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2018.12.4 合併・買収・組織再編にまつわる経営意思決定と会計制度 (2018年12月5、6、7、8、9、10、13、14、15日に追加あり)

           2018.11.22朝日新聞

(図の説明:左図のように、平均的役員報酬の額は日米欧で全く異なり、日本は著しく低い。また、中央のように、自動車大手の経営トップを比べてもゴーン氏の報酬が特別高いわけではなく、トヨタの場合は外国人副社長の報酬の方が日本人社長よりも高い。さらに、右図のように、日本企業にも役員報酬の高い上場企業があり、ゴーン氏の報酬が特に高いわけではない)

 書かなければならないことは多いのだが、私は、監査だけでなく税務やコンサルティングの経験もあり、組織再編税制・連結納税制度・退職給付会計・暖簾の会計処理・税効果会計等々の変更を提案してきた人であるため、今日は、ゴーン氏の「有価証券報告書への虚偽記載」によるとされる逮捕劇と合併・買収について記載する。

(1)ルノー・日産の事例から
1)経営統合を阻止するためのゴーンさんの逮捕
 *1-1、*1-2のように、日産は、ルノーとの経営統合を阻止すべく、ゴーン氏の不正行為について少人数の極秘チームで内部調査を進め、財務担当役員交代後に、秘書室幹部に司法取引させてゴーン氏を逮捕に追い込み、これを理由に会長を解任したというのがStoryの全貌だろう。メディアは、最初から「ゴーン容疑者」「不適切な支出」「有価証券報告書への虚偽記載」「個人に依存した体制」などという文言を使っていたが、日産自動車は個人企業ではないため、ゴーン氏の報酬についても優秀な財務部や法務部が関与して不法行為にならないよう気を付けたのは想像に難くない。また、ゴーン氏自身が日本や世界の法律・税務に詳しいわけではないため、ケリー氏を通じて社内外で検討させたのも当然のことと思われる。
 
 そして、*1-3のように、フランスのマクロン大統領は、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車の3社連合について、ルノーの筆頭株主である仏政府は日産元会長のゴーン氏逮捕後の混乱収拾に乗り出す姿勢を示すことで、3社の「対等な関係」を目指す日産をけん制するそうだが、交渉役のゴーン元会長が不在になり、影響力拡大を狙う仏政府の思惑が崩れ始めていると日本のメディアは伝えている。

 しかし、EVかガソリン車かを選択する時代は既に終わったので、持ち株会社の下には「ルノー、日産、三菱自動車」をぶらさげるのではなく、①EV・燃料電池車 ②ES・燃料電池船 ③EA・燃料電池航空機 ④ゼロエミッション住宅 ⑤研究開発 ⑥マーケティング(新市場開拓や政策立案を含む)等々、製品や機能別に会社をぶら下げるべき時代になったようだ。こうなると、従来のエンジニアも新技術・新市場で活躍するしかないが、活躍の場は少なくないだろう。

 ゴーン氏の速やかな判断のおかげで、現在、ニッサンはEVや自動運転技術が他社より少し進んでいるが、ゴーン氏のようなリーダーを失い、調整とカイゼンしかできなくなった日産が全体を率いるよりは、(フランスはじめヨーロッパは、既にEVを普及させる政策には入っているのだから)フランス政府肝入りのルノーが全体を率い、3社を統合して組織再編を行い、それぞれの分野でトップに立つ機会を狙った方がよいように思う。そのためにも、コスモポリタンでヨーロッパ人ではないゴーン氏を失ったのは、日本勢にとって痛かったのではないか?

2)司法取引の問題点 ― 経営権争いに司法取引を用い、軽微な“罪”を言い立てて、
  実力者を追い出すことが可能になったこと
 司法取引が導入された時から、私は冤罪や人権侵害の温床になると考えていたが、やはり、*1-4のように、「①報酬合意文書は秘書室で秘匿され、取締役会に諮られていなかった」「②将来の支払いを確定させた文書だ」と、東京地検特捜部が文書作成に直接関与したとする秘書室幹部は、司法取引を行って証言したそうだ。

 しかし、取締役会は株主総会で認められた役員報酬(30億円)のうち、支払われなかった部分についてゴーン氏に一任することを承諾していたのだから、ゴーン氏は取締役会に諮っていたことになり、①は虚偽である。また、*1-6のように、報酬文書には日産の別の幹部のサインもあり、ケリー氏が「会社としても退任後の報酬支払いを把握していた証拠だ」としているのは本当だろう。

 なお、東京地検特捜部は、「退任後に支払う報酬は確定していたので、有価証券報告書に記載義務がある」として受領額の確定性を論点にしている。しかし、従業員の退職給付債務も、退職金規程等(企業と従業員の契約)に基づくに制度と解されており、誰でも自己都合退職時の支給額は確定しており、会社都合の場合はそれより大きくなる。そして、企業は、当該会計期間までに発生した退職給付債務を現在価値に割引いて退職給付支払いのためだけに使用する年金基金などに外部拠出し、年金基金は企業からの拠出金を元本として株式や債券等で運用して、従業員が退職した際に退職金を支払う。そのため、日産の従業員だった取締役は、この退職給付を必ず受け取るが、有価証券報告書にはそれを記載しておらず、弁護士のケリー前代表取締役が合法な方法だと言ったのは本当で、②の将来支払確定性は従業員の退職給付債務にもあるのである。

 従って、*1-5のように、退職後の報酬不記載を違法性の焦点にした時点で、日本の特捜や検察は敗北した。にもかかわらず、自白させるために拘留期間を伸ばす目的で逮捕容疑を2015年3月期までとそれ以後に分けたのは悪どい。さらに、どの取締役も書いていない退職後の報酬を書かなかったことを金商法違反(有価証券報告書の虚偽記載)だとして、ゴーン氏を逮捕するのは法の下の平等に反する。

 そのため、*1-7のように、ゴーン氏が「嘘の自白は耐えられない」として、一貫して容疑を否認しているのは当然だ。また、ゴーン氏は、フランスの工学系グランゼコールの一つパリ国立高等鉱業学校を卒業した人で、法律や会計の専門家ではないため自らの正当性を理論的に説明することはできないかも知れないが、社内外の専門家に相談して行動したと思われるので、嘘の自白を強要するのはやめるべきである。

3)役員報酬の相場と透明性
 経産省は、2015年3月に、「日本と海外の役員報酬の実態及び制度等に関する調査報告(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/000134.pdf#search=%27IFRS+%E5%BD%B9%E5%93%A1%E5%A0%B1%E9%85%AC+%E9%96%8B%E7%A4%BA%E8%A6%8F%E5%AE%9A%27)」をトーマツグループに委託し、トーマツグループがしっかりした報告書を提出しているので、役員報酬に関心のある方は参照されたい。

 その中に、「日本国内における役員報酬の決定方法は、取締役が代表取締役に一任する会社が58%を占め、報酬委員会で協議して取締役会で決議する会社は15%に留まる」と書かれている。また、*1-8にも書かれているように、ゴーン氏問題を受けて高額批判が出ている役員報酬は、主要企業のトップの報酬を比較すると、日本は米国の1割程度で国際的には低い水準にあり、日本は経営者も含めた人材獲得のグローバル競争で後れを取る恐れがある。これは、高度専門職や研究者も同じだ。

 しかし、*1-9のように、日産は、ゴーン容疑者の裁量で報酬額を決めてきた現行の仕組みが不正の温床だと判断し、役員報酬の決定過程を透明化するために、報酬委員会を新設することを検討するそうだ。こうすると、確かに特定の人が槍玉に挙げられることはなくなり、決定過程も透明にはなるが、必要な人をヘッドハントして業績や相場に応じた報酬を支払うことはできにくくなる。また、50%以上の人が賛成することは、現在の常識であって先端ではないのである。

 なお、ゴーン氏は日産から7億3500万円の役員報酬を得ていたそうだが、ルノーから得ていた報酬は、ルノーは日産の被連結子会社でないため、日産の連結財務諸表に掲載されない。つまり、会社の資本関係やそれに伴う連結範囲を吟味せずに、こういう問題を語ることはできないのである。

(2)不適切な合併・買収に関する論評
 このように、破綻寸前だった日産をよみがえらせたゴーン氏のやり方が非難され、*2-1のように、世界的な企業規模の大型化についていけていないため日本企業の「小粒化」が進んでいると書かれた記事がある。しかし、合併して瞬間的に大規模になればよいわけではなく、合併後にシナジー効果を発揮して大きな成果の得られることが合併の本当の意義である。

 また、長寿だから新陳代謝が鈍くて成長力がないわけではなく、時代にあった的確な戦略を作ってそれを実行できるか否かが問題であるため、歴史があり優秀な人材の揃っている企業が強いことは多い。さらに、他と比べたから成長率が上がるわけではなく、成長率が上がること自体が企業の目的でもない。

 それどころか、国民生活を犠牲にした金融緩和でじゃぶじゃぶにした金で無理にM&Aをして大損した例は、枚挙に暇がない。例えば、*2-2の東芝の例のように、自らは技術がないため高すぎる買収額で技術があると思われる会社を買収したケースは、相手が納得していないので、金をむしり取られただけでうまくいかなかった。

 なお、買収額と本当の企業価値のギャップは、現在は全て暖簾に計上しているが、本来の暖簾部分と高値買いした部分とに分け、後者は直ちに償却するか買収を行った経営者がいる数年のうちに償却するのがFairである。しかし、本来の暖簾部分は、時間の経過とともに価値が上がることも多いため、価値がなくなった時に減損処理する現在の会計処理が妥当だと考える。

 また、*2-3のように、銀行・生保・商社は、大きくさえあればよいと、日本型の「メガ合併」や「救済合併」をよく行ったが、それによりコスト・システム運営費などを削減できればよいものの、人事でやりにくさが増したり、企業の数が減ったため製品やサービスに個性がなくなり、消費者が求めるサービスが減ったりしたという現象もあった。

 そのような中、*2-4のように、ゴーン氏は聖域なき改革を行い、工場閉鎖・人員削減・系列破壊を行って非効率にメスを入れ、破綻寸前だった日産はV字回復を果たしたのだが、ゴーン氏は恨まれているようである。工場労働者と経営者との報酬格差が日本ではよく批判されるが、日産が破綻していれば全員が職を失っていたのであり、時代に先んじた正しい意思決定をすることは、小田原評定の議論をしているよりずっと重要なことである。

(3)暖簾の会計処理
 暖簾の会計処理について、*3のように、国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、企業買収を巡る会計処理の見直しを始めたと書かれているが、(2)で述べたとおり、暖簾は買収先企業の収益還元価値と純資産の差額がブランド力等と解され、買い手企業が資産計上でき、その価値がなくなった時に減損損失を計上するのが正しいと、私は考える。

 しかし、日本の合併・買収は、高値買いした価格と純資産の差額をすべて暖簾に計上するため、問題が起こる。つまり、高値買いした価格と収益還元価値の差額は、直ちに償却するか買収した経営者のいる数年のうちに償却し、収益還元価値と純資産の差額は、暖簾として計上し続けるのが適切であろう。

<ルノー・日産の事例>
*1-1:http://qbiz.jp/article/144694/1/ (西日本新聞 2018年11月24日) 日産、今春から極秘チーム結成 ゴーン前会長の不正調査
 日産自動車が、逮捕された前代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者の不正行為について、今年春ごろから役員を含む少人数の極秘チームを結成し、社内調査を進めていたことが24日、関係者への取材で分かった。財務担当の役員交代を機に、不適切な支出が確認された。フランス自動車大手ルノー主導による経営統合をゴーン容疑者が進めることを警戒し、会長解任を急いだことも判明した。統合を阻止するために調査を始めたわけではないが、経営戦略を巡る日産内部の対立が事件発覚の引き金となったことが裏付けられた。関係者によると、ゴーン容疑者が会社の資金を不当に使っている疑いは以前から浮上していた。だが、絶対的な権力を持つゴーン容疑者から不利な扱いを受けるのを恐れ、社内には声を上げられない雰囲気が広がっていたという。転機となったのは今年5月。最高財務責任者(CFO)がそれまでの外国人から日本人の軽部博氏に交代した。財務部門のメンバーが代わり、不適切な支出が次々と明るみに出た。ゴーン容疑者による証拠隠滅や妨害を警戒し、社内調査は秘密保持を徹底した。司法取引した外国人の専務執行役員らも調査に協力した。6月ごろから大手弁護士事務所も加わり、証拠を積み上げていった。日産は公表時期を慎重に検討。ゴーン容疑者は今年3月以降、日産とルノーの資本関係を見直す発言を繰り返すようになり、日本人役員を中心に日産内で経営の自立性を失うことへの警戒が広がった。ゴーン容疑者が年内にも協議開始の提案をするとの情報があり、今回、来日したタイミングで公表する手はずを整えたという。関係者は「協議が始まった後に不正を発表し、クーデターという見方が強まるのを避けた」と話す。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38263090X21C18A1EA2000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/11/28) 日産「日仏対等」探る 出資「4割ルール」焦点に、3社連合トップ、29日初会合
 日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の3社連合のトップが29日、オランダで会合を開く。カルロス・ゴーン容疑者(64)が逮捕されて以降、初めてのトップ協議になる。出資比率や提携内容の見直しを通じ「対等な関係」を模索する日産と、支配的な地位を維持したいルノー――。日仏連合は「ゴーン後」の新しい枠組みを構築する作業に着手するが、日産とルノーの溝は深く妥協点を見いだすのは容易ではない。29日のトップ協議は、新車開発や部品調達など重要事項を決める統括会社「ルノー日産B・V」(アムステルダム)が舞台になる。日産の西川広人社長と三菱自の益子修会長は、現地に行かずテレビ会議で参加。ルノーからは暫定トップのティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)が加わる見通しだ。3社連合の実権をゴーン元会長に委ねてきた西川氏とボロレ氏にとっては事実上の「外交デビュー」となる。29日は「込み入った話には踏み込まない」(日産幹部)見通しで、3社連合の枠組みを維持する方針の確認にとどまるとみられる。「個人に依存した体制を見直すいい機会になる」。ゴーン元会長の逮捕を受けた19日の記者会見。3社連合への影響を聞かれた西川社長は危機ではなく好機だと強調した。日産は29日の初協議を経て、ルノーとの対等な関係の構築に動き出すとみられる。日産が求める「対等」とは何か。その柱はルノーとの資本構造と事業面での不均衡の是正だ。「4割ルール」――。日産とルノーの資本関係にはフランスの会社法が重みを持つ。ルノーは日産株を43.4%持ち議決権もある一方、日産が15%持つルノー株には議決権がない。仏会社法の定めでは、40%以上の出資を受ける企業は、出資元の企業の株式を保有しても議決権を持てない。ルノーは資本面で優位に立つ。日産は08~18年に出願した特許が約6万8千件とルノーの2倍を超えるなど、先端技術や販売台数、収益力などでルノーに勝る。しかし北米で売る主力車を経営不振だった韓国のルノー子会社で生産するなど、ルノーを支えることを主眼とした判断も迫られた。日産にとっては、こうした事業面のゆがみを解消するには資本による支配構造の見直しが必要だ。考えられる選択肢はいくつかある。仏会社法ではルノーの日産への出資比率が4割を割れば、原則として日産もルノーの議決権を得るとみられる。逆に日産がルノー株を25%まで買い増せば、日本の会社法に基づきルノーが持つ日産の議決権が消える。持ち株会社を設立し、日産とルノーが事業会社としてぶら下がる案もある。両社の間には「改定アライアンス基本合意書(RAMA)」と呼ばれる協定がある。ルノーは日産の合意なしに日産株を買い増せないが、日産は仏政府などから経営干渉を受けたと判断した場合、ルノーの合意なしにルノー株を買い増せる。日産はこの協定をカードにルノーと見直し協議を進める可能性がある。ただ、ルノーは仏政府にとって数少ない虎の子の企業だ。仏国内では有力企業が次々と外資の手に渡っている。支持率低迷にあえぎ国内投資や雇用を重視するマクロン政権が、現在のルノーの支配的地位を譲る事態は想定しにくい。日産は12月17日に取締役会を開きゴーン元会長の後任人事を協議する。ルノーは後任会長を送る意向を示したのに対し、西川社長を軸に検討する日産は拒否したとされ、水面下で両社の綱引きはすでに始まっている。泥沼の主導権争いを避け、妥協点を見いだせるか。日仏連合は岐路に立つ。

*1-3:
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181202&ng=DGKKZO38440120R01C18A2EA2000 (日経新聞 2018年12月2日) 3社連合、崩れる仏の思惑、マクロン氏「維持・安定を」
 フランスのマクロン大統領が日本時間1日未明、日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の3社連合について安倍晋三首相と議論した。ルノーの筆頭株主である仏政府が日産元会長のカルロス・ゴーン容疑者の逮捕後の混乱収拾に乗り出す姿勢を示すことで、3社の「対等な関係」を目指す日産をけん制する。交渉役のゴーン元会長が不在になり、影響力拡大を狙う仏政府の思惑が崩れ始めている。
20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた会談は15分という短時間だった。マクロン氏は「3社連合を維持し、安定させるのが重要だ」と語り、仏政府が支援する姿勢を明確にした。逮捕されたゴーン元会長については「司法的な手続きは進めなければいけない」と日本の司法制度を尊重する姿勢もみせた。会談は当初予定されていなかったが、マクロン氏の呼びかけで開かれた。直前の11月29日に日産・ルノー・三菱自の3社トップが会合を開き、今後の方針は3社による合議制で決めると合意していた。仏政府にしてみれば、「ルノー優位の連合」という構図にヒビが入った瞬間だった。日仏首脳会談を開く重要な狙いは、ルノー優位の連合の関係見直しを求める日産へのけん制だ。かつて国営の「ルノー公団」だったルノーは仏国内で4万8000人の雇用を抱える、いわば「国策企業」だ。日産車の生産移管などで仏国内での雇用を創出している。マクロン氏の支持率は17年の就任以来最低の2割台に急落している。自ら連合の維持を訴えることで、ルノーを巡る経営や雇用への不安を打ち消そうとする狙いがある。経済産業デジタル相だった2015年、マクロン氏はルノー株を買い増して影響力の拡大を図った。さらに日産・ルノーの経営統合を目指したとされ、日産から激しい反発を生んだ。ゴーン元会長の逮捕後に遠心力を強める日産に対し、マクロン氏が首脳会談で自らの指導力を見せつける必要があった。G20の直前、仏経済紙レゼコーは政府幹部の「我々には『重火器』がある。つまり、ルノーに日産株を買い増しさせる」との声を伝えた。信頼関係の崩壊につながる極めて荒っぽい提案だが、仏政府内に強硬派がいることを日産に知らしめた。自動車行政を所管するルメール経済・財務相は、はっきりと仏政府が介入する姿勢をみせている。11月下旬の仏メディアの取材に「ルノーと日産が互いの出資比率を変えることを望まない」と語った。

*1-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13789560.html (朝日新聞 2018年11月29日) 報酬合意文、秘書室で秘匿 取締役会に諮られず ゴーン前会長 関与の幹部、司法取引
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が約50億円の役員報酬を有価証券報告書に記載しなかったとして逮捕された事件で、この約50億円を退任後に受け取ることで日産と合意した文書は、秘書室で極秘に保管されていたことが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部は、文書作成に直接関与した秘書室幹部と司法取引し、将来の支払いを確定させた文書だという証言を得た模様だ。関係者によると、この文書は役員報酬を管理する秘書室で管理され、経理部門や監査法人には伏せられていた。退任後に支払うという仕組みは取締役会にも諮られなかったという。ゴーン前会長と前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)は、2014年度までの5年間の前会長の報酬が実際は約100億円だったのに、有価証券報告書に約50億円と虚偽記載したという金融商品取引法違反の疑いで逮捕された。関係者によると、ゴーン前会長は高額報酬への批判を避けるため、各年度に受け取る額は約10億円にとどめたうえで、さらに約10億円を退任後に受領するという文書を毎年、日産と交わしていたという。特捜部は、外国人執行役員と共に、ゴーン前会長に長年仕えた秘書室の日本人幹部と司法取引。捜査に協力する見返りに刑事処分を減免することにした。秘書室幹部は合意文書を特捜部に提供。さらに文書の解釈について、退任後に支払う約10億円は約20億円の年間報酬の一部で、将来の支払いが確定しているなどと証言したとみられる。特捜部は、司法取引しなければ入手困難な文書を得たうえ、解釈に関する当事者の証言を得られたことを重視し、隠蔽(いんぺい)工作と判断した模様だ。
■「従業員のやる気考慮」 ゴーン前会長、容疑否認
 ゴーン前会長が、約20億円の報酬のうち毎年開示するのは約10億円にとどめ、差額の約10億円を退任後に受け取ることにしたとされる点について、「(公表したら)従業員のモチベーションが落ちると思った」と話していることが、関係者への取材でわかった。関係者によると、2008年秋のリーマン・ショックで日産の業績が下がったため、ゴーン前会長の報酬も減った。その後、日産の業績は回復。ゴーン前会長は報酬を元に戻そうと考えたが、開示すれば従業員のやる気を失わせてしまうと考えたという。退任後の報酬の支払いについては「確定したものではなく、記載義務はない」と容疑を否認。弁護士でもあるケリー前代表取締役に相談して「『合法な方法です』と言われた」とも主張しているという。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181201&bu=BFBD9496EABAB5E (日経新聞 2018年12月1日) 報酬不記載の違法性焦点 ゴーン元会長逮捕1週間、先送り80億円、開示対象? 受領額確定か否か
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の逮捕から26日で1週間を迎えた。役員報酬約80億円の過少記載方法の違法性を巡り、検察側とゴーン元会長側が争う構図が鮮明になってきた。業績をV字回復させたカリスマ経営者は、逮捕容疑以外にも会社を「私物化」していた不正行為が発覚。事件を機に、日産・ルノーの資本関係の見直し協議が本格化するなど「ゴーン元会長退場」の余波は広がる。関係者によると、有価証券報告書に記載されていないゴーン元会長の役員報酬は▽受け取りを先送りした金銭報酬=8年間で計約80億円▽株価上昇と連動した額の金銭を受け取れる「ストック・アプリシエーション権」(SAR)=4年間で計約40億円分――の2種類があるとされる。関係者によると、2種類のうち受領を先送りした報酬は毎年約10億円、2018年3月期までの8年間で計約80億円に上る。東京地検特捜部が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)にあたるとしてゴーン元会長らを逮捕した容疑は、このうち15年3月期まで5年間の約50億円を対象としたもようだ。日産では近年、役員報酬の総額上限を29億9千万円と設定。ゴーン元会長は上限内で各役員への報酬の配分を決める権限を持ち、自身は年20億円前後としていた。だが、10年に報酬1億円以上の役員について報酬額の開示が義務化されると、高額報酬への批判を避けるため、約10億円の受領を退任後などに先送りし、有価証券報告書に記載しないことにしたという。金融庁によると、内閣府令では開示対象の報酬を「職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益」と定義。ストックオプションや退職慰労金なども含まれ、開示義務は受け取る見込み額が明らかになった時点で生じるという。青山学院大の八田進二名誉教授(会計学)も「支払いの時期にかかわらず、額が決まった時点で記載の義務が生じる」と説明する。東京地検特捜部は報酬先送りについて記載した文書を入手するなどしており、ゴーン元会長が受け取る報酬額は固まっていたので受け取り前でも記載の義務はあったと判断しているもようだ。ただ、先送り分の引当金などは計上されていなかったとみられ、ゴーン元会長らは「確実に支払われると決まっていなかった」などと容疑を否認しているという。2種類の報酬のうちSARについても、他の役員は付与された分を記載していたのに、ゴーン元会長は18年3月期までの4年間に得た計約40億円分を記載していなかったとされる。SARの場合、受け取れる金額は権利を行使した時点の株価で決まる。会計実務に詳しい専門家によると、開示義務が生じるのはSARを付与された時点とする考え方がある一方、権利行使が可能になった時点だとする考え方もあり、運用は各企業に委ねられているのが実情という。金商法に詳しいある弁護士は「開示ルールが必ずしも明確ではなく、SARの不記載を立件するハードルは高いだろう」と話している。投資家の判断の元となる有価証券報告書の虚偽記載は証券市場の公正さに対する信頼を損なう犯罪とされ、検察当局は厳しい姿勢で臨んでいる。06年には法定刑も「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」から「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」に引き上げられた。一般的には、投資の判断材料として、役員報酬の重要度は財務諸表などより低い。しかし、企業統治の健全さなどを評価する指標として開示が義務化された経緯もあり、特捜部は巨額の報酬を株主や投資家の目から隠した悪質性は高いと判断しているもようだ。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018120201001679.html (東京新聞 2018年12月2日) 報酬文書、日産の別幹部もサイン ゴーン前会長側近が作成
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)=金融商品取引法違反の疑いで逮捕=が有価証券報告書に記載せず、退任後に受け取ることにした報酬の支払い名目を記した文書に、作成者の前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)=同=のほか、当時のより上位の役員クラスの日産幹部がサインしていたことが2日、関係者への取材で分かった。文書はケリー容疑者が常務執行役員だった2010年ごろから数年間、毎年作成されていた。ケリー容疑者は、自分やゴーン容疑者らだけでなく、会社としても退任後の報酬支払いを把握していた根拠だと主張するとみられる。

*1-7:http://qbiz.jp/article/145135/1/ (西日本新聞 2018年12月3日) 「うその自白耐えられない」 ゴーン容疑者、一貫し容疑否認か
 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が周囲に「うその自白をすると自分の評判が落ちるので耐えられない」と話していることが3日、関係者への取材で分かった。一貫して容疑を否認しているとみられる。ゴーン容疑者は、2011年3月期〜15年3月期の5年間に、自分の報酬を約50億円少なく記載した有価証券報告書を提出した疑いで逮捕された。毎年の報酬額を約20億円と設定し、このうち退任後に受け取ることにした半分程度を記載しなかった点が容疑となった。関係者によると、ゴーン容疑者は退任後の報酬について、東京地検特捜部の調べに「あくまでも希望額だった」などと供述。記載していない事実は認めた上で、支払いは確定しておらず、報告書への記載義務はなかったと主張している。さらに、側近の前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)=金融商品取引法違反の疑いで逮捕=に事前に確認し、記載しなくても合法との回答を得ていたとも説明しているという。不記載の総額は18年3月期までの8年間で総額80億円を超えるとみられ、特捜部は直近3年分の立件も検討している。

*1-8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181201&ng=DGKKZO38423100R01C18A2MM8000 (日経新聞 2018年12月1日) 役員報酬 きしむ日本流、「ゴーン問題」で注目 水準・透明性に課題
 日産自動車元会長カルロス・ゴーン容疑者の問題を受け、高額批判も出ている役員報酬。ただ、主要企業のトップの報酬を比較すると日本は米国の1割程度にとどまり、国際的には低い水準にある。経営者も含めた人材獲得のグローバル競争で後れを取る恐れがある。役員報酬を適切な水準へと見直していくべきだとの指摘があり、同時に決定過程を透明にするといった対応も課題となる。開示されているベースでゴーン元会長の2017年度の報酬は仏ルノーや三菱自動車の分も含めて約19億円にのぼる。日産からは7億3500万円で、役員報酬全体(18億5700万円)の約4割を得ていた。ゴーン元会長の報酬は過少に記載されていた疑いがあり、全体に占める比率はもっと高かった可能性もある。投資資金や会社経費を巡る「私物化」疑惑もある。海外子会社を通じてブラジルやレバノンに自宅用の住宅を購入させたり、姉と実態のないコンサルタント契約を結んで報酬を払ったりしていたとされる。様々な問題が指摘されてはいるが、ゴーン元会長の報酬額が国際的に突出しているわけではない。半導体大手ブロードコム約117億円、放送大手CBS約79億円、旅行サイトのトリップアドバイザー約54億円――。米労働総同盟・産別会議によると米国では17年も多くの最高経営責任者(CEO)が高額な報酬を得た。自動車大手のCEOだと米ゼネラル・モーターズが約25億円、米フォード・モーターは約19億円だ。社会主義的な風潮から高額報酬に批判的なフランスでも、医薬大手サノフィや化粧品大手ロレアルのCEOは約12億円を得ている。日本の役員報酬の平均水準は海外を大きく下回る。米コンサルティング会社、ウイリス・タワーズワトソンがまとめた17年度の日米欧主要企業のCEO報酬によると、米国の14億円に対して日本はわずか1.5億円。ドイツや英国、フランスと比べても2~3割の水準にとどまる。「総中流」時代のなごりで格差への抵抗感が強く、高額な報酬を避ける経営者が多いためだ。報酬が1億円以上だと個別名の開示が必要になるため、「9990万円」程度に抑えるケースも珍しくない。業績や株価に連動する「インセンティブ報酬」の比率が国際的に低いという違いもある。
●低成長でも高報酬
 この結果、日本の役員報酬には「上方硬直性」が生じている。国内上場企業の17年度の役員報酬合計は約8800億円と10年度比で31%増加。だが、業績ほどには伸びていないため、純利益に占める役員報酬の比率は同期間に4%から1.95%へと半減した。個別企業でみても報酬と業績の関係はあやふやだ。東京商工リサーチのデータで国内主要100社の取締役ひとりあたりの報酬を算出し、業績動向を反映しやすい時価総額との関係を調べたところ、17年度中に「時価総額が大きく伸びたのに報酬は低位」の会社が2割にのぼった。反対に「時価総額の伸びが鈍いのに報酬は高位」も2割弱あった。日産は時価総額が約3%増と低成長なのに、報酬額は約2億700万円と全体の平均値を上回る。ゴーン元会長の報酬が過少に記載されていたなら、「低成長・高報酬」の度合いはもっと強かった計算になる。
●委員会26%どまり
 日本の役員報酬には「決め方が不明確」という問題もある。報酬総額は株主総会の承認が必要だが、どう配分するかは「社長一任」としている企業が多い。歴史的に低い水準の報酬が続き、突っ込んだ議論が求められてこなかったためだ。一方、米上場企業は「報酬委員会(総合2面きょうのことば)」の設置が義務付けられている。報酬委は外部の有識者などを交え、客観性をもたせながら取締役など個人別の報酬を決めるための仕組みだ。日本で報酬委(任意導入含む)を設置しているのは日立製作所やブリヂストンなどの932社。全上場企業の約26%にすぎない。日産も報酬委はなく、ゴーン元会長は自身の報酬を「お手盛り」で決めていたとされる。「透明性と緊張感のある報酬制度は競争力の源泉」と一橋大学の伊藤邦雄特任教授は指摘する。外国人も含めて優秀な経営者を引きつけるには、日本の役員報酬は欧米に見劣りしない水準へと切り替わっていく必要がある。報酬委などの活用で透明性を高め、利害関係者の納得を得やすくするといった制度上の工夫がその第一歩になる。

*1-9:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201811/CK2018112202000162.html (東京新聞 2018年11月22日) 日産、報酬制度変更へ ゴーン容疑者 ルノーと統合模索
 日産自動車が、代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬を過少に申告したとして逮捕されたことを受け、役員報酬制度を変更する検討に入ったことが二十一日分かった。事実上、ゴーン容疑者の裁量で報酬額を決めてきた現行の仕組みが不正の温床と判断した。フランス大手ルノーとの企業連合の在り方も見直す。二十二日に臨時取締役会を開き、ゴーン容疑者の会長職を解く。ゴーン容疑者が今年九月の取締役会でルノーとの資本関係の見直しを提案していたことも判明した。役員報酬は決定過程を透明化するため、報酬委員会を新設し「委員会設置会社」に移行することなども検討する。甘い内部監査の是正は急務で、関係者は「報酬委員会などの設置は避けられない」と話す。現在の社内規定で各役員の報酬は、取締役会議長でもあるゴーン容疑者が、共に逮捕された代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者、西川広人社長と相談して決まる。企業連合の見直しは、ルノーから日産への出資比率の引き下げや新たな役員構成が焦点。英紙は二十日、ゴーン容疑者がルノーと日産の経営統合を考えていたと報じた。日産経営陣はかねて統合論に反発しており、ゴーン容疑者の失脚が関係再構築の呼び水となる。ただ日産がルノー株の15%を持つのに対し、ルノーは日産株の43・4%を保有し発言権が強いため、調整は難航が予想される。一方、ルノーは二十日に臨時取締役会を開き、ナンバー2のティエリー・ボロレ最高執行責任者が最高経営責任者(CEO)代理に就任する人事を決めた。ゴーン容疑者の会長兼CEO職の解任は先送りした。日産経営陣で代表権を持つ取締役はゴーン、ケリー両容疑者が欠け西川氏だけになり、補充が必要だ。他の取締役は六人で、うち二人がルノー出身。両容疑者を早期に取締役からも外すため臨時株主総会を開くことも議論になりそうだ。

<不適切な合併・買収に関する論評>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/morning/?b=20181118&d=0 (日経新聞 2018年11月18日) 小粒になった日本企業、「寿命」突出の89年 成長鈍く
 日本企業の「小粒化」が進んでいる。世界的な企業規模の大型化についていけていないためで、米国では企業の1社あたり時価総額が2000年末の2.6倍になった一方、日本は1.7倍にとどまる。企業再編などによる「新陳代謝」が鈍く、成長力の差を生んでいるとの指摘が多い。企業の競争環境の見直しなどが今後の課題となる。
●中国に逆転許す
 00年末に9.9億ドル(約1120億円)だった日本の1社あたり時価総額は17年末に17億ドルまで増えた。だが、米国は27.5億ドルから72.3億ドルと大きく伸ばし、「日米格差」は2.8倍から4.3倍に広がった。5億ドルだった中国は5.4倍の27億ドルと日本を逆転。「日中格差」は0.5倍から1.6倍に拡大した。米国ではアマゾン・ドット・コムやグーグル親会社のアルファベット、中国ではアリババ集団や騰訊控股(テンセント)など若いネット企業が急成長したためだ。日本でもソフトバンクグループやファーストリテイリングなどが健闘しているが、そうした新たな成長企業の数・時価総額の増え方などで見劣りする。ネットビジネスでの出遅れ、土台である日本経済の低迷、規制緩和の鈍さ、経営者マインドの保守性、語学力も含めたグローバル人材の不足――。背景には様々な要因がある。なかでも特に深刻だと多くの専門家が指摘するのが「企業の新陳代謝が国際的にみて鈍い」(帝京大学の宿輪純一教授)という問題だ。確認のために上場企業の「平均寿命」を試算してみた。期中の新規上場を含めて上場社数の年間平均が100社だったとする。上場廃止が10社なら、1年で10分の1の企業が消えたことになる。全企業が入れ替わるには10年かかるペースなので、「平均寿命(上場維持年数の平均値)」は10年だと見なせる。この計算だと17年時点で米ニューヨーク証券取引所の上場企業は「15年」、英ロンドン証取は「9年」。これに対して日本取引所の上場企業は「89年」と極端に長寿だと分かった。NY証取では約130社が新規に上場し、これを上回る150社強が消えた。この結果、上場社数(期中平均)は約2300と前年より約60社減少。上場社数は16年から減少が続いている。米証券取引委員会への提出資料で上場廃止の理由(上場投資信託など除く)を調べると、約8割がM&A(合併・買収)によるものだった。競争力の一段の強化を狙った大型再編や独自の強みをもつ小型企業の買収が多発しているからだ。17年にはダウ・ケミカルとデュポンが統合し、世界最大の化学会社ダウ・デュポンが誕生している。
●「長寿」があだに
 一方、日本取引所は100社強増えた一方で、上場廃止は40社どまり。上場社数は増え続けており、3600社弱と世界的にも多い。再編などの動きが鈍いためで、「日本には成長ではなく、企業存続を目的とする経営者が多い」(みずほ証券の菊地正俊氏)との指摘がある。景気低迷が長期にわたって続いたうえ、日本では銀行の力が強いため、M&Aなどを駆使して積極的に成長を狙うよりも、借金返済が確実になる安定型の経営が選ばれやすいようだ。これが突出した「長寿」につながっている。このため倒産も国際的にみて少ない。帝国データバンクによると17年までの10年間に倒産した日本の上場企業は79社。同期間に米国では総資産1億ドル以上に限っても331社が連邦破産法11条を申請している。日本と違って米国では経営上の選択肢と割り切って早めに倒産を申請するので再生も容易になる。倒産には時代遅れの企業から資本や人材を解き放ち、新たな成長企業を育ちやすくする効用もある。成長志向の弱さという問題は以前より悪化している可能性がある。日銀が年6兆円規模で上場投資信託(ETF)を購入し、東証1部に上場してさえいれば一定の買いが入る。業績低迷を放置していても株安による市場からの圧力を受けにくくなった。成長ではなく上場維持だけを目的にする経営マインドの土壌になっている。起業を促しつつ、事業や会社そのものの売却、破綻処理などのハードルを下げ、経営者には成長へのインセンティブを明確にする――。企業の新陳代謝を活発にするトータルな施策が、成熟期に入った日本経済には一段と重要になっている。

*2-2:https://medium.com/@newsgimon/東芝-westinghouse失敗の本質-1-9bbf2894469e (ニュースノギモンNov 19, 2017 抜粋)東芝:Westinghouse失敗の本質(1)
 日本のマスコミは、よく日本のモノづくりを礼賛していますが、ときに行き過ぎているのではないかと思うことがあります。確かに日本の電動自転車やシャワートイレに感動する外国人は多いでしょう。ただ、そういった画期的な製品というのは、ここ数年出ていないように見受けられます。日本のモノづくりの現場を同業の外国人が視察して感動する、そういう番組があるのも「もう一度自信を取り戻したい」という願望の裏返しに思えてなりません。日本のモノづくり神話、本当は疑っているんですよね? 率直にいうと、日本の製造業は大手になればなるほどモノづくりカルチャーというより、モノ(単一の)カルチャーに支配されていているのではないかと思っています。一つの企業文化の中に押し込められているので、悪い方向に流れ始めても軌道修正ができない。悪い方向に進んだ結果、失敗が起きても敗因分析はされない。なぜなら、モノカルチャーでは自己と他者が同一視されるので、誰かに責任をとらせるようなことをすると自分に返ってくるようで怖いのです。大手製造業では、多くの人は新卒で入社し、なんなら寮や社宅で同じコミュニティに属し、上意下達が根付いていて、「それ違うんじゃないの?」という気力が抜け落ちて行きます。名門といわれる企業ほど、外国人・中途採用にとって狭き門であり「異論」を持つ人間が主流派になりづらい現状があるのではないでしょうか。「それ違うんじゃないの」という人不在で突き進んで行った代表例、それが東芝だと思っています。僭越ながら東芝社内にかわり私めが失敗分析をさせていただきますね。東芝は、子会社であるWestinghouseの原子力事業により、巨額の損失を抱えることになりました。このことについて日本のマスコミの多くは、良心的にも「東芝がダマされた」「東芝は見抜けなかった」という論調で掲載しています。その根底にあるのは「日本の生真面目な製造業は、マネジメントが下手であるため欧米企業の暴走をコントロールできない」という思想ではないでしょうか。マネジメントが下手なのは事実かもしれませんが、果たして問題はWestinghouseの暴走にあったのでしょうか。
(あらすじ)
 この2年間、東芝は話題につきなかったので、Westinghouseにフォーカスしてことの経緯をざっくり振り返ります。
i)東芝が買ったWestinghouse(WEC)がShawの子会社のStone& Webster(S&W)という会社と原子力発電所の建設を受注した
ii)工期が遅れた
iii)プロジェクトの責任一本化のためにS&Wを買った
iv)S&Wの工期遅れによる損失がものすごいとわかった
といった感じです。
●買収における失敗
①高すぎた買収額
 そもそも東芝がWestinghouseを買収しようとした際、市場の想定価格は18億ドル程でしたが、東芝はライバル達に競り勝つために54億ドルで交渉権を得ました。当時の記事に、「3年単位で25億ドルのキャッシュフローを稼げるから大丈夫」という東芝幹部の発言が残っています。東芝の当時の主力事業は、半導体やハードディスクなど投資の規模・スピードともにもとめられる事業でした。その需要サイクルから考えると、キャッシュフローが一定に維持できるか疑問が残ります。一方で、東芝にしてみるとだからこそ、安定した収益の柱としてエネルギーにかけたのでしょう。結論からいうと、数年後のリーマンショックによる景気後退と、高すぎた買収額と企業価値とのギャップ(のれん)により、東芝のガバナンスは歪められていきます。
②買収がゴールだった時代
 2006年は、日本板硝子が英ピルキントンを6,160億円、ソフトバンクが英ヴォーダフォンを1兆7500億円、JTが英ガラハーを2兆2000億円で買収するなど、大型買収が目白押しでした。この年、日本企業による外国企業の買収が、始めて外国企業による日本企業買収を上回り、まさに外国企業買収のれい明期といえます。成功例として語られるM&Aもある一方で、この東芝の件については「どのように統合し、ガバナンスを利かせていくか」が考えられていなかったように思えます。もちろん、統合後の事業シナジーは描かれていました。問題は買収される側の心理をよく理解していなかったということです。日本企業の生え抜き文化では、経営陣の指示のもと組織は粛々と機能していくため、従業員への配慮を忘れてしまったのかも知れません。
③一方通行のシナジー戦略
 東芝の描いた絵というのは、次のようなものでした。原子力ルネッサンスが花開く(原子力市場が再興する)といわれるアメリカや、日本企業にハンディキャップのある中国や欧州市場でWestinghouse(WEC)にマーケティグを頑張ってもらい、その上がりをいただこう。WECがとってきたプロジェクトに東芝のタービンや周辺機器も入れてもらおう。原子力発電所の設計技術は、大きくBWR(※1)とPWR(※2)の2つに分けられています。東芝はBWRの会社だったので、世界の3/4を占めるPWR市場にリーチできることに当時の報道ではフォーカスされています。一方、当の東芝は、WECの販売力への期待もかなり大きかったようです。スピード感が重視される海外案件は、日本企業にとって依然言葉の壁、規制の壁が大きく立ちはだかります。東芝のプレスリリースに記載された以下のコメントにも、WECの裁量に任せる感が出ていますね。その方がスピーディに売り上げが上がっていくとの想定でしょう。
※1:沸騰水型軽水炉、※2:加圧水型軽水炉、加圧水型の方が安全性が高いといわれている
(ウェスチングハウス社については、これまでの経営体制と方針を尊重し、引き続き 独立性を保持した事業運営が行われます。また、当社およびパートナー企業とのシナ ジーが最大限にはかられるよう体制を強化し、さらなる事業の拡大を目指します。 出典:2006年10月東芝プレスリリース)
④自由裁量≠ロイヤリティ
 買われた側のWECの人たちはどう思うでしょうか。「このM&AでWECはどう成長させる気なの?」となりませんか。相互に刺激し成長していくビジョンがなければ、モチベーションは下がります。独立性が保たれるのは結構ですが、リーダーシップや共有の成長ビジョンが示されないと、「金持ちがバックについた」くらいの感覚になっても致し方ないように思えます。買収時に発表された運営体制の図には、常勤の取締役2人、CFO(最高財務責任者)・CCO(最高調整責任者、東芝の造語)、コーディネーションスタッフの派遣を行うと書かれています。コーディネーションオフィスは、人員が記載されていませんが、WEC内に1つ東芝内に1つ作られていたようで、恐らく本社との情報共有くらいの役割しか担っていなかったのでは、と思う次第です。経験上ですが(※)、直轄の現地法人であっても本社に自動的に情報が入るとはを限りません。必ず、どの情報をどの様に誰に伝えるか選択されます。世界のPWR特許の4割を抑えている名門WECが、買収されたからといって、真っ正直にタイムリーに報告しようとするでしょうか。コーディネーションオフィスをおいたぐらいでは、恙無い情報共有とは至らないはずです。ましてガバナンスを利かせるという点においては、いうに及ばずです。
※:東芝での勤務経験はございません。悪しからず。
⑤ふりかえり
 買収時における失敗要因は、以下に集約されるのではないでしょうか。
  1.買収額が高すぎた
  2.買収後のビジョン共有ができていなかった
  3.Westinghouseの信頼獲得に失敗した

*2-3:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50896 (週刊現代 2017.2.7 抜粋)銀行・生保・商社・自動車…これから始まる一流企業「大合併」、人口減少社会で生き残るために
 「勝者総取り」の時代だ。ごく一部の企業だけが突出して成長して輝く一方で、大多数は無残に死んでいく。勝ち残るためにはライバルとも手を組む。経営者たちはもう動き出している。
●「メガ合併」の衝撃
 みずほフィナンシャルグループ(FG)と三井住友トラスト・ホールディングス(HD)が、傘下の資産管理銀行を統合すると報じられてから約2週間。いまだ銀行業界では、この統合劇による衝撃の余波が収まらない。今回の統合は、コストやシステム運営費を減らしたいという思惑が一致したライバル同士が手を組んだもの――。新聞やテレビではそんな経済解説がなされているが、銀行業界のインナーたちはまったく違った視点からこの統合劇を眺め、戦々恐々としている。「現在、日本の銀行業界は青息吐息の経営を強いられています。ただでさえ人口減少で経済のパイが縮小して利ザヤを稼ぎづらくなっている中、日本銀行がマイナス金利政策を導入したことでトンネルの先がまったく見通せない状況に追い込まれている。そうした中で、今回の統合話が急浮上してきたことの意味は何かと言えば、メガバンクですら生き残るためには手段を選んでいられず、系列を超えた金融再編が一気に幕を開ける可能性が出てきたということです。すでに日本の銀行界では、'90年代後半から'00年代前半にかけて、不良債権問題から経営破綻、経営危機が勃発し、現在の3メガに集約された経緯があります。あれから10年以上が経ち、この体制すら維持するのが厳しくなってきた。ここからは、生き残りをかけた大合併劇が起こり得る」(元日本興業銀行金融法人部長で経済評論家の山元博孝氏)。そんな金融再編の「目玉」として銀行界で噂になっているのが、みずほと三井住友FGの「メガ合併」という驚愕のシナリオである。順を追って説明すると、まず今回はみずほが出資する資産管理サービス信託銀行と、三井住友トラストが出資する日本トラスティ・サービス信託銀行の統合だが、その先にはみずほFGと三井住友トラストHD同士が一緒になる可能性がある。みずほ幹部が、「確かにそれは検討されている」として内情を明かす。「現在のみずほFGの佐藤康博社長は、信託銀行部門を強化したいという想いが強い。信託銀行は普通の銀行と違い不動産業ができるため、低金利時代にあって高い仲介手数料を稼げる絶好のビジネスになるからです。佐藤社長は、みずほ銀行とみずほ信託銀行を統合させて、全国の支店で不動産業を展開させる壮大な構想まで考えていた。みずほ信託銀行が三井住友トラストHD傘下の三井住友信託銀行と一緒になれれば、まさにその強力な一手となり得る」。三井住友トラストも、「みずほと近づくメリットは大きい」と、三井住友グループ幹部は言う。「三井住友FGが同じ金融グループ内で自分たちを格下として見るのが気に入らないし、仮に統合となれば経営の主導権を握られるのは目に見えている。そのため、三井住友銀行の國部毅頭取と三井住友信託銀行の常陰均社長は表向き良好な関係だが、水面下での駆け引きは激しくなっている。その点、みずほ相手であれば、交渉次第では『対等合併』という形に持ち込める」。次に、両社がそうして蜜月を深めるほど、三井住友FGとしては黙ってはいられなくなる。三井住友は昨年度にみずほの後塵を拝して業界3位に転落しており、みずほと三井住友トラストが統合すれば、その差は広がるばかりだからである。「そこでいま業界内で語られているのが、三井住友と大和証券グループ本社の『復縁話』です」と、銀行業界を長く取材する金融専門記者は言う。

*2-4: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181123&ng=DGKKZO38122570S8A121C1EA2000 (日経新聞 2018.11.23) 「経営者ゴーン」の功罪
 カルロス・ゴーン元会長の「犯罪」に注目が集まっているが、ここでは事件からあえて距離を置き、企業のトップリーダーとしてのゴーン元会長の功罪を分析してみる。ゴーン元会長の日本での歩みの中で最大の衝撃をもたらしたのは、日産に赴任直後の1999年10月に発表した「日産リバイバルプラン(NRP)」だ。当時の日産は業績が長期にわたって低迷し、売れ筋の車にも乏しく、自動車業界でも「終わった会社」と突き放す見方が多かった。その危機を救ったのが仏ルノーから送り込まれたゴーン元会長の聖域なき改革であり、その基本設計であるNRPだ。ほぼ手つかずだった工場閉鎖や人員削減、「系列破壊」とまでいわれた調達改革を断行し、長年の非効率にメスを入れた。影響は自動車だけでなく、隣接産業にも波及した。川崎製鉄とNKKの統合など鉄鋼再編が加速したのは、ゴーン改革による調達先の絞り込みが直接の引き金だった。こうした改革の結果、日産はV字回復を果たした。「業績が悪くなったのはしがらみを断ち切れなかった経営のせいで、開発や生産などの車づくりの実力まで落ちていたわけではなかった。ゴーンさんは私たちにそれを気づかせてくれた」と日産社員は振り返る。自信回復の波は他の日本企業にも広がった。2000年ごろのいわゆるITバブルの崩壊で業績が悪化したのを機に、松下電器産業(現パナソニック)やコマツは事業や関連会社を思い切って整理し、業績を立て直した。一時的な痛みは覚悟のうえでウミを出し、心機一転、再出発する――。基本的な発想はゴーン改革と同じであり、そこから学ぶことも多かったのだろう。コマツの再生を主導した坂根正弘元社長は「ゴーンさんは常に意識する存在だった」と述べたことがある。今から振り返れば、ゴーン元会長が日産の経営に専念していた05年までが最も輝いていた時期かもしれない。ルノーと日産の両社のトップを兼ねるようになって以降はやや精彩を欠いた。中国への積極投資や三菱自動車への出資などで日産・ルノー連合の規模はトヨタ自動車と肩を並べるまでに巨大化したが、収益性やエコカーの技術力などもろもろひっくるめた会社の総合力ではまだまだ差が大きいのではないか。「コミットメント(必達目標)」はゴーン経営の代名詞にもなったが、実は最近の中期経営計画はほとんど未達に終わっている。17年3月期までの6年間の計画「日産パワー88」は期間中に電気自動車を150万台売るという目標を掲げたが、実績は30万台前後にとどまった。目標と結果がここまで乖離(かいり)するのは、そもそも計画を策定する側が市場の実態をきちんと把握できていないか、販売や開発の前線の士気がよほど低下しているのか。いずれにしても、会社が重大な問題を抱えているというシグナルに違いないが、そこに日産経営陣が機敏に手を打つ気配は感じられなかった。過去19年でカリスマ経営者は何を残したか、その歴史的評価が定まるのはゴーン元会長が去ったこれからかもしれない。

<暖簾の会計処理>
*3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35330630T10C18A9MM8000/ (日経新聞 2018/9/13) M&A「のれん」費用計上の義務化検討 国際会計基準、見直し、21年にも結論
 国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、企業買収を巡る会計処理の見直しに着手したことが明らかになった。買収代金のうち相手企業の純資産を超えて支払った「のれん」と呼ぶ部分について、費用計上義務付けの議論を始め、2021年にも結論を出す。大型のM&A(合併・買収)が相次ぎ、企業財務への影響が強まっていることを考慮した。欧州中心に広がるIFRS採用企業には業績の下押し要因となる。IASBのハンス・フーガーホースト議長が日本経済新聞の取材で明らかにした。のれんは買収先企業のブランド力などの対価と解釈され、買い手企業が資産計上する。日本の会計基準では最長20年で償却し、費用として処理していく。IFRSではのれんの償却は不要な一方、買収先企業の財務が悪化した際などにのれんの価値を一気に引き下げる減損損失の計上を求める。巨額の減損損失を突然公表するケースもあり、投資家から分かりにくさを指摘されてきた。フーガーホースト議長は減損損失を巡る企業の判断が「楽観的になりやすい」うえ、計上のタイミングも「遅すぎる」と指摘した。IASB内でも以前からのれんの会計処理を巡る問題が意識されてきたものの、これまでは現状維持派が優勢で議論を始めてこなかった。しかし、議長の意向などを踏まえ、議論を始めると7月に正式に決定。今後、規制当局など利害関係者から意見を集めたうえで、のれんの償却を義務付けるかどうか判断する。企業業績への影響は大きい。IFRSは欧州を中心にアジアなど120以上の国・地域に広がる。日本では武田薬品工業、三菱重工業、ソフトバンクグループなどが導入している。IFRS採用企業には大型M&Aを実施するケースも目立つ。17年度時点で国内IFRS導入企業(約160社)は約14兆円、欧州の主要600社は240兆円ののれんを抱える。仮に20年間の定期償却が導入されると、日欧合計で年間13兆円の減益要因が生じる計算になる。中国では主要100社で約10兆円ののれんがある。中国の会計基準はIFRSとの互換性を重視しており、今後、対応を迫られる可能性がある。大型M&Aが活発な米国ではのれんは主要500社で340兆円にのぼる。米国会計基準ではのれんの償却は不要。ただ、世界の主流になりつつあるIFRSが変更されれば、米国でも見直し議論が出そうだ。のれんの償却は企業財務の予見性を高め、投資家のメリットとなる。その半面、M&Aのコストを増やし、企業活動を阻害するとの反対論も根強い。IFRSの見直し議論も今後、曲折が予想される。

<ゴーン氏逮捕事件と日本の刑事司法手続き>
PS(2018年12月5、7日追加):ゴーン氏が役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件に関して、側近だったケリー氏は、*4-1のように、「退任後の支払いのうち隠したとされる分は、前会長の秘書室が開示義務はないと外部に確認した」と供述しておられるそうだが、有価証券報告書の記載事項について疑問がある時は、外部監査人や金融庁に確認をとり、根回しをしておくのが普通であるため、こちらが事実だと考える。
 もし退職金でなく、コンサルタント料であったとすれば、コンサルタントとしての役務提供を行うか否かによって契約が実行されるかどうかは変化するが、60代で退任するゴーン氏なら、退任後にコンサルタントとして有益な役務提供ができると考えても決しておかしくない(日本には、顧問として残っている元役員も多い)。
 なお、*4-2のように、ゴーン氏逮捕事件は、日本の刑事司法に世界の目を向けさせ、長く是正されてこなかった問題点をあらためて浮き彫りにしているが、これこそ人権を重視する時代に合わせて改革すべきである。そうでないと、危なくていっていられないからだ。
 また、2018年12月7日、日経新聞は社説で、*4-3のように、「①ゴーン氏事件で、海外から日本の捜査手法や刑事手続きに対する批判が相次いでいるので、見直すべき点は検討課題とすべき」としながらも、「②司法制度や司法文化の違いを無視した単純比較や、誤解、思い込みも目立つ」「③一方的な批判を放置すれば、刑事司法に対する国民の信頼を損ない、国際的な日本のイメージが傷つく」「④証拠のあれこれではなく、明示されたルール、裁判所の関与、人権への一定の配慮の仕組みを伝えればいい」「⑤フランスでは警察による勾留は原則24時間にとどまるが、予審の段階で最長4年に及ぶ勾留が認められる」「⑥欧米では捜査側に幅広い通信傍受や司法取引、おとり捜査といった強い権限が与えられるので、容疑者に弁護士の立ち会いを認めている」「⑦日本では捜査手法は限定しており、取り調べに比重を置いて弁護士立ち会いを認めずに供述を引き出すやり方を採用してきた」などと記載している。
 しかし、④のような高飛車な言い方をするのなら、①は枕詞にすぎないだろう。そして、③を防止するため、法務省・最高裁は制度の違いを丁寧に説明して正しく反論する姿勢が求められるとしているが、②のように、文化や制度が違うから問題なのではなく、有罪と決まってもいない人を生活環境の悪い拘置所に長期間拘留し、弁護士もつけずに自白に導く手法が拷問に近く、これは日本人に対してでも人権侵害なのである。さらに、④の「罪状や証拠は関係ない」「明示されたルール・裁判所の関与・人権への一定の配慮の仕組みを伝えればいい」などとするのは、その制度そのものを問題にしている時に、思考停止だ。私は、⑤のフランスの仕組がどうかは知らないが、ゴーン氏のような司法取引で最初から事実が確認されている“罪”なら24時間の勾留で終わる筈だし、容疑者に弁護士の立ち会いを認めるのは、⑥⑦のような捜査手法とは全く関係なく、司法に詳しくない一般人の人権を守るためだということを忘れていると思う。

*4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13798329.html (朝日新聞 2018年12月5日) 「開示義務ない、秘書室が確認」 ゴーン前会長側近
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が巨額の役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、側近の前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)が、退任後の支払いにして隠したとされる分について「前会長の秘書室が開示義務はないと外部に確認した」と供述していることがわかった。相談した外部の弁護士や会計士の事務所名も具体的に挙げているという。違法性の認識をめぐる、東京地検特捜部との対立が鮮明になった。特捜部は2人を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕。2010~17年度の8年間の年間報酬は各約20億円だったが、各約10億円は退任後の支払いにして計約90億円を隠蔽(いんぺい)し、退任後はコンサルタント料などの別名目に紛れ込ませて支出する計画だったとみている。一方、関係者によると、ケリー前代表取締役は、前会長の退任後の処遇をめぐる計画は、役員報酬とは無関係だと主張。前会長の秘書室に指示して会計事務所などに法的な問題点を問い合わせたとし、「取締役として各年度に行った職務への報酬ではなく、開示義務はないと確認した」「日産として確認したということだ」と強調しているという。特捜部が有力な証拠とみる関連書類についても、「前会長に見せる時は『退任後の支払いを確約するものではない』と何度も言っていた」と説明しているという。

*4-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20181203/KT181130ETI090020000.php (信濃毎日新聞 2018年12月3日) 刑事手続き 不備を見直す機会に
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が逮捕された事件は日本の刑事司法手続きにも世界の目を向けさせた。長く是正されてこなかった問題点があらためて浮き彫りになっている。一つは、捜査当局が被疑者を取り調べる際の弁護士の立ち会いだ。日本の刑事訴訟法は、立ち会わせる権利を明記していない。一方、欧米をはじめ各国が立ち会いを認めている。米国では、1966年の連邦最高裁の判決に基づき、被疑者が権利を放棄しない限り、立ち会わせるルールが確立された。欧州連合(EU)は、権利として保障することを加盟国に義務づけている。取調官が密室で被疑者に自白を迫る捜査手法は、冤罪(えんざい)を生む温床となってきた。弁護士の立ち会いは、取り調べの可視化(録音・録画)と並んで、その弊害を防ぎ、人権を守る手だてである。一昨年の刑訴法改正で、可視化は実現したが、裁判員裁判の対象となる事件などごく一部に限定された上、幅広い例外規定が設けられた。弁護士の立ち会いは、法制審議会の議論の過程で抜け落ち、制度化は見送られた。供述が得にくくなり、真実の解明を妨げる、といった捜査側の主張が背景にある。密室での不当な取り調べを防ぐには、可視化の範囲を広げて事後の検証を可能にするとともに、弁護士の立ち会いを認めることが欠かせない。もう一つの問題点は、否認している容疑者の身柄拘束を長引かせる「人質司法」だ。精神的、肉体的に追いつめて自白を迫るために使われてきた実態がある。裁判所が勾留を認めれば、逮捕してから最長で20日余の拘束が可能だ。ゴーン容疑者も12月10日まで勾留が延長された。検察の勾留請求を裁判所が退ける例が以前より増えたとはいうものの、全体の5%に満たない。起訴されると、拘束はさらに続く。2009年の郵便不正事件で、厚生労働省の局長だった村木厚子さんの勾留は160日余に及んだ。後に無罪が確定している。長く拘束されれば、社会的にも大きな不利益を被る。仕事を失う場合もある。虚偽の自白を強いて冤罪を招けば、取り返しがつかない。否認しているからと不公正な扱いをすることは許されない。憲法は、適正な刑事手続きの保障を重んじ、詳細な定めを置いている。刑事司法制度の現状はそれを踏まえたものになっているか。あらためて見つめ直し、社会に議論を広げる機会にしたい。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181207&ng=DGKKZO38655270X01C18A2EA1000 (日経新聞社説 2018年12月7日) 海外からの捜査批判に説明を
 有価証券報告書に虚偽の記載をした疑いで日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が逮捕された事件で、海外から日本の捜査手法や刑事手続きに対する批判が相次いでいる。こうした指摘に真摯に耳を傾け、見直すべき点があれば検討課題としていくことは当然だ。ただ、日本と欧米とでは刑事司法全体の仕組みが大きく異なる。一連の批判の中には、司法制度や司法文化の違いを無視した単純な比較や、誤解、思い込みによる主張も目立つ。一方的な批判を放置すれば、刑事司法に対する国民の信頼を損なうとともに、国際的な日本のイメージが傷つくことになりかねない。法務省や最高裁には制度の違いなどをていねいに説明し、正しく反論する姿勢が求められる。必要なのは事件の証拠のあれこれではない。明示されたルール、裁判所の関与、人権への一定の配慮。こうした仕組みを堂々と伝えればいい。「公判で明らかにする」「捜査のことは答えない」だけで済む時代は終わっている。海外からの代表的な批判に、容疑者の勾留期間の長さがある。東京地検特捜部による捜査では、地検が48時間、その後は裁判所の判断で通常20日間、身柄が拘束される。一方、フランスでは警察による勾留は原則24時間にとどまる。だがその後、日本にはない制度である「予審」の段階で最長4年に及ぶ勾留が認められている。欧米では捜査側に幅広い通信傍受や司法取引、おとり捜査といった強い権限が与えられている。これに対抗する形で取り調べの際、容疑者に認めているのが弁護士の立ち会いだ。日本では捜査手法は限定して取り調べに比重を置き、弁護士立ち会いを認めずに供述を引き出すやり方を採用してきた。そうした手法が、容疑を認めなければ保釈されない「人質司法」へつながるなど負の側面も持っていることは否定できない。ゴーン事件で相次いだ批判を、日本に適したよりよい刑事司法制度を考えるためのきっかけにしたい。

<日本のガラパゴス世論は世界で拒否されること>
PS(2018年12月6日追加): 「パナマ文書」を挙げ、*5のように、タックスヘイブンを利用して各国首脳や富裕層が節税していることを、すべて脱税や資金洗浄などの犯罪に当たるかのように、日本の全メディアが批判し報道した時期があった。しかし、タックスヘイブンとは、法人税・源泉税などが低い国・地域で、それぞれの国が理由があって決定している法定税率である上、日本も租税条約に調印しているので、タックスヘイブンを利用すること自体を批判するのは的外れである。もし、脱税や犯罪組織の資金洗浄等に使われていれば、それを罪として起訴するのは妥当だが、全てのタックスヘイブン利用事例が脱税や犯罪組織の資金洗浄に結びついているかのような批判をするのは、タックスヘイブンを持っている国やタックスヘイブンを利用している人・法人の全てに対して失礼であり、誹謗中傷・侮辱による実害を与えているケースもある。特に、各国首脳に対して無知で的外れた批判をしていると、日本の外交上の不利益となる上、行き過ぎれば日本をまた孤立に追い込むことになるので注意すべきだ。

*5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13799967.html (朝日新聞 2018年12月6日) 「パナマ文書」、米で初の起訴 弁護士・顧客ら、脱税・資金洗浄の罪
 タックスヘイブン(租税回避地)を利用した各国首脳や富裕層の実態を暴いた「パナマ文書」に関連し、米司法省は4日、文書が流出したパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の弁護士や顧客ら4人を、脱税や資金洗浄の罪で起訴したと発表した。文書を巡る米国での訴追は初めて。起訴されたのは、同事務所の弁護士でパナマ国籍のラムセス・オーウェンズ被告(50)、顧客でドイツ国籍のハラルド・フォン・デア・ゴルツ被告(81)ら。発表によると、オーウェンズ被告らは2000~17年ごろ、パナマや香港で設立したペーパーカンパニーや架空の基金を使って、複数の顧客について米国での脱税や資金洗浄を行ったとされる。また、フォン・デア・ゴルツ被告は米国在住で納税義務があったにもかかわらず、自身などが設立したペーパーカンパニーを国外の母名義と偽り、脱税に使ったとされる。オーウェンズ被告は逃亡中という。米司法省は今回の起訴について、「国境を越えて行われる金融犯罪や脱税を立件するという、我々の決意を示している」との声明を発表した。パナマ文書の実態は、16年4月に「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」が報道し、アイスランドとパキスタンの首相が辞任した。パナマ当局は17年2月、同事務所の創業者2人を資金洗浄の容疑で逮捕。同事務所は今年3月末に閉鎖した。

<入管難民法改正と外国人労働者の受入拡大>
PS(2018年12月7、10日追加):*6-1、*6-2のように、入管難民法が国会を通過し、トランプ大統領の移民政策を批判しながら日本では認めていなかった外国人労働者の“単純労働分野”への就労を認めることになったのは、一歩前進だ。もちろん、受入規模など確定していないことは多いが、市場経済の下で事前に確定するのは無理である。
 また、技能実習生の問題は、外国人労働者に新しい選択肢を用意して技能実習生から移行できるようにしたため、何もしないよりはずっとよいだろう。さらに、首相が「移民政策でない」と言っておられたのは、外国人労働者受入拡大に強く反対する自民党内などの慎重派対策であり、野党が主張するやり方では、技能実習生問題も解決しなかったと思われる。
 今後は、言語・住宅・教育・社会保障等の問題解決が必要だが、全市町村が多言語に対応するのは費用対効果が悪すぎるため、同言語の人に集って住んでもらう方向で住宅を整備し、教育・社会保障は不公正・不公平のないようにすべきと考える。また、人手不足で外国人労働者の受け入れを積極的に行いたい市町村はそれを実行して共生するようにし、従来の住民だけでやりたい市町村はそうすればよい。しかし、市町村に選択の余地ができたので、まずは市町村が総合計画を作って、それに基づいて外国人労働者を受け入れ、必要な支援を国に要請すれば、あまり混乱なく結果が出ると思う。
 入管難民法が国会を通過したことについて、日本農業新聞は、*6-3のように、「①特定技能1号の創設が柱で、これは家族の呼び寄せを認めない」「②1号より高度な技能試験に合格すれば特定技能2号になれ、在留期間に上限がなく家族を呼び寄せられる」「③政府は農業では2号の人材を求める要望はないとして当面1号の受け入れに限り、人材派遣業者が雇用契約を結んで複数農家に派遣する形態も認める」としている。①②は、状況を見ながら判断していくことになるだろうが、③は農業では必要であり、この仕組みは外国人に限らず日本人にも有効だ。また、遺伝資源の海外流出は、技能実習生に技術移転すれば当然のこととなり、技術移転をやめ知的財産権の保護意識を高めれば解決する。
 また、西日本新聞は、*6-4のように、「九州・沖縄と山口の9県計293市町村のうち4割超の128自治体で、①高齢化 ②人口減少に伴う他産業の雇用減により、介護サービスなど医療・福祉業が雇用の最大の受け皿になった」としている。①は、今後、日本全国で次第に起こることだが、②の人口が減少したから他産業で雇用が減少するというのは、モノやサービスの需要内容が変化するだけで、輸出も可能であるため、短絡的過ぎると思う。
 なお、内閣府の高齢社会白書によると、2017年の高齢化率は、沖縄・福岡以外の7県で29.2〜33.4%と全国(27.7%)を上回り、2045年には9県とも6.3〜10.4ポイント上昇する見通しだそうで、医療・福祉分野は人手不足で、入管難民法改正による外国人労働者の受け入れ拡大では介護業も対象になったが、外国人労働者を含めた人材確保に加え、機械化による生産性向上や高齢者が暮らしやすくなる仕組み作り などが不可欠であることは間違いない。

  
  2018.11.29新潟日報  2018.12.8東京新聞 2018.12.1西日本新聞(*6-4より)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181208&ng=DGKKZO38698860X01C18A2EA2000 (日経新聞 2018年12月8日) 「選ばれる国」へ制度設計、外国人受け入れ5年最大34万人 生活支援や待遇、政省令に先送り
 外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案は日本社会のあり方を変える。政府は28日に具体的な対策をまとめ、2019年4月の制度開始へ準備を加速する。「選ばれる国」へ外国人労働者への生活支援、待遇の改善を急ぐ。「選ばれる国」へ日本の賃金水準がアジアの外国人労働者にとって魅力的に映るのか。新制度の対象となるのは比較的低賃金の職種が多い。中国やタイでも少子高齢化や労働力不足が進み、アジアのなかでも人材獲得競争は激しくなる。日本の賃金水準はライバルとなるアジア諸国に比べ突出して高いとは言えない。日本貿易振興機構(JETRO)の17年度の調査によると、一般工の賃金は東京で月額2406ドル。香港は1992ドル、シンガポールは1630ドルと日本に迫る。政府は外国人労働者の賃金水準について「日本人と同等以上」を支払うように求める。外国人労働者が増えることで日本人の賃金水準も下がるのではないかとの懸念は根強い。人手不足が深刻な地方ではなく、賃金水準が高い首都圏など都市部に外国人が集まるとの予測がある。制度は法律ではなく、政省令で決めるものが多い。今後5年間の受け入れ見込み数を分野別の運用方針で示す。どのくらいの外国人を受け入れるかが分からなければ、企業は対応しづらい。法務省は11月、新たに外国人労働者を受け入れる14業種を所管する省庁が推計した受け入れ見込み数を国会に提示した。現時点で5年後に14業種合計で145万5千人の人手が不足すると仮定し、19年4月から5年間で最大34万5150人を受け入れる見通しだ。山下貴司法相は「この数字を上回ることはない」と説明した。上限は外国人労働者が急増した場合、受け入れ停止を判断する基準になる。各業界を所管する閣僚が受け入れ上限に近づいた際に法相に停止の判断を求める仕組みだ。上限は各業界が外国人を採用する目安になる。日本で暮らす外国人が増えれば、様々な問題が生じる。住居の契約に伴う手続きやゴミ出しのルールなど日本の習慣に外国人は戸惑う。ドイツのように欧州では外国人の急増が国内政治を揺るがした例もある。外国人にとって特に高いのが日本語の壁だ。行政手続きに多言語対応は欠かせない。銀行口座の開設や転居に伴う手続きにも多言語が必要だ。日本語教育や行政窓口の設置など地方自治体が実務の大部分を担う。熟練した技能が必要で在留資格の更新と家族帯同が可能な「特定技能2号」を巡っては試験の制度設計も課題だ。資格を得るのに十分な能力があるか判断する試験は細部を詰め切れていない。日本で働く外国人は日本人と同様に公的年金の保険料などが給与から天引きされる。保険料の払い損になる恐れがある。厚生労働省は健康保険に外国人労働者の扶養家族に居住要件を求める法改正を検討中だ。新設する「特定技能」を取得する外国人労働者の大半は現行の技能実習生から移る。技能実習制度を巡って最低賃金を下回る低賃金や違法な長時間労働、パワハラの問題も明らかになっている。参院法務委員会で立憲民主党の有田芳生氏は15~17年の3年間で技能実習生69人が自殺や実習中の事故に巻き込まれて亡くなったと追及した。日本に来る前に母国で多額の保証金を払わせる悪質ブローカー(仲介業者)も存在する。法務省は悪質業者を排除するため、多額の保証金を払っていないか事前に確認すると省令に記す。法務省は実態調査の結果を来年3月末に公表する。大島理森衆院議長は改正法が施行する前に運用方針や政省令の内容を国会に報告するよう要求。安倍晋三首相は施行前に制度の全容を国会に示すと明言した。

*6-2:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20181208_4.html (京都新聞社説 2018年12月8日) 改正入管難民法  議論は尽くせていない
 入管難民法などの改正案を巡る国会審議が大詰めを迎えた。これまで原則認めてこなかった外国人労働者の単純労働分野への就労を認めるものだ。高度な専門人材に限っていた政策の転換であり、社会を変える可能性がある。だが議論は全く深まりを欠いた。採決を押し切ろうとした政府与党の国会軽視の姿勢は容認できない。受け入れの規模や対象業種をどうするのか。必要な技能や運用の詳細は不明確だ。次々と明るみになった技能実習生の実態も含め、外国人労働者問題の論点を掘り下げたとは言い難い。大島理森衆院議長は与野党へ異例の裁定を行い、来年4月の改正法施行前に政省令を含めた法制度の全体像を国会に報告させるとした。政府与党のまずい国会運営に対し、立法府の長が注文をつけた形だ。だが、本来は制度の全体像こそ国会で審議すべきではなかったか。外国人労働者を受け入れた後の議論は全くできていない。権利をどう保障するかや日本人と地域で共生する仕組みなど、幅広い分野での検討が早急に求められる。その「司令塔」となるのは法務省に新設される出入国在留管理庁とされる。新在留資格の創設に伴い増加する外国人の管理や、雇用する企業などへの監視を行うほか、共生に向けた受け入れ環境整備も担うという。だが、日本語教育や住宅確保など担当する領域は広い。同庁だけで対応できるのか疑問だ。関係省庁との連携と情報共有が欠かせない。健康保険や年金など社会保障制度の準備も遅れている。教育や医療、福祉など身近なサービスを提供する自治体の役割が一層重要となる。言葉の壁や生活習慣の違いもあり、現在はボランティアや市民団体の活動に頼っているのが現実だ。マンパワーも不足しており、負担も重くなるため国の支援が不可欠である。総務省によると、今年4月時点で外国人住民向けの指針や計画を策定している自治体は46%にとどまる。住民に占める外国人の割合は地域差が大きく、地域の実情にあった支援態勢が欠かせない。官民挙げて整えていくべきだ。政府は年内に受け入れ環境の整備に関する総合対策を取りまとめる方針だが、改正法施行まで残された時間は少ない。働く外国人の生活と人権を守る視点で制度を改善していく必要がある。来月召集予定の通常国会でも引き続き議論を深めていかねばならない。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p46078.html (日本農業新聞 2018年12月9日) 改正入管法が成立 4月施行 外国人就労 農業も
 外国人労働者の受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法が8日、参院本会議で可決、成立した。3年間の技能実習の修了者ら一定の技能を持つ外国人が、通算5年を上限に日本で働ける在留資格「特定技能1号」の創設が柱。農業など14業種を受け入れ対象にし、来年4月に施行する。労働現場への就労を本格的に外国人に開放し、受け入れ施策の大転換となる。今後、業種ごとの具体的な制度設計が焦点となる。国会審議では「失踪や死亡などが相次ぐ技能実習制度の課題解決が先決だ」と一部野党が訴え、法改正に反対。与党側が押し切る形になった。改正法では、1号よりも高度な技能を問う試験に合格した外国人に対象とした特定技能「2号」も創設。在留期間に上限はなく、家族も呼び寄せられる。1号は基本的に家族の呼び寄せは認めない。政府は農業では2号の人材を求める具体的な要望はないとして、当面1号の受け入れに限る。外国人は受け入れ経営体が直接雇用契約を結ぶのが原則だが、政府は、農業では人材派遣業者が雇用契約を結び、複数農家に派遣する形態も認める方針。農業は繁忙期と農閑期の差が激しく、個別では周年雇用が難しい面があることに考慮する。業種ごと具体的な制度設計は、所管省庁を中心に今後定める業種別受け入れ方針で明確化する。政府は、同方針を含む制度の全容を法施行前に示す方針。来年の通常国会で議論になる見通しだ。農業では同一外国人を複数産地で連携して受け入れられるか、和牛精液など遺伝資源の海外流出の懸念がある肉牛経営での受け入れはどうするのかなど、不明確な点も多い。政府が制度設計で、これらの課題にどう対応するのかが焦点になる。

*6-4:http://qbiz.jp/article/145088/1/ (西日本新聞 2018年12月1日) 老いる九州、雇用「医療・福祉」最多 九経調分析 自治体4割でトップ、変わる受け皿
 九州・沖縄と山口の9県計293市町村のうち4割超の128自治体(2016年)で、医療・福祉業の従業者数が業種別で最多となっていることが、九州経済調査協会の分析で分かった。09年時点では44市町村だったが約3倍に増加。高齢化によるニーズの拡大に加え、人口減少に伴う他産業の雇用減で、介護サービスなど医療・福祉業が雇用の最大の受け皿になっている。九経調が国の経済センサス調査の民間事業所従業者数から算出した。医療・福祉業の従業者が最多を占める県別の自治体数は、福岡28▽佐賀6▽長崎10▽熊本22▽大分8▽宮崎9▽鹿児島21▽沖縄16▽山口8。北九州市や佐賀市、長崎市、熊本市、宮崎市、鹿児島市といった大都市や県庁所在地に加え、人口に占める65歳以上の高齢者の割合(高齢化率)が20%以下と低い福岡県春日市なども含まれる。09年は従業者数トップが製造業の自治体が104、小売業が101だった。16年は製造業が101で微減となる一方、小売業は32に激減。人口減やネットショッピングの普及など流通構造の変化が背景にある。9県全体の医療・福祉従業者は09年比26・7%増の113万4千人となり、伸び率は全産業中で最大。全雇用者数に占める割合も17・3%と09年から3・9ポイント上昇し、小売業を抜いてトップになった。内閣府の高齢社会白書によると17年の高齢化率は、沖縄(21・0%)、福岡(27・1%)以外の7県で29・2〜33・4%と全国(27・7%)を上回っている。45年には9県とも6・3〜10・4ポイント上昇する見通しだ。医療・福祉業は人手不足が特に深刻化しており、政府が今国会の成立を目指す入管難民法改正による外国人労働者の受け入れ拡大では、介護業も対象になる見通し。調査を担当した九経調の渡辺隼矢研究員は「外国人労働者を含めた人材確保に加え、介護用ロボット導入や、医療介護が必要な人を地域全体で支える仕組みづくりが不可欠」と指摘している。

<有価証券報告書における役員報酬の重要性>
PS(2018年12月9、13日追加): 有価証券報告書は、株主や投資家の投資判断に資するために作成するもので、*7-1の「有価証券報告書への役員報酬の“虚偽記載”」は、それが認定されたとしても重要性が低い(仮に重要性が高ければ、監査証明をした監査法人も責任を免れず、監査証明を得ておくことは経営者を守る効果もあるのだ)。また、*7-2で、機関投資家団体のワリング事務局長が述べておられるように、投資家にとっての重要事項は、「利益と配当」「企業価値向上と株価上昇」であるため、役員は、報酬額だけでなく、報酬に見合った能力を有しているかどうかが重要になる。
 しかし、日産は、*7-3のように、4度目の検査不正が明らかになったそうで、これは企業価値を落とすが、日産車が事故を起こしたという話は聞かないため、私には、検収や検査に資格がいるのか、その検査は有用なのかという疑問が残る。また、その理由をリストラによる人員不足だとしている点は、どうも日本的発想すぎておかしい。しかし、このような報道があると、日産の企業価値が落ちるのは確実だ。
 なお、2018年12月13日、*7-4のように、朝日新聞が「政治資金監査制度」で少なくとも23人の国会議員関係政治団体が監査を担当した税理士など監査人から寄付を受けており、「監査人として独立性がない」と問題視している。2007年に導入したこの監査制度も、最初に私が提唱してできたので説明すると、私が考えていたよりもずっと狭くて不十分な形の監査になったため、これは本物の監査とは言えないのだ。本物の監査と言えないポイントは、①「国会議員関係の政治団体のすべての支出をチェックする」と定められているので、収入はチェックしなくてもよい ②独立性の要件に関する規定や指針がない ③監査担当者に監査論を勉強して監査の実務経験を積んだ公認会計士以外(税理士、弁護士)の人を認めている ④公認会計士が本物の監査を行って責任を持てるには、政治資金会計も複式簿記による網羅的で検証可能な通常の会計にする必要があるが、現在は単式簿記による収支のみの記載で不都合な収支は記載しないことも可能であるため、監査をしてもそれを見つけられず、監査人も責任を持ちかねる(これは、政治家も会計担当者の不正をチェックできないということ) などである。政党と政治家の関係は、会社と従業員ではなく任意組合と組合員に近いため、政党が政治家を管理するのは妥当でないと思うが、不十分な監査では主権者に政治資金のありようが正しく開示されず、政治家もいちゃもんから守ってもらえないため、政治資金会計も複式簿記による網羅的で検証可能な通常の会計(市販の会計ソフトを使えるので簡単で安上がりな上、税務事務所に計算を委託することも可能)に変更して正規の監査を行うべきである。これは、国会議員に限らず地方議員も同じだ。

   
   日産リーフ     日産リーフ軽    日産リーフセダン 資源エネルギー庁より

(図の説明:一番右の図のように、太陽光発電とEVを組み合わせれば、脱燃料費・脱排気ガスの究極のエコカーができる。女性は、ガソリン車で走るのが目的ではなく、実用目的で自動車に乗っており、環境には敏感であるため、本来はEVの格好の顧客になる。しかし、安全性に疑問符がつくのはご法度で、さらに日産車のデザインは怖い面構えで角ばっており、スタイルもかっこよくないため、女性を遠ざけている。日産の役員構成を見ると、取締役は全員男性で執行役員47名のうち女性は2名だが、もっと女性の声を反映させ、デザインにはフランスのデザイナーのアドバイスなどを入れて、スマートでかわいいスタイルするとさらに売れると思う。例えば、服はピエールカルダン、靴はフェラガモ、車はニッサンの○○と言われるようにだ)

*7-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120902000132.html (東京新聞 2018年12月9日) 「役員報酬虚偽記載」初の事件化 悪質性、分かれる見解 ゴーン容疑者あす起訴
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が逮捕された事件で、ゴーン容疑者が問われている有価証券報告書への「役員報酬の虚偽記載」は、これまで刑事事件として立件されたケースがない。役員報酬が投資家の判断にどれだけ影響するかは、市場関係者らの間でも見解が分かれている。東京地検特捜部は勾留期限の十日、金融商品取引法違反の罪で起訴する見通しで、今後の司法判断が注目される。「役員報酬は企業の姿勢が顕著に表れる重要事項。額を偽ることは投資家を欺く行為で、許されない」。検察幹部はうその報酬を記載する悪質性を強調する。経営方針や財務状況などさまざまな企業情報が盛り込まれ、有価証券報告書は「年度ごとの成績表」とも評される。ただ、うそを書けばすべて罪に問われるわけではなく、金商法は「重要事項への虚偽記載」を罰すると定めている。何が重要事項に該当するのか、明確な定義はない。ある市場関係者は「投資家の判断を左右する事項すべて」と解説する。これまで罪に問われてきたのは、ライブドア元社長や旧カネボウ経営陣の粉飾決算事件、オリンパス元会長らの損失隠し事件などで、利益や資産などが重要事項とみなされた。役員報酬が刑罰の対象になったケースは、金融庁の担当者も「聞いたことがない」といい、「案件ごとに判断するしかない」とする。実際、役員報酬が重要事項に当たるのか、定まった見解はない。ある投資家は「役員報酬は一応チェックする程度。投資する上で、主な参考情報とすることはない」と言い切る。証券市場に詳しい弁護士も「役員報酬が投資判断に大きな影響を与えるかどうかは疑問だ」と、重要事項との見方に否定的だ。一方で、大和総研の横山淳主任研究員は「正当な理由なくトップが高額な報酬を得ている会社は信頼されない。部下たちが仕事へのやる気を保てているか否かの判断材料にもなる」と重視する。ある市場関係者も「今の時代、投資家はコーポレートガバナンス(企業統治)を注視している。特に経営者の資質、報酬体系には厳しい目が注がれている」と指摘。「今回の事件はリーディングケース。何が重要事項かは、社会のニーズによって変わるのではないか」と語った。

*7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181207&ng=DGKKZO38654510W8A201C1TJ3000 (日経新聞 2018年12月7日) 日本、統治改革の再加速を 日産巡り機関投資家団体提言 ワリング事務局長
 欧米の主要機関投資家で構成する国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)のケリー・ワリング事務局長が、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長逮捕を受け、日本経済新聞に対し「事件をきっかけに日本は企業統治改革を加速させるべきだ」と強調した。具体的には「社外取締役の質の向上」や「独立性の高い指名・報酬委員会の設置」を挙げた。日本のガバナンス改革に影響を与えそうだ。
主な発言は以下の通り。
【日産ショックの教訓】
 日産ほどの大企業が報酬委員会も設けず、報酬の配分が実質的にトップ1人に委ねられていた事実は、世界中の投資家にショックを与えている。日本は安倍晋三政権のもと、2014年から本格的なガバナンス改革が始まった。進捗は順調だったと言えるだろう。しかし、足元では「自分たちはよくやっている」という自己充足感も広がってはいなかっただろうか。その意味で、日産ショックは日本の市場関係者にガバナンス改革の再加速を促す目覚まし音(ウエイクアップ・コール)となったのではないか。
【社外取締役】
 ゴーン元会長逮捕を受け、金融庁にガバナンス改革を提言した。まず、社外取締役だ。人数を増やすだけでなく、経営や金融・財務に通じた人材を多く採用し、取締役会の質を上げる必要がある。経営の専門家が求められる。性別や国籍、年齢で制限しなければ、日本にも社外取締役の候補者はたくさんいる。取締役の教育制度も拡充すべきだ。
【報酬問題】
 監査役会設置会社であっても、上場企業ならば任意で指名・報酬委員会を設置し、トップの選任や役員報酬算定の方法を決めるようにしてほしい。役員報酬の金額の多さだけに目を向けるべきではない。大切なのは企業価値を向上させるために、どんなトップをいかに処遇するかという、透明性の高いルールづくりだ。
【日本への働きかけ】
 日産ショックをきっかけに外国人投資家は日本企業のガバナンスに改めて目を向けるだろう。ICGNは金融庁のほか経団連や東京証券取引所などと意見交換の場を持ち、市場の立場から建設的な提案をしていきたい。2019年7月には東京で年次総会を開く。日本の企業人もお招きしガバナンス改革を話し合いたい。
*ICGN:米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)など米欧の年金基金が1995年に設立。運用総額は34兆ドル(約3800兆円)に達し、世界の株式市場に強い影響力を持つ。ワリング事務局長は日本の金融庁に度々招かれ、企業統治に関する指針づくりを助言している。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181207&ng=DGKKZO38634640W8A201C1EA1000 (日経新聞 2018.12.7) 日産、深まる統治不全 新たな検査不正、ブレーキなど
 日産自動車が新車を出荷する前の完成検査で新たな不正をしていたことが6日、分かった。不正発覚は2017年9月から4回目だ。企業統治(コーポレートガバナンス)の不全やコンプライアンス(法令順守)意識の低さに改善の兆しが見えない。元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の逮捕に新たな不正発覚が追い打ちとなり、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら経営陣への批判がさらに強まりそうだ。今回の不正は、国土交通省が日産の主力工場に立ち入り検査した10月以降、社内調査で見付かった。ブレーキなど複数の項目が対象とみられる。日産は国交省とリコール対応などを協議しており、月内にも詳細を公表する見通しだ。
●防止策を再検証
 日産では完成車の品質検査不正が後を絶たない。17年9月に資格を持たない従業員が完成車の検査をしていたことが発覚した。18年7月には一部の完成車を対象にする抜き取り検査で、燃費・排ガスデータの書き換えや不適切な条件での試験が見つかった。18年9月末には全ての新車を対象にした検査で、決められた試験を省いたことなどが明らかになった。一連の不正はゴーン元会長が仏ルノーから派遣された翌年の00年代以降、常態化していた。不正の背景には「効率性やコスト削減に力点を置くあまり、検査員を十分に配置せず技術員も減らした」(外部の弁護士事務所が9月にまとめた調査報告書)ことがある。国交省は無資格検査を受けて日産に対し、17年9月と18年3月に2度の業務改善指示を出している。再発防止策の進捗を四半期ごとに報告させるほか、重点監視の対象として抜き打ち検査を増やしてきた。日産は9月に再発防止策を盛り込んだ最終報告書を公表し、一連の問題に区切りをつけたはずだった。再発防止策とともに今後6年間で測定装置などに1800億円を投じ、検査部門に670人を採用する計画を打ち出していた。西川社長は9月時点で「できる限り将来の再発防止に努めることが私の仕事だ」と述べた。しかし新たな不正発覚で、再発防止策そのものの再検証は避けられない。
●発覚は4度目
 ゴーン元会長逮捕を受け、日産はガバナンス不全が指摘されている。01年に日産のCEOに就いたゴーン元会長は人事と報酬の両方の決定権を持っていたとされ、絶対的な存在として長期間君臨。独立した社外取締役を主要メンバーにした報酬委員会などの仕組みもなかった。報酬過少記載事件ではゴーン元会長らに加え、法人としての日産の刑事責任も問われる見通しだ。西川社長ら同社の取締役らも虚偽記載という不正を見逃したとして、民事上の責任を追及され、損害賠償を求められかねない。ゴーン元会長逮捕に加えて4度目の検査不正が明らかになったことで、西川社長を含む現経営陣の経営責任を問う声が強まる可能性がある。日産同様に完成検査を巡る不正が相次ぐSUBARU(スバル)では、6月には当時の吉永泰之社長兼CEOが責任を取り、CEO職を返上。代表権のない会長に退くなど経営責任に波及している。「ポスト・ゴーン体制」を担う西川社長には、経営トップとしての説明責任が求められる。

*7-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13809380.html (朝日新聞 2018年12月13日) 23議員の政治団体、監査人から寄付 公正さ、疑問の声 17年収支報告書
 国会議員の政治資金の支出を第三者がチェックする「政治資金監査制度」で、少なくとも23人の国会議員の関係政治団体が、監査を担当した税理士などの監査人から寄付を受けていたことがわかった。外部性の確保が求められる監査を支援者にまかせていた形になり、専門家からは「公正ではない」と疑問視する声もある。11月30日までに全国で公表された2017年の政治資金収支報告書を分析したところ、23の国会議員関係政治団体に対し、それぞれを監査する監査人が1万~40万円を寄付していた。総額は約340万円だった。総務省によると、監査制度は、不適正な支出が疑われた閣僚の事務所費問題などをきっかけに、07年の政治資金規正法の改正で導入された。公認会計士や税理士など「外部性を有する第三者」が、国会議員関係政治団体のすべての支出をチェックすると定められた。監査人は「監査の対象となる国会議員関係政治団体との間に密接な身分関係を有してはならない」とされ、対象の政治団体の役職員や議員の配偶者が務めることはできない。ただし、監査人が団体側に寄付することは禁止されていない。政治資金規正法に詳しい富崎隆・駒沢大教授(政治学)は「監査は利害関係のない人が行うのが前提で、政治家を支援している寄付者がするのはおかしい」と指摘する。「公正な収支報告書を有権者が見られるようにすることが重要で、各団体が監査人の選定や費用負担などに難しい面があるなら政党が責任を持つべきだ」と話す。

<退職金・退職年金の認識時期>
PS(2018年12月14日追加):*8-1のように、今回のゴーンさん逮捕事件はルノーと日産の組織再編に端を発したものだが、市場経済の中での経済闘争に微“罪”で刑事を介入させるのは、人権侵害である上、公正ではない。そのため、「権力闘争になれば、われわれは大砲を持ち出し、ルノーに対して日産への出資比率を上げるよう要請する用意がある」という仏政府幹部の言葉は理解できる。また、*8-2のように、米ウォールストリート・ジャーナルは、ゴーン氏は米国での販売不振や度重なる検査不正をめぐり、西川社長の解任と経営陣の刷新の考えを一部の役員に伝えていたとも報じている(西川社長は否定)。
 なお、ゴーンさん逮捕の根拠について、東京地検特捜部は確定債務だったか否かを論点とし、*8-3のように「日産の取締役会で決定され、文書化されているから確定債務だ」とか、*8-4のように「文書に報酬額が1円単位で書かれていたから確定債務だ」などとして、有価証券報告書への役員報酬の過少記載による金商法違反と結論づけている。しかし、*9の企業年金も、給付額は個人毎に債務が確定しており、企業は掛金の拠出時に費用計上するが、受取人の所得となるのは退職後にその年金をもらった時であり、認識時期にずれがある。また、企業は、現在価値に割り引いて掛け金を拠出するため、1円単位になるのが普通だ。
 さらに、*8-3には、役員報酬の決定をゴーン氏に一任することは取締役会で2年ごとに諮られ、決定事項として文書に残されていたと書かれているため、役員報酬の決定は、ゴーン氏の独断ではなく取締役会の承認済である。「実は異論は言えなかった」と弁解する取締役がいれば、その人は取締役としての任務を怠っていたので、報酬を払う価値がなかったということになる。さらに、違法行為があれば、監査役は是正しなければならず、言えなかったという弁解は通用しない。つまり、「確定債務だから、その期の報酬だ」という結論が誤りなのである。
 そのような中、*8-5のように、12月10日午後、東京地検特捜部はゴーン氏、ケリー氏及び日産を金商法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴したが、本来は裁判所が即時棄却しなければならない。しかし、法学系の人は会計に疎く、殆ど全員が退職給付の会計と税務を理解しておらず、「自分が黒と言えば白でも黒になる」「特捜が起訴した以上は、(人権よりも)司法のメンツと信用が大切」などと思っているため、結論が危ぶまれるわけだ。そして、*8-6のように、罪状が確定していない人を長期間拘留して自白を促すのは人権侵害だ。
 なお、*8-7のように、日産は、不記載報酬を一括処理して今期決算で計上するそうだが、私は日産退職後に支払う報酬であるため、退職慰労金として一括処理するのが正しいと考える。また、日産はゴーン氏と同社が有価証券報告書に虚偽記載したため「内部統制報告書」の訂正も検討するそうだが、有価証券報告書と内部統制をチェックしていた監査法人は、どういう見解を持っているのだろうか。重要な虚偽記載なら、「見つけられなかった」では済まないからだ。

*8-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121202000132.html (東京新聞 2018年12月12日) <ゴーン事件の底流>(2)自動車戦争 日仏ぶつかる国益
 「出資比率と統治は現状通りが望ましい。世耕氏と、統治のルールは変わらないことで一致した」十一月二十五日の仏報道番組。仏ルノーと日産自動車、三菱自動車の三社連合について、仏経済・財務相ブルーノ・ルメールは、三日前の経済産業相の世耕弘成(せこうひろしげ)との会談内容をこう説明した。会談は三社の会長だったカルロス・ゴーンの逮捕後、仏側の要請を受け、訪問先のパリで急きょ行われた。世耕はこの発言に強く反発。二十七日の閣議後会見で「日産のガバナンス(統治)に関して、何か他国と約束するようなことは全くない」と否定した。ルノーは日産株の43・4%を保有する筆頭株主で、仏政府はルノー株15%を保有する物言う株主だ。フランスでは、今回の事件をルノーとの関係を対等にしようとする日産側のクーデターとの見方が根強い。仏大統領エマニュエル・マクロンと首相の安倍晋三の首脳会談が行われた十一月末のG20直前、仏経済紙レゼコーは「権力闘争になれば、われわれは大砲を持ち出し、ルノーに対して日産への出資比率を上げるよう要請する用意がある」という仏政府幹部の言葉を紹介した。「大砲」はルノーの大株主としての強力な議決権行使を意味する。マクロンは経済相だった二〇一五年、ルノー株を買い増した上で、二年以上株式を保有する長期株主に一株当たり二票の議決権を認めるフロランジュ法を利用し、日産とルノーの経営統合に動いたこともある。ゴーン逮捕で、再び日仏の国益がぶつかり合うことになる。
◆特捜と連携、官邸は「サポート」
 カルロス・ゴーン逮捕翌日の十一月二十日、日産自動車専務執行役員の川口均が首相官邸を訪れ、官房長官の菅義偉に事件の経緯を説明し謝罪した。川口は「日産とルノーとのアライアンス(提携)の関係でサポートしていただけるとお聞きした」と記者団に語った。一昨年五月の三菱自動車との提携発表前にも官邸で、菅に事前報告していた。仏マクロン政権はルノーと日産の経営を一体化し、日産車の仏国内での生産に意欲的とされる。日産には、独自性が失われ、ルノーにのみこまれていく恐怖感が募る。日産側の動きにも日本政府の影がちらつく。日産のある執行役員はゴーン逮捕後、政府と連絡を取り合っているのかという報道陣の質問に「(政府には)心配いただいている。今回の件だけでなく、フロランジュ法のときも日本政府としての考え方を仏政府に伝えてもらった。国をまたがることなので、いろいろとお話をさせてもらっている」と明かした。検察との司法取引に協力した日産側の弁護士は元東京地検特捜部検事の熊田彰英。安倍政権や自民党の「守護神」とも呼ばれるやり手だ。日産は特捜部とも密に連携。米在住のグレゴリー・ケリーとゴーンが同時に来日するのは珍しく、日産側はゴーンの帰国スケジュールを特捜部に伝えていた。日産の川口は渉外担当が長く、大手企業幹部は「議員会館や霞が関でよく見かける。菅長官は地元が日産本社のある横浜で、事前に相談を受けていても不思議ではない」と推測する。自動車業界に詳しい大手監査法人関係者は、米司法省がカルテル容疑で摘発した日系自動車部品メーカー四十六社と役員三十二人が有罪(五月現在)となったことなどを例に分析する。「国対国の自動車戦争は日米、米独で起きており、それが日仏でも起きたのでは」 

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121002000047.html (東京新聞 2018年12月10日) ゴーン容疑者、西川社長の解任計画か 販売不振など不満
 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は九日、金融商品取引法違反の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が、逮捕前に西川(さいかわ)広人社長の解任を計画していたと報じた。ゴーン容疑者は二〇一七年に日産の社長を退き、西川氏を後継者に指名した。だが、同紙によると、ゴーン容疑者はここ数カ月間、米国での販売不振や度重なる検査不正をめぐり、西川氏の経営手腕に対して不満を募らせていたという。このためゴーン容疑者は一部の役員に経営陣を刷新したいとの考えを伝えており、十一月二十二日の取締役会で西川氏の解任を提案する意向だったという。だが、ゴーン容疑者は同十九日、役員報酬を過少に記載したとして、金融商品取引法違反の疑い(有価証券報告書の虚偽記載)で東京地検特捜部に逮捕され、二十二日の取締役会では自らが会長職を解任された。一方、西川氏はここ数カ月間、内部通報を受けゴーン容疑者の不正について社内調査を行い、検察に情報提供したことを明らかにしており、ゴーン容疑者による西川氏の解任計画とほぼ同じ時期にゴーン容疑者の不正に対する社内調査が進められていたことになる。同紙はゴーン容疑者による西川氏の解任計画を、西川氏自身が知っていたかや、それが逮捕のタイミングに影響したかどうかは分からないとしている。

*8-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13810942.html (朝日新聞 2018年12月14日) 報酬「ゴーン前会長に一任」 日産取締役会で決定、文書化
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、ゴーン前会長に役員報酬の決定を一任することが取締役会で2年ごとに諮られ、決定事項として文書に残されていたことが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部は文書を入手し、報酬額の確定に関する重要な証拠とみている模様だ。ゴーン前会長側は、退任後の支払いにして隠したとされる報酬について、「希望額」で、社内の手続きを経ていないため「確定していない」と反論。これに対して特捜部は、取締役会での一任によって、ゴーン前会長が正式な権限に基づいて支払いを確定していたと立証できるとみている模様だ。関係者によると、取締役の任期(2年)に合わせる形で2年に1回、役員の報酬額はゴーン前会長に一任すると取締役会で決定していた。前会長が社長兼最高経営責任者(CEO)だった時期は「CEOに一任」とし、17年に会長に退くと「会長に一任」と変更された。異論はなく、取締役会の内容は決定事項として文書に残されているという。日産は役員報酬について「取締役会議長」が「代表取締役と協議の上、決定する」と定める。この議長はゴーン前会長で、一任を決めた取締役会には他の代表取締役も出席しているため、特捜部は「協議」を経ていると判断した模様だ。立件対象となった8年間では、西川広人社長兼CEOと志賀俊之取締役が代表取締役の時期もあったが、特捜部は前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)以外は、報酬の後払いを把握していなかったとみている。一方、ゴーン前会長側は、ケリー前代表取締役以外と協議せずに決めたのであれば、社内規定に違反しており、「確定しているとはいえない」と主張している。

*8-4:http://qbiz.jp/article/145494/1/ (西日本新聞 2018年12月10日) ゴーン氏報酬文書、金額1円単位 特捜部、支払い確定の根拠に
 金融商品取引法違反の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が報酬の一部を有価証券報告書に記載せず、受け取りを退任後に先送りする計画を記した文書に、報酬額が1円単位で書かれていたことが10日、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は退任後の受領額が確定していた根拠の一つとみている。証券取引等監視委員会は10日、同法違反の疑いでゴーン容疑者と前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)、法人としての日産を告発した。特捜部が同日起訴する。また、新たに約40億円の報酬を記載しなかった金融商品取引法違反の疑いで、同日中にも2人を再逮捕する。2人は、ゴーン容疑者の報酬が2015年3月期までの5年間で計約100億円だったのに、このうち退任後の報酬を記載せず、約50億円とした有価証券報告書を提出したとして逮捕された。18年3月期までの3年間にも同様の疑いがあり、虚偽記載の立件総額は約90億円になる。関係者によると、先送り計画が記された「報酬契約書」には、報酬総額、実際に支払われた額、未払い額の3種類の金額が1円単位で書かれていた。ゴーン容疑者や、秘書室に所属していた日本人の元幹部のサインがあった。この元幹部と外国人執行役員が特捜部との間で司法取引に合意し、不正を裏付ける保管資料を提出したとされる。

*8-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181210&ng=DGKKZO38733440Q8A211C1MM0000 (日経新聞 2018年12月10日) ゴーン元会長、午後起訴 虚偽記載で東京地検 監視委が告発
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、東京地検特捜部は10日午後、ゴーン元会長と元代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)、法人としての日産を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴する。特捜部は同日、2018年3月期まで3年間の有価証券報告書でゴーン元会長の報酬を計約40億円過少に記載したとして、同法違反容疑で2人を再逮捕する方針だ。証券取引等監視委員会は10日、15年3月期まで5年間の報酬過少記載について、ゴーン元会長とケリー役員、法人としての日産を同法違反容疑で東京地検に告発した。監視委としても、ゴーン元会長らの刑事責任を問う必要があると判断したもようだ。ゴーン元会長らは容疑を否認しており、起訴されれば公判で無罪を主張して争うとみられる。再逮捕容疑の捜査によってさらに20日間の勾留の可能性があり、身体拘束の長期化に対して海外の批判が強まることも予想される。関係者によると、ゴーン元会長は役員報酬の個別開示が義務化された10年3月期から、自身の報酬の一部について受領を先送りし、有価証券報告書に記載しないようにしていたとされる。先送り分を含めた報酬の総額は、10年3月期~12年3月期には年20億円を下回る水準だったが、毎年のように引き上げられ、17年3月期と18年3月期にはそれぞれ約24億円とされていたという。18年3月期の記載額は7億3500万円だったのに対し、記載のない先送り分は約16億円に上っていたとみられる。

*8-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181211&ng=DGKKZO38770160R11C18A2MM8000 (日経新聞 2018年12月11日) ゴーン元会長ら再逮捕 直近3年の報酬、虚偽疑い
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、東京地検特捜部は10日、ゴーン元会長と元代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)、法人としての日産を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴した。さらに直近3年間でも過少記載があったとして、ゴーン元会長らを同法違反容疑で再逮捕した。立件額は8年間で計91億円余となった。ゴーン元会長らは起訴内容・再逮捕容疑を否認しているとみられ、公判では無罪を主張して争う見通しだ。役員報酬に関する虚偽記載の起訴は初めて。企業統治(コーポレートガバナンス)に対する関心の高まりなどを背景に、特捜部は役員報酬も投資家の判断に影響を与え、虚偽記載をすれば刑罰の対象となる「重要な事項」に当たると判断した。有価証券報告書の虚偽記載には個人だけでなく法人の刑事責任を問う両罰規定があり、長期間にわたって経営トップの虚偽記載を止められなかった法人としての日産の責任も重いと判断した。日産では新車の完成検査で新たな不正が発覚。企業統治の面から、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら現経営陣の経営責任についても批判が強まりそうだ。日産の起訴を受け、東京証券取引所は同社株について上場廃止のおそれがあることを示す「特設注意市場(特注)銘柄」に指定するかどうかの検討に入る。特注銘柄は、有価証券報告書に重大な虚偽記載があり、会社の内部管理体制にも問題がある際に東証が指定する。指定期間中も通常どおり売買できるが、東証が内部管理体制の改善度合いを監視する。改善が認められれば指定解除する。西川社長は10日、社内に向け「法人として日産が起訴されるにいたったことは厳粛に受け止めている。ゴーン、ケリー(両容疑者)による私的な動機・目的で行われたことが原因だ」とコメントを出した。関係者によると、ゴーン元会長は自ら決めた各期の自身の報酬の一部について受領を先送りし、有価証券報告書に記載していなかったとされる。特捜部の起訴に先立ち、証券取引等監視委員会は10日、ゴーン元会長ら2人と日産を金商法違反容疑で東京地検に告発した。

*8-7:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181211&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO38770160R11C18A2MM8000&ng=DGKKZO38743870Q8A211C1MM8000&ue=DMM8000 (日経新聞 2018年12月11日) 日産、不記載報酬を一括処理 今期決算で計上へ
 日産自動車はカルロス・ゴーン元会長と同社が役員報酬について有価証券報告書に虚偽の記載をした罪で起訴されたことを受け、記載されていなかった役員報酬に絡む費用を2019年3月期決算で一括処理する方針だ。正しい決算を作成するための社内管理体制が整っていると上場企業が投資家に向けて宣言する文書、「内部統制報告書」の訂正も検討する。ゴーン元会長が記載していなかった役員報酬は総額90億円前後とされるものの詳細が明らかになっていない部分もあり、日産は費用計上すべき額の把握を急いでいる。日産が今期、5000億円と見込む純利益は目減りする見通しだ。19年2月初旬とみられる18年4~12月期決算発表と合わせて開示する。日産内部では費用の一括処理案が有力。「虚偽記載の額が利益に対して小さい」(関係者)ためだ。ただ、取引所などとの今後のやりとり次第では過去にさかのぼって分割処理する案が検討される可能性もある。日産は10日、過年度の有価証券報告書を訂正する予定だと発表した。役員報酬の総額と1億円以上を受け取った役員の個別の報酬額などが対象になるとみられる。虚偽記載の疑いがある11年3月期以降の有価証券報告書が対象となる見込みだ。日産はゴーン元会長による費用の付け替えなどがなかったかも調査をしている。結果が確定し次第、必要であれば過去の有価証券報告書の損益計算書や貸借対照表など財務諸表を修正する見通しだ。

*9:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181129&ng=DGKKZO38305510Y8A121C1MM8000 (日経新聞 2018年11月29日) 企業年金、積み立て手厚く、確定給付、制度改正で100社超 手元資金で危機に備え
 株価下落など将来の損失リスクに備え、企業年金の積立金を手厚く積む企業が増えている。2017年の制度改正で予防的な掛け金拠出が解禁されたのを受けた動きで、18年11月時点の導入企業はサッポロビールなど100を超えた。業績改善で手元資金が厚くなった企業が従業員の老後資金に還元している。配当などの株主還元や設備投資に続く手元資金の第3の活用策として同様の動きが広がりそうだ。企業の抱える現預金は17年度末時点で221兆円と5年前に比べ3割以上増えた。年金の掛け金は税務上の損金となることもあり、現預金を抱えるよりも効率的と判断した企業が拠出に動いている。企業は掛け金を基金など企業年金の運営主体に出し、その分を費用として計上する。厚生労働省は17年、従業員の年金額を保証する確定給付型企業年金を対象に「リスク対応掛け金」と呼ぶ仕組みを解禁した。金融危機など20年に1度程度の頻度で生じるような損失に備え、年金会計上の必要額を超えて掛け金を積み立てることを認める仕組みだ。この仕組みを活用した企業年金はサッポロビールやコーセーなど18年11月1日時点で104社・グループに上った。「より安定した年金制度を維持できる」(サッポロビール)という。企業年金の運用管理を受託するみずほ信託銀行によると「福利厚生の充実のために検討する企業が増えている」という。確定給付年金は運用不振で積み立て不足が生じると、企業は年金水準を維持するために掛け金を追加拠出して穴埋めする必要がある。90年代のバブル崩壊や08年のリーマン危機では株価の低迷などで巨額の積み立て不足が発生し、多くの企業で穴埋めを余儀なくされた。危機後には年金制度が企業経営を圧迫する事態の再発を防ごうと年金制度そのものを見直し、給付水準を下げる改革に踏み切る動きも相次いだ。今の企業の動きにはこうした悪循環を断ち切る狙いがある。リスク対応掛け金は株価急落などがあっても年金水準を維持できるように、企業業績に余力があるときに掛け金を本来必要な水準よりも多めに拠出しておくものだ。これにより企業年金の財政に「のりしろ」をつくり、将来、運用不振に直面しても積み立て不足に陥りにくくする。企業は突然、巨額の穴埋め負担を迫られるリスクが減り、経営の安定につながる。従業員にとっても年金財政が悪化して給付減額などを求められるリスクが減り、老後への備えが安定する利点がある。企業年金は確定給付型が主流だったが、リーマン危機後は従業員が運用先を決め、損失リスクも負う確定拠出年金に移行する企業が増えた。運用が好調だと将来の年金も増えるが、今は元本保証型などリスクを抑えた運用を選ぶ人が多い。掛け金にも上限があり、年金資産がなかなか積み上がらない課題がある。予防的拠出で確定給付型年金の安定性が高まれば、従業員の老後を支える福利厚生として存続・維持させる企業も増えそうだ。

<女性の能力に対する過小評価について>
PS(2018年12月15日追加):有報への虚偽記載もあやしくなってきたせいか、2018年12月14日、日産は、*10-1のように、「理由なき利益」を日産から得ていたとしてゴーン氏の姉をブラジル・リオデジャネイロ州の裁判所に提訴する方針を固めたそうだ。ゴーン氏の姉は、リオでコンサルタント会社を経営していた2002年に日産とアドバイザー業務契約を結び、日産から年約10万ドル(約1130万円)の支出を受けたが、日産は「業務実態はなかった」として会社経費の不正支出にあたるとする。しかし、*10-2のように、ゴーン氏の姉は、ブラジル生まれのレバノン育ちで、フランスのリヨン大学を卒業し、パリ・デカルト大学(パリV)などの大学院で民族学研究をした後、1995年に「Netune Ltda」の責任者に就任し、2013年3月~2017年3月には、フランスとブラジルの商工会議所の会長を務めた人であり、アラビア語、フランス語、英語、ポルトガル語の4か国語を話すことができるため、強力な営業マンだったと考えることもできる。そのため、「業務実態がなく、理由なき支払いだった」というのが本当かどうかは慎重な吟味を要する。日本の社会通念では、「60代の女性が大した仕事をしていたわけがないため、業務実態のない不正支出だろう」と思うのかも知れないが、私も佐賀地裁唐津支部で佐川急便に提訴された時、「この人はパートくらいでしか働いたことがなく、何も知らないのだろう」と推測され、呆れたとともに不利益を蒙ったのでわかるわけである。

*10-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13812578.html (朝日新聞 2018年12月15日) 日産、ゴーン前会長の姉を提訴へ 
 日産自動車は14日、「理由のない利益」を日産から得ていたとして、前会長カルロス・ゴーン容疑者の姉をブラジル・リオデジャネイロ州の裁判所に提訴する方針を固めた。手続きに向けた準備を始めているという。日産によると、リオでコンサルタント会社を経営するゴーン前会長の姉は2002年に日産とアドバイザー業務契約を結び、日産から年約10万ドル(約1130万円)の支出を受けていたという。社内調査によると、姉に業務の実態はなかったといい、日産は会社経費の不正支出にあたるとみている。

*10-2:https://shiawase-no-tobira.com/carlos-ghosn-claudine-keireki-kaogazo-titioya-hahaoya-sister/ (わしろぐ) カルロスゴーン姉(Claudine)の経歴や顔画像は?父親と母親と妹についても
 カルロスゴーン姉(Claudine Bichara)の経歴や名前や顔画像があるのか調査していきます。カルロスゴーンは3人兄弟で、姉、ゴーン、妹の兄弟構成です。また、父親と母親と妹についても情報があるのかチェックしていきます。
●カルロスゴーン姉の経歴や顔画像は?
 名前は「クロディーヌ(Claudine Bichara)」というのが判明しています。ブラジル生まれ、その後、レバノンで育ちます。弟になるカルロスゴーンの誕生日が1954年3月9日ですので、年齢は64歳より上になりそうです(2018年11月23日現在)。カルロスゴーンが16歳でフランスに移住しますが、姉のクロディーヌは既にフランスに渡っています。クロディーヌはフランスのリヨン大学を卒業し、パリ・デカルト大学(パリV)などの大学院で民族学研究をしています。1995年に「Netune Ltda」というインターネット決済や電子取引の戦略などに関するコンサルティングサービスを提供する会社の立ち上げに協力し、責任者に就任します。2013年3月から2017年3月まで、フランスとブラジルの商工会議所の会長を務めます。現在、ブラジルのリオデジャネイロに住んでおり、日産リオのオフィスの昼食会に参加できる人物のようです。アラビア語、フランス語、英語、ポルトガル語の4か国語も話せます。
●カルロスゴーン姉も不正に関与?
 カルロスゴーンが姉に対して、業務実績がないのにコンサル料を支払っていたという報道がありました。姉はブラジルのリオに住んでいて、子会社に購入させたという住宅がブラジルにありますし、他にもありそうですね。(以下略)

| 経済・雇用::2018.12~ | 01:35 PM | comments (x) | trackback (x) |

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