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2019.3.8 日本は人権を大切にしない国である ← ゴーン氏の逮捕と長期勾留から (2019年3月9、10、11、12、13日に追加あり)

    2018.11.19逮捕       2018.12.7朝日新聞    2019.3.6朝日新聞

(図の説明:左図のように、2018年11月19日、ゴーン氏とケリー氏が突然逮捕され、日産は速やかにゴーン氏を会長からケリー氏を代表取締役から解任し、中央の図のように、西川社長が記者会見した。この後、右図のように、108日後にゴーン氏は保釈されたが、保釈条件はまるで殺人犯・性犯罪者・テロリストのようなものだった)

(1)ゴーン氏が殺人犯やテロリストのような扱いを受ける理由はないこと
1)ゴーン氏の報酬は巨額過ぎ、巨額報酬は犯罪になるか? ← 報酬は雇用者と被用者の合意に基づけばよいのであり、金額が多すぎるからといって犯罪にはならない

 報酬が多額であることを理由に刑事犯として裁かれた経営者はいないだろう。株主・投資家にとって重要なのは、実績と比較して報酬が多きすぎるか否かであり、仮に株主の賛成が得られなかったとしても株主総会の決議によって否決されるだけの民事上の問題で、利害関係のない人には無関係のことである。そして、株主・投資家の判断根拠となる開示方法が、有価証券取引法で定められているわけだ。

 そのような中、*1-1のように、日産自動車元会長のゴーン氏が逮捕され、西川広人社長兼CEOが「①不正の背景としてゴーン元会長に会社全体が依存していた」「②経営手腕への期待が先行し、個人に権限が集中する企業統治の議論が不十分だった」「③昨年10月に社内調査の結果が来て、トップとして守るべきことから完全に逸脱しており、ゴーン元会長の不正自体が問題だ」「④最初うまくいっていたという見方は幻想だ」と話したそうだ。

 しかし、①②については、*1-2に「西川社長ら現経営陣の責任を問わない」と書かれており、他の人は何もしなくてよいほど権限を集中させた上で、日産・ルノー組を世界第二位の自動車会社に押し上げたのなら、ゴーン氏の報酬は20億円でも足りないくらいで、取締役はじめ他の役員は1千万円でも高すぎるだろう。また、本当に不正があったのなら、八田名誉教授の意見のとおり、上場会社である日産の経営陣はゴーン氏の不正を長年見過ごしてきたのだから、社外取締役を中心とする特別委は当事者の一部であって独立性がなく、不正の真因を突き止める役割を果たすことはできない。しかし、それなら、上場会社である日産は、内部統制に関する外部監査も通らなかった筈で、形だけの監査をしていたのでなければ、①②は成立しないのである。

 また、③については、*1-5のように、2019年1月下旬に日産のCFOが社内調査に追われていたそうだが、このような調査は外部監査法人に依頼するのが世界標準だ。その外部監査法人は、これまで監査意見を書いてきたEYではなく、PWCやトーマツのような他のBig4である。私は、PWCで外資系企業の不正の監査に携わったことがあるが、それほど難しいものではなく、このように会社が協力的である場合はなおさら容易だ。

 そして、監査(調査)結果は、不正があったとすれば「いつ」「どのようにして」「いくら」あったのかを明らかにしなければならず、「不正はない」という結論が出ることもあり、これらは利害関係のない第三者だから信じてもらえるのである。また、日本人記者の目に、「日本の大企業とは思えないずさんな資金の流れ」に見えたとしても、その国の文化に従いつつマーケティング目的を果たすために使われたのかも知れないため、直ちに不正と決めつけることはできない。そのため、正確を期すには、その国にある系列監査法人の意見を聞く必要もあるのである。

 さらに、④のゴーン氏の経営能力に関する評価は、監査手続きの一つとして外資・内資系企業の経営者と話し慣れている私には過小評価に思える。何故なら、ゴーン氏は最新技術の導入にあたって経営意思決定を誤らなかったが、ゴーン氏逮捕事件の後は、*1-2のように、日産・ルノーの売上高は、北米・中国で新車販売が大きく落ち込み、その理由は、このような司法の使い方をしたり、ガソリン車(e-Power搭載のIMQも同様)に昔返りしたりしている日産に対する失望の気持ちが加わっているからである。つまり、日産が、今になってe-Power搭載のIMQなどを作るのは、人材・資本など経営資源の無駄遣いにすぎず、企業利益率を落とすものでしかない。

 従って、*1-3の「ゴーン前会長の巨額報酬を問いたい」とする記事については、20億円/年が正当だったが、日本メディアの不合理でしつこい追及を避けるため、退職後に退職慰労金として受け取るスキームを法律・会計・税務の専門家が頭を絞って合法になるよう検討したのだろうと、私は推測する。

2)長く経営者をしているのは、逮捕されるべきことか? ← 普通は褒められることである
 *1-4には、「①ゴーン退場、長く居すぎたカリスマ、迷走する日産・ルノー」「②V字回復後に「独裁」の土壌」「③2018年12月、インドネシア日産自動車のトップが古巣の三菱自動車に戻された」「④日産が2010年に発売したEVリーフは、6年後にルノーと共同で累計150万台のEV販売目標を掲げたが、3年目で7万台と苦戦」「⑤長く居すぎたカリスマ経営者の末路」などと書かれている。
 
 しかし、②のV字回復に独裁が必要だったのなら、ゴーン氏は恨まれるリスクを犯して日産をV次回復させた英雄である。が、ゴーン氏が行った人事は、③や中国事業担当幹部のムニョス氏などの外国人幹部が主要業務から外れ、この100日間にEV系が後退したように見える。しかし、①⑤の「長く居過ぎた」というのは意味不明で、フィットした人なら長く居てもらった方がよく、実際、長くやっている経営者は多い。

 私は、③のリーフがあまり売れなかった背景は、i)電池が永く持つ改良をしなかったこと ii)リーフの名のとおり、環境に優しいことのみを前面に出して、EVの低燃費・運転支援のすごさ・(例えばélégance《エレガンス:優雅》、joie《ジュア:喜び》などの名称で)車の優雅さなどを主張しなかったこと iii)最初に出したEVだったためか、メディアをはじめとして的外れたEV批判が多かったこと などだと考える。そのため、世界にEVの潮流を作り、その流れに乗る選択と集中を行って、EVのラインアップを増やすのが正解だっただろう。

(2)これまでの日産・ルノーの実績は、誰でもできたことか? 
1)世界初のEV市場投入は、日本人経営者にはできなかった
 日産は、ゴーン氏がトップであった時代にEVに手を付け、*2-1のように、現在、中国の環境規制を追い風として中国ではEV戦略を加速している。私は、シルフィEVなら関心があるが、*2-2のジュネーブモーターショーで初披露されたというガソリン発電で動くIMQには全く興味がなく、これはどの国なら売れるのだろうかと疑問に思うくらいで、この車の制作は無駄遣いだったと思う。つまり、ゴーン氏なき日産は、このように既に目的もなく漂流し始めているのであり、これまでの日産・ルノーの実績は、誰にでもできたことではないのだ。

2)メディアの悪質な報道ぶり
 日本のメディアは、*2-3のように、ゴーン氏は光と影をもたらした(=優秀な人には必ず悪いところがあり、普通の私たちこそ模範だ)と決めつけて、ワンマン経営者の没落ぶりを報道したくて集まっていた。そこに、作業着姿で青い帽子にオレンジ色の反射ベストを身につけ、マスクをしたゴーン氏が出てきて、スズキの軽ワゴン車に乗り込んだため、「変装か」「後ろめたいところがないなら、変装などせずに堂々と出てきてほしかった」などと書いているが、このような目的で集まった報道陣の前で何を話しても悪くしか報道しないため、準備してから記者会見を開くのが正解だ(ただし、それでも主観的な感想を書かれるので危ないのである)。

 そのため、この日にはメディアの前で語ることなく、無罪の証拠を揃えるのが賢明である。弁護人の弘中氏は、*2-4のように、「ゴーン氏の変装をテレビ見てびっくりした」としているが、ゴーン氏も入社した当時は作業服を着て現場で働きつつ、厳しい競争に勝ち抜いて社長になったのだから、作業服も似合っていたし、背筋を伸ばして堂々ともしていた。この点が、現場と経営者は入社当時から異なる道を歩いていると考える日本人のおかしさなのである。

 ゴーン氏が乗車したスズキの社長は長く社長を務めた創業者だが、ガソリン車に固執しすぎたため、スズキは先が見えなくなっている。また、スズキ(https://www.suzuki.co.jp/corporate/producingbase/abroad.html 参照)は静岡県に生産拠点が多く、インドでも販売を伸ばしているが、今後は鉄道車両も蓄電池電車や燃料電池電車に行く方向であるため、ゴーン氏の保釈姿は、今後のゴーン氏の役割を示しているように、私には思われた。

 さらに、日産は、*1-6-1・*1-6-2のように、ゴーン氏の報酬約92億円分を確定報酬分としてあわてて決算計上し、有価証券報告書に記載していなかった報酬の支払いは確定していたと主張しやすくしたと同時に、報酬の支払いを凍結した。これは、ゴーン氏に対して司法判断で敵対しつつ、日産がゴーン氏に損害賠償請求しようとするものだが、まさに、このように理由をつけて凍結されたり、支払いを拒否されたりする可能性があるから、報酬は受領日まで確定しておらず、受領日の属する期に認識するのである。

 また、ルノーも、*1-6-3のように、ゴーン氏が退任に伴って受け取る金銭の約3千万ユーロ(約38億円)相当の支払いを認めないことを決め、退任時に報酬として受け取る権利のあったルノー株約46万株(約33億円相当)の支給もとりやめ、ライバル会社に退任後2年間転職しないことを条件に支給する補償金400万~500万ユーロ(約5億~6億3千万円)も支払わないそうだ。

 そのため、ゴーン氏はライバル会社に転職することも自由であり、それはスズキでもよいし、*1-6-4のテスラでもよいだろう。何故なら、米EV大手、テスラ社のイーロン・マスクCEOは、イノベーションには優れた人だが、関心が自動車だけでなく宇宙にも広がっているため、ゴーン氏が自動車部門のリーダーを引き受けて世界展開に導くのが合理的だと思われるからだ。しかし、この時ネックになるのが日本の司法は審理にも時間がかかることで、日本の司法は、*3-1のブラジル弁護士会によるゴーン元会長への「人権侵害」の指摘や*3-2・*3-5の「人質司法」だけでなく、時間を引き延ばすことによる人権侵害も重ねているのである。

(3)逮捕と懲罰用監房での勾留について
 日本は、憲法で罪刑法定主義「第31条:何人も法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」「第39条:何人も実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない」と定めている。

 そして、刑罰でもないのに、身体の自由を拘束したり、抑留や拘禁したりすることを禁止し、拷問や自白の強要を禁止している。当然、新しく法律を作って、過去に遡及して処罰することも禁止されている。

 にもかかわらず、ゴーン氏は、*3-6のように、有罪が確定したわけでもないのに、証拠隠滅の恐れがあるとして懲罰用の監房で108日間も勾留された。そして、①居住地の日本国内への制限 ②海外渡航の禁止 ③関係者との接触を疑われないよう住居の出入口に監視カメラを設置し、録画映像を定期的に地裁に提出する ④携帯電話の通信制限 など、まるで殺人犯か性犯罪者かテロリストのような条件で保釈されたが、その上、*3-3のように、保釈金10億円も支払わされている。そのため、ゴーン氏は、*3-4のように、この保釈条件に「嫌そうな顔」をしたそうだが尤もであり、これら一連のやり方は日本国憲法に違反している。

 そして、ゴーン氏を108日も勾留し、日産も会社として地検に協力しているのに、地検がまだ金融商品取引法違反や特別背任罪の証拠を得ていないのなら、そのような罪はないことが明らかだ。何故なら、本当に何かあれば、1~2カ月で報告書までできるからだ。さらに、日産の西川社長がゴーン氏の保釈について「経営や仕事への影響はない」と言っているように、元会長のゴーン氏は、社長を退いて以降(特に現在)は、日産に影響力を駆使して証拠を捏造することは不可能であるため、③の関係者と接触させない理由は、ゴーン氏が無実である証拠を作成して提出するのを邪魔する目的にすぎないと思われる。

・・参考資料・・
<ゴーン氏が殺人犯やテロリストのような扱いを受ける理由はないこと>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190228&ng=DGKKZO41846630Y9A220C1MM8000 (日経新聞 2019年2月28日) 日産・西川社長「あの時、議論すべきだった」、ゴーン元会長に全権 2005年が転機
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告が逮捕され、27日で100日を迎えた。西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に応じ、不正の背景として、ゴーン元会長に会社全体が依存していたと指摘した。経営手腕への期待が先行し、個人に権限が集中するガバナンス(企業統治)十分だったと認めた。同時に「(ゴーン元会長が仏ルノーのトップを兼務した)2005年ごろに自分たちで問いかけるべきだった」と語った。ゴーン元会長は1月30日、日本経済新聞の取材に対し、自らを巡る日産社内の不正調査を「策略であり、反逆だ」と主張した。西川社長は「昨年10月頭に私に社内調査の結果が来た」としたうえで「刑事事件になるかどうかにかかわらず、トップとして守るべきことから完全に逸脱していた」と、ゴーン元会長の不正自体が問題だと反論した。ゴーン元会長は1999年、ルノーから最高執行責任者(COO)として経営危機の日産に乗り込み、V字回復をさせた。西川社長は不正が起きた背景を「99年の記憶が生々しく、トップをやってもらえると日産が成長し将来的に安定していけるという気持ちが強かった」と説明した。西川社長はCEOだったゴーン元会長がルノーCEOも兼務した05年が「大きな変化点」になったと振り返った。05年はゴーン元会長が事実上両社のトップを兼ね、日仏連合の権限の集中が始まった年になる。西川社長も「ゴーン元会長がルノーの責任者にもなってくれるなら日産の自立性を担保してくれる」と受け止めたという。同時に社内外が「祭り上げすぎたというのは正直ある」と述べ、「ガバナンスが非常に難しくなるという議論が十分でなかった」とも認めた。経営破綻の危機から脱するには権限集中がプラスに働いた面もある。ただ西川社長は「企業連合は1本のリポートラインで個人に情報がいくことを中心に考えられていた」と指摘した。企業連合を築いた先代経営者と比べ「剛腕だけでは駄目だ」と、独裁的な運営手法を批判。「当時うまくいっていたとの見方は幻想だ」と話した。日産では17年秋、完成車検査の不正が発覚し、社内で不正を申告しやすい雰囲気になっていたという。ワンマン体制を築いたゴーン元会長だが、18年春ごろから不正を巡る社内調査が始まっていた。18年11月、ゴーン元会長は東京地検特捜部に逮捕されたが、社内調査には気づかなかった。西川社長はこの理由を「本人が現場から遠くなり、幹部も含めた掌握力が弱くなっていった」と述べた。近年のゴーン元会長は1カ月に数日しか日産に出社していない。西川社長は部品などの調達畑が長く、ゴーン改革を裏側から支え、17年に社長兼CEOに就いた。実際のトップはゴーン元会長であり続けたことに対し「徐々に実力と実績ではね返していくしかないと思った」という。一方、日産の取締役会が長くゴーン元会長の不正を見抜けず、日産は有価証券報告書への虚偽記載の罪で法人としても起訴されている。西川社長は不正を見抜けなかった理由について「非常に頭が良い人」として「プロや自分の側近を使って実行し、なかなか分からない」と説明した。取締役会は「気がつかないというか、分からない」と釈明した。側近は、ゴーン元会長と同時に逮捕された元代表取締役のグレッグ・ケリー被告らを念頭においているとみられる。西川社長は自らの経営責任に関しては「トップの責任を果たしていく。社内の動揺を元に戻してまとめ、ルノーとの提携関係を前に進めることなどは自分がやるしかない」と、6月の定時株主総会以降も社長を続投する考えを示した。今後の焦点は日仏連合の運営体制だ。空席の日産会長職をルノーが指名する意向を伝え、日産は拒否してきた。ルノーでは1月下旬にジャンドミニク・スナール氏が会長に就き、2月中旬に来日し西川社長と会談した。西川社長はルノーとの関係について「普通の状態に戻りつつある。(両社の問題は)解消していく」と話した。「会長は日産内部で決めていく。スナール氏も十分理解している」と述べ、日産が会長を指名できる展開に自信を見せた。もっとも両社の資本関係は、ルノーが43%の日産株を持つ一方、日産はルノーへの15%出資にとどまる。ルノーの筆頭株主である仏政府の出方を含め流動的な面は残る。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201902/CK2019022302000150.html (東京新聞 2019年2月23日) 日産経営陣の責任問わず 特別委方針「議論の対象外」 ゴーン被告不正
 前会長カルロス・ゴーン被告の不正を許してきた日産自動車の企業統治(ガバナンス)の見直しについて有識者らが議論する「ガバナンス改善特別委員会」が、西川広人社長ら現経営陣の責任を問わない見通しであることが分かった。専門家からは、責任の所在を明確にしないままでは、実効性のある改善案にはならない、との指摘が出ている。特別委関係者は取材に「委員会の主要議題はガバナンス改革。責任を問うのは仕事ではない」と述べた。これまでの議論で、役員の人事や報酬などを社外取締役が中心となって決める「指名委員会等設置会社」への移行などを検討している。人事や報酬を決める権限がゴーン被告に集中した反省などからだ。だが、不正を見逃してきた経営陣の責任の検証については議論の対象になっていないという。特別委は昨年十二月に設置。三月末までに提言案をまとめる計画だ。委員は、弁護士ら外部有識者四人と日産の社外取締役三人の計七人。社外取締役は経営陣の一角を占め、責任検証の対象となりうるため、特別委はそもそも経営陣の責任を問いづらい体制になっている。社外取締役を委員に選んだ理由を日産は「会社の状況を把握しており、提言を速やかに行うため」としている。ガバナンスの問題に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は「日産の経営陣はゴーン被告の不正を長年見過ごしてきた。なぜ不正が起きたのか真因を突き止めようとすれば必然的にその責任を検証しなければならない。特別委は役割を果たしていない」と指摘している。

*1-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019030702000191.html (東京新聞社説 2019年3月7日) ゴーン前会長 巨額報酬を問いたい
 ゴーン被告については昨日、いわゆる人質司法の問題を指摘したが、一般的に巨額すぎるような報酬についても改めて考えてみたい。富を偏らせる政治や経済の仕組みに、ゆがみはないのかと。著しい収入格差は世界に広まっている。格差を研究する国際非政府組織(NGO)、オックスファムは二〇一八年、世界の富豪上位二十六人の資産約百五十兆円と、世界人口の半分にあたる三十八億人の貧困層の資産がほぼ同額だと報告した。数字を見て資本主義の暴走を感じはしまいか。国内に目を向ければ、企業が収入を人件費に回す労働分配率は約66%で、石油ショックに苦しんだ一九七〇年代中頃の水準まで落ち込んでいる。富裕層は富を増やし続け、勤労世帯の所得が減る流れが国内外で定着している。保釈されたゴーン被告は日産会長として一時、年十億円を超す報酬をもらっていた。これに対し、株主総会で批判が出ていた。九九年以降、経営危機に陥っていた日産の立て直しに尽力したのは事実だ。彼なしに今の日産はないだろう。しかし、経営再建に際し多くの系列会社が取引を停止され、社員も大量に去らざるを得なかった。多大な犠牲を払った上での再建だ。ルノーも再三困難に直面した。雇用不安を抱える従業員や株主らが、突出した報酬を批判するのは理解できる。もちろん巨額報酬をもらっている経営者は、ゴーン被告だけではない。突出した巨額な報酬が目立ち始めたのは、九〇年代以降の米国の金融界だった。自社株による報酬支払いを巧みに使いこなし、多くの経営者が天文学的な額の報酬をもらい続けた。生産性の高い人間が高い報酬を得るのは資本主義の原則だろう。だが一握りの経営者があまりにも巨額な報酬をもらい、一般労働者は残りを分け合うという構図は、社会のあり方としてどうか。不公平は、社会全体の不安定を招きはしないだろうか。フランスの経済学者、トマ・ピケティは一三年、著書「21世紀の資本」で資産課税強化による格差の是正を唱えている。しかし、政策に反映されてはいない。ゴーン被告の巨額報酬は、格差の現実を改めて可視化し人々に提示した。それが資本主義のゆがみであるなら、たださねばならないだろう。 

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39977060S9A110C1EA2000/ (日経新聞 2019/1/13) ゴーン退場 長く居すぎたカリスマ、迷走する日産・ルノー(中)V字回復後に「独裁」の土壌
 「また詰め腹を切らされたか」。2018年12月、インドネシア日産自動車のトップが古巣の三菱自動車に戻された。16年10月に日産が三菱自を実質的に傘下に収めたのを機に、両社のトップを務めていたカルロス・ゴーン元会長(64)が打ち出した交流人事の目玉だったが、就任からわずか1年半で職を解かれた。ゴーン元会長は日産の第2ブランドとして「ダットサン」ブランドを14年に復活させた。新興国向けの低価格車を投入してトヨタ自動車グループの牙城切り崩しを狙ったが、18年1~11月の販売台数は1万202台、シェアは1%(マークラインズ調べ)。多目的車が主流となるなか、小型車投入があだとなった。「リーマン・ショック後の10年以降、明らかに彼は変わった」。多くの日産幹部は口をそろえる。同じく日産が世界に先駆けて10年に発売した電気自動車(EV)「リーフ」。6年後にルノーと共同で累計150万台のEV販売目標を掲げたが、発売から3年目で7万台と苦戦していた。元会長は腹心の志賀俊之・最高執行責任者(COO、当時)をEVの責任者に据えてこ入れを託したが、7カ月後の13年11月にCOOを解任する。北米戦略の失敗も重なり、2期連続で業績見通しの下方修正を迫られた。一世を風靡した「コミットメント経営」は封印、古参の日本人幹部も一斉に入れ替えた。「再建」から「成長」モードに入ったゴーン元会長は、トップダウンでロシアのプーチン大統領の要請に応じ同国最大手のアフトワズを買収。経営者同士の友好関係を生かし独ダイムラーとの提携も決めた。しかし、側近を相次いで排除していった結果、実務が滞りゴーン元会長の思った通りの成果を上げられなかった。それがまた焦りを生み、意にそぐわない幹部を次々と入れ替える「独裁」につながっていった。ゴーン元会長をはじめ、企業の危機などを乗り越え、V字復活を遂げた経営者は「カリスマ化」されることが多い。しかし、「経営が軌道にのった後の成長や新機軸を打ち出すのに苦労するケースが多い」と、ローランドベルガーの貝瀬斉パートナーは指摘する。この点で、米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフ・イメルト元最高経営責任者(CEO、62)も似ている。イメルト氏は米同時多発テロやリーマン・ショックの2度の危機を放送や金融などの事業売却で乗り切り、「選択と集中」の経営手腕は高く評価された。復活を遂げたあと、さらなる成長に向け目をつけたのが電力事業だった。仏アルストムの電力事業の買収合戦で三菱重工業を制し傘下に収めたが、再生可能エネルギーの台頭を読み切れず主力のガスタービンが不振に陥った。17年の退任直前の株価は在任中最高値の半分の水準に下落した。後継CEOに再生を託したが、アルストムの事業買収で2兆円近い減損処理を迫られ、後継者は志半ばで退任する事態を招いた。20年以上、独フォルクスワーゲン(VW)の実権を握ったオーナー家出身のフェルディナント・ピエヒ氏(81)。世界一を目指す中で、ピエヒ氏にシェアの低い米国市場の攻略を求められた幹部らは、不正なソフトウエアを使い排ガスデータを改ざん。全世界で1100万台が不正の対象となる不祥事の元凶となった。ピエヒ氏は社長に引き上げたマルティン・ヴィンターコーン氏(71)の解任を画策したが、逆に辞任に追い込まれた。いずれも「長く居すぎた」カリスマ経営者の末路だ。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190301&ng=DGKKZO41853860Y9A220C1EA1000 (日経新聞 2019年3月1日) ゴーン退場100日(4) 「特注銘柄は避けたい」
 1月下旬、日産自動車の最高財務責任者(CFO)、軽部博(62)は社内調査に追われていた。元会長、カルロス・ゴーン(64)の役員報酬は本当はいくらだったのか。ほかに財務諸表への記載漏れはないのかも確認が必要だ。調査チームからは「事実がなかったと証明するのは至難の業。まるで悪魔の証明だ」と嘆きの声。事件の影響をできる限り示さないと市場の信頼を失ってしまう。帳簿を遡る作業は終わりが見えなかった。金融市場が日産への不信感を強めている。役員報酬の虚偽記載や親族を含む元会長周辺の不明瞭な資金の流れ。国内有数の大企業とは思えないずさんな実態が次々と明るみに出てくる。昨年11月、ゴーンが逮捕されると日本取引所グループ(JPX)は即座に動いた。内部管理に問題があると注意を促す「特設注意市場(特注)銘柄」に指定する必要があるかの調査だ。2月22日の定例会見。JPXの最高経営責任者(CEO)、清田瞭(73)は「全容が分からず情報収集の段階」と言葉を選んだ。だがJPXの幹部は「虚偽記載は投資家の判断を誤らせる重大な不正」と厳しい。「東芝にはなりたくない」と日産幹部は漏らす。トップの暴走で不適切会計に手を染めた東芝は2015年に特注銘柄に指定され2年にわたり苦しんだ。実質的に市場から資金調達できず、多くの機関投資家は内部規定に従い株を売る。50万人近い株主がいる日産にとって「何としても避けたい」シナリオだ。株主には不満が蓄積する。個人株主の石上晶敏(62)は「これほどの不正に気づかないのは会社としておかしい」と口にする。機関投資家に影響力がある米議決権行使助言会社、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズの日本法人代表、石田猛行(50)は「企業統治の仕組みが脆弱だ」と指摘する。このままなら株主総会で取締役の選任議案に反対が相次ぐ事態になりかねない。「もはやコスト削減では補えない」。2月初旬、軽部は営業報告を見てうなった。北米や中国で新車販売が大きく落ち込み、19年3月期の営業利益は900億円の下方修正を余儀なくされた。事件の影響ばかりではない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一(48)は「魅力のある新型車を増やさないと厳しい」と話す。ゆがんだ企業統治、低下する収益力。経営危機だった20年前の記憶は今も色濃く残る。ゴーン退場で日産は再び瀬戸際に追い込まれた。

*1-6-1:http://qbiz.jp/article/148306/1/ (西日本新聞 2019年2月5日) 日産、ゴーン被告の報酬凍結へ 90億円を決算計上
 日産自動車が、前会長のカルロス・ゴーン被告=会社法違反(特別背任)などの罪で起訴=に関し、有価証券報告書に記載していなかった報酬の支払いを凍結する方針を固めたことが5日、分かった。約90億円分を確定報酬分として近く決算に計上するが、ゴーン被告の報酬過少申告の事件を巡る司法判断や、日産が検討しているゴーン被告への損害賠償請求をにらみ実際の支給は見送る。関係者は「ゴーン被告が絡んだ不正の総額は、確定報酬額を上回る可能性がある」との見方を示した。報酬額が賠償額と事実上相殺され、ゴーン被告が最終的に受け取れないケースも考えられる。東京地検特捜部は、ゴーン被告の役員報酬が、2015年3月期までの5年間に計約50億円、16年3月期〜18年3月期に計約40億円それぞれ有価証券報告書に過少記載されたとして、ゴーン被告らを起訴した。法人としての日産も起訴された。日産は起訴内容を認めているが、ゴーン被告側は先送り分の報酬は金額が確定していないとして否認していることを踏まえ、裁判所がどのように認定するかを見極めたい考えだ。このほか、日産の社内調査でゴーン被告が多額の高級住宅の購入や改装費などを日産側から支出させていたことなどが判明。ゴーン被告に損害賠償請求訴訟を起こすことも検討している。ゴーン被告は1999年6月、日産の最高執行責任者(COO)として就任。業績回復に経営手腕を発揮し、2001年6月に社長兼最高経営責任者(CEO)、17年4月に会長となった。

*1-6-2:http://qbiz.jp/article/148648/1/ (西日本新聞 2019年2月12日) 日産、通期純利益半減へ ゴーン被告報酬92億円計上
 日産自動車は12日、2019年3月期の連結純利益予想を従来の5千億円から4100億円に下方修正した。前期の実績に比べ45・1%減と約半分になる。主力市場の米国での販売不振と貿易摩擦による中国の景気減速が響く。同時に発表した18年4〜12月期決算には、会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された前会長カルロス・ゴーン被告の確定報酬分として92億3200万円を追加費用計上した。ゴーン被告が昨年11月に逮捕されて以来、初めての決算発表だった。トヨタ自動車なども通期業績予想を下方修正しており、国内基幹産業の自動車大手に影響が本格的に顕在化し始めた。フランス自動車大手ルノーなどと組む企業連合の世界販売台数2位の地位が揺らぎかねない。西川広人社長は横浜市の本社で記者会見し、ゴーン被告の確定報酬の計上に関して「大きな責任を感じている。(会社に多額の損害を与えた被告に)支払いをするという結論に至るとは思っていない」と述べた。ルノーとの連合については「われわれの大きな強みであり財産。将来的にも磨きを掛けたい」と話し、互いに自立性を尊重しながら成長を進めるとの認識を示した。業績に関しては、競争が激化する米国でセダンを中心に販売台数が減少した。値引きの原資となる販売奨励金を抑えるなど立て直しに取り組む。中国は「踊り場に来ている」(西川氏)との認識で、市場の減速により販売台数が従来の予想に届かなかったという。19年3月期予想は、売上高も4千億円少ない11兆6千億円に下方修正した。相次いで発覚した検査不正などの影響は計200億円の利益の圧縮要因となる。18年4〜12月期の売上高は前年同期比0・6%増の8兆5784億円だったが、純利益は45・2%減の3166億円だった。

*1-6-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13891827.html (朝日新聞 2019年2月14日) ルノー「退職金」払わず ゴーン前会長への38億円相当
 仏ルノーは13日、同社の会長兼CEO(最高経営責任者)職を退いたカルロス・ゴーン被告が退任に伴って受け取る金銭をめぐり、約3千万ユーロ(約38億円)相当の支払いを認めないことを決めたと発表した。同日開いた取締役会で決めた。ゴーン被告は退任時にルノー株約46万株(約33億円相当)を報酬として受け取る権利があったが、ルノーは支給をとりやめる。ライバル会社に退任後2年間転職しないことを条件に支給する補償金も支払わない。仏メディアによると、400万~500万ユーロ(約5億~6億3千万円)を受け取れる規定だった。パリ郊外のベルサイユ宮殿で2016年に開かれたゴーン被告の結婚式にルノーの資金が流用されていたことなどが報じられており、世間の理解が得られないと判断したとみられる。

*1-6-4:https://www.asahi.com/articles/ASM2V36F1M2VUHBI00L.html?iref=comtop_8_04 (朝日新聞 2019年2月26日) テスラCEO、またまた舌禍ツイート 株価は急落
 米証券取引委員会(SEC)が、米電気自動車(EV)大手、テスラ社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が和解条項に違反したとして、米連邦地裁に申し立てていたことが26日、わかった。テスラ株は26日の時間外取引で、4%程度急落している。マスク氏は19日夜、テスラ社の年の生産台数について「2019年は約50万台になる」とツイート。その約4時間後のツイートで、「19年末段階での生産台数ペースが年換算で50万台になるという意味だった。今年の引き渡しベースの台数は依然として約40万台だ」と修正した。マスク氏は1月末の四半期決算発表の際の説明では「19年には、36万~40万台の引き渡しを見込んでいる」としていた。マスク氏は昨年8月、テスラ社を非上場化するとツイートして株価を乱高下させた。その後、投資家から非上場化する正式な提案がなかったことも表面化して、非上場化の「断念」を表明した経緯がある。SECはこの一連の動きで、市場を混乱させたとして、マスク氏を提訴。昨年秋に多額の制裁金のほか、マスク氏が兼務していた会長職から離れることや、ツイートを含めたマスク氏の対外的なコミュニケーションを監視する態勢をつくることでマスク氏側と和解していた。

<これまでの日産・ルノーの実績と今後>
*2-1:http://qbiz.jp/article/147920/1/ (西日本新聞 2019年1月30日) 日産が中国でEV戦略加速 現地生産、販売網拡大 環境規制が追い風
 日産自動車が中国市場への電気自動車(EV)投入・販売策を進めている。中国政府が新たな環境規制を導入し、EVなどエコカー普及を促す動きに合わせたものだ。EV戦略は今後、同社が中国市場で覇権を握れるかどうかの試金石となる。現地の生産・販売現場を訪ねた。「都是奮斗出来的、加油(全ては奮闘した結果だ、頑張れ)」−。中国語の看板が掲げられた工場内で、ヘルメット姿の作業員たちがきびきびと動き回る。広東省広州市にある東風日産花都工場。これまでガソリン車のみを生産してきた組み立てラインに、12〜13台に1台の割合でエンジンの代わりにモーター、そして燃料タンク部分にバッテリーを搭載するEVが流れる。昨年9月から販売を開始した「シルフィ ゼロ・エミッション」だ。中国で人気のセダン「シルフィ」に、EV「リーフ」のシステムを応用した。同工場で1日に90台生産する。2003年に中国へ進出した日産は、地元メーカー「東風汽車集団」との合弁で事業展開。今年末までにEV5車種を市場に投入予定で、シルフィEVが先陣を切った。
■連 動
 広州市の東風日産販売店。シルフィEVが店舗入り口の“一等地”に展示され、EV売り込みへの意欲が伝わる。同店では月間販売数約200台のうち10台前後がEV。昨年末までに販売網約800店のうち約2割でEV販売を始め、さらに増やす方針という。EV普及の鍵を握るのが広州、北京、上海など主要7都市でのナンバープレート規制だ。渋滞緩和や環境対応のため、マイカー保有には抽選などによるナンバー取得が必要だが、EVなら比較的容易に入手可能。東風汽車の泉田金太郎経営企画本部長は「規制都市がEV市場を創出する。対象都市が倍以上に増える可能性もある」とみる。中国は今年から自動車メーカーに対し、一定割合でEVなど新エネルギー車(NEV)の生産を義務付ける制度を導入。こうした動きを受け、日産はEVをけん引役に22年の中国での販売台数を17年比7割増の260万台に引き上げる青写真を描く。
■懸 念
 ただ、EV戦略に動くのは日産だけではない。昨年11月に広州市で開かれた広州国際モーターショーでは、国内外のメーカーがEVを並べた。中国専用の量産EVを初公開したのはホンダ。現地法人、広汽ホンダの佐藤利彦総経理は「18年は電動車元年。今回のEVはその第1弾だ」と強調する。トヨタ自動車も来年、EV生産を開始する方針を明らかにしている。一方で中国経済は減速。中国自動車工業協会によると、18年の年間販売数は28年ぶりに前年を割った。米中貿易戦争、さらには日産固有の問題として前会長カルロス・ゴーン被告の事件も影を落とす。日産では中国事業の担当幹部だったホセ・ムニョス氏が退任するなど、ゴーン被告の信任が厚かった外国人幹部が主要業務から外れるケースも起きている。こうした内外の変化が今後のEV戦略にどう影響するかも注目される。

*2-2:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190306-00010005-kurumans-bus_all (Yahoo 2019.3.6) 「e-POWER」搭載のコンセプトカー日産「IMQ」を発表 欧州へ「e-POWER」投入も宣言
●クロスオーバーSUVタイプのコンセプトカー「IMQ」
 日産はジュネーブモーターショー2019において、全輪駆動タイプの電動パワートレイン「e-POWER」を搭載したクロスオーバーSUVのコンセプトカー「IMQ」を世界で初めて公開。また「e-POWER」技術の欧州市場への投入も発表しました。電動パワートレインの「e-POWER」は、コンパクトカー「ノート」に搭載されて、2018年国内登録車販売で1位を獲得しています。100%電動モーター駆動システムと、モーターを駆動するための電気を発電するガソリンエンジンを組み合わせた「e-POWER」は、素早く滑らかな加速と優れた燃費性能を提供。欧州では、日産「リーフ」が販売台数トップの電気自動車となっていますが、日産は「e-POWER」を投入することで、同地域における電動車両のリーダーシップを更に強化するとしています。2022年までに「e-POWER」を欧州の量販モデルに搭載することで、欧州における日産の電動車両の販売は現在の約5倍となり、2022年度末には市場平均の2倍の規模となる見込みです。日産の常務執行役員であるルードゥ・ブリースは次のように述べています。「日産は量販EV技術におけるグローバルリーダーシップの上に、欧州における全面的な電動化を見据えています。今後2年のうちに「e-POWER」を欧州市場に投入することで、“ニッサン インテリジェント モビリティ”の提供する価値をさらに多くのお客さまにお届けしていきます」
  ※ ※ ※
 ジュネーブモーターショーで初披露された「IMQ」は、先進の技術とデザインを搭載した全輪駆動の「e-POWER」搭載車です。欧州の小型クロスオーバーの概念を超えた外観や技術が、日産のクロスオーバーセグメントにおけるリーダーシップを反映します。具体的には「e-POWER」システムは、発電専用のガソリンエンジンに加え、発電機、インバーター、バッテリー、電動モーターが搭載されます。ガソリンエンジンは発電にのみ使用され、常に最適な回転数で作動し、従来型の内燃エンジンと比べより優れた燃費と低排出ガス性能を実現。日本では「ノート」と「セレナ」に「e-POWER」が搭載されています。「ノート」は購入者の70%以上が、「セレナ」は約半数が「e-POWER」搭載車を選んでいます。なお、100%電気自動車「日産リーフ」の累計グローバル販売台数が40万台を突破し、世界販売台数No.1の地位を確固たるものにしたことも、車両の電動化における日産のリーダーシップを明確に示しています。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM366WFCM36UTIL07Z.html?iref=pc_rellink (朝日新聞 2019年3月6日) 車はスズキ、関係ない社名が次々 ゴーン前会長保釈
 東京拘置所では200人を超える報道陣が、ゴーン前会長の保釈を待っていた。午後4時17分、保釈手続きを担当していた弁護人の高野隆弁護士らが黒塗りのワゴン車を拘置所の正面玄関前に止め、建物内に。約12分後、布団やキャリーケースなどの荷物を持って外に出て、ワゴン車に積み込み始めた。
●カルロス・ゴーン もたらした光と影
 その2分後、玄関から10人ほどの拘置所職員が出てきた。職員らに挟まれるように、青い帽子にオレンジ色の反射ベストを身につけ、マスクをした男性がいた。背筋を伸ばし、ゆっくりとした歩み。黒塗りワゴン車の前を素通りし、前方に止めてあったスズキ製の軽ワゴン車に乗り込んだ。埼玉県内の塗装会社の社名が書かれ、塗装道具が積まれた軽ワゴン車は、静かに走り出した。黒塗りワゴン車は停車したまま。弁護人も玄関付近に残っていた。だが、軽ワゴン車の後部座席に座った男性の帽子とマスクの間には、特徴的な太い眉毛と鋭い目つきが見て取れた。「えっ、ゴーン被告?」。中継中のテレビ局の記者は声を裏返し、言葉に詰まった。他の報道陣も「変装か」とざわつき始めた。軽ワゴン車が拘置所敷地内をぐるりと回って車道に出ようとすると、カメラマンたちが一斉にシャッターを切った。拘置所を出発した軽ワゴン車が行き着いたのは、東京都千代田区の弁護士事務所。車から出てきたのは、作業員風の服装から、濃いグレーのコートに着替えたゴーン前会長だった。事務所に入った後も、メディアの前で語ることはなかった。法務省関係者によると、ゴーン前会長が着ていた衣服と移動用の軽ワゴン車は弁護人が用意したという。同省幹部は「変装して保釈なんて聞いたことない」。塗装会社の関係者は「車の塗装はやっていない」と語り、ゴーン前会長との関係は「全然わからないし聞いたことがない。もしかしたら、お客さんのつてでつながりがあったのかも」と語った。青い帽子には、埼玉県内の鉄道車両整備会社の社名が書いてあった。この会社の担当者は「日産とは取引がないし、今回の件も関係がない」と戸惑った様子だった。なぜ、変装までする必要があったのか。関係者は「マスコミに追われないようにする意図があったが、確実にだますのは難しいと思っていた」と語る。日産の40代の女性社員は、「後ろめたいところがないなら、変装などせずに堂々と出てきてほしかった」と残念がった。別の30代の男性社員は「ゴーンさんは人の目を気にするタイプだから、変装してマスコミに追われないようにしたのでは」と推測した。
●妻と娘? にこやかな表情で車に
 東京拘置所には朝から、ゴーン前会長の弁護人や家族とみられる人たちが頻繁に出入りした。報道陣も朝から100人以上が詰めかけ、周囲には10段ほどの大型脚立がずらりと並んだ。午前10時40分ごろには、ゴーン前会長の妻と娘とみられる2人がフランス大使館の車で到着。約1時間半ほど、拘置所内で過ごしてからいったん離れた。報道陣は増え続け、昼過ぎには200人超に。フランスのほか、米、英、ロシア、ブラジルなどの海外メディアも並んだ。午後1時40分過ぎ、「保釈保証金の納付が完了した」と速報が流れると、カメラマンたちは地面に置いていたテレビカメラを担ぎ上げ、脚立に上って構え始めた。妻と娘とみられる2人は午後3時過ぎ、再びフランス大使館の車で姿を現した。変装したゴーン前会長が軽ワゴン車に乗って走り去ってから約10分後、にこやかな表情で車に乗り込んだ。

*2-4:https://digital.asahi.com/articles/ASM373HH2M37UTIL005.html (朝日新聞 2019年3月7日) ゴーン氏の変装、弁護人の弘中氏「テレビ見てびっくり」
 会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)が保釈されたことについて、弁護人の弘中惇一郎弁護士が7日、記者団の取材に応じ、「人質司法がなくなるきっかけになれば」と改めて語った。前会長の記者会見については、休養や打ち合わせの必要があるため同日中はないとし、引き続き検討するという。昨年11月の逮捕後、ゴーン前会長の身柄拘束は108日間に及んだ。弘中氏は「長期勾留の状態で裁判をするのはアンフェアだ。制限付きだが、裁判所が保釈を認めたことは非常によかった」と話した。保釈の際、前会長が作業着姿に変装していたことについて、弘中氏は「ゴーンさんと現場にいた弁護士のアイデアだったと思う」と話し、「テレビを見てびっくりした」という。「無罪を訴えるならもっと堂々との意見もあるが、ユーモラスでいいという考え方もある」と語った。ゴーン前会長は保釈後、事前に定められた都内の住居で、来日した家族と過ごしているとみられる。弁護団は今後、会見の時期や内容、弁護方針などを協議する。

<日本の司法の違憲性>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190217&ng=DGKKZO41377720W9A210C1CC1000 (日経新聞 2019年2月17日) ゴーン元会長への「人権侵害」懸念 ブラジル弁護士会
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(64)が会社法違反罪などで起訴されたことに絡み、ブラジル主要紙フォリャ・ジ・サンパウロ(電子版)は16日までに、ブラジル弁護士会が日弁連にゴーン被告への「人権侵害」への懸念を表明する文書を送ったと伝えた。クラウディオ・ラマシア会長名の文書は、ゴーン被告が「拷問による自白を得る明確な目的により、肉体と精神の状態を害する状況で不当に勾留されている」と非難し、日弁連に対処を求めた。文書はゴーン被告の家族の弁護士が要請し作成されたという。

*3-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201902/CK2019022302000263.html (東京新聞 2019年2月23日) NYタイムズ、社説で「人質司法」批判 ゴーン被告勾留巡り
 日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(64)が金融商品取引法違反と会社法違反(特別背任)の罪で起訴された事件で、米紙ニューヨーク・タイムズは二十二日付の社説で、自白偏重型とされる日本の司法制度を批判した。社説は「ゴーン氏は日本の“正義”と相対している」と題し、ゴーン被告が問われている罪を「深刻」としながらも「保釈を拒むべき理由にはならない」と述べ、逮捕から三カ月過ぎても拘置所に勾留されている現状を疑問視。日本では「保釈は一般的に、公判で罪を認める用意がある被告のためのものだ」と指摘し、保釈請求が繰り返し却下されているのはゴーン被告側の無罪主張が理由との見方を示した。「公判はいつになるか分からないが、裁かれるのは伝説の経営者だけではない。日本の司法制度もそうだ」と締めくくっている。

*3-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM3544RQM35UTIL00Y.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2019年3月5日) ゴーン被告の保釈認める決定 東京地裁、保釈金10億円
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)が会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された事件で、東京地裁は5日、前会長の保釈を認める決定を出した。保釈保証金は10億円。前会長の保釈請求はこれまで2回退けられていたが、弁護人が一新した後、2月28日に3回目の請求が出されていた。検察側は決定を不服として準抗告するとみられるが、これが退けられ、前会長が保証金を納付すれば、東京拘置所から保釈される見通しだ。前会長は一貫して起訴内容を否認しており、身柄拘束は昨年11月19日に逮捕されてから100日以上に及んでいる。東京地検特捜部の事件で否認のまま、裁判の争点や証拠を絞り込む公判前整理手続き前に保釈されるのは極めて異例だ。特捜部は今年1月11日、ゴーン前会長を特別背任と金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で追起訴した。弁護人は同日、保釈を請求したが、地裁が却下。保釈後にフランスに住むなどの条件を提示したが、地裁は証拠隠滅や逃亡の恐れがあると判断したとみられる。弁護人は1月18日、再び保釈を請求し、保釈後の住居を日本国内に変更するなどしたが、これも却下された。前会長の弁護人は11月の逮捕後、元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士が務めていたが、2月13日付で辞任。弘中惇一郎弁護士らが新たに就任し、3度目の保釈請求をしていた。起訴状によると、ゴーン前会長は2008年10月、約18億5千万円の評価損が生じた私的な投資契約を日産に付け替えたほか、信用保証に協力したサウジアラビアの実業家に日産の子会社から09年6月~12年3月、計1470万ドル(当時のレートで約13億円)を不正に送金したとされる。また、10~17年度の役員報酬計約91億円を有価証券報告書に記載しなかったとされる。

*3-4:https://digital.asahi.com/articles/ASM355T49M35UTIL03M.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年3月5日) ゴーン前会長、保釈条件に「嫌そうな顔」 弁護人明かす
 「手続きをスムーズに進めたい」。東京地裁が、ゴーン前会長の保釈を認める決定をしたと速報が流れてから約4時間半後。ゴーン前会長の弁護人の弘中惇一郎弁護士は、東京都千代田区の事務所に集まった報道陣の質問に答えた。保釈決定の主な要因については「証拠隠滅、逃亡の恐れを防止できる極めて具体的な手立てを、こちらが提示したこと」と強調。ゴーン前会長の住まいに監視カメラを設置したり、携帯電話に通信制限を設けたりするほか、事件関係者との連絡も一切禁止する内容になった。こうした条件には、保釈決定の知らせ自体には喜んだゴーン前会長も「びっくりして、嫌そうな顔はした」。弁護人が条件の必要性を説得したという。横浜市西区の日産自動車グローバル本社で、帰路につく社員たちの口は重かった。30代の男性社員は「話さないように言われているので」とうつむいた。別の社員は「逮捕から3カ月以上たち、もはや過去の人という印象。資金の私的流用などの不正があったことは事実だと思うので、経営の邪魔はせず反省してほしい」と思いを明かした。東京拘置所(東京都葛飾区)には数百人の報道陣が駆けつけた。ロイター通信のティム・ケリー記者(50)は「欧米の基準からすれば、保釈までの期間が長すぎる」と日本の司法制度を批判する一方、「保釈されれば、ゴーン氏は検察や日産への批判が自由にできる。検察、日産との戦いがこれから本格化する」と注目する。さらに、「長い拘束でどれくらいやせたか、白髪が増えたのか容姿の変化も気になる」と語った。

*3-5:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190307_4.html (京都新聞 2019年3月7日) ゴーン被告保釈  「人質司法」から脱却を
 昨年11月の電撃的な逮捕以降、108日に及ぶ身柄拘束が続いていた日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が保釈された。起訴内容を全て否認する被告の保釈決定は異例であり、画期的だ。冤罪(えんざい)の温床とも指摘される「人質司法」の不当性を考えれば当然といえる。会社法違反(特別背任)などの罪で起訴されていたゴーン被告はきのう、保証金10億円を納付して保釈された。保釈請求に対し、東京地裁は証拠隠滅や逃亡の恐れが大きくないと判断した。保釈決定を不服とした検察側の準抗告も棄却した。ゴーン被告は無罪を主張し、法廷で全面的に争う姿勢をみせる。米国の代理人を通じ、「私は無実であり、公正な裁判を通じ強く抗弁する」と強調した。請求は3回目で認められた。公判に向けた争点整理が進んでいない段階で、否認している被告が保釈されるケースはまれだ。事件関係者との口裏合わせなど、証拠隠滅の不安が拭えないためだ。とりわけ検察の特捜部が手掛ける複雑な事件では、保釈は珍しい。2度も請求を退けた地裁が、なぜ許可へかじを切ったのか。「人質司法」との批判が強まる中、むやみに勾留を続けたくないというのが本音ではなかろうか。「検察と一体」とみられては裁判自体の公正を損ない、国民の信頼を失いかねない。証拠隠滅の恐れなどを綿密に審査し、身柄の拘束がもたらす不利益をも考慮して問題がなければ否認でも弾力的に保釈を認めるべきであろう。新たに就任した弁護団は住居の出入り口への監視カメラ設置や携帯電話の使用制限といった厳しい行動制限を提起し、地裁も応じた。刑事弁護にたけた弁護団の手段が奏功したとみられる。ただ証拠隠滅や逃亡の防止を担保するとはいえ、過剰な保釈条件は人権侵害につながりかねない。前例として定着する懸念が残る。否認すれば罪証隠滅の恐れがあるなどとして長期にわたり勾留される「人質司法」への批判は強い。長期の拘束は日産事件で海外からも厳しい目が向けられている。日本も批准した国連の自由権規約には、無罪推定の原則とともに妥当な期間内に裁判を受ける権利や釈放される権利、起訴後の勾留原則禁止が定められ、勾留を短期間にとどめる国は多い。最近、勾留請求却下率や保釈率は上がっているが、裁判所の責任は重い。「人質司法」から脱却する契機としたい。

*3-6:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019030690135519.html (東京新聞 2019年3月6日) 一貫否認、ゴーン前会長保釈へ 108日間拘束、何語る
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)=会社法違反(特別背任)罪などで起訴=の弁護人は六日午前、東京地裁に保釈保証金の十億円を納付しなかった。地裁は五日夜、保釈決定に対する東京地検の準抗告も棄却しており、保釈金を納めればいつでも保釈される状況になっていた。ゴーン被告の保釈は早くても六日午後以降になる。ゴーン被告は昨年十一月十九日の逮捕後、一貫して否認。百八日間にわたる身柄拘束が解かれれば、記者会見を開く可能性があり、何を語るか注目される。地裁は五日、弁護人の保釈請求に対し、保釈を決定。居住地を日本国内に制限し、海外渡航を禁止する条件を付けたことを明らかにしていた。弁護人によると、関係者との接触を疑われないよう住居の出入り口に監視カメラを設置する案を示したところ、地裁は保釈条件に組み入れた。録画映像は定期的に地裁に提出する。東京地検は決定を不服として準抗告したが、地裁の別の部が棄却していた。ゴーン被告は、有価証券報告書に自身の役員報酬の一部を記載しなかったとする金融商品取引法違反容疑で二度逮捕され、日産に損害を与えたとする特別背任容疑でも再逮捕された。ゴーン被告の当初の弁護人は今年一月、二度にわたり保釈請求。いずれも却下され、勾留が続いていた。その後の一月二十四日、ルノーの会長と最高経営責任者(CEO)を辞任。新たに弁護人に選任された弘中惇一郎弁護士らが二月二十八日、三回目の保釈を請求していた。
   ◇ 
 ゴーン被告が勾留されている東京・小菅の東京拘置所には、六日早朝から保釈の瞬間を捉えようと、二百人以上の記者やカメラマンが詰め掛けた。現場には足の高い脚立や三脚などがずらりと並び、拘置所職員や警察官が警戒に当たった。午前中からテレビ中継が断続的にあり、上空をマスコミのヘリコプターが旋回するなど、ものものしい雰囲気となった。最初の逮捕から百八日にわたる長期間の勾留は、国際社会から「人質司法」と批判されてきた。日産自動車の経営を立て直した世界的な「カリスマ経営者」の動向をいち早く報じようと、仏国をはじめとする海外メディアの記者も多く集まった。
◆日産社長「仕事影響ない」
 日産自動車の西川広人社長は六日朝、都内で記者団にカルロス・ゴーン被告の保釈について問われ「司法手続きなので、そういうこともある」と平静を強調した。ゴーン被告は一貫して無罪を主張しているが、経営に与える影響についても「仕事への影響はない」と明言した。

<航空機や船舶にも電力を使う時代に・・>
PS(2019年3月9、11日追加): *4-1のハイブリッド内航船は、現在なら、それほど大きな期待を持てない船出だ。何故なら、太平洋等を航行する時はディーゼルエンジンを使い、港湾内では洋上充電したリチウムイオン電池をエネルギーとして使うからだ。日本人は、空気や海を汚す化石燃料を高い金を出して外国から買うのがよほど好きなのかも知れないが、私は、再生可能エネルギー由来の水素燃料を使った方が液体燃料より軽く、公害も出ないのでずっとよいと考える。また、船舶の場合は、風とのハイブリッドにもできるそうだ。さらに、船舶は自動車よりも自動運転にしやすいため、自動運転の導入が人手不足解消に繋がるだろう。
 そして、造船会社は、*4-2のように、自動車会社やIT会社からヘッドハントしてでも転職者を採用して活かせば、短時間で船舶のイノベーションを行うことができるのだが、そのためには転職が不利にならない賃金体系(年功序列ではなく能力主義)を作っておくことが必要だ。従って、今頃、「定年まで勤めあげるだけが職業人生のゴールではない(当然)」「生え抜き社員だけでなく・・(これも当然)」などと言っていること自体、かなり遅れているのである。
 なお、*4-3の記事の「①グローバル化で報酬制度改革が不可避で、役員報酬は序列から誘因型へ」「②資本生産性やESG等の指標も考慮を」と書かれているが、このうち①は、ゴーン氏の報酬が高いことを強く問題にした日本国内の批判に一石を投じるものだ。実際には、②も加味して実績を挙げた経営者の報酬が高いのは世界標準であり、経営者の多様化が進めば進むほど単純な高額報酬批判は当たらなくなる。私の経験では、報酬がその人の貢献度(=実績、価値)を表す代理変数であるのは、米国だけでなく日本以外はどこも同じで、年功序列型雇用制度を堅持している日本だけが勤務年数の代理変数になっている。そして、年功序列型雇用制度の中では、問題を先送りして静かに長く勤めた人が役員になり、中途採用は不利であるため従業員の転職も進まず、改善はできても摩擦の起きる改革ができない企業体質を作ることになるわけだ。

*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190309&ng=DGKKZO42076550V00C19A3QM8000 (日経新聞 2019年3月9日) ハイブリッド内航船、期待の船出 少ない騒音 労働環境改善も
 人手不足に悩む内航海運業界に一石を投じる船が走り出した。NSユナイテッド内航海運(東京・千代田)が2月に就航させた「うたしま」はリチウムイオン電池を使ったハイブリッド(HV)推進システムを搭載した新型船。騒音や振動が少ないため、環境負荷の低減だけでなく洋上の労働環境改善を後押しするモデルとして注目される。うたしまは新日鉄住金の鋼材を運ぶ。生産計画に基づき最適な航路や運航頻度を今後決める。太平洋などを航行する際はディーゼルエンジンを使うが、港湾内では洋上で充電したリチウムイオン電池から電動機に給電する。陸上の設備からも充電可能だ。船の建造にかかるコストは従来の2倍近いが、同様のシステムの内航貨物船は日本で初という。利点は二酸化炭素(CO2)排出量を削減できるだけではない。「リチウムイオン電池を使っている際の音が静かで驚いた」。船主である向島ドック(広島県尾道市)の竹嶋秋智船長は話す。内航船の船員は2~3カ月間乗船した後、1カ月ほど休暇をとるのが一般的。勤務中、エンジンの音や振動で睡眠や業務を妨げられるとの声も多い。HV船は港湾内で船を移動させる際、エンジンの温度を管理する作業も軽減できる。日本内航海運組合総連合会(東京・千代田)によると2018年の輸送量は前年並みの2億2254万トン。荷動きは総じて堅調だった。トラックから船や鉄道に輸送手段を変える荷主が増加。トラック運転手の労働環境が厳しくなる中、物流網に船を加え負荷を分散させる動きもある。だが人手不足に悩むのは海運も同じ。内航貨物船は60歳以上の船員が約3割を占めるとされる。船舶管理会社、イコーズ(山口県周南市)の蔵本由紀夫相談役は「船員を年々確保しづらくなった」と懸念する。「労働環境の改善は人手確保にもつながる」とNSユナイテッド内航海運の和田康太郎常務。洋上の働き方改革に一役買えるか、HV船の行方に期待が集まる。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190114&ng=DGKKZO39985250T10C19A1PE8000 (日経新聞社説 2019年1月14日) もっと転職者を生かす会社に
 終身雇用の慣習が崩れ、転職や起業が珍しくなくなった。でも円満退職へのハードルは高い。いまだに転職をマイナスの印象でとらえる風潮が、日本の会社に残っていないだろうか。人手の確保が難しい今こそ、転職した人材も活用する視点をもちたい。総務省の2018年7~9月の調査によると、過去1年以内に転職した経験のある人は341万人に達し、リーマン・ショック以降で最も高い水準となった。一方で民間の調査では、35歳以上の退職者の半数が「後任が不在」などの理由で強引に慰留され、円滑に辞められなかった。本人に代わって手続きをする退職支援サービスが伸びているのは、退社をめぐる会社と個人のギクシャクした関係の裏返しだろう。退職・転職は「別れ」ではなくコミュニティーの「広がり」と考えたい。退職希望者を無理に引きとめても、意欲は下がり周りの社員にも悪影響を及ぼしかねない。連帯感を持ち続けることで得られる利点に目を向けるべきだ。元社員の転職先が仕入れ先や外注先、代理店となる場合がある。一度やめて社外で経験を積んだ人材を再雇用すれば、客観的な視野から経営改善に取り組める。さらに起業が増えれば、起業家を輩出する企業として評価され、優秀な人材を獲得しやすくなる。米マイクロソフトが現役の研究者と元社員の交流の場を設け、研究分野の相乗効果を生みだそうとしている。社外の知恵を持ち寄って製品やサービスを企画・開発するオープンイノベーションの発想が、人材の確保や育成においても求められる。企業は働き手の人生設計に応じた制度を考えてほしい。転職や再雇用を含めた将来のキャリア形成について、採用時に担当者と率直に話せる企業はまだ少ない。人生100年時代には、定年まで勤めあげるだけが職業人生のゴールではない。生え抜き社員だけでなく、社外の多様な人材も生かすことが企業の成長につながる。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190117&ng=DGKKZO40069050W9A110C1KE8000 (日経新聞 2019年1月17日) 企業統治、何が足りないか(上)役員報酬、「序列」から「誘因」型へ、指標や開示 統合的に改革 伊藤邦雄・一橋大学特任教授(1951年生まれ。一橋大博士。専門は会計学、企業統治論、企業価値評価論)
<ポイント>
○グローバル化で報酬制度の改革不可避に
○業績連動の株式報酬は比率高める方向へ
○資本生産性やESGなどの指標も考慮を
 いま進んでいる企業統治改革は当初、取締役会の機関設計、複数社外取締役の導入、取締役会の実効性評価などに焦点が当てられたため、役員報酬の議論が比較的遅れていた。ところが、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長の高額報酬や有価証券報告書記載漏れ、官民ファンドの「高額報酬」問題に世間の耳目が集まったこともあり、経営者報酬への関心がにわかに高まった。ただ昨今の論調は、報酬水準の多寡だけが独り歩きしており、危険でもある。皮相的な議論は統治改革の流れを逆行させる恐れもある。経営者報酬制度は本来、企業統治や企業価値の持続的向上の文脈で冷静に議論されるべきものである。本稿では、日本の経営者報酬に焦点を当て、その課題や今後のあり方をグローバルな視点も入れながら論じてみたい。日本企業の経営者報酬水準は2009年以降、上昇傾向にある(図参照)。ウイリス・タワーズワトソンの調査によれば、17年度の日本の時価総額上位100社のうち売上高1兆円以上の74社の経営トップの報酬額は1億5千万円(中央値)。米国は14億円、英国とドイツはそれぞれ6億円、7億2千万円である。この彼我の差には、経営者報酬に対する各国の経緯と基本的な考え方が投影されていることを看過してはならない。米国では、報酬を自分の価値を表す代理変数であり、自らの働きのベクトルをけん引するインセンティブ(誘因)と捉える傾向がある。将来に向けた「けん引指標」なのだ。日本では、経営陣の報酬水準は社内序列の代理変数であり、株主総会をにらんだ報酬総枠内での調整結果であり、過去の「処遇指標」の性格が強い。そこには「インセンティブ」の要素は薄い。日本では自社の報酬水準が業界内で突出するのを避け、従業員との給与格差が拡大し過ぎないよう配意してきた。また、おカネのことを言い出しにくい雰囲気の中で、過去を踏襲した、抑制型の「逆お手盛り」実務が多く見られた。経営者が自らの報酬水準を独断で設定した日産には、多くの日本人が目を疑った。日本の統治改革の狙いは、過去の慣習を問題視し、株主・投資家視点で報酬制度の透明性の向上と「攻め」の統治に基づくインセンティブとして性格づけることにある。興味深いことに、経営者報酬を巡って日本と欧米は逆の方向にある。欧米では最近、高額報酬が企業の持続的発展に寄与しているとは限らないとの認識から、株主が経営者報酬の暴走を抑止する動きが見られる。背景には、経営者が目先の利益に走る「短期主義」への反省がある。日本の報酬水準が低位にある理由は他にもある。欧米企業が高額報酬を払うのは、選任の際に経営者としての過去の実績や人脈の豊富さなどを重視するからだ。日本は内部昇格が普通で、自社の事業経験はあるが、経営者としての実績は「未知数」状態で選任されるのが通例だ。人脈も限られる。経営トップに登りつめた人材は流動性が低く、経営者市場が育たなかった。こうした実情から一見、日本の役員報酬制度をあえて変革する必然的理由は見いだしにくい。ところが急速に進む日本企業のグローバル化がこうした現状に揺らぎを与え、変革を余儀なくしているのだ。海外M&A(合併・買収)などにより、外国籍の経営人材がグループ内に流入し、かつ買収先の経営陣には日本型とは異なる報酬制度を認めざるを得ない。また、競争戦略の面からも、海外の有能な経営人材を獲得しなければならない。報酬は、数値化し比較できる重要な指標だ。見直す際の基本的視点は、「序列処遇型」から未来志向の「インセンティブ制度」に変えていくことだ。確かに「報酬の多寡で働きが変わるものではない」と喝破する日本の経営者も多い。筆者もその美意識には共感するが、報酬を競争戦略の一環と捉える限り、インセンティブを高められない報酬制度は危機的だ。今後は、以下の点に留意しながら報酬制度を設計・運用すべきである。第1はプロセスの透明性と客観性の確保。この点はコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)でも強調されている。最低限、任意でも報酬委員会を設置すべきだ。委員会は社外取締役が過半(社外が委員長)を占めるのが肝要だ。日産の悲劇の発端は、最低限の要件を満たさなかったことにある。要は、役員報酬について堂々と透明性をもって議論すべきだ。客観性の担保として、外部の報酬データベースを使うのもよい。その際に散見されるのが「中央値傾斜症候群」だ。確かに報酬水準の突出を回避する点では意義があるが、そこには世間相場に引っ張られた標準化志向がうかがえる。重要なのは、競争環境を視野に入れ、自社のビジネスモデルや中期経営計画の積極性などを考慮して、柔軟に報酬制度を設計することだ。報酬と指名の委員会を連携させるのも一法だ。両委員会は役割が異なる。指名委員会は、選任・昇格・降格・解任という「ゼロ・イチ」の鋭角的性格をもつ。報酬委員会は、役員のパフォーマンスを評価して報酬を決定するという「連続的」な性格をもつ。評価結果が各役員への人事的なメッセージや警鐘となる。「組織内公平性」も忘れてはならない。余りに高い役員報酬は、従業員のやる気をそぐ恐れもある。それを防ぐのが報酬決定プロセスの透明性と客観性だ。従業員にプロセスを丁寧に説明すべきだ。第2は基本報酬と中・長期インセンティブ(LTI)の組み合わせだ。LTIは中長期の業績に連動した報酬のことで、統計によれば、米国は基本報酬1割、年次インセンティブ2割で、LTIが7割である。日本は5割が基本報酬、年次インセンティブ3割で、LTIは2割だ。昨今、日本でも中長期業績に連動した株式報酬制度を導入する企業が増えている。それでもLTIの導入割合は欧米がほぼ100%に対し、日本は半分にとどまる。企業価値について経営陣が株主と利害を共通化するには、業績に連動する株式報酬の比率を高めるべきだ。大事なのは、インセンティブの構成比を自社の哲学や文化、競争環境や戦略の時間軸を踏まえて統合的にデザインすることである。第3の点は、KPI(重要経営指標)だ。三井住友信託銀行によれば、日本では中長期業績連動報酬に用いるKPIは売上高など損益計算書の項目が多い。統治改革では資本生産性の向上を課題としており、そうしたKPIを入れる必要があろう。LTIの指標と中期経営計画で掲げるKPIとの間にかい離があると、投資家から「二枚舌」と捉えられかねない。定性評価の指標にも目配りすべきだ。「持続可能性」の観点からESG(環境・社会・企業統治)や国連の持続可能な開発目標に関わる指標の導入も検討すべきだろう。最後は説明責任の問題だ。欧米の報酬水準は高額だが、一方で詳細で厳しい開示規制がある。米では最高経営責任者(CEO)と最高財務責任者(CFO)に加え報酬額上位3人の個別開示と説明、英でも「取締役報酬報告書」の作成、毎年の事前と事後の開示が要求されている。それに比べ、日本の開示は見劣りがし、改革の余地が大きい。経営者報酬ガバナンスを実効性あるものにするには、開示を通して納得性と妥当性を高めることが鍵となる。経営者報酬制度は単に欧米に追従するのではなく、企業価値を中長期で高めるよう、持続可能性の観点から統合的に設計されるべきである。

<ルノー・日産の権力闘争という背景>
PS(2019年3月9日): *5-1のように、ゴーン氏はルノー・日産・三菱自動車の業務提携の立役者で、「①自身の逮捕は策略と反逆の結果だ」「②日産の一部幹部が日産と業務提携しているルノーとの経営統合を望んでいなかった」「③自分は、3社をより緊密に統合した後、持ち株会社の傘下でそれぞれの自主性を確保する計画だった」と語っている。そして、逮捕直後に日産と三菱の会長職を追われ、2019年に入ってからルノーの会長兼CEOも解任されているため、ゴーン氏逮捕事件の背景にはルノー・日産の権力闘争があったことが明らかだ。しかし、権力闘争に役員報酬の過少記載や会社資金の不正利用などという別件逮捕を使うのは人権侵害であるため、私は、Big4で監査・税務・コンサルティングのすべてを経験しながら多くの会社を見てきた専門家として、感性の良い経営者であるゴーン氏が無罪である理由を説明しているわけである。
 なお、ゴーン氏は、執行役員の半分(25人)を日本以外から採用し、成果給の比率を高めて外国人材を獲得してきたが、ゴーン氏の逮捕後は、*5-2・*5-3のように、ゴーン氏の信任が厚く国際業務で重責を担ってきた人事統括のバジャージュ専務執行役員や中国事業担当のムニョス氏が外され、ゴーン体制は崩されつつある。そして、この3月末の人事異動で、それも完了するということなのだろう。

*5-1:https://blogos.com/article/354799/ (BBCニュース 2019年1月31日) ゴーン前会長、逮捕は「策略と反逆」の結果と 日経新聞が逮捕後初インタビュー
 金融商品取引法違反などの罪で勾留されている日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(64)は、自身の逮捕は「策略と反逆」による結果だと、30日付の日本経済新聞に語った。昨年11月の逮捕以来初めてとなるインタビューでゴーン前会長は、日産の一部の幹部が日産とアライアンスを組んでいるルノーとの経営統合を望んでいなかったと話した。経営統合の計画については、日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)と協議していたという。日本経済新聞の取材に応じたゴーン前会長は、現在も東京拘置所に勾留されている。取材は20分にわたり、拘置所内で行われた。ゴーン前会長はルノー・日産アライアンスの立役者で、2016年には三菱自動車もアライアンスに組み込んだ。しかし逮捕直後に日産と三菱の会長職を追われたほか、今年に入ってルノーの会長兼CEOからも解任されている。ゴーン前会長は、アライアンスの将来について三菱自の益子修CEOにも会話に加わってほしかったが、西川社長が「一対一での会話を求めてきた」と話した。ゴーン前会長の構想では、3社をより緊密に統合した後、「持ち株会社の傘下でそれぞれの自主性を確保する」計画だったという。その上で、自身の逮捕・起訴に日産幹部が関係していたことは「疑いようがない」と話した。ゴーン前会長は昨年11月19日、役員報酬の過少記載や会社資金の不正利用など「重大な不正行為」があったとして、金融商品取引法違反容疑で逮捕された。その後、別の時期の金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑および会社法違反(特別背任)の疑いで2回再逮捕・起訴されている。今年1月8日に東京地裁で開かれた勾留理由開示手続きで、多田裕一裁判官は、前会長には国外逃亡と罪証隠滅を図る恐れがあったとして、勾留は正当なものだと認めた。一方、ゴーン前会長は無罪を主張している。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190109&ng=DGKKZO39789860Y9A100C1TJ1000 (日経新聞 2019年1月9日) 日産外国人幹部、また職務外れる 中国担当に続き人事も
 日産自動車で上級外国人幹部が職務から外れる例が続いている。人事を統括するアルン・バジャージュ専務執行役員が通常業務から外れたことが8日分かった。中国事業を担当するホセ・ムニョス氏も同様に業務から離れた。ともにカルロス・ゴーン元会長の信任が厚く、国際業務で重責を担ってきた。求心力だったゴーン元会長の逮捕を受け、同様の動きが続く可能性がある。バジャージュ氏はすでに通常業務を離れ、新たな担当業務なども決まっていない。同氏は弁護士として活動し、米フォード・モーターを経て、2003年に日産カナダ法人の弁護士として入社。08年に日産本体の人事部の担当部長に就き、アジアや海外人事の要職を担った。14年に人事統括の常務執行役員に昇格すると、ゴーン元会長の右腕として人事を差配。15年から仏ルノー・三菱自動車との3社連合でも人事担当役員の職に就いていた。チーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)で中国事業を担ってきたムニョス氏も通常業務から外れたことが明らかになっている。新たな担当業務は非公表。同氏は北米など主要地域を統括し、18年4月から重点地域の中国戦略を一手に任されるなど、ゴーン元会長の信任が厚かった。日産は両氏が職務から離れた理由を明らかにしていない。ムニョス氏に関しては、統括していた北米事業は採算が悪化。中国でも足元の新車販売が減速し、同氏の責任を問う声もあった。日産はゴーン元会長のもとで国籍にとらわれない「ダイバーシティー経営」を推進し、18年には執行役員の半分にあたる25人を日本以外の出身者が占めた。ルノーからの派遣に加え、グローバル企業で実績を積んだ人材を多く幹部として迎え入れてきたのが特徴だ。日産は成果給の比率を高める欧米流の給与体系などの制度を整備し、海外でも知名度が高いゴーン元会長の存在も求心力となり外国人の人材を獲得してきた。海外事業や3社連合の統括業務では、元会長の信任を得て抜てきされた外国人役員が多い。元会長逮捕による社内の動揺は大きく、こうした動きが続く可能性がある。

*5-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019011201001248.html (東京新聞 2019年2月1日) 日産ゴーン前会長の側近が辞任 執行役員のムニョス氏
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告に近い存在とされてきたホセ・ムニョス執行役員が辞任したことが12日分かった。ムニョス氏は日産の重要市場である中国を受け持ってきたが担当を外れていた。ロイター通信は11日、日産がゴーン被告に関する内部調査の対象を米国、インド、南米にも拡大すると報じた。日産はムニョス氏が中国担当を外れたことについて「別の業務に専念するため」と説明してきたが、関係者は「ゴーン被告に忠実な人間なので現経営陣に警戒されている」と指摘していた。一方、内部調査はムニョス氏が米国事業を統括していた際に行った決定などが対象になるとしている。

<足元にある未来:再生可能エネルギーと電気自動車>
PS(2019年3月10、11、12、13日):原発事故で放射性物質に汚染された地域で生産された食品は、いくら「基準値越えした食品は0だから、風評被害だ」と叫んでみても、基準値が0ではないので生産・販売を続けることが難しいが、*6-1のような再生可能エネルギーなら全く問題ない。そのため、「飯舘電力」が太陽光発電・風力発電を行って送電したり、水素を作ったりするのは、どうせ街づくりをやり直さなければならない被災地にとって大変よく、せっかくなら宮城県以北の比較的安全な場所に、BMW・6-5のフォルクスワーゲン・ポルシェなどの電気自動車や炭素繊維工場などを集積し、東北大学と組んでさらに開発を進めてはどうかと思った。
 なお、*6-2のように、宮城県東松島市赤井地区に落雷があり、赤井地区全体は停電したが、東松島市が震災後に住宅メーカーと作った「スマート防災エコタウン」の住宅街の電気は消えず、約二百人の住民は誰も停電に気付かなかったそうだ。非常時は蓄電池だけでなく、ディーゼル発電機も自動で動くそうだが、私は、これがディーゼルではなく水素か国産の天然ガスであれば、電気は100%国産にできる上、地産地消も進むと考える。
 また、*6-3のように、北海道内の酪農地帯でも自家発電機の導入が相次いでいるそうだが、広い牧場や畑に風力発電設備を設置すれば、停電の心配がなく農家が農業と売電のハイブリッドで稼げるため、外国産に負けない農産品価格にすることもできる。さらに、北海道地震におけるブラックアウトは、再エネは大地震後も稼働していたのに電力需給の調整弁を果たす火力発電所の停止で活用できなかったのであるため、道内の足元の資源を生かして100%再エネ発電をすれば停電の心配がなく、エネルギー代金も外部に流出しないわけである。
 さらに、北海道だけでなく、農業地帯はどこも再生可能エネルギーが豊富なため、発電とのハイブリッドで稼げば日本産農産物の価格を外国産農産物に負けない価格にすることができる筈だ。そのため、*6-4のように、国民のツケで既得権益にしがみつく抵抗勢力に忖度して高コストの電源にしがみつくのではなく、世界の状況と時代の要請にあった政策に大転換すべきで、そうすれば国内に製造業を戻したり、無駄な財政支出を減らしたりすることができるが、このような大転換に乗り出す政治家が現れた時に、それを支持する国民が多くなければその人は政治家たりえないという意味で民主主義の主権者は国民であるため、国民の判断を支えるメディアの普段からの表現も重要なのである。


  岩手県の復興住宅   宮城県石巻市の災害公営住宅       北欧の住宅

(図の説明:大災害の後に新しい街づくりをして復興するのなら、全住宅に太陽光発電をつけて電気代を無料にし、電線を地中化し、デザインのよい家づくり・景観のよい街づくりをすればピンチをチャンスに変えられるが、前と同じかそれより悪い家に住むことになるのなら帰還する人は少ないだろう。その点、欧米の住宅や街づくりは参考にすべきものがある)

*6-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019031002000136.html (東京新聞社説 2019年3月10日) 3・11から8年 再生の光、復権の風
 国は福島県を「再生可能エネルギー先駆けの地」と位置付ける。でも、忘れないでほしい。太陽や風の電気には、脱原発の願いがこめられていることを。福島県飯舘村は、福島第一原発の三十キロ圏外にもかかわらず、あの日の風向きの影響で放射性物質が降り注ぎ、全村避難を余儀なくされた。おととし三月、避難指示は解除されたが、事故以前、約六千人いた村民は、一割しか戻っていない。高原の美しい風景が、都会の人に愛された。「までい」という土地の言葉に象徴される村人の生き方も。「丁寧、心がこもる、つつましさ」という意味だ。原発事故は「までい」な暮らしを引き裂いた。
◆自信と尊厳を取り戻す
 二〇一四年九月に設立された「飯舘電力」は、「までい」再生の象徴だ。村民出資の地域電力会社である。設立の理念は、こうだ。<『産業の創造』『村民の自立と再生』『自信と尊厳を取り戻すこと』をめざして飯舘村のあるべき未来を自らの手により造り成すものとする->原発事故で不自然に傷つけられたふるさとの尊厳を、村に豊富な自然の力を借りて、取り戻そうというのである。現在、出力四九・五キロワットの低電圧太陽光発電所、計四十三基を保有する。年末には五十五基に増設する計画だ。当初は、採算性の高い千五百キロワットの大規模発電所(メガソーラー)を造ろうとした。ところが設立直後、東北電力送電網が一基五十キロワット以上の高圧電力の受け入れを制限することにしたために、方針を転換せざるを得なかった。三年目には、風力発電所を建設しようと考えた。やはり東北電力に「接続には送電網の増強が必要で、それには二十億円の“受益者負担”が発生する」と言われ、断念したという。「風車が回る風景を、地域再生のシンボルにしたかった…」。飯舘電力創設者の一人で取締役の千葉訓道さんは、悔しがる。送電網が“壁”なのだ。送電線を保有する電力大手は、原発の再稼働や、建設中の原発の新規稼働も前提に、太陽光や風力など再生可能エネルギーの接続可能量を決めている。原発がいつ再稼働してもいいように、再エネの受け入れを絞り込み、場所を空けて待っている。「送電線は行列のできるガラガラのソバ屋さん」(安田陽・京都大特任教授)と言われるゆえんである。
◆原発いまだ特別待遇
 発電量が多すぎて送電網がパンクしそうになった時にも、国の定めた給電ルールでは、原発は最後に出力を制限される。あれから八年。原発はいまだ特別待遇なのである。電力自由化の流れの中で、二〇年、電力会社の発電部門と送配電部門が別会社に分けられる。しかし今のままでは一六年にひと足早く分離した東京電力がそうしたように、形式的に分かれただけで、同じ持ち株会社に両者がぶら下がり、「送電支配」を続けるだろう。大手による送電支配がある限り、再エネは伸び悩む。先月初め、「東京電力ホールディングス」が出資する「福島送電合同会社」が、経済産業省から送電事業の許可を受けた。「先駆けの地」の先行例として、福島県内でつくった再生エネの電力を、東電が分社化した子会社の「東京電力パワーグリッド」の送電線で、首都圏へ送り込む計画だ。大手による実質的な送電支配は変わっていない。「発電事業にも大企業の資本が入っており、私たちには、何のメリットもありません」と、千葉さんは突き放す。福島県の復興計画は「原子力に依存しない、持続的に発展可能な社会づくり」をうたっている。千葉さんは、しみじみ言った。「私たちがお日さまや風の力を借りて、こつこつ発電を続けていけば、いつかきっと原発のいらない社会ができるはず-」
◆再エネ優先の送電網を
 最悪の公害に引き裂かれたミナマタが、日本の「環境首都」をめざして再生を果たしたように、脱原発依存は、最悪の事故に見舞われたフクシマ再生の基本であり、風力や太陽光発電は、文字通り再生のシンボル、そして原動力、すなわちエネルギーではないのだろうか。脱原発こそ、福島復興や飯舘復権の原点なのだ。原発優先の国の姿勢は、福島再生と矛盾する。例えば飯舘電力などに、地域再生の活力を思う存分注ぎ込んでもらうべく、再エネ最優先の電力網を全国に張り巡らせる-。今「先駆け」として、やるべきことだ。

*6-2:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019031190070628.html (東京新聞 2019年3月11日) <原発のない国へ すぐそばの未来>(1)停電3日 耐える街 宮城・東松島 電気を地産地消
 太平洋の海岸線から北に三キロ、宮城県東松島市を横断するJR仙石(せんせき)線の線路沿いに、平屋や二階建ての住宅八十五戸が並ぶ。この住宅街を含む赤井地区に落雷があったのは、二〇一七年七月二十五日の午前一時すぎのことだった。停電し、地区は一時間半にわたり真っ暗に。だが、この街の電気は消えず、約二百人の住民は誰も停電に気付かなかった。地元自治会副会長の相沢正勝さん(68)は「二、三日後になって、初めて知ったよ」。八年前、相沢さんは大津波で壊滅的被害を受けた海沿いの大曲(おおまがり)地区に住んでいた。自宅は流され、五人の家族や親戚を失った。停電が長引き、避難先の姉の家では、庭で火をおこして米を炊き、ドラム缶を風呂にした。記憶は鮮明に残っている。「あんな災害は二度と起こってほしくない。でも、ここでは万が一の電気の心配だけはないんだ」。この住宅街は災害などで外部からの電力供給が途絶えても、三日間は自前で電気を賄える。東松島市が震災後、住宅メーカーの積水ハウスと共に水田に開発した復興住宅で「スマート防災エコタウン」と呼ばれる。日本初の取り組みだ。街の真ん中には、太陽光発電の黒いパネル。夏なら昼間の電力需要を100%満たせる。足りない分は、電力事業を担う「東松島みらいとし機構」が東北電力の送電網を通じて市内の別の太陽光発電所から買ったり、太陽光で充電した大型蓄電池を活用したりして補う。機構の常務理事、渥美裕介さん(34)は「街の全需要の半分近くを、地元の再生可能エネルギーで満たしている」と説明した。非常時は蓄電池だけでなく、ディーゼル発電機が自動で動く。渥美さんは「二年前の停電の時、発電機が動きだして黒煙を上げたので、火事と勘違いした人もいました」と明かした。街の中の電線は自営で、東北電の送電網から独立。住宅だけでなく、近くにある仙石病院など四つの医療機関と県の運転免許センターにつながり、普段から電気を供給している。これらの施設は災害時には避難所となる。停電が四日以上となれば、街の非常用電源から最優先で電気の供給を続ける。仙石病院では八年前、長期化した停電で腎不全患者の人工透析が続けられなくなったが、これで助かる命が増えた。街の整備には約五億円の税金が投じられた。四分の三は環境省の補助金が充てられ、残りを市が負担。みらいとし機構は街の外の公共施設や漁協、農協に電気を売って利益を得ており、市が負担した一億二千五百万円を十五年ほどで回収できる見込みだという。再生エネの電気を地産地消しながら防災に生かす試みは、東京都武蔵野市など全国四十カ所以上で進む。震災の苦い経験が、その挑戦を後押ししている。
 ◇ 
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から八年。原発のない国をどう実現するか。先進的な取り組みから、未来を展望する。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p46981.html (日本農業新聞論説 2019年3月9日) 大地震と電力 鍵を握る再エネの活用
 北海道地震から半年が過ぎた。国内初の全域停電(ブラックアウト)の教訓から、道内の酪農地帯では自家発電機の導入が相次ぐ。ただ、自家発電は自衛手段の一つ。停電が長引けば燃料確保の問題も出てくる。災害が多発する今こそ、再生可能エネルギー(再エネ)を活用した地域分散型の電力供給システムを導入すべきだ。別海町の30代の酪農家はブラックアウトの衝撃をこう振り返った。「数分で復旧するだろうと思っていたが、朝の搾乳が夕方にずれ込んだ。牛の乳房は風船のように膨らみ噴水のように生乳が噴き出した」。乳房が張り、牛が鳴き叫ぶ声が耳に残っているという。この酪農家は、知人から大型発電機を借り、停電時も搾乳ができた。近隣の酪農家2戸と交代で使い、電気が復旧した翌日の9月7日夜遅くまで牛の命を支えた。現在は万一に備えて自家発電機を配備したという。乳業メーカーも電力確保に動きだした。よつ葉乳業は既に3工場で自家発電機を導入。他の大手メーカーでも配備に向けた検討や調査を進めている。よつば乳業の有田真社長は本紙インタビューで「非常時でも余裕があれば、他メーカーが集乳した分の処理を手伝う」と述べた。災害時の市民生活に欠かせない小売店の営業継続に向けた動きも出てきた。北海道の日産自動車の販売会社7社と、道内で1000店超のコンビニエンスストアを運営する札幌市のセコマが、電気自動車(EV)を電源に活用し、営業を続ける体制の確立へ協定を結んだ。試乗車として配備するEVをコンビニに派遣し、バッテリーの電力を供給する。今後、モデル店舗を札幌市に設ける予定で、20時間程度の給電が可能という。問われるのは、ブラックアウトを二度と起こさないための電力供給網の整備だ。北海道電力は先月末、燃料に液化天然ガス(LNG)を使う石狩湾新港発電所の営業運転を始めた。大規模停電の発端となった苫東厚真石炭火力発電所を補い、電力の安定供給を目指すためだ。それでも「集中型電力システム」の仕組みは変わらない。ブラックアウトは、電気の需給バランスが乱れたことが原因。再エネは地震後も稼働していたが、電力需給の調整弁を果たす同発電所の停止で、活用できなかったことを教訓にすべきだ。酪農や畜産から出るふん尿、林業から出る木質バイオマス、地形や気象条件を生かした風力。道内には足元の資源を生かした再エネ発電施設がある。太陽光、風力を合わせて地震前日の最大需要の4割に相当する160万キロワットの発電容量を持つ。石炭火力、LNGともに化石燃料の採掘は永遠には続かない。燃焼に伴い、地球温暖化につながる二酸化炭素(CO2)の排出も増える。今こそ環境に負荷をかけない持続可能な「地域分散型」の電力供給システムを検討すべきである。

*6-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/348131 (佐賀新聞 2019年3月12日) 原発とエネルギー政策、世界の現実に目を向けよ
 東京電力福島第1原発事故から8年間、世界のエネルギー情勢は大きく変わった。高コスト化が目立つ原発が低迷する一方で、再生可能エネルギーが急成長し、地球温暖化対策として脱化石燃料、特に石炭火力廃止の動きが広がった。だが、日本では、世界で進む大転換から懸け離れ、旧態依然としたエネルギー政策が続いている。このままでは、エネルギーに関するリスクが高まり、日本の産業の国際競争力が大きく損なわれることになる。政策決定者は一刻も早く現在の過ちを改め、世界の状況と時代の要請に即した政策の大転換に向けかじを切るべきだ。高コスト化が目立つ原発は事故前から停滞していたのだが、福島事故後の安全対策費用の高騰がこれを加速し、競争力を失った。東芝の子会社だったウェスチングハウス・エレクトリックは経営破綻、フランスの原発大手アレバも事実上、破綻した。トルコ、英国などで国策として進めた日本の原発輸出案件もすべて頓挫した。2015年には、「脱炭素社会」実現を掲げるパリ協定が採択された。英国、フランスなどが相次いで石炭火力の廃止を決め、石炭への依存度が高かったドイツでさえ、最近になって38年までに石炭火力発電を全廃する方向を打ち出した。一方で、世界の電力供給に占める水力を含む再生可能エネルギーの比率は17年には26・5%にまで増え、多くの国で最も低価格な電源とされるまでになった。消費電力の100%を再生可能エネで賄うとの目標を掲げる国も増えている。こんな中、日本の状況を見ると、暗い気持ちにならざるを得ない。日本でも原発事故後、太陽光発電が急成長し、国も再生可能エネルギーの主流化を打ち出した。だが、30年度の発電比率の目標は22~24%と、現在の世界平均より低い。発電と送電の分離が進まず、大電力会社が送電網を支配する状況が続いているのも、国際的には異例だ。逆に高すぎて、多くの専門家が実現の可能性が低いとするのが20~22%という原発の目標だ。電力会社は多大な労力とコストを投じて原発の再稼働を進めているが、17年の比率は3%弱だ。石炭火力の目標が26%と高いこともあって、日本は石炭火力の新設を進める数少ない国の一つになっている。20、21年にかけて建設中の100キロワット級の大型を含む10基近くが運転開始する予定だ。石炭重視の日本の政策には、外国政府からも厳しい批判が出ている。重厚長大、大規模集中型の発電技術にこだわり、「革命」とも称される再生可能エネルギーの拡大で後れを取り、脱炭素社会づくりに向けた国際競争でも劣後するとなれば、国際社会での日本の発言力は低下し、日本の産業界は多くのビジネスチャンスを失うだろう。再生可能エネルギー拡大のために政治家や官僚が口にするのは、水素や二酸化炭素の固定など画期的な技術開発の必要性だ。だが、適切な政策が社会の変革を促せば、既存の技術で原発も温暖化もない社会の実現が可能であることを、過去8年間の世界の経験は示した。日本にないのは新技術ではない。欠けているのは、既得権益にしがみつく勢力の抵抗を排して大転換に乗り出す政治家の勇気と確固たる意志である。

*6-5:http://qbiz.jp/article/150190/1/ (西日本新聞 2019年3月13日) VW、EV生産2200万台に 今後10年で、重視姿勢鮮明
 ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は12日、今後10年間の電気自動車(EV)の生産台数を2200万台にするとの計画を公表した。2028年までに計約70車種のEVを売り出す。従来より野心的な方針を示し、電動車重視の姿勢を鮮明にした。VW本社があるドイツ北部ウォルフスブルクで記者会見したディース最高経営責任者(CEO)は「予見可能な将来においては、道路交通分野で二酸化炭素を削減するために、EVが最良で一番効率的な方法だろう」と強調した。VWはこれまでEV約50車種を25年までに投入するとの計画を示していた。22年までに欧州と北米、中国の計18工場でEV生産を始める。ディースCEOはEVの推進で生産の省力化が進み、人員削減の必要性が生じるとも指摘した。ドイツ紙は、VWが今後数年間でドイツの2工場の従業員約7千人を削減する計画だと報じている。中国政府が外資規制の緩和方針を示したことで可能になる合弁企業への過半出資に関しては、19年中にも結論を出す考えであることを明らかにした。

<日本の司法の問題点>
PS(2019年3月13日): *7-1のように、東京地検特捜部がこれまでの逮捕容疑をすべて起訴したそうだが、有価証券報告書への役員報酬の過少記載が金融商品取引法違反に当たらない可能性が高くなると、「とことんやるしかない(検察幹部)」「何とか事件に結び付ける」として特別背任に問える疑いがないか捜査するのは、“司法の信頼を保つ”以外には何のメリットもなく、*7-2-5の松橋事件のように、司法の名誉のために無罪の人の人生を奪うことに繋がるため厳に慎むべきだ。そして、「俺が黒と言ったら白でも黒になる」という思い上がりは、日本の司法が冤罪を生む原因となっているが、いくつもの整合的な物証のない自白だけでは証拠にならないというのが、監査では基本中の基本である。
 また、*7-2-1のように、「ゴーン氏は会社を私物化した悪者」という筋書きで話が進められているが、個人企業ではあるまいし上場企業でそのようなことはできないので、検察は経済事案に疎いと考える。さらに、日産と三菱が作った統括会社からゴーン氏が報酬約10億円を受け取っていたとしても、それが日産の有価証券報告書に開示されないのは当然であるとともに、特定目的会社のように連結対象でない会社も日産の有価証券報告書に記載されない。そして、「日産がゴーン氏の姉とアドバイザリー契約を結んで毎年10万ドル(約千百三十万円)前後を支出していたのは実態がない」と決めつけるのは、日本独特のキャリアに関する女性蔑視である。なお、娘が通う大学への寄付金を日産の名前で支払ったり、*7-2-3のように、ルノーがベルサイユ宮殿と文化芸術を支援する「メセナ」契約を結んで宮殿の改修費用の一部を負担する代わりに城館を借りられるようにし、ルノーの会長だったゴーン氏がベルサイユ宮殿で結婚披露宴を無料で開催したというのも、寄付を尊ぶ文化の中では日産やルノーの名声と知名度を高める方向に働くため、ゴーン氏は家族を挙げて日産車のマーケティングに尽くしていたとも考えられ、私的流用と決めつけて批判ばかりしているのはむしろ変である。
 さらに、*7-2-2のように、ゴーン氏がオマーンの日産販売代理店オーナーから私的に3千万ドル(現在のレートで約33億円)を借り入れ、この後に日産子会社から代理店に計約3500万ドル(同約38億円)送金させていたのも、CEOリザーブから「販売促進費」として支出されており、CEOリザーブの支出について従業員の要請はいらない上、従業員がすべての必要性を把握しているわけでもない。また、損失の付け替えについては、*7-2-4のように、郷原弁護士も取引の決済期限が来て損益が確定するまで損失は「評価損」に留まり、損失を発生させることなくゴーン氏に契約上の権利が戻っているので罪に問えないとされており、私と同意見だ。

*7-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM1C5782M1CUTIL02R.html?iref=pc_rellink (朝日新聞 2019年1月12日)「とことんやるしかない」対ゴーン氏、目算狂った特捜は
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)をめぐる一連の捜査は11日、東京地検特捜部がこれまでの逮捕容疑をすべて起訴した。世界的な経営者に対して、前例のない容疑での着手で始まった54日間の捜査は、異例の展開をたどった。「ゴーン氏という世界的に有名な方に対する強制捜査。様々な反響があるとは考えていた」。東京地検の久木元(くきもと)伸・次席検事は11日の定例会見で、捜査に対して海外から寄せられた疑問の声についてこう答えた。特捜部が逮捕に踏み切ったのは昨年11月19日。ゴーン前会長と前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)が、2010~14年度の前会長の役員報酬を有価証券報告書に過少記載したという金融商品取引法違反容疑だった。報酬の過少記載を問うのは初めてだ。前例のない捜査が本格化した。毎年の報酬は約20億円だったが、開示するのは約10億円だけにし、差額の約10億円は顧問料など別の名目に偽装し、退任後に受け取る――。特捜部が描く「報酬隠し」はこうした仕組みだ。この「退任後支払い」の報酬が確定しており、記載義務があったかどうかが争点となった。ゴーン前会長は「退任後の報酬支払いは確定していない」と容疑を否認。ケリー前代表取締役も「役員報酬とは関係ない」と主張した。未受領の報酬の事件化には「形式犯」の批判もあり、専門家でも意見が割れる。ただ検察幹部らは「役員報酬の開示はガバナンス(企業統治)にゆがみがないかを投資家が判断するうえで重要だ」と強調する。2人の勾留期限となる12月10日、特捜部は5年分の虚偽記載の罪で起訴。15~17年度の3年分の容疑で再逮捕した。8年分の容疑を2回に分けて捜査を続ける想定通りの展開だった。このころ特捜部では、虚偽記載の解明を進める検事と別の検事たちが、前会長を特別背任に問える疑いがないか捜査していた。だが検察としてはあくまで「虚偽記載につながる予備的な主張」との位置づけ。ある幹部は「立件できるものがあればやればいい」と語り、別の幹部は「日産ほどの規模の会社で数十億円程度の損害を与えた話より、投資家を欺いた虚偽記載の方が重要だ」と話していた。検察は虚偽記載事件を「本丸」とし、捜査を進める構えだった。目算が狂ったのは再逮捕から10日後の12月20日。東京地裁が検察側の勾留延長請求を却下した。特捜部が担当する事件で勾留延長が却下されるのは極めて異例だ。地裁は5日後、否認したままのケリー前代表取締役を保釈。異例の早期保釈だった。ゴーン前会長の早期保釈の観測も広がる中、特捜部が再逮捕に踏み切ったのは、前会長の私的取引の評価損をめぐる行為だった。約18億5千万円の評価損が生じた契約を日産に付け替えた容疑と、信用保証に協力したサウジアラビアの実業家ハリド・ジュファリ氏に計約13億円を不正送金した容疑の二つだ。「もうとことんやるしかない」(検察幹部)。徹底抗戦の構えの前会長は1月8日、勾留理由の開示手続きに出廷。付け替えについて「日産に金銭的な損失を負わせない限りで、一時的に担保を提供してもらっただけ。一切損害を与えていない」と反論した。送金も「ジュファリ氏は日産に対して重要な業務を推進してくれた。関係部署の承認に基づき、相応の対価を支払った」と訴えた。特捜部はジュファリ氏の取り調べをしていない。元特捜部長であるゴーン前会長の弁護人、大鶴基成弁護士はこう古巣に疑問を呈した。「特別背任で、金の支払われた先から話を聞かずに逮捕するのは異例だ」
●「私物化」捜査は継続 4回目の逮捕は
 今後、新たな容疑での再逮捕はあるのか。特捜部はゴーン前会長による「会社の私物化」を疑わせる膨大な証拠をつかんでおり、捜査は継続するとみられる。
一連の捜査で特捜部が注目した資金の一つは、CEO(最高経営責任者)直轄の「CEOリザーブ(予備費)」だった。関係者によると、この資金から、特別背任事件でサウジアラビアの実業家へ支払った約13億円以外にも、オマーンとレバノンの販売代理店に計50億円超が支出されるなどしていた。代理店幹部は前会長の知人で、前会長に「還流」したように見える資金の流れもあるという。ただ検察幹部は「簡単にはひも付けられない。CEOリザーブが全て不正とは言えない」と慎重に見極める構えだ。またゴーン前会長は未払いの役員報酬を退任後に受け取る方法として、日産、ルノー、三菱自動車の統括会社(オランダ)や、ベンチャー投資名目で設立された子会社「ジーア」(同)からの支出を検討していた。ジーアなどが絡む資金は、租税回避地(タックスヘイブン)や実態のないペーパーカンパニーを経由しており、解明は容易ではない。特捜部は、中東各国に捜査共助を要請して協力を求めており、その回答待ちだ。日産関係者の聴取もまだ続いている。今後は、起訴された罪について弁護側への証拠開示も進む。ただ資料の英訳などが必要で、初公判までに半年~1年ほどかかるとみられている。特捜部は、初公判の冒頭陳述で描く「犯行に至る経緯」を分厚くする捜査を続けながら、別途事件化できる容疑が煮詰まれば、4回目の逮捕も排除しないとみられる。現時点では、再逮捕をにおわす検察幹部がいる一方、「すぐに事件にできる材料はない」と語る幹部もおり、見通しは不透明だ。
●広がる疑惑 「ゴーン後」へ日産混迷
 日産が特捜部に社内調査の結果を報告し、幹部が司法取引に応じた結果、経営トップらの逮捕に至った事件は、ゴーン前会長の追起訴で一区切りを迎えた。だが、日産社内の混迷は、3社連合を組む仏ルノーや三菱自動車を巻き込んで、むしろ深まりつつある。ゴーン前会長が羽田空港で身柄を確保された昨年11月19日の夜、西川(さいかわ)広人社長兼CEO(最高経営責任者)は前会長の不正行為として①役員報酬の過少記載②投資資金の不正支出③経費の不正支出――の三つを挙げた。①は特捜部による立件に至ったものの、三菱自とつくる統括会社から前会長が非開示の報酬約10億円を受け取っていたことが追加の社内調査で判明。3社連合を統治する別の統括会社から仏ルノー副社長に不透明な報酬が支払われた疑いも浮上するなど、起訴内容とは異なる不正が相次いで明るみに出ている。ゴーン前会長が私的な投資で生じた損失を日産に付け替えたなどとして起訴された特別背任事件は、社内調査が端緒ではなく、検察独自の捜査によるものだった。オランダの子会社を通じた高級住宅の購入、業務実態がない前会長の姉に対する経費の不正支出など、②③に関する疑惑も次々と発覚し、混迷が収束する兆しは見えない。裏を返せば、長年にわたる前会長の「暴走」を止められなかった深刻なガバナンス(企業統治)の不全が次々と露呈しているともいえる。西川氏ら経営陣の責任は重い。日産は先月、社外の弁護士らでつくる「ガバナンス改善特別委員会」を新設することを決めた。3月末までに抜本的な統治体制の改善策の提言を受ける予定だが、20年近く君臨した前会長に重用された「イエスマン」が多く、企業風土を刷新できるかは不透明だ。日産、三菱自と異なり、会長職の解任を見送っているルノーや、「推定無罪」の原則を主張してルノーの判断を支持する仏政府との足並みも乱れたままだ。「ゴーン後」の統治体制もなかなか定まらない。
●元検事の落合洋司弁護士の話
 日産の資金が支出されたサウジアラビアの実業家への聴取なしで違法性を裏付けられるかが焦点になる。通常は、資金の趣旨を裏付ける上で、支出先の聴取は欠かせない。公判で検察の想定しない説明がなされる可能性もあり、有罪となるかは予断を許さない。今回の捜査を通じては、経営者の暴走を、企業内部でどう解決するのかという課題も浮き彫りになった。
●元刑事裁判官の木谷明弁護士の話
 日本でこれまで当たり前だと思われてきた刑事司法が、「外圧」で変わろうとしている。従来は、否認しているうちは保釈しないという「人質司法」が当然だった。ケリー前代表取締役も従来なら、保釈されていなかったはずだ。前例ができた以上、裁判所は今後、外国人だけを特別扱いするのではなく、運用自体を変える必要に迫られるだろう。

*7-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120202000136.html (東京新聞 2018年12月2日) 「会社私物化」疑惑続々 ゴーン容疑者
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)を巡っては、有価証券報告書に自分の報酬を約五十億円少なく記載したとする逮捕容疑とは別に、海外社宅の無償利用や経費の私的利用などの問題も次々と持ち上がっている。カリスマ経営者として二十年近くトップに君臨する中、会社を「私物化」していた実態が浮き彫りになってきた。「『コストカッター』としてあれほど人員や経費を削ってきたのに、自分だけ私腹を肥やしていたのか…。驚いたというより、あきれたね」。ある検察幹部がこう苦笑するほど、ゴーン容疑者の会社私物化疑惑は底が知れない。その象徴的な舞台がオランダ・アムステルダムにある日産の子会社「ジーア」。日産が約六十億円出資し、二〇一〇年に投資会社として設立された。関係者によると、ジーアはタックスヘイブン(租税回避地)などの会社に約二十億円を投じ、ゴーン容疑者が出生したブラジルのリオデジャネイロ、幼少期から高校まで過ごしたレバノンのベイルートに高級住宅を相次いで購入。ゴーン容疑者が私的に無償で使っていたという。また、パリやアムステルダムにも別の会社を通じて住宅を用意し、ゴーン容疑者が私的に利用していたにもかかわらず、賃料の一部を負担していたとされる。ゴーン容疑者は逮捕後、海外住宅の私的利用疑惑について、周囲に「仕事で世界中を飛び回るので、拠点として使っていた」と正当性を主張しているという。ゴーン容疑者の指示でジーアに深く関与したとされるのが、側近の前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)だ。ゴーン容疑者の意向をごく限られた部下に伝え、契約などの実務を担わせていたとされる。関係者によると、日産は一二~一四年、監査法人から「ジーアは設立趣旨に沿った投資活動がされていないのではないか」などの指摘を複数回受けた。しかし日産側は「ゴーン氏が戦略的投資をするための会社で問題ない」と回答。私的利用疑惑は見過ごされた。ゴーン容疑者の指示を受けたケリー容疑者が、会社の資金をゴーン容疑者個人のために使う-。こういった疑惑は、ほかにも複数持ち上がっている。ジーアを通じて購入したリオの家では、実はゴーン容疑者の姉が暮らしていた。さらに日産は姉とアドバイザリー契約を結び、毎年十万ドル(約千百三十万円)前後を支出。だが、アドバイザー業務の実態はなかったとされる。このほか家族の海外旅行費数千万円、娘が通う大学への寄付金…。日産のプライベートジェット機で、会社の拠点がないレバノンにも渡航していた。ある日産関係者は「プライベートで誰かと食事をするときも、会社のカードで支払っていた。自分に関わるものは会社に支払わせるのが当然だと思っていたのか。誰も彼に意見できない中で、公私混同が進んでいったのだろう」と話した。

*7-2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13853476.html (朝日新聞 2019年1月18日) 日産資金で借金返済か ゴーン前会長、38億円送金 オマーンの友人側に
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)が2009年1月にオマーンの日産販売代理店のオーナーから私的に3千万ドル(現在のレートで約33億円)を借り入れ、この後に日産子会社から代理店に計約3500万ドル(同約38億円)を送金させていたことが、関係者への取材でわかった。東京地検特捜部が、この資金の流れに焦点をあてて捜査していることも判明。貸借契約書を押収し、日産の資金を借金の返済に充てた可能性もあるとみて調べている。関係者によると、ゴーン前会長はオマーンの日産販売代理店のオーナーと長年の友人で、09年1月20日付で、個人的に3千万ドルを借りる貸借契約書を交わした。その後、子会社の「中東日産」(アラブ首長国連邦)に指示し、複数年にわたってこの販売代理店に500万ドル前後ずつを送金させ、総額は約3500万ドルに上った。原資はCEO(最高経営責任者)直轄の「CEOリザーブ(予備費)」で、「販売促進費」名目で支出された。CEOリザーブからの支出について、日産関係者は「現場は要請していない」と証言し、必要性を否定しているという。一方、ゴーン前会長はオマーンを含む中東各国の代理店への支出について「奨励金であり、問題ない」と反論。借金返済という自らの利益を図るため、業務とまったく無関係な支出をして会社に損害を与えたと立証されれば会社法違反(特別背任)に問われるが、ハードルは高い。特捜部は関係者の聴取や、日産を通じた現地での証拠集めを続け、立件の可否を慎重に検討するとみられる。ゴーン前会長は既に起訴されている特別背任事件で、リーマン・ショックの後の08年10月、約18億5千万円の評価損が生じた私的な投資契約を日産に付け替えたとされる。さらに、この契約を自分に戻す際に約30億円の信用保証に協力したサウジアラビアの実業家の会社に09~12年、中東日産からCEOリザーブで計1470万ドル(当時のレートで約13億円)を不正送金したとされる。オマーンの販売代理店オーナーからの借金は、サウジの実業家からの信用保証と同時期にあたり、特捜部は当時の前会長の資金繰りを調べているとみられる。
■準抗告を棄却
 前会長の弁護人は17日、保釈請求の却下を不服として準抗告したが、東京地裁は同日、これを棄却した。

*7-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190313&ng=DGKKZO42345310S9A310C1EA2000 (日経新聞 2019年3月13日) 仏検察もゴーン元会長捜査、国際世論に影響も
 日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告(65)を巡る捜査が海外にも広がりつつある。ベルサイユ宮殿で開いた結婚披露宴を巡り、ルノーの資金を不正に使用した疑惑に関して、フランス検察当局が11日、初期段階にあたる「予備捜査」を開始したことが判明。東京地検特捜部も中東ルートへの捜査を継続している。日本に続き、フランスも捜査に着手したことは国際世論に影響を与える可能性もある。ルノーなどによると、2016年10月、ベルサイユ宮殿内の大トリアノン宮殿で妻キャロルさんとの結婚披露宴を開催した。検察当局は、宮殿使用料に当たる5万ユーロ(約625万円)が、「個人的な利益」だった疑いがあるとみていると、フランスメディアが一斉に報じた。フランスでは経済事件の疑いが生じた場合、検察がまず「予備捜査」を行う。ナンテール検事局が予備捜査を始めた今回もこのケース。事件の複雑さにもよるが、年単位で行われることもあり、重大事件と判断されれば裁判官による「予審」の捜査手続きに移行する。起訴するか不起訴にするかを決めるのが予審判事だ。フランスの経済事件の場合、在宅捜査が主流だが、予審が始まれば本格的に容疑者扱いとなるため、打撃は大きい。南山大学の末道康之教授(フランス刑法)は「予審が開始される可能性がある」と話す。一方、ゴーン元会長は12日、弁護団会議に参加。弁護人によると、ゴーン元会長は記者会見について「やる以上は、自分でどういうことを言うか決めてから出たい」とし、発言内容の精査に時間が必要との考えを示したという。記者会見は来週以降になる見通し。現時点で、4月8日の日産の臨時株主総会に参加しない方針も説明したという。

*7-2-4:https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20181224-00108835/ (Yahoo2018/12/24)ゴーン氏「特別背任」での司法取引に関する “重大な疑問”(郷原信郎)
 日産自動車の前会長のカルロス・ゴーン氏が12月21日に特別背任で再逮捕されたが、その後の報道によれば、その逮捕容疑の概要は、以下のようなもののようである。[ゴーン氏は、10年前の2008年、リーマンショックの影響でみずからの資産管理会社が銀行と契約して行った金融派生商品への投資で18億5000万円の含み損を出したため、新生銀行から担保の追加を求められ、投資の権利を日産に移し損失を付け替えた。その付け替えが日産の取締役会の承認を経ておらず違法ではないかということが証券取引等監視委員会の新生銀行の検査の際に問題にされ、結局、この権利は、ゴーン氏の資産管理会社に戻された。その権利を戻す際に、サウジアラビア人の知人の会社が、担保不足を補うための信用保証に協力した。平成21年から24年にかけて、日産の子会社から1470万ドル(日本円でおよそ16億円)が送金された。]このうち、損失を付け替えたことが第1の特別背任、サウジの知人に送金したことが第2の特別背任だというのが検察の主張のようだ。しかし、報道によって明らかになった事実を総合すれば、二つの事実について特別背任罪で起訴しても、有罪判決を得ることは極めて困難だと考えられる。検察は、ここでも日産秘書室長との司法取引を使おうと考えているのかもしれないが、そうなると、「日本版司法取引」の制度自体の重大な問題が顕在化することになる。第1については、新生銀行側が担保不足への対応を求めたのに対して、ゴーン氏側が、「日産への一時的な付け替え」で対応することを提案し、新生銀行がこれに応じたが、証券取引等監視委員会による銀行への検査で、新生銀行が違法の疑いを指摘されて、新生銀行側が日産に対して再度対応を求め、それが日産社内でも問題となり、結局、短期間で「付け替え」は解消され、日産側には損失は発生していないようだ。それを、「会社に財産上の損害を発生させた」特別背任罪ととらえるのは無理がある。確かに、その時点で計算上損失となっている取引を日産に付け替えたのだとすれば、その時点だけを見れば、「損失」と言えなくもない。しかし、少なくとも、その取引の決済期限が来て、損益が確定するまでは、損失は「評価損」にとどまり、現実には発生しない。不正融資の背任事件の場合、融資した段階で「財産上の損失」があったとされるが、それは、その時点で資金の移動があるからであり「評価損」の問題とは異なる。ゴーン氏側が、「計算上損失となった取引を、一時的に、日産名義で預かってもらっていただけで、決済期限までに円高が反転して損失は解消されなければ、自己名義に移すつもりだった」と弁解した場合、実際に、損失を発生させることなくゴーン氏側に契約上の権利が戻っている以上、「損害を発生させる認識」を立証することも困難だ。第2については、サウジアラビア人の会社への支出は、当時CEOだったゴーン氏の裁量で支出できる「CEO(最高経営責任者)リザーブ(積立金)」から行われたもので、ゴーン氏は、その目的について、「投資に関する王族へのロビー活動や、現地の有力販売店との長期にわたるトラブル解決などで全般的に日産のために尽力してくれたことへの報酬だった」と供述しているとのことだ。実際に、そのような「ロビー活動」や「トラブル解決」などが行われたのかどうかを、サウジアラビア人側の証言で明らかにしなければ、その支出がゴーン氏の任務に反したものであることの立証は困難であり(「販促費」の名目で支出されていたということだが、ゴーン氏の裁量で支出できたのであれば、名目は問題にはならない)、そのサウジアラビア人の証言が得られる目途が立たない限り、特別背任は立件できないとの判断が常識的であろう。検察は、サウジアラビア人の聴取を行える目途が立たないことから、特別背任の立件は困難と判断していたと考えられる。サウジアラビア人の証言に代えて、検察との司法取引に応じている秘書室長が、「支出の目的は、信用保証をしてくれたことの見返りであり、正当な支出ではなかった」と供述していることで、ゴーン氏の弁解を排斥できると判断して、特別背任での再逮捕に踏み切ったのかもしれない。しかし、そこには、「司法取引供述の虚偽供述の疑い」という重大な問題がある。この秘書室長は、ゴーン氏の「退任後の報酬の支払」に関する覚書の作成を行っており、今回の事件では、それが有価証券報告書の虚偽記載という犯罪に該当することを前提に、検察との司法取引に応じ、自らの刑事責任を減免してもらう見返りに検察捜査に全面的に供述している人間だ。そのような供述には、「共犯者の引き込み」の虚偽供述の疑いがある。そのため、信用性を慎重に判断し、十分な裏付けが得られた場合でなければ、証拠として使えないということは、法務省が、刑訴法改正の国会審議の場でも繰り返し強調してきたことだ。「覚書」という客観証拠もあり、外形的事実にはほとんど争いがない「退任後の報酬の支払」に関する供述の方は、有価証券報告書への記載義務があるか否かとか、「重要な事項」に当たるのか否かなど法律上の問題があるだけで、供述の信用性には問題がない。しかし、秘書室長の「サウジアラビア人の会社への支出」の目的についての供述は、それとは大きく異なる。ゴーン氏の説明と完全に相反しているので、供述の信用性が重大な問題となる。その点に関して致命的なのは、この支払については、日産側は社内調査で全く把握しておらず、「退任後の報酬の支払」の覚書について供述した秘書室長が、この支出の問題については、社内調査に対して何一つ話していないことだ(上記朝日記事でも、「再逮捕は検察独自の捜査によるもので、社内調査が捜査に貢献するという思惑通りにはなっていない」としている。)。秘書室長は、検察と司法取引する前提で、社内調査にも全面的に協力したはずであり、もし、このサウジアラビア人に対する支出が特別背任に当たる違法行為だと考えていたのであれば、なぜ社内調査に対してそれを言わなかったのか。「その点は隠したかった」というのも考えにくい。この支出が特別背任に当たり、秘書室長がその共犯の刑事責任を負う可能性があるとしても、既に7年の公訴時効が完成しており、刑事責任を問われる余地はないからである(ゴーン氏については海外渡航期間の関係で時効が停止していて、未完成だとしても、その時効停止の効果は、共犯者には及ばない)。結局、秘書室長の供述の信用性には重大な問題があり、ゴーン氏の説明・弁解を覆して「サウジアラビア人への支出」が不当な目的であったと立証するのは極めて困難だと言わざるを得ない。以上のとおり、第1、第2について、ゴーン氏を特別背任で起訴しても、有罪に持ち込むことは極めて困難だと考えられる。勾留延長請求却下を受けて急遽、ゴーン氏を再逮捕した検察の、年末年始をはさんだ捜査には、多大な困難が予想される。(以下略)

*7-2-5:https://www.topics.or.jp/articles/-/162254 (徳島新聞社説 2019年2月14日) 松橋事件無罪へ 冤罪を防ぐ法整備急げ
 冤罪を巡るさまざまな問題が、司法と立法府に改めて厳しく突きつけられた。熊本県松橋町(現宇城市)で男性が刺殺された松橋事件で、殺人罪などに問われ服役した宮田浩喜さん(85)の再審初公判が熊本地裁で即日結審し、来月の判決で無罪になることが確実となった。なぜ宮田さんは殺人犯にされたのか。どうして、名誉回復まで何十年もかかったのか。しっかりと検証し、悲劇を繰り返さない対策を進めなければならない。事件は1985年に起きた。男性の将棋仲間だった宮田さんが、警察に任意で12日間連続で取り調べられ自供、逮捕された。否認し続けたものの「うそ発見器で陽性反応が出た」と告げられ、「自白」してしまったという。長時間の過酷な取り調べで疲弊させ、精神的に追い詰める。行き過ぎた自白偏重捜査の典型と言えよう。物証はほぼなく、この自白が唯一の証拠となった。宮田さんは一審で全面否認に転じ、必死に無実を訴えたが、聞き入れられなかった。90年に最高裁で懲役13年が確定、99年の仮出所まで服役した。自白の信頼性が揺らいだのは、判決確定から7年も後だった。再審請求に際し、弁護団が検察に開示を求めた証拠の中から、あるはずのないシャツ片が見つかったのだ。自白では「シャツから左袖を切って、凶器の小刀に巻き、犯行後に燃やした」とされていた。その左袖である。弁護団は、小刀と傷の形状が一致しないとする法医学者の鑑定書も加え、2012年に再審を請求。16年に熊本地裁が再審開始を決め、昨年10月に最高裁で確定した。不都合な証拠を検察が隠していなければ、有罪判決は変わっていた可能性がある。証拠開示については、16年の改正刑事訴訟法施行で、被告側への一覧表交付が検察に義務付けられた。しかし、それではまだ十分とは言えまい。やはり全面開示が原則だろう。一覧表の交付義務が通常の裁判に限られているのも問題だ。今回のように、再審請求の段階で「新証拠」が発見される例は少なくない。裁判官の判断に委ねている現状を改め、開示手続きの明確なルール作りを急ぐ必要がある。高齢の宮田さんは、認知症で寝たきりの状態になっているという。「生きているうちに無罪を」との願いはかないそうだが、再審請求から約7年、地裁の再審開始決定からでも2年半以上になる。明らかな新証拠が見つかったのに、検察が有罪立証に固執し、抗告を重ねたためだ。無用な引き延ばしを防ぎ、早期に名誉回復を図るには、少なくとも再審開始決定に対する検察の抗告権を制限すべきである。捜査当局はもちろん、虚偽の自白を見抜けなかった裁判所も、事件を教訓にしなければならない。法を整備する国会も対応が問われている。

| 日本国憲法::2016.6~2019.3 | 12:05 PM | comments (x) | trackback (x) |

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