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2017.5.22 原発の危険性と使用済核燃料の早期最終処分の必要性 (2017年5月22、23、28、30日、6月1、4、14、17、18、22、25日、7月16、26日、8月1、2日追加)
(1)原発を再稼働するどころか、使用済核燃料も速やかに最終処分すべきであること
1)北朝鮮のミサイル及びサイバー攻撃

 
     最近の北朝鮮のミサイル実験状況            制裁措置について
                           2017.5.15  2017.5.15
                            毎日新聞   日経新聞

 北朝鮮がミサイルを発射するたびに、日本のTVは大騒ぎをし、共謀罪の内容を隠すかのように北朝鮮ミサイルの話ばかりを報道しているが、最近は核弾頭を取り付けられるのかという疑問を発している。しかし、現在は第2次世界大戦中とは異なり、ミサイルに核弾頭など取り付けなくても、*1-2のように、ミサイルを原発の原子炉建屋・使用済核燃料プール・それらの直近の施設などに着弾させれば、そこに内蔵されている核物質により原発自体が自爆するため、敵国を住めない土地にすることは容易なのである。

 そして、テロ対策ができている原発は一つもないのに、川内1、2号機、伊方3号機は既に運転中で、玄海3、4号機、高浜3、4号機では再稼働への準備が進められており、日本政府が本当に国や国民を守ろうとしているのかについて大きな疑問がある。

 また、複数のIT(情報技術)企業が、*1-1のように、5月15日に世界で起きた大規模サイバー攻撃には北朝鮮が関与している可能性があるとの分析結果を公表し、米政府は同攻撃に北朝鮮政府が関与したと断定して、北朝鮮の対外工作活動機関である人民武力省偵察総局などに追加制裁を実施したそうだ。しかし、日本の原発へのサイバー攻撃については、これまでの原子力ムラの対応を見ている限り、先進的な防御を速やかに行った気配はない。

 なお、*1-3のように、北朝鮮のキム・インリョン国連次席大使は、「①アメリカもICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を行っており、ダブルスタンダードだ」「②国連安保理が、アメリカが行う攻撃的で挑発的なICBM発射訓練への説明を求めなければ、北朝鮮はいかなる安保理決議も受け入れない」「③アメリカが反北朝鮮政策を続ける限り、速い速度で核攻撃能力を高めていく」「④トランプ政権が制裁を強めれば、壊滅的な結果の責任をとることになる」としており、相互主義という意味では理屈が通っているが、北朝鮮は人権を尊重しない国であるため、近くに住む日本人は恐ろしいわけである。

2)このような中での原発再稼働について
 このような中で、まさに国も司法も電力会社も自治体も誰も責任を負えないまま、*1-4のように、福島の事故究明や避難計画の実効性を置き去りにして、原発が次々に再稼働され始めた。昨年春に大津地裁は滋賀県住民の訴えを入れ、「原発を動かすならゼロリスク、すなわち福島の事故原因に基づいた完璧な備えがいる」として関西電力高浜原発3、4号機の運転を差し止めたが、福井地裁と大阪高裁は「絶対的安全性は想定できず、危険性が社会通念上無視できる程度まで管理すべきだ」とした。しかし、「社会通念上無視できる程度」とは何%くらいで、その割合で事故が起こった場合に周囲がどうなるかについては全く言及されておらず、これで「安心しろ」と言っても無理である。

 また、*1-5のように、玄海原発再稼働については、佐賀県の全自治体と福岡、長崎両県の原発30キロ圏に入る計28自治体のうち6割の17自治体が再稼働の前提となる「地元同意」の対象範囲の拡大を求めているため、このまま玄海町と佐賀県の同意だけで、なしくずし的に再稼働されることはないようにして欲しい。

3)韓国の原発について

     
韓国原発事故の影響予測   福島第一原発事故(フクイチ)による汚染範囲

(図の説明:フクイチ事故の結果、放射性ヨウ素やストロンチウムも関東・東北一円で検出されており、文科省の調査結果は実際よりも控えめに表示されている。そのため、土壌汚染を通じて農産物が汚染されているのも明らかだ。なお、古里原発はじめ韓国の原発が事故を起こした場合は、日本海や日本の日本海側の地域が広い範囲で汚染されるが、国内で原発再稼働を進めながら、韓国に何とかするようにとは言えないだろう)

 外国のことなので今まで書かなかったが、韓国南部の釜山市にある古里原発3号機で使用済燃料プールの冷却機能が失われて火災が発生し、放射性物質セシウム137が大量に放出されると、*1-6のように、1月なら偏西風の影響で西日本を中心として日本の最大6万7000平方キロが汚染され、最大2830万人に避難の必要性が出る可能性がある。また、9月なら最大で韓国国土の半分以上5万4000平方キロが汚染され、2430万人が避難することになり、日本では首都圏に近い地域や東北にも被害が及ぶそうだ。

 そして、韓国には原発が25基あるため、北朝鮮がミサイルに核弾頭を積まなかったとしても、原発を自爆させて大きな被害を与えることは容易であろう。

(2)フクイチの健康被害について
1)本当は風評の問題ではないこと
 *2-1のように、改正福島復興再生特別措置法が、5月12日に参院本会議で可決・成立し、フクイチ事故で立ち入りが制限されている帰還困難区域内に、人が住める「特定復興再生拠点区域」を国費で整備することになったそうだ。しかし、こういう場所に住む人は、リスクを認識した上で受容すべきである。

 また、福島県産農林水産物の「風評払拭」に向け、国が販売の実態調査や適正な取引指導を行うなど、被災者の暮らしとなりわいの復興を加速させるとのことだが、福島県産の農産物は原発事故前の価格まで戻らず全国平均価格と差があるといっても、自由主義経済であれば、価格は需要と供給で決まり、需要の少ない製品の価格が下がるのは当然なのである。

 さらに、「流通しているものは安全が確認されている」と言っても、全数を検査しているわけではなく、基準放射線量は0ではなく、また、放射線量を開示しているわけでもないため、国民が長期的な安全性を重視してこういう製品を避けるのを、「風評被害」「心配しすぎ」などと言えば言うほど信頼がなくなるのである。

 そのため、これら原発事故の被害を農林漁業被害のすべてまで含めれば、*2-2のように、世耕大臣が「原発のコストは安い」などと言っているのは、ご都合主義の強弁にすぎない。


     電力の総原価         原子力発電のコスト   発電コスト実績比較  
               (事故費用12.2兆円という試算の時)

(図の説明:太陽光発電などの再生可能エネルギー買取に必要な費用が電気料金請求書で「再エネ発電賦課金」として加算されているため、再エネの買取が電気代を上げていると考えている人が多い。しかし、電力会社内で発電する場合の電力コストは、一番左の図のように、電力会社の発電設備等の減価償却費や発電に要する人件費・燃料費・修繕費などから構成されており、再エネを買い取る場合は、電力会社内ではこれらの発電コストが発生しない。一方、原発は、中央の図のように、立地自治体への交付金・核燃料サイクル費・事故処理費用等が国から支払われ、国民が負担しながら含められていない“発電コスト”もあり、使用済核燃料の処分費用は未だ計算されてすらいない。そのため、実際の発電コストは、一番右の図のように、原発は高い)

2)福島の原発事故関連疾病発生率

      
 セシウムの降下・蓄積   循環器系の疾患・心疾患    貧血治療数・手術数推移
           ・脳血管疾患死亡率の福島・全国比較


白内障・水晶体疾患推移    静脈・リンパ管疾患推移 扁桃周囲膿疱・急性扁桃腺治療推移

(図の説明:セシウム降下量は、文科省が航空機でモニタリング《空中の値であるため地上より低い》した結果、フクイチを中心として関東一円に広がっており、これはヨウ素やストロンチウムなど他の放射性物質でも同じだ。そして、循環器系疾患・心疾患・脳血管疾患死亡率が、福島県では全国平均と比較して2009年より2014年に明らかに上昇している。その原因は、①実際に死亡率が上昇した ②若い人が避難したため発症率の高い高齢者割合が増加した などが考えられるが、原発事故後、埼玉県でも心疾患で亡くなったという訃報が明らかに増えたため、①は決して否定できない。また、貧血・水晶体、白内障・リンパ管疾患になった人も2010年以降に増えており、扁桃周囲膿疱・急性扁桃腺治療数は福島県・栃木県両方のDPC対象病院で増加しているが、フクイチに近く放射線量の高い福島県の増え方は栃木県よりずっと多いため、原発事故の影響は明らかだ。そのため、これらの調査を、各県の大学病院・大病院がいっせいに行えば、世界でも貴重な驚くべき結果が出ると思われる)

 *2-3のように、岡山大大学院の津田教授(生命環境学)が国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー(疫学)」に発表した「福島県が福島原発事故当時に18歳以下だった県民を対象に実施している健康調査の結果を分析したところ、甲状腺がんの発生率が国内平均の20~50倍に達していた」という論文に衝撃が広がっているが、これは予期されたことだ。

 津田教授は、原発事故から2014年末までに県が調査した約37万人を分析した結果、「二本松市」「本宮市」「三春町」「大玉村」の「福島中通り中部」で甲状腺がんの発生率が国内平均と比較して50倍に達し、「郡山市」では39倍になっており、チェルノブイリ原発事故やWHO(世界保健機関)の2013年予測をすでに上回っており、今後、患者数は爆発的に増える可能性を示唆している。

 そして、放射性物質の放出量がチェルノブイリ事故と比べて10分の1と公表されたことについては、「もっと大きな放出、被曝があったと考えざるを得ない」と指摘しておられる。これに対して、国内では「時期尚早」「過剰診断の結果」などの指摘が出ているが、海外の研究者で時期尚早と言う人は誰もいないそうだ。つまり、日本の原発関係者は、信じたくないことを証明する事実は認めたがらないのである。

 また、福島で被爆住民の健康状態を確認し、治療している布施福島共同診療所長(医師)は、韓国で行われた韓日国際シンポジウムに参加し、*2-4のように、フクイチ被爆住民の白血病・脳出血・心筋梗塞の発症増加を、福島県立医大が発表した「原発事故の後、増加した病気」に関する資料を公開して発表した。その内容は、原発事故後、福島住民の白内障は2010年比で2011年229%、肺癌は172%、脳出血は253%、食道癌は134%、小腸癌は277%、大腸癌は194%、前立腺癌は203%に増加したとのことである。

 さらに、2年経過後の2012年には、脳出血は2010年比で300%、小腸癌は400%に増加し、早産/低体重出産も166%まで増加し、東京や埼玉県でさえ事故後4%ほど死産率が増加し、放射能汚染度が高い福島県周辺の死産率は12.9%増加したそうだ。日本政府は、まだ原発事故以来、放射能による健康被害はないなどと強弁しているが、もう事実を認識して対応せざるを得ない時期に来ている。

 このほか、広瀬隆氏は、*2-5のように、順天堂大学の血液内科が発表した「血液系疾患の患者数が激増しており、首都圏の病院でも骨髄形成症候群(血液関連の癌)が2~5倍という状態」「白内障も増えている」という資料を使い、「東京で、白内障や心筋梗塞が激増するのは何故か?」という記事を書いておられる。また、「ロッキー山脈でもプルトニウムが検出されているということは、原子炉内でメルトダウンした燃料が気化し、あらゆるものがガスになって放出され」「フクシマ原発から放出された放射能は、天文学的な量」とのことである。

 さらに、「セシウムは盛岡より新宿が6倍!ヨウ素は盛岡より新宿が100倍!!」「東京の荻窪も“チェルノブイリ危険地帯第4区”!」だそうだが、埼玉県はしっかり測定していないため、東京より目立たないのだろう。

(3)使用済核燃料最終処理施設候補
 このように、使用済核燃料が原発近くのプールに大量に保管されているのは、危険なことなのである。そのため、*3-1のように、「原発燃料処分の先送りはもう限界」である。

 そこで、使用済核燃料をなるべく安価に処分するには、*3-2のように、炭鉱が閉山して無人になりつつある高島か軍艦島に核の最終処分場を作り、速やかに深い海底下に保存する方法を採用するのがよいと、私は考える。何故なら、すでに地下空間が存在し、島の維持管理もできる上、移住したい人が移住できるように保障金を支払っても人数が少ないため安く済むからだ。

<北朝鮮のミサイル及びサイバー攻撃と原発>
*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16H17_W7A510C1MM0000/ (日経新聞 2017/5/16) 大規模サイバー攻撃、北朝鮮が関与か 複数社が分析、ソフトの技術的痕跡
 複数のIT(情報技術)企業は15日、世界各地で起きた大規模サイバー攻撃に北朝鮮が関与している可能性があるとの分析結果を公表した。北朝鮮のハッカー集団が今回のサイバー攻撃ソフトを作成した技術的な痕跡を見つけたという。ボサート米大統領補佐官(国土安全保障・テロ対策担当)は同日の記者会見で「ソフトは犯罪集団か外国政府によって開発された可能性がある」として「緊密に状況を注視している」と述べた。米グーグルの研究者と米シマンテック、ロシアのカスペルスキー研究所がそれぞれ公表した。カスペルスキーによると、北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」が2015年のサイバー攻撃で使ったソフトと、今回の攻撃ソフト「ワナクライ」の初期版のプログラムに、同じ記述が存在することがわかった。同一人物によって作成された可能性があるという。ラザルスは14年にソニー米映画子会社にサイバー攻撃を仕掛けたとされる。米政府は同攻撃に北朝鮮政府が関与したと断定し、15年に北朝鮮の対外工作活動機関である人民武力省偵察総局などに追加制裁を実施した。ラザルスは13年には韓国の放送局と金融機関の計6社を襲ったサイバー攻撃に関与したとされる。16年にはバングラデシュ中央銀行への決済システムに侵入し、8100万ドル(約92億円)を不正送金した事件にも関わったとの指摘もある。シマンテックは、北朝鮮のハッカー集団が31カ国(3月時点)でサイバー攻撃に関与しているとみている。ただIT各社は今回の攻撃が北朝鮮によるものとは断定していない。ボサート氏は15日朝(日本時間同日深夜)時点で「150カ国の30万台以上が影響を受けた」と表明した。「週末が過ぎて感染速度は下がっている」という。米政府では被害は確認されていないとしている。今回のサイバー攻撃ソフトはデータ復旧の代わりに金銭を要求する「ランサム(身代金)ウエア」で、「これまでに支払われたのは7万ドル以下のようだ」(ボサート氏)。被害が大きかったのはロシアやウクライナ、台湾などという。

*1-2:http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/statement/17-05-02/ (脱原発弁護団 2017年5月2日) ミサイル攻撃の恐れに対し原発の運転停止を求める声明
脱原発弁護団全国連絡会共同代表  河合弘之
     同           海渡雄一
1 米国が北朝鮮への圧力を強め、北朝鮮がミサイルの発射実験を繰り返し、国際情勢は緊迫の度を強めている。3月17日には、秋田県男鹿市で、弾道ミサイルを想定した避難訓練が実施された。4月21日、政府は「弾道ミサイル落下時の行動について」を公表し、国民に対し、「屋外にいる場合は、できる限り頑丈な建物や地下街などに避難すること、建物がない場合には、物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守ること、屋内にいる場合には、窓から離れるか、窓のない部屋に移動すること」等を呼び掛けた。4月29日の北朝鮮によるミサイル発射を受け、米国ティラーソン国務長官は、「ソウルや東京への核攻撃は現実の脅威である」と指摘した。この発射の直後、東京メトロ、東武線、北陸新幹線は、いずれも約10分間、安全確認のため運転を見合わせた。
2 ところで、追い詰められた北朝鮮が本気で日本をミサイル攻撃しようと考えれば、第一に狙われるのは在日米軍基地であり、第二に狙われるのは、原子力発電所であろうと言われている。原発は、在日米軍基地と違って無防備であり、通常のミサイルで壊滅的な被害を生じさせることができる。そもそも、日本の原発は、ミサイル攻撃に対する防護措置は全くとっておらず、原子力規制委員会が定めた新規制基準においても、そのことは求められていない。政府が上記のように国民に対ししてミサイル落下時の行動指針まで示さなければならないほどに事態が切迫しているのであれば、第一に原子炉や使用済み核燃料プール、これらの直近にミサイルが着弾することも当然のこととして想定しなければならないはずである。しかるに、現時点でテロ対策の設備(「特定重大事故等対処施設)が完成している原発は一つもない。政府や原子力規制委員会、原発事業者がミサイル着弾のリスクに対して有効な対策をとっているという説明は国民に全くなされていない。川内1、2号機、伊方3号機は今も運転中であり、玄海3、4号機、高浜3、4号機は再稼働への準備を着々と進めている。
3 もし、原子炉建屋や使用済み核燃料プールをミサイルが直撃すれば、戦慄すべき大惨事が起こる。その近くに着弾するだけでも、電源の喪失、各種設備の損壊、損傷によってその原発は深刻な危機に陥る。原発の位置、構造若しくは設備が災害の防止上支障がないものであること、原発の保全、運転について必要な保安措置がなされていることが原発使用の大前提であり、原発がこれらを満たしていない場合、原子力規制委員会は、原発の使用停止等の必要な措置を講じる権限を有している(原子炉等規制法43条の3の23)。ミサイル着弾に備える対策としては、原子炉内の核燃料及び使用済み燃料プール内の使用済み核燃料を安全な場所に運び出すしかないが、これは短期間でなし得ることではない。しかし、少なくとも現在運転中の原発の運転を停止して核燃料を冷温停止させておけば、危機が発生した場合において破滅的事態への進展を食い止めるための対策を講じる時間的余裕が生まれる。今、ミサイル着弾を想定すべき事態においてできる対策はそれしかない。
4 よって、脱原発弁護団全国連絡会は、原発事業者、政府及び原子力規制委員会に対し、次のことを求める。
(1) 現在運転中の原発を所有している原発事業者は、その運転を直ちに停止すること、そして、政府が日本へのミサイル着弾の恐れがなくなったことを表明するまで、再稼働しないこと。
(2) 現在、再稼働準備中の原発を所有している原発事業者は、政府が日本へのミサイル着弾の恐れがなくなったことを表明するまで、その原発を再稼働しないこと
(3) 政府及び原子力規制委員会は、原発事業者に対し、(1)(2)のとおり指示すること          以上

*1-3:http://www.news24.jp/articles/2017/05/20/10362004.html (日テレNews24 2017年5月20日) 北朝鮮「安保理決議は受け入れない」
 北朝鮮の国連次席大使が19日に会見を開き、「安全保障理事会の決議は受け入れない」などと強く批判した。北朝鮮キム・インリョン国連次席大使「もし、国連安保理がアメリカが行う攻撃的かつ挑発的なICBM(大陸間弾道ミサイル)発射訓練への説明を求めなければ、北朝鮮はいかなる安保理決議も決して受け入れないだろう」。会見した北朝鮮のキム・インリョン次席大使は、安保理がミサイル発射を非難していることに対して、「アメリカもICBMの発射実験を行っており、ダブルスタンダードだ」などと反論した。さらに、キム次席大使は、「アメリカが反北朝鮮政策を続ける限り、はやい速度で核攻撃能力を高めていくことになる」とけん制した上で、トランプ政権がさらに制裁を強めれば、「壊滅的な結果の責任をとることになるだろう」と述べた。

*1-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051902000137.html (東京新聞 2017年5月19日) 社説:高浜原発再稼働 置き去りにしたままで
 二転三転の高浜原発再稼働。国も司法も電力会社も自治体も、その責任を負えないまま、福島の事故究明や避難計画の実効性、何より住民の不安を置き去りにしたままで、原発が次々息を吹き返す。昨年春、大津地裁は滋賀県住民の訴えを入れ、関西電力高浜原発3、4号機の運転を差し止めた。原発を動かすならば、事実上のゼロリスク-、すなわち福島の事故原因に基づいた、完璧に近い備えがいるとの判断だった。前年の暮れ、福井地裁は「絶対的安全性は想定できず、危険性が社会通念上無視できる程度まで管理すべきだ」と、真逆の決定を下していた。再稼働のよりどころとなったこの三月の大阪高裁の判断も、これと同様、ゼロリスクの追求はできない、しなくてもいいという考えに立つと言えるだろう。「想定外」なら仕方がないということだ。従って高浜原発は、重大事故の危険を残したままで、再び動き始めたということだ。福島の事故原因は、究明されてはいないのだ。ならば、万一の事故の備えはどうかといえば、やはり万全にはほど遠い。日本の原発は、元々往来の不便な海辺に建てられる。国は周辺三十キロ圏の自治体に、避難計画の策定を義務付けた。だが、渋滞は、車両の確保は、船は、介助の人員は…。自治体側の悩みは深い。原子力規制委員会は、避難計画にはかかわらない。政府も了承するだけだ。被害の補償はできるのか。民間では世界最大の東京電力にさえ、福島の事故の負担は到底負いきれない。関電や政府に十分な補償ができる保証はない。それでも、立地地域以外の住民の声は聞こうとしない。周辺住民にとっては、ないないづくし。運営する電力会社も立地地域も最大のリスクを抱え続けることになる。これで「安心しろ」と言うのは無理だ。この状態が、「社会通念上無視できるほどのリスク」だとするならば、この世に危険なものなど存在しない。何か起きればすべて「想定外」で済まされる-。安全神話が復活した、というしかないではないか。福島の事故に関して明らかなことが、少なくとも一つはある。それは、安全神話こそ、すべてのはじまりだったということだ。 

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/385309 (佐賀新聞 2016年12月10日) 再稼働、地元同意の拡大要望6割、玄海原発、5市町長慎重
 新規制基準による原子力規制委員会の審査に事実上合格した九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に関し、佐賀県の全自治体と福岡、長崎両県の原発30キロ圏に入る計28自治体のうち6割の17自治体が再稼働の前提となる「地元同意」の対象範囲の拡大を求めていることが、共同通信が10日まとめた首長アンケートで分かった。佐賀の4市町を含む5自治体が再稼働に慎重なことも判明した。地元側の対応方針決定に時間がかかり、再稼働時期が遅れる可能性がある。九電川内原発や関西電力高浜原発が再稼働した際の地元同意の対象は、立地する県と市町に限られていた。

*1-6:https://mainichi.jp/articles/20170521/ddm/008/030/057000c (毎日新聞 2017年5月21日) 原発事故:韓国で起きたなら… 「日本では最大2830万人避難」 米シンクタンク試算
 東京電力福島第1原発事故を踏まえ、韓国の原発で事故が起きた場合の被害規模を専門家が試算した。気象次第で放射性物質が日本の広範囲に飛来し、日本で最大2830万人が避難を余儀なくされる恐れを指摘した。試算した米シンクタンク「天然資源保護協会」の姜政敏(カンジョンミン)上級研究員は「地震や津波だけでなく、テロや北朝鮮のミサイル攻撃が事故につながる事態も排除できない」としている。韓国南部・釜山市にある古里原発3号機で、使用済み燃料プールの冷却機能が失われて火災が発生し、放射性物質セシウム137が大量に放出されたと想定。2015年1~12月の気象条件で被害を調べた。1月は偏西風の影響で、西日本を中心に日本の最大6万7000平方キロが汚染され、最大2830万人に避難の必要が出る可能性がある。姜氏の図解では、山口県から四国、紀伊半島まで帯状に、地表のセシウム濃度が1平方メートル当たり200万ベクレル以上の地域が広がる。9月は最大で、韓国で国土の半分以上に当たる5万4000平方キロが汚染され2430万人が避難。日本の首都圏に近い地域や東北にも被害が及ぶ。北朝鮮や中国に被害が出るシナリオもある。韓国には原発が25基ある。

<フクイチ被害の隠蔽>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p40850.html?page=1 (日本農業新聞 2017年5月13日) 改正福島特措法が成立 風評払拭 復興加速へ
 改正福島復興再生特別措置法が12日、参院本会議で可決、成立した。東京電力福島第1原子力発電所事故で立ち入りが制限されている帰還困難区域内に、人が住める「特定復興再生拠点区域」を国費で整備する。また、福島県産農林水産物の風評払拭(ふっしょく)に向けて、国が販売の実態調査や適正な取引の指導を行うなど、被災者の暮らしと、なりわいの復興を加速させる考えだ。帰還困難区域はこれまで「将来にわたり居住を制限する」と位置付けられていたが、区域内に復興拠点を整備して帰還できるようにする。市町村が、放射線量の低減や公共施設の整備などで帰還が可能な地域を選定。国費を使って除染やインフラ整備を進め、5年以内をめどに避難指示の解除を目指す。一方、福島県産の農産物は原発事故前の価格まで戻らず、全国平均価格とも差がある。流通しているものは安全が確認されており、風評被害の実態と要因を究明する。流通販売の過程で買いたたきなど不適切な取引がないか調査する。結果に応じ、販売業者に対して国が指導や助言など必要な措置を行う。この他、被災した同県東部を拠点に新産業の創出を進める「福島イノベーション・コースト構想」を改正法に位置付けた。情報通信技術(ICT)やロボットなどの先端技術を活用し、農作業の効率化を目指す研究を強化する。改正法は今村雅弘前復興相の“肝いり”だった。しかし、東日本大震災が「東北で良かった」と発言し、更迭された影響で成立がずれ込んだ。菅義偉官房長官は12日の記者会見で、改正福島特措法の成立を受け、「福島の復興再生をさらに加速することができるように引き続き全力で取り組みたい」と述べた。国が費用負担する除染について、できるだけ早く開始する考えを示した。
●痛みを和らげ本気で対応を 全中会長
 改正福島特措法の成立を受け、JA全中の奥野長衛会長は12日、「福島の復旧・復興が道半ばなのは、風評被害の存在が大きい。福島の農家の、怒りを通り越した悲しみを少しでも和らげられるよう、政府に本気で対応してほしい」と語った。日本農業新聞の取材に答えた。

*2-2:http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20161207-00000010-ann-bus_all (テレビ朝日系(ANN) 2016/12/7) 世耕大臣「原発コスト安い」強調…廃炉費用増加でも
 東京電力福島第一原発の廃炉と賠償費用が膨らんでいることを受け、世耕経済産業大臣は「原発コストは安い」と改めて強調しました。世耕経産大臣:「色んな費用を全部、含めたとしても発電単位あたりのコストは原発が一番、安いと考えている」。廃炉と賠償などの費用は事故後の見積もりから数兆円単位で増大していて、経産省は国民負担を増やす方向で議論を進めています。そうしたなか、世耕大臣は、新たな費用を考慮しても原子力の発電コストは他の発電よりも安いと説明しました。経済産業省内には廃炉や賠償の費用が20兆円に上るとの試算もあるものの、公表されていません。経産省は今月中に議論を取りまとめる方針です。

*2-3:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/165762 (日刊現代 2015年10月9日) 福島の甲状腺がん発生率50倍…岡山大・津田教授が警告会見
 岡山大大学院の津田敏秀教授(生命環境学)が6日付の国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー(疫学)」に発表した論文に衝撃が広がっている。福島県が福島原発事故当時に18歳以下だった県民を対象に実施している健康調査の結果を分析したところ、甲状腺がんの発生率がナント! 国内平均の「50~20倍」に達していた――という内容だ。8日、都内の外国特派員協会で会見した津田教授は「福島県では小児や青少年の甲状腺がんの過剰発生がすでに検出されている。多発は避けがたい」と強調した。福島県で原発事故と子どもの甲状腺がんの因果関係を指摘する声は多いが、権威ある医学専門誌に論文が掲載された意味は重い。国際的な専門家も事態を深刻に受け止めた証しだからだ。津田教授は会見であらためて論文の詳細を説明。原発事故から2014年末までに県が調査した約37万人を分析した結果、「二本松市」「本宮市」「三春町」「大玉村」の「福島中通り中部」で甲状腺がんの発生率が国内平均と比較して50倍に達したほか、「郡山市」で39倍などとなった。津田教授は、86年のチェルノブイリ原発事故では5~6年後から甲状腺がんの患者数が増えたことや、WHO(世界保健機関)が13年にまとめた福島のがん発生予測をすでに上回っている――として、今後、患者数が爆発的に増える可能性を示唆した。その上で、「チェルノブイリ原発事故の経験が生かされなかった」「事故直後に安定ヨウ素剤を飲ませておけば、これから起きる発生は半分くらいに防げた」と言い、当時の政府・自治体の対応を批判。チェルノブイリ事故と比べて放射性物質の放出量が「10分の1」と公表されたことについても「もっと大きな放出、被曝があったと考えざるを得ない」と指摘した。一方、公表した論文について「時期尚早」や「過剰診断の結果」との指摘が出ていることに対しては「やりとりしている海外の研究者で時期尚早と言う人は誰もいない。むしろ早く論文にしろという声が圧倒的だ」「過剰診断で増える発生率はどの程度なのか。(証拠の)論文を示してほしい」と真っ向から反論。「日本では(論文が)理解されず、何の準備もされていない。対策を早く考えるべき」と訴えた。「原発事故と甲状腺がんの因果関係は不明」とトボケ続けている政府と福島県の責任は重い。

*2-4:http://nonuke.at.webry.info/201701/article_5.html (NAZENヒロシマ~すべての原発いますぐなくそう! 2017/1/22) ふくしま共同診療所 布施幸彦所長が韓国シンポジウムで発表
 2011年の東日本津波で発生した福島原子力発電所の事故以来、被曝住民の健康状態が非常に悪化したことが分かった。福島で被爆住民の健康状態を確認し、治療している布施幸彦福島共同診療所長(医師)は18日、韓国で行われた韓日国際シンポジウム(チュヘソン・キム・ギョンジン議員など主催)に参加して福島被爆住民の白血病・脳出血・心筋梗塞発症が増加したと明らかにした。特に18歳以下の子供を対象に甲状腺がんが大幅に増加したと明らかにした。2012年福島診療所を立てた布施幸彦(前群馬県公立病院副院長)は、この日のシンポジウムで、福島県立医科大学が発表した「原発事故の後、増加した病気」資料を公開した。これによると、福島の住民の白内障は、2010年比で2011年229%、肺がんは172%、脳出血は253%、食道がんは134%、小腸癌は277%、大腸がんは194%、前立腺癌は203%増加した。 2年が経った2012年の場合、脳出血は、2010年比で300%、小腸癌は400%増加したことが分かった。甲状腺がんの場合、10歳〜24歳の若年層をはじめ、ほとんどの年齢層で発生率が増加した。注目すべき点は、放射能被曝の影響を受ける子供たちである。 2013年12月31日現在、小児甲状腺がんまたは小児甲状腺がんが疑われる患者は、74人だったが、2016年12月現在の患者は184人に増えた。福島県で義務的に検査を受けた30万人の18歳以下の子供の68人の場合、先行検査では問題がなかったが、時間が流れて発症を確認したことが分かった。潜伏期間を経て、被曝の影響が癌で明らかになったものである。原発事故の後、日本の人口は減少に転じた。 2010年比で2012年早産/低体重出産は166%まで増加した。難病件数も、2011年を基点に大幅に増えた。難病件数は70万件のレベルで、2011年以来、100万件水準まで増加した。死産率も増加した。東京や埼玉県の場合、核事故の後、4%ほど死産率が増加した一方、放射能汚染度が高い福島県周辺は死産率が12.9%増加した。福島近くの6つの県では、乳児死亡率も増加した。急性白血病も増加した。福島県は、2010年に白血病の死亡者が108人だったが、原発事故後の2013年に230人に増え213%も増加した。付近の群馬県は310%、埼玉県は285%増加した。日本の平均値(142%増)に比べて高い。セシウム137の汚染濃度が高いほど発生する急性心筋梗塞の場合も全国的には減少傾向が福島県だけ増加した。原子力発電所の事故を処理した労働者の場合、白内障数値も著しく増加して労働災害認定を受けた事例も現れている。布施幸彦診療所章このような事実を伝えた後、「現在の福島県当局は、診察受けない権利を主張して検査を縮小・中止しようとしている。自律検査に変わったら、住民の健康状態を把握することができる材料が適切に出てくることはできない」と憂慮した。彼は続いて「福島県当局はまた、避難指示を解除して高濃度汚染地域住民を回して送信している。ここでは、子供も含まれている」と憂慮した。県当局は、今年3月から避難住民に施行していた住宅補助を中止する予定である。このような状況を残して布施幸彦診療所長は「住宅補助中断は帰還して被爆れるのか、(避難指示に)残って貧困になるのかを選択するようにする非人間的な政策」と批判した。日本政府は、まだ原発事故以来、放射能による健康被害はないと主張している。彼はこの日、全世界最高の原発密集国である韓国の警告も忘れなかった。彼は「原発事故は、原子力発電所が多い順にスリーマイル(米国)、チェルノブイリ(ソ連)、福島(日本)で発生した。次は韓国になるという懸念が多い」と明らかにした。

*2-5:http://diamond.jp/articles/-/82736?display=b (ダイヤモンド・オンライン) なぜ、東京で、白内障、心筋梗塞が激増するのか?
――エッセンシャル版・緊急特別講演会
<広瀬 隆 :1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数>
 ついに伊方原発の再稼働に関して、中村時広愛媛県知事がGOサインを出した。「1977年9月30日稼働」以来、38年経った「老朽化」の心配もさることながら、中央構造線上にそびえる伊方原発の危険性については、本連載でも再三触れてきた。同時に、2015年8月に1号機、10月に2号機が再稼働し始めた川内原発とまったく同じ「加圧水型」の原子炉は、「沸騰水型」の福島第一原発とは比べものにならない危険性があると、本連載第21回で指摘した。壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が増刷を重ね、第6刷となった。本連載シリーズ記事も、累計313万ページビュー(サイトの閲覧数)を突破し、大きな話題となっている。そんななか、10月23日に、広瀬隆氏がダイヤモンド社で緊急特別講演会を開催。当日は南相馬出身の人や高速バスで遠くからたくさんの人が会場を訪れた。予定の1時間を大幅に超え、2時間にわたった講演会のエッセンスを凝縮してお届けする。さらに、現況から展望される今後の原発ゼロ時代の到来について、7回の連載記事をお届けする。
では、注目の第3回をお送りしよう。
●順天堂大学の血液内科が発表した衝撃データ
  「原発問題はフクシマだけの問題であるから、東京に住んでいる私には関係ない」と思っている人にぜひ見てほしいデータがあります。東京の人間は非常に危ない状態にあります。このことについては、それを裏づけるデータがいくつかありますので、ダイヤモンド書籍オンラインのリンク(第24回)をここに示しておきます。全身に血液が流れるので、血液が癌の転移を引き起こすという意味で非常に重大です。このリンクに示したように、血液系疾患の患者数が激増しています。首都圏の病院でも、骨髄形成症候群(血液関連の癌)が2~5倍という状態です。またほとんどの人は、放射能というと、「癌」、「白血病」しか考えないのですが、「白内障」も増えています。東京や首都圏の人間は、本人がほとんど無意識でも、確実に被曝しています。この事実は、断言しておきます。私は、フクシマ原発事故が起こってからできるだけ外出しないようにしました。ただ、当時、講演会の依頼があるたびに全国各地に引っ張りまわされたので、私自身も、かなり被曝しています。この深刻な被曝がいつごろまで続いたかが問題ですが、フクシマ原発事故が起こってから2ヵ月後の5月11日に福島大学が高空の放射能測定結果を発表しました。このグラフは、縦軸に地上からの高さをキロメートル単位で示してあります。飛行機の絵がある高さが10キロメートルで、ジャンボ機が飛行するおよそ1万メートルです。横軸が放射線の量で、セシウムのガンマ線が濃紺の折れ線で示され、ストロンチウムやトリチウムのベータ線がピンクの折れ線で示されています。このような高空に大量の放射性物質が浮遊していた、つまり原発からは放射性物質の大量の漏洩が続いていることが確認されたのですから、これらが風に運ばれて、南下して首都圏へ、また北上して東北の北部にまで、大量に流れていたのです。事故が起こってから2ヵ月後でも、これほど大量にです!! 実際には、分っている限り2015年6月頃までは、これほど深刻な被曝量でした。そうしたなかで、誰も、眼が被曝していたことには、ほとんど意識がなかったはずです。しかし水晶体のある角膜に、1000分の1mmという、目に見えない、つまりミクロン単位の微小な放射性物質がつくと、白内障になり、眼の濁りが出てきて、数年~10年後ぐらいから悪化し、最悪の場合は失明してしまいます。こうした被害は、アメリカのスリーマイル島原発事故でも、チェルノブイリ原発事故でも、多くの被害者を出しているので、明らかになっています。白内障が東北で激増している、統計データも、さきほどのリンク先に示してあります。一番こわいのは、猛毒物プルトニウムです。アメリカの環境保護局EPA(Environmental Protection Agency)が発表しているデータを見ると、アメリカ西海岸のカリフォルニアで多量のプルトニウムが検出されました。プルトニウム燃料を使って運転していた福島第一原発3号機が大爆発をした日からちょうど10日後、2011年3月24日にグーンとプルトニウムの数値が上がっています。これ以降、なぜかEPAはデータを出していません。この分野で信頼できる科学者のアーニー・ガンダーセンさんがたびたび警告したように、ロッキー山脈でもプルトニウムが検出されていますし、東京の都心でもウランのような放射性物質が検出されています。茨城県つくば市にある、気象庁気象研究所では、放射性物質のモリブデンや、テクネチウムが検出されたと、地元紙・常陽新聞が報道したのが、2011年7月16日です。このニュースを聞いたときは、私は、もうダメだと思いました。このことも、すでにダイヤモンド書籍オンラインで書きました。つくば市は福島第一原発から170kmも離れています。つくば市まで沸点4877℃でガス化するテクネチウムが飛んできたということは、原子炉内でメルトダウンした燃料が気化して、あらゆるものがガスになって放出されたということです。原子炉内で、一番危険な甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素は184℃でガスになりますから、天ぷらの温度ですぐガス化する。それが日本全土に降り積もりました。セシウムはよく議論されていますが、白血病を起こす沸点1384℃のストロンチウムはほとんど議論されていません。一番危険な猛毒物プルトニウムでさえ、3232℃でガス化します。こういう危険な放射性物質が見えないガスになって東京を含む東日本地域に襲いかかりました。沸点が低い放射性物質はみんな、原子炉内でガス化していたわけです。それが、東京に飛んでこないはずがないのです。大事故直後の2011年3月17日に、私はCS放送の「朝日ニュースター」という番組で。「今、みなさんはテレビのいい加減な学者たちから、東京は大丈夫だという話を聞いていますが、そんなことはあるはずがない! 危険な放射性物質がガス化してみんな、東京にきていますよ」ということを話しました。
●セシウムは「盛岡」より「新宿」が6倍!ヨウ素は「盛岡」より「新宿」が100倍!!
 福島県では、美しい阿武隈山地に放射能が大量に降り積もりました。北のほうに流れた放射性物質は、奥羽山脈にぶつかってそこで大量に落ち、南のほうは茨城県から千葉・埼玉・東京に向かって山がないため、一気に直進して東京から神奈川にきたわけです。特に、新宿の高層ビル群に大量にぶつかりました。高層ビルの福島側と、その裏側では全然放射線量が違いました。しかし、マスコミは一切この事実を報道せず、多くの人たちは平気で通勤していました。「この人たちは大丈夫なのか?」と思っていたのは、私だけでしたでしょうか。あまりにも非常識で、普通の生活をする人たちを見て、私の頭がオカシイのかと思いました。それぐらい誰もが普通に通勤して、子どもたちも2011年4月に入って、普通に通学しているじゃないですか。「子どもたちの通学を止めさせろ」と叫んでいたのですが、誰も聞いてくれない。あの期間に、多くの人が被曝をしました。東京・新宿と盛岡市では、セシウムで新宿のほうが6倍です。この数字は、自治体の測定値なので、おそらくエアコンのフィルターなどで付着物を測定したものと思いますが、文科省の測定ではないので、信用していいです。甲状腺癌を引き起こす放射性ヨウ素は、新宿のほうが盛岡の100倍ですよ!(2011年11月25日公表値)。特に2011年は6月ぐらいまで、多くの人がすさまじい被曝をしました。
●東京の荻窪も“チェルノブイリ危険地帯第4区”!
 これは文部科学省が発表している東京の汚染地図ですが、山のある多摩地区は当然のことながら高度に汚染され、ギリギリ山梨県境まで汚染されました。この地図を見ると、「新宿」と「杉並」が汚染されていませんが、これはウソなのです。土壌が大汚染されているのに、航空機からの空間線量で、机上の計算でつくった気休めの地図です。放射性物質を実測したものではないのです。真の危険性を調べるため、私は、わが家のある東京・荻窪(福島第一原発から230km離れた場所)の土壌の汚染度を、信頼できる人に分析してもらいました。この人たちは、チェルノブイリ原発事故以来、ずっと放射能測定を続けてきた専門家です。つまり、継続して測定している人たちが、フクシマ原発事故の真の危険度を知ることができるのです。この内容は、『東京が壊滅する日』にくわしく書きましたので、お読みください。杉並区のわが家も、目の玉が飛び出るように汚染されていることが判明しました。その結果、1平方メートルあたり、わが家は1万7160ベクレルあり、子どもが遊ぶ近くの公園の土では9万2235ベクレルという驚異的な数値でした。杉並区の住宅地のど真ん中ですよ。ところが、同じ10月に文部科学省が空間線量から推定した汚染分布地図では、今の分布図のように、杉並区も新宿区も“安全地帯”となっているではないですか! その汚染された公園では、幼稚園児たちが遊んでいたというわけです。
●これから何が起こるのか? ―知られざる「ホットパーティクル」の恐怖
 私は30年以上前から、この問題に医学的に取り組んできたので、これから何が起こるかを理論的に申し上げます。1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故の教訓はこうです。ソ連では、当時の白ロシアが分離独立して、現在、「ベラルーシ」と呼ばれています。チェルノブイリ原発はベラルーシ国境近くのウクライナにありました。ベラルーシでは、チェルノブイリ原発事故のあとに亡くなった人たちの体を解剖すると、体内に高濃度の放射性物質の粒子「ホットパーティクル」がいっぱいありました。これもダイヤモンド書籍オンラインでくわしく書きましたので、そちらを参照してください。東京に住んでいるわれわれも、この高レベルの放射性物質を吸い込んできたのです。クシマ原発事故のあと、多くの人が線量計を買って、危険かどうかを調べてきましたが、アメリカと東京では、空間線量がほとんど変わりません。つまり空間線量の測定では、こうした危険な「ホットパーティクル」を検出できないわけです。
●「放射能の実害」から科学的に分析
 結論を申し上げます。フクシマ原発から放出された放射能は、トテツモナイ天文学的な量です。その内訳や計算は『東京が壊滅する日』にくわしく書きましたので、参照してください。大量の癌患者・死者を出したアメリカのネバダ核実験の風下地帯より、日本のほうが汚染度が高いのです。見すごされている事実として、首都圏はトテツモナイ人口密度だということがあります。これは福島県の比ではありません。これからこの日本で、100万人以上の方が、フクシマ原発事故の汚染で亡くなります。一瞬でみんなが死ぬわけではない。だから、気づかない。それがおそろしいのです。時間をかけて、病室の中でゆっくりと殺されてゆく。音もなく、家族だけが知っている。そうして亡くなっていくのです。私が申し上げている事実は、「放射能の実害」にあります。もし、原発から出る放射性物質が、人間の体内で「実害がない」ならば、どんどん原発を建てたらいい。しかし、私が調査してきたスリーマイル島事故(1979年)、チェルノブイリ事故(1986年)だけでなく、『東京が壊滅する日』で紹介した、アメリカネバダ州での大気中核実験(1951~58年で計97回)がおこなわれた場所から220kmも遠く離れた、田舎町のセント・ジョージでの悲劇、ロシアがひた隠しにしてきた「チェリャビンスク40」での史上最大の惨事を科学的に分析すると、放射能災害は必ず大量発生します。必ず起こります。ただ、東京には1300万人以上もいますので、100万人が何年かにわたって亡くなっても、精細な統計疫学で分析しないと、はっきり統計には出てきません。知るのは当事者の家族だけです。人殺し政策の好きな安倍晋三の日本政府が、賠償金打ち切りのために、次々と危険地帯への住民帰還政策を進めています。新聞やテレビも「フクシマ事故の影響はもう終った」かのような報道をしています。こうしてますます、フクシマ事故の大災害がいま現在、深く静かに進行しています。この体内被曝は、医学的な時限爆弾ですから、時間が経過すると共に発症するのです。
●なぜ、『東京が壊滅する日』を緊急出版したのか ―広瀬隆からのメッセージ
 このたび、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』を緊急出版した。現在、福島県内の子どもの甲状腺ガン発生率は平常時の70倍超。2011年3~6月の放射性セシウムの月間降下物総量は「新宿が盛岡の6倍」、甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素の月間降下物総量は「新宿が盛岡の100倍超」(文部科学省2011年11月25日公表値)という驚くべき数値になっている。東京を含む東日本地域住民の内部被曝は極めて深刻だ。映画俳優ジョン・ウェインの死を招いたアメリカのネバダ核実験(1951~57年で計97回)や、チェルノブイリ事故でも「事故後5年」から癌患者が急増。フクシマ原発事故から4年余りが経過した今、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』で描いたおそるべき史実とデータに向き合っておかねばならない。1951~57年に計97回行われたアメリカのネバダ大気中核実験では、核実験場から220キロ離れたセント・ジョージで大規模な癌発生事件が続出した。220キロといえば、福島第一原発~東京駅、福島第一原発~釜石と同じ距離だ。核実験と原発事故は違うのでは? と思われがちだが、中身は同じ200種以上の放射性物質。福島第一原発の場合、3号機から猛毒物プルトニウムを含む放射性ガスが放出されている。これがセシウムよりはるかに危険度が高い。3.11で地上に降った放射能総量は、ネバダ核実験場で大気中に放出されたそれより「2割」多いからだ。不気味な火山活動&地震発生の今、「残された時間」が本当にない。子どもたちを見殺しにしたまま、大人たちはこの事態を静観していいはずがない。最大の汚染となった阿武隈川の河口は宮城県にあり、大量の汚染物が流れこんできた河川の終点の1つが、東京オリンピックで「トライアスロン」を予定する東京湾。世界人口の2割を占める中国も、東京を含む10都県の全食品を輸入停止し、数々の身体異常と白血病を含む癌の大量発生が日本人の体内で進んでいる今、オリンピックは本当に開けるのか?同時に、日本の原発から出るプルトニウムで核兵器がつくられている現実をイラン、イラク、トルコ、イスラエル、パキスタン、印中台韓、北朝鮮の最新事情にはじめて触れた。51の壮大な史実とデータをぜひご覧いただきたい。「世界中の地下人脈」「驚くべき史実と科学的データ」がおしみないタッチで迫ってくる戦後70年の不都合な真実!よろしければご一読いただけると幸いです。

<使用済核燃料最終処理施設候補>
*3-1:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170507/KT170501ETI090005000.php (信濃毎日新聞社説 2017.5.7) 原発燃料処分 先送りはもう限界だ
 原発は「トイレのないマンション」と批判される。指摘されてきた矛盾の一部が浮き彫りになった。廃炉が決まった全国の原発17基のうち7基で、使用済み核燃料計約610トンの搬出先が確定していないことが表面化した。解体が計画通りに進まない可能性がある。使用済み核燃料は再処理して、プルトニウムとウランを回収する。後に残る高レベル放射性廃棄物はガラス固化体にして、地下300メートルより深く埋めることになっている。その処分地は決まっていない。搬出先が決まらないのは、最終的な核のごみの行き場がなく、途中で処理が行き詰まっているためだ。使用済み核燃料は長期にわたって極めて強い放射線を出す。運転が続けば総量はさらに増える。見通しがないまま、動かし続けることは認められない。問題を先送りにしてきた政府と電力会社の責任を問わねばならない。日本にある使用済み核燃料は約1万8千トン。フランスなどに委託して再処理した分を含めると、ガラス固化体換算で2万5千本相当になる。使用済み核燃料は、原発に併設されているプール施設などに保管されたままだ。廃炉が決まると、併設されていたプールも将来、取り壊される。そうなると、保管されていた核燃料の行き場がなくなる。搬出先が決まっている核燃料も問題を抱える。搬出先の多くは、同じ敷地内にある別の建屋のプールである。中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)は、廃炉になった1、2号機の使用済み核燃料を4、5号機のプールに移す。その結果、同原発のプールの貯蔵量は許容量の86・9%に上る。3〜5号機全てが再稼働すれば、2年余で上限に達する。満杯になれば搬出先は簡単には見つからないだろう。脱原発へのプロセスとして必要なことは、当面の保管先を確保することだ。保管方法を電力を使う水冷より安全性が高いとされる空冷の乾式貯蔵に切り替え、原発敷地などに施設を建設することも考えられる。長期保管につながる乾式貯蔵施設の建設は、地元自治体の同意が必要だ。理解を得るには、保管期限を厳密に定め、その間に最終処分する手段や処分地を見つけ出すことが求められる。まずは原発を稼働させる期間と基数を明確にして、処分する核のごみの総量を決めるべきだ。先送りはもう限界に来ている。

*3-2:http://qbiz.jp/article/99327/1/ (西日本新聞 2016年12月3日) 【閉山の島 高島30年・池島15年】(3)直訴 「無人」がもたらすもの
 閉山に揺れる30年前の高島(長崎市)に、こんな構想が持ち込まれた。国内随一を誇った高さ965メートルの立て坑を使い、ロケットの打ち上げ拠点にする−。「ありとあらゆる提案があった」。当時の高島町助役、土居訓(79)はその奇抜さに驚いた。記憶は、さらにさかのぼる。「そういえば、軍艦島(端島)の炭鉱閉山のときは核のごみ処分場はどうか、という話もあったなあ」。池島炭鉱が閉山した15年前の池島(長崎市)でも、原発から出る核のごみの最終処分場建設案が、外部コンサルタントを通じて当時の外海町に届いた。「被爆地・長崎で、無論できるわけがなかった」。当時、閉山対策を担う町課長だった吉川司(68)もあきれる。いずれも立ち消えになったが、共通するのは「人がいなくなる」=「無人化」を前提にしていたこと。もともと寒村だった島。炭鉱が生まれ、全国から人が集まった。「炭鉱なしで島は成り立つのか。行政マンとしては本土への集団移転も現実的な選択肢として考えたが…」。吉川は、今も悩んでいるようだ。
     ◇
 「お願いがあります」。11月初め、高島での旧高島町と市の合併10年式典。地元代表としてあいさつに立った自治会連合会長の松尾保(49)は、壇上の市長、田上富久(59)や市議に目を向けた。「観光だけで人口減少は止められません。せめて、今住んでいる人が住みやすくしてほしい。希望ある未来が訪れることを祈ります」。祝いの場での“直訴”だった。人口384人。うっそうと茂る雑草が坑口跡や住民の消えた家、通路をふさぐ。除草を担ってきた島民が高齢で引退し、公募でやっと市本土在住の男性が見つかり、11月から船で通う。草刈りですらぎりぎりだ。10月上旬、池島炭鉱跡。普段は立ち入り禁止区域に、池島自治会連合会長の近藤秀美(66)は関東から来た研究者数人を案内した。目的は、高低差660メートル、煙突状の立て坑。内部のコンクリート構造は健在。研究者たちは、島を囲む海から立て坑内にくみ上げた海水を落としてタービンを回す、国内初の揚水発電をひそかに構想する。炭鉱の下請けで働いていた近藤は土産店を営むが、人口は159人。客はほとんどない。「炭鉱を生かした観光の武器になる。人をたくさん呼べるようになるかもしれん」。島に2人しかいない小学生の祖父でもある近藤に差した、かすかな希望の光。一方、研究者の視点はこうだ。「実験場としてこんな適地はない。こう言っては悪いが、人がいない島なので騒音への反対がない」。最盛期からの人口減少率は2島ともに98%。こんな街が、日本にあるだろうか。島の中で今、暮らしを営む人の思いは常に切実で、外からの視線はいつも冷徹なほどに現実的だ。


<スイス、国民投票で脱原発>
PS(2017/5/22追加):フクイチから遠い国スイスでは、2017年5月21日、*4のように、脱原発を問う国民投票が行われて賛成多数で可決され、「脱原発」支持の民意が示された。なお、国民がこのような判断に至るためには、スイスでは、今回の原発事故に関する正確な情報が開示されていたのである。

*4:http://www.jiji.com/jc/article?k=2017052200199&g=int (JIJI 2017/5/22) 「脱原発」、賛成が多数=スイスで国民投票
 スイスで21日、原発の新設を禁止し、再生可能エネルギーを推進する改正エネルギー法への賛否を問う国民投票が行われた。開票結果は賛成58.2%に対し、反対41.8%と、「脱原発」支持の民意が示された。投票率は42.4%。スイスは2011年の東日本大震災での東京電力福島第1原発事故を受け、脱原発方針を決定。改正法はこの方針に基づくもので、昨年9月に議会で承認されたが、その後国民負担増加への懸念を理由に反対派が署名を集め、国民投票に持ち込んだ。

<核禁止条約>
PS(2017年5月23日追加):「日本には不幸なことで世界で有名になった都市が4つあり、それはヒロシマ・ナガサキ・ミナマタ・イサハヤだ」と言われているうちに、フクシマも加わって5つになった。そのヒロシマ・ナガサキから「核兵器禁止条約」が提案され実現が近づいているが、これが本来の日本の役割だと考える。そこで、原発はどうする?

*5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12950874.html (朝日新聞 2017年5月23日) 「ヒバクシャの苦難を心に留める」 核禁止条約原案に表現
 核兵器の使用などを法的に禁じる「核兵器禁止条約」の原案が22日、初公表され、「核兵器使用の犠牲者(ヒバクシャ)の苦難を心に留める」との表現が盛り込まれたことが分かった。原案をまとめた条約交渉会議議長国コスタリカのホワイト大使は、「『被爆者が皆この世を去る前に、核兵器禁止条約の実現を見届けたい』との被爆者の思いを、交渉会議に伝えてほしい」と田上富久長崎市長から依頼された、との逸話を明かした。原案は、前文と21の条項から構成されている。前文では、締約国が、核兵器のもたらす壊滅的な非人道的影響を「深く憂慮」し、再び使われることがないための「あらゆる努力」を行う必要性をうたった。禁止する項目は、(1)核兵器の開発や製造、生産、取得、保有、貯蔵(2)核兵器やその管理権限の移転や受領(3)核兵器の使用(4)核実験の実行(5)上記の活動について支援したり、支援をうけたりすること(6)自国領への核兵器の配備(7)自国領での核実験、と定めた。一方で「核兵器使用をちらつかせた脅し」を禁止する、直接的な文言は含まなかった。米国の「核の傘」の下にあり、交渉に現在参加していない日本などに、将来加盟する余地を残すものだ。


<新エネルギーと原発>
PS(2017.5.28追加):*6-1のように、福井県の原発集中立地は誰が考えても危険であるにもかかわらず、福井県が率先して原発再稼働を進め、原発事故の責任は国にあるとしているのは無責任だ。原発立地地域が原発を推進する理由は、原発が交付金・税収・(少々の)雇用等をもたらすからだが、少し広い視野で見ると、*6-2、*6-3、*6-4のように、原発は環境親和性の高い新エネルギーの進歩や発展を阻害している。また、燃料費を外部に持ち出さず安全性も高い地域エネルギーでその地域を豊かにすることをも阻んでいるのだ。さらに、*6-5のように、福井県高浜町長は、使用済核燃料を原発敷地内で「乾式貯蔵」する選択肢も示しているそうだが、ただでさえ放射性物質の多い原発敷地内で、災害・テロ・戦争などが起こっても、安全に10万年も貯蔵できるつもりだろうか。もしそうでなければ、近所迷惑である。

*6-1:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0113969.html (北海道新聞 2017.5.28) 福井県の原発 集中立地やはり危うい 
 原子力規制委員会は、関西電力大飯原発3、4号機(福井県)が新規制基準に適合すると認める審査書を正式決定した。気になるのは、海沿いに原発が10基以上も並ぶ福井県内で、審査に合格した原発がすでに7基を数えることだ。いずれかの原発で自然災害などによる過酷事故が起き、立ち入りが禁止されたり制限されたりする区域が広がった場合、他の原発に混乱は生じないのか。国、電力会社、自治体は、「原発銀座」が抱える危うさに正面から向き合わなければならない。同県内では、関電の高浜1~4号機、美浜3号機も審査に合格している。中でも大飯と高浜の両原発は十数キロしか離れていない。だが、規制委は各原発の号機ごとに審査し、独立した形での安全態勢確保を基本としている。東日本大震災の規模を考えれば、原発が集中するこの地帯で、複数の施設が同時に被災する可能性は否定できまい。その時、電力会社が想定通りに事故に対応し、住民が安全に逃げられると言い切れるのか。福井県が策定した広域避難計画が「多重事故」を想定していないことも、大きな懸念材料だ。福島第1原発事故では炉心溶融が1~3号機で起き、広範囲で放射線量が高まったため、ピーク時は約16万人が避難した。福島第2原発も津波に襲われたが、かろうじて大惨事を免れた事実がある。東日本大震災の教訓を生かすには、原発の審査や避難計画を、単独の「点」ではなく、「面」でとらえる発想が必要だ。まして福井県の場合、合格した7基だけでも、避難計画策定が必要な半径30キロ圏内の地域は京都府や滋賀県の一部にも及ぶ。原発は、立地地域に雇用などの経済効果をもたらす。だからといって、事故時には周辺地域にも被害が及ぶ恐れがあることを無視していいはずがない。大飯原発の審査を巡っては、島崎邦彦前規制委員長代理が耐震設計の目安となる基準地震動について、過小評価の疑いを指摘した。関電は秋以降の再稼働を目指しているが、運転差し止めを求める訴訟が名古屋高裁金沢支部で審理中でもあり、30キロ圏内で不安を抱く住民も少なくなかろう。しかし、現状では電力会社と国、立地自治体の意向だけで再稼働を進めることができる。やはり、可否を巡る同意権を、周辺自治体にも認めるべきだ。

*6-2:http://qbiz.jp/article/110169/1/ (西日本新聞 2017年5月23日) インドネシア 地熱12鉱区の開発加速、来月に5鉱区入札へ
 インドネシア政府は今年、地熱鉱区12カ所の開発に向け、入札手続きなどを加速させる。12鉱区の総発電容量は86万5,000キロワット(kW)。投資総額は約43億米ドル(約4,800億円)と見込んでいる。22日付ジャカルタ・ポストが伝えた。エネルギー・鉱物資源省によると、6月中にも5鉱区の一般入札を実施する。5鉱区は、◇中スラウェシ州ボラプル◇東ヌサトゥンガラ州オカイレ・アンゲ◇同シルン◇北マルク州ジャイロロ◇北スマトラ州シンボロンサモシル――。総発電容量は計33万kWで、うちシンボロンサモシルが22万kWで最大。このほか、国営電力PLNとPLN傘下のジオ・ディパ・エネルギー、国営石油プルタミナの3社は、直接指名鉱区7カ所の開発を進める。PLNは北マルク州ソンガ・ワヤウアなど3鉱区、ジオ・ディパ・エネルギーとプルタミナはそれぞれ2鉱区を開発する。インドネシアの現在の地熱総発電容量は169万8,500kW。北スマトラ州サルーラ地熱発電所で2号基が稼働することなどに伴い、容量は年内に16万kW増の185万8,500kWに拡大する見通しだ。政府は、地熱総発電容量を2025年までに720万kWに引き上げる方針を示している。

*6-3:http://qbiz.jp/article/110601/1/ (西日本新聞 2017年5月27日) 九州の風力発電 接続可能量到達
 九州電力は26日、九州の風力発電所から電力系統に接続するための契約申し込みが、25日に接続可能量の累計180万キロワットに到達したと発表した。26日以降に接続を申し込む事業者は、電力の需給バランス調整のために稼働を停止する出力制御を、無制限に受け入れる必要がある。事業者は稼働日数が想定できず、新規案件のリスクが高まる。2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まって以降、風力発電所の設置が増加。25日時点で、既に九電の系統に接続した発電所の出力が49万キロワット、接続を承諾した計画が29万キロワット、接続契約の申し込みがあった計画が102万キロワットとなった。出力制御は、天候で出力の変動が大きい太陽光発電や風力発電の急増を受け、電力需給のバランスが崩れるのを防ぐための措置。もともと九電は、各発電事業者に年間で最大30日間の出力制御を前提に容量を設定している。ただ、これまでに風力発電所の出力制御を要請したことはない。

*6-4:http://qbiz.jp/article/108807/1/ (西日本新聞 2017年5月3日) 九州・沖縄の倒産、太陽光関連が最多に 17年は4月時点で9件
 東京商工リサーチ福岡支社は2日、九州・沖縄地区の太陽光発電関連事業者の倒産状況を発表した。2017年は4月時点で件数9件、負債総額計62億7200万円に上り、件数・金額とも年間の過去最高を既に更新した。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の価格引き下げや新規投資縮小が背景にあり、同支社は今後も倒産が増えるとみている。17年の倒産9件のうち、原因別では「販売不振」が3件で最多。「事業上の失敗」「他社倒産の余波」が各2件だった。4月には関連部品販売の「ZEN POWER(ゼンパワー)」が破産開始決定を受け、負債額は約52億円と九州で過去最大だった。本年度は事業用の太陽光発電に入札制度が設けられ、今後住宅用の買い取り価格も引き下げられる見通し。同支社は「ノウハウがない新規参入企業などで淘汰(とうた)が進む」としている。同支社は2000年から集計開始。これまでの過去最高は、件数が16年などの7件、負債総額は12年の50億8100万円だった。

*6-5:http://www.shinmai.co.jp/news/world/article.php?date=20170527&id=2017052701000658 (信濃毎日新聞 2017年5月27日) 原発敷地内で乾式貯蔵も選択肢 使用済み核燃料で高浜町長
 関西電力高浜原発が立地する福井県高浜町の野瀬豊町長が27日までに共同通信のインタビューに応じ、同原発で増え続ける使用済み核燃料の扱いについて、現在保管している原発内のプールから取り出し、専用の金属容器に入れて保管する「乾式貯蔵」を原発敷地内で進めることも選択肢との認識を示した。原発外への搬出が前提となっている使用済み燃料を巡り、原発の地元町長が敷地内でのさらなる保管に言及するのは異例。野瀬町長は同時に、使用済み燃料を原発外でいったん保管する「中間貯蔵施設」建設に国が積極的に関与するよう求めた。国や、原発を抱える各地の立地自治体の議論に影響を与えそうだ。

<地産地消のエネルギーへ>
PS(2017年5月30日):*7-1、*7-2のように、福岡県の筑後地方では、「やめエネルギー」や「みやまスマートエネルギー」が事業を始め、①地域資金とエネルギーの循環を生み出して地域を豊かにする ②電力を地産地消して災害に強いまちづくりをする ③高齢者の見守りサービスを組み合わせる などを行いながら、ドイツの先進事例を学んでおり、他の地域でも参考になるだろう。また、*7-3のように、柳川市は、市の49施設を地産電力に切り替え、年間472万円の電気代節減に成功したそうだ。さらに、*7-4のように、大分県九重町の出光興産地熱バイナリー発電所が低温熱水での発電を始めており、地域によってさまざまな電源があるだろうが、これにEVとゼロエネルギー建物を組み合わせると地域のエネルギー自給率は100%になるため、「日本は資源のない国」というのは誤りである。

*7-1:http://qbiz.jp/article/109886/1 (西日本新聞 2017年5月19日) 電力新時代:八女市に新電力73社出資 6月供給スタート 太陽光など「地産地消」へ
 福岡県八女市の中小企業が1月に立ち上げた地域新電力会社「やめエネルギー」が18日、同市本町の「おりなす八女」で事業開始式を行った。出資企業は広川町を含む八女地域で事業展開する73社に上り、やめエネルギーによると民間資本だけで設立された新電力会社の中で出資者数は全国最多。「電力の地産地消」を掲げ、これまで電気料金として地域外に流れていた資金を地元で循環させ、地域経済の活性化にもつなげたい考えだ。同社は、昨年4月から全面自由化された電力小売り事業への参入を目的に1月11日に設立。製茶や仏壇など地域の特色ある産業をはじめ、建設業やサービス業など幅広い業種が出資した。電力は「やめのでんき」のブランド名で販売し、6月から供給を始める。販売する電力は、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーを地元から調達し、不足分は電力卸取引市場などから仕入れて補う。料金は一般家庭向けでは九州電力より2〜5%安く設定した。当面は、みやま市などが出資する「みやまスマートエネルギー」が電力供給などを担い、やめエネルギーは電力の需給管理などノウハウを得た上で、1年後をめどに独立するという。出資者ら約100人が出席した式典で、やめエネルギーの本村勇一郎社長は「地域資金とエネルギーの循環を生み出すことで、新たな産業や地域サービス、雇用、人の流れが生まれる。ビジネスや生活面で地域を豊かにしたい」とあいさつ。八女市の三田村統之市長は「(電力を地産地消することで)災害に強いまちづくりにも大きく貢献できる」と期待した。1年後までに、事業者80件、一般家庭450件程度との小売り契約を目指す。本村社長は「将来的には、木質バイオマスによる発電事業も構想している。高齢者見守りサービスなどにも取り組んでいきたい」と話している。契約などに関する問い合わせは同社=0943(22)8834。

*7-2:http://qbiz.jp/article/103147/1/ (西日本新聞 2017年2月7日) みやま市やドイツの先進事例を学ぶ 自治体エネルギー会議
 自治体主導の電力事業に注目が集まる福岡県みやま市で6日、「日独自治体エネルギー会議 in みやま」(環境省主催、みやま市など共催)が開かれた。国内外から参加した約140人が、ドイツの先進事例やみやま市の取り組みなどを学んだ。ドイツは、電力やガスなどのエネルギーを供給する自治体出資の都市公社が数多く設立されている先進地。会議では、公社や自治体の担当者らが、運営の仕組みや収益状況などを説明。新電力の設立を検討している日本の自治体関係者らが耳を傾けた。みやま市が中心となって設立した「みやまスマートエネルギー」は、電力売買で得た収益を住民サービスに還元する取り組みなどを紹介。磯部達社長は「自治体同士で電力を融通し合う取り組みを深め、互いの経済活性化に協力できるような関係づくりを進めたい」と話した。

*7-3:http://qbiz.jp/article/102885/1/ (西日本新聞 2017年2月2日) 電力新時代:柳川市が地産電力に切り替え 福岡県内初 49施設、年472万円節減
 福岡県柳川市は1日、市の49公共施設の電力供給先を、九州電力から、隣接するみやま市が55%出資している地域電力会社「みやまスマートエネルギー」(磯部達社長)に切り替えた。同社がみやま市以外の県内の自治体と売電契約を結んだのは初めて。柳川市によると、年472万円の電気料の節減につながるという。供給を切り替えた施設は市役所3庁舎、全25小中学校、給食センター、公民館など。いずれも高圧電力(50キロワット以上)を使用し、この49施設で市における公共施設全体の電気料の56%を占める。市は「低圧電力より大きな節減効果が見込めた」としている。この日、柳川市役所で供給切り替え式があり、金子健次市長、磯部社長、みやま市の西原親市長らが切り替えスイッチを押した。金子市長は「みやま市とは共同で火葬場やごみ処理施設を計画しており、今回の契約で、両市の地域連携をさらに深めたい」と強調。磯部社長は「地域に地産地消エネルギーを普及させることで、両市の発展に貢献したい」と述べた。同社は南筑後地区の他の自治体にも切り替えを働き掛けており、金子市長は「柳川の契約を機に、他の自治体にも広がるのでは」と話した。同社は柳川市の一般世帯にも普及を図るため、電気料を払うと市内統一買い物カード「やなぽ」のポイントがたまるサービスも検討する。

*7-4:http://qbiz.jp/article/104722/1/ (西日本新聞 2017年3月2日) 余った熱水を使った全国初の地熱発電所が運転開始
 大分県九重町に出光興産が建設した地熱バイナリー発電所「滝上バイナリー発電所」(出力5050キロワット)が1日、商業運転を始めた。低温の熱水で発電するバイナリー方式として日本最大級。グループ会社や九州電力に売電する。発電所は、子会社の出光大分地熱が運営する滝上事業所の敷地内に建設。同事業所は、九電滝上発電所に地熱発電用の高温の蒸気を供給している。同発電所で使わずに地下に戻していた130度の熱水を利用するため、出光が新たに発電所を建設した。既設の地熱発電所に併設し、未利用の熱水を使う地熱バイナリー発電所の稼働は国内で初めてという。出光大分地熱の竹中照雄社長は記者会見で「エネルギーを効率的に利用でき、地熱発電の拡大にもつながる」と語った。

<スマートメーターを使った見守りサービス>
PS(2017年6月1日):九電が、*8のように、1人暮らしの高齢者の電気使用状況から察知して高齢者を見守る社会実験を福岡市で始めるそうだ。私は、電力使用が普段と異なるパターンを示した場合には、①まず「大丈夫ですか?」と声をかけ ②返事がない場合はアクションを起こせる組織に連絡する のがよいと考える。ただ、高齢者も旅行や入院などで普段と異なる電力使用パターンになることはあるため、その場合はあらかじめ連絡するようにしておくべきである。また、「見守り・介護サービス」という福祉子会社を作り、プライバシーを守りながらシステムを完成すれば、料金をとるサービスとして国内だけでなく他国でも使えるだろう。

*8:http://qbiz.jp/article/110886/1/ (西日本新聞 2017年6月1日) 九電が高齢者の見守り社会実験 6月から電気使用量で異常把握
 九州電力は31日、1人暮らしの高齢者の電気使用状況から親族が異常を察知するサービス「みまもりサポート」を活用し、地域で高齢者を見守る社会実験を福岡市で始めると発表した。親族を対象にしたサービスを、高齢化が進む地域の見守り活動に発展できるかを検証するのが狙い。社会実験は6月から半年間、同市城南区の別府校区で実施する。1人暮らしの高齢者約30人の電気使用量と過去のデータを30分ごとに九電のシステムが分析。使用量に異常があれば、同校区の社会福祉協議会のメンバーにメールを送り、高齢者の状況を確認してもらう。高齢者1人を最大5人の地域住民で見守る。すでに九電と市、市社会福祉協議会が協定を締結。実験後に、見守る側と見守られる側の負担感などを検証する。九電の渡辺義朗営業本部長は記者会見で「他地域に拡大できればいい。役に立てることで地域に貢献したい」と語った。結果次第では、他地域での本格運用も検討する。みまもりサポートは九電の生活関連支援サービスの一つで、昨年10月に開始。九州でスマートメーターを設置している契約者が、月額500円で利用できる。

<太陽光発電電力の買取価格>
PS(2017年6月4日追加):*9-1に書かれているとおり、原発再稼働の同意は原発事故時に汚染される全地域にすべきで、それができなくても、少なくとも30キロ圏内の市町村・都道府県の同意は必要だろう。なお、*9-2のように、東日本大震災後に太陽光発電所が爆発的に増えた九州で、太陽光を中心に723万キロワット分(大型原発7基分)の再生可能エネルギー発電所建設計画の認定が2017年4月に失効したそうだが、これには系統設備の増強・新設の工事費が高騰したことや原発を再稼働させたい九電が太陽光の買取制限を行ったことなどが影響している。太陽光発電による電力の買取価格は、2012年度のスタート時(普及開始時)は1kw時当たり40 円だったが、今後は市場価格での普及を促すため、世界標準の10円前後にするのがよいだろう。

   
 2017.6.4    2016.11.23   電源別発電コスト    太陽光発電コスト
 西日本新聞    佐賀新聞      の比較         国際比較

(図の説明:日本全国では大型原発106基分の再生可能エネルギーが認可を受け、九州では太陽光を中心に大型原発22基分の再生可能エネルギーが認可を受けているため、原発再稼働は全く必要ない。また、玄海原発30km圏には26万人以上の人が住んでおり、事故時には立地自治体と変わらぬ大きな被害を受けるため、原発再稼働には立地自治体並みの同意が必要だ。なお、太陽光発電の買取価格1kw時当たり8~15 円への引き下げは、他国では既に実現しており、市場価格での取引を始めるためには、我が国でも必要だと思われる)

*9-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12971524.html (朝日新聞社説 2017年6月4日) 原発と地域 再稼働への同意権拡大を
 周辺で暮らす人々の不安を置き去りに、原発がまた続々と動きだそうとしている。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)ではこの春、佐賀県知事と玄海町長が再稼働に同意した。関西電力大飯(おおい)原発(福井県おおい町)も先月、新規制基準に適合し、福井県知事とおおい町長の同意手続きへ進む。事故に備えた住民避難計画をつくる周辺30キロ圏では、首長や住民から再稼働反対の声が相次ぐが、電力事業者は耳を傾けない。再稼働への同意を得るべき「地元」は、原発の立地市町村と道県に限っているからだ。東京電力福島第一原発事故の被害を経験した日本で、事故前と同じ手続きを繰り返す限り、住民の不安はぬぐえない。「地元」の定義を見直し、少なくとも30キロ圏の自治体に同意権を認めるよう改めて訴える。
■被害に差なし
 同意権は法令上の権限ではない。自治体と電力事業者が結んでいる安全協定にある「事前了解」の規定がおもな根拠だ。玄海原発の30キロ圏にある佐賀県伊万里市(人口5万5千人)。塚部芳和(よしかず)市長は昨夏、再稼働への反対を明言した。福島原発事故後の13年に30キロ圏の福島県南相馬市を訪ね、「周辺と立地自治体とで被害の差はない」と痛感した。立地自治体並みの事前了解を含む安全協定の締結を九電に求めたが、九電側は拒んだ。「いくら反対してもかやの外。事故のリスクだけは負わされる。あまりに理不尽だ」と塚部市長は憤る。周辺では長崎県の3市長も反対を表明した。だが、県境をまたげば知事でも同意権はない。15年以降、川内(鹿児島県)、伊方(愛媛県)、高浜(福井県)の3原発が立地自治体だけの同意で再稼働した。福井県に隣接する京都府や滋賀県は同意権の拡大を訴えてきた。北海道函館市は、海を挟んで23キロ離れた大間原発(青森県)の建設差し止め訴訟を起こした。被害が及ぶ恐れがある地域がなぜ「地元」と認められないのか、という問いかけだ。
■地域の目を安全向上に
 朝日新聞の社説はこれまでも同意権を持つ地元の範囲を広げるよう主張してきた。より多くの自治体が同意手続きで原発の安全性をチェックすればその向上が期待でき、住民の信頼につながると考えるからだ。安倍政権は、新規制基準は世界で最も厳しく、原子力規制委員会が適合だと認めれば安全性は確認される、との見解だ。ただ、国際原子力機関(IAEA)が求める5層の安全防護策のうち、新規制基準がカバーしているのは4層までだ。第5層は原子力防災だ。1~4層が突破されて原発外に放射性物質が拡散する事態を想定し、住民を避難させて被曝(ひばく)を防ぐ「最後の壁」だ。国は福島原発事故後、その計画づくりを30キロ圏の自治体の責務とした。自治体が原発の安全性の確認を国任せにせず、自分たちが担う避難計画の実効性も含めてまだ不十分だと判断すれば、再稼働に待ったをかける権限を与えることは当然ではないか。判断には専門知識も要る。福島原発事故の独自検証を続ける新潟県のように、専門家組織を設けることも有益だろう。
■国会で議論を
 同意権の範囲拡大には、ほとんどの立地自治体も否定的だ。立地自治体は、電源三法に基づく国の交付金や住民の雇用確保など、財政・経済面で原発の恩恵を多く受けてきた。「同意権を持つ自治体を増やせば、それだけ原発は動かしにくくなる」との警戒感がにじむ。「安全協定の本来の意味に戻るべきだ」。金井利之・東京大教授(自治体行政学)は話す。60年代以降、立地自治体が協定締結に動いたのは、電力事業者に事故やトラブルの情報を隠させず、必要に応じて「もの申す」ことで、住民の安全・安心につなげるためだった。「不安や懸念を抱く自治体が周辺にあれば、何を問題視しているか、広く一緒に議論すればいい。安全性はさらに高まり、立地自治体にもプラスのはずだ」と金井さんは言う。各自治体が安全面のみを中立的に判断できるよう、原発の稼働の有無で財政・経済面の受益に差が出ることがないようにする制度づくりも考える必要があると説く。そうした制度を考えるのは、国の役目のはずだ。安倍政権はこれまで、地元同意の範囲は「国が一律に決めるものではない」(世耕弘成経済産業相)と傍観してきた。ただ、「地元」をめぐる電力事業者・立地自治体と周辺自治体の分断を放置し、周辺の異論も無視したままの原発再稼働をこれ以上続けてはならない。30キロ圏の自治体の同意を再稼働の条件として法令に明記するなど、やり方はいろいろ考えうる。事故から6年余り、積み残されている重要課題として、国会で論議していくべきだ。

*9-2:http://qbiz.jp/article/111091/1/ (西日本新聞 2017年6月4日) 電力新時代:太陽光計画、九州3割失効 723万キロワット、建設放置の業者排除
 東日本大震災後に太陽光発電所が爆発的に増えた九州で、太陽光を中心に723万キロワット分の再生可能エネルギー発電所建設計画の認定が4月に失効したことが分かった。認定された出力合計の3割強で、全国10地域で最大。太陽光などの電力買い取り価格が高い時期に認定を取得し、いっこうに建設を始めない事業者が国によって排除された形だ。大型原発6〜7基分の出力に匹敵する計画が、実現性がないまま放置されていた実態が浮かび上がる。太陽光設備の認定を経済産業省から受けた後も実現していない発電所が全国で増加し、問題になっている。太陽光の電気を買い取る価格が高いうちに認定だけ受け、発電設備の部材価格下落を待っている事業者がいたことなどが要因とみられる。固定価格買い取り制度(FIT)を見直した4月の改正FIT法施行に合わせ経産省は、事業者が3月末までに大手電力会社の電力系統への接続契約を終えなかったケースは原則的に認定を失効させた。経産省によると、FITが始まった2012年7月から16年6月末までに、九州では太陽光を中心に52万7千件、2204万キロワットの再生可能エネルギーの計画を認定。うち42万4千件、1327万キロワットは今年3月末までに九州電力との接続契約を済ませた。しかし、最大で10万2千件、723万キロワットの認定が4月に失効した。ほとんどが太陽光という。九電によると、認定後に九電に系統の接続契約を申し込んでいなかったり、申し込み後に辞退したりしたものが、失効の大半を占める。太陽光発電所の建設が集中する九州南部を中心に系統設備の増強・新設の工事費が数億円規模に高騰したことや、太陽光の増加で出力制御が必要になったことなどで事業環境が厳しくなり、建設を断念した事業者も多いとみられる。FITの事業用太陽光(10キロワット以上)の買い取り価格は、12年度に1キロワット時当たり40円でスタートした。しかし、13年度に36円に引き下げた後は4年連続で減少が続き、17年度からは21円と当初の約半分になった。価格低下に伴い、発電事業のうまみも薄れ続けている。改正FIT法 再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)の内容を見直し、4月に施行。事業者が設備の認定後に電力会社と系統接続を契約する従来の手順を変更。接続契約を認定の条件にすることで、早期の事業の実現性が見込める太陽光の計画を買い取り対象に認定する。認定した計画の事業者名や設備所在地も公表。太陽光は認定から運転開始までの期限を1〜3年に定めた。

<佐賀地裁の玄海原発再稼働容認判決>
PS(2017年6月14日追加):*10-1、*10-2のように、九電玄海原発3、4号機再稼働に関する住民団体の運転差し止めを求める仮処分について、佐賀地裁は6月13日に「原発が安全性に欠けるとは認められない」と判断して住民の訴えを却下する決定を出し、九電は「妥当な決定だ」、玄海町長は「安全性が認められた」と評価しているが、住民側は決定を不服として福岡高裁に即時抗告する方針だそうだ。しかし、福岡高裁は地裁の言う通りであるため、三審制はあまり期待できない。そこで、原発は事故時には周辺に不可逆的で深刻な公害を引き起こし、経済的にも安価ではなく、屁理屈を付けて少数の利益のために周辺にリスクを負わせるのはやめてもらいたいため、30km圏内に入る壱岐市、松浦市、平戸市、佐世保市の市民が中心となって、事故時の避難の必要性や同意権の有無などの新規制基準の不備や原発の温廃水による漁業被害等も含めて長崎地裁に提訴すれば、大津地裁のように運転差し止めが認められると考える。

    
                2017.6.13西日本新聞

*10-1:http://qbiz.jp/article/111800/1/ (西日本新聞 2017年6月13日) 玄海3、4号機の再稼働容認 佐賀地裁が差し止め認めず
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働を巡り、住民団体が運転差し止めを求めた仮処分申し立てで、佐賀地裁(立川毅裁判長)は13日、「原発が安全性に欠けるとは認められない」と判断し、住民側の訴えを却下する決定を出した。住民側は決定を不服とし、福岡高裁に即時抗告する方針。3、4号機については今春、地元の佐賀県と玄海町の同意手続きを終え、今秋にも再稼働の見通しとなっている。直近の司法判断では今年3月、高浜原発(福井県)の運転を差し止めた大津地裁決定を大阪高裁が取り消し、伊方原発(愛媛県)についても広島地裁が住民側の訴えを却下。佐賀地裁決定は脱原発派に厳しい流れとなり、新規制基準に適合した原発の再稼働を進める政府、電力会社に追い風となった。決定は、東京電力福島第1原発事故後に定められた新規制基準の合理性を認めた上で、原子力規制委員会の審査を「厳格かつ詳細に行われた」と評価。九電が断層面積から地震規模を導くのに用いた計算式「入倉・三宅式」については「現在の科学技術水準に照らして合理的で有効性も検証されている」と判断し、住民側の「過小評価を導く」との訴えを退けた。原子炉の冷却水が流れる配管の老朽化に関しては、2号機で2007年に配管ひび割れが発覚したことについて「発見が遅れたことには問題があると言わざるを得ない」としながらも「保守点検体制に重大な不備があったとはいえない。必要な対策を講じており、現時点では同様の恐れは認め難い」とした。住民側の冠木(かぶき)克彦弁護団長は「日本は地震大国。決定は熊本地震を何も考慮しておらず、住民の安全を無視している」と話した。仮処分を申し立てたのは3号機90人、4号機146人(うち34人重複)だった。
●九州電力「妥当な決定だ」
九州電力は「発電所の安全性は確保されているとの当社のこれまでの主張が裁判所に認められたもので、妥当な決定をいただいたと考えている。今後とも、さらなる安全性、信頼性向上への取り組みを自主的、継続的に進め、発電所の安全確保に万全を期してまいります」とコメントした。山口祥義・佐賀県知事「注視怠らない」 特にコメントすることはないが、国と事業者には安全性の確保について最大限努力してもらいたい。安全問題に関しては、気の緩みや考え方、思いが風化していくことが一番怖い。注視を怠らず、玄海原発を見守っていきたい。岸本英雄・佐賀県玄海町長「安全認められた」 司法の判断で、しっかりとした安全性が認められた。再稼働が先送りされなかったことに安心している。玄海原発の保安規定の審査や使用前検査を早く進めてもらい、年内には再稼働をしてもらいたい。
■玄海原発 佐賀県玄海町に立地する九州初の原発。1号機(55万9千キロワット)は1975年、2号機(同)は81年、3号機(118万キロワット)は94年、4号機(同)は97年に運転開始した。いずれも加圧水型軽水炉で、3号機は2009年、国内初のプルサーマル発電を始めた。東日本大震災を受け、11年12月までに全4基が停止。九州電力は15年4月、運転期間を原則40年とする国の制度に基づき、1号機を廃止した。原子力規制委員会は今年1月、3、4号機の新規制基準適合を決定。佐賀県と玄海町は今春、再稼働に同意した。

*10-2:http://qbiz.jp/article/111863/1/ (西日本新聞 2017年6月13日) 「フクシマを学ばず」原告ら落胆 地裁決定「政治や経済に追随」
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)3、4号機の運転差し止めを認めなかった13日の佐賀地裁の仮処分決定に、申立人の住民団体「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」のメンバーは「正義はないのか。安全性の無視だ」と落胆や怒りの声を上げた。地裁前でメンバーが「フクシマを学ばず」と書かれた垂れ幕を掲げると、申立人ら約70人からため息が漏れた。同会代表の石丸初美さん(65)=佐賀市=は「裁判所が最後のよりどころと思っていたので悔しい。原発がたくさんの犠牲をまた生み出すかもしれないのに」と残念がった。仮処分を申し立てたのは2011年7月、玄海再稼働の県民説明番組に九電社員らが肯定意見を寄せた「やらせメール」問題が発覚した直後だった。石丸さんは「政治や経済に追随した決定だ」と批判した。玄海原発から6キロの玄海町の自宅で却下を知った申立人の青木一さん(79)は、妻(82)と知的障害のある義妹(79)との3人暮らし。原発事故の避難計画の実効性が問われる中、試しに家族を車に乗せ、指定避難先の同県小城市に移動したことがあるが、1時間10分もかかった。青木さんは「再稼働は不安だ。裁判所の判断と言われても、納得はいかない」と語った。同県唐津市の農業、中原宏輔さん(30)は「司法は市民の声をすくい上げてくれなかった。それでも反原発への思いは変わらない」と話した。

<地熱発電の資源>
PS(2017年6月17日追加): 確かに地熱発電なら温室効果ガスを出さず、外国にエネルギー代金を支払わずに済み、コストも安く、日本列島は火山が多くて地熱が無限にあるため、*11のように、地熱発電を増やすのは良いと思う。さらに、現在は電力自由化時代で、九電が北海道や東北などに発電所を設置して電力を販売してもよくなったため、大分県・鹿児島県だけでなく、多くの場所で地熱発電すればよいだろう。

  
   日本近海のプレートと火山・地震の分布      2017.6.11    2017.6.11
                           佐賀新聞      日経新聞

(図の説明:日本は火山が多いので地熱発電の適地も多い。しかし、原子力発電は右から2番目の表のように危険性がある上、一度事故を起こすと一番右の図のように汚染範囲が広い。このセシウムボールは粉状の白い細かな粒子で、フクイチ事故の後、しばらく埼玉県の私の自宅のサイクロン型掃除機にたくさん入り、これを取り除いて線量を下げるためには、床だけではなく、壁・カーテン・備品・本の一冊一冊まで大掃除しなければならず被害甚大だったのだが、補償されていない。ちなみに、私は食べ物にも非常に注意した結果、現在のところは健康です)

*11:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/438597 (佐賀新聞 2017年6月17日) 地熱発電強化へ 九電、大分で調査、来月から九重町
 九州電力は16日、大分県九重町の涌蓋山東側のエリアで、地熱発電所新設に向けた調査を7月下旬から始めると発表した。5年後をめどに事業化できるかどうか判断する。温室効果ガスを出さない資源として九電は地熱発電事業を強化する構えで、大分県内でのほか2カ所を含め、九州と北海道の計6カ所で発電所設置を視野に調査中だ。九電によると、今回調査するエリアでは、京都大や九州大の調査により1990年代から地熱の存在が推定されていた。当初は電気や磁気を測定して地熱の分布を調べるとともに、発電所を設けた場合に周辺の温泉に悪影響が及ぶかどうかも確認する。その上で掘削調査を行う方針だ。九電はグループ会社を含め、国内で大分と鹿児島両県の計6カ所で地熱発電所を運営している。

<韓国、古里原発1号機の廃炉>
PS(2017年6月18日追加):韓国は、*12のように、最も古い古里原発1号機を運転開始から40年で廃炉とし、隣接地に建設中の新古里5、6号機の建設も中止するそうだ。そして、釜山市の徐市長が建設中止に賛成を表明し、周辺で飲食店を営む男性も「運転延長は事故のリスクが高まる」「原発依存度を下げるのは世界の流れだ」等として文大統領の公約実現を望んでいる。これは、原発事故当事者の日本よりもアクションが早い。

*12:http://qbiz.jp/article/112244/1/ (西日本新聞 2017年6月18日) 韓国の原発で初、古里1号機が18日廃炉 文政権の方針に注目
 韓国で最も古い古里(コリ)原発1号機(出力58・7万キロワット、釜山市)が、運転開始から40年を迎える18日を最後に永久停止し、廃炉となる。韓国での原発廃炉は初めて。これを機に、隣接地に建設中の新古里5、6号機(蔚山市)の建設中止など、韓国政府が脱原発にかじを切るかが注目されているが、地元には不満の声も根強い。1号機は17日夕に電源が切られ、出力が低下。18日深夜に停止する。1号機は1977年6月、初めて核分裂反応に到達。2007年に30年の運転期限を迎えたが、10年の延長が認められていた。今回の廃炉で韓国の原発は24基に減る。韓国メディアによると、文在寅(ムンジェイン)大統領が19日に同原発を訪れ、今後の原発政策について就任後初めて方針を示す可能性がある。11年の東京電力福島第1原発事故や韓国内での地震発生などを受け、文氏も選挙中「新古里5、6号機建設の白紙化や運転40年での廃炉推進」などを公約していた。ただ、37年間、古里原発で働いてきた男性住民(67)は「40年間、安全に運転してきた。1号機はまだ使える」と話す。制度上はさらに10年の延長を申請できたが、政府の停止勧告があり運営会社が廃炉を決定したことに不満げだ。日本には審査を経れば60年まで延長可能な制度がある。男性は「韓国もエネルギー資源が少ない。原発の安い電気が産業の国際競争力を支えていることを忘れてはならない」と指摘した。新古里5、6号機について、別の男性(74)は「多額の費用が既に投資された。継続してほしい」と話した。韓国はこれまで原発プラントの海外輸出にも積極的で、「核のごみの処分先が決まらず、地震による事故の心配もあるが、原発新設で韓国が持つ技術力を向上させられる」と期待。近くの女性(63)も「作業員がいるから地域経済が成り立っている」と話した。一方、釜山市の徐秉洙(ソビョンス)市長は今月上旬、同5、6号機の建設中止に賛成の立場を表明した。原発周辺で飲食店を営む男性(45)は「運転延長は事故のリスクが高まる。原発を新設するほど国内の電力需要もない。原発依存度を下げるのは世界の流れだ」とし、大統領の公約実現を望んでいた。

<韓国の脱原発と日本>
PS(2017年6月22日追加): *13-1のように、韓国は文大統領が脱原発にカジを切り、LNGや再生可能エネルギーによる発電を柱とする方針を発表したが、これが現在のあるべき姿である。これに対し、日本では「電源別の構成を示さなかった」などという馬鹿な批判をし、日本の経産省はベースロード電源などという概念を作って2030年に原発20%超などという今では世界の潮流からも外れた愚かなエネルギーミックスを計画しているが、役所が、列車・自動車・自転車の利用割合など交通機関の利用ミックスを決めるのがナンセンスであるのと同様、エネルギーも結果である利用割合を決めるのはナンセンスで、政治が理念に基づいた目標を決め、その方向に舵を切れば技術は安心してついてくるものなのである。その点、日本は原発を守ることで原発への無駄な投資を続け、先頭に立って世界を変革できる位置にいたにもかかわらず、燃料代が無料で100%自給可能な再生可能エネルギーに構造転換するチャンスを失った。これは、政治家はじめそれを選んだ市民、民主主義を誤らせないためには真実の情報提供が必要だということの意味すらわかっていない日本のメディア(特にTV)のレベルの低さが原因であり、日本のメディアは「言論の自由」「表現の自由」を言い立てる以前のレベルなのだ。
 また、*13-2ように、大分県の住民が、「伊方原発沖に国内最大級の活断層帯『中央構造線断層帯』があるため地震による重大事故の危険性があると主張して伊方原発の運転差し止め訴訟を起こしているが、伊方原発は中央構造線断層帯のすぐ上にあり、ここに原発を作ったことがそもそもの誤りなのだ。そのような中、*13-3のように、2017年6月20日に大分県で震度5強の地震があり、これに関する報道は少ないが、熊本地震との連続関係も考えられ、今後の地震にも注意すべきことを思えば、伊方原発は手早く廃止するのが最も安上がりだろう。
 なお、*13-4のように、世界の再生エネルギーによる発電能力は20億1,700万キロワットに達して、電力全体の24.5%を再生可能エネルギーが供給し、地球温暖化をもたらす二酸化炭素の排出削減に貢献したそうだ。そして、日本でも太陽光発電は昨年1年間で860万キロワットが導入され、累積で4,280万キロワット(原発43基分)になったとのことである。

    
  経産省が決めた馬鹿なエネルギーミックス  2017.6.20大分地震 2017.6.22
                                 西日本新聞
*13-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM19H9U_Z10C17A6FF1000/ (日経新聞 2017/6/19) 韓国、脱原発にカジ 新設白紙、再生エネを柱に
 韓国が「脱原子力発電」にカジを切る。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は19日、原発への依存度を減らし、液化天然ガス(LNG)や再生可能エネルギーによる発電を柱にする方針を発表した。韓国では原発が発電量の3割を占める主力電源で、「エネルギー政策の大転換」(文氏)となる。文氏は釜山市郊外の古里原発1号機の運転停止の記念式典で脱原発を宣言した。具体的な時期や電源別の構成などは示さなかったが「早期に脱原発のロードマップを作成する」と語った。新規原発の建設計画は白紙化し、設計寿命を超えた原発の稼働延長は認めない。延長運転中の月城原発1号機(南東部慶州市)は電力需給を見ながら早期閉鎖をめざす。建設中の新古里5、6号機をどうするかについては「早期に社会的合意を得る」と語った。発電量の4割を占め、環境汚染の一因となっている石炭火力にも大なたを振るう。新設を全面中止し、老朽化した10基を文氏の任期内に閉鎖する。代わりに石炭より環境負荷の少ないLNG火力発電の稼働率を高める。再生エネの比率を引き上げるため、関連産業を育成する。原子力と石炭火力という2つの主力電源への依存度を下げれば、発電コストの上昇は避けられない。電力需給が逼迫する恐れもある。産業界には懸念が強いが、文氏は「産業用電力料金を見直し、産業分野の過剰消費を防ぐ。産業競争力に影響しないよう中長期的に進め、中小企業は支援する」と語った。韓国で廃炉になるのは古里1号機が初めてで、解体技術の獲得も課題だ。文氏は研究所を設立して廃炉を支援し、廃炉解体を事業化する考えも示した。

*13-2:http://www.oita-press.co.jp/1010000000/2017/06/19/JD0055862157 (大分合同新聞 2017年6月19日)運転差し止め 原告は378人 「県民 危機感の表れ」
 県民が四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めた大分地裁の訴訟は、5月の2次提訴で原告が114人増え、計378人になった。住民側弁護団によると、住民が主体となって同地裁に起こした裁判では、1977年に始まった「8号地計画取り消し訴訟」(488人)に次ぐ多さ。原告らは「大分県民の危機感の表れだ」と強調する。「大きな前進だ」。5月11日の2次提訴後に大分市内で開かれた集会。住民側弁護団の共同代表を務める岡村正淳弁護士(72)は、大規模な原告団になった意義をこう説明した。「いいかげんな判断を許さないぞという県民、法廷の熱気が、裁判官に勇気を与える」。岡村弁護士によると、同地裁で原告が最も多かった裁判は、ストライキに伴う懲戒処分を不服として教職員1014人が84年に起こした処分取り消し訴訟。教職員組合が中心となった。住民運動による訴訟としては、同市佐賀関で計画された「大分新産都8号地」の埋め立てを巡る裁判。77年1月に332人、同6月に156人の背後地住民らが提訴し、県に計画の取り消しを求めた。臼杵市でセメント工場建設に反対する風成(かざなし)地区の漁民が立ち上がり、全国初の公害予防裁判として注目された「風成訴訟」(70年に提訴)の原告は56人だった。8号地の訴訟は住民側が敗訴したものの、県は最終的に計画を断念。風成訴訟は住民側が勝訴し、工場進出を阻止した。いずれも住民の声の高まりが行政、司法を動かした形だ。伊方原発訴訟の2次提訴に加わった大分市の主婦阿南祐子さん(59)は「3・11で原発の安全神話が崩壊し、危機感を抱いた。次世代の子どもたちのことを思うと、黙っておけなかった。裁判所は良心を持った判決を出してほしい」と話す。伊方原発沖には国内最大級の活断層帯「中央構造線断層帯」がある。住民側は地震による重大事故の危険性などを主張。四国電側は「安全性を十分確保している」と全面的に争っている。同地裁では運転差し止めの仮処分申請に対する審理も続いている。

*13-3:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170620-00000132-mai-soci (毎日新聞 2017/6/20) <地震>大分・佐伯市で震度5強 津波の心配なし
20日午後11時27分ごろ、大分県沖の豊後水道を震源とする地震があり、同県佐伯市で震度5強を観測した。気象庁によると、震源の深さは約40キロで、地震の規模を示すマグニチュード(M)は5.0と推定される。この地震による津波の心配はないという。佐伯市の地元消防や警察署によると、けが人などの人的被害は確認されていない。市防災危機管理課によると「激しい横揺れが5秒続いた」という。21日午前1時現在、被害報告は寄せられていない。市内のコンビニエンスストアでは化粧品などの軽い商品が棚から落ちた程度だった。また、地割れが多数見つかっている同県豊後大野市朝地町綿田地区では、地震で亀裂が広がるなどの変化は出ていない。九州電力などによると、玄海原発(佐賀県)、川内原発(鹿児島県)、伊方原発(愛媛県)で地震による異常はみられないという。
主な震度は次の通り。
震度4=大分県津久見市、豊後大野市、竹田市、熊本県高森町、宮崎県延岡市
震度3=大分市、大分県臼杵市、由布市、熊本県産山村、阿蘇市、南阿蘇村、山都町、宮崎県日向市、西都市、高鍋町、都農町、高千穂町、愛媛県伊方町、愛南町、高知県宿毛市

*13-4:http://qbiz.jp/article/112601/1/ (西日本新聞 2017年6月22日) 世界の再生エネルギー拡大 電力供給の4分の1担う
 2016年末時点で、大型水力発電を含む世界の再生可能エネルギーの発電能力が20億1700万キロワットに達し、初めて20億キロワットの大台を超えたとの調査結果を、エネルギーの専門家らでつくる「21世紀の再生可能エネルギーネットワーク」(REN21、本部フランス)が発表した。
●発電能力 初の20億キロワット超
 世界全体の電力の24・5%を再生可能エネルギーが供給したと推定され、地球温暖化をもたらす二酸化炭素の排出削減に貢献した。日本の市場規模の伸びは15年比で20%鈍化した。それでも太陽光発電は昨年1年間で860万キロワットが導入され、累積で4280万キロワットとなりドイツを抜き世界2位になった。昨年1年間に建設された世界の再生可能エネルギーの発電設備容量は1億6100万キロワットで、前年比9%の伸び。増加分の内訳は太陽光発電が47%、風力が34%だった。風力、太陽光ともに中国の増加量が最大で、総容量でも2位以下を大きく引き離している。世界全体で見ると、年間増加量は15年よりも多かったが、総投資額は23%少ない2416億ドルで、開発コストの低下を印象づけた。REN21の担当者は「世界の再生可能エネルギー開発のトップを走る中国は今年1月、開発中だった石炭火力発電所100基超の閉鎖を決めた。温暖化防止のため、このような変革を各国が進める必要がある」としている。

<プレートの沈み込みと地震・火山帯・断層帯>
PS(2017年6月25日追加):*14-1の大分県で震度5強を観測した6月20日夜の地震について、気象庁は「熊本地震との直接的関連はない」という見方を示したそうだが、“直接的関連”とはどういう関連までを言い、それなら今回の大分地震の原因が何かの説明ができていない。そして、気象庁は、プレートの沈み込みが早くなったことにより歪が大きくなり、限界を超えた場所で歪の修正を行うべく地震が起こったり断層ができたりすることについては直接的関連の範囲に入れていないようだが、プレートの沈み込みと火山噴火・地震・断層が無関係であることを証明できない限り、「関連なし」とは言えない筈だ。そして、日本列島の地図を見れば、プレートの沈み込みと火山帯・地震発生・断層帯の間に大きな関係があることは、一目瞭然なのである。なお、6月25日には、*14-2のように、糸魚川・静岡構造線(フォッサマグナ)上の長野県南部を震源とするマグニチュード5.6の地震もあった。



(図の説明:中央構造線、糸魚川・静岡構造線付近で地震が多く、火山帯は太平洋プレート・フィリピン海プレートが沈み込む少し内側にある。そして、中央構造線付近は絶えず動いて木々が育たないせいか、宇宙からも見える。この中央構造線が作った川や平野に沿って神武東征は速やかに行われたらしく、機関神社が中央構造線上にあるのは尤もであり、新しい発見だ)

*14-1:https://mainichi.jp/articles/20170621/k00/00e/040/239000c (毎日新聞 2017年6月21日) 気象庁:大分・震度5強「熊本地震と関連ない」
 大分県佐伯市で20日夜に震度5強を観測した地震について、気象庁は21日、「熊本地震との直接的な関連はないとみられる」との見方を示した。同庁によると、今回の地震は、陸側のプレート(岩板)に潜り込むフィリピン海プレートの内部で、地盤が北西-南東方向に引っ張られて発生したとみられる。同日に記者会見した尾崎友亮・地震情報企画官は「熊本地震は活断層の比較的浅いところで起きており、地震のタイプが異なる」と説明した。同庁は、揺れの強かった地域では今後約1週間、最大で震度5強程度の地震に注意が必要で、土砂災害などにも警戒するよう呼びかけている。また、大分県などによると、一夜明けた後の調査でも、けが人や建物被害などは確認されていない。同県内のJRの在来線や路線バスは朝から平常通り運行している。東九州道や大分道も通行止め区間はない。

*14-2:http://www.yomiuri.co.jp/national/20170625-OYT1T50010.html (読売新聞 2017年6月25日) 長野県南部で震度5強、震度4も2回…2人けが
 25日午前7時2分頃、長野県南部を震源とする地震があり、同県王滝村と木曽町で震度5強を観測した。震源の深さは7キロ、地震の規模を示すマグニチュードは5・6と推定される。揺れの強かった地域では、落石や崖崩れの危険性があり、気象庁は「今後1週間程度、地震に注意してほしい」と呼びかけている。同庁によると、最初の地震の後、25日午後7時までに観測された震度1以上の地震は25回。午前9時24分頃と午後3時17分頃には、木曽町などで震度4を観測した。2014年9月に噴火した御嶽山との関連について、気象庁の松森敏幸・地震津波監視課長は25日の記者会見で、「関連性はわからない」と述べた。御嶽山の火山活動に異常は確認されていないという。木曽地域では1984年9月に、死者・行方不明者29人を出した長野県西部地震が起きているが、同庁は今回の地震との関連は低いとみている。長野県などによると、同県木曽町の女性(60)が自宅で倒れてきたタンスに脚を挟まれて軽いけがをしたほか、同県王滝村の80歳代女性が、落下物が頭にあたって軽傷。3町村の22棟で屋根瓦が落下するなどし、王滝村では90戸が最大4時間停電した。王滝村では直径約1・5メートルの石2個が村道に落下。木曽町のホテルでは、町中心部につながる町道に落石があり、宿泊客約60人が一時、通行できなくなった。岐阜県高山市でも県道が一時、落石のため通行規制された。JR東海によると、この地震で、東海道新幹線が新横浜―掛川間で緊急停止。約10分後に運転を再開した。中央線、高山線、飯田線も運転を見合わせ、在来線25本が最大1時間47分遅れた。
各地の震度は次の通り。
▽震度4 長野県上松町、大桑村、石川県輪島市、岐阜県高山市、下呂市、中津川市
▽震度3 長野県松本市、諏訪市、石川県七尾市、岐阜県飛騨市、岐阜市、富山県射水市、
     浜松市天竜区、名古屋市北区、滋賀県彦根市など


PS(2017年7月16日追加):*15-1のように、玄海原発に隣接する長崎県松浦市の漁協に属する66隻の漁船が、玄海原発再稼働に反対して原発前の海で海上デモを行い、「事故が起きれば影響は県境を越えて漁業は壊滅的な被害を受けるのに、松浦市が地元同意の対象外にされている」と訴えた。佐賀県側の漁協は、九電から漁業補償費や電源立地交付金などとして資金援助をしてもらっているため、文句が言えないのだ(http://www1.saga-s.co.jp/news/saga.0.2043429.article.html 参照)。しかし、原発が事故を起こせば、地元の農林漁業はじめ観光までが壊滅状態になることは、フクイチの例から明らかだ。
 そのような中、*15-2のように、東電HDの川村新会長は産経新聞等のインタビューに応じて、「(政府は)原子力を捨てれば、日本(経済)が衰退することを説明すべきだ」「見直し時期を迎えている国のエネルギー基本計画でも原発が重要視されるべきで、原子力の言葉は消さないようにしてほしい」と述べたそうだが、フクイチのために国民がいくら支払ったのか、電力使用者がいくら負担したのか、環境をどれだけ汚して他産業に迷惑をかけたのかを考えれば、脱原発と再生可能エネルギーへの転換こそが日本経済を救う唯一の道であることは明白だ。
 また、*15-3のように、鹿児島湾(火山の火口)を震源とする震度5強の地震があり、川内原発は2基が運転中だったが、九電は「異常はなく、運転を継続している」とした。しかし、九州新幹線は一時運転を見合わせており、これが万が一にも事故を起こしてはならない場合の運転の仕方で、電力会社は原発が国策だったことに甘えて安全に麻痺しているように見える。


    2017.7.16       2017.7.11  フクイチの  フクイチによる
    佐賀新聞        西日本新聞   汚染範囲   病気の増加

*15-1:https://mainichi.jp/articles/20170715/k00/00e/040/296000c (毎日新聞 2017年7月15日) 玄海原発:「再稼働反対」66隻の漁船が海上デモ
●新松浦漁協「事故あれば漁業は壊滅的な被害」
 九州電力玄海原子力発電所3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に反対する長崎県松浦市の新松浦漁協が15日、原発の前の海で66隻の漁船(計約220人)による海上デモを決行した。同市は全域が事故発生時の避難対象の半径30キロ圏に入る。長崎県内の漁協が海上抗議行動をしたのは初めてで、漁民たちは「事故が起きれば影響は県境を越え、漁業は壊滅的な被害を受ける」と訴えている。原発が立地する玄海町と佐賀県の同意を受け、九電はまず3号機を秋にも再稼働させる見通し。新松浦漁協の本所がある離島の鷹(たか)島は原発から最短8.3キロに位置するが、松浦市が「地元同意」の対象外にされていることに、漁民らは強く反発している。漁船は「玄海原発再稼働絶対反対」などの横断幕を掲げ、原発から約300メートルの海上に5列に並んで「生活の海を守れ」「安全な海を子孫に残せ」などと抗議の声を上げた。デモにあわせて、志水正司組合長(69)は原発に隣接する施設で、九電の瓜生道明社長あて抗議文を提出。「漁業は松浦の基幹産業。海の生活を永遠に守り抜くため、再稼働は決して容認しない」と訴えた。

*15-2:http://www.sankei.com/economy/news/170714/ecn1707140005-n1.html (産経新聞 2017.7.14) 「原子力捨てれば日本経済は衰退する」 東電HDの川村隆新会長
 東京電力ホールディングス(HD)の川村隆会長は13日までに産経新聞などのインタビューに応じ、「(政府は)原子力を捨てれば、日本(経済)が衰退することを説明すべきだ」と述べた。見直し時期を迎えている国のエネルギー基本計画でも原発が重要視されるべきだとして「原子力の言葉は消さないようにしてほしい」と求めた。5月に公表した「新々総合特別事業計画」(再建計画)は福島第1原発事故を踏まえ、原発の安全性向上や再稼働を明記した。川村氏は柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に向けて過酷事故対策を進めていると強調し、「地元の理解を得なければいけない項目を粛々と進めていく」と語った。ただ、今月10日の原子力規制委員会の会議では「(福島第1原発の)廃炉に主体性がみえない」と批判を受けた。川村氏は「原子力事業は主体的にそれ(動くこと)ができないところがある」として、改善に努める考えを示した。東電HDは再建計画に盛り込まれた原発事業の再編に向け、原子力部門に社内カンパニー制を導入する方針。廃炉費用の増大を背景に経済産業省の意向が働いているとみられるが、「事業そのものを国営にすれば、うまくいくとは思っていない」と指摘した。スマートフォンと連携した省エネサービスなどの事業については「一つ一つは小さいビジネスだが広範囲にわたる」とし、今後の展開に期待感を示した。

*15-3:http://qbiz.jp/article/114018/1/ (西日本新聞 2017年7月11日) 鹿児島市で震度5強 九電「川内原発に異常なし」 指宿で負傷者も
 11日午前11時56分ごろ、鹿児島湾を震源とする地震があり、鹿児島市喜入町で震度5強を観測した。震源の深さは10キロ、地震の規模はマグニチュード(M)5・3と推定される。福岡管区気象台によると、鹿児島市内で震度5強以上を観測したのは初めて。鹿児島県内では2001年12月に奄美市で観測して以来。
●九州新幹線は一時運転見合わせ
 同県薩摩川内市の九州電力川内原発は2基が運転中。九州電力は「異常はなく、運転を継続している」としている。薩摩川内市は「九電から原発内の地表面の震度は2で、原発には今のところ影響はないと連絡を受けた」としている。九電によると、同県南九州市で計約100戸が停電している。同県指宿市によると、市内に住む60代の男性が落下物で頭を負傷した。鹿児島市や同市消防局には、被害の情報は入っていない。南九州署によると、同市川辺町の市道沿いの斜面が幅約13メートル、高さ20〜30メートルにわたって崩れ、通行止めとなっているという。JR九州によると、九州新幹線は安全確認のため新八代−鹿児島中央の上下線で一時停止したが、運転を再開した。在来線は指宿枕崎線の一部区間で上下線が運転を見合わせている。
各地の震度は次の通り。
震度5弱=鹿児島市下福元、指宿市、南九州市頴娃町、同市知覧町▽震度4=南さつま市、薩摩川内市、日置市、鹿屋市(鹿児島)など▽震度3=都城市、日南市(宮崎)など

<玄海原発について>
PS(2017年7月26日追加):原発30キロ圏内だけに事故時の核物質汚染リスクがあるわけではないが、少なくとも30圏内の自治体には再稼働を巡って反対意見を言う権利があるだろう。そのため、*16-1のように、関係市の市議が安全な街づくりのため、原発に対して再稼働反対の統一見解をまとめて集団で提言するのがよいと考える。
 ただ、*16-2のように、佐賀県や玄海町は原発からの税収減が起こり、原発立地自治体である玄海町が23年ぶりに交付税を受け取ることになった。しかし、この原発関係のコストは、すべて国民が電気料金か税金で負担しているのであり、事故時の費用や使用済核燃料の処分コストは莫大で見積もりさえできていない。そして、化石燃料の豊富な米国でも、*16-4のように、再生エネと合わせると低コストだという理由で蓄電池の普及が加速し自治体も補助金を拡充している時代なのだ。それにもかかわらず、日本こそ再生可能エネルギーにシフトした方がよほど安上がりでメリットが多いにもかかわらず、*16-3のように、原子力規制委員会が原発運転延長の申請受け付けを前倒しして延長に便宜を図り、後ろ向きの政策に予算を使って環境汚染のリスクを増加させているのは情けない。

  
 2017.7.26      世界の太陽光発電        日本の電源別発電コスト
 日経新聞        最低入札価格            (大島教授)

*16-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/448730 (佐賀新聞 2017年7月23日) 伊万里、松浦、平戸市 原発30キロ圏議員協設立へ、玄海安全対策で連携
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関連し、原発から半径30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)にある伊万里市や長崎県松浦市、平戸市の3市の市議有志が22日、連携して避難計画や安全対策などを協議する組織の立ち上げに向けた初会合を、松浦市内で開いた。今秋とも言われる再稼働前の設立を目指す。再稼働を巡っては、3市とも市長が反対を表明。松浦、平戸は市議会も全会一致で反対の意見書を可決している。初会合には、宮本啓史松浦市議らの呼びかけで19人が集まり、伊万里市からは議会最大会派「伊想会」の9人が参加した。初会合は自由発言で行われ、「伊万里市と福島を結ぶ福島大橋は50年前の完成で道路の幅や耐震基準を満たしておらず、唯一の避難道路として心細い」など各地域の課題や取り組みを報告。UPZ圏内議員協議会(仮称)を立ち上げる方針が了承された。今後の活動として、国や県、九電に説明の場を設けることや要望活動、情報発信など複数の案が示されたが、継続して協議していくことになった。終了後、伊万里市の呼びかけ人を務めた草野譲市議は「塚部芳和市長が反対を表明する中で、市民からは『市議会は何をしているのか』という声がある。議会として安心安全のまちづくりのために、原発に対しての統一見解をまとめることも考えたい」と話し、全議員に参加を呼びかける考えを示した。

*16-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/449487 (佐賀新聞 2017年7月26日) 玄海町に交付税681万円 23年ぶり原発税収減で
 自治体の財源不足を補う2017年度の普通交付税と臨時財政対策債の配分額が決まった。佐賀県関係では、1995年度から県内で唯一「不交付団体」が続いていた東松浦郡玄海町の交付額が681万5千円で、九州電力玄海原発2~4号機にかかる固定資産税の減収に伴い、23年ぶりに交付団体に転じた。玄海町で固定資産税が減少した要因は、玄海原発施設の減価償却に加え、安全対策工事により不必要になった設備を算定から外したため。前年度比8・1%減の1億1千万円減った。佐賀県の普通交付税は1436億7400万円で前年度より9億1600万円(0・6%)減と2年ぶりに減少した。20市町の合計は、870億5934万円で前年度より29億8978万円(3・3%)減と2年連続で減少した。赤字地方債の臨時財政対策債発行可能額は、県が199億8200万円(前年度比0・1%増)、20市町の合計は120億3625万円(同2・4%増)となった。全国の不交付団体は、前年度より1団体減り、東京都と75市町村の計76団体となった。玄海町のほか、栃木県上三川町、東京都羽村市、静岡県富士市の3市町が配分を受けるようになる。一方、税収が伸びるなどした宮城県女川町、埼玉県八潮市、大阪府摂津市の3市町が不交付になった。不交付団体の数が減るのは5年ぶり。

*16-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170726&ng=DGKKASGG26H01_W7A720C1MM0000 (日経新聞 2017.7.26) 原発運転延長申請、受け付け前倒し 規制委、計画的な対策可能に
 原子力規制委員会は運転開始から40年を超す老朽原発の運転延長の申請を3年以上前倒しで受け付ける規則に改める。運転期間35年から申請できるようにする。電力会社が延長できるかどうかを早い段階で分かるようにして、定期検査時などの停止中に計画的に対策を取れるようにする。これまでに延長が認められた原発は、期限間際で結論が出たため対策に時間がかかり、すぐには動かせなかった。原発の運転期間は原則40年だが、最大20年延長が認められる。そのためには、電力会社は規制委に申請し、原子炉の経年劣化の確認などの審査を受ける必要がある。現状では運転40年の1年3カ月前から申請できる。審査が運転40年までに終わらなければ、その時点で審査は打ち切りとなり、電力会社は廃炉を余儀なくされる。審査の行く末が分かるまで、老朽化対策を進めるのをためらう要因になっている。規制委は運転35年の時点から延長申請を受け付けるように規則を改正する。経年劣化の試験などの項目のうち、早めに審査できる内容などを定めて柔軟性のある制度にする。今夏中に詳細をまとめる。

*16-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170726&ng=DGKKASGM25H0P_W7A720C1MM0000 (日経新聞 2017.7.26) 米、蓄電池の普及加速 再生エネと合わせ低コスト、発電所補う
 米国で再生エネルギーの普及に合わせ、蓄電池の利用が急拡大している。2016年1年間の増加ペースは13年比で6倍弱に拡大し、22年には現在の10倍に増える見通しだ。太陽光などで発電した電気を低コストで蓄積し、家庭や企業の料金節約につながるためだ。投資がかさむ火力発電所などの補完が期待され、自治体も補助金を拡充する。米テスラや韓国・LG化学などは生産を急拡大している。米GTMリサーチによると、16年に増設された蓄電設備の出力規模は260メガ(メガは100万)ワット。金額に換算すると市場規模は3億2000万ドルに達する。出力規模の増加ペースは22年に2.6ギガ(ギガは10億)ワットに増える見通しだ。これは一般的な火力発電所3基の発電能力に相当する。テスラは約5千億円を投じ米ネバダ州の巨大工場で蓄電池の量産を加速する。今年に入っても約400億円を追加投資した。LG化学も米ミシガン州の工場で生産を拡大中だ。料金が高いピーク時の時間帯に蓄電池からの電気に切り替える動きが企業や家庭で進んでいる。テスラの蓄電池を導入すれば、カリフォルニアの一般的な家庭で年間10万円前後節約できるという。市場の拡大を背景に価格は直近3年で4割以上低下している。米調査会社ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスは、25年までの10年間で価格は約半分になるとみる。設備の低価格化も市場拡大の追い風となりそうだ。普及が急速に進む背景にはいくつかの要因がある。1つは太陽光発電や風力発電など再生エネルギーの普及だ。再生エネが発電全体に占める比率が2割弱にまで上昇。再生エネは発電量の振れが大きいため送配電網の安定運用が難しいが、蓄電池を使えばこうした問題を克服できる。コストを抑えたい電力会社の意向もある。米国では環境意識の高まりなどから都市周辺での発電所の新設は難しくなっている。国土が広大な米国では長距離送電網の維持には膨大なコストがかかる。電力会社は再生エネルギーと蓄電池を組み合わせたパッケージの提案に積極的だ。自治体の支援も普及を後押しする。ニューヨーク、マサチューセッツ、ハワイなど電気が高い州では電力会社に蓄電池の調達義務を課したり、導入すれば税額を控除したりする政策を打ち出した。蓄電池の普及が進む米国に比べ、日本の市場拡大ペースは鈍い。家庭や企業の設置スペースが限られ、工事コストがかさむためだ。政府は20年度の蓄電池価格を15年度の半分以下にする目標を設定。官民が連携して普及に取り組む考えだ。


PS(2017年8月1日追加):世界は脱原発に向けて進み始めたにもかかわらず、日本が原発にこだわり続ける理由は何か?電力を作るには、①温度を上げて蒸気を発生させ、タービンを回すか ②風力を使うか しかなく、環境汚染したり外国に金を払ったりしなければエネルギーは得られないと思っている人が少なからずおり、*17のようなことになるのだろうが、これでは説明しても理解できる素地がないので話にならないわけである。

*17:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201708/CK2017080102000251.html (東京新聞 2017年8月1日) 日本は「原発新増設」も視野 エネ基本計画見直しへ
 経済産業省は一日、国のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の見直しに着手すると発表した。これまで「想定していない」としてきた新しい原発の建設や老朽原発の建て替えの必要性を、将来の課題として盛り込む構え。しかし原発の建設や建て替えに対する世論の慎重論は根強く、議論は曲折が予想される。世耕弘成(ひろしげ)経済産業相は一日の閣議後の記者会見で「現計画の骨格を変える必要はないと思うが、ゼロからしっかり議論する」と話した。経産省が選んだ学識者による二つの審議会で話し合い、二〇一八年三月末までに新計画の素案をまとめる。原子炉等規制法は原発の稼働期間を原則四十年、特例を適用しても六十年と定めており、将来は廃炉になる原発が増える。経産省幹部と自民党議員の一部は「原発は必要だ」と強調。経産省は原発の新設や建て替えの必要性を計画に盛り込みたい意向だ。しかし原発をめぐっては、放射線を出すさまざまな廃棄物の処分場がないほか、海外での建設費が高騰するなど課題が山積している。それにもかかわらず日本政府は「原発は安い」と主張。主張には矛盾や問題点が多く、国民の反発は根強い。与党内にも「脱原発」を求める声があり、議論は難航しそうだ。
<エネルギー基本計画> 国の中長期的なエネルギー政策の方針で、2003年に初めて策定して以来、おおむね3年ごとに見直してきた。11年の東京電力福島第一原発の事故を受け、当時の旧民主党政権は、将来は稼働する原発をゼロにする目標を掲げたが、12年に自民党が政権に復帰し原発維持に方針を転換。14年に決定した現計画でも原発を「重要な電源」と位置付けた。

<食品の安全性と健康>
PS(2017年8月2日追加):最近、成人病(癌、心疾患、脳血管疾患など)になると生活習慣に原因を求めて本人の責任にする傾向が強いが、私も生活習慣以外にも原因があると考えている。その原因はいろいろな要素からなるが、人工の核種による被曝の要因も大きく、これは外部被曝や内部被曝の程度に比例するため、地域別の死亡率や罹患率を調べれば違いが出るのだ。そして、*18-1の結果は、本来ならもっと寿命が延びた筈のところ、被曝した地域の人は死亡率が上がって寿命の延びが抑えられたようである。
 そして、このことはフクシマへの差別でも風評でもなく、既にわかっている言わざるを得ない事実だから言っているのだ。そのため、*18-2のように、事故時は海と漁業者の生活が奪われるため、漁協が原発再稼働に反対するのは安全な食料を生産しようとする者として当然のことであり、漁業補償すれば失われた海産資源が戻ってくるわけでもない。
 そのため、*18-3のように、信濃毎日新聞が2017年8月2日に、「エネルギー計画 国民の声に耳を傾けよ」と記載しているのは心強いが、「国民の声はポピュリズムだ」などと無知丸出しのメディア関係者が不遜極まりない報道をしているのも散見されるため、「国民の声がポピュリズムなら、誰の声が正しいと思っているのか」という論点も追及すべきである。

*18-1:http://qbiz.jp/article/114583/1/ (西日本新聞 2017年7月20日) 都道府県の健康格差が拡大 病気別の死亡率にも差
 日本の平均寿命は過去25年間に4・2歳延びたが、都道府県間の健康状態の格差は拡大したとの研究結果を、東京大の渋谷健司教授(国際保健政策学)らのチームが20日、英医学誌ランセットに発表した。格差の原因は不明だが、医療体制や食事などの生活習慣以外に理由があると考えられるという。
●生活習慣以外にも原因か
 今後、自治体の健康関連予算や住民の意識との関係を調べる必要があるとしている。病気ごとの死亡率にも地域差があり、都道府県は地域の事情に応じた健康対策の推進が求められそうだ。チームは、国などが公表している死亡や病気に関する1990年と2015年のデータを使って独自に解析。全国の平均寿命は、25年間で79・0歳から83・2歳に延びた。ただ90年に最長の長野と最短の青森の差は2・5歳だったが、15年には最長の滋賀と最短の青森の差が3・1歳に広がった。健康上の問題がなく生活が送れる期間を示す健康寿命も70・4歳から73・9歳に延びたが、地域間の差は広がった。医療の進歩を見るため、年齢構成の違いを取り除いた病気などの死亡率を算出すると、全国で29%減少していた。心臓病やがんの死亡率が下がったためだが、05年以降は減少のペースが鈍くなっていた。死亡率の減少は近畿や九州で目立つ一方、東北や沖縄では小幅で、減少幅が最大の滋賀(32・4%)と最小の沖縄(22・0%)で約10ポイントの差がついた。病気ごとの死亡率にも地域差が出た。狭心症や心筋梗塞を含む「虚血性心疾患」の15年の死亡率は、最も高い埼玉が最も低い熊本の1・5倍。首都圏で高く、北陸や九州で低い傾向があった。気管支炎など「下気道感染症」の死亡率は、青森が長野の1・5倍だった。健康格差ができる原因も分析したが、医療費や医師、看護師の数とは関連がなかった。塩分摂取や喫煙などの生活習慣も、今回の解析では格差との関連は見つからなかった。

*18-2:http://qbiz.jp/article/114567/1/ (西日本新聞 2017年7月20日) 九州の原発:事故懸念、漁業は壊滅 玄海再稼働、3漁協組合長に聞く
 「万が一の事故時は、海と漁業者の生活が奪われる」。秋以降に見込まれる九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働。原発30キロ圏内の住民は事故時の被害の大きさを恐れ、突き動かされるように新松浦漁協(長崎県松浦市)が15日、再稼働反対の海上デモを実施した。原発が間近にありながら再稼働に伴う「地元同意」手続きの対象外になっており、反対の声が再稼働への判断に考慮されないという「黙殺への怒り」が渦巻いている。同漁協をはじめ、30キロ圏内にある長崎県平戸、壱岐両市の漁協トップに原発再稼働に対する姿勢と今後の方針を聞いた。 
●新松浦「デモは県民の声代弁」
 新松浦漁協は原発から8・3キロの鷹島など4カ所の漁港を拠点に、玄界灘でのヒラメやカレイなどの底引き網漁、トラフグやクロマグロの養殖が盛んだ。再稼働について、志水正司組合長は「事故が起きれば、風評被害も加わって漁業は壊滅的打撃を受ける。生活の糧が一瞬で奪われる」と訴え、松浦市長に先んじて反対を主張してきた。15日に海上デモをしたことにも「市は同意権がなく、このままだと物も言えない。組合員の怒りを伝えたくて行動した。同時に県民の声も代弁している。その重みを九電と国は理解すべきだ」と話し、「地元同意」の対象でなく、自らの主張が届かないもどかしさの表れであることを強調した。デモに合わせて九電に抗議文も提出した。「われわれの声を無視して再稼働をしようとする限り、抗議行動を続ける」と初心を貫く覚悟を見せる。
●平戸市「県漁連と申し入れを」
 平戸市漁協の山中兵恵組合長は、新松浦漁協のデモについて「漁業者の立場をはっきり示した。訴えに賛同する。平戸市漁協も一貫して再稼働反対の立場」と言い切る。事故時の影響についても「福島第1原発のような事故が起きたら、平戸の漁業も大きな打撃を受ける」と指摘。平戸のあごは8月下旬〜10月上旬、玄海町と壱岐の間の海域を通って、玄海原発方面から吹く風とともにやってくる。「風や潮流で放射性物質が平戸方面に流れたら魚は売れない。観光も影響を受ける」と懸念する。今後の対応については「県漁連と各漁協組合長で九電に再稼働反対を申し入れることを考えたい」と語った。
●箱崎「責任持って補償して」
 島南部が原発から30キロ圏に入る壱岐市。県漁連副会長で、箱崎漁協(壱岐市芦辺町)の西寛組合長は「今回のデモは、松浦が壱岐以上に原発から近いため、その危機感から行ったのだろう」と推察。今後の連携には「今のところ、松浦との連携は考えていないが、県漁連も再稼働反対を掲げており、その方針には従う」と述べた。ただ、事故時の危機感は松浦、平戸と同様に強い。「壱岐は1次産業の島。イカ、ブリ、サワラ、マグロ漁が盛ん。ウニ、サザエ、アワビなども特産で、風評被害を一番懸念している。万が一の場合は、九電や国が責任を持って漁業被害を補償してほしい」と訴えた。

*18-3:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170802/KT170801ETI090005000.php (信濃毎日新聞 2017年8月2日) エネルギー計画 国民の声に耳を傾けよ
 経済産業省がエネルギー基本計画の改定に向け、議論を始めると発表した。国の中長期的なエネルギー政策の指針で3年ごとに見直すことになっている。2014年策定の現計画は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働方針を明記している。世耕弘成経産相は記者会見で骨格は変えないとし、審議会や有識者会議で議論するとした。経産相に問う。国民の声を聴く意向は今回もないのか、と。政府は現計画を民意を無視して策定した。12年夏、当時の民主党政権は計画策定に向け、全国11都市で原発について意見を聴く会を開き、討論型世論調査も実施した。その結果、再生可能エネルギーの普及を進め、30年代に原発稼働ゼロを目指す戦略を決めている。基本計画に反映させる前に政権交代した。安倍政権は12年12月の発足直後にゼロ目標を撤回。基本計画を審議する委員を経済界などから選び、現行計画をまとめた。市民の意見を生かした脱原発路線は顧みられなかった。政府の原発推進路線はその後も加速する。15年には30年度の電源構成比率を決め、原発は20〜22%程度にするのが望ましいとした。原則40年の運転期間を延長するか、建て替え、新設がなければ達成が難しい目標である。今回の見直しでは「目標をどう達成するのか議論する」(世耕経産相)という。民意無視の現計画が電源構成比率につながった。それが新基本計画に反映されることを認めるわけにはいかない。脱原発を求める民意は各種世論調査でも変化していない。基本計画の策定は、国民に向き合うことから始めるべきである。世界の潮流にも目を背けてはならない。台湾はアジアで初めて脱原発に踏み切り、韓国の文在寅大統領も原発の新設計画の白紙化を宣言した。米国では他の発電方法のコスト低下で、原発新設計画が中止に追い込まれている。原発の矛盾は覆い隠せない。事故経費や安全対策費などを含めれば安価とはいえない。原発から出る高レベル放射性廃棄物の処分方法も決まっていない。議論するべきことは幅広い。火力発電に頼れば温室効果ガスが増え、料金値上げも想定される。再生可能エネルギーで安定供給できるのかも検証する必要がある。必要なのは全ての課題を提示した上で、国民が議論し、進路を選ぶ過程である。旧態依然とした審議会だけで決める問題ではない。

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