■CALENDAR■
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31       
<<前月 2024年03月 次月>>
■NEW ENTRIES■
■CATEGORIES■
■ARCHIVES■
■OTHER■
左のCATEGORIES欄の該当部分をクリックすると、カテゴリー毎に、広津もと子の見解を見ることができます。また、ARCHIVESの見たい月をクリックすると、その月のカレンダーが一番上に出てきますので、その日付をクリックすると、見たい日の記録が出てきます。ただし、投稿のなかった日付は、クリックすることができないようになっています。

2014.10.22 川内原発再稼働は合理的ではなく、原発のコストも安くないということ
     
 原発のコスト       廃炉費用の負担について

(1)川内原発は、再稼働ありきの形式的手続ではいけない
 *1-1のように、川内原発の安全審査に関する住民説明会が行われたが、新規制基準は自然災害やテロ対策、放射性物質拡散防止を求めているものの、それはまだ実践されていない。また、原子力規制庁担当者は、「100%安全とは言えない」と繰り返すが、原発の場合は、事故時の影響が膨大であるため、100%安全でなければ稼働は許されない。

 しかし、川内原発再稼働に関する住民説明会での質疑は、技術的な審査に関するものだけで、避難計画や地元同意の範囲など住民の関心が高い事項が受け付けられず、インターネット中継も禁止されたため、説明会の様子を視聴できたのは薩摩川内市の人口の1%に限られたそうだ。薩摩川内市の岩切市長は、「規制庁は細かく説明してくれた」と評価し、住民説明会の追加開催を否定したそうだが、日本全国の住民が、より丁寧な質疑を望んでいる。

 なお、*1-2のように、新規制基準への適合性審査に合格した九電川内原発について、鹿児島県と鹿児島県内の5市町で開いた住民説明会では、A4判両面印刷のアンケート用紙が配られたが、設問はわずか6つで、そのうち3つは性別など回答者の属性を尋ねる内容であり、原発に関わるのは説明会で理解できなかった項目を選ぶ1問だけだったそうだ。そして、再稼働への意見を聞く設問は全くなく、鹿児島県は「理解不足の項目を確認し、情報提供の方法を検討する(原子力安全対策課)」と説明しているが、内容の理解と再稼働の支持は同義ではないのに、鹿児島県の住民は馬鹿にされたものである。

 こうした行政の姿勢は「再稼働ありき」で住民を原発の議論から遠ざけ、立地自治体の薩摩川内市以外での原発30キロ圏(本当は、30キロ圏内だけが地元でもない)の4会場は参加希望者が定員の4~8割程度で、さつま町は定員の半数にも満たなかったそうだ。そして、その中には「いくら意見を言っても無駄」「公開討論会を開いてほしい」「住民投票をやるべきだ」などの意見がある。

 また、*1-3のように、薩摩川内市での住民説明会は、「良くなかった」という意見が約5割で、「良かった」の約3割を上回った。そして、*1-4のように、薩摩川内市議会の特別委員会には、再稼働に反対する市民ら約70人が傍聴に詰めかけ、約40人が傍聴席の抽選から漏れて市側と小競り合いになり、熊本県水俣市の会社員は、「再稼働は薩摩川内市だけの問題ではない。傍聴希望者を全て受け入れて審議すべきだ」と話したとのことである。 

(2)薩摩川内市議会、薩摩川内市長の動向について
 薩摩川内市は、*1-5のように、10月28日に臨時議会を開いて、再稼働をめぐる賛成と反対の陳情が採決され、賛成の陳情が採択される見通しで、これを受けて岩切市長も同日中に再稼働への同意を表明する見込みとのことだ。岩切市長は20日の記者会見で「再稼働は市民の元気を取り戻す一つの方法」と述べたそうだが、原発にそのような前向きな発言ができるのは、私には、不勉強で無責任としか思えないが、これが現在の鹿児島県の状況である。

(3)原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分について
 *2に書かれているように、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分に関して、日本学術会議が「新たに生じる放射性廃棄物の対策が曖昧なまま、原発を再稼働するのは将来世代に対し無責任」と指摘しており、これには賛成だ。しかし、「原発に対する現在世代の責任を強調している」ことについては、責任は現在世代の全員にあるのではなく、強引に原発を進め再稼働に積極的な人たちにあることを明確にすべきだ。何故なら、電気を使った人にも責任があるという意見もあるが、電気は原発でしか作れないわけではなく、需要者には発電方法の選択権がない地域独占システムだったからである。

 また、日本学術会議は、「暫定保管を各電力会社の管内とし、保管する期間は一世代に相当する30年を一区切りとした」とのことだが、①拡散して保管することによるリスク増大 ②分散して保管することによる費用増大 ③保管にかかる総予算 ④諸外国の事例 を明らかにすべきである。そして、拡散した暫定的保管にカネをかけ、さらに最終処分場にカネをかけた場合、全体として原発のコストはいくらになるのかを考えるべきである。私は、そのカネと労働力を最大限節約して、本当に将来の地域振興に役立つインフラに投資した方が、根本的に地方の問題を解決する手段になると考えている。

(4)原発事故の賠償金について
 *3に書かれているとおり、フクシマ原発事故で、原発が事故を起こせば巨額の賠償金が必要になることが分かったのに、事故への備えが不足したまま、九電川内原発が再稼働に向かうことになっており、これを現在世代全員の責任にされてはたまったものではない。さらに、原発の輸出促進を狙った「原子力損害の補完的補償に関する条約」も国民負担になっており、とんでもない話だ。

 福島事故では、11兆円を超える損害が生じる見通しだが、現行の原賠法による事故の備えは1200億円の保険金だけで、福島事故の不足分は国が一時的に肩代わりした。しかし、本来は、私的企業である電力会社が責任を持つべきであり、損害賠償のためには保険掛金を拡充すべきなのである。

(5)廃炉について
 *4-1、*4-2に書かれているように、運転開始から39年の玄海原発1号機を廃炉にするか、存続して再稼働させるかを検討しているそうだが、原発のように絶対に事故を起こしてはならない固定資産の耐用年数を、延長申請すれば40年から60年まで延長できるとするのが、そもそも乱暴すぎる。そのため、検討するまでもなく廃炉にすべきだ。

(6)原発解体費が4割も不足しているとは・・
 *4-3に書かれているように、原発の解体費が4割不足しているそうだが、解体費用や廃炉費用は発電して電力を供給している期間に廃炉引当金(そもそも“積立金”という認識が誤り)を積み、毎年の引当金繰入額は、発電費用として電気料金で回収するのがあるべき会計処理である。そのため、現在、引当金が6割に満たないのであれば、これまで電力会社は解体費の見積もりを誤っていたことになる。

 もし、予定外の廃炉による巨額の損失があれば、それは特別損失として一括処理するのがあるべき会計処理だが、災害によるものは、臨時巨額の損失として繰り延べ、できるだけ早く償却する方法もある。しかし、それは、5年以内に償却するのが普通であり、10年という事例は他にはない。

 また、電力会社が負うべき解体費用を国民に転嫁するのは、(国策変更で予定外に早く廃炉する部分を除き)筋が通らない。そのため、解体費用を負担できないのなら、原発のコストは安くないのだから、早々に原発から撤退するのが普通の経営判断である。

(7)最終処分場について
 高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する費用も、発電して電力を供給している期間に高レベル放射性廃棄物処理引当金を積み、毎年の引当金繰入額は、発電費用として電力料金に入れるべきだったのであり、ここまで含めて安くなければ、「原発のコストは安い」と主張することはできない。

 そして、最終処分場建設費も、本来は電力会社が負うべき処理費用を国民に転嫁しようとしているもので、それは筋が通らない。もし、その費用も負担できないようなら、原発のコストは決して安くはないため、国民にこれ以上の迷惑をかけないよう、早々に原発から撤退すべきである。

          
 使用済核燃料保管量  除染と中間貯蔵       最終処分場

*1-1:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201410/20141020_13007.html (河北新報 2014.10.20) 質疑打ち切りに反発/(上)住民説明 内容限定不安消えず/再稼働の行方・九州川内原発ルポ
 川内原発の安全審査に関する住民説明会。会場では安全性への不安の声が相次いだ=9日、鹿児島県薩摩川内市 鹿児島県薩摩川内市にある九州電力川内原発が国の新規制基準適合性審査(安全審査)に合格し、国内第1号となる再稼働に向けた手続きが着々と進む。福島の事故で増幅された地域の不信と不安に、自治体はどう向き合おうとしているのか。住民説明会が開かれた現地を訪れ、東北での課題を探った。(原子力問題取材班)
<何のため>
 1時間の質疑を終えて残ったのは反発と不満だった。薩摩川内市で9日夜にあった住民説明会。「何のために開催したのか。もっと丁寧に市民の声を聞くべきだ」。終了後、原発から12キロの地域で自治会長を務める川畑清明さん(58)が吐き捨てるように言った。説明会は再稼働への同意、不同意の判断を迫られる県と市が共催した。地元住民への説明は法的に定められていないものの、理解促進を目的に独自に企画された。2013年7月施行の原発新規制基準は、自然災害やテロの対策、放射性物質の拡散防止を求めている。福島の事故を踏まえて基準が厳格化されたとはいえ、住民の不安解消は容易ではない。「絶対安全には到達できない。できるだけリスクを抑える審査をした」。原子力規制庁担当者の発言に、満席の会場がざわめく一幕もあった。質問に立った女性の一人は「福島の事故が収束しておらず、説明に説得力があると思っているのか」と詰め寄った。住民が原発再稼働と向き合う貴重な機会のはずが、質疑は途中で打ち切られた。内容は原則、審査結果に関するものに絞られた。避難計画や地元同意の範囲など、住民の関心が高い事項は受け付けられなかった。開催は原発30キロ圏を含む5市町で各1回限り。薩摩川内市の場合、出席できたのは約1000人。全人口の1%にとどまった。
<市長は評価>
 十分な対話が尽くされたとは言い難いものの、行政サイドは再稼働に向けた地元手続きを着々と進めている。川内原発をめぐる焦点は、既に首長や地方議会の判断に移ろうとしている。一夜明けた10日、記者会見した岩切秀雄市長は「規制庁は細かく説明してくれた」と評価。次は「市議会の意向を聞く」と語り、住民説明会の追加開催は否定した。現在、東北電力の女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)と東通原発1号機(青森県東通村)も安全審査を受けている。基準を満たしていると判断されれば、地域で原発の是非をめぐる議論が再燃するのは必至だ。先行する鹿児島の動向は参考事例となる。深刻な原発災害が今も続く中、どんな対応が東北で求められるのか。より丁寧な住民説明が欠かせないのは明らかだ。立地自治体となる宮城県の担当者は「(放射性物質の飛散など)福島の事故の影響が及んでいる。手続きを慎重に検討したい」と話している。川内原発]加圧水型軽水炉(PWR)の1号機が1984年、2号機が85年に営業運転を開始した。出力はともに89万キロワット。東日本大震災後、2011年9月までに2基とも運転を中止した。運営する九州電力は13年7月、原子力規制委に適合性審査を申請。ことし9月に全国で初めて適合が認められた。

*1-2:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201410/20141021_13011.html (河北新報 2014年10月21日) 是非問う機会設けず/(中)民意集約/「結論ありき」批判も/再稼働の行方・九州川内原発ルポ
<同意の思惑>
 国の新規制基準適合性審査(安全審査)に合格した九州電力川内原発。鹿児島県などが県内5市町で開いた住民説明会では、A4判両面印刷のアンケート用紙が配られた。設問はわずか六つで、うち三つは性別など回答者の属性を尋ねる内容。原発に直接関わるのは1問しかなかった。それも「(地震や津波対策など)説明会で理解できなかった項目」を選ぶだけ。再稼働への意見を聞く設問は全くない。集計結果がどう活用されるかも見通せない。県は「理解不足の項目を確認し、情報提供の方法を検討する」(原子力安全対策課)と説明するにとどまる。本来、審査結果に対する理解と再稼働支持は同義ではない。アンケート項目の乏しさには「審査内容への理解が進めば再稼働に同意できる」との県の思惑が透けている。
<低い出席率>
 こうした行政の姿勢は「再稼働ありき」と映り、住民を原発議論から遠ざける恐れがある。説明会の全5会場のうち、定員を超す応募があったのは立地自治体の薩摩川内市だけ。原発から半径30キロ圏の4会場は希望者が定員の4~8割程度。平日の夜間開催という事情を勘案しても、高い出席率とは言い難い。さつま町は定員の半数に満たなかった。町内で眼鏡店を経営する山内義人さん(63)はあえて出席を見送った一人だ。「再稼働の是非で激論を交わすべきだが、行政側は強引に手続きを進めてしまっている。意見をいくら言っても無駄だ」。山内さんは諦め顔を見せた。「公開討論会を開いてほしい」「住民投票をやるべきだ」。複数の会場でこうした意見も出たが、県側は否定的な姿勢を崩さなかった。説明会について、伊藤祐一郎鹿児島県知事は「一般的な形では理解が進んだ」と話す。住民の意見を集約する機会がないままに、再稼働をめぐる手続きは最終局面を迎えようとしている。
<有志尋ねる>
 経済性や安全性など、原発を評価する住民の尺度は一様ではない。同意、不同意の判断を迫られる自治体は、多様な価値観をくみ取る努力が欠かせない。東北では再稼働の判断に向けた取り組みが進む。東北電力女川原発の地元、宮城県女川町の町議有志が今、2500世帯を対象に女川原発再稼働の賛否を尋ねている。12月には県と町に結果を報告する。企画者の一人、高野博町議(71)は「原発は一般の行政課題と異なる。首長や議員だけで決められる問題ではない」と指摘する。

*1-3:http://qbiz.jp/article/48068/1/
(西日本新聞 2014年10月20日) 川内の住民説明会 「良くなかった」5割
 九州電力川内原発の再稼働をめぐる陳情審議があった20日の鹿児島県薩摩川内市議会特別委員会で、市が原発の安全性に関する住民説明会出席者へのアンケート結果を説明した。説明会の感想は、「あまり良くなかった」(34%)と「良くなかった」(14%)を合わせると約5割で、「まあまあ良かった」(23%)と「良かった」(8%)の合計の約3割を上回った。「普通」は22%だった。説明会はほかに原発30キロ圏4市町であり、20日夜の同県いちき串木野市で終了する。伊藤祐一郎知事はアンケート結果を同意判断の材料にするとしているが、立地自治体の薩摩川内市で否定的な傾向が出たことで、ほかの4市町の結果が注目される。薩摩川内市の説明会は9日、市民を対象に開かれ、736人がアンケートに回答した。理解できなかった項目を選択する設問(複数回答可)では、「原子炉施設の大規模な損壊への対応」が25%、「自然現象および人為事象の想定と対策」が19%だった。何も選択しなかった人が52%いたが、市は「(全般的に)理解できなかったから印も付けられなかったのではないか」と説明した。 

*1-4:http://qbiz.jp/article/48069/1/
(西日本新聞 2014年10月20日) 市議会特別委、傍聴求め紛糾
 川内原発再稼働をめぐる陳情の採決があった20日の鹿児島県薩摩川内市議会の特別委員会には、再稼働に反対する市民ら約70人が傍聴に詰めかけた。約40人が傍聴席の抽選から漏れて市側と小競り合いになり、混乱した。傍聴席は30しかなく、議会側は抽選に漏れた人には審議状況を音声中継する別室を準備した。市民は「重大な問題なのになぜ傍聴を制限するのか」と反発し、議会事務局の職員に詰め寄った。特別委が始まると、傍聴席から大声で抗議した男性1人が橋口博文委員長に退室を命じられた。午前11時ごろから再稼働をめぐる陳情審理が始まると、市民約30人が委員会室前の通路を占拠。委員会室に向けて「再稼働反対」と繰り返し、市議会事務局の職員とにらみ合いを続けた。退室を命じられた熊本県水俣市の会社員永野隆文さん(60)は「再稼働は薩摩川内市だけの問題ではない。傍聴希望者を全て受け入れて審議すべきだ」と話した。 

*1-5:http://qbiz.jp/article/48205/1/
(西日本新聞 2014年10月22日) 薩摩川内市が28日臨時議会 鹿児島
 九州電力川内原発がある鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長は21日、臨時議会を28日に招集すると告示した。再稼働をめぐる賛成と反対の陳情が採決され、賛成の陳情が採択される見通し。これを受け、岩切市長も同日中に再稼働への同意を表明する見込みだ。福島第1原発事故を教訓に原発の新規制基準が施行された昨年7月以降、原発立地自治体が再稼働にゴーサインを出すのは初めてとなる。この後、再稼働に向けた地元同意手続きの焦点は、県議会と伊藤祐一郎知事の判断に移る。薩摩川内市議会は、20日の特別委員会の再稼働賛成陳情採択を受け、21日に議会運営委員会を開いた。瀬尾和敬議長が「特別委の審査終了を受け、市議会として意思を示す必要がある」と臨時議会の招集請求を諮り、全会一致で認めた。市議(26人)の過半数は取材に対して、再稼働に同意する意向。岩切市長は20日の記者会見で「特別委の判断を高く評価する。再稼働は市民の元気を取り戻す一つの方法」と述べて再稼働に前向きな姿勢を示している。

<核のゴミ処理について>
*2:http://www.sanyonews.jp/article/83861/1/?rct=shasetsu
(山陽新聞 2014年10月18日) 核のごみ報告書 再稼働ありきへの警告だ
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分に関し、「学者の国会」と呼ばれる日本学術会議が二つの分科会の報告書を公表した。新たに生じる放射性廃棄物の対策が曖昧なまま、原発を再稼働するのは「将来世代に対し無責任」などと指摘している。原発の再稼働に向けた動きが本格化する中、核のごみの処分をめぐっては全く見通しが立っていない。国は、今回の報告書を科学界からの警告として重く受け止めるべきである。日本は、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルを国策として進めてきた。だが、中核となる高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)はトラブル続きで、運転再開のめどが立たないなど、核燃料サイクルは事実上、破綻している。一方で、核のごみの処分方法や最終処分地は決まらず、手詰まりの状況にある。このまま原発の再稼働を進めれば、核のごみは増え続けるばかりだろう。2010年に国の原子力委員会から審議依頼を受けた日本学術会議は12年9月、廃棄物を回収可能な場所で「暫定保管」し、その間に最終処分の進め方について国民の合意を得るべきだと国に提言していた。今回の報告書はその提言をより具体化した。注目されるのは、原発に対する「現在世代の責任」を強調していることだ。暫定保管を各電力会社の管内とし、保管する期間は、一世代に相当する30年を一区切りとした。その間に長期的な政策選択について判断することを求めている。暫定保管の期間について、12年の提言では「数十年から数百年程度」と幅が広かった。今回の報告書では、保管期間があまりに長いと、廃棄物を生みだした世代の関与や責任が曖昧になる恐れがある一方、期間が短すぎれば、科学的知見や技術開発が進展せず社会的合意もできない、と指摘した。保管期間を30年間と具体的に示すことで、現在世代が責任を果たすよう強く促したといえよう。暫定保管の施設については、電力各社がそれぞれの配電圏域内で建設することを社会的な議論の出発点とするよう求めている。その上で、原発の再稼働に伴って新たに発生する放射性廃棄物に関して、対策を曖昧にしたままの再稼働は「将来世代に対する無責任を意味し、容認できるものではない」と断じた。報告書は、廃棄物の暫定保管や、発生量に上限を定める総量管理について社会的な合意形成を図るためには、中立公正な組織を設ける必要性も強調している。日本学術会議は報告書を基に、年内にも新たな提言としてまとめる方針だ。政府は原発再稼働ありきでなく、核のごみ処分に関する国民的な議論の喚起に向け、取り組みを主導していくべきである。

<原発事故の賠償金について>
*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014101902100005.html (東京新聞 2014年10月19日) 【福島原発事故】原発賠償金「備え」放置 臨時国会 抜本改正見送り方針
 政府が臨時国会で原子力損害賠償法の抜本改正を見送る方針を固めたことが分かった。東京電力福島第一原発事故で、原発が事故を起こせば巨額の賠償金が必要になることが分かったのに、政府は、資金的な備え不足や、国と電力会社が責任をどう分担するのかの議論を避けた。このままでは備えが不足したまま、九州電力川内(せんだい)原発が再稼働に向かうことになる。政府は十一月末まで開かれる臨時国会に、原賠法の一部改正案を提出する考えだが、原発の輸出促進を狙った「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)の承認に必要な文言修正など、部分改正にとどめる。文部科学省の担当者は本紙の取材に「(必要な備えのあり方など)基本的な問題については、CSCの後で議論することになる」と、抜本改正を先送りすることを認めた。福島事故では、十一兆円を超える損害が生じる見通し。しかし、現行の原賠法による事故の備えは一千二百億円の保険金だけ。福島事故では不足分を国が一時的に肩代わりし、制度の不備を取り繕ったものの、資金量は東電対応で手いっぱいだ。日本がCSCに加盟すると、米国などの加盟国が賠償金を支援する仕組みもある。ただし、文科省の試算では、もし日本で再び重大事故が起きた場合、日本が得られる支援金は七十億円ほど。備えるべき兆円単位の被害額に比べると、ほとんど対策にはならない。本来なら、電力会社と国はどこまで責任を分担するのかや、保険金額を拡充できないのか、などの検討が不可欠。しかし、政府は六月と八月に原賠制度の見直しを議論する副大臣会議を開いたものの、実質的に議論はしていない。

<廃炉について>
*4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/115189
(佐賀新聞 2014年10月16日) 廃炉か存続か迫る期限 玄海原発1号機運転39年
 九州電力玄海原発1号機(東松浦郡玄海町)が15日、運転開始から39年を迎えた。原則40年の運転期限まであと1年と迫り、九電は廃炉とするのか、存続して再稼働させるのか、検討を進めている。存続するには来年7月までに運転延長を申請する必要があるが、福島第1原発事故後の新規制基準をクリアするには巨額の設備投資は避けられず、3年連続赤字の九電としては高いハードルとなる。立地する玄海町の岸本英雄町長は運転延長を望みつつ、投資額の多さに廃炉もやむを得ないとの認識を示す。九電の判断が注目される。玄海1号機は出力55万9千キロワットで、2011年3月の福島の原発事故後、同年12月に定期検査のため運転を止め、2年10カ月にわたり冷温停止状態が続いている。今月10日には今後10年間の保守管理方針を原子力規制委員会に申請した。規制委は昨年7月に定めた新規制基準で、運転期間を原則40年と制限し、例外として1回、最大20年間の延長を可能としている。運転を延長する場合、期限の1年~1年3カ月前までに申請する必要がある。ただ、玄海1号機など全国の7基は特例で申請手続きが16年7月まで猶予され、それまでに審査を終えるには来年7月までに申請しなければならない。九電の瓜生道明社長は当初、今秋の判断を示唆していたが、来年4~6月への先送りを言明している。運転延長には、新基準の厳しい審査に合格しなければならない。最大の課題とみられるのが、新基準に適合しない可燃性の電源ケーブルの取り扱いだ。現在、延焼防止剤を塗って対応しているが、不燃性・難燃性への交換を求められると、巨費と多大な時間を強いられる可能性がある。どれだけ延長を認められるかも見通せず、費用対効果をどう判断するかが焦点となりそうだ。「50年運転」が持論の岸本町長は町財政や経済をにらみ、九電の判断を注視する。「私が社長なら膨大な投資をしても費用対効果が見込めないので廃炉にする」と語る。その上で「電力の安定供給のためには、リプレース(置き換え)で廃炉と同時に新設すべきだが、原発を取り巻く状況では困難」と指摘する。廃炉する場合、立地町への交付金新設を国に求める。規制委が運転延長を最終判断する際は「原発構内に入り、コンクリートの状況など確認して立地自治体の責任者として意見を言いたい」と注文する。また再生可能エネルギーの買い取り契約申請殺到で想定を上回る供給過剰の状況が発生し、九電は新規の契約手続きを中断している。「原発の再稼働を見越し、今後どれだけの買い取りが可能かどうか見極める」と説明しており、原発が再稼働すれば、さらに供給過剰が拡大し、買い取り制限につながりかねない。買い取り中断も絡み、九電は悩ましい判断を迫られている。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11407627.html
(朝日新聞 2014年10月18日) 経産相「早く判断を」 40年超原発、延長か廃炉か
 小渕優子経済産業相は17日、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)と会談し、運転開始から40年を超える原発について、運転延長するか廃炉にするかの判断を早期に示すよう指示した。経産省は電力業界からの回答を踏まえ、廃炉を決めても巨額の損失がでないよう会計ルールを見直すなど、支援策で一定の方向性を年内に打ち出す。政府は東日本大震災後、原発の運転は「原則40年」と定めた。例外として1回に限り、最長20年の延長が認められており、原子力規制委員会への延長申請が必要になる。対象となる原発は、関電の美浜1、2号機(福井県)、九州電力の玄海1号機(佐賀県)、中国電力の島根1号機など7基で、期限は来年7月に迫っている。国が老朽化した原発の廃炉を進める姿勢をはっきりと示すことで、原発再稼働を加速させる環境づくりをすすめたい考え。会談で小渕氏は「地元経済、事業者の財務への影響などの課題があり、政府としてもしっかり必要な対策を検討する」とも述べた。経産相からの指示について、八木氏は記者団に、「できるだけ早く回答したい」と話した。今後、延長申請が迫る7基を持つ関電、九電、中国電などに廃炉判断を促し、電事連として国にまとめて回答する考えだ。

*4-3:http://qbiz.jp/article/48036/1/ (西日本新聞 2014年10月20日) 原発解体費4割不足 廃炉後も電気料金で穴埋め 電力9社積立金調査
 原発を保有する電力9社に義務付けられている解体費用の積立金が、今年3月末時点で見積額(計2兆6千億円)の6割に満たないことが分かった。積立金は電気料金に含まれ、利用者から徴収。原発解体をめぐっては放射性廃棄物の処分法が決まっておらず、解体費用が見積額を上回る可能性もある。電力各社はこれから相次ぐ原発の解体を控え、電力自由化後も追加負担を国民から徴収できる仕組みづくりを国に要望。解体費用が上振れすれば、発電コストが安いとされる原発の優位性はさらに揺らぐ。原発解体費用の積み立て状況は、西日本新聞がこのほど、9社に実施したアンケートで判明。それによると、解体費用の積立金は見積額の約56%の1兆4800億円。これまでは、運転期間中に稼働実績に応じて積み立てる制度だったが、東京電力福島第1原発事故後、運転が長期停止しているため、積み立て計画に遅れが生じている。このため経済産業省資源エネルギー庁は昨秋、運転を終了し、廃炉を決めても電気料金から、その後10年かけて徴収できる会計制度に改めた。積立金が不足する実態に合わせるため、制度を変更する原発優遇策。九州電力は、現状で年間約50億円を料金に折り込むことが認められている。そうした配慮がなされたものの、電力各社はその後の国の審議会で「解体費用が上振れする可能性がある」と懸念を表明。原子炉や制御棒といった放射性物質の付着レベルが高い廃棄物などは地中で300年程度の管理が必要とされるのに、処分場も決まっていないためだ。解体費用の見積額を上回る追加負担が出た場合、国民から徴収できるよう国に求めた。さらに廃炉が決まれば、使用中の核燃料や、タービンなどの発電設備が資産価値を失い、現状では電力各社は、減価償却できていない分を特別損失として一括して会計処理しなくてはならない。原則40年の運転期限が迫る玄海原発(佐賀県玄海町)1号機など、老朽化した全国7基の廃炉判断が間近に迫る中、各社は、損失計上せず、料金として徴収して自社負担とならない仕組みを国に要望中だ。
●負担できぬなら撤退を
 立命館大の大島堅一教授(環境経済学)の話 
電力業界は「原発のコストは安い」と主張する一方で、本来業界が背負うべき解体費用の追加負担などを、国民に転嫁しようとするのはおかしな話だ。負担を負えないのなら、事業から撤退するというのが普通の経営判断だ。国は、原発を極端に特別扱いしていることを、国民にきちんと説明すべきではないか。

| 原発::2014.10~2015.3 | 02:53 PM | comments (x) | trackback (x) |

PAGE TOP ↑