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2016,11,11, Friday
(図の説明:世界の女性リーダーは、現在では少なくない。しかし、2016年10月中旬から11月上旬にかけて、アメリカ及び韓国の女性リーダーに逆風が吹き、その内容には理不尽さがある。そして、それは、日本で女性・女系天皇の議論が抹殺された時期と一致する) (図の説明:2016年の世界経済フォーラム男女平等ランキングでは、アメリカは144カ国中45位、日本は111位(2015年は101位)、韓国は116位であり、日本は特に政治・経済で低い。このようなジェンダーギャップが生じる理由は、根拠なき「男らしさ」「女らしさ」の押しつけと先入観が、女性の社会進出や社会での昇進を妨げているからである。その結果、日本女性の所得は男性の半分しかない) (1)米大統領選について 1)選挙結果は、トランプ氏の勝利だった 米史上初の女性大統領候補となったヒラリー・クリントン氏(以下・ヒラリー)は、大統領選に敗れた直後、*1-1のように、「勝てずに申し訳ない」「最も高く硬いガラスの天井は、いつか誰かが破る」「今回の結果を受け入れて未来に目を向けよう」「正しいことのために戦うのは価値がある」等々の普通の演説を行い、それを日本の日経新聞は「涙みせず気丈に敗北宣言した」と表現した。この“涙みせず気丈に”と書いたところは、「女はよよと泣くのが当たり前」というジェンダーに満ちた行間になっており、外国や利害関係者とタフに交渉しなければならないアメリカ大統領にはふさわしくない人材であると表現してしまっている。これが、ジェンダーによって引き起こされる昇進差別の一例だ。 しかし、毎日新聞は、*1-2で、「女性の昇進を阻むガラスの天井を破って前国務長官となったヒラリー・クリントン」とヒラリーの実績を紹介しており、ここにはジェンダーはない。そして、「①米国では女性の大統領は必要ないと考える人がいる。ヒラリーは強い女性で、多くの男性は自分が脅かされていると感じる。彼女は率直にモノを言う。多くの男性は、それは女性の役割じゃないと考える」「②ヒラリーは公人として長く攻撃を受け続け、悪い印象が根付いてしまった」という女性指導者たちの見解を書いている。 ①は実際に存在する女性蔑視で、既に女性指導者がいる国も多いのにアメリカの不運は、選挙期間中のネガティブ・キャンペーンを公認したため、これが悪用され、候補者が嫌われ者同士のより嫌いでない方への選択になったことである。そのため、②のように、公人として長く攻撃を受け続けて悪い印象が根付いたり、疑惑にすぎないメール問題を選挙期間中にFBIに何度も蒸し返されたりしたことによって、ヒラリーの支持率は明らかに落ちた。 2)ヒラリーの支持率に悪影響を与えたメール問題 米連邦捜査局(FBI)は、2016年10月28日(大統領選の投開票日:2016年11月8日)に、*2-1のように、「大統領選民主党候補ヒラリー・クリントン氏の私用サーバー問題を見直す」と発表し、その理由は、別件で入手したメールが関係するかもしれないという疑惑レベルの曖昧なものだ。これに対し、ヒラリーは「訴追に相当しないとFBIが7月に下した判断に影響はない」と述べた。 しかし、この段階で、ヒラリーに投票したいと思っていた人も、「大統領になってから、FBIと闘ってばかりいるようでは大統領として機能しない」と判断したため、FBIはヒラリーへの選挙妨害を行ったことになる。 ただ、クリントン陣営のジョン・ポデスタ選対委員長が「FBIの発表のタイミングはとんでもない」と批判したり、陣営幹部のロビー・ムック氏が「FBIは政治的な領域に踏み込んだ」との見方を示唆したり、ヒラリー自身も「大統領選直前の動きとして前代未聞」「選挙直前のタイミングでこのように実体のない情報を公開するのはおかしい」とFBI長官を非難できたりしている点で、アメリカは日本や韓国よりはずっと民主主義や女性の社会進出について先進国で公正だと言える。 3)ヒラリーはガラスの天井を破る本物か 外国の大統領選のことで口出ししない方がよいと思ったため、私は選挙後までコメントしなかったのだが、ヒラリーが「今回の結果を受け入れて未来に目を向けよう」と演説しただけで、何がガラスの天井になったのかを分析してなくすよう努力したり、FBIの選挙違反を曝露したりしなければ、ヒラリーは「ガラスの天井を破る」という主張を切り札にして闘っただけであり、ガラスの天井を破る本物ではない。 どこかヒラリーに強い意思からくる魅力が感じられなかったのは、(日本のメディアの要約や翻訳が的を得ていなかったためかもしれないが)そのためではないかとも思われ、それでも当選しそうだったのは、相手がトランプ氏というラッキーな状態だったからと言えるのだ。 (2)韓国の女性大統領の困難 1)友人女性が国政に介入した疑惑? 一方、*3-1に書かれている韓国の朴槿恵大統領の友人女性が国政に介入した疑惑というのは、全く信用できない“疑惑”だ。何故なら、韓国の検察特捜本部は、2016年10月31日に、崔順実容疑者を緊急逮捕したが、その理由が「①崔氏は朴氏に国政の助言を与える一方で大統領との特別な関係を利用して様々な不正を行った疑いがある」「②崔氏が一連の疑惑について容疑を否認している」「③不安定な精神状態で、釈放した場合予期せぬ状況(自殺?)が起きる可能性も考慮した」とのことであり、このような理由で逮捕されるのであれば、疑惑を否認している限り釈放されないことになるからだ。 さらに報道に客観性のなさを感じたのは、*3-2のように、崔氏がソウル中央地方検察庁に出頭した際に報道陣や市民団体400人以上が集まり、11月1日の韓国朝刊各紙や日本メディアが脱げた靴の写真を「国内で買えば70万ウォン(約7万円)の高級品だ(私はさほどよいものとは思わなかったが、盗んだものでなければ民間人がどんな靴を履こうと自由)」と報じたり、韓国が購入するF35ステルス戦闘機の機種選定で崔氏が介入した疑惑があるとした報道が登場し外交・国防両省がそれぞれ事実関係を否定する事態になったり、宗教家だった崔氏の父が朴氏に接近した過去を報道したり、崔氏の娘がソウルの名門梨花女子大学に不正入学した疑いがあるなどとしているのは、次元の低い興味本位の作り話に見え、100歩譲ってそれが本当だったとしても朴槿恵大統領自身に罪があるわけではないからだ。 また、朴氏の方から機密文書を積極的に見せていたとされる点については、これから講演する原稿を崔氏に見せて意見を言ってもらったとしても、これから講演する原稿の内容に含まれるものが機密である筈がないため、「機密」の定義に照らして検討し直すべきである。 2)韓国政界の動きと朴槿恵大統領の談話 さらに、*3-3のように、講演原稿に意見を言ったくらいで「陰の実力者」にはなり得ないのだが、朴槿恵大統領は支援者の崔順実氏に機密文書を渡していたとして、野党3党は11月1日、「朴氏は検察当局の捜査に積極的に応じなければならない」との考えで一致したそうだ。 しかし、*3-4のように、朴槿恵大統領は、崔氏が国政に介入したという“疑惑”と関連して「必要なら私も検察の捜査へ誠実に臨む覚悟で、特別検察官による捜査も受け入れたい」と語り、国民向けの談話で「あらゆる事態は全て私の誤りで私の不覚によって起こり、大きな責任を痛感している」「今回の崔氏関連の事件で、語り尽くせない大きな失望と心配をおかけしたことを心からお詫びする」「国家経済や国民の暮らしの役に立つだろうという望みから推進されたことでしたが、その過程で特定個人が利権を手にし、さまざまな違法行為まで犯していたということで、非常に残念でみじめな心境」等々と語ったそうだ。 さらに、*3-5のように、涙ながらに「胸が痛む」「自分を許せない」などと謝罪したそうで、これがアジアの女性に求められる古いタイプの“素直さ”“謙虚さ”なのかもしれないが、そこまで自分に責任があると認める状況なら直ちに辞職すべきだというのが世界標準の価値感だ。 そのため、*3-6のように、韓国でも、朴氏の支持率は30歳未満では0となり、古いタイプの“素直さ”“謙虚さ”に共鳴する高齢者の支持と合わせても全体で5%の支持率となった。しかし、韓国大統領の朴氏に必要なことは、涙ながらに「反省」や「謝罪」をして見せることではなく、韓国の検察が崔氏を緊急逮捕したことの妥当性を検証し、その裏に働いている力を明るみに出すことだ。 3)朴槿恵大統領と崔順実氏が立ち向かわなければならないジレンマ 崔順実氏がソウル中央地方検察庁に出頭した際に集まっていた報道陣は、その殆どが男性だった。つまり、韓国のように女性の社会進出が進んでいない国では、昇進したり成功したりした女性の周囲は女性差別意識を持つ男性が殆どであるため、アメリカのように正論を言っても通じないのだ。 そして、古いタイプの“素直さ”“謙虚さ”が求められ、期待通りに振舞わなければ魔女狩りのように根拠のない批判をされ、それを聞いた視聴者もその異常さに気づかない人が多いという具合だ。そのため、朴槿恵大統領も自らの支持者に多い高齢者向けの態度をすれば世界標準から外れ、留学経験のある人も多い若者の支持を得られないというジレンマに陥っているのだろう。 (3)日本のレベルは? 1)女性・女系天皇 天皇陛下の生前退位については、*4-1のように、政府による有識者会議の初会合が2016年10月17日に開かれ、政府は今の天皇陛下に限って生前退位を認める特例法を整備する方針だそうだが、これは、天皇がお言葉の中ににじませられた内容とは大きく異なる。 さらに、世論は皇室典範改正による恒久的な制度作りを求める声が多く、女性・女系天皇も認める方向なのだが、政府は特別法を出し、それが一段落してから皇室典範改正に取り組む構えだ。しかし、これは、女性・女系天皇を認めず、今のままにしていたいという古い頭の政治家の意思にほかならない。 2)男女平等度で日本は111位 ダボス会議で知られるスイスの「世界経済フォーラム(WEF)」は、2016年10月26日、*4-2のように、「2015年版 男女格差報告」を発表し、これによれば、日本は144カ国中111位で下から数えた方が早く、先進7カ国(G7)中最下位だった。ちなみに、アメリカは45位、韓国は116位だ。 そして、日本女性は、健康(40位)や教育(76位)では中位だが、政治(103位)と経済(118位)は著しく低く、勉強はしたものの社会進出して認められている度合いが小さく、男性との格差が大きい。 これらのアメリカ、日本、韓国の状況は、外資系ビッグ4で働いていた時にはアメリカに近い形の洗練された女性差別を受け、国会議員など日本人の中で働くようになってからは日本・韓国に近い古典的・初歩的な女性差別を受けた私の体感と一致している。ただし、私は、その女性差別を決して受け入れることなく、一貫して闘って前進させてきたのを誇りとしている。 <米大統領選> *1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161111&ng=DGKKASGM10H7L_Q6A111C1FF1000 (日経新聞 2016.11.11) ガラスの天井 誰かが破る クリントン氏敗北宣言 涙みせず気丈に 米大統領選に敗れたヒラリー・クリントン氏(69)は9日午前(日本時間10日未明)、ニューヨーク市内のホテルで支持者やスタッフを前に演説し「勝てずに申し訳ない」と敗北を認めた。大統領夫人、上院議員、国務長官と華麗な政治キャリアを歩み、米史上初の女性大統領をめざしたがあと一歩及ばなかった。民主党のシンボルカラーである青と共和党の赤の中間にあたる紫色の入った服を身につけ、選挙の結果判明後に初めて公の場に姿を現したクリントン氏。夫のビル・クリントン元大統領が壇上で見守るなか、涙をみせることはなく淡々と支持者に謝意を述べた。トランプ次期大統領の下での融和を訴えつつ、女性の進出を阻む「ガラスの天井」の最後の1枚を破れなかったことには悔しさをにじませた。「最も高く硬いがいつか誰かが破る」。クリントン氏はこう語り、「初の女性大統領」を後進に託すメッセージを込めて敗北宣言を締めくくった。演説の主な内容は以下の通り。 ◇ ありがとう。皆さん本当にありがとう。昨晩、ドナルド・トランプ氏に祝意を伝え、国のために協力したいと申し出た。彼がすべての米国民のための大統領として成功することを願っている。選挙の結果は私たちが望むものではなかった。共有する価値観と国のビジョンのための選挙に勝てなかったことを申し訳なく思っている。多様性や創造性、活力に満ちたこの素晴らしい選挙戦を一緒に戦えたことを誇りに感じている。皆さんのための候補者になれたことは、私の人生にとって大変名誉なことだった。皆さんがどれだけ失望しているかは分かっているし、私もそうだ。私たちの選挙戦は希望に満ちて寛容な心を持つ米国をつくるためのものだった。この国は私たちが思っていた以上に深く分断している。それでも私は米国を信じているし、これからも信じ続けたい。今回の結果を受け入れて未来に目を向けよう。広い心で、トランプ氏に国を率いる機会を与えなければならない。憲法に基づく民主主義は権力の平和的な移行を定めている。法の支配、平等と尊厳、信仰や表現の自由を尊重し、守る必要がある。アメリカン・ドリームは人種や宗教、男女、移民、LGBT(性的少数者)、そして障害を持つ人を問わず全ての人のためのものだ。市民としての責任はより良く、強く、公平な米国を築く取り組みに参加し続けること。皆さんは今後もそうしてくれると思う。私はこれまでの人生で信じるもののために戦ってきた。そこには成功も挫折もあった。正しいことのために戦うのは価値があるということをどうか信じ続けてほしい。(女性大統領という)最も高くて硬いガラスの天井はまだ打ち破れていないが、いつか誰かが、私たちが考えているより早く達成してくれるだろう。 *1-2:http://mainichi.jp/articles/20161110/k00/00m/030/093000c (毎日新聞 2016年11月9日) 米大統領選 「ガラスの天井」クリントン氏、破れず 女性の昇進を阻む「ガラスの天井」を破り、女性初の大統領を目指したヒラリー・クリントン前国務長官(69)。女性の社会進出を先導し続ける人生だった。落選が確定した9日未明は支持者の前に姿を見せず、落胆の大きさがにじんだ。クリントン氏は選挙戦で「一緒なら強くなれる」と訴えた。人種や政治信条、経済状態の差を超え国民の融和と協力を主導する意向を打ち出したのだ。クリントン氏のスピーチライターだったリサ・ムスカティーンさん(62)は、「国の未来を考える」大統領になっただろうと指摘。女性やマイノリティー(人種的少数派)、貧しい人を支援し、国務長官の経験から外交にも積極的な指導者になっただろうとみる。法科大学院の教え子の弁護士ウッドソン・バセットさん(65)は、批判や攻撃にひるまない闘士のクリントン氏は「良い変化を起こせると信じていた」と語った。だが、「大統領の資質がない」と厳しく批判し続けた共和党のドナルド・トランプ候補に敗北した。なぜか。クリントン氏をよく知る人々の中には、米国に潜む女性政治指導者への反感を指摘する声もある。米大統領だった夫ビル・クリントン氏が知事を務めた南部アーカンソー州の知事公舎職員を務め、今もクリントン家と交流があるアン・マッコイさん(80)は「米国では女性の大統領は必要ないと考える人がいる。ヒラリーは強い女性で、多くの男性は自分が脅かされていると感じる。彼女は率直にモノを言う。多くの男性はそれは女性の役割じゃないと考える」と話した。世界の主な女性指導者ムスカティーンさんも「彼女は公人として長く攻撃を受け続け、悪い印象が根付いてしまった」との見方を示した。 女性指導者、世界各地に 8日の米大統領選では民主党のヒラリー・クリントン候補が敗れたが、国際社会で女性指導者は少なくない。 主要7カ国(G7)では、2005年にメルケル独首相(62)、今年7月にメイ英首相(60)が就任した。リトアニアやエストニアも女性大統領だ。東アジアでは韓国の朴槿恵(パククネ)大統領(64)、台湾の蔡英文総統(60)が初の女性トップ。ミャンマーでも民主化運動指導者アウンサンスーチー氏(71)が外相兼国家顧問を務める。西アフリカ・リベリアの女性大統領、サーリーフ氏(78)は11年にノーベル平和賞も受賞。ブラジルでは初の女性大統領ルセフ氏(68)が今年8月、汚職疑惑で失職した。 主要都市では小池百合子・東京都知事(64)やイダルゴ・パリ市長(57)、ラッジ・ローマ市長(38)が知られる。 <メール問題> *2-1:http://www.bbc.com/japanese/37809154 (BBC 2016年10月29日) 米大統領選2016】FBI、クリントン氏メール問題見直すと クリントン氏は自信 米連邦捜査局(FBI)は28日、大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏の私用サーバー問題を見直すと発表した。別件で入手したメールが関係するかもしれないという。これに対してクリントン氏は、訴追に相当しないとFBIが7月に下した判断に影響はないと自信を示した。11月8日投開票の大統領選まで11日。広告 クリントン氏はジェイムズ・コーミーFBI長官に、新しい捜査の内容を米国民につまびらかに説明するよう求めた。クリントン氏が米国務長官時代に公務メールを私用サーバーで扱っていた問題で、FBIはすでに機密情報を含むメールも私用サーバーを経由していたと確認。コーミー長官は7月、クリントン氏とスタッフの行動は「きわめて不注意」だったものの訴追には相当しないと発表していた。しかしコーミー長官は28日、連邦議会に対して書簡で、捜査員が発見した「別件に関する」メールが「(メール問題の)捜査に関係する様子」のため、メール問題を「見直す」と説明した。「この資料が重要かどうかまだ精査できていないし、この追加作業を終えるまでどれくらいかかるのか予測できない」と長官は書いている。消息筋によると、問題のメールは、クリントン氏の右腕とも言われる最も近い側近、フマ・アベディン氏の別居中の夫、アンソニー・ウィーナー元下院議員に対する捜査の中で発見された。FBIは、ウィーナー元議員が15歳少女に性的なメールを送っていた疑いに関連して、元議員やアベディンさんの電子端末を押収して調べていた。メールが何通あり、誰が発信あるいは受信したものかは明らかにされていない。アイオワ州デモインで記者会見したクリントン氏は、「米国の人たちはただちに、すべての事実を完全に知らされるべきです」と強調。「この問題がなんであれ、(FBIは)なんとしても、滞りなくこの問題を説明しなくてはならない」と求めた。クリントン氏はさらに、コーミー長官が議会に宛てた書簡は、「言及するメールが重要なのかどうかについても触れていない」と指摘。さらに、「(メールが)どういうものであれ、(訴追不相当という)7月の結論に変化はないと自信をもっている」と述べた。会見に先立ち、クリントン陣営のジョン・ポデスタ選対委員長は、FBIの発表のタイミングは「とんでもない」と批判した。11月8日投開票の大統領選まで、残すところあと11日。このメール問題は、告発サイト「ウィキリークス」が相次ぎ公表しているクリントン選対関係者の内部メールとは異なる模様だ。 ●クリントン氏の私用メールサーバーはニューヨーク州チャパクアの自宅に設置されていた 共和党候補ドナルド・トランプ氏は一貫して、メール問題についてクリントン氏とFBIを激しく非難し、クリントン氏は「刑務所にいるべきだ」などと発言してきた。またクリントン陣営に近いウィーナー元議員の存在は、米国の安全保障を脅かすと批判してきた。今回のFBI発表を受けて、トランプ氏はニューハンプシャー州マンチェスターでの支援者集会で、「アメリカ合衆国の安全を脅かした(クリントン氏の)犯罪的で違法な行動について、捜査が再開された」と述べ、「ヒラリー・クリントンは今まで見たことがないほど腐敗している。犯罪計画を大統領執務室にまで持ち込ませるわけにはいかない」と支援者を前に強調した。続いてアイオワ州に移動して集会に赴いたトランプ氏は、「ウォーターゲート以来最大の政治スキャンダルだ」と、ニクソン元大統領の辞任につながった1970年代のスキャンダルに言及。また「よほどひどい犯罪行為でなければ、FBIはこんな時期に捜査を再開したりしない」と述べた。クリントン氏の私用サーバー問題は2015年3月に米紙ニューヨーク・タイムズが最初に報道して明るみに出た。クリントン氏は当初、遺憾の意を示すことなく、「hdr22@clintonemail.com」の私用アドレスを国務長官の公務でも使った理由は主に「便利だったから」と説明していた。しかしその後間もなくABCニュースのインタビューで謝罪し、その後もたびたび有権者に謝っている。 *2-2:http://www.cnn.co.jp/usa/35091369.html (CNN 2016.10.30) クリントン氏、メール問題でFBI長官を非難 米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏の私用メール問題で、連邦捜査局(FBI)のコミー長官が新たなメールを調査していると議会指導部に通知したことに対し、クリントン氏は29日、大統領選直前の動きとして「前代未聞」だと述べて長官を非難した。クリントン氏は遊説先のフロリダ州デイトナビーチで支持者らを前に、「選挙直前のタイミングでこのように実体のない情報を公開するのはおかしい」と主張。さらに「前代未聞の、深く憂慮すべき事態。有権者には事実の全容を知らせるべきだ」と力説した。同氏はそのうえで「コミー長官はただちに全てを説明し、情報を全て提示する必要がある」と呼び掛けた。クリントン氏は共和党候補のドナルド・トランプ氏にも矛先を向け、この問題をめぐって同氏が「全力で米国民を混乱させようとしている」「すでに話をでっち上げ始めた」と不快感を示した。コミー長官は28日、私用メール問題との関連が疑われる新たなメールが別件の捜査で浮上し、FBIが同問題の捜査を再開したことを明らかにした。フロリダでの演説に先立ち、クリントン陣営を率いるジョン・ポデスタ氏は、コミー長官が選挙前のタイミングを計り、特定の内容だけを選んで公表したと非難。陣営幹部のロビー・ムック氏も、FBIは政治的な領域に踏み込んだとの見方を示唆した。両氏とも、浮上したメールには新たな情報が含まれていない可能性もあると指摘し、選挙戦への悪影響を打ち消している。クリントン氏の陣営は今年7月、私用メール問題で同氏の訴追を求めない方針を示したコミー長官の「プロ意識」を称賛していた。FBI長官の任期は10年で、コミー長官が就任したのは2013年。クリントン氏が大統領に当選した場合も、解任されない限り長官職にとどまることになる。 <韓国の女性大統領> *3-1:http://www.yomiuri.co.jp/world/20161031-OYT1T50115.html (読売新聞 2016年11月1日) 朴大統領の友人・崔容疑者を逮捕…国政介入疑惑 韓国の朴槿恵(パククネ)大統領(64)の友人女性が国政に介入した疑惑をめぐり、検察の特別捜査本部は10月31日、当事者の会社経営者崔順実(チェスンシル)容疑者(60)を緊急逮捕した。崔氏は朴氏に国政の助言を与える一方で、大統領との特別な関係を利用して様々な不正を行った疑いがある。韓国国内では私人の国政介入を許した大統領への批判が噴出しており、朴政権は機能不全に陥っている。聯合ニュースによると、検察は、緊急逮捕した理由について、崔氏が一連の疑惑について容疑を否認しているほか、不安定な精神状態にあり、釈放した場合、「予期せぬ状況」が起きる可能性も考慮したという。 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJC152YYJC1UHBI02L.html (朝日新聞 2016年11月1日) 韓国、チェ氏事件で報道過熱 脱げた靴や外交、北朝鮮… 韓国で、朴槿恵(パククネ)大統領から機密文書を受け取っていたとされる朴氏の支援者チェ・スンシル氏を巡り、国内の報道が過熱する一方だ。脱げたチェ氏の靴に焦点を当てたと思えば、日韓関係への影響にまで報道が及ぶ。韓国政府が一部の報道は事実でないと否定したり、北朝鮮が朴政権たたきに利用したりしている。10月31日午後3時、チェ氏がソウル中央地方検察庁に出頭した際は、報道陣や市民団体ら400人以上が集まった。もみくちゃにされたチェ氏は、左足の靴が脱げたまま庁舎に入った。翌1日付の朝刊各紙は、脱げた靴の写真を「国内で買えば70万ウォン(約7万円)の高級品だ」と報じた。韓国メディア幹部は「どの社も各部から人を集めた特別チームで、大量の記事を作っている」と語る。10月31日付の一部朝刊紙は、事件の余波で韓国は12月に日本で開かれる見通しの日中韓首脳会議への出席の返事を出せずにいると報じた。11月1日付には、韓国が購入するF35ステルス戦闘機の機種選定で、チェ氏が介入した疑惑があるとした報道も登場。外交、国防両省がそれぞれ事実関係を否定する事態になった。北朝鮮の朝鮮中央通信は1日、「各国メディアが朴槿恵最大危機を報道」と伝えた。韓国政府関係者は「内政干渉だ」として、不快感を隠さない。韓国では、宗教家だったチェ氏の父(故人)が朴氏に接近した過去や、チェ氏の娘がソウルの名門・梨花女子大に不正入学した疑いがあることが大きな関心を呼んでいる。一方で、朴氏の方から機密文書を積極的に見せていた場合、チェ氏は大統領記録物管理法違反には問われないという指摘も出ている。韓国政府の元関係者は「本当に責められるべきは、国民との意思疎通を欠いた朴大統領。チェ氏は鏡に映った朴氏のもう一つの姿に過ぎない」と語った。 *3-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJC14RGFJC1UHBI024.html (朝日新聞 2016年11月1日) 「朴大統領は捜査に応じよ」 チェ氏事件で野党3党 韓国の朴槿恵(パククネ)大統領が支援者のチェ・スンシル氏に機密文書を渡していた問題をめぐり、野党3党は1日、朴氏は検察当局の捜査に積極的に応じなければならないとの考えで一致した。野党は朴氏への攻勢を強めるが、憲法では大統領は在職中、刑事訴追は受けないと定められており、捜査に応じるかは不透明だ。野党の「共に民主党」、国民の党、正義党の院内代表が協議し、合意した。野党が国会で疑惑の解明を進めることも盛り込まれた。10月25日の緊急記者会見で、チェ氏に文書を提供し、意見を聞いていたことを認めた朴氏だが、その後は沈黙を続けている。詳しい説明をする予定もない。憲法の規定上、大統領が在職中に捜査を受けるかは解釈が分かれている。金賢雄(キムヒョヌン)法相は10月27日の国会審議で「捜査対象にならないというのが多数説」との見解を示した。検察当局も大統領への捜査は否定的とされる。一方、ソウル地方弁護士会は10月27日、真相究明を求める声明で「(憲法の規定で)捜査が難しいという話は成立しない」と主張した。韓国紙「朝鮮日報」は1日付の社説で、今は法の解釈が問題ではないとして、「大統領が国民の前に出て来なければならない」と自ら説明するよう求めた。朴氏に対する世論は、厳しさを増している。韓国紙「文化日報」の1日付夕刊は、10月29~30日に実施した世論調査で、望ましい事態の収拾策として朴氏の「辞任」が36・1%で最も多く、「弾劾(だんがい)」の12・1%と合わせると、退陣を求める意見は48・2%にのぼったと報じた。与野党の合意による「挙国一致内閣」は26・1%だった。検察当局は、10月31日深夜に緊急逮捕したチェ氏に対する逮捕状を2日に請求する予定だ。韓国の刑事訴訟法では、逮捕状は緊急逮捕から48時間以内に裁判所に請求する必要がある。チェ氏は疑惑を否認しているという。また2日午後には安鍾範(アンジョンボム)・前大統領府政策調整首席秘書官を事情聴取する。安氏は、チェ氏が私物化したとされる財団の資金集めに関わったとの疑いがもたれている。 *3-4:http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/11/04/2016110401105.html (朝鮮日報 2016/11/4) 国政介入:「残念、みじめ」 朴大統領が検察捜査を受け入れ 韓国の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が4日、「陰の実力者」といわれる崔順実(チェ・スンシル)氏が国政に介入したという疑惑と関連して「必要なら私もまた検察の捜査へ誠実に臨む覚悟で、特別検察官による捜査も受け入れたい」と語った。朴大統領は4日午前10時30分、国民向け談話を通してこのように語った。朴大統領は談話で「あらゆる事態は全て私の誤りで、私の不覚によって起こったこと。大きな責任を深く痛感している」と語った。続いて朴大統領は「今回の崔順実氏関連の事件で、到底語り尽くせない大きな失望と心配をおかけしたことを、あらためて心からお詫びします」「何より、私を信じて国政を任せて下さった国民の皆さんに、取返しのつかない心の傷を負わせてしまい、非常に胸が痛い」と語った。また「私と共に献身的に走ってくださった政府の公職者や、現場の多くの方々、そして善意の支援をしてくださった企業の皆さんにも深い失望を与え、申し訳なく思っています」「国家経済や国民の暮らしの役に立つだろうという望みから推進されたことでしたが、その過程で特定個人が利権を手にし、さまざまな違法行為まで犯していたということで、非常に残念でみじめな心境」と語った。 *3-5:http://toyokeizai.net/articles/-/143568 (ロイター 2016年11月4日) 「自分が許せない」韓国の朴大統領、親友の国政介入疑惑を謝罪 韓国の朴槿恵大統領は4日、テレビを通じて国民向け談話を発表し、親友である崔順実氏の国政介入疑惑をめぐる政治スキャンダルについて、涙ながらに「胸が痛む」と述べ、謝罪した。検察の捜査に協力することも表明した。朴大統領は、検察当局に対し疑惑の全容解明を要請。自らを含め問題に関わった全員に責任があり、有罪であることが判明した場合は責めを負うべきだと述べた。さらに、声を震わせながら「自分を許せない」と話した。検察の当局者は、朴大統領が事情聴取の対象になるかとのロイターの質問へのコメントを控えた。現職の大統領がこれまで、検察の捜査を受けたことはない。野党の共に民主党の秋美愛(チュ・ミエ)代表は朴大統領の謝罪が不誠実だと批判。「大統領は国政から手を引くべきだ」と指摘したが、辞任要求はしていない。崔容疑者については「われわれが国家経済や国民生活を支援するため努力している一方で、特定の個人が利益を享受し、複数の不法行為に関与していたとの疑惑が持たれていることは非常に不幸で、残念だ」と述べた。スキャンダルをめぐって大統領の支持率は低下しており、ギャラップがこの日公開した世論調査では過去最低の5%となっている。 *3-6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/375652 (佐賀新聞 2016年11月11日) 朴氏支持率、30歳未満でゼロ、韓国、全体では5% 韓国の世論調査会社「韓国ギャラップ」は11日、朴槿恵大統領の支持率について、調査対象で最若年層の19~29歳で支持率がゼロになったとの結果を明らかにした。調査は朴氏が親友、崔順実氏の国政介入疑惑で2回目の国民向け謝罪を行った後の8~10日に実施されたが、全体の支持率は前週と同じ5%。不支持率は前週より1ポイント増え、90%に達した。地域別でも、野党が強い南西部の全羅道地域での支持率はゼロだった。調査は約千人を対象に行われた。朴氏は4日の国民向け謝罪で、捜査を受け入れると表明し、涙を見せて「反省」を訴えた。 <日本のレベルは?> *4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12612681.html (朝日新聞 2016年10月18日)女性天皇の議論は除外 来月、専門家から聴取 有識者会議 天皇陛下の生前退位をめぐり、政府による有識者会議の初会合が17日、開かれた。政府は今の天皇陛下に限って生前退位を認める特例法を整備する方針だが、実現には世論と国会のハードルが待ち受ける。「今上陛下が82歳とご高齢であることも踏まえ、公務の負担軽減などを図るため、どのようなことができるのか静かに議論を進めていきたい」。17日夕、安倍晋三首相は有識者会議の初会合冒頭でそう語った。この日は約1時間10分の会議で、当面のスケジュールを確認した。11月には上旬から3回に分けて、皇室制度や歴史の専門家ら計十数人からヒアリングを重ねる。年明けにも論点整理を公表する方向だ。政府は今の天皇陛下に限って退位を可能とする特例法を軸に法整備を検討する。ただ、報道各社の世論調査では特例法による対応ではなく、皇室典範改正による恒久的な制度作りを求める声が多い。国会でも、民進党や共産党などから皇室典範改正の検討を求める声が上がる。このため、有識者会議では生前退位だけでなく、摂政制度など幅広い選択肢を示し、それぞれ課題や問題点を列挙。早急に対応できる特例法のメリットを世論に理解してもらう狙いだ。有識者会議は今回、小泉政権時代に検討された女性・女系天皇の是非は対象から外す。首相官邸幹部は「皇室の安定的な継続のために必要な議論だが、時間がかかる」と指摘。将来、皇室典範改正を目指す際の課題とする考えだ。有識者会議メンバーの山内昌之・東大名誉教授は17日夜、BSフジの報道番組で「特別法を出すことで、まず(生前退位を)解決する。それが一段落してから皇室典範改正に取り組む姿勢を打ち出すことは、荒唐無稽のことではない」と語った。一方、政府は有識者会議の開催に合わせて報道各社に対し、有識者メンバーが官邸に出入りする際の取材を控えるよう要請した。首相周辺は「メンバーが最初に意見を言ったら会議に色がつく」と説明。情報管理に神経をとがらせる政府の姿勢がにじんだ。座長となった今井敬・経団連名誉会長は、初会合後の記者会見で「予断なく議論し、専門家の意見をよく聞いていろいろな判断をする」と語った。ヒアリングの対象となる専門家は十数人で、1人当たりの聴取時間は30分を想定。関係者によると、対象者として退位に賛成する所功・京都産業大名誉教授や、退位に反対する八木秀次・麗沢大教授ら幅広い名前が候補に挙がる。政府は初会合前から人選を進めており、専門家の選定も官邸主導で進む可能性が高い。 ◇ 「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の初会合の出席者(17日、首相官邸) 【有識者】 ◆今井敬・経団連名誉会長=座長 ◆御厨貴・東大名誉教授(日本政治史)=座長代理 ◆小幡純子・上智大法科大学院教授(行政法) ◆清家篤・慶応義塾長(労働経済学) ◆宮崎緑・千葉商科大教授(国際政治学) ◆山内昌之・東大名誉教授(国際関係史) 【政府】 ◆安倍晋三首相 ◆菅義偉官房長官 ◆杉田和博官房副長官 ◆衛藤晟一首相補佐官 ◆古谷一之官房副長官補 ◆西村泰彦宮内庁次長 ◆近藤正春内閣法制次長 ◆山崎重孝内閣総務官 *4-2:http://qbiz.jp/article/96751/1/ (西日本新聞 2016年10月26日) 男女平等 日本は111位 WEF発表 ダボス会議で知られるスイスの「世界経済フォーラム(WEF)」は26日、2016年版「男女格差報告」を発表。日本は調査対象となった144カ国中111位で、前年より順位を10下げ、先進7カ国(G7)中で最下位だった。 ●前年より順位10下げる 報告書では、日本は分野別で健康(40位)や教育(76位)では中位以上だったが、政治(103位)と経済(118位)で女性の進出が遅れ、男性との格差があるとされた。女性の議員数の少なさや、女性首相を出していないこともマイナス要因となった。首位は8年連続でアイスランド。2位フィンランド、3位ノルウェー、4位スウェーデンなど北欧諸国が上位に並んだ。米国は45位、中国は99位、韓国は日本より低い116位だった。アジアで上位10位に入ったのはフィリピン(7位)のみだった。トルコ(130位)、エジプト(132位)、イラン(139位)など中東諸国が下位に並び、最下位はイエメン。WEFは「世界的に経済参加や雇用機会での男女格差が拡大しており、予測では2186年までその差は縮まらないとみられる」としている。男女格差報告は各国の女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析、数値化している。 PS(2016年11月12日追加):*5の「ヒラリーはなぜ敗れたのか」という記事で、政治アナリストの横江氏が、「ヒラリーには、ウォールストリートから多額の企業献金を集め、彼らの方を向いた政治家という古臭いイメージがあり、時代遅れ感があった」と述べているが、オバマ大統領が国民皆保険を目指して制定し、トランプ大統領の誕生によって存続の危機に瀕しているアメリカの国民皆保険制度は、最初はクリントン政権時代にヒラリーが手を付けたものであり、時代遅れどころか現在も渦中にある制度だ。また、ヒラリーは中産階級出身で、弁護士となってファースト・レディーや国務長官を歴任したアメリカン・ドリームの体現者であるため、それを「優等生的な『上から目線』でも嫌われた」というのは、日本人独特のjealousy(嫉妬)を含んだ狭量な見方であり、アメリカ人はアメリカンドリームの体現者や成功者を褒める気質があるため、このような卑屈なことは言わないのである。そのため、そういうことよりも、大切な時期にFBIが「メール問題」という曖昧な疑惑でヒラリーの捜査をしたこと、分刻みで世界を飛び回らなければならないアメリカ大統領が体力的に勤まるかと思われる局面がヒラリーにはあったこと、アメリカの大統領選挙が国民全体の意志を反映するのではなく選挙人の数を競う競争になっていることなどが敗因だと考える。 また、映画作家想田氏の「米国人の13%が女性大統領の誕生に怒りを感じと答えた」というのは、本当なら私には意外だが、「男性候補なら『力強い』と好意的に受け止められたものが、女性候補だと『隙がない』『性格がきつい』と思われなかったか」というのもジェンダー後進国の日本人の目であり、アメリカ人はそうではないからこそ、ヒラリーは大きなジェスチャーとはっきりした言葉で演説を行っていたのだ。そのため、ヒラリーに不運があったとすれば、候補となったのが8年前ではなく、現在だったことだろう。 *5:http://mainichi.jp/articles/20161111/dde/012/030/004000c (毎日新聞 2016年11月11日) 特集ワイド:ヒラリーはなぜ敗れたのか 米大統領選結果、識者2氏が分析 本命だったはずの候補が敗れ、「米国史上初の女性大統領」は結局、誕生しなかった。「嫌われ者同士の戦い」とも称された米国大統領選。暴言暴論を繰り返し、女性問題まで露呈したドナルド・トランプ氏(70)を相手に、政治家としてのキャリアも長いはずのヒラリー・クリントン氏(69)は、なぜ負けたのか? ●時代遅れ、尊大な印象拭えず 政治アナリスト・横江公美さん クリントン氏の最大の敗因は、政策や言動の「時代遅れ感」です。だから有権者の心をつかめませんでした。米国で今、一番不満をためているのは中間層です。貧困層は、オバマ政権が国民皆保険を目指した医療保険制度改革で救われた。「次は我々を」と中間層は望んだ。だから民主党の候補者争いをしたサンダース氏は政策を「左」に振り切り、中間層が最も喜びそうな「大学授業料免除」を掲げました。この問題が米国で最も深刻だから。子ども2人を借金なしに米国内の大学に進学させるには1世帯年収27万ドル(約2800万円)が必要というデータもあるほどです。一方、トランプ氏は当選したらすべての所得層を対象に所得税減税を行う、と断言しました。ところがクリントン氏はそのどちらの政策にも踏み込めず、中間層にアピールできなかった。そもそも彼女には、ウォールストリートから多額の企業献金を集め、彼らの方を向いた政治家、という古臭いイメージがある。「私用メール問題」がそれを決定づけました。米国は情報公開や金銭の流れの透明性を重要視する社会です。透明性のない、危機管理もできない、時代遅れな候補--という印象を有権者に与えてしまいました。もう一つ、優等生的な「上から目線」でも嫌われました。米国が「世界の警察」の時代ならば、そのような言動はリーダーシップとして好意的に受け取られたでしょう。でも今はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で「いいね!」の数を競う時代です。フレンドリーさが好まれる。トランプ氏はその点、暴言は多いけれど人間味があります。「キング・オブ・ブルーカラー」と呼ばれていましたから。クリントン氏は今回、2008年の予備選と違って、女性の立場を強調し、「マイノリティー(人種的少数派)のための代表」を前面に出すなど、戦術を変えていました。それでも有権者は彼女の「偉そう」な印象を忘れていなかったのです。一方、トランプ氏が前評判より票を集めたのは「隠れトランプ支持者」が大勢いたから。多様化の時代、「メキシコ国境に壁を」と言う候補への支持は恥ずかしくて口には出せない。それでも今の政治に不満を持ち、トランプ氏に変化を期待した有権者がそれだけ大勢いたということ。クリントン氏は、変化を求める時代の空気を読み切れなかったのです。 ●米国社会に根強い「女性嫌い」 映画作家・想田和弘さん 格差が拡大し、中間層が没落する中、米国人が既存の政治に不満を持つのはよく分かります。しかし、トランプ氏はむしろ状況を悪化させるでしょう。人種差別をあおる人物でもあり、米国と世界の行方がとても心配です。クリントン氏が負けた理由はさまざまですが、一つは米国社会に根付き、払拭(ふっしょく)できない「ミソジニー(女性嫌い)」だったと思います。もしも彼女が男性だったら結果は違ったのではないでしょうか。ある政治学者が今年行った調査によると、米国人の13%が「女性大統領の誕生」に「怒りを感じる」と答えたそうです。男女別の回答で見ると、女性はほぼ0%だったのに、男性は実に26%。「怒りを感じる」が4人に1人以上いたのです。「女を大統領にしたくない」という差別意識やミソジニーこそが、彼女の敗因だったと思います。米国人は大統領に「強さ」を求める傾向があります。それだけでも、女性には不利なのでしょう。クリントン氏は十分に強い女性だと思いますが、しかし、男性候補なら「力強い」と好意的に受け止められたものが、女性候補だと「隙(すき)がない」「性格がきつい」と、男性から見たフェミニストのステレオタイプなイメージに重ねられてはいなかったでしょうか。もう一つ。政治経験のないトランプ氏に対して、クリントン氏は政治家としてのキャリアが長く、実績もある。そのことがかえって、災いしたように思えます。扇動家としての能力にたけたトランプ氏は、ワシントンの政治家たちを「既得権益」と位置付けて攻撃し、人々の政治に対する怒りに火を付け、徹底的にあおりました。今回、米大手メディアは軒並みクリントン氏を支持し、トランプ氏を徹底的に批判しました。しかしトランプ氏は勢いを失わなかった。日本で「マスゴミ」という言葉が多用されるのと同様、米国でも既存メディアが「既得権益」とみなされてしまったからでしょう。また、トランプ氏は既存秩序の「破壊者」のように自らを演出することに成功した。だから、暴言を吐き、スキャンダルが暴かれても、そのダメージを最小限に抑え、時には魅力にすり替えられました。結局、夫も大統領を務めたクリントン氏は「既得権益」の代表格として、政治不信と憎しみの対象にされてしまったのです。 PS(2016年11月14日追加):入国者の子どもの教育・医療・失業問題などの国民負担を伴うため、移民を無制限に受け入れなければならないというのは、独立国としてむしろ不自然だと私も思っていた。そのため、難民や外国人労働者に国を閉ざすことなく、秩序だって受け入れるのは国の発展や世界貢献のために必要だが、国境にフェンスくらい作って、不法移民を強制送還するのはよいと考える。 *6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/376424 (佐賀新聞 2016年11月14日) トランプ氏、300万人を強制送還、壁建設は軟化 トランプ次期米大統領は、200万~300万人の不法移民を公約通りに米国外へ強制送還する方針を強調した。CBSテレビが13日、トランプ氏のインタビューを伝えた。大規模な強制送還は内外に波紋を広げそうだ。トランプ氏は不法移民流入を防ぐためメキシコ国境に壁を建設する方針も確認した。ただ、一部地域では壁ではなくフェンスを採用する可能性を示し、壁にこだわる姿勢を軟化させた。米国内の不法移民はヒスパニックを中心に1100万人を超える。トランプ氏は、強制送還されるのは「犯罪者や犯罪歴がある者、ギャングのメンバー、麻薬密売人だ」と説明した。
| 男女平等::2015.5~2019.2 | 05:35 PM | comments (x) | trackback (x) |
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