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2015.10.13 普天間基地の閉鎖と辺野古の基地建設問題について (2015年10月14日、15日、28日、11月1日、27日に追加あり)
    
 2015.10.13                辺野古の位置と地形            2015.5.31 
 沖縄タイムス                                          朝日新聞
 
(1)沖縄県の辺野古埋め立て承認取り消し
 普天間基地の辺野古移設については、*2-1のように、2013年12月に仲井真前知事が政府による辺野古沿岸部埋め立て申請を承認し、2014年11月の沖縄県知事選では、辺野古移設反対を公約に掲げた翁長氏が仲井真氏を破って、新知事に当選した。

 しかし、*1-1のように、仲井真前知事は、翁長新知事(前那覇市長)が知事に就任する直前に工法変更の承認まで行っていたため、翁長新知事が、*2-3のように、承認過程を検証する第三者委員会にかけた上で、「承認の手続きに瑕疵がある」として承認を取り消した。私は、2013年12月の仲井真前知事の誰かに脅されたかのような突然の翻意や2014年12月の知事交代直前の工法一部変更承認には疑問が多いため、仲井真知事の判断や承認手続きには、本質的な瑕疵が潜んでいそうだと考える。

 そして、*1-2のように、①普天間基地の移設先が名護市辺野古である必要性は乏しい ②米軍基地が沖縄県に集中し、基地負担が固定化する ③周辺の自然環境に悪影響がある 等の理由を挙げて、翁長知事が埋め立て承認を取り消したのに対し、菅官房長官や中谷防衛大臣は、「承認に法的瑕疵はない」「辺野古が唯一の選択肢だ」「粛々と進める」等の思考停止したような観念的で短い返事を繰り返すのみである。そして、国交相に行政不服審査法に基づく不服審査と取り消し措置の効力の一時停止を申し立てる考えを示したそうだが、何が大切かについての考察がなく、誰かから言われたフレーズを繰り返し、権力を振りかざすだけでは、官房長官や防衛大臣として不足である。

(2)これまでの経緯
 そのような中、*2-2のように、沖縄タイムスは、2015年4月6日付の「翁長・菅会談」における翁長知事の冒頭発言が、民意を過不足なく代弁し、ウチナンチュの心の琴線に触れる内容だったため、年配の読者が感動し興奮したと伝えている。確かに、有権者を馬鹿にし、大した根拠もないのに自分たちの判断が唯一無二だとする一部ヤマトンチュの態度は、同じヤマトンチュから見ても見苦しい。

 そして、沖縄県の第三者委員会は、*2-3のように、①沖縄防衛局は普天間の危険性除去・早期移設を挙げたが、他の場所ではなく辺野古だけが適切だとする理由を説明しておらず、論理の飛躍がある ②普天間の早期閉鎖手法が辺野古移設であるべき根拠はない ③辺野古移設の不利益は、沖縄に米軍基地の固定化を招き、格差や過重負担を固定化することである ④こうした状態は法の下の平等を定めた憲法14条の精神に反する ⑤埋め立て地域の一部は県の「琉球諸島沿岸海岸保全基本計画」で開発行為に規制が掛かっているが、防衛局は必要な規制解除の手続きを取らなかったため承認に瑕疵があった などを指摘しており、もっともである。さらに、上の右端の図のように、日本各地の土砂を沖縄に運び込むなど、生態系を壊す可能性のあるとんでもない話だ。

 しかし、*2-4のように、沖縄県の辺野古協議書取り下げ要求を、菅官房長官は拒否した。また、*2-5のように、2015年8月11日から辺野古移設工事を全面的に中断し、9月9日まで約1カ月の集中協議を行ったが、これは結論ありきの形式で、*2-6のように、9月13日には工事が再開された。これは、沖縄の民主主義で示された民意を踏みにじる行為にほかならない。

 そのため、*2-7のように、2015年9月21日に、翁長知事がスイスで開かれた国連人権理事会で「沖縄の人々の人権はないがしろにされている」という演説をしなければならなくなった。私は2012年2月からこのブログで普天間基地問題に関しても注視して記述していたため知っているのだが、確かに最初、ヤマトンチュのメディアは、沖縄問題は他人ごとで放っておけばよいという態度だった。そのために、ヤマトンチュの政治家や国民の認識が遅れたので、私は、沖縄の基地問題は、安全保障の問題であるのみならず、民族差別や人権問題も含んでいると考える。

(3)島尻参議院議員(自民党、沖縄選出)の沖縄担当相就任について
 *3-1のように、朝日新聞が、2015年4月18日、19日に、全国世論調査と沖縄県民意識調査を電話で行ったところ、米軍普天間飛行場の辺野古移設については、全国で「評価しない(55%)」が「評価する(25%)」を上回り、沖縄では「評価しない(73%)」が「評価する(18%)」を圧倒したそうだ。また、翁長知事の「辺野古に基地をつくることに反対し、移設のための作業を停止するよう指示した」という対応に、全国では「評価する(54%)」が「評価しない(28%)」を上回り、沖縄では「評価する(70%)」が「評価しない(19%)」を引き離したとのことである。

 さらに、*3-2のように、辺野古の埋め立て工事を阻止しようとする抗議市民と警官がもみ合いになる事態も起こっており、沖縄防衛局は移設に向けた準備作業を進め、市民らは関係車両がゲートに入るのを阻止しようと集まって、必死の抵抗をしているわけだ。

 これに対し、*3-3、*3-4のように、自民党沖縄県連会長に就任した島尻参院議員は、2015年4月4日、自民党の県連大会挨拶で、「名護市辺野古の新基地建設をめぐる市民の反対運動は責任のない市民運動で、私たちは政治として対峙する」「反対運動の声の大きさに恐れおののかず、毅然と冷静に物事を進めないといけない」と発言したそうだ。これは、国会議員が国民によって選ばれ、国民に委託されて政治を行っていることを考えていない発言で、島尻氏が「その発言は市民運動を否定するものではない。運動と私たちの立場である政治は違うという意味だ。現実を見据えて物事を進めるのが政治の使命だ」と説明しているのは、その説明自体がおかしい。

 このような島尻参議院議員が、*3-5のように、2015年10月7日に沖縄担当相として入閣した。安倍首相の女性枠だろうが、米軍普天間飛行場の返還問題では、2010年7月に「県外移設」を訴えて沖縄選挙区で再選を果たした参議院議員だ。その後、*3-3、*3-4のような発言をしていたため、どうするのか見ものである。

<沖縄県の辺野古埋め立て承認取り消し>
*1-1:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=136905 (沖縄タイムス 2015年10月13日) 【号外】辺野古埋め立て根拠失う 翁長知事が承認取り消し 
 翁長雄志知事は13日午前、県庁で記者会見し名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消したと発表した。前県政の承認の手続きに「瑕疵(かし)がある」と判断した。翁長知事は「承認は取り消すべき瑕疵があると判断した。今後も辺野古に新基地は造らせないという公約実現に向け、全力で取り組む」と述べ、新基地建設を阻止すると強調した。承認取り消しで、沖縄防衛局は埋め立ての根拠を失い、辺野古沖での作業ができなくなる。県は、承認の過程を検証した第三者委員会の「瑕疵あり」の結論を踏まえ、埋め立て承認申請では普天間飛行場の代替施設を県内に建設する根拠が乏しく、環境保全策が不十分な点などを指摘。埋め立ての必要性を認めることができないと判断した。取り消しを受けて、防衛局は公有水面埋立法を所管する国土交通相に対し、県の取り消しの効力を止める執行停止と、無効化を求める審査請求をする見通し。翁長知事は知事就任前から「あらゆる手段で新基地建設を阻止する」と公約に掲げてきた。ことし7月に第三者委員会が承認に「瑕疵がある」と翁長知事に報告後、8月10日から1カ月かけた政府との集中協議が決裂。処分される防衛局側の意見を聞く「意見聴取」と「聴聞」の手続きを終えて、取り消しが決まった。防衛局は県に出した陳述書で「承認手続きに瑕疵はなく、取り消しは違法」と主張している。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK13H0P_T11C15A0I00000/
(日経新聞 2015/10/13) 沖縄知事、辺野古埋め立て承認取り消し発表 菅氏「瑕疵ない」
 沖縄県の翁長雄志知事は13日午前、県庁で記者会見し、米軍普天間基地(同県宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認に関し、正式に取り消したと発表した。防衛省沖縄防衛局は移設工事を進める法的権限を失う。中谷元・防衛相は工事を続けるため、直ちに承認取り消しの執行停止と無効を求める申し立てをする方針を示した。県によると、13日付で沖縄防衛局に文書を送付し、埋め立て承認を取り消したことを通知した。理由について(1)普天間基地の移設先が名護市辺野古である必要性が乏しい(2)沖縄に集中する米軍基地負担が固定化する(3)周辺の自然環境への影響――などをあげた。翁長氏は記者会見で、仲井真弘多前知事が埋め立てを承認したことについて「到底容認できない」と主張。政府と県による1カ月間の集中協議で「沖縄の考え方や思いが理解いただけなかった」と政府を批判した。政府が対抗措置をとれば「法律的にも政治的にもしっかり沖縄の主張をしていく」と強調した。菅義偉官房長官は13日の閣議後の記者会見で「承認に法的瑕疵(かし)はない」と強調。埋め立て工事を進める考えを示した。「公有水面埋立法を所管する国土交通相に、審査請求および執行停止の申し立てすることを含め、対応を検討する」と述べた。中谷氏も記者会見で、国土交通相に行政不服審査法に基づく不服審査と、取り消し措置の効力の一時停止を速やかに申し立てる考えを示した。取り消しの効力が一時的になくなれば、移設工事を再開できる。政府は今秋以降に本体工事に着手する方針だ。ただ、工事を再開すれば今度は県が工事を阻止するための対抗措置を取る方針で、最終的に法的闘争に発展する可能性が高い。普天間基地の移設問題を巡っては、2013年12月に仲井真前知事が政府による辺野古沿岸部の埋め立て申請を承認した。14年11月の知事選で翁長氏が辺野古移設反対を公約に掲げて仲井真氏を破った後、15年1月に承認過程を検証する第三者委員会を置いた。第三者委が手続きに関し「法的な瑕疵がある」との報告書をまとめたのを受け、翁長氏は9月に承認を取り消す方針を表明していた。

<これまでの経緯>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASGD55RDCGD5TPOB002.html
(朝日新聞 2014年12月5日) 沖縄・仲井真知事、辺野古の工法変更を承認 退任直前に
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、仲井真弘多知事は5日、工法の一部を変更したいとする沖縄防衛局からの申請を承認した。移設阻止を掲げる翁長雄志(たけし)・前那覇市長の知事就任を10日に控え、任期切れ目前の仲井真氏が昨年末の辺野古の埋め立て承認に続き、国に「お墨付き」を与えたことに、県内では反発の声が上がった。沖縄防衛局は9月、仮設道路の設置や護岸の追加など4項目の変更を県に申請。うち2項目について県は5日までに審査を終え、仲井真氏が承認した。仲井真氏は「標準的な処理期間を大幅超過しており、判断すべき時期と考えた」とするコメントを発表。しかし、移設反対派の市民団体は同日、県土木建築部長を訪ね、「(承認の公印の)押し逃げだ」と批判した。新たに知事に就く翁長氏は変更申請について、「私に判断をお任せ願いたい」と述べていた。移設工事を巡る国の変更申請は今後も繰り返し出される見通しで、知事就任後の翁長氏の対応が焦点となる。

*2-2:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=110598
(沖縄タイムス社説 2015年4月7日) [知事不退転の決意]支援の大きなうねりを
 感動のあまり心が打ち震えることをウチナーグチで「ふとぅふとぅー」と表現する。6日付本紙に掲載された「翁長・菅会談」の翁長雄志知事の冒頭発言を読んで、年配の読者は「ふとぅふとぅーしてきた」と興奮気味に伝えてきた。このような感想が出てくるのは、翁長知事の発言が名護市長選、知事選、衆院選で示された民意を過不足なく代弁しているだけでなく、ウチナーンチュの心の琴線に触れる内容だったからだ。テレビで連日のように流れる菅義偉官房長官の「粛々と」という発言に対しては、復帰前、「自治は神話である」と言い放ったキャラウェー高等弁務官の金門クラブ演説(1963年)を持ち出し、「問答無用の姿勢が感じられる」と厳しく批判した。名護市長選で移設反対候補が再選されても「全く影響ない」と無視し、県知事選が近づくと「(移設問題は)争点にならない。過去の問題」だと言い放ち、知事選の結果についても、移設反対の民意が示されたことを否定し、都合のいいように解釈する。有権者を小ばかにしたような菅氏の態度が、公開の場で厳しい批判にさらされたのである。安倍政権の強権的な手法は、沖縄戦で戦場となり米軍支配の下で自治・人権を脅かされ続けた沖縄では、通用しない。それを浮き彫りにしたのが翁長・菅会談だった。「辺野古の新基地は絶対に建設できないと確信を持っている」という知事の不退転の言明は今後、大きな意味を持ってくるはずだ。
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 翁長氏だけではない。大田昌秀、稲嶺恵一、仲井真弘多の3知事も在任中、辺野古移設は不可能という趣旨の見解を明らかにしてきた。「どの県の知事も安保は大事と言いながら、自分の所に基地が来ては困ると言い、自分が困ることを沖縄に押しつけ平然としている」と会見で語ったのは大田氏。稲嶺氏はラムズフェルド米国防長官と県庁で会った際、基地に対する県民感情をマグマにたとえ、「一度、穴が開くと大きく噴出する」と指摘した。仲井真氏だって2013年11月の会見では「固定化という言葉が出てくること自体、一種の堕落だ」と指摘しているのである。菅氏は、1999年、稲嶺知事と故岸本建男名護市長の受け入れ表明を受け、閣議決定がなされたことを強調するが、稲嶺県政が打ち出した構想を県の相談もなく廃棄し、閣議決定を一方的にほごにしたのは国である。稲嶺県政は現行案(V字案)には合意していない。
    ■    ■
 これら一連の経過の全体を菅氏は知っているのか。本紙が3日から5日まで実施したオートコール方式による緊急世論調査(サンプル数610)によると、約76%が新基地建設に反対し、翁長知事の姿勢を支持すると答えた人は83%に達した。民意を無視して建設を強行しようとすれば、むき出しの国家暴力が表面化し、辺野古移設の正当性は失われる。日米関係そのものが大きな痛手を受けるのだ。

*2-3:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-246497-storytopic-3.html
(琉球新報 2015年7月30日) 第三者委報告書、県が公開 辺野古の根拠示されず 
 沖縄県は29日、名護市辺野古の新基地建設計画に伴い前知事が行った埋め立て承認に「瑕疵があった」と翁長雄志知事に答申した第三者委員会の報告書と議事録を公開した。報告は米海兵隊が新基地に配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、環境影響評価(アセスメント)手続きの最終段階に当たる評価書で初めて配備を記載したことに触れ「極めて重要な配備の情報は方法書および準備書段階で記載されるべき」だったと指摘した。辺野古に移設予定の普天間飛行場では、夜間飛行やオスプレイの飛行形態に関する日米合意違反が常態化し、県の審査担当者もこの状況を認識していたと聞き取りを基に断定した。埋め立ての必要性について沖縄防衛局が「普天間の危険性除去、早期移設」を挙げたことに対し、「他の場所ではなく、なぜ辺野古が適切なのか、何ら説明していない」とし、「論理の飛躍(審査の欠落)」があったと指摘した。報告書は埋め立ての利益と不利益を比較考量すべきだとした上で、利益について、普天間飛行場の早期閉鎖を挙げた。ただその手法が辺野古移設であることは「合理性が不明で、根拠も十分とは言えない」とした。一方、不利益について、沖縄の過重な基地負担に触れ、辺野古移設は「米軍基地の固定化を招く契機となり、格差や過重負担を固定化する」と指摘した。こうした状態は法の下の平等を定めた憲法14条の精神にも反するとも指摘した。報告書はジュゴンやウミガメなどの保護策、県外からの埋め立て土砂搬入に伴う外来種侵入防止策など各分野の環境対策も網羅した。埋め立て申請内容は、県自身が知事意見や環境生活部長意見で示した環境対策の問題点に「対応できていない」と結論付けた。埋め立て地域の一部は県の「琉球諸島沿岸海岸保全基本計画」で開発行為に規制が掛かっているが、防衛局は必要な規制解除の手続きを取らなかったとして、承認に瑕疵があったと指摘した。

*2-4:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=126367
(沖縄タイムス 2015年7月30日) 沖縄県、辺野古協議書取り下げ要求 菅氏は拒否
 米軍普天間飛行場返還に伴う名護市辺野古の新基地建設で、沖縄県は29日、埋め立て本体工事に向けた実施設計と環境保全対策に関する協議書を受理した上で、沖縄防衛局に対し、取り下げと再提出を求める文書を出した。翁長雄志知事は同日午前、那覇空港で記者団の質問に答え、「事前協議はボーリング調査終了後、全体の詳細設計に基づき、実施すべきだ」と述べ、全体の設計がまとまっていない段階での協議開始に否定的な考えを示した。菅義偉官房長官は同日の記者会見で、「政府として取り下げる考えはなく、県側と丁寧に協議していきたい」との考えを示した。県土木建築部の伊禮年男土木整備統括監らが嘉手納町の防衛局を訪れ、協議書を取り下げ、実施設計の終了後に再提出するよう要求する文書を提出。8月10日までの回答と、取り下げない場合にはその理由や一部の協議から始める理由などを質問している。伊禮統括監によると、防衛局調達部の福島邦彦次長が文書を受け取り、「内容を精査して答えたい」と語ったという。防衛局は24日に協議書を提出。「協議は始まった」との認識を示し、8月14日までに協議書に関する質問を出すよう、県に求めた。翁長知事は質問への回答について「取り下げるか、しないかという(防衛局の)判断を待って、こちらも判断したい」と話した。県は一方的に質問期限を設けた理由も防衛局に問い合わせている。防衛局は辺野古沿岸の海上ボーリング調査24地点のうち、深場の5地点で調査を終了していないが、調査を終えた地点の護岸などの実施設計と環境保全対策の協議書を、一部先行する形で提出していた。協議書の取り下げを求める県の文書では「工事中の環境保全対策は一部だけではなく、護岸全体の環境影響評価を連続的に検討すべきだ」と指摘している。菅官房長官は会見で、「工事は段階的に実施されるものであり、段階的に協議するのは問題ないと思っている」と話した。協議で県側の合意が得られない場合でも着工可能との認識を示した。

*2-5:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015081001001228.html
(東京新聞 2015年8月10日)辺野古移設工事を全面的に中断 政府と県11日から集中協議
 政府と沖縄県は10日、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、9月9日まで1カ月の集中協議期間に入った。辺野古沿岸部の埋め立て関連工事は全面的に中断。政府は辺野古移設を推進する姿勢を崩していないが、県は移設計画の撤回を求める構えで、協議で一致点を見いだせるかどうかは不透明だ。菅義偉官房長官は11日に沖縄入りし、県庁で翁長雄志知事や安慶田光男副知事らと集中協議の初会合を開く。沖縄防衛局は期間入りに先立ち、9日までに海底ボーリング調査に使う台船など工事資機材の撤去を終え、資材を運ぶ車両の運行も停止した。

*2-6:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-248816-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2015年9月13日) 辺野古工事再開 民主主義踏みにじる愚行
 政府は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け、県との集中協議のため1カ月中断していた新基地建設へ向けた関連工事を再開した。県が新基地建設の中止を求め続ける中、政府は工事再開を強行した。極めて遺憾だ。安倍政権は沖縄の民意を一貫して無視し、民主主義を踏みにじる愚行をいつまで重ねるのか。怒りを禁じ得ない。沖縄防衛局は「政府と県の集中協議期間が終了し、県の調査も終了したため、再開した」と説明しているが、工事を加速し、新基地建設の既成事実化を図るのが狙いだろう。来週にも埋め立て工事の前段となる海底ボーリング調査を再開する予定だ。新基地建設をめぐる県と安倍政権の集中協議は、完全な平行線をたどり、安倍晋三首相が出席した5回目で決裂した。政府側は、前知事による埋め立て承認に固執するばかりで、その後の名護市長選、同市議選、県知事選、衆院選で新基地建設拒否の候補者が圧勝し、沖縄の民意が何度も示されたことについて言及はなかった。本来なら政府は県と真摯(しんし)に向き合い、民意を直視すべきだったはずだ。協議は最初から結論ありきで、翁長雄志知事に理解を得る努力をした形跡を残すアリバイづくりだったと言われても仕方あるまい。翁長知事は、前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認の取り消しを14日にも表明、必要な手続きに着手する方針だ。弁護士や環境学者ら有識者の第三者委員会は既に、手続きに「瑕疵(かし)あり」との報告書を提出している。政府の強硬姿勢に対抗するため、翁長知事はそれに基づき、埋め立て承認の取り消しを速やかに行えばよい。妥協や取引することなく、普天間飛行場の即時無条件全面返還を政府に要求すべきだ。政府は「辺野古が唯一の選択肢」とかたくなな姿勢を取り続けている。だが新基地建設の反対運動は県内ばかりでなく、国内、海外でも草の根レベルで盛り上がっている。12日午後に行われた国会包囲行動には2万2千人(主催者発表)が参加し「辺野古新基地ノー」の声を上げた。世界の識者109人も新基地阻止に賛同している。翁長知事は21、22の両日に国連人権理事会で演説する。そこで沖縄の民主主義的正当性を強く訴え、民意を無視する日本政府の理不尽さを内外に示してほしい。

*2-7:http://www.huffingtonpost.jp/2015/09/21/takeshi-onaga-okinawa-un-human-rights-council_n_8173918.html (The Huffington Post 2015年9月22日) 翁長雄志知事が国連で演説「沖縄の人々は、人権をないがしろにされている」(日本語訳全文)
 沖縄県の翁長雄志知事(64)は9月21日、スイスで開かれている国連人権理事会で約2分にわたって英語で演説し、アメリカ軍普天間基地の移設計画について、沖縄に米軍基地が集中する実態を紹介し「沖縄の人々は、自己決定権や人権をないがしろにされている」などと訴えた。翁長知事の国連演説は、国連人権理事会の場で発言機会を持つNGO「市民外交センター」が、持ち時間を提供して実現。国連での演説の意義について、同NGOの上村英明代表は琉球新報に、「沖縄の基地問題は安全保障、平和の問題ではなく、人権問題だということを国際社会にアピールする機会となる」と説明した。以下に、翁長知事による国連での演説の、日本語訳全文を掲載する。
−−−−
 ありがとうございます、議長。私は、日本の沖縄県の知事、翁長雄志です。私は世界中の皆さんに、辺野古への関心を持っていただきたいと思います。そこでは、沖縄の人々の自己決定権が、ないがしろにされています。第2次大戦のあと、アメリカ軍は私たちの土地を力によって接収し、そして、沖縄にアメリカ軍基地を作りました。私たちが自ら望んで、土地を提供したことは一切ありません。沖縄は、日本の国土の0.6%の面積しかありません。しかしながら、在日アメリカ軍専用施設の73.8%が、沖縄に存在しています。70年間で、アメリカ軍基地に関連する多くの事件・事故、環境問題が沖縄では起こってきました。私たちは自己決定権や人権を、ないがしろにされています。自国民の自由、平等、人権、民主主義すら守れない国が、どうして世界の国々とそれらの価値観を、共有することなどできるでしょうか。今、日本政府は、美しい海を埋め立てて、辺野古に新しい基地を建設しようと強行しています。彼らは、昨年沖縄で行われた選挙で示された民意を、無視しているのです。私は、あらゆる手段、合法的な手段を使って、新しい基地の建設を止める覚悟です。今日はこのようなスピーチの機会が頂けたことを感謝します。ありがとうございました。
−−--
 なお、この日の国連人権理事会では、翁長知事の演説のあと、日本政府が答弁する機会もあった。日本政府側は翁長知事に反論。「日本政府は、沖縄の基地負担軽減に最大限取り組んでいる。普天間基地の辺野古への移設は、アメリカ軍の抑止力の維持と、危険性の除去を実現する、唯一の解決策だ。日本政府は、おととし、仲井真前知事から埋め立ての承認を得て、関係法令に基づき移設を進めている。沖縄県には、引き続き説明をしながら理解を得ていきたい」と述べた。

<島尻氏の沖縄担当相就任>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11715605.html (朝日新聞 2015年4月21日) 辺野古めぐる政権対応、評価せず55%・評価25% 朝日新聞社世論調査
 朝日新聞社は18、19の両日、全国定例世論調査(電話)と、沖縄県民意識調査(同)を同時に実施した。沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場の同県名護市辺野古への移設問題に対する安倍政権の対応については、全国で「評価しない」が55%と、「評価する」25%を上回った。沖縄でも「評価しない」73%が「評価する」18%を圧倒した。辺野古移設問題については、全国調査と沖縄県の調査でいくつか同じ質問をして、全国と沖縄県内との調査結果を比較した。沖縄県の翁長雄志知事は辺野古に基地をつくることに反対し、移設のための作業を停止するよう指示した。全国ではこの対応を「評価する」が54%で、「評価しない」28%を上回り、沖縄では「評価する」70%が「評価しない」19%を引き離した。辺野古移設の賛否では、全国では「賛成」は30%で、「反対」は41%。「その他・答えない」は29%だった。沖縄では「反対」が63%と、「賛成」22%の3倍近かった。普天間飛行場の移設問題をどのように解決するのが最も望ましいか3択で聞くと、全国、沖縄ともに「国外に移設する」が最も多く、全国では45%、沖縄では59%を占めた。「沖縄県内に移設する」は全国で27%、沖縄で15%。「本土に移設する」が全国で15%、沖縄で20%だった。移設問題をめぐり、安倍晋三首相と翁長知事が17日に初めて会談したことに関しては、全国、沖縄ともに7割が「評価する」と答えた。安倍内閣の全国の支持率は44%(前回3月全国調査46%)、不支持率は35%(同33%)だった。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/231807
(佐賀新聞 2015年9月21日) 辺野古で抗議市民と警官もみ合い、怒声飛び一時騒然
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設予定地である名護市辺野古近くの米軍キャンプ・シュワブ前で21日午前、移設に抗議する市民ら数十人が道路に横たわったり、工事用車両が出入りするゲート前で隊列を組んだりし、これを強制排除しようとした警察官約100人ともみ合いになった。怒声が飛び交うなど周辺は一時騒然とした。沖縄防衛局は移設に向けた準備作業を進めており、市民らは関係車両がゲートに入るのを阻止しようと集まっていた。名護市の高校生(18)は「警察官のやり方は強引」と批判。国連で演説予定の翁長雄志知事に「沖縄の現状を世界に伝えてほしい」と期待した。

*3-3:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=110372&f=ap
(沖縄タイムス 2015年4月5日) 「責任のない市民運動」辺野古行動に島尻議員
 自民党沖縄県連の会長に就任した島尻安伊子参院議員は4日、那覇市内の自治会館で開かれた県連大会のあいさつで、名護市辺野古の新基地建設をめぐる市民の反対運動について「責任のない市民運動だと思っている。私たちは政治として対峙(たいじ)する」と発言した。さらに、米軍普天間飛行場の危険性除去のため辺野古移設を容認する立場から「反対運動の声の大きさに恐れおののかず、毅然(きぜん)と冷静に物事を進めないといけない。今日より明日がよくなるよう、真剣に議論し実行する」とも述べた。島尻氏は大会後、沖縄タイムスの取材に対し「発言は市民運動を否定するものではない。そういった(反対する)方々の声にも耳を傾けたいが、運動と私たちの立場である政治は違うという意味だ。現実を見据えて物事を進めるのが政治の使命だ」と説明した。

*3-4:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-241545-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2015年4月8日) 島尻氏発言 移設反対の民意と向き合え
 市民の側ではなく、権力側に立つ人なのだと再認識させられる。自民党県連の新会長に選出された島尻安伊子参院議員のことだ。県連大会での就任のあいさつで、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する市民運動に関し「反対運動は責任のない市民運動だと思っている。私たちは政治としてここに対峙(たいじ)していく」と言い放った。にわかに信じられない発言だ。移設に反対するのが無責任だというが、そもそも自身が2010年の参院選で、普天間飛行場の県外移設を公約して再選されたことを忘れたわけではあるまい。島尻氏は県外移設公約を翻し、13年4月に辺野古移設容認を表明した。全ての県関係自民党国会議員が辺野古容認に転じ、その後に仲井真弘多前知事が辺野古埋め立てを承認するよりも、半年以上早い公約の撤回だった。新基地を後世に残したくないと反対運動をする市民に対し、公約を破棄した政治家が「無責任」と批判するのは、筋違いも甚だしい。島尻氏は「移設に反対すれば普天間が固定化する」といった政権幹部同様の論理を振りかざしている。辺野古移設反対と普天間の危険性除去は二者択一のテーマではなく、また移設問題の解決策をめぐっては米国でも多様な意見があることは何度も指摘した通りだ。仮に島尻氏の立場に立ったとして、昨年の知事選や名護市長選、衆院選などで示された通り、移設反対が世論であることは紛れもない事実だ。政治家であるなら、その民意に耳を傾け、利害を調整するのが最低限の責務ではないのか。発言について島尻氏は「言論の自由はあり、反対運動を否定するものではない」と釈明した。だが過去の言動を見ると、今回も本音ではないのかと思わざるを得ない。島尻氏は昨年2月の国会質問で辺野古の市民運動に対し「危険な行為に先んじて対策を打つことが必要だ」と述べ、反対運動を弾圧するかのような「対策」を求めた。13年11月には辺野古移設について「待望の子どもが生まれた時にはみんなでお祝い」と述べ、物議を醸した。「台所から政治を変える」を掲げて国政進出した島尻氏だが、為政者に忠実であることが政治家だとはき違えてはいないか。民意を無視する政権と歩調を合わせて市民と「対峙」する態度を改め、移設反対の世論と向き合うべきだ。

*3-5:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=136107
(沖縄タイムス 2015年10月7日) 島尻安伊子氏、沖縄担当相で入閣へ きょう内閣改造
 安倍晋三首相は7日に行う内閣改造で、県選出で自民党県連会長の島尻安伊子参院議員(50)を沖縄担当相に据えることを固めた。県選出・出身国会議員の入閣は1991年に沖縄開発庁長官に就任した伊江朝雄氏、93年に同長官に就任した上原康助氏、2012年に郵政民営化担当相に就いた下地幹郎氏以来、4人目となる。女性では初めて。島尻氏は那覇市議などを経て、07年4月の参院補選で初当選し、現在2期目。第2次安倍内閣発足時に内閣兼復興政務官を務めた。自民党沖縄振興調査会事務局長として、米軍キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区の返還や改正跡地法の成立などに尽力。4月から同党県連会長を務める。米軍普天間飛行場の返還問題では、10年7月の自らの選挙で「県外移設」を訴えて再選を果たしたが、政務官就任後の13年4月に「辺野古容認」を表明し、公約を破棄。ことし4月の県連会長就任時のあいさつでは、名護市辺野古の新基地建設に反対する市民運動を「責任のない市民運動」と発言し、物議を醸した。


PS(2015年10月14日追加): *4-1、*4-3のように、菅官房長官は、沖縄県の埋立承認取り消しについて「①承認に法的な瑕疵はない」「②承認取り消しは沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ「③(ジュネーブでの知事演説には)強い違和感を受ける。国際社会では理解されない」などとし、国交相に不服審査請求を行うそうだ。しかし、②は既に事件から20年も経過して何ら進展していない普天間の危険除去を辺野古の埋め立てと交換条件にしている点が不誠実で、③は鈍感かつ融通が効かない。が、*4-2のように、名護市長はじめ沖縄県民には知事を評価し支持する声が強く、*4-3のように、社説で「沖縄の苦悩を理解し、人権や自己決定権に十分配慮する姿勢で、まず計画を白紙に戻せ」とする大手メディアも出てきたため、日本国民全体の認識も進むだろう。

*4-1:http://mainichi.jp/select/news/20151013k0000e010074000c.html?fm=mnm
(毎日新聞 2015年10月13日) 辺野古承認取り消し:菅官房長官「法的瑕疵ない」
 菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で、沖縄県が埋め立て承認を取り消したことについて「(前知事時代の)承認に法的な瑕疵はない。従来の判断に基づいて進めていくのは自然なことだ」と述べた。政府は14日以降に行政不服審査法に基づき国土交通相に不服審査請求を行う。県内移設を進める方針に変わりはないが、県との対話は継続する姿勢だ。菅氏は「承認取り消しは沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ。危険性をどうするか、現職の知事として極めて大事なことだ」と翁長雄志知事を批判した。

*4-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015101301001367.html
(東京新聞 2015年10月13日) 辺野古抱える名護市長、知事評価 「全面的に支持」
 沖縄県名護市の稲嶺進市長は13日、翁長雄志県知事による同市辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しについて「県民が期待していた日がとうとうきた。全面的に知事の行動を支持していく」と述べ、評価した。市役所で記者団の取材に応じた。稲嶺市長は、県との連携を今後も密にすると強調。政府に対しては「取り消し手続きは大きな効力を持つ。法治国家というなら従うべきだ」とけん制した。さらに「本体工事に着手するのは地方自治を無視し、違法。そんなことが許される国ではないはずだ」とくぎを刺した。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12013757.html
(朝日新聞社説 2015年10月14日) 辺野古移設 沖縄の苦悩に向き合え
 これに対し、政府は直ちに行政不服審査請求などを行う方針だ。政府と県が行政手続き上、司法上の対抗策を打ち合うなかで、民意に反した基地建設が進む。そんな異常事態は、何としても避けなければならない。政府は埋め立ての法的根拠を失った以上、計画は白紙に戻し改めて県と話し合うべきだ。前知事による承認から1年10カ月。翁長知事は取り消しに向けて周到に準備を重ねてきた。「承認手続きに瑕疵(かし)がある」との結論は、第三者委員会が半年かけて導き出した。第三者委は移設の必要性について「実質的な根拠が乏しい」と指摘。「米軍の沖縄配備の優位性」などの政府の主張にも具体的な説明がないとした。翁長知事は政府との集中協議でもこれらの点を問いただしたが、政府は「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返すばかり。説得力ある説明はなかった。翁長知事は先月、ジュネーブでの国連人権理事会の演説で、「沖縄の人々は自己決定権や人権がないがしろにされている」と訴えた。基地問題を人権問題ととらえての主張である。戦後、米軍に土地を強制接収され、次々と米軍基地が造られた歴史。戦後70年、米軍による犯罪や事故に巻き込まれる危険、航空機の騒音などの「基地被害」と隣り合わせの生活を余儀なくされてきた歴史。そして、いまなお全国の米軍専用施設面積の73・8%が、国土の0・6%にすぎない沖縄県に集中している現実。これはまさに、沖縄に対する「差別」ではないのか。日米安保条約を支持する政府も国民も、そうした沖縄の現実に無関心でいることによって、結果として「差別」に加担してこなかったか――。翁長知事による埋め立て承認取り消しは、政府に、国民に、そこを問いかけるメッセージだと受けとめるべきだ。残念なのは、ジュネーブでの知事の演説に対し、菅官房長官が「強い違和感を受ける。国際社会では理解されない」と冷淡な対応に終始したことだ。行政手続きや司法判断の結果がどうあれ、政府と沖縄の亀裂がこれ以上深まれば米軍基地の安定運用も危うくなるだろう。政府に求められるのは、沖縄の苦悩を理解し、人権や自己決定権に十分配慮する姿勢だ。まず計画を白紙に戻すことが、そのための第一歩になる。


PS(2015年9月15日追加):*5-1、*5-2のように、翁長沖縄県知事の辺野古埋め立て承認取り消しについて、政府(工事主体の防衛局)は行政不服審査法に基づき、審査請求と取り消し処分の効力停止を石井国土交通相に申し立てるそうだ。そして、同じ政府内であるため、国交相は政府寄りの判断をしそうだと懸念する人が多い。確かにそうかもしれないが、国交相は公明党である上、観光庁は国交省に所属しており、*5-3、*5-4で日弁連が会長声明や意見書で完璧に記載しているとおり、沖縄の自然や文化は価値が高く、日本の観光にとって有望な資産だ。そのため、国交相が沖縄側に立った適切な判断をしてくれればよいと願っている。

*5-1:http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201510148682.html (愛媛新聞 2015年10月14日) 辺野古承認取り消し 泥沼の闘争に政府は終止符打て
 ついに国と沖縄県の全面対決に至ってしまった。沖縄県の翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。対して政府側は、工事主体の防衛局が行政不服審査法に基づき、審査請求と取り消し処分の効力停止を石井啓一国土交通相に申し立てると表明した。国交相が効力停止を認めれば防衛局は審査請求の審査期間中も移設作業を続け、本体工事に着手することができる、と政府は読む。そうなれば、県側は効力停止の取り消しや差し止めを求めて提訴する方針だ。泥沼の法廷闘争は避けねばならない。ここまで対立を先鋭化させたのは、基地問題に関して「辺野古移設が唯一の解決策」との一点張りで、民意を一顧だにしない政府の強権的な態度にほかならない。抗議する市民への警察官や海上保安官らによる取り締まりが厳しさを増す現在、さらに力ずくで本体工事に突入すれば、流血の事態さえ現実のものとなりかねない。暴挙は断じて許されない。政府には、事態を重く受け止め工事を中止するよう強く求める。県民の声を聞き、苦難の歴史と向き合い、基地負担軽減策を練り直して米国との協議のやり直しへかじを切るべきだ。普天間返還の合意を主導したジョセフ・ナイ元国防次官補は辺野古移設について「沖縄の人々の支持が得られないなら、米政府はおそらく再検討しなければならないだろう」と沖縄の地元紙に述べている。住民の反発下では米国側も基地の安定的持続が見通せないに違いない。ナイ氏は以前、沖縄が中国の弾道ミサイルの射程内にあることを踏まえ、沖縄への基地集中を変えるべきだとも指摘している。実際、米国はリスク軽減のためハワイやグアムなどへの兵力分散を加速させている。沖縄での最大の兵力である海兵隊については、機動力や抑止力、訓練の環境などの観点から沖縄での存在意義や戦略的価値を疑問視する声が米国内や日本の専門家らから上がっている。これらの状況を鑑みれば、辺野古移設が基地問題の唯一の解決策であると主張する根拠は揺らぐ。国民の強い懸念と反発を米国に伝え、別の解決策を探ることこそ政府が取るべき道だ。米国への協力をアピールするために、政府が主導して辺野古への新基地建設を強行することは決して認められない。国民より米国との約束を優先する姿勢は安全保障関連法の強行成立と共通しており、深く憂慮する。翁長知事は先月、国連人権理事会で「自国民の自由、平等、人権、民主主義を守れない国がどうして世界の国々と価値観を共有できるか」と訴えた。県民の怒りはもっともだ。本土からの賛同や支援も拡大している。民意を力で抑え続ければ国際的信頼を失うことを政府は肝に銘じ、計画見直しと対立解消へ力を尽くさなければならない。

*5-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-153618.html (琉球新報社説 2015年10月14日) 承認取り消し 民意実現の出発点に 政府は新基地断念すべきだ
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古沿岸部への新基地建設をめぐり、翁長雄志知事が前知事の埋め立て承認を取り消した。沖縄の将来を見据え、新基地建設阻止への決意を示す意義ある一歩として高く評価したい。裁判などで問題解決までには長い道のりが予想される。だが、新基地建設反対の民意は圧倒的であり、土地を同意なく奪って建設した普天間飛行場の形成過程からしても、理は知事にある。阻止運動を県外、国外に広げ、新基地建設断念と普天間飛行場の閉鎖を勝ち取る新たな出発点に、承認取り消しを位置付けたい。
●犯罪的な行為
 知事は埋め立て承認取り消し後の会見で、普天間飛行場は戦後、県民が収容所に入れられている間に、強制接収されて建設されたことをあらためて強調した。その上で「辺野古に移すということは、土地を奪っておきながら代わりのものも沖縄に差し出せという理不尽な話」と批判した。普天間飛行場が国際法に反して建設されたことは明らかである。知事の批判は当然だ。ところが、菅義偉官房長官は知事の承認取り消しを「沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ」と批判した。「政治の堕落」を指摘されたことから何ら学んでいないと言わざるを得ない。車の窃盗犯が持ち主である被害者に「古くなった車を返すから新車をよこせ」と開き直るような姿勢は改めるべきである。政府はそんな犯罪的な行為を国民の面前で恥ずかしげもなく行っているのである。これで法治国家と言えるだろうか。官房長官が知事を批判するなど、筋違いも甚だしい。官房長官が言うように、政府はこれまで普天間飛行場の危険性の除去に努力してきただろうか。新基地は完成までに10年かかるとされる。危険性を除去し、固定化させないための辺野古移設としながら、10年間は固定化し、危険性もその間放置されるのである。政府が真剣に危険性除去を考えるならば、直ちに普天間飛行場を閉鎖すべきだ。そうしないのは県民軽視以外の何物でもない。普天間飛行場の危険性除去や固定化回避を持ち出せば、新基地建設に対する県民の理解が得やすいといった程度の認識しかないのではないか。前知事の埋め立て承認の条件ともいえる普天間飛行場の5年以内の運用停止の約束も、ほごにしている。政府の言う「努力」はこの程度のものでしかない。
●普遍的な問題
 本来ならば、知事の承認取り消しを政府は重く受け止め、新基地建設の作業を直ちに停止すべきである。しかしそのような常識が通用する政府ではないようだ。中谷元・防衛相は「知事による埋め立て承認の取り消しは違法」と述べ、国交相に知事の承認取り消しの効力取り消しを求める不服審査請求と執行停止申し立てを速やかに行うとしている。同じ政府機関が裁決して公正を保つことはできない。政府側に有利になる可能性は極めて高い。これが官房長官の言う「わが国は法治国家」の実態である。新基地建設は沖縄だけの問題ではない。普遍的な問題を包含している。新基地建設に反対する圧倒的な民意を、政府は踏みにじろうとしている。日本の民主主義が問われているのである。日米同盟を重視し、民意は一顧だにしない政府を認めていいのかが突き付けられているのである。優れて国民的問題だ。知事は「これから節目節目でいろんなことが起きると思う」と述べている。新基地建設問題の本質をしっかり見極めてほしいということだ。そのことを深く自覚し、声を上げ続けることが今を生きる私たちの将来世代に対する責任である。

*5-3:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2015/151013.html (日本弁護士連合会会長 村越 進 2015年10月13日) 普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立ての承認の取消しに関する会長声明
 本日、沖縄県知事は、前知事が2013年12月27日に行った普天間飛行場代替施設建設事業(以下「本事業」という。)に係る公有水面埋立ての承認(以下「本件承認」という。)を、公有水面埋立法第4条第1項の承認要件を充足していない瑕疵があるとともに、取消しの公益的必要性が高いことを理由として、取り消した。本事業で埋立ての対象となっていた辺野古崎・大浦湾は、環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠA類かつ天然記念物であるジュゴンや絶滅危惧種を含む多数の貴重な水生生物や渡り鳥の生息地として、豊かな自然環境・生態系を保持してきた。当連合会は、2000年7月14日、「ジュゴン保護に関する要望書」を発表し、国などに対し、ジュゴンの絶滅の危機を回避するに足る有効適切な保護措置を早急に策定、実施するよう求めた。また、当連合会は、2013年11月21日に、「普天間飛行場代替施設建設事業に基づく公有水面埋立てに関する意見書」を発表し、国に対し「普天間飛行場代替施設建設事業」に係る公有水面埋立ての承認申請の撤回を、沖縄県知事に対し同申請に対して承認すべきでないことをそれぞれ求めるなどした。その理由は、この海域は沖縄県により策定された「自然環境の保全に関する指針」において自然環境を厳正に保全すべき場所に当たり、この海域を埋め立てることは国土利用上適正合理的とはいえず(公有水面埋立法第4条第1項第1号)、環境影響評価書で示された環境保全措置等では自然環境の保全を図ることは不可能であるなど(同第2号)、同法に定める要件を欠いているというものである。そして、沖縄県知事が2015年1月26日に設けた「普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会」(以下「第三者委員会」という。)においても、本件承認について、公有水面埋立法第4条第1項第1号及び同条第2号の要件などを欠き、法律的な瑕疵があるとの報告が出されるに至った(2015年7月16日付け検証結果報告書)。以上のとおり、本件承認には、法律的な瑕疵が存在し、瑕疵の程度も重大であることから、瑕疵のない法的状態を回復する必要性が高く、他方、本件承認から本件承認の取消しまでの期間が2年足らずであり、国がいまだ本体工事に着手していない状況であることからすれば、本日の沖縄県知事による本件承認の取消しは、法的に許容されるものである。当連合会は、国に対し、沖縄県知事の承認取消しという判断を尊重するよう求める。

*5-4:http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2013/opinion_131121.pdf (日本弁護士連合会意見書 2013年11月21日) 普天間飛行場代替施設建設事業に基づく公有水面埋立てに関する意見書
<意見の趣旨>
1 国は,沖縄県知事に対する「普天間飛行場代替施設建設事業」に基づく公有水面埋立ての承認申請を直ちに撤回すべきである。
2 国が上記承認申請を撤回しない場合,沖縄県知事は,本事業について公有水面埋立法に基づく承認をすべきではない。
3 国と沖縄県とは,協議の上,辺野古崎付近の海域及び大浦湾につき,自然公園法に基づく国立公園に指定する等の保全措置を講じ,ラムサール条約上の湿地登録手続を行うべきである。
<意見の理由>
第1 本意見書提出の経緯
1 事業計画の概要
 沖縄県名護市東部に位置する辺野古崎周辺及び大浦湾の一部の海域の埋立計画は,国(沖縄防衛局)が,沖縄県宜野湾市に存する普天間飛行場の代替施設を建設する目的で進めている公有水面埋立法に基づく海水面の埋立計画である。1997年には90ヘクタールの埋立てが,2000年には184ヘクタールの埋立てが計画されるなど,これまでに2度の計画変更がなされ,現在は米軍キャンプ・シュワブ基地沿岸部205ヘクタールを埋め立てるという計画となっている(添付図面参照)。現在の計画について,国は,①2007年8月に環境影響評価の方法書の公告・縦覧,②2009年4月に同準備書の公告・縦覧,③2011年12月に環境影響評価書の提出という環境影響評価法に基づく手続を行った。沖縄県知事は,2012年3月に知事意見を述べた(後述のとおり,このままでは「生活環境及び自然環境の保全を図ることは不可能と考える」というもの)。これを受けて,国は2012年12月に補正後の環境影響評価書を提出し,2013年3月,上記環境影響評価書を添付の上,公有水面埋立承認申請を行った。現在までに,環境影響評価書の告示・縦覧の手続は既に完了している。今後は,沖縄県知事により地元市町村である名護市からの意見聴取が行われ,年内あるいは年明けにも沖縄県知事によって公有水面埋立ての承認の可否の判断が下される見込みである。
2 当連合会の湿地保全に対するこれまでの取組
 当連合会は,1977年に大阪で開催された第20回人権擁護大会において,「海岸地帯保全法」の制定,「瀬戸内海環境保全法」の制定,両保全法の内容に沿うように公有水面埋立法を全面的に見直すこと等の提言を行った。この提言は,1978年の瀬戸内海環境保全特別措置法の改正につながった。また,2002年に福島県郡山市で開催された第45回人権擁護大会においては,湿地保全・再生法の制定や,重要湿地の開発計画中止の提言を行った。さらに,2012年に佐賀県佐賀市で開催された第55回人権擁護大会においては,①沿岸域環境を保全するために,現状の海岸線を保全し,原則的に開発・改変をしないこと,②生物多様性の保全・持続可能な漁業資源の利用などの基本原則を踏まえ,沿岸域を再生するための妨げとなる,開発を推進する方向となっている法制度を見直すなど,再生に向けたより実効的な法制度の整備を行うことなどを求める提言を行った。他方,沖縄県の希少な自然環境の保全についても,当連合会は,沖縄県の干潟の保全について,2001年6月に泡瀬干潟の現地調査を行って以降,調査や研究を積み重ねて,必要に応じて意見を述べてきた。例えば,泡瀬干潟に関しては,2002年3月15日に,「泡瀬干潟埋立事業に関する意見書」を公表して中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業の中止と泡瀬干潟のラムサール条約登録を求め,さらに同趣旨の意見書と会長談話をそれぞれ2回ずつ公表しているところである。また,ジュゴンの保護については,種の保全のため即時に実効性のある保護措置を求めて2000年7月14日に水産庁等に要望書を提出し,その中で辺野古崎周辺に基地移設計画を策定する場合はジュゴンの生息に関する影響を回避するために策定作業の初期の段階での環境影響評価手続の実施を求めている。
3 当連合会は,上述のとおり1977年以来,沿岸域の保護に取り組み,2012年には現状の海岸線を保全し原則的に開発・改変をしないこと,つまり新たな埋立てを禁止すべきことを提言している。とりわけ,辺野古崎周辺海域・大浦湾についてはジュゴンの餌場であることを含む貴重な生態系が残された自然環境であることから,意見の趣旨のとおり,①国に対し埋立ての承認申請の撤回を,②国の撤回がない場合には沖縄県知事に対し埋立てを承認しないこと
第2 辺野古崎・大浦湾の重要性
1 地理的特徴
 辺野古崎・大浦湾は,沖縄県のうち沖縄本島名護市東海岸にあり,太平洋に面する地区に位置する。同地域は,サンゴ礁が広がる辺野古崎周辺と外洋的環境から内湾的環境の特徴を持つ大浦湾が一体となって存在するという極めてまれな地理的特徴を有する。そして,辺野古崎周辺のサンゴ礁には,準絶滅危惧種に指定されているリュウキュウスガモ,ベニアマモなど7種の海草の藻場が安定的に広がっている。辺野古崎に隣接する大浦湾は,全体的に水深が深くなっているが,湾奥は,海底が砂れきから泥へと移り変わり,水深が深くなるスロープラインに沿ってユビエダハマサンゴの大群集が分布する。2007年9月には,大浦湾の東部に高さ12m,幅30m,長さ50mの広範囲にわたる絶滅危惧種のアオサンゴ群落(チリビシの青サンゴ群集)が発見された。湾奥の大浦川や汀間川の河口付近には,オヒルギやメヒルギといった大規模なマングローブ林や干潟が広がっている。さらに,辺野古崎と大浦湾の接点である大浦湾西部の深部には,琉球列島では特異な砂泥地が広がっている。
2 生態系の特徴
 辺野古崎・大浦湾は,環境省レッドリスト絶滅危惧IA類(CR)に指定されているジュゴンの生息域のほぼ中心に位置し,海草のみを餌とするジュゴンの生息には欠かせない餌場となっている。同地域のサンゴ礁には,沖縄に生息するカクレクマノミなど6種のクマノミ全てが観察されるなど魚類が豊富に生息し,絶滅危惧Ⅱ類(VU)のエリグロアジサシなど渡り鳥の生息地ともなっている。公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)が2009年に行った調査では,大浦湾においてわずか1週間の調査で36種の新種及び国内初記録の25種の十脚甲殻類(エビ・カニ類)などの生息が確認されるなど,生物学的にも貴重な地域である。河口部のマングローブ・干潟には,トカゲハゼなどの魚類のほか,ミナミコメツキガニといった甲殻類,シマカノコ,マングローブアマガイなどの底生生物などレッドリスト掲載の生物が多数生息している。さらに,大浦湾西深部の砂泥地は,詳細な生息地が知られていなかったオキナワハナムシロや新種の甲殻類など特異的な生物群と希少種が分布するなど,サンゴ礁の発達する琉球列島の中にあって極めて特異な生物相を有する。
3 辺野古崎・大浦湾が重要な自然環境として評価されてきたこと
 豊かな自然環境を有する辺野古崎・大浦湾は,沖縄県の「自然環境の保全に関する指針(1998年)によ」り,沿岸地域の大部分が,評価ランクⅠとして,自然環境の厳格な保護を図る地域とされてきた。また,同地域は,レッドリスト掲載種を多数育むなど生物多様性の見地から保全上の配慮をすべき地域として2001年に環境省により「日本の重要湿地500」に選定されている(№449及び№453)。さらに,海洋生物多様性保全戦略(環境省;2011年)の「海域の特性を踏まえた対策の推進」の記述においては,「藻場,干潟,サンゴ礁などの浅海域の湿地は,規模にかかわらず貝類や甲殻類の幼生,仔稚魚などが移動分散する際に重要な役割を果たしている場合があり,科学的知見を踏まえ,このような湿地間の相互のつながりの仕組みや関係性を認識し,残された藻場,干潟やサンゴ礁の保全,相互のつながりを補強する生物の住み場所の再生・修復・創造を図っていくことが必要である」とされ,その重要性が強調されている。生物多様性国家戦略2012-2020においては,ジュゴンについて,「引き続き,生息環境・生態等の調査や漁業者との共生に向けた取組を進めるとともに,種の保存法の国内希少野生動植物種の指定も視野に入れ,情報の収集等に努めます」とされ,その保全が急務となっている。ジュゴンの保護は国際的な関心事となっており,国際自然保護連合(IUCN)においては,2000年,2004年に次いで2008年のバルセロナ総会でも「2010年国連国際生物多様性年におけるジュゴン保護の推進」が決議されている。
4 ラムサール条約登録湿地の要件を満たすこと
 ラムサール条約(「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」)は,干潟をはじめとする湿地保全の重要性が国際的に認識されたことから,1971年に採択され,以後,湿地の保全は国際的な課題となっている。日本は1980年にラムサール条約を批准し,現在の日本における同条約登録湿地の数は,46か所となっている。ラムサール条約は,その名が示すとおり,かつては水鳥の保護を中心とした条約であったが,現在では広く湿地の保護を目的とするものとなっている。登録湿地の基準については,現在は9の基準が示されており,そのいずれかに該当すれば登録湿地の要件を充たすものと評価される。我が国においては,「国際的に重要な湿地であること(国際的な基準のうちいずれかに該当すること)」,「国の法律(自然公園法,鳥獣保護法など)により,将来にわたって,自然環境の保全が図られること」,「地元住民などから登録への賛意が得られること」が登録基準とされており,「国際的に重要な湿地であること」の要件については,環境省が2001年12月に選定した「日本の重要湿地500」から登録湿地がほぼ選定されるという方法が採られている。辺野古崎・大浦湾については,上記のとおり重要湿地500選に含まれている。また,ラムサール条約登録湿地の国際的な基準に照らしても,環境省レッドリストにおいて絶滅危惧種IA類(CR)のジュゴンの生息地となっていること(基準1 ,アマモ類の大き) な群落による藻場が形成されていること(基準8),大浦湾についても,「日本の重要湿地500」への選定理由とされている,危急種である底生生物が多く生息することやマングローブ林の前後に存する水溜まりに止水性昆虫の種の多様性が高いこと(基準2,基準3)から,優に「国際的に重要な湿地」の要件は充たしていることとなる。なお,埋立予定地である大浦湾に注ぎ込む大浦川及び河口域は2010年9月30日時点で環境省によりラムサール条約湿地潜在候補地として選定されている。このように,辺野古崎周辺の海域は,ラムサール条約締結のための基準を優に充たしているものであり,国際的に重要な湿地であることは明らかである。
第3 辺野古崎周辺海域・大浦湾埋立ての問題点
1 はじめに
 都道府県知事は,公有水面埋立法4条に限定列挙する一定の要件に適合する場合を除いて「埋立ノ免許ヲナスコトヲ得ズ」(同法4条1項柱書)とされる。なお,本件のように国が埋立免許の申請をする場合の都道府県知事の「承認」(同法42条)についても,同法4条は準用される。そして,本件埋立てについては,公有水面埋立法上の埋立承認の要件は次のとおり全く満たされていない。
2 国土利用の要件について
(1) 公用水面埋立法4条1項1号の趣旨
 公有水面埋立法上,埋立ての免許には「国土利用上適正且合理的ナルコト」という要件に適合することが必要である(同法4条1項1号)。この要件は,埋立ての可否の判断基準の基本である。
ちなみに,旧建設省河川局が監修した1995年発行の「公有水面埋立実務ハンドブック」においても,同条項については「よくいわれるのは,日本三景等の古来からの景勝地における埋立,環境保全上重要な地域等における埋立,良好な住宅地の前面の工業用地造成目的の埋立等である。こうした一般な基準からしても認め難いものは,本号により,免許拒否される。」(同ハンドブック41頁)としている。
(2) 本件における検討
 埋立予定地である辺野古崎周辺・大浦湾は,既に述べたとおり,生物多様性に富んだ環境的価値が高く評価されている。すなわち,開発行為等に対する配慮を促すために2001年に環境省によって選定された「日本の重要湿地500」の2つのエリアに関係している。また,開発事業による生態系への影響や貴重な野生生物の減少を憂慮して環境を保全するために1998年に沖縄県により策定された「自然環境の保全に関する指針」でも,藻場,干潟,サンゴ層が発達するなど健全で多様な生態系が維持されている沿岸域で,厳正な保護を図る必要のある区域(評価ランクⅠ)とされている。さらに,国際的な観点からみても,上述のとおりラムサール条約登録湿地のクライテリアを優に充足しており,周辺の大浦川及び河口域は環境省により2010年にラムサール条約の潜在的候補地にまで選定されている。特筆すべきは,埋立予定地は,環境省レッドリストにおいても絶滅危惧種ⅠA類(CR)に指定されているジュゴンの餌場の藻場としてかけがえのない海域であることである。
したがって,埋立予定地は,国土の利用に関する様々な位置付けからも自然環境を厳正に保全すべき場所にあたり,この海域を埋め立てることは,そもそも「国土利用上適正合理的」とはいえない。
3 環境配慮要件について
(1) 公用水面埋立法4条1項2号の趣旨
 次に,公有水面埋立法上,埋立ての免許には「其ノ埋立ガ環境保全・・・ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」が要求される(同法4条1項2号)。これは,水面を変じて陸地となすという埋立行為は,環境に与える影響が多大で不可逆的であることから1973年改正により同法に特に付加されたものである。「十分配慮」とは,問題の状況及び影響を把握した上で,これに対する措置が適正に講じられていることであり,その程度において十分と認められることをいう。しかしながら,本埋立ては環境に十分配慮されたものとは到底いえない。
(2) ジュゴンについて
 まず,国の調査でもわずか3頭しか確認されていない絶滅危惧種(かつ,文化財保護法上の天然記念物)であるジュゴンに対する影響評価を大きく誤っている。埋立承認申請書添付の環境影響評価書では海草藻場でのジュゴンの食跡は「辺野古地区では確認されませんでした。」(同評価書要約書「6.16ジュゴンに係る環境影響評価の結果の概要(1)」)と記載されているが,申請書提出直後の2013年4月から6月にかけての調査で,埋立てにより消失する辺野古地区(大浦湾西部)において,合計12本の食跡が発見されており,このことは国も確認していた(2013年9月22日共同通信)。この新たな調査結果を踏まえなかったため,環境影響評価書はジュゴンの生息域に関して「施設等の存在に伴う海面消失によりジュゴンの生息域が減少することはほとんどないと考えられます。」(同評価書要約書「6.16ジュゴンに係る影響評価の結果の概要(2)」)と全く誤った予測をしており,訂正もされていない。なお,日本のNGOも関与して2003年に米国カリフォルニアの連邦地方裁判所に提起された訴訟(ジュゴンvsラムズフェルドケース)において,2008年1月24日の判決は,米国国防総省が本件海域の埋立てにあたり沖縄に生息するジュゴンへの影響等を評価・検討していないことは米国の国家史跡保存法(NHPA)に違反している状態にあると判示し,国防総省にジュゴンの保護手続の在り方を示すように指示をしている。今回,国(沖縄防衛局)が提出する環境影響評価書は,上記判決において指示されたアメリカ国家環境影響評価法(NEPA)で求められる評価・検討ともいえないことは明らかである。
(3) サンゴ・海藻草類について
 埋立区域内のサンゴに対する環境影響については,施設の存在により大浦湾側のサンゴの生息域が一部消失することを認め,その消失面積(被度5%以上)は6.9ヘクタールと予測しながら,確立された技術とはいえないサンゴ類の移植をもって環境保全措置としている点は極めて不十分である。また,埋立区域内の海藻草類に対する環境影響について,施設の存在により辺野古前面海域及び大浦湾の西側海域における海草藻場の一部(約78ヘクタール)が消失すると予測しながらも,具体的な環境保全措置についての言及はない(同評価書要約書「6.15海藻草類に係る環境影響評価の結果の概要(2)」)。
(4) まとめ
 そもそも,沖縄県知事は,2012年3月27日に,環境影響評価書に対して,「当該事業は,環境の保全上重大な問題があると考える。また,当該評価書で示された環境保全措置等では,事業実施区域周辺域の生活環境及び自然環境の保全を図ることは不可能と考える」と,およそ環境配慮がなされていないとの意見を述べていた。今回の埋立承認申請に当たり添付された環境影響評価書は若干の補正はされているものの,上記の点も含めその補正は全く不十分であり,当連合会としても,沖縄県知事意見と同様,「埋立予定地の自然環境の保全を図ることは不可能」と評価する以外ない。
4 以上のとおり,本件事業は,公有水面埋立法の埋立「承認」の要件も満たしていない。
第4 結論
 以上の検討結果に鑑み,本埋立ては公有水面埋立法により「承認」される要件が欠けているため,当連合会は,国に対し,本公有水面埋立ての承認申請を直ちに撤回することを求める。また,国が承認申請を撤回しない場合は,処分庁である沖縄県知事は,公有水面埋立法上の適正な解釈に従って本埋立ての承認申請を承認しないことを求める。むしろ,国と沖縄県は,協議の上,本沿岸域一体について自然公園法の国立公園に指定するなど,法律により自然環境を保護する手続を進め,次回に開催される締約国会議においてラムサール条約登録湿地に指定をされるように,積極的に保全手続をとるべきことを提言するものである。
                                                            以上

PS(2015年10月29日追加):知事に代わって取り消しを撤回する「代執行」の手続きをする強硬姿勢とは、環境についての意識の低さと沖縄県民の意志をないがしろにする態度が出ている。そして、気にしているのが来年夏の参院選のみで、どんな方法をとっても既成事実化してしまえば反対運動が沈静化するというのは、いくらなんでも考えが甘すぎるだろう。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/244128
(佐賀新聞 2015年10月28日) 辺野古、29日に本体着工、政府、移設に強硬姿勢
 政府は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の本体工事に29日朝、着手する。翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しの効力を石井啓一国土交通相が停止したのに続き、知事に代わって取り消しを撤回する「代執行」へ手続きを始めるなど強硬姿勢を鮮明にした。沖縄県側は、取り消しの撤回を求める政府の是正措置に応じない方針を固め、反発を強めた。政府は、市街地に囲まれた普天間飛行場の早期閉鎖を目指している。本体工事を急ぐのは、移設を既成事実化して反対運動の沈静化を図り、来年夏の参院選への影響を最小限に抑える思惑もあるとみられる。


PS(2015年11月1日追加):私は、*7-1、*7-2の意見に賛成だ。そして、国が名護市の久辺3区に直接振興費を出すことを約束し、3区長が公民館や道路建設で納得したことについては、地方自治や主権在民(民主主義)を無視しているとともに、これからの久辺3区の可能性の大きさと公民館・道路・防災備蓄倉庫の整備等は基地と引き換えにしなくてもまちづくりの一環として整備すべきものであることを考えると、久辺3区にとっても割に合わない取引であり、ここで沖縄が分断されるべきではないと思う。
 また、*7-3のように、防衛省は、宮古島・与那国島・石垣島に陸上自衛隊の警備部隊を配備し、離島防衛を専門とする部隊や地対空ミサイル等を配備して、尖閣諸島を含む東シナ海の守りを固めるそうだが、尖閣諸島の守りを固めるのに「3つの島の自衛隊基地+辺野古米軍基地」の新設はやりすぎであり、予算の使い過ぎでもあるため、既に飛行場のあるどれか一つの島にすべく、配備する部隊の合目的性と費用対効果を検証して必要最小限にすべきだと考える。

<国のやり方>
*7-1:http://www.y-mainichi.co.jp/news/28642/ (八重山毎日新聞社説 2015年10月31日) 許せぬ民意無視の暴挙、辺野古新基地、国が本体工事強行
■国と県の対立極限に
 辺野古新基地建設の埋め立て本体工事が強行され、国と県の対立が極限に達している。27日、石井国交相は翁長知事の埋め立て承認取り消しについて「書面を審査した結果承認取り消しの効力を停止する」と発表。さらに菅官房長官は「普天間飛行場の危険性の除去が困難となり、外交、防衛に重大な損害が生じ著しく公益を害するとの結論に至った」として、国は県に代わり代執行の手続きを開始すると述べた。安倍総理は閣議で翁長沖縄県知事による承認取り消しを「違法」だとの立場から政府内のみならず司法の判断を仰ぐ必要があると代執行について語った。国は翁長県知事への承認取り消しの是正を勧告、従わない場合は高等裁判所へ提訴となる。翁長知事は取り消しの執行停止を決めたことに強い憤りを表明し「国が地方自治法に基づく代執行の手続きを行うとの発表があった。国も司法判断を問うのであれば、第三者機関である裁判所の判決が出るまで辺野古基地建設作業は開始すべきでない」と述べた。
■今後流血の事態も
 県は国地方係争委員会に不服審査を申し出る予定だ。防衛局は翁長知事の意向や民意を全く無視し、29日から本格的な工事を開始した。早くも現場では混乱が続いている。今後、流血騒ぎが起きてもおかしくない緊迫した状況だ。国交相による県知事の承認取り消しを無効にした「行政不服審査法」は本来、公権力(国)に対し個人が不服審査を訴える制度であるはずだ。今回、沖縄防衛局も一般私人としての立場で処分を受ける場合国は申し立ての資格を有するとの判断を初めて示した。防衛局は国の機関である。国の機関が提訴し国の機関が判断すること自体、公平さに欠けることは言うまでもない。国の勝手な解釈だ。県の提出した資料を国はどれだけ精査したか疑問が残る。防衛局、政府側に立たなければこのような「即判断」などできるはずはない。審査を国は公表すべきだ。国のなりふり構わぬ「ムチとアメ」政策も問題だ。国が名護市の久辺3区に名護市を通さず直接、振興費を出すことは地方自治への露骨な介入である。さらに、辺野古の海周辺の環境影響を監視する国の「環境監視委員会」のメンバー3人が監視委員会の運営や移設関連事業を請け負った業者から寄付を受けていたことが判明した。委員会は仲井真前知事が辺野古承認を決定した際、承認条件の一つとして政府に設置させたものだ。委員は発言や判断に影響はないと述べ、菅官房長官は「法的にも運営上にも問題はない」との認識を示した。しかし、委員や監視委員会に疑惑と不信の目が向けられるのは当然だ。28日、沖縄防衛局は世論に押され、移設と運営を同一関連業者が受注していたのを見直し、業者を新たに選定し契約すると発表。問題ありと認めたのだ。
■沖縄は重大な岐路に
 市内では28日、「翁長知事の埋め立て承認取り消しを支援し辺野古新基地を許さない」八重山郡民総決起大会が開かれ、「自らが選んだ誇りある翁長知事を最後まで支え、辺野古には絶対に新基地を造らせない」と決議した。国は県民の分断、懐柔攻勢を強めるだろう。沖縄は重大な岐路に立たされている。5月の県民大会で翁長知事が「ウチナーンチュ、ウセーテーナイビランドー」(沖縄の人をなめてはいけませんよ)の発言をいま一度かみしめ、揺るぎない視座を再確認したい。

*7-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-164124.html
(琉球新報社説 2015年11月1日) 久辺3区の振興費 新基地計画と絡めるな
 新基地建設に向けた政府の姿勢は常軌を逸している。その強引な手法は地方自治をも破壊しかねないものであり、極めて問題だ。政府は米軍普天間飛行場の代替となる名護市辺野古の新基地建設をめぐり、同市の辺野古、豊原、久志の「久辺3区」が進める地域振興の事業費を直接交付する方針を3区の区長らに伝えた。建設予定地に隣接する3区は、名護市に計55ある行政区の一部だ。国が自治体を通さず、財政支援するのは異例であり、地方自治への介入にほかならない。札束で地域の分断を図るような手法に憤りを覚える。政府としては、新基地建設に反対している名護市の頭越しに3区を支援することで稲嶺進市長らをけん制するとともに、国民に普天間の移設事業が進展しているとアピールする狙いがあろう。防衛省は本年度予算から3区にそれぞれ1千万円ずつ支出する方向で調整している。基地所在市町村に支給する「特定防衛施設周辺整備調整交付金(9条交付金)」などをモデルに、交付対象を行政区に拡大する方向だが、その法的な根拠ははっきりしない。9条交付金に基づく事業は自治体を介して行うのが通例だ。交付対象の拡大には財政規律上、疑問が大きい。国会での審議もないまま、政府内の手続きだけで制度が見直されていいはずがなかろう。交付金の原資は国民の税金だ。そもそも国の施策に反対した自治体を無視して、地域住民への交付金を恣意(しい)的に動かせるような仕組みは地方自治の精神を否定するものだ。復帰前、米統治下で住民の懐柔策に利用された高等弁務官資金と何ら変わらない。これで「法治国家」(菅義偉官房長官)と言われても、噴飯ものだ。久辺3区から振興事業として要望が挙がったのは、防災備蓄倉庫の整備や放送設備の修繕、芝刈り機の購入などだった。いずれも通常の地域振興事業として支援すべきものではないのか。仮に3区だけ、移設の諾否でその実施が左右されるとしたら差別以外の何物でもない。政府は翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しの効力を停止させ、新基地の本体工事に着手するなど強権色を鮮明にしている。振興策を盾にさらに地域を揺さぶるようなまねは許されない。基地と振興はリンクしないと繰り返してきたことの責任を負うべきだ。

<沖縄の他の新基地>
*7-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150411&ng=DGKKASFS10H6V_Q5A410C1PP8000 (日経新聞 2015.4.11) 
宮古島に陸自部隊 防衛省、18年度末までに 550人、ミサイル配備
 防衛省は南西諸島の守りを固めるため、沖縄県の宮古島に陸上自衛隊の警備部隊を配備する方針だ。離島防衛などを専門とする550人規模の部隊のほか、航空機を撃ち落とす地対空ミサイル(SAM)を配備する。沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海への進出を拡大している中国をにらむ。左藤章副大臣を夏までに宮古島へ派遣し、下地敏彦宮古島市長らに配備計画を説明する。8月末に締め切る2016年度予算案の概算要求に用地取得費などを盛りこみ、18年度末までに配備することをめざす。新設するのは離島への上陸を阻んだり、大規模な災害に対処したりする警備部隊。航空機や艦船による武力侵攻に備え、SAMのほか、地対地ミサイル(SSM)などの配備も計画する。警備部隊は約350人、ミサイル部隊は約200人をそれぞれ想定している。現在、沖縄本島以南には陸上部隊がなく「力の空白」(陸自幹部)が生じている。中国の艦船や航空機が東シナ海で活動を活発にしていることを踏まえ、14~18年度の中期防衛力整備計画では南西地域の防衛強化を打ち出した。防衛省は15年度末までに日本最西端の沖縄県・与那国島に尖閣周辺の艦船や航空機の動きを監視する部隊を新設する。鹿児島県の奄美大島には18年度末までに警備部隊をつくる計画だ。宮古島に関しては昨年6月に当時の武田良太副大臣が下地市長と会い警備部隊配備先として「有力な候補地」と伝えていた。防衛省は沖縄県の石垣島も、警備部隊の配備先として検討している。


PS(2015年11月27日追加):米軍は、離島の自衛隊基地を利用すればよく、*8のように、第一級の食品生産を行っている海近くの民間空港を利用する必要はないだろう。防衛省が佐賀空港の米海兵隊利用の要請を取り下げたのに、あらためて確認するのは、まるで誘致しているかのようだが、このような産業間の矛盾や国費の無駄遣いはやめるべきである。また、玄海原発の再稼働については、伊方原発や国の対応を確認しなくても、佐賀は、汚染されていない高品質の食品を生産し、再生可能エネルギーほかクリーンな産業で勝負する決意をし、それと矛盾のない方針を出せば、他もついて来ると考える。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/253915
(佐賀新聞 2015年11月27日) 山口知事、米軍空港利用「確認する」、11月定例県議会開会
 11月定例佐賀県議会は26日開会し、86億6300万円の一般会計補正予算案や知事ら特別職の期末手当(ボーナス)を引き上げる給与条例改正案など27議案を提出した。山口祥義知事は提案理由説明で、防衛省が佐賀空港の米海兵隊利用の要請を取り下げたことに対し、「あらためて確認する必要があり、説明内容を精査すると(防衛省に)申し上げた」と述べた。その上で「国防の重要性は十分認識しているつもりだが、今回の要請は本県の将来を左右する大きな課題で、慎重には慎重を重ねて対応していく」と強調した。環太平洋連携協定(TPP)については「農相や政府の担当政務官に万全の対策を講じるよう要請した。県内の関係団体の意見を聞きながら、適宜必要な対応をしていく」とした。玄海原発の再稼働では、3、4号機の規制基準の適合性審査が進んだ段階で、「伊方など先行事例の関係者の対応状況や国の考えを確認した上で、県としての考え方を整理する」と説明した。1号機の廃炉に関し安全協定で廃止措置を事前了解の対象に含める改定をしたことに触れ、「安全第一の姿勢で対応する」と語った。補正予算案は、知的障害のある児童生徒の教室不足解消を図るため、県立大和特別支援学校の校舎整備の基本設計に761万円などを計上した。議会改革検討委員会も開かれ、政務活動費の在り方について意見を交わした。再び各会派で持ち帰り、検討を続ける。会期は12月18日までの23日間で、一般質問は2~4日の3日間、常任委員会は9、10日の2日間。14日はさが創生対策、16日は佐賀空港問題等特別委員会を開く。

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