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2017.6.26 経営戦略と組織再編 ― 日本郵政、東芝、富士ゼロックス、JR九州、農業、自動車産業の事例から (2017年7月4、5、6、7、10、11、13日、8月7日に追加あり) 
  
   2017.6.21         2017.6.24        2017.6.25   
   日経新聞          東京新聞          日経新聞   

    
   2017.6.24       2011.2.26        2017.6.26
    佐賀新聞        日経新聞          佐賀新聞

(図の説明:日本郵便の利益は、2017年3月期は買収したオーストラリア物流子会社ののれん減損処理の影響で、マイナスになりそうだ。ウェスティングハウスの買収による巨額損失を抱えこんだ東芝は、上場維持さえ危うくなり、東芝メモリを売却することによって債務超過を回避しようとしているが、これまでに締結した不利な契約に束縛されて困難が多い。富士ゼロックスは、ニュージーランド子会社の不適切会計を理由として統括会社の支配を強めようとしているが、ローカルな市場に直面する販売はローカリズムを維持した方がよいと考える。JR九州は不動産事業の好調で順調な上場を果たしたが、気のゆるみや驕りは巨額損失に繋がるので禁物だ。また、鉄道の不採算路線は、地域社会と協力しながら、ふるさと納税も利用して話を進めることにより、問題解決して次の収益機会が得られると考える)

(1)大企業の買収・分社と失敗事例の原因
1)買収で巨大損失を招いた日本郵政
 日本郵政は、*1-1のように、買収したオーストラリアの物流子会社の業績が振るわず、のれんの減損処理をする必要が出て、民営化後初の赤字の可能性とのことである。

 減損処理を検討しているのは、2015年に純資産額より約4,700億円も高い6,200億円で買収した豪トールの「のれん代」で、上場前に国際物流で成長するというメッセージを発する目的で買収し、「上場を乗り切ろうという姿勢で、会社の将来を考えての判断とは思えない」状況だったのだそうで、この時の株主は国であり、買収は東芝出身の西室前社長の主導で行われて、内部での検討は殆どなかったそうだ。

 また、*1-2のように、早ければ7月とされる政府保有株の売却を前に、郵政が持つ膨大な不動産を野村不動産の力を借りて再開発する成長の展望を示そうと動いた日本郵政の野村不動産ホールディングス(HD)の買収交渉は中止となった。郵政株の売り出しの主幹事を務める野村証券は郵政との良好な関係を維持したいが、野村不動産は安定収益を稼ぐグループ会社であるため、郵政の要望にどう応じるべきか、野村社内には困惑するムードがあり、郵政による買収検討が伝わると野村不動産株式は急上昇したのだそうだ。

 この日本郵政の両方の買収に言えることは、金や取引関係や政府の後ろ盾を背景に、競争相手に望まない買収をしかけていることである。そのため、必要以上に高い価格で買わされ、被買収会社のモチベーションは低く、買収価格に見合った収益が挙がらないのだろう。では、相手も望む組織再編はどういうものかと言えば、技術やネットワークを拠出しあえるなど、お互いにシナジー効果のある買収や合弁だ。

 例えば、*1-3のように、ドイツポストは、配送用の電気自動車(EV)の生産で米フォード・モーターと提携し、7月からフォードの車台を使って中型のEVトラックを生産し、2018年までに2,500台を生産し、中型EVトラックとしては欧州最大規模の生産体制にし、自動車大手との提携で小包配送車をEV化する計画を加速するそうだ。この理念と仕組なら、相手も喜んで協業するだろう。

 そのような中、日本郵政のこれまでの業務とシナジー効果のある成長戦略を考えると、①最もよく使う配送車をEV化するため、日本の優秀な自動車会社とジョイントベンチャーを作る ②配送や仕分けの拠点は、土地の価格が安くて便利な高速道路のインター付近に引っ越して自動化する ③街の中心部に持っている主要郵便局は、高層化して商店・保育所・学童保育・介護施設・サービス付きマンション等を入れ、建設会社と組んで新しいスマートシティーを提案する などだ。つまり、今の時代に必要とされるサービスを提供できるよう、シナジー効果のある事業を関係する会社と合弁会社を作って行うのがよいと考える。 

2)東芝のウェスチングハウス買収と不利な契約締結による失敗
 東芝も、*1-4のように、ウェスチングハウスの高値買収と米原子力発電所建設に関して電力会社に提供した親会社保証契約で債務総額 98億ドル(約1兆900億円)を抱え、東芝原子力エナジーホールディングス(以下、TNEH)は、米国連邦倒産法第11章(Chapter 11)に基づく再生手続を申し立てることを決議して、同日付でニューヨーク州連邦破産裁判所に申し立てた。

 そして、*1-5のように、東芝は、東芝メモリを2兆円で売却して利益を出す計画で、経産省が日本勢が66.6%の株式を保有する「日米韓連合」を提案し、日米韓連合案は産業革新機構と政策投資銀行が計6千億円、ベインとSKが計8,500億円を拠出し、銀行融資も加えて2兆円となっている。そして、産業革新機構以外は融資や優先株による出資を含むため、議決権は産業革新機構が50.1%、政策投資銀行が16.5%、ベイン側が33.4%で、売却から2〜3年後の上場を目指すそうだ。

 しかし、半導体工場を東芝と共同運営する米ウエスタン・デジタルが「契約違反だ」と反対し、法廷で争う姿勢を鮮明にして経産省などと駆け引きを続けているとのことである。

 このように、高値買いと不利な契約締結の結果、東芝は、*1-6のように、2017年3月末で5,816億円の債務超過が確実となり、今月末に期限を迎える2017年3月期の有価証券報告書(有報)の提出を8月10日まで延期することを関東財務局に申請して承認され、2017年8月1日付で東証2部に降格となった。

3)東芝と日本郵政の巨額損失を招いた西室元社長について
 日本郵政は、*1-7のように、郵便事業や貯金・簡保などとは業務の異なる東芝から西室社長(1935年生まれで、2015年のトール買収時に80歳)を招き、自社に技術のないものを人脈と金にあかして買収で手に入れようとして高値買いをするという東芝と同じ失敗をしている。そして、東芝と同様、不利な契約を結んでいるという悪材料が次々と出てくるのではないかと心配されている。

 買収時に被買収会社の企業価値を厳しく精査するのは外資系企業では当然であり、私もPWCで監査していた頃、買収会社の依頼で被買収会社を監査したことがある。その目で見ると、日本企業の経営者は、根拠なき信頼をベースに企業価値をしっかり精査もせずに買収し、欧米企業を買収したこと自体に喜びを感じる人がおり、買収後の経営戦略が甘すぎるケースが散見される。

(2)富士ゼロックスのケースについて
 富士ゼロックス(株)は、富士写真フイルム(株)と英ランク・ゼロックス社との合弁会社として1962年に誕生したコピー機メーカーで、写真屋とコピー屋が技術を出し合って優秀なコピー機ができたケースだ。現在、富士ゼロックスは富士フイルムホールディングスの連結子会社だが、米ゼロックス社も25%の株式を保有しており、この協業はもともと成功事例だった。

 しかし、*1-8のように、ニュージーランドのプリンターリース会社MARCOが、普通のリース取引の形をとりながら、金融会社FINCOにリース債権を譲渡する形でリース販売を確定させ、売上の過大計上をしていたそうだ。ただ、「リース開始時に見積もったリース債権額と満了時までのリース料総額(コピー料金総額)に大きな差額が出るのは、リースが満了すれば直ちに損失計上すべき」と書かれているが、リース期間満了時に直ちに使えなくなるコピー機はないため、コピー料金で全額を支払うまでリースを解除できない契約にしておけば回収可能になる。

 実は、私は衆議院議員の時、唐津事務所で富士ゼロックスのいいコピー機を使っていて、ハンコを押した書類はどちらがオリジナルかわからないほどのカラーコピーの出来栄えに感心していたが、リース料とコピー料金が高すぎるのが欠点で、有権者に配る資料を思う存分カラーコピーすることができなかった。これは、物価の安い外国ではなおさら感じられることだと思うため、この提案をした次第である。

 今回の会計不祥事を受けて、*1-9のように、グループの成長を引っ張ってきた独立心の強い富士ゼロックスの経営を、富士フイルムHDが経理・人事・広報などで年内にも一体的に運営し始めるというのは、経理は一体的に行った方がコストの削減効果が大きいが、国によって異なるマーケットに直面している販売を統合管理するのはむしろマイナスで、人事もまた日本の論理を押し付けすぎると、現地に合ったやり方を阻害して業績悪化を招く恐れがある。

 そのため、不正をなくすためには、経営の自由度を保ちながら、富士フイルムホールディングスに社長直轄の内部監査部を作って、世界中の関連会社をローテーションしながら社内監査する仕組みにすればよい。私はPWCで監査をしていた頃、ロイズやブリストルマイヤーズの内部監査人(Big4出身の公認会計士が多い)が日本子会社の監査に来た時に、日本(東京)のPWCからその内部監査の手伝いに行っていたので知っているのだ。

 なお、写真屋とコピー屋の合弁会社である富士ゼロックスなら、*1-10のような薄い太陽電池を建材シートに印刷することも可能ではないだろうか。これにより、爆撃で建物が壊滅したイラクなどで、昔の写真を使って元の街並みを断熱性の高い建材で復元した上、可能な場所には元の建物と同じ色調の太陽電池シートを張って元の街並みを復元しながら、超次世代の街を作れば面白いし、日本の技術のアピールになると考える。

(3)JR九州について
 JR九州は本物の利益を出して滞りなく上場にこぎつけたが、*2-1のように、上場後初の株主総会に向けて準備を進めるにあたり、他社を見学したり、23人の役員全員でリハーサルを3回も開いたり、質疑に対する各役員の答弁練習を実施したり、会場で案内などを担当する社員への教育を進めたりしたのは面白い。しかし、このような成長期には、すべてを子飼いの社員でやらなくても、上場会社で総務を担当していた人材、公認会計士、弁護士、税理士などを雇えばもっとスムーズに付加価値の高いことができると考える。

 なお、JR九州の上場を容易にしたのは、*2-3のように、「不動産事業」からの収益だ。何故なら、JR九州は、現在は運輸サービス事業と駅ビル・不動産事業の利益がそれぞれ全体の4割で、不動産からの収益が多いからだ。私は、鉄道会社が運輸サービス事業とシナジー効果の高い駅ビル・不動産事業を行うのは極めて合理的だと考えている。何故なら、運輸サービス事業の充実によって、手持ちの不動産の価値を上げることができるからだ。ただし、これは、自らが運輸サービス事業を行っている地域に限られ、他の地域や外国に出るとシナジー効果はない。
 
 このような中、上場後初の総会では、*2-4のように、株主に地方路線での廃線の動きを懸念する声があったり、株主から不採算路線については第三セクターへの移譲を検討してはどうかとの意見が出たり、JR九州の担当者が効率化を図ることでネットワークを維持していく方針を説明して理解を求めたりしたそうだ。私は、鉄道収入だけを見れば不採算でも、その鉄道があることによって連続性を保つことができたり、駅近くの地価が上がったり、観光振興ができたりすることを考えれば、廃線や第三セクターへの移譲のようなコストカットだけが解決策ではなく、その特性を活かした収益拡大策があってよいと考える。

 また、*2-2のように、九州新幹線長崎ルートのフリーゲージトレインは、車体価格などコストが通常よりも約3倍になるうえ、長崎と新大阪を直通運転することもできないため、R九州の青柳社長は、全線を通常の新幹線と同じフル規格で整備すべきだとの意向を示したそうだ。私も、長崎行きがフル規格でないのはもったいなすぎるため、①高架下を利用したり ②駅近エリアの開発を行ったり ③送電線を敷設して送電料をとったり ④夜間は新幹線貨物を走らせたり しながら、フル規格で整備すれば何とかなるのではないかと考える。

 ちなみに、九州新幹線を使うと、*2-5のように、新大阪―鹿児島中央間でも3時間45分で走ることができ、夜間の新幹線貨物なら止まる駅が少ないので3時間程度で走ることができると思われる。そのため、*2-6のような物流会社と合弁会社を作れば、九州の農水産物を高付加価値のまま、高くない運賃で大消費地に届けられるだろう。

 また、街づくりのために新幹線の駅が欲しい都市は、*2-7の「ふるさと納税」で使い道を指定して寄付を集め、JR九州に目的を持って出資して、路線の有効な使い方にも知恵を絞るのがよいと考える。ただし、これがうまく機能するためには、JR九州は路線ごとに別会社にして管理しておく必要がある。

(4)合併後の戦略について ー 十八銀行の事例から
 どの合併会社でも同じだが、経理・総務は一つになり、販売も店舗の統廃合や業務の効率化で、*3のように、合併後には余剰人員が生まれる。2017年10月にふくおかフィナンシャルグループ(FFG)との経営統合を目指す十八銀行は、FFG傘下の親和銀行との合併に伴う店舗統廃合等で計400人以上の余剰人員が生じ、余力を地域活性化や新規事業に振り向けるそうだ。

 それが成功するためには、視野が広くて応用力のある優秀な人材を、経営企画部・新規事業部に配置し、事業として再編されようとしている農水産業・食品・新エネルギー・第4次産業革命・地域活性化などに関する仕事を開拓させることが必要だ。銀行経験者は、情報通で、きちんとした経理や経営計画を行う能力があるという意味で貴重な人材だが、とかく投資よりコストカットに目が向きやすい欠点があるため、自覚して気を付けるべきである。

<大企業の買収・分社と失敗>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK4P4S39K4PULFA00Y.html (朝日新聞 2017年4月22日) 日本郵政、誤算の買収 豪子会社巡り巨額の損失計上へ
 日本郵政が巨額の損失を計上し、民営化以来初めて純損益が赤字になる可能性が出てきた。買収した豪州の物流子会社の業績がふるわず、会社の資産価値を切り下げる「減損処理」をする必要があるからだ。買収に慎重論もあったが、西室泰三前社長が主導した。日本郵政が減損処理を検討しているのは、2015年に6200億円で買収した豪州の物流大手「トール」。資源価格の低迷を受け、16年4~12月期の営業利益が前年同期に比べ7割も減るなど、業績は買収前の予想を下回る。買収額はトールの純資産額より約4700億円も高かった。トールのブランド力やノウハウが収益につながると期待したためで、この差が「のれん代」と呼ばれる。のれん代は買収した企業の資産になるが、期待ほど収益が上がらなければ損失として計上しなければならない。東芝が巨額損失を計上したのと同じ構図だ。買収発表は日本郵政が株式を上場する約9カ月前。「上場前に郵便事業の成長戦略を描く必要があった。国際物流で成長するというメッセージ」(当時の幹部)だったが、巨額の買収費用に「高値づかみだ」との声も出ていた。トールののれん代は16年12月末時点で3860億円あり、日本郵政は来週前半の取締役会でこの大半について減損処理を決める見通しだ。日本郵政は17年3月期決算の純損益を3200億円の黒字と予想するが、減損額によっては07年10月の民営化以来、初の赤字に転落する可能性がある。業績の大幅悪化は、政府が東日本大震災の復興財源に当て込む日本郵政株の売却益を減らしかねない。政府は22年度までに郵政株の3分の2を売って計4兆円を確保する計画。15年に約2割の株を1・4兆円で売却済みで、早ければ7月にも追加で売却するとみられる。日本郵政株の終値は、減損の検討が明るみに出た20日に前日比で2・6%下落。翌21日に1・6%戻したものの、今後も不安定な値動きが予想される。財務省理財局は「売却時期や規模については、市場環境などをふまえて適切に判断する」と話す。株価の下落が続く場合、売却時期の先送りもありうる。
■「内部検討ほとんどなし」
 日本郵政グループ幹部によると、西室前社長は15年春の取締役会で初めてトールの買収を説明し、「もう決めた」と語った。取締役から批判が上がったものの、西室氏の意思は変わらなかった。巨額買収を心配する声は当初からあった。別のグループ幹部は「買収について内部の検討はほとんどなかった。上から降ってきた話」と明かした。元幹部は「とにかく上場を乗り切ろうという姿勢で、会社の将来を考えての判断とは思えない」と語っていた。16年初めの日本郵政の経営会議。トールの現状について「かろうじて黒字」などと報告されたのに対し、社外取締役から「日本郵便にとって意味があるから買ったのでは」「いくらもうかり、いくら損して、これからいくら負担しなければならないのか、数字で示してくれ」などの懸念が出た。グループ内でも「すぐに減損処理せざるをえない」との見方が強まっていた。このころ、西室氏がかつて社長を務めた東芝の子会社、ウェスチングハウスも原発の受注悪化などから減損が避けられないとの見方が出ていた。だが、東芝はまだ「将来の収益が見込める」として損失の計上は不要との姿勢を続けていた。16年2月に取材に応じた日本郵政幹部は、同年3月期にトールの減損を実施するかを問われ、こう答えた。「しない。ウェスチングハウスと同じだ」(真海喬生、織田一)

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170621&ng=DGKKZO17905290Q7A620C1EE9000 (日経新聞 2017.6.21) 郵政成長戦略の舞台裏(上)、大型買収不発 次の一手模索 政府の保有株売却を意識
 日本郵政による野村不動産ホールディングス(HD)の買収交渉が中止になった。早ければ7月とされている政府保有株の売却を前に成長の展望を示そうと動いたが、大型買収への懸念をぬぐいきれなかった。オーストラリアの物流会社への出資に続く失敗で、M&A(合併・買収)による成長の道は狭まった。これから新たな戦略の模索が始まる。「ちょっと難しくなってきたな」。6月上旬、日本郵政のある幹部が関係者にこう漏らした。郵政による野村不HDの買収が報じられて1カ月。6月に入って資産査定のプロセスが止まり、買収交渉からの撤退は秒読み段階に入っていた。郵政が持つ膨大な不動産を野村不の力を借りて再開発する。野村不は有望なマンション用地などを確保。互いにメリットがあると思われた枠組みを止めたのは、他ならぬ郵政自身の「失敗」だ。
●ゲームより汗を
 郵政は2015年11月に株式上場したが、発行済み株式の8割はまだ政府出資だ。追加で売り出す株式の収益は東日本大震災の復興財源にあてられる。郵政が成長するかどうかは震災からの復興に響く。海外の買収で大失敗した直後に出てきた野村不の買収案は、政治家の目には浮ついた「マネーゲーム」に映った。郵政は野村不の買収を巡り、親会社の野村ホールディングスと交渉を進めていた。郵政株の売り出しの主幹事を務める野村は郵政との良好な関係を維持したい。一方で野村不は安定収益を稼ぐグループ会社でもある。郵政の要望にどう応じるべきか、野村社内には困惑するムードがあった。
●高値づかみ批判
 5月上旬に郵政による買収検討が伝わると、野村不株は急上昇。4月まで1800円前後だった株価は2500円程度まで上がった。「トールに続く高値づかみ」。こんな批判に耐えて買収に踏み切れるほど郵政に自信はなく、応援する人も少なかった。買収は白紙に戻ったが、成長戦略を白紙にしておくことはできない。政府が株式の追加売却を迫られているためだ。政府は3月に2次売却を引き受ける主幹事証券を決めており、追加売り出しは最も早くて7月だ。日経平均株価は2万円を超え、市場の環境は悪くない。だが郵政株は1300円台でもたついている。17年度予算に盛り込まれた売却額は1兆3000億円。郵政株が1200円台なら届く水準だが、成長戦略がきちんとしていれば、もっと大きな額で売れる可能性はある。郵政の強みは郵便・貯金・保険の3事業で培った顧客層。全国の郵便局は投資信託の販売網などとしても有力だ。華々しいM&Aには取り組みにくくなり、郵政は原点に立ち戻ろうとしている。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170615&ng=DGKKASDZ14HS2_U7A610C1TJ1000 (日経新聞 2017.6.15) 独ドイツポスト、フォードとEV生産 来年までに2500台
 国際物流・郵便世界大手の独ドイツポストは14日、配送用の電気自動車(EV)の生産で米フォード・モーターと提携すると発表した。7月からフォードの車台を使って中型のEVトラックを生産する。2018年までに2500台を生産する。中型EVトラックとしては欧州最大規模の生産体制になる。自動車大手との提携で小包配送車をEV化する計画を加速する。フォードのドイツ法人と契約を結んだ。フォードの商用車「トランジット」のシャシーをベースに独自仕様の車体やEVシステムを載せる。組み立ては独西部アーヘンのドイツポスト子会社の工場で手がける。ドイツポストはEVベンチャーを買収し、積載容積4立方メートルなどの小型の自社開発EVを国内で2500台導入している。ドイツポストは全ての小包配送車をEVにするため、積載容積20立方メートルの車両を18年までに投入する方針を表明していた。フォードとの提携で中大型車両の導入に道筋を付けた。

*1-4:http://news.mynavi.jp/articles/2017/03/30/toshiba/ (マイナビニュース 2017/3/30) 東芝、最終赤字1兆円超 ウェスチングハウスの負債はこれで本当に終わるか?
 巨額の損失が発生することが判明した東芝。そのがん細胞となっている、海外原子力事業リスク遮断のため米国子会社・ウェスチングハウス社切り離しに向けて大きな動きがあった。
●債務総額 98億ドル
 米国時間の2017年3月29日、東芝の海外連結子会社に米ウェスチングハウスエレクトリックカンパニー社とその米国関係会社、米国外の事業会社群の持会社である東芝原子力エナジーホールディングス(以下、TNEH)が、米国連邦倒産法第11章(Chapter 11)に基づく再生手続を申し立てることを決議し、同日付でニューヨーク州連邦破産裁判所に申し立てしたと、東芝が発表した。ウェスチング社とTNENの2社の債務総額は98億ドル、日本円で約1兆900億円だ。3月29日、午後5時45分から都内の東芝本社で開かれた会見の冒頭、説明にたった綱川智社長は、今回の11章に基づく再生手続きの適用について「ウェスチンググループの事業の再生に不可欠だ。それと同時に、非連結化により原子力事業のリスクを遮断するという当社の方針にも合致する」と説明。申請と同時に再生手続きに入ったため、ウェスチンググループは裁判所の法的保護のもと、電力会社、東芝などの当事者の協議によって事業再建をはかることを模索していくとした。これによってウェスチンググループは東芝の実質的な支配から外れ、2016年度通期決算から連結対象からはずれることになるという。ウェスチングハウス社の今後については、再生手続に乗っ取った事業再編を念頭に置き、当面は当面現行の事業をこれまでどおり継続する予定だという。この当面の事業継続のために、ウェスチング社は8億ドルの第三者からのファイナンスを獲得し、そのうち東芝が、2億ドルを上限として債務保証を提供する予定としている。建設中の米国原子力発電所2サイトについては、ウェスチンググループと東芝の2社が、顧客である電力会社と当面のプロジェクトの継続にむけた合意を目指して協議を進めているという。包括的な合意形成にむけて協議を行う当面の間は、電力会社が建設コストなどを支払う前提だという。
●東芝への影響について
 東芝本体への影響については、2016年度業績は、現時点でまだ影響額を確定できていないと説明した上で、2月末までの計算を公表し、追加の影響可能性額を示した。2月14日に公表した2016年度業績見通しでは、原子力事業ののれん減損によって営業利益が7125億円、当期純損益・株主資本・純資産については6204億円の悪化影響を織込んで、当期純損益3900億円の赤字、株主資本1500億円のマイナス、純資産1100億円としていた。この値から当期純損益は、6200億円規模の追加悪化となり、1兆100億円の赤字。株主資本については、4700億円規模の追加悪化となり、6200億円のマイナス。連結純資産では、4500億円規模の追加悪化となり、3400億円のマイナスだという。これだけの追加の影響が出ると想定される要因。それは、再生手続きの開始によって、主にアメリカ原子力発電所建設プロジェクトの東芝が電力会社に提供している親会社保証に関連する損失計上と、ウェスチンググループへの東芝の債権に対する貸倒引当金の計上を新たに検討する必要があるというのだ。2月末時点で、親会社保証は全額で6500億円規模、債権は全額で1756億円規模で、それに対する貸倒引当金が見積もられている。その一方で、ウェスチングハウスグループが連結から外れる影響で当期純利益が概算で2000億円超の改善影響が出る見通しだ。これらを勘案し、上記のような影響額になる可能性が示された。計上額は、再生手続きの過程で確定する再生計画の内容で大きく変動すること、額の算出については、東芝グループの2016年度第4四半期実績を踏まえる必要があるとしている。このため、先に述べたように、影響額は確定できていないというのだ。「一時的には追加の損失が発生する可能性があるが、マジョリティを含むメモリー事業の譲渡。外部資本導入に加え、聖域なく保有する資産の意義を見直し、意義の低い資産の売却を進める。新生東芝において注力事業と位置づける社会インフラなどで安定的に利益を拡大、確保し、債務超過の解消と毀損した財務基盤の回復をはかる」と発言した。再生手続きの申請によって、一つ山を超えた東芝だが、親会社保証などの額が確定していない。さらには建設中の4基の原発のスケジュールの遅れなど指摘されているリスクはまだまだある。3月30日の臨時株主総会、4月11日に予定される第3四半期決算など動向を見守りたい。

*1-5:http://qbiz.jp/article/112533/1/ (西日本新聞 2017年6月21日) 東芝メモリ売却、日本勢6割超 「日米韓連合」が提案
 経営再建中の東芝は21日、半導体子会社「東芝メモリ」(東京)の売却に向け、経済産業省が主導した「日米韓連合」と優先的な交渉に入ると発表した。連合の提案によると買収額は2兆円で、東芝メモリ株の議決権の66・6%を日本勢が握る。国外への技術流出阻止や雇用確保の観点から財界の実力者や有識者を含む取締役会が「最も優位性が高い」と判断した。28日の株主総会までに合意し、来年3月までの売却完了を目指す。だが三重県四日市市の半導体工場を東芝と共同運営する米ウエスタン・デジタル(WD)は「契約違反だ」と反対するコメントを改めて発表し、法廷で争う姿勢を鮮明にした。WDは売却の差し止めを求めて米国の裁判所に提訴している。WDは「(現地時間の)7月14日に予定される審問を楽しみにしている」と表明した。訴訟の展開次第では売却手続きが頓挫する恐れがある。日米韓連合は政府系ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行、米ファンドのベインキャピタルで構成。韓国半導体大手SKハイニックスはベインと連携し参画するが、東芝メモリと同じ主力製品で高いシェアがあり、中国など独占禁止法の審査で問題視される可能性もある。日米韓連合案は現時点で、革新機構と政投銀が計6千億円、ベインとSKは計8500億円を拠出。銀行融資も加え2兆円とした。革新機構以外は融資や優先株による出資を含むため、議決権は革新機構が50・1%、政投銀が16・5%、ベイン側が33・4%。売却から2〜3年後の上場を目指す。日本企業数社や米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の出資も取り沙汰され、陣容や枠組みは変わる可能性もある。WDは経産省側などと駆け引きを続けており、買収に関与する可能性も残る。対抗馬だった米半導体大手ブロードコムの陣営は、訴訟の行方を見守る構えだ。東芝の資金繰りを支えるため、三井住友銀行やみずほ銀行など主要取引銀行7行は6月中に、280億円の新規融資をする方向だ。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201706/CK2017062402000138.html (東京新聞 2017年6月24日) 【経済】東芝、東証2部に降格 8月1日付 決算発表も延期に
 経営再建中の東芝の株式について東京証券取引所は二十三日、八月一日付で東証一部から二部に降格になると発表した。二〇一七年三月末で負債が資産を上回る債務超過が確実になったため。また東芝は今月末に期限を迎える一七年三月期の有価証券報告書(有報)の提出を八月十日まで延期することを関東財務局に申請し、承認された。綱川智社長は東京都内で記者会見し、「非常に責任を感じている。上場を維持し、有報の提出へ監査法人と協調し最善を尽くす」と語った。有報の提出延期は、四半期ベースを含め、不正会計問題が発覚した一五年以降で五度目。元子会社の米原発大手ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を巡るPwCあらた監査法人の監査が七月末までかかるため延期した。東芝がWHの巨額損失をいつ認識したかについても、あらたとの意見の相違を解消する必要がある。東芝は、WHの破綻に伴い米電力会社が求める債務保証の負担などが膨らんだとして、債務超過の額が従来予想から四百十六億円増え、五千八百十六億円になったことも明らかにした。東芝は来年三月末時点で債務超過を解消できていなければ上場廃止になる。このため財務改善に必要な半導体子会社「東芝メモリ」の売却に向け、政府系ファンド産業革新機構などがつくる「日米韓連合」と交渉を急いでいる。三重県四日市市の半導体工場を共同運営する米ウエスタン・デジタル(WD)が売却に反対し係争中だが、綱川社長は今月二十八日の株主総会までに連合と売却契約を結べるとの認識を示した。

*1-7:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/204179/1 (日刊ゲンダイ 2017年4月25日) 東芝に続き…日本郵政の巨額損失招いた西室元社長の罪
 日本郵政の巨額損失を巡り、市場の判断が揺れている。日本郵政は2015年に子会社の日本郵便を通じて、オーストラリアの物流会社トール・ホールディングスを6200億円で買収した。ところが、オーストラリア経済の低迷などでトール社の業績は悪化。3000億~4000億円程度の減損を計上する可能性が指摘されている。17年3月期の最終損益で赤字転落する恐れも出てきたのだ。「ウミを一気に出し切ることは悪くない。ダラダラと損失を処理するより、よっぽどマシでしょう」(株式アナリストの黒岩泰氏)
■「悪材料がまだあるのでは…」
 一方で、トール社買収を主導した人物が、西室泰三元社長だったことから、市場がざわついている。
「西室氏といえば東芝の元社長です。“東芝の天皇”とすら呼ばれ、その影響力は計り知れません。東芝が不正会計に手を染めたキッカケとされる経営トップの人事抗争をつくり出した張本人ともいわれます。日本郵政の巨額損失は、東芝と同じ海外M&Aに絡んでいます。もしかすると日本郵政も東芝と同じように、次々と悪材料が出てくるのではないか……と勘繰っているのです」(市場関係者)。
西室氏はトール社買収に際し、「日本郵政は世界をリードする物流企業だ。アジア太平洋で最大級のトール社との組み合わせは強力」と自信満々にコメントした。だが、西室氏の見立ては、わずか2年あまりで崩壊。買収当時、市場がささやいていた「株式上場(15年11月)に向けた“お化粧”にすぎない」「高い買い物」が正解だった。東芝の米ウェスチングハウス(WH)社買収(06年)に暗躍したのも西室氏だ。当時、西室氏は相談役に退き、社長は西田厚聰氏に譲っていた。WH社を巡っては日立製作所や三菱重工も熱心だったが、最終的には東芝が手中にした。決め手は、院政を敷いていたといわれる西室氏が人脈を駆使し、ベーカー元駐日米国大使に働きかけたからだといわれている。「ただ、その過程でWHの買収額は倍以上の約6000億円にハネ上がっています。日本郵政のトール社買収も西室氏の鶴の一声で決定したといいます。企業価値をキチンと精査しなかったので、今回のような巨額損失が生じるのです」(証券アナリスト)。日本郵政にとって「西室つながり」は悲劇だが、投資家の不安は高まるばかりだ。

*1-8:http://toyokeizai.net/articles/-/176127 (東洋経済 2017年6月14日) 富士フイルムHD、「不正会計」の絶妙カラクリ、海外子会社で売り上げのカサ上げが行われた
 6月10日。富士フイルムホールディングスの第三者委員会は、海外子会社の不正会計疑惑についての調査報告書を同社に提出した。その全文版には不正の実態が克明に描かれている。調査報告書は「不適切会計」と多く記述しているが、「不正会計の隠蔽指示」「監査上の重要性の低い監査対象外の会社での不正な会計処理等」など不正会計という記述もある。単に間違えただけなら不適切会計だが、意図的に悪意を持って正しくない会計処理をすれば不正会計だ。はたして富士フイルムHDのケースは、どちらのケースなのか。
●一見すると普通のリース取引&債権譲渡
 不正の舞台となったのはニュージーランドのプリンターリース会社MARCOと金融会社FINCOである。両社を合わせて富士ゼロックスニュージーランド(FXNZ)と呼んでいる。MARCOとFINCOの親会社が、シンガポールにあるアジア・オセアニア地域統括子会社富士ゼロックスアジアパシフィック(以下FXAP)。その親会社が富士ゼロックス(以下FX)、さらにその親会社が富士フイルムHDという複雑な親子関係だ。MARCOとFINCOの取引は大きく3段階に分けられる。まず、リース会社のMARCOはプリンターを顧客にリースする。期間は平均48〜60カ月だ。リース料金は毎月のコピー代で回収する。次に、MARCOはそのリース債権を金融会社のFINCOに全額譲渡する。最後にMARCOはリース債権を譲渡することで、債権譲渡と同時に、向こう48〜60カ月分のリース代金の合計を売上高として一括計上する。これだけならごく普通のリース取引であり、通常の債権譲渡である。問題はリース債権の見積もりにあった。このリース債権をかなり高く見積もることで、実態よりもかなり多い売上高を計上していたのである。どうやって高く見積もっていたかというと、MARCOは毎月のリース料をプリンターの使用量に完全比例するように料金設定していたが、この使用量の見積もりを、実態よりも高く見積もっていた。その高く見積もった使用量をベースにした金額でリース債権をFINCOに譲渡し、リース開始時点でリース満了までの収入を一括で得ていた。この手法だと、リース開始時に見積もったリース債権額と満了時までのリース料総額に大きな差額が出る。これはリースが満了すれば、直ちに損失計上すべきものだ。それなのにFINCOはこの差額を、未回収のリース債権としてバランスシートに計上していた。あたかも回収可能性があるかのように会計処理をすることで、損失を先送りしていたのである。
●これはやはり「不正会計」
 このケースはやはり「意図的に悪意をもって正しくない会計処理をしていた」といえるのではないか。実は、富士フイルムHDの過去分の決算修正はこれからだが、大手監査法人は不正会計を検証する前提ですでに修正作業に入っている。なぜこうした不正会計が行われたのか。調査報告書はいくつかの原因を指摘している。最大の原因はMARCOとFINCOの経営者が同一人物のニール・ウィッタカー氏だったことだ。同氏は現地採用でたたき上げの人物だったという。「料金は使った分だけ。使わなければ無料」を意味する「ミニマムペイメント(=固定費部分)なし」契約を始めたのは同氏だという。この顧客に有利な条件を武器に契約数を伸ばしたと見られる。特殊な報酬体系も不正の温床となった。売り上げ増に対する評価部分が大きいことが、毎月のリース料を高く見積もることにつながった。ウィッタカー氏はFXNZでの実績が認められてオーストラリア子会社の経営トップに栄転している。そのオーストラリアでもニュージーランドと同様の不正会計がなされた。富士フイルムは同氏への損害賠償請求を検討しているという。そもそも不正はなぜ見過ごされてきたのだろうか。調査報告書は、ニュージーランド現地の自主性を重んじ、FXが日本人経営者を派遣しなかったこと、内部監査と業績目標の管理部門が同一だったことなどを挙げている。FXでは、吉田晴彦副社長が山本忠人会長や栗原博社長に報告しないという隠蔽もあった。だが報告書は、不正会計や隠蔽は組織的だったとまでは結論付けていない。不正会計はあくまでもウィッタカー氏個人の、隠蔽は吉田副社長個人の行為だとしている。
●3月に1300億円の社債を発行
本調査が4月20日〜6月10日まで約50日もかかったのは、国内外のすべての子会社でニュージーランドやオーストラリアと同様の不正がないかを調査したからだという。結論は「ニュージーランドやオーストラリア以外で同様の不正は見つからなかった」というものである。一方で報告書は「もう一丁(1兆)やるぞ!!」をスローガンとした売上高1兆円回帰運動や、「プライド値」という売上高目標の存在を指摘し、業績至上主義の体質を指摘している。もし報告書が指摘する通りであれば、本当に不正会計問題はこれですべてなのか。他の手口による別の不正会計は存在しないのだろうか。12日の会見は2時間近くに及んだが、すべての疑問が解決されたとまでは言えそうにない。なお、今回の不正会計騒動の最中、富士フイルムは3月に1300億円の社債を発行している。また、不正会計への疑惑が指摘されているにもかかわらず、あずさ監査法人が第2四半期・第3四半期の四半期レビュー報告書で適正意見を表明している。PwCあらた監査法人が東芝に対してしたように、あずさの監査意見が「不表明」だったら、このタイミングでは社債を発行できていなかったおそれもある。

*1-9:http://www.nikkei.com/article/DGXKASDZ20IDY_R20C17A6MM8000/?dg=1 (日経新聞 2017/6/25) 富士フイルム・ゼロックス 17年目の親子接近、管理部門統合 日本流グループ統治、岐路
 富士フイルムホールディングス(HD)が子会社の富士ゼロックスと年内にも管理部門を統合する。グループの成長を引っ張ってきた富士ゼロックスは独立心が強いことで知られるが、同社の会計不祥事を受け、富士フイルムHDは経営を任せてきた方針を転換する。人事権を含めて経営を掌握して名実ともに傘下に入れる方針。成長を目指してM&A(合併・買収)で手に入れた子会社の統治が、日本企業の盛衰に直結する経営課題に浮上している。管理部門の統合は6年間で375億円の損失を出した会計処理を受け、12日に発表したガバナンス(統治)見直しの一環だ。経理や人事、広報などが候補で、年内にも一体的な運営を始める。部門の重複を減らして効率を高め、ガバナンスも強化する。近くプロジェクトチームを設け、具体的な手法を詰める。とりわけ人事部門の意味合いは大きい。2001年に連結子会社にして以来、足かけ17年にわたり主要人事の大半を富士ゼロックス側に任せ、親会社として追認するにとどめてきた。今後は富士フイルム側が社長を含む人事や主要な経営方針に強く影響を及ぼす。経理も所管しM&Aを含めたお金の流れを把握する。
●収益の多く生む
 新体制では富士ゼロックスの栗原博社長を除く6人の役員が一斉に退任。富士フイルムHDは古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)が富士ゼロックス会長を兼務するなど計7人の役員を派遣した。財務や技術といった主要ポストに富士フイルム側の人材が就き、栗原氏は営業を主に担う体制に改めた。
12日、富士フイルムHD本社。取締役会を終えた古森氏は富士ゼロックス会長を務めた山本忠人氏に会い、「辞めてもらえないか」と切り出した。栗原氏を除く総退陣という大なたを振るう形で、古森氏は聖域に切り込んだ。これまで経営に細かく口を挟まなかったのは、富士ゼロックスが富士フイルムHDの収益の多くを生み出してきたからだ。経営の柱だった写真フィルムは00年代、デジタルカメラの台頭で市場が急速に収縮していた。液晶パネル用部材、医薬品、化粧品――。富士ゼロックスが業績を支える間に富士フイルムは業態転換を進めて安定収益の礎を築いた。今も連結の売上高の半分近く、営業利益の4割を富士ゼロックスが稼ぐ。だが、両社の関係はこのころからよそよそしかった。もともとは折半出資だった米ゼロックス側の経営不振に伴い01年に富士フイルム側が25%分の株式を買い取った。富士ゼロックスは米ゼロックスを親会社と思う風潮が強く、富士フイルムによる連結子会社化に戸惑いを隠せなかった。両社の関係に緊張が走ったのは00年代半ばだ。古森氏が富士ゼロックスの社外の取締役として率直に意見を言い始めた。市場環境や販売の見通しといった当然の質問だが口調は厳しい。富士ゼロックスの故小林陽太郎氏は「古森さんが遠慮無く、優れた質問をする。いい意味での厳しさが増している」と評していた。両社が表立ってトラブルを起こすようなことはない。しかし、下町の印刷所に印刷材料を売り歩いて出世の階段を上った古森氏と、国際派の小林氏らは大きく境遇が異なると周囲に見られた。古森氏はこのころ「両社の関係が前向きでないなら、そうしてみせる」と微妙な間柄を示唆するような発言をしていた。富士フイルムHDの助野健児社長が12日の記者会見で言った「遠慮があった」という表現は、両社の積年の関係を映す。打ち解けない親子関係は、富士ゼロックス幹部が会計を操作する遠因にもなった。好業績こそが独立性を保てる最大の理由だということを、富士ゼロックス幹部は分かっていた。
●東芝も危機招く
 国内市場の伸び悩みを受け、日本企業はM&Aに活路を見いだしている。米ゼロックスの苦境を救う意味があったとはいえ、富士フイルムも富士ゼロックスの連結子会社化により、成長の足がかりをつかみたかった。M&Aで子会社が増えれば、それをどう管理するかという問題に直面する。とりわけ海外は目が行き届きにくい。東芝の経営危機は子会社だった米社のずさんなコスト管理が招いた。ソニーは米映画事業で1千億円以上の損失を出した。富士ゼロックスの不祥事も豪州とニュージーランドの事業で起きている。欧米の大手企業はCEOが強い権限を持ち、グループ企業の意思決定もトップに一元化している。日本企業はそれが曖昧だった面は否めない。成長に向けてM&Aが欠かせない手段となった今こそ、グループ統治の基盤強化が求められている。

*1-10:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170626&ng=DGKKASGG23H3W_V20C17A6TJM000 (日経新聞 2017.6.26) 薄~い太陽電池、丈夫で長持ち 理化学研究所、食品ラップの3分の1
 理化学研究所の福田憲二郎研究員らは薄型でも丈夫で長持ちする太陽電池を開発した。厚さは食品ラップの約3分の1の3マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル。腕に巻いたり服に取り付けたりしながら4~5年は使い続けられるという。健康管理用のウエアラブル(装着型)機器の電源などとして2~3年後の実用化を目指す。開発した有機薄膜太陽電池はシート状で軽い。研究チームは電池の基板に防水性に優れた「パリレンフィルム」を採用した。全体を変形させても発電に関わる部分は壊れないように設計を工夫した。従来の有機太陽電池は基板にポリイミドなどを使うのが一般的。全体の厚さは数十マイクロメートルで、折り曲げることはできても全体をくしゃくしゃにすることはできなかった。渡り鳥に取り付けて生態調査に役立てるといった用途も検討している。

<JR九州について>
*2-1:http://qbiz.jp/article/112433/1/ (西日本新聞 2017年6月21日) 「初の総会」準備着々 他社を見学、予行も JR九州、23日開催
 JR九州は23日に福岡市で開く上場後初の株主総会に向け、大詰めの準備を進めている。上場前は国土交通省所管の独立行政法人鉄道・運輸機構が全株式を保有していたため、同機構の担当者のみへの対応だったが、今回は会場のホテルに千人を超す株主の来場が見込まれる。鉄道事業の合理化などに投資家の厳しい目が向けられることも予想され、円滑な総会運営へ万全の準備を目指している。「どのくらいの来場者数を見込み、どんな会場で準備をしたらよいのか。苦労しました」(広報部)。同社は“初の総会”に向け、総務課を中心とする各部門の担当者などで準備作業を進めてきた。これまでは、福岡市の本社会議室で鉄道・運輸機構の担当者1人に対する総会を開催。所用時間は質疑応答を含め長くて2時間ほどだったという。ところが今回は、総会前に約14万通の招集通知を発送。JR他社や地場大手企業などを参考に、千〜2千人程度の来場を見込む。当日は約200人の社員で会場案内などをする予定だ。上場後を見据えJR九州は、株主総会に備えた情報収集を3、4年前から進めてきた。いつ招集通知を発送するか、会場受け付けはどうするか−。他社の総会リハーサルを見学することもあった。上場が目前に迫った昨年は、今回の会場となる福岡市のホテルで株主総会を開催。ひな壇に約20人の役員が並び、鉄道・運輸機構の担当者に対して説明するなど、来るべき日に備えて運営などを確認した。準備は今年4月から本格化。23人の役員全員でリハーサルを3回開いたほか、質疑に対する各役員の答弁練習も実施。会場で案内などを担当する社員への教育も進めてきた。鉄道事業の合理化や九州新幹線西九州(長崎)ルートへのフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)導入、上場後に相次いだ輸送障害といった課題を抱えるJR九州。「株主の関心が高そうなところはしっかり準備をし、円滑な答弁ができるようにしている」。広報部の担当者は力を込める。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO17641000T10C17A6TJ2000/ (日経新聞 2017/6/14) JR九州、採算見込めず 長崎新幹線フリーゲージ導入断念
 JR九州は2022年度に開業予定の九州新幹線長崎ルートで、フリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)の導入を断念する方針を固めた。車体価格などコストが通常よりも約3倍になるうえ、長崎と新大阪を直通運転することもできない。昨秋に上場し、実質赤字の鉄道事業に株主から厳しい視線を向けられるなか、十分な収益を得られないと判断した。FGTは線路の幅が違う新幹線と在来線を行き来できる利便性がある一方、軌間を変換させるために特有の部品を使用することなどから車体価格が高くなる。また、部品交換のために台車の解体が必要で、保守点検も高コストだ。鉄道建設・運輸施設整備支援機構が開発し、川崎重工業と日立製作所が試験車両を製作していたが、コストは通常の車体などと比べて約3倍になるとみられる。「従前の新幹線と比べ費用がかかるという状況で、効果的な対策が出ていない」。5月、JR九州の青柳俊彦社長は定例記者会見でこのように述べ、FGTの経済性に懸念を表明していた。JR九州は長崎ルートでの採用を目指していた。博多から新鳥栖(佐賀県)まで新幹線を走り、新鳥栖から武雄温泉(同県)までは在来線。武雄温泉から長崎までは新幹線を走行する計画だ。現状では長崎と新大阪を直接結ぶこともできない。FGTについてJR西日本の来島達夫社長は「山陽新幹線への直接乗り入れは難しい」との見解を示している。FGTの最高速度は時速270キロメートル。「山陽新幹線は同300キロメートル区間で、走行性能が異なる」(来島達夫社長)ためだ。山手線や東海道新幹線のようなドル箱路線のないJR九州の17年3月期の鉄道事業は「実力では87億円の赤字」(同社)。長崎ルートの開業が収益の改善につながらなければ、株主から厳しい批判を受けかねない。加えて、安全性にも課題が残る。走行試験を始めた直後に不具合が発覚するなど開発は難航している。社内では「万が一事故が起きた際に責任を取るのは我々だ」という意見も根強い。JR九州はこうしたFGTの問題点を説明することで政府・与党や地元自治体から理解を求める考えだ。今後長崎ルートの運行方法はどうなるのか。暫定開業する22年度は、博多から武雄温泉まで在来線を特急が走り、武雄温泉で新幹線に乗り継ぐ「リレー方式」で運行することは決まっている。JR九州の青柳社長は「今夏に(実用化できると)断定できなければ、対案を示すのが国の仕事だ」と述べ、全線を通常の新幹線と同じフル規格で整備すべきだとの意向を示した。フル規格は収益性は高いが、新幹線の整備に関しては政府・与党や地元に委ねられ簡単には決まらない。このため、リレー方式による運行が長期化しそうだ。FGT導入というJR九州にとって“最悪のシナリオ”は脱することになりそうだが、鉄道事業の収支改善に道筋をつけるのはこれからだ。

*2-3:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25H80_V21C16A0000000/ (日経新聞 2016/10/25) JR九州上場、快走演出した「不動産事業」
 九州旅客鉄道(JR九州)が25日、東京証券取引所第1部に上場した。朝方から買い注文が膨らみ、取引開始から30分ほどたって付けた初値は3100円と、売り出し価格(公開価格、2600円)を19%上回る水準。ひとまずは順調な「走り出し」といえそうだが、人気の背景を探ると、少し気掛かりな点も浮かび上がる。
■営業利益でみると「不動産会社」
 「現在は運輸サービス事業と駅ビル・不動産事業の利益がそれぞれ全体の4割。しばらくの間はこの構成で成長を目指す」。青柳俊彦社長は午前中、経済専門チャンネルの番組に出演し、成長のけん引役として不動産事業への期待感を隠さなかった。JR九州は社名の通り、鉄道事業が主力ではあるが、実は不動産事業が孝行息子。九州新幹線をはじめとする鉄道事業は2017年3月期にひとまず黒字化する計画だが、営業利益でみると連結全体の4割にすぎない。残る6割のうち、4割分を稼ぐのが駅ビル不動産事業。営業利益でみれば、鉄道事業と同じ規模なのだ。JR九州はJR博多駅の駅ビル「JR博多シティ」(福岡市)や4月に開業したオフィスビル「JRJP博多ビル」(同)など駅前の不動産を活用した商業施設や賃貸用不動産を運営しており、今後も駅ビルや駅ナカを開発していく方針を示す。保有不動産の収益力を高めるというストーリーは、東日本旅客鉄道(JR東日本)や東海旅客鉄道(JR東海)が歩んできた成長路線と重なる。初値時点でのJR九州の時価総額は4960億円と1兆~3兆円に達する、他のJR3社と比べると小粒だが、割安なJR九州に投資する理由は十分にある。
■不動産マネーの「逃げ場」にも
 完全民営化で経営の自由度が高まれば、成長のけん引役である駅ビル運営で大規模投資や他社との連携などに踏み切りやすくなる。楽天証券の窪田真之氏も、「高収益の駅ビル不動産事業は、これからさらに利益を拡大する余地がある」と指摘する。JR九州株の初値は、不動産事業への「期待料込み」ともいえる。実際、日本株の運用担当者の間では、「国内外の機関投資家がJR九州の不動産事業に注目して投資しようという動きも出ていた」という。そして、もう一つのJR九州にとっての追い風も吹いたのかもしれない。日本国内の不動産に向かっていた投資マネーの変調だ。ここ数年来の不動産価格の高騰で、投資額に見合う利回りを得にくくなっており、今年1~9月の累計で海外勢や国内の事業法人は不動産をこぞって売り越した。行き場を失った不動産への投資資金が向かいやすいのは、流動性が高く、一時期に比べて過熱感が薄れた不動産投資信託(REIT)や株式。つまり、巨大な投資マネーの流れの中で、JR九州株が資金の「一時的な逃げ場」になったのかもしれない。
■初値は「追い風参考記録」か
 もっとも、期待通りの水準だった初値が「追い風参考記録」になる恐れもある。JR九州が自社で保有する不動産は九州地方が中心で、東京や東海地域の一等地に資産を持つJR東日本やJR東海とは異なるからだ。不動産市況の過熱感が想定外に強まれば、新規の案件の取得や開発にかかるコストが膨らむ。今後、九州より不動産市場が大きな首都圏、成長著しいアジア地域で不動産ビジネスを拡大したとしても、リスクは消えない。25日のJR九州株は初値に比べて178円(5.7%)安い2922円で午前の取引を終えた。シナリオ通りに不動産事業を伸ばし、JR東日本など旧国鉄民営化の成功事例に加われるだろうか。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/440538 (佐賀新聞 2017年6月24日) JR九州合理化強調 上場後初の総会
■地方廃線、株主懸念も
 JR九州は23日、昨年10月の上場後初めてとなる定時株主総会を福岡市で開いた。青柳俊彦社長は「九州外のエリアに事業進出して売り上げの拡大を目指す。徹底的なコスト削減も図りたい」と述べ、不動産など非鉄道事業で収益拡大を図る一方、合理化を推進する姿勢を強調した。株主には地方路線での廃線の動きを懸念する声もある。総会には個人株主ら987人が出席し、約1時間45分で終了。株主から不採算路線について「第三セクターへの移譲を検討してはどうか」との意見が出た。日豊線の大分-宮崎空港(213キロ)の一部列車に導入した車掌を乗せない「ワンマン特急」に関して説明を求める質問も出され、JR九州は「安全面で問題はない」と回答した。JR九州の担当者は鉄道事業に関し、効率化を図ることでネットワークを維持していくとの方針を改めて説明し、理解を求めた。フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の九州新幹線長崎ルートへの導入可否については「初夏に予定される国の専門家委員会の(耐久性などの評価に関する)判断を待ちたい」と述べるにとどめた。JR九州株を巡っては、廃線の可能性が取り沙汰されている沿線の自治体がけん制の目的で株式を取得する動きもある。日南線沿線の宮崎県串間市の担当者は総会には参加しなかったが「路線存続を求める意思表示を続けたい」と話した。

*2-5:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2500I_V20C11A2000000/ (日経新聞 2011/2/26)九州新幹線、新大阪―鹿児島中央間を最短3時間45分、空とシェア争奪
 3月12日、九州旅客鉄道(JR九州)が運行する九州新幹線鹿児島ルートが全線開業する。九州を南北に縦断して博多(福岡市)―鹿児島中央(鹿児島市)の257キロメートルを直結。同時に西日本旅客鉄道(JR西日本)が運行する山陽新幹線との相互直通運転も始まり、九州と関西の交流拡大も期待される。博多―新八代(熊本県八代市)が新たに開通、2004年に開業した新八代―鹿児島中央とあわせて全線が開業する。博多―鹿児島中央は、新幹線と在来線特急を乗り継ぐ現行に比べ所要時間を約50分短縮、最速約1時間20分で結ぶ。博多―熊本は約35分となる。列車は停車駅の数に応じて3種類。新大阪から鹿児島中央までを約4時間10分で結ぶ「さくら」は1時間に1本を運行。九州新幹線でのみ運行し、各駅に停車する「つばめ」は博多―鹿児島中央を2時間弱で結ぶ。さらに新大阪―鹿児島中央を約3時間45分で結ぶ最速列車「みずほ」を投入。途中停車駅を新神戸、岡山、広島、小倉、博多、熊本に限り所要時間を短縮。朝夕にそれぞれ2往復運行する。使用する車両は2種類。九州新幹線区間の折り返し運転に主に使うのは、すでに開業区間を「つばめ」として走る800系。山陽新幹線との相互直通運転にはN700系の改良車両を使う。正規料金は博多―鹿児島中央は1万170円(指定席利用)、新大阪―鹿児島中央が2万1300円(同、最速列車「みずほ」は300円加算)。インターネット利用による割引切符は主要区間で最大40%割引する。乗車日の3日前までしか予約、変更ができない早期割引切符「e早特」は新大阪―鹿児島中央で1万7000円、新大阪―熊本で1万4400円。博多―鹿児島中央は早割で8500円。博多―熊本の早割は正規料金より40%安い3000円。九州内のネット予約割引にはJR九州が発行するクレジットカードへの入会が必要。山陽新幹線との直通列車のネット予約割引にはJR西日本発行のカードも使える。所要時間の短縮や割引料金の設定で、9割以上が空路を利用するとされている大阪―鹿児島を筆頭に、交通機関のシェア争奪戦激化は必至。全日本空輸が3月の伊丹―熊本線を正規料金から最大1万1300円割引き、最安で九州新幹線の割引料金と同程度の1万4400円とするなど、各社は新幹線対抗策を強化している。

*2-6:http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/012600245/?rt=nocnt (日経BP 2017/1/26) Amazon.comが物流事業を拡大、海上輸送への進出本格化
 米Amazon.comが海上輸送事業への進出を本格化させていると、複数の海外メディア(米The Verge、米TechCrunchなど)が現地時間2017年1月25日、米Wall Street Journalの記事を引用して報じた。同社はすでに、中国の小売業者がAmazon.comのeコマースサイトで販売する商品の米国への海上輸送を始めている。こうした輸送事業はこれまで米UPSや米FedExなどが手がていたが、Amazon.comは今後これらの企業と直接競争することになり、自前の物流事業構築計画をさらに一歩前進させることになるとWall Street Journalは伝えている。英Reutersによると、Amazon.comは2015年に「Beijing Century Joyo Courier Service」と呼ぶ中国子会社を、非船舶運航業者(フォワーダー)として中国運輸省に登録した。これは自ら輸送船を保有しないが、通関や書類手続きなどを行って貨物輸送を取り扱う業者。Amazon.comはこれにより、中国から同国外への海上貨物輸送業務が可能になった。今回のWall Street Journalの報道によると、2016年10月以降、同社が取り扱った中国からの海上輸送コンテナ数は150超に上る。今月には、前述の中国子会社が、仕分けや貨物追跡といった業務についての料金を公開したという。なお、Amazon.comは約1年前に、同社の倉庫など米国における施設間で商品を輸送するために、自社ブランドのトラックを大規模導入すると発表した(関連記事:Amazon.comが数千台の輸送トラック導入 配送を効率化)。2016年8月には、「Amazon One」と呼ぶ自社ブランドの貨物航空機を利用した輸送業務を始めたことも明らかにしている(関連記事:Amazon.com、自前の貨物航空機の運航開始)。こうして同社はこれまで外部委託していた物流の中間業務を自社で手がけ、輸送業務の拡大とコスト削減を図っているとTechCrunchは伝えている。

*2-7:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS17H6H_Y6A610C1NN1000/ (日経新聞 2016/6/18) ふるさと納税寄付額の4割が返礼品経費に
 個人が故郷や好きな自治体に寄付できる「ふるさと納税」で、寄付額の4割が返礼品の費用に使われていることが総務省の調べで分かった。広報などの経費も含めると、地方の活性化に活用できるのは半分程度になる。寄付額が全国最多の宮崎県都城市や長野県飯山市では返礼品の費用が7割超だった。同省が全国の自治体から2015年度に受け取った寄付額と返礼品の費用などを聞き取った。寄付額が全国合計で1652億円だったのに対して「返礼品の調達費」に632億円、「返礼品の送付費」に42億円かけた。返礼品は地元の肉や魚といった特産物が多い。自治体にとって寄付してもらう動機づけになるほか、地元のPRにもつながる。全国最高の42億円の寄付があった都城市は肉と焼酎が人気で、返礼品経費は31億円だった。飯山市は寄付額17億円に対して12億円を返礼品に使った。高額な返礼品が増えたため、総務省は4月、高額だったり寄付額に対して経費がかかり過ぎたりしている返礼品の自粛を自治体に要請。これを受け、7自治体が返礼の取りやめや価格を下げることにした。自治体間の行き過ぎた競争につながりやすい返礼品の価格や寄付額に対する価格割合の表示をやめることにした自治体も33あった。高市早苗総務相は「(返礼品の費用は)基準を決めてこちらから指導するようなものではない」として自治体側の対応を見守る考えを示している。

<合併後の戦略>
*3:http://qbiz.jp/article/112722/1/ (西日本新聞 2017年6月24日) 余力400人超「新事業に」 十八銀頭取、統合意義を強調 株主総会
 10月にふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)との経営統合を目指す十八銀行(長崎市)の株主総会が23日、本店であった。森拓二郎頭取は、親和銀行(長崎県佐世保市)との合併に伴う店舗統廃合や業務の効率化で計400〜500人の余剰人員が生じると説明。余力を地域活性化や新規事業に振り向けるとし、統合の意義を強調した。現在の行員数は十八銀が約1400人、親和銀が約1200人。合併後、2割弱が余剰になる計算。総会は非公開で約250人が出席。十八銀によると、森頭取は「スケジュール通りの統合を目指す」と語ったという。一方で株主から「選択肢として白紙撤回もあるのでは」との意見が出たほか、貸出金シェア引き下げに向けた債権譲渡に関する質問が複数あったという。総会後、長崎市内の男性株主(65)は「人口が減る中で統合する理由は分かるが、本当に実現するのだろうか」と話した。

<大都市の街づくりについて>
PS(2017年7月4日追加):東京のマンションは、容積率を上げれば階数を2倍以上に増やすことができたり、古いマンションは、容積率以下の上、建築後に建築基準法が変わっていたりするため、*4は、周囲の低層建築も巻き込みながら、階数を増やして建て替え、緑の多いマンションと住宅地に変えるのがよいと思われる。その場合、ハードを整えるだけでなく、希望する人は家事や介護のサービスを受けられるマンションにすると、高齢者・独身者・共働き世帯・学生など、多くの世代のニーズを満たすマンションにできると思うが、それを実現するためには、あらかじめ東京都知事のところへ行って、東京の都市計画・容積率緩和・介護等の社会保障に関して意思疎通しておくのがよいだろう。 

*4:http://qbiz.jp/article/113428/1/ (西日本新聞 2017年7月4日) JR九州が東京でマンションを取得 賃貸用12階建て
 JR九州は、東京都北区東十条の賃貸マンションを6月1日付で取得したと発表した。取得額は非公表。同社は収益拡大に向けて積極的に不動産事業を展開しており、東京で保有するオフィスやホテルなどの事業用不動産は7件目となる。取得した「東十条マンション」はJR京浜東北線の東十条駅近くで、地上12階建て。全182戸のうち約9割が入居しており、リニューアルするか建て替えるか検討していくという。

<農協監査について>
PS(2017年7月5日追加): *5のように、農協法の改正に伴ってJAに公認会計士監査が義務付けられ、JA全中の監査部門であるJA全国監査機構が行っていた監査を公認会計士監査に移行するのに伴い、JAを中心に監査を行う「みのり監査法人」が業務を開始して会計士を50人規模に増やすことにしたのは一歩前進だ。
 しかし、「農協監査士は、独立性を確保し、都道府県中央会などから転籍・出向する」と書かれているのは、出向してきた人は独立性を持てず、農協しか監査したことのない人は農協の特殊な遅れに気付かないため間違いであり、今後は農協の監査しか経験していない農協監査士は必要ないと言わざるを得ない。何故なら、製造業や金融関係の監査をしている公認会計士も、最初は全業種の監査を経験し、できれば外国企業の監査も経験した上で、その業種の監査に長く従事して詳しくなっているので、その業種に詳しいだけでなく、業種間比較や連携が容易だからだ。さらに、農学部卒はじめ理系の人や経営学修士(MBA)である公認会計士も少なくない。
 なお、日本は、資格を細かく分けて狭い範囲のことしかできない人材を作りたがる国だが、その職に就いた人にとっては時代が変われば努力して得た資格と人生を台無しにされ、視野の狭い人材ができ、人材の無駄使いも多いため、このやり方は生産年齢人口の少ない時代に適さない。

*5:https://www.agrinews.co.jp/p41280.html?page=1 (日本農業新聞 2017年7月4日) 「みのり法人」始動 JAの公認会計士監査対応
 農協法の改正に伴いJAに公認会計士監査が義務付けられたことを受け、JAを中心に監査を行う「みのり監査法人」が3日、業務を開始した。会計士と農協監査士が連携し、JA事業に精通した監査を実施。公認会計士監査に完全移行する2019年度までに会計士を50人規模に増やし、全国のJA監査の受け皿になることを目指す。みのり監査法人が同日、発表した。16年4月施行の改正農協法で、貯金量200億円以上のJAなどに、公認会計士か監査法人の監査を義務付けた。従来、JA全中の監査部門・JA全国監査機構が行っていたが19年9月までに公認会計士監査に移行する。15年2月に政府・与党が決めた「農協改革の法制度の骨格」では「全国監査機構を外だしして、公認会計士法に基づく監査法人を新設」するとしていた。同法に沿って、みのり監査法人は、全国監査機構でJA監査に従事した経験のある会計士ら17人が6月30日に設立。あずさ監査法人出身の大森一幸氏が理事長に就任し、3日に業務を始めた。JAや連合会を顧客の中心と想定し、会計士と農協監査士がチームを組んで監査に当たり、JA事業に詳しいのが特徴だ。農協監査士は、独立性を確保し、都道府県中央会などから転籍・出向する。全中は、今後も農協監査士の資格試験を継続するという。ただ、実際にJAなどを監査するのは、JAが公認会計士監査制度に完全に移行する19年度からとする。それまでは、公認会計士監査に円滑に移行できるよう、全国監査機構による監査に帯同するなどしてJAの内部統制の整備を支援する。内部統制が不十分だと監査時間が増し、費用が膨らむためだ。一方、同監査法人の会計士は全国監査機構への出向などでJA監査の経験を積む。現在、監査の対象となるJAや連合会は全国に600超ある。JAは他の監査法人も選べるが、同監査法人は19年度までに会計士を50人程度に増やし、全JAを担当できる体制を整える方針だ。これらを踏まえ、全中は今後、必要な農協監査士の人数や、都道府県中央会による業務監査の在り方などを検討していく。

<農業の競争力強化について>
PS(2017年7月6日追加):*6-1のように、JA全中の次期会長にJA和歌山中央会会長である中家氏が当選したのは尤もで、その理由は、和歌山県は米だけでなく、他の農産品でも実績を挙げている県だからだ。JAは現在、農家の所得向上や地域活性化に向けて自己改革を進めており、全中は、2019年9月末までに一般社団法人に移行して、中家氏には変革期のJAグループを導くリーダーシップが求められるそうだが、変革の課題は、①農家の高齢化と担い手不足は農業所得が労働と比較して低いこと ②EUとの経済連携協定(EPA)など、農産物市場開放に堪える農業にするためには生産性と付加価値(安全性を含む)の高い農業経営を行わなければならないこと に尽きる。そのため、農業には、国会議員・大学教授・官僚のような経営の素人ではなく、優秀な経営コンサルティングが必要であり、経営戦略・中長期事業戦略・成長戦略ならアクセンチュアやマッキンゼーのような世界的なコンサルティング会社に、世界のBest Practiceを調べてもらい、自らも視察に出掛けて、日本の得意技を織り込みながら、世界で勝てる農業を創るしかないと考える。
 なお、*6-2のように、農業は殆どが家族経営であるため女性の参画は50%以上だが、認定農業者に占める女性割合は低く、農業委員に占める女性割合7.4%(2015年10月現在)、JA役員に占める女性割合6.8%(2015年3月末現在)など、10%以下である。私は、海外の優良経営体や市場・スーパー・デパートの食品売り場などに出ている農産物の種類・価格を見れば、女性がピンとくるものも多いため、しばらくは農閑期に、(温泉ではなく)出荷している農産物や気候が近い優良な国に、地域農協でまとまって視察に行ったらどうかと考える。

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p41294.html (日本農業新聞 2017年7月6日) 全中会長に中家氏 「自己改革やり遂げる」
 JA全中の次期会長に5日、JA和歌山中央会会長の中家徹氏(67)が内定した。選挙の結果、JA東京中央会会長の須藤正敏氏(69)を抑えて当選した。任期は3年で8月10日の臨時総会を経て正式に就任する。中家氏は記者会見で「JAグループの自己改革をやり遂げる」と強調。農業者の所得増大に全力を上げる決意を示した。会長選は現任の奥野長衛氏(70)の任期満了に伴うもので、中家氏は前回の2015年に続き2回目の出馬となった。JA組合長ら全中代議員(定数251人)が6月22日から郵送で投票。締め切りの5日に即日開票し、有効票総数240票のうち中家氏が152票、須藤氏が88票を得た。結果を受け、全中の役員推薦会議が中家氏を次期会長候補として推薦することに決めた。和歌山市の和歌山県JAビルで5日に開いた記者会見で中家氏は、奥野氏の路線を基本的に継承する方針を示した上で、「自己改革の一丁目一番地は農業者の所得増大」と強調。「農家や地域の方々からなくてはならないと言われる組織を目指す」と述べた。政府・与党の農業・農協改革などには、是々非々で対応していく考えを示した。また大枠合意の可能性が高まっている欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉について、「酪農家を守るのはわれわれの使命だが、今の状況では推移を見守るしかない」と述べた。選挙戦で消費者との連携を強調してきた須藤氏も同日、東京・大手町のJAビルで会見し、「立候補には意味があった。中家会長を中心に、JAグループとして(自己改革の実践などを)しっかりやっていかなければならない」と述べた。JAグループは現在、農家の所得向上や地域活性化に向けた自己改革を進める。全中は、中家氏の任期中の19年9月末までに一般社団法人に移行する。中家氏には、変革期にあるJAグループを束ね、導くリーダーシップが求められる。農家の高齢化や担い手不足、農産物の市場開放といった内外の農政課題への対応も待ったなしだ。一方で安倍政権の農業・農協改革には、生産現場の不信感も根強い。政府・与党に是々非々で臨み、日本農業の持続的発展に向けた提言をしていくことも必要となる。全中は28日の理事会で役員選任議案を決める。8月10日の臨時総会で新体制が正式に発足する。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p39934.html?page=1 (日本農業新聞 2017年1月17日) 女性認定農業者が増 農委7.4%、JA役員6.8% 内閣府調査
 女性の認定農業者が3年連続で増えていることが、内閣府男女共同参画局が16日に発表した「政策・方針決定過程への女性の参画状況」で分かった。2015年3月末時点で1万812人と前年より441人増え、12年から年間400人以上増え続けている。農業委員やJA役員に占める割合も向上しており、女性の活躍の場が広がっている。認定農業者は、農業経営改善計画を申請、認定されなければならない。同計画が認定された農業者のうち女性の単独申請と夫婦による共同申請から女性の人数を算出した。女性の単独申請は5950件と449件増加。一方、夫婦による共同申請は4862件と8件減少した。農水省経営政策課は「農業女子プロジェクトなどで女性の活躍を後押しする取り組みがある中でじわじわと増えてきている」とみる。認定農業者に占める女性の割合は、担い手としての女性の活躍や、農業経営への女性の関与状況の指標となる。第4次男女共同参画基本計画でも、男女共同参画社会の形成の状況を把握する上で重要な指標としている。また、農業委員の過半を認定農業者としなければならなくなり、女性登用を進める上でも女性の認定農業者を増やしていく必要がある。同課は「農業就業人口のおよそ半数を女性が占める中、認定農業者となり積極的に経営に関わる女性が増えていくことは大切」と強調する。男女共同参画基本計画の成果目標である農業委員に占める女性の割合は7.4%(15年10月時点、前年比0.1ポイント増)、JA役員に占める女性の割合は6.8%(15年3月末時点、前年比0.7ポイント増)と改善した。ただ、指導的地位に占める女性の割合を表す指標である女性の指導農業士等は6405人(16年3月末時点)と390人減少した。女性の占める割合は30.6と1.4ポイント減少した。

<経産省のお馬鹿な政策>
PS(2017年7月6、7日追加):*7-1のように、経産省は、馬鹿の一つ覚えのように「自由貿易」「自動車」と言ってはTPPやEPAを進め、「交渉が難航したのは欧州産チーズと日本産乗用車で、日本車にかける関税を協定発効後7年かけて撤廃する方針」などと、いつまでも日本車に競争力があるかのようなことを言っているが、7年後に物価と賃金の高い日本で製造された車が欧州に輸出されているわけがなく、日本は輸入だけ増えて輸出は減っているだろう。
 何故なら、太陽光発電やEVは、(私の提案で)1995年頃から世界で最初に日本が手をつけていたのだが、経産省や産業界が変なことばかり言って逆噴射したため、*7-2のように、ボルボが2019年以降に発売するすべての車を電動車にすると発表し、*7-4のように、独ダイムラーが中国の北京汽車集団と中国でEV生産するため50億元(約835億円)を投資する発表し、*7-5のように、テスラがEV・太陽光・安い蓄電池のセット売りで日本に攻勢をかけているのに、日本ではまだ、*7-3のように「ガソリン車に必要な部品が約3万個とすればEVでは約1万8900個ですむので、(20年経っても)急激な事業構造の転換はできない」などと言っており、日本車は高くてうるさく排気ガスの出る環境に悪い車になるからである。
 そして、このような状況では、日本車を輸出するどころか、日本人も中国製のベンツやテスラを買う時代になって日本車に競争力がなくなる日は近く、リーダーが馬鹿で方針を間違うと大きな負の影響があるということで、家電も輸出どころではなくなっているだろう。
 なお、*7-6のように、フランスは、「パリ協定」の目標達成に向けてCO2排出削減計画を発表し、その柱の一つに2040年までのガソリン車・ディーゼル車などのCO2排出車の販売禁止方針を明らかにしたそうだが、これはオランダやノルウェーなどの欧州各国に広がりつつあり、都市の空気をきれいにする。また、インドも2030年までに販売する車をすべてEVにする計画で、これらによってEVの購入コストがガソリン車より安く、デザインも豊富になるのは、部品の数と仕組から考えて当然だ。また、EVを含めた再生可能エネルギーによる分散発電も進むと思われる。日本には、大量の燃料を輸入して多額の燃料費を外国に支払いながら、消費税率を引き上げるのが財政健全化策だと主張している人が多いが、これらの人々は消費税率引き上げを自己目的化しているとともに、思考停止が甚だしいのである。

   
   2017.7.6      2017.7.6    2017.7.6       2017.7.6   
   読売新聞       毎日新聞     日経新聞        日経新聞

(図の説明:日本は乗用車・家電の輸出を増やすために食品を犠牲にしているが、これは1980~90年代の新興国が十分に工業化されていなかった時代のスキームだ。今後は、世界では食品が不足し、エネルギーに化石燃料は使わなくなるのだが、このように何十年も止まったままのカビが生えたような古い発想しかできないのが、日本の行政の致命的欠陥なのである)

*7-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170706&ng=DGKKZO18529550W7A700C1MM8000 (日経新聞 2017.7.6) 日欧EPA、閣僚級協議で大枠合意、首脳きょう宣言
 日本政府と欧州連合(EU)は経済連携協定(EPA)交渉の大枠合意を6日の首脳協議で宣言すると決めた。岸田文雄外相は5日午後(日本時間同日夜)、訪問先のブリュッセルでマルムストローム欧州委員(通商担当)との協議後、「閣僚間で大枠合意の達成を確認できた」と表明した。日欧間で関税がなくなる品目は全体の95%超に達する見込み。世界の経済・貿易の3割を占める大経済圏が誕生する。大枠合意した内容は、6日の安倍晋三首相とトゥスクEU大統領との首脳協議で正式に決める。EU高官は「最終的な合意には数カ月かかる」と語り、今回の大枠合意で詰めきれなかった部分を含めた最終合意は、年内に実現できるとの見通しを示した。首相は5日の欧州歴訪出発前に「日欧EPAはアベノミクスの重要な柱だ」と強調。日欧EPAの大枠合意をテコに、米国を除く11カ国での環太平洋経済連携協定(TPP)の発効を目指す「TPP11」の交渉進展にもつなげたい考えだ。欧州側も7日から独ハンブルクで始まる20カ国・地域(G20)首脳会議を前に、自由貿易を重視する姿勢を強調するため大枠合意を急いでいた。岸田氏は協議後、記者団に「大枠合意によって保護主義的な動きのなかで世界に前向きで大きなメッセージを送ることができる」と意義を強調した。「日・EUが世界に範を示すに足る内容だと自負している」とも述べ、日欧が自由貿易を主導していく考えを示した。大枠合意の内容は首脳協議後まで明らかにされない。これまでの交渉で日欧が貿易品目の95%超で関税を撤廃することになった。これはTPPと同程度の自由化水準だ。関税撤廃する品目のうち、交渉が難航したのは欧州産チーズと日本産乗用車の扱いだったが閣僚級協議でメドがついた。欧州側が市場開放を求めたチーズは、日本側が欧州産チーズに低関税で輸入する新たな枠を設け、枠内の税率を15年かけてゼロにする見通し。欧州側は、日本車にかける関税(最高10%)を協定発効後7年かけて撤廃する方針となった。このほか、日本側は欧州産ワインにかかる関税(ボトルワイン1本で約93円)を即時撤廃する方針。欧州産の豚肉やパスタ、木材などの関税も削減・撤廃でほぼ決着し、欧州側も日本産の緑茶・日本酒にかける関税を即時撤廃する。大枠合意後も、引き続き日欧間で協議を続け、年内には最終合意する方向。協定が発効すれば日本の消費者にとっては欧州産ワインやパスタ、チョコレートを今よりも安く買えるようになる。一方、日本から欧州には自動車や日本酒を売りやすくなる。

*7-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170706&ng=DGKKASDZ05IDT_V00C17A7TI1000 (日経新聞 2017.7.6) ボルボ、全車種電動に 有力メーカー初、19年、環境対応でEV・ハイブリッド集中
 スウェーデンの高級車メーカー、ボルボ・カーは5日、2019年以降に発売するすべての車を電気自動車(EV)やハイブリッド車などの電動車にすると発表した。世界中で厳しさを増す環境規制や消費者ニーズの変化に応える。世界の自動車大手が進めるガソリンやディーゼルなど既存エンジンの搭載車からEVなどへの移行がさらに加速しそうだ。ボルボ・カーのホーカン・サムエルソン最高経営責任者(CEO)は声明で「(ガソリンやディーゼルなどの)内燃機関の時代の終わりを意味する」と述べた。有力自動車メーカーで、長期目標を除いて「脱内燃機関」を表明したのはボルボ・カーが初めて。5日の記者会見で同CEOは「ボルボ・カーにとって非常に重大な決断であり、戦略的な転換」と強調した。25年までに電動車両を累計で100万台販売する計画。16年の世界販売台数は53万台。既存のエンジンを搭載しない純粋なEVは、19~21年までに5車種を発売する。EVや家庭などで充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)、バッテリーとモーターを補助に使う「マイルドハイブリッド」と呼ばれるタイプなどすべての品ぞろえを構成する。価格は高級車と同水準になるが「ディーゼル車とは勝負になるレベル」という。サムエルソンCEOは「電動車両へのニーズは強い。消費者の現在と将来の需要に応える必要がある」と強調した。背景にあるのは米テスラの台頭だ。ドイツでは1~6月の販売台数は前年同期の約2.4倍。月末からは400万円程度の廉価版EVの納車を始める。ボルボ・カーは対抗策として6月、傘下の高性能車部門「ポールスター」をEV専用ブランドとして立ち上げると発表。21年までに投入する5車種のうちポールスターのEVは2車種含まれる。EVのネックとされていた航続距離が短いという課題は、電池技術の進化でクリアされつつある。価格面でも18年に欧州でのEV保有コストはディーゼル車と並ぶとスイス金融大手UBSが試算している。充電インフラ不足という課題は残るが、数年前に業界で予測されていたより早く普及の条件はそろいそうだ。すでに最大のEV市場となっている中国の攻略も狙いの一つだ。ボルボ・カーは現在は商用車主体のボルボから分離され、米フォード・モーターによる買収を経て10年に中国の浙江吉利控股集団の傘下に入っている。中国は近く「NEV規制」と呼ばれる規制を導入する。EVやPHVの市場は急拡大するとみられ、親会社と連携して中国での販売拡大を狙う。フォルクスワーゲン(VW)やダイムラー、BMWの独大手3社も、25年に販売台数の最大25%をEVなどの電動車両にする計画を掲げる。ただ、独大手の現在の事業の柱はディーゼル。EVへの移行はエンジンや変速機をつくる工場の雇用問題に直結するため、急激な移行は難しい。

*7-3:http://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20170706&c=DM1&d=0&nbm=DGKKASDZ05IDT_V00C17A7TI1000&ng=DGKKZO18527410V00C17A7TI1000&ue=DTI1000 (日経新聞 2017.7.6) 大手、構造転換に時間 部品産業への影響懸念
 日欧米の自動車大手は動力機構について、当面は全方位で開発を進める。トヨタ自動車は2050年をめどにエンジン車をほぼゼロに、ホンダは30年に3分の2をハイブリッド車(HV)を含む電動車に置き換える構想を描くが、ボルボ・カーと比べると転換のペースは遅い。構造転換に二の足を踏む背景には産業の裾野の広さがある。経済産業省はガソリン車に必要な部品点数が約3万個としたときに電気自動車(EV)では約4割の部品が不要となり、約1万8900個で構成すると試算する。トヨタやホンダでは「ティア1」と呼ばれ自動車メーカーと直接取引する1次部品メーカーが数百社にのぼるとみられる。急激な事業構造の転換が部品メーカーの収益に与える影響は大きい。エンジン部品を手掛ける大手メーカー首脳も「自動車分野に限らず新たな収益源を育成しなくてはならない」と身構える。トヨタやホンダなどは燃料電池車(FCV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、HV車などの開発も進める。新興国市場での展開などを踏まえると、幅広い動力機構を持つことも成長につながるためだ。独フォルクスワーゲン(VW)は今後5年間に電動化技術に90億ユーロ(1兆1000億円)を投じ、25年のEV比率を20~25%にする計画。米ゼネラル・モーターズ(GM)もEVを投入しているが世界販売における電動化比率など中長期的な目標は明示していない。

*7-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170706&ng=DGKKASDZ05IBS_V00C17A7TI1000 (日経新聞 2017.7.6) EV中国生産へ800億円投資 ダイムラーと北京汽車
 独ダイムラーは5日、中国国有自動車大手の北京汽車集団と共同で中国で電気自動車(EV)を生産するため50億元(約835億円)を投資すると発表した。このうち数百億円規模をEVの肝となる電池の工場建設にあてる。世界に先駆けてEV市場の拡大が見込まれる中国で、存在感を高める狙いだ。高級車「メルセデス・ベンツ」を生産する合弁会社、北京ベンツで2020年までにEV生産を始める。ダイムラーがドイツ国外に電池工場を造るのは初めて。研究開発のための施設も用意する。

*7-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170706&ng=DGKKASDZ05HU0_V00C17A7TI1000 (日経新聞 2017.7.6) 太陽光再生、起点はテスラ 売電偏重、市場にゆがみ
 太陽光発電の国内最大級の見本市「PV Japan」が5日、横浜市内で開幕した。目玉の一つが米テスラの出展だ。日本の太陽光市場は固定価格買い取り制度の機能不全で低迷が続く。自動車のほかエネルギー分野でも世界の産業秩序を壊しつつあるテスラの上陸は、日本市場再生の起爆剤になるか。
太陽光パネルが立ち並ぶ見本市会場のど真ん中。電気自動車(EV)が置かれたテスラのブースには終日、人だかりができていた。ブースを訪れた大手電機メーカーの担当者が驚いたのはテスラが提示した家庭用蓄電池の価格だ。販売時期は未定だが、予定価格は約70万円。国内で現在普及する製品の4分の1の水準になる。住宅などの屋根に取り付けた太陽光発電が機能するのは日中のみ。雨の日や夜間に家庭の電力を賄うには蓄電池が欠かせない。テスラの説明員は「太陽光発電を自家消費や地産地消のために使う動きが日本でも始まる」と話した。米国ではエネルギー分野でもテスラの存在感が高まっている。昨年は太陽光パネルメーカーのソーラーシティを買収。EVと太陽光、蓄電池のセット売りで攻勢をかける。太陽光や蓄電池は環境意識の高いユーザーが多い点でEVに近い商品だ。EVの本格普及後に、充電の時間帯が集中し電力不足を引き起こすリスクも蓄電池があれば緩和できる。3つの商品をEVの販売店で直販するのもテスラの特徴。機器の設置工事はソーラーシティの社員が担当する。無駄なコストを徹底して省き、蓄電池の価格を米国の競合品と比べ半分以下に抑えた。デザインにこだわった太陽光パネルは投資回収に約10年かかる価格設定ながら、予約が殺到し今注文しても納入は来年以降という。一方、日本市場は個人の需要がけん引する米国とまったく違う景色になっている。その原因が2012年に始まった太陽光による電力を一定価格で買い取る制度。高い価格が設定され、売電目当てのメガソーラーが急増した。パネルの市場は急拡大したが、一般家庭や工場、ビルの自家消費向けの需要の開拓が遅れるゆがみが生じた。その後、制度への批判が高まり買い取り価格が下落。発電所の設置基準も厳しくなり、市場は一気に冷え込んだ。16年は米国や中国、欧州など世界の主要国が軒並み成長するなか日本だけが前年割れ。太陽光発電協会の増川武昭事務局長は「20年ぐらいまで下降トレンドは続く」と話す。世界を追いかけるには政策頼みでない地道な需要の開拓が欠かせない。見本市では三菱電機が自家消費用にEVの蓄電池を使うシステムを提案。京セラは太陽光で発電した電気の需給を効率的に調整するシステムを展示した。テスラが運営する日本の店舗は東京、大阪など6カ所のみ。蓄電池や太陽光の販売を広げるにはまだ手薄な体制だ。しかしテスラが本気で開拓に乗り出せば市場の再生にも弾みが付く。そのためにも買い取り制度に依存しない市場環境の構築を急ぐ必要がある。

*7-6:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ07HHP_X00C17A7000000/?n_cid=NMAIL002 (日経新聞 2017/7/7)フランス、EV社会へ大転換 ガソリン車禁止の余波
 フランス政府が6日、2040年までに国内のガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を明らかにした。自国に世界大手のメーカーを抱える国が、ガソリン車禁止を明確に打ち出したのは初めて。実はフランスに似た動きは欧州やアジアでも相次ぐ。同日には40年時点で全世界の新車販売に占める電気自動車(EV)比率が5割を超えるとの予測も出た。電動化の流れが一段と加速する。
■G20直前、マクロン流のエコアピール
 仏のユロ・エコロジー相が6日に記者会見し、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の目標達成に向けた、二酸化炭素(CO2)排出削減の計画を発表した。柱の一つが、40年までのガソリン車など走行時にCO2を排出する車の販売禁止。さらに22年までに予定する石炭火力発電所の停止なども着実に進め、50年までに国全体のCO2排出量を差し引きゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すという。7日からはドイツで20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれる。マクロン仏大統領は就任以降、パリ協定からの離脱表明や保護主義的な主張を続けるトランプ米大統領に対抗し、メディアを意識し情報発信をしてきた。トランプ氏も参加するG20を前にした、「マクロン流」の広報戦略の一環とみるのが自然だ。産業界への影響は大きい。フランスはルノーとグループPSAの二大メーカーが本社を置き、トヨタ自動車や独ダイムラーも工場を構える。16年の乗用車販売台数は約200万台と、ドイツ、英国に次ぐ欧州第3の規模だ。仏自動車工業会(CCFA)によると、自動車産業に従事するのは約20万人、関連産業も含めると約230万人に達する。フランスは欧州ではEV普及に熱心なことで知られるが、限界がある。17年上半期の新車販売ではガソリン車・ディーゼル車が95.2%を占めた。ハイブリッド車(HV)は3.5%、EVは1.2%にとどまるのが実情だ。ルノーのEV「ゾエ」は欧州市場のEV販売ランキングで常に上位に位置する。だが、市場全体に占める存在感は小さく、収益貢献もまだ先だ。ユロ氏も、国内自動車メーカーなどへの影響は「厳しい」と認めた。同時に、国内メーカーは他社に先駆け変革をすることができると期待を示した。仏政府はルノーとPSAの大株主で、官民連携で戦略転換を進めやすい面はある。
■各国に広がるガソリン車販売禁止
 欧州ではCO2排出抑制と、都市部の大気汚染対策の両面からディーゼル車などへの逆風は強まる。オランダやノルウェーでは、25年までにガソリンやディーゼルを燃料にする内燃機関の車の販売を禁止する動きがある。ドイツも同様のうねりがある。連邦参議院(上院)は昨秋、30年までにガソリン車などの車の販売を禁止する決議を採択した。連邦議会(下院)で法案が成立したわけではなく、ドブリント運輸相も決議を「非現実的」と評した。決議に拘束力はないが、欧州最大の自動車大国でさえこうした議論が公にされるのが現実だ。アジアにもこの波は及ぶ。代表がドイツを抜き世界4位の自動車市場になったインド。ゴヤル電力・石炭・再生可能エネルギー相は4月、「30年までに販売する車をすべてEVにする」と野心的な計画を表明した。EVに一気にシフトして自国産業を育成しようという狙いで、中国でも似た政策が打ち出されている。メーカー側の動きも急だ。米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は2日、初の量販EV「モデル3」の納車を今月末から始めると表明。ボルボ・カー(スウェーデン)は5日、19年以降に販売するすべての車をEVかHVにすると発表した。すでにルノーは充電1回の航続距離を400キロメートル(欧州基準)に伸ばしたEVを発売。18年には独フォルクスワーゲン(VW)傘下の独アウディと独ポルシェが500キロメートルを走れるEVを投入する予定だ。
■「20年代後半、ガソリン車より安く」
 調査会社のブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス(BNEF)は6日、40年時点の世界の乗用車販売に占めるEV比率は54%に達するとの見通しを発表した。従来予想の35%から大幅な上方修正だ。新たな予測では20年時点のEVは全体の3%、25年では8%。その間に電池価格の下落と容量の増加が進み、「25~29年までにはEVの販売価格が内燃機関の車より安くなる」とみる。5月にはスイス金融大手UBSが、欧州では18年時点でEVを購入した場合のトータルコストが、ガソリン車と対等になるとのリポートを出し、業界で話題を呼んだ。ただ、これはEVを最後まで乗っての計算。BNEFの予測では、20年代後半にEVを店頭で買う時点から競争力を持ち、普及のハードルが一段と低くなる。BNEFは市場別の40年の新車販売のEV比率も公表し、欧州が約67%、米国58%、中国51%の見通し。「早くEV採用を進めた国は40年にはリーダーになる」と指摘し、具体的にノルウェー、フランス、英国の名前を挙げた。40年には世界の路上を走る車の33%がEVになるという。同社シニアアナリストのサリム・モーシー氏は「EVは確実に力強く成長するが、世界規模でさらに多くの充電インフラ投資が必要になる」と指摘する。EV充電の用途もにらんだ、再生可能エネルギーなど分散型電源の整備など関連投資の動きも活発になりそうだ。


<人口減少時代の労働力―農業の事例から>
PS(2017年7月10日追加):*8のように、農業分野の労働力不足を解決するために、沖縄県は国家戦略特区制度に基づき人材派遣業者と雇用契約を結んだ外国人労働者の受け入れを検討しているそうだが、これは沖縄県や農業だけの問題ではないため、日本全国で解禁すべきだろう。そうすれば、外国人労働者も日本人労働者と同様の柔軟な労働条件で働くことが可能となり、農林漁業の人手不足を緩和して生産拡大に繋げることができる。また、労働にも難しさのさまざまなレベルがあるため、雇用対象となる外国人は、その仕事ができる人を派遣してもらえばよく、技能実習制度で2年以上現場実習したことを要件にする必要はないと思われる。

*8:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-531175.html (琉球新報 2017年7月9日) 経済:農業に外国人就労、県が検討 人手不足解消図る 国家戦略特区活用 
 沖縄県内農業分野で労働力不足が課題となっていることを受け、県が国家戦略特区制度に基づいて外国人労働者の受け入れを検討していることが8日までに分かった。農業を学ぶ技能実習生として外国人を受け入れる従来の制度に比べて作業内容に制限がなく、農閑期には一時帰国もできる。植え付けや収穫期など人手が必要な時期に限った雇用が可能となり、農家の負担軽減や農業生産の拡大につながることが期待される。外国人労働者の農業就労を認める制度は、6月に国家戦略特区法が改正されて導入が決まった。作物は指定せず、繁忙期のキクやサトウキビを想定する。外国人労働者は「特定機関」の認定を受けた人材派遣業者と雇用契約を結び、高齢化や大規模化により労働力を必要とする農家に派遣される。農家が直接雇用していた「技能実習生」制度と比べ、複数の農家で働くことが可能になる。できる農作業の制限がなくなるほか、農作物の加工、販売もできるようになる。雇用対象となる外国人は、技能実習制度で2年以上現場で実習した「技能実習2号」の修了者らを対象にする見通しで、即戦力として働くことが期待される。沖縄は2014年に国家戦略特区に指定されており、観光分野や区域限定保育士事業など4件で活用している。農業分野で労働者を受け入れるには、新たに区域計画案を策定して国に申請する必要がある。現在、国は9月末までの改正法施行を目指し、細かな受け入れ条件を定めた政令や指針を定めている最中だ。県民の雇用に影響が出ることや、外国人が失踪するなどの事態も考えられる。農水部は労働政策を所管する商工労働部や、県警とも協議を進めていく考えだ。県農林水産部の島尻勝広部長は「外国人の就労解禁は関係機関からも要望が寄せられている。関係機関と連携を取って有効に活用したい」と語った。

<先が見えない日本のリーダー>
PS(2017年7月11日追加):東芝がウェスティングハウス(WH)の買収で大きな損害を受けたにもかかわらず、今度は三菱重工が経営不振に陥った原子炉製造会社「アレバNP」の買収に15%出資し、出資比率を最大で19.5%に上げるそうだ。ここまでくると、日本企業(特に重電会社)の経営者は先が見えず、ハイリスク・ローリターンの事業に大金を出し、経営方針に社会貢献や安全運転という哲学がなく、大損ばかりして地球上から消えていくため、困ったものである。

*9:http://qbiz.jp/article/113980/1/ (西日本新聞 2017年7月11日) 三菱重、最大19・5%出資 仏原子炉製造会社
 フランス電力は10日、同国の原子炉製造会社「アレバNP」の買収に三菱重工業と地元のエンジニア大手アシステムが参加すると発表した。三菱重工は15%出資し、出資比率は最大19・5%に上がる可能性があると説明した。アレバNPはフランス原子力大手アレバの子会社。アレバが経営不振に陥ったため、フランス電力が救済する。アシステムは5%を出資する。フランス電力は昨年11月、アレバNPの全株取得額は25億ユーロ(約3250億円)となり、51〜75%を出資すると公表していた。一連の出資手続きは年内に終えることを目指す。買収後の社名は「ニューNP」となる。

<新しい技術の障害を突破できない日本企業>
PS(2017年7月13日追加):燃料電池車は水素を燃料とするため、①走行時に水しか出ず、排気ガスによる公害がない ②再生可能エネルギーで水を電気分解すれば、エネルギーの100%自給が日本でも可能である のに、輸入した化石燃料から水素を作ろうなどと考えること自体、意味が分かっておらず、化石燃料から水素を作る技術開発への人材の投入や費用は無駄だったのだ。そして、これは、試行錯誤などしなくても、ちょっと考えればわかることである。
 また、いつまでも水素の製造費や運搬費が高いなどと言い続けて改善策を思いつかないのも努力と工夫が足りず、水を電気分解して水素を作れば酸素もできて販売可能なため、今後、燃料電池車が増えて混雑した道路が低酸素状態になることも考えられるので、車内の酸素濃度を一定に保つためや療養中の患者などのために、副産物の酸素も売ればよいだろう。
 なお、今日の日経新聞社説記事には「電気自動車を普及させるためには原発が必要だ」などと書かれていたが、化石燃料よりも公害の大きな原発を使って水素燃料や電気を作ると言うのは、環境への配慮に欠けすぎており、安全不感症の領域だ。

*10:http://qbiz.jp/article/114143/1/ (西日本新聞 2017年7月12日) 風力発電使い水素燃料を製造 トヨタや神奈川県が新設備
 トヨタ自動車や神奈川県などは12日、風力発電と水を使って二酸化炭素(CO2)を出さずに水素燃料を製造する新たな設備を、横浜市で報道陣に公開した。2015年度に水素活用の可能性を探る実証プロジェクトを始めており、13日から新設備を本格的に運用する。実証プロジェクトは環境省からの委託で、期間は18年度までの4年間。事業費は計約20億円という。これまで水素の利用によるコストやCO2削減効果を燃料電池車のフォークリフト2台で検証してきた。今後は新施設から水素を供給し、横浜市と川崎市の工場などで計12台を稼働させる。燃料電池車は走行時に水しか出ないが、現在は化石燃料から水素を作るのが主流で、製造時にCO2の排出を伴うことが課題となっている。今回、横浜市の臨海部にある風力発電所内に新設した設備では、風力で得た電気で水を電気分解して水素を製造し、CO2は排出しないという。神奈川県などは従来のガソリンや電気で動くフォークリフトでの作業と比べ、80%以上のCO2を削減できると試算している。横浜市内で記者会見したトヨタの友山茂樹専務役員は、水素の製造や運搬の費用が高いことも課題だとして「どこまで価格を下げられるか検証したい」と説明した。

<エネルギー大転換に対する日本のリーダーの対応>
PS(2017.8.7追加):日経新聞は、*11-1のように、①英仏政府が2040年までにガソリン車の国内販売を禁じる方針を決め、EVや再生可能エネルギーのコスト低減が石油の大量消費を前提とする産業構造を変えようとしている ②「液化天然ガス(LNG)はずっと続くと信じてやっている」と三菱商事のエネルギー部門の幹部は気色ばんだ ③石油のピークはいつか ④国家運営を石油収入に頼る産油国は小さな可能性も見過ごせない、サウジアラビアが大胆な改革を進める背景には石油の需要ピークへの備えがあるのではないか 等と記載している。
 しかし、①については、エネルギーにおける脱石油で最も恩恵を受けるのは日本で、それを最初に提案したのは私であるにもかかわらず、英仏政府の決断によって初めて日本でも変革が起ころうとしているのが日本の情けない点であり、これは各界リーダーの知的レベルの低さに由来するため、教育の問題である。
 また、②③については、商社には文系の優秀な人が多く就職したにもかかわらず、どこよりも高い値段でエネルギーとして原油を購入し、すべての産業の足をひっぱってきたという点で情けなさすぎる。そして、エネルギーは、優秀な役所と言われている経産省の管轄なのだ。私は、原油は最も付加価値の低い使い方であるエネルギーとしてではなく、化学製品を作るために使えばよいため、不要になるわけではないと考える。そこで、④のサウジアラビアは、石油製品を作って輸出するように産業構造を変革すればよいし、原油産出の少ない日本は、天然ガスを使って化学製品を作る方向にシフトすればよいのである。
 なお、改造内閣で沖縄・北方担当大臣になった江崎衆議院議員は、*11-2のように、「北方領土問題について素人なので、答弁書を朗読させていただく」などと述べ、それが謙虚な態度のつもりだったのだそうだが、「謙虚」というのは知っていて威張らないことであり、知らなければ大臣(リーダー)は務まらない。しかし、長く衆議院議員をやっていながら、そのくらいの知識や問題意識もなかったのだろうか。何故なら、知らなければ仕事はできず、理念もなく役人の原稿を読むだけでは国民主権の国の大臣を勤める能力は認められないからで、知らない人を大臣にすることこそ任命責任に反するからである。

*11-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170807&ng=DGKKZO19712870W7A800C1TJC000 (日経新聞 2017.8.7) 経営の視点EV革命と石油の終わり 事業の寿命、自問続けよ
 英仏政府が2040年までにガソリン車の国内販売を禁じる方針を決めた。トヨタ自動車とマツダは電気自動車(EV)の共同開発を視野に資本提携で合意した。EVの台頭や、再生可能エネルギーの急速なコスト低減が、石油の大量消費を前提とする20世紀型の社会・産業構造を変えようとしている。「液化天然ガス(LNG)はいつまで必要か」。「ずっと続くと信じてやっている」。三菱商事の垣内威彦社長の問いに、エネルギー部門の幹部は気色ばんだ。同社の16年3月期決算は資源安の影響を受け、初の連結最終赤字に沈んでいた。同年4月に就任した垣内社長がまず手をつけたのは150に及ぶ事業単位の「仕分け」だった。それぞれの事業を5段階に分類し、ピークアウトしたと判断した事業は撤退も考える。三菱商事はLNGビジネスのパイオニアだ。1969年に投資を決めたブルネイLNGプロジェクトは「失敗すれば三菱商事が3つつぶれる」と言われた。この決断が花開き、原料炭などとともに三菱商事を支える主力事業に育った。だが、「どんな事業、どんなビジネスモデルにも寿命がある」と、垣内社長は言う。過去に安住して未来はない。ピークアウトに向き合い、どう乗り越えるのか。問われているのは変化への対応力だ。中核事業だからこそ自問を迫った。燃料転換にとどまらず、人工知能(AI)やIoT、シェアエコノミーなど、自動車を起点とする革命は全産業に広がる可能性がある。誰が主導権を握るのか。垣内社長は「見極めるためにも自動車ビジネスに関与し続ける」と話す。石油のピークはいつか。ここ数年、関心を集めるテーマだ。「地球上には経済成長を支えるだけの石油がない」とするかつての議論ではない。温暖化対策や、自動車・発電の燃料転換によって石油消費は遠からず減少に転じ、石油が余る時代が来るとの見方だ。「石油の終わり」と決めつけるのは早計だ。英メジャー(国際石油資本)、BPのチーフエコノミスト、スペンサー・デール氏は「現在、200万台のEVが35年に1億台に増えても、失われる石油需要は日量300万~400万バレル。1億バレル前後の需要全体でみれば小さい」と指摘する。EVの実力を見極めるにはもう少し時間が必要だろう。ただし、国家運営を石油収入に頼る産油国は小さな可能性も見過ごせない。国際エネルギー機関(IEA)の事務局長を務めた田中伸男・笹川平和財団会長は、「国営石油会社の新規株式公開(IPO)など、サウジアラビアが大胆な改革を進める背景には石油の需要ピークへの備えがあるのではないか」と見る。仏トタルの生産量は10年前、石油が7割、天然ガスが3割だったが、今は5対5。パトリック・プヤンネ最高経営責任者(CEO)は「35~40年にはガス比率がさらに上がり、再生可能エネルギーが全体の2割を占めるだろう」と語る。メジャーとはもはや、巨大石油企業の代名詞ではない。エネルギー大転換のうねりは速度を上げ、国家と企業に変身を迫る。

*11-2:https://mainichi.jp/articles/20170807/k00/00e/010/212000c (毎日新聞 2017年8月7日) 江崎沖縄・北方相:朗読発言で陳謝 野党「辞任を」 
 江崎鉄磨沖縄・北方担当相は7日午前、北方領土問題に関し「答弁書を朗読させていただく」と述べたことについて「不用意な発言で、軽率だった」と陳謝した。内閣府で記者団に語った。野党からは辞任を求める声が出ているが、江崎氏は「やります、必ず」と辞任を否定した。発言の真意について江崎氏は「(答弁書の)原稿にしっかり目を通し、チェックして、自分なりに加えるところは加え、省くところは省きながら参考にするということだ」と釈明した。「(国会)軽視なんて一切していない」とも述べた。菅義偉官房長官から6日に電話で「十分に気をつけるように」と注意を受けたという。北方領土問題について「素人」と述べたことに関しては「今まで実際携わっていなかった。北方領土問題は外相、日露の経済協力は経済産業相だから、あのような表現になった」と説明した。民進党の山井和則国対委員長は7日午前、「役所の書いた原稿を朗読するだけなら閣僚は必要ない。北方領土問題に取り組む方々にも極めて失礼だ」と記者団に語り、江崎氏を批判。安倍晋三首相が「仕事人内閣」と名付けたことを挙げ、「どう考えても江崎氏が仕事をしそうには思えない。看板に偽りありだ」と江崎氏の交代を求めた。

| 経済・雇用::2016.8~2017.12 | 07:45 PM | comments (x) | trackback (x) |

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