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2019.6.5 北方領土の話 ← 日本の外交とそれに対する国内からの妨害も含めて (2019年6月6、9日追加)
 
 北方領土の地図  知床のシャチの大集合         羅臼のシャチ  

(図の説明:一番左が北方領土と呼ばれる地域の地図で、国後島も日本の湾の中に入っているため、せめて国後島までは変換してもらいたいものだ。しかし、この地域では漁業もできなかったため、餌が豊富らしく、知床(左から2番目)や羅臼(1番右と右から2番目)にはシャチの大集合する場所があり、世界自然遺産の名に値する地域となっている)




  優勝チーム   2019.6.9福島民報   JR九州のチーム  サハリンからのチーム
           会津チーム
(図の説明:上の段と下の段の左は、札幌市で開催されたYOSAKOIソーラン祭りで元気に踊る地元チーム。下の段の右3つは、会津・九州・サハリンから参加して、趣向を凝らした面白い演舞を披露しているチーム)

(1)北方領土に関するロシアの認識
 私自身は、北海道出身の友人の話や2005~2009年の間の衆議院議員として現地訪問した経験から、「歯舞、色丹、国後、択捉の北方4島は、歴史的に一度も外国の領土になったことのない日本固有の領土であるため、返還してもらいたい」と思うが、ロシア外務省は、*1-1のように、「日本政府は南クリルの『帰属変更』について住民の理解を得る必要がある」と発言し、上月駐ロシア大使を呼び出して注意を喚起したそうだ。

 また、日本の内閣府HPは、「ソ連が北方領土領有を主張する最も有力な根拠とする太平洋戦争終盤に行われたヤルタ協定は、米英ソ三国間の秘密協定であるため日本が拘束される理由はなく、同協定が領土移転の法的効果を持つものではないことは当事国である米国政府も公式に明らかにしている」としている(https://www8.cao.go.jp/hoppo/mondai/01.html参照)。

 そして、安倍首相とロシアのプーチン大統領は、2018年11月の首脳会談で、歯舞、色丹の2島の日本への引き渡しを明記した日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速することで合意したそうだが、「ロシア側からは、戦争でとった領土なので、返してもらいたければ戦争をするか」という発言が出たこともあるわけだ。

(2)丸山衆議院議員の戦争発言について
 このような中、*1-2のように、北方四島ビザなし交流の訪問団の一員として国後島を訪問していた丸山衆議院議員(元日本維新の会)は、元島民の男性に対し、「戦争をしないと取り返せない」「ロシアと戦争して取り返すのに賛成か反対か」などと発言して問題になった。

 これに関し、*1-4のように、衆院議院運営委員会の与野党筆頭理事は、2019年6月4日、戦争で北方領土を取り返すことの是非に言及した丸山議員(元日本維新の会)に弁明書の提出を求め、その書面で丸山議員が「人民裁判」と反論し、議員辞職に否定的な考えを示したため、直ちに進退判断を迫る「糾弾決議案」を共同提出する方針で一致したそうだ。しかし、国会議員は国民の代表であるため国会による議員辞職勧告は無理筋であり、「多数派の意見と異なるから辞職せよ」というのも危険な発想だ。

 その丸山議員は、女性に対する破廉恥な発言もあったようだが、これを言いだすと丸山議員だけではないという話になるため、戦争発言に論点を絞ると、*1-3のように、「①戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」「②ロシアが混乱しているときに取り返すのはOKですか」「③戦争しないとどうしようもなくないですか」と言っているのがポイントのようだ。

 このうち、①は、ロシアに真っ向から対立すればそうなるが、それは日本人を含む誰も幸福にしない。②は、25年前のソ連邦崩壊直後で日本が豊かだった1990年代なら千載一遇のチャンスで、「技術支援や資金援助と引き換えに4島とも返還してもらう」という話もあり得たが、それから25年後の現在では遅い(https://blogos.com/article/179399/ 参照)。

 また、③だからこそ、もっと賢い方法を考えるべきだったのだが、現在はロシアが長期間実効支配した後で、日本は現状維持と称する長期間の不作為の後であるため、時間が経つほどに旧住民は減り、権利放棄に近づいてしまったわけである。

 私は、戦争するかしないかは決して議論してはいけない話題ではないが、戦争をすれば不幸な人が増え、日本国憲法違反であり、日本政府の長期間の外交不作為の後始末の方法を元島民に問いかけるのは酷だと考える。そういう意味で、丸山議員は思慮が浅かったと思う。

(3)北方領土問題の経緯
 安倍首相は、*2-1のように、北方領土問題に関して北方4島のうち色丹島と歯舞群島の引き渡しをロシアとの間で確約できれば、日ロ平和条約を締結する方向で検討に入ったそうだ。「2島決着」に傾いた背景には、4島をロシア領と位置付けるプーチン氏に択捉、国後の返還を求め続けた場合、交渉が暗礁に乗り上げ、1956年の日ソ共同宣言に明記された色丹と歯舞の引き渡しも遠のきかねないとの判断があるそうだ。

 ロシアのプーチン大統領は、もともとは親日派だったが、*2-2のように、「パラダイス文書」でプーチン大統領に近いガス会社がどうとか、娘婿がどうとかをさんざん言われた上、ウクライナ等の事件がある度に、日本はロシアの敵側についてきた。従って、反日になっても全くおかしくなく、全体として日本の政策は思慮も計画性もなかったと言わざるを得ないのである。

 そのため、北方領土問題に関する交渉の不調を、丸山議員の言動のせいのように書いたメディアもあったが、それは全くの責任転嫁である。

・・参考資料・・
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM1B1QSXM1BUHBI002.html (朝日新聞 2019年1月10日) ロシアが日本に注意喚起 北方領土「帰属の変更発言」
 ロシア外務省は9日、「日本政府が南クリル(北方領土のロシア側呼称)の『帰属の変更』について『住民の理解を得る必要性がある』などと発言した」として、モルグロフ外務次官が同日、上月豊久駐ロシア大使を呼び出し、注意を喚起したと発表した。
●プーチン大統領「対話の継続を期待」 安倍首相に書簡
 安倍晋三首相が4日の年頭記者会見で「北方領土には多数のロシア人が住んでいる。日本に帰属が変わることについて納得していただくことも必要だ」と述べており、これを批判したとみられる。同省は「1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速するとした日ロ首脳の合意の本質をゆがめ、交渉の内容について両国の世論をミスリードするものだ」などとした。また、同省は日本側が「(ロシアによる)『戦後占領』について、ロシアから日本や日本の元住民への賠償を求めない案」についても言及したとも批判している。ロシア・メディアは8日、「平和条約交渉で日本政府が、北方四島の元島民らの財産権侵害に関するものなど、賠償請求権を互いに放棄するよう提起する方針を固めた」とする日本側の一部報道を伝えていた。安倍首相とロシアのプーチン大統領は11月の首脳会談で、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)の2島の日本への引き渡しを明記した日ソ共同宣言を基礎に、平和条約交渉を加速することで合意した。

*1-2:https://mainichi.jp/articles/20190513/k00/00m/010/160000c?fm=mnm (毎日新聞 2019年5月13日)北方領土「戦争しないと…」維新・丸山議員 国後元島民へ発言
 北方四島ビザなし交流の訪問団の一員として国後島を訪問した日本維新の会の丸山穂高衆院議員(35)=大阪19区=が11日夜、滞在先の国後島古釜布(ふるかまっぷ)で元島民の男性に対し、北方領土問題について「戦争をしないとどうしようもなくないか」「(戦争をしないと)取り返せない」などと発言し、トラブルになった。同行記者団によると、丸山氏は11日午後8時ごろ、訪問団員との懇談中、元国後島民で訪問団長の大塚小弥太(こやた)さん(89)に「ロシアと戦争で(北方領土を)取り返すのは賛成か反対か」と語りかけた。大塚団長が「戦争なんて言葉を使いたくない」と言ったところ、丸山氏は「でも取り返せない」と反論。続いて「戦争をしないとどうしようもなくないですか」などと発言した。丸山氏はロシア人島民宅で飲酒した後で、訪問団員らの制止を聞かずに大声で騒いだり外出しようとしたりしたという。このため複数の団員が「日露友好の場にそぐわない」として丸山氏に抗議。丸山氏は12日、滞在先の古釜布で全団員の前で「ご迷惑をかけたことをおわび申し上げます」と謝罪した。一方、13日に北海道・根室港に戻った後の記者会見では「(マスコミに)発言を切り取られており心外。団員の中では領土問題についてタブーが無く話せると聞いており、団長にも考えを聞いた」などと述べた。発言を受け、日本維新の会の松井一郎大阪市長は同日、大阪市内で記者団に「(丸山氏を)厳重注意した」と語った。丸山氏は当選3回。衆院沖縄北方問題特別委員会の委員を務めている。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM5F7G81M5FIIPE02T.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2019年5月13日)「戦争で取り返すの賛成か反対か」丸山議員の音声データ
 「戦争で島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」――。北方四島ビザなし交流の訪問団の一員として同行した日本維新の会の丸山穂高衆院議員(大阪19区)が訪問団長に質問を繰り返した。同行記者団の音声データに基づく、丸山議員と元島民とのやりとりは次の通り。
●維新・丸山氏「戦争しないと」 国後島で訪問団長に詰問
 丸山氏「今日行ったお墓は、本当に骨が埋まっていないんですよね」
 元島民「と私は思っているんです。もしあれでしたら千島連盟(千島歯舞諸島
     居住者連盟)の担当者に確認します」「骨があるかないかは、それは
     掘り返したわけじゃないから分かりません。(国後島の)古釜布に住ん
     でいた人たちは、おれたちの墓はここじゃないと言っているわけですよ。
     違うところだと言っているわけですよ」
 丸山氏「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」
 元島民「戦争で?」
 丸山氏「ロシアが混乱しているときに、取り返すのはオーケーですか」
 元島民「戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」
 丸山氏「でも取り返せないですよね」
 元島民「いや、戦争するべきではない」
 丸山氏「戦争しないとどうしようもなくないですか」
 元島民「戦争は必要ないです」
 【中略】
 丸山氏「何をどうしたいんですか」
 元島民「何をですか」
 丸山氏「どうすれば」
 元島民「どうすれば、って何をですか」
 丸山氏「この島を」
 元島民「率直に言うと、返してもらったら一番いい」
 丸山氏「戦争なく」
 元島民「戦争なく。戦争はすべきではない、これは個人的な意見です」
 丸山氏「なるほどね」
 元島民「早く平和条約を結んで解決してほしいです」

*1-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/382907 (佐賀新聞 2019年6月4日) 丸山氏、異例の糾弾決議案可決へ、6日にも、与野党が共同提出合意
 衆院議院運営委員会の与野党筆頭理事は4日、国会内で会談し、戦争で北方領土を取り返すことの是非に言及した丸山穂高衆院議員=日本維新の会を除名=について、直ちに進退判断を迫る「糾弾決議案」を共同提出する方針で一致した。6日にも衆院本会議で可決される見通しだ。丸山氏は3日に提出した弁明文書で「人民裁判」と反論。議員辞職にも否定的な考えを改めて示した。丸山氏に関して、与党が提出したけん責決議案と野党の議員辞職勧告決議案は取り下げる。衆参両院事務局によると、国会議員への糾弾決議案提出は例がないという。

<北方領土問題の経緯>
*2-1:http://qbiz.jp/article/147433/1/ (西日本新聞 2019年1月21日) 安倍氏、2島決着案を検討 北方4島返還「非現実的」
 安倍晋三首相は北方領土問題に関し、北方四島のうち色丹島と歯舞群島の引き渡しをロシアとの間で確約できれば、日ロ平和条約を締結する方向で検討に入った。複数の政府筋が20日、明らかにした。2島引き渡しを事実上の決着と位置付ける案だ。4島の総面積の93%を占める択捉島と国後島の返還または引き渡しについて、安倍政権幹部は「現実的とは言えない」と述べた。首相はモスクワで22日、ロシアのプーチン大統領との首脳会談に臨む。「2島決着」に傾いた背景には、4島をロシア領と位置付けるプーチン氏に択捉、国後の返還を求め続けた場合、交渉が暗礁に乗り上げ、1956年の日ソ共同宣言に明記された色丹と歯舞の引き渡しも遠のきかねないとの判断がある。だが2島決着に実際に踏み切れば、日本固有の領土である択捉と国後を放棄したとの批判を招く可能性がある。首相は世論の動向を見極めながら、最終決断を下す構えだ。交渉経過については、公表を避ける意向。先に色丹と歯舞、後に択捉と国後の返還を目指すとした「2島先行返還」の実現可能性についても、首相は悲観的な見方を強めている。首相に近い政府高官は「プーチン氏は同意しない。あり得ない」と強調した。2島先行返還は、首相が当初思い描いていたとされる解決方式。共同宣言にある色丹と歯舞の引き渡しを巡っては、妥協の余地がないと結論づけた。日ロ関係筋によると、首相は昨年11月のシンガポールでの日ロ首脳会談で、宣言に言及し「日本としてこのラインは譲れない」とプーチン氏に伝えていた。同氏は理解を示したとされる。ただプーチン氏は、宣言にある色丹と歯舞の引き渡しに関し、必ずしも主権譲渡を意味しないとの認識を示している。主権引き渡しを求める日本との隔たりは大きい。首相が22日の会談で、難交渉を強いられる展開も予想される。北方領土交渉を巡り日ロ首脳は2016年12月の会談で、北方領土での共同経済活動に向けた協議開始で合意。だが協議は進展せず、昨年11月の会談で、双方は共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速する方針を新たに確認した。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASKBV7JKHKBVUHBI03S.html (朝日新聞 2017年11月6日) 米閣僚、ロシア企業から利益 「パラダイス文書」を入手
 米トランプ政権のウィルバー・ロス商務長官が、タックスヘイブン(租税回避地)にある複数の法人を介して、ロシアのプーチン大統領に近いガス会社との取引で利益を得ていたことが、朝日新聞が提携する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の調べでわかった。ガス会社の主要株主には、プーチン氏の娘婿や、米国の制裁対象である実業家らが含まれている。商務長官は外国への制裁判断にも影響力を持ち、複数の専門家が「深刻な利益相反の恐れがある」と指摘している。英領バミューダ諸島などに拠点がある法律事務所「アップルビー」などから流出した膨大な電子ファイル「パラダイス文書」を元に、ICIJがロス氏の資産報告など複数の公文書と合わせて取材した。「ロシア疑惑」に揺れるトランプ政権にとって、新たな火種となることは必至だ。ロス氏は大富豪として知られる投資家だ。2月の商務長官就任時に、米国の法律に従い、保有資産を公開。職務と利益相反になりうるとして大半の資産を手放すことを宣誓し、米上院から承認された。しかし今回の取材で、タックスヘイブンである英領ケイマン諸島で、長官就任後も株を保有する複数の法人を通じて、海運会社「ナビゲーター」(ナビ社)と利害関係を保っていたことがわかった。ナビ社はロシアのガス石油化学会社「シバー」にガス輸送船を貸し出している。両社の取引が拡大すれば、ロス氏も利益を得る構図だった。シバー社はロシアの元国営企業で、プーチン氏の娘婿が取締役を務めるなど、同国政府と密接な関係にある。大株主の実業家も米国の制裁対象で、米国企業は取引が禁じられている。ICIJに対し、米商務省の報道官は「ロス長官は、ロシアなどへの米国の制裁政策を広く支えてきた。高い倫理基準を守っている」などと書面で回答した。(野上英文、高野遼、サーシャ・シャフキン(ICIJ)、マーサ・ハミルトン(ICIJ))

<漁獲量について>
PS(2019/6/6追加):近年、世界でイカなどの水産物漁獲量が増え、それに伴って資源量が減っている。そこで、*3-1のように、スルメイカの資源量も減っているわけだが、日本は世界第6位の排他的経済水域を保有しているため、本来なら有利な筈である。なお、日本人1人あたりの生鮮魚介類購入量は減っているが、*3-2のように、外食・中食による消費は増えており輸出を増やすこともできるので、不漁が続くようなら資源管理だけでなく放流や養殖も考えられる。


              冬生まれ群の     日本人1人あたり      日本の
 世界のイカ漁獲量    スルメイカ資源量   年間生鮮魚介類購入量  排他的経済水域

*3-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/312445 (北海道新聞 2019/6/6) スルメイカ豊漁期待、函館から中型船出港
 日本海のスルメイカ漁の主力を担う中型船(30トン以上200トン未満)3隻が5日、函館港を出港した。石川県沖の好漁場「大和堆」を目指し、イカの回遊に合わせて北上しながら操業する。港では、家族ら約350人が見守る中、漁船が汽笛を鳴らしながら順次出港した。幸雄丸(184トン、乗組員8人)の島森憲一船長(71)は「不漁が続いているが、イカをたくさん函館に水揚げしたい」と意気込んだ。乗組員の父の見送りに来た北斗市の木村絵未さん(31)は「事故なく帰ってきてほしい」と漁船に向かって大きく手を振っていた。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p47833.html (日本農業新聞 2019年6月4日) 6次化販売額2・1兆円 小規模事業の底上げ課題 農水省17年度調べ
 農業関連の6次産業化の年間総販売金額(2017年度)が2兆1044億円に上り、2年連続で2兆円を超えたことが農水省のまとめで分かった。関連の雇用者数は28万人に上り、前年度から10%増えるなどの成果も出ている。一方、1事業体当たりの年間販売額は1000万円未満が76%を占め、全体の底上げには結び付いていない。一層の積み増しができるかどうかが課題となっている。農業の6次産業関連の年間総販売金額の内訳を見ると、最も大きいのは、農産物直売所の1兆790億円。前年度から4・5%増えた。次いで農産物加工が9413億円で3%増だった。観光農園は402億円、農家レストランは383億円、農家民宿は57億円で推移。直売所と加工が6次産業化の柱となっている構図が続いている。販売額増加の背景として、同省は「地域ではブランド化などの取り組みが進んでいる。さらに行政による補助事業や相談などの支援も後押しになった」(産業連携課)とみる。6次産業化の進展に伴い、雇用も増えている。農業の6次産業化関連の雇用者数は、28万3400人に上り、前年度比10%増となった。常時雇用、 臨時雇用ともに女性が7割を占めており、6次産業化の拡大に女性が貢献している。農業関連の1事業体当たりの年間販売額は、3392万円に上る。だが販売規模で分けると、100万円未満が最も多く31・8%。100万円以上500万円未満が30・5%と続き、500万円以上1000万円未満は13・5%となっている。半面、年間販売金額が1000万円以上となっている事業体は全体の24・2%と、一部に限られる。小規模事業者を含め、各地の取り組みをいかに伸ばしていくかが問われている。

<日本で夢の新技術が停滞する理由>
PS(2019年6月9日):*4-1のように、「①EVはゼロ・エミッション車と呼ばれるが、発電時に火力発電所等でCO2が出る分を勘案して、ガソリン1リットルで45キロメートル走るエンジン車と同じ環境負荷が発生すると考えて新規制を作った」「②米カリフォルニア州や中国が採用しているEVなどの販売目標台数をメーカーごとに設定するZEV規制は導入しない」「③欧州などの環境先進地でも未導入のこの手法を日本が取り入れたのは一定の意義がある」「④最終の燃費目標を達成するためにどんなエコカーに力を入れるかは各メーカーの選択に委ねる『技術中立的』な規制体系」とのことである。しかし、①は、すべてのEVは火力発電所の電力を利用して走るという架空の仮定に基づいており、再生可能エネルギーの普及も阻んでいる。そのため、③のように、日本以外ではこいう馬鹿な規制を導入しないのである。さらに、この規制は、燃費のみに焦点が当てられており、環境汚染防止の理念はないが、それなら需要者の選択に任せれば経済合理性に基づいて選択するので、政府の介入はいらないのである。そして、②④は、日本政府が、どういう自動車を推進して環境を守るかという理念に欠けていることを示している。
 このように、政策の誤りで企業資金を無駄遣いさせている間に、世界一だったEV技術はどんどん遅れ、再生可能エネルギー技術も遅れた。そして、石油大国のアメリカでさえ、*4-2のように、米ウォルマートと独フォルクスワーゲン(VW)の米子会社エレクトリファイ・アメリカが、米国内のウォルマート120店への電気自動車(V)の急速充電スタンド設置を完了し、今後も順次設置店舗を増やして将来的には全米展開も視野に入れているのだから、充電器の標準規格も日本から離れるだろう。このような日本政府の理念なき政策誘導が、日本の新技術を停滞させてきたのである。
 なお、*4-3に、IMFのラガルド専務理事が、「①世界経済は下振れリスクが存在しており、貿易摩擦が重大なリスクになっている」「②関税がどうなるか不確実だと貿易は利益や繁栄につながらないと指摘した」と書かれており、日本は「まあまあ、緊張緩和しさえすればよいだろう」というように纏めることが多い。しかし、米国が主張している知的財産権の保護や進出企業の技術移転の強制廃止などは、公正な市場を形成するためにどの国にとっても必要な要件であるため、緊張緩和して自由貿易しさえすればよいわけではないのである。

  
    北陸電力より
(図の説明:左図のように、世界の太陽光発電設備は、2006年の6GWから2016年の303GWへと10年で約50倍になり、中央の図のように、世界では最も安価な電力となった。また、まだ発電量の中には入っていないが、右図のような有機薄膜型太陽電池もでき、設置できる場所が著しく広がっている)

*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190609&ng=DGKKZO45875160Y9A600C1EA1000 (日経新聞 2019年6月9日) 新燃費規制テコに車の革新を
 経済産業省と国土交通省が2030年度までに新車の燃費を16年度の実績値より32%改善することを自動車メーカーに義務付ける新たな燃費基準を定めた。ガソリン1リットル当たりの走行距離を全車種平均で25.4キロメートルに引き上げるというかなり高めのハードルだが、日本車各社は強みとする環境技術に一段と磨きをかけてほしい。地球温暖化問題への貢献と競争力強化の両立こそ、日本車が21世紀も繁栄を持続する道だ。今回の新たな規制には、諸外国に比べて大きな特長が2つある。1つは電気自動車(EV)のような電池で動き、ガソリンを消費しないクルマについても、燃費の考え方を導入したことだ。例えば日産自動車のEV「リーフ」の燃費は45キロメートル程度になるという。EVは走行時にCO2を出さず、ゼロ・エミッション車(ZEV)と呼ばれるが、実際は動力源の電力をつくる際に火力発電所などでCO2が出る。その分を勘案すると、ガソリン1リットルで45キロメートル走るエンジン車と同じ環境負荷が発生する、という考え方だ。環境性能を走行時だけでなく、発電所などの源流に遡って評価する手法を「ウェル・ツー・ホイール(油井から車輪へ)」と呼ぶ。欧州など環境先進地でも未導入のこの手法を日本が先駆けて取り入れたのは一定の意義があり、EVなどの環境性能のさらなる向上を促す効果を期待したい。もう1つは米カリフォルニア州や中国が採用しているEVなどの販売目標台数をメーカーごとに設定するZEV規制を導入しなかったことだ。特定の技術や車種に政府が肩入れするのではなく、最終の燃費目標を達成するためにどんなエコカーに力を入れるかは各メーカーの選択に委ねる「技術中立的」な規制体系といえる。最近は欧州や中国でも、日本が生みの親であるハイブリッド技術を再評価する機運が高まっている。日本メーカーは新燃費規制をテコに環境技術の革新を加速し、世界をリードしてほしい。

*4-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45808630X00C19A6000000/ (日経新聞 2019年6月7日) ウォルマート、EV充電器120店に設置完了 全米展開も
 米ウォルマートと独フォルクスワーゲン(VW)の米子会社エレクトリファイ・アメリカは6日、米国内のウォルマート120店への電気自動車(EV)の急速充電スタンド設置が完了したと発表した。今後も順次設置店舗を増やしていく方針で、将来的には全米展開も視野に入れる。両社は2018年7月、初のEV用充電スタンドをアーカンソー州に置いた。その後約1年で34州にある店舗を対象に、1店あたり平均4~6台の充電スタンドを追加した。出力は150~350キロワットで「車種にもよるが平均20~30分程度」(エレクトリファイの担当者)での急速充電が可能という。ウォルマートでエネルギー部門を担当するマーク・バンダーハイム副社長は「消費者に、環境に配慮した持続可能な選択肢を与えることができる」と説明。「今後はさらに2~3倍の規模までスタンド設置を広げたい」と意気込みを述べた。ウォルマートは全米に約5千の店舗を持ち、その多くが移動に車を必要とする地方にある。利用者が充電を待つ時間に店舗に立ち寄ってもらう狙いもある。現在、EV充電スタンドは需要のある東海岸と西海岸に集中している。エレクトリファイは今後10年で20億ドルを投資し、米南部でも徐々にスタンド設置を広げたい考えだ。同社のブレンダン・ジョーンズ最高執行責任者(COO)は「ウォルマートと共同でゼロエミッション車の普及に貢献したい」と述べた。VWは排ガス不正問題を受けてカリフォルニア州当局との合意に基づきエレクトリファイを設立した。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45874530Y9A600C1EA2000/ (日経新聞 2019/6/8) 世界経済「貿易摩擦のリスク重い」 IMF専務理事
 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席するため福岡市を訪れている国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は8日、日本経済新聞などのインタビューに答え、世界経済について「下振れリスクが存在しており、明らかに貿易摩擦が重大なリスクになっている」と指摘した。米中対立を念頭に、緊張緩和に向けた協議の進展に期待を示した。ラガルド氏は日経新聞、テレビ東京、日経BPとの共同インタビューで、2019年後半にかけて世界経済が持ち直すというこれまでの見通しを改めて示した。そのうえで「(貿易摩擦の)当事者は緊張を取り除き、合意するために交渉すると決めている」と語った。トランプ米大統領が7日、メキシコ製品に対する5%の関税発動の見送りを表明したことに関しては「関税がどうなるか不確実だと貿易は利益や繁栄につながらない」と指摘し、歓迎した。「明白なことだが、我々は常に貿易が経済成長のエンジンであるという理念を支持してきた」と改めて強調した。

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