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2020,07,08, Wednesday
2020.7.7 2020.7.7 2020.7.5 2020.7.6日経BZ 中日新聞 日本農業新聞 毎日新聞 浸水想定区域と実際の浸水域 (図の説明:1番左の図は、2020年7月7日までの豪雨被害地域だ。左から2番目は、人吉市の電線に流れてきた植物がからまっている状態で、水深がここまであったことを示す。右から2番目は、球磨村の特別養護老人ホームが水に沈んでいる様子で、1番右の図は、球磨川流域の浸水想定区域と実際の浸水域を示した地図である。これらによると、球磨村の特別養護老人ホームが著しく浸水することは前からわかっており、他の住宅は一段高い場所にあるため浸水していない) (1)2020年梅雨時期の九州豪雨とその被害 熊本県南部の豪雨では、*1-1のように、特別養護老人ホームの浸水によって入所者14人が亡くなったが、私は、その高齢者施設が地価が安いという理由からか、氾濫の恐れがある川の傍の低い場所に造られているのに驚かされた。特に、千寿園はその危険性が知られていた地域に立地しているのに、上層階のある頑丈な建物でもなく、エレベーターもないそうで、まるで三途の川の畔に建てられたような建物だったと言わざるを得ない。 何故なら、高齢者は避難困難者であるため、浸水の恐れのある場所に高齢者施設を建設すること自体が危険であり、避難計画を作成したから命を守れることにはならないからだ。そのため、突きつけられた重い課題は、「日本は、高齢者を粗末にする国だ」ということであり、「(毎年、どこかで起こっている)○○年に一度の想定を超える豪雨」「水位が急激に上がって対応が追いつかなかった」というのは、言い訳にもならない。 また、熊本県人吉市や球磨村では、*1-2のように、屋根と同じ高さにある電線に氾濫した川の水が運んだ木の枝や草がぶら下がり、屋根の高さまで水が押し寄せ、JAくま管内の支店建物や農地でも大きな被害が出ているそうだ。それでも、農地はまだ回復が早いが、住宅はそうはいかないため、今後の地方自治体の仕事は、避難を促すだけでなく、危険な地域には人が住まないよう土地利用を規制することである。そのためには、既に使われている土地・建物を交換したり、収用したりするなどの方法がある。 福岡、佐賀、長崎三県でも、*1-3のように、大分県日田市で筑後川が氾濫し、熊本・大分県境の下筌ダムは基準水位を越えたため緊急放流したそうだ。また、大牟田市では避難所が周辺の冠水で孤立し、そこには200人以上が身を寄せていたそうだ。福岡・佐賀・長崎で被害が大きかったのは、有明海沿岸の海抜0mに近い地域で、有明海の満潮時に排水不良が起こったようだが、地球温暖化で海面が上がるにつれ海抜はさらに低くなるため、ここでも土地利用の見直しが必要である。 また、ダムや河川は、底に泥が溜まって浅くなっても浚渫せず、本来の能力を維持できていない場合が多いそうだ。そのため、人口減の現在は、新しいダムを作るより現存するダムや河川を適格に管理し、できれば強化して(水力発電等の)多目的で使えるようにするのが経済的だ。 このように事前の災害防止を怠り、国民の命を粗末にしながら、*1-4のように、防衛省は九州の豪雨被害に自衛隊員を2万人派遣して人命救助や土砂の撤去に当たらせるそうで、現在はそれが必要だが、まるで賽の河原の石積みのように思える。 そのため、*1-5のように、激甚災害に指定するのなら、“復旧”して元の場所に同じ建物を建て、毎年同じことを繰り返して国民の血税を使うのではなく、適格な住居規制を設けて街づくりをやり直し、安全な街を作れるように復興を手伝うことが重要であり、それには、(戦争中でないため時間がある)自衛隊の労働力も使えばよいと思う。 (2)リスクを考慮した街づくりと既存施設の維持管理 1)住宅ゾーンの規制 朝日新聞は、2020年3月22日、*2-1のように、「①政府が土地利用規制に乗り出し、都市計画法等の改正案を閣議決定して国会に提出する」「②ダムや堤防などハード面の整備だけに頼らず、街づくりから変えるという考えは理にかなう」「③レッドゾーン・イエローゾーンでの住宅開発の許可を厳しくする」「④権利の制限に繋がるので、どこから網をかけるかは難しい」「⑤被害をうけた工場が移転して地価が下がった場所で宅地開発が進むのを目にする」「⑥浸水想定区域に住む人は、2015年時点で20年前に比べて4%増、世帯は25%増だ」としている。 このうち①②③はそうすべきだが、④を気遣って⑤⑥を野放しにすることが住民の権利保護に繋がるのかと言えば、自治体がその土地の安全性に関する情報を開示し、安全を守れる都市計画を作って住民に安全を保障することが、自治体の仕事でもあり住民の権利を護ることだと、私は思う。つまり、これをやらないことこそ、必要な仕事をしない不作為である。 2)ダムや河川への土砂の堆積 ダムに土砂が堆積して貯水量が減り、本来の治水機能を発揮していないダムが全国に100カ所以上あることを、会計検査院が、*2-2のように、2014年に指摘している。これでは多発している豪雨に対応できないとして、会計検査院は国土交通相に改善を求めた。中には、堆砂量が計画堆砂量の3倍以上に達しているダムも2カ所あったそうだ。 放流して人災を起こしたダムには、このような問題があったのではないか検証すべきで、設定貯水量が建設当時のままで、現在の堆砂量をダムの貯水量に反映していないなどというのは、論外だ。さらに、地震計が故障しているのに気づきながら3年以上も放置していた3県が管理する5ダム、地震計とダム管理者への自動通報装置を接続していないため地震発生時に速やかに臨時点検ができない状態のダム、非常用発電設備の燃料が規定を満たす備蓄量に達していないダムも数多く見られたそうで、それこそ国民の命を守るという意識に欠けている。 そのため、会計検査院は国交省に対し、3つの改善処置と自治体等への周知徹底を求めたそうだが、2014年に指摘されてから6年後の現在、まだ改善されていなかったとすれば人災である。 3)まだ台風ではなく、梅雨なのだ 政府は、*2-3のように、2019年12月20日、地方自治体が河川やダムにたまった土砂やヘドロを取り除く作業を総務省が支援することとし、当初予算案で900億円を計上したそうだ。 しかし、他の無駄遣いが多い割には、土砂の浚渫を地方債の起債対象として起債額の70%を地方交付税で措置する政策で、それを行うことができない自治体は多く、起こった災害に対して、このように膨大な予備費を使わなければならなくなるのである。そして、今回の豪雨は、まだ台風ではなく梅雨であるため、早急に対策を実施できるようにすべきだ。 (3)地域エネルギー 日経BPが、2015年6月29日、*3-1のように、「①日本各地で、地域新電力(地域密着型のエネルギー事業)が立ち上がっている」「②背景は電力小売りの全面自由化」「③再生可能エネルギーなどの地域資源を活用した電力を購入して小売りすることに多くの事業者が名乗りを挙げている」「④地域資源を生かしてエネルギーを生み出し、それを地域内で消費すればエネルギー資金が地域内で還流し、地域活性化に繋がる」「⑤事業が活性化して市外にも流通すれば収益が膨らむ」と記載しており、これは事実だったのだが、原発の再稼働とともに送電線が満杯という理由で話が下火になってしまった。 しかし、*3-2のように、熊本県南阿蘇村で豊富な湧水を活用した小水力発電施設が整備されることになっており、水力発電なら治水ダムや利水ダムも利用できる筈だ。 このように全く工夫が足りない中、*3-3のように、取引条件として環境対応を重視する顧客の要望があり、事業に必要な電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的企業連合の「RE100」に加盟する日本企業は、30社に達したそうだ。 しかし、実績では欧米勢に大きく後れを取っており、その理由は、日本では太陽光17.7円/kwh(2017年)、陸上風力15.8円/kwh(2017年)と未だに再エネ調達コストが高いからで、これは、世界の太陽光9.1円/kwh、陸上風力7.4円/kwhを大きく上回っている。ここでも、世界は既に、日本政府が2030年に実現を目指す目標を達成済であり、日本はどうしてこのように何でも遅いのかを、猛烈に反省すべきだ。 ・・参考資料・・ <2020年九州豪雨> *1-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200708/KT200707ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2020年7月8日) 高齢施設の被災 突きつけられた重い課題 熊本県南部の豪雨による特別養護老人ホーム「千寿園」の浸水被害で、入所者14人の死亡が確認された。 自力避難の困難な高齢者が犠牲になるケースは、過去の水害でも繰り返されてきた。命を守るために何が必要か。突きつけられた重い課題に改めて向き合わねばならない。濁流が押し寄せる中、職員は地域住民の協力も得て入所者の救出に奮闘した。だがエレベーターもなく、一人一人を抱えて階段を上るのに時間がかかり、全員を救うことはできなかった。熊本日日新聞の報道によると、施設長は当時、増水より土砂崩れを心配していたという。近くの球磨川と支流の合流点に数年前、水位の急上昇を防ぐ「導流堤」が完成していたこともあった。水位が急激に高まり、対応が追いつかなかった経緯が浮かぶ。早く避難に踏み切っていれば救えたのではないかと悔やまれる。国の調査では、浸水の恐れがある場所に立つ全国の高齢者施設などのうち、避難計画を作成済みなのは昨年3月時点で36%にとどまる。千寿園は作成していた。作成を促すと同時に、既存の計画に見落としている点はないか、見直しを進めるべきだ。早めの避難が大切なことは確かだ。ただ、高齢者の移動は心身に与える負担も大きい。人手や時間もかかる。踏み切るタイミングの判断は簡単ではない。避難を促す上で欠かせないのは地元自治体の役割だ。避難の勧告や指示は適切に出て正確に伝わっていたか。検証が必要だろう。2016年の台風で入居者9人が死亡した岩手県岩泉町の高齢者グループホームの事例では、当時の町長が迷いながら結局、避難指示を出せなかった。河川や気象の情報を集めているのは、国土交通省や気象庁など国の機関だ。それが自治体の判断を支えられる態勢になっているかどうかが重要なポイントだ。昨年秋の台風19号災害では、千曲川の堤防が決壊したとの情報が国交省から長野市に伝わっていなかった。情報共有や行政の連携態勢を整える必要がある。高齢者施設は、広い面積が取れて地価が安いなどの理由から、必ずしも安全な場所に立地してはいない。千寿園の地点は、以前からその危険性が知られていた。氾濫の恐れが高い地域への建設を規制するよう求める専門家もいる。災害に強い高齢者施設の在り方は、まちづくりの観点からも考えていかねばならない。 *1-2:https://www.agrinews.co.jp/p51285.html (日本農業新聞 2020年7月7日) 九州豪雨 電線にごみ、屋根に流木「水位ここまで」 熊本県人吉市・球磨村 JAくま人吉支所球磨村店の屋根と同じ高さにある電線には、氾濫した川の水が運んだ木の枝や草などがぶら下がっていた。球磨川の氾濫で5日まで水に漬かっていた人吉市や球磨村では6日、一夜明けて変わり果てた光景が広がった。屋根の高さまで水が押し寄せ、JAくま管内の支店建物や農地などでも大きな被害が出ている。JA本店の職員らは、5日朝から被害を受けた支所に集まり支援を始めたが、6日も雨は降り続いており、予断を許さない状況が続いている。「普段見慣れている分、余計に衝撃的な光景だ」。JAくま本所から人吉支所に向かう道中、同行したJA職員はつぶやいた。JAくま本所から国道219号を西に進むと球磨川に着く。川を渡ると「九州の小京都」と呼ばれることでも有名な人吉市の変わり果てた光景が広がる。頻繁に行き交う自衛隊の車両や木や電柱には、泥が付着。住宅街には動かなくなった車が点在する。JAでは5日朝、「手の空いている職員は人吉支所に集合」と指示が出て、JA役職員や女性部の部員らが大勢集まった。支所での清掃作業や移動店舗車による臨時の窓口業務を行う。同JAには県内のJAから支援物資を送りたいとの連絡が来ているが、JAの尾方朝則参事は「JAからの協力は非常にうれしい。ただ6日も雨が降り続き、順調に到着できない」と話す。球磨村でも、大きな被害が出ている。JA人吉支所球磨村店には水が屋根の高さまで押し寄せた。店舗から道路の電柱までつながる電線には川から流れ着いた草や、ごみ、布などが付着。押し寄せた水の水位を物語っている。店舗の隣で地元の住民2家族が自宅内の泥のかき出し、水に漬かった家具を外に運び出していた。コンビニには、自衛隊の復旧作業車が10台近く止まっていた。水田には、大量の泥が流れ込んだまま。水田の隣の畑にはトウモロコシが植えてあるが、水の勢いで倒壊寸前まで曲がっている。軒高2メートル以上の2棟のハウスの屋根にも流木や草が付着している。付近の住宅は無残な形で潰れ、原形をとどめていない。JAによると、人吉市や球磨村は5日中に水が引かなかった。さらに6日も雨が降り続いており、被害の実態把握には、時間がかかる見通しだ。 *1-3:https://www.chunichi.co.jp/article/84866?rct=national (中日新聞 2020年7月7日) 九州の豪雨被害拡大 死者52人に、筑後川氾濫 停滞する梅雨前線の影響で九州は七日も北部を中心に猛烈な雨が降った。気象庁は福岡、佐賀、長崎三県の一部自治体への大雨特別警報を警報に切り替え、引き続き警戒を呼び掛けた。大分県日田(ひた)市では筑後川が氾濫。熊本、大分県境の下筌(しもうけ)ダムは基準水位を越え、緊急放流に踏み切った。福岡県で初めて死者一人を確認。大牟田市では避難所が周辺の冠水で孤立し、県は陸上自衛隊に災害派遣を要請した。熊本県ではこれまでに全県で五十一人が死亡、二人が心肺停止。行方不明者十一人の捜索が続いた。武田良太防災担当相は九州の豪雨について行政上の特例措置を通じて被災者を救済する特定非常災害の指定を検討すると明らかにした。福岡県によると、死亡したのは大牟田市の田中春子さん(87)。六日夜に冠水した自宅で見つかり、病院で死亡が確認された。同市で冠水した避難所は二カ所で、七日午前四時の時点で計二百人以上が身を寄せていたという。筑後川の氾濫を受け、福岡管区気象台と国土交通省は午前八時三十五分、大雨・洪水警戒レベルで最高のレベル5に当たる氾濫発生情報を発表した。 *1-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/40712 (東京新聞 2020年7月7日) 災害派遣2万人態勢に増強 自衛隊、被害拡大のため 防衛省は7日、九州の豪雨被害に対処する自衛隊の災害派遣の規模を、現行の1万人態勢から2万人態勢に拡大すると発表した。自衛隊は4日から熊本県で人命救助や土砂の撤去に当たっており、九州北部にも被害が広がったため増員が必要と判断した。防衛省によると、7日時点で、熊本県に加え、避難所が水没した福岡県大牟田市や大分県にも部隊を派遣した。これまでは九州を拠点にする部隊が活動してきたが、今後は他の地域の部隊を活用することも検討する。河野太郎防衛相は7日午後、ツイッターで「(熊本県)球磨村の孤立が深刻で、隊員が徒歩で水、食料を届け、安否確認をしている」と投稿した。 *1-5:https://jp.reuters.com/article/suga-kyushu-disaster-idJPKBN2490EL (Reuters 2020年7月8日) 九州での豪雨、激甚災害に指定の見通し=官房長官 菅義偉官房長官は8日午前の会見で、九州の豪雨被害について、被災した自治体が復旧事業を行う際に国から財政的な支援を受けられる「激甚災害」に指定する見通しだと明言した。同長官は「被災地の早期復旧のために、財政面で不安を持つことなく復旧に取り組むことが大事であり、基準を満たしたものから速やかに行いたい」とした。東京都内で新型コロナウイルスの新規感染者が連日100人超確認されていることについては、3週間ごとの見直しに沿って専門家に議論してもらった上で、都外への外出に気を付けてもらうという中で、予定通り次の段階に制限を緩和する方針だと述べた。 <リスクを考慮した街づくりと既存施設の維持管理> *2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14412053.html (朝日新聞社説 2020年3月22日) 災害と住まい 危ない土地には規制を 大きな自然災害が近年相次いでいるのに対応するため、政府が土地の利用規制に乗り出すことになった。都市計画法などの改正案を先月閣議決定し、この国会に提出している。ダムや堤防などハード面の整備だけに頼らず、まちづくりの思想から変えていこうという考えは理にかなう。行政はもちろん、住民が認識を深めるのに役立つ審議を期待したい。検討されているのは、▽出水や土砂災害などの危険性が高い「レッドゾーン」は、居住をすすめる区域から除くことを徹底する▽そこでは事務所や店舗、ホテルなどの開発を原則として禁止する▽市街化調整区域内にあって浸水被害が予想される「イエローゾーン」で、住宅開発の許可を厳しくする―などだ。行政の勧告に従わない事業者の氏名を公表できるようにすることも盛り込まれている。がけの下や地盤の弱い土地、川沿い・海沿いの低地、遊水池跡といった危険な地域に、住宅や人が集まる施設がなければ、災害が起きても被害を抑えることができる。だが権利の制限につながるため、どこまで個人や企業の判断に任せ、どこから網をかけるかの線引きが難しく、結果として野放図ともいえる開発が進んできた。しかし気候は激甚化し、地震も頻発する。手をこまぬいているわけにはいかない。被災地でよく目にするのは、被害をうけた工場などが移転して地価が下がった一帯で、宅地開発が進む現象だ。山梨大の調査によると、国や県の浸水想定区域に住む人は、2015年時点で20年前に比べて4%増、世帯は25%も増えている。法改正はこうした動きへの一定の歯止めにはなろう。だが、同じイエローゾーンでも規制強化措置がとられるのは市街化調整区域に限られるなど、踏み込み不足と思える点もある。政府は、宅建業法も今後見直し、不動産取引の際に水害リスクを告げるよう、業者に義務づけることを検討中だ。議論を重ね、危ない土地への居住を減らす方策を広げてほしい。参考になるのは滋賀県が14年に定めた流域治水推進条例だ。リスク告知を努力義務とし、200年に1度の大雨で3メートル以上浸水する土地では、新改築時に地盤をかさ上げしたり2階建て以上にしたりするよう求める。対象エリアに指定するには地域の合意が必要で、県内に50ある候補地区のうち、実現したのはまだ2カ所にとどまる。それでも地域で話し合うことで、リスクの認識は深まる。20年先、30年先を見越して安全なまちをどう築くか。旧来と異なる発想で考えたい。 *2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO78834440U4A021C1000000/ (日経新聞 2014/10/24) 堆砂で機能低下のダム100カ所以上、検査院が指摘 ダム内に土砂が堆積して貯水量が減り、本来の治水機能を発揮できない恐れのあるダムが全国で100カ所以上あることが2014年10月21日、会計検査院の調査で分かった。このところ多発している突発的な局地的豪雨などに対応できないとして、検査院は国土交通相に改善を求めた。検査院が検査したのは、国交省が管理する29ダムと21道府県が管理する182ダムの合計211ダム。検査における着眼点は、点検や計測の実施状況、堆砂への対応状況、緊急時への備えなどだ。 ■計画堆砂量の3倍以上に達しているダムも 指摘が最も多かったのは堆砂への対応状況で、主に3つのケースが見られた。1つ目は、実際の堆砂量が計画堆砂量を上回る状況。計画年数に達していないのに、既に堆砂量が計画堆砂量を上回っている事例が、9府県管理の20ダムに見られた。中には、堆砂量が計画堆砂量の3倍以上に達しているダムも2カ所あった。検査院は、実際に利用できる貯水容量が減少するのに加え、貯水池の上流部に土砂が堆積した場合には、貯水池上流の河川などに影響を及ぼす場合もあると指摘している。2つ目は、土砂が洪水調節容量内に入り込んでいるケースだ。たとえ堆砂量が計画堆砂量に達していなくても、洪水時に本来、貯留できる水量を貯留できなくなり、ダムの下流の河川に影響を及ぼす恐れがある。検査院によれば、国交省所管の14ダムと16道県所管の92ダムでこうした状態になっていた。このほか、11道県所管の48ダムはそもそも洪水調節容量内の堆砂量を算出せず、状況を把握していなかった。3つ目は、現在の堆砂量をダムの貯水量に反映していない例だ。国交省が管理する22ダムと20道府県が管理する130ダムでは、設定貯水量が建設当時のままで、堆砂の測量結果と連動していなかった。検査院はこれらのダムでは貯水位が建設当時よりも速く変化するため、貯水池への水の流入量を正確に測れない可能性があると指摘。放流のタイミングなど、ダムの操作を誤る恐れがあるとしている。 ■地震計が壊れていても放置 河川法に基づく操作規則に定められた点検や計測の履行については、漏水量の計測や設備の点検などが規則どおりに行われていなかった。例えば9県が管理する25ダムでは、「計測値に大きな変化がみられない」ことを理由に、一部の項目について3年以上にわたって計測を止めていた。さらに、3県が管理する5ダムでは点検の際、堤体下部に設置された地震計が故障しているのに気づきながら3年以上も放置していた。このほか、地震計とダム管理者への自動通報装置を接続していないため、地震発生時に速やかに臨時点検ができない状態のダムや、非常用発電設備の燃料が規定を満たす備蓄量に達していないダムも数多く見られた。検査院によると、維持管理に不備のあるダムは、合計201カ所あった。以上の調査結果を踏まえ、検査院は国交省に対して以下の3つの改善処置と自治体などへの周知徹底を求めた。 1)維持管理に必要な計測を適切に行い、必要に応じて設備の修繕などを施す。 2)計画堆砂量を大きく上回るなど、堆砂に関わる問題を抱えている場合は適宜、対策を 検討する。また、堆砂量の測定結果は、ダム操作などに関わる情報に反映させる。 3)地震発生時に速やかに臨時点検が行える体制を整えるとともに、緊急時に所要の連続 運転可能時間を確保できるように、非常用発電設備の燃料調達などに万全を期す。 *2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14302512.html (朝日新聞 2019年12月21日) 河川やダム氾濫、防止支援900億円 予算案 10月の台風19号で東日本の広い地域で洪水被害が出たことを受け、地方自治体が河川やダムにたまった土砂やヘドロを取り除いて氾濫(はんらん)しにくくする作業を総務省が支援する。政府が20日に閣議決定した当初予算案で900億円を計上した。来年の通常国会に地方財政法改正案を提出し、土砂の浚渫(しゅんせつ)を地方債の起債対象にする一方、起債額の70%を地方交付税で措置する。事業は2024年度までの5年間の予定で、事業費は計4900億円を見込む。 <地域エネルギー> *3-1:https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/061800007/062500005/ (日経BP 2015.6.29) ■総論■地域エネルギービジネス、動く 日本各地で、地域密着型のエネルギー事業が立ち上がっている。大きな流れの一つが地域新電力(特定規模電気事業者、PPS)である。背景にあるのは、電力小売りの全面自由化。再生可能エネルギーなど地域の資源を活用した電力を購入し、小売りすることに新たなビジネスチャンスを見出し、数多くの事業者がPPSに名乗りを挙げている。地域の資源を生かしてエネルギーを生み出すとともに、その電力を地域で消費すれば、エネルギーに関わる資金は地域内で還流する。そして資金の動きが活発になれば、地域の活性化につながる――。地域エネルギービジネスの根底にある、この地域活性化の効果に目をつけているのはPPSだけではない。地方自治体の中にも、地方創生に向けてエネルギービジネスに取り組む例は少なくない。PPSの動きの中にも、自治体が関与しているケースがいくつかある。再生可能エネルギーなど地域の資源を生かした電力は、燃料の製造、配送をはじめ、地域の雇用を生み出す。事業が活性化して市外にも流通すれば、収益が膨らむ。加えて、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)により、電力会社に売電できれば、新たな収入源になる。とはいえ、エネルギー産業は多額の初期投資が必要になる。地域内で安定的に燃料を確保し、配信できる体制づくりも欠かせない。しかも、その仕組み・体制づくりやノウハウは、太陽光・バイオマス・風力・小水力など、発電の方式によって全く異なる。そこで一部の自治体は、地元企業とタッグを組んで課題解決に挑んでいる。 *3-2:https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/nishinippon/region/nishinippon-1000574509 (西日本新聞 2020年1月10日) 南阿蘇で小水力発電着工 湧水生かし21年春から事業開始 熊本県南阿蘇村に豊富な湧水を活用した小水力発電施設が整備されることになり、8日に現地で起工式があった。棚田を潤す農業用水を発電にも有効利用する県内初の試み。来年4月から事業を始め、一般家庭350戸分を発電する計画。売電収入の一部は地元の農業団体に還元され、農業振興にもつなげていく。施設が整備されるのは、緩やかな棚田が広がる久木野(くぎの)地区。全長約1キロの地下導水路を整備し、36メートルの高低差を利用してタービンを回し、最大出力199キロワットを発電する計画。売電収入は年間4600万円の見込み。このうち400万円は利水料として、地元農家でつくる久木野村土地改良区(567人、580ヘクタール)に配分される。小水力発電を巡っては、地域に眠る自然エネルギー活用に向け、県とNPO法人・くまもと温暖化対策センターが2009年から事業候補地を検討。36カ所から南阿蘇村が選ばれ、14年に事業認可された。ところが、東日本大震災後に太陽光発電施設が急増して送電トラブルが生じていたほか、16年の熊本地震で建設用地が被災し、着工が遅れていた。この日は、村と関係団体、運営会社の協定調印式もあった。総事業費は3億8千万円で運営会社が全額負担する。旧清和村長で同センター副理事長の兼瀬哲治さんは「農山村は、豊かな自然エネルギーの供給基地でもある。発電収益を地域に循環させることで、持続可能な農業や景観保全につなげていってもらいたい」と話した。 *3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53748060U9A221C1TJ3000/?n_cid=DSREA001 (日経新聞 2019/12/25) 事業電力を100%再エネに 日本企業、欧米勢に後れ 事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す、国際的な企業連合「RE100」に加盟する日本企業が30社に達した。背景には、取引条件として環境対応を重視する顧客の要望がある。ただ実績では欧米勢に大きく後れを取る。再生エネの調達コストが高い日本で、どうやって実効性を高めるかが課題になっている。楽天は17日、RE100に加盟し、2025年までに事業活動の電力を100%再生エネにすると発表した。データセンターや物流拠点で多くの電力を消費する同社だが、近年は再生エネ関連サービスにも注力する。同社の小林正忠常務執行役員は「イノベーションによる気候変動対策への貢献を目指す」とコメント。今後は本社だけでなく、楽天市場の出店店舗や楽天トラベルの加盟宿泊施設に対しても、再生エネの導入を支援していく方針だ。14年に発足したRE100は世界約220社が加盟、売上高合計は5.4兆ドル(約590兆円)に達する巨大連合だ。日本企業は17年のリコーを皮切りに、今秋以降にも東急やLIXILグループなどが参加。小売りや金融など幅広い業種に広がり、楽天の参画で加盟数は30社になった。数では一定の存在感を持つ日本勢だが、肝心の再エネ利用率では欧米勢に大きく後れを取る。RE100を主導する英国の非政府組織(NGO)によると、18年に再生エネの比率が95%を超えたのは45社で、ほぼ全てが欧米企業。日本企業のほとんどは25%未満(73社)のグループに属する。19年7月に再生エネ100%を実現した城南信用金庫など一部を除き、大半の企業にとって目標達成は遠い。取り組みの遅れは、企業の競争力に影響を与えはじめた。グローバルでの商取引では「再生エネの導入が前提条件になりつつある」(公益財団法人・自然エネルギー財団の石田雅也氏)ためだ。リコーは19年度から、国内外の5工場を対象に、主力製品のA3複合機の組み立てに使用する電力を100%再生エネに切り替えている。欧州を中心とした海外の大口顧客は、再生エネの利活用を購買判断の基準にしているためだ。「商談などでも重視され、未対応はリスクでしかない」と同社は説明する。今年RE100に加盟したパナソニックも、年内にも国内外の4工場で電力を100%再生エネにする計画だ。だがこうした動きは、有力企業の一部にとどまる。先進的とされるリコーでも全社の再エネ比率は18年時点で9%。19年度中に多少高まるが、100%を実現するのは50年になる見通しだ。一方で海外大手ははるかに先を行く。米アップルは世界中のサプライヤーに再生エネの導入を推奨。既に40社以上がアップル向け生産ラインで再生エネ100%を実現した。日本でも日本電産など3社が対応している。原動力はESG(環境・社会・企業統治)投資の動きだ。米ゴールドマン・サックスは12月中旬に、石炭火力発電や石炭採掘事業への融資を削減することを表明。環境対策を強化する企業に多くの投資資金が流れ込む。その象徴が資金の使い道を環境事業に絞った環境債(グリーンボンド)の急増だ。19年は2500億ドル(約27兆円)を超え、過去最高を更新した。アップルは11月、20億ユーロ(約2400億円)の環境債を発行した。環境意識の高い大企業がマネーを呼び込み、再生エネの「経済圏」を拡張し企業価値を高めていく。再生エネの導入に二の足を踏んでいては、この流れに乗り遅れかねない。RE100を推進する業界団体「JCLP」の石田建一・共同代表(積水ハウス常務執行役員)は、「日本企業も再生エネの利活用方針を明確に打ち出し、具体的な実効策に着手する段階に来ている」と強調する。 ■太陽光、風力 高コストがネック 企業が再生可能エネルギーの利活用を進めるには、「理念」だけでは不十分だ。経済合理性を度外視した取り組みは株主の理解を得られず、持続性もないためだ。その点で日本企業は大きなハンディを背負っている。経済産業省の資料などによると、日本における太陽光発電のコストは17年に1キロワット時あたり17.7円で、陸上風力発電は15.8円。一方、世界の平均コストは太陽光が9.1円、陸上風力が7.4円だ。日本政府が30年に実現を目指す水準を、既に達成している。再生エネ比率を高める上では再生エネ価値を取引する「証書」を購入する手法も有効だが、通常の電力調達より割高になる。証書による調達に加え再生エネ電源への直接投資などを進めなければ、日本企業が海外勢に追いつくのは難しい。再生エネ価格の高止まりは、海外企業が日本進出をためらう原因にもなる。米グーグルは千葉県に日本初のデータセンターを開設する計画だが、再生エネの調達で難航する可能性もある。仮に化石燃料由来の電力を使うようなら、再生エネ比率が下がってしまう。「日本への直接投資の広がりにも水を差しかねない」(業界関係者)。アップルやソニーなど、RE100に加盟する大手20社は6月、日本の電力に占める再生エネ比率を30年に50%に引き上げるよう求める提言を発表した。政府は30年にこの比率を22~24%に引き上げる目標を掲げ企業への支援を強化する方針だが、今後はより踏み込んだ環境整備も重要になりそうだ。 <では、どうするべきか?> PS(2020年7月9日追加):*4-1は、熊本県南部を中心とした豪雨により、球磨川の12カ所が氾濫・決壊し、土砂崩れも続いて犠牲者が増えているため、国交省が打ち出している「流域治水」を球磨川はじめ河川ごとに急いで計画策定するべきだとしている。具体的には「①土砂災害の危険性がある地域の開発規制や住宅移転」「②雨水をためる遊水地、ビルの地下貯水施設整備」「③ため池や田んぼの貯水機能の活用」「④高架道路の避難所活用」「⑤鉄道橋の流失防止のための補強」などを進めるそうで賛成だ。特に、川底やダムの掘削は、掘削された土砂を使って堤防のかさ上げや埋め立てができるため、同時に行った方が効率的である。また、*4-2のように、中部地方でも豪雨被害で、岐阜県・長野県で4,300人が孤立し、下呂市小坂町で飛騨川沿いの国道41号が約300mにわたって崩落したほか、道路の崩壊や冠水が相次いでいるそうだ。 日経新聞も、*4-3のように、2020年7月9日、「⑤九州や岐阜県を襲った豪雨で8日までに115河川が『氾濫危険水位』を超えた」「⑥梅雨末期の豪雨が広範囲に及んで氾濫危険水位を超えた河川数はこの5年間で5倍に増加した」「⑦気候変動で豪雨が増え、河川の安全度が下がっている恐れがある」「⑧ハード整備だけでなく、流域全体の治水対策が急務だ」「⑨地球温暖化などの影響で河川の氾濫リスクが高まっている」「⑩国交省は20年度から行政・民間企業・地域住民らが連携して『流域治水』を進める」としている。私も、避難ばかりしており、体育館等で長期間を過ごすのは文明国の国民のすることではないため、早急にITや5Gの普及だけではない安心して暮らせるスマートな街づくりを企画すべきだと考える。 なお、*4-4のように、EUの欧州委員会は、2020年7月8日、水素を脱炭素計画の中心に据えて、運輸や産業でも排出ゼロをめざし、景気浮揚にも繋げ、世界をリードするための水素戦略を公表したそうだ。「パリ協定」は地球規模のCO₂排出量を実質0にすることをめざしており、EUは2050年までに域内の温暖化ガス排出を実質0にする目標を掲げているため、コストは下げられるだろうし、これなら投資価値がある。水素燃料電池は日本で開発されたのだが、おかしな批判や対応が多くて日本では普及せず、これもEUで先に市場投入されることになったわけだ。 2020.7.9朝日新聞 2020.7.9中日新聞 (図の説明:1番左の図のように、岐阜県・長野県でも豪雨被害があり、右の3つの図のように、河川の氾濫やがけ崩れによる被害となっている) *4-1:https://kumanichi.com/column/syasetsu/1518004/ (熊本日日新聞 2020年7月9日) 流域治水 球磨川でも新たな計画を 県南部を中心とした3日からの豪雨では、球磨川の12カ所が氾濫・決壊した。土砂崩れも相次ぎ、犠牲者は日を追って増えている。活発化した梅雨前線はさらに福岡や大分県など九州北部、中部地方にも被害を及ぼした。人命のみならず、家屋の浸水、橋の流失、道路や堤防の崩壊など、各地に大きな爪痕を残している。今年に限ったことではない。日本列島は、死者が数十人を超えるような風水害に毎年のように見舞われている。そうした現状を踏まえ、国土交通省が防災・減災の新たな在り方として打ち出したのが「流域治水」である。ダムや堤防だけに頼るのではなく、流域のあらゆる力を集めて豪雨災害を防ぐ、という考え方だ。地球規模の気候変動の影響で、水害を含めた自然災害は大規模化・頻発化している。もはや従来のやり方では対処できず、国交省の方向性は間違っていないだろう。球磨川をはじめ、河川ごとの計画を急いで策定するべきだ。これまで治水は、主に国管理の多目的ダム(治水・利水)や河川の堤防を中心に考えられてきた。だが、ハード整備には時間がかかり、それだけに頼るのは限界がある。このため新たな考え方では、国、自治体、企業、住民など流域のあらゆる関係者に協力を求め、ソフトを含め対策を総動員する。具体的には(1)土砂災害の危険性がある地域の開発規制や住宅移転(2)雨水をためる遊水地、ビルの地下貯水施設整備(3)ため池や田んぼの貯水機能の活用(4)高架道路の避難所活用(5)鉄道橋の流失防止のための補強-などを進める。農業や発電用の利水ダムについても、大雨を予想して事前放流し、雨水のせき止めに役立てる。多くは自治体や電力会社の運営だが、国は全国955カ所のダムと既に協定を結んでおり、事前放流が可能になっている。国交省は全国109の1級水系について、地域の実情に応じた「流域治水プロジェクト」を策定するとしている。一刻も早く実行してもらいたい。1級河川の球磨川水系では、1963年から3年続けて大きな洪水が発生。国は66年、治水目的の「川辺川ダム」建設計画を発表した。しかし流域に賛否もあって事業は進まず、2008年に蒲島郁夫知事が建設反対を決めた。その後、国、県、流域自治体で「ダムによらない治水」の在り方を協議。川底掘削、堤防かさ上げ、遊水地の整備などを組み合わせた10案が候補に挙がった。だが現在までに決定には至らず、その中で今回の豪雨災害が起きた。また、球磨川流域では県営市房ダムなど6ダムで事前放流が可能となっていた。だが、豪雨の予測が難しいこともあって現実には実行されず、今後に課題を残した。国、県、自治体は今後、「流域治水」の考え方も踏まえて球磨川水系の新たな治水プロジェクトを策定すべきだ。その根底には当然、今回の被害の検証がなければならない。 *4-2:https://www.chunichi.co.jp/article/85971 (中日新聞 2020年7月9日) 岐阜・長野で4300人孤立 中部でも豪雨被害、9日以降も大雨警戒 梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、中部地方は八日、各地で大雨となった。岐阜県では下呂市や高山市で道路が寸断されるなどし約四千人が孤立。長野県でも観光地の上高地につながる国道で土砂崩れが起き、宿泊客ら三百人以上が孤立している。岐阜、長野両県に一時、大雨特別警報が出され、その後解除されたが、気象庁は九日以降も大雨を予想。これまでの雨で地盤が緩んでいる所もあり、引き続き厳重な警戒を呼び掛けている。岐阜県では下呂市萩原町の飛騨川と、白川町河岐の白川と飛騨川の合流地点で氾濫が発生した。同県は大雨特別警報が出された下呂、高山、中津川など六市に対し、災害救助法の適用を決めた。六市ではピーク時に計二十一万九千人に避難指示が出た。八日午後十一時半現在、下呂市など四市町で百九十六人が避難している。けが人は見つかっていない。下呂市小坂町で、飛騨川沿いの国道41号が約三百メートルにわたって崩落したほか、道路の崩壊や冠水などが相次ぎ、高山、下呂、郡上の三市の計十七集落で約四千人が孤立。九日にはいずれも解消される見通し。 *4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200709&ng=DGKKZO61296530Y0A700C2CC1000 (日経新聞 2020.7.9) 115河川「氾濫危険水位」、増える豪雨、広域で被害 流域全体で対策急務 九州や岐阜県などを襲った今回の豪雨で、8日までに115河川が「氾濫危険水位」を超えた。梅雨末期の豪雨は近年、広範囲に及び、氾濫危険水位を超えた河川数は5年間で5倍に増加。気候変動で豪雨が増え、河川の安全度が下がっている恐れがある。堤防建設などのハード整備だけでなく、流域全体の治水対策が急務だ。8日は岐阜県で非常に激しい雨が降り、山間部の下呂市で飛騨川が氾濫。大分県でも日田市の筑後川と由布市の大分川が氾濫した。国土交通省によると、8日午後2時時点で氾濫危険水位を超えていたのは長野県の木曽川や犀川など7。今回の豪雨で一時、氾濫危険水位を超え、すでに下回った河川も108に上った。地球温暖化などの影響で河川の氾濫リスクは近年高まっている。国交省によると、氾濫危険水位を超えた河川数は2014年に83だったが、19年は403と5年で5倍に増加した。17年の九州北部豪雨や18年の西日本豪雨など、梅雨末期の豪雨が広範囲で河川氾濫を引き起こすケースも多い。増える災害に対して、堤防建設などのインフラ整備はコストと時間がかかるため、国交省は20年度から行政や民間企業、地域住民らが連携してインフラ整備に頼らない「流域治水」を進める。戦後最大の洪水と同規模の災害を想定し、流域ごとに雨水貯留施設やため池の活用、工場の浸水対策などを検討する。同省担当者は「河川管理区域内だけの対策では限界があり、行政だけでなく関係者全体を巻き込みたい」と話す。福島、宮城両県を流れる阿武隈川、新潟、長野両県にまたがる信濃川など、昨年の台風19号による河川氾濫の被害が大きかった9都県の7水系で計画が進んでいる。埼玉県の入間川流域では県や市町、河川事務所が連携し、1月末に計画を公表した。20年度は決壊箇所の災害復旧や遊水池の整備に取り組む。プロジェクトには避難行動を時系列で示す「マイ・タイムライン」の普及などのソフト対策も盛り込んだ。治水対策に詳しい京都大の今本博健名誉教授(河川工学)は「国内ではダムによる治水が重視され、堤防の補強や川底を掘削して流量を増やすなどの対策が遅れてきた」と指摘。一方で「従来の治水対策の範囲では今回の雨量で洪水を防げなかった可能性がある。避難計画やまちづくりも含めた幅広い視点で、被害を減らす取り組みが必要だ」と話している。 *4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200709&ng=DGKKZO61293600Y0A700C2FF8000 (日経新聞 2020.7.9) EU、脱炭素の柱に「水素」 戦略公表、景気浮揚狙う 欧州連合(EU)の欧州委員会は8日「水素戦略」を公表した。燃焼しても温暖化ガスを排出しない水素を脱炭素計画の中心に据え、運輸や産業でも排出ゼロをめざす。景気浮揚にもつなげる。世界での脱炭素競争をリードする考えだが、コストが課題となる。「この戦略の狙いは(温暖化ガスの)排出ゼロ達成と、新型コロナウイルスが経済に与えたダメージの克服だ」。欧州委員会のティメルマンス上級副委員長(気候変動担当)は8日の記者会見で力説した。EUは2050年までに域内の温暖化ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げている。これまで力を入れてきた再生可能エネルギー普及は排出のない電力を通じ、家庭やオフィスの脱炭素に貢献しているが、排出ゼロには産業や運輸部門の脱炭素化が欠かせない。だが大型の飛行機や船舶、トラックの電化は難しい。鉄鋼やセメントなどの産業でも現状は石炭を使う必要がある。水素を活用すれば、こうした課題を解決できると期待されている。水素を使う燃料電池車は一部で実用化されている。50年には世界のエネルギー需要の24%を水素がまかなうとの分析もある。水素戦略によると、域内で24年までに水を電気分解して水素をつくる装置を6ギガワット分整備。30年までに40ギガワット超に拡大する。実現に向け、「水素版エアバス」とも言える官民の「クリーン水素連合」を設ける。複数の欧州企業が知見を共有し、水素の生産から輸送、利用までを手掛ける企業連合をつくる。20年に500社が参加し、24年に1千社の参加を見込む。欧州委は50年までの累計投資額は1800億ユーロ(約21兆円)から4700億ユーロにのぼるとみている。関連事業を手掛ける企業を資金面などで支援する仕組みを設け、新技術導入を阻みかねない規制の緩和を検討。21年までにルールを改正し、車や船のための水素充填施設の整備を加速させる。EUとは別に、7月からEU議長国となったドイツも総額1兆円を超える投資計画を発表。内閣改造があったフランスも一段と新エネルギー開発を強化する見通しだ。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、地球規模での排出を将来、実質ゼロにすることをめざす。水素は次世代エネルギー源の一つとして注目される。日本や中国のほか、石炭産出国のオーストラリアや産油国のサウジアラビアなども研究。国際エネルギー機関(IEA)は2日公表の報告書で排出ゼロのカギを握る技術に水素、CO2回収、電池などをあげた。当面はコスト引き下げが重要になる。EUによると、水素生産装置の価格は過去10年間で6割下がったが、30年までにさらに5割減らす。 <原発と安全保障> PS(2020年7月10、12、14日追加):*5-1のように、政府は、中国を意識して敵基地攻撃能力の保有に踏み切るかどうかの検討を始めたそうだが、「①先制攻撃との線引きができなければ、専守防衛からの逸脱になる」「②平和主義や戦争放棄という憲法の理念に背く」というのはもちろんのことだが、敵基地として攻撃されて黙っている国はないため、原発を早々に手じまって使用済核燃料もどこかの地下深くもしくは海底の深い場所に始末しておかなければ、動けない原発を狙った数発のミサイルで、日本中が住めない国になる。 日本政府は、③科学的検証力の弱さ ④後進性(航空機の時代に巨艦主義採用、国際法から逸脱した野蛮な行為、戦略なき進軍、運と精神論への依存、国家のためとした国民への死の強制など) ⑤縦割行政による無責任体制 があって第二次世界大戦に負け、これに懲りて戦争放棄を日本国憲法に入れたにもかかわらず、③④⑤は今でも変わらないのに、日本国憲法の戦争放棄部分をなし崩し的に変えるのは歴史の歯車を逆に回す危険な行為だ。また、サイバー攻撃やバイオ兵器も使える現代は、原爆も過去の兵器となりつつある。 しかし、*5-2は、「⑥低効率の石炭火力発電所を休廃止する」「⑦2030年度の電源構成は原子力20~22%、再エネ22~24%、残り56%は石炭・石油などの化石燃料」「⑧これはフクイチ事故後の2014年に定められ、2018年の見直しでも据え置かれた」「⑨20~22%の電力を確保するためには約30基の原発が必要だが、再稼働した原発は9基に留まる」「⑩原発は重要なベースロード電源」等としている。これは、⑦⑧のように、人為的に電源構成を定めた点が誤りなのであり、⑨⑩は原発を護り、⑥は化石燃料を護っている。地球温暖化にはCO₂だけ削減すればよいというのも③の典型例で、原発が温排水により海を温めていることは周知の事実だ。また、「世界の潮流だから逃れられない」としているのも、自分でよいものへの改革ができない③④の事例だ。さらに、省庁横断的に見れば矛盾だらけで、二重三重に計上され無駄遣いの多い政策や予算は、⑤が変わっていないことを意味する。つまり、再エネを猛烈に伸ばせば全エネルギーを代替できるため、エネルギー源を人為的に配分して原発や化石燃料を市場淘汰から護る「エネルギーミックス」により、公害を出すエネルギーを温存する必要はない。そして、日本における再エネ資源の膨大さや分散発電の有効性については、*5-3・*5-4のように、国内でも既に言い古されたと思われるほど指摘されているのである。 なお、「石炭から水素燃料を取り出す」などというアホなことを書いている新聞記事をよく見かけるが、水を電気分解すれば水素と酸素ができるため、電力が豊富なら水素は安価に作れる。それを小学校で習わなかったのだろうか? (図の説明:1番左は、科学技術予算のGDP比で、日本の地位低下が目立つ。また、左から2番目は農業地帯で利用できる小水力発電の全体像で、右から2番目は山の尾根沿いに設置された風力発電だ。1番右は、漁業地帯の養殖施設に併設された風レンズ風車で、一般の風車より効率的に発電できる) *5-1:ttps://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=658905&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2020/7/5) 敵基地攻撃能力 専守防衛からの逸脱だ 政府は、山口、秋田両県で進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の計画断念を受け、敵基地攻撃能力の保有に踏み切るかどうかの検討を始めた。国家安全保障会議(NSC)で議論して、9月にも方向性を出すという。北朝鮮や中国を仮想敵として日本に向けてミサイルが発射される前に、弾道ミサイル発射基地やミサイルを攻撃しようというのだ。相手国の基地の場所を確認し、防空能力を無力化しておく必要があり、十分な打撃を与える力も欠かせないなど、実現には高いハードルがある。先制攻撃との線引きができなければ、自衛とはいえなくなるだろう。戦後、堅持してきた専守防衛からの逸脱になりかねない。平和主義や戦争放棄という憲法の理念に背くことにもなる。看過できない。自民党は既に前のめりだ。防衛相経験者らを中心に検討チームを設け、論議を始めた。提言をまとめ、政府のNSCの議論に反映させる考えだ。「北朝鮮よりも中国を意識している」(党幹部)という。背景には、沖縄県の尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返すなど、海洋活動を活発化させる中国に対する警戒感の高まりがある。党内にも慎重論はある。岩屋毅前防衛相は「地上イージスが難しいからといって、一足飛びに敵基地攻撃能力を考えるのは論理の飛躍だ」と強調する。連立を組む公明党は否定的である。山口那津男代表は「武力行使を未然に防ぐ外交的な取り組みに力を入れるべきだ」と指摘する。当然だろう。政府はこれまで、米国との役割分担として、敵基地攻撃能力は米側に依存するとしてきた。なぜ今、抜本的に方針転換するのか。地上イージス断念を受け安倍晋三首相は「防衛に空白が生じてはならない」と言う。しかし地上イージスの配備は計画では5年後の2025年以降。それまではイージス艦で対応する方針だった。敵基地攻撃能力の保有を巡り、今秋までに急いで方向性を出す必要性があるのか。地上イージス断念の経緯の検証こそ急務のはずだ。敵基地攻撃能力の論議は1956年にさかのぼる。当時の鳩山一郎首相が「座して自滅を待つというのが憲法の趣旨とは考えられない」と指摘。攻撃を防ぐのに他に手段がないと認められる限り、法理的に自衛の範囲との見解を示した。以来、政府は憲法上可能との考えを踏襲しつつ、専守防衛の観点から保有しない立場を取ってきた。2006年、北朝鮮が相次いで弾道ミサイルを発射したのを受け、当時の防衛庁長官が必要性を表明した。しかし小泉純一郎首相は「憲法上の問題がある」と否定した。ところが安倍首相は政権に返り咲いた12年末以降、保有論議を再燃させた。ただ当時のオバマ米大統領から、中国などを刺激するとして懸念を示された。妥当な指摘だろう。核実験やミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮には、国際社会と連携して非核化するよう説得を続ける必要がある。近隣諸国との有効な関係づくりに努めれば、敵基地攻撃能力は不要だ。武力に武力で対抗するだけでは平和で安全な地域づくりには、つながらない。政府は肝に銘じるべきである。 *5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200710&ng=DGKKZO61341880Z00C20A7EA2000 (日経新聞 2020.7.10) エネ政策、不作為に限界 脱炭素、原発に国の関与不可欠 脱炭素のうねりが迫るエネルギー転換や電力・ガス市場の自由化など、エネルギーをめぐる環境が内外で変わりつつある。速度を上げる変化に日本がのみ込まれようとしているときに、エネルギー政策は不作為とも言える思考停止が続く。現実を直視した計画に作り直すときだ。梶山弘志経済産業相は9日、洋上風力発電を拡大させる方針を表明した。3日には低効率の石炭火力発電所を休廃止する考えを示している。エネルギー政策を担う経産省は長期指針である「エネルギー基本計画」の見直しに向けた地ならしを急ぎ始めた。現行の計画は2030年度の電源構成について、原子力を20~22%、再生可能エネルギーを22~24%、残り56%を石炭や石油などの化石燃料でまかなうとする。東京電力福島第1原子力発電所の事故後の14年に定められ、18年の見直しでも据え置かれた。この比率実現が、温暖化ガス排出を30年度に13年度比で26%減らす国際公約の前提になっている。しかし、目標年度と定める30年度まで残り10年に迫り、掲げる数字の非現実性があらわになりつつある。なかでも原発だ。20~22%の電力を確保するためには約30基の原発が必要だが、再稼働した原発は9基にとどまる。福島原発事故から来年で10年、国民の原発に対する信頼回復は進まない。関西電力で発覚した原発立地をめぐる金品受領問題は不信を増幅した。金品の渡し手となった元助役のような人物がどうして影響力を持つようになったのか。「重要なベースロード電源」と位置付けながら、立地対策を含め、運営を電力会社に丸投げしてきた国策民営の限界がある。原発は有力な脱炭素の手段となりうる。国民が受け入れて使い続けるには、立地対策や使用済み燃料の処理、核燃料サイクルなど、国がもっと前に出て関与しなければならない。それは政治と行政の責任でもある。国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の発電量に占める太陽光や風力など再生エネの比率は40年に44%となり、石炭や天然ガスを上回る最大の電源になる。日本もこの潮流から逃れられない。石炭より発電コストが高くても伸ばすなら、国民に受け入れてもらうよう説明を尽くす必要がある。広大な海洋をいかした洋上風力を増やす。導入拡大のネックとなる送電線利用のルールを見直す。発電した場所で電気を使う分散型システムの導入を促す。原発に温暖化ガス削減を期待できないとすれば、あらゆる政策を動員して再生エネを主力電源に育てていかねばならない。ただし、エネルギー政策は温暖化対策だけでない。安全や供給の安定性、経済性などの要素を考慮する必要がある。国際的に割高な電気料金をどう下げるのか。地政学リスクに伴う供給途絶をどう回避するのか。エネルギー戦略の立案とはこうした要素の最適バランスを見つける作業だ。現行のエネルギー基本計画では30年度に電源構成の56%を化石燃料でまかなう。再生エネを最大限伸ばしても、すべてを代替するには力不足だとすれば、脱炭素に配慮しながら化石燃料を使い続ける方法を考えるしかない。石炭に比べて、温暖化ガスの排出が少ない液化天然ガス(LNG)の利用拡大が現実解になるとしても、輸入頼みのLNGには地政学リスクがつきまとう。これをどこまで増やせるのか。現実を見据えたエネルギーの最適組み合わせ、いわゆる「エネルギーミックス」の議論を早急に始めなければならない。 *5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191001&ng=DGKKZO50386330Q9A930C1KE8000 (日経新聞 2019年10月1日) 再生可能エネルギーの未来(中)電源の地産地消 目指せ 泉井良夫・金沢工業大学教授(1959年生まれ。東京大工卒、同大博士(工学)。専門はエネルギーマネジメント) <ポイント> ○地方は再エネを利用した分散型電源が解 ○太陽光と中小水力や地熱の組み合わせを ○電気自動車は動く蓄電池として活用せよ 本稿では再生可能エネルギー(再エネ)の未来を、地方から、エネルギーマネジメントの視点で考察したい。再エネは主に脱炭素社会実現のための電源として議論されるが、それ以外にも分散型電源、地域による多様性、電源の国産化など様々な視点がある。中でも地方は、人口密度が疎で分散的であることから再エネとの整合性が高く、地産地消に適している。実現のためには、おのおの地域ごとの再エネによる創エネとエネルギー消費を結びつけるエネルギーマネジメントが重要である。今般、千葉県で起きた長期間の送電停止は示唆的であり、こうした地域の小規模分散型電源の重要性を図らずも実証したといえそうだ。まず、地産地消における再エネ=分散型電源という視点を考察する。再エネは、設置場所の自由度が高い。たとえば太陽光発電は日射があればよいので、日本全国どこでも設置可能である。風力発電は風況の制約などがあるものの同様である。地熱に至ると、我が国は世界第3位のポテンシャルを持ち、掘ればどこでもエネルギー利用が可能である。これらの再エネは密度が低いといわれるが、地方は人口密度も低いため、この点での親和性もある。一般に生産(発電)と消費はできるだけ近い方が、コストや電力損失などの点で有利であるが、地方は人口が少なく分散的であるため、電力を配るための配電線が長い。たとえば総発電出力あたりの配電線長(架空線)を比較すると、北海道電力は東京電力の約2倍である。つまり、地方においては再エネを活用した分散型電源によるコミュニティーが合理的であり、さらにオフグリッド(電力自給)化が実現すると、地震や台風などからのレジリエンス(復元力)の観点からも有利となる。次に、再エネの地域による多様性の視点を考察する。科学技術振興機構低炭素社会戦略センター調査報告(2018年1月)によると、出力変動型再エネである太陽光発電は、おおむね日本全体に均一分布している。一方、地域的な分布の違いが見られる再エネも多く、中小水力発電は北陸・甲信越、地熱発電は九州・東北・北陸に多い。これらは出力安定型再エネであり、うまく組み合わせるとベストミックスになる。我が国は、地域間、季節間の寒暖差が大きく、冷暖房など空調設備が必須であり熱需要が存在する。しかし、熱は輸送や貯蔵が難しく、生産と消費が近接している必要がある。ドイツの自治体によるインフラ運営公社・シュタットベルケでは、約900社が電気事業を手掛けており、電力小売市場で20%以上のシェアがあるといわれる。ドイツは比較的寒冷であり、熱の生産と消費が近接しリンクしているのが主な理由である。我が国でも、地産地消での再エネ熱活用により、同様のビジネスモデルが成立する可能性がある。次に、地方におけるEVなどモビリティーによるエネルギー利用について考察する。地方は自動車の保有率が高く、運輸部門における二酸化炭素排出量比率が高い。たとえば東京都は10%前後であるが、金沢市は20%を超えている。さらに、ガソリンスタンドの減少、少子高齢化を背景に、地方における自動運転関連技術の期待が一層高まってくることを考えると、これと親和性の高いモビリティーの電動化は必然となる。移動体の電動化には蓄電池は必須であり、電気視点では「動く蓄電池」と言える。太陽光発電や風力などの出力変動型再エネは電気のバッファリング(緩衝)が必要であるから、これら動く蓄電池の活用が可能となる。動く蓄電池はモビリティーと電気のデュアルユースであることから、定置型蓄電池に比べてコスト面でも有利である。さらに、停電時などのエネルギーレジリエンスにも有効である。将来は再エネ由来の水素活用も考えられる。さて、上記のように再エネは地方の特性と様々な整合性を有するが、これをシステム的にどのように活用してエネルギーサービスとして提供するかは別の議論が必要である。究極は分散型電源として、地域で作った再エネを地域で使う、地産地消による小規模電力システム(マイクログリッド)化が考えられる。さらに今後は、電気ばかりでなく熱エネルギーも含めた熱電一体のエネルギーシェアが、地産地消におけるエネルギーサービスの軸になると考える。我が国においては、既に膨大な資本を投下した電力システムが存在する。転換コストを考えると、これを直ちに小規模電力システム化して地産地消することは現実的ではない。しかし、新たな消費者地域の構築や固定価格買い取り制度終了を見据え、既存の再エネ設備を地産地消化するために再構築するときには十分検討に値する。地産地消の実現に必要な技術は、大きく分けて「需要家資源活用技術」「直流給電技術」「システム・オブ・システムズ(SoS)技術」「決済系技術」の4つがある。エネルギー創出や電力消費の予測、さらにその制御を行うのが需要家資源活用技術である。また、太陽光発電など再エネは効率の観点から直流給電技術で構築すると都合が良い。交流で構築されている商用の電力システムには、周波数を一定に維持する高度な需給制御技術が必須である一方、直流システムは創エネと消費のアンバランスに非常にロバスト(頑健)であり、制御が容易で停電しにくい特徴がある。さらに、動く蓄電池としてのEVなどのモビリティーシステム、再エネ発電量予測のため衛星システムと連携するSoS技術も必要である。地産地消では、電気ばかりでなく熱を含めた多種少量のエネルギーをシェアするが、そのシェアに逐一人手を介在させることは事実上不可能である。このため、セキュリティーやプライバシーの保持はいうまでもないが、ブロックチェーン(分散型台帳)などの低コストでスマートな決済系技術が必須である。このようなエネルギーマネジメントを活用した地産地消システムは、各所で活発に実証実験が行われている。筆者が所属する金沢工業大学においても、18年4月にオープンした白山麓キャンパス地方創生研究所で、熱を含む多様な再エネを活用した「再生可能エネルギーベストミックスの地産地消コミュニティモデル」という、50年の地方におけるエネルギー縮図モデルとして実証評価を行い、その実現を目指している。再エネは今後、脱炭素化を主目的に導入がさらに加速すると考えられる。その際、地域による多様性への配慮は欠かせない。都市には都市の特性、地方には地方の地域特性があり、これらと再エネの多面的な視点の整合化が望まれる。地方においては、「分散」をキーワードに、地域特性を生かし、熱・電気エネルギーの地産地消を実現するエネルギーマネジメント技術の確立が求められよう。 *5-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201808/CK2018082002000139.html (東京新聞 2018年8月20日) 猛暑こそ太陽光発電 最高気温更新でも安定 記録的な猛暑が続いたこの夏、冷房を使う機会が増える一方で、東京電力管内の電力需給は、深刻な逼迫(ひっぱく)に陥った日がまだないことが分かった。太陽光発電の発電量が増え、節電の浸透で電力消費自体も減っていることなどが要因だ。東電管内で稼働している原発はゼロでも猛暑の日を乗り切っており、「電力の安定供給には原発が不可欠」とする政府や電力業界の主張はその根拠が薄らいでいる。電気の使用可能量(供給)に占める実際の使用量(需要)を示す「使用率」について、東電は安定的(93%未満)、やや厳しい(93~95%未満)、厳しい(95%以上)、非常に厳しい(97%レベル)の四段階に区分する。一般的に暑い日ほど冷房が使われ使用率は上昇。97%を超えると停電の可能性も生じるとされる。だが、この夏の使用率は、埼玉県熊谷市の気温が四一・一度と国内最高記録を更新し、東京(千代田区)で史上三位の三九・〇度に達した七月二十三日でも92%と「安定的」だった。ほかの日をみても、94%となって「やや厳しい」となった七月二日以外は、すべて「安定的」だ。電力不足が避けられているのは、「気温が高い」との予報がある日に、東電が火力発電の発電量や他の電力会社から融通してもらう電力を増やしていることが要因になっている。さらに午前十時~午後三時ごろに増える太陽光の発電量が、電気の使用がピークになる午後二時ごろと重なることも大きい。太陽光発電は、再生可能エネルギーで発電した電気をすべて電力会社が買い取る制度が二〇一二年に導入されてから増加。東電管内でも供給力の一割超を占めるようになっている。節電や省エネで、電力の消費量自体も減っている。七月二十三日には、東電管内の電力使用量が午後二~三時に五千六百万キロワットと震災後最大を更新。それでも〇一年七月二十四日に記録した過去最大量よりも13%少なかった。事前に契約した企業への一時的な節電要請や、他の電力会社に電力を融通してもらう仕組みが整備されたことも、供給安定の要因に。日没以降も高温が予想された八月の一日と二日、東電は夕方にかけて大口顧客に節電を要請した。今年一月も厳しい寒さで暖房の利用が急増したが、電力会社間の融通によって電力不足は回避された。 <災害レッドゾーンとイエローゾーンの定義は?> PS(2020年7月12日追加):*6-1のように、九州を襲った記録的豪雨で熊本・福岡・大分の3県で身元が発表された犠牲者57人のうち、少なくとも3/4にあたる43人が氾濫した川沿いに住み、そのうち約9割の38人が65歳以上の高齢者だったそうだ。住民の年齢分布も上に偏っているため、約9割が65歳以上でもおかしくはないが、高齢者だけでは避難も後片付けも容易でないと思う。さらに、近年は、100mm/時間超や400mm/24時間超という雨は珍しくないため、避難を前提としていては安心して生活することができない。 そこで、*6-2・*6-3のように、国交省が都市計画法や都市再生特別措置法などを6月4日に改正し、①「災害レッドゾーン」「災害イエローゾーン」などの「災害ハザードエリア」における新規開発の抑制 ②災害ハザードエリアからの移転促進 ③立地適正化計画と防災の連携強化 で安全な街づくりを促し、土砂災害の危険性が高い「災害レッドゾーン」は、オフィス・店舗・病院・社会福祉施設・旅館・ホテル・工場・倉庫・学校などの施設開発を原則禁止することになった。しかし、浸水想定区域の「災害イエローゾーン」は、住宅の開発許可を厳格化するだけで、病院・社会福祉施設・旅館・ホテルなどの営業施設開発は禁止されておらず、今回の河川の氾濫はこちらに当たるが、危険は土砂災害だけでなく津波・洪水でも大きく、新都市計画法の弱点を突いて起こっている。つまり、浸水想定区域は「災害レッドゾーン」に入れて安全な場所に移転させる必要があり、危険性がわかっていても住民自身が禁止区域に住み続けたい場合は、全国民ではなく、「災害レッドゾーン」「災害イエローゾーン」の危険度に応じて保険料を上げ、災害が起こった際にはなるべく多くを私的保険で賄うようにすべきだ。そして、自治体の都市計画と保険料により、都市を安全な方向に誘導すべきだと思う。 2020.1.20読売新聞 (図の説明:左図のように、災害の起こり易い地域をレッドゾーン・イエローゾーンとし、安全な地域に住宅を誘導することになった。レッドゾーンに入るのは、中央の図のような土砂災害の起こり易い地域で、住宅・オフィス・店舗・病院・社会福祉施設・旅館・ホテル・工場・倉庫・学校などの施設開発が原則禁止だが、浸水想定区域のイエローゾーンは低層住宅だけが禁止だ。また、右図のように、イエローゾーンには、鉄筋コンクリートの頑丈で高い建物は建設可能だが、このような建物も機器は地下に設置してある場合が多いため、建て方に要注意だ) *6-1:https://mainichi.jp/articles/20200711/k00/00m/040/215000c(毎日新聞 2020年7月12日)犠牲者の4分の3は川沿い居住、約9割が高齢者 逃げ遅れた可能性 九州豪雨 九州を襲った記録的豪雨の犠牲者で、熊本、福岡、大分3県で身元が発表された57人のうち、少なくとも4分の3にあたる43人が氾濫した川沿いの地区に住んでいたことが、毎日新聞のまとめで判明した。43人のうち約9割の38人が65歳以上の高齢者だった。3日夜から4日朝にかけた豪雨の中で多くの人が逃げ遅れた可能性があり、高齢者避難の課題が改めて浮かんだ。熊本県では、2012年7月12日未明から阿蘇地方などで1時間100ミリ超の記録的な雨が降り、県内で23人が死亡した。この反省から県は、明るいうちに避難を呼びかける「予防的避難」を目標に掲げ、市町村が避難所を開設する経費の一部を負担するモデル事業を実施したこともある。しかし今回、気象庁の予想雨量は県内の多いところで24時間200ミリで、モデル事業で予防的避難をする基準としていた値(24時間雨量250ミリ以上など)にも満たなかった。実際は400ミリ以上の雨となり、人吉市では「避難準備・高齢者等避難開始」の情報を出せないまま、最初の避難勧告が3日午後11時となるなど住民の明るいうちの避難は難しい状況だった。県の防災担当者は「答えの見えない重い宿題だ」と語る。静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授は「夜になれば大雨の中で高齢者は動けない。一方で、雨量予測が難しい中では行政の対応に限界もある。行政に頼りすぎず、住民自ら早めに避難することが世の中の常識にならなければ被害は減らせない」と訴える。 *6-2:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/00783/ (日経クロステック 2020.2.5) 都市計画法改正で「原則禁止」となる建物は? 防災重視に転換する街づくり 国土交通省は都市計画法や都市再生特別措置法などを改正し、激甚化する自然災害に対応した安全な街づくりを促す。開発許可制度を厳格化し、災害危険区域や土砂災害特別警戒区域といった「災害レッドゾーン」における自社オフィスなどの開発を原則禁止する。今通常国会に提出する改正案の概要を、2020年1月27日の都市計画基本問題小委員会で示した。改正のポイントは「災害レッドゾーンや災害イエローゾーンなどの『災害ハザードエリア』における新規開発の抑制」、「災害ハザードエリアからの移転の促進」、「立地適正化計画と防災の連携強化」の3つだ。企業にとって最も影響が大きそうなのが、都市計画区域全域を対象とした、災害ハザードエリアの開発抑制。「災害レッドゾーン」と呼ぶ災害危険区域、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域の4区域で、自社のオフィスや店舗、病院、社会福祉施設、旅館・ホテル、工場、倉庫、学校法人が建設する学校などの「自己の業務の用に供する施設」の開発を原則禁止とする。現行の都市計画法では、分譲住宅や賃貸住宅、賃貸オフィス、貸店舗などを開発する際に、区域内に災害レッドゾーンを原則として含まないよう規制している。一方で、開発事業者が自ら使用する施設については規制対象としていない。近年の自然災害で、こうした施設が被災して利用者に被害が及ぶケースが発生しているため、法改正による規制強化に乗り出す。国交省が16年4月~18年9月の2年半を対象に、開発許可権者である590自治体に調査したところ、災害レッドゾーンにおける自己業務用施設の開発行為は合計47件。土砂災害特別警戒区域内に小学校・中学校が含まれるケースもあった。災害ハザードエリアのうち、浸水想定区域などのいわゆる「災害イエローゾーン」についても、市街化調整区域における住宅などの開発許可を厳格化する。現行の都市計画法では、市街化調整区域内であっても自治体が条例で区域を指定すれば、市街化区域と同様に開発できる。指定に当たっては原則として「溢水、湛水、津波、高潮等による災害の発生のおそれのある土地の区域」などを除外する必要がある。しかし現実には災害レッドゾーンが含まれているケースがあるほか、浸水想定区域についてはほとんど考慮されていないのが実情だ。19年10月の台風19号でこうした区域を含む市街化調整区域で浸水被害が発生したことを受けて、開発許可の厳格化に踏み切る。 *6-3:https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200604/mca2006040500003-n1.htm (産経BZ 2020.6.4) 開発規制強化 災害に備え 改正都市計画法が成立 まちづくりで防災を進める改正都市計画法などが3日、参院本会議で可決、成立した。土砂災害などの危険が高い地区の開発規制を強化し、自ら店舗を経営する目的でも建設を禁止する。浸水などの恐れがある地区からの住宅移転を促すため、市町村が移転先などを調整する制度も導入。最大2年程度の周知期間を経て施行する。大きな被害が出た昨年の台風19号をはじめ多発する自然災害に備えるのが狙い。崖崩れや地滑りなどで建物が壊れたり、身体に危害が及んだりする「レッドゾーン」に指定されているエリアでは現在でも賃貸、分譲目的の住宅、貸店舗は建設できない。しかし、自分が経営する目的で店舗やホテル、学校、事務所などが建設されているケースがあり、規制対象を広げる。移転の調整は、住宅や施設を集約する「コンパクトシティー」を目指し、立地適正化計画を作っている市町村が対象。開発規制の有無にかかわらず浸水などの恐れがある場合は、市町村が移転対象の住宅や施設、移転先、時期などを盛り込んだ計画を作成する。昨年の台風19号では居住誘導区域でも浸水被害が起きており、安全を確保する。国土交通省は「住民の代わりに、自治体が安全な移転先を見つけて紹介できる」と利点を説明する。立地適正化計画には防災対策を明記することも市町村に求める。避難施設整備、宅地のかさ上げや耐震化が想定され、具体策は国交省がガイドラインの形で示す。国交省は今後、関連する政令も改正。適正化計画で住宅の集約を目指す「居住誘導区域」から、危険性の高いレッドゾーンは除外するよう明示する。 <新型コロナでも非科学的なTV報道が多いのは何故か?> PS(2020年7月14、17、18日追加):*7-1のように、東京都で200人以上の感染者が4日間も出て、7月13日(月)に5日ぶりに119人になり新規感染確認者数が200人を下回ったと一喜一憂する報道が多いが、この論調なら検査を抑制して新規感染者の確認を止めればよいことになってしまい、本質的な解決にならない。そして、このような反応の中で、無症状者・軽症者・中等症者をウイルスを排出しなくなるまで隔離して治療しなかったことが、新型コロナを市中に蔓延させた直近3カ月の最大の失敗であるため、まずこれを反省すべきだ。また、「新型コロナ≒夜の街」という新型コロナがまるで性病ででもあるかのような病人差別も見られるが、先進国とは思えない非科学的な行為だ。正確には、精密抗体検査や新型コロナウイルスのDNA解明などを行った東大先端研の児玉名誉教授が、YouTubeで検査・症状・治療・ウイルスの変異・ワクチン等について話しておられる(https://search.yahoo.co.jp/video/search?p=%E5%85%90%E7%8E%89%E9%BE%8D%E5%BD%A6+%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A&tid=d83a8d062f1c155c7e68c92f3f94dca0&ei=UTF-8&rkf=2&dd=1 参照)。 その中で、*7-2・*7-3の内容も話されており、「死者数/人口100万人」は、欧米では300~800人であるのに対し、日本では約6人と50~100倍以上の差があり、これだけの違いは生活様式や医療格差だけでは説明できない。そのため、「人種によって異なる遺伝子で免疫応答の違いが生じているのではないか」との仮説を立て、ゲノム解析で確かめようとしているそうだ。また、BCG接種と感染者数・死者数の間にも強い相関関係があるが、私自身は、BCG接種との直接因果関係というよりは、類似のウイルスに対して多重に免疫を持っているのではないかと思っており、類似のウイルスが存在する地域の発酵食品も、ペニシリンと同じ原理でこれらのウイルスに抵抗力があると考えている。 これまでの政府の対策の失敗により(これは認めるべき)、新宿が日本独特の遺伝子配列を持つ新型コロナの東京型エピセンターとなり、*8-1のように、東京都内の感染者が17日の発表で過去最多の293人となったが、メディアはまた同じようにボケたことを言っている。そして、*8-2のように、「GoToトラベル」事業も東京を目的とする旅行と東京居住者の旅行が対象外になったのだが、本来はPCR検査で陰性なら行動制限をする必要がないため、「GoToトラベル」事業を行う必要もなかったのに、容易に検査できない仕組みにして国民全員を自粛させたのが問題だったのだ。そのため、それぞれの地域は、他の地域から入ってくる人にPCR検査の陰性証明書提示を義務付け、陰性なら入れるようにした方がよいと思う。まして、被災地に入るボランティアは受入自治体でPCR検査してもよいくらいで、厚労省は、*8-3のように、唾液を使って迅速に結果の出るPCR検査を無症状の場合でも認めると発表している。しかし、やはり検疫や濃厚接触者に限っているため、無症状でも希望する人は自費で受けられるようにすればよいだろう。その検査は、大学や検査センターを使えば大量にできるそうなのでやってもらえばよく、それでも検査させない理由が他にあるのだろうか? この新型コロナへの対応の誤りから発生した巨額の無駄遣いで、*9のように、2021年度予算編成の指針となる「骨太の方針」は、①国債の大量発行 ②財政再建目標削除 ③国内総生産(GDP)600兆円達成目標の取り下げ を行い、④「プライマリーバランス(PB)」を2025年度に黒字化する目標が棚上げされた。この新型コロナの長期化により、財政のさらなる悪化が見込まれているが、対応によっては逆の効果を生むこともできた。つまり、政府が検査・診断・隔離・治療・ワクチン開発を推進し、それを可能にするツールを日本で開発・製品化すれば、高度なバイオ産業となって次の経済成長に繋がった筈なのだ。しかし、日本政府は、馬鹿の一つ覚えのように、「テレワーク」「働き方改革」と連呼して人を自宅から出さないようにしたため、テレワークでは不可能な調査研究・開発・製品化などもできなくなった。また、日本中で長期に自粛させたことにより、国内総生産が落ち、財政再建ができないばかりか、やっていけなくなった個人や企業を救うための後ろ向きの支出が増えて、国債の大量発行を余儀なくされた。これは、与野党・メディアが協力して行ったことであり、「何故、ここまでの愚策しか思いつかないのか?」と、私は呆れながら見ているしかなかったのである。 2020.7.9朝日新聞 2020.7.9 2020.6.25 2020.7.18 毎日新聞 朝日新聞 東京新聞 (図の説明:1番左の図のように、東京都の新規感染者数は増えているが、その理由は、左から2番目の図のように、PCR検査数を増やしているからであり、検査数が減る週末には新規感染者数も減る。また、今のところ、重症患者も漸減している。なお、新型コロナの本質的解決には、検査数を増やして治療と隔離をすることが必要であるため、新規感染者数の増減だけを問題にするのはおかしい。また、右から2番目の図のように、日本はじめアジア諸国は新型コロナによる死亡率が低いため、その原因究明も行われている。しかし、1番右の図のように、新型コロナ対策に関する愚策とそれを尻拭いする膨大な支出のため、日本の財政状態は危うい状態になった) *7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/42142 (東京新聞 2020年7月13日) 東京都で新たに119人の感染確認 5日ぶりに200人下回る 東京都の小池百合子知事は13日、都内で新たに確認された新型コロナウイルス感染者は119人だったと明らかにした。1日当たりの新規感染者数が200人を下回るのは今月8日以来、5日ぶり。都内の累計感染者数はこれで8046人となる。小池知事は13日午前、都庁で報道陣の取材に応じ、都内の感染者数が多い日が続いていることを菅義偉官房長官が「東京問題」と発言したのに対して「圧倒的に検査数が多いのが東京。それによって陽性者があぶり出てきて、その中には無症状の方もかなり含まれているということが分かってきた」と述べた。 *7-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN5P5KCKN5PUCFI003.html?iref=pc_rellink_01 (朝日新聞 2020年5月21日) なぜ人種で差 コロナ重症化、遺伝子解析で探る研究開始 新型コロナウイルス感染症が重症化する仕組みを、患者の遺伝子解析を通じて解き明かそうというプロジェクトが始まった。人口100万人当たりの死者は米英で300~500人なのに対し、日本では約6人で大きな差がある。研究グループはこの差が生活様式や医療格差だけでは説明できないと考え、人種ごとに異なる遺伝子によって免疫応答に違いが生じているとの仮説を立て、ゲノム解析で確かめることにした。重症化因子が判明すれば、今後のワクチン開発に生かせるという。東大や阪大、京大など7大学の研究者と研究機関などが参加。日本医療研究開発機構(AMED)から研究資金を得た。国内の約40の医療機関と連携、無症状から重症者まで、少なくとも600人の血液を調べ、9月までに報告をまとめる。慶応大の金井隆典教授が研究責任者を務める。特に注目しているのが、免疫反応をつかさどる司令塔の役割を果たすHLA(ヒト白血球抗原)。これを重症患者と無症状患者とで比較し、重症患者に特有の遺伝子を見つける。欧米でも進む同種の解析結果と照合すれば、日本人の死者数が少ない原因の解明にもつながるとしている。遺伝子解析が専門で東京医科歯科大特命教授の宮野悟・同大M&Dデータ科学センター長は「ウイルスの遺伝子解析だけでは『半分』しか調べたことにならない。宿主である人間の遺伝子も解析することでワクチン開発を補完できる」と話す。新型コロナウイルス感染症への抵抗性に関わる遺伝子が見つかれば、健康な時から血液検査でリスクを判定したり、ワクチンや治療薬の開発に貢献したりできるという。遺伝子と感染症には密接な関係があり、エイズウイルスに耐性を持つ遺伝子変異や、インフルエンザや肺炎に対して免疫が働かなくなる遺伝子病が見つかっている。かつてのシルクロード周辺に住む民族がかかりやすいベーチェット病など、遺伝子の違いによって、特定の病気になりやすい民族があることも知られている。 *7-3:https://digital.asahi.com/articles/ASN6V5CY7N6TUCLV00V.html (朝日新聞 2020年6月29日) BCG接種? 交差免疫? 日本のコロナ死者なぜ少ない 新型コロナウイルス感染症が世界に広がる中、日本を含むアジア地域(中東を除く)の人口当たり死者数は欧米に比べ非常に少なく、驚きを持って受け止められている。世界中の研究者が原因を注目しているが、生活習慣や文化、医療体制の差だけでは最大100倍の差は説明しにくく、獲得した免疫の強さなど、根本的な違いがあるという見方が強くなっている。 ●「世界の研究者が困惑」 人口100万人当たりの死者数は、800人を超すベルギーを筆頭に欧米の先進国が上位に並び、中南米も100人を超す。一方、日本の7・7人などアジアは10人以下が多い。5月28日付の米紙ワシントン・ポストはこの現象を「新型コロナのミステリーの一つ」と紹介。特に世界有数の高齢社会で、検査数が少なく、外出自粛という欧米に比べて緩やかな対策で死者数を抑え込んだ日本に「世界の研究者が困惑している」と伝えた。背景に何があるのか。まず指摘されるのは生活習慣や文化の違いだ。花粉症が広がり、感染拡大前からマスクを着用する習慣は根付いていた。「病人の証し」としてマスクを避け、義務づけなければ着用が進まなかった欧米各国とは異なる。感染防止に効果がある手洗いをする習慣も身についている。海外の病院で、ウイルスが靴に貼り付いて移動しているという研究結果もあり、室内で靴を脱ぐ文化が感染拡大を抑えたという見方もある。ハグやキスなど体の接触を伴うあいさつが少ないのも、接触感染、飛沫(ひまつ)感染を抑えた。またロックダウン(都市封鎖)など強権的な対策を採らなくても、補償なしの自粛要請だけで休業し外出を控える「従順な国民性」がプラスに働いたという指摘もある。「きれい好き」「衛生、栄養状態が全般的によい」だけでは答えにはならない。過密都市を抱え衛生状態が良くないバングラデシュやインドと日本は人口比死者数はほぼ同じだ。 ●遺伝子から違いを探る 「生活習慣や文化の違いが有利に働いた面はあるが、2けたの差はもっと根本的な違いがなければ説明できない。ポイントはヒトが持つ遺伝子では」と話すのは慶応大学の金井隆典教授。遺伝子によって免疫反応に違いが生じているとの仮説を立て、7大学が共同研究中だ。重症、中軽症、無症状各200人の感染者の血液を集め、全ゲノムを解析して9月までに報告をまとめる。特に注目しているのが、免疫反応をつかさどるHLA(ヒト白血球抗原)で、重症患者と無症状患者とで比べ、重症患者特有の遺伝子を見つける。欧米でも同種の解析が進んでおり、照合すれば、東アジアで死者が少ない原因の解明につながる可能性がある。にわかに注目を集めたのが結核の予防ワクチンBCGだ。世界で比較すると接種している国はしていない国より死者数が少ない傾向がある。藤田医科大学の宮川剛教授はBCGと結核に注目。結核蔓延(まんえん)国は接種国より一段と死者数が少ない。さらに平均寿命や高齢化率、人口密度、肥満率、病床数、喫煙率など結果に影響を与える恐れがある因子を除いて解析しても、接種国の死亡率が低い傾向は変わらなかった。宮川教授は「BCGと感染者数や死者数の間に強い相関関係があることを示すだけで、因果関係があることを示すデータではない」と語る。イスラエルの研究チームが5月にBCGの効果に否定的な研究結果を発表したが、宮川教授は「接種率についての事実関係の誤りがあるなど問題が多い」と指摘する。一方で、オーストラリア、ニュージーランドは接種していないのに人口比死者は少なく、BCG仮説だけでは説明できない。 ●注目の「交差免疫」説 交差免疫説も注目の的だ。過去に似たウイルスに感染して出来た免疫が、新型コロナも排除する仕組みのこと。東京大学の児玉龍彦名誉教授が都内の感染者の血液を調べたところ、すでに部分的な免疫も持っているとみられる人が多数確認された。「風邪を引き起こす一般的なコロナウイルスと新型コロナは、塩基配列のほぼ半分が同じ。コロナウイルスは絶えず進化し、日本にも流入している。そのため新型コロナへの抵抗力を持っている人が一定数いて、重症化率の抑制につながっているのではないか」という。米ラホイヤ免疫研究所が、感染拡大前に採取した血液を調べた研究で、約半数から新型コロナを認識する免疫細胞が検出された。これも、新型コロナに似たウイルスがすでに存在し、交差免疫を起こしたことを示している。免疫学の第一人者である大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘(しょうへい)教授はこう分析する。①BCGは「訓練免疫」という仕組みで人体に備わっている自然免疫を活性化させ、重症化抑制に寄与している可能性がある②交差免疫も働いているが、重症化を抑える貢献度の大きさは正確には分かっていない③遺伝子の差異も因子の一つだが、同じアジア人でも住む場所によって重症化する割合は異なり、決定要因とは思えない④アジアの方が肥満や生活習慣病の程度が欧米より低く、これも重症者の数を抑え込む因子の一つだろう。「一つが決定的に重要というより、交差免疫、BCG、遺伝子などの因子が相互補完的に働き、重症化率を大きく押し下げている」 ※ 人口100万人当たり死者数の出典は、https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html 札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門(畑川剛毅) *8-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN7K4RKKN7KUTIL01L.html?iref=comtop_8_01(朝日新聞 2020年7月17日)東京都の感染者、最多の293人 「これからも増える」 東京都内で17日、新たに新型コロナウイルスの感染者が293人確認されたことがわかった。小池百合子知事が同日、報道陣に対し、明らかにした。16日の286人を上回り、過去最多を2日連続で更新した。都内の感染者は9日連続で100人超となった。都が感染者数を集計して発表するまでには3日ほどかかる。14日の検査件数は過去最多だった13日の約4700件に続き、4千件ほどと高い水準を維持。都幹部は「検査を積極的にしているので、これからも感染者数は上がり続けるだろう」と見通しを語っていた。感染者数の急増を受け、都は15日、感染状況に関する4段階評価の警戒度を最も深刻な「感染が拡大していると思われる」に引き上げていた。7月は20~30代の若い世代の感染が約7割を占めているが、ここ1週間では10歳未満や重症化しやすい60歳以上にも感染の幅が広がっている。感染経路も施設や同居の家族、職場、劇場、会食など多岐にわたっている。 *8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200717&ng=DGKKZO61617330W0A710C2MM8000 (日経新聞 2020.7.17) GoTo 東京発着除外 新型コロナ急増、全国一律から転換 赤羽一嘉国土交通相は16日、国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」事業について「東京を目的とする旅行、東京居住者の旅行を対象から外す」と述べた。東京都で新型コロナウイルスへの感染を確認された人が急増したためだ。22日に全国一斉に始める予定だったのを改めた。安倍晋三首相と赤羽氏らが16日に首相官邸で協議して判断した。首相は記者団に「現下の感染状況を踏まえてそういう判断になった」と語った。都内の感染拡大を受け、各地の首長から全国一斉の開始などに反対する声が上がっていた。同事業は新型コロナによって大きく落ち込んだ旅行需要を回復させる目的で、22日以降に始まる国内旅行を対象に代金の半額を補助する。1人あたり1泊2万円を上限とし、補助の7割は旅行代金の割引、3割は旅行先で使える地域共通クーポン(9月以降)とする。東京以外に住む人の東京以外への旅行については、予定通り22日以降の旅行分から補助する考えだ。政府は16日、新型コロナの専門家会議に代わって設置した分科会で説明した。西村康稔経済財政・再生相は分科会後の記者会見で「東京を対象外とすることで了解をいただいた」と述べた。東京だけ除外した理由としては、直近1週間の累積陽性者数が1216人となり、隣接県とは1桁違うことを挙げた。国交省の旅行・観光消費動向調査によると、2019年に東京を訪れた国内居住者は約9千万人に達した。消費額は約1.8兆円で、千葉県や大阪府がそれぞれ1兆円程度だったのを上回った。事業に参加する宿泊事業者に対しては、同省は感染拡大を防ぐ対策として、宿泊客の検温や保健所との連絡体制づくりを求める。浴場や飲食などの共用施設は人数や利用時間を制限してもらう。 *8-3:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020071700550&g=soc (時事 2020.7.17) 無症状も唾液診断可 PCR・抗原検査拡充―厚労省 新型コロナウイルスへの感染の有無を調べるPCR検査と抗原検査について、厚生労働省は17日、唾液を使った診断を無症状の場合でも認めると発表した。空港での検疫や感染者の濃厚接触者らが対象。東京都などで感染者増が続く中、検査体制の拡充を目指す。 *9:https://www.tokyo-np.co.jp/article/43279 (東京新聞 2020年7月18日) コロナ禍の「骨太方針」、財政再建棚上げ 膨らむ借金、将来のツケに 安倍政権が17日、2021年度予算編成の指針となる「骨太の方針」と、中長期的な経済成長を目指す「成長戦略」を閣議決定した。新型コロナウイルス対策で政府の借金に当たる国債を大量に発行する一方、今回は骨太の方針から例年盛り込んでいる財政再建目標を削除し、成長戦略でも大々的に掲げていた20年ごろの名目国内総生産(GDP)600兆円達成目標に触れなかった。実現が難しくなると、十分な説明もせず「なかったこと」にするような対応が目立つ。 ◆消えた「25年度黒字化目標」 「今は財政のことを考えている場合ではない」。西村康稔経済再生担当相は17日の記者会見でこう述べ、骨太の方針に具体的な財政健全化目標を掲げなかったことを正当化した。従来の骨太では、名目国内総生産(GDP)に対する国と地方の借金残高の比率を安定的に引き下げるとともに、借金に頼らずにまかなう政策経費の収支「プライマリーバランス(PB)」を25年度に黒字化する目標を掲げていた。西村氏は今回も「中長期的に持続可能な財政を実現すると書いてある」と強弁するが、事実上、棚上げにしているのは明らかだ。 ◆コロナ長期化でさらに悪化も ただでさえ深刻な財政状況は新型コロナの流行で一層悪化している。みずほ証券の末広徹氏によると、GDPに対する債務残高は20年度、政府見通しの189%から225%に急伸し、PB赤字も約15兆円から約64兆円に拡大するとみられる。しかも、この試算は今後予想される税収減を反映しておらず、収束に時間がかかれば再び補正予算を組む必要に迫られ、借金が膨らむ可能性もある。法政大の小黒一正教授(財政学)は政府の対応について「財政再建の目標は明確に書くべきだった。なし崩し的に規律が失われて予算の無駄遣いにつながり、将来世代にツケが回りかねない」と強調した。 ◆成長戦略も目標触れず 新型コロナの陰に隠れ、記述がなくなったのは、これまでの成長戦略の目玉だった20年ごろの名目GDP600兆円目標も同じだ。「戦後最大の名目GDP600兆円の実現を目指す」という一節が登場したのは、第2次安倍政権が16年につくった成長戦略。19年でも554兆円にとどまり、達成は難しい情勢だったが、新型コロナを受けて策定された今回は「名目GDP」という言葉すら出てこない。多くの内閣が掲げてきた名目GDP成長率を平均3%程度に高める目標についても、10~19年の平均は1・25%にとどまる。安倍政権は十分な説明もないまま、目指す対象を600兆円という「金額」に切り替えたが、成長率に関する目標設定の妥当性や実現に向けた課題などを検討した形跡はない。第1生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「成長戦略は政権の理想像を示す側面があるため高い目標になるのは仕方ないが、実現に向けた検証や努力が十分とは言い難く、形骸化して実効性が疑われる傾向がある」と指摘。「特にコロナ後の社会変容を目指すなら、国民に信用してついてきてもらう必要があり、政策を検証し反省を生かすプロセスが必要だ」と語った。 <外国人労働力の必要性と外国人差別の撤廃> PS(2020年7月19日追加):*10-1のように、新型コロナの影響で、2019年に農業分野で3万人を突破した外国人技能実習生が、*10-2のように、来日できなくなったり、失業した人が他の仕事につけなかったりして、農業は外国人に支えられている現実があぶり出されたそうだ。そのため、形だけ“国際貢献”としている技能実習制度を廃止し、安価な期限付き労働力ではない「農業の後継者」としても希望の持てる迎え入れ方をすべきだ。これは、食料だけでなく多くの財・サービスを国内生産し、マスクや防護服すら他国に頼らなければ手に入らない国ではなくするために、必要不可欠なことである。そのためには、経済発展したアジア諸国の労働者が日本を選ばなくなった理由である ①外国人の労働条件の悪さ ②外国人差別を前提とした不利益の強要 は、必ず変えなければならない。 さらに、*10-3のように、世界の難民が約7950万人(昨年末時点)に上り、コロナ対策もできない場所で暮らすことを余儀なくされているのに、日本は資金拠出程度でお茶を濁しているが、もともと普通に暮らしていたのに移動を強いられた難民を受け入れ、農林水産業・製造業・サービス業などの必要な分野で募集して家族で日本に来られるようにすれば、人手不足が解消され、国内生産を進めることもできる。もちろん、日本国内では、日本国憲法はじめ日本の法律が適用されることを前提としてである。 (図の説明:何歳まで元気に働けるかは人によって全く異なるが、左図のように、日本が高齢化しているのは間違いなく、中央の図のように、出生数も減っているため、このままでは支える側の労働力が減るのも確かだ。実際、右図のように、農業者の平均年齢は2010年時点で65.8歳であるため、それから10年後の現在は70歳以上だろう。そのため、労働力として外国人を招きいれることは必要であり、《長くは書かないが》工夫すればそれは容易だ) *10-1:https://www.agrinews.co.jp/p51354.html (日本農業新聞 2020年7月15日) [農と食のこれから 人手不足の産地 1][解説] 外国人労働力頼みの日本 問われる自給の未来 新型コロナウイルス禍は、農業が外国人に支えられている現実をあぶり出した。国際貢献と国際協力を目的に1993年導入された外国人技能実習制度は、農水省によると、2019年に農業分野で3万人を突破し、雇い入れ農家も10年間で2倍近くに増えた。技能実習生の在留資格は「研修」であり、出稼ぎ目的の就労ではないとの前提がある。このため、都道府県の最低賃金水準にある実習生がほとんどで、多くは中国やベトナム、フィリピン、カンボジアといったアジアの発展途上国からだ。一方、アジア各国の経済成長に伴い、人集めは年々厳しさを増している。ある監理団体の責任者は「日本で実習生として働く魅力が薄れ、どの国も都市部では人が集まらない。人探しは地方から地方へ行き詰まりを見せている」と語った。政府は2年前、技能実習制度に屋上屋を架す形で、「就労」目的を明確にした特定技能制度を新設した。農業や介護など14分野で働く外国人を対象に、試験などを課すことで最大5年の就労を可能にした。だが、全分野を通じた新制度利用者は「5年で34万人」の政府目標の1%。長期滞在の条件となる通年雇用は、農業分野では群馬県嬬恋村や北海道などの雪国では困難で、技能実習制度と同様に単年ごとの人探しと信頼関係の構築が迫られる。人手不足に悩む農家の多くが、同一人物の長期雇用を強く望み、農業の現実を反映した制度作りを求めている。外国人に頼れなくなった時、日本の農と食をどう守るのか。頼り続けるのであれば、安価な期限付き労働力でなく、「農業の後継者」として迎え入れる施策も必要な時代が来る。コロナ禍で問われたのは食料自給の未来図だ。 *10-2:https://www.agrinews.co.jp/p51349.html (日本農業新聞 2020年7月15日) [農と食のこれから 人手不足の産地] 「働かせて」悲痛な叫び 新型コロナウイルス禍に伴う政府の入国規制で、外国人技能実習生221人が来日できなくなった群馬県嬬恋村。嬬恋キャベツ振興事業協同組合事務局長の橋詰元良さん(57)は、これを補完するための人探しに追われた一方で、仕事を失った人々の悲痛な叫びを聞いた。「工場から派遣(社員)契約を切られた。会社の寮から出ていかなくてはならず、住む所もない。すぐにでも嬬恋で働きたい」。4月中旬、切羽詰まった若い男性の声で協同組合の事務所にかかってきた電話は大阪の市外局番だった。 ●コロナ禍で求職相次ぐ 人手不足を解消するため、「商系」農家でつくる協同組合や「系統」農家のJA嬬恋村、村観光協会、村商工会が「農家の仕事を紹介します」と記したちらしを作ったのは、東京都など7都府県で緊急事態宣言が出された4月7日だった。県境をまたぐ移動が控えられ、村内のホテルや旅館の休業状態が決定的となり、仕事を休まざるを得ない従業員らに農家で働いてもらおうと考えたのだ。ところが、農家の紹介が「職業あっせん」と解釈されれば職業安定法に抵触しかねないとの指摘があった。調べると、協同組合の定款を変更すれば限定的にできると分かったが、手続きに時間も必要だった。橋詰さんは東京の専門家に問い合わせ、「農家支援なら問題ない」との見解を得て、ちらしの問い合わせ先を協同組合にした。同村では感染者ゼロが続く。村外から不特定多数が来ればウイルスが持ち込まれる恐れがあったため、ちらしの配布先を村内に限った。ところが電話は北海道から九州まで全国からかかってきた。ちらしを見た村民が善意からインターネット交流サイト(SNS)に投稿し、拡散され、コロナ禍で職を失った人々の目に留まったのだ。 ●県外の電話鳴りやまず 岡山に住む派遣社員の30代シングルマザーは「契約を切られてお金がない。育児があるので土日だけでも農家で働かせて」と望んだ。岩手のタクシー運転手は「乗客がおらず、収入がない。実家が農家だったから心得はある」と願った。受話器を置けば電話が鳴り、トイレにも立てなかった。橋詰さんは勤務時間を終えた後、携帯電話に転送して自宅でも問い合わせに応じた。「1万人を超える派遣社員らが契約を解除されたというニュースを見たが、一人一人の状況がこれほど深刻だとは想像できなかった」。橋詰さんは、県外の求職者には「全国の農家が今、人手不足で困っている。お住まいの近くで見つかるかもしれない」と励まし、農業求人サイトなどを伝えた。5月の連休を過ぎた頃、休業状態となった村内のホテル従業員らの申し出などから、人手不足は解消に向かい始めた。その対応に追われながら、橋詰さんは、幾多の人が「働きたい」と望んだ農業の意義を考え、求人と求職がかみ合わなかったコロナ禍の皮肉を呪い、電話をかけてきた派遣社員たちがどこかで働けていることを祈った。 *10-3:https://digital.asahi.com/articles/ASN6N5W9TN6NUHBI01F.html (朝日新聞 2020年6月20日) 世界の難民など、過去最多8千万人 「コロナ対策重要」 20日の「世界難民の日」に合わせ、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は紛争や迫害で家を追われたり、移動を強制されたりした人々が約7950万人(昨年末時点)に上り、過去最多と発表した。グランディ国連難民高等弁務官は19日、世界保健機関(WHO)で会見し、新型コロナウイルスの世界的流行を受けて、難民や国内避難民も「各国の保健対策の対象にすべきだ」と訴えた。UNHCRによると、他国に逃れた難民は約2600万人。出身国で最も多いのは内戦が続く中東シリアで、約660万人だった。シリア難民を最も多く受け入れていたのは北隣のトルコの約360万人だった。また、国内避難民は約4570万人、難民申請者は約420万人だった。移動を強いられた人々の総計約7950万人は、2010年末に比べると倍増しており、18年末に比べても約1千万人の大幅増だった。グランディ氏は会見で、新型コロナ対策で難民や国内避難民が対象外にされれば、地域全体の感染リスクを減らせないと強調。社会・経済の回復策に難民や国内避難民を含めることが重要だと訴えた。
| 資源・エネルギー::2017.1~ | 09:30 PM | comments (x) | trackback (x) |
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