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2015.5.26 これ以上の金をかけて原発を再稼働することこそ、原発被害者を見捨て、未来に負の遺産を残し、新エネルギーや新産業を妨害して、財政規律に反する無責任な行為である (2015年5月26、27、29日、6月2日《図》、7日に追加あり)
    <フクシマ原発事故による放射能汚染の範囲とそれが人間に与える影響>
    
         2015.3.10Friday         2015.5.27東京新聞  2015.5.23NHK

     
           2015.5.21、22東京新聞           2015.3.10Friday

(1)放射能が人体に与える影響
 *1-1に書かれているように、首都圏も放射能汚染され、東京ドーム(毎時1.34マイクロシーベルト:日本政府が定める除染基準値0.23マイクロシーベルト超、つまり年間2ミリシーベルト超の5倍)、成田空港(毎時0.45シーベルト)、ディズニーランド(毎時0.42マイクロシーベルト)などで高い測定値が出ている。これは、静岡県まで含む広い範囲の燕の巣でセシウムが検出されていることからも納得できる。

 そして、福島原発事故以降、福島県では心筋梗塞などの循環器系疾患による死者数が急増し、日本全国の急性心筋梗塞による死亡率は人口10万人当たり12.1人であるにもかかわらず、福島県は2013年に27.5人とその2倍以上になっている。また、悪性リンパ腫なども増加傾向だが、この実態を日本のメディアは科学的に取り上げて報道することなく、殺人事件や同性愛者のニュースばかり報道しているのは、メディアの記者や編集者の知識不足と意識の低さだけが原因だろうか? (*なお、医療用放射線は、浴びるディメリットと診療上のメリットを比較した上で、患者本人の同意をとり、医師の管理下で必要最小限を浴びるものであるため、強制的に被曝させられるディメリットのみの被曝被害とは全く異なる) 

 このような中、*1-2のように、双葉町の井戸川前町長が、原発事故直後に国の避難指示が遅れたため大量に被曝し、「国の避難指示が遅れたため大量に被ばくし、この先、自分の体がどうなるか分からないという怖さを感じている。放射能の心配をしないで希望に満ちた日々を過ごしたかった」として、国と東京電力に対し、精神的な苦痛への慰謝料約1億5000万円の損害賠償を求める訴えを起こされたそうだが、これは、原発事故で汚染された全地域に該当することである。

(2)原発事故の被害者及び日本国民への人権侵害
 *2-1のように、自民党東日本大震災復興加速化本部は、「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」について、2017年3月までに解除するよう求める提言案をまとめたそうだ。それは、避難指示を解除するのは、居住制限区域(年間積算放射線量20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)と避難指示解除準備区域(同20ミリシーベルト以下)で、年間積算放射線量50ミリシーベルト超の地域のみ避難指示を継続するという“過激”な内容である。

 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故では、5ミリシーベルトを超える場合は移住義務、1~5mSv/年で移住権利が発生するため、日本の20ミリシーベルトや50ミリシーベルトという基準が如何に高いかがわかる。もちろん、日本人がロシア人より放射能に強いわけではなく、チェルノブイリの方が国際基準に準拠しているため、50ミリシーベルト以下なら避難指示を解除し、*2-3のように、帰還させるべく自主避難者の借り上げ住宅などの提供を終了するというのは、原発事故の被害者に対する人権侵害だ。

 また、原発事故後、ただちに真実の情報を開示しておけば、避難するかしないかで家族間対立などする必要はなく、さらに4年間も無駄に待ち続けることもなく、*2-4のように、故郷を奪われたのはもちろん大変なことだっただろうが、損害賠償を受け、まとまって移住して今頃は次の生活が軌道に乗っていた人も多い筈なのだ。これが、日本政府が原発事故の真実を隠した人災による二次的被害だ。

 なお、*2-5のように、日本政府は、韓国がフクシマ原発事故による放射線の影響を理由に、福島県はじめ8県の全水産物の輸入を禁止していることについて、科学的根拠がないとして世界貿易機関へ提訴するそうだ。しかし、これについては日本政府の方が科学的ではなく、「産業を守るために汚染された食品を食べろ」というのは、日本国民に対する政府による人権侵害そのものである。

(3)原発の経済性と国民の費用負担
原発に大甘の
電源別コスト 原発追加安全策 処分場の方針     地元アンケートと行動
    
2015.5.24  2015.5.17  2015.5.22  2015.4.30  2015.5.17西日本新聞  
朝日新聞     東京新聞   日経新聞    南日本新聞

 原発事故の被害はこれだけ大きく、住めない場所を作って多くの人にすべてを失わせるため、これこそ日本政府が自ら引き起こした存立危機事態である。そのため、今後も再稼働などしてよいわけがないのに、*3-1、*3-2のように、原発の新規制基準により追加安全対策費が大手電力九社で少なくとも総額2兆3700億円を上回り、九電は災害発生時の後方支援拠点を作り、これが電気料金から支払われるが、もったいない話だ。金は、もっと経済効果のある使い方をすべきだ。

 さらに、*3-3、*3-4のように、経産省は、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場を受け入れる自治体に対し、さらなる原発関連研究拠点整備などの新たな財政支援策を設けたり、文献調査で最大20億円、ボーリング調査などの概要調査時に最大70億円を電源立地地域対策交付金から支給したりするそうだが、これは税金から支払われ、原発のコストに入らない。その上、*3-6のように、「暫定保管場所としては原発立地地域以外が望ましく、それに50年もの時間をかける」など、どれだけの金と時間を使って日本列島全体を放射能まみれにすれば気が済むのか、それこそ非科学的かつ未来への負担の先送りなのである。

 *3-5に、かつての希望地も「もう、でけん」と書かれている。その理由は、環境汚染に対するこれほど鈍感な日本政府と国民への人権侵害を見た後の事実に基づく国民の判断である。

(4)原発地元の意見
 *4-1のように、南日本新聞社が、九電川内原発1、2号機の再稼働について鹿児島県内で実施した電話世論調査によると、「反対」「どちらかといえば反対」が59.9%で、「賛成」「どちらかといえば賛成」が37.3%だったそうだ。しかし、なかなか声が届かないため、*4-2のように、「ストップ再稼働3・11集会実行委員会」を中心にしたリレーデモ隊が鹿児島市を出発して鳥栖市に入り、再稼働の不当性を訴えている。

 また、*4-3のように、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」「プルサーマルと佐賀県の100年を考える会」などは、佐賀県知事の責任にも触れ、「さまざまな質問に対して『国の考えを聞いてから考える』と回答しているが、知事として県民の命を守る確固たる意思を見せてほしい」等々、言っている。

<放射能汚染が人体に与える影響>
*1-1:http://saigaijyouhou.com/blog-entry-5838.html
(真実を探すブログ) 週刊誌が首都圏の放射能汚染を特集!ディズニーランドや東京ドームで高い値!原発近隣住民の間で「悪性リンパ腫」多発の兆しも!
 週刊誌フライデーの2015年3月20日号が「放射能は減っていない!首都圏の【危】要除染スポット」というタイトルで首都圏の放射能汚染を特集しました。この記事には東京ドームやディズニーランド等のメジャースポットを中心に測定した放射能測定値が掲載されています。記事に掲載されている測定場所で一番高い線量を観測したのは東京ドームの毎時1.34マイクロシーベルトで、政府の定めている除染基準値(毎時0.23マイクロシーベルト以上)の5倍に匹敵していました。また、成田空港も毎時0.45シーベルトと高く、ディズニーランドの毎時0.42マイクロシーベルト等の値がそれに続いています。これは震災から4年が経過した今になっても放射能汚染が酷い事を示唆しているデータだと言えるでしょう。フライデーと同じく今月発売の月刊宝島2015年3月号にも興味深いデータが掲載されていました。月間宝島は福島原発事故で避難対象となった7町村の放射能被ばく状況を調査し、福島県で心筋梗塞などの「循環器系の疾患」で死者数が急増していることを突き止めています。急性心筋梗塞の全国での死亡率は12.1人(10万人あたり)となっていますが、福島県では福島原発事故後に急増して2013年は27.5人となりました。他にも悪性リンパ腫が増加傾向にあることを政府の発表しているデータを分析することで発見しています。首都圏の放射能汚染と福島県の避難町村で頻発する病気。当ブログでは何度か書いていますが、東日本の広い範囲で同様の傾向が見られます。これから放射能汚染の影響が表面化することになるかもしれませんが、その時に備えて覚悟が必要なのかもしれませんね。いずれの記事も現在発売中なので、興味のある方は是非とも読んでみてください。
☆調査スクープ!原発近隣住民の間で「悪性リンパ腫」多発の兆し ~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第5回】~
URL http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150309-00010000-takaraj-soci
引用:
 手紙の趣旨は、急性心筋梗塞以外の循環器系疾患にも目を向けてほしい──というものだった。指摘を受けて本誌取材班は、最新の「2013年人口動態統計」データを入手し、福島県における「循環器系の疾患」による死者数の推移を検証することにした。まずは、急性心筋梗塞である。【表1】は、過去5年間の福島県とその周辺県の「急性心筋梗塞」死者数で、【表2】は、福島県と全国の「急性心筋梗塞」年齢調整死亡率の推移だ(注1)。【表2】を見てほしい。全国の値が右肩下がりで減少し続ける中、福島県は原発事故発生翌年の12年に「人口10万人当たり29.8人」(男性は同43.7人)という全国ワーストの値を記録。翌13年は同27.5人(男性は同42.1人)と、少々下がったものの、いまだに原発事故前の値(10年は同25.3人。男性は同36.9人)を上回り続け、高い死亡率のまま推移している。急性心筋梗塞で亡くなる方の13年全国平均は同12.1人(男性は同17.9人)。福島県の同死亡率はその2倍以上ということになる。原発事故以降の福島県での急性心筋梗塞多発という“異常さ”が、3年連続で際立つ結果となった。

*1-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150520/k10010085951000.html
(NHK 2015年5月20日) 前双葉町長 事故直後の被ばくで国を提訴
 原発事故の影響で全域が避難指示区域になっている福島県双葉町の前の町長が、国の避難指示が遅れたため事故直後に大量に被ばくしたと主張して、国と東京電力に対しておよそ1億5000万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。東京地方裁判所に訴えを起こしたのは、双葉町の井戸川克隆前町長(69)です。4年前、町長として原発事故の対応に当たった井戸川前町長は、「国の避難指示が遅れたため大量に被ばくした」と主張して、国と東京電力に対し、初期被ばくによる精神的な苦痛への慰謝料など合わせて1億4850万円の損害賠償を求めています。井戸川前町長は会見で、「この先、自分の体がどうなるか分からないという怖さを感じています。放射能の心配をしないで希望に満ちた日々を過ごしたい」と話していました。弁護団によりますと、初期被ばくに伴う精神的な被害について裁判所への提訴は今回が初めてだということです。訴えについて国は「訴状が届いていないのでコメントできない」としています。また東京電力は「請求内容や主張を詳しく伺ったうえで真摯に対応してまいります」とコメントしています。

<被曝者への人権侵害>
*2-1:http://mainichi.jp/select/news/20150514k0000m010117000c.html
(毎日新聞 2015年5月13日) 福島原発事故:17年3月までに避難指示解除…自民提言案
 東京電力福島第1原発事故で政府が設定した避難区域のうち、放射線量が比較的低い「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」について、2017年3月までに解除するよう求める提言案を自民党東日本大震災復興加速化本部(額賀福志郎本部長)がまとめたことが13日分かった。近く政府に提出する。政府は避難住民の帰還時期を明示しておらず、帰還に向けた議論が活発になりそうだ。提言案は「第5次復興提言」の原案。両区域に関し「遅くとも事故から6年後までに、全て避難指示を解除し、住民の帰還を可能にしていく」と明記した。居住制限区域(年間積算放射線量20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)の避難住民は約2・3万人。避難指示解除準備区域(同20ミリシーベルト以下)は約3・2万人で、計5・5万人が指示解除の対象となる。原発に最も近い福島県双葉町と大熊町などからなる帰還困難区域(同50ミリシーベルト超)の約2・4万人への避難指示は継続する。提言案では「インフラと生活関連サービスの復旧や、除染などの加速に取り組む」としており、早期に放射線量を低減させることが課題となる。政府は今年度限りの集中復興期間の終了後も、除染は全額国費で実施する方針だ。避難指示の解除は政府と地元自治体の合意で行われ、14年4月に田村市、同10月に川内村の一部で解除された。ともに避難指示解除準備区域で、これまで居住制限区域の解除例はない。14年度に福島県東部の11市町村が行った住民意向調査では、避難住民の約4割が指示解除後も事故前の居住市町村に帰還しない意向で、復興は住民の意向が鍵を握りそうだ。

*2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015052202000117.html
(東京新聞2015年5月22日)自民復興5次提言 原発慰謝料18年3月終了 避難指示は17年に解除
 自民党の東日本大震災復興加速化本部(額賀福志郎本部長)は二十一日、総会を開き、震災からの復興に向けた第五次提言を取りまとめた。東京電力福島第一原発事故による福島県の「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」の避難指示を二〇一七年三月までに解除するよう正式に明記し、復興の加速化を政府に求めた。賠償では、東電が避難指示解除準備区域と居住制限区域の住民に月十万円支払う精神的損害賠償(慰謝料)を一八年三月に一律終了し、避難指示の解除時期で受取額に差が生じないようにする。既に避難指示が解除された地域にも適用するとした。提言は自民党の総務会で正式決定後、今月中に安倍晋三首相に提出する。額賀本部長は「古里に戻りたいと考える住民が一日も早く戻れるよう、生活環境の整備を加速化しなければならない」と述べ、避難指示解除の目標時期を設定した意義を強調した。だが、福島県の避難者からは「二年後の避難指示解除は実態にそぐわない」と不安の声も上がっており、実際に帰還が進むかどうかは不透明だ。避難指示区域は三区域あり、居住制限区域と避難指示解除準備区域の人口は計約五万四千八百人で、避難指示区域全体の約七割を占める。最も放射線量が高い「帰還困難区域」については避難指示の解除時期を明示せず、復興拠点となる地域の整備に合わせ、区域を見直すなどする。集中復興期間終了後の一六~二〇年度の復興事業は原則、国の全額負担としながらも、自治体の財政能力に応じ、例外的に一部負担を求める。また一六年度までの二年間、住民の自立支援を集中的に行うとし、商工業の事業再開や農業再生を支援する組織を立ち上げる。その間、営業損害と風評被害の賠償を継続するよう、東電への指導を求めるとした。提言には、第一原発の廃炉、汚染水処理をめぐり地元と信頼関係を再構築することや風評被害対策を強化することも盛り込まれた。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/CMTW1505210700006.html
(朝日新聞 2015年5月21日) 住宅提供終了、自主避難者から反対の声
 「命綱を切らないでほしい」。原発事故に伴う自主避難者向けの借り上げ住宅などの無償提供をめぐる問題で、20日に都内で集会を開いた自主避難者や支援者たち。県の2016年度での提供終了の方針を批判し、撤回を求めた。「福島市には(放射線量が高い)ホットスポットが点在している。汚染土が身近に山積みになっているのは普通の暮らしではありません」。子どもとともに、京都市に自主避難している女性はそう訴えた。
今月15日、住宅提供の長期延長を求める約4万5千人分の署名を出すため、避難者の団体とともに県庁を訪れていた。その後、県が提供終了に向けて自治体と調整していることを朝日新聞の報道で知り、ショックを受けたという。東京電力が自主避難者に払う賠償金は、避難指示区域内の人に比べて少ない。そのため、多くの自主避難者にとって、無償の住宅提供は生活を支える頼みの綱になっている。県が避難者全世帯を対象に2月に実施したアンケートでは、避難指示区域外の回答者のうち、住宅について「入居期間の延長」を望んだ人は46.5%。13年度の44%から微増している。生活で不安なことを聞くと、「生活資金」を選んだのは54.8%で、13年度(61.7%)よりも減ったものの半数を超えており、避難指示区域内の人の回答(36.3%)よりも割合が高かった。自主避難者らを支援する河崎健一郎弁護士は「打ち切りは早すぎるし、当事者不在の手続きになっている」と述べた。

*2-4:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150514-00000041-mai-soci
(毎日新聞 2015年5月14日) <福島原発事故>浪江町の住民100人が集団提訴へ
 東京電力福島第1原発事故を巡り、避難区域の中で最も放射線量が高い「帰還困難区域」(年間積算放射線量50ミリシーベルト超)に指定された福島県浪江町津島地区の住民が、帰還に向けた除染計画も策定されず古里を奪われたとして、国や東電を相手取り損害賠償を求める集団訴訟を起こす。約100人が参加する見通しで、今夏にも福島地裁いわき支部に提訴する。帰還困難区域の地区住民が集団提訴するのは初めて。賠償請求額は検討中。
◇帰還困難区域で初
 津島地区は福島第1原発の北西約30キロにある山林地帯。米、タバコ栽培などの農業や林業、酪農が盛んで約1400人が暮らしていた。住民らは訴訟を通じ、何世代にもわたり築き上げてきた田畑や地域の伝統文化、地域コミュニティーが破壊され、元に戻らない現実を訴える方針だ。長期間にわたり古里を奪われた精神的苦痛に対する慰謝料に加え、徹底した除染による原状回復も求める。提訴を決断した要因の一つに、浪江町民約1万5000人が申し立てた国の原子力損害賠償紛争解決センターの裁判外紛争解決手続き(原発ADR)が不調となっていることがある。センターは昨年3月、東電が現在支払っている1人当たり月10万円の精神的賠償を15万円に増額する和解案を提示したが、東電は他の自治体との公平性などを理由に拒否し続けている。和解案に法的拘束力はない。訴訟に参加予定の住民は「和解案を拒否され、それを許している国に不信感が募った。除染を含め責任を取らせるため決断した」と話している。帰還困難区域について環境省は現在も除染計画を示していない。自民党東日本大震災復興加速化本部は「避難指示解除準備区域」(年間積算放射線量20ミリシーベルト以下)と「居住制限区域」(同20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)の避難指示解除を2017年3月までに求める提言案をまとめたが、帰還困難区域は対象外。提訴を準備する弁護士によると、地区住民による集団訴訟は、旧緊急時避難準備区域(同原発20~30キロ圏)の同県田村市都路地区の約340人が「地域共同体が崩壊した」などとして計37億円の損害賠償を求めているが、帰還困難区域では初めて。

*2-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150522&ng=DGKKASFS21H69_R20C15A5PP8000 (日経新聞 2015.5.22) 政府、韓国をWTO提訴へ 水産物輸入制限巡り
 政府は21日、韓国が一部の日本産の水産物を不当に輸入制限しているとして、世界貿易機関(WTO)への提訴に関する手続きに入ったと発表した。日本が韓国に対して同様の手続きに入るのは初めて。韓国は福島第1原子力発電所による放射線の影響などを理由に、福島をはじめ8県の全水産物の輸入を禁止しているが、日本は科学的根拠がないと主張している。同日、WTO協定に違反しているとして、WTOを通じた2国間協議を韓国側に要請した。要請から60日以内に解決できない場合、第三国の法律家や科学者などでつくる紛争処理小委員会(パネル)の設置を求める。韓国は2011年の原発事故を受け、8県でとれるウナギやスズキなど一部の水産物の輸入を禁止。13年9月からは全ての水産物に対象を広げ、放射線量の検査も厳しくした。日本は外交ルートを通じて撤回を求め、韓国も専門家を日本に派遣し現地調査を実施してきたが「規制緩和に向けためどが全く立たない」と判断した。農林水産物の貿易をめぐっては15日、台湾が日本産の全ての食品に産地証明書の添付を義務付けるなど、輸入規制を強化している。中国やシンガポールなどでも依然として一部で規制が残っている。提訴を通じて、他国をけん制する狙いもあるとみられる。

<原発の経済性と費用の負担者>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015051702000120.html (東京新聞 2015年5月17日) 原発安全費2.3兆円増 13年新基準後、揺らぐ経済性
 福島第一原発事故後に施行された原発の新しい規制基準で必要になった追加の安全対策費が大手電力九社で少なくとも総額二兆三千七百億円を上回る見通しであることが本紙の調べで分かった。経済産業省が二〇一三年秋に公表した調査結果は約一兆六千五百億円で、一年半の間に四割、金額にして七千億円増加していた。各社によると、まだ試算すらできていない原発もあり、費用はさらに膨らみそうだ。安全対策費の一部は既に原発維持に必要な経費として電気料金に上乗せされ、企業や家庭が負担。対策費の増加は原発の発電コストを押し上げる要因になり、経済性を理由に再稼働を目指す政府や電力業界の主張が揺らぐことにもなる。本紙はことし四月、原発を保有していない沖縄電力を除く九社を対象にアンケートを実施。東京電力福島第一原発事故後、追加の安全対策として行っている工事や計画している工事などについて尋ねた。それによると、関西電力を除く、八社が経産省の調査時点から軒並み増額。関電は「最新の数値は公表できない」として経産省の調査以前の一二年十一月時点の金額を回答した。このうち北海道電力は、九百億円から二千億円台前半と二倍以上に膨らんだ。同社は泊原発1~3号機(北海道泊村)の再稼働に向け原子力規制委員会で審査中だが、規制委から火災の防護対策が不十分との指摘を受け「必要な工事が大幅に追加となった」(広報部)としている。同じく島根原発2号機(松江市)が審査中の中国電力も二千億円超と、ほぼ倍。浜岡原発(静岡県御前崎市)敷地内に海抜二十二メートルの防潮堤などを建設している中部電力は三千億円台後半で、当初から五百億円以上の上積みになる見通し。アンケートでは九社のうち北海道電、中部電、関電、中国電、四国電力の五社が「審査の進展に伴い工事内容の見直しや追加を行う可能性もある」(中部電)などと回答、今後さらに増額する可能性があると答えた。関電は運転開始四十年前後の老朽化した高浜原発1、2号機(福井県高浜町)の再稼働も目指している。電力九社以外では、敦賀原発(福井県敦賀市)など三基を保有する日本原子力発電は九百三十億円超と回答。建設中の大間原発(青森県大間町)を持つ電源開発(Jパワー)は千三百億円を安全対策費として投じるという。
<原発の新規制基準> 福島第一原発の事故を受けて2013年7月8日に施行。津波対策としての防潮堤建設や全電源喪失事故に備えた非常用発電設備の設置、重大事故の影響を緩和するフィルター付きベントなども義務づけた。一方、航空機衝突などのテロ対策拠点となるバックアップ施設は5年間猶予。地元自治体の避難計画については定めていない。電力各社が15原発の24基の適合審査を原子力規制委員会に申請している。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/189777
(佐賀新聞 2015年5月23日) 原発防災計画 九電、支援拠点を追加 佐世保と福岡市に
 九州電力は22日、原子力事業者としての防災業務計画を修正し、原子力規制委員会などに届け出た。玄海原発(東松浦郡玄海町)の災害発生時に後方支援拠点となる候補地に、長崎県佐世保市と福岡市城南区の自社施設2カ所を追加した。後方支援拠点は、災害時に資材などを置く施設となる。これまでの計画では、原発から約10キロの唐津市の唐津火力発電所と、約20キロの伊万里市の伊万里変電所の2カ所だった。新たな2カ所は、原発からの方向や距離を考慮し、約40キロ離れた佐世保配電所と約50キロの福岡市の社員研修所を加えた。このほか、災害時などに原発作業員の内部被ばく量を測定する車載型の移動式ホールボディーカウンター1台を福岡市内の資材センターに配備したことを盛り込んだ。

*3-3:http://qbiz.jp/article/62297/1/
(西日本新聞 2015年5月16日) 核のごみ最終処分場 経産省、追加財政支援の意向
 経済産業省は15日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分に関する有識者会議で、処分場の建設を受け入れる自治体に対し、原発関連の研究拠点整備など新たな財政支援策を設ける方針を示した。選定に必要な調査は3段階あり、第1段階の文献調査で最大20億円、第2段階のボーリング調査などの概要調査時に最大70億円を電源立地地域対策交付金から支給する支援策が既にある。経産省は新たに、第3段階の実証実験や処分場建設決定後について追加の財政支援策を設け、計画を推進させたい意向。難航する処分場建設をめぐっては、政府が2013年末に従来の自治体の公募方式を転換。政府が「科学的有望地」を示した上で、処分場の建設に向けた調査を要請する方向で準備を進めている。

*3-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150522&ng=DGKKASGG22H07_S5A520C1MM0000 (日経新聞 2015.5.22) 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)とは
 ▼高レベル放射性廃棄物(核のごみ) 原子力発電所から出る使用済み核燃料を再処理し、まだ利用できるウランやプルトニウムを取り出した後に残る廃液。きわめて強い放射線を出し、人がそばに立つと20秒以内で死ぬといわれる。強い放射線は非常に長い期間出るため、数万年以上隔離する必要がある。政府は核のごみをガラスと一緒に固めたうえで、地上で30~50年かけて冷やし、地下300メートルより深い安定した地層に数万年にわたって閉じ込める計画だ。

*3-5:http://qbiz.jp/article/62823/1/
(西日本新聞 2015年5月23日) 【核のごみ国主導で処分場選定】かつての希望地「もう、でけん」
 核のごみ処分にめどが立たないまま推進される原発政策に国民が厳しい視線を送る中、政府は22日、国主導で有望地を探す新たな方針を閣議決定した。処分場は、過疎地の一部では活性化策の一つとして期待された時期もあったが、福島第1原発事故で状況は変わった。九州でも、かつて名前の挙がった地域の多くが今は冷ややかだ。一方、原発の立地自治体は、再稼働と処分場建設をどう同時に進めればいいか頭を悩ます。「もう、でけんでしょう。今はまったく考えていない。福島の事故で状況は一変した」。かつて核のごみ処分場の誘致話が持ち上がった熊本県の離島、天草市御所浦町。旧御所浦町議会議長で現市議の脇島義純さん(64)はそう言い切った。2004年、議会が町側に処分場の応募を要請したが、当時の町長が拒否した。22日に閣議決定された新方針には、国が科学的な有望地を示すことが盛り込まれたが、脇島市議は「国が強制できるとですか」と実効性に疑問を呈した。市民の抵抗も強く、島おこしグループ代表の松永英也さん(40)は「みんな頑張って地域活性化に取り組んでいる。子どもたちに禍根を残したくない」と、誘致に「絶対反対」と語る。05年、同じく誘致話が持ち上がった長崎県新上五島町。地元関係者によると、民家がない地区が候補地となったものの、反対者が多く立ち消えになった。町には世界文化遺産登録を目指す教会群の構成資産もある。地元関係者は「処分場があったら観光客は減る。どこかが受け入れなければならないのは分かるが、人の少ない離島だから構わない、というのは違う」と訴える。一方、原発推進を訴える原子力国民会議理事で九州大の清水昭比古名誉教授(核融合工学)は「処分場は技術的に不可能、というのは誤解。国が前面に出て探すのは一歩前進だ」と評価した。06年に誘致の動きがあった長崎県対馬市のある市議は「前向きな人たちは今もいる。市民の声をよく聞いて判断していく必要がある」と、受け入れに含みを残した。
   □    □
 「非常に広範な問題で今一括して答えるべきではない」。今夏にも再稼働が見込まれる九州電力川内原発がある鹿児島県の伊藤祐一郎知事は22日の定例会見で、政府の新方針に対する明確な意見表明を避けた。知事はこれまで「県内に処分場は造らせない」と明言してきた。ごみを増やす再稼働を容認しながら、やっかいなごみの処分は県外とする姿勢が反発を招くことを懸念したとみられる。政府の新方針が打ち出されても最終処分場がいつできるかはなお判然としない。新方針には使用済み核燃料を容器に一時保管する中間貯蔵施設の立地推進も入った。燃料貯蔵プールが満杯に近い九電玄海原発がある佐賀県玄海町の岸本英雄町長は「中間貯蔵施設の建設申し入れがあったら町民や議会に意見を聞いて判断する。欧州視察の経験から安全性に不安はない」と受け入れを示唆するが、一部住民らの反発は必至で曲折が予想される。

*3-6:http://qbiz.jp/article/62826/1/
(西日本新聞 2015年5月23日) 【核のごみ国主導で処分場選定】専門家の評価は
 核のごみの処分推進に向け、政府が新たな方針を閣議決定したのを受け、九州大の出光一哉教授(原子力学)と東京工業大の今田高俊名誉教授(社会システム論)に今後の課題を聞いた。
◇処分場探し、待ったなし−出光一哉・九州大教授
 基本方針改定で東京電力福島第1原発事故後に止まっていた最終処分場探しのスタートラインに、再び立つことができた。国が「科学的有望地」を示し、より前面に出て対処するというのは、全国で処分場探しの議論を活性化させる大きなきっかけになると思う。処分場探しは、待ったなしだ。現状でも約1万7千トンの使用済み核燃料が各地にたまっている。原発推進の是非にかかわらず、今の世代で処分の道筋を付けなければならないことに異論はないだろう。処分場探しが難航し、数十年かかってしまう可能性もある。放射能を早期に人工的に減らす核変換技術の開発に期待し、それを待つ「暫定保管」の考え方もあるが、処分場はいずれにしても必要になり、先送りはできない。ただ、国内で「一番最適な場所」を科学的に証明し、選択するのは無理だ。火山の位置などを考慮して定めた「ここ以外なら問題ない」という広いエリアの中から、原子力に理解のある地域に絞っていく、というのが海外の先行例だ。エネルギー資源を持たない日本では原発が今後も必要だ。各原発の使用済み燃料の貯蔵プールが満杯に近づき、再処理工場の稼働も遅れており、中間貯蔵施設の設置も急がなければならない。
◇国民の理解が最優先−今田高俊・東京工業大名誉教授
 日本学術会議の検討委員会で委員長を務め、4月末、核のごみ処分についての政策提言をまとめた。趣旨は、副題の「国民的合意形成に向けた暫定保管」に集約される。放射性廃棄物を一時的に容器で保管する「暫定保管」に似た言葉に「中間貯蔵」もあるが、それ以上に「安全研究と国民の理解を最優先する」という意味を込めた。暫定保管の期間は原則50年。最初の30年で国民の合意形成と地層処分の候補地選定を行い、残りの20年で処分地の建設を行っていく。50年もの時間をかけるのは、福島第1原発事故を受け、政府も電力会社も、国民の信頼を失っているからだ。まず信頼を回復しなければ、安全性を説明しても本当にそうなのかと疑われてしまう。それには相当の時間を要する。国民の意見を政策に反映する政府機関「総合政策委員会」の設置や、再稼働の条件として「暫定保管の計画策定」を提言したのは、真摯(しんし)に国民の不安に答えることが必要だからだ。国民は、本意か不本意かにかかわらず原発の受益者であることを自覚し、核のごみの議論に積極的に関わってほしい。提言では、暫定保管場所として「原発立地地域以外が望ましい」と踏み込んだ。立地地域に押しつけず、全国民で取り組まなければ問題は決して解決しない。

<地元の意見>
*4-1:http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=66018
(南日本新聞 2015.5.1) 川内再稼働、59%が反対 南日本新聞世論調査
 南日本新聞社が、九州電力川内原発1、2号機(薩摩川内市)の再稼働をテーマに鹿児島県内で実施した電話世論調査によると、再稼働に「反対」「どちらかといえば反対」と答えた人は、前年の調査に比べ0.4ポイント増の計59.9%に上った。「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答した人は、0.5ポイント増の計37.3%だった。

*4-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/190461
(佐賀新聞 2015年5月25日) 川内原発再稼働反対のリレーデモ隊が鳥栖入り
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に反対する市民グループ「ストップ再稼働3・11集会実行委員会」を中心にしたリレーデモ隊が25日、鳥栖市に入り、国道沿いや市中心部を歩き、再稼働の不当性を訴えた。今月16日に鹿児島市を出発した一行は、九州各地の市民グループと交流しながら国道3号を北上し、この日は午前10時半に鳥栖市の曽根崎交差点に到着した。原発を考える鳥栖の会(野中宏樹代表)のメンバーも合流し、約20人が「原発ゼロ」と書いたのぼりなどを掲げ、福岡県太宰府市まで歩いた。岩下雅裕団長(65)=薩摩川内市=は「住民の避難計画など未解決の問題が多く、再稼働は絶対に許されない」と訴えた。12日間で約300キロを行進し、27日午後2時に福岡市の九州電力本社に到着する予定で、九電に再稼働中止や住民説明会開催を求める約11万人分の署名を提出する。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/189498
(佐賀新聞 2015年5月22日) 反原発団体、「主体性ない」と知事に再質問
 原発再稼働に反対する市民団体が22日、佐賀県庁を訪れ、避難計画や原子力災害対策についての認識を尋ねる質問書を山口祥義知事宛てに提出した。4月の知事回答に対する再質問で、市民団体関係者は「主体性のない回答ばかりで残念だった。知事として責任ある具体的な説明をしてほしい」と求めた。質問書は「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表、「プルサーマルと佐賀県の100年を考える会」の野中宏樹共同世話人が連名で県の担当者に手渡した。両団体を含む反原発6団体は山口知事と4月17日に面会したが、今回はその前の4月9日付回答に対する質問となっている。4月22日に改定された原子力災害対策指針で「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」を活用しないことや、半径30キロ圏外の避難は事故後に規制委が判断することになった点について、「県民の命に関わる重大な改定で、国に対して市町や住民への説明を求めるべきではないか」とした。知事の責任にも触れ、「さまざまな質問に対して『国の考えを聞いてから考える』と回答しているが、なぜ県独自の姿勢を示さないのか。知事として県民の命を守る確固たる意思を見せてほしい」としている。県の担当者は「知事に伝えて文書で回答する」と答えた。


PS(2015.5.26追加):民主主義は、主権者が日頃から真実の情報を知り、候補者の政策や行動を知って投票しなければ有効に働かない。そこで配布するチラシやポスターは、候補者にとっては自分の政策や行動をアピールする表現手段であり、有権者にとっては候補者の人となりを知る手段である。しかし、上のようにメディアが真実の情報を伝えなかったり、*5-1の佐賀県警の事例のように、選挙違反として文書頒布を制限し過ぎたりすると、有権者は、どういう考えの誰が立候補しているのかさえわからず、選挙の内容に関心を持てない。そして、*5-3のように投票率が低くなり、これは投票年齢を18歳に下げたとしても同じである。しかし、*5-2に書かれているとおり、このように極端な選挙規制を行っているのは日本だけであり、連呼だけのむなしい日本的選挙運動を改善するには、公選法の事前運動や文書配布規制を、日本国憲法の表現の自由に反しないよう改正し、当たり前の選挙運動ができるようにすることが必要である。民主主義の先輩国である英国では、戸別訪問が基本になっているそうだ。

*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/190824
(佐賀新聞 2015年5月26日) 佐賀県警、地方選の違反取締本部を解散
 佐賀県警は26日、3月24日から設置していた統一地方選の選挙違反取締本部を解散した。県議選と6市町の首長・議員選で警告は計84件で、知事選も行われた4年前の前回に比べ10件多かった。公選法違反による摘発はなかった。捜査2課によると、県議選での警告は69件で、内訳は戸別訪問1件、事前運動に当たる内容のチラシを配るなどの文書頒布違反12件、ポスターを指定場所以外に張る文書掲示違反56件。首長・議員選は警告が15件で、文書頒布2件、文書掲示13件だった。インターネットで事前運動したことによる警告も県議選で3件あった。

*5-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11726446.html?_requesturl=articles%2FDA3S11726446.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11726446 (朝日新聞 2015年4月27日) 低投票率と無投票、解決策探る 統一地方選
 今回の統一地方選では、多くの自治体で投票率の戦後最低記録を更新し、無投票当選も相次いだ。最も身近なはずの選挙で、なぜ有権者は棄権し、首長や議員のなり手は出てこなかったのか。低投票率と無投票当選の背景と解決策を探った。
■知らない候補・似た主張…投票棄権
 今回、投票率が36・02%と東京都内の区議選で最低だった港区。六本木の39階建てタワーマンションに住む会社員女性(48)は26日夕、冷蔵庫に貼った投票所の入場券を忘れたまま買い物に出かけ、棄権した。「平日は帰宅が遅く、一度も演説を聞かなかった。区議選を忘れていた」。国政選挙や都知事選は欠かさず投票したが、今回は選挙公報も目にせず、知っている候補はゼロ。夫と2人暮らしで子育て政策に関心は薄く、健康診断も区より勤務先の方が充実している。「区政に関心が持てない」。港区選挙管理委員会は今回、選挙公報を印象づけようと候補の顔写真をカラーにした。新聞に折り込んでも全世帯には届かないため、マンションでは各戸のポストに啓発チラシを配ることも試みた。だが、区選管の井上茂次長は「管理人がほとんど受けてくれない」と嘆く。前回の投票率が40・45%で埼玉県内の町議選で最低だった伊奈町。今回は39・05%と、さらに下がった。都内に通勤・通学する「埼玉都民」が多い。「生活の基本は東京。平日昼間は町内にいないし、どんな人が立候補しているかわからない。週末は選挙より家族サービス」。前回に続き、町議選を棄権した会社員男性(43)は言う。町選管の担当者は「投票率が低い30~40代が人口の中心。若年層に向けたアピールをしなければ」と言うが、妙案はないという。大阪市に隣接する吹田市長選は、大阪市をなくして特別区を設ける「大阪都構想」が焦点となった。都構想を掲げる大阪維新の会推薦の現職と、自民、公明が推薦する新顔や元職ら計4人の激戦となったが、投票率は前回をやや下回った。会社員の女性(33)は「候補者のイメージが湧かない。演説も少し聞いたけど、都構想がどうとか言われても、全然ピンと来ない」と明かす。茶わんや皿など「瀬戸もの」の陶磁器で知られる愛知県瀬戸市。名古屋近郊ながら高齢化や若者流出が課題だ。市長選では新顔4人が争ったが、投票率は55・01%で過去最低だった。棄権した自動車部品会社員の男性(37)は「選挙公報を見ても似たり寄ったり。画期的な政策を打ち出す人がいれば投票に行くが、新顔が争うというだけでは……」と話す。「誰かを選ばなくても、誰でも一緒」と考え、26日は妻子と買い物に出掛けた。
■40年ぶり選挙戦「票に思い込めた」
 宮崎県諸塚村長選は1975年以来の選挙戦となった。95%が山林で、林業やシイタケ栽培などが主産業の山村。村政の継承を訴えた元副村長の西川健(けん)氏(64)が、変革を唱えた元村議の中本洋二氏(42)を破り、初当選した。40年前も一騎打ちで村を二分した激戦となった。村民に争いは嫌だとの空気が広がり、助役らに後を託す無投票が続いた。生まれて初めて村長選で投票した農業男性(56)は「投票権を得て村政を真剣に考えた。選挙になってよかった」。別の農業男性(64)も「親戚も地区も関係なく、思いを込めて票を投じた」。26日夜、西川氏は「貴い一票を頂いたことに重みを感じる」と語った。一方、北海道栗山町議選は今回、20年ぶりに無投票となった。議会改革の象徴とされる「議会基本条例」を06年、全国で初めて制定した先進議会だ。無投票を避けようと、定数を1減らして12にして臨んだが、候補者は12人どまりだった。議員は議会報告会などで忙しくなったが、報酬は上がらない。鵜川和彦議長(58)は農業団体幹部や商店主ら7、8人に声をかけたが断られた。「選挙がなければ楽だけど、議員は劣化する」とため息をつく。議会事務局長として議会基本条例制定に関わった東京財団研究員の中尾修さん(66)は「行政サービスが削られ、議員は住民の要望をかなえる立場から、住民負担の説得役に変わった。荷が重い仕事と思われるようになった」と指摘する。
■<考論>投票率を上げるには 政治と接点、普段から
 若者の政治参加を促すNPO法人「Youth Create」の原田謙介代表 今の制度を前提にすれば、短い選挙期間で有権者が候補者を吟味するのは無理だ。投票率を上げるには、自治体や市民団体、NPOなどが普段から有権者に政治に興味を持ってもらう工夫をするしかない。私たちは2012年11月から全国で地方議員と若者の交流会を開いている。「議員って普通の人なんだ」という感想も多く、議員が遠い存在でなくなり、投票へ行くきっかけになる。こうした試みを広げることが重要だ。
■<考論>無投票を防ぐには 女性候補増やす必要
 女性候補者らの支援団体「WIN WIN」の赤松良子代表(元文相) 無投票を防ぐためには、新しい候補者を増やす必要がある。特に、男性に比べてまだ数が圧倒的に少ない女性の進出が求められる。地方議会は子育てなど生活に身近な課題が多く、解決には女性の視点が必要だ。韓国など女性政治家が増えた国では、候補者の一定割合を女性にするなどの「クオータ制」を採用している。日本もクオータ制の導入を進めるべきだ。女性の立候補には配偶者の反対も多く、家庭の理解も不可欠だろう。
■<考論>公選法に課題は 選挙運動、自由拡大を
 憲法学者の水島朝穂・早稲田大学法学学術院教授 低投票率の背景は、国政選挙の場合は制度の問題が大きい。しかし地方選では、短い選挙期間と報道の少なさが影響している。今のままでは有権者の関心は高まらない。先進国に例をみない極端な選挙運動規制と選挙期間の短縮が繰り返され、町村長、町村議員の選挙は1週間にも満たなくなった。連呼だけのむなしい日本的選挙運動を改善するには、公選法による事前運動や文書配布の過度な制限を見直し、選挙運動の自由を拡大することが必要だろう。
■<考論>外国の事例は 英は戸別訪問が基本
 英国の地方議会の実地調査を重ねる自治体議会政策学会の竹下譲会長 英国の選挙運動は戸別訪問が基本だ。候補者が玄関先で有権者に直接、自らの政策を披露する。選挙区も小さいから候補者も少なく、顔が見えやすくなって代表を選びやすい面がある。選挙カーから名前を連呼する日本の選挙のやり方では、自分の考えに合った候補者を選ぶのは難しい。住民と議員が日常的に切り離されている現状を改めるべきだ。英国のように戸別訪問を解禁し、選挙区を細分化する改革が必要ではないか。

*5-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/135854
(佐賀新聞 2014年12月15日) 推定投票率52%、戦後最低に、前回から7ポイント低下
 衆院選の投票率は、共同通信の15日午前1時現在の推計で52・38%となり、戦後最低だった2012年の前回衆院選(小選挙区59・32%、比例代表59・31%)を7ポイント程度下回る見通しだ。期日前投票者数は前回から9・23%増の1315万1966人だったが、14日に投票した有権者が大幅に減った。北日本から西日本の日本海側を中心に大雪が降った影響もあるとみられる。都道府県別の投票率(推定を含む)で最高は島根の59・24%。2位以下は山梨59・18%、山形59・15%が続いた。最低は青森の46・83%で、徳島47・22%、富山47・46%の順だった。


PS(2015.5.26追加): 再稼働反対リレーデモは、鹿児島から福岡まで九州を縦断し、川内原発再稼働反対の11万2846人分の署名を提出して頑張った。これが民意で、今は原発0で廻っているのに、再度、リスクを犯して再稼働することがあってはならない。

     
         *6より           2015.5.13西日本新聞より 
*6:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/171735
(西日本新聞 2015年5月28日) 再稼働反対デモ、九電本店に 11万人分の署名提出
 再稼働反対を訴えながら九州を縦断してきたリレーデモ隊は27日午後2時すぎ、福岡市中央区の九電本店前に到着。デモを主催した市民団体「ストップ再稼働!3・11鹿児島集会実行委員会」の向原祥隆事務局長は、集まった約200人を前に「九電は一度も住民の前に出てきていない。公開説明会を開くべきだ」と訴えた。九州各県の反原発団体のメンバーも次々とマイクを握り、気勢を上げた。約100人はその後、本店内を訪れ、川内原発再稼働の反対を求める11万2846人分の署名を提出。応対した広報担当者から、4月に提出していた公開質問状に対する回答を口頭で受けた。質問は原発周辺の活断層や基準地震動など詳細に及び、4時間を過ぎてもやりとりはほとんどかみ合わなかった。午後7時すぎ、広報担当者が「予定の時間を2時間以上過ぎている」として議論を打ち切ろうとすると、デモ参加者らが詰め寄り、もみ合いに。110番で警察官約20人が駆けつけ、仲裁する騒ぎになった。向原事務局長は、質問状への納得のいく回答を求め、再稼働前にあらためて話し合いの場を設けるよう、28日に九電に申し入れるという。


PS(2015年5月29日、6月7日追加):このような中、東日本大震災から3年5カ月が過ぎた2014年8月3日、*7-2のように、鹿児島県の口永良部島が34年ぶりに噴火して噴火警戒レベル3(入山規制)になっていたが、*7-1のように、4年2カ月過ぎた今朝、爆発的噴火が起こり、噴火警戒レベルが5(避難)に上げられた。日本列島は、プレートの大きな移動により、火山活動が活発化しているようだ。
 なお、東日本大震災時に、押し込まれにくかった部分がはずれて太平洋プレートが北米プレートに早く押し込まれ始めると、マントルは粘性は高いが液体であるため、フィリピン海プレートにも圧力がかかり、フィリピン海プレートがユーラシアプレートに押し込まれる速度も早くなって、日本列島のあちこちで火山活動が活発化すると考えられる。つまり、池に薄く張った氷を叩いて4つに割り、そのうちの一つを押すとすべての氷が動き、動けない場合は重なるのと同じ理屈だ。

   
               *7-2より           2015.5.29西日本新聞  日本列島とプレート
*7-1:http://qbiz.jp/article/63294/1/
(西日本新聞 2015年5月29日) 鹿児島県・口永良部島で噴火
 気象庁によると、29日午前9時59分ごろ、鹿児島県の口永良部島で爆発的噴火が発生した。同庁は噴火警戒レベルを3(入山規制)から5(避難)に引き上げた。

*7-2:http://qbiz.jp/article/51432/1/ (西日本新聞 2014年12月9日) 見捨てられた火山島 検証「口永良部噴火」 観測機は全滅、国会議員視察もゼロ
 黄土色の山肌に転がる無数の岩と、山頂から絶えず上がる噴煙が、約3キロ離れた本村港からくっきり見える。「緑の火山島」と防波堤の案内板がうたう鹿児島県屋久島町の口永良部島(くちのえらぶじま)。一面に木々が生い茂っていたという新岳を今、想像するのは難しい。「海岸線までずーっと木が枯れとるでしょうが。火砕サージ(火山ガスや灰がまじった火砕流の一種)が通った跡よ。元に戻るのに数十年かかる」。島でただ一人の町職員、川東久志さん(54)がつぶやいた。8月3日午後0時半前、島の真ん中にある新岳が34年ぶりに噴火した。現在も噴火警戒レベル3(入山規制)。火口から半径2キロは立ち入り禁止のまま。気象庁が24時間監視する全国47火山のうち、警戒レベル3が出されているのは他に、9月27日の噴火で戦後最悪の被害が出た御嶽山(おんたけさん)=長野、岐阜県=と、年に千回以上噴火する桜島(鹿児島県)だけだ。屋久島から北西に約12キロ。136人(11月末現在)しかいない島で、火山は最大の観光資源だった。「一歩違えば、ここは御嶽山より先に全国に注目されたかもしれなかったんですよ」。民宿を営む貴船森さん(42)はこう話す。規制が一切ない警戒レベル1(平常)から突然、噴石を伴う噴火があったのは日曜日。土曜日の正午前に噴いた御嶽山とほぼ同じ状況だ。死者57人行方不明者6人の御嶽山に対し、口永良部島は負傷者ゼロ。その背景には、台風の接近で島へのフェリーが欠航し、新岳に登る予定だった観光客が来なかったという偶然があった。
   ◆    ◆
 「本当なら、あの時間は山頂で昼ご飯を食べていたはずです」。鹿児島県屋久島町口永良部島(くちのえらぶじま)。噴火当日、東京の高校生12人と新岳に登る予定だった民宿経営の貴船森さんは、フェリーが来なかったことで九死に一生を得た。8月3日午後0時24分。新岳火口から約2・2キロの集落にある民宿の庭にいた。バリバリバリバリ−。山を見ると空に上がった煙が斜面を駆け下りてきた。「あっ火砕流!」。宿には地域活性化を研究中の大学生グループが滞在中だった。「おまえらすぐ出てこい」。軽ワゴン車に家族や学生10人がぎゅうぎゅう詰めで坂を下った。バックミラーに灰色の煙が迫る。途中、走って逃げる数人を見かけたが、車に乗せる余裕はなかった。煙は坂をまっすぐ下っていった。「煙に巻かれた人は亡くなったと思っていましたよ」。島には警察官も消防士も医師もいない。住民を守るのは貴船さんも所属する消防団だけだ。火口から約1・5キロ地点では、噴火予測に使う地震観測機の設置工事中だった。死亡したと思っていた作業員から電話が鳴った。「助けてくれ」。山に向かうと、灰まみれの5人がいた。前後の区別もつかず目だけが真っ赤。視界がなくなり、横一列で手をつなぎ一歩ずつ逃げてきたという。「おれ、生きていますよね」。作業員はうつろな表情で何度も繰り返した。工事現場の数百メートル先には、数十センチ大の噴石がいくつも転がっていた。
   ◆    ◆
 11月15日。島には福岡管区気象台の職員2人の姿があった。火山ガスの放出量などを計測するため、チャーターした漁船で山の風下側を何度も往復する。「こうして地道にやるしかないんです」と職員は話した。気象台が火口付近に設置していた観測機は、噴火でほぼ全滅。安全上の理由から代替機を設置できず、観測は月に1度の麓からの調査に頼る。気象台も噴火の前兆現象を把握するのは困難と認める。噴火から4カ月がたつ今も、島は非常事態にある。コンクリート製造工場が立ち入り禁止区域に入り、島の経済を担う公共工事も観光客も止まったまま。小中学校では教員の車を校舎脇に止め、すぐに子どもを避難させられる態勢を取る。11月14日に実施した噴火後初の避難訓練では、避難場所を従来より新岳から遠くに変更した。「火山観測の態勢を見直す」「災害に強いまちづくり」。衆院選の各政党の公約には力強い言葉が並ぶ。安倍晋三首相は公示前、長野県北部地震の被災地を訪れた。だが、新岳噴火後、島を視察した国会議員はゼロ。有権者が100人ほどの島には選挙中に候補者が来る予定もない。「見捨てられとるんよ」と港のそばに住む松本章さん(70)。火山噴火予知連絡会は11月末、火山の観測強化を求める提言を出した。国も対策に乗り出したが、動きはあくまで御嶽山(おんたけさん)の災害を受けたものだ。「犠牲者が出んと国は動かん。口永良部で噴いたことを政治家は知っとるんやろうか」。島民の視線は冷めている。

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