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2016.11.15 農業たたきの“農業改革”では、国民も国益も守れないこと (2016年11月16、17、22、26日に追加あり)

    2016.6.30     2015.11.11  大規模化による生産性向上 オ二ヒトデの肥料への活用        
    西日本新聞      毎日新聞     2016.8.30佐賀新聞     2016.6.18農業新聞

I.TPPの推進とそれに反対する者への反グローバル、ポピュリズムという烙印の不適格性
(1)トランプ氏の勝利、環太平洋連携協定(以下、TPP)、日本の反グローバル報道
1)トランプ氏の勝利とTPP
 *1-1のように、次期大統領に就任するトランプ氏がTPP脱退の意向を表明しているため、米政府が来年1月までのオバマ大統領の任期内にTPPの議会承認を獲得することを断念したそうだ。TPPは米国議会が承認しなければ発効せず、日本も政策の見直しを迫られるので、アメリカでのトランプ氏の勝利によって、政府が馬鹿な政策を進めてきた日本も救われそうで、情けない話だ。

2)的外れな“反グローバル”報道
 *1-2のように、日経新聞は「①米英の展開は、アングロサクソンの両国が導くグローバル化やエリート主義に庶民が募らせる不満の表れ」「②活発な競争を通じた新自由主義や多国間自由貿易の枠組みを築く従来の路線を否定することが有権者の心をつかむ」「③反グローバルを唱えて票を稼ぐ模範例ができ、大衆迎合主義(ポピュリズム)を武器とする政党が勢いづいた」「④人々を扇動するポピュリズムは、西側の至る所で憂慮すべき事態になった」「⑤保護主義を強引に進めていくだけでは、経済繁栄や生活充実への解にならない」と書いており、TPP反対やEU離脱を反グローバル化、保護主義、ポピュリズムと決めつけており、これはTPP推進派の論拠になっているものの、事実を直視していない指摘だ。

 まず、①の「アングロサクソンの両国が導くグローバル化やエリート主義」というのは、日本独特の、事実に基づかないエリート批判だ。何故なら、アングロサクソンだけでなく、ラテン系(フランス、スペイン)もユダヤ人、中国人もずっと昔からグローバル化して世界に広がっていることは誰もが知るところだからだ。そして、ここで言っている現代のグローバル化は、(私は公認会計士・税理士としてそれらの国の日本に進出した企業の監査や税務を担当していたため知っているのだが)1980年代から本格的に進められており、その頃の日本は、それらの国の日本進出に消極的で保護主義だった。

 また、②については、EUやアメリカが多国間自由経済圏を作った結果、物価水準と賃金が低い国の労働者に負けて失業した先進国の労働者が不満を募らせたもので、この路線の失敗は、先進国の労働者を吸収できる現代産業を育成しなかったことや連携が規制・制度・産業政策・移民の受入・戦争開始・財政などの国家主権に関わることにまで行きすぎたことが原因で、自由貿易が否定されたわけではない。

 そのため、有権者の心を掴んだ主張を③のようにポピュリズムと決めつけ、④のようにポピュリズムは人々を扇動する憂慮すべき事態だと吹聴するのは、少数の行政官による“エリート”の判断が、行政官よりもそれぞれの分野で百戦錬磨したいろいろな専門家を含んでいる“民衆”の判断よりも絶対に正しく、遅れた行政におんぶにだっこされた政治の方針に反対するのは愚かな民衆だとするもので、それこそ時代錯誤の誤ったエリート主義なのである。

 なお、⑤について、保護主義を強引に進めていくだけでは経済繁栄や生活充実への解にならないのは事実だが、今後の産業政策を考えていない(つまり国益を考えていない)大雑把な自由化で国内産業をいためつけるのが経済繁栄や国民生活の充実に繋がることはないため、「自由貿易=日本の発展」という日本が開発途上国だった時代の古くて単純なフレーズを繰り返すのではなく、目的・手段・結果をきちんと調査して検証すべきである。

3)TPPを推進しているのは日本だった
 TPPの発効に不可欠な米国の批准が困難になった中、*1-3、*2-4のように、TPP承認案と関連法案が2016年11月10日に衆院本会議で自民党・公明党・日本維新の会の賛成多数で可決された。数の上では賛成多数で必ず決議されるため、反対する党は退席したり、山本農相の発言を問題視して不信任決議案を提出したりすることくらいしかできない。これが、ねじれのない“決められる政治”の実態だ。

 また、与党と日本維新の会が「自由で公正な開かれた経済の枠組みを作ることは、わが国の大きな使命であり、核となるのがTPPだ」としたことで、TPPを積極的に推進しているのは日本だということが明らかになった。そのため、結果が日本の一人負けになるTPPの交渉過程は見せられず、TPP協定の日本語訳も作らせず、TPP承認案とその関連法案に関する丁寧な議論もしない状態にしているのだろう。

(2)日本の市民と日本政府
 日本では、*2-1のように、生産者や市民の声が政治に届いていない。「自由貿易=日本の発展」という単純なフレーズを繰り返すだけの答弁には意味がなく、農業・食の安全・国民皆保険制度の維持・ISD条項などへの不安は拭えない。政府はTPPが発効すれば輸出拡大できると主張し、農業を成長産業として農産物の輸出にてこ入れするそうだが、そのようなことはTPPがなくてもやればよく、TPPは農業や暮らしに大きな影響を与えるため、地方にとっては死活問題なのだ。そのため、佐賀市議会が会期中の臨時国会でTPPを批准しないよう求める意見書を全会一致で採択しているのは妥当である。

 また、*2-2のように、福岡県農業総合対策協議会やJAグループ福岡、福岡県農政連は10月29日に、TPP断固反対を訴える集会を福岡市で開いている。

 なお、*2-3のように、水産物の8割で関税が撤廃されるそうだが、南北に広い海洋を持つ日本は水産業には有利で、養殖や加工・運搬技術を高めれば、TPPがなくても水産加工品の輸出で稼ぐことは十分に可能だと、私は考えている。

II.農協破壊の農協改革は農業に役立たないこと
(1)「金融」地域農協半減等の改革は正しいか
 *3-1、*3-2、*3-3のように、政府の規制改革推進会議農業部会が、地域農協が農産物販売などに専念できるよう「金融」地域農協を半減して農産物の販促に専念し、肥料・農薬の販売事業を縮小することを促しているそうだが、これこそ「いらん世話」であり、政府が大雑把な実態把握で民間の経営に関与することこそ最も経営の失敗に繋がりやすいのである。そのため、*3-4のように、民間の独立組織である全農改革に素人の不当な経営介入を許すなという主張は正しい。

 また、貯金の受け入れや金の貸し付けをする金融事業を手がける地域農協を3年以内に半減させ、地域農協の金融事業をJAグループの農林中央金庫に譲渡して、農林中金の代理店が金融サービスを維持する仕組みは、地域の金が中央に吸い上げられて無駄に使われ、その地域の農業に再投資されなくなる恐れが大きいのが問題であるため、この点には特に注意すべきだ。農林中央金庫は、(私も驚いたのだが)一般金融機関と一緒にアメリカのサブプライムローンに協調融資してリーマンショックで大損し、アメリカでは所有者が変わっても建てられた家が残ったが、日本の預金者は損だけしたものである。

(2)本当に必要な改革は・・
 本当に必要な改革は、農協、全農、会員農家の立場に立ち、消費者や国益も考慮して行われたアドバイスに基づいて経営主体が行う改革であり、そのためには地域によって異なる気候、地形、農産物、耕畜水産連携の可能性などを調査して現存するものをできるだけ活かしながら、さらなる生産性の向上や付加価値の向上を図ることが必要なのである。私は、やればそのアドバイスはできるが、現在はそれぞれの地域の農業を知る立場にないため、これ以上に詳しいアドバイスはできないわけだ。

<トランプ勝利、TPP、日本の報道>
*1-1:http://qbiz.jp/article/98002/1/ (西日本新聞 2016年11月12日) 「オバマ氏TPP断念」米紙報道
 米政府が来年1月までのオバマ大統領の任期内に環太平洋連携協定(TPP)の議会承認獲得を断念したと、複数の米紙が11日、報じた。次期大統領に就任するトランプ氏はTPP脱退の意向を表明しており、方針転換がない限り協定発効は絶望的だ。アディエモ米大統領副補佐官も11日、TPPについて「議会が次期大統領と協議する課題だと考えているのは承知している」として、任期内の議会承認が困難だとの認識を示した。TPPは参加12カ国で最も経済規模が大きい米国の議会が承認しなければ発効しない。米国と共にTPPを主導した安倍政権は通商政策の見直しを迫られそうだ。報道では、米議会の共和、民主両党首脳部が承認手続きを進める意向はないと政権側に伝えたとしている。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161111&ng=DGKKASGM10H6Z_Q6A111C1MM8000 (日経新聞 2016.11.11)反グローバル 解なき拡散 編集委員 菅野幹雄
 米国と英国という、世界を代表する2つの民主主義国が、半年で次々と既存秩序をぶち壊した。
 「再び偉大な米国を」(Make America great again)。トランプ米次期大統領の合言葉は6月の英国民投票で欧州連合(EU)離脱派が使った「再び偉大な英国を」とうり二つ。どちらも世論調査機関や市場は有権者の変革への意思を全く読み誤っていた。写し絵のような米英の展開は、アングロサクソンの両国が導くグローバル化やエリート(支配層)主義に庶民が募らせる不満の表れだ。国家や市場を分ける壁を取り、貿易や人の流れを自由にしても繁栄の果実は届いていない。むしろ激しい競争で職や生活に不安が増し、米国人の8割は所得水準が金融危機前を下回るとされる。活発な競争を通じた新自由主義や多国間で自由貿易の枠組みを築く従来の路線を否定することが有権者の心をつかむ。トランプ氏のもと日本を含む環太平洋経済連携協定(TPP)や米・EUの環大西洋貿易投資協定(TTIP)の実現は極めて難しくなった。反グローバルを唱えて票を稼ぐという模範例ができ、大衆迎合主義(ポピュリズム)を武器とする政党が勢いづく。フランスの極右、国民戦線のルペン党首は「米大統領選は自由の勝利。我々も自由を阻むシステムを打ち壊そう」と2017年春の仏大統領選に向けて既存政党との対抗姿勢をむき出しにした。英国に続く離反を避けたい欧州の周辺国は気が気でない。「人々を扇動するポピュリズムは、米国だけでなく西側の至る所で憂慮すべき事態になった」とドイツのショイブレ財務相は指摘する。来年の欧州は仏大統領選とオランダ、ドイツの総選挙が重なる選挙の当たり年だ。トランプ氏が大統領として剛腕を発揮するほど、反EUの機運は高まりかねない。世界経済を支える貿易の停滞に国際通貨基金(IMF)などの危機感も強い。反グローバル化を叫ぶ勢力の伸長は止まりそうにないが、それを唱え、保護主義を強引に進めていくだけでは、経済の繁栄や生活の充実への解になり得ないのは明らかだ。「偏狭なナショナリズム(国家主義)の乱立になりかねない」。中前国際経済研究所の中前忠代表は危惧する。グローバル化や市場主義に背を向けるのでなく生じたひずみをどう直していくのか。「グローバル化に代わる選択肢はない。もっと人間的な形に変えていく努力こそが必要だ」。仏モンテーニュ研究所のドミニク・モイジ首席顧問は過剰な不平等の解消など具体的な政策の明示を呼びかける。有権者の怒りを踏み台にのし上がったトランプ氏も、これから彼らを納得させる答えを示さねばならない。日本、欧州も新興国の首脳にも、反グローバル化のうねりを抑える賢明で繊細な政策選択が問われる。トランプ・ショックを生んだ背景を正視すべき時だ。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p39418.html (日本農業新聞 2016年11月11日) TPP衆院通過 政府・与党 批准に執念
 環太平洋連携協定(TPP)承認案と関連法案は10日の衆院本会議で、与党と日本維新の会の賛成多数で可決された。民進党など3野党は抗議して退席した。政府・与党は承認を確実にするため、今月30日までの会期を延長する方針。議案は参院に送付され、今国会で承認される可能性が高まった。TPPの発効に不可欠な米国の批准が困難になる中、日本は国内手続きを急いだ。TPPの国民の懸念や疑問が解消されたとは言い難い状況だ。討論では、自民党と日本維新の会が、TPP承認案と関連法案に賛成の立場から「自由で公正な開かれた経済の枠組みを作ることは、わが国の大きな使命であり、核となるのがTPPだ」と訴えた。これに対し、民進、共産など野党は「トランプ氏が明確に反対しているにも関わらず、採決を行うのは、世界の笑い者になる」として反対を表明し、その後の採決で退席した。民進党の山井和則国対委員長は記者団に「十分な審議が行われたとは思っていない」と採決に抗議した。承認案は衆院通過から30日以内に参院が議決しない場合、12月9日に自動的に成立する。TPP承認を確実にするため、会期延長幅は同10日ごろまでとする案が検討されているほか、年金制度改革法案などの処理も念頭に同28日ごろまでの延長案も取り沙汰されている。今後、与野党間での攻防が予想される。参院は11日に審議入りする見通し。衆院TPP特別委員会での審議時間は約70時間。農業分野の合意内容など国会決議の検証も一定程度行われたが、新たに浮上した輸入米価格偽装問題では、国産米への影響はないとする政府と野党との間で議論はかみ合わなかった。TPP対策など今後の農業政策の議論は深まっていない。一方、TPPの発効に不可欠となる米国では、TPP脱退を主張するトランプ氏が大統領選で勝利。議会幹部も年内のTPP採決を否定しており、同国の承認はますます不透明になっている。TPP承認案の採決に先立ち、民進、共産など野党4党は、山本有二農相の一連の発言を問題視して農相の不信任決議案を提出したが、否決された。

<日本の市民と日本政府>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p39314.html (日本農業新聞 2016年10月29日) TPP審議不十分 農家、市民の声を聞け
 生産者、市民の声が政治に届いているのか。環太平洋連携協定(TPP)承認を巡って農業、食への不安や危機感は拭えないままだ。十分な審議が尽くされたとは言い難い。政府の説明責任と情報開示なしで強行する国会運営は、到底許されない。地方の声に耳を傾け、納得のいく答弁をすべきである。政府・与党が結論を急ぐ正当な理由はあるのか。今週開いた地方公聴会、参考人質疑からは慎重な審議や対策を求める意見が相次いだ。性急に採決を進める姿勢は、国民を置き去りにした政治にほかならない。衆院TPP特別委員会が26日に北海道、宮崎県で開いた地方公聴会ではTPPの合意内容と国会決議との整合性を問う声が続いた。国会決議に盛り込んだ重要5品目は関税撤廃も含め無傷のものはない。北海道会場では農民組織代表が「TPP断固反対とした自民党公約や重要農産品の除外を求めた国会決議に著しく反する」と述べている。政府はTPPが発効すれば輸出拡大が期待できると主張してきた。農業を成長産業とし、農産物輸出をてこ入れする。宮崎会場では政府の「攻めの農業」に異論が出た。和牛繁殖農家は「中山間地では攻めるよりも守っていかなければならないことの方が多い」と訴え、現場との温度差は大きい。TPPは農業、暮らしに大きな影響を与える。地方にとっては死活問題だ。危機感を持って各地のJAグループはTPP勉強会や集会、要請活動を展開している。大筋合意の内容や影響、国会決議との整合性などについて十分な説明責任と情報開示を要望するものだ。佐賀市議会は会期中の臨時国会でTPPを批准しないよう求める意見書を全会一致で採択している。TPPが発効すれば地域の農業・関連産業に深刻な影響が及び、地方の疲弊がさらに進むとの懸念からだ。JA福岡県青年部協議会はTPP断固反対の特別決議を採択した。農家、市民の不安は払拭(ふっしょく)されていない。安倍晋三首相は今国会の所信表明演説で早期承認に決意を示した。その意をくんでか強行採決発言が飛び出し、国会は一時空転した。「安倍1強」体制のおごりとも言える。国民が求める真摯(しんし)な姿勢に逆行する。今国会での地方公聴会は全国でわずか2カ所にすぎない。形だけ国民の意見を聞いたと、採決を急ぐことがあってはならない。輸入米を巡っても、売買同時入札(SBS)米が国産よりも安価に売られている事実が明らかになり、農家の不安は一層高まっている。参考人質疑では政府の過小な影響試算、再協議による関税撤廃、食の安全が脅かされる問題が指摘された。食品添加物や遺伝子組み換え、輸入牛肉の安全性などで国内の表示や制度が後退する恐れが消費者に根強い。農相が言うように国民全員が納得できる審議を尽くすべきだ。.

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p39324.html
(日本農業新聞 2016年10月30日) TPP採決「待った」 650人結集 福岡集会
 環太平洋連携協定(TPP)承認案と関連法案の審議が衆院で続く中、福岡県農業総合対策協議会やJAグループ福岡、県農政連は29日、TPP断固反対を訴える集会を福岡市で開いた。県内の農業者ら650人が参加。合意内容は、米など重要5品目の「聖域」確保を掲げた国会決議を満たしていないとして、衆院通過を急ぐ政府・与党を批判。慎重な審議の継続と協定内容の詳細を開示するよう求めた。
●審議不十分 不満の声
 県農協青年部協議会の佐々木彰委員長は「(TPP承認案の)地方公聴会は北海道と宮崎だけ。十分に国民の声を反映したといえるのか」と指摘。「継続して断固反対の声を上げ続けよう」と呼び掛けた。主催者を代表してJA福岡中央会の倉重博文会長も「なぜこんなに採決を急いでいるのか」と疑問を投げ掛けた。衆院TPP特別委員会の質疑でも、売買同時入札(SBS)米の「調整金」問題で政府・与党は質問に十分に答えていないとして、「TPPは秘密主義だ」と非難。倉重会長は承認案が衆院を通過したとしても、断固反対の姿勢で運動を続けていく考えを強調した。県農政連の林裕二委員長が、SBS米問題で政府のTPP影響試算の妥当性への不信が募っていると訴えた他、集まった農業者もTPPに対する不安や、政府・与党への不満を口にした。JAむなかた管内で稲や野菜を栽培する農業者は「TPPの影響を過少に見積もることで、割を食うのは中小の農家だ。ばたばたと倒れてしまう」と強調した。JAみなみ筑後管内の米農家も「報道を見る限りSBS米の影響がゼロとは到底思えない」と不安を訴えた。集会では、県女性協議会の中村由美会長が、TPP反対運動を団結して続けていくことを盛り込んだ特別決議を読み上げ、採択した。

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p39369.html (日本農業新聞 2016年11月5日) 水産物8割で関税撤廃 かつてない市場開放 TPP
 TPP承認案と関連法案が4日、衆院TPP特別委員会で可決された。農林水産物は8割で関税撤廃するなど、日本農業はかつてない市場開放を迫られることになる。TPP交渉は、米国やオーストラリアなど計8カ国が2010年に始めた。日本は当初からのメンバーではなく、安倍晋三首相が13年3月に交渉参加を表明。以降、2年余りをかけて昨年10月に大筋合意した。交渉の結果、日本は2594品目ある農林水産物のうち、2135品目(82%)で関税撤廃が決まった。国会決議で聖域とした重要5品目も29%で関税撤廃する他、関税が残る品目も税率の大幅引き下げや輸入枠の新設を受け入れた。このため、政府は輸入品の増加で国産価格が下落するなどして、農林水産物の生産額が約1300億~2100億円減少すると見込んでいる。合意内容と対策では、米は関税を維持した一方、米国とオーストラリアに7万8400トンを上限に売買同時入札(SBS)方式の特別輸入枠を新設。輸入米の影響を抑えるため政府備蓄米の運用を見直し、輸入量相当の国産米を買い入れる。牛肉は現行38.5%の関税を9%、豚肉は低価格帯にかける従量税(1キロ482円)を同50円まで大幅に引き下げる。対策として、経営安定特別対策(マルキン)の法制化と補填(ほてん)率の9割への引き上げを行う。乳製品の対策は、輸入と競合しにくい生クリーム(液状乳製品)を加工原料乳生産者補給金の対象に加えて交付することなどを決めた。

*2-4:https://www.agrinews.co.jp/p39418.html (日本農業新聞 2016年11月11日) TPP衆院通過 政府・与党 批准に執念
 環太平洋連携協定(TPP)承認案と関連法案は10日の衆院本会議で、与党と日本維新の会の賛成多数で可決された。民進党など3野党は抗議して退席した。政府・与党は承認を確実にするため、今月30日までの会期を延長する方針。議案は参院に送付され、今国会で承認される可能性が高まった。TPPの発効に不可欠な米国の批准が困難になる中、日本は国内手続きを急いだ。TPPの国民の懸念や疑問が解消されたとは言い難い状況だ。討論では、自民党と日本維新の会が、TPP承認案と関連法案に賛成の立場から「自由で公正な開かれた経済の枠組みを作ることは、わが国の大きな使命であり、核となるのがTPPだ」と訴えた。これに対し、民進、共産など野党は「トランプ氏が明確に反対しているにも関わらず、採決を行うのは、世界の笑い者になる」として反対を表明し、その後の採決で退席した。民進党の山井和則国対委員長は記者団に「十分な審議が行われたとは思っていない」と採決に抗議した。承認案は衆院通過から30日以内に参院が議決しない場合、12月9日に自動的に成立する。TPP承認を確実にするため、会期延長幅は同10日ごろまでとする案が検討されているほか、年金制度改革法案などの処理も念頭に同28日ごろまでの延長案も取り沙汰されている。今後、与野党間での攻防が予想される。参院は11日に審議入りする見通し。衆院TPP特別委員会での審議時間は約70時間。農業分野の合意内容など国会決議の検証も一定程度行われたが、新たに浮上した輸入米価格偽装問題では、国産米への影響はないとする政府と野党との間で議論はかみ合わなかった。TPP対策など今後の農業政策の議論は深まっていない。一方、TPPの発効に不可欠となる米国では、TPP脱退を主張するトランプ氏が大統領選で勝利。議会幹部も年内のTPP採決を否定しており、同国の承認はますます不透明になっている。TPP承認案の採決に先立ち、民進、共産など野党4党は、山本有二農相の一連の発言を問題視して農相の不信任決議案を提出したが、否決された。

<農協破壊の農協改革>
*3-1:http://mainichi.jp/articles/20161112/ddm/008/010/048000c (毎日新聞 2016年11月12日) 規制改革推進会議、「金融」地域農協半減を提言 農産物販専念促す
 政府の規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大教授)の農業部会は11日、農業改革に関する提言をとりまとめた。貯金の受け入れやお金の貸し付けをする金融事業を手がける地域農協を、3年以内に半減させることを新たに求めた。農家の所得増に向け、地域農協が農産物販売などに専念できるようにする狙いがある。規制改革推進会議はこれまでに、全国農業協同組合連合会(JA全農)が肥料や農薬を調達して農家に販売する事業を縮小することなどを打ち出している。金融事業の縮小も迫ることで、JAグループの経営資源を農産物販売に集中し、農家の所得引き上げにつなげる体制を促す。具体的には、地域農協の金融事業をJAグループの農林中央金庫に譲渡し、農林中金の代理店が金融サービスを維持する。地域農協は業務負担が軽減される。また、全農には、農家から手数料を得て農産物を販売することを1年以内にとりやめ、全量を買い取ったうえで販売することも新たに求めた。JAが在庫を抱えるリスクを取って販売することで、より高いリターンを得る狙いがある。これらの改革が進まない場合は、国がJA全農に代わる「第二全農」の設立を推進すべきだとも明記し、JAに真剣に取り組むよう迫った。政府、与党はこの提言を受け、月内にも農業改革案をとりまとめる方針だ。だが、自主的に改革を進めているJA側の反発は必至だ。JA全農などJAグループ4団体は11日、「(改革には)現実的ではない事業・組織の見直しを強制されないことが大前提」とのコメントを出した。自民党農林族幹部も「(互いに助け合う)協同組合組織の否定につながりかねない」などと指摘している。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/375759
(佐賀新聞 2016年11月11日) 全農改革、1年以内に刷新を、資材縮小、農産物の販売強化
 政府の規制改革推進会議の農業ワーキング・グループは11日、全国農業協同組合連合会(JA全農)に今後1年以内に組織や事業を刷新するよう求める提言を取りまとめた。農薬などの生産資材を農家に販売する事業は、人員の配置転換や関連部門の売却で大幅に縮小する一方、農家が生産した農産物の販売体制について流通業者の買収も含めて強化するよう求めた。このほか年限は示していないが、役職員の報酬や給与の水準を公表して農業所得の動向に合わせることも促した。改革が不徹底なら「第二全農」のような新組織の設立を国が推進すべきだとも指摘した。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p39392.html (日本農業新聞 2016年11月8日) 全農 購買抜本見直し 少数精鋭の新組織に 規制改革推進会議方針
 政府の規制改革推進会議は7日、JA全農と指定生乳生産者団体(指定団体)制度の改革方針を決めた。全農の生産資材の購買について、手数料を得る事業方式を抜本的に見直し、農家らの安値仕入れを支援する少数精鋭組織になるよう要求。指定団体では生乳の全量委託の原則廃止などを打ち出した。今後、方針の具体化を図り、週内にも提言にまとめる。改革方針は同日の会議で、農業ワーキンググループの金丸恭文座長が示し決定した。安倍晋三首相は会合で、全農改革は農業の構造改革の試金石だとし、「新しい組織に生まれ変わるつもりで事業方式、組織体制を刷新してほしい」と要請。指定団体制度では「酪農家が販路を自由に選び、流通コスト削減と所得の向上が図れる公平な事業環境に変える」と強調した。この二つの改革について「私が責任を持って実行していく」と強い意欲を示した。同会議は、改革方針で全農に「農業者の協同組織の原点」に立ち返るよう求め、懸案となっていた株式会社化には言及しなかった。一方、生産資材の購買では組織の抜本改革を要求。「資材メーカーの販売代理とも見られる購買組織は縮小」すべきだとし、メーカーと安値交渉で徹底的に対峙(たいじ)するよう求めた。その上で、農家やJAの安値での資材調達を支援する「少数精鋭の新組織」への見直しを提起。全農は「仕入れ販売契約の当事者にならない」とし、JAへの資材の供給時に販売手数料を得る方式をやめるべきだとした。新組織は、国内外の資材の情報を収集・分析し、JAや農家により有利な資材の仕入れ先を提案するなどの機能を果たす。手数料ではなく、新組織が機能に応じた対価を得るべきとの考えだ。販売事業は、実需者への直接販売の拡大や買い取り販売への転換、輸出の促進などで強化するよう提起した。金丸座長は同日の会見で、改革方針を全農が拒否することは「全く想定していない」と述べ、方針に沿った改革の具体化を迫った。

*3-4:https://www.agrinews.co.jp/p39429.html
(日本農業新聞 2016年11月12日) 急進的全農改革 不当な経営介入許すな
 政府の規制改革推進会議がJA全農やJA経営に踏み込んだ改革案を示した。焦点の全農改革は1年以内に委託販売を廃止し全量買い取り販売へ転換、JA信用事業は代理店化を進めるなど、全農経済事業やJA信用事業の機能と役割を無視した極めて不当な内容だ。これは協同組合的事業方式の否定で、民間独立組織への経営介入であり、断じて許されない。協同組合の原点は自主・自立であり、改革は組合員である農業者の合意による自己改革が基本だ。だが今回示された全農改革に関する意見は「メーカーなどへの事業譲渡を進め、1年以内に新組織に移行」「委託販売を1年以内に全量買い取り販売に」などと細部にわたる。言うまでもなく全農の目的は、経済的に弱い立場にある個々の農家が「協同組合」に結集することで、価格交渉力を高め、農家組合員の所得向上と国民への食料の安定供給を図ることである。生産資材事業の取り扱いから実質的に手を引くというのは経済活動からの撤退を意味し、長年積み上げてきた共同経済行為を否定するもので、全農の経営を立ち行かなくする恐れが強い。現在自民党の農林水産業骨太方針策定プロジェクトチームは生産資材価格の引き下げで議論を重ねている。その中で全農は着実に事業見直しを実践している。提言はそうした議論を逸脱するもので到底納得できない。委託販売から買い取り販売への転換については、既に自己改革の一環としてマーケットイン(需要に応じた生産・販売)に基づく生産・販売事業方式への転換を進めている。米で言えば、自己改革の具体策として今秋打ち出した「魅力増す農業・農村の実現に向けたJAグループの取り組みと提案」でも事前契約取引の一層の推進を明記した。業務用実需者と産地の結び付きを強め、ニーズに合った品種を導入しているケースもある。事業転換を迫られる正当な理由があるのか。信用事業の譲渡については2年前の農協改革議論で、代理店化によるサービスの低下を危惧する声や、信用事業収益の減少により営農事業の財源が少なくなり地域農業の担い手や産地の活性化に結び付かないとの懸念があった。こうした経緯を踏まえ、農協改革については2014年6月の与党取りまとめがベースとなり、改正農協法に盛り込まれた。残る課題は5年間の改革集中期間で取り組むこととなった。それを踏み越えるものがあってはならない。全農は農業協同組合の民間組織であり、自主・自立の組織である。政府が介入すべきではない。JAグループはまさに農業発展や農家所得増大のため創造的自己改革に取り組み、その役割を率先して発揮している途上にある。方向性を最終的に判断するのは、組合員である農業者の合意が重要であることを肝に銘じるべきだ。


PS(2016年11月16日追加):都市より農業地帯の方が自然が美しいため、*4のようなスマートアグリが普及し、地方における教育その他の利便性が整えば、農業に参入したいと考える若者も増えるだろう。私の経験では、所得の上がっている農家には、担い手となる後継者の不足があまりなかった。


 *4より    レモンの花      みかんの花      ウメの花         蕎麦の花


レンコンの花(つまり蓮の花)   リンゴの花       ジャガイモの花        ナスの花

*4:https://www.agrinews.co.jp/p39448.html (日本農業新聞 2016年11月16日) 営農指導 一筆ごと 作物情報 地図と連動 JAグループ茨城
 JAグループ茨城は15日、地理情報システム(GIS)データを活用し、農地一筆ごとの地図情報に作物や土壌などの情報を連動させ、営農・経営指導に活用できるシステムを導入すると発表した。パソコン上で、集積状況と併せて、適切な播種(はしゅ)時期や施肥量などの情報も把握できるようになる。JAが農家や集落に対し、収益性の高い作物の作付けや低コスト技術の導入など、農地の状態に合わせた的確な営農指導ができるようになる。農家手取りの最大化、担い手育成につなげる考えだ。2018年度までに県内全域に普及させる。同日、水戸市の県JA会館で記者会見した県農協五連の加倉井豊邦会長は「農家手取りの最大化に向け、農地を最適利用できる有効なツールだ。現場を一番よく知っている農家と信頼関係のあるJAが取り組むことに意義がある」と強調した。従来は紙の地図で手作業で農地台帳などを管理してきたが、時間がかかる、地権者や担い手などが変わるごとに更新しなくてはならないなどの課題があった。新システムでは、農地情報をパソコンの地図上に落とし込むことで農地の利用状況がひと目で分かり、地図作成を大幅に省力できる。営農情報も連動させる。地図情報を活用して担い手に農地集積を提案する中で、集約した広域な農地でどの作物をいつ、どのように栽培すれば作業効率が最適になるか、手取りがどれだけ増えるのかなど、所得増大につながるアドバイスも地域実態に合わせてきめ細かにできるようになる。農業機械の有効活用にもつながる。新システムはJA全農いばらきと東京農業大学GIS研究部会が連携して開発した。地番、面積、作物などの属性を選ぶと検索できる。JAグループ茨城は、集落営農組織を含む担い手に指導するJAの人材を育成する考え。県や農業会議と連携しながら系統外の農地情報も収集し、より実態に近いシステムを構築する。先行してJA水戸、JA常陸、JAつくば市谷田部の3JAで来年3月までに稼働させる。


PS(2016年11月17日追加):みかんの花から香水をとれば柑橘系のよい香りがするため、*5-1は、ミカン畑という遺産を使うよい方法だと思う。また、一世代前のミカンは甘いだけでなく酸味もあるため、みかんジュースにした場合には現在の品種より美味しく、みかんジュース作りも放置されたミカン畑から付加価値のあるものを作る方法だろう。さらに、みかんの花だけから集めたハチミツは、ほのかに柑橘系の香りがして美味しく、私はオレンジの花からとったハチミツ(イタリア産)を継続的に食べている。ハチミツも花ごとに分けた方が花の香りがして美味しいため、リンゴやウメなどのいろいろな花からハチミツという副産物を作ることができるだろう。これは、花の咲く時期が少し違うことと蜂の飛行距離が短いことから可能なのだそうだ。さらに、既に根が張っている古いみかんの木に、新しい品種のみかん・レモン・オレンジなどを接ぎ木すれば、新しい作物が速やかにできるのではないかと考える。
 なお、長野県は、*5-2のように、2014年に蜂蜜生産量が日本一になり、ミツバチの飼育戸数や飼育群数は全国1位で、養蜂は安定した経営ができるため若い後継者や定年後に始める人も多いそうだ。確かにアカシアの蜂蜜もさっぱりしていて美味しく、私は、トチ、リンゴ、栗の蜂蜜は食べたことがないが、ドロッとした朝鮮ニンジンに似ている黒色の蕎麦の蜂蜜もあったのは驚きだった。松本市のふるさと納税の返礼品は、各種蜂蜜、ジャム、果物、味噌などの地元の名品が喜ばれると思うので、農協や商工会と相談して決めた方がよいのではないだろうか。

*5-1:http://qbiz.jp/article/98250/1/ (西日本新聞 2016年11月17日) 放置ミカン畑活用し化粧品 花から油を抽出、東京のメーカーが商品化 唐津市や玄海町
 佐賀県唐津市浜玉町で耕作放棄地になったミカン畑を活用し、花から抽出した香り成分を使った化粧品が10月中旬に全国発売され、人気を呼んでいる。開発した東京の化粧品メーカー「ビーバイ・イー」は「地元生産者と持続可能な仕組みを作り、日本発の香りを世界に届けたい」としている。ミカンの花から抽出される精油「ネロリ」は、花の香りとかんきつ類の爽やかさを併せ持ち、バラやジャスミンと並んで高級化粧品に使われる。同社は美容液や化粧水など3製品を「ネロリラボタニカ」のブランド名で各2千個製造。「癒やされる香り」と好評で、全国の百貨店など約50店でほぼ完売した。目標の3倍以上の売れ行きといい、追加生産の準備をしている。唐津・玄海地区の化粧品製造拠点化を進める産学官連携組織「ジャパン・コスメティックセンター」(JCC)が耕作放棄地の活用を模索していたところ、同社がネロリの国産を目指していることを知り、協力を申し出た。唐津市浜玉町や玄海町にある計3カ所の耕作放棄されたミカン畑を紹介。今年は所有者から無償で協力を得たが、今後は地元に利益が出るよう、生産者団体にミカン畑の管理を委託するなど対価を支払える態勢を整える方針。14日に唐津市を訪れ、地元生産者と意見交換した同社の杉谷恵美社長は「日本のアロマはまだ世界に全く出ていない。生産者も幸せになる仕組みをつくり世界の市場に出て行きたい」と話した。

*5-2:https://www.agrinews.co.jp/p38984.html (日本農業新聞 2016年9月23日) 祝 蜂蜜生産日本一 長野県で初共進会
 長野県養蜂協会は23日、蜂蜜の生産量が農水省の統計で2014年に日本一になったことを記念し、「信州はちみつ共進会」を長野県松本市で初めて開いた。本物のミツバチも登場する演出の中、糖度や色合い、風味などを厳正に採点した。同協会によると、同県はミツバチの飼育戸数や飼育群数は全国1位だったが、蜂蜜の生産量は北海道に次ぐ2位だった。今回の統計で生産量が361トンになり、初めて日本一となった。養蜂は景気に左右されず安定した経営ができるため、県内には若い後継者や定年後に始める人も多い。第1回共進会には県内各地の養蜂家46人が、108点を出品。アカシア、トチ、リンゴ、栗、百花の5部門に分けて品評した。同協会の依田清二会長は「日本一の蜂蜜県をPRして、県内の養蜂を盛り上げたい」と力を込める。


PS(2016.11.22追加):トランプ次期米大統領は、*6-2のように、当選後もTPPからの離脱を唱えているが、日経新聞は、*6-1のように、「①米国の外交戦略にとって重要」「②日本は他の通商交渉も加速しなければならない」「③中国・インドなどが参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉でも、日本が積極的な役割を果たせば米国にTPP参加を強く迫ることができる」などとしている。しかし、①②③を同時に行えば、米国だけにとって外交・防衛にプラスになるわけではないため、将来の産業政策や防衛政策も考えずに、根拠にならないことを列挙するのはいい加減にすべきだ。
 また、「④日本はニュージーランドに続き、早期発効の機運を高めてほしい」「⑤日本は参院で審議中のTPP承認案・関連法案を確実に成立させるべきだ」「⑥あらゆる形の保護主義に対抗する(APEC首脳会議宣言)」「⑦日本は先頭に立って世界の自由貿易を牽引しなければならない」ともしており、APEC首脳宣言も日本が主導したのだろうが、主権者である国民に対してあまりにも無責任である。
 さらに、「⑧日本は、高水準の貿易・投資ルールを通じて(?)実現しようとしているTPPの意義をトランプ氏に説明していく必要がある」「⑨欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉に向け、日本が主要閣僚会議を設けたのは前進で、政治主導で年内の大筋合意を導いてほしい」としているのも自信過剰で、実際には日米主導のTPPは、食品安全基準・食料自給率確保・医療保険制度等が粗末であるため、⑨はEUとのFTAを先に行ってEUに学ぶのがよいと考える。
 なお、*6-2のトランプ氏の政策のうち、自動車産業については、EV・FCVを主軸として炭素繊維で自動運転車を作れば、アメリカでも競争の土壌が変わって買替需要が伸び、米国労働者も雇用創出できると思うが、エネルギーの転換を行わずにシェールオイルや石炭産業に固執していれば、次は技術でも現在の開発途上国に追い越されて再起不能になるかもしれない。しかし、移民・難民政策に関しては、日本もアメリカにもの申せるほど移民・難民・外国人労働者の入国を自由に認めているわけではない。

*6-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161122&ng=DGKKZO09807740S6A121C1EA1000 (日経新聞社説 2016.11.22) 自由貿易堅持へTPPをあきらめるな
 トランプ次期米大統領が環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を唱えるなか、TPPの先行きが見通せなくなっている。しかし、アジア太平洋地域全体の自由貿易圏をつくるうえで、TPPはもっとも重要な礎となる。日本を含む参加国はTPPの発効をあきらめることなく、国内手続きを着実に進める必要がある。ペルーで開いたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にあわせて、日米を含むTPP参加12カ国は首脳会合を開いた。安倍晋三首相が「発効に向けた努力をやめるとTPPは死に、保護主義がまん延する」と訴えたのは当然である。一部の国からは、会合に先立ち「米国を外し、新たな環太平洋での協定を構築すべきだ」との意見が出ていた。仮に最大の経済大国である米国がTPPから抜ければ、貿易・投資の自由化により域内経済を成長させる効果は限られる。世界的に自由貿易が退潮し、世界経済の行方にも影を落としかねない。米国を含む12カ国がひとまずTPP存続へ協調する方針を確認したのは評価できる。課題は米国以外の11カ国の結束を保つことだ。トランプ氏が大統領選の期間中、TPPに反対する発言を繰り返してきたのは事実である。だからといってTPPを安易に捨て去ってはならない。日本など各国は、高水準の貿易・投資ルールを通じて実現しようとしているTPPの意義をトランプ氏に粘り強く説明していく必要がある。米国の外交戦略にとって重要である点も訴えてほしい。日本は参院で審議中のTPP承認案・関連法案を確実に成立させるべきだ。すでに議会承認を終えたニュージーランドに続き、早期発効の機運を高めてほしい。同時に、他の通商交渉も加速しなければならない。欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉に向け、日本が主要閣僚会議を設けたのは前進だ。政治主導で年内の大筋合意を導いてほしい。中国やインドなどが参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉でも、日本が積極的な役割を果たせば、米国にTPP参加を強く迫ることができる。APEC首脳会議は「あらゆる形の保護主義に対抗する」との宣言を採択し閉幕した。日本はこうした国際的な取り組みの先頭に立ち、世界の自由貿易をけん引しなければならない。

*6-2:http://mainichi.jp/articles/20161122/k00/00e/030/180000c
(毎日新聞 2016年11月22日) トランプ氏、「TPP離脱」当選後初表明 発効絶望的
 ドナルド・トランプ次期米大統領(70)は21日、日米など12カ国による環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について、来年1月20日の就任初日に「離脱の意思を(参加国に)通知する」との方針を表明した。トランプ氏は勝利後、TPPへの発言を控えていたが、この日、政権の最優先課題にあげたことで、TPPの発効は絶望的になった。21日夕(日本時間22日午前)、自らのフェイスブックに動画メッセージを投稿し、就任初日から取り組む政策課題を列挙。政権移行チームに具体的な準備を進めるよう指示した。トランプ氏は最初に通商政策をあげ、TPPが「米国にとって大惨事になり得る」として離脱する方針を表明し、その代わりとして「国内に雇用と産業を引き戻すような公正な2国間協定に向け交渉する」と明らかにした。TPP発効には参加12カ国全体の国内総生産(GDP)の85%以上を占める6カ国以上が国内手続きを済ませる必要があり、米国の議会承認が不可欠。トランプ氏がTPPに関する発言を封印していたため、参加国関係者の間ではトランプ氏の翻意に期待をかける声があがっていた。19日のTPP首脳会合でも各国が発効に必要な国内手続きを進めつつ、トランプ氏の動向を見守る方針で一致したばかりだった。しかし、トランプ氏がTPP離脱の方針を明確にしたことで、少なくとも政権発足後、一定期間はTPP発効の可能性が絶たれることになる。トランプ氏は演説で、米製造業の再興を通じて雇用創出に励む姿勢も強調。「私の政策は『米国第一』というシンプルな原則に基づいている」としたうえで、「鉄鋼を生産し、自動車を組み立て、(自由貿易によって受けた)大惨事をいやす。米国で次世代の生産や革新を起こしたい。米国の労働者のために富と雇用を創出したい」と述べた。他の優先課題として、シェールオイルや石炭産業への規制緩和でも雇用を拡大するほか、「新たに一つ規制を導入する際には二つの規制を撤廃する」として規制緩和を徹底する方針を示した。移民政策に関しても入国に必要なビザ(査証)の不正使用について調査し、米国の労働者が不利益を受けないようにするほか、ダムや発電施設といったインフラへのサイバー攻撃に防御を固める方針も示した。


PS(2016年11月26日追加):*7-1のように、韓国では、自由貿易協定(FTA)の影響で米価が過去最低水準まで暴落して農業経営が厳しくなり、トラクターなど1000台以上がトラクターデモを行っているそうで壮観だが、朴大統領の不満は農政でもくすぶっていたようだ。そして、食料はじめその国の産業については、「保護を排せばすべてがうまくいく」というような単純なものではない。
 ただ、*7-2のように、ムスリム市場は砂漠の多い場所であるため、そこでは決して獲れない作物が韓国や日本では獲れる。そのため、米にこだわらずに付加価値の高いものを作り、販路を拡大する方法は日本でも韓国でも使える。そこで、韓国の農家は米を減産して朝鮮ニンジン(現在は高価過ぎて継続使用は遠慮される)やニンニク(日本では、現在、運賃をかけてもスペイン産の方が青森産よりも安い)など、他の付加価値の高い作物を増産し、日本を含む各国に積極的に輸出したらどうだろうか?

   
     2016.11.26、27日本農業新聞              韓国の農村風景
 (図の説明:韓国の田畑も区割りが小さく、機械化が進んでいないという課題があるようだ)

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p39538.html (日本農業新聞 2016年11月26日) トラクター1000台集結 農政失敗に抗議 「朴政権退陣」農家訴え 韓国
 韓国ソウル近郊の京畿道安城市で25日、最南端の慶尚南道と全羅南道からそれぞれ出発した農民によるトラクターのデモ隊が合流した。トラクターなど1000台以上が集結、日本の官邸に当たる青瓦台を目指す。朴槿惠政権による農業政策の失敗で米価が過去最低の水準まで暴落、海外との自由貿易協定(FTA)などの影響で農業経営が一層、厳しくなっているためだ。デモ隊は同日、ソウルで開く「農政破断、朴槿惠政権退陣、全国農民大会」に合わせて、全羅南道を15日、慶尚南道を16日に出発した。デモ隊は各地で農政の失策をアピールし、ろうそくデモを展開、朴政権を批判した。主催する全国農民会総連盟は「政権という畑を耕し、新たな種をまく意味でトラクターデモを考えた。朴政権が退陣するまで闘う」と主張した。

*7-2:https://www.agrinews.co.jp/p39510.html
(日本農業新聞 2016年11月23日) ムスリム市場に商機 ハラールエキスポ 販路拡大へPR
 イスラム教の食事戒律「ハラール」に沿った食品などの展示商談会「ハラールエキスポジャパン」が22日、東京都内で始まった。国内外の農業者や食品業者など約90団体が、在日のイスラム教徒(ムスリム)やインバウンド(訪日外国人)が安心して食べられる食品や商品を出展。ムスリム市場で商機を探る業者らでにぎわった。23日まで。群馬、栃木両県にまたがる両毛地域の商工業者やJAでつくる協議会は特産のイチゴをプランターに植えて展示し、来場者の注目を集めた。同地域は東京から比較的近いが目立った観光地が少ないのが課題で、「来日数が増えているムスリムに特化してPRし、他の地域より先行して知名度を上げたい」(事務局)と、特産品を売り込んだ。徳島県は、農商連携で農産加工品や牛肉などを出展。事務局の県農林水産部によると、現在は県内の中小12業者が国内向けハラール認証を受け、新たな販路獲得を目指しているという。この他、「ムスリムにも日本茶が喜ばれた」と鹿児島県で茶を生産販売する農業法人や、大手外食チェーン、レストランなどが自慢の食を試食提供しながら、来場者と活発に商談していた。

| 環太平洋連携協定(TPP)::2012.11~ | 03:13 PM | comments (x) | trackback (x) |

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