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2015.7.21 集団的自衛権の行使が違憲なのではなく、自国防衛以外での武力行使が違憲なのである (2015.7.23追加あり)
    
  概略図        2015.7.18東京新聞      2015.6.21 2015.7.12東京新聞 
                                   日経新聞
            (図は、クリックすると拡大します)
(1)日米安全保障条約は集団的自衛権そのものであること
 *2の1960年にワシントンで締結された日米安全保障条約(以下、“日米安保条約”)に、「日米は、(中略)両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際平和と安全の維持に共通の関心を有することを考慮して日米安保条約を締結する」と書かれており、当時から、日本が個別的・集団的自衛権の両方を有していると認識していたことが明らかだ。そして、砂川事件判決は、安保条約の合憲性を争った違憲立法審査権の行使において、最高裁が地裁判決を覆して出した判決である(つまり、裁判所も判断が分かれた)。

 その日米安保条約は、5条で「①締約国は、日本国の施政下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃は自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて(重要)、共通の危険に対処するように行動することを宣言する」「②前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第51条に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない」「③その措置は、安全保障理事会が国際平和と安全を回復・維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない」としている。

 また、6条で、「①日本の安全と極東の平和・安全の維持に寄与するため、アメリカは、その陸・海・空軍が日本で施設や区域を使用することを許される」「②施設や区域の使用、日本におけるアメリカ軍の地位は、1952年2月28日に東京で署名された日米間の安保条約第三条に基く行政協定に代わる別個の協定及び合意がなされれば、その取極により規律される」としている。つまり、日米安全保障条約の双務性は、日本の基地提供によって果たされており、日米の地位協定は、今後、変化する可能性もあるのだ。

 このほか、日米安保条約は、「2条:締約国は、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する」「3条:締約国は、継続的かつ効果的な自助・相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として(重要)、維持発展させる」「4条:締約国は、日本の安全や極東の平和・安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する」「7条:この条約は、国際連合憲章(以下、“国連憲章”)に基づく締約国の権利・義務や国際平和・安全の維持を行う国際連合の責任に対し、どのような影響も及ぼすものではない」、「8条:この条約は、日米のそれぞれの憲法上の手続に従つて批准されなければならない」「10条:この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も他の締約国に対して条約終了の意思を通告することができ、その場合はそのような通告が行なわれた後一年でこの条約は終了する」等を定めている。

(2)国連憲章と日本国憲法による戦争放棄の関係
 *3の国連憲章により、国際法上、日本が個別的及び集団的自衛権を有していることは、疑う余地もない。そして、国連憲章と国際司法裁判所は不可分であるため、国際司法裁判所に行っても、日本の集団的自衛権は認められる。そして、国際法は地球上に存在する国間のルールであるため、個別国の憲法や一般法より優先するが、個別的及び集団的自衛権は権利であるため、日本国憲法で放棄することが可能なのである。

 一方、日本国憲法は9条で、「①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」として戦争放棄しているが、自衛のみは認められると解釈されているため、「どこまでが自衛か」がポイントであり、「個別的」か「集団的」かという区別がポイントなのではない。

 そして、国連憲章51条に、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際平和と安全維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない」と国際的に定められているため、個別的自衛権と集団的自衛権の境目を日本のみで通じる定義にすることはできない。

(3)安保関連法案衆院通過の経緯とその違憲性
 *1-1のように、政府・与党は「砂川事件の最高裁判決や過去の政府見解を踏まえたものであるため、安保関連法案は問題ない」と主張しているが、私も委員会質問や答弁を聞いていて、それぞれの事態における行使要件や行使内容が曖昧で国際基準からも外れている思った。その上、今回の安保関連法案に合わせるように、憲法改正を準備しているのは要注意だ。

 また、*1-3に書かれているとおり、その場限りの慰めで真面目に答えていない答弁も多く、内容を正確に説明しようという意欲に欠けていた。しかし、現在は、専門家を含む多様な人がインターネットで国会質問を視聴しているため、TVなどのマスメディアさえコントロールしておけばよいというのは甘い。TVの方は、国民を腑抜けにするのが目的であるかのように、スポーツ、事件、台風ばかりに長時間を割き、まともに安保関連法案を分析した局は少なく、編集者のレベルが疑われる程だったが、これにより、インターネットで国会中継を視聴できたか否かで国民の間に大きな情報格差が生まれただろう。

 もちろん、*1-2のように、「○○事態で地球の裏側まで武力行使が可能」というのは、国連憲章では認められていても日本国憲法で認められていないため違憲だ。また、本当に差し迫った国境警備についてはグレーゾーン事態とされ、変化がない。そのため、国民が安保法案の必要性を認めるには、逐条で従来の法律と新法案の比較、変更理由、上位法や国際法との整合性を一覧表にして議論すべきだ。

 しかし、全体として、私は、戦争に懲りて平和の理念に基づき文章が練られた国連憲章や日本国憲法と異なり、今回の安保関連法案は、筋が悪すぎて欠点を指摘して修正すれば済むというものではないため、*1-4、*1-5に書かれているとおり、廃案にして出直すしかないと思う。

<安保関連法案衆院通過の経緯>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150621&ng=DGKKZO88335600Q5A620C1TZJ000 (日経新聞 2015.6.21) 合憲性巡る議論再燃、集団的自衛権の行使容認 与野党、判決・学説挙げ激突
 集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案の国会審議で、合憲性を巡る議論が再燃している。政府・与党は過去の最高裁判決や政府見解を踏まえたもので問題はないと主張、民主党などは行使できる要件が曖昧なことや立憲主義の観点から憲法違反とみる。戦後、自衛権と9条の整合性が論じられてきたのを踏まえ、論争の構図を点検した。法案で認める集団的自衛権の限定行使を「合憲」とする政府・与党の主張は、1972年の政府見解を根拠とする。(1)憲法の下で自衛権を有する(2)国民の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処するため必要最小限度の範囲に限る――との内容だ。
●立憲主義で反論
 ただ、72年見解の結論は集団的自衛権の行使が「憲法上許されない」。政府は法案の下敷きとなる2014年7月の閣議決定で解釈を変えた。安保環境の変化を理由に、密接な関係にある他国への攻撃でも国民の権利が根底から覆される明白な危険があれば、自衛権を行使できるとの結論を導いた。見解の(1)と(2)の基本的論理も維持し、合憲と主張する。閣議決定時から憲法学者や野党から「立憲主義」の観点で違憲論が相次ぐ。立憲主義は憲法で国家権力を制限する考え方で、時の政権が憲法の解釈を大幅に変えるのに否定的だ。4日の衆院憲法審査会で自民党推薦で発言した長谷部恭男・早大教授は「従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」と指摘。民主党も岡田克也代表が17日の党首討論で安保法案を「違憲だ」と断じた。そもそも終戦直後は自衛権を持つかが焦点だった。1946年、吉田茂首相は国会で、自衛権は一切ないとの立場を表明した。だが50年に「自衛権は存する」と軌道修正。この年、朝鮮戦争が起こり米国の求めに応じて警察予備隊が発足した。54年には自衛隊が創設され、政府は憲法9条の禁じる「戦力」にあたらないとの論理を採用したが、その合憲性は問われ続けた。最高裁が自衛権に関する判断を示したのが砂川事件判決だ。都内の米軍立川基地へのデモ隊乱入を契機に、米軍駐留の違憲性が争点となった。59年の最高裁判決は違憲とした第一審判決を破棄。自衛権については「自国の存立を全うするために必要な自衛の措置をとり得るのは当然」とした。
●砂川判決で補強
 安保関連法案の集団的自衛権行使容認で、政府・与党は砂川判決を根拠の補強材料とする。「自衛の措置」は個別的、集団的を明記せず「集団的自衛権行使が認められないと言っていない」(高村正彦自民党副総裁)とみる。田中耕太郎最高裁長官が補足意見で「厳格な意味での自衛の観念は存在せず、自衛はすなわち『他衛』、他衛はすなわち自衛という関係がある」と述べたのを、集団的自衛権行使の容認発言とみる向きもある。憲法学者の多くは批判する。長谷部氏は15日の記者会見で「問題とされたのは日米安保条約で、集団的自衛権の行使は争点になっていない」と強調した。これに対し、安保法案の合憲性を主張する百地章・日大教授は「(判決は)集団的自衛権を射程に入れていた」と指摘している。冷戦後は国際協力での自衛隊活動の範囲拡大の合憲性が論じられた。イラク派遣差し止めを巡る名古屋高裁判決で、航空自衛隊の空輸活動を違憲と判断した。安保関連法案も後方支援活動で「武力行使との一体化」を巡る議論がある。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015071202000124.html
(東京新聞 2015年7月12日) 自民「違憲」批判ショック 憲法審査会ブレーキ
 衆院憲法審査会の審議がストップしている。先月の審査会で、自民党推薦を含む参考人の憲法学者三人全員がそろって安全保障関連法案を「違憲」と批判したため、党執行部が安保法案審議への影響を懸念して、審査会開催にブレーキをかけたからだ。憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を可能にする安保法案の今国会成立を目指すと同時に、改憲に向けた審議も急ぐ両にらみの国会運営は進んでいない。六月四日の審査会で、参考人として出席した自民推薦の長谷部恭男・早稲田大教授のほか、民主推薦の小林節・慶応大名誉教授、維新推薦の笹田栄司・早稲田大教授の三氏全員が安保法案を「違憲」と指摘。法案の問題点がさらに鮮明になった。自民党執行部は、審査会の審議に関し「安保法案に影響のないやり方をしてほしい」(佐藤勉国対委員長)と求めた。審査会幹事を務める船田元・党憲法改正推進本部長は「審査会はしばらく休む予定だ」と明言。その時点で開催が決まっていた六月十五日の地方公聴会を最後に、審査会は開かれていない。昨年末の衆院選で、与党は衆院での改憲発議に必要な三分の二以上の議席を維持した。自民党は緊急事態条項や環境権の新設に絞った改憲なら各党の賛同を得やすいとみて、審査会の審議を急ごうとした。来年夏の参院選で、次世代などを含めた改憲勢力で三分の二以上の議席を参院でも確保して最初の改憲を実現し、二回目以降の改憲で九条見直しを視野に入れる。これに対し、審査会委員がいる党のうち、民主党は「安倍晋三首相の下での憲法論議は危ない」(岡田克也代表)と慎重。護憲を掲げる共産党は審議自体に反対で、公明党も審議を急いでいなかった。一方、世論の反対にもかかわらず、政府は五月に安保法案を国会に提出した。首相は提出に先立つ訪米時に「この夏までに成立させる」と表明。「国会無視だ」と野党が反発する中、法案審議が始まった。法案をめぐる与野党対立の余波が、審査会に及ぶのは時間の問題だった。参考人の違憲発言で当面は審査会を開けなくなり、首相周辺は「安保法案と改憲を同時に進めようとして、改憲スケジュールに影響が出てしまった」と悔やむ。自民党に改憲論議をせかされていた公明党幹部は「改憲、改憲と急ぐから、回り道する結果になるんだ」と皮肉った。
<憲法審査会> 憲法に関する総合的な調査や改正原案を審査する国会の機関。憲法改正手続きを定めた国民投票法に基づき2007年8月、衆参両院に設置された。委員数は衆院50人、参院45人で、各党の議席に基づき配分される。11年11月から実質的な審議が始まり、現在は改正が必要と主張する項目などをめぐる議論に入っている。改憲原案が提出された場合、両院の憲法審査会が審査後、両院でそれぞれ総議員の3分の2以上が賛成すれば60~180日の間に国民投票が実施される。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11867903.html (朝日新聞 2015年7月19日) (審議検証 安保法制:4)答弁あいまい、議論平行線 政府の裁量、確保狙う
 安倍政権は16日の衆院本会議で、安全保障関連法案を可決、通過させた。論戦の舞台が参院に移るのを前に、国会審議を検証する最終回は、首相らが詳細な説明を避けたり、はぐらかしたりする場面がなぜ多かったのか、議論が深まらなかった原因を考える。「残念ながら国民が十分に(法案を)理解している状況ではない」。今月15日。衆院特別委員会の最後の質疑で安倍晋三首相はこう認めつつ、その直後に採決に踏み切る正当性を強調した。「しかし国会議員は国民から責任を負託されている。国会議員は法案を理解したうえで議論をし、100時間を超える議論を行ってきた」。だが、特別委で116時間半を重ねた審議では、首相ら政府側が同じ答弁を繰り返したり、抽象的な表現でぼやかしたりする場面が目立った。正面から説明しない姿勢は、法案審議の初日から始まっていた。5月26日の衆院本会議。集団的自衛権の前提となる「存立危機事態」とは何か。自民の稲田朋美政調会長が「典型例とはどんな事態か」と問うと、首相はこう答えた。「典型例をあらかじめ示すことはできないが、国民生活に死活的な影響を生じるか否かを総合的に評価して判断する」。首相はその後も具体的な説明を求められると、「総合的に」「全般的に見て」「客観的に」判断するといった言い方を繰り返した。6月17日の党首討論では、民主の岡田克也代表が「どういう時に存立危機事態になるのか」とただした。だが、首相は「政策的な中身をさらすことにもなるから、そんなことをいちいち述べている海外のリーダーはほとんどいない」などと説明を拒んだ。岡田氏はこれに対し「今の答弁を聞いて、やはり(法案は)憲法違反と思った。何が憲法に合致し、何が違反するのか、法律できちんと決めなければいけない」「『客観的、合理的に判断』と言うのは判断の丸投げと一緒。白紙委任だ」などと激しく批判した。政府側が、法案の条文を読み上げて質問をやり過ごそうとする場面も目立った。野党は、後方支援での活動範囲を「非戦闘地域」から「戦闘が行われていない現場」に広げる危険性を再三ただしたが、中谷元・防衛相は、「戦闘現場となる場合はただちに活動を休止、中断する」との法案のくだりを繰り返した。なぜ、あいまいな答弁を繰り返すのか。今回の安保関連法案は集団的自衛権の行使も含め自衛隊の活動を飛躍的に拡大させる。米軍など他国軍による戦争に後方支援という形で関わる可能性も格段に増える。防衛省幹部は「将来、どんな事態が起きるのかは分からない。政府が裁量する幅はできるだけ広くしておきたい」と語る。そんな政権の姿勢が、詳しい説明を拒む首相らの答弁につながっている。具体的な説明を求める野党との議論は平行線のままだった。政府には、反対意見と向き合い、議論を深めようという態度も欠けていた。6月4日の憲法審査会で、参考人意見を述べた憲法学者3人から法案は「違憲」と指摘されると、菅義偉官房長官は会見で「『違憲じゃない』という著名な憲法学者もいっぱいいる」と反論。具体的な人数を問われると「数(の問題)ではない」とはぐらかした。首相の答弁にもこうした姿勢がにじんだ。5月28日の特別委では、民主議員に「早く質問しろ」とヤジを飛ばし、陳謝に追い込まれた。今月15日の特別委では、首相は法案への「国民の理解が進んでいない」と認めつつ、現時点での「無理解」は問題ではないとも取れる言葉が飛び出した。「60年安保(条約)改定時、PKO法案の時も国民の理解はなかなか進まなかった。しかしその後の実績を見て、多くの国民から理解や支持を得ている」。
■「邦人救出」語られず
 衆院では、ほとんど論じられなかった法案や論点も多い。特別委の浜田靖一委員長(自民)が採決後に「法案を10本束ねたのはいかがなものか」と漏らすほど、一括で質疑するには内容が多岐にわたっていたためだ。海外でテロリストや武装集団などに拘束された日本人を救出する「邦人救出」については、衆院特別委でほとんど議論されなかった。過激派組織「イスラム国」(IS)による人質事件などで紛争地のリスクに関心が高まったが、新たな安保法案でどこまで対処できるのかは語られなかった。法案では、国連平和維持活動(PKO)での自衛隊任務も拡大し、武器の使用基準も緩和される。これについても、踏み込んだ議論は少なかった。特別委の参考人質疑で、伊勢崎賢治・東京外大大学院教授は「停戦合意が破られても撤退できない」と、PKOの現場の危険性を指摘した。しかし、首相は野党の質問にも「停戦合意をはじめ参加5原則が前提」と原則論を述べるにとどまっている。安保法案と連動する形で、18年ぶりに改定された日米防衛協力のための指針(ガイドライン)をめぐる議論も乏しかった。自衛隊は米軍にどこまで協力するのか。なぜ米軍以外にオーストラリア軍なども連携対象に追加するのか。安保政策と密接不可分な外交政策についても参院での論戦が期待される。

*1-4:http://www.y-mainichi.co.jp/news/27887/
(八重山毎日新聞社説 2015年7月18日) 首相「国民の理解進まず」も採決強行
■黒塗りされた内部文書
 16日、衆議院平和安全法制特別委員会で審議中の安全保障関連法案が怒号が飛び交うなか、自公両党の賛成多数で強行採決され17日参議院へ送られた。「安全保障法案」は憲法学者やマスコミの世論調査、自民党きっての防衛問題のエキスパートで、内閣の一員である石破茂地方創生担当大臣までが国民の理解を得られていないと発言するなかでである。安倍総理自身も委員会の答弁で「残念ながら国民の理解は進んでいる状況ではない」と述べ、浜田委員長は「法律を10本束ねたというのはいかがなものかと私も思っている」と述べるなど国民の理解を得られていないとしながら、なぜ強行採決をするのか。16日安倍首相は衆議院本会議での可決後「日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。この認識のなかにおいて、日本国民の命を守り、戦争を未然に防ぐため絶対必要な法案だ」と述べた。参議院でも審議が行われるが、与党の賛成多数と「60日ルール」で法案成立は確実の情勢だ。戦後日本の安全保障政策は大転換し、積極的に戦争できる国になる。憲法を完全に空洞化させるこの法案が、国民を戦争に巻き込む危険極まりない法案であることは明白だ。15日の審議中、「陸上自衛隊イラク復興支援活動状況について」の黒塗りされた内部文書が問題とされ、取り上げられたが強行採決であいまいにされた。これは重大な問題である。秘密保護法を盾に議員や国会への報告書などが、黒塗りされ提出されたら、自衛隊の行動は全て秘密にされ主権者である国民の知る権利を奪うもので到底容認できない。秘密保護法も廃止すべきである。
■世論に背を向けた市議会決議
 強行採決の前日、石垣市議会が「安全保障関連法案」の早期成立を求める意見書を可決し百田尚樹氏や自民党議員などの報道圧力への抗議決議は否決した。石垣市は異常ではないか。中山市長が誕生して以来、尖閣問題を背景に中国脅威論をばらまき、市議会議員が魚釣島に上陸し、ナショナリズムをあおり、辺野古基地建設賛成を叫ぶなどどう考えても尋常ではない。基地の騒音被害など議員の目には映らないのだろうか。法が成立すれば沖縄の基地が強化され基地被害が拡大するのは目に見えているではないか。意見書は「わが国の安全を守るためには、日米間の安全保障、防衛協力体制を強化することが求められており、そのためには、平時からあらゆる事態に対処できる切れ目のない法制を整備する必要がある」「わが国の安全と国民の生命、そして国際社会の安全を確保するための平和安全法制について徹底した議論を進め、平和安全法制の今国会での成立を図るよう要望する」と結んでいる。危険極まりない法案を「平和安全法制」と呼べるだろうか。国民は「戦争法案」と呼んでいるのだ。石垣市議会が「徹底した議論を」と採択した翌日、衆議院特別委員会で強行採決した。議論は一夜で徹底したと市議会は思っているのだろうか。
■沖縄屈辱も抗議決議否決
 それとも、もう一度徹底した議論をと意見書を出すのだろうか。「報道機関への言論圧力および沖縄県民侮辱発言への抗議」が否決された。反対意見を述べた議員は「決議文の内容は作家の百田尚樹氏の発言を問題視しすぎており、表現の自由に対する抗議決議だ」と述べている。表現の自由なら何でも許され、抗議もできないというのか。県民や県紙への侮辱を侮辱と感じない議員たちが、平和憲法を空洞化させ、世論に背を向けた時代錯誤の決議や否決愚行では議会史上最大の汚点であろう。

*1-5:http://www.asahi.com/paper/editorial.html
(朝日新聞社説 2015年6月16日) 「違憲」の安保法制―廃案で出直すしかない
 国会で審議されている法案の正当性がここまで揺らぐのは、異常な事態だ。安倍内閣が提出した安全保障関連法の一括改正案と「国際平和支援法案」は、憲法違反の疑いが極めて濃い。その最終判断をするのは最高裁だとしても、憲法学者からの警鐘や、「この国会で成立させる必要はない」との国民の声を無視して審議を続けることは、「法治への反逆」というべき行為である。維新の党が対案を出すというが、与党との修正協議で正されるレベルの話ではない。いったん廃案とし、安保政策の議論は一からやり直すしかない。
■説明つかぬ合憲性
 そもそもの間違いの始まりは集団的自衛権の行使を認めた昨年7月1日の安倍内閣の閣議決定である。内閣が行使容認の根拠としたのは、集団的自衛権と憲法との関係を整理した1972年の政府見解だ。この見解は、59年の砂川事件最高裁判決の一部を取り込み、次のような構成をとっている。
 ①わが国の存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを9条は禁じていない。
 ②しかし、その措置は必要最小限の範囲にとどまるべきだ。
 ③従って、他国に加えられた武力攻撃を阻止する集団的自衛権の行使は許されない。
 歴代内閣はこの考え方をもとに次のように説明してきた。日本は国際法上は集団的自衛権を持っているが、憲法上は集団的自衛権を行使できない。行使できるようにするためには、憲法の改正が必要だ――。ところが閣議決定は、①と②はそのままに、③の結論だけを必要最小限の集団的自衛権は行使できると改めた。前提となる理屈は同じなのに結論だけを百八十度ひっくり返す。政府はその理由を「安全保障環境の根本的な変容」と説明するが、環境が変われば黒を白にしてよいというのだろうか。この根本的な矛盾を、政府は説明できていない。入り口でのボタンの掛け違いが、まっとうな安全保障の議論を妨げている。
■安保政策が不安定に
 この閣議決定をもとに法案を成立させるのは、違憲の疑いをうやむやにして、立法府がお墨付きを与えるということだ。その結果として可能になるのが、これまでとは次元の異なる自衛隊の活動である。限定的とはいいながら、米国など他国への攻撃に自衛隊が反撃できるようになる。政府の判断次第で世界中で他国軍を後方支援できるようになる。弾薬を補給し、戦闘機に給油する。これらは軍事的には戦闘と表裏一体の兵站(へいたん)にほかならない。9条のもと、私たちが平和国家のあるべき姿として受け入れてきた「専守防衛の自衛隊」にここまでさせるのである。リスクが高まらないわけがない。世界が日本に持っていたイメージも一変する。その是非を、国民はまだ問われてはいない。昨年の衆院選は、間違いなくアベノミクスが争点だった。このとき安倍氏に政権を委ねた有権者の中に、こんなことまで任せたと言う人はどれだけいるのか。首相が国民の安全を守るために必要だというのなら、9条改正を提起し、96条の手続きに従って、最後は国民投票で承認を得なければならない。目的がどんなに正しいとしても、この手続きを回避することは立憲主義に明らかに反する。数を頼みに国会を通しても、国民の理解と合意を得ていない「使えない法律」ができて、混乱を招くだけだ。将来、イラク戦争のような「間違った戦争」に米国から兵站の支援を求められた時、政府はどう対応するのか。住民への給水などかつて自衛隊が実施した復興支援とは訳が違う。派遣すれば国民は反発し、違憲訴訟も提起されるに違いない。断れば、日米同盟にヒビが入る。かえって安全保障体制は不安定になる。憲法学者から「違憲」との指摘を受けた後の対応を見ると、政権の憲法軽視は明らかだ。砂川事件で最高裁がとった「統治行為論」を盾に、「決めるのは我々だ」と言い募るのは、政治家の「責任」というより「おごり」だ。
■憲法の後ろ盾は国民
 先の衆院憲法審査会で、小林節慶大名誉教授がこんな警告を発している。「憲法は最高権力を縛るから、最高法という名で神棚に載ってしまう。逆に言えば後ろ盾は何もない。ただの紙切れになってしまう。だから、権力者が開き直った時にはどうするかという問題に常に直面する」。権力者が開き直り、憲法をないがしろにしようとしているいまこそ、一人ひとりの主権者が憲法の後ろ盾となって、声を上げ続けるしかない。「憲法を勝手に変えるな」。

<日米安全保障条約>
*2:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html
(1960年1月19日@ワシントン) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
 日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よつて、次のとおり協定する。
第一条
 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。
第二条
 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。
第三条
 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
第四条
 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。
第五条
 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
第六条
 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
第七条
 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。
第八条
 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。
第九条
 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。
第十条
 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。
 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。
 千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。
日本国のために
 岸信介
 藤山愛一郎
 石井光次郎
 足立正
 朝海浩一郎
アメリカ合衆国のために
 クリスチャン・A・ハーター
 ダグラス・マックアーサー二世
 J・グレイアム・パースンズ

<国連憲章>
*3:http://www.unic.or.jp/info/un/charter/text_japanese/ (国連憲章)
<序>
 国際連合憲章は、国際機構に関する連合国会議の最終日の、1945年6月26日にサンフランシスコにおいて調印され、1945年10月24日に発効した。国際司法裁判所規程は国連憲章と不可分の一体をなす。国連憲章第23条、第27条および第61条の改正は、1963年12月17日に総会によって採択され、1965年8月31日に発効した。1971年12月20日、総会は再び第61条の改正を決議、1973年9月24日発効した。1965年12月20日に総会が採択した第109条の改正は、1968 年6月12日発効した。第23条の改正によって、安全保障理事会の理事国は11から15カ国に増えた。第27条の改正によって、手続き事項に関する安全保障理事会の表決は9理事国(改正以前は7)の賛成投票によって行われ、その他のすべての事項に関する表決は、5常任理事国を含む9理事国(改正以前は7)の賛成投票によって行われる。1965年8月31日発効した第61条の改正によって、経済社会理事会の理事国数は18から27に増加した。1973年9月24日発効した2回目の61条改正により、同理事会理事国数はさらに、54に増えた。第109条1項の改正によって、国連憲章を再審議するための国連加盟国の全体会議は、総会構成国の3分の2の多数と安全保障理事会のいずれかの9 理事国(改正前は7)の投票によって決定される日と場所で開催されることになった。但し、第10通常総会中に開かれる憲章改正会議の審議に関する109条 3項中の「安全保障理事会の7理事国の投票」という部分は改正されなかった。1955年の第10総会及び安全保障理事会によって、この項が発動された。
<国際連合憲章>
 われら連合国の人民は、われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること、並びに、このために、寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互いに平和に生活し、国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、 これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。よって、われらの各自の政府は、サン・フランシスコ市に会合し、全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機構を設ける。
 第1章 目的及び原則    第2章 加盟国の地位    第3章 機 関    第4章 総 会  
 第5章 安全保障理事会    第6章 紛争の平和的解決    
 第7章 平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動   第8章 地域的取極
 第9章 経済的及び社会的国際協力    第10章 経済社会理事会    
 第11章 非自治地域に関する宣言   第12章 国際信託統治制度   第13章 信託統治理事会
 第14章 国際司法裁判所   第15章 事務局   第16章 雑則   
 第17章 安全保障の過渡的規定   第18章 改正    第19章 批准及び署名  
第1章 目的及び原則  
第1条
国際連合の目的は、次のとおりである。
1.国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整または解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。
2.人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。
3.経済的、社会的、文化的または人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語または宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること。
4.これらの共通の目的の達成に当たって諸国の行動を調和するための中心となること。
第2条
この機構及びその加盟国は、第1条に掲げる目的を達成するに当っては、次の原則に従って行動しなければならない。
1.この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。
2.すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
3.すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。
4.すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
5.すべての加盟国は、国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合の防止行動又は強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。
6.この機構は、国際連合加盟国ではない国が、国際の平和及び安全の維持に必要な限り、これらの原則に従って行動することを確保しなければならない。
7.この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原則は、第7章に基く強制措置の適用を妨げるものではない。
第2章 加盟国の地位
第3条
国際連合の原加盟国とは、サン・フランシスコにおける国際機構に関する連合国会議に参加した国又はさきに1942年1月1日の連合国宣言に署名した国で、この憲章に署名し、且つ、第110条に従ってこれを批准するものをいう。
第4条
1.国際連合における加盟国の地位は、この憲章に掲げる義務を受託し、且つ、この機構によってこの義務を履行する能力及び意思があると認められる他のすべての平和愛好国に開放されている。
2.前記の国が国際連合加盟国となることの承認は、安全保障理事会の勧告に基いて、総会の決定によって行われる。
第5条
安全保障理事会の防止行動または強制行動の対象となった国際連合加盟国に対しては、総会が、安全保障理事会の勧告に基づいて、加盟国としての権利及び特権の行使を停止することができる。これらの権利及び特権の行使は、安全保障理事会が回復することができる。
第6条
この憲章に掲げる原則に執拗に違反した国際連合加盟国は、総会が、安全保障理事会の勧告に基いて、この機構から除名することができる。
第3章 機関
第7条
1.国際連合の主要機関として、総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所及び事務局を設ける。
2.必要と認められる補助機関は、この憲章に従って設けることができる。
第8条
国際連合は、その主要機関及び補助機関に男女がいかなる地位にも平等の条件で参加する資格があることについて、いかなる制限も設けてはならない。
第4章 総会
【構成】
第9条
1.総会は、すべての国際連合加盟国で構成する。
2.各加盟国は、総会において5人以下の代表者を有するものとする。
【任務及び権限】
第10条
総会は、この憲章の範囲内にある問題若しくは事項又はこの憲章に規定する機関の権限及び任務に関する問題若しくは事項を討議し、並びに、第12条に規定する場合を除く外、このような問題又は事項について国際連合加盟国若しくは安全保障理事会又はこの両者に対して勧告をすることができる。
第11条
1.総会は、国際の平和及び安全の維持についての協力に関する一般原則を、軍備縮小及び軍備規制を律する原則も含めて、審議し、並びにこのような原則について加盟国若しくは安全保障理事会又はこの両者に対して勧告をすることができる。
2.総会は、国際連合加盟国若しくは安全保障理事会によって、又は第35条2に従い国際連合加盟国でない国によって総会に付託される国際の平和及び安全の維持に関するいかなる問題も討議し、並びに、第12条に規定する場合を除く外、このような問題について、1若しくは2以上の関係国又は安全保障理事会あるいはこの両者に対して勧告をすることができる。このような問題で行動を必要とするものは、討議の前または後に、総会によって安全保障理事会に付託されなければならない。
3.総会は、国際の平和及び安全を危くする虞のある事態について、安全保障理事会の注意を促すことができる。
4.本条に掲げる総会の権限は、第10条の一般的範囲を制限するものではない。
第12条
1.安全保障理事会がこの憲章によって与えられた任務をいずれかの紛争または事態について遂行している間は、総会は、安全保障理事会が要請しない限り、この紛争又は事態について、いかなる勧告もしてはならない。
2.事務総長は、国際の平和及び安全の維持に関する事項で安全保障理事会が取り扱っているものを、その同意を得て、会期ごとに総会に対して通告しなければならない。事務総長は、安全保障理事会がその事項を取り扱うことをやめた場合にも、直ちに、総会又は、総会が開会中でないときは、国際連合加盟国に対して同様に通告しなければならない。
第13条
1.総会は、次の目的のために研究を発議し、及び勧告をする。
a.政治的分野において国際協力を促進すること並びに国際法の斬新的発達及び法典化を奨励すること。
b.経済的、社会的、文化的、教育的及び保健的分野において国際協力を促進すること並びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を実現するように援助すること。
2.前記の1bに掲げる事項に関する総会の他の責任、任務及び権限は、第9章及び第10章に掲げる。
第14条
第12条の規定を留保して、総会は、起因にかかわりなく、一般的福祉または諸国間の友好関係を害する虞があると認めるいかなる事態についても、これを平和的に調整するための措置を勧告することができる。この事態には、国際連合の目的及び原則を定めるこの憲章の規定の違反から生ずる事態が含まれる。
第15条
1.総会は、安全保障理事会から年次報告及び特別報告を受け、これを審議する。この報告は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を維持するために決定し、又はとった措置の説明を含まなければならない。
2.総会は、国際連合の他の機関から報告を受け、これを審議する。
第16条
総会は、第12章及び第13章に基いて与えられる国際信託統治制度に関する任務を遂行する。この任務には、戦略地区として指定されない地区に関する信託統治協定の承認が含まれる。
第17条
1.総会は、この機構の予算を審議し、且つ、承認する。
2.この機構の経費は、総会によって割り当てられるところに従って、加盟国が負担する。
3.総会は、第57条に掲げる専門機関との財政上及び予算上の取極を審議し、且つ、承認し、並びに、当該専門機関に勧告をする目的で、この専門機関の行政的予算を検査する。
【表決】
第18条
1.総会の各構成国は、1個の投票権を有する。
2.重要問題に関する総会の決定は、出席し且つ投票する構成国の3分の2の多数によって行われる。重要問題には、国際の平和及び安全の維持に関する勧告、安全保障理事会の非常任理事国の選挙、経済社会理事会の理事国の選挙、第86条1cによる信託統治理事会の理事国の選挙、新加盟国の国際連合への加盟の承認、加盟国としての権利及び特権の停止、加盟国の除名、信託統治制度の運用に関する問題並びに予算問題が含まれる。
3.その他の問題に関する決定は、3分の2の多数によって決定されるべき問題の新たな部類の決定を含めて、出席し且つ投票する構成国の過半数によって行われる。
第19条
この機構に対する分担金の支払が延滞している国際連合加盟国は、その延滞金の額がその時までの満2年間にその国から支払われるべきであった分担金の額に等しいか又はこれをこえるときは、総会で投票権を有しない。但し、総会は、支払いの不履行がこのような加盟国にとってやむを得ない事情によると認めるときは、その加盟国に投票を許すことができる。
【手続】
第20条
総会は、年次通常会期として、また、必要がある場合に特別会期として会合する。特別会期は、安全保障理事会の要請又は国際連合加盟国の過半数の要請があったとき、事務総長が招集する。
第21条
総会は、その手続規則を採択する。総会は、その議長を会期ごとに選挙する。
第22条
総会は、その任務の遂行に必要と認める補助機関を設けることができる。
第5章 安全保障理事会
【構成】
第23条
1.安全保障理事会は、15の国際連合加盟国で構成する。中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国は、安全保障理事会の常任理事国となる。総会は、第一に国際の平和及び安全の維持とこの機構のその他の目的とに対する国際連合加盟国の貢献に、更に衡平な地理的分配に特に妥当な考慮を払って、安全保障理事会の非常任理事国となる他の10の国際連合加盟国を選挙する。
2.安全保障理事会の非常任理事国は、2年の任期で選挙される。安全保障理事会の理事国の定数が11から15に増加された後の第1回の非常任理事国の選挙では、追加の4理事国のうち2理事国は、1年の任期で選ばれる。退任理事国は、引き続いて再選される資格はない。
3.安全保障理事会の各理事国は、1人の代表を有する。
【任務及び権限】
第24条
1.国際連合の迅速且つ有効な行動を確保するために、国際連合加盟国は、国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を安全保障理事会に負わせるものとし、且つ、安全保障理事会がこの責任に基く義務を果すに当って加盟国に代って行動することに同意する。
2.前記の義務を果すに当たっては、安全保障理事会は、国際連合の目的及び原則に従って行動しなければならない。この義務を果たすために安全保障理事会に与えられる特定の権限は、第6章、第7章、第8章及び第12章で定める。
3.安全保障理事会は、年次報告を、また、必要があるときは特別報告を総会に審議のため提出しなければならない。
第25条
国際連合加盟国は、安全保障理事会の決定をこの憲章に従って受諾し且つ履行することに同意する。
第26条
世界の人的及び経済的資源を軍備のために転用することを最も少くして国際の平和及び安全の確立及び維持を促進する目的で、安全保障理事会は、軍備規制の方式を確立するため国際連合加盟国に提出される計画を、第47条に掲げる軍事参謀委員会の援助を得て、作成する責任を負う。
【表決】
第27条
1.安全保障理事会の各理事国は、1個の投票権を有する。
2.手続事項に関する安全保障理事会の決定は、9理事国の賛成投票によって行われる。
3.その他のすべての事項に関する安全保障理事会の決定は、常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成投票によって行われる。但し、第6章及び第52条3に基く決定については、紛争当事国は、投票を棄権しなければならない。
【手続】
第28条
1.安全保障理事会は、継続して任務を行うことができるように組織する。このために、安全保障理事会の各理事国は、この機構の所在地に常に代表者をおかなければならない。
2.安全保障理事会は、定期会議を開く。この会議においては、各理事国は、希望すれば、閣員または特に指名する他の代表者によって代表されることができる。
3.安全保障理事会は、その事業を最も容易にすると認めるこの機構の所在地以外の場所で、会議を開くことができる。
第29条
安全保障理事会は、その任務の遂行に必要と認める補助機関を設けることができる。
第30条
安全保障理事会は、議長を選定する方法を含むその手続規則を採択する。
第31条
安全保障理事会の理事国でない国際連合加盟国は、安全保障理事会に付託された問題について、理事会がこの加盟国の利害に特に影響があると認めるときはいつでも、この問題の討議に投票権なしで参加することができる。
第32条
安全保障理事会の理事国でない国際連合加盟国又は国際連合加盟国でない国は、安全保障理事会の審議中の紛争の当事者であるときは、この紛争に関する討議に投票権なしで参加するように勧誘されなければならない。安全保障理事会は、国際連合加盟国でない国の参加のために公正と認める条件を定める。
第6章 紛争の平和的解決
第33条
1.いかなる紛争でも継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞のあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。
2.安全保障理事会は、必要と認めるときは、当事者に対して、その紛争を前記の手段によって解決するように要請する。
第34条
安全保障理事会は、いかなる紛争についても、国際的摩擦に導き又は紛争を発生させる虞のあるいかなる事態についても、その紛争または事態の継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞があるかどうかを決定するために調査することができる。
第35条
1.国際連合加盟国は、いかなる紛争についても、第34条に掲げる性質のいかなる事態についても、安全保障理事会又は総会の注意を促すことができる。
2.国際連合加盟国でない国は、自国が当事者であるいかなる紛争についても、この憲章に定める平和的解決の義務をこの紛争についてあらかじめ受諾すれば、安全保障理事会又は総会の注意を促すことができる。
3.本条に基いて注意を促された事項に関する総会の手続は、第11条及び第12条の規定に従うものとする。
第36条
1.安全保障理事会は、第33条に掲げる性質の紛争又は同様の性質の事態のいかなる段階においても、適当な調整の手続又は方法を勧告することができる。
2.安全保障理事会は、当事者が既に採用した紛争解決の手続を考慮に入れなければならない。
3.本条に基いて勧告をするに当っては、安全保障理事会は、法律的紛争が国際司法裁判所規程の規定に従い当事者によって原則として同裁判所に付託されなければならないことも考慮に入れなければならない。
第37条
1.第33条に掲げる性質の紛争の当事者は、同条に示す手段によってこの紛争を解決することができなかったときは、これを安全保障理事会に付託しなければならない。
2.安全保障理事会は、紛争の継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞が実際にあると認めるときは、第36条に基く行動をとるか、適当と認める解決条件を勧告するかのいずれかを決定しなければならない。
第38条
第33条から第37条までの規定にかかわらず、安全保障理事会は、いかなる紛争についても、すべての紛争当事者が要請すれば、その平和的解決のためにこの当事者に対して勧告をすることができる。
第7章 平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動
第39条
安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第41条及び第42条に従っていかなる措置をとるかを決定する。
第40条
事態の悪化を防ぐため、第39条の規定により勧告をし、又は措置を決定する前に、安全保障理事会は、必要又は望ましいと認める暫定措置に従うように関係当事者に要請することができる。この暫定措置は、関係当事者の権利、請求権又は地位を害するものではない。安全保障理事会は、関係当時者がこの暫定措置に従わなかったときは、そのことに妥当な考慮を払わなければならない。
第41条
安全保障理事会は、その決定を実施するために、兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、且つ、この措置を適用するように国際連合加盟国に要請することができる。この措置は、経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中断並びに外交関係の断絶を含むことができる。
第42条
安全保障理事会は、第41条に定める措置では不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。
第43条
1.国際の平和及び安全の維持に貢献するため、すべての国際連合加盟国は、安全保障理事会の要請に基き且つ1又は2以上の特別協定に従って、国際の平和及び安全の維持に必要な兵力、援助及び便益を安全保障理事会に利用させることを約束する。この便益には、通過の権利が含まれる。
2.前記の協定は、兵力の数及び種類、その出動準備程度及び一般的配置並びに提供されるべき便益及び援助の性質を規定する。
3.前記の協定は、安全保障理事会の発議によって、なるべくすみやかに交渉する。この協定は、安全保障理事会と加盟国との間又は安全保障理事会と加盟国群との間に締結され、且つ、署名国によって各自の憲法上の手続に従って批准されなければならない。
第44条
安全保障理事会は、兵力を用いることに決定したときは、理事会に代表されていない加盟国に対して第43条に基いて負った義務の履行として兵力を提供するように要請する前に、その加盟国が希望すれば、その加盟国の兵力中の割当部隊の使用に関する安全保障理事会の決定に参加するようにその加盟国を勧誘しなければならない。
第45条
国際連合が緊急の軍事措置をとることができるようにするために、加盟国は、合同の国際的強制行動のため国内空軍割当部隊を直ちに利用に供することができるように保持しなければならない。これらの割当部隊の数量及び出動準備程度並びにその合同行動の計画は、第43条に掲げる1又は2以上の特別協定の定める範囲内で、軍事参謀委員会の援助を得て安全保障理事会が決定する。
第46条
兵力使用の計画は、軍事参謀委員会の援助を得て安全保障理事会が作成する。
第47条
1.国際の平和及び安全の維持のための安全保障理事会の軍事的要求、理事会の自由に任された兵力の使用及び指揮、軍備規制並びに可能な軍備縮小に関するすべての問題について理事会に助言及び援助を与えるために、軍事参謀委員会を設ける。
2.軍事参謀委員会は、安全保障理事会の常任理事国の参謀総長又はその代表者で構成する。この委員会に常任委員として代表されていない国際連合加盟国は、委員会の責任の有効な遂行のため委員会の事業へのその国の参加が必要であるときは、委員会によってこれと提携するように勧誘されなければならない。
3.軍事参謀委員会は、安全保障理事会の下で、理事会の自由に任された兵力の戦略的指導について責任を負う。この兵力の指揮に関する問題は、後に解決する。
4.軍事参謀委員会は、安全保障理事会の許可を得て、且つ、適当な地域的機関と協議した後に、地域的小委員会を設けることができる。
第48条
1.国際の平和及び安全の維持のための安全保障理事会の決定を履行するのに必要な行動は、安全保障理事会が定めるところに従って国際連合加盟国の全部または一部によってとられる。
2.前記の決定は、国際連合加盟国によって直接に、また、国際連合加盟国が参加している適当な国際機関におけるこの加盟国の行動によって履行される。
第49条
国際連合加盟国は、安全保障理事会が決定した措置を履行するに当って、共同して相互援助を与えなければならない。
第50条
安全保障理事会がある国に対して防止措置又は強制措置をとったときは、他の国でこの措置の履行から生ずる特別の経済問題に自国が当面したと認めるものは、国際連合加盟国であるかどうかを問わず、この問題の解決について安全保障理事会と協議する権利を有する。
第51条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。
第8章 地域的取極
第52条
1.この憲章のいかなる規定も、国際の平和及び安全の維持に関する事項で地域的行動に適当なものを処理するための地域的取極又は地域的機関が存在することを妨げるものではない。但し、この取極又は機関及びその行動が国際連合の目的及び原則と一致することを条件とする。
2.前記の取極を締結し、又は前記の機関を組織する国際連合加盟国は、地方的紛争を安全保障理事会に付託する前に、この地域的取極または地域的機関によってこの紛争を平和的に解決するようにあらゆる努力をしなければならない。
3.安全保障理事会は、関係国の発意に基くものであるか安全保障理事会からの付託によるものであるかを問わず、前記の地域的取極又は地域的機関による地方的紛争の平和的解決の発達を奨励しなければならない。
4.本条は、第34条及び第35条の適用をなんら害するものではない。
第53条
1.安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極または地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。もっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。
2.本条1で用いる敵国という語は、第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される。
第54条
安全保障理事会は、国際の平和及び安全の維持のために地域的取極に基いて又は地域的機関によって開始され又は企図されている活動について、常に充分に通報されていなければならない。
第9章 経済的及び社会的国際協力
第55条
人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の平和的且つ友好的関係に必要な安定及び福祉の条件を創造するために、国際連合は、次のことを促進しなければならない。
a.一層高い生活水準、完全雇用並びに経済的及び社会的の進歩及び発展の条件
b.経済的、社会的及び保健的国際問題と関係国際問題の解決並びに文化的及び教育的国際協力
c.人種、性、言語または宗教による差別のないすべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守
第56条
すべての加盟国は、第55条に掲げる目的を達成するために、この機構と協力して、共同及び個別の行動をとることを誓約する。
第57条
1.政府間の協定によって設けられる各種の専門機関で、経済的、社会的、文化的、教育的及び保健的分野並びに関係分野においてその基本的文書で定めるところにより広い国際的責任を有するものは、第63条の規定に従って国際連合と連携関係をもたされなければならない。
2.こうして国際連合と連携関係をもたされる前記の機関は、以下専門機関という。
第58条
この機構は、専門機関の政策及び活動を調整するために勧告をする。
第59条
この機構は、適当な場合には、第55条に掲げる目的の達成に必要な新たな専門機関を設けるために関係国間の交渉を発議する。
第60条
この章に掲げるこの機構の任務を果たす責任は、総会及び、総会の権威の下に、経済社会理事会に課せられる。理事会は、このために第10章に掲げる権限を有する。
第10章 経済社会理事会
【構成】
第61条
1.経済社会理事会は、総会によって選挙される54の国際連合加盟国で構成する。
2.3の規定を留保して、経済社会理事会の18理事国は、3年の任期で毎年選挙される。退任理事国は、引き続いて再選される資格がある。
3.経済社会理事会の理事国の定数が27から54に増加された後の第1回の選挙では、その年の終わりに任期が終了する9理事国に代って選挙される理事国に加えて、更に27理事国が選挙される。このようにして選挙された追加の27理事国のうち、総会の定めるところに従って、9理事国の任期は1年の終りに、他の9理事国の任期は2年の終りに終了する。
4.経済社会理事会の各理事国は、1人の代表者を有する。
第62条
1.経済社会理事会は、経済的、社会的、文化的、教育的及び保健的国際事項並びに関係国際事項に関する研究及び報告を行い、または発議し、並びにこれらの事項に関して総会、国際連合加盟国及び関係専門機関に勧告をすることができる。
2.理事会は、すべての者のための人権及び基本的自由の尊重及び遵守を助長するために、勧告をすることができる。
3.理事会は、その権限に属する事項について、総会に提出するための条約案を作成することができる。
4.理事会は、国際連合の定める規則に従って、その権限に属する事項について国際会議を招集することができる。
第63条
1.経済社会理事会は、第57条に掲げる機関のいずれとの間にも、その機関が国際連合と連携関係をもたされるについての条件を定める協定を締結することができる。この協定は、総会の承認を受けなければならない。
2.理事会は、専門機関との協議及び専門機関に対する勧告並びに総会及び国際連合加盟国に対する勧告によって、専門機関の活動を調整することができる。
第64条
1.経済社会理事会は、専門機関から定期報告を受けるために、適当な措置をとることができる。理事会は、理事会の勧告と理事会の権限に属する事項に関する総会の勧告とを実施するためにとられた措置について報告を受けるため、国際連合加盟国及び専門機関と取極を行うことができる。
2.理事会は、前記の報告に関するその意見を総会に通報することができる。
第65条
経済社会理事会は、安全保障理事会に情報を提供することができる。経済社会理事会は、また、安全保障理事会の要請があったときは、これを援助しなければならない。
第66条
1.経済社会理事会は、総会の勧告の履行に関して、自己の権限に属する任務を遂行しなければならない。
2.理事会は、国際連合加盟国の要請があったとき、又は専門機関の要請があったときは、総会の承認を得て役務を提供することができる。
3.理事会は、この憲章の他の箇所に定められ、または総会によって自己に与えられるその他の任務を遂行しなければならない。
【表決】
第67条
1.経済社会理事会の各理事国は、1個の投票権を有する。
2.経済社会理事会の決定は、出席し且つ投票する理事国の過半数によって行われる。
【手続】
第68条
経済社会理事会は、経済的及び社会的分野における委員会、人権の伸張に関する委員会並びに自己の任務の遂行に必要なその他の委員会を設ける。
第69条
経済社会理事会は、いずれの国際連合加盟国に対しても、その加盟国に特に関係のある事項についての審議に投票権なしで参加するように勧誘しなければならない。
第70条
経済社会理事会は、専門機関の代表者が理事会の審議及び理事会の設ける委員会の審議に投票権なしで参加するための取極並びに理事会の代表者が専門機関の審議に参加するための取極を行うことができる。
第71条
経済社会理事会は、その権限内にある事項に関係のある民間団体と協議するために、適当な取極を行うことができる。この取極は、国際団体との間に、また、適当な場合には、関係のある国際連合加盟国と協議した後に国内団体との間に行うことができる。
第72条
1.経済社会理事会は、議長を選定する方法を含むその手続規則を採択する。
2.経済社会理事会は、その規則に従って必要があるときに会合する。この規則は、理事国の過半数の要請による会議招集の規定を含まなければならない。
第11章 非自治地域に関する宣言
第73条
人民がまだ完全に自治を行うに至っていない地域の施政を行う責任を有し、又は引き受ける国際連合加盟国は、この地域の住民の利益が至上のものであるという原則を承認し、且つ、この地域の住民の福祉をこの憲章の確立する国際の平和及び安全の制度内で最高度まで増進する義務並びにそのために次のことを行う義務を神聖な信託として受託する。

1.関係人民の文化を充分に尊重して、この人民の政治的、経済的、社会的及び教育的進歩、公正な待遇並びに虐待からの保護を確保すること。
2.各地域及びその人民の特殊事情並びに人民の進歩の異なる段階に応じて、自治を発達させ、人民の政治的願望に妥当な考慮を払い、且つ、人民の自由な政治制度の斬新的発達について人民を援助すること。
3.国際の平和及び安全を増進すること。
4.本条に掲げる社会的、経済的及び科学的目的を実際に達成するために、建設的な発展措置を促進し、研究を奨励し、且つ、相互に及び適当な場合には専門国際団体と協力すること。
5.第12章及び第13章の適用を受ける地域を除く外、前記の加盟国がそれぞれ責任を負う地域における経済的、社会的及び教育的状態に関する専門的性質の統計その他の資料を、安全保障及び憲法上の考慮から必要な制限に従うことを条件として、情報用として事務総長に定期的に送付すること。
第74条
国際連合加盟国は、また、本章の適用を受ける地域に関するその政策を、その本土に関する政策と同様に、世界の他の地域の利益及び福祉に妥当な考慮を払った上で、社会的、経済的及び商業的事項に関して善隣主義の一般原則に基かせなければならないことに同意する。
第12章 国際信託統治制度
第75条
国際連合は、その権威の下に、国際信託統治制度を設ける。この制度は、今後の個々の協定によってこの制度の下におかれる地域の施政及び監督を目的とする。この地域は、以下信託統治地域という。
第76条
信託統治制度の基本目的は、この憲章の第1条に掲げる国際連合の目的に従って、次のとおりとする。
1.国際の平和及び安全を増進すること。
2.信託統治地域の住民の政治的、経済的、社会的及び教育的進歩を促進すること。各地域及びその人民の特殊事情並びに関係人民が自由に表明する願望に適合するように、且つ、各信託統治協定の条項が規定するところに従って、自治または独立に向っての住民の漸進的発達を促進すること。
3.人種、性、言語または宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように奨励し、且つ、世界の人民の相互依存の認識を助長すること。
4.前記の目的の達成を妨げることなく、且つ、第80条の規定を留保して、すべての国際連合加盟国及びその国民のために社会的、経済的及び商業的事項について平等の待遇を確保し、また、その国民のために司法上で平等の待遇を確保すること。
第77条
1.信託統治制度は、次の種類の地域で信託統治協定によってこの制度の下におかれるものに適用する。
a.現に委任統治の下にある地域
b.第二次世界大戦の結果として敵国から分離される地域
c.施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域
2.前記の種類のうちのいずれの地域がいかなる条件で信託統治制度の下におかれるかについては、今後の協定で定める。
第78条
国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、信託統治制度は、加盟国となった地域には適用しない。
第79条
信託統治制度の下におかれる各地域に関する信託統治の条項は、いかなる変更又は改正も含めて、直接関係国によって協定され、且つ、第83条及び第 85条に規定するところに従って承認されなければならない。この直接関係国は、国際連合加盟国の委任統治の下にある地域の場合には、受任国を含む。
第80条
1.第77条、第79条及び第81条に基いて締結され、各地域を信託統治制度の下におく個々の信託統治協定において協定されるところを除き、また、このような協定が締結される時まで、本章の規定は、いずれの国又はいずれの人民のいかなる権利をも、また、国際連合加盟国がそれぞれ当事国となっている現存の国際文書の条項をも、直接又は間接にどのようにも変更するものと解釈してはならない。
2.本条1は、第77条に規定するところに従って委任統治地域及びその他の地域を信託統治制度の下におくための協定の交渉及び締結の遅滞又は延期に対して、根拠を与えるものと解釈してはならない。
第81条
信託統治協定は、各場合において、信託統治地域の施政を行うについての条件を含み、且つ、信託統治地域の施政を行う当局を指定しなければならない。この当局は、以下施政権者といい、1若しくは2以上の国またはこの機構自身であることができる。
第82条
いかなる信託統治協定においても、その協定が適用される信託統治地域の一部又は全部を含む1又は2以上の戦略地区を指定することができる。但し、第43条に基いて締結される特別協定を害してはならない。
第83条
1.戦略地区に関する国際連合のすべての任務は、信託統治協定の条項及びその変更又は改正の承認を含めて、安全保障理事会が行う。
2.第76条に掲げる基本目的は、各戦略地区の人民に適用する。
3.安全保障理事会は、国際連合の信託統治制度に基く任務で戦略地区の政治的、経済的、社会的及び教育的事項に関するものを遂行するために、信託統治理事会の援助を利用する。但し、信託統治協定の規定には従うものとし、また、安全保障の考慮が妨げられてはならない。
第84条
信託統治地域が国際の平和及び安全の維持についてその役割を果すようにすることは、施政権者の義務である。このため、施政権者は、この点に関して安全保障理事会に対して負う義務を履行するに当って、また、地方的防衛並びに信託統治地域における法律及び秩序の維持のために、信託統治地域の義勇軍、便益及び援助を利用することができる。
第85条
1.戦略地区として指定されないすべての地区に関する信託統治協定についての国際連合の任務は、この協定の条項及びその変更又は改正の承認を含めて、総会が行う。
2.総会の権威の下に行動する信託統治理事会は、前記の任務の遂行について総会を援助する。
第13章 信託統治理事会
第86条
1.信託統治理事会は、次の国際連合加盟国で構成する。
a.信託統治地域の施政を行う加盟国
b.第23条に名を掲げる加盟国で信託統治地域の施政を行っていないもの
c.総会によって3年の任期で選挙されるその他の加盟国。その数は、信託統治理事会の理事国の総数を、信託統治地域の施政を行う国際連合加盟国とこれを行っていないものとの間に均分するのに必要な数とする。
2.信託統治理事会の各理事国は、理事会で自国を代表する特別の資格を有する者1人を指名しなければならない。
【任務及び権限】
第87条
総会及び、その権威の下に、信託統治理事会は、その任務の遂行に当って次のことを行うことができる。
1.施政権者の提出する報告を審議すること。
2.請願を受理し、且つ、施政権者と協議してこれを審査すること。
3.施政権者と協定する時期に、それぞれの信託統治地域の定期視察を行わせること。
4.信託統治協定の条項に従って、前記の行動その他の行動をとること。
第88条
信託統治理事会は、各信託統治地域の住民の政治的、経済的、社会的及び教育的進歩に関する質問書を作成しなければならない。また、総会の権限内にある各信託統治地域の施政権者は、この質問書に基いて、総会に年次報告を提出しなければならない。
【表決】
第89条
1.信託統治理事会の各理事国は、1個の投票権を有する。
2.信託統治理事会の決定は、出席し且つ投票する理事国の過半数によって行われる。
【手続】
第90条
1.信託統治理事会は、議長を選定する方法を含むその手続規則を採択する。
2.信託統治理事会は、その規則に従って必要があるときに会合する。この規則は、理事国の過半数の要請による会議招集の規定を含まなければならない。
第91条
信託統治理事会は、適当な場合には、経済社会理事会及び専門機関がそれぞれ関係している事項について、両者の援助を利用する。
第14章 国際司法裁判所
第92条
国際司法裁判所は、国際連合の主要な司法機関である。この裁判所は、付属の規程に従って任務を行う。この規定は、常設国際司法裁判所規程を基礎とし、且つ、この憲章と不可分の一体をなす。
第93条
1.すべての国際連合加盟国は、当然に、国際司法裁判所規程の当事国となる。
2.国際連合加盟国でない国は、安全保障理事会の勧告に基いて総会が各場合に決定する条件で国際司法裁判所規程の当事国となることができる。
第94条
1.各国際連合加盟国は、自国が当事者であるいかなる事件においても、国際司法裁判所の裁判に従うことを約束する。
2.事件の一方の当事者が裁判所の与える判決に基いて自国が負う義務を履行しないときは、他方の当事者は、安全保障理事会に訴えることができる。理事会は、必要と認めるときは、判決を執行するために勧告をし、又はとるべき措置を決定することができる。
第95条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国が相互間の紛争の解決を既に存在し又は将来締結する協定によって他の裁判所に付託することを妨げるものではない。
第96条
1.総会又は安全保障理事会は、いかなる法律問題についても勧告的意見を与えるように国際司法裁判所に要請することができる。
2.国際連合のその他の機関及び専門機関でいずれかの時に総会の許可を得るものは、また、その活動の範囲内において生ずる法律問題について裁判所の勧告的意見を要請することができる。
第15章 事務局
第97条
事務局は、1人の事務総長及びこの機構が必要とする職員からなる。事務総長は、安全保障理事会の勧告に基いて総会が任命する。事務総長は、この機構の行政職員の長である。
第98条
事務総長は、総会、安全保障理事会、経済社会理事会及び信託統治理事会のすべての会議において事務総長の資格で行動し、且つ、これらの機関から委託される他の任務を遂行する。事務総長は、この機構の事業について総会に年次報告を行う。
第99条
事務総長は、国際の平和及び安全の維持を脅威すると認める事項について、安全保障理事会の注意を促すことができる。
第100条
1.事務総長及び職員は、その任務の遂行に当って、いかなる政府からも又はこの機構外のいかなる他の当局からも指示を求め、又は受けてはならない。事務総長及び職員は、この機構に対してのみ責任を負う国際的職員としての地位を損ずる虞のあるいかなる行動も慎まなければならない。
2.各国際連合加盟国は、事務総長及び職員の責任のもっぱら国際的な性質を尊重すること並びにこれらの者が責任を果すに当ってこれらの者を左右しようとしないことを約束する。
第101条
1.職員は、総会が設ける規則に従って事務総長が任命する。
2.経済社会理事会、信託統治理事会及び、必要に応じて、国際連合のその他の機関に、適当な職員を常任として配属する。この職員は、事務局の一部をなす。
3.職員の雇用及び勤務条件の決定に当って最も考慮すべきことは、最高水準の能率、能力及び誠実を確保しなければならないことである。職員をなるべく広い地理的基礎に基いて採用することの重要性については、妥当な考慮を払わなければならない。
第16章 雑則
第102条
1.この憲章が効力を生じた後に国際連合加盟国が締結するすべての条約及びすべての国際協定は、なるべくすみやかに事務局に登録され、且つ、事務局によって公表されなければならない。
2.前記の条約または国際協定で本条1の規定に従って登録されていないものの当事国は、国際連合のいかなる機関に対しても当該条約または協定を援用することができない。
第103条
国際連合加盟国のこの憲章に基く義務と他のいずれかの国際協定に基く義務とが抵触するときは、この憲章に基く義務が優先する。
第104条
この機構は、その任務の遂行及びその目的の達成のために必要な法律上の能力を各加盟国の領域において亨有する。
第105条
1.この機構は、その目的の達成に必要な特権及び免除を各加盟国の領域において亨有する。
2.これと同様に、国際連合加盟国の代表者及びこの機構の職員は、この機構に関連する自己の任務を独立に遂行するために必要な特権及び免除を亨有する。
3.総会は、本条1及び2の適用に関する細目を決定するために勧告をし、又はそのために国際連合加盟国に条約を提案することができる。
第17章 安全保障の過渡的規定
第106条
第43条に掲げる特別協定でそれによって安全保障理事会が第42条に基く責任の遂行を開始することができると認めるものが効力を生ずるまでの間、 1943年10月30日にモスコーで署名された4国宣言の当事国及びフランスは、この宣言の第5項の規定に従って、国際の平和及び安全の維持のために必要な共同行動をこの機構に代ってとるために相互に及び必要に応じて他の国際連合加盟国と協議しなければならない。
第107条
この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。
第18章 改正
第108条
この憲章の改正は、総会の構成国の3分の2の多数で採択され、且つ、安全保障理事会のすべての常任理事国を含む国際連合加盟国の3分の2によって各自の憲法上の手続に従って批准された時に、すべての国際連合加盟国に対して効力を生ずる。
第109条
1.この憲章を再審議するための国際連合加盟国の全体会議は、総会の構成国の3分の2の多数及び安全保障理事会の9理事会の投票によって決定される日及び場所で開催することができる。各国際連合加盟国は、この会議において1個の投票権を有する。
2.全体会議の3分の2の多数によって勧告されるこの憲章の変更は、安全保障理事会のすべての常任理事国を含む国際連合加盟国の3分の2によって各自の憲法上の手続に従って批准された時に効力を生ずる。
3.この憲章の効力発生後の総会の第10回年次会期までに全体会議が開催されなかった場合には、これを招集する提案を総会の第10回年次会期の議事日程に加えなければならず、全体会議は、総会の構成国の過半数及び安全保障理事会の7理事国の投票によって決定されたときに開催しなければならない。
第19章 批准及び署名
第110条
1.この憲章は、署名国によって各自の憲法上の手続に従って批准されなければならない.
2.批准書は、アメリカ合衆国政府に寄託される。同政府は、すべての署名国及び、この機構の事務総長が任命された場合には、事務総長に対して各寄託を通告する。
3.この憲章は、中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国及びその他の署名国の過半数が批准書を寄託した時に効力を生ずる。批准書寄託調書は、その時にアメリカ合衆国政府が作成し、その謄本をすべての署名国に送付する。
4.この憲章の署名国で憲章が効力を生じた後に批准するものは、各自の批准書の寄託の日に国際連合の原加盟国となる。
第111条
この憲章は、中国語、フランス語、ロシア語、英語及びスペイン語の本文をひとしく正文とし、アメリカ合衆国政府の記録に寄託しておく。この憲章の認証謄本は、同政府が他の署名国の政府に送付する。
以上の証拠として、連合国政府の代表者は、この憲章に署名した。
1945年6月26日にサン・フランシスコ市で作成した。


PS(2015.7.23追加):*4-1のように、東シナ海で中国がガス田開発を行っている。これについて、外務省が写真を公表し、日本政府は、「一方的な資源開発は極めて遺憾だ」として中止を求め、「中国による一方的な現状変更に対する関心の高まりを総合的に勘案して公表した」とのことだが、中国は、*4-2のように、「中国が管轄する争いのない海域でのガス田開発は全く正当かつ合法だ」としている。
 しかし、①2003年(今から12年前)に問題点が明らかになり、②2008年(今から7年前)に日中両政府がガス田の共同開発で合意した(条約はない)が、③日本がいつまでもガス田開発を行わず、④「一方的な現状変更だ」と中国にクレームをつけるだけであったため、中国が争いのない海域でのガス田開発を行うのは、私も正当で合法的だと考える。
 日本の態度を隣組に例えれば、清らかな地下水に恵まれた住宅地で、井戸を掘る手間と費用を惜しんで飲料水を取りよせて購入している人が、境界近くの自分の敷地に井戸を掘った隣家に対して、「地下水脈は繋がっているのに勝手に現状変更するな。井戸を掘るなら共同でしか許さない」とクレームを言っているのと同じで、日本の主張の方がおかしい。必要な資源であれば、速やかに問題を解決して自分も掘るべきだったのだが、私が衆議院議員だった時、経産省にそう言っても、経産省は「中東から輸入した方が安い」と短期的かつ狭窄な視野でたかをくくっていて何もしなかったのである。ちなみに、小笠原の赤サンゴ事件の時でさえ、日本政府は、公式な抗議や逮捕など大したことは行っておらず、環境に対して中国よりも見識の低い不作為があった。
 なお、*4-3のように中国が主張している大陸棚説は、隣家が「うちと同じ地層の上にある場所はうちの敷地だ」と言っているのと同様に理不尽であるため、放っておかず速やかに交渉して問題解決すべきだったのであり、それは外務省の仕事であるから外務省の不作為だ。

   
                2015.7.22、23日経新聞

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150723&ng=DGKKASDE22H0J_S5A720C1MM8000 (日経新聞 2015.7.23) 中国ガス田開発12基増 東シナ海、写真公表
 政府は22日、東シナ海での中国によるガス田開発の現状を示す航空写真や地図を外務省のホームページで公表した。菅義偉官房長官は記者会見で、「日中中間線」の中国側で2013年6月以降に新たに12基の構造物が確認され、すでに確認済みの4基と合わせて16基になったと発表。「一方的な資源開発は極めて遺憾だ」と批判し、中止を求めた。公表した写真は海上自衛隊機が上空から撮影。天然ガスを掘削するプラットホームで、多くはヘリポートが付いている。菅長官は公表の理由について「中国による一方的な現状変更に対する関心の高まりを総合的に勘案した」と説明。政府内には「ヘリや無人機の展開拠点として利用する可能性もある」(中谷元・防衛相)との見方が出ている。

*4-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE22H0G_S5A720C1000000/
(日経新聞 2015/7/22) 政府、中国ガス田開発の証拠写真を公表 計16基の構造物
 政府は22日、中国が日中間の合意に反し、東シナ海の「日中中間線」付近で一方的に新たなガス田開発を進めていると指摘し、証拠として航空写真などを公表した。周辺海域で中国がガス田開発のために設けた構造物は計16基で、いずれも日中中間線の中国側で建設されている。政府は各施設が中国の軍事活動の拠点となる可能性も念頭に、警戒を強めている。菅義偉官房長官は同日の記者会見で「日中中間線の中国側においてとはいえ、中国側が一方的な開発行為を進めていることは極めて遺憾だ」と抗議した。外務省が同日、ホームページで構造物や構造物の土台の写真と、構造物の位置を示した地図を発表した。証拠写真を公表することで、境界が画定していない海域で中国が一方的に開発を進めている実態を国内外にアピールし、中国をけん制する狙いがある。中国が「ヘリや無人機の展開拠点として利用する可能性もある」(中谷元・防衛相)などの指摘も多く、今後は米国などと連携して警戒態勢を強める考えだ。中国側は「中国が管轄する争いのない海域でのガス田開発は全く正当かつ合法だ」(中国外務省の陸慷報道局長)と繰り返し反論している。東シナ海のガス田開発を巡っては、2008年6月に日中両政府がガス田「白樺」(中国名・春暁)の共同開発で合意。具体化に向けた交渉を進めていたが、10年の沖縄県尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件を機に中国側が交渉を一方的に延期した。その後、13年6月に中国による新たな掘削施設の建設が明らかになり、政府が抗議していた。

*4-3:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/higashi_shina/tachiba.html
(外務省 平成27年7月22日) 中国による東シナ海での一方的資源開発の現状
1 近年,中国は,東シナ海において資源開発を活発化させており,政府として,日中の地理的中間線の中国側で,これまでに計16基の構造物を確認している。
2 東シナ海の排他的経済水域及び大陸棚は境界が未画定であり,日本は日中中間線を基にした境界画定を行うべきであるとの立場である。このように,未だ境界が画定していない状況において,日中中間線の中国側においてとは言え,中国側が一方的な開発行為を進めていることは極めて遺憾である。政府としては,中国側に対して,一方的な開発行為を中止するとともに,東シナ海の資源開発に関する日中間の協力について一致した「2008年6月合意」の実施に関する交渉再開に早期に応じるよう,改めて強く求めているところである。
1 日中双方は、国連海洋法条約の関連規定に基づき、領海基線から200海里までの排他的経済水域及び大陸棚の権原を有している。東シナ海をはさんで向かい合っている日中それぞれの領海基線の間の距離は400海里未満であるので、双方の200海里までの排他的経済水域及び大陸棚が重なり合う部分について、日中間の合意により境界を画定する必要がある。国連海洋法条約の関連規定及び国際判例に照らせば、このような水域において境界を画定するに当たっては、中間線を基に境界を画定することが衡平な解決となるとされている。
 (注:1海里=1.852キロメートル、200海里=370.4キロメートル)
2 (1)これに対し、中国側は、東シナ海における境界画定について、大陸棚の自然延長、大陸と島の対比などの東シナ海の特性を踏まえて行うべきであるとしており、中間線による境界画定は認められないとした上で、中国側が想定する具体的な境界線を示すことなく、大陸棚について沖縄トラフまで自然延長している旨主張している。
(2)他方、自然延長論は、1960年代に、隣り合う国の大陸棚の境界画定に関する判例で用いられる等、過去の国際法においてとられていた考え方である。1982年に採択された国連海洋法条約の関連規定とその後の国際判例に基づけば、向かい合う国同士の間の距離が400海里未満の水域において境界を画定するに当たっては、自然延長論が認められる余地はなく、また、沖縄トラフ(海底の溝)のような海底地形に法的な意味はない。したがって、大陸棚を沖縄トラフまで主張できるとの考えは、現在の国際法に照らせば根拠に欠ける。
3 このような前提に立ってこれまで、我が国は、境界が未画定の海域では少なくとも中間線から日本側の水域において我が国が主権的権利及び管轄権を行使できることは当然との立場をとってきた。これは中間線以遠の権原を放棄したということでは全くなく、あくまでも境界が画定されるまでの間はとりあえず中間線までの水域で主権的権利及び管轄権を行使するということである。したがって、東シナ海における日中間の境界画定がなされておらず、かつ、中国側が我が国の中間線にかかる主張を一切認めていない状況では、我が国が我が国の領海基線から200海里までの排他的経済水域及び大陸棚の権原を有しているとの事実に何ら変わりはない。

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