲状腺検査は、震災発生時18歳以下だった37万人を対象に2011年10月から続けている。1次検査の結果が出た約30万人のうち、甲状腺がんの「確定」は57人、「疑い」は46人となっている。10代の甲状腺がんは「100万人に1~9人」とされた震災前の頻度より割合は高いが、検査の精度が高まったためという。当初から問題が多かった。甲状腺がんの原因となる放射性ヨウ素の半減期は8日間と短い。検査が始まった時点でほぼ消失していて、被ばく量は推計に頼らざるを得ない状況だった。検査の順番がなかなか回ってこない、検査結果が書面で通知されるだけで医師から説明を受けられない―。住民の不満は強く、自費で検査や再検査を受けた人たちも少なくない。国の責任は重い。健康調査は福島県に任せきり。被ばくした人は他県にもいるのに、十分に対応していない。血液や尿など検査項目を増やすよう求める医療関係者の声にも応えてこなかった。東京五輪招致に当たり、安倍晋三首相は、原発事故による健康被害について「今までも、現在も、将来も問題ないと約束する」と国際社会に言い放った。福島の医療現場からは「被災者と国、自治体との信頼関係の回復が急務」との嘆きさえ聞かれる。検査はこれからが大切になる。チェルノブイリ原発事故で甲状腺がんが急増したのは4~5年後だった。消化器や呼吸器、泌尿器のがん、免疫機能低下や心筋異常などの疾患もみられるという。低線量被ばくには未解明な点が多い。予断を持たず検査を続け、住民の受診率を高め、病気の予防、早期発見を徹底する必要がある。国が前面に立って体制を強化すべきだ。東電任せにした汚染水問題のように、中途半端に推移を見守るのでは無責任すぎる。

*2-2:http://www.minyu-net.com/news/news/0920/news8.html
(2014年9月20日 福島民友ニュース)「初期被ばくの解明」提言 日本学術会議が公表
 日本学術会議(大西隆会長)は19日、東京電力福島第1原発事故の発生当初のモニタリングデータなど、時間経過に伴い新たに明らかになった情報に基づき、事故に伴う初期被ばくの実態解明を目指すべきだとする内容を盛り込んだ提言を公表した。提言では、被ばくによる健康影響の解明などに向け、行政や科学者集団に望まれる役割を指摘している。放射性ヨウ素などによる事故直後の初期被ばくはいまだ不明な部分が多いが、提言は、昨年6月に米国エネルギー省の調査に基づくヨウ素線量マップが公開されたことなどを指摘。こうした新たに追加された情報に基づき、当時の放射性物質の放出状況や初期被ばくの状況を再度検討し、結果を県民の健康調査などに反映させるべきとした。また、事故直後の放射性物質の拡散などをめぐる情報がまだ十分公開されていないとして、政府や研究機関は関連する情報を直ちに公開すべきと訴えた。県民健康調査は続けるべきとしたが、調査体制の在り方、調査結果の伝え方などについて、住民との対話を踏まえながら不断の改善を図るべきだと指摘。避難者の帰還の判断や除染の目標値をめぐっては、科学者集団が地域の決定、住民の選択を支援すべきとした。原子力規制委員会の下に府省横断的な学術調査・研究の組織を置き、科学者集団が科学的知見や助言を規制委に提供する仕組みを確立することも求めた

*2-3:http://mainichi.jp/select/news/20140922k0000m040114000c.html
(毎日新聞 2014年9月22日) 住宅除染:過半が未完了…74市町村計画、進捗に地域差
 東京電力福島第1原発事故に伴い、市町村による除染を国が財政支援する汚染状況重点調査地域に指定され、住宅の除染を計画した東北、関東の74市町村のうち計画分を「未完了」としているのは、6月末時点で半数超の40市町村に上り、少なくとも計約31万1700戸分に上ることが、毎日新聞のアンケートで分かった。このうち2町は住宅除染に着手できておらず、進捗(しんちょく)率の地域差も浮き彫りになった。同地域に指定された8県(岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉)104市町村(うち4市町村は指定解除)に7〜8月、優先してほぼ終了した学校や公共施設などを除き、住宅、道路、農地、森林の除染についてアンケートし、全市町村が回答した。このうち住宅除染を計画したのは74市町村。未完了とした40市町村の県別の内訳は、実施戸数の多い福島県が29と大半を占め、少なくとも28万6002戸の除染が終わっていなかった。他は栃木・宮城各4、茨城2、群馬1で計2万5719戸。今後の除染予定戸数について、3市町村は「集計中」などとして回答しなかった。宮城県山元町(予定戸数1495戸)と福島県新地町(同600戸)は「進捗率0%」だった。作業が進まない理由として「除染土の仮置き場確保が困難を極めている」(福島県いわき市)など多くが仮置き場不足を挙げた。また、「関係者が膨大で、同意取得に日数を要している」(栃木県那須町)など地権者同意に手間取っている例も複数あった。このほか、計画分は終わったが、軒下などの放射線量が比較的高い場所の除染を「今後も継続実施する必要がある」と答えたところも岩手・茨城各2、福島1の計5市町村あった。環境省の担当者は「福島県は実施戸数が多く、計画完了は2015〜16年度末がめどでほぼ想定通りのペースだ。他県は戸数を基準にすると約9割が終了した」と説明する。一方、京都精華大の山田国広名誉教授(環境学)は「国は除染方法の大枠を指針などで定めているが、その運用は自治体に任され、地域差が生じている。計画分を終えてもホットスポットなどの問題が残る場合もあるが、今後の具体的な方針を国はまだ示していない」と指摘する。

<原発地元での反対意見>
*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20140921/CK2014092102000167.html (東京新聞 2014年9月21日) JCO臨界事故から15年 東海村から「脱原発を」 28日に集会
 東海村の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所で一九九九年、作業員二人が死亡する臨界事故が発生してから三十日で十五年。これに合わせ、脱原発を訴える集会が二十八日、東海村石神内宿の石神コミュニティセンターで開かれる。「JCO臨界事故から十五年、原発再稼働を許すな」をテーマに、事故時に自身の判断で住民避難を決めた元村長の村上達也さん、JCO健康被害訴訟元原告の大泉恵子さん、各地の原発訴訟に詳しい弁護士の青木秀樹さんの三人が意見を交わす。水戸地裁で行われている日本原子力発電東海第二原発運転差し止め訴訟の報告などもある。集会は午後一時半から。午後三時半からJR東海駅まで約二・四キロにわたりデモ行進も行う。参加無料。問い合わせは茨城平和擁護県民会議=電029(221)6811=へ。

<意図的な試算結果と政策>
*4-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS21H03_R20C14A9NN1000/
(日経新聞 2014/9/21) 小渕経産相「原子力持たない選択は難しい」、NHK番組で
 小渕優子経済産業相は21日のNHK番組で「資源の乏しい日本はエネルギーについて良いバランスを取っていくことが大事。原子力を持たない選択をするということはなかなか難しい判断ではないか」と述べ、原子力規制委員会の安全審査に合格した原子力発電所を再稼働させていく政府の方針を改めて強調した。小渕氏は「原発がなくても我々の生活は回っているじゃないかという話をいただくが、古くなった火力発電所をフルに使ってエネルギーを作り出している。決して安心できる状況ではない」と指摘。化石燃料の輸入増が電気料金の上昇につながり、中小企業などの経営を圧迫している現状にも懸念を示した。

*4-2:http://toyokeizai.net/articles/-/48133 (中村 稔 :東洋経済 編集局記者 2014年09月22日)原発停止だけじゃない、電気料金上昇の真相、震災前に比べて4割近くも値上がり
 これまで東電を含め7社が震災後に改定値上げを実施。北海道電力は再値上げを申請した東日本大震災以降、電気料金の上昇が目立っている。原子力発電所の停止による影響が大きいと見る向きが多いが、実際はどうか。画像を拡大東京電力の家庭用モデル料金で見ると、震災が発生した2011年3月分は6251円だった。それが2014年9月分は8477円まで上昇している。上昇幅は2226円、率にすると35.6%増だ。内訳は、口座振り替え割引額の増加が1.5円の値下げ要因となった一方、2011年4月から導入された太陽光発電促進付加金で14円、2012年8月導入の再生可能エネルギー発電促進賦課金で217円、同年9月の料金改定で359円、2014年5月分からの消費税率引き上げの影響で230円の上昇となった。それ以外の1407円が燃料費調整制度(燃調)を通じた値上がりだ。
●燃調とは何か
 燃調とは、火力発電の燃料である原油や液化天然ガス(LNG)、石炭の価格変動を毎月自動的に電気料金へ反映する制度。2011年3月分の料金に反映された平均燃料価格(貿易統計実績)は1キロリットル当たり3万2800円だったが、2014年9月には5万5100円と68%も上昇している。これは、ドルベースで原油価格が33%上昇し、それに連動してLNG価格も50%上昇した影響が大きい。加えて、為替が1ドル=83円から102円へ大きく円安に振れた影響も甚大だ。LNG高の一部は日本の原発停止に伴う需要増大の影響も考えられるが、原油高や円安は原発停止とは基本的に関係ない。原発停止との関係が深いのは、料金改定値上げだ。東電の場合、原発の発電収入がなくなった反面、原発の代替となる火力発電の燃料費が大幅に増加。燃料単価の上昇は燃調で料金へ反映されるが、使用量の増加による燃料費増大は料金に反映されない。燃料費は原価全体の4割強を占めるだけに業績は急悪化。そのため、人件費削減など合理化を前提に値上げを政府に申請し、平均8.46%(モデル家庭は5.1%)の値上げが認められた。
●料金改定の影響は小
 ただ、震災後の値上げ幅のうち、料金改定による影響は2割にも満たない。値上げ要因の大半は燃調を通じた燃料単価高、円安といえる。東電は料金改定による来年以降の再値上げの可能性も示唆している。前回の値上げ時に、今年7月からの柏崎刈羽原発の再稼働を前提に置いていたが、今もそのメドが立たないためだ。現在、合理化の加速による値上げ回避を模索しているが、なお不透明だ。今後の見通しについて、富士通総研経済研究所の高橋洋主任研究員は、「燃料価格上昇や増税、再エネの賦課金増加などが値上がり要因となる反面、(2016年度からの)電力小売り完全自由化による競争が値下がり要因となりうる」と語る。すでにエネットなどの新電力会社は、大手より割安な企業向け料金でシェアを拡大している。家庭分野が自由化されて競争がさらに激化すれば、大手電力への値下げ圧力も高まる可能性がある。 (なかむら みのる:東洋経済 編集局記者企業情報部編集委員、エネルギー業界担当)

*4-3:http://qbiz.jp/article/45910/1/ (西日本新聞 2014年9月15日) 「原発抜き」国の試算過大 「火力燃料費3.6兆円増」……実は2.4兆円
 原発停止に伴い、不足する電力を火力発電のたき増しで補った結果、火力の燃料費増加額として年間約3兆6千億円が余計に必要になったとした政府試算に対し、専門家から「高すぎる。原発停止の影響を過大に見積もっている」と批判する声が出ている。廃炉が決まった東京電力福島第1原発を含め東日本大震災前の原発を維持することを前提に、その分を火力で補った場合で試算している上に、節電の実績も反映されていないからだ。実績に基づく民間試算では3分の2の約2兆4千億円に圧縮される。経済産業省資源エネルギー庁は8月下旬、今後の原発政策を議論する審議会で委員の指摘を受け、「燃料費増加分の要因分析」とする資料を提出。3兆6千億円の内訳を初めて明示した。それによると、同庁は福島原発事故(2011年3月11日)による電力供給の影響がほとんど出てない10年度と、関西電力大飯原発を除く原発が停止した13年度の燃料費を比較し、3兆6千億円が余計にかかったと説明している。同庁は08〜10年度平均の原発による発電量2655億キロワット時を、13年度も維持することを前提に、その分を火力で補った場合で試算。廃炉が決まった福島原発も稼働中という、現実にはあり得ない前提だ。その上で、内訳は火力の燃料となる液化天然ガス(LNG)や石油などの使用量が増えた「数量要因」が7割(2兆6千億円)とする一方、残りの3割(1兆2千億円)は、燃料単価の上昇や、燃料輸入の際のアベノミクス政策を受けた円安による「価格要因」。それらを合算し、原発のウラン燃料の削減効果(約3千億円)を差し引き、おおむね3兆6千億円と計算した。しかし、13年度の火力発電の増加量(12年度実績から推計)は、節電が進んだこともあり、政府見込みよりも約3割少なく推移。脱原発を目指し、政策提言を行う自然エネルギー財団(東京)が、それに基づいて試算したところ、13年度の燃料費増加分は政府試算の3分の2の約2兆4千億円。価格要因を除けば、約1兆6千億円まで圧縮された。九州大の吉岡斉(ひとし)教授(原子力政策)は「福島事故前と同じ規模で原発を稼働させるという政府試算の前提が実態とかけ離れている。廃炉になりそうな原発はまだあり、原発が再稼働すれば3兆6千億円の国民負担が解消するという言い方は誤りだ。再稼働の経済効果は政府が言うより小さいとみるべきだ」と話す。同財団の分山達也研究員は「LNG価格は福島原発事故前から上昇してきた。円安を含め、価格要因まで含めて原発停止の影響とするのは妥当ではない」と指摘する。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014091601001012.html
(東京新聞 2014年9月16日) 原発電力は風力より高い、米試算 太陽光発電と同レベル
 原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で太陽光発電とほぼ同レベル、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8・2セントに比べてかなり高いとの試算を、エネルギー問題の調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)が16日までにまとめた。東京電力福島第1原発事故後の安全規制強化もあって建設費や維持管理にかかる人件費などが世界的に高騰していることが主な理由。再生可能エネルギーのコストの低下が続く中、原子力の優位性が薄れていることを印象付ける結果となった。

<電力自由化に逆行して大規模事業者を優遇する経産省>
*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140923&ng=DGKDZO77422100T20C14A9PP8000 (日経新聞 2014.9.23) 
電力小売りで消費者保護 経産省 供給力不足、参入認めず
 経済産業省は2016年4月に家庭向けの電力小売りを自由化した際に消費者を保護するための制度を固めた。経産省が小売りに参入する企業を審査し、十分な供給能力がない企業の販売を認めない規制が柱だ。安定した電力供給の能力がない企業を排除し消費者が電力供給を受けられなくなる事態を回避する。6月に成立した改正電気事業法により、16年4月から経産省に登録さえすれば誰でも家庭に電気を売れるようになる。従来は東京や関西など10電力会社が地域ごとに電力販売を独占してきた。家庭向けの電力小売りへの参入を視野に経産省に届け出た企業は9月時点で350社を超えた。商社や通信大手の参入意欲が強い一方、「十分な供給能力を持っていない企業も多い」との見方がある。新規参入企業と契約した消費者を保護する策が課題となっていた。このため経産省は新たに小売りに登録する企業に条件を設け、省令に盛り込む方向だ。企業が電気を売る地域で見込む最大需要を経産省に提出させる。経産省は企業が需要に見合った発電所との契約や、他社から受電する見通しがあるかをチェックして不十分なら登録を拒否する。太陽光や風力など気象条件で供給力が変わる発電所に依存する企業は、供給を安定させる火力発電所などを確保しているかを審査する。企業が小売りを始めてから供給力が不足すると、経産省が改善命令を出す。改善が見られなければ登録を抹消する制度にする。

*5-2:http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201409220006.html
(愛媛新聞 2014年9月22日) 原発の電気に優遇策 小売り自由化の趣旨に反する
 経済産業省が総合資源エネルギー調査会の小委員会に、大手電力など原発事業者の優遇策を提案した。電力自由化が進み、市場価格が下がった場合に備え、原発で発電した電気の価格を保証する仕組みの導入を目指す。具体的には、廃炉や使用済み核燃料の処分に必要な費用も含めて国と大手電力が「基準価格」を設定。市場価格が下回れば、差額を電気料金に上乗せするなどして全国の消費者に負担させる。逆に上回れば差額を還元するが、「原発の電気は安価」としてきた国の見解と矛盾する可能性が高いと言わざるを得まい。市場価格にかかわらず、大手電力が原発にかかる巨額の費用を確実に回収できるとなれば、新増設に道を開くことにもなろう。さまざまなコストを電気料金に転嫁する「総括原価方式」の撤廃を見越した代替措置とさえ映る。事業者間の競争を阻害し、小売り全面自由化の趣旨に逆行する優遇策は到底容認できない。エネルギー基本計画との整合性も問われる。安倍政権は今春「原発依存度を可能な限り低減させる」と計画に明記した。具体的な数値目標などを検討する気配が見えないばかりか、原発温存の枠組みを強化するかのような優遇策に懸念と憤りを禁じ得ない。東京電力福島第1原発事故を経験し、国民の半数以上が原発に依存しない社会を望んでいる。共同通信の先月の世論調査でも、原発再稼働に57.3%が反対し、賛成の34.8%を大きく上回った。廃炉や使用済み核燃料処分が、結果として原発に頼ったわれわれ世代の責務であることは否定しない。原発事業者の経営悪化などで廃炉が進まない事態は避けねばならないが、そもそも電気料金とは切り離して論じるべきだ。国民に負担を求めるなら脱原発方針の明確化が不可欠。新増設に理解は得られないとくぎを刺しておきたい。エネルギー基本計画は、原発を「運転コストが低い」と位置付ける。「重要なベースロード電源」として再稼働推進を打ち出したのも、低コストの前提があればこそだ。しかし、事故後の規制強化や廃炉などを考慮した総合的な分析は十分とは言い難い。原発のコストの優位性は多くの研究で揺らいでいる。米国の調査機関は1キロワット時当たり平均15円と試算した。太陽光と同レベルで、天然ガスや陸上風力の1・7倍、地熱や小規模水力のほぼ2倍に相当する。しかも、試算には廃炉費用は含まれていないのだ。国が目指す優遇策は「原発の電気は高くつく」と認めたに等しい。再稼働推進の根拠を自ら否定するからには、エネルギー基本計画を抜本的に見直し、原発に依存しない社会実現を急がねばならない。

<原発事故時補償、メーカーを免責>
*6-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014092202000223.html
(東京新聞 2014年9月22日) メーカー免責の原発賠償条約 臨時国会に承認案
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十二日午前の記者会見で、原発を持つ国同士が重大事故時の賠償金を支援する「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」の承認案を二十九日に召集される臨時国会に提出する考えを明らかにした。この条約は異常に巨大な天災の場合を除き、賠償責任は全て、事故発生国の電力会社が負い、加盟国は事故発生国に対して支援金を支払う仕組み。輸出先が加盟国なら、日本製の原発でもメーカーは免責される。日本の原発メーカーはリスクが減る分、輸出しやすくなる。米国が中心となり、条約発効に向けた準備を進めている。日本が加盟すれば、発効要件を満たすため、米国から強い要請がある。菅氏は、山口俊一科学技術担当相が二十一日にモニズ米エネルギー長官に条約の承認案を国会提出する考えを伝えたと説明。「東京電力福島第一原発の廃炉、汚染水対策を進める上で、知見のある海外企業の参加を後押しすることに役立つ」と述べた。しかし、日本弁護士連合会は「原発輸出の推進が目的で、原発による人権侵害を他国に広める」などと反対している。
 <原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)> 米国、アルゼンチン、モロッコ、ルーマニア、アラブ首長国連邦の5カ国が加盟するが、「原発の熱出力が計4億キロワット」の要件を満たさず未発効。米国は日本に、民主党政権当時から加盟を強く求めてきた。同種の国際条約には欧州が中心のパリ条約、東欧や中南米を中心としたウィーン条約がある。

*6-2-1:http://mainichi.jp/select/news/20140830k0000m040199000c.html
(毎日新聞 2014年8月30日) 原発賠償:原発ADR「一律5割」 国の説明、二転三転
 「文書はない」。否定からわずか1カ月、コピーを示されると一転して存在を認めた−−。原発事故の賠償を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を巡り、国の「原子力損害賠償紛争解決センター」が死亡慰謝料を「一律5割」とする内部文書を作成していた問題。センターは他にも、賠償額を算定するために多数の文書を作成しているが、公開していない。「すべて開示すべきだ」。被災者側の弁護士から批判の声が上がっている。7月25日、センターの実務を担当する原子力損害賠償紛争和解仲介室の団藤丈士室長は、取材に訪れた記者にA4判1枚のペーパーを手渡した。原発事故による避難で死亡した場合の慰謝料を「ほぼ一律に50%」と算定していることを指摘した7月9日の毎日新聞の記事に対する反論だった。「正しい理解を欠き、客観的事実にも反する内容で遺憾」と記載。「一律50%のルールは一切ありません」と語った。記者が文書の有無を確認したところ「そんなものございません」と言い切った。ところが、毎日新聞が「一律5割」と明記された内部文書を入手すると説明を一変させた。8月7日、コピーを示された団藤室長は「文書にはクレジット(作成者の名前)がないからよく分からないが、私が見ていなかったのかもしれない」と後退した。さらに「文書の管理ができていない。(センターは)弁護士の集合体なので行政文書(としてきちんと管理する)概念がない。どんな書類が行き来しているか問われても(分からない)」と開き直りとも言える主張を展開した。文書の存否を明言しないため確認を求めると、後日、団藤室長の部下の職員から記者に電話があった。「文書はありました。複数の調査官が持っている」。公文書管理法は「職務上作成し、組織的に用いるものとして保有するもの」を行政文書と定めており、情報公開請求の対象となる。複数が所持しているなら、行政文書に該当する可能性が高い。このため、記者が「行政文書であり開示すべきだ」と言うと、職員は「個人の興味(で作成されたメモ)の可能性もある」と述べ、開示対象とならないとする。

*6-2-2:http://mainichi.jp/select/news/20140830k0000m040201000c.html
(毎日新聞 2014年8月30日) 原発賠償:「一律5割」の内部文書 算定基準そのものだ
 原発事故の賠償を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を巡り、毎日新聞が入手した内部文書には、国の「原子力損害賠償紛争解決センター」が死亡慰謝料を「一律5割」とする、「死亡事案に関するパネル間協議で異論がなかった」との記載がある。「パネル」とは和解案を作成する仲介委員を意味する。記載から、仲介委員たちが、今後の慰謝料額を決めるために話し合い、その結果をまとめた文書であることが分かる。関係者は「仲介委員は、自分だけが突出した金額の和解案を出すのは嫌がる」と証言する。平等な救済を目指し、協議結果を文書に落とし込むのは自然な成り行きだ。つまり、文書は仲介委員が金額を算定する際に参考にする基準そのものだ。その証拠に、内部文書には「独自の基準」との記載さえある。原子力損害賠償紛争解決センター側は(1)センターの上部組織である「原子力損害賠償紛争審査会」が策定した指針(2)センター内部で決めた「総括基準」だけしか基準はなく、内部文書は基準ではないと抗弁する。しかし、(1)と(2)だけで判断できるなら、パネル間協議など不要であり、納得できる説明ではない。文書には「死亡慰謝料を控えめ(低め)にする必要はないか」など被災者にとって看過できない記載もある。すべて非公開の内容ばかりであり、早急に開示するとともに、十分な説明が必要だ。

<経済成長を促すのは、どういう女性か>
*7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140922&ng=DGKDZO77345920Q4A920C1TCR000 (日経新聞 2014.9.22)女性は経済成長の源泉 米ジョージタウン大 女性・平和・安全保障研究所所長 メラニー・バービアー氏
 今日の世界において、女性が経済成長を促していることは紛れもない事実だ。女性の社会進出は様々な場所で見られ、国連や世界銀行といった公的機関にとどまらず、ゴールドマン・サックスやマッキンゼーなど民間でも目にすることができる。彼女たちが職場で働くことによって、国内総生産(GDP)が押し上げられていることを示すデータは数多い。ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが現在、百数十カ国を対象に実施している「ジェンダー・ギャップ・リポート(性差報告書)」によれば、健康、教育、政治・経済へのかかわり度合いなどの分野の中で、健康、教育に関して男女間の差はかなり縮まっている。一方で、政治への関わりはかなり低い。経済面でいえば、女性の社会進出を許容している国家の方がより競争力があり、繁栄している。それには「多重効果」を持つと言われる女性の消費性向が大いに関係している。彼女たちはパートナーの男性に比べて、自らの収入を自分のコミュニティーや健康維持、家族、子供たちの教育に振り向ける傾向が強い。結果として、その社会の生活水準は上がり、より多くの価値を持つことになるのだ。今後の課題を言えば、日本の安倍晋三首相も指摘しているように、女性の起業家たちを増やすことだ。女性による起業を阻むバリアーが多数、存在することはわかっている。しかし、私たちはそれに向かって前進していくことができるはずだ。たとえば、米小売り大手のウォルマート・ストアーズでは海外の女性起業家たちからの仕入れ額を2倍にすることを決めている。もちろん、米国においても多くの課題が残っている。賃金の男女格差は一例にすぎない。クリントン政権にいた当時、大統領はいつも「国民には良き職業人だけでなく、良い両親になってもらわなければならない。その二つのことに摩擦があってはならないのだ」と言っていた。そのためには子供たちをいかにして育てていくか、という課題と向き合わなければならない。女性たちは同時に、高齢者介護という課題にも直面している。我々は常に経済成長を望んでおり、多くの雇用を創出したいと思っている。その結果として、多くの人が繁栄を享受できることを願っている。そのためには人口の半分を占める才能(女性)を解放してあげなければならない。この点において、政府の責務は大きい。性差別に基づく法体系や各種の規制は当然、見直しが求められる。法律、規制に加え、心理的なものや、文化的なものに(性差別が)由来することも確かだが、政治がこれまで以上にこの問題に取り組む必要があることは間違いない。
*Melanne Verveer 1997~2000年に米クリントン政権の大統領補佐官とヒラリー・クリントン氏の首席補佐官を務めた。09~13年に国際女性問題担当大使。


PS(2014.9.24追加):*8に書かれているように、「日本はまだ、女性が十分に力を伸ばせる環境が整っていない」というのは事実であり、早急にそれを改善する必要がある。しかし、「女性は昇進への意欲が低い」というのは、教育、社会、組織の中で女性に対してそういう圧力が働いているからであるため、それをやめるべきなのだ。また、「すぐに仕事を辞める」というのは事実ではなく言い訳であり、現在は、結婚退職ではなく保育園や学童保育の不足により、子育てでやむなく退職している人が多い。最後の「もちろん、女性自身が仕事への意欲を高めることは言うまでもない」というのは女性に対して失礼千万であり、その前に、日経新聞はじめ日本企業が、女性にモチベーションの上がる仕事のさせ方をしてきたか否かをよく考えてから書くべきである(これは経営学の基礎)。

*8:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140924&ng=DGKDZO77436580U4A920C1PE8000 (日経新聞社説 2014.9.24) 企業は女性の力伸ばす職場改革を競え
 男女問わず、意欲と能力のある人が力を発揮しやすい職場をつくる。労働力人口の減少が懸念されるなかで、企業の競争力を高め、社会・経済に活力をもたらすためには、欠かせないテーマだ。とりわけ女性の力を生かすことは焦眉の課題だ。すでに自主的に、女性の育成や登用に向けた行動計画を策定する企業は増えている。政府も秋の臨時国会に、行動計画づくりを企業などに求める法案を提出する方針だ。日本の職場が大きく変わる後押しになることを期待したい。日本はまだ、女性が十分に力を伸ばせる環境が整っているとはいえない。男女共同参画白書によると、組織の管理職に占める女性の割合は欧米では3~4割が中心だが、日本は1割程度にとどまる。「女性は昇進への意欲が低い」「すぐに仕事を辞める」。企業からはときに、そんな声が聞こえてくる。しかし、防ぐための方策は十分にとられているだろうか。女性の管理職やその候補者が少ない原因は企業によって様々だ。男女で仕事の与え方に違いがあったり、硬直的な長時間労働で仕事と子育ての両立を阻んだりする。残念ながら、そんな職場は今も珍しくない。女性の採用が少ないことが原因の企業もあるだろう。よりよい行動計画づくりの最大のカギは、各社が現状をしっかりと分析し、課題を浮かび上がらせることだ。それにより、取り組むべき対策も異なってくるだろう。気をつけたいのは、目先の計画づくりにとらわれ、本質的な改善に向けた道筋を見失うことだ。例えば、数値目標は分かりやすい指標となるが、しっかりした現状分析に基づくものでなければ、かえって弊害が生じかねない。女性の育成と登用に熱心だが、あえて数値目標は示さない企業もある。政府は指導的地位に占める女性の割合を、2020年に30%にする目標を掲げている。だが個々の企業が具体的にどんな計画を立てるか、目標を数値で示すかなどは、企業の自主的な判断が生かせるよう十分な配慮が必要だ。人材の育成や長時間労働の是正といった働き方の見直しに、王道はない。トップが女性活用の旗を掲げること、そしてその意義を社員一人ひとりが理解することが欠かせない。特に若手の育成を担う中間管理職の役割は大きい。もちろん、女性自身が仕事への意欲を高めることは言うまでもない。


PS(2014.9.25追加):*9は、「日本では朝方まで仕事をしている人が偉いという文化がある」というのが間違いである。何故なら、日本でも、不規則な勤務をしていれば全体として生産性が下がって成果が出ないため、評価されないからだ。但し、特殊な公務員、新聞記者、医師、看護師、イカ釣り漁師、トラックやタクシーの運転手など、夜に働かざるを得ない仕事もあるので、組織としてローテーションを組むなど、工夫して行うべきなのである。そのため、クリントン氏の「これだけ働いているから偉いんだという発想だと思う」という答えもあまり意味がなく、外国でも働く人は働いているので、働く人を非難する文化を作って日本人を怠け者にすると、人材で負けることになる。

*9:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11367949.html
(朝日新聞 2014年9月25日) ヒラリー氏「午前様、家庭への責任放棄」 安倍首相と米で対談
 帰宅が午前様では「責任放棄」。発想を改めて――。ヒラリー・クリントン前米国務長官と安倍晋三首相が24日、米ニューヨークで開かれた女性支援のイベントで対談し、働きすぎを尊ぶ日本の企業風土には改革が必要との考えで意気投合した。クリントン氏は2016年の米大統領選で民主党の最有力候補になるとみられている。対談は「女性が輝く社会」を掲げる首相に、クリントン氏がインタビューする形で行われた。首相が「日本では朝方まで仕事をしている人が偉いという文化がある」と日本の企業風土を説明。クリントン氏は「これだけ働いているから偉いんだという発想だと思うが、『どういう責任を果たすべきか』ということとは両立しない。親であれば子供に責任がある。高齢者に対する責任もある」とバッサリ。働き方の文化そのものを変える必要があるとの持論を展開した。

| 原発::2014.8~10 | 08:47 PM | comments (x) | trackback (x) |

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