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2019.9.26~28 日本の環境・衛生に関する意識が低下しているのは、何故か? (2019年9月29日、10月1日に追加あり) 
   
           2018.9.29西日本新聞          2018.9.29東京新聞

(図の説明:左図のように、阿蘇山から130km圏内に3つ原発があり、中央の図のように、裁判所は社会通念を基に火山の危険性を無視することを容認している。しかし、原発は、万が一にも事故を起こしては困るという方向に社会通念も変化してきている。また、右図のように、フクイチの汚染水は(何をやっていたのか)再浄化の必要なものが8割に上り、まだ増えている)

(1)裁判所も含めて低い日本の環境意識
1)東日本大震災前後の東電経営陣への無罪判決は正しいか
 2011年のフクイチ事故について、検察審査会が強制起訴した裁判で、*1-1のように、東電の旧経営陣が「無罪」になった。しかし、国の地震予測の「長期評価」で津波高は最大15.7mにのぼるという報告が事故の3年前になされていたため、大津波は想定内だったと言える。

 また、担当の東電社員がそれを元副社長に報告したところ、「(津波想定の)水位を下げられないか」と言われ、「津波対策を検討して報告すること」を指示され、「防潮堤を造る場合は完成までに4年を要して数百億円かかる」と報告したところ、元副社長は「外部機関に長期評価の信頼性を検討してもらう」と言ったと、担当の東電社員が証言しており、その外部機関は東電の言いなりになる機関だったため、対策の先送りは過失ではなく故意である。

 しかし、東電旧経営陣の業務上過失致死傷罪の責任を問うには、①原発事故との因果関係 ②大津波の予見可能性 ③安全対策での回避可能性 がポイントになるそうで、このうち①②については、東日本大震災で大事に至らなかった東北電力女川原発は869年の貞観地震を踏まえて海抜15mの高台に建てられ、実際に高さ14~15mの津波が来たのであるため、(事故時の経営陣だけではないが)東京電力の予見の甘さと原発事故には強い因果関係がある。さらに、③については、「防潮堤を造るには4年を要する」とされているが、防潮堤を造るのに4年もかかるのは長すぎる上、防潮堤を造る以外にも予備電源を高い場所に移動したり、使用済核燃料を内陸の安全な場所に移動したりなどの他の対策も考えられることから、この判決は東電の経営陣に甘い。

 さらに、*1-2には、緊急時に使う設備が事前の準備不足で機能しなかった疑いがあるので、原子力規制委員会の更田委員長が事故前の安全対策の検証をすると書かれているが、津波の危険性がある地域で非常用電源まで浸水するような低い場所に置く原発の設計自体、安全については全く考えていなかったことの証である。

2)原発の廃炉廃棄物をリサイクルするとは!?
 その上、*1-3の「④原発の廃炉に伴い発生する金属やコンクリートの廃棄物のうち汚染の程度が比較的低いものをリサイクルする」「⑤原子力規制委員会が放射能の測定方法を見直している」というのには驚いた。

 何故なら、放射能汚染の程度が比較的低ければ安全ということはなく、放射性廃棄物は人間が住む環境から隔離した場所に集めて長期間管理するのが原則だからだ。それができないほど多くの廃棄物が出たのなら、それこそ誰の責任で、どうして原発稼働を今でも続けているのかを明確にすべきだ。

3)玄海原発の差し止め訴訟
 おかしな地裁判決でもそのまま通すという上と下のご機嫌を伺うだけの情けない組織のようだが、*1-4-1・*1-4-2のように、福岡高裁が、「原発なくそう!九州玄海訴訟(長谷川照原告団長:素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理の専門家)」が玄海原発の運転差し止めを求めた住民側の即時抗告退けた。

 しかし、阿蘇の破局的噴火リスクは低いとはいえず、日本のような地震・火山の多い国で、原発近くの高い場所に使用済核燃料プールを置き、設計当初よりも安全を無視して使用済核燃料を詰め込みながら原発を運転するのは危険である上、事故時の“避難計画”も実効性がないため、安全なエネルギーへの速やかな転換が求められるのである。

(2)フクイチ事故の汚染水による海洋汚染
1)処理水放出は正しいか
 原田前環境相が、*2-1のように、「フクイチ原発事故で増え続ける汚染水の処理水は、海洋放出しかない」と述べたことに対して、全漁連の岸宏会長が「絶対容認できない。発言撤回を強く求める」と述べたそうで、当然のことである。

 海洋放出してよいとする理由を、原子力規制委員会は、*2-2のように、「放射性物質で汚染された地下水は除去設備で浄化され、トリチウム(三重水素)だけ取り除くことができない」「批判に科学的根拠はなく、風評被害にすぎない」などとしているが、実際には、*2-6のように、汚染水にはトリチウム(半減期12年)だけでなく、ストロンチウム90(同299年)、ヨウ素129(同1570万年)なども国の基準値を超えて含まれていた。

 また、*2-4のように、「処理水は薄めて海洋放出するのが妥当」と原子力規制委が韓国に伝えたというのは、間違ったことを言っているのに上から目線で呆れるのである。何故なら、「科学的、技術的な判断を行う規制委員会としては、基準以下に薄めて海洋に放出する方法が妥当」としているが、ここには「基準以下なら安全」と「薄めて基準以下にすれば総量が多くても海洋は処理できる」という誤った2つのセオリーが含まれているからだ。

 放射性物質を含んでいても無味無臭で味も変わらないため、食べても無害だと勘違いしている“専門家(何の??)”が多い。そのため、わかりやすい例を挙げれば、*3-1の東京湾の水質悪化は、処理しきれなかった汚水が東京湾に流れ込んで起こる問題だ。しかし、東京の人口が10人だったら、全く処理せずに汚水を流しても川も海もそれを包含して浄化することができるだろう。しかし、1000万人以上の汚水を川や海が浄化することはできないのであり、その違いは汚物の総量であって濃度ではない。さらに、“基準”は、人間が勝手に定めた法的限界値であり、自然に関する不変の真理ではないのだ。

 そのため、*2-3のように、韓国が「原発汚染水は国際問題だ」として、IAEA総会で日韓が応酬することになったが、日本政府代表が非科学的で反論にならない反論をすればするほど、環境意識の低さで世界に呆れられる。何故なら、皆、騙されるほど馬鹿ではないからだ。

2)トリチウムの害について
 トリチウムは、*2-5のように、水素の同位体で、最大エネルギー18.6keV、平均エネルギー5.7keVという非常に低いエネルギーのβ線を放出し、物理的半減期は12年だ。環境には、トリチウム水(HTO)の形で放出され、飲料水や食物から摂取されたトリチウム水は胃腸管から完全に吸収され、トリチウム水蒸気を含む空気を呼吸することによっても肺に取り込まれて殆どが血液中に入るのだそうだ。

 そして、血中のトリチウムは細胞に移行して24時間以内に体液中にほぼ均等に分布し、有機結合型のトリチウムは、排泄が遅く体内に長く留まる。トリチウムのβ線による外部被ばくの影響は無視できる程度だが、ヒトに障害が起きるのはトリチウムを体内に取り込んだ場合の内部被曝で、ヒトが長期間摂取した被曝事故例では、症状としては全身倦怠、悪心、その後白血球減少、血小板減少が起こり、汎血球減少症で死亡する。

 そのため、岩手日報は、*2-2のように、「福島原発処理水は、長期保管の可能性を探れ」と記載している。東電はタンクでの保管は2022年夏ごろ満杯になるとの試算をまとめ、保管容量を増やすのは困難だとしているが、初めから薄めて海洋放出するつもりではなかったのか。それなら、これまでに使ったタンク費用の妥当性や東電・政府の不誠実さも問われ、被害は実害であって風評被害ではないため、漁業関係者だけでなく消費者も反対なのである。

(3)後退した環境・衛生に関する意識
1)東京の下水道の不潔さ
 東京の下水道は、コレラの流行をきっかけとして明治17年(1885年)から始まったため、現在は大量のストックがあり、老朽化している上、人口増加に追いついていない。そのため、*3-1のような事態になったのだが、東京は人口増加で地方税が十分に入ってきたのだから、無駄遣いばかりせずに、下水道を維持修繕する過程で計画的に完全浄化システムに変更していくべきだったのに、何故か、これをやっていないのである。

2)ゲノム食品に対する表示義務の緩さ

  
2019.9.20東京新聞 子どもの食物アレルギーの増加   食物アレルギーの原因食物

(図の説明:左図のように、ゲノム食品の表示義務は、消費者が選択できないくらい緩くなってしまった。一方で、中央の図のように、食物アレルギーが増加しており、右図のように、鶏卵・甲殻類・乳製品・小麦などが原因物質として多いが、これは何故か?甲殻類は、外骨格まで食べてしまうと、そこに毒があるせいか、私も腹の調子が悪くなる。鶏卵・乳製品は、日本人の消化器が慣れていないのかもしれない。小麦の場合は、これまで米国産が多かったため、害虫防除の遺伝子を挿入した小麦を食べた時に、体が小麦全体を防御するようになるのかも知れない)

 消費者庁は、2019年9月19日、*3-2-1・*3-2-2のように、「①外部遺伝子を組み込まない食品は、遺伝子改変がゲノム編集によるのか、従来の育種技術によるのかを科学的に判別できず、表示義務に違反する商品があっても見抜けないため表示を義務化しない」「②外部遺伝子を組み込み、安全性審査が必要となる食品は表示を義務付ける」と決めたそうだ。

 しかし、①は、その食品の作り方を尋ねて検証すれば科学的に判別できるし、そもそも違反を見抜けないから表示を義務化しないなどというのは、アメリカに過度に忖度してか始めから腰が引けていておかしい。また、②も「安全性審査が必要となる食品」と限定することによって、「安全性審査が必要になると思わなかったから」という言い訳ができ、どちらにしても消費者が選択できる環境にならないのだ。そのため、消費者が購入時に簡単に比較して選択できるよう、表示の義務化を行って真実と異なる場合は虚偽表示とすべきだ。

 そして、このように自分の判断で食品を選べる環境を整えることが、コストがかかっても安全で美味しい作物を作る動機付けになり、そういう食品のブランド化もできる。逆に、そういう環境がなければ、安いが安全とは言えない作物が市場を席巻し、これまであった日本の食品産業の優位性も失われるだろう。

3)地球温暖化対応への消極性
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、*3-3のように、「世界全体で有効な対策が取られないまま地球温暖化が進むと、今世紀末に世界平均の海面水位は最大で1.1m上昇すると予測した特別報告書を9月25日に公表したそうだ。

 世界平均の海面水位は1902年から2015年までの間に16cm上昇し、2006~2015年は年3.6mmのペースで上昇し、1901~90年の平均ペースの約2.5倍と先例がないスピードで水位が上がっているそうで、満潮時の海面と岸壁との差が既に小さくなっていることに気づいている人の実感が数字で裏付けられた形だ。

 そして、温室効果ガス削減が進まず、今世紀末の世界の平均気温が産業革命前より最大5.4°C上がった場合、世界平均の海面水位は1986~2005年の平均に比べて、61cm~1.1m(中央値84cm)上昇するそうだ。確かに、海面上昇に伴い、低地にある都市は海抜0m付近になって、ポンプを使わなければ水が海に流れず、高潮災害が頻発する等の事態になると思われる。

 ただ、最近の台風や豪雨災害を見ていると、この地球温暖化は温室効果ガスのみではなく、海底火山の噴火も影響しているように見える。

(4)フクイチ原発事故と癌の増加
1)フクイチ関係の福島県民を対象にした甲状腺検査について
 2011年のフクイチ原発事故時に18歳以下だった福島県民を対象にした2014~2015年度分の甲状腺検査について、福島県の評価部会は2019年6月3日に、「現時点で、発見された癌と被曝の関連は認められない」とする見解をまとめたそうだ。

 しかし、厚労省の人口動態統計はすべて暦年で出されているため(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/index.html 参照)、他の地域や日本全体と正確な比較をするには暦年単位で結果を出す必要がある。

 また、福島県民を対象にした2014~2015年度分の甲状腺検査の規模なら、対象年が終わって6カ月後には調査報告書がまとまっていてもよく、4年以上もかかるのは遅すぎる。

 さらに、真実を求めることが目的なら、調査結果を他の地域と比較することが必要なのであって主観的な“評価”は不要だ(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/dl/h7.pdf、https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/dl/h10.pdf 等参照)。

 そのため、*4-1の福島の小児甲状腺癌と被曝との関連調査は、まじめにやれば貴重な調査結果が出たのに、「線量と癌の発見率には関係がない」と結論づけるために、迅速で正確な調査をしなかったように見える。なお、日本全体では、フクイチ事故以前は死因の1/3と言われていた癌が、事故後直ちに死因の1/2と静かに修正されたのは呆れるほかない。

2)内部被曝・外部被曝について
 *4-2のように、内部被曝については、チェルノブイリや福島の経験からデータを出すことはできるし、実際に隠されていたデータや論文も多く出てきているが、ICRP・IAEA・WTOのような世界機関にはデータがないとされ、日本の食品安全委員会は「自然放射線や医療被曝を除く放射線で、生涯100ミリシーベルト以下の被曝なら健康に影響は出ない」としている。しかし、この安全基準には、科学的根拠が全くないのだ。

 さらに、外部被曝では、日本の法律上の一般公衆線量限度は1mSV/年以下だが、政府は警戒区域や計画的避難区域の人は、20 mSV/年まで許容できるとした。しかし、20 mSV/年は頑強な原発労働者の基準であり、成長期の子どもや妊婦、免疫力の低下している人にまで当てはめるのは危険で人命軽視である。そして、*4-3のように、チェルノブイリ原発事故の場合は、5mSV/年で強制移住だったが、福島では20 mSV/年以下なら帰ることを強制しているのだ。

3)メディアの報道
 メディアの中では比較的よく原発被害を報道していたテレ朝だったが、2014年8月30日、フクイチの取材や冤罪事件に心血を注いでいた報道ステーションのディレクター岩路真樹さんの遺体が自宅で発見され、「なんらかの権力による他殺ではないか」という説が流れた。

 そして、*4-4のように、「関東の子どもの健康被害」は隠されているのだそうだ。しかし、体力の弱い子どもだけでなく、大人も多かれ少なかれ同じような健康被害が出ることは間違いないのである。

<低い環境意識>
*1-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019092002000193.html (東京新聞社説 2019年9月20日) 東電旧経営陣に無罪 「人災」の疑問は残る
 東京電力の旧経営陣は「無罪」-二〇一一年の福島第一原発事故で検察審査会が強制起訴した裁判だった。本当に予想外の事故だったのか疑問は残る。事故の三年前まで時計の針を戻してみよう。国の地震予測である「長期評価」に基づく津波の試算が最大一五・七メートルにのぼるとの報告がなされた。東電社内の会合で元副社長に「『(津波想定の)水位を下げられないか』と言われた」-担当していた社員は法廷で驚くべき証言をした。元副社長は否定し、「そもそも長期評価は信頼できない」と反論した。
◆「力が抜けた」と証言
 社員は「津波対策を検討して報告するよう指示された」とも述べた。だから、その後、防潮堤を造る場合は完成までに四年を要し、建設に数百億円かかるとの報告をしている。元副社長は「外部機関に長期評価の信頼性を検討してもらおう。『研究しよう』と言った」と法廷で応じている。てっきり対策を進める方向と思っていた社員は「想定外の結論に力が抜けた」とまで証言した。外部機関への依頼は、対策の先送りだと感じたのだろう。実際に巨大津波の予測に何の対策も講じないまま、東電は原発事故を引き起こしたのである。この社員は「時間稼ぎだったかもしれないと思う」「対策工事をしない方向になるとは思わなかった」とも証言している。社員が認識した危険性がなぜ経営陣に伝わらなかったのか。あるいは対策の先送りだったのか。これはぬぐえぬ疑問である。旧経営陣の業務上過失致死傷罪の責任を問うには(1)原発事故との因果関係(2)大津波などが予見できたかどうか(3)安全対策など結果回避義務を果たせたか-この三点がポイントになる。
◆電源喪失予測もあった
 東京地裁は争点の(2)は「敷地高さを超える津波来襲の予見可能性が必要」とした。(3)は「結果回避は原発の運転停止に尽きるが、原発は社会的有用性があり、運転停止だと社会に影響を与える」ため、当時の知見、社会通念などを考慮しての判断だとする。原発ありきの発想に立った判決ではないか。「あらゆる自然現象の想定は不可能を強いる」とも述べたが、それなら災害列島に原発など無理なはずである。宮城県に立地する東北電力女川原発との違いも指摘したい。女川原発が海抜一五メートルの高台に建てられたのは、八六九年の貞観地震を踏まえている。だから東日本大震災でも大事には至らなかった。〇八年の地震予測「長期評価」が出たときも、東北電力は津波想定の見直しを進めていた。ところが、この動きに対し、東電は東北電力に電子メールを送り、津波対策を見直す報告書を書き換えるように圧力をかけた。両社のやりとりは公判で明らかにされた。「危険の芽からは目をそらすな」-それは原発の事業者にとって常識であるはずだ。旧ソ連のチェルノブイリ事故が示すように、原発でいったん事故が起きれば被害は極めて甚大であり、その影響も長期に及んでしまう。それゆえ原発の事業者は安全性の確保に極めて高度な注意義務を負う。最高裁の四国電力伊方原発訴訟判決でも「(原発の)災害が万が一にも起きないように」と確認されていることだ。「最大一五・七メートルの大津波」という重要なサインが活(い)かされなかったことが悔やまれる。〇四年にはスマトラ沖地震の津波があり、インドの原発で非常用海水ポンプが水没し運転不能になった。〇五年の宮城県沖地震では女川原発で基準を超える地震動が発生した。これを踏まえ、〇六年には旧経済産業省原子力安全・保安院と電力会社による勉強会があった。そのとき福島第一原発に敷地高一メートルを超える津波が来襲した場合、全電源喪失から炉心損傷に至る危険性が示されている。勉強会が活かされたらとも悔やむ。防潮堤が間に合わなくとも電源車を高台に配備するなど過酷事故対策が考えられるからだ。福島第一原発の非常用電源は地下にあり、水没は容易に発想できた。国会事故調査委員会では「明らかな人災」と厳しく非難している。今回の刑事裁判は検察が東電に家宅捜索さえ行わず、不起訴としたため、市民の検察審査会が二度にわたり「起訴すべきだ」と議決したことによる。三十七回の公判でさまざまな事実関係が浮かんだ意義は大きい。
◆地震の歴史は繰り返す
 安全神話が崩れた今、国の原発政策に対する国民の目は厳しい。歴史は繰り返す。地震の歴史も繰り返す。重大なサイン見落としによる過酷事故は、やはり「人災」にも等しい。繰り返してならぬ。苦い教訓である。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50074040Q9A920C1TJM000/ (日経新聞 2019/9/22) 規制委、福島第1事故の調査再開、事故前の安全対策を検証
 原子力規制委員会が東京電力福島第1原子力発電所事故の調査を約5年ぶりに再開する。更田豊志委員長が重視するのは、事故前の安全対策の検証だ。緊急時に使う設備が事前の準備不足で機能しなかった疑いがある。事故現場の痕跡を分析し、今後の安全規制に生かす。事故に伴う放射線量の高さから、原因の詳しい調査は2014年から休止していた。放射線量が下がり、ようやく原子炉建屋に入れるようになった。近く事故分析に関する検討会を再開する。メンバーには原発の構造に詳しい外部有識者や、原子力規制庁の職員に加えて、更田委員長も名を連ねる。検討会に委員長が入るのは異例だ。更田委員長には事故時の安全対策を検証することが「今後の安全対策を考えるうえで重要な教訓を与える」との強い思いがある。福島第1原発は11年の東日本大震災に伴う津波の影響で原子炉を十分に冷却できなくなり、1~3号機が炉心溶融(メルトダウン)を起こした。14年10月にまとめた報告書では、事故の拡大につながった電源喪失について「津波による浸水が原因」との見解を示した。電源喪失と津波による浸水の時刻は一致するなどと指摘し、地震の揺れが関与していたとする一部の見方を否定した。ただ、当時は放射線量が高くて建屋内の調査ができなかった。なお残る疑問の1つが、2号機で原子炉内部の圧力を下げるベントがなぜうまく働かなかったのかだ。2号機は1~3号機のなかで、最も多くの放射性物質が外部に漏れ出たとされる。格納容器内の水を通って、放射性物質が減った気体を放出するベントができなかったためだと東電は推定する。ベントができなかったのは、一定の圧力で自然に破れる配管内の板が破れなかったとの見方がある。設定圧力が高すぎた疑いがあるが、更田委員長は「ベントを減圧、冷却手段として期待していたのだったら、そんなに設定圧力を高くするはずがない」との疑問を持っている。ベント設備は1992年に国が過酷事故対策をまとめたことから電力会社側が自主的に設置した。調査の焦点となるのは「本当に狙ったような意図の施工がされていたかどうか疑問がいくつもある」(更田委員長)。最初に炉心溶融と水素爆発を起こした1号機では、非常時に原子炉を冷却する装置「非常用復水器(IC)」が停止していることに気づかなかったことが問題となった。発電所員らが復水器の仕組みや使い方を十分に理解していなかった可能性がある。福島第1原発所長だった吉田昌郎氏(故人)も政府のヒアリングに対し、理解不足との認識を示している。規制委は現場に残る復水器の状態を確認しつつ、同じ設備を持つ日本原電敦賀原発1号機(福井県)とも比較しながら、東電が所員にどのような教育をしていたのかなどソフト面の対策が十分だったかも調べる。規制委は検討会での議論を踏まえて20年に報告書をまとめる予定だ。今後の規制に反映すべき点があれば対応する。ただ、今回はまだ原子炉格納容器内は立ち入ることはできず、炉心溶融の詳細な経緯など真相究明は21年以降も続く見通しだ。

*1-3:https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1101 (東京新聞 2019年7月24日) 廃炉金属のリサイクルの現状は-進む原発老朽化で大量発生へ-
 原発の廃炉に伴い発生する金属やコンクリートの廃棄物を少しでも減らすために、汚染の程度が比較的低いものをリサイクルする「クリアランス」制度。老朽原発の廃炉が相次ぐのを見込む電力業界は審査の効率化を求め、原子力規制委員会が放射能の測定方法を見直している。国の実証事業で金属廃棄物を加工した工場周辺では、市民団体が「うやむやのまま全国の原発から持ち込まれるのでは」と警戒し、情報公開の徹底を要望。リサイクル製品が社会的に受け入れられるかも未知数だ。

*1-4-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/545988/ (西日本新聞 2019/9/25) 玄海原発の差し止め認めず 住民側の即時抗告退ける 福岡高裁
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)を巡り、周辺住民らが九電に運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で、福岡高裁(山之内紀行裁判長)は25日、差し止めを認めなかった昨年3月の佐賀地裁決定を支持、住民側の即時抗告を退けた。即時抗告したのは、「原発なくそう!九州玄海訴訟」のメンバー約70人。阿蘇カルデラ(熊本県)の破局的噴火の発生リスクは低いといえず、重大事故が起きる可能性があると主張。避難計画やテロ対策にも不備があると訴え、九電側は「破局的噴火の可能性は低く、避難計画も合理的」としていた。昨年3月の佐賀地裁決定は「阿蘇カルデラが破局的噴火直前の状態ではないとした九電の判断は不合理とはいえない」と判断。避難計画も適切として申し立てを却下した。

*1-4-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/432088 (佐賀新聞) 【速報】福岡高裁も運転差し止め認めず 玄海原発即時抗告審
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県東松浦郡玄海町)を巡り、運転差し止めを認めなかった佐賀地裁の仮処分決定を不服として佐賀など九州・山口の住民らが申し立てた即時抗告審で、福岡高裁(山之内紀行裁判長)は25日、棄却する決定をした。申し立てたのは、玄海原発の操業停止を求める訴訟を起こしている「原発なくそう!九州玄海訴訟」(長谷川照原告団長)に加わる住民ら71人。別の住民らが同原発の運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審は、福岡高裁が今年7月に棄却していた。

<汚染水による環境汚染>
*2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019091101001726.html (東京新聞 2019年9月11日) 全漁連「処理水放出」発言に抗議 原田前環境相に
 東京電力福島第1原発で増え続ける汚染水浄化後の処理水について、原田義昭前環境相が海洋放出しかないと述べたことに対し、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は11日、東京都内で記者会見し「絶対容認できない。発言撤回を強く求める」と述べた。岸氏らは同日午前、環境省を訪れ原田氏の秘書官に抗議文を提出した。岸氏は記者会見で、福島県内の漁業者から「怒り心頭に発している」などの憤りや不安の声が寄せられたことを明らかにし、「漁業の将来に大きな影響を与える。政治不信にもつながる。風評被害の増長を心配している」と話した。

*2-2:https://www.iwate-np.co.jp/article/2019/9/15/64534 (岩手日報 2019.9.15) 福島原発処理水 長期保管の可能性探れ
 東京電力福島第1原発にたまり続ける処理済みの汚染水をどうするのか、判断が迫られている。敷地にはタンクが林立し、保管中の水は7月末時点で約110万トン。東電は2020年末までに137万トン分のタンク容量を確保する計画だが、それ以降は未定だ。東電は先ごろ、タンクでの保管は22年夏ごろ満杯になるとの試算をまとめた。大型化などで保管容量を増やすのは困難だという。原子力規制委員会は薄めての海洋放出が合理的との考えだ。試算には、放出決定を国に促す姿勢がにじむ。処理水が増え続けているのは、溶融核燃料を冷却する注水や、流入する地下水が次々と汚染されていくからだ。処理水の処分方法は政府の小委員会で検討し、地元など関係者との調整を踏まえて国が基本方針を決める。試算だと3年後に限界が来る。規制委の更田豊志委員長は「処分方法が決まったとしても準備に少なくとも2年はかかる。意思決定の期限が近づいていると認識してほしい」と希釈しての海洋放出を改めて求めた。しかし、漁業関係者は反対姿勢を強める。当然だろう。事故によって甚大な被害を受け、抑制的な操業を余儀なくされている。政府小委員会は8月の会合で、漁業関係者からの求めが多かった長期保管を初めて正式議題に取り上げた。放射性物質で汚染された地下水は除去設備で浄化される。ただ、トリチウム(三重水素)だけは取り除くことができない。この物質は運転中の原発でも生じ、放射線の影響が少ないとして世界で放出が認められている。しかし、たとえ生物への影響がないとしても、風評被害の懸念がある。耐え続けてきた漁業者の苦労が水泡に帰しかねない。処理水には韓国も目を向ける。日本に対して海洋放出計画の有無など事実関係の確認を要求。政府は、現時点では具体的な結論が出ていないと回答した。韓国は原発事故に関し、本県産を含め8県産の水産物の輸入を禁止。世界貿易機関(WTO)がその措置を容認しているだけに、処理水の行方は気になるところだ。可能な限り長期保管の道を探るべきだ。その場合、自然に放射線量が減るのを待つことになろう。原発敷地外での場所確保は本当に難しいのか政府は精査すべきだ。仮に海洋放出すると判断するなら、漁業者に対する国の全面的なバックアップの約束が不可欠だ。これまでの汚染水漏れや公表の遅れで信頼感を欠いている東電と漁業者の関係構築も大前提になる。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM9K10C1M9JUHBI03N.html (朝日新聞 2019年9月17日) 韓国「原発汚染水は国際問題」 IAEA総会で日韓応酬
 国際原子力機関(IAEA)の総会が16日、本部のあるウィーンで始まった。韓国政府の代表は、東京電力福島第一原発にたまり続ける、放射性物質を含んだ汚染水の処理方法について「今も解決されていないままで、世界中に恐怖や不安を増大させている」などと述べ、国際的な問題であると強調した。これに対し、日本政府の代表が反論し、IAEAでも日韓が応酬することになった。総会には韓国政府の代表として文美玉(ムンミオク)・科学技術情報通信省次官が出席。日本の原田義昭前環境相が処理済みの汚染水について「海洋放出しかない」と発言したことに触れ、「もし海洋放出するなら、もはや日本の国内問題ではない。生態系に影響を与えかねない深刻な国際問題だ」と訴えた。IAEAの積極的な関与を求め、「日本は十分かつ透明な措置をとるべきだ」とした。これに先立ち、日本の竹本直一・科学技術担当相は福島第一原発事故後の情報提供について、「国際社会に対して透明性をもって丁寧に説明してきている」と述べ、汚染水についても「議論の共有を含め、取り組みを継続していく」としていた。日本側は韓国代表の発言後に再び発言し、福島原発事故に関して昨年までIAEAの調査団を4次にわたって受け入れ、取り組みの評価を受けていると強調。「韓国代表の発言は海洋放水を前提としており、受け入れられない」とした。また、原田氏の発言は「個人的」なものだとして、処理方法は経済産業省の小委員会で協議中であると説明した。日本の主張に対しては韓国も反論し、日韓は計3回ずつ発言。韓国代表の厳在植(オムジェシク)・原子力安全委員長が「(日本が)言葉を明確で十分な行動に移すことが重要だ」と締めくくり、応酬を終えた。

*2-4:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190925/k10012098841000.html (NHK 2019年9月25日) 「処理水は薄めて海洋放出が妥当」原子力規制委が韓国に伝える
 福島第一原子力発電所にたまり続けるトリチウムなどを含む水の扱いについて、原子力規制委員会の更田委員長は韓国の規制当局トップに対し、「科学的、技術的には基準以下に薄めて海洋放出するのが妥当だ」との見解を伝えたことを明らかにしました。福島第一原発で出る汚染水を処理したあとの水には、取り除くのが難しいトリチウムなどの放射性物質が含まれ、これまで構内のタンクにおよそ115万トンが保管されていて、毎日170トン前後増え続けています。この水の扱いについて、今月20日までウィーンで開かれていたIAEA=国際原子力機関の総会で韓国の代表が懸念を示し、日本側は「丁寧に情報を出すなどIAEAも評価している」などと反論し、両国の間で応酬となりました。これについて原子力規制委員会の更田豊志委員長は25日の会見で、IAEA総会の期間中、韓国の規制当局トップと意見交換する場があったことを明らかにし、この中で水の扱いで懸念を伝えられたということです。これに対して更田委員長は、最終的には政府が決定する案件だと前置きしたうえで、「科学的、技術的な判断を行う規制委員会としては基準以下に薄めて海洋に放出する方法が妥当と判断している」と従来の見解を伝えたということです。トリチウムなどを含んだ水について、国はこれまで濃度を基準以下にして海や大気中などに放出する5つの案と、タンクに長期保管する案を示していて、現在、有識者でつくる国の会議で議論が行われています。

*2-5:https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-02-02-20.html (抜粋)
<タイトル> トリチウムの生物影響 (09-02-02-20)
 将来のエネルギー源として計画が進められている核融合(炉)にかかわる環境・生物影響、とくにトリチウムの人体への影響が注目される。トリチウムはトリチウム水(HTO)の形で環境に放出され人体にはきわめて吸収されやすい。また、有機結合型トリチウム(OBT)はトリチウムとは異なった挙動をとることが知られている。動物実験で造血組織を中心に障害を生ずることが明らかにされ、ヒトが長期間摂取した重大事故も発生している。
<更新年月>
2000年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)
<本文>
 トリチウムは水素の同位体で、最大エネルギー18.6keVで平均エネルギー5.7keVという非常に低いエネルギーのβ線を放出し物理的半減期は12年である。大気上層中で宇宙線中の中性子と窒素原子核との衝突によって生成する天然トリチウムが自然界の水循環系に取り組まれているとともに、核実験や原子力施設などから主としてトリチウム水(HTO)の形で環境に放出され、生物体へは比較的簡単に取り込まれる。ヒトの体重の60〜70%は水分で、個人差はあるが、女性よりも男性、老人よりも若者、太った人よりも痩せた人の方が含水量が多い傾向にある。表1は国際放射線防護委員会(ICRP)がトリチウムの被ばく線量計算のために水分含有量を推定したもので、“体重70kgのヒトの60%(42kg)が水分である”と仮定している。このうちの56%は細胞内液、20%は間質リンパ球、7%が血しょう中に、残りは細胞外液として存在するものとしている。飲料水や食物から摂取されたトリチウム水は胃腸管からほぼ完全に吸収される。トリチウム水蒸気を含む空気を呼吸することによって肺に取り込まれ、そのほとんどは血液中に入る。血中のトリチウムは細胞に移行し、24時間以内に体液中にほぼ均等に分布する。また、トリチウムは皮膚からも吸収される。最近問題になっているのは有機成分として取り込まれた場合の有機結合型のトリチウム(OBT:Organically Bound Tritium)で、一般に排泄が遅く、体内に長く留まる傾向がある。トリチウムは水素と同じ化学的性質を持つため生物体内での主要な化合物である蛋白質、糖、脂肪などの有機物にも結合する。経口摂取したトリチウム水の生物学的半減期が約10日であるのに対し、有機結合型トリチウムのそれは約30日〜45日滞留するとされている。トリチウムのβ線による外部被ばくの影響は無視できるが、ヒトに障害が起きるのはトリチウムを体内に取り込んだ場合である。ヒトの場合にはこのような事故例は少ないので、主として動物実験から被ばく量と障害の関係が推定されている。放射線の生物学的効果を表す指標をRBE(Relative Biological Effectiveness,生物学的効果比)というが、いろいろな生物学的指標についてのトリチウムβ線のRBEは表2のように示される。基準放射線をγ線とした場合のRBEは1を超える報告が多い。血球には赤血球、白血球(好中球、単球、マクロファージ、好酸球、リンパ球など)、血小板がある。これらはすべて骨髄の造血細胞から作られ、それぞれ機能が異なる。ヒトの末梢血液をin vitro(生体外)で照射してTリンパの急性障害をしらべた結果、トリチウムの細胞致死効果はγ線より高く、また放射線感受性はいずれの血液細胞もマウスよりヒトの方が高いことが明らかにされている。トリチウム被ばくの場合、幹細胞レベルでは変化があっても通常の血液像の変化は小さい。したがって急性障害のモニタリングには幹細胞チェックが重要である。トリチウム水を一時に多量摂取することは現実的にはあり得ないが、低濃度のトリチウム水による長期間被ばくの場合を考えねばならない。実際に、トリチウムをヒトが長期間摂取した被ばく事故例が1960年代にヨーロッパで起きている。トリチウムは夜光剤として夜光時計の文字盤に使用されているが、これを製造する二つの施設で事故が発生している。一つは、トリチウムを7.4年にわたって被ばくした例で280テラベクレル(TBq)のトリチウムと接触し、相当量のトリチウムを体内に取り込んだ事例である。尿中のトリチウム量から被ばく線量は3〜6Svと推定されている。症状としては全身倦怠、悪心、その後白血球減少、血小板減少が起こり、汎血球減少症が原因で死亡している(表3)。もう一つの例も似たような症状の経過をたどり汎血球減少症が原因で死亡している。臓器中のトリチウム量が体液中よりも6〜12倍も高く、体内でトリチウムが有機結合型として存在しているものと推定されている。発電所および核燃料再処理施設の稼働によりトリチウムも放出されるが、ブルックヘブン・トリチウム毒性プログラムは低濃度トリチウム水に長期間被ばくする場合の健康影響について示唆を与えてくれる(表4)。夜光剤を扱う施設ではラジウムペインターの骨肉腫がよく知られているが、トリチウムの場合はラジウムの場合と明らかに異なることは注目される。トリチウムによる発がんに関する報告は多くはないが、X線やγ線との比較によるRBEが求められている(表5)。これらは動物での発がん実験や培養細胞がん化実験の結果で、トリチウムRBEは1〜2の範囲である。このほか、遺伝的影響を調べるために染色体異常の誘発、DNA損傷と修復などの細胞生物学的研究や、発生時期、すなわち胞子発生期、器官形成期、胎児期あるいは器官形成期における放射線感受性の研究も行われている。

*2-6:https://digital.asahi.com/articles/ASL8N4CR7L8NUGTB004.html (朝日新聞 2018年8月21日) 福島)第一原発の汚染水、トリチウム以外にも放射性物質
 東京電力は20日、福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ低濃度の汚染水について、保管する大型タンクに入れる前の放射性物質の検査で、トリチウム以外に、ストロンチウム90、ヨウ素129が国の基準値を超えていたことを明らかにした。東電はこれまで「トリチウム以外の放射性物質は除去されている」として、十分な説明をしていなかった。構内で発生した汚染水は、セシウムを吸着する装置と、62核種を除去する装置「アルプス」を通り、取り除けないトリチウムを含む汚染水がタンクに保管されていると説明されていた。だが、「アルプス」の出口で汚染水を定期的に調べている分析検査で、トリチウム(半減期12年)のほか、ストロンチウム90(同29年)とヨウ素129(同1570万年)が国の基準値を上回っていた。最大値はトリチウムは1リットルあたり138万ベクレル(基準値の約23倍)、ストロンチウム90は141ベクレル(同約5倍)、ヨウ素129は62ベクレル(同約7倍)だった。東電は「吸着するフィルターの性能が落ちていたことも考えられる」としている。数値はホームページで公表しており、国が定める敷地境界の放射線量(年間1ミリシーベルト)も超えておらず、「保管上は問題はない」としているが、「今後はわかりやすくお知らせしていきたい」とコメントした。現在、タンクには約109万トンの汚染水がためられている。処理を巡っては、海洋や大気での放出といった方法が国で議論されている。東電によると、仮に放出となれば、事前に検査が行われる。放射性物質が検出されれば、アルプスに再び送って除去できるという。東電は「現在の汚染水がそのまま放出されるわけではなく、今回のこととは別問題」としている。

<後退した環境・衛生に関する意識>
*3-1:https://www.excite.co.jp/news/article/Buzzap_58298/ (Excite news 2019年8月20日) 【コラム】「東京湾うんこまみれ問題」はどれだけ根深く深刻なのか、13年前から指摘も【東京オリンピック】
 東京オリンピックに関して先日から話題になっている、トライアスロンなどの競技の会場ともなる東京湾が「トイレ臭い」という問題。実はあらゆる意味で極めて根の深い、深刻な話でした。
◆東京湾のオリンピック本番会場「トイレ臭い」問題とは
 産経新聞と朝日新聞が報じたところに寄ると、お盆前の8月11日に行われた本番会場と同じお台場海浜公園で行われた水泳オープンウオーターの東京五輪テスト大会。猛暑の真っ只中であったこともあり、参加選手からは水温や気温、陽射しの強さなどが過酷だと懸念の声が漏れました。これに加えて物議を醸したのが水質です。東京都や大会組織委員会が大腸菌類の流入を抑制するためにポリエステル製の水中スクリーンをコースの外周約400mに設置したものの、「正直くさい。トイレみたいな臭い」などと異臭を指摘する声が続出しました。来年には東京オリンピックの本番で、世界中から集まったトップアスリートたちが東京湾のこの会場で泳ぐわけですが、トイレ臭いとはいったいどういうことなのでしょうか。原因と現在に至る経緯を振り返って見ると、小手先ではどうにもならない極めて深刻な問題が浮かび上がってきました。しかもこれ、人災です。
◆東京23区の大部分で採用されている「合流式下水道」の問題
 この問題を知るために、まずは戦後日本のし尿の歴史を見直してみましょう。厚生省が(恐らくは昭和34年前後に)監修した「し尿のゆくえ」という極めて貴重で優秀なドキュメンタリー映画が作られています。当時は川や海へのし尿の投棄が日常的に行われており、寄生虫に加えてチフスや赤痢といった伝染病の蔓延など、衛生に関する非常に深刻な問題であった事がわかります。とはいえ出来が良すぎるため食事中は「絶対閲覧禁止」です。この作品がモノクロであることを天に感謝するレベルですので、心してご覧ください。現在は、日本のほとんどの場所でこのドキュメンタリー中盤で理想として語られる「水洗トイレから下水に流す」という方式が採用されています。もちろん東京でもこの方式が採用されているものの、東京都下水道局によると、東京都の区部の約8割では、汚水と雨水をひとつの下水道管で集める古いタイプの「合流式下水道」という仕組みが採用されています。この合流式下水道では、家の屋根や道路などに降った雨水を流す雨水管とトイレの水を含む生活排水を流す汚水管が別れておらず、いずれも同じ合流管に流れ込みます。晴天時や一定量までの雨の日は、この合流管からの下水を水再生センターで沈殿処理と生物処理によって処理した後、消毒・放流します。ですが一定以上の雨が降った際は、街を洪水から守るために汚水と雨水の混合した下水は簡易処理のみで河川や海に放流されてしまいます。上記映画でも言及されていた衛生や健康の問題、また洪水の起こりやすい関東平野での治水という観点から、東京では下水道の整備が急務となり、コストの安い合流式下水道が採用されてきました。現在は雨水と汚水を分ける分流式下水道の採用、切り替えなども行われているようですが、残念ながら2020年までに切り替えることは不可能です。なお水再生センターでは、塩素剤等の薬剤で大腸菌等を消毒して放流しているとされていますが、公益財団法人東京都環境公社の「東京湾の水質汚濁 -雨天時負荷が水質へ及ぼす影響-」という研究では、大雨後に多数の糞便性大腸菌が検出されたことが報告されています。つまり誇張でもなんでもなく、ゲリラ豪雨や台風のような大雨が降った後に東京湾は文字通りの「うんこまみれ」状態になってしまうのです。なんでそんな大切なことが分からなかったの?という疑問も出てきそうですが、実は以前から分かっていました。
◆「東京湾うんこまみれ問題」はずっと前から指摘されていた
 大雨が降ると東京湾に糞便性大腸菌が流れ出すという問題は、決して今回の東京五輪テスト大会で判明したものではありません。上記の「東京湾の水質汚濁 -雨天時負荷が水質へ及ぼす影響-」は2006年の研究発表資料ですし、国立環境研究所の2006年の公開シンポジウムでも「雨が降ると東京湾はどうなるか? -降雨後の水質変化-」の中で糞便性大腸菌が降雨時に「平水時の100~1万倍くらいまで高く」なることが指摘されています。そしてこの問題は、2013年の東京オリンピック開催決定直後に主催の東京都にもしっかり認識されていることが報じられています。スポニチは2013年9月27日の記事で、当時の猪瀬直樹東京都知事が定例記者会見で、東京オリンピックのトライアスロン会場となるお台場海浜公園周辺の海水が「大雨の時に大腸菌が多いことがある」と述べていることを伝えています。猪瀬知事(当時)はオリンピック開催までに下水道施設を改善して対処する考えを表明、「東京都はほぼ完璧に対策を取る。上流の県の水もきちんとやっていただきたい」として水質改善に向けて政府に申し入れる意向を示していました。またこの問題は、2017年7月に小池都知事も出席した都の幹部会議でも「雨が降った時が課題。対策を考えないと」と議題に上がりました。この問題を報じた朝日新聞の記事ではお台場海浜公園では「大腸菌が増えて、泳げる水質を定める国の「水浴基準」を満たさないことがあるため、ふだんは遊泳禁止。14年の都環境科学研究所の調査では、雨が3日間降らなかった後は基準をクリアしたが、大雨の直後は大腸菌がその時の約100倍に増え、基準を超えた」と指摘しています。この問題について長く取り組んでいる港区の榎本茂区議会議員によると、「平成24年(編集部注:2012年)度だけでも187万7200平方メートル、実に東京ドーム1.5杯分の未浄化下水が運河に放水されました」とのこと。日刊ゲンダイの記事によると、榎本議員は2014年9月の港区議会定例会では「私もNPOの代表をしていた平成19年(編集部注:2007年)に、このお台場でカキを使った大規模な水質浄化実験を提案し、お手伝いをしたことがあります。宮城からいただいてきたカキは、残念ながら1年を待たずして死滅してしまいました。理由の一つに挙げられたのが、毎月何度となく流れ込んでくる未浄化の生活排水によるものです」と指摘しています。また2017年5月13日に榎本議員が「ほぼ山手線の内側エリアのトイレ台所の汚水が雨水と共に、レインボーブリッジの袂から、塩素を混ぜただけの状態で放流されている」としてFacebookアカウント上にアップした動画での茶色く汚濁した水はかなり衝撃的です。榎本議員はここで「東京都下水道局は塩素で大腸菌は死んでいると言うが、港区の雨天時の水質調査をみても、大腸菌は死んでいないし、この放流されている水質が「水質汚濁防止法」の排水基準や、より厳しい上積み条例である「東京都環境確保条例」の基準を満たしているとは到底思えない」と指摘しています。つまり、少なくとも2006年の段階では問題が明らかにされており、東京オリンピック開催決定時点の2013年にも当時の都知事が問題を認識し、現在の小池都知事になった2017年にも問題として把握されていたということ。ですが開催まで1年を切った現時点でも東京都の対策が「ほぼ完璧」の域に至っていないことは8月11日に証明されたとおりです。
◆本当にここでオリンピックやって大丈夫なの?
 さてこんな状態の東京湾で、本当に東京オリンピックのトライアスロン競技を開催することはできるのでしょうか。上述したように、東京都や大会組織委員会は大腸菌類の流入を抑制するためのポリエステル製の水中スクリーンをコースの外周約400mに設置しています。東京オリンピック本番ではこのスクリーンを3重にするとのこと。東京都が2018年夏にコースそばに膜を設置して水質を調べたところ、3重の膜の内側で大腸菌類は基準値を下回っていたものの、膜の外は調査した22日間のうち5日間で基準値を超えていたとされています。大雨の後に糞便性大腸菌が大量に検出されても、1日程度で急減することは「東京湾の水質汚濁 -雨天時負荷が水質へ及ぼす影響-」でも示されているとおり。朝日新聞は大会組織委担当者の組織委の担当者は「膜の設置で水質の安全は担保できる。あとは大腸菌が流れ込む原因となる大雨や台風が、本番で来ないことを祈るのみ」という言葉を紹介しており、運頼みという状況であることが分かります。うんこだけに。実際に8月17日に開催されたパラトライアスロン・ワールドカップでは大腸菌による水質悪化でスイム抜きのデュアスロンとなりましたが、翌18日には国際トライアスロン連合基準で最悪の「レベル4」が「レベル1」まで改善されたため、トライアスロン・世界混合リレーシリーズ大会は予定通り実施されています。なお、会場となるお台場海浜公園では毎年夏にお台場海水浴「お台場プラージュ」が10日ほどの期間限定で開催されています。台風10号の襲来を前にした8月14日の水質の動画が撮影されていますが、前日からの降雨がほとんどない状態です。話が戻りますが、雨が降らなければそれで解決という話ではありません。水質は基準をクリアしていたとしても、例えば貴田裕美選手はテスト大会時に「水温も気温も高いし、日差しも強くて過酷だった。泳ぎながら熱中症になるんじゃないかという不安が拭えなかった」と述べています。また野中大暉も「他の会場と比べても暑い。脱水の心配もあるので、水分補給とかを工夫をしていかないと」と話すなど、晴れた場合は水温、気温、陽射しなどで熱中症の危険が発生するという、まさに前門の虎後門の狼状態となっています。国際水連のマルクレスク事務総長が水温の問題について「最も大切なのは選手の健康。水温の状況を見ながら5時、5時半、6時、6時半と開始時間を変更する可能性もある」と述べていますが、こうなるとまた別の問題が発生します。それは先日BUZZAP!が報じて大きな反響を得た、東京五輪ボランティアが「終電で現場に行かされ、徹夜の交流で士気を高めさせられる」という問題です。海辺の炎天下での徹夜明けのボランティア作業が過酷なことは、改めて指摘するまでもありません。この会場でトライアスロンを開催する以上、どうやっても誰かが過重な負荷や負担を強いられるという、いわゆる無理ゲー状態となっていることがよく分かります。そもそもうんこまみれの東京湾で海外のトップアスリートを泳がせることが日本の「オモテナシ」なのかという疑問もありますが、トイレを素手で掃除する事を美徳とする日本人にとっては、これも滝行のような「精神修練の場」ということになるのでしょうか。

*3-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201909/CK2019092002000179.html (東京新聞 2019年9月20日) ゲノム食品 表示義務なし 年内にも流通 消費者庁「判別できず」
 消費者庁は十九日、ゲノム編集技術で品種改良した農水産物の大半について、生産者や販売者らにゲノム編集食品であると表示することを義務付けないと発表した。ゲノム編集食品は特定の遺伝子を切断してつくられるが、外部から遺伝子を挿入する場合と挿入しない場合があり、現在開発が進む食品の大半は挿入しないタイプという。厚生労働省は同日、同タイプの販売について安全性審査を経ずに届け出制にすると通知。今回の消費者庁の発表で流通ルールの大枠が決まった。早ければ年内にも市場に出回る見通しだが、表示がなければゲノム編集食品かどうか分からず、安全性に疑問を持つ消費者から不満が出るのは必至だ。消費者庁は、表示を求める声が消費者団体などから上がっていることを踏まえ、義務付けない食品についても、生産者や販売者らが自主的に包装やウェブ上などで表示するよう働き掛ける方針。消費者庁は義務化しない理由について「(外部遺伝子を組み込まない食品は)遺伝子の改変がゲノム編集によるものか、従来の育種技術で起きたのか科学的に判別できず、表示義務に違反する商品があっても見抜けないため」と説明。製造から流通までのトレーサビリティー(生産流通履歴)の仕組みも不十分で、追跡が不可能だとした。一方、外部遺伝子を組み込み、安全性審査が必要となる食品は表示を義務付ける。

*3-2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14192008.html (朝日新聞社説 2019年9月25日) ゲノム食品表示 これで理解得られるか
 役所の名称とは裏腹に、消費者・市民に寄り添っているとは言いがたい決定だ。ゲノム編集技術を使った食品について、消費者庁は先週、遺伝子の配列をわずかに変えただけなら、編集した旨の表示を事業者に義務づけることはしないと発表した。既存の品種改良との区別が難しく、たとえ義務化しても違反者を特定することができないため、としている。消費者団体などが批判の声を上げたのは当然だ。朝日新聞の社説は、科学的に安全か否かの議論とは別に、自分の判断で食品を選べる環境を整えることが大切で、その視点に立って表示のあり方も考えるべきだと主張してきた。今回の措置は、消費者の権利を尊重し、適切に行使できるようにするという、消費者行政の目的と相いれない。見直しを求める。消費者庁も、どんな食品かを知りたい消費者がいることを、当然認識している。そこで、厚生労働省に届け出があったゲノム編集食品については、事業者に対し、消費者への積極的な情報提供を呼びかけている。何とも中途半端な対応だが、そういうことであれば当面は食品を開発・販売する側に期待するしかない。ゲノム編集を施したことを明示し、問い合わせがあれば丁寧に答える。情報の公開と説明に前向きに取り組む姿勢を見せることが、信頼を生み、今後のビジネスにも役立つと考えてもらいたい。そのためにも、表示・公開の方法に一定の基準を設けることを検討すべきだ。どんな遺伝子に手を加えたのか、成分はどのように変化したのかなどについて、企業秘密を守りつつ、どこまで公にするか。ホームページに載せるだけでいいのか、購入時に認識できるようにするにはどうしたらよいか。事業者任せにせず、消費者庁も入って、工夫や研究を重ねてもらいたい。厚労省の責任も重い。業者が届け出るべき情報の中には、アレルギーの原因物質が新たにつくられていないことを確認する項目などもある。開発段階で十分な試験がなされているか、データは信頼できるか、入念なチェックが求められる。ゲノム編集は発展途上の技術だ。最新の動向を幅広く収集するとともに、懸念材料が出てきたときには、事業者にすみやかに対応をとらせ、安全性を検証できる仕組みをあらかじめ整えておくことが欠かせない。効率のいい品種改良を可能にするゲノム編集技術は、国内はもちろん世界の農林水産業を大きく変える可能性を秘める。それだけに、幅広い理解を得られるよう慎重に歩みを進めたい。

*3-3:https://mainichi.jp/articles/20190925/k00/00m/040/160000c (毎日新聞 2019年9月25日) 海面水位、世界平均1・1メートル上昇と予測 地球温暖化で IPCC特別報告書
 世界全体で有効な対策が取られないまま地球温暖化が進むと、今世紀末に世界平均の海面水位は最大で1・1メートル上昇すると予測した特別報告書を25日、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した。台風など熱帯低気圧の強さも増して、高潮などによる沿岸部の被害が増加すると指摘しており、島国の日本をはじめ各地の防災対策に影響を与えそうだ。報告書によると、世界平均の海面水位は1902年から2015年までの間に16センチ上昇した。特に2006~15年は年3・6ミリのペースで上昇し、1901~90年の平均ペースの約2・5倍と先例がないスピードで水位が上がっている。さらに温室効果ガス削減が進まず、今世紀末の世界の平均気温が産業革命前より最大5・4度上がった場合、世界平均の海面水位は1986~2005年の平均に比べ、61センチ~1・1メートル(中央値84センチ)上昇すると予測した。南極の氷がどんどん解けていることなどから、IPCCが2014年に公表した報告書の予測より上昇幅は1割程度拡大した。海面上昇に伴って低地にある大都市では、これまで100年に1回程度の頻度で発生していた高潮災害などが、2050年には毎年のように起こるという。IPCCは温暖化に関する知見を各国に提供する政府間組織で、195カ国が参加している。今回の報告書は海と極地・高山地域の氷への影響に焦点を当て、公表済みの約7000の論文を基にして、日本の研究者4人を含む36カ国計104人の専門家が執筆に関わった。

<癌の増加>
*4-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM634WF5M63UGTB009.html (朝日新聞 2019年6月4日) 福島の小児甲状腺がん、被曝との関連否定 県の専門部会
 2011年の東京電力福島第一原発事故時に、18歳以下だった福島県民を対象にした14~15年度分の甲状腺検査について、福島県の評価部会は3日、「現時点で、発見されたがんと被曝(ひばく)の関連は認められない」とする見解を取りまとめた。今回検討した検査は、11~13年度に続く2巡目。約27万人が受診し、このうち71人で、がんまたはがんの疑いが発見された。部会では、国連科学委員会による被曝線量の推計を使って、受診者の推計線量と、がんやがんの疑い発見の比率を、性別や年齢、検査年度などの影響が残らないよう調整して分析。線量とがんの発見率に関係がないと結論づけた。出席者からは、被曝線量の推計が個人別ではなく、地域で区分していることなどが指摘されたが、鈴木元(げん)部会長は現時点でできうる範囲のものと説明。「今回の結果をもって、(今後も)事故の影響が出ないとは言えない」とも述べた。

*4-2:https://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/7b914e413119f15ca27d5b158f258b2d (Goo 2015.2.18) 内部被ばくの影響は10年後、必ずでてくる、西尾正道北海道がんセンター院長、インタビュー/ 財界さっぽろ
 放射線による健康被害は外部被ばくばかりが問題視される。しかし、深刻なのは体内に放射性物質を取り込んでしまった内部被ばく。長年、臨床医として放射線治療をしてきた第一人者に人体に及ぼす内部被ばくの影響を聞いた。世界機関に内部被ばくのデータなし
――食品安全委員会は7月26日、自然放射線や医療被ばくを除く放射線で、健康に影響が出るのは内部被ばく・外部被ばくを合わせて、生涯で100ミリシーベルト以上との答申案をまとめました。
西尾 日本の法律上では、一般公衆の線量限度は1ミリシーベルト/年ですが、政府はICRP(国際放射線防護委員会)の基準をもとに警戒区域や計画的避難区域を設け、校庭の活動制限の基準を3.8マイクロシーベルト/時間、住民には屋外で8時間、屋内で16時間の生活パターンを考えて、年間20ミリシーベルトとしました。この線量基準は年齢も考慮せず、放射線の影響を受けやすい成長期の小児や妊婦にまで当てはめるのは危険です。では、なぜこんな基準が示されたのか。移住を回避させる目的としか考えられません。しかし、原発事故の収拾のめどが立っていない状況で、住民に20ミリシーベルト/年を強いるのは人命軽視の対応です。そうした中で、今度は食品安全委員会から生涯で100ミリシーベルト以下なら安全だという答申が出された。しかも内部被ばくも含むという。しかし、内部被ばくについては、これまでICRPもIAEA(国際原子力機関)もまったく取り上げていません。むしろ原子力政策を推進する上で不問にしていた。だから内部被ばくに関するデータはまったく持ち合わせていないというのが現状です。
――にもかかわらず、100ミリシーベルトという数字を出したと。
西尾 結局、内部被ばくと外部被ばくの人体影響の差はまったくわかっていないので、とりあえず線量が同じなら同等と考えましょうというのが今の世界のコンセンサス。何の根拠もなく、わからないから1対1にしようということです。
――ものすごく乱暴な結論ですね。
西尾 ですから、内部被ばくの1ミリシーベルトと外部被ばくの1ミリシーベルトが同等の健康被害かどうかということすらわかっていない。内部被ばくは近くにある細胞にしか影響を与えません。局所的にアルファ線やベータ線の影響は強いわけですが、それを体全体の線量に合わせてしまうと60兆個の細胞のうちの局所的な個数ですから、見かけ上ものすごく少ない線量しか出てこない。そういうトリックがあります。そもそも国は、国民の被ばく線量もはかっていないのに、新たな規制値をつくるのは何の目的なんだということですよ。自分がどれだけ被ばくしているかもわからないのに、ただ数字だけが踊っている。
――考えられることは。
西尾 今後、予想される食品汚染ということになると内部被ばくの問題です。政府にはそういうデータはまったくないと思います。このタイミングで出てくるというのは、たとえばセシウムだったら年間5ミリシーベルトに抑えようと、肉だったらキロ当たり500ベクレルにしようとなっていて、そういうものを食べていれば年間5ミリシーベルトくらいになるということなんだけど、いまの規制値だとそれで収まりきらない可能性がある。だからもっとぼかした形で「一生涯にこれだけいいですよ」と。国民をだます手法の1つとして考え出されたものだと思います。ごまかしです。いままでの基準値だって、水は100ベクレルでした。それが東京・金町浄水場の水道水から210ベクレルの放射性ヨウ素が出たといったら、一気に300ベクレルに上げた。原発作業員も年間被ばく量は100ミリシーベルトといっていたら、それじゃ作業させられないから一気に250ミリシーベルトに上げた。その場でクリアできなくなったら、基準値を上げているだけ。一貫してそう。こんなことをやっていたら10年後は大変な問題が起こりますよ。「人ひとり死んでいない」とバカなことを言う人もいるけれど、それは目先の利益を追いかける人の発想です。問題は今後、奇形児が生まれたり、がんが増えたり、そういうことは確実に起こります。
――これまでに起こった原発事故で、内部被ばくによる人体への影響は明らかだと思うのですが。
西尾 いま世界中で内部被ばくを含め、隠されていたデータがどんどん出てきています。2000年以降、10ミリシーベルト以下の低線量でも健康被害があるという論文もいくつかあります。とくに子ども。放射線の影響は大人の3倍から4倍ありますよ。乳幼児の場合だったら、同じ甲状腺への取り込みは8倍から9倍になる。英国の使用済み核燃料棒の再処理工場があるセラフィールドでは、子どもの白血病が通常より10倍の罹患率です。チェルノブイリもそうです。IAEAの予想では4000人くらいの過剰がん患者というけれど、実際には100万人近く出ている。今回の福島だって、欧州のグループは今後50年間で42万人が、がんになると予想。ところがIAEAは6000人。ケタが2つも違うようなことを言っている。現在も、極めて原子力推進派の意見が世界を支配しているのです。避難住民は疎開ではなく移住すべき
――いまも福島原発からは放射性物質は出ているんでしょうね。
西尾 専門家は水素爆発時の100万分の1くらいになっていると言っていますが、いずれにせよ微量は出ていると思います。
――一連の爆発時にどんな放射性物質が放出されたのでしょう。
西尾 9割方はヨウ素131。あとの1割弱はセシウム134と137が半々くらいといわれています。
そのほかにコバルト、ストロンチウム、プルトニウムなど、もろもろ30核種50種類くらいの放射性物質が出た。
ただ、ヨウ素は半減期が8日だから、いまはほとんどなく、セシウムだけが残っている状況です。セシウム137の半減期は30年、134は2年です。
――一番毒性の強いのは。
西尾 プルトニウムです。アメリカの西海岸やハワイでも検出されています。
――そういうものを吸い込んだ人も、たくさんいるんでしょうね。
西尾 たとえば体内にセシウム137を取り込んだとします。物理的半減期が30年といっても、生物的には代謝する過程で体外に出ていきますから、実際には100日くらいしかない。4カ月もたっていたら4割くらいになっている。放射性物質を100取り込んだとして9割はヨウ素だから検出されない。1割のセシウムも3分の1くらいになっている。ですから理論的には100あったとしても3しか残っていない。
――国民はすでに汚染された肉などを食べた可能性もあります。
西尾 いまくらいの量だと実際にはそれほど問題はないと思います。ただ、食べ続けると健康へのリスクは高くなるでしょう。
――やはり食物が気になります。
西尾 政府は飲食物に関する規制値も緩和しました。年間線量限度をヨウ素では50ミリシーベルト、セシウムでは5ミリシーベルト、しかも従来の出荷時の測定値ではなく、食する状態での規制値です。これではますます内部被ばくは増加します。ちなみにホウレンソウの暫定規制値はヨウ素でキロ当たり2000ベクレル、セシウムは同500ベクレルとなりました。放射性物質は、よく水洗いすれば2割削減され、茹でて4割削減され、口に入るときは出荷時の約4割になります。確かに調理によって人体への取り込みは少なくなりますが、汚染水や人体からの排泄物は下水に流れていく。それは最終的に川や海に達します。環境汚染が進むことは避けられません。今後、日本人は土壌汚染と海洋汚染により、内部被ばく線量の増加を覚悟する必要があります。
――高い放射線量が計測される町にも人はいます。
西尾 20マイクロシーベルトになっているところは、さしあたって住めません。疎開でなく移住です。
疎開は少したったら帰ってくるという発想ですが、それは無理です。汚染地域では産業が成り立たない。
生活の基盤がつくれないのだから移住すべきだと思います。
21世紀は放射性物質との戦いの時代
――いまそういうところに住んでいる人は被ばくし続けているわけですよね。
西尾 いまくらいの数値だったら問題はないでしょう。世界中には自然放射線を年間10ミリシーベルト浴びているところもある。世界平均で2.4ミリシーベルト。それほど深刻になるほどではありませんが、地域経済は成り立たない。日本は最も原発に適さない国です。世界で発生する震度6以上の地震の半分は日本です。海に囲まれ、津波のリスクもある。国土が狭いから何かあっても逃げられない。静岡県の浜岡原発でチェルノブイリと同じことが起こったら、東京がすっぽり汚染地域に入ってしまう。そのくらい狭い国土なんです。中国はこれから原発を400基つくるといっています。日本にだって54基ある。何らかの事故でまた放射性物質がばらまかれる事態は想定しておかなければなりません。そんな時代に内部被ばくを不問にして健康被害を語るのは、まったくの片手落ち。21世紀は放射性物質との戦いの時代です。1980年以降、がんの罹患者数は増えています。昨年は心臓病を抜いてがんが、全世界で死因のトップになりました。これは単純な高齢化の問題だけでは説明がつかない。人工放射線が何らかの形で関与している可能性がある。そのくらいの思い切った発想で、放射線の健康被害を慎重に検討することが求められていると思います。

*4-3:https://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/7b914e413119f15ca27d5b158f258b2d (Goo 2013.8.21) 被曝【10ミリでガン増加、政府データ】チェルノブイリなら「5ミリで強制移住」福島では20ミリで帰れ!
●MSN産経ニュースより 2013.11.8
【追加被ばく「年間20ミリ以下」で影響なし 規制委、住民帰還で提言へ】
 東京電力福島第1原発事故で避難している住民の帰還に向け、放射線防護対策の提言を検討している原子力規制委員会が、年間の追加被ばく線量が20ミリシーベルト以下であれば健康に大きな影響はないという見解を提言に盛り込む方針を固めたことが8日、分かった。放射線防護対策を議論する11日の検討チームで提言案を示し月内にもまとめる。提言を受け、政府は住民帰還に向けた具体的な放射線対策を年内にとりまとめる方針。国際放射線防護委員会(ICRP)は原発事故のような緊急事態後の段階では、住民の被ばく線量を年1~20ミリシーベルトにする目安を示している。田中俊一委員長も住民が不慣れな避難先でストレスを抱えて病気になるリスクもあるとし、「年20ミリシーベルト以下であれば全体のリスクとして受け入れられるというのが世界の一般的考え方だ」と述べていた。政府は事故後、年20ミリシーベルトを基準に避難区域を設定。ただ、除染の長期目標は年1ミリシーベルトとし論議を呼んでいた。規制委は国際基準を再確認し提言案に盛り込む。
●MSN産経ニュースより 2013.11.8
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131108/dst13110814110005-n1.htm 原子力規制委員長
 「年間20ミリシーベルトまで許容」した方がいい。チェルノブイリなら5ミリで強制移住。 自民党の鬼木議員は「基準値は厳しすぎる。500ベクレルに戻せ」と言い、安倍政権は福島原発付近の出荷規制を次々に解除。【原子力規制委員長「年間20ミリシーベルトまで許容した方がいい」】 民主党政権時に定められた放射能基準値も酷かったですが、自民党はその基準値を更に緩めようとしている動きを見せています。自民党の鬼木議員は「基準値は厳しすぎる。500ベクレルに戻せ」と言い、安倍政権は福島原発付近の出荷規制を次々に解除。そして、先日に福島原発と除染状況を調査するため来日した国際原子力機関(IAEA)の専門家チームのフアン・カルロス・レンティッホ団長は「必ずしも(国が追加被ばく線量の長期目標に掲げる)年間1ミリシーベルトでなくてもいい」と述べました。日本の原子力規制委員長もこれに合わせる形で「年間20ミリシーベルトまで許容した方がいい」と発言をしており、原子力を規制する側の組織が、体制側の連中を容認しているのが分かります。おそらく、政府や権力者の間では基準値を緩める前提で話が進んでいるのでしょう。だから、国民の反発を抑えるために、IAEAの団長や原子力規制委員会の連中にこのような言葉を言わせているのだと思います。山本議員らは何とか1ミリシーベルト以下の基準値にしようと努力をしていますが、政府が基準値を緩める方向で動いているため、多勢に無勢という感じの状況です。本当は基準値を厳格化するべきなのに、基準値を緩めるとか私には出来ません。政府の連中は本気で、「お金さえ手に入れば後はどうでも良い」と考えています。でなければ、今の状況で「基準値を緩める」なんて言葉は言わないはずです。
●読売新聞 2013年10月25日(金) http://s.news.nifty.com/headline/detail/yomiuri-20131024-01364_1.htm 【IAEA報告書 「1ミリ・シーベルト」はあくまで長期目標】
 東京電力福島第一原子力発電所の事故による除染は当面、どのレベルまで実施すべきなのか。国際原子力機関(IAEA)の調査団は、徹底除染により年間被曝(ひばく)線量を「1ミリ・シーベルト以下」にすることについて、「必ずしもこだわらなくてもよい」との見解を示した。適切な指摘である。環境省にはIAEAの見解に沿い、除染を加速させることが求められる。調査団は今月、第一原発周辺の現地調査を実施して除染状況をチェックし、報告書をまとめた。注目すべきは、報告書が、国際的基準に照らし、「年間1~20ミリ・シーベルトの範囲内のいかなるレベルの個人放射線量も許容し得る」と明記した点である。避難住民の帰還に向け、政府が設けている「20ミリ・シーベルト以下」という目安を補強するものだ。早期の帰還実現への弾みとしたい。政府は、除染の長期目標として「1ミリ・シーベルト以下」も掲げる。だが、1ミリ・シーベルト以下にならなければ帰還できないと思い込んでいる住民が少なくない。民主党政権が、徹底除染を求める地元の要望を受け、1ミリ・シーベルトを当座の目標としたことが尾を引いている。ゼロリスクにとらわれると、除染完了のめどが立たなくなる。住民の帰還は遅れるばかりだ。IAEA報告書も、1ミリ・シーベルトについて、「除染のみで短期間に達成できるものではない」と結論付けた。政府には、その事実関係を丁寧に説明するよう注文した。政府は、1ミリ・シーベルトが安全と危険の境目ではないことを住民に周知する必要がある。環境省は、第一原発周辺の11市町村で除染を実施しているが、汚染土を保管する仮置き場の確保などが難航し、作業は大幅に遅れている。現在、7市町村の除染計画を見直している。汚染レベルが比較的低い地域で重要なのは、除染と併せ、住民の生活再建に必要なインフラ整備を進めていくことだ。1ミリ・シーベルトを一気に目指さず、段階的に取り組めば、除染からインフラ復旧に、より多くの費用を振り向けられる。報告書のこの提言は、除染計画の参考になろう。政府は除染費用として、今年度までに約1兆3000億円を計上した。要した費用は東電に請求する仕組みになっているが、経営が悪化している東電に支払う余力はない。電気料金の値上げなどで国民の負担となる可能性が高い。いかに効率よく的確に除染を進めるか。喫緊の課題である。

*4-4:https://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/746becae201fb092dd7a03cda57b1291 (goo  2014.4.16) 報道ステーション せっかく取材したのに、東京の汚染は全面カットだった!
●「無いこと」にされている関東の子どもの健康被害
川根…「放射能防護プロジェクト」に参加している三田茂さんという医師がいます。この3月に小平市の病院を閉院して、東京から岡山へ移住することを決断されています。今年3月11日に、『報道ステーション』で古舘伊知郎さんが甲状腺がんの特集をやりました。古舘さんは三田先生にも取材に行っています。三田医師は、東京・関東の子どもたちの血液、特に白血球の数値が低くなっている、と明らかにしました。それは柏市や三郷市のようなホットスポットだけでなく、埼玉市や川崎、横浜、相模原の子どもたちの数値も悪くなっている、と指摘しました。話を聞いた古舘さんたちは驚いて、「先生の名前と顔が出るが、話していいのか」と聞きました。三田先生は「大事なことだから、きちんとした良い番組を作ってくれるなら出して構わない」と、OKを出しました。ところが、数日後に連絡が来て、「実は東京が危ないということは報道できない」と、全面カットになったそうです。福島だけの問題になってしまいました。三田先生は、他の医師にも「甲状腺エコー検査機器を共同で買って、治療し直しましょう」と呼びかけているのですが、反応がない。多くのテレビ局や新聞社からも、「東京の子どもの健康問題はどうなっているんだ」と取材を受けていますが、一本の記事にも番組にもなっていません。今のマスメディアは、「東京は安全だ、危険なのは福島だ」という情報操作がなされているのです。

<ゲノム編集食品表示の緩さ>
PS(2019年9月29日追加):*5に書かれているとおり、今回のゲノム編集食品の表示については「遺伝子を切り取って機能を失わせるだけなら、(安全性に問題がないので《??》)表示規制の対象外にする」としているが、本当に安全かどうかは、薬と同様、多くの人が長期間摂取した後でなければわからない。そのため、消費者の選択権をなくしてそういう食品を食べたくない人にまで無理矢理食べさせるような表示規制は問題だ。また、消費者の立場を護るために作られた消費者庁の存在も、消費者の立場を護らないのであれば無駄になる。今、この緩い表示規制に対して民間ができることは、ゲノム編集していない食品には「ゲノム編集した食品は入っていない」という文言を大きく書くことしかないが、EUではゲノム編集食品も規制の対象にすべきだとの司法判断が出たそうだ。(本当はそれが当たり前だが)司法が正常に働く国は羨ましい。

*5:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190929_3.html (京都新聞社説 2019年9月29日) ゲノム食品  許されない「見切り発車」
 消費者の不安や懸念を置き去りにし、これでは「見切り発車」といわざるを得ない。狙った遺伝子を破壊して特定の機能を失わせたゲノム編集食品の流通や販売が、あさって10月1日から解禁される。血圧を抑える成分が多いトマトや芽に毒のないジャガイモ、肉厚なマダイなどの開発が進んでおり、早ければ年内にも食卓に並びそうだ。政府はゲノム編集技術で品種改良した食品の販売に向け、届け出制度を導入するが、特定の遺伝子を壊す手法なら安全性審査は不要だ。ゲノム編集食品であるとの表示も義務付けない。ゲノム編集は生物の遺伝子を改変する技術の一種だ。簡便な手法の開発に伴い、従来の遺伝子組み換え技術より効率よく高い精度で遺伝子を書き換えることができ、医療や農林水産分野での応用が期待されている。その技術を使った食品開発は昨年6月に政府が決定した「統合イノベーション戦略」に盛り込まれ、議論が加速。厚生労働省や消費者庁などが安全性や流通ルールの検討を急いでいた。厚労省によると、遺伝子組み換え食品と同様、遺伝子を外から組み込む場合は厳格な安全性審査を求める一方、遺伝子を切り取って機能を失わせるだけなら規制の対象外とする。ゲノム編集食品の大半が届け出だけで販売が認められるという。精度が高いゲノム編集ならば想定外の変化や異常は起きにくく、安全面は従来の品種改良と同程度のリスクというのが、その理由だ。だが新技術ゆえに未知の部分も多い。予期せぬ変異は生じないと断言できまい。ゲノム編集の方法や新たなアレルギー原因物質の有無などを届け出る必要があるものの、違反しても罰則はなく実効性に疑問符が付く。ゲノム編集食品の開発・流通を促進させるためとはいえ、拙速過ぎないか。消費者はどう受け止めているのか。厚労省の意見公募に約700件が寄せられ、大半が「長期的な検証をしてから導入すべきだ」といった懸念だった。消費者庁の姿勢も疑問だ。流通・販売の解禁に際し、検査が難しいことなどを理由にゲノム編集食品であるとの表示を義務付けない方針を決めた。表示がなければゲノム編集食品かどうか分からず、消費者は知らないうちに口にする恐れがある。不満が出るのは必至だろう。消費者目線で対応すべき官庁として存在意義が問われる。ゲノム編集によって有用な品種改良が短期間で可能になる。消費者にも利点は多い。しかし食の安全・安心へのこだわりは根強い。欧州連合(EU)でも昨年、ゲノム編集食品も規制の対象にすべきとの司法判断が下された。不安を解消しないまま、ゲノム編集食品の流通が既成事実となる事態は避けたい。少なくともゲノム編集を施したとの明示は欠かせない。情報を正しく消費者に知らせ、安全で安心な食品を「選ぶ権利」を確保することが重要である。拙速に解禁しても消費者に受け入れられない。遠回りであっても法整備やルール作りを通じ、新しい技術への理解を深めることこそ早道といえよう。

<原子力規制委員会は人体に関する専門家ではない>
PS(2019年9月29日追加):上のように、人体の専門家である医師が内部被曝の危険性を説明しているのに、原子力の専門家である原子力規制委員会が「科学的に安全だ」と言ったから安全で、それを信じない人は「非科学的であり、風評被害の根源だ」などと*6が記載しているのは、“専門家”の区別もつかない文系のドアホと言うしかない。原子力の専門家である原子力規制委員会が言っている安全性は、「人体への安全性」ではなく「原子力産業と経産省継続の安全性」なのに、よくもここまで主観的・感情的なこじつけが書けるものだ。もちろん、何だって食べたい人が食べるのは自由だが、国全体では医療費・介護費が増えて年金支給額は減るだろう。

*6:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/546973/ (西日本新聞 2019/9/29) 処理水放出、遠い「安心」 原田・前環境相発言を読み解く
 「思い切って(海洋に)放出するほかに選択はない」。東京電力福島第1原発で増え続ける処理水について、原田義昭前環境相=衆院福岡5区=がこう問題提起し、論議を呼んでいる。科学的根拠に基づくとされる「安全」と、それでもなお多くの人々が素直には胸に抱けない「安心」-。今回、あらためて浮き彫りになったのは、このギャップを埋めるのが簡単ではないという現実だ。原田氏の発言は、環境相退任前日の9月10日に飛び出した。放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出を主張し、「それによって残るであろう風評被害や漁業者の苦労は、国を挙げて補完することが極めて大切だ」と強調した。処理水は今も毎日170トンずつ増え、現在計116万トンがタンク約千基に保管されている。東京電力は2022年夏ごろには満杯になり、原発の廃炉作業にも支障が出る恐れがあるとしている。国は有識者でつくる小委員会を設置し、気体にして大気中に放つ「水蒸気放出」や「地層への注入」なども選択肢に処分方法を話し合っているが、答えは出ていない。
     ■ 
 専門家である原子力規制委員会の見解は、トリチウムの人体への影響は極めて小さいので心配なく、海洋放出が「処理水処分の現実的、唯一の選択肢」(更田豊志委員長)というものだ。原田氏は、この「科学性」に依拠して声を上げた。誰もが触れたがらないことを、勇気を出して世に問うたと受け止めたのは、復興相経験者の自民党議員。「フクシマの復興を真に加速させる意味で、(原田氏の発言が)放出を決断するきっかけになればいい」。松井一郎大阪市長と吉村洋文大阪府知事も、「環境被害がないものは国全体で処理すべきだ」と同調。大阪湾で、一部の処理水放出を受け入れても構わないと踏み込んだ。これに対し、福島で日々生きる住民からは、海洋放出は水産物などへの風評被害を招くとして「容認できない」との反発が出ている。相馬双葉漁協(福島県)の立谷寛治組合長は「『安全』を訴えても、どうしても信じてもらえない消費者が一定数はいる。原発事故後に試験操業でこつこつやってきて、風評被害がやっと徐々に減っているのに、漁師の努力に水を差すつもりか」と憤る。昨夏には、処理水中にトリチウム以外の放射性物質が残留していることも判明。漠とした不安の影を濃くした。
     ■ 
 国の小委員会メンバーでもある東京大大学院の関谷直也准教授(災害情報論)は「科学的に安全だからといって、社会的な課題が解決していないのに放出を急ぐとすれば早計だ」と指摘。小委員会は、風評被害との向き合い方もテーマに検討を深めている。原田氏の後任の小泉進次郎環境相も福島を訪れ漁業関係者に陳謝し、こう述べた。「世の中に一石を投じる必要性は分かるが、簡単に石は投げられない」。では、どうすれば人々の「安心」を獲得して「安全」に近づけていけるのか-。処理水はたまり続ける。解決策はまだ見えない。

<東京オリンピックのトライアスロンは、美しい自然と歴史ある街を舞台に>
PS(2019年10月1日追加):東京オリンピックのトライアスロン競技会場がお台場海浜公園のままであれば、トライアスロン選手に酷であるだけでなく、見る方も楽しくないし、日本開催のオリンピックなのに日本の醜さばかりが世界に報道され、日本の歴史や自然の美しさが報道されない。そのため、*7のトライアスロンは、神奈川県江の島からスイムを開始し、バイクで鎌倉の名所や横浜港・元町中華街・東海道などを通って、最後に東京都内の名所をランしてゴールするように変更すれば、面白い競技を通して周囲の美しい自然と歴史(日本の鎌倉時代、江戸時代、明治維新、現代)をパノラマで世界に発信することができる。この時、日本の報道機関が、江の島付近の自然や海中、鎌倉時代、江戸時代、明治以降の歴史や付近の自然を外国の報道機関も的確に報道できるよう、あらかじめ映像や解説を渡しておけば効果的だと思う。

   

(図の説明:一番左の図は、鎌倉の名所旧跡を示した地図で、中央の3つは横浜の名所だ。また、一番右が東京の名所を示した地図だが、いずれも錚錚《そうそう》たるものである)

*7:https://www.2020games.metro.tokyo.lg.jp/taikaijyunbi/taikai/syumoku/games-olympics/triathlon/index.html (概要のみ抜粋) トライアスロン
距離:オリンピックディスタンス(スイム1.5㎞、バイク40㎞、ラン10㎞)
スイム(水泳)、バイク(自転車)、ラン(長距離走)の順で、1人で連続して行う競技で、屋外で行われます。着順を競う競技です。

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