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2020.11.10~15 エネルギーの変換と分散化が日本経済を回復させるKeyである (2020年11月18、21、22、23、25、27、28日追加)
    
2020.6.17日本農業新聞 農山漁村の再エネ       田園地帯の風力発電機 

    
    ハウスや畜舎の太陽光発電機     放牧地帯の風力発電機  日本の地熱発電所 

(図の説明:上の1番左の図のように、基幹的農業従事者の平均年齢が65歳を超えて次第に上がっているのは、次世代の参入が極めて少ないからだ。これは、農業が他産業と比べて魅力のないものとなって選択されていないからだろうが、上の左から2番目の図のように、農業・再エネ・地方は親和性が高く、農地への再エネ発電機の設置に補助することにより、電源のグリーン化を行いながら農業者の所得を増やし、以後の農業補助金をカットすることができる。つまり、電源のグリーン化をうまくやれば、農林漁業や地方の活性化・地方への人口分散・国の歳出削減を同時に行うことができる。その例として、上の右から2番目と1番右の図のような田園に設置した風力発電機、下の1番左の図のようなハウスに設置した太陽光発電機、左から2番目の図のような畜舎に設置した太陽光発電機、右から2番目の図のような放牧地に設置した風力発電機などがあり、1番右の図のように、我が国は地熱を利用できる地域も多いのである)

(1)電源はグリーン化すべき
1)エネルギーは燃料を燃やさなければ得られないものではないこと
 日本では、*1-2のように、電力業界が、①CO₂を出さないアンモニアを燃やす発電 ②化石燃料を使ってCO₂を分離・回収・再利用する技術の実用化 ③発電時にCO₂を出さない原発の使用 を狙っており、2030年度の総発電量に占める火力発電の割合は56%もあるそうだが、①②③とも、CO₂だけが公害だと思っている点で失格だ。

 そして、経産省や電力会社が「原発や石炭火力がベースロード電源」などとしているため、個人や一般企業は電力会社を当てにできず、ゼロエネルギー住宅やゼロエネルギービルディングに移行せざるを得なくなったのである。このままでは、日本は電力でも世界に後れを取り、ゼロエネルギー住宅やゼロエネルギービルディングでは(皮肉にも)トップランナーになるだろう。

 なお、米国の大統領選挙では、確かにおかしな点も多かった。しかし、*1-1のように、バイデン氏が当選を色濃くしたことで、米国のエネルギー・環境政策が一変し、太陽光・風力発電が促進されて、2050年までの温暖化ガス排出0をめざし、米国が「パリ協定」に復帰しそうなのは喜ばしい。

 また、米国が環境・インフラに4年で2兆ドル(約210兆円)を投じて再エネへの設備投資を促し、電力部門では2035年までにCO₂排出0をめざし、ガソリン車から電気自動車への移行を後押しするというのも明快である。

 ただ、米国は2010年代に進んだ「シェール革命」で世界一の原油生産国になっているため、燃料での脱石油に伴い、採掘にコストがかかったり、採掘時に公害を出したりする油田から停止して、サウジアラビアと同じように原油を国内で化学製品に加工して使うようシフトするのがよいと思われる。そうすれば、さらに付加価値を創出しながら、雇用を維持できるからだ。

2)原発も廃止するのが当然だ
 政府は、*1-3のように、「エネルギー基本計画」の見直しに向けた議論に着手したそうだが、CO₂を出さない再エネを主力とした電源構成に転換する必要があるのであって、脱炭素化に向けて「ベースロード電源」などとして原発を活用することがあってはならない。

 何故なら、日本の再エネによる発電コストが高いままで、海外のようにコストの低下が進まなかったのは、*1-4のように、大手電力会社や原発を優遇した結果、再エネの普及が拡大しなかったからだ。

 また、「原発はクリーンな電源だ」と主張する人もいるが、*1-5のように、事故を起こした原発の後始末すらうまくできず、放射性物質を含む大量の原発処理水を発生させ、それを海洋放出して国民にさらなる迷惑をかけようというのだから、技術力・公害への感度・食品安全への感度のいずれについても信頼に値しないという結果が既に出ているからである。

(2)IT化とデータや情報の流用
 現在の日本は、自ら総合的・論理的な判断をして改革することができず、他国がやっているのを見て追随することしかできないという意味で、意識が低い。

 例えば、日本は、1979年に国連総会で採択された女子差別撤廃条約(日本を含む130ヶ国が賛成)に1980年に署名し、条約への批准要件である第一次男女雇用機会均等法を作って1985年には日本でも女子差別撤廃条約が発効したのに、それから35年も経ち、世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」が2019年に153カ国中121位になってから、ようやく女性のリーダーへの登用を推進しようとしているのである。

 また、1995年には、日本が議長国をしてCOP3で京都議定書が採択されたにもかかわらず、日本政府は、それから25年も遅れてやっと環境・再エネ・EVに本格的に取り組み始めている。そして、他にも、このような事例は多いのだ。

 これらは、世界に後れをとってから初めてキャッチアップする形で追随するため「黒船型改革」と言われるが、実際には、日本人(実は私)が最初に問題提議を行い、外国で認められ稼働してから祖国が追随するという悲劇になっており、こういうことが多すぎるため、そうなる理由を考えるべきなのである。

 なお、*2-1のように、第2期(次期)の日本政府の共通プラットフォームは、10月1日から米国企業Amazonが提供するAWS(Amazon Web Services)のクラウド・コンピューティング・サービスに移るそうで、それは、比較・検証の結果、AWSが『セキュリティ対策』も含め、クラウドサービスのメリットを最大限活用するという点で国内各社のクラウドサービスよりも優れていたからとのことである。

 しかし、私にも、日本政府の共通プラットフォームを作るにあたって、Amazonのシステムが最善とは思えず、それより、ミロクやブギョウをクラウドで仕事ができるように改善してもらい、セキュリティー(情報の流用などは論外)を徹底して導入した方が、誰にでも操作しやすく、出来上がりのよいシステムになると考える。

 私は、ITについても、「2000年頃から政府が旗振りをしていたのに、まだ言っているのか」と思うが、確かに、日本は何でも公共工事にしてしまうため、目的を追求した優れたものができないのだろう。

 また、日本政府と地方自治体は組織が全く独立しているので、連結する必要はなく、地方自治体は自らが最もやりやすいシステムを導入すればよい。そして、地方自治体には外部監査が導入されているため、会計・資産管理・人事管理・内部統制・記録保存・セキュリティー等については外部監査人からアドバイスを受けながら改善していけば、それぞれの組織に最も適したシステムを作り、その過程でシステム作りを担当したIT企業を育てることも可能だ。

 さらに、日本政府のプラットフォームを独立した地方自治体にまで共通化する必要はないため、それぞれの自治体がこれぞと思うシステムを作り、よくできたものをBest Practiceとして参考にすれば、よくないものは改善されて、よいものを作り出していくことができる。

 *2-2には、「デジタル化の敵は、言うこと聞かぬ省庁」と書かれており、確かに、省庁が最もデジタル化に遅れてはいるが、マイナンバーカードを健康保険証として使うような行き過ぎを抑えている面もあるので、デジタル化しさえすれば進歩したと考えるのは間違いであり、重要なのは内容だ。

 そして、一律10万円の給付でオンライン申請をしても時間がかかったのは、慣れた人を使わず慣れない人を使ったことが大きな理由である。また、医療や教育の現場も、オンライン化しさえすれば進歩したと考えるのは誤りで、よりよいものになったか否かが重要なのだ。

 なお、「マイナンバーカードを通じて情報が漏れるのではないか」「政府があらゆる情報を覗くのではないか」という懸念は、政府が情報の流通を促進している無神経さから考えて当然であり、議論を聞けば聞くほど信頼するに足りないのである。さらに、デジタルによるオンラインサービスが最高なわけではないため、不慣れな人や使いこなせない人は、(窓口に来る人の数が減るのだから)窓口に来てもらって親切に手助けすればよいだろう。

(3)日本の農業について
 農業は、一昔前までは主たる産業であり、現在も安全な食料を供給するために重要な産業なので、合理的な経営をすれば必ず成立する筈である。にもかかわらず、狭く区切った田畑で、余っている米を皆が生産したがり、付加価値も生産性も低いのが、農業者の所得が増えない理由だ。

 また、国から補助金をもらってやっと成立するようでは、(当然のことながら)職業としての魅力に乏しいため、次世代の農業者をなかなか得られず、耕作放棄地は増え、食料自給率も下がって、農村が過疎化する結果となったのである。

1)ロボット技術やICTを活用したスマート農業
 そのため、農水省が、*3-1のように、「ロボット技術やICTを活用して、省力・高品質生産を実現するのがスマートな農業だ」と広報し始めたのは、少ない人数で多くの農産物を生産でき、職人技がなくても品質の安定を保つことができるためよいと、私は思う。

 また、スマート農業の中にも、無人の農業機械が畑を走り回り、ドローンや衛星から送られる情報に従って耕したり収穫したりするレベル4~5から、農業機械が人のサポートをする程度のレベル1~3まであってよいし、作物の種類・農地の広さ・農業者の資金によって選択すればよい。

 なお、日本人には、「①成長するには競争するしかない」「②競争は他人を蹴落とすもの」「③社会の経済格差が広がるのがいけない」という発想をする人が少なくないが、①については、隣人とは競争するより協力して地域ブランドを作らなければ、他の地域や他国との競争には勝てない。

 また、②は非常に視野の狭い競争でしかなく、いくら他人を蹴落としても見える範囲にいる人にしか勝てないので、そういうことにエネルギーを使うよりは、必要なことをクリアするように集中して努力した方が、気がついた時には全員の上にいられるものだ。

 さらに、③については、国から補助金をもらいながら農家が皆で底辺に居続けては誰にとっても将来性がなく、努力や能力によって差がつくのを受け入れなければ、農業に成功者は出ない。そして、成功者が出なければ、農業の魅力が薄くなって次世代を得ることができず、農村が過疎化するため、農業で成功者を出すことは、農村を復活させるKeyなのである。

2)物流の迅速化と冷凍・冷蔵技術の進歩
 農水産物や食品の新鮮さという付加価値を保ったまま流通できれば、食品ロスが減り、農水産業者・食品業者の所得が増え、食料自給率も上がる。そして、それを実現する方法には、①流通の簡素化 ②配送の迅速化 ③冷蔵・冷凍技術の進歩 ④加工販売などがある。

 このうち、③を極めたのが、*3-2の「細胞を破壊せず、鮮度を保ったまま冷凍する技術」で、「採れたてのおいしさを求める消費者」のニーズに応える形で磨かれたそうで、世界で通用するだろう。

 また、④も、電子レンジが普及して冷凍や冷蔵の加工品を調理するのが容易になったため、プロが作った冷凍・冷蔵の総菜を、中食でも味に妥協せず食べられるようになった。これは便利なことで、今後は、外食・中食の垣根を超えたり、外食産業の形を変えたりすると思われる。

3)需要の多い作物への転作
 滋賀県のJAこうかが、*3-3のように、半永久的に収穫できる薬草ドクダミの産地化に力を入れ、茶の収穫機を転用して、耕作放棄地の農地再生に繋げるそうだ。

 それはよいのだが、JAこうか管内だけで200haを超える遊休農地があり、日本の食料自給率が38%まで落ちているのは、農業を産業としてバックアップせず、その場限りの練られていない政策やバラマキでお茶を濁してきた政治の責任だ。

4)過剰在庫と国産回帰
 新型コロナの流行で、小豆や砂糖原料など需要が減った作物の産地が過剰在庫に苦慮し、*3-4のように、新たな需要創出や輸入品からの国産回帰に向けて総力で取り組んでいるそうだ。

 そのためには、加工・販売業者と組んだり、冷凍・冷蔵技術を駆使したり、輸出したりするのがよいだろう。私自身は、小豆から料理することはなく、冷蔵の小豆餡や冷凍の鯛焼きなど、一手間かければ完成品になる材料を購入して使うので、半加工品のニーズは多いと思う。

 しかし、先日は、ふるさと納税の返礼品として5kgもらったマイヤーレモン(皮ごと)と蜂蜜を使い、甜菜糖を加えてレモンジャム(マーマレード?)を作ったら、美味しい上に美容と健康に良いものができた。にかっ

 また、和菓子やケーキが冷凍になっていると、まとめ買いしてもあわてて食べなくてすむので助かる。さらに、最近は生クリームのケーキばかりしか売っていないので、私は、Amazonを使ってわざわざ北海道や神奈川県から冷凍のバタークリーム・デコレーションケーキを取り寄せて食べるが、常温に1日置くと作りたてのようになって驚くほど美味しいのである。

 なお、日本一のソバの産地である北海道のJAきたそらちが、製粉業者や地元自治体と連携し、輸入品を使っていた大手外食店やコンビニに働きかけて、2,000ha分の販路を新たに確保し、過剰在庫の解消にめどをつけたそうだが、私にとっては、ソバも輸入品だったことがむしろ驚きで、日本には耕作放棄地も多いので、是非、国産を増やして欲しいと思っている。

・・参考資料・・
<電源はグリーン化>
*1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65975470Y0A101C2FF8000/?n_cid=NMAIL006_20201109_H (日経新聞 2020/11/8) バイデン氏当確 21年1月、パリ協定復帰へ
 米大統領選で民主党候補のバイデン前副大統領が当選を確実にしたことで、米国のエネルギー・環境政策は一変する。太陽光や風力発電の促進で2050年までに温暖化ガスの排出ゼロをめざし、現政権が離脱した温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」に21年1月にも復帰する。国際社会の脱炭素の流れが加速し、企業も対応を迫られるだけでなく、バイデン氏の国際協調路線の象徴となる。バイデン氏は「気候変動は深刻な脅威」と断じ、環境・インフラに4年で2兆ドル(約210兆円)を投じる公約を掲げた。太陽光など再生可能エネルギーへの設備投資を促し、電力部門で35年までに二酸化炭素(CO2)排出ゼロをめざす。全米に充電設備を50万カ所設けるなどして、ガソリン車から電気自動車への移行を後押しする。トランプ大統領が進めた化石燃料業界への規制緩和は、再び強化の方向に向かいそうだ。現政権は原油や天然ガスを運ぶパイプラインの建設を認めたり、規制緩和で石炭火力発電所の投資を後押ししたりした。オバマ前政権が定めた自動車の燃費規制を緩めて、環境技術で日欧に劣る米国メーカーの競争力を支えてきた。米国は11月4日にパリ協定から離脱したが、バイデン氏は21年1月20日に就任すればすぐに復帰に動く構えだ。温暖化ガスの排出量削減に動く欧州や中国に加え、日本も50年までの実質ゼロを目指すと表明した。排出量で世界2位の米国も再び合流すれば環境対策には追い風となるが、主導権争いも激しくなる。世界のエネルギー業界の勢力図にも影響を及ぼしそうだ。米国は10年代に進んだ「シェール革命」によって、中東のサウジアラビアを抜いて世界一の原油生産国に躍り出た。輸出も解禁して原油価格を左右してきたが、脱石油の流れが進めば需給も変わりうる。ただ予算や法制化の権限を握る米議会で上下院の多数派が異なる「ねじれ」が予想されるなか、バイデン氏が実効性のある政策を打てるかは未知数だ。同氏も多くの雇用を抱える石油・ガス業界を意識し、シェール開発のフラッキング(水圧破砕法)を禁じるか曖昧な発言を繰り返す。化石燃料に関わる企業や労働者のほか、野心的な環境対策を求める民主党内の左派など様々な勢力との利害調整を求められる。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14668247.html (朝日新聞 2020年10月23日) 温室ガス実質ゼロ、問われる本気度 菅首相「2050年目標」表明へ
 政府は、温室効果ガスの排出量を2050年に実質ゼロにする目標を掲げる方針だ。複数の政府関係者が明らかにした。菅義偉首相が、26日召集の臨時国会での所信表明演説で表明する方向で調整している。欧州連合(EU)の目標と足並みをそろえ、地球温暖化対策に取り組む姿勢をアピールする狙いだ。温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の目標を実現するには、50年までに世界全体の温室効果ガス排出を森林吸収分などを差し引いた実質ゼロにする必要がある。日本政府は「50年までに80%削減」といった目標は掲げていたが、いつ「実質ゼロ」を実現するのか具体的な年限を示していなかった。
■電源構成見直し・大量排出業界の対応、必須
 「50年実質ゼロ」の実現には飛躍的な技術革新が欠かせない。国内の二酸化炭素(CO2)の4割近くは発電部門から排出される。日本でも太陽光や風力などの再生可能エネルギーが増えてきたが、大量導入には課題が多い。発電設備の高効率化に加え、天候による発電量のぶれを調整する大容量の蓄電池などの普及も重要だ。電力業界などは、CO2を出さない水素やアンモニアを燃やす発電技術や、化石燃料を使う場合でもCO2を分離・回収したり再利用したりする技術の実用化をめざしているが、コスト低減が欠かせない。運輸部門では、電気自動車や燃料電池車を本格的に普及させる必要があるが、インフラ整備には時間がかかる。鉄鋼やセメントなど、大量のCO2を排出する業界が、どこまで対応できるかも課題になる。国のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」の大幅な見直しも避けられない。いまの計画の目標では、30年度の総発電量に占める火力発電の割合が56%もある。再生エネ比率の引き上げや石炭火力の削減など、電源構成の見直しは必須だ。その際には、再生エネ同様に発電時にCO2を出さない原発の扱いも焦点となる。
■30年度目標と、大きな隔たり
 「50年実質ゼロ」を掲げる国はイギリス、ドイツなど100カ国を超える。日本も遅ればせながら、それらの国々と、パリ協定の目標達成に向けたスタートラインに立つことになる。環境NGO「気候ネットワーク」の平田仁子理事は「50年と決めたことで、それを達成するための30年度目標がより重要になってくる」と指摘する。日本は30年度に13年度比で温室効果ガスの排出を26%減らす目標を掲げるが、50年実質ゼロと大きな隔たりがある。NGOのネットワーク「Japan Beyond Coal」によると、新設を計画あるいは建設中の石炭火力は国内に17基。発電所の稼働年数は40年程度と見込まれ、近年稼働した発電所も含めれば、50年時点で数十基が動いている見込みだ。石炭火力を容認したままで実質ゼロの実現は疑問が残る。CO2を分離・回収し地中にためる「CCS」を石炭火力につける考えもあるが、日本は地形的に適地が限られる。水素技術などのイノベーションが、CO2の削減にきいてくると考えられるのは30年度以降だ。東京大の高村ゆかり教授は「まずは(再生可能エネルギーやゼロエネルギー住宅など)今ある技術を普及させることが大事」と指摘する。

*1-3:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=127560 (南日本新聞社説 2020/10/25) エネルギー計画:脱炭素社会へ大転換を
 政府は中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の見直しに向けた議論に着手した。地球温暖化を抑えるため「脱炭素」の潮流が国際的に加速する中、火力発電が過半を占める日本は遅れをとっている。二酸化炭素(CO2)を出さない再生可能エネルギーを主力とした電源構成へ大きく転換する必要がある。エネルギー基本計画は将来の電源構成や原発の運営の方向性などを示し、おおむね3年に1度見直してきた。2018年7月に閣議決定した現在の計画は30年度の電源構成を、火力で56%程度、再生エネ22~24%程度、原発20~22%程度に置いたそれまでの目標を維持した。ただ、18年度実績は火力が77.0%、再生エネ16.9%、原発6.2%で目標には程遠い。とりわけ、原発は目標達成に20~30基の稼働が必要だが、東京電力福島第1原発事故後の再稼働は9基にとどまり、実態と大きくかけ離れている。脱炭素化に向けて原発の活用を求める声もある。しかし、事故による安全対策費の増加や原発に対する厳しい世論、安全審査の長期化などを考えれば、行き詰まりは明らかだ。原発を「ベースロード電源」と位置付けた従来の路線を踏襲するのは無責任と言わざるを得ない。一方、太陽光や風力といった再生エネについては「主力電源化を目指す」と現在の計画にも明記している。ただ、発電量全体に占める再生エネの比率が35.3%のイタリア、33.4%のドイツなど欧州各国に比べ、日本の遅れが際立つ。日本では再生エネの発電コストの高さが問題になるが、海外ではコスト低下が進み、普及が拡大している。再生エネ分野の産業競争力を強化するためにも政策的な後押しが欠かせない。経済産業省は7月、非効率な石炭火力の縮小や、再生エネの普及を推進する本格的な仕組みづくりに乗り出すと表明した。特に大規模な洋上風力への期待が大きい。再生エネは天候に左右されるため、蓄電池の普及や送電線の利用ルールの見直しなどが必要だ。普及拡大のインフラ整備が進むことを期待したい。経済同友会は、再生エネの比率を30年に40%まで引き上げるよう求める提言をまとめた。再生エネ普及は経済界の要請でもある。官民協議会などで積極的に推進してもらいたい。菅義偉首相は週明け召集の臨時国会で、50年に国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにすると表明するとみられる。国際社会で進む脱炭素化の機運は避けて通れないという判断だろう。目標を実現するには、現行のエネルギー基本計画の大幅な見直しが不可欠だ。将来を見据えた責任ある議論を尽くすことが重要である。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201024&ng=DGKKZO65423290U0A021C2EA1000 (日経新聞 2020.10.24) 新設の「容量市場」、初入札結果が波紋、電力需給見誤り高騰か
 電力システム改革の一環として政府が創設した新市場「容量市場」が議論を呼んでいる。今夏に初めて実施した新市場の入札で、当初の想定をこえる高い価格がついたからだ。価格は同じ市場を導入する米国や英国の2倍超で「市場設計の失敗」との声もあがる。
●24年度分を確保
 容量市場は、電力の安定供給のため発電事業者に必要な電源を確保させる仕組みだ。電力自由化で卸売電力価格が市場で決まるようになり、太陽光発電など燃料費がかからない電源の普及で電力価格は下がっている。火力や原子力発電は巨額の設備費を回収できず設備の維持や新規投資ができない恐れが生じた。そこで全国の電力需給状況を監視する電力広域的運営推進機関は入札で発電能力(容量)を募り電源維持の対価を払う。原資は電力を購入したい小売事業者から集める。最初の入札は2024年度に必要となる約1億8千万キロワット分について実施した。発電事業者の応札で安い順に落札していったところ、最終的な約定価格は1キロワット当たり1万4137円に達した。これは事前に決められた落札の上限価格とほとんど同額。落札結果が公表されると、関係者からは「想定をこえる価格」と驚きの声が上がった。原資を負担する小売事業者への配慮から、古い電源の受取額を割り引く「経過措置」があり実質的な価格は9534円になる。単純比較はできないが、英国は1キロワット当たり1千~3千円、米国では同3千~7千円にとどまる。このまま調達すると、落札事業者にはおよそ1.6兆円が支払われる。消費者が支払う電気料金への影響について「本来得られるべき電力供給のコストを卸売市場と容量市場に分けて支払うので電力価格には中立的」と電力中央研究所の服部徹・副研究参事。電気事業連合会も「(1.6兆円が)まるごと消費者の負担になるのではない」と説明する。容量市場の収入は卸売市場で未回収のコストを補うので電力料金をあげる要因にはならないとの理屈だ。
●原発は抜け落ち
 ただ電源をもたず払う一方の新電力には打撃で大手との競争で不利だ。経過措置があっても「これでは激変緩和の意味がない」との声も上がる。なぜ想定外の高値になったのか。「需要が過大」か「供給が過小」だったからだろう。需要は広域機関が将来必要とみた発電能力で、供給は発電事業者による応札価格と量から決まる。需要曲線と供給曲線が一致したところが約定価格となる。「需要曲線を人為的に決めるわけで、過大だと余剰電源を抱え込み過小だと電源不足に陥りかねず、さじ加減が難しい」と京都大学の安田陽・特任教授。欧米でも決め方には苦慮する。今回、需要は災害を想定して約12%積み増した。北海道や千葉県での大規模停電の経験が影響した。供給は応札しなかった電源が約2千万キロワットあった。24年度に発電を保証できない原子力発電所などが抜け落ちた。容量市場に詳しいエネルギー戦略研究所の山家公雄所長は「米国の市場では応札可能な電源は必ず応札しなければならないルールがある」と出し惜しみ防止を指摘する。価格の不当な引き上げがなかったかを検証した電力・ガス取引監視等委員会は13日、「算定に問題はなかった」と報告したが、「検証が足りない」と有識者から批判が出た。「(大手電力が)ぬれ手で粟(あわ)の利益を手にしているなどと言われないよう」(松村敏弘・東京大学教授)積極的な情報公開が必要だ。消費者の目線でみれば容量市場は発電設備の維持・更新を促し電力システム全体がより効率的で環境面でも持続可能になってこそ意義がある。既存設備の温存に終わっては困る。需給逼迫時に需要を調整するデマンドレスポンスや蓄電池など次世代に向けた誘導策の存在感が薄いのは課題だ。気候変動対策から石炭火力の休廃止が急ぎの課題だが、容量市場は電源の区別なく維持を保証する。政策の整合性がとれていないのも問題だ。

*1-5:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1212256.html (琉球新報社説 2020年10月23日) 原発処理水海洋放出 地元の不安を押し切るな
 東京電力福島第1原発で増え続ける処理水の問題で、政府は海洋放出の方針を月内に決定する。地元は漁業者を中心に反対の声を上げており、影響を受ける人々と向き合わないまま方針決定に突き進むことになってしまう。処理水には放射性物質トリチウムが含まれる。環境や人体に与える影響を巡る検証は十分ではなく、復興に取り組む地場産業に及ぶ風評被害にも懸念が尽きない。放射性物質の除去技術や安全性が確立するまでの間の新たな保管場所の確保など、海洋放出を回避する方策を探るべきだ。第1原発では溶融核燃料(デブリ)を冷やすための注水などで、現在も1日に170トン程度の汚染水が増え続けている。東電は多核種除去設備(ALPS)を使って汚染水から放射性物質を取り除く処理をしているが、水に似た性質があるトリチウムは除去することができない。東電は処理水を保管する原発敷地内のタンク容量が、2022年夏に限界に達するとしている。政府も処分方法の決定を急ぐ姿勢を強めており、菅義偉首相は21日に「いつまでも先送りできない」と語った。背景には、海洋への放出を始めるには設備工事や原子力規制委員会の審査などで2年程度の準備を要するため、現状が決定のタイムリミットだとする判断がある。だが、時間切れを理由に地元の反対を押し切ることなど許されるはずがない。炉心溶融(メルトダウン)した原発から出る処理水を海に流し続けることによる環境影響は簡単に予見できるものではなく、問題視するのは当然だ。処理水の保管を東電の敷地内に限定せず、政府としても別の保管先の確保を検討する対応などがとれるのではないか。トリチウムの除去技術開発に注力することも、原発事故を起こした東電や国の責任であるはずだ。また、震災の津波でさらわれた漂着物が沖縄で見つかることがあるように、海洋放出の影響は原発沿岸だけにとどまらない。周辺諸国からの非難は避けられないだろう。19年には、韓国による水産物の輸入規制を巡って世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きで日本が敗訴した。国際社会は福島の原発事故を終わったと見なしていないことを自覚する必要がある。処理水の扱いに関する議論は13年に始まった。この間には、17年に東電の川村隆会長(当時)が海洋放出について「判断はもうしている」と発言し、地元の反発を招いた。18年には、国民の意見を聞く公聴会の直前に、本来除去されているべきトリチウム以外の放射性物質が処理水に残留しているのが発覚した。東電、政府の結論ありきの姿勢やデータに対する不信も、処理水の処分方法が長年決まらない要因の一つにとなってきた。地元や国民の不安の払拭を第一とした、誠実で慎重な対応が必要だ。

<IT化とデータや情報の流用>
*2-1:https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020092600003.html?page=1 (朝日新聞論座 佐藤章 2020.9.26) アマゾンに日本政府のIT基盤を丸投げする菅政権~NTTデータはなぜ敗北したのか、菅政権「デジタル改革」の罠(2)
今から167年前の1853年、浦賀沖に米国ペリー提督率いる黒船が来航して徳川幕府は上を下への大混乱に陥り、明治維新につながっていった。それ以来、日本人の保守的で慣習に流されがちな側面を揶揄して「黒船が来ないと改革はできない」としばしば表現される。10月1日から、次期政府共通プラットフォームは米国企業のAmazonが提供するAWS(Amazon Web Services)のクラウド・コンピューティング・サービスに移る。この事態をわかりやすく言えば、「みんなで黒船に乗って改革してもらおう」という話だ。「みんなで乗れば怖くない」という意識が安倍政権の方針を引き継いだ菅政権にはあるのかもしれないが、本当に「怖くない」のか。幕末の黒船には吉田松陰が乗り込もうとしたが、その話とはまるで違う。松陰は身を捨てても先進文明を学ぼうとする覚悟を決めていたが、現在の日本政府は黒船Amazonの単なる客だ。しかも、国民や政府の機密情報が大々的に流出するリスクにも目をつぶって乗ろうとしている。
●「AWSは国内各社より優れていました」
 Amazonにみんなで乗ることを決めた安倍内閣の総務相、高市早苗氏は日本会議国会議員懇談会の副会長でもあり、右翼的な言動が目立つ。その高市氏は今年5月20日、自らのホームページ上のコラムでこう綴っている。「私は、『第2期(次期)政府共通プラットフォーム』について、何とか『純国産クラウド』で整備できないかと考えていました。昨年9月の総務大臣就任直後、『設計開発の一般競争入札』は昨年3月に終わっていたものの、諦め切れずに、改めて国内各社のクラウドサービスとの比較・検証を行いました」。愛国の情がそうさせたのか、高市氏はAmazonと国内メーカーとの比較、検証の再調査をしたと記している。だが、その結果についてはこう続けている。「日本人としては残念ですが、十分な比較・検証の結果、AWSは、『セキュリティ対策』も含め、『クラウドサービスのメリットを最大限活用するという点』で、国内各社のクラウドサービスよりも優れていました」。本当にそうなのか。この高市氏の言葉に対して、私が取材した日本有数のセキュリティ設計専門家は問題の深さをこう指摘している。「ふざけるなという話ですよ。それだったら、なぜもっと早く国内メーカーや専門家にそういう問題提起をしなかったのでしょうか。問題は政府基幹システムのアプリケーションもセキュリティも今後はAmazonに従うということです。もっと早く議論すれば専門家や学者がいろんな意見を出したでしょう。安倍さんや菅さんのやり方はまさに独裁でしょう。議論や意見の出しようがない」。しかし、この専門家も高市氏も、Amazonなどの海外勢に比べて日本の国内メーカーが技術力で劣っていることを認めている。なぜ、こんな状態になってしまったのだろうか。
●ITゼネコンの市場寡占が日本のIT産業を衰退させた
 私は日本の国内メーカーがどんどん力を落としていった2007年から09年にかけて、この問題を集中的に取材したことがある。この問題は、メーカー側を取材してもその原因はなかなか見えてこない。むしろ、クライアント側に目を移すことによって問題の所在がはっきりと浮かび上がってくる。当時の取材現場からわかりやすい事例を二つほど挙げてみよう。2000年7月、国税庁システム構築の入札で驚くべきことが起こった。最終的に61憶円の契約となったが、当初NTTデータがわずか1万円で応札してきたのだ。いったんシステム構築の仕事を取れば、以後の随意契約で高値の改修作業を取り続けることができるからだ。NTTデータのこの入札はふざけたやり方だが、このころ日本の大手IT企業はやはりそれぞれの縄張りを確保しようと躍起になっていた。経済産業研究所の報告によると、2001年度の政府調達ではNTTや日立製作所、NEC、富士通の4大グループで6割、これに東芝や日本IBMなどを加えた10大グループで8割を受注していた。これら大手グループのトップ企業は2次下請け、3次下請けなどの多重構造ピラミッドの頂点に君臨しているため、土木建設業界のゼネコン企業にちなんで「ITゼネコン」と呼ばれている。このITゼネコンの市場寡占こそ、日本のIT産業が衰退していく最大の要因となった。2001年4月、日本総合研究所から長崎県にひとりのシステムエンジニアが出向してきた。同県の最高情報責任者(CIO)に就いた島村秀世氏だ。島村氏は当初建設業界のゼネコンで電算業務を担当していたが、日本総研に移って金融機関の電算化を手掛けた。だが、子会社へ出向していた時に、技術力があっても中小IT企業はなかなか受注できず、ブランド力だけで受注していくITゼネコンのやり方に疑問を感じていた。国税庁システムを1万円入札で落としたNTTデータのやり方は極端な事例だが、当時のITゼネコンは縄張りを築くためにかなり貪欲な姿勢を見せていた。このため、自治体からのIT調達改革を目指していた長崎県の呼びかけに「大喜びで飛びついた」(島村氏)。私が長崎県庁に島村氏を訪ねた時、彼の「実績」のひとつが真っ先に目に飛び込んできた。長崎県の観光案内映像などを流すディスプレイのコンピューターは地元業者が県内の電器店で買った部品で作り上げたもので、製作費は70万円。ITゼネコンに発注すれば300万円程度は取られた。島村氏はまず県庁職員自身のIT知識向上を目指した。このため、職員全体の休暇システム作りを育児休暇から復帰したばかりの30代の女性職員に任せた。この職員は当初、パソコンでメールや検索ができる程度で、入門書からスタートしなければならなかった。しかし、地元業者と打ち合わせを重ねて半年後には設計書を完成させるまでにこぎつけた。第一歩から始めて職員全体のIT知識の水準もどんどん上がり、大手業者に依頼すれば数百万円かかりかねない少々のシステム変更などは職員自身がこなせるまでになった。このために長崎県全体のシステム製作費は年を追って低下し、地場企業の受注割合は増加していった。ITゼネコンはいったんシステム構築を受注すると設計仕様などのソースをクローズする。こうしておけばこのシステムには他社は入れず、翌年度以降の改修事業などは黙っていても随意契約で入ってくる。これは、自治体や国税庁などの中央省庁だけではなく、民間企業でも同じ構図だ。このクローズドソース体制に挑戦したのが長崎県であり、島村氏が率いる同県の職員たちだった。
●「韓国モデル」を下敷きにしたオープンソース
 もうひとつの事例を紹介しよう。沖縄県浦添市はITコンサルタント企業と共同して独自の業務システムを開発した。さらにこのシステムの設計図を公開して、他の自治体に共同管理を呼びかけた。このように設計や仕様を公開するやり方をオープンソース体制と呼ぶ。先のクローズドソース体制に対して、システム全体を社会の共有財産にしようという考え方である。こうしておけば、自治体や中央省庁のシステム構築は競争の下に置かれ、予算低廉化とITを中心とした社会全体の進化につながっていく。私が取材した2009年に稼働を始めた、地方税や国民健康保険、年金などの「基幹系」と呼ばれるシステムの発注価格は約8憶円で、ITゼネコンを使っていたころに比べて半分以下で済んだ。これを可能にしたのは2年間かけて実施した市役所の業務見直しだ。余計な手続きが減れば、それだけシステム構築費は安くなる。「なぜ、ここでその作業が必要なんですか」。見直し期間の間、コンサルタント企業の社員が市の職員の後ろにはりつき、一つひとつの作業の意味を洗い出し、作業の効率化を目指した。極端な例は、小中学生の保護者への就学援助だった。それまで申請から通知までに必要だった20もの作業をわずか二つの作業にまで減らせることがわかった。いかに無駄な作業をしていたか。すべての作業を見直した結果、システム費用が安くなっただけでなく、市職員も業務に習熟した。以前はシステム構築や補修をすべて大手ITメーカーに任せきっていたが、職員自身がシステムや市全体の業務を幅広く知るようになった。そして、この先進的な事例を考える上で欠かすことのできない視点は、このオープンソース体制は「韓国モデル」を下敷きにしたという点だ。浦添市のこの新システム構築を裏で支えていたのは、ITコンサルタントの廉宗淳(ヨムジョンスン)イーコーポレーションドットジェーピー社長だ。廉氏はソウルの工業高校を卒業後、韓国空軍で3年間、戦闘機のエンジン整備に携わった。除隊後、夜間大学でITプログラムを勉強し1989年に初来日。当時はIT先進国の位置にあった日本の企業でプログラム作成の仕事をした。1991年にいったん帰国し、97年に再来日するが、そのころから韓国はIT分野で日本を追い抜き始めた。再来日後ITコンサルタント企業を作り、病院関係のコンサルタントから佐賀市や佐賀県、青森市、そして浦添市など自治体のIT改革を手掛けた。「私は現代のIT朝鮮通信使を自任している。日本に韓国の方法を伝えたい」。廉氏は当時、私にこう語っていたが、現在IT分野では韓国は日本のはるか先に行ってしまった。同じ浦添市役所で、決済書類がいまどこの部署にあるか一目瞭然に見えるパソコンのディスプレイを初めて見た時、私は大変な驚きを味わった。便利なこの小システムを開発したのが韓国の若者が立ち上げた小さいベンチャー企業だと聞いて再び驚かざるをえなかった。
●「台湾のオードリー・タンは日本には出てこない」
 IT社会全体がオープンソース体制を取っているために若者のITベンチャー企業がどんどん出てきている。このためにIT社会全体のイノベーションが日々新たになり、韓国はIT五輪の世界で常にメダル争いを演じるまでに成長した。翻って日本は、ITゼネコンだけが、外界から閉じた秘密のソースの中でいつまでも随意契約で楽な儲け口を見出しているクローズドソース体制によって、技術のイノベーションは衰え、IT業界全体が没落の道をたどっている。韓国がメダル争いを演じている一方、日本は10位台から20位台をウロウロしているのが現状だ。「日本人は不思議なんですよ。自分たちは何か科学技術に非常に優れた民族で日本製品は素晴らしいと思っている。確かにそういう時代はあった。だけど、今や全然そうではない」。日本有数のセキュリティ設計専門家はこう言葉を継いだ。「日本製のコンピューターのモニターなんかもう存在しないですから。ぼくはここ20年、一貫してLGのモニターしか買っていませんが、やっぱりLGは素晴らしいですね」。LGエレクトロニクスはサムスン電子に次ぐ韓国電機業界のナンバー2。同社の液晶モニターのシェアは世界トップクラスだ。まだ日本のIT技術が世界トップレベルにあると思われていた2000年のころ、この専門家が韓国で講演したことがある。その時、会場の収容能力2000人のところを5000人が詰めかけ、講演の後半は質問攻め、ホテルに引き上げてからも韓国の自治体関係者が質問のために部屋に押しかけてきた。当時の韓国は日本のIT技術を吸収するためにそのくらい貪欲だった。ところが、今や韓国のIT企業のホームページを開くと、この専門家でも教わりたいくらいの技術が載っているという。「もう韓国には勝てないです。いや勝つ勝てないじゃなくて、もう日本はキャッチアップもできないでしょう」。専門家はこう話し、さらにこう続けた。「日本のITゼネコンには秀才が100人いるんですよ。だけど、秀才100人は一人の天才に勝てないんです。それがコンピューターセキュリティの世界なんです。日本ではみんなで天才の足を引っ張る。『お前は静かにしてろ』というわけです。だから、台湾のオードリー・タンは日本には出てこないんです」
●国内IT産業は消失の危機
 言葉を変えて言えば、クローズされた縄張りの中で随契の儲けを稼いでいくITゼネコンの世界では、「天才」の頭に閃くイノベーションはむしろ邪魔になる。オードリー・タンのいない日本のITゼネコンは、最初の政府共通プラットフォームの構築に失敗した。NTTデータが中心となって構築するはずだったが、2016年9月、会計検査院はあらゆる面で「不十分」と指摘した。さらに2018年には、利用実績がゼロだったために約18憶円かかったこのシステム自体をそのまま捨ててしまう事態にまで追い込まれた。昨年5月、この失敗の後を受けて、次期政府共通プラットフォームの設計・開発などの請負業務一般競争入札があった。落札したのはアクセンチュア。同社はAmazonのAWSの利用を前提に設計を進めていたようだ。この点は発表がないためよくわからないが、専門家によれば、Amazonのクラウド・コンピューティング・サービスによる次期政府共通プラットフォームの試験走行はすでに相当の距離を走っているのではないか、という。菅首相は9月25日、自治体のシステムについて、「全国一斉に迅速な給付を実現するため、25年度末までをめざし作業を加速したい」(9月25日付朝日新聞夕刊)と述べた。また、マイナンバーカードについても、2022年度末にはほとんどの国民が手にするよう、普及策を加速するように指示した。ここまで書けば、菅首相の頭の中はCTスキャンをかけたようにはっきり見えるだろう。つまり、菅首相が考えていることは、国内ベンダーはどこも頼りないから米国のAmazonに日本政府全体のIT基盤構築を全部やってもらおうということだ。そして、新政権最大の目玉のデジタル庁はその露払い役というわけだ。「みんなで黒船に乗って改革してもらおう。みんなで乗れば怖くない」。菅政権の本音の合言葉は恐らくこのようなものだろう。しかし、本当に「怖くない」のか。例えば、これまで政府共通プラットフォーム構築のイニシアティブを執ってきたNTTデータは今後確実に退いていく。同じように、他の中央省庁システムを担当していたITゼネコンの業務も確実に縮小していくだろう。確かに、これまで見てきたように、日本のITゼネコンの業容縮小は自業自得の面も少なくない。しかし、一国の経済政策、産業政策の側面から見れば、自前のIT産業全体の消失にまでつながりかねないこのような政策は、とても歓迎できたものではない。もっとはっきり言えば、21世紀の産業を引っ張るIT技術を自ら捨てるこの政策は、まさに亡国の政策だ。確かに長年続いてきた自民党政権はIT業界の構造的な重大問題に目をつぶり、問題を放置してきた。しかし、専門家や学者らが議論を重ねれば、日本のIT産業をきちんと守りながら業界全体に改革を促し、政府共通プラットフォームの構築についてもソフトランディングさせる方法が出てきたかもしれない。私は菅首相に問いたい。その道を模索する努力も払わず、黒船に乗ることを簡単に決めてしまったのはなぜなのか。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN9Q40ZSN9LULZU00L.html?ref=hiru_mail_topix1 (朝日新聞 2020年9月23日) 第1回デジタル化の敵は「言うこと聞かぬ省庁」 3密も生んだ
 4連休初日の19日午後2時前、東京・虎ノ門の民間オフィスビルに入る内閣官房IT総合戦略室の会議室に、私服の官僚たちが集まってきた。菅義偉首相が目玉政策に掲げるデジタル庁創設に向けた、キックオフ検討会のためだ。具体化を任されたのは、IT業界にくわしく、安倍政権でIT担当相を務めた平井卓也デジタル改革担当相だ。「総理の指示は相当なスケジュール。素早く立ち上げ、小さく産んで大きく育てたい」。紺のポロシャツ姿の平井氏は、檄(げき)を飛ばした。菅氏は政権発足翌日の17日、平井氏に作業を急ぐよう指示した。休日返上となった19日の検討会にはオンラインを含めて20人ほどが参加し、議論は4時間に及んだ。「省庁がポストに人を送りこむのではなく、官民のデジタルを強くしたい人を集めた組織に」「法律で、各省庁への権限をしっかり持たせないと」「エンジニアはリモートワーク前提で」「国民から広く意見を寄せてもらおう」。冒頭以外は非公開で、お菓子をつまみながら、具体化に向けた課題や進め方を次々に出し合った。連休明けの23日には、すべての閣僚が出席する会議が首相官邸であり、菅氏が設置準備室をつくるよう指示を出す。来年は通常国会で法整備を進め、立ち上げまでこぎつけたい考えだ。菅氏がデジタル庁創設を急ぐのは、政権の売りにしたい「縦割り打破」の象徴となるからだ。新たに発足した菅政権はどういう政策をどのように進めていくのか。首相が重視する「菅印」の主な政策について、菅氏のこだわりの背景や課題を検証しつつ、今後の行方を探る。官房長官時代は、その縦割りの典型がマイナンバーカードにあると見ていた。「今年は、マイナンバーをやる」。2019年の1月初旬、菅氏は総務省や厚生労働省など省庁の幹部を急きょ集め、マイナンバーカードの普及策を考えて前進させるよう指示した。発行から3年たっても普及率が12%ほどの状況を、かなり気にしていたという。所管する総務省では、情報通信を担う旧郵政省系は前向きでも、地方自治体をみる旧自治省系は腰が重い。カードを健康保険証として使えるようにする作業も、厚生労働省の動きが鈍く、進んでいなかった。マイナンバーに限らず、省庁のデジタル化の取り組みの大半は、優先順位が低かった。そのつけはコロナ禍で、一気に噴き出す。一律10万円の給付では、窓口となる自治体と国のシステムの連携が悪く、オンライン申請をしても時間がかかった。医療や教育の現場でも、すぐにオンライン化への切り替えが進まない。さまざまな行政手続きで対面での確認やはんこを必要とし、「3密」回避の大きな障害になった。こうした課題に、デジタル庁はどのような体制で、何に取り組むのか。「デジタル敗戦から立ち上がる」「既存の役所とは一線を画す」と強調する平井氏は、最新の知見を持つエンジニアなど、民間の人材も多く登用する考えだ。マイナンバーカードは使える行政サービスを広げる。省庁でばらばらのシステム調達をまとめ、医療や教育などあらゆる分野のデジタル化の予算を集約する。自治体のシステムの共通化を進める。そんな構想を描く。最大の課題は、それぞれの省庁に実行を迫る強い権限と予算、人材を集約できるかどうかだ。「横串を通す」作業は、関連する仕事と予算と定員の削減につながり、省庁や関連業界は強く抵抗する。政府のデジタル化の「司令塔」としてはIT総合戦略室があるが、「いまは予算がほとんどなく、単なるアドバイザー。省庁は言うことを聞かない」(内閣官房幹部)のが実態だ。新組織が二の舞いとなれば、実行力は乏しくなる。「(政権の方針に)反対するのであれば、異動してもらう」。菅氏はこう明言して、これまでも反対を抑え込んできた。ただ、社会全体のデジタル化は、力ずくだけでは進まない。「デジタル化のかぎ」と位置づけるマイナンバーカードには、オンライン上で本人確認ができるICチップがついている。これを活用し、今後さまざまな情報とひもづけて使い道を広げていくと、便利にはなる。一方でカードを通じて情報が漏れるのではないか、政府があらゆる情報をのぞくのではないか、との懸念は強まる。情報漏れを防ぐ対策とともに、国民からの信頼を得る丁寧な説明が欠かせない。デジタル化に不慣れな人や使いこなせない人を、どう手助けするのか。高齢社会で新たな格差をつくらないためのきめ細かな対応も、求められる。

<日本の農業について>
*3-1:https://www.agrinews.co.jp/p52065.html (日本農業新聞 2020年10月6日) スマート化で何をする? 新技術が経済格差に 特別編集委員 山田優
 スマート農業が花盛りだ。本紙には無人の農業機械が畑を走り回り、ドローン(小型無人飛行機)や衛星から送られた情報に従って耕したり収穫したりする事例が、全国各地で登場する。農水省のウェブサイトによると、「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業」がスマートな農業だという。高齢化や過疎で農村の人手不足が深刻な中、魅力的に見えるのは確か。省力化と品質向上の一石二鳥になるのであれば、期待されるのは当然だ。厳しさが強調される農業で、数少ない明るい話題といえる。政府のスマート農業関連予算は拡充されている。デジタル化に熱心な菅政権でさらに農業のスマート化が進むことは確実。目指すのは農家がいち早くスマートになって競争力を高めることだ。この場合の競争相手は、国内の他産地や輸出先の競合国などだろう。政府のスマート農業は、安倍前政権から続く攻めの農政とぴったり歩調を合わせている。成長するには競争するしかない。他人を蹴落としてでも強い農業を目指しなさいというわけだ。新しい技術は私たちの暮らしや経営を便利にする一方で、社会のひずみを広げることもある。ここ数十年の間に、世界中でITが浸透した。インターネットやスマートフォンがない生活はもはや想像しにくい。半面で社会の経済格差は大きく広がった。ITをスマートに利用するごく一部の企業や富裕層が巨万の富を独占し、一方で多くの貧困層が生まれた。新自由主義的なさまざまな規制緩和と、ITの発展が結び付き、競争の勝者だけがおいしい思いをできるようになったからだ。農業でスマートな技術がもてはやされ、気が付いたら農村に取り返しのつかない経済格差が生まれることはないだろうか。人影のない田んぼで、無人トラクターとコンバインが走り回る。収穫した米は自動で乾燥調製機に運び込まれる。経営者の命令で全ての作業を指示するのは人工知能(AI)。従うのは地元の補助要員か海外からの研修生。一つ一つの技術を見れば便利で営農に役立つものばかり。だが、こんな風景の中、一握りのスマートな経営者が、戦前の地主のように「旦那さま」として農村を歩き回る姿は見たくない。

*3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48973690U9A820C1X11000/ (日経新聞 2019/8/26) COOLジャパンが世界を変える 進化する冷凍・冷蔵技術
 ニッポンの冷凍・冷蔵技術に熱視線が注がれている。米国で生まれた急速冷凍の技術が、食材のおいしさにこだわる日本で鍛えられて、その進化が止まらない。鮮度を保ったまま冷凍できる新技術が登場し、農水産物の加工や小売り、外食などで新たなビジネスが広がっていく。冷食市場が広がる新興国ではコールドチェーン(低温輸送網)構築の動きも加速する。世界の食の未来を激変する潜在力を秘める「COOLジャパン」の最前線を追いかけた。「本当に冷凍されたシイタケの香りなのか。ありえない」。中国工商業連合会の幹部は、手に取った冷凍シイタケを鼻に近づけると驚きの声を上げた。数年前に冷凍されたメロンやホウレンソウなども次々と試食すると、興奮気味に呼びかけた。「生と変わらないみずみずしさ。中国でもっと話しを聞かせて欲しい」
■水の分子を振動
 7月20日、同連合会の「日本低温物流視察交流訪問団」の22人が訪れたのは、千葉県流山市にある冷凍技術のアビーの本社。お目当ては大和田哲男社長が発明した冷凍システム「CAS」だ。「セル・アライブ・システム」の略で、凍結時に細胞を生かしたまま素材を冷凍できる。素材本来がもつうまみや香りなどを長期間保てる。これまでの急速凍結装置は、セ氏マイナス40~50度の冷風を素材に直接吹き付けて凍らせる。このとき、水の分子が集まった氷の結晶が表面で膨張し、素材の細胞組織を破壊して、うまみや香りなど素材の質を劣化させていた。肉や魚を解凍し、素材から汁がにじみ出る「ドリップ現象」が起きるのはそのためだ。CASは急速凍結機に組み合わせて使う。独自装置で凍結機のなかに磁界を発生させて、微弱な電流で素材に含まれる水の分子を振動させ、表面の氷の成長を抑える。素材と水の分子の凍結点を同期させ細胞を壊さずに凍らせる。大和田氏は「細胞破壊がないため、素材の新鮮さをいつでも再現できる」と胸を張る。大和田氏は1973年、不二製油と生クリームを使ったケーキの凍結と解凍に世界で初めて成功した職人として知られる。その技術力に目を付けた細胞医学者が細胞や臓器、血液などへの応用研究を大和田氏に働きかけ、CASの開発につなげた。2004年に第1弾のCASフリーザーを発売し、今では世界22カ国で使われている。まだまだ進化中だ。「冷凍食品の父」と言われる米実業家のクラレンス・バーズアイ氏は1920年代に急速冷凍した食品を発案し、食の世界に革命をもたらした。
■安心とおいしさを両立
 それから約1世紀。大和田氏は凍結速度の進化が中心だった「クールテック」に創造性を加えた。画期的なイノベーションとしてCASを特集した米経済誌フォーブスは、大和田氏を「ミスター・フリーズ」と評した。大和田氏は現在、大半の時間を海外食品メーカーの担当者との接客に費やす。6月に米ウエスト・バージニア州のエドワード・ガンチ商務長官が大和田氏を訪ね、米国の農産物の輸出拡大の切り札としてCASを求めた。大和田氏は「世界で勝負できる手応えを感じ始めた」と語る。米国発祥の技術が日本で独自の進化を遂げた。ニッポン発のクールテックが食の世界で新たな風を吹かせている。冷凍船で世界シェア8割以上を誇る産業用冷凍機大手、前川製作所の高橋繁執行役員は「とれたてのおいしさを求める消費者に鍛えられた」と説明する。日本の冷凍・冷蔵技術は、まずマグロなどの水産物加工の保存に用いられ、冷凍食品に広がった。前川製作所も顧客のニーズに合わせて、技術を発展させてきた。おいしさだけが魅力ではない。人手不足やフードロス(食材廃棄)などの課題解決に一役買う。「ヤシノミ洗剤」で知られるサラヤ(大阪市)は、中小の食品加工場の衛生管理を向上するため、急速凍結機に着目した。大きな食品工場が導入する大型機は充実しているが、小型な凍結機は少なかった。中小に急速凍結機が入れば「加工食品を保管しやすくなり、フードロスや人手不足を解消できる」(食品衛生部の脇本邦裕副統括部長)
■液体は速度の20倍
 サラヤは洗浄機や消毒器など食品衛生分野における商材やコンサルティングなどを主力としている。「衛生管理に人を回せない」。そんな声を聞き、独自の急速液体凍結機「ラピッドフリーザー」を開発した。ラピッドフリーザーはエタノールを用いた専用冷凍液で素材を急速凍結する。洗剤で培ったアルコールのノウハウを生かし、不純物が少ない冷凍液の開発につなげた。一般の冷凍機と比べて、冷凍速度は約20倍になる。冷凍速度を速めて、氷の結晶を小さくし、食材の細胞破壊を抑えられる。外装殺菌したパックに加工した素材を詰め、冷凍液をくぐらせるため、より効率良く保存し、配送もしやすくなる。加工業者は一括仕入れ・調理が可能となる。青果仲卸を手掛ける泉州屋(大阪市)は、ラピッドフリーザーを卸売市場に導入し、冷凍商品開発のラボを開設した。味は良くても小売りに卸せない規格外品、完熟直前の廃棄対象といった食材の保存にも活用する。サラヤは泉州屋からそうした果物や野菜を調達し、スムージージュースとしてサラヤの店舗で販売し、フードロスの活動を展開している。20年6月には食品加工業者に国際基準である「危険度分析による衛生管理(HACCP)」に基づく衛生管理が義務化される。サラヤ食品衛生部の中田慧悟係長は「冷凍技術で食の安心安全とおいしさの両立を提案していく」と語る。磁石と電磁波に冷風を組み合わせ、ドリップ現象を防ぐ「プロトン凍結機」を展開する菱豊フリーズシステムズ(奈良市)。食材を長期保存し、長距離輸送できる冷食に強みを持つ。同社は沖縄県うるま市に冷食の製造・販売などを手掛けるアンリッシュ食品工業を15年に設立。冷食のセントラルキッチン(CK)機能を備え、伊勢丹新宿本店などにプロのシェフが手作りした凍結総菜を供給している。菱豊の弓削公正営業統括部長は「冷凍機だけでなく、冷凍素材の最適な調理法も研究している」と話す。「アンリディッシュ」という手作り冷凍総菜ブランドを今年から本格展開する。日本各地の産地と組み、長期保存できる冷食の利点を生かし、全国津々浦々に高品質な食材を届ける。国連は60年にも世界の人口が100億人を超えると予測する。アビーの大和田氏は「食糧難を防ぐため、冷食を世界で広げる」と誇りを感じる。
■「COOLジャパン」戦略が世界を席巻
 クールテックは農水産業、畜産が抱える題を克服する力を持つ。「いつまでも自動車に頼れない。冷凍・冷蔵技術で農水産業を競争力ある産業にしたい」(大和田氏)。日本企業が展開する「COOLジャパン」戦略が世界を席巻する。日本では手抜きのイメージが強かった「レン(ジで)チン」が、ひと味もふた味も違った味を引き出している。クールテックの進化によって、冷食の商品力を格段に上げた。味や食感のレベルを保ちながら、保存料なども使わず食卓で楽しめる。小売店の売り場や外食の現場でも存在感を増しており、人手不足やフードロスなど流通業界が抱える課題を溶かすパワーをみせる。フォーク越しに伝わるふわりとした感覚。口の中に運ぶとしっとりとした柔らかさの後にじんわりと甘さが広がる。「ギャザリング テーブル パントリー」(東京・中央)の「ベイクドチーズケーキ」(税別480円)は、39秒の「レンチン」を経た冷凍食品だ。チーズケーキだけではない。かむと皮のぱりっとした感触と肉汁があふれるチキンをはじめ、すべての商品が火と油を使わない厨房で生み出される。パントリーは「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングス(HD)が17年に出店した実験店だ。パナソニックと共同研究で同社の新型機器を導入。セントラルキッチン(CK)で調理した冷蔵、冷凍食材を高い品質で提供できるようにした。店での仕込み時間はゼロ。清掃の労力も短く済む。ロイヤルHDとコールドチェーンには歴史的に深いつながりがある。実はロイヤルHDが1970年の大阪万博の会場で運営する飲食店で冷凍食品を活用し、外食産業でコールドチェーンの先駆けとなった。創業者の故・江頭匡一氏は米軍基地のコック見習いから身を起こし、米国の流通業界を支えていた冷凍技術に早くから着目した。当時、米国ではロサンゼルスとサンフランシスコ間でコールドチェーンが構築されていた。「ちょうど福岡県のCKから大阪と同じ距離。米国にできて、日本で実現できないわけがない」江頭氏は福岡県のCKから片道8時間の冷食の輸送に踏み切った。万博の会期中は周囲が欠品を起こす中で料理を提供し続け、半年で11億円超の売上高を稼ぎ出した。ロイヤルHDで研究開発を担う野々村彰人常務は「多店舗展開の基礎を実証した転換点になった」と振り返る。
■新たな消費スタイルも
 コールドチェーンは70年以降の外食企業の興隆を下支えした。クールテックの進化は、人手不足などの難題に悩まされる外食産業にとっても次なる飛躍をつかむきっかけとなる。「冷凍技術は調理と消費のタイミングをずらせる。労働集約型の外食産業を変えられる」(野々村氏)。パントリーはその先兵だ。ロイヤルHDが冷食で狙うのが、食卓だ。ロイヤルホストでは17年秋ごろからカレー、シチューといったメニューを冷凍食品として販売。現在75店舗で展開している。野々村氏は「ロイヤルの味を店に来なくても家庭に届けられれば新たな市場ができる」と自信をみせる。クールテックが「外食」と「内食」の垣根も崩しつつある。食卓に食品を届けるのが冷凍食品専門店「ピカール」だ。品ぞろえは約350種。有機野菜を使った「Bio野菜のラタトゥイユ」(735円)のような手軽なおかずから、「サーモンのパイ包み焼き」(3219円)のようにパーティーに出るような本格的な料理まで、レンジやオーブンで温めるだけで楽しめる。仕事を抱える女性を中心に人気が広がる。冷凍食品は品質の高まりに加えて、共働きの増加などライフスタイルの変化もあり、消費量はプラス基調が続く。日本冷凍食品協会(東京・中央)によると、18年の冷凍食品の国内消費量は289万トン。消費量は1人あたり22.9キログラムで08年から18%増えている。消費者アンケートでも週1回以上利用するとの答えが半数を超えた。新たな消費スタイルも生み出しそうだ。冷食売り場の拡大を進めているファミリーマートが今、照準を合わせるのは、「朝食」だ。コンビニの冷食といえば、帰宅時に夜食用に買われていた。商品・物流・品質管理本部で冷食を手がける栗原栄員氏は「朝食に冷食を広げるメニュー開発を進めている」と話す。例えば、冷凍サンドイッチをチンして食べられるようにする。チルドで時間の経過で出るぱさつきなどを抑えながら、翌朝でも食べられるようになる。「瞬間凍結できれば中食のメニューで冷凍商品で販売できないものはない」(栗原氏)。どの家庭も多忙なだけに、冷食朝食というカテゴリーが加われば、消費者も助かるというわけだ。ファミリーマートは冷食を成長領域に定め、約44億円を投じて、冷凍食品を増やした店舗を9月までに4000店にする計画だ。冷凍食品のケースは従来の3枚扉でなく4枚扉と大きくし、収容する商品のアイテム数を51から73に増やす。店舗運営の効率化、フードロス軽減にもつなげる。コールドチェーンの進化は、地場でしか味わえなかった食品流通も変えつつある。ホルモン専門店など約130店舗展開するい志井(東京都調布市)が鹿児島大学と共同で開発したのは、医療用に使われている溶液を活用した新たなホルモンの流通方法だ。鮮度劣化が早いホルモン。これまで解体から2日目までしか提供してこなかったが、11日目まで鮮度を保ち保存できるようになる。保存期間が延び、これまで1割ほどだったホルモンの廃棄率がゼロになった。関東圏の食材しか仕入れられなかったが、畜産県である鹿児島とも取引できるようになった。鹿児島ではホルモンを消費しきれず廃棄されるケースも多かったが、同社の保存技術で都市圏への出荷が可能になった。冷食市場はグローバルでみても成長分野だ。英調査会社ユーロモニターによると世界の冷凍食品の市場規模は18年に1193億ドル。5年で12%増の1339億ドルまで拡大する見通し。フードロス削減や厨房・加工場の省力化、流通コストの圧縮など、日本の食の現場で日々蓄積されているクールテックのノウハウは、これからの成長産業の隠し味となる。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p52069.html (日本農業新聞 2020年10月6日) [滋賀・JAこうか移動編集局] 「忍者の里」動く ドクダミ産地化 手間かからず“半永久的”
 滋賀県のJAこうかは、薬草として知られるドクダミの産地化に力を入れている。一度植えると半永久的に収穫できて毎年定植する必要がない他、茶の刈り取り機が使えるなど、手間がかからない点に着目。耕作放棄地中心に導入し、農地再生につなげたい考えだ。JA管内は薬の扱いにたけていたとされる甲賀忍者ゆかりの地。かつて得意とした薬草の産地化に“忍者の里”が動きだした。
●放棄地解消へ一手
 ドクダミはハート形の葉が特徴の多年草で、全国に分布する。開花期の葉と茎は薬効の多さから「十薬」と呼ばれ、利尿や消炎の作用の他、便秘にも効果があるとされる。古くから民間療法に使われ、日本三大民間薬の一つに数えられている。現代でもドクダミ茶の原料に使われるなど、健康志向の消費者を中心に人気を集める。JAは2019年に産地化に乗り出した。JA営農経済部の上田典孝次長は「管内の遊休農地が200ヘクタールを超え、何とか活用できる作物はないかと模索していた」と振り返る。
●茶どころ強み収穫機を転用
 決め手となったのは、栽培に手間がかからない点だ。ドクダミは多年草で、苗を一度植えると「半永久的」(上田次長)に収穫できる。さらに、茶の刈り取り機を転用することで収穫を機械化できる。全国有数の茶産地を抱えるJAならではの強みを生かすことができた。他にも、ドクダミは湿地でよく育つため、耕作放棄地のほぼ全てが水田だったことも有利に働いた。JAの栽培モデルでは、1年目の4月ごろに苗を定植、2年目から収穫が可能となる。収穫は夏と秋の2回で、収穫後は追肥をする。鍵を握るのは雑草対策だ。JAによるとドクダミには使える除草剤がなく、手作業で取り除くしかない。昨年から5アールで栽培する大平啓治さん(70)は「定植後に小まめに雑草を取り除き、いかに密に生育させるかが重要となる。ドクダミが定着すれば、雑草は次第に生えにくくなる」と強調する。JA管内の20年の栽培面積は、前年(10アール)の4倍に当たる37アールに広がった。収穫されたドクダミはJAが全量を集荷し、茶などの加工品の原料向けに出荷する。上田次長は「今後は雑草対策や施肥体系を確立し、10アール5トンの収量を目指す。ドクダミ栽培を耕作放棄地対策の柱の一つにしたい」と、意気込みを見せる。
●伸びる 国産需要
 日本特産農産物協会によると、国内のドクダミ栽培面積は、データがある直近の18年産で666アール。16年産まで長らく200アールを切っていたが、17、18年産で急拡大した。県別では、兵庫(253アール)と徳島(250アール)での栽培が盛んで、両県で全体の8割近くを占めている。農水省は「(ドクダミを含む)薬用作物は全般的に国産の需要が伸びている」(生産局)と指摘する。

*3-4:https://www.agrinews.co.jp/p52337.html (日本農業新聞論説 2020年11月7日) 農作物の過剰在庫 国産回帰運動を総力で
 新型コロナウイルスの流行で、小豆や砂糖原料など需要が減った作物の産地が過剰在庫に苦慮している。産地は、新たな需要の創出や輸入品からの需要の奪還に向けて、加工・販売業者や自治体と連携し需要拡大に取り組む必要がある。過剰在庫が滞留し続ければ地域経済にも影響する。国の支援も必要だ。国内の小豆収穫量でシェア9割を占める北海道。ホクレンによると、昨年10月から今年9月の道産の年間消費量は4万560トンと、平成以降で最低だった。コロナ禍で、土産物や手土産用の和菓子の売れ行きが悪化したためだ。3万2466トンが在庫となり、繰り越された。土産物需要の落ち込みで、砂糖も過剰在庫が発生。原料のテンサイやサトウキビは北海道や沖縄には欠かせない地域の基幹作物だ。過剰在庫が続けば、需給を長期に圧迫してしまう。早く手を打たなければならない。需要拡大に産地は懸命だ。テンサイの主産地、JAグループ北海道は、昨年から「天下糖一(とういつ)」プロジェクトと銘打ち、人工甘味料や加糖調製品などに奪われた需要を取り返すため、イベントやインターネットの活用などで多様なPRを展開。コロナ禍の今秋も、札幌市近郊の銭湯で、砂糖を使った入浴剤を入れた「砂糖のなごみ湯」イベントを行った。また、ホクレンは十勝、オホーツク地区のJAや農家にも呼び掛け、小豆をはじめ道産豆類を使用した和菓子の購入や、菓子メーカーなどと連携した商品開発など、需要拡大に積極的に取り組んでいる。しかし、産地だけでの需要拡大策には限界がある。卸や和菓子業界などとの連携を国も後押しし、“国産回帰運動”の裾野を広げなければならない。また、生産者の作付け意欲が減退しないような振興策や、安心して輪作体系に組み込める契約栽培への支援なども必要だ。小豆は台風の被害などで作付面積が減っていたが、国産を望む和菓子業界などの声を受け、北海道の産地の努力で増産してきた背景がある。ここで作付けが減れば、コロナ禍が収束し需要が回復しても、すぐに増産できるわけではない。この機会に、国産の需要を増やすことが重要だ。酒米などさまざまな産地が同じ状況にある。参考となるのがソバだ。販売が激減する中、日本一の産地、北海道・JAきたそらちは、製粉業者や地元自治体と連携し、輸入品を使っていた大手外食店やコンビニに働きかけ、2000ヘクタール分の販路を新たに確保、過剰在庫の解消にめどをつけた。農水省の国産農林水産物等販売促進緊急対策を活用した。製粉業者は「一産地だけでなくソバ業界全体が国産志向になるきっかけとなっている」とみる。同対策の対象は一部品目に限られる。需要奪還と生産安定へ国は多くの農作物の在庫を把握し、中長期的な視点で支援を強化すべきだ。

<あまりにも生物学を理解していない政治・行政・メディア>
PS(2020年11月18日追加):立教大学経済学部特任教授の金子氏が、*4-1のように、①徹底的にPCR検査を行い、隔離・追跡・治療するという基本的対策をなおざりにした ②人口100万人当たりの検査数は、219の国・地域で日本は150位前後 ③徹底的に検査しなければ無症状者を見逃し、そこから感染拡大する ④人口100万人当たり死亡率は15人と、中国・韓国・台湾など東アジア諸国の中で突出して高い と書かれており、同意見だ。特に、④について、欧米人と東アジア人は獲得免疫が異なるのに日本の死亡率が東アジア諸国の中で突出して高いのは、①②③の政策が誤っていたからにほかならない。その政策の誤りの結果、国民は自粛を余儀なくされ、経済が縮小し、政府は財政支出を増やして給付金をばら撒かざるを得なくなり、2020年度の財政支出は3次補正まで合わせると約190兆円にもなる。そして、その財源は日銀の金融緩和で、貨幣価値を下げて物価を上げるため、国民生活をさらに圧迫しているのだ。
 さらに、*4-2の種苗法改正案は、優良品種の海外流出を防ぎ、開発者の権利を保護することが目的とされているが、④登録品種の自家増殖に許諾制を導入する ⑤これは、農家の種や苗を次期作に使う国際的に認められた農家の「種の権利」を害する ⑥現行法でも自家増殖した種苗の海外への持ち出しは違法で、登録品種全般を許諾制にする理由はない というのに、私は賛成だ。その理由は、農家も種や苗を次期作に使いながら品種改良しているため、これを禁止すると農家の権利を奪うだけでなく、作物の改良をも阻害するからだ。また、この改正案は、種苗開発者の権利を少しは守るかもしれないが、優良品種の海外流出を止める根本的解決とはならず、日本の農家の権利を害するだけだからである。
 このように、生物系の事象に関する判断にはあまりに誤りが多いので、私は、政治・行政・メディアの担当者は、MITの全学生が学び全米の学生が絶賛する「大学生物学の教科書(D.サダヴァ著、石崎泰樹・斎藤成也監訳)、1~5巻」を読んでおくのがよいと考える。理系だけでなく文系の人も読むべき理由は、バイオの最先端を理解して政策を誤らず、社会に余計なストレスを与えずに、バイオ関係の研究や創薬を助けたり、正確に伝えたりできるようにするためだ。

   
2020.11.14毎日新聞  ジョンズホプキンズ大学・藻谷氏 コロナウイルスの発祥地など

(図の説明:左図のように、日本では感染者数のみを出して騒いでおり、検査の母集団が変化しているのに、母集団から見た死亡率は出していない。また、中央の図のように、西太平洋諸国の人口100万対累計死亡者数は低いが、誤った政策により日本だけ増加が止まらなかった。そして、西太平洋諸国の人口100万対累計死亡者数が低い理由は、右図のように、普段からコロナウイルスに暴露されており、人体も免疫や遺伝で対応しているからだと思われる)

*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p52415.html (日本農業新聞 2020年11月16日) コロナ禍の経済政策 格差生む調達改めよ 立教大学経済学部特任教授 金子勝
 新型コロナウイルスの感染第3波が来た。ウイルスの変異が激しく、周期的に押し寄せてくる。非常に厄介なウイルスだ。ところが、徹底的にPCR検査を行い、隔離し、追跡し、治療するという基本的な対策をずっとなおざりにしてきた。人口100万人当たりの検査数は、219の国と地域の中で日本は150位前後。他方で、100万人当たりの死亡率は15人と、中国、韓国、台湾などの東アジア諸国の中でも突出して高い。
●危うい日銀頼み
 徹底検査をしなければ、無症状者を見逃し、そこから感染が拡大する。自粛をすると感染者数が減り、経済活動を再開すると感染者数が拡大する。政府はジレンマに陥っている。そして、ひたすら財政支出を増やして給付金をばらまくだけになる。実際、2020年度予算は約102・6兆円の大規模予算だったが、2次にわたる補正予算を加えると、約160兆円に達する。さらに、また30兆円規模の第3次補正予算を編成するという。だが政府は、どのように巨額の財政支出の財源を調達しているのか。それは日銀による赤字財政のファイナンスによる。しかし、日銀は8年近くも国債買い入れによる金融緩和策を続けてきたため、年間購入予定とした80兆円の国債を買えなくなっている。実際、17年は約30兆円、18年は約29兆円、19年には約14兆円弱まで購入残高が落ちている。¥一方で、補正予算の際に、政府は銀行、地方銀行、信用金庫に実質無利子・無担保の貸し付けをさせる企業金融支援を決めた。日銀は、それを支えるために、企業や個人の民間債務を担保にして、日銀はこれら金融機関に対してゼロ金利の貸付金を大量に供給し始めた。その金額は約60兆円にも及び、20年11月段階で約107兆円の貸付残高に達している。その結果、日銀は売るに売れない国債、株、社債、CP(コマーシャルペーパー)を大量に抱え、戦時財政・戦時金融と同じく“出口のないねずみ講”のような状況に陥っているのである。
●株価好調の裏で
 しかも、日銀がリスク管理の弱い貸付金という過剰流動性を大量に供給したことで、コロナ禍にもかかわらず、バブルが引き起こされている。株価も2万5000円台に急上昇し、今年5月に8割以上も落ち込んだ首都圏マンションの販売が、6月から急速に回復し、7月には前年水準を上回った。それは、猛烈な格差拡大をもたらす。コロナ禍で多くの倒産、休廃業、そして雇い止めが引き起こされる一方で、富裕層は資産バブルの恩恵を受けるからだ。その上、やがてバブルが崩壊した時に、弱小金融機関だけでなく、民間債務担保を日銀に付け替えているので、日銀信用を大きく傷つけていくだろう。経済政策は根本的に間違っている。徹底検査による抜本的コロナ対策とともにエネルギー転換を突破口とする地域分散型の産業戦略が不可欠になっている。
*かねこ・まさる 1952年東京都生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2000年から慶応義塾大学教授、18年4月から現職。著書に『金子勝の食から立て直す旅』など。近著に『平成経済 衰退の本質』(岩波新書)。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p52414.html (日本農業新聞 2020年11月16日) 種苗法改正案 保護と権利 バランスを
 今国会で審議中の種苗法改正案は、優良品種の海外流出を防ぎ、開発者の権利を保護することが目的である。一方で、登録品種の自家増殖に許諾制を導入することには、疑問や異論もある。知的財産の保護と農家の「種の権利」のバランスをどう取り、農業振興につなげるか、徹底審議を求める。同改正案は先の通常国会に提出されたが、新型コロナウイルス対応などで審議時間が取れず、今国会に持ち越していた。衆院で本格審議が始まったが、改めて論点も見えてきた。改正の背景には、日本が長年にわたって開発してきたブランド品種の海外流出問題がある。現行法では、正規に販売された種苗の海外への持ち出しは禁じられていない。改正案は、品種の開発者が、輸出先や栽培地域を指定できるようにし、違反した場合に育成者権の侵害を認定し刑事罰を問いやすくする。こうした市中流通ルートに加え、農家の自家増殖にも許諾制の規制をかける。現在は登録品種であっても農家は原則自家増殖ができる。種や苗を次期作に使うことは国際的にも認められた「種の権利」である。現行法でも自家増殖した種苗の海外への持ち出しは違法だが、なぜ登録品種全般に許諾制の網をかけるのか。農水省は、品種開発者が増殖の実態を把握することで、流出時に適切な対応ができると説明。違法流出の立証が容易になり、刑事罰や損害賠償請求をしやすくなるとも指摘する。あくまでも流出防止のための規制で「種の権利」に対する侵害ではないとの立場だ。だが、許諾制による管理強化がどれほど流出防止に実効性があるのか、国会審議を通じてさらなる説明が必要だ。欧米では、登録品種であっても主要作物の一部に自家増殖を認めるなど例外規定がある。日本でも柔軟な対応を求めたい。流出防止の核心は、同省も認めているように輸出国での品種登録だ。海外での品種登録はコストや申請手続きなどハードルが高い。同省は登録経費の支援などを行っているが、海外での育成者権の行使に向け包括的な支援の充実こそ急務だろう。農家が不安を抱く自家増殖の許諾料について同省は、営農の支障になる高額な設定にはならないと説明する。民間種苗会社も農研機構や都道府県の許諾料水準を参考にすると指摘。品種の太宗はこれまで通り自家増殖ができる一般品種であり、経営判断で選択できるとして不安を打ち消す。だが企業による種苗の寡占化が進めば、将来負担増にならないと言い切れるのか。許諾料の上昇に対する歯止め規定も検討すべきだ。許諾手続きの事務負担が増えないよう簡素化や団体代行も進めたい。改正案は「食料主権」に関わる内容を含むだけに、幅広い利害関係者の意見もくみ取りながら、将来に禍根を残さない慎重かつ徹底した審議を求める。

<日本における製造業の落日と技術の喪失>
PS(2020年11月21日):*5-1は、「①パナソニックは2021年3月期の連結営業利益率が2%台と低迷」「②パナソニックの不振は、『選択と集中』が進まなかったため」「③EV向け電池は大口顧客テスラの成長スピードについていけなかった」「④大阪本社を移転するようなショック療法も検討しなければいけないのではないか」「⑤電機産業は自動車と並ぶ日本の2本柱だったが、韓国サムスン電子などに水をあけられている」等と記載している。
 しかし、②のように「選択と集中」を進めれば、⑤のサムスンだけでなく、中国や欧米のメーカーにも負け、日本の家電メーカーはなくなる。現在、家電量販店に行って電気製品を探せば、日本の有名ブランドはパナソニックしかない。そして、製造しない国には技術がなくなるため、国民が求める製品を作れず、修理もできなくなる。これは何がいけなかったのかと言えば、国として構造改革を行わず、高コスト構造のまま、①のように、「連結営業利益率が2%以下の事業は止めるべきだ」などという傲慢な評論をしたことだ。これでは、株主の利益率は一時的に上がったとしても、日本には製造業がなくなるのであり、④のようなショック療法を乱発すると、これまであった産業集積や技術も失う。さらに、③は先見性があったが、国内でEVがこき下ろされていたため、経営陣が今一つ本気になれず、誤った経営意思決定をしたのではないかと思う。つまり、政府やメディアが間違った誘導をすると、それを情報源とする人が誤った判断をするので、気を付けるべきなのだ。
 なお、電機産業と自動車は日本の2本柱だったが、*5-2のように、自動車も、中国が世界の輸出拠点になってきている。中国は、早くからEVの普及に向けた規制でバッテリー等の関連部材企業を集積し、サプライチェーンの整備も進んで、販売・生産の両面で世界を主導する「EV強国(=次の自動車強国)」として存在感を増しているのであり、日本は中国等が市場に参入する前はバッシングされていたが、今ではパッシングされる立場になっているのだ。私も、中国製で安価な上に、コンセプトやデザインの優れた欧州車が日本で市場投入されたら欲しいくらいで、こうなると日本は米国と同様、双子の赤字に悩まされることになる。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201120&ng=DGKKZO66428700Z11C20A1EA1000 (日経新聞社説 2020.11.20)明暗が分かれたソニーとパナソニック
 パナソニックが9年ぶりとなるトップ交代を決めた。2022年には持ち株会社にも移行して低空飛行が続く業績の回復を目指すとするが、克服すべき課題は多い。ライバルのソニーは好業績が続いており、明暗がはっきり分かれた。パナソニックに求められる経営改革は、多くの事業を抱えたまま停滞する他の大企業に共通するものだ。12年にパナソニックの社長に就任した津賀一宏氏は、プラズマテレビからの撤退といった構造改革を進めて巨額赤字からの脱却を果たした。しかし、その後は収益の柱を絞り込めずに時間を浪費した。14年には「売上高で10兆円を目指す」としたが、わずか2年でこの目標を撤回。21年3月期の連結売上高は6兆5千億円と30年前と同じ水準に沈む見通しで、営業利益率は2%台に低迷するありさまだ。ソニーもテレビ事業などで大規模なリストラを断行したが、スマートフォン向け画像センサーと家庭用ゲーム機に集中的に投資した。18年3月期に20年ぶりに営業最高益を更新し、コロナ禍にもかかわらず足元の業績も堅調だ。パナソニックの不振は、幾度となく指摘されてきた「事業の選択と集中」が進まなかったことに尽きる。低迷するデジタル家電事業を引きずり、力を入れるとした電気自動車(EV)向けの電池でも大口顧客の米テスラの成長スピードについていけずに追加の投資に二の足を踏んだ。21年6月に新社長に昇格する楠見雄規常務執行役員は、歴代トップが繰り返してきた中途半端な改革では抜本的な再建は難しいことを認識する必要がある。競争力のない事業を見切り、成長領域へ果敢に攻め入るべきだ。過去との決別を明確に示すためには、大阪の本社を移転するようなショック療法も検討しなければいけない状況なのではないか。一方のソニーも1990年代に参入したゲーム事業への依存が強まっており、新たな事業の育成では大きな課題を残したままだ。もう一段の成長には、時代を先取りする製品や技術を生み出す努力が欠かせない。電機産業は自動車と並ぶ日本の2本柱だったが、近年では韓国サムスン電子などに水をあけられている。パナソニックとソニーには良きライバルとして、電機産業を再びけん引する役割を望みたい。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201121&ng=DGKKZO66521020R21C20A1MM8000 (日経新聞 2020.11.21) 中国産EV、輸出始動、テスラ・BMWまず欧州へ 部材集積生かす
 中国が電気自動車(EV)の世界への輸出拠点になってきた。米テスラや独BMWが2021年初めまでに中国から欧州にEVの輸出を開始。中国メーカーの輸出も弾みがついている。中国はEV普及に向けた新エネルギー車(NEV)規制(総合2面きょうのことば)でバッテリーなど関連の部材企業も集積。販売だけでなく生産面でも世界を主導する「EV強国」として存在感を増している。英LMCオートモーティブによると2020年1~6月の世界のEV生産台数66万台のうち中国が約4割の25万台を占め、米国(23%)や日本(2%)に差をつけた。1~6月の中国の自動車輸出は減少したが、EVを中心とするNEVは前年同期の2.4倍の3万6900台に拡大。輸出額は3.7倍の11億ドル(約1100億円)に伸びた。EVの輸出はさらに増えそうだ。BMWは遼寧省で生産する新型EV「iX3」を欧州に輸出し21年初めにも納車を開始する。米国への輸出も模索する。欧州への乗用車輸出は10%関税がかかり販売価格は約6万5000ユーロ(約800万円)。テスラも10月、上海工場で生産した「モデル3」を欧州へ送り出した。中国で民営自動車大手の浙江吉利控股集団傘下の電動車メーカー、ポールスターは欧州や北米にEV「ポールスター2」の輸出を始めた。ポールスターの生産台数の多くは輸出向けだ。EVが市場の過半を占めるノルウェーで9月新車販売全体の3位に入った。新興勢も海外市場に狙いを定める。愛馳汽車は多目的スポーツ車(SUV)「U5」をフランスのレンタカー会社に500台販売したほか、年内にドイツやスイスでも販売する。小鵬汽車も9月に輸出を開始。ガソリン車では限定的だった先進国での中国ブランドがEVで浸透しつつある。中国はNEVの販売台数で19年まで5年連続で世界1位。工業情報化省によるとNEVで累計2兆元(約31兆円)超が投資され、サプライチェーンの整備も進んでいる。車載電池で中国最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)がテスラなどEV大手に供給している。冷却部品の浙江三花智能控制や高圧直流送電リレーのアモイ宏発電声などもEVに欠かせないという。日本の自動車産業は裾野が広い部品や素材企業が支えてきたが、同様の産業構造をEVで中国が世界に先駆けて構築している。日本の自動車メーカーも中国でのEV生産に乗り出す。日産自動車は東風汽車集団と合弁でEVを生産・販売する。来年に稼働する湖北省武漢市の生産拠点で新型EV「アリア」を生産するが、当面は中国で販売する。ホンダは合弁ブランドEVを中国で生産・販売している。中国で生産を計画する自社ブランドのEVについては「(将来的に)他国への展開も視野に入れる」(ホンダ)。中国で拡大するEV生産の恩恵は日本の部品・素材企業にも及ぶ。EV用駆動モーターで世界大手の日本電産は中国での事業展開を強化。リチウムイオン電池の構成部材でシェアの高い旭化成や住友化学なども現地生産で取り込みを狙う。日米欧から中国を軸とした自動車産業の勢力図に変わりつつある。日本にとって基幹産業である自動車の輸出・生産に影響が出る可能性がある。

<政治・行政・メディアによる医療破壊>
PS(2020年11月22、25、27日追加):*6-1は、「①団塊世代が75歳以上になり始め、医療費が急膨張するので、非効率な医療供給体制の改革が必要」「②都道府県別の1人当たり医療費は最大4割近くの差が出ており、1人当たり医療費は病床数の供給が需要を作り出している」「③神奈川県はコロナ患者を症状ごとに重点医療機関やホテル療養で対応し、病床数は最少でも県主導で効率的な体制を作った」「④日本の千人当たり病床数は先進国最高水準で米英の約5倍だが、春先の感染爆発時はコロナ患者をたらい回しした」「⑤医療供給体制に無駄がある」「⑥自民党財政再建推進本部小委員会は、都道府県の医療体制へのガバナンス強化を求めた」「⑦新型コロナとの戦いで都道府県の体制整備責任に焦点が当たっている」「⑧国は都道府県に『地域医療構想』を作るように求め、過剰な急性期病床の削減を進めて在宅医療への転換を促してきた」「⑨都道府県は民間病院に病床機能の転換を促すことをためらう」等と記載している。
 このうち②は、都道府県により人口構成が異なるため、都道府県別1人当たり医療費が異なるのは当然で、それだからこそ75歳以上の人口が増えると医療費がかさむのであり、75歳以上の人に増える疾患は、癌・心疾患・脳血管疾患・誤嚥性肺炎・老衰などであって感染症ではないため、この記事は人口構成と疾病の関係もわかっていない人の主張であることがわかる。そして、①⑤のように、医療費がかさむからといって、団塊の世代を標的として受けられる医療の質を落とすのは、これまで保険料を支払ってきた人に対して不誠実だ。さらに、③は、神奈川県はホテルや大規模病院が多いため、効率的と言うより病状に応じた対応を取りやすかったが、地方には大規模病院は公的病院しかなくホテルも少ないため、⑦⑧⑨は言っていることが支離滅裂なのである。また、④は、ざっくり千人当たりの病床数しか見ていないが、疾病毎、治療方法毎、診療科毎に比較すべきだ。また、春先のコロナ感染爆発時に患者がたらい回しになった理由は、検査して感染者か否かを判別する方法が閉ざされ、防護服も足りなかったため、院内感染を恐れたという理由からだったと記憶している。なお、介護施設が足りずに社会的入院を余儀なくされている場合も、国に責任がある。つまり、⑥のように、あるべき医療体制を議論せずに、「医療は無駄」というところから出発している点が、すべての誤りの始まりなのである。
 NHKは、*6-2のように、新型コロナの1日毎の全国の新規感染者数・感染者の年代別割合・入院・療養中の人数・重症者数・死者数を報道しているが、このうち新規感染者数は検査数に比例して変わるので重視できない。確実で他の疾患と比較しやすいのは死者数だが、日本では、癌・心疾患・脳血管疾患による死者数より2桁少なく、インフルエンザによる死者数の2/3だ。メディアは、よく病床が逼迫すると報道しているが、(バチカン市国じゃあるまいし)重傷者が251人いると病床が逼迫するとは、日本の医療も地に落ちたものだ。近年、厚労省は何をやっていたのか。さらに、専門家と呼ばれる人が、いつまでも「(i)3密回避」「(ii)マスク着用」「(iii)消毒」「(iv)換気」などと小学校の補導の先生のようなことを言っているが、(ii)のマスク着用はほぼ100%なされており、(i)の3密は人口の集中しすぎによるもので、(iv)の換気は窓を開けなくても技術でクリアできる。さらに、公共の建物でも水道の水がチョロチョロで3秒毎に止まる設定にして濡らす程度にしか手を洗わせず、(iii)のように消毒液をすり込めばウイルスが全部死滅するかのように教えこむのは、不潔にも程がある。
 朝日新聞が、2020年11月24日、*6-3のように、「①厚生労働省に助言する専門家会議が、北海道・首都圏・関西圏・中部圏で感染者数が増加して入院者数が増加し医療が逼迫している」として「②『この状況が続けば通常の医療で助けられる命が助けられなくなる』と警鐘を鳴らした」と記載していたが、ダイヤモンドプリンセス号事件から9カ月も経過しているのに、最初の2カ月と同じことを言って国民に迷惑をかけていること自体が、助けられる命を助けようとしていない証拠だ。そのため、厚労省と助言した専門家が不作為の責任も取らずに、平気で国民にさらなる犠牲を強いているのは常識外れであり、もし「③自分たちはやるべきことはやってきたので、責任はない」と言いたければ、単に税金を原資とする大金をばら撒いただけでなく、他の先進国の検査・治療・ワクチン開発等の対応に見劣りしない対応をしてきたことを示すべきだ。100年前のスペイン風邪の時代とは異なり、現在はウイルス等のDNAを読んで検査することが可能な時代で、新型コロナウイルスにより検査方法も進歩したのに、日本は各リーダーがそれを理解することすらできず、科学に貢献もしなかったことを反省すべきだと、私は思う。
 なお、*6-4のように、福岡県は、北海道・首都圏・中部圏・関西圏のような騒ぎにはなっていない。その理由は、福岡市が、①PCR検査・抗原検査導入による検査の拡充 ②早期発見 ③軽症・無症状者の宿泊療養施設利用徹底による陽性者の隔離強化 ④*6-5のアビガン早期投与による治療という当たり前の医療を行っているからだ。初期に中国が公表した「無症状でも感染力がある」という新型コロナウイルスの特性を考えれば、①②③の必要性は明白だったにもかかわらず、厚労省はそのすべてを非常に不完全に行い、④については、米製薬会社開発のレムデシビルは承認したが、日本の製薬会社が開発したアビガンは未だ承認しておらず、まるで新型コロナ感染症を広げたいかのような対応をしている有様なのである。何故だろうか?

 
      2020.11.17NHK              2020.11.17NHK

 
 2020.6.6東京新聞   2020.6.6朝日新聞      2019.7.13朝日新聞

(図の説明:上の段の左右の図のように、日本の新型コロナ感染症は、11月16日、重傷者251人・死者15人だが、11月22日までの合計は感染者130,179人・死者1,974人だ。これは、下の段の右図の癌約30万人・心疾患約15万人・脳血管疾患約8万人の死者と比較すれば著しく少なく、インフルエンザ約3千人と比較しても少ない。しかし、数は少なくても亡くなる方は気の毒で、さっさと検査と治療を充実させ、ワクチンや治療薬の開発をしつつ普通に活動すれば、下の段の左や中央の図のような新型コロナを名目にした大きな無駄遣いをする必要はなかった筈だ)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201120&ng=DGKKZO66372040Y0A111C2EE8000 (日経新聞 2020.11.20) コロナ禍に迫る2022年の壁(下) 地域医療、浮かぶ非効率 改革の重責、自治体及び腰
 団塊の世代が75歳以上になり始め、医療費が急膨張する2022年の壁を乗り越えるには、非効率な医療供給体制の改革も必要だ。新型コロナウイルス危機は地域の医療体制の権限を持つ都道府県の力量を試した。都道府県別の1人当たりの医療費は最大4割近くの差が出る。千人当たりの病床数で全国最多の高知県は1人当たりの医療費が66万5294円と2位。病床数は最少の神奈川県の3倍だ。大和総研の鈴木準執行役員は「1人当たり医療費は人口当たり病床数と関係が強く、供給が需要を作り出している」と指摘する。病床数が危機時の力を左右するとは限らない。3月、神奈川県はコロナ患者を症状ごとに重点医療機関やホテル療養で柔軟に対応する「神奈川モデル」を導入した。病床数は最少でも県主導で効率的な体制を作り、その手法は全国に広がった。日本の千人当たりの病床数は先進国で最高水準で、米英の約5倍。それでも春先の感染爆発時は小さな医療機関を中心にコロナ患者をたらい回しした。「医療供給体制に無駄があることが浮き彫りになった」(鈴木氏)。「新型コロナとの戦いで都道府県の体制整備の責任に焦点が当たっている」。自民党の財政再建推進本部の小委員会は10月末、都道府県の医療体制へのガバナンス強化を求めた。地域に応じた医療体制の構築と医療費適正化の計画作りに関し、都道府県の責任を法律で明確にする内容だ。国は都道府県に「地域医療構想」を作るよう求め、過剰な急性期病床の削減などを進め在宅医療への転換を促してきた。だが都道府県は民間病院に病床機能の転換を促すことをためらう。独自策を探る動きもある。「収入増には地域別の診療報酬が活用できる」。7月、奈良県の荒井正吾知事は新型コロナによる受診控えで収入減に悩む医療機関を支援するアイデアを示した。診療報酬は全国一律が通例。高齢者医療確保法は都道府県が地域別の報酬を決めることを可能としているが、適用例はない。奈良県は医療機関の動向に影響を与えるには収入である診療報酬を使うのが効果的とみる。今夏に厚生労働省に提言したが、奈良県の医師会や厚労省は反対の方針だ。全国知事会は地域医療の混乱を理由に医療提供体制の議論をコロナ収束後に先送りしたい意向を示す。医療行政は責任を負いたくない地方自治体と、本音は権限を失いたくない厚労省の利害がもつれあう。医療制度に迫る22年の壁は高く厚い。

*6-2:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/medical/detail/detail_55.html (NHK 2020年11月17日) 【データで見る】“第3波” 第2波との違いは
 新型コロナウイルスは、東京などの大都市部だけでなく、北海道など気温が下がってきた地域などでも感染が広がるなど、11月以降、感染拡大のペースが速くなっていて、感染の“第3波”とも言われるようになっています。新規の感染者数や重症患者数は夏に拡大した感染の第2波のピークを超えました。感染の第2波と比べると、重症化するリスクが高い高齢者の割合が増える傾向が見られているほか、クラスターが多様化し、行政の対応が難しくなってきているとして、専門家は改めて基本的な感染対策を徹底するよう呼びかけています。
●【全国の新規感染者】第2波のピーク上回る
 7月初めから東京を起点に拡大した感染の第2波では、全国の新規の感染者数は8月7日に1605人、当時、1週間平均では1300人を超えピークを迎えました。一方、11月に入っての感染拡大では、10月下旬まで500人余りだった感染者が、およそ半月の間に11月14日には1736人、1週間平均でもおよそ1400人となり第2波のピークをすでに上回っています。
●【年代別割合】60代以上が第2波の2倍以上に
 また、感染者の年代別の割合についても重症化しやすいとされる60代以上の割合が、第2波より高い傾向が見られています。 たとえば、東京都では、第2波で感染者が急増した7月には
  ▽10代以下が4.6%
  ▽20代が43.1%
  ▽30代が24.0%と30代以下が70%以上を占め、
  ▽40代は12.7%
  ▽50代は7.5%
  ▽60代以上は8.2%と、高齢者は比較的少ない状態でした。
一方で、11月は16日までで
  ▽10代以下が7.7%
  ▽20代が25.3%
  ▽30代が19.8%と30代以下は半数ほどに減り、
  ▽40代は16.5%
  ▽50代は13.6%
  ▽60代以上は17.1%と、特に60代以上の占める割合が第2波の2倍以上になっています。
 大阪府でも同様の傾向で、60代以上の割合が7月には9.5%だったのに対し、11月は25.8%と高くなっています。
●【入院・療養している人】11月15日には1万2358人に
 一方で、入院や療養している人の数は、第2波では6月下旬のおよそ700人から急激に増え、8月10日には1万3724人と1か月余りで20倍近くになりました。その後、徐々に減って、10月下旬には5000人ほどになりましたが、十分減りきらない中で感染が拡大し、11月15日には1万2358人となっています。
●【重症者】第2波のピーク超える
 重症患者も同様の傾向で、第2波では、感染者のピークから2週間あまりたった8月24日に259人と最も多くなったあと、10月5日には131人まで減りましたが、十分に減らない中で感染が拡大し、11月17日、272人となり、第2波のピークを超えました。
●【死者】11月に入り10人をやや上回る日多く
 また、死者は、第2波では8月18日に16人、8月28日に20人が報告されたあと10人を下回る日が多くなっていましたが、11月に入っては10日に15人など10人をやや上回る日が多くなっています。
●専門家「クラスターが多様化 基本的な対策の継続を」
 このほか、厚生労働省の専門家会合によりますと、第2波では感染者の集団=クラスターは、大都市圏の接待を伴う飲食店や、職場での会議などが多かったのに対し、11月以降は、会食や職場に加えて、地方の歓楽街や外国人のコミュニティー、それに医療機関や福祉施設などと多様化し、地域への広がりも見られるとしています。日本感染症学会の理事長で東邦大学の舘田一博教授は「第2波の際には、感染の広がりが特定の地域に限定され、ターゲットを絞って対応できたが、第3波ではクラスターが多様化し対応が難しくなってきている。今後、医療機関や高齢者施設などを巻き込んで、さらに大きなクラスターに発展するおそれもある」と指摘しています。そのうえで、「感染が続き、疲れや緩みが出た人もいると思われるが、改めて一人一人が感染リスクを避ける行動を取る必要がある。3密を避け、マスクの着用や消毒、換気といった基本的な対策を続けてほしい」と呼びかけています。

*6-3:https://www.asahi.com/topics/word/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9.html?iref=kijiue_bnr (朝日新聞 2020年11月24日) 「助けられる命助けられなくなる」医療逼迫に専門家警鐘
 厚生労働省に助言する専門家組織は24日、北海道や首都圏、関西圏、中部圏で感染者数が顕著に増加し、入院者数の増加が続いているとして「このままの状況が続けば、通常の医療で助けられる命が助けられなくなる」と警鐘を鳴らした。分析では11月以降、新規感染者が2週間で2倍を超える伸びとなるなど過去最多の水準だとした。感染者1人が何人に感染させるかを表す実効再生産数は、大阪、京都、兵庫では2を超え、北海道、東京、愛知などで1を超える水準が続いている。入院者数や重症者数の増加が続き、予定手術や救急の受け入れ制限や、まったく異なる診療科の医師が新型コロナ患者を診療せざるを得ない事例も出てきたという。その上で、各地で通常の医療との両立が困難になり始めているとした。出席者の1人は医療体制について「2週間後3週間後の見通しが立たない。それまでにかなり悲惨な状況に状態になる」と語った。今後の対応については、政府が示している「Go To」キャンペーンの見直しや営業時間の短縮、移動の自粛要請などを速やかに実行することを求めた。政府が「Go Toトラベル」について、旅行の目的地だけを制限している点について座長の脇田隆字・国立感染症研究所長は、一般論と断った上で「感染の高い所から低い所に広めないという意味では、両方を止めることが有効と考える」と述べた。既に医療提供に困難が生じている地域では、接触機会の削減など強い対策が必要とした。会合の資料によると、23日までの1週間の感染者数は全国で1万4919人で、前週から1・46倍に増えた。北海道、東京、大阪の3道都府で半数を占めたものの、すべての都道府県で感染者が確認されており、全国的な広がりが懸念される。実効再生産数は、全国では5日時点で1・30。北海道は1・24、東北は1・12、首都圏は1・27、中京圏は1・35、関西圏は1・41、九州北部は1・29、沖縄は1・04だった。感染が広がる中、検査の陽性率も上がっている。15日までの1週間でみると、全国では5・5%で前週より1・2ポイント増。北海道では17・4%に上り、兵庫県が9・9%、大阪府が9・7%、愛知県が9・4%で続いた。
●直近の感染状況の評価の要約
<感染状況>
・新規感染者数は2週間で2倍を超える伸びとなり、過去最多の水準。特に北海道や首都圏、関西圏、中部圏を中心に顕著な増加が見られる。地域によってはすでに急速に感染拡大が見られており、このままの状況が続けば医療提供体制と公衆衛生体制に重大な影響を生じるおそれがある。
・感染拡大の原因となるクラスターについては、多様化や地域への広がりがみられる。
・感染拡大の要因は、基本的な感染予防対策がしっかり行われていないことや、人の移動の増加、気温の低下による影響に加えて、人口密度が考えられる。
・予定された手術や救急の受け入れなどの制限、病床を確保するための転院、診療科の全く異なる医師が新型コロナウイルスの診療をせざるを得なくなるような事例も。病床や人員の増加も簡単には見込めない中で、各地で新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難になり始めている。このままの状況が続けば、通常の医療で助けられる命が助けられなくなる。
【感染拡大地域の動向】
①北海道
 札幌市近郊を含め、道内全体にも感染が拡大。福祉施設や医療機関で大規模なクラスターが発生。患者の増加や院内感染の発生により、札幌市を中心に病床が窮迫。旭川市でも院内感染が発生し、入院調整が困難をきたす例が発生するなど厳しい状況となりつつある。
②首都圏
 東京都内全域に感染が拡大。感染経路不明割合も半数以上となっている。埼玉、神奈川、千葉でも同様に感染が拡大し、医療機関、福祉施設、接待を伴う飲食店などの様々な施設でクラスターが発生し、医療体制が厳しい状況。感染経路不明割合は4~5割程度と上昇傾向。茨城でも接待を伴う飲食店などでクラスターが発生し、感染者数が増加。
③関西圏
 大阪では大阪市を中心に感染が大きく拡大。医療機関や高齢者施設などでのクラスターが発生。感染経路不明割合は約6割となり、重症者数が増加し、医療体制が厳しい状況。兵庫では高齢者施設や大学などでクラスターが発生。医療体制が厳しい状況。京都でも感染が拡大。
④中部圏
 愛知県内全域に感染が拡大。感染経路不明割合は約4割。名古屋市で歓楽街を中心に感染者が増加し、保健センターの負荷が大きくなっており、医療機関での対応も厳しさが増大。静岡でも接待を伴う飲食店などでクラスターが発生し、感染が拡大。

*6-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/668001/ (西日本新聞 2020/11/27) 福岡「第3波」大丈夫? 検査拡充で拡大抑制 「いつ来ても」警戒
 大都市を中心に全国で新型コロナウイルス感染の「第3波」が押し寄せる中、福岡県でも感染者がじわりと増え始めている。26日の新規感染者は53人で、約3カ月ぶりに50人を超えた。ただ、連日のように過去最多を更新している東京や大阪などと比べると拡大のペースは抑制気味。県や専門家もその明確な理由は分かっておらず、「いつ次の波が来てもおかしくない」と警戒している。「今後、福岡でも感染が拡大する危険性があり得る」。福岡県がん感染症疾病対策課の佐野正課長は26日の記者会見で、第3波への危機感を口にした。県内では、第2波とされる7~8月に感染者が急増。7月31日には過去最多の169人に上った。その波が落ち着いた9月中旬以降は、10人前後で推移。全国的に感染が再拡大した11月に入って増加傾向が強まっている。ただ、26日に判明した53人も1日の感染者としてはピーク時の3割程度。全国と比較すると秋以降は抑え込めている。小川洋知事は24日の記者会見で理由を問われ、「取り組んだ対策は説明できるが、よく分からない」と首をかしげた。
   □    □
 このまま感染者を抑制することができるのか-。小川知事や県内感染者の約6割を占める福岡市の高島宗一郎市長が対策の切り札として期待するのが、検査拡充による早期発見だ。県内では、医療機関で受けられるPCR検査や抗原検査の導入を促進。PCR検査可能件数は1日最大約4200件(11月10日時点)で、8月から2倍近くに増えている。福岡市は、人口10万人当たりの累計検査数(10月20日時点)を独自に調査。政令市では同市が全国最多(4064件)で、2位は北九州市(3945件)。第3波が猛威を振るう大阪市(2365件)や札幌市(2095件)を大きく引き離しているという。福岡市は、検査対象者を国が示す「濃厚接触者」より拡大。職場や施設内で感染が疑われる場合、同じフロアなどにまで広げて検査をしている。市幹部は「無症状者を含めた早期発見が重要だ」と強調する。
   □    □
 宿泊療養施設の利用徹底による陽性者の隔離強化も鍵を握りそうだ。県は、入院が必要ない軽症や無症状者に対し、県内4カ所にある宿泊療養施設の積極活用を呼び掛けている。8月中旬には利用の手順を簡素化して陽性確認の翌日には入所できるようにした。県内の累計感染者約5600人のうち、約4割の2千人超が宿泊療養施設を利用。東京都では利用率が3割を下回っており、県幹部は「一定の成果が出ているのではないか」とみる。これまでの抑制傾向について気候や地理的な要因を指摘する声もあるが、明確な理由は不明だ。県幹部は「県民や事業者にはより注意してもらい、できるだけ増加を抑え込めれば」と話す。
●「油断せず予防を」
 九州大の柳雄介教授(ウイルス学)は、福岡県内の感染者数が比較的抑えられていることについて「福岡県民だけが特に予防策の実施を徹底しているというわけでもないと思うので、運が良かったのだろう」と指摘。「福岡に他の地域からやって来る人の中にたまたま感染者が少なかったなど偶然が重なった結果では」と話す。流行の波は全国一律ではなく地域差があるのは当然だとした上で、「福岡もいつ増えてもおかしくない。感染者が多い地域への移動は慎重になるなど、油断することなく感染予防を続けてほしい」と呼び掛けた。

*6-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/607425/ (西日本新聞 2020/5/11) アビガン投与「福岡県方式」構築 47機関、医師判断で早期対応可能に
 福岡県医師会は11日、新型コロナウイルス感染症への効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」を、主治医が重症化の恐れがあるなどと判断した場合、軽症でも早期投与できる独自の体制を整えたと発表した。県内47の医療機関が参加を表明しており、県医師会は「『福岡県方式』の構築で新たに投与できる患者はかなり多く、影響は大きい」としている。アビガン投与には、藤田医科大(愛知)などの観察研究への参加が必要。県医師会が一括して必要な手続きを行ったことで、これまで未参加だった27機関が加わり、計47機関で投与できるようになった。今後も増える見通し。主に重症や中等症の患者に投与されていたが、「主治医等が重症化の可能性を憂慮する患者」を対象に明記したことで、主治医が必要と判断すれば軽症でも早期投与が可能としている。投与には入院が必要という。ただ、アビガンは動物実験で胎児に奇形が出る恐れが指摘され、妊婦や妊娠の可能性がある人などには使えない。肝機能障害などの副作用も報告されており、患者への十分な説明と同意が必要となる。新型コロナ感染症の治療薬としては、厚生労働省が7日、米製薬会社が開発した「レムデシビル」を国内で初承認。安倍晋三首相はアビガンについても今月中に承認する意向を示している。

<ロボット・IoT・オンラインでさえあれば“先進的”なわけではないこと>
PS(2020年11月23日追加):*7-1に、「①オンライン診療は、かかりつけ医を対象として安全性と信頼性をベースに初診も含めて恒久的に進める」「②医療機関へのアクセス向上という視点で捉えられがちなオンライン診療が本格的な普及段階に入れば、医師資格のあり方にもかかわってくる」「③医師会はかかりつけ医の普及には熱心だが、患者と対面して五感を研ぎ澄ませて診察する方が見落としのリスクが小さいとする」「④デジタル専門教育を受けた医師なら初診からのオンライン診療を認めるとの考え方も成り立つ」等が書かれている。
 このうち、①については、病気を悪化させずに治せるか否かは、初診とそれに伴う治療方針の正確さによって決まるため、かかりつけ医でも安全性を妄信するのは危険で、深刻な病気であれば、Second Opinion をとる必要がある場合もある。そのため、初診で検査の行き届いた大病院にかかりにくくするのは問題であるとともに、初診でもオンライン診療でよいとするのはやりすぎだ。そのため、私は、③の医師会の意見に賛成で、その理由は、病院に行く時は女性も化粧をせず素顔を見せなければ本当の病状はわからないのに、検査もせず、身体の一部しか映さない画像だけで病名を当てようとすれば、外れるリスクが高くなるからである。これについて、②④のように、「医師がデジタル専門教育を受けておらず、オンラインを使えないからオンライン診療を認めないのだ」などと言うのは、事実を曲げており、失礼も甚だしい。
 さらに、*7-2のように、川崎重工業とシスメックスが共同出資して設立したメディカロイドが、2013年に「hinotori」という手術支援ロボットを開発したそうだが、非常に簡単な手術ならともかく(それなら人がやっても簡単だ)、途中で何が起こるかわからない手術をロボットの方が人より適切に行うことができると考えるのは甘い。何故なら、ロボットが得意とするのは、同じことを繰り返して正確・迅速に行うことで、血管・神経・病変の位置などが異なる人間にメスを入れて、非常時の対応まですることはできないからだ。料理に例えれば、自動でよい焼き加減で魚を焼いたり、てんぷら油の温度を一定に保ったりすることは器械ができるが、それを使って調理師が離れた場所から調理すれば、吹きこぼれて火が消えガスが漏れたり、火事になったりした時に、素早く気付いて迅速に対応することができず大変なことになる。しかし、調理師がそばにいれば視覚だけでなく五感で感じて適切な対応をとることができるため、ロボットは、人の傍で忠実に働き、正確な仕事を素早く行う相棒の位置づけにするのがよいと思う。なお、手術支援ロボットなら、「hinotori」より「Jack」か「Pinoko」という名前の方がよくないか?

 
                手術ロボットhinotori 

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201121&ng=DGKKZO66521430R21C20A1EA1000 (日経新聞 2020.11.21) 初診「かかりつけ医」に限定、オンライン診療、恒久化の議論迷走 英には似て非なる「家庭医」
 菅義偉首相が指示したオンライン診療解禁の恒久化をめぐり、政府内の議論が迷走気味だ。医療機関へのアクセス向上という視点で捉えられがちなオンライン診療だが、本格的な普及段階に入れば医師資格のあり方にもかかわってくる可能性がある。キーワードは「かかりつけ医」と似て非なる「家庭医」である。かかりつけ医が政策の焦点に浮上した。10月30日の田村憲久厚生労働相の記者会見が契機だ。「オンライン診療は安全性と信頼性をベースに初診も含めて進める。首相から恒久化という言葉ももらっている。普段かかっているかかりつけ医を対象に初診も解禁というか、恒久化すると3者で合意した」。3者は、河野太郎規制改革相、平井卓也デジタル改革相を含めた3閣僚を指す。オンライン診療は安倍政権時の4月、規制改革推進会議(首相の諮問機関)がコロナ禍を受けて特命タスクフォースを新設し、収束までの特例として全面解禁した。感染リスク対策の意味合いが強かったが、首相の恒久化指示で政府の動きが慌ただしくなった。
●対面原則譲らず
 日本医師会を中心に医療界には全面解禁への慎重論が強い。医師会はかねて、かかりつけ医の普及に熱心だ。意を受けた厚労省は、タレントのデーモン閣下が「気軽に相談できるかかりつけ医をもちましょう」と勧める広告動画をつくり、東京メトロの車内モニターなどで流している。問題はかかりつけ医の定義だ。医師会のウェブサイトには「何でも相談でき、最新の医療情報を熟知し、必要なときに専門医や専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的能力を有する医師」とある。こんな名医が自宅や勤め先の近くにいて平時から健康管理を任せられれば、誰だって心強い。日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が9月にまとめた意識調査によると、かかりつけ医がいる人は55%。年齢別では70代以上の83%に対し、20代は22%だ。普段あまり医者の世話にならない若年層が低いのは当然だが、20代の31%が「いるとよいと思う」と答えた。この割合は前回調査より高い。日医総研はコロナの影響があるのではと推測する。英国にはGP(ジェネラル・プラクティショナー)と呼ばれる資格がある。日本語なら「家庭医」といったニュアンスだ。すべての人が自宅近くの診療所に勤務する家庭医を1人登録し、初期診療はその家庭医に診てもらうのを原則とする。同国の国民医療制度(NHS)の家庭医になるには医学部卒業後に基礎研修を受け、最短3年の専門研修が義務づけられている。指導医から一定の評価が得られれば一人前として登録される。いくつもの診療科の治療をこなし、手に負えない患者は素早く病院の専門医につなぐのが使命だ。日本医師会は「患者と対面して五感を研ぎ澄ませて診察する方が見落としなどのリスクを小さくできる」などを根拠に、とくに初診時の対面原則を崩そうとしない。むろん対面診療の重要性に異論はない。病状や患者が置かれた環境で対面でなければならない場面はある。一方、デジタル技術の飛躍的な革新で対面を上回る効果を発揮するオンライン診療が可能になるケースも出よう。
●医学教育に一石
 医師会関係者は「日本の医学教育はオンライン診療を想定しておらず、医学生は対面診療が基本と教わる。オンライン診療がなし崩しに広がれば医療の質が下がる心配が強い」とも話す。裏を返せば、医学教育にもデジタル化が前提の改革が必要になるのではないか。デジタル専門教育を受けた医師なら初診からのオンライン診療を認めるとの考え方も成り立つ。かかりつけ医の範囲が曖昧なままオンライン初診を認める厚労相の方針は果たして機能するのか。仮に英国のような家庭医資格の創設を俎上(そじょう)に載せるなら、それはそれで意義深い改革になるかもしれない。

*7-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/91075fd9f35372b0e126f049ba9423c7acb755d7 (Yahoo 2020/10/27抜粋) 国産手術支援ロボット「hinotori」がIoTプラットフォームと連携、AI解析が可能に
●国産で初めて製造販売承認を得た手術支援ロボット「hinotori」
 hinotoriは、2013年に川崎重工業とシスメックスが共同出資して設立したメディカロイドが開発した手術支援ロボットである。オペレーションユニット、サージョンコックピット、ビジョンユニットの3ユニットで構成される。手術を実施するオペレーションユニットのアームは、ヒトの腕に近いコンパクトな設計で、アーム同士やアームと助手の医師との干渉を低減し、より円滑な手術が可能となることが期待されている。サージョンコックピットは、執刀医の姿勢に合わせることが可能なように人間工学的な手法で設計されており、執刀医の負担を軽減し、ストレスフリーな手術を支援する。ビジョンユニットは、サージョンコックピットに高精細な内視鏡画像を3Dで映し出すとともに、執刀医と助手の医師との円滑なコミュニケーションをサポートする。2015年度から“人とロボットの共存”をコンセプトに開発が進められてきたhinotoriは、2020年8月7日に国産の手術支援ロボットとして初めて製造販売承認を取得しており、同年9月からは保険適用となった。まずは、日本市場で泌尿器科を対象に早期の市場導入を目指しているところだ。

<農業の可能性と将来性>
PS(2020年11月28日追加):*8-1のように、2020年2月1日現在の基幹的農業従事者は136万1,000人と5年前の前回調査から39万6,000人(22.5%)減少し、1経営体当たりの平均耕地面積は北海道30.6ha・都府県2.2haと拡大し、北海道は100ha・都府県も10ha以上の経営体が増えたそうだ。また、個人経営体は103万7,000と前回から30万3,000(22.6%)減ったが、団体経営体は3万8,000と1,000(2.6%)増え、特に会社形態の法人の増加が貢献したそうで、これは、農業の高齢化を解決しつつ、大規模化・スマート化して米豪の農産品にも対抗できる農業を作ろうと意図して、(私が衆議院議員時代に)アドバイスした結果である。
 しかし、農水省のスマート農業実証プロジェクトでは、*8-2のように、「スマート農機の導入で労働時間は短縮されたが、農機導入費で利益が減った」ということもあったそうで、これは、ロボットトラクターを10aというような小規模な水田や分散した水田で使うと費用対効果が合わないが、耕作地を大規模・大区画にすればコスト低減するということだ(規模の利益)。そのため、個人がパートナーシップ(弁護士事務所方式)を組んだり、複数の個人が土地を出資して会社組織にしたりして、土地を整理して区画を大きくし、農機を減価償却したり、割増償却制度を導入してもらったりすれば、生産性を上げることが可能なのである。
 また、*8-3のように、日本政府も化石燃料への依存度を下げる取り組みを本格化させ始めたので、速やかに農機具を電動化し、太陽光発電・風力発電・小水力発電等で電力を作れば、温室効果ガス削減に貢献しつつ、エネルギー代金を節約したり、副業としてエネルギー代金で稼いだりすることができる。また、園芸施設の加温における省エネにも、ヒートポンプや*8-4の地中熱を使う方法があるが、高すぎない価格で機材の供給が行われることが必要だ。

  
地中熱とヒートポンプを利用した冷暖房        ヒートポンプの仕組み

*8-1:https://www.agrinews.co.jp/p52529.html (日本農業新聞 2020年11月28日) 農業従事者40万人減の136万人 減少率、過去最大 20年農林業センサス
 農水省は27日、2020年農林業センサス(2月1日現在)の調査結果を発表した。主な仕事が農業の「基幹的農業従事者」は136万1000人と、5年前の前回調査から39万6000人(22・5%)減った。減少率は、比較可能な05年以降で最大。高齢化が大きく響いた。一方、1経営体当たりの耕地面積は初めて3ヘクタールを超え、経営規模の拡大が進んだ。基幹的農業従事者は一貫して減り続けており、減少ペースも加速している。同省は、この要因の一つに高齢化を挙げる。20年の基幹的農業従事者の平均年齢は67・8歳。65歳以上の割合は4・9ポイント増の69・8%に達した。「70歳を超えると、離農するか、統計対象とならない規模に経営を縮小する傾向にある」(センサス統計室)という。全国の農業経営体数は107万6000で、前回より30万2000(21・9%)減った。前回の5年間の減少率(18%)と比べ、やはり減少のペースが加速している。農業経営体のうち、家族で営む個人経営体の数は103万7000で、前回から30万3000(22・6%)減った。一方、家族以外の「団体経営体」は3万8000と、1000(2・6%)増えた。このうち、任意組織の集落営農などを除いた法人経営体は3万1000で4000(13%)増加。会社形態の法人の増加が貢献した。担い手の減少に伴い、経営規模が拡大する傾向は鮮明となった。全国の1経営体当たりの耕地面積は3・1ヘクタールで、前回の2・5ヘクタールから21・5%増えた。北海道が30・6ヘクタール、都府県が2・2ヘクタールで、それぞれ初めて30ヘクタール、2ヘクタールを超えた。耕地面積が10ヘクタール以上の割合も増えて全国で55・7%となり、初めて過半に達した。耕地面積別に経営体の増減率を見ると、北海道は100ヘクタール以上の経営体が増加。都府県も10ヘクタール以上の経営体が増えた。いずれも、それを下回る面積の経営は減った。同省は「農業経営体の減少が続く中で、法人化や規模拡大が進展している」(同)と分析する。農林業センサスは、全ての農業経営体を対象に5年に1度行う農業版の国勢調査。今回は精査が済んだ統計の概数値を公表した。農地関係などの統計を含めて、確定値は来年3月以降に公表する。

*8-2:https://www.agrinews.co.jp/p52499.html (日本農業新聞論説 2020年11月25日) スマート農業 経営効果見極め導入を
 農水省は、スマート農業実証プロジェクトの水田作の成果について中間報告をした。スマート農機の導入で労働時間は短縮されたが、機械の費用がかさんで利益が減る結果となった。農業現場ではスマート農業への期待が大きいが、万能ではない。地域や経営ごとに導入の効果を見極める必要がある。
プロジェクトは、先端技術を生産現場に導入し、生産期間を通じた効果を明らかにするのが狙いだ。2年間行う。2019年度に全国69地区で始め、現在148地区で実証中だ。中間報告では、水田作での初年度の結果を分析。①平場の大規模②中山間③輸出用の超低コスト──それぞれの代表的な1事例について、労働時間や経営収支を慣行区と比較した。実証区の水田作では、耕耘(こううん)に2台同時作業ができるロボットトラクター、移植に直進キープ田植え機、防除に農薬散布ドローン(小型無人飛行機)を導入する例が多い。自動水管理システムやリモコン式草刈り機、自動運転コンバインなども組み合わせて採用した。その結果、大規模水田作では、慣行区と比べて労働時間は10アール当たり1・9時間減り、人件費を同13%削減できた。一方、スマート農機を追加投資したことで機械・施設費は同261%増加し、利益は同90%(約2万8000円)減った。人件費は減るものの、機械・施設費が増え、利益が減少する傾向は、中山間と輸出でも同じだった。必要なのは効果の見極めだ。ドローンを使った農薬散布は10アール当たりの労働時間を平均81%削減できた。動力噴霧器を使った防除より省力化でき、散布の際にホースを引いて歩く必要がないなど軽労化も期待できる。自動水管理システムも見回りの距離や回数を減らせて、労働時間が平均87%減と効果が高い。一方、効果は地域や経営内容で異なる。2台で耕すロボットトラクターは効率の面で大区画水田での作業に向く。ドローンはバッテリーを使うため作業できる時間が短く、手作業で散布するような小規模な水田に向くとの指摘もある。のり面が広い水田にはリモコン式草刈り機が、水田が分散する経営には水管理システムが力を発揮する。経営面積や課題に応じたスマート農機の採用や組み合わせが重要になる。同省は、経営面での見通しが立つよう適正な面積まで見極めた経営モデルを作成する。経営で負担となる初期投資を抑えるため、農機を共同利用するなどの支援・活用策も検討する。作業の省力化で労働時間が減っても収支が悪化してはスマート農業の普及は望めない。中間報告後も同省は、品質・収量などのデータを含め、経営への効果を分析する。併せて重要なのは、生産現場への情報提供である。経営課題に対しどんな技術・機械を採用したら最も費用対効果が大きいか、判断に役立つ情報を整備してもらいたい。

*8-3:https://www.agrinews.co.jp/p52479.html (日本農業新聞論説 2020年11月23日) 温室効果ガス削減 農業も脱炭素化めざせ
 政府が、化石燃料への依存度を下げる取り組みをようやく本格化させる。温室効果ガスの農業からの排出量は国全体から見れば数パーセント。しかし農業には排出量を減らす潜在能力がある。地球温暖化の影響をまともに受ける産業でもある。農家ら農業関係者も、温室効果ガスの排出削減に正面から向き合うべきだ。地球温暖化対策には世界各国が本腰を入れている。欧州連合(EU)諸国は石炭火力発電を中止にする方針を示した。世界最大の温室効果ガス排出国の中国も、太陽光発電への転換を進めている。排出量2位の米国はトランプ大統領が地球の温暖化自体を否定し、温暖化対策の国際的な枠組みを定めたパリ協定から離脱した。しかし、次期大統領に当選確実となったバイデン氏は、温暖化対策を強化する方針を表明している。日本はどうか。スペインで昨年12月に開かれた気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)では、化石燃料からの離脱に消極的だとして環境団体から2度にわたり「化石賞」を贈られた。小泉進次郎環境相らが石炭火力発電からの脱却を明言しなかったことで、日本の姿勢が世界から問われた形だ。それがここに来て、菅義偉首相が初の所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と述べ、「脱炭素社会」の方向を明確にした。政府は、地球温暖化対策を新たな成長戦略と位置付けた。産業構造を変え、経済と環境の好循環を生み出す考えだ。農業は自然と共存しているイメージを持たれているが、実際は化石燃料を使って農機を動かし、園芸施設を加温する。牛のげっぷや水田からは温室効果ガスが空気中に出ている。温暖化は農業への影響が大きいだけに、温室効果ガスの削減に農業関係者は率先して取り組む必要がある。水田から発生するメタンガスの削減技術や、牛の胃からの発酵ガスを減らすための微生物の研究などは進んでいるが、農業関係者は、農村ならではの資源を利用した温室効果ガス削減策にも注目すべきだ。小水力発電や太陽光発電、バイオ燃料など、化石燃料に頼らなくても、エネルギーを生産できる可能性が農村には潜んでいる。食の地産地消だけでなく、エネルギーの地産地消を目指したい。地域でクリーンなエネルギーを自給しているとなれば、生産される農産物のイメージアップにもつながる。地産地消の発電体制が整っていれば、災害時の停電にも対応できる。自動車では、ハイブリッド、さらには電気自動車、水素電池車へと開発が進んでいる。農業用トラクターの電化にはまだ時間がかかるとしても、刈り払い機などの農機具では電動機種がそろってきた。園芸施設の加温にも、燃油の代わりにヒートポンプを使う方法がある。温室効果ガス削減に向け、農村ならではのエネルギーの生産と消費の方策へと転換していきたい。

*8-4:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/underground/index.html (資源エネルギー庁 抜粋) 再生可能エネルギーとは
●地中熱利用
○日本中いたる所で利用可能
 地中熱とは、浅い地盤中に存在する低温の熱エネルギーです。大気の温度に対して、地中の温度は地下10~15mの深さになると、年間を通して温度の変化が見られなくなります。そのため、夏場は外気温度よりも地中温度が低く、冬場は外気温度よりも地中温度が高いことから、この温度差を利用して効率的な冷暖房等を行います。
○特長
 1.空気熱源ヒートポンプ(エアコン)が利用できない外気温-15℃以下の環境でも利用可能
 2.放熱用室外機がなく、稼働時騒音が非常に小さい
 3.地中熱交換器は密閉式なので、環境汚染の心配がない
 4.冷暖房に熱を屋外に放出しないため、ヒートアイランド現象の元になりにくい
○課題
 設備導入(削井費用等)に係る初期コストが高く設備費用の回収期間が長い。
○地中熱利用冷暖房・給湯システム
                          (出典:地中熱利用促進協会HP)

| 教育・研究開発::2020.11~ | 09:25 PM | comments (x) | trackback (x) |

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