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2015.8.14 川内原発はじめ他の原発の再稼働について (2015年8月15、16、17、26、27、28日に追加あり)
       
  2015.8.?   2015.8.11 2015.8.12    2015.8.12     
  東京新聞    佐賀新聞   佐賀新聞      朝日新聞
 
      
   2015.8.1~7     2015.8.12   九州の     2015.8.12  
  最大電力使用率      朝日新聞    火山分布     産経新聞

(1)原発のコストは安くなく、川内を再稼働の雛型にしてはならないこと
 *1-1のように、九電が川内原発1号機を再稼働させて8月14日に発送電を開始し、「原発ゼロ」の状態が終わってエネルギー政策が原発に回帰し、佐賀新聞はこれを祝うように号外で報じた。しかし、「電力が足りない」という再稼働の根拠は、上の東京新聞や*1-4のように、代替電源や広域融通で既に解決されており、原発自体は課題が山積している。しかし、電力業界と経済界は「大きな一歩が踏み出された(経団連の榊原定征会長)」と歓迎しており、ここが原発再稼働のメリットを最も大きく受けるようだ。

 しかし、「原発はコストが安い」と言われてきたことについては、*1-2のように、「核のごみ処分」の目途も立っておらず、「国が責任を持って立地自治体以外に最終処分場を造れ」と言う人もおり、強引に川内原発再稼働を進めた鹿児島県の伊藤知事も最終処分場の鹿児島県への建設には反対している。

 そもそも電力会社は、核のごみ処分費用については見積もりを作って引当金を計上し、引当金繰入額と原子力由来の電力販売収益を毎期対応させてコスト比較を行うべきだったのだ。つまり、他の電源を使いたいと主張している再稼働反対派や受益者ではない将来世代に、今後発生する核のごみ処分費用を税の形で負担させるのは、受益者と負担者が一致しないため不公正なのである。

 また、行き場のない大量の核のごみが原発内の貯蔵プールに溜まっているのは今でも危険であり、その原発を再稼働してメリットがあるのは九電と一部の企業にすぎない。そのため、私も、*1-3のように、川内原発を雛型にして、次々と原発を再稼働してはならないと考える。なお、原子力規制委員会の新規制基準は、火山の大規模噴火を想定しておらず、避難計画も不備であり、*4-3のように、長期避難は想定外であるため、欠陥品である。さらに、放射性物質が拡散して線量も十分に下がっていない場所に住民を帰還させるのは、非人道的としか言いようがない。

 「原発がなければ安定的な電力が不足する(これこそ10年1日の如く言われる科学的でない観念論である)」として、政府(経産省)は2030年の電源構成目標で原発をベースロード電源として原発比率を20~22%と決めたが、*1-3のように、先進国ではベースロードという概念は消え、再エネを含めた多様な電源やサービスを公正な条件のもとで消費者が選ぶ時代になっている。それにもかかわらず、太陽光発電などの技術を最初に作った日本が、古い観念に縛られて割に合わない原発に回帰するのは愚かであり、さらに、電源構成を決めるというのは計画経済であって市場経済ではない。

(2)原発再稼働の受益者は誰か
 *2-1のように、九電は原発再稼働を業績回復の「切り札」として再稼働による収支改善に期待を寄せ、他の電力会社からねぎらいの連絡もあったそうで、再稼働の最大の受益者は電力会社である。しかし、「原発ゼロ」でも、値上げにより電力会社の黒字化は進んでいたし、電力会社の赤字解消が原発再稼働の目的であれば、原発がらみのコストはすべて電力会社が負担した上で他の電源と比較すべきだ。

 さらに、*2-2のように、大口需要先として優遇を受けている経済界からも「大きな一歩」と再稼働に歓迎の声が上がったそうだが、立地地域の商工会トップは原発の増設は「非現実的」として、原発だけに頼らない地域経済を模索する必要性を強調しており、原発立地地域も次の時代の産業に進むべき時だ。

(3)原発事故の責任者は誰か
 *3-1のように、業界は無責任体質で、立地自治体がそこまで「振興のため必要だ」と言うのなら、東京でかつての脱原発のうねりが消えるのも尤もではあるが、*4-4のように、立地自治体や周辺地域の住民も脱原発派の方が多い上、関東も鹿児島県で原発が過酷事故を起こせば汚染が広がって九州の安全な農水産物を食べられなくなるため、本当は深い関係を持っている。

 そのような中、電力会社と立地自治体の利益のために原発を再稼働させながら、*3-2の「政府は原子力の必要性とエネルギー政策の転換を改めて国民に説明し、原子力利用に伴う最終責任を国が引き受けることを明確にすべきだ」という主張には呆れるほかない。

 そのため、2016年に自由化される電力市場では、電力需要者に好みの電源由来の電力を使う選択権を与えるべきである。そうすれば公正な市場競争と消費者の見識によって原発は消え、それを無理やり残そうとすれば国民の福利を最大にしないことが明らかになるからだ(経済学の基本)。

(4)過酷事故時の汚染範囲と汚染期間
 *4-1のように、約2年間の「原発ゼロ」が終わり、「新基準は世界でも最も厳しいレベルだから、新基準に合格しさえすれば安全だ」という新たな安全神話ができた。そして、これまで規制委に審査を申請したのは、川内を含めて15原発の計25基あり、高浜原発は福井地裁が運転を認めない仮処分の決定を出したが、川内原発は鹿児島地裁が仮処分の決定を出さなかった。

 しかし、川内原発の周辺では、高齢者の多い医療施設や福祉施設で住民の避難計画が十分に整っていない上、*4-2のように、放射性物質の放出量や気象条件、地形などのデータを基に放射性物質の拡散範囲や量を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」は住民の避難に活用しないことが決められ、被曝前に避難することが不可能になった。さらに、*4-3のように、長期避難は、今も想定外になっている。

 川内原発再稼働は、*4-4のように、鹿児島県の伊藤知事が主導権を握って強引に進めたが、蚊帳の外にされた自治体も安全だというわけではない上、周辺の大切な農林水産業もダメージを受ける可能性が高い。そのため、私は、鹿児島県知事をリコールして、正確に次のステップに進める知事に選び直すしかないと考える。

 また、*4-5のように、過酷事故時は高線量の下で誰が突入するかも深刻な問題だ。過酷事故はテロ以外にも、*4-6の火山噴火やミサイル攻撃等でも起こり、作業員の被曝線量限度を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げたからといって人の手に負えるものではない。そのため、他のクリーンな発電方法も多い中、私は、発電のために国の存続や命を懸けなければならないとは思わない。

<原発再稼働の責任者について>
*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/218064
(佐賀新聞 2015年8月11日) 川内1号機が臨界、エネルギー政策、原発回帰
 九州電力は11日、川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉を起動し再稼働させた。核分裂反応が安定的に持続する「臨界」に同日深夜に達し、14日に発電と送電を開始する。国内の全ての原発が停止した「原発ゼロ」状態は終わり、日本のエネルギー政策は原発に回帰。「核のごみ」問題など課題が山積し、世論の反対も根強い中、安倍政権は新規制基準に適合した原発の再稼働を進める方針だ。電力業界や経済界は「大きな一歩が踏み出された」(経団連の榊原定征会長)と歓迎。一方、国会前や川内原発前では市民団体が「福島の事故を忘れるな」などと訴える抗議集会を開いた。

*1-2:http://qbiz.jp/article/68867/1/
(西日本新聞 2015年8月14日) 【原発が動いた日〜川内1号機再稼動】(下)核のごみ
●限界迫る“行き場”探し
 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉が起動し、3時間後の同市役所。記者会見の席で、原発から出る「核のごみ」の処分にめどが立っていないことを問われた岩切秀雄市長(73)は予防線を張った。「(原発の)リスクは全国で公平に負うべきだ」。国が責任を持ち、立地自治体以外に最終処分場を造れとの意思表示だ。原発関係者は「処分場」と聞くと、フィンランドを思い浮かべる。世界で最も核のごみへの準備が進む同国では、経済的利益がある原発新設と引き換えに、地元が処分場を受け入れた。同県では、伊藤祐一郎知事(67)も地元建設には一貫して反対。九電玄海原発がある佐賀県玄海町の岸本英雄町長(62)も引き受ける考えがない。処分場の用地選定は、福島第1原発事故の前でさえ進まなかった難事業。原発への拒否反応が広まる中、予定地を探すことは可能なのか。
   ◇    ◇
 京都教育大(京都市)で9日まであった日本エネルギー環境教育学会で、経済産業省名のペーパーが参加者に配られた。「処分地の選定調査にも着手できていない状況」を反省しつつ、最終処分問題を授業で扱ってくれる学校には、教材提供や講師派遣で支援するとの文面だ。処分事業は立地調査から埋め終えるまで100年以上かかり、推進には将来世代の理解が不可欠。一部小中学校で試験的に取り入れられるようになったのはここ1、2年にすぎず、政府が原発回帰へとかじを切った今、将来世代教育は待ったなしの課題だ。同大には核のごみの処分計画を紹介する、経産省認可法人の展示車が乗り入れていた。見学を終えた和歌山市の高校3年中井仁さん(17)が首をかしげる。「処分場がないのに、再稼働で核のごみが増えるのはどうなんでしょう。結局、僕ら世代の負担になる」
   ◇    ◇
 お盆に入った13日、再稼働当日に反対派であふれていた川内原発のゲート前は静まりかえっていた。
 川内2号機も動けば、九電は本年度決算の黒字化が見える。原子力規制委員会で審査が進む玄海原発3、4号機も再稼働すれば、経営のV字回復は確実。ただ、使用済み核燃料を再処理してウランなどを再利用する核燃料サイクル政策は、再処理工場(青森県六ケ所村)稼働にめどがつかない。行き場のない核のごみは原発敷地内にたまり続け、川内で10年、玄海だと4年の運転で貯蔵プールは限界に達し、原発は動かせなくなる。川内1号機は14日、発送電を開始する予定。核のごみ問題の解決なしに10年後の安定運転は見込めない。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911199.html
(朝日新聞社説 2015年8月12日) 原発再稼働 川内をひな型にするな
 福島第一原発事故を契機に改められた原子力規制委員会の新しい規制基準に合格した第1号でもある。政府は川内を皮切りに、規制委の審査をパスした原発はすべて動かす方針だ。しかし、今回の再稼働の決定過程には問題が多い。火山の大規模噴火について規制委の審査には疑問が投げかけられたままだ。避難計画も不備が指摘され、鹿児島県民の半数以上が再稼働に反対とする世論調査もある。誰の判断と責任で再稼働が決まったのか、あいまいだ。こうした疑問や問題、さらには民意を置き去りにした見切り発車の再稼働は認められない。川内の決め方をひな型として今後も再稼働を決めていくこと、なし崩しで原発依存に戻すことには反対である。
■消えるベースロード
 今回の再稼働に先立って、政府は2030年時点の電源構成目標を決定し、原発の比率を20~22%という水準においた。新たに原発をつくるか、相当数の老朽原発の寿命を延ばさないと達成できない数字だ。関西電力の八木誠社長(電気事業連合会会長)は先月末の会見で「(建設中の3基を含む)46基の原発を相当数稼働していく必要がある数字だと理解している」と語った。国と電力会社は原発回帰を既定路線にしようとしている。原発の位置づけは「ベースロード電源」だ。「発電コストが安く、出力が安定しているので昼夜を問わず運転を続ける電源」だという。しかし、先進国ではベースロードという概念自体が消えつつある。風力や太陽光などの再生可能エネルギーをできるだけ受け入れ、原発や火力発電は、再エネによる発電が少ないときの調整弁へと役割を変えている。こうした運用を可能にしているのが、電力改革だ。欧州では送電部門を発電部門から分離・独立させ、一元的に管理・運用している。天候に左右されがちな再エネも、精緻(せいち)な天気予報に基づいて広域的に融通させることで、需要に見合うようにしている。今後は、変動する電力需要にあわせて柔軟に供給をコントロールする技術が世界の電力ビジネスのカギになると見られている。日本も、遅まきながら電力改革に着手した。今国会で仕上げとなる法律も成立した。2020年までに3段階で改革を進める。再エネを含めた多様な電源やサービスが公正な条件のもとで競い合い、消費者が選んでいく。そんなエネルギー社会に変わることが期待されている。
■割に合わない電源に
 原発を支えてきた地域独占や、経費をそのまま消費者に転嫁する料金制度もなくなる。「安い」とされてきた原発だが近年、建設や運営にかかるコストは世界的に上昇の一途だ。世界有数の原発メーカーであるフランスのアレバは新設原発のコストが膨らんで経営が行き詰まり、政府が救済に入った。不正会計に揺れる東芝も、強化してきた原子力部門が経営の重荷になりつつある。国内の電力各社は追加の安全対策に2・4兆円を見込む。今後も新しい対策が出るたびに追加投資を迫られるだろう。廃棄物の処理や立地のための交付金制度、事故時の賠償金などを積み上げていくと、原発は「割に合わない」電源であり、新しい電力システムの中では成り立たない事業であることが見えてくる。何より、国民の過半数が「原発を使わなくてすむ社会」を望んでいる。
■再エネ築く覚悟を
 政府がいま取り組むべきは、再稼働を重ねて原発を主軸に戻していくことではない。一時的に原発に頼るとしても、老朽原発や安全面に疑問符がつく原発から優先的に廃炉にすると同時に、再エネを育てていくことである。自然環境から見て、九州は最適地の一つだ。この間、再エネの固定価格での買い取り制度が始まり、地域の特性を生かした「ご当地電力」が各地に誕生した。太陽光発電に偏っている問題や、買い取り価格を見直す課題はあるが、自給できて温暖化防止にも役立つ電源を伸ばそうという機運は、着実に育っている。当面は支援が必要だが、送電網への接続といったインフラが整って普及すれば、今より安くて持続的な電源となる可能性が高い。もちろん、再エネを主軸とした分散型エネルギー社会を築くには、時間もかかるし、曲折もあるだろう。国民の覚悟もいる。高い電気料金を受け入れなければならない時期があるかもしれない。それでも、福島での事故で、私たちは原発の怖さを知った。新しいエネルギー社会に向かう原点はそこにある。

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/218184
(佐賀新聞 2015年8月12日) [解説]川内原発再稼働 電力代替進み必要揺らぐ
 九州電力川内原発1号機が再稼働し、東京電力福島第1原発事故から4年5カ月で日本は原発活用路線に戻った。政府と電力業界は、電力の安定供給や燃料コストの観点から原発の再稼働が必要だと主張するが、その背景説明は説得力を失いつつある。東日本大震災後、東電管内で計画停電が実施されるなど電力供給体制のもろさが露呈し、国民の間に電力不足への不安が広がった。しかし原発が長期停止する間に火力発電や、太陽光を中心とした再生可能エネルギーによる代替が進んだことに加え省エネの定着もあり供給力は着実に回復。電力需要が急増する夏を震災後4回乗り越え、記録的な猛暑が続く今年も需給は逼迫(ひっぱく)していない。昨年夏ごろまで1バレル=100ドル程度と高値で推移していた原油価格も50ドルを下回る水準にまで下落し、電力各社の収支は大幅に改善した。多くの国民の反対を振り切り再稼働を急ぐ切迫した事情は見あたらない。政府が再稼働の可否判断の根拠とする新規制基準は、厳格化されたとはいえ最低限の安全確保策を求めているにすぎず、事故のリスクが消えたわけではない。

<原発再稼働の受益者について>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911218.html
(朝日新聞 2015年8月12日) 九電、赤字脱却図る 再値上げ見送りへ 川内再稼働
 九州電力川内原発1号機が再稼働した。九電は再稼働を業績回復の「切り札」と期待する。これまでは、原発停止でコストが高い火力発電の割合が増え、4年連続の赤字。再稼働が順調に進んで黒字が視野に入れば、九電は電気料金の再値上げは見送る方向だ。九電幹部は11日夜、「これまで崖っぷちだったが、新たなスタートラインに立てた」と再稼働による収支改善に期待を寄せた。他の電力会社からはねぎらいの連絡があったという。2011年の東日本大震災まで、九電の発電量の4割は原発が占めた。比較的コストが安いとされる原発を推進したためだが、震災後状況は一変した。11年12月までに管内の全原発6基が停止。代わりに火力発電を多く稼働し、燃料費がふくらんだ。11~14年度の経常損失の累計は7千億円超。10年度に1・1兆円あった純資産は、14年度は半分以下の約4500億円に減った。13年春に電気料金の抜本値上げに踏み切ったが、川内、玄海の各原発の早期稼働を前提にしていた。しかし再稼働が遅れ、コスト増を値上げでカバーできずに赤字が続いた。九電は川内原発の再稼働が今夏から遅れれば、電気料金の再値上げが必要とみていた。しかし、川内1号機が再稼働し、2号機も10月中旬の再稼働が視野に入りつつある。九電によると、川内1、2号機が動けば、月に計150億円の収支改善効果があるという。再稼働が順調に進めば、今後の赤字縮小は確実視される。「再稼働したのに値上げ、というのは理解されない」(幹部)として、再値上げは見送られる公算が大きい。経営改善のための再稼働を強調する九電だが、「原発ゼロ」でも値上げやコスト削減で他電力は黒字化が進む。14年度決算では、10電力のうち九電と関西電力、北海道電力を除く7電力が経常黒字を確保した。九電も、今年の4~6月期決算は211億円の経常黒字だった。4~6月期としては5年ぶりの黒字だ。原油価格の下落で燃料コストが下がったことが大きい。
■収益改善、他社も期待
 再稼働を収支改善につなげたいという思いは他の電力も同じだ。震災後の赤字続きで失われた「体力」を取り戻す狙いがある。東京電力は、再稼働に向けた審査が進む柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)が両方動くと、利益が月に160億~280億円アップすると見込んでいる。再稼働すれば1年間で利益を数千億円上積みできる計算だ。足元では黒字を確保しているものの、福島第一原発事故の賠償や廃炉などに巨額の費用がかかる。国の支援を受けながら経営を続けている状況で、こうした事故対応の支払いを、原発再稼働によって埋め合わせたいという本音もある。九電と並んで原発への依存度が高かった関西電力。高浜原発3、4号機(福井県)と大飯原発3、4号機(同)が再稼働すると、月に計約300億円の収支改善効果があるという。電気事業連合会の八木誠会長(関電社長)は11日に出した談話で、川内原発の再稼働は「大きな節目の一つ」とし、他の原発も「一日も早い再稼働を目指す」との考えを示した。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/218225 (佐賀新聞 2015年08月12日) 佐賀県内経済界「現実的選択」と歓迎 地元は脱原発依存模索 川内原発再稼働
 原発停止に伴う電気料金の値上げに苦しむ佐賀県内の経済界からは「大きな一歩」と再稼働に歓迎の声が上がった。玄海3、4号機の再稼働にも期待を寄せる一方、立地地域の商工会トップは原発の増設は「非現実的」として、原発だけに頼らない地域経済を模索する必要性を強調した。「やっとこぎ着けることができた」。2年前から早期再稼働を県に要請してきた県商工会議所連合会の井田出海会長は安堵(あんど)の表情を浮かべた。反対世論は根強いが、「万が一にも備えた基準をクリアしたと考えている。感情論ではなく、現実的な選択が日本の経済を支える」と強調した。再稼働による電気料金の値下げ効果について、「大いに期待したいが、川内だけでは不十分」と玄海原発の早期再稼働に期待した。一方、玄海1号機は廃炉が決まり、九電も巨額の累積赤字を抱える。玄海町や隣接地域の事業者でつくる唐津上場商工会の古賀和裕会長は「原発が地元経済を支えてきた側面はある」と再稼働に理解を示しながらも、「今後は原発作業員や国の交付金が減り、九電も経費抑制に動く。停止前の状況には戻らない」と原発依存からの脱却を訴えた。

<原発事故の責任>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911308.html (朝日新聞 2015年8月12日) 業界の無責任体質、指摘し続ける 福島原発事故で避難の原電元幹部 川内再稼働
 11日に再稼働した九州電力川内原発の前には、全国から反対する市民が集まった。一方、電力大消費地の東京ではかつての脱原発のうねりは消えつつある。事故の記憶は、もう遠のいたのか。福島で避難を続けるかつての原発推進者は、なし崩しでの原発回帰に危機感を募らせる。「事故の想定も避難計画も不十分。こんな状態でよくも再稼働できるものだ」。日本原子力発電元理事の北村俊郎さん(70)は、ため息をついた。今回の再稼働は、東京電力が15・7メートルの津波を試算しながら福島第一原発の対策を怠った態度と重なる。「政権も根拠なく『世界一の規制基準』と説明している。安全神話にすがっている証拠だ」。国内で初めて原発を動かした原電で人事部長や社長室長を歴任。退職後は業界団体の日本原子力産業協会の参事を務めた。原子力業界の中枢に40年。その体質も問題点も知り尽くす。推進してきたその原発が起こした大事故で、家を追われた15万人の1人になった。15年前、福島県富岡町をついのすみかに選んだ。温暖で電源三法交付金で行政サービスが充実しているのが魅力だった。震災翌日に避難した。車に積み込んだのは位牌(いはい)と数枚の衣類。「どのくらい避難するの」と妻に問われ「せいぜい2、3日だよ」と答えた。県内の避難所を転々とし、現在は須賀川市の借り上げ住宅に暮らす。帰還困難区域にある自宅に戻れるのか。先月末、一時帰宅すると、雑草だらけの庭の所々に、イノシシが掘り返した穴が開いていた。富岡町にある福島第二原発は、県議会や地元市町村が廃炉を求めているが、東電は再稼働の可能性を否定しない。世論調査で反対が多数でも、政権は再稼働を推し進める。「安保法案の進め方と同じ。国民を甘く見ている」。一方、かつての推進者として、自責の念が消えることはない。事故前、住民説明会で重大事故の可能性を聞かれ、「1万年に1回」と答えていた。「もし明日起きたら」。そう返されると、「あくまで確率論。大丈夫」とごまかした。事故後、業界誌などに投稿を続けている。安全を危うくする下請け・孫請けの発注構造を「無責任体質が変わっていない」と指摘。「原発は経済的にも割に合わない」と切り込む。原産協会は震災翌年に辞めた。「批判を受け付けない業界の閉鎖性が、福島の事故につながった。内部にいた者として、問題を指摘し続ける。そうすることで私は責任を取るしかない」。事故からわずか4年余りで国民の関心が薄れていることに焦燥感を抱く。政権も復興や事故の収束より東京五輪に重点を移しているように映る。安倍首相は招致の演説で「状況は制御できている」と言い切り、福島を方便にした。「浜は祭りの/ようだけど/海のなかでは/何万の/鰮(いわし)のとむらい/するだろう」。金子みすゞの詩が、東京と福島の対比の風景として頭から離れない。
■「命を軽視」「福島を忘れるな」 川内原発前で抗議
 「九電は命を軽んじている」「福島を忘れるな」。川内原発の正門前には、11日、約200人が集まった。再稼働した午前10時半、抗議の声はひときわ大きくなった。周辺では200人以上の警察官や警備員が警戒。緊張感に包まれた。鹿児島県姶良(あいら)市の公務員女性(48)は高校生と中学生の娘と一緒に参加した。「放射能が漏れれば命が脅かされる。私たちの声が無視されるなんて不合理だ」。埼玉県富士見市の大学生梶原康生さん(20)は、原発事故があった福島、米軍基地問題で揺れる沖縄を訪ね歩き、住民の声を聞いてきた。初めて川内原発を訪れ、「基地問題も原発も根っこは同じ。国家権力の横暴を感じる」。海外メディアも注目した。台湾のテレビ局記者、胡慕情さん(32)は「欧米では再生可能エネルギーへの転換が進んでいるのに、日本はその逆を行こうとしている」と話した。
■立地自治体「振興のため必要」 大都市デモはかつての熱気欠く
 原発の足元からは、早くも歓迎ムードが漂う。川内原発の地元、鹿児島県薩摩川内市内で宿泊施設を経営する40代の男性は「見学客も全国から来る。期待します」。同市の岩切秀雄市長は「安全であれば原発は地域振興のために必要だと思う」と語った。全国各地の原発立地自治体でも、再稼働に弾みがつくとの期待の声が続いた。関西電力高浜原発がある福井県高浜町の野瀬豊町長は「原発の一つが現実に動いたことを評価したい」、Jパワー大間原発の建設が進む青森県大間町の金沢満春町長も「うれしく思います」とコメントした。一方、脱原発を目指す市民らは、電力消費地の関心が薄れていると危機感を抱く。国会の周辺では11日、反対デモがあったが、参加者は午前中に数十人、夜も数百人。沿道が埋め尽くされた3年前の熱気はない。3カ月ぶりに参加した東京都板橋区の主婦(62)は「最近は安保関連法案の反対運動が忙しく、原発まで手が回らない」。同足立区の星野芳久さん(65)は「のど元過ぎれば熱さ忘れる、という無責任さがあるのかも」と話す。2012年に都内で原発の是非を問う住民投票実施の署名集めをしたジャーナリストの今井一さん(61)は「巨額の交付金で原発を地方に押しつけ、大都市が電力を消費する構図が変わらない限り、国民の多くは問題を我がこととして考えられない」と指摘する。当時は約32万人の署名を集めたが、「今やったら5万人くらいでは」と今井さん。ただ、再稼働反対が多数である状況は以前から変わらない。「その意思を政策に映す回路さえ作れば、脱原発は実現できる」

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150812&ng=DGKKZO90440820S5A810C1MM8000 (日経新聞 2015.8.12) 国は責任とる覚悟示せ
 福島第1原子力発電所の事故から川内原発の再稼働まで約4年半。何が変わったのか。原子力はかつてエネルギー安全保障や安価な電力供給、温暖化対策のどの面でも他の電源に比べ優位だと考えられていた。2010年のエネルギー基本計画が電力の半分以上を原子力で賄うとしたのはその表れだ。福島原発の事故で原子力は「特等席」から滑り落ちた。7月に政府が決めたエネルギー長期需給見通しは30年時点の原子力比率を20~22%と見込んだ。再生可能エネルギーや火力と並び、電源の一選択肢にとどまる。原発は安全規制の厳格化でいつ、幾つが稼働するのか見通せなくなった。関西電力などが古い原発5基の廃止を決めたが、新増設に関しては政府は「脱原発」を求める世論を前に、議論すら封じている。自由化される電力市場で、原発の初期投資の巨大さは大きな経営リスクとなる。原子力が切り札の時代は終わり、多様な電源の組み合わせで日本のエネルギー戦略を考える時代になった。大きな転換といえる。ただ原発への依存度の低下とは逆に、原発への政府の関与は高まる。重大事故時の賠償や使用済み核燃料の処分などは民間企業や市場だけに委ねられないことがはっきりしてきた。原子力は「国策民営」といわれてきたが、国策の度合いが強まる。核物質を扱う点で再生エネや火力と本質的な違いがあるからだ。そこに原子力特有のしがらみがあり、わかりにくさがある。国策強化を福島原発事故以前への回帰の兆しだとみる人も多いだろう。再稼働の節目にあたり、政府は原子力の必要性とエネルギー政策の転換を改めて国民に説明すると同時に、原子力利用に伴う最終責任を国が引き受けることを明確にすべきだろう。放射性廃棄物の処分など山積する課題解決への道筋を早期に示す必要もある。そこを欠いては再稼働しても原子力は長続きしない。

<過酷事故時の汚染範囲と汚染期間>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911328.html (朝日新聞 2015年8月12日) リスク抱え原発回帰 川内再稼働、新基準で初 避難計画、実効性課題
 九州電力川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が11日午前、再稼働した。東日本大震災後にできた新規制基準を満たす初の再稼働となり、約2年間の「原発ゼロ」は終わった。安倍政権はこの審査手続きを「ひな型」に原発の再稼働を進める方針だ。避難計画の実効性などに課題を残したまま「原発回帰」が本格化する。
■1号機、「臨界」に
 東京電力福島第一原発事故を受け、政府は独立性がより高い原子力規制委員会を設け、地震や津波対策を強化した新規制基準を2013年7月に施行した。新基準は「安全神話」の反省から、事故は起きることを前提にしている。再稼働に向けた審査でも、規制委は一定規模の事故が起こりうると想定して新基準に適合すると判断した。「絶対の安全」はなく、事故のリスクをゼロにすることはできない。再稼働を進めるということは、事故が起こりうるリスクを抱えた社会に戻ることを意味する。川内1号機の再稼働は約4年ぶり。午前10時半に原子炉内で核分裂を抑えていた制御棒32本を引き抜く作業が始まり、原子炉が起動。午後11時に核分裂反応が連続的に起こる「臨界」状態となった。九電は14日から発送電を始め、9月上旬にも営業運転に移る。2号機は10月中旬に再稼働させる方針だ。瓜生(うりう)道明社長は「安全確保を最優先に今後の工程を進める」とコメントした。菅義偉官房長官は11日の記者会見で「原子力規制委員会によって、世界でも最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認められた場合は、原発の再稼働を進める」と、安倍政権の方針を改めて示した。これまで規制委に審査を申請したのは、川内を含めて15原発の計25基。関西電力の高浜原発3、4号機(福井県)と四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)が主な審査を終えている。高浜原発は福井地裁が運転を認めない仮処分を出しているが、川内の審査や検査手続きは他の原発のモデルとなり、今後の再稼働手続きは加速する可能性がある。しかし周辺地域では、高齢者などが多い医療施設や福祉施設で住民の避難計画が十分に整っていない。防災対策などに対する原発周辺の住民の不安は解消されていない。

*4-2:http://mainichi.jp/select/news/20150812k0000e040221000c.html
(毎日新聞 2015年8月12日) 緊急時放射能予測:政府「不確実」防災基本計画から外す
 原発事故の際に放射性物質の放出量や気象条件、地形などのデータを基に放射性物質の拡散範囲や量を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)について、政府は7月、国や自治体の災害対応の基礎となる防災基本計画で住民の避難に活用しないことを決めた。「予測が不確実なため」としているが、住民避難で予測を参考にするとしてきた自治体や住民は反発している。SPEEDIは原発事故時の避難に活用すると位置づけられていたが、東京電力福島第1原発事故では予測の公表が遅れ、住民に無用の被ばくを強いたとして国が批判された。原子力規制委員会は2012年に新たな原子力防災指針を策定。原発から5キロ圏は即避難とする一方、5〜30キロ圏は屋内退避を基本とし、空間放射線量の実測値が毎時500マイクロシーベルトに達したら避難すると定めた。この時点で指針はSPEEDIを「参考にする」とし、同時期、防災基本計画も予測結果を「公開する」とした。だが、今年4月に指針からSPEEDIの記述が消え、7月には防災基本計画からも除外された。原子力規制庁幹部は「放射性物質の流れた方向が予測と異なることもあり不確実だ。実測値の基準では被ばくを完全には防げないが、世界でもスタンダードな方法だ」と説明する。国の「SPEEDI外し」に、新潟県の泉田裕彦知事は7月の中央防災会議で「被ばくが前提の避難基準では住民の理解は得られない」と訴えた。また、11日に再稼働した九州電力川内(せんだい)原発の地元、鹿児島県薩摩川内市などで開かれてきた避難計画の説明会でも、自治体はSPEEDI活用の考えを伝えていた。市内で子供3人を育てる大中美子さん(48)は「被ばくありきの避難計画では引っ越さないと子供は守れない」と国の姿勢に憤る。
◇SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)
 事故を起こした原発から送られてくる放射性物質の放出量や気象条件、地形などのデータを基に、放射性物質の拡散範囲や量、大気中の濃度などを予測するシステム。現在は原子力規制委員会が運用し、予測結果は原発の立地する周辺自治体などに送信される。1979年の米スリーマイル島原発事故をきっかけに120億円以上かけて開発され、東京電力福島第1原発事故当時は文部科学省所管の原子力安全技術センターが運用していた。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11914937.html (朝日新聞 2015年8月14日) (再稼働を問う 教訓どこへ:下)長期避難、今も想定外 福島の現実反映せず
 7日昼過ぎ、客のいないプレハブ造りの仮設商店にはテレビの音だけが響く。福島県田村市の都路地区で、地元商店主らが経営する「ど~も古道店」。東京電力福島第一原発の事故後、避難先から自宅に戻った人たちのためにつくられ、食料品や雑貨を扱う。開業から1年半近くですでに経営が行き詰まっている。原発事故の復興は国の責任で行う、と進められた目玉施策の一つだった。
■進まぬ住民帰還
 都路地区は昨年4月、原発事故に伴う避難指示を国が初めて解除した。人口約2600人の地区に戻ってきたのは5~6割。今年1月、近くに大手コンビニエンスストアができ、売り上げは6割減った。ど~もの売り上げを支えた除染作業員らを奪われ、地元客の少なさに直面している。共同経営者で古道店長の吉田光一さん(56)は中学2年の長男らと車で約50分離れた仮設住宅に避難している。店が順調なら帰還するつもりだったが「当てが外れた」と気落ちする。昨年10月、一部を除き避難指示が解除された川内村も住民が戻らない。人口約2700人のうち、帰還したのは6割。野菜工場などを誘致したが、働き手が足りない。井出茂・村商工会長(60)は「国の復興策に役場は踊らされている」と言う。7月、都路地区と川内村に、追い打ちをかけるような出来事が起きた。環境省は、汚染稲わらの焼却施設を2地域の境界に造ると決めた。都路の行政区長連合会長の吉田修一さん(60)は「避難指示が解除されても、なぜ苦労し続けなければならないのか」と嘆く。「地域を築くには何十年もかかるが、失うのは一瞬だ」。田村市の冨塚宥けい(ゆうけい)市長は2011年、朝日新聞のアンケートで答えた。アンケートでは、原発周辺自治体の首長15人に地域を維持するために住民がふるさとに戻らなければならない期限を聞いた。10人が「1年以内」と回答した。事故から4年半近く。福島では今も11万人が避難を続ける。避難者数のピークは、事故のあった11年ではなく12年(16万4千人)。避難指示区域の外でも、放射線量が下がらずに不安を募らせた母親らが、新年度にあわせて子どもを連れ自主的に避難したからだ。九州電力川内原発の再稼働を翌日に控えた10日、日本学術会議による復興シンポジウムが福島市であった。事故で悲観し自殺した人など震災関連死の認定に携わってきた今野順夫(としお)・福島大元学長は講演で言った。「原因究明もなく福島をないがしろにしたままの再稼働は、被災者の心を逆なでするものだ」
■計画「体裁だけ」
 原発が重大事故を起こせば一時避難では済まない。福島の教訓だ。しかし、国と自治体は何万人もが何年間も避難先で生活する事態を、今なお想定していない。内閣府によると、全国の原発の30キロ圏にある135市町村のうち、避難計画を作り終えたのは65%の88市町村。100万人近い人口を抱える中部電力浜岡原発(静岡県)、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)では、策定済みの市町村はゼロ。避難先を確保するめどが立たないからだ。南海トラフ巨大地震が想定される静岡県は、県外避難先を12都県に打診中だが、協議は難航している。打診された群馬県の担当者は「数万人がいつまでいるか分からないのに、避難先を決められない」という。静岡県が想定する避難期間は約1カ月。「更に延びるようなら国と協議する」(原子力安全対策課)。それ以上のことは未定だ。茨城県でも、避難対象の96万人のうち52万人が向かう県外の避難場所は、決まっていない。東海第二原発がある東海村の村上達也前村長は「真面目に検討すればするほど、避難計画など作れるはずがないとわかる。体裁を整えるだけの計画は不誠実だ」と語る。そもそも国の防災基本計画は、体育館などでの一時避難が長びいた場合の記載しかない。策定済みの市町村の避難計画も、多くは期間の記述はなく、あっても1~2週間がほとんどだ。11日に再稼働した川内原発がある鹿児島県は、国が30キロ圏の病院などに避難計画を求めているのは現実的でないとして、対象を10キロ圏に絞った。長期避難については「必要な情報や支援・サービスを提供する」などとしか定めていない。福島第一原発事故の避難行動を研究する関谷直也・東大特任准教授(災害情報学)は、各地の計画に危惧を抱く。「もう事故は起こらない。そう思っているのではないか」

*4-4:http://qbiz.jp/article/68806/1/
(西日本新聞 2015年8月13) 【原発が動いた日〜川内1号機再稼動】(中)線引き
●“地元”で差渦巻く不満
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から南へ5キロ余り。周辺自治体として最も近い、同県いちき串木野市は11日の再稼働をどう受け止めたのか。市役所で取材に応じた田畑誠一市長(75)は「エネルギー政策は国策。国が再稼働の地元同意の範囲を決めるべきだ」と語気を強めた。政府が再稼働を認める条件「地元同意」は、電力会社と立地自治体が結ぶ安全協定に基づく。法的ルールではなく、“地元”の線引きがポイントとなる。川内原発の場合、伊藤祐一郎知事(67)が主導権を握った。総務省出身で「行政のプロ」を自認する手腕を発揮し、九電が同意を得るべき自治体を県と薩摩川内市に限定した。蚊帳の外となった、いちき串木野市は過酷事故が起きた場合に最優先で避難すべき「5キロ圏」からわずかに外れるが、風向き次第で放射能被害を受ける。昨年11月、知事が再稼働に同意する直前、田畑市長は鹿児島県を訪れた宮沢洋一経済産業相を空港まで追いかけ、国主導の同意形成を求めた。だが、国は「各地で決めること」と突っぱねている。
   ◇    ◇
 原子力防災の枠組みから外れた自治体もある。川内原発から北へ38キロの熊本県水俣市。「ホームページをご活用ください」。昨年11月、原子力規制委員会からのつれない回答が、市担当者にメールで届いた。同市は30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の外だが、事故時に南隣の鹿児島県出水市から6600人の避難者を受け入れる計画に組み込まれた。そこで昨年9月、物資確保への支援などに関する要望書を近隣自治体と共同で規制委に提出。届いた回答はA4サイズの紙1枚だけ。具体的な説明がまったく書かれていなかった。西田弘志市長(56)は憤る。「国は30キロ圏の外には関心がないようだ。大事故になれば、われわれも被害者となるのに…」
   ◇    ◇
 目に見えない放射能への備えに、歴然と横たわる行政の線引き。関西電力高浜原発(福井県)の5キロ圏に入る京都府は3月、川内原発の再稼働に際し、立地自治体の意見だけが反映された理由を明確にするよう政府に要望した。「周辺の意見も聞いた上で政府が判断すべきだ」との不満の表れで、九電玄海原発から12キロの佐賀県伊万里市も立地自治体並みの安全協定の締結を求め続けている。法的ルールなき地元同意と、30キロ圏外に目を向けない原子力防災−。全国的には“地元”の定義拡大を求める声は強まっている。原発の再稼働にこぎつけながら、多くの関係者に不満と不安を残した鹿児島の「川内方式」は全国モデルになりそうにない。

*4-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11913190.html (西日本新聞 2015年8月13日) (再稼働を問う 教訓どこへ:上)高線量下、突入誰が 過酷事故訓練、飛ぶ怒号
 事故を起こした原発を止める高い放射線量下の作業をだれが担うのか。福島第一原発事故で日本が直面した難題が、再稼働によって、現実の問題として突きつけられている。「行きたくない。家族がいるんだ。電力の社員が先に行くべきだ」。今年1月、東京都三鷹市にある会議室で怒号が飛び交った。原発の安全対策のため電力会社などがつくった民間団体、原子力安全推進協会が今年から採り入れた過酷事故対策の訓練だ。原発でテロが起き、全電源を喪失。高い放射線量の現場にけが人が取り残されたという想定。救出を命じられた孫請けの若手社員が反発する。どう判断し、命令し、行動するか、参加者が自ら考える。全国の原発から集まった所長の補佐クラス20人ほどが、電力会社、下請け、孫請けの社員役になる。部屋は真っ暗。煙をたいて視界を悪くするなど事故時の混乱と緊張を再現した。一定時間を超えると線量計のアラームが鳴る。どう振る舞うかのシナリオはない。時間が迫る中、ある参加者は思わず「行ってくれ」と部下役に土下座した。
■「福島の検証を」
 福島の事故では、高い放射線量に阻まれて十分に作業できない場面が多かった。国は作業員の被曝(ひばく)線量限度を100ミリシーベルトから250ミリに特例で引き上げたが、事故の進展を食い止められなかった。反省を踏まえ、原子力規制委員会は今月5日、緊急時の被曝限度を250ミリとする法令改正を決めた。事前にルール化しておけば必要な作業が迅速にできる、との考えからだ。原発は、暴走すると手に負えなくなる核物質という脅威を内包した発電技術だ。福島第一の故吉田昌郎所長が「決死隊」と呼んだ高線量下への突入作業は、1986年4月のチェルノブイリ原発事故で現実のものになっていた。炉心の爆発や一帯での火災が起き、消火活動などで消防士ら28人が急性放射線障害などで死亡。軍が出動し、鎮火後も続いた放射性物質の大量放出を止めるのに10日かかった。極限状態の作業がなければ、世界の汚染はさらに広がっていた。日本はこの問題を深く議論してこなかった。「日本の原発では大事故は起きないから」が理由だった。福島の事故から4年余り。ようやく被曝限度引き上げという一つの答えを出した。だが、福島第一の作業員の一人は疑問を持つ。「事故のときは100ミリを超えてしまいそうだから近づけなかった。何もできなかった、ということ。250ミリで本当に事故を止められるのか。だれも福島の検証をしていない」
■限度どう判断
 7月23日の放射線審議会でも委員から質問が出た。「仮に250ミリでは事故が収束できそうもない場合はどういう判断になるのか。諦めて退避するのか」。規制委は、国際機関が勧告する「正当化原則」を使う考えだ。作業員の健康リスクと作業で得られるメリットを比べ、人命救助や広大な国土の汚染の阻止など必要性が明らかに上回るなら、被曝限度を超えてやってもらう、ということだ。田中俊一委員長は会見でこう話した。「事業者としての一つの責任とか、そういう問題になってくる」。原子力災害対策特別措置法は、事故の拡大防止は電力会社の責務と定める。だが、民間企業にどこまでやれるのか。福島の事故では自衛隊や警察、消防も現場に入り、米軍は専門部隊を日本の基地に派遣した。今も福島の検証を独自に続ける新潟県。泉田裕彦知事は昨年11月、高線量下での作業に関する国への要請の中で、外国の事例も参考に、自衛隊の任務に事故対応を追加するなど国が指揮する部隊の設置を求めた。一方、福島第一に放水した部隊を現地で指揮した元東京消防庁警防部長の佐藤康雄さんは「福島の現場に入ったのは特別だった。本来、事故収束は事業者の責任。電力業界が事故時に助け合う組織をつくるべきだ」。
■「覚悟はあるか」
 過酷事故対策の訓練に取り組む原子力安全推進協会は、原発の所長を集め、こんなテーマで討論した。「部下の命を左右する命令を出す覚悟はあるか」。協会の久郷(くごう)明秀理事は言う。「高線量下の作業はある意味、弾が飛んでくる戦争と一緒。自分の犠牲でみんなを守ろうという人も、そこまではできない人もいる。家族や上官のことを思う中で個人で決断せざるを得ない」。九州電力川内原発の再稼働で、日本は再び事故が起きうるリスクを抱えた。次に起きたとき、最後に事故を止めるのはだれか。答えはまだはっきりしない。

*4-6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911275.html (朝日新聞 2015年8月12日) 安全の確保、どこまで 火山対策に専門家異論・複数の設備未完成 川内原発再稼働
 新規制基準に適合するとして再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県)。過酷事故や自然災害への対策は厳しくなったが、火山対策では専門家から異論が出た。設置が義務づけられたものの、猶予期間中でまだできていない設備もある。川内原発の160キロ圏には、活発な活動を繰り返す桜島や阿蘇など39の火山がある。地質調査から、過去に巨大噴火の火砕流が原発近くまで届いていたことも分かった。火砕流は、原発の設計で対応することができない災害にあたる。九電は、稼働期間中に巨大噴火が起こる可能性は十分低く、巨大噴火につながりそうな変化を観測すれば運転を止めて核燃料を運び出すとしている。しかし、火山学者からは「前兆が捉えられるとは限らない」と異論が相次いだ。核燃料の搬出先も未定だ。地震対策で九電は、揺れの想定を引き上げ、規制委も重要施設の直下に活断層がないと認めた。だが、福井地裁は関西電力高浜原発3、4号機の運転を認めない仮処分で、新基準の厳しさそのものを疑問視した。設置が猶予され、未完成のまま再稼働した設備は複数ある。その一つが「フィルター付きベント」だ。東京電力福島第一原発事故では、格納容器が圧力で壊れるのを防ぐため、内部の気体を放出するベントが実施された。フィルターを通すことで、排気に含まれる放射性物質を減らす。福島第一原発と同じ沸騰水型炉では再稼働に必須だが、川内原発などの加圧水型炉は、格納容器が大きいとして猶予されている。九電は来年度に設置する予定だ。事故対策の拠点となる緊急時対策所は当面、別施設で代替する。航空機テロなどへの対策として、電源やポンプを別に備えておく特定重大事故等対処施設も2018年まで猶予されている。


PS(2015/8/15追加): *5-1のように、経産省が原発地元の自治体に渡す交付金も、国民が税金で支払っている原発のコストだ。しかし、原発地元の自治体は、このような後ろ向きの交付金よりも、次のステップに進んで将来は交付金なしでもやっていける準備をするための脱原発促進交付金による支援と各省庁の知恵に依るサポートの方が有り難い。 
 また、*5-2のように、「原発ゼロ」でも電力の需給は安定していたため、原発を再稼働させる意味はなかった。電力各社が老朽化した火力発電所を使用して供給力を高めていたのなら、それを地熱発電や分散型の太陽光発電などに変更すればよく、その方が地球と日本の両方のためになるのだ。

*5-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS14H36_U5A810C1EE8000/
(日経新聞 2015/8/15) 原発再稼働、交付金手厚く 送電開始の川内が第1号
 経済産業省は原発が再稼働した自治体への交付金を手厚くする。九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が14日に発送電を開始した薩摩川内市などを第1号とし、稼働実績に基づく交付金に加え、再稼働に伴う新たな交付金を上乗せする。一方、原発停止が続く立地自治体は今より減らす方向で検討している。川内1号機は14日から家庭や企業に電気を送り始めた。九電は今月下旬にフル出力とし、9月上旬から本格的な営業運転を始める方針だ。九電は今夏、中国電力などから電気の融通を受けて供給余力を示す予備率を3.0%確保する計画だった。再稼働で5.1%に改善し、他社から融通を受ける必要も無くなる。川内1号機の再稼働に伴い、立地地域に配る交付金には差をつける。政府は「電源立地地域対策交付金」を稼働実績に応じて配っているが、東京電力福島第1原発事故以降は、原発の停止中も稼働率を一律81%とみなして支給していた。16年度以降は算定方法を見直し、再稼働した自治体は稼働実績に応じて配り、原発が稼働しない場合、稼働率の想定を70%前後に減らす方向で検討している。経産省は15年度予算で、原発を再稼働したときなどに立地自治体に配る15億円の交付金を新設した。再稼働後の支援を手厚くすることで地元自治体の理解を得やすくする狙いがある。川内原発がある薩摩川内市の地域対策交付金は15年度で14億6653万円。16年度は8月に再稼働した川内1号機の稼働実績を考慮して決めるが、新たな交付金を加えれば、当面は交付金の総額が増えることになる。一方、原発が稼働しない自治体は稼働率の想定が減る影響で、交付金が減ることになる。交付金への依存が強い自治体からは懸念の声が出ている。

*5-2:http://qbiz.jp/article/68916/1/
(西日本新聞 2015年8月15日) 【川内原発再稼働】「原発ゼロ」でも需給安定、再稼働の意味は
 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市、出力89万キロワット)で14日に発電と送電が始まったことで、西日本と中日本の電力需給状況は大きく改善に向かう。ただ「原発ゼロ」だったこれまでも全国的に需給は逼迫(ひっぱく)していない。供給余力がさらに増すことで、原発再稼働への疑問の声が高まりそうだ。九電や関西電力、中部電力など西日本と中日本の電力6社は、周波数が同じ60ヘルツ。今夏は九電と関電が、中部電や中国電力などから電力の融通を受けており、6社間でやりくりして電力の安定供給に努めている。西日本、中日本全体でみると、電力需給の余力を示す「予備率」の想定は、川内1号機が稼働する前で4・5%。安定供給に最低限必要とされる3%を上回っていたが、川内1号機がフル出力になれば、5・5%程度まで高まる。川内1号機の出力が高まるにつれて、九電への融通は不要になる。中部電や中国電などは、予備率が3%と低い関電への融通を手厚くすることができ、電力不足の危機は遠ざかる。そもそも「原発ゼロ」でも需給は安定していた。6社とも8月3〜7日にかけて今夏の最大電力需要を記録しているが、省エネへの取り組みや太陽光発電が普及したこともあり、最大供給力に対して10〜20%程度の余力がある状況だ。周波数が50ヘルツの東日本(東京、東北、北海道電力管内)でも、全体の予備率は9・7%。原発がなくても十分な余力を確保しているといえる。ただ電力各社は、老朽化した火力発電所の補修を先送りするなどして供給力を高めており「需給は予断を許さない状況で、安定供給へ原発の再稼働が必要なことに変わりはない」(中国電力)などと主張している。


PS(2015年8月16日追加): 桜島が全島避難になっても、川内原発に火砕流が達する可能性は小さいと思うが、桜島は、*6-1のように、怒りを溜めて爆発することで警告を発しているように見える。また、*6-2のように、原発再稼働への反対は全体で55%だが、女性の方が反対割合が高いのは、①自分も健康被害を男性より早く受けること ②食品の安全性を考えること ③子どもはじめ家族の健康を考えていること 等が理由だ。そのため、ここは、男性よりも反対割合の高い女性の意見を重視すべきだ。

    
2015.5.15東京新聞           2015.8.16西日本新聞

*6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/219474
(佐賀新聞 2015年8月16日) 桜島の噴火切迫、厳戒続く、鹿児島市が対応協議
 鹿児島市では16日、桜島の噴火警戒レベルが4(避難準備)に引き上げられたのを受け、厳戒態勢が続いた。市は午前、警戒本部会議を開き、火山活動や避難所の現状、今後の対応などを協議した。16日は午前8時までに有感地震が発生していないことや、「爆発的噴火が切迫している状況は変わらない」との京都大防災研究所の報告が伝えられた。市は島の有村町の全域、古里町と黒神町の一部の計51世帯77人に出した避難勧告を維持。山腹の噴火や大きな火砕流の恐れがある場合、全島避難に切り替える方針だ。避難対象の住民は島内に開設された避難所で不安な一夜を過ごした。

*6-2:http://qbiz.jp/article/68949/1/
(西日本新聞 2015年8月16日) 原発再稼働、反対は55% 世論調査
 共同通信社の世論調査では、停止中の原発再稼働への反対が55.3%で、賛成の36.9%を上回った。反対は7月の前回調査に比べ1.4ポイントの微減。政府は、原子力規制委員会の新規制基準に基づく審査に合格した原発を再稼働させる方針だが、九州電力川内原発(鹿児島県)1号機の再稼働後も、依然として根強い慎重姿勢が浮き彫りになった。政党別では、自民党支持層の57.1%が賛成と答え、反対は35.4%だった。これに対し、民主党支持層では反対70.0%、賛成24.1%。与党の公明党支持層でも反対が54.8%で、賛成の41.4%を上回った。反対は維新の党支持層で59.2%、共産党支持層では91.2%に達した。男女別では、女性は反対が62.0%で、賛成は27.9%。男性は反対48.1%、賛成46.6%で意見が二分した。地域別に見ると、反対が最も多いのは四国の60.1%。賛成が反対より多かったのは近畿のみだった。川内原発がある九州は反対が52.2%で、賛成は39.9%だった。


PS(2015年8月17日追加):国民主権の民主主義社会では、国民の意志決定で政策が決まるため、メディアが正確な情報を流すことは必要不可欠であり、メディアの情報の流し方一つで政策も左右される。そのため、①国民がフクイチ事故後に散々被曝させられ ②政府が2030年時点の電源構成で原発をベースロード電源として原発比率20~22%と決め ③川内原発が再稼働した 後で真相を伝えても、(伝えないよりは良いが)遅すぎる。それではメディアの情報が信用できず、これが「メディアの自殺」と言われる理由だ。つまり、適時に真相を伝えることが、本来のメディアの使命であり社会的責任なのだ。
 また、現行憲法下で大本営発表をそのまま書くのは意気地がなさすぎ、外国の報道や放射能測定値を参考にしたり、いろいろな所に取材に行って線量を測ったり話を聞いたりすれば真相はわかる筈で、それが記者の実力と勇気であって言論の自由や表現の自由で守られる価値のある報道だ。私は取材に行けなくても自分が不利になっても、2011年7月25日、27日くらいから、このブログに原発事故に関して真実だと思うことを記載している。

*7:http://qbiz.jp/article/68782/1/
(西日本新聞 2015年8月17日) 原発再稼働、今度こそ「真相」を
 会見の合間を見計らって、記者たちは、航空機のチケットをパソコンで予約していた。2011年3月。東京で日銀を担当していた私は、東京電力福島第1原発事故の取材に加わった。霞ケ関の「原子力安全・保安院」(現在は原子力規制委員会)の会見は、昼夜を問わず、断続的に行われ、その度に、100人近い報道陣が集まった。記者たちの「予約」は、いわば保険のようなもの。東京から避難しなければならなくなったときに備え、「退路」を確保した。当時、ネット上では「福島原発はメルトダウン(炉心溶融)した」「放射性物質をまき散らしている」とさんざん書き込まれ、羽田空港は、自主避難の人たちであふれ返った。会見で質問は「メルトダウン」に集中した。保安院の審議官は「燃料棒の損傷の疑い」と繰り返すばかり。当時の枝野幸男官房長官も「メルトダウンはしていない」「直ちに健康への影響はない」と強調し、新聞やテレビはそのまま「発表」を垂れ流した。しかし、実際は、福島第1原発の1〜3号機すべてでメルトダウンが起きていた。最も早い1号機では地震から約5時間後、原子炉圧力容器が破損していたという。15年8月11日。東日本大震災からちょうど4年5カ月後、九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働した。震災後に作った新しい規制基準を満たす、初の再稼働だ。「安全神話」の反省から、新基準は事故が起きることを前提にした。菅義偉官房長官は11日の会見で「原子力規制委員会によって、世界でも最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認められた場合は、原発の再稼働を進める」と、原発回帰を鮮明にした。だが、安全に「絶対」はない。規制委の田中俊一委員長は「絶対安全とは申し上げない」と断言。再稼働後、私たちは、事故が起きるかも知れない危険性と隣り合わせとなる。福島第1原発事故では、報道機関は、原発政策を進めてきた国の「発表」を伝えてきた。それでも記者たちが、航空機のチケットを予約していたのは、事故の真相をつかめず、不安に襲われたためだ。私もその1人だった。今も、じくじたる思いがある。「震災前」に戻った日本のエネルギー政策。国や電力会社の「発表」は本当なのか―。今度こそ、真相を伝えていきたい。


PS(2015年8月26日追加): *8-1のように、佐賀県、玄海町、九電間で40年前に結ばれた協定では、原発地元は立地自治体のみとなっているが、過酷事故時には、*8-2のように、近隣住民に被害があるのみならず農林水産業の生産物も汚染されて輸出に影響が出る(実際には、韓国だけでなく多くの国が輸入禁止や制限を行っており、ここで韓国だけをWTOに提訴するのはおかしい)。さらに後で書くように、本当は日本国民が食べている食品の安全性も疑問であり、今では「日本産」は安全ブランドではなくなったのである。つまり、原発事故の被害を受けるのは多くの国民であるため、エネルギーへの原発使用には、それだけをテーマとした全国民の国民投票が必要だ。

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/222871
(佐賀新聞 2015年8月26日) 唐津市長、現協定で「原発の地元権利」遂行と強調
 唐津市の坂井俊之市長は25日の定例会見で、玄海原発(東松浦郡玄海町)の「地元」の定義について、「準立地自治体と言ってはいるが、われわれは地元という認識を持っている。九電と締結した安全協定で実質的な権利は得ており、その権利を遂行するだけ」と述べた。今後の再稼働や廃炉に対して現在の協定の枠組みで対応していくことをあらためて強調した。唐津市は福島第1原発事故後の2012年10月、九電と1対1で安全協定を結んでいる。坂井市長は「県と玄海町、九電の間で40年前に結ばれた協定に入ろうと努力したが、なかなか難しかった」と振り返った上で、九電と2年議論して作った協定に関し「事前了解という言葉はないが、九電から説明を受け、こちらから意見を述べるという実質的な権利は取っている」と語った。原発をめぐっては「立地」と「隣接地」の差は大きく、鹿児島県の川内原発再稼働の際は「地元同意」の対象は県と立地の薩摩川内市に限定された。市のほぼ全域が玄海原発の30キロ圏に入る伊万里市の塚部芳和市長は福島第1原発事故後、「立地自治体並みの安全協定」を主張し続けている。

*8-2:http://qbiz.jp/article/69276/1/
(西日本新聞 2015年8月21日) 政府、WTOに韓国提訴 原発事故で水産物輸入規制
 政府は20日、韓国が東京電力福島第1原発事故を理由に、日本からの水産物輸入を規制しているのは不当な差別だとして、世界貿易機関(WTO)に提訴した。福島第1原発事故を受けた輸入規制で政府が他国を提訴するのは初めて。2国間の協議で解決できなかったため、紛争を処理する小委員会(パネル)の設置を要請した。9月までに開かれるWTOの紛争解決機関の定例会合でパネルの設置が認められる見通し。政府は提訴後も、韓国側に規制を撤廃するよう働き掛けを続ける方針。菅義偉官房長官は20日の記者会見で「WTOの結論を待つことなく、規制を早く撤廃すべきだ」と指摘した。韓国は2011年3月の原発事故を受けて、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県のヤマメやスズキといった一部水産物の輸入を禁止した。13年9月には汚染水漏れを理由に、禁止対象を8県の全水産物に拡大するなど規制を強化した。日本政府はことし5月にWTO協定に基づき、2国間協議の開催を要請した。6月の協議では、日本が「科学的根拠がなく、WTO協定に違反している」として規制撤廃を求めたが、韓国政府が反論し、対立が続いていた。協議開催の要請から60日以内に決着しなければ、パネル設置を要請できる仕組みだ。


PS(2015年8月27日追加):写真のように、原発の温排水により瀬戸内海の海水温を上げて漁獲高を減少させ、本来は恵まれている海の価値を減じながら、政府・自治体が資源管理のみを強調しているのは適切でなく、もったいないことである。さらに、*9のように、原発で過酷事故が起きて陸路が使えない場合には、佐田岬半島の住民約5千人は対岸の大分県内18市町村に海路で避難する予定などとしているが、どのくらいの期間、陸海の汚染が続いて漁ができず、平常の生活に戻れないかの考察がない。

    
瀬戸内海の漁獲高推移  資源管理         漁          海中の様子
  
*9:http://qbiz.jp/article/69642/1/
(西日本新聞 2015年8月27日) 大分県に5千人避難も 伊方原発の事故時、国など対応策
 原子力規制委員会が新規制基準に適合していると判断した四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働を控え、関係省庁と愛媛、山口、大分の3県でつくる伊方地域原子力防災協議会は26日、原発事故に備えた広域避難計画を含む緊急時対応をまとめた。原発から約30キロ圏内の住民約12万4千人の避難経路や受け入れ先、放射性物質の拡散状況を測定するモニタリング体制などを盛り込んだ。原子力災害対策指針に基づき、愛媛、山口両県の5市3町にまたがる約30キロ圏内を重点区域に指定。原発西側の佐田岬半島は5キロ圏内に準じた防護措置を取る「予防避難エリア」とした。原発で電源喪失など深刻な事態が発生した場合、5キロ圏内と佐田岬半島では要支援者を優先して車やバスで避難。5〜30キロ圏内の住民は屋内に退避する。複合災害で陸路が使えない場合、佐田岬半島の住民約5千人は対岸の大分県内18市町村に海路で避難する。ただ予防避難エリアに放射線防護施設が4カ所しかないなど課題も多い。内閣府は「訓練を通じて問題点を把握、対策を講じるのが重要」と継続した見直しを行う姿勢を示したが、再稼働前の訓練実施については明言しなかった。今後、原子力防災会議(議長・安倍晋三首相)を開き、了承を得る方針。


PS(2015年8月28日追加): *10-1で、「女子に三角関数教えて何になるのか」と伊藤鹿児島県知事が言ったのは教育における女性差別だし、「自分自身も使ったことがないから勉強不要」と言うのなら、そのような人だから論理的思考ができないのだろう。また、「サイン、コサイン、タンジェントを社会で使ったことがあるか女性に問うと、10分の9は使ったことがないと答えるから教えなくてよい」のであれば男性にも教えなくてよいことになる。つまり、女性にも数学者や理系の職業人は多いにもかかわらず、鹿児島県知事は、このように女性蔑視が甚だしく、こういう人が総務省出身で知事だから問題なのである。
 ちなみに、国は、*10-2のように、まさにこの日に「女性活躍推進法」を成立させたので、鹿児島県も率先して女性登用の推進に向けた行動計画の策定と公表を行うべきだ。

*10-1:http://mainichi.jp/select/news/20150828k0000e040234000c.html?fm=mnm (毎日新聞 2015年8月28日) 鹿児島知事:「女子に三角関数教えて何になるのか」
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、県教育委員らが参加した会議で「高校教育で女子に(三角関数の)サイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか」と発言したことが分かった。28日の定例記者会見で、発言について「自分自身も使ったことがないよねという意味。口が滑った」と述べ、訂正した。発言は、全国学力・学習状況調査の結果が25日に公表されたことを受け、27日の県総合教育会議で知事としての目標設定について問われた際にあった。伊藤知事は「サイン、コサイン、タンジェントを社会で使ったことがあるか女性に問うと、10分の9は使ったことがないと答える」とも述べた。

*10-2:http://mainichi.jp/select/news/20150828k0000e010182000c.html?fm=mnm (毎日新聞 2015年8月28日) 女性活躍推進法:成立 管理職の数値目標設定の公表など
 女性管理職の割合に数値目標の設定などを義務付ける「女性活躍推進法」は28日午前、参院本会議で自民、民主、公明各党などの賛成多数で可決され、成立した。従業員301人以上の企業と、雇用主としての国や自治体は、女性登用の推進に向けた「行動計画」の策定と公表を求められる。数値目標の水準は各企業などに委ね、罰則規定もないが、計画策定と公表の義務付けによって女性登用を進める効果を狙っている。行動計画策定は2016年4月1日に、その他は公布と同時に施行する。集中的に対応するよう施行から10年間の時限立法とした。安倍政権は「女性活躍」を成長戦略の中核の一つに掲げ、「20年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」との目標を掲げている。人口減少が進む中、女性に活躍してもらい、労働力不足による社会の活力低下を防ぐ狙いもある。行動計画は、(1)採用者に占める女性の割合(2)勤続年数の男女差(3)労働時間の男女差(4)管理職に占める女性の割合−−の各項目の現状把握と分析を必須とした。その上で、改善点や取り組み期間、数値目標などを盛り込むよう求めている。この他、企業側が選択する項目が省令で示される見通しで、育児と仕事の両立支援制度や利用状況、非正規雇用から正規雇用への転換制度の利用状況などが想定される。従業員300人以下の中小企業にも努力義務として課す。施行に合わせ、国は「女性活躍の推進に関する基本方針」を閣議決定する。各企業などの計画策定を支援するためのガイドラインも作る。また、行動計画の内容や達成度などに応じて優良な企業を認定し、国や自治体の公共事業や備品購入などで優遇できるようにもする。法案は昨年秋の臨時国会で提出されたが、衆院解散で廃案となり、今国会に再提出された。衆参両院で、賃金の男女格差の把握と是正、非正規労働者の待遇改善のためのガイドライン策定などを求める付帯決議を行った。14年の日本の女性管理職の割合は11.3%で、米国の43.7%、フランスの39.4%、ドイツの28.6%(いずれも12年)などの主要国の水準を大幅に下回っている。

| 原発::2015.4~10 | 05:40 PM | comments (x) | trackback (x) |

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