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2015.1.15 「表現の自由」は、人格権の侵害に優先しない ← メディアの歪んだ「表現の自由」と対象にされた人への「侮辱」「人格権の侵害」の関係から (2014年1月16日に追加あり)
    
            *1-2より                          *2-1より
(1)「表現の自由」は、「名誉棄損」「侮辱」「人格権の侵害」に優先しないこと
 1月8日に、パリ南部で仏週刊新聞「シャルリー・エブド」が襲撃を受け、記者ら12人が殺害された事件は、*1-1のように、多くの死亡者を出した後一段落したが、フランスの警戒態勢は現在も厳しい。

 そして、この事件直後の1月11日、*1-2のように、「表現の自由」を尊重し、テロとの戦いを協力して進めることを確認して、「ペン(言論・表現の自由)は銃に負けない」「協力してテロとの戦いを進める」というメッセージを表現するため、オランド大統領、メルケル独首相、キャメロン英首相、レンツィ伊首相、ラホイ・スペイン首相らが腕を組んで行進し、これにイスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長ら約50カ国・地域の首脳・閣僚が参加して「反テロ行進」を実施した。そして、広場に集まった市民は100万人規模に上った。

 それに対して私が違和感を感じたのは、テロの原因となった多くの風刺画や記事の妥当性の評価は一切せずに、メディアは何を書こうと「表現の自由」だとした点だ。しかし、欧米が準備した世界で最も理想的な憲法と言われる日本国憲法では、「表現の自由」「言論の自由」は保障するが、それは個人の「名誉棄損」「侮辱」「人権侵害」に優先するものではないとされており、私は、それが正しいと考えている。

 仏週刊新聞「シャルリー・エブド」は、「私たちは表現したいものを表現しているだけ」として、メディアであるにもかかわらず、それによって誰かの名誉を棄損したり、人権侵害をしたりするかもしれないという考察は全くない。そして、事実か否かには関係なく風刺画を描いているため、その風刺画は、むしろ掲載して妥当性について皆で評価すべきである。これは、キリスト、マリア、ローマ法王、仏陀、エリザベス女王、天皇などが同じ様な笑い物の風刺画にされたら、眉をひそめる人が多いのと同じだ。

 私は、もちろん「表現の自由」「言論の自由」は重要だと思っているが、それはまともに「イスラム教の内容は現代社会に合っていない部分が多いから改善したら?」というような議論をする自由だと考える。しかし、事実でもないことを馬鹿にした風刺画にして表現するのは、イスラム教を信じている人に失礼であり、そもそも「表現の自由」「言論の自由」は、そのようなために保証されているのではない。

(2)移民とその受け入れ国について
 *1-4のように、仏週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件の後、反イスラム感情をかき立てる動きが欧州に広がり、「反イスラム」デモがあったそうだが、このような問題が起こっているのは、むしろ移民に国を開放している地域であるのが皮肉なことである。

 しかし、「異文化に対する寛容さが大切」とは言っても、女性には職場や学校を含むあらゆる場所でベールや黒づくめの服で体を覆わせ、そうしなければ批判し、女性には教育もさせないなどの時代錯誤の習慣が広められては困る上、そちらの集団の方が子供が多く、将来はそればかりになりそうなのも問題だ。

 つまり、移民になる人は、郷(行った国)に入っては郷(行った国の文化)に従うのでなければ、受け入れた国の文化がかき乱されて迷惑であるし、イスラム教も紀元600年頃に成立した当初とは社会状況が変化しているため、変わるべきなのである。

(3)ソニー・ピクチャーズの「ザ・インタビュー」も、殺人を示唆しており人権侵害である
 *2-1のように、北朝鮮の金正恩氏暗殺のコメディー映画「The Interview(ジ・インタビュー)」は、米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)が、大規模なサイバー攻撃にさらされて一旦公開中止を決めた後、「表現の自由」と囃したてられ、米国内の200カ所以上の映画館で上映されることになった。そして、SPEのマイケル・リントン会長兼最高経営責任者(CEO)が「言論の自由の抑圧に対して立ち上がった」とコメントしている。

 しかし、北朝鮮が脱北者に対して非人道的な処罰を行い、日本人を拉致して帰さないことと、金正恩第1書記を暗殺する映画をコメディーにすることとは別問題である。これは、各国首脳の暗殺計画がコメディー映画として多数の映画館で上映されたり、ゲームになったりすれば、亀裂が深まることを考えればわかる筈で、政治家だったり、トップだったりする人には侮辱や人権侵害をしてもよいという法律はない。そして、そのようなことをされれば、その国の人にとっては気持が良いわけがないため、*2-3のようなことが起こっても少しも不思議ではなく、ここから深刻な亀裂に発展する恐れもあるのである。

 もちろん、北朝鮮の問題についても、「言論の自由」や「表現の自由」はあるが、それは、*2-2、*2-4のように、安全保障問題や人権問題として議論したり記述したりする自由であり、生存している一国のリーダーの暗殺計画をお笑いにする自由ではない。

<シャルリー・エブド社襲撃事件について>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150110&ng=DGKKASGM09H8I_Z00C15A1MM8000 (日経新聞 2015.1.10) 仏紙銃撃の容疑者死亡 部隊突入、人質を救出 別の籠城でも容疑者死亡
 パリで起きたフランス週刊紙銃撃事件で9日、逃走しているアルジェリア系フランス人の兄弟がパリ北東の印刷工場に人質を取って立てこもった。一方、パリ南部で8日発生した別の銃撃事件に絡み、逃走していた実行犯とみられる男がパリ東部の商店に籠城した。9日午後5時すぎ(日本時間10日午前1時すぎ)、仏特殊部隊は2つの立てこもり地点に一斉に攻撃を開始、容疑者3人が死亡したもようだ。仏北東部の現場では、特殊部隊が包囲し、爆発音が聞こえるほか、煙が上がっている。仏メディアによると、兄弟は特殊部隊の攻撃で死亡。人質は無事という。カズヌーブ内相は9日午前、北東部ダマルタンアンゴエルで立てこもっている男らが週刊紙銃撃事件の容疑者兄弟と認めた上で「制圧する作戦が進行中だ」と述べていた。兄弟が立てこもっている際に「殉教したい」と語ったとの報道もある。女性警官が死亡した8日朝のパリ南部での銃撃事件では、実行犯とみられる男は9日昼すぎ、パリ東部バンセンヌの商店に押し入り、人質を取って立てこもった。仏部隊の攻撃で実行犯は死亡したと仏紙が報じた。複数の人質が保護された。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150112&ng=DGKKZO81849440S5A110C1MM8000 (日経新聞 2015.1.12) 欧州首脳、反テロで結束 パリで100万人デモ行進
 フランスの週刊紙銃撃事件など一連のテロを受け、欧州各国の首脳は11日、パリで一堂に会し、対テロで結束することで一致した。午後からオランド仏大統領の呼びかけで、パリで「反テロ行進」を実施。国際社会が「表現の自由」を尊重し、テロに屈しない姿勢を示した。欧米のテロ担当閣僚は同日、テロを事前に防ぐ対策強化で一致し、共同宣言を発表した。オランド大統領を中心にメルケル独首相、キャメロン英首相、レンツィ伊首相、ラホイ・スペイン首相らが腕を組み行進した。パレスチナ問題で対立するイスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長ら、約50カ国・地域の首脳・閣僚が参加した。共和国広場に集まった市民は100万人規模に上ったようだ。行進前には、オランド大統領が各国首脳らを大統領府(エリゼ宮)に招き、各国がテロとの戦いを協力して進めることを確認した。テロ対策を話し合う国際会議も同日開かれ、欧米12カ国の閣僚が出席した。採択した共同宣言には、インターネット事業者と協力し、テロにつながりうる情報を早期収集する仕組みの構築のほか、欧州の国境警備の強化、航空機に搭乗する顧客の情報収集を進めることを盛り込んだ。カズヌーブ仏内相は会議後、「合意事項を実行に移し、テロ防止につなげたい」と強調した。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11549127.html
(朝日新聞 2015年1月14日) (時時刻刻)風刺か、侮辱か 仏紙、「涙のムハンマド」掲載へ
 襲撃を受けて記者ら12人が殺害された仏週刊新聞「シャルリー・エブド」は、14日に発行する特別号で、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載する。暴力に屈しない姿勢を示すという。一方で、事件発生後、風刺画を転載するかどうかをめぐって世界のメディアの対応は分かれている。
 「私たちは表現したいものを表現しているだけ」
 14日号の表紙の預言者ムハンマドの風刺画を描いた「ルズ」こと風刺漫画家レナルド・ルジエさん(43)は、13日夕に会見し、こう語った。数多くの同僚が殺害されただけに、憔悴(しょうすい)した様子で、時折大きく息をつきながら話し続けた。預言者はルジエさんが何度も描いてきた。特別号の表紙も自然に仕上げたという。ただ、描きながら涙がこぼれた。仏メディアによると、7日はルジエさんの誕生日で、出勤前にケーキを買いに行き、難を逃れたという。ルジエさんは「表現の自由は、表現の自由だ。『自由だ。だけれど……』などと留保をつける必要はない」とも語った。特別号の表紙は、「すべては許される」という見出しがつけられている。そこに、目から涙粒をこぼしながら、悲しそうな表情の預言者ムハンマドが、白い衣装をまとい、胸の前で連続テロに抗議する合言葉「私はシャルリー」が書かれたプラカードを掲げている。ジェラルド・ビアード編集長は13日、仏ラジオで「我々の預言者の表情は、過激派が体現する預言者よりもずっと優しい。表紙はテロの恐怖を表すものではなく心を揺り動かすもの、けれども(読者を)悲嘆させないものを選んだ」と説明した。同紙が、特別号であえて預言者を描くのは、テロや暴力に屈しない姿勢を示すためだ。同紙の弁護士は仏メディアに「我々は一切譲歩しない」と述べた。特別号の発行部数は海外向け30万部を含む300万部。仏語以外に少なくとも5カ国語で発行されるという。同紙は「デジタル版でアラビア語版も出す」という。日本語版が発行されるかは不明だ。
■転載見送り、米・欧で イスラム教徒に配慮・テロ懸念
 米ニューヨーク・タイムズは、事件発生を伝えた8日付の紙面でイスラム教関連の風刺画は載せず、代わりにオランド仏大統領らを描いた表紙を掲載した。読者からは「表現の自由の大切さを示すためにも、問題の漫画を載せるべきだ」という批判も寄せられたという。ディーン・バケー編集主幹は読者代表を務めるパブリックエディターに対し、多くの記者や編集者の意見を聞いたうえで、自分で判断したと説明。「読者、特にイスラム教徒の読者の受け取り方を考えて決めた。侮辱と風刺の間には境界があり、これらの多くは侮辱だ」と語った。イスラム過激派による暴力を懸念して、掲載を見送るメディアもある。05年9月に預言者ムハンマドの風刺画12枚を掲載して反発を招き、一連の風刺画問題の発端になったデンマークの保守系紙ユランズ・ポステンは9日、「シャルリー・エブド」が掲載した預言者の風刺画の転載をしないと社説で表明した。ロイター通信によると、ユランズ・ポステンは「我々は、テロ攻撃を受ける恐怖と共に9年間生きてきた。これが、私たちのものであろうと『シャルリー・エブド』のものであろうと再掲しない理由だ」と説明。「暴力や脅迫に屈することになるのはわかっている」とも記した。同紙は06年1月に反発を招いた風刺画の掲載を謝罪したが、デンマークの在外公館への放火や抗議活動が続いた。同紙は、いまも過激派に狙われている。ドイツでは今月11日、「シャルリー・エブド」の風刺画を転載した大衆紙「ハンブルガー・モルゲンポスト」が放火される事件が起きた。一方、フランスでは、保守系のフィガロを含むほぼすべての主要紙が、発生翌日の8日付の紙面でイスラム教や預言者ムハンマドの風刺画を転載した。ルモンドは9日付の紙面で宗教を扱ったイラストばかり6点を集めたページを設けた。アルノー・ルパルモンティエ副編集長(47)は「女性の裸など下品なものは除外し、イスラム教だけでなくキリスト教などを扱った風刺画も選ぶようにした」という。朝日新聞は「シャルリー・エブド」が出版した風刺画について、一部をのぞき、掲載を見送っている。長典俊ゼネラルエディターは「表現の自由は最大限尊重する。特定の宗教や民族への侮辱を含む表現かどうか、公序良俗に著しく反する表現かどうかなどを踏まえて判断している」と話している。
■<考論>表現の自由、例外も
 山田健太・専修大学教授(言論法)の話 表現行為に対する暴力が絶対に許されないのは言うまでもない。また、表現の自由が重要であることはどの国も変わりなく、世界の共通認識だ。その中でどのような例外を設けるかが、国によって変わってくる。欧州における例外は人種差別表現だ。ナチス・ドイツによるユダヤ人排斥の反省から各国が戦後、法律によってこの例外を決めた。イスラム国家での例外は宗教に関すること。まさに今回の問題は例外をどう扱うかが問われている。日本ではこの例外にあたる表現をあえて設けてこなかった。歴史的にはマスメディアが自主的に限界について「模範を示す」形で社会が合意してきた経緯がある。今回もほとんどのメディアが問題となった風刺画の掲載をしていないのは、そうした流れにあるものだ。
■<考論>尊厳認め合う必要
 長沢栄治・東大東洋文化研究所教授(中東地域研究)の話 偶像崇拝を禁じるイスラム教では、預言者ムハンマドの姿を描かないこと自体が信仰の表れだ。絵に描くことは一般的なイスラム教徒には受け入れ難く、その絵で侮辱するなどというのはあり得ない。一連の事件について、中東のイスラム諸国もテロを批判しているが、イスラム諸国の首脳や宗教指導者は、内心は欧米社会が過剰に表現の自由を振りかざすことにわだかまりを持っているはずだ。異なる価値観や宗教的背景を持つ人同士がわかり合うためには、人間の尊厳とは何かという点から議論を始めるべきだ。絶対的正義が自分の側にあると一方的に押しつけるべきではない。尊厳を認め合うための文明間の対話を、恒常的に続ける必要がある。

*1-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11549198.html
(朝日新聞 2015年1月14日) 排外と融和、デモ応酬 欧州、反イスラム拡大 仏紙襲撃事件
 仏週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件の後、反イスラム感情をかき立てる動きが欧州に広がっている。ドイツ東部ドレスデンで12日夜、事件後初めてとなる大規模な「反イスラム」デモがあり、参加者は過去最多の約2万5千人(地元警察発表)に膨れ上がった。対抗して「寛容な社会」を訴える集会もドイツ各地であり、参加者は全国で約10万人に達した。12日夜、旧東独の古都ドレスデンの広場は国旗やプラカードを持った人々であふれた。「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」(通称ペギーダ)を名乗る団体の反イスラム集会。参加者の腕や胸には、仏紙襲撃事件の犠牲者を悼む黒いリボン。同紙の風刺画を掲げた人もいる。壇上の男性が声を張り上げた。「パリの事件は我々の(反イスラムの)行動が正しいと証明した」。ペギーダは昨年10月から、毎週月曜にデモを開催。当初の数百人から規模を急拡大した。デモでは「イスラム化阻止」をスローガンに排外的な主張が目立つ。多くの参加者は一見して、老夫婦や若いカップルなど普通の市民たち。記者が話を聞くと、職業も年金生活者からサラリーマンまで様々で、デモ初体験という人もいた。地元報道によると、当局は極右組織の関与を確認したというが、ペギーダ側は否定している。ペギーダに呼応し、類似団体が次々と生まれており、小規模のデモを各地で繰り返す。背景には、経済格差が残る旧東独を中心に、豊かさと職を求めて流れ込む難民や移民への根強い反感がある。一方、ドイツでは、ナチスの過去の反省から人種差別や偏見に厳しい風潮がある。イスラム系移民が人口の5%を占め、難民の受け入れにも積極的に取り組んできた。DPA通信によると12日には、東部ライプチヒで約3万人や南部ミュンヘンで約2万人、首都ベルリンで約4千人など各地でペギーダに対抗する集会を開催。全国で計約10万人とペギーダを圧倒した。ペギーダの動きはドイツにとどまらない。スペインでは、マドリードのモスクの前で12日に集会を開くと呼びかけた。だが直前になってツイッターで「当局の許可が出なかった」と中止を表明した。「不寛容」に反対する地元の市民団体は、朝日新聞の取材に「この数週間、イスラム憎悪の動きがネット社会で生まれてきている。集会も当局に通報した」と話した。AFP通信によると、ペギーダは12日、ノルウェーの首都オスロで集会を開き、約200人が集まった。スイスやオーストリアでも計画があるという。

<ソニー・ピクチャーズの「ザ・インタビュー」について>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASGDS2SXKGDSUHBI007.html?_requesturl=articles%2FASGDS2SXKGDSUHBI007.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGDS2SXKGDSUHBI007 (朝日新聞2014年12月24日)正恩氏暗殺映画、200カ所上映へ オバマ氏、決断称賛
 北朝鮮の犯行とされるサイバー攻撃の引き金になり、公開中止が決まった米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)のコメディー映画「The Interview(ジ・インタビュー)」が一転して、米国の一部の映画館で上映されることになった。米国内の200カ所以上の映画館が個別に上映を決め、SPEも了解したと23日、米メディアが報じた。AP通信によると、テキサス州の映画館などが上映を決め、SPEもこれを認めた。米CNNによると、他の州でも同調する動きが広がっており、米東部時間23日午後7時(日本時間24日午前9時)で全米の200カ所以上の映画館が公開を決めたという。大半は、当初の予定通り25日から上映する。独立系の映画館が多いという。SPEのマイケル・リントン会長兼最高経営責任者(CEO)は「これはまだ一歩に過ぎないが、言論の自由の抑圧に対して立ち上がったことを誇りに思う」とコメントした。監督兼主演のセス・ローゲン氏は「人々が声を上げた! 自由が勝利した! ソニーはあきらめなかった!」と自身のツイッターに書き込んだ。映画は、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記が暗殺されるコメディー。SPEは11月下旬から大規模なサイバー攻撃にさらされ、大量の社内情報が流出した。映画館を攻撃するとの脅迫もあり、劇場側が公開を次々と中止し、12月17日にはSPE自体が上映中止を決定した。米政府は、北朝鮮が国としてサイバー攻撃を行ったと非難。オバマ大統領は19日、ソニー側の判断について「誤りだった」と語っていた。米国では「テロに屈するべきではない」「表現の自由を守るべきだ」などの声が上がっていた。米ホワイトハウスのシュルツ副報道官は23日、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記が暗殺されるコメディー映画の上映に、一部の映画館で踏み切ることにしたソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)と映画館の決定を支持する声明を発表した。シュルツ氏は「大統領はソニーの決断を称賛している」とした上で、「人々は映画について自ら選択できるようになる。我々はこの結果を歓迎する」などと述べた。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141224&ng=DGKKASGM23H5F_T21C14A2FF2000 (日経新聞 2014年12月24日) ソニー「映画公開へ努力続ける」
 ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)の弁護士を務めるデービッド・ボーイズ氏は北朝鮮の金正恩第1書記を題材にした「ザ・インタビュー」について、「ソニーは公開に向けた努力を続けている」と語った。21日に出演した米NBCテレビの番組で明らかにした。現状では公開に応じた映画館も、インターネットでの配信を申し出たビデオオンデマンド業者もいない。ボーイズ氏も公開方法に関しては「未定だ」とした。国連安全保障理事会は22日、北朝鮮の人権問題について、メンバー15カ国中11カ国の賛成により、初めて議論した。シモノビッチ国連事務次長補(人権担当)は、日本人を含む外国人の拉致問題にも言及、「北朝鮮周辺地域の緊張を和らげるには、まず人権問題へのリスペクトがないといけない」とした。一方、当事国の北朝鮮はこの日の会合は欠席し、中国の劉結一国連大使は「安保理は人権問題を取り上げるフォーラムではない」と反対意見を述べた。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141224&ng=DGKKASGM23H45_T21C14A2FF2000 (日経新聞 2014年12月24日) 北朝鮮、ネット接続不安定、サイバー攻撃受ける? 米「作戦の詳細は公表せず」
 北朝鮮のインターネットが19日から断続的に接続できなくなっていることが22日分かった。米専門家によると、北朝鮮が何らかのサイバー攻撃を受けた可能性もあるという。米国務省のハーフ副報道官は22日の記者会見で北朝鮮への報復を含めた作戦の詳細は「公表しない」と述べ、米政府が攻撃に関与したかへの言及は避けた。攻撃の背後関係は謎のままだが、米朝の対立が深まるのは避けられそうにない。米ネット技術会社のダイン社によると、北朝鮮のネット接続は断続的に不安定になっており、22日には9時間半にわたり完全に停止した。北朝鮮国営の朝鮮中央通信や、朝鮮労働党の機関紙労働新聞のウェブサイトも接続できなかったもようだ。北朝鮮がネット経由で「何らかの攻撃を受けていてもおかしくない」(マドリー・インターネット分析部長)という。北朝鮮には4本の基幹ネットワーク回線があり、4本とも中国を経由している。接続不能の原因としては、標的に多数のアクセスを仕掛けて機能停止に追い込む「DoS攻撃」などを北朝鮮が受けたことが考えられる。外部からのサイバー攻撃だとすれば、中国の回線を経由した可能性がある。だが中国外務省の華春瑩副報道局長は23日の定例記者会見で中国の関与を否定した。そのうえで「米国と北朝鮮は意思疎通してほしい」と述べた。ハーフ氏は22日、北朝鮮のネット状況について「司法当局や米国土安全保障省が状況を注視している」としたうえで「我々は様々な選択肢を検討しているが、作戦の詳細は公表しない」と述べた。「実施した選択肢の一部は表に出るが、一部は出ない」とも付け加えた。ロイター通信によると、複数の米政府関係者は北朝鮮へのサイバー攻撃に米は関与していないと述べた。米紙ニューヨーク・タイムズは北朝鮮自身がサイバー攻撃に備えて遮断した可能性に触れている。ただ、オバマ米大統領は19日、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)へのサイバー攻撃に北朝鮮が関与したと断定。テロ支援国家への再指定も視野に「相応の対応を取る」と北朝鮮に対抗措置を取ると警告した。北朝鮮の攻撃封じ込めのため、日中韓などにも協力を呼びかけている。米国は今回の北朝鮮へのサイバー攻撃に関与したかをあえて否定も肯定もせず、対抗措置を視野に入れ続けていることを強調した。一方、北朝鮮の国防委員会は21日「サイバー戦を含むすべての戦争で米国と対決する万端の準備を整えている」との声明を発表している。

*2-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141224&ng=DGKKASGM23H6L_T21C14A2FF2000 (日経新聞 2014年12月24日) 北朝鮮人権問題 安保理で初議論
 国連安全保障理事会は22日、北朝鮮の人権問題について、メンバー15カ国中11カ国の賛成により、初めて議論した。シモノビッチ国連事務次長補(人権担当)は、日本人を含む外国人の拉致問題にも言及、「北朝鮮周辺地域の緊張を和らげるには、まず人権問題へのリスペクトがないといけない」とした。一方、当事国の北朝鮮はこの日の会合は欠席し、中国の劉結一国連大使は「安保理は人権問題を取り上げるフォーラムではない」と反対意見を述べた。


PS(2014年1月16日追加):ローマ法王が、*3のように、「神の名のもとに人を殺すのは、常軌を逸しており、正当化できない」「自分の母親が侮辱されたら殴りたくなるものだ」「人の信仰を挑発したり、侮辱したり、笑いものにするべきでもない」と述べられたのは、全くその通りである。しかし、その内容を、NHKは「信仰に関わる場合、表現の自由には限度がある」というように、信仰という狭い範囲に対象を限定して表現の自由の限度について報道しているのが意図的であり、これは日本のメディアがいつもやっている「表現の自由」という言葉の乱用に対する自己防御である。

*3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150116/k10014723061000.html
(NHK 2014年1月16日) ローマ法王「表現の自由に限度」
 武装した男らに襲撃されたフランスの新聞社が最新号に掲載したイスラム教の預言者の風刺画について、表現の自由か宗教の尊重かを巡る議論が広がるなか、ローマ法王のフランシスコ法王は、「人の信仰に関わる場合、表現の自由には限度がある」という考えを示しました。今月7日、武装した男らに襲撃され12人の犠牲者を出したフランス・パリの新聞社「シャルリ・エブド」は、事件から1週間後に発行した最新号でイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載しました。フランスでは表現の自由だと肯定的に捉える人が多い一方で、預言者の顔を描くことは教えに反すると考えるイスラム教の国々からは、批判の声が上がり、表現の自由か宗教の尊重かを巡り議論が広がっています。こうしたなか、ローマ・カトリック教会の指導者であるローマ法王のフランシスコ法王は15日、訪問先のスリランカからフィリピンに向かう機中で記者団から事件について尋ねられたのに対し、「神の名のもとに人を殺すのは、常軌を逸しており、正当化できない」と述べました。そのうえで、フランシスコ法王は、「自分の母親が侮辱されたら反応したくなるものだ」とたとえ話を示しながら、「人の信仰を挑発したり、侮辱したり、笑いものにするべきでもない」と述べ、信仰に関わる場合、表現の自由には限度があるという考えを示しました。

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