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2016.7.24 南シナ海、東シナ海の問題について
 
  中国の行動     中国が主張する管轄権    中国が作った人工島    国際法の規定 
2016.7.15日経新聞                   2016.7.13日経新聞

 TVではNHKまでポケもんの宣伝をしているが、一億総幼児化の企みだろうか。そして、ポケもん(このブログでは、ポケットモンスターのことではなく、ポケッとした人のことを言う)キャスターやポケもんコメンテーターが、南シナ海問題に関して意味のない曖昧なコメントをしているため、法的筋道を明確に書く。

(1)南シナ海問題の性質と仲裁裁判所判決の内容
 南シナ海の問題とは、*1-1、*1-3のように、天然ガスや漁業など豊富な資源が眠る海域で、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイなどが領有権を主張しているが、中国は国連海洋法条約に違反して、中国独自で定めた「9段線」を根拠とし、南シナ海のほぼ全域で管轄権を主張し実効支配しているのが問題なのである。

 そして、軍備や経済力に大きな差のある中国とフィリピンが1対1で交渉してもFairな交渉にならないため、*1-2、*1-3のように、フィリピンが、「中国が人工島を造成したミスチーフ礁などは満潮時に水没する『低潮高地(暗礁)』であり、領海を設定できない」とオランダ・ハーグの仲裁裁判所に訴え、2016年7月12日、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が「①中国が南シナ海に設定した独自境界線『九段線』には主権、管轄権、歴史的権利を主張する法的根拠はない」「②南沙諸島には中国が排他的経済水域(EEZ)を設けられる国連海洋法条約上の『島』はないため、中国はEEZを主張できない」「③中国がスカボロー礁でフィリピン漁民を締め出したのは国際法違反である」「④ミスチーフ礁とセカンドトーマス礁はフィリピンのEEZ内である」「⑤中国は南沙諸島で人工島を建設するなどして国連海洋法条約の環境保護義務に違反した」という法的に筋の通った判決を出したものだ。

 この判決について、フィリピンのヤサイ外相は「フィリピンは画期的な判決を尊重し強く支持する」と述べたが、中国の習近平国家主席は「南シナ海の島々は昔から中国の領土であり、領土、主権、海洋権益はいかなる状況でも仲裁判決の影響を受けない。判決に基づくいかなる主張や行動も受け入れない」と強調したそうだ。しかし、(国連海洋法条約という)国際法が(中国の)国内法に優先するというのは世界のルールであるため、国際法上の根拠を明確に示せなかった中国が「国際法違反」と結論づけられたのは当然のことである。

 そして、同じ状況は東シナ海でも起こっているため、日本も尖閣諸島の領有権を曖昧にして「武力による一方的な現状変更に抗議する(これでは、「武力ではなく合意の下で領有権を変更するのならよい」ということになる)」と唱えるだけでなく、領有権の所在を明確にした上で、次の交渉を行うべきなのだ。

(2)仲裁裁判所の公正性について
 *2-1のように、中国外務省の劉次官は「①仲裁裁判所は合法的な国際法廷ではない」「②裁判官5人のうち4人が欧州出身者である」「③国際法廷は世界各種の文化と主要法体系を代表して構成するという国連海洋法条約の定めに反する。彼らがアジアの文化を理解しているのか」「④国際司法裁判所や国際海洋法裁判所の判事の報酬は国連が支給しているが、5人はフィリピンから金を稼いでいる」「⑤5人の裁判官のうちフィリピンが指名した1人を除く4人はすべて日本人の柳井国際海洋法裁判所所長(当時)が指名した」などと批判したそうだ。

 しかし、日本も東シナ海で同様の問題をかかえているものの、誰が裁判官であったとしてもこの判決は国際法を根拠として筋が通っているので、覆らないと考える。そのため、*2-2のように、戦争をせずに領土問題を解決するためには、国際法を根拠とするハーグ仲裁裁判所の判決を尊重することが必要不可欠だろう。

(3)尖閣諸島について

    
    東シナ海の状況      東シナ海の資源開発        新安全保障法制について

 *3-1のように、日本の2016年版防衛白書で、6月上中旬に中国の軍艦が沖縄県・尖閣諸島周辺や鹿児島県沖などの接続水域、領海に3度にわたり航行した事例について、東シナ海や南シナ海などの海洋進出について「高圧的」との認識を示すそうだ。しかし、他国の接続水域や領海に入るのは、高圧的か否かが問題ではなく国際法違反か否かが問題であるため、2016年版防衛白書もポケもんである。

 また、新安全保障関連法が成立して周辺事態法が重要影響事態法に変更されたが、尖閣諸島など周辺の警備については図のように電話閣議になっただけであるため、地球規模で他国軍を支援して弾薬提供などを行うことになった上、尖閣諸島付近への中国船出没の抑制にはなっていない。従って、新安全保障関連法は、「国際社会からは(助かるので)高く評価する」とされたとしても、日本国民を前より守ることになったわけではないのだ。

 なお、*3-2のように、翁長沖縄県知事が、2016年6月9日に、中国海軍のフリゲート艦が尖閣諸島(同県石垣市)周辺の接続水域に侵入したことなどを受け、地域住民の安全確保に向けて万全の態勢で取り組むよう菅官房長官らに要請したのは的を得ている。しかし、日本政府の菅官房長官らは、いつものとおり情報収集・監視活動に取り組んでいることを説明したのみで、結果を出していない。そのため、「何のためにやっているのか」と言われて当然なのである。

*1-1:http://www.asahi.com/topics/word/%E5%8D%97%E3%82%B7%E3%83%8A%E6%B5%B7.html (朝日新聞 2016年7月15日) 南シナ海問題
 豊富な天然資源が眠るとされる海域で、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を主張している。対立回避のため東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国は2002年に行動宣言を結んで自制と協調を目指した。だが中国は、独自の「9段線」を根拠にほぼ全域での管轄権を主張。軍事力や経済力を背景に、監視船を派遣するなど実効支配を強めてきた。フィリピンはスプラトリー(南沙)諸島ミスチーフ礁を奪われた経緯から中国と激しく対立。国連海洋法裁判所に仲裁を申し立てている。中国はベトナムとも漁船妨害などで衝突してきたが、最近はフィリピンを孤立させる戦略もあって、友好を保っていた。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160713&ng=DGKKZO04779730T10C16A7MM8000 (日経新聞 2016.7.13) 仲裁裁判所判決の骨子
 ○中国が南シナ海に設定した独自境界線「九段線」には主権、管轄権、歴史的権利を主張する
   法的根拠はない
 ○南沙諸島には、排他的経済水域(EEZ)を設けられる国連海洋法条約上の「島」はなく、中国は
   EEZを主張できない
 ○中国がスカボロー礁でフィリピン漁民を締め出したのは国際法違反
 ○ミスチーフ礁とセカンドトーマス礁はフィリピンのEEZ内にある
 ○中国は南沙諸島で人工島を建設するなどして国連海洋法条約の環境保護義務に違反

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160713&ng=DGKKZO04779680T10C16A7MM8000 (日経新聞 2016.7.13) 南シナ海 中国の主権認めず 国際司法が初判断、人工島「島ではない」 中国「受け入れない」
 国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、南シナ海での中国の海洋進出(総合2面きょうのことば)を巡り、中国が主権を主張する独自の境界線「九段線」に国際法上の根拠がないと認定した。中国が人工島造成など実効支配を強める南シナ海問題に対し、初めて国際的な司法判断が下された。中国は判決を受け入れないとしており、国際社会との緊張が高まるのは必至だ。裁判はフィリピンが提訴した。判決文は九段線の海域内で中国が主張する主権や管轄権、歴史的権利に関して根拠がないと指摘。国連海洋法条約を超えて主権などを主張することはできないとした。中国は1996年に同条約を批准している。中国が造成する人工島も「島」と認めなかった。フィリピンが訴えた「中国が人工島を造成したミスチーフ礁などは満潮時に水没する『低潮高地』(暗礁)であり、領海を設定できない」との指摘を認めた。スカボロー礁やジョンソン礁などは「岩」であると認定し、沿岸国が漁業や資源開発などの権利を持つ排他的経済水域(EEZ)は設けられないと判断。スカボロー礁周辺の海域は中国、フィリピン、ベトナムの伝統的な漁場で、中国がフィリピン漁船にたびたび妨害を加えていたことも国際法違反だとした。フィリピンのヤサイ外相は判決を歓迎するとした上で「フィリピンは画期的な判決を尊重し、強く支持する。紛争の平和的解決のため、引き続き努力する」と述べた。一方、中国の習近平国家主席は北京訪問中のトゥスク欧州連合(EU)大統領との会談で「南シナ海の島々は昔から中国の領土であり、領土、主権、海洋権益はいかなる状況でも仲裁判決の影響を受けない。判決に基づくいかなる主張や行動も受け入れない」と強調した。国連海洋法条約に基づく仲裁裁判は、相手国の同意がなくても一方の国の意思だけで始められる。中国の海洋進出を脅威に感じたフィリピンは2013年1月に裁判の開始を申し立てた。中国は拒否したが、同条約の規定に従い裁判官に当たる5人の仲裁人が審理した。中国は1950年前後に九段線を示し、海域のほぼ全域での主権と管轄権を主張してきたものの、国際法上の根拠を明確には説明してこなかった。今回の判決で「国際法違反」と明確に結論づけられ、中国の主張が根底から覆された。中国とフィリピンは判決に従う義務を負うが、罰則や強制する仕組みはない。南シナ海は国際航路の大動脈である上、天然ガスや漁業などの資源が豊富。中国とフィリピンのほか、台湾、ベトナム、マレーシアなどが領有権を争っている。

<仲裁裁判所の公正性>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJ7F5WTWJ7FUHBI01J.html (朝日新聞 2016年7月13日) 南シナ海判決、中国が批判に躍起「日本人裁判所長が…」
 中国政府が、南シナ海での中国の権利を否定した常設仲裁裁判所の判決を「無効」と批判するキャンペーンを展開している。裁判官の国籍も問題視し、判決を拒否する正当性を強調。批判の矛先は日本にも向けられている。中国政府は13日午前、予定していた貿易統計の会見を延期し、判決への反論会見に差し替えた。会見では中国の立場を説明する「白書」を発表。歴史的経緯から「中国の領土だという基本的事実を変えることはできない」とし、判決を無効と主張した。白書は中国語のほか英語、ロシア語、アラビア語など計9言語で出版された。会見で外務省の劉振民次官は「仲裁裁判所が合法的な国際法廷ではないことを説明したい」とし、裁判官5人のうち4人が「欧州出身者だ」と指摘。「国際法廷は世界各種の文化と主要法体系を代表して構成するという、国連海洋法条約の定めに反する。彼らがアジアの文化を理解しているのか」などと批判した。さらに、5人の給与にも言及し、「国際司法裁判所や国際海洋法裁判所の判事の報酬は国連が支給しているが、5人は金を稼いでいる。フィリピンのカネだ」などと述べた。判事の選定方法や適性も含めて手続きの「違法性」を主張した形で、「国際法史上、悪名高い判例となった」とも断じた。また、仲裁裁判の審理の過程で十分な海域調査をしていないとし、技術的な観点からも判決には問題があると強調した。中国政府は日本にも批判の矛先を向けた。劉氏は会見で、5人の裁判官のうちフィリピンが指名した1人を除く4人は「すべて日本人の国際海洋法裁判所の柳井俊二所長(当時)が指名した」と指摘。柳井氏が安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の座長だったことに触れ、「裁判手続きの過程で影響を与えた」と述べた。中国外務省は12日夜、岸田文雄外相が出した「当事国は今回の判断に従う必要がある」との声明に対する反論コメントで、同様の批判を展開。判決に日本の政治的な意図が関わっていると強調することで、国内世論の不満を日本に向けさせる狙いとみられる。中国国内では12日夜から13日にかけて判決のニュースが駆け巡り、反発が強まっている。中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」では「中国の領土は一点たりとも譲るな」「強軍こそが中華民族が屈辱から抜け出す唯一の道」などと強硬な発言が目立つほか、「外務省には人材がいないのか」「裁判で反論すべきだった」などと政府の対応を批判する声も上がる。中国政府の強硬姿勢の背景には、判決を「座視」すれば、批判の矛先が指導部に向かいかねない懸念もあるとみられる。新華社通信は13日、南沙諸島の二つの滑走路で民間機2機が試験飛行に成功したと伝え、中国が今後も実効支配を進める姿勢をアピールした。共産党機関紙・人民日報も1面で「中国は将来、領土主権を守り、海洋権益の侵犯を受けないために必要なあらゆる措置を取る」と強硬な姿勢を示した。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12460913.html
(朝日新聞 2016年7月15日) 比、判決の尊重訴える方針 ASEMで 南シナ海問題
 フィリピンのドゥテルテ大統領は国内執務のため出席しないが、代理でヤサイ外相が参加する。ドゥテルテ氏は14日、マニラであった会合で「戦争は望まない」と述べ、中国と対話で解決したい考えを示した。また、ラモス元大統領に対し「中国と対話を始められるように」と相談していることも明らかにした。これを受け、ASEMでヤサイ外相がどこまで判決について訴えるかに関心が集まっている。

<尖閣諸島>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJ7N6KS1J7NUTFK00D.html
(朝日新聞 2016年7月21日) 中国の海洋進出「高圧的」 防衛白書原案、認識示す
 2016年版の防衛白書の原案が明らかになった。中国の動向について、6月上中旬に軍艦が、沖縄県・尖閣諸島周辺や鹿児島県沖などの接続水域、領海に3度にわたり航行した事例を盛り込み、東シナ海や南シナ海などの海洋進出について、「高圧的」だとの認識を示した。白書は8月上旬にも閣議報告される。航空自衛隊による対中国機の緊急発進(スクランブル)について、「急激な増加傾向」にあると指摘し、尖閣周辺の東シナ海での中国機の動きが南下しているとも分析した。北朝鮮を巡っては、1月に強行した4度目の核実験や2月以降の相次ぐ弾道ミサイル発射などを示し、「軍事的な挑発的言動」を繰り返していると強調。「既に核兵器の小型化、弾頭化の実現に至っている可能性も考えられる」とし、「北朝鮮のミサイル開発全体が一層進展しているとみられる」とした。また、安全保障関連法が成立した後、初めての白書となる。同法については章をたてて説明し「歴史的な重要性」があると強調した。「国際社会からも高く評価、支持」されているとも明記した。

*3-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160721-00000566-san-pol (産経新聞 2016年7月21日)翁長雄志沖縄県知事が政府に初めて安全確保要請 尖閣周辺海域の中国軍艦侵入
 沖縄県の翁長雄志知事は21日、首相官邸で開かれた「政府・沖縄県協議会」で、今年6月9日に中国海軍のフリゲート艦が尖閣諸島(同県石垣市)周辺の接続水域に侵入したことなどを受け、地域住民の安全確保に向けて万全の態勢で取り組むよう菅義偉官房長官らに要請した。翁長氏が中国船への対応を政府に要請するのは初めて。協議会で菅氏らは翁長氏の要請に対し、情報収集や監視活動に取り組んでいることを説明した上で、「政府としては引き続きわが国周辺海域での警戒監視活動に万全を期す」と応じた。政府への要請については、石垣市の中山義隆市長らが県に求めていた。

| 外交・防衛::2014.9~2019.8 | 03:47 PM | comments (x) | trackback (x) |

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