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2015.10.11 原発事故に依る健康被害・環境被害と、それでも原発が不可欠だと主張し、20年前に日本で最初に開発し始めた燃料電池で米国に後れを取った原因は何か? (2015年10月12日、13日、14日、15日、23日、31日に追加あり)
   
  ゼロエネ住宅   自立型水素エネルギー     EV軽トラック        ホンダ燃料電池車
                 供給システム
     
      日産EV      トヨタ燃料電池車    燃料電池船   IHIの燃料電池航空機 
  2015.10.29西日本新聞             *12-3より

(1)原発事故の人体への影響
 *1-1のように、外務省が、国内の原発が戦争やテロなどで攻撃を受けた場合の被害予測を、1984年に極秘で研究し、最悪の場合には急性被曝死が1.8万人で原発の約86キロ圏が居住不能になると試算していたが、反原発運動が広がることを懸念して公表しなかったのだそうである。そして、その研究では、東電福島第一原発事故と同じ全電源喪失も想定していたそうだ。

 長期的影響としては、放射性セシウムなどで土壌汚染が深刻化し、農業や居住などの土地利用が制限される地域は原発から最大で86.9キロ、平均で30.6キロにまで及ぶとしているが、外務省は公表する理由がない(?)ため公表しないとしており、都合の悪い情報は国民に隠す隠蔽体質が浮かび上がっている。信州大の久保教授は、昨年12月に施行された特定秘密保護法により、安全保障やテロ対策などを口実に、原発に関する情報が一段と制限され、闇から闇に葬られかねないとしている。

 そのような中、*1-2のように、東日本大震災で「トモダチ作戦」にあたった米原子力空母「ロナルド・レーガン」の元乗組員たちが、事故から1年9カ月後の2012年12月に、「東京電力福島第一原発事故で東電が正しい情報を示さなかったため、放射性プルームに包まれて被曝した」としてカリフォルニア州サンディエゴの連邦地裁に提訴したそうだ。提訴理由は、被曝の影響で「2011年末、車を運転中に突然気を失い、高熱が続き、リンパ節がはれ、足の筋力が衰え、髪の毛が抜け、体重も十数キロ激減した」「筋肉を切り裂くような痛みは腕や胸に広がり、全身のはれや囊胞、発汗、膀胱不全などを発症」「作戦に従事した元乗組員2人が亡くなり、ほかの仲間も深刻な健康被害を抱えている」などだ。これに対し、東電は「政治的問題なので裁判になじまない。日本で審理するべきだ」などとして却下を申し立てている。

 また、*1-3のように、東電福島第1原発事故後、福島県で見つかった子どもの甲状腺癌の年間発症率は事故前の日本全体と比べて20~50倍で、その多くは被曝で発症したものだとする分析結果を岡山大の津田教授らのチームが国際環境疫学会誌電子版に発表した。しかし、ここまで他の要素を考えなくてすむわかりやすいケースでも「結論は時期尚早」と指摘する専門家もいるそうだ。実際には、大人にもロナルド・レーガンの元乗組員と似たような症状を出している人や甲状腺癌になった人はいるだろうし、セシウムやストロンチウムの影響によって、白血病その他の疾病も増えていくと考えるのが自然だ。

(2)原発事故に依る地域の汚染
 *2のように、東電福島第1原発事故により年間積算放射線量が50ミリシーベルト超となり、帰還困難区域に指定されている福島県浪江町津島地区の住民32世帯117人が、国と東電を相手に、2020年3月までに、国際基準で平常時の追加被曝の限度とされる年1ミリシーベルトを下回るまで津島地区を除染するよう要求すると同時に、事故によって失ったものに対する慰謝料を求めており、もっともだ。しかし、除染しても到底国際基準(年1ミリシーベルト)以下にならない場合は、移住を選択した方が無難だろう。

 また、国が事故直後に放射性物質の拡散予測を公表せず、避難が遅れて無用な被曝をしたとして1人300万円の慰謝料を求めているのは、避けられ得た被曝の強制であるため特に重要だ。他の原発地元も、拡散予測のためには、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の使用を要求すべきである。

(3)原発再稼働と環境破壊
 *3-1のように、川内原発は、1号機に続き2号機も再稼働の準備が最終段階に入っているそうだ。

 しかし、*3-2のように、原発の原子炉が出した熱の2/3は電気にならず、温排水として海に捨てているため、原発の稼動によって海の環境破壊が進むことが、原発停止期間中に各地で原発周辺の海洋環境が著しく回復したことによって証明された。出力100万キロワットの原発の場合、1秒間に約70トンの温排水を出し、原発を冷やすために吸い込まれる海水には小さな生物が含まれているため、原発周辺の海域では、「海洋生物の死亡」「海藻の全滅」「漁獲の激減」などの環境破壊が生じている。また、原発温排水の影響は火力よりも大きいそうだ。

 さらに、*3-3のように、東日本大震災前後から日本全国で火山活動が活発化する中、九州では阿蘇山ほか霧島山、口永良部島、桜島も活動を活発化させており、火山の噴火予測は難しく、原発建設時には火山噴火までは考慮していないのが実情だ。

(4)原発再稼働の根拠
 大手電力会社は、「原発の再稼働がなければ、電力需給は厳しい」とし、政府やメディアにもこのフレーズを繰り返す人が多いが、実際には、*4-1のとおり、電力需給は今夏も余力があり、原発再稼働の根拠は揺らいでいた。それは、①太陽光発電が原発12基分に相当する1200キロワットの電力を生み出すようになった ②節電ツールが増えた ③企業や自治体が大手電力を解約して新電力へ切り替えた などが理由で、あるべき方向に進んでいるのである。

 そのような中、*4-2のように、九電は、原油価格の下落や川内原発1号機の再稼働で2015年9月中間連結決算の純損益が450億円の黒字になる見通しとのことだ。しかし、このブログに何度も記載しているように、原発事故の補償は税金から多額の支出がなされ、原発の立地、再稼働、*4-3の使用済核燃料の貯蔵・廃棄についても税金が原資の多額の費用が支払われる。そのため、原発の総コストは、太陽光発電をはじめとする自然エネルギーをはるかに上回るのだ。

 なお、*4-3のように、政府が原発の使用済核燃料の中間貯蔵施設を拡充するために、各電力会社に貯蔵能力を拡充する具体的な計画の策定を求め、容量増強を受け入れた自治体への交付金を増額するというのは、原発の地元をさらなるリスクに晒し、地域振興を阻害するため、とんでもないことである。新安保関連法の成立で、日本の軍隊がPKOであっても戦争の現場に出動したり、日本が武器輸出したりすれば、恨みを買うことは必定で、その時、原発関連施設はオウンゴール(Own goal)の強力な原爆となる可能性があることを忘れてはならない。

(5)日本の再生可能エネルギー技術の停滞
 節電は、上図や*5-1のような太陽光発電によるゼロエネルギー住宅で徹底的に行うことができる。そのため、ミサワが全戸、パナホームが85%、積水ハウスも70%に標準仕様として設置するのは誠に頼もしく、ゼロエネ住宅は発電能力5キロワット程度の太陽電池をのせるため、20万戸で原発1基分の発電能力を有する。私は、このような家は、世界で受け入れられるに違いないと考える。

 (私が提案して)日本で太陽光発電、電気自動車、蓄電池の開発が始まったのは、世界初である1995年前後であり、現在はそれから20年も経過しているのだが、日本国内では、「性急すぎる(?)のはいけないことで、時間がかかるのがいいことだ」などと言われ、本気で実用への道筋がつけられなかった。

 そうこうしているうちに、*5-2のように、米ハーバード大学の研究チームが無害、非腐食性、不燃性の新しい素材を使った、安全安価で高性能なフロー電池の開発に成功し、畜電池が大きく前進した。そのため、名誉だけでなく、蓄電池の重要な特許もそちらにいく。何故、こうなるのかと言えば、日本では、意思決定する立場にいる人が殆ど文系の科学音痴で、開発や特許権の重要性に疎く、技術の選択眼もなく、外国がやっているのを見て初めて日本でもやらなければと焦るキャッチアップ型(新興国に多い)の政治・行政しか行えないからだ。

 また、温室効果ガスの悪影響についても、(私が提案して)日本がイニシアティブをとり、京都議定書(京都市で1997年12月に採択された気候変動枠組条約に関する議定書)を決めたにもかかわらず、日本国内では「無理だ、理想だ、現実的でない、妥協こそ大事だ」「排出量取引でごまかそう」などとして何とか本物の排出削減目標を低くしようとしてきた。しかし、*5-3のように、現在の世界は、既に途上国も含めて、日本(2030年に2013年比26%減)より高い目標を出しており、ゼロエネルギー住宅や電気自動車・燃料電池車を標準とすれば、それは原発を使わなくても可能なのである。

<原発事故の人体への影響>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2015040802100010.html (東京新聞 2015年4月8日) 【福島原発事故】被ばく死 最悪1.8万人 原発攻撃被害 84年に極秘研究
 国内の原発が戦争やテロなどで攻撃を受けた場合の被害予測を、外務省が一九八四(昭和五十九)年、極秘に研究していたことが分かった。原子炉格納容器が破壊され、大量の放射性物質が漏れ出した場合、最悪のシナリオとして急性被ばくで一万八千人が亡くなり、原発の約八十六キロ圏が居住不能になると試算していた。研究では東京電力福島第一原発事故と同じ全電源喪失も想定していたが、反原発運動が広がることを懸念し公表されなかった。八一年にイスラエル軍がイラクの原子力施設を空爆したことを受け、外務省国際連合局軍縮課が外郭団体の日本国際問題研究所(東京)に研究委託。成果は「原子炉施設に対する攻撃の影響に関する一考察」と題した六十三ページの報告書にまとめられ、本紙が情報公開を通じてコピーを入手した。報告書は出力百万キロワット級の原発が攻撃されたと仮定。原発の場所は特定せず、(1)送電線や発電所内の非常用発電機がすべて破壊され、すべての電源を失う(2)原子炉格納容器が爆撃され、電気系統と冷却機能を失う(3)格納容器内部の原子炉が直接破壊され、高濃度な放射性物質を含む核燃料棒などが飛散する-の三つのシナリオで検証した。このうち、具体的な被害が示されたのは(2)の格納容器破壊のみ。当時、米国立研究所が米原子力規制委員会(NRC)に提出した最新の研究論文を参考に、日本の原発周辺人口を考慮して試算した。それによると、緊急避難しない場合、放射性物質が都市部など人口密集地に飛来する最悪のケースでは一万八千人が急性被ばくで死亡。ただ、被害は風向きや天候で大きく変わるとして、平均では三千六百人の死亡になると試算した。五時間以内に避難した場合は最悪八千二百人、平均八百三十人が亡くなるという。急性死亡が現れる範囲について、報告書は「十五~二十五キロを超えることはない」と記述している。長期的影響としては、放射性物質セシウムなどで土壌汚染が深刻化すると指摘。農業や居住など土地利用が制限される地域は原発から最大で八六・九キロ、平均で三〇・六キロにまで及ぶとしている。最も被害が大きい(3)の原子炉破壊については「さらに過酷な事態になる恐れは大きいが、詳しい分析は容易ではない」と紹介。福島原発事故と同じ(1)の全電源喪失では、実際に起きた水素爆発の可能性に触れ「被害が拡大する危険性がある」と指摘しており、報告書が公表されていれば、事故の未然防止や住民避難に役立った可能性がある。八〇年代は、七〇年代の二度にわたる石油危機を受け、国は原発建設を積極的に推進。国内の原発十六基が運転を始めた。軍事攻撃が想定とはいえ、原子炉に重大な損害が生じれば深刻な被害が及ぶとのシナリオは世論の不安を呼び、国の原子力政策に水を差す可能性があった。報告書にも「反原発運動などへの影響」などと、神経をとがらせていたことをうかがわせる記述がある。原子力資料情報室の伴英幸・共同代表は報告書の存在を「知らなかった」とした上で「反対運動を理由にした非公開ならとても納得できない。テロの脅威が高まる中、原発のリスクを国民にもっと知らせるべきだ」と話している。
◆公表する理由がない
 外務省軍備管理軍縮課の話 報告書は保存されているが、作成部数や配布先など詳しい経緯は分からない。今後、公表の予定はない。積極的に公表する理由がない。
◆原発攻撃被害報告書 「福島」に生かされず
 軍事攻撃による原発の放射能被害を予測していた外務省の報告書。水素爆発した福島第一原発事故は地震と津波が引き金とはいえ、報告書が指摘していた「全電源喪失」の危機がシナリオ通りに再現された。三十年も前から原発の潜在的な危険性を知りながら、反原発運動の広がりを恐れて公表を控えた外務省。原発推進を掲げた当時の国策の下で、都合の悪い情報をひた隠しにする官僚の隠蔽(いんぺい)体質が浮かび上がる。 「限定配布の部内資料(『取扱注意』なるも実質的に部外秘)」「外務省の公式見解でないことを念のため申し添える」…。高度な秘密性を裏付けるように、報告書には当時の国際連合局軍縮課長が書いた「ことわりがき」が添えてある。当時、同局の審議官だった元外交官の遠藤哲也氏(80)は本紙の取材に「記憶が確かではない」としながらも「ショッキングな内容なので(非公表に)せざるを得なかったでしょうね」と話した。同氏によると、一般的に部内資料は省外への持ち出しが禁止されており、報告書が官邸や原子力委員会などに配布されていなかった可能性が高い。作成された二年後の一九八六(昭和六十一)年には旧ソ連・チェルノブイリ原発事故が起きたが、その時ですら報告書の公表はなく、原発の安全対策に生かされることはなかった。当時は米ソが核兵器の開発を競う冷戦時代。科学技術史が専門の吉岡斉・九州大教授(61)は原発の軍事攻撃を想定した報告書が公表されれば「国民の間で核兵器と原発が一体的に連想されることを心配したのではないか」と推測する。「国家と秘密 隠される公文書」(集英社新書)の共著者で、歴史学者の久保亨・信州大教授(62)も「原子力は、軍事に転用できる技術の最たるもの」と指摘する。久保教授が懸念するのは昨年十二月に施行された特定秘密保護法。安全保障やテロ対策などを理由に原発に関する情報が一段と制限され「闇から闇へ葬られかねない」と懸念を示している。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASH9W4TZ7H9WPTIL008.html
(朝日新聞 2015年10月1日) トモダチ作戦、称賛の陰で 元空母乗組員ら健康被害訴え
 東日本大震災で「トモダチ作戦」にあたった米国の原子力空母「ロナルド・レーガン」が1日、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に配備された。作戦から4年半。当時の乗組員たちは今、健康被害を訴えて米国で訴訟を続けている。称賛された支援活動の陰で何があったのか。
■帰国後に体調悪化
 トモダチ作戦に従事した元海軍大尉のスティーブ・シモンズさん(37)に会うため、記者は米国ユタ州ソルトレークシティーを訪ねた。ロナルド・レーガンの元乗組員たちは事故から約1年9カ月後の2012年12月、「東京電力福島第一原発事故で東電が正しい情報を示さず、被曝(ひばく)した」としてカリフォルニア州サンディエゴの連邦地裁に提訴。当時、艦載機部隊の管理官だったシモンズさんも訴訟に加わっている。「空母では当初、海水蒸留装置の水を飲んだり、その水で調理した食事をとったりしました。現場海域に着いてから3日後の2011年3月15日、艦長が『水を飲まないように』と命じました。だが、すでにシャワーを浴びたり、水を飲んだりしたあと。その後も、甲板の洗浄には汚染された海水を使っていました」。「乗組員は強い放射線にさらされ続けましたが、当時は健康へのリスクに無知でした。私たちは人道支援にあたったのであり、核惨事に対応できたわけではない。東電が正しい情報を出していれば、違った対応がとれたはずです」。シモンズさんは帰国後、体調が悪化。様々な症状に苦しんでいる。「11年末、車を運転中に突然気を失いました。高熱が続き、リンパ節がはれ、足の筋力が衰えました。髪の毛が抜け、体重も十数キロ激減。トモダチ作戦前は登山をするなど健康体でしたから、症状が現れたときには打ちのめされました」。「筋肉を切り裂くような痛みは腕や胸に広がり、全身のはれや囊胞(のうほう)、発汗、膀胱(ぼうこう)不全などを発症。通院するソルトレークシティーの退役軍人病院の医師は『放射能の影響だろう』としています」。米国防総省は昨年、連邦議会へ報告書を提出した。乗組員らが受けた放射線量は一般の米国人が自然界から受けるより低いとし、健康被害との因果関係は考えられないと主張している。「報告書は使い物にならない代物。乗組員全員の検査をせず、健康被害のリスクはなかったとしている。飲料水の汚染は検知器の誤作動だったとしているのも不可解です」。「作戦に従事した元乗組員2人が亡くなり、ほかの仲間も深刻な健康被害を抱えています。一方で(係争中の訴訟は)米国内で理解されていません。私自身は海軍に16年以上勤めたので医療費を受けられますが、20代の若い仲間は健康問題が生じると何の保障もなく海軍を追い出されている。見捨てられません」。横須賀に配備されたロナルド・レーガン。地元からは「事実上の母港化が続く」「原発再稼働に匹敵する問題」などとして反対の声が上がるほか、「完全に除染されたという客観的証拠を示すべきだ」との指摘もある。「(ロナルド・レーガンには)『トモダチ』としての顔と『放射能汚染にさらされた船』という両面があると思う。日米政府間の信頼醸成には資するが、地元側が安全性に疑問を抱くのも当然。原発事故後、日本人の放射能汚染への意識は高まっているでしょう。レーガンの除染について、米側に正しい情報を求める権利がある」
■「放射性プルームに包まれた」
 米情報公開法に基づき、訴訟の弁護団がロナルド・レーガンの航海日誌や米原子力規制委員会(NRC)の電話会議記録を入手していた。航海日誌によると、演習参加のためにハワイから韓国・釜山に向かっていたロナルド・レーガンは、大震災を受けて11年3月13日までに福島沖に到着。米第7艦隊や海上自衛隊と活動を始めた。そしてNRCの電話会議記録には、13日の米海軍高官の発言が残る。「東北近海の海自艦に立ち寄ってレーガンに戻ったヘリ搭乗員の靴などから放射性物質を検出した」「沖合約185キロにいたレーガンは放射性プルーム(雲)の下に入った。空気中の放射線量が通常の30倍の数値を示し、救援活動を一時停止した」。その後の状況も航海日誌に記されていた。「16日午後11時45分、福島第一原発東方沖約230キロの海域を航行中に放射性プルームに包まれた」「17日午前5時7分に抜け出すまでの5時間あまり強い放射線にさらされた」。ロナルド・レーガンは4月上旬まで日本近海で活動を続け、東南アジアや中東を経て9月にハワイへ。ワシントン州の海軍施設で除染されたという。横須賀への配備を前に外務省北米局は「我が国の周辺に米海軍の強固なプレゼンスが引き続き維持される。トモダチ作戦に従事した艦船でもあり、入港を歓迎する」と発表した。一方、米国で訴訟を起こした元乗組員側の原告は250人を超え、10億ドル(約1200億円)の救済基金の設立を要求。2人が骨膜肉腫や急性リンパ球白血病で亡くなっている。東電側は「政治的問題なので裁判になじまない。日本で審理するべきだ」として却下を申し立てている。
     ◇
〈米原子力空母「ロナルド・レーガン」〉 2003年に就役した「ニミッツ」級空母。全長約333メートル、幅約77メートル、満載排水量約9万7千トン。動力として原子炉2基を搭載する。戦闘機など60機以上を艦載し、航空要員を含めて5千人以上が乗り組む。これまでの母港サンディエゴから、前任の原子力空母「ジョージ・ワシントン」に代わって横須賀に配備される。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015100601002207.html
(東京新聞 2015年10月7日) 「被ばくで発症」と主張 福島事故後の甲状腺がん 
 東京電力福島第1原発事故後、福島県で見つかっている子どもの甲状腺がんの多くは被ばくで発症したものだと主張する分析結果を岡山大の津田敏秀教授(環境疫学)らのチームがまとめ、国際環境疫学会の6日付の学会誌電子版に発表した。別の疫学専門家からは「結論は時期尚早」との指摘がある。研究チームは、福島県が事故当時18歳以下だった約37万人を対象にした昨年末時点までの甲状腺検査の結果を分析。年間発症率は事故前の日本全体と比べ、20~50倍と算出した。さらに福島県内でも地域によって発症率が最大2・6倍の差があった。

<原発事故に依る地域の汚染>
*2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150929-00000126-mai-soci (YAHOO、毎日新聞 2015年9月29日) <福島原発事故>浪江町117人が集団提訴 原状回復求め
 東京電力福島第1原発事故により帰還困難区域(年間積算放射線量50ミリシーベルト超)に指定された福島県浪江町津島地区の住民32世帯117人が29日、国と東電を相手取り、除染による古里の原状回復や慰謝料など約65億円の支払いを求め、福島地裁郡山支部に提訴した。弁護団によると、帰還困難区域の住民による集団提訴は初めて。住民らは、2020年3月までに国際基準で平常時の追加被ばくの限度とされる年1ミリシーベルトを下回るまで津島地区を除染するよう要求。期限に間に合わない場合は、地域コミュニティーの再生が困難になって古里を奪われるとして1人3000万円の慰謝料を求める。また、1人につき月10万円の精神的賠償を35万円に増額することや、国が事故直後に放射性物質の拡散予測を公表せず避難が遅れ無用な被ばくをしたとして1人300万円の慰謝料も求めた。津島地区の約170世帯約480人も今後追加提訴し、同地区の半数が訴訟に参加する見通し。

<川内原発再稼働>
*3-1:http://www3.nhk.or.jp/lnews/kagoshima/5055226071.html
(NHK 2015年9月28日)2号機は15日にも再稼働
 1号機に続き再稼働に向けた準備が最終段階に入っている川内原子力発電所2号機について、九州電力は今後の検査や作業で問題がなければ来月15日に原子炉を起動し再稼働する計画であることがわかりました。
川内原子力発電所は福島第一原発の事故後につくられた新しい規制基準の審査に、去年、全国の原発で初めて合格し、1号機は先月11日に再稼働しました。2号機も今月13日までに原子炉に燃料が入れられ再稼働に向けた準備は最終段階に入っています。来月1日からは新しい規制基準に基づいて増設された非常用の設備や機器を使った事故対応の訓練が行われることになっており、九州電力は今後の検査や作業に問題がなければ来月15日に原子炉を起動し再稼働する計画であることがわかりました。再稼働後は12時間程度で核分裂反応が連続する「臨界」の状態に達し、その後、発電用のタービンを起動し2号機でも発電を開始することにしています。2号機が再稼働した場合、新しい規制基準のもとでは1号機に続き全国の原発で2例目ですが、福島第一原発の事故の影響で4年にわたって運転を停止した状態が続いているため検査や作業に時間がかかり再稼働の時期がずれ込む可能性もあります。

*3-2:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150906-00058720-hbolz-soci (YAHOO:HARBOR BUSINESS Online  2015年9月6日) 川内原発再稼動で再び懸念される「海の環境破壊」
 川内原発の温排水放出口がある寄田海岸には、2009年に29匹のサメが打ち上げられたという(川内原発「温廃水」訴訟訴状より)。九州電力川内原発1号機が今年8月11日、4年3か月ぶりに運転を始めた。原子炉が出した熱の実に3分の2は電気にならず、温排水として海に捨てられる。「海暖め装置」でもあるのが原発だ。一方、2年近く続いた原発ゼロ期間中、各地で原発周辺の海洋環境が劇的に改善したとの報道が相次いだ。
◆温排水停止の4年間で徐々に海の環境が回復!?
 「それまで浜辺に魚などの死体が打ち寄せられていたのが、川内原発が運転を止めてからピタリと止まりました。劇的な変化でした」と話すのは、市民団体「反原発・かごしまネット」の向原(むこはら)祥隆さんだ。川内原発の稼働中、近くの浜辺には毎日のようにサメやエイなどの大型魚類、クジラやイルカなどの海生哺乳類、ウミガメなどの死体が海岸に漂着していた。ところが2011年9月の運転停止以降はそれらが一切なくなったという。海水1度の温度上昇は、気温でいえば3~4度上がるのに相当する変化だとされる。原発が排出してよい温排水の温度は取水口の海水温度プラス7度まで。出力100万キロワットの原発の場合、1秒に約70トンもの温排水が出る。九電は温排水の影響を否定するが、向原さんらは温排水によって川内原発周辺海域で環境破壊が生じているとして、2010年10月に九電を相手取り「温廃水」訴訟を起こした。訴状で、温排水の影響として「海洋生物の死亡漂着」「原発南側での海藻の全滅」「原発南側に隣接する漁協での漁獲の激減」などを挙げている。鹿児島地裁は12年10月、訴えを退けた。
◆火力より影響が大きい? 原子力の温排水
 もっとも、温排水を出すのは原発に限らない。火力発電所からも温排水は出る。しかし熱効率で比べると、原子力が30%程度なのに対して、火力は40~60%だ。つまり火力発電所の温排水は原発よりも温度が低い。つまり原発の再稼働が進めば、火発を運転するよりもムダな熱が海に捨てられることになる。京都大学舞鶴水産実験所の益田玲爾(れいじ)准教授は若狭湾で潜水調査を続ける。若狭湾では関西電力高浜原発の停止後に周辺海域の海水温が下がり、地元特産のアカウニやムラサキウニ、マナマコなどが姿を見せるようになったという。海藻も茂ってきたそうだ。舞鶴湾には舞鶴石炭火力発電所があるが、こちらでは海洋生物への影響はみられないという。「火力発電所の周辺で変化が見られないのは、第一に、火力発電所の方が効率よく熱を使っているからです。しかも10年前に完成した舞鶴火力発電所は、舞鶴湾内から採水。冷却に使った(つまり加温された)海水を長い地下パイプを経て、湾外に放出しています。ですので、排水口に近い瀬崎沖で潜水中に測定しても、同所と舞鶴湾内の水温差はほとんどありません。一方、40年前に作られた高浜原発では、湾外の海水を冷却に利用し、7℃高い水を湾内に放出しています。このため、原発稼働中に高浜町の内浦湾は温排水による影響を強く受けていました」(益田氏)。川内原発の場合、現在のところ温排水を沖合に放出する地下パイプのような設備はない。向原さんは「原発が停止し、4年かけてようやく“海焼け”した海底にヒジキなどの海藻が付き始めたところ。再稼働で徐々に影響が広がるでしょうが、これでは元の木阿弥です」と話し、温排水の影響を懸念している。

*3-3:http://qbiz.jp/article/70870/1/
(西日本新聞 2015年9月15日) 火山活動、九州際立つ 噴火予測難しく
 1年以上にわたり小規模な噴火を断続的に繰り返してきた阿蘇山が14日、2千メートルの噴煙を上げ、噴火警戒レベルも初めて3(入山規制)に引き上げられた。全国で火山活動が活発化する中、九州では阿蘇のほか霧島山、口永良部(くちのえらぶ)島、桜島も活動を活発化させており、動きは突出している。相次ぐ異変に関連はないのか。九州のほかの火山に影響はないのか−。専門家は十分な警戒を呼び掛けている。「活発化はしていたが、マグマがたまった様子や地殻変動は見て取れなかった。今回のような小規模な噴火は予測が難しい」。福岡管区気象台の米田隆明・火山防災情報調整官はこう語った。阿蘇山は昨年8月に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)に引き上げられた後、同11月からは21年ぶりにマグマ噴火を繰り返すなど活動を活発化させていた。火山ガスの量はやや多い状態で推移。今年8月以降は火山活動の指標となる「孤立型微動」が増え、噴火直前の14日午前9時20分ごろには震動を示す数値が急に倍増していた。京都大火山研究センター(熊本県南阿蘇村)の大倉敬宏教授(火山物理学)は「いつ噴火してもおかしくない状況だった」。ただ、そのタイミングまでは分からなかった。これまでの立ち入り禁止区域は火口から半径1キロ。気象台によると、この日の噴火に伴う噴石は2キロ近くまで飛んだとみられる。当時、火口から1キロ余りの阿蘇山ロープウェー付近には観光客十数人が滞在していた。「けが人が出なかったのは幸運だった」。阿蘇市職員はこう振り返る。
   ◇    ◇
 阿蘇山では1979年9月の噴火で観光客3人が犠牲となった。石原和弘京都大名誉教授(火山物理学)は「今回は79年の噴火と同規模とみられる。これまで静かだったのはマグマをため噴火能力を蓄えていたからで、それが一気に噴出したのでは」と分析する。気象庁によると、山体の膨張が小さいことからマグマの供給量は少ないとみられ、今回より規模の大きな噴火が起きる可能性は低いという。微動も減少傾向にあるといい、「(噴火の)サイクルが終わる可能性が高い。ただ、確実にこれで収まるとは言えない」。
   ◇    ◇
 火山は全国で活動が活発化しており、専門家には東日本大震災と関連づける見方もある。火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長(東京大名誉教授)は「海外でも巨大地震の後に火山噴火が起きた事例はあり、一つの遠因と言える。箱根山などだけでなく、鹿児島の諏訪之瀬島でも火山性微動が増えた」と指摘する。九州では近年、霧島山(宮崎、鹿児島)、口永良部島(鹿児島)、桜島(同)など、南部を中心に火山の動きが活発だ。雲仙岳(長崎)や九重山(大分)に目立った動きはないが、常時観測対象の活火山だ。日本列島には二つの火山密集帯があり、沖縄から九州を縦断して中国地方へつながる西日本の「火山フロント」は南海トラフに平行して形成。最近噴火した箱根山(神奈川)や御嶽山(長野、岐阜)は日本海溝に平行する東日本のフロント上にある。だが、マグマだまりは火山ごとに独立しており、気象庁は「隣接する火山の噴火が連動するという考え方はしていない」と説明する。地震と火山活動の関係や、火山活動の連動性は未解明の部分が多い。藤井名誉教授は「九州での相次ぐ火山活動に関連性はないと考えるが、活火山に近づく際には気象庁の情報に注意するよう心掛けてほしい」と話している。
◆マグマ水蒸気噴火か
 14日に中岳第1火口で発生した噴火は「マグマ水蒸気噴火」とみられ、今年5月の口永良部島(鹿児島県)噴火と同じだ。阿蘇山には多数の火口があるが、1934年以降、噴火が確認されているのは中岳第1火口のみ。気象庁によると、近年は数カ月から数年の周期で噴火を繰り返し、多くは赤熱した噴石を間欠的に飛ばすマグマ噴火の「ストロンボリ式噴火」で、昨年11月の噴火もストロンボリ式だった。阿蘇火山博物館の須藤靖明学術顧問によると、阿蘇山でマグマ水蒸気噴火を最後に確認したのは93年。須藤氏は「11日から小噴火が相次いでガスが抜け、噴火の威力は弱まったのではないか」と指摘し「火口に残る水蒸気がなくなった後にはストロンボリ式に移る可能性がある」との見方を示す。気象庁は「マグマ水蒸気噴火とマグマ噴火でどちらが危険度が高いかは一概には言えない」としている。
◆観光客死傷、戦後相次ぐ
 九州屈指の観光地・阿蘇山は、カルデラ内の活動中の火口に接近できることが特長だが、有史以降、数え切れないほどの噴火を繰り返しており、戦後も観光客らを巻き込む死亡事故が起きている。最も活動的なのは「中岳第1火口」。気象庁などによると、1953年の噴火では噴石などにより観光客6人が死亡、90人以上が負傷した。人間の頭大以上の噴石が火口から数百メートル飛んだという。58年には突然、爆発的噴火が発生。噴石が火口から約1・2キロに達し、ロープウエーの作業員ら12人が死亡、負傷者は28人に上った。79年にも噴石により観光客3人が犠牲になった。97年には、火口から放出された火山ガスの二酸化硫黄により観光客2人が死亡。人身事故以外にも、大量の火山灰により周辺の農作物に被害をもたらす噴火もたびたび発生している。
◆気象庁が初の噴火速報
 気象庁は14日、阿蘇山の噴火を受け、8月に運用を始めた「噴火速報」を初めて発表した。犠牲者が多数出た昨年9月の御嶽(おんたけ)山(さん)(長野、岐阜県)の噴火を踏まえ、登山者などがいち早く避難できるようスマートフォンでも即時に情報を得られるが、専用アプリが必要だ。噴火は午前9時43分。「噴火から5分以内」を目標とする噴火速報の発表は7分後の同50分だった。福岡管区気象台は「黒煙が出始めた同47分前後に速報が必要と判断した。最善を尽くした」と説明した。速報発表とほぼ同時に民間2社のアプリ登録者約400万人に情報が届いた。「いつもと違う通知音ですぐに気付いた」という熊本県南阿蘇村の旅館従業員の男性(45)は「噴火直後に知り、職場に駆け付けた。テレビをつけていなかったので役立った」と話した。一方、スマホを持っていない同県高森町のリンゴ園経営、後藤和弘さん(69)は「ラジオのニュースを聞くまで(噴火に)気付かなかった」という。特定地域のすべての携帯電話に情報を一斉送信できる自治体の緊急速報メールも使われたが、送信時刻は同県阿蘇市が午前10時23分、南阿蘇村が同40分ごろで噴火発生から40分〜1時間後だった。

<原発再稼働の根拠>
*4-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015092802000134.html (東京新聞 2015年9月28日) 電力需給 今夏も余力 原発再稼働の根拠揺らぐ
 この夏の全国の電力需給を電力各社に取材したところ、需要が最も高まるピーク時の電力使用率が95%を超える「厳しい」日はゼロだったことが分かった。節電の定着や企業・自治体の大手電力離れで需要が減る一方、電力会社間の融通や太陽光発電の増加で供給力を確保し、電力の安定につながった。8月に川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県)が再稼働した九州電力を除く地域は今夏も原発なしで乗り切った。本紙は、原発のない沖縄を除く電力九社に、今年七月~九月中旬までの月-金曜日のピーク時の電力使用率を取材した。使用率は、電力会社が気温などから需要を予測して事前に準備した供給力に対する実際の最大需要の割合で、どれだけ電力に余力があったかを知る目安となる。昨年の夏は中部電力と関西電力でそれぞれ一日「厳しい」日があった。今年は東京で過去最長の八日連続の猛暑日となるなど、全国的に八月上旬に暑さのピークを迎え、冷房などの使用により各地で今夏の最大需要を記録した。九電管内では八月十一日に川内原発1号機が再稼働。九電は「原発の再稼働がなければ、電力需給は厳しい」としていたが、再稼働前は中部、中国両電力から融通してもらい、余力を確保していた。原発が動いていない電力各社は既存の発電所の増強や、老朽火力も活用して供給力を確保。太陽光発電の導入が昨年に比べて倍増し、原発十二基分の出力に相当する計千二百万キロワットの電力を生み出したこともピーク時の供給を下支えした。東京電力管内では、最高気温が三七・七度となった八月七日に今夏最大の四千九百五十七万キロワットの需要を記録したが、使用率は92・3%と余力を残していた。原発依存度の高い関電管内は、原発稼働がゼロでも使用率が90%未満の「安定」した日がほとんど。同四日に今夏の需要がピークとなったが、中部、中国、北陸の電力三社から計百一万キロワットを融通してもらい、使用率は88・1%にとどまった。夏を乗り切れた理由について、電気事業連合会の八木誠会長は「節電が大きな要因」と説明。全国の最大需要は東日本大震災前の二〇一〇年と比べて、今夏は13・5%減少した。加えて、企業や自治体などが、料金値上げをした大手電力を解約して新電力へ切り替える動きが進んだことも需要減の一因となり、今夏の安定につながった。

*4-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/226295
(佐賀新聞 2015年9月5日) 9月中間で九電5年ぶり黒字 原発再稼働寄与
 九州電力は4日、2015年9月中間連結決算の純損益が450億円の黒字になる見通しだと発表した。純損益の黒字は5年ぶり。原油価格の下落や川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働などが寄与して前年同期の359億円の赤字から大幅に改善した。瓜生道明社長はこの日、川内1号機の再稼働後、初めて記者会見し「東京電力福島第1原発のような事故を起こさないため、安全対策に万全を期してきた」と強調。川内1、2号機に加え、玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)が再稼働した場合、料金の本格値下げについて「財務状況を勘案し、総合的に判断する必要がある」と述べた。ただ、玄海3、4号機の本年度中の再稼働は「現実的には少し難しい」と話した。川内1号機は8月11日に再稼働し、九電は月75億円の収益改善効果を見込んでいる。原油安で火力発電の燃料費が大幅に減少したことも黒字化に大きく貢献した。売上高は9300億円と予想。16年3月期の売上高は1兆8800億円を見込むとした。純損益は未定としたが、瓜生社長は黒字化に「川内2号機が予定通り10月中旬に再稼働し、効率化をもう少し進めれば可能ではないか」と述べた。また瓜生社長は、16年4月に始まる電力小売り自由化に向け「ライフスタイルに合わせた新しい料金メニューを検討している」と明らかにした。

*4-3:http://qbiz.jp/article/72271/1/
(西日本新聞 2015年10月7日) 使用済み核燃料の貯蔵拡充を要請 政府、九電など電力各社に
 政府は6日、原子力に関する関係閣僚会議を開き、原発から出る使用済み核燃料の中間貯蔵施設を拡充するための行動計画をまとめた。各電力会社に、貯蔵能力を拡充する具体的な計画の策定を求めるほか、容量増強を受け入れた自治体への交付金増額などを盛り込んだ。使用済み燃料をめぐっては、日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)がトラブル続きで稼働できず、各原発の貯蔵プールにたまり続けている。保管容量が限界に近づいている原発もあり、九州電力の玄海原発(佐賀県玄海町)は、再稼働から5〜6年で満杯になる見通し。満杯になれば運転できなくなるため、政府は原発の敷地内に限らず、貯蔵施設を拡充するよう各社に要請してきた。ただ地元の理解なども必要で、具体的な取り組みは進んでいない。行動計画では容量の拡大に向けて、特に使用済み燃料を金属製の容器に入れて保管する「乾式貯蔵」を推奨。維持管理や輸送が容易になるためで、導入を受け入れた自治体には交付金を手厚くする方針も示した。

<再生可能エネルギー>
*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150920&ng=DGKKASDZ19H6A_Z10C15A9MM8000 (日経新聞 2015.9.20) 消費電力抑え太陽光発電 ゼロエネ住宅、一斉販売、ミサワ、全戸標準仕様 パナホームは85%に
 住宅大手がエネルギー消費が実質ゼロとなる省エネ住宅「ゼロエネルギー住宅(総合・経済面きょうのことば)」の販売に乗り出す。屋根に設置する太陽光パネルによって、家庭内で消費するエネルギーよりも多く発電する。ミサワホームは2017年度に販売する全戸をゼロエネ住宅とし、パナホームも18年度に85%にする。環境負荷を減らせる一方、消費者にとっては家計の節約にもつながる。ゼロエネ住宅は電気やガスを使って消費するエネルギーから、太陽光発電で生み出したエネルギーを差し引くと、年間のエネルギー消費量が実質ゼロとなる。消費電力の低減が重要なため、断熱材のほか省エネタイプの給湯器や換気システムを標準装備する。このため通常の住宅と比べて250万~300万円の追加費用が必要だ。これとは別に太陽電池が工事費込みで150万~200万円かかる。光熱費の節約や売電収入によって、長期的に追加の費用を回収する。ミサワホームは17年度には販売する住宅のすべてでゼロエネタイプを標準とする。まずは今春から30代など比較的若い世代を対象とする価格が低めの住宅で、ガラス繊維の密度を高めた高性能の断熱材を使用して、太陽電池も標準で搭載した。同社は年間8千戸を販売している。14年度のゼロエネ住宅の受注数は66戸と1%に満たなかったが、省エネ住宅への引き合いが強いことから切り替えを進める。14年度はゼロエネ住宅がほぼゼロだったパナホームは、パナソニック製の太陽電池「HIT」や蓄電池を組み合わせた新たな住宅の販売を強化する。同社の試算では築20年の住宅を新タイプの住宅に建て直すと、年間の光熱費が約35万円から約7万円に減らせる。さらに太陽光でつくった余剰電力を電力会社に売れば年間13万円の収入が得られるという。戸建て大手は各社とも省エネの住宅を増やす方針だ。積水ハウスも16年度に受注棟数の70%をゼロエネ住宅にするほか、積水化学工業も20年度に過半にする目標を掲げている。昨年度の同住宅の販売戸数は住宅大手10社合計で1万~2万戸程度にとどまっている。今後、各社が一斉に販売の重点を置いていくことで、20年度までに10社で5万戸以上に増える見通しだ。ゼロエネ住宅は発電能力5キロワット程度の太陽電池を載せるため、20万戸で原発1基分の発電能力に相当する。工場やオフィスに比べて遅れているとされる家庭部門の省エネが進み、二酸化炭素(CO2)の削減につながる。

*5-2:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO92371410S5A001C1000000/ (日経新聞 2015/10/10) ニュースフォローする 画期的な蓄電池を開発、住宅用にも 米ハーバード大
 米ハーバード大学の研究チームがこのたび無害、非腐食性、不燃性の新しい素材を使った、安全安価で高性能なフロー電池の開発に成功した。太陽光発電のみで電力をまかなえる家に住みたいと願うなら、曇りの日用に電力を蓄えておけて、発火するおそれのない安全な電池が必要だ。米ハーバード大学の研究者が、そんな蓄電池を考案したと科学誌「サイエンス」2015年9月25日号で発表した。未来の電池を開発しようと世界中の研究者がしのぎを削るなか、今回開発されたのはフロー電池と呼ばれるタイプのものだ。安価で無害、非腐食性かつ不燃性の材料でできており、しかも高性能であるという。「誰でも使えるようになるという意味で、畜電池は大きく前進しました」。ハーバード大学の工学教授で、論文の共同執筆者であるマイケル・アジズ氏はこう説明する。腐食の心配がない安全な電池であれば、事業用にも家庭用にも適している。「自宅の地下室にも安心して置いておける化学物質が使われています」。気候変動問題が深刻化し、太陽光や風力などのクリーンな再生可能エネルギーへの期待が高まるにつれ、5年ほど前から電力貯蔵技術の研究がさかんになってきた。理由は簡単だ。太陽光発電や風力発電は出力の変動が大きく、太陽が出ていないときや風が吹いていないときに備えて電力を貯蔵する必要がある。蓄電池のなかでもよく知られているのはリチウムイオン電池だ。今から20年以上前に主に個人用電子機器向けに実用化されたものだが、特に大出力のものは高価で、発火の危険性がある。実際、電気自動車で発火事故が数件起きているほか、大量のリチウムイオン電池を輸送する貨物機で火災が発生したこともある。研究者たちは現在、リチウムイオン電池の改良に取り組むほか、まったく別の方式も模索している。今回のハーバード大学の研究チームのように米国エネルギー省から資金を得て、新しい材料の組み合わせや、ナノサイズの電極の開発に取り組む研究者もいる。アジズ氏のチームはフロー電池に注目した。フロー電池は、電気が発生する電池セルとは別のところにあるタンクの液体にエネルギーを貯蔵するため、タンクを大きくすればより多くのエネルギーを貯蔵できる。問題は、フロー電池のほとんどがバナジウムなどの高価で腐食する金属を使っていることだった。
■すでに複数の企業がアプローチ
 ハーバード大学の科学者たちは2014年、バナジウムの代わりにキノンという有機分子を使ったフロー電池を試作した。この試作品はうまく機能し、欧州の企業に製造を許諾したが、材料に有害で揮発性のある臭素が含まれていた。研究チームは今回、臭素をフェロシアニドという無害な非腐食性イオンに置き換えることに成功した。「フェロシアニドは青酸と同じシアン化物なので、毒性があると思われるかもれませんが、そうではありません」と、ハーバード大学のポスドク時にこの新しい素材を考えつき、現在は米コロラド大学ボールダー校に所属するマイケル・マーシャク氏は説明する。「青酸は体内の鉄イオンと非常に強く結びついて呼吸を阻害し、致死的な作用を及ぼします。これに対して、フェロシアニドは最初から鉄と結びついているので安全なのです」。フェロシアニドは食品添加物や肥料にも広く用いられているという。米アルゴンヌ国立研究所エネルギー貯蔵共同研究センターのジョージ・クラブツリー所長は、「この研究は、有機分子を電池に活用する新しい分野を開拓するものです」と言う。彼はこの新分野を「画期的で有望」と評価し、さらに多くの成果を生むだろうと予想する。今回の研究には関与していないが、米ケース・ウェスタン・リザーブ大学の工学教授で蓄電池の専門家であるロバート・サヴィネル氏は、「大容量化が容易で危険性がなく、製造コストも抑えられるでしょう」と、この電池の優れた性能を認めている。サヴィネル氏は、10年以内に商品化も可能だろうと期待を寄せるが、まださらなる検証も必要だと述べている。アジズ氏自身も検証の必要性を認めている。研究チームは短時間の実験結果で寿命を推定しただけなので、「何千回、何万回の充放電サイクルを経ても劣化しないことを証明する必要があります」と言う。彼は1年以内にこのテストを始めるつもりだが、ハーバード大学はそれ以前に製造を許諾する可能性がある。アジズ氏は、すでに複数の企業からアプローチを受けていることを打ち明け、「そう遠くない時期に商品化が実現するかもしれません」と言う。具体的な時期は、製造を許諾される企業が新興企業か大きな電池メーカーかで変わるだろう。ほかにも、起業家イーロン・マスク氏のテスラ・ギガファクトリー(米国ネバダ州)などが、自動車用、家庭用、事業用に畜電池の大量生産をめざしている。太陽光や風力による発電能力が上がるにつれ、エネルギー貯蔵分野の競争がもっとさかんになることをアジズ氏は期待している。しかし今後の電力貯蔵用電池の市場の巨大さを考えると、「最も安価な電池でさえ、需要をすべて満たすにはおそらく相当な時間がかかるでしょう」

*5-3:http://mainichi.jp/feature/news/20151002k0000e030212000c.html
(毎日新聞 2015年10月2日) 温室効果ガス:インド2030年に33〜35%削減を目標
 インド政府は1日(日本時間2日未明)、温室効果ガスの排出量について、2030年に国内総生産(GDP)当たり05年比で33〜35%削減する目標を国連に提出した。インドは世界第3位の排出国だが、削減目標を国際的に公約するのは初めて。1日は国連への提出期限となっており、中国やブラジルなどの主要国も含め148カ国・地域の目標が出そろった。排出削減について、京都議定書は先進国が対象だったが、11月30日からパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)では途上国も含め、すべての国が参加する温暖化対策の新枠組みを目指している。世界の排出量の9割近くを占める148カ国・地域の目標が出そろったことで、合意への動きが加速しそうだ。インドは、これまで20年までにGDP当たりの排出を05年比20〜25%減とする目標を掲げていた。新目標では、二酸化炭素(CO2)を排出しない非化石エネルギーの総発電量に占める割合を30年までに40%に増やすことや、CO2を吸収する森林量を追加することなど、達成に向けた具体策も挙げた。一方で、これらを実行するためには、先進国からの資金支援が欠かせないことも明記した。インドでは、大気汚染や温暖化に伴う熱波や洪水などの災害が深刻化し、対策を求める世論が高まっていた。ただし、経済発展が前提との姿勢は変えておらず、将来のGDPに基づく相対的な目標にとどめ、総排出量には上限を設けなかった。
◇主要国の温室効果ガス削減目標
 中国 2030年にGDP当たり05年比60〜65%減(遅くとも30年を排出のピークとする)
 米国 25年に05年比26〜28%減
 欧州連合 30年に1990年比40%以上減
 インド 30年にGDP当たり05年比33〜35%減
 ロシア 30年に90年比25〜30%減
 日本 30年に13年比26%減
 韓国 30年に対策を取らなかった場合に比べ37%減
 カナダ 30年に05年比30%減
 ブラジル 30年に05年比43%減
 メキシコ 30年に対策を取らなかった場合に比べ25%減
 インドネシア 30年に対策を取らなかった場合に比べ29%減
 豪州 30年に05年比26〜28%減
 南アフリカ 遅くとも25年を排出のピークとする


PS(2015年10月12日追加):福島第1原発事故と関係した支出増や収益減について、東電に請求するのは当然であり、広範囲で長期に多額の費用がかかるのが原発事故の特質だ。しかし、「風評被害対策費」と書かれているのは、本当に噂だけで害がないのであれば、科学的根拠を明らかにしてそれを説明すれば受け入れられる筈で、「害があるかどうかわからないから、気をつける」というのは、正当な注意であって風評被害とは言わない。

*6:http://mainichi.jp/select/news/20151012k0000e040134000c.html
(毎日新聞 2015年10月12日) 福島第1原発事故:東電と6県1市係争 損害賠償など
 東京電力福島第1原発事故後、福島県を含む17都県と7政令市が放射線検査の経費など総額563億6000万円を損害賠償請求したところ、200億円余について東電が応じず、6県1市が原発ADR(裁判外紛争解決手続き)で係争中か近く申し立てる方針であることが分かった。住民や法人と比べて補償の枠組み作りが遅れているためで、自治体担当者は「国がもっと具体的に関与する必要がある」と指摘している。毎日新聞が全都道府県と政令市を対象に取材し、8月末時点の請求額や内容をまとめたところ、東北、関東地方は全ての都県と政令市が賠償請求、三重県や島根県も放射線測定の機器購入費などを請求していた。自治体関係者によると、東電は(1)水道、下水道など公営企業の減収(2)学校給食や農畜産物の放射線検査費(3)放射性物質を含む廃棄物の処理・保管費−−など計362億9000万円分について賠償の対象と認めた。だが、項目によっては期限を切っている上に、福島県の住民税等減収分▽秋田県の風評被害対策費▽群馬県の被害者支援費などは応じていないという。こうした東電の姿勢に不満で迅速な賠償が必要として、青森、秋田、山形、宮城、千葉の5県が原発ADRを申し立て、群馬県と仙台市も近く申し立てる。岩手県は既に2億5000万円の支払いで和解した。東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)によると、県とは別に大半の市町村が賠償請求しており、総額は628億8000万円。このうち東電が賠償に応じているのは86億5000万円分にすぎなかった。3県以外の市町村も請求しているケースがあり、自治体請求は全国で1200億円を超えるとみられる。東電は取材に対し「原子力損害賠償紛争審査会の中間指針などを踏まえ、必要かつ合理的な範囲を賠償している」とコメントした。
◇例がない広がり
吉村良一・立命館大法科大学院教授(環境法)の話 自治体による企業への損害賠償請求としては金額、広がりともに過去に例がない規模で、原発事故の特質をよく表している。天災でも人災でも住民が困っていれば対応するのは自治体の本来業務だが、今回は長期に負担がかかり本来業務を超えている。


PS(2015年10月13日追加):薩摩川内市は、既に新幹線が開通しているので、原発再稼働はせず、豊かな自然や広い土地を活かした21世紀の街づくりをした方が将来のためになると、私も考える。

   
                           薩摩川内市の様子
*7:http://digital.asahi.com/articles/ASHBD5416HBDTLTB001.html
(西日本新聞 2015年10月12日) 川内原発再稼働は「自殺行為」 鹿児島で1800人集会
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)2号機の再稼働に反対する集会が12日、鹿児島市のJR鹿児島中央駅前であった。九州各地の脱原発団体メンバーら約1800人(主催者発表)が参加。九電が15日にも予定する2号機の再稼働中止や、8月から稼働している1号機の停止を訴え、中心街をデモ行進した。市民グループ「ストップ再稼働! 3・11鹿児島集会実行委員会」の主催。アイドル「制服向上委員会」のライブの後、参加者が口々に原発に反対する思いを述べた。川内原発建設反対連絡協議会の鳥原良子会長は、8月に川内1号機が再稼働した地元・薩摩川内市について「運転開始から30年が過ぎた川内原発と同じく、まちくりの発想が老朽化している。原発に頼り切って、発想の転換がなかなか図れません」と指摘した。 「原発いらない!宮崎連絡会」の小川渉さんは「川内原発で事故が起きれば、偏西風で自分が住む宮崎県綾町も被害を被る」と懸念を訴え、「九電の姿勢を変えさせるため、電力自由化されたら、原発を稼働する九電から買わないことを実践しよう」と呼びかけた。九州電力は、2009年に2号機の原子炉建屋内にある蒸気発生器を耐食性に優れたものに取り換えることを計画しながら、今回は実施せずに再稼働する。集会ではこれを「自殺行為」と断じて再稼働に反対するアピールを採択した。


PS(2015年10月14日追加): *8-1、*8-2のように、2013年11月に、世銀と国連は原発の援助はしないことを表明し、新エネルギーに舵を切っている。また米国では、*8-3のように、「シェールガスの普及で電力価格が下がり採算性が悪化した」として東部にある原発を4年後までに停止して廃炉にするそうで、原発はフェードアウトしつつある。そのような中、*8-4のように、2015年10月13日、日本の岸田外相がイランの原子力利用を支援することを約束したのは、時代を読めず、民主主義に対する理解も乏しく、当時のドイツ、イタリアと同盟を結んで第二次世界大戦に突っ走って行った構図と似ている。

*8-1:http://www.afpbb.com/articles/-/3004099
(AFP 2013年11月28日) 「原発は援助しない」、世銀と国連が表明
 世銀のジム・ヨン・キム(Jim Yong Kim)総裁と国連の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長は、2030年までに世界中の全ての人が電力の供給を受けられるようにする取り組みについて記者団に説明した。その中でキム総裁は「われわれは原発は行わない」と明言した。キム総裁によると、世銀は来年6月までに42か国の発電計画をまとめる予定。電力網の整備やエネルギー効率の倍増、再生可能エネルギー比率の倍増などを掲げ、目標達成には年間およそ6000~8000億ドル(約61兆~82兆円)が必要になるとしている。しかしキム総裁は、集まった資金は新エネルギー開発にのみ使用すると報道陣に明言。「原子力をめぐる国家間協力は、非常に政治的な問題だ。世銀グループは、原発への支援には関与しない。原発は今後もあらゆる国で議論が続く、たいへん難しい問題だと考えている」と述べた。

*8-2:http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/158086 (日刊ゲンダイ 2015年3月14日) 「投資対象にしない」 世界銀行が突きつけた原発への“絶縁状”
 国連防災世界会議に出席するため来日した世界銀行のキム総裁が13日、外国特派員協会で会見を開き、反原発の姿勢を鮮明にした。「難しい問題だが、原発はリスクが未知数なため、世銀は投資の対象にはしない。炭素税導入で、火力発電によるCO2排出量を抑えると同時に、地熱、水力などのクリーンエネルギーへの投資を拡大するべきと考えている」。キム総裁は9日にもワシントン市内で原発の危険性に関し、懸念を表明。福島原発事故について、「フクシマの技術は最先端ではなかった。新しい技術で本当に安全な原発ができるのか。核廃棄物の貯蔵や取り扱いを安全にできるのか。その証拠を示せなければ国民の納得を得るのは難しい」と語り、原発の安全性を強調し、再稼働に突き進もうとしている安倍政権を批判した。
■原発向け融資は控えたまま
 途上国が原発を建設する場合、先進国の企業がセールスをかけ、発注する国は受注した企業などからの資金を受けて建設する。その後、発電所の電気料金の収入で債務を返済していくケースが一般的だ。受注者の多くは米国、ロシア、中国、韓国などの企業だが、もちろん日本も名を連ねている。昨年4月にはトルコ、UAEへの原発輸出を可能にする原子力協定が参院本会議で承認され、安倍首相がセールスに意欲満々なのは周知の通りだ。ところが、世銀は1959年にイタリアの原発施設に4000万ドル貸し付けて以来、原発向けの融資は控えている。この日のキム総裁の発言は縁切り宣言みたいなものだ。今や反原発が世界の潮流であることを国民も知るべきだ。

*8-3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151014/k10010269141000.html
(NHK 2015年10月14日) 米東部の原発 採算性悪化などで廃炉へ
 アメリカ東部にある原発について、運営する電力会社は、シェールガスの普及で電力価格が下がり採算性が悪化したなどとして、4年後までに運転を停止して廃炉にすると発表しました。廃炉が決まったのはアメリカ東部マサチューセッツ州にあるピルグリム原発で、運営する電力会社、エンタジー社は、遅くとも2019年6月までに運転を停止して廃炉に向けた作業を始めるとしています。その理由について、エンタジー社は、シェールガスの生産量が増えたことによる電力価格の低下や、安全対策にかかる費用が増えたことで運転コストが上昇し、採算性が悪化したためだと説明しています。ピルグリム原発は、東京電力福島第一原子力発電所の1号機などと同じ型の原発で、1972年から営業運転を続けていますが、ことし1月、外部電源が失われて原子炉が自動停止するなどトラブルが相次いでいました。このため、アメリカのNRC=原子力規制委員会は、先月、この原発の安全性の評価を全米で最も低いランクに位置づけていて、地元からは、安全対策への懸念を指摘する声も上がっていました。エンタジー社は去年12月、アメリカ東部にある別の原発の運転も停止していて、アメリカでは、この数年で採算性の悪化を理由に5つの原発の廃炉が決まっています。

*8-4:http://digital.asahi.com/articles/ASHBF1TQPHBFUHBI004.html
(朝日新聞 2015年10月13日) 日本、イランの原子力利用を支援へ 外相会談で合意
 岸田文雄外相が12日、イランを訪問し、首都テヘランで同国のザリフ外相と会談した。両者はイランによる原子力の民生利用を日本が支援することで一致。東京電力福島第一原発事故などを教訓に、地震への備えや事故時の対処について知識を授ける。また、両国は投資協定を結ぶことでも合意した。米欧など6カ国とイランが7月に結んだ核合意は、イランに発電や医療のための小規模な核開発を認めるかわりに、「原子力安全センター」をつくって専門知識や技術を習得するように定めている。合意文書には「6カ国か他の国がセンター設立に協力する」とだけ書かれており、日本が名乗りを上げた形だ。外相会談後に発表された共同声明によると、日本はセンターに専門家を派遣。原子力事故が起きた場合の対応策や、耐震構造の重要性、核物質の計量や管理についてイラン側に研修する。核合意を履行する準備が整う来年以降に行われる見通しだ。岸田外相は「日本が知見を有する分野で貢献し、協力を続けたい」と述べた。また、日本とイランは投資協定を結ぶことで合意した。イラン進出を考える日本企業には追い風となる。イランとの投資協定はドイツやフランス、中国や韓国など52カ国が結んでおり、交渉開始から約1カ月のスピード合意となった。経済、環境など様々な分野で連携する「日・イラン協力協議会」の立ち上げでも一致。ザリフ外相は会見で「両国の関係は非常に明るい展望がある」と話した。


PS(2015/10/14追加):*9のように、「女性は感情的であって科学的でない」などとするのは、女性蔑視に基づく女性差別であって質が悪すぎる。これに対する私の回答は、「馬鹿も休み休み言え」だ。

*9:http://www.mutusinpou.co.jp/%e6%97%a5%e6%9b%9c%e9%9a%8f%e6%83%b3/2015/10/38423.html
(陸奥新報 2015/10/11 ) 「女性と原子力問題」感情的ではなく科学的に
 「原子力を国民の手に」をスローガンとして2年前に発足した原子力国民会議が主催する集会が東京であり、私も参加した。同会はわが国の経済・エネルギー、地球温暖化など、いわゆる「3E」(経済性、環境問題、エネルギー安全保障)を考えるとき、原子力は不可欠なものであり、安全性が確認された原発は早急に再稼働させ、本県に立地する核燃料サイクル事業の早期竣工も願って結成されたもので、原子力に関する知識や情報を発信するとともに、政府などへの提言を積極的に行ってきている。しかし約4年8カ月前の福島第1原発重大事故以来、原子力への不信を募らせ、原発再稼働にも反対だとする国民が多いのも確かだ。こうした状況を受け、集会のテーマは「原子力の誤解を考える」であり、原子力に反対する人は女性に多いこともあって、「女性の目線から考える」がサブテーマであった。内容は3人の女性講師による講演と、講師と女子学生3人とのディスカッションである。結論から言うと、3講師は「女性の目線」には違和感をもっておられ、客観的に考えなければならぬ時、「女性の目線」も「男性の目線」もないのだとした。免疫学が専門の宇野氏は福島原発事故を振り返り低線量放射線に怯えるあまりに強いストレスを感じ、免疫が低下した事実を上げ、感情に左右されることの恐ろしさを客観的に紹介した。原子力が専門の村上氏は、福島事故以後、世界的に原発開発が衰退したなどとする誤解を事実に即して批判した。ジャーナリストの細川氏はマスメディアが反原発を感情的にあおっていることの危険を批判した。講演の内容はいずれも「女性の目線」からではなく、事実を客観的に捉えようとする「目線」からのものであったが、それはさらにディスカッションにおいて明確に主張された。司会者の質問に答え、学生が「リスクがゼロでなければ自身が母親ならば避難する」としたが、村上氏は、研究者として、妊娠時にも原発の管理区域に入った経験から、「原子力・放射線に対しては女性も男性もない。命を大切にするのは母親だけではない、あるのは事実に基づく行動だけ」とし、細川氏は「女性に原子力反対が多いのは勉強不足に尽きる」と断言した。すなわち、科学的事実に基づいて行動することに女性も男性もなく、さらに言えば「女性の目線」とは事実を求めるのではなく、己の感情に基づく見方でしかなくなる危険性もあると主張されたのだ。私は、社会の様々な事象や場面において「女性の目線」が必要な時もあろうが、原子力を含め、科学的に考え行動することが求められる時には不必要であり、問題の解決を遅らせ、誤まらせる危険すらあると思っている。(青森地域社会研究所特別顧問 末永洋一)


PS(2015.10.15追加):*10-1のように、トヨタ自動車が今から35年後の2050年までにエンジンだけで走る自動車の販売をほぼゼロにする目標を発表し、自動車革命を「天変地異」などと言っているようでは、2050年にはトヨタ自動車はなくなっているだろう。何故なら、日本では、今から20年も前に電気自動車に必要な技術開発を始めたため、そのつもりで準備していれば、今頃は技術者の再教育や更新も完了して準備が整っていた筈であり、それをやっていなかったのなら、経営者に洞察力がないということだからだ。なお、*10-2の本命については、HVは経過的妥協作にすぎず、環境車の本命はEV、FCVだ。また、大地震の中、都市で避難することなどを考えれば、FCVよりもEVの方が爆発せず安全であるため、自家用車はなるべくEVで、EVでは馬力の足りない大型のバス、トラック、航空機、大型船はFCVという選択になるだろう。つまり、これは、エンジンを電動系に変えてトップに立つチャンスでもあったのだ。

*10-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151015&ng=DGKKASDZ14HYT_U5A011C1EA2000 (日経新聞 2015.10.15) トヨタ、50年にエンジン車ゼロ、燃料電池車などシフト 環境目標
 トヨタ自動車は14日、2050年までにエンジンだけで走る自動車の販売をほぼゼロにする長期目標を発表した。ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)の比率を高めて新車の走行時の二酸化炭素(CO2)排出量を10年比9割減らす。自動車の開発競争の中心がエンジンから電池や制御ソフトなど「電動化技術」に移り産業構造にも影響を与えそうだ。
●「天変地異だ」
 トヨタは5カ年の環境計画を設定し、HVの普及などに取り組んできた。14日は新たに21年3月期までの計画を公表するとともに、初めて50年までの長期目標「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表した。「長年にわたってHVやFCVの開発に取り組んできたが地球環境は日々悪化している。20年、30年先を見据えたより高い水準の新たな挑戦が必要と考えた」。14日の説明会でトヨタの内山田竹志会長は強調した。長期目標では新車の走行時のCO2排出量を9割減らす方針だ。車両1台生産する際に排出するCO2の量も段階的に削減しゼロを目指す。工場で省エネを一段と進めると同時に、風力発電など自然エネルギーや水素の利用を進める。記者会見した伊勢清貴専務役員は「エンジンだけを搭載した自動車は生き残れない。エンジン車がなくなるのは(自動車メーカーにとって)天変地異だ」と述べた。トヨタは世界で販売するほぼすべての車を50年までにFCV、HV、家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)とする目標を示した。目標の達成に向け、FCVとHVの販売拡大を今後5年間の実行計画の柱に据えた。同社は14年12月に発売したFCV「ミライ」の生産体制を段階的に増強している。17年には年間3千台規模にする。さらに20年をメドに販売台数を一気にこの10倍に当たる3万台以上に引き上げる。国内では月1千台の水準にする。日産自動車のEV「リーフ」と同じ規模だ。
●新興国でも拡販
 HVの販売は20年までに14年実績より18%多い年間150万台に増やす。トヨタは1997年に世界初の量産型HV「プリウス」を発売した。HVの累計販売台数は今年7月に800万台を超えた。ただ大半を北米と日本で売っている。今後はコスト低減によって価格を抑えて、中国など新興国でも販売を増やしていく考えだ。トヨタはHVで培った制御ソフトなどの技術をFCVやEVなどに幅広く活用できるとみている。燃料電池で作った電気でモーターを動かすFCVは「HVと共有できる部品が多い」(トヨタ幹部)。現在、ミライの価格は700万円台と割高だが、HVの量産効果を取り込んで価格を引き下げていく。エコカーの動力源として電池やモーターなどの重要性が高まれば、自動車産業の構造にも影響を与えそうだ。電機メーカーやIT(情報技術)企業にとっては自動車関連事業を拡大するチャンスが広がる。エンジン部品メーカーなどは事業構造の見直しを迫られる。伊勢専務も「トヨタの体質を変えないといけない」と指摘。新環境目標はトヨタグループの構造改革につながっていく可能性がある。

*10-2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20151015&c=DM1&d=0&nbm=DGKKASDZ14HYT_U5A011C1EA2000&ng=DGKKASDZ14HYZ_U5A011C1EA2000&ue=DEA2000 (日経新聞 2015.10.15) 次の本命まだ見えず
 電池や制御ソフトといった電動化技術が世界の自動車業界で競争の焦点となってきた。トヨタ自動車はハイブリッド車(HV)で培った技術を燃料電池車(FCV)に応用する。ディーゼル車の排ガス不正問題に揺れる独フォルクスワーゲン(VW)は、電気自動車(EV)に開発の軸足を移すことを表明した。いずれの技術も本格的な普及には課題がある。「FCVは二酸化炭素(CO2)を排出せず、走行距離も長い。水素の充填にかかる時間もガソリン車並みだ」。14日の記者会見でトヨタの伊勢清貴専務役員はFCVがエコカーの本命になるとの見通しを示した。自動車大手ではホンダや米ゼネラル・モーターズ(GM)などもFCVの販売を計画している。水素ステーションの整備が本格的な普及のハードルとなっている。設置には1カ所当たりガソリンスタンドの約5倍に当たる5億円程度がかかる。日本国内の開設は2016年3月期までに100カ所程度にとどまる見通し。EVを手掛ける米テスラ・モーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は「インフラ整備は難しい」と指摘する。EVはテスラや日産自動車が重点投資する。中国メーカーも開発に熱心だ。VWはイメージが悪化したディーゼル車に代わってエコカー開発の主軸に据えた。小型EV向けの新たな車台(プラットホーム)を開発し、複数のブランドで共用する。最上級セダン「フェートン」の新モデルはEVにする計画だ。そのEVにも課題はある。日産は12月「リーフ」の新モデルを発売する。1回の充電で従来より約2割長い280キロメートルを走行できる。それでも航続距離はガソリン車などに及ばないのが実情だ。販売地域も環境規制が厳しい米カリフォルニア州などに偏っている。各社は電池の性能向上に力を入れ一定の成果を上げているが、トヨタ幹部は「充電時間を短縮する技術のメドは立っていない」と指摘する。エンジンは約1世紀にわたり自動車の動力源の主役を担ってきた。しかし各地で強まる環境規制を乗り越えるには限界もみえてきた。各社はそれぞれの課題を解決するスピードが問われている。


PS(2015年10月23日追加):*11-1のように、自動運転技術開発が加速していることや、*11-2のように、レクサスなど燃料電池車の種類が増えるのはよいことだが、日本では、前者は提案してから5年、後者は20年以上経っており、「今頃、そんなことを言っているのか」と思われる。そして、電気自動車の方が仕組みが簡単であるにもかかわらず、*11-2に書かれているような「環境意識の高い消費者に高額の商品を売りつけ、環境に悪影響を与えているフリーライダーが低額の商品を使う」という考え方は、環境維持を必要条件とする21世紀において、あまりにも意識が低く、質が悪い。
 また、*11-3のように、米電気自動車(EV)メーカー、テスラモーターズが革命的な家庭用蓄電池「パワーウォール」を開発したが、日本のメディアや展示会はこれを黙殺し、「日本の木造住宅だと壁をかなり補強しないと設置できない」などの欠点を挙げるだけで、工夫と改善でよりよいものにしていく気が感じられない。これでは、当然、駄目なのである。

*11-1:http://qbiz.jp/article/73004/1/ (西日本新聞 2015年10月18日) 自動運転車実用へ加速 走行安定、乗り心地も快適 異業種の開発参入続々
 ハンドルやペダルを操作しなくても、車が勝手に目的地へ運んでくれる−。自動運転技術をめぐり、国内外の自動車メーカーや情報技術(IT)企業による技術開発競争が加速している。高速道路上の自動運転は数年内に実用化する見通しで、実現すれば人為ミス回避による安全性向上や渋滞緩和が期待される。完全自動運転の普及へ向け、法令の見直しなど官民による環境整備も本格化しそうだ。6日、トヨタ自動車が都内で開いた自動運転実験車の試乗会。「自動運転に入ります」。運転者がハンドルのスイッチを押す。両手をハンドルから離し、足をペダルから下ろした。それでも車は走り続け、首都高速道路の本線に合流。一般車も走行する約8キロのコースを、微妙な加減速を繰り返しながら走り切った。試乗した記者がひやりとさせられる場面は一度もなく、乗り心地は快適そのもの。車線変更まで自動でこなすことには驚かされた。高性能センサーなどを駆使して周囲の状況を把握し、人工知能がそれらのデータや高精度地図情報などを基に適切な操作を瞬時に判断するという。トヨタはこの日、東京五輪が開かれる2020年をめどに高速道路での自動運転技術を実用化すると表明した。いかなる状況でも正常な動作を保つ精度やコストに課題を残すというが、「手放し運転」が実現する日は遠くなさそうだ。
●16年発売視野 
 自動運転をめぐっては、日産自動車が高速道路で利用可能な車の16年発売を目指しホンダも近い将来の商品化を視野に入れている。海外勢ではドイツ・アウディや米ゼネラル・モーターズなども開発に力を注ぐ。異業種からも参入が相次いでいる。ディー・エヌ・エー(DeNA)はロボット開発ベンチャーのZMP(東京)と合弁会社を設立、20年の自動運転タクシー実用化に向け、16年1月にも実証実験を始める。米IT大手のグーグルも、自社設計の自動運転車開発に本腰を入れる。「自動運転は、クルマの概念を根底から変える可能性がある重要な技術だ」(自動車メーカー幹部)。各社の開発競争は激しさを増している。
●法整備は必要 
 自動運転技術は実用化済みの「運転支援機能」から「完全自動走行」まで四つのレベルに区分される。トヨタや日産が現在、高速道路で実用化を目指す技術は、運転者が必要に応じて操作するレベル2に相当。現行の道路交通法下でも導入できる見通しだ。民間調査会社の矢野経済研究所(東京)は、レベル2の車が20年に世界で360万台、30年には3155万台に増えると予測。緊急時以外は運転者が操作しないレベル3も実用化に向けた開発が進み、30年時点での普及台数は979万台に達するとみている。一方、道交法や国際条約では、自動車は「運転を制御できるドライバーが乗っている」ことが前提。レベル3以上では、この想定が根底から変わるため、事故の責任を負うのが運転者かメーカー側かなどについて法整備が必要。警察庁は月内にも、法律上の課題について検討作業を始める。さらに完全自動運転の普及には交通インフラの整備のほか、車同士の通信技術の高性能化や高精度地図の導入なども不可欠。関係企業が業態を超え、協調を求められる局面も出てくる見通しだ。自動運転車 IT技術を使ってハンドルやブレーキを自動で操作し、走行できるシステムを搭載した車。高性能センサーやレーダー、カメラなどで走行中の周辺状況をリアルタイムで把握し、人工知能システムが加減速や停止を判断し、操縦を担う。技術レベルが四つあり、最終的には運転者が運転に全く関与しない完全自動運転車の実用化が見込まれるが、センサーなどのさらなる技術開発が不可欠とされる。

*11-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151023&ng=DGKKASDZ22HKZ_S5A021C1MM8000 (日経新聞2015.10.23)「レクサス」でも燃料電池車 トヨタ、20年メド販売へ
 トヨタ自動車は高級車ブランド「レクサス」で燃料電池車(FCV)を販売する検討に入った。東京五輪が開かれる2020年をめどに発売を目指す。レクサスは環境性能の高さが売り物で、最先端のFCVも用意しブランド価値を高める。トヨタは20年ごろにFCVの年間販売を3万台以上に増やすべく、次世代車は月産3千台に高める方針を部品各社に伝え始めた。現行のFCVは国内では1900店で扱っているがレクサス店でも扱い普及を加速する。トヨタは14年に発売した世界初の量産型FCV「ミライ」の後継車種開発に着手している。コストが低く造りやすい基幹部品を開発し同じものを両ブランド車に載せる。レクサスでは大型セダン「LS」にFCVを設定する案が有力だ。現行のミライは約720万円で、現行車種が約850万円からのLSでの価格は未定。レクサスは富裕層を顧客に抱え環境意識の高い消費者に訴える。次世代車では水素と酸素を反応させて電気を取り出す基幹部品「燃料電池スタック」に使う白金を減らし、水素漏れを防ぐ工程などを短縮し生産を増やす。

*11-3:http://diamond.jp/articles/-/78018
(週刊ダイヤモンド 2015年9月8日) テスラの家庭用蓄電池「価格破壊」の盲点
 「革命的だ!」。突如、蓄電池市場に現れた黒船、米電気自動車(EV)メーカーのテスラモーターズの家庭用蓄電池「パワーウォール」(PW)に業界関係者たちは当初、拍手喝采した。破格的な安値で勝負してきたからだ。日本メーカーのそれは、1日の日中に使う電力を賄えるとされる容量5キロワット時なら100万円以上で、1キロワット時当たりおよそ20万円の計算だ。対してPWは7キロワット時で36万円。1キロワット時当たりわずか約5万円だ。テスラのイーロン・マスクCEOは5月にPWを発表。直後のドイツの太陽光関連展示会「インターソーラー・ヨーロッパ」では、実物大サンプルがお披露目された。7月の日本の展示会「PVJapan2015」でも披露が期待されたが、残念ながらEVだけ。担当者によれば、「日本では2016年以降の出荷予定だが、価格など詳細は未定」。日本市場への正式発表はまだ先となっている。それにしてもなぜこんなに安いのか。太陽光発電製品を扱う関係者の間では、「EV用に大量仕入れしたパナソニック製リチウムイオン電池のおかげ」との声が一般的。一方で、「シェア拡大のためのフラッグシップ製品で採算性を度外視」との見方もある。「設備投資の資金を金融機関や投資家から引き出すアドバルーン」だというのだ。もっとも、価格には、電力を直流から交流に変換するインバーターが含まれていない。これを含めると70万~80万円程度になるとみられる。EVとの併用ならカーポートへの設置が便利だが、「住宅に配線するなら電気工事費がさらにかさむ」(業界関係者)という。非常用電源や余剰電力の売電、省エネシステムとの組み合わせによる節電などで使える蓄電池。日本では国から導入補助金が出るが、蓄電池単体では導入費に対する金銭的メリットが小さい。太陽光パネルなどと一緒に導入するのが一般的で、なかなか普及していない。そこに革命児のごとくPWが現れるのだが、その安さは額面通りに受け止められそうにない。また、国内発売を心待ちにする業界関係者はある盲点に気付いてしまった。
●木造住宅は補強が必要
 従来の日本製は地面に基礎を打ち設置するが、PWは壁掛け式。故に簡易施工で場所も取らないというのが売り文句だ。製品仕様では、重量100キログラム、大きさは高さ130センチメートル、幅86センチメートル、奥行き18センチメートル。これほどのものを取り付けるとなると、「日本の木造住宅だと壁をかなり補強しないと設置できない」(前出の業界関係者)のである。このままでは補助金の対象にならないともされる。
*ドイツの展示会では実物大のサンプルが出展されたが、日本の展示会ではEVだけだった。


PS(2015年10月31日追加):上記や*12-1、*12-2のように、とっくに再生可能な自然エネルギーによる水素社会・電力社会という解を出して実現させているにもかかわらず、まだピンと来ず、ガソリンエンジンやロータリーエンジンを改良したり、火力か原発かという選択肢を振りかざしたりしている愚か者は、意思決定に関わらないのがBestだ。なお、*12-3の燃料電池船が市場投入されれば、①漁業者が燃油高騰で漁に出られないということがなくなる ②燃油に支払っていた金が地元で廻る ③港を油で汚さない など、地球環境以外にも多くの問題解決ができ、メリットが大きいのだ。

*12-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151029&ng=DGKKASDZ28HUG_Y5A021C1TI1000 (日経新聞 2015.10.29) 未来のクルマ 楽・守・技、東京モーターショー、きょう開幕 トヨタ、燃料電池車を核に/ホンダ、欧米での展開視野
 世界の自動車メーカーが出展する「第44回東京モーターショー2015」が29日、東京ビッグサイト(東京・江東)で開幕する。各社は燃料電池車(FCV)や自動運転など最新の技術を盛り込んだ車を披露し、環境性能や安全性を前面に打ち出す。「走る楽しさ」に軸足を置いた車も多く登場。先進国中心に車離れが進むなか、環境・安全を守る技術と楽しさを切り口に持続的な成長を目指す。28日の報道機関向けの事前公開ではFCVのお披露目が相次いだ。トヨタ自動車は高級車ブランド「レクサス」の旗艦モデルを想定したコンセプト車「LF―FC」を初公開。2014年末に発売した「ミライ」に続くFCVをレクサスでも20年以降に投入する考えを正式に表明した。今回のモーターショーには作った電気を他の自動車などに供給できるFCVのコンセプト車も出展。今後のエコカー戦略ではハイブリッド車(HV)に次ぐ柱として、FCVを推し進めていく立ち位置を明確にした。ホンダも初の量産型FCV「クラリティフューエルセル」を世界で初披露。16年3月から官公庁などへのリース販売を始め、増産体制が整った段階で市販する。水素と酸素を反応させる発電装置をホンダの従来のFCVより33%小さくし、大人5人が快適に座れるようにした。八郷隆弘社長はクラリティについて、「環境性能はもちろん、運転する楽しさや使う喜びも持つ」と述べ、欧米でも展開する考えを明らかにした。グーグルなどの異業種も加わり、新たな競争軸となった安全性能や自動運転の技術では日産自動車が20年以降の自動運転車をイメージしたコンセプト車「IDSコンセプト」を出展した。自動運転時にはハンドルを収納して車内スペースを広げるほか、人工知能(AI)を使って運転手の体調や気分を検知。最適なレストランを案内するといった機能も併せ持つ。富士重工業は独自の運転支援システム「アイサイト」を進化させた「スバル・ヴィジヴ・フューチャー・コンセプト」を出展した。高速道路での自動運転や自動駐車を可能とし、20年に量産車への搭載を目指す。吉永泰之社長は「スバルの自動運転はハンドルを無くすためのものではない。安心と楽しさを目的とする運転手のための運転支援技術だ」と述べた。20年をめどに高速道路での自動運転車の販売を目指すトヨタの豊田章男社長は「すべての人に運転の楽しさを提供するために必要な技術だ」と強調。そもそも運転が難しい高齢者や障害者でも自由に移動できるようにするため、従来より踏み込む開発姿勢を示した。クルマ本来の魅力である走りや運転する楽しさに焦点をあてた車の展示も目立つ。マツダは12年に生産を終了したロータリーエンジンを積むコンセプト車「RX―VISION(アールエックス・ビジョン)」を出展。ロータリーエンジンの力強い走りには中高年層を中心に根強いファンが多く、小飼雅道社長は「私たちの将来の夢を託した」と語った。ホンダは05年に生産を終えた「NSX」の新型車、トヨタも大きさが小型車「ヴィッツ」並みのスポーツカー「S―FR」を公開した。少子高齢化や若者の車離れを背景に国内の新車販売は1990年の777万台をピークに減少傾向にあり、14年は556万台まで落ち込んだ。各社とも最新の技術に磨きをかけると同時に感性に訴える車づくりで新たな需要の喚起を狙う。

*12-2:http://qbiz.jp/article/73925/1/ (西日本新聞 2015年10月31日) 【温室ガス削減】脱原発との両立に悩む日本 脱温暖化、脱原発 両立議論は不十分
 11月末からパリで開かれる条約締約国会議(COP21)に向け、世界各国が既に公表した温室効果ガス削減目標を達成したとしても今世紀末の世界の平均気温は、国際目標の「2度未満」に抑えられないことが明らかになった。今後、先進国は一層の削減を発展途上国から求められる可能性が高い。ただ、日本の温暖化対策は福島第1原発事故の後、原発に対する是非論に議論が集中。脱原発と温暖化の防止をどう両立させるべきかについて議論が深まっているとは言えない。「(欧州連合に比べて見劣りする、日本の温室効果ガス削減目標に対し)強い批判が少ないのは、日本のエネルギーミックスの厳しい現状が理解されているからだ」。COP21のホスト国であるフランスの政府関係者はこう指摘する。「2030年までに13年度比で26%削減する」。この日本の削減目標については「不十分だ」と、国内外の非政府組織などから批判も出ている。ただ、やり玉に挙げられている、とまでは言えない。原発推進への国民批判が根強く、短期的には火力発電の依存を減らせないことへの世界からの「同情」とも取れる。電力業界の二酸化炭素(CO2)排出量は国内の約4割。九州電力によると、川内原発2基が1年間稼働すると、CO2を約900万トン削減できるという。原発ゼロ時の排出量から2割弱減らせる計算だ。政府も電力業界も、原発再稼働を削減の短期的な“切り札”と位置づけている。ただ、これには異論がある。東北大の明日香寿川教授(環境科学政策)によると、30年にエネルギー使用を10年比で3割減らし、再生可能エネルギーの電力比率を現状の10%余から35%に引き上げれば、原発なしでも欧州連合(EU)並みの排出削減は可能。原発比率25%を確保した場合と比べても、電気料金も大きく変わらないという。明日香教授は「中長期的に再生エネと省エネを進めれば、脱原発と温暖化防止は両立できる」と訴えている。

*12-3:http://www.asahi.com/articles/ASH874SV6H87ULBJ008.html
(朝日新聞 2015年8月8日) 燃料電池船、走り出す 国内初、実証実験スタート
 長崎県五島市沖で燃料電池船の実証実験が始まった。年内いっぱい、安全性や航行性能を確認し、実用化に向けた課題を洗い出す。燃料電池船は日本では初めてという。事業は環境省の委託で、戸田建設(東京都)が中心となって行う。漁船を想定した全長12・5メートルで12人乗りの小型船舶がモデル。450リットルの水素タンクを備え、燃料電池で発電した電気でモーターを動かす。速度は20ノット(時速約37キロ)で一般的な漁船並みだが、1回の水素燃料の補給で航行可能な時間は2時間とまだ短い。五島沖には環境省の委託で戸田建設が設置した浮体式洋上風力発電がある。ここで発電して余った電気を使い水素を作る実証実験も行われている。燃料電池船は、この水素を使っており、水素製造時も大気汚染物質や二酸化炭素(CO2)を出さない。戸田建設の担当者は「再生エネルギーで海を使わせてもらっている。燃料電池船を実用化して漁業者に喜んでもらいたい」と話している。

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