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2016,08,16, Tuesday
放射能汚染 2015.3.25月刊宝島4月号より 2016.3.10時事ドットコム 2013.9.13現在 放射性セシウム 食品基準 農産物の汚染 農地の除染法 体内残存量 (暫定基準と2012年4月以降の基準) (これで農産物の汚染がなくなるか疑問) (1)雑誌が奮闘して書いた原発事故の影響 月刊宝島が、2015年4月号で、*1-1のように、「汚染17市町村で小児甲状腺ガン、急性心筋梗塞が同時多発していること」「周産期死亡率も汚染17市町村で高いこと」「高止まりしているのは2012年からであること」を国の人口動態統計の死亡率から突き留め、フクイチ原発事故による被曝の健康被害として公表した。 この記事を書くにあたり東電に取材依頼書を送ったところ、東電から「(記事を)読む方の不安を煽るような内容になったりするのではないんでしょうか」と質問された上、「人口動態統計での各死亡率等についての数値の変化については、さまざまな要因が複合的に関係していると思われ、それら変化と福島原子力事故との関係については、当社として分かりかねます」という“回答”がFaxで送られてきたそうだ。 そして、死亡統計や被曝に詳しい筈の厚労省は、「環境省に聞いていただきたい」とし、環境省は「昨年12月22 日に公表した『東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議』の中間取りまとめが、①放射線被曝により遺伝性影響の増加が識別されるとは予想されないと判断した ②今般の事故による住民の被曝線量から、不妊、胎児への影響のほか、心血管疾患、白内障を含む確定的影響(組織反応)が今後増加することも予想されない としているため、周産期死亡率や急性心筋梗塞年齢調整死亡率が増加したとしても、それは原発事故の影響ではない」と原発事故で現実に起こった事象から目を逸らしてごまかしているそうである。 これらは、官の責任回避のためのチームプレイであり、原発事故の被害者にとっては決して許せることではなく、他の国民にも今後の原発利用への判断を歪めて迷惑がかかるものだ。 (2)食品放射能基準は、蓄積・呼吸による内部被曝・外部被曝を考慮していないため、甘すぎること 原子力規制委員会の田中委員長は、2016年8月3日、*1-2のように、「(食品の放射性物質濃度基準値が放射性セシウムで1キロ当たり100ベクレル以下などと規制されていることについて)私の知る限りでは科学的根拠があるとは思えない」と述べた。 しかし、食品・飲料水の放射性物質濃度基準値は原発事故直後の暫定基準から2012年4月に厳格化されたとは言え、一日10ベクレルでも長期間摂取すると体に蓄積するので、食品に人工の核種は含まないにこしたことはない。にもかかわらず、厚労省や食品安全委員会が「国際的指標を踏まえ、食品からの被曝線量上限を年1ミリシーベルトにした場合の値(つまり、食品以外からの被曝は考慮していない)で、長期的な健康への影響も含めて専門家が科学的見地から判断している」としており、さらに原子力規制委員会の田中委員長は医療の専門家ではないにもかかわらず、「厳格化された基準になったことで風評被害や出荷制限で大変な思いをしている」と述べた。しかし、福島県の農漁業生産者へは、安全な産物を生産できなくなったことに対して損害賠償や補償をすべきなのであり、国民に汚染食品を食べて協力させるのは間違いである。 このような中、*1-3のように、今村復興相が産業再生を重点施策に据え、福島の産物に対する風評被害対策として消費運動を促す仕掛けづくりに意欲を示されたそうだが、放射性物質が含まれていても基準以下なら安全だと吹聴することこそ、国民に対する科学的根拠なき風評による加害である。 (3)危険な伊方・川内原発の再稼働 中央構造線と川内原発・伊方原発 事故時の放射性物質拡散予測 広島での反対 2016.8.8佐賀新聞 2016.8.16高知新聞 2016.8.12東京新聞 女性自身の原発関連記事は、2016年8月2日、*2-1のように、「事故が起きたら死ぬ伊方と川内原発のお粗末すぎる避難計画」という記事を掲載している。伊方原発は、そばを国内最大級の中央構造線断層帯(活断層)が通っており、2016年4月に起きた熊本地震に誘発されて付近の断層が動く可能性が指摘されている。また、最大43万人以上の死者になるという南海トラフで地震が起きると複合災害となって避難は不可能だそうだ。さらに、原発事故で放射能漏れしている時に、その場所にバスやフェリーを出せる民間会社もないだろう。 また、現在稼働中の鹿児島県川内原発から50kmに桜島があり、桜島は姶良カルデラという巨大火山帯の一部で、多くの火山学者は火山噴火の予知は不可能としているにもかかわらず、九電は「敷地周辺のカルデラが、巨大噴火する可能性は十分に小さい」とし、薩摩川内市の担当者は「風向きによって避難する方角が変わるので事前に避難先を決めても意味がない。避難の必要性が生じたら鹿児島県が予め整備した原子力防災・避難施設等調整システムによって、その都度、避難先を選定する」としている。しかし、アメリカでは、現実的な避難経路が確立されていない原発は即廃炉であり、日本では避難計画は新規制基準の対象外だそうだ。 そして、どちらも避難することしか話題にしていないが、原発が事故を起こした場合には周辺の土壌や近くの瀬戸内海・日本海・太平洋が汚染され、その被害はフクイチどころでなく、広い地域が避難したまま使えなくなることについては指摘されていない。 そのため、*2-2、*2-5のように、無理してまで原発を動かす大義が見当たらない中、伊方原発の再稼働について豊後水道を挟んだ大分県内18市町村のうち半数の9市町議会が再稼働に反対や見直し、慎重対応を求める意見書案を可決した。また、*2-4のように、広島の原爆慰霊碑前でも座り込みが行われ、周辺自治体には、政治的立場の左右を問わず懸念や反対が広がっている。 さらに、*2-3のように、伊方町民を対象にした原発意識調査の結果、再稼働に反対は55%で、賛成の24%を上回り、賛成住民のうちの67%も大地震発生時の原発に不安を感じているそうだ。 (4)国民負担になる原発のコスト 福島原発事故5年で、*3-1のように、賠償・除染などの国民負担が3兆4千億円超になっており、今後も増え続ける見通しだそうだ。そのほか電源開発促進税が入るエネルギー特別会計から約1兆1000億円が中間貯蔵施設の建設費等に充てられ、政府の直接財政支出は2014年度までに廃炉支援や食べ物の放射能検査、研究開発の拠点整備など計1兆2144億円が使われ、確定していない2015年度分の除染費や直接支出を含めれば、国民負担はさらに膨らむそうだ。 また、*3-2のように、最近になってフクイチの2号機内部を透視したところ、溶融核燃料が原子炉の圧力容器の底に残っている可能性が高いことがわかったと発表されたが、3号機については爆発時に核燃料を外に吹き出してしまって内部に残っていないらしく、全く言及されていない。そして、これまで強い放射線で作業員が近づけないため溶融燃料を確認できなかったなどと言い訳されているが、人体はずっと前からレントゲン、CTスキャン、MRIなどで直接見ることのできない場所を透視しているため、その気があれば応用は容易だった筈である。 なお、*3-3のように、廃炉費用についても当初の見込みを大幅に超過するという話で、東電は国に支援要請をしている。フクイチの被災者への賠償費用も国が無利子で立て替えており、既に6兆円を超えているそうだ。 (5)他の原発の安全性 北電は、*4-1のように、「加圧水型軽水炉のタービンを回すために使う2次冷却水や蒸気に放射性物質を含まない」と説明をしていたが、1次冷却水に含まれるトリチウムは金属配管を透過して2次冷却水に漏れ出しているため事実と異なり、北海道新聞が「事実と違う」と指摘したところ、「(2次冷却水には)蒸気発生器の伝熱管を透過したトリチウムが含まれている」と説明内容を修正したそうだ。 私も玄海原発について九電から同じ説明を受け、混じりあわなくても近くで接すれば放射能を帯びることがあるかもしれないと思って何度も問い返したことがあるが、2次冷却水や蒸気には放射性物質を含まないという同じ説明だったので、他の原発も検証すべきである。 また、*4-2のように、原子力規制委が新規制基準の合格証となる「審査書案」を了承して40年以上の老朽原発を延命していくのは、原発事故のない社会を作りたいという多くの国民の声を無視しており、原発の過酷事故を経験した国が進めるべきことは、金をかけて老朽原発を延命することではなく、廃炉にすることだ。 (6)世界の潮流と日本政府のギャップ 世界銀行(World Bank)と国連(UN)は、*5-1のように、2013年11月27日、最貧国に電力網を整備するため数十億ドル規模の資金援助が必要だと訴え、いずれの国でも原子力発電への投資は行わない考えを表明している。現在は分散発電が可能になったため、①地下に電力網の整備すること ②エネルギー効率を倍増すること ③再生可能エネルギー比率を倍増すること ④新エネルギーを開発することは、開発途上国だけでなく日本でも行うべき重要な政策である。 さらに、*5-2のように、第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)、2015年12月12日、「途上国を含む196カ国が参加する2020年以降の新たな温暖化対策「パリ協定」を採択し、「産業革命前からの気温上昇を2度より十分に低く抑える目標を掲げたうえ、さらに1.5度以内とより厳しい水準へ努力する」とした。そして、この ブログの2015年12月8日に記載しているとおり、「パリ協定」の温暖化対策は原発を意図しているのではなく、100%自然エネルギーを意図しているのだ。 それにもかかわらず、*5-3のように、日本の山本環境相は2016年8月3日の就任記者会見で、温室ガス削減目標達成は原発抜きでは「極めて困難」と述べ、著しい放射線公害を引き起こす原発の再稼働を進めており、大量の温室効果ガスを排出する石炭火力発電の新設計画も条件付きで容認する意向であるため、既に再生可能エネルギー技術が進み、さらにこれを伸ばして税収を増やすべき日本の環境相として失格だ。 また、*5-4のように、原発事故を受けて企業や家庭の節電が進み、エアコンの利用が増える猛暑でも夏の電力需給は安定し、原油安で電力大手の業績も改善し、新電力への切り替えで大手に対する電力需要が減っている現在、原発再稼働の大義はない。 初期投資の大きい原発は長く使うほど利益が出るため、九電は玄海3、4号機を早く再稼働させたいそうだが、それなら、被災者への賠償費用(約5・4兆円)、廃炉費用(約2兆円)、使用済核燃料の最終処分費用等、これまで国民が負担してきた費用も電力会社が負担するよう制度変更してから、意思決定すべきである。 (7)再生可能エネルギーの発展 九州電力の子会社で再生可能エネルギー事業を手掛ける九電みらいエナジーは、*6-1のように、長崎県の五島列島沖で潮流を利用した発電の実証実験を始めるそうだ。まだ出力が小さく、運転開始も2019年度だが、日本には五島列島沖はじめ狭い海峡になっていて潮流の速い場所が多いため、本気でやれば潮流発電も力を発揮できると考える。 また、*6-2のように、農家の経営安定と地域の災害時安全保障のため、再生可能エネルギーが農村の電源になりつつあるそうだ。原発を遠慮なく使っていた時代でも電気料金は高すぎたため、農家は輸入した燃油を使っていたが、太陽光・水力・風力などの自然エネルギーを動力として使えるようになれば、農家の所得が上がって地域を活性化できると同時に、日本のエネルギー輸入額が減少するため、より重要なものに支出を振り向けることができる。 なお、埼玉県は、*6-3のように、下水処理施設で下水汚泥から発生するメタンガス等を使った発電を2019年4月に開始し、事業者へのガス売却代金や土地賃貸料など年間6000万円の収入を見込むことができた上、汚泥の減量化にも繋がるとのことである。事業者は施設内に発電機を設置し、1キロワット時あたり39円(税抜き)で20年間、電力会社に売電するそうだが、このように邪魔者をエネルギーに換えるのはアッパレだ。他の自治体も、この“資源”は豊富に持っているのではないだろうか。 *1-1:http://blog.takarajima.tkj.jp/archives/1957240.html (月刊宝島2015年4月号) 福島県の汚染地帯で新たな異変発覚!「胎児」「赤ちゃん」の死亡がなぜ多発するのか? ~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第6回 後編】~最新2013年の「人口動態統計」データを入手した取材班は、高い放射能汚染に晒されている「17の市町村」で、周産期死亡率が急上昇している事実に辿り着いた。ジャーナリストが自力で行なう「原発事故による健康への影響調査」最終回! ■小児甲状腺ガン、急性心筋梗塞「汚染17市町村」で同時多発 福島第一原発事故発生当時、18歳以下だった福島県民の人口は36万7707人。そのうち、14年12月末時点で甲状腺ガン、またはその疑いがある子どもの合計は117人である。この数字をもとに、福島県全体の小児甲状腺ガン発症率を計算してみると、10万人当たり31.8人となる。これでも相当な発症率であり、十分「多発」といえる。14年度の検査で新たに「甲状腺ガン、またはその疑いがある」と判定されたのは8人だが、そのうちの6人が「汚染17市町村」の子どもたちである。「汚染17市町村」における小児甲状腺ガン発症率を計算してみると、同33.0人と県平均を上回り、より多発していることがわかった。汚染17市町村」では、急性心筋梗塞も多発している。【図5】は、同地域における過去5年間の「急性心筋梗塞」年齢調整死亡率を求めたものだ。 最新13年の年齢調整死亡率は、福島県全体(同27.54人)を上回る同29.14人。おまけにこの数値は、12年(同29.97人)から“高止まり”している。つまり「汚染17市町村」が、福島県全体の同死亡率を押し上げていた。周産期死亡率、小児甲状腺ガン発症率、さらには急性心筋梗塞年齢調整死亡率のいずれもが、「汚染17市町村」で高くなる──。これは、福島第一原発事故による「健康被害」そのものではないのか。それとも、偶然の一致なのか。本誌取材班は、東京電力を取材した。同社への質問は、 (1)原発事故発生後の「福島県における周産期死亡率の上昇」は、原発事故の影響によるものと考えるか。 (2)原発事故発生後の「汚染17市町村における周産期死亡率の上昇」は、原発事故の影響によるものと考えるか。 (3)「汚染17市町村」で周産期死亡率と急性心筋梗塞年齢調整死亡率がともに上昇していることは、この中に、被曝による「健康被害」が内包されている可能性を強く示唆している。これに対する見解をお聞きしたい。 という3点である。取材依頼書を送ったところ、東京電力広報部から電話がかかってきた。 * 「(記事を)読む方が、心配になったりするような内容ではないんでしょうかね?」 ──「心配になる内容」とは? 「質問書をいただいた限りだと、『震災以降、率が上がっている』といったところで、特に不安を煽るような内容になったりするのかなと、個人的に思ったものですから」 ──「不安を煽る」とはどういうことでしょうか?質問した内容はすべて、国が公表したデータなど、事実(ファクト)に基づくものです。 「ファクトですか」 ──はい。 「国等(とう)にも当社と同様にお聞きになった上で、記事にされるんでしょうかね?」 ──はい。そうです。 * その後、同社広報部からファクスで次のような“回答”が送られてきた。 「人口動態統計での各死亡率等についての数値の変化については、さまざまな要因が複合的に関係していると思われ、それら変化と福島原子力事故との関係については、当社として分かりかねます」。しかし、「分かりかねる」で済む話ではない。そもそも、日本国民の「不安を煽る」不始末を仕出かしたのは東京電力なのである。それを棚に上げ、事実を指摘されただけで「不安を煽る」などという感情的かつ非科学的あるいは非論理的な言葉で因縁をつけてくるとは、不見識も甚だしい。自分の会社の不始末が「国民の不安を煽っている」という自覚と反省が不十分なようだ。猛省を促したい。 ■環境省「放射線健康管理」の正体を暴く 続いて、国民の健康問題を所管する厚生労働省に尋ねた。 * 「それは、環境省のほうに聞いていただく話かと思います」 ──原発事故による住民の健康問題は、環境省に一本化されていると? 「そうですね」 * ご指名に基づき、環境省を取材する。面談での取材は「国会対応のため、担当者の時間が取れない」との理由で頑なに拒まれ、質問への回答は、同省総合環境政策局環境保健部放射線健康管理担当参事官室よりメールで寄せられた。回答は以下のとおり。「昨年12月22 日に公表された、『東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議』の中間取りまとめによれば、 ●放射線被ばくにより遺伝性影響の増加が識別されるとは予想されないと判断する。 ●さらに、今般の事故による住民の被ばく線量に鑑みると、不妊、胎児への影響のほか、心血管疾患、白内障を含む確定的影響(組織反応)が今後増加することも予想されない。 とされています」 環境省は、たとえ周産期死亡率や急性心筋梗塞年齢調整死亡率が増加したとしても、それは原発事故の影響ではない──とした。その根拠は「専門家会議の中間取りまとめ」が、原発事故の影響でそうした疾患が増加することを予想していないからなのだという。ちなみに、「専門家会議」を所管しているのは、この回答の発信元である同省の「放射線健康管理担当参事官室」である。科学の権威たちが揃って予想だにしないことが起きたのが福島第一原発事故だったはずだが、あくまで「予想」に固執する環境省は同じ轍(てつ)を踏みそうだ。もちろん、科学が重視すべきは「予想」より「現実」である。環境省の説が正しいとすれば、原因は別のところにあることになり、それを明らかにするのが科学であり、それは環境省が拠りどころとする「専門家会議」の仕事のはずだ。だが、その原因を特定しないまま、環境省は端から全否定しようとするのである。なぜ、環境省は現実から目を逸らし、真正面から向き合おうとしないのか。身も蓋もない言い方だが、環境省が現実に目を向けることができないのは、昨年12月に出したばかりの「中間取りまとめ」を、環境省自身が否定することになりかねないからなのである。つまり、本誌取材班の検証で明らかになった「汚染17市町村」での周産期死亡率や急性心筋梗塞年齢調整死亡率の増加の事実は、「専門家会議の中間取りまとめ」の「予想」結果を根底から覆しつつ「権威」を失墜させ、その贋物性を白日の下に曝け出してしまうものだった。中間取りまとめ」が予想していない疾患の増加はすべて「原発事故の健康被害ではない」として、頭ごなしに否定する環境省の姿勢は、かつて「日本の原発は事故を起こさない」と盛んに喧伝してきた電力御用学者たちの姿を彷彿とさせる。12年7月に出された国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)の報告書は、「歴代の規制当局と東電との関係においては、規制する立場とされる立場の『逆転関係』が起き、規制当局は電力事業者の『虜』となっていた。その結果、原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していた」としていた。環境省もまた、電気事業者の「虜」となっているようだ。そう言われて悔しければ、「現実に向き合う」ほかに名誉挽回の道はない。このように不甲斐なく、頼りにならない環境省のおかげで、このままでは「汚染17市町村」での“健康異変”は十把一絡(じっぱひとから)げにされ、かつて「水俣病」が発覚当初に奇病扱いされたように、原因不明の奇病「福島病」とされてしまいそうである。メチル水銀中毒である「水俣病」に地域の名前が付けられたのは、加害企業の責任をごまかすべく御用学者が暗躍し、「砒素(ひそ)中毒説」などを唱えたことにより、原因究明が遅れたことが原因だった。これにより、病気に地域名が付けられ、被害者救済も大幅に遅れることになったのである。従って、「汚染17市町村」で多発する病気に「福島」の名が冠されるようになった時の原因と責任は、すべて環境省にある。 *1-2:http://www.jiji.com/jc/article?k=2016080300780&g=soc (時事ドットコム 2016.8.3) 食品放射能基準「根拠ない」=田中委員長が批判-規制委 原子力規制委員会の田中俊一委員長は3日の定例記者会見で、食品の放射性物質濃度基準値が放射性セシウムで1キロ当たり100ベクレル以下などと規制されていることについて、「私の知る限りでは科学的根拠があるとは思えない」と述べた。食品や飲料水の基準値は東京電力福島第1原発事故を受け、2012年4月に厳格化された。それまでは野菜や穀類、肉などは同500ベクレル以下などとされていた。田中委員長は「あの基準になったことで、風評被害や出荷制限で大変な思いをしている」と述べ、福島県の農業生産者らの苦労を強調した。チェルノブイリ原発事故後の欧州の食品基準にも言及し、「コントロールできるようになったから(基準値を)低くしている。そういうのが本来の姿だ」と指摘。「私のような人たちから見ると日本は変な国だ」と批判した。厚生労働省は現行基準について「国際的な指標を踏まえ、食品からの被ばく線量上限を年1ミリシーベルトにした場合の値。長期的な健康への影響も含めて判断している」と説明。食品安全委員会事務局も「専門家が科学的見地から取りまとめた」としている。 *1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/344681 (佐賀新聞 2016年8月15日) 編集局長インタビュー 今村雅弘復興相に聞く 風評被害対策に意欲 第3次安倍再改造内閣で初入閣した今村雅弘復興相(69)=衆院比例九州、鹿島市出身=は、佐賀新聞社のインタビューに応じた。5年が経過した東日本大震災の復興・復旧について、産業再生を重点施策に据える考えを示すとともに、根強く残る福島の産物に対する風評被害対策として、消費運動を促す仕掛けづくりに意欲を示した。今村復興相は就任直後に改めて被災地3県を回った。現状について「5年前に比べると、基盤整備などで着々と姿を現してきており、復興・復旧が進んできた」と評価した。その上で「基盤が整備されても、なりわいの再生が進まなければ人は戻らない」として、産業再生へ支援策を重点的に打ち出す考えを示した。原発事故の影響で福島を中心に農産物や海産物の風評被害が残っていることに関しては「危ないものではないということをもっとアピールして、福島の食材を買おうという運動を常に起こしていくことが重要」と指摘した。「福島農産物ファンクラブのようなものや、ふるさと納税に似た仕組みで消費拡大を促してもいい」と私案も披露した。原発の再稼働問題では「日本のエネルギー事情を考えると、原発は最小限必要」と容認の立場を鮮明にした。ただ、条件として「二重、三重の安全対策を講じ、さらに万一、事故が起きた場合に備えた多重防護策を施すべき」と福島第1原発事故を教訓にした対策の徹底を挙げた。 <伊方・川内原発の再稼働> *2-1:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160802-00010000-jisin-soci (女性自身 2016年8月2日) 「事故起きたら死ぬ」伊方&川内原発のお粗末すぎる避難計画 「ここでの暮らしは、つねに不安がつきまとう。原発で事故が起きたら、逃げ場がありませんから」と話すのは、佐多岬半島(愛媛県伊方町)の先端近くに住む平岡綾子さん(仮名・43)。伊方原発は、すぐそばを国内最大級の中央構造線断層帯(活断層)が通っている。4月に起きた熊本地震に誘発されて、伊方付近の断層が動く可能性も指摘されている。また南にある南海トラフで地震が起きると、最大で43万人以上の死者数になる可能性も……(内閣府試算)。「伊方原発は、佐多岬半島という日本一細長い半島の付け根にあるんです。だから、伊方原発から西に住む半島の住民(4,906人)は、原発事故が起きたら原発の前を通って東に避難するしかありません。でも放射能漏れしている原発の前を通って逃げるなんて不可能です」と平岡さん。しかし避難経路になっているのは片側一車線の道が多く、なかにはがけ崩れが修復されず、そのままになっているところもあった。政府は、放射能漏れがひどく原発の前を通って逃げられない場合は、佐多岬半島の港からフェリーで大分県に避難する計画も立てている。「訓練のときは、迎えのバスが来て港まで連れて行ってくれました。でも地震でガケくずれが起きたら、すぐに道がふさがれてしまう。第一、放射能漏れしているのにバスやフェリーを出してくれる民間会社なんてあるんでしょうか」(平岡さん)。避難訓練にも参加した国道九四フェリーの広報担当者にも尋ねた。「放射能漏れがなければフェリーは出せますけどね。当社も、船員の人命を守らねばなりませんから、(放射能漏れが)あった場合は対応できるかむずかしいですね」。昨年の避難訓練では、ヘリを導入することも予定されていたが、天候不良で中止になるというお粗末さ。事故がおきれば、逃げ道をふさがれた住民の命は切り捨てられる。現在、日本で唯一稼働している鹿児島県の川内原発。そこから50kmには桜島がある。桜島は姶良カルデラという巨大火山帯の一部で、これが巨大噴火を起こせば川内原発も破壊的なダメージを受ける可能性がある。九電は「敷地周辺のカルデラが、巨大噴火する可能性は十分に小さい。原発の運用期間中は、火山活動のモニタリングを続ける」と説明する。多くの火山学者は「火山噴火の予知は不可能」と批判している。しかし、原子力規制庁も九電の言い分を認めて再稼働に至っている。避難計画も穴だらけだ。介護が必要な高齢者や障害者の避難計画はないに等しい。「県や市は、避難計画を各施設に丸投げです。原発事故が起きたら、施設に通う高齢者は自宅に帰せと言うが、ひとり暮らしで認知症がある高齢者も少なくないのに、帰せるわけがありません」。そう話すのは、川内原発から約17kmにある、いちき串木野市で「デイサービス蓮華」を営む江藤卓郎さん。原発から5~30km圏内の要介護者は“屋内退避”が原則だが、避難が必要になった場合に施設の利用者を受け入れてくれる先は決まっていない。市の担当者は「風向きによって避難する方角が変わるので、事前に避難先を決めておいてもあまり意味がない。避難の必要性が生じたら、鹿児島県が予め整備した原子力防災・避難施設等調整システムによって都度、避難先を選定する」と話す。「風向きを読むことは、もちろん大事です。でも、事故が起きてから高齢者をいきなり知らない施設に避難させることは不可能です」と江藤さん。事前に利用者の家族にアンケート調査を実施し、避難の意向を確認。独自に原発から30km離れた知人の介護施設に受け入れてもらえるよう手はずを整えた。施設に通う80代の女性は、ポツリとこうもらした。「原発事故が起きたら、逃げられやせん。もう、ここで死ぬだけよ」前出の後藤さんもこう語る。「アメリカでは、現実的な避難経路が確立されていない原発は即廃炉です。でも日本の場合、避難計画は原子力規制委員会が原発再稼働を進めるために新たにつくった新規制基準の対象外なんです。だったらなおさら、安全がきっちり確認できない原発は再稼働を認めない、という厳しい姿勢で臨まなければ」。今回の取材で出会った、福島県南相馬市から京都府綾部市に避難中の女性も、次のように訴える。「福島では、事故のときに逃げ遅れたり、放射能の方向に避難してしまったりして被ばくした人がたくさんいます。その教訓がまるで活かされていない。事故が起きたら、国の言うことを信じずに、逃げられる人はすぐに逃げてほしい。国の指示を待っていたら被ばくするだけです」 *2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201608/CK2016081202000241.html (東京新聞 2016年8月12日)伊方、不安置き去り再稼働 周辺自治体に広がる懸念・反対 四国電力は十二日午前、伊方原発3号機(愛媛県伊方町)を再稼働させた。東京電力福島第一原発事故を踏まえ策定された原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発では九州電力川内1、2号機(鹿児島県)、関西電力高浜3、4号機(福井県)に次ぎ五基目。川内1号機の再稼働から一年たち政府は原発活用を加速させたい考えだが、伊方原発近くには長大な活断層「中央構造線断層帯」が通り、熊本地震を機に活発化する懸念や、事故時の避難計画の実効性に不安も根強い。日本一細長い半島に位置し、事故時には住民避難も収束作業も支援も困難が予想される四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が再稼働した。九州から四国を通って本州に至る活断層「中央構造線断層帯」に沿って発生した四月の熊本地震後、豊後水道を挟んだ大分県各地の議会で、再稼働への懸念や反対を表明する動きが広がっている。その一方、暑い日が続く中でも四国の電力需給は安定。無理をしてまで原発を動かす大義は見当たらない。いくら地震や津波の対策をしても、原発のリスクはなくならない。一般的な工業施設なら、事故の影響は限定的。広範囲かつ長期にわたる影響が出る点で、原発はやはり別格と言える。何度、伊方の地を訪れても、雄大な美しい光景に圧倒される。その半面、尾根筋を走る一本の国道を除けば、道は細く険しく、岩肌ももろい。事故に備えて進めている道路拡幅は未完成のまま。住民避難計画では海を渡って大分などに避難するというが、現実的と受け止めている住民には出会ったことがない。地震が起きたら道は寸断される可能性があるためだ。「港に行く前に、閉じ込められる」と多くの人が語った。険しい半島の岩場を切り崩し、埋め立てて造った原発。敷地に余裕はない。事故時の対策拠点も必要最低限の施設で、休むスペースはなく、トイレも仮設が一つあるだけ。福島のような高濃度汚染水問題が起きても、保管するためのタンクの置き場も見当たらない。「新規制基準を満たせば、事故はある程度で止まる」。そんな危うい仮定の上で、伊方原発の「安全」は成り立っている。 *2-3:http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20160812/news20160812018.html (愛媛新聞 2016年8月12日) 町民反対55% 伊方原発再稼働 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働を前に、県内外の8人でつくる「瀬戸内海を守ろう会」は11日、伊方町民を対象にした原発への意識調査結果を発表した。再稼働に反対は55%で、賛成の24%を上回り、賛成住民でも67%は大地震発生時の原発には不安を感じているとしている。調査は、7月11日~8月10日に県内外のボランティアが戸別訪問し、伊方町民294人から回答を得た。大地震発生時の伊方原発には「とても不安」が全体の56%で、「少し不安」は29%、「大丈夫だと思う」は10%。再稼働に賛成の住民は「少し不安」が42%で「とても不安」は25%。「大丈夫だと思う」は31%だった。再稼働反対の住民は「とても不安」が73%を占め、「事故が起きれば逃げ場がなく、避難計画に不安がある」などの意見があった。 *2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016081201001778.html (東京新聞 2016年8月12日) 「再稼働強行に抗議」で座り込み 広島の原爆慰霊碑前 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)が再稼働した12日、広島市中区の平和記念公園にある原爆慰霊碑前では、反原発派の市民団体メンバーら約30人が「再稼働の強行に抗議する」と訴え、座り込みをした。原水爆禁止広島県協議会(広島県原水禁)が呼び掛けて実施。金子哲夫代表委員(68)は「絶対的に安全だとは言えない。放射能被害に遭った広島と同じ思いをさせないためにも、直ちに停止させるべきだ」と批判し、参加者らは「原発再稼働をゆるさん」と書かれたプラカードを掲げた。 *2-5:http://qbiz.jp/article/92331/1/ (西日本新聞 2016年8月13日) 伊方原発再稼働 大分のシイタケ農家、対岸60キロ圏から抗議 天気が良い日は、豊後水道を挟んだ対岸に伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の原子炉格納容器のドームが見える。原発から約60キロの大分県杵築市大田でシイタケ栽培を営む中山田さつきさん(62)は再稼働に不安を募らせる。「過酷事故が起きれば、海を越えて放射性物質が飛来する。そんなことになったら、生活を根こそぎ奪われてしまう」。12日、四国電力は3号機を再稼働させた。中山田さんの住む国東半島は、江戸時代からため池やクヌギ林を活用したシイタケ栽培が盛ん。その循環型農業が評価され、地域は2013年、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に認定された。中山田さん方も代々続くシイタケ農家。自宅で乾燥させ、大分名産の干ししいたけとして出荷する。今春は菌が入った「種コマ」をクヌギの原木に約9万5千個打ち、生育を待っている。東京電力福島第1原発の事故後、福島県産の露地栽培シイタケから基準を上回る放射性物質が検出され、出荷停止になった。生産量日本一を誇る大分県産の干ししいたけも、産地を問わずに敬遠される風評被害で価格が急落した。12年、中山田さんは同業者の声を聞こうと福島県二本松市の農家を訪ねた。汚染されたシイタケは行き場がなく、倉庫に積まれたまま。「同じことが大分で起きるかもしれないと思うとぞっとする。シイタケもクヌギ林も全部汚染され、生活が立ちゆかなくなる」。今年3月、関西電力高浜原発(福井県)の運転差し止めを求める仮処分申し立てを大津地裁が認めた。「隣県の住民でも止められるんだ」と勇気をもらった。7月上旬、大分地裁に伊方原発の再稼働差し止めを求めて仮処分を申し立てた。「今まで立地県の人に、原発と戦うことを押しつけてきた。申し訳なかった」。原発はとんでもない怪物だと思う。「過酷事故を想定して、30キロ圏内の自治体には避難計画を義務づけ、何十万という人を避難させるかもしれない前提で、動かす。そんな工場や発電所がほかにありますか?」。再稼働を前に開かれた今月10日の仮処分申し立ての審尋で、四国電力は「安全性に問題はない」と主張した。「事故はいつ起きるか分からない。一日も早く止めなければ」。伊方原発が再稼働した12日、居ても立ってもいられず、発電所周辺で開かれた抗議集会に駆け付けた。 ◇ ◇ ●反対意見書の可決次々 大分9市町議会、全体の半数 愛媛県の中村時広知事が昨年10月に伊方原発3号機の再稼働に同意して以降、大分県内18市町村のうち半数の9市町議会が再稼働に反対や見直し、慎重対応を求める意見書案を可決した。経済的利益は受けず、事故の際には被害だけを受けることになる大分県では、不信感が高まっている。意見書案を可決したのは杵築、竹田、由布、別府、中津、国東、豊後高田、臼杵の市議会と日出町議会。このうち、全会一致で可決した杵築市議会は、再稼働にあたり、周辺自治体の同意や実効性ある避難計画が必要だと求めた。内陸部の竹田市議会は「放射性物質が飛来すれば、農林畜産業など主要産業が壊滅する」としている。杵築市議の一人は「原発の安全性確保に関しては、保守も革新もない。事故が起きれば市民は誰だって被害者になってしまう」と話す。臼杵市の中野五郎市長は今年1月、伊方原発を視察した際に「絶対に安全ということはありえない」と訴え、四国電力に大分県内での説明会開催を求めたが、四電は応じていない。大分県は、愛媛県からの避難者を受け入れる方針を示し、再稼働自体には反対していない。 <国民負担の原発事故コスト> *3-1:http://www.jiji.com/jc/article?k=2016031100118&g=soc (時事ドットコム 2016/3/11) 国民負担3兆4千億円超=賠償・除染など、事故5年で-総額見えず拡大へ・福島原発 東京電力福島第1原発事故の発生から5年間に損害賠償や除染、汚染水対策などで国民が負担した額が、確定分だけで3兆4613億円を超えることが分かった。日本の人口で割ると1人2万7000円余りに上る。今後も増え続ける見通しで、総額が見通せない状況だ。時事通信は復興特別会計などの原子力災害関連予算の執行額と、東電など電力7社が電気料金の値上げ分に含め賠償に充てる一般負担金などを集計した。国民負担は、電気料金への上乗せ▽事実上の国民資産である東電株の売却益やエネルギー特別会計(エネ特)からの支出▽政府の直接財政支出-に大別される。電力7社は事故後の電気料金値上げで、一般負担金を2015年度までに少なくとも3270億円上乗せした。東電は汚染水処理装置の保守管理費や賠償相談のコールセンター運営費など、2193億円以上も値上げ分に含めている。一般負担金は原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じ、賠償費用を立て替えている政府に納付されるが、その際に機構の運営費が差し引かれる。14年度までの運営費は117億円だった。東電株の売却益やエネ特の支出は、除染や汚染廃棄物の処理費、中間貯蔵施設関連費に充当される。これらの費用は14年度までに計1兆6889億円発生し、政府が立て替えている。東電株の購入に際し、機構が金融機関から受けた融資には政府保証が付き、焦げ付いた場合は税金で穴埋めされる。機構は東電株が大幅に値上がりすれば約2兆5000億円の売却益が生じ、除染などの費用を賄えると見込む。電源開発促進税が入るエネ特からは、約1兆1000億円が中間貯蔵施設の建設費などに充てられる。直接財政支出は14年度までに、廃炉支援や食べ物の放射能検査、研究開発の拠点整備などで計1兆2144億円が使われた。確定していない15年度分の除染費などや直接支出を含めれば、国民負担はさらに膨らむ。 *3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160729&ng=DGKKASGG28H1J_Y6A720C1MM8000 (日経新聞 2016.7.29) 溶けた核燃料、圧力容器内に 福島第1の2号機 内部を透視 東京電力と政府は28日、福島第1原子力発電所2号機の内部を透視する最先端の技術を使って調べたところ、溶け落ちた核燃料が原子炉の圧力容器の底に残っている可能性が高いと発表した。強い放射線に阻まれて作業員が近づけない溶融燃料を確認したのは初めて。具体的な取り出し方法を決める手がかりになるとみており、今後より詳しい調査を進める。2011年3月の福島第1原発事故で、1~3号機は炉心溶融(メルトダウン)が起きた。原子炉内部の調査には、宇宙線から生じる「ミュー粒子」と呼ぶ素粒子を使う。この粒子は人体などたいていの物質を通り抜けるが、ウランなど密度が高い物質に当たると進路が折れ曲がり、レントゲン撮影のような透視画像を得られる。今回の観測では、圧力容器の底に大きな影が映っていた。影の大部分は溶融燃料とみられる高い密度の物質で、その量は160トンほどと推定した。この数字から、原子炉中心部付近にあった核燃料はほとんどが溶け落ちたとみられる。2号機については、核燃料が集まった炉心を覆う鋼鉄製の圧力容器の中に溶融燃料が多く残っていると推定されてきた。しかし、建屋周辺の除染や調査の準備などに時間がかかっていた。溶融燃料の位置や量が把握できたことで、今後の取り出し方法の選定に向けて前進したことになる。東電と政府は今年度中にも、ロボットを使って格納容器の内部を調べる計画だ。 *3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160729&ng=DGKKZO05400790Z20C16A7MM8000 (日経新聞 2016.7.29) 廃炉費用 東電が国に支援要請 当初見込みを大幅超過 東京電力ホールディングス(HD)の数土文夫会長は28日の記者会見で、福島第1原子力発電所の廃炉に関して政府に支援を求める考えを明らかにした。作業工程の遅れなどで、廃炉費用が当初見込んだ約2兆円を大幅に上回る可能性が高くなったため。原発事故の賠償費用が当初見込みを上回っている問題でも政府と対応を協議する。数土会長は福島第1原発の廃炉費用について「経営に多大なインパクトを与える」と強調。そのうえで「これまで以上に国や原子力損害賠償・廃炉等支援機構と連携を密にする」と述べた。具体的な廃炉費用の見通しや支援要請の内容は明らかにしなかった。福島第1原発事故の被災者への賠償費用は国が無利子で立て替えている。従来の再建計画では5兆4000億円を見込んでいたが、すでに6兆円を超えた。想定を上回る分をどう負担するかについて政府と協議する。東電HDは経営改革を加速することで国の支援を取り付けたい考えだ。数土会長は電力小売りの全面自由化などで「環境が大きく変化している」とし、「過去の習慣にとらわれず非連続の改革に取り組む」と語った。政府は東電HDからの支援要請を受け、廃炉が着実に実施できるような支援措置の検討に入る。費用が膨らんだ場合でも作業が滞らないようにする考えだ。 <原発の安全性> *4-1:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0301450.html (北海道新聞 2016/8/6) 北電が泊原発資料修正 地元首長「信頼揺らぐ」と批判の声 北海道電力が4月から後志管内で行っている泊原発(後志管内泊村)に関する地域説明会で「原発の2次冷却水には放射性物質が一切含まれない」と事実と異なる説明をしていたことが分かり、北電は5日から説明会の資料や説明内容の修正を始めた。後志管内の首長からは「説明の信頼が揺らぐ」との批判の声が出ている。北電によると、地域説明会の資料に、泊原発が採用する加圧水型軽水炉について「タービンを回すために使う2次冷却水や蒸気に放射性物質を含みません」などと記載し、口頭でも同様の説明をしていた。しかし、1次冷却水に含まれるトリチウムは金属配管を透過して、2次冷却水に漏れ出している。北海道新聞が「事実と違う」と指摘したところ、内容の修正を決めた。北電は「資料は沸騰水型原発との構造の違いの説明を主眼にしたもの。故意に誤った説明をした訳ではないが、誤解を招く表現なので修正した」としている。北電は5日夜の留寿都村での説明会では「(2次冷却水には)蒸気発生器の伝熱管を透過したトリチウムが含まれている」と説明を変え、修正した資料を配った。誤った内容による説明会は18市町村で計61回行われたが、「説明会のやり直しはしない」という。これに対し、泊村の牧野浩臣村長は「当初の説明内容が軽率だった。説明会をやり直す必要はないが、機会を見て住民への説明責任をしっかり果たしてほしい」と指摘。仁木町の佐藤聖一郎町長は「(トリチウムが)入っていないと説明したのに、入っていたとなると不信感が募るだけ。北電は悪いことも含め事実をしっかり伝えてほしい」と話している。 *4-2:http://mainichi.jp/articles/20160808/ddm/005/070/002000c (毎日新聞社説 2016年8月8日) 老朽原発の延命 「40年廃炉」の骨抜きだ 老朽原発の運転延長が、立て続けに認められようとしていることに、大きな危惧を抱かざるを得ない。あくまでも「例外」とされた措置が、普通のことになってしまった。福島第1原発事故を教訓に見直された原子力安全規制は事実上、大きく方向転換したことになる。関西電力が40年を超えた運転を目指す美浜原発3号機(福井県)について、原子力規制委員会は新規制基準への合格証となる「審査書案」を了承した。11月末までに追加の審査に合格すれば、最長で2036年まで運転が延長できる。 ●「例外」が普通のことに 老朽原発の運転延長は、今年6月に認可を得た関電高浜原発1、2号機(同)に続き3基目となる。福島第1原発事故後、原発の運転期間を原則40年とする法改正がなされた。老朽化による原発のリスクを低減するためだ。福島第1原発で炉心溶融した1〜3号機は運転開始から約35〜40年が過ぎていた。導入当時の民主党(現民進党)政権は、40年の根拠を「圧力容器が中性子の照射を受けて劣化する時期の目安」と説明し、法改正には野党だった自民、公明両党も賛成した。規制委が認めれば1度限り、最長で20年間の延長を認める規定が盛り込まれたが、あくまで「例外的」な措置のはずだった。日本は地震と火山の国だ。原発に依存し続けるリスクは大きい。多くの国民も、40年原則を当然だと受け止めたはずだ。原発の安全性を向上させるためにも、脱原発依存を進めるためにも、政府と電力会社は40年廃炉の原則を厳守すべきだ。老朽原発の部品は新品に交換できても、施設の配置などは古い設計を変えづらく、安全性向上には限界があるとされる。古い技術をどうやって継承していくのかも、大きな課題となっている。こうした老朽原発のリスクを重く見るのなら、運転延長の審査は、通常の原発に比べても、格段に厳しいものであるべきだ。ところが、高浜、美浜両原発の運転延長に関する規制委の一連の審査では、むしろ、関電を手助けしているようにすら見える。高浜原発は今年7月が認可の期限だった。美浜原発は運転開始40年の前日となる11月末が期限となる。審査期間が限られる中、規制委は担当者を両原発に集中させ、安全審査を申請済みの他の原発よりも優先して審査してきた。しかも、審査が時間切れになるのを避けるため、重要な機器を実際に揺らして耐震性を確認する試験を、運転延長の認可後に先送りした。認可後の試験で耐震性に問題ありと判定された場合でも、認可は取り消さず、追加対策をして確認をやり直せばよいという。この問題については、規制委の一部委員からも「確認のやり直しは社会の理解を失う」との批判が出たほどだ。老朽原発では、燃えやすいケーブルを使っていることが問題視されていた。新規制基準は全ケーブルの難燃化を求めているが、すべて難燃性ケーブルに交換するには膨大な費用と時間がかかる。規制委は、交換が難しい箇所を防火シートで覆うという関電の代替策を認めた。難燃性ケーブルを使う場合と同等の安全性が保てるのか、疑問が残る。 ●疑問募る委員長の発言 規制委の田中俊一委員長は就任当初、原発の40年超運転について「延長は相当に困難」と述べていた。しかし、最近では「費用をかければ技術的な点は克服できる」という言い方に変わった。電力会社の代弁者のように聞こえはしまいか。福島第1原発事故後に廃炉が決まった老朽原発は、東電分を除くと6基ある。ただ、出力は30万〜50万キロワット級と小規模なものばかりだ。一方で、美浜3号機や高浜1、2号機は出力が80万キロワット級と、廃炉が決まった原発に比べれば大きい。関電は安全対策費として、高浜1、2号機で2000億円超、美浜3号機で1650億円を見込む。それでも延長に踏み切るのは、火力発電の燃料費削減など収益改善効果があるからだ。高浜1、2号機の場合、1カ月当たり約90億円に上るという。国内では今後10年間で、美浜3号機を含めて15基の原発が運転開始から40年を超える。関電の原発がお手本となり、安全対策費をかけても採算が見込める一定規模以上の原発の運転延長申請が続くだろう。廃炉の選択は、経済原理に基づく電力会社の判断に託され、例外規定の形骸化が更に進む。40年廃炉原則には、こうした電力会社の経済原理よりも、安全性を重視する意味があったはずだ。しかし、安倍政権は30年度の電力供給における原発比率を20〜22%とする計画を掲げる。これも、老朽原発の延命を後押しする。40年原則を徹底すれば、既存と建設中の原発がすべて稼働したとしても、比率は15%程度にとどまるからだ。これでは、原発に依存しない社会をできる限り早く作りたいという多くの国民の声には応えられない。原発の過酷事故を経験した国として、進めるべきは、老朽原発の延命ではなく淘汰(とうた)のはずだ。 <世界の潮流と日本のギャップ> *5-1:http://www.afpbb.com/articles/-/3004099?ctm_campaign=topstory (朝日新聞 2013年11月28日) 「原発は援助しない」、世銀と国連が表明 世界銀行(World Bank)と国連(UN)は27日、最貧国に電力網を整備するため数十億ドル規模の資金援助が必要だと訴えるとともに、いずれの国においても原子力発電への投資は行わない考えを表明した。世銀のジム・ヨン・キム(Jim Yong Kim)総裁と国連の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長は、2030年までに世界中の全ての人が電力の供給を受けられるようにする取り組みについて記者団に説明した。その中でキム総裁は「われわれは原発は行わない」と明言した。キム総裁によると、世銀は来年6月までに42か国の発電計画をまとめる予定。電力網の整備やエネルギー効率の倍増、再生可能エネルギー比率の倍増などを掲げ、目標達成には年間およそ6000~8000億ドル(約61兆~82兆円)が必要になるとしている。しかしキム総裁は、集まった資金は新エネルギー開発にのみ使用すると報道陣に明言。「原子力をめぐる国家間協力は、非常に政治的な問題だ。世銀グループは、原発への支援には関与しない。原発は今後もあらゆる国で議論が続く、たいへん難しい問題だと考えている」と述べた。 *5-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG12H37_S5A211C1000000/ (日経新聞 2015/12/13) COP21、パリ協定採択 196カ国・地域が参加、18年ぶり 温暖化1.5度以内へ努力 第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)は12日午後7時26分(日本時間13日午前3時26分)、途上国を含むすべての国が参加する2020年以降の新たな温暖化対策「パリ協定」を採択した。産業革命後の気温上昇を抑える目標を掲げたうえ、できるだけ早期に温暖化ガス排出を減少に転じると明記した。各国の自主性に委ねられる面は大きいが、196カ国・地域が史上初めて温暖化防止にともに努めると約束した。地球温暖化の阻止へ歴史的な一歩を踏み出した。12日夜、パリ郊外に設置された特設会場に設けられた大会議場にケリー米国務長官や中国の解振華・国家発展改革委員会特別代表、丸川珠代環境相など各国の閣僚が集まった。議長を務めるファビウス仏外相が「パリ協定を採択した」と述べ、木づちを振り下ろすと会場は長い間、拍手や歓声で包まれた。世界の温暖化対策がまとまるのは、1997年採択の京都議定書以来、18年ぶり。パリ協定は産業革命前からの気温上昇を2度より十分に低く抑える目標を掲げたうえ、さらに1.5度以内とより厳しい水準へ努力するとした。2度を超えると、異常気象といった様々な影響が現れると指摘されている。すでに地球の気温は1度程度上昇している。このため、温暖化ガスの排出量を早期に頭打ちにし、今世紀後半には人為的な排出量を森林などによる吸収量と均衡する状態まで減らす。米国や、中国などの途上国を含むすべての国が温暖化ガス削減の自主目標を作成し、国連に提出し、国内対策を実施する義務を負う。各国の削減目標を引き上げるため、2023年から5年ごとに目標を見直し、世界全体で進捗を検証する仕組みも導入する。温暖化に伴う被害を軽減する世界全体の目標を定めることも決めた。パリ協定の採択に向けて最大の焦点となった途上国の資金支援を巡っては、「温暖化は先進国の責任」とする途上国と、将来の支援額を明示できないうえ新興国にも拠出側に回ることを望む先進国で意見が激しく対立。途上国への資金支援は義務づける一方、具体的な拠出額は協定とは切り離す形とし、25年までに、最低でも年間1000億ドルとする新たな拠出額の目標を決めることで決着した。地球温暖化を巡っては、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が14年に第5次評価報告書を公表し、「人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高い」と結論づけた。世界各地で温暖化の影響とみられる豪雨や洪水、干ばつなどの被害の報告も相次いでいる。国際社会が地球環境問題に危機感を感じ、1992年には気候変動枠組み条約が採択された。97年の同条約第3回締約国会議(COP3)で京都議定書がまとまった。だが京都議定書の採択後、中国やインドなど経済成長を遂げた途上国を中心に温暖化ガスの排出量が急増。さらに米国が2001年に離脱し、日本などが参加を見送るなど、参加国が大幅に縮小し、13~20年に削減義務を課された国々の排出量は世界全体の1割強にとどまっている。こうした状況を打開すべく、09年のデンマークでのCOP15で新たな枠組みの合意を目指し、首脳級による交渉が行われたが先進国と途上国の意見の隔たりが大きく失敗。その後6年間かけて各国の温暖化対策の機運を徐々に高めていき、ようやくパリ協定の採択に至った。 *5-3:http://www.jiji.com/jc/article?k=2016080400011&g=pol (時事ドットコム 2016.8.4) 原発抜きでは「極めて困難」=温室ガス削減目標達成-山本環境相 山本公一環境相は3日の就任記者会見で、地球温暖化対策を進める上での電源構成(ベストミックス)について「原子力発電抜きで、2030年までに(13年比で)温室効果ガスを26%削減する目標を達成するのは極めて困難」と述べ、原発の再稼働などを進める政府方針を堅持する考えを示した。環境相はまた、大量の温室ガス排出を伴う石炭火力発電の新設計画の条件付き容認方針も基本的に踏襲する意向も表明。一方で「(環境影響評価法に基づき)石炭火力への抑制的な思いをにじませたい」とも述べた。政府は30年のベストミックスとして、原発の比率を20~22%、石炭火力を26%、再生可能エネルギー22~24%とすることを決めている。 *5-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12509511.html (朝日新聞 2016年8月13日) 「原発必要」揺らぐ根拠 電力大手、需給に余力・業績も回復 伊方再稼働 四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)が再稼働した。電力業界は需給や経営を安定させるのに「原発は欠かせない」として、審査中の原発の再稼働を進める方針だ。だが、原発事故を受けて企業や家庭の節電が進んだ結果、エアコン利用が増える猛暑でも夏の電力は安定。原油安で業績は改善しており、再稼働の根拠は逆に揺らいでいる。2011年3月の東京電力福島第一原発事故をきっかけに、大手に対する電力需要は減っている。節電が定着したことに加え、新電力への切り替えが進んだためだ。15年度の需要は5年前より約13%減。ピーク時でも電気を十分に供給できることから、政府はこの夏、震災後で初めて「節電要請」を見送った。四電は、伊方3号機の再稼働で、原発1基分にあたる98万キロワットが余る計算になり、首都圏や関西圏向けに電気を売る方針だ。1年前に川内原発(鹿児島県)が再稼働した九州電力は「余る電力を売ることが必要」(幹部)と、自粛していたオール電化の営業を7月から再開した。「再稼働しないと電力不足になる」状況にはない。業績も回復している。事故後、原発の代わりに動かす火力の燃料費が増え、原発頼みだった各社の業績は悪化した。だが、原発を持つ9社の16年3月期決算は、震災後初めて全社が経常黒字になった。WTI原油の先物価格は11年以降、1バレル=80~100ドル台で推移したが、今年2月には一時20ドル台に下落した。原油安の影響で火力の燃料費負担が減り「燃料価格の安さなど外部環境がプラスに働いた」(瓜生道明・九電社長)。それでも「収益力の本格回復には至っていない」として、玄海3、4号機(佐賀県)の再稼働を急ぐ考えだ。初期投資の大きい原発は長く使うほど利益が出るため、今ある原発は早く再稼働させたい。電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は7月の記者会見で「需給と電力の事業収支の面で厳しい状況が続いている。早期の再稼働に向かって進めていく」と改めて強調した。 ■かさむ事故対策費 経産省は昨年5月、30年時点の原発の発電コストは1キロワット時あたり10・3円以上と試算し、太陽光や火力など他の電源と比べて「最安」と位置づけた。ところが、政府は今年4月からの「電力自由化」で競争が激しくなり、原発を持つ大手の経営環境は厳しくなると見て、原発事業を維持する制度づくりを進める。例えば、使用済み核燃料の再処理事業では、電力が撤退や破綻(はたん)することも想定し、国の関与を強めた。原発事故時の損害賠償制度をめぐっては、電力側の責任の範囲を小さくすることも含めて議論を始めた。こうした見直しに国の有識者会議の委員からは「原発コストは安いという試算があるのに、なぜ自由化で『原発はやっていけない』という議論が出るのか」と、矛盾を指摘する意見も出た。実際、事故対応のコストは当初の想定より膨らんでいる。被災者への賠償費用(約5・4兆円)や廃炉費用(約2兆円)は、東電の想定を大幅に上回る見通しだ。電力各社が見込む原発の安全対策費も年を追うごとに増えている。原発の実際の発電コストは試算を上回っている可能性が高い。再稼働を進めるにあたっては「原発は安い」との試算を前面に出し、実際には「高コスト」を前提に政府内の議論が進む。都留文科大の高橋洋(ひろし)教授(エネルギー政策)は「すでに電気は十分に足りているし、コストが安いという神話は崩壊している。政府は、原発が安くないことを認めたうえで、それでも推進する根拠を説明する必要がある」と指摘する。 <再生可能エネ> *6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/337842 (佐賀新聞 2016年7月26日) 国内最大の潮流発電設置、長崎、五島列島沖で実証実験 九州電力の子会社で再生可能エネルギー事業を手掛ける九電みらいエナジー(福岡市)は26日、長崎県・五島列島沖で潮の流れを利用した発電の実証実験を始めると発表した。新日鉄住金エンジニアリング(東京)などと共同で実施。出力は2千キロワットを想定しており、潮流発電としては国内で最大規模になる。本年度から準備を進め、2019年度の運転を目指す。潮流発電は再生エネの中でも天候に左右される太陽光や風力と違い、年間を通じて安定した発電ができるとされ、政府も導入に力を入れている。実験は環境省の委託事業として選ばれ、総事業費は本年度からの4年間で30億円以上を見込む。 *6-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37920 (日本農業新聞 2016/6/17) 再生エネルギー 収益で地域活性化 災害時 農村の電源に 地域ぐるみで再生可能エネルギー発電を行い、大規模な災害に備えて蓄電する取り組みが、農山村で広がっている。固定価格買取制度による売電収入で地域活動の財源が見込めるだけでなく、停電した場合の一定期間、非常用電源にも活用できる。自然災害で集落が孤立した場合などへの備えになり、「農家の経営安定と地域の災害時の安全保障につながる」と効果を実感する声が上がる。兵庫県朝来市の10集落の住民でつくる「与布土地域自治協議会」は、児童数の減少で閉校になった小学校体育館の屋上に太陽光パネルを設置し、昨年3月から固定価格買取制度を利用して売電を始めた。パネルと同時に蓄電池も設置。体育館は災害時に地域の避難所となり、その場合に使える非常用電源を確保した格好だ。山に囲まれた与布土地域。閉校を契機に、協議会では過疎高齢化が進む地域の存続問題について話し合いを重ね、再エネ発電に挑戦した。太陽光パネルと蓄電池設置の総費用は2200万円。うち蓄電池は500万円程度で、体育館の数日間の電源が確保できる見通しだ。県の助成500万円を活用し、残りの1700万円は無利子融資を受けた。年間180万円の売電収入のうち、年間50万円は協議会の活動費に充てる。同協議会の西山俊介さん(73)は「地域活性化のために自由に使える活動費は貴重。自然災害が発生しライフラインが途絶えた時に、自分たちの生活を地域で守ることもできる」と笑顔だ。兵庫県では再エネを活用した非常用電源を整備した集落を「エネルギー自立のむら」と認定し、補助や無利子貸し付けを行う。現在、県内の中山間地域などで12集落を認定。同県は「エネルギーの地産地消により災害時の自給自足が実現できる」(水エネルギー対策課)と説明する。地元農家や地域づくり団体などでつくる福島県いわき市の「いわきおてんとSUN企業組合」も太陽光発電と蓄電に取り組む。売電する他、蓄電池を整備することで災害時の電源対応ができる。島村守彦事務局長は「再エネは、売電による経済効果も大きいが、自分たちでエネルギーを作って自分たちで使い、いざという時の生活を守ることができる」と感じる。熊本県南阿蘇村の「里山エナジー」は、農家が再エネに参入する支援をする。代表者の農家、大津愛梨さん(41)の家では、再エネ発電をしていたことから熊本地震の本震が発生した4月16日もすぐに電気が使えた。大津さんは「再エネの力は災害時に改めて証明された」と強調。地域の資源を生かした発電について「農村は食べ物もエネルギーも作れることを示し、農業の経営安定にも災害時の安全保障にもつながる」と指摘する。 *6-3:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO05236320V20C16A7L72000/ (日経新聞 2016/7/26) 下水汚泥発電の準備着手・県、桶川で19年に開始 埼玉県は25日、下水処理施設で下水汚泥から発生するメタンガスなどを使った発電事業の準備に着手したと発表した。元荒川水循環センター(桶川市)に設備を設け、2019年4月に発電を開始する。県は事業者へのガスの売却代や土地の賃貸料で年間6000万円の収入が見込め、汚泥の減量化にもつながるという。事業者は公募型プロポーザル方式で大原鉄工所(新潟県長岡市)の東京支店(東京・文京)を選定。県は同センターに汚泥消化槽を建設し、年間に発生するメタンガスを主成分とする消化ガスのうち6割に相当する146万立方メートルを同社に売る。同社は同センター内に発電機を設置し、1キロワット時あたり39円(税抜き)で20年間、電力会社に売電する。年間発電量は270万キロワット時で、一般家庭500世帯分に相当するという。国が定めた再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を活用する。ガスの残り4割は汚泥焼却炉の燃料として活用。県は汚泥消化槽の建設や焼却炉の改造などに約40億円を投じる。同センターは熊谷、行田、鴻巣、桶川、北本の5市の33万人分の下水を処理している。県は中川水循環センター(三郷市)でも発電事業を予定している。 PS(2016/8/17追加):*7-1のように、7月の鹿児島県知事選では三反園氏が当選し、川内原発の一時停止を要請しているため、停止後は再稼働しない可能性も出てきた。しかし、愛媛県は2014年11月に2度目の当選を果たした中村氏が、四国電の再稼働に関し、「安全確保を最優先に慎重に取り組んでいただきたい」と述べただけだったため、愛媛県の伊方原発は、*7-2のように、司法で止めるか、知事を換えて止めるかしかなさそうだ。 *7-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/342354 (佐賀新聞 2016年8月8日) 地震で原発立地知事に差 ■川内原発 一時停止の要請を表明 ■伊方原発 再稼働に追加策求めず 連続して震度7を記録し大きな被害が出た4月の熊本地震を巡り、原発を抱える周辺自治体首長の対応に差が目立っている。鹿児島県の三反園訓知事が九州電力川内原発(同県薩摩川内市)の一時停止を求める意向を示す中、12日にも再稼働する四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働に同意した同県の中村時広知事に特段の動きは見られない。市民団体は「熊本地震を受け安全対策を再検証すべきだ」と批判している。 ▼対決姿勢 7月に初当選した三反園氏は、熊本地震の影響を調べるため、稼働中の川内1、2号機の一時停止を九電に要請することを表明。「地震後に安全性は確認した」とする九電との対決姿勢を鮮明にしている。一方、伊方3号機の近くには長大な中央構造線断層帯が通っており、熊本地震をきっかけに活発化することを危ぶんだ住民らは松山地裁や大分地裁に運転差し止めを求める仮処分を申し立てた。一部の市民団体は、再稼働同意を撤回するよう中村氏に要請した。だが、原子力規制委員会は「審査で十分検討した」との立場で、中村氏もこれをほぼ踏襲する形で、再稼働までに四国電や国に追加の安全対策を要求しない考えを示してきた。 ▼影潜める 中村氏は昨年10月の再稼働同意に際し、国の基準以上に施設を耐震化するよう四国電に求めるなどの県独自の安全対策を取るとともに「過酷事故が起きたときの国の責任が曖昧」と繰り返し批判。“物言う知事”としての存在感をアピールしたが、熊本地震後は影を潜めたようにも見える。今年7月下旬の定例会見。中村氏は県の取り組みを改めて紹介した上で「立地条件などが違い、鹿児島県と同じ土俵で(対応を)比較できない」と理解を求めた。今月5日、四国電が再稼働の日を12日と発表した際も、中村氏は「安全確保を最優先に、慎重に取り組んでいただきたい」などとコメントを出しただけだった。 *7-2:http://www.oita-press.co.jp/1010000000/2016/08/16/000804532 (大分合同新聞 2016/8/16) 対岸の原発 伊方再稼働㊦ ― 「一私企業の経営安定のために、どうして多数の住民がリスクを負わなければならないのか」(井戸謙一 1954年生まれ。大阪府出身。東京大学教育学部卒。75年司法試験合格。金沢地裁、京都地裁で民事部の裁判長を務めた。2011年3月に退官し、現在は弁護士。滋賀県彦根市在住) 関西電力高浜原発3、4号機(福井県)に隣接する滋賀県の住民の申し立てを認め、運転を差し止めた3月の大津地裁決定は、重大事故が起きた場合に放射能被害が及ぶ可能性のある周辺自治体の住民を勇気づけた。滋賀住民の弁護団長を務め、四国電力伊方原発(愛媛県)の運転禁止を求める「大分裁判」の弁護団にも加わった井戸謙一弁護士(滋賀弁護士会)に、大津決定の意義などを聞いた。 ●大津決定の意義は。 現実に動いている原発を、隣接県の住民の申し立てで隣接県の裁判所が止めたことだ。(立地県でない住民の主張を認めたのは)東京電力福島第1原発事故の被害が広範に広がったことの裏返しだ。 ●追随する司法判断は出るか。 これまで裁判所は、電力会社側に原発が安全基準に適合していることを、原告側には原発の危険性の立証を求め、原告側のハードルが高かった。大津決定は従来の枠組みを踏襲しながらも、関電に対し「福島事故後の規制がどう強化され、関電がどう応えたか」の立証責任を強く求めた。(他の裁判所が)同調しやすい判断枠組みだ。 ●決定は政府が「世界最高水準」と自負する新規制基準を不十分と指摘した。 国際基準である国際原子力機関(IAEA)の「深層防護」の考え方を取り入れなければならないのに、新基準は避難計画を審査の対象としていない。それだけで原子力基本法、原子力規制委員会設置法に違反する。「世界一厳しい」というのは大うそだ。 ●井戸さんは元裁判官で、金沢地裁の裁判長だった2006年に北陸電力志(し)賀(か)原発の差し止め判決を言い渡した。 もともとは原発廃止論者ではなかった。原発なしでは日本のエネルギーが立ち行かないと思っていた。しかし、審理の中で、北陸電力がコスト削減のためにあえて不利な部分に目をつぶっていると感じた。原発自体は反対しないが、やるなら安全性を高めて、との思いを込めた。「3・11」直後も原発をすぐゼロにとは言えなかった。だが、2年間、原発が1基も動かず、日本社会には原発がいらないことが分かった。今夏は節電要請もしていない。一私企業の利益のために周辺住民がリスクを負う理由はない。 ●伊方原発をどう見る。 最も大きいのは耐震性の問題。中央構造線が動いたときの地震の加速度予測は、四国電の計算にごまかしがあるとしか思えない。合理的な避難計画もできず、立地不適だ。 ●「大分裁判」の弁護団に参加した。 大分、松山、広島と3地裁に伊方原発差し止めの仮処分が申し立てられている。最低でも一つ勝ち、何としても止めたい。鹿児島県では九州電力川内原発の一時停止を掲げた知事が当選した。川内は政治で、伊方は司法で止めることができる。もう時代は変わった。動き始めた原発を一つ一つ止めていき、原発ゼロを実現したい。 PS(2016年8月18日追加):朝日新聞編集委員の上田氏が伊方原発近くの集落生まれだそうで、*8に、「『なんか声をあげんといかん』。道は、その先に開かれる」と書いておられるが、役に立つ有力な地元出身者だろう。そして、その先の道は、原発がなければ瀬戸内海は釣り堀のように魚が多くて美しい内海にでき、豊予海峡は海峡幅が約14kmで流れが速いため関アジ・関サバのような筋肉質の高級魚が獲れる上、潮流発電の適地にもなりうる。従って、その先は栽培漁業を含む漁業や九州・四国間海底トンネルをつくって四国・瀬戸内海をめぐる観光拠点にするなど、いろいろな可能性が考えられる。 *8:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12516729.html (朝日新聞 2016年8月18日) ザ・コラム 伊方原発再稼働 声をあげる、その先に (編集委員 上田俊英) 朝のうちから夏の日差しが照りつけていた。11日、愛媛県伊方町。穏やかな瀬戸内の海が眼前に広がる四国電力伊方原発のゲート前に、斉間淳子さん(72)はいた。3号機の再稼働反対を訴えるためだ。伊方の隣の八幡浜市で生まれ育ち、夫で地域紙を発行する満さん(2006年死去)と原発反対運動を続けてきた。兄が四電にいて運動と距離を置いた時期もあったが、1981年に伊方沖で魚の大量死が発生。県の調査グループは放射能の影響を否定したものの、淳子さんは恐怖を感じた。「海に浮いている魚を見て、わが子のように思ったんよ。どこかで必ず事故が起こる。そうなったら、子どもや孫が帰るところがなくなってしまう」。11年3月11日、不安は福島で現実になる。東京電力福島第一原発事故からほどなく、淳子さんは東日本大震災の「月命日」の毎月11日に、ゲート前で座り込むようになった。「反対の声をあげんといかん。そうすれば四電もむちゃくちゃを、ようせんようになる」という思いからだ。最初の座り込みは、みずからが88年につくった「八幡浜・原発から子どもを守る女の会」のメンバーと2人。それが3号機の再稼働を翌日に控えたこの日、全国から集まった人たちは80人ほどはいただろう。その輪の中で淳子さんは訴えた。「子どもの命を、だれが守ってくれるんですか」 ◇ 伊方で原発の建設計画が表面化したのは69年。激しい反対運動のなか、8年後の77年に最初の1号機が運転を始める。そして94年までに3基の原発が並んだ。淳子さんの夫の満さんは新聞記者として、当初から取材にあたった。満さんは著書「原発の来た町/原発はこうして建てられた/伊方原発の30年」に記す。「原発は決して伊方を豊かにはしなかった。道路や建物は立派になったが、人々の心は傷つき、人間の信頼は失われた」。それは、まさにいまの福島の被災地の姿だ。第一原発周辺の広大な避難指示区域。人々は分断され、心は傷ついたままだ。伊方の反対運動は73年、原発の安全性を争う日本で最初の裁判へ発展する。住民が1号機について国の設置許可の取り消しを求めて最高裁まで争い、92年に敗訴が確定した。しかし、この裁判は、反対運動に、いまにつながる道を切り開いていた。伊方の最高裁判決は次のように述べた。原発の設置許可の判断に不合理な点があるという主張や立証の責任は「本来、原告(住民)が負うべき」だが、原発の安全審査に関する資料をすべて国側が持っている点などを考えると、国側に「判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する責任があり」、それを尽くさなければ「判断に不合理な点があることが事実上推認される」。関西電力高浜原発3、4号機(福井県)をめぐり滋賀県の住民が大津地裁に再稼働の差し止めの仮処分を求めた裁判で、地裁が今年3月に出した運転停止の決定も、この最高裁判決を引用した。被告が電力会社の場合も原発の安全を立証する責任は電力会社側にあり、関電がそれを尽くしていないなどとして、住民の申し立てを認めた。伊方3号機は12日、予定通りに再稼働した。反対する住民は広島、松山、大分の3地裁にそれぞれ運転停止の仮処分を申請。いま、司法の力での運転停止を目指す。 ◇ 伊方原発は愛媛の西に針のように突き出た佐田岬半島のつけ根にある。事故の際、避難の「命綱」となる幹線道は、半島を貫く国道197号と、そこから分かれて瀬戸内海沿いを通る378号だけである。原発を離れて378号を東に向かうと、ほどなく私が生まれた集落に着く。人口450余。避難路はこの国道1本だ。道は片側が海、反対側は崖。かつては幅が狭く、ガードレールもまばらで「酷道(こくどう)」と呼ばれた。集落の2キロほど東には60年前に路線バスが海に転落し、9人が亡くなったことを伝える「慰霊碑」も立つ。集落で知人を見かけた。「事故があったらどう逃げる」と尋ねたら、「みんな、あきらめとる」。現実かもしれないが、それでは困るので、言った。「なんか声をあげんといかん」。道は、その先に開かれる。 PS(2016年8月19日追加):*9-1のように、鹿児島県の三反園知事は九電川内原発周辺を視察し、「道路・避難訓練など、事故時の避難計画を含めて見直す必要がある」と述べている。これにより、道路整備のために原発が必要だということにならないことを望みたい。一方、電力供給については、*9-2のように、北九州市や地場企業が出資する地域エネルギー会社「北九州パワー」が、供給可能なすべての市施設への電力供給を達成し、供給先を民間企業にも拡大する方針を決めた。また、*9-3のように、九電管内の揚水発電所は太陽光発電接続量が約600万キロワット(原発6基分)に達し、日中に水をくみ上げる日が増加して揚水発電所が太陽光発電の余剰電力を調整する「蓄電池」の役割を果たしているそうだ。さらに、北九州市は、*9-4のように、響灘沖の洋上風力発電に向けて事業者の公募を開始しており、*9-5のように、地中熱の利用で省エネ・創エネもできるため、強烈な公害を伴う原発は、既に過去のエネルギーとなっている。 *9-1より *9-3より 2016.8.18 北九州市響灘 東京新聞 風力発電ゾーン *9-1:http://qbiz.jp/article/92651/1/ (西日本新聞 2016年8月19日) 九州の原発:事故時の「避難計画を見直す」 鹿児島知事が明言、川内原発周辺視察で 鹿児島県の三反園訓知事は19日、九州電力川内原発(薩摩川内市)周辺を視察した。前知事時代に作成された原発事故時の避難計画が適切かどうかを判断するため、避難道路の状況を確認。住民からも意見を聞き「道路や避難訓練の問題など、早急に対応が必要なことが分かった。避難計画を含めて見直す必要がある」と述べた。記者団の質問に答えた。今回の視察は、7月の知事選で川内原発の一時停止を公約として掲げて当選した三反園知事にとっては、実現に向けた初めての具体的な行動。三反園知事はこの日、薩摩川内市や原発30キロ圏内のいちき串木野市を視察した。 *9-2:http://qbiz.jp/article/92556/1/ (西日本新聞 2016年8月18日) 「北九州パワー」が中小企業に売電 来年1月から 北九州市は17日、市や地場企業が出資する地域エネルギー会社「北九州パワー」(戸畑区)が2017年1月から市内の事務系中小企業への売電を始めることを市議会環境建設委員会に報告した。18年1月をめどに工場系の中小企業にも売電を始める。企業側は電気料金の削減が期待できるという。同社は4月から市内2カ所のごみ焼却施設で発電する電力を買い取り、市施設の約3割に当たる122施設に他の事業者より安く売電。残りは売っても採算割れする施設などで、同社は「供給可能なすべての市施設への電力供給を達成した」と判断し、1日の取締役会で供給先を民間企業に拡大する方針を決めた。同社は昨年12月に設立。4〜6月の売上高は約1億9600万円で営業利益は約1600万円。購入した122施設では3カ月間で計1111万円の電気料金削減効果があったという。 *9-3:http://qbiz.jp/article/92610/1/ (西日本新聞 2016年8月19日) 電力新時代:揚水発電所「昼夜逆転」 余剰太陽光の受け皿に 九州電力管内で、くみ上げた水を使って発電する「揚水発電所」の役割が変化している。従来は夜間に原子力や火力などの電力を使って貯水し、需要が増える時間帯に発電していたが、近年は日中に水をくみ上げる日数が増加。太陽光設備の余剰発電量を調整する「蓄電池」の役割を果たしている。揚水発電所は、電気を使って低所ダムの水を高所ダムに移し、必要に応じて水車を回して発電する仕組み。九電は天山(佐賀県唐津市、出力60万キロワット)、大平(熊本県八代市、出力50万キロワット)、小丸川(宮崎県木城町、出力120万キロワット)の3発電所を持つ。離島を除く九州の太陽光発電の接続量は、国の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度が始まった2012年以降に急増。今年6月末現在の接続量は615万キロワットで、11年度末の約8・3倍に増えた。このため、春や秋の需要が少ない時期には、日中の発電量が想定を上回る状況が発生。供給過多だと停電の恐れもあることから、九電は需給調整のため揚水発電所を活用している。水をくみ上げた延べ日数の合計を昼夜別にみると、11年度以降、昼間の稼働は年々増加。15年度には昼夜が逆転した。九電によると、昼間のくみ上げ日数は、15年度の3倍程度まで増やせる余地がある。現在も増加を続ける太陽光発電の受け皿として、重要性がさらに高まりそうだ。 *9-4:http://qbiz.jp/article/92596/1/ (西日本新聞 2016年8月19日) 北九州市、事業者の公募開始 響灘沖の洋上風力発電 北九州市若松区沖での洋上風力産業集積を目指す北九州市は19日から、響灘の港湾区域2700ヘクタールに発電施設を設置・運営する事業者の公募を始める。市は投資金額1千億〜1500億円、関連産業を合わせて将来的に千人超の雇用を見込む。公募は10月18日まで。外部の有識者からなる「評価・選定委員会」の意見を参考に市が事業者を選び、来年1月ごろに結果を公表する。事業者は環境アセスメントを経て2021年度以降に発電を始める予定。評価項目には、風力発電産業の総合拠点化に向けた産業集積、拠点形成に役立つ具体的提案も含まれている。市港湾空港局は「洋上風力の風車には2万点程度の部品が必要とされ、裾野が広い産業。単に発電所を設置するだけでなく、北九州市をけん引する新たな産業集積を図りたい」としている。 *9-5:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/346157 (佐賀新聞 2016年8月19日) 「地中熱の利用促進を」九州研究会、最新事例など発表 再生可能エネルギーとして注目されている地中熱を研究している「九州地中熱利用促進研究会」(野田豊秋会長、8社)の結成1年を記念した講演会が佐賀市であり、地中熱を導入したモデルルームの事例などが報告された。地中熱は浅い地盤にある低温の熱エネルギーで、地上の外気温と地中の温度差を利用して冷暖房に役立てる。地盤改良機製造のワイビーエム(唐津市)は、地中熱の利用により夏期の電力消費を50%以上削減できたという。講演会では、研究会が建設した小城市のモデルルームでの実験結果を報告。太陽光発電と地中熱を利用することで、外気がマイナス3度でも20度以上の室温を実現した事例が示された。同社の大久保博晃主査は「海外からの視察もあり、地中熱が次世代のエネルギーの主役になる可能性がある」と力を込めた。講演会には約50人が参加。佐賀大の宮良明男教授が地中熱利用技術の最新研究を発表した。 PS(2016年8月20日追加):東電福島第一原発事故による避難区域のうち、放射線量が年間50ミリシーベルト超の帰還困難区域を、どうすれば年間1ミリシーベルト以下の居住可能区域にできるのか不明であり、際限なく国家予算をつぎ込めば年間1ミリシーベルト以下の居住可能区域になるわけでもない。そのような中、最終的には数兆円にもなる可能性のある除染を国費で負担しつつ、原発のコストは安いと強弁し、社会保障は消費税率を上げなければ財源がないなどとして、特定の省庁のメンツや趣味のために国民の生命・財産・生活をないがしろにするのは程がある。 *10:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201608/CK2016082002000130.html (東京新聞 2016年8月20日) 帰還困難区域の除染に国費 事実上の東電救済策 東京電力福島第一原発事故に伴う避難区域のうち、最も放射線量が高く、立ち入りが制限されている福島県の「帰還困難区域」の除染について、政府が国費を投入する方針を固めたことが政府関係者への取材で分かった。帰還困難区域では本格的な除染作業は行われておらず、方針が決まるのは初めて。政府は区域内に、五年後をめどに避難指示の解除を目指す「復興拠点」を設ける方針で、この拠点や関連するインフラの整備を公共事業として行うことで、通常の除染作業と同様、線量を下げる。洗浄や表土はぎ取りといった従来の除染は、東電が費用を負担する仕組み。国費の投入は「国が前面に出る姿勢のアピール」(政府関係者)で、帰還困難区域の除染がスムーズに進むとの期待がある一方、東電の事実上の救済に当たるため、反発も出そうだ。政府関係者によると、復興拠点の整備事業として、対象地域内の建物の解体・撤去や土壌の入れ替え、道路の基礎整備・舗装などを実施することで、除染と同様に大幅な線量低下が見込めるという。インフラ整備と一体化して行うことにより、除染が迅速化すると同時に、東電の負担軽減につながる。こうした除染費用の方針について、政府は近く与党の提言を受け、今月末にも正式決定する。拠点外の除染については、整備の進展に応じて今後、検討する。一方、既存の利用可能な設備やインフラなどの除染費用は、政府が従来通り、東電に請求する。政府は二〇一三年、東電が負担する除染費用を二・五兆円と試算したが、範囲の拡大や経費の高騰などで大幅に超過する見込みで、本年度当初予算までに二・九兆円が計上されている。帰還困難区域を含めると最終的には数兆円程度に増える可能性もあり、このうち、国費で負担する復興拠点の除染費用は見通しが立っていない。 <帰還困難区域> 東京電力福島第一原発事故による避難区域のうち、放射線量が年間50ミリシーベルトを超え、原則立ち入り制限がされている区域。第一原発のある大熊町、双葉町をはじめ、浪江町、富岡町、飯舘村、葛尾村、南相馬市のそれぞれ一部が対象で、事故前の区域内人口は約2万4000人、面積は約337平方キロ。 PS(2016年8月21日追加):送電網がなくても電気を使えるのが太陽光発電などによる自家発電だ。パナソニックは、*11-1のように、「①ブランドイメージは最初に手にする商品で創られる」「②日本製は機能や品質は高いが価格も高いと言われてきた」としているが、最近の日本製は、他国製と比較して機能差より価格差が大きすぎ、これがブランドイメージになっている。ではどうすればよいかと言えば、生産を現地化してインドでよく教育された優秀な技術者やインド商人として有名なインド人営業マンを使って、市場のニーズに合う製品を作って販売することだ。これは、グローバリズムの中のローカリズムと言われ、現地に雇用を生み出して購入資金を提供するとともに、会社としてのパナソニックのファンを増やし、市場がインド人の視野の内にあるユーラシア大陸に広がるという効果を持たらす。これは、左ハンドルの大型アメ車を輸入して日本で売ろうとしても売れないのと同じグローバル化の原則だ。 さらに、アフリカもインドと同様に太陽光発電の適地である上、これから生産適地にもなるため、現地で生産・販売することを視野にビジネスを行った方が、地域を豊かにして販売も進むと考えられる。 このような中、*11-2のように、経済同友会副代表幹事「原発の運転延長をしないと原子力比率20%は達成しえない」と述べたり、*11-3のように、内閣府原子力委員会が原子力白書を復活して原発回帰したりしていれば、せっかく日本で発明された太陽光発電の普及や生産が妨害され、10年後にはインドよりも、15年後にはアフリカよりも遅れて、またバスに乗り遅れまいと必死で追い駆け、(逆転できたとしても)逆転できたことを喜ばなければならない立場になっているだろう。何故なら、生産技術は販売され生産する場所で改良され定着するものだからだ。 *11-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJ8D64VXJ8DULZU00F.html?ref=nmail (朝日新聞 2016年8月21日) 日本品質を途上国価格で 「エネルギーのはしご」見据え 南アジアやアフリカの送電網がほとんど整備されていない地域で、電気のある暮らしが急速に広がっている。かぎを握るのは、太陽光パネルを使った簡素な機器と、低所得者層の実情にあった販売手法の組み合わせだ。貧困問題の解決はビジネスチャンスにもつながる。日本企業も本腰を入れ始めた。レンガ造りの家の中で、子どもたちが本を読んでいた。インド・ニューデリーの東約200キロにあるゴート村。明かりは、小さな太陽光パネルとリチウムイオン電池、LED照明を組み合わせたソーラーランタンだ。「ケロシン(灯油)の明かりは、暗くて煙で目が痛かった。これで夜も勉強できるようになった」。大学生のポージャ・チャンドラさん(18)と中学生のアカシュ君(12)のきょうだいは口をそろえた。家の外では母親のマヤさん(45)がもう1台で夕食の準備をしていた。送電線はあるが、電気がつくのは日に2~3時間。昨年末に2台買ってから、市場で野菜などを売って暮らす一家の生活は明らかに上向いた。夜も商売ができるようになり、収入が2割増えたという。約900世帯の集落では、ランタンの明かりの下で店を開いたり、工芸品を加工したりする人たちも目につく。この村で一番売れているのはパナソニック製だ。機能を絞って、価格を1500~2500円に抑えた。インド全体ではこれまでに約5万台売れた。ソーラーランタンはインドで年間約300万台が売れている。大半は欧米のベンチャー企業製。日本製はこれまで「機能や品質は高いが価格も高い」と敬遠され、もっぱら社会貢献として寄贈されてきた。そこにあえて参入したのが、パナソニック・インド事業開発センターの柿本敦さん(39)たちだ。電気が使えると、教育や健康も改善され、貧困から抜け出す足がかりになる。自然エネルギーの電気なら地球温暖化防止にも役立つ。安くて信頼できるエネルギーへのアクセスは、国連が2030年までに解決をめざす「持続可能な開発目標(SDGs)」の重要なテーマでもある。寄贈や援助でなく、ビジネスを通じて社会課題を解決するのが世界の流れだ。パナソニックは14年11月、価格をこれまでの半分以下に抑えた低所得者層向け製品を発売した。販売面では現地の社会的企業と連携し、「なぜ健康や家計にプラスなのか」という啓発や代金回収、アフターサービスの窓口などを委託した。もうけは薄い。ただ、インドの無電化人口は2億4千万人もいる。潜在的な市場は巨大だ。電気のない生活から、安定した電気が使える生活へと発展していく道筋は「エネルギーのはしご」と呼ばれる。ソーラーランタンは「はしご」の1段目にあたる。柿本さんは、その先を見据える。「ブランドイメージは、最初に手にする商品でつくられる」。パナソニックは家電のラインアップが豊富だ。無電化地域の人たちはこれから「はしご」を登り、家電を増やしていく。目先の利益は難しくても、将来的には大きな利益が見込めるはずだ。「うちも元は二股ソケットで大きくなった。大きな可能性があると思う」。電気のない生活をしている人は世界に約12億人、不安定な電気しか使えない人は約10億人いる。多くは年間3千ドル(約30万円)未満で暮らす低所得者層だ。この人たちが灯油やロウソクなどのエネルギーに使うお金は、年間約270億ドルにのぼる。送電網につなげないソーラーランタンなどの「オフグリッド(独立電源)」の市場は、まだ世界で7億ドルだが、20年には31億ドルに拡大し、約1億世帯に普及するとみられている。 ■南アジアだけでなくアフリカでも 世界には、インドを含む南アジアのほかにもう一つ、広大な無電化地域がある。アフリカだ。人口約1億人とアフリカで2番目に多いエチオピアでは、日本の中小企業連合がエネルギービジネスに挑む。「東京電力の顧客の2倍にあたる1億人に電気を届けましょう」。8月上旬、東京・新宿のスナックに中小企業の社長ら10人が集まって気勢をあげた。町工場の技術を結集した「ソーラー・ホーム・システム(SHS)」が完成したのだ。SHSは「はしご」の2段目にあたる機器。ランタンよりひと回り大きい10~100ワット程度の太陽光パネルを屋根に置いて蓄電池にためる。複数の照明やテレビ、扇風機などを動かせる。きっかけは、LEDや蓄電池製品を製造・販売するアイガジェット(東京都千代田区)の川口辰彦社長(62)が、途上国の低炭素化事業を企画する会社を経営する松尾直樹さん(55)と出会ったことだ。2年前、松尾さんが国内の大企業と開発していたSHSの試作品をたまたま見かけ、川口さんはダメ出しをした。松尾さんが「あなたはできるの」と聞くと、「できますよ」と答えた。製品化を考えたことはなかったが、勝算はあった。太陽光パネルや蓄電池を世界各地から安く調達できる人脈と、核となる制御装置に日本の高い技術を投入できる人脈を両方持っていたからだ。松尾さんとエチオピアを訪ね、社会的な意義も実感した。1年後にできた試作品は、大企業のものよりはるかに能力が高かった。コストもぎりぎりまで抑え、1万円程度で量産できる見込みだ。6~12カ月のローンなら現地の人にも手が届く。年内に1千台のテスト販売を予定している。川口さんを突き動かしたのは「技術ではどこにも負けない」という中小企業の意地と、「短期的な利益は薄くても将来性は十分ある」という確信だ。「日本品質の製品を途上国価格で提供することは十分可能。日本の生きる道はここだと示したい」と川口さん。アフリカの無電化人口は6億3千万人で世界の半分以上を占める。27、28日にケニア・ナイロビで開かれる第6回アフリカ開発会議(TICAD)でもエネルギーアクセスの向上が議論される。 ■コストダウンとマイクロクレジットの広がり 太陽光パネルと蓄電池を組み合わせて電気を自前でまかなう動きは、送電網が整備された先進国にもある。だが、いま世界で先頭を走っているのは途上国の人たちだ。いくつかの無電化地域を歩いて、その勢いを感じた。後押ししているのは、最近6年間で80%も下がった太陽光パネルの急激なコストダウンと、貧困層への無担保少額融資(マイクロクレジット)の広がりだ。実は、SHSが世界で最も普及している国はバングラデシュだ。グラミン銀行の創設者でノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏は、マイクロクレジットの手法で、1996年から販売に取り組んだ。初めは月に2、3セットだったが、いまでは1日に1千セット。通算で160万セットも売れた。他社分も合わせ400万世帯に普及した。SHSは1万~5万円。3年ローンを組めば、毎月の返済は明かりの灯油代とほぼ同じになる。マイクロクレジットは、インドやアフリカでも広がる。最近は各国で携帯電話による決済も可能になっている。お金と時間をかけて発電所や送電網を整備する前に、電気のある暮らしが広がる。電話回線を引く前に携帯電話が普及したのと同じ「カエル跳び」現象だ。自然エネルギーの技術と新しいビジネスモデルが融合し、世界のエネルギーの構図を変えつつある。 *11-2:http://jp.reuters.com/article/asada-nuclear-plant-idJPKCN10213Z?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter (ロイター 2016年7月 22日) インタビュー:電源構成、原発比率10%達成も危うい=同友会副代表幹事 7月22日、経済同友会の朝田照男副代表幹事(丸紅会長)はロイターとのインタビューで、政府が2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス)で20─22%と想定している原子力発電の比率について、現状を踏まえると10%の達成も危ういと指摘した。写真は川内原発、2015年8月撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)[東京 22日 ロイター] - 経済同友会の朝田照男副代表幹事(丸紅(8002.T)会長)はロイターとのインタビューで、政府が2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス)で20─22%と想定している原子力発電の比率について、現状を踏まえると10%の達成も危ういと指摘した。太陽光などの再生可能エネルギー拡大に向けた民間投資を促すよう、政府の積極的な支援を求めた。同友会は6月28日に「ゼロ・エミッション社会」実現への提言を発表。その中で、原子力について、「40年廃炉ルール」を厳格に適用した場合、原発全基が再稼動しても政府目標の達成は難しく、「その発電割合は15%程度になる」との見通しを示している。朝田氏は昨年、同友会の環境・資源エネルギー委員会委員長として同提言のとりまとめにあたった。インタビューの中で、朝田氏は福井県にある関西電力の高浜原子力発電所の1号機と2号機が40年超の運転を認められたことに触れ、「あのような運転延長を入れていかないと、原子力比率20%は達成しえない」と指摘。しかし、原子力規制委員会による新規制基準への適合可能性や司法判断による運転見合わせのリスクなどを考慮すると、「残念ながら、10%も行くかどうかという状況」と述べた。一方、再生エネルギー開発については、日本のエネルギー産業で最大の成長分野でありながら、促進するには「障害が多すぎる」と指摘。具体的には、地熱、水力、風力発電に長期の環境アセスメントが必要になるという実態のほか、最大の問題として送電線の不備を挙げた。朝田氏は、再生エネルギーを推進しなければ、「日本が世界の笑いものになってしまうという危機感を持っている」としたうえで、民間企業による投資への促進措置や送電線整備への政府や政府系ファンドからの資金支援を強く求めた。 *11-3:http://mainichi.jp/articles/20160725/k00/00m/040/102000c (毎日新聞 2016年7月25日) 原子力白書、7年ぶり復活 「原発回帰」の伏線か 内閣府原子力委員会(岡芳明委員長)は、東京電力福島第1原発事故以来、発表を中止していた「原子力白書」を来春に復活することを決めた。2010年以来、7年ぶりとなる。原子力委はかつては「原発推進の司令塔」と位置付けられており、「原発回帰」の伏線との臆測を呼びそうだ。白書は、11年春に10年版が発表される予定だったが、福島事故を受けて急きょ中止され、09年版以降、発表がストップしていた。今年度になって「編集作業に必要な人員を確保できた」(内閣府幹部)として復活を決めた。来春発表される16年版は、事故後の原子力政策の動きや、今後の展望を紹介する内容になりそうだ。原子力委は、国の原子力政策を推進するために56年設置された。78年には旧原子力安全委員会と分離され、福島事故後も業務や体制を縮小されたが、自民党内には「『原発推進のとりで』として復権させるべきだ」といった意見が根強くある。 <アフリカについて> 世界の開発段階別 アフリカ諸国の アフリカ諸国の 世界人口の推移 一人当たりGDP成長率 現在の産出物 人口ピラミッド (飢餓や戦争の原因になる人口爆発も 教育で抑制することができる) PS(2016年8月28日追加):*12-1のように、①安倍首相は、今後3年間で総額300億ドル(約3兆円)規模をアフリカに投資し ②インフラ整備に3年間で約100億ドル(約1兆円)を拠出する方針を表明し ③産業の基礎を支える人材や感染症専門家の育成はじめ約1000万人の人づくりに取り組み ④アジア・アフリカをつなぐ二つの大洋(太平洋、インド洋)を平和なルールの支配する海にし ⑤民主主義、法の支配、市場経済のもとでのアフリカの成長に貢献する考えをTICAD6で示された。このうち②は、決して原発や電柱を建てるのではなく、自然エネルギーによる分散発電を行い、上下水道・ガス管・電線を同時に埋設し、発電できるゴミ処理施設を建設したりするのが最も安上がりで迅速だと考える。その時は、日本の自治体は既にノウハウを持っているので、JICAと組んで熟練した人をアフリカ各地に派遣し、自治体事務を効率化すると同時に定年延長や若い世代の研修を果たせると考える。また、③については、米国は、米国が奨学金を出してアフリカのリーダーとなる人を米国の大学で勉強させるシステムを持っており、これは日本でアジア・アフリカ系の留学生がアパートや下宿探しでさえ苦労させられたのとは対照的で展望の大きさに違いを感じる。そして、それらのインフラ(人材も含む)ができれば廻り出すため、積極的に男女の留学生を受け入れて教育するべきだ。 なお、*12-2のように、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(石油依存からの脱却を目指す経済改革を主導)が日本を訪問し、日中両国に民間投資の拡大を促し、改革「ビジョン2030」への協力を強く求められるそうで、今後は資源の産出国も加工する時代になるため、日本がコストをかけて遠くから原油を運んできて加工し、輸出するというスキームは成り立たなくなることを忘れてはならない。 *12-1:http://mainichi.jp/articles/20160827/dde/001/010/054000c (毎日新聞 2016年8月27日) アフリカに3兆円投資 安倍首相、午後表明 官民・3年で 安倍晋三首相は27日午前(日本時間27日午後)、ケニアの首都ナイロビで開幕する第6回アフリカ開発会議(TICAD6)で基調演説し、今後3年間で民間資金を含めて総額300億ドル(約3兆円)規模でアフリカに投資する方針を表明する。産業の基礎を支える人材や感染症専門家の育成をはじめ約1000万人の人づくりに取り組む考えも打ち出す。首相はアフリカで初めて開催するTICAD6を「日本とアフリカ諸国の関係の新たな幕開け」と位置付け、資源価格の低迷やエボラ出血熱、平和と安定などアフリカが直面する課題をともに解決していく姿勢を強調する。2013年のTICADで、日本は5年間で約3兆2000億円の支援を表明した。今回の300億ドルについて首相は演説で「3年前のプランを充実、発展させる日本の新たな約束」と説明する。インフラ整備には3年間で約100億ドル(約1兆円)を拠出する。首相は、日本とアフリカの経済関係を強化するため「日アフリカ官民経済フォーラム」を常設することにも言及。フォーラムは、日本の閣僚や経済団体、企業のトップが3年に1回、アフリカを訪れ、投資環境改善などを協議する場になる。3年間の人づくりに関しては、将来の職長、工場長など現場指導者を1500人、感染症の専門家らを2万人育成するほか、基礎的保健サービスを受けられる人口を200万人増やす。一方、豊富な資金力でアフリカに進出する中国を念頭に、首相は「日本は太平洋とインド洋、アジアとアフリカの交わりを、力や威圧と無縁で、自由と法の支配、市場経済を重んじる場として育てる責任を担う」と述べ、民主主義、法の支配、市場経済のもとでのアフリカの成長に貢献する考えを示す。 ●安倍晋三首相の基調演説 骨子 ・アフリカの国連安全保障理事会常任理事国入りを支持 ・日アフリカ官民経済フォーラムを設立 ・感染症対策を強化 ・今後3年間で約1000万人の人づくりを実施。官民で総額300億ドル規模を投資 ・アジアとアフリカをつなぐ二つの大洋(太平洋、インド洋)を平和な、ルールの支配する海に *12-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/348056 (佐賀新聞 2016年8月23日) サウジ副皇太子が31日初訪日へ、安倍首相と会談 サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(30)が、就任後初めて31日から日本を訪問し、安倍晋三首相らと会談することが23日分かった。複数の外交筋が明らかにした。ムハンマド副皇太子はサルマン国王の息子で、異例の若さで国防相と国家経済評議会議長を兼務。最高実力者の一人として、石油依存からの脱却を目指す経済改革を主導している。副皇太子は今回、日本と中国を歴訪。日中両国に民間投資の拡大を促す狙いがあり、副皇太子が進める改革「ビジョン2030」への協力を強く求める。日本側は、国家元首級として厚遇する。 PS(2016.8.29追加):*13のうち「世界的な1次産品の価格下落」は、6次産業化によって付加価値を上げれば解決するが、それには人材育成や衛生環境が不可欠だ。また、「地熱や水力発電などのエネルギーインフラや電子通信網の整備」は、九電みらいエナジーなど、アフリカの自然を壊さず活かしながら行える技術を持つ日本企業も多く、貢献できるだろう。 *13:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160829&ng=DGKKASFS28H1Q_Y6A820C1PE8000 (日経新聞 2016.8.29) 「教育・雇用を支援」 アフリカ開発会議ナイロビ宣言 第6回アフリカ開発会議(TICAD)は合意文書「ナイロビ宣言」で、アフリカの経済成長には、社会を安定させ、テロや紛争の抑制につながる若者への教育や雇用での支援が重要だとの方針を打ち出した。安倍晋三首相は全体会合で「日本企業の高い技術力はアフリカの課題解決に資する」と強調した。TICADは27~28日の2日間、日本とアフリカ諸国の首脳らが経済発展のあり方を話し合った。ナイロビ宣言はテロや紛争に加え「世界的な1次産品の価格下落」「エボラ出血熱の流行」をアフリカの新たな課題だと指摘。これに対応するため「質の高いインフラ整備」などを通じた経済の多角化・産業化や人材育成、保健システムの強化が必要だとした。ナイロビ宣言とともにまとめた各国・機関向けの実施計画は、港湾や空港、鉄道、幹線道路などの建設を加速する方針を明記。地熱や水力発電などエネルギーインフラや電子通信網をさらに開発するとした。経済特区の推進も盛り込まれており、政府は日本企業の受注増につなげたい考えだ。首相は28日の共同記者会見で「海で法の支配が尊重されることは、地域の平和と安定、繁栄の基礎になる」と指摘。「日本とアフリカが経済的な関係を深め、貿易を通じて繁栄していくには海が自由で開かれていなければならない。それを担保するのが法の支配だ」と強調した。中国が念頭にあるとみられる。 PS(2016.9.15追加):*14のように、経産省はフクイチの教訓から学ぶことなく、一定規模の原発を維持するために、まだ原発で創った電気が安い(?!)などとして電力自由化で参入した新電力に原発で創った電気を供給させ、同時に原発の廃炉費用の負担も新電力に求めるとしている。しかし、新電力の売りは、①原発や化石燃料で創った環境に悪い電力を使わないこと ②原発や化石燃料による発電をしないため料金を安くできること の2つであるため、この経産省の方針によれば、新電力は差別化できなくなって電力自由化は失敗する。このように、国が「ベースロード電源」などとして一定規模の原発を維持するという原発ありきの市場原理を無視した恣意的な政策をとると、よりよい製品(この場合は電気)を選択していく市場経済を失敗させるのであり、これがまさに共産主義経済の失敗の原因なのである。そのため、経産省のこの経済運営は、既に失敗が証明された共産主義の経済運営と同じであり、このようなことを続けていれば、日本はアフリカよりも遅れるだろう。 *14:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160915&ng=DGKKASFS14H3F_U6A910C1PP8000 (日経新聞 2016.9.15) 原発の電気、公開市場に 経産省検討 大手に義務付け 経済産業省は原子力発電でつくった電気を公開市場に供給するよう電力大手に義務づける検討に入った。4月の小売り自由化で参入した新電力が調達できるようにして、安い電気を家庭や企業に売りやすくする。一方、原発の廃炉費用などの負担を新電力に求める。一定規模の原発を維持するため、大手と新電力の利用者が受益と負担を分け合うしくみを整える。学識経験者らで構成する審議会を近く立ち上げ、来年の通常国会に電気事業法の改正案を出す。数年内の実施をめざす。原子力や石炭火力などコストが低く発電量が天候や時間帯に左右されない「ベースロード」と呼ばれる電気を日本卸電力取引所に供給することを義務づける。いま大手が取引所に出しているのは石油火力などコストの高い電気が中心で、割安な電気は自社の小売部門に優先的に流している。原発で作った安い電気が市場に出回れば、自前の発電所の少ない新電力が大手と価格競争しやすくなる。義務づける電気の供給量は今後詰める。一方、原発の廃炉費用などは新電力にも負担を求める。通常の原発を廃止するには数百億円のコストがかかり、これまでは原発を持つ大手が家庭や企業が支払う電気料金で回収してきた。今後は新電力も支払う送電線利用料に上乗せして回収する。家庭や企業は契約先が大手か新電力かにかかわらず原発のコストを負担することになる。反原発の消費者などからの反発も予想されるため、経産省は慎重に制度設計をする考えだ。 PS(2016年10月20日追加):九州の原発30キロ圏内21自治体を調査したところ、*15-1のように、屋内退避に課題があると答えたのが5割に上るそうだが、万が一にも原発事故が起これば、フクイチの例のとおり、短期間の屋内退避だけではすまず、その後、その地域を棄てるか、莫大な費用をかけて完全に除染するかしなければならない。しかし、現在では、そのようなリスクとコストをかけて原発で発電しなければならない理由はないため、早急に脱原発し、オーストラリアやニュージーランドのように、原発のない国として安全な農水産物を生産し、徹底して「安全な食品」というブランドを高めるべきである。 なお、*15-2のように、原発政策を進めるには、原発建設費・地元補助金を除く関連処理費として、フクイチの事故処理・廃炉・最終処分場建設・核燃サイクルなど最低でもこれまでの処理に総額30兆円かかり、既に国民が14兆円負担しているそうだが、これらは発電時に原発のコストとして電力会社が引き当てていなければならなかったもので、本来、一般国民が負担する理由のないものである。 *15-1:http://qbiz.jp/article/96303/1/ (西日本新聞 2016年10月20日) 屋内退避に「課題」5割 九州の原発30キロ圏21自治体調査 九州電力の玄海原発と川内原発の30キロ圏内にある佐賀、長崎、福岡、鹿児島の4県と17市町のうち、半数に当たる11県市町が、重大事故の発生時に5〜30キロ圏の住民に原則屋内退避を指示する現在の避難計画について、「課題がある」と考えていることが西日本新聞のアンケートで分かった。震度7が2度発生し、家屋倒壊で多くの犠牲者が出た熊本地震を背景に、複合災害への対応を不安視している実態が明らかになった。熊本地震後に避難計画の見直しを着手・検討しているのも12県市町に上った。5キロ圏の住民は屋外、5〜30キロ圏は屋内とする2段階避難について、「十分に対応できる」としたのは佐賀県玄海町のみ。11県市町が「対応できるが、課題もある」と回答し、理由として「パニックが予想され、指示に従わない住民が出る恐れがある」(鹿児島県さつま町)「老朽化している避難施設もある」(佐賀県伊万里市)などを挙げた。「対応できない」と答えた自治体はなかったが、4市町は「分からない」とし、この中で鹿児島県姶良市は「複合災害では避難経路の安全確保などさまざまな問題が発生し、予測できない」と答えた。残り5県市は「状況に応じて柔軟に対応する」「現時点では問題ない」などとした。熊本地震後、避難計画の見直しに着手したのは佐賀県唐津市と長崎県、鹿児島県。9県市町は「検討中」とした。見直しが必要な項目は「避難車両の確保」(9県市町)「避難道路の確保」(8市町)「要支援者のスムーズな避難」(7県市)が多く挙がった。熊本地震では道路が寸断されたが、交通混乱の想定については、複数の避難経路を確保するなどして「想定している」としたのが13県市町、「想定していない」は6市町だった。自治体間の避難連携に基づく広域避難は18県市町が「仕組みが整っている」とし、16県市町は訓練も実施していたが、鹿児島県さつま町と同県長島町は「実際に訓練したことはない」と答えた。「仕組みが整っていない」と回答したのは同県日置市のみで、長崎県と同県壱岐市は「整備中」とした。アンケートは原発事故発生時の避難計画の策定が義務づけられている21県市町を対象に9、10月に実施し、全自治体が回答した。 *15-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201610/CK2016102002000131.html (東京新聞 2016年10月20日) 原発処理に総額30兆円 既に国民負担14兆円 本紙調べ 原発政策を進めるには原発建設費、地元補助金を除き、関連処理費用として東京電力福島第一原発の事故処理、廃炉、最終処分場建設、核燃サイクルに最低でも約三十兆円かかることが本紙の調べで分かった。十九日には、経済産業省が有識者会合の作業部会を開き、規制変更によって廃炉が決まった原発の廃炉費用を電気料金に上乗せする方針を固めた。高速増殖炉もんじゅの行き詰まりなど原発政策の矛盾が拡大する中、政府が国民負担を増やそうとする論議が本格化する。すでに国民は電気料金や税金で十四兆円を負担しており、今後、さらに十六兆円以上の負担を迫られる可能性がある。新潟県や鹿児島県知事選で原発慎重派の候補が当選するなど原発への厳しい民意が強まる中で、政府が国民負担を増やしながら原発を推進するかが問われそうだ。福島第一原発の処理に必要なお金は、二〇一三年時点の見積もりを超過。二・五兆円を見込んでいた除染費が来年度予算の概算要求では三・三兆円に、被災者への賠償金がすでに六・三兆円にのぼっている。廃炉費用の見込み額も二兆円となっており、総額で十二兆円以上かかりそう。東電は自力で払うのは困難とみて政府に支援を求めた。経産省が財界人らとつくった「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」で検討しているが、東電の経営努力で賄えない分は、電気代などを通じ国民に負担を求める方針だ。東電を除く原発の廃炉費用問題では、福島第一原発の事故後、原発の規制基準が変わったため関西電力美浜原発1号機など六基が廃炉を決定。予定より早い廃炉決定などで計三百二十八億円の積み立て不足(一三年三月末時点)が生じている。経産省は原発による電力を販売していない新電力の契約者も含めすべての利用者の電気料金に上乗せし、回収する意向だ。他の原発も合わせると合計二・九兆円(福島第一などを除く)の廃炉費用が必要だ。また、使用済み核燃料をリサイクルする計画の柱だった高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉方針に伴い、経産省は代わりの高速炉を開発する。政府はすでに核燃サイクルに十一兆円(最終処分場を除く)を費やし、電気代や税金で国民が負担している。もんじゅの後継が決まれば、さらに国民負担は膨らみそうだ。核のごみの最終処分場は場所が決まっていないが、政府試算では最低三・七兆円かかる。このうち積み立て済みは国民が支払った電気代をもとにした一兆円だけ。政府は年末にかけ候補地選定作業を急ぐ予定で具体化すればさらに国民負担が増える可能性がある。政府は福島第一原発の処理問題やもんじゅの後継問題でも、年末までに方針を決める意向だ。
| 原発::2015.11~ | 01:52 PM | comments (x) | trackback (x) |
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