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2019,07,17, Wednesday
2018.3.7毎日新聞 2019.7.10東京新聞 2018.8.1東京新聞 (図の説明:左図のように、フクイチ事故の処理費用は天井知らずで、先が見通せない状況だ。また、中央の図のように、原発事故被災地の放射線量は今でも高い。さらに、右図のような活断層や火山噴火は、これまでの原発建設には考慮されていなかったようだ) 2019.7.11 2018.12.22 農業地帯の風力発電 東京新聞 毎日新聞 (図の説明:参議院選挙の候補者は、国の予算のうち年金・社会保障を削ることには積極的だが、金を湯水のように使う原発再稼働には賛成の人がいるため、それぞれの意見を並べて比較すべきだ。また、農業補助金をばら撒くことを厭わない人も多いが、毎年補助金をばら撒くより一度だけ太陽光・風力など再エネ発電機器の設置を行い、その収入を補助金に換えた方が、予算の削減・地方創成・エネルギー自給率向上のすべてに資すると考える) (図の説明:1番左の図のように、特に地域間送電線は鉄道などの既存インフラに沿って超電導ケーブルを敷設すれば電力ロスが少なく、人手不足なら、左から2番目の図のように、外国人労働者を雇用することも可能だ。また、漁業地帯は、右から2番目の図のような養殖施設に付帯した風力発電もあり、1番右の図のようなEV冷蔵トラックもできている) (1)環境とエネルギー政策 地球温暖化が原因と見なされる気象災害が、世界の各地で相次ぎ、*1-1・*1-2・*1-3のように、「気候緊急事態宣言」をする自治体がオーストラリア・欧州・北米国内で広がり、2019年5月には英国議会も宣言した。 また、2015年にはパリ協定が採択され、国際エネルギー機関も2040年に総発電量の40%超を再エネが占めると見込んでいる。しかし、日本政府(特に経産省)は、フクイチ事故の辛酸を舐め「安全神話」が崩壊して原発比率が2017年度では3%になっているにもかかわらず、エネルギー基本計画で2030年の電源構成に占める再エネ比率を22~24%、原発比率を20~22%としている。つまり、国民の年金を減らしながら、無駄な国費を使って、環境に悪い輸入資源由来の原発を推進しようとしているわけだ。 その原発の総コストは、国費も入れると再エネに到底かなわず、使用済核燃料という膨大な負債を未来に残し続けている。また、輸入石炭による石炭火力を温存しつつ「脱炭素社会」の実現を掲げる政策も自己矛盾しており、世界に遅れている。さらに、再エネによってエネルギー自給率を高め、国内で資金を循環させながら、安価なエネルギーを作って産業や国民生活に資する努力にも欠けるのである。 一方、野党の多くは原発0をうたって再エネ導入の目標拡大を掲げており、共産党は再稼働させずに即時0、立憲民主党は2030年までに全廃を目指すとしているが、私は、即時0も可能だと考えている。エネルギー価格は産業の国際競争力に大きく影響し、エネルギー自給率は安全保障を左右するため、メディアは各党のエネルギー政策を参院選前に明確に報道し、有権者が参院選でエネルギー政策に関する審判もできるようにすべきだ。 (2)原発 1)フクイチの現在 フクイチ事故後8年後の現在も、*2-1のように、終わりの見えない廃炉作業が続いており(予算ばかり使って本当にやる気があるのか?)、住民は苦境の中にあるのに、政府は原発再稼働の方針を変えず、旧来型の産業界がそれに期待を寄せている。 しかし、*2-2のように、フクイチ1~4号機が立地していた福島県大熊町の帰還困難区域の放射線量は、今でも毎時2~3マイクロシーベルトあり、帰還が始まった地域でも事故前と同じように放射線量が低くなったわけではない。 2)参院選候補者の原発に対する見解 そのため、「今後も原発を存続すべきと思うか?」については、各地で全候補者に問うて欲しいが、東京では、自民の武見さん・幸福実現党の七海さん・安楽死制度を考える会の横山さん・無所属の関口さんが「原発存続賛成」で、立民の山岸さんと塩村さん・共産の吉良さん・社民の朝倉さん・日本無党派党の大塚さん・れいわ新選組の野原さんが「原発存続反対」だそうだ。国民の水野さん・公明の山口さん・無所属の野末さんは「どちらでもない(言えない?)」で、回答しなかった人は「(言えないが)原発存続に賛成」と考えてよいだろう。 3)司法の見解 四電伊方原発3号機の運転差し止めを求めて山口県の住民が申し立てた仮処分申請で、山口地裁岩国支部が申し立てを却下する決定を出したことについて、愛媛新聞が社説で、*2-3のように、「①山口地裁伊方稼働を容認したが、司法はフクイチ事故を忘れている」「②このような司法判断の連続に失望を禁じ得ない」「③住民の不安に正面から向き合っていない」等と報道しており、全く同感だ。 4)市民の抵抗 また、*2-4のように、脱原発を目指す市民グループ「eシフト」が、ウランは100%輸入なのに、国のエネルギー基本計画が「日本の原発は準国産のエネルギー源」と記載して国産を強調しており、このような記述が104カ所もあって「原発推進への印象操作だ」と批判しており、そのとおりだと思う。このような論理的な反論が、あちこちから出ることが重要だ。 (3)これからのエネルギーは脱原発・脱化石燃料にして再エネへ転換 1)再エネへの転換 九電が川内原発を鹿児島県で再稼働させた地元誌の南日本新聞も、*3-1-1のように、「①東日本大震災とフクイチ事故は、世界のエネルギー政策の転機となった」「②政治の責任で脱原発・再エネへの転換を急ぐべき」「③原発が競争力を失っていることは明らか」「④川内と玄海で原発4基が再稼働した九州では再エネの出力制限を招き、原発で再エネがはじき出された」「⑤政府が脱炭素社会をうたったパリ協定を批准しながら石炭火力発電所新設を認めているのはちぐはぐだ」「⑥原発にこだわった日本のエネルギー政策は世界の潮流から取り残された」「⑦政府は現実を見据えた大胆な政策転換に踏み出すべきだ」としている。私も、日本政府が原発を護ってトップランナーだった日本の再エネ技術をビリまで落とした責任は大きいと考える。 日本弁護士連合会も、*3-1-2のように、パリ協定と整合したエネルギー基本計画の策定を求める意見書を資源エネルギー庁長官に提出しており、「①太陽光・風力について蓄電池・水素等と組み合わせた電力貯蔵系システム」「②再エネの送電網への優先接続」「③既存送電網の活用及び地域分散型電源に対応した送電網の拡充」「④地域分散型のエネルギー需給システム構築のための政策の積極的推進」「⑤省エネ対策の一層の強化」「⑥脱炭素化を促進する野心的な炭素の価格付けの早急な導入」などを挙げており、同感だ。 2)「RE100」の提言 事業で使う電力をすべて再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的な企業連合「RE100」の国内メンバーと米アップルの計20社が、*3-2-1のように、2019年6月17日、2030年の日本の再エネ比率を、政府目標の「22~24%」から「50%」に引き上げるべきだと提言したそうだ。 アップルで環境対策を担当するリサ・ジャクソン副社長が、「世界中でクリーンなエネルギーを調達している企業として痛感しているのは、政府の決断次第で、より安価で安定的に調達が可能になるということだ」と述べ、日本政府に企業の取り組みを後押しする政策を求めたのは、全くそのとおりでよかった。 また、*3-2-2のソニーのように、(ちょっと遅いが)2040年までに、世界の111拠点で全電力を再エネに切り替える目標を立てたり、環境対策の優れた企業に投資や調達を集中させたりするのは効果的だ。 さらに、*3-2-3のように、取引先等の自社拠点以外でもCO2排出削減や資源循環に取り組んだり、物流拠点の共同利用でCO2を減らしたりするグローバル企業が増えると、世界に好影響を与えることが可能だ。 3)電力会社は・・ 九州では太陽光発電の出力が原発7、8基分に高まり、九電の原発4基も再稼働したため、九電は、*3-3-1のように、太陽光や風力発電事業者に稼働停止を求める「出力制御」に踏み切ることが多くなり、もったいないことだ。余った再エネを事業者に直接販売したり、水素に変えたりするインフラがあれば、意識の高い事業者の助けになるが、このようなことが技術的に難しいようでは先進国とは言えない。 しかし、*3-3-2のように、 四電管内では、太陽光や水力発電など自然エネルギーによる電力供給量が、2018年5月20日午前10時から正午にかけて需要の100%を超えていたそうだ。内訳は、太陽光161万キロワット、水力56万キロワット、風力7万キロワット、バイオマス1万キロワットの計225万キロワットで、需要の101.8%に達し、余った電力は連係線を通じて市場で他社に卸売りしたほか、水をくみ上げて夜間に発電する「揚水発電」に使ったとのことである。他地域への電力販売は、地方経済の活性化を通じて地方の財源創出に資すると考える。 また、*3-3-3のように、エアコンを夜通し動かしておかないと命が危うい猛暑の夏でも、3・11の教訓を生かした賢い省エネ・再生可能エネルギーの普及・電力融通の基盤整備によって電気は足りていたそうで、むしろ最大のピンチに立たされたのは、昨年から今年にかけて4基の原発を再稼働させた関西電力だそうだ。 地域独占からネットワークへ、集中から調整へ、原発から再エネへと電力需給の進化は静かに、しかし着実に加速しているのではないかとのことである。 <環境とエネルギー政策> *1-1:https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=552537&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2019/7/15) ’19参院選、エネルギー CO2と原発、どう脱する 「気候緊急事態宣言」をする自治体がオーストラリアや欧州、北米の国内で広がり、5月には英国議会も宣言した。地球温暖化が原因と見なされる気象災害が、世界の各地で相次いでいるからだ。温暖化を食い止めるため2015年に採択されたパリ協定が来年、本格的に始動する。各国のエネルギー政策の動向には今後、注目が強まるだろう。石炭や天然ガスなどの化石燃料に依存した経済や社会から、いかに脱却するか。東京電力福島第1原発事故の辛酸をなめた日本社会にとっては、原発の扱いも重い政策課題である。活発な政策論議が望まれる。安倍政権は昨年改定したエネルギー基本計画で、30年に電源構成で占める再生可能エネルギーの比率を22~24%、原発は20~22%とした。再生エネの「主力電源化」を今回初めて打ち出した割には、海外諸国に比べると見劣りのする数値といえよう。40年に世界で総発電量の40%超を再生エネが占める―と見込む、国際エネルギー機関(IEA)の予想ともかけ離れている。一方で、原発の電源比率は17年度で約3%にとどまる。20%超の比率目標は、30基前後の稼働を前提とした数字である。現実はどうだろう。耐震補強や津波対策による高コスト化で廃炉を余儀なくされる原発も現れている。再稼働にこぎ着けた9基の幾つかは、テロ対策の不備から運転停止命令の出る公算が大きい。比率の実現など、もはや困難な状況である。政府はまた、先にまとめた温暖化対策の長期戦略で「脱炭素社会」実現を掲げた。今世紀後半のなるたけ早期に、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量をゼロにするという。にもかかわらず、石炭火力を温存する姿勢は変えていない。国内では新規の発電所建設が進み、30年度の排出削減目標は達成が危ぶまれている。CO2の排出量が膨大なため、石炭火力の廃止に向かいつつある世界とは逆行している。どうして、これで30年の電源構成比率や「脱炭素社会」の実現を成し遂げられると言い切れるのだろう。化石燃料を使わず、CO2を排出しない。「非化石」電源として原発を位置付け、推進すれば、矛盾はしない―。そう言いたいのかもしれない。だが、原発の「安全神話」はとうに崩壊し、事故の際のリスクを国民は目の当たりにした。代償はあまりに大きく、そして長期に及ぶ。先の見えぬ使用済み核燃料の廃棄や処分コストを考えても、妥当性はもはや見当たりそうにない。現政権のエネルギー政策は明らかに、ちぐはぐと言わざるを得ない。矛盾しないとするなら、与党は選挙戦できちんと説明する責任がある。野党の多くは原発ゼロをうたい、再生エネ導入の目標拡大などを掲げる。石炭火力では唯一、立憲民主党が30年までの全廃を目指す―と打ち出した。対立軸がこれほどはっきりした分野でありながら、議論がまだ低調なのは物足りない。エネルギー政策は、私たちの暮らしはもとより、産業の国際競争力や安全保障も左右する。与野党間で、もっと論争が交わされるべきである。 *1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14097729.html?iref=editorial_news_two (朝日新聞社説 2019年7月15日) 参院選 脱炭素政策 変革への意欲はあるか 来年から、地球温暖化対策の国際ルール・パリ協定が始まるのを前に、世界の脱炭素化が加速している。 再生可能エネルギー発電の設備容量は一昨年までの10年間で倍増し、すでに総発電量の4分の1を超えた。石炭火力発電は二酸化炭素(CO2)の排出量が多く、先進国では全廃や縮小をめざす動きが相次ぐ。 日本も自らの目標を達成できるよう、温室効果ガスの削減に本気で取り組まねばならない。そのために必要なのは、社会や経済の思い切った変革だ。参院選では、脱炭素化への与野党の覚悟と意欲が問われる。 これまで安倍政権のもとで打ち出されてきた各種の政策で、日本の脱炭素化を加速させられるのかは心もとない。たとえば昨年のエネルギー基本計画は、2030年度の電源構成で再エネを22~24%しか見込まず、石炭火力を26%も残すとしている。これに縛られたままでは、閣議決定した「50年までに80%排出削減」という目標にたどり着くのは難しい。政府は先月、この目標に向けたシナリオである長期戦略を国連に提出した。目標を達成した後、今世紀後半のできるだけ早期に排出ゼロの脱炭素社会をつくるとしている。だが、将来の不確かな技術革新に過度な望みをかけ、炭素税や排出量取引などのカーボンプライシングのように、いま実行できる対策からは逃げている。説得力に欠ける戦略である。それでも与党は、このシナリオに沿って進めばいいとの考えだ。脱炭素化を急がねば、という危機感は感じられない。それを象徴するのが石炭火力への姿勢である。日本には多くの新増設計画があり、「CO2削減に後ろ向きだ」と海外では評判が悪い。なのに与党は産業界の意向を尊重し、石炭火力からの撤退を視野に入れていない。大胆な政策転換に背を向けていては、世界の流れに取り残されてしまう。選挙戦の前半では、気候変動や温暖化をめぐる論戦は活発ではなかった。しかし野党には脱石炭に前向きな声があり、与党との対立軸として訴えられるはずだ。「30年までに石炭火力全廃」を公約に掲げる立憲民主党は、野党第1党として安倍政権の姿勢をただしてほしい。近ごろ、世界のあちこちで異常気象や自然災害が相次いでいる。このまま温暖化が進めば、くらしに深刻な影響が及ぶことを忘れてはならない。次世代に重いツケを回さぬよう、いま対策を急ぐ必要がある。与野党どちらに脱炭素社会をめざす意気込みがあるのか、しっかり見極めたい。 *1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13491491.html (朝日新聞 2018年5月13日) 原発20~22%を明記 「取り組み強化」 エネ計画改定案 政府が今夏の閣議決定を目指す「第5次エネルギー基本計画」の原案がわかった。電力量に占める原子力発電の割合を20~22%にするなど、政府が2030年度にめざす電源構成を初めて明記し、「確実な実現へ向けた取り組みのさらなる強化を行う」とした。核燃料サイクル政策は維持し、原発輸出も積極的に進めるなど、原発推進という従来の姿勢を崩していない。原発比率を20~22%にするには30基程度を動かす必要がある。経済産業省はいまある原発の運転を60年間に延長すれば達成できるとの立場だ。だが、新規制基準のもと、現時点では8基しか稼働しておらず、「非現実的」と指摘される。東京電力福島第一原発事故後、再稼働に反対する世論が多数を占めるなか、エネルギー政策への不信を深めることにつながりかねない。30年度の電源構成は原発のほか、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの比率を22~24%にすることなどを掲げる。15年に経産省がまとめたもので、その前年に決定した第4次計画には盛り込まれていない。原案は原発について「依存度を可能な限り低減させる」としながらも、「重要なベースロード電源」とし、従来の計画の位置づけを維持。新規制基準に適合した炉の再稼働を進めるとした一方、新増設の必要性の文言は明記していない。核燃料サイクルについては、自治体などの理解を得つつ、再処理で取り出したプルトニウムを燃やすプルサーマル発電を一層推進する、とした。安倍政権が成長戦略に掲げる原発輸出は各地で難航しているが、「世界の原子力の安全向上や平和利用などに積極的な貢献を行う」として、こちらも進める姿勢だ。再生エネは「主力電源化」を初めて打ち出した。送電線への接続制限などの課題の克服を「着実に進める」とした。一方、石炭火力は「重要なベースロード電源」との位置づけを維持した。温室効果ガス排出量が多く、国内外で批判も強いが、「高効率化技術を国内のみならず海外でも導入を推進していく」とした。化石燃料の自主開発比率について、30年に石油・天然ガスで40%以上に引き上げ、石炭は60%を維持することも目指す。基本計画は政府の中長期的なエネルギー政策の方向性を定め、約3年に1回見直している。原案は16日にある経産省の審議会に示す。 <原発> *2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201907/CK2019071102000124.html (東京新聞 2019年7月11日) <参院選>候補者アンケート 原発 「存続すべき」4人が主張 東日本大震災から八年がたった今も、東京電力福島第一原発では終わりの見えない廃炉作業が続き、ふるさとに帰還できても、避難先などにいても、住民は苦境の中にある。一方、政府は原発再稼働の方針を変えず、産業界も期待を寄せている。今後も原発を存続すべきか。候補者に賛否を問うと、「賛成」が四人、「反対」が九人、「どちらでもない」が三人、「回答なし」が四人だった。賛成とした自民の武見敬三さんは「徹底した省エネ、再エネの導入等で原発依存度を可能な限り低減し、段階的な廃止を進め、安全性を最優先に、立地自治体等の理解を得るための取り組みを進めるべきである」と「条件付き」で存続の立場を取る。日本は石油などが乏しいことや、経済力、技術力の維持という観点から存続を容認する意見も。諸派(幸福実現党)の七海ひろこさんは「安全保障上からも原発の再稼働・増設を進め、エネルギー自給体制を構築すべきだ」と主張した。また、無所属の関口安弘さんは「原発なしで電源問題は解決できない。再生可能エネルギーの比率を高めながら最低限は存続」とする。諸派(安楽死制度を考える会)の横山昌弘さんは「原子力発電の技術を維持するためにも存続する必要がある」としつつ「狭い日本では数を半分に減らせる」と述べた。一方、反対する立民の山岸一生さんは「『原発ゼロ基本法』成立後五年以内に全ての原発を停止し、再稼働させることなく廃炉にする」と持論を展開。同じく立民の塩村文夏さんも反対の立場だった。共産の吉良佳子さんは「原発と人類、地震国日本は共存できない。コストの点でもすでに失格」と断じ、再生可能エネルギーへの転換を提言。社民の朝倉玲子さんは「人間の力で制御できないものは作るべきではない」、諸派(日本無党派党)の大塚紀久雄さんは「海岸線に設置され危険極まりない」、諸派(れいわ新選組)の野原善正さんは「巨大地震が取り沙汰されている中、継続はありえない」と安全性を疑問視。国民の水野素子さんは「原発ゼロ社会を目指していくためには、現実的な道筋、ロードマップを責任ある形で示していくことが必要」と指摘する。公明の山口那津男さんは「新設は認めない」が「新規制基準を満たし、立地自治体等関係者の理解を得て、再稼働を判断。再エネ拡大で原発依存度を下げる」として「どちらでもない」を選択。無所属の野末陳平さんは「当面は原発存続しかないが、三十年くらい先は原発依存から脱却しなくてはいけない」とする。 ◇ アンケートでは、丸川さん、西野さんから回答を得られなかった。森さんは回答を拒んだ。大橋さんは一部のみ回答。 *2-2:https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1075 (東京新聞 2019年7月10日) 福島・大熊町の放射線量 −本紙が実走して測定− 本紙は6月26日、東京電力福島第一原発1~4号機が立地する福島県大熊町の帰還困難区域で放射線量調査を実施した。7時間かけ自動車で約160キロを低速で走り、車外の線量分布を調べると、今なお原発事故の爪痕が色濃く残っていた。同町は、今年4月、大川原(おおがわら)、中屋敷(ちゅうやしき)両地区の避難指示が解除され、JR常磐線大野駅近くにあった町役場は大川原地区に移転し、新たな歩みを始めた。町の復興計画では、大野駅周辺など人口が多かった地域を「特定復興再生拠点区域」に指定し、優先的に除染を進めて2022年春ごろまでに避難指示の解除を目指す。27年には居住人口を、震災前の2割強に当たる2600人まで回復させたい考え。除染はまだ始まったばかりで、大野駅周辺は毎時2~3マイクロシーベルトあった。国道6号の東(海)側は、除染で出た汚染土などを長期貯蔵する中間貯蔵施設。用地が確保されしだい、次々と処理・貯蔵施設が建設され、急速に町の姿が変わっていた。 *2-3:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201903160010 (愛媛新聞社説 2019年3月16日) 山口地裁伊方稼働容認 司法は福島の事故を忘れている 東京電力福島第1原発事故を忘れたかのような司法判断の連続に、失望を禁じ得ない。四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求め、山口県の住民が申し立てた仮処分申請で、山口地裁岩国支部は申し立てを却下する決定を出した。愛媛をはじめ、広島、山口、大分4県の住民らが同様の仮処分申請をしているが、2017年に広島高裁が火山の危険性を指摘し運転を差し止めた以外、全て運転を認める決定が下っている。ほとんどが四電の主張を追認する内容で、原発の安全性や重大事故が起きた場合の避難など、住民の不安に正面から向き合っているとは言い難い。司法は、二度と福島のような事故を起こさない責任を改めて自覚し、住民の命や権利を守る役割を果たすべきだ。山口地裁で争点の一つだった住民の避難計画に対する判断は特に信じがたい。伊方原発から30㌔圏外で避難計画が策定されていない点について、国の緊急時対応が合理的との理由で問題視しなかった。しかし、福島原発事故の被害が30㌔圏にとどまらなかったことは周知の事実。事故への備えを一律に距離で線引きすることはできず、現実から目を背けるような姿勢は看過できない。さらに、地震などとの複合災害が起きた場合には「速やかに避難、屋内退避を行うことは容易ではないようにも思われる」と認めながら、具体的な問題点には触れていない。そればかりか「自治体レベルでの対応が困難になった場合には、全国規模のあらゆる支援が実施される」と言及。避難計画がなくても、いざとなれば国が何とかしてくれるといった論理はあまりにも乱暴で楽観的すぎる。伊方原発で最大の懸案である地震の影響に関しては、審尋の中で、地質学の専門家が活断層である沖合の中央構造線断層帯とは別に、地質の境界線の中央構造線の周辺にも活断層が存在する可能性を指摘した。決定では、四電や大学などが詳細に調査しているとして「活断層が存在するとはいえない」と断言したが、疑問だ。政府の地震調査研究推進本部も調査の必要性に言及しており、国や四電は速やかに検討すべきだ。広島高裁が運転差し止めの根拠とした巨大噴火の危険性は、「社会通念を基準として判断せざるを得ない」と、他の決定を踏襲した。だが、国民が気に留めないことと、実際の危険性は別の話だ。弁護団が「科学的な問題に社会通念を用いるのはおかしい」と指摘するように、噴火の規模の予測が困難な以上、自然災害には最大限謙虚に向き合わなければならない。社会通念を持ち出すべきは、原発の在り方そのものだろう。決定では「原発の必要性が失われている事情も認められない」としたが、太陽光などの再生可能エネルギーの普及が進む今、脱原発への潮流を司法が見誤ってはならない。 *2-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201903/CK2019031502000147.html (東京新聞 2019年3月15日) 「エネ計画に印象操作」市民団体分析 原発「国産強調」 事故「矮小化」 国のエネルギー基本計画について、脱原発を目指す市民グループ「eシフト」は十四日、その内容を詳細に分析した結果を公表した。ウランは100%輸入なのに計画には「日本の原発は準国産のエネルギー源」と「準」とすることで国産を強調しているとし、グループはこのような問題を含む記述が百四カ所あると指摘。「原発推進への印象操作だ」と批判している。作成の中心を担った東北大の明日香壽川(あすかじゅせん)教授(環境エネルギー政策)は本紙の取材に「都合の良いデータだけを採用したり、事象の一面しか取り上げないなど、印象操作を狙ったように見える」と指摘した。検証サイトは、基本計画の本文を示しながら、問題のある箇所を一目でわかるように色づけし、問題点を解説するコメントを逐一、添えた。例えば、基本計画の前提となる近年のエネルギー動向をどう見るかについて、二〇一八年に閣議決定したこの第五次計画は、第四次計画を決めた一四年から「本質的な変化はない」と記述。これに対し、検証サイトは再生エネのコストが低下する一方で、原発のコストが増加したことを挙げ、「極めて大きな変化があった」と、前提の置き方を問題視した。福島第一原発事故による避難者の数に関して、基本計画が区域外避難者を含めていない点を「被害の矮小(わいしょう)化だ」と批判した。明日香氏は「エネルギー政策は複雑と思われがち。問題点を分かりやすく示すことで、改めて議論のきっかけになれば」と語った。検証サイトは、eシフトの公式サイトで読むことができる。 <これからのエネルギーと脱原発> *3-1-1:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=103037 (南日本新聞社説 2019/3/10) [原発政策] 再生エネへ転換を急げ 東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第1原発事故は、世界のエネルギー政策の転機となった。原発依存を脱却し再生可能エネルギー中心への大転換である。それなのに日本では安倍政権の下で原発の再稼働が進められ、ルール骨抜きの運転期間延長の動きも顕在化している。いまだに汚染水がたまり続け、溶けた核燃料の取り出し方法さえ定まっていない福島第1原発の状況を見れば、現実離れした政策と言わざるを得ない。安倍晋三首相は、8年たっても5万人以上に避難生活を強いている震災と原発事故の複合災害の教訓を思い起こすべきだ。政治の責任で脱原発の方針を明確にし、再生エネへ転換を急ぐ必要がある。福島の事故後、安全規制の強化によって原発の建設コストが膨れ上がり、世界各地で新増設計画が苦境にある。東芝の米子会社が経営破綻し、フランスの原発大手だったアレバ社も事実上破綻した。昨年末には、三菱重工業がトルコで進めていた原発新設計画と、日立製作所の英国での案件が断念の方向に追い込まれていることが表面化した。これで安倍政権が成長戦略として旗振り役を務めた原発輸出は全て行き詰まった。原発が競争力を失っていることは明らかだ。政府は昨年7月に改定したエネルギー基本計画でも原発を引き続き基幹電源と位置付け、2030年の電源構成比率の目標でも原発を20~22%のまま据え置いた。目標達成には現在稼働している9基を30基程度に増やす必要があるが、国民の反発が予想される新増設の議論は封印したままだ。川内と玄海両原発の4基が稼働する九州では、電力の供給過剰対策で再生エネの出力制限を招いている。原発再稼働によって再生エネがはじき出された格好だ。一方で政府は電力会社に多くの石炭火力発電所の新設を認めている。「脱炭素社会」の実現をうたったパリ協定を批准しながら、まったくちぐはぐな対応である。この間に、多くの国が脱原発や脱石炭のエネルギー政策に動きだしている。再生エネのコストが劇的に低下し、急拡大しているからだ。20年までに風力や太陽光が最も安価な電源になると予測する国際機関もある。原発にこだわるあまり、日本のエネルギー政策は世界の潮流から完全に取り残された。政府は早急に、現実を見据えた大胆な政策転換に踏み出さなければならない。 *3-1-2:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2018/180615.html (日本弁護士連合会 2018年6月15日) パリ協定と整合したエネルギー基本計画の策定を求める意見書 ●本意見書について 当連合会は、2018年6月15日付けでパリ協定と整合したエネルギー基本計画の策定を求める意見書を取りまとめ、資源エネルギー庁長官に提出しました。 ●本意見書の趣旨 第5次エネルギー基本計画は、2050年までに温室効果ガスの排出量を80%削減するという我が国の長期目標に向けて、以下の点を明確にし、パリ協定の目的と整合したものとすべきである。 1 福島第一原発事故の経験から、原子力発電所の稼働、新増設を前提とするのではなく、原子力からの脱却を前提とする計画とすべきである。 2 脱炭素を実現するため、石炭火力発電からの脱却を明確に位置付けるべきである。 3 速やかに再生可能エネルギーの主力電源化を実現するために、2030年の電力供給に占める再生可エネルギーの割合を30%以上に引き上げるべきである。また、その拡大に当たっては、太陽光・風力について蓄電池や水素等と組み合わせた「再生可能エネルギー・電力貯蔵系システム」をコスト検証の対象とするのではなく、再生可能エネルギーの送電網への優先接続、既存送電網の活用及び地域分散型電源に対応した送電網の拡充など、地域分散型のエネルギー需給システム構築のための政策を積極的に推進するべきである。 4 省エネ対策の一層の強化及び脱炭素化を促進する野心的な炭素の価格付け政策を早急に導入するべきである。 5 エネルギー基本計画は、国民への十分な情報開示と、国民の意見が政策の立案・策定において実質的に反映されるプロセスの下で策定されるべきである。 *3-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201906/CK2019061802000131.html (東京新聞 2019年6月18日) <原発のない国へ>2030年、再エネ50%提言 ソニー、イオン、アップルなど20社 事業で使う電力をすべて再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的な企業連合「RE100」の国内メンバーと米アップルの計二十社が十七日、二〇三〇年の日本の再エネ比率を、政府目標の「22~24%」から「50%」に引き上げるべきだと提言した。RE100は、英非政府組織(NGO)「The Climate Group」などが運営し、米グーグルやスターバックスなど百七十九社が参加。提言には、国内企業で加盟するソニーやイオンなど十九社に、世界の自社施設で使う電力を昨年すべて再エネにした米アップルを合わせた二十社が名を連ねた。提言は、世界中で異常気象が頻発していることを挙げ「早期の脱炭素化への行動が必要だ」と強調。気候変動に対応するため、温室効果ガスを排出しない再エネの比率を高める必要があるとし、「国が明確かつ意欲的な方向性を示すことが、迅速かつ大規模な再エネ普及の前提になる」と訴えた。この日、東京都内で関連のシンポジウムがあり、アップルで環境対策を担当するリサ・ジャクソン副社長が「世界中でクリーンなエネルギーを調達している企業として痛感しているのは、政府の決断次第で、より安価で安定的に調達が可能になるということだ」と述べ、日本政府に企業の取り組みを後押しするような政策を求めた。アップルは取引先にも納める部品を再エネ100%で生産することを求めており、国内ではイビデン、太陽インキ製造、日本電産の三社が対応した。ジャクソン氏は「他の日本の部品供給企業も続いてほしい」と訴えた。 *3-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35148180Y8A900C1EA5000/ (日経新聞 2018/9/9) ソニー、全電力を再生エネに 世界111拠点で40年に ソニーは事業運営に必要な電力をすべて再生可能エネルギー由来に切り替える。現在7%の再生エネ比率を2040年までに段階的に引き上げる。環境対策の優れた企業に投資や調達を集中させる動きがあり、企業価値に直結すると判断した。日本では10社程度にとどまる全面切り替えが、半導体など生産に大量の電力を使う大手製造業にも広がってきた。世界中の事務所や工場など111拠点で使う電力を再生エネに切り替える。テレビやカメラなどの生産に必要な電力に加え、映画などコンテンツ製作も含む。工場の屋根に太陽光パネルを設置したり、再生エネを使ったとみなされるグリーン電力証書を買ったりして再生エネ比率をまず30年に30%まで引き上げる。再生エネへの全量切り替えを目指す世界的な企業連合「RE100」に加盟する。米アップルなど先行する欧米勢に加え、日本では富士通やリコー、イオンなどが参加し30~50年までの全量切り替えを目指している。ソニーは欧州ですでに再生エネ活用100%を達成しているが、グループ全体の電力消費の8割は日本に集中している。半導体工場があるためだ。ソニーの電力などに由来する温暖化ガス排出量はリコーの4倍あり、同連合に加盟する日本の製造業では最多になるとみられる。太陽光発電設備の買収も進める。日本では32年以降、再生エネでつくった電力を高値で買い取る固定価格買い取り制度の対象から外れる太陽光発電所が出てくるため、発電事業者の間で設備売却機運が高まるとソニーはみている。環境や社会への配慮で優れた企業に投資するESG投資は世界的な潮流になっている。世界持続可能投資連合(GSIA)の集計によると、世界でESG投資に向かった金額は16年に22兆9千億ドル(約2540兆円)と14年比で25%増えた。日本でも約160兆円を運用する最大の機関投資家、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が17年からESG指数に基づいた運用を始めた。再生エネへの切り替えは一時的にコスト増を招くが、「対応しなければ(資金調達など)事業が立ちゆかなくなる未来が来る」(ソニー幹部)と取り組みを強化する。 *3-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25954220Q8A120C1EA5000/ (日経新聞 2018/1/21) 本社調査:環境エネ 素材キヤノン、製造業首位守る 環境経営度ランキング 日本経済新聞社が実施した第21回環境経営度調査の企業ランキングで、製造業ではキヤノンが2年続けて首位となった。環境対策を取引や投資の条件とする動きが世界で強まるなか、取引先など自社拠点以外でも二酸化炭素(CO2)の排出削減や資源循環対策に取り組む企業が増えている。非製造業では物流拠点の共同利用でCO2を減らす試みが広がっている。調査では、資源循環や温暖化対策など5つの評価指標で企業を評価してランキングにまとめた。キヤノンは評価指標すべてで高評価を獲得。中でも資源循環は最高点だった。使用済みの複合機やトナーを回収し、部品や素材を製品に再利用する取り組みを強化。使用済み製品を生まれ変わらせた量は2016年に累計3万4千トンと、12年の6倍に増えた。茨城県には再資源化専用の工場も設けた。環境統括センターの古田清人所長は「欧州の国際会議などでは温暖化対策以外に資源循環を求める声がある」と話す。再資源化拠点は欧州や米国、中国にも設けている。5位のトヨタ自動車も資源循環に取り組む。使用済み自動車の破砕処理後に出る廃棄物の再資源化率は16年度に98%と12年度比4ポイント高まった。2位のコニカミノルタは主要な調達先500社以上を対象に省エネ支援を始めた。自社工場で培った省エネ対策をまとめたデータベースを17年に作成。調達先が容易に省エネできるようにした。サプライチェーン(供給網)全体で水資源のリスク管理に動くのは7位のサントリーホールディングス。17年度に取引先を対象とした水使用についてのガイドラインを整備した。海外の水使用量や水の枯渇リスクなどを把握。水を通じて持続可能な生産体制を整える。非製造業の運輸部門では佐川急便が3年連続の首位。20年をメドにIHIと都内に物流拠点を新設して共同運用する。物流を効率化することでトラックの配送距離を短くし、CO2排出量を減らす。2位の日立物流は佐川急便と資本提携しており、両社で千葉県の物流拠点の共同活用を進める。建設業は2年連続で積水ハウスが首位となった。17年から住宅の建設廃棄物をQRコードを使って現場で分別するリサイクルシステムの運用を始めている。 ▼環境経営度調査 企業が環境対策を経営と両立させる取り組みを評価する調査。日本経済新聞社が日経リサーチの協力を得て1997年に始めた。今回は上場と非上場の有力企業のうち、製造業1724社、小売り・外食、電力・ガス業、建設業などの製造業以外の業種1357社を対象に、2017年8月から11月に実施。676社から有効回答を得た。評価指標は製造業が、環境経営推進体制、汚染対策・生物多様性対応、資源循環、製品対策、温暖化対策の5つ。スコア算出の際は、評価指標によって最高点が異なるため、最高を100、最低を10に変換。最高スコアを500とした。建設業は製造業に準じ5指標で評価し、非製造業、電力・ガス業は「製品対策」を除く4指標で評価している。非製造業の最高スコアは400、電力・ガス業は対象社数が少ないため各指標の平均を50、合計の平均を500としてスコアを算出している。 *3-3-1:http://qbiz.jp/article/139788/1/ (西日本新聞 2018年8月28日) 九電が事業者に太陽光制限周知へ 供給過剰の可能性 9月にも 九州電力は、9月にも太陽光発電や風力発電事業者に稼働停止を求める「出力制御」に踏み切る可能性が高まったとして、近く事業者(契約件数約2万3千)に事前周知する。出力制御が行われれば、離島を除き全国初。九州では太陽光発電の出力が原発7、8基分に高まる中、今夏までに九電の原発4基が再稼働している。暑さがピークを過ぎて冷房需要が落ちる秋以降、電力の供給力が需要を大幅に上回り「送電網の安定運用が難しくなる恐れがあるため」(九電)としている。電気は需要と供給のバランスが崩れると、周波数が乱れたり、最悪の場合は大規模停電が起きたりする可能性がある。九電によると、再生可能エネルギーの出力制御は、工場やオフィスが休業し、需要が特に落ちる連休中などを想定。実施する場合は、前日夕方までに事業者にメールなどで通知し、当日朝に実施の最終判断をする。九電は初の本格的な出力制御となるため「突然の通知で混乱を招かないよう、あらかじめ対象者にダイレクトメールや直接訪問で周知」(関係者)する方向で調整している。九電管内では、5月の連休中に一時、太陽光発電の出力が需要量の81%を占めた。この時期にも出力制御が検討されたが、同社の火力発電の出力を抑制したり、揚水発電所の水をくみ上げる「揚水運転」に電力を使ったりすることで、実施を回避してきたという。その後、玄海原発4号機の再稼働や、川内原発1号機の定期検査終了で供給力が大幅に上昇。現在、定検中の川内原発2号機も近く発電再開の見通しとなっているほか、太陽光発電も月5万キロワットのペースで増えている。九電は「再生エネルギーを前向きに受け入れてきた結果、出力制御をしなければ需給バランスを保てない限界に近づいている」としている。経済産業省によると、出力制御は、揚水運転、火力発電抑制、再生エネ、原発の順に行われる。原発が最終手段とされている理由については「短時間に供給力を微調整するのが技術的に難しい」(担当者)と説明している。 *3-3-2:http://www.topics.or.jp/articles/-/87629 (徳島新聞 2018年8月17日) 四電、自然エネ100%供給 今年5月、国内10社で初 四国電力管内で太陽光や水力発電など自然エネルギーによる電力供給量が、5月20日午前10時から正午にかけ、需要の100%を超えていたことが、NPO法人・環境エネルギー政策研究所(東京)の調べで分かった。2012年に太陽光発電などの固定価格買い取り制度が始まって以降、供給が100%に達したのは国内電力10社で初めてという。5月20日午前10~11時の四電管内の電力需要は221万キロワット。これに対する供給は太陽光161万キロワット、水力56万キロワット、風力7万キロワット、バイオマス1万キロワットの計225万キロワットで、需要の101・8%に達した。同11時~正午は需要が223万キロワットで、太陽光167万キロワット、水力52万キロワット、風力6万キロワット、バイオマス1万キロワットの計226万キロワットを供給し、需要に対する割合は101・3%だった。両時間帯ともに、太陽光が72・9%、74・9%を占め、最も多かった。火力発電と合わせると、10~11時は150万キロワット、11時~正午には153万キロワットの供給過多となった。余った電力は連係線を通じて市場で他社に卸売りしたほか、水をくみ上げて夜間に発電する「揚水発電」に使った。春は冷暖房があまり使われないため電力需要が少なく、太陽光発電の出力が大きい好天時は、自然エネルギーの割合が高くなりやすい。四電によると、5月20日は企業の需要の少ない日曜日で、晴天の上、それまでの降雨で水力の供給力も大きかった。自然エネルギーの1日平均の供給割合は52・2%だった。一時的とはいえ100%を超えたのは、固定価格買い取り制度に伴い、太陽光発電の導入が進んだことが背景にある。研究所によると、四電が他電力よりも早く100%を超えたのは太陽光や水力の比率が高いためという。飯田哲也(てつなり)所長は「伊方原発の再稼働は、電力需給を見る限り明らかに不要」と訴えている。四電は「自然エネルギーは天候に出力が左右される。安定的な供給のため原子力発電は不可欠」としている。 *3-3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018090402000169.html (東京新聞社説 2018年9月4日) 猛暑も電力余力 節電、融通、再エネで エアコンを夜通し動かしておかないと、命が危うい猛暑の夏-。それでも電気は足りていた。3・11の教訓を生かした賢い省エネ、そして電力融通の基盤整備が、エネルギー社会の未来を切り開く。七月二十三日。埼玉県熊谷市で国内観測史上最高の四一・一度を記録した猛暑の中の猛暑の日。東京都内でも史上初めて四〇度の大台を超えた。冷房の使用もうなぎ上り。午後二時から三時にかけての電力需要も、この夏一番の五千六百五十三万キロワットを記録した。それでも最大需要に対する供給余力(予備率)は7・7%。“危険水域”とされる3%までには十分な余裕があった。その日中部電力管内でも3・11後最大の二千六百七万キロワットに上ったが、12・0%の余力があった。東電も中電も、震災後に原発は止まったままだ。この余裕はどこから来るのだろうか。最大の功労者は省エネだ。計画停電を経験した3・11の教訓を受け止めて、家庭でも工場でも、一般的な節電が当たり前になっている。これが余力の源だ。そして、再生可能エネルギーの普及が予想以上に原発の穴を埋めている。猛暑の夏は太陽光発電にとっては好条件とも言えるのだ。むしろ最大のピンチに立たされたのは、昨年から今年にかけて四基の原発を再稼働させた関西電力ではなかったか。七月十八日。火力発電所のトラブルなどが重なって供給率が低下し、予備率3%を割り込む恐れがあったため、電力自由化を見越して三年前に発足した「電力広域的運営推進機関」を仲立ちとして、東電や中電、北陸電力などから今夏初、計百万キロワットの「電力融通」を受けた。3・11直後、東日本と西日本では電気の周波数が違うため、融通し合うのは難しいとされていた。だが、やればできるのだ。震災当時百万キロワットだった周波数変換能力は現在百二十万キロワット。近い将来、最大三百万キロワットに増強される計画だ。北東北では、送電網の大幅な拡充計画が進行中。地域に豊富な再生可能エネルギーの受け入れを増やすためという。地域独占からネットワークへ、集中から調整へ、原発から再エネへ-。電力需給の進化は静かに、しかし着実に加速しているのではないか。猛暑の夏に、エネルギー社会の近未来を垣間見た。 <おかしな論理はやめ、脱化石燃料へ> PS(2019.7.17追加):*4-1・*4-2のように、2019年6月、この海域で日本のタンカーが攻撃されたため、米国が派遣した艦船が監視活動を指揮し、参加国が米艦船の警備や自国の民間船舶の護衛に当たるため、米国が同盟国に有志連合の結成を呼び掛け、原油を中東に依存する日本にとってこの航路の安全は極めて重要なので、日本政府は担当者を出席させるそうだ。 こうなる理由は、*4-3のように、安保法制関連法案の国会審議の中で、集団的自衛権を行使し、自衛隊を米軍とともに世界に派遣する一例として、この航路の安全確保が挙げられていたからだ。しかし、根本的におかしいのは、①民間の船舶であるタンカーの経済的リスクなら保険で手当てすべきで ②保険料込みで原油購入者は対価を支払っている筈であり ③リスクが高ければ原油の販売者も大きな打撃を受けるため、この海域を守るべきは周辺の産油国側で ④この海域が原油で汚染されて困るのもこの海域の国々であること などである。 このような中、エネルギー自給率を向上させる努力もせず、化石燃料であるこの地域の原油に依存し続けている日本の政治は、とりわけビジョンがないと言わざるを得ない。 *4-1:https://www.kochinews.co.jp/article/293436/ (高知新聞 2019.7.17) 【ホルムズ海峡】有志連合は緊張を高める 中東・ホルムズ海峡などの安全を確保するため、米国が同盟国に有志連合の結成を呼び掛けている。米軍によると、米国が派遣した艦船が監視活動を指揮し、参加国は米艦船の警備や自国の民間船舶の護衛に当たるという。6月にこの海域で日本のタンカーなどが攻撃されたことに伴う対応としている。日本政府にも参加や負担を求めてくる可能性がある。イラン沖にあるホルムズ海峡やその周辺海域は原油の海上輸送の大動脈といってよい。原油を中東に依存する日本にとっても、航路の安全は極めて重要である。だが、自衛隊は現状で有志連合に参加すべきではない。現行法上、派遣が難しいこともあるが、航路の安全確保は本来、実力部隊の派遣によってではなく、国際社会の対話と協調で実現していくのが筋である。自衛隊派遣について岩屋防衛相はきのう「現段階では考えていない」と述べた。当然の判断だ。他の同盟国にも冷静な判断を求める。トランプ米政権は、タンカー襲撃などはイランの最高指導者ハメネイ師が直轄するイラン革命防衛隊の仕業と指摘し、非難している。ただ、確たる証拠がないのが現状だ。そもそも、米国とイランの最近の関係悪化はトランプ政権が引き起こしたといっても過言ではない。イランと、米欧など6カ国は2015年、イランが核開発を大幅に制限する見返りに制裁を解除することで合意。中東の緊張緩和は大きく前進すると期待された。ところが、米大統領に就任したトランプ氏はこの核合意からの離脱を一方的に表明し、対イラン制裁も再開した。イランが猛反発するのも当然だ。トランプ氏のイランへの強硬姿勢には、来年の米大統領選に向け、支持者に強いリーダー像を見せたいとの思惑があるとみられる。支持層である保守派はイランへの制裁強化を望む人が多い。問題は、トランプ氏がそれに同盟国を巻き込もうとしていることだ。同盟国はこれまで、トランプ政権の対イラン政策に一定の距離を置いてきたはずだ。有志連合に加われば一転、同調したことになる。ホルムズ海峡はイランにとって対外戦略上の要衝である。そこに米軍主導で多国籍の艦船が展開すれば、イランには軍事的な包囲網に映るだろう。航路の安全どころか、かえって緊張が高まりかねない。米国は数週間以内に有志連合を結成したいとしている。同盟国は参加を検討するより前に、米国とイランの関係修復に当たりたい。日本はイランと友好的な関係を維持してきた。安倍首相は6月、仲介のためにイランを訪問し、ハメネイ師とも会談した。その日本が有志連合に入るようなことになれば、これまでの友好関係も仲介の取り組みも水泡に帰すことになろう。今後も粘り強い外交努力が必要だ。 *4-2:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190717/k10011995731000.html (NHK 2019年7月17日) ホルムズ海峡安全確保 米構想の説明の場に日本も出席で調整 中東のホルムズ海峡などの安全確保のため、アメリカ政府が今月19日に関係国に新たな構想を説明する場に、日本政府も担当者を出席させる方向で調整しています。アメリカとイランの対立で緊張が高まる中、アメリカ軍はホルムズ海峡の安全を確保するため、同盟国などとの有志連合の結成を検討していて、国務省のフック特別代表は、今月19日に関係国に対し新たな構想について説明する場を設ける考えを明らかにしました。これを受けて日本政府は、アメリカにある日本大使館から担当者を出席させる方向で調整しています。有志連合の結成をめぐっては、岩屋防衛大臣は16日「この段階で、いわゆる有志連合に自衛隊の参画を考えているものではなく、自衛隊を派遣することは考えていない」と述べています。ただ日本政府としては有志連合をめぐるアメリカの構想が明らかにならない中、担当者を出席させることで構想の具体的な内容について情報を収集するねらいもあるものとみられます。 *4-3:https://www.news-postseven.com/archives/20150604_326445.html (週刊ポスト 2015年6月12日号)安保法案でのホルムズ海峡機雷除去 想定自体現実にあり得ず 安保法制関連法案の国会審議が始まった。集団的自衛権を行使し、自衛隊を米軍とともに世界に派遣する──安倍政権が閣議決定した憲法解釈変更を法制化し、日本の安全保障政策を大転換させる重要法案だ。法案早期成立のために、安倍晋三首相は詭弁と詐弁を駆使している。「他国の領土、領海、領空に派兵することはない」。安倍首相は安保審議の前戦の党首討論でそう言明した。しかし、安保法制の柱であり、国際紛争に際して自衛隊派遣の要件を定める恒久法「国際平和支援法案」には、「外国の領域における対応措置」が明記されており、他国領で活動しないという安倍首相の説明は明らかに嘘である。安倍首相が他国領域での集団的自衛権の行使について、「例外」のひとつとして挙げているのがホルムズ海峡での機雷除去活動だ(その他「米艦防護」に含みを持たせ、内閣法制局長官は「敵基地攻撃」にも言及した)。イランがペルシャ湾口のホルムズ海峡を機雷で封鎖する事態になれば、日本は中東からの石油運搬ルートを断たれる。それは安全保障上の重大事態だから、米国との集団的自衛権を行使して海自による機雷除去の掃海活動が必要になるという論理である。しかし、早稲田大学法学部の水島朝穂教授はこの想定自体が現実にはあり得ないと指摘する。「ホルムズ海峡はイランとオマーンの間で最狭部は幅約30キロ。両国が主張する領海が重なり、公海はない。この海峡を通る世界のタンカーの9割は中間線よりオマーン側の航路を通る。イランが海峡を封鎖するなら、オマーン領海にも機雷を敷設しなければならない。相手国領海への機雷敷設は戦闘行為そのもので、イランはオマーンに宣戦布告することになる。しかしオマーンはイランの友好国だから、機雷を敷設するという想定自体が非現実的だ」。それだけではない。「仮に機雷が敷設された場合でも、戦争状態での機雷除去は軍事行動になる。それを自衛隊が行なうとすれば、日米の集団的自衛権に基づくものではない。これは『集団的自衛権は米国が相手』としてきた政府の説明と矛盾する」(同前)。それでも安倍首相がホルムズ海峡を持ち出したのは、「石油が断たれたら大変なことになる」と危機を煽れば国民も認めるだろうという発想なのだ。 <電動車への移行> PS(2019年7月18日追加):*5-1のように、市川市が低炭素社会の実現をアピールするためにEV導入を決定し、市長と副市長の公用車にテスラ製の高級セダンの『モデルS』とSUV(スポーツ用多目的車)の『モデルX』の2台を導入することをめぐって、「高額すぎる」と市民から見直しを求める声が上がったそうだが、それを次の産業政策に結び付ければ上出来だと私は考える。例えば、市長の公用車をテスラ、副市長の公用車をリーフ、市の他の所有車もEVや運転支援車にして皆で性能を比較し、今後の自動運転化やEV化を進める基礎にしたり、その方面の企業を誘致したりできれば初期投資は大きすぎず、値引要請も可能だろう。 なお、最近は、*5-2のように、燃料電池電車も独で営業を始めており、これを運行する州の交通公社は2021年までに全てを燃料電池電車に置き換える予定で、その電車は水素タンクを満タンにすれば千km走行できる上、将来は風力発電による電気で水を分解して得た水素を使うのだそうだ。再エネによる分散発電と燃料電池電車を組み合わせれば、エネルギー代金が下がってエネルギー自給率は高まり、さらに超電導電線を敷設すれば送電料が入るため、日本でも北海道・東北・四国・九州の鉄道会社に特にお勧めだ。 (図の説明:1番左が、2018年9月17日から営業運転を開始したドイツのFCV電車だ。左から2番目は、日立製のFCV電車だが、営業運転はしておらず、DENCHAという子供じみた命名をしている点で本気度が見えない。また、右から2番目は、EV電車、1番右はEVバスで、陸上交通は既に実用化済のFCVやEVに変えることが可能になっている) *5-1:https://response.jp/article/2019/07/18/324536.html (Response 2019年7月18日) 高級EVテスラにこだわる市川市長、リーフの選択は論外?[新聞ウォッチ] ローカル過ぎる話題だが、批判の的にされているのは、あのイーロン・マスク氏が最高経営責任者(CEO)をつとめる米電気自動車(EV)メーカー、テスラの高級EV車だけに見過ごすわけにもいかないようだ。千葉県の市川市の市長と副市長の公用車にテスラ製の高級セダンの『モデルS』とSUV(スポーツ用多目的車)の『モデルX』の2台を導入することをめぐり、市民から見直しを求める声が上がっているという。きょうの毎日などが「米テスラ高級EV公用車に批判」などと、社会面で大きく取り上げている。それによると、市川市は低炭素社会の実現をアピールするため、EV導入を決定。7月上旬には、副市長用に車両価格1110万円のモデルXのリースを開始した。費用は月約14万円で期間は8年間。これまでのトヨタの『クラウン』は月約6万円で月額が2倍以上となったという。このため、市民や議会から「高額だ」と批判が噴出。村越祐民市長は「説明不足だった」として、もう1台の車両価格1020万円のモデルSについては入札を延期することを決定。すでに納車された1台については、これまでの国産車との差額分8万5000円分を自身の給料から減額して補てんする考えを示したそうだ。この市川市の公用車導入の問題を少し整理すると、地球温暖化対策に前向きな取り組みの一環としてエコカーを選択することについての批判は少ないようだが、市民感情としてはその車種が1000万円を超える高級外車だから「税金の無駄遣い」との反対意見が噴出したと思われる。もし、最初から日産自動車の『リーフ』などを選択していたら、批判の声も上がらなかったのではないだろうか。もっとも、リーフは大衆車であるのと「差額は自腹でも」という市長の発言からみると、最初から「テスラありき」との思惑も透けて見える。 *5-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL9K1RV4L9KUHBI001.html (朝日新聞 2018年9月18日) 世界初、燃料電池で走る列車 時速140キロ、独で営業 鉄道が電化されていない区間の多いドイツで17日、燃料電池を使った列車の営業運転が始まった。車両を製造したフランスのアルストム社によると世界初の取り組みという。走行時に二酸化炭素(CO2)を出さず、環境にやさしい次世代の列車として世界的に注目されている。北部ニーダーザクセン州の約124キロの区間(ブクステフーデ駅―クックスハーフェン駅)を走る14編成のうち2編成で導入された。1編成で最大300人を乗せることができ、運行する州の交通公社は2021年までに全てを燃料電池列車に置き換える予定だ。車両の屋根にあるタンク内の水素と空気中の酸素を化合して発電。架線からは電気を受けずに、モーターを回して走る。床下にはリチウム電池が設置され、走行中にも自動で蓄電する。最高速度は時速140キロで、水素タンクを満タンにすれば1千キロまで走行できる。将来は風力発電による電気で水を分解して得た水素を使う方針という。通勤のため乗車した50代の女性は「すごく静かでとても驚いた。乗っていて心地良いくらい」と話した。ドイツの鉄道は現在も電化されていない区間が約半分を占め、ディーゼル車が走る。電化には巨額の投資と時間がかかるため、二酸化炭素削減に取り組む中で、燃料電池列車が急速に普及する可能性がある。一方、日本では鉄道総合技術研究所などで開発が進むが、営業運転のめどは立っていない。アルストム社の広報担当者は「燃料電池列車の価格はディーゼル列車より高いが、電化の費用を考えれば十分に見合う」と話す。 <メディアの質が低いこと> PS(2019年7月19、20日追加):*6-1のように、参院選のテレビ報道が少なく、報道関係者は「選挙自体が盛り上がらず高視聴率を見込めないから」と説明しているそうだ。しかし、テレ朝の「羽鳥慎一モーニングショー」は、参院選公示以降、毎日30~40分、消費増税、年金などをテーマに専門家を招いて選挙報道を行い、各党の主張を紹介して連日9%台の視聴率を記録しているそうで、これは、この時間帯に家にいる高齢者や女性の政策への関心も高いことを示している。各党の公約を掘り下げて報道しなければ選挙による有権者の真の審判はできないが、NHKはじめ他の民放は、災害・天気・放火・殺人・高齢者の交通事故ばかりを報道しており、これらの報道関係者は各党の政策や公約を的確に掘り下げる意欲も能力も使命感もないようだ。 また、メディアの質が低下しているのは報道番組だけでなく、*6-2のようなNHKの大河ドラマ「いだてん」も同じで、ゴールデンタイムを使って広告がないにもかかわらず6月9日の平均視聴率は6.7%と苦戦し、1989年以降最低だそうだ。そして、その理由を「①合戦のシーンを大河の見どころと考える従来の固定層が近現代という設定になじめなかった」「②有名人のストーリーではないから」「③作品のメッセージ性はよい」「④少子高齢化により高齢視聴者の影響が強い数字になりがちだから」「⑤『歴史好き』ではなく、『ドラマ好き』が支持しており、視聴率は関係ない」としているが、マーケットリサーチは正確に行わなければ今後の改善もない。私は、①②④は、言い訳にしても従来の視聴者や高齢者を馬鹿にしており、③は偶然に触発された人ばかりのメッセージで感動するほどのものではなく、⑤は、ドラマとしても、失敗ばかりして絶叫しているストーリーで面白くないのである。 大河ドラマに戦国時代・明治維新の話は既にしつこいほど出たため、今後は、1)秦の始皇帝と徐福 2)三国志と倭 3)神功皇后の新羅出兵と応神天皇の東征 4)大化の改新・白村江の戦い・飛鳥時代・持統天皇 5)「この世をば わが世とぞ思ふ・・」と詠んだ藤原道長と彰子、定子、紫式部、清少納言 など、日本の古代史とアジアを、二国間協力し壮大な大河ドラマにして美しい映像で放映すれば、世界レベルで興味を持たれると思う。もし、日本の作家にそういう能力がなければ、中国・インド・アラビア・エジプトはじめ文化に力を入れている外国の映画を放映した方がよほど面白い。 なお、京都アニメ放火事件について、ある番組のコメンテーターが「テロと言ってもいい」などと言っていたのには呆れたが、テロリズムとは、*6-3のように、「準国家的集団又は秘密の代理人による、非戦闘員を標的とし、政治的な動機を持つ暴力をいう」と定義されており、非国家主体又はその各々の政府のために仕える秘密捜査員によってのみ関与されるものだ。日本は既に民主主義国で政治の変革にテロは不要なので、私は京都アニメ放火事件はただの犯罪だと思うが、あれをテロだと言った人は(いい加減ではなく)テロの要件に合う理由を述べるべきだ。 *6-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM7K6X5XM7KUCVL02H.html?iref=comtop_8_02 (朝日新聞 2019年7月19日) 「視聴率取れない」参院選、TV低調 0分の情報番組も 参議院選挙のテレビ報道が低調だ。選挙自体が盛り上がらず、高視聴率を見込めないためと関係者はみるが、そんな常識を覆す現象も起きている。テレビ番組を調査・分析するエム・データ社(東京都港区)によると、地上波のNHK(総合、Eテレ)と在京民放5社の、公示日から15日までの12日間で選挙に関する放送時間は計23時間54分で、前回に比べ6時間43分減っている。とりわけ「ニュース/報道」番組の減少が顕著で、前回から約3割減、民放だけなら約4割減っている。公示日のテレビを見ると、NHK「ニュースウオッチ9」がトップで伝えたり、TBS系「NEWS23」と日本テレビ系「news zero」が党首討論を行ったり、午後9時以降の主な報道番組六つすべてが選挙にふれたが、翌日は六つとも報じなかった。その後も、番組によって、放送しない日があった。「情報/ワイドショー」は、前回より放送時間が増えたが、フジテレビ系「とくダネ!」やTBS系「ビビット」、日本テレビ系「スッキリ」など、公示日から15日まで選挙企画が全くないところも。10年以上情報番組に携わった在京キー局の元プロデューサーは、選挙自体、盛り上がりに欠けるためだとみる。「安倍政権1強下で行われる参院選。政権交代が起きる要素もない。テレビが取り上げたくなる個性の強い候補者や選挙区もない。視聴率が取れない」。また選挙期間中は、陣営からのクレームを恐れ、発言時間をストップウォッチで管理するなど細心の注意が必要だったとし、「数字が取れないのに、作り手は、手間とリスクを取って放送するメリットはないと思っているのでは」。実際、14年には自民党がテレビ局に、出演者の選定や街の声の放送など、事例を挙げて「公平」な報道を求める文書を送付している。そんな中、積極的なのはテレビ朝日系の朝の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」。公示日以降、ほぼ毎日30~40分、消費増税、年金などをテーマに、専門家を招いて掘り下げ、各党の主張を紹介している。しかも、視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ)は連日9%台を記録。同時間帯の民放の情報番組の中で首位を走る。憲法改正に絡む「緊急事態条項」を取り上げた祝日15日の放送は、15年の番組開始以来2位の11・7%となった。小寺敦チーフプロデューサーは「難しいテーマに司会者の羽鳥慎一さんさえ『祝日の朝に本当に見てもらえるのだろうか』と心配していたのに、結果を見て、選挙に関する有権者の知りたいという欲求を確かに感じた」と話す。NHKは前回に比べ3時間弱、放送時間が減少した。同局幹部は4日の公示日前後にあった九州南部の大雨に触れ、「災害報道に時間を割いたことも影響しているのでは」と言う。ただ、NHKの場合、ネット上で選挙サイト「NHK選挙WEB」も展開。世論調査の結果や各党党首の演説を、グラフや図を使って多角的に分析。全国の選挙区ごとに特設ページを設け、候補者へのインタビュー映像や、NHKの記者による争点解説の動画を発信するなどネット報道を強化しているという。別の幹部は「全体では、発信する情報量はむしろ増えている」。政治とメディアの関係に詳しい逢坂巌・駒沢大准教授は、選挙に強い関心のある有権者を満たす受け皿としてネットの充実は必要だと評価する。ただ「選挙に関心の低い人が興味を持つきっかけは、最も影響力の大きい地上波が担うべきではないか」。そもそも、各局の放送内容に批評性が足りないと指摘するのは、フジテレビで報道番組のディレクターなどを務めた筑紫女学園大の吉野嘉高教授だ。「本来であれば、安倍政権の6年を振り返り、何が実現して何が実現しないのか検証する報道が必要だ。公平性に気が回りすぎて、全く切り込めていない」と話す。「有権者が一番知りたい時期に、知る権利に量的にも質的にも応えていないことを意識すべきだ」と指摘する。 *6-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM6M2W93M6MUCVL001.html (朝日新聞 2019年7月2日) こんな大河見たことない いだてん、視聴率が計れない熱 NHKの大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」が苦戦している。6月9日の平均視聴率は6・7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)で、NHKが把握している1989年以降で大河史上最低を更新した。作品を評価する声はあるのに、なぜ?「いだてん」は五輪マラソンに日本人初出場を果たした金栗四三(かなくりしそう)と、64年の東京五輪招致に関わった田畑政治の歩みを描く。大河としては珍しい近現代の物語だ。脚本は人気作家の宮藤官九郎さん、金栗を中村勘九郎さんが演じ、ビートたけしさんや役所広司さんらも出演し、話題性は十分だった。ところが、初回視聴率こそ前作「西郷(せご)どん」を上回ったが、2月から6月30日まで20回連続で1桁台。対照的に、山奥の一軒家を訪ねる同時間帯のテレビ朝日系「ポツンと一軒家」は20%前後の高視聴率で、民放関係者は「確実に視聴者が流れている」と指摘する。 ●従来の固定層がなじめない 受信料で支えられる公共放送のNHKは、数字に一喜一憂する必要はないはずだが、大河や朝ドラは「NHKの看板番組」。ある幹部は「トヨタでプリウスが売れなかったら問題になるようなもの。公共放送も、放送内容に納得してもらうからこそ受信料を払ってもらえる」と危機感を募らせる。低迷の理由はどこにあるのか?大河に詳しいコラムニストのペリー荻野さんは「合戦のシーンを大河の見どころと考える従来の固定層が、近現代という設定にそもそもなじめなかった」と分析。明治・大正期と昭和期の二つの時代を唐突に行き来する複雑な演出なども敬遠されたとみる。さらに、織田信長や坂本龍馬のような有名人のストーリーではないため、「1回見逃すと、話についていけなくなると思われた」こともマイナスに影響したと考える。とはいえ、ペリーさん自身は、これまでにない「新しい大河」として、いだてんを評価する。 ●現代に通じる強いメッセージ 6月9日の放送では、陸上競技の大会で、女学生が素足に靴を履いて走った。父親が「おなごが人前で脚を丸出しにするなんて。もう嫁には行けない」ととがめる中、教師の金栗は「おなごが脚ば出して何が悪かね」と猛然と反論する。ペリーさんは、女性が職場でヒールがあるパンプスを強制されることに疑問を投げかける昨今の社会状況と重なったと語る。「単なる女性の自立ではなく、『男女はこうあるべきだ』という社会の押しつけに異議申し立てする現代的な視点を歴史物語に盛り込むなど、作品のメッセージ性は強い」。近現代文学を扱う小樽文学館(北海道小樽市)の玉川薫館長は「金栗の日記などを元にした脚本は人物を生き生きと描いており、明治・大正期の人物が身近なものとして感じられる。4年に一度の五輪がいかに人生を振り回すかが切実に伝わってきます」と評価する。 ●「ドラマ好き」からの支持 そもそも「視聴率が低いから失敗」とは言えないと、メディアコンサルタントの境治さんは指摘する。ビデオリサーチの視聴率とは「世帯視聴率」のことで、少子高齢化により高齢視聴者の影響が強い数字になりがちだというのだ。「ツイッターでの反響や他の調査会社のデータなどを分析すると、高齢視聴者が中心の従来の『歴史好き』ではなく、『ドラマ好き』が支持しているとわかる。新しい視聴者の開拓という意味では成功していると言えます」。視聴率の高い低いは注目され、ニュースにもなる。「しかし、世帯視聴率は今や番組を測る基準の一つでしかないのだと、テレビ局もメディアも視聴者も認識を改めるべきではないか。もっとも、好きなドラマを楽しむのに視聴率は関係ないと思いますが」。大河制作に携わっていたNHKの木田幸紀放送総局長は視聴率低迷を「残念なこと」としつつ、「『いだてん』は今までにない、これからあるかどうかわからない、見たこともない大河ドラマ。この作り方を最後まで貫いてほしい」と語る。ドラマは6月30日から田畑が主役の第2部へ。その前に報道陣の取材に応じた田畑役の阿部サダヲさんは「ポツンと一軒家」を念頭にこう言った。「もう一軒家って、そんなにないでしょう、そろそろ。(視聴者が)帰ってくると思いますよ」 *6-3:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%BE%A9 (Wikipediaより抜粋) テロリズムとは 「準国家的集団又は秘密の代理人による、非戦闘員を標的とし、事前に計画された政治的な動機を持つ暴力をいう」と定義されている。テロリズムの教科書に載っている定義には、以下のようなものが含まれている。 1)テロリズムは、政治目的、宗教又はイデオロギー的な変化を追求しようとして、 特に民間人に対して、暴力又はその脅威を行使することである。 2)テロリズムは非国家主体又はその各々の政府のために仕える秘密捜査員に よってのみ関与され得る。 3)テロリズムは直接対象となる犠牲者以外にも影響が及び、より広範囲の社会 への標的にも向けられる。 4)テロリズムは「法律により違法とされた犯罪(法定犯)で、不道徳又は不正な 行為(自然犯)である。 <参院選における投票判断の材料> PS(2019年7月20日追加):*7は、朝日新聞社と東京大学谷口研究室の共同調査で、候補者や政党の見解がわかりやすく纏められていてよいのだが、大雨や日程の都合で期日前投票をした人も多いため、今週始めくらいに出してもらえるともっとよかったと思う。 *7:https://www.asahi.com/senkyo/senkyo2019/asahitodai/?iref=comtop_8_08 朝日新聞社と東京大学谷口研究室の共同調査で、候補者に政策課題への賛否を尋ねました。皆さんが注目する候補者の政策への考え方を調べてください。(以下略) <政策選択と投票> PS(2019年7月21日追加):*8-1のように、今日、参院選が投開票されるので、有権者は選挙で政策への賛否を示すべきである。一票では力がないと考える人もいるが、一票の集まりが選挙結果や政策変更に繋がっており、棄権は政権への白紙委任だ。しかし、メディアの情報にも、「年金支給を支えながら自身は十分に受け取れない可能性がある若者こそ声を上げるべきだ」というように行政の説明を鵜呑みにした論調が多く、これでは、「これまで年金を支えたり、老親を直接養ったりしてきたのに、自分は生活できる年金すら受け取れない」という現在の高齢者の生活を無視している。そして、この問題を一挙に解決して誰にも文句を言わせないのが、自分のために積み立てる積立方式への移行と税外収入による積立不足分の補填なのである。 また、*8-2のように、自由貿易至上主義でTPPとEUとのEPAが推進されているが、産業政策も考えておかなければ、我が国は食料自給率が低く、自国の食料確保さえおぼつかなくなる。それは与党が主張する「攻めの農政」だけでは解決しないし、野党が主張する「戸別所得補償制度」では財源が膨大になる上、農業の生産性向上に資さない。また、「農産物の価格補償」は、高価格分が国民負担なのである。そのため、私は、TPPとEUとのEPAを進めるにあたり、「戸別所得補償制度」の代わりに農林漁業に再エネ機器を貸与して副収入を得させるようにし、補助金の削減・地方創成・地方交付税の削減に結び付けるのが最もよいと考える。 なお、自民党政権は行政とつるみ、大人が働いている産業に補助金をばら撒いて社会的弱者への教育・社会保障を削ってきた。しかし、*8-3の教育投資は重要で、技術革新や生産性向上の源は教育だ。さらに、*8-4のように、沖縄は過去2回の知事選・今年2月の県民投票で基地移設反対の民意が鮮明に示され、オール沖縄で基地の集中に抗議しているのに、与党は公約で辺野古移設推進を掲げ、沖縄選挙区の自民党公認候補は賛否を明らかにしていない。そして、ここにも土木業者と結託して将来計画もなく環境を破壊している無駄遣いの温床があるようだ。 2019.6.26、28東京新聞 2018.3.19東京新聞 (図の説明:参院選のテーマは多いが、左と中央の図のように、ポイントが纏められている。根本は、インフレ政策で実質年金・実質賃金が減少し、生活が苦しくなった人が多い《=エンゲル係数が上がった》ことである) *8-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/327180 (北海道新聞 2019年7月21日) <2019参院選>きょう投票 未来につながる選択を 参院選はきょう投開票される。衆院選と違って政権選択選挙ではないとされるが、6年半続く安倍晋三首相の政権運営に評価を下す大切な機会である。この間に、われわれの暮らしはどう変わっただろうか。参院選の公示直前に「老後に夫婦で2千万円の蓄えが必要」と試算した金融庁の報告書が明らかになり、老後への不安があらわになった。こうした不安を取り除く手だてを講じるのが政治の使命であり、その政治を動かすのは有権者の切実な声だ。なかんずく、現在の年金支給を支えながら自身は十分に受け取れない可能性がある若者こそ、声を上げるべき局面といえる。未来を見据えた思いを1票に託そう。今回改選される参院議員は、安倍首相が政権復帰して初めて行われた国政選挙で当選した。任期が第2次以降の安倍政権とほぼ重なるだけに、候補者や、候補が所属する政党が政権とどう向き合ってきたかが問われる。「安倍1強」の下、政権に不都合な事実を覆い隠すような公文書の隠蔽(いんぺい)や改ざんが行われ、参院を含む国会の形骸化が進む。行政監視の機能を取り戻す必要がある。安倍首相は「違憲論争に終止符を打つため、憲法に自衛隊を明記していく」と繰り返し、改憲を最大の争点に掲げる。権力を縛るはずの憲法について、為政者自らがそのくびきを外すかのごとく改定を声高に叫ぶのは、やはり違和感が拭えない。改憲は国民の代表である国会が発議するもので、そこに投票で意思を投影するのは有権者であることを忘れてはならない。首相があまり強調しないテーマの方がむしろ問題は切迫している。北海道では、急激な人口減と高齢化に伴う地方衰退に歯止めをかける施策が求められる。ふだんの暮らしで困ったことを、どう解決するか。自分の生活に引きつけて、候補や政党の公約を見比べてみるのも有効だ。道選挙区の投票率はかつて60~70%台で推移していたが、2013年は54・41%、16年は56・78%と低迷が続いている。前回の参院選から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたが、投票所に足を運ぶ若者は少ない。少子高齢化が加速し、若者の声が政治に届きにくくなっている。この状況を変えるためにも、まずは1票を投じてほしい。 *8-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/326973?rct=c_editorial (北海道新聞社説 2019年7月21日) <2019参院選>農業政策 自由化後の展望見えぬ あす投開票される参院選は、環太平洋連携協定(TPP)、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の発効後、最初の国政選挙である。日本農業はかつてない自由化の荒波に直面し、多くの農家が将来に不安を抱いている。これからの農業をいかに守り、育てるのか―。食料基地・北海道の有権者にとって関心の高いテーマだが、年金問題などに比べて各党の優先順位は低く、論戦が深まっていないのが残念だ。選挙戦も残り1日である。特に道選挙区の候補者には、農業政策の具体論を語り、有権者に明確な選択肢を示してもらいたい。農業政策について与党は、安倍晋三政権が推進する「攻めの農政」を通じ、対外的な競争力を高めることに重きを置く。自民党は「TPPや日欧EPAの下でも農業者が安心して再生産に取り組めるよう全力で応援する」、公明党は「世界に日本ブランドを広め、輸出力を強化する」とそれぞれの公約集に記した。こうした考え方は、輸入農産物の攻勢にさらされている生産現場の実感とは大きく異なる。例えば、TPP発効後の約半年で、オーストラリアなど加盟国からの牛肉の輸入は前年同期比で4%伸びた。しかも関税は今後14年間下がり続ける取り決めがある。ただでさえ高齢化と人手不足で経営体力を失う生産者が増えているのに、既存の国内対策の「着実な実施」や輸出などの「攻め」を強調するだけでは説得力を欠く。対する野党は、農家の所得を底上げし、40%未満に落ち込んだ食料自給率向上を訴えている。所得向上策に関しては、立憲民主党と国民民主党が「戸別所得補償制度の導入」、共産党は「農産物の価格補償と所得補償の抜本強化」を掲げた。農家への直接支払制度は自国農業を守るのに有効だが、巨額財源をどう確保するかの説明がなく、絵に描いた餅にしか見えない。特に立憲民主党と国民民主党は、民主党政権時代の戸別所得補償制度が十分機能しなかった原因を検証し、改善案を示さなければ、農家の信頼は得られまい。選挙後には日米貿易協定交渉も本格化する。トランプ米大統領は「農産物と牛肉が重要だ」と主張しており、輸入拡大を求めてくることははっきりしている。各候補は「農業を守る」と連呼してきたが、そんなかけ声だけで済ませてよい選挙ではない。 *8-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201907/CK2019072002000134.html (東京新聞 2019年7月20日) <参院選 くらしデモクラシー>中所得層にも無償化訴え 大学生困窮「教育もっと投資を」 日本の公教育への投資は先進国の中で極端に低く、家計への負担は大きい。低所得世帯の学生らを対象に高等教育の負担を軽減する新法が五月にできたが、中所得層は置き去りのままだ。現状に苦しむ学生から「教育への投資」を求める声が高まっている。「政治はもっと教育に目を向けてほしい」。梅雨空が広がった六月末、学生団体「高等教育無償化プロジェクト」(通称・フリー)代表の岩崎詩都香(しずか)さん(20)=東大三年=の声が東京・新宿駅前に響いた。「高額な学費で学生生活が奪われている」「奨学金という借金を背負い未来を自由に描けない」。メンバーの学生らも代わる代わるマイクを握り、窮状を訴えた。フリーは、岩崎さんらが学生の実態調査のために約三十大学の学生らとともに昨年九月につくった。現在、首都圏を中心に約百三十人が活動している。岩崎さんは地元・長崎市の公立高を卒業し、二〇一七年に東大文学部に進学した。六人きょうだいの末っ子。八歳の時に父を病気で亡くした。起業に失敗した父の借金を背負った母が、清掃業のパートで家計を支えてきた。しかし、父の遺族年金を含めても収入は年二百五十万円に届くのがやっとで、浪人は許されない。東大を選んだのは、年約五十四万円の授業料が全額免除される制度の所得対象になったからだ。仕送りはなく、月額約五万円の奨学金に加え、母子生活支援施設を警備する夜間バイトで生活費を賄う。「教科書の購入が必要な授業は、なるべくとらないようにしています。同級生との交流を極力減らし、コンパも断ってきた。ましてや旅行なんて」。返済が必要な奨学金の総額は、大学四年間で約二百五十万円を見込む。進学を望む大学院でも奨学金を頼るつもりだが、一段と膨らむ負担への不安は大きい。苦しんでいるのは「自分のような低所得層だけではない」と言う。「裕福そうな友人たちも、授業料のためにバイト漬けの生活を送っていた」。フリーが全国の大学や短大、専門学校に実施したアンケートでは、七月中旬までに集計が完了した約六千七百人の六割程度が「大学・学部を選択する際に学費を考慮した」と回答。奨学金の利用は三割を超えた。安倍晋三首相は消費税の使い道として「高等教育無償化」を掲げたが、五月に成立した高等教育の負担を軽減させる新法の対象は低所得世帯に限定された。多くの学生が望むものとはほど遠い。岩崎さんは「地元の友達の中には、親から『おまえは大学にはやれない』と言われて早々に諦めた人もいる。高等教育を受けることができないのは本人の努力不足かのような自己責任論を押しつけられている。こうした社会を変えていきたい」。二十一日投開票の参院選で、学生の未来を託せる候補者を見極めるつもりだ。 ◆公的支出2.9% OECD34カ国中最下位 日本の学生を取り巻く環境は厳しさを増している。日本の教育への公的支出の割合は、経済協力開発機構(OECD)の加盟国の中でも際立って低い。二〇一八年の発表によると、日本の国内総生産(GDP)に占める公的教育費の割合は2・9%でOECD平均の4・2%を下回り、比較可能な三十四カ国で最下位だった。日本では特に国公立大など高等教育の授業料が主要国の中でも高く、学費の家計依存度の68%もOECD平均の30%の二倍を超える。授業料の値上げも続いている。文部科学省によると、バブル経済に沸いた一九八九年に約三十四万円だった国立大の授業料は現在、約一・六倍の約五十四万円に。入学金は十万円増の約二十八万円となった。一方、九四年に六百六十万円を超えた一世帯あたりの平均所得は、一七年には五百五十一万六千円に低下した。家計に余裕がなくなっているのに、国立大では学費値上げが相次ぐ。東京工業大や東京芸大などは一九年度から学費を年額十万円値上げし、学生らが苦境に立たされている。 *8-4:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/326972?rct=c_editorial (北海道新聞 2019年7月21日) <2019参院選>沖縄に基地集中 辺野古は全国の問題だ 戦後、沖縄が背負ってきた負担はあまりに重い。今なお、国内の米軍専用施設の7割が集中している。その状況下で安倍晋三政権は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事を強行している。首相は就任以来「沖縄に寄り添う」と繰り返してきたが、実際の態度は違う。県はすでに辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回している。加えて過去2回の知事選に続き今年2月の県民投票では、移設反対の民意がより鮮明に示されている。なのに、国は県の承認撤回を脱法的とも言えるやり方で取り消し、希少な自然が残る辺野古沿岸で埋め立て域を広げ続けている。安全保障を理由に、国の政策を一方的に押し付ける姿勢は、対等であるべき国と地方の関係をゆがめている。沖縄以外の地方にとっても人ごとではない。沖縄の基地問題は負担の公平性も含め、参院選の大きな争点だ。自民党は公約で辺野古移設推進を掲げる。しかし沖縄選挙区では公認候補が賛否を明らかにしていない。昨年の知事選同様、争点をぼかそうとする意図が透ける。公明党は党本部が政府方針を容認する一方、沖縄県本部は県内移設に反対している。一貫性を欠き、有権者には分かりづらい。一方、立憲民主、国民民主、共産、社民の野党4党は中止、反対を公約に掲げ、政権批判を強めている。ならば普天間返還を含め、基地負担の軽減を米側とどう進めるか具体的に示す必要があろう。県は今週、石井啓一国土交通相が県による埋め立て承認撤回を取り消す裁決をしたのは違法だとして、裁決の取り消しを求める訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。国と県の対立はまたも法廷闘争に入り、出口が見えない。そもそも県の撤回理由には、辺野古沿岸部に最深約90メートルに達する軟弱地盤の存在が新たに判明したことがある。現計画では対応できず、費用も大幅に膨らむ。国が県の承認なく工事を強行し続けることができないのは明らかだ。国は普天間問題について「辺野古移設が唯一の解決策」とする。だが移設を最初に閣議決定してから20年たち、安全保障環境も変わる中「なぜ、唯一なのか」を県民に丁寧に説明したことはない。今回の参院選は、政権の地方軽視の姿勢と基地負担のあり方を国全体の問題として考え、投票する機会にしたい。
| 資源・エネルギー::2017.1~ | 03:34 PM | comments (x) | trackback (x) |
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