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2018.4.22 データは、集め方、解釈、使い方が重要で、そのためには、その分野に関する総合的な知識が必要なのである ← しかし、みんなで考えれば、よい解決策も出るだろう (2018年4月23、25、26、27、28、30日、5月2、3日追加)
   
  名目と購買力平価によるGDP      欧州・中国・日本の電源構成
                       2018.4.17、14東京新聞   

(図の説明:日本は物価水準が高いため、名目GDPでは中国との差が小さいが、購買力平価換算では中国との差が大きい。また、日本は、最も自国に有利で環境にも良いエネルギーである再生可能エネルギーの採用を進めず、電源構成に占める再エネ割合はヨーロッパだけでなく中国よりも小さい上、今後の普及計画も見劣りする)

   
 アジアの再エネ  世界の再エネ  日本のレアアース      原発再稼働への
  導入ペース   普及と電力価格               九州電力の執念 
  2018.4.19   2018.4.15    2018.4.19        2018.4.21
  日経新聞     東京新聞    西日本新聞        西日本新聞

(図の説明:世界は、再エネの普及時代に入り、それに伴って電力価格が下がっている。また、アジアの再エネ普及は他地域を上回っている。日本は、南鳥島付近の海底にレアアースが大量に存在することがわかり、21世紀の電源構成を邪魔する者は、現在は既得権益者しかいない)

(1)経済発展には総合的知識に基づいた計画性が必要であること
1)中国の出資規制緩和について
 中国は、1992年10月の14回党大会以降、市場経済に基づく社会主義(社会主義市場経済)と世界経済への参入に進路を明確化し、*1-1、*1-2のように、外資系企業が中国へ進出する際には、中国企業(もしくは個人)と合弁させ、外国資本の出資割合は50%以下しか認めなかった。これは、中国が市場を開放するにあたって自国の産業を育成するためで、技術を吸い尽くしていらなくなった外資は、追い出すこともできるようにした。私は、この頃、中国に進出する日本企業のケアをするために中国の外資規制を調査して、その巧みさに感心して唸った。
 
 その中国政府は、2018年4月17日、乗用車分野への外国企業の出資規制を、2018年中にEVなどの新エネルギー車、2020年にトラックやバスなどの商用車、2022年に乗用車で撤廃すると発表した。しかし、今や中国の新エネルギー車は国際競争力を持っており、新エネルギー車で出遅れた日本や米国の自動車メーカーにとっては、特に事業拡大の機会にはならないだろう。日本の経産省は、馬鹿の一つ覚えのように自由貿易のみを提唱しているが、1980年代と同様、日本の自動車産業の方が進んでいると考えている点が思考停止で甘い。

 しかし、中国政府は、2018年末までに造船・航空機の外資規制も撤廃するそうで、これらはまだ世界中でガソリン・エンジンを使っているため、日本が新エネルギー製品を投入すればリードできそうだが、日本の経産省は現状維持に汲々としており、環境でリードしようという先進的な意気込みがない。 
 
2)再エネに関する日本の遅れ
 また、中国では、*1-3のように、政府が2007年に再エネ拡大計画を立てて再エネが急速に増え、2017年の発電に占める再エネ割合は約33%となり、2050年には再エネを中心にするそうだ。また、世界1位、2位の企業を含めて200社以上の太陽光発電機器メーカーが激しく競い合い、値下げ競争をしているため、太陽光電力の価格が下がっているとのことである。

 さらに、日本の東電福島第一原発事故を受けて中国政府が原発の建設計画を大幅に見直し、2013年以降、原発の新規建設計画を承認しておらず、2050年には大半の電気を再エネで賄い、EVも再エネで動くことになるそうで、これは、私が、1995年前後に、日本で(もちろん世界でも)最初に提唱し、馬鹿者どもの逆噴射でつぶされたことだった。

 また、再エネは、*1-4のように、アジアでも急伸し、世界全体の伸び率の5割を大きく上回って5年で倍増しており、それを牽引しているのは中国とインドとのことだ。また、アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなどでは、100万キロワット以上のギガソーラーが相次いで建設されており、エネルギーの脱炭素化と脱原発は進むであろう。

 しかし、日本では、*1-5のように、25年経ってもまだ「再エネを主力電源にするには技術上の課題がある」などとしているが、競争力はやっている人につき、やらない人にはつかないので、最初から見極めることなどできない。そもそも、20~25年もの間、「再エネは自然条件による変動の大きい」などとして解決策を講じず、それを解決しないのも論外である。

 さらに、日本の場合は、*1-9のように、大手電力会社が自らの経営のために原発再稼働を望み、まだ原子力か火力で発電することしか考えず、*1-6のように、「送電線に空き容量がない」として再エネ電力の送電を拒んで、新規参入してきた再エネ事業者を破たんさせてきた。このシステムは、日本で起業が少なく、*1-8のようにイノベーションが進まない理由の一つである。

3)レアアース
 希少金属のレアアース等は、自動車産業、電子産業を始めとして広い分野で使われ、現在の先端技術に不可欠な資源だが、その殆どは中国で産出されている。そして、経産省は「資源は輸入するもの」という頭を切り替えられず、日本の先端産業は中国の意図次第で左右されるようになっている。

 そのような中、*1-7のように、海洋研究開発機構や東大のチームが、日本の排他的経済水域内の南鳥島沖にレアアース等が1600万トン超埋蔵されているとの推計を発表した。国としてやればすぐできるのに、相変わらず「現時点で利用できる見通しは立っていない」「今後10年で採掘技術を開発する」など、国の真剣さがないわけだ。

4)化粧品の「爆買い」と品切れ
 このようにぼけっとしていながら、*1-10のように、中国人客が「爆買い」して中国で転売されるとして、ブランドイメージ低下を懸念して、日本の化粧品メーカーが顧客に購入個数の制限を求めたそうだ。

 しかし、同じアジア人であるため、化粧品に望まれることが近く、今は売れるのが当たり前の時で、これは有難いことであって、今のうちに中国に販売ルートを作って必要な特許を取り、ブランドイメージを打ち立てなければならないにもかかわらず、「アルバイトを使って買い占めた」「化粧品の爆買い」などと客を馬鹿にしたり、購入禁止にしたりしている。そんな態度では、それに近いものが中国で安く生産され、日本人もそちらを買うようになるだろう。
 
 つまり、日本人は、日本人を持ち上げるために、中国などの中進国や後進国の人を馬鹿にすることが多いが、実際には、日本は、1980年代から30年に渡って進んでいないことに、謙虚に気付くべきである。

(2)教育研究の重要性
1)研究とイノベーション
 全米科学財団(NSF)がこのほどまとめた報告書で、*2-1のように、科学技術の論文数で中国が米国を上回り世界1位となったそうだ。2016年に発表された論文数は、中国が約43万本で約41万本の米国を抜き、3位以下は、インド、ドイツ、英国で、日本は6位だった。

 研究はイノベーションに直結するため、研究者の質と量の確保が重要なのだが、日本だけ研究論文数が13%減っているのである。これは、「勉強だけできても」などと無意味な比較をしたり、理数系教育を疎かにしたり、研究者をポスドクにして冷遇したりしたせいで、*2-2のように、過度に不正を言い立てて研究者の地位を魅力ないものにしたことも一因だろう。

2)個人情報の利用はどこまで認められるか
 日経新聞は、*2-4のように、「データの世紀だ」「データは情報資源だ」「データを集めろ」「データは新たな石油だ」などと言っているが、データは、①誰が ②何の目的で ③どういう集め方をして ④どのように比較したりトレースしたりして結果を出すか についてきちんと計画していなければ、ただのゴミだったり、個人情報の不正利用になったり、監視社会を作ったりする。私は、誰かが失敗するまで、それがわからないのを不思議に思う。

 そして、*2-5のように、8700万人の会員情報を不正流出させた米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者は、米議会上院の公聴会で証言して全面的に謝罪したが、利用者の個人情報を利用して利益を得る組織はフェイスブックだけではない。また、*2-6のように、利用者の個人情報を悪用するのもIT関連企業だけではなく、コンピューターウイルスの作成者でさえ野放しになっている現在、悪用の防止は不可能である。

 そのため、欧州では2018年5月に、企業などに個人情報の厳格な扱いを義務づける「一般データ保護規則」が施行されるそうで、日本も、欧州や米国などの先進国並みに個人情報保護を重視すべきだ。

(3)データ分析と研究
 日立製作所・ヤマトホールディングスなどの大手企業9社が、*3-1のように、データ分析の専門家「データサイエンティスト」の育成に乗り出し、そのデータサイエンティストには統計学に加え、データを取捨選択して問題解決につなげる能力も求めるそうだ。

 しかし、問題解決は、その分野の十分な知識がなければできないため、それぞれの分野(例えば、医学・薬学・マーケティングなど)の人がデータ分析の知識を持つべきなのであり、“データ分析のプロ”が問題解決をできるわけがない。また、“統計学を専門に教える大学”で、統計学しか勉強しなかった人が、どういう問題なら解決できるのか疑問だ。

 さらに、*3-2のように、日本の科学研究の実力が急速に低下しているのは、科学者や研究者を大切に育成しなかったことが原因である。そして、政府支出を評価する「独立財政機関」を設置しても、そこが正しい評価をできなければ、天下り先として政府支出がさらに増えるだけで、「政府研究開発投資はGDP比の1%にすることを目指す」というような支出金額の目標しか立てられないのであれば、単なる無駄遣いになるだろう。

 それでは、何故、そのようなお粗末な結果になってしまっているのかと言えば、*3-3の「全国学力テストの小6と中3で、これまで国語と算数・数学しかテストしていなかったが、3年ぶりに理科を加えて3教科で実施する」というように、近年、勉強することをないがしろにしているからである。

 そう言う理由は、上に書いたように、イノベーションのもとになる研究があっても、経営者・官僚・政治家・メディア・国民などがその価値を認めて前に進める態勢をとらなければ、イノベーションの種を殺してしまうからで、そのためには、文系・理系を問わず、必要な知識を持っておくことが必要不可欠だからである。

(4)データの読み方


  平均寿命の推移    医師数/人口1000人     GDPの推移  家電普及率推移

(図の説明:日本人の平均寿命は、1950年には男58.0歳、女61.5歳だったが、1965年まで急激に上昇し、その後2010年までは少し緩やかなカーブで上昇している。そして、2011年の東日本大震災で短縮したが、その後、さらに緩やかなカーブで上昇し始め、90歳~100歳の間で収束するように見える。1965年までの急激な上昇は、栄養状態・衛生状態の改善により乳児死亡率(0歳で死亡するため平均値を下げる)が減ったためだと言われている。その後、1965~2010年のカーブは少し緩やかになって漸増している。この平均寿命のカーブは、人口1000人当たりの医師数のカーブより、人口一人当たりのGDPのカーブや洗濯機・冷蔵庫などの家電普及率のカーブに似ている。そのため、長寿には、まず十分でバランスの良い栄養による体力づくりや清潔さが必要で、それでも病気になった場合に医師が関与して治癒させることが大切だということがわかる。なお、2011年の東日本大震災を境に寿命の伸びが緩やかになり、これを生活習慣病が原因だとする人もいるが、生活習慣病だけが原因なら1990年頃から寿命の伸びが緩やかになってよかった筈だと思うので、死亡原因別の死亡率推移も比較すべきだ)

1)県毎の平均寿命・健康寿命の比較
 2015年の都道府県別平均寿命は、滋賀県が長野県を抜き、男性が全国1位、女性が4位となって、長野県は30年ぶりに男性トップを奪われたそうだ。*4-1のように、どちらも健康を重視していることには変わりないが、県ごとに原因追及を行って対策を講じるのはよいことだ。

 また、*4-2のように、男女を合わせた平均寿命を1990年と2015年で比べると、都道府県の格差は広がっており、2015年トップの滋賀県(84.7歳)と最下位の青森県(81.6歳)は3.1歳の差があるそうだ。そのため、生活習慣(喫煙、食生活など)の見直しは必要で、都道府県間の格差分析は生活環境や実態の違いを把握するのに有効だろう。

2)介護保険制度について
 厚労省は、*4-3のように、介護が必要な高齢者の身の回りを世話する「生活援助」について、平均以上の利用回数になる介護計画を市町村に届けるよう義務づけ、過剰な利用を洗い出し、本人の自立支援や重度になるのを防ぐ中身かどうか検証するそうだ。

 しかし、何が過剰かの判断は重要で、生活援助を減らすと新たに施設に入らなければならない高齢者も出るため、施設を増やして高齢者を収容した方が安上がりで高齢者のQOLが高くなるのか否か熟考すべきだ。何故なら、月30~40回(1日1~2回)と生活援助の利用回数が多い高齢者というのは、甘えている人というより、重篤だが自宅で過ごそうとしている独立性の高い高齢者だと思われるからである。

 なお、介護サービスの需要は実需であり、介護保険制度は始まって20年未満であるため、介護給付費が2025年にかけて現状の2倍の20兆円規模まで膨らむと予想されるのは全く自然で、生活援助が給付費の1%程度であるにもかかわらず無駄遣いを指摘する声が多いのは、「家事は仕事のうちに入らない楽なものである」と考える人が少なくないからだろう。しかし、多くの老夫婦世帯で生活援助は必要不可欠であるし、男性だけが残った世帯ではさらに重要になっている。

 そのため、生活援助のより安価な担い手を確保したり、保険適用と保険不適用(自由)の混合介護をやりやすくして、安いから頼むのではない実需を探って適正額を決め、必要と認められるものは速やかに保険適用にしていくのがよいと考える。

 なお、*4-4のように、介護保険料を8割の自治体で上げ、健保組合は全国の約1400組合のうち3割が2018年度に保険料率を引き上げたので、給付抑制が必要だとする意見がある。しかし、現在の介護保険料は40歳以上からしか徴収していないため、まず受益者である働く人すべてから介護保険料を徴収するように改正し、価格の高すぎる機材の必要性とその価格の見直しから始めるべきだ。

<経済発展への総合的知識の必要性>
*1-1:http://qbiz.jp/article/132030/1/ (西日本新聞 2018年4月17日) 中国、車の外資規制撤廃へ EV18年、乗用車22年に
 中国政府は17日、乗用車分野への外国企業の出資規制を、2022年に撤廃すると発表した。現在は現地合弁企業に対する50%までの出資しか認めていないが、この規制を取り除く。電気自動車(EV)などの新エネルギー車は18年中に、商用車では20年に、それぞれ出資規制を撤廃する。日本の自動車メーカーにとっては、中国事業拡大のチャンスになりそうだ。自動車分野の規制緩和は、米国や日本が強く求めてきた。米中貿易摩擦などで中国市場の閉鎖性への批判が高まる中、基幹産業である乗用車分野の開放策を打ち出すことで、改革・開放政策の継続を印象付ける狙いだ。中国政府は、ガソリン車などを含む乗用車での撤廃により、自動車業界での出資規制は全てなくなると説明している。中国の習近平国家主席は10日の演説で、改革・開放政策を進めるために自動車などの分野で市場開放に取り組む姿勢を示していた。

*1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180418&ng=DGKKZO29492320X10C18A4MM8000 (日経新聞 2018年4月18日) 中国、車の外資規制撤廃 22年に、市場開放アピール
 中国政府は17日、外資系自動車メーカーの乗用車分野の出資規制を2022年に撤廃すると発表した。同年までに電気自動車(EV)や商用車など自動車産業の外資規制をすべて撤廃する。米国との貿易摩擦をにらみ、市場開放をアピールするのが狙い。世界最大の自動車市場で日本勢を含む外資メーカーの経営戦略の自由度が高まりそうだ。国家発展改革委員会が新しい政策を発表した。習近平(シー・ジンピン)国家主席が10日に博鰲(ボーアオ)アジアフォーラムで表明した自動車産業などの外資規制の緩和方針を受け、自動車の分野別にロードマップを明らかにした。これまでは外資の出資は50%が上限だった。外資規制撤廃の時期は、18年中にEVなどの新エネルギー車、20年にトラックやバスなどの商用車、22年に乗用車とする。中国政府が17年4月に発表した自動車産業の中長期発展計画では「25年までの外資規制の緩和」としており、時期を前倒しするとともに撤廃にまで踏み込んだ。過半出資にこだわって中国進出が難航する米電気自動車メーカー、テスラなどを後押しする狙いとみられる。新エネ車を除き原則2社までだった中国での自動車生産の合弁会社数の制限も22年に撤廃する。中国政府の新しい外資規制撤廃で、日本勢を含む外資メーカーは中国市場での経営の自由度が高まる。一方、外資系自動車大手幹部は「中国側の協力を得られなくなると中国事業にマイナスに働くので、出資比率の引き上げは慎重に考える必要がある」と漏らす。具体的な規制緩和の扱いについても「これから公表される詳細な細則などをみないと分からない」(外資系メーカー幹部)との指摘もある。中国政府は自動車以外でも、18年末までに造船、航空機製造の外資規制を撤廃する。すでに公表した金融以外でも、18年以降にエネルギーや資源、インフラ、交通、流通分野で規制緩和を順次進める方針を打ち出した。中国の新車販売台数は17年で2887万台。世界2位の米国の1.7倍、日本の5.5倍に達する。乗用車を中心に独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)、日産自動車、ホンダ、トヨタ自動車が合弁で生産するブランドが上位を占める。規制緩和によって中国市場で外資と中国メーカーの競争が進み、業界再編が進むとの見方も出ている。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201804/CK2018041402000147.html (東京新聞 2018年4月14日) 【経済】<原発のない国へ 世界潮流を聞く> (1)中国「50年には再生エネ中心」
◆中国国家気候変動戦略研・李俊峰教授
 世界各国で太陽光、風力など再生可能エネルギーが飛躍的な拡大を続けている。日本政府が依然、原発を基幹電源として位置付け、再生エネルギーが伸び悩んでいるのと対照的だ。世界潮流から何を学ぶべきか。国内各地の再生エネ導入の現場をルポした第一部に続き、研究者やビジネスマンなど世界の専門家たちにエネルギー事情の最前線を聞く。
-中国の再生エネの導入状況は。
 「中国政府が二〇〇七年に再生エネの拡大計画を立ててから、再生エネが急速に増えており、一七年の発電に占める再生エネの割合は計約33%に増えている。これまでは水力、風力の割合が大きかったが今後は太陽光が急増する。二〇年の目標は35%だが、前倒しで達成できるかもしれない。経済政策を立案する国家発展改革委員会は三〇年の目標として、温室効果ガスを排出しない非化石電力である再生エネと原子力で電気の50%超を賄うことを掲げている。原子力はこのうち5%にも満たないだろう」
-再生エネ増加の背景は。
 「技術が進歩し、大量生産が可能になった。太陽光発電用のパネルなど設備投資費用は〇七年から十年間で八分の一まで下がり、いまも急速に下がり続けている」
「これに伴い発電費用は下がるので、電力会社が発電会社から買い取る際の固定価格も大規模太陽光は今年は一キロワット時当たり〇・五五元(九・二円)まで下がっている。これも日本(本年度十七円)の半額だ。二五年には石炭より安くなり、買い取り制度そのものが不要になるだろう」
-なぜそれほど設備投資費用が下がっているのか。
 「太陽光発電設備を作るメーカーが激しく競っているためだ。中国では太陽光メーカーは世界一、二位の企業を含め二百社以上がひしめき合っている。いまや中国メーカーが世界の太陽光生産の70%を占める。風力タービンのメーカーも二十社以上ある。受注を巡って値下げ競争が起きている」
-原発政策は。
 「中国政府は日本の東京電力福島第一原発事故を受け、原発の建設計画を大幅に見直した。一三年以降は新規の建設計画を承認していない。すでに建設中の原発はあるが、二〇年時点の原発の設備容量の目標はもともとの百二十ギガワットから半分以下の五十五ギガワットに大幅に下方修正している」。「建設途上にある国産原子炉が成功すれば、流れが変わるかもしれないが、原発の問題は高い建設費用と安全性だ。人口が大きい中国ではどこに建てたとしても集住地域が近くにあり、安全面のリスクが高い。中国の国土は広いが、最終処分場をつくるメドもたっていない」
-中国は自動車もガソリン車から電気自動車(EV)に転換する計画を発表しているが、発電以外の計画は。
 「二〇五〇年には大半の電気を非化石電力で賄うことになり、再生エネが中心になっているだろう。EVの電気も再生エネで賄うことになる」
<り・しゅんほう> 中国国家気候変動戦略研究・国際協力センター教授。同センターはエネルギー政策を研究し政府に助言している。過去には中国の国家戦略を立案する国家発展改革委員会のエネルギー研究所副所長も務め、政府の再生エネの関連法や中長期計画の立案に携わった。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180419&ng=DGKKZO29568160Z10C18A4MM0000 (日経新聞 2018年4月19日) 再生エネ、アジアで急伸 5年で倍増、中国けん引
 再生可能エネルギーの導入がアジアで急拡大している。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調べによると2017年末の発電容量は5年でほぼ倍増。世界全体の伸び率の5割を大きく上回った。太陽光発電を推進する中国やインドの伸びが大きい。環境意識が強い欧州などに加えアジアでも採用が増え、世界で再生エネの存在感がいっそう高まりそうだ。17年末の再生エネの発電容量は21億7900万キロワットだった。発電方式別では水力が53%、風力が24%、太陽光が18%と続く。太陽光の構成比が過去5年で約2.6倍となり、伸びが大きい。けん引するのが中国で、太陽光が5年で36倍に増えた。13年に再生エネを高い価格で買い取る制度を導入して大気汚染の一因とされる石炭火力発電を抑制。太陽光発電施設の新設が相次ぎ、中国資本の太陽電池メーカーも育った。太陽光発電はパネルの価格下落で発電コストが5年で約半分に下がったうえ「風力ほど設置や運営のノウハウが要らない」(自然エネルギー財団の大林ミカ氏)。中国では17年も16年に比べ68%増えるなど増加率は高水準が続く。水力発電も過去5年で36%増えた。足元で再生エネの導入が急速に進んでいるのがインドだ。17年の増加率は18%と、比較可能な01年以降で最高となった。ソフトバンクグループが合計2千万キロワットの再生エネ発電所を建てる計画を掲げ、17年4月に一部設備が稼働した。日本では過去5年で2.1倍に増えた。増加分の96%が太陽光だ。発電容量の地域別構成比はアジアが42%、欧州が24%だ。欧州も過去5年で30%増えたが伸び率はアジアより低かった。国際エネルギー機関(IEA)によると、再生エネが世界の総発電量に占める比率は16年に24%に高まった。40年には再生エネの発電量が2.6倍に増え、総発電量の40%に高まるとみている。アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなどでは100万キロワット以上の太陽光発電施設「ギガソーラー」が相次いで建設されている。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180411&ng=DGKKZO29216810Q8A410C1EE8000 (日経新聞 2018年4月11日) 再生エネ「主力」へ技術課題 2050年戦略、競争力見極め難しく
 経済産業省は10日、省内の有識者会議で2050年に向けた国の長期エネルギー戦略の提言を取りまとめた。太陽光や風力など再生可能エネルギーを「主力電源」にする目標を明記した。ただ再生エネを主力にするには技術的な課題も多い。火力なども含めてどの電源や技術に経済性や競争力があるのか、今後も難しい見極めが迫られる。今夏をめどに閣議決定するエネルギー基本計画に反映する。再生エネを主軸としつつ蓄電池や火力、原子力など多様な技術や電源を組み合わせて変化に対応できるようにする。エネルギー情勢を客観的に分析し、最適な選択に向けた判断材料を示す新組織も設立する。再生エネは海外に比べて高コストから脱却できておらず、発電システムの一層の効率化を事業者に促す。再生エネの大量導入を受け入れられる送配電網の整備も課題。天候や季節で出力が変動する弱点を補うためには、火力発電など他の手段の活用も必要になる。それぞれに技術的な課題が多く50年の明確なエネルギー構成は示せなかった。原子力は依存度を低減する方針を明記する一方、「脱炭素化の選択肢」として「安全性や経済性、機動性に優れた炉の追求」も続ける。10日の会議では原子力について、「地球温暖化への対応を考えると依存度低減は合理的ではない。逃げてはだめだ」(コマツの坂根正弘相談役)といった意見が出た。一方で「推進しないほうがいい」(イーズの枝広淳子代表取締役)との異論もあり、明確な方向付けはできなかった。

*1-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180418&ng=DGKKZO29496450X10C18A4EE8000 (日経新聞 2018年4月18日) 再生エネ拡大へ、送電線空き活用 経産省会議が対応策
 再生可能エネルギーの普及拡大を議論する経済産業省の有識者会議は17日、発電コストの低減策や、送電線の空き容量を柔軟に運用するルールなどを盛り込んだ対応策の骨子をまとめた。今夏にも改定するエネルギー基本計画に反映する。有識者会議は送電線の利用ルールを見直し、使える容量を拡大する「コネクトアンドマネージ」を2018年度から順次導入する方針を示した。空き容量をどこまで活用できるかを今後、経産省と電力会社で詰める。自然条件による変動の大きい太陽光や風力などの再生エネを大量に導入する場合、電力の需給バランスを保つ方法を確保する必要がある。骨子では蓄電池や水素などのコスト低減を目指し、技術開発を加速する方針も明記した。政府は2030年度に再生エネ比率を22~24%にする目標を掲げている。再生エネを主力電源とするためには、詳細な制度づくりや技術開発に課題が残る。

*1-7:http://qbiz.jp/article/132184/1/ (西日本新聞 2018年4月19日) 南鳥島沖の深海に希土類1000万トン超 世界消費の数百年分
 海洋研究開発機構や東京大のチームは、太平洋の南鳥島沖の深海底で見つかったレアアース(希土類)を含む泥の濃度を調査した結果、2500平方キロの範囲で埋蔵量が1600万トンを超すとの推計を発表した。周辺は日本の排他的経済水域(EEZ)内で、世界で消費されるレアアースの数百年分に相当する大量の資源だとしている。ただ実用レベルの採掘技術が存在しないため、現時点で利用できる見通しは立っていない。東京大の加藤泰浩教授は「企業や研究機関と検討を進め、今後10年で実際に使える採掘技術を開発したい」と話している。チームはこれまでに南鳥島沖の水深約5千メートルの海底にジスプロシウムやイットリウムなどを含む泥が2500平方キロにわたって広がっているのを発見している。調査船で25カ所の海底を掘削して泥に含まれるレアアースの濃度を調べると、北西部の約100平方キロで特に濃度が高かった。この海域だけで120万トン、全体では1600万トンを超す埋蔵量があると推定される。泥に含まれる粒状の生物の骨や歯には多くのレアアースが含まれ、それらをすくい上げて回収することで採掘コストを抑えることができるとチームはみている。

*1-8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180411&ng=DGKKZO29236340Q8A410C1CR8000 (日経新聞 2018年4月11日) イノベーション、日本勢創出難しく 研究者3000人調査 「国際的成果少ない」26%
 文部科学省科学技術・学術政策研究所は10日、日本の産学の研究者約3000人を対象とした意識調査の結果を発表した。国際的に突出した成果が日本から出ているか、との質問では回答者の26%が前回調査に比べて状況が悪化していると回答した。政府は画期的な研究成果をイノベーションにつなげて経済成長を実現する方針だが、研究現場の認識と大きな開きがあることがうかがえる。同研究所は、研究現場の意識変化を継続的に追う目的で2016年に調査を初めて実施。17年末に同じ回答者を対象に2回目の調査を実施して1回目と比較。対象者は大学や公的研究機関に所属する約2100人、企業に所属する約700人で回答率は92.3%だった。国際的に突出した成果が生み出されているかとの質問は26%が前回よりも悪化しているとした。変化なしは68%で、改善したとするのは5%だけだった。状況を10点満点にすると回答者の平均は大学所属の研究者が4.1と前回に比べ0.58ポイント低下、産業界も0.5ポイント減の4だった。研究成果がイノベーションにつながっているかという質問でも20%の回答者が悪化とした。ポイントも大学で0.4ポイント低下の4.1、産業界は0.29ポイント減の3.3だった。日本の研究状況が悪化している理由として、中国やインドの台頭による国際的な地位低下、学術論文の動向などを挙げた。ベテラン研究者の固定観念が若手研究者の自由な発想を妨げているのではとの回答もあった。ノーベル賞の受賞などは近年目立つものの、過去の蓄積によるもので今後は研究力が落ちる一方という意見も多かった。

*1-9:http://qbiz.jp/article/132329/1/ (西日本新聞 2018年4月21日) 九電、社長交代で成長戦略へかじ 原発4基実現へ、経営再建にめど
 九州電力のトップが約6年ぶりに交代する人事が固まった。2011年の東京電力福島第1原発事故後、大きく傷んだ経営を立て直す環境づくりに一定のめどがついたことが背景にある。今後、重要度が増すのは成長戦略。瓜生道明社長から後を継ぐ池辺和弘氏が、成長の歩みをどのように進めるのかが焦点だ。原発の長期停止による火力発電の燃料費負担増加で、九電の財務は急激に悪化。2012年3月期から4年連続で赤字を計上し、有利子負債は約1・5倍に膨らんだ。収支改善と電力の供給力確保が喫緊の課題となる中、瓜生氏は原発再稼働を推進。川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)は福島事故後で全国第1号となった。並行して経費削減を徹底。16年の電力、17年のガスと続いた小売り全面自由化、20年の発送電分離に向けた「カンパニー制」導入など、重要課題への対応も指揮した。3月の会見では「嫌というほど濃密な6年間だった」と振り返った。最後の大きな課題が川内1、2号機と玄海3、4号機(佐賀県玄海町)の原発4基体制の実現。玄海3号機が蒸気漏れで一時発送電が停止になったものの、4号機の再稼働への影響は抑えられ、「経営の大きな節目」(九電幹部)を乗り越える見通しがついた。役員の序列では10人抜きで社長に昇格する池辺氏。昨年6月に22人抜きで取締役常務執行役員に就いた後は、若手社員のアイデアや他社技術を活用した新規事業創出に携わり、トップとして成長戦略を進めるための布石との見方もあった。一方、財務は好転しているとはいえ、自由化で競争は激化し、経営環境はなお厳しい。池辺氏も策定に関わった中期的な財務目標では連結の経常利益を17〜21年度の平均で1100億円以上などと掲げるが、社内でも「かなり高い目標」との見方がある。池辺氏は2月、役員制度の見直しに関する記者会見で「意思決定の迅速化が重要」と語った。九電が目指す「日本一のエネルギーサービスを提供する企業グループ」実現のためには、スピード感ある対応が鍵を握る。

*1-10:https://digital.asahi.com/articles/ASL3Z52XCL3ZULFA00Z.html (朝日新聞 2018年3月31日) 化粧品「爆買い」制限広がる 品切れ・海外への転売懸念
 化粧品メーカーが顧客に商品の購入個数の制限を求める動きが広がっている。訪日客向け販売の急増による品切れや、一部が海外で転売されていることが背景にある。訪日客への販売増で業界は好調だが、品切れによる既存顧客への悪影響や、転売によるイメージ低下の懸念から、購入制限を求めざるを得なくなっている。
●「バイト20人で買い占め」 化粧品「爆買い」の実態
 ファンケルは2月、メイク落とし「マイルドクレンジングオイル」の購入個数を「1週間に1人10個まで」とする日中2カ国語の顧客向け通知を直営店に出した。中国人客が「爆買い」したとみられる商品が現地で転売される例が見つかり、ブランドイメージ低下を懸念した。コーセー子会社のアルビオンは昨年末から、「アルビオン」ブランドの乳液の購入を1日1個に制限。ネットに顧客向けの「お願い」を日中英3カ国語で出した。訪日客への販売増で生産が追いつかなくなったという。資生堂は2月ごろから、銀座の百貨店などで「SHISEIDO」ブランドの美容液の購入を1日1個に制限。店頭に営利目的購入を禁じる日中英3カ国語の掲示も出した。制限は「多くのお客様に届けるため」(広報)という。購入制限は訪日客増とともに2015年ごろから目立ち始めた。最近は対象商品が増え、1回あたりの個数の上限も減らす傾向にある。訪日客向けが好調で、資生堂とポーラは直近の決算で営業利益が過去最高、コーセーも最高益の見込みだが、急増した販売の「副作用」が購入制限という形で表面化している。

<データと研究>
*2-1:https://www.sankei.com/world/news/180125/wor1801250041-n1.html (産経新聞 2018.1.25) 科学・工学分野の論文数、中国が初の首位 米国抜く 日本6位 米財団調査
 各国の科学技術力の分析に当たる全米科学財団(NSF)がこのほどまとめた報告書で、科学技術の論文数で中国が初めて米国を上回り世界首位となったことが分かった。日本は6位となり、新興国ではインドにも追い抜かれており、科学技術立国としての基盤低下が懸念されそうだ。報告書はNSFが2年ごとにまとめている。2016年に発表された論文数は中国が約43万本となり、米国の約41万本を抜いた。3位以下はインド、ドイツ、英国が続き、日本は6位と低迷した。7位以下はフランス、イタリア、韓国。報告書がまとめた統計によると、直近10年間の国別の論文数の推移は、中国が約124%増と大きく飛躍。インドも182%増と伸び、新興国の躍進が著しい。日本は13%減った。米国が7%増、欧州連合(EU)域内は28%増だった。論文数を分野別にみると、中国は工学分野で欧米を上回ったが、医学・生物学分野では米国などが優位を保った。中国は科学研究の底上げのため、民間を含む研究開発費を増加させている。論文数増加は、こうした事情が背景にあるとみられる。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL454HRCL45PLBJ005.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2018年4月12日) 研究不正、大学教育で防げ 「インチキ論文」見破り方も
 東京大分子細胞生物学研究所や京都大iPS細胞研究所など、著名な機関で研究をめぐる不正が相次いでいる。国は大学や研究機関に対して、ビデオ教材などによる不正防止教育を求めているが、効果はいま一つだ。そうした中、危機感を募らせた大学の間では、学生たちが不正に手を染めないようにと、独自の教育プログラムを取り入れる試みが広がり始めている。「どこが、どう怪しいのか。どう修正すべきか。考えをまとめてください」。滋賀県立大の高倉耕一准教授(生態学)が、学生たちに呼びかけた。受講する十数人の学生が持ち寄ったのは、健康器具や化粧品などのチラシ。他社製品との違いをアピールする言葉が並ぶ。「事例紹介ばかりで、肝心のデータがない」「グラフの目盛りを操作して効果を大きく見せている」。学生たちが、互いに意見をぶつけあう。大学院の「環境研究倫理特論」という授業のひとコマだ。
●不正見抜くソフトの使い方も
 「身近なチラシの観察は、自分が不正に手を染めず、上からの不正の指示に批判的に対処するためのトレーニングです」と高倉さん。この授業は昨秋から今年2月まで15回行われ、学内外の9人が講師を務めた。「インチキ論文」を見破る技術として、画像の切り貼り・使い回しや不正な統計処理などを見抜くソフトの使い方を教えたり、過去の研究不正の裁判記録を読み解いたりした。「特論」を企画した原田英美子准教授(植物科学)は、主任教授などの上司が指示し、若手を巻き込んで組織的に行われる「トップダウン型」の不正を念頭に置いたという。若手は生活のために、人事権者の理不尽な指示に従わざるを得ない。「学生には怪しい論文や研究室を見抜く目を持ち、近づかないようにしてほしい」と話す。互いに意見を出し合って問題の解決策を探るアクティブ・ラーニング(参加型)の授業は学生に好評で、今秋にも同様のプログラムを予定している。
●過去の不正を題材に議論
 東京工業大でも、大学院の修士課程で、選択科目として研究倫理の講義を行っている。2016年度は約290人、17年度は約240人が受講した。座学のほか、ほぼ毎回グループ討議を行う。過去の不正事例を題材に「科学者が重視すべき価値」、「不正が起きた原因や背景」などについて、学生同士で話し合う。講義を担当した東工大の札野順教授(科学技術倫理)は「論文の作成・出版は、本来、研究成果を共有し、研究をより進める手段にすぎない。しかし、それ自体が目的化していることが不正の背景にある」と指摘する。「研究する意味や目的を正しく知れば不正はおのずと減るはず」。19年度からは、対象を学部1年生から博士課程までに拡充する計画だ。
●「不安定な雇用環境が背景」指摘も
 京都大iPS細胞研究所で1月に発覚した研究不正は、任期付きで採用された30歳代の研究者が起こした。成果を出さないと次のポストが得られない若手の不安定な雇用環境が、不正の背景として指摘されている。若手だけでなく、研究代表者らも、国からの補助金が減り続ける中で予算獲得の強い圧力の下にある。科学界全体が過度の成果主義にさらされている。研究不正の防止に特効薬はなく、海外でも大きな課題となっている。東京大医科学研究所の技術専門職員で、日本医療研究開発機構の主査として海外の事例を調査した池上徹さんによると、たとえばカリフォルニア大学のある教員は、「倫理、および『生き抜く』術」と題した討議やロールプレー(役割演技)などのプログラムを導入。研究倫理上問題となる具体的な状況を参加者たちが自ら設定し、論文の責任著者、研究グループの代表者、雑誌の編集者、資金を出した機関の人などの立場で対応を演じ合う。研究者として生き残るため、正解のない問題に対して、自分ならどうするかを考えてもらう試みだ。他大学の教員らの間でも、同様の取り組みが草の根的に広まりつつあるという。
●文科省の不正防止教育「不十分」
 日本では文部科学省が、国の研究費を受ける条件として、不正防止教育を大学などに課している。ただ、ビデオ教材を視聴する「eラーニング」が中心で、不正防止には不十分との指摘は多い。一方、東工大や滋賀大のように教育カリキュラムに組み込む大学独自の参加型のプログラムは、まだ全国でも数えるほど。国立大学の法人化を機に、国からの運営費交付金が減り、新たな教育プログラムに必要な専門の教員を雇う十分なお金が大学側にないという事情もある。池上さんは「研究倫理を、大学の研究教育の一分野として確立する必要がある。そのための予算と教員の措置は、ぜひとも必要だ」と指摘する。

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180403&ng=DGKKZO28878060S8A400C1MM8000 (日経新聞 2018年4月3日) データの世紀 情報資源、世界を一変、始まった攻防(1)人体から宇宙まで 企業・国、先頭競う
 世界各地で毎日、企業の活動や個人の行動などから膨大な量のデータが生み出される。つぶさに分析すれば成長の原動力になる「新たな資源」だが、人の行動を支配しうるリスクも抱える。企業や国を巻き込んだ攻防も始まり、世界はデータの世紀に入った。3月27日。英下院の委員会に、赤く染めた短髪にスーツ姿の男性が現れた。米フェイスブックで約5千万人分のデータが不正流出し米大統領選の選挙工作に使われた疑いが浮上。男性は問題を内部告発した英データ分析会社、ケンブリッジ・アナリティカの元社員だ。この会社は流出データの提供を受けていた。証言に費やされた時間は延々、3時間半。米国では大統領選への関与が注目されている。一方、英国で議論を呼んだのは、委員の質問に淡々と答えていたこの男性が、2016年の英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票にも関与していたと示唆したことだ。委員「もしその関与がなかったら?」。男性「国民投票の結果は、違っていたかもしれません」
●「新たな石油」
 データ分析は個人の行動をも動かす領域にまで高度化した。全世界のフェイスブックの利用者は月間20億人以上。「フェイスブック上での反応を分析して広告を打てば、消費者を大きく動かせる」。米コロンビア大学のサンドラ・マッツ准教授らの研究では、「いいね!」ボタンの押し方などから得た嗜好に沿ってその個人に合った化粧品の広告を流すと「購買数は54%増えた」という。全世界で1年間に生み出されるデータの量は既にギガ(10億)の1兆倍を意味する「ゼタ」バイトの規模に達する。米調査会社IDCの予測では、25年に163ゼタバイトと16年比10倍に増える。これは全人類一人一人が、世界最大の米議会図書館の蔵書に相当するデータを生み出すような規模だ。ネットの検索履歴や車の走行情報が新サービスを生み、経済や政治のデータがマネーを動かす。「データは新たな資源」「新たな石油」。米インテルやIBM、中国アリババ集団などIT(情報技術)大手の経営者は口をそろえる。限りある石油と違い猛烈な勢いで膨張するデータを、世界中の企業が吸い上げる。宇宙からは、モノの動きを見逃すまいと人工衛星の「目」が光る。港のタンカーの出入りやスーパーの駐車場の稼働状況から、公式情報より早く経済の動向を予測。データを駆使するヘッジファンドが利益を上げる。「全世界を毎日撮影する」。日本でも超小型人工衛星開発のアクセルスペース(東京・中央)が18年秋、大きさ数十センチメートルの衛星を3基打ち上げ、最終的に50基に増やす。「衛星画像を様々なデータなどと組み合わせて分析すれば、ビジネスになる」(中村友哉社長)
●病気リスク軽減
 データは命をも救いうる。米アルファベットは17年4月、傘下企業を通じ1万人の心拍などの健康情報を少なくとも4年間集めるプロジェクトを始めた。日本でも内閣府と東京大学や京都大学が共同で18年6月から、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術を使い生活環境と血圧の関係を即時測定する実証実験を始める。病気リスクの軽減が狙いだ。20世紀を石油の世紀とすれば、21世紀はデータの世紀。その先頭を走るのがグーグルやアップルなど「GAFA」と呼ばれる米IT4社だ。合計時価総額は10年代前半、かつて「セブン・シスターズ」と呼ばれた石油大手4社を逆転した。急拡大ぶりは、勃興時の石油産業の姿にも重なる。石油の大量供給は世界で自動車産業の発展をもたらした。一方、巨大化の弊害も指摘された。ジョン・ロックフェラー氏らが19世紀後半に設立したスタンダード石油は1911年に反トラスト法(独占禁止法)で分割。後に栄えたエクソンやテキサコなど巨大7社も、今は4社に集約された。現在は、肥大化したGAFAに対する逆風が世界で強まる。歴史は繰り返す。データの世紀が問いかけるのは、産業構造の転換や企業間の攻防にとどまらない。石油の世紀には、石油輸出国機構(OPEC)が誕生。中東諸国による石油支配を生み出し、石油危機を通じて先進国経済を大きく揺さぶった。そのアキレスけんを守ろうと米国が同地域に軍事介入する結果となった。データの世紀は米国1強にもみえる。だが世界のルールと一線を画す独自政策で、官民を挙げて世界中からデータの収集にかかる中国のような国もある。ロシアもデータの力で世界を揺さぶる。「宗教や民族や国家といった従来の枠組みに代わり、情報を軸とした新たな世界秩序の構築が始まる」。慶応義塾大学の山本龍彦教授は、そう予言する。その行き先を、まだ誰も知らない。

*2-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13446853.html (朝日新聞 2018年4月12日) FB全面謝罪、議会追及かわす 情報流出でザッカーバーグ氏、米公聴会証言
 米フェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が10日、米議会上院の公聴会で証言し、最大8700万人の会員情報が不正流出した問題について全面的に謝罪した。だが、利用者の個人情報を利用して収益をあげる巨大IT企業の事業モデルそのものへの不信感は拭えていない。(ワシントン=香取啓介、青山直篤、江渕崇)
■対策講じ、低姿勢貫く
 ダービン議員「昨日どこのホテルに泊まったか教えてくれませんか?」。ザッカーバーグ氏「ここでは明らかにしたくありません」。ダービン氏「これがプライバシー。FBが集めている情報なのです」。公聴会では上院定数の半数近い44人の議員が次々と質問。追及は5時間近くにわたった。普段のTシャツ姿ではなく、紺色のスーツに水色のネクタイを締めて臨んだザッカーバーグ氏。「我々は会社を経営する上でたくさんの間違いを犯してきました」などと対策の遅れや不十分さを謝罪し、低姿勢を貫いた。「世界の人々をつなぐ」との理想を掲げるFBは、誰でも無料で使える。その代わり、利用者がインターネット上に出す個人情報を元にして広告主に広告スペースを提供し、収入を得る。創業14年で、利用者は世界で20億人を超えた。情報の不正流出が発覚したのは3月。アプリを通じて利用者の個人情報が抜き取られ、2016年の米大統領選でトランプ陣営を支援した英選挙コンサル会社に不正利用された疑惑が持ち上がった。偽ニュースの拡散を許し、選挙への介入を招いたとの批判もある。FBは先週来、アプリ開発者の情報へのアクセス制限や広告表示の自主規制など、対策を発表。議員からは政府による規制に関する質問も相次いだが、ザッカーバーグ氏は「正しい規制なら歓迎する」と応じ、論戦にならないようにした。広告なしの有料版を検討しているか問われると「広告モデルが10億人単位の人々にサービスを届ける唯一の道だ」と答えた。追及をかわしたかにみえるザッカーバーグ氏だが、不信感はくすぶっている。「使命よりも広告の価値を上位に置く事業モデルなのに、米国人のプライバシーを守るために自らの意思で本当に変われるとどうして信じられるだろうか」。ハッサン上院議員はこう問いかけた。
■規制強化求める声も
 問題が深刻になった背景には、米巨大IT企業が情報や富を独占し、米政治や社会がその悪影響への懸念を強めていることがある。米調査会社によると、フェイスブックとグーグルだけで昨年の米デジタル広告市場の6割以上を稼ぎ、寡占度合いは年々高まる。欧州に比べ、独占に甘い競争政策をとってきた米国だが、今回の問題を契機に流れが変わる可能性はある。欧州では5月、企業などに個人情報の厳格な扱いを義務づける「一般データ保護規則」が施行される予定で、ザッカーバーグ氏も順守を誓った。米国でも同様の厳しい規制が必要だとする見方が出ている。ニューヨーク大学のロバート・シーマンズ准教授は「データの収集や利用について人々が注意を払うきっかけになった。消費者が完璧なプライバシーを得ることはできなくなっている」と話す。

*2-6:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/204114 (佐賀新聞 2018年4月12日) FB悪用対策「不十分」
 米交流サイト大手フェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は10日、個人情報の不正利用やFBを通じたロシアの米大統領選介入など一連の問題について、対策の不備を認めて陳謝した。「悪用防止に十分な対応をしていなかったのは明らかだ。私の過ちで、申し訳ない」と述べた。上院司法委員会と商業科学運輸委員会の合同公聴会に出席した。サイト利用者保護のため、偽アカウントや投稿内容を確認する要員を年内に5千人増やし、約2万人にすると表明。個人情報の収集や利用に関し、規制強化の必要性を指摘する議員らに「正しい規制であれば歓迎する」と一定の理解を示した。一連の問題でのザッカーバーグ氏の議会証言は初めて。反省の姿勢を強調し、イメージ悪化や利用者離れの食い止めを図った。株式市場では再発防止策の説明が評価され、FBの株価は前日と比べ、4・5%上昇した。ザッカーバーグ氏は、モラー特別検察官によるロシア疑惑捜査にFBが協力中だと明らかにした。自身は聴取を受けていないと語った。最大8700万人分の利用者の個人情報を不正取得した英政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカについて、2015年に情報削除を要求したが実際は消されず、確認が足りなかったと責任を認めた。同社は16年米大統領選でトランプ陣営のために個人情報を使ったとされる。大統領選中にFBに虚偽情報を投稿していたロシア企業インターネット・リサーチ・エージェンシーに関し「約470のアカウントやページがあり、約8万件の投稿をしていた。約1億2600万人が影響を受けたと推定される」と説明した。

<研究とデータ分析>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180402&ng=DGKKZO28858360R00C18A4MM8000 (日経新聞 2018年4月2日) データ分析のプロ、産学で育成 日立など9社、5大学と
 日立製作所やヤマトホールディングスなど大手企業9社がデータ分析の専門家「データサイエンティスト」の育成に乗り出す。東京大学など5大学と組み、企業が持つビッグデータを使った大学院生の育成プログラムを始める。産業のデジタル化と人工知能(AI)の導入が進むなか、データを扱える専門家の層の厚さは企業の競争力を左右する。産学が手を携え実践的な専門家を育てる。データサイエンティストには数値の規則性を探り出したりする統計学に加え、データを取捨選択して問題解決につなげる能力も求められる。業界ごとの課題を理解し企業のエンジニアと意思疎通することも要求される。フリーマーケットアプリ大手のメルカリ(東京・港)ではデータサイエンティストが利用履歴などをもとに、サイト画面の改善や顧客動向の予測につなげている。パナソニックは17年、製品の故障予測などを目指し、優秀なデータサイエンティストが在籍する米企業を数十億円で買収した。日本では統計学を専門に教える大学が少ないなど、育成体制に課題があった。課題解決に向け「一般社団法人サーキュラーエコノミー推進機構」を立ち上げた。日立やヤマトに加え、アステラス製薬、NTTドコモ、MS&ADインシュアランスグループホールディングスなどが参画。元経済産業事務次官の望月晴文氏が代表理事に就いた。推進機構は東大、京都大など5大学と育成プログラムを立ち上げ、大学院生を対象に7週間、データの分析手法を教える。まずは特定の研究室の学生が原則費用負担なしで受講できるようにする。初年度は20~30人を育成し、早期に年間100人体制に増やす。プログラムは参画する事業会社の持つデータを使い、経営課題を解決する人材の確保にもつなげる。物流会社の配送ルートの策定や新薬候補物質の探索方法といったテーマが浮上しているようだ。大学側はプログラムを授業の一環として組み込んだり、単位認定したりすることを検討する。データサイエンティストは争奪戦が激しく、求人情報大手が扱う求人は1年間で6倍近くに増えた。

*3-2:https://toyokeizai.net/articles/-/176110? (東洋経済 2017年6月16日) 日本の科学研究の実力が急速に低下している、政府支出を評価する「独立財政機関」の設置を
末廣 徹 : みずほ証券 シニアマーケットエコノミスト
 2017年度版の「科学技術白書」(6月2日政府、閣議決定)によると、主要な科学論文誌に発表された論文のうち、引用された件数の多い論文の国別順位で、日本はこの10年間で4位から10位に下がっており、基礎研究力の低下が著しいと指摘されている。すでに日本の基礎研究力の低下は議論されており、政府は4月に行われた総合科学技術・イノベーション会議(議長は安倍晋三首相)で名目GDP(国内総生産)600兆円の達成に向け、技術革新を推進するための研究開発への投資額を来年度から3000億円上積みする方針を固めた。生産性向上のためには科学技術のブレークスルーが必要となるが、日本の財政を考えると大盤振る舞いできる状況にはない。第5期科学技術基本計画で示されている「(政府研究開発投資は)対GDP比の1%にすることを目指す」を中心に議論せざるをえないため、研究開発投資の金額を増やすためにはGDPを増やす必要がある。これはつまり、「高い経済成長をするためには高い経済成長が必要である」と言っていることになり、とても苦しい状況だ。3月23日に英国の科学誌『ネイチャー』(Nature)は「日本の科学成果発表の水準は低下しており、ここ10年間で他の科学先進国に後れを取っている」と発表した。世界の8000以上の大学や研究機関における研究を指数化したNature Index(科学論文の本数を指数化したもの)において、日本の論文の割合が2012年から2016年にかけて6%低下したという。指数の水準は米国、中国、ドイツ、英国に続く5位につけているが、2~4位の国とは距離が拡大しつつある。(以下略)

*3-3:http://qbiz.jp/article/131976/1/ (西日本新聞 2018年4月17日) 全国学力テスト、小6と中3で実施 理科加え3教科、7月に結果公表
 小学6年と中学3年の全員を対象にした文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が17日、一斉に行われた。国語と算数・数学に加え、3年ぶりに理科を加え3教科で実施し、計約213万4千人が参加。結果は7月に公表する。参加は小学校1万9629校の約107万2千人と、中学校1万80校の約106万2千人。国公立は全校で、私立の参加率は49・8%。東日本大震災で事実上実施できなかった2011年度を除き、今回で11回目となる。同時に子どもたちに学習意欲や生活習慣などを尋ねる質問調査も実施し、さまざまな分析に役立てる。

<データの読み方>
*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180402&ng=DGKKZO28791810Q8A330C1TCC000 (日経新聞 2018年4月2日) 寿命 データ活用で延ばす、滋賀県、長野抜き男性1位に 課題見つけ改善策具体的に
 2017年12月に厚生労働省が発表した15年の都道府県別平均寿命で、滋賀県が男性で全国1位、女性で4位となり、長寿県として注目を集める。30年ぶりに男性トップを奪われた長野県は、滋賀県との違いをデータ分析した報告をまとめ、5年後の首位奪還を目指す。全都道府県で平均寿命と健康寿命は延びているものの、データ分析を踏まえた食事、喫煙、運動など生活習慣病の長期的な対策などによって明暗が分かれている。「一に健康、二に健康、三に健康。健やかな滋賀をつくろう」。滋賀県の三日月大造知事は18年1月、年頭の記者会見で「健康」を繰り返して強調し、医療・福祉・保健のネットワーク基盤の拡充と同時に、ビッグデータを活用して取り組むことを宣言した。
●もとは平均以下
 同県は15年の都道府県別の平均寿命で、男性が81.78歳で初めて全国トップになった。女性も87.57歳で4位。三日月知事は「滋賀県民は長生きだと注目された」と喜ぶ。もともと長寿県だったわけではない。約50年前の1965年時点では滋賀県の男性の平均寿命は67.26歳で、全国平均(67.74歳)を下回って全国27位。女性も72.48歳で全国平均(72.92歳)より低く、全国31位にとどまっていた。転機は約30年前から本格的に取り組んだ生活習慣病対策だ。その一つが86年から始めた「滋賀の健康・栄養マップ」調査だ。当時、県民の食事や生活習慣に関するデータは十分に把握できていなかった。「県の情報処理システムが改善され、大きなデータを扱えるようになり、県独自に初めて実施した」(県健康寿命推進課)。5年に1度の調査で県内の地域ごとに県民の健康状態を分析。データに基づき、栄養バランスや運動、余暇、虫歯予防の大切さを伝えるガイドブックを作り、県内全世帯に配った。「健康への1%投資運動」として、1日24時間の1%となる15分程度を散歩や体操など運動に充てることを具体的に県民に呼びかけた。県健康寿命推進課は「主体的に健康づくりに取り組む県民が増えるきっかけにつながった」とみる。喫煙率も男性は5割超だったが、県の計画で2001年に「喫煙率を半減させることが望ましい」と努力目標を設定。数値目標を掲げる自治体は珍しかったが、禁煙か完全分煙を行っているとして登録した飲食店を「受動喫煙ゼロのお店」と公表して後押しした。その結果、喫煙率は激減し、16年に男性で20.6%と全国で最も低い県となった。対策の広がりとともに県の平均寿命の順位は上昇した。男性は05年、10年の調査で2位、今回(15年)調査で初めて1位になった。女性も05年に13位で全国平均を上回り、10年は12位、今回は4位に食い込んだ。
●健康寿命も長く
 自立した生活を過ごせる健康寿命も滋賀県は長い。東京大学大学院の国際保健政策学教室と米ワシントン大学の共同調査によると、滋賀県は男女合わせた健康寿命は15年までの25年間で4.1歳延び、福岡、佐賀と並び全国で最も延びた。「滋賀県と比べ、働き盛り世代で運動習慣のある人が少ない」。0.03歳の僅差で男性の平均寿命トップから30年ぶりに陥落して2位だった長野県は「長野県の健康課題~平均寿命男性1位の滋賀県との対比から」という報告をまとめた。働き盛り世代の運動不足のほか、滋賀県と比べて食塩の摂取量や喫煙者も多いことがトップ陥落の主因として、18年1月中旬に開いた健康づくり推進県民会議で報告を公表。データで課題を明確にし、県民に健康づくりを呼びかけていく。生活習慣病対策を放置すると、平均寿命に大きく響く。長寿県で知られていた沖縄県は00年の調査で女性はトップを維持したが男性は前回調査の4位から一気に26位まで転落。40~50代の脳卒中や糖尿病による死亡率の高さが原因だった。平均寿命が延びても、健康寿命が延びなければ、寝たきりの高齢者が増え、医療・介護費の大幅増になるだけだ。寿命を延ばすための生活習慣病対策は同じ県内でも地域で異なる。財政に限りがある中、データ分析で不十分な分野を見直し、有効な対策を地域ぐるみで採り入れる工夫が必要だ。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180402&ng=DGKKZO28791850Q8A330C1TCC000 (日経新聞 2018年4月2日) 地域格差、最大で3.1歳 「喫煙対策 強化が必要」
 男女を合わせた平均寿命を1990年と2015年で比べると、都道府県の格差は広がっている。両年とも全国平均以上だったのは19都府県あり、逆にいずれも平均未満だったのは18道府県と二極化している。平均以上から平均未満に転落した県、平均未満から平均以上に改善した県もそれぞれ5県あった。男女合わせた都道府県ごとの寿命のデータは、東京大学大学院の国際保健政策学教室が米ワシントン大と共同で分析した。調査によると、1990年に男女合わせた平均寿命が最も長い長野県(80.2歳)と最も短い青森県(77.7歳)の差は2.5歳だったが、2015年にはトップの滋賀県(84.7歳)と最下位の青森県(81.6歳)の差は3.1歳。25年間で差は0.6歳広がった。健康寿命も1990年に最も長い長野県(71.5歳)と最も短い高知県(69.2歳)の差は2.3歳だったが、2015年にはトップの滋賀県(75.3歳)と最下位の青森県(72.6歳)の差は2.7歳で、0.4歳拡大した。分析した東大大学院の渋谷健司教授は「喫煙対策は強化する必要がある。男女とも食生活の見直しも不可欠」と指摘。「今後、都道府県格差をさらに詳しく分析し、実態を踏まえた対策が必要」と話している。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180403&ng=DGKKZO28902210S8A400C1MM8000 (日経新聞 2018年4月3日) 生活援助 使いすぎ抑制 厚労省 介護計画、月30~40回で届け出
 厚生労働省は介護が必要な高齢者の身の回りを世話する「生活援助」について、平均以上の利用回数になる介護計画(ケアプラン)を市町村に届けるよう義務づける。過剰な利用を洗い出し、本人の自立支援や重度になるのを防ぐ中身かどうか検証する。介護費用の膨張を抑制する狙い。4月中にも正式に決定し、10月から始める。生活援助は介護が必要な高齢者の家を訪問し、掃除や調理、買い物など身の回りを世話する訪問介護サービスの一つ。自己負担は1回数百円と安価に利用できる。その半面、平均を大きく上回る過剰利用が問題視される。厚労省は、利用回数が平均を大きく上回る場合、ケアプランをつくるケアマネジャーに届け出を義務づける。市町村は「必要以上の利用になっていないか」「他のサービスで代替できないのか」などの観点からプランを検証。必要に応じて変更を求める。対象は介護の必要性の度合いで異なるが、おおむね月30~40回前後の利用とし、対象者は年間で数万人規模に上るとみられる。2016年9月のデータによると、生活援助の利用者(48万5千人)は月間平均で11回程度使っている。そのうち31回以上の利用者が2万5千人を占め、100回を超える例もあった。介護給付費は25年にかけて現状の2倍の20兆円規模まで膨らむと予想される。生活援助は給付費の1%程度だが、無駄遣いを指摘する声も多い。定額制の別のサービスがあるのに生活援助を使ったり、生活援助を使いすぎて本人の自立がかえって難しくなったりしていると指摘され、効率化が急務だ。利用回数の上限設定や軽度者の対象除外の是非も議論になっている。厚労省は、不足する生活援助の担い手の育成も始める。新設の短期研修を受ければ、利用者の自宅を訪問して生活援助できる資格を与える。

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180419&ng=DGKKZO29537990Y8A410C1MM8000 (日経新聞 2018年4月19日) 介護保険料 止まらぬ上昇、自治体の8割上げ/健保も3割 給付抑制が急務
 介護保険料の引き上げが広がっている。日本経済新聞の調べでは、65歳以上の介護保険料は8割の市区町村で上がった。現役世代が加入する企業の健康保険組合では、全国の約1400組合のうち3割が2018年度に保険料率を引き上げた。介護給付費は過去10年間で57%増え、医療費の伸びを大きく上回る。介護保険制度(総合2面きょうのことば)の維持には給付抑制が課題だ。65歳以上の介護保険は市区町村や広域連合が運営する。保険料は介護サービスに必要な費用の見通しなどをもとに自治体が3年ごとに見直す。18~20年度の基準月額を15~17年度より引き上げた自治体は全体の8割。月額6000円を超える自治体は前期の1割強から4割に増えた。制度が始まった00年度の全国平均は2911円で2倍の水準にあたる。7000円超の自治体も50を上回り、3倍以上になった。基準月額が最も高かったのは福島県葛尾村。9800円と前期から3割引き上げた。「東日本大震災の避難生活の影響もあってか、村内の要介護認定率が高まっている。人口減少で被保険者の数自体も限られている」(住民生活課)。東京都は8700円の青ケ島村、大阪府では大阪市の7927円が最も高かった。最も低かったのは北海道音威子府村で前期と同じ3000円に据え置いた。「村には介護サービスが乏しく給付が少ない。住民も介護が必要になる前にサービスが充実する都市部に転出していく」(住民課)という。40~64歳の会社員らが負担する介護保険料は18年度の月平均が5723円。10年前に比べ45%増えた。特に収入の多い大企業で負担が増している。18年度に保険料率を引き上げたのは450程度で健保全体の3割を占める。JRグループ、ファーストリテイリング、新日鉄住金などの健保が引き上げた。要因は健保加入者の平均収入に応じて、介護納付金の負担額を決める「総報酬割」の導入だ。17年度から段階的に導入しており、20年度に完全実施する。厚生労働省の試算では導入前に比べ、平均で月700円程度の負担増になる見込みだ。社会保険料の負担が増えれば、賃上げ効果が薄まる可能性もある。介護給付費は15年度で約9兆円。10年間で57%増えた。この間の国民医療費の伸びは3割弱だ。一定の給付抑制策は欠かせない。例えば、軽度な要介護者向け料理などの生活援助サービスは一部の利用者が月100回以上使う例がある。回数制限など抜本的な見直しが必要になる。今後の見通しも厳しい。「団塊の世代」が全員75歳以上となる25年度には、65歳以上の保険料はさらに上昇する。沖縄県と大阪府は9000円を超えると推計。東京や京都、石川など11都府県が8000円以上を見込む。保険料は年間で10万円の大台が迫ってくる。調査は日本経済新聞社が4月上旬、全国1571の市区町村などの保険者をまとめている都道府県を対象に実施。広島県を除く46都道府県が回答した。25年度の推計は31都道府県が答えた。

<原発は地球では過去のエネルギー>
PS(2018年4月23、25、28日追加):*5-1のパナソニックのように、新興国や途上国に、教育や地場産業創出の支援として太陽光発電・蓄電システムや照明を寄贈するのはよいことで、パナソニックや日本のよいイメージを新興国や途上国の人に定着させることもできる。
 一方、*5-2のように、日本の経産省有識者会議は「再生可能エネルギーを主力電源にする」という提言をしたが、「原発は温暖化対策のための選択肢として維持し続ける」という姿勢を変えなかった。しかし、公害は二酸化炭素の排出だけでなく、原発によるものもあるため(そんなことも知らずに、気を付けている人に対して、「風評被害」「ポピュリズム」などと言っているのが呆れる)、日本政府は世界に遅れている。また、現在は原発0でも電力に困らないため、可能な限り低減するなら原発は0になるのに、*5-5のように、経産省は新エネルギー基本計画骨子案を示し、再エネを主力電源化するが原発は脱炭素化の選択肢として「可能な限り依存度を低減する」としている。
 なお、*5-3のように、九電は、管内で再稼働を目指していた原発4基全ての再稼働のめどが立ったことで経営を刷新し、新しい取締役常務執行役員の池辺和弘氏は「エネルギーサービスで日本一の会社にしたい」と意気込んでいるそうだ。しかしながら、こういう判断では、世界進出も日本一も難しいと、私は考える。何故なら、*5-4のように、原発輸出は福島原発事故で状況が一変して、多くの原発関連会社が①採算悪化 ②破綻 ③撤退 しているので、もし九電がアフリカでインフラ整備に進出するとすれば、日本と同じ段階を踏む必要はなく、初めから地熱・太陽光等の再エネを基本とした方が世界の潮流に乗っており、感謝されるからだ。

 
 爆発直後の原発  何年も野積みされている除染土  増える汚染水タンク 原発輸出状況
           福島第一原発事故の現実              *5-4より

(図の説明:福島原発事故は過小報道されたが、実際は広い地域が放射性物質で汚染され、その除染土は今でも野済みされたままである。また、汚染水は完全には除染できないため、タンクに溜まっていくばかりだ。もちろん、核廃棄物の最終処分場もない。このように何の解決もできず、国の補助金で成り立っているにもかかわらず、安いから今後も原発を稼働させるというのは、環境と国の財政負担を無視した姿勢である)

*5-1:http://qbiz.jp/article/132436/1/ (西日本新聞 2018年4月23日) パナ、太陽光発電で開発支援 100周年で途上国に
 パナソニックは23日、創業100周年に合わせてアジアやアフリカなどの新興国や途上国を対象に、太陽光発電システムを活用した教育や地場産業の創出といった開発支援を始めたと発表した。十分な電力供給のない地域に太陽光発電・蓄電システムや照明を寄贈するなどして、地域の発展や貧困解消を目指す。まずインドネシア、ミャンマー、ケニアの3カ国で、現地で活動する非政府組織(NGO)などと共同で支援を開始し、対象国・地域を順次拡大する。寄贈したシステムは家庭や学校、集会場の明かりとして使ってもらったり、発電した電気を活用して農産物や水産物の加工といった産業づくりに役立ててもらったりする。パナソニックは、これまでも電力供給のない地域に太陽電池付きの小型照明を寄贈する「ソーラーランタン10万台プロジェクト」を実施。2013年以降、30カ国で10万台以上を無償提供している。

*5-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018042302000131.html (東京新聞社説 2018年4月23日) 再生可能エネ 主役に起用するのなら
 「再生可能エネルギーを主力化する」-。経済産業省の有識者会議からの提言だ。風力や太陽光を電力の未来を担う主役に据える、というのなら、それなりの舞台と待遇を用意すべきではないか。風力や太陽光といった再生可能エネルギーを「主力電源」にすると持ち上げる一方で、原発は温暖化対策のための「選択肢」として維持し続ける-。二〇五〇年のエネルギー政策はどうあるべきかを考える、経済産業省の有識者会議による提言だ。風力や太陽光は増やしましょう。だが原発に関しても、依存度は小さくするが、なくすわけではないという。相変わらず、どっちつかずと言うしかない。第一に「主力電源」という位置付けが、よく分からない。四年前に閣議決定された国の第四次エネルギー基本計画でも、再生可能エネは「有望かつ重要な低炭素の国産エネルギー」と位置付けられて、最大限、導入を加速するとされてきた。政府は現在、三〇年時点の再生可能エネの比率は、原発とほぼ同じ、22~24%と決めている。“先進国”と言われるドイツは、五〇年までに消費電力の少なくとも80%を再生可能エネルギーで賄う目標を掲げている。そのために、太陽光と風力を最優先で利用してもらい、足らない分を揚水発電やバイオマス発電などで補うよう、電力の供給体制も変えてきた。「主力電源」とうたうからには、少なくとも現行を大幅に上回る導入の数値目標、そして、基幹送電線への優先接続など給電システムの改革案を具体的に明示すべきなのである。送電網の拡充などに時間と費用がかかるという意見もある。しかし、3・11を経験し、原発の新増設は、もう不可能と言っていい。老朽化していく原発に膨大な費用を投じて安全対策を施しながら、あと三十年、恐る恐る使い続けていくよりは、はるかに安上がりかつ合理的ではあるまいか。原発維持は、温室効果ガスの排出をなくしていくためだという。しかし、原発の燃料であるウランの採掘などの過程で、かなりの二酸化炭素(CO2)が排出されるという指摘もある。再生可能エネ普及の加速こそ、脱炭素化の王道でもあり、世界の主流なのである。「脱炭素化のため」と言われても、原発維持の口実にしか聞こえない。

*5-3:http://qbiz.jp/article/132437/1/ (西日本新聞 2018年4月23日) 再稼働めどで九電社長交代 昇格の池辺氏「日本一の会社に」
 九州電力は23日、瓜生道明社長(69)の後任に取締役常務執行役員の池辺和弘氏(60)を昇格する人事を発表した。管内で再稼働を目指していた原発4基全ての再稼働のめどが立ったことで経営を刷新する。6月就任予定で社長交代は6年ぶり。福岡市で記者会見した池辺氏は「エネルギーサービスで日本一の会社にしたい」と意気込んだ。瓜生氏は代表権のある会長に就く。貫正義会長(73)は相談役に退く見通し。瓜生氏は池辺氏を後任の社用に抜てきした理由について「知識もあるが、視野の広さが突出している。今後の難局を乗り越えられる」と述べた。池辺 和弘氏(いけべ・かずひろ)東大卒。81年九州電力。執行役員を経て17年6月から取締役常務執行役員。大分県出身。

*5-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180425&ng=DGKKZO29808960V20C18A4EA2000 (日経新聞 2018.4.25) 原発輸出 福島の事故で状況一変
▽…安倍政権は原子力発電所の海外展開を成長戦略の柱に位置づける。民主党政権時代の2009年、アラブ首長国連邦(UAE)の原発新設計画で有力視されていた日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の企業連合が、官民一体で取り組んだ韓国勢に受注競争で敗れたのがきっかけになった。▽…11年の東京電力福島第1原発の事故を機に状況が変わる。10年にベトナムの原発計画で三菱重工業などが受注する方針が固まったが、ベトナム政府が16年、財政難などを理由に計画中止を決定。トルコ・シノプの原発計画も当初は東芝と東京電力の企業連合が受注する予定だった。▽…国内だけでなく、ドイツやスイス、韓国など脱原発を掲げる国が増え、世界的に需要増は見込めない。仏原発大手、アレバ(現フラマトム社)は原発計画の遅れから採算悪化に陥り、仏政府主導で経営再建を選んだ。東芝も米原発子会社ウエスチングハウスの経営破綻を機に海外事業から撤退。新設計画の先細りに加え、供給体制の弱体化が起きるなど状況が大きく変わっている。

*5-5:http://qbiz.jp/article/132909/1/ (西日本新聞 2018年4月28日) エネルギー基本計画の骨子案を提示 「再生」導入加速促す
 経済産業省は27日、新しいエネルギー基本計画の骨子案を有識者会議に示した。再生可能エネルギーの導入を加速して主力電源化する一方で、原発を「脱炭素化の選択肢」として今後も活用していくのが柱。5月に原案をまとめ、夏にも政府が閣議決定する。基本計画は、これまで2030年に向けた方針を示してきたが、50年を見据えた長期的な視点を取り入れた。地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」で、50年に温室効果ガスを8割削減する目標を掲げており、その達成を目指す。骨子案では、再生エネの発電コストを下げ、余った電気をためる蓄電池などの技術開発を進める。原発については、可能な限り依存度を低減する方針を維持したものの、原発発電比率など50年段階での数値目標は示さなかった。会議では、原発の新増設が明記されていない骨子案に対し、原発推進派の委員から「原発の位置付けがはっきりしない」などと批判が相次いだ。脱原発派の委員からも「原発低減の文言は残っているが、(具体的な)施策が盛り込まれていない」との声が上がった。

<電力へのエネルギーシフト>
PS(2018年4月25、26、27日、5月3日追加):世界最大級の北京国際自動車ショーの報道向け公開が始まり、*6-1のように、世界14カ国・地域から計1200社余りが参加して1000台以上の自動車が展示される見通しで、中国はEVを機にゲームチェンジを図る狙いが伺えるそうだが、中国の政策ならそれが可能だろう。しかし、世界でEV車に変えることは、中国・インドが本格的に市場参入してきた1995年前後に私が日本の経産省に提案したが、日本メーカーは日産自動車以外はEVを作らず、ハイブリッド車でお茶を濁したのである。そして、日本における最初の“空気”は「EVは音がしないから危険だ」「EVは走行距離が短い」などとEVをくさすものばかりで、それを改善しようという努力はなかった。つまり、何に対しても、日本人は、“その場の空気を読む”だけの役立たずが多く、「空気を変えよう」とか「空気をきれいにしよう」と志す人が「変人」や「発達障害」扱いされてイノベーションを阻害するのである。
 そのような中、*6-2のように、安川電機がワイヤレス充電できる電動船を世界で初めて開発したのはよかった。電動タイプを漁船に利用すれば、離島なども地域で発電した電力で操作性の良い漁船を使うことができ、電動タイプを大型船に利用すれば港の水をきれいすることができる。そのため、これは、欧州や中国だけでなく、日本でも普及を推進すべきである。なお、「乗り物が電動化すれば産油国が困るのでは?」と高いエネルギー代を支払いながら言っているド阿呆な日本人もいるが、*6-3のように、サウジアラビア政府は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の指揮下で脱石油依存の経済改革を進めており、こちらは技術協力した方が感謝される。
 また、日欧の自動車大手は、*6-4のように、中国でEVの現地生産を広げるそうで、特に独BMWのように次世代EVを先行投入するのは競争に勝つための英断だ。日本でもEV化が最も遅れている自動車大手のホンダは、2018年に合弁会社の広汽本田が中国初となるEV生産を開始するそうだが、私の夫は日本でホンダ車に乗っており、そろそろ買い変え時期だが何度も買い変えたくはないのでホンダが日本でEVを発売するまで待っており、私は最近のホンダの動きにとろさを感じている。社内で煮詰まっていると変化できないので、ホンダならBMW・ボルボ等と出資関係を持って取締役を交換してはどうかと考える。
 ジョイントベンチャー(JV)の好事例は、*6-5の富士写真フイルムと英国ゼロックス社の合弁により1962年に創立された「富士ゼロックス(株)」で、ゼロックスの謄写に関するアイデアと富士写真フイルムの確かな写真技術が組み合わさって優秀なコピー機ができている。しかし、富士フイルムホールディングスが米事務大手ゼロックスを全部買収しようとすると、株主から提訴されたりする上、いらぬ部分まで買うことになる。そのため、私は、新ビジネスに有用な部分だけ出し合って新会社を作り、持株会社の下につけた方が双方の株主が納得する上、新会社の階層が浅くて風通しがよく、経営しやすいのではないかと考える。
 なお、*6-6のように、パナソニック、天津力神電池などが数年内に中国で始まるEV電池市場の争奪戦を始めたそうだが、日本は1995年頃からEV電池の開発をしていたのに、日系電池メーカーが何度も戦略転換を強いられるような逆噴射が多く、今頃、あわてて争奪戦に加わっていることが情けない。同じかそれ以上の技術なら、物価水準の低い中国産の方が安くてよいに決まっており、これが変化を嫌がる体質と高コスト構造が日本の製造業を外国に追い出した理由なのである。


*6-4より 北京国際自動車ショー(左から、日産、トヨタ、ホンダ、比亜迪のEV)  

*6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29814760V20C18A4MM0000/?nf=1 (日経新聞 2018/4/25) 中国、EVで覇権狙う 北京自動車ショー開幕
 世界最大級の自動車展示会、北京国際自動車ショーの報道向け公開が25日午前に始まった。電気自動車(EV)に傾斜する中国メーカーに加え現地で一定の生産比率を義務付けられる日米欧勢も電動技術を誇示した。エンジン車では先進国の壁を越えられなかった中国がEVを機にゲームチェンジを図る狙いが展示からうかがえる。世界14カ国・地域から計1200社余りが参加し、展示する自動車は1000台を上回る見通し。このうち新しいEVとプラグインハイブリッド車(PHV)だけで170台が出展される。会場は中国勢のEVが目立つ。北京汽車集団傘下の北京新能源汽車は人工知能(AI)でエネルギー効率や安全性を高めた車種を披露。北京汽車の徐和誼董事長は「EVやPHVを成長戦略の中心とし世界トップクラス入りを狙う」と話した。日本車では日産自動車が中国で生産するEVを2018年後半に現地で発売すると発表した。トヨタ自動車は20年までに新たに10の電動車を中国で追加する計画を明らかにした。開幕に先立ち独フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース社長は「中国は世界の自動車産業のカギとなる市場だ」と強調した。中国政府の統計によると、17年のEVとPHVの世界販売台数は142万台。このうち中国は55%を占め78万台と2位の米国の約3.5倍に相当するという。メーカー別でも13万台の比亜迪(BYD)のほか北京汽車と浙江吉利控股集団の年間販売が10万台規模に達した。先進国メーカーでは米テスラが10万3千台で日産自動車は7万3千台。中国勢の販売は大半が現地だが物量の実績で日米欧メーカーに優位に立っている。中国政府は大気汚染や渋滞の対策としてガソリン車の規制を強め、市場が広がった。これを受け現地大手がこぞってEVやPHVに参入し完成車や専用部品を手掛ける300社ものスタートアップが勃興している。将来の基幹産業の芽が育ち、苗●(つちへんに于)・工業情報化相は「市場としての世界一は3年連続だ」と胸を張る。19年にはEVやPHVで一定比率の生産を義務付ける。巨大市場をバックに外資が技術を持ち込まなければ売らせないという得意の誘導策を持ち出した。EVなどで一定比率を生産できないメーカーはクリアしている競合の余剰分を「クレジット」として買い入れないとガソリン車の生産制限を受ける可能性がある。EVの現地生産で出遅れれば成長が難しくなる。一方、50%までとしている自動車メーカーへの外資出資ルールは22年までに全廃する。目指すのは米テスラをはじめとするEVメーカーの誘致だ。規制の強化と緩和の両面の取り組みで中国にEV工場を引き込もうともくろむ。「ガソリン車では外資にかなわなかったがEVでは接近した勝負になる」。工業情報化省幹部は言う。部品点数が減るEVでは先進国メーカーと横一線で開発をスタートできると読む。多くの中国メーカーは出資規制緩和で外資と競うようになる。自動車ショーでは中国勢がその水準に達しているか否かを世界の競合が見定めようとしている。

*6-2:http://qbiz.jp/article/132575/1/ (西日本新聞 2018年4月25日) 世界初、電動船ワイヤレス充電 安川電機が開発 プラグ接続不要、煩雑さ軽減
 安川電機(北九州市)は24日、電気で動く「電気推進船」向けの非接触型(ワイヤレス)充電システムを世界で初めて開発したと明らかにした。欧州を皮切りに中国などで本格販売を始める。二酸化炭素(CO2)削減を目的とした欧州の環境規制などで電気推進船の導入拡大が見込まれており、充電システムを含む船舶関連事業を新たな収益事業の一つに育てる構えだ。電気推進船はバッテリーにためた電気で動く「電気タイプ」と、重油などを使い船内の発電機でモーターを動かす「ハイブリッドタイプ」があり、同社のシステムは電気タイプ向け。港の岸壁に送電設備を設置し、受電設備のある船が近づくと、電気を供給する仕組み。バッテリーに充電して推進用のモーターを動かすほか、船内の照明や空調などの電気設備に利用する。現在は岸壁の充電スタンドからプラグを接続して給電しており、システム導入で充電の煩雑さの軽減が図れる。国土交通省によると国内の電気推進船は現在33隻。ディーゼルエンジンの船舶に比べ揺れが少ないため、多くが旅客船として活用されているという。環境面に加え、大型のエンジンが不要で船内の空きスペースが増えるなどのメリットもあり、欧州や中国でも小、中型の観光船や貨物船に導入され、大型化に向けた研究開発も進んでいる。安川電機は2020年に欧州で船舶に対する排ガス規制が強化されるため、電気推進船の導入が進むと予想。16年に買収したフィンランドの船舶エンジン機器メーカー「バルチラ社」の船舶用電気推進装置部門のノウハウと、自社のコンバーター技術を融合させ、今回の充電システムを開発したという。18年2月期に10億円弱だった船舶事業売上高を、21年2月期には80億円まで伸ばすことを目指す。扇博幸システムエンジニアリング部長は「技術を強みに競争力を高め、新たな分野を開拓していく」と話した。

*6-3:http://qbiz.jp/article/132599/1/ (西日本新聞 2018年4月25日) サウジ、石油外収入1.2兆円 脱依存へ数値目標
 サウジアラビア政府は24日、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の指揮下で進める脱石油依存の経済改革で、国営企業の民営化などにより2020年までに石油以外の収入として90億ドル〜110億ドル(約9800億〜1兆2千億円)を達成することを柱とする計画文書を発表した。ロイター通信などが報じた。サウジ政府は世界最大の石油企業である国営サウジ・アラムコの新規株式公開を目玉に、石油依存からの脱却を目指す経済構造改革「ビジョン2030」を推進中。今回の文書は20年までの数値目標を示しており、最大1万2千人の雇用創出も盛り込んだ。

*6-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180426&ng=DGKKZO29830190V20C18A4EA2000 (日経新聞 2018年4月26日) トヨタ、自社開発EVを中国生産 20年発売 北京自動車ショー 日産・BMWも現地投入
 日欧の自動車大手が中国で電気自動車(EV)の現地生産を広げる。トヨタ自動車は25日に開幕した北京国際自動車ショーで、自社開発のEVを中国で生産して2020年に発売する戦略を示した。独BMWなどは次世代EVを先行投入する。中国は世界最先端のエコカー市場になり重要度が一段と高まる。「EVを他地域に先駆けてやっていく」。トヨタ自動車の中国本部長、小林一弘専務役員は同日、モーターショー会場でこう述べた。自社開発EVを中国で現地生産することを初めて示した。中国政府は19年にEVなどを一定比率生産することを義務付けた。これに対応できないメーカーは対応済みの競合メーカーの余剰分を「クレジット」として買い入れないとガソリン車の生産制限を受ける可能性がある。トヨタは中国の合弁相手2社からEVを調達し、19年にも販売することを検討していた。中国のEV市場拡大と規制強化をにらみ、現地生産に踏み切る。「カローラ」と「レビン」のプラグインハイブリッド車(PHV)を19年から現地生産で発売する。20年までにPHVやEVなど新たに電動車10車種を追加し、電動車の中核部品の現地生産も進める考えを示した。日産自動車はトヨタに先駆けて、中国で生産するEVを18年後半に現地で発売する。ホンダも18年に合弁会社の広汽本田が中国初となるEVの生産を開始。19年にはもう一つの合弁会社の東風本田でもEVの生産を始める計画だ。EVシフトで先行する欧州メーカーも中国で生産・開発を強化する。独BMWはEVやPHVの「iシリーズ」から多目的スポーツ車(SUV)の「iX3」のコンセプト車を初公開した。20年に中国で世界に先行して発売する計画。中国以外の発売は未定で現地生産も予定する。ハラルト・クリューガー社長は「(iX3は)ゲームチェンジャーになる。中国はあらゆる車で先行する」と話した。独フォルクスワーゲン(VW)は21年までに中国の6工場でEVなど電動車の生産を始める。22年までに中国で電動化や自動運転、コネクテッド技術などへの投資に150億ユーロ(約2兆円)を充てる方針を発表した。全世界で340億ユーロ(約4兆6600億円)の投資を計画するうち、4割以上を中国に投じる計算だ。中国の吉利傘下のスウェーデンの自動車大手、ボルボ・カーも25年までに販売台数の半分をEVにすると発表した。

*6-5:http://qbiz.jp/article/132867/1/ (西日本新聞 2018年4月27日) ゼロックス買収交渉再開か 富士フイルム、ロイター報道
 富士フイルムホールディングス(HD)による米事務大手ゼロックスの買収計画を巡り、ロイター通信は26日、米ゼロックス側がニューヨークの裁判所に富士フイルムHDとの交渉再開を伝えたと報じた。関係者の話としている。米ゼロックスは、計画が富士フイルムHD側に有利な内容だとして反対する米国の物言う株主から提訴されている。富士フイルムHDが1月に発表した買収計画は、米ゼロックスと合弁子会社の富士ゼロックスを経営統合させ、米ゼロックス株の過半を取得する内容。今年7〜9月期の手続き完了を目指すとしていた。ペーパーレス化が進む事務機市場で生き残るための大型再編が狙い。

*6-6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30095740S8A500C1XA0000/ (日経新聞 2018年5月3日、日経産業新聞 2018年5月2日) 「EV電池」争奪戦前夜、最大手パナも正念場
 中国で数年内に始まると確実視されるのが、電気自動車(EV)電池市場の争奪戦だ。中国政府の政策変更で日本勢が苦しんできた中国勢優位のハンディは解消に向かう。野心的な中国メーカーの追い上げを許すまいと、世界首位のパナソニックも将来の市場拡大に備える。日中企業同士のつばぜり合いがにわかに激しさを増してきた。北京市内から南東方面に2時間ほど車を走らせると、中国電池大手、天津力神電池の本社が見えてくる。力神は中国国有企業の傘下で、1997年に創業。米アップル、米デル、韓国サムスン電子グループ、華為技術(ファーウェイ)など向けにパソコンやスマホの電池を供給してきた。2019年に始まる新エネルギー車(NEV)規制では自動車メーカーが一定比率のEVやPHVなどNEVの製造・販売を義務付けられる。大量の電池を確保できるかは死活問題。力神のある社員は「日本車向けにまだ実績はないが、検討中の話はある」と明かす。
■驚異的な成長曲線、中国勢が大増産
 力神は車載電池では12年に電動バス向けの供給を始めたにすぎない新興メーカーだが、驚異的な成長曲線を描く。17年には車載用と民生用を合わせた電池の生産能力で10ギガワット時に到達した。すべてが車載向けではないが「電気自動車(EV)需要の高まりに対応するため、20年には30ギガワット時、25年には60ギガワット時まで伸ばしていく」(同社)と威勢が良い。世界首位のパナソニックが米テスラとネバダ州に建設した巨大電池工場「ギガファクトリー」の能力が35ギガワット時。中国新興メーカーの工場のスケールの大きさがわかる。「将来EVブームに本当に火がつけば、大きな電池のキャパが必要になる。例えば(2000億円前後を投資した)ギガファクトリーが10個分くらい。そのときが本当の勝負。そのときに勝てるよう準備を進めていきたい」。パナソニックの津賀一宏社長は電池事業の将来像をこう語る。
■政策変更で日本勢にも勝機
 ただ近年、日系電池メーカーは何度も戦略転換を強いられてきた。日産自動車はNECと共同出資した車載電池子会社を中国の投資ファンドに売却。GSユアサは独ボッシュなどとの車載電池セル開発の合弁会社を解消した。パナソニックはトヨタと協業検討する形で、テスラ傾倒のリスクを分散する方針に転じた。防戦一方の展開を強いられる要因だったのが、中国の自国優位の政策だった。ただ政府が補助金を与える電池メーカーを選ぶ「ホワイトリスト」制度が事実上形骸化した。ホワイトリストに代わって16年ごろから始まった現在の電動車向け補助金制度は、日系電池メーカーの電池を搭載した車も対象になりそうだ。日系や欧米の自動車メーカーによるNEVの製造・販売は19年から本格化する見込み。トヨタ自動車は4月25日に開幕した北京国際自動車ショーで、自社開発のEVを中国で生産して20年に発売する戦略を明らかにした。ホンダもEVやプラグインハイブリッド車(PHV)など20車種超を25年までに投入する計画を発表。中国でのビジネスチャンス拡大の可能性は大きく広がってきた。中国勢は強気の投資計画をぶち上げる。中国電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は20年に50ギガワット時規模まで増産する計画を発表。NEVへの対応を急ぐ日系自動車などグローバルメーカーへの供給拡大をもくろむ考えが透ける。日本も負けていない。出荷量ベースで自動車向けリチウムイオン電池世界首位のパナソニックは、大連工場(遼寧省)で3月から車載用リチウムイオン電池の量産出荷を始めた。まずは北米向け出荷から始めたが「早ければ年内にも中国合弁向けに出荷を始める」(車載担当の久田元史氏)と、鼻息は荒い。1年後に控えるNEV規制という号砲は、従来の完成車メーカーと電池メーカーの序列を変える可能性すら秘める。パナソニックを筆頭とする「日の丸電池」にとっては難しいかじ取りを迫られる半面、最大のチャンスにもなる。

<バラマキ外交と国民負担増>
PS(2018年4月30日):*7-1のように、世耕経産相が北極圏ヤマル半島で昨年末に生産を始めた液化天然ガス施設や積出港の視察でロシアを訪問し、日本のLNG購入や事業出資で日ロ経済協力計画を進める方針とのことである。しかし、購買力平価によるGDPも技術力(分野によっては日本より上)もさほど変わらないロシアからLNGを高く買うことで、エネルギーのために国富を流出させて経済協力しようという頭は20~30年古い(もちろん、他より高く買えば売る国からは喜ばれるが、それは売る側には能力があるが買う側は馬鹿ということだ)。
 一方で、*7-2のように、日本にも「メタンハイドレート」という天然ガス資源が無尽蔵に存在し、既にガス生産に成功しており、こちらなら国富が国内で循環して海外に出ない。エネルギーとしてなら、水素や再エネによる電力の方が公害を出さないため優れているが、天然ガスを使うのなら国産を使うべきだ。
 また、日本政府は、これだけ無能な放漫経営をして国民に負担をかけながら、福祉となると、*7-3のように、財政逼迫として負担増・給付減を続けている。そのため、政府・メディア関係者は、憲法改正を言う前に、まず現在の日本国憲法(特に第25条)をよく理解すべきだ。

*7-1:http://qbiz.jp/article/132952/1/ (西日本新聞 2018年4月29日) 北極LNG事業に日本参加を期待 ロシア閣僚、世耕経産相を案内
 世耕弘成経済産業相は29日、北極圏のロシア北部ヤマル半島で進む天然ガス開発で、昨年末に生産を始めた液化天然ガス(LNG)施設や積み出し港を視察するため、ヤマロ・ネネツ自治管区サベッタを訪れた。日本のLNG購入や事業出資に期待するロシアのオレシキン経済発展相が案内した。「ヤマル」は「サハリン2」に続くロシアで2番目のLNG事業。ロシア天然ガス大手ノバテクが主導し、フランスのトタル、中国石油天然ガス集団(CNPC)も出資するが、日本側の購入契約はない。ノバテクは2022年以降に予定する新たなLNG事業「北極2」に出資するよう日本に促している。ヤマルの生産能力は年550万トン。19年には1650万トンに増やし、サハリン2を上回る見通し。近隣の北極2も同等の巨大事業で、日本政府は「LNGの一大供給源」になると注目している。ノバテク幹部は29日、世耕氏や同行した日本企業幹部らに対し、北極2について説明。ただ北極2は、冬に氷で覆われる北極海航路を使うため、輸送コストや供給の安定性に問題がある。また、日本勢が出資し日本の輸入の約1割を占めるサハリン2も生産拡大を検討中で、北極2と競合する恐れがある。世耕氏は28日、モスクワでシュワロフ第1副首相らと会談した。5月下旬に予定される安倍晋三首相のロシア訪問に向け、日ロ経済協力計画を進め、成果にする方針だ。

*7-2:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/09/news077.html (スマートジャパン 2017年5月9日) 自然エネルギー:夢の国産天然ガス資源「メタンハイドレート」、4年ぶりにガス産出に成功
 日本近海の海底に分布し、国産の天然ガス資源として期待されている「メタンハイドレート」。資源エネルギー庁が愛知県と三重県の沖合で進めているメタンハイドレートら天然ガスを取り出す海洋試験で、4年ぶりにガス生産に成功した。メタンハイドレートは天然ガスの主成分であるメタンと水が低温かつ高圧の状態で結晶化した物質で、地球上では極地や深海にのみ存在する。過去の政府の調査で東部南海トラフ海域には、メタンに換算して約1.1兆m3の砂層型メタンハイドレートが存在すると推定されている。これは日本の2015年のLNG輸入量に換算して、約11年分に相当する量だ。国内で消費するLNGのほとんどを海外からの輸入に頼る日本にとって、メタンハイドレートを資源として利用できるようにするメリットは大きい。ポイントは、水深1000m以深のさらに海底下数百mに分布するメタンハイドレートから、いかに天然ガスの主成分であるメタンガスを取り出すかだ。深海の地層の中に固体として存在するメタンハイドレートをエネルギーとして利用するには、分解してメタンガスと水に分け、さらにメタンガスだけを回収する必要がある。資源エネルギー庁は2013年3月に今回と同じ愛知県と三重県の沖合にある第二渥美海丘で、メタンハイドレートからメタンガスを生産する第1回の海洋産出試験を実施している。地球深部探査船「ちきゅう」を使用して約6日間にわたってメタンガスを連続生産することができた。そして2017年4月7日から4年ぶりとなる第2回の海洋産出試験を実施し、5月4日の10時頃にメタンガスの生産を確認できた。第2回の試験では、第1回と同様に「減圧法」という手法でメタンハイドレートからメタンガスを取り出している。これは坑井内の圧力を減少させてメタンハイドレートを分解する方法だ。この他には坑井内に温水を循環させてメタンハイドレートを加温て分解する「温水循環法」などがある。減圧法で課題となるのが、出砂対策だ。第二渥美海丘にある砂層型と呼ばれるメタンハイドレートからメタンガスを取り出すと、同時に砂が出てくる。第1回の試験ではこの砂がパイプつまるトラブルが発生したため、当初の予定より早く生産を打ち切らなくてはならなかった。そこで今回は異なる出砂対策を施した2本の生産用坑井を用い、まず一方の坑井で3~4週間程度のガスの連続生産を行うことが1つの目標となっている。次にもう一方の坑井において、1週間程度のガスの連続生産を試みる。試験は2016年6月下旬頃まで行う予定だ。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p43861.html (日本農業新聞論説 2018年4月21日) 改正介護保険法 利用者に不安与えるな
 改正介護保険法が4月、スタートした。介護保険財政の逼迫(ひっぱく)は深刻な現実だが、給付費削減へ向けて利用者や事業者に負担を求めるだけでは課題は解決しない。「介護の社会化で生活の質を高める」という創設の原点に立ち返って、「地域福祉」の在り方を考える必要がある。今回の制度改定は「2025年問題」への対策が柱。自己負担額の見直しや、介護予防を強化し「自立支援」に積極的に取り組む事業者への報酬を手厚くすることなどが特徴だ。「2025年問題」とは、団塊の世代が75歳以上となって超高齢社会が到来し、介護や医療など社会保障の給付と負担が一段と増すことを指す。25年には、75歳以上が約2200万人になるという推計があり、総人口に占める割合は2割。1割だった10年に比べると、急速に高齢化が進んでいく。この問題を視野に入れた主な改正のポイントは、自己負担額での3割負担の導入や、介護予防による「自立支援」を重視したことだ。医療との連携や、リハビリテーションの強化で介護不要な状態までの改善を目指し、成果を上げた事業者へ報酬を手厚くする。だが、事業者が改善の見込みがある人だけを選んだり、保険料を払っても望むサービスを受けられなくなったりする懸念がある。身体的な介護予防に力点を置いた場合、認知症の人への支援はどうするのかなど、さまざまな課題がある。介護保険制度は2000年にスタート。背景にあったのは、①家族介護で特に女性に重い負担がかかる②在宅介護ができないと病院へ(社会的入院)③病院で尊厳が軽視される──といった社会状況だった。制度導入前、介護は家族内の問題であり、“できれば家の奥に隠しておきたいこと”だった。取材を受けてくれる家族を探すのも困難だった。公的介護サービスが当たり前になっている現在と比べると、制度が定着していることを実感する。状況は明らかに改善した。一方で、3年ごとに行われる制度の見直しが財政面にばかりに目が向くきらいがある。制度の安定的な運用は重要だが、「高齢者自らがサービスを選び、決定することで尊厳が守られる」とした制度の理念を置き去りにするようなことは許されない。介護サービスを必要とする高齢者が安心して利用できる制度が「尊厳」の出発点となる。介護の目的は食事や排せつ、入浴などの支援(サービス提供)だけにあるのではない。人と人の良い関係に基づいた支援により、人間らしい生活を送ることにある。地域に密着したJAの強みは、このような関係性を築いてきたことだ。地域の食と農を生かし、女性部パワーを活用したきめ細かな対応で、利用者に喜ばれる高齢者支援活動を続けていきたい。

<自然を知って活用すべき>
PS(2018/5/2追加):*8-1のように、今治市の松山刑務所大井造船作業場から脱走した平尾受刑者は尾道市の向島から泳いで本州に渡ったそうだが、警察もメディアも流れが速く水温が低いので島内での潜伏を有力視して、警察犬も導入し延べ1万5000人(日当1万円とすると、人だけで1.5億円)を投じて向島内を捜索していた。しかし、尾道水道は最も狭い所で200メートルしかなく、満潮・干潮間の潮目が変わる時には流れが止まり(この潮流変化を利用したのが「壇ノ浦の戦い」で、源氏が平家に勝った戦法である)、泳ぐとエネルギーを使って暑くなるのでこのくらいの水温は問題なく、私でも泳いで渡ることができる。そのため、海辺で育った男性なら潜って渡ることも可能だろうと、私は思っていた。しかし、警察やメディアは、「季節や日によっては潮の流れが速い」などと言って、1日に2回ある満潮・干潮間の潮流の停止を未だ知らないようである。この警察やメディアの問題点は、地元の人に聞けばすぐわかる情報を入手せず、自然に関する知識もないため、判断が誤っているということだ。そして、これは、警察やメディアに限らず農水省・国土交通省の官僚や裁判官にもそういう人が多いため、根の深い問題なのである。ただ、この事件が長期間報道されたおかげで、この地域は島が多く流れの早くなる場所も多いため潮流発電に向いており、オリーブやアーモンドなど地中海のような作物を植えて、計画的に都会や海外から新しい住民を呼び寄せたらよいということもわかった。
 このような中、*8-2のように、佐賀、福岡、熊本3県の漁業団体は1日、福岡高裁が示した開門に代わる100億円基金案による和解を「強く期待する」との統一文書を発表したそうだが、確かに本質ではなく策略でゲームのように国を動かそうとする官僚や政治家は多い。しかし、人間は自然の代弁者にすぎないため、このやり方では、人間は動かせても自然の仕返しを受けるだろう。私も、この状況なら、調整池からの排水が有明海に行き渡るようにこまめに排水する必要があると思うが、それは潮受け堤防の排水口に発電機をつけて干満差6メートルの海で満潮・干潮毎に発電しながら行えば、ポンプを使うよりも排水のメリットが出て、安価にこまめな排水ができると考える。

*8-1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2018050100122&g=soc (時事通信 2018/5/1) 「泳いだ」海、最短200メートル=逃走経路の解明急ぐ-受刑者脱走 
 愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から受刑者の平尾龍磨容疑者(27)が脱走し22日ぶりに逮捕された事件で、県警などは1日、逃走経路などについて本格的な捜査を始めた。平尾容疑者は潜伏していた広島県尾道市の向島から「泳いで本州に渡った」と供述。対岸の同市内までは最短距離で200メートルほどで、泳いで渡ることは可能という。向島は広さ約22平方キロメートル。山林に覆われ、空き家が1000戸以上点在する。広島、愛媛両県警は、平尾容疑者が脱走した4月8日から延べ1万5000人を投じて捜索。同24日には、島北部の防犯カメラに平尾容疑者とみられる男が映っていたことが分かった。両県警は、島内の港や本州につながる道路で検問を実施していることや、海水の温度が15度前後と低いことから、島内での潜伏を有力視していた。平尾容疑者は、向島と本州の間にある尾道水道を泳いで渡ったとみられる。尾道海上保安部によると、尾道水道は最も狭い所で200メートルほど。季節や日によっては潮の流れが速いが、「泳ぎの得意な人なら、泳ぎ切ることはできる。場所を選べば渡れる」という。平尾容疑者は向島で「空き家に潜伏していた」と供述。逮捕された際は、脱走時と異なる衣服を着ていた。現金などを盗みながら空き家を転々としていた可能性があり、両県警は足取りを詳しく調べる。愛媛県警は1日午後、平尾容疑者を送検した。

*8-2:http://qbiz.jp/article/133103/1/ (西日本新聞 2018年5月2日) 佐賀県漁協が諫干「非開門」容認に転換 原告の漁業者側は反発
 国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の潮受け堤防開門を巡る訴訟の和解協議に関し、佐賀、福岡、熊本3県の漁業団体は1日、福岡高裁が示した開門に代わる100億円基金案による和解を「強く期待する」との統一文書を発表した。佐賀県有明海漁協は100億円基金案に一貫して反対してきたが、容認にかじを切った形だ。訴訟当事者の漁業者側の孤立化は必至だが、和解協議を拒否する姿勢を崩しておらず、和解成立が厳しい状況に変わりはない。3県の漁業団体は訴訟の当事者ではないが、基金を運営する立場。統一文書では「高裁が示した開門しない前提の和解協議を進めて欲しいとの考えで一致」と明記し、国の基金案とともに有明海再生事業の継続やこまめな排水の確実な実施、基金とは別枠での排水ポンプの増設を和解協議で取り上げるよう求めている。佐賀県の漁協では諫早湾に近い西南部5支所が、干拓による漁業被害を訴えており、開門調査を求める意見は根強いが、統一文書の文言調整については4月24日の運営委員長会議で執行部に一任されていた。福岡、熊本の漁業団体トップと1日に福岡県柳川市で会見した佐賀県有明海漁協の徳永重昭組合長は、報道陣に方針転換かどうかを問われ「裁判所が開門しないことを前提に勧告しているので、そう捉えざるを得ない」と説明。「有明海再生に向け、いろんな意味で弾みがついてほしい」と話した。一方、漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は統一文書について「和解実現を望む思いは受け止めるが、非開門を前提とする和解案は明らかに間違っている」と強調し、従来通り和解協議を拒否する考えを示した。3県漁業団体は8日、統一文書を斎藤健農相に提出する方針。判決期日は7月30日。
   ◇   ◇
●開門見えず苦肉の容認 「和解拒めば基金逃す」 国予算でも揺さぶられ
 「福岡高裁が示した和解の実現を強く期待する」。国営諫早湾干拓事業の開門を巡る訴訟の和解協議に関し、佐賀県有明海漁協が1日、開門によらない和解を容認する姿勢に転じた。湾の潮受け堤防が閉め切られて21年。これまで開門断念につながるような選択は突っぱねてきた。何が契機となったのか。
■福岡、熊本に歩調
 和解案容認派の福岡、熊本両県の漁業団体に、佐賀も歩調を合わせた。
3県のトップが顔をそろえ、統一文書を発表した1日の記者会見。佐賀の徳永重昭組合長は「ここ(統一文書)に書いていることが全て」と険しい表情を浮かべた。一方で、福岡高裁が和解勧告で示した開門に代わる基金案については最後まで言及を避けた。佐賀には、国に開門を求める裁判の原告漁業者や諫早湾の近くで赤潮被害に苦しむ漁業者がいる。これが福岡、熊本の漁業団体との「最大の違い」(漁協幹部)で、非開門の和解案を拒んできた理由だ。
しかし、漁協幹部や県関係者には懸念が広がっていた。昨年4月に「開門しない」と方針決定した国に反発し続ければ「予算を削られかねない」。2018年度政府予算では、開門調査を命じた10年の確定判決後、農林水産省が計上してきた開門準備経費が消えた。毎年約18億円を計上する有明海再生事業も「国の予算は単年度ごとに決まる」(農水省)と見直しに含みを持たせる。
■漁業者から不安
 「開門」を求める佐賀の有明海西南部の漁業者からも「基金案を拒み続けたら開門も基金も逃しかねない」との声が出てきた。7月に予定される福岡高裁判決は和解勧告を踏まえ「非開門の決断が下される」とみられているためだ。国の“揺さぶり”に呼応するように、福岡、熊本両県の漁業団体が佐賀説得に動いた。佐賀県漁協内部は「原告団の一部がいるのに、容認は口が裂けても言えない」「福岡、熊本から『俺たちの気持ちをくんでほしい』と言われる」との意見が交錯。板挟みとなった。
■「包囲網」が完成
 こうした状況に佐賀県も現実路線に転じた。これまで開門を求め「漁業者に寄り添う」としてきた山口祥義知事は今、「漁協に寄り添う」と県漁協の組織決定に重きを置く。県幹部も、諫早湾を閉め切った調整池からの小まめな排水で有明海が再生すれば「開門調査に代わりうる」と3月の県議会で説明。地元県議は「県の対応は以前とまったく変わった。高裁の和解勧告が引き金になった」と憤る。決着を急ぎたい国は判決ではなく、和解による解決を望んでいるが、原告漁業者が協議を拒んでいる。佐賀県漁協の「和解容認」で、原告を協議のテーブルへ引っ張り出す“包囲網”が完成したといえる。「ニンジンをぶら下げて(相手を)動かす。国には策士がいる」。佐賀県漁協の幹部は歯がみした。

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