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2017.8.10 EPAと農林漁業、農協と農業改革、食料自給率、地域振興など (2017年8月11、12、13、16、18、20、21、22、24、26、28、31日、9月1、2、3、8、9、15日追加)

(図の説明:日本では大型の田植機は増えてきたが、その他の作物での自動化は進んでいない。その理由には、大型機械導入を前提とした田畑の区割りになっていないこと、農機の価格が高すぎることなどがあるが、これは農協の努力を超えており、これまでの国の政策の問題が大きい)


  日本の耕作放棄地      オーストラリアの放牧と機械化された搾乳風景

(図の説明:国は、主食米に多額の補助金をつけ耕作面積を制限しながら、他の作物への転作を促さなかったため耕作放棄地が増えた。一方で、豪州の畜産は、右の写真のように大規模な放牧で行われており、日本も飼料用米に多額の補助金をつけるよりも賢い土地の使い方がある筈だ)

(1)JAの改革
1)JAさがの持株会社発足
 JAさがは、自己改革の目玉として全国の地域農協で初めて、2017年7月21日に、*1-1のように、農産物加工や購買生活関連といったグループ会社9社を傘下に置く持株会社2社を設立し、当面は中期の企画・戦略策定、総務管理部門の集約に注力して、業務の効率化・商品開発等に力を入れるそうだ。私は、農業者の共同体である農協を株式会社化するのではなく、農協の下に持株会社をつけるのがあるべき姿だと考えている。

 ちなみに、持株会社制度と連結納税制度は、私がフランスの事例の経験から1995年前後に経産省に提案し、持株会社制度が1997年に解禁され、連結納税制度は2002年度の『税制改正大綱』で100%子会社、孫会社などに限って実施されることになったものだ。

 そして、持株会社の下に、①企画部門 ②総務管理会社 ③食品会社 ④人材派遣会社 などをつければ、①は全体を見渡して企画立案でき、②はそのことに熟練した人が関係会社の総務・経理をまとめて面倒見ることによって効率的で質の高い仕事ができるとともに、受託料をもらって農業者の会計・管理を受託することもでき、③は加工・販売を行う食品会社と合弁企業を作れば、お互いのノウハウをつぎ込んで経営する最先端の組織を作って生産性を上げることができ、④は繁忙期に人材派遣を行えば、農業者の所得増大・農業生産の拡大・地域の活性化に繋げることができる。

 そのため、JAさがの大島組合長が全国から注目を集める取り組みであることを強調して「絶対に成功させなければならない」と強い決意を語られたのは心強いし、頑張って欲しい。

2)JA全中次期副会長にJA佐賀中央会の金原会長内定
 このように、佐賀県のJAは先進的な試みを率先して取り入れたため、*1-2のように、全中副会長にJA佐賀中央会会長金原氏が内定した。次は、持株会社での実績を携えて、JA全中次期会長になれれば嬉しいと考える。

3)JA全農の新執行部
 JA全農の新執行部が始動し、*1-3のように、長澤会長は「『全ては組合員のために』の姿勢を貫き、全農の自己改革を完遂する」と強調されたそうだ。私も、産地再生、生産基盤作り、新技術駆使、業務提携などを含む生産力・販売力の強化、生産資材の引き下げなど、農業者の所得向上と地域再生を目的として自己改革すればよいと考える。なお、農家所得増大のためとして特殊な資材の引き下げのみに固執するのは、政府がやるようなことではない。

 また、農業は、同じ地域に存在し土地所有者が同じであるという意味で林業と関係が深く、同じ食品であるという意味で水産業とも関係が深い。そのため、漁協や森林組合も持株会社形式で会社を作り、食品会社など協働した方がよいケースでは合弁会社にした方が販売力がより強化できるので、地元の公認会計士・税理士とケースに応じた相談をした上で、具体的な対応を決めるのがよいと考える。

(2)JA全厚連とJAバンクについて
1)JA全厚連について
 農家は共働きが一般的で妻の働きも所得に直結するため、JAは、*1-4のように、医療・介護を行う全厚連をもっている。そして、今回、その会長にJA長野厚生連会長の雨宮氏、副会長にJA愛知厚生連会長の前田氏、理事長に中央コンピュータシステム社長の中村純誠氏が選任されたそうだ。

 私は、医療・介護を一体としたコンピュータシステムによる管理は、効率化や生産性の向上に役立つと思うが、これまで連続して行われてきた医療費・介護費の削減によって赤字になった病院や介護施設が多いと思われるため、その対応も重要だと考える。

2)JAバンクについて
 2008年のリーマンショック時には、みずほ銀行等の一般銀行と並んで農林中央金庫がアメリカのサブプライム住宅ローン(所定基準を満たさない顧客への貸付に対しては、より高い利率をとるローン)に融資し、借り手が破たんして大損していたので、私は本当にショックを受けた。

 何故なら、サブプライム層が破たんしても、家は資産としてアメリカに残るが、日本の金融機関は単に損をしただけで、リスクが高い割に還元が少ない外国への融資に農村から集めた資金を出して大損していたからである。ちなみに、この時、地方では、投資すべき案件は多いのに投資が行われないため、生産性が上がらないという悪循環の状況だった。

 しかし、JAバンクの貯金額は、*1-5のように、100兆円を超えたため、是非、豊富な資金力を生かして農業への融資拡大や地域重視で必要な投資をしてもらいたい。何故なら、そうすることが、今後の生産性の向上・販売力の強化・地域振興に繋がり、農村の魅力を増して人口回帰に資するからである。

(3)政府が進める農業改革について
 中野吉実JA全農前会長が、*2-1に述べられているとおり、政府・与党が主導する農協改革は、「農協=悪い岩盤=農家とは利益相反関係にある」という誤った前提で叫ばれた。そして、提示された改革理由は、農機・化学肥料・農薬などの高価格への対応だったが、それらの高価格は農協よりも生産者の独占や寡占によるところが大きく、安価な有機肥料の利用・減農薬・農協と競争関係にある他の店舗からの購入などで解決できるものが多い。そのため、政府が既定路線にしている全農の株式会社化とは結びつかないものだ。

 にもかかわらず、*2-2のように、農水省は8月中旬から農協改革の進捗状況調査に乗り出し、改革の重点を、①農産物の高値販売や生産資材の安値調達に向けた取り組み ②組合員の経営支援 ③改革を進めるための組織体制整備 とし、それが具体的にどの程度進んでいるかを確認して改善を働き掛けるそうだ。農水省は「JAと同じ目線で対話して課題の解決策などを探り、自己改革の実践を後押したい」と言っているそうだが、都会育ちの農水省職員なら、同じ目線どころか現場に同行して教えていただく形で調査すべきで、経営の専門家ではない官の口出しは経営を悪化させる懸念さえある。

 その点は、現場をよく知っている知事会も懸念しており、*2-3のように、全国知事会は2017年7月27日に盛岡市で会議を開き、農業振興を柱とした「地域経済の好循環の拡大に向けた提言」を採択した。そして、農業振興を地域社会の基盤と位置付け、政府が定めた「農業競争力強化プログラム」を進めるに当たっては、農業・農村の実情を十分踏まえるよう求めたそうで、これには私も賛成だ。

 しかし、安倍改造内閣の斎藤農相(経産省出身)は、*2-4のように、2017年8月7日に、JA全中を訪問し、引き続き安倍政権が進める農業・農協改革への協力を呼び掛けたそうだ。しかし、出向いてちょっと話したくらいで現場の問題点を正しく把握してよい改革案を提示できるわけがないため、結果ありきの話し合いにならないようにしてもらいたい。そして、斎藤農相が本気で農業改革に取り組みたければ、状況が全く異なる北海道・東北・北陸・中部・都市近郊・中国・四国・九州・沖縄・離島などの農業現場を回り、その地域でどういう農業が行われ、何に困っているのかを調査した上で、外国にも負けない生産性や販売力を持ち、土地を有効に利用して農家所得を増大させ、農業の魅力を作って積極的な担い手を増やす方法を考えるべきである。

 なお、経産省は、自動農機具やコンピューター制御の温室など優秀な農機を安価に生産して提供するよう知恵を絞って欲しい。そうすれば、その農機はどの国でも重宝され、輸出可能でもある。なお、私は、報酬をもらって仕事でやっているわけではないので、*2-5の農業強化法は見ていないが、議論を聞く限り、良い方向に改革されているようには見えない。

(4)EPAについて
1)EPAとその交渉内容
 私は、安全規制等の国家主権を放棄することになるTPPには反対だったが、EPAには賛成だった。何故なら、TPPの参加国は広大な農地を持つ国が多くて太刀打ちできそうもないが、EPAの参加国は広大な農地を持っているわけではないのに知恵と工夫で生産しているので、主権を放棄しない自由貿易が前提なら、日本の農業が学ぶところは大きいと考えたからである。

 そのため、*3-2のように、交渉中に情報開示を行うことはその分野の専門家が見て意見を述べるために必要で、日本が相手国並みにも情報開示を行わないのは、交渉官が国民に見せられるような交渉をしておらず、国民には背信行為の結果ありきの交渉をしている証拠だろう。

2)自由度を高めさえすればよいのではないこと
 日経新聞の論調は、*3-1のように、いつも経済の一体化を主張し、農業の将来を考えるためにも自由度を高めるべきだとする。しかし、そのEPA交渉では、自動車と酪農製品(特にチーズ)のバーター的な関税削減を巡って、交渉が最後まで難航したのだそうだ。

 そのうち自動車については、EUとEPAを結んでいる韓国車が無税で輸出できるのに、日本車は10%の関税が課されてハンディであるため、自動車の関税撤廃は日欧EPAの大きな目的の一つだったそうだが、日本は人件費が高く、全体として高コスト構造になっているため、日本のグローバル企業は、人件費が安くて労働の質の良い東欧で生産することが多い。また、現在では、自動車もEVで遅れ始めているため、環境規制や本体価格の問題を抜きにして、関税だけで売れ行きがよくなるとは思えない。

 一方、農業については、TPPを超える乳製品(特にチーズ)の関税削減が問題となり、出荷先にかかわらず加工用生乳はすべて補給金の対象となるそうだが、今まで指定団体に出荷しなければ加工用生乳に対する補給金が支給されなかったというのは、食料不足時代の食糧管理のやり方のようで、TPPやEPAとは関係なく、変えていなければならなかった問題だろう。

 私は、欧州産のチーズは美味しく、種類も豊富で、よく工夫されていると思うが、日本産の食品も冷凍ピザのような中食にまで加工したり、健康志向を加えたりすれば、欧州では見られない商品ができると考える。そのため、欧州の人の口に合わせながらも、手間が省けて美味しく、健康に良い新しい食品に進化させれば、日本産チーズは関税0でもやれるのではないだろうか。

 また、*3-1には、最先端にいるフロンティア農業者の自由度を高め、フロンティアを広げる政策が必要として、米の減反政策廃止が提言されている。しかし、そもそも主食用米ばかり作っても、その需要は日本国内が殆どであるため、だぶついて価格が低下し、生産したこと自体が無駄になりそうだ。これは、経済学における典型的な市場の失敗の例で、昔から世界中で起こっていることのようである。かといって、多額の補助金を使って飼料米生産に誘導するのも、甚だしい無駄遣いだ。

 そのため、私は、足りない産品を作るように転作すればよいと思うのだが、「日本の農家は、どうして米ばかり作りたがり、足りない産品に転作しないのか?」と問うと、「米を作れば機械化でき、何かと楽で兼業農家でもできるから」という答えが、(特に東北の農家から)返ってくる。私は、ここが問題の本質で、他の産品に転作しても損をせず、機械化でき、保険や作業システムを整えて、兼業しなくても生活できる所得を得られるようにすべきだと考える。そうすれば、余剰な米ばかりを作りたがり、耕作放棄地を増やしながら、食料自給率は低いという日本の変なシステムを変えられると思うが、これは決して農協だけの責任ではない。

 なお、EPAやTPPについては、*3-3のように、「経済規模が大きく自由化度が高いのが優れているとの論調は経済学的に間違いだ」とする注目すべき意見もある。

3)食料自給率と安全保障

  
世界の人口増加 食糧不足の発生リスク拡大 主要先進国の食料自給率 日本の食料自給率

(図の説明:一番左と左から2番目の図のように、世界人口は2050年には95億人になることが予想されており、気候変動による生産減も起こる。そのため、右から2番目のグラフのように、どの先進国も農業を疎かにはしておらず食料自給率が高いが、日本だけ著しく低い。その日本の食料自給率は、一番右の図のように、1975~1990年の間はほぼ横ばいだったが、1990年以降は下降の一途を辿っており、政府が「国民の命と健康を守る」と言うのは白々しく聞こえる)

 *3-1は、「日本農業が活路を見いだすには、市場を世界に求めなければならず、そのためには関税なき貿易が必要で、それを前提に日本の農業の構築を考えなければ、農業の産業としての独り立ちは見えてこない」としている。

 しかし、*3-4、*3-5のように、食料自給率は減り、食料の安定供給を果たす「食料安全保障」はさらにおぼつかなくなった。それについての拙い言い訳は不要であり、食料はカロリーだけでは不十分であるとともに、価格だけでは話にならないことは、中等教育以上で栄養学を学んだ人(殆ど女性)なら常識だ。

 なお、*3-4の「低自給率を強調するよりも、消費者に選ばれる農産物をつくり、輸入に対抗できる競争力を磨いていけば、おのずと国内農業の供給力が高まるのではないか」という部分は、世界人口の予測と世界の食糧事情を無視し、農業生産を行うには生産基盤や日進月歩する機械・技術・種子が必要であることを無視した、驚くべき楽観論である。

<JAさがの持株会社発足>
*1-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/448475 (佐賀新聞 2017年7月22日) JAさが持ち株会社発足 効率化進め商品開発強化、地域農協初自己改革の目玉
 JAさが(大島信之組合長)は21日、農産物加工や購買生活関連といったグループ会社9社を傘下に置く持ち株会社2社を設立した。業務の効率化を進めて商品開発などに力を入れる。8月1日から業務を始め、当面は中期的な企画・戦略の策定と、総務管理部門の集約に注力する。持ち株会社化は、「農協の一員としての自覚とガバナンス(企業統治)の強化」「事業統合によるコストダウン」「会社の枠を越えた商品開発」の3点を主眼に置く。政府・与党が農協改革に力を入れる中、農業者の所得増大、生産の拡大、地域の活性化につなげようと、JAさがが自己改革の目玉として、全国の地域農協で初めて打ち出した。設立したのは、「JAさが食品ホールディングス(HD)」と「JAさがアグリ・ライフホールディングス(HD)」。JAさがグループ15社のうち9社がぶら下がる。食品HDは、JAフーズさがとジェイエイビバレッジ佐賀、JAさが富士町加工食品の3社を傘下に置く。社長には大島組合長が就き、大手からのOEM(相手先ブランドによる生産)のほか、独自ブランドを開発し、地域の農畜産物を全国に発信する。宅配や通販事業などにも取り組む。アグリ・ライフHDの傘下には、JA建設クリエイトさがやJAオート佐賀など6社が入る。タマネギやミカンの収穫など農家の人手が足りない繁忙期に人的支援をしたり、農業経営に参画して農地を活用したりして、担い手育成に努める予定。JAさがの中村直己副組合長が社長を務める。2016年度のグループ15社の総売上高は約680億円。持ち株会社の傘下に入っていない残り6社については引き続き、HD編入に向けた準備、検討を進める。佐賀市の県JA会館で行われた設立総会で、JA佐賀中央会の金原壽秀会長は「それぞれがさらにもう一段パワーアップして、農家、組合員、地域の評価をいただけるように飛躍を遂げてほしい」とあいさつ。大島組合長は、全国から注目を集める取り組みであることを強調し、「絶対に成功させなければならない」と強い決意を語った。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/450623 (佐賀新聞 2017年7月30日) 金原氏、全中副会長に JA佐賀中央会会長、県出身者で初 来月正式決定
 全国農業協同組合中央会(JA全中)の次期副会長に、JA佐賀中央会の金原壽秀会長(67)=杵島郡江北町=が内定したことが29日、分かった。JAグループの独立的な総合指導機関であるJA全中の副会長に県出身者が就任するのは初めて。8月10日の全中臨時総会で正式に決定する。
金原氏はJAさがの理事や常務理事を経て、2014年から組合長を1期務めた。6月30日の通常総会でJA佐賀中央会の会長に就任した。中央会の前会長である中野吉實氏(69)は11年から今年7月25日まで2期6年、全国農業協同組合連合会(JA全農)の会長を務めた。佐賀の中央会トップが2代続けてJA全国組織の要職を務めることになる。JA全中の次期会長にはJA和歌山中央会の中家徹会長が内定。もう一人の副会長には、中家氏と会長選で競ったJA東京中央会の須藤正敏会長が就く見込み。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p41464.html (日本農業新聞論説 2017年7月27日) 全農新体制と改革 結集こそ組織の「底力」
 JA全農の新執行部が始動した。陣容は「改革加速内閣」とも言えよう。営農経済事業を担う全農は、系統組織のいわば“心臓部”だ。役割発揮はJA自己改革の成否に直結する。事業改革の年次計画に沿った着実な実践と、内外への「見える化」が欠かせない。組織の結集力と求心力こそが大きな鍵を握る。新執行部の使命は、会見で長澤豊会長が強調した「『全ては組合員のために』の姿勢を貫き、全農の自己改革を完遂する」ことに尽きる。最終ゴールは、農業者の所得向上を通じた元気な地域の復活だ。全農はこれまでも多様な事業改革を実施してきた。いま力を入れるべきことは、改革加速化と併せ、農業者の営農と経営にどう結び付くのかの「見える化」である。組織内外への広報強化は、経済事業への組合員の理解と納得にもつながる。理不尽な全農批判の防波堤ともなる。「全ては組合員のために」は、何のための組織なのかを改めて自らに問う原点回帰宣言でもあろう。産地再生、生産基盤づくり、新技術の駆使、新たな業務提携も含む販売力強化、生産資材の引き下げ。農業者の所得向上と地域再生にはトータルコストの引き下げが重要だ。資材下げなど一分野だけをあげつらうのは見当違いだ。その意味では、全農が全国55JAと取り組むモデル事業は、今後の総合的なコスト下げに向けて全国展開の礎となり得る。「ゴーゴー作戦」として、地域農業再生への旗振り役を果たしてもらいたい。意欲的な数値目標を掲げた全農の事業改革年次計画だが、滑り出しはほぼ予定通り。だが、本番はこれからと言っていい。年次計画は年を追うごとに大きな目標値となっているだけに、この1、2年が正念場となる。自己改革完遂へ残された時間は少ない。政府・与党の改革フォローアップや2019年5月とされる改革集中期間の最終期限も2年を切った。代表理事体制も一新した。新理事長の神出元一氏はこれまで専務として全農改革に関わり、政府・与党との調整の陣頭指揮を担ってきた。専務となった岩城晴哉氏は外食大手・スシローと業務提携するなど、米・園芸の販売事業強化を進めた。もう一人の山崎周二氏は改革の本丸となった生産資材引き下げなど、購買事業見直しの具体案を取りまとめた。改革加速化に期待したい。一方で、農政改革では政府の責任こそが問われなければならない。民間組織の全農ばかりに改革努力を迫るのは間違いだ。通常国会冒頭での安倍晋三首相の施政方針演説に大きな違和感を覚える。「農政新時代」の項目で「農家のための全農改革」を挙げた。首相自ら民間組織の具体名を挙げることは極めて異例だ。政権による「全農先行」改革の意図が透けて見える。政府は全農自己改革を後押しする姿勢に徹するべきだ。

*1-4:https://www.agrinews.co.jp/p41476.html (日本農業新聞 2017年7月28日) 全厚連 会長に雨宮氏(長野)
 JA全厚連は27日、東京都内で通常総会後に経営管理委員会を開き、会長に雨宮勇氏(JA長野厚生連会長)を選任した。空席になっていた副会長には前田隆氏(JA愛知厚生連会長)を選任した。加倉井豊邦会長は同日付で退任した。理事長に、中村純誠氏(中央コンピュータシステム社長)を選任。総会では、経営管理委員16人を選任し、そのうち9人が新任した。任期は2020年度の通常総会終了まで。

*1-5:https://www.agrinews.co.jp/p41520.html (日本農業新聞論説 2017年8月2日) 農協貯金100兆突破 協同組合こそ明日開く
 JAバンクの貯金額が100兆円の大台を超えた。計画目標よりも1年前倒しの達成は、組織結集力の結果である。大台達成を契機に、いま一度、地域や農業の足元を見直し、協同組合金融の特色を確認したい。根底には、組合員目線に立ち地域重視で利用者第一の考え方がある。JAの総合力の発揮こそが持続可能な社会づくりの「明日」を開くはずだ。金融の根幹は「信用」である。信用事業と言われる理由だ。貯金額が100兆円を突破したのは、JAバンクへの組合員・利用者の「信用」の表れである。健全経営の徹底や万が一の事態へのセーフティーネット(安全網)の整備など、金融機関として安全・安心が評価されてきた結果とも言えよう。農林中央金庫のリテール事業本部長を務める大竹和彦専務は、日本農業新聞のインタビューで「JAの総合事業、地域での人と人とのつながりこそが他金融機関にない強さ」と強調。協同組合金融の特色発揮が、揺るぎない「信用」につながっている。運動体でもあるJAグループは、目標を掲げた組織展開に強みを持つ。100兆円達成も運動の成果の一つだ。歴史をさかのぼれば、協同組合は信用事業の確立と重なる。組合運営の原則を制定した英国のロッチデール公正先駆者組合設立は1844年。日本はその1年前の43年、江戸時代に二宮尊徳が基金をつくり困窮した農民に無利子で貸し出す報徳社をつくった。協同組合の原点の一つである。尊徳は600もの村落で協同の精神で地域復興を果たす。JAバンクを束ねる農林中金は、6年後に創業100周年を迎える。前身の産業組合中央金庫は関東大震災の直後、1923年末から営業を開始した。協同組合金融は地域の復興・再生の歴史と共に歩み発展してきた。こうした歴史的な経過をしっかり踏まえたい。今後の課題は「ポスト100兆円」の戦略だ。少子高齢化、日銀のマイナス金利の影響などで、金融業界は大きな岐路に立つ。地域金融機関を中心に合従連衡の動きが活発化してきた。系統信用事業も、地域単位では次の目標を検討するだろうが、数値で全国一本の“旗”を掲げる時代とは明らかに異なる。時代の変化を踏まえ農林中金は、JA全農や関連企業との連携を強め、食農ビジネスを本格化させている。豊富な資金力を生かした農業融資の拡大、担い手育成は喫緊の課題だ。「食と農、地域の振興のためにできることは何でもやる」と食農法人営業本部長を務める宮園雅敬副理事長。新たな一手として、組合員の資産形成のため投資信託などを推進する「JAバンク資産形成推進部」を新設した。「ポスト100兆円」をどうするのか。模索は続くが、基本路線は営農経済事業をはじめ地域に根付くJAの総合力、相互扶助を歴史的な原点とした協同組合金融の強さのはずだ。

<政府が進める農業改革>
*2-1:https://mainichi.jp/articles/20170730/ddm/008/020/116000c (毎日新聞 2017年7月30日) 中野吉実・JA全農前会長:農協への圧力、再燃を懸念
 全国農業協同組合連合会(JA全農)会長を今月退任した中野吉実氏(69)が29日までに共同通信のインタビューに応じ、政府、与党が主導した農協改革を「(日本農業が低迷する現状を踏まえ)誰かを悪者にしないと駄目だったのだろう」と振り返り、改革が再燃し農協への圧力が強まりかねないとの懸念を示した。JA全農の株式会社への移行は「絶対すべきでない」と強く否定した。2011年7月から2期6年にわたる在任中、政府の規制改革推進会議などから組織縮小やコメ全量買い取りなどを求められたほか、自民党の小泉進次郎農林部会長から組合員に提供する農機や肥料などが高すぎるとして改革を迫られた。中野氏は、農家の所得向上を目指すとの方向性は政府と一致しているとした上で、「農協が力を付け、組合員に還元できるようにしていく」ことが重要だと指摘した。在任中の成果として17年3月に自己改革をまとめたことや、コメの安定的な出荷先確保のため回転ずしチェーン大手「あきんどスシロー」の持ち株会社に出資したことを挙げた。その上で「農協と農家が一緒に努力し生産性を高めていくことが所得向上につながる」との認識を示した。政府、与党で議論されたJA全農の株式会社化に関しては「海外では農協が株式会社化した後、穀物メジャーに買収された例がある。農家を守る立場の組織がなくなったら元も子もない」と改めて反対を表明した。政府は18年産米から生産調整(減反)を廃止するが、「米価が下がらないようJAグループが各地の収穫量を配分する。それができることが前提だ」とし、コメ農家に大きな影響は出ないとした。
■ことば:全国農業協同組合連合会(JA全農)
 JAグループで商社機能を担う全国組織。肥料や農薬といった生産資材を農家に供給するほか、農産物を集めて販売する。事業収益は大手商社に匹敵。政府、与党が改革の方針を昨年11月にまとめたことを受け、今年3月に資材価格引き下げなどに向けた自己改革案を策定した。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p41525.html (日本農業新聞 2017年8月3日) 農協改革 中旬から進捗調査 月内にも進捗調査 各県1JAを行脚 農水省
 農水省は全国のJAを対象に、農協改革の進捗状況の調査に乗り出すことが分かった。各地のJAに担当者を派遣。改革の重点となる農産物の高値販売や生産資材の安値調達などが具体的にどの程度進んでいるかを確認し、改善を働き掛ける。今年度は試行的に各都道府県の1JAを対象に調査を実施する方針で、8月中にも始める。2014年6月の農協改革に関する与党取りまとめでは、5年間を「農協改革集中推進期間」として、JAに自己改革の実行を強く求めている。既に同期間の中間年を迎える中、改革の実践を加速させる必要があるとみて、今回の調査に乗り出す。特に重点的に調査するのは、(1)農産物の高値販売や生産資材の安値調達に向けた取り組み(2)組合員の経営支援(3)改革を進めるための組織の体制整備――の3項目。都道府県の担当者と共にJAに出向き、JAが事業計画などに盛り込んだ目標数値など具体的な指標に照らし合わせて、取り組みが進んでいるかどうかを聞き取る。思うように成果が上がっていない取り組みについて、何が課題かをJAとの間で共有、同省から先進事例を紹介するなどで改善策を探る。都道府県は意見聴取後も、特定した課題について、JAの解決に向けた取り組みの進捗を確認し、改革の着実な進展を促す。こうした一連の流れを今年度、試行的に実施、検証し、来年度以降の対応を検討する。同省は「JAと同じ目線で対話して課題の解決策などを探り、自己改革の実践を後押したい」という。16年4月に施行された改正農協法では、農協の事業目的に、農業者の所得増大に最大限配慮することを掲げ、JAに営農経済事業の強化を求めている。こうした中、JAグループは16年度からの3年間を自己改革の集中期間として自己改革の実践を進めている。同省が各都道府県の1JAを試行的に調査することに対し、JA全中は「自己改革に取り組んでいるJAの実態を見て、理解してもらうには良い機会だ」と話している。

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p41471.html (日本農業新聞 2017年7月28日) 現場踏まえ対応を 農業競争力プログラム 全国知事会
 全国知事会は27日、盛岡市で全国知事会議を開き、農業振興を柱とした「地域経済の好循環の拡大に向けた提言」を採択した。農業振興を地域社会の基盤と位置付け、提言5項目のうち2項目を農業関連とした。政府が昨年決めた「農業競争力強化プログラム」を進めるに当たって、農業・農村の実情を十分踏まえるよう求めた。改革を急進的に進める政府に対し、くぎを刺した格好だ。日欧経済連携協定(EPA)をはじめ、国内農業への影響に懸念を示し、丁寧な情報提供を求めるとした。会議には「地方から日本を変える」をテーマに、全国都道府県の首長が参加した。政府が2016年11月に決めた同プログラムでは、生産資材の引き下げや全農改革、卸売市場法の見直しを提起。政府はこれに沿って農業改革を進めている。提言では、地域間格差の是正や、多様性に満ちあふれた地域の創出に取り組むべきとした。その上で、プログラムに関する制度設計について、地域の農業・農村の実情を十分踏まえるよう求めた。地域の農業者が意欲と希望を持って営農に取り組めるようにすべきとした。国際貿易交渉を巡っては、日欧EPAをはじめ国内農林水産業への影響が懸念されると指摘。全ての貿易交渉で、重要品目に対する必要な国境措置を確保することが必要と提起した。交渉の進捗(しんちょく)や国内の影響についての情報提供を丁寧にするよう求めた。米、大豆など主要農作物種子法(種子法)の廃止に際して、今後も生産者に良質で安価な種子の供給と普及ができるよう、財政措置の確保を要望した。国産種子の海外流出の防止などの措置も求めた。この他、農業分野では担い手らの人材育成、農地集積、ICT(情報通信技術)をはじめとするスマート農業、鳥獣害防止対策について国の支援の充実を提起。資材の価格低減、所得向上への支援策、輸出促進策の強化も必要とした。会議では、国と地方を挙げて「防災庁」の創設に取り組むことや、東京一極集中の是正などについて議論、提言した。災害に強い国土づくりを進める「岩手宣言」も採択した。

*2-4:http://qbiz.jp/article/115975/1/ (西日本新聞 2017年8月7日) 農相、改革継続に協力要請 就任直後異例のJA訪問
 斎藤健農相は7日、全国農業協同組合中央会(JA全中)を訪問し、奥野長衛会長や中家徹次期会長らに対して引き続き安倍政権が進める農業・農協改革への協力を呼び掛けた。就任直後の農相がJA首脳を訪ねるのは異例。自民党の農林部会長や農林水産副大臣を歴任して農協改革を主導し、3日に農相に就任した。10日にJA全中の次期会長に選出される中家氏は政権の改革に距離を置く慎重派とみられており、自ら出向くことで話し合いを重ねていく姿勢を示した。面会では、JA全中に加え、全国農業協同組合連合会(JA全農)、農林中央金庫などJAグループ幹部が顔をそろえた。奥野氏は「本来ならこちらが伺うのが筋」と謝意を表明し、斎藤氏は「日本の農業が厳しいという状況認識を共有できれば、農家の皆さんが前向きに取り組める環境づくりに向け、いい関係で前進ができる」と述べた。面会後、報道陣に対して奥野氏は「大臣としての農業に対する強い思いから、自らこちらに足を運ばれた。官僚の経験を生かし、いろいろ課題を提起していただくことになる」と語った。中家氏も「問題があったときには話し合いをして互いに理解し合うのが大事」との認識を示した。

*2-5:https://www.agrinews.co.jp/p41511.html (日本農業新聞 2017年8月1日) 農業強化法が施行 改革推進丁寧に
 農業生産資材価格の引き下げや農産物流通の合理化に向けた構造改革を進める農業競争力強化支援法が1日施行される。農水省は、卸売市場法の抜本改革など規制・規格の見直しや資材の開発促進、直販の促進といった改革を実行に移す。同省が、生産性の低さや機能不全を問題視する米卸や飼料メーカーには業界再編をてこ入れする。同時に、JA全農の改革の実行を促す方針だ。いずれも生産現場に密接に関わる課題だけに、具体化には、多様な農家の声を踏まえた丁寧な議論が欠かせない。同法は、5月に成立。資材価格下げや農産物流通の合理化に向けて①国が講じるべき施策②業界再編や事業参入に向けた支援措置――を定めたのが柱。同省は今後の政策展開は一義的に行政の仕事として「与党の了承を取る必要はなく、農水省の権限で粛々と進めればよい」(同省幹部)としている。だが、法律上は国の政策の方向性を示す抽象的な文言にとどまる。施行を受け、同省は、法律が定める国内外の農業資材供給や農産物流通の実態調査に着手。この結果を踏まえて2019年8月までに施策見直しを検討する。同省は昨年、日本の肥料などが韓国に比べて割高とする調査結果をまとめ、全農に改革を迫った経緯がある。だが、殊更に価格差だけを取り上げれば、品質の劣化を招く恐れがある。農業全体の構造や品質格差を踏まえた冷静な分析が必要だ。参院農林水産委員会は、協同組合の本来機能である共同購入や共同販売の機能の強化、民間事業者の自発的な取り組みの尊重を求める付帯決議を採択した。今後の法律運用では、政府による過剰な民間干渉につながらないか国会による監視が求められる。

<EPAについて>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170801&ng=DGKKZO19451050R30C17A7KE8000 (日経新聞 2017.8.1) 日欧EPAの課題(下)農業の将来 考える好機に、最先端分野、自由度高めよ 本間正義・西南学院大学教授(1951年生まれ。アイオワ州立大博士。専門は農業経済学。東大名誉教授)
ポイント
○チーズの低関税輸入枠設定の影響小さい
○日本農業は関税なき貿易で世界に活路を
○コメの減反政策廃止や農地政策改革急げ
 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉が大枠合意した。米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、自由貿易の推進に暗雲がたち込めていただけに、この合意の意義は大きい。また貿易だけでなく、グローバル化時代の包括的な経済活動のルールづくりを目指すTPPと目的を一にする。世界の国内総生産(GDP)の28%、世界貿易の37%を占める両地域のEPA実現に向けた大きな一歩を歓迎したい。日欧EPAの交渉でも、またぞろ農産物が焦点の一つとされた。だがTPPでの合意が基礎となっていることや、欧州の関心の低いコメが除外されていること、日本からも日本酒などの食品輸出の拡大が見込めることなどもあり、国内の反応は関係者を除けば比較的冷静だったといえる。とはいえ、自動車と酪農製品、特にチーズの関税削減を巡っては最後まで交渉が難航した。日本にとって自動車の関税撤廃は日欧EPAの大きな目的の一つだった。EUとEPAを結んでいる韓国の自動車が無税で域内に輸出できるのに対し、日本の自動車には10%の関税が課され、大きなハンディとなっていた。一方、EUが求めてきたのはTPPを超える乳製品、特にチーズの関税削減だった。金額でみると、日本からEUへの自動車輸出額は1兆2494億円(2016年)に対し、EUからのチーズ輸入額は378億円(同)にすぎない。従ってこの両者をバーター(交換取引)にしたとみるのは適当ではない。日EUともに包括的なEPA締結に十分大きなメリットを見いだした結果と解釈すべきだろう。EUが今回の交渉でチーズにこだわる理由はあった。EUは15年3月末、30年以上継続してきた生乳クオータ(割り当て)制度を廃止した。加盟各国に生乳供給の上限を課す制度だが、これを自由化し市場志向性を高め、乳製品の需要増大が見込める国際市場で活路を見いだそうとした。しかしEUが輸出増を期待したロシアは、欧米がウクライナ問題で科した経済制裁に対抗し、欧米からの農畜産物の輸入禁止措置を継続している。このためEUは別の市場を求め輸出戦略を練り直しており、途上国への輸出拡大とともにEPAを通じた日本市場の開放が重要課題だった。表は、合意したEUからの主な農産物の関税削減の内容を示したものだ。焦点だったチーズは、TPPでは関税を維持したカマンベールやモッツァレラなどソフト系チーズを一括して新たに低関税輸入枠を設けた。この枠内関税率は徐々に削減し、16年目に撤廃するとしている。輸入枠は初年度2万トンから、16年目に3万1千トンに拡大する。EUからのソフト系チーズ輸入量は2万トン(16年)程度であり、輸入枠は現状に比べ16年で1.5倍に拡大するだけなので、大きな影響はあるまい。またチーズは差別化できる製品であり、国内でも様々な取り組みが展開されている。輸入品に対抗できる日本ブランドのチーズが多く生み出されることを期待したい。さらに生乳の流通制度改革も進行中だ。これまで全国を10地域に分けて、各地域の指定団体に出荷しなければ加工用の生乳に対する補給金は支給されなかったが、出荷先にかかわらず、加工用の生乳はすべて補給金の対象となる。また補給金受給のためには指定団体に原則全量委託することを義務付けていたが、これも部分委託が可能となる。従って個々の農家や農家グループの創意工夫を乳製品の生産に生かせる道が広がる。日欧EPAの合意は、英国のEU離脱決定や米トランプ政権の誕生で挫折しかかった自由貿易の方向を、決して後戻りさせてはならないという両地域の強い政治的意志でもある。今後、他のEPAや新たな交渉を通じ貿易の拡大と経済活動に関するルールの共通化が進展していくと予想される。その際、交渉結果に一喜一憂するのでなく、日本農業も国境措置に依存しない体制を築くことが重要だ。先ごろ日本経済調査協議会は、元農水事務次官の高木勇樹氏を委員長とする食料産業調査研究委員会がまとめた提言「日本農業の20年後を問う」を公表した。筆者はこの委員会で主査を務めた。これから20年後の日本農業をどう考えるか。少子高齢化・人口減少で日本の国内市場は確実に縮小する。一方、浮き沈みはあるにせよ、グローバル化の波は今後も間違いなく押し寄せてくる。これらの条件の下で日本農業が活路を見いだすには、市場を世界に求めなければならない。それには関税なき貿易が必要だ。この関税なき世界を前提に日本農業の構築を考えなければ、農業の産業としての独り立ちは見えてこない。日本の農家数は経営体でみて過去20年間で毎年平均して6万戸減少している。このままいけば20年後には10万戸を切ることになる。それでも各農家(経営体)が年間1億円規模の生産を担えば、日本農業は10兆円の生産額を維持できる。そうした方向に向かうにはどのような政策が望ましいのか。真っ先に必要な政策は最先端にいるフロンティア農業者の自由度を高め、フロンティアを広げる政策である。第1にコメの減反政策の廃止だ。政府は生産割り当てをやめると言うが、多額の補助金で飼料米生産に誘導し、主食米生産を制限し高価格を維持する政策を継続する。小規模兼業農家が維持され、大規模農家の生産拡大が阻害される。第2に農地政策の改革だ。現行農地法は農地を生産資源として活用するというより、農地所有者の権利を守ることを目的としている。農業内での権利移動を前提とするために、リースは認められても、農外の株式会社が農地を保有することは禁じられている。第3に耕作地が何カ所、何十カ所にも分散している非効率な経営の解消だ。農地のリースや所有を自由化しても耕作地が細切れでは生産効率は上がらない。地域で連坦(れんたん)化してひと続きの耕作面積を確保するために、孤島的に別経営をしている農地を周囲と一体化し、耕作を統合する仕組みが必要となる。農地の流動化のためには、農地の利用に応じた税制の整備などが有効だと考えられる。フロンティアは海外での販売戦略でも広げる必要がある。概して日本の農業関係者は海外でのマーティングが不得手だ。農産物の品質の高さのアピールが足りない。それは日本の農業者がいまだにプロダクトアウト(作り手優先)の姿勢から抜けきらず、消費者ニーズを取り込むマーケットインの姿勢に切り替えられずにいることに通じる。和食がユネスコ無形文化遺産になっている今日、世界に日本の農と食を広範にアピールするチャンスだ。今回の日欧EPAで日本酒の関税が撤廃され、欧州への輸出拡大が期待される。日本酒をフランスワイン並みのブランドに育て、それに合う和食とその魅力を伝える好機でもある。一方で、農業はその生産プロセスそのものが付加価値を生む。農作業はそれ自体が面白い。また工夫により様々なアクティビティーに展開可能でもある。農業の魅力を都市住民に伝え、農業体験をより手軽にできるような体制づくりは、これからの農業のあり方の一つとしても重要だ。農業が20年後に自立した産業となるには、国内海外を問わず今何をすべきか、国民全体での活発な議論を期待したい。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p41351.html (日本農業新聞 2017年7月12日) EPA 情報開示に差 EUは協定文案一部公開
 欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の大枠合意を受け、欧州委員会が日本政府が開示していない協定文案の一部を公開していることが分かった。一方、日本政府は文案が固まっていないとして公表しない方針で、日欧の情報開示の差が露呈した。民進党など野党は、情報開示に後ろ向きな日本政府の姿勢を問題視し、欧州と同水準の開示を求める方針だ。欧州委員会は日欧首脳が大枠合意を発表した6日付けで、ホームページに投資やサービス、電子商取引、紛争解決などに関する協定文案の一部や欧州側の提案を掲載。最終案ではないと断りながら「交渉への公衆の関心の高まりを考慮」して開示したと説明している。一方、日本の外務省は同日開かれた民進党の会合で「テキストが固まっておらず、最終調整する必要があるので、今の時点で公表に至っていない」と開示しない理由を説明した。民進党の会合では、出席議員から「情報公開には(日欧で)互いに同じ対応するのではないのか」(玉木雄一郎氏)など、情報開示に後ろ向きな政府の姿勢を質す意見が相次いだ。協定案を巡り、交渉の経過を含めて国民に積極的に開示しようとする欧州側と、内容が固まるまでは国民に知らせるべきではないとする日本政府の対応の違いが浮き彫りになった。交渉における情報開示の少なさは、農業関係者からも不満の声が相次いで挙がっており、今後の政府の説明に注目が集まっている。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p41449.html (日本農業新聞 2017年7月25日) EPAの経済学分析 貿易ゆがみ損失も大 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏
 日欧経済連携協定(EPA)は国内総生産(GDP)で世界の約3割を占め、全体で95%超の関税撤廃率で、日本の農林水産物の関税撤廃率も82%で環太平洋連携協定(TPP)並みに高いとして、「経済規模が大きく自由化度が高い」のが優れているとの論調は経済学的には間違いである。そもそも自由貿易協定(FTA)は「悪い仲間づくり」のようなもので、A君は好きだから関税なくしてあげるがB君は嫌いだから関税をかけるというものである。仲間だけに差別的な優遇措置を取るのがFTAだから、「経済規模が大きく自由化度が高い」方が貿易が大きくゆがめられ、「仲間外れ」になる域外国の損失は大きくなる。われわれの試算では、日欧EPAによって締め出される域外国の損失は23億1600万ドルで、日欧のメリットの17億6200万ドルより大きい。しかも、自由化度が高いほど、締め出される域外国の損失は大きくなるから、農産物のような高関税品目は除外した方が域外国の損失は緩和できる。われわれの試算では、域外国の損失は23億1600万ドルから16億2300万ドルに減少する。さらに、日本にとっても、農産物を自由化しない方が、日本全体の経済的利益は、11億2600万ドルから21億3200万ドルに増加する。高関税の農産物を欧州連合(EU)だけに関税撤廃すると、例えば、最も安く輸入できる中国からの輸入が差別的な関税撤廃によってEUに取って代わる「貿易転換効果」によって、消費者の利益はあまり増えず、生産者の損失と失う関税収入の合計の方が大きくなってしまうからである。このように、FTAは、仲間外れになった国は損失を被るし、域内国も貿易が歪曲されて損失が生じることなどから、日本では、長年、政府も国際経済学者も世界貿易機関(WTO)を優先し、FTAを否定してきた。ところが、2000年ごろから、日本政府がFTA推進にかじを切り出すと、みるみるうちに、同じ学者がFTAやTPPを礼賛し始めた。しかも、「農産物を例外にしてはいけない」と主張したい人たちにとっては、日本にとっても、域外国にとっても、農産物を除外する方がベターだ、という試算結果は不都合なので、そういう数値は表に出ないように極力隠されてきた。経済学者の良識、経済学の真理とは何なのかが問われている。

*3-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170621&ng=DGKKZO17910830Q7A620C1EE8000 (日経新聞 2017.6.21) 経済:骨太診断(6)消えた「食料安全保障」 農家、保護より自立促す
 経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の「攻めの農林水産業の展開」を見ると、2016年の骨太の方針にあった「食料安全保障の確立」の文言が消えている。農林水産省関係者によると、食糧安保を象徴するものは「食料自給率」。食料の安定供給を果たす責務を国が放棄するわけではないが、食料自給率を重要な指標として位置づけるのを見直しつつある状況の表れだ。食料自給率は、国内で消費する食品がどれだけ国産の材料で賄われているかを表す。供給熱量で換算するカロリーベースで2015年度は39%。主要先進国の中で最低水準にあることが「手厚い農業予算が必要」(農業団体幹部)との主張を支えてきた。ただ、カロリーベースの食料自給率は野菜をつくっても上向きにくいなどの問題が指摘される。生産額ベースになれば66%まで引き上がるのも、「(カロリーベースが)むやみに危機を高める指標になっている」(農水省OB)との見方を強めている。生産額ベースも下落傾向にあり、食料の安定供給を懸念する主張に根拠がないわけではない。ただ、ことさら低自給率を強調するより、消費者に選ばれる農産物をつくり、輸入に対抗できる競争力を磨いていけば、おのずと国内農業の供給力が高まるのではないか。安倍政権が自民党の小泉進次郎農林部会長らの主導で農協改革に乗り出したのも、保護農政から脱却する狙いが強いからだ。日本の農村を守る適度な予算の配分は必要だが、自立できる強い農家を各地にどれだけつくり出せるかという視点が欠かせない。

*3-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170810&ng=DGKKASFS09H3O_Z00C17A8EE8000 (日経新聞 2017.8.10) 食料自給率、38%に低下 昨年度、23年ぶり水準 小麦の生産減
農林水産省は9日、2016年度の食料自給率(カロリーベース)が38%だったと発表した。コメが不作だった1993年度の37%に次ぐ低水準。北海道を襲った台風などの影響で、小麦やテンサイの生産量が落ち込んだ。政府は2025年度までに自給率を45%に高めるという目標を掲げている。しかし09年度を最後に40%台には届いておらず、目標達成の道筋は見えない。カロリーベースの自給率は、コメや小麦といった穀物の供給量に左右されやすい。政府は輸入品が多い畜産飼料を国産に置き換えようと、飼料用米の増産に力を注ぐ。しかし草を食べる牛の飼料にコメを配合してもその割合には限界があり、自給率の押し上げ効果は乏しい。単価の高い野菜や畜産物などの動向が影響する生産額ベースの自給率は15年度に比べて2ポイント増の68%だった。野菜や果実で輸入が減り、国内生産が増えた。生産額ベースは2年連続で上昇した。

<農林漁業とエネルギー>
PS(2017.8.11、16追加):私も、*4-1の「太陽光などの再生可能エネルギーで作った電気でEVを動かすシステム」が、CO2はじめ排気ガスを0にできるため、最もよいと考える。なお、日経新聞は「フランスは原子力発電の比率が高いので、CO2を出さない」としているが、フランスは、2015年7月22日に制定した「エネルギー転換法」で、①原子力発電所の大幅削減 ②化石燃料消費の廃止 ③再生可能エネルギーへのシフト ④石油由来廃棄物の大幅削減 などを決め、マクロン新大統領も、*4-2のように、エネルギー・環境政策をさらに推し進めるとして、国民議会(下院、定数577)選挙で大勝した。そして、その中には、農業分野の環境改善や輸送分野のエネルギー効率改善なども入っている。
 日本でも、*4-3-1、*4-3-2、*4-3-3のように、平成26年5月1日に、農山漁村で自然再生可能エネルギー(太陽光、風力、小水力、地熱、バイオマス等)を積極的に活用する「農山漁村再生可能エネルギー法(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/pdf/re_ene1.pdf)」が施行され、地域の所得向上・農山漁村の活性化・農林漁業の振興などを進め、再生可能エネルギーの地産地消により、地域内での経済循環を構築する方向性が示された。そのため、農林漁業は、機器を電動化して自然エネルギーで自家発電するのが近未来の姿になる。従って、全農は、持ち株会社の下に自然エネルギーによる発電子会社(仮名:全農自然エナジー)をつければよいだろう。
 やはり、*4-4のように、日経新聞は経済教室で、慶大卒・東大院博士課程満期退学・災害情報論専門の関谷氏に、「偽ニュースを考える」として「①市場に流通している福島県産の農作物・海産物は徹底した検査をして、99.99%がND(検査機器が設定した検出限界より大きい値の放射性物質が検出されなかったこと)で安全確認されている」「②NDとは生産者・流通業者・消費者の間で流通上の許容量のデファクトスタンダード(事実上の基準)として結果的に合意した値」「③現在、このNDの状態でも風評被害により経済被害が起きている」「④流通業者・農業関係者の中に、まだ福島県産の農産物に多くの消費者が不安を抱いていると思い込んでいる人も多い」「⑤福島県の農林水産物についての情報発信は、検査結果に関する広報が十分ではなく、おいしさをアピールするブランド戦略や広告が中心となっている」と書かせている。
 しかし、①②にも書かれているとおり、ND(検査機器が設定した検出限界より大きい値の放射性物質が検出されなかったこと)は、生産者・流通業者・消費者の間で流通上の許容量の事実上の基準として人為的に合意した値にすぎず、長期間食しても健康を害さないことが証明された値ではない。そのため、NDだから安全確認されたとは言えず、④のように、流通業者・農業関係者・消費者に疑念を抱いている人がいる方が尤もであり、③のように、これを風評被害と断じることこそ無知である。また、放射能で汚染されても味は変わらないため、「おいしさをアピールすればよい」と考えている人には、もともとこの問題を論じる資格がない。そして、⑤のように、この検査でNDであったことをアピールしても「だから長期間食しても健康を害さないのか」は依然としてわからず、薬剤と同様、安全性が不明なら摂取しないのが常道だ。さらに、“災害情報論の専門家”というのが何を勉強してきた人かは不明だが、東大の教官でもこのようなことを断じる知識があるとは限らないことをわきまえるべきである。
 なお、*4-5のように、東京電力は、市民の反対と福島の不安に応えず、2016年9月にフクイチの1号機建屋カバーを外した。チェルノブイリでは、原発からの放射性物質の飛散を防ぐために、旧ソ連が国家の威信をかけて石棺を突貫工事で完成させ、30年を経て石棺の老朽化により再び飛散の危険があるため、2千億円をかけてさらに石棺を覆うシェルターを完成させたにもかかわらず、フクイチは、青天井で放射性物質が飛散し放題の状態になったのである。そして、これらは、「差別」や「感情論」などという否定のための誹謗中傷にもめげず、「女性自身」はじめ環境意識のある女性によって多く主張されていることを忘れてはならない。

   
都道府県別食料自給率     フクイチ事故の状況と“除染”後のフレコンバッグ

(図の説明:一番左の都道府県別食料自給率で福島県は85%と高い方だったが、原発事故後の福島県の農産物や海産物は0ではない放射性物質を含み、安全でなくなった《まさか、これをフェイク・ニュースとは言わないでしょうね》。その上、他の原発も食料自給率の高い地域(農林漁業地帯)に建設されているため、エネルギーに原発を使うのはコストが高い上、食料自給率にも影響し、亡国へのパスポートである)

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170811&ng=DGKKZO19918370R10C17A8MM8000 (日経新聞 2017.8.11) EV大転換(下)これが持続可能な未来だ さらば石油、世界も揺れる
 7月上旬に横浜で開かれた太陽光発電の見本市。目玉は米テスラだった。「太陽光で作った電気を蓄電池でためて電気自動車(EV)で使う。これが持続可能な未来だ」。テスラのカート・ケルティ・シニアディレクターはこう語った。
●一気通貫めざす
 テスラは2月に社名から「モーターズ」を外した。16年に太陽光発電の米ベンチャーを買収。EV用電池に加え据え置き型蓄電池にも事業を広げる。創業者、イーロン・マスク氏の狙いは発電からEVまで一気通貫のエネルギーインフラを作ることにある。なぜそこまでするのか。「発電時の二酸化炭素(CO2)排出量まで考えれば、エンジン車はEVとの差がなくなる」。ある国内自動車メーカー幹部はこう主張する。背景にあるのは「ウェル・トゥー・ホイール」(油井から車輪)という考え方。燃料を作る段階からトータルの環境負荷を見る発想だ。国立環境研究所の調査では、ガソリン車に対するEVのCO2削減率はフランスで90%。一方、中国では15%減にとどまる。フランスは原子力発電の比率が高いのに対し、中国は7割以上をCO2を多く排出する石炭火力発電に依存するためだ。いくらEVを増やしても、エネルギー源から変えなければ根本的な地球温暖化対策につながらない。EVシフトの先には太陽光発電など再生可能エネルギーの拡大が待ち受ける。多くの企業がそのことに気がつき動き始めている。北欧では米IBMや独シーメンスなどが連携し、風力発電による電力をEVに供給するシステムの整備が進む。日本でも一部自治体で同じような実証実験が進むが、「欧州では既に商用段階に入っている」(日本IBMの川井秀之スマートエネルギーソリューション部長)。石油メジャーも「変身」に動く。仏トタルは低炭素の液化天然ガス(LNG)などガスの生産量が発熱量ベースで原油を超えた。仏電池メーカーを買収し再生エネ事業の拡大にも走る。自動車に素材、そしてエネルギーまで産業構造を大きく変えようとしているEVへの大転換。それは世界の秩序にも影響を与える。
●試される産油国
  「40年には1日に800万バレルの石油需要が減る」。米調査会社ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスはEVシフトの影響をこう予測する。800万バレルは石油輸出国機構(OPEC)の1日の生産量の4分の1に相当する。世界の石油消費量の65%は自動車など輸送用が占める。発電用途は全体の4%程度。自動車用の落ち込みを補うのは難しい。各国が協調して需給調整するOPECの戦略が成り立たなくなるかもしれない」。日本エネルギー経済研究所の田中浩一郎中東研究センター長は指摘する。需要減により協調が崩れれば、次世代産業にカジを切れるかどうかで産油国間の格差が広がる。不安定な中東に新たな不協和音を生みかねない。EVへの大転換は地政学に大きな影響を与える可能性もある。

*4-2:https://sustainablejapan.jp/2017/05/12/macrons-energy-policy/26778 (Sustainable Japan 2017/5/12) 【環境】フランスのエマニュエル・マクロン新大統領のエネルギー・環境政策の骨子
 5月7日のフランス大統領選挙で勝利を収めたエマニュエル・マクロン元経済・産業・デジタル大臣。5月14日に第25代フランス大統領に就任します。フランスでは、社会党を与党とする現オランド大統領政権時代に、環境・エネルギー政策の大転換がありました。その最たる例が2015年7月22日に制定された「エネルギー転換法」。この法律では、フランスの電力の代名詞であった原子力発電所の大幅削減、化石燃料消費の廃止、再生可能エネルギーへのシフト、石油由来廃棄物の大幅削減、企業及び金融機関に対する気候変動関連情報開示制度など、世界初の政策を大規模に盛り込みました。同時に政府の公的年金でもESG投資が大規模に推進されました。これまで欧州の環境先進国と言えば、ドイツやイギリス、または北欧という印象が強かった近年。フランスは後塵を拝していましたが、このオランド政権時代に、欧州、そして世界の「トップクラス」へと躍進しました。その中、関心が集まるのが、マクロン新大統領のエネルギー・環境政策です。マクロン新大統領は今回、無党派として立候補し、極右と言われる国民戦線のマリーヌ・ル・ペン候補だけでなく、フランス二大政党である社会党のブノワ・アモン候補、共和党のフランソワ・フィヨン候補とも選挙戦を競いました。選挙戦中には、現政権与党の社会党幹部が、自党の候補ではなく、マクロン新大統領を支持するという事態も発生しました。なぜマクロン氏には社会党の支持が集まっているのか。その背景には、マクロン新大統領の経歴が関係しています。マクロン新大統領は、2004年にフランスの名門大学、国立行政学院(ENA)を卒業後、フランス財務省に就職。国家官僚として勤務する一方、政治家を志し、社会党へ入党します。その後、2008年に財務省から、英国老舗資本家であるロスチャイルド家の中核投資銀行であるロチルド&Cie銀行に転職。投資銀行家としてのキャリアを積み、2010年には社会党を離党し、無党派として政治家を目指す姿勢に転向します。マクロン氏が、最初に政権入りするのが、2012年。当時就任したばかりのオランド大統領に招聘され、大統領府副事務総長としてオランド大統領に側近の地位を得ます。そして2014年、オランド政権の経済・産業・デジタル大臣に任命された後、今回の大統領選挙出馬を視野に2016年8月に大臣を辞任。そして、39歳の若さで大統領選挙に勝利。このように、マクロン新大統領は、無党派ながらも現オランド政権を支えてきました。マクロン氏は、2010年に社会党を離党した背景について、「私は社会主義者ではない」とし、右派・左派を超越した政治を目指したい考えを訴えています。さて、このマクロン新大統領の環境・エネルギー政策はどう展開されていくでしょうか。マクロン新大統領は、選挙期間中に、すでに自身の「環境・エネルギー政策」の骨子を表明しています。大きな柱は、現オランド政権のエネルギー・環境政策を「さらに推し進める」というものになっています。
<電力>
•2025年までに原子力発電比率を2025年までに現在の67%から50%に削減
•国営電力会社EDFが業績が大幅に低下している原子力発電会社アレヴァを救済合併
•2022年までに石炭火力発電を2022年までに全て廃止
•フランス領内での石油・ガス採掘を全て禁止
•2030年までにエネルギー消費に占める再生可能エネルギー割合を現在の約15%から32%に引き上げ
•2030年までに発電量に占める再生可能エネルギー割合を現在の約18%から40%に引き上げ
•再生可能エネルギーと環境保全分野に150億ユーロ(約1.8兆円)を投資
•再生可能エネルギー発電の設備容量を26GW分を新たに追加
<交通燃料>
•ガソリンとともにディーゼル燃料に対する増税を実施し、石油燃料の消費を抑制
•2040年までに化石燃料自動車を廃止する将来構想を提示
•電気自動車向けの充電スタンド設置に対する政府支援
<エネルギー効率>
•不動産分野のエネルギー効率改善のため、低所得家庭に対し40億ユーロ、政府施設に対し40億ユーロを助成
•農業分野の環境改善と地域農業協働促進のため50億ユーロを助成
•輸送分野のエネルギー効率改善のため、50億ユーロを助成
•EUの排出権取引制度に対し、フランス国内では下限価格を設定する意向を表明(2020年までに1t当たり56ユーロ、2023年までに100ユーロ)
 再生可能エネルギー推進では、すでにEUからの助成が決定しています。大統領選挙の前の5月10日、EUの行政府である欧州委員会が、再生可能エネルギー発電所建設プロジェクト合計17GW分に対する約13億ユーロ(約1,600億円)の助成金給付を承認しました。そのうち、15GW分は陸上小型風力発電所(最大3MWで6基以内)。残りは、小型太陽光発電所(100kW以内)が2.1GWと、下水発生ガスを用いた廃ガス火力発電所が1ヶ所です。マクロン新大統領はこれらの野心的な政策を実現できるのか。それは今後の国会運営にかかっています。無党派で出馬したマクロン新大統領は、現在国会内に1議席も有していません。マクロン氏は当選後、支持団体をもとに新政党「レピュブリック・アン・マルシェ(共和国前進)」を設立。6月11日から18日に行われる国民議会(下院、定数577)選挙に向け、428人の公認候補を発表しました。社会党の下院議員24人もマクロン新党公認候補として出馬します。一方、半数以上の候補が新人候補であり、選挙戦は容易ではありません。マクロン新大統領は、従来の政党には依存しない政権運営を目指すため既存の政治との訣別を掲げ、有権者に支持を訴えています。マクロン新大統領が打ち上げたエネルギー・環境政策が花開くか。次の下院選挙が帰趨を決します。

*4-3-1:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/ (農林水産省) 再生可能エネルギーの導入促進
 私たちの身のまわりには、土地や水、風、熱、生物資源等が豊富に存在しています。有限でいずれは枯渇する化石燃料などと違い、これらは、自然の活動などによって絶えず再生・供給されており、環境にやさしく、地球温暖化防止にも役立つものとして注目を集めています。農山漁村において、これらのエネルギー(太陽光、風力、小水力、地熱、バイオマスなど)を積極的に有効活用することで、地域の所得の向上等を通じ、農山漁村の活性化につなげることが可能となります。農林水産省は、再生可能エネルギーの導入を通じて、農山漁村の活性化と農林漁業の振興を一体的に進めていきます。

*4-3-2:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/sinkou.html (農林水産省) 農山漁村の再生可能エネルギー振興策について
 農山漁村における再生可能エネルギー振興策について、固定価格買取制度の活用等による発電の取組と併せて、再生可能エネルギー熱の利用や、電力小売全面自由化を捉えた再生可能エネルギーの地産地消の取組による地域内経済循環の構築等、今後推進すべき方向性の一例を紹介します。

*4-3-3:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/houritu.html (農林水産省) 農山漁村再生可能エネルギー法
 平成25年11月15日に農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)が成立し、11月22日に公布され、平成26年5月1日に施行されました。この法律は、農山漁村における再生可能エネルギー発電設備の整備について、農林漁業上の土地利用等との調整を適正に行うとともに、地域の農林漁業の健全な発展に資する取組を併せて行うこととすることにより、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー発電を促進し、農山漁村の活性化を図るものです。この法律の条文や概要等につきましては、以下のリンク(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/pdf/re_ene1.pdf 等)を御参照下さい。

*4-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170816&ng=DGKKZO20000960V10C17A8KE8000 (日経新聞 2017.8.16) 経済教室:経済教室偽ニュースを考える(下)周知不足が風評被害拡大、流通や行政にも課題多く 関谷直也・東京大学特任准教授(1975年生まれ。慶大卒、東大院博士課程満期退学。専門は災害情報論)
ポイント
○安全確認されても経済的被害が止まらず
○消費者の不安和らぐも供給側に思い込み
○ブランド戦略優先し検査体制のPR不足
 風評被害とはもともと原子力分野において、放射性物質による汚染がない状況で食品や土地が忌避されることとして問題となってきた。過去の事例をまとめると、風評被害とは、ある社会問題(事件、事故、環境汚染、災害、不況など)が報道されることによって、本来「安全」とされるもの(食品、商品、土地、企業など)を人々が危険視し、消費、観光、取引をやめることなどによって引き起こされる経済的被害を指す。環境汚染や食中毒などの危険性のあるものや、安全でないものが売れないのは当然である。それとは別に「安全であるにもかかわらず売れない」からこそ問題となる現象が風評被害である。2011年の東京電力福島第1原子力発電所の事故と、その後の福島県産の食品に関する消費者の購買行動を例に、風評被害のメカニズムと解消に向けた対応策を論じたい。原発事故の直後の段階では、公的には政府が定めた放射線量の基準値以下ならば安全であるとして、この基準値以下で人々が商品を買わないことや、福島県を訪れないことで生じる経済被害が「風評被害」とされた。事故直後は出荷制限された農産物も多く存在し、実際に放射性物質が検出されることもあったため、風評被害か実害かは議論が分かれるところであった。だが、放射性物質のセシウム134はすでに半減期(約2年)が過ぎ、空間線量や農作物の放射性物質の含有量は大幅に低下してきている。汚染の状況も把握され、空間線量も明らかにされてきた。カリウムを含んだ肥料をまくなどの吸収抑制策の成果もあり、農作物に含まれる放射性物質の値は下がり、昨年度の放射性物質モニタリング検査結果では野菜2870点、果実923点、肉類3791点、野生・栽培キノコ796点はすべて基準値以下である。しかも市場に流通している福島県産の農作物は徹底した検査がされている。米は毎年、約1000万袋全量が調査されているが、15年と16年は放射性物質が基準値を超えたものはなく、99.99%が不検出を意味する「ND」であった。海産物についても昨年度は8766件が調査され、全て基準値以下だった。現在、10魚種の出荷制限が続いているが、魚種や海域を絞った試験操業は拡大している。NDとは正確には、検査機器の設定した検出限界より大きい値の放射性物質が検出されなかったという意味で、生産者や流通業者、消費者の間で、流通上の許容量のデファクトスタンダード(事実上の基準)として結果的に合意した値である。現在の風評被害は、このNDの状態であっても生じる経済被害のことだといえる。さらに、社会状況や消費者の心理状況も大きく変化している。福島第1原発は廃炉の見通しが立っていないものの、避難指示区域は縮小してきている。筆者らが実施したアンケート調査の結果を比べると、福島県産の購入を拒否する人の割合は減ってきており、とくに福島県内で消費者の意識の変化が大きく、拒否する人の割合は12%にまで減った(図参照)。放射性物質に関して不安が薄らいだ理由としては、「基準値を超えた品目は出荷制限がなされている」「放射性物質が検出されなくなってきている」など、検査体制の充実による信頼感が生まれてきたことが大きいと考えられる。筆者らのこれまでのアンケート調査でも繰り返しこれらの結果が得られている。福島の風評被害の焦点は現在、人々の不安や心理の問題から、流通の問題へと変化している。流通業者や農業関係者の中に、いまだ「福島県産の農産物に多くの消費者が不安を抱いている」と思い込んでいる人も多い。社会心理学で言う、周囲の意見を正確に認識できない「意見分布の無知」という現象である。人々への影響力の大きいソーシャルメディアでも、ユーザーが見たい情報を選択的にみる「フィルターバブル」と称される現象が起きている。一般の関心は低下しているものの、ネット上では強い関心を持つ人が多くの意見を書き込むため、「放射能の問題の有無について、いまだに論争が続いている」という印象を持つ人も少なくない。さらに福島県産の農産物の安全性は確認されてきているにもかかわらず、(1)流通が長期間滞ったことで他産地の商品に置き換わり、販路が途絶えた(2)安全なことが分かっているうえ、安価でおいしいので業務用とされることが多い(3)震災後の混乱を経験した仲卸や小売店が福島県産の回復に消極的――といった問題がある。これらが総じて現在の風評被害の最も大きな課題であるといえよう。福島の風評被害の問題はすでに次のステージに入っている。放射能などに関する「科学」的な理解の問題や、リスクに関する情報を社会で共有する「リスクコミュニケーション」の問題でもなければ、行政に対する不信感の問題でもない。「事実」がきちんと周知されていないというPRの問題である。筆者らの統計的な分析でも、購買行動に大きく影響を与えるのは「検査結果」や「検査体制」である。「福島県内では米に関して全量全袋検査が行われている」ことの周知率は、福島県内では79.0%に達しているのに対し、県外は40.8%にすぎない。「食品への含有放射性物質の検査でもほとんどがNDである」ことの周知率は県内では50.3%にもなるが、県外では17.3%しかない。図で紹介したように、福島県産の食品の購入状況が県内と県外で異なっているのは、全量全袋検査やスクリーニングなどの検査体制や、ほとんどがNDという検査結果について、事実の周知に差があるためと考えられる。福島県外では汚染対策などへの関心の低下により周知度が低く、食品に対する不安感の低減が遅れているとみられる。検査体制や結果について事実が周知されなければ、これ以上の消費の回復は望めない。現在の福島県の農林水産物についての情報発信は、検査結果に関する広報が十分ではない段階にもかかわらず、「おいしさ」をアピールするブランド戦略や広告が中心となっている。だが産地間競争が増すなかで、他地域も栽培技術の開発やマーケティングに熱心に取り組んでおり、おいしさのアピールだけでは風評被害の払拭は望めない。そしりを恐れずにいえば、現代社会では消費の選択の自由がある。福島県産を心情的に拒否する人がいても、それはやむを得ない。だが、少なくとも今の福島県の検査体制や検査結果の事実を知った上で、福島県産を拒否する合理的な根拠はすでにないことは理解される必要がある。福島第1原発事故の事例に限らず、「風評被害」という社会問題は単に消費者の不安感だけが原因なのではない。メディアの報道姿勢、人々の安全認識、安全基準の設定、市場流通、産地間競争、復興時の情報発信などが複雑に絡み合った問題である。多義的であり、時間の経過と共に変化するといえる。それゆえに風評被害は単なるリスクコミュニケーションや広告だけで解決できるものではない。課題から目を背けず、社会問題としての風評被害の事実を正確に把握し、事実をきちんと知ることが解決策につながるのである。

*4-5:http://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/24433de21832131caeb66f361abde4fa 木村結、東電株主代表訴訟事務局長
「女性自身 2017年4月4日号」(光文社)引用記事
 昨年9月、市民の反対と福島の不安に応えず、東京電力(以下、東電)は福島第一原子力発電所1号機の建屋カバーを外した。東電は放射性物質には飛散防止剤を使うので心配はないと説明していた。しかし、「女性自身」編集部が原子力規制庁のデータを検証したところ、福島県双葉郡では2017年1月の放射性セシウム134が770ベクレル/立方メートル、137が4700で合算5470ベクレル/立方メートル。カバーを外す前の2016年9月と比べると約65倍に急増していた。東京都新宿区では約4.5倍、神奈川県茅ヶ崎市では約9倍、群馬県前橋市では約13倍、千葉県市川市で約5倍となった。これは東電の怠慢であると同時に国民の安全を守らなければならない国の怠慢であり、全国各地で定点観測している規制庁は数値を知りながら警告せず放置していたことになる。1986年に福島原発と同じくレベル7の事故を起こしたチェルノブイリ原発は30年経って石棺にヒビが入り放射能漏れを起こしたため、ドーム型の覆いを施したが、これは100年持つという。チェルノブイリではデブリ(=原子炉から解け落ちて鉄や金属とともに固まった核燃料。非常に高い放射線量を持つ)を取り出すことはまだ不可能と考えているということ。ところが日本は再稼働をしたいばかりに事故を起こした原発から無理にデブリを取り出し、何が何でも廃炉が可能と言いたいようだ。それは取りも直さず作業員に多大なる被ばくを強い、無理やり帰還させた福島の住民をも被ばくさせるだけでなく、全国民も知らないうちに被ばくさせられているということ。このような原発推進ありきの政治を一刻も早く終わりにしないと日本は世界の核のゴミ捨て場になってしまう。 
-----(引用ここまで)--------
 政府・原子力ムラはこの記事の否定に躍起ですが、1号機に限らずガレキ撤去のたびに周辺の線量が跳ね上がることは以前から観測されており、何の不思議もありません。しかも溶融燃料が格納容器の底を突き抜けて地下に沈下しており、地下水と接触して大量の放射性蒸気も噴き上げています。今さら騒ぐこともない当たり前の事実です。口汚く「女性自身」を罵っている連中は、何一つ科学的なデータや根拠を示すことはしません。チェルノブイリ原発からの放射性物質の飛散を防ぐために、旧ソ連は国家の威信をかけて石棺を突貫工事で完成させました。30年を経て石棺の老朽化により再び飛散の危険があるため、さらに2千億円もかけてこのたびそれを覆うシェルターを完成させたのです。石棺も何もない青天井の福島第一原発(1F)からは放射性物質は飛散し放題です。風が吹けば大量の放射性微粒子が舞うのです。こんな当たり前のことをデマだと騒いで否定する連中は頭がおかしいとしか言いようがありません。今月1Fを見学したNYタイムズの記者たちが防護服・マスクをしていたのも、きちんとした理由があるのです。被ばくをしたくなければ、1Fから放射性物質が飛んでこない地域に避難移住するしかありません。「女性自身」には、誹謗中傷にめげず今後もぜひ真実を伝え続けてほしいと思います。読んで応援しましょう。

<人材派遣会社>
PS(2017年8月12日追加):全農の人材派遣子会社が、*5のように、リレー方式で農繁期の地域を渡り歩いたり、加工に携わったりする人を雇用して派遣すれば、働く人にとっては、①正規社員になれば生活が安定する ②多様な農業を体験できる ③定年後の高齢者・外国人などの雇用の受け皿が増える などのメリットがあり、派遣を受ける農家や加工会社にとっては、④繁忙期のみ人を増やすことができる というメリットがある。
 そして、①は被用者にとってプラスであり、②は農業に従事し始めたばかりの人や外国人にとってよい経験となり、③は雇用が増える効果がある。また、私は、この時の賃金の支払い方は、時間給だけでなく成果給を入れるのが効率を上げるポイントだと考える。何故なら、1時間あたりのみで賃金を決めるのではなく、収穫一箱あたりでも賃金を決めると、能率の良い人ほど短時間で多く稼ぐことができるため能率を上げる動機付けができ、賃金の決め方によっては双方にとってプラスになるからである。

*5:https://www.agrinews.co.jp/p40280.html (日本農業新聞 2017年3月3日)北海道-愛媛-沖縄で農作業 3JAがリレー方式 アルバイト周年確保 即戦力、人材情報を共有
 愛媛県のJAにしうわと沖縄県のJAおきなわ、北海道のJAふらのは、農繁期の労働力確保へ、アルバイトをリレー方式でつなぐ事業に乗り出した。農繁期がずれる3JAを、アルバイトが1年間渡り歩くイメージで、一定の農作業経験を積んだ即戦力として期待できる。2016年度は各JAが連携先のJAで人材募集をかけた。17年度からは他JAの加入も検討する。産地維持にアルバイトは必須なだけに、人材情報を共有するなど連携を強化し、人材確保につなげる。各JAがアルバイトに聞き取り調査などをしたところ、提携するJAでも農作業をしている事例が多く、リレー方式による連携を決めた。アルバイトの1年間の流れはこうだ。11月10日から12月20日ごろまでJAにしうわでミカンの収穫や選果場での選別作業をする。その後、JAおきなわで12月中旬から翌年3月までサトウキビの収穫や製糖作業に従事。JAふらので4~10月までメロンの品質管理やミニトマト、スイカの定植と管理、収穫を担う。各JAでは年々、アルバイト不足が深刻化している。JAおきなわは15年度、必要な約250人が集まらず一般の派遣会社を利用した。派遣会社を通じた場合は紹介料などもあり、直接募集するアルバイトより2割以上高いという。同JAは「1人でも多くリピーターを増やしたい」と連携による人材確保に期待する。JAふらのは年々、必要な採用人数に達する時期が遅くなっている。これまで4月末までに120人を確保できたが、近年は5月下旬にずれ込む。同JAの子会社で農作業支援サービスを展開するアグリプランによると、今年は2月末までで15、16人の採用しか決まっていない。「前年は同時期に約20人が決まり、状況は悪化している」と嘆く。JAにしうわ管内のアルバイトの採用人数は年々増えている。16年度は前年を2割近く上回る212人を農家が雇用した。「将来的に労働力の確保の要望は高まる」とみる。連携により、農作業経験がある優良なアルバイトの確保につなげる。新規の場合は作業効率が悪いことや働く姿勢に個人差があるため、事前にJA間で情報を共有し、有望な人材を確保する。アグリプランは「農業は他のバイトに比べ、雇用主と向かい合ってやりとりをする機会が多い。事前に参加者の個性を知ることは重要」と強調する。今後は連携JAの拡大も検討する。JAにしうわは「アルバイトにとっても選択肢が増えれば、さまざまな働き方ができるようになる」と強調する。

<脱原発・脱化石燃料と農林漁業の貢献>
PS(2017年8月13日追加):地球温暖化対策の推進に関する法律(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO117.html)の第21条1項には「都道府県・市町村は、温室効果ガスの排出量削減や吸収作用の保全・強化のため措置計画を策定する」と定められており、3項には「その区域の自然的社会的条件に応じて温室効果ガスの排出の抑制等を行うための施策(太陽光、風力その他の再生可能エネルギーの利用、都市機能集約、公共交通機関利用者の利便増進など)を行う」等々が定められている。また、農山漁村の活性化と再生可能エネルギーによる発電推進を目的として、「農山漁村再生可能エネルギー法(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/pdf/re_ene1.pdf)」も制定されているため、農山漁村で発電して市町村の上下水道に併設した送電線で電力を集め、鉄道の敷地に(超電導)電線を敷設して大量消費地に送るシステムにすると、*6の脱原発・脱化石燃料と電線の地中化が比較的安価に実現できる。
 これにより、外国に支払う燃料費が不要になるとともに、農林漁業に再生可能エネルギー発電機器を補助して所得を下支えすることにより、農林水産物への永遠の補助金を削減することが可能になり、送電した組織には送電料収入が入る。こうなると、2014年の日本の原油輸入額13.9兆円(GDP比2.9%)のうちの燃料の割合が92%の12.9兆円であるため、この外国への支払いが次第になくなって国内で廻るようになり、こういう構造改革をしていくと消費税増税や子ども保険の徴収を行わなくても必要な社会保障ができるようになる。そして、これまでこういう改革ができなかったのは縦割りの別省庁の管轄だったからで、これこそ政治主導でやるべきなのだ。
 なお、日本もEV化を進めるために、東京オリンピックを期限として東京都が東京23区内へのEVや燃料電池車以外の乗り入れを禁止すれば、瞬く間にあらゆる車種の環境車への変換が進み、空港や道路で排気ガスに燻されることがなくなり、世界に驚きを与えるだろう。また、東京だけでなく、奈良・京都・大阪・札幌・福岡やその他の観光地もそうすればよいと考える。

*6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13084985.html (朝日新聞社説 2017年8月13日) エネルギー基本計画 「脱原発」土台に再構築を
 電気や熱などのエネルギーをどう使い、まかなっていくか。その大枠を示す国のエネルギー基本計画について、経済産業省が見直し論議を始めた。世耕弘成経産相は「基本的に骨格は変えない」と語った。しかし、小幅な手直しで済む状況ではない。今の計画は、国民の多くが再稼働に反対する原発を基幹電源とするなど、疑問が多い。世界に目を向けると、先進国を中心とした原子力離れに加え、地球温暖化対策のパリ協定発効に伴う脱石炭火力の動き、風力・太陽光など再生可能エネルギーの急速な普及といった変化の大きな波が起きている。日本でも将来像を描き直す必要がある。まず土台に据えるべきは脱原発だ。温暖化防止との両立はたやすくはないが、省エネ・再エネの進化でハードルは下がってきた。経済性や安定供給にも目配りしながら、道筋を探らなくてはならない。
■偽りの「原発低減」
 14年に閣議決定された今の計画にはまやかしがある。福島第一原発の事故を受けて、「原発依存度を可能な限り低減する」との表現を盛り込んだが、一方で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。新規制基準に沿って再稼働を進める方針も明記し、実際に各地で再稼働が進んでいる。計画をもとに経産省が15年にまとめたエネルギー需給見通しは、原発回帰の姿勢がさらに鮮明だ。30年度に発電量の2割を原発でまかなうと想定する。30基ほどが動く計算で、再稼働だけでなく古い原発の運転延長か建て替えも多く必要になる。だが、原発政策に中立的な専門家からも「現実からかけ離れている」と批判が出ている。事故後、原発に懐疑的な世論や安全対策のコスト増など、内外で逆風が強まっているからだ。原発から出る「核のごみ」の処分も依然、日本を含め大半の国で解決のめどが立たない。先進国を中心に原発の全廃や大幅削減をめざす動きが広がっている。次の基本計画では、原発を基幹電源とするのをやめるべきだ。「依存度低減」を空証文にせず、優先課題に据える。そして、どんな取り組みが必要かを検討し、行程を具体的に示さねばならない。
■温暖化防止と両立を
 脱原発と温暖化対策を同時に進めるには、省エネを徹底し、再エネを大幅に増やすことが解になる。コストの高さなどが課題とされてきたが、最近は可能性が開けつつある。省エネでは、経済成長を追求しつつエネルギー消費を抑えるのが先進国の主流だ。ITを使った機器の効率的な制御や電力の需要調整など、技術革新が起きている。かつて石油危機を克服した時のように、政策支援と規制で民間の対応を強く促す必要がある。再エネについては、現計画も「導入を最大限加速」とうたう。ここ数年で太陽光は急増したが、風力は伸び悩む。発電量に占める再エネの割合は1割台半ばで、欧州諸国に水をあけられている。本格的な普及には障害の解消が急務だ。たとえば、送電線の容量に余裕がない地域でも、再エネで作った電気をもっと流せるように、設備の運用改善や、必要な増強投資を促す費用負担ルールが求められる。世界では風力や太陽光は発電コストが大きく下がり、火力や原子力と対等に競争できる地域が広がっている。日本はまだ割高で、設置から運用まで効率化に知恵を絞らねばならない。再エネは発電費用を電気料金に上乗せする制度によって普及してきたが、今後は国民負担を抑える仕組みづくりも大切になる。一方、福島の事故後に止まった原発の代役として急増した火力発電は、再エネ拡大に合わせて着実に減らしていくべきだ。現計画は、低コストの石炭火力を原発と並ぶ基幹電源と位置づけ、民間の新設計画も目白押しだ。しかし、二酸化炭素の排出が特に多いため、海外では依存度を下げる動きが急だ。火力では環境性に優れる天然ガスを優先する必要がある。
■世界の潮流見誤るな
 今回の計画見直しでは、議論の進め方にも問題がある。経産省は審議会に加え、長期戦略を話し合う有識者会議を設ける。二つの会議の顔ぶれは、今の政策を支持する識者や企業幹部らが並び、脱原発や再エネの徹底を唱える人は一握りだ。これで実のある議論になるだろうか。海外の動向や技術、経済性に詳しい専門家を交え、幅広い観点での検討が欠かせない。資源に乏しい日本では、エネルギーの安定供給を重視してきた。その視点は必要だが、原発を軸に政策を組み立てる硬直的な姿勢につながった面がある。世界の電力投資先は、すでに火力や原子力から再エネに主役が交代した。国際的な潮流に背を向けず、エネルギー政策の転換を急がなくてはならない。

<国政の方針と教育財源>
PS(2017年8月18、20日追加):*7-1のように、福島第一原発の廃炉のため国は既に1000億円超の税金を投入し、電力ばかり食って効果の上がらない汚染水対策や調査ロボットの開発費に使ったそうで、経産省が原発事故処理にまでたかって予算を獲得していることがわかる。さらに、東芝の失敗を見てもなお、*7-2のように、日立の英国子会社はスペインのテクナトム社と提携して原発新設に携わる作業員の育成や原発の運営・保守に繋げるそうで、*7-3のように、米政府代表でさえ「パリ協定」の完全履行を求める内容を含む閣僚宣言を採択したにもかかわらず、日本の経産省幹部は、①石炭火力発電所の新増設 ②国外での削減貢献分の算入 ③目標を引き下げるか原発を新設するかの選択 などを主張しているのだ。
 しかし、私は、②については、環境省の「国内の努力だけで達成すべき」というのが正しく、①③ではなく、環境に配慮した製品への代替こそが経済成長のKeyになると考える。そのため、韓国でも、*7-4のように、現代自動車が、1回の水素充填で580キロメートル走る新型FCVを2018年に韓国と欧米市場に投入し、1回のフル充電で390キロメートル走るEVも発売する予定とのことであり、この調子では、太陽光発電は中国製か台湾製、EVやFCVは中国製か韓国製が優れたブランドになり、日本は国が大きな補助をして実質マイナス価格で原発か石炭火力発電機器を売るしかなくなりそうだ。
 さらに、上のような莫大な無駄遣いを放置しつつ、*7-5のように、高等教育の無償化や福祉については、必ず財源問題が主張される。そして、政府は有力な2案(①全国民を対象に在学中は授業料を取らず、卒業後に所得に応じて拠出金の形で納付する案 ②一定の所得制限をした上で給付型奨学金を拡張する案)に絞って検討を進める方針だそうだが、教育・福祉の財源は、国内にある自然再生エネルギーで発電すれば容易に出てくるため、国立・公立大学の授業料は(無料である必要はない)せいぜい月額1万円を上限とし、奨学金は親の所得とは関係なく必要とする学生には支払うべきである。また、そうすることによって、補助金にぶら下がった仕事をするのではなく、報酬以上の付加価値を自らつけられる教育をすべきだ。
 なお、*7-6のように、日経新聞は社説で「①全員入学に近づいて大半の大学が学力による学生の選抜機能を失っている」「②このまま門戸を広げれば大学の質が低下する」「③必要なのは量的拡大より国際競争力の強化と規模の適正化だ」「④そのため外部評価に応じた資金配分が必要だ」としている。私は、大学まで無償化する必要はないと思うが、大学を卒業することにより社会貢献が多くなる学生に少ない費用で教育したり、奨学金を出したりするのは理にかなっていると考える。その際、大学の立場から見れば、①②は、選抜して間口を狭くしさえすれば質が上がるわけではなく、教育のゆとり化やスポーツ重視で高校までに得ている知識が少なく思考力が弱くなっている生徒をいくら選抜しても限界があり、少なくとも高校までの内容を身に着けていなければ大学の授業についていけない。そのため、大学はじめ試験者は、選抜者の顔色や空気を読んで相手が気に入る答えをする能力だけが鍛えられる推薦を廃止し、知識や思考力を測る試験に変えるべきだと考える。また、③の国際化が必要なのは、実は国際競争をしている第一線の人材だけで、職業によっては国際競争は少ないが専門教育を受けることが必要なものもある。そのため、望む人が大学に行けるようになったのはよいことで、今後は、知識を更新したい社会人の再教育や医療・看護・介護、工学、農学などの外国人への門戸拡大が必要だ。そして、日本の大学が勉学に困難を極める開発途上国の若者を受け入れるようになれば、結果は日本にも戻ってくる。④については、外部評価の公正性を担保した上でなら評価に応じた資金配分に異存はないが、日本人は(教育のせいか)将来を見据えた公正な評価ができないのが問題なのである。


  2017.8.18日経新聞     2011.11.13東京新聞      凍土遮水壁
      
*7-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201708/CK2017081402000112.html (東京新聞 2017年8月14日) 【社会】福島第一 廃炉に税金1000億円超 7月まで本紙集計
 東京電力福島第一原発事故の廃炉作業で、国が直接、税金を投入した額が一千億円を超えたことが、本紙の集計で分かった。汚染水対策や調査ロボットの開発費などに使われている。今後も溶け落ちた核燃料の取り出し工法の開発費などが必要になり、金額がさらに大きく膨らむのは必至だ。廃炉費用は東電が負担するのが原則だが、経済産業省資源エネルギー庁によると「技術的に難易度が高い」ことを基準に、税金を投入する事業を選定しているという。担当者は「福島の早い復興のため、国が対策を立てることが必要」と話す。本紙は、エネ庁が公表している廃炉作業に関する入札や補助金などの書類を分析した。廃炉作業への税金投入は二〇一二年度からスタート。今年七月までに支出が確定した業務は百十六件で、金額は発注ベースで計約千百七十二億六千万円に上った。事業別では、建屋周辺の地下を凍らせ、汚染水の増加を防ぐ凍土遮水壁が、設計などを含め約三百五十七億八千万円。全体の三割を占め、大手ゼネコンの鹿島と東電が受注した。ロボット開発など、1~3号機の原子炉格納容器内の調査費は約八十八億四千万円だった。福島第一の原子炉を製造した東芝と日立GEニュークリア・エナジーのほか、三菱重工業と国際廃炉研究開発機構(IRID)が受注した。受注額が最も多いのは、IRIDの約五百十五億九千万円。IRIDは東芝などの原子炉メーカーや電力会社などで構成する。国は、原発事故の処理費用を二十一兆五千億円と試算。このうち、原則東電負担となる廃炉費用は八兆円とされている。除染で出た汚染土を三十年間保管する中間貯蔵施設は国の負担だが、賠償費用は主に東電や電力会社、除染費用も東電の負担が原則だ。

*7-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170720&ng=DGKKASDZ19IOJ_Q7A720C1EAF000 (日経新聞 2017.7.20) 日立の英子会社が提携 スペイン原発関連と
 日立製作所は英国の原子力発電事業開発子会社ホライズン・ニュークリア・パワーがスペインの原発関連エンジニアリング会社であるテクナトム社と提携したと発表した。英国中部のアングルシー島で進める原発新設に携わる作業員を育成し、確実な原発の運営・保守につなげる。

*7-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170818&ng=DGKKZO20106770X10C17A8EE8000  (日経新聞 2017.8.18) 経済:エネルギー再考 論点を探る(下)50年目標、具体化か素通りか 温暖化対策、省庁間で溝
 7月半ば、ニューヨークでの「持続可能な開発目標(SDGs)」閣僚級会合。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の完全履行を求める内容を含む閣僚宣言を採択した直後、米政府代表は言い放った。「米国は協定に関する部分とはかかわりを持たない」
●米抜きでも歩み
 ほぼすべての国が参加するパリ協定。温暖化ガスの2割弱を排出する米国の離脱表明が衝撃だったのは確かだが、欧州連合(EU)や中国など主要国が歩みを止める兆しはない。7月、独ハンブルクでの20カ国・地域(G20)首脳会議で、米を除く各国は「パリ協定は撤回できない」と宣言。仏英は2040年からガソリン・ディーゼル車の販売を禁止し電気自動車などを優遇すると発表した。再生可能エネルギーの普及を急ぐドイツやカナダを含め、各国の念頭には「産業革命前からの気温上昇を2度未満にする」との協定に盛られた目標がある。カギになるのが50年をメドとする長期の削減戦略。仏独などは基本対策とともに国連に提出済みだ。各国は対応が経済成長につながるとみる。経済協力開発機構(OECD)によると、G20が温暖化防止に取り組めば50年時点で成長を約5%押し上げる。30年までに年平均6兆9000億ドルの投資が必要になる。
●石炭火力やり玉
 一方の日本。50年に80%減という長期計画を閣議決定したが、国連に出せていない。政府内調整が難しいためで、特に温暖化対策を推進する経済産業、環境両省の足並みがそろわない。「どんどん設置されれば二酸化炭素(CO2)の削減はできない」。中川雅治環境相は約40ある石炭火力発電所の新増設計画をやり玉にあげる。中部電力の計画に待ったをかけるなど影響が出ているが、経済産業省は「電力安定供給に石炭火力は必要」との立場だ。80%減を巡り、環境省は国内の努力だけで達成すべきだと訴えるが、経産省は国外での削減貢献分も算入するよう主張。対策を示す報告書も別々にまとめた。地球環境産業技術研究機構(RITE)の分析によると、国内だけで80%減を実現するには電源構成の4割以上が原子力になる。1割強はガス発電だが、排出されるCO2を回収する装置をつける。残りは再生可能エネルギーだ。このシナリオではCO2を1トン減らすのに60万円以上かかり、原発の新設も必要になる。経産省は30日、50年を見据えた有識者会議の初会合を開く。経産省幹部は「目標を引き下げるか原発を新設するかの選択になるかもしれない」と言う。将来像を詰めて具体化するか素通りするか。温暖化対策への本気度も問われる。

*7-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170818&ng=DGKKASDX17H0I_X10C17A8FFE000 (日経新聞 2017.8.18) 現代自が新型燃料電池車 航続距離39%増 欧米でも来年投入
 韓国の現代自動車は17日、新型の燃料電池車(FCV)を公開した。2018年の第1四半期(1~3月)に韓国で発売するのを皮切りに、欧米市場などにも投入する。現行モデルと同じ多目的スポーツ車(SUV)型で、航続距離は現行比39%延びるという。18年に航続距離を2倍にした電気自動車(EV)を発売することも公表した。現代自にとって2代目になるFCVは、水素と酸素を化学反応させて電気をつくる燃料電池スタックや水素供給装置などの中核部品を全面的に見直した。化学反応から推力を得るシステムの効率を60%と現行比約5ポイント上げ、1回の水素充填で走る距離を580キロメートルに延ばす。モーターの出力は163馬力でトヨタ自動車のFCV「ミライ」(154馬力)を若干上回る。欧米とオーストラリアで「18年後半の発売を見込み、中国販売も検討する」(現代自幹部)とする。FCV市場で先行するトヨタなどを追撃する。ハイブリッド車(HV)などを含む環境対応車を20年までに現在の14車種から31車種に増やす方針も明らかにした。EVは1回のフル充電で390キロメートル走るSUV型を来年前半に出す。また、現代自は航続距離が500キロメートルのEV開発に着手したことも明かした。

*7-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13091724.html?_requesturl=articles/DA3S13091724.html&rm=150 (朝日新聞 2017年8月18日) 高等教育無償化2案 卒業後に拠出金納付・給付型奨学金を拡張
 安倍政権が掲げる大学などの無償化について、政府は、有力な2案に絞って検討を進める方針を固めた。全国民を対象に在学中は授業料を取らず、卒業後に所得に応じて拠出金の形で納付する案と、一定の所得制限をした上で給付型奨学金を拡張する案の二つ。ただいずれの案でも、数兆円規模で必要ともされる財源の確保策には現時点では踏み込んでおらず、検討が難航する可能性も残る。意欲があれば大学や専修学校に進学できるようにし、高等教育への機会均等の確保を図るのがねらい。政権の目玉政策「人づくり革命」を具体化するため、9月に初会合を予定する「人生100年時代構想会議」で大学改革と合わせて議論を開始。関係法案をまとめ、2020年4月からの新制度の施行を目指す。第1案は、オーストラリアの高等教育拠出金制度「HECS(ヘックス)」を参考にする。在学中の授業料などを全額、公費で負担する代わりに、卒業してから所得に応じて拠出金を納めてもらう。「高等教育費は保護者が負担する」という原則を「社会が共同で支える」考え方に転換するものだ。拠出金は、卒業者がその時点の所得に応じて社会に貢献してもらうという位置づけだが、拠出金のあり方や額などによっては、奨学金の貸与を受けて返済するのと変わらなくなる可能性もあり、慎重な制度設計が不可欠になる。第2案の「給付型奨学金の拡張」は今年度、先行実施された給付型奨学金制度がもとになる。この制度では最終的に、年6万人程度が返済不要の奨学金を受ける見込み。日本学生支援機構が貸与し、返済義務がある奨学生(15年度で約132万人)に比べてまだまだ少ないため、拡張を検討する。しかし、所得制限をかけることで、高等教育をすべての国民に等しく開かれたものにするという考え方からは離れることになる。財源をどうするかも課題だ。新たな借金(国債)で賄うことになれば、将来世代に負担を先送りすることになりかねず、構想会議や政府部内でも激しい議論を招きそうだ。
■高等教育無償化の二つの案
◇日本版HECS(高等教育拠出金制度)
 【対象】 全国民
 【在学中】授業料は無償
 【卒業後】所得に応じて拠出金を納付
◇給付型奨学金の拡張
 【対象】 一部(所得制限あり)
 【在学中】現行制度では、授業料は減免制度で対応
 【卒業後】返還の必要なし

*7-6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170820&ng=DGKKZO20171740Z10C17A8EA1000 (日経新聞社説 2017.8.20) 
 政府は高等教育の無償化の検討を始めた。だが、私立大学の約40%が定員割れし、大半の大学が学力による学生の選抜機能を失っている。現状のまま無償化で門戸を広げれば、大学の一層の質の低下は避けられない。必要なのは、量的拡大よりも国際競争力の強化だ。人材育成や研究の中核を担う「公共財」としての価値をいかに高めるのか。長期的な視野に立ち、抜本的な大学改革に乗り出す時だ。
●規模適正化が課題に
 まず、検討すべきは大学の規模の適正化だ。バブル経済崩壊後の低成長、少子化時代に、大学はその数、入学定員を増やし続けた。その結果、志願者の90%超が進学する「全入」に近づいた。水ぶくれした大学が限られた予算を奪い合い、国全体としての教育・研究の投資効率を低下させてはいないか。18歳人口のピークは1992年度の205万人。直近は120万人で、2040年には88万人と予測される。現在の大学数は780。92年に比べ18歳人口は約40%減ったが、大学数は約50%、入学定員も約25%それぞれ増加した。今の大学進学率、入学定員が維持されると仮定すると、20年後には十数万人規模の供給過剰になる。入学定員1000人の大学が100校以上不要となる計算だ。1980年代に18歳人口が減少した米国では、大学が入学者数を抑制し、選抜機能を維持した。新入生の減少で大学は授業料を引き上げたが、連邦政府は貸与奨学金と寄付制度の拡充という支援策を講じた。少子化が進む韓国では現在、大学を5段階にランク分けし、評価下位大学に定員削減を求める荒療治を始めた。日本でもようやく規模適正化の議論が始まった。少子化による教員採用減が確実な国立大の教員養成大学・学部に対し、文部科学省の有識者会議は定員削減や他大学との機能集約・統合を求める報告書案を示した。妥当な判断だ。20年後には日本の労働人口の約49%が人工知能やロボットなどにより代替可能という民間調査がある。産業別就業者の推計なども参考に今後は、国公私立の設置形態の別を問わず、入学定員の総枠の削減を視野に、時代に適合した学部の重点化を図るべきだ。政府は東京23区内の私立大の定員増を今後認めない方針を決めた。若者の東京一極集中を是正する目的だが「木を見て森を見ず」の感が否めない。問題はむしろ学生の選抜機能を失い教育の質の低下が懸念される地方の小規模大学だ。大学間の単位互換や校地の共有化など、地域教育の中核となるような統合・再編が望まれる。大学の数や入学定員が急増したのは、「事前規制から事後チェックへ」という政府の規制緩和策が大学設置基準にも及び、一定の要件を満たせば新規開設が認められるようになったからだ。規制緩和の本質は、新規参入を促す一方、質の低いサービスは市場から淘汰される仕組みにある。しかし、大学の経営や教育水準をチェックするため2004年度に文科省が導入した「認証評価制度」がうまく機能していない。
●評価に応じ傾斜配分を
 大学基準協会などの機関が評価結果を公表しているが、社会的にほとんど認知されていない。財務省の財政制度等審議会は、主に規模や定員の充足率に応じ交付する私立大の補助金を評価結果に連動させ傾斜配分すべきだと提言。学術論文の数や学生の就職実績なども勘案すべきだと指摘する。どんな評価指標が妥当かは議論の余地があるが、公費の使途や効果の「見える化」は国民的な要請だ。評価機能の拡充も課題だ。その点、気になる動きがある。評価機関によって経営や教育が「不適格」とされた地方の私立大が公立大に衣替えするなど、定員割れの私大を地方交付税で救済する事例が相次いでいる。納税者の観点からは、違和感がある。日本の大学の国際的評価が総じて低調なのは、密度の低い教育を量的に拡大してきたからだ。高等教育無償化の前提は、各大学が入学金や授業料が公費で充当されるにふさわしい公的価値を持つことを、社会に証明することにある。国はまず、定員を戦略的に削減し教育の質を高める大学を支援するなど規模適正化と、外部評価に応じた資金配分に着手すべきだ。

<21世紀の農林漁業へ>
PS(2017年8月21、22、24、26日追加):現在の森林環境税は、都道府県が森林整備の目的で徴収する法定外目的税だ。しかし、この仕組では森林面積が広くて人口の少ない地域が二酸化炭素吸収源で水源である森林を整備することになるため、*8-1のように、国が森林環境税を新設しようとしているのは実現すべきだ。問題はどう配分するかで、私は、森林・田園・緑地帯・藻場などの面積に比例して都道府県・市町村の役割に応じて両方に交付すればよく、そのためには都道府県・市町村の役割分担を明確にする必要があると考える。そうすれば、森林・田園・緑地帯・藻場などを護ることが、直接的な地域の収入にもなる。
 なお、農業は、*8-2のように、熊本県山鹿市が民間企業と協力して最適な温度と湿度を保った無菌室で蚕を飼育し、桑の葉を人工飼料に加工することによって年24回の繭の生産を可能にして養蚕業の再興に乗り出し、「山鹿シルク」のブランドを確立させて世界のシルク産業の拠点にするそうだ。そのシルクの使用目的は、製糸、医療・医薬品、化粧品開発などだが、日本の技術の粋を尽くしたシルクのブランドイメージを作るためには、「山鹿シルク」よりも「日本シルク」「九州シルク」のようなもっと大きなブランド名の方がよいと考える。
 また、*8-3のように、鹿児島県十島村では、輸入品の多い神棚のサカキを栽培する新しい組合が生まれたり、島の特性や気候を活かして野生のヤギを出荷したり、バナナの栽培が始まったりしている。さらに、*8-4のように、佐賀県伊万里市南波多町にブドウや梨の収穫体験ができる観光農園が開園したそうだが、現代の最大の贅沢は自分で選んだ採れたての野菜や果実でジャムを作ったり料理を作ったりすることで、それが贅沢である理由は、大都会ではそれができにくいからだ。
 菓子とガムを生産していた「九州グリコ」が、*8-5のように解散し、従業員のうち非正規社員211人が雇用契約を更新されず、跡地の活用も未定だそうだ。跡地(佐賀市鍋島町大字蛎久、3万1520平方メートル)は神野公園の前にあるため、工場よりも付加価値の高い使い方ができるが、私は残った人で土地価格の安い場所に引っ越し、残った機械や技術を活用して、ケーキと洋菓子のメーカーをすればよいと考える。何故なら、この頃、馬鹿の一つ覚えのように生クリームのケーキしかなく、私はアマゾンを通して広島のケーキ屋さんからバタークリームのケーキを購入しているくらいで、ケーキも冷凍して運べば遠くからでも運ぶことができ、解凍すればできたてのようになるからだ。その際、戦後の「菓子でさえあればよい」という発想は捨て、フランスの一流パティシエを招いて作るのがよいだろう。そのケーキ・洋菓子の材料は、小麦粉・米粉・牛乳・果物・野菜など佐賀県に豊富にあり、6次産業化しての輸出も可能である。
 なお、最近は、*8-6のように、惣菜が売れている。その理由は、1~2人暮らしの家族では、いろいろな材料を買って手作りするよりも、できあがった中食を買う方が安くつき手間も省けるからだが、「九州グリコ」の元従業員のように、衛生的に食品を作ることに慣れている人は、そちらへの転用も可能だろう。しかし、この際も、惣菜だから味・栄養価・品質が一段落ちたり高くついたりしてもよいというわけではなく、手作り以上の味・栄養価・品質を出して合理的な価格で売るのが、継続的にヒットするコツである。
 また、*8-7のように、西日本新聞が「パスタ・菓子 本場の味に対抗できるか」という記事を書いているが、私は「ゆで時間が短い」「束になっている」などの理由で、国産スパゲティを買うことが多いため、国産も十分に太刀打ちできると考える。さらに、カルシウム・鉄・ビタミンなどを配合して付加価値を増し、調理を簡単にするための美味しいトマトピューレや冷凍海産物があると、売り上げがさらに上がると思われる。


 これからの課題 福岡県の森林環境税に関する説明   熊本県山鹿市のシルク  
                           2017.8.16佐賀新聞

(図の説明:2050年の世界人口は95億人となり、今のまま構造改革をしなければ、食料・水・エネルギー・資源が不足する事態となる。そのため、我が国も持続可能な社会を意識して、食料・エネルギーの自給率を上げておくことが必要だ。さらに、持続可能にするためには、国内の自然を壊さず、公害を出さずに、国内資源を十分に活用できるようにしておく必要があるため、環境税の徴収による環境維持は重要である。さらに、農林漁業に生物学・生態学の最先端の知識を導入して、担い手が誇りを持ち、豊かな生活ができる産業にしなければならない)

*8-1:http://qbiz.jp/article/116766/1/ (西日本新聞 2017年8月20日) 森林環境税、都道府県にも税収を 知事会「整備に関与不可欠」主張
 市町村の森林整備費を賄うため政府、与党が新設を検討している「森林環境税」について、全国知事会が「森林整備は都道府県の関与が不可欠」として、税収の一部を配分するよう働き掛けを強めている。ただ都道府県に配れば、取り分が減る市町村からは反発も予想される。年末の税制改正大綱の取りまとめに向け、議論が過熱しそうだ。森林環境税は、所有者が分からない森林の増加や林業の担い手不足が問題になる中、地域の実情に最も詳しい市町村が私有林の間伐を代行する財源を確保するために検討が始まった。個人住民税に上乗せして徴収し、国が森林面積などに応じて市町村に配分する仕組みが想定されている。これに対し、7月に盛岡市で開かれた全国知事会議では「都道府県が関わらないと森林整備はできない」(佐竹敬久秋田県知事)、「林業の専門職員が少ない市町村だけでは厳しい」(尾崎正直高知県知事)といった声が噴出した。会議では、都道府県が市町村への間伐事業の指導や林業技術者を派遣することなどを念頭に「税収は役割分担に応じて配分すべきだ」との提言を採択した。

*8-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/455475 (佐賀新聞 2017年8月16日) シルク産業 世界拠点へ 熊本・山鹿市に巨大養蚕工場
■耕作放棄地桑畑に転換 製糸、化粧品開発も視野
 かつて養蚕が盛んだった熊本県山鹿市は、民間企業と協力して養蚕業の再興に乗り出した。市内の廃校跡には世界最大級の養蚕工場が建設され、耕作放棄地約25ヘクタールは桑畑に生まれ変わった。「山鹿シルク」のブランドを確立させ、世界のシルク産業拠点となることで地域経済の活性化を狙う。今年4月、熊本県北部の山あいの地に延べ床面積約4170平方メートルの養蚕工場が完成し、5月に稼働を始めた。総工費は約23億円。最適な温度と湿度を保った無菌室で蚕を飼育し、病気から守る。桑の葉を人工飼料に加工する設備もあり、通常は葉の収穫に合わせて年3回程度の繭生産が、通年で24回可能となった。取り組みのきっかけは、工場を運営する市内の農業生産法人「あつまる山鹿シルク」側の提案だった。市は2014年12月、同社と新養蚕産業構想に関する協定を締結。同社による養蚕工場建設や桑畑造成の計画が具体化した。土地の有効活用や雇用創出につながると、市は用地選定や桑畑へのアクセス道路の沿道整備といった面から支えた。3年以内に国内最大産地の群馬県に匹敵する年約50トンの繭生産を目指す。現時点で、地元を中心に約20人の雇用が生まれている。あつまる山鹿シルクの島田裕太専務(37)は「徐々に生産量を増やしたい」と意気込む。一方、取り組みはまだスタート地点。市は、製糸工場建設や、繭のタンパク質を活用した医療・医薬品、化粧品開発も展望する。大手商社などと連携し、情報発信や販路開拓を強化。構想名をIT産業の聖地、米カリフォルニア州シリコンバレーになぞらえた「SILK on VALLEY(シルク・オン・バレー)」とし、関連産業の集積を図りたい考えだ。市によると、県内には昭和初期、約7万軒の養蚕農家があった。しかし、安価な輸入品の増加や、高齢化に伴う廃業により衰退し、14年には市内の2軒を含め県内で5軒にまで減った。養蚕業再興の成否はこれからだ。山鹿市は熊本の近代養蚕業の開祖とされる長野濬平(しゅんぺい)の出身地。中嶋憲正市長(67)は「広がりの大きい産業が山鹿の地から生まれれば、市民の誇りや希望につながる」と話している。

*8-3:https://www.agrinews.co.jp/p41655.html (日本農業新聞 2017年8月19日) [にぎわいの地] 島で生きる 鹿児島県十島村(下) なりわい育む“家族” 移住者の夢村民が応援
●サカキ特産化組合つくる 
 シャツに記された文字は「悪」。フェリーが港に着岸すると、高齢者から若者までそろいの服を着て港で積荷の作業に励む。命綱である生活物資を島に運び入れる作業だ。収入を得るための出荷物も皆で送り出す。家族のような一体感。それが、悪石島(鹿児島県十島村)の特徴だ。36世帯78人が暮らす。昨年、神棚に備えるサカキを栽培する新しい出荷組合が生まれた。名古屋市出身の西澤慶彦さん(20)、東京都出身の太田有哉さん(21)ら都会育ちの“ヨソモノ”と地元農家12人が団結。手間が掛からず台風に強いサカキ。組合長で自治会長の有川和則さん(65)は「ヨソモノじゃなくて家族と思っている。サカキは将来の収入の種。若者を島に残すため金をつくる仕組みを皆でつくる」と知恵を絞る。
●野生のヤギで新ビジネスを
 ここ数年、島には夢を抱いて新しい農業に挑戦する若者が移住する。必ずしも全員が夢を持ってやってきたわけでない。中には都会で傷ついた若者たちも。島で生きるため、移住後、夢を見付ける。大人たちが団結し、若者の夢を育み、支える。野生のヤギの生体出荷を始めた太田さん。「牛の草をヤギが食べて島民を困らせている。土砂崩れの原因にもなる。一石二鳥のビジネスでしょ」。少し自慢そうに構想を明かす。ここまで何かに本気になって挑戦したことは、初めてだ。太田さんは農林漁業のイベントで有川さんと知り合い、西澤さんを誘って3年前に移住した。家事が苦手で、売店もない島の生活は苦労の連続。遅刻などでたびたび島民に怒られる。「けんかするのも怒るのも家族だから。本気で僕を育ててくれている」。心の中で島民に、感謝している。病気になってもライフラインが壊れても、助け合って応急処置するしかない離島。西澤さんは「誰かが勝ち残るのではなく皆で生きていく感覚を島で初めて知った」と語る。ゲーム漬けで孤独だった高校生活。皆で支え合う家族的な島の雰囲気に、生きる居場所を見つけた。村で成人式を挙げた西澤さん。将来も島で生きていく術(すべ)を懸命に模索する。サカキ、スナップエンドウ、バナナなど新たな特産品で生計を立てようと必死だ。早朝から夕刻まで、畑へ。
●団結と温かさ一体感が支え
 高知県から移住し、漁業とバナナを栽培する鎌倉秀成さん(38)は「夢を持って生きることができる島。家族のように受け入れてくれる温かさが、生きる励み」と感謝する。若者の夢は、島民の夢でもある。畜産農家の有川俊江さん(59)は「島を選んでくれて心からうれしい。絶対、島に残ってほしい」と願う。手伝えることがないか、いつも考えているという。悪石島の名の由来は諸説ある。農家の有川安美さん(84)は隠し財宝を悪人から守るために先祖が命名したと聞いて育った。終戦も長く知らず島で生きてきた有川さん。「島に来てくれて夢に向かって頑張る若い人は、悪石島の財宝のよう。自分たちが財宝を守っていきたい」と決意する。誰もがわが事として、移住してきた若者の挑戦を応援している。本当に定住できるかは、これからにかかっているからだ。発想力を生かし挑戦する若者たちの移住。人口は増え、悪石島には保育園も近くでき、島は確実に変わった。その変化の道のりは、時に摩擦も生じる。十島村の住民は、新しい風を受け止めながら、島を残す歴史をつむいでいく。
キャンペーン「若者力」への感想、ご意見をお寄せ下さい。ファクス03(3257)7221。メールアドレスはwakamonoryoku@agrinews.co.jp。フェイスブック「日本農業新聞若者力」も開設中。

*8-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/456578 (佐賀新聞 2017年8月21日) 伊万里に観光フルーツ園 9月30日まで
■ブドウやナシ収穫体験
 「フルーツの里」の伊万里市南波多町で20日、特産のブドウや梨の収穫体験ができる観光農園が開園した。今年はブドウ、ナシともに品質が上々で、家族連れの観光客がもぎたてをかごに入れながら笑みを浮かべていた。9月30日まで。地元農家でつくる観光農業推進協議会(池田徳和会長)が毎年町内5カ所の園地を開放しており、今年で41回目。初日は高瀬ぶどう園で開園式があり、池田会長は「猛暑の影響が危ぶまれたが、ここ数日の涼しさで着色も酸切れもよく、抜群の食味」と太鼓判を押した。ナシも好天で玉太りが良好となり、「近年では一番の出来栄え」という。入園無料で、持ち帰り料金は巨峰1キロ1000円、シャインマスカットは2000円。ナシ(豊水・新高)は1キロ500円。開園時間は午前9時から午後5時。問い合わせは「道の駅伊万里ふるさと村」、電話0955(24)2252へ。

*8-5:http://qbiz.jp/article/116868/1/ (佐賀新聞 2017年8月22日) 九州グリコが解散へ 2018年12月に菓子生産停止
●江崎グリコ創業の地「特別な思い」
 江崎グリコ(大阪市)は21日、菓子とガムの生産子会社「九州グリコ」(佐賀市)の生産を来年12月に停止し、会社を2019年1月に解散すると発表した。工場の老朽化と販売不振が理由。乳製品などの生産子会社「広島グリコ乳業」(広島市)も来年10月に解散し、それぞれ生産は国内17工場に集約する。九州では、グループ工場が乳製品などを製造する「佐賀グリコ乳業」(佐賀市)のみとなり、菓子製造から撤退する。江崎グリコによると、九州グリコの従業員は262人。うち正社員51人は他工場に転籍させるが、パートなど非正規社員211人は雇用契約を更新しない。跡地(3万1520平方メートル)の活用は未定。九州グリコは1953年に九州工場として操業を開始し、01年に現地法人化した。菓子の「チーザ」とガム類を生産し、17年3月期の売上高は11億6900万円とピークの09年3月期から半減したという。佐賀県は江崎グリコの創業者江崎利一の出身地。有明海のカキの煮汁をヒントにキャラメルのグリコを製品化したといい、九州グリコの干貝(ひがい)博彦社長は「(佐賀県には)特別な思いがある」とコメントを出した。

*8-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/457446 (佐賀新聞 2017年8月24日) 総菜ポテトサラダ出荷元O157不検出 埼玉
 埼玉県熊谷市のスーパーに入る「でりしゃす籠原店」などで7、8日にポテトサラダを買って食べた14人が腹痛などを訴え、県は23日までに10人の検体からO157が検出されたと発表した。群馬県高崎市は23日、出荷元の同市の食品加工工場にあったサンプルを調べた結果、菌は検出されなかったと発表した。立ち入り調査で感染者が食べたのと同じ製造日のものを持ち帰り検査していた。高崎市によると、埼玉県からの依頼で21日と23日に調査し、製造工程を確認。感染者の食べたサラダは5~7日に製造され、6、7日に群馬、埼玉、栃木の34店舗に計約590キロ出荷されていた。5日と7日の製造分は菌が検出されなかったが、調理器具などの検査結果が24日以降に出る見込み。市は「原材料の衛生状態などに問題はなく、管理上明らかに不適切な点は確認できなかった」としている。工場は19日から操業自粛中という。埼玉県によると、総菜店を運営する群馬県太田市の「フレッシュコーポレーション」は、同工場から袋詰めのポテトサラダを仕入れ、ハムやリンゴをまぜて販売していた。

*8-7:http://qbiz.jp/article/115782/1/ (西日本新聞 2017年8月26日) 【よく分かる日欧EPA】その5:パスタ・菓子 本場の味に対抗できるか
 「今でも国産は太刀打ちできないのに、先は厳しい」。経済連携協定(EPA)で欧州連合(EU)産スパゲティやマカロニの関税が11年目になくなると決まり、国内メーカーでつくる日本パスタ協会(東京)の担当者は肩を落とす。協会によると、消費者の国産志向は強いが「パスタに限ってはイタリア、ギリシャ産が好まれる」。形や食感の種類が豊富な輸入品には国産と価格が大差ないものもあり、2016年は輸入量が国内生産量を上回った。1キロ当たり30円の関税がゼロになれば、本場のブランドがさらに浸透する。パスタ協会は原料の小麦輸入時に事実上の関税がかかり、高値で調達せざるを得ない仕組みの見直しを求めている。加工食品では、菓子の関税も軒並み撤廃される。チョコレート菓子の関税は現在10%。詰め合わせだと数千円はするベルギーのチョコ「ゴディバ」といった高級品ほど恩恵は大きくなる。国内メーカーには、EU産と日ごろ食べる国産菓子とはすみ分け可能との見方が多い。ただ、乳酸菌入りのチョコを手掛ける不二家は「今後も付加価値のある製品開発に力を注ぐ必要がある」と輸入増加に気を引き締めており、新商品の投入競争が活発になりそうだ。
   ◇   ◇
日欧EPAで貿易や投資のルールがどう変わるのか。暮らしや産業への影響を中心に解説する。

<漁業について>
PS(2017年8月24、26、28日追加):一般の人に海は水面しか見えていないため変わっていないように感じるだろうが、実際には水中のいたるところに生物が生息し生態系があって、人間はそれを利用しているわけである。わかりやすい例では、*9-1のように、ウニは食べ物の海藻が少なければ身が入らず商品にならない。また、海藻が減って砂漠のようになった海を「磯焼け」と呼び、「磯焼け」の主な原因は海水温の上昇で生物が増えて海藻が食べ尽くされることと書かれているが、海水温上昇の原因は地球温暖化だけではなく原発の温排水や海底火山の噴火もあり、海藻の生育にも適切な海水温があるため、「磯焼け」する原因は多い。その結果、食べる身のないウニが増えるため海藻は重要なのである。ただし、ウニの場合は身のないウニを捕獲して陸上の植物や藻類のユーグレナなどで安い飼料を作って養殖することが可能だと私は考える。
 そのような中、*9-5のように、原子力規制委員会は、2017年8月25日に九電が再稼働を目指している玄海原発3号機(佐賀県玄海町)の「工事計画」を認可したそうだ。原発が稼働すると、温排水により海が暖められて正常な生態系が壊れるとともに、原発を冷やすために大量の海水とともに海の生物の幼生を吸い込んで煮殺して排出する。これも藻場の衰退や漁獲高減少の原因であるにもかかわらず、原発を再稼働させるなど何を考えているのかと言いたい。
 しかし、*9-2は、「①三陸沖での漁獲量が減っているのは、中国が公海で大量に獲っているのもあるが、資源の枯渇も原因だ」「②日本の水産業が抱える問題の縮図が、東日本大震災が起きた三陸にある」「③震災により廃業した漁業者が増え、高齢化と後継者不足が顕著に表れている」「④より厳しく確実に水産資源を管理し、地球環境だけでなく漁業者の生活にとっても持続可能な漁業を実現すべき」などとしている。しかし、①の中国が公海で大量に獲って資源が枯渇しそうなのは事実だが、②③の東日本大震災で原発事故が起きた三陸沖はいろいろな意味で漁業に適さない海になっているという特殊事情があるため、他の要因と混同させるのはよくない。また、④については、日本の漁船は既に網目を大きくして幼魚は逃げられるようにし、漁業者の数も減っているため、日本の水産資源管理を厳しくするよりは他国にも同様の規制を促すとともに、海の環境を守ることの方が重要だ。そして、その結果は食料自給率に影響する。
 さらに、*9-3のように、「第6あおい丸」が優良な漁場である長崎県壱岐沖で海砂を採取した後、平戸沖を経由して諫早市久山港に向かう途中の平戸沖で沈没した。対馬や壱岐沖ではイカ釣りなどの漁業が盛んだが、海砂を取ると砂の中に産み付けられた魚介類の卵を一緒に吸い込むため、不漁の一因になっていると言われている。そのため、一石二鳥になるよう、海砂ではなく、埋まってしまったダムの底や天井川の川底の砂をとるべきで、日本はこのように漁業を持続可能にするための国を挙げての努力が行われていないのだ。
 その上、*9-4のように、ロシアは北方領土を経済特区に指定し、「先行発展地域」に指定するそうで、日本政府の言う「特別な制度」にどういう意味があるのかは不明だが、日本政府は現在最もやるべきことを考えていなかったため、北方領土を返還してもらうこともできず、“共同経済活動”だけを行って北方領土を諦めることになったらしいのは、悲しくも阿保らしい。
 そのため、このような漁業上の理由からも、*9-6の高知新聞による「エネルギー計画は、脱原発を明確にすべきだ」という意見及び*9-7の山陽新聞による「エネルギー計画、現実踏まえ抜本見直しを」という意見に全く賛成だ。

  
                  *9-1より
(図の説明:ウニの漁獲高は、左のグラフのように年々減少している。その原因は、①中央の写真のように、えさとなる海藻がなくなる磯焼けをしていること ②それにより、右の写真のように、餌不足のウニに食用部分の身が入らないこと などである)

*9-1:https://abematimes.com/posts/2467906 (Abema Times 2017.6.2) 寿司屋からウニが消える?漁獲量を減少させる「磯焼け」とは
玄界灘に面した新三重漁港をはじめ、長崎県は全国4番目の漁獲量を誇るウニの好漁場だ。しかし近年、ウニの漁獲量は年々減少しているという。中には身の入っていないウニもあった。原因は「磯焼け」だ。海岸に生えているコンブやワカメなどの海藻が減少、不毛の状態となってしまう現象だ。磯焼けの海で獲れるウニは、身入りが悪く、売り物にはならない。長崎県のウニの漁獲量は1970年代後半には4000トン以上を記録していたが、現在はその10分の1程度にまで落ち込んでいる。福岡市中央区にある「うにと海老の専門店 魚魚魚」の島津料理長によると、価格も高騰、1キロ5000円~1万円の幅で変動しているという。30年以上全国各地の海に潜り「磯焼け」を研究、水産庁の「磯焼け対策ガイドライン」策定にも携わった東京海洋大学の藤田大介准教授は、「磯焼け」の主な原因は温暖化による水温上昇が引き金となって生物の活動が活発化し、海藻が食べ尽くされてしまったことだと話す。さらに、気候変動で大型の台風や時化の発生が増え、海藻が引き剥がされ枯れてしまうのだ。 また、ウニそのものも「磯焼け」の原因になってしまっている。飢餓に強く、食料がない場合は生殖せずに生きていこうとするのだという。「磯焼け」の海で取れた、身の入っていないウニは、精巣・卵巣の部分の成長を抑えているウニということだ。「実は東日本大震災の直後、養殖施設が流れてしまったことで潮通しが非常に良くり、海藻にとってプラスに働いた。その後に生まれたウニたちが食べ盛りになっていて、今、大いに暴れている。そこで水温が高くなると、ますます海藻を食べてしまう」(藤田准教授)。長崎の漁師たちも手をこまねいていたわけではない。漁協では、ウニの移植で磯焼けの解消を図っている。ウニを普通の藻場に移し、磯焼けが進行した場所には海藻を移植、繁殖を促している。また、藤田准教授は「北海道では冬のエサがない時期にイタドリの葉っぱを与えるという試みもあった。エサに困るところはそういう努力もしている」と、不要になった野菜を使った養殖の可能性も示唆した。将来、私たちが美味しいウニを食べられなくなる日が来てしまうのだろうか。藤田氏は「磯焼け対策の中でも、一般市民ができることはまだまだあると。ダイバーの方は写真を撮って記録していただくとか、陸上で手伝えることもあると思う。参加していただければと思う」とした。

*9-2:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO19950560U7A810C1I00000/?n_cid=MELMG002 (日経新聞 2017/8/16) 市場で買う魚がない 減り続ける水産資源、三陸沖の不都合な真実(上)
 ノルウェー近海、北米東海岸と並び世界三大漁場のひとつといわれる三陸沖。親潮と黒潮がぶつかる潮目でとれる豊富な種類の魚介類は、長らく日本人の食生活を支えてきた。しかし今、三陸沖での漁獲量が減っている。宮城県北部の気仙沼湾。最も奥まったところにある鹿折地区に、18社の水産加工会社が名を連ねる気仙沼鹿折加工協同組合(気仙沼市)がある。地元の加工業者が事業コストを減らすために設けた7000トンの大型冷蔵庫が低い音を響かせる。
■細る漁獲量
 しかし組合は冷蔵庫の稼働率を高めるのに苦労している。2016年末の時点で稼働率は6割ほど。本来は魚で冷蔵庫の棚を埋めたいところだが、やむなく組合企業から海藻類を集め、やっとのことでフル稼働に近づけた。「サンマやカツオなど、気仙沼で揚がる主要な魚種がとれなくなっている」。当初の計画通りに漁獲量が上がらず、組合の細谷薫事務局長は頭を悩ませる。組合企業で缶詰などを製造するミヤカン(気仙沼市)で原料・直販を担当する三浦謙一氏は、最近魚市場に買い出しに行っても何も買わずに帰ってくることが増えた。「水揚げそのものがない場合が多く、揚がっていても高くて入札で落とせない」。サンマの缶詰は同社の主力商品の一つだ。だが16年の日本のサンマ漁獲量は約11.4万トンと、水産庁が統計を取り始めた1977年以降の最低を記録した。気仙沼魚市場には16年10月時点では5700トンのサンマが揚がり、1キログラムあたり188円の値が付いた。03年10月と比べると量は約半分に、価格はほぼ4倍に跳ね上がっている。ミヤカンの寺田正志社長は「台湾や中国などが公海でたくさんとっているのもあるが、資源そのものの枯渇も原因だ。ここ2年ほどは小さいものしか揚がらない」と嘆く。
■漁業大国は過去のモノに
 「6本目ェ!」「はい7本目ェ!」。午前3時、宮城県東部の石巻湾。東松島市の漁師、大友康弘氏が海からはえ縄を手際よく船上にたぐり寄せる。縄の先の針をくわえた旬のスズキは甲板の上でバタバタと力強い音を立て抵抗する。大友氏は釣ったスズキの水揚げ量を記録し、岩手大学の石村学志准教授に報告する取り組みを2年前から始めた。水産資源学が専門の石村准教授のもとでスズキの資源量を科学的に調べ、どのくらいの漁獲量なら資源の回復と漁業が両立し得るか、その水準をはじき出すのが狙いだ。石巻湾のスズキは長く漸減傾向にあった。ところが11年の東日本大震災から4年間、湾内ではスズキ漁が取りやめになり、資源量が大きく回復したという。「スズキが増えた今がチャンスだ。この資源水準を保てる漁のやり方を探したい」。大友氏は過去に記録していた水揚げ量の資料も含め計7年分のデータを石村准教授に渡している。「日本は漁業大国」。世界各国の水揚げ高と比べれば、そんな言葉が過去のものだということは一目瞭然だ。国連食糧農業機関(FAO)によると、日本はかつて他国を大きく引き離していたが、1984年の1159万トンをピークに右肩下がり。中国、ペルー、米国、インド、インドネシアに抜かれ、現時点では6位まで下がった。特に三陸地方の主要漁港である八戸、宮古、釜石、大船渡、気仙沼、女川、石巻、塩釜の8港の水揚げ高は、03年に55万トンだったのが15年には42万トンにまで減少。東日本大震災が起きる前から減少傾向は続いている。水産庁によると、日本周辺の主要な48魚種79系群(系群は一つの魚種の中で産卵場、産卵期、回遊経路などが同じ集団を指す)のうち、16年9月時点で実に半数の資源量が低位にあり、3割超は資源量が中位にあるという。資源量が低位にある魚種にはマサバやスケトウダラ、ズワイガニやトラフグなどが挙げられている。スズキ以外のこうした日本の食卓になじみ深い魚種についても、大友氏は警鐘を鳴らす。「今の発達した漁業技術をもってすれば、この石巻湾内のあらゆる魚を取り尽くすのはいとも簡単なことだ」
■漁業者は利益上げにくく
 漁獲量の減少により、漁業者や水産加工会社は利益を上げにくくなっている。特に日本の漁業生産額の約6割を占める沿岸漁業では個人経営が多く、原油の高騰なども所得に大きく響いている。15年時点の沿岸漁船漁師の平均漁労所得は年261万円と漁業だけで生活するには困難な水準だ。収入が低いため若い漁業者も集まりにくく、後継者不足と高齢化が深刻化している。
日本の水産業が抱える問題の縮図が、東日本大震災が起きた三陸にある。震災により廃業した漁業者が増え、高齢化と後継者不足がより顕著に表れている。全国の漁業経営体の数は13年に9万4507件と03年から28%減少したが、宮城・岩手の両県では計5676件と、同じ10年間で41%も減っている。
――より厳しく確実に水産資源を管理し、地球環境だけでなく漁業者の生活にとっても持続可能な漁業を実現する――。国や漁業関係者のあいだで、漁業大国の名を名実ともに取り戻すための挑戦が始まろうとしている。

*9-3:http://qbiz.jp/article/116928/1/ (西日本新聞 2017年8月22日) 長崎・平戸沖で砂運搬船が沈没 2人不明1人心肺停止
●停泊中、3人は漁船に救助される
 22日午前3時40分ごろ、長崎県平戸市沖で長崎市平野町の「葵新建設」所属の台船を押す押し船「第6あおい丸」(98トン)が遭難信号を出した後、沈没した。佐世保海上保安部によると、乗船していた男性6人のうち4人が救助されたが、航海士大浦作美さん(59)=福岡市南区大橋3丁目=の死亡が確認された。2人が行方不明となっている。救助された他の3人はいずれも意識があるという。行方不明になっているのは、船長の竹谷和浩さん(48)=長崎県新上五島町七目郷、航海士丸山勝広さん(46)=同県平戸市生月町山田免。第7管区海上保安本部(北九州)が捜索している。海保などによると、第6あおい丸は台船の「第8あをい丸」と連結して運航。長崎県・壱岐沖で砂を採取した後、平戸沖を経由し、同県諫早市の久山港に向かう途中で、現場付近でいかりを下ろして停泊していたという。台船もともに沈み、救助された4人は台船に乗っていたという。海保によると、現場は平戸島北東約4キロの海上で、当時は晴れており海は穏やかだったという。乗組員の一人は「船が浸水して急に傾き、6人が海に投げ出された」などと説明している。他に救助されたのは、機関長森律雄さん(66)=平戸市、航海士森元徳さん(55)=同、機関士笹山安彦さん(48)=長崎市。笹山さんは近くの漁船に救助され、2人の森さんは海保が救助したという。
●過去にも転覆・沈没
 長崎県沖では、これまでにも船の転覆・沈没事故がたびたび起きている。
五島列島沖では1993年2月、巻き網漁船「第7蛭子(えびす)丸」(80トン)が転覆して沈没、乗組員19人が行方不明になった。同年7月には、佐世保市沖で巻き網漁船「第21金光丸」(14トン)と砂利運搬船「龍玉丸」(683トン)が衝突、金光丸が沈没して9人が死亡した。2009年4月には平戸市沖で、巻き網漁船「第11大栄丸」(135トン)が沈没して船長ら12人が犠牲になった。その10日後には、五島市沖で巻き網漁船「有漁丸」(19トン)が座礁・沈没。10年1月にも同市沖で底引き網漁船「第2山田丸」(113トン)が沈没、10人が死亡した。15年9月には、対馬市沖でイカ釣り漁船「第5住吉丸」(10トン)など5隻が転覆し、5人が死亡している。大きな事故が起こるたび、漁業者や行政は事故防止策の見直しを進めてきた。ただ、後継者不足や魚価低迷で老朽化した船の新造が難しいなど、事故の背景には漁業が直面する厳しい現状を指摘する声もある。

*9-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201708/CK2017082402000123.html (東京新聞 2017年8月24日) 【国際】ロシア、北方領土を特区指定 共同経済活動影響か
 タス通信によれば、ロシアのメドベージェフ首相は二十三日、訪問先の極東サハリン州で、南クリール諸島(北方領土)を、外国企業の誘致などを目的としたロシアの経済特区「先行発展地域」に指定する決定に署名した。日本政府は、北方領土で双方の法的立場を害さない「特別な制度」での共同経済活動実現を目指してロシア政府と協議中。一方的ともいえる特区指定は、共同経済活動の実現に否定的な影響を及ぼす可能性がある。日ロは現在、観光や養殖など共同経済活動の事業案絞り込みを進めるが、ロシア側は「特別な制度」をめぐる協議には消極的とされる。九月上旬に極東ウラジオストクで予定される日ロ首脳会談を前に、特区指定で日本をけん制する狙いもあるとみられる。先行発展地域には税制優遇措置などがあり極東地域では十八番目。メドベージェフ氏は「漁業やインフラ整備に役立ち、地域の発展を後押しする」と強調した。共同経済活動を巡って、ロシアの経済関係者からは「日本が特区に参加する形で進めるべきだ」との意見がある。一方、ロシアが指定した特区での経済活動は、北方領土でのロシアの主権を認めることになる。日本側が創設を求める「特別な制度」とは矛盾し、日本側としては受け入れ困難。

*9-5:http://qbiz.jp/article/117302/1/ (西日本新聞 2017年8月26日) 九州の原発:玄海原発3号機の工事計画認可 再稼働は越年も
 原子力規制委員会は25日、九州電力が再稼働を目指す玄海原発3号機(佐賀県玄海町)について、設備の詳細設計をまとめた「工事計画」を認可した。九電は、設備性能を現地で確認する「使用前検査」を28日にも申請する。工事計画の審査が長引いたため、今秋を想定していた再稼働は12月以降にずれ込む見通しで、越年の可能性が出ている。再稼働には使用前検査に加え、運転管理体制を定めた「保安規定」の認可も必要。一連の手続きに4、5カ月程度を要するとみられる。九電は25日、「引き続き国の審査に真(しん)摯(し)かつ丁寧に対応する」とコメントした。玄海原発3、4号機は1月に新規制基準の適合性審査に合格した。九電は3号機を先行して再稼働する方針。4号機は工事計画の審査が続いており、九電の補正書提出を受け、3号機に続いて認可される見通し。

*9-6:http://www.kochinews.co.jp/article/121389/ (高知新聞 2017.8.28) 【エネルギー計画】脱原発を明確にすべきだ
 国の中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の改定に向け、経済産業省が作業に入った。有識者の意見を聞きながら年度内にもまとめる方針だ。最大の焦点はやはり原発の方向性になる。国民が納得のいく、しっかりとした論議を求めたい。現計画は2014年4月に策定された。東京電力福島第1原発事故後初の改定で、事故の反省と教訓を前面に打ち出したが、矛盾が目立つ内容というしかない。序文で「震災前に描いていたエネルギー戦略は白紙から見直し、原発依存度を可能な限り低減する」と強調する一方で、その原発を石炭火力や水力とともに安定供給を図る「ベースロード電源」に位置付けた。事故後に停止した全国の原発の再稼働を進める方針も掲げている。旧民主党政権は事故後、脱原発の声の高まりを受け、「30年代の原発ゼロ」を打ち出していた。政権交代で後を継いだ安倍政権がそれを転換し、「原発回帰」を掲げたといっていいだろう。国民の声を無視し、アベノミクスの実現を優先したとの批判もある。15年には30年度の電源構成比率を決め、原発を「20~22%」とした。世界各国が積極的に導入している再生可能エネルギーの位置付けは「22~24%」にとどまっている。政府の原発依存の姿勢は明らかだ。しかも、原発の電源構成比率2割以上を実現するには、いま停止中の原発の再稼働を進め、老朽化した原発の運転期間延長や建て替えが前提になる。福島第1原発事故後に改正された原子炉等規制法は、原発の運転期間を原則40年としているが、原子力規制委員会が認めれば、特例で1回に限り20年の延長ができる。に2基が延長審査に合格しており、原発事故を教訓に設けられた運転期間制限の形骸化が早くも懸念されている。建て替えとなれば脱原発はさらに遠のく。世耕経産相は、計画改定について「(計画の)骨格を変える段階にない」と述べている。電源構成目標の達成方法を論議したいという。ひとたび原発の過酷事故が起これば、復興がいかに難しいかは被災地が示している。福島第1原発はいまもって廃炉の具体的な見通しが立たず、事故対策費は約22兆円に上るとの試算もある。原発は極めてリスクが高く、他の発電方法と比べコスト競争力に勝るとも言えなくなっている。何より多くの国民が脱原発を望んでいる。一足飛びにはいかないにしても、政府は中長期の戦略である新計画で脱原発を明確に打ち出し、その道筋を探るべきだ。地球温暖化防止も含め、再生可能エネルギーの導入にもっと汗をかく必要がある。福島の事故責任の一端は、「安全神話」に陥り、過酷事故への備えが不十分だった政府にもあると、現計画も記している。まやかしのような計画や政策を続けてはならない。

*9-7:http://www.sanyonews.jp/article/587277/1/ (山陽新聞 2017年8月28日) エネルギー計画 現実踏まえ抜本見直しを
 国の中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の見直し議論が経済産業省の有識者会議でスタートした。2014年の現行計画の決定以降、エネルギーや環境を巡る状況は変化している。抜本的な見直しに踏み出すべき点は少なくないはずだ。ところが、世耕弘成経産相は大幅見直しに慎重な姿勢を示している。原発について現計画は「依存度を可能な限り低減する」としつつ、「重要なベースロード電源」とも位置付けている。30年度の「電源構成」目標では、原発が20~22%を担うとした。東京電力福島第1原発の事故を受けて、脱原発を望む多数の国民の思いを反映しておらず、逆に原発回帰路線を鮮明に打ち出したものとなった。原発で約2割をまかなうためには既存の42基の多くで再稼働が必要となる。「例外」とされたはずの運転期間の40年制限を超えた延長もしなければ達成できず、実現性には疑問符が付こう。老朽原発の運転データはまだ少なく、トラブル増加を招く恐れも指摘されている。計画が示された14年以降、再稼働した原発は5基にとどまっている。新潟県の柏崎刈羽原発を巡る地元同意の難航など、再稼働が容易でないことも示されている。目標が現実に即したものになるよう、丁寧な議論が必要だ。もう一つの焦点が再生可能エネルギーである。現行計画は「導入を最大限加速する」とうたい、目標を22~24%(水力含む)としている。再生エネは原発事故後、日本でも育ちつつあるとはいえ、水力を除いた太陽光、風力などは6%にとどまる。26%を占めるスペイン、25%のドイツなどの欧州各国と比べれば立ち遅れは明らかだ。日本が再生エネの課題に挙げる発電コストの高さについて欧州では、市場拡大による設備価格の低下などにより火力、原子力と同等か割安の水準を実現している。昨年秋には、地球温暖化防止のための新たな枠組み・パリ協定が発効した。日本は温室効果ガス排出量を50年に13年比で80%削減する目標を掲げ、先進各国も思い切った目標を設定した。多くの国で再生エネ拡大を目標達成手段の柱に据え、技術革新やインフラへの投資が相次いで、ビジネスチャンスともなっている。経済面からも乗り遅れないようにしたい。現行計画で推進を掲げている核燃料サイクル政策の根本的な見直しも急務だ。政府は昨年末、トラブル続きの高速増殖原型炉もんじゅの廃炉を決めた。政府は後継となる高速炉の開発を進めるというが、サイクル政策の延命にも限界があろう。日本のエネルギー政策が時代に取り残されることのないよう、政府は現実を直視し、計画を練り直していくことが求められる。

<では、次に進もう>
PS(2017.8.28追加):10-1のように、準天頂衛星「みちびき」を使えば、既存のGPSと併用して最小6cmの誤差で位置を測ることができ、正確な測位で農機の自動走行ができるようになるというのはすごいが、確かに道路を移動中も安全に自動運転して欲しい。
 また、*10-2-1のように、水田の給排水を自動化して水管理時間を8割減少させ、遠隔操作できるのようにしたというのも素晴らしい。このような中、*10-2-2のように、地震や豪雨で多くの溜池が決壊したそうだが、この際、どうしても必要な溜池と地下水や下水浄化水で代替できる溜池を選別したらどうだろうか。このうち下水浄化水は、現在では飲めるほどまで浄化できるそうだが、窒素・リン酸・カリウムを少し残して肥料の節約をすることも可能だ。
 さらに、*10-3のように、「農家・漁師をスターにする」として、早稲田・慶應など首都圏8大学の学生編集部が生産者の生の声を月間約2万の読者に届けているのは面白いが、販売はマーケティングで、自動農機はロボットであるため、いろいろな学部の学生が農林漁業の現場を体験して、スマートに問題解決する方法を考えれば有意義だと思われる。

*10-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170828&ng=DGKKZO20441280Y7A820C1PE8000 (日経新聞社説 2017.8.28) 衛星生かし精密農業の推進を
 衛星画像やIT(情報技術)を利用し、農業生産の効率向上をめざす「精密農業」が米国で広がっている。日本でも担い手が不足する農業の改革は待ったなしで、準天頂衛星「みちびき」を使う日本版GPS(全地球測位システム)を最大限活用すべきだ。米国では東京ドーム400~500個分もの農地を数人で経営する場合もあり、精密農業による効率化のニーズが高い。GPS受信機、収量計測装置などを搭載し、自動運転も可能なトラクターやコンバインが増えている。日本の農地は規模が小さいが生産性向上などの課題は米国と共通しており、学ぶべき点は多い。米モンサントはGPSの位置情報を使い農地の区画ごとの雨量、収量などをスマートフォン(スマホ)画面の地図上にわかりやすくカラー表示するサービスを始めた。気象情報会社を買収し観測やデータ解析のノウハウを得た。近年は局地的豪雨が増え、隣接地でも雨量が異なる場合がある。同じように育てた同一品種でも、収量が少ないこともある。スマホなどで常に実態を把握できれば、区画ごとに収穫時期をずらしたり品種を替えたりするのに役立つ。日本はみちびき1~3号機の打ち上げに成功し、今年度中に4基目が上がる予定だ。既存のGPS信号と併用して最小6センチメートル程度の誤差で位置を測れるようになる。精密農業の普及につながる新サービスを展開する好機だ。正確な測位で農機の自動走行の安全性は高まる。農林水産省は今年3月、人間が近くで監視しながら、農地でトラクターなどを無人で自動走行させる際の安全指針を出した。今後は遠隔操作での無人走行や、農地に隣接した一般道の走行も検討すべきだろう。測位情報は他の衛星の画像、気象、地形、地質などの多様なデータと組み合わせてこそ使い道が広がる。斬新なアイデアをもつ企業がこれらを素早く入手して事業に生かせるよう、関係省庁が連携して仕組みづくりを進めてほしい。

*10-2-1:https://www.agrinews.co.jp/p41733.html (日本農業新聞 2017年8月28日) 水田給排水を自動化 管理時間8割減 遠隔操作装置+アプリ 農研機構
 農研機構農村工学研究部門は、スマートフォン(スマホ)などで水田の給排水を自動設定し、水管理の時間を8割減らすシステムを開発した。給水バルブと排水口に遠隔操作装置を取り付け、圃場(ほじょう)に行かなくても水深が制御できる。給排水の両方を自動化したのは日本初で、今年度中に市販化の予定。水稲の労働時間の3割を占める水管理を軽減し、農地を集積する担い手を支援する。研究は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環。遠隔操作装置はソーラーパネルやアンテナ、モーターなどを組み合わせて作り、給水バルブと排水口の両方に使える。電波で開閉し、各社のバルブに後付けできる。この他、水深を感知するセンサー、電波の基地局などを設置する。制御の仕組みは、センサーが水深の変化を感知すると自動で給排水を調節し、元の水位に戻す。水位の設定は専用のアプリを使いスマホやタブレット、パソコンでできる。アプリでは水位や気温の確認もできる。省力の他、豪雨で急に増水したときも有効だ。20アール区画で実証試験をしたところ、水管理の年間の労働時間は3時間と、慣行水田の15時間に比べて8割減った。無駄なかけ流しが減るため、使う用水量を50%に節約する効果もあった。システムは年度内に国内メーカーから発売される予定だ。価格は基地局が1台20万~30万円、バルブを動かす装置(給水、排水共通)が同10万円。サーバーの利用料が1カ月当たり2000~4000円ほどを見込む。同部門は「農地の集積で分散した水田が増える中、担い手の省力効果は大きい」と説明する。品種などから水管理が自動で分かり、収量や品質が向上できる仕組みも開発中だ。

*10-2-2:https://www.agrinews.co.jp/p41729.html (日本農業新聞論説 2017年8月27日) ため池 総点検 防災強化へ再整備急げ
 地震や豪雨で決壊するため池が続発している。釣りなど娯楽中の死亡事故も続く。政府は農業用水の確保に欠かせぬため池の再整備を急ぎ、防災機能と安全性を高める必要がある。ため池は、西日本を中心に全国に約20万カ所ある。主に雨の降水量が少ない地域で農業用水を確保するために人工的に造られた。洪水調節や土砂流出を防止する効果に加え、生物の生息・生育の場所の保全、地域の憩いの場の提供など、多面的な機能もある。2ヘクタール以上の農地をカバーするため池は約6万カ所あり、このうち7割が江戸時代以前に造られた。取水施設などでの老朽化が進んでいる。多くは地元の水利組合や土地改良区、農家などが管理する。農家の減少や高齢化から管理が行き届かず、堤の崩れや排水部の詰まりなどが起きている。農水省の調査によると、下流に住宅や公共施設のあり、決壊すると大きな被害が予想される「防災重点ため池」は、1万カ所を上回った。近年は都市化や混住化が進み、事故の危険性が増している。安全性が確認できない3391カ所に対する詳しい調査を地方公共団体が行うが、整備を急ぐ必要がある。最近10年のため池被災は、7割が豪雨、3割が地震で決壊や流失している。7月の九州北部豪雨災害で大きな被害を受けた福岡県朝倉市では、市内のため池108カ所の1割に当たる11カ所が流出・決壊した。こうしたため池の復旧を急ぐとともに、耐震性を高め、洪水防止策を強めるなど、安全性の強化を急ぐことが肝要だ。ため池を抱える地域では、農家が減る中で受益農家にかかる工事費用の負担が重く、改修工事の合意形成も容易ではない。政府がしっかり支援すべきだ。農水省は農村地域防災減災事業(508億円)に含まれているとするが、心もとない。現場のニーズに応えられるように予算を確保し、改修工事などをしやすくしたい。また、補助率を高めるなど農家負担を減らす方法も改修を後押しするはずだ。ため池での死亡事故は増加傾向にある。2016年度は26件で32人が亡くなった。60歳以上の高齢者が多く、例年水利用が多くなる5月から9月にかけて多発している。ため池を管理する土地改良区や個人は、安全管理に対する意識を高めるとともに、監視を強める必要がある。死亡事故には、釣りなどの娯楽中の事故も多い。夏休み期間の子どもたちが危険な箇所に立ち入らないように注意喚起したり、安全柵を設置したりする対策も進めるべきだ。また、管理作業中の事故も多い。高齢者の作業は特に注意する必要がある。農山村は人口減少と高齢化が進んでいる。ほったらかしにしたままのため池はないか。地域のみんなで点検し、必要な整備を急ぐことが大事だ。政府は、こうした取り組みを全力で支援すべきである。

*10-3:https://www.agrinews.co.jp/p41724.html (日本農業新聞 2017年8月27日) 若者力:[食農応援隊 大学生リポート](9) 長期密着し“スター”育成 首都圏8大学の学生が編集 農家の生の声を発信するWEBサイト 日本食べるタイムス
 「タケノコ王」って知っていますか? 目印はピンク色のタンクトップ。全国放送のテレビ番組で準レギュラーとしても活躍するタケノコ農家、風岡直宏さんです。2年前、無名だった風岡さんの情報発信を「日本食べるタイムス」(以下食べタイ)が引き受け、彼が“農家スター”になるまで伴走しました。今では彼の下にファンがサインを求めて訪れ、タケノコの産直販売は大盛況です。食べタイは、農家の生の声を発信するWEBサイトです。コンセプトは「農家・漁師をスターにする」。早稲田、慶應など首都圏8大学の学生編集部20人が、全国約200人の生産者の生の声を、月間約2万の読者に届けています。大量の情報の中に埋もれてしまった農家のブログやSNS(インターネット交流サイト)投稿を掘り起こしたり、学生が現地で取材したりして記事を発信しています。何度も現場に通い、一緒に農作業をすることもあります。このような長期密着・仕事体験型の取材は、学生だからこそできる発信方法です。登録生産者からは「過去最高の売り上げになった」「ここで働かせてほしい、と若者に志願された」などと反響をいただいています。われこそは、という農家、推したい農家さんがいる農業関係者の皆さん、ぜひ食べタイにご連絡ください。登録は無料です。(代表・森山健太=早稲田大学)
*キャンペーン「若者力」への感想、ご意見をお寄せ下さい。ファクス03(3257)7221。メールアドレスはwakamonoryoku@agrinews.co.jp。フェイスブック「日本農業新聞若者力」も開設中。

<お粗末な日本の食料政策>
PS(2017年8月31日、9月1日追加):*11-1の「①食料自給率が38%にダウンしたから、1ポイント上げるために、ご飯をもう一口食べろ」「②日々の食卓に、ちょっと工夫しろ」という指示を出すような意識の低い人が人がリーダーでは困るのである。何故なら、①は、現在は、*11-2、*11-3のように、健康上の理由で栄養バランスを考えて糖質・炭水化物を控えている時代だからであり、供給者が需要に合わせて生産を調整するのではなく、できたものを食べるように需要者に注文を付けるというのは市場主義にも反するからである。また、斎藤健農相の「消費者が意識を持ってもらうことが重要」「子や孫のことを考えて食料自給率向上に目を向けてほしい」というのも呆れたもので、消費者は十分に意識が高いからこそ栄養バランスを考えて糖質を抑え、放射性物質が混入している可能性のある食品を控えているのであり、政府の方がよほど意識が低いのだ。そんなことも、言われなければわからないのですか?
 なお、*11-4のように、全ての加工食品に原材料の原産地表示を義務付ける改正食品表示基準が9月1日に施行されるが、5年も猶予期間があり、完全施行は2022年4月からだそうだ。これは、政府はしぶしぶこの法律を施行するという意味で、実質的には2022年3月までは施行されないということだ。それも、国名だけの表示なら、安全基準の緩い日本産は買わないことになるが、まさか国名だけの表示ではないでしょうね。
 さらに、*11-5のように、TPP署名11カ国は2017年8月30日にシドニーで首席交渉官会合を行い、日本は議論を主導する立場なので関税分野の見直しを提案しにくく、最終的には米国のTPP復帰を促して12カ国での発効を目指すのだそうだ。しかし、オーストラリアは優秀な農業国で原発はなく、赤身で脂肪の少ない牛肉や乳製品が安いため日本の消費者は嬉しいが、日本の農業には不利である。それでも日本政府は、まともな交渉もせずに議論を「主導」し、このTPP条約が締結されれば食料自給率がさらに下がるが、それでもTPP条約の締結は麻生副総理の言われる「結果を出した」ことになるのですか?

*11-1:https://www.agrinews.co.jp/p41748.html (日本農業新聞 2017年8月29日) 食料自給率 38%にダウン +1ポイント作戦始動 ご飯もう一口、国産豆腐は月に2丁… 日々の食卓 ちょっと 工夫を
 ご飯を1日もう一口、国産豆腐を月に2丁――。食料自給率を1ポイント上げるため に必要な国民の食事量の一例だ。2016年度の食料自給率(カロリーベース)は38%と、先進国の中で最低水準にまで落ち込んだ。半世紀前の73%から半減し、もはや国民の食と命を自国で守れない危機的な状況にある。自給率向上へ国民一人一人がどんなことをすればよいのか? 誰でも簡単にできる「1ポイント上げる」ためのちょっとした工夫を紹介する。農水省が提示する食料自給率を1ポイント向上させる方策によると、全国民が、ご飯を1日にもう一口(17グラム)食べるだけで1ポイント自給率が向上する。「国産米粉パンを月に6枚(400グラム)食べる」「国産大豆100%の豆腐を月に2丁食べる」「国産小麦100%のうどんを月に2玉食べる」などでも向上する。これら全て実現できれば、4ポイント向上する計算だ。日常の食事を増やすわけでなく、国産の農産物を選ぶことで自給率が上がる。国産の比率が高いのが米を使ったメニューだ。おにぎり1個98%、にぎりずし75%、親子丼70%など、米料理の自給率は高い。ただ、和食を多く食べれば自給率の向上に直結するかというと、そう単純ではない。原料の輸入割合が高いそばやうどんでは自給率は下がり、「エビの天ぷらそば」は24%まで低下する。本みりん(98%)、かつおだし(69%)などだしの自給率は高いが、しょうゆ(23%)、エビ(5%)などの低さが自給率を下げる要因だ。しかし、国産のそば粉や小麦粉を使うと自給率は向上する。ソバの自給率22%の中で、国産そば粉を使ったそばを提供する東京・上野の「はなみずき」店主、弘田千秋さん(43)は「国産のそば粉は、海外産と味が違う」と国産にこだわる理由を明かす。そば粉を100%国産にすれば、天ぷらそばの自給率は71%まで上昇する。最近ではラーメン用やちゃんぽん用、パスタ用など小麦の品種開発が進んでおり、こうした品種が広がれば自給率向上に貢献しそうだ。農水省は自給率への意識を高めてもらおうと、インターネット上で、料理の自給率を計算するソフトを公開。ハンバーグ(14%)、ねぎとろ丼(82%)といったメニューや、家庭で作る料理の食材を選んで入力すれば、食料自給率を算出できる。
●国民が危機感を共有
 食料自給率は、国民の平均カロリー摂取量のうち、国産食材で得られるカロリーの割合を示す。16年度は国民1人が1日当たり2429キロカロリーを摂取しており、このうち国産食材からの摂取は913キロカロリーにとどまる。国民の摂取カロリーの割合で最も多いのは米(自給率98%)、次いで畜産物(同16%)、油脂類(同3%)。この3品目だけで摂取カロリーの全体の半分を超える。4番目に多いのは小麦(12%)だ。同省によると、自給率の高い米の消費が減る一方で、飼料を海外に依存している肉類や油脂類、小麦製品の消費量が増え、自給率を下げる要因となっている。食の洋風化や油脂類・小麦の輸入増などが、自給率低下をもたらしている。少子高齢化で国内の食市場そのものが縮小している状況を踏まえ、斎藤健農相は「消費者が意識を持ってもらうことが重要。子や孫のことを考えて食料自給率向上に目を向けてほしい」と危機感を示す。

*11-2:https://mainichi.jp/articles/20170719/ddl/k37/040/330000c (毎日新聞 2017年7月19日) 糖尿病:治療「中断」17.1% 県、491機関の患者を調査 /香川
●「仕事」理由、重症化の傾向
 仕事の忙しさや症状がなかったことなどから糖尿病の治療を中断した経験を持つ人が患者の17・1%いることが、県の調査で分かった。若い患者ほど中断経験があり、40歳以下では24・8%と4人に1人近くに上った。中断経験者は重症化しやすい傾向もあり、県は治療継続のために地域や職場、医療が連携する必要性を指摘している。昨年の人口動態調査(概数)によると、人口10万人あたりの糖尿病死亡率は14・1人で、全国平均(10・8人)を上回り、全都道府県でワースト9位となっている。調査は2008年度に続いて2回目。生活習慣から発症が多いとされる「2型糖尿病」患者を治療する491の内科や専門医療機関を対象に、60歳以下の患者について昨年12月に実施。226機関が1367人(男882人、女482人、性別不明3人)分を回答した。受診のきっかけは、46・1%が健康診断で、35・7%は妊娠や交通事故などの診察や治療だった。糖尿病の症状が出て受診した患者も15・2%いた。だが、すぐに受診したのは78・5%。受診しなかった理由(複数回答)では、▽「特に症状もなく必要はないと思った」59・8%▽「仕事や用事で時間が取れなかった」42・4%▽「生活習慣を変え自分で改善できると思った」30・8%--などだった。17・1%の患者で治療の中断経験があった。男性は18・5%で、女性の14・7%を上回った。中断理由(複数回答)では、男性の47・7%が「仕事が忙しいので通院できなかった」を挙げたが、女性は22・4%だった。女性は「症状がなかった」が29・9%で最多だった。治療継続のために必要なことは、男性は「職場の理解」が31・4%、女性は「家庭の理解」が36・9%だった。治療を中断後に再開した患者は、網膜症や腎症、神経障害といった糖尿病合併症の併発率が中断しなかった患者と比べて3・2~2・6倍に達した。また、40歳以下の患者の86・8%が肥満だったが、41歳以上50歳以下は74・4%、51歳以上は64・4%にとどまった。食事、運動療法を続け、年配者ほど効果が出ているためとみられるという。他の医療機関との連携状況では、歯科医との連携が24・6%と低かった。県健康福祉総務課の担当者は「歯周病と糖尿病には高い相関関係のあることが分かっているが、歯科医との連携が低かった。症状がなくても治療の必要があるといった知識の普及を進めたい」と話している。

*11-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/459618 (佐賀新聞 2017年8月31日) くら寿司が糖質制限メニュー
■シャリは大根酢漬け
 回転ずしチェーン「くら寿司」を運営するくらコーポレーションは29日、すしの酢飯の代わりに大根の酢漬けを使った「シャリ野菜」など、業界で初めて糖質制限に対応したメニューを発表した。31日から全国の店舗で販売する。ご飯など炭水化物に多い糖質の摂取量を減らす「糖質制限」の人気に着目し、若い女性などの集客増を目指す。一方、「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトが期間、時間帯限定の食べ放題サービスを28日から対象店舗を拡大して実施するなど、回転ずし業界各社は激化する競争での勝ち残りへ知恵を絞っている。シャリ野菜は酢飯を使った通常のすしと比べて糖質を最大88%カットした。すしネタはエビやビントロなど4種類。酢飯の量を半分にした商品も用意し、価格は108円。担当者は「糖質を気にせずに野菜と一緒においしく食べてもらいたい」とアピールする。かっぱ寿司の食べ放題は今後も実施店舗を変えて継続する方針で、担当者は「大学生や家族連れなど幅広い層に利用してもらいたい」と話す。「スシロー」を展開するあきんどスシローは、国内の天然魚の活用や、海外産食材の調達多様化を進めている。

*11-4:http://qbiz.jp/article/117878/1/ (西日本新聞 2017年9月1日) 全加工食品に原産地表示 きょうから義務化
 全ての加工食品に原材料の原産地表示を義務付ける改正食品表示基準が1日、施行された。メーカーや販売店が表示を変更する準備ができるよう猶予期間が設けられ、2022年4月から完全施行される。内閣府・消費者委員会が8月、改正案を首相に答申していた。輸入食品の増加が見込まれる中、消費者が購入の際に参考にできるようになるほか、国産品のブランド力向上などの効果を狙う。
22年4月以降、虚偽の原産地表示をした食品を販売した個人に、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、法人には行為者への罰のほか、1億円以下の罰金が科せられる。

*11-5:https://www.agrinews.co.jp/p41765.html (日本農業新聞 2017年8月31日) 日本 見直し提案せず TPP11首席会合終了
 環太平洋連携協定(TPP)署名11カ国は30日、オーストラリア・シドニーで3日間の首席交渉官会合の日程を終えた。知的財産分野の見直しでは一致したが、その他の分野で各国から修正要望が続出。日本は農業関係者が要望する農産品関税の見直しを提案しなかったもようだ。次回は9月後半に再び日本で首席交渉官会合を開く。
●米国要求項目 棚上げ
 12カ国で合意した内容のどの部分を見直すか具体的に議論した。米国が要求した項目について、いったん凍結し棚上げすることで米国のTPP復帰を促し、最終的に12カ国での発効を目指す。しかし、米国に復帰の兆しは見えず、先行きは依然不透明だ。交渉関係者によると、焦点の関税分野の見直しについては、各国から要望が出なかった。日本の農業関係者は、乳製品の輸入枠など米国の参加を前提にした合意内容の見直しを求めているが、日本は今回見直し提案をしなかったもようだ。日本は議論を主導する立場のため、「各国が慎重な関税分野の見直しを率先して提案しにくい」(交渉筋)。政府は米国の焦りを引き出すため11カ国での発効を急ぎたい考えだが、米国の2国間交渉で追加の農産品の市場開放を求められるとの警戒感は農業関係者に根強く、日本国内の意見調整も難航しそうだ。今回の会合で、実質8年の医薬品のデータ保護期間については凍結する方向でおおむね一致した。議論を主導する日本とオーストラリア、ニュージーランドはTPPの自由化水準を下げないよう協定の内容の見直しを極力少なくしたい考え。ただ、投資などルール分野の修正要望が続出。国内調整が引き続き必要な国もあり、見直し項目を絞り込みきれなかった。11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までの合意を目指し、来月の首席交渉官会合で検討を継続する。


PS(2017年9月2、3日追加):*12-1のように、JA全中が「らくらくWeb簿記システム」を本格始動し、経理・税務申告書類や源泉徴収票の作成・経営コンサルなどに役立てるのは、不得意な作業から農業者を解放し、質の高い生産・販売に専念できる基盤になるため、大きな進歩だ。また、*12-2のような直売所での販売、*12-3のような林業、不動産、その他所得を経理や税務申告に正確に反映させ、日報や月報を出して経営管理することも容易になって農家の意欲増大に繋がる。この時、一つだけ懸念があるのは、農協に全サービスを依存する結果、農協が農家を支配することが可能になることだが、この問題は、政府が行っているような農協の弱体化で解決すべきではなく、その他の主体が同様以上のサービスを行って農協と切磋琢磨し、農業者がよりよいサービスを選択できるようにすることが重要なのだ。
 なお、*13について、JAグループが、2019年4月に自己改革の評価を把握するために、全国1000万人超の正・准組合員全てを対象にアンケート調査を実施するのは大変よいと思うが、客観的で役立つ情報を得るためには、JAの役職員が訪問するよりも郵送・匿名で、期待・クレーム・要望などを言いやすい状態にして年に一度くらい調査し、継続的に改善していくことが重要だと考える。さらに、調査する際には、国際的なコンサルティング・ファームを利用して海外と比較すれば、これまで考え付かなかったような解決策が提案される可能性が高い。
 また、*14のように、事務作業も自動化が進んでいるため、農協自体も人材を組合員に役立つ営農支援や販売、顧客対応などの業務により手厚く配置して生産性を上げることが可能になった。もちろん、RPAをブラックボックス化するのではなく、その仕組を理解している人が業務を把握しておく必要はあるが、組織全体として生産性を上げることができるわけである。

*12-1:https://www.agrinews.co.jp/p41769.html (日本農業新聞 2017年9月1日) 「Web簿記」本格始動 申告支援 経営指導も 全中
 JA全中は、担い手への経営コンサル機能を強化するため、税務申告書類を効率的に作成できる「らくらくWeb簿記システム」を本格始動した。中央会・JA向けシステムで、農業者の事務負担を軽減するとともに、税務申告で集約する販売、購買事業データや信用事業の資金情報を活用し、担い手への経営戦略のアドバイスに役立てる。8月にはJA群馬中央会が導入した。今後は、各県の判断を踏まえ、活用を進める方針だ。同システムは、静岡県農協電算センターが開発。2017年度、全中が保守管理を引き受けて全国の情報を管理するシステムを構築した。具体的には、システムで農業所得や不動産所得の情報を管理できる。貯金の入出金や販売精算などの情報を入力すれば自動的に青色申告や白色申告で使う決算書や、収支計算書などの書類の作成も可能。農業法人などの従業員向け源泉徴収票も作れる。それらの情報を、経営分析に活用する。JA管内の農業者の経営状況との比較を踏まえてアドバイスできる他、経済事業で取引の際に使うシステムと連動させ、日頃の実績を帳票などに反映できる。生産や販売、購買、資金対応、労務管理など各分野での個別提案を目指す。将来的には、集約した経営情報を全国規模で分析し、地域、品目別の提案も視野に入れる。全中は「JAの各事業での連携を重視したシステムであり、事業間連携にもつながる」(JA情報システム対策部)と強調する。JA自己改革では、大規模化する担い手経営体との信頼関係の構築の強化を目指しており、システムの活用で、その取り組みを加速する。JAの総合事業の強みを発揮し、担い手経営体を支援する。

*12-2:https://www.agrinews.co.jp/p41753.html (日本農業新聞論説 2017年8月30日) 広がるJA直売所 課題克服し魅力磨こう
 JA直売所が着実に増えている。地元産の安心感や新鮮さで消費者に受け入れられ、生産者の所得増にもつながった。日本農業新聞の調査によると、2016年度は売上高10億円を超える大規模店が15年前と比べ10倍になった。ただ、直売所の乱立で競争は激しく、出荷者の高齢化で品ぞろえも厳しさを増す。品ぞろえはもちろん魅力ある直売所づくりに向け、JAグループの結集力が求められている。消費者にとって直売所の魅力は、地元産の安心感、収穫後すぐに店頭に並ぶ鮮度の良さ、それに流通ルートの短さによる低価格の三拍子がそろっていること。JA直売所が急増したのは直売所設置が決議された1997年の21回JA全国大会以降だ。この動きは、日本農業新聞の調査でも明らかになった。調査は、本紙掲載記事などを参考に、売上高5億円以上と推定される133店を対象に実施し、110店から回答があった。それによると9割の直売所が、20年前のJA全国大会以降に開設した。特に、7割の店は、21世紀に入ってからの10年間にオープンした。当時、JA合併が急激に進み、広域JAが管内各地に次々に設置したことや、先行JAのノウハウが近隣JAに伝授されたことも急増に拍車を掛けた。その結果、15年前の01年度にわずか4店だった年間売上高10億円を超える直売所は、今回の調査で39店と10倍に増えた。福岡県JA糸島の「伊都菜彩」(41億円)、和歌山県JA紀の里の「めっけもん広場」(28億円)、愛媛県JAおちいまばりの「さいさいきて屋」(22億円)など20億円を超える店が6店もあった。地域別でも5億円以上の店舗は、関東や東海だけでなく、東北から九州まで全国各地に広がっている。直売所によって「生産者の所得向上」に9割、「消費者に好評」に7割が効果あったと回答。農家だけでなく地域住民にも人気だった。同時に、出荷者の高齢化や品ぞろえの確保が課題として浮かび上がった。農水省の調査(15年度)によると、全国2万3600カ所の直売所のうちJA直売所は2000店。ライバル店の増加で、開店から7、8年で売上高は横ばいとなり、各店とも売り上げ維持に懸命となる。最大の課題は、野菜を中心とする地場産品の確保だ。1直売所で500人ほどいる出荷会員は、年々、高齢化が進む。さらにスーパーのインショップなどの増加で、農家の出荷先はJA直売所以外にも広がる。これに対しJAは、直売所出荷者を育てる農業塾、営農指導部署と連携した新作物講習会、遠距離地区向けの集荷便などさまざまな取り組みを進めており、評価したい。地域に密着し豊富な品ぞろえで魅力あるJA直売所を育てるため、出荷者である組合員も含めて、JAグループ一丸となった積極的な取り組みを期待する。

*12-3:https://www.agrinews.co.jp/p41719.html (日本農業新聞論説 2017年8月26日) 稼げる林業経営 担い手への集約対策を
 わが国の林業政策が2018年度から新段階に進みそうだ。政府が掲げる「林業の成長産業化」の具体策として、林野庁が新たな林業経営の在り方の検討に入っている。年内に結論をまとめ、来年度の政府予算と制度改正で新対策を打ち出す。山持ち林家が林業経営を担い手に任せる代わりに、木材収入の一部をいわば借地料としてもらう。その仕組みをうまく作ることが重要になろう。「林業の成長産業化」は安倍政権が3年前に掲げたが、推進の具体策に欠けていた。政府は本腰を入れ、新対策の方向を6月に公表した未来投資戦略でこう記した。「森林の管理経営を、意欲ある持続的な林業経営者に集積・集約化する」。林業経営を集約型にして、稼げる林業を目指す方向に異論はない。一方で、条件不利地の林業に向かない森林の管理は「市町村等が行う新たな仕組みを検討」として、公的管理を強める。併せて、昨年末に与党が今年度税制改正大綱で示した森林環境税について、将来導入した際に市町村主体の森林整備の財源に充てる手法を検討していく。政府の新対策はつまり二段構えだ。稼げる林業を目指すとともに、それが困難な森林の管理は市町村に責任を持ってもらう。地元の森林を林業向けと保全管理向けに区分けするのは、市町村の役目になろう。市町村は現在、今年4月施行の改正森林法で義務付けられた林地台帳作成へ、森林の所有者・境界の特定を進めている。条件不利地の森林管理だけでなく、林業向けの森林をまとめ、担い手に集積推進する自覚と責任が求められる。林業経営の担い手には、自立林家の他、森林組合と林業事業者がなるのが現実的だろう。だが現在、両者とも再造林から伐採までの施業請負が大半で、経営責任を伴わない。ここから大きく踏み出し、いわば借地の林業経営を積極的にやれる制度作りが、政策的に必要となる。借地型の林業経営では、収益確保の努力を迫られる。施業効率化に向け、高性能機械導入や、主伐とコンテナ苗を使った植林の一貫作業化などが進むはずだ。伐採木の販売努力を含めた生産性向上こそが、稼げる林業実現の道となる。林業での借地料は定期的な支払いが難しく、伐採木収入の一部の充当が妥当だろう。林家と担い手の双方が納得できる仕組みが肝要となる。林家は「林業はもうからない」と嘆き、赤字経営も実際多い。それだけに、森林の所有と経営を分離し、必ず収入が得られる借地型は安心感を持てるのではないか。わが国の人工林の半分が主伐期を迎えており、伐採して活用する推進政策が急がれる。日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)大枠合意による林産物の輸入関税の段階的撤廃の打撃を乗り越え、林業の成長産業化を達成するには、稼げる林業を全力で築くしかない。

*13:https://www.agrinews.co.jp/p41775.html (日本農業新聞 2017年9月2日) JAグループ 19年に全組合員調査 自己改革評価把握 実践加速、全JAも
 JAグループは、現在進めている自己改革への評価を把握するため、全国1000万人超の正・准組合員全てを対象にしたアンケートを2019年4月に実施する。全組合員調査はJAグループ初の試み。併せて、全JA調査も行い、自己改革の取り組み実績をまとめる。節目を設定し、高評価の獲得を目標にして改革を加速させる。各JAは、評価や実績を基に一層の改革案などを検討し、次期中期計画を策定する。全組合員調査は、全JAの役職員が正・准組合員の全戸を訪問。農産物の販売事業や生産資材の購買事業、営農指導への期待度や満足度などをアンケート形式で調べる。全国のJAの組合員数は正・准合わせて1037万人(15年度)。JA全中によると、全国の組合員全てを対象に調査を行うのは初めてだ。一方、全JA調査はこれまでも毎年実施しているが、調査項目を見直す。例えば、ある事業について「何割のJAが取り組んだか」から「何人の組合員が利用したか」などに変更。組合員目線で、自己改革がどこまで進んだかを定量的に把握できるようにする。全組合員調査に合わせ、19年4月1日を基準日に19年度の調査を実施する。JAグループは15年の第27回JA全国大会の決議を受け、農業者の所得増大などに向けた「創造的自己改革」を進めている。同大会決議の実践期間は18年度までで、各JAがつくる自己改革の工程表も18年度を区切りとする。このため19年4月を自己改革の一定の節目とし、全組合員・全JA調査で評価や実績を把握することにした。政府の規制改革推進会議が、19年5月末を「農協改革集中推進期間」の期限としていることも考慮した。調査で把握した改革の実績や評価を踏まえ、全国のJAは19年度からの一層の取り組みを検討し、次期中期計画を策定する。中期計画には、総合事業を継続するか信用事業の代理店化を選択するかの判断なども盛り込む。信連や農林中央金庫による手数料水準の提示を受け、JAは信用事業の運営体制の在り方を検討し、19年5月までに結論を出すことにしているためだ。ただ全中は、総合事業を展開した方が農業者の所得増大や農業生産の拡大に有利とみて、多くのJAが総合事業の継続を選ぶと見込む。自己改革の実績や評価、それを踏まえた今後の計画は対外的にも発信する。全中は、こうした一連の取り組み方針を理事会で決めた。全中の比嘉政浩専務は「自己改革に終わりはないが、明確な節目をつくることで改革を加速化する」と強調。「全組合員調査で高い評価を得ることを一つの目標にして、JAグループを挙げて取り組む必要がある」と話す。

*14:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170903&ng=DGKKZO20699380S7A900C1EA5000 (日経新聞 2017.9.3) 事務作業も自動化進む、第一生命やオリックス、「ロボ」ソフトで労働時間削減
 オフィスの作業を自動化するソフトウエアが日本で浸透し始めた。データ入力など人手に頼っていた単純作業を自動的に処理することからロボットと呼ばれ、第一生命保険は最大で150人相当の業務を代替する。人手不足の深刻化や働き方改革で労働時間の削減を急ぐ大手企業が次々に導入している。生産性を引き上げて、貴重な人材を顧客対応や企画部門に厚く配置する動きにつながりそうだ。パソコンを使った定型的な繰り返し作業を担うのが「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」と呼ばれるソフト。米オートメーションエニウェアや英ユーアイパスなど欧米企業が先行し、2年ほど前から日本企業で利用が広がり始めた。紙ベースのデータを光学式文字読み取り装置(OCR)で読み取ってデジタル情報として基幹システムに入力したり、ウェブの画面から数値をコピーしてエクセルにペーストしたりするような作業を担う。あらかじめ操作を設定しておけば、検索やデータの取得、入力、確認などの作業を人間と同じ手順で処理する。オリックスグループは10月末からRPAで担う仕事を増やす。これまでレンタカーの予約情報を基幹システムに登録する業務で使用してきた。外部の旅行サイトなどから受け付けると目視で確認して入力し直す必要があり煩雑な作業が伴った。RPAでは時間当たりの処理件数が人手に比べ8倍になり、ミスもなくなったという。この結果を受け、生命保険や不動産などグループ各社が導入を予定する。これまでの子会社1社から全社にRPAの利用を広げる。第一生命は試験的に使っていたRPAを10月から本格稼働する。社内で自動化に切り替える作業を募り2千以上、年間30万時間分の業務が候補に挙がった。従業員150人分に相当する。可能な業務から順次、RPAのソフトで代替していく。例えば保険金請求の処理業務を担当する社員を決める割り振りに使う。疾病や事故の内容によってスキルの程度を含めて対応する社員をあらかじめ分類し、自動的に仕事を振り分ける。人手で年間1000時間かかる作業を代替する見込み。日本RPA協会の調査ではRPA利用企業の97%で適用した業務の処理時間が半分以下になった。KPMGコンサルティングは単純作業に従事する労働力を4~7割減らせるとみている。電通も年末までに300の業務でRPAを導入する。自動化により月間で5万8千時間分の労働時間の削減を目指す。既に各種メディアの視聴率のデータを取得、入力する業務に使用済み。長時間労働問題を受けて進める働き方改革の一環として活用範囲を広げる。日本の時間あたり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中20位で、かねて単純作業の見直しが必要と指摘されてきた。RPAソフトの機能が上がるのと並行して働き方改革の機運も高まり、関心を示す企業が増えた。単純作業を減らせば生産性は上がり、働く意欲の向上も見込める。第一生命は営業や海外事業などの部門に再配置したい考えだ。米調査会社トラクティカによると、ソフト利用や関連コンサルなど世界のRPA市場は2025年に51億ドル(約5600億円)と16年の30倍以上に増える。仕事が効率よく進み、企業のコストが下がるとの期待が高まる一方、25年までに世界で1億人の知的労働者の仕事がRPAに置き換わるとの試算もある。RPAは作業内容を社内で誰かが把握していないと、データの取得先のフォーマットが変わるなど環境が変化した場合も従来と同じやり方で作業を続け、業務が混乱する恐れがある。ソフトバンクはRPAソフトに操作を設定する人員や使用している業務を一元的に把握して、RPAに仕事を任せきりにしないよう管理している。


PS(2017年9月8日追加):*15-1のように、全農が、農家所得の増大や農業生産の拡大に向け、実需者への直接販売拡大のために営業開発部を設置するそうでよいと思うが、国内外の需要の変化に応じて持続的に新製品を出したり製品の改善を続けたりするのは、他産業ではこれまでもやってきたことなので遅すぎたくらいだ。なお、最近は、インターネット通販の利用で望む産地から直接買う消費者が増えたため、努力する生産者には利益獲得のチャンスが増えた。今後は、例えばデパ地下の惣菜などの業務用食材も相手の仕様に合わせて産地で下ごしらえして販売すれば、①ゴミまで都会に輸送しないため輸送コストを下げ ②人件費の安い産地で新鮮で安価な製品を作ることができ ③需要者の要求が手に取るようにわかるため今後の生産計画に役立ち ④地方で付加価値をつけるので地方の所得を増加させることもでき ⑤ゴミになる部分は地方で養殖魚の餌や肥料に再利用できるので、よりよくなると考える。
 なお、日本は農畜産物の輸出額が非常に小さいが、*15-2のように、JA全農は、香港で日本産農畜産物に特化した特設サイトを開設して、ネット通販をはじめとするEC事業を展開するそうだ。私は、合理的な価格で販売すれば売上が増えると思うが、品揃えの充実と量の確保は欠かせないだろう。そのような中、熊本県のJA菊池は、*15-3のように、牛の繁殖拠点を整備して年間500頭の増産を目指し、安く供給することで農家の手取りを増やす考えだそうだ。
 ところで近年、日本では野生鳥獣の数が増えたので、*15-4のように、鹿・イノシシなどの野生鳥獣を捕獲した狩猟者に支払う「鳥獣被害防止総合対策交付金」ができた。しかし、捕獲した野生鳥獣は、尻尾を切って写真を添えれば助成金をもらえるため捨てられることが多く、これでは、人間はあまりにも不遜で命を無駄にしていると言わざるを得ない。しかし、野生鳥獣の肉は、脂肪が少なく蛋白質が豊富で健康的であるため、適切に料理すれば家畜より価値の高いごちそうにもなる。そのため、*15-5のように、何とかしてジビエとして活用すべきだ。
 さらに、*15-6のように、九州から欧米へ続々と米粉が輸出され始めたのは希望多きことだが、米粉は、*15-7のように、菓子、パン、麺などの様々な用途に使うことができ、米粉のパンは固くならないなどの長所がある上、フォー(ベトナムの麺:爽やかで美味しい)は米粉でしかできない麺であるため、農水省が「戦略作物」として生産拡大を支援したり用途別に支援したりするのはバラマキであるとともに、市場を歪める大きなお世話になるだろう。

<全農の経済事業>
*15-1:https://www.agrinews.co.jp/p41785.html (日本農業新聞論説 2017年9月3日) 全農が営業新部署 直販拡大へフル活動を
 実践2年目となるJAグループの自己改革が9月で半年を迎える。経済事業を担うJA全農は、農家所得の増大や農業生産の拡大の実現に向け1日、営業開発部を設置、販売力強化の取り組みを加速する。実需者への直接販売拡大を狙う実働部隊に位置付ける。消費や販売形態の変化など市場動向に即応した機能アップが成否の鍵を握る。営業開発部は政府の「農林水産業・地域の活力創造プラン」への対応を実践するため、司令塔としての役割も担う。精米や青果など従来、縦割りに進めてきた営業活動を品目の垣根を取り払って横断的に実施する。新たな取引先の開拓や取扱品目の拡大が使命だ。併せて、実需者ニーズを産地に伝え、生産から加工・流通、販売までをつなぐ全農としてのバリューチェーン構築を目指す。その際に意識しなければならないのは、消費構造や販売形態の変化だ。最近の動向を見ると、生活の多様化に合わせ、市場では業務用需要が伸び、並行してインターネット通販の利用が増えている。さらに、作り手の論理を優先させる「プロダクトアウト」から、消費者ニーズを重要とする「マーケットイン」を意識した事業展開が強まっている。単にモノを売るだけにとどまらず、実需者ニーズを捉えた付加価値のある商品の企画・開発が求められている。こうした時代の流れをくみ、全農は従来の取引先であるスーパーや生協に加え、コンビニエンスストアや外食・中食業者、インターネット通販、ドラッグストアなど幅広い分野の実需者をターゲットにリスト化。取引先ごとに横断的なチームをつくり、新たな品目の売り込みと新規顧客の開拓を進める。直販事業を拡大するには、消費構造の変化への対応が重要だ。その一つが電子商取引(EC)だ。野村総合研究所が昨春公表したインターネット利用者を対象にした調査によると、3000円以下のちょっとした買い物でもネットを使う実態が浮き彫りになった。利用層も若者だけでなく中高年層に広がり、生活に定着している。農産物の販路の拡大・新規開拓には、既存の事業モデルの見直しと併せて、EC戦略を磨き上げることが欠かせない。全農は3月に決めた事業改革の年次計画で、2024年度の直接販売の割合を米で9割、園芸品目で取扱額の過半の5500億円という意欲的な目標を据えた。7月下旬の通常総代会の時点での実行状況はほぼ計画通りとしている。米の買い取りは2017年度計画の30万トンを超えたという。実績の積み上げへ新部署の果たす役割は大きい。有効に機能すれば、産地を巻き込んだ栽培や商品開発という好循環を作り出すことにもつながる。目に見える成果が問われる改革の必達。

<農畜産物の輸出>
*15-2:https://www.agrinews.co.jp/41743?page=2 (日本農業新聞 2017年8月29日) 全農、香港で通販事業 最大級サイトと連携 農畜産物輸出拡大
 JA全農は、日本の農林水産物・食品の最大の輸出先である香港で、ネット通販をはじめとする電子商取引(EC)事業を展開する。香港最大級の通販サイト「HKTVmall(HKTV)」などと連携し、日本産農畜産物に特化した特設サイトを開設したと、28日に発表した。百貨店など実店舗に加え、ネット通販を積極的に活用することで、消費者に直接売り込める期待がある。ネット通販は利便性が強みで、日本産農畜産物の新たな顧客層を獲得し、輸出拡大を狙う。輸出事業の拡大へ全農は4月、輸出対策部を新設。実務を子会社のJA全農インターナショナルに集約するなどの体制を整備し、産地づくりやCA(大気調整)コンテナなどを活用した試験輸送、国・地域別の輸出戦略の策定などに動く。9月1日に「営業開発部」を設置して取り組みを強化し、新たな販売網としてネット通販戦略の構築を進める。今回の仕組みは、HKTVに加え、国内外で料理教室などを展開する「ABCクッキングスタジオ(ABC)」とも連携する。国内から米や肉、果実など農畜産物を調達する全農と、食材を生かす調理方法などを紹介するABC、販売を担うHKTVがそれぞれの強みを生かし、香港の家庭などに日本産農畜産物を届ける。物流は、全農が既に構築している現地の青果や食肉などの卸をはじめ、取引先との仕組みを生かす。香港は他国に比べて輸入規制が少ないため、日本にとって幅広い品目を輸出しやすい。輸出戦略でも最重点地域で、現地では日系の総合スーパーや高級スーパーなどを中心に日本産農畜産物や加工品の取り扱いが広がり、消費者の購入機会が増えている。ネット通販で利便性が高まり、新たな顧客層の獲得に期待が大きい。取扱品目は、現時点で米、青果、牛肉、豚肉など。今後、販売状況を見ながら、品ぞろえの充実を検討する考えだ。全農は「香港の消費者ニーズを捉え、商品を広げていきたい」(輸出対策部)としている。

*15-3:https://www.agrinews.co.jp/p41799.html (日本農業新聞 2017年9月5日) 繁殖拠点を整備 管内で和子牛安く提供 熊本・JA菊池が新方式
 熊本県のJA菊池は、和牛子牛を増やすためキャトルブリーディングステーション(CBS)を整備した。生まれた子牛は市場に出荷せず、管内の生産者に安く譲る全国初の方式を導入する。子牛高騰に苦しむ肥育農家の経営改善につなげる狙いだ。西日本最大の酪農地帯である利点を生かし、管内の酪農家から乳用牛を預かって受精卵移植(ET)で和牛子牛を生ませる。JAが所有する繁殖和牛にも子牛を生ませ、3年後をめどに合計で年間500頭の増産を目指す。4日に菊池市に完成したCBSで竣工式を開いた。和牛と乳用牛を合わせて常時850頭を飼養。効率化のため哺乳ロボットや発情発見器などを完備する。国の畜産クラスター事業を利用し、総額約9億5000万円を投じて整備した。JAが所有する最大200頭の和牛に人工授精(AI)で子牛を年間180頭生ませる他、預かった酪農家の乳用牛最大240頭にETを施し、同140頭生産する。加えて、管内の酪農家組織の乳用牛300頭にもETで同180頭生ませる。受精卵はJAが用意し、代金も負担する。黒毛和種だけでなく褐毛和種(あか牛)も生産する他、生乳の生産基盤を守るため乳用後継牛の確保にも活用する。酪農家から預かる乳用牛は1日700円程度で管理を請け負う。生まれた和牛子牛は生後1週間程度で酪農家から全て買い取る。受精卵や引き取った後の管理にかかるJAの費用を勘案し、価格はスモール牛(3、4カ月齢)の市場相場の半額程度を想定する。生まれた子牛はCBSである程度育成した後、全頭を管内の肥育農家に供給する。市場出荷せず確実に管内にとどまるようにする。価格は県内市場の相場より1頭5万円ほど安くする方針。繁殖農家への影響も考慮して決めるが、一定程度安くし、採算ぎりぎりの状態にある肥育経営の改善につなげる。JAによると生産した子牛を市場出荷せずに安く供給する施設は「全国でも例がない」(畜産企画課)という。JAの正職員3人と嘱託職員3人が主に作業に当たる。獣医師1人と、哺育や育成などを担当するパート16~18人を確保するめどもついた。CBSは宿泊可能で、新規就農者らの研修施設としての役割も果たす。酪農と肉用牛肥育・繁殖の全てに対応する。JAの三角修組合長は「和牛子牛の不足と相場高騰は農家個人では解決できない問題だ。JAが子牛を生産して安く供給することで、農家の手取りを増やす。乳用牛を預かることで、酪農家の負担軽減にもつなげる」と強調する。

*15-4:https://www.agrinews.co.jp/p41783.html (日本農業新聞 2017年9月3日) 鳥獣対策交付金 捕獲確認を厳格化 不正防止へ 来年4月 尻尾と写真 必ず
 イノシシなどの野生鳥獣を捕獲した狩猟者に支払う国の「鳥獣被害防止総合対策交付金」について、農水省は交付ルールを厳しくする。実際に野生鳥獣を捕獲したかどうか地方自治体が書類で確認する場合、写真に加え、証拠として尻尾の提出を義務付ける。交付金の不正受給防止が狙いで、10月をめどに交付金の実施要領を改正。周知期間を設けた上で、2018年4月から施行する。同交付金は、市町村の認定を受けた狩猟者を対象に、鹿やイノシシなどの捕獲に最大1頭8000円を助成する仕組み。実際に捕獲したかどうかの確認は、市町村職員や都道府県職員が実際に捕獲現場に出向く「現地確認」、狩猟者が市町村や都道府県に証拠を提出する「書類確認」がある。書類確認の証拠は写真だけでもよいルールになっている。だが、3月に兵庫県と鹿児島県で証拠写真で不正が発覚。撮影地点を変えるなどして1頭の個体を使い回し、実績よりも多く捕獲したように見せかけ、交付金を多く受け取っていた。新しい交付ルールでは確認作業について、「現地確認」か、処理加工施設への持ち込み時の「搬入確認」を基本とする。これらが難しいケースだけ書類確認を認める。書類確認の内容も厳しくする。証拠として写真に加え、尻尾の提出も義務付ける。証拠を尻尾に統一することで、耳や牙など複数の証拠部位を使って1頭の個体で複数回申請されることを防ぐ。証拠写真は個体の向きを「右向き」に統一し、向きを変えて複数個体に見せかける不正を防ぐ。現地確認でも、尻尾を回収したりスプレーで着色したりすることを義務付け、個体の使い回しを防ぐ。野生鳥獣による農産物被害(15年度)は176億円。高水準にあり、捕獲は欠かせない。同省は今回の見直しで不正受給の再発を防ぎ、交付金を着実に執行していきたい考えだ。

*15-5:http://qbiz.jp/article/118256/1/ (西日本新聞 2017年9月7日) 夢の「ジビエカー」初導入 捨てる有害獣の肉、活用可能に

   

 捕獲したイノシシやシカなどの有害鳥獣を有効に活用しようと、高知県檮原(ゆすはら)町が、移動式のジビエ(野生鳥獣肉)解体処理車「ジビエカー」を全国で初めて導入した。処理場まで遠く、これまで廃棄せざるを得なかった捕獲獣をその場で解体、冷蔵運搬することが可能。業界内で「夢のような車」との声が上がっている。檮原町では昨年度、ハンターらが農作物に被害を与えるイノシシやシカを約1500頭捕獲。その数は2008年度の約10倍に膨れ上がっており、自家消費されるもの以外の大半が山中に捨てられているという。ジビエカーは箱型の荷台を備えた2トントラック(全長約6・5メートル)で、1台2175万円。日本ジビエ振興協会(長野県)
 機械化された日本の田植え  中国の小麦刈り取り      米国の消毒
と長野トヨタ自動車が共同開発し、これまで宮崎県などで実証実験が行われてきた。本格導入は檮原町が初めてだ。最大でイノシシやシカ5頭分の枝肉を冷蔵・冷凍保管できる冷蔵室や、皮や内臓を取り除いて殺菌できる解体室を完備。捕獲現場に出向いてすぐに1次処理できるため鮮度が保たれ、臭みの少ない良質な肉が得られる。解体で出た臓器や汚水を現場に残さないなど、環境にも配慮した。今後は高知県が中山間地域の拠点として設置する同町の集落活動センターが、地元猟友会と協力して運用する。来年3月には町内にジビエ専用の食肉処理施設も完成予定。ジビエカーと連動すれば年間400〜500頭を食肉用に加工、出荷できる見込みだ。同町の矢野富夫町長は「山に捨てていたものが収入に変わり、雇用も生まれる」と期待する。

<米粉>
*15-6:http://qbiz.jp/article/118122/1/ (西日本新聞 2017年9月6日) 米粉輸出、九州から欧米へ続々 グルテンフリー人気受け 農業振興へ国も支援
 国産のコメを原料にした米粉を欧米に輸出する業者が、九州で相次いで登場している。欧米では小麦粉に含まれるタンパク質「グルテン」が症状を引き起こす「セリアック病」への警戒から、米粉などグルテンフリー(グルテンを含まない)食品人気が広がる。輸出の拡大は国内農業の振興につながることから、農林水産省も注目している。熊本製粉(熊本市)は2015年2月、米国への米粉輸出を始めた。まずは家庭用から手掛け、16年11月には業務用に拡大。米国のグルテンフリー認証機関の認証を15年1月に取得した上での取り組みだ。同社などによると、米国はセリアック病の患者が多い上、グルテンフリー食品を健康にいいと評価する消費者が増加。浦郷弘昭取締役は「米国のグルテンフリー食品市場の規模は約6千億円と大きく、現地の市場調査で自社の米粉が高く評価されたため、参入できると判断した」と話す。輸出する米粉は大半で熊本産のコメを使い、独自の製粉技術で生産。浦郷氏は「当社の米粉で作ったパンは、米国の既存のものよりふっくらと仕上がる」と胸を張る。「輸出は始めたばかりだが手応えは感じている。知名度を上げ、より浸透していきたい」という。和菓子の材料として米粉を長年製造している小城製粉(鹿児島県薩摩川内市)は、14年11月からドイツに輸出。現地の商社を通じ、顧客はフランスにも広がっているという。「これまでに約25トン輸出したがもっと伸ばしたい」と能勢勝哉社長。9月にドイツ・ハンブルクに販売拠点を設け、米粉素材のパンや菓子も製造、販売する計画だ。「製品をパン用やパイ用などに分け、欧州でも『おいしい』と評価を頂いている。課題は価格の高さだが、価値を一層PRし欧州各地に販路を広げたい」という。農林水産省は輸出を後押しするため、NPO法人国内産米粉促進ネットワーク(東京)が今秋に欧州で計画する米粉のPR活動を支援する。

*15-7:https://www.agrinews.co.jp/p41797.html (日本農業新聞 2017年9月5日) 米粉 用途別に支援 農水省18年度 品種実証や設備
 農水省は2018年度、今春に示した米粉の用途別基準や米粉の特性を踏まえた生産をする産地とそれを活用する実需の支援に乗り出す。菓子、パン、麺と三つの用途区分はアミロース含有率で決まる。新事業では、それぞれに合った品種の栽培実証や栽培マニュアル作りなどを促す。用途などを意識して販売する製造業者も支援する。多様な商品化を後押しし、米粉用米の需要拡大につなげる。農水省が18年度予算概算要求に盛り込んだ「戦略作物生産拡大支援事業」(1億3000万円)の中で支援する。同省は3月、「米粉の用途別基準」を発表した。米粉のアミロース含量は、菓子・料理用で20%未満、パン用で15%以上・25%未満、麺用で20%以上と三つに分けた。こうしたアミロース含量は品種や栽培管理で変わるため、実需に応じた生産には統一した技術を確立する必要がある。しかし産地にそうしたノウハウはないのが現状だ。そこであまり普及していない高アミロース品種の導入や、栽培のマニュアル化といった産地の取り組みを支援。例えば高アミロース品種には「モミロマン」「越のかおり」などがある。産地と連携する業者に対しても、小麦アレルギー患者から需要の高いノングルテン米粉を製造する設備や小麦粉製品の混入防止対策などを支援する。同省は「高アミロースを必要とする米粉の麺はまだ利用が少なく、事業で需要を広げたい。ノングルテン米粉は小麦アレルギーの多い欧米などへ輸出も見込める」(穀物課)と期待する。同省は米粉用米について、25年度に13年度比で約5倍となる10万トンの生産努力目標を掲げるが、国内需要量は約2万3000トンでここ数年はほぼ横ばい。農水省は米粉用米を戦略作物と位置付け、水田活用の直接支払交付金で飼料用米と並ぶ水準で助成している。

<本当の改革の進め方>
PS(2017年9月10日追加):*16-1の農水省の元事務次官で農林中金総合研究所理事長の皆川氏の話の内容は良いと思うが、①日本は人口減少という大きな課題に直面している ②貿易立国として世界のものづくりを担うのは難しい ③農業は2次、3次産業までの付加価値を足すと、GDP(国内総生産)の1割を稼いでいる ④地域社会を支え続ける意味でも、農業やその関連産業には大きな可能性がある ⑤家業としての農業経営の持続可能性がなくなっていることは否定できない とされていることに関して、①②は、一人当たりの国土や財産が増えるのでよい点も多く、女性・高齢者・障害者など、これまで生産年齢人口の健常男性に道をあけるために雇用から外されていた人に雇用の機会を与えるので悪いことばかりではない。さらに、③④については、食料自給率や環境維持を考慮すれば、GDPには載らない農林漁業の重要性もある。また、⑤については、家業としての経営は農業だけでなく製造業にもあり(トヨタ、ホンダ、有田焼、唐津焼など)、オーナー会社やベンチャー企業は、経営者によっては将来性ある意思決定を迅速に行えるので強みになることも多い。
 また、生産物の種類を増やせば、これまで輸入品しかなかった産物を国内産に回帰させたり、生産革命で消費者が高すぎて買わなかった産品を買えるようにしたりできるため、日本の市場規模は小さくなるとは限らない。しかし、輸出で他流試合をするのは、外貨を稼ぐだけではなく、日本産の価値を客観的に知って改善を続けるために重要である。
 なお、競争に勝つための連携目的で準組合員や非農家理事を作ったり、全農の持株会社が他産業とジョイントベンチャー子会社を作ったりする必要も出てくるため、*16-2に書かれているとおり、実態を知らない人が「上から改革」で准組合員を規制するのはもってのほかだ。そして、農林中金の役割は、農村から集めた資金を、改革・改善のために資金を必要とする地方の農林業に提供できる卓越した視野と金融技術を持つことなのである。

*16-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/461886 (佐賀新聞 2017年9月9日) 農業の複合化避けられず 多様な連携で地域貢献を、農林中金総合研究所 皆川理事長講演
 佐賀県内のJAグループ役員を対象にしたセミナーが佐賀市で開かれた。農水省の元事務次官で農林中金総合研究所理事長の皆川芳嗣氏が、人口減少が進む今後の日本における農業の可能性、JAが果たすべき役割について語った。要旨を紹介する。日本は人口減少という大きな課題に直面し、かつてのように貿易立国として世界のものづくりを担うのは難しい。金融、技術も国を引っ張るだけの産業にはなり得ない。では農業はどうか。数年前にTPP(環太平洋連携協定)の議論で、「農業は日本のGDP(国内総生産)のたかだか1・5%しかない」と言った政治家がいた。だが、フランスやアメリカでもGDPに占める1次産業の割合は1~2%。あんなに農村を抱えている中国でも10%しかない。1・5%はあくまで原料の世界。2次、3次産業まで付加価値を足すと、生産額ベースで国の1割を農業から派生した分野が稼いでいる。地方に行くと、そのウエイトはさらに高い。地域社会を支え続ける意味でも、農業やその関連産業には大きな可能性がある。ただ、家業としての農業経営の持続可能性がなくなっていることは否定できない。後継者が成り立つ事業にするには、規模拡大や複合化はある程度避けて通れない。労働のピークを経営の中でどう分散させられるか、マネジメントをJAも一緒になって取り組まなければならない。農地基盤の条件整備、農地の権利問題といったことも今後、JAがやる必要があるだろう。日本の市場規模は必ず小さくなる。地域にこだわりつつ、“他流試合”に挑むのも大事だ。福岡と東京のJAさが系統の店(季楽)は、他の地域の需要を食って佐賀の農産物が売れている。外に打って出る取り組みを加速させる必要がある。東アジアは必ず成長し、消費社会になる。インバウンドを生かさない手はない。地域全体を良くするためには、いろんな人たちと連携し、包み込むという考えが重要だ。JR九州の「ななつ星in九州」は、九州の風土と皆さんが丹精込めて作った食材がなければ成功しなかった。旅をする理由はその場所でいろんなものを食べたり、体験したりできるから。連携相手としてもっと深くつながれるのではないか。農業と福祉の連携もある。農業分野の一部でも、JAから福祉サイドに手を差し伸べるのは大きな社会的意義がある。障害者雇用は日本の企業の責務だが、企業本体の業務で雇用の場を提供することが難しい場合もある。企業が特例子会社をつくり、その子会社の事業として農業や園芸に取り組めば、法定雇用の人数に組み込める制度がある。農業のノウハウや販路を生かし、地域のためにより積極的に役割を果たすJAにしていただければありがたい。

*16-2:https://www.agrinews.co.jp/p41762.html (日本農業新聞論説 2017年8月31日) JA組織基盤強化 組合員と共に未来開く
 JA自己改革の要諦は、組合員との結び付きを強め、その成果を「見える化」することに尽きる。多様化する組合員の「姿」をつかみ、理念や課題を共有し、共に農と地域の未来を開いていこう。政府主導の一連の農協改革は、総合事業を弱め、地域のライフライン機能を損ねる方向で進んでいる。対してJAグループが進める創造的自己改革は、「食と農を基軸として地域に根差した協同組合」を目指す。課題克服の「解」は常に現場にある。「上から改革」ではなく、「現場からの改革」でなければ真の自己改革はできない。JAグループの目標は、農業者の所得増大、豊かで暮らしやすい地域社会の実現だ。それには、共に歩む正組合員・准組合員とのつながりが欠かせない。JAを支える土台が揺らいでは改革などなし得ない。組織基盤を強め、JAが組合員、地域住民にとって、なくてはならない存在になることが改革集中期間に問われている。JA全中、JC総研が東西2カ所で開いた「JA組織基盤強化フォーラム」は、そうした問題意識に貫かれ、先進事例報告や識者提言など示唆に富む内容だった。フォーラムで問われたのは、多様な組合員の営農・生活実態、JA組織・事業・経営への関与の度合いを把握できているかだ。徹底した意向調査でJAの「強み」「弱み」を知り、きめ細かく組合員の要望に応えることが求められている。組合員と言っても、JA事業や地域農業を支えた親世代の正組合員、高齢化で販売の一線を退いた正組合員、後継者世代のJAに対する意識も一様ではない。既に数の上では正組合員を上回る准組合員にしても、単なる事業利用者から就農意欲のある人、JA運営参画を目指す自覚的な人までさまざまだ。組織基盤強化とは、多様化する組合員と直接向き合い、信頼を深めることにほかならない。正組合員には、営農・経済改革の果実をスピード感を持って届けることだ。経営者は明確なビジョンを掲げ、全ての職員は渉外であり、広報担当だという自覚と当事者意識を持とう。あらゆる場面で職員は、具体的な目標、手段を自らの言葉で語れるよう「人材力」を磨こう。准組合員への対応も総合事業の将来を左右する。政府が准組合員の事業利用規制問題を調査・検討する2021年3月末までに、「利用者」から「パートナー」「応援団」へと結び付きを強めることだ。准組合員は、総会への議決権などJA経営に直接参加する「共益権」はないが、さまざまな機会を捉え、参加・参画を促そう。支店の協同活動、総合ポイント制の活用、農業祭、食農教育、家庭菜園指導、健康講座など日頃の交流が理解と関係を深める。自己改革の進捗を政府から問われたときに、全ての組合員が「わがJA」と胸を張れるようにしたい。

<合理的な農業交付金>
PS(2017年9月15日追加):*17に、①主食用米以外の米作りを進めて水田の生産機能を維持するのは、食料自給率向上と食料安全保障に寄与する ②農水省は2018年度農林水産予算で飼料米助成や産地交付金など水田活用の直接支払交付金として3,304億円を要求した ③財務省や一部マスコミなどからは「財政負担が大きい」と疑問視する意見が出ている ④水田活用交付金は自給率向上の“要石”だ 等が書かれている。
 しかし、このうち①④は、転作するのに水田と米以外の選択肢を持たず、本来なら他の付加価値の高い作物を作ることができる場所で水田を維持するために、②のように膨大な予算を要求していることが問題なのである。つまり、別の不足している付加価値の高い作物を作って合理的な経営をすれば、国からの補助金はいらず、他産業はそうやって利益を出しているのだ。そのため、③のように、財務省が財政支出の負担が大きいというのは当たり前で、国民負担を増やさずに教育や福祉を充実させるには、一人前の生産年齢人口の大人には原則としてだらだらと補助金を出さずに自立してもらうしかない。ただ、農林漁業の場合は、環境や食糧安全保障にも寄与しているため、環境税その他から貢献度に見合った補助金を出すのは合理的である。

*17:https://www.agrinews.co.jp/p41901.html (日本農業新聞論説 2017年9月14日) 水田活用交付金 自給率向上の“要石”だ
 米価を上げるのに税金を投入するのは問題だという意見をしばしば聞く。それは皮相的な見方だ。主食用米以外への作物転換で需要に見合った米作りを進め、併せて水田の生産機能を維持するのは、食料自給率向上と食料安全保障に寄与する。農水省は2018年度農林水産予算で飼料米助成や産地交付金など水田活用の直接支払交付金として3304億円を要求した。この点に関し財務省や一部マスコミなどから「財政負担が大きい」と疑問視する意見が出ている。米価にようやく上向き傾向が見られるだけに、転作予算を“影の米価維持対策”に見立てて、批判を強める気配が感じられる。年末までの予算編成過程では、総額や助成単価の水準を巡り、財務省と農水省の厳しい綱引きが想定される。水田面積243万ヘクタールは全耕地面積447万ヘクタールの5割強に相当する。農地面積が減少する中、この貴重な生産機能を将来にわたって維持することは、脆弱(ぜいじゃく)化するわが国の食料安全保障上極めて重要である。毎年8万トンに及ぶ米の需要減が今後も見込まれる中、〈生産調整の強化↓需給緩和・米価下落↓耕作放棄地の拡大↓食料供給力の低下〉の悪循環を食い止めなければならない。最終的には国民・消費者の食を脅かす事態となる。15年度からの新しい食料・農業・農村基本計画を決定したのは安倍内閣であり、食料自給率の引き上げ目標を民主党政権が設定した50%(カロリーベース)から45%に下げた。現実的な目標に修正し、向上を目指すというのが理由だった。しかし、自給率は16年に1ポイント下落し38%にまで落ち込んだ。この目標設定に関わった食料・農業・農村政策審議会の中嶋康博会長は本紙のインタビューで「自給率が上がる姿が見えてこない。ほぼ全ての農産物が自給率を下げる要因になっている」と厳しい認識を示した。政府・与党はこの事実を重く受け止めなければならない。産地交付金や飼料米助成は、主食用米以外に作付け転換することで、需要に応じた米作りによる安定供給と水田機能の維持という二つの目標を実現する政策である。財政負担が小さくないのは事実だが、現状ではこれに代わる政策展開は見いだせない。斎藤健農相の肝いりで動きだす米の輸出拡大プロジェクトは、19年で米加工品を含めて10万トンという量である。これさえ実現は簡単なことではない。納税者の理解を得ながら、農家が主食用米以外を選択できる環境を整えるしかない。水田という持続可能性の高い生産装置を守ることは、食料自給率の向上と併せ、国土の保全や災害時の洪水防止といった多面的機能の発揮にもつながる。食料自給率低下を機に、審議会はわが国の食料安全保障の在り方を見詰め直し、危うい現状を発信し、広く国民理解を得る取り組みをしてはどうか。

| 農林漁業::2015.10~ | 07:39 PM | comments (x) | trackback (x) |

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