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2015.3.21イスラムと日本の女性差別 (性差を能力差にする体質は、教育に始まり、仕事での機会の与えられ方の違いなどで、大きく残っているということ) (2015.3.25、26に追加あり)
    
 マララさんの国連スピーチ  ミシェル&昭恵     メルケル独首相   サッチャー英首相
(↑ http://www.huffingtonpost.jp/2013/07/12/malala_speech_n_3588163.html 参照)

(1)メルケル首相とサッチャー元首相は、ともに欧州出身の理系女性であること
 *1に書かれているように、メルケル首相は、旧西独で生まれ、牧師だった父の転勤で東独に行き、ライプチヒの反政府デモからベルリンの壁崩壊までの激動を東側の物理学者として見届け、それから統一を求める新党に参じて科学から政治へ人生のかじを大きく切り、現在では、ウクライナの停戦を仲介し、ギリシャ債務問題で欧州連合(EU)を代表してユーロ防衛の大義を説くなど、欧州の政治に欠かせぬ顔となり、英国首相を11年半務めたマーガレット・サッチャー氏と並んでいる。このような実力派のヘビー級リーダーの女性は、まだ欧州でしか出ていない。

 一方、我が国では、国会議員の女性比率は主要国で最低であり、地方議員ではさらに低くて“男湯議会”も多い。この状況は、日本国憲法制定後、70年河清を待っても変わらなかったため、国会の超党派議員連盟で女性候補を5年で30%にする目標を掲げたそうだが、私も、「リーダーや政治は男でなければならない」という人々の先入観がなくなり、自然に女性候補が50%程度になるまで、候補者のクオータ制を導入するしかないと考えている。

(2)日本のメディアは男社会で、女性に対する意識が低いこと
 *2-1のように、朝日新聞は、メルケル独首相を、超人的な仕事ぶりが独メディアで話題になる「欧州の女王」と表現した上で、その素顔を、「『鍋をかき回している時は、自分が首相でも何でもない存在だと思える』というのが本音だ」としている。この中には、「首相となる女性は女王のように権力主義だが、本当は首相でも何でもなく鍋をかき回しているのが一番幸せなのだ」という価値観が入っており、その古い価値観が、この記事の他の部分の内容のよさを打ち消して、メディアの意識の古さを露呈している。

 私もそうなのでここではっきり書いておくが、一生懸命勉強してそれなりの大学を卒業し、研究や仕事で業績を残している人は、やりたいことを実現するために多くの苦労をし、他の時間を犠牲にしながら集中して頑張ってきているため、それを行うには強い意志が必要だったのである。そのため、本音では「首相でも何でもない存在で鍋をかき回しているのが一番幸福だ」と考えるような人は、はじめから首相にはなっていない。

 さらに、*2-2でNHKは、「広がる”不寛容”多文化は共生できるか」という放送をした。私は、預言者ムハンマドを笑い物にして描くシャリル・エブドは、いくら当事者が「表現の自由」を主張したとしても、そこには見識がなさすぎると考える。

 一方、イギリス政府が、イギリス市民としての生き方を教える「シチズンシップ(市民教育)」という教科を中学校で必修化する教育改革を行い、移民が市民権や永住権を得る際にはイギリスの歴史や文化に対する理解度をはかる試験を実施して、合格者にはイギリス王室や国法への忠誠を誓う儀式に参加することを義務付けたのは、イギリスとしては当たり前だと考える。何故なら、異なる宗教や民族が同居していても、異様な女性差別を宗教や文化を理由として認めるのは、男女が同じ市民権を持つ国ではありえない上、女子差別撤廃条約にも反するからだ。

 さらに、*2-3のように、日本のメディアである朝日新聞は、「読解力・数学で男女に差 OECD、15歳の学習到達度を分析」と大きな見出しで書いており、まるで女性が生まれつき数学(論理学)に弱く、読解力(文学)に強いかのような戦前の発想で記事を書いている。よく内容を読めば、社会環境、教育環境、家庭環境による性差(ジェンダー)によるところが大きいだろうとも読めるが、忙しい人は題名と最初のフレーズくらいしか読まないため、さらにジェンダーを広めている。

 しかし、メルケル首相(ライプツィヒ大学卒業、物理学博士)もサッチャー元首相(オックスフォード大学化学科卒、弁護士)も理数系に強い女性である。一方、メディアの記者や弁護士・公認会計士などの文系分野にも男性が多く、それは先天的能力よりも社会の期待や価値観によっており、どんな人生を送ることを前提として育てられたり、社会環境の影響を受けたりして勉強してきたかが分かれ目となっている。なお、私も理数系に強い女性だが(だからといって文系に弱いわけではない)、仕事上、女性に対して30年以上前から比較的機会均等に門戸を開いていた公認会計士・税理士としてやってきたのだ。

(3)女性に対する教育と女性が仕事を持つことの重要性
 *3-1の朝日新聞で、ミシェル・オバマ米大統領夫人と安倍昭恵・首相夫人が19日、世界における女子教育の支援で協力を確認し、ミシェル夫人は「世界各地に聡明で能力があり成功を切望しながら学校に通えない女子がいる。それは世界にとって大きな損失だ」と語り、昭恵夫人も「世界には当たり前の権利を求めて汗と涙を流している子供たちがいる」と語り、米国は女子教育支援のための援助資金として2億5千万ドル(約303億円)を来年度予算に盛り込み、日本は政府の途上国援助(ODA)で今後3年間で420億円超を支出することを発表したと記載されており、よいと思う。

 特にイスラム社会では、女子教育や女性の職業選択の自由が制限され、女性が活躍して世界を変える力になるための基礎教育が十分に行われていない。私は、女性の意思決定権者が少なく、一夫多妻で結婚相手にあぶれる男性が多いのが、イスラム圏で戦争が多い理由の一つであるため、教育改革による人材構造改革は、戦争回避と経済発展の両方のために重要だと考えている。

 なお、「私のような貧しい環境で育った女の子は、成功を収める生徒にはなれまいと決めつける先生にも出会った」というミシェル夫人と、つい最近まで男女の性的役割分担を強調しつつ女子教育だけは充実してきた日本の昭恵夫人は、イスラム教などで差別され教育を受けられない女の子に女子教育の機会を与えられるBest Personかもしれない。それを、「オバマ大統領の残り任期2年で、大統領夫人としても、女子教育でレガシー(遺産)を作ろうとしている」などと言っているのは、言った本人がそのくらいの推測しかできない発想の持ち主なのである。

 また、*3-1で、「両夫人は首脳である夫に率直に意見を述べる点などが共通していると言われる」などと書き、「ミシェルは思ったことを恐れずに語り、私が間違っている時も指摘する。それもしょっちゅうだ」とオバマ大統領が語ったということを取り上げているのは、日本のメディアが「女性は夫を立てて意見も言わないのが普通」という前提を持っているからだろうが、その愚かさと世間の狭さには呆れるほかない。何故なら、どういう地位の人でも夫は夫であり、妻が自分の意見を言うのは当たり前である上、ミシェル夫人はオバマ大統領と弁護士事務所の同僚だった人だからである。

 さらに、*3-1は、ミシェル大統領夫人のファッションには詳しく触れているが、ミシェル夫人が逆境の中で、プリンストン大学とハーバード・ロー・スクールを卒業して弁護士として働いていたことには触れていない(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%90%E3%83%9E 参照)。つまり、本当はよい題材を扱いながら、記事の内容は古い価値観の男性目線に依る取り上げ方、解釈の仕方であり、記者のレベルの低さがわかるのである。

 なお、女性が発言権を持てるためには、教育水準だけではなく経済力も必要であるため、女性が働きやすい産業を立地させるのが良い。それには、*3-3のような繊細、緻密で根気のいるイスラム圏の女性が織るペルシャ絨毯を見れば、イスラム女性の能力と根気、4大文明のすごさがわかるため、日本の政府途上国援助で、女子教育だけでなく、女性の能力を活かせる産業の立地も進めるのがよいと思う。

 また、*3-4は日本に関する記事だが、どの国も、経済発展するためには、労働の質と量が重要だ。そのためには、労働参加率を引き上げ、いろいろな分野に女性を参加させ、1人当たりの労働生産性や1人当たり所得を増加させることが必要で、そのためには女子教育も必要不可欠なのである。

 なお、教育水準の高い東アジアでは、この70年間、日本(1950~70年代)、韓国(70~90年代)、中国(90年代~現在)で、1人当たり国内総生産(GDP)の顕著な増加が起こったが、次はイスラム諸国の番である。ただし、工業は労働生産性が高いからといってすべての人が工業にシフトして農林漁業を疎かにしていれば、食べ物がなくなる。そのため、農林水産業は決して疎かにすべきではないのだ。

 このような中、*3-2のように、佐賀県の私立学校協会は、補助金の充実による保護者の負担軽減や公私間格差の是正などを求めて、佐賀県の山口知事に私立学校関係予算に関する要望書を提出したそうだ。私は、保護者の負担軽減や公私間格差の是正は必要だと思うが、日本では少子化の中で公立高校の収容人数にもゆとりが出てきたため、佐賀県の私立も都会の私立のように独自の教育方針を示して保護者や生徒に魅力を増す必要のある時代になったのであり、「県立高校の2次募集合格によって私立高を辞退する人が少なくないので、2次募集を廃止してほしい」と訴えるのは、学校が生徒の教育のためにあることを考えれば本末転倒だと思う。

 しかし、日本は少子化で設備にゆとりができたのであれば、この際、寮や寄宿舎を作り、昭恵夫人に頼んで、ODAで“アキエ奨学金”もしくは“(プリンセス)マサコ奨学金”を作ってもらい、イスラム圏はじめ日本で勉強したい外国の生徒を受け入れてはどうかと思う。

<実力派の女性について>
*1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11638859.html
(朝日新聞 2015年3月8日) (日曜に想う)「和製メルケル」クオータ制から 特別編集委員・冨永格
 同じ旅で旧東独のライプチヒ大学を訪れた。ゲーテ、ニーチェ、ワーグナーらが並ぶ「在籍した偉人」の末尾にアンゲラ・メルケルの名がある。旧西独で生まれたメルケル首相(60)は、牧師だった父の転勤で東へ。ライプチヒの反政府デモに始まり、ベルリンの壁崩壊に至る激動を、東側の物理研究者として見届ける。最後は統一を求める新党に参じ、科学から政治へと人生のかじを大きく、賢く切った。いまや欧州政治に欠かせぬ顔だ。ウクライナでの停戦を仲介し、ギリシャ債務問題では欧州連合(EU)を代表してユーロ防衛の大義を説く。母国の経済力にも裏打ちされた存在感は、EU首脳の間で抜きんでている。国際政治でヘビー級と呼ばれるリーダーはめっきり減った。欧州ではロシアのプーチン大統領と、メルケル氏くらいだろう。ドイツのきっちり、どっしりにスーツを着せたその人があす、7年ぶりに日本にやってくる。
     *
 ヨーロッパの女性指導者といえば、英国首相を11年半も務めたマーガレット・サッチャー氏が浮かぶ。メルケル氏も秋で在任10年。2017年までの任期を全うすれば「鉄の女」を超す。欧州の2大国に登場した初の女性首相が、そろって長期政権を担う。この事実、まんざら偶然ともいえない。政治が「男の世界」なのは欧州とて同じだが、北欧を中心に女性の大統領や首相は珍しくない。男優位の空気が残るラテン文化圏も変わりつつある。フランスでは07年の大統領選で左派の女性候補があと一歩に迫り、大衆人気で勝る右翼政党は創設者の三女が率いている。EU外相にあたる重職を務めるのは41歳のイタリア女性だ。女性の政治家は鍛えられ、ふるいにかけられ、地位をつかめば活躍する。それを見た同性が政界を目ざし、登用の機運は民間にも波及する。翻って、我が国の惨状である。国会議員の女性比率は衆院が9%台、参院も16%で、主要国では恥ずかしいほど低い。地方議員は12%弱、ひと時代前の「男湯議会」もたくさん残る。政治家が総じて小粒になったのに、遠からず首相を狙えそうな女性は見当たらない。三権の長といえば、過去に衆院議長(土井たか子氏)と参院議長(扇千景氏)がいるだけだ。
     *
 産む産まないは自由としても、妊娠出産がキャリアの妨げになる現実は捨ておけない。私たちの社会は、持てる力の半分ほどを無駄にしかねない。少子化対策にしても、女性の視点や肌感覚は必須だろう。機会均等の徹底は、だから制度づくりに関わる議会から始めるべきだ。遅れた職域でもあり荒療治が要る。まずは政党間で争う国政選挙で、候補者の一定割合を女性にするクオータ制を実現したい。かぎを握るのは巨大政党。もはや「逆差別」を理由にためらう余裕はない。100を超す国々が多様な割当制を採り入れ、女性議員を増やしてきた。先頃わが国会にできた超党派の議員連盟は、女性候補を5年で30%にする目標を掲げる。結果ではなく機会の3割だから、女性優遇の枠ではない。そもそも、能力に関係なく当選を重ねる男性議員はいくらでもいよう。サッチャー氏は首相になった翌月、東京での主要国首脳会議に臨んだ。記者会見で「初の女性首相として」と聞かれると、質問を遮り「私は女性の首相ではなく、英国の首相です」と厳しい口調で釘を刺したという。通訳を務めた村松増美さんの回顧録にある。皆が「鉄」になれるわけではない。頂点を争う地位にまで女性を押し上げるには、強いルールで人材のすそ野を広げることだ。夢はるかでも、世界を動かす和製メルケルを待ちたい。

<女性に対する日本メディアの意識>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11636613.html?_requesturl=articles%2FDA3S11636613.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11636613 (朝日新聞 2015年3月6日) 「欧州の女王」の素顔 メルケル独首相、9・10日に訪日
 ドイツのアンゲラ・メルケル首相(60)が、ウクライナ危機など世界的な問題の対処で存在感を大きく高めている。ドイツだけでなく、ヨーロッパ各国のメディアで、「欧州の女王」と形容されるメルケル首相は、どんな人なのか。9、10日の訪日を前に、素顔に迫った。
■超人的 8日間で2万キロ移動
 ウクライナ危機やギリシャ債務問題が山場を迎えた2月上旬。メルケル首相の「超人的な仕事ぶり」が独メディアで話題になった。メルケル氏は2月5日~12日の8日間に、ウクライナ情勢を巡りロシアのプーチン大統領らとの長時間の首脳会談を2回こなしつつ、故ワイツゼッカー大統領の追悼式や安全保障会議にも出席。北米にも外遊した。独メディアによると総移動距離は2万キロ。地球半周分だ。ウクライナ問題には特に執念をみせる。シンクタンク・欧州外交評議会のグスタフ・グレッセル客員研究員は「ソ連や旧東独で理不尽なものを目の当たりにしてきたからこそ、西側の政治家が首をかしげるようなプーチン氏の行動や決断も理解している」と分析する。
■決断力 脱原発、世論見て即決
 メルケル氏はよく「熟慮の政治家」といわれる。その資質は9歳の時のエピソードにも垣間見える。学校の水泳の授業で、高さ3メートルの飛び込み台の上で立ち往生。飛び込んだのは、授業終了の合図を聞いた時だった。後に「飛び込み台を信頼するのに、1時間かかった」と振り返った。進学したライプチヒ大学では物理学を専攻。卒業後、物理学者として東ベルリンの科学アカデミーに勤めた。その記憶力は健在のようだ。長年取材する独紙ビルトのラルフ・シューラー記者(48)は「用意された書類を短時間で細部まで覚えて忘れない」と舌を巻く。シューラー氏はこうも言う。「彼女はデータが何より好きで、それを頭の中で蒸留し揺るぎない決断を導く。逆に、理解できないうちは何も決めずに待つ」。ただ、2011年の東京電力福島第一原発事故後のエネルギー政策の転換は例外だった。「稼働延長」を決めていた原発の停止を即断。脱原発に傾いた世論をみるや、党内の反対を押し切り、22年までの原発全廃に踏み込んだ。「(被災地の映像を見て)今まで信じていたものに疑問を感じた」と後に語っている。その「素顔」はあまり知られていない。1989年のベルリンの壁崩壊後、政治の世界に飛び込んだメルケル氏は、旧東独最後の政権で副報道官などを務めた。その後、コール元首相に見いだされ、2005年に初の女性、東独出身の首相になった。私生活では大学時代に学生結婚し、数年後に破局。現在の夫と1998年に再婚後も、前夫のメルケル姓を使い続ける。好物は独家庭料理のルーラーデ(肉巻き)とポテトスープだ。「鍋をかき回している時は、自分が首相でも何でもない存在だと思える」。メルケル氏はかつて女性誌のイベントで珍しく本音を漏らし、会場を笑わせた。意外な特技が物まね。長年取材する独紙記者によると、とくにロシアのプーチン大統領が得意だという。
■寝だめ・10キロ減量に成功
 昨年7月に60歳になったメルケル氏。元気の秘密は、どこにあるのか。メルケル氏はかつて、女性誌に「ラクダがこぶに水をためるように、睡眠時間をためることが出来る」と語っている。週末や休暇中に「寝だめ」し、いざという時に消費するという。その分、普段の睡眠時間は4~6時間と少なめだ。一昨年末の休暇中にスキーで転倒し腰を負傷。医師の勧めでダイエットを始めた。そのかいあってか昨春、「10キロ減量に成功」と報じられた。ファッションでは、カラーコーディネーターのジルビア・レグニッタープレーン氏(53)によると、お気に入りの色はグリーン系。外遊中は落ち着いた印象の青系を着ることが多い。くだけた場面ではピンクやオレンジ、黄色にも挑戦する。

*2-2:http://www.nhk.or.jp/wisdom/150228/theme.html
(NHK 2015年2月28日、3月7日再放送) 広がる”不寛容”多文化は共生できるか 
 先月、フランスの風刺新聞社「シャルリ・エブド」がイスラム過激派に襲撃された。事件後、EU各国では、イスラム系移民の排斥を訴えるデモが拡大。深刻な異文化対立を引き起こしている。グローバル化が進む時代。先進国の多くが労働力として移民を受け入れるなど、モノだけでなく人も絶え間なく国境を越えて行き交う時代になった。さらに、インターネットを通じて、さまざまな情報が瞬く間に世界中を駆け巡る。世界の経済的、社会的な結びつきは強まっているが、一方で、国境紛争や民族対立は多発。グローバル化は異文化がどのように共生していくかという重い課題も突きつけている。襲撃事件はイスラム教でタブーとされる預言者ムハンマドを描いたことへの報復行為だとされている。事件後、パリでは「表現の自由」を守れと370万人が行進。シャリル・エブドが再びムハンマドの絵を掲載した最新号は完売した。しかし、その一方で、世論調査ではこの風刺画を「掲載すべきでなかった」という意見が40%以上に上っている。インターネットを通じて、誰もが情報を発信し拡散できるようになった現代。各国で異なる人種や宗教などに対する「ヘイト・スピーチ」が問題化する中、「表現の自由」のあり方が問われている。さらに、国家の価値観も揺れている。去年、イスラム教徒の女性が顔を覆う「ブルカ」の公共の場での着用を禁止するフランスの法律が差別に当たるとする、パキスタン系フランス人の訴えに対して、法律は合法だと判断した。ブルカを「男女平等に反する」とするフランス政府の主張を認めたことになる。しかし、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「表現の自由や信仰の自由を著しく侵害する」と判決を批判、大きな論争を呼んでいる。多文化多民族化が進む中、自国の価値観と異なる信仰や思想をどこまで認めるべきなのかが、問題になっている。多様な価値観を持つ国民をどのように統合していくのか。2011年の国勢調査ではロンドンに住む白人のイギリス人が過半数を割り、多文化多民族化が急速に進むイギリス。21世紀に入り、宗教や人種問題を背景にしたテロや暴動が多発している。そこでイギリス政府は、「イギリスの価値観」を共有することが社会の分断を防ぐとして、教育改革に乗り出した。イギリス市民としての生き方を教える「シチズンシップ(市民教育)」という教科を中学校で必修化する一方、移民が市民権や永住権を得る際に、イギリスの歴史や文化に対する理解度をはかる試験を実施。合格者には、イギリス王室や国法への忠誠を誓う儀式に参加することも義務付けた。多文化社会の中で、従来の国民国家の姿が変貌する中、国民が共有すべき価値とは何か、模索が続いている。グローバル化によって異なる宗教や民族が同居する時代を迎えた21世紀。異文化はお互いを認め合い、共生してゆくことはできるのか。世界のウィズダムが議論する。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11659566.html?_requesturl=articles%2FDA3S11659566.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11659566 (朝日新聞 2015年3月20日) 読解力・数学で男女に差 OECD、15歳の学習到達度を分析
 数学や科学は男子の方が好成績で、読解力は女子の方が高い――。経済協力開発機構(OECD)が15歳の学習到達度の男女格差を調べたところ、日本を含む多くの国でそんな傾向が出た。ただ、娘よりも息子に理系の就職を期待する親や学校の教育が影響している可能性もあり、性別に関係なく好成績を取れるような数学の指導を促している。OECDが、2012年に65カ国・地域の15歳を対象に行った国際学習到達度調査(PISA)や生徒への質問票などを分析した報告書をまとめた。読解力はPISAの全参加国・地域で女子が男子を上回り、日本でも女子が24点高かった。一方、OECD平均でみると、「数学的な知識の応用」は男子が女子より強く、「科学者のように考える」ことが求められる質問では女子の苦戦が目立つ。日本では12年PISAの数学的リテラシーは男子が女子を18点上回り、科学的リテラシーで11点、問題解決能力も19点男子が女子を上回った。こうしたなか、ドイツ、韓国など10カ国・地域では、娘と息子の数学の成績が同じでも、親は息子に対し、科学や工学、数学分野の就職を期待する傾向が強かった。OECDの担当者は、学校行事での役割分担や教師の進路指導が影響している可能性も指摘する。OECDは「学業成績の男女格差は生まれつきの能力差によるものではない」と指摘し、数学では生徒に解答手順を説明させるような指導が、女子の成績向上につながるとしている。

<女性の教育と仕事>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11659610.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2015年3月20日) 女性の活躍、世界変える ミシェル・昭恵両夫人、教育支援で協力を確認
 ミシェル・オバマ米大統領夫人と安倍昭恵・首相夫人が19日、世界における女子教育の支援で協力を確認した。首脳である夫に、率直に意見を述べる点などが共通していると言われる両夫人。春の大型連休に予定される日米首脳会談を前に、「ファーストレディー外交」を展開した。東京都心の外務省飯倉公館。初来日したミシェル夫人が講演で「世界各地に、聡明(そうめい)で能力があり成功を切望しながら学校に通えない女子がいる。それは世界にとって大きな損失だ」と語ると、昭恵夫人も「世界には、当たり前の権利を求めて、汗と涙を流している子供たちがいる」と語った。米国が女子教育支援のための援助資金として、2億5千万ドル(約303億円)を来年度予算に盛り込むことを明らかにすれば、日本も政府の途上国援助(ODA)で今後3年間で420億円超を支出することを発表した。両夫人は、ともに女性の社会進出や女子教育の問題に取り組み、発信を続けてきた。昭恵夫人は、ミャンマーでの「寺子屋」づくりを支援し、バングラデシュでの女子大学設立にも尽力した。この日の講演では「日本はいかなる時も貧困削減との戦いから逃げることなく、国際社会の先頭に立つ」と宣言。「日本には子どもに質の高い教育環境を提供する支援モデルがある」とし、これまでのノウハウを生かし、さらに支援を拡大する考えを示した。一方のミシェル夫人は今月3日、女子教育の拡充を目指す「レット・ガールズ・ラーン(女子に教育を)」構想を打ち上げた。米政府の開発支援組織「ピースコー(平和部隊)」が中心となり、女子の通学を促す活動を進める世界各地のボランティア団体と連携し、地域の指導者らにも女子教育の機会拡大を求めていくのが目的だ。講演でも自らの生い立ちに触れて、「私のような貧しい環境で育った女の子は、成功を収める生徒にはなれまいと決めつける先生にも出会った」と述べ、女子教育の重要性を訴えた。日米の女性の地位についても「女性は仕事のプロと献身的な母親の両方にはなれず、どちらか一方を選ぶしかないとの時代遅れの考えがある」とも指摘した。ミシェル夫人は、講演後の日本の女子学生との懇談会で「我々には世界を変えるチャンスがある」と呼びかけた。これまで国内対策として、子どもの肥満撲滅を目指す「レッツ・ムーブ!」構想などを主導してきたが、今回、世界規模の構想を打ち出したことについて、「オバマ大統領の残り任期2年で、大統領夫人としても、女子教育でレガシー(遺産)を作ろうとしている」(海野素央明治大教授)との見方もある。
■「マム・イン・チーフ」「家庭内野党」 2人に共通点
 両夫人は19日、昭恵夫人が都内で経営する居酒屋で昼食を共にした。その後、首相官邸で面会した安倍晋三首相が「私はまだ行ったことがない」と打ち明けると、ミシェル夫人は「とてもおいしかった。ぜひ行ってみて」とほほえんだ。日米ファーストレディーには共通点も多い。「ミシェルは思ったことを恐れずに語り、私が間違っている時も指摘する。それもしょっちゅうだ」。オバマ大統領が1月にインドを訪問した際の講演でミシェル夫人を前にこう語ると、会場がどっと沸いた。米軍の「最高司令官(コマンダー・イン・チーフ)」であるオバマ大統領の立場をなぞり、大統領夫人としての務めを「マム・イン・チーフ(母親最高司令官)」と自称。娘2人の教育環境を大切にしつつ、しつけも厳しい。ホワイトハウスに入る際、担当者に「娘たちは身の回りのことは自分たちでできます」と話したエピソードが有名だ。国民の人気も高く、昨年末の世論調査でオバマ大統領への支持率(約4割)をはるかにしのぐ6割強だ。高級ブランドだけでなく、J・クルーなど手頃な価格のワンピースなどを着こなし、ファッション誌で取り上げられることも多い。一方、ときに「家庭内野党」とも評される昭恵夫人。原発の再稼働には慎重で、東日本大震災の被災地では防潮堤の是非を考えるシンポジウムを開いた。米や野菜の有機栽培に挑戦する姿は、ホワイトハウスで家庭菜園に取り組むミシェル夫人とも相通ずる。安倍首相は19日、首相官邸で会った米国の大学生らに、自民党総裁への返り咲きを目指した2012年の総裁選をめぐる昭恵夫人のエピソードを紹介した。「勝てなければ政治キャリアは終わるとの考えも頭をよぎったが、最後は妻が『国のことだけを考えて判断すべきだ』と。この時は、妻の判断に従ってよかった」

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/168681
(佐賀新聞 2015年3月21日) 補助金充実など山口知事に要望 県私立学校協会
 佐賀県私立学校協会(江口敏文会長)は20日、佐賀市のマリトピアで山口祥義知事に私立学校関係予算に関する要望書を提出した。補助金充実による保護者負担軽減や公私間格差の是正などを求めている。運営補助金の増加や就学支援金の充実など幼稚園、中学高校、大学、専修学校などそれぞれの要求を列挙した要望書を、江口会長が山口知事に手渡した。私立高関係者は県立高校の2次募集に疑問を投げ掛けた。1次で定員割れの学校が不合格者を出しながら2次募集をかけていることを挙げ、「2次募集合格によって私立高を辞退する人が少なくない。学級編制業務も年度末ぎりぎりにせざるを得ない状況がある。2次募集を廃止してほしい」と訴えた。山口知事は「高い志を持った取り組みには県としてもバックアップしたい。2次募集についてはよく調べてみたい」と話した。

*3-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/162900
(佐賀新聞 2015年3月5日) ペルシャ絨毯、多彩な作品700点展示 佐賀玉屋
■ペルシャ絨毯、繊細で緻密
 イランの伝統工芸品ペルシャ絨毯(じゅうたん)の商品企画展が、佐賀市の佐賀玉屋で開かれている。幾何学文様や絵画などの図柄を繊細で緻密に織り込んだペルシャ絨毯約700点を展示している。8日まで。佐賀での開催は5年連続。会場には、5人で約4年をかけて織り込んだ縦3メートル50センチ、横5メートルの絨毯や、犬などの写真を基に織り込んだ作品などを展示。特に日本人に人気のあるシルクで織り込んだクム産は触り心地がよく、買い物客が立ち寄って触れていた。絨毯の仲買会社・オービーエム(東京都)を経営するバシーリ・メーディさん(76)は「ペルシャ絨毯は、シルクやウール、綿など産地によって織り込む素材が異なり、図柄や触り心地などが全く違ってくる。フローリングの家屋に合った柄もあり、多彩なデザインがあるのを知ってほしい」と話している。会期中、ペルシャ紅茶と干しイチジクのお菓子も振る舞われる。

*3-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150105&ng=DGKKZO81525890T00C15A1KE8000 (日経新聞 2015.1.5) 2015再生の起点に(1)、人を生かし生産性高めよ 青木昌彦 スタンフォード大学名誉教授
 今年、戦後70年を迎える。直近25年の経済は、はかばかしくなかったという思いが、それ以前の「成功」体験を経た人たちに少なくない。だが「失われた何十年」という感傷は、それを追体験し得ない新世代には無縁だろう。日本が直面する歴史的な課題は何か。「3本の矢」による「経済再生」か。戦後政治レジームを清算し、地政学的に存在感を示すことか。それとも新世代の積極的な参加による制度の創発的な構築か。歴史的転換点とでもいうべき今を見据えるには、短期の経済変数の動きに一喜一憂するだけでは十分でない。米ブラウン大学のオデット・ガロア教授らによる「統一的成長理論」のアプローチが示唆するように、経済変数と様々な人口関連変数、それに制度変数を統合して、今を新たな経済成長のフェーズへの移行期として理解すべきである。第3回ノーベル経済学賞を受賞したサイモン・クズネッツは、19世紀から20世紀にわたる欧州経済史のデータ分析を通じ、農業から製造業・サービス産業への雇用の移転が「経済成長の数量的側面」を表現するとした。それを成長のクズネッツ効果と呼ぼう。遅れて、この70年間、東アジアでは、まず日本(1950~60年代)、ついで韓国(70~80年代)、そして中国(80年代~現在)に、人口1人当たりの国内総生産(GDP)の顕著な高度成長期が相次いで起きた。それぞれの期間、農業と工業の間には日本と中国では5倍、韓国で3倍強の1人当たり労働生産性の格差があった。だから前者から後者に急速な雇用流動が短期に起きたことで、高度成長が実現したのは不思議ではない。クズネッツ・プロセスと連動して起きた高度成長の第二の要因は、日本では終戦、韓国では朝鮮戦争の休戦、中国では多数の餓死者を出した毛沢東の「大躍進」運動という社会的混乱が終焉(しゅうえん)した直後に誕生したベービーブーマーたちが、生産活動に参加したことである。それによる1人当たりGDPの成長を「人口配当」という。だが、この2つの要因は不可逆的な過程である。日本でも、韓国でも農業雇用人口のシェアが20%を切ると、クズネッツ効果がほぼ消滅し、高度成長のフェーズが終わるという経験則がある。中国沿岸省でも今やこの20%という閾値(いきち)に到達した。クズネッツ・プロセスが終焉すると、1人当たりGDPの成長は第2次、第3次産業での1人当たり労働生産性の向上に依存する。さらにそれは2つの要因に分解される。第一に、1人当たり労働者に対する資本設備(経済学が資本装備率と呼ぶもの)の増加であり、第二に、人的資本の蓄積や経済組織の制度的な革新(経済学でTFP=全要素生産性=と呼ぶもの)である。中国の公式統計は都市で働く農村戸籍保有者を正確に捕捉しておらず、図示した近年の生産性向上の貢献分は隠れたクズネッツ効果を多分に含む。他方、2000年代のTFP貢献度は低いとされる。物的資本の量的拡大だけで、第二の人的・組織的要因によって補完されることがなければ、その生産性の貢献は次第に低下する(資本の収穫逓減の法則)。日本の70~80年代の穏やかではあるが、確かな労働生産性の向上は、第二の革新的要因に多く依存していたとはいえるだろう。だが、このフェーズの積極面にやがて2つのアンチテーゼが生じる。第一に、人的資本投資が子供の教育費、養育に費やす親の努力や時間などの点で高くつくものとなる。そういう経済計算に基づき、この内生的な経済成長のフェーズでは女性1人当たりの出生率が低下する。これを成長の統一的アプローチでは「人口的転移」という。人口的転移は、やがて団塊世代の退職とも相まって、勤労人口の相対的シェアの減少(マイナスの人口ボーナス)、人口の高齢化という「ポスト人口的転移」のフェーズへの移転を不可避とする。第二に、これら普遍的な法則性に日本特有の要因が加わった。70~80年代の制度革新には、生涯雇用や企業集団という枠組みのなかで人々の長期の信頼関係に育まれた暗黙知の共有が、比較優位の一つの要素としてあった。しかし80年代から世界を席巻した情報革命は、膨大なデータを効率的に解析するビッグデータのアルゴリズムという、暗黙知とは対極の技術を生んだ。以上の歴史的な展望から、1人当たりGDPの成長を持続させていくには何が必要か、いくつかの論点が明らかになる。第一に、労働参加率の引き上げである。生産性の高い分野への女性の一層の参加、年長者の引退の繰り延ばしなどの可能性については、既に広く認知されている。さらに、論議を呼ぶとはいえ、生産性向上に潜在的に寄与しうる外国人に、勤労人口の予備軍として国の門戸を広くあけることである。少子化で縮小しつつある大学が主にアジアから学生を積極的にリクルートし、日本の言語、慣習、文化にも通じた人的資本を養成することも一案だ。ヘイトスピーチ(憎悪表現)を声高に叫ぶ、外国人恐怖症の現象も一部にみられるが、かの吉田松陰も「夷人」を日本に取り込むことによる知の獲得と人口の増大という「一挙両得」(「幽囚録」)について積極的に語っていた。日本文化はそういうプロセスを経て歴史的に発展してきたことに、もう一度思いを馳(は)せよう。より重要なのは、1人当たり労働者の生産性の増大である。といっても雇用削減や低賃金労働の時限的活用によって、経営上の見かけの生産性を上げることではない。それではマクロ的に労働参加率低下という負荷がかかるだけである。そして、硬直化した年功序列にあぐらをかくような経営は、ポスト人口的転移の時代に競争力を失うだろう。人的資本の投資に基づく組織と技術の革新、情報技術と伝統的なきめの細かい協働を世代を超え相補的に結合するチーム力が鍵である。また多様な人的資本の形成に貢献しうる教育制度改革も必要だ。都市集中という現象にもポスト人口的転移の動きが投影している。だとすれば、観光産業、有機農業、情報・交通のインフラが可能とする地域分散型ビジネスを発展させるため、都市から還流する新世代の斬新な市場開拓力・実行力と、地場の年長者が持つ伝統的なノウハウとが結合するとき、経済成長の新しいフェーズに対応した地方の再創成が可能となるだろう。最後に、ポスト人口的転移のフロンティアを走る日本にとって、待ったなしの政策的要請は、世代間で合意が成り立ちうる、持続可能な社会保障政策のデザインである。評判のトマ・ピケティ・パリ経済学校教授の「21世紀の資本」では、資本収益率のrが経済成長率のgを上回ると、金融資本の所有者と他の人々の間で富の分配の格差が拡大すると論じた。しかし、効率的に運営される年金基金や社会保障基金を通じて勤労所得者も金融収益の分配に参加できれば、非倫理的で野放図な格差の増大は抑制が可能だ。一方で、十分に自活しうる高齢者への公的年金支給の廃止なども考慮に値しよう。ポスト人口的転移のフェーズの制度デザインを巡って、新旧世代を網羅した論議の活性化が望まれる。
<ポイント>
○持続的成長へ統一的成長理論の示唆有効
○人的投資かさみ出生率低下を経て高齢化
○女性・若者・外国人を活用し競争力向上を
*あおき・まさひこ 38年生まれ。スタンフォード大シニアフェロー。NIRA上席客員研究員


PS(2015.3.25追加):*4のように、最近、何でも精神障害や発達障害というレッテル貼りをするメディアが多いが、この発想では、マララさん、ミシェル大統領夫人、サッチャー元英首相はアスペルガー症候群などの発達障害にされてしまうだろうし、カントは統合失調症、カフカは躁鬱病、ファーブルは自閉症、ピカソは視覚障害ということにされてしまうだろう(例)。つまり、「自分が正常であり、自分が理解できない人は相手が異常だ」という価値観が、傲慢この上なく、間違っているのだ。
 また、「多様性」「個性」という言葉も、近年、障害者や性的マイノリティーを包含することに対して使う人が多いが、DNA・ミトコンドリア由来の遺伝情報や周囲の環境が異なれば誰でも異なるのが当然であるため、「個性」はすべての人が持っており、遺伝情報が完全に一致する一卵性双生児でさえ同じではなく、それを「多様性」と呼ぶのである。そして、この多様性により、種としての環境への対応力が強くなり、環境変化に対応しやすくなっているのだ。
 つまり、メディアは、国語、生物、医学の知識や倫理観を持って報道しなければ、間違った言葉の定義や浅はかな価値観を国民に定着させ、いたずらに差別を助長して、障害者に対する社会の精神的バリアを強めることになるため、注意すべきなのである。

*4:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/169772
(佐賀新聞 2015年3月24日) 発達障害、自治体支援にばらつき、手帳交付の統一基準なく
 自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害がある人を支援する障害者手帳の交付基準は、都道府県や政令指定都市によってばらつきがあることが24日分かった。共同通信の全国調査で、約4割の自治体が知能指数(IQ)の目安を超えても、知的障害者向けの「療育手帳」を交付するとした。残りの6割は精神障害者向けの手帳に限っている。療育手帳ではJRの割引などを受けられる。法律に基づく制度ではないため、国の統一基準はなく、交付の目安や、発達障害の人を対象にするかどうかは自治体の判断に任せているのが実情だ。


PS(2015.3.26追加あり):日本の男女雇用機会均等法は、下のように、1986年に採用、昇進、研修、定年・解雇における男女差別を努力義務ではあるが、禁止した。しかし、その時に、「一般職」という職種を作って、そこに女性を採用することで、その男女雇用機会均等法がザル法化されたのである。そこで、私が提案して改正した1999年改正法では、採用、昇進、研修、定年・解雇における男女差別を、努力義務から禁止規定にした。*5-2のような非正規労働者や派遣労働者は、その1999年改正法をザル法化するために、多くの企業で導入されたのである。そのような中、*5-1のように、今まで「一般職」に女性を採用して、昇進、教育訓練、研修、定年・解雇などで差別していたのなら、それは、1999年以降は違法行為である。そのため、労働基準監督署が、このような状況を注意もせずに放置していたのであれば、その男女差別に対する意識の低さを問題とすべきだ。
 なお、本当は間接差別やジェンダーも大きな問題なのだが、2007年及び2014年改正法では、カバーする範囲が狭い上、「合理的な理由なく」などという文言が入っているためザル法になっている。何故なら、企業は、“合理的な理由”の弁解など、いくらでも創作できるからである。
 ①1986年施行:
  - 採用、昇進、研修、定年・解雇における男女差別の撤廃を努力義務に。
 ②1999年改正法施行:
  - 採用、昇進、研修、定年・解雇における男女差別の撤廃を禁止規定に。
 ③2007年改正法施行:
  - 間接差別の禁止。これにより「合理的な理由なく総合職の募集において転勤を要件とすること、
   転勤経験を昇進の要件とすること」が禁止された。
 ④2014年改正法施行:
  - 間接差別の禁止の範囲拡大。「すべての労働者の採用、昇進、配転などにおいて合理的な理由
   なく転勤を要件とすること」が禁止された。

*5-1:http://qbiz.jp/article/58761/1/
(佐賀新聞 2015年3月26日) 佐賀銀が人事制度改定 総合職と一般職の昇格要件を統一
 佐賀銀行は25日、一般職と総合職の昇格要件の統一や管理職登用の見直しなど成果重視を柱とした新たな人事制度を4月から導入すると発表した。賃金体系も見直し、20年ぶりに初任給を引き上げる。人事制度の全面改定は2001年以来で、女性やシニア人材の活躍を支援する狙いがある。新制度は女性行員に多い一般職を「地域総合職」に移行し、支店長や部長にも就けるようにした。また、育児や介護で退職した行員の復職制度も新設する。管理職については、管理職定年の55歳以降も登用を可能にする。賃金体系は職務手当と職能給の一部を見直して「職責給」を導入し、一定の役職以上は一律だった手当に差を付ける。一方、16年度から新卒採用者の初任給を大幅アップ。総合職は3万4千円増の20万5千円となる。陣内芳博頭取は「優秀な学生の確保は厳しさを増している」と述べた。

*5-2:http://qbiz.jp/article/56474/1/
(西日本新聞 2015年2月25日) 「ブラック自治体」が分かる50項目とは
 職務に見合わない低賃金で働いている非正規公務員の問題を広く考えてもらおうと、NPO法人「官製ワーキングプア研究会」(東京、白石孝理事長)が、各自治体の非正規公務員の労働実態を50項目でチェックする「『ブラック自治体』指標」を発表した。「○」「×」形式で30以上○がないと「ブラック自治体」と見なすべきだという。作成に当たった、地方自治総合研究所(東京)の上林陽治研究員は「各自治体で活用し、非正規公務員の労働環境の改善につなげてほしい」と呼び掛けている。若者を大量に採用した後、過重労働で使い捨てにするいわゆる「ブラック企業」が社会問題となり、非正規公務員の労働環境が不十分な自治体も、改善が求められるようになった。だが、労働契約法の改正で5年を超えた非正規労働者は期間の定めのない働き方に移行できるようになったが、公務員は適用除外で立場が弱いままだ。非正規公務員の待遇改善が進まなければ、行政のサービス低下を招きかねない。指標は労働法制や地方公務員法などのルールに基づいて作成している。職員の「募集」「採用」「勤務条件」「休暇」「社会・労働保険」「雇い止め・再度任用」など八つに区分し、「本人の意に反する雇い止めが行われていない」「通勤費が支給されている」「有給休暇を取得できる」といった項目が並ぶ。研究会は「指標は民間企業でも参考になる。労働組合や人事関連の部署で使ってもらえればいい」と話している。
◆非正規公務員の実態深刻
 非正規公務員の生活実態は依然として深刻だ。「現場の教員と同じ時間を働きながら、給与は教員の半分から3分の1の水準です」。福岡県内で学校図書館の司書として働くある非正規公務員はこう嘆く。本の管理、読み聞かせ、辞書の引き方指導…。さまざまな幅広い仕事を一手に担い、経験がものをいう仕事にもかかわらず、契約は1年更新だ。「雇用がいつまで続くのか、いつも不安だ」と打ち明ける。自治労の推計によると、非正規公務員は全国の自治体で約70万人に上り、公務員に占める比率は約33%に達するという。長崎県のある自治体は「非正規比率が7割を超えた」と明かす。自治体の財政難に伴う人件費削減と、増加する行政需要の矛盾を解消する存在として、教員、保育士、各種の相談員、給食調理員など幅広い分野で増えている。平均年収は約200万円。交通費が支給されていなかったり、休暇制度が不十分だったりする自治体も少なくない。福岡県内では、4分の3に上る自治体で任用の更新回数に制限が設けられている。非正規公務員の増加は行政の将来を危うくしている。「人がころころ入れ替わり、経験が必要な技術が伝承できていない」。九州のある自治体で埋蔵文化財の管理に携わる非正規の女性は、発掘後の土器などの復元、図面作りといった裏方を非正規公務員が支えているといい、「実態を住民に知ってほしい」と訴えている。

| 男女平等::2014.7~2015.5 | 08:56 PM | comments (x) | trackback (x) |

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