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2015.1.16 原発再稼働は、水素燃料・燃料電池時代には不要である (2015年1月16日、17日に追加あり)
        
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(1)玄海原発の再稼働について
 佐賀県知事選の後、*1-1のように、山口新知事は、来週中にでも九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)を視察する考えを表明したそうである。しかし、「現場主義」は当たり前であり、現場を見ずに判断できることなど殆どなく、現場で何を見てどう判断するのかが重要である。そのため、就任直後に原発視察が実現したからといって、それが早期の原発再稼働の判断に繋がると考えるべきではない。

 現在、原発再稼働の問題は、主に①過酷事故発生の可能性 ②過酷事故で汚染される地元の範囲 であり、私が、このブログにずっと記載しているとおり、①はゼロではなく、②の汚染される範囲は便宜的に30キロ圏内とされているものの、実際には奈良県まで達するわけである。このような中、鹿児島県の川内原発が、立地自治体である薩摩川内市と鹿児島県の同意だけで再稼働の手続きを終えたとしているのは、単なる手続主義であって、危機管理上の雛型には全くならない。

 また、実際に過酷事故が起こったフクシマでは、事前の説明や事故後の対応への不信から、*1-2のように、福島県民は「負担増でも脱原発」という意見が4割を占め、また、*1-3のように、福島県民の7割が「原発再稼働反対」になっている。また、*1-4の東海村JCO 臨界事故の後、JCOから地元や国への通報が遅れて住民が危険に晒されたため、東海村村長も脱原発派になったのである。

 そのため、*1-1に書かれているように、「山口新知事は茨城県東海村のJCO臨界事故の際に、内閣官房の担当者として現場で事故処理に当たり、危機管理分野の行政経験が豊富」というのなら、その時、どういう方針で事故処理に当たったのかが最も重要である。そして、その対応と判断の方針が、一般に法学部卒で行政官だった人には期待できない理由で、法学部教育の問題だと言われているのだ。

(2)水素と燃料電池の進歩により、原発の必要性はなくなったこと
   
         農業現場で使われている電気自動車            トヨタのミライ

 「①原発は安価」「②原発は安定電源」「③原発はCO2を出さないため無公害」などが、原発の利点としてよく言われてきたが、①は真っ赤な嘘であり、②は集中電源であるため広域停電の可能性があり、③は、CO2より深刻な放射能公害を引き起こすため、すべてが否定された。そして現在は、自然エネルギー由来で100%国産エネルギーのクリーンな水素燃料が実用化されている。

 さらに現在は、*2-1のように、東京都が燃料電池バスに購入補助を行って普及を促し、トヨタ自動車は、*2-2のように、燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の受注が1カ月で約1500台に達し、燃料の水素を補充する「水素ステーション」の整備が進められている時代である。ミライの個人購入者は男性が9割を占めるのは、燃料電池車のスタイルと価格帯のせいであり、女性の方が趣味の運転ではなく実用目的で車に乗っているため、ラインナップを増やせば、費用が安くて環境によい車を選択する傾向が強いだろう。

 このような中、*3-1、*3-2のように、九電が太陽光発電などの余剰電力で水素を製造し、燃料電池車(FCV)などの燃料として活用するそうだ。これは、環境に優しい水素社会の実現に向けたモデルケースになるため、原発に交付金を与えるのではなく、この次世代エネルギーを補助して推進すべきなのである。日本では、これまで、離島など田舎に行くほど燃料費が高くて不利だったが、これによって地方でエネルギーが作られて新しい収入源になるため、これらを早急に実用化すべきだ。

(3)では、原発について佐賀県民がやるべきことは何か
 このまま原発再稼働をせずに脱原発すれば、佐賀県や玄海町、唐津市が原発交付金を得られなくなるのは事実だ。しかし、佐賀県民は、①今後もそういうリスクをとって交付金をもらう立場を続けるのか ②原発やオスプレイなどのリスクは引き受けずに、農林漁業、製造業、サービス業などの普通の産業で稼ぎだすのか についての選択をしなければならない。

 そして、②の意志決定をすれば、今までもらっていた交付金を埋めるだけの産業振興方針と県民全体の頑張りが必要であるため、その覚悟を決めるためにも、原発再稼働一点に絞って県民投票をするのがよいと考える。そうやって卒原発すれば、他地域の雛型にもなるだろう。

 私自身は、必要なインフラを整備して時代の変化の中で新しい産業に入り、本気でふるさと納税を集め、消費税を地方税化させれば、脱原発は可能であるし、そうしなければならないと考えている。なお、このブログの「まちづくり」等のカテゴリーで記載してきたように、インフラ整備にもいろいろな方法がある。

*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/146046
(佐賀新聞 2015年1月16日) =選択の先に~山口新知事=(下)玄海原発再稼働
 「できるだけ早急に、来週中にでも時間が取れればと思っている」。14日の就任会見。山口祥義知事は九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)を視察する考えを表明した。スケジュールを担当する秘書課職員に「最初の視察先」として指定したのは当選翌日の12日。「まずは玄海と決めていた」というように、その行動は速かった。「現場主義」。選挙中から声高に主張し続けた政治スタイルを早速、県政の最重要課題の舞台で実行してみせることになる。「まずは原発を見たいと言われていたが、就任直後に実現するとは。驚いている。早期の再稼働の判断にもつながる」。玄海町の岸本英雄町長は知事の言動を期待感を持って受け止める。
▽二つの宿題 
 玄海原発の再稼働問題は、佐賀空港へのオスプレイ配備計画と同じく、古川県政時代から引き継がれた「宿題」だ。ただ、この県民世論を二分する二つの問題に対する山口知事のスタンスは微妙に違う。オスプレイ問題では「古川県政の承継ではない」と明言し、前知事が「民間空港の使用・発展に支障はない」とした判断を含めて再検証する考えを示し、前知事との違いを強調した。一方で原発再稼働をめぐっては、原子力規制委員会の審査に合格し、住民の理解を得られた場合は容認する考えで、前知事の路線を踏襲しているように映る。規制委の審査が終盤を迎えるなか、今後の焦点となるのは「地元同意の範囲」だ。先行する鹿児島県の川内原発は、地元の薩摩川内市と県の同意だけで手続きを終えた。ただ、玄海原発は、30キロ圏内の伊万里市が立地自治体並みの安全協定締結を求めて九電と交渉を続けている。「鹿児島方式の追従ではなく、周辺自治体の意見も聞くべき」。塚部芳和市長は「地元」を譲るつもりはない。山口知事は、地元の範囲については「国の話をしっかり聞くことが大事。その後に私の考えを伝えたい」と明言を避けた。伊万里市には「ぜひ、話を聞いてみたい」との考えも示したが、地元の範囲に含めるのか、方向性は見えていない。
▽経験豊富 
 30キロ圏内の自治体や福祉施設などが策定している避難計画の検証も、再稼働を容認する山口知事にとって大きな課題になる。自身は茨城県東海村のJCO臨界事故の際、内閣官房の担当者として現場で事故処理に当たった。危機管理分野の行政経験も豊富で、「実効性ある防災計画や避難計画は必要」との認識だ。現在の計画に対して住民からは「いろんな想定に対処できておらず、絵に描いた餅」との批判も多い。30キロ圏内の福祉施設関係者も「根本的な部分から検証が必要。もっと深く現場のことを知ってほしい」と注文する。24日は玄海原発の重大事故を想定した原子力防災訓練が実施される。「危機管理のプロ」を自任する山口知事の目には、現在の防災、避難態勢はどう映るのか。不安を抱える住民や関係者との向き合い方を含めて、「現場主義」の真価が問われる。

*1-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141014-00010001-khks-soci
(河北新報 10月14日) 福島県民「負担増でも脱原発」4割
 福島県民の4割超が、脱原発に伴う電気料引き上げを容認する考えであることが河北新報社のアンケートで分かった。6割近くが原発に依存していない電力会社からの電力購入を望んでおり、福島第1原発事故を契機とした厳しい市民感情を裏付けた。家庭用を含めた電力小売りについて、国は2016年に自由化する方針を掲げる。経済的負担より脱原発を優先させる回答が一定数あったことは、原発再稼働を目指す東北電力からの顧客離れをうかがわせる。脱原発に伴う負担増は全体の42.5%が認めた。許容できる値上げ幅は「10%まで」が最多の21.0%。以下、「5%まで」16.5%、「20%以上でも」4.5%、「15%まで」0.5%と続いた。電気の購入先については「原発に依存しない電力会社」が58.5%と過半を占め、「依存する会社」との回答は2.5%にとどまった。「特に気にしない」は39.0%だった。東北電力は東通(青森県東通村)、女川(宮城県女川町、石巻市)両原発に計4基を所有している。同社が目指す再稼働に関しては「反対」「どちらかといえば反対」が64.0%となり、賛成意見は21.5%だった。再稼働に理解を示した人の中でも、原発に由来しない電力の購入を望む声が2割近くあった。再稼働反対派では8割に上った。調査は9月末から10月初めに福島、いわき両市で成人の男女計200人から聞き取った。福島県内では9日に知事選が告示され、26日に投開票される。立候補した6人は、原発事故からの復興の在り方をめぐり論戦を繰り広げている。

*1-3:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201410/20141015_63009.html
(河北新報 2014.10.15) 福島県民「再稼働反対」7割
 東北大大学院情報科学研究科の河村和徳准教授(政治意識論)の調査では、東日本大震災と福島第1原発事故後、岩手、宮城、福島の被災3県の有権者に原発再稼働への賛否や復興の進め方なども聞いた。原発再稼働について、「反対」「どちらかといえば反対」は福島が69.6%と最も高く、宮城62.2%、岩手60.6%と続いた。「賛成」「どちらかといえば賛成」は福島11.3%、宮城16.0%、岩手16.5%。再稼働反対の姿勢は、原発事故の影響が色濃く残る福島の有権者に強く表れた。震災からの復興を進める上で「合意形成」と「スピード」のどちらを重視するかの質問では、「スピード重視」が福島47.0%、宮城43.7%、岩手41.1%だった。原発事故からの復旧・復興の道のりが津波被災地に比べて不透明な中、福島の有権者が合意形成よりもスピードを重視していることが浮き彫りになった。県職員への信頼度を比較するため、現場の問題を速やかに改善・対処できるかどうかを尋ねた結果、「そう思う」「ややそう思う」は岩手31.1%、宮城31.0%に対し、福島は22.6%。「あまりそう思わない」「そう思わない」という否定的な見方は福島が63.7%で最も高く、岩手55.5%、宮城54.4%だった。同じ質問を市区町村の職員で比べたところ、肯定的な回答は岩手が40.7%で最も高く、宮城37.0%、福島32.0%だった。否定的な見方は福島58.8%、宮城53.1%、岩手49.9%。復興の最前線に立つ市区町村職員への信頼度が、県職員に比べ、やや高い傾向にあることが分かった。

*1-4:http://www.nuketext.org/jco.html
東海村JCO 臨界事故 (要点のみ抜粋)
●現場の動きと対応
1.まずJCOから地元や国への通報が遅れたことが問題です。消防本部への通報も正確さを欠いていました。JCOには、一斉送信システムも備えられていなかったそうです。
2.科学技術庁は約44分後に「臨界事故の可能性」について連絡を受けているのですが、政府が事故対策本部を設置したのはそれから3時間40分も経過しています。その間住民は危険に晒されていました。(この点について当時の野中官房長官は「・・・今回のような民間施設での事故は想像を絶する事態だった。・・・事故の深刻さの認識があまかったのを率直に認めなければならない。」と述べています。1999.10.2 朝日新聞)
3.東海村が国の判断を待たずに村の措置として住民に避難を要請したことは高く評価できますが、それでも避難開始までに付近の住民はかなり多量に被ばくをしていたと考えられます。
4.安全宣言については、放射性ガスの放出が約1ヶ月続いていることから考えて、判断が早すぎたと考えられます。
5.避難の範囲についても根拠があいまいでより広い範囲で被ばくの危険性があります。風向きの変化を含め避難の方法も再考すべき点がありました。
●被ばくの実態
 今回の事故では、わずか1mgのウランの核分裂が大きな被害をもたらしました。(ちなみに100万kw級の原子力発電所では、1 日当たり2~3kgのウランが核分裂しています)。 臨界による放射線の放出で、東海事業所内の人々はもちろん、付近の多くの住民までが被ばくしてしまいました。放射線の種類は、中性子線及びガンマ線、そして気体の放射性物質ですが、今回の被ばくの主な原因は中性子線でした。中性子線は透過力が極めて強く、厚いコンクリートも通り抜けます。中性子線を止めるのは水素を多く含むものです。人の体は多くの水でできているので、中性子線は人体によく吸収され、細胞を傷つけたり、死なせたりします。

<燃料電池について>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150106&ng=DGKKZO81575580V00C15A1L83000(日経新聞2015.1.6)燃料電池バス購入に補助 都方針、五輪までに100台目標
 東京都は5日、燃料電池バスの購入補助制度を設ける方針を固めた。2015年度予算案に10億円を計上。高価な燃料電池バスを事業者が通常のバスと同程度の価格で買えるようにする。東京五輪のある20年までに都内で100台の普及を目指す。都は仕事始めの同日、15年度予算案の知事査定に着手した。舛添要一知事は査定に先立つ職員向けの新年挨拶で、20年五輪までの5年間について「東京と日本を復活させるビッグチャンスでありラストチャンス」と強調。「東京を世界一の街にする」と重ねて表明した。15年度の一般会計総額は14年度当初比4%増の6兆9500億円程度とする。都税収入は3500億円ほど増えて約5兆200億円となる見込みだ。5兆円台に乗るのは08年度決算以来、7年ぶり。企業の業績回復で法人税収が伸びるほか、消費税率8%への引き上げで都の取り分も増える。14年度の当初予算案は知事不在の1月に副知事以下で編成。このため2月に就任した舛添知事は既にできあがった案を事実上追認するにとどまっていた。今回は舛添知事が編成する初の本格予算となる。16日に原案を発表する。福祉の充実へ、男性向け不妊治療費助成制度なども創設する方針だ。

*2-2:http://qbiz.jp/article/53818/1/
(西日本新聞 2015年1月15日) MIRAI、1カ月で1500台受注 目標大幅に上回る
 トヨタ自動車は15日、2014年12月15日に発売した燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の受注が約1500台に達したと発表した。発売から1カ月となる15年1月14日時点で集計した。15年末までに400台としていた国内販売目標を大幅に上回っている。受注の内訳は中央官庁や自治体、企業が約6割。中央官庁は経済産業省や国土交通省、環境省など。個人は約4割で、男性が9割を占め、60代以上が多いとしている。地域別では、燃料の水素を補充する「水素ステーション」の整備が進められている東京都や神奈川県、愛知県、福岡県が中心となっている。トヨタはミライの好調な受注を受け、15年末までに700台としていた生産台数を大幅に増やすよう調整している。

<九電が余剰太陽光電力で水素製造>
*3-1:http://qbiz.jp/article/53645/1/ (西日本新聞 2015年1月14日) 九電、余剰太陽光で水素製造 再生エネ導入拡大に活路、離島での事業検討
 九州電力が太陽光発電など再生可能エネルギーを利用し、離島で水素を製造する事業の検討に入ることが13日分かった。余剰電力を使って水素を製造し、燃料電池車(FCV)などの燃料として活用する試み。採算性などを見定めた上で、九州本土での導入も検討するとみられる。電力大手では極めて異例の取り組みで環境に優しい水素社会の実現に向けたモデルケースとして注目される。再生エネの固定価格買い取り制度に基づく太陽光発電の新規契約が頭打ちになりつつある中、余剰電力の用途に活路が開かれ、導入量の拡大も見込める。離島の取り組みで成果が出れば、九電が本格的に水素事業に乗り出す可能性もある。九電管内の離島では現在、主にディーゼル発電によって島内の電力を賄っている。出力の変動が大きい再生エネが大量に導入されると需給バランスが崩れ、供給が不安定になる恐れがあり、特に離島では調整力の確保が課題となっている。今回の検討では、余剰電力を使って水素を製造・貯蔵し、再び電力に戻したり、燃料として使ったりする事業の可能性を探る。作業のスケジュールなどは未定。水素の製造・供給コストの低廉化など課題は多く、事業化までは息の長い取り組みになりそうだ。九電関係者は「発電燃料となる石油の価格変動に左右されない、地産地消のエネルギーとして価値がある。再生エネで車が走るのも夢ではない」としている。再生エネの固定価格買い取りをめぐっては、九電は昨年7月から、長崎、鹿児島両県の6島で、新規契約を1年程度中断する措置を講じている。九州本土では昨年9月に新規契約を中断。今月中旬にも太陽光発電の契約手続きを再開する。中断対象設備の大半については、九電が無制限に発電抑制できるため、多くの事業者が導入を断念する可能性がある。
■水素エネルギー 燃料電池の燃料として使われ、酸素と結び付いて高効率で発電する。二酸化炭素(CO2)などを排出しないため環境に極めて優しい。燃料電池車(FCV)や家庭用燃料電池の普及に伴う需要拡大が見込まれ、水素ステーション整備の動きも本格化しつつある。灯油、液化石油ガス、天然ガスなどの原料から取り出すことができ、水を電気分解することによっても造れる。

*3-2:http://qbiz.jp/article/53636/1/
(西日本新聞 2015年1月14日) 【解説】なぜ今、九電が水素製造事業か
 九州電力が再生可能エネルギーを使った水素製造の検討に乗り出すのは、電力の安定供給を維持しながら再生可能エネルギーの導入拡大を実現することを目的としているが、二酸化炭素(CO2)を排出しない水素社会の実現に向け大きな可能性を秘めている。水素は現状、製鉄所などの工場で石炭などの化石燃料を燃やす際の副産物として造られることが多く、その過程でCO2が発生している。しかし、再生エネから水素を造れば、製造過程からCO2排出をゼロにできるため、地球温暖化問題などの解決につながる。水素をめぐっては、トヨタ自動車が昨年末に燃料電池車(FCV)として世界初の市販車「MIRAI(ミライ)」を発売し、他の自動車大手も追随する方針。都市ガスなどから水素を取り出す家庭用燃料電池の普及も進んでおり、市場拡大が見込まれている。電力小売りの全面自由化など国の電力システム改革が進む中、九電は電力事業以外も本格的に展開する「総合エネルギー企業」を目指す方針で、今後の有望なエネルギー源として水素にも着目。水素を生み出せる燃料や電気を大量に取り扱う大手電力が水素事業に参入すれば、水素社会の実現に弾みがつくとみられ、他の大手電力にも同様の動きが広がる可能性がある。ただ、水を電気分解して水素を造るには大規模施設が必要で、多くの電気も欠かせない。電力コストのほか貯蔵・運搬費用を抑える方法や安全性を確保できる技術力も課題になるとみられ、本格的な事業展開には他社との提携も必要となりそうだ。


PS(2015.1.16追加):*4のように、東芝は、水素を使って電力を大量貯蔵するシステムを2020年にも実用化するそうだ。一方、玄海町には農業や水産業もあり、放射能リスクは0でなければならないため、原発をやめてこちらに移行するのがスマートでよい。

  
               *4より                      *4より
*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150116&ng=DGKKZO81990780W5A110C1TJ2000 (日経新聞 2015.1.16) 東芝、水素使い電力貯蔵、設置費用、蓄電池の半分 再生エネ事業者など向け
 東芝は水素を使い電力を大量貯蔵するシステムを2020年にも実用化する。水を電気分解していったん水素にし、必要に応じ燃料電池で酸素と反応させ電気として取り出す技術にめどをつけた。既存の蓄電池に比べ電力を長期に大量保管しやすく、設置・運用費は半減できるという。再生可能エネルギーの発電事業者や自治体などにとって蓄電方式の選択肢が広がりそうだ。まず1万世帯が8時間使う電力に相当する4万キロワット時を蓄えられるシステムを提供する。システムは600平方メートルほどの敷地に燃料電池や電気分解装置、水素貯蔵タンクなどを組み合わせて構成。水を電気分解して得た水素をタンクにため、燃料電池で空気中の酸素と反応させ電気を作る。電力を熱にするなどエネルギーの形態を変えた際、元のエネルギーをどれだけ再現できるか示す「エネルギー変換効率」は東芝のシステムで8割に達する。電気でくみ上げた水を流下させて発電するダムの揚水発電の7割を上回る。一般的な蓄電池のエネルギー変換効率も8割程度とされるが、大容量化には電極部材が大量に必要だ。4万キロワット時の蓄電池の設置コストは20億円近いとされる。蓄電池は自己放電するなど長期保存の課題もある。水素を使う場合、漏出防止など安全技術を担保すればタンクの大きさの調整だけで大容量化でき、既存の蓄電池に比べ設置から運用までの総コストを半減できるという。太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーで作った電力が電力会社の受け入れ能力を超えるとして、きめ細かい発電出力の抑制措置が15年からとられる。再生エネの発電事業者にとって余剰分を低コストで貯蔵する仕組みを確保できれば、発電した電力を買い取ってもらえないリスクを減らせる。ほかにも災害時の非常用電源として自治体などの利用が見込める。東芝は350キロワット時の電力を貯蔵する小型実証設備を15年春に川崎市内に設置、太陽光発電と組み合わせ公共施設の非常用電源などに活用する。再生エネとの組み合わせで、地域の電力の自給自足につながる可能性もある。東芝は実証設備の成果に加え、水素を大量生産する技術や燃料電池の発電の高効率化で、大規模システムの実用化につなげる。


PS(2015.1.17追加):このように技術進歩している中で、*5のように、「脱原発世論の説得のために、原発と再生エネの比率を20%の同程度とする」「電源構成のベストミックスを決める」などというのは、結論ありきのこじつけであり、科学的ではない上に、経済学もわかっていない。そして、これが、日本の法学部を中心とする文科系のものの考え方の限界なのである。

*5:http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150116-OYT1T50175.html
(読売新聞 2015年1月17日) 原発比率20%軸に検討…再生可能エネと同程度
 政府が、2030年の国内の発電量に占める原子力発電の割合について、太陽光など再生可能エネルギーと同程度の約20%を軸に検討を進める見通しになった。原発を可能な限り減らすとの方針に沿って、東日本大震災前(10年度)の28・6%から引き下げることになる。今月末から経済産業省に新設する有識者会議で、発電方法ごとにどの程度の割合にするかを示す最適な電源構成(ベストミックス)の議論に着手する。発電方法別のコストなどを検証し、今夏までに結論を出したい考えだ。政府は、14年4月に決めた新しいエネルギー基本計画で、将来の再生エネの割合を「約2割を上回る水準」と決めた。一方、原子力などは決定を先送りしていた。政府内では、「原発を減らしすぎると電力供給に支障が出るが、脱原発の世論を考えると再生エネ以上の活用は難しい」(政府関係者)などの見方が強まっている。宮沢経産相は、原発の割合を30%未満にする意向を昨年10月に表明している。


| 資源・エネルギー::2014.10~2015.4 | 01:55 PM | comments (x) | trackback (x) |

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