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2016.10.9 TPPや農協叩きでは農業の生産性は向上せず、農林水産業の付加価値向上、生産性向上、輸出増には普段からの継続的改善(Continuing improvement)が重要なのである。 (2016年10月10、13、14、15、24、26日、11月1、2日に追加あり)

     TPPの範囲           TPPに関する     交渉参加に関する   TPPによる 
                       政府と野党の主張       決議       生産減少額
     
2015.11.26朝日新聞  2015.11.18日本農業新聞  2016/3/30及び10/11日本農業新聞
   TPP関連施策      攻めと護りに分けた施策     2016年度の農林水産関係予算 

(図表の説明:農業者が海外に販路を広げる方法は多いため、TPPは必要条件ではない。にもかかわらず、国会決議を無視し、農業はじめ日本へのデメリットを過小評価してTPPに驀進するのは問題が大きく、後で後悔しても取り返しがつかない。また、交渉結果とその正確な影響を示して国会で議論されていないため、国民の納得は得られていない。なお、TPP対策として行われる施策は、強い農業を作るためにはTPPとは関係なく必要なものも多く、予算は大きいが無駄遣いになりそうな項目もあるので、全体としてどれだけの予算を農業・TPP対策としてつぎ込み、どれだけの効果があったかの検証が必要だ)

(1)「破壊すれば創造に繋がる」というのは甘すぎる
 *1-1のように、神戸大学の三品教授(専門は経営戦略論)が「破壊を伴う創造行為が産業競争力を左右する」とし、①日本の産業競争力起死回生の鍵は創造的破壊 ②生産現場は強いが大変化には対処できない ③米産業はネットワーク経済で強みを発揮している ④なぜ日本の絶頂期は一瞬で終わってしまったのか ⑤国はもはや産業競争力のけん引役とはなり得ない 等々、書いておられる。

 しかし、①については、常日頃から必要な改革・改善はやり続けなければならず(英語は、Continuing improvement)、それを怠って破壊すれば新しいものが創造されると考えるのは甘すぎ、次に創造するものの形が見えていなければ破壊されただけに終わって創造はできない(ピンチをチャンスに変えることはできない)。また、次に創造するものは、当然のことながら実需で裏付けられていなければ成功しない。そして、国が実需を決めることはできないため、⑤のとおり、日本は、国主導で産業競争力の牽引を行う段階ではないのである。

 また、②については、製造業は国の重点産業とされ、国民の安い賃金と勤勉さに支えられて国際的にも強かったが、重点産業とされなかった産業や公的資金で支えられてきた産業は生産性が低い。しかし、現在では日本国民の賃金は安くなく、高コスト構造も残ったままで、他に賃金の安い多くの国が製造業に参入してきたため、製造業も比較優位ではなくなったのである。さらに、日本の製造現場は優秀だが、狭い範囲の改善はできても経営意思決定を伴う改革はできないので、国民の人口構成や環境変化に伴う需要の変化に合った製品にシフトする大きな改革は、営業を踏まえた経営からしかできない。

 ③は、日本でも経済のネットワーク化は既に進んでおり、そのネットワークは国境を超えているが、ネットワーク化の必要性は個々の経営体で異なり、ネットワーク化を進めさえすればよいわけではない。

 また、④の日本の絶頂期が一瞬で終わってしまった理由は、i)日本は共産主義や朝鮮戦争で市場経済において競争相手なき生産者を担うことができたという千載一遇の幸運の下にあったが、その時代が終わり、それらの国々が安い賃金で競争相手として参入してきたこと ii)日本は幸運の下で工業生産において比較優位の輸出国になっていたが、それを他国と異なる技術力・勤勉さを持っている結果と勘違いして傲慢に振舞い、速やかに環境変化に対応せずに蓄えを費やしたこと iii)そのため低賃金で高い生産性を持つ振興国に太刀打ちできなくなったこと iv)それでも産業構造を変えずに同じスキームを続けようとしていること 等であり、政治・行政・経済学者・経営学者・経営者等のリーダーが問題なのである。

 このような中、*1-2のように、米国では、次期大統領候補がTPPへの反対姿勢を示して発効への道筋が不透明になっているのに、日本政府は妥協を重ねて交渉をまとめた上、TPPの承認を急いで発効への機運を高め、他国の手続きを後押しするとのことである。もともと、TPPの発案者は日本の経産省で、事実に即してよく考えられたスキームではなく、一体化しさえすればグローバル化して輸出入が増えるという安易な思い付きで締結を進めているため、交渉内容や根拠は、開示して議論するに堪えるシロモノではなく、破壊しさえすれば創造できると考えている恐るべき政策なのである。

 そのため、破壊されれば後戻りできない農地を有する農業分野に反対や慎重が多く、与党はTPPで予想されるメリットとデメリット、デメリットに対する対策とその効果を検証して、TPP参加への当否を決めるべきである。なお、*1-2にも、TPPで関税をなくしたり引き下げたりすれば製造業の輸出が活発になるかの如き記載があるが、実際にはTPPにより食品の輸入が増え、食品安全基準における主権を失い、生産コストの高い日本から外国への製造業の製品輸出は増えず、農業で独り負けして食料自給率を減らすだけだと思われる。

 それでも、*1-3-1のように、首相が「TPP協定の承認案と関連法案の早期成立を目指し、他国に先駆けて国会で協定を承認して早期発効に弾みをつけるのが、自由貿易で経済発展を遂げたわが国の使命」などとしているのは、古い発想から抜け出せない経産省(経済界はその下部団体)の言いなりになっているためだが、このように役人(官)を使うどころか使われる人が連続して議員に当選して大臣や首相になっていくのが、日本の民主主義の未熟な点である。

 また、*1-3-2は、「民進党にも隠れ賛成派がいるため、TPP反対に歯切れが悪い」と書いているが、民進党にも経産省系の議員や農業の育成より低価格の農産物という都市部出身の議員や製造業出身の議員はおり、自民党と同様だろう。しかし、本当に国益を護り、日本の将来に悔いを残さないか否かは、正確に日本語に訳された黒塗りでない資料を基に、影響調査や議論を行ってから判断すべきだ。

(2)農水省がTPP対策に3453億円もの補正予算を計上したが・・
 *1-4-1のように、農水省は8月23日、農林水産関係の総額を5739億円とする2016年度第2次補正予算案を自民党の農林関係合同会議に示して了承され、これは、2015年度補正予算を43%上回る大幅増だそうだ。このうちTPP関連対策に2015年度11%増の3453億円、土地改良(農業農村整備)関連事業に同77%増の1752億円を確保したそうだが、TPP対策で総計いくら使って何をし、どういう効果があったのかを、明らかにすべきだ。

 また、*1-4-2のように、9月27日、農林水産省は国内外での農産物の販売促進に充てるために、TPP対策の一環として農家から拠出金を集めるという論点を自民党の会合で示したそうだが、原発の販促は首相まで海外訪問して熱心に取り組み、経産省が製造業の販促をするのは無償であるのに、農水省が農産物の販促のためにTPP対策の一環として農家から拠出金を集めるのはおかしい。

(3)TPPは、日本政府(経産省)の主導だが、ぶっ壊すだけであること
 *2-1のように、TPPの経済効果について、米国は日本への農産物輸出増を約4,000億円と試算し、日本政府は米国以外の影響も含めて日本での生産減少額は1,300億~2,100億円に留まると試算している。品目別では、米国は米の対日輸出額が23%増えるとし、日本は生産減少額は0としており、牛肉も米国は対日輸出が923億円増とし、日本は生産減少額は311億~625億円としているため、日本は影響を過小評価していると言われている。

 農水省は、「A.米国の輸出額が増えても他国産と置き換わる場合もあり、米国の輸出増がそのまま日本の生産減には繋がらない」「B.影響を緩和する国内対策を日本の試算に織り込んでTPP対策の効果が発揮されたという前提で生産量は維持できる」「C.米の場合は米国とオーストラリアに合計7万8400トンの国別輸入枠を設けるが、同量の国産米を備蓄で吸収するなどで影響はない」などが差の理由だとしているが、Aは甘すぎ、Bは対策の効果が不明であるうちに試算に織り込むのはおかしく、Cは一時的に備蓄してもそれが出荷される時が必ずあるのでタイムラグにすぎない。

 そのため、*2-2のように、JA長野県グループは街宣車でTPPの情報公開等を訴える活動を始め、秋の臨時国会での審議に向けて、「国民への丁寧な説明と十分な審議を求めます」「TPPは農業農村、保険医療、食の安全、雇用など、私たちの生活に大きな影響を及ぼす恐れがあります」などのメッセージを流しているが、これは、TPPによってこれまで作り上げてきた農地や農業を打ちのめされる可能性の高い人たちとして当然のことである。

 このような状況の中、*2-3のように、TPPの審議日程が窮屈であるため強行採決の可能性もあるとのことだが、*2-4のように、十分な情報開示もなく、試算は甘く、そのため本当の議論が深まらず、農家も国民も納得していないのである。そのような状況で、TPP発効を見据えた農業“改革”を行うのは、農家にとっても国民にとっても不幸だ。そして、この間、TPPに関わったKey Personは、甘利経済再生担当相(神奈川13区)、斎藤自民党農林部会長(千葉7区、経産省出身)、石原TPP担当相(東京8区)、小泉自民党農林部会長(神奈川11区)など、農業に殆ど関わりのない地域を地元とし、農業に関する知識のない人たちが多いため、この人事で国益を考慮した交渉をしたとは思えない。

 なお、小泉自民党農林部会長が強く求めている全農の株式会社化も、そうしなければならない必然性がないため根拠を説明することはできず、農薬や肥料などの生産資材価格を政治が決めるのは市場主義に反している。そのため、自由競争を促すのがあるべき姿だ。

 そして、佐賀県の場合は、私が国会議員となった2005年からすぐに、公認会計士として多くの日本系・外資系企業の製造業・サービス業を見てきた目で佐賀県の農業を見て改革案を出し、全農はじめ農協が協力して農業改革にとりかかり、すでに必要な改革は進んでいるのだ。そのため、全農の中野会長(佐賀県の農協出身)が言われる「方向に間違いはない」「改革には既に鋭意取り組んでいる」というのは本当であり、農地の大規模化、機械化、米以外への転作などの改革が遅れているのは東北であって、九州では進んでおり地域差があるため、日本全国を一緒にひっくり返せばよいわけではないのである。

(4)全農“改革”の不合理
 全農改革を進捗管理するとして、*3-1のように、資材価格引き下げや農産物の流通構造の改革を議論しているのは、20年以上も時代遅れだ。資材価格は競争の自由度を増せばよく、*3-2、*3-3のように、化学肥料を韓国から買ってコストを下げるだけの発想では、日本の農産物は栄養価も味も悪くなり、農地が荒れることは経験済である。

 それよりも、*3-5のように、今まで捨てていたものを有機肥料として活用すれば、農業だけでなく漁業にも役立ち、その地域や作物に合った堆肥をつくることもできる。ちなみに、佐賀県の場合は、肉牛の排泄物を肥料として使い、化学肥料は土壌を計って足りないものを補充するようにしてコスト削減しており、りっぱな作物ができている。そして、これらは、何も知らない人がめくらめっぽうに壊すのではなく、それなりの知識のある人が工夫し、地域を総動員して初めて行い得るものである。

<愚かな“農業改革”>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160920&ng=DGKKZO07382980X10C16A9KE8000 (日経新聞 2016.9.20) 日本の産業競争力(上)創造的破壊、起死回生の鍵、強い経営で攻勢に転じよ 三品和広 神戸大学教授 (1959年生まれ。ハーバード大企業経済学博士。専門は経営戦略論)
ポイント
○生産現場は強いが大変化には対処できず
○米産業はネットワークの経済で強み発揮
○破壊を伴う創造行為が産業競争力を左右
 産業競争力という概念が脚光を浴びるようになったのは1980年前後のことだ。日本で製造されたテレビや自動車が欧米諸国の市場を席巻し、貿易摩擦を引き起こし始めた時期にほかならない。ハイテクの最先端に位置する半導体メモリーのDRAMの品質で日本製が米国製を上回るというリポートを米ヒューレット・パッカードが公表、衝撃が走ったのも80年のことだ。予想外の展開に遭遇して、欧米諸国が産業競争力の分析に乗り出したのも無理はない。以下では日本の絶頂期と、それに続く衰退のプロセスに関する一つの解釈を述べる。日本の急伸が世界の意表を突いたのは、日本が保護貿易や為替管理と決別してから15年ほどしか経過していなかったからだ。決別当初は、日本の市場は輸入品に制圧され、企業は買収されるという悲観論が渦巻いていた。それが杞憂(きゆう)だったとわかるころには石油ショックが勃発し企業倒産が相次いだことから、新たな悲観論が日本を覆いつくした。日本製品が貿易摩擦を引き起こすなど、誰も夢想だにしなかったはずだ。競争力という概念が国次元ではなく、また企業次元でもなく、中間の産業次元に設定されたのは、明確な理由による。いくら日本が注目を集めたといっても、農業のように後進性の目立つ産業があった。企業次元に転じてトヨタ自動車を俎上(そじょう)に載せても、やはり住宅のように競争力に劣る事業がある。これに対し日本の競争力が目立った産業では、例外を見つけるのが難しかった。テレビではソニーや松下電器産業(現パナソニック)のみならず下位の三洋電機や日本ビクターですら、自動車ではトヨタのみならず下位のスズキやいすゞ自動車ですら、DRAMでは東芝やNECのみならず下位のシャープや沖電気工業ですら、競争力を発揮した。この事実が世界を驚かせた。しかし日本の絶頂期は長く続かない。いまやテレビとDRAMで産業競争力を誇るのは韓国で、日本企業は事業縮小・撤退を余儀なくされた。自動車でも日産自動車、マツダ、三菱自動車が外資に救済を仰ぐ事態を迎え、もはや産業競争力は死語と化した観がある。なぜ日本の絶頂期は一瞬で終わってしまったのか。そもそも日本の産業競争力は、生産現場や実務組織に根源を置いていた。新卒採用した社員を比較的狭い守備範囲に張り付けることで、真面目に働く人間なら誰でも練度が上がっていく体制を構築し、そこに人事考課と昇進制度を入れて社員の間で息の長い競争を促していく。さらに歩幅の小さな定期異動により社員が思考停止に陥る危険性を排除したうえで、それでも起きかねないミスを稟議(りんぎ)で組織的に潰していく。こうした工夫は、一方で目に見えるモノの設計や製造において大きな威力を発揮するが、他方で目に見えない犠牲を伴った。そこには経営人材の育つ余地がなく、最強の管理人材が経営にあたる結果、大きな変化に対処できなくなってしまったのである。この弱点を米国は鋭く看破して、反攻策を周到に準備した。やれ現地生産、やれ市場開放、やれ内需拡大と高飛車の要求を積み重ね、それに円高誘導やココム(対共産圏輸出統制委員会)規制を絡めて日本の霞が関と産業界を横から揺さぶるというのが、その骨子だ。反攻が一巡すると、仕掛けた米国も驚くほど、日本企業の経営は暴走、または迷走し始めた。その経緯については拙著「戦略暴走」(2010年)で触れている。米国は国際政治力を駆使して、グローバリゼーションの時代を呼び込む策も打っていた。新たに新興国市場の開拓が競争の焦点になると、経営上のボトルネックはモノづくりから販路にシフトする。過去の経験が生きない展開の中で、日本企業は大挙して安易な合弁契約に走り、新興国で悪戦苦闘を強いられた。執拗な波状攻撃を受けて、日本は産業競争力を著しく低下させた。個社次元で耐え抜いたのはトヨタくらいだ。企業経営はモノづくりだけでは成立せず、先行きが不透明になるほど、または多面攻撃を受けるほど、経営が浮沈を分けてしまう。そこに80年代の日本は致命的な弱点を抱えていたことを、われわれは反省材料とすべきであろう。ただし反省材料はもう一つある。反攻に転じた日本を米国が封じ込めるという第二幕が控えているからだ。そこで彼らが武器としたのはインフォメーション・スーパーハイウエー構想だった。これは副大統領になる前のアル・ゴア上院議員が提唱していたもので、最終的にインターネットの一般開放に結実した。米国の起死回生の一手により、世界を支配する原理は「規模の経済」から「ネットワークの経済」に移行した。同じモノを大量につくって安くするより、同じプラットフォームを多くの人々が使うことで生まれる便益が企業間競争の行方を左右し始めると、戦略の要衝は大きくシフトする。チャンスの窓が開いている期間は短く、初動で結果が決まってしまう。プラットフォーム間の短期決戦を制したのはいまのところグーグル、フェイスブック、アップル、アマゾン・ドット・コムなど米国ベンチャー勢に限られる。こうした変化を日本も看過していたわけではない。ハイビジョン映像用のMUSEデコーダー(信号変復調器)、総合デジタル通信網(ISDN)、第5世代コンピューターなど、国が資金を注ぎ込んで技術革新を先導しようとしたが、軒並み失敗に終わった。テレビ産業や自動車産業も日本流の「イノベーション」、すなわち技術革新に再起を懸けたが、薄型テレビやハイブリッドカーは救世主となり得なかった。薄型テレビを主導したシャープは台湾企業の救済を仰ぐに至り、ハイブリッドカーは米国市場で占有率3%台に到達したあたりで頭打ちとなっている。国はもはや産業競争力のけん引役とはなり得ない。社員間の公平な競争を入社後四半世紀も引っ張る日本の大企業も、しかりである。なぜならば、いま世界を席巻するイノベーションは破壊を伴う創造行為で、純然たる技術革新とは一線を画しているからだ。例えばアップルはデジタルカメラ、ビデオ、電子辞書、電卓、携帯電話、携帯情報端末(PDA)など、日本が得意としてきた産業多数を破壊した。破壊の標的となっている産業に身を置く企業が正面から対抗すれば、身の丈が縮むことは避けられない。それどころか過去に雇用した人々を抱え続ける企業は防戦に打って出ざるを得ない。護送船団の先頭に立つ国も同類だ。エレクトロニクスを押し流した創造的破壊の波は、既に自動車や産業機械に矛先を向けている。その次は医療や農業や物流に襲いかかる気配が濃厚だ。守勢をとっても勝ち目は見えない。しからば、破壊の標的を自ら断ち切り、攻勢をとる展開に持ち込むほうが得策であろう。そのためには、まずは実務の強さに経営の強靱(きょうじん)さを併せ持つよう日本企業自体を創造的に破壊する必要がある。一連のガバナンス(統治)改革で、その作業は緒に就いた。水面下では、新たな日本企業を一から興す作業も静かに始まっている。あとはどこに起死回生の一手を求めるかだ。そこで妙手が出れば日本が産業競争力を回復する日は意外と近いのかもしれない。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12589160.html
(朝日新聞社説 2016年10月3日) TPPと国会 不安解消へ審議尽くせ
 交渉を主導した米国では、民主、共和両党の次期大統領候補がそろってTPPへの反対姿勢を示し、発効への道筋は不透明になっている。そんな中で、日本の国会ではTPP承認案と関連法案の審議が本格化する。政府・与党はTPP承認を急ぐ構えだ。発効への機運を高めて他国の手続きを後押ししつつ、米国で高まる再交渉論を牽制(けんせい)するのが狙いだ。野党側は、農業分野などを懸念する民進党をはじめ反対・慎重論が強い。TPPをめぐっては今春の通常国会で審議入りしたが、議論が深まらないまま継続審議になった。いま、あえて審議を再開するというのなら、今後の暮らしや農業など国内業界に予想される影響について、丁寧にかつ徹底的に議論する必要がある。衆院TPP特別委員会の理事を務める自民党議員が「強行採決という形で実現するよう頑張る」と発言し、辞任する騒動があった。「承認ありき」で数の力を頼むことは許されない。与党は肝に銘じてほしい。そのうえで、野党を含めて望みたいのは、TPPで予想されるデメリットとその対策をしっかりと検証することだ。TPPの対象は幅広い。貿易を活発にするためにモノの関税をなくしたり、引き下げたりする。投資や金融、小売りなどのサービス分野の規制を減らす。著作権や特許、労働に関する規定も各国で歩調を合わせる。通商国家として発展してきた日本にとって、グローバル化への対応は避けられない。ただ、各国が妥協を重ねて交渉をまとめただけに、分野や項目ごとにプラスとマイナスが入り交じるのも確かだ。生活の安全・安心が脅かされないか、国内業界が打撃を受けて雇用が失われないか、といった不安は根強い。代表例が農業だろう。農林水産物の8割にあたる約2千品目の関税が撤廃され、ほかの品目の多くも引き下げられる。海外産の輸入が増えるのは必至で、消費者の食卓への不安のほか、農家の反対も続いている。政府は昨年末にまとめた分析で、コメへの影響について「(直前に決めた)対策の効果で、国内の生産量は減らない」と結論づけた。影響があるから対策を打つのに、順番が逆だ。政府をただし、情報公開を徹底させる。TPPの負の側面と向き合い、政府の対策が必要かつ十分かどうかを考える。そんな国会審議を求める。賛否の結論ありきの論戦は不毛だ。

*1-3-1:http://qbiz.jp/article/95543/1/
(西日本新聞 2016年10月7日) 首相、TPP他国に先駆け承認を 関係閣僚会議で
 環太平洋連携協定(TPP)に関する関係閣僚会議が7日、首相官邸で開かれ、協定の承認案と関連法案の早期成立を目指すことを確認した。出席した安倍晋三首相は「他国に先駆けて国会で協定を承認し、早期発効に弾みをつける。自由貿易で経済発展を遂げたわが国の使命と確信している。この国会でやり遂げなくてはいけない」と述べた。承認案と関連法案は衆院特別委員会での審議入りを控えている。閣僚会議ではTPPを担当する石原伸晃経済再生担当相が、会談した各国要人と再協議を行わないことで一致したと報告した。石原氏は会議後の記者会見で、米大統領選で共和、民主両党の候補がTPPに反対していることに関連し「日本が率先して(承認を)行うことで、オバマ大統領による議会承認を後押しする」と述べた。TPPに関する関係閣僚会議は昨年9月以来。政府が機運を高めようとしているほか、経済界からも早期承認の要望が出ている。

*1-3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161005&ng=DGKKZO08017530V01C16A0PP8000 (日経新聞 2016.10.5)民進、歯切れ悪いTPP反対、党内に隠れ賛成派も
 今国会の焦点は、環太平洋経済連携協定(TPP)承認案の行方に移る。野党第1党の民進党は国内の農産物保護が不十分で、自動車産業などへの利点も少ないなどと主張し反対する。党内には推進派もいるが、発言力のある反対派に配慮せざるを得ない党内事情もある。歯切れの悪い印象はぬぐえない。民進党は3月の結党時に「経済連携協定によって自由貿易を推進する」との立場を掲げた。しかし、安倍政権が合意した協定案は「国益が守れたとは評価できない」との考え方に立つ。最大の反対理由は、牛肉・豚肉など農林水産物の重要品目の保護を求めた衆参農水委員会の決議との整合性だ。決議では重要品目を「聖域」と位置づけ、10年を超す段階的な関税撤廃も認めないなどとした。民進党は牛肉・豚肉の大幅な関税引き下げなど「聖域として守れた水準ではない」(大串博志政調会長)との立場だ。自動車分野で得た「成果の乏しさ」も強調する。完成車の対米輸出で関税撤廃まで約30年の期間を設けたことを「関税には触らないと言っているに等しい結果」と批判。政府が輸出増の試算を示せていないことも問題視。大串氏は4日の記者会見で「攻めきったとはいえない」と語った。3つ目は「交渉過程が情報開示されていない」との主張だ。先の通常国会中に示された日米の交渉録は全面的に黒塗りだった。TPP参加判断の根拠となった政府の国内農業への影響試算についても正確性を疑問視している。交渉前に3兆円と見積もった農林水産物の生産額減少が、大筋合意後の農林水産省試算では最大2100億円にまで圧縮された経緯が不透明だとしている。党内事情も大きい。党の見解はTPP推進派と反対派が混在する党内の「最大公約数」で意見を集約しただけとの見方もある。9月末に開いた細野豪志代表代行のグループ会合では「農村ではなく都市部でどう説明するのか」などの意見が相次いだ。自動車関連企業が集積する中部地方選出の議員は「民進党の主張は話にならない」と言い切る。旧民主党政権下では当時の野田佳彦首相(現民進幹事長)が、党内反対派を押し切って関係国との事前協議入りを決めた経緯があり、これも民進党の見解の分かりにくさにつながっている。

*1-4-1:https://www.agrinews.co.jp/p38505.html (日本農業新聞 2016年8月23日) 総額5739億円 4割増 TPP対策に3453億 補正予算農水関係
 農水省は23日、農林水産関係の総額を5739億円とする2016年度第2次補正予算案を、自民党の農林関係合同会議に示し、了承された。2015年度補正予算を43%上回る大幅増。このうち環太平洋連携協定(TPP)関連対策には同11%増の3453億円、土地改良(農業農村整備)関連事業は同77%増の1752億円を確保した。24日に閣議決定する。目玉と位置付ける「中山間地域所得向上支援対策」には、300億円を計上した。内訳は、中山間地域で収益性の高い農産物に取り組む際の計画策定に5億円、計画に基づく基盤整備に70億円、施設整備に25億円。また、産地パワーアップ事業と畜産クラスター事業の優先枠各50億円、土地改良事業の優先枠100億円と組み合わせる。輸出力の強化策には270億円。そのうち空港や港に近い卸売市場のコンテナヤード(集積場)など、国内外の輸出拠点の整備が203億円を占める。農林水産分野のイノベーション(技術革新)推進にも117億円を計上する。TPP対策のうち産地パワーアップ事業に570億円、畜産クラスター事業には685億円を計上。いずれも前年度を1割超上回る。また、農地のさらなる大区画や汎用(はんよう)化に370億円、水田の畑地化や畑地・樹園地の高機能化に496億円、草地整備にも94億円を盛り込んだ。この他、飼料用米の拡大に伴い、水田活用の直接支払交付金の財源を144億円積み増す。熊本地震などの災害復旧等事業には713億円を計上した。大幅増額を受け、自民党の西川公也農林水産戦略調査会長は会合で「すばらしい補正予算ができた」と指摘。今月末に概算要求する17年度予算でも、万全な金額を確保したい方針を強調した。.

*1-4-2:http://qbiz.jp/article/94797/1/ (西日本新聞 2016年9月27日) TPP対策、農家から拠出金も 強制徴収で販売促進制度を法制化
 農林水産省は27日、環太平洋連携協定(TPP)対策の一環として、農家から拠出金を集め、国内外での農産物の販売促進に充てる「チェックオフ制度」の論点を自民党の会合で示した。制度を法制化する場合は、拠出金の強制徴収が避けられないとの考えだ。拠出金の強制徴収は、恩恵へのただ乗りを防止し、制度の公平性を確保するのが狙い。しかし、お金を納付しない場合は、罰則の適用も考えられるため、制度導入には一定の負担を強いられる農家から幅広い理解を得る必要がありそうだ。農水省が会合で示した資料によると、米国などで導入されているチェックオフ制度は、集めたお金の使い道を、国内外での販売促進や、調査研究などに充てると法令で決めている。日本で導入する場合は、強制徴収に見合うお金の使い道や、金額を定める必要があると説明した。お金を強制徴収される農家の同意が不可欠とも指摘した。海外では、法制化の際に品目ごとの業界団体が自ら農家に説明しているほか、業界の任意の仕組みから始め、業界内の合意形成に取り組んでいるとした。会合後、この検討課題を担当する福田達夫衆院議員は記者団に「(日本では)養豚業界が熱心だ。まずは業界がどういうことをやりたいのか提案してほしい。まだ段階として詰まっていないところがある」と述べた。

<TPPは日本政府主導であること>
*2-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37594
(日本農業新聞 2016/5/21) TPP試算 日米で大きな開き 国内対策 効果に疑問も
 環太平洋連携協定(TPP)の経済効果をまとめた日米両政府の試算が出そろった。米国は日本への農産物輸出が約4000億円増えるとはじくが、日本は米国以外の影響も含めて生産減少額は1300億~2100億円にとどまると見込む。日本政府の試算には、以前から影響を過小評価しているとの指摘もあり、試算について一層丁寧な説明が不可欠だ。米国の政府機関・国際貿易委員会は18日、TPPが米国経済に与える影響を分析した報告書を出した。品目別に見ると、米国の試算では米の対日輸出額は23%増えるが、日本の試算では生産減少額はゼロ。牛肉も、米国の試算で対日輸出は923億円増えるが、日本の試算では生産減少額が311億~625億円で差がある。米国の輸出額が増えても他国産に置き換わる場合もあるため、輸出増加がそのまま日本の生産額減少につながるわけではない。だが、影響を緩和する国内対策を日本の試算に織り込んでいることが試算の差の大きな理由だ。日本政府がまとめた影響試算では、関税撤廃・引き下げによる国産価格低下の影響だけを見ている。コスト削減などのTPP対策の効果が発揮されたという前提で生産量は維持できるとする。例えば米は、米国とオーストラリアに合計7万8400トンの国別輸入枠を設けるが、同量の国産米を備蓄で吸収することなどを理由に影響はないとする。一方、米国の試算ではこうした対策を織り込んでいない。日米の違いについて農水省は「前提が異なるため、単純に比較できない」とする。TPP対策を行うことが既に決まっているため、対策の効果を入れない状態で再試算する考えはない考えも度々示している。ただ、対策の効果が具体的に見えない段階で試算に織り込むのは適当ではなく「過小評価」との批判が野党から出ている。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p38582.html (日本農業新聞 2016年9月2日) TPP情報開示 十分な審議訴え 街宣車県内リレー JA長野県グループ
 JA長野県グループは1日、街宣車で環太平洋連携協定(TPP)の情報公開などを訴える活動を始めた。2台の軽トラックが県内JAをリレーして、9日まで各地を巡回。秋の臨時国会での審議に向け、県民にアピールする。街宣車は、荷台に「国民への丁寧な説明と十分な審議を求めます」などと描いた看板を掲示。スピーカーからは「TPPは農業農村、保険医療、食の安全、雇用など、私たちの生活に大きな影響を及ぼす恐れがあります」などのメッセージを繰り返し流す。同日、長野市のJAビルを出発した街宣車は、県東部のJA長野八ケ岳と県南部のJAみなみ信州に引き渡された。今後、各JAが街宣車を引き継ぐ。9日には、同グループと生協など38団体でつくる連絡会が同市内でTPP学習会を開催。街宣車は、この会場をゴールに県内を走る。JA長野中央会は「TPPは農業の問題だけにとどまらない。県民の皆さんに一緒に考えましょう、と伝えたい」(農政対策課)と意気込む。.

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p38540.html (日本農業新聞 2016年8月27日) TPP 審議日程 窮屈に 強行採決の可能性 政府与党
 環太平洋連携協定(TPP)承認案の審議が、9月召集の臨時国会で再開する。11月8日の米大統領選までの衆院通過を目指す政府・与党。だが民進党代表選の影響で召集日は26日にずれ込む見通し。審議日程が窮屈になり、強行採決の可能性もある。政府・与党は、臨時国会を9月13日に召集し、TPPの審議時間を確保する構えだった。だが民進党代表選が15日に設定され、26日召集で調整せざるを得なくなった。同党の新執行部が決まらなければ、事実上、審議が進められないためだ。約2週間のずれ込みだが、政府・与党には「かなり痛い」(政府筋)。米大統領選候補がTPP反対を強調する中、「大統領選までに衆院を通過させ、日本が承認する見通しを付ける」(同)ことで、米国の早期批准を促す考えがあるからだ。26日召集になれば、2016年度第2次補正予算案の審議などを優先し、衆院TPP特別委員会の審議再開は、10月中旬にずれ込むとみられる。参院選でTPP反対を掲げた民進、共産などの野党の厳しい追及は必至で、11月8日までに衆院通過が「微妙」(自民党幹部)な情勢だ。円滑な審議に向け、自民党は臨時国会で衆院TPP特別委員長を西川公也氏から塩谷立氏に代える。通常国会では、西川氏の著作とされる「TPP内幕本」が審議停滞の一因となったためだ。審議日程を野党と調整する筆頭理事も森山裕前農相に交代し、万全を期す。与党側は、衆院通過までに、通常国会(約23時間)と合算して40時間程度の審議を想定する。だが野党はゼロからやり直すとの考え。8月に就任した山本有二農相らのTPPへの答弁能力も未知数で、政府・与党内には「与党だけで強行採決もやむを得ない」との指摘もある。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/359145
(佐賀新聞 2016年9月24日) 「TPP議論不十分」 全農・中野会長、国に疑問
 環太平洋連携協定(TPP)の承認案・関連法案審議が焦点となる臨時国会(26日召集)を前に、全国農業協同組合連合会(全農)会長を務める中野吉實JA佐賀中央会会長は、佐賀新聞社のインタビューに応じた。早期成立を目指す政府、与党の姿勢に対し、「議論は尽くされておらず、国の主張を農業関係に押し付けようという風潮があるようだ」と疑問を呈した。通常国会で政府がTPP関連文書をほとんど黒塗りで開示したことに触れ、「黒塗り資料では議論は深まらない。農家も納得していない」と批判し、十分に議論するようくぎを刺した。TPP発効を見据えた農業改革の一環で、小泉進次郎自民党農林部会長が強く求めている全農の株式会社化には、海外企業から買収される懸念を示し「株式会社化の強制は断固反対と言わざるを得ない」と明言した。農薬や肥料など生産資材価格を巡る自民党プロジェクトチームとの議論については、「改革に後ろ向きと言われるが、自己改革には鋭意取り組んでいる」と強調した。

<全農“改革”>
*3-1:https://www.agrinews.co.jp/39043?page=2 (日本農業新聞 2016年9月30日) 全農改革を進捗管理 来週にも提言 業界再編へ法整備 規制改革推進会議
 政府・与党は11月に取りまとめる環太平洋連携協定(TPP)中長期対策の一環で、資材価格引き下げや農産物の流通構造の改革を議論している。29日にはこうした農業改革を集中議論する未来投資会議の「ローカルアベノミクスの深化」会合と規制改革推進会議の農業ワーキンググループ(WG)が合同会議を開き、WG座長の金丸恭文フューチャー社長が検討方向の試案を示した。試案は、両会議による提言のたたき台となる。試案では、資材価格の低減などへ関連企業の競争を促すため、業界再編が必要だと強調。再編を起こす「重要なツール」として、全農の資材の仕入れや農産物販売の改革を位置付けた。改革を促すため、規制改革推進会議による農協改革の進捗管理の一環として、全農の組織体制の見直しや役職員の意識改革、外部人材の活用などを重視して管理していくとした。業界再編に向けては、税制支援などを措置する産業競争力強化法や、公正取引委員会の監視強化など独占禁止法の活用も促した。改革の着実な推進を担保する法制度を、次期通常国会で検討することも求めた。両会議の提言を受け、自民党農林水産業骨太方針策定プロジェクトチームを中心に、具体策の検討が加速する見通しだ。一方でJAグループも、全農が扱う肥料の銘柄数を絞り込むことで工場の集約化につなげるなど、業界再編を目指す方針を既に掲げている。ただ、政府・与党内には、改革の踏み込みを求める声も強い。11月のTPP中長期対策の取りまとめ以降も、規制改革推進会議の進捗管理を通じて、全農を中心とするJAグループの改革の実践に、厳しい目が向けられる構図が続きそうだ。.

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160907&ng=DGKKZO06959210X00C16A9MM8000 (日経新聞 2016.9.7) 農業改革、肥料値下げ促す JA全農が高コスト批判に対応 銘柄数半減
 全国農業協同組合連合会(JA全農)は、国際的にみて割高との批判が強い肥料や農機の生産コスト削減策を打ち出す。コメ農家が使う肥料の銘柄をいまの約2000種から半分に減らし、1品種あたりの生産量を増やして値下げにつなげる。肥料や農機など農業資材をめぐっては、環太平洋経済連携協定(TPP)への対応策を話し合う自民党のプロジェクトチーム(委員長・小泉進次郎農林部会長)がJA全農に値下げを強く求めている。JAグループが近く公表する改革案は、TPP参加をにらんで農業の高コスト体質の改善を迫る政府・自民党の批判をかわす狙いもある。国内でコメ向けの肥料を製造するメーカーは約3000社にのぼる。JA全農はこうしたメーカーから肥料を買い取り、地域の農協を通じて農家に販売している。JA全農が扱うコメ向け肥料は地域限定品など約2300種に及ぶ。成分や効果が似通った製品が異なる銘柄で売られているケースも目立つ。肥料メーカーは少量多品種の生産体制をとるため、JA全農への卸価格はどうしても高くなる。JA全農はメーカーから買い取る銘柄の数を「半分あるいはそれ以下」(幹部)に抑えて卸価格の引き下げを促す。肥料代が安くなれば、農家の生産コストは下がる。農林水産省も銘柄数の増加に歯止めをかける制度改正を検討する。JA系の肥料メーカーのなかには銘柄の削減でJA全農との取引が減り、経営が苦しくなるところも出てくるとみられる。「業界再編のきっかけになる」(業界関係者)との見方は多い。農水省によると、韓国のある肥料メーカーは生産能力136万トンに対し、銘柄数は52。一方、日本のあるメーカーでは生産能力31万トンに対し、銘柄数は500近い。日本の肥料価格は平均で韓国の2倍に達している。JA全農は生産コストの2割を占める農機でも調達方法を見直す。大規模な農業法人と連携し、安価なコンバインやトラクターを農機メーカーから共同購入する仕組みをつくる。大規模な農業法人はコスト削減を狙って簡素な農機を購入する傾向があるが、JA全農での扱いは不十分だった。また農薬では開発費を抑えたジェネリック農薬の発売を検討する。

*3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161004&ng=DGKKZO07931020T01C16A0KE8000 (日経新聞 201.10.4) 農業の効率化と地方創生(3)化学肥料で穀物単収6~10倍に 東京大学准教授 川島博之
 第2次世界大戦が終わったころから農業の効率が飛躍的に向上しました。効率向上の要因は農薬、農業機械など色々ありますが、最大の功労者は空気中の窒素から作る化学肥料です。農作物の生産量を増やすには、(1)農地面積を広げる(2)単位面積当たりの収穫量(単収)を増やす――の2つの方法があります。人類が農業を始めてから長い間、単収はほぼ一定でした。人類は農地面積を広げることに注力し、それが土地の奪い合いにつながりました。現在でも領土問題は戦争の最大の原因ですが、それは人類に農地が重要だというメッセージが刻み込まれているためでしょう。19世紀に土壌中の窒素含有量を増やすと、穀物単収が増えることが分かりました。欧州では農地に窒素を供給する方法として、チリで採掘された硝石が使われました。しかし、地下資源には限りがあるため、19世紀末の欧州では、硝石を掘り尽くすと食料危機になると心配されていました。その悩みを解決したのが空気中の窒素から化学肥料を作る技術です。20世紀初頭のドイツで開発され、開発者の名前にちなんでハーバー・ボッシュ法といいます。空気が原料なので、いくらでも生産できます。化学肥料は著しい効果を発揮しました。人類が農耕を始めてから長い間、穀物単収は1ヘクタール当たり1トン程度でした。一生懸命に耕し、苦労して堆肥や厩肥(きゅうひ)を投入しても、同2トン程度にしかなりませんでした。それが、化学肥料を投入すると目を見張るような速度で増加し、現在、先進国では穀物単収は同6~10トン程度になっています。あまりにも化学肥料が効いたため、化学肥料に不信感を抱く人々もいます。副作用もあると考え、従来型農法である有機農業に取り組んだりしています。しかし、化学肥料なしでは、現在の世界の73億人もの人口を扶養できません。もし、化学肥料を全く使用しなければ、地球上にはその半分ぐらいの人々しか生きることができないでしょう。一方、アフリカなどの発展途上国でも先進国並みに化学肥料が使われるようになれば、地球は現在の2倍の人口でも楽に扶養できると思います。

*3-4:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%9D%E5%B3%B6%E5%8D%9A%E4%B9%8B 川島博之氏の略歴のみ引用:東京都生まれ。1977年東京水産大学卒業、1983年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得の上退学。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員などを経て、現在、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授。

*3-5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37949 (日本農業新聞 2016/6/18) 大地と海 連携 ホタテの天敵・ヒトデを堆肥化 北海道・JAつべつ×網走、西網走2漁協
 漁師の悩みを農家が解決する試みが、北海道北東部の津別町で始まっている。キーワードは「ヒトデ」。特産のホタテを食い荒らす天敵を、堆肥にして作物を育てようという作戦だ。ヒトデの処分費用、堆肥の原料コスト双方が削減できる。堆肥化に挑むのはJAつべつ。来年から本格的に畑作に利用する。漁協と共に川の水質を守る植樹活動にも取り組み、大地と海をつなぐ活動を展開する。農家と漁師が手を組んだのは、網走湖の汚染問題が背景にある。湖には網走川の淡水が流れ込んでいるが、2001年の台風で農地の土砂が流出し、湖が汚染されて真っ赤になり、漁業を脅かした経緯がある。そこでJAと網走、西網走2漁協が話し合いを重ね、11年に「網走川流域農業・漁業連携推進協議会(だいちとうみの会)」を立ち上げ、流域の環境保全に乗り出した。「農業と漁業がしっかり手を組んで地域を支えていかなければならない。われわれには上流域としての大きな責任がある」と、同協議会副幹事長を務める酪農家、山田照夫さん(69)は意義を強調する。双方の問題解決につながる試みの一つが、ヒトデの堆肥化だ。ヒトデはオホーツク海の特産であるホタテを食べるため、漁協にとっては天敵。年間600トンものヒトデが大発生することもあり、漁師の悩みの種だ。そこでJAは13年から、ヒトデの堆肥化を考え始めた。ホタテと共に水揚げされた20トンほどのヒトデを搬入し、樹皮を発酵させたバーク堆肥を混ぜることで、完熟堆肥を作ることに成功した。試しにテンサイの畑に施用したところ、収量や品質は問題ないことが分かった。漁協は従来、ヒトデの処分を1キロ15~20円で業者に頼んでいた。600トンを処理すれば、費用は最大で1200万円にも上る。堆肥化が軌道に乗れば、この膨大な処分費用の削減につながる。JA側も堆肥の原料コストを削減でき、互いにメリットになる。JA営農部の有岡敏也部長は「ジャガイモなど他の作物にヒトデ堆肥を使っても、収量や品質には問題ないだろう」と手応えをつかんだ。漁師の間では「ヒトデには虫が嫌がる成分がある」と言われており、堆肥にもその効果が表れればさらにメリットが生まれる。今年は秋にヒトデを搬入して堆肥化し、17年産の作付けから本格活用する計画だ。
●植樹、清掃も
 協議会は毎年、植樹活動にも取り組んでいる。「大地と海をつなぐ植樹」と題し、14日には農家と漁師ら130人が参加し、アオダモやハンノキなど300本以上を植えた。こうした活動の結果、網走川流域の網走市、美幌町、大空町の農業関係者も集まる場になり、女性部からも参加する。26日には4市町で流域の一斉清掃事業も開かれる。協議会の新谷哲章幹事長は「土壌環境や水質への視線は今後さらに厳しくなってくる。漁業、農業が経済を支える町が多い道内で、モデルとなる取り組みにしていきたい」と先を見据える。


PS(2016.10.10追加):*4に、「①酪農家が、補助金の関係で原料生乳の販売先を自由に選べない」「②企業による農地の実質所有解禁は国家戦略特区だけの例外にしてはならない」「③生産性の低い農業資材メーカーの再編などを支援する新法の制定を提言した」「④重要なのは公正で自由な競争が安くて優れた商品やサービスを生む環境を整えることだ」と書かれているが、このうち①は、農業者の政治活動を農協が行うのではなく、農業者の政治連盟を作ることで解決するだろう。また、②は農業生産法人を作ることにより既に解決されており、本当に農業をやろうとする企業は、JR九州のように農業生産法人の子会社を作って既に農業に参入している。にもかかわらず株式会社でなければ農業ができないなどとする企業が農業に参入することは(理由を長くは書かないが)むしろ弊害の方が大きい。さらに、農業機械価格が高すぎるのは問題だが、その原因は機械メーカー等の独占・寡占であるため、③のように政府がメーカーの再編などを支援する新法を制定するのは逆効果であり、④のように公正で自由な競争を行って外国からでも自由に機械や資材を購入できるよう、公正取引委員会がしっかり働くのが筋である。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161010&ng=DGKKZO08196920Q6A011C1PE8000 (日経新聞社説 2016.10.10) 自由な競争で農業の成長力を高めよう
 安倍晋三首相は今国会の所信表明演説で、生産から流通、加工まで農業分野の構造改革を進める決意を表明した。農業の競争力を高めるために肝心なのは、成長を阻む旧弊や横並びの保護策を見直し、企業の新規参入を活発にして創意工夫を引き出すことだ。改革を加速してもらいたい。安倍政権は農業協同組合制度の改革などで一定の成果をあげた。しかし、農業分野には旧態依然とした制度が残る。たとえば酪農家は事実上、原料生乳の販売先を自由に選べない。50年も前に制定された暫定措置法が存続し、生乳を原則すべて地域ごとの「指定団体」に出荷しないと補助金がもらえない仕組みだからだ。政府の規制改革会議は5月にまとめた答申で規制緩和の結論を先送りしている。新たに発足した規制改革推進会議は、今秋まとめる改革策で自由な競争環境の実現を提言してほしい。農林水産省の統計でコメの生産額は2014年で1兆4370億円、生乳は6979億円と農産物の1、2位を占める。しかし、03年と比べるとコメの生産額は38%減り、生乳も2%弱の増加にとどまる。トマト(22%増)やレタス(31%増)に比べ成長力は劣る。競争力の弱い農産物は手厚い保護で守る。そんな競争を排除する横並びの保護政策が成長を阻害してきた結果だ。これでは将来の展望が描けない。企業による農地の実質所有解禁は国家戦略特区だけの例外にしてはならない。成長を後押しする競争には企業の新規参入が不可欠だ。規制改革推進会議と未来投資会議は6日に合同会合を開き、生産性の低い農業資材メーカーの再編などを支援する新法の制定を提言した。農業資機材の価格や農産物の流通コストの高さが農業所得の拡大を阻む要因とみており、再編で効率化を促す狙いがある。非効率な企業の再編は必要だ。ただ、より重要なのは公正で自由な競争が安くて優れた商品やサービスを生む環境を整えることだ。これまで大部分の農家は肥料や農薬、農業機械を地域の農協から購入してきた。一般の消費財のように価格の安さやサービスの内容を農家に訴求し、競う環境が実現すれば再編はおのずと進む。農業分野に自由な競争を阻害する構造問題はないか、公正取引委員会もこれまで以上に目を光らせてほしい。


PS(2016.10.10追加):*5のように、麻生財務相は、「①自由貿易には大いなる意義があると強調し」「②保護主義の広がりに強い懸念を示し」「③過度な悲観論に陥ることなく、潜在成長率の引き上げに正面から取り組むと指摘した」そうだが、グローバル企業は、既に自由貿易ではなく相手国に生産及び販売拠点を作っているので、①は30年ほど古いテーゼだ。しかし、自国の柱になる産業を保護・育成することは必要であるため、②は必ずしもそうとは言えない。さらに、③は、何もないところから出発する開発途上国と異なり、先進国のGDPの成長率が低いのは当然であって、現在の日本は、国民一人一人の豊かさ(購買力平価による一人当たりGDP)を比較して、これを増加させなければならない時期なのである。そのため、財務相がこのような発言をすることこそ、悲観要因だ。


   発展段階別     $と購買力平価による アジアの購買力平価による    先進国の
一人当たりGDP成長率    GDP比較        一人当たりGDP      食料自給率推移

(グラフの説明:先進国ほど「一人当たりGDP成長率(「一人当たりGDP」ではない)」は低い。また、物価の高い日本では購買力平価によるGDPの順位が$ベースより低く、アジアの中で比較しても日本の購買力平価による一人当たりGDPは高くない。さらに、先進国の中で、日本の食料自給率は著しく低い)

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161008&ng=DGKKASDF08H02_Y6A001C1MM0000 (日経新聞 2016.10.8) TPP推進を確認 麻生財務相、米長官と会談
 麻生太郎財務相は米ワシントンで7日、米国のルー財務長官と会談し、環太平洋経済連携協定(TPP)の実現に向けた取り組みを互いに進めていくことを確認した。麻生財務相は会談後、日銀の黒田東彦総裁と開いた会見で、「自由貿易には大いなる意義がある」と強調し、保護主義の広がりに強い懸念を示した。麻生財務相は会見で、過度な悲観論に陥ることなく「潜在成長率の引き上げに正面から取り組む」とも指摘した。働き方改革などの構造改革や生産性の向上につながるインフラ整備などを進める考えを表明。さらに、デフレ脱却を確実にするためには「継続的に賃金を上昇させることが極めて重要だ」と述べた。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では金融緩和が長期化することの副作用が議論された。黒田総裁は会見で「金融政策だけでバランスのとれた成長につながるというのは難しい」と指摘。「財政政策、構造政策といったあらゆる政策手段を用いてバランスのとれた成長を実現していくという考え方が共有された」と説明した。


PS(2016年10月13日追加):*6-1のように、JR九州ファーム(本社:佐賀県鳥栖市)が長崎県松浦市で大規模にアスパラガスの生産を行い、一般主婦・警察官・建築会社出身の人を雇用しているのは面白いが、環境意識の高さを示す洗練されたJR九州のロゴがあった方が世界で周知されやすいと考える。また、雇用された主婦は需要者の要望をキャッチしやすく、建築会社経験者はあちこちの現場で人や機械を廻して仕事を進めるのが得意で、警察官経験者は警備を任せられ、元JR職員は時間に几帳面など、前職による得意技もありそうだ。なお、*6-2で、JR九州の青柳社長が、「今後、鉄道と相乗効果のある事業に進出したい」と言っておられるが、その地域はリアス式海岸の美しい場所であるため、農林漁業の現場自体を鉄道と相乗効果のある観光地にすることもできそうだ。また、「赤字ローカル線を絶対に廃線にしないとは言い切れない」とも言っておられるが、駅ビルや高架下を充実して使うことにより便利な街づくりを進めることができ、そこから膨大な収益を上げることもできるため、JR九州の場合は、まず既に所有している資産をスマートに有効活用するのが最も安全確実な収益獲得方法だと思われる。また、赤字ローカル線は赤字になる理由があるため、その理由を精査して解決するのが資産を壊さない方法だ。

*6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/364999
(佐賀新聞 2016年10月11日) JR九州、長崎・松浦で営農 アスパラ特産に
 長崎県松浦市にあるJR九州ファーム(鳥栖市)の農場で今年、アスパラガスが初めて収穫された。同社は九州最大のアスパラガス農場にしたい考えで、担い手不足に悩む地元は企業的な農業経営を通じた生産力アップ、特産品化に期待している。ただ、外部からの参入を不安視する声もあり、同社は地域との連携を密にする姿勢を打ち出している。
▽自慢
 長崎県のアスパラガス生産量は全国4位。北部に位置する松浦市は土壌に豊富なミネラルを含み、ほどよい甘みと苦みが特徴だ。しかし、高齢化で栽培農家が減少。JR九州ファームは昨年5月、市と農業参入に関する協定を結んだ。海に近い地区に土地を借り、アスパラガス用のハウスは現在12棟。この秋から23棟に拡張し、栽培面積は3・3ヘクタールになる。別に露地栽培でブロッコリーも育てる。今年は10月までにアスパラガス25トンの収穫を予定。2019年には約100トンに増やすのが目標だ。農業経験のない主婦、元警察官ら地元の17人を採用。建築会社から転身した松本敏光さん(61)は「農業をしたいと思っていた。自分が手入れしたものを食べてもらえることが幸せ」と話す。同社は地元のJAながさき西海から資材や営農指導の支援を受け、収穫した約7割を出荷。残りは福岡市にある直営店「八百屋の九ちゃん」などで売る。
▽期待
 JR九州は10年4月、大分市でニラ栽培に参入したのを皮切りに、九州各地で営農を開始。長崎県への参入は松浦市が初めてだ。松浦市のアスパラガス農家は減少傾向にあり、市の担当者は「大規模経営で産地強化と雇用拡大が見込める。ブランド化を進め、特産品にしてほしい」と期待する。一方、地元には「国土の保全も担う農業と利益を追求する企業は水と油。企業はもうからないと撤退する」と心配する声もある。今回の参入では第1希望だった土地の関係者に反対され、場所を変更。現在の農場でも地元住民から夏場のホタルを守るよう求められたため、蛍光灯などでガを駆除する「防ガ灯」の使用も諦めた。それでもJR九州ファーム松浦事業所の森崎崇所長(40)は「農業も鉄道も地元との関わりがあって成り立つ」と地元の声を尊重する方針を強調。地権者との交流にも積極的に参加しており「不安を抱く地域の人々に寄り添い、信頼につなげたい」と話している。

*6-2:http://qbiz.jp/article/95799/1/ (西日本新聞 2016年10月13日) 上場後、赤字ローカル線「絶対に廃線にしないとは言い切れない」 JR九州青柳社長に聞く
 25日に株式上場するJR九州の青柳俊彦社長が12日、報道各社の共同インタビューに応じ「上場することで、スピーディーで大胆な展開ができるようになる。今まで取り組んでいなかった事業にもチャレンジしていきたい」と述べた。主なやりとりは次の通り。
−上場で何が変わるか。
 「100%株主だった独立行政法人の鉄道・運輸機構から解放される。責任は重くなるが、経営判断のスピードは速まる」
−上場後、鉄道事業の収支が改善する見込みは。
 「JR九州グループにとって永遠の課題だ。収入の増加とコスト削減を、これまで以上に積極的に展開していきたい」
−赤字ローカル線の運営についての考えは。
 「昨年、国会で上場後も路線を維持することを宣言した。効率化に向けて積極的に廃線にする考えはない。ただし、絶対に廃線にしないとは言い切れない。路線の使命が終われば検討せざるを得ない」
−今後、新たにチャレンジしたい事業は。
 「イメージはまだないが、鉄道との相乗効果がある事業が望ましい」
−海外での事業展開はどう進めるか。
 「アジアでマンションやホテル事業をしたいと考えている。東京に進出してきたように、海外にも出て行きたい」


PS(2016年10月14日追加):JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」は、車両が豪華であるだけでなく、食事や列車内の調度もその地域トップの産物を使っているのが人気の秘密だ。また、*7のように、JR西日本のトワイライトエクスプレス瑞風が「美しい日本をホテルが走る」をコンセプトにしているのも魅力的で、乗り換えなどの手間なくポイントとなる地域を周遊できるメリットがある。しかし、ななつ星も、3泊4日コースで1人当たり最高95万円などという超豪華コースだけでなく、同じコースをホテルを使って周遊した場合と同程度の金額のコースも作った方が日本人や外国人の観光客が増えると思われる。

*7:http://mainichi.jp/articles/20161014/k00/00e/020/176000c
(毎日新聞 2016年10月14日) JR九州運行開始から3年 予約20倍超の人気
 JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」が運行開始から15日で3年を迎える。高額な乗車料金にもかかわらず、予約平均倍率は20倍超の人気ぶりを継続。上場を控えるJR九州の知名度向上にも大きく貢献した。一方、来春にはJR東日本や西日本も豪華寝台列車を投入予定で、各社間の競争が激しくなりそうだ。「高い価格でも価値を感じていただけている」。当初から運行に携わるJR九州クルーズトレイン本部の仲義雄次長は手応えを語る。ななつ星には今年9月末までで、延べ7297人が乗車。直近の予約平均倍率は24倍に達し、再乗車を希望する客も2割に上っており、人気は衰えない。支持される理由は豪華さだけでなく、きめ細やかなサービスにある。訓練を重ねたクルー(乗務員)が最高の笑顔で迎え、沿線住民も盛んに手や旗を振って歓迎する。温かいもてなしに乗客は感激し、最終日には多くが涙を流して列車との別れを惜しむ。ななつ星を追いかけるようにJR2社も来春、豪華寝台列車を相次いで投入する。JR西日本のトワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)は「美しい日本をホテルが走る」がコンセプト。車両には風や香りを体感できる展望デッキを設ける。JR東日本のトランスイート四季島(しきしま)は、高級車フェラーリを手がけた奥山清行氏がデザインを担当した。制作費50億円の車両は、淡い金色の外観やガラス張りの展望車が特徴だ。いずれも富裕層や外国人客の獲得を狙う。両社の動きについて、ななつ星の生みの親であるJR九州の唐池恒二会長は「鉄道業界の刺激につながったことは素直にうれしい」とし、ライバル登場についても「(豪華寝台列車に)乗りたいと思う層が拡大する。私どものお客さんが奪われるという危惧は全くない」と強気だ。ななつ星は来年3月の出発分から体験コース充実を理由に5度目の値上げに踏み切る。3泊4日コースで1人当たり最高95万円となり、高額と話題となった運行当初(同55万円)から7割も跳ね上がった計算だ。顧客の選択肢が広がる中で、価格に見合ったサービスを提供し続けることができるかが、ななつ星4年目のカギになりそうだ。


PS(2016年10月15日追加):どうも官制合併は、①大きくなりさえすればよいと考えている ②寡占や独占状態にしたがる など、経済原則や経営合理性からはずれたものが多いが、*8の九州を中心とする離島を結ぶ地域航空会社の統合なら、JR九州が航空会社を作って統合し、列車との接続をよくして離島の価値を上げつつ、空への進出を計るのがよいと、私は考える。

*8:http://qbiz.jp/article/96017/1/
(西日本新聞 2016年10月15日) 離島結ぶ地域航空会社の統合検討 国交省、大手2社に要請
 国土交通省がANAホールディングス(HD)と日本航空に対し、離島などを結ぶ地域航空会社の統合を検討するよう求めたことが15日、分かった。燃料の調達や機体の整備などでコストを削減し、地域の航空網を維持する狙いがある。国交省は地元自治体の意見も聞き来年夏までに統合計画をまとめたい意向だが、ANAHDと日航は慎重に検討するもようだ。統合を検討するのは北海道エアシステム(札幌市)、ANAウイングス(東京都)、オリエンタルエアブリッジ(長崎県大村市)、天草エアライン(熊本県天草市)、日本エアコミューター(鹿児島県霧島市)の5社。各社はそれぞれANAHDや日航と資本や業務の提携関係がある。国交省では、地域航空会社を傘下に収める持ち株会社を設立したり、経営規模のより大きな会社が小さな会社を合併したりする案などが浮上している。5社はいずれも30〜70席程度のプロペラ機を中心に運航し、北海道や九州の離島を結んでいる。各社はともに路線の利用率が低く、経営基盤は弱い。保有する機体が少なく、整備や乗務員の養成にかかるコストも高くなる傾向がある。主に100席以上の大型機を運航するANAHDや日航から機体の融通を受けることも難しい。このため国交省は同じ課題を抱える地域航空会社が連携し、効率化する必要があると判断した。ただ、ANAHDと日航は競合関係にあり、地元の自治体や企業も地域航空会社に出資している。このため国交省は関係者の意見を聞き、統合に関する課題の洗い出しを進める。


PS(2016年10月24日追加):*9-1のように、SBS米を商社が扱う理由は、「安い」「自社のビジネスが増える」にほかならない。そして、輸出国も日本の消費者に合わせた製品を最低コストで生産する工夫をしており、(自民党農林族のベテラン議員が中国に視察に行った時、中国産コシヒカリと日本産コシヒカリを食べ比べて区別がつかなかったように)味だけを比べれば国内産が勝るとは限らない。そのため、産出地・遺伝子組み換えの有無・使用した農薬・食品添加物などに関する表示は、消費者の選択を可能にするため、最低限必要なのである。
 なお、*9-2の「都会だから食料自給率が低い」という見解は成立せず、日本の食料自給率は先進国の中でも際立って低く、それもカロリーだけを比較するのは一面的で、本来は主要な栄養素の自給率を示すべきだ。また、「コメの消費拡大が鍵で、需要面の政策が必要」というような見解の人は議員・行政(殆どが栄養学の“え”の字も知らない男性)にも多いが、供給を需要に合わせるのが財・サービスを販売するには当然であり、「供給が余るから重要を増やす政策が必要」などとして糖尿病患者を増やすのは逆である。にもかかわらず、このような発想で農業政策を行い、余っても米に固執しながら減反してきたため、日本の農業政策は失敗したのだ。


政府と大学教員 SBS米の価格偽装  TPPで争点   先進国の食料自給率   嗜好の変化
 の会の試算    201610.23     となりそうな      国際比較       2016.10.24 
            日本農業新聞    食品安全基準                   西日本新聞

*9-1:https://www.agrinews.co.jp/p39269.html (日本農業新聞 2016年10月23日) SBS米扱う理由 商社「安いから」 相場は国産の2割安 本紙聞き取り調査
 輸入米の売買同時入札(SBS)取引を巡って日本農業新聞は、商社に聞き取り調査を行い、回答を得た全社が輸入米を扱う理由に「国産米より安いから」を挙げた。取引する米の相場は「国産品より2割安」が最も多かった。SBS米の「調整金」を使った価格偽装問題に対し、今月7日に農水省が公表した調査結果は、実需者への販売価格に十分踏み込まないまま、「国産相場への影響はない」と結論付けた。“安さありき”で取引される実態と、同省見解との間には大きなずれがある。国会での徹底審議が求められる。
●国の見解と食い違い
 調査は、今月13~21日にSBS参加資格を持つ全24の商社を対象に聞き取り、11商社(設問への一部回答も含む)の回答をまとめた。「輸入米を扱う理由」には、11商社全てが「国産米より安いから」と答えた。長い輸送時間で劣化しやすく、炊飯時に割れやすいなど品質面で見劣りする点も織り込んだ回答だ。タイ産の香り米などでは料理適性が調達基準になるが、まれなケースだった。米卸を通じた輸入米の売り先は、外食・中食といった業務筋が中心。企業や福祉施設向けの給食事業者もあった。安さを優先し、原産地表示が目立たない場面で採用されていた。単一銘柄での使用は少なく国産米とのブレンドが中心だった。実際に取引する輸入米の相場観は、国産米より「2割安」が4社と最も多く、「1割安」が2社と続いた。米国産やオーストラリア産より一段安い中国産を想定し、「4割安」とする回答もあった。近年、同省が公表するSBSの売り渡し価格は、国内業務市場で競合する国産B銘柄と接近するケースが目立つ。だが、同価格ではSBS米の魅力はなく、「公表される価格と実際の取引価格は、明らかに乖離(かいり)している」(大手商社)との受け止めが業者に広がっていた。調整金について商社は「農水省が定める売り渡し価格の最低ラインをクリアし、実需が求める安い水準で販売するための手法」(中堅)と受け止める。そうした使途を打ち消すために同省が挙げる「米卸が商社に支払う“逆調整金”もある」という事例は、「取扱量が少ない銘柄を試験輸入する場合など限定的」(大手商社)とみる。SBS売渡価格に米卸の手数料などを加算した実需への販売価格は、複数社が「1キロ当たり200円がボーダーライン」とみている。その水準を下回ると、実需の調達意欲が高まる傾向にあるという。14、15年度のSBS入札の不調は、国産米が大幅に値下がり、B銘柄を輸入米並みの価格で調達できたことが影響していたとみられる。

*9-2:http://qbiz.jp/article/96476/1/ (西日本新聞 2016年10月24日) 【福岡県の食料自給率20%】九州で唯一、全国の39%を下回るワケ
 国内で供給される食料のうち、国産で賄われる割合を示す食料自給率(カロリーベース)。日本は39%と先進7カ国(G7)で最も低く、食料の多くを輸入に頼っている実態があらためて分かる。さらに、これを都道府県別にみると、福岡県の“お寒い”状況が浮かぶ。自給率は九州で最低の20%。しかも唯一、全国の39%を下回る。
■胃袋は多いのに品目は低カロリー?
 直近は2014年度(概算値)のデータだ。それによると、九州の他6県は、佐賀90%▽鹿児島84%▽宮崎67%▽熊本59%▽大分48%▽長崎44%−の順で高く、全国の39%を下回っている県は一つもない。なぜ福岡だけ、食料供給が“ぜい弱”なのか。農林水産省のある職員はこう解説する。「福岡はそれなりの農業県だが、それ以上に人口(約510万人)が多いからだ」。つまり、胃袋の数が多く、供給が追いつかない、というわけだ。栽培品目に着目する意見もある。福岡県の農政担当者は「カロリーが低いお茶やイチゴなどの生産に力を入れていることも影響している」と分析する。確かに、野菜や果実に比べカロリーが高いコメの産地は上位に並ぶ。全国では、1位は北海道だ。自給率208%は北海道“二つ分”のカロリー供給力を誇る。全国の農地面積の4分の1超を占め、酪農の生乳や、畑作のばれいしょ、小麦の生産も盛んだ。2位以下は米どころが目立つ。秋田190%▽山形141%▽青森123%▽岩手111%▽新潟105%―が100%を超え、余剰分を他県へ“輸出”できる供給力を持っていることを意味する。逆に、自給率が低いのは、東京と大阪が1%と同率ワースト1位。続いて神奈川の2%がワースト3位で、「一ケタ」はこの3都府県のみ。いずれも大都市で、福岡の20%も、九州で都市化が進んだ表れかもしれない。
■コメ消費拡大が鍵、需要面の政策も
 都道府県別の食料自給率について、農水省は「2025年度末までに全国で45%」とする政府目標達成に向け、「地域ごとの取り組みを推進する参考データにしてほしい」と説明する。とはいえ、コメの生産を増やそうにも、簡単ではない。農水省は米価下落を防ごうと、生産調整(減反)を進めている。各都道府県に、上限となる生産数量を割り振り、過剰生産をしないよう要求。これを守らない生産者には、麦や大豆の転作助成金を支払っていない。食料自給率は1965年は73%だった。それが、経済成長とともに、右肩下がりに下がってきた経緯がある。背景には、日本人の食生活の変化を指摘する声もある。食の「欧米化」が進み、コメ中心の食事はパンやパスタ、卵、肉など、いずれも輸入に頼る食品へシフトした。畜産は、牛や豚、鶏といった家畜を国内で飼育しているものの、その飼料の大半を輸入に頼っているため、自給率は低いままだ。「米離れ」の実態は、1人当たりの年間コメ消費量をみると、明らかだ。1962年度の118キロをピークに、現在(2015年度)は54・6キロと半分以下になっている。コメは日本が唯一自給できる主食。その消費が増えれば、おのずと自給率も上がり、輸入への依存度も下がる。農水省は自給率アップについて「(麦や大豆など)コメ以外の農産物の生産量を増やして対応してほしい」というが、そもそもコメの消費拡大をどう進めるのか。需要面で実効性ある政策を示す必要もありそうだ。


PS(2016年10月26日追加):農業において種子は最も重要で、開発者に特許権があるにもかかわらず、何年もかけて開発した種子を技術提供として簡単に外国に渡しているのが我が国の現状だ。しかし、それを改めなければ外国産との差別化はできず、日本で種子の開発をする民間はなくなるだろう。

*10:https://www.agrinews.co.jp/p39282.html (日本農業新聞 2016年10月25日) 野菜種子を国産化 海外品より発芽率高く 福岡市の種苗メーカー
種苗メーカーの西日本タネセンター(福岡市)が、野菜種子の国産化に乗り出す。流通する種の大半が海外産の中、管理が行き届いた国内施設で育てて品質を高める。価格は海外品より高くなるが、発芽率は高まるため、種を買う農家の採算性はトータルで改善すると同センターは見込む。キュウリ、トウガンなど70~80種を栽培し、年内にもJAや種苗店へ販売する。日本種苗協会は「種子を本格的に国産化する事業は初めてではないか」と指摘する。福岡市内の3ヘクタールの農地に建てた6メートル×20メートルのハウス43棟で採種用の植物を育てる。ハウスでは1種類の採種を完全に終えた後、別の品種の栽培に移る。同センターによると、屋外中心の海外の圃場(ほじょう)は虫害や他品種との交雑、異物混入といったリスクがあり、「正品率の低さが課題だった」(諸岡譲代表)という。ハウス室内の温度やかん水は専門の社員が管理する。収穫した種子は消毒、選別した後、発芽率が高まるように種の外皮を研磨する。生産した種子の8割はグループ会社の中原採種場(同市)が販売を担う。県や農研機構などが育成した品種は同センターが直接JAなどに販売する。山口県と同県のJA下関が共同開発した小ネギ「YSG1号」などは山口県内の複数のJAと契約し、全量販売する予定だ。日本種苗協会によると国内に流通する種(F1種)の9割は海外産とみられる。気温などの栽培適性、農地の確保のしやすさ、人件費の安さが理由だ。ただ、異常気象や人件費アップなど海外の生産条件が今より悪化する恐れが高まっており、同センターは「国産化が安定供給につながる」と事業の将来性を見込む。同センターは今後、耕作放棄地を活用しながら規模拡大を進める計画だ。2020年までに農家委託を含め、県内外20ヘクタールにハウス計300棟まで増やす。扱う品種も段階的に増やす。消えそうな固定種や在来種の保存も進める考えだ。種子の海外輸出も想定する。同センターのハウスを今月、視察した佐賀県の職員は「近場で安定的に種子が供給される環境が整うようであれば、県内で使える品種があるか、検討したい」と期待する。事業化に当たっては、6次産業化などを後押しする農林漁業成長産業化支援機構(A―FIVE)やサブファンドが8000万円を出資した。


PS(2016.10.26追加):木質バイオマス発電は、限られた資源である木材チップを燃やして発電するシステムで、これが21世紀の日本で進められるのには驚かざるを得ない。また、農地を売却して製造業・運送業・倉庫業などの5業種の建屋に用途を変える場合は地主農家が所得控除を受けられるようにするというのは、日本でしかできない農業のための農地を、外国で簡単に肩代わりできる製造業に転用するということで、何の工場かにもよるが50年も前のスキームだ。さらに「食の安全意識の高まりから室内で野菜をつくる植物工場」と書かれているが、確かに農薬は使わないものの、限られた栄養素のみを溶かした水耕栽培で人工光による「形だけ野菜」を、誰が、どこで食べるのか、呆れてモノが言えない。

*11:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161026&ng=DGKKASFS24H4L_W6A021C1MM0000 (日経新聞 2016.10.26) 農地転用 税優遇広く、バイオマスや植物工場 製造業中心を転換
 農林水産省は農地を売却する農家への税制優遇を拡大する。全国で広がる木質バイオマス発電所や植物工場を運営する企業に売却する際にも所得税を軽くする方針だ。運営企業には固定資産税の軽減も検討する。現行制度で優遇を受けられるのは製造業などに転用した場合に限られる。産業構造の変化を踏まえ、新たな産業を誘致して農村で就労機会を増やす狙いだ。年末の与党の税制調査会の議論を経て実施を目指す。併せて2017年の通常国会に農村地域工業等導入促進法(農工法)の改正案を出す。現在は農地を売却して製造業や運送業、倉庫業など5業種の建屋などに用途を変える場合に限り、地主の農家は800万円を上限に所得控除が受けられる。一般的に農地転用は厳しく制限されるが、農工法のもとで例外が認められている。農水省は既存の5業種に加え、木材チップなどを燃料にするバイオマス発電所や植物工場、農家レストランなど農林業と関わりがある場合も税優遇の対象とする。追加業種を限定せず、広く対象に加える案もある。農家への優遇措置を広げるとともに、農工法が対象とする場所でバイオマス発電所などを運営する企業の進出も支援する。日本政策金融公庫の低利融資を受けられるようにするほか、新たに導入する機械設備の固定資産税を3年間は2分の1にする方向だ。農工法はコメ余りに悩んでいた農家の振興策として1971年に制定された。だが農地転用の有力な受け皿だった製造業は円高などで海外への生産シフトを加速させてきた。2015年の国内の工場立地面積はピークだったバブル期の4分の1まで減少。農工法に基づいて工業団地を整備するケースは1970年代に年間200件を超えることもあったが、2015年にはわずか1件にとどまった。代わって存在感を増しているのが農林業系の産業だ。11年の東京電力福島第1原子力発電所事故後に生じた電力不足の解消を狙ってバイオマス発電所の建設が相次いでおり、全国の認定容量は原発1.5基分に達した。食の安全意識の高まりから室内で野菜をつくる植物工場も全国300カ所を超え、地場産業としての期待が高まりつつある。バイオマス発電所や植物工場などの広がりは農工法制定時には想定されていなかった。農水省は新しい産業の誘致を通じ、農村での雇用機会の拡大につなげたい考えだ。


PS(2016年11月1、2日追加):*12-1に書かれているように、TPPが発効されれば、かつての不平等条約と同様、日本の農業や国民生活に打撃があるにもかかわらず、政府が自分もわかっておらず口当たりが良いだけの答弁を繰り返して採決に進もうとしているのは論外だ。なお、*12-2の鹿児島県鶏卵販売農協の経営の行き詰まりはもったいなく、①フクイチ事故で、放射能汚染の心配がない九州の農産物は付加価値がついているため全国区のスーパーや百貨店に販路を拡大する ②「飼料の高騰、高騰」と騒がなくてもよいように、材料は多いので安くて質の良い飼料を工夫して近くで作る などを行えば、経営が改善した上、飼料も販売できるようになると考える。また、*12-3のように、人口が減少して一人一人が豊かになる社会の休耕田や耕作放棄地の使い方には、佐賀県みやき町で秋咲きのヒマワリが咲いて観光名所になり、近くでこだわりの農産物を販売しているように、風景の美しさと食へのこだわりの両方を満足させる企画もある。 

*12-1:http://qbiz.jp/article/97095/1/ (西日本新聞 2016年10月31日) 「TPP反対」650人が気勢 JA福岡など福岡市で集会
 環太平洋連携協定(TPP)をめぐる衆院の論戦が大詰めを迎える中、JAグループ福岡などは29日、福岡市・天神のエルガーラホールで「TPP断固反対 農業政策要請 県農業者集会」を開いた。JA組合員(農業者)ら約650人が参加。「TPPが発効されれば、将来のわが国の農業のみならず、国民生活に対して大きな懸念を残す」などとするTPP反対の決議を採択した。JA福岡中央会の倉重博文会長はあいさつで、最近の国会審議に関して「野党の質問は丁寧だが、受け答えする政府側がはっきりしない。TPPは秘密主義だ」と批判。「(TPP承認案と関連法案について)急いで採決に向かっていることが全く分からない」と述べた。また、集会に参加した県選出の自民党国会議員らに対し、「TPPの合意内容が、農林水産分野の重要5項目などの聖域確保を求めた国会決議を満たしているとは考えられない。協定内容を十分に精査し、さらなる情報開示などを行うこと」などを要請。参加者は「TPP断固反対」と書かれた旗を掲げた後、「頑張ろう」と声を上げて集会を締めくくった。

*12-2:http://qbiz.jp/article/97174/1/
(西日本新聞 2016年11月1日) 鹿児島県鶏卵販売農協が2回目の決済も不調
 東京商工リサーチ鹿児島支店によると、鹿児島県内の養鶏農家でつくる「鹿児島県鶏卵販売農業協同組合」(鹿児島市)が2回目の決済も不調となり、経営が行き詰まっていることが分かった。事実上の倒産で、負債総額は約8億円の見込みになるという。同支店によると、同農協は1973年に採卵養鶏農家が共同出資して設立した。組合員となる農家が生産した鶏卵をスーパーなどに販売し、最盛期は売上高15億円を超えたという。しかし、卵の価格が低迷した上、飼料が高騰し、事業環境が悪化。資金繰りが悪化し、取引先への支払いを予定していた9月30日と10月20日の決済がそれぞれ不調に終わったという。

*12-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/372599 (佐賀新聞 2016年11月2日) 秋の棚田大輪10万本 みやき町の山田ひまわり園
 佐賀県みやき町簑原山田地区の「山田ひまわり園」で、秋に咲くヒマワリが見頃を迎えている。中山間地の棚田を活用した会場内には約10万本の黄色い花が咲き誇り、赤く色づいたケイトウとのコントラストが来場者の目を楽しませている。27日まで。地区住民でつくる山田地区中山間地組合が、耕作放棄地対策とにぎわいづくりを目的に2001年から取り組んでいる。昔ながらの石積みの棚田が残る約6千平方メートルの園内に、8月中旬から種をまいて準備を進めた。10月中旬から開花し、約2メートルの高さまで育った茎の先端に太陽に似た大輪の花を咲かせている。家族で訪れた西津博幸さん(47)は「インスタグラムで見て初めて訪れた。迫力があってきれいで、涼しいから子連れでもいいですね」と幼い我が子を抱きかかえながらほほ笑んだ。近年は観光バスのコースに組み込まれることも増え、長年の目標だった「来場者1万人」を2014年に達成。昨年は1万3千人が訪れた。今年は10日前後まで見頃が続くという。組合代表の眞子生次さん(69)は「棚田が荒れないよう守り続けるための活動だったが、ここまでの観光名所になった」と目を細める。場所は県道31号と136号が交わる綾部東交差点から北に約1・7キロ。開園時間は午前10時~午後4時半。大人1人100円の協力金を呼び掛けている。組合員らが手掛けた米などの農産物も販売する。問い合わせはみやき町観光協会、電話0942(96)4208。

| 農林漁業::2015.10~2019.7 | 08:44 PM | comments (x) | trackback (x) |

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