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2015,10,27, Tuesday
パブリック・ 政府のエネル 大手メディア フクイチ作業員 一般住民の放射線防護 コメント結果 ギー・ミックス の報道 の被曝状況 (平時は1mSv以下で、「100mSv 以下なら健康への影響はない」 という科学的根拠はない) (1)東電福島第一原発事故(以下、“フクイチ”)後について *2-1のように、現在のフクイチは、「①周辺に“怪しい霧”が発生し、近くにいると異様な日焼けをする」「②港湾内外の海水から検出される放射性物質の濃度が上昇している」「③1~3号機から溶け落ちた大量の核燃料デブリが地中へメルトアウトして地下水流の汚染をより高めている可能性があり、プルトニウムは含まれていないため、3号機のデブリは格納容器の底に留まっているか、爆発時に外に放出してしまった可能性が高い」「④メルトアウトした核燃料デブリが、今も核分裂反応を起こしているらしい」などである。そして、いまだに「中のことはよくわかっていない」などと曖昧なことを言っているのは、「わかっているが、言えない」ということで、ここまで国民を粗末にする、技術的にもずさんでチェルノブイリより劣る対応が、現代の日本にあってよい筈がない。 そして、*1-1のように、フクイチ後の作業で被曝した後に白血病になった元作業員に、労災保険が認定された。これまで、白血病の労災が認められるには、年5ミリシーベルト以上を被曝し、作業開始から発症まで1年以上あることが基準だが、この男性の累積被曝線量は19.8ミリシーベルトであり、そのうち大半の15.7ミリシーベルトをフクイチでの作業が占めたため、福島県の富岡労働基準監督署がフクイチでの被曝が大きな原因と判断したそうだ。厚労省は「科学的に被曝と健康影響の因果関係を証明したわけではない」としているが、フクイチの収束作業で白血病も含む癌を発症したとする申請は既に8件も出ており、因果関係があると考える方が自然だ。 また、*1-2のように、放射能汚染されたガレキの撤去作業をしていたフクイチの元作業員(53歳、男性)が、4か月で56・41mSv被曝し、作業後11か月で転移ではない3つ癌(胃癌、結腸癌、膀胱癌)を同時に発症して、東京電力らを相手に損害賠償請求訴訟を起こしたそうだ。Aさんの被曝線量は年間上限の50mSvを少し超えただけだったとしても、線量計をはずして働いたり、放射線値の高いガレキを直接抱えたりしたのであれば、線量計に出た数値以上に被曝しており、転移ではない3つの癌はそれらの結果として発生したのだろう。 なお、*1-3のように、岡山大大学院の津田教授(生命環境学)が、国際環境疫学会の医学専門誌エピデミオロジー(疫学)に、「福島県が福島原発事故当時18歳以下だった県民を対象に実施した健康調査の結果を分析したところ、甲状腺がんの発生率が国内平均の20~50倍に達していた」という内容の論文を発表された。そして、都内の外国特派員協会の会見で「①福島県では小児や青少年の甲状腺がんの過剰発生がすでに検出されており、多発は避けがたい」「②チェルノブイリ原発事故の経験は生かされず」「③チェルノブイリ事故と比べて放射性物質の放出量は10分の1と公表されたが、もっと大きな放出・被曝があったと考えざるを得ず」「④今後、患者数が爆発的に増える可能性がある」と示唆されたそうだ。この発表を「時期尚早」として、癌と原発事故の因果関係を否定するのは、非科学的であるとともに、国民の命を大切にしない人権侵害である。 さらに、*1-4のように、外務省が1984年、国内の原発が戦争やテロ等で攻撃を受けた場合は急性被曝で最悪1万8千人が亡くなり、原発の約86キロ圏が居住不能になると試算していたにもかかわらず公表されなかったのだそうで、現在、再稼働し始めている原発周辺の住民は、そういう前提で考えるべきである。これまでは、「危険性を知らなかった」という理由で地元住民に責任はなかったが、これからは、「危険を承知で交付金目的の原発再稼働をさせたのだから、自己責任だ」と言われても仕方あるまい。 しかし、経産省が2030年の電源構成(エネルギーミックス)を決めるために国民から意見を募った「パブリックコメント(意見公募)」では、*1-5のように、原発への依存度をさらに引き下げるかゼロにするよう求める意見が約9割に上ったにもかかわらず、経産省は原発割合を「20~22%」として公募意見を「黙殺」し、意見公募を単なる儀式にして、あらかじめ予定していた電源構成に決めた。権力で自然現象を変えることはできず、自然の摂理を無視した法律や基準は、次第にその不遜さが表れるのに、である。 なお、*2-2のように、フクイチの避難者が「『避難の権利』を求める全国避難者の会」を結成したそうだが、これはフクイチを小さく見せ、地域振興するためには、住民(国民)の命を犠牲にしてもよいと考えている本末転倒の政治・行政に対抗する手段として重要だ。 (2)川内原発再稼働について 鹿児島県の川内原発2号機は、*3-1のように、2015年10月15日に4年1か月ぶり再稼働し、今年8月に再稼働した1号機に続いて2基目となったそうだ。川内原発1号機は1984年7月4日、2号機は1985年(昭和60年)11月28日に営業運転を開始して約30年経過しており、川内原発の蒸気発生器は中を通る細い管に傷が入るトラブルがたびたび見つかり、原発に反対するグループからは「このまま、再稼働させるのは安全性に問題がある」と指摘されている。 また、*3-2のように、九電川内原子力総合事務所の藤原伸彦所長は、2号機の稼働が約4年ぶりであることに触れ「何が起こるか分からないという緊張感を持ち、営業運転まで当たりたい」と述べたそうだが、川内原発前では、反原発派の100人が集会を開催して「再稼働のスイッチを押すな」と声を上げ、福岡市の九電本店前でも抗議する人たちの姿が見られたそうだ。 東京新聞も、*3-3のように、2011年3月のフクイチ事故後、新規制基準に基づく審査に適合した原発として川内原発の再稼働を取り上げ、夏の電力需要ピークも原発なしで乗り切った九州で、太陽光発電の買い取りを制限しながら、複数の原子炉を近くで稼働させるのは危険性だとしている。また、新規制基準に合格しても、火山の巨大噴火への備えはなく、鹿児島県の伊藤知事らは「広域に避難するような事態にはならないだろう(いわゆる想定外)」と楽観的に見て再稼働を認めているのだ。 そのため、南日本新聞も、*3-4のように、福島原発事故では放射性物質が立地自治体の外にまで拡散し、局地的に放射線量の高い「ホットスポット」も見つかり、当初は川内原発30キロ圏市町の多くが、立地自治体並みの協定を求め、それは住民の不安を踏まえれば当然だった筈で、少なくとも避難対象地域となる半径30キロ圏までは、同意が必要な「地元」と解すべきだとしている。私は、同意が必要な「地元」は、過酷事故時に被害を受ける80キロ圏もしくは250キロ圏だと考えている。 (3)玄海原発について フクイチで拡散した放射性物質は、当時の防災対策重点区域だった10キロ圏を超え、50キロ圏の福島県飯舘村を汚染して全村避難に追い込んだ。そのため、*4-1のように、佐賀新聞社の佐賀県民世論調査で、従来の手続きを適切とした県民は15%に満たず、80%以上の県民が地元の範囲を広げるべきだと回答したそうだ。玄海原発の半径30キロ圏内には、立地自治体の東松浦郡玄海町のほか、佐賀県唐津市、伊万里市、福岡県糸島市、長崎県佐世保市、平戸市、松浦市、壱岐市が含まれ、影響を受ける人口や産業が大きすぎるため、私は、いろいろな資源の多いこの地域でわざわざ原発を行うよりも、筑肥線を複線化して呼子・玄海町、伊万里、松浦、平戸などまで延長する方が、将来に役立つ投資になると考えている。 そのような中、半径30キロ圏内の同意や説明を省略して、*4-2のように、九電の黒字化のために原発再稼働をすることは許されず、このようなことを続ければ、単に価格だけの問題ではなく、環境という視点から国民の新電力への切り替えが進むだろう。 また、*4-3のように、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」(石丸初美代表)は、佐賀市の中央大通りで抗議活動を行い、「①フクイチの犠牲を踏みにじる暴挙」「②フクイチは収束どころか、まだまだ続いている」「③(火山対策や避難計画の不備を挙げて)原発事故は起きる。原発事故は地球を滅ぼす。そんな原発はいらない」「④山口知事は、佐賀のことは佐賀で決めるといって当選した。知事は再稼働の同意権を持っており、住民説明会や地元の範囲など国任せではなく、県民の立場で判断すべき」と批判し、即時停止を訴えたとのことで、そのとおりだ。 (4)伊方原発再稼働について *5-1のように、佐田岬半島に位置する伊方町にある四国電力伊方原発3号機の再稼働をめぐる陳情の採択について、町議会の特別委員会の審議は非公開とされ、早期再稼働を求める陳情3件が全員一致で採択されたそうだ。そして、愛媛県議会も再稼働を認める決議案を本会議で可決し、中村知事は、*5-2のように、2015年10月26日、伊方再稼働に同意した。 中村知事は「非常に重い責任を伴う判断」「国の考え方、四国電力の取り組み姿勢、地元の議論を総合的に判断した」などとして再稼働に同意する意思を伝えているが、交付金目当てで再稼働に進んだ責任を、事故時にどう負えるのか、国の考え方、四国電力の取り組み姿勢が何故よいのかについては、説明がとんでいるため不明だ。瀬戸内海に面した原発で過酷事故が起きれば、その事故が瀬戸内海に与える影響は太平洋の比ではないのに・・。 <東電福島第一原発事故(“フクイチ”)の影響> *1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201510/CK2015102102000134.html (東京新聞2015年10月21日)福島事故後被ばくで初の労災認定 白血病発症の元作業員 厚生労働省は二十日、東京電力福島第一原発事故後の作業で被ばくした後に白血病になった元作業員に、労災保険を認定した。事故収束作業に伴う白血病の発症で労災が認められたのは初めて。厚労省によると、労災が認められたのは発症時三十代後半だった男性。建設会社の社員として二〇一一年十一月~一三年十二月、複数の原発で作業した。一二年十月以降の一年一カ月間は福島第一を担当。原子炉建屋に覆いを造ったり、使用済みの防護服などを焼却する施設を建設した。男性は一三年十二月に福島第一を去った後に体の不調を感じ、白血病と診断され労災申請した。現在は通院治療している。白血病の労災が認められるには、年五ミリシーベルト以上を被ばくし、作業開始から発症まで一年以上あることが基準。男性の累積被ばく線量は一九・八ミリシーベルトで、福島第一での線量は大半の一五・七ミリシーベルトを占めた。福島県の富岡労働基準監督署は、厚労省の専門家による検討会の見解を聴いた上で、福島第一での被ばくが白血病の大きな原因になった可能性があると判断した。男性には医療費や休業補償が支払われる。厚労省は「労災認定は補償が欠けることがないよう配慮した行政上の判断で、科学的に被ばくと健康影響の因果関係を証明したわけではない」としている。事故前に全国の原発で白血病や悪性リンパ腫などの労災を認められた作業員は十三人。福島第一の収束作業で白血病も含むがんを発症したとする申請は八件。今回の男性を除く七件の内訳は三件が不支給、一件が取り下げ、三件が調査中。福島第一原発での作業をし、白血病となった男性が初めて労災認定されたことに、作業員からは「認められてよかった」との声が上がったが、収束作業の現場が被ばくとの闘いであることは変わりない。他のがんなどの労災認定には高いハードルが設けられていることなど、作業員を取り巻く環境は課題が山積している。白血病の認定条件の一つは「年五ミリシーベルト以上の被ばく」。東電のまとめによると、事故発生後、福島第一での作業に関わって累積で五ミリシーベルト以上被ばくした人は二万人強いる。二〇一一年度だけで一万人以上が五ミリシーベルト超被ばくしていることなどから、「累積五ミリシーベルト以上」の二万人強の多くが、「年五ミリシーベルト以上」という条件に当てはまるとみられる。仮に白血病になった場合、救済の道が開けたことは安心材料になる。ただ、胃がんなどでは明確な基準が定まっておらず、一〇〇ミリシーベルト以上の被ばくが認定の一つの目安とされるなど、白血病に比べ厳しい運用がされている。技術者の作業員は「がんになるのでは、と不安になることもある。どうすれば認定されるのか、決めてほしい」と話した。別の作業員も「福島第一で命をかけて働いている。(国は)家族のためにも救済側に立ってほしい」と訴えた。胃など三カ所のがんになった元作業員は、高線量の作業をしたが、記録上の線量が一〇〇ミリシーベルトに満たないなどとして労災が認められなかった。この男性を含め、線量計を低線量の場所に置いて作業していたと証言した作業員は少なくない。その場合、実際の被ばく線量は記録より高くなる。現場では、がれきが除去されるなどして当初よりは線量が下がった。現在はタンク増設や敷地内の舗装が中心のため、作業員の被ばく線量も全般的には低めで推移している。だが今後、廃炉作業は原子炉へと近づく。ベテラン作業員は「来年はもっと高線量の作業が増える。がんになる人が増えたら、福島第一に来なくなる人が出てくるかもしれない」と懸念した。 <東電の広報担当者の話> 作業員の労災申請や認定状況について当社はコメントする立場にない。今後も作業環境改善に取り組み、被ばく管理を徹底していく。 *1-2:http://news.livedoor.com/article/detail/10747967/ (週刊女性 2015年10月24日) 第一原発元作業員の53歳、作業11か月で3つのがんを同時発症 ○北海道に住む53歳男性は、膀胱がん、胃がん、結腸がんを発症した ○福島第一原発の元作業員で、放射能汚染されたガレキの撤去作業をしていた ○男性は9月、東京電力らを相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こした わずか11か月間で膀胱がん、胃がん、結腸がんを発症。それも転移ではなく別々の発症だ。しかも、53歳という若年期での同時発症は極めてまれだ。汚染された樹木を高圧洗浄する作業員。除染による被ばくの影響も危惧されている。3つのがんに見舞われたのは北海道札幌市に住む男性(現在57)。仮にAさんとしておく。Aさんは長年“一人親方”として重機のオペレーターに従事していた。その腕と経験を買われ、知人から誘われたのが福島第一原発の収束作業だった。簡単に言えば、放射能汚染されたガレキ等の撤去作業だ。原発爆発事故からわずか数か月後に誘いを受けたとき、Aさんは「行きたくない」と思った。だが、どうしてもとの誘いを断れず、「いやいや行った」のだ。就労は2011年7月4日から10月31日までの4か月間。Aさんは今、働いたことを悔いている。一般人の年間被ばく量は1ミリシーベルト(以下、mSv)と規制されているが、原発労働者の場合は、年間最大で50mSv(5年間の累計で100mSvまで)。だが、Aさんは4か月で56・41mSvと年間の上限に達したため退職する。そして翌’12年6月、’13年3月、5月と冒頭の3つのがんに侵されたのだ。自分がこうなったのは、原発の労働環境以外に考えられない。Aさんは今年9月1日、東京電力、その元請けの大成建設、そして一次下請け業者の山粼建設の三者を相手取り約6500万円の損害賠償を求める訴訟を札幌地裁に起こした。「福島第一原発での収束作業と発がんの因果関係を争うことでは初めての裁判になります」。こう語るのは、9人の弁護士で構成するAさんの弁護団団長、高崎暢弁護士(たかさき法律事務所)だ。「本人には身体をボロボロにされた憤りはあります。でもそれ以上に、もう被ばく者を出してはいけないとの思いが強いんです」。だが、Aさんの被ばく量は年間上限の50mSvを少し超えただけだ。これで、3つのがんとの因果関係を争えるのか。この疑問を高崎弁護士にぶつけると、「56・41mSvはあくまでも表向きの数字。なぜなら、Aさんらは線量計をはずして働いたこともあるし、放射線値の高いガレキなどを直接、人力で抱える危ない労働もしていたからです」と、その労働環境こそが被ばく者を生み出すと強調した。じつは、体調を崩して労災申請をした福島第一原発の元労働者は、Aさんを含め8人いる。1人だけ申請を取り下げたが、Aさんを含む5人に不支給が決定し、2人が審査中だ。行政の壁は厚い。それを突き破るための今回の提訴だ。しかし「闘える」と高崎弁護士は読んでいる。高崎弁護士は、かつて『原爆症集団訴訟』を担当。原爆症と認定されない被爆者数百人が、2003年から全国各地で認定を求めて提訴したもので、31の裁判のうち29で原告が勝訴、原告の訴えがほぼ認められた。この裁判で明らかになったことがある。2号機と3号機の間にある通路に積まれたガレキ。作業員が重機で撤去した。「ここから上の線量が危険で、ここから下が安全という“しきい値”が存在しないことです。つまり、低線量でも危険というのは司法の場で決着ずみ。今回も、線量にこだわらないで裁いてほしい」(高崎弁護士)。だが厳しい闘いになるのは間違いない。日本の原発で働いた労働者は推定数十万人だが、自らの被ばくについて訴えた裁判となると敗訴続きだ。日本初の原発労働者による裁判は、放射線皮膚炎と二次性リンパ浮腫に罹患した岩佐嘉寿夫さんが1975年に起こした。しかし、「被ばくを記録した証拠がない」ことで地裁、高裁、最高裁で敗訴。岩佐さんはその後、亡くなる。市民団体『原子力情報資料室』によると、最近では1979年2月から6月まで島根原発と敦賀原発で働いた福岡市の梅田隆亮さんが、2000年に心筋梗塞を発症したのは被ばくが原因だと’12年、福岡地裁に国を相手取り提訴した事例がある。ところが国は、「100mSv以下の線量による影響の推定には、非がん疾患を含めない」「心疾患は生活習慣病のひとつ」として因果関係を認めない(原爆症認定訴訟では、心筋梗塞は認定されている)。梅田さんとAさんに共通するのは、「放射線の人体への害悪や危険性を教えられていなかった」ことだ。梅田さんは責任感から、作業中にブザーが鳴らないよう、床面にたまった強度に汚染された汚水のふき取りなどの危険な仕事を、線量計を人に預けて作業した。Aさんらも長時間にわたる屋外作業をなかば強いられ、ガレキを直接持ち運び線量計をはずしてきた。高線量のホコリも吸った。ここに、大成建設と山粼建設は、労働者への「安全配慮義務違反」を犯したと高崎弁護士は主張する。現在、Aさんは経過観察のため定期受診をしているが、もうフルタイムで働けない。体調のいいときに短時間労働をこなすだけだ。「被ばく者は被害者。だけど、その現状を訴えると逆に差別されたり、仕事を干されます。だから、Aさんの提訴は勇気ある行為なんです」(高崎弁護士)。11月5日、札幌地裁での初公判でAさんは意見陳述を行う。安全性が無視され誰もがお払い箱になる現場で、2度と原発被ばく者を出さないために。 *1-3:http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/165762 (日刊ゲンダイ 2015年10月9日) 福島の甲状腺がん発生率50倍…岡山大・津田教授が警告会見 岡山大大学院の津田敏秀教授(生命環境学)が6日付の国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー(疫学)」に発表した論文に衝撃が広がっている。福島県が福島原発事故当時に18歳以下だった県民を対象に実施している健康調査の結果を分析したところ、甲状腺がんの発生率がナント! 国内平均の「50~20倍」に達していた――という内容だ。8日、都内の外国特派員協会で会見した津田教授は「福島県では小児や青少年の甲状腺がんの過剰発生がすでに検出されている。多発は避けがたい」と強調した。福島県で原発事故と子どもの甲状腺がんの因果関係を指摘する声は多いが、権威ある医学専門誌に論文が掲載された意味は重い。国際的な専門家も事態を深刻に受け止めた証しだからだ。津田教授は会見であらためて論文の詳細を説明。原発事故から2014年末までに県が調査した約37万人を分析した結果、「二本松市」「本宮市」「三春町」「大玉村」の「福島中通り中部」で甲状腺がんの発生率が国内平均と比較して50倍に達したほか、「郡山市」で39倍などとなった。津田教授は、86年のチェルノブイリ原発事故では5~6年後から甲状腺がんの患者数が増えたことや、WHO(世界保健機関)が13年にまとめた福島のがん発生予測をすでに上回っている――として、今後、患者数が爆発的に増える可能性を示唆した。その上で、「チェルノブイリ原発事故の経験が生かされなかった」「事故直後に安定ヨウ素剤を飲ませておけば、これから起きる発生は半分くらいに防げた」と言い、当時の政府・自治体の対応を批判。チェルノブイリ事故と比べて放射性物質の放出量が「10分の1」と公表されたことについても「もっと大きな放出、被曝があったと考えざるを得ない」と指摘した。一方、公表した論文について「時期尚早」や「過剰診断の結果」との指摘が出ていることに対しては「やりとりしている海外の研究者で時期尚早と言う人は誰もいない。むしろ早く論文にしろという声が圧倒的だ」「過剰診断で増える発生率はどの程度なのか。(証拠の)論文を示してほしい」と真っ向から反論。「日本では(論文が)理解されず、何の準備もされていない。対策を早く考えるべき」と訴えた。「原発事故と甲状腺がんの因果関係は不明」とトボケ続けている政府と福島県の責任は重い。 *1-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2015040802100010.html (東京新聞 2015年4月8日) 【福島原発事故】被ばく死 最悪1.8万人 原発攻撃被害 84年に極秘研究 国内の原発が戦争やテロなどで攻撃を受けた場合の被害予測を、外務省が一九八四(昭和五十九)年、極秘に研究していたことが分かった。原子炉格納容器が破壊され、大量の放射性物質が漏れ出した場合、最悪のシナリオとして急性被ばくで一万八千人が亡くなり、原発の約八十六キロ圏が居住不能になると試算していた。研究では東京電力福島第一原発事故と同じ全電源喪失も想定していたが、反原発運動が広がることを懸念し公表されなかった。八一年にイスラエル軍がイラクの原子力施設を空爆したことを受け、外務省国際連合局軍縮課が外郭団体の日本国際問題研究所(東京)に研究委託。成果は「原子炉施設に対する攻撃の影響に関する一考察」と題した六十三ページの報告書にまとめられ、本紙が情報公開を通じてコピーを入手した。報告書は出力百万キロワット級の原発が攻撃されたと仮定。原発の場所は特定せず、(1)送電線や発電所内の非常用発電機がすべて破壊され、すべての電源を失う(2)原子炉格納容器が爆撃され、電気系統と冷却機能を失う(3)格納容器内部の原子炉が直接破壊され、高濃度な放射性物質を含む核燃料棒などが飛散する-の三つのシナリオで検証した。このうち、具体的な被害が示されたのは(2)の格納容器破壊のみ。当時、米国立研究所が米原子力規制委員会(NRC)に提出した最新の研究論文を参考に、日本の原発周辺人口を考慮して試算した。それによると、緊急避難しない場合、放射性物質が都市部など人口密集地に飛来する最悪のケースでは一万八千人が急性被ばくで死亡。ただ、被害は風向きや天候で大きく変わるとして、平均では三千六百人の死亡になると試算した。五時間以内に避難した場合は最悪八千二百人、平均八百三十人が亡くなるという。急性死亡が現れる範囲について、報告書は「十五~二十五キロを超えることはない」と記述している。長期的影響としては、放射性物質セシウムなどで土壌汚染が深刻化すると指摘。農業や居住など土地利用が制限される地域は原発から最大で八六・九キロ、平均で三〇・六キロにまで及ぶとしている。最も被害が大きい(3)の原子炉破壊については「さらに過酷な事態になる恐れは大きいが、詳しい分析は容易ではない」と紹介。福島原発事故と同じ(1)の全電源喪失では、実際に起きた水素爆発の可能性に触れ「被害が拡大する危険性がある」と指摘しており、報告書が公表されていれば、事故の未然防止や住民避難に役立った可能性がある。八〇年代は、七〇年代の二度にわたる石油危機を受け、国は原発建設を積極的に推進。国内の原発十六基が運転を始めた。軍事攻撃が想定とはいえ、原子炉に重大な損害が生じれば深刻な被害が及ぶとのシナリオは世論の不安を呼び、国の原子力政策に水を差す可能性があった。報告書にも「反原発運動などへの影響」などと、神経をとがらせていたことをうかがわせる記述がある。原子力資料情報室の伴英幸・共同代表は報告書の存在を「知らなかった」とした上で「反対運動を理由にした非公開ならとても納得できない。テロの脅威が高まる中、原発のリスクを国民にもっと知らせるべきだ」と話している。 ◆公表する理由がない 外務省軍備管理軍縮課の話 報告書は保存されているが、作成部数や配布先など詳しい経緯は分からない。今後、公表の予定はない。積極的に公表する理由がない。 ◆原発攻撃被害報告書 「福島」に生かされず 軍事攻撃による原発の放射能被害を予測していた外務省の報告書。水素爆発した福島第一原発事故は地震と津波が引き金とはいえ、報告書が指摘していた「全電源喪失」の危機がシナリオ通りに再現された。三十年も前から原発の潜在的な危険性を知りながら、反原発運動の広がりを恐れて公表を控えた外務省。原発推進を掲げた当時の国策の下で、都合の悪い情報をひた隠しにする官僚の隠蔽(いんぺい)体質が浮かび上がる。 「限定配布の部内資料(『取扱注意』なるも実質的に部外秘)」「外務省の公式見解でないことを念のため申し添える」…。高度な秘密性を裏付けるように、報告書には当時の国際連合局軍縮課長が書いた「ことわりがき」が添えてある。当時、同局の審議官だった元外交官の遠藤哲也氏(80)は本紙の取材に「記憶が確かではない」としながらも「ショッキングな内容なので(非公表に)せざるを得なかったでしょうね」と話した。同氏によると、一般的に部内資料は省外への持ち出しが禁止されており、報告書が官邸や原子力委員会などに配布されていなかった可能性が高い。作成された二年後の一九八六(昭和六十一)年には旧ソ連・チェルノブイリ原発事故が起きたが、その時ですら報告書の公表はなく、原発の安全対策に生かされることはなかった。当時は米ソが核兵器の開発を競う冷戦時代。科学技術史が専門の吉岡斉・九州大教授(61)は原発の軍事攻撃を想定した報告書が公表されれば「国民の間で核兵器と原発が一体的に連想されることを心配したのではないか」と推測する。「国家と秘密 隠される公文書」(集英社新書)の共著者で、歴史学者の久保亨・信州大教授(62)も「原子力は、軍事に転用できる技術の最たるもの」と指摘する。久保教授が懸念するのは昨年十二月に施行された特定秘密保護法。安全保障やテロ対策などを理由に原発に関する情報が一段と制限され「闇から闇へ葬られかねない」と懸念を示している。 *1-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201510/CK2015102602000124.html(東京新聞2015年10月26日)公募意見の9割が「原発多すぎ」 電源構成で異論「黙殺」 経済産業省が2030年度に目指す電源構成(エネルギーミックス)のうち、原発の占める割合を「20~22%」とする報告書をまとめる際に国民から意見を募った「パブリックコメント(意見公募)」で、原発への依存度をさらに引き下げるかゼロにするよう求める意見が約9割に上っていたことが分かった。寄せられたすべての意見を本紙が情報公開請求して取得し、分析した。政府は国民から意見を募集しながら全体傾向や詳細は明らかにしなかった。構成目標の最終決定にも反映させておらず、一般の人々からの異論を「封殺」するかのような国民軽視の姿勢が浮き彫りになった。経産省は今年六月に電源構成の原案を示し、六月二日~七月一日まで意見公募を実施。メールやファクスなどで二千五十七件(本紙集計)が寄せられた。しかし、同省は意見の全容を示さず、七月十六日に原案通り構成を決定。その際、件数と意見を部分的に抜粋し公表したにとどまった。本紙は開示された三千三百八十六ページの文書すべてを分析、内訳を分類した。原発については千六百十七件の意見があり、うち依存度を引き下げるかゼロにするよう求める意見は千四百四十九件で、89・6%だった。原案の依存度を支持するか、さらなる拡大を求める「維持・推進」は三十八件で2・4%にとどまり、賛否の判断が困難な意見は百三十件で8%だった。原発比率引き下げを求める理由は「老朽原発の稼働を前提としていて事故が心配」「使用済み核燃料の処分方法が解決していない」などが多かった。政府原案が「22~24%」とした太陽光や風力など再生可能エネルギーに関する意見は延べ千六百六件(原発への意見と重複分含む)。うち91・7%の千四百七十二件が「もっと増やす」ことを要求。原案の支持か、比率引き下げを求める意見は十四件(0・9%)にとどまった。行政手続法は各省庁が重要な指針などを決める際は意見公募し結果を公表するよう定めているが、公表範囲は各省庁の裁量に委ねられている。民主党政権下の一二年、将来の原発比率を決める際は政府は公募意見約八万八千件を分析、87%が「原発ゼロ」を支持していることを公表していた。 <電源構成見通し(エネルギーミックス)> 中長期的に日本がどんな電源に発電を頼るかについての比率。この見通しに沿う形で、政府は規制や財政支出を行い、電力各社も原発の運営方針や、再生エネルギーの活用策を決めるため、日本のエネルギー政策の基本となる重要な数字。家庭の省エネ目標もあり、国民生活へのかかわりも深い。2030年度時点の見通しは、14年4月に安倍政権が閣議決定したエネルギー基本計画に基づき、経産省の審議会の報告も反映し今年7月に策定した。 <フクイチの後始末> *2-1:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151025-00055426-playboyz-soci (週プレNEWS 2015年10月25日) フクイチ周辺にだけ発生する“怪しい霧”に“異様な日焼け”が警告するものとは 福島第一原発事故から4年半――。『週刊プレイボーイ』本誌では当時の総理大臣・菅直人氏とともに、“フクイチ沖1.5km”の海上から見た事故現場の現状をリポートしたーー。フクイチで今も続いている危機は、前回記事(「元総理・菅直人が初めての“フクイチ”海上視察!」)で指摘したベント塔の老朽化だけではない。事故発生以来、港湾内外の海水から検出される放射性物質の濃度も上昇するばかりなのだ。これは構内の地面から流れた汚染水と、フクイチ施設の地下を流れる汚染地下水が海へ漏れ出ている影響としか考えられない。さらに、1~3号機から溶け落ちた大量の核燃料デブリが地中へメルトアウトして、地下水流の汚染をより高めている可能性もある。そこで本誌は、フクイチ沖1500mの「海水」1リットルと、海底(深さ15m)の「海砂」約3㎏を採取し、専門機関に測定を依頼した。その結果、事故当時に大量放出された「セシウム137」(半減期約30年)と「セシウム134」(同約2年)が検出され、やはりフクイチ事故の影響が続いていることがわかった。さらに重要なのが、セシウムと同じくウラン燃料が核分裂した直後に放出される「ヨウソ123」(同約13時間)が、何度か変化して生まれる同位体の放射性物質「テルル123」(同約13時間)も微量ながら検出されたことだ。この海水は、採取1日後から約47時間をかけて測定したので、微量ながら「テルル123」が検出されたことは「採取の数十時間前くらいにフクイチからメルトアウトした核燃料デブリが核分裂反応を起こした?」という見方もできるのだ。では「海砂」の測定結果はどうか。船上に引き上げた限りでは、泥を含んだ様子もなく、生きたハマグリの稚貝も交じるきれいな砂だった。しかし測定結果を見ると、海水よりも多くの放射性物質を含んでいた。まず注目されるのが、核燃料そのものといえる「ウラン235」(同約7億年)と「セシウム134」「セシウム137」。それ以外に「タリウム208」(同約3分)、「アクチニウム228」(同約6時間)、「ラジウム224」(同3・66日)、「ユーロピウム」(同4・76年)など、セシウムよりも半減期が短い放射性物質もいくつか検出された。採取に立ち会った、フクイチ事故の汚染拡大パターンを研究する長崎大学院工学研究科の小川進教授(工学、農学博士)は、こう分析する。「このウラン235は自然界にも存在しますが、やはり採取場所からみてフクイチ事故で放出されたと判断すべきでしょう。そして、これは放射線科学の教科書的内容ともいえる基礎知識ですが、ウラン燃料が原子炉内で核分裂すれば、今回この海砂から検出された、すべての〝短半減期核種〟が発生します。しかし、もうフクイチの原子炉は存在しないので、これらの短半減期核種とウラン235の発生源は、デブリの臨界反応とみるのが理にかなっています。もしデブリが建屋の地中へ抜けているなら、海の汚染を防ぐのは至難の業になるでしょう。ただ、ひとつ気になるのは、3号機だけで使われていたウラン+プルトニウム混合燃料(MOX燃料)のデブリから発生するはずのプルトニウムが、この砂から検出されていないことです。もしかしたら3号機のデブリだけは、まだ格納容器内の底にとどまった状態なのかもしれません」(小川進教授)。今年5月に1・2号機の格納容器内へ投入した探査ロボットの映像からは、今のところデブリの落下位置は突き止められていない。しかし、フクイチ付近の海で放射能汚染が急に高まった昨年前半あたりから、1・2・3号機それぞれのデブリの位置と反応に大きな変化が起き始めた可能性がある。かつてフクイチ構内を作業員として取材したジャーナリストの桐島瞬氏が、こう推理する。「事故後しばらくは、1・2・3号機から蒸気や煙状の気体が出ていたと現場の作業員が話していました。いまだに中のことはよくわかっていないので、3号機のデブリが1・2号機とは違った場所で発熱しているとも考えられます。もうひとつ気になるのは、一昨年から海際近くの汚染水くみ出し井戸などで、濃度の高い“トリチウム”が検出されるようになったことです。この放射性物質は“三重化水素”とも呼ばれ、急速に水と結びつき、その水を放射能を帯びた特殊な水に変えます。フクイチの原子炉周辺は濃い霧に包まれることが多いのですが、これも放出量が増えたトリチウムの影響ではないかという意見も聞かれます」。空気中の水(水蒸気)と三重化水素が結びつけば分子量が大きくなるので、当然、霧が発生しやすくなる。そういえば今回の海上取材でも、南側の4号機から北側の5・6号機にかけて、約1㎞幅、厚さ20mほどの霧の帯がフクイチ構内の地上から高さ30~40m、巨大な原子炉建屋の上部3分の1ほどの空中に浮いていた。6、7月頃の福島県沿岸には「やませ」と呼ばれる冷たい風が吹き寄せ、浜通りの海岸地帯では朝晩に霧が立つことが多い。実際、今回の船上取材でも朝9時に久之浜港を出て、しばらくは沿岸のあちこちに霧がかかり、福島第二原発にも薄霧の層がたなびいていた。しかしフクイチの霧は、どうも様子が違った。気温の上がった昼近くになっても、他の場所よりも濃い霧の層がしつこく居座り続けた。少し強く海風が吹くと一時的に薄れるが、しばらくするとまたモヤモヤと同じ場所に霧の塊が現れた。この海上取材から10日後の8月2日には、3号機燃料プール内に落下した大型瓦礫を撤去する作業が行なわれた。その際にも、3・4号機付近から濃霧が湧き出すように見えるニュース画像が話題になった。このフクイチ上空の“怪霧”について、船上取材に同行した放射線知識が豊富な「南相馬特定避難推奨地域の会」小澤洋一氏も、後日、あれは気になる現象だったと話してくれた。「私は昔から海へ出る機会が多いのですが、フクイチだけに濃い霧がかかる現象は記憶にありません。凍土遮水壁の影響で部分的に地上気温が下がっているとも考えられますが、トリチウムが出ているのは事実なので、その作用で霧が発生する可能性は大いにあると思います。だとすれば、あの船上で起きた“気になる出来事”にも関係しているかもしれません」。その出来事とは、取材班全員が短時間のうちにひどく“日焼け”したことだ。フクイチ沖を離れた後、我々は楢葉町の沖合20㎞で実験稼働している大型風力発電設備「ふくしま未来」の視察に向かった。この時は薄日は差したが、取材班数名は船酔いでずっとキャビンにこもっていたにもかかわらず、久之浜に帰港した時には、菅氏とK秘書、取材スタッフ全員の顔と腕は妙に赤黒く変わっていた。つまり、曇り状態のフクイチ沖にいた時間にも“日焼け”したとしか考えられないのだ。「トリチウムは崩壊する際にβ(ベータ)線を放射します。これは飛距離が1m以内と短い半面、強いエネルギーを帯びています。私たちが1時間ほどいたフクイチ沖1500mの空気にも濃度の高いトリチウムが含まれていたはずで、それが皮膚に作用したのではないでしょうか」(小澤氏)。だとすれば、我々は、トリチウムによるβ線外部被曝を体験したのか…。とにかく、今回訪れた福島県内では多くの新事実を知ることができた。まず実感したのは、福島復興政策の柱として進められている除染事業が、避難住民を帰還させるに十分な効果を発揮しているか非常に疑わしいことだ。また、フクイチ事故で行方知れずになった燃料デブリが地下水、海洋汚染のみならず今後もさらに想定外の危機を再発させる恐れもある。やはりこの事故は、まだまだ厳重な監視が必要なステージにあるとみるべきなのだ。今回の現地取材に同行した菅直人氏は、フクイチ事故当時の総理としての行動と判断が賛否両論の評価を受けてきたが、今後も政治生命のすべてを「脱原発」に注ぐと宣言している。また機会をあらためて、次はフクイチ構内への同行取材を成功させ、事故現場の現状を明らかにしたいものだ…。 *2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201510/CK2015102502000113.html (東京新聞 2015年10月25日) 原発避難の権利確立を 全国組織、29日に設立集会 東京電力福島第一原発事故の避難者らが「『避難の権利』を求める全国避難者の会」を結成し、二十九日に東京で設立集会を開く。強制避難と自主避難の壁を越え、全国に散らばった避難者のネットワークをつくり、政府や自治体に、避難の権利を保障する立法や支援策を求めていく考えだ。「さまざまな避難者に呼び掛けが伝わる工夫を」「住宅支援問題の取り組みは外せない」。七日夜、札幌市のアパートで福島市から妻子と自主避難した介護サービス業中手聖一さん(54)が、インターネット電話「スカイプ」で設立準備会の会議に臨んでいた。準備会メンバーは、福島県やその近隣から避難し、十都道府県で暮らす約十五人で、今夏ごろから話し合いを重ねてきた。この夜も活動方針や入会方法など、会議は三時間を超えた。同会が求める避難の権利を、中手さんは「避難する人もとどまる人も、自分の意思で選択できるよう等しく支援を受けられること」と説明する。政府は住民が帰還できる環境が整ったとして、これまでに福島県楢葉町などの避難指示を解除。放射線量が高い帰還困難区域以外の他の地域も二〇一七年三月までに解除する方針だ。福島県も自主避難者に対する住宅無償提供を同じ時期に打ち切ることを決めている。こうした状況に中手さんらは「避難の権利が切り捨てられようとしている」と危機感を抱き、政府と交渉できる全国組織が必要と考えたという。会では、避難の支援や健康診断の充実を政府に求めていくとともに、避難者の実態把握などにも取り組む方針だ。強制避難、自主避難にかかわらず入会でき、被災当時、どこにいたかも問わない。経済的な理由などで帰還した人も参加可能だ。避難者が抱える課題は一人一人異なり、行政からの支援にも格差がある。避難指示の解除により、自主避難の立場に変わる人が増える可能性もある。福島市から京都府木津川市に家族で避難し、中手さんと共に共同代表に就任予定の宇野朗子(さえこ)さん(44)は「お互いに理解して支え合い、分断を乗り越えたい」と話している。問い合わせは、中手さん、電080(1678)5562。 <川内原発再稼働> *3-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151015/k10010270051000.html (NHK 2015年10月15日) 川内原発2号機 きょう再稼働 鹿児島県にある川内原子力発電所2号機は15日午前、原子炉を起動する操作が行われ、再稼働します。原発事故後に作られた新しい規制基準の下で国内の原発が再稼働するのは同じ川内原発の1号機に続き、2基目になります。川内原発は去年9月、東京電力福島第一原発の事故後に作られた新しい規制基準の審査に全国の原発で初めて合格し、1号機は、ことし8月に再稼働しました。これに続いて、2号機でも再稼働前に必要な検査を14日までに終え、九州電力は15日午前10時半から核分裂反応を抑える32本の制御棒を順次、引き抜いて2号機の原子炉を起動し、再稼働させることにしています。川内原発2号機は原発事故の半年後に定期検査に入って以降、運転を停止しており、稼働すれば4年1か月ぶりとなります。また、新しい規制基準の下、国内の原発が再稼働するのは同じ川内原発の1号機に続き、2基目になります。九州電力によりますと、再稼働後12時間程度で、核分裂反応が連続する「臨界」の状態になり、今月21日に発電と送電を開始するとしています。その後、運転の状態を確認しながら、徐々に原子炉の出力を高め、問題がなければ、来月中旬に営業運転を始める計画です。 .川内原発2号機とは川内原子力発電所2号機は昭和56年5月に建設工事が始まり、昭和60年11月に営業運転を開始しました。福島第一原発の事故の、およそ半年後から運転を停止した状態が続いています。その後、原発の新しい規制基準が作られ、これを踏まえて、九州電力は津波の被害を防ぐための海抜15メートルの防護壁を設置したり、移動式の大型発電機や非常用のポンプを整備したりしてきました。その結果、去年9月2号機は1号機とともに、全国の原発で初めて新しい規制基準に適合していると認められました。ことし6月からは再稼働に向けた設備や機器の検査、使用前検査が始まり、先月、原子炉に157体の燃料が入れられ、準備が最終段階に入っていました。一方、川内原発では原子炉の熱でタービンを回すための蒸気を作り出す蒸気発生器が、1号機は7年前に交換されましたが、2号機は昭和60年の営業運転開始以来、取り替えられていません。蒸気発生器では中を通る細い管に傷が入るトラブルがたびたび見つかっており、原発に反対するグループからは「このまま、再稼働させるのは安全性に問題がある」という指摘も出されています。これについて九州電力は、平成30年の定期検査に合わせて2号機の蒸気発生器を交換することにしており、「現段階でも、検査を通して安全性は十分確保されている」としています。この冬 自社のみで電力供給可能に九州電力が発表している、この冬の電力需給の見通しによりますと、最も多く見積もった需要は平成23年並みの厳しい寒さとなった場合で、1515万キロワットと予測しています。これに対し、川内原発1号機に続いて2号機も再稼働すれば、供給は最大で1648万キロワットとなり、8.8%の余力を確保できるとしています。九州電力は原発の運転停止によって需要の増える夏と、冬の時期にほかの電力会社から電力の融通を受けていましたが、今シーズンは冬としては平成22年以来5年ぶりに、自社のみで電力を供給できる見通しだとしています。避難計画 残る不安川内原子力発電所の周辺に住む住民からは1号機が再稼働したあとも、事故の際の避難計画などに不安の声が出ているとして、県や自治体は説明や対応を行っています。このうち、全域が川内原発の30キロ圏内に入る鹿児島県いちき串木野市では、原発事故の際、高齢者や入院患者などいわゆる災害弱者から不安の声が出ているとして、今月6日、市議会が県に対し、医療機関や福祉施設を対象にした説明会を行うことや、避難に必要な福祉車両の充実を図ることなどを求める意見書を提出しました。また、市には、住民から事故の際に避難する場所を事前に確認したいという要望が寄せられているため、市が用意したバスで避難所まで案内する取り組みも行っています。いちき串木野市まちづくり防災課の久木野親志課長は、「原発事故に対する住民の不安は根強いので、再稼働したあとも不安の声を丁寧に聞き取り、解消していく必要がある」と話しています。一方、鹿児島県の計画では、川内原発で事故が起きた際の住民の避難にバスも使うことになっており、県は、ことし6月、地元のバス協会やバス会社と協定を結びました。8月にはバス会社の担当者およそ70人を集め、初めての研修会を開きましたが、出席者の間には、「運転手や車体の除染に関して具体的な説明は聞けず、不安の残る内容だった」といった声があります。これについて県は、「研修会を繰り返し開き、理解を進めていきたい」としています。 *3-2:http://qbiz.jp/article/72800/1/ (西日本新聞 2015年10月15日) 九電、川内2号機再稼働 1号機に次ぎ全国2基目 九州電力は15日午前、川内原発2号機(鹿児島県薩摩川内市、出力89万キロワット)を再稼働させた。東京電力福島第1原発事故後に策定された新規制基準に基づく原発の再稼働は、8月の川内原発1号機(同)に次いで全国で2基目。午前10時半、中央制御室からの遠隔操作で、核分裂を抑える制御棒を引き抜いて原子炉を起動させた。約12時間後の午後11時ごろ、分裂反応が安定的に継続する「臨界」に達する見通し。工程が順調に進めば21日に発電と送電を開始。11月中旬の営業運転を目指す。九電川内原子力総合事務所の藤原伸彦所長は、2号機の稼働が約4年ぶりであることに触れ「何が起こるか分からないという緊張感を持ち、営業運転まで当たりたい」と述べた。川内原発前では、反原発派の100人が集会を開催。「再稼働のスイッチを押すな」などと声を上げた。11日から座り込み、抗議のハンガーストライキをしている同市の自営業川畑清明さん(59)は「原発は命より経済を優先する社会の象徴。廃炉まで反対し続ける」と訴えた。福岡市の九電本店前でも抗議する人たちの姿が見られた。 *3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201510/CK2015101502000258.html (東京新聞 2015年10月15日) 川内2号機 再稼働 複数炉の危険、想定せず 九州電力は十五日、川内(せんだい)原発2号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉を起動し再稼働させた。二十一日に発電と送電を開始する。二〇一一年三月の東京電力福島第一原発事故後、新規制基準に基づく審査に適合した原発の再稼働は、今年八月の川内1号機に続いて二基目。2号機は十五日午前十時半に再稼働した後、約十二時間後に核分裂反応が安定的に続く「臨界」に達する見通し。営業運転への移行は十一月中旬を予定している。川内原発前や福岡市の九電本店前では、再稼働に反対する住民らが抗議の声を上げた。1号機では再稼働後の出力上昇中に復水器のトラブルが発生し、作業が一時中断した。2号機でも問題が起きれば再稼働に厳しい目が向けられるのは必至で、九電は慎重に作業を進める。瓜生(うりう)道明社長は十五日、「緊張感を持って安全確保を最優先に今後の工程を進めていく」とのコメントを発表した。十五日午前十時半に九電の作業員が川内原発の中央制御室で、2号機の原子炉内の核分裂を抑えていた制御棒の引き抜き操作を始め、原子炉が起動した。再稼働の前提となる規制委の審査には、川内原発のほか関西電力高浜3、4号機(福井県高浜町)、四国電力伊方3号機(愛媛県伊方町)が合格している。 ◆福島事故の教訓どこへ 夏の電力需要ピークも原発なしで乗り切り、その後も安定的な電力供給が続いている九州で再稼働二基目となる川内原発2号機が動きだした。原発は目先のコストは安く、九電の経営にとっては好都合だが、原発の内外とも多くの課題を積み残したままだ。東京電力福島第一原発事故が見せつけたのは、複数の原子炉が近くで稼働する危険性だ。1号機の水素爆発で全作業の一時中断を迫られ、3号機の爆発では突貫工事で完成したばかりの2号機の注水ラインがずたずたにされた。複数炉が悪影響を与え合い、事態を深刻化させた。しかし、原子力規制委員会の審査は、複数炉の問題をあまり考慮していない。「新規制基準さえ満たしていれば、各号機で対処できる」(田中俊一委員長)ことが大前提となっている。がれきで資材を運べなかったり、十分な要員が集まらなかったり事前の事故収束シナリオを外れるような事態は想定していない。国内で火山活動が活発化しているが、桜島もその一つ。周辺の姶良(あいら)カルデラなどの巨大噴火への備えも必要だが、監視態勢は不十分で、核燃料の緊急移送もまだ検討中だ。住民の避難計画も形はできているが、県のトップらは「広域に避難するような事態にはならないだろう」と楽観的にみて再稼働を認めている。 <川内原発> 鹿児島県薩摩川内市にある九州電力の加圧水型軽水炉。1号機が1984年、2号機が85年に営業運転を開始した。出力はともに89万キロワット。定期検査で1号機が2011年5月、2号機が同9月に停止した。13年7月、新規制基準の施行日に原子力規制委員会に審査を申請し、14年9月に全国の原発で初めて審査に適合した。1号機は今年8月11日に再稼働し、同14日に発電と送電を始めた。 *3-4:http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201510&storyid=70609 (南日本新聞 2015.10.23)[2号機発送電] 「川内方式」には反対だ 九州電力は川内原発2号機の発電と送電を4年ぶりに始めた。これから出力を段階的に引き上げ、11月1日のフル稼働をめざす。すでに営業運転中の1号機は、出力上昇中に復水器の細管が破損し、計画に狂いが生じた。「1号機の経験を踏まえ、慎重にやっていく」と九電は述べた。根強い不安や反対を振り切っての運転再開である。スケジュールありきは許されない。営業運転30年を昨年迎えた1号機に続いて、2号機も来月には30年となる。そろそろ老朽化が懸念される。1号機は運転開始から24年後、「加圧水型炉のアキレスけん」と言われる蒸気発生器を交換した。しかし、2号機は東京電力福島第1原発事故の影響で、交換予定を2018年へ先送りしている。1号機の交換タイミングに比べるとほぼ10年遅れだ。安全上の問題はないのか。1号機以上に厳しい目が注がれていることを忘れてはならない。問題はまだある。原発再稼働の地元同意手続きで「川内方式」と呼ばれているものも、その一つである。川内原発では「鹿児島県と薩摩川内市で十分」と伊藤祐一郎知事が発言し、薩摩川内市議会の賛成陳情採択から2週間足らずで手続きを済ませた。安倍内閣も「川内原発の対応が基本的なことになる」(菅義偉官房長官)と、原発が立地する自治体に限定した川内方式を踏襲する姿勢だ。福島原発事故では放射性物質が立地自治体の外にまで拡散した。局地的に放射線量の高い「ホットスポット」も、半径20キロ圏外で見つかった。尻すぼみになったものの、当初は川内原発30キロ圏市町の多くが、立地自治体並みの協定を求めた。住民の不安を踏まえれば当然の判断だったはずだ。少なくとも避難対象地域となる半径30キロ圏までは、同意が必要な「地元」と解すべきだ。事故の教訓を忘れたような川内方式は同意できない。川内に続いて新規制基準に適合した関西電力高浜原発3、4号機でも、政府は福井県と高浜町の同意だけで十分との考えだ。5キロ圏の京都府舞鶴市などは、事故が起これば立地自治体並みの被害を受けるのは明らかである。川内方式をごり押しすべきではない。来年、電力自由化を控える九電にも聞きたい。「核のごみ」の処分、廃炉などの難題とどう向き合うか。誠実に答えてほしい。 <玄海原発> *4-1:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/238628 (佐賀新聞 2015年10月12日) 原発再稼働「同意地域広げて」80%超、県民世論調査 被害が広域化した福島の原発事故後、再稼働の際に同意が必要な「地元」の範囲をどう定めるべきかが課題となっている。8月の川内原発の再稼働では鹿児島県と立地自治体の薩摩川内市に限られたが、佐賀新聞社の県民世論調査では、従来の手続きを適当とした県民は15%に満たず、80%以上が地元の範囲を広げるべきと回答した。玄海原発の半径30キロ圏内には、立地自治体の東松浦郡玄海町のほかに唐津市と伊万里市、福岡県糸島市、長崎県の佐世保、平戸、松浦、壱岐市が含まれる。世論調査では、川内原発のケースと同じ従来通りの立地自治体と県が地元範囲となる「玄海町と佐賀県」が14・7%にとどまった。これに対し、「福岡、長崎両県を含む30キロ圏内の自治体」が最も多い52・7%を占め、「佐賀県内の全自治体」も30・5%に上った。性別や年代、支持政党に関わらず、満遍なく同様の傾向となった。福島の事故で拡散した放射性物質は当時の防災対策重点区域だった10キロ圏を超え、50キロ圏の福島県飯舘村を汚染し、全村避難に追い込んだ。こうした実例から原発事故が起きれば立地自治体だけの問題ではなくなるとの思いが県民の中に根強くあることが浮き彫りとなった。地域別(16市郡)にみると、九電に立地自治体並みの権限拡大を求め、県内で唯一、安全協定を結んでいない伊万里市は、地元の範囲を「30キロ圏内の自治体」にすべきとの回答の割合が全市町で最も多い75%を占めた。ほかに玄海町と唐津市、有田町でも60%を超えた。政府は原発再稼働の手続きに関して「川内原発の対応が基本」(菅義偉官房長官)とし、半径30キロ圏内の自治体に避難計画の策定を求める一方、地元同意の範囲は「立地県の知事の判断を尊重する」と判断を丸投げしている。一方、山口祥義知事は8月の定例会見で、地元同意の範囲について「基本的には国が考えること」と述べた。これを受け、伊万里市の塚部芳和市長は「薩摩川内市の面積は玄海町に唐津市、伊万里市を合わせたぐらいの大きさ。位置関係が違うので、知事には国に働き掛けてほしい」と強調した。 *4-2:http://qbiz.jp/article/72889/1/ (西日本新聞 2015年10月16日) 九電、本格回復道半ば 電力自由化対策急務 川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)を相次いで再稼働させたことで、九州電力は2016年3月期の通期黒字が明確に見通せる状況になった。電力供給にも大きな余力が生まれる。ただ、16年4月には電力小売りの全面自由化が控え、業界の垣根を越えた大競争が始まる。玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に向けた手続きも道半ばで、直面する課題はなお尽きない。九電は川内原発2基の再稼働で月平均150億円の収支改善を見込む。2号機は21日から段階的に出力を上げ、機器トラブルなどがなければ、11月から再稼働による財務面への効果が本格的に出てくる見通し。16年3月期は5年ぶりに黒字化できる公算が大きくなった。電力供給面では、余力分を市場で販売できる。高負荷での稼働が続いた火力発電所の維持・補修作業にも順次、取り組む方針だ。だが、瓜生道明社長は株主への復配や社員の賞与復活など今後の利益配分については「さまざまな利害関係者がおり、バランスをとる。現時点でどうこうという答えは出さない」と慎重な構え。他の九電幹部からも、川内原発の再稼働による安堵(あんど)感はうかがえない。財務状況が好転するとはいえ「抜本的な改善には玄海原発2基の再稼働が不可欠」(幹部)だが、本年度内の再稼働は厳しい状況。引き続き経営効率化を図っていくという。原発が停止していた間に九電が失ったのは、それまで積み上げた利益だけではない。電気購入契約を新電力などに切り替え、九電から「離脱」した企業や自治体は、電気料金を抜本値上げする以前の3倍以上に増えた。電力小売り全面自由化は約5カ月後。なお自由度の限られた経営資源を使って、どれだけ魅力的な料金やサービスを提供できるか−。引き続き難しい対応を迫られる。 *4-3:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/239751 (佐賀新聞 2015年10月15日) 川内2号機再稼働、佐賀市で抗議行動 九州電力が川内原発(鹿児島県薩摩川内市)2号機を15日に再稼働させたことを受け、反原発の市民団体「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」(石丸初美代表)は佐賀市の中央大通りで抗議活動を展開した。「福島第1原発事故の犠牲を踏みにじる暴挙」と批判し、即時停止を訴えた。石丸代表らメンバー約10人は抗議声明のビラを配り、「福島原発事故は収束どころか、まだまだ続いている」と指摘した。火山対策や避難計画の不備を挙げて「原発事故は起きる。原発事故は地球を滅ぼす。そんな原発はいらない」と呼び掛けた。さらに隣県を含む川内原発周辺の自治体住民が、説明会開催を求めているにも関わらず、九電が応じていない現状も批判した。近く原子力規制委員会の適合性審査が再開される玄海原発ついても「山口知事は、佐賀のことは佐賀で決めるといって当選した。知事は再稼働の同意権を持っており、住民説明会や地元の範囲など国任せではなく、県民の立場で判断すべき」と主張した。 <伊方原発> *5-1:http://digital.asahi.com/articles/ASHB84Q6RHB8PTIL00P.html?iref=comtop_list_pol_f01 (朝日新聞 2015年10月16日) 原発の町 閉じた審議なぜ(考 民主主義はいま) 愛媛県の佐田岬半島に位置する伊方町にある四国電力伊方原発3号機の再稼働をめぐる陳情の採択について、町議会の特別委員会の審議は非公開とされた。原発再稼働の行方は、住民にとって最大の関心事。議会制民主主義の下で選ばれた住民代表による議論は、公開を求める声があったにもかかわらず、なぜ閉ざされたのか――。早期再稼働を求める陳情3件が全員一致で採択された2日の伊方町議会原子力発電対策特別委員会は、現在手続きが進む「地元同意」の第一歩となった。6日に本会議でも採択し、9日に県議会も再稼働を認める決議案を本会議で可決した。中村時広知事と山下和彦町長は、同意の是非を近く判断するとしている。議会関係者によると、町議会では議会運営をリードする「主流派」10人と「非主流派」の6人に分かれる。運営方法を決める会議で非主流派議員から「再稼働の是非は住民の関心が高い。公開すべきだ」との意見が出たが、冒頭と最後の採決の公開だけになった。ふだん審議をめぐり、公開の是非が焦点となることはない。今回非公開とした判断の根拠は「議員のほか委員長の許可を得た者が傍聴することができる」という町の条例だ。必要と認める時は委員長の判断で傍聴人の退場を命じ、非公開にできる。委員長は非公開の理由を「忌憚(きたん)のない意見を聞きたいから」と説明した。主流派議員の一人は「非公開は全会一致を目指すためだった。議員を選んだ伊方町民の総意としても『よし、行け』なんだという結論を出したかった。立地自治体としてもめんように丸く収めたかった」と打ち明ける。もう一つ別の思惑もあったという。「賛成意見だけで議論が盛り上がらなかった場合、公開だと格好悪い。『反対意見も出ない伊方町ってどんな町なんや』と思われるのも嫌だった」。人口約1万人の町の今年度一般会計予算は約100億円。3割を原発による電源三法交付金や固定資産税が占める。町に落ちた「原発マネー」はこの40年間で約900億円。地元振興のための施設が各地に散らばる。非公開には反対したが、再稼働には賛成の立場を取った議員の一人は「原発なしの町政は考えられん。恩恵があまりにも大きすぎる」と漏らした。 ■「議会の意味ない」 議会は民意を代表しチェック機能を果たすべき存在だ。非公開の審議に60代の町民の男性は険しい表情で語った。「再稼働反対の町民はいるのに、議員は反対意見を言わない。しかも特別委は非公開。議員がどんな意見を持っているか、聞けるはずだったのに議会の意味がない」と、「政治」と「民意」の乖離(かいり)を嘆く。「町が長いものに巻かれようという考えだと、事故があったとき、町民が何か意見を言っても、国や県は聞く耳を持たないだろう」。一方、再稼働に賛成の住民は多い。別の男性は「様々な意見を表に出さないようにして、全会一致で賛成を表明した方が再稼働に向かいやすくなる」と話す。九州電力川内原発1、2号機が再稼働した鹿児島県薩摩川内市では「再稼働賛成」と「反対」の陳情が付託された市議会特別委員会の審議は公開だった。副委員長を務めた成川幸太郎市議は「非公開との声は全くなかった。よその議会のことをどうこう言えないが、非公開だと住民に変な疑念を持たれてしまうのでは」。原発の国の新規制基準作りに関わった勝田忠広・明治大准教授(原子力政策)は「町議の考えを知る大事な機会をなくし、町民が主体的に考えるきっかけも失わせた」と批判。「東京電力福島第一原発事故後、技術的な安全性は改善に向かっていると言えるが、地元の自治体が経済的に過度に原発に依存する体質について議論がない。そもそも原発はなぜ必要かという根源的な議論が必要だ」と指摘する。 ◇ 〈伊方原発〉 愛媛県伊方町の瀬戸内海側に1~3号機がある。再稼働に向けて準備が進む3号機は1994年に運転が始まった。東京電力福島第一原発と異なる加圧水型炉で、出力は89万キロワット。使用済み燃料から取り出したプルトニウムを混ぜた燃料を使うプルサーマル発電を計画している。 *5-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12036328.html (朝日新聞 2015年10月26日) 伊方再稼働、県が同意 愛媛知事表明、地元手続き完了 愛媛県の中村時広知事は26日、四国電力伊方原発3号機(同県伊方町)の再稼働への同意を表明した。これで地元同意手続きは完了となり、今後は原子力規制委員会による認可手続きや設備の使用前検査を経て、早ければ今冬以降に再稼働する見通し。原発の新規制基準ができて以降、地元同意は九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)に次いで2例目。中村知事はこの日、松山市の愛媛県庁で、四電の佐伯勇人社長と面会。中村知事は「非常に重い責任を伴う判断だ」と述べ、「国の考え方、四国電力の取り組み姿勢、地元の議論を総合的に判断した」と、再稼働に同意する意思を伝えた。そのうえで、▽異常通報連絡の徹底や地元住民への真摯(しんし)な説明の継続▽県や市町が行う原子力防災対策への支援――など9項目を要請した。中村知事はその後、記者会見し、安全対策について県独自に四電に求めてきたことなどを解説。再稼働への同意を決断した理由に理解を求めた。22日には山下和彦町長が中村知事に同意の意思を伝えていた。中村知事は26日午後に上京し、林幹雄経済産業相に同意の意思を伝える。伊方原発の防災重点区域となる半径30キロ圏は、山口県上関(かみのせき)町の離島・八島(やしま)の一部も含まれるが、同意手続きには関わらなかった。30キロ圏で反対を表明する県内の自治体もなく、川内1、2号機のケースと同様、四電と安全協定を結ぶ原発立地自治体の伊方町と県のみの判断となった。1994年12月に営業運転を始めた伊方3号機は、2010年3月から原発の使用済み燃料から取り出したプルトニウムを混ぜた核燃料を使うプルサーマル発電をしていたが、11年4月に定期検査で停止した。今回の知事同意で、福島第一原発事故後、プルサーマル運転を地元自治体が初めて認めたことになる。 ◇ 菅義偉官房長官は26日午前の会見で、中村知事が伊方3号機の再稼働への同意を表明したことを受け、「知事の理解を得られたことは極めて重要だ。引き続き、法令上の手続きに基づき、四国電力が安全確保を最優先に対応することが極めて大事だ」と述べた。 PS(2015年10月27日追加):そもそも、*6-1のような空母・潜水艦は戦争で使うものであるため撃沈される確率が高く、それが原子力を動力にしているのは危なくて仕方がない上、事故時に乗組員が退避するのでは周囲の人はたまったものではない。そのため、空母や潜水艦は真っ先に燃料電池船にすべきだし、*6-2のように、洋上風力発電などの自然エネルギーを利用して燃料電池を充電する漁船があれば、離島でも燃料費高に悩まされることなく漁業をすることができるのに、と考えている。 *6-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201510/CK2015102302000149.html (東京新聞 2015年10月23日) 原子力艦事故の避難判断基準 防災相、原発並みに変更を検討 河野太郎防災担当相は二十二日、米軍空母など原子力艦で事故が起きた場合の避難判断基準の変更を検討する考えを示した。原発と同様、停泊地の周辺で放射線量が毎時五マイクロシーベルトを超えたら住民が避難や屋内退避を始めるよう、国の災害対策マニュアルを見直す。首相官邸で記者団に語った。現在の原子力艦事故の避難判断基準は、毎時一〇〇マイクロシーベルトで原発事故の二十倍。河野氏は「同じ放射性物質なのに(原発と)変える意味がない」と述べ、十一月に開く関係省庁や有識者の作業委員会で見直すとした。また河野氏は原子力艦事故の屋内退避の範囲が、空母の場合は半径三キロとされていると指摘。原発事故の原子力規制委員会の指針は半径三十キロ圏内となっており「原子力艦は、今のままでいいのか範囲を広げるのがいいのか(作業委で)議論してもらう」と述べた。内閣府によると、原子力空母や原子力潜水艦が入港する米海軍基地があるのは神奈川県横須賀市、長崎県佐世保市、沖縄県うるま市。 *6-2:http://qbiz.jp/article/73552/1/ (西日本新聞2015年10月27日) 洋上で風力発電を燃料電池に利用 エコ漁船へ研究会、長崎 国立研究開発法人水産総合研究センター(横浜市)や長崎県、五島市などは26日、水素を燃料とする燃料電池漁船の導入を目指す「五島市離島漁業振興策研究会」を発足させた=写真。2020年度以降の実用化に向け、漁船の設計に必要な条件を検証していく。環境省は既に同市沖で進める「浮体式洋上風力発電実証事業」の余剰電力から水素を製造し、燃料電池船(10トン級)の燃料にする実証事業を行っている。同事業から得られるデータを基に、漁具を積んで操業する際の安全性や、必要な電力量などを検証し、定置網の水揚げなど沿岸漁業に適した漁船の開発を目指す。研究会には、燃料電池車を市販するトヨタ自動車も技術アドバイザーとして加わる。同センターの宮原正典理事長は「再生可能エネルギーの地産地消で、五島の基幹産業である漁業の振興につなげたい」と話した。 PS(2015年9月28日追加):*7-1、*7-2のように、川内原発は、カリフォルニア州サンオノフレ原発と同じ三菱重工業製の加圧水型原子炉で、高い気圧の水を蒸気発生器に送るため配管破断のリスクがあり、サンオノフレ原発は2012年に起きた蒸気発生器配管の水漏れをきっかけに廃炉になったそうだ。そして、*8のように、2010年1月29日、九電川内原発でも7人が死傷する大事故があり、死者は靴しか残っていないほどのひどい火傷で、瞬時に超高熱火災が発生したとのことだが、これは高温・高圧の蒸気による事故だったのではないのか? 1)高温高圧に耐えなければならない加圧水型原子炉蒸気発生器の設計には無理がある *7-1:http://dot.asahi.com/wa/2015090900135.html (週刊朝日 2015年9月18日号) 再稼働 川内原発の“大事故”が危ぶまれる本当の理由 発端は、2012年1月。カリフォルニア州サンオノフレ原発3号機で、交換後の蒸気発生器の配管から放射性物質を含む水漏れ事故が起きたことだった。蒸気発生器とは加圧水型原子炉に備わる装置で、タービンを回して発電するための蒸気を作り出す重要なもの。それが新品に交換した後に故障したのだ。同原発を運営する南カリフォルニア・エジソン社は、装置内に張り巡らされた伝熱細管と呼ばれる管が異常摩耗していたことが原因だったと断定。定期点検中の2号機にも同様の摩耗が見つかった。米国でこの問題を取材していたジャーナリストの堀潤氏が解説する。「米原子力規制委員会(NRC)の調査では、問題となった三菱重工業製の蒸気発生器の1万5千カ所以上に異常な摩耗が見つかったと報告されました。しかもNRCによると、三菱重工は製造した蒸気発生器に欠陥部分があることを設置前に認知していて、それを認めた報告書を12年9月にNRC側に提出していたと言います」。そのとおりなら、三菱重工は欠陥品を売ったことになる。事態を重く見たNRCは、原因究明と安全確保がなされるまで再稼働を禁止。12年10月には、神戸にある三菱重工の事業所に抜き打ち検査を行った。「そのときNRCは、蒸気発生器の欠陥部品を改良した配管に対する安全検査の方法が、連邦法などが定める基準に沿っていないことを見つけたのです。具体的な問題点は、[1]住友金属工業(現・新日鉄住金)から購入したモックアップ用配管が検査要求を満たす仕様になっていたか確認しなかった[2]東京測器研究所による市販の測定サービスの精度が基準を満たすか確認していなかったことなどです」(堀氏)。 つまり、三菱重工側の品質保証が、NRCや顧客の求める基準を満たしていなかったということになる。トラブルを起こした蒸気発生器は「経済性重視」のため、設計上の無理があったとの指摘もある。原子炉停止に追い込まれたエジソン社は早期再稼働を目指すが、周辺住民が反発。NRCも安全性が確保できないとして再稼働許可を与えず、13年6月にサンオノフレ原発は廃炉の選択を余儀なくされる。その後、責任を巡ってエジソン社と三菱重工の泥仕合が始まる。エジソン社は検査や補修にかかった費用1億ドル(約97億円)を三菱側に請求したが、折り合いがつかず13年に国際仲裁裁判所(国際商業会議所)へ仲裁を申請。そして今年7月、「欠陥のある蒸気発生器を設計、製造した三菱重工には甚大な被害の責任がある」として75.7億ドル(約9300億円)を請求したのだ。問題は三菱重工製の蒸気発生器が、再稼働した川内原発の加圧水型の原子炉(同社製)にも採用されていることだ。三菱重工によると、同社がいままで納めた蒸気発生器は122基。「サンオノフレ原発と同一仕様の蒸気発生器は他の原発に納入されていない」という。だが、トラブルを起こすリスクはあると指摘するのは、川内原発再稼働の異議申し立てを原子力規制委員会に行った山崎久隆氏だ。九州電力が公表した資料によると、7年前に交換した川内原発1号機の蒸気発生器にはすでに35本の配管(伝熱細管)に穴が開きかけて施栓をしています。これが30年間使い続けている2号機の装置になると、栓をした本数は400カ所を超える。加えて古いタイプの装置は改良型に比べて配管に応力が集中しやすく、大きな地震が来たら耐えられない危険さえあるのです」。蒸気発生器は、熱交換効率を上げるために配管の厚みがわずか1.1ミリから1.3ミリほどしかない。常に加圧された熱水が管の中を流れているため、時間の経過によって摩耗し、穴が開くリスクも高まる。「常時どこかに穴が開いていて、定期点検で塞ぐ」(原発エンジニア)といわれるほどだ。摩耗した配管が裂けて高圧水が漏れだすと、重大事故につながりかねない。原発の危険性を訴え続ける作家の広瀬隆氏も「加圧水型の原子炉は高い気圧をかけた水を蒸気発生器に送るため、配管破断のリスクがある」と話す。「摩耗したどこかの配管が破れて水が噴き出すと鉄砲玉のように隣の配管を壊し、連鎖反応で一気に破壊される。1987年にイギリスの高速増殖炉で起きた事故では、10秒未満で40本の配管が連鎖破断しました。91年に起きた美浜原発2号機の事故は、蒸気発生器から噴き出した高圧水で配管がスパッと切れたギロチン破断だったのです」。蒸気発生器の配管が破損すると、1次冷却水が圧力の低い2次側へ急速に漏出する。つまり原子炉の冷却水が失われ、メルトダウンにつながる危険性をはらんでいる。事実、美浜原発の事故では20トン以上の冷却水が漏れ、炉が空焚き状態になりかけたと言われた。このように蒸気発生器のトラブルは深刻な事故につながるため、慎重な安全対策が必要。だが高価で大がかりな装置の上、取り換えにも時間を要するため、補修費用がかさむか、施栓が増えて定格出力ダウンにでもならない限り交換はしない。全部で1万本程度ある配管の18%程度が施栓で使えなくなると交換時期ともいわれる。その一方、再稼働を急ぐあまりか、耳を疑うような出来事もある。九電は400カ所以上に栓をした川内原発2号機の古い蒸気発生器を交換するため、新品を準備済み。だが、変えずに再稼働するという。九電はこう主張する。「信頼性向上の観点から14年度の取り換えを計画していたが、新規制基準適合への作業などがあり、ひとまず交換せずに再稼働を目指すことにした。現行の蒸気発生器は非破壊検査をして健全性を確認している」。だが、前出の山崎氏は「新しいものを発注したのは、九電が交換する必要があると判断したから。これでは安全軽視以外の何物でもありません」と批判する。川内原発1号機では再稼働直後の8月下旬、蒸気を海水で冷やして水に戻す復水器が海水混入事故を起こした。九電は混入の原因となった管など69本に施栓したが、同様の事故は今回が初めてではない。97年と99年にも玄海原発で同じ事故が起きていたのだ。広瀬氏が言う。「日本の原発は海岸線にあり、ただでさえ塩分で腐食しやすい。それが再稼働で高温環境になれば、ますます進む。4年以上動かしていない原子炉はすぐにトラブルを起こすのが当たり前で、いま現場の技術者は戦々恐々としているはず」。国民は大事故が起きないことを、祈るしかない。 *7-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12036505.html?rm=150#Continuation (朝日新聞 2015年10月27日) 三菱重工への請求9160億円 米原発廃炉 三菱重工は7月、賠償請求額が75.7億ドルになる見通しを発表しており、今回、額が確定した。三菱重工は、契約上の賠償の上限は1億3700万ドル(約166億円)と主張しており、国際商業会議所(パリ)の国際仲裁裁判所が仲裁に入っている。問題になったのは、カリフォルニア州のサンオノフレ原発。2012年に起きた蒸気発生器の配管の水漏れがきっかけとなって、運営会社の南カリフォルニア・エジソン社が廃炉を決めていた。 2)本当はどういう事故だったのか? *8:http://www.data-max.co.jp/2010/04/post_9611.html (NetIBNews 2010年4月21日) 九電川内原発7人死傷事故―許されない談合決着 九州電力川内原子力発電所の現実を検証していくにあたり、まずは今年1月に同原発で起きた事故についての記事を再掲載する。1月29日、九州電力川内原発1号機で7人が死傷した。原発では「大事故」にも関わらず、メディアの続報がない。ひたすら「調査中」しか繰り返さない九電は、一体何をしているのか。電力会社とは持ちつ持たれつの連合がバックアップするのが、「小鳩政権」。その「政治とカネ」にメディアの注目が集まっているのを幸いに、ツジツマ合わせに苦慮している姿が思い浮かぶ摩訶不思議な事故だ。 <「事故は隠せ」 電力会社長年の悪癖> どうしてこんなことが起きるのか。テレビ、新聞の第一報に接しても理解不能だったのが、今回の事故だ。「原発は安全」を謳い文句に原発建設を推進してきたのは国と電力会社。チェリノブイリ級超巨大惨事になりかねない重大事故は当然ながら、小さな事故も原発のイメージを悪くするというので握りつぶすのを当たり前としてきた。そこには本社員であろうが末端の下請け作業員であろうが、一個人に対する尊厳のかけらもなく、ともかくその場を糊塗するのを旨としてきたのが電力会社だ。とくに原発は「放射能=被曝」のイメージが強いため、電力会社は放射線被曝事故や周辺への放射能漏洩にはことさら神経を尖らす。しかし、原発という巨大システムは、放射能に直接関わりはないところにも重要施設や機材がヤマほどあり、それらが一体に運用されている。そんな場所や機材での事故や故障が原発中枢の原子炉やタービンに影響をおよぼし、重大事故になることもあり得る。したがって、放射能漏洩や被曝とは直接関係なくても、とにかく「事故は隠せ」が電力会社のいわば習い性になっている。そんな電力会社の体質も近年はわずかながら改善され、情報公開の重要性を理解してきたように見受けられたが、長年の悪癖はそう簡単に直るものではなかったようだ。ましてや、今回のような大事故は隠せるものではないだけに、注視すべきは今回の事故への九電および国の今後の対応だ。事故は1月29日早朝の午前7時過ぎに起きた。原子炉の運転を止めて行なわれる定検は、原子炉をはじめとするあらゆる機器の保守・点検を行なう。原発の点検作業は事前に予定されたものと、事故、トラブルで緊急に行なわれるものがある。後者は当然のことながら、今回のように事前に予定されていたものも、早く終えて運転再開したいのが電力会社の性。企業として生産性を上げるのはもとより、コストは「原発が安い」をアピールする国策にも沿うからだ。その結果、現場は大変だが、原発では徹夜作業も早朝作業も当たり前に行なわれている。事故そのものは、九電と協力企業の西日本プラント工業、西日本技術開発の作業員7人で、配電室にある配電機器の保守・点検を行なう際に発生した。配電室は、タービン建屋という原子炉建屋とは別棟の放射線管理区域外に設置されている。したがって、彼らの着衣は放射線防護服ではなく、通常の作業衣である。そして、配電設備の分電盤を点検するため、1人の作業員が電気を地中に逃がすアースを取り付けようとしたときに火花が発生。本人を含む3人が重症、4人が軽傷を負い、救急車で病院へ搬送された。しかし、重傷者のうち、アースを取り付けようとした西日本プラントの作業員はその日のうちに死亡した。 <追加情報がない「大事故」> 原発での死傷事故は過去にたびたび起きているが、もっとも多い放射線被曝によるそれは、公式記録では極端に少ない。「原発は安全」を金科玉条とする国と電力会社は、被曝事故などあってはならないので、それらは握りつぶす。証拠の記録やデータの改ざんなどは電力会社の得意とするところで、それらの数値を盾に被曝との因果関係を否定するからだ。被曝以外の死傷は公式記録上もかなりあって、作業中の転落や熱水や火災による火傷、感電などさまざまだが、今回のように7人も同時に死傷するのは異例。原発内事故としては「大事故」である。しかも、発生したのは配電室という中枢施設だ。というのも原発は、心臓部の原子炉を中心に水系統や油圧など無数の配管、いわば血管が通っている。それらを正常に機能させるには、コンピュータ制御を含めた電気系統が不可欠。これまた血管類の一つとして、原発内各所に張りめぐらされている。その電気系統のいわば心臓部が、配電室だ。そんな中枢施設を保守・点検するのは、電気系統に通じたプロ集団であるべき。チームのトップは当然ながら九電社員で、ほかの6人も九電社員と同じ九電グループのしかるべき社員であり、「知識のない孫請け、ひ孫請けの作業員ではありません」(死亡者を出した西日本プラント)というのも当然だろう。それが大事故を起こす、あるいは起きてしまったのはなぜか。九電が発表した写真では、点検しようとした分電板がかなり焼けこげているが、死傷者について当初は「感電」としていたのも不可解。2月1日に、国の原子力安全委員会へ経産省原子力安全・保安院が報告したときも、「感電」である。火災と感電。一体何が起きたのか。事故当時の現場のイメージが湧かない。続報を注視していたが、九電からもメディアにもさらなる追加情報がない。 <地元軽視の電力会社 明かされない真相> 九電に問い合わせしたのが事故後2週間以上経ち、全体像が見えておかしくない頃だが、同社広報部門の回答は基本的に「調査中」の繰り返し。2月16日に九電と協議会を開いた薩摩川内市側の、「作業マニュアルを出して欲しい」との要請を九電は断っている。出して何か不都合があるのか。地元をバカにするのも電力会社の悪癖だ。県も同様、本来なら電力会社には国と同等の影響力をもつ立場ながら、九電の報告待ちの姿勢は同じだ。それは国も同じである。電力会社のすべてを管理するのが経産省であり、原発はそのなかの原子力安全・保安院が管理する。そこには、電力会社から真っ先に報告が行く。2月22日に問い合わせをすると「本日発表」と言うので、それを見ると想定通りである。詳細は省くが、よくできた報告文だ。一言でいえば結論はまだ出していない。作業員個人のミスやチームとしての意志疎通の不備などに言及し、あくまでも「推定」という逃げの余地を残したものである。それが最終的にどんな結論に至るのか。少なくとも事故は捜査中ながら、死因は「熱傷」(薩摩川内警察署)すなわち火傷であり、搬送されるときの死傷者のうち死者は「90%火傷。靴しか残っていない状態」(薩摩川内消防局)であり、感電ではない。つまり事故のイメージとしては、火花を機に周辺で瞬時に超高熱火災が発生したということだ。専門家も、「このようなケースはきわめて希な現象」(関東電気保安協会員)と見ている。それが作業員個人に帰せられるのか、チームの監督者責任なのか。そんな個人よりも市に作業マニュアルを出さない九電の定検とは何か。事故は常に複合的な要因で起こる。死傷した作業員の着衣が純綿なら死亡しなくても済んだのに、化繊系が災いした可能性もある。それはコスト削減のためか。さらに、過労によるミスもある。それらも念頭に、今回の定検のなかで配電施設点検がどう位置付けられていたのか。九電の姿勢を知りたいもの。これだけの大事故。作業者たちだけに目を奪われていては、真相を見誤る。機材そのものの経年劣化も影響した可能性もあり、メーカーと電力会社のパワーバランス、そして国とのそれで「真相」はいかようにもなるのがこれまでの原子力行政。それを覆すのが地元の県市や警察の責任。それができなければ3号機の増設など論外。鹿児島や九州はもとより、日本に住む人間にはハタ迷惑というものだ。 PS(2015年10月29日追加):*9-1、*9-2のように、東電がフクイチの汚染水海洋流出を抑える柱として建設を進めていた海側遮水壁が完成したそうだが、本当に壁で水をせき止められると考えている人はいないだろう。何故なら、壁で流れをせき止められた水は、壁のない横か、上に行くのであって、流れ込んだ400トンもの地下水を護岸近くの井戸でくみ上げて浄化するのが間に合う筈はなく、くみ上げればくみ上げた分だけ、さらに多くの水が流れ込むからである。また、海水に鋼管ではすぐ錆びるだろう。 なお、「浄化後の汚染水は、トリチウムだけは取り除けない」とも書かれているが、他の放射性物質がすべて取り除けているのなら上出来の方であり、本当に他の放射性物質が含まれていないかどうかについては、溜められた汚染水をぬきうちでサンプリング調査すべきだ。 さらに、「周囲の地盤を凍らせる凍土壁の建設が進んでいる」とも書かれているが、大量の地下水が流れ込み、核燃料デブリが崩壊熱を出している中で、凍らせ続けるためには、これまでフクイチが発電した電力と挙げた利益の全てを使っても足りないと思うが、これまでで凍った部分はあるのだろうか? *9-2より *9-1:http://www.minpo.jp/news/detail/2015102726281 (福島民報 2015/10/27) 海側遮水壁が完成 港湾内流出大幅減へ 第一原発 東京電力が福島第一原発で汚染された地下水の海洋流出を抑える柱として建設を進めていた海側遮水壁が完成した。東電が26日、発表した。港湾内への流出量は1日400トンから10トンと大幅に減る見通し。東日本大震災と原発事故から4年7カ月余。汚染水対策は大きな節目を迎え、今後は建屋内への地下水の流入を防ぐ凍土遮水壁の運用などが焦点となる。東電によると、海側遮水壁は総延長780メートルで、594本の円筒状の鋼材を壁のように並べて打ち込んだ。26日午前9時40分ごろ、鋼材の隙間にモルタルを注入する止水工事の完了を確認し、一連の作業を終えた。地下水の流れをせき止めることで、港湾内への地下水の流出量は1日400トンから10トンに減らせ、放射性セシウムやストロンチウムは40分の1、トリチウムは15分の1まで低減できると試算している。せき止められた地下水は建屋周辺の井戸「サブドレン」や護岸近くの井戸「地下水ドレン」でくみ上げ、浄化した上で海洋放出する。これにより地下水の上昇を防ぐ。今後1カ月程度かけ、港湾内の海水に含まれる放射性物質の濃度などを分析し、遮水壁の効果を確認する。東電は平成24年4月に遮水壁の建設を開始した。26年9月の完成を目指していたが、水位が上昇して地表にあふれ出る恐れがあったため、約10メートルを残して工事を中断していた。今年8月、県漁連が「サブドレン計画」の受け入れを決定したのを受け、9月から工事を再開していた。遮水壁の完成を受け、県原子力安全対策課は「汚染水の低減につながるだろうが、運用に当たっては地下水位のコントロールを徹底してほしい」と求めた。県漁連の野崎哲会長は「港湾内の放射性物質濃度が目に見えて改善されると期待している。引き続き、注意深く廃炉作業を進めてほしい」と注文した。 ◇ ◇ 今後は建屋内への地下水の流入をいかに防ぐかが課題になる。現在、1日約160トンの地下水が流入し、汚染水になっている。東電は、東京五輪・パラリンピックが開催される32(2020)年内に地下水の流入をなくし、建屋にたまっている汚染水をほぼゼロにする計画。当面は建屋内への地下水の流入を氷の壁で抑える凍土遮水壁を運用させるなどし、28年度中に流入量を1日当たり100トン未満に減らす方針。 *9-2:http://www.imart.co.jp/houshasen-level-jyouhou.html (福島第一原事故後の最新情報 27.10.26) 汚染水の海流出防ぐ遮水壁 きょう完成へ (要点のみ) 東京電力福島第一原子力発電所で3年越しで建設が進められてきた「遮水壁」と呼ばれる設備が、26日にも完成する見通しです。汚染された地下水が海に流れ出すのを抑えるため、護岸を鉄の壁で完全に囲うもので、事故から4年半余りたって汚染水対策は大きな節目を迎えることになります。「遮水壁」は、福島第一原発の護岸沿いの地中に深さ30メートル、全長780メートルにわたって鋼鉄製の壁を設け、海に流れ出している汚染された地下水をせき止めるもので、東京電力は、事故の翌年から建設を進めていました。鋼鉄の板を打ち込む作業はすでに終わっていて、26日午前中に鉄板の隙間をセメントで埋める最後の作業を行い、問題がなければ3年越しで進められてきたすべての建設作業が終わる見通しです。遮水壁でせき止めた地下水はポンプでくみ上げ、浄化して海に流す計画で、東京電力は今後、地下水の水位や海水中の放射性物質の濃度を監視するなどして効果を確かめるとしています。東京電力は、遮水壁が完成すれば海に流れ出す地下水の量がこれまでの1日400トンから10トンまで減り、放射性物質の流出も抑えられるとしていて、海への流出が大きな課題となってきた汚染水への対策は、事故から4年半余りたって大きな節目を迎えることになります。遮水壁の経緯と予想される効果 【遮水壁の経緯】 福島第一原発で遮水壁の建設が始まったのは、事故発生から1年余りたった平成24年5月でした。しかし、完成に向けては大きな課題がありました。何も対策を取らなければ、せき止められた地下水が地表などからあふれ出してしまうのです。このため東京電力はせき止めた地下水をポンプでくみ上げ、浄化したうえで海に排水する計画をたて、去年8月、地元の漁業関係者に了承を求めました。しかし、浄化するとはいえ1度は汚染された地下水を海に流すことへの不安に加え、汚染水対策を巡る東京電力への不信感もあり、地元からは強い反対の声が上がりました。長い交渉を経て地元が計画に同意したのは1年後のことし8月。その結果、中断していた遮水壁の建設作業が再開し、26日、ようやく完成にこぎ着ける見通しとなりました。 【海の汚染の現状は】 福島第一原発では、海の汚染は当初から深刻な問題として対策が求められてきました。事故発生直後、核燃料から放出された放射性物質に加え、原子炉に注がれた冷却水が高濃度の汚染水となって海に流れ出し、海水の放射性物質の濃度は、「セシウム137」の場合、原発に隣接する場所で1リットル当たり数百万ベクレルに上りました。その後、濃度は1年後までに大きく下がったあと、おおむね横ばいの状態が続いています。現在は、雨やトラブルの影響による変動はありますが、「セシウム137」で比較するといずれも高いところで、原発の港湾の内側で十ベクレル前後、外で数ベクレル程度となっています。こうしたなか、地下水の問題は、海を汚し続ける残された課題の一つとなっていました。 【遮水壁の効果は】 東京電力は、遮水壁が完成すれば地下水を通じて海に流れ出す放射性物質の量が、セシウムとストロンチウムはこれまでの40分の1に、トリチウムは15分の1に減ると試算していて、今後、海水に含まれる放射性物質の濃度の変化を調べ、効果を確かめることにしています。 ●汚染水対策の現状と残る課題 汚染水を巡っては、「遮水壁」の完成後も数多くの課題が残されています。 【課題1 海への流出対策】 福島第一原発では毎日400トンの地下水が海に流れ出していて、一部は原子炉建屋の周辺など汚染された場所を通るため、海を汚染する原因の一つと指摘されてきました。東京電力は、「遮水壁」が完成すれば海に流れ出す量は10トンまで減るとしていて、「海への流出」への対策は1つの区切りを迎えることになります。 【課題2 汚染水の増加対策】 一方、汚染水の増加を抑える対策も進められています。福島第1原発では地下水が建屋に流れ込んで内部の高濃度の汚染水と混ざり、毎日新たに400トンずつ汚染水が発生していました。東京電力は、建屋に流れ込む前の地下水をくみ上げて海に流す「地下水バイパス」と呼ばれる取り組みなどで、地下水の流入量を1日当たりおよそ100トン減らすことができたとしています。先月からは「サブドレン」と呼ばれる建屋の周辺の井戸から地下水をくみ上げて浄化して海に放出する対策を始めたほか、周囲の地盤を凍らせる「凍土壁」の建設も進んでいます。将来的には、建屋を補修して地下水を完全に止水したうえで汚染水をすべて取り除きたいとしていますが、具体的なめどは立っていません。しかも、事故で溶け落ちた核燃料を取り出さない限り、汚染水の発生を完全に無くすことは難しいのが実情です。 【課題3 汚染水管理と処分】 さらに、汚染水の管理や最終的な処分も課題として残されています。 おととし、建屋からつながる「トレンチ」と呼ばれる地下のトンネルにたまった高濃度の汚染水によって地下水が汚染され、海に流れ出していたことが明らかになりました。さらに、保管用のタンクから高濃度の汚染水およそ300トンが漏れ、一部が海に流れ出すトラブルも発生しました。このため東京電力は、「トレンチ」にたまった汚染水の抜き取りを進め、ことし7月までに作業を終えてセメントで埋め立てたほか、タンクで保管している汚染水から放射性物質を取り除く作業を進めています。しかし、「トリチウム」と呼ばれる放射性物質は取り除くことはできません。現在、タンクで保管している汚染水の量は70万トン余りに上っていますが、最終的な処分についてはめどさえ立たないのが現状です。 PS(2015年10月30日追加):*10-1、*10-2のように、大間原発建設差止訴訟を起こしている函館市の工藤市長を激励に、小泉純一郎、細川護熙両元首相が函館を訪れ、建設中の大間原発と函館の近さも確認して、「函館から意見は聞かずに避難計画を作れという法律は、矛盾している(小泉氏)」「(原発建設は)青森側だけの同意ではなく、函館やその他の沿岸地域の同意を受けるべきだ(小泉氏)」。「私たちも原発ゼロや自然エネルギー普及へ頑張りたい(細川氏)」等、述べられたそうだ。津軽海峡も替えのないよい漁場で日本国民の宝であるのに、何からでもできる発電のために豊かな生態系を破壊するなど、とても許されるものではない。 *10-1:http://www.asahi.com/articles/ASHBY4TP7HBYUTFK00D.html (朝日新聞 2015年10月29日) 小泉元首相「矛盾している」 原発訴訟の函館市長を支持 小泉純一郎、細川護熙両元首相が29日、北海道函館市を訪れ、大間原発(青森県大間町)の建設差し止めを求める訴訟を起こしている函館市の工藤寿樹市長と意見を交わした。函館市の一部は大間原発から30キロ圏にあり、福島第一原発事故後に避難計画の策定が義務づけられた。一方、工藤市長は原発の稼働に当たって函館市には同意権がないことを問題視し、提訴の理由としている。小泉氏は「函館から意見を聞かない。しかし、避難計画を作るという法律がある。矛盾している」と函館市の姿勢を支持した。原発事故後に工事がいったん中断していた大間原発について、工藤市長は「完成して稼働すれば、これからもドンドン新しい原発をつくっていくことにつながる」と指摘した。 *10-2:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/area/donan/1-0196153.html (北海道新聞 2015年10月30日) 原発ゼロ、函館から訴え 小泉、細川両元首相が来函 電源開発大間原発(青森県大間町)の建設差し止め訴訟を起こしている函館市の工藤寿樹市長の激励を目的に、29日に函館を訪れた小泉純一郎、細川護熙両元首相は、市役所で工藤市長の説明を聞き、津軽海峡の対岸で建設中の同原発と函館の距離の近さも確認した。「(原発建設は)青森側だけの同意じゃいけない。函館やそのほかの沿岸地域の同意を受けるべきだ」(小泉氏)。「私たちも原発ゼロや自然エネルギー普及へ頑張りたい」(細川氏)。道内外から集まった大勢の報道陣に囲まれ、函館から「原発ゼロ」を訴えた。両元首相ら一般社団法人「自然エネルギー推進会議」(東京)のメンバーら7人は29日正午ごろ、函館空港から市役所に到着。正面玄関で出迎えた工藤市長と笑顔で握手を交わし、道内や東北、東京などから集まった報道陣が待つ市長会議室に入った。約20分間の非公開の会談で、小泉氏らは大間原発の建設状況などを質問。会談後の取材で、小泉氏は事故時の避難計画作成を求められながら建設同意権がない函館の状況に理解を示し、工藤市長は「短時間で他の原発との違いをよく分かってもらえた」と手応えを語った。下北半島を一望する庁舎8階では「あの白いのか」などと言いながら、ガラス越しにうっすら見える大間原発を肉眼や双眼鏡で確認。小泉氏は「距離が短いねえ。これじゃあ風が吹いたらもう…」と、原発事故時の函館での放射能汚染の恐れにも言及した。午後2時から市内のホテルで開かれた小泉氏の講演会には、実行委の想定を約200人上回る約800人が集まった。歯切れのいい「小泉節」に、実行委代表で大間原発訴訟の会の竹田とし子代表は「小泉さんは原発ゼロでも国内の電力が十分賄えることを明確に語ってくれた。今後も活動を続けて頑張らなければと思った」。講演を聴いた市内の無職菅原久美子さん(66)は「原発の温排水が海に与える影響に関する話は参考になった。周囲には大間原発の問題は考えないようにしているという人も多いが、講演会を聞き、やっぱり反対しないとダメだと感じた」と感想を語った。 PS(2015.10.31追加): *11-1のように、英国がいくつもの新原発建設を行うのは、英国の失敗の始まりで残念だと思うが、その受注額は1700億円前後などと桁違いに大きい。しかし、事実でないことを根拠にした首相のトップセールスで原発を売り込めば、*11-2のように、事故時には、信用をなくしたり、国民負担が生じたり、恨まれたりする可能性が高いのである。 *11-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151031&ng=DGKKASDZ22HH1_Q5A031C1MM8000 (日経新聞 2015.10.31) 日揮、原発建設に参入 日立の英計画、1700億円で受注へ 日揮は原子力発電所の建設事業に参入する。日立製作所が計画する英国西部ウィルファの原発で建屋などの建設工事を請け負う見通しで、受注額は1700億円前後に達する見込み。海外でのプラント建設で培ったノウハウを生かす。国内の原発建設はこれまで総合建設会社(ゼネコン)が手掛けてきたが、国内の新規案件が止まるなか、大成建設などが海外での建設に乗り出す方針。プラント大手の日揮の参入で受注競争が激しくなりそうだ。英国では日立傘下の原発事業会社が原発4基の建設を計画。このうち2基を設置するウィルファの計画は2019年にも着工、24年の稼働を目指しており、1基目の建屋の発注に向けて日立が日揮と交渉に入った。原子炉などの中核機器を日立が手掛け、日揮は米エンジニアリング大手ベクテルと共同で建屋建設などを担う見通し。1基あたりの事業費は約50億ポンド(約9200億円)で、建設費は7~8割を占める。日揮の受注分は建設費のうち2~3割となるもようだ。日揮は日本で原発建設の実績はない。一方、アジアや中東でエネルギープラントの工事経験が豊富で、数千人に及ぶ外国人労働者の管理や建築資材の大量調達など、大型案件を得意としている。 *11-2:http://blogs.yahoo.co.jp/liliumnokai/9984591.html (毎日新聞 2013年8月3日) 原発輸出:国民負担に直結 国のリスク不十分な説明 日本が安全確認体制を整備しないまま、原発輸出を強力に推進し続ける背景には、原子力安全条約の存在がある。条約は原発事故の責任を「原発を規制する国(立地国)が負う」と規定しており、日本は免責されるという論法だ。茂木敏充経済産業相も5月28日の衆院本会議で「(海外で事故があっても)日本が賠償に関する財務負担を負うものではない」と強調している。果たして本当に「知らぬ顔」は通用するのか。推進役の経産省幹部でさえ「賠償でなくても援助などの形で実質的な責任を取らざるを得ない」と高いリスクの存在を認める。売り込み先の一部には別のリスクもある。インドには電気事業者だけでなく、製造元の原発メーカーにも賠償責任を負わせる法律があり、米国はこの法律を理由に輸出に消極的とされるが、日本は前のめりだ。そもそも、輸出国向けに実行される国際協力銀行の融資は税金が原資であり、何らかの原因で貸し倒れが起これば、国民負担に直結しかねない。国のリスクに関する説明は不十分だ。安倍晋三首相は原発輸出について「新規制基準(などによって)技術を発展させ、世界最高水準の安全性を実現できる。この技術を世界と共有していくことが我が国の責務」(5月8日、参院予算委)と正当化。公明党の山口那津男代表も6月、新規制基準を前提に輸出を容認する姿勢に転換した。しかし、この基準は国内の原発にしか適用されず、輸出前に原子力規制委員会が安全確認を行うシステムはないのだから牽強付会(けんきょうふかい)だ。「安全」を強調する一方、事故時の責任回避も主張する姿は、原発を推進しつつ賠償責任を電力会社に負わせる「国策民営」と呼ばれてきた原子力政策に重なる。原発事故から2年超を経てなお約15万人が避難する現状に照らせば、無責任な輸出は到底許されない。 PS(2015年11月3日追加):*12-1、*12-2のように、伊方3号機再稼働に愛媛県知事が同意したため、市民が同意撤回の請願書を知事に渡し、愛媛県松山市の城山公園で伊方原発再稼働反対の全国集会を開いた。そして、行動している人よりずっと多くの人が原発再稼働に反対しているのだ。 伊方原発の位置 2015.11.2愛媛新聞 2015.9.20東京新聞 *12-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015110201001401.html (東京新聞 2015年11月2日) 伊方3号機の再稼働同意撤回を 市民ら愛媛県知事に請願書 愛媛県伊方町の四国電力伊方原発3号機の再稼働に反対する市民らは2日、中村時広知事が10月に再稼働に同意したことを受け、同意の撤回を求める知事宛ての請願書を県に提出した。請願書は、四国電がおおむね千ガルの地震の揺れに耐えられるとしている3号機の耐震性に関し、想定外の地震に耐えられず不十分だと訴えた。集まった約60人の市民らが、1人ずつ県の職員に向かって請願書を読み上げた上で提出した。提出を呼び掛けた松山市の市民団体「伊方原発をとめる会」の和田宰事務局次長は「知事は一度も批判的な立場の専門家から意見を聴取していない」などと批判した。 *12-2:http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20151102/news20151102014.html (愛媛新聞 2015年11月2日) 4000人再稼働ノー 伊方原発再稼働反対全国集会 四国電力伊方原発の再稼働に反対する全国集会が1日、愛媛県松山市堀之内の城山公園であった。10月26日に中村時広知事が伊方3号機の再稼働に同意したことを受け、参加者は「断固許さない」との決意を胸に、市内をデモ行進した。主催の市民団体「伊方原発をとめる会」(松山市)によると、北海道、福島、鹿児島など全国から約4千人が参加した。集会でとめる会の草薙順一事務局長は、中村知事の同意に対して「理性も倫理も投げ捨てた行為」と批判。再稼働の阻止に全力を挙げると宣言した。会場の参加者は「原発再稼働ゆるさん」と書かれたメッセージを一斉に掲げてアピール。市内のデモ行進では「命を守れ」「再稼働反対」とシュプレヒコールを上げて、買い物客らに訴えた。 PS(2015年11月24日追加): このブログに何度も記載しているため理由を長くは書かないが、*13は、①30キロ圏の住民だけが避難すればよいという科学的根拠はない(チェルノブイリ、フクイチを参照) ②どれだけの期間、避難すればよいかという認識が甘い(チェルノブイリ、フクイチを参照) ③汚染水で(狭い)日本海が使い物にならなくなるという認識がない(フクイチを参照) ④フクイチの場合は、陸地に落ちた放射性物質は20%以下だったが、玄海原発の場合は80%以上が陸地に落ち、西日本の広域が汚染される という認識がなく、また安全神話によりかかっている。 *13:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/254265 (佐賀新聞 2015年11月28日) 玄海原発事故想定し合同訓練、30キロ圏の3県、6千人参加 佐賀、福岡、長崎の3県は28日、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の重大事故を想定した合同防災訓練を実施した。原発から30キロ圏の住民、関係機関の担当者ら約6千人が参加。避難手順の確認に加え、被ばく者が出た際の搬送訓練も行い、万一の場合に備える。3県の合同訓練は今回で3回目。玄海原発4号機が運転中に電源を失い、炉心が冷却できなくなった事故を想定した。佐賀県では、通過するだけで車両に付着する放射性物質を検出できるゲート型の機器を初めて設置。原発内で被ばくした負傷者を、国の指定医療施設の長崎大病院にヘリコプターで搬送し、迅速に対応できるか確認する。 このような記事を女性が書くと、「感情論」「風評(根拠のない噂)」等の矮小化した解釈をされることが多く、これは先入観と偏見による女性に対する過小評価だ。そのため、私は、上の記事を書くにあたって、公衆衛生学、生物学、生態学、物理学、化学、経済学、法律、監査などの知識・経験を使っており、これらの知識・経験を一人で使って考えることのできる人は日本全体でもあまりいないということを記載しておく。しかし、こう書くと今度は、「謙虚でない」「女らしくない」などと言う人がおり、両方を合わせると「女性は全員、感情的で科学や論理に弱く知識もないため、風評をまき散らすだけだから、謙虚にして黙っていろ」ということになり、これは、女性蔑視そのものだ。そして、こういうことを書くと、「生意気だから嫌い」「あいつの政策は(正論でも)実現させない」と言う人も少なくないが、それこそ感情論である。
| 原発::2015.4~10 | 02:07 PM | comments (x) | trackback (x) |
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