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2019,01,31, Thursday
2018.10.21朝日新聞 2017.9.1毎日新聞 2018.11.9時事 (図の説明:英国がEU離脱の国民投票を行った際、アイルランドでは反対が多く、特に北アイルランドは民族が北欧に近い。そのためか、英国は、離脱後も北アイルランドとEUを検問なしの状態にしたがっている。また、EU離脱の手切れ金は最大5.8兆円とされている) 2018.7.10毎日新聞 2019.1.6毎日新聞 2018.12.21毎日新聞 (図の説明:左図のように、1年間に入国した移住者は、ドイツ・米国が多く、英国・日本・韓国は、その1/3~1/2で同程度だ。また、中央の図のように、日本の財政は悪化の一途を辿り、現在はGDPに対する債務残高が世界一である。さらに、2019年度予算案は、歳入・歳出が右図のようになっているが、地方が稼げれば地方交付税は減らせるし、借り換えすれば国債利子は減らすことができる。また、防衛費は多すぎるだろう) (1)「保護主義」「ポピュリズム」「ナショナリズム」の定義は何なのか 「スイスで開かれたダボス会議は、各国でポピュリズムとナショナリズムが台頭して国際協調や自由貿易の理念が揺らぎ、グローバル化の価値に関する議論が熱を帯びた」と、*1-1-1に書かれているが、トランプ米大統領が国境の壁を作ると主張したり、メイ英首相が英国のEU離脱交渉で苦労したりしているのは、反グローバル主義ではなく、国の主権が認められないほど過度な自由化を強制されることに対する国民の異議申し立てを反映したものである。 そのため、これら多くの国民の異議申し立てを、*1-1-2のように、ポピュリズム(*1-6のうちの大衆迎合主義)として保護主義や国際協調の危機と一刀両断するのは、日本とは違って、既に徹底してグローバル化を行ってきた国の人々が到達した真理を無視する周回遅れの解釈であり、ポピュリズムなどと言っている人の方が、思考停止していると考える。 1)日本の経産省発案のTPPについて 日本政府は、*1-1-3のように、「自由貿易の旗手として全力を尽くす」としているが、徹底したグローバル主義のEUは、*1-2-1のように、対米貿易交渉で農産品を除外した。何故なら、世界人口が爆発的に増加している中では、長期的には食糧を自給できる政策が必要であり、*1-2-2のように、狭い範囲の現在しか考えていない政策では、経済発展どころか自国民への食料確保もおぼつかなくなるからで、これもりっぱな産業政策なのである。 2)英国のEU離脱について メイ首相は、*1-3-1のように、国民投票で決まったEU離脱に向けた国内の合意形成に苦労しているが、その理由は、*1-3-2のように、①350億─390億ユーロ(410億─460億ドル)ものEUへの清算金支払い ②スコットランドの独立問題 ③EUの後押しを受けた北アイルランドのEU離脱反対 などだそうで、気の毒なほどの難題だ。 そして、*1-3-3のように、2019年1月29日、英下院はEUとの離脱合意案の修正を求める議員提案を賛成多数で可決したが、EUのトゥスク大統領は、「離脱協定は再交渉しない」「英側が要求すれば離脱延期を検討する」としているそうで、私には、EUの要求は高すぎる手切れ金に思える。 この両方を解決する方法としては、民族がヨーロッパに近くEU離脱反対が多かったことから、北アイルランド(又はアイルランド)を特区としてEUに加盟させ、その面積分の拠出金を支払い続けて、その面積に比例して手切れ金をカットしてもらうのはどうだろうか。その時、北アイルランド(又はアイルランド)と英国の間には税関が復活するのが道理で、そうなると公用語が英語というメリットがあるため、EUを視野に入れる企業は北アイルランド(又はアイルランド)に集積することになるだろう。 3)ギリシャの緊縮策について ギリシャは、*1-4のように、金融支援したEUの要求で、年金削減や増税などの緊縮策により財政黒字化を達成し、2017年には3年ぶりにプラス成長に転換したが、国内総生産(GDP)はギリシャ危機前に比べて約4分の3の規模に縮小したそうだ。 EUは単一通貨ユーロを使うため、財政統合や共通予算の導入などが要求され、金融政策や財政政策の独立性が乏しい。もちろん、①速すぎるリタイアと年金受給 ②高すぎる公務員割合では、どこの国でも持続可能性がないが、国によって積極財政による投資を行うべき時期と財政黒字化に専念すべき時期に差があり、①②を解決するには、民間のよい仕事を増やして失業率を下げなければ国民が生活できなくなる。 にもかかわらず、EUのように一律に財政規律のみを言っていると、それぞれの国の個性を活かした発展ができず、北部欧州と南部欧州の両方で不満が溜まる。そして、多くの国民が感じているこの真実を、「内向き姿勢のポピュリズム(大衆迎合主義)」として切り捨てていると、問題を深刻化させると同時に、遠心力を働かせることになるわけである。 4)イタリアの予算について イタリアも、*1-5のように、2019年予算案についてEUから修正を求められ、その内容は、公的債務の多いイタリアの支出増に対する懸念だそうだが、やはり失業者に対する支出を減らすには積極財政によって必要な投資を行い、失業者を減らす必要がある。そして、イタリアもギリシャも、歴史的建造物は壊れ、街が博物館のようになっているため、やるべき仕事は多い。 なお、イタリアの公的債務残高は対GDP比131パーセントで、EU加盟国では金融支援を受けたギリシャの債務残高(GDP比179%《2016年》)に次いで2番目に多いとのことだが、これは、*2の日本の政府債務(GDP比239%《2016年》)よりずっと低い。しかし、公的債務や政府債務のみを取り上げて議論するのは間違っており、国有財産を差し引いた純債務について議論すべきであり、国有財産(資源を含む)は活かして使わなければならないのである。 (2)日本政府の債務について 主に日本の財務省発の意見なのだが、*2は、GDP比で239%(2016年)もの世界一の借金を抱えている日本政府の財政の悪化が真の国難であり、その解決策は、①ハイパーインフレによる国の借金棒引き ②大幅増税 ③社会保障費などの国民に対するサービスの大幅削減 しかなく、①は副作用が強すぎるため、②③の併用を徐々に進める以外には処方箋はないとしている。 この思考でおかしいのは、歴史のみを参考にし、条件は変わらないと見做して、小中学生でもできるような数字の加減乗除だけで結論を出していることだ。しかし、実際には、これまで利用していなかった資源を利用できるようになったり、生産性が飛躍的に伸びたり、それを支える国民の教育水準が上がったりしているため、それらを無駄にすることなく利用すべきなのだ。 ・・参考資料・・ <国境を護ることは、大衆迎合主義か?> *1-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190127&ng=DGKKZO40529660W9A120C1EA1000 (日経新聞 2019年1月27日) ダボス会議を陰らす反グローバル主義 スイスで開いた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は、グローバル化をめぐる世界のきしみを色濃く映し出す会合となった。各国でポピュリズムとナショナリズムが台頭し、国際協調や自由貿易の理念が揺らぐ中で、グローバル化の価値をどう再定義するかという議論が熱を帯びた。政治ショーとして見ると、今年のダボス会議は精彩を欠いた。トランプ米大統領、メイ英首相、マクロン仏大統領らが、国内の混乱のため欠席したためだ。米国の「国境の壁」や英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる騒動は、それぞれの国内で高まる反グローバル主義の帰結でもある。自分がグローバル化の犠牲者だと感じる人々が増え、多くの民主主義国で排外的な政治家が支持されている。この世界の現実に目を背けることはできない。グローバル化の旗を振ってきたダボス会議が、グローバル化のあり方を問い直す場に変質したといえる。だが、ダボスを悲観論が覆っていたわけではない。ショーの派手さはないが、企業経営者や学術界の重鎮が、膝を詰めて議論を深めた意義は大きい。単にグローバル化を礼賛するだけの理想論は聞こえず、課題ごとに現実的な打開策を探ろうとする声が目立った。注目を集めた個別の議題には、機能不全に陥った世界貿易機関(WTO)の改革、データ流通の国際ルールづくり、人工知能(AI)開発の指針、プラスチック環境汚染への取り組みなどがある。こうした国家単位では解決できない課題に焦点を当てて、各国の有力者が問題意識を共有すれば、反グローバル主義の抑制にもつながる。会議で浮き彫りになったのは、格差や衝突を生むのではなく多様な価値観を包み込む新しいグローバル化への期待である。米中欧の首脳がいないダボス会議は、安倍晋三首相が存在感を示す好機となった。日本が主導した電子商取引(EC)の国際ルールづくりで、中国を含む76カ国・地域が正式協議の開始で合意したのは、日本外交の成果といえる。とはいえ、6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議への意欲を語る首相の講演が、大きな反響を呼んだとは言い難い。米欧の指導力が衰えた今、国際秩序の再構築で日本が果たすべき役割は重い。世界に向けて語る言葉が説得力を持つには、経済と外交で着実に実績を積むしかない。 *1-1-2:http://qbiz.jp/article/147291/1/ (西日本新聞 2019年1月17日) 反保護主義へ、日本がG20主導 麻生氏「国際協調が危機」 新興国を含む20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁代理会議が17日、東京都内で開かれ、日本が議長国を務める2019年のG20が始動した。米中貿易摩擦が深刻化する中での開催となり、麻生太郎財務相は冒頭で「国際経済秩序や国際協調は危機にひんしている」と強調。反保護主義や自由貿易体制の維持に向け、日本が議論を主導していく決意を表明した。日銀の黒田東彦総裁も「国際貿易は経済成長や生産性の向上をもたらす」と述べ、自由貿易の重要性を訴えた。代理会議は18日まで。G20は08年に起きたリーマン・ショックの克服に成果を上げたが、昨年の首脳宣言ではトランプ米政権の意向で反保護主義の文言が削られるなど、最近は協調体制の揺らぎが目立つ。米国が問題視する貿易赤字は旺盛な国内消費などの構造要因によるもので、米中や日米などの2国間交渉では解決困難だとの認識の共有を目指す。また中国を念頭に途上国融資の規模などの透明化を提案。米中に自制を促し、世界経済の安定成長への回帰を狙う。多国籍IT企業のデジタル取引への課税や仮想通貨への規制でも国際的な合意を目指す。高齢化による労働力不足などを乗り越える経済政策も議題とする。議論は、6月の財務相・中央銀行総裁会議(福岡市)や首脳会合(大阪サミット)に向けて行われる。日本はG20議長国として農相会合(新潟市)や労働雇用相会合(松山市)なども主催する。 *1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40223950Z10C19A1000000/ (日経新聞 2019/1/19) TPP閣僚級会合が開幕 首相「自由貿易の旗手へ全力」 環太平洋経済連携協定(TPP)に参加する11カ国の閣僚級会合「TPP委員会」が19日、都内で開幕した。安倍晋三首相は会合の冒頭で「自由貿易の旗手として全力を尽くす決意だ」と述べた。「保護主義への誘惑が生まれているが、時計の針を決して逆戻りさせてはならない」と強調した。米中が追加関税の応酬を繰り広げるなど保護主義が世界で広がっており、首相は自由貿易圏の拡大の重要性を訴えた。TPPは昨年12月に発効した。閣僚級会合の開催は発効後初めて。茂木敏充経済財政・再生相が議長を務める。新たに加入を希望する国・地域との具体的な交渉手順などを正式に決定する。首相は「私たちの理念に共鳴し、TPPのハイスタンダードを受け入れる用意のある全ての国・地域に対し、ドアはオープンだ。自由で公正な貿易を求める多くの国々の協定への参加を期待している」と述べた。閉幕後に共同声明を発表する。 *1-2-1:http://qbiz.jp/article/147404/1/ (西日本新聞 2019年1月19日) EUが対米貿易交渉指針案を発表 農産物除外、立場に隔たり 欧州連合(EU)欧州委員会は18日、米国との貿易交渉の指針案を発表した。工業製品の関税や非関税障壁の撤廃で合意を目指すことに集中し、農産品は交渉から「除外する」としている。ただ、米通商代表部(USTR)は11日、対EU交渉で農産品の包括的な市場開放を目指すと議会に通知。米欧の立場の隔たりは大きく、交渉入りが遅れる可能性がある。その場合、業を煮やしたトランプ米大統領が、欧州製自動車などに対する高関税導入を再び訴える恐れもありそうだ。EUの通商担当閣僚に当たるマルムストローム欧州委員は記者会見で、交渉開始時期は「(加盟国の貿易担当)閣僚理事会が決める」と述べるにとどめた。また、広範な自由貿易協定(FTA)を結ぶつもりはないと強調した。米農産品の輸入拡大はEU有力国で農業国のフランスなどが強く反対している。ユンケル欧州委員長とトランプ大統領は昨年7月、「自動車を除く工業製品」の関税撤廃協議の開始で合意。これによってトランプ氏が「本丸」と位置付ける欧州製自動車への高関税の発動をひとまず阻止した。 *1-2-2:https://www.agrinews.co.jp/p46499.html (日本農業新聞 2019年1月22日) 政治経済システムと経済学の欠陥 誤った「合理性」前提 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏 日本は「保護主義と闘う自由貿易の旗手」のように振る舞っている。規制緩和・自由貿易を推進すれば、「対等な競争条件」で経済利益が増大すると言われると納得してしまいがちであるが、本質は、日米などのグローバル企業が「今だけ、金だけ、自分だけ」(3だけ主義)でもうけられるルールを世界に広げようとするたくらみである。現地の人は安く働かされ、国内の人も低賃金で働くか失業する。だから、保護主義VS自由貿易は、国民の利益VSオトモダチ(グローバル企業)の利益と言い換えると分かりやすい。彼らと政治(by献金)、行政(by天下り)、メディア(byスポンサー料)、研究者(by資金)が一体化するメカニズムは現在の政治経済システムが持っている普遍的欠陥である。環太平洋連携協定(TPP)は本来の自由貿易でないとスティグリッツ教授は言い、「本来の」自由貿易は肯定する。しかし、「本来の」自由貿易なるものは現実には存在しない。規制緩和や自由貿易の利益の前提となる完全雇用や完全競争は「幻想」で、必ず失業と格差、さらなる富の集中につながるからである。市場支配力のある市場での規制緩和(拮抗=きっこう=力の排除)はさらなる富の集中により市場をゆがめるので理論的に間違っている。理論の基礎となる前提が現実には存在しない「理論」は本来の理論ではない。理論は現実を説明するために存在する。「理論」に現実を押し込めようとするのは学問ではない。3だけ主義を利するだけである。本質を見抜いた米国民はTPPを否定したが、日本は「TPPゾンビ」の増殖にまい進している。実は、米国の調査(2018年)では、国際貿易によって国民の雇用が増えるか減るかという質問への回答は、米国が増加36%、減少34%に対し、日本は増加21%、減少31%。日本人の方が相対的に多くが貿易が失業につながる懸念を持っているのに、政治の流れは逆行している。理由の一つは、日本では国民を守るための対抗力としての労働組合や協同組合が力を巧妙にそがれてきたことにある。米国では最大労組(AFL―CIO)がTPP反対のうねりを起こす大きな原動力となったのと日本の最大労組の行動は、対照的である。 「自由貿易に反対するのは人間が合理的に行動していないことを意味する。人間は合理的でないことが社会心理学、行動経済学の最近の成果として示されている」と言う経済学者がいるが、行動経済学は人間の不合理性を示したのでなく、従来の経済学の前提とする合理性を否定したのである。3だけ主義で行動するのが「合理的」人間ではなく、多くの人はもっと幅広い要素を勘案して総合的に行動する。それが合理性である。米国でシカゴ学派の経済学をたたき込まれた「信奉者」たち(無邪気に信じているタイプも意図的に企業利益のために悪用しているタイプも)は、誤った合理性と架空の前提という2大欠陥を直視すべきだ。 *1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190117&ng=DGKKZO40100720X10C19A1MM0000 (日経新聞 2019.1.17) 英議会、僅差で内閣不信任案否決 メイ首相続投、EU離脱 混迷続く 英議会は16日夜(日本時間17日早朝)、メイ内閣の不信任決議案を採決し、与党・保守党などの反対多数で否決した。メイ首相はひとまず目先の危機を乗り切り、欧州連合(EU)からの離脱に向けた国内の合意形成に注力する。ただ15日に大差で否決された英・EUの離脱案に代わる案をまとめるのは簡単ではなく、英政治の混迷は続きそうだ。不信任決議案は英・EUで合意した離脱案の否決を受けて、野党第1党の労働党が提出した。採決には下院議員650人のうち、議長団などを除いた議員が参加。賛成306票、反対325票だった。閣外協力している北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)の10人が反対に回り、DUPの支援がなければ不信任決議案が可決しかねない僅差の投票結果だった。続投が決まったメイ首相は「国民との約束であるEU離脱のために働き続ける」と語った。15日の離脱案の採決では保守党など与党内から大量の造反が出たため、政府側が230票差という歴史的な大差で敗れた。だが今回の不信任決議案では与党議員が解散・総選挙で議席を失うことを恐れ、メイ首相の支持に回った。不信任を免れたメイ英首相は今後、21日までに代替案を議会に提示する。英議会によると代替案の採決は30日までに行われる予定だ。メイ首相は英議会で支持を得られる案をつくるため、各党幹部と個別に会談を重ねる方針。そこで国内の意見を固めたうえで、EUとの再協議に臨みたい考えだ。ただ英議会ではEUとの明確な決別を求める意見もあれば、2度目の国民投票によるEU残留を求める声もあるなど議論の収拾がつく見通しは立たない。一方、EU側は離脱案の修正を認めておらず、仮に英側が超党派協議で案をまとめてもそれを受け入れるとは限らない。代替案が1つに絞れない中で経済に混乱を及ぼす「合意なき離脱」を避けるには、離脱時期の延長も視野に入る。欧州委員会の報道官は「英国が正当な理由を示せば、EU首脳は離脱時期の延期を受け入れる可能性がある」と語った。 *1-3-2:https://blogos.com/article/324715/ (ロイター 2018年9月13日) 英EU離脱交渉、合意可能だが決裂なら清算金支払わない=英担当相 英国のラーブ欧州連合(EU)離脱担当相は12日付の英紙デーリー・テレグラフへの寄稿で、離脱後の関係を巡るEUとの合意は手の届くところにあるとの見方を示した。ただ、交渉が決裂した場合は離脱に伴う「清算金」の支払いを見送ることになると表明した。EU当局者らによる最近の発言を背景に、英国とEUが将来的な通商関係について合意することは可能との期待感が強まっており、ポンドは他通貨に対してここ数週間で上昇している。ただ、来年3月29日の離脱日が刻一刻と近づくなか、交渉はまだ決着しておらず、「合意なきブレグジット(英EU離脱)」のシナリオがなお存在している。ラーブ氏は「EUが英国に匹敵する野心と現実主義を掲げるならば、合意は手の届くところにある」と記した。EUのバルニエ主席交渉官が最近使った表現を踏襲した。ラーブ氏はまた、「合意なき」離脱は短期的な混乱をもたらすことになるが、「それを埋め合わせるだけの機会」が英国側に生じることになると指摘。「その場合は英政府はEUと合意した清算金を支払わない。全体の合意がなければ個別の合意は成立しない」と続けた。英国は既に350億─390億ユーロ(410億─460億ドル)の清算金の支払いに合意している。英国のEU離脱後、数十年間かけて支払うことになっている。 *1-3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019013001001028.html (東京新聞 2019年1月30日) 英、離脱再交渉要求 EUは拒否、延期検討も 英下院は29日夜(日本時間30日朝)、欧州連合(EU)との離脱合意案の修正を求める議員提案を賛成多数で可決した。EUに同案の再交渉を求める方針を示したメイ首相を支持した形だが、EUのトゥスク大統領は声明で、合意案の根幹である離脱協定は「再交渉しない」との姿勢を明確にした。離脱が3月29日に迫る中、経済や社会に大混乱をもたらしかねない「合意なき離脱」が一段と現実味を増した。 メイ氏は近くEUに再交渉を求める方針だが、局面打開の見通しは立っていない。こうした中、トゥスク氏は英側が要求すれば離脱延期を検討する用意があると表明した。 *1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34355090Q8A820C1EA1000/ (西日本新聞 2018/8/20) ギリシャ、自立へ一歩 EUの金融支援が終了 欧州債務危機の震源地となったギリシャは20日、8年に及ぶ欧州連合(EU)の金融支援から脱却した。ギリシャは自立に向け国債市場に本格復帰し、安定発行という課題に向き合う。一方、単一通貨ユーロの改革は財政統合や共通予算の導入を巡り停滞、危機の再発防止に不安を残す。「生活が良くなる見通しがない。何も変わらない」。20日朝、アテネ中心部の議会前。5年前の失業を機に清掃の仕事を続けるユージニアさん(49)はこぼした。週5日1日12時間働くが月給は400ユーロ(約5万円)にすぎない。ギリシャは2009年に財政粉飾が発覚し、世界の金融市場を揺さぶった。10年から3次にわたった支援の融資総額は国際通貨基金(IMF)拠出分を加えると約2900億ユーロに達した。年金削減や増税などの緊縮策によって、ギリシャは財政黒字化を達成、17年には3年ぶりにプラス成長に転換した。だが、国内総生産(GDP)は危機前に比べ約4分の3の規模に縮小した。ギリシャは今後、債務の借り換えなど財政運営に必要な資金を国債市場から直接調達する。しかし金利はユーロ圏の低利融資を上回り、19年9月に任期満了が迫るチプラス政権も有権者受けを狙ったばらまき策の誘惑がつきまとう。国債の安定発行は容易ではないのが実情だ。四半期ごとに財政規律の順守を点検・監視するEUやIMFとの衝突懸念も拭えない。それでも「グレグジット」(ギリシャのEU離脱)まで取り沙汰されたギリシャ危機だったが、ユーロはひとまず生き延びた。ユーロ圏は危機時に加盟国を支援する常設基金「欧州安定メカニズム(ESM)」を創設。EU基本条約(リスボン条約)上は禁じていた加盟国への財政援助・金融支援に道を開き、危機時の耐性を強化。圏内でバラバラだった金融機関の監督なども一元化した。しかし、ギリシャ危機を結束して乗り切ったものの、平時から危機を予防するユーロ改革は道半ばだ。最たるものが「通貨はひとつだが、財政はバラバラ」という根本問題への対応。ユーロ圏の共通予算編成などを通じて、ドイツなど豊かな北部欧州から南欧への財政資金を移転する必要性が指摘されながらも、南欧のモラルハザードにつながるとの北部の懸念が強く、実現は遠い。ユーロ圏各国でも広がるポピュリズム(大衆迎合主義)の内向き姿勢もユーロ改革をさらに難しくしている。イタリアではポピュリズム政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」の連立政権がギリシャ危機の反省で強化されたEUの財政規律ルールに反発。財政を巡る南北対立が再び深まる懸念が強まり、次の危機に結束した対応が取れるかどうかは不透明だ。19年で退任するユンケル委員長をトップとするEUの欧州委員会は現体制下での抜本的ユーロ改革を実質的に断念した。欧州が懸念するのはギリシャだけではない。米国との対立を端緒に通貨が急落したトルコの動きに神経をとがらせる。ギリシャの公的債務残高は17年末時点でGDP比約179%に達するのに対し、約28%のトルコ政府は財政体質は健全とみられるが、政権の強権化や中銀への圧力が通貨の信認低下を招いている。トルコで懸念されているのは、外貨建て債務負担の増大に苦しむ企業の破綻が相次ぎ、影響が銀行部門に及ぶ事態だ。トルコには欧州の主要行も進出している。ギリシャとは異なる種類の金融危機が欧州を襲う可能性は消えていない。 *1-5:https://www.bbc.com/japanese/45961814 (BBC 2018年10月24日) 欧州委、イタリアに予算案修正を要求 史上初 欧州連合(EU)の欧州委員会は23日、イタリアの2019年予算案についてイタリア政府に修正を求めた。EU加盟国の国家予算案を欧州委員会が拒否したのは初めて。イタリアはユーロ圏で3番目に大きい経済規模を持つが、ただでさえ公的債務の膨らむイタリアの支出増を欧州委員会は懸念している。政権与党のポピュリスト政党「同盟」と「五つ星運動」は、失業者への最低収入保証など支出増を伴う選挙公約の実現を約束している。欧州委員会はイタリアに求める新たな予算案の提出期限を3週間とした。イタリアの予算原案は、欧州委員会の勧告に順守していない部分があり、それが「特に深刻」だと委員会は懸念を示している。欧州委員会のユーロ問題担当副委員長、バルディス・ドムブロフスキス氏は、委員会の懸念に対するイタリアの回答は、懸念緩和に「不十分」だったと指摘。ユーロの規則は全加盟国に平等だと述べた。イタリアのルイジ・ディ・マイオ副首相はフェイスブックに、「イタリア予算案が初めて、EUに嫌われた。特に驚かない。EUではなく、イタリア政府が作った初のイタリア予算だからだ!」と書いた。もう1人の副首相マッテオ・サルビーニ氏は、EUに予算を拒否されても「だからといって何も変わらない」と付け加えた。サルビーニ副首相は「欧州委員会は政府ではなく、国民を攻撃している。イタリア国民をさらに怒らせるだろう」と述べた。 ●イタリアがより多くの支出を望む理由 今年発足したイタリア新政権は、失業者への最低収入保証などによる「貧困の終結」を約束している。 他の貧困対策には、減税や定年引き上げ撤廃など、3月の選挙で重要公約を実現するための施策が含まれている。EUに反発するジュゼッペ・コンテ首相はすでに、財政赤字が国内総生産(GDP)の2.4%より大きくなることはないと主張していた。ただ、財政赤字目標は前政権が提示した予算案の3倍となっている。イタリアの公的債務残高は対GDP比131パーセントとなっており、EU加盟国では金融支援を受けたギリシャに次ぐ2番目。この債務を無理に返済すれば、10年前の金融危機からいまだ回復できていないイタリア国民を苦しめると政府は主張している。イタリア経済は依然として金融危機前の2008年の水準まで回復していない。同盟と五つ星運動は、支出増が経済成長に弾みをつけるとしている。 ●劣悪なイタリアの債務状況 ユーロ離脱について中立を保つイタリアのジョバンニ・トリア財務相と、海外アナリストは、イタリアの財政赤字が対GDP比2%以下を維持し、場合によっては1.6%の低水準にまで下がってほしいと期待していた。EUはユーロ圏の規則として、財政赤字をGDPの3%以下とするよう求めている。GDPの2.4%というイタリアの財政赤字状況はこの制限値に近づいており、同国の債務状況は警戒が必要な水準になっている。ドムブロフスキス副委員長は、「欧州委員会がユーロ圏内の国に予算案草案の修正を求めざるを得なくなったのは今回が初めてだが、イタリア政府にそう要求する以外の代替案はないと判断した」と述べた。イタリアの納税者が、教育費と同じくらいの額を公的債務返済にあてなくてはならない事態になっていると、ドムブロフスキス氏は指摘した。同氏は「ルール違反は、最初は魅力的に見えるかもしれない。自由になるという幻想を提供してくれるので」と述べた。「借金を借金で返そうとするのは、魅力的かなこともしれない。しかしいずれ、債務負担が限界を超えてしまえば(中略) 最終的には一切の自由を失ってしまう」。イタリアが予算案を9月に発表すると、市場の混乱は数週間続いた。欧州委員会が23日にイタリア予算案を拒否すると発表するまで、欧州市場の株価は過去2年近くで最低水準まで下落した。委員会の発表後、市場におけるイタリアの地位の相対基準として使われるイタリア・ドイツ10年債利回り格差は、過去最大となる314ベーシスポイントまで広がった。 <解説>イタリアは譲らない――ケビン・コノリー、BBC欧州特派員 イタリアはEUと衝突する道に突進しており、論争はユーロ圏を未知の領域に導いている。 EU当局は予算案を拒否し、修正案を要求する権利を持つ。要求が無視されれば、罰金を科すこともできる。EUがこの段階まで進むのは初めてだ。EUの政治的エネルギーは現在、英国のEU離脱交渉に吸い取られている。その最中だというのに、EUはさらに、最大級の加盟国との対立を長引かせることと、他のユーロ圏各国にルール違反をさせないよう強硬策でにらみを利かせることの是非を、比較検討しなくてはならない。イタリア政府は、自分たちが決めた対策は成長回復に必要なものなので、譲歩するつもりはないと主張している。 *1-6:https://dictionary.goo.ne.jp/jn/205148/meaning/m0u/ (Goo) ポピュリズムの意味 1 19世紀末に米国に起こった農民を中心とする社会改革運動。人民党を結成し、政治の 民主化や景気対策を要求した。 2 一般に、労働者・貧農・都市中間層などの人民諸階級に対する所得再分配、政治的 権利の拡大を唱える主義。 3 大衆に迎合しようとする態度。大衆迎合主義。 <日本の財政> *2:https://blogs.yahoo.co.jp/sansantori/43451236.html?__ysp=5pel5pys44Gu5YWs55qE5YK15YuZ5q6L6auYIOWvvkdEUOavlCDoqJjkuos%3D (Yahoo 2017/10/22) 政府債務が対GDP比200%超の国の末路-(1) 昨夜から雨。今日は衆院選の投票日。午後からは台風接近で雨に加えて強風が吹きそうなので、午前中に投票所に行く予定。安倍総理によると今回は「国難」選挙だそうだが、真の国難とは、日本政府の財政の悪化だろう。GDP比で239%(2016年)もの世界一の借金を抱えている国の国政選挙だというのに、各党の立候補者も、これについては一言も触れようとしない。このままでは、国民全体が本当に「ゆでガエル」になってしまう。書店に行くと、「国の借金をもっと増やしても日本は大丈夫だ!」と主張する本が未だに山積みされている。ということは、今までの延長線上を走っていれば問題ないと考えている日本人が、まだまだたくさんいるということを示している。この機会に、この問題について明確にしておきたい。まずは、過去の歴史のおさらいから。下に過去約130年間の日本政府債務の推移のグラフを示す。青色で示した純債務は、粗債務から政府の保有する金融資産を引いた残りを示している。小さなものも入れると粗債務のピークは三つある。1905年前後の日露戦争、1944年のピークは太平洋戦争、1990年前後のバブル崩壊であり、前の二つは戦争からの財政回復過程である。現在、急速に進行中の政府債務増加は、いつがピークになるのだろうか?さっぱり先が読めない。日露戦争の後、当時の明治政府の財政規律は厳格であった。プライマリーバランスが厳しく守られ、財政は順調に回復している。一方、先の大戦直後の急激な回復は、いわば国による債務の踏み倒しであり、国による国民財産の強奪によって成し遂げられたものである。ハイパーインフレ(消費者物価が戦前の350倍に急騰)と、新円切り替えの強行によって、銀行や国民が抱えていた発行済の国債は紙くずに化けてしまった。国家財政の破産、デフォルトにほかならない。バブル崩壊後のわずかな回復については、プライマリーバランスの健全化と若干の経済成長によるものであった。この辺は大事なところなので、このグラフの出典元である次の記事をぜひ読んでいただきたい。特に、プライマリーバランス実現の先送りを表明した安倍総理、ならびに消費税8%→10%実施の先送りを唱えている野党幹部は必読すべきだと思う。 ●「政府債務の歴史に教えられること」 独立行政法人 経済産業研究所 さて、現在の日本のように対GDP比で200%を超える政府負債を抱えた国家が、破産に陥ることなく健全に財政を回復できた例はいままでにあったのだろうか?筆者は最近、この点に興味を持って時々調べているが、現在までの調査結果によれば、デフォルトを回避できた例は過去にたった二例しかない。いずれも英国に関するものである。一方、過剰な政府債務が原因で国家破綻した例は、それこそ無数にある。下に、英国の過去300年間にわたる政府債務の推移を示す。米国と日本の推移も合わせて示している。なお、このグラフも、上に挙げた経済産業研の記事からの引用である。第二次大戦後の日本のように国家破綻した場合には、債務が急速にほぼゼロとなる。これに対して、英国・米国のように、経済成長、緊縮財政、ゆるやかなインフレによって安全に財政が改善した場合には、債務は時間をかけて徐々に下降していることがよく判る。英国の政府負債推移の中の1820年前後のピークは、1815年に終結した対仏ナポレオン戦争の戦費によるものである。この巨額負債は、大英帝国の全盛期であった19世紀末のビクトリア女王の時代までかかって返済されている。ご存知のように、19世紀の英国はインドや東南アジアなどの海外に膨大な植民地を領有していた。国内では蒸気機関を応用した鉄道や織物産業などが飛躍的に発展して産業革命が進行中であった。また、インドで栽培したアヘンを中国に売りつけるなど、軍事力を背景として弱小国から強引に利益を強奪する手法も得意技だった。これらの急速な経済発展と利益蓄積によって、対GDP比200%の政府負債を約50%まで削減できたのである。次の英国政府負債のピークは、第二次大戦中の1945年の約250%である。1914年に勃発した第一次世界大戦の戦費返済が進まないうちに、第二次世界大戦が始まってしまったのである。二度の大戦後の英国は海外植民地が次々に独立、世界経済の中心は米国に移って国内経済は疲弊した。戦後すぐの労働党による主要産業の国有化も失敗に終わり、英国の製造業はほぼ壊滅した。閉塞状況下の1950年代にはアラン・シリトーの「長距離走者の孤独」などに描写された「怒れる若者たち」が現れた。この流れを受けて1960年代にはリバプールにビートルズ(戦後の英国における最大の世界貢献?)が誕生した。この時期の英国社会の困窮については、次の記事からも読み取ることができる。 ●「GDP比250%の政府債務を二度も返した英国」 1945年から約40年をかけてぼう大な戦費をほぼ返済したわけだが、この間のインフレ率が高かったことも、国民生活では困窮したものの、負債の軽減には効果があった。英国経済が上向きに転じたのは、今世紀になってから世界経済のグローバル化によってロンドンが金融業の中心地として復活したためとされている。現在の国際社会においては、19世紀の英国のような、海外植民地からの収奪、アヘン戦争勝利などによる相手国からの賠償金獲得などは、到底、実行不可能である。日本政府がいま抱えている巨額の政府負債の解消は、次の三種類の方策のいずれかによるほかはない。 ① ハイパーインフレによる国の借金棒引き、要するに国家の破産宣言 ② 大幅増税 ③ 社会保障費などの国民に対するサービスの大幅削減 ①は政府自体が無責任極まりないし、あまりにも副作用が強く、かつ社会の大混乱は必至であり回避するのが当然である。②と③の併用を徐々に進める以外には処方箋はないはずだ。国内のエコノミストや経済誌の記事の大部分もほぼ同じ結論なのだが、一部には、「まだ国の借金を増やしても全然OK」というトンデモ論を吹聴している者がいる。「世の中には、タダのメシなどない」(There ain't no such thing as a free lunch.)。次回は、このトンデモ論の中味について調べて見たい。なお、次の資料には、世界各国で過去に発生した国家破綻・デフォルトの事例が多数挙げられています。 ●「財政再建にどう取り組むか」 日本総研 この資料の中の各先進国債務の比較図を下に示しておきましょう。ベルギーやイタリアはいったん債務が100%を超えたものの、自力での財政再建努力によっていくぶんかは回復しています。数年前には破綻が危惧されたあのギリシャも、2016年時点の債務残高はGDP比で179%と最近は債務の増加が止まっています。一貫して債務が増え続けているのは日本だけです。 <国民の資産を大切に活かそう> PS(2019年2月2、3日追加):*3-1のように、九州・沖縄で大学発ベンチャーの育成を目指して、産学組織「九州・大学発ベンチャー振興会議」が活動しておりよいことだが、課題は「大学から良いシーズが出るかどうか」だけでなく、「良いシーズを見つける眼力」と「育てる力」もある。 例えば、*3-2のミノムシ糸の量産は、「新たな繊維強化プラスチックとして実用化でき、飼育は温度管理などを徹底すれば場所を選ばない」とされる。また、*3-3のように、温度管理の費用を抑えるために、暑さに強い蚕の新品種を開発することも可能であり、蚕にいろいろな遺伝子を組み込めば、蚕を工場とすることもできる。そして、これらは、教育水準の低い移民の女性にもでき、付加価値の高い仕事にすることが可能だ。さらに、*3-4のように、他国と同じワインやチーズを作って価格競争に苦しまなくても、日本の自然や技術を活かした良い製品を作れば新市場が開けるだろう。例えば、ワインは葡萄を原料にしなくても、耕作放棄されたみかん畑や梨畑のみかんや梨を使って美味しいものができるし、アイスクリームのような冷凍技術を使えば、船で安価に輸送でき、日本独自の美味しさを輸出することも可能だ。そして、このように、地方にも多くのシーズが眠っているため、*3-5のように、水需要が減少していると考えるのは早計だ。近年は、特に水に関して節水を行いすぎて不潔な状況が散見されるため、まずは水不足にならず、節水しなくても流水で十分に洗える社会を作って欲しい。 なお、*3-6のように、生産調整して作らないことに奨励金を出すやり方は、補助金を使ってやる気を失わせ、耕作放棄地を増やす結果となるなど、稲作で既に失敗している。仮に「“供給過多”で価格を押し下げている」のであれば、国産の牛乳・米粉・小麦粉などと合わせた加工品(プロも使うケーキスポンジ等)にし、国内外に新しい市場を作ればよいと思われる。 最後に、*3-7の種子は、長年かけて作られた知的所有権の塊であるにもかかわらず、農水省があっさりと種子法を廃止して、国民の財産を投げ捨てた。それに危機感を感じて、地方自治体で種子法を事実上“復活”させたのはよいが、種子を守り育てるためには予算が必要なので、こういう投資にこそ補助金が必要なのである。 2018.12.6ITmedia NEWS 2016.2.25毎日新聞 2019.1.17上毛新聞 (図の説明:左図のように、みのむしから世界最強の糸を取りだすことができ、量産も可能だそうだ。また、中央の図のように、蚕は目的の遺伝子を注入することによって、さまざまな特性を持った絹糸を作ることができる。さらに、右図のように、暑さに強い蚕もできている。生物系は、物理・化学よりも科学としての研究・開発が遅れていたため、現在はシーズの宝庫になっており、やり方によっては○兆円市場が期待できそうだ) *3-1:http://qbiz.jp/article/148161/1/ (西日本新聞 2019年2月2日) 九州の大学発ベンチャー支援、初年度は5400万円拠出 10大学から20件応募 九州・沖縄で大学発ベンチャー企業の育成を目指す産学組織「九州・大学発ベンチャー振興会議」は1日、事業化に向けた資金を援助する「ギャップ資金」として、2018年度は20件のシーズ(種)に対し、5400万円を拠出したと発表した。18年度が初の資金提供で、10大学から20件の応募があった。5400万円のうち、会議のメンバー企業などが1700万円、ふくおかフィナンシャルグループ企業育成財団が1千万円、残りを大学が負担した。19年度は最大8千万円の拠出が目標。同会議は「メンバー企業や提供額の上積みに加え、大学から良いシーズが出るかどうかが鍵になる」と話した。ギャップ資金は、大学の研究成果の事業化に向け、試作品開発や市場調査に活用する資金。同会議は昨年3月、メンバーの大学や企業が折半し、18年度から5年間、毎年5千万円程度を拠出する計画に合意していた。 *3-2:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1812/06/news077.html (ITmedia NEWS 2018年12月6日) 「クモの糸を凌駕する」ミノムシの糸、製品化へ 「世界最強の糸」と期待 医薬品メーカーの興和(名古屋市)と、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構・つくば市)は12月5日、ミノムシの糸の製品化を可能にする技術開発に成功したと発表した。ミノムシの糸はクモの糸より弾性や強度が高いことを発見。「これまで自然界で最強と言われていたクモの糸をしのぐ、世界最強」の糸だとアピール。新たなバイオ素材としての応用に期待し、早期に生産体制を構築する。ミノムシの吐く糸は、弾性率(変形しにくさ)、破断強度、タフネスすべてにおいてクモの糸を上回っていることを発見したほか、熱に対しても高い安定性を示したという。ミノムシの糸を樹脂と複合することで、樹脂の強度が大幅に改善されることも分かった。ミノムシから1本の長い糸を取り出す技術を考案し、特許を出願したほか、効率的な採糸方法も確立。ミノムシの人工繁殖や大量飼育法も確立したという。ミノムシの糸は、タンパク質から構成されているシルク繊維であるため、「革新的バイオ素材として、脱石油社会に貢献できる持続可能な製品」と期待を寄せるほか、再生医療用素材としての可能性にも期待している。 *3-3:https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/105581 (上毛新聞 2019/1/17) 暑さに強い蚕の新品種 群馬県が開発 夏場も収量と質 維持へ 近年の夏の猛暑による蚕の成育不良に対応するため、群馬県蚕糸技術センター(前橋市)は16日、暑さに強い新たな蚕品種を育成したと発表した。猛暑でも通常の品種に比べて高品質を維持し、1割以上多い繭の収量を見込める。昨夏の記録的猛暑で、本年度の県内の繭生産量は前年度比1割減の41.07トンに落ち込むなど、高温による障害が顕著に表れており、経営安定のため農家などから対策を求める声が上がっていた。今年夏に農家で実証飼育試験を行い、実用化されれば、9番目の県オリジナル品種となる。 ◎最も過酷な7、8月に実証飼育実験へ 同センターは2012年度から新品種の育成を始め、暑さに強い日本種原種「榛しん」と中国種原種「明めい」を交配した交雑種を生み出した。昨年夏の試験飼育は新品種と、普及している夏秋蚕用品種の「ぐんま200」「錦秋鐘和きんしゅうしょうわ」を同じ条件で育てて比較した。6月26日に掃き立てを行い、7月20日に上蔟じょうぞく。桑を与える4~5齢の12日間の蚕室の気温を調べたところ、夜間も含めて平均気温は30度前後で、日中は40度に達することもあった。飼育の結果、蚕3万匹当たりの収繭量は新品種が48.42キロに対し、ぐんま200が43.55キロ、錦秋鐘和42.62キロと1割以上の差が生じた。品質の目安であり、繭糸のほぐれやすさを示す「解じょ率」は新品種が77%に対し、他の2品種は50%台。新品種は過酷な環境でも生存でき、健全なさなぎの割合も94.30%と高かった。県蚕糸園芸課によると、本年度の蚕期ごとの繭生産量は春蚕16.10トン(前年度比10%減)、夏蚕5.66トン(同19%減)、初秋蚕2.16トン(同26%減)、晩秋蚕13.83トン(同6%減)、初冬蚕3.33トン(同1%増)と、夏の減少幅が大きい。暑さを考慮し、養蚕農家が夏の生産を控える動きもあったという。飼育量の多い春蚕の5月に気温の高い日が続き、成育不良が発生したことも響いた。同課は「猛暑でも育てられれば、養蚕農家の経営の安定を図れる。これまでより、蚕室内の気温に神経質にならずに済むので、生産者の労力軽減につながる」としている。農家での実証飼育試験は夏蚕(7月)か初秋蚕(8月)の時期に行う。その後、9月中旬のぐんまシルク認定委員会での県オリジナル品種の認定を目指す。 *3-4:https://www.agrinews.co.jp/p46610.html (日本農業新聞 2019年2月2日) [メガFTA] 日欧EPA発効 小売り先行値下げ ワイン、チーズ 国産と競合激化 欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が1日に発効したことを受け、スーパーなど小売業界でワインやチーズなどの値下げ競争が早くも始まっている。発効と同時に小売価格を1~3割引き下げることで関税削減効果を先取りし、売り上げ増を狙う。関税は、ワインが即時撤廃、チーズは段階的に下がり16年目には無税(ソフト系は枠内)になる。環太平洋連携協定(TPP)と併せ、今後多様な品目で値下げの動きは強まる。国産との競合が激しくなりそうだ。「日欧EPA発効記念・欧州ワイン一斉値下げしました」。大手スーパー・イオンの系列となるイオンスタイル幕張新都心(千葉市)の酒類売り場に大きな看板が置かれた。イタリアやフランスなどのEU産ワインがずらりと並んだ。イオンは同日、全国約3000店舗で、最大330種類のEU産ワインを平均で1割値下げした。同社で販売する輸入ワインの7割の値が下がった。関税撤廃で、1本(750ミリリットル)換算で最大約93円の関税が0円になる。同社は「関税撤廃分より値下げ幅の大きい商品もある」と明かす。値下げは期間限定ではなく継続する考え。同社は今月のEU産ワインの売り上げを前年比3割増と見込む。店舗では同日、EU産食品の特売フェアも開いた。スペイン産豚バラ薄切り肉(100グラム105円)、イタリア産のパスタやトマトソースなどを2、3割安で販売。3日までの期間限定でPRする。値下げはコンビニ業界へも広がる。セブン―イレブンは1日からEU産ワイン3品を1割値下げ。ファミリーマートは2日から14品を最大17%引きで販売する。チーズでは、ソフトチーズの値下げが早くも表面化した。西日本でスーパーを展開するイズミ(広島市)は1日から最大20品のチーズを値下げした。ドイツ産カマンベールを23%安で扱うなど、13日までの限定セールを展開する。日欧EPAでは農林水産物の82%の関税が撤廃され、大幅な自由化となった。EU産のブランド力が消費者に認知されており、「需要拡大が見込める」と大手コンビニ。多様な品目で値下げ競争が進む恐れがある。 *3-5:https://blogs.yahoo.co.jp/toshi8686/65364408.html?__ysp=5rC06YGTIOe1jOWWtumboyDoqJjkuos%3D (読売新聞 2018/11/13) 市町村の水道事業を統合へ…人口減などで経営難 政府は、水需要の減少で経営悪化が続く市町村の水道事業について、都道府県を調整役に6580事業者の統合を進める方針を固めた。事業の広域化によって経営効率を高めるのが狙いで、2019年度から着手する。事業統合に応じた市町村に対しては、国が財政支援を手厚くする。総務省の「水道財政のあり方に関する研究会」が、こうした方針を盛り込んだ報告書を近く公表する。報告書案などによると、都道府県は域内の水道事業者である市町村と協議し、将来の人口動態などを踏まえて統合すべき市町村の組み合わせを盛り込んだ「広域化推進プラン」を策定する。国は、プランに基づいて統合を進めた市町村に対し、国庫補助金の拡充や地方交付税の増額で実現を後押しするという流れだ。統合の形態は、水道事業全体の経営統合のほか、〈1〉浄水場など一部施設の共同設置・共同利用〈2〉料金徴収や施設管理など業務ごとの共同化――などを想定している。一部の統合でも、工事の一括発注などで無駄なコストを省け、経費削減につながるという。政府が統合を推し進めるのは、人口減などで水の使用量が減り、全国的に経営難が続いているためだ。 *3-6:https://www.agrinews.co.jp/p46615.html?page=1 (日本農業新聞 2019年2月2日) 生産調整鶏卵で発動 1月補填49・418円 鶏卵価格が低迷した際に生産調整する国の成鶏更新・空舎延長事業が1日、発動した。実施主体である日本養鶏協会が発表した。今年度の発動は2回目。同日の標準取引価格が1キロ142円となり、発動基準の安定基準価格(163円)を下回ったことを受けた。供給過多で価格を押し下げているため、需給改善で価格安定を図る。価格下落を補填(ほてん)する事業は同日に1月分を発動した。同事業は、成鶏を出荷後、新たにひなを導入せず、鶏舎を60日以上空舎にした生産者に奨励金を交付する。成鶏が10万羽以上の場合は1羽当たり210円、10万羽未満の場合は同270円を交付する。対象期間は1月2日から、価格が安定基準価格を上回る前日まで。今年度は4月下旬~6月下旬に5年ぶりに発動していた。鶏卵価格差補填事業による1月の補填金は1キロ49・418円となった。同月の標準取引価格が111・72円と、基準価格(185円)を下回ったためだ。今年度は両事業の発動回数が多く、財源が枯渇する恐れがあった。必要な財源を確保した上で、1月分の価格差補填金を交付する。そのため、満額(65・952円)の交付とはならない。JA全農たまごの同日の東京地区のM級は1キロ145円。今年の初取引価格(100円)に比べ大きく上げたが、 前年を15%下回って推移する。 *3-7:https://www.agrinews.co.jp/p46530.html (日本農業新聞 2019年1月25日) 種子法廃止の対応 現場の危機 受け止めよ 命の根幹である種子をなんとしても守る──。思いがうねりとなり自治体を動かしている。主要農作物種子法(種子法)廃止から1年を待たず10道県が種子法に代わる条例制定へ動く。他の県でも意見書の提出が相次いでいる。なぜ廃止したのか。現場の声に耳を傾けたのか。強引な政権運営のひずみである。日本農業新聞が47都道府県に聞き取った。種子法は廃止されたが、各地で事実上の“復活”を遂げた。既に種子の安定供給を担保する新たな条例を制定したのは山形、埼玉、新潟、富山、兵庫の5県。来年度の施行に向けて準備を進めるのは北海道、岐阜、長野、福井、宮崎の5道県。先代から受け継いできた大切な種子を失っていけないとの危機感の表れである。2017年1月から19年1月22日までに地方議会から国会に出された意見書は、衆参併せて250件を超えた。農家や消費者、識者らでつくる「日本の種子(たね)を守る会」による種子法復活を訴える署名は17万筆に達している。憤りの声は自民党の地方議員からも上がっている。福岡県の市議はこう主張する。「種子を守ることは農家の将来を守ることにつながる。党派を超えて条例の必要性を県に求めていく」。岐阜県の市議も「なぜ法律を廃止したのか、いまだに納得できない。種子の尊さに自民も野党も関係ない」。危機感は党派を超えて共有されている。種子法は、食糧の安定確保に向けて1952年に制定された。都道府県に米、麦、大豆の優良な品種を選定して生産し、普及することを義務付け、60年以上守られてきた。国民の食を支える上で、重要な法律だったためだ。だが農水省は、都道府県が自ら開発した品種を優先的に「奨励品種」に指定して公費で普及しており、種子開発に向けた民間参入を阻害していると判断。17年2月に廃止法案が閣議決定され、2カ月後の4月には、わずか12時間の審議時間であっけなく成立した。現場の農家を含め、反対の声が全く聞き入れられなかった。そもそも種子法に民間参入を阻害する規定などない。だが、民間企業の参入を推し進める政府にとって、種子も例外ではなかったといえる。規制改革推進会議に突き動かされるように、廃止在りきで審議が進んだとしか考えられない。そうした中、地方自治体で進む条例化の動きは、種子の品種開発や安定供給に自治体自らが責任を持つという強い意志の表れだ。種子法廃止に対し、地方から「ノー」を突き付けている。このうねりがさらに広がることを期待したい。政府は自治体の動きを真摯(しんし)に受け止め、現場の声を大切にした政権運営をすべきである。4月には統一地方選が行われる。種子法も争点の一つとなるだろう。改めて廃止の意味を問いたい。 <介護や社会保障に関して、軽すぎる論説が多いこと> PS(2019年2月4日追加):サ高住は、プライバシーを害することなく介護の不要な人から必要性の高い人まで受け入れることができるため、高齢化社会の有力な解の一つであるとともに、学生・単身者・共働き・出産前後の全世代に便利な住宅である。そのため、*4-2のように、高松で老朽マンションを改修してアシストホームを作ったのは一歩前進であり、新築マンションでも家事サポートや訪問介護などのサービスを付けた方が誰にとっても便利だと、私は考える。 しかし、日経新聞は、*4-1で、家賃の安い住戸は「要介護3以上」の入居者が5割を占め、自立した高齢者向けとの想定に反して特別養護老人ホーム(特養)が対応すべき低所得で体の不自由な人が流入し、安いサ高住は介護報酬で収入を補おうと過剰に介護を提供しがちで、特養より公費の支出が膨らむ懸念があるから問題だとしている。これは、介護制度の理念が、家族を介護に縛りつけずに自宅療養できるようにすることで、散在する自宅に住むよりはサ高住にまとまって住んでもらった方が介護者の負担が軽くなることを考えれば的外れだ。 また、特養と老健(https://kaigo.homes.co.jp/manual/facilities_comment/list/hoken/tokuyo/hikaku_rouken/参照)の入居条件は特養が要介護3~5、老健は要介護1~5で、居室タイプはどちらも個室と多床室があって、多床室ではプライバシーが保てず、周囲が重度障害者ばかりでは居住環境が悪くなるため、「高齢者だから死ぬまで置いておけばよいだろう」という発想でなければ、要件を満たした民間賃貸住宅を自治体がサ高住として登録するのはよいことだ。 さらに、日経新聞は、*4-3のように、医療・介護の知識のない大学教授が「①介護従事者の確保に限界がある」「②現物給付の4~6割程度を現金給付して同居家族に介護させよう」「③女性要介護者は男性より家族に大きな負担をもたらす」などと書いた記事を掲載しているが、①については、我が国は外国人労働者の導入に消極的だったため、それを改善した後の動向を見ることが必要である上、②については、家族のうちの誰かが介護を担当することを想定しており、その人は患者の症状を理解した介護ができるのか、密室で家族による高齢者いじめや不正が起こらないかについて検討していない。さらに、③については、疫学的調査に基づいて語っていないと思われ、大学教授が科学的調査に基づかず科学的根拠も示さずに語るのは言語道断である。 このような中、*4-4のように、外国人労働者受入拡大を行う改正入管難民法施行(2019年4月1日)に合わせ、介護現場で働く外国人や外国人を受け入れる介護事業者を多方面からサポートする「就労支援センター」(ICEC)が福岡県小郡市に発足したのはよいことだが、他地域では介護現場で働く外国人の増加を予定していないと言うのだろうか。また、*4-5のように、少子化で我が国の教育施設は余剰が多くなっているため、大学・専門学校が留学生の比率を上げるのは当然であり、その中に介護や看護も入れればさらによいと思われる。 *4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190203&ng=DGKKZO40813420R00C19A2MM8000 (日経新聞 2019年2月3日) 高齢者向け賃貸、安いほど要介護者流入、公的支出 膨らむ懸念 見守りなどのサービス付き高齢者向け住宅(サ高住=総合2面きょうのことば)。日本経済新聞が全国の利用実態を調べると、家賃月8万円未満の安い住戸は多くの介助が要る「要介護3以上」の入居者が5割を占めた。自立した高齢者向けとの想定に反し、特別養護老人ホーム(特養)が対応すべき低所得で体が不自由な人が流入している。安いサ高住は介護報酬で収入を補おうと過剰に介護を提供しがちで、特養よりも公費の支出が膨らむ懸念がある。サ高住は国が2011年につくった制度。バリアフリーで、安否確認などの要件を満たした民間賃貸住宅を自治体が登録する。18年末時点で全国に約7200棟、23万8千戸が存在する。法律上「住宅」なので介護は義務ではない。訪問介護などを使いたい入居者は介護事業者と契約するが、実際は介護拠点を併設し、事業者が同じケースは多い。明治大の園田真理子教授は「家賃を安くして入居者を募り、自らの介護サービスを多く使わせる動きが起きやすい」と指摘する。 ●特養に入れず 本来、要介護3以上の低所得者の受け皿は公的な色彩が濃い特養だ。毎月一定額の利用料も相対的に安く、その範囲で食事や介護を提供する。必要以上にサービスを増やして、介護報酬を稼ぐ動きは起きにくい。ただ職員不足で受け入れを抑える特養が目立ち、全国に30万人の待機者がいる。行き場を失った高齢者がサ高住になだれ込む。日経新聞はサービス費を含む家賃と入居者の要介護度のデータが公開されている1862棟を対象に、その相関を分析した。家賃の平均は約10万6千円。全戸数に占める要介護3以上の住民の比率は34%だった。家賃別にみると、8万円未満の同比率は48%に達していた。金額が上がるほど比率は下がり、14万円以上は20%にとどまった。「介護報酬を安定的に得るため、要介護度の高い人を狙い、軽い状態の人は断っている」。関東で数十棟を営む企業の代表は打ち明ける。1月に茨城県ひたちなか市のサ高住を訪ねると、併設デイサービスに約10人が集まっていた。多くが車いすに乗る。住民の4分の3が要介護3以上だ。 ●介護報酬狙う 介護報酬の1~3割は利用者負担。残りは税金と介護保険料で賄う。要介護度が進むと支給上限額は増える。介護保険受給者は平均で上限額の3~6割台しか使っていないが、同社の計画上は住民が85%を使う前提だ。「夜勤の人件費を捻出するのに必要。暴利は貪っていない」と主張する。兵庫県で家賃が安いサ高住の管理人も「上限額の90%を併設サービスで使ってもらっている」と話す。16年の大阪府調査では、府内のサ高住は上限額の86%を利用し、要介護3以上は特養より費用がかさんでいた。安いサ高住に要介護度の高い人が集まる傾向は都市圏で顕著だ。8万円未満の物件に住む要介護3以上の比率は首都圏が64%、関西圏が57%。都市圏は土地代が高く、家賃を下げた分を介護報酬で補うモデルが広がっている懸念がある。「デイサービスを『行って寝ていればいい』と職員に説得されて仕方なく使った」。サ高住の業界団体にこんな苦情も集まる。日本社会事業大の井上由起子教授は「国も学者もこれほど介護施設化すると考えていなかった。一部のサ高住が介護報酬を運営の調整弁に使うと、介護保険制度の持続性が揺らぐ」と警戒。運営費は家賃のみで吸収するのが筋だと訴える。すべてのサ高住が過剰に介護をしているわけではないが、個別の実態を捉えるのは難しい。一般社団法人の高齢者住宅協会は「介護状況の開示や法令順守を事業者に強く促していく」という。民間主導のサ高住は行政も運営・整備計画を把握していない。それがサ高住の乱立につながり、介護報酬で経営を成り立たせようとする動きを招く。介護施設との役割分担を明確にし、立地の最適配分も考えなければ悪循環は断ち切れない。(斉藤雄太、藤原隆人、久保田昌幸) *調査概要 高齢者住宅協会が運営するサ高住の情報提供システムで2018年12月時点に公開されていた家賃と住民の要介護度のデータを抽出。家賃は共益費と見守りのサービス費を含め、同じ施設で最高と最安が異なる場合は中間値を用いた。食事や入浴の介助が必要で、特養の入所基準である「要介護3」以上の住民の割合を家賃の水準別に分析した。 *4-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190203&bu=BFBD・・ (日経新聞 2019年2月3日) 高齢者向け賃貸、安いほど要介護者流入 公的支出 膨らむ懸念サービス付き高齢者向け住宅 老朽マンションを改修 高松のSUN 介護事業を展開するSUN(高松市)は老朽化したマンションを改修し、一部をサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)として提供する=写真。サ高住と賃貸マンションが同一の建物に混在するのは香川県では初めて。老朽化したマンションの空き部屋対策につながるという。1986年に完成した既存のマンションを改修し、名称を「アシストホーム」とした。一部をサ高住として提供する。部屋の広さは32~36平方メートルと全室30平方メートル以上は全国的にみても珍しく、12戸を用意した。車いすに乗ったまま使える洗面台や手すり付きのトイレなどの設備を備えている。月額の利用料は単身の高齢者が食事の提供を受ける場合、約14万円が目安となる。訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所などと連携して、高齢者の生活を支える。 *4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190204&ng=DGKKZO40775630R00C19A2KE8000 (日経新聞 2019年2月4日) 介護危機、乗り越えられるか 現金給付で従事者抑制を、外国人の安定確保厳しく 中村二朗・日本大学教授(1952年生まれ。慶応義塾大修士《商学》。専門は労働経済学、計量経済学) <ポイント> ○従事者確保で女性や高齢者活用には限界 ○現金給付を現物より抑えれば財政上も益 ○保険者の広範地域への再編や連携強化を 急速に高齢社会を迎えた日本では2000年に介護保険制度が導入された。ドイツの制度に倣いながらも、要介護対象者や提供される介護サービスを幅広く設定したことで多くのメリットがあるとされる。しかし財政的には多額の支出を余儀なくされた。団塊世代が後期高齢者になる25年には介護保険の利用者は約900万人、財政規模は20兆円前後に達するといわれる。大きな課題は財政規模の抑制と介護従事者の確保だ。介護は3K(きつい・汚い・危険)的な職場というだけでなく、現保険制度では事業所全体の収入が規定され、その範囲内で介護従事者の処遇条件を決定する必要がある。処遇改善のための加算制度はあるが介護事業者の裁量で賃金を設定することは難しい。一方で介護事業者に裁量を委ねても、事業所支出に占める人件費比率が特養で約6割、通所・訪問で7~9割と高いため、介護費用の増加を通じて介護財政をさらに逼迫させる恐れがある。介護財政の抑制と介護従事者の確保とは両立が極めて難しい課題だ。本稿では、介護財政の抑制という課題を念頭に置きながら、今後の介護従事者不足に対する解決策を検討する。問題を考えるうえで主要な前提・課題を整理しておこう(表参照)。現状の課題は、未婚者や結婚しても子供のいない高齢者(チャイルドレス高齢者)の増加と、女性要介護者の比率が全体の約7割と高いことだ。高齢者の同居比率が低下しており、居宅介護のために同居率を高めようという議論がある。しかし子供のいる高齢者の同居率はそれほど低下していない。こうした状況で介護従事者の必要性を少なくするために家族介護の拡充による居宅介護を重視する政策には無理がある。また福岡市の65歳以上の介護保険データを用いた多相生命表(健康、要介護度別平均余命)による分析では、女性の要介護者は人数が多いだけでなく、介護期間が長期にわたる傾向があり、費用も男性と比べ4割前後高くなる。今後は要介護度の高い高齢者と、都市部での要介護者の増加が予想される。現状でも要介護者の多くは女性だが、その傾向は今後も続くだけでなく都市部でより顕著に表れることが予想される。女性要介護者は男性に比べ家族に大きな負担をもたらすことが確認されている。都市部では住宅事情などにより居宅介護は難しさを増す。財政支出と必要な介護従事者の増加をもたらすだけでなく、居宅介護と施設介護のあり方を大きく変化させる可能性がある。現状および今後の問題点を考慮したうえで、必要な介護従事者をどのように確保すればよいのだろうか。対応の方向性は2点だ。一つは必要な従事者数を確保するための環境を整備することであり、もう一つは必要な従事者数の抑制策を講じることだ。以下では、今後の対応策と実現可能性について検討したい。従事者数の確保については2つの対応策に大別できる。一つは女性や高齢者のさらなる活用だ。女性の活用では介護従事者の資格要件の緩和措置などがとられているが、労働条件が悪いままでは安定的に一定量を確保するのは難しい。高齢者はボランティア的な仕事としては受け入れられる可能性は高いが、安定的に活用できる人材ではない。もう一つは外国人労働者の導入だ。日本が魅力的な国である限りは、外国人労働者は安定的に活用できる人材としてみることもできる。しかし日本人と同等の処遇ならば、介護従事者の賃金が低い現状のままでは必要な人員を確保できるかわからない。既に外国人介護福祉士としては経済連携協定(EPA)により受け入れられており、17年度までに約3500人が来日し、700人以上が介護福祉士の国家試験に合格している。こうした外国人は送り出し国で看護学校などを卒業し「N3」以上の日本語資格を持っている。また日本で介護福祉士の国家試験を受けるために受け入れ事業所などで様々な教育を受けている。事業所は1人あたり200万~300万円程度の費用を負担しているが、合格率は5割程度だ。合格後は在留資格が得られるが、他の事業所への転職も可能で、受け入れ事業所は多くのリスクを抱えている。現状のEPA介護従事者に対しては、事業者や利用者も高く評価しているケースが多い。しかし現在想定される新たな外国人労働者に対して、EPAでの受け入れと同様の手厚い対応ができるのだろうか。受け入れ人数が桁違いに増えるだけでなく、受け入れ要件もEPAに比べ緩和される可能性が高い。受け入れ態勢や教育環境の整備、それらの費用を誰が負担するのかなど慎重な議論が必要だろう。さらに今後も、日本が外国人労働者に魅力的な国であり続ける保証はない。むしろ5~10年先の本当に必要な時期に外国人労働力を確保できなくなるリスクはかなり高い。仮に介護従事者を増やすことに成功しても、財政上の問題は解決されない。両者をともに解決するには、単に必要人員の確保だけでなく必要な従事者数を抑える視点が大切だ。しかし介護現場では新技術の導入などである程度の労働生産性の向上は望めるが、大きな効果は期待できない。では、どうすればよいのか。介護サービスの提供は例外を除いて、保険制度で指定された事業所でしかできない。介護サービスが現物給付で実施されているためだ。この枠組みを外せば、介護事業所以外でも介護サービスを提供することが可能となり、必要な介護従事者数を抑制できる。そのための方策の一つは、ドイツや韓国などで採用されている現金給付もしくはバウチャー(利用券)制度の導入だ。ドイツのように介護をする家族にも保険から手当などを支払えれば、居宅介護が増えて必要な介護従事者数を抑制する効果も期待できる。保険導入時に現金給付との併用案が検討されたが、事業者の反対や不正利用の懸念などを理由に採用されなかった。確かに保険導入前の状況を考えると当時の反対理由もうなずける。しかし介護サービス需要の増加や介護関連事業所の増加により、介護市場が成長し競争メカニズムが働く余地が大きい。さらにこれまでの保険事業で蓄積されたデータを活用・分析することにより、不正利用を見つけやすくなっている。また日本独自のシステムとしてケアマネジャー制が導入されており、利用者や事業所を監視する役割を拡充することにより不正利用や不効率な利用を防止できるだろう。現金給付を選んだ場合には現物給付の4~6割程度の支給にできるならば、財政上のメリットも生じる。今後生じる様々な課題に対応するには、介護保険を運営する保険者に求められる役割はより高度なものとなる。基礎自治体をベースとした一部の保険者は難しい問題を抱えることになる。保険者については、より広範な地域への再編・連携強化や都市部と非都市部との連携などを検討すべきだ。介護施設や人材などの効率的な運用ができるだけでなく、要介護者の地域的偏在や地域間の保険料格差などを改善することができよう。従来の制度を土台としながら、現金給付の導入や保険者の枠組みなどを今後の状況に即した制度に見直すことなどを含め、人材不足の解消と財政の健全化を目指す整合的な方策を考えることが急務だ。 *4-4:http://qbiz.jp/article/148203/1/ (西日本新聞 2019年2月4日) 介護就労の外国人指導 4月 小郡に支援センター 受け入れ施設に助言も 外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法の施行(4月1日)に合わせ、介護現場で働く外国人や、外国人を受け入れる介護事業者を多方面からサポートする「就労支援センター」(ICEC)が福岡県小郡市に発足する。同法に基づく新たな在留資格「特定技能」の労働者や技能実習生などが対象で、介護に必要な日本語教育や生活面の指導、事業者側への助言も行う。こうした包括的な支援組織は九州で珍しいという。ICECを立ち上げるのは、1998年に発足した外国人就労支援事業会社「インターアジア」(小郡市)。経済連携協定(EPA)に基づいて来日した介護福祉士候補生や、日本のフィリピンパブや飲食店などで働いた後、介護業界に新たな働き口を求める在留外国人たちを対象に、介護職員の基礎的な資格「介護職員初任者研修」の講座を行ってきた。卒業生は6カ国の300人以上に上る。017年11月に介護分野が追加された外国人技能実習生は、入国時だけでなく、来日2年目にも日本語能力試験に合格することが求められる。介護の現場では、生活指導も含めた教育をどうするか、不安視する声が上がっていた。ICECは「アルツハイマー病」「安静」「嚥下(えんげ)」など介護に必要な用語を中心に、日本語教育や文化教育、生活面もサポートする。事業者側に対しては経営者だけでなく、外国人と一緒に働く職員全員に助言する。講師は約20人。介護福祉士や看護師の資格を持つ日本人や、介護福祉士の資格を持つ同社の卒業生など、日本の介護現場で働いた経験のあるフィリピン、ベトナム、中国出身の外国人も加わるという。同社の中村政弘代表(78)は「外国人は日本を介護先進国と捉え、期待して来日する。まずは日本人職員に、介護のプロとして『外国人を育てる』という意識を持ってもらえるような助言をしたい」と言う。17年9月、在留期限を更新できる在留資格「介護」が新設され、技能実習生や特定技能の労働者も介護福祉士の資格を取得すれば「介護」に変更申請できる。ICECでは、希望者向けに介護福祉士の資格取得を目指す講座も開設する予定。中村代表は「日本に残り、日本の介護を支え続ける外国人も育てたい」と話す。 *介護と外国人労働者 厚生労働省の推計によると、2025年度に介護人材が約34万人不足する恐れがある。国は改正入管難民法に基づく新在留資格「特定技能1号」(通算で5年が上限)の介護分野で、19年度から5年間で最大6万人の外国人労働者を受け入れる方針。介護職種の外国人技能実習生(最長5年)は“第1号”が昨年7月に来日。施設が実習生を受け入れるには、日本の監督機関「外国人技能実習機構」に実習計画を申請し、認定を受ける必要がある。昨年12月末時点での申請は1516人で、うち946人の計画が認定された。 *4-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190202&ng=DGKKZO40806230R00C19A2EA5000 (日経新聞 2019年2月2日) 大学・専門学校の留学生比率 地方、初の5%超え 昨年、サービス人気 地方にある大学や専門学校など高等教育機関で、2018年に留学生の比率が全学生の5%を初めて超えたことが日本学生支援機構の調査などで分かった。三大都市圏を除く39道県別では群馬や茨城で上昇が目立っており、6県が東京都の比率を上回った。少子化や東京一極集中に悩む地方の教育機関にとって、留学生の獲得は経営の要にもなりつつある。日本学生支援機構の外国人留学生在籍状況調査と文部科学省の学校基本調査を使い、高等教育機関の学生に占める留学生の割合を都道府県別に算出した。39道県で18年の留学生の総数は7万3320人。全学生数に占める割合は5.4%と、前年に比べ0.5ポイント上がった。留学生の比率は11年の東日本大震災後に停滞していたが、13年に底を打って以降は急速に上昇している。39道県のうち、13年比で最も比率が伸びたのは群馬県。13年は3%だったが、18年は15%と大幅に高まった。同県の担当者は「群馬大や上武大、高崎経済大といった以前から留学生が多かった大学ではそれほど増えていない。大幅に増えているのはNIPPONおもてなし専門学校だ」と話す。同校は群馬ロイヤルホテルグループの学校法人が13年に設立した専門学校。ベトナムやネパールを中心に約500人の留学生が日本のホテルや旅館、飲食店などのサービスを実践的に学んでいるという。群馬県内に本部を置く東京福祉大学の留学生が増えていることも比率を押し上げた。同大は留学生が約800人と学生の2割を占める。出身国別にみると、中国が最も多いが「最近はベトナム、ネパールも目立つ」(同大)。39道県で2番目に留学生比率が上昇したのは茨城県で、18年は11%とこの5年で5ポイント伸びた。国内有数の留学生数を誇る筑波大学に加え、東京家政学院大学系列の筑波学院大学などで留学生の増加が目立った。筑波学院大学によると、「留学生に人気の専攻はビジネスや情報系。18年はベトナムが一番多かった」という。留学生の生徒総数では東京都が約6万7000人と突出して多いが、全生徒の比率でみると7%。留学生の比率では大分県が16%と、全国で最も高かった。生徒数のほぼ半数を留学生が占める立命館アジア太平洋大学がある影響が大きい。このほか、山口、福岡、長崎県も東京の比率を上回った。高等教育の国際化に詳しい上智大学の杉村美紀教授は「人口減少が厳しい地方では留学生で人材を確保しようとする動きが強まっている」と指摘する。経済協力開発機構(OECD)の資料によると、欧米諸国のほとんどは高等教育機関の留学生比率が日本より高い。国際競争力を高めるためにも今後、留学生の人材育成は地方にとって重要性を増す。大学の外での交流を促すなど、地域全体で留学生を迎え入れる体制づくりがより求められそうだ。 <呆れて一言では語れないこと> PS(2019年2月7、9、10日追加): *5-1-1のように、「厚労省の統計不正による過少給付は雇用保険・労災保険・船員保険などを合わせて564億円になり、2019年内に追加給付を開始する」とのことで、(統計は正確でなければならないものの)失った記録の復元は、新聞・TV・HP等で連絡先を示して関係する期間に受給した人に申し出てもらい、日本年金機構(旧社会保険庁)の年金記録と照合・立証して支払えばよい。つまり、雇用保険は、再就職済で困っておらず、申し出ない人まで探し出して渡す必要はないのだ。 なお、*5-1-2のように、毎月勤労統計は不適切に調査されており、2018年の物価変動の影響を除く実質賃金の伸びが実態よりかさ上げされていたことが発覚し、民間の試算でも2018年の1人当たり実質賃金は大半がマイナスだそうだ。これには非正規の働き手が増えた要因もあり、名目賃上げ率は2%前後で2018年1~11月の実質賃金のうち9カ月分が前年を下回ったそうだが、1カ月単位の短期間かつ1%前後の賃金の増減で消費者心理が変わるわけではなく、子どもが生まれた場合の収入減・負担増・年金までを加味した生涯収支を考慮して貯蓄と消費の割合を決めているため、予算委員会で大量の時間を使うには議論が小さすぎる。そして、「消費者は名目賃金で賃金動向を実感する」というのは誰のことか不明であり、物価上昇率が名目賃金上昇率より高くて実質可処分所得が小さくなっていることにはすぐ気付くため、あまりに一般消費者を馬鹿にした見方だ。なお、今後は、企業がデータで賃金・品目毎の売上・仕入(単価と数量)を提出すれば、全数調査して毎月の平均賃金・卸売物価・消費者物価を出せそうである。 このような中、*5-2のように、公的年金で運用損を出し、社会保障の負担増・給付減ばかりしていれば、*5-3-1のとおり、静かに少子化が進むのは当然のことで、できることとできないことを理性的に判断して行動しているのは、子どもの少ない(orいない)人の方だろう。また、*5-3-2のように、信濃毎日新聞も「少子化の責任は女性にあると言いたいようであるため、麻生氏は暮らしや人権に関わる問題について正しい理解ができない人である」として、首相の任命責任も問われると記載している。ただ、首相は子どもがおらず、どちらかと言えば被害者に当たるため、麻生氏の発言の責任まで取らせるのは酷ではないか?なお、麻生氏は、2008年、麻生内閣で内閣府特命担当大臣(男女共同参画・少子化対策)として出産したという理由で小渕優子氏を初入閣させており、出産奨励は麻生氏の本音だ。そして、これは、「女性は産む機械」「ママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれればいい」という産めよ増やせよ論であり、時代錯誤だ。さらに、*5-3-3のように、京都新聞も「少子化となる環境こそ問題なのに、女性に責任を押し付けている」としているのは正論である。 *5-1-1:https://mainichi.jp/articles/20190204/k00/00m/040/250000c?fm=mnm (毎日新聞 2019年2月4日) 統計不正問題 年内に追加給付開始へ 延べ2000万人超に564億円 厚労省が公表した追加給付の工程表によると、過少給付は雇用保険や労災保険、船員保険などを合わせて564億円で、対象者は延べ2000万人超。追加給付が始まる時期は、保険の種類や現時点での受給の有無などによって異なる。現行の受給者は比較的早く、雇用保険が4月▽労災保険が6月▽船員保険が4月。既に受給が終わっている人は雇用保険が11月ごろ▽労災保険が9月ごろ▽船員保険が6月――と見込む。システム改修などの都合で例外的に時間がかかる対象者もおり、労災保険の一部では追加給付の開始が12月ごろにずれ込む見通しだ。この問題では、各保険の過去の受給額だけではなく現行の受給額も過少になっている。厚労省は3~6月に、適正な受給額に是正することを既に発表している。 *5-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190207&ng=DGKKZO40975120W9A200C1EE8000 (日経新聞 2019年2月7日) 18年実質賃金かさ上げ 不適切統計問題、実態は非正規増え、下落圧力 毎月勤労統計の不適切調査を受け、足元の賃上げの評価の難しさが一段と鮮明になった。2018年の物価変動の影響を除く実質賃金の伸びが実態よりかさ上げされていたことが発覚。民間の独自試算でも18年の1人当たり実質賃金は大半がマイナスだ。だが非正規の働き手が増えるなど、全体をならした賃金水準には下落圧力がかかっている。雇用者増や賃上げの効果をすべて否定する議論も乱暴だといえる。連合によると、18年労使交渉による賃上げ率は全体で2.07%。中小だけでも1.99%と20年ぶりの高水準だった。それでも野党は国会論戦などで18年1~11月の実質賃金のうち9カ月分で前年を下回ったと主張する。賃上げをしているのに、なぜ1人当たりの実質賃金は下がるのか。厚生労働省がもともと公表していたデータで実質賃金が前年を下回るのは6カ月分だった。野党の試算は同じ事業所を比べる「共通事業所」ベースで、物価上昇率を使って名目値から割り戻したものだ。みずほ総合研究所の独自試算でも18年1~11月のうち8カ月分が前年比マイナスだ。人々は物価の動きと自身の懐事情を勘案しながらモノやサービスを買うかどうか判断するので、実質賃金は消費者心理を分析するうえで重要な指標だ。ここで無視できないのは、1人当たりの実質賃金に低下圧力がかかる構造的な要因だ。総務省の労働力調査によると、18年の女性の就業者数は前年比で3%増え、男性の1%増を上回った。65歳以上の就業者数も18年は前年比7%増えた。女性や高齢者は非正規で働く人も多い。このため賃上げをしても、1人当たりの賃金にならすと、下落方向への圧力が働きやすくなる。その一方で、例えばこれまで夫だけが働いていた世帯で新たに妻も働くようになれば、家計全体としての所得は増えることが多いだろう。安倍晋三首相が「総雇用者所得は名目も実質もプラスだ」と主張するのも、消費を支える家計全体の購買力を意識したものだ。総雇用者所得は1人当たり賃金と雇用者数を掛け合わせた値だ。18年1~11月の総雇用者所得は実質で前年比1.0~3.6%増えた。第一生命経済研究所の星野卓也氏は「実質賃金が下がっても、暮らしが悪くなったとは言い切れない」と指摘する。消費動向を判断するため、所得の総量を重視するという説明には一定の説得力がある。むろん、低収入の働き手ばかりが増えて1人当たり賃金が伸びなければ、消費全体は勢いづかない。実質賃金がマイナスでも賃上げ効果をすべて否定できないのと同じく、総雇用者所得の増加だけで消費の先行きを安心できるわけではない。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「消費者は見た目の名目賃金でまず賃金動向を実感する。実質に加え、名目も合わせて見るべきだ」と、丁寧な議論の必要性を訴える。民間エコノミストの間では独自に賃金動向を分析する試みもある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮崎浩氏は日銀のアンケート調査などを使って分析。18年の賃金は上昇基調とみる。第一生命経済研の星野氏は雇用保険のデータから1人当たり賃金を算出し、17年度の実質値はマイナスだった。18年度分のデータはまだないが「物価上昇率が鈍く、18年度の実質賃金は上がっている可能性がある」という。 *5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190202&ng=DGKKZO40786420R00C19A2EA4000 (日経新聞 2019年2月2日) 公的年金運用損、最大の14.8兆円 10~12月、株安が打撃 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は1日、2018年10~12月期の運用損失が14兆8039億円だったと発表した。市場運用を始めた01年度以降、四半期ベースでは過去最大となった。GPIFは14年の運用改革で相場変動の影響をより受けやすくなった。環境や社会への貢献を重視するESG投資などの取り組みを強めて安定的な運用につなげる。米中貿易戦争や欧州政治の不透明感を背景とした世界的な株安が響いた。ただこれまでの累積の収益額は56兆7千億円に及んでおり、年金財政を維持するために必要な水準は確保している。資産別の運用損益を見ると、国内株で7兆6千億円、外国株で6兆8千億円の損失となった。 *5-3-1:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201902070016 (愛媛新聞社説 2019年2月7日) 麻生氏「少子化暴言」 責任の国民への押し付け許すな 不適切な発言をしては、撤回し開き直る。既視感のある光景がまたも繰り返された。麻生太郎副総理兼財務相が、少子高齢化に関し「子どもを産まない方が問題」と発言した。さまざまな理由で子どもをつくりたくてもつくれない人たちに対して著しく配慮を欠いた暴言だ。「産む・産まない」については、あくまで個人の自由意思に基づくものであることも理解できておらず、人権感覚に大いに疑問符が付く。そもそも少子化の要因は、これまでの国の見通しの甘さと不十分な政策にある。にもかかわらず今回の発言は、その責任を国民に転嫁するものだ。安倍晋三首相は発言について言及していないが、なぜ放置したままなのか理解できない。「子どもを産み、育てやすい日本」をつくるという政権の方針が、出産の「押し付け」を意味するものではないなら、麻生氏の処遇も含め、危機感を持って対処する必要がある。麻生氏の発言があったのは、地元・福岡での国政報告会。自身が生まれた頃より平均寿命が30歳長くなったと指摘し、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なやつがいっぱいいるけど、それは間違いだ。子どもを産まなかった方が問題なんだから」と述べた。2014年にも同様の発言をしており、何の反省もしていないことは明らかだ。野党のみならず、与党からも批判を受けた麻生氏は、発言を撤回。「一部女性の方が不快に思われる。それはおわび申し上げる」とも述べたが、不妊に悩む人には男性もいることを認識しておらず、失言の上塗りでしかない。少子化を含む人口減少問題は「静かな有事」とまでいわれる状況にある。政府は、女性1人が生涯に生む子どもの数「合計特殊出生率」を1.8に引き上げる目標を掲げるが、17年で1.43と低水準のままだ。だが「子どもがほしい」「第2子、第3子を持ちたい」、との希望を抱きながらも、経済的な事情や社会的なサポートの不足から、断念する夫婦が少なくないことを忘れてはならない。現状はこうした人たちへの国からの支援が行き届いていない。長く予算を担当してきた麻生氏が少子化を語るなら、まず国の「無策」への反省からだろう。少子化を巡る失言や暴言は麻生氏に限らない。昨年も、子どもを産まないことを「勝手な考え」とした自民党の二階俊博幹事長や、「必ず3人以上の子どもを産み育てていただきたい」と結婚披露宴で呼び掛けていると発言した同党の加藤寛治衆院議員が批判された。偏った家族観への固執は、党の体質ではないかと疑わざるを得ない。子どもがいない人を一方的に断罪しかねない発言は、社会に無用の分断をもたらすものであり、国民の代表である政治家として許されない。持論を自由に発信したいなら、せめて今の立場を自ら退いてからにすべきだ。 *5-3-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190209/KP190208ETI090004000.php (信濃毎日新聞 2019年2月9日) 麻生氏発言 首相の責任も問われる 暮らしや人権に関わる問題について正しい理解ができない人を、なぜ政権の中枢に起用し続けるのか。安倍晋三首相の責任も問われる事態だ。副総理兼財務相の麻生太郎氏が、支持者らを集めて開いた地元・福岡での会合で少子高齢化に関連して「子どもを産まない方が問題だ」と述べた。自身が生まれた頃と比べ平均寿命が30歳長くなったと指摘し、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なのがいっぱいいるけど、それは間違いだ」とした上での発言だ。少子化の責任は女性にある、と言いたいかのようだ。少子化の背景には保育所不足、雇用の不安定化など産みたくても産めない事情がある。そんな世の中にした一番の責任は、長年政権の座にある自民党にある。そもそも子どもを産むか産まないかは自己決定権の問題である。産まないことを「問題」だと批判するのは人権侵害につながる。発言に弁護の余地はない。麻生氏は5年前にも同じようなことを言っている。選挙の応援演説で、少子高齢化に伴う社会保障費の増加について「高齢者が悪いというようなイメージをつくっている人が多いが、子どもを産まないのが問題だ」と述べた。麻生氏はその時は、保育施設などの不足で産みたくても産めないのが問題との趣旨であり、「誤解を招いた」と釈明した。同じ発言が繰り返されたことから見て、「問題」とするのは本音と受け止めるほかない。麻生氏はこれまで、ほかにも暴言、失言を重ねている。財務省幹部によるセクハラ問題では「はめられて訴えられているんじゃないかとか、いろいろなご意見は世の中いっぱいある」。医療費を巡る政府の会議では「たらたら飲んで、食べて何もしない人(患者)の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」。そこには社会的弱者への共感がない。そんな人が第2次安倍内閣の発足以降、副総理兼財務相のポストに居座り続けている。足元で森友学園問題が起きても責任を取らず、留任した。「女性は産む機械」「ママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれればいいなと思う」…。政府・自民党幹部が過去に重ねてきた発言の数々を思い出す。一人一人の個性を大切にし、権利を保障するよりも、国のために国民を動員する発想がにじむ。党の体質も問われている。 *5-3-3:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190209_4.html (京都新聞社説 2019年2月9日) 麻生氏の暴言 またか、と看過できぬ 麻生太郎副総理兼財務相が「子どもを産まないほうが問題だ」と発言し、批判を浴びている。 発言の根底には政策の不備を女性らに責任転嫁する姿勢が見え、言葉足らずでは済まされない。 発言は3日に地元福岡県で開いた支持者向けの会合であった。少子高齢化問題を語る中、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なのがいっぱいいるけど、それは間違いだ。子どもを産まなかったほうが問題なんだから」と言及した。麻生氏は翌日、衆院予算委員会で野党から問いただされて発言を撤回し、その後、陳謝した。予算委で批判されても、にやけるばかりの麻生氏の態度を不快に感じた国民は少なくないだろう。麻生氏は「長寿化より、少子化のほうが社会保障や財政の持続可能性の脅威となるということを申し上げた」と釈明した。だが2014年にも同様の発言をして批判を受けており、本音とも取れる。政治家の言葉には、さまざまな立場の人が耳を傾けている。弱者の痛みを共有し、発言がどう受け止められるのかと聴衆の思いをくみ取りながら話せば、暴言を発することはないだろう。安倍晋三政権は女性活躍や働き方改革を掲げている。ところが麻生氏に限らず、出産を巡って政権や与党の中枢にいる政治家の発言が物議を醸してきた。確かに日本が抱える多くの問題は高齢化と併せ、少子化が急激に進んでいることに起因している。働いて、社会を支える世代が減るから社会保障制度が揺らぎ、経済成長が低迷している。とはいえ子どもを産む、産まないは、個人の問題だ。少子化の背景には労働環境など社会的障壁があり、望んでも「産めない」環境こそが問題であるのに、女性らに責任を押し付けていないか。長時間労働の是正や育児休暇の充実、経済的不安の解消によって仕事を続けつつ希望通りに子どもを産み育てられる環境を整える―それこそが政治の責務だ。根本的な対応を怠ってきた帰結が今日の少子化であろう。麻生氏は政権ナンバー2にもかかわらず、耳を疑うような放言、暴言が目立つ。いずれも閣僚としての資質に疑問符が付く。発言の揚げ足を取る考えは毛頭ないが、繰り返される暴言を、またか、批判しても無駄だ、と寛容に受け止めてはなるまい。安倍首相は麻生氏を不問に付してきたが、「1強」のおごりが顔をのぞかせていないか。国民の理解を得られるとは思えない。 <地方創成と教育の充実> PS(2019年2月12、13日追加):子育て世帯の負担を軽減して少子化対策に繋げるだけでなく、どの子にも3~5歳時に適した教育を与えるという意味で、義務教育で無償の小学校への入学年齢を3歳にすればよいと私は思うが、*6のように、3〜5歳児の全世帯幼保無償化を行うのも一歩前進だ。しかし、0〜2歳児は、夫婦で育休をとれば家庭で育てる選択肢もあるため、無理に預かる必要はないだろう。また、地域住民を増やすには、「教育が充実している」というのが重要な要素であるため、市長は産業振興を支える人材を創るという意味だけでなく、教育そのものの充実にも一歩進んだ取り組みを行い、恵まれた環境になったらそれを宣伝するのがよいと考える。 また、*6-2のように、資生堂が中国を中心とする海外向け需要の急増に対応することを目的として久留米市に進出することにしたのは、九州は地の利を活かしてアジアへの輸出に熱心に取り組んでいるため的を得ている。また、久留米大学が近くにあるため、化粧品会社がバイオと結び付いて、品質の維持・向上だけでなく新製品の開発を企画できるメリットもあるだろう。また、必要な原料を、近くの農漁業で供給できるメリットもある。 なお、*6-3のように、インターネット上の漫画・小説・写真・論文等のあらゆるコンテンツをダウンロードすることを、文化庁が著作権侵害として全面的に違法とする方針を決定したそうだが、最近は、学生でもインターネット上に掲載されている世界の論文に直接アクセスして教科書より先端の知識を入手したり、政治家が書いた政策を直接見て切磋琢磨したりしている時代であるため、文化庁のドアホな方針は、日本の論文数をさらに減らし、文化力を下げるだろう。 *6-1:http://qbiz.jp/article/148622/1/ (西日本新聞 2019年2月12日) 幼保無償化法案を閣議決定 3〜5歳児は全世帯、成立急ぐ 政府は12日、幼児教育・保育の無償化を実施するための子ども・子育て支援法改正案を閣議決定した。今年10月から3〜5歳児は原則全世帯、0〜2歳児は住民税非課税の低所得世帯を対象に、認可保育所や認定こども園、幼稚園の利用料を無料にする。認可外保育施設などは一定の上限額を設けて費用を補助。政府、与党は今国会の重要法案と位置付け、早期成立を目指す。政府は同日、低所得世帯の学生を対象に、大学や短大などの高等教育機関の無償化を図る新たな法案も閣議決定した。授業料や入学金を減免するほか、返済不要の給付型奨学金を支給する。来年4月の施行を目指す。幼保無償化は、子育て世帯の負担を軽減し少子化対策につなげる狙い。安倍政権が掲げる「全世代型社会保障」の一環で、財源には消費税率10%への引き上げに伴う税収増加分を充てる。3〜5歳児の場合、私立幼稚園の一部は月2万5700円、認可外施設やベビーシッター、病児保育などのサービスは月3万7千円を上限とする。0〜2歳児は月4万2千円まで補助する。認可外施設は保育士の配置数などで国が定める指導監督基準を満たすことが条件だが、法施行後5年間は基準を満たさない施設も対象となる。制度の検討過程で、全国市長会が「指導監督基準を満たさない施設まで含めると、子どもの安全に責任が持てない」と強く反発。このため地域事情に応じて、市町村条例で対象施設の基準を厳格化することも認める。朝鮮学校幼稚部やインターナショナルスクールなどは、国の基準を満たさない場合は無償化の対象にならない。 *6-2:http://qbiz.jp/article/148678/1/ (西日本新聞 2019年2月13日) 資生堂の久留米進出、九州の産業に多様化期待 雇用拡大、地元企業と連携も 九州初となる資生堂の新工場が福岡県久留米市に建設されることが決まった。訪日外国人客の増加を受け、高まる「メード・イン・ジャパン」製品への需要に応えるとともに、アジアへの輸出にも対応する。これまで自動車や半導体製造などを中心に発展してきた九州にとっても、産業の多様化につながり、雇用にとどまらない経済波及も期待されるものの、化粧品産業の裾野拡大などは未知数だ。「(バイオ産業の集積を目指す)『福岡バイオバレープロジェクト』に弾みがつく。新しい雇用も生まれ、地方創生という観点からも非常に感謝している」。福岡県の小川洋知事は12日の立地協定締結式で、資生堂の新工場進出に期待を寄せた。九州は自動車や半導体製造などを基幹産業として発展。技術や人材の移転が進み、部品メーカーなど関連産業も集まって、一大集積地を形成するようになった。ただ、輸出依存の高い九州の製造業は海外の景気悪化や国際競争の激化などのあおりを受けることもあり、より多様な産業が求められている。今回、化粧品の世界的ブランドが進出することで、九州の産業構造の重層化が進む。資生堂の魚谷雅彦社長も「地元のITベンチャーといろいろな取り組みができるのではないか。バイオ分野との連携もできれば新しい価値を生み出していける」と地元との協調にも意欲をみせた。雇用が広がる側面もある。久留米市の大久保勉市長は、大学生の地元定着率が低いことに触れ「有名企業に就職できることはすばらしい」と期待。資生堂は地元での雇用規模は今後固めるとしているが、「かなり地元の人に協力いただくことになると思う」(魚谷社長)という。高い品質の「日本ブランド」製品を維持し、地元の産業として育てるには質の高い人材の養成、確保も課題になる。一方、自動車産業のように、原料の供給などで裾野が広がるかは不透明だ。佐賀県唐津市を中心に化粧品産業の拠点化を目指す動きもあるが、資生堂側は既存取引先の九州工場からの仕入れなどにとどまる可能性もあり、供給網への参入といった進出の波及効果は、現段階では見通せない。 ◇ ◇ ●海外需要の急増に対応 品質維持、向上が鍵 資生堂が福岡県久留米市に化粧品の工場新設を決めたのは、中国を中心とする海外向け需要の急増に対応するのが最大の狙いだ。少子高齢化、人口減少で国内市場の伸びが期待しづらい中、同社は既に連結売上高の6割近くを海外で稼いでいる。海外市場で高い人気を誇る資生堂の「メード・イン・ジャパン」。その品質とブランド力を維持することこそ、新鋭工場の使命といえる。日本製の化粧品は、2010年ごろから急増した訪日外国人による「爆買い」で人気に火が付いた。爆買いが沈静化した後も人気は持続。帰国後に通信販売で買い求める中国人も少なくない。国の統計によると、化粧品の17年の国内出荷額は約1兆6千億円で過去最高。対中輸出額は18年までの8年間で10倍に増えた。資生堂の海外市場での売れ筋は、高価格帯ブランド「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」のほか、中価格帯の「エリクシール」など。「長年の研究開発の成果や最新技術を採用している点など『日本の資生堂』が信頼されている」との同社グローバル広報部の言葉を裏付けるように、数字も伸びている。18年12月期の売上高をみると、中国向けは前期比32・3%、アジア太平洋圏は13・9%それぞれ伸びた。海外からの「神風」を受け、栃木県、大阪府に続く工場新設に踏み切る資生堂。だが化粧品の世界では、欧米勢の攻勢も激しい。また最近では、日本製への信頼を失墜させる品質問題が日本企業で相次いでいる。海外市場の期待を裏切らない品質の維持、向上こそが、資生堂の勝ち残り戦略と言って過言ではない。 *6-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM2D6F8NM2DUCVL03V.html (朝日新聞 2019年2月13日) 著作権侵害、スクショもNG 「全面的に違法」方針決定 著作権を侵害していると知りながら、インターネット上にある漫画や写真、論文などあらゆるコンテンツをダウンロードすることを全面的に違法とする方針が13日、文化審議会著作権分科会で了承された。「スクリーンショット」も対象となり、一般のネット利用に影響が大きいことから反対意見が出ていた。悪質な行為には罰則もつける方向で、文化庁は開会中の通常国会に著作権法の改正案を提出する。早ければ来年から施行となる見込み。これまでは音楽と映像に限って違法だったが、被害の深刻な漫画の海賊版サイト対策を機に、小説や雑誌、写真、論文、コンピュータープログラムなどあらゆるネット上のコンテンツに拡大されることになった。個人のブログやツイッターの画面であっても、一部に権利者の許可なくアニメの絵やイラスト、写真などを載せている場合は、ダウンロードすると違法となる。メモ代わりにパソコンやスマートフォンなどの端末で著作権を侵害した画面を撮影して保存する「スクリーンショット」もダウンロードに含まれる。このため「ネット利用が萎縮する」と批判が起きていた。ただ、刑事罰の対象範囲については、著作権分科会の法制・基本問題小委員会で「国民の日常的な私生活上の幅広い行為が対象になる」ため慎重さを求める声が相次ぎ、「被害実態を踏まえた海賊版対策に必要な範囲で、刑事罰による抑止を行う必要性が高い悪質な行為に限定する」こととした。いわゆる「海賊版サイト」からのダウンロード▽原作をそのまま丸ごと複製する場合▽権利者に実害がある場合▽反復継続して繰り返す行為――などを念頭に、今後文化庁が要件を絞り込む。 <在留資格の根拠が不明確で恣意的である> PS(2019年2月16、21日追加):*7-1の「高度人材ポイント制」の加点対象大学が、現在は旧帝大・早大・慶大などの13大学に限られており、地方大学に少なく、その選択に明確な基準がないのには驚いた。外国人在留資格優遇大学の拡大は、単に「高度人材の地方分散」という要請だけでなく、有用な人材を集められるか、公平性はあるかなどの視点も重要であるため、恣意性がが入らないように、各大学の申請により合理的な基準(少なくとも国立大学は入るようでなければならないし、農業・保育・介護など需要の多い科目を教えている大学も入れるべきである)に基づいて行われるべきである。 また、*7-2のように、熊本県警は入管難民法(資格外活動・不法残留)違反で、菊池市の製造工場で働くベトナム国籍の技能実習生ら12人を逮捕し、その理由は「技能実習の在留資格を持つ人が資格外活動の許可を受けずに同工場で補助作業員として働いて報酬を受け取った」「在留期間を超えた」などだそうだ。しかし、人手が足りず、少子化を問題にしながら、日本で働いている外国人を軽微なことで犯罪者扱いするのは人権侵害も甚だしく、日本のメディアがトランプ大統領を批判するのは何かを間違えている。 なお、*7-3のように、新しい外国人雇用制度に期待している農業は、積み残された課題をまじめに指摘しているため、一つ一つの課題を解決していくことが望まれる。 *7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190216&ng=DGKKZO41350440V10C19A2MM8000 (日経新聞 2019年2月16日) 外国人在留資格、優遇大学を拡大 高度人材、地方へ分散促す 政府は外国人の学歴や年収を点数にして評価する「高度人材ポイント制」の加点対象を地方大の卒業者にも広げる。地方大出身者が在留資格を取りやすくする。4月に新在留資格による外国人労働者の受け入れが始まるのを前に、相対的に賃金が高い都市部への人材の集中を避け、人手不足が深刻な地方への分散を促す。高い技能を持った外国人を地方経済の活性化に生かす狙いだ。高度人材ポイント制は2012年に導入した。学歴や年収、職歴といった項目ごとにポイントを設け、70点に達すると「高度専門職」の在留資格を与える制度。配偶者の就労や親の帯同などで優遇を受けられる。18年6月時点で約1万3千人が認定されており、政府は22年末までに2万人に増やす目標を掲げる。対象は大学教員などの研究職や企業の営業職、経営者といった人材。活動の種類によって異なるものの、例えば博士号取得で20~30点、法相が指定する大学を卒業した場合は10点を加算する。今回はこの対象校を広げる。3月をメドに地方を含む100以上の大学に拡大する。これまでは東大をはじめとする旧帝大や早大、慶大など全国13大学に限られていた。既存の対象校には広島大や九州大なども含まれていたが岡山大や熊本大など、より人口が少ない地域の大学にも広げる。加点対象大学の卒業者でなくても、職歴や年収に応じて加算されるポイントで高度専門職の在留資格を得られる。ただ加点対象の大学を卒業すれば10点を獲得でき、在留資格をより取得しやすくなる。政府は留学の段階から外国人が地方を選びやすくなるとみる。基準となるのは英教育誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションなどが公表する世界大学ランキングに選ばれた大学。国際化の取り組みに文部科学省が補助金を出す「スーパーグローバル大学」の指定校も対象とする。政府は4月からの外国人材の受け入れ拡大を控え、運用に関する基本方針を昨年12月に決定。外国人材が大都市圏に集中するのを防ぐため、必要な措置をとると明記した。事実上の単純労働を対象とする新在留資格「特定技能」を巡っては、先進的な取り組みを進める自治体への財政支援制度をつくる方針を打ち出した。 *7-2:http://qbiz.jp/article/149120/1/ (西日本新聞 2019年2月21日) 技能実習生ら12人逮捕 熊本の同じ工場 入管法違反容疑 熊本県警は19日、入管難民法違反(資格外活動や不法残留)の疑いで、同県菊池市の製造工場で働くベトナム国籍の技能実習生ら12人を逮捕した。逮捕されたのは、菊池市泗水町永のチン・ヴァン・ズン容疑者(25)らで、11人が技能実習、1人が留学の資格で来日していた。逮捕容疑は、チン容疑者ら技能実習の在留資格を持つ2人が、昨年11月〜今年2月19日、資格外活動の許可を受けずに同工場で補助作業員として働き、報酬を受け取った疑い。8人が在留期間を3カ月〜3年半超えて日本に滞在した不法残留、2人が偽造在留カードを所持した疑い。県警によると、12人は一軒家2棟に6人ずつで暮らしていた。近隣住民から「不審な外国人がいる」と通報があったという。12人は同じ派遣会社から工場に派遣されたと話しており、県警は派遣元の会社からも事情を聴いている。 ◇ ◇ ●熊本で外国人労働者急増 地震後、人手足りず 日本で働く外国人労働者は昨年10月時点で146万463人に達し、届け出が義務化された2007年以降、最多を更新した。熊本県では1万155人が働き、前年からの増加率は31・2%と全国で最も高かった。少子高齢化や景気回復に伴う労働力不足に加え、熊本県では「震災後の人手不足も要因」(熊本労働局)とみられ、外国人労働者の増加傾向は今後も続くとみられる。国籍別ではベトナムが約4割を占め、中国、フィリピンが続く。同労働局によると、資格別では「技能実習」が6295人で6割超。就労する産業別では「農業、林業」29・2%、「製造業」28・3%、「卸売業、小売業」10・8%、「建設業」8・8%の順に多かった。技能実習生が、より収入が高い職を求めるなどして失踪する事例も相次ぐ。熊本県警によると、昨年1年間の失踪者は247人に上り、15年の2・8倍となっている。 *7-3:https://www.agrinews.co.jp/p46802.html (日本農業新聞 2019年2月21日) 外国人雇用制度 課題積み残し 生活支援誰が? 派遣元のサポート期待 技能実習生受け入れ法人 昨年の臨時国会で改正出入国管理法が成立し、4月から新たに外国人を雇用する制度がスタートする。短期間の受け入れも可能となり、農・漁業では直接雇用だけでなく派遣形態でも受け入れができるようになるため、生産現場の期待は高い。ただ、外国人労働者が地域社会になじめるような生活支援の枠組みなど不透明な部分が多く、制度開始を前に、不安を訴える声が上がる。働く外国人にとっては、家族の呼び寄せが基本的にできないなど、先送りされた課題も残る。鳥取県大山町の「当別当育苗」では、フィリピンからの技能実習生、アンジェリカ・キントさん(27)がポット苗を運ぶ作業に励む。「ここに来てよかった。親切で学ぶことが多い。ごますりじゃなくて、本音よ」。個室が整備されるなど働く環境に感謝するものの、母国に残した3人の子どもを思うと、切ない気持ちがこみ上げるという。夫と義理の母が子育てをするが「お金をためて仕送りをするの。早く会いたいわ」と話す。年間160万ポット のスイカやトマトなどの苗を専業農家向けに出荷する同社。32年前に商社マンから農家に転職した當別當英治さん(68)が経営し、5年前から技能実習生を年間4人程度受け入れる。「気持ちよく働いてもらった方が経営にプラスになる。コミュニケーション不足は仕事のミスにつながる」と考え、実習とは別に、来日後1年間は毎日、自ら日本語を教え、対話を深める。食事や旅行などイベントも欠かさず、研修生の母国の文化や国民性を勉強して理解し、日常生活をサポートしてきた。国際貢献の名の下に行う研修と、事実上は労働力として受け入れる現場の実態に「無理がある」と感じていたことから、新制度に期待は大きい。作物に応じた派遣を希望し「直接雇用ならサポートもできる限りするが、派遣で生活支援を派遣会社が担うことになれば農家の負担軽減になる」と考える。 ●家族呼び寄せ 要望強く 家族の呼び寄せや生活支援をどこが担うかなど、4月からの制度開始を前に積み残された課題は多い。新制度では、外国人から要望の強い家族の呼び寄せは原則できないが、子どもを母国に残す場合、一時帰国は可能になる。ただ、来日、帰国時と同様に、一時帰国でも飛行機代は外国人が負担することになる見通しだ。人権の観点から家族帯同への要望は強く、経済同友会も1月に必要性を提言している。新制度では、受け入れる農家や派遣会社が支援できない場合、日本語習得や社会で暮らすための教育、住宅確保や手続きのサポートといった生活支援などを国が認定する「登録支援機関」が担う。業界団体や弁護士、社会労務士などが想定される。監理団体が登録支援機関になることもできる。ただ、同機関がどの地域で、どこまできめ細かくサポートできるかは不透明だ。外国人雇用を視野に入れる関東の農家は「実習生のように、受け入れ農家が責任を問われない派遣(形態)に期待している」と本音を明かす。法務省は今月から新たな仕組みについて、47都道府県で説明会を開いている。同省は「雇用計画や支援計画の基準などを記した政省令を公表できていないが、説明できる範囲で理解を求めていく」(入国管理局)とし、細部は「検討中」を繰り返す。4月からの施行を前に、自治体担当者は「国に聞いても不明確な点ばかり。人手不足対策は切実な問題なので、走りながら課題を検証して、運用を改善していくしかない」などと説明する。全国に先駆けて外国人を派遣する「農業サービス事業体」を発足し、5月から外国人を生産現場に派遣する長崎県は「政府の方針を受けて生活支援などを決めていきたい」(農業経営課)としている。 ●現行制度 教訓生かせ 外国人技能実習生や新たな在留資格を研究する早稲田大学の堀口健治名誉教授の話 新たな制度は4月に始まるが、仕組みが定まっておらず“生煮え”の状況だ。当面、農家やJAは技能実習生で対応を進めることになるだろう。技能実習制度では、訪れる外国人も受け入れる農家側も双方にメリットがあるよう、生活面も含めて多くの農家は配慮してきた。新制度では、技能実習制度に比べると作業に制限がないことがメリットとされるものの、トラブルも想定される。費用負担や手続きなど、どこが責任を負ってフォローするのか、派遣で支援体制が機能するのかなど、課題が残される。技能実習制度の教訓や仕組みを生かした対応が求められる。 <医療の充実も地方創成の手段の一つであること> PS(2019年2月14、21日追加):*8-1のように、九経連が、医療機関の外国人患者受入態勢整備を進めるため、「九州国際医療機構」を設立して多言語対応やトラブル対策を支援し、「訪日客などにしっかりした医療を提供するとともに、先端医療を国際的に供給するシステムをつくりたい」としているのはよいことだが、多言語に対応するのは容易でないため、AIなど医療分野以外からの機器開発による支援も重要だ。しかし、*8-2のように、「医療ツーリズム」市場も世界で急拡大しており、環境の良い場所で高度な医療を受けて完治したいというニーズは今後も増え、2021年まで年率13%で成長が続くそうで、医療は高付加価値の“観光”の一つになりつつある。 一方で、*8-3のように、日本にも医師不足地域があり、「年1900~2000時間」までの残業を認めるとする厚労省の原案が出ているが、これは医師を他の人の2倍働かせる内容で、よほど健康で病気になったことがなく病人の気持ちはわからないといった人しか医師を続けられないというパラドックスを作る上、医師が研鑽する時間をとるのも難しくする。厚労省は、*8-4のように、「2036年時点に各都道府県で必要とされる医師数を推計すると、最も医師の確保が進んだ場合でも宮崎など12道県で計5323人の不足が見込まれる」としているが、おおざっぱに全体数を推計するのではなく、診療科による医師の偏在もなくすよう頭を使うべきである。 しかし、ちょっと気を付ければ無駄に医師を忙しくする必要のないことも多いのに、*8-5の事例のように、私は(いつも風邪をうつされないように自分がマスクをかけて電車に乗るのだが)、先日、マスクを忘れて電車に乗った時、隣に来た男性に咳をされ風邪をうつされてしまった。このように、みんなに迷惑をかけるのに、マスクもせずに大きな口をあけてせき込むのはマナー違反であり、まさか「こういうことを言うのが相手を傷つける」などという教育はしていないだろうが、学校での清潔・マナーに関する教育に疑問が持たれる。 2018.7.28東洋経済 2018.11.15東京新聞 2019.2.18西日本新聞 (図の説明:左図のように、日本における外国人労働者数は毎年20万人ペースで増加しており、中央の図のように、人手不足はさらに増える見込みだ。また、右図のように、医師数も不足している地域があるが、診療科による医師の偏在もあるため、総量調整だけでは解決しない) *8-1:http://qbiz.jp/article/148407/1/ (西日本新聞 2019年2月7日) 外国人診療態勢強化へ 九経連が医療機関支援組織 多言語化やトラブル対策 九州経済連合会は6日、医療機関での外国人患者の受け入れ態勢整備を進めるため、「九州国際医療機構」を設立した。在留外国人や訪日客が増加する中、医療従事者向けのセミナーを開催するなどして、多言語対応の充実や医療費未払いといったトラブル対策を支援する。代表理事に就任した九州大病院の赤司浩一病院長は福岡市で記者会見し「訪日客などにしっかりと医療を提供するとともに、先端医療を国際的に供給するシステムをつくりたい」と抱負を述べた。九経連の麻生泰会長は「医療を通じて外国人に安心感を提供することが、観光やビジネスの面で九州の魅力アップにつながる」と強調した。法務省などによると、九州の在留外国人は13万1532人(2018年6月末)。九州の空港や港から入国した外国人は、18年に初めて年間500万人を超えたとみられる。在留外国人や訪日客の受診が増えるのに伴い、医療機関の言語対応が不十分で適切な診療ができなかったり、外国人患者が日本の公的医療保険制度を不適切に利用したりする事例も起きている。機構は九経連に事務局を置き、問診票などの多言語対応支援や医療通訳の勉強会開催、多言語で受診できる医療機関や医療保険制度など外国人向けの情報発信にも取り組む。治療目的の「医療ツーリズム」で来日する患者と受け入れ医療機関のマッチング支援も手掛ける考えだ。 *8-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36751950S8A021C1MM0000/ (日経新聞 2018/10/22) 医療ツーリズム、世界で急拡大 新興国が誘致競う 国外を医療目的で訪れる「医療ツーリズム」の市場が世界で急拡大している。主要国の高齢化や格安航空会社(LCC)など安い交通手段の発達により、タイなど新興国渡航の人気が高まる。各国で査証(ビザ)要件を緩めるなど需要取り込みの競争も激しい一方で、地元市民の医療が後回しになるとの批判も出ている。米プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が2018年に明らかにした調査によると、医療ツーリズムの世界市場は16年時点で681億ドル(約7兆6千億円)だったという。21年まで年率13%で成長が続くと試算している。16年は世界で約1400万人が移動したとみられ、訪問先はタイ、メキシコ、ブラジルなど新興国が人気だ。医療レベルが比較的高いにもかかわらず、物価が安いため。治療費を含めた旅費は1人あたり約3千~1万ドルで、通常の観光より多い傾向にある。市場拡大の背景には高齢化がある。50年に4人に1人が65歳以上となる中国などが需要をけん引する。また国内線で成長したLCCが国際線にも広がり、移動が手軽になっている。誘致合戦も過熱する。タイは「アジアの医療ハブ」構想を打ち出し、官民で取り組んできた。調査会社によると、17年に医療ツーリズムで訪れた人はのべ330万人と世界トップのもようだ。18年には4%増の同342万人の見込みだ。タイ政府は17年、治療目的の観光客向けに査証(ビザ)の滞在許可期間を延長した。中国など周辺5カ国からの観光客はそれまでより最大76日長い90日滞在できるようにした。バンコクが拠点の富裕層向け私立病院はホテル並みと評される豪華な設備を整え、呼び込みに躍起だ。近年台頭するのがインドで、訪問者は17年に約49万5千人と15年の2.1倍に増えた。医療機器や医師が優れている割に費用が安いのが一因で、手術費は先進国の2割で済む例もあるという。医療レベルが不十分な近隣やアフリカ諸国のほか、インドの伝統医学「アーユルベーダ」を目的にした欧米や中東の訪問者も多い。インド政府は医療人材のスキルを高める研修や、外部にアピールするイベントなどに補助金を出している。病院最大手アポロ・ホスピタルズは英語やヒンディー語などが話せない患者のために通訳を置き、母国から付き添う家族のために宿泊先を探すといった手厚い対応をしている。中東からの旅行者が多いのがトルコだ。地元メディアによると医療目的の訪問者は10年間で急増し、17年に約70万人が訪れた。人気の一つが男性向け植毛で、年10万人以上が治療を受ける。予約までの日にちの短縮や通訳の手配などを官民で進めており、18年には外国人の治療費の一部を付加価値税(VAT)の対象外とした。欧州ではハンガリーやルーマニアなど東欧の人気が伸びている。メキシコも、医療費が高くなりがちな米国の旅行者を多く受け入れる。一方で問題点も指摘される。米国の疾病予防管理センターは言葉が分からない国での治療、品質が分からない薬剤に危険が伴うと指摘する。オーストラリアでは17年、マレーシアで脂肪吸引などを受けた男性が帰国後に死亡したと報じられた。たとえばインドでは医師や病床数が足りず、低所得者層や農村部には十分な医療サービスが行き渡っていない。こうした国民が置き去りにされる中、国外の高所得者が恩恵を受ける医療ツーリズムを批判的にみている個人もいる。日本政府も医療ツーリズムを成長分野と位置づけ、巻き返しをねらう。ただ、16年の医療滞在ビザ発行は1307件にとどまっている。海外での認知度が乏しいうえ、新興・途上国と比べてコストが高い点が伸び悩んでいる原因とみられる。 *8-3:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3981696009012019EE8000/ (日経新聞 2019/1/10) 医師不足地域「年1900~2000時間」 残業規制で厚労省原案 厚生労働省が2024年4月から適用する医師の残業時間の上限規制の原案がわかった。医師不足の地域の病院などでは「年1900~2000時間」まで容認する案だ。連合など関係団体に示して調整を進めているが、一般労働者の上限規制を大幅に上回るため、議論は難航が予想される。4月施行の働き方改革関連法では一般労働者で年720時間以内、単月100時間未満などの残業時間の上限規制を課す。医師も規制対象だが、厚労省は医師向けの独自ルールを今年度中に固め、5年後に適用する。一般の医師の残業時間の上限は休日労働込みで960時間とする方針。その上で地域医療に欠かせない病院などに勤務する医師は特例で上限を緩める。原案では特例は35年度末までの経過措置とする方針。勤務間インターバルなどの健康確保措置も義務付ける。 *8-4:http://qbiz.jp/article/148936/1/ (西日本新聞 2019年2月18日) 医師不足12道県5000人超 36年推計 都市からの配分急務 厚生労働省が2036年時点で各都道府県で必要とされる医師数を推計すると、最も医師の確保が進んだ場合でも、宮崎など12道県で計5323人の不足が見込まれることが17日、関係者への取材で分かった。医師確保が進まない場合、必要な人数を満たせない34道県の不足分を積み上げると、3万人超となる。東京や大阪、福岡、佐賀、長崎など13都府県では、その場合でも必要人数を上回る医師が確保できると予測されており、大都市圏から不足地域に医師を配分する施策が急務となる。厚労省は36年度までに医師が都市部に集中する偏在問題の解消を目指している。今回の集計結果を18日の有識者検討会に報告し、医師確保策の議論の材料とする。今後、医師が足りない地域に関しては、地元で一定期間勤務することを義務付ける大学医学部の「地域枠」を優先的に配分するなど、対策を強化したい考えだ。検討会では、医師が集中している現状の度合いを示す「医師偏在指標」を、都道府県が複数の市町村などをまとめて設定する「2次医療圏」ごとに提示。都道府県など3次医療圏単位でも示し、医師不足が顕著な岩手、新潟、青森など15県は「医師少数3次医療圏」とする方針。今回の推計は、患者の年齢や性別による受診率や、配置されている医師の性や年齢、将来の人口変化などを考慮し、36年時点で必要とされる医師数を算出。2次医療圏ごとでは、全国335カ所のうち約220カ所で医師が不足する結果となった。都道府県ごとの推計をみると、医師確保が最も進んだ場合でも、新潟で1534人、埼玉1044人、福島804人の不足が生じる。医師確保が進まなかった場合は、埼玉で5040人、福島で3500人、茨城で2376人と不足人員がさらに増えると推計。必要人数を満たせなかった34道県の不足分を、他の都道府県からの流入を考慮せず、単純に積み上げると、3万4911人となる。一方、その場合でも、東京で1万3295人、大阪で4393人、福岡で2684人が必要な医師数を上回ることが見込まれている。 *8-5:http://qbiz.jp/article/149044/1/ (西日本新聞 2019年2月20日) せき込む音が高速バス車内に響く・・・ せき込む音が高速バス車内に響く。せきの主は反対側の窓側席の男性。マスクはしていないようだ。世の中ではインフルエンザが流行中。バスの中は逃げ場がない。「勘弁してほしい」と思い窓からずっと外を見ていた。近くの客は気が気じゃなかっただろう。そんな体験から10日余り。のどが痛くてせきが止まらない。鼻水が出て顔が熱っぽい。病院で検温すると38度7分。「見るからに怪しい」と医師。ウイルス検査でA型のところに赤い線が出た。ワクチンを打っていたので症状が軽くて済んだ。職場を強制退去させられ、しばらくは自宅軟禁生活だ。編集局内でインフルエンザがじわじわ広がっている。世間ではピークは過ぎたようだが、流行の終わりかけに発症するとは中年男の悲哀。今週初めからのどが痛かったのにマスクをしてなかった自分を猛省。 <地方の発展はみんなの幸福に繋がるのに・・> PS(2019年2月19日追加):*9のように、金沢産野菜と農産加工品を東京に運ぶ貨客混載の高速バスが運航を開始したそうだ。人口の少ない地方は、バスも貨客混載しなければ走らせることができないくらいだが、それなら貨物積載部分の面積が大きな地方仕様のバスがあってもよいと思われる。このような中、2020年開催の二度目の東京オリンピック・パラリンピックに2兆円以上もかけ、東京の地下鉄工事は1路線1,000億円以上と言われながら、地方が返礼品を工夫し地場産品を開発しながら、ふるさと納税によって少々住民税を集めると東京圏から苦情が出るというのは、それこそ背景や歴史を無視したエゴ以外の何物でもないだろう。 *9:https://www.agrinews.co.jp/p46779.html (日本農業新聞 2019年2月19日) 高速バスで野菜直送 東京便スタート JA金沢市 金沢産の野菜と農産加工品を東京に運ぶ貨客混載の高速バス「産地直送あいのり便」の初便が18日、西日本JRバス金沢営業所を出発した。バスのトランクスペースを使って生産量が少ない「加賀野菜」などを輸送し、販路拡大や運送費のコスト削減、農家の所得増大につなげる。今後、月に4便程度の運行と都内各所での即売会などを計画する。輸送されたのはサツマイモ「五郎島金時」や「加賀れんこん」「金沢春菊」などの加賀野菜と加工品各9品目の計4ケース。JA金沢市が集荷した。金沢営業所前で積み込み、JAの辰島幹博常務は「小ロットでも可能な新しい輸送事業となる。金沢産野菜の発信の広がりに期待する」とあいさつした。バスは午前9時半に金沢駅発、午後5時22分に新宿駅着の「金沢エクスプレス2号」。野菜マーケティング販売などのアップクオリティ(東京)が運営を担当し、19日、三菱地所(同)の社員に直販する。アップクオリティによると、バス会社と連携した農産物の貨客混載輸送は9県目。担当者は「都内のレストランやスーパーからも注文を取りたい」と話した。西日本JRバスでは農産物の貨客混載輸送は初めて。金沢営業所の丸岡範生所長は「バスは3列シートで定員が28人と少なく、トランク収納に余裕がある。定期便を使って輸送したい」とした。JAの辰島常務は「昨年の試験輸送では鮮度が高く、速く届くと好評だった。生産量の確保が今後の課題だ。これまで以上に、若い人にも加賀野菜を栽培してもらいたい」と期待を寄せる。 <地方創成とふるさと納税> PS(2019年2月22、23《写真等》、24、25日追加):地方が発展するためには、*10-1のように、所得の高い仕事を増やし、地域の魅力をアピールして移住者を増やすのが最も合理的である。そのためには、今後の成長産業である農林漁業資源を活かして生産者の所得を増やしたり、製造業の事業所・本社機能が地方に移るような施策を行うことが必要だ。しかし、海外も含めて立地の選択肢が多い製造業は、税制よりも販売エリアへのアクセス・労働力の質と単価・関連産業からの調達を考慮して立地を決定するため、間違いのない意思決定と筋の通った普段の誘致努力が必要だ。一方で、*10-2の地方創生目的で文化庁などの政府機関の一部を地方移転するというのは、政府機関の生産性はもともと高くなく、分散すればさらに効率が下がるため、首都機能の一部をまとめて疎開でもさせるのでなければ、国全体としてはマイナスだろう。 また、*10-3のように、対馬の漁業者でつくる「対馬の漁業者の所得向上を実現する会」が、①対馬市への公設市場開設 ②燃料費の高騰対策 等の要望書を提出したそうだ。しかし、①については、対馬はよい水産物を作っているため、公設市場をいくつも通すより東京・大阪・福岡の公設市場の出張所を対馬につくってもらった方が、手数料を省くことができるのではないか?また、②については、「船の燃料費が高いから補助しろ」と20年以上も言い続けるのはあまりに工夫がなく、船を電動船に変えて島で発電した自然エネルギー由来の電力で動かしたり、クロマグロの漁獲制限で所得が半減したのならクロマグロの完全養殖をしたり、船に魚を効率よく漁獲できる機材を備えたりすればよいと考える。 *10-4-1、*10-4-2のように、ふるさと納税額は、泉佐野市が2017年に135億円を集め、2018年には360億円に達する勢いで他地域から苦情が出るほどだが、私は商才があると思った。泉佐野市は関西空港を持ち、瀬戸内海・淡路島・四国に面した美しくて歴史的交通の要衝であるため、泉佐野市にアマゾンやガリバーと同じくらい世界に通用するネット通販会社(例えば、大王《おおきみ》という名前)を作って、質の良いものを販売してはどうか? そして、地方自治体が、ふるさと納税により、一村一品のような小さな目標ではなく、自らの長所を活かして堂々と売れる物を開発してきたことは、ふるさと納税制度の大きな成果なのである。 なお、今日(2019年2月24日)わかったのだが、*10-5のように、半島・離島・奄美群島のうち一定の基準を満たす地域は、「個人又は法人が機械・装置、建物・その附属施設及び構築物の取得等をして事業の用に供すると5年間の割増償却ができる」という税制優遇があるそうだ。 移住希望地域 長崎県対馬市の様子 (図の説明:左図のように、移住希望地域は長野県が連続1位で、都市部から地方への移住に抵抗感のない人は多いことがわかる。また、左から2番目の図のように、長崎県対馬市は韓国の釜山と49kmしか離れていない国境離島であり、リアス式海岸が美しい。そして、ここでは獲る漁業だけでなく、右から2番目の写真のようなマグロの養殖・1番右の写真のような真珠の養殖・その他の魚介類の養殖も盛んだ。つまり、対馬は、今後のアジアの台頭で潜在力が高くなる島であり、付加価値の高い仕事をするための資本投下や人材投入が必要な時期なのである。また、真珠も素敵なアクセサリーに加工して販売した方が付加価値が上がるし、ふるさと納税の返礼品にしてもよいと考える) イタリア製 フランス製 スペイン製 日本製 (図の説明:念のため、各国の真珠のブローチを並べて見たところ、ヨーロッパ製は台座のデザインが華やかで、日本製は真珠は多くついているのだが、台座が簡素なため全体としておとなしくなっている。そのため、外国のデザイナーを入れてみるのも一案だろう) *10-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190220/KT190219ATI090041000.php (信濃毎日新聞 2019年2月20日) 移住希望地 長野県1位 2年連続 認定NPO法人ふるさと回帰支援センター(東京)が19日に発表した2018年の移住希望地ランキングによると、1位は2年連続で長野県となった。2位は前年3位の静岡県、3位は前年16位の北海道だった。長野県は年代別でも30〜50代でトップ。20代以下では新潟県、60代では北海道、70代以上では宮崎県が1位だった。長野は20代以下で2位、60代で3位、70代以上で2位。長野県楽園信州・移住推進室は、市町村と連携した情報発信などが要因と分析。阿部守一知事は「来年度は『信州暮らし推進課』を設置し、一層充実した体制の下で移住、交流の促進に取り組む」としている。18年に同法人が運営する情報センターを利用した人や、セミナー参加者に移住したい都道府県を複数回答可で質問。9776件を集計した。 *10-2:https://www.kochinews.co.jp/article/252817/ (高知新聞 2019.2.10) 【一極集中の拡大】地方創生の本気度を問う 東京一極集中に歯止めがかからず、むしろ加速している実態があらためて明らかになった。総務省が公表した2018年の人口移動報告によると、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)は転入者が転出者を14万人近く上回る転入超過となった。前年より1万4千人以上多く、一極集中が拡大した。その半面、39道府県が人口の流出を意味する転出超過で、高知県は2300人余り。全国の市町村の7割以上で転出超過となった。日本人に限った統計でも、東京圏は23年連続で転入が上回った。安倍政権が地方創生本部を新設した14年以降の5年間は、10万人超えが続く。東京圏の吸引力が強まっているのは皮肉といえる。東京一極集中は、戦後の高度経済成長政策のひずみとして問われ続けてきた課題だ。近年は20年の東京五輪に向けた建設ラッシュや、企業の業績改善に伴う慢性的な人手不足という要因もあろう。ただ、安倍政権は地方創生を看板政策に掲げ、選挙のたびに地方の期待を取り込んできた。その本気度が問われる実態であり、危機感を持って政策を見直すべきだ。15年度にスタートした地方創生の総合戦略は、東京圏と地方の転出入を20年に均衡させる目標を掲げている。だが、目に見える成果は上がっていない。達成に向けた目玉政策は、本社機能を東京23区から地方に移す企業への優遇税制だったが、昨年11月現在で認定は25件。企業を大胆に動かす誘導策にはなり得ていない。昨年も東京23区にある大学の定員増を10年間禁止する新法が成立。さらに、人口流出をせき止めるダムとして重点支援する「中枢中核都市」に高知市を含む82市を選んだ。こうした政策の実効性も現時点では見通せない。中枢中核都市については地方から、周辺の人口を吸い上げる「ミニ集中」を懸念する見方が強い。人の流れを変えるインパクトでいえば、政府機関の地方移転も文化庁の京都府移転などごく小規模にとどまっている。一極集中の是正という本来の狙いに照らせば、期待できる効果はあまりに小さい。省庁の強い抵抗が繰り返されてきた課題とはいえ、ここでも安倍政権の本気度に疑問符が付く。首都直下地震など災害リスク対応という観点もある。リーダーシップを持って議論し直す必要がありはしないか。政府は19年度、総合戦略の新5カ年計画を策定する。これまでの政策を真摯(しんし)に検証し、地方の意見を取り入れながら、実効性がある政策に向け大胆に見直すべきだ。高知県も転出入者ではかる「社会増減」を19年度にゼロにする目標を掲げてきた。雇用創出や移住の環境整備など粘り強い努力が欠かせまい。また、現場の実態を踏まえた有効な政策を国に実現させるには、なお積極的に声を上げていく姿勢が必要になる。 *10-3:http://qbiz.jp/article/149041/1/ (西日本新聞 2019年2月20日) 対馬の漁業者、公設市場開設など県に要望 長崎県対馬市の漁業者でつくる「対馬の漁業者の所得向上を実現する会」(宮崎義則会長)は19日、県庁を訪れ、同市への公設市場開設や燃料費の高騰対策など5項目を県に求める5325人分の署名と要望書を提出した。県側は「施策の参考にしたい」と述べたが、漁業所得の具体的な改善策には言及しなかった。同会は昨年末に発足。署名には漁業者のほか、船の燃料や電気設備を扱う業者も協力した。同会によると対馬には魚市場がなく、売り上げの半額をかけて本土の市場に出荷しているという。また本土と対馬の燃料費の格差を県が補てんするように求めている。要望書では他に、クロマグロの漁獲制限で半減した所得対策や、違法操業への取り締まり強化を訴えている。同会は「市場があれば流通ルートに乗りにくい魚も販売でき、漁業者の利益が増える」としている。 *10-4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32713260W8A700C1LKA000/ (日経新聞 2018/7/6) ふるさと納税、関西首位は大阪・泉佐野市の135億円 17年度 総務省は6日、応援したい自治体に寄付できる「ふるさと納税」による2017年度の寄付額を発表した。関西2府4県は1位が大阪府泉佐野市の135億円で前の年度の約4倍。2位は和歌山県湯浅町の49億円で同5倍だった。総務省は17年4月、返礼品の調達額を寄付額の3割以下にするなど「良識ある対応」を求めたが、3割を超えた両自治体の寄付額が急増した。泉佐野市は17年度の返礼率は約4割。返礼品の品ぞろえを1000種類以上と16年度より300種類以上増やした。もっとも選ばれたのが肉。1万円以上の寄付で黒毛和牛切り落とし1.75キログラムの人気が高かった。湯浅町は地域振興を目的に地元の約70商店が取り扱う商品を返礼品としている。肉やウナギなど高額な返礼品が人気を集めた。返礼率も最大4割だった。両市町とも18年度は返礼率を3割以下とするなどの対応をとる。関西2府4県の寄付額の総額は前年度から1.9倍の437億円だった。豪華な返礼品を自粛する動きが出る中でも、制度が徐々に浸透し、全国と同様に伸びた。地域課題を解決する財源に、ふるさと納税を活用する自治体も目立っている。大阪府吹田市は国立循環器病研究センター(同市)に入院する子どもの家族が低料金で宿泊できる施設の移転費の一部にあてる。個人や法人からの寄付を含めて目標の2億円に達した。 *10-4-2:http://qbiz.jp/article/149331/1/ (西日本新聞 2019年2月25日) ふるさと納税3倍、大阪・泉佐野 規制批判し、ギフト券も贈る 大阪府泉佐野市は25日、ふるさと納税による2018年度の寄付額が、約135億円だった17年度の3倍近い360億円になる見込みだと明らかにした。市はふるさと納税制度で過度な返礼品を規制する総務省方針に反発し、3月末までの予定で返礼品に加えてインターネット通販大手「アマゾン」のギフト券を贈るキャンペーンを始めていた。千代松大耕市長は記者会見で「キャンペーンの効果が出たが、19年度以降は大幅に減額するだろう。総務省の動きはふるさと納税の縮小につながる」と規制方針を改めて批判した。市によると、18年度は当初から17年度を上回るペースの寄付が寄せられた。360億円は2月に始めたキャンペーンの効果も考慮した12月末時点での想定で、最終的にはさらに増える可能性もある。国会で審議中の地方税法改正案は返礼品を「調達費が寄付額の30%以下の地場産品」とし、これを守る自治体のみを制度対象にすると規定している。市は4月以降、寄付の受け付けを一時停止し、改正法に適合させるため約2カ月かけて返礼品の見直しなどをするという。 *10-5:http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/hra_zei.html (国土交通省) 半島・離島・奄美群島における割増償却制度 半島地域・離島地域又は奄美群島のうち、市町村の長が産業の振興に関する計画を策定する(一定の基準を満たすものに限る。)地区として関係大臣が指定する地区において、個人又は法人が、機械・装置、建物・その附属施設及び構築物の取得等をして対象事業(製造業・旅館業・農林水産物等販売業)の用に供した場合は、5年間の割増償却ができます。(以下略) <地方創成と自治体の連携> PS(2019年2月24日、3月2日追加):*11-1の「圏域」については、例えば、市町村毎に上下水道を運用するよりも、いくつかの市町村が一つの会社に管理運用を任せて市町村間で水を売買したり、圏域に一つの最新型ゴミ処理施設を作ったりした方が効率がよくなるし、基幹病院や中学・高校も小さな市町村まで1セットづつ持っている必要はなく、いくつかの市町村が圏域として協力した方が質が高くて効率も良くなるだろうが、その「圏域」として最適な範囲はインフラ別に異なるため、協力したい市町村が必要なネットワークを作るのがよいと思われる。つまり、国が財源を使って無理やり連携や合併を強いると、むしろやりにくくしてマイナスになることもあるため、地方自治体が連携したい時にそれを手助けするのがよいと思う。 なお、*11-2は、「今ごろ次世代エネルギーとして水素の利用拡大に向けた政府工程表が作られているのは10年遅い」というのが私の感想だが、再生可能エネルギーで電力や水素を作れば、地方の住民が必死で稼いだなけなしの金を湯水のように外国に支払ったり、輸送に金がかかりすぎて生産物を運べず産地として成立しなかったりするということがなくなるため、地方自治体や民間が先に立って世論を作り、国に進めさせるのがよいと考える。 私は、福岡市のJR博多駅と博多港を結ぶ交通なら、*11-3のようなロープウエーではなく、博多港まで高架で電車を走らせるか地下鉄を乗り入れるのがよいと思う。何故なら、乗車することが目的の観光だけでなく生活の中で乗るものであるため、便利が一番だからだ。これは、空港も同様で、途中にモノレールがあったり、乗り換えが多かったり、階段が多かったりして乗り継ぎが不便なのは、大きな荷物を持って乗ることが多い交通機関として現代の生活にマッチしていない。つまり、国交省は、首都圏で国際線と国内線を別の空港にしたことも含めて交通機関の連結を考えず、利用者の利便性を重視しなかったために、使い勝手の悪い交通ネットワークを作ってしまったわけである。 2019.2.22 2019.2.21西日本新聞 2018.9.17朝日新聞 2019.3.2西日本新聞 東京新聞 (図の説明:左と中央の図のように、日本政府内で水素ステーション設置が本格的に動き出したそうだが、燃料電池車《iMiev》ができてから既に10年以上が経過しており、あまりに遅いと言わざるを得ない。また、右から2番目の図のように、自動車だけでなく電車にも蓄電池電車や燃料電池車ができて脱電線できそうな時代であり、次は船舶や航空機等の輸送手段に応用すべき時である。なお、交通機関は安全で乗換や所要時間が少ない方がよいため、福岡市内のロープウェイはBestな選択でないと思われる) *11-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/341631 (佐賀新聞 2019年2月24日) 「圏域」構想が反対上回る 市町村連携、自治体アンケート 人口減少が進む地域の住民サービスを維持するため、新たな広域連携として、複数の市町村でつくる「圏域」が行政を運営する構想に全国自治体の計34%が反対し、賛成は計30%にとどまったことが23日、共同通信のアンケートで分かった。市町村の独自性が維持できない懸念のほか、国主導で議論が進むことへの警戒感が強い。一方で市町村の人材不足を補うため、連携強化による行政の効率化を期待する意見もある。この構想は昨年7月、総務省の有識者研究会が2040年ごろの深刻な人口減少を見据えて提言。圏域への法的権限や財源の付与も求めた。政府は第32次地方制度調査会の主要テーマとし、来年夏までに一定の結論をまとめる方針だ。調査では「反対」9%、「どちらかといえば反対」25%、「賛成」4%、「どちらかといえば賛成」26%だった。「その他」34%は、制度の詳細が固まっていないため賛否を判断できないなどの理由が多かった。反対理由は「地方の声を踏まえて慎重に議論すべきだ」の40%が最も多い。研究会が自治体側と十分な対話のないまま提言した経緯もあり、地方からは「小さい町を次々と合併へ追い込もうとしているのではないか」(兵庫県新温泉町)との声が上がる。 ●佐賀県内は賛否拮抗 佐賀県の20市町のうち、新たな広域連携に賛成と答えたのは7市町、反対は6市町で賛否が拮抗(きっこう)した。「詳細が不明」などとして、7市町は賛否を示さなかった。「賛成」は鳥栖市、「どちらかといえば賛成」は唐津、伊万里の2市と吉野ヶ里、基山、みやき、江北の4町。「どちらかといえば反対」は多久、武雄、嬉野、神埼の4市、玄海、白石の2町だった。賛成の市町は「地方創生の取り組みだけでは今後、地域活性化は難しい」(唐津、鳥栖)、「『圏域』で新たなブランド構築など観光や産業面で期待できる」(伊万里)、「『圏域』内で同一水準の住民サービスが提供できるようになる」(吉野ヶ里、みやき)、「法的根拠や財源を持つことで、圏域での取り組みの実効性が高まる」(江北)などを理由に挙げた。反対の市町は「将来の地方自治のあり方については、地方の声を踏まえて慎重に議論すべき」(武雄、白石)、「従来の中枢連携都市圏や定住自立圏など広域連携の枠組みで特に問題がない」(神埼)、「自治体独自の住民サービスがしにくくなるなど、自治が失われる恐れがある」(玄海町)とした。 *11-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201902/CK2019022202000139.html (東京新聞 2019年2月22日) 水素ステーション無人化 20年目標 燃料電池車普及へ 政府工程表案 次世代エネルギーとして期待される水素の利用拡大に向けた政府の工程表原案が二十一日、明らかになった。燃料電池車(FCV)に補給する「水素ステーション」を二〇二〇年までに無人で運営できるようにする目標を設定。コンビニ併設型のステーション拡大も盛り込んだ。二〇年の東京五輪・パラリンピックや二五年の大阪・関西万博など国際行事に合わせ技術力を世界に発信。二酸化炭素(CO2)を排出しない環境に配慮した燃料と位置付け、官民一丸で活用を促進する。水素ステーションを全国規模で整備するため国の補助対象を現行の大都市中心から全都道府県に拡大することを検討する。トヨタ自動車やパナソニックなど民間企業とつくる協議会で月内にも公表し、三月末までの正式決定を目指す。ステーションを現状の約百カ所から二〇年度までに百六十カ所、二五年度までに三百二十カ所整備する従来目標は据え置いた。無人化による営業時間拡大や人件費削減などの利点を想定。代わりに運営者が遠隔監視する仕組みの構築が必要で、安全性を確保できるかどうかが焦点になる。FCVは二五年にスポーツタイプ多目的車(SUV)やミニバンといった新車種を投入する。二〇年までに四万台、二五年までに二十万台、三〇年までに八十万台を普及させる目標を維持した。現状は約三千台とかけ離れているが新車種投入で巻き返す。東京五輪では福島県で再生可能エネルギーを使って製造した水素を、FCVや選手村のエネルギーとして利用する。大阪・関西万博でも日本の先端技術や水素の魅力を国内外にアピールする。最初の工程表は一四年に策定され、今回は三年ぶり二回目の改訂となる。工程表とは別に作成された一七年の水素基本戦略や、一八年のエネルギー基本計画を今回の原案に反映させた。資源に乏しく原発依存度の低下も図る日本にとって水素は重要なエネルギーになり得るが、生産や管理に費用がかかることが課題だ。採算を良くするため計画を具体化した一方、従来目標の据え置きも目立った。特にFCVの普及は遅れており、今後も工程表通りに進むかどうかは不透明だ。 *11-3:http://qbiz.jp/article/149655/1/ (西日本新聞 2019年3月2日) 福岡ロープウエー「尚早」 自民市議団が検討費削除提案 予算修正案、可決の公算大 福岡市のJR博多駅と博多港を結ぶロープウエー構想を巡り、市議会(60人)最大会派の自民党市議団(18人)は1日、市の2019年度一般会計当初予算案に計上された実現可能性の検討費5千万円を削除する修正案を提案すると発表した。南原茂会長は「ロープウエー限定の調査は受け入れられない」と述べ、検討費を予備費に移す案を示した。ロープウエーは市議会で反対論が根強く、修正案の可決は確実な情勢。賛成が過半数を突破し3分の2に迫る可能性も出ている。「ロープウエーに絶対反対ではないが、時期尚早で議論ができない」。市議団の打越基安副会長は、与党第1党ながら修正案に踏み切った理由を説明した。ロープウエーは、高島宗一郎市長が昨秋の市長選で公約に掲げ、3選後の今年1月には有識者や市幹部による研究会が「ロープウエーが望ましい」と提言。市議団には「結論ありきで議会軽視だ」との不満が募っていた。一部には「検討だけならいいのでは」との容認論もあったが、市議選(4月7日投開票)が迫る中、「市民にはロープウエー反対の声が多い」との見方も浮上。福岡空港への出資問題などで対立した高島市長とのあつれきも根底にあり、多数決で修正案の提出が決まったという。ほかの会派では、立憲民主や国民民主などでつくる福岡市民クラブ(8人)が、検討費を生活交通の調査に移す独自の修正案を検討中で今後、自民側と調整に入るとみられる。共産党市議団(7人)も独自の案を提出するが、「自民案にも乗ることができる」。福岡維新の会(3人)や緑と市民ネットワークの会(2人)も同調する見通し。一方、与党会派のみらい・無所属の会(5人)は「計上されたのはあくまで検討費」との立場。公明党市議団(11人)は「自民の話を聞いて冷静に対応する」、高島市長に近い自民党新福岡(3人)は「議会の議論を注意深く見守る」と述べるにとどめた。修正案が可決された場合、高島市長は地方自治法に基づく首長の「拒否権」である再議(審議のやり直し)を議会に求め、出席議員の3分の1超が修正案に反対すれば否決することもできる。高島市長はこの日、「市議会の意見をうかがいながら適切に対応する」とのコメントを発表したが、具体的な対応策は示さなかった。 <膨大な無駄遣いと失う資産の事例> PS(2019年2月25、26日追加): *12-1-1のように、米軍普天間飛行場の辺野古移設に関する県民投票は、投票率52.48%・反対72.2%で、同じ言葉を繰り返すだけの政府“説明”にも関わらず、沖縄県民の正しい意思が示されたと思う。辺野古には、*12-1-2のように、軟弱地盤が存在し「地盤改良」という名のさらなる莫大な費用と環境破壊が必要で、工期も長期化することがわかっていた。一方、国内外の空港のある他の離島を使えば軟弱地盤ではない上、埋め立て費用も時間もかからないため、沖縄県民の判断をポピュリズムと呼べる人はいない。 また、*12-2-1のように、2011年3月に起きたフクイチ原発事故のデブリ接触調査が、2019年2月13日に初めて行われ、デブリの取り出しに今後30~40年かかり、これが廃炉の最大の難関・廃炉の実現を占う試金石などと書かれているため、全体として必要になる膨大な費用を明らかにすべきだ。さらに、1~4号機の原子炉建屋を取り囲むように、20年度にも海抜11メートルの防潮堤が建つと書かれているが、東日本大震災でフクイチに押し寄せた津波の高さは15mで、海抜11メートルの防潮堤では意味がないため、またまた本気度が疑われる。 そのような中、*12-2-2に、東日本大震災とフクイチ原発事故からの復興のため2012年2月10日に発足し期限が10年と定めらている復興庁について、「原発事故による福島県の復興は10年ではできず長期にわたるので新しい組織を立ち上げる」と記載されている。しかし、国民は多額の復興税(所得税の2.1%)を支払ってきたため、これまでコストセンターである復興庁が使った予算とそれによって得られた成果を国民の前にガラス張りにすることから始めるべきであり、そんなこともできない既得権益としての新復興庁ならいらない。 なお、*13に、国は「放射能濃度が基準値(8千ベクレル/kg)以下の汚染土は、最大99%再利用可能として福島県内の公共事業で再利用する計画を進めている」と書かれているが、汚染土が未だ野積みされている地域を避難解除している無神経さに呆れる。前にもこのブログに記載したが、8千ベクレル/kgの土砂1t(総計:8,000ベクレルX1,000 kg=800万ベクレル)を人里から離れた山中に捨てるのと、8千ベクレル/kgの土砂1,400万立方メートル(8,000ベクレルX1,000 kgX14,000,000m3X1.7《土の比重t/m3》=約190兆ベクレル)を人が居住している地域で再利用するのは人体に対する影響が全く異なるため、基準値以下か否かで判断するのはまやかしだ。また、放射性物質の濃度は技術開発すれば低減できるわけではなく、エネルギーを放射線として出しながら別の物質に変わるのを待つ必要があり、その半減期は、ヨウ素131は8日、セシウム137は30年、ストロンチウム90は29年、プルトニウム239は2.4万年、ウラン238は45億年などであるため、それらが人体に与える影響を心配するのは単なる「不安」ではなく「科学的」なのである。そのため、厳格に管理しながら帰還困難区域の堤防やかさ上げに再利用するのは可能かも知れないが、環境省が「再利用は県内、県外を問わない」としているのは、日本中に放射性物質をばら撒くことになり、住環境にも農林漁業にも悪影響があって、日本の環境省の見識が問われるのである。 2018.12.30東京新聞 2018.3.10毎日新聞 汚染土の処理 (図の説明:左図のように、大本営発表ではなく市民が計測した放射能汚染地図では、関東地方もしっかり汚染されている。また、中央の図のように、福島県などの被汚染地域では、未だに汚染土を入れたフレコンバッグが民家や田畑の傍におかれている。そして、汚染土の処理も、右図のように、ほこりを立てたり、地下水と交わらせたりなど、不注意極まりないのだ) *12-1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019022401001712.html (東京新聞 2019年2月25日) 辺野古埋め立て反対が72% 沖縄県民投票、52%投じる 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡る県民投票は24日投開票の結果、辺野古沿岸部の埋め立てに「反対」が72・2%となった。投票率は、住民投票の有効性を測る一つの目安とされる50%を超えて52・48%だった。玉城デニー知事は近く安倍晋三首相とトランプ米大統領に結果を伝達する。県側は民意を踏まえ、改めて移設を断念するよう迫るが、県民投票結果に法的拘束力はなく、政府は推進方針を堅持する見通しだ。「賛成」は19・1%、「どちらでもない」は8・8%。反対票は投票資格者の4分の1に達した。投票条例に基づき、玉城氏には結果を尊重する義務が生じた。 *12-1-2:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190223-00000023-ryu-oki (琉球新報 2019.2.23) 岩屋防衛相、工事長期化認める 辺野古新基地 軟弱地盤改良へ 「新要素加わった」 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、岩屋毅防衛相は22日の閣議後会見で、軟弱地盤が存在し工期が長期化するとの指摘について「地盤改良という新たな要素が加わったので、その分は(工期が)延びていくとは思う」と述べた。これまで政府は国会答弁などで、一般的な工法により地盤改良が可能であると強調する一方、工期の延長に関しては明確に説明していなかったが、岩屋氏は工事が一定程度長期化するとの認識を示した。政府が長期化を認めたのは初めて。岩屋氏は会見で、軟弱地盤の対応について「一般的な工法を用いて、相応の期間で確実に地盤改良と埋め立て工事をすることが可能だ」と強調した。「相応の期間」がどの程度なのかについては具体的な明示は避けた。軟弱地盤は辺野古の埋め立て予定海域の大浦湾側にあり、防衛省は砂を締め固めたくい約7万7千本を打ち込み、地盤を強化する工法を検討している。県は20日、埋め立て承認撤回を巡る防衛省の審査請求に関して反論の意見書を国土交通省に提出した。その中で防衛省が軟弱地盤の改良に使うくいに650万立方メートルの砂が必要になり、新基地建設が長期化し普天間飛行場の固定化につながることなどを指摘している。軟弱地盤が水深90メートルの地点まで達していることを含め、岩屋氏は22日の会見で「具体的なことは詳細な設計が決まればしっかり説明したい」と話した。 *12-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41168350S9A210C1I00000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2019/2/12) 初のデブリ接触調査 福島第1、直前ルポ 3月で事故から8年となる東京電力福島第1原子力発電所に日本経済新聞の記者が12日、単独取材に入った。13日から始まる炉心溶融(メルトダウン)で溶け落ちた核燃料(デブリ)の本格的な調査に向けた準備作業が進んでいた。デブリの取り出しは今後30~40年かかる廃炉における最大の難関で、廃炉の実現を占う試金石となる。「調査装置がスタンバイしている」。1~4号機の原子炉建屋を眺める高台から、東電の木元崇宏リスクコミュニケーターは2号機の原子炉建屋を指さした。最大15メートルある調査装置は複数のパーツに分かれて、建屋内で出番を待つ。13日早朝から組み立て原子炉格納容器の横の穴から入れてデブリに触れる。建屋の脇には調査に携わる作業員が待機する小さなコンテナが並んでいた。すぐ近くの道から2号機を見上げた。2号機は事故時に水素爆発が起きなかったため淡い水色の原子炉建屋の輪郭がしっかりと残るが、内部の線量は非常に高い。視察時間は5分程度に限られた。2号機の調査は装置の先端にある2本の指でデブリをつまみ、硬さやもろさなどを調べる。政府と東電は2019年度に取り出し方法などを決めて、21年に取り出しを始める計画だ。ただデブリの取り出しは極めて難しい。もし実現できなければ、東電の経営や福島の復興に大きな影響を与えることになる。生々しい姿が残る場所もあった。3、4号機の建屋の間にある中央制御室だ。事故直後に当直の作業員らが対応にあたった最前線に足を踏み入れた。薄暗い部屋をペンライトで照らすと、「格納容器ベント」などと書かれた操作レバーや事故時の走り書きのようなメモが目に付いた。何かを捜していたのか、床に散乱する鍵の束なども大災害の混乱を物語っていた。中央制御室から出て海沿いでは原発構内を津波から守る防潮堤の建設工事が始まろうとしていた。1~4号機の原子炉建屋を取り囲むように、20年度にも海抜11メートルの防潮堤が建つ。17年に政府の地震調査研究推進本部が、千島海溝沿いで巨大地震が近い将来に発生する可能性があると発表したのを受けた対策だ。震災から8年がたち、作業環境を整え、自然災害への備えを万全に、長い廃炉作業に臨む時期だ。すれ違う構内の作業員の「お疲れさまです」との声を耳に福島第1原発を後にした。 *12-2-2:https://blogos.com/article/357375/ (BLOGOS 2019年2月12日) 復興庁 新たな組織立ち上げへ 復興庁は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興のために、 2012年2月10日に発足し、10年間と期限を定められています。トップは、 首相で、事務の統括をする補佐として復興相が置かれています。各省庁、 自治体、団体・企業などの出向者など520人が働いています。10年になる2021 年度には、復興庁は廃止されるため、政府は、復興を引き継ぐ新たな組織を立ち 上げる、と報じられています。原発事故による福島県の復興などは、10年では とてもできず長期にわたるためと、南海トラフ地震など将来の巨大災害に対応する 役割も、新しい組織には担わせることも検討する、ということで、今年夏に閣議 決定する方針です。原発事故があった福島県だけなく、津波被災地の復興事業も 土地のかさ上げや震災弱者などの支援事業などが、2021年3月までには終わら ないことが、復興庁の検証で判明しました。総額32兆円の復興予算は、復興庁の 廃止とともに原則として使えなくなることなどもあり、政府・与党は、新たな組織を 立ち上げて、2021年4月以降も、国が復興事業に関与し続ける必要がある いう認識で一致した、とのこと。しかし、大型公共事業を新たに計画するわけでは ないので、金融庁や消費者庁のような内閣の「外局」として、担当大臣を置く方針、 ということです。国が支援し続けることは、当然のことだと思います。しかし、これ までの復興事業、それを担った復興庁の役割と各省庁の関係など、また、将来の 巨大災害をどのように含めるのか等、しっかり検証して、あらたな形を、私たちにも わかりやすく議論して、進めてもらいたいと思います。これまでも、復興庁に、 自らの省庁の権限が奪われるのではないかという警戒感などから、必ずしも スムーズに運用されていないことがありました。自治体との関係も含めて しっかり議論して、新しい組織を、効果的に働けるものにしてほしいと思います。 *13:http://www.asahi.com/shimen/20190226/index_tokyo_list.html (朝日新聞 2019年2月26日) 福島の汚染土、再利用計画 「最大99%可能」国が試算 地元住民の反対受け難航 東京電力福島第一原発事故後、福島県内の除染で出た汚染土は1400万立方メートル以上になる。国は放射能濃度が基準値以下の汚染土について、最大で99%再利用可能と試算し、県内の公共事業で再利用する計画を進めている。県外で最終処分するためにも総量を減らす狙いがあるとするが、地域住民から「放射線が不安」「事実上の最終処分だ」と反発が出ており、実現は見通せていない。中間貯蔵施設には4年前から汚染土の搬入が始まり、19日時点で235万立方メートルが運びこまれた。2021年度までに東京ドーム11個分に相当する1400万立方メートルが搬入される予定だ。汚染土は45年3月までに県外の最終処分場に搬出されることが決まっている。だが最終処分場を巡る交渉や議論は始まっていない。環境省の山田浩司参事官補佐は「(最終処分を)受け入れていただくのは簡単ではない。現時点では全国的な理解を進める段階だ」と話す。汚染土の再利用はその理解を進める手段の一つという位置づけだ。同省は有識者会議で16年6月、「全量をそのまま最終処分することは処分場確保の観点から実現性が乏しい」として、再利用で最終処分量を減らし、県外での場所探しにつなげる考えを提示。▽「指定廃棄物」(1キロあたり8千ベクレル超)の放射能濃度を下回ったり、下げたりした汚染土を再利用▽管理者が明確な公共事業などで使う▽道路や防潮堤の基礎のように安定した状態が続く使い方――などの条件を示した。また再利用する汚染土の量については18年12月の同じ会議で、濃度低減などの技術開発が最も進んだ場合、1400万立方メートルのほぼすべてが再利用でき、最終処分すべき汚染土は全体の約0・2%、3万立方メートルほどに減らせるという試算を明らかにした。しかし思惑通り進むとは限らない。同省は「再利用の対象は県内、県外を問わない」としているが、実証事業と称して実際に再利用計画を提案したのは県内の3自治体のみ。二本松市など2自治体では住民の反対を受け、難航している。同市で反対署名を集めた鈴木久之さん(62)は「約束を変えて県内で最終処分しようとするもので、再利用はおかしい」と批判する。 <その他の国民負担と生活・産業> PS(2019年3月2、3《図》日追加):*14-1のように、経済同友会が温暖化ガス抑制のため提言をまとめ、政府が2030年の電源構成で原発の比率を20~22%と定めているのを受けて、政府に原発を使い続けるための原子力政策再構築を促したそうだ。しかし、原発は温排水を排出して地球温暖化対策にもマイナスである上、環境にはさらに深刻な被害を及ぼすため、このように科学的合理性を持たず生産性の低い金の使い方ばかりして昔返りしたがる人が、経産省や経営意思決定の重要な場所に多いことが日本の実質賃金が延びない大きな理由である。 また、*14-2のように、東海第二から電気を受け取る東電HDが約1900億円と東北電力・中部電力・関西電力・北陸電力3社が1200億円を原電東海第二原発に資金支援する計画だそうだが、そういうことに支援するくらいなら東電はうなぎ上りに上がった電気料金(これも国民負担であり、上昇は生活や産業を妨害している)を下げるべきだ。そのため、周辺自治体は、もう一度、原発事故が起こって故郷や農地はじめ膨大な資産を失うまで原発稼働を容認し続けるのではなく、速やかに脱原発に向かわせるべきであり、それが損失を最小化する方法だ。 なお、*14-3の東日本大震災は、原発事故がなければ速やかに街づくりや復興ができた筈だが、原発事故によって帰郷や居住が妨げられている。そして、外国人労働者も、こういう場所に住みたくないのは同じである。 2019.3.2東京新聞 2019.2.14西日本新聞 2019.2.21北海道新聞 (図の説明:左2つの図のように、原発事故の影響を強く受けた地域は、当然のことながら水稲の作付を元に戻すことができていない。また、中央の図のように、原発は大災害を想定外として、地震・火山列島である日本全国に広がっている。そして、北海道の泊原発は、右図のように、内浦湾が噴火湾であるため外輪山の上に建設されており、付近は活断層や地震が多い) *14-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190301&ng=DGKKZO41866540Y9A220C1EE8000 (日経新聞 2019年3月1日) 原発利用継続へ「政策再構築を」 経済同友会が提言 経済同友会は28日、二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスを抑制するための提言をまとめた。当面は原子力発電を使い続ける必要があるとしたうえで、政府に「現実を改めて国民に丁寧に示し、原子力政策を再構築すべきだ」と求めた。政府が2030年の電源構成で原発の比率を20~22%と定めているのを受け、目標達成に向けてあらゆる努力をすべきだと訴えた。経済同友会は長期的には原発を減らしていく「縮原発」を主張する一方、環境問題への対応から当面は原発が必要だとの立場をとる。 *14-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13916101.html (朝日新聞 2019年3月2日)東電、東海第二支援1900億円 安全対策3000億円に膨張 再稼働見通せぬ中 原発専業会社の日本原子力発電が再稼働をめざす東海第二原発(茨城県)をめぐり、電力各社による資金支援の計画案が明らかになった。安全対策工事費が従来想定の2倍近い約3千億円に膨らむとし、東海第二から電気を受け取る東京電力ホールディングス(HD)が3分の2に当たる約1900億円を支援する。これに東北電力のほか、中部電力、関西電力、北陸電力の3社も支援することが柱だ。再稼働時期は2023年1月を想定しているが、周辺自治体から再稼働の了解を得るめどは立っていない。自治体の同意を得られずに廃炉になった場合、東電などは巨額の損失を被る可能性がある。福島第一原発事故を起こした東電は、国費投入で実質国有化された。にもかかわらず、再稼働が見通せない他社の原発を支援することに批判が出るのは必至だ。計画案によると、再稼働前の19年4月から22年末までに約1200億円が必要とし、受電割合に沿って東電が8割の約960億円、東北電が2割の約240億円を負担。東電は、東海第二から将来得る電気の料金の「前払い」と位置づけ、銀行からの借り入れで賄う見通し。東北電は前払いか、原電の銀行借り入れへの債務保証の形で支援する。稼働後の23年1月~24年3月に必要な約1800億円は原電が銀行から借り入れる。これに対し、東電が約960億円、東北電が約240億円、中部電など3社が計約600億円を債務保証する。関電と中部電、北陸電は、原電の敦賀原発2号機(福井県、停止中)から受電していたことを根拠に支援に加わる。だが、敦賀2号機は原子炉建屋直下に活断層の存在が指摘されて再稼働は難しく、受電の見通しは立たない。直接電気を受けない東海第二の支援に乗り出すことは、株主らの反発を受ける可能性がある。原電は保有する原発4基のうち2基が廃炉作業中で、再稼働を見込める原発は東海第二しかなく、資金繰りが厳しい。東海第二が廃炉となれば原電の破綻(はたん)が現実味を帯び、原電に出資する電力各社は巨額の損失を被りかねないため、支援を検討していた。 *14-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13916066.html (朝日新聞 2019年3月2日) (東日本大震災8年)細る介護、異郷の施設へ 被災地から170人、青森で入所 東日本大震災の被災地で介護施設が見つからないお年寄りを、青森県弘前市の高齢者福祉施設が受け入れ続けている。8年間で延べ170人。古里に帰れぬままの人も多く、35人が異郷で亡くなった。震災のひずみが行き場のないお年寄りを今も生んでいる。雪深い津軽に、社会福祉法人弘前豊徳会が運営する「サンタハウス弘前」はある。介護老人保健施設などの入所者の2割、66人が岩手、宮城、福島3県の被災地からだ。宮城県気仙沼市の千葉ツヤ子さん(87)は仮設住宅で1人で暮らしていた2015年秋、脳梗塞(こうそく)で入院。要介護度は3、退院後の自立生活が難しくなった。市内に住む息子が近くの施設に申し込んだが、どこも待機が100人以上。病院が困った末に相談したのがサンタハウスだった。入所3年を超えた千葉さん。「みな親切にしてくれる。でもやっぱり帰りたいんだよね」。震災では多くの高齢者施設が被災し、避難所暮らしが難しい要介護者が大勢出た。厚生労働省は特例で、遠くの施設が定員を超えて受け入れてもよいとする通知を出した。名乗り出る施設が少ない中、サンタハウスは新規増床中で、たまたま個室や職員に余裕があった。被災地の病院などに呼びかけ、11年は6人を受け入れた。当初、「緊急事態」は1、2年で終わると考えていた。ところが被災地では施設が復旧しても職員が集まらない。要介護者は増え続けた。サンタハウスで窓口となった宮本航大さん(40)の携帯電話には、自治体の地域包括支援センターやケアマネジャーから相談が途切れなかった。12年以降も毎年数人~二十数人が入所した。最近は、認知症が進んだり、家族との縁が薄れていたりといった人も増えている。現在の入所者のうち、16人が生活保護受給者で、その半数程度は身寄りがないという。一方で帰郷はなかなか進まない。サンタハウスは昨年から、3県にある600施設に空き状況を聞くなどの取り組みを進める。ただ多くのお年寄りにとって、弘前が終(つい)のすみかになる可能性は高い。今年1月19日には89歳の男性をみとった。4日後、気仙沼市から一人暮らしの77歳の男性が入所した。災害公営住宅で倒れているのを民生委員が見つけなければ、孤独死が避けられないケースだった。 ■要介護者は増、人手は不足 被災地では、介護に頼らざるを得ないお年寄りが増え、一方で施設の人手は足りていない。「避難所から仮設、災害公営住宅へと移るたび、環境が変わる。閉じこもり、体調を崩す人が年々増えた」。気仙沼市のケアマネジャーはそう話す。震災で配偶者を亡くしたり、子どもが都市部に出たりして独居になる人も多い。宮城県の沿岸部5地区の65歳以上の被災者約3500人を対象にした東北大の追跡調査によると、要介護認定割合は10年から18年にかけて16ポイント上昇。沿岸部の介護職の有効求人倍率(18年12月)は、気仙沼ハローワーク管内で4・88倍、岩手県釜石管内で4・95倍など高水準の所が多い。施設を増やそうにも、介護職員が集まらない現実がある。一気に進む高齢化、地域や家族の支える力の低下、働き手不足。「日本のあちこちで起きる事態を被災地は先取りしてしまった」と気仙沼市の高橋義宏・高齢介護課長。市は移住者で介護の仕事に就く人に補助金を出すなど対策に躍起だ。サンタハウスの宮本さんは「介護現場では今も震災が続いている」と話す。 <防災に名を借りた公共事業の無駄遣いもある> PS(2019年3月3日追加): *15-1に、東日本大震災後8年の現在、高さ12.5 mの巨大防潮堤の建設が進んだと書かれているが、宮城県による津波痕跡調査の結果では、*15-3のように、気仙沼市の中島海岸付近、南三陸町志津川荒砥海岸付近は21.6m、女川町近辺は18.3mの高さの津波が来襲し、1960年チリ地震津波を想定して決められた10mの堤防・護岸を殆どの場所で越えた。そのため、12.5 mの新しい巨大防潮堤の高さがどういう根拠で決められたのか不明だが、景観や視界を遮るわりには避難のための時間的猶予を与える程度にしかメリットがなく、景気対策だけが目的の理念なき膨大な無駄遣いに見える。 従って、(前にもこのブログに記載したが)標高25~30 m超にあるゴルフ場や農地の方を住宅地として開発し、標高の低い場所に農地・牧場・発電設備・公園などを作って、人や動物はいつでも高い場所に避難できるようにしておくべきである。そのため、*15-2のように、42市町村の過半数が被災の記録を廃棄したのかも知れないが、東日本大震災の記録は防災だけでなく科学研究にも重要な資料であるため、マイクロフィルムにして国立国会図書館に保管するのがよいと思う。また、この大震災と大津波は、海上保安庁・メディア・個人の動画に多く記録されているため、日本地図上に地震・津波の映像を張り付けて誰でも参考にできるようなHPを作れば、人によって異なる視点の気付きがあると思う。なお、住む場所を決めるのは個人の自由だが、次回の地震・津波は想定外ではないため、被害があったら自己責任(=主に自費)で再建すべきで、そのためには個人で災害保険や生命保険に入っておく必要があるが、災害保険料・生命保険料の掛金も該当地域の安全性を考慮して変えるのが合理的だ。 それでも、地震・津波だけなら適切な都市計画をすれば復興に邁進できたのだが、*15-4のように、福島県では本格的なコメ作り再開への環境が整いつつあっても、長い避難の間に農業をやめた人も多く、若い世代はなかなか町に戻ってこず、再開の意向のない農家が45%あるそうで、私はこの数字を尤もだと考える。 東日本大震災の津波 *15-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190303&ng=DGKKZO41979240T00C19A3CC1000 (日経新聞 2019年3月3日) (東日本大震災8年)巨大防潮堤 建設進む 東日本大震災の発生から11日で8年となるのを前に、被災地を上空から取材した。福島県では東京電力福島第1原子力発電所事故で使えなくなったゴルフ場や農地に大量の太陽光パネルが設置されていた。岩手県の海岸線では壁のような巨大防潮堤の建設が進む。震災と原発事故が地域に残した影響の大きさと、今なお途上の復興を異例の眺めが物語っていた。2017年に帰還困難区域を除き避難指示が解除された福島県富岡町。再開のメドが立たずに閉鎖したゴルフ場「リベラルヒルズゴルフクラブ」のコースは、黒光りする太陽光パネルに覆われていた。18年12月に設置を終えたという。町内には17年完成の大規模太陽光発電所「富岡復興メガソーラー・SAKURA」もあり、原発事故の影響で増えた遊休農地の利用が進む。緑や黒の土のう袋が並ぶ汚染土の仮置き場はさらに広がり、雑草が茂る周辺の荒れ地とともに重苦しい雰囲気を漂わせる。宮城、岩手両県の沿岸部では海と陸を分かつような防潮堤が目を引く一方、多くの漁港付近に養殖用の漁網が浮かび水産業の再生もうかがえた。岩手県陸前高田市ではそびえ立つ壁のような防潮堤の増設が続く。台形型の防潮堤の高さは12.5メートル。土地のかさ上げ工事に伴いクレーン車やトラックが激しく行き交い、茶色い土ぼこりが舞っていた。かさ上げした土地に約2年前にオープンした商業施設「アバッセたかた」の駐車場には多くの車があり、にぎわいが伝わってきた。 *15-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13917665.html (朝日新聞 2019年3月3日) (東日本大震災8年)被災の記録、残らぬ恐れ 42市町村の過半数、既に廃棄も 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島各県の42市町村の過半数が、被災時の対応や復興の過程で作成した「震災公文書」の一部を既に廃棄したか、廃棄した可能性がある。朝日新聞の調査で判明した。当時のメモや写真なども10市町村が保存していなかった。保存ルールが統一されていないのが原因で、対策が必要になりそうだ。 ■保存、対応分かれる 公文書管理法は2011年4月施行。内閣府は翌年、震災関連公文書を「国家・社会として記録を共有すべき歴史的に重要な政策事項」として適切な保存を国の機関に通知した。ただ通知の対象に地方自治体は含まれていない。朝日新聞は1~2月、42自治体にアンケートした。市町村は公文書を、▽1、3、5、10、30年ごとに保存期限を決める▽永年保存する――など、同法や内部規程に沿ってそれぞれ管理している。42市町村に保存期限が過ぎて廃棄した震災公文書があるか尋ねたところ、6市町村が「ある」、16市町村が「可能性がある」と回答。国からの通知文書やボランティア名簿などを廃棄していた。「保存期限がきた」(宮城県多賀城市)、「全て保管するスペースがない」(福島県飯舘村)などを理由に挙げた。今後、保存期限が過ぎると廃棄する震災公文書があるかを問うと、「ある」は12市町村、「未定」は17市町村だった。公文書の管理を各部署に任せている市町村も多く、全庁的な判断の有無とその時期が重要になる。例えば宮城県気仙沼市は昨年になって「当分の間は捨てない」と定めたが、それ以前は捨てていた恐れがある。一方、廃棄した文書が「ない」と回答した岩手県釜石市は12年、「11年度以降の震災公文書は全て永久保存」と決めており、早期の判断で対応が分かれた。また、市町村が公文書として取り扱わなくても、職員の手控えメモやホワイトボードの記録、写真なども震災の重要な記録であるほか、当時の対応を検証できる資料だが、10市町村が「保存していない」と答えた。 ■国・県・民間も保存後押しを 神戸大の奥村弘教授(歴史資料学)の話 災害に関わる公文書は、保存期間の長短に関わらず、被災時の様子や被災後に行政や住民がどのように対応したか示している可能性がある。将来の災害対応に向けた資料として、できるだけ保存していく必要がある。ただ、一自治体で保存していくのは保存場所や人手確保といった課題が残る。場所の確保に加え、被災直後から文書保存に向けた応援職員を派遣するなど、国や県レベルでの保存や支援の仕組みが必要だ。また、被災者や復旧・復興に携わった民間団体レベルでも資料を残す動きを起こすことが、災害の記録と記憶を後世に伝える上で重要になる。(以下略) *15-3:https://www.fukkoushien-nuae.org/2011/07/17/・・ (宮城県調査) 津波、気仙沼・南三陸20メートル超 宮城県は東日本大震災の津波で浸水した県沿岸部について、津波痕跡調査結果をまとめた。気仙沼市、南三陸町の2カ所では、基準海面からの高さが20メートルを超える地点で痕跡が確認された。ほとんどの場所で既存の堤防、護岸を越えていた。調査は4月中旬から6月末、陸上約1200地点、河川約1300地点で実施。海岸線から最も近い場所の痕跡を採用し、東京湾平均海面と比べた高さを計測した。調査地点の中で最も高い位置の痕跡は気仙沼市の中島海岸付近、南三陸町志津川の荒砥海岸付近で、ともに21.6メートルだった。両海岸周辺でも20メートル近い痕跡があった。死者・行方不明者が900人を超す女川町近辺では5.5~18.3メートルで痕跡を確認。児童74人が死亡、行方不明になっている石巻市大川小に近い北上川では、12.5メートルの高さに跡が残っていた。七北田川河口から県南にかけての仙台平野沿岸では福島県境付近が最も高く、15メートル前後に達した。津波で滑走路などの施設が浸水した仙台空港付近は13.3メートルだった。松島町など一部を除き、津波は既存の堤防、護岸(高さ3.2~7.2メートル)を大きく越えた。堤防や護岸の高さは、主に1960年に発生したチリ地震津波や高潮を想定して決められていた。国は6月下旬、堤防、護岸の高さや規模について、県が過去の測定値や歴史文献を踏まえ、入り江や湾ごとに決めるとの方針を示した。県は本格復旧時の高さや工法について検討を進めている。 *15-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201903/CK2019030202000189.html (東京新聞 2019年3月2日) <原発のない国へ 事故8年の福島> (3)帰農へ歩み 不安の種も 収穫されたコメを低温貯蔵するカントリーエレベーターや種苗センターが国道6号沿いに完成するなど、本格的なコメ作り再開への環境が整いつつある福島県楢葉町。農地に置かれていた除染土入りの黒い袋は、めっきり減った。東京電力福島第一原発周辺にある中間貯蔵施設への搬出が進んでいるためだ。町北部の上繁岡地区で、農家の佐藤充男さん(74)はコメ作り再開のため、仲間五人と「水田復興会」を結成した。昨年は八ヘクタールで作付けをし、今年は二倍以上の十八ヘクタールに増やし、近い将来には五十ヘクタールにまで拡大することを目指している。「三年前から徐々に作付けを増やしてきたが、最近では買いたたかれるような風評被害を感じない。譲ってくれと引き合いもかなりあるんだ」と、佐藤さんは語る。「田んぼとして使っていることが大切」と食用米の他、飼料米も大幅に増やす計画で、自宅近くに仲間と共同所有する大型農機の倉庫も建てた。冬の間も準備に余念がない。ただ、長い避難の間に農業をやめた人も多く、若い世代はなかなか町に戻ってこない。「俺は農業が好きだし、仲間とワイワイやるのも好きだからやっている。ただし、この先どうなっていくかは、まだ見通せないな」と話した。町の同じ地区で、塩井淑樹(よしき)さん(68)は風評被害を見越して、コメから観賞用の花「トルコキキョウ」栽培に切り替えた。三年前から七棟のビニールハウスで試行錯誤を続ける。薄い赤紫の花が咲き、出荷を待つハウスもあれば、これから植え付けるハウスもある。「植え付け、出荷を順繰りにしていくから忙しいんだよ。手をかけて形を整えれば、評価も高くなる。自分は見よう見まねでやっているから、まだまだだ。もっとうまくなれば、収入も増えるんだが…」。需要に素早く応える「産地」として市場で認められるには、仲間の農家が多い方が有利。今は三軒にとどまるものの、イチゴの観光農園から転身した三十九歳の男性もいる。幼い子がいて、二十キロ以上離れたいわき市から車で通って栽培する日々。若い担い手は力を込めて言った。「軌道に乗ったとは言えない。話にならないほど収入は減り、これで食べていけるほどではない。原発に依存してきたから、プロの農家は多くはない。でも、生まれ育ったこの地は好きだし、プロとして生き残っていかないと」 ◆農家 再開意向なし45% 楢葉町など比較的汚染度の低い地域では、農地を深く耕して降った放射能を薄め、他の地域では汚れた表土を5センチほど除去し山砂を加えた。放射性セシウムを吸着する鉱物ゼオライトを土に混ぜたほか、農作物の成長期にカリウムを散布。こうした対策で、農作物へのセシウム移行を防げることも確かめられている。福島相双復興官民合同チームが2018年、被災12市町村の農家1429人に実施した調査では、営農を「再開済み」と「再開意向あり」は合わせて40%、一方で「再開意向なし」は45%に上った。
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