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2015.7.16 安いと主張されている原発コストの嘘と、原発事故の処理費用、廃炉費用、核のごみ処理費用について (2015年7月17、22日追加あり)
    
2015.5.27 2015.7.2   経産省原発コスト     エネルギー構成  2030年 
朝日新聞   朝日新聞                                コスト予測

    
 2015.7.3   2015.7.7        2015.7.3         2015.7.8
 河北新報    西日本新聞       西日本新聞         西日本新聞

(1)脱原発の方が合理性があること
 上図及び*1-1のように、経産省は2030年の電源構成を、発電量に占める原発の割合が、現在でも0であるにもかかわらず、「①コストが安い」「②CO2を出さない」などの理由で、20~22%と設定した。しかし、太陽光発電は、九電が買取制限をかけるまで等比級数的に伸び、九州だけで現在でも原発5基分に達しており、大量に生産すればするほどコストが安くなる性格のものである。

 しかし、経産省は、「電気料金の値上がりで家庭や企業の負担がさらに増えれば、経済成長にマイナス」とし、原発の発電コストは1キロワット時で10.3円以上とした。これは、i)過酷事故への対応費を過小に見積もり ii)過酷事故が起きる確率を過小に仮定し iii) 建設中のフランスやフィンランドの原発と比較して、原発の建設費を過小に見積もり iv)自然エネルギーの普及を止めて次のステップへの技術進歩を妨害し v)その結果、本当の経済成長を妨害している。つまり、経産省の理由づけは、原発ありきの電源構成を導くためのものなのだ。

(2)川内原発再稼働最終段階 !?
 そのような中、*1-2のように、九電は7月7日、原子力規制委員会の審査に適合すると認められた川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉に核燃料を装填する作業を始め、8月10日頃に原子炉を起動して、8月13日前後に発送電を開始して再稼働する予定で、2号機についても10月中旬の再稼働を目指し、これは電力不足を理由とした政治判断とのことだが、この発想が極めて古いのである。

 しかし、*1-3のように、九電内部では原発再稼働で大幅な収支改善効果が期待できるという安堵感が広がったということであるため、今後(二度目の過酷事故以降)は、過酷事故の損害賠償もすべて電力会社の負担にすべきである。そうしなければ、国民負担で有害な古い技術の補助をして先進的な技術の足を引っ張り、原発再稼働は収益力を強化するという誤ったメッセージが株主や国民に蔓延して公正な競争にもならず、次々と原発の再稼働が進むことになるからだ。

 さらに、*1-4のように、川内原発1号機が昨年7月に運転開始から30年を迎えたが、原子炉等規制法は30年を超えて運転する場合も原発再稼働認可の条件にはしていない。これに対し、市民団体や野党国会議員から認可なしの再稼働に批判が相次いだそうだが、危機管理に対する人の対応の甘さも含めて、日本は原発を使うべき国ではないのである。それでも、政治・行政は迅速で的確な意思決定ができないため、*1-5のような運転停止の可能性もある司法判断が期待される。

 なお、*1-6に、「原発は倫理的存在か」という記事があり、i)使用済核燃料が原発の高い場所に大量に保管されている ii) 使用済核燃料の処理・処分技術すら確立されていない iii)自分で処理・処分できないものを「他人任せ」にして成立している技術だ などが挙げられ、面倒なことは他人に任せで自分だけが利得を得る態度が倫理的問題だとしている。私は、使用済核燃料の問題も非常に大きいが、核燃料は作る時も、運送する時も、使用する時も人間に被曝を強いるため、使わないのがBestだと考える。

 また、*1-7のように、原発の運転開始から30年以上経過しながら、これまで廃炉などの後始末に道筋をつけずに原発を推進し、今になって廃炉のため克服しなければならない課題が山積しているなどというのは、他の技術ではあり得ないことだ。経産省は、*3-4のように、核のごみの最終処分場に追加財政支援の意向を示しているが、そもそも交付金は、電力会社や原発由来の電力を使用する者が負担するのではなく、税金によって将来も長く賄われる原発のコストだという認識を明確にすべきである。
 
 それにもかかわらず、「原発はコストが安いから、再稼働が必要」などと言う人がいるのは勝手極まりなく道徳に反するし、福島第一原発事故による帰還困難区域、遠くの無人島、深海など、問題の少ない候補地は多いにもかかわらず、発電もしない核のゴミを分散して処理し、膨大な税金を投入しようとしているのも、倫理観に欠ける。

(3)原発事故の賠償
 *2-1のように、東電福島第一原発事故を機に、富山県内の主婦らでつくる市民団体「とやま原子力教育を考える会」が、放射線の危険性や事故の歴史を盛り込んだ中高生向けの冊子「私たちの放射線副読本」をまとめたそうだが、*2-2のように、一般には現在でも放射線の人体への影響を過小評価する教育や政策が行われているのは愚かなことである。

 フクシマの場合は、初めての過酷事故だったため国が責任を持つのも仕方がないが、まさに*2-3のように、東電は賠償額を計7・1兆円と見積もり、これは従来の見通しより1兆円程度増額した。しかし、私も、*2-4のように、住民の健康を守るためには予防しかないため、避難指示解除は、年間の追加被ばく線量が1ミリシーベルト以下であることが確認された地域から慎重に行うべきであると考える。そのため、本当に被害がこれですべてであるとは思っていない。

(4)核廃棄物の処理と最終処分場について
 *3-1のように、スウェーデンでは、エストハンマル自治体のフォルスマルク森の地下450メートルに、原発から出た使用済核燃料を埋め立てる最終処分場ができるそうだ。それは、地層処分で、安全なレベルになるまでの約10万年間、地下深くで保管する手法である。また、*3-2のように、原子力大国のフランスでも、人類の難題「核のごみ」を巡る議論が続いており、未解決である。

 そして、*3-3のように、日本でも原発での使用済核燃料の保管は危険であり、既に余裕もないが、処分場の選定は難航している。私は、日本でも地層処分が最も安全だと思っていたが、国土が狭く温暖で地下水が豊富な日本では適地が少ないため、これでは収益を生まないごみの処分にカネがかかり過ぎ、陸上で候補地を探すのも困難であるため、これ以上の核廃棄物を決して出さないという条件付きで、核廃棄物が絶対に外に漏れない厳重な容器に入れ、8000メートル以上の深海の水が殆ど動かない場所に沈める方法もありではないかと考えている。

(5)九電川内原発と地震・火山
 東電福島第一原発は、津波に関する専門家の意見を無視したため、過酷事故を起こし、取り返しのつかない損害を与えた。しかし、*4-1の九電川内原発(鹿児島県薩摩川内市)は、*4-2のように、「地震・火山対策が不十分だ」と、地震・火山学者が懸念を表明しているにもかかわらず、無視している。 

 鹿児島市から12日間かけて歩いてきたリレーデモ隊も、九電側と小競り合いになり、警察が出動してデモ隊を抑制することになっている。原発の再稼働を心待ちにする事業者というのは、どういう事業者かわからないが、地震・火山など50の学会・協会で組織する「日本地球惑星科学連合」が多くの問題を指摘しているのをどう受け止めているのだろうか。

 そのような中、*4-3のように、同じ火山帯に属する鹿児島県口永良部島新岳が噴火し、これは、マグマ噴火だそうだ。マグニチュード9クラスの地震が起きた周辺で火山噴火が多くなるのは世界的な傾向で、東日本大震災で列島の地殻に加わる力が変わったためとすれば、今後も規模の大きいマグマ噴火が起こりうると考えねばならず、九州とその南の沖合では過去、破滅的なカルデラ噴火が繰り返され、7300年前の薩摩硫黄島噴火では、火砕流が九州内陸や屋久島にまで達したとのことである。

(6)地元の範囲と国民の意見
 *5-1のように、宮台真司首都大学東京教授と杉田敦法政大教授を代表として、「原発の是非で国民投票をしよう」と呼びかける署名が16万筆集まり、また、*5-2のように、玄海原発の地元である佐賀県でも、元佐賀大学学長の長谷川照氏を団長として県内外の市民が、国と九州電力に玄海原発全4基の操業停止を求めて訴訟しており、新たに270人が追加提訴して原告数が9396人になったそうだ。

 *5-3のように、ナガサキでも、「さようなら原発1000万人アクション・ナガサキ」などが主催して、「さようなら原発ナガサキ集会」が、長崎市平野町の長崎原爆資料館ホールで開かれ、約300人が再稼働反対の思いを一つにし、「一体何度『ノーモア』を繰り返せばいいのか」と脱原発を呼び掛けたそうだ。

 なお、*5-4のように、伊万里市の塚部芳和市長は、玄海原発の再稼働を同意する際の「地元範囲」に伊万里市など玄海原発から30キロ圏内を含めるよう要望することを明らかにしているが、30キロ圏内のみならず、原発事故で被害を受ける地域に同意権があるのは当然のことである。

 *5-5のように、四国電力伊方原発3号機が新規制基準に適合しているとした原子力規制委員会の決定に、原発から海を挟んで約45キロに位置する大分県で漁業関係者らが不安を募らせているが、魚は「風評被害」ではなく実際に放射性物質を含み、人体に被害をもたらずだろう。原発のために瀬戸内海の海産物や四国・九州の農産物を台無しにしては、食料自給率や輸出どころの話ではなくなるため、日本の大半の食品に核廃棄物のマークがつく前に、考え直すべきである。

<脱原発の合理性>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11836647.html
(朝日新聞 2015年7月2日) (教えて!電源構成:1)原発コスト、本当に最安?
 15年後の2030年、私たちが使う電気をどのように賄うのか。政府がまとめた電源構成(エネルギーミックス)案は、発電量に占める原発の割合を約2割とし、太陽光や風力は期待されたより抑える内容でした。そんな政府案の課題を8回にわけて読み解きます。初回は原発の発電コストは本当に安いのか―。
■事故頻度、半減見立て
 電源構成とは、全体の発電量に占める最適な電源の組み合わせをまとめたもので、政府は3~5年ごとに見直している。日本は火力に使う燃料の大半を輸入に頼っており、長期の資源調達や設備投資計画を考えておく必要があるからだ。政府は30年度の電源構成を決めるにあたり、「負担増をできるだけ抑える」方針でのぞんだ。電気料金の値上がりと並んで消費増税などの負担増が本格化しており、家庭や企業の負担がさらに増えれば「経済成長にマイナス」と考えた。経済産業省が電源ごとの発電コストを試算したところ、原発は1キロワット時で10・3円以上となり、主要電源のなかでは石炭火力の12・9円、水力の11・0円より安くなった。ここから、負担増を抑えるには「最安」の電源に頼るしかないという理屈で原発は2割必要と結論付けた。「原発比率を高くすれば、すべてが解決する」。宮沢洋一経産相は6月の会見で強調した。東京電力の福島第一原発事故は、いったん原発で過酷事故が起きれば、取り返しのつかない被害が生じることを世界中に知らしめた。それでも原発が最安とされたのはなぜなのか。からくりのひとつは、大きな事故に備えた「事故リスク対応費」にある。ここに含まれる廃炉や損害賠償、除染などの損害費用は、前回の11年時に試算した5・8兆円から9・1兆円に増えはした。ただ、これは経産省も認める「下限」の金額。事故を収束させる見通しが立たないなかで、実際の損害費用は大きく膨らむ可能性が高い。さらに、震災後の新規制基準に基づいて安全対策などが実施された結果、炉心損傷などの過酷事故が起きる回数は対策前より「ほぼ半減した」と見立てた。前回は、50基の原発をベースに「40年に1回」の頻度で事故が起きるとしていたが、「80年に1回程度」に減る計算だ。経産省が「半減」の根拠にしたのは、原子力規制委員会の審査で扱われた事故の「リスク評価」。震災前からの対策などを除いた状態の原発で、どんな原因で心臓部の炉心が損傷し、どのぐらいの頻度で起きるかを分析。安全対策によって事故の可能性がどれだけ減るかを試算したものだ。九州電力は規制委の審査で、再稼働を目指す川内原発(鹿児島県)の事故を起こす頻度が、一つの安全対策で「6割以上減る」との試算を示していた。経産省はこうした電力会社の試算などから、事故頻度はほぼ半減すると追認した。事故対応費は、損害費用を80年に1回程度という事故頻度で割り、それをさらに年間発電量で割って1キロワット時のコストを計算する。その結果、対応費は前回の0・54円から、ほぼ半減の0・3円になった。だが、事故頻度の試算結果を対応費と直接結びつけることには、規制委内でも「違和感がある」との声がある。専門家の一人は「損害費用がどんなに膨らんでも、半減した事故頻度で割れば、たいした被害ではないと言うに等しい結論になる」と指摘する。
■建設費、甘い見積もり
 建設費などの「資本費」にもからくりがある。経産省が試算した建設費は1基あたり4400億円。東北電力東通原発など国内で比較的新しい原発をベースにしたとはいえ、事故前の仕様だ。海外では、原発の建設費は右肩上がりで、日本原子力産業協会によると、建設中のフランスやフィンランドの原発は1基あたりの見積もりが、当初の2・5倍の1兆円超になっているという。原発に詳しい立命館大学の大島堅一教授は、海外の原発は安全性をより高めた最新型で建設費が高くなったとみる。「少なくとも、海外で原発の建設コストが上がっていることの検証が欠かせない」と指摘する。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015070702000273.html (東京新聞 2015年7月7日) 川内原発、7日午後に核燃料装填 検証不十分 最終段階に
 九州電力は七日午後、原子力規制委員会の審査に適合すると認められた川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉に核燃料を装填(そうてん)する作業を始める。その後の検査で問題がなければ八月十日ごろに原子炉を起動し、同十三日前後に発電と送電を開始して再稼働する予定。2号機についても十月中旬の再稼働を目指す。燃料装填により再稼働に向けたプロセスは大詰めを迎える。今後の作業が順調に進めば、東京電力福島第一原発事故を受けて二〇一三年七月に施行された新規制基準に適合した原発として初の運転再開となる。宮沢洋一経済産業相は七日の閣議後の記者会見で「やっとここまで来たかとの思いだ」と述べた。九電によると、川内1号機に入れる核燃料は計百五十七体で、原子炉建屋に隣接する使用済み核燃料プールからクレーンで移動させて原子炉容器に装填する。作業は全て水中で行い、終了までに四日程度かかる見通し。規制委は昨年九月、川内1、2号機が新規制基準に適合していることを認める「審査書」を決定。作業が先行する1号機では今年三月に使用前検査が始まり、今月三日に核燃料の装填に必要な検査が終わった。規制委は燃料装填後も検査を継続し、冷却系配管などの設備に不具合があれば九電に対策を求めるため、再稼働時期がずれ込む可能性もある。九電は今後、重大事故を想定した訓練を実施し、問題がなければ原子炉の起動試験に移る。東日本大震災以降、電力不足を理由とした政治判断で一二年七月、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県おおい町)が再稼働したが、一三年九月の定期検査入り後、国内の全原発が停止している。
◆九電、自治体に説明せず
<解説> 火山の巨大噴火リスクや周辺住民の避難計画の不十分さなどいくつも重要な問題が山積したまま、九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が、再稼働に向けた最終段階に入った。川内原発は、桜島を中心とした姶良(あいら)カルデラをはじめ、数多くの火山に囲まれている。九電は何十年も前に巨大噴火の予兆をつかむことができるため対応は可能だとし、原子力規制委員会もその主張を妥当と判断している。しかし、五月に同県の口永良部島(くちのえらぶじま)新岳の噴火が示したように、ただでさえ噴火予知は非常に難しい。巨大噴火の場合は、現代の科学による観測データがなく、どんな過程を経て噴火に至るかよく分かっていない。火山の専門家からはさらに難しいとの指摘が相次いでいる。使った核燃料は自らが高熱を発するため、二年間はプールの水で冷やしてからでないと外部に運べない。にもかかわらず九電は、核燃料をどこにどう緊急搬出するか、いまだ十分に検討していない。鹿児島県や薩摩川内市は既に再稼働に同意したが、屋久島や種子島などで九電に説明を求める動きが広がっている。だが、九電は公の場で反対意見が出るのを避けるため、説明会を開こうとしない。避難計画は、国際原子力機関(IAEA)が定める国際基準の中で、五つ目の最後のとりでとなる。鹿児島県や周辺自治体の計画はできたが、避難住民の受け入れ態勢の協議などはほとんどされていない。計画に実効性があるのか、規制委も含めどこも検証しない。

*1-3:http://qbiz.jp/article/66278/1/ (西日本新聞 2015年7月8日) 【川内原発燃料装填】社長「動かしてみないと…」 九電「4年ぶり」に安堵と不安
 川内原発1号機は7日、核燃料装填に着手したことで再稼働に向けた最終段階に入った。2011年12月に九州電力が保有する原発が全て停止して3年7カ月。大幅な収支改善効果が期待できる再稼働がほぼ確実となったことで、社内には安堵(あんど)感も広がった。「ここまで長かった。ようやくといった感がある」。九電関係者は大きく息を吐き出した。新規制基準に基づく原子力規制委員会による川内1、2号機の審査が始まったのは13年7月。当初は半年程度で終わるとみられていた。だが、新基準下では全国初の審査とあって、九電、規制委ともに手探りの作業だったことに加え、九電が必要書類の準備に手間取るなどしたことで大幅に長期化。審査終了まで2年弱を要した。原発停止は財務に大打撃を与えた。九電が13年春に値上げした電気料金は、同年7月に川内1、2号機、翌年1月までには玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)も再稼働していることを前提に算出。ところが、長期停止に伴い火力発電の燃料費がかさんだ。15年3月期連結決算で純損益が約1147億円の赤字となり、4年連続の最終赤字を計上。東日本大震災前に6千億円以上あった過去の利益の蓄積も底を突いた。川内1号機は工程が順調に進めば8月中旬にも再稼働し、夏の高需要期に間に合う可能性がある。他電力や市場からの調達は大幅に減らせる。2号機も稼働すれば年平均で月間150億円の収支改善効果があるため、料金の再値上げは当面、回避できる見通しだ。4年以上停止している川内1号機。再稼働までの工程が想定通りに進むかは予断を許さない。瓜生道明社長は「止まっている間に総点検を3回やり、不良箇所は直している。ただ、動かしてみないと分からないという若干の不安はある」と打ち明ける。川内1、2号機が再稼働すれば本年度の黒字化が視野に入る九電。だが、16年4月に始まる電力の小売り全面自由化などの変化に対応していくには、強固な財務基盤が欠かせない。収益力強化のため、川内に続き玄海3、4号機の再稼働も急ぐ構えだ。

*1-4:http://mainichi.jp/select/news/20150711k0000m040056000c.html
(毎日新聞 2015年7月10日) 川内原発1号機:30年超の運転 29日にも認可 規制委
 1号機は昨年7月に運転開始から30年を迎えた。原子炉等規制法は、30年を超えて運転する原発に対し、機器の劣化の評価や管理方針を定めることを電力会社に義務付けているが、再稼働の条件には含まれていない。市民団体や野党の国会議員からは認可なしの再稼働に批判が相次いでおり、規制委の田中俊一委員長は6月の記者会見で「法律上の枠組みが一般的感覚としては理解しがたいことはよく分かる」と述べていた。

*1-5:http://qbiz.jp/article/66283/1/
(西日本新聞 2015年7月8日) 【川内原発燃料装填】注目される司法判断、運転停止の可能性も
 原子力規制委員会の審査基準に適合しているとされた九州電力川内原発で核燃料の装填(そうてん)作業が7日に始まり、原発は再稼働の最終準備に入った。今後、稼働の「壁」として立ちはだかる可能性もあるのが司法の判断だ。周辺住民らが再稼働差し止めを求めた仮処分申し立ての即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部の判断が早ければ年内にも下される。最大の争点は、原発耐震化の基準となる「基準地震動」の妥当性。再稼働したとしても「想定する揺れは小さすぎる」との判断になれば、再び運転停止となることもあり得る。再稼働が近づく原発の差し止め仮処分をめぐっては4月、差し止め決定が出された関西電力高浜原発3、4号機と、却下された川内原発1、2号機で司法判断が割れた。川内原発については先月末、福岡高裁宮崎支部に審判の場が移った。基準地震動は、周辺の活断層が動いた際に想定される揺れのことだ。この数値が「小さすぎる」となると、原発設備はさらなる耐震化工事と、それに伴う費用負担が求められ、運転は続けられなくなる。住民側弁護団の内山成樹弁護士は、九電の地震動が「地域で過去発生した地震の平均値にとどまっており、最大レベルを想定できていない」と批判した。高浜原発の決定を出した福井地裁も、地震動の推定について「実績のみならず理論面でも信頼性を失っている」と再稼働を認めなかった。内山弁護士によると、抗告審で争点となりそうなのが、地震動を導き出す過程で広く使われている「松田式」(断層の長さから地震の規模を推定する式)。「松田式を使った地震動はあくまでも平均像。安全を重視すれば、基準地震動は今より4倍以上必要になるのは明らか」と訴える。松田式を1970年代に提唱した東京大の松田時彦名誉教授(84)も「式自体に妥当性はあると考えている。問題はその使い方だ。原発は十分な安全性が求められる施設であり、基準地震動を平均値にとどめるなら、安全想定としては低いと思う」と指摘している。原発の規制基準の妥当性そのものが問われているとも言えるが、原子力規制庁は「裁判関連は答えられない」と取材に応じていない。九電は「原発の安全性が確保されているという主張が高裁でも認められるよう対応したい」(事業法務グループ)。巨大噴火への対応や避難計画の妥当性についても争点となっており、あらためて司法判断が注目される。

*1-6:http://digital.asahi.com/articles/ASH775W3CH77UEHF018.html?iref=comtop_list_pol_f01 (朝日新聞 2015年7月7日) 原発は倫理的存在か
東浩紀(あずま・ひろき) 作家・思想家 1971年生。ゲンロン代表取締役。専門は現代思想、情報社会論、表象文化論。メディア出演多数。主著に『存在論的、郵便的』(1998、サントリー学芸賞受賞)『動物化するポストモダン』(2001)『クォンタム・ファミリーズ』(2009、三島由紀夫賞受賞)『一般意志2.0』(2011)。編著に『福島第一原発観光地化計画』(2013)など
■原発は倫理的存在か
 原発をめぐる議論で「倫理」がなぜ問われるかといえば、それは使用済み核燃料の処理技術が確立されていないからである。「トイレのないマンション」とも揶揄(やゆ)されるように、現在の原発は、使用済み燃料の処理を、長期間保管しその危険性が自然に減衰するのを待つか、あるいは後世の技術開発の可能性に委ねることで成立している。いずれにせよ、いまここで処理できないものを、いつかだれかがなんとかしてくれるという「他人任せ」の態度のうえで成立しているのは疑問の余地がない。面倒なことは他人に任せ、自分だけが利得を得る。そのような態度が「よい」ことであるかどうか。原発の倫理的問題は結局はそこに集約される。日本では福島第一原発事故を機にはじめて関心を向けたひとが多いが(筆者自身もそのひとりだが)、この問題は本質的に事故の可能性とは関係ない。経済性とも関係がない。事故がなくても、いくら経済効率がよくても、使用済み核燃料は蓄積する一方であり、後世の自然環境と人間社会の負担は増える一方だからである。そしてそう考えると、上記の問いに肯定で答えることはきわめてむずかしい。面倒なことを他人に任せ、自分だけが利得を得る。そのような態度が、無責任で責められるべきものであることは、文化的な多様性とは無関係に、多くのひとが同意する価値観だと思われる。そうでなければ、そもそも人間社会は成立しない。つまり、原発は(少なくとも現在の技術水準での原発は)、そもそもが倫理に反する存在なのである。わたしたちは、原発を建設し、運用し、その果実を享受することで、日々倫理に反する行動を行っている。しかし、これは必ずしも原発の即時停止や全廃を意味しない。また、わたしたちすべてが深く反省し、罪の意識に沈殿すべきだということも意味しない。なぜなら、人間の行動は倫理のみで測られるわけではないからである。倫理に反する決定が、別の論理に基づいて支持されることはある。たとえば戦争時の殺人のように。あるいは、地球の裏側で何百万人もの飢えた子どもたちがおり、少額の寄付でその多くの命が救われることがわかっているにもかかわらず、ジャンクフードで日々膨大な食料と資金を浪費しているわたしたちの日常のように。それゆえ、わたしたちが考えるべきなのは、原理的には倫理に反するはずの原発が、それでもいまこの時代に存在が許される、そのときの「条件」とはなにかということである。それは便利だから許されているのか。儲(もう)かるから許されているのか。ほかに手段がないから許されるのか。議論はここから具体論に入り、哲学の手を離れる。最終的な結論はさまざまな要素に依存し、不安定な未来予測にも左右される。たとえば、もし近い将来に画期的な技術革新が生じ、使用済み燃料の危険性が安全かつすみやかに除去できるようになるとするならば、たとえいま原発が倫理に反するように見えたとしても、むしろ建設を推進し、革新の到来を早めたほうが倫理的だということになる。あるいは、多くの人文的問題と同じく、その議論もまた再帰的な構造をもつ。たとえば、もし仮に、ある国で原発が倫理に反するものであることを確認したうえで、それでも慎重な議論を経て稼働が不可避だと判断されたのだとしても、その事実そのものがほかの国で安易な建設を促進するのだとすれば、その副作用は議論の最初の前提を掘り崩してしまうことになる。原発そのものが素直に肯定できる存在ではない以上、わたしたちは、その是非について、未来や他者の視線も考慮しながら総合的に判断しなければならない。以上、原発と倫理の関係について私見を述べた。ではそんなふうに言うおまえは具体的にどう考えているのかと問われれば、筆者は、深刻な福島第一原発事故を経験した日本は、ほかの国とは異なる条件を自覚し、原発の管理について特別の倫理的な役割を果たすべきだと考えている。それゆえ、原発の再稼働はしても新設はせず(リプレース含む)、自然全廃を受け入れるとともに、他方で原子力の研究にはいっそうの力を入れ、新設なしでの研究者と技術者の養成を試みるべきだと思う。しかし、その根拠について記すのは、また別の機会に譲りたい。いずれにせよ、わたしたちが忘れてはならないのは、原発というのは、21世紀初頭の現時点での技術水準においては、そもそも倫理に反する存在、つまり「存在しないほうがいい存在」であり、それゆえ稼働や新設をめぐっては慎重な議論が求められるということである。わたしたちは、すべての議論を、まずこの認識から始めなければならない。さきほども記したように、わたしたちはつねに倫理を守る必要はない。しかし、倫理を破るには、つねにそれなりの「言い訳」が必要になる。そして、その言い訳をどれだけ精緻(せいち)に、説得力あるかたちで、そして普遍的な論理に基づいて作ることができるか、そこでこそ人間の知性は試される。その点で言えば、立地自治体と経済界が望むので新設します、というのは、知性のかけらもない判断である。

*1-7:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11655467.html?_requesturl=articles%2FDA3S11655467.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11655467 (朝日新聞社説 2015年3月18日) 廃炉の決定 「脱原発」を見すえてこそ
 関西電力と日本原子力発電(原電)が、運転開始から40年を超えた原発3基の廃炉を決めた。中国、九州の2社も計2基の廃炉を18日に決める予定だ。運転期間を原則40年とする、福島第一原発の事故後に設けられた規制が初めて適用される。日本の発電所に48基ある原子炉(商業炉)のうち、20基近くが運転開始から30年以上経過している。延長は1回だけ認められるが、特別な審査に合格しなければならず、追加投資の必要も生じる。今後は毎年のように、廃炉にするのか決断を迫られるようになる。 1963年に原子力発電に成功して以来、日本は後始末に道筋をつけないまま原発を推進してきた。このため、廃炉を進めるために解決しなければならない課題が山積している。これらを克服し「廃炉できる国」にしていくことは、脱原発を着実に進める前提にもなるはずだ。
■未解決のゴミ問題
 廃炉事業で最も深刻なのが、ゴミの問題だ。解体にともなって出る使用済み核燃料と放射性廃棄物の置き場所が決まっていない。使用済み燃料については、全量を再処理する「核燃サイクル」を掲げることで直視を避けてきた。しかし、事業は事実上破綻している。使用済み燃料は原発の冷却プールや乾式キャスクに入れて敷地内に保管せざるをえないのが実情だ。特に関西電力は、福井県と「使用済み燃料の保管・処分は県外で」と約束してきた経緯がある。今回、美浜2基の廃炉を決めたことで、この約束とも直面することになる。放射性廃棄物の取り扱いもやっかいだ。線量の多寡によって分別され、それぞれ地中で管理する方針は決まっている。だが、高レベル廃棄物はもとより、低レベル廃棄物も処分地が決まっていない。埋設にあたっての管理基準もこれからだ。処分のめどが立たなければ廃炉作業自体が滞る。実際、国内の商業炉で初めて廃炉を決めた原電の東海原発(茨城県)では低レベル廃棄物の処分法が確立できないため、一度3年延期した原子炉の解体作業の着工をさらに5年先送りしている。政府は高レベル廃棄物の最終処分場について、立候補を待つ方式を改めて、自ら候補地の選定に乗り出す。どこにも決まらなかった経緯を考えれば、選定は難航が予想される。一方的な押しつけにならないよう手続きの透明性とともに、対話する機会を確保することが何より大切になる。
■必要になる地元支援
 原発が立地する地域にも配慮する必要がある。立地自治体には現在、電気料金に含まれる税金を財源とした電源三法交付金が配られているが、廃炉が決まれば対象外となる。経済的な自立の難しい過疎地域で、自治体財政を原発マネーに依存しているところが多いだけに影響は少なくない。お金を理由に立地自治体が原発の維持や建て替えを望む悪循環は断ち切らなければならない。ただ、いきなり住民生活に支障が出ることは避けるべきだ。当面、何らかの財政支援が必要になるだろう。人口も資源も少ない地域の振興は容易ではない。それでも、事故で大きな被害を受けた福島県は、再生可能エネルギーによる再生にかじを切った。福井県でも地域の資源を見つめ直す動きはある。国は、電力消費地との連携をとりもつなど、原発からの自立を積極的に支えることに注力してほしい。
■自由化に沿うものに
 政府は、電力の自由化を進めている。16年度には電力大手の地域独占を廃し、20年度には発送電を分離する計画だ。電気の利用者は、自由に電源を選べるようになる。一方、廃炉は20~30年かかる長丁場の事業になる。そのコストは一体、誰が負担するのか。今回の廃炉にあたっては会計処理のルールが見直され、必要額を電気料金から回収できるようにしている。廃炉費用の負担が電力会社にとって過大であれば、廃炉自体にブレーキがかかるとの考えからだ。今後についても送電網の使用料の一部として広く国民に負担を求める案が浮上している。だが、政策上増やしていく電源ならともかく、配慮が過剰になれば減らしていくべき原発の温存につながる恐れがある。競争上の公平さからも疑問は残る。詰めの論議が必要だ。廃炉の道筋を整えることは一面で、原発を更新しやすい環境をつくることにもなる。しかし、福島第一原発の事故を思えば、脱原発につなげることにこそ、廃炉を進める意味がある。関西電力は同じ17日、40年前後の原発3基の運転延長を求めて、原子力規制委員会に審査を申請している。脱原発依存を着実に進めるのか。政府はエネルギーの将来絵図を明確に示すべきである。

<原発事故と賠償>
*2-1:http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/20150706/CK2015070602000029.html (中日新聞 2015.7.6) 放射線の真実記す 県内主婦ら 中高生向け冊子作製
●危険性、原発事故の歴史…
 東京電力福島第一原発事故を機に、県内の主婦らでつくる市民団体「とやま原子力教育を考える会」が、放射線の危険性や事故の歴史を盛り込んだ中高生向けの冊子「私たちの放射線副読本」をまとめた。県内の全教育施設に無償配布する予定で、代表の道永麻由美さん(62)は「同じ過ちを犯さないよう、真実を正しく伝える手助けになれば」と話す。副読本は、A4判全九十一ページカラー刷り。米国・スリーマイル島やウクライナ・チェルノブイリなど、世界で起きた原発事故の年表や放射線による人体への影響、身の守り方を図や表、写真で紹介している。福島原発事故後の二〇一一年九月、文部科学省が発行した副読本の内容が、「福島原発事故についての記載がなく、責任や原因にも触れていない」(道永さん)として、不満を抱いたメンバーらが集まって独自の副読本作製を企画。放射線の恐ろしさを正しく伝えようと、市民からの協力金など五十万円を集め、一二年四月から三年がかりで今年五月に二千部を完成させた。五日は富山市新富町のCiCビルで、メンバー六人が県内の教育施設五百六十九カ所や図書館六十八カ所への発送作業に追われた。副読本は、一冊五百円(税込み)と郵送料で購入できる。問い合わせは道永さん=電090(7083)8190=へ。

*2-2:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201507/20150704_13015.html
(河北新報 2015年7月4日) <女川原発>事故時「仙台など高線量の恐れ」
 原発の重大事故に備える避難計画をめぐり、前提となる放射性物質の拡散想定の在り方が問われている。民間のシミュレーションでは、東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)が東京電力福島第1原発並みの事故に陥った場合、空間放射線量は県内の広範囲で高くなる恐れがあると判明。ただ原発から30キロ以上離れた仙台市などが避難対象に含まれる事態は想定されていないのが実態だ。「放射性物質は『見えない津波』。汚染の広がり方には地形や風向、風速などが大きく影響する」。民間シンクタンクの環境総合研究所(東京)顧問の青山貞一東京都市大名誉教授(環境政策)はこう強調する。研究所のシミュレーションによると、女川原発の事故想定では、風向きなどによっては、仙台市でも1時間当たりの空間放射線量が数十マイクロシーベルトに達する可能性があるという。地形を考慮した結果は図・上の通り。女川町周辺では西よりの風が多いが、陸地への影響が懸念される「東北東」の風を想定し、風速2メートルの場合の空間放射線量を色分けした。原発から数キロ圏は数百マイクロシーベルトと非常に高く、30キロ圏外の仙台市や七ケ浜町なども20~50マイクロシーベルトに上った。100キロ近く離れた白石市や蔵王町などは10~20マイクロシーベルトなどとなり、地形を考慮しない場合(図・下)より、高線量地域が広かった。原子力規制委員会の新たな基準では、毎時500マイクロシーベルトは即時避難、20マイクロシーベルトは1週間程度以内の避難に該当する。一方、規制委が2012年10月に公表した拡散予測では、避難が必要となるのは女川原発から最大18.3キロと試算されていた。女川原発の事故に備える広域避難計画については、立地自治体を含む周辺7市町が策定中だが、宮城県がガイドラインで示した対象はあくまで原発の半径30キロの区域にとどまる。しかも、国は実際の避難は放射線量の実測値を基に判断し、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)は活用しない方針。ただ、30キロ圏で区切ったり、予測を避けたりする傾向には反発の声も出ている。女川原発30キロ圏の登米市の布施孝尚市長はSPEEDIの有用性を指摘し「予測は避難する上で必要な情報だ」と述べている。環境総合研究所のシミュレーションのシステム開発に関わった青山氏は「シミュレーション結果を避難計画の策定などにどう活用するかが重要だ」と訴える。研究所の予測結果について宮城県原子力安全対策課の担当者は「詳細が分からないのでコメントできない」と話している。
[環境総合研究所のシミュレーション]2011年11月~13年4月に開発したシステムで実施。大気汚染研究用などの計算モデルを福島第1原発事故に適用。国土地理院の地形データや気象庁の気象データも活用した。事故の規模、風向、風速などの違いに応じて放射性物質拡散状況を試算、1時間当たりの空間線量を色分けして表示する。約1000パターンをデータベース化。影響が及ぶ人口や事故後に同じ場所に住み続けた場合の積算外部被ばく線量も推計できるという。

*2-3:http://qbiz.jp/article/65547/1/
(西日本新聞 2015年6月28日) 東電賠償、計7・1兆円 時期確定で1兆円増額
 東京電力は、福島第1原発事故による損害賠償の総額を約7兆1千億円と見積もっていることが28日、分かった。近く改定する再建計画(新総合特別事業計画)に盛り込む。政府が避難者への慰謝料支払いなどの終了時期を示したことで、東電が想定する賠償額の全体像がほぼ固まった。従来の見通しより1兆円程度増額した。東電は既に原子力損害賠償・廃炉等支援機構と調整に入っている。両者は週内にも経済産業相に申請し、7月上旬にも認定を受ける見通しだ。政府は12日に決めた福島復興指針の改定版で、避難者への慰謝料に加え、商工業者の営業損害の終了時期を決めた。東電はこれに基づいて、追加の賠償額を計算した。2016年度分で終了する商工業者に対する営業損害や、17年度分で終わる避難者への慰謝料の支払いなどを含めたとみられる。ただ、賠償期間の終了後も営業損害が出たり、政府の目標通りに避難指示が解除できなかったりすれば、賠償総額がさらに膨らむ可能性がある。東電は4月に一部改定した再建計画では、損害賠償の総額を6兆1252億円と見込んでいた。一方、収支見通しに関しては、5月に金融機関に提示した、柏崎刈羽原発(新潟県)が10月から順次再稼働することを前提にした数字を盛り込むもよう。しかし原子力規制委員会による審査の先行きは見通せず、地元の了解が得られるめども立っていない。東電はことし秋から12月にかけて再稼働の時期を本格的に見直し、再建計画を再度改定する方針。

*2-4:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2015/150703_2.html (2015年7月3日 日本弁護士連合会会長声明 会長 村越 進) 避難指示の解除、慰謝料支払の打切りに反対する会長声明
 政府は、2015年6月12日、福島復興加速化指針を改訂し、福島県の居住制限区域と避難指示解除準備区域について、避難指示を遅くとも2017年3月までに解除するとの目標を定めた。両区域の原発事故前の人口は約54、800人であり、避難指示区域全体の7割を占める。また、上記時期までに両区域の避難指示を解除することを前提に、避難指示区域からの避難者に東京電力が支払っている慰謝料について、解除の時期にかかわらず2018年3月分まで支払うよう東京電力を指導することを決めた。しかし、避難指示をいつ解除するかについては、避難指示区域とされている各市町村の実情に応じて判断していくべき事柄であり、上記解除の目標が当該地域の実情を無視して、一律に期限を区切るものであるとすれば、相当でない。当連合会は、住民の健康を守るためには、予防原則を貫徹し、避難指示解除は、年間の追加被ばく線量が1ミリシーベルト以下であることが確認された地域から慎重に行うべきであるとの意見を述べてきた(2013年10月4日付け「福島第一原子力発電所事故被害の完全救済及び脱原発を求める決議」)。政府の原子力災害対策本部が2011年12月26日付けで示した「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」においても、避難指示の解除については、①年間積算線量が20ミリシーベルト以下となること、②日常生活に必須なインフラや、医療・介護などの生活関連サービスがおおむね復旧し、除染作業が十分に進捗すること、③県、市町村、住民との十分な協議を踏まえること、の3点を要件として挙げていた。また、解除に当たっては、地域の実情を十分に考慮する必要があることから、一律の取扱いとはせずに、関係市町村が最も適当と考える時期に解除することも可能とするとしていた。両区域の実情を見るに、①除染が未だ進捗していない、②除染後も高い放射線量が測定されている、③インフラや生活関連サービスの復旧の見通しが立っていない、④建築業者の人手不足のため、元の自宅の改修や建て替えをしようにも着工の見通しが立たないなど、あと2年弱で避難指示の解除や帰還の前提が整うとは考え難い地域が多く見られる。避難指示が解除されたからといって、わずか1年間で被害者が元の生活に戻れるものではない。よって、当連合会は、政府に対し、避難指示の解除については、各地域の実情を十分踏まえ、地元や対象住民との協議も十分行った上で、個別に慎重に判断すること、一律に2017年3月までに解除すると期限を区切らないことを求める。また、政府及び東京電力に対し、被害者の被害の実情を十分に踏まえ、避難指示区域からの避難者に対する慰謝料の支払を一律に2018年3月分までで打ち切ることのないよう求める。

<核廃棄物の処理と最終処分場>
*3-1:http://qbiz.jp/article/61427/1/
(西日本新聞 2015年5月5日) 【欧州の脱原発】スウェーデン 核のごみ、共存への覚悟
 日本記者クラブ欧州取材団に参加し、2月、ヨーロッパを訪ねた。使用済み核燃料(核のごみ)の最終処分場の建設計画が進むスウェーデン、脱原発が進むドイツと、再生可能エネルギーでほぼ全ての電力をまかなうアイスランドを紹介する。雪をかぶった針葉樹から木漏れ日が差し、絵本のような銀世界がまぶしく光る。森には希少種のカエルが生息するという。2月、スウェーデンの首都ストックホルムから北約140キロにあるエストハンマル自治体のフォルスマルク。この森の地下450メートルに、原発から出た使用済み核燃料(核のごみ)を埋め立てる最終処分場ができる。着工は2019年で、10年後には国内の原発から出た全ての核のごみが順に運び込まれる計画だ。「心配はしていませんよ。よく調査された結果ですから」。マルガレータ・バイレグレン副市長はさらりと言った。地層処分−。近づけば死に至る強烈な放射線を出し続ける核のごみを、地下深くで保管する手法だ。安全なレベルになるまでに要する時間は、およそ10万年。地域住民は途方もない年月を共存していく。核のごみの処分は、原発を抱える各国の共通課題だ。日本を含む多くの国が地層処分を目指す。ただ、具体的な予定地が決まっているのは2カ国にすぎない。小泉純一郎元首相が視察して話題になった「オンカロ」を建設中のフィンランドと、スウェーデンだけだ。米国とドイツは一度は決めた候補地で住民から反対を受け白紙撤回した。日本は、候補地選定のスタートラインで足踏みを続ける。「私たちは一番安全な場所で処分すべきだと考えている。それがここならば、やるしかない」。副市長は受け入れる理由を話した。事業主体は、国内の電力会社が出資する廃棄物管理会社「SKB」だ。1970年代から適地を探してきた。地層処分に耐えうる地質を持つ地域を選び、地元住民に理解を得るため説明会を重ねてきた。2カ所の最終候補地からフォルスマルクが選ばれた09年には、住民の8割が賛成意見を持つようになっていた。SKBが規制当局に最終処分場の建設許可を申請したのは11年3月だった。福島第1原発事故があった時期と重なる。SKBのクリストファー・エッケルベーグ社長は「事故直後には原子力に否定的な国民が増えたが1、2年で元に戻った」といい、こう付け加えた。「福島の事故が示したのは、核のごみを発電所内のプールに長い間置いておくべきではないということ。ちゃんとした処分場が必要だ」。スウェーデンの首都ストックホルムから南に約340キロのオスカーシャムには、最終処分場の技術を開発してきた「エスポ岩盤研究所」がある。処分場の適地の一つとして1990年に掘削が始まった。最終的に予定地から漏れたが、現在は地層処分の理解を促すため見学を受け付けている。雪で覆われた地上からバスでトンネルに入った。らせん状に約5分下っていくと、地下420メートルに着いた。むき出しの岩盤に水がじわりとしみ出している。「花こう岩に似たもので、18億年前の地層です。最終処分場の建設予定地の地質とよく似ています」。薄暗いトンネルの中で、研究所を運営するSKB社の担当者が説明を始めた。担当者によると地層処分の手順はこうだ。銅製の専用容器に核のごみを収容する。1本ずつトンネル内の穴に入れ、周囲を緩衝材の粘土(ベントナイト)で埋める。国内で出た全量(現在は約6千トン)を60〜80年かけて運び込み、最終的にベントナイトでトンネルを埋め、二度と掘り起こせなくする−。専用容器、粘土、周囲の岩盤という3重のバリアーを施された核のごみは地下で眠り続ける。「人間の環境から孤立させて保管します。ざっと4千世代先まで」
     ◆    ◆
 10万年という遠い将来まで負の遺産を引き継ぐことに不安はないのか。予定地フォルスマルクを抱えるエストハンマル自治体のマルガレータ・バイレグレン副市長は「情報は開かれている。私たちは安心している」と強調した。見返りとして、SKB社は最終候補地になったエストハンマルとオスカーシャムに計250億円を支払う。だが、日本が原発立地地域に出す交付金のような公的な経済支援はスウェーデンにはなく、固定資産税などの税収もない。「金で釣る」といった批判は当てはまらないという。近くの大工ラシュ・イエントさん(56)は「雇用が生まれていいのでは。心配はしていませんよ」と、屈託がない。処分場の最終候補に残った2都市には「原子力に慣れた町」だという共通点がある。ともに原発3基があり、フォルスマルクには中低レベル放射性廃棄物処分場が、オスカーシャムには国内の原発から出る放射性廃棄物の全てを一時的に預かる中間貯蔵施設がある。「放射線への理解や知識が豊かな地域。対話しやすい人たちです」。SKB社のクリストファー・エッケルベーグ社長は、原発がある地域に関連施設が集中する背景にそんな理由があると説明した。
     ◆    ◆
 東京電力福島第1原発事故を経験し、原発政策をめぐる産官学「原子力ムラ」の癒着構造を目の当たりにした日本人には、スウェーデンの人々が楽観的すぎるように思えてしまう。だが日本とスウェーデンには決定的に違う点がある。原発政策に対する国民の信頼の度合いだ。スウェーデンでは原発10基が稼働しているが、これまで大事故は発生したことがない。その延長線上で核のごみ処分場の議論が交わされてきた。さらに、目標達成時期は定めていないが、将来は電源を再生エネ100%にすることを目指すと決めている。79年の米スリーマイルアイランド原発事故後には、規制当局が電力会社に安全対策強化を指示し、事故時に原子炉格納容器の圧力を逃がす「フィルター付きベント」を全原発が取り付けた。日本ではフィルター付きベントは、福島第1原発と同じ沸騰水型の原発での取り付けが広がり始めたばかりだ。九州電力の川内、玄海両原発のような加圧水型では当面取り付けが猶予された。日本は30年遅れている部分がある。日本も原発を稼働させた以上、核のごみの処分から逃れられない。「トイレなきマンション」に例えられる原発の現状の放置は未来の世代に難題を先送りしていることになる。核のごみの処理に道筋をつけるには原発行政への信頼回復が先決だが、福島の事故も収束していない。日本の原発行政の信頼を回復させる取り組みは十分だろうか。
●イブラヒム・バイラン・エネルギー担当相 省エネ 将来100%に
 スウェーデンには原発10基があり、発電量の約40%を支えている。再生エネルギーは現在51%。2020年までに55%まで上がる予測だ。原発は老朽化しており、代替電力を考えなければいけない。将来は再生エネルギーで100%にすることを目指す。スウェーデンでは1980年の国民投票で2010年までの原発廃止が決まったが、前政権が政策を変更して原発の新設が可能になった。だが原発が造られた頃と違い、現在は国が原発事業者への補助を一切しないことで各政党が合意している。経済的な理由から新しい原発を造る事業者は当面出てこないだろう。短期間で原発を廃止すると電気料金が急上昇するため、ドイツと違って原発をゼロにする目標達成時期は定めていない。事業者が安全面や経済面を考慮して廃止していくのがいいと思う。主力の再生エネはバイオマスだ。海岸線が長い国土では洋上風力発電も期待できる。国会に全政党でつくる調査会を設け、将来のエネルギー政策について合意したい。

*3-2:http://mainichi.jp/feature/news/20150507mog00m030009000c.html
(毎日新聞 2015年5月8日) 核のごみ:最終処分場計画で苦悩するフランスに重なる明日の日本
 原子力大国のフランスで、人類の難題「核のごみ」を巡る議論が続いている。北東部ビュールに計画中の放射性廃棄物最終処分場は、1991年以来の長い議論の末、10年後に試験運用を始める予定だが、反対派の運動もあり、操業開始時期は依然、不透明だ。一方、最終処分場の操業まで放射性廃棄物を保管している北西部のラアーグ核燃料再処理工場では、貯蔵施設が満杯となるため拡張計画がスタートした。山積する課題に苦悩するフランスの姿は、明日の日本と重なる。仏ナンテールの裁判所は今年3月末、ビュールの処分場建設計画に反対する6団体が、計画を進めるANDRA(放射性廃棄物管理機関)を相手に起こした訴訟で、訴えを却下する決定を出した。6団体は、ANDRAがビュールの地下水脈の存在を過小評価し、処分場候補地選定に向けて誤った情報を提供したとして違法行為に該当すると主張していた。最終処分場を巡る反対派とANDRAの対立は続いている。24年前の91年、仏政府は最終処分場の建設地に適した場所を決めるため、地下試験施設の建設計画を策定し、地質条件からビュールなど国内3カ所の候補地を選んだ。ビュールは鉄道駅から車で1時間以上離れた小さな農村。一帯は、フランスで最も所得水準の低い地域の一つだ。地下に放射線を遮断する厚さ120メートルの粘土層があることなどから、98年に地下試験施設の建設が決まり、2000年に掘削工事が始まった。現在は地下480メートルに全長1290メートル以上の坑道を張り巡らせている。私は13年6月に地下試験施設内に入ったが、まるでSF映画の宇宙基地のような景観だった。直径約5メートルの坑道をフォークリフトが行き交い、粘土質の岩壁には3200基のセンサーが設置され、地盤の動きを測定していた。職員によると、この場所に最終処分場を建設する場合、岩盤の動きを少なくとも100〜150年間抑えるだけのコンクリートが必要という。放射性廃棄物を貯蔵する空洞は歳月とともに次第に埋まり、コンテナも風化する。放射性物質が岩に染み出すが、粘土層に閉ざされ、外に漏れるまでに10万年以上かかる計算という。政府はビュールの最終処分場をまだ認可していない。地下試験施設と最終処分場は本来、別の計画だ。しかし、地元住民を取材すると、両者を混同し、処分場の建設が既に決定されたと勘違いしている人が多かった。実際、06年に最終処分場の建設基本計画が策定された時も、住民への説明会などが遠隔地で開かれ、民意が計画に十分反映されなかったとの不満が出た。13年には、建設認可申請の条件である住民討論会が、反対運動による妨害を理由に中止された。住民討論会の代替策として、インターネットを使った討論会などが実施され、さらに地元住民代表が専門家と意見交換する「市民会議」がパリで開かれた。この結果などを受け、ANDRAは14年5月、新たな建設基本計画を公表した。当初は25年に操業開始予定だったが、市民会議で性急だとの批判が出たため変更された。新計画によると、17年に認可申請を終え、20年に認可を得られれば、同年中に建設に着手。25年に試験運転を開始する。試験運転の期間は5〜10年と想定している。だが、不測の事態が起きない保証はなく、反対派の動向も不透明だ。市民会議を傍聴する住民の姿は少なく、計画の周知がどこまで進んだのか疑問視されている。政府やANDRAがどこまで真剣に地元住民に必要な情報を伝え、民意を吸い上げようとしたのかは分からない。だが、地元住民の理解や民意を置いてきぼりに計画が進んでいる印象を受ける。中央のエリートたちが時には強引に事を進めるのがこの国の特徴でもある。反対運動の背景には、不十分な住民参加への不満がある。最終処分場計画は、ラアーグ核燃料再処理工場の運営にも影響を及ぼす。運営する仏原子力大手アレバ社は4月、工場内にある高レベル放射性廃棄物の貯蔵施設の拡張計画を発表した。同工場では国内外から受け入れた使用済み核燃料を再処理し、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の原料となるプルトニウムを抽出している。再処理の際に残る高レベル放射性廃棄物はガラス固化体にして、国外分は発注国に返還し、国内分は最終処分場が稼働するまでの間、施設内に貯蔵している。アレバ社によると、現在の貯蔵施設は既に満杯になりつつある。今後7年間に2億3000万ユーロ(約297億円)を投入し、約6割増の収容数に拡張する計画だ。現在、地元県などが周辺11市町村の住民に環境への影響などの情報を開示し、意見を求める公共調査を行っている。同社は拡張計画について「最終処分場を待つ間の安全な解決策」としているが、ビュールの動向次第で保管期間が長期化する可能性もある。このように、紆余(うよ)曲折を経てようやく最終処分場の認可申請までたどり着きそうなのが、現在のフランスの状況だ。91年に試験施設の計画が生まれてから既に24年が経過し、この先、反対派の動向にもよるが、操業まで少なくとも15年以上かかる見通しだ。フランスの原発事情を取材して感じるのは、東京電力福島第1原発事故を機に日本で崩れ去った原子力の安全神話が、フランスにはまだ残っているということだ。また、農村部には政府権力に対する無力感が強く、政府の政策を受け入れやすい土壌がある。日本はどうか。ANDRAの職員が、フランスは日本と比べて地震のリスクが低いことを強調すればするほど、私は日本で最終処分場が実現するのか不安になった。青森県・六ケ所村にある高レベル放射性廃棄物をどうするのか。また、各地の原発施設のプールで保管されている使用済み核燃料をどうするか。経済産業省ではようやく、最終処分場の候補地選定調査の準備に取り掛かっている段階だ。だが、悠然と構えている時間はない。原発が稼働する限り、「核のごみ」は刻一刻と増えていくからだ。まずは本格的な議論を早急に始めなければならない。

*3-3:http://qbiz.jp/article/61428/1/
(西日本新聞 2015年5月5日) 日本の最終処分場 選定難航、保管余力なく
 日本は使用済み核燃料(核のごみ)の地層処分を念頭に1970年代から研究を開始した。北海道と岐阜県に研究施設がある。スウェーデンと異なり地震が多い地理的条件もあり、候補地選びは難航している。日本原子力研究開発機構によると、前身の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が80年代に実施した調査で、活断層や火山などを考慮して全国の88カ所が「適地」に選ばれた。このうち10カ所は鹿児島県にあった。最も多かったのは福島県だった。スウェーデンと同様に原発立地地域と重なった。現在、地層処分を推進するのは、電力会社でつくる原子力発電環境整備機構(NUMO)。2002年に処分場を受け入れる意思のある自治体の公募を始め、過去の地震や火山の影響を調べる「文献調査」に応じれば10億円、その次の概要調査に応じれば20億円と、国は交付金をふんだんに準備した。07年に高知県東洋町が手を挙げたが住民の猛反発を受けて撤回に追い込まれた。そのほかに応じた自治体はない。今年2月、経済産業省は、市町村の公募方式を見直し、科学的な適地を国側から提示していく方針を明らかにしたが、福島の事故で放射性物質の怖さを目の当たりにした今、「地元の理解を得るのは簡単な作業ではない」(NUMO)。だが核のごみの処分は待ったなしの課題だ。そもそも日本は、核のごみを再処理して燃料として再び利用する計画だが、青森県六ケ所村の再処理工場はトラブルが続いて機能していない。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)など全国で再稼働に向けた動きが進むが、各原発の敷地にある核のごみの保管プールはどこも空き容量は乏しい。最も余裕が少ない玄海原発(佐賀県玄海町)では再稼働して約3年で満杯になる見込みだ。科学者でつくる日本学術会議は再稼働の条件として、明確な核のごみ対策を求めている。既に国内の各原発には計1万4千トン以上の核のごみがある。原発の再稼働に反対であろうとなかろうと、見て見ぬふりはできない。

*3-4:http://qbiz.jp/article/62297/1/
(西日本新聞 2015年5月16日) 核のごみ最終処分場 経産省、追加財政支援の意向
 経済産業省は15日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分に関する有識者会議で、処分場の建設を受け入れる自治体に対し、原発関連の研究拠点整備など新たな財政支援策を設ける方針を示した。選定に必要な調査は3段階あり、第1段階の文献調査で最大20億円、第2段階のボーリング調査などの概要調査時に最大70億円を電源立地地域対策交付金から支給する支援策が既にある。経産省は新たに、第3段階の実証実験や処分場建設決定後について追加の財政支援策を設け、計画を推進させたい意向。難航する処分場建設をめぐっては、政府が2013年末に従来の自治体の公募方式を転換。政府が「科学的有望地」を示した上で、処分場の建設に向けた調査を要請する方向で準備を進めている。

<九電川内原発と火山>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/ASH6M7QH4H6MTIPE054.html
(朝日新聞 2015年6月20日) 川内原発に核燃料搬入、7月7日から 九電が工程見直し
 スクラップ メール 印刷  再稼働を控えた九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)で、原子炉への核燃料の搬入作業が7月7日に始まる見通しとなったことが、19日わかった。九電が原子力規制委員会に伝えた。4日に始める予定だったが、よりスケジュールに余裕を持たせるため工程を見直す。1号機の再稼働は、これまで通り8月中旬を目指している。川内原発1、2号機は再稼働前の最終段階となる規制委の設備検査を受けている。1号機では19日、核燃料を原子炉に入れるために必要な検査を終えた。今週以降に始まる2号機との共用設備の検査は7月3日に終わる見通し。これまでは、4日から約150本の核燃料の搬入作業を始める計画を立てていた。しかし、作業には下請け企業も含めて数百人が関わり、準備に時間がかかることなどから、3日ほど遅らせることになった。搬入は7日から4日ほどで終わり、その後約1カ月の規制委の設備検査を経て再稼働する。ただ、九電はこれまで検査への対応に手間取るなどして再稼働の時期を何度も遅らせており、想定通りに進むかは不透明だ。

*4-2:http://qbiz.jp/article/63167/1/
(西日本新聞 2015年5月28日) 科学者、川内再稼働に懸念表明 地震、火山対策「不十分」
 原子力規制委員会が27日、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に必要な全ての審査手続きを終了した。規制委は「世界最高水準」の審査基準と強調するが、地震や火山を研究する学者からはなお「不十分」との評価が相次ぐ。福岡市の九電本店では再稼働反対を訴えて鹿児島市から12日間かけて歩いてきたリレーデモ隊が九電側と小競り合いになり、警察が出動する騒ぎになった。一方、原発が立地する薩摩川内市では、再稼働を心待ちにする事業者らの切実な声が上がった。地震や火山など50の学会・協会で組織する「日本地球惑星科学連合」は24〜28日、千葉市で学会を開催中。27日は「地球科学の限界と原発」をテーマに研究発表があった。約150の席は全て埋まり、立ったままの傍聴者もいた。九電は川内原発に関し、日本列島の太平洋側で発生するマグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震を厳密に検討していない。除外理由を「敷地から遠く、発生しても震度5弱以上とならないため」という。だが、神戸大の石橋克彦名誉教授(地震学)は「検討対象から除いたのは間違っている」と訴えた。会場からも「震度5強を上回る可能性は十分ある」との指摘があった。同地震を考慮するなら、川内原発の耐震強化の目安となる基準地震動の変更が迫られかねないという。「九電の過誤を見過ごした規制委の審査は、重大な間違いを犯している」(石橋氏)。東京大の纐纈(こうけつ)一起教授(同)は、福井地裁が関西電力大飯原発の再稼働を差し止めた昨年5月の判決で、規制委が外部電源や給水設備に高い耐震性を求めておらず、一定の揺れでその機能が失われる可能性を指摘したことを「正しい」と支持。重大事故時に冷却機能が失われる恐れがあるため、再稼働を認めなかったのは「妥当な判断」との見解を示した。一方、鹿児島地裁が川内原発の運転差し止め仮処分に絡み、再稼働を容認する判断を出したことには「行政判断を尊重する福島の事故前の司法スタンスに戻った」と批判した。火山学者も続いた。静岡大防災総合センターの小山真人教授は、九電が約1万3千年前の桜島薩摩噴火を基に、巨大噴火による敷地内の降灰想定を15センチとしている点を問題視。鹿児島湾内の姶良(あいら)カルデラの噴火データを踏まえれば、風向きによっては1メートルほどになる懸念も十分あるとした。1メートルに及ぶと事故があっても原発に近づくことは難しい。「九電はそのことを意図的に考慮していない」と批判した。火山噴火の監視を専門とする京都大の石原和弘名誉教授も、九電が巨大噴火の前兆が数十年前から始まり、十分に事前準備できると主張していることに「数年前、数カ月前に始まる前例があり、信じられない評価だ」などと述べた。

*4-3:http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201505/0008074957.shtml
(神戸新聞 2015/5/30) 口永良部噴火/原発の再稼働に不安残す
 怒髪天を突く。そんな形容がぴったりの爆発的噴火だった。鹿児島県口永良部島(くちのえらぶじま)の新岳(しんだけ)噴火である。きのう午前、山頂付近から突如、黒煙を噴き上げ、直後の火砕流は数キロ先の海岸まで達した。緑の山が火山灰でたちまち白くなる。風景を一変させる圧倒的な自然の底力。気象庁は噴火警報を発表し、噴火警戒レベルを3(入山規制)から最も高い5(避難)に引き上げた。2007年の運用開始以来、5へ引き上げたのは初めてだ。島民や一時滞在者ら約140人が安全な場所に待避した後、船などで全員、屋久島に避難した。1人が軽いやけどを負っているという。気象庁は、地下のマグマだまりが押し上げられて起きるマグマ噴火とみている。活発な火山活動が続けば島民の避難は長期化する可能性がある。ほとんどが着の身着のままだ。高齢者や病弱の人もいる。住まいや健康対策など、避難生活の長期化に備え、政府は万全を期さねばならない。00年の三宅島噴火では全島避難による島外生活が4年以上続き、生活基盤を島外に移す例も多かった。そうした事例からも学びたい。気になるのは、日本列島の火山活動が活発になったことだ。昨年9月に噴火した御嶽(おんたけ)山(長野県)をはじめ、桜島(鹿児島県)や蔵王山(宮城県)、箱根山(神奈川県)など各地で不気味な現象が続いている。マグニチュード9クラスの地震が起きた周辺で火山噴火が多くなるのは世界的な傾向とされる。東日本大震災で列島の地殻に加わる力が変わったためだとすれば、今後も規模の大きいマグマ噴火が起こりうると考えておかねばならない。九州とその南の沖合では過去、破滅的なカルデラ噴火が繰り返された。地層に痕跡が残る。7300年前の薩摩硫黄島の噴火は、火砕流が九州内陸や屋久島にまで達した。その九州でこの夏、川内(せんだい)原発の再稼働が始まろうとしている。火砕流が防災上の課題であることは九州電力も認める。だが、「問題ない」とする。その理由は火山学者の常識から著しく外れる。噴火の時期や規模を予測するのは現在の科学では難しいが、その限界が理解されていないのだ。これでは備えにならない。口永良部噴火の動向と、及ぼす影響を注意深く見守る必要がある。

<国民の意見>
*5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015052902000141.html (東京新聞 2015年5月29日) 「原発是非で国民投票を」 署名16万筆集まる
 市民グループ「みんなで決めよう『原発』国民投票」は二十八日、東京・永田町で記者会見し、原発稼働の是非を国民投票で決めるよう求める署名が計十六万五千筆になったと発表した。引き続き署名を集め、国民投票の手続きを定める法律の制定を超党派の国会議員に働き掛ける。グループの代表は宮台真司(みやだいしんじ)首都大学東京教授と杉田敦法政大教授で、署名集めは三十~四十代が中心となり福島原発事故後から全国で実施。二〇一二年六月に十万四千筆を衆参両院議長らに提出した。この日の会見ではさらに五万二千筆を集めたとして請願法に基づき衆参の五党十二議員を通し国会に提出すると説明。ほかにもネットなどで九千筆を集めた。運営委員長の鹿野隆行さん(42)は「グループとしては原発の是非に賛否を表明しない。国民投票という、国民の声が反映される土台を作りたい」と説明。東京都町田市の整体師石崎大望(ひろみ)さん(42)は「選挙以外に自分の意思を政治の場に届けることに希望を感じている」と話した。署名活動の詳細はホームページ=http://kokumintohyo.com/=で。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10102/196705
(佐賀新聞 2015年6月12日) 玄海原発停止、270人追加提訴
 原発の再稼働に反対する佐賀県内外の市民が国と九州電力に玄海原発全4基の操業停止を求めている訴訟で、新たに270人が11日、佐賀地裁に追加提訴した。14回目の提訴で、原告数は9396人になった。提訴後、原告団は鹿児島地裁が4月に川内原発(鹿児島県)の再稼働を禁じる仮処分申し立てを却下したことに対し、「福島第1原発事故を真正面から見据えず、事故前と変わらない司法判断」などと批判する声明を出した。長谷川照団長は「川内原発の再稼働に反対する人たちの心の支えにもなるよう原告1万人を達成したい」と話した。

*5-3:http://www.nagasaki-np.co.jp/news/kennaitopix/2015/03/15090603016802.shtml (長崎新聞 2015年3月15日) ナガサキ集会300人訴え
 脱原発を訴える「さようなら原発ナガサキ集会」が14日、長崎市平野町の長崎原爆資料館ホールであり、約300人が再稼働反対の思いを一つにした。県平和運動センターなどでつくる「さようなら原発1000万人アクション・ナガサキ」などが主催。原子力の安全問題に詳しい元慶応大助教授(物理学)の藤田祐幸さん(72)=西海市大瀬戸町=が講演し、「一体何度『ノーモア』を繰り返せばいいのか」と脱原発を呼び掛けた。藤田さんは原発停止分の電力を補ってなお火力発電所の稼働率が低い点を指摘。「原発をすべて火力発電に置き換えることはすでに成功している。全原発を廃炉準備段階にし、金や人員を他に移す方が効率的だ」と強調した。このほか、福島の住民のビデオメッセージの紹介や、再稼働の動きが進む九州電力川内原発(鹿児島県)について地元住民による反対宣言もあった。参加者は集会後、JR長崎駅近くまで「原発いらない」「再稼働反対」と訴えデモ行進した。

*5-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/162077
(佐賀新聞 2015年3月3日) 30キロ圏内も地元範囲に 伊万里市長 知事と会談
 伊万里市の塚部芳和市長は2日の定例記者会見で、17日に予定している山口祥義知事との会談で、玄海原発の再稼働を同意する際の「地元範囲」に伊万里市など玄海原発から30キロ圏内を含めるよう要望することを明らかにした。会談では市長と市議会議長、市区長会連合会長との連名で要望書を提出する予定。地元範囲に関する要望のほか、九電と伊万里市との原子力安全協定締結に県が関与することや、原発交付金を30キロ圏内の避難道路整備や防災行政無線設置にも充当することを求める。山口知事は2月の県議会一般質問で、協定のあり方について「事業者と各自治体が結ぶもので、基本的には当事者間で協議して定めるべき」と答弁している。塚部市長は「答弁を聞く限りはわれわれの要望とは、程遠い状況かもしれないが、伊万里市長の意見も聞いて判断するという答弁もあったので期待したい」と話した。

*5-5:http://qbiz.jp/article/66870/1/
(西日本新聞 2015年7月16) 伊方原発の“対岸”大分、漁業者「事故あれば風評被害」
 四国電力伊方原発3号機が新規制基準に適合しているとした原子力規制委員会の決定に、原発から海を挟んで約45キロに位置する大分県では、漁業関係者らが不安を募らせた。「事故があれば漁師の命にかかわるし、大分の魚の風評被害がずっと続く」。大分県漁業協同組合の職員(55)は懸念を深める。「関あじ」「関さば」など高級魚の漁場である大分近海は、原発のある愛媛県の佐田岬半島と目と鼻の先。四国電からは、事故時の補償の話までは出ていないといい、職員は「放射性物質が海に流れれば風評被害が広がり、ますます後継者が減る」と語った。四国電に運転差し止めを求める訴訟を松山地裁に起こしている原告団の一人で、NPO法人「九州・自然エネルギー推進ネットワーク」の小坂正則代表も「近く南海トラフ地震が起こるのは間違いなく、去年と今年は伊予灘と大分で大きな地震もあった。再稼働は理解できない」と批判した。一方、事故が発生した場合に対応に当たる大分県は「(原発については)国と事業者の責任で安全性を確保し、住民に十分理解してもらうことが大事と申し上げてきた。これからもしっかり見守っていく」とする広瀬勝貞知事のコメントを出し、冷静に受け止めた。大分県は、秋に予定される愛媛県の防災訓練に参加し、大分県民向けの屋内退避訓練も実施する予定。


PS(2015年7月17日追加):パブリックコメントには、短い期間で多くの原発再稼働への批判意見が寄せられ、「可能な限り低減」としたのであれば、既に原発割合は0であるため再稼働する必要はない。そして、化石燃料の使用を抑えるためには、自然エネルギーへの変換に資金を集中するのが賢い。

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015071702000137.html
(東京新聞 2015年7月17日) 30年電源、原発回帰 最大22%活用決定
 経済産業省の有識者委員会は十六日、二〇三〇年の電源構成比率で、原発の割合を「20~22%」とする報告書をまとめた。意見公募(パブリックコメント)を踏まえ、原案の文言を一部修正した。報告書の決定を受け、政府は実現に向けた施策づくりに乗り出す。パブリックコメントは六月二日から約一カ月実施され、二千六十件の意見が寄せられた。原発の再稼働に批判的な意見が寄せられたことを考え、原発の割合に関して「可能な限り低減」との文言を加えた。委員会ではパブリックコメントで集まった、原発や再生可能エネルギーに対する意見が紹介された。しかし、賛成や反対の詳細な割合は公表しなかった。坂根正弘委員長(コマツ相談役)は「意見を言いたい人が言うだけでバランスを考えた発言がない」と説明した。委員から「原発のリプレース(敷地内の建て替え)がなければ、(20~22%の)目標は達成できない」といった反対意見が出るなど議論は完全には一致しなかった。報告書では、太陽光や水力、風力といった再生可能エネルギーは「22~24%」とし、現在の約二倍に増やす方針も明記した。石炭や液化天然ガス(LNG)などを使う火力は56%とした。


PS(2015年7月22日追加):経産省が安くもない原発のコストを安いと偽り、地方自治体は交付金目当てで大半の国民が反対している原発再稼働を主張しながら、「『重大事故などに国が責任を持つ』と首相に意思表示させよ」とは、エゴが過ぎる。そもそも豊予海峡は海流の流れが早く、潮流発電の適地であるにもかかわらず地の利を活かした先進的な工夫がなく、そのようなところが加圧水型の廃炉研究をしても環境への配慮について信用できない。

*7:http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20150722/news20150722493.html
(愛媛新聞 2015年7月22日) 「責任、首相が表明を」 再稼働問題で知事要望
 国の原子力規制委員会が四国電力伊方原発3号機(伊方町)の原子炉設置変更を許可し、政府が再稼働方針を愛媛県に伝えたのを受け、中村時広知事は21日、経済産業省で宮沢洋一経産相と面会した。国として重大事故などに最終的な責任を持つという首相の意思表示など、8項目の要望を口頭で申し入れた。中村知事は「県民は最高責任者の言葉を非常に重く受け止める」と指摘し、再稼働に関する議論の過程で「最終責任について首相の声を直接聞く機会をつくってほしい」と求めた。沸騰水型軽水炉の東京電力福島第1原発で廃炉作業が行われる中、伊方原発が採用している加圧水型軽水炉の廃炉も研究する必要があると主張。「伊方1号機が(1977年の運転開始から40年を超えて)運転を延長するか今の段階では分からないが、いずれ廃炉となる。ぜひ加圧水型の廃炉研究を伊方で行うよう検討してほしい」と訴えた。宮沢経産相は安倍晋三首相に伝えるとし、加圧水型の廃炉研究に力を入れる必要があるとの認識を示した。

| 原発::2015.4~10 | 12:44 PM | comments (x) | trackback (x) |

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