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2014,11,23, Sunday
フクシマによる汚染 パブリックコメントの内容 川内原発について 再稼働の流れ 今回の衆議院解散について、安部首相は外国から日本に帰ってくるまで、「解散するつもりはない」と言っておられたが、帰ってきたら解散風が吹いていたので、それに従って解散したと言える。そのため、野党が「解散の是非」を論点にするのは間違っている。 しかし、安部首相が「①決められる政治になった」「②これまで真っ暗な道を通っていたが、やっと明るさが出てきた」と頻繁に述べておられることについて、私は、①については、間違ったことを決められるよりは決められない方が余程よいと思うし、②については、これまで真っ暗だったかどうかは疑問があり、現在の薄日も名目であって実質ではないし、実質の明るさが出るためには準備期間が必要であることを考えれば、賛成できない。 そのため、今回の解散を名付ければ、安部政権への「ぬきうちテスト解散」と言うことができ、安定多数をとって安心していた安部政権のこの2年間の実績が問われるべきである。ただし、この2年間に行われたことは、安部首相の意向によるものばかりではないため、アベノミクスとして一括するよりも、テーマ毎に是非を判断すべきだ。 なお、有権者が、「政策が一致している政党に投票するか否か」については、「生意気に見えるから入れない」「お祭りに来たから入れる」「観劇会に連れて行ってもらったから入れる」などというようなこともあるため問題は残るものの、次の点は、争点にして判断して欲しいと考えている。 特定秘密保護法 TPP 農協改革 アベノミクス (1)原発再稼働の是非(このブログの「原発」「内部被曝・低線量被曝」のカテゴリーに詳しく記載) 自民党政権になって、エネルギー基本計画で重要なベースロード電源とされた原発は、再稼働の準備がどんどん進められ、再生可能エネルギーは危機に瀕している。しかし、エネルギー基本計画を作成するにあたって、パブリックコメントとして国民から寄せられた意見では、原発維持・推進は1.1%しかなく、原発廃止が94.4%を占め、それはエネルギー基本計画作成前には公表されなかった。原発廃止意見の根拠は、①地震国で安全ではない ②使用済核燃料の処分場がない ③火山噴火予知ができない ④避難ができない などである。 (2)特定秘密保護法の是非(このブログの「特定秘密保護法関係」のカテゴリーに詳しく記載) 特定秘密保護法が制定され、理由もわからないまま逮捕され厳罰に処せられる可能性が出てきたため、刑法研究者が、速やかな廃止を求める抗議声明を発表した。その声明は、①何が特定秘密かが極めてあいまいで罪刑法定主義の原則に反し違憲 ②特定秘密の内容が明らかにされないまま公判が開かれれば、憲法82条の裁判公開原則に反する、など刑事法の観点から問題点を指摘しており、一橋大名誉教授、九州大、北海道大、大阪大などの教授や弁護士らが名前を連ねている。それでも特定秘密保護法を施行するのか、また、それは何のためかなのかを問題にすべきである。 (3)TPP、農協改革の是非(このブログの「環太平洋連携協定」「農林漁業」のカテゴリーに詳しく記載) TPPは農業にダメージを与え国家主権を害するものだが、自民党は公約を曖昧にしてTPPや農協改革を進めてきた。これは、経済産業省の意向が強く働いているからだろうが、地域の産業として、農林漁業や食品産業は重要であるため、守らなければならない。また、農協改革も実態に合っていないため、ここで「No」の意志表示をすべきだ。 (4)消費税増税の是非(このブログの「消費税増税問題」のカテゴリーに詳しく記載) 消費税増税の是非については、昨日も記載したとおり、ここで明確に「No」の意志表示をすべきだ。 (5)年金・社会保障削減の是非(このブログの「年金・社会保障」のカテゴリーに詳しく記載) 社会保障は、街づくりや中食産業の工夫により、サービスを維持しながらある程度削減することが可能だが、年金、医療保険、介護保険を削減されれば生活できなくなる人が多い。これは、副総理の麻生財務大臣や世襲議員にはピンとこない人が多いため、国民が、ここで明確な「No」の意志表示をすべきだ。 (6)普天間基地問題の是非(このブログの「普天間基地問題」のカテゴリーに詳しく記載) このブログの2014年11月17日にも記載したとおり、在日米軍施設の74%が集中する沖縄に、辺野古沖を埋め立てて新たな米軍基地をつくることは、保守分裂までして行われた今回の沖縄県知事選挙で明確に反対の意志が示された。しかし、政府はその選挙結果にもかかわらず、辺野古移設を進めると明言しており、民主主義国家としていかがなものかと思われるため、国政選挙でも論点として、「No」の意志表示がなされなければならない。 (7)集団的自衛権行使の是非(このブログの「安全保障」のカテゴリーに詳しく記載) 日本国憲法は最高法規であるため、日本がどこまで集団的自衛権を行使できるかは、憲法の範囲内に決まっているが、いろいろと迷案が出ているので、ここで明確にすべきである。 (8)国民主権と憲法改正の是非(このブログの「日本国憲法」「民主主義・選挙」のカテゴリーに記載) 自民党は憲法改正の準備に入っているため、この議論も重要である。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014112102000125.html (東京新聞 2014年11月21日) 安倍政治を問う 衆院きょう解散 安倍晋三首相は二十一日、衆院を解散する。二〇一二年十二月の第二次安倍政権発足後、約二年間にわたって進めてきた政策が審判を受ける。くらしへの影響が大きいアベノミクスと呼ばれる経済政策、憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使容認に踏み切った安全保障政策、再稼働を進める原発政策は、日本の針路を大きく左右する三つの岐路として、その是非が問われる。政府は二十一日午前の閣議で、各閣僚が解散の閣議書に署名。午後一時開会予定の衆院本会議で伊吹文明議長が解散詔書を朗読し、衆院は解散される。政府はこの後の臨時閣議で「十二月二日公示、十四日投開票」の選挙日程を正式決定する予定。衆院選は、自民、公明両党が大勝し、民主党から政権を奪還した一二年十二月以来二年ぶり。首相は二十日、都内で開かれた商工会全国大会で「私たちが進めている成長戦略が正しいのか、ほかに道があるのか、選挙戦を通じ明らかにしていく」と述べ、アベノミクスの継続の是非を問う考えを示した。与党は近く円安対策などを柱とした経済対策をまとめ、選挙戦で実現を訴える。一方、民主党の海江田万里代表は都内で記者団に「アベノミクスによる格差の拡大と固定化はあってはならない。(安全保障政策で)社会がきな臭い方向に行かないように押しとどめる」と安倍政権と対峙する考えを示した。衆院選公示が迫る中、野党は他党と競合する選挙区の調整や公認候補の選定作業を加速。一部では離党して民主党に合流する動きが表面化した。首相は十八日、消費税率の8%から10%への引き上げを一七年四月まで一年半延期すると明言。「国民生活に密接に関わる税制を変更する以上、速やかに信を問うべきだ」として二十一日に衆院を解散する。首相は与党で過半数(二百三十八議席)を下回れば退陣する考えを表明した。 *2:http://mainichi.jp/select/news/20141121k0000e010232000c.html (毎日新聞 2014年11月21日) 衆院:解散、総選挙へ…アベノミクス問う 12月2日公示 衆院は21日午後1時からの本会議で解散された。衆院選は「12月2日公示−14日投開票」の日程で行われる。衆院解散は2012年11月16日に民主党政権の野田佳彦首相(当時)が行って以来2年ぶり。安倍晋三首相は、今年4月の消費税率8%への引き上げ以降、経済が低迷していることを受け、来年10月予定の10%への引き上げを1年半先送りすることを決めた。衆院選では、政権の経済政策「アベノミクス」継続の是非のほか、集団的自衛権の行使容認などが大きな争点となる。首相は21日朝、首相官邸で記者団から「解散に臨む気持ちは」と問われたが、「おはよう」と右手を挙げるにとどめ、閣議前の写真撮影の際も硬い表情のままで無言だった。閣議では、全閣僚が閣議書に署名し、憲法7条に基づく解散詔書を決定。「大義なき解散」との批判を念頭に、菅義偉官房長官はその後の記者会見で、「首相はデフレ脱却と経済再生に強い意欲を持っている。解散後に首相が会見して説明する」と述べた。午後の衆院本会議で、伊吹文明議長が解散詔書を読み上げ、解散。民主党は「解散に大義がない」として、慣例となっている「万歳」をしなかった。維新も起立のみで万歳はしなかった。野党各党は今回の衆院解散・総選挙を「延命をはかる解散」と批判している。政府はその後の臨時閣議で、衆院選の日程を正式に決める。首相は就任後の昨年3月、毎日新聞の世論調査で内閣支持率70%を獲得。同7月の参院選で勝利して衆参両院の「ねじれ」を解消した。その後も安倍政権は、堅調な支持率と衆参で多数を占める自民党の「1強多弱」を背景に、安定した政権運営を進めてきた。経済政策では、(1)大胆な金融政策(2)機動的な財政政策(3)民間投資を喚起する成長戦略−−をアベノミクスの「三本の矢」として進め、株価は上昇した。一方、消費税率8%への引き上げを昨年10月に決定し今年4月に実施して以降は、経済が低迷。首相は景気回復の遅れを理由に、今月18日の記者会見で消費税率10%への引き上げを17年4月まで1年半先送りすると明言。そのうえで「国民生活に重い決断をする以上、速やかに国民に信を問う」と衆院解散の意向を表明した。エネルギー政策では、首相は「安全が確認された原発を再稼働する」と訴え、原子力規制委員会の審査を後押ししてきた。 *3:http://qbiz.jp/article/50442/1/ (西日本新聞 2014年11月22日) 衆院選の争点、世論を二分する4テーマ 12月2日に公示される衆院選は、2年間の「安倍政治」を問う選挙になる。国民の間で意見が分かれ、日本の将来に大きく関わる(1)アベノミクス(2)安全保障(3)エネルギー(4)社会保障−の4テーマについて、第2次安倍内閣の実績やこれからの課題を検証し、選挙戦の争点を展望する。 ■アベノミクス <デフレ脱却には道/都市部に偏る恩恵> 衆院選での最大の争点が、安倍内閣の経済政策「アベノミクス」だ。政府、与党が株価や賃金上昇などの成果を強調する一方、4月の消費税増税の影響が長引き、7〜9月期の国内総生産(GDP)が2四半期連続のマイナス成長となるなど、評価は分かれる。「企業がしっかりと収益を上げれば、雇用を増やし、賃金を上げることができる。その好循環を回していく、これがアベノミクスなんです」。安倍晋三首相は衆院解散した21日の会見で、雇用や賃金などの指標を挙げ、成果を自賛した。最大の課題だったデフレからの脱却に光が差してきたのは間違いない。9月の全国消費者物価指数は前年同月比3・0%上昇し、16カ月連続のプラス。消費税増税分を除くと1・0%の上昇で、日銀目標の2%には及ばないが、緩やかな上昇が続いている。雇用でも9月の有効求人倍率が1・09倍と、バブル後の最高(1・10倍)と肩を並べた。2012年12月の第2次安倍内閣発足時と比較すると、日経平均株価は約7千円上昇、円相場は1ドル=85円台から117円台まで円安が進んだ。10月の貿易統計で輸出は金額、数量とも2カ月連続で前年同月を上回り、財務省は「海外需要に加え、円安の影響も出ている」と分析する。 § § 一方、アベノミクスの恩恵にあずかっているのは、大企業や都市部などに偏り、地方や家計に及んでいないという指摘は根強い。9月の消費支出は5・6%減で、消費税が引き上げられた4月以降、マイナスが続いている。物価上昇分を除いた実質賃金は9月も3・0%減と15カ月連続のマイナス。消費税増税を含めた物価上昇に賃金が追いつかず、消費が伸び悩むという図式だ。地域経済の力不足も顕著だ。10月の百貨店売上高は東京や大阪など大都市圏が前年同月比0・9%減だったのに対し、地方は4・8%減と落ち込みが激しかった。14年9月中間決算でも、好業績だったのは円安を追い風にした輸出関連の大企業が中心で、内需関連や地方の中小企業は輸入原材料や燃料費高騰に苦しむ。明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは「円安による物価上昇や、厚生年金保険料の引き上げなどで、家計の負担は拡大している。物価の推移を見る限り、日銀の追加緩和が効く見通しも立てがたい」と指摘した。 ■安全保障 <武力行使、歯止め焦点> 安倍晋三首相は7月、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更を閣議決定した。これまで、日本への武力攻撃があった場合のみ自衛隊が武力行使できると解釈してきたが、「国民の権利が根底から覆される明白な危険」がある場合、他国への武力攻撃であっても、自衛隊の武力行使を可能とした。だが、「明白な危険」の範囲については、与党内でも温度差がある。例えばペルシャ湾ホルムズ海峡のシーレーン(海上交通路)で行う機雷掃海について、首相は「可能」とする立場だが、公明党は慎重姿勢を崩していない。日米両政府は、自衛隊と米軍の協力や役割分担を定めた日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定作業を年内に終える予定だったが、来春以降に先送りした。集団的自衛権を含む安全保障法制も、来年の通常国会後半で審議される。両者は密接に関係しており、自衛隊の武力行使に適切な「歯止め」をかけられるか否かが大きな焦点となる。国家機密の漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法は昨年12月、与党の強行採決で成立。選挙期間中の12月10日に施行される。指定する秘密の拡大解釈や恣意的な運用に対する懸念は強い。政府が設置する監視機関の権限も不十分で、実効性に疑問が残ったままだ。首相は18日のテレビ番組で「(秘密保護法によって)報道が抑圧されるような例があったら私は辞めます」と明言したが、廃止法案が成立しない限り同法は続く。たとえ首相が辞任しても事態は改善しない。 ■エネルギー <再稼働、さらに加速へ> 安倍内閣は、今年4月に策定した新たなエネルギー基本計画で「重要なベースロード電源」と位置付けた原子力発電所の再稼働を推進する姿勢を鮮明にしている。21日の閣議後会見でも、宮沢洋一経済産業相が「安全性が原子力規制委員会で確認されたものについては再稼働を進めるという方針でやってきたし、(衆院選の)公約に明記しないといけない」と強調した。東京電力福島第1原発事故を教訓にして策定された新規制基準に基づき進んでいる規制委の審査は、1番手の九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が地元同意を得て、年明けに再稼働する見込み。関西電力の高浜原発(福井県)や大飯原発(同)、九電玄海原発(佐賀県玄海町)も進んでおり、来年はさらに再稼働が加速しそうだ。一方、基本計画で「導入を最大限加速する」とした再生可能エネルギーの先行きには暗雲が漂う。九電など大手電力会社5社は9月、太陽光発電など再生エネの送電網への接続申し込みが許容量を超えたとして、契約手続きを中断。国が検証作業を進めているが、申し込みの全てが接続できるかどうかは不透明だ。福島第1原発の事故は今も収束せず、10万人以上が避難生活を強いられる中で進む原発回帰。火力発電中心となり、家庭向けの電気料金が震災前より約20%上昇しているのも事実だ。国民生活や企業活動を支えるエネルギーの将来像が問われる。 ■社会保障 <過重労働、根強い懸念> 雇用労働では安倍政権が進める規制緩和の是非、社会保障では制度維持に向けた負担増の在り方が問われる。臨時国会では、企業が派遣労働者を受け入れる期間の制限をなくす法案が廃案になった。政権は多様な働き方を支援すると主張したが、野党は不安定雇用が広がると批判した。政権は労働時間規制の適用を除外する「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を目指しており、過重労働に歯止めがかからなくなるとの懸念が根強い。政権は、医療では75歳以上の一部に実施している保険料の特例軽減措置の廃止や、入院食費の増額を検討している。介護では、特別養護老人ホームの相部屋の利用料引き上げ、年金では少子高齢化に応じて年金水準を徐々に抑制する仕組みの強化などを議論している。 *4:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO80040280S4A121C1MM8000/ (日経新聞 2014/11/22) アベノミクス争点 衆院解散、12月14日総選挙 衆院が21日の本会議で解散され、与野党は「12月2日公示―14日投開票」の衆院選に向けて事実上の選挙戦に突入した。安倍晋三首相(自民党総裁)は記者会見で、自らの経済政策アベノミクスの継続を問う考えを表明。雇用の増加や賃金水準の上昇などの成果を訴えた。野党側は経済格差が拡大したとして持続性と効果に疑問を呈し、対決姿勢を強めている。日本経済新聞社の調べによると、21日夜時点で立候補予定者は与野党で約1千人。1票の格差是正で小選挙区は5減り、今回の衆院選は小選挙区295、比例代表180を合わせた定数475議席を与野党が争う。首相は21日の記者会見で「アベノミクス解散だ。アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか、それを問う選挙だ」と強調した。「100万人以上の雇用増」を成果に挙げた。「アベノミクスが始まって行き過ぎた円高が是正された」とも主張。円安による物価高については「経済対策でしっかり対応していく」と述べた。都市と地方の格差拡大に触れ「まだまだ厳しい地方経済に景気回復の暖かい風を送り届けてこそ、アベノミクスは完成する。この道しかない」と理解を求めた。2015年10月に予定していた消費税率10%への引き上げを17年4月に延期すると改めて説明。「今回のような景気判断による再延期は行わない」と断言した。「野党が皆同意しているから選挙の争点ではないといった声があるが、それは違う。いつから引き上げるべきなのか時期を明確にしていない」と批判した。再増税延期で社会保障を充実させる政策スケジュールの見直しが必要との認識を示す一方、待機児童解消を目指す子ども・子育て支援の新制度を来年4月から予定通り実施する考えを示した。民主党の海江田万里代表は記者団に「アベノミクスが持続的、安定的な経済成長につながるのか」と疑問を投げかけた。維新の党の江田憲司共同代表は「成長戦略の骨抜きが景気失速の最大の原因」と指摘した。次世代の党は金融政策に過度に依存しているとして軌道修正を求めている。 ■アベノミクス、2年の評価は 安倍晋三首相は衆院選でアベノミクスの是非を問うと力説した。2012年12月の政権発足後、金融緩和と財政支出、成長戦略の「3本の矢」でデフレからの脱却を目指してきたが、成果は道半ばだ。行き過ぎた円高の修正によって雇用や所得の改善につながったものの、個人の消費や企業の投資が増え続ける好循環には至っていない。第1の矢、日銀による大規模な金融緩和の効果は円高の修正だ。12年2月に一時1ドル=76円台となった円相場は14年11月に1ドル=118円台と、5割も円安になった。輸出企業の収益が高まり、大手製造業は今期も海外で稼いで最高益をうかがう勢いだ。企業収益の改善は株高にもつながった。第2の矢である財政支出も、政府債務が増したものの景気は押し上げた。2.2%だった13年度の実質成長率は0.7ポイント分が公共投資による押し上げ効果だ。雇用環境は人手不足とも指摘され、完全失業率も3%台まで下がった。今春の大企業の賃上げ率は、15年ぶりに2%台の伸び率となった。ただ4月の消費税率8%への引き上げ分を差し引くと、家計の購買力である「実質賃金」は減っている。輸出企業にはプラスに働く円安も、輸入企業や家計にとっては原材料や食料品の値上がりにつながる。第3の矢である成長戦略は、規制緩和などで企業活動を後押しするとしていた。医療や農業などの「岩盤規制」の突破も狙ったが、実現した政策はまだ少ない。企業側の要望が強い法人実効税率の引き下げも、詰めの議論は途上だ。日本経済の実力を示す潜在成長率は労働力人口の減少などで0%台半ばとされ、政権発足後も伸びていない。日本経済は4月の消費増税後、2四半期続けてマイナス成長になるなど立て直しは道半ばだ。消費再増税の先送りによって財政再建も遅れている。医療や介護、年金といった社会保障分野の歳出見直しは不可欠だ。 *5:http://qbiz.jp/article/50434/1/ (西日本新聞 2014年11月22日) 【景気変調〜アベノミクスの行方】(5)建設 人手不足の長期化深刻 「実家に帰って農家になります」。今年9月、福岡市内の建築足場会社で、10〜20代の職人3人が相次いで辞表を出した。「給料はがんばって出していたが、今の若い人は建設業に魅力を感じてくれない。頭が痛い」と社長。過剰な業務による事故を防ぐには依頼の一部を断るしかない。外国人技能実習生の活用に向けた検討も始めた。今年9月の九州・沖縄8県の有効求人倍率は0・91。バブル期直後の1991年12月以来の高水準だ。特に建設業界は全国的な人手不足が続く。福岡労働局によると、福岡県の建設・採掘業の有効求人倍率は、比較可能な2012年4月以降、1・0倍を超えている。直近の14年9月は、働き口が求職者の2倍以上あることを示す2・12。他県もほぼ同じ傾向という。東日本大震災の復興工事や東京五輪に向けた工事が増え、東北や首都圏に職人が集まっていると言われるが、大本は、就労者の高齢化と若手の減少が同時に進む慢性的な問題だ。中高年が退職期に差し掛かり、今後、さらに深刻化するとみられている。 ■大型工事に遅れ 人手不足により人件費は上昇。円安による資材高とも相まって、各地で大型工事の遅れが散見される。来春の開業に向け、大分駅ビルの建設が進む大分市中心部。駅前の一等地にあった商業施設、大分パルコ(11年に閉店)の跡地は、今年7月から暫定的に駐車場になっている。15年度に完成予定だった大分中村病院(大分市)の新病院建設が、遅れる見通しになったためだ。同病院が、周辺道路の車線減との調整などと並んで原因に挙げるのが、当初の予算から2、3割高くなりそうな建設費。後藤昌一事務長は「早く建てたいが、理想の病院を建てるには慎重に進めた方が得策と判断した」と語る。 ■高校生に見学会 長崎県では8月、県庁舎の建て替え工事の入札で、参加業者が示した金額が県が算出した予定価格を上回り、落札業者が決まらなかった。「公共工事の単価は相場を反映するのが遅く、業者は民間工事を優先しているのでは」と業界関係者。26日にある2回目の開札を前に、県の担当者は「今度こそ決まってほしい」。人手不足解消に向け、竹中工務店九州支店(福岡市)は今年から、建設中のマンションで高校生や専門学校生向けの見学会を始めた。現場の作業を見せて興味を持ってもらう狙い。参加した41人のうち6人が来春から建設業界への就職を決めたという。牧旨之調達部長は「現状のままでは日本の建築技術は衰退する。後継者を増やすには、長い目で見た取り組みが必要」と力を込めた。景気変調の中で、人手不足など長期的な課題も抱える九州経済。アベノミクスの行方が問われている。 PS(2014.11.24追加):秘密保護法の施行には、*6のように、民主主義や三権分立を護る見地からの反対が多く、それだけ重要な問題なのである。 特定秘密保護法の内容 *6より *6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014111801001716.html (東京新聞 2014年11月18日) 秘密保護法施行やめて、市民訴え 国会前、日弁連集会も 12月10日施行の特定秘密保護法に反対する市民団体が18日、東京・永田町の国会前で「国民の知る権利を奪う」と法廃止や施行延期を求めてシュプレヒコールを上げた。国会内では日弁連主催の集会も開かれ「恣意的な秘密指定がされる恐れがある上、国会の監視機能が制限され、三権分立がゆがめられる可能性もある」との指摘が出た。国会前では約130人の市民が「秘密保護法を施行するな!」と書いた横断幕やプラカードを掲げ「情報は市民のもの」「安倍政権の暴走を止めよう」と声を上げた。施行延期などを求める安倍晋三首相宛ての要請書を内閣府に提出した。 PS(2014.11.24追加):TPPに関しては、*7-1のように、農業など眼中にない日経新聞や経団連会長は「TPPの実現は日米関係のさらなる強化に資する」としており、農業を真面目に考えている日本農業新聞や専門家は、*7-2のように、「『日本農業は一人負けで、参加国の輸出増の70%を背負い込む』と米農務省がTPPの効果を試算している」と述べている。だからこそ、米国等はTPPに積極的なのであり、日本は農業を既に古くなっている形の貿易や能力なき外交の生贄にしてはならないのである。 TPPの参加国 農業の今後の懸念とこれまでの交渉実績 ISD条項 *7-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141113&ng=DGKKASFS13H0A_T11C14A1EAF000 (日経新聞 2014.11.13) 経団連会長、「TPP早期合意実現を」 日米財界人会議が開幕 日米の経営者が経済問題などを話し合う日米財界人会議が13日、東京都内のホテルで開幕した。経団連の榊原定征会長は講演で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉について「TPPの実現は日米関係のさらなる強化に資する」と強調した。年内の大筋合意は断念しているが「年明け以降、できる限り早く合意が実現されるよう日米の政治のリーダーシップに期待したい」と語った。会議には、菅義偉官房長官やケネディ駐日米大使が出席した。景気認識に関し榊原氏は、輸入コストの増加など下押し圧力に注意が必要だが「先行きを過度に悲観する必要はない」と指摘した。消費税10%への引き上げは、予定通り実行すべきだと重ねて強調した。 *7-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30768 (日本農業新聞 2014/11/12) 日本農業 一人負け 参加国の輸出増 70%背負い込む 米農務省がTPP試算 米農務省は、環太平洋連携協定(TPP)合意で2025年までに関税が完全撤廃になった場合、交渉参加12カ国の農産物貿易がどう変わるのかを予測した報告書をまとめた。合意によって米国農業は輸出額を最も増やす。一方、参加国全体の輸出増加額の70%は、その輸出先となる日本に押し付けられ、日本農業がほぼ一人負けになると見込んでいる。報告書は、米農務省経済分析局の専門家らがまとめた。各国が既に参加している自由貿易協定などを加味した「通常」と、関税や関税割当を完全撤廃した「TPP」シナリオを比べた。「TPP」シナリオで合意すると、参加国の農産物貿易は6%、計85億ドル(1ドルは約116円)増えると予測する。うち33%に相当する28億ドルを米国が獲得する。これに対し、日本の輸出増加分は、加工品を中心に8300万ドル。参加国全体の輸出増額分のわずか1.4%に過ぎない。一方、参加国の輸出増加額の70%に当たる58億ドル分は、輸入という形で日本が背負い込む。日本の輸入額が増える品目は、食肉が半分を占め、米を含めた穀物、その他の加工品、酪農製品などが続く。日本には貿易収支の面で「焼け石に水」にもならない。安倍政権が20年までに食品輸出額を1兆円に倍増する計画は、この試算からは完全に無視された形だ。報告書が示す日本農業への影響は、これまで日本政府などが試算したものに比べ、極めて小さい数字に抑えられている。例えば米について、日本政府が32%の生産額の減少を見込むのに対し、米農務省試算は3%減に過ぎない。砂糖の生産額は100%無くなるとの予測に対し、わずか2%の落ち込みと見込む。こうした“軽い”減産予測を基に報告書は「TPPで関税を撤廃しても日本農業生産額への影響は大きくない」などと指摘。TPP交渉で日本が関税撤廃に踏み切るよう背中を押した。日本政府の試算と大きく異なるのは、米農務省試算が関税以外の豚肉の差額関税制度や砂糖の価格調整制度などを織り込んでいないことが大きい。報告書の執筆に当たった米農務省関係者の一人は「国際市場で日本向けに輸出できる数量が十分に手当てできないこと、日本の消費者が国産志向を持っていることなどが米日の試算で影響が異なった原因だ」と説明する。 ●生産への影響評価不十分 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏に聞く 米農務省がまとめたTPPの試算に対する見方について、東京大学大学院の鈴木宣弘教授に聞いた。農務省は中間選挙での共和党の勝利を見込んで、このタイミングで試算を提示したと考えられる。共和党は徹底した自由貿易推進の立場をとっており、TPPでさらに徹底した農産物の関税撤廃を日本に迫るだろう。域内の農産物輸入増加分の7割を日本が負担する「一人負け」なのに、国内生産はほとんど減らないという試算は極めて恣意的である。この種の試算では安い輸入品が入ってきても国産品は「別物」で、国内生産はあまり影響を受けない。輸入と国産の代替性を現実的な水準に変更すれば、試算結果は大きく変化する。日本産米に匹敵するジャポニカ米の供給余力を現時点での生産量で評価しているのが問題だ。主産地のカリフォルニア州は水が不十分で余力が小さいとしても、アーカンソー州は水が豊富である。ビジネスチャンスが日本で生じれば、同州ではジャポニカ米に切り替えられる。ベトナムでもジャポニカ米はすでに60キロ当たり1200円程度で生産され、「コシヒカリ」を欧州に輸出している。日本の米農家の現地検証では、日本と同等の品質米も同4000円程度で生産可能だ。日本の商社などもTPPを見越した準備を始めている。中長期的な供給余力と低い生産コストを考慮すれば、農務省の試算結果とは全く異なり、日本の農業生産への影響はもっと大きくなる。 PS(2014.11.25追加):原発の安全性について、鹿児島県の伊藤知事は、*8-1のように、「もう命の問題なんか発生しない」と明言して川内原発の再稼働に同意したが、原発が事故を起こせば、癌、白血病、心臓病等の疾患が増えるのは当たり前だ。これについて、*8-2で、英国出身の放射線生物学者キース博士(73)が、11月24日、「国連科学委員会の報告書が掲載している被曝線量でも癌の過剰発生は予測され、国連科学委員会は、透明性、独立性を欠いて非科学的であるため解散すべきだ」としている。私は、キース博士の方が、勇気を持って、公正でまっすぐな意見を言っていると考える。 *8-1:http://mainichi.jp/select/news/20141108k0000m040112000c.html (毎日新聞 2014年11月8日) 川内原発再稼働同意:「命の問題発生せず」鹿児島知事 原発の立地県として初めて、鹿児島県の伊藤祐一郎知事と県議会が7日、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に同意した。原発事故への不安が根強い中、伊藤知事は国の新たな規制基準とそれに基づく九電の対策を高く評価し、「もう命の問題なんか発生しない」と明言。しかし、再稼働に反対する県民は「安全神話の復活だ」と猛反発している。両者の主張は相いれないまま、知事判断で再稼働の地元手続きは完了した。「やむを得ない」。伊藤知事は7日、県議会が再稼働陳情を採択した後に記者会見を開き、自らも同意したことについてこの言葉を連発した。伊藤知事はこれまで、再稼働の必要性を訴えつつ「脱原発に向かって模索する」とも主張してきた。今回、再稼働に同意したことに、伊藤知事は「国民生活のレベルを守り、わが国の産業活動を維持する上で(原発は)重要な要素だ」と理解を求め、「わが国の当面の判断として原発を活用する以外に道がない。安全性がある程度約束されるのであれば、それがベターだ」として「やむを得ない」の理由を説明した。一方、原発事故への不安については「福島であれだけの不幸な事故が起きた。安全神話が全部崩れたのは確かだ」との認識を示しながらも、原発事故後に設けられた国の新規制基準を高く評価。原子力規制委員会の指針や九電の評価を引用し、事故が起きても原発から5.5キロの放射線量は毎時5マイクロシーベルトだとした上で「避難の必要がない。普通に生活してもいい」と述べ、「もし福島みたいなことが起きても、もう命の問題なんか発生しない」と明言した。福島の事故は収束せず、避難計画の実効性や火山対策にも疑問の声が上がる中での再稼働同意に、納得のいかない住民は多い。この日、県庁には全国各地から再稼働反対を訴える400人以上が集まり、県議会の傍聴席を埋めた。午前10時の開会前から「再稼働にどんなメリットがあるのか」などのヤジが飛んだ。しかし、県議会(定数51、欠員2)は自民県議団が33人を占め、再稼働を進める政府・自民党本部の方針に従えば、再稼働陳情が採択されるのは必然だった。反対討論を行った柳誠子県議(県民連合)も「歴史に禍根を残す一日」と無念さをにじませた。 *8-2:http://digital.asahi.com/articles/ASGCR4HRLGCRUGTB002.html?_requesturl=articles2FASGCR4HRLGCRUGTB002.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGCR4HRLGCRUGTB002 (朝日新聞 2014年11月25日)「国連科学委は非科学的」 元WHO欧州地域顧問 旧ソ連・チェルノブイリ原発事故の健康影響調査などに携わってきた英国出身の放射線生物学者キース・ベーバーストック博士(73)が24日、東京都内で朝日新聞記者の取材に応じた。東京電力福島第一原発事故後のがんの増加に否定的な報告書を出した国連科学委員会(UNSCEAR)を「透明性、独立性を欠き非科学的」と批判し、「解散すべきだ」と訴えた。博士は取材に対し、科学委が今年4月に発表した福島第一原発事故の影響についての報告書で「被曝によるがんの増加は予測されない」などとしたことに、報告書が掲載している被曝線量でも「がんの過剰発生が予測される」と反論した。たとえば報告書は事故から約1年半後までに原発敷地内で働いた作業員で10ミリシーベルト以上被曝した人は1万人近くいるとしており、これだけで50人近くのがんが増えると主張した。科学委の中立性にも疑義を訴えた。理由として、原子力推進計画をもつ国が委員を指名し、科学委に資金提供している▽委員の原子力産業内での雇用履歴が公表されず、放射線リスク評価の際の利益相反がないことの宣誓書が添付されていない――などをあげ、「利権からの独立もなく、科学の名に値しない偏向した報告書だ」と述べた。博士はWHO勤務時代、原子力を推進している国際原子力機関(IAEA)から「常に介入圧力を感じていた」と語った。福島第一原発事故に関する報告書が公表まで3年以上もかかったことに疑問を呈し、内部情報をもとに「結論を巡る批判やIAEAなど他の国連機関の影響」の可能性を指摘した。博士はチェルノブイリ事故の被災地での甲状腺がんの増加をいち早く指摘。世界保健機関(WHO)欧州環境健康センターで放射線公衆衛生地域顧問などをつとめてきた。今回、原発事故に関する「市民科学者国際会議」を主催する市民団体の招きで来日した。 PS(2014.11.25追加):憲法改正論者の論拠は、*9のように、「現行憲法は占領下で制定されたので、日本国民が憲法を定めるべき」というのが多い。しかし、私は、日本の内部で改正すれば、小さな変革はできても、ここまで大きな民主化や男女平等への革命的変革はできなかったと考える。そのため、憲法を改正すれば、国民にとって(ここが重要!)良くなるのか悪くなるのかをしっかり議論すべきであり、私自身は、自民党の改正案よりも現行憲法の方が、ずっとヒューマニズムに富み見識が高いため、まず、この憲法を守るべきだと考えている。 自民党改正手続案 自民党改正草案 一般へのアンケート(有権者も勉強が必要) *9:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014111702000203.html (東京新聞 2014年11月17日) 衆院憲法審が盛岡で公聴会 改正国民投票法議論 衆院憲法審査会は17日、盛岡市で大学教授や弁護士ら5人による地方公聴会を開いた。改正国民投票法の施行を受けたもので、憲法改正に対し賛否の意見が出た。衆院事務局によると、憲法審査会としての地方公聴会開催は初めて。宮城県議の相沢光哉氏は「現憲法は占領下で制定された。(衆参両院それぞれで総議員の3分の2以上の賛成が必要となる)改憲の発議要件は緩和されるべきだ」と主張。弁護士の小笠原基也氏は「改正国民投票法は採決までの経緯で十分な議論がなく、廃止すべきだ」、岩手県生活協同組合連合会会長理事の加藤善正氏は「改憲の必要性を感じるのは国民の少数だ」と述べた。日本大名誉教授の小林宏晨氏は「閣議決定による集団的自衛権の行使容認解釈は、国連憲章に近づいており、非常に良い方向だ」と指摘した。
| 民主主義・選挙・その他::2013.12~2014.11 | 03:23 PM | comments (x) | trackback (x) |
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