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2014.9.28 イスラム教とイスラム圏、「イスラム国」について (2014.10.2に追加あり)
  
                現代のイスラム女性の服装
(1)イスラム教と現代文化の親和性について
 *1-1のように、オバマ米大統領が、ニューヨークの国連総会で中東の過激派「イスラム国」の打倒に向けた国際的な有志連合に加わるよう各国に求めたそうだ。私は、イスラム教徒が世界のあちこちで過激化する理由やシリア空爆と過激派「イスラム国」打倒の関係については、わからない点が多いため、常々、説明してもらいたいと思っていた。

 しかし、*1-2のように、米軍の軍事作戦には、サウジアラビア、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、カタールなどのイスラム諸国も参加しており、「イスラム国」の本拠地、ラッカやハサカ、デリゾール、アブカマル、アレッポの司令部施設、訓練施設、武装車両、補給トラックなどを対象に空爆したそうだ。また、「欧米への差し迫ったテロ計画があった」として、米軍は国際テロ組織アルカイダ系グループ「ホラサン」の施設も空爆し、シリア政府にも空爆方針を直接伝えて、アサド政権に敵対行為を取らないよう警告していたそうである。

 アルカイダや「イスラム国」過激派の行動には、時代錯誤ではないかと思われる論理が多いため、調べてみたところ、*1-3のように、イスラム教は、中国には「隋」があり、日本では小野妹子が遣隋使として隋へ派遣された607年と同時期の610年にマホメットがアラーの神から啓示を受けて始まった。そして、イスラム教の内容は、①唯一神アラーの前で人は平等 ②女性は肌を見せてはならない ③豚を食べてはいけない ④男性は妻を4人まで持つことが出来るが、平等に愛することが条件 ⑤弱者には無条件で手をさしのべる などが基本で、時代の変化に沿って変化していない部分が多いのである。

 今回、「イスラム国」に入った若者には、欧米に移住したイスラム圏の人の子どもも多いそうだ。彼らは、欧米に住み欧米の高等教育を受けたが、欧米文化とイスラム教文化の間で違和感を感じ、就職も閉ざされて行き場がなく、アイデンティティーを求めて「イスラム国」に入っているように見える。しかし、それでは、貧しい国から移民を受け入れた欧米諸国が危険に晒されることになり不公正である。例えば、日本では、どんなに人手が足りなくても、女性が学校や職場にいる時でさえ必ずスカーフやヒジャブを身につけ、中世のように何をするかわからない恐ろしいイスラム教徒だけは願い下げということになるのだ。

(2)イスラム教のハラールと現代の公衆衛生について
 日本からイスラム教国に食品を輸出しようとする場合、イスラム教の戒律にのっとったハラール認証の取得が必要だが、これはイスラム教徒以外の人が現在の公衆衛生学の視点から見れば、不合理な点が多い。何故なら、現在は、紀元600~700年頃には想定されなかった科学的知見や技術がふんだんに使われており、当時は予想だにされなかった汚染もあるからである。

 もちろん、*2-1のように、ハラールの市場開拓の支援にハラールの専門家を使う方法もあるが、それでは本当に必要な規制が行われず、意味のない規制が続けられて、イスラム教徒自身が不幸である。そのため、イスラム教も、現在の公衆衛生学に基づいて世界標準に近い食品衛生規制への改革をした方が良いと考える。それには、*2-2のような公衆衛生に関するハラールの取り決めを、できるだけ世界基準に合わせる方法があるだろう。

(3)イスラム教における女性の地位と世界基準(女子差別撤廃条約)における女性の地位について
 *3-1に書かれているように、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」がイラク人の著名な人権活動家で女性弁護士のサミラ・ヌアイミさんを拘束して拷問した後、公開で殺害したそうだ。これは酷すぎて理解しかねるが、日本も太平洋戦争に負けて日本国憲法が施行されるまでは、女性の権利はかなり制限されたものだったし、男女とも人権侵害されることは多かった。

 また、*3-3には、イスラム国であるスーダンの女子割礼の解説があるが、女子割礼は、女性が力を持ってはならない男性優位の世界で行われているもので、女子割礼を行う理由は、宗教や習慣という理由だけではなく、女子割礼によって女性の性欲をなくして、ほかの男に走らないようにしようとしているのだそうである。

 しかし、*3-2に書かれているように、世界では「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」が締結されており、その女子差別撤廃条約は、1979年12月18日に第34回国連総会で採択され、女性に対するあらゆる差別を撤廃し、固定的な性別役割分業を打破することを目的とする女性の人権に関する包括的な条約で、国連に加盟する殆どの国が批准しているのだ。

 それにもかかわらず、実際には、国際人権基準は「留保」という手段で差別の撤廃が形骸化・無力化され、イスラムの女性は、国際人権基準(特に女子差別撤廃条約)に照らして、その地位の低さが問題となる。例えば、イスラム教の聖典コーランでは、「女性は男性より劣位にあって保護されるべき存在」として家族の中で低い地位が与えられ、「弱い女性を保護する」という名目で一夫多妻制が維持されている。また、女性は男性を誘惑するものとされ、その害悪を予防するためにヴェールやブルカなど種々の習慣ができたのだそうで、そのほか、一夫多妻制、結婚と離婚、子の親権、後見、女性に対する暴力(夫による暴力、姦通罪に対する刑罰、名誉の殺人、女子割礼)など、世界基準から見れば驚くほどの状況である。

 もともとイスラム教が一夫多妻を許している理由は、中世の戦争下で寡婦となった多くの女性の経済的扶助目的と社会的再生産目的があったからだとされているが、それは、現在の世界では通用しない。つまり、イスラム教国も信仰の自由を保障し、イスラム教自体も改革を行わなければ、欧米文化とイスラム教文化の間で違和感を感じて就職が閉ざされ、行き場がなくなって過激なイスラム教徒になる若者が出るという悪循環は止まらないと考える。また、人手が欲しい国があっても、イスラム教徒だけは御免だということになるだろう。

*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11367885.html
(朝日新聞 2014年9月25日) 米、「イスラム国」打倒訴え 国連でオバマ氏 各国に連携促す
 オバマ米大統領は24日、ニューヨークで開催中の国連総会で演説し、中東の過激派「イスラム国」の打倒に向けた国際的な有志連合に加わるよう各国に求めた。米国が「自衛権」を根拠にシリアで開始した軍事行動への支持や、イラク政府への支援を各国に呼びかけた。
■シリア空爆、自衛権を主張
 オバマ氏は「『イスラム国』は最終的には打倒されなければならない」と表明し、「米国は幅広い有志連合と共に、死のネットワークの廃棄に取り組む」と軍事行動を続ける決意を示した。「米国は単独では行動しない」と述べ、「すでに40カ国以上がこの連合に加わる意向を示した。この取り組みに参加することを世界に求める」と呼びかけた。オバマ氏の国連演説に先立ち、米国のパワー国連大使は23日、「イスラム国」への空爆をシリア領内で実施したことについて、「国連憲章51条に基づく自衛権行使」だとする文書を国連の潘基文(パンギムン)事務総長に提出した。米国はイラク在住の自国民保護などを理由にイラク空爆を続けてきたが、今回、新たな法的根拠を示し、シリア空爆の正当化を図った形だ。文書によると、「イスラム国」の攻撃にさらされているイラクから空爆を主導するよう要請を受けたとして、他国が攻撃された場合に反撃する「集団的自衛権」を行使したとしている。さらに、米国人記者2人が「イスラム国」に殺されたことや、シリアにいるアルカイダ系武装組織「ホラサン・グループ」の米国などへのテロ計画が最終段階に入っていたとの情報を踏まえ、米国は自国民を守る「個別的な自衛権」を行使したと主張している。シリア領内での軍事作戦には、隣接するトルコのエルドアン大統領が23日、「軍事行動に必要な支援を提供する」と表明。英国も軍事支援を検討するなど国際社会で空爆への支持や容認の空気が広がっている。背景には、「イスラム国」が国際社会全体の脅威であるとの認識が強まっている事情がある。中国やロシアも、自国の反政府勢力の一部が海外のイスラム過激派組織と合流したり、「イスラム国」と関係を持つ過激派が自国内でテロに関与したりする事態への危機感を強める。米国が各国への根回しを進めるなか、当事者のシリアのアサド大統領が「テロと戦う国際社会の努力を支持する」と事実上容認する考えを示したことで、反対論は急速にしぼんだ。だが、温度差もある。フランスはシリアからは支援要請を受けていないことを問題視し、シリアには軍事介入しない姿勢を鮮明にしている。ロシアやイランも「シリア政府の同意か国連安全保障理事会の決議が必要だ」などとして、米国に釘を刺した。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140924&ng=DGKDASGM23H1T_T20C14A9MM8000 (日経新聞2014.9.24) 米、シリア領で空爆 対「イスラム国」 サウジなど参加
 【ニューヨーク=吉野直也】米政府は22日、米軍と複数の有志国が過激派「イスラム国(総合・経済面きょうのことば)」を標的にシリア領内で空爆を始めたと発表した。米中央軍によると、サウジアラビア、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、カタールの中東5カ国が軍事作戦に参加した。オバマ米大統領は23日、国連総会への出発前にホワイトハウスで声明を読み上げ「米国に危害を加えようとする者に安住の地はない」とテロとの戦いへの決意を表明。「米国単独の戦いではない。一定の時間はかかる」と力説した。米メディアは軍や有志国の空爆の開始時間は米東部時間22日午後8時半(日本時間23日午前9時半、現地時間同日午前3時半)ごろと報じた。イスラム国の本拠地、ラッカやハサカ、デリゾール、アブカマル、アレッポの司令部施設や訓練施設、武装車両、補給トラックなどを対象に14回、空爆した。アレッポ近郊には日本人男性がイスラム国に拘束されているとみられている。戦闘機や爆撃機による攻撃だけでなく、紅海とペルシャ湾に展開した複数の艦艇から巡航ミサイル「トマホーク」を47発発射した。「欧米への差し迫ったテロ計画があった」として米軍は国際テロ組織アルカイダ系グループ「ホラサン」の施設も空爆した。米国防総省のカービー報道官は23日の記者会見で、空爆は「大きな成功を収めた。これは始まりにすぎない」と語った。米統合参謀本部のメイビル作戦部長は空爆にステルス戦闘機F22が初めて参加したと述べるとともに、攻撃の96%が高い命中精度を持つ精密誘導弾だったと指摘した。米国務省のサキ報道官は声明を出し、シリア政府に空爆方針を直接伝えていたと明らかにした。アサド政権には敵対行為を取らないよう警告。「同意は求めていない。軍レベルで攻撃の具体的な時期についても一切知らせていない」と強調した。

*1-3:http://www.uraken.net/rekishi/reki-westasia15.html
第15回 イスラム教の基礎はこうして誕生した
○今回の年表
 570年頃 ムハンマドが生まれる。
 581年 中国で隋が建国される。
 607年 小野妹子が遣隋使として日本から隋へ派遣。
 610年頃 ムハンマド、預言者アラーから啓示を受ける。
 618年 唐が建国され、隋が滅亡。
 622年 ムハンマド、メディナに移住(ヒジュラ)。
○ムハンマド、現れる
 ササン朝ペルシアと東ローマ帝国の抗争が激化すると、アラビア半島西部と海を組み合わせた交易路が発達し、その交易路の中継都市として大きく発展したアラビア西部の都市がメッカです。メッカには、遊牧民の信仰の対象であるカーバの神殿もあり、多くの人を集めていました。この都市を5世紀以降支配していたのが、クライシュという部族です。クライシュ族は更に、カーバ神殿周辺に住む身分の高い部族、その周辺の山麓に住む身分の低い部族ら12の部族に分かれます。570年頃、このクライシュ12部族の名門ハーシム家に生まれたのが、ムハンマド(マホメット)です。ムハンマドは、イスラム教の基礎を作り上げた預言者で、6歳で孤児となった彼は、祖父と叔父に養育され、隊商貿易に従事し、誠実な人柄だったらしく大富豪で未亡人のハディーシャに仕事を任され、これが縁で結婚します。当時ムハンマドは25歳、ハディーシャは40歳でした。二人の間には、三男二女が生まれ(ただし男子はいずれも早世)、幸せ一杯のムハンマドは、メッカ近郊の山中で瞑想をするのが趣味で、よく通っていましたが、610年頃、天使を通じて唯一神アラーの啓示を受けます。驚いた彼が妻ハディーシャに相談すると、励まされ、預言者として活動することになります。
○イスラム教の基本
 さて、唯一神アラーの預言者として活動を開始したムハンマド。その後もアラーからの啓示を受け、次のような教えを大成します。特徴は以下の通り。
・偶像崇拝の禁止&多神教への批判・・・人々の精神の堕落を招くから。
・唯一神アラーの前では、人は種族・階級・貧富・関係なく平等である・・・このため、既得権益からは目の敵にされる。
・六信五行(アラー・天神・経典『コーラン』・預言者・来世・天命&信仰告白・礼拝・断食・喜捨・巡礼)
 ★預言者・・・予言ではなく預言。神の意図を伝えるために送られた存在のこと。 アダムやモーセ、イエス=キリストも含まれるが、ムハンマドがその中で最大とされる。
 ★天命・・・自然界で起こる全ての事象はアラーの意志によって起きる。
 ★信仰告白・・・アラーの他に神はなく、ムハンマドはアラーの使徒である、と唱えること。
 ★断食・・・イスラム暦の9月において、1ヶ月間日の出から日没まで一切飲食を絶つこと。飢えを我慢することによって普段飲食できることを神に感謝するとか。なお、日没後は飲食可能。
 ★喜捨・・・収入に応じた税金。
 ★巡礼・・・なるべく一生に一度、メッカのカーバ神殿にお参りに行くこと。
・ムスリム(六信五行の実践と神に身を捧げた者)の存在。
・経典『コーラン』・・・コーランとは、読誦すべきもの、という意味。7世紀半ばに今の形に。
・安息日は金曜日
・女性は肌を見せないように。
・豚は食べてはいけない。
・男性は妻を4人まで持つことが出来る。ただし、平等に愛することが条件。
・弱者には無条件で手をさしのべる。
ムハンマドが考えたものもあれば、その後少しずつ変容したものもあるかも知れませんが、これがイスラム教の基本のようです。

<ハラールと現代の公衆衛生について>
*2-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30010
(日本農業新聞 2014/9/26) ハラール認証に注目 茶で初の取得 鹿児島・JAあおぞら
 鹿児島県のJAあおぞらは、海外向け販売戦略としてイスラム教の戒律にのっとった「ハラール」認証を特産の茶で取得し、26日から日本国内や東南アジア諸国連合(ASEAN)、中東諸国で販売を始める。茶でのハラール認証取得はJAで初めて。国内で茶の消費が伸び悩む中、世界的な健康志向や和食の世界遺産登録を追い風に、新たな市場開拓に乗り出す。
●国内外 きょうから販売
 JAはリーフ茶を手始めに、黒糖と混ぜたタイプや粉末タイプ、抹茶などの商品も展開していく。イスラム圏での販売や、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け土産用に国内での販売を進める。26日には、内村常夫会長らが東京都内で会見を行う。JAは世界への輸出を視野に、国際標準化機構(ISO)9001やJGAPの取得、総合的病害虫・雑草管理(IPM)などにも積極的に取り組んでいる。JA指導購買課の取違弘一茶業センター長は「東京のハラール認証レストランで提供される他、羽田、成田空港やイスラム諸国で販売できれば、鹿児島県産茶、国産茶の可能性が広がる」と期待する。JAは、ハラールの市場開拓の支援事業を手掛ける非営利一般社団法人ハラル・ジャパン協会の一般会員となっており、海外販路拡大や国内販売のサポートを受ける。同協会は「世界人口の4分の1がイスラム市場。日本食に欠かせない茶が今後、イスラム市場にどのように入っていくのか注目している」としている。今回、認証した機関は、日本国内で認証やハラール関連の支援事業を行うマレーシアハラルコーポレーション(MHC、東京都港区)。アクマル・アブ・ハッサン社長は「来日したイスラム教徒が困るのはハラール認証の食品や商品、飲食店などが少ないこと。東京オリンピックも控え、ハラールはビジネスチャンス」と強調する。ハラール認証は、各国の認証機関などが付与する。認証取得の難易度や期間は国や地域で異なり、中でもサウジアラビアやマレーシアの規格が厳しいという。国内では、社団法人日本ムスリム協会など複数の機関が認証を行っている。
●百貨店はネット使い売り込み
 三越伊勢丹ホールディングス(東京都新宿区)は、「ハラール」認証を取得した食品を取り扱うオンラインショップ「ハラール・フードセレクション」を24日にオープンした。扱う商品は、ステーキ用黒毛和牛や、熊本県の地鶏「天草大王」のローストチキン、しょうゆなど26点。販売動向をみて、さらに商品を増やすか検討する。10月1~7日には、伊勢丹新宿本店の食品売り場で、期間限定でハラール認証商品のコーナーを設ける予定だ。同社は「イスラム圏からの観光客と日本在住者が増え、ハラール認証商品のニーズが高まっている」(広報)と需要に期待する。

*2-2:http://www.maff.go.jp/j/chikusan/shokuniku/lin/l_yusyutu/pdf/j1.pdf
アラブ首長国連邦 行政事務局(GSM) 公衆衛生・環境部 決定第 GSM/32 号 2005 年5 月1 日付
海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関の認証に関する条件及び手順について
・GSM の組織構成については、1980 年改正の連邦最高評議会(FSC)決定第2号に従うこととする。
・食品安全委員会及び獣医学的統制委員会の行う組織規制に従うこととする。
・以下の内容について GSM 評議会の決定に従う。
-海外においてアラブ首長国連邦を対象としたハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関の認証規制及び規則に関する決定第3/33/92-3 号(1992 年5 月12 日付)及び第26/33/92-2 号(1992 年5 月26 日付)。
-ハラールと畜証明書の範例(様式)の認証に関する決定第3/33/92-2 号(1992
年5 月12 日付)。
-衛生要件の認証及び UAE におけるイスラム法に関する決定第8/52/2000 号(2000 年2 月9 日付)(食肉処理場の設立及び運用に関する法的及び衛生的要件の指針について)
・イスラム法に従った動物のと畜についての UAE の基準第993/1993 号に従うこととする。
・GSM の関係委員会の勧告に従うこととする。
・GSM 評議会の決定第37/53/2000 号(2000 年4 月19 日付)に従うこととする。
・GSM 評議会の第65 回会合議長と後ほど協議することとする。
・公衆の利益の要求に従うこととする。
第1章
海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関の認証に関する条件について
決定第3/33/92-3 号(1992 年5 月12 日付)及び第26/33/92-2 号(1992 年5 月26 日付)における条件は以下の通り改正する。海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督することについて、GSM より認証を受けようと希望するイスラム協会又は機関(センター、組織、連盟又はその他類似名称)は、以下の条件を満たすこととする。
1.ハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関は、当該機関が存在する国内において、認知又は周知されており(設立されており)、又国内の全ての法的要件に合致していなければならない。
2.起源となる国に永住権を持ち、従業員の責任及び義務、ハラールと畜証明書の署名権限者及び実行者(acting person)の氏名及び役職を記載した業務諸表を有し、自らのロゴマークの入った公的用紙を所有すること。
3.輸出国におけるハラールと畜を実行する食肉処理場の効果的なコントロールに必要な技術及び人的資源のある施設を有すること。
4.イスラム法に従った動物のと畜についての UAE の基準第993/1993 号及び、GSM による動物のと畜について合法的(正当な)要件(決定第8/52/2000 号(2000 年2 月9 日付))に従うこと。
5.決定第 3/33/92-3 号(1992 年5 月12 日付)に従い、UAE により認証されている範例に類似したハラールと畜証明書を発行し、証明書にはシリアル番号を付すこと。
6.当該イスラム協会又は機関はハラールと畜を所管する部局を有し、その部局は業務に関して必要なすべての記録(ハラールと畜の監督者、と畜者、監督されたと畜場、発行されたと畜証明書、必要な時又はGSM の関係委員会から求め
られた時に紹介する関連文書等)についての文書管理システムを有すること。
7.当該イスラム機関はと畜場の検査員及び監督者を独自に有し、それぞれの検査員により監督されると畜場の数は3 を超えてはならない。
8.いかなる営利企業又は個人も、UAE に関連したハラールと畜の監督を任命されてはならない。
9.当該イスラム協会は、検査員及び監督者の選定についてのシステムを有し、彼らに対して労働カード(労働許可)を発行すること。
10.当該イスラム協会は、検査員及び監督者の効率性及び技能向上のためのトレーニングのシステムを有すること。
11.当該協会又は機関は、イスラム教徒に対する慈善、人道支援、援助又はその他の奉仕活動に従事していること。
12.証明書を発行するシステムを有し、スタンプ及びその他の認証のサインを保持(keep)すること。
13.GSM に対してハラール証明書にサインする権限者署名のコピーを送付すること。実行者も同様。
14.当該協会又は機関は、GSM に対し、その活動、業績及び発行したハラール証明書の枚数について記した年次レポートを提出すること。
15.いかなる協会又は機関も、上記条件に同意しない限り認証されず、認証については下記第2章の手続きに従って行われる。
第2章
海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督するイスラム協会又は機関の認証に関する手順について
海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜を監督することについて、GSM より認証を受けようと希望するイスラム協会又は機関(センター、組織、連盟又はその他類似名称)は、以下の認証条件及びそれに伴う義務に従うこと。
1.当該イスラム協会又は機関は、第1章で述べた、海外においてアラブ首長国連邦を対象とするハラールと畜の監督をするイスラム協会又は機関の認証についての全ての条件を満たすこと。
2.当該イスラム協会又は機関が要件を順守していることを証明するために必要なすべての書類を添付した上で、公的ルートにより(official channels)GSM に対して申請書類を提出すること。さらに、GSM の関係委員会の代表団が必要とあれば、その協会又は機関のコンプライアンスを確認するために必要となる旅費、宿泊費及び移動に係る経費について全額を支払うことを確約する文書を提出すること。
3.もし申請が要件を満たさない場合、当該イスラム協会又は機関の要求は GSMの関係委員会により、受理するか拒否するかが評価される。
4.もし関係委員会が承認を勧告した場合、本件はGSM 評議会に送付され、当該イスラム協会又は機関が認証されるか、訪問してそのコンプライアンスを確認するための現地訪問が勧告される。その認証については、訪問調査の結果及び訪問した代表団の勧告に基づいて決定される。
5.もし関係委員会の勧告に基づき(3)、又は訪問代表団の調査結果に基づき(4)申請が否認(拒否)された場合、当該イスラム協会又は機関は、公的ルートを通じて、否認または拒否の理由を知らされるものとする。当該イスラム協会又は機関は、拒否の原因を訂正し、要件に合致するようになれば、同様の手順に従って再申請することができる。
6.もし申請が受理された場合、当該イスラム協会又は機関は、GSM 評議会の定める一定期間認証され、GSM から該団体に対し、当該国内でUAE 向けのハラールと畜を監督する権限を付与する認定証が発行される。必要とあれば、GSMの関係委員会は当該団体に対し、当該団体が正当に責務を果たしているかを確認し、又は再評価や認証の更新を行うため、調整又は監督のための現地訪問を行う。
第3章
本決定は、在UAE の在外公館及び海外のUAE 大使館で配布するため、行政当局及び外務省に回付されるべきである。
第4章
本決定は、施行日より発効する。
(署名)
事務総長 ヤシン・モハメド・ビン・ダルビッシュ

<イスラム教における女性の地位と世界基準(女性差別撤廃条約)について>
*3-1:http://www.asahi.com/articles/ASG9V34VWG9VUHBI00M.html?iref=comtop_6_04 (朝日新聞 2014年9月26日) イスラム国、イラクの女性人権活動家を公開殺害
 国連イラク支援団(UNAMI)は25日、イラク北部の主要都市モスルで、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」がイラク人の女性弁護士を拘束、拷問後に公開で殺害したとして、「おぞましい犯罪」と非難する声明を出した。声明によると、殺害されたのは著名な人権活動家でもあるサミラ・ヌアイミさん。「イスラム国」による宗教文化施設の破壊に批判的なコメントをフェイスブックに書き込んだことを理由に、17日に自宅で拘束された。「背教行為」で有罪とされ、5日間の拷問を受けた末、殺害されたという。AP通信によると、ヌアイミさんは、夫と子ども3人と自宅にいたという。「イスラム国」は6月にモスルを制圧後、国家樹立を一方的に宣言するなど、イラクやシリアで勢力を急速に拡大している。

*3-2:http://daigakuin.soka.ac.jp/assets/files/pdf/major/kiyou/19_houritsu4.pdf (法学研究科法律学専攻博士前期課程修了 岩本珠実)イスラムと女性の人権 国連での討議をとおして
はじめに
 本論文では、イスラムにおける女性の人権に関して、国際社会はいかに考え、行動すべきか、国連、特に女性差別撤廃委員会(Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women、CEDAW)における留保に関する議論をとおして考察する。「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(以下、「女性差別撤廃条約」ないしは「条約」と称する)は、1979年12月18日に第34回国連総会で採択された。本条約は女性に対するあらゆる差別を撤廃し、固定的な性別役割分業を打破することを目的とした女性の人権に関する包括的な条約である。現在までに国連加盟国のほとんどが加盟している。その加盟国の多さから、国際社会全体がこの条約の趣旨を支持しているようにみえる。しかし実際は、国際人権基準、ひいては西欧的な価値観に嫌疑を抱く諸国によって留保という手段で本条約は形骸化され、無力化されている。この条約の抱える問題点こそ、多様な宗教観の共存する国際社会において、いかにして共通の人権概念を構築するか、という今日の国際社会が抱える課題なのである。留保問題を考えることが、多文化・多宗教社会の相互理解を見出す糸口になると考える。本稿では、女性観の違いから対立するイスラムと非イスラムの主張を考える。まず第1章では、イスラムにおける女性の状況を述べ、国際人権基準、特に本稿で扱う女性差別撤廃条約の基準に照らして、家族関係における女性の地位の低さが問題となることを指摘する。第2章は、「女性差別撤廃条約におけるイスラムとの衝突」と題し、条約に抵触するイスラムの主張についての委員会の反応とイスラム諸国の対応を見る。第3章では対立の分析と若干の考察を試みることにしたい。
Ⅰ.イスラムにおける女性の人権
 本章では、イスラム女性の人権について、イスラム各国の制度を検討した上で、女性差別撤廃条約との関係で問題となる点を指摘する。
1.イスラム女性の現状、制度
 イスラム教の聖典『コーラン』と『ハディース』では、女性は男性より劣位にあり、保護されるべき存在であるとされている。そのため家族においては低い地位が定められ、弱い女性を保護するという目的で一夫多妻制ができた。また、女性は男性を誘惑するものとされたため、その害悪を予防するためにヴェールやブルカに代表される種々の男女隔離の習慣ができたのである。このように女性に関するイスラム法の記述がある一方で、実際のイスラム諸国の女性に対する地位はいかに規定され、認識されているのだろうか。イスラム国といってもその地域は広く、女性に対する扱いも一様ではない。女性解放が進む地域がある一方で、いまだに慣習に縛り付けられている地域がある。本節では、イスラム法の教えを各国は現在どの程度守り、または改革しているのか、イスラムと女性との問題で特に議論の的となる(1)一夫多妻制、(2)結婚、離婚、後見、(3)女性に対する暴力について、それぞれ述べる。
(1)一夫多妻制
一夫多妻制はイスラム諸国の間でもその是非が分かれる問題である。一夫多妻制について、『コーラン』「女人の章」第3節はこう規定する。「気に入った女性を二人なり三人なり、あるいは四人なり娶れ」。これは、妻を四人まで持つことを肯定しているかのようにみえる。しかし、この後以下の記述がある。「もし妻を公平に扱いかねることを心配するなら、一人だけを娶っておけ。お前たちがいかに切望しても、女たちを公平に扱うことはできない」(第129節)。近代主義者の解釈によれば、この第129節を重視して一夫多妻制は原則的に禁止とされている。しかし、伝統的な解釈を支持する者も多く、いまだひとつの選択肢となっている。現在、中東、北アフリカ諸国で一夫多妻制を明文で禁止しているのは世俗化が進むトルコとチュニジアだけである。トルコ、チュニジアほどではないが、一夫多妻制を制限しようとしている国は多い。二人目以上の妻を娶る際には裁判官の許可を条件としているのは、シリア、イラク、パキスタン等である。すでに結婚している妻の了承を条件とするのはモロッコ、ヨルダン、エジプト、アルジェリアなどである。このように一夫多妻制に関するイスラム法の適用が制限される潮流のなかで、逆にイスラム回帰が進む国もある。イランは1979年のイスラム革命によって、妻は夫の重婚に対して異議を挟むことはできなくなった。ただし、法的に一夫多妻制が認められている国でも複数の妻を持つ男性はきわめて少ない。それには経済的、倫理的規制があるからである。結婚の際には、男性は結納金と住居を用意しなければならないため、一般の男性にとっては一人の女性と結婚することも高いハードルである。複数の妻を持つことができるのは、結納金と住居を用意することのできる裕福な男性だけである。また、倫理的規制としては、イランやサウジアラビアのように法的、社会的に一夫多妻が認められている国でも、重婚をした男性に対する周囲、特に女性の反応は冷ややかである。以上のように、一夫多妻制を法的に規制しようとする国が増えており、また、一夫多妻制に関する法的な規制のない国でも、経済的、倫理的な理由から実質的には一夫一妻制がほとんどである。しかし、一夫多妻制を法的に規制していても二番目の妻との結婚が無効にならない、社会的慣例から使用されない、法的規制のない国では経済的に強みのある男性にとって一夫多妻は自由など、女性にとっては厳しい状況が続いている。
(2)結婚、離婚、後見
① 結婚
 まず、結婚に当たって問題になったのが幼児婚である。イスラム法では男性は12歳、女性は9歳という年齢での結婚が可能である。そしてその場合、自分の意思が反映されることは少なく、親族同士が後見人や代理人として結婚を決めてしまう。嫁ぎ先での女児の権利や発言力はほとんど期待できない。ただし、現在では近代法が取り入れられつつあり、幼児婚も否定されるようになってきている。エジプトでは1924年に女子の最低結婚年齢を16歳にまで引き上げた。また、就学率の上昇と共に婚姻適齢とされる年齢は上がってきている。イランは法律上の最低結婚年齢は女性が9歳だが、実際の平均婚姻年齢は1996年時点で都市で22.5歳、農村部で22・3歳であった。
② 離婚
 コーランの規定によると、離婚は夫が三度離縁を宣言すれば成立する。ムハンマドは身勝手な理由での離縁は戒めていたとはいえ、夫の力は絶大であった。そのため、法改革でこのような夫の一方的な離縁権を規制する国が多い。シリアは1953年、三度の離婚宣言だけの離婚の成立を否定し、チュニジアは1956年、法廷外の離婚はすべて無効となった。一方、妻からの離婚請求は厳しい状態が続いている。イランではイスラム革命により女性からの離婚請求がほとんど不可能になった。エジプトでも、ほとんどの場合、離婚を決めるのは男性である。女性は夫が別の女性と結婚した場合、離婚を請求する権利があるが、離婚後の女性は貧困と戦うことになるため、容易に離婚を請求することはできないのが実情である。
③ 離婚後扶養
 コーランは婚姻にあたって、夫に扶養義務があり、妻に扶養される権利があると規定している。よって、女性は一般的に自活手段をもっていない。そのため、女性だけでは経済的自立が困難で、離婚の際には女性の扶養義務が大きな問題となる。夫からの離婚請求に対して、シリアやチュニジアでは、法律でしかるべき補償を定めている。また、多くの国で慰謝料が支払われることになっている。しかし、ナワル・エル・サーダウィは「一時的な乏しい資格に過ぎず、ちょっとした口実でまもなく停止されるものだ」と指摘している。また、女性の側から離婚を請求するには、逆に夫に多額の慰謝料を払う必要がある。よって経済的にゆとりのある女性以外は、自分から離婚をするのは実質的に不可能である。
④ 子の親権
 イスラム法では、12歳以上の子どもの親権は男親にある。さらに、シーア派の解釈によると男児の場合は2歳まで、女児の場合は7歳までしか女性の親権が認められない。革命後のイランではこのシーア派の解釈がそのまま適用されることになった。ところが、イラン・イラク戦争の激化に伴い、夫の戦死と共に子どもの親権を喪失する母親の問題が深刻化したため、1985年、殉教者の妻には子の養育権が認められることになった。しかし、財産、教育、その他重要な事柄に対する決定権を全て含んだ親権は認められていない。
(3)女性に対する暴力
 イスラム法で規定されている、もしくは規定されていると思われている行為で、女性に対する暴力として特に問題になっているのが、①夫による暴力、②姦通罪に対する刑罰、③名誉の殺人、④女子割礼、である。それぞれについての現状と取り組みを概観する。
① 夫による暴力
 女性に対する暴力を正当化する根拠に挙げられるのは、『コーラン』「女人の章」の「逆らう心配のある女たちにはよく説諭し、寝床に放置し、また打ってもよい」との記述である。家庭内暴力に関する英国の研究によると、ムスリム社会の出身者、生活者であった男性と結婚している女性は、英国の他の女性よりの8倍も配偶者によって殺害される可能性が高いという。また、有川によると、バングラディシュ農村において、既婚女性の約半数が夫による身体的暴力を受けたとしている。また、女性に対する暴力は、イスラムの教えに則ったものとして、被害者である女性自身によってかなりの程度正当化されている。
② 姦通罪に対する刑罰
 イスラム法では既婚者以外の性的関係は厳重に禁じられており、罰則も厳しい。イランやサウジアラビアでは、既婚者の姦通には石打ちによる死刑が行われる。女性への暴力として特に問題となっているのが、レイプ被害者の処刑の問題である。姦通罪を成立させるには四人の男性の証言か、本人の自白が必要である。姦通罪が成立しない場合、逆に訴えた側が中傷罪として処刑されるのである。レイプ被害者が処刑される規程に関しては、反撥が多く、法改正に向けて動き出す国も見られる。パキスタンではこのほど、レイプ被害者が姦通罪に問われてしまう「ハッド法令」を見直す改正案が、賛成多数で下院を通過した。しかし、イスラム原理主義政党は猛反発をし、全議員の辞職を打ち出す等、改革への道のりは容易ではない。
③ 名誉の殺人
 家族の名誉を傷つけたという理由で婚前の若い女性が家族や親族の男性に殺害されるという「名誉の殺人」は、今日でも世界の広範囲で起こっている。イスラエル、パレスチナ、レバノン、トルコ、エジプト、モロッコ、ウガンダ、ブラジル、ヨルダン、サウジアラビア等で報告されている。全世界に広がるこの慣習は、秘密裏に行われ、自殺や事故とされることが多いため、正確な数は把握されていないが、年間5000人とも、6000人とも言われている。「名誉の殺人」はイスラム教と関連付けて考えられていることが多いが、実際はイスラムが広まる以前からの慣習と考えるのが妥当だろう。それは、「名誉の殺人」がイスラム国以外でも見られることから推測できる。また、教義にてらせば、イスラム教では、刑の執行はカリフの権限であり、「名誉の殺人」に見られるような家族による処刑は認められていない。また、婚外交渉は禁止されているが、それは男女を問わず、若い女性だけを狙い打ちにする「名誉の殺人」とは相容れない。このように、多くの点でイスラムの教義と矛盾する。しかし、この慣習のある地域では、「名誉の殺人」をイスラム教徒自身を含め、イスラム教の教義と考えている。
④ 女子割礼
 女性に対する割礼は、広くアジア、アフリカ、中東の各地で見られ、その数は8000万人にも達するとの統計がある。ただ、1982年のレポートでは約8400万人、1993年の調査によれば約1億1400万人と、女児が誕生する限り女子割礼人口は増え続けている。預言者は「割礼せよ」と述べたわけではないのだが、多くのイスラム地域の人々は、女子割礼がコーランに書かれていると思い込んでいる。国際的なキャンペーンによって女子割礼の有害性が指摘されるようになり、法的に規制する国も増えている。しかし、女子割礼が禁止されたとしても、人々の間で意識が変わらなければ密かに続行される可能性は高い。エジプトでは自らの意思で隠れて割礼を受ける女性が増えていると言われている。それは、娘が外に出ることを心配する両親に対して、きちんと割礼を受けたのだから教育を受けさせてほしいとか、外で働かせてほしいとか、自分の決めた人と結婚させてほしいという交渉の切り札として使うためだという。女性を縛るための割礼が逆に女性の解放をもたらすという逆説的な状況が生まれているといえる。
2.女性差別撤廃条約との抵触点
 以上述べたイスラムの慣習については女性差別撤廃条約のレポート審議で女性差別として問題となったものが多くある。前述のとおり、イスラムにおける女性の人権観については各国対応が分かれており、一様ではない。それでも概して、イスラムでは結婚や家族に関する権利の考え方が西欧諸国とはかなり異なっている。よって西欧諸国主導で作成された女性差別撤廃条約の条文とイスラムの価値観の抵触が生まれるのである。本節では前節であげたイスラム法的慣習の女性差別撤廃条約との抵触点を指摘する。まず、一夫多妻制は、第16条1項(a)「婚姻をする同一の権利」に抵触する。親が子の意思に関係なく結婚相手を決める幼児婚は、第16条1項(b)「自由に配偶者を選択し及び自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」、第16条2項「児童の婚約及び婚姻は、法的効果を有しないものとし、また、婚姻最低年齢を定め公の登録所への婚姻の登録を義務付けるためのすべての必要な措置がとられなければならない」と対立する。男性からの離婚が容易である点は、第16条1項(c)「婚姻中および婚姻の解消の際の同一の権利及び責任」に触れる。子の監護が父親に有利な点は、第16条1項(d)「子に関する事項についての親(婚姻をしているかしていないかを問わない。)としての同一の権利及び責任」、同項(f)「子の後見及び養子縁組又は国内法令にこれらに類する制度が存在する場合にはその制度に関る同一の権利及び責任」に抵触する。女性への暴力については、女性差別撤廃条約に直接の言及はない。しかし、第12条1項「保健の分野における女子に対するあらゆる差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる」などとの関係により、割礼のように女子の健康に有害となる伝統的慣習を根絶するための「一般的勧告第14」が、1990年第9会期において採択された。また、夫による暴力や名誉の殺人など、女性に対する暴力全般については、1987年に「一般的勧告第12」が、1992年に「一般的勧告第19」が採択された。これにより、女性に対する暴力も、女性差別撤廃条約で禁止されているとの解釈がなされたのである。また、委員会は、締約国に、あらゆる性に基づく暴力を撤廃するために適切かつ実効的な措置をとることを勧告している。この一般的勧告は、委員会による条約解釈の意味を持ち、各国のレポート審議やコメントに当たっての解釈原理となる。このように、特に婚姻・家族関係における差別撤廃を定める第16条に、多くのイスラム法及びイスラム法的慣習が抵触していることがわかる。そしてこの16条こそ、女性差別撤廃条約が最重要視する条項なのである。(以下略)

*3-3:http://www.jca.apc.org/praca/back_cont/02/02Sudan.html 
スーダンにおける女子割礼
 私はレイラ。モスクワ生まれです。父はスーダンの北部出身ですが、母はモスクワ近郊の出身ですので、私の国籍はロシアです。私は、モスリムの女性割礼についてのリサーチャーとしての仕事をしています。特にヨーロッパに在住のモスリム女性の文化的アイデンティティーや、割礼にたいする意識の調査などをおこなっています。昨年、米国ワトソン基金奨学金留学生に選ばれ、今年6月には、米国に向かいます。女子割礼について日本の方はあまりご存じないと思いますので、少し説明させてください。
 割礼そのものは、イスラム教以前からすでにアフリカに存在していました。男子の割礼と異なり、女子割礼は、男性優位の世界の中でおこなわれています。女性は力を持ってはいけないのです。それなのに男性性器の名残として、クリトリスがあります。だからクリトリスは悪魔のシンボルといわれています。出産の時、赤ん坊がクリトリスに触れると、死んでしまうという言い伝えまであります。割礼には約4種類のタイプがあります。スンナ割礼、陰部摘出、陰部封鎖、陰部刺切です。スンナ割礼は、陰核包皮を円周状に切除することです。陰部摘出は、包皮のみでなくその他の部分まで含めて切除します。陰部封鎖は、切除する部分の大きさは地方によって異なりますが、切除した後、膣下端を完全には塞がらないようにしながら、切除部分を縫いあわせたり、癒着させたりします。癒着させるためには割礼を受けた子どもの太股を縛り、何日間かそのままにしておきます。陰部刺切は会陰部を裂いたりもします。女子割礼をおこなうことは、なぜ男にとって必要なのでしょうか。宗教上のこととか、昔からの習慣だともいわれていますが、それだけではありません。男性にとって女性は性欲を持ってはいけないのです。割礼により女性の性欲をなくし、ほかの男に走らないようにしようとしているのです。女性は女性で、男性に快楽を与えるためはこの行為が必要だと思っています。つまり、男はいつでも自由であるのに、女は小さいときから男に従属しなければならないという考え方なのです。割礼を受ける年齢はまちまちで決まってはいません。ただ、女の人がその行為をおこなうので、あまり大きくなると、女では抵抗できないよう体を押さえることができないので、小さいときにおこなうのが普通です。私の従姉妹二人は、12才と14才で受けました。フランスのスーダン人の子供の例ですが、生後3週間で受け、出血多量で死亡したこともあります。また、妊娠後割礼を受ける場合もあります。割礼により死亡する場合もたくさんあります。消毒もしていない剃刀によって感染症となったり、炎症を起したり、出血多量によったりです。あるいは、生理の血が体外に出なくなったためという場合もあります。ただ、割礼後何年も経ってから死亡するようなケースは、それが割礼のためなのかどうかはっきりしないこともあります。割礼による内面的な問題として、母親が娘にそれをおこなうことにあります。そのために、母子関係に精神的苦痛をおよぼし、そのことを引きずっていかなければなりません。そういった意味で、女性同士の友人関係は、表面的になってしまいます。心の奥では相手を信用してはいないのです。はじめにもお話しましたように、私はヨーロッパでモスリムの女性の割礼についてのリサーチをおこなってきました。その結果、ヨーロッパと、スーダン本国との割礼にたいする考え方の興味深い相違についてはっきりしました。ヨーロッパのスーダン人は、貧しい人たちはこの習慣をやめたいと思っているのですが、裕福な人たちは続けたいと望んでいます。その理由として彼女達は、経済的には不自由がなくても、差別されていることをはっきりと感じているのです。そのため、伝統的なほこりを捨てないためにも、割礼をおこなっているのです。それにたいし、スーダン国内では、貧しい人たちは習慣として続けようとしていますが、裕福な上層階級は悪い習慣としてやめたいと思っています。つまり、ヨーロッパ在住の人と、国内にいる人では、とらえかたが全く逆になっているのです。直接ヨーロッパの内にいるか、ヨーロッパの目を気にするかの違いです。ですから、スーダンはイスラム法による政策をおこなっていますが、割礼を法的に認めている場所と、認めていないところとがあります。男優位の世界が割礼をおこなわせているのです。スーダンでは、常に男が一番で女はその次でしかありません。そして子どもたちは一番最後です。ですから子どもたちはいつでも飢えています。兵隊が、ノートや本を買いに行く子どもたちに銃をあて、金を奪うような状態なのです。外国からの援助にかんしてですが、スーダンにいる国連の人たちは、ベンツを乗り回しています。そのベンツのガソリンで、1年分の村の食料がまかなえるのです。彼らはただ、金をつかうだけです。割礼は大嫌いです。でも、日本人にとってスーダンは遠すぎます。スーダンだけではなく、第三世界すべてがそうです。援助はとても難しい問題です。


PS(2014.10.2追加):*4-1のように、インドのタタグループはアフリカの若者を対象に奨学金を実施して、アフリカの大学や大学院に送っており、その中には女子学生も多く、アフリカ女性の社会進出を後押ししているそうだ。また、タタグループは、これを世界で展開する企業の社会的責任と考え、女性の人材育成や登用も行っている。一方、日本では、*4-2のように、何とかかんとか言って女性を待遇の悪い非正規社員や派遣社員とし、女性から搾取してきたが、これは経営者が持っている理念の違いだ。

  
 取締役の女性比率         就業者・管理職の女性比率  

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141002&ng=DGKDZO77830500S4A001C1FFE000 (日経新聞 2014.10.2) 世界で社会貢献 「清廉」の信頼感、活力に
 インドのタタグループがアフリカの若者を対象に実施している奨学金。2006年から年間30人程度を奨学生として選び、ネルソン・マンデラ・メトロポリタン大学などアフリカの大学や大学院に送り込む。女子学生も多く、アフリカの女性の社会進出を後押しする。タタが世界で展開する企業の社会的責任(CSR)活動の一環だ。
●慈善財団が株
 タタグループの統括会社であるタタ・サンズ株の66%を握るのはタタ一族の慈善財団。「利益を社会に還元する」という理念に沿い、巨額の配当収益を農村支援や教育、医療、文化などに投じている。この10年で財団や傘下企業が投じたCSR費は800億ルピー(約1400億円)に上る。利益を追うだけでなく、社会貢献を重視する姿勢は、例えば、汚職が横行するインドにあって「清廉なタタ」という評価につながる。タタ製鉄の企業城下町である東部ジャムシェドプールでは、街の整備や水道、電力供給などをタタ自らが手掛け、地域や従業員の求心力を高めてきた。ムンバイにあるタタグループの本拠「ボンベイハウス」。今年で生誕175年となる創業者ジャムセトジー・タタ氏の肖像画とともに同氏の言葉を示した記念の盾が置いてある。「企業にとって、社会はステークホルダーの一つではなく、存在目的そのものだ」。タタグループ総帥のミストリー氏が昨年立ち上げたタタ・サンズの経営諮問機関のメンバーの一人でもあるムクンド・ゴビンド・ラジャン氏は「タタはいまや世界企業だ。良き企業市民であり続けてきたタタの理念とインドで得てきた信頼を世界に広めたい」と言う。今年8月には米国の広告大手JWTと契約し、世界で独自の社会貢献活動を進めようとしている。
●女性登用目立つ
 社会との共生を目指す理念は人材育成にも表れている。タタ・サンズが運営する経営者育成プログラム「タタ・アドミニストレーティブ・サービシズ(TAS)」はグループ総力で“英才教育”を施す取り組みだ。毎年、20歳代の40人程度を選び、100社超の傘下企業のなかで多様な事業や部門を経験させていくが、最近は女性の登用が目立つ。象徴はインドで話題の34歳の女性経営者、アバニ・ダブダさん。米スターバックスとのインド合弁の最高経営責任者(CEO)だ。合弁は12年の事業開始以来、50店以上を開設し、業績も好調で評価も高まっている。タタグループは20年までに少なくとも1千人の女性幹部を育てるという。タタが創業140年余りインドで育んできた独特の企業理念は成長の活力ともなってきた。今後、グローバルな事業展開で国外企業との連携も増える中で、独特の企業文化をいかに生かしていくかも課題になりそうだ。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141002&ng=DGKDASFS01H25_R01C14A0PP8000 (日経新聞 2014.10.2) 女性活躍本部、10日にも初会合
 政府は3日の閣議で、女性の活躍推進の司令塔となる「すべての女性が輝く社会づくり本部(本部長・安倍晋三首相)」の設置を決める。10日にも初会合を開き、非正規社員の待遇改善を後押しする行動計画の策定や母子家庭への支援体制の強化など、来春までに実施すべき女性に関する具体策の骨子案をまとめる。女性の再就職を後押しする行動計画も年内にまとめる方針だ。


PS(2014.10.2追加):イスラム圏からの留学生に、「学生食堂でイスラム教の戒律に沿ったハラル食を出す」「授業の合間にお祈りができる礼拝スペースを設ける」という教育方針は正しいだろうか?私は、イスラム圏からの留学生も、グローバルな人材として、日本を始め世界のどこへ行っても活動できるようになることが留学の目的であるため、ハラール食に固執したり、礼拝スペースがなければやっていけないことを薦めるのではなく、多様な文化があることを学ばせる方が価値があると思う。つまり、「それをしなくても罰は受けないし、より合理的なこともある」ということを学ぶのも、留学の意味なのだ。

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141002&ng=DGKDZO77824640R01C14A0TCQ000 (日経新聞 2014.10.2) ハラル対応学食、留学生に安心感 イスラム圏から急増、神田外語大、土日は学外に開放 埼玉大、弁当の開発も検討
 学生食堂でイスラム教の戒律に沿った「ハラル食」を提供したり、授業の合間などにお祈りができる礼拝スペースを設けたりする大学が増えている。インドネシアやマレーシアなどイスラム圏からの留学生が急増しているためだ。生活の基本である食について安心できれば留学は充実する。留学生の声を拾い、今どきのキャンパス事情を探った。「どんな調味料なのかわからないからコンビニで食品を買えないし、自炊もできない。食堂でハラルメニューが食べられて、とても助かる」。9月にインドネシアから神田外語大学(千葉市)へ留学に来たフェルリアンディ・ロッビさん(21)はこう話す。この日食べたのはハラル対応のうどんとエビの天ぷら。調味料や調理器具まで、すべてイスラム教徒の戒律に配慮したものだ。食堂を利用するまでは「外食はパンだけだった」といい、ハラル食が食べられることに安堵の表情を浮かべる。神田外語大は今春、学生食堂を改装オープンした。東南アジア各国の食文化を体験できるメニューや内装にしたほか、国内の大学施設では初となる「ムスリムフレンドリー・ハラール認証」を日本アジアハラール協会(千葉市)から取得。「ハラル食」を提供したり、礼拝スペースを設けたりして、イスラム圏からの留学生に配慮した。9月6日からは土日限定で学外の市民にも食堂の開放を始めた。東南アジア各地のセット料理やビールなどを提供するほか、ハラル食が食べられるプレートも用意した。オープン初日には開店前から行列ができ、約420席はほぼ満席の状態。土日の2日間、家族連れなど計1320人が来店した。「想像以上に注目度が高くて驚いている」(神田外語大)。名古屋工業大学(名古屋市)の生協は5月、イスラム教徒の留学生の要望を受け「ハラール推奨メニュー」をつくった。イエローチキンカレーなど2品を日替わりで提供し、毎日約20食が売れる。厳密にハラル食と認定されるためには、食材の加工工場の機械を洗う際にアルコールを使っていないなど、数多くの条件をクリアする必要がある。しかし、学食で実現するには不可能な条件も数多くあったため、チェックリストを作成。留学生にはハラル食の条件を満たしていない項目もあることを理解してもらったうえで、提供している。大学院の博士課程で道路の設計などの創成シミュレーション工学を専攻しているカン・モハマダ・ハンナンさん(26)は2011年にバングラデシュから来日。ハラール推奨メニューが登場するまでは「昼食に食べられるものがなく、シーチキンのおにぎりばかり食べていた」という。5月以降は週に2、3回、食堂でハラール推奨メニューを食べているといい、特にイエローチキンカレーがお気に入り。500円を超える価格だけは「もう少し安くしてほしい」と苦笑いする。埼玉大学は5月、第2食堂部のハラル対応のメニューを扱うコーナーを新設した。真新しい食堂の奥に「食べてみたい ハラールメニュー」と書かれた張り出しがあり、他のメニューと同様、カウンターで注文できる。埼玉大にはイスラム圏からの留学生が50人程度いる一方、ハラルに対応した食べ物が少なく、留学生は食事に苦慮していた。イスラム圏出身の留学生に調理器具や食材などを確認してもらい、カレーや竜田揚げ、しょうが焼きなど、週替わりで3品ずつ販売している。食材が限られるため平均単価は500円前後で、一般メニュー(390円程度)よりやや高い。食堂を運営する埼玉大学生協によると、ハラル食は1日30食程度売れており「一定のニーズがある」(大木島誠専務理事)。メニューを飽きさせない工夫として、9月下旬からはうどんやそばも始めた。食堂の営業時間外でもハラル対応食を食べられるよう、今後は弁当の開発も検討する。

| 外交・防衛::2014.9~2019.8 | 05:11 PM | comments (x) | trackback (x) |

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