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2014,12,03, Wednesday
消費税増税と税収の関係 *1-1より 2014.11.28、29日経新聞より <消費税を導入してからワニの口は開き始めた> (1)アベノミクスの“この道”は、昔の日本に逆戻りする道である 1)消費税増税と社会保障の切り捨ては、今後必要となる財やサービスの発展を阻む *1-1は、財務省の論理を記載しており、「ワニの口」とは国の税収と歳出の推移を示したもので、「歳出-歳入」の差が次第に広がって、大きく開いたワニの口の形をしているため、名付けられたものである。そして、「消費税増税」そのものが目的である財務省は財政再建を旗印として、社会保障費の確保を人質に、消費税再増税を訴えているわけだ。 また、メディアも、軽減税率適用時に自らが軽減税率適用対象となる目的と財務省のオウム返ししかできない質の低さにより、*1-1のように、「再増税先送りは債券、株、円のトリプル安を招く恐れがあり、将来に大きな禍根を残しかねない」とか、*1-2のように、「消費再増税、信頼維持に重要」とか、*1-6のように、「不利益の分配も問う時」などという記事を掲載している。 しかし、省毎に縦割りの中で、財務省だけで考えれば財政再建には増税しか思いつかないだろうが、私が、このブログの「年金・社会保障」「資源・エネルギー」「まちづくり」などのカテゴリーに何度も記載したように、①エネルギーを国産の再生可能エネルギーに変換する ②排他的経済水域内で天然ガスなどの資源を採掘する ③日本国民(高齢者が多い)に本当のニーズがある財やサービスを開発し生産して、間もなく同じものが必要となるアジアや世界に輸出する など、本物の経済成長を促して財政健全化に資する正道は、他にいくらでもあるのである。 それでも、高齢者に対する年金や社会保障をカットしたがるのは、③の日本国民に本当のニーズがある財やサービスを開発・生産することを阻み、ヒューマニズムに反すると同時に、今後、世界で必要となる産業を育成することをも妨げている。 2)アベノミクス政策では日本経済は発展せず、実質賃金や実質年金収入は減る以外にない 安部首相は、企業に何度も賃上げを頼んでおられるが、*1-3のように、1人当たりの名目給与総額が0.5%増加しても実質賃金は減少し続けており、これは当然の結果だ。何故なら、企業は、その生産性以上の賃金を支払うことはできず、ここで言う生産性とは会社全体、もしくは国全体の平均であるため、不要な仕事をして給料をもらう人が多ければ多いほど、全体の生産性は低くなるからである。 そのため、景気対策として不要な工事を行えば、全体の生産性は低くなる上、辺野古の埋め立てのように、その工事の結果として環境にマイナスの影響が出て、さらに経済の足を引っ張ることもある。 なお、*1-3に、「①物価の影響を加味した実質賃金は2.8%減と16カ月連続で減少」「②賃金の伸びは物価上昇に追い付かない」などと書かれているが、①については、名目で語ることはそもそも意味がなく実質のみが意味のある数字だ。また、②については、まさに日本を昔の低賃金の状態に戻して輸出を増やすべくインフレ政策を行っているので実質賃金が下がるのは当然のことだが、歴史の進歩と新興国の台頭で既に日本が輸出を増やすことは不可能になっているため、目的は達せられない。そのため、問題点の突き方が甘いのである。 しかし、*1-4では、「個人消費の低迷が続いているものの、企業の投資意欲は高い」としている。これは、マイナス金利による設備投資と公共投資による投資需要が主な理由だろうが、自動車と建築向け素材しか眼中にないようでは、お先真っ暗だ。 このような中、*1-5で、公明党の山口代表が「アベノミクスの推進に加え、家計などを支援するための緊急経済対策の速やかな実施を訴えていく」という考えを示されたそうだが、「きめ細かな配慮」と称する意図的な需要操作を行うよりも、減税や年金削減の中止、必要な社会保障の充実を行った方が、21世紀に世界で必要とされる需要に合った財やサービスを開発し、生産・販売するのに役立つ。また、消費税増税があると必ず緊急経済対策の実施と称する公共投資などの歳出が増加するのが、「ワニの口」が開く理由だったことを決して忘れてはならない。 3)「不利益の分配が必要」というのは、本当の責任者の責任逃れと乏しい発想力の結果である 1950年と2012年 時代による人口 *2-1より 2014.11.28東京新聞 の人口ピラミッド ピラミッドの変化 比較(世代毎) *1-6には、「①いちばん恩恵をこうむっているのが高齢者で、投票する頭数の多さからその世代の利益が優先されるシルバー・デモクラシーに日本政治は流されている」「②若い人が割を食う世の中はやはり問題だ」「③所得や地域だけでなく世代の格差もならすことを考えなければならない」「④これから、より迫られるのは『不利益を分配する政治』だ」などとしている。 しかし、①については、人口の中で割合が増える高齢世代のニーズにあう財・サービスを生産するのが次の産業発展に繋がることを忘れてはならないし、高齢者を粗末にすれば若い世代が大切にされるということも絶対になく、これは単純な対立の構図を作って見せる誤った考え方である。さらに、投票率が高いのはシニア世代であり、民主主義における意志決定は投票に依るため、棄権する人の意見は反映されないことも、若い世代は認識しておくべきだ。 また、②については、年金積立金の放漫な管理の責任を、高齢者と若者の世代間対立に落とし込み、本当の責任者を見えなくして高齢者いじめをしているが、一昔前と違ってこれからのシルバー世代は、年金保険の支払いをしてきており、「若い人が割を食う」という表現は当たらない。また、これからのシルバー世代は必要なものに対する消費性向が高いため、「消費は若者がするものだ」という先入観も古い。 さらに、③については、格差をなくすためには一番下に合わせるしかないため、格差の解消を唱えれば努力した人が報われる社会にはならない。例えば、皆一緒にゴールする100m走がオリンピックにあったら、努力して記録を伸ばし、そこに参加する人はいなくなるのと同じである。そのため、最低線のセーフティー・ネットは整えた上で、公正な(ここが重要)競争の結果できた格差はあるのが当然とすべきだ。 なお、④のように、「不利益の分配が必要」という声は多いが、これは責任なき人にも責任を負わせることによって真の責任者が責任を逃れる手法である上、実際には(1)の1)に記載したとおり、解決する手段は他にいくらでもあるのに皆が損することを薦めている変な理屈である。薬は、病気の原因に作用するから効くのであって、苦いから効くのではない。 (2)日本が本当に進むべき道は、どういう道か 1)国民の豊かさや幸福を求めることとその指標について 国民の豊かさは、名目ではなく実質で測らなければわからないため、今後は実質のみで議論すべきだ。また、豊かさは、一人当たりの豊かさによって感じるものであり、国全体の実質GDPが多くても、国民一人当たりの実質GDPが小さければ、国民は貧しいのである。 ただし、国民一人当たりの実質GDPが同じでも、例えば、①不自由なく暮らせる ②社会保障がしっかりしていて安心である ③土地や家が広い ④食べ物が安全で美味しい ⑤環境がよい ⑥自由である など、国民の幸福を増す他の要素はあるだろう。 2)アベノミクスの「三本の矢」では、国民は貧しくなるだけだ アベノミクスの三本の矢とは、①大規模な金融緩和 ②拡張的な財政政策 ③民間投資を呼び起こす成長戦略 のことだ。 このうち、①については、日銀がお金を印刷して発行すればよいためすぐできたのだが、これにより円の価値が下がって尺度が変わったため、円の価値を反映する為替レートは円安になり、企業価値を反映する株価は上昇し、財・サービスの価値を反映する物価は上がった。従って、円で生活している日本国民の資産は減り、給料も目減りした。「デフレを脱却してインフレになった」とは、こういうことである。 また、②の拡張的な財政政策は、東日本大震災から復興しなければならないため、迅速に必要な工事をすれば十分だった筈である。しかし、その上さらに財政出動したため、建設関係のモノ不足と作業員不足で、同じ歳出でもできあがるものが減り、工期も延びた。また、政府が景気対策として行う財政出動は、出動することが目的であるため、生産性を高めず、環境を壊した上、無駄遣いという事例が多い。 次に、③の民間投資については、民間は、(正常な経営が行われていれば)需要のある生産を行うためにしか投資しないため、これを誘うためには、本当に必要な需要が増える必要がある。そして、この典型が、人口が増えたのにまだ整っていない高齢者関係の需要、家事の外部化を行うための需要、新エネルギー関係の需要なのだが、年金や社会保障を削減し、原発再稼働を薦めてこの需要を抑えたため、本当に必要な需要が増えず、民間投資も勢いづかないという結果を招いている。 (3)年金減額、労働条件の悪化、人件費の削減が経済にもたらす影響 1)年金減額の影響について *2-1、*2-2に書かれているように、年金の給付水準は、2回目の減額が終わった現段階で、削減前に比べて国民年金(基礎年金)で月額1,041円、厚生年金(標準世帯)で月額4,015円カットされ、その上、もう一回減額があり、これ以外にも給付抑制が進む予定だそうだ。また、物価上昇時には年金給付の伸びを物価上昇より低く抑える「自動抑制」が来年度にも動きだすとのことである。 これは、「切迫する年金財政を支えるため」として、民主党の野田政権時代に自、公、民の三党でまとめた「税と社会保障の一体改革」で決めたそうだが、このシナリオを描いたのは財務省・厚労省だ。そして、「税と社会保障の一体改革」が行われれば、もともと少ない年金しかもらっていない高齢者は生活できなくなる。また、「年金の財源は現役世代が負担し続けてきた」とも書かれているが、これから高齢者になる人は現役時代に年金保険料をしっかり支払った人が多く、年金が積立方式から賦課課税方式に変更されたのは1985年であり、賦課課税方式ではこのような結果になるのは、人口ピラミッドを見て前からわかっていなければならない。つまり、この積立金不足は、厚労省はじめ政府の年金制度に関する失政のつけであるのに、その責任を高齢者の二重負担として、これからの高齢者に強いるものなのである。 さらに、公的年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、今年10月、株式の運用比率を大幅に引き上げる方針を決め、「成長への投資に貢献する」としたそうだが、これは、リスクの高い株式に投資するということであるため、将来の年金支給に充てるべき積立金が株価下落のリスクに晒される可能性は高く、危険な行為である。 そして、マクロ経済スライドによる年金支給額の抑制により、人口の大きな割合を占める年金生活者の実質所得が減らされ、需要があっても購入できない状況になれば、本物の需要は伸びず、景気の足を引っ張り、これを政府の生産性の低い公共投資で補えば、国全体の生産性はさらに低くなるとともに、新たな産業の創造はできない。 *2-3のように、「実質国内総生産(GDP)のうち、公共投資による押し上げ分は5割弱を占め、建設労働者が不足し、民間工事の一部に人手が回らなくなった」そうだが、民間需要や民間投資こそが生産性を高めるために必要な投資であるため、国が国民の所得をこっそり移転して生産性の低い公共投資に無駄遣いすることは国益にならない。なお、公的年金の支給開始年齢の引き上げには、私も賛成だが、それは定年の延長と同時に行わなければ、失業者や暮らせなくなる高齢者が増えるだけである。 2)非正規、派遣という働かせ方による労働条件の悪化と人件費の削減について 非正規、派遣という働き方では、労働者として労働法で保護されることができない。そのため、この働かせ方は、一時的なものとして雇用の増加に含めるべきではないだろう。 また、非正規労働者・派遣労働者は、生涯所得が低くて不安定な雇用形態である上、社会保険料の支払いを行っていない人が多いため、このような労働者が増加することは、本人にとっても、他の国民にとっても困ることなのである。 (4)税制に組み込まれた所得の再配分 1)所得税に組み込まれた所得の再配分効果 所得税は、累進課税であるため所得の大きい人ほど高い税率になり、所得の再配分効果が税制の中に組み込まれている。また、法人税も所得税も景気がよくなると増え、景気が悪くなると減るため、景気調整効果(ビルトインスタビライザー)を内蔵している優れた税制である。 しかし、消費税は誰に対しても同様に税を課すため、所得の低い人ほど税率が高くなる。このため、公明党は軽減税率の適用を公約にしているが、これは何を軽減するかに関して意図が入りやすく、軽減税率を適用すれば、それだけ消費税増税による税収が落ちる。つまり、国税としての消費税は、あまりお勧めではない税だと、私は考えている。 そのため、戦後、シャウプ勧告を出して日本の税制の基礎を作ったアメリカでは、付加価値税(消費税に似たもの)は国税ではなく州税となっており、各州で自由に税率を決めることができる。私も、消費税は全額地方税として県や市町村で自由に税率を決められるようにするのがよいと考える。そして、税収を移転した分は地方交付税を減らし、それぞれの地域で努力に見合った税収があるようにすべきである。 2)衆院選で作るべき構図は、一強の転換だ *3に、東京新聞が、「一強継続か転換か」と題した記事を書いているが、今回の一強の状態で、自民党は、国民の「知る権利」を侵す特定秘密保護法、武器輸出三原則の事実上の撤廃、原発の「ベースロード電源」としての位置付けなどを、まともな国会論戦もなく国民を馬鹿にした目線で、次々と決めていった。そのため、私は、野党との力のバランスが重要であると考えている。 また、「この道」より賢い道については、私は、このブログの2012年12月18日をはじめ「年金・社会保障」のカテゴリーで、既に何度も記載している。 <財務省・厚労省の論理をそのまま語る政治家やメディアは、その役割を果たしていないこと> *1-1:http://qbiz.jp/article/50860/1/ (西日本新聞 2014年11月29日) 閉じない「ワニの口」 歳出削減と税収増、見通せず 中央官庁が集中する東京・霞が関で、「ワニの口」と呼ばれるグラフがある。国の税収と歳出の推移を示したもので、両者の距離が広がる様子が、大きく開くワニの口のように見える、というわけだ。財政再建を使命とする財務省の幹部らはこのグラフを手に夏以降、政府、与党幹部を回って来年10月の消費税再増税の必要性を訴えてきた。一方で4月の消費税増税で景気は失速し、夏場の天候不順や円安による物価高で消費は低空飛行のまま。「再増税して景気がさらに悪化すれば元も子もない」。安倍晋三首相周辺からは公然と再増税延期論も出てきた。首相が再増税の是非を有識者に聞く「景気点検会合」が始まった翌日の11月5日。危機感を強めた財務省は麻生太郎財務相を先頭に事務次官、主計局長、主税局長らが顔をそろえて首相に直接再増税を迫った。だが時既に遅し。延期への流れは固まっていた。 □ □ 消費税増税の目的は財政健全化と、増え続ける社会保障費の確保だった。少子高齢化により社会保障費が毎年約1兆円伸びているのに対し、増税延期で2015年度は約1兆5千億円の減収が見込まれる。再増税を果たせなかった財務省は早速“意趣返し”に出た。麻生財務相は25日、消費税10%への引き上げ時に予定していた低年金者への月5千円の上乗せ給付について、実施を先送りする意向を示した。「法律で10%に上げた時と書いてあるので、その時にやらせていただく」とにべもない。塩崎恭久厚生労働相も「当然優先順位はつけなきゃいけない」と表明。首相の指示を受け15年4月からの子ども・子育て支援新制度を予定通り行うことを最優先にする構えだが、実施延期や規模縮小になる事業が出るのは必至だ。 □ □ 財政健全化について「国内総生産(GDP)に対する基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の赤字の割合を15年度に半減、20年度に黒字化する」とする政府目標に影響が及ぶのも避けられない。首相は再増税延期の一方で「財政健全化目標も堅持する」と明言したが、内閣府の最新の試算では20年度のPBは11兆円の赤字だ。これは15年10月に消費税を上げ、税収も約69兆円と、過去最高だった約60兆円(1990年度)を大きく上回ることが前提。再増税見送りで目標達成はさらに困難になった。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「再増税先送りは将来に大きな禍根を残しかねない。財政規律の維持に失敗すると債券、株、円のトリプル安を招く恐れがある」と警告する。再増税を含め税収増を図るとともに、歳出削減に抜本的に切り込む−。「ワニの口」を閉じる手段は限られるが、その先行きは見通せない。 *1-2:http://qbiz.jp/article/48400/1/ (西日本新聞 2014年10月24日) 消費再増税、信頼維持に重要 閣議後に財務相 麻生太郎財務相は24日の閣議後記者会見で、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げに関し「国際社会における日本の信用だ。確実に実行することが日本への信頼を保証する意味でも非常に大きい」との認識を示した。同時に、再増税に備えた経済対策について「12月の予算編成時期までにきちんと対応しないといけない」との考えをあらためて強調した。自民党の山本幸三元経済産業副大臣ら再増税に慎重な議員が、先送りを主張していることに関しては「自由な意見を言えて、最終的に決められた通りにやっていくのが自民党の良き伝統だ」と語った。 *1-3:http://qbiz.jp/article/51011/1/ (西日本新聞 2014年12月2日) 1人当たり給与総額、0・5%増 10月、実質賃金は減少続く 厚生労働省が2日発表した10月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、1人当たりの全ての給与を合わせた現金給与総額は前年同月比0・5%増の26万7935円と、8カ月連続で増加した。春闘の賃上げや堅調な雇用情勢を反映した。ただ、物価の影響を加味した実質賃金は2・8%減と16カ月連続で減少。消費税増税や円安の影響で、依然として物価上昇に賃金の伸びが追い付いていない。基本給などの所定内給与は0・4%増の24万2370円。フルタイムで働く一般労働者が0・5%増、パートタイム労働者は0・3%減だった。残業代などの所定外給与は0・4%増の1万9673円。残業時間が伸び悩んだことから、プラス幅は前月の1・9%増から縮小した。ボーナスなどの特別給与は6・0%増の5892円だった。 *1-4:http://qbiz.jp/article/50923/1/ (西日本新聞 2014年12月1日) 設備投資伸び率拡大、5・5%増 7〜9月GDP上方修正か 財務省が1日発表した7〜9月期の法人企業統計は、金融・保険業を除く全産業の設備投資が前年同期比5・5%増の9兆4383億円と6四半期連続で増えた。伸び率は4〜6月期の3・0%増から拡大した。個人消費の低迷が続いているものの、企業の投資意欲は底堅いことを示した。4〜6月期と比べた季節調整済みの設備投資(ソフトウエアを除く)も3・1%増だった。内閣府が8日に発表する7〜9月期の実質国内総生産(GDP)改定値は今回の結果が反映され、速報値の前期比年率1・6%減から上方修正されるとの見方が出ている。前年同期と比べた設備投資の内訳は、製造業が10・8%の大幅増で2四半期ぶりのプラス。非製造業も2・7%増と6四半期連続で増えた。全産業では売上高、経常利益とも伸ばし、財務省は「緩やかな回復基調が続いている経済全体の傾向を反映している」と分析した。設備投資は、スマートフォン向け電子部品や自動車関連の生産能力の増強が全体を押し上げた。非製造業では、商業施設やオフィスビルの開発投資がけん引した。売上高は全産業で2・9%増と5四半期連続で増えた。消費税増税に伴う駆け込み需要の反動減から持ち直し、伸び率は4〜6月期の1・1%増を上回った。製造業が0・9%増、非製造業は3・8%増といずれも増えた。天候不順の影響で飲料など食料品が減収となった一方、自動車や建築向け鋼材需要は好調だった。経常利益も7・6%増で、製造業が19・2%増と特に大きく伸ばした。 *1-5:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141130/k10013606251000.html (NHK 2014年11月30日) 公明 山口代表 家計支援の緊急経済対策を 公明党の山口代表は東京・北区で街頭演説し、衆議院選挙では安倍政権の経済政策・アベノミクスの推進に加え、家計などを支援するための緊急経済対策の速やかな実施を訴えていく考えを示しました。この中で公明党の山口代表は安倍政権の経済政策・アベノミクスについて、「働く人の数は増え賃金は上がってきているが、実感できていないのも実情だ。消費税率を10%に引き上げるまでの間に賃金アップを行い、物価に追いつき追い越せるようにしていくのが我々の責任だ」と述べ、アベノミクスを推進していく考えを示しました。そのうえで山口氏は、GDP=国内総生産の伸び率が2期連続でマイナスになったことについて、「今の経済状況を考えると、ことし4月に消費税率が上がり、物価高の直撃を受けている人たちも多い。家計や中小企業を助け、大都市から地方に経済の流れを及ぼしていく対策もあわせて実行しなければならない」と述べ、衆議院選挙では家計などを支援するための緊急経済対策の速やかな実施を訴えていく考えを示しました。 *1-6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141203&ng=DGKKASDE01H1P_R01C14A2MM8000 (日経新聞 2014.12.3)「不利益の分配」も問う時だ 論説委員長 芹川洋一 これまでの2年間を問い、これからの4年間を託すこんどの選挙。いちばんの争点はアベノミクスだという。有権者のふところを温かくするための経済の手法をめぐる政治のぶつかり合いである。もちろん大切なことだが、それだけでなく政治は口に苦い話にも向き合う必要があるのではないだろうか。小選挙区選挙は、政権・首相・政策の3つを選択するものだが、残念ながらこんどは政権も首相も選べる状況にない。野党のふがいなさを嘆いてもしかたがない。安倍晋三首相みずからが設定したように、アベノミクスを中心とした政策の選択にならざるを得ない。政治が個々人の豊かさを実現するための進め方をめぐって論じ合うことは、けっこうなことだ。世の中はこうあるべきだといった物の考え方で対立し接点が見いだせないのより、ずっとましだ。経済を真っ正面にかかげ政権の命運をかけるのは池田勇人内閣以来である。高度成長の当時、日々ふところが豊かになっていく実感があった。所得倍増はなんなく達成した。遠い昔の話である。デフレ脱却をめざすアベノミクスのひとつの特徴は、期待という人の心理に働きかける経済政策である。今すぐではなく、時間軸をつかいながら、ちょっと先の豊かさに期待を持たせる時間差攻撃がミソだ。「期待の政治」である。ひと昔前の自民党は右肩上がりの経済を前提に、利益の分配がお家芸だった。公共事業を中心に全国津々浦々までみんな等しく豊かになる「利益の政治」だった。しかしもはやその手法は使えない。すぐさま利益を与えるのも無理だ。期待の政治はそうした中から出てきた変化球である。それが決して悪いわけではない。「豊かで自由で安全な社会」をめざしてきたのが戦後日本である。社会の安定が個人のふところによるのは間違いない。期待の政治がもたらしたのは資産を持つ人だけのふところの温かさなのか、資産がなくともこの先まだ可能性はあるのか、これまでのやり方ではうまくいかないのか……アベノミクスをめぐる議論は大いにたたかわせる必要がある。ただ心配なのは、自分たちのふところの豊かさを追い求めるのはいいが、子や孫のふところまでちゃんと考えているかどうかという点だ。消費再増税の延期について、中止を主張する政党は別にして、選挙の争点にはなっていない。デフレを脱却しまず経済を立て直さないことには前に進めないというのはその通りだ。経済を大きくするのが何より大事だ。成長戦略が促されるゆえんだ。しかしどう考えても、膨大な借金を抱えたままで、この国が先々までやっていけるわけがない。少子高齢化はいやおうなく進む。地方はどんどん疲弊していく。入るを量りて出ずるを制すしかない。とりわけ毎年増えていく社会保障費の抑制はやむを得ない。いちばん恩恵をこうむっているのが高齢者で、投票する頭数の多さからその世代の利益が優先されるシルバー・デモクラシーに日本政治は流されていないかどうか。若い人が割を食う世の中はやはり問題だ。所得や地域だけでなく世代の格差もならすことを考えなければなるまい。これから、より迫られるのは「不利益の政治」のはずだ。それを知らん顔して論戦を交わしていていいものかどうか。過去の業績と将来への期待をはかりにかけながらの選択になるとしても、不利益も視野に入れたものでありたい。そうしなければこんどの選挙は次につながらない。 <年金減額や高齢者切り捨てでは、経済にも良い結果が出ないこと> *2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014113002000124.html (東京新聞 2014年11月30日) <安倍政治2年 くらしこう変わった> (3)国民年金 年金の給付水準は、本来より高い「特例水準」が二〇〇〇年度から続き、直近で2・5%高くなっていた。これの解消に向けて、昨年十月、今年四月、来年四月と三回にわたって段階的な引き下げが行われている。物価の上昇分は勘案されているが、それでも二回目の減額が終わった現段階で、削減前に比べて国民年金(基礎年金)は月額千百四十一円減少。厚生年金(標準世帯)は同四千十五円のカットになった。もう一回減額がある。これ以外にも、給付抑制が進む予定だ。年金給付は物価に連動して上下するが、物価上昇時に給付の伸びを低く抑える「自動抑制」が、早ければ来年度にも動きだす。物価下落時には、それ以上に給付を減らす仕組みも検討されている。特例水準の解消は、切迫する年金財政を支えるため、野田政権時代の一二年六月に自民、公明、民主三党でまとめた「社会保障と税の一体改革」で決まったこと。自動抑制も〇四年の年金制度改革に基づく措置で、いずれも安倍政権が決めたわけではない。そもそも特例水準は時の政権が受給者の反発を恐れて据え置いてきたもので、その財源は現役世代が負担し続けてきた。ただ、アベノミクスに伴う円安で物価上昇が続く中だけに、給付抑制策が既定方針通り進んだことは、年金生活者にとって大きな負担感をもたらす結果になった。低所得者に対しては上乗せ給付制度の新設が予定されているが、消費税率10%への再増税が財源とされている。再増税が先送りされ、現段階で実現の見通しは立っていない。一方、年金をめぐっては、公的年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が今年十月、株式の運用比率を大幅に引き上げる方針を決めた。「成長への投資に貢献する」という安倍晋三首相の意向に沿い、約百三十兆円ある積立金を経済成長に活用する動きだが、将来の年金支給に充てる積立金が、株価下落のリスクにさらされる懸念もある。さらに、第一次安倍政権時の“宿題”もある。年金記録問題だ。〇七年の参院選で首相は「最後の一人まで年金を支払う」と約束した。しかし、「宙に浮いた年金記録」のうち、四割にあたる約二千百十二万件は持ち主が不明のまま。厚生労働省と日本年金機構は事実上、照合作業を打ち切っている。 *2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11480752.html (朝日新聞 2014年11月29日) 年金、初の実質減額へ 来年度1.1%程度 物価上昇で発動 公的年金の支給額の伸びを物価上昇よりも低く抑える仕組み(マクロ経済スライド)が、来年度に初めて実施されることが確実な情勢となった。2014年の通年での物価上昇が決定的となったためだ。これにより年金の支給水準は来年度、物価に比べて実質的に目減りすることになる。マクロ経済スライドは、少子高齢化で厳しくなる年金財政を維持するため04年に導入された。来年度の抑制額は1・1%ほどが見込まれている。国民年金を満額(月6万4400円)もらっている人で言うと、物価上昇に対応した本来の増額分から、月に700円ほど目減りする。年金額は本来、前年の物価や賃金の上昇に合わせ、翌年度から増額される。マクロ経済スライドは、例えば物価が2%上昇しても年金は2%までは上げず、支給額を実質的に減額していく。条件がそろえば自動的に発動されると法律で決まっている。抑制幅は、保険料を払う働く世代の減少度合いなどに応じて決まる。ただし物価下落時は発動されないルールがある。制度導入後デフレが続いたことなどから、まだ一度も発動されていない。しかし今年は経済状況が変わった。総務省が28日に公表した10月の消費者物価指数が前年同月比で2・9%上昇。1~10月の消費者物価指数は前年比約2・6%上がった。また、かつて物価下落時に年金額を据え置いたことで高止まりとなっている支給水準(特例水準)を解消するため、来年4月に0・5%分の引き下げが決まっている。このため来年度は、マクロ経済スライドによる抑制の約1・1%と特例水準解消分をあわせ、本来の物価上昇による増額分より、支給額は計約1・6%抑制される見通し。国民年金の満額受給者で言うと、合計の抑制額は月1千円ほどとなる。ただ物価の伸びが大きいため、名目の年金額自体は増える見込みだ。来年度の正式な年金額は、来年1月末に分かる14年の年間物価上昇率を反映させ、厚生労働省が公表する。 *2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141129&ng=DGKKZO80291350Z21C14A1MM8000 (日経新聞 2014.11.29) 社会保障改革 目先の痛み、迫れず 歳出削減に切り込みを 「短期的には柔軟な対応をする。中長期にはしっかりとした財政再建の目標は崩さない」。甘利明経済財政・再生相はアベノミクス第2の矢である「機動的な財政政策」の意味をこう語っていた。2012年12月の政権発足直後、安倍晋三首相は12年度補正予算で10兆円超、13年度補正で5兆円超の対策をそれぞれ打った。「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権から一転、公共事業の積み増しに転じた。景気の下支え効果はあった。14年7~9月期までに増えた実質国内総生産(GDP)のうち、公共投資による押し上げ分は5割弱を占める。一方、建設労働者が不足するなかで、公共事業を増やした結果、民間工事の一部に人手が回らなくなる副作用を生んだ。家計向け支援が不十分だったことも、4月の増税後の消費回復が鈍い一因となった。政権発足からの2年足らずで、国の借金は41兆円あまり増え、総額は1000兆円を超えた。公共事業、防衛、文教など主な歳出項目は軒並み増えた。最大の問題は、膨張する社会保障費の伸びを十分に抑えきれずにいることだ。医療では70~74歳の窓口負担を1割から2割にあげ、介護保険でも収入が多い高齢者の自己負担は2割にあげた。だが「竹やり戦術では不十分」と鈴木亘学習院大教授は指摘する。公的年金の支給開始年齢の引き上げ、診療報酬の大胆な引き下げ、抜本的な少子化対策など「本当に重要なことには手をつけていない」。自民党も民主党も、国と地方の基礎的財政収支を20年度に黒字にする財政健全化目標を掲げてはいる。だが、肝心の実現手段は公約から抜け落ちている。社会保障制度を持続可能にするための道筋も見えない。20年度時点で最大13兆円の赤字が残る――。日本総合研究所によれば、17年4月に消費税率を10%に引き上げたうえで、公的年金の支給開始年齢を70歳に遅らせ、後発医薬品の普及で医療費の伸びを名目成長率並みに抑えたとしても、財政健全化目標は達成できない。「歳出削減や消費税のさらなる増税で皆が痛みを分かちあう必要があるのに、政治が国民に伝えようとしていない」と同総研の岡田哲郎主席研究員は話す。高齢者向け給付が手厚く、現役世代の負担が重いという不均衡は、「シルバー民主主義」の産物だろう。有権者が高齢化するほど高齢者に給付減や負担増といった痛みを迫る政策を出すのを政治が尻込みする。そのツケを払うのは若者や将来世代だ。小黒一正法政大准教授は「問われるべきは、消費増税の是非ではなく、『いまの痛み』か『近い将来のより大きな痛み』かだ」という。欧州のスウェーデンでは今年「もう減税はしない」といって社会民主労働党が政権を奪還した。米国の中間選挙では歳出削減による「小さな政府」を訴える共和党が上下両院を制した。翻って日本。リベラルな勢力が社会保障充実のための増税を、保守勢力が歳出削減をそれぞれ十分に唱えずにいる。有権者にとって、各党が「何を語っていないか」を見抜く力もカギになる。 <衆院選について> *3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014120202000278.html (東京新聞 2014年12月2日) 【政治】<衆院選>「一強」継続か転換か <解説> 国会は、憲法四一条で「国権の最高機関」と位置付けられている。その最高機関はこのところ「一強多弱」といわれる。自民党は二年前の衆院選で過半数を大きく超える二百九十四議席を獲得し、政権復帰。翌年七月の参院選でも勝ち「一強」を作り上げた。それ以降、安倍政権は国民の「知る権利」を侵す恐れのある特定秘密保護法を成立させ、他国への輸出を禁じた武器輸出三原則を事実上撤廃する大幅な見直し、原発を「ベースロード電源」と位置付ける新エネルギー基本計画を決定。他国を武力で守る道を開く集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更を閣議決定で行った。いずれも世論が割れる問題だが、十分な国会論議があったとは言えない中で次々に決めていった。経済では、安倍晋三首相自身が「アベノミクス」と呼ぶ政策を進めた。首相は衆院解散にあたりアベノミクスを「この道しかない。この道を前に進む」と断言した。民主党政権の時、政策決定のたびに与党内で混乱、分裂を繰り返し「決められない政治」と批判された。逆に今は矢継ぎ早に行われる重要な政策決定に対し、民意が十分反映されていないとの指摘がある。安倍政治の二年間が問われる今回の衆院選は一強が続くのか、一強が崩れて転換するのかの分岐点でもある。野党は「この道」とは違う「もう一つの道」を有権者に示すことができるのか。その意味で、今回の衆院選は野党も問われている。 PS(2014.12.4追加):私は、「“格差”とは、公正平等な競争条件の下でできた差」と理解しているが、*4では、低年金生活者や非正規雇用などを格差と呼んでいる。年金の水準を下げ、医療や介護の自己負担も重くするというのは、私は、格差と言うよりも憲法25条(すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない)違反に当たるケースが多い。また、常時の非正規雇用や派遣労働は、労働法の脱法行為であるため、実質的な労働法違反として扱うべきだろう。 *4:http://mainichi.jp/opinion/news/20141204k0000m070112000c.html (毎日新聞社説 2014年12月4日) 衆院選 ここを問う 日本の貧困 ◇格差放置は安定損なう 安倍政権の経済政策で株価は上がり輸出企業が潤う一方で、貧困が高齢者ばかりか若年層にも深く広がっている。生活保護を削減し困窮者に自助努力を求める政策がもたらした負の側面だ。「アベノミクスの陰」は選挙戦の重要な争点である。現在の日本は先進国で貧富差が最も大きい国の一つだ。全国民の年収を順に並べた中央値の半分に満たない人の割合を示す「相対的貧困率」は16.1%(2013年国民生活基礎調査)で過去最悪を更新、生活保護受給者も200万人以上に及ぶ。ところが、2年前に安倍政権が始まった時、すぐに着手したのが生活保護の削減だった。自助や家族による助け合いを重視するのが自民党の伝統だが、安倍政権は給付水準の段階的引き下げに加え、親族の扶養義務の強化など要件も厳しくした。家族に頼ることができない独居の高齢者は10年時点で約500万人だったが、30年には約730万人になる。無年金・低年金だけが問題ではない。満額受給者の年金の水準も下がり、一方で医療や介護の自己負担は重くなる。低年金者への給付も、消費増税の延期とともにあっさりと先送りされた。貧困の高齢者は加速度的に増えるだろう。さらに最近は20〜30代の生活保護受給者が急増している。低賃金や劣悪な雇用条件で心身の健康を害する人も少なくない。「アベノミクスで雇用は伸び、賃金は増えた」と首相は力説するが、増えたのは非正規雇用ばかりで、正社員は減っている。中小企業や非正規雇用の賃金はあまり改善されていない。特に女性は深刻で、年収200万円以下の人が4割にも上る。パートや派遣の仕事を掛け持ちし、長時間働きながら低収入の人は多い。会社内で職業訓練を受ける機会がなく、キャリア形成ができないことも貧困の要因となっている。社会保障の制度自体にも貧困や格差を悪化させている面がある。非正規雇用の人が加入する国民健康保険(国保)や国民年金には保険料に事業主負担がなく、個人の負担は重い。国保の保険料には世帯の人数による応益負担部分があり、子どもの数が多い貧困家庭ほど負担が重い原因となっているのだ。貧困対策や格差の是正はただ困っている人を助けるだけではなく、社会を安定させ、国民相互の信頼を高めることにつながる。消費を喚起し経済全体の底上げにも寄与するはずだ。自助か現金給付によるバラマキかという単純な比較ではなく、各党の公約をじっくり見極めたい。 PS(2014.12.8 追加):自民党は「責任与党だから」というのを消費税増税強行の理由にしているが、実際には消費税増税を行っても税収は増えず、景気対策と称する歳出が増えて、上のグラフのワニの口は開くばかりだった。つまり、「責任与党だから消費税を増税する」というフレーズは、「責任与党は、行政官僚が作った消費税増税政策を進める」という意味で、これは国民主権の下での議会政治を自ら否定して官主主義を推進しており、*5で野党が言っているとおり、国民に対しては無責任である。 *5:http://qbiz.jp/article/51357/1/ (西日本新聞 2014年12月8日) 「強い決意」「無責任」 与野党 景気条項廃止で応酬 与野党の幹事長らは7日のNHK番組で、消費税再増税の2017年4月への延期に伴い、景気の動向次第で増税を停止できる「景気条項」を増税法から削除するとした安倍晋三首相の方針をめぐり議論した。与党は増税への強い決意だと評価する一方、野党は無責任だと批判した。自民党の谷垣禎一幹事長は「必ず(増税を)するという強い意志の表れだ」と強調。「財政再建と景気回復の二兎(にと)を追う」と述べた。民主党の枝野幸男幹事長は「経済は生き物だと首相は言ってきた。3年先、経済がどうなっているか。決め打ちするのは無責任だ」と反発した。維新の党の江田憲司共同代表は「景気が悪ければ(延期を決めた)今回と同じ判断をすべきだ」と柔軟な対応を訴えた。公明党の井上義久幹事長は「財政健全化の目標がある」とした上で、再増税凍結を打ち出した民主党に関し「はるかに無責任だ」と反論した。共産党の山下芳生書記局長は「国民の暮らしがどうあれ、17年に10%に上げるというなら大変な『増税宣言』だ。暮らしが壊れ、経済が壊れる」と非難した。これに先立ちフジテレビ番組で谷垣氏は、再増税延期で財源不足が懸念される子育て支援を充実させる方向性は変わらないとの考えを強調した。 PS(2014.12.8 追加):*6のように、野党が苦戦する理由は、1)景気対策と称する歳出は、与党議員が当選しやすいように行われてきたこと 2)前回の民主党政権のように、まともな政策でも行政官僚の意図と異なるものは否定され、メディアも行政官僚のメガホンとして動いていること 3)このように何かと与党である自民党の方が有利であるため、候補者や地元も与党志向であり、“人物”で選んでも与党が勝つ候補者構成になる場合が多いこと 4)行政官僚が作った政策を進めるだけが仕事であれば、議員時代は小選挙区の地元の祭りに顔を出したり、地元に利益誘導したりして、選挙区で“いい人”“役に立つ人”という評判をとり、名前を売っておくのが最も重要な仕事となり、これは現職や世襲に有利であること などである。つまり、選挙は公示後に始まるのではないため、有権者も日頃から、何が自分を幸福にするのか、そして国の発展に繋がるのかを、主権者として関心を持って考えておくべきである。 *6:http://qbiz.jp/article/51356/1/ (西日本新聞 2014年12月8日) 衆院選 野党なぜ苦戦 経済対案具体性欠く 選挙協力ぎくしゃく 衆院選の序盤情勢調査で、自民党が300議席超獲得の勢いを見せる「自民1強」の現状が浮き彫りになった。野党不振の背景について有識者や関係者は、公約の実現性や、政権批判票を取り込む「受け皿」としての位置付けが不明確だと指摘する。14日の投開票へ巻き返しを図る野党側の課題となりそうだ。論戦の焦点となっている経済政策について、民主党は安倍政権の経済政策「アベノミクス」が生んだ格差是正へ「厚く、豊かな中間層」の復活を公約に掲げた。子育て世帯への支援や最低賃金の引き上げなど家計支援を盛り込み、大企業や富裕層を優遇して経済再生を目指すアベノミクスとの違いを際立たせる戦略だ。しかし実現への道筋や財源を明示していない政策も多い。他の野党の公約にも同様の課題がある。実施段階に入った政策が含まれる自民党公約と比べ、野党の政策は「具体性に欠け、実現可能性を判断しにくい」と、市場関係者は説明する。慶応大大学院の小幡績准教授は、アベノミクスは成長戦略の成果が出ていないとする一方で、民主党公約に関し「中間層全員にお金をばらまくのか」と疑問を示す。国民の将来不安をなくすため、社会保障改革などを訴えるべきだと提案した。 □ □ 民主党や維新の党など共産党を除く野党各党は、政権への批判票を分散させまいと候補者を調整し、295選挙区のうち194選挙区は一本化に成功した。だが内実は、政策の不一致を度外視し、共倒れを回避したにすぎない。相互の推薦はほとんどなく、選挙後のビジョンも異なる。維新の党の橋下徹共同代表は街頭演説で「反対ばかりだから民主党は駄目だ」と批判。民主党幹部は「矛先が違う」と不快感を隠さない。民主党最大の支援組織の連合と、官公労を敵視する橋下氏は水と油の関係だ。連合幹部は「維新候補を支援しろとは、とても言えない」と話す。一方の維新の党関係者も「うちにあるのは『ふわっとした民意』だけ。組織票と違って他党に差し上げられない」と語る。民主党幹部は「空白区が100以上もあれば、政権奪取への覚悟が疑われても仕方ない」と嘆く。自民党幹部は「単なる数合わせなら怖くない」と断言した。 □ □ 衆院選公示直後、東京都心に雨が降った夕方。ビルや飲食店が立ち並ぶ一角で声をからす野党候補の訴えに足を止める人はまばらだった。多くの人は候補者をちらりと見ただけで家路を急いだ。作家で映画監督の森達也さんは「野党が具体的戦略を打ち出せないだけでなく『野党では駄目』というイメージが有権者に刷り込まれている」と分析。民主党政権が公約実現に「失敗した」と繰り返し報じたメディアの影響も大きいとみる。森さんは「ここ十数年、多数派につこう、勝ち馬に乗ろうという流れが強まっている」と「日本人の集団化」も指摘する。精神科医の香山リカさんには、有権者の熱狂的な与党支持も、野党への反発も感じ取れていない。「『景気はそんなに悪くない。このままでいい』との曖昧な支持が多い気がする。目の前の生活に追われ、政治家任せになっているのだろう」と話している。
| 経済・雇用::2014.6~2015.10 | 05:58 PM | comments (x) | trackback (x) |
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