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2021.1.13~15 年が明けても明けなかったコロナ禍と分散型社会の必要性 (2021年1月17、18、20、21、22、24、28、29《図》、31日、2月7日に追加あり)

  2021.1.7Reuters       2020.12.16NHK       2021.1.7NHK

(1)都市と新型コロナ
1)伝染病の感染拡大は人口密度との相関関係が大きいこと
 新型コロナの感染拡大に歯止めがかからないとして、*1-1のように、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の首都圏1都3県に対し、1月7日に緊急事態宣言の再発令が決定された。

 そして、1月9日には、*1-2のように、大阪府・京都府・兵庫県の関西圏が緊急事態宣言の要請を決定し、*1-3のように、政府は1月13日に、中部の愛知、岐阜2県と福岡、栃木両県を緊急事態宣言に追加するそうだ。

 緊急事態宣言による規制内容は、*1-5に記載されているが、その是非については、これまでも記載してきたので省略する。しかし、新型コロナは全国的に都市部を中心に新規感染者数が増加して医療提供体制が逼迫すると言われているが、都市部には大病院もホテルも多いため、この数カ月、政府や地方自治体は何をしていたのかと思う。

 なお、日本の都道府県別人口・面積・人口密度のランキングは、*1-7のとおりで、最初に緊急事態宣言の再発令が決定された首都圏1都3県の人口密度は、1位:東京都・3位:神奈川県・4位:埼玉県・6位:千葉県だ。次に、緊急事態宣言の要請を決定した関西圏は、2位:大阪府・8位:兵庫県で、その次に中部圏の5位:愛知県が続く。そのほかに感染者が多い県は、7位:福岡県・9位:沖縄県だ。

 そのため、(当然ではあるが)人口密度と感染症は密接な関係のあることがわかり、そうなると都道府県でひとくくりにして緊急事態宣言を行うのもやりすぎで、医療圏(or生活圏)を構成する市町村単位でよさそうだ。例えば、東京都にも小笠原村や伊豆大島があり、北海道にも札幌市(その一部「すすきの」)があるという具合である。

 しかし、人口密度の高い都市部には大病院やホテルも多いため、これまで何の準備もしていなかったのでは不作為と言わざるを得ない。また、都市部には、節水しすぎて流水でまともに手も洗えないような施設が多いが、「流水と石鹸でよく手を洗わず、アルコールを手にこすりつけさえすればよい」などというメッセージを発しているのは異常であり、そのような手で触った食品や食器は不潔なのである。

2)人口の集中しすぎがいけないので、分散型社会へ
 都市部に異常なまでの節水をして流水でしっかり手を洗えないような施設が多いのは、節水をよいことであるかのように思っているふしもあるが、人口増による水不足で水道水の単価が高くなっているせいもある。その一方で、地方には、せっかくある水道事業が成り立たなくなるほど過疎化した地域もあり、もったいない。

 そのため、*1-6のように、「東京一極集中をコロナを機に是正する」というのに、私は賛成だ。人口が集中し過ぎているのが首都圏だけでないことは、関西圏・中部圏の人口密度を見てもわかり、過度な人口集中は是正すべきだ。そして、それは、住民を誘致したい地方自治体が国に働きかけながら、仕事やインフラを準備しつつ行うのが効果的だと考える。

 なお、地方の仕事には、企業や工場の誘致だけでなく、*1-8のように、農業や食品加工業もある。また、*1-4のように、外国人のビジネス関係者もおり、全入国者に出国前72時間以内の陰性証明書を求めて空港での検疫も強化すればかなり安全だが、これまで空港では検査しなかったり、検査で陽性が判明しても行動制限をしなかったりしたのが甘すぎたと思う。

(2)地方と仕事
 *2-1も、「①大都市圏への人口集中を是正し、地方に人が住み続ける分散型社会を構築することは、持続可能な国土づくりに不可欠」「②都市を志向する価値観が変化し、自然豊かな環境や人との繋がりを求めて地方移住を考える人が増加」「③移住促進で必要なのは仕事の確保」「④政府は分散型社会の姿を描き、実効ある施策を講じるべき」としており、このうち①については、全く賛成だ。

 地方には豊かな資源を利用した農林漁業や食品加工業などの重要な産業があるのに、人手不足の危機に瀕している。また、観光・体験・研修等の分野と連携した新しいビジネスの展開もでき、再エネ発電を農林漁業地域で展開すれば、その地域に仕事ができると同時にエネルギー自給率が上がるため、②③も自然な人の流れにできるのである。従って、④のように、国や地方自治体が福祉・教育・交通などのインフラ整備を後押しして、地方分散を進めるべきだ。

 なお、都市から農村への移住は、移住者を受け入れた側がよそ者として排除するのを辞め、都市育ちの人のセンスを活かしながら共生すればよい。そもそも、戦後教育を受けて農村から都市に移住した世代には、ムラ社会の封建性から逃れて自由になり、新しい挑戦をするために都市に出た人が多い。しかし、今では農村でもその世代が“高齢者”と呼ばれているので、都市の若者が農村に移住しても楽しく共生できると思うのである。

 2021年1月9日、日本農業新聞が論説で、*2-2のように、「⑤自立する地域を協同組合が主導しよう」というメッセージを発信している。確かに、「⑥地方への移住者の定着支援」「⑦仕事づくり」「⑧安心して暮らせる地域社会づくり」などで農業協同組合にできることは多く、地元自治体と連携して全国から多くの新規就農者を呼び込んでいるJAもある。これは、多くの地域で参考にしたいことである。

(3)エネルギーも分散型へ
1)エネルギーの変換
 毎日新聞が、*3-1のように、「脱炭素は社会貢献でなくなった」と題して、「①アップル向け製品には、再エネ使用が最低条件」「②恵和は和歌山の製造拠点で使用電力の3分の1を再エネに切り替え、電気代が1割程度上がった」「③アップルは2030年までに、サプライチェーンを含む事業全体でカーボンニュートラルを達成すると宣言した」と記載している。

 私は、③の宣言をしたアップルは偉いが、②のように、アップルから言われて仕方なく使用電力の3分の1を再エネに切り替えた日本企業やいつまでも再エネに切り替えると電気代が上がると言っている日本政府・メディアは情けないと思う。そして、これも、新型コロナと同様、不作為によるものなのだ。

 このように、環境意識の低い日本政府や日本企業に対し、取引先の海外企業から再エネ導入圧力が強まるのは大変よいことで、これまでの誤った政策により、出遅れた日本の再エネによる発電コストは下がっていないのだ。これには、産業だけでなく、国民も迷惑している。

 そのため、取引先企業だけでなく、投資家も再エネ使用を進めている企業に投資するような投資判断をすれば、企業の行動は大きく変わる。そして、これは、日本にとって、エネルギー自給率を上げ、エネルギーコストを下げる成長戦略そのものなのである。

2)移動網について
 ヨーロッパ横断特急が復活し、*3-2のように、2020年12月、欧州4カ国の鉄道事業者が13都市を結ぶ夜行列車ネットワークをつくることで合意して、順次整備を進めるそうだ。その理由は、航空機のCO₂排出量は、鉄道の5倍に達するからだそうだが、ヨーロッパ横断特急も楽しみではあるものの、航空機も水素で動かすべきであり、欧州の航空機大手エアバスは、2035年には温暖化ガス排出ゼロの液化水素を使う航空機を実用化すると既に宣言している。

 日常生活を支える自動車についても、2025年には電動の垂直離着陸機が商用化されるそうだ。また、2030年以降にEVが過半数になればガソリン車より部品が4割減少して参入障壁が下がり、他産業からの参戦も増えて、自動車の価格は現在の5分の1程度になるとのことである。そのため、このリセットの時代に、従来の方法を守り続けるだけの企業に投資していれば、元手を紙くずにすることになるため、機関投資家も投資先をよく選別しなければならない筈だ。

3)原発について
 このような中、*3-3のように、原発の再稼働を画策している経産省と大手電力は、未だに「原発はコストが安い」と言っているが、日本の商業原子力発電は日本原発(株)が1966年7月に東海発電所で営業運転を開始し、それから54年半も経過しているのに、まだ1974年に制定された「電源開発促進税法」「電源開発促進対策特別会計法」「発電用施設周辺地域整備法」などの電源三法交付金制度により、立地自治体に電力使用者の負担で補助金を支払っているのだ。

 原発の立地自治体は、原発が危険だということはわかっているから補助金をもらわなければ立地させないのだが、補助金をもらっても見合わないことはフクイチで既に証明済で、そのような状況は早く卒業するにこしたことはないのである。電力の使用者にとっても、余分な負担だ。

 その上、耐用年数が40年とされていた原発を65年に延長したり、新しい原発を建設したりする動きがあるが、「原発はコストが安い」と主張する以上は電源三法交付金を廃止した上で、それでも稼働させる自治体を探すべきであり、そうしなければ再エネと公正な競争にはならない。

 現在稼働している九電の玄海原発と川内原発も、周囲は豊かな農林漁業地帯であり、事故を起こせばそれらの財産をすべて失うリスクを背負っている。にもかかわらず、まだ稼働させるという意思決定をしたいのなら、(最初の商業運転から54年半も経過している原発であるため)すべてを自己責任で行うこととして、その結果によりエネルギーの選択と集中を進めるべきである。

(4)再生医療
1)日本における再生医療研究の経緯
 1995年頃、私は、JETROの会合で、当時、日本では行われていなかったゲノム研究が海外では行われているのを見て、種の進化から考えればヒトの再生医療もできる筈だと思い、経産省(当時は通産省)に再生医療の研究を提案した。そして、日本でも遺伝情報や再生医療の研究が始まり、2005~2009年の私の衆議院議員時代に、文科省、厚労省、経産省などの省庁が協力して再生医療の研究を進めることになったのである。

 そして、この経過の中で、山中伸弥氏が2006年にマウスで、2007年にヒトでiPS細胞の作製に成功され、2012年10月8日に、ノーベル賞受賞が決まった(https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/other/121008-183500.html 参照)。

 なお、理論上は、ヒトES細胞からクローン人間を作成することもできるが、それを行うためには他のヒト胚の核を抜いて使うため、人の生命の萌芽であるヒト胚を滅失させるという問題があるとされる。しかし、私は、受精後のヒト胚は生命の萌芽と言えるが、未受精卵は体細胞の一種であり生命の萌芽とは言えないため、治療用に使うのはアリだと考える(https://spc.jst.go.jp/hottopics/0812saisei/report05.html 参照)。ただし、本人の同意もなく、同じ遺伝情報を持つ別の人を作るのは、倫理上の問題が大きいので禁止すべきだ。

 一方、家畜の場合は、ES細胞を使って、1997年に英国で世界初の体細胞クローンヒツジ「ドリー」が誕生したのをきっかけに、日本でも体細胞クローン生物の研究が牛を中心に進んでおり、1998年に世界初の体細胞クローン牛が誕生し、現在までに約360頭の体細胞クローン牛が誕生したそうだ(http://ibaraki.lin.gr.jp/chikusan-ibaraki/16-06/04.html 参照)。

2)再生医療から再生・細胞医療・遺伝子治療へ
 私が考えていた再生医療は、「大人になると、再び増殖して回復することはない」とされる臓器を再生することで、例えば、心臓・腎臓・脊髄・永久歯などが典型的だが、研究が進むにつれて応用範囲が広がるのは当たり前であるため、倫理上の問題がなければ、最初の定義以外のことはやってはいけないなどということはない。

 しかし、日本では再生医療の研究開始から20年も経たないうちに、「選択と集中」としてiPS細胞の研究のみに限ったのが、間違いだった。商業運転が開始されてから54年半も経過している原発とは異なり、再生医療の研究は基礎研究が始まったばかりでわかっていないことの方がずっと多いのに、原発には未だに膨大な国費を投入しながら、再生医療には「選択と集中」を適用したのが大きな誤りで、何をやっているのかと思った。

 そして、*4のように、他人のiPS細胞から作った「心筋シート」も使えるかもしれないが、「心筋シート」は本人の足の筋肉やES細胞を使っても作ることができ、こちらの方が遺伝情報が同じで拒絶反応がないため、より安全なのである。

 また、免疫細胞による癌治療も、癌細胞だけを選択的に攻撃するので化学療法や放射線治療より優れた可能性を持ち、大量に作って使えば薬の値段は下がるのに、厚労省は未だに副作用が強すぎる上に生存率の低い化学療法・放射線治療・外科療法を標準治療とし、免疫療法は標準治療では効かなくなった人にのみ適用するなどという本末転倒のことをしている。

 そのため、必要で成功確率の高い研究に国費を投入するのは、国民を幸福にしながら行う成長戦略であるにもかかわらず、役に立つことをしないで起こった不幸な出来事に血税から無駄金をばら撒くことばかりを考えているのは、どうしようもない政府・議員・メディアであり、これは首相を変えれば解決するというような生易しい問題ではない(https://spc.jst.go.jp/hottopics/0812saisei/report05.html 参照)。

・・参考資料・・
<都市と新型コロナ>
*1-1:https://jp.reuters.com/article/japan-state-of-emergency-idJPKBN29B315 (REUTERS 2021年1月7日) 緊急事態宣言、1都3県に再発令へ 東京1日500人が解除基準と西村氏
 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、政府は7日夕に緊急事態宣言の再発令を決定する。対象地域は首都圏の1都3県で、期間は1カ月。飲食店を中心に営業時間の短縮を要請するほか、大規模イベントの開催条件も厳しくする。西村康稔経済再生担当相は、東京なら1日の新規感染者が500人まで低下することが解除の判断基準とした。政府は7日午前、専門家に意見を聞く諮問委員会を開催。西村康稔経済再生相は宣言の対象を東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県にし、期間は1月8日から2月7日とする方針を諮り、諮問委で了承された。午後に衆院議院運営委員会で説明した西村氏は、解除の判断基準について、「東京に当てはめると新規陽性者が1日500人」と述べた。東京都が発表した7日の新規感染者は2447人と、初めて2000人を超えた。政府は夕方に対策本部を開き、菅義偉首相が発令を宣言する。その後に記者会見を開いて理由などを説明する。7都府県で開始した昨春の緊急事態宣言とは異なり、今回は感染者が特に急増している首都圏の1都3県に対象を絞る。菅政権は飲食時の感染リスクが高いとみており、飲食店に対し午後8時までの営業時間短縮を要請する。酒類の提供は7時までとする。国内メディアによると、協力に応じた店舗への補償金を現在の最大4万円から6万円に上積みする一方、政令を改正し、知事の要請に応じない店の名前を公表できるようにする。劇場や遊園地には午後8時の閉園を求め、スポーツやコンサートなど大規模イベントは最大5000人に制限する。昨年4月7日に始まった前回は、途中から全国へ対象を拡大。5月25日の全面解除まで、テレワークの徹底や外出自粛が呼びかけられ、百貨店や映画館などが休業、イベントも中止された。西村担当相は7日午前の諮問委員会で、解除基準について、最も深刻な現状のステージ4から「ステージ3相当になっているかも踏まえ総合的に判断する」と説明したが、政府分科会の尾身茂会長は5日夜の会見で「宣言そのものが感染を下火にする保証はない。1カ月未満でそこ(ステージ3)までいくことは至難の業だと思う」と指摘している。国内の新型コロナ感染者は昨年末から急増。厚生労働省によると、今月5日には4885人、6日には5946人の感染が新たに確認され、連日最多を更新している。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOHC080QK0Y1A100C2000000/ (日経新聞 2021/1/8) 大阪・京都・兵庫、緊急事態宣言要請を決定 9日にも伝達
 吉村洋文知事は8日午後の対策本部会議で「この2日間で急拡大している。首都圏と同様の対策を今の時点でとるべきだ」と述べた。京都府の西脇隆俊知事は8日の記者会見で「人口10万人あたりの新規感染者数は京都も高水準にあり、早めの手を打つ必要がある」と話した。年末の忘年会などで若者を中心に感染が広がったことへの危機感を背景に、要請に慎重姿勢を示していた吉村氏は一気に方針転換に傾いた。大阪府内の新規感染者数は8日まで3日連続で過去最多を記録した。12月上旬から年末までは減っていた1週間の累計感染者数は年明けに一変。1月1~7日は前週比1.38倍に急増した。クリスマス会や忘年会など、年末年始のイベントによる感染事例が多かったという。特に感染が広がったのは20代だ。人口10万人あたりの20代の新規感染者数は、大阪市内では約5人(4日時点)から約17人(7日時点)に増えた。行動範囲が広い若者への感染拡大は、さなる感染拡大の「火種」となる。府内ではもともと高齢者の感染者が多く、重症病床の使用率は7割と高止まりしており、府は事態悪化になんとか歯止めをかけたい狙いがあったとみられる。一方で、大阪府内では東京都よりは感染拡大が抑えられているとも言える。政府の分科会が感染状況を判断する6指標では、府は6日時点で陽性率の指標を除いて5指標が最も深刻な「ステージ4」の段階だ。東京都は全てで「ステージ4」を上回っている。療養者数や1週間の感染者数では、大阪府は東京都の6割程度の水準だ。政府はこうした状況も踏まえ、府などと協議を進めるとみられる。

*1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE1234V0S1A110C2000000/?n_cid=BMSR3P001_202101122212 (日経新聞 2021/1/12) 緊急事態、福岡・栃木も 関西・中部5府県と13日発令
 政府は13日、新たに7府県を緊急事態宣言に追加する。関西圏の大阪、兵庫、京都の3府県と中部の愛知、岐阜2県、福岡、栃木両県だ。8日から宣言期間に入った首都圏とあわせて対象は11都府県になる。新型コロナウイルスの感染が広がっているため。対象自治体の知事は午後8時以降の営業や外出の自粛を要請する。全国的に都市部を中心に新規感染者数が増加し、医療提供体制が逼迫する懸念が出ている。政府は宣言への追加を要望した自治体について、13日に専門家の意見を聞いた上で対象に加える。福岡は要請していないが感染拡大の懸念が強いため追加する。期間は7日に宣言を発令した東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県と同じ2月7日までにする。対象地域の知事は新型コロナに対応する新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき、法的根拠を持って様々な要請ができる。対象地域では感染リスクが高いとされる飲食店の時短や、不要不急の外出の自粛を徹底する。首都圏と同様に営業時間は午後8時まで、酒類の提供は午前11時から午後7時までとするよう求める。従わない店舗は特措法に基づき、知事が店舗名を公表できる。要請に応じた店舗には1日最大6万円まで協力金を支払う措置を講じる。菅義偉首相は12日、宣言の対象地域では飲食店の時短、午後8時以降の不要不急の外出自粛、イベントの人数制限、テレワークによる出勤7割削減をするよう求めた。「4点セットの対策で感染を抑え込んでもらいたい」と述べた。スポーツやコンサートなどのイベントは参加者数を最大5千人、収容人数では50%を上限に定める。自治体によっては、劇場や映画館、図書館や博物館といった大規模施設にも午後8時までとするよう呼びかける。宣言解除の基準も首都圏と同じにする予定だ。専門家で構成する政府の新型コロナ対策分科会がまとめた4段階の感染状況のうち最も深刻な「ステージ4」から「ステージ3」への脱却が目安となる。新規感染者数や療養者数、病床の逼迫度合いなど6つの指標を総合的に判断する。感染者数は「直近1週間の人口10万人あたり25人以上」を下回る必要がある。首相は12日、首相官邸で1都3県知事と会談し「迅速に情報共有し具体的な要望などに対して調整していく」と表明した。1都3県と事務レベルの連絡会議を設置する。首相は医療提供体制にも言及し、各知事に国の支援策を活用するよう求めた。新型コロナに対応する病床を増やすため「医療機関への働きかけなど先頭に立ってほしい」と訴えた。東京都の小池百合子知事は「1都3県は海外からの流入も多い」と指摘し、水際対策の厳格化を政府に要望した。政府は13日午後に専門家による基本的対処方針等諮問委員会に地域の追加を諮る。諮問委が妥当だと判断すれば、同日中に西村康稔経済財政・再生相が衆参両院の議院運営委員会に報告した後、政府の対策本部で首相が対象地域の追加を決める。再発令から1週間足らずで対象地域が拡大し、期限の2月7日に予定通り解除できるかは見通せない。昨年春に初めて発令した際は4月7日に発令後、同月16日に対象を全国に広げた。5月4日に期限を一度延長したうえで、全面解除は5月25日までかかった。都市部以外での感染が広がれば、対象地域はさらに増える可能性もある。

*1-4:https://digital.asahi.com/articles/ASP187R6HP18UTFK01B.html?iref=comtop_7_04 (朝日新聞 2021年1月8日) 全入国者に陰性証明求める 中韓などは入国継続維持
 菅義偉首相は8日夜、テレビ朝日の番組で中韓を含む11カ国・地域を対象にしたビジネス関係者などの入国継続を表明した。政府はこれにあわせて、日本人を含めた全入国者に出国前72時間以内に陰性を確認した証明書を求める、空港での検査を強化するといった検疫強化策を発表した。これにより全入国者について、それぞれの国・地域の出国前と日本への入国時の2回、陰性を確認することになる。首相の入国継続方針に対しては、与野党に加えSNS上でも批判が殺到していた。このため入国継続は維持する一方、検疫強化に乗り出した格好だ。首相は番組で11カ国・地域からの入国を止める考えはないか問われ、「安全なところとやっている」と強調。そのうえで新型コロナの変異ウイルスの市中感染が確認されるまで、受け入れを続ける方針を示した。空港検査の強化は、入国拒否対象以外からの入国者にも、空港での検査を実施するというもの。政府は約150カ国・地域を入国拒否とし、全入国者に空港で検査している。11カ国・地域のうちマレーシア以外は11月に入国拒否対象から除外され、空港での検査をしていなかった。

*1-5:https://www.agrinews.co.jp/p52857.html (日本農業新聞 2021年1月8日) [新型コロナ] 緊急事態再宣言 1都3県、来月7日まで 飲食店午後8時まで一斉休校は要請せず
 政府は7日、新型コロナウイルス感染症対策本部を首相官邸で開き、東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県を対象に、コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言の再発令を決めた。期間は8日から2月7日までで、感染リスクが高いとされる飲食店などへの営業時間の短縮要請が柱。小中高校の一斉休校は求めないが、外食やイベント需要の減少などで農産物の価格に影響が出る可能性がある。宣言発令は昨年4月以来2回目。首都圏の感染拡大が止まらず、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)していることを踏まえた。菅義偉首相は対策本部後の記者会見で「何としても感染拡大を食い止め、減少傾向に転じさせるため、緊急事態宣言を決断した」と述べた。コロナ対策の新たな基本的対処方針では、飲食店に対し、営業時間を午後8時までに短縮し、酒類の提供は午前11時から午後7時までとするよう要請。応じない場合は店名を公表する一方、応じた場合の協力金の上限は、現行の1日当たり4万円から6万円に引き上げる。宅配や持ち帰りは対象外とした。大規模イベントの開催は「収容人数の50%」を上限に「最大5000人」とする。午後8時以降の不要不急の外出自粛も求める。出勤者数の7割削減を目指し、テレワークなどの推進を事業者らに働き掛ける。宣言解除は、感染状況が4段階中2番目に深刻な「ステージ3」相当に下がったかなどを踏まえ「総合的に判断」するとした。西村康稔経済再生担当相は同日の衆院議院運営委員会で、東京に関しては、新規感染者数が1日当たり500人を下回ることなどが目安との認識を示した。政府は対策本部に先立ち、専門家による基本的対処方針等諮問委員会を開き、西村氏が宣言の内容などを説明し、了承された。その後、西村氏は衆参両院の議院運営委員会で発令方針を事前報告した。政府は昨年4月7日、東京など7都府県を対象に緊急事態宣言を発令し、16日には全国に拡大した。5月25日に全面解除したが、農畜産物では、飲食店やイベントの需要の激減で、牛肉や果実、花などの価格が下落した。政府は、コロナ対策を強化するため、特措法の改正案を18日召集の通常国会に提出する方針だ。
●業務需要減加速の恐れ
 緊急事態宣言が再発令されることを受け、流通業界や産地では農畜産物取引への影響が懸念されている。飲食店向けや高級商材はさらに苦戦する様相。一方、家庭消費へのシフトが進んでおり、対象地域が限られることから、前回宣言時ほどの打撃にはならないとの声もある。品目、売り先で影響の大きさが異なる展開になりそうだ。米は、春先のようなスーパーでの買いだめは現状、起きていない。しかし、飲食店の営業縮小で業務用販売は厳しさが増す見通しで、JA関係者は「今も前年水準に戻り切れていない。在宅勤務が増え、米を多く使う飲食店の昼食需要までなくなる」と警戒する。青果物は、飲食店の時短営業で仕入れに影響が出てきた。東京都の仲卸業者は「7日から注文のキャンセルが出た。多くの店が休んだ前回の宣言時ほどでなくても、1件当たりの注文量はがくっと減る」と懸念する。果実は、大手百貨店が営業縮小する方針で、メロンなど高級商材を中心に販売が厳しくなるとの見方で出ている。鶏卵は加工・業務需要が全体の5割を占めるため、飲食店の時短営業の拡大による販売環境の悪化が予想される。切り花は、葬儀や婚礼の縮小、飲食店の休業や成人式などイベントの中止で業務需要が冷え込むため、「相場は弱もちあいの展開が避けられない」(花き卸)見通し。長引けばバレンタインデーの商戦に影響するとの懸念もある。一方、牛乳・乳製品は家庭用牛乳類の販売好調が続く。緊急事態宣言再発令で業務需要はさらに減少する恐れがある。だだ、「前回のような全国一斉休校がなければ加工処理量の大幅な増加はない」(業界関係者)との観測も広がる。食肉は各畜種ともに内食需要の好調が継続しそうだ。豚肉、鶏肉は前回の緊急事態宣言以降、価格が前年を上回って推移しており「国産は在庫も少なく、引き続きスーパー向け中心に引き合いが強まりそう」(市場関係者)。和牛は外食から内食へのシフトが進んでおり、「外食向けの上位等級は鈍化するものの、3、4等級は前回のような大きな落ち込みはない」(都内の食肉卸)との見通しだ。

*1-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14754956.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2021年1月7日) 東京一極集中 コロナ機に是正に動け
 新型コロナ禍は日本が抱える多くの問題を改めて浮き彫りにした。そのひとつに都市部、とりわけ東京への一極集中が生み出すひずみがある。人が大勢いるところで感染症は猛威をふるう。この災厄を、かねて指摘されてきた過度な人口集中の是正に、社会全体で取り組むきっかけとしたい。変化のきざしはある。総務省によると、東京都から転出した人は昨年7月から5カ月連続で転入者を上回り、計約1万7千人の転出超過となった。全体からみればまだ微々たる数字でしかない。しかしテレワークが普及し、仕事の内容によってはあえて過密の東京に住む必要がないこと、通勤に要する時間を家族や地域の人々との交流、趣味などにあてれば人生が豊かになることを、多くの人が身をもって知った。人口集中がもたらす最大のリスクが災害だ。東京の下町で大規模洪水があれば250万人の避難が必要となる。おととしの台風19号の際、広域避難の呼びかけが検討されたが、これだけの人数を、どこへどうやって移動させるか、改めて課題が浮上した。その後、政府の中央防災会議の作業部会も具体的な答えを示せていない。30年以内に70%の確率で起こるとされる首都直下地震や、南海トラフ地震などへの備えも怠れない。一方で人口の分散は、近隣自治体にとっては住民を呼び込み、まちに活気を取り戻す好機でもある。例えば茨城県日立市は、市内への移住者に最大約150万円の住宅費を助成するなど、テレワークの会社員をターゲットに優遇措置を講じる。県が都内に設けた移住相談窓口の利用は前年比で5割増えたという。昨年8月に合同でテレワークセミナーを開いた山梨、静岡両県は首都圏と名古屋圏双方への近さをアピール。移住者の経験談を織り交ぜながら「心のゆとりや歴史、文化との出会いを」と呼びかけた。脱東京といっても行き先は周辺県にとどまる例が多いが、視線をもっと遠くに置いてもいいのではないか。内閣府が昨年5~6月に行ったネット調査によると、3大都市圏に住む人で地方移住への関心が「高くなった」「やや高くなった」と答えた人は、東京23区の20代で35・4%、大阪・名古屋圏の20代でも15・2%にのぼった。こうした声に合致する施策の展開が求められる。一極集中の是正こそ多様なリスクの低減につながるとの視点に立ち、防災すなわちインフラ整備といった旧態依然の政策のあり方を見直す。そのための議論が国会、自治体、企業などの場で深まることを期待したい。

*1-7:https://uub.jp/rnk/chiba/p_j.html (都道府県の人口・面積・人口密度ランキングより抜粋)
<人口,人>           <面積,km²>        <人口密度, 人/km²>
1 東京都 13,971,109      1 北海道 78,421.39      1 東京都 6,367.78
2 神奈川県 9,214,151      2 岩手県 15,275.01      2 大阪府 4,627.76
3 大阪府 8,817,372       3 福島県 13,784.14      3 神奈川県 3,813.63
4 愛知県 7,541,123       4 長野県 13,561.56      4 埼玉県 1,933.63
5 埼玉県 7,343,453       5 新潟県 12,583.96      5 愛知県 1,457.77
6 千葉県 6,281,394       6 秋田県 11,637.52      6 千葉県 1,217.90
7 兵庫県 5,438,891       7 岐阜県 10,621.29      7 福岡県 1,024.12
8 北海道 5,212,462       8 青森県 9,645.64       8 兵庫県 647.41
9 福岡県 5,106,774       9 山形県 9,323.15       9 沖縄県 639.12
・・
41 佐賀県 808,821       41 鳥取県 3,507.14      41 青森県 127.57
42 山梨県 806,210       42 佐賀県 2,440.69      42 山形県 114.23
43 福井県 762,679       43 神奈川県 2,416.11      43 島根県 99.43
44 徳島県 721,269       44 沖縄県 2,282.59      44 高知県 97.10
45 高知県 689,785       45 東京都 2,194.03      45 秋田県 81.81
46 島根県 666,941       46 大阪府 1,905.32      46 岩手県 79.36
47 鳥取県 551,402       47 香川県 1,876.78      47 北海道 66.47

*1-8:https://www.agrinews.co.jp/p52864.html (日本農業新聞 2021年1月9日) 緊急事態宣言 ガイドライン順守を コロナ感染防止で農水省
 農水省は緊急事態宣言の再発令を受け、農家に新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた業種別ガイドラインの順守を呼び掛ける。ガイドラインは大日本農会のホームページに掲載。日々の検温や屋内作業時のマスク着用、距離の確保などの対策をまとめている。感染者が出ても業務を継続できるよう、地域であらかじめ作業の代替要員リストを作ることも求める。ガイドラインは①感染予防対策②感染者が出た場合の対応③業務の継続──などが柱。予防対策では、従業員を含めて日々の検温を実施・記録し、発熱があれば自宅待機を求める。4日以上症状が続く場合は保健所に連絡する。ハウスや事務所など、屋内で作業する場合はマスクを着用し、人と人の間隔は2メートルを目安に空ける。機械換気か、室温が下がらない範囲で窓を開け、常時換気をすることもポイントだ。畑など屋外でも複数で作業する場合は、マスク着用や距離の確保を求める。作業開始の前後や作業場への入退場時には手洗いや手指の消毒を求めている。人が頻繁に触れるドアノブやスイッチ、手すりなどはふき取り清掃をする。多くの従業員が使う休憩スペースや、更衣室は感染リスクが比較的高いことから、一度の入室人数を減らすと共に、対面での会話や食事をしないなどの対応を求める。感染者が出た場合は、保健所に報告し、指導を受けるよう要請。保健所が濃厚接触者と判断した農業関係者には、14日間の自宅待機を求める。保健所の指示に従い、施設などの消毒も行う。感染者が出ても業務を継続できるよう、あらかじめ地域の関係者で連携することも求める。JAの生産部会、農業法人などのグループ単位での実施を想定。①連絡窓口の設置②農作業代替要員のリスト作成③代行する作業の明確化④代替要員が確保できない場合の最低限の維持管理──などの準備を求める。

<地方と仕事>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p52851.html (日本農業新聞論説 2021年1月8日) 地方分散型社会 持続可能な国土めざせ
 大都市圏への人口集中を是正し、地方に人が住み続ける分散型社会を構築することは、持続可能な国土づくりに不可欠である。地方、特に農村への移住をどう促すか。政府には、新型コロナウイルス禍を踏まえた分散型社会の姿を描き、実効ある施策を講じることが求められる。都市を志向する価値観が変化し、自然豊かな環境や人とのつながりを求め地方移住を考える人が増えている。総務省の地域おこし協力隊の任期終了者で、活動先に定住した人が2019年度時点で2400人を超え、5割に上るのもその兆候だ。移住の促進で必要なのは仕事の確保である。新たな食料・農業・農村基本計画で政府は、農村を維持し、次世代に継承するために地域政策の総合化を打ち出し、柱の一つに「所得と雇用機会の確保」を掲げた。観光や体験、研修など、さまざまな分野と連携した新しいビジネスの展開などを想定している。しかしコロナ禍で人を呼び込むのが難しくなり、外食や農泊、農業体験を含む観光産業など農業との連携が期待される分野は苦境が続く。半面、家庭需要が高まり、直売所の利用など地産地消の動きは活発化。また起業や事業承継、農業と他の仕事を組み合わせた半農半X、複数の業種をなりわいとする多業など、移住者らによる多様な仕事づくりや働き方がみられる。政府は農業・農村所得の倍増目標も掲げてきた。達成のためにも事業の継続を支える一方、新たな動きや、コロナ禍の中での経済・社会の変化を捉え、所得確保と雇用創出の政策を構築すべきだ。また東京一極集中の是正を、地方創生や国土計画の中心課題に据えてきた。しかし一極集中に歯止めがかからず、農村の高齢化・過疎化が進んだ。政策の実効性が問われる。移住者と地域の融和も重要である。地域の一員として溶け込むには移住前から住民と対話・交流し、心を通わせる必要がある。しかしコロナの感染拡大で現地を訪れ、対話する機会を設けるのが難しくなっている。一方、新しい対話の手法として移住者と地域をオンラインでつなぎ、説明会や就農座談会を開く動きが増えている。自治体や先輩移住者が暮らしや仕事などについて説明。ふるさと回帰支援センターが昨年10月、オンラインで開いた全国規模の移住マッチングイベントには1万5000人超の参加があった。移住希望者と地域がオンラインで対話し、信頼関係を育む。その上で感染防止対策を徹底し、現地を訪れるなど新様式が一般化する可能性がある。多くの地域で実践できるようノウハウの共有や費用支援が重要だ。地方への人の流れをつくる方策として政府は、テレワークの推進などを念頭に置く。併せて説明会から移住、定着までを段階を追って、また所得・雇用機会の確保から生活環境整備まで幅広く支援する重層的、総合的な政策体系を構築すべきだ。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p52861.html (日本農業新聞論説 2021年1月9日) 自立する地域 協同組合が主導しよう
 新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、「3密」を回避できるとして地方への関心が高まっている。地方への移住者の定着支援では、仕事づくりや安心して暮らせる地域社会づくりなどで、協同組合にこそ役割発揮が求められる。都市集中型から地方分散型への社会転換を協同組合の力で後押ししたい。
都市での生活は、満員電車での通勤をはじめ、密閉、密集、密接が避けられない環境にある。コロナ禍を契機にテレワークが広まり、一部業種では都市にいなくても働けることが分かった。観光地などで休暇を過ごしながら働くワーケーションを実践する人も増えている。JA全中の中家徹会長は2020年の総括として「3密社会の回避へ東京一極集中から分散型社会への潮流が生まれている」と指摘した。今後、地方に移住し、地域に根付いて働きたいというニーズも高まってくるだろう。協同組合として何ができるか。徳島県JAかいふは地元自治体と連携して、全国から多くの新規就農者を呼び込んでいる。農業と合わせて、豊かな自然でサーフィンや釣りなどが楽しめるとしてアピール。栽培を1年間学べる塾や、環境制御型ハウスの貸し出しなど手厚く支援する。15年度から始め20年度までに24人を受け入れ、20人が就農したという。総合事業を手掛けるJAは新規就農者に農地や住居、営農指導、労働力など多様な支援を用意し、定着を後押しできる。医療や介護といった暮らしや、組合員組織を通じた仲間づくりなどにも貢献できる。生協など他の協同組合と連携すれば支援の幅はさらに広がる。地方に移住してくる人に対して、協同組合が仕事や生活を丸ごと支援する仕組みの構築も考えられる。また今後期待されるのが、組合員が出資・運営し、自ら働く労働者協同組合だ。各地域での設立を後押しする法律が20年に成立。たとえ事業は小さくても地域の課題を解決しつつ、自ら経営する新しい働き方として地方にも広がる可能性がある。コロナ禍の収束は依然見通せない。仮に収束してもグローバル化が進み、今後も感染症が世界を脅かす懸念は強い。都市から地方への単純な人口移動にとどまらず、大都市圏を中心に他の地域と激しく人や物が行き来する社会の在り方が見直される可能性もある。そこでは、経済や生活、文化が地域ごとに一定程度自立する「地域自立型社会」とも呼べる国の在り方が構想できる。そうなれば先に挙げた役割を果たすため、地域に根差す協同組合の役割はより大きなものになるだろう。また、それぞれの協同組合には全国ネットワークがあり、地域間の連携にも取り組みやすいと考えられる。感染症を含め近年増えている災害などの危機の際には、協同組合の基本である助け合いが求められる。協同組合の役割と実践内容を改めて発信したい。

<エネルギーも分散型へ>
*3-1:https://mainichi.jp/articles/20210108/k00/00m/040/237000c?cx_fm=mailasa&cx_ml=article&cx_mdate=20210109 (毎日新聞 2021年1月8日) コロナで変わる世界:脱炭素は「社会貢献」でなくなった 広まる欧州主導の国際ルール、焦る日本企業
 新作が発売されるたびに、世界が注目する米アップルのスマートフォン「iPhone」。その画面に使われる光拡散フィルムが、和歌山県にある日本企業の工場で製造されていることはほとんど知られていない。紀伊半島の先端近くに位置する南紀白浜空港から車で1時間弱の山間地に、高機能フィルムメーカー「恵和」(本社・東京)の生産拠点がある。
●「アップル製品に再エネ導入は最低条件」
 同社は2020年11月、和歌山工場のアップル向け生産ラインで使う電力を太陽光や風力などの再生可能エネルギーに切り替えた。「アップルから『あなたの企業が使うエネルギーは?』と聞かれて化石燃料を出したらその時点で終わり。再エネ導入は最低条件で、その上で技術の勝負になる」。恵和の長村惠弌(おさむらけいいち)社長は強調する。アップルは同年7月、30年までに事業全体で「カーボンニュートラル」を達成すると宣言した。サプライチェーン(部品の調達・供給網)の全てを通じて温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にする野心的な目標だ。10年以内に再生可能エネルギーの100%使用を迫られた形の取引先企業にとって、脱炭素は社会貢献ではなく、経営の根幹にかかわる必須条件に変わった。恵和は1948年に加工紙メーカーとして創業。アップルとは12年ごろから取引関係にある。再エネを購入し、和歌山の製造拠点での電力使用量の3分の1を切り替えたことで、電気代は1割程度上がったという。長村社長は「コストが増えても、関係が強化されて結果的に収入が増えればいい。アップルの活動への協力は自社の事業にプラスだ」と話す。アップルの発表によると、20年12月時点で半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)を含む95の取引先企業が、100%の再エネ使用を目指す方針を表明した。取引先に温室効果ガスの抑制を求める企業はアップルに限らない。米IT大手マイクロソフトは30年までに排出量よりも多くの二酸化炭素(CO2)を大気中から除去する「カーボンネガティブ」の実現を約束した。自然エネルギー財団の石田雅也シニアマネジャーは今後、中小を含む日本企業に対し、海外の取引先から再エネ導入圧力が強まる可能性があると指摘する。再エネの「主力電源化」に欧米から大きく後れを取る日本の課題は、国際的にも割高な発電コストだ。「1円でも安くしないと競争できない企業もある。国全体で再エネのコストが安くならないと、間違いなく産業競争力に影響するだろう」と石田さんは懸念する。新型コロナウイルス流行後の世界で、脱炭素に向けた動きが急加速している。人類が直面するもう一つの危機である気候変動を抑止し、持続可能な社会を目指す「グリーンリカバリー」(緑の復興)に向けた挑戦が始まった。
●欧州からは「実態を超えたレベルの要求」
 「多量のCO2(二酸化炭素)を排出する石炭火力の比率が高い日本に今後も製造拠点を置くべきなのか、といった議論をせざるを得ない状況にある」。2020年11月中旬。イオンや武田薬品工業など日本を代表する有力企業の幹部が霞が関を訪れ、河野太郎行政改革担当相らに提言書を手渡した。新型コロナウイルス収束後の経済復興策に脱炭素の視点を加え、「30年までに再エネ50%」の目標設定を求めたものだ。文書をまとめたのは、09年に設立された「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」。気候変動問題で、世界から取り残される危機感を共有する富士通や積水ハウスなど165社が加盟し、総売上高は125兆円に達する。設立メンバーの複合機大手リコーは17年、事業に使用する電力を100%再エネで調達することを目指す国際イニシアチブ「RE100」に日本企業として初めて参加した。阿部哲嗣・社会環境室長は「要求が高度化する顧客への対応が不可避になっている」と語る。脱炭素への取り組みで国内の先頭を走る同社でさえ、先をいく欧州の取引先から圧力にさらされている。阿部室長によると、欧州の商談では、納入する複合機の価格やサービス体制に加え、CO2削減を含むESG(環境、社会、企業統治)への取り組みが評価基準に盛り込まれる例が増えたという。受注前に気候変動への対応について監査を求められたこともあった。取引先からの「ESG要求」に応じることで成立した商談は19年度、欧州を中心に120億円。同社の欧州での売上高の約3%に過ぎないが、コロナ後は割合が確実に増えていくと見込まれている。一方、投資家などからは同社に部品を供給するサプライヤーにもESGへの取り組みを求める声があり、阿部室長は「実態を超えたレベルの要求が走り出している」と話す。再エネ100%を見据えることができない企業は、グローバル企業の取引先から外されるリスクに直面する。リコーはこの3年で再エネ比率を12・9%まで高めたが、再エネ調達価格が安い欧州事業など全体を底上げしているのが現状だ。国内に限れば、再エネ利用率は1・9%にとどまる。日本で、化石燃料由来でないことを証明する有力な手段の一つは、「非化石証書」付きの電力を購入することだ。だが証書付きの電力コストは欧州の数倍から数十倍とされる。JCLPの事務局を務める環境政策シンクタンク「地球環境戦略研究機関」の松尾雄介ディレクターは「複数の日本企業から『この10年で再エネ価格が相当下がらなければ、海外に拠点をシフトさせるかもしれない』という声が出ている」と明かす。
●「今の投資判断が未来を決める」専門家指摘
 温暖化防止の国際ルール「パリ協定」が採択されて5年。日本は主要7カ国(G7)で唯一、石炭火力の新設計画があり、そのエネルギー政策には国際社会の厳しい視線が注がれてきた。菅政権は20年10月、50年までの温室効果ガスの排出「実質ゼロ」達成を宣言したが、「周回遅れ」の日本にとってはようやくスタートラインに立ったにすぎない。政府が21年中にまとめるエネルギー基本計画の改定に向け、経済産業省は電源構成に占める再エネの割合を、50年までに50~60%に引き上げる目安を示した。だが、JCLPが河野行政改革担当相らに提言した「30年までに50%」からは20年近い乖離(かいり)がある。経済協力開発機構(OECD)の元事務次長で、世界の気候政策に詳しい玉木林太郎・国際金融情報センター理事長は「化石燃料を使わないようにすることは、(産業革命に寄与した)蒸気機関の発明以来の大きな変化だ。この変化は避けられず、早くやった方が勝者になれる。先送りして済む問題ではない」と語る。「50年『脱炭素』は、遠いようで極めて近い目標だ。社会システムを切り替えるにはインフラを中心に息の長い投資計画が必要で、40年に慌てて始めても間に合わない。今の投資判断が未来を決める」と指摘する。
●欧米主導のルールづくりに日本も重い腰上げ
 「ここで方向を変えなければ、我々は今世紀のうちに壊滅的な気温上昇に直面する」。20年12月12日。パリ協定の採択5年を記念する首脳級オンライン会合で、国連のグテレス事務総長は警鐘を鳴らした。各国が「グリーンリカバリー」(緑の復興)を掲げるのは、コロナ禍で悪化した経済の立て直しと脱炭素を両立させるためだ。パンデミック(世界的大流行)による行動制限などの影響で、20年に世界で排出されたCO2は前年と比べて7%近く減った。リーマン・ショック時を上回る記録的な減少幅だ。しかし、世界の平均気温の上昇を1・5度に抑えるパリ協定の目標を実現するには、この先10年間でCO2排出量を毎年7%ずつ減らし続ける必要がある。エネルギーや交通など、社会・経済のシステムを急速かつ大胆に変革しなければ不可能な数字だ。欧州諸国は、若者世代がけん引した「緑の波」と例えられる世論の支持を追い風に野心的な気候政策を推し進め、域内産業の成長と保護の両立をしたたかに追求する。欧州連合(EU)では「国境炭素調整措置」の導入に向けた議論が本格化する。気候変動対策が不十分な国からの輸入品に対し、製造過程などで生じるCO2に高関税をかける発想だ。脱炭素を進める欧州の製造業を不公正な競争から守る目的もあり、「保護主義」との反発もある。だが世界貿易機関(WTO)元事務局長で、EUの欧州委員(通商担当)も務めたパスカル・ラミー氏は「『保護主義』ではなく、『予防措置』だ。貿易相手をたたいて自国の産業を守るためではなく、(世界全体の排出量を減らして)気候変動の損失から人々を守るためと考えるべきだ」と欧州の「大義」を強調する。トランプ米政権はEUが国境炭素調整措置を導入した場合、報復を示唆していた。だが、気候変動を最優先課題の一つに掲げるバイデン次期米大統領はEUと同様の措置導入を目指しており、今後具体化する可能性がある。欧米主導のルール作りが進む中、日本政府も重い腰を上げた。菅政権ではCO2排出に課金して削減を促す仕組み「カーボンプライシング」(CP)の導入に向け、環境省と経済産業省が連携して議論を始める。CPは短期的には産業界や家庭の負担増につながるため、これまで本格的な議論は先送りされてきた。だが、小泉進次郎環境相は「国内で炭素に価格付けしなくても、海外で(国境調整措置などを通じて)徴収される可能性を検討せざるを得ない」と指摘。「国際情勢をみながら後手に回らないように多角的に議論の蓄積をしたい」と話す。
●日本での関心の低さ、根底に「負担意識」
 日本では世論もカギだ。「欧州は草の根の運動が社会を動かした。でも今の日本は政府から『脱炭素』が降りてきたように感じる」。京都の大学1年生、寺島美羽さん(19)はそう語る。寺島さんは高校3年生の春にスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん(18)を知り、気候変動に興味をもった。グレタさんら欧州の若者にならい、10人ほどのグループで、街頭やネット交流サービス(SNS)で大人たちに本気の対策を訴え続けてきた。しかし、周囲の反応は冷笑的で「壁」を感じることも多かったという。気候科学者で国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多・副センター長は、関心の低さの根底には「温暖化対策を取ることへの『負担意識』」があるとみる。世界76カ国の一般市民を対象にした討論型の調査(15年)では、「あなたにとって、気候変動対策はどのようなものか」という問いに対し、「生活の質を脅かすもの」と回答した人は、世界平均27%に対して日本は60%と突出していた。「これを変えるには『新しい社会システムにアップデートする』というような前向きなメッセージを出すことが大切だろう」。江守さんは続ける。「日本でも数は多くないが、若い世代が気候変動対策の強化を求めて各地で声を上げている。こうした活動を応援することも、私たちができることのひとつだ」 年の瀬。JR京都駅前の街頭に寺島さんの姿があった。「気候危機の存在に気づいて」と書かれたプラカードを持った同世代の男女6人の前を、高校生や仕事帰りの人々が見向きもせずに過ぎ去っていく。1時間ほどたったころ、「SNSで見て活動に興味をもった」という制服姿の女子高校生2人が輪に加わった。「こんなことは初めて。本当にうれしい」と寺島さんは相好を崩した。草の根からも変化の芽が生まれつつある。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210109&ng=DGKKZO68042480Z00C21A1MM8000 (日経新聞 2021.1.9) 一からつくる移動網 テスラ超える戦い
 夕方にベルリンをたち翌朝、目が覚めるとローマに到着。1957~95年に欧州の主要都市を結んだヨーロッパ横断特急が復活する。2020年12月、欧州4カ国の鉄道事業者が13都市を結ぶ夜行列車ネットワークをつくることで合意した。12月開通予定のウィーン~パリ間などを皮切りに順次整備を進める。
●鉄道の5倍排出
 背景には、二酸化炭素(CO2)を大量排出する飛行機に乗らない「飛び恥」という現象がある。世界のCO2排出で「運輸」は「発電・熱供給」に次ぐ2割強を占め、航空機の排出量は乗客1人の移動1キロ換算で鉄道の5倍に達する。国際航空運送協会(IATA)で環境分野を担当するマイケル・ギル氏は「旅客機では電気自動車(EV)のような技術が確立していない」と話す。それではもう、飛行機に乗れないのか。移動の選択肢を確保するため、欧州の航空機大手エアバスが立ち上がった。35年には温暖化ガス排出ゼロの航空機を実用化すると宣言。「ゼロe」と呼ばれるコンセプト機は液化水素をガスタービンで燃やして飛ぶ。実現すれば約70年前に英国でジェット旅客機の幕が開いて以来の大変革となる。日常生活を支えるクルマも変わる。ドイツ南部のミュンヘン郊外に「空のテスラ」と呼ばれる新興企業がある。電動の垂直離着陸機「eVTOL(イーブイトール)」を開発する15年創業のリリウムだ。駆動時に温暖化ガスを全く出さないのが売りで、25年の商用化を視野に入れる。機関投資家も出資し企業評価額が10億ドル(約1030億円)を超えるユニコーンとなった。こうした空飛ぶクルマメーカーが世界で続々と誕生している。脱炭素時代の移動手段は化石燃料時代とは全く違う「不連続の発想」から生まれる。技術革新に遅れると命取りになる。中国の自動車市場で、ある「逆転」が話題になた。米ゼネラル・モーターズ(GM)と上海汽車集団などの合弁で小型車を手がける上汽通用五菱汽車が、20年7月に発売した小型EV「宏光ミニ」。9月に販売台数で米テスラの主力小型車「モデル3」を追い抜いたのだ。航続距離は120キロメートルと近距離移動向けだが、価格は2万8800元(約46万円)からと安い。低価格が話題を呼び、地方都市で爆発的に売れている。
●他産業から参戦
 カーボンゼロの申し子、テスラですら安泰ではない新しい競争の時代。日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は「30年以降に過半数がEVになれば、車の価格は現在の5分の1程度になるだろう」と予言する。内燃機関を持たないEVは3万点もの部品が必要なガソリン車に比べ、部品点数は4割ほど減少する。参入障壁が下がり、自動車産業以外からの参戦も増える。トヨタ自動車は街からつくる。21年2月、静岡県裾野市にある約70万平方メートルの工場跡地で、自動運転EVなどゼロエミッション車(ZEV)だけが走る実験都市「ウーブン・シティ」に着工する。豊田章男社長は「3000程度のパートナーが応募している」と力を込める。5年以内の完成を目指し、グループで開発中の空飛ぶクルマが登場する可能性もある。20世紀のはじめ、米フォード・モーターの創業者であるヘンリー・フォード氏が大量生産方式を確立した自動車産業。生産コストを大幅に下げ、人々に移動の自由を提供し、経済成長の原動力にもなってきた。いまや世界で5千万人を超す直接・間接の雇用を生み出している。カーボンゼロで産業地図は大きく塗り替わる。自動車メーカーを先頭に発展してきた日本企業も、新しい青写真を描く時だ。

*3-3:https://mainichi.jp/articles/20210110/k00/00m/040/152000c (毎日新聞 2021年1月10日) 40年超原発」再稼働へ立ちはだかる壁 安全性懸念、行き詰まる中間貯蔵先探し
 運転開始から40年を超える関西電力の美浜原発3号機(福井県美浜町)と高浜原発1、2号機(同県高浜町)の再稼働に向け、地元の同意プロセスが進んでいる。ただ、老朽原発の安全性には懸念の声が根強いほか、県が同意の前提とする使用済み核燃料の「県外」での中間貯蔵先探しも行き詰まったまま。国内初の「40年超原発」の再稼働には、高いハードルが立ちはだかる。
●「原発から抜けられない町」、本心は「ノー」
 関電は経営面から一日も早い再稼働を目指し、美浜3号機を2021年1月、高浜1、2号機を3月以降に再稼働させる工程を示しているが、実現のめどは立っていない。原発の寿命が「40年」とされたきっかけは、11年3月の東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故だ。「原子炉の圧力容器が中性子の照射を受けて劣化する時期の目安」として、13年7月の改正原子炉等規制法で原発の運転期間が原則40年と定められた。ただ、基準を満たせば1度に限り最大20年の延長が認められ、美浜3号機と高浜1、2号機は原子力規制委員会の審査をクリアした。今後、30年までに全国の原発11基が運転開始から40年を迎えるため、関電3基の再稼働が試金石となる。しかし、安全面で課題も指摘されてきた。関電が09年に高浜1号機で実施した検査では、60年運転時点の脆性(ぜいせい)遷移温度(圧力容器の劣化を示す指標)の予想値が97度となり、廃炉以外の原発で最高を記録。この値が100度程度に高いと圧力容器が破損する恐れがあるとされ、長沢啓行・大阪府立大名誉教授(生産管理システム工学)は「過去の検査に比べ09年の結果を見ると脆化(もろくなる)スピードが速まり、余裕がなくなった。次の検査でさらに予想値が高くなる可能性がある」と指摘。関電は「脆化の程度が大きいのは事実だが、地震や事故に耐えられることは確認している」と反論する。再稼働には県や原発の立地自治体の首長と議会の同意が必要とされる。「再稼働への理解と協力をお願い申し上げる」。経済産業省資源エネルギー庁の保坂伸長官は20年10月16日、福井県庁などを訪れ、40年超原発3基の再稼働への協力を県などに要請した。これを受け、立地自治体である高浜、美浜両町の議会は11~12月に再稼働を求める請願を相次いで採択し、早々に同意。両町長も近く同意の意思を示す見通しだ。安全性の懸念はあるものの、生活のため、地元からは再稼働を容認せざるを得ない「嘆き」が聞こえてくる。再稼働を求める請願に賛成した高浜町議の一人は「財政の大部分を原子力が占める町では、『同意』は賛否を論じるような話ではない。もし否定して再稼働しないなんてなったら大変なことになる」と複雑な思いを吐露し、「半世紀かけて原発から抜けられない町にしてしまった。僕らも本心では『ノー』と言いたい。でも、言えないよ」と語る。一方、関電が老朽原発の再稼働にこだわるのは、発電コストの安い原発で収支を改善し、安全対策で投じた膨大な費用を回収するためだ。東電福島第1原発事故前、関電は原発11基を運転し、10年度の全発電量に占める原発の割合は51%だった。しかし、19年度は27%で、高コストの火力が59%で最多に。老朽原発を再稼働できれば1基当たり月25億円の利益増になる。福島事故後の新ルールに対応した安全対策工事の総費用は、廃炉を除く原発7基で計1兆693億円に達し、一刻も早く老朽原発を動かしたいのが本音だ。
●20年以上続く中間貯蔵施設の「県外」確保問題
 福井の老朽原発再稼働の大きな課題となっているのが、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の「県外」確保だ。現在、使用済み核燃料は原発敷地内で保管されているが、5~9年で容量が限界に達する。関電にとって1998年7月に秋山喜久社長(当時)が県外建設の考えを初めて示して以来、20年以上続く経営課題となっている。関電は15年11月に「福井県外で20年ごろに計画地点を確定し、30年ごろに操業を開始」との計画を公表。17年11月には岩根茂樹社長(当時)が「18年には具体的な計画地を示す」と述べ、2年前倒しした。ところが18年1月、東電と日本原子力発電の中間貯蔵施設(青森県むつ市)を関電が共同利用する案が報道で表面化。むつ市は猛反発し、関電は報道を否定したが目標時期を「20年を念頭」に戻した。20年12月、事態が動いた。むつ市の中間貯蔵施設を、関電を含む電力各社で共同利用する案が浮上したのだ。全国の使用済み核燃料の負担が集中することを懸念し、むつ市の宮下宗一郎市長は12月18日、説明に訪れた電気事業連合会の清水成信副会長らに「むつ市は核のゴミ捨て場ではない」と不快感を隠さなかった。今後、電事連や国が地元の「説得」を進める模様だが、見通しは立っていない。同じ日、福井県内では、金属製容器(キャスク)に入れた使用済み燃料を空冷する「乾式貯蔵」を念頭に「県内」での貯蔵を検討する案が出た。美浜町議会の竹仲良広議長は「個人の意見」とした上で「美浜原発サイト内で乾式貯蔵を推進していきたい」と発言。同町議会は04年7月に中間貯蔵施設の誘致を決議した経緯があるが、当時は県の反発で立ち消えになった。また、衝撃的な判決も波紋を広げている。大阪地裁が20年12月4日、関電大飯原発3、4号機の想定する最大の揺れを示す基準地震動について「実際に発生する地震が平均より大きくなる可能性(ばらつき)を考慮していない」とし、国の設置許可を取り消したのだ。この判決の大きな影響を受けるのが、美浜3号機だ。40年超運転に向け、美浜3号機の基準地震動は750ガルから993ガルに大きく引き上げられた。だが、原告共同代表の小山英之・元大阪府立大講師(数理工学)は大飯と同じ評価方法が採用されていることからさらに1330ガルまで跳ね上がるとし、「安全の証明がされていない」と指摘する。福井県の杉本達治知事は判決を受け、再稼働の同意判断には規制委などによる安全性の説明が改めて必要とし、県原子力安全専門委員会でも検証する方向だ。混沌(こんとん)とする中、地元同意で事実上の最終判断を下す立場の杉本知事は慎重な姿勢を崩していない。関電が20年末までに県外候補地を示せなかったことについて、記者団に「(再稼働の)議論の入り口には入れない」とする一方、「最大限努力するということなので、それを待ちたい」とも述べた。協議を拒絶しつつ、「年内」の期限は猶予した政治判断の背景について、県幹部は「関電が『早く報告に来る』というから了とした。貯蔵プールの満杯も迫っているので、今回は期待もしていたが……」と話す。関電はどのようなボールを投げてくるのか。今後の日程が定まらないまま、県は出方をうかがっている。
●運転中は玄海3号機と川内1、2号機のみ
 建設中や廃炉決定などを除き、国内には33基の商業用原発がある。16基が東日本大震災後にできた新規制基準に「合格」したが、9日現在で運転しているのは九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)と同川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の3基のみ。また、合格した16基のうち、運転開始から40年を超える老朽原発は関西電力美浜原発3号機と同高浜原発1、2号機、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の計4基となっている。

<再生医療>
*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210111&ng=DGKKZO68052890Q1A110C2TJM000 (日経新聞 2021.1.11) 科技立国 動かぬ歯車(4)iPS、世界と隔たり、集中投資も存在感乏しく 柔軟な戦略修正に課題
「経過は順調だ」。大阪大学の澤芳樹教授らは2020年12月、iPS細胞から作った「心筋シート」を重い心臓病の患者に移植する世界初の手術を3人に実施したことを報告した。19年末に始めた医師主導臨床試験(治験)は前半を終えた。iPS細胞の臨床応用は広がっている。心臓病のほか加齢黄斑変性など目の病気、パーキンソン病、がんなどの治療を目指す臨床研究や治験が進む。安全性や効果を示せるかが注目されている。京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞の作製法をマウスで発見したのは06年。山中教授は12年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。政府は13年、iPS細胞を使う再生医療の実現に向け、10年間で1100億円という巨額の投資を決めた。皮膚などの体の細胞から胚性幹細胞(ES細胞)のような万能細胞を作るという山中教授の発想は斬新なものだった。研究計画を審査した岸本忠三・阪大特任教授が可能性に注目するなど、政府が支援したことで発見につながった。科学技術政策の成功例といえる。その後の大型投資は「選択と集中」の象徴だ。iPS細胞関連の研究者は増え、論文も増えた。だが、その課題や弊害も見えてきた。独ロベルト・コッホ研究所などのチームが人のiPS細胞に関する論文を18年に調べると、日本は論文数シェアで世界2位だった。ただ、論文を掲載した科学誌の影響度(インパクトファクター)と論文の被引用数は平均を下回った。国内で初めてES細胞を作った京都大学の中辻憲夫名誉教授は「日本は間違った過剰な選択と集中によって、投資対効果が低い結果になった」と批判する。iPS細胞に集中投資した半面、ES細胞など他の幹細胞研究の支援は手薄になった。両者は関連技術に共通部分が多いのに、日本はバランスを欠いた。世界の動きは速い。米国立衛生研究所(NIH)や米カリフォルニア再生医療機構は10年代半ばに再生医療の研究予算を減らし、遺伝子治療や細胞医療の拡充に転じた。英国も同様の傾向だ。注目するのは、人工的に機能を高めた「デザイナー細胞」の研究だ。代表的なものが、遺伝子操作した免疫細胞で血液がんを攻撃する「CAR-T細胞療法」。17年に実用化し、様々ながんで応用研究が進む。画期的な治療法と期待を集める。科学技術振興機構研究開発戦略センターの辻真博フェローは「iPS細胞中心の再生医療から軌道修正が必要だ」と提案する。集中投資で培った人材や成果を生かし、免疫学など日本が強みを持つ分野と組み合わせれば、デザイナー細胞で世界と競合できるとみる。政府も軌道修正を模索する。日本医療研究開発機構(AMED)は予算の枠組みを20年度からの第2期中期計画で変えた。第1期では「再生医療」としていたプロジェクトを「再生・細胞医療・遺伝子治療」に再編した。有識者会議で30年ごろまでの国や企業の投資対象などを工程表にまとめる検討も始めた。新型コロナウイルスのワクチンを開発した米モデルナの創業者は、iPS細胞の発見から着想を得たという。幹細胞が持つ可能性は再生医療に限られたものではない。神奈川県立保健福祉大学の八代嘉美教授は「多様な研究を支える資金制度が重要だ」と指摘する。世界の潮流に合わせた戦略的な研究と、斬新な発想の研究のバランスを取り、いかに柔軟に軌道修正するか。資金や人材が限られる中、日本のマネジメントが問われる。

<根拠なき規制は、有害無益である>
PS(2021年1月17日追加):*5-1・*5-2のように、厚労省は、「①入院勧告に従わない感染者に罰則導入」「②入院勧告の対象にならない軽症の感染者は、宿泊・自宅療養を法的に位置付け」「③保健所の『積極的疫学調査』に応じなかった感染者に新たな罰則を新設」「④知事らによる医療機関への協力要請の権限強化」などの感染症法改正案の概要を感染症部会に示して了承されたそうだ。
 しかし、②はまあよいが、①は検査も十分に行わず市中に蔓延させ、症状が出ても入院できない状況を作って、それが1年経っても改善されていないのであるため、厚労省の責任そのものである。その上、この強制によって感染が減るという根拠もないのに、国民の私権を制限する前例を作るのはむしろ有害だ。
 また、③の「積極的疫学調査」は、陽性者の数が限られており接触者の跡を追える場合には有効かもしれないが、そうでなければたまたま近くにいた人に迷惑をかけ、誰かにとって都合の悪い集会(例:選挙の対立候補の集会)が開かれた場合に悪用することさえできる。それよりも、これまで1年間も感染経路を網羅的に調査してきたのだから、感染者の年齢・性別・住所・感染経路・予後などが正確にわかっているので、大雑把に都道府県単位で私権制限を行わなくても正確にポイントをついた対応ができる筈だ。保健所は、個人の行動履歴を根ほり葉ほり聞いただけで、そのデータは積んだままにしているということは、まさかないだろう?
 なお、④についても、政治・行政は、「医療費は無駄遣い」とばかりに医療費削減を行い続け、必要な医療システムを作ることを放棄してきたため、もともと志の高い人が多い医療分野にゆとりをなくさせ、疲弊させてきた。さらに、*5-3のように、医療機関のすべてが新型コロナ患者を受け入れればよいわけではなく、基幹病院にあたる大病院が受け入れるのが適切なのだが、診療報酬を下げ続けて基幹病院にも選択と集中を迫り、対応できない状態にしてきたのだ。そのため、「入院や療養の調整中」とは、「アフリカ(失礼!)ではなく日本の話か?!」と思う。
 本来、市中で蔓延している地域で行うべきことは、*5-4で広島県が広島市内で80万人規模のPCR検査を実施しようとしているようなことで、これに加えて空港や港の検疫・陰性証明書・14日間の待機を組み合わせれば、乱暴に外国人の全入国を遮断する必要もなかった。そのため、広島市のやり方を参考にしたり、負荷が小さくて合理的な検疫方法を考えたりすべきなのだ。

*5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/80153 (東京新聞 2021年1月15日) 「ほとんどの罰則が刑事罰」入院拒否の感染者などに… 感染症法改正案を了承
 厚生労働省は15日、同省感染症部会に新型コロナウイルス対策強化に向けた感染症法改正案の概要を示し、了承された。入院勧告に従わない感染者などへの罰則導入や知事らによる医療機関への協力要請の権限を強めることが柱。出席者からは罰則導入の根拠や効果を問う声が相次いだが、同省は罰則の具体的な内容やデータなどは示さなかった。政府は18日召集の通常国会に改正案を提出し、早期成立を目指す。
◆国や自治体の権限も強化
 部会で示された概要では、入院勧告を拒否した感染者に加え、濃厚接触者が誰かを追跡する保健所の「積極的疫学調査」に応じなかった感染者に新たな罰則を新設。入院勧告の対象にならない軽症の感染者は宿泊・自宅療養を行うことを法的に位置付けた。また、感染者情報の収集や民間病院によるコロナ患者の受け入れが円滑に進んでいないことを背景に、国や地方自治体の権限を強化する対策を盛り込んだ。具体的には、医療関係者らへの協力要請を「勧告」に見直し、正当な理由なく従わない場合は病院名なども公表できるとした。新型コロナウイルス感染症が「指定感染症」としての分類期限が来年1月末に切れることから、その後も濃厚接触者の外出自粛要請などの措置が継続できるよう、同法上の「新型インフルエンザ等感染症」に位置付ける改正も行う。
◆「罰則の根拠は?」疑問の声も
 入院勧告に従わない感染者への罰則について、政府は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」の刑事罰を検討しているが、15日の部会には示さなかった。出席者からは「罰則を導入しないと感染拡大が止まらないことを示す根拠を示してほしい」「保健所の仕事がさらに増える」などの疑問が相次いだ。さらなる議論を求める声もあったが、部会は改正案の概要を了承した。同省の正林督章健康局長は、罰則導入の根拠を示すように求められていることに対し「(根拠を)網羅的に把握するのは難しい」と説明。「感染症法は健康被害という重たいものを扱っている観点で、ほとんどの罰則規定が刑事罰だ」と理解を求めた。

*5-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14765109.html (朝日新聞社説 2021年1月16日) コロナの法改正 罰則が先行する危うさ
 政治の怠慢や判断の甘さを棚に上げ、国民に責任を転嫁し、ムチで従わせようとしている。そんなふうにしか見えない。新型コロナ対策として、政府が進めている一連の法改正の内容が明らかになりつつある。共通するのは、制裁をちらつかせて行政のいうことを聞かせようという強権的な発想だ。例えば特別措置法をめぐっては、緊急事態宣言の発出前でも「予防的措置」として知事が事業者や施設に対し、営業時間の変更などを要請・命令できるようにする、応じない場合に備えて行政罰である過料の規定を設ける、などが検討されている。要請や命令の実効性を高めたいという狙いはわかる。だが倒産や廃業の危機に直面し、通常どおり仕事をせざるを得ないのが、このコロナ禍における事業者の現実ではないか。まず考えるべきは、休業や時短に伴う減収分を行政が適切に支援し、人々が安心して暮らせるようにすることであり、それを法律に明記して約束することだ。ところが政府案では、そうした措置は国・自治体の努力義務にとどまる見通しだという。本末転倒というほかない。どうしたら事業者の理解と協力を得られるかという視点から、全体像を見直す必要がある。感染症法の改正では、保健所の調査を拒む、うその回答をする、入院勧告に従わないといった行為に、懲役刑や罰金刑を科す案が浮上している。接触者や感染経路を割り出す作業はむろん大切だ。だが、いつどこで誰と会ったかはプライバシーに深くかかわる。刑罰で脅せば、市民との信頼関係のうえに成り立ってきた調査が変質し、かえって協力が得られなくなる事態を招きかねない。何より今は、一部で疫学調査が満足にできないレベルにまで感染者が増え、入院相当と診断されても受け入れ先が見つからない状態だ。いったい何を意図しての罰則の提案なのか。そもそも調査や入院勧告の拒否、無断外出などの件数がどれほどあるか、理由は何で、どんな支障が出ているか、政府は具体的なデータを示していない。罰則を必要とする事情を説明しないまま、ただ感染抑止のためだと言われても、真っ当な議論は期待できないし、社会の認識が深まるはずがない。日本にはハンセン病患者の強制隔離など深刻な人権侵害の歴史がある。医学界はおととい緊急声明を出し、感染症の制御で必要なのは国民の理解と協力であり、強制的な措置はむしろデメリットが大きいとした。ほかならぬコロナ対応の現場を担う当事者の声に、政府は真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

*5-3:https://digital.asahi.com/articles/ASP1H7HC7P1HULBJ010.html?iref=comtop_7_07 (朝日新聞 2021年1月16日) 揺れる「ベッド大国」日本 医療逼迫は民間病院のせいか
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、各地で病床の逼迫(ひっぱく)が深刻だ。日本は世界的にみても充実した病床数を誇り、「ベッド大国」と言われるのに、なぜなのか。政府は15日、病床確保のために感染症法を見直すという強い対策を打ち出し、民間病院に新型コロナへの対応を迫った。
●人口あたりのベッド数、日本が「最多」
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、たとえば東京都では14日現在、「入院や療養の調整中」とされている陽性者は6500人に上る。東京だけでなく各地で病床が逼迫し、入院調整に苦しむ実態がある。13日に会合があった厚生労働省の専門家組織は、「感染者が急増する自治体では入院調整が困難となり、高齢者施設などで入院を待機せざるを得ない例も増えてきている」と指摘。通常医療との両立が困難な状況も広がる、とした。こうした状況を受けて、厚労省が病床確保策として打ち出したのが感染症法の改正だった。改正に伴い、たとえば病床の確保が必要な場合、従来だと都道府県知事らが医療関係者に協力を「要請」できたのが、「勧告」というさらに強い措置を取ることができるようになる。勧告に従わなかった場合、医療機関名などを公表できる、という規定も盛り込む案だ。狙いは、民間病院に対応を促すことにある。日本は「ベッド大国」といわれる。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、人口千人あたりのベッド数は日本は13で最多。韓国12・4、ドイツ8と続く。米国の2・9、英国の2・5の4~5倍以上だ。さらに新型コロナの感染者は、米国で2300万人を超え英国320万人、フランス、イタリア、スペインは200万人を超す。日本は急増しているとはいえ30万人と欧米に比べると桁違いに少ない。
●民間は17%
 それなのに「入院が必要な患者が入院できない」と病床の逼迫が叫ばれるのはなぜなのか。政府は感染症法の改正で「民間」に対応を促す意向ですが、当事者からは反発の声もあがっています。記事の後半では、そうした声や改正案の背景にある官邸の意向について解説します。現在、コロナ患者が入院している医療機関は、手術や救急を行う急性期病院が多いとされる。厚労省によると、昨年11月末時点で厚労省のシステムに登録している4255の急性期病院のうち、新型コロナ患者の受け入れ実績があるのは1444病院。設立主体別に受け入れている割合を見ると、公立病院は58%の405病院、日本赤十字社や済生会など医療法で位置づけられた公的病院が75%の565病院。一方、民間病院は17%の474病院にとどまる。新型コロナ用に確保した病床は全国で2万7650床(6日時点)あるが、急性期の病床の4%程度だ。加えて、コロナ患者を診る割合が低い民間病院が、国内の医療機関の大半を占めている実態がある。厚労省の医療施設調査によると、医療法人・個人が開設する民間病院は全体の約7割。公立病院が多くを占める欧州とは事情が異なる。
●日本病院会会長「病院のせいにされている」
 民間がコロナ患者の受け入れに消極的なのには理由がある。コロナ患者を受けると、感染防御のために一人の患者のケアに必要な看護師が通常より多くなる。感染が怖い、差別を受けるといった理由で離職するスタッフもいる。ほかの診療ができなくなり減収につながる、と敬遠する施設も少なくない。また、民間は中小規模のところも多く、受け入れが難しい現状もある。医療体制を決める現行の医療法では、個別の医療機関がどのような医療を提供するか、指示や命令をする権限は都道府県知事らにもなく、民間病院に行政が介入できる余地は小さかった。ただ、民間に対策を迫る今回の改正案に実効性が伴うかは疑問も残る。そもそも新型コロナの感染拡大防止のための医療提供体制の整備は、国や地方自治体と医療関係者が連携して取り組んでいるため、法律に基づく従来の協力要請すら行われていないという実態があるという。協力要請を飛び越えて盛り込んだ「勧告」が、病床逼迫の改善に結びつくのか。相沢孝夫・日本病院会会長は今回の改正案について「勧告の前に政府は、病院間の役割分担や情報交換、連携を促し、地域でコロナを受け入れるための青写真を描くべきだ。それを踏まえて都道府県が具体的な体制をとるべきだろう。コロナ患者を受けなくても、かわりに他の病気の患者を引き受けるなど、医療機関が協力して対応する仕方はいくらでもある」と話す。
●改正案、背景に官邸の意向
 医療提供の問題については「政府や自治体が責任のなすりつけあいを続け、病院のせいにされている」とし、患者の受け入れを強く求めるだけでは差が生まれ、「病院間の分断を生んでしまう」と指摘する。厚労省の地域医療計画に関する作業部会のメンバーでもある今村知明・奈良県立医大教授(公衆衛生)は「勧告によって、コロナの受け入れをしやすくなる施設も出てくるのではないか。民間病院の場合、公的病院と異なり、職員のコロナへの抵抗感が強いと受け入れにくい面もある。厚労省や都道府県知事も勧告を出す前には事前に病院の状況を確認するだろうから、やみくもにどこにでも勧告を出すということではないだろう」と話す。今回の改正案には官邸の意向が働いた。病床確保に向け菅義偉首相は14日に日本医師会など医療団体と面会。「必要な方に必要な医療を提供させていただくために、さらなるご協力を賜りたい」と協力を求めた。首相周辺は「病院や診療所の絶対数は多いんだから、民間にもどんどん協力してもらうしかない」と、民間医療機関のさらなる協力に期待を寄せた。日本医師会などの医療団体は週明けにも、病床確保のための対策組織を立ち上げる予定だ。

*5-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJB1555G0V10C21A1000000/ (日経新聞 2021/1/15) 「80万人検査」の広島県、検体採取能力アップへ
 広島県は広島市内での最大80万人規模のPCR検査実施に向け、検査体制の拡大を進める方針だ。現在稼働している広島市内のPCRセンターで、検体を採取するラインを増設する案を軸に検討。検体採取キットを薬局などで受け渡し、採取効率を高める案も出ている。15日明らかになった広島県の方針によると、新型コロナウイルスの集中対策の一環で、広島市中心部の4区(中区、東区、南区、西区)の全住民や就業者を対象に無料PCR検査を実施する。県は具体的な実施方法などを現在詰めているが、全国でも珍しい大規模検査になるだけに、いかに体制を強化するかがカギになる。広島県は2020年12月、広島市内でPCRセンターを相次いで2カ所立ち上げた。2カ所のセンターで採取できる検体は1日あたり最大900人程度で、1月5日までに計1万1500人の検体を採った。一方、県が確保した検査能力は1日あたり最大5300人分(県外機関含む)あり、検体の採取体制を拡大して大規模検査に備える。大規模検査は任意のため、検査能力の引き上げが必要かどうかは実際の希望者数などをみて判断する。検査数が今後増えれば、陽性が確認される人数も増加する可能性が高い。県は現在819室分の宿泊療養施設を確保しているが、大規模検査が本格化すれば追加を迫られる公算が大きい。

<エネルギーの変換>
PS(2021年1月18、20日追加):*6-1のように、IMF等によれば、コロナ対策の財政支出や金融支援は世界で13兆ドル(約1340兆円)に達し、英国は、①「グリーン産業革命」として脱炭素に不可欠となる新たなインフラ整備に重点投資し ②再エネの導入を拡大して2030年までに洋上風力で全家庭の電力を賄えるようにし ③道路には自転車レーンを拡充し ④温暖化ガスを排出しないバスを数千台規模で投入して 新産業で雇用を生みながらCO₂排出ゼロに向けた布石を打つそうだ。また、ドイツは、⑤洋上風力の拡大目標を2030年に500万キロワット分引き上げ ⑥自動車向け水素ステーションを増やし、米国も、バイデン次期大統領が、⑦グリーン刺激策に2兆ドル(208兆円)を投じる計画で ⑧50万カ所に充電施設を設け政府の公用車300万台をEVにする方針 だそうだ。さらに、フランスは、⑨既存産業の支援にも脱炭素の視点を入れ ⑩エールフランスKLMの救済では運航時のCO2排出が少ない機体の導入や鉄道と競合する国内路線の廃止を条件として ⑪産業を立て直しながら社会全体で脱炭素を進める姿勢を鮮明にする。日本も、(当然)財政支出を行うならグリーンリカバリーとして環境投資で再エネや水素の導入を行って経済を浮上させるのが賢く、*6-4のとおり、原発依存はもう必要ない。
 このような中、*6-2のように、三菱地所は2022年度にも東京・丸の内に持つ約30棟で、東急不動産は2025年頃に全国の保有施設全てを再エネ仕様にし、全国には3000平方メートル以上のオフィスビルが約1万600棟あって、こうした物件が再エネ対応に変われば効果が大きいそうで期待できる。マンションも、2020年代前半にZEBによる再エネ仕様にすれば、環境によいだけでなく光熱費も下がる。しかし、メディアは必ず「再エネを使うと、火力発電より発電費用がかかるため電気利用のコストが上がる」などと書くが、これは真っ赤な嘘だ。その理由は、再エネは化石燃料を遠くから運賃を払って輸入する必要がなく、運転コストが0であるため、自然エネルギーで発電すれば発電コストが下がり、エネルギー自給率は上がるからである。
 また、自動車もEVが主流になるだろうが、その端緒を作った功績ある日産のゴーン前会長は、*6-3のように、元CEOオフィス担当のハリ・ナダ氏が「ゴーン解任計画」を取りまとめて西村氏にメールで送信していた。テレビ東京は、この極秘文書を入手したのだそうで、その極秘文書には、ゴーン氏の逮捕半年前に作られたゴーン氏解任のためのシナリオが詳細に書かれており、日産社内で周到な準備をした上で、検察・経産省を巻き込んで行われたものだったようである。私は、このブログの2018年12月4日、2019年4月6日、2020年1月11~12日に、事件の背後に見て取れる陰謀について推測して記載し、その殆どが当たっていたが、推測できた理由は、日本にある外資系企業に監査人として監査に行った時は、(外国人も含む)社長と必ず話をしてその行動様式を知っていたこと、EYなどBig4の税務部門で外資系企業の税務コンサルティングをした時は、報酬の支払い方や開示方法について関係各国の事務所の専門家から文書で、日本の金融庁・国税庁からは(文書を出さないので)口頭で必ず確認をとっていたため、日産のゴーン前会長のやり方も違法行為には当たらない筈だと思えたからである。これはプロの技術であり、決して新聞記事等の文章を読んだだけで分析できるわけではないことを付け加えておく。
 なお、*6-5のように、新型コロナ感染拡大で、政府はビジネス関係者に認めていた外国人の新規入国を全部停止したたため、農業の生産現場でも人手不足に拍車がかかった。日本の産業は、既に農業だけでなく製造業・サービス業も外国人労働者を多用しているので、技能実習生のように仕事を覚えたら帰国することを前提とした低賃金で差別的な労働条件ではなく、職務に見合った賃金で雇用し、5年在住したら永住権も認めるようにした方がよい。何故なら、そうした方が雇用する側にとって、搾取して使い捨てにするのではなく、人材に投資して回収を見込めるからだ。これに対し、日本人労働者は「賃金が下がる」として反対するケースが多いが、高コスト構造のまま日本から産業がなくなれば働く場も技術もなくなる上、日本人は母国語・教育などで有利な立場にあるため、職務に見合った賃金で雇用されれば不足はない筈だからである。
 このような中、*6-6のように、日本は難民の認定率が低く、定住や永住の在留資格を与えないことで有名だが、地方で自治体が公営住宅を準備して企業誘致を行えば、難民を労働力として国際競争力ある賃金で産業を日本に回帰させることが可能だ。日本人になって「イスラム教」「アラビア学校」等に固執しない条件でリクルートすれば、双方にメリットがあるだろう。

 
   ZEB    太陽光発電設置道路   太陽光発電屋根の駐車場 EV用ワイヤレス充電器

(図の説明:1番左は、Zero Energy Building(ZEB)で、ビルの壁面で太陽光発電を行う。左から2番目は、太陽光発電装置を埋め込んだ道路で、道路面積は広いので潜在力が大きい。右から2番目は、駐車場の屋根に太陽光発電機を設置したもの。1番右は、自動車のワイヤレス充電器で、これらは中小企業でも作れそうだ。駐車場の屋根に太陽光発電機をつけ、ワイヤレス充電器で充電するシステムで、EVがロボット掃除機のように自動的にワイヤレス充電器の上に止まって、「着きました。外の気温は○度です」と言うと便利な相棒になるのだが・・)


               2021.1.14WBSニュースより

(図の説明:2021年1月14日、テレビ東京のWBSニュースで、元CEOオフィス担当のハリ・ナダ氏が「ゴーン解任計画」として西川氏にメールで送信していた極秘文書が明らかになった。通常は、会長が逮捕されれば会社は弁護するのだが、西川氏が「待ってました」とばかりに会長を解任したため、検察・経産省を使った日産社内の内部紛争の可能性が推測された)

*6-1:https://r.nikkei.com/article/DGXZQOGE282L30Y0A221C2000000?n_cid=NMAIL006_20210117_A&disablepcview=&s=4 (日経新聞 2021年1月17日) 経済再生、脱炭素の試練 グリーン復興で欧州先行
 世界を大きな混乱に陥れた新型コロナウイルス危機には思わぬ副産物もあった。その一つが大幅な温暖化ガスの排出量の減少だ。もっとも経済活動の急収縮に頼った排出削減は経済の回復とともに後戻りしかねない。コロナ後の復興をどう脱炭素につなげていくか。グリーンリカバリーの知恵が問われている。2020年は都市封鎖や工場停止で化石燃料の需要が減った。国際共同研究グローバル・カーボン・プロジェクトによると20年の化石燃料由来の二酸化炭素(CO2)排出量は19年比で7%減少した。減少は15年以来で、単年の減少量は過去最大という。コロナ禍では経済活動停止の影響で大気汚染が改善した。「ヒマラヤ山脈をこんなきれいに見たのは初めて」。世界3位の温暖化ガス排出国のインドではこんな声が出た。しかし排出量は早くも反転の兆しが見える。20年前半に大幅減だった中国では昨秋以降、鉄鋼などの生産が回復し20年通年の排出量は19年比で1.7%減にとどまった。国際通貨基金(IMF)などによると、コロナ対策の財政支出や金融支援は世界で13兆ドル(約1340兆円)に達する。特に雇用や資金繰りの支援に重点を置く。グリーンリカバリーには大きく2つある。第1はコロナ後の経済刺激策で脱炭素に不可欠となる新たなインフラ整備に重点投資すること。第2は既存産業の立て直しで単純にコロナ前に戻すのではなく、温暖化ガスを減らす方向へ事業転換を促すことだ。第1の例には「グリーン産業革命」を唱える英国の戦略がある。再生可能エネルギーの導入を拡大し30年までに洋上風力で全家庭の電力を賄えるようにする。交通では温暖化ガスを排出しないバスを数千台規模で投入し、道路には自転車レーンを拡充する。新産業で雇用を生むと同時に将来の排出ゼロに向けた布石を打つ。ドイツは洋上風力の拡大目標を30年に500万キロワット分引き上げ、自動車向けの水素ステーションも増やす。米国も欧州を追う。環境対策に消極的だったトランプ政権から一転、バイデン次期大統領はグリーン刺激策に2兆ドルを投じる計画を表明した。50万カ所に充電施設を設け政府の公用車300万台を電気自動車などにする方針だ。第2の例では既存産業の支援にも脱炭素の視点を入れるフランスの政策がある。航空大手エールフランスKLMの救済では、運航時のCO2排出が少ない機体の導入や鉄道と競合する国内路線の廃止を条件にした。産業を立て直しながら社会全体で脱炭素を進める姿勢を鮮明にする。デンマークは老朽化が進む公営住宅を対象にする。暖房設備を環境に優しいタイプに変えた場合などに補助金を出し、20年から6年間で集中して更新を進める。日本は電力需要の逼迫への対応で重油で火力を稼働させるなど心もとない状況だ。菅義偉首相は温暖化ガス排出実質ゼロの目標を掲げた。再生エネや水素の導入拡大を加速できるかが試される。「主要25カ国・地域のコロナ対策のうち18カ国の対策は環境負荷が重い」。ロンドンに拠点を置くコンサルティング会社、ビビッド・エコノミクスは昨年12月に報告書をまとめた。財政支出を環境の視点から分類した「グリーン刺激策指数」でプラスは全体の約3割にとどまっている。08年のリーマン・ショック時も各国が環境対策をうたって財政支出を拡大したが、温暖化ガスの排出量は増え続けた。的確な対策で効果を高め、経済を浮上させながら排出量を増やさない状況を作り出せるかが課題になる。
■グリーンリカバリー 環境投資で経済浮上
 新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退への対策で、環境を重視した投資などを通して経済を浮上させようとする手法をさす。気候変動への対応や生物多様性の維持といった課題の解決に重点的に資金を投じ、そこから雇用や業績の拡大で成果を引き出す。先進国を中心に各国がグリーンリカバリーを意識した景気刺激策を相次いで打ち出している。世界で異常気象が相次ぎ、気候変動への対応は世界共通の優先課題だ。地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」は地球の気温上昇を産業革命前から2度以内に抑えることを掲げている。日米欧のほか中国も温暖化ガス排出実質ゼロを掲げ、水素活用の推進などに巨額の資金を投じる方針だ。気候変動対策に反する活動への批判も高まっている。国が環境負荷の高い産業を支援することは投資家などから批判を浴びる。民間では石炭火力発電所からの投資引き揚げなど、より環境を配慮した行動へのシフトが進む。グリーンリカバリーは今後の経済回復の局面で、コロナ拡大前と同じ生活や企業活動に戻るのではなく、新しい形態に転換しようとする動きを加速するためのカギを握る。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210118&ng=DGKKZO68247360Y1A110C2MM8000 (日経新聞 2021.1.18) オフィスビル電力、脱炭素、三菱地所、丸の内30棟 テナント誘致の柱に
 大手不動産会社が保有物件で使う電力を一斉に再生エネルギーに切り替える。三菱地所は2022年度にも東京・丸の内に持つ約30棟で、東急不動産も25年ごろに全国の保有施設全てを再生エネ仕様とする。入居企業が多いオフィスビルの大規模な脱炭素化は波及効果も大きい。都市部に多い金融や飲食などサービス業などの再生エネ活用を後押ししそうだ。三菱地所は「新丸ビル」「丸の内オアゾ」など丸の内地区の約30棟で切り替えを進める。対象ビルの19年度の使用電力は計約4億キロワット時で、家庭なら10万世帯強に相当する。二酸化炭素(CO2)排出量は約20万トンだった。21年4月から18棟で再生エネ由来に順次変更し、22年度にも残りのビルの電力を切り替える。当初は丸の内エリアで年数棟ずつ切り替える計画だったが、政府の方針などを受け前倒しで進める。電力はENEOSが手掛けるバイオマス発電などで調達する。東急不動産でも、21年4月に本社が入る「渋谷ソラスタ」など計15物件の電力を再生エネに変える。25年をメドにスキー場やホテルも含め、全国に保有する全施設の電力を再生エネに変更する。当初の目標達成時期の50年から大幅に早める。開発中を含め風力や太陽光など50を超える再生エネルギー発電事業に参加しており、こうした電源を活用する。再生エネを使うことで電気利用のコストは上がる。水力や風力発電は火力発電より発電費用がかかるからだ。企業が再生エネからの電力を購入する方法の1つの「非化石証書」がついた電力は、通常の電力より約1割高くなるという。両社は増加するコストをテナントに転嫁しない方針だ。政府が温暖化ガスの排出を50年までに実質ゼロにする方針を示し、オフィスの脱炭素化を立地や設備などと並ぶテナント誘致の柱と位置づける。他の不動産会社も脱炭素を急いでいる。三井不動産は「東京ミッドタウン日比谷」で再生エネを導入する。東京・丸の内の「鉄鋼ビル」を運営する鉄鋼ビルディングも1月に導入済みだ。オフィスで使われる電力は企業・事業所が使う電力の約6%を占める。三菱地所によると丸の内地区だけで金融やサービス業など千社以上が活動し、多くの企業の再生エネ利用につながる。日本不動産研究所によると全国には3千平方メートル以上のオフィスビルが約1万600棟あり、今後こうした物件が再エネ対応に変われば効果は大きい。再生エネの発電量に占める割合は19年度速報値で18%だった。経済産業省は50年の発電量に占める再生エネの割合を約5~6割に高める案を示している。安定した電力を確保しながら日本の産業全体で脱炭素を進めるために、再生エネの拡大に加え、電力を効率的に使う蓄電などの技術開発が不可欠になる。

*6-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/8852bada16588a58cf7e94380c1ffb8696679e6c (Yahoo 2021/1/14) 日産「ゴーン解任計画」極秘文書を入手
日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン被告のレバノンへの逃亡からおよそ1年が経ち、主役不在の裁判がヤマ場を迎えています。ゴーン被告の報酬隠しに関与したとして、金融商品取引法違反の罪に問われた元代表取締役のグレッグ・ケリー被告らの裁判がきょう東京地裁で開かれ、元CEOオフィス担当で、現在専務を務めるハリ・ナダ氏が証人として出廷しました。ハリ・ナダ氏はゴーン被告らのかつての腹心で、検察との司法取引に応じた事件のキーマンともいえる人物です。テレビ東京は今回、このハリ・ナダ氏が取りまとめていたとみられる「ゴーン解任計画」とも呼べる極秘文書を独自に入手しました。ゴーン被告ら逮捕の半年前に作られたこの極秘文書にはゴーン被告を解任するまでのシナリオが細かく記載され、社内で周到な準備の元、解任を入念に検討していたことをうかがわせるものです。

*6-4:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2020/201216.html (日本弁護士連合会会長 荒 中 2020年12月16日) 大飯原発設置変更許可取消訴訟大阪地裁判決に対する会長声明
 大阪地方裁判所は、本年12月4日、国に対し、関西電力大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)3号機及び4号機の設置変更を許可した原子力規制委員会の処分を取り消す判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。福島第一原子力発電所事故後、原子力発電所(以下「原発」という。)の安全確保に問題があるとして民事訴訟ないし仮処分において運転差止めを認めた事例はこれまで5例あるが、行政訴訟としては初めて、原発の設置(変更)許可処分を取り消す判決が言い渡されたものであり、その意義は大きい。当連合会は、2013年に開催された第56回人権擁護大会において、原発の再稼働を認めず、できる限り速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択した。また、2014年に福井地方裁判所が大飯原発3号機及び4号機の運転差止めを命じる判決を言い渡した際、これを評価する会長声明を公表し、同年の第57回人権擁護大会においても、行政庁が依拠する特定の専門的技術見解を尊重して判断する方法を改め、今後は、科学的・経験的合理性を持った見解が他に存在する場合には、当該見解を前提としてもなお安全であると認められない限り原発の設置・運転を許さないなど、万が一にも原発による災害が発生しないような判断枠組みが確立されること等を求める宣言を採択した。本判決は、1992年10月29日の伊方発電所原子炉設置許可処分取消請求事件に関する最高裁判決の判断枠組みに従い、原子力規制委員会の判断に不合理な点があるか否かという観点から審理、判断をしている。原子力規制委員会が制定した「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(以下「地震動審査ガイド」という。)によれば、地震規模の設定に用いる経験式は平均値としての地震規模を与えるものであり、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある。にもかかわらず、経験式に基づき算出された地震モーメントの値に何らかの上乗せをする必要があるか否か等について何ら検討することなく、本件申請が設置許可基準規則4条3項に適合し、地震動審査ガイドを踏まえているとしたことは、原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があると判示したもので、福島第一原子力発電所事故後初めて原発の設置(変更)許可処分を取り消した判決として評価に値する。当連合会は、原子力規制委員会に対し、本判決を受けて地震動審査ガイドに適合しない原発の設置許可を自ら取り消すことを求めるとともに、政府に対して、従来の原子力に依存するエネルギー政策を改め、できる限り速やかに原発を廃止し、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させること、及びこれまで原発が立地してきた地域が原発に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである。

*6-5:https://www.agrinews.co.jp/p52932.html (日本農業新聞 2021年1月15日) 実習生ら対象 外国人入国停止 人手不足深刻化も
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は14日、ビジネス関係者らに例外的に認めていた外国人の新規入国を一時停止した。この例外措置の対象には技能実習生も含まれており、昨年11月から今月10日までにベトナム、中国などから実習生約4万人が入国していた。入国制限で生産現場の人手不足に拍車がかかる可能性があり、農水省は影響を注視している。
●農水省 支援活用促す
 政府は、コロナの水際対策の入国制限を昨年10月に緩和し、全世界からのビジネス関係者らの入国を再開。感染再拡大を受けて12月28日には一時停止したが、中国や韓国、ベトナム、ミャンマーなど11カ国・地域のビジネス関係者らの入国は例外的に認めていた。だがこの措置も14日から、宣言解除予定の2月7日まで停止した。この例外措置の対象には技能実習生も含まれる。出入国在留管理庁の統計によると、例外措置で入国したのは、昨年11月から今年1月10日までに10万9262人。うち技能実習生は4万808人で、全体の37%を占める。留学などを上回り、在留資格別で最多だった。国別に見ると、ベトナムが3万6343人、中国が3万5106人で、うち技能実習生はベトナムが2万911人、中国が9322人。農業分野の技能実習生も含まれるとみられる。11カ国・地域に限定後の12月28日~1月10日にも、技能実習生として計9927人が入国している。農水省は、農業にも影響が及ぶ可能性があるとみる。昨年3~9月は2900人の技能実習生らが来日できず、人手不足が問題となった。今年の見通しは不透明だが、「外国人を受け入れている経営は全国的に多い」(就農・女性課)として状況を注視する。一方、同省は技能実習生の代替人材を雇用したり、作業委託したりする際の労賃などを一定の水準で支援する「農業労働力確保緊急支援事業」の対象期間を3月末まで延長。農家らに活用を呼び掛ける方針だ。

*6-6:https://digital.asahi.com/articles/ASP1H7RTJNDZUHNB00B.html (朝日新聞 2021年1月16日) 迫害受ける同胞、日本から支える ロヒンギャの指導者
 「ふるさとに帰りたいけど、帰れない。殺されるかもしれないから」。群馬県館林市苗木町の会社社長水野保世(ほせ)さん(52)の本名は「アウンティン」。仏教国のミャンマーで迫害されている少数派のイスラム教徒ロヒンギャだ。来日28年。館林には1999年から住んでいる。当時、館林に住むロヒンギャは数人だった。迫害を逃れて偽造パスポートなどで来日する人が続き、「2006年までに70人のロヒンギャが住むようになった」とアウンティンさん。01年にロヒンギャの妻と結婚し、3人の子どもに恵まれた。他にもロヒンギャの女性を呼び寄せて結婚した男性は多い。子どもが増え、270人を数える日本最大のロヒンギャコミュニティーになった。立場はさまざまだ。定住や永住の在留資格を持つ人、不法滞在ながら一時的に拘束を免れている「仮放免」の人……。仮放免状態だと就労や国民健康保険への加入ができない。生活費や医療費を仲間が支える。アウンティンさんは、立ち上げに関わった「在日ビルマロヒンギャ協会」の副会長として、難民認定を日本政府に働きかけている。コミュニティーが大きくなる過程で、地域住民からは「どういう人たちなのか」と不安がる声のほか、ゴミの分別や夜間の騒音に対する指摘もあった。ロヒンギャの中には車の運転に免許が必要だと知らない人もいた。「認めてもらうにはルールを守ることが大事。そうしないと、みんな幸せになれない」。アウンティンさんは、そう仲間に説いて回った。アウンティンさんが故郷を遠く離れたのは、故国の民主化運動がきっかけだった。高校生だった88年に始まった運動に身を投じた。何人もの仲間が軍政下の弾圧で殺され、自身も3回拘束された。命の危険を悟り、90年7月に単身タイへ。マレーシア、バングラデシュ、サウジアラビアを経て、92年11月に知人を頼って来日した。茨城・日立、埼玉・大宮、そして館林。「英語はあまり通じないし、お祈りする場所もない。来てすぐのころは困ってばかりだった」。だからこそ、仲間のために尽くし続けている。工場で必死で働いてためたお金で06年、中古の車や家電を輸出する会社をつくった。07年には市内の中古住宅を購入し、イスラム教の礼拝所であるモスクに改装した。モスクでは子ども向けの「アラビア学校」も開く。平日の午後6~8時、イスラム教の教えや祈りの作法を教える。食事もイスラム教の戒律に従い、口にするのは「ハラル」と呼ばれる料理に限られる。市内にはハラル食を扱うスーパーもできた。館林市学校給食センターによると、地元の小中学校の給食には戒律で禁じられている食材が使われることもあるため、弁当を持参する子どもが多いという。故国でのロヒンギャへの迫害や差別は続く。18年にはクラウドファンディングで集めた資金と私財でバングラデシュのロヒンギャ難民キャンプに学校を建設。生活物資や新型コロナウイルス対策のためのマスクを送る活動も続ける。15年、日本国籍を取得した。「ミャンマーでは自由に活動ができない。日本人になってロヒンギャ支援とミャンマーの民主化のための活動を続けよう」。そう決意したからだ。「日本には自由がある。平和であることは、何より素晴らしいことです」

<農業について>
PS(2021年1月21、22日追加):*7-1のように、1965年に73%だった食料自給率は35年間で38%に半減し、食料安全保障に関わる重大な問題となっている。しかし、新型コロナ感染拡大で外食が減っても食べる量に大差はないので家庭向需要は増えた筈だが、こちらは所得に見合った単価の外国産を購入したり、食べたいものを我慢したりしているのだ。つまり、日本産は、日常使いには価格が高すぎ、会社が交際費か福利厚生費として支出する会食や贈答用が多かったということで、その価格を維持すれば個人消費者の需要は増えない。また、日本の農業の問題点は、生産過剰の米を作りたがって足りない農産品を作りたがらないことで、日本政府の食料自給率軽視政策も誤ってはいるが、米以外の必要なものを作って成り立つ経営改革も必要だ。
 その改革の内容は、①付加価値の増大 ②副産物の生産 ③生産性の向上 ④無駄の排除 などが考えられ、①は、的確な農産品ミックスや加工・冷凍することによる無駄の排除、②は、農地での再エネ生産などで収入を増やすことだ。そのため、*7-3の2021年度内に庁内で使う全電力を再エネにして脱炭素化する目標は、経産省・環境省だけでなく農水省・国交省も立て、農地・山林・離島・洋上などでの再エネ製造と課題解決法を省を挙げて検討すべきだ。
 また、③は、*7-2-1・*7-2-2のように、農業を全自動化することが考えられ、それができるためには全自動化に適した大区画にする必要があり、大区画化の準備は私が衆議院議員時代の2005~2009年に既に始めていた。そして、5GやGPSを使わなくても農地のポイントに電波の発信源を設置しておけば全自動化はできる筈で、大規模な農地内に農機具倉庫を作れば無人トラクターが公道を走る必要もない。なお、コンバインで刈り取り始めてからコメの食味を判定する必要はなく、1台1000万円以上になると収益から支払うことができないほど高価な機械となって使えない。農機具は使う時期が同じであるためシェアリングには向かず、価格が高すぎると農機具も機能を絞った安価なものを外国から買うしかなくなるのだ。なお、*7-2-3のような中山間地は、農地を大区画化しにくいため、それにあった作物やスマート化が必要になる。もちろん、5Gを利用できるに越したことはないが、必要な場所に基地局を建てる方法もあり、これもまた1基数千万円では、日本は何もできずに遅れた国になるしかないのである。
 なお、③の生産性の向上には、国際競争力ある賃金で働く労働者が無駄なく働ける環境づくりも必要で、*7-4のような「派遣労働」は季節によって労働力のニーズが異なる農業分野で有効だ。労働者も技術を習得するまでは多くの経営体を見た方が知識や経験の蓄積ができ、技術を習得したら帰国するのではなく地域に根付いてもらった方が労働力の質が上がる。
 2021年1月21日、日本農業新聞が、*7-5のように、「高知県がベテランの技やJAの出荷データをクラウドに集約して経営の“最適解”を計算する「IoPクラウド」を産官学連携で構築した」と記載している。知識や経験による原理の理解がなければシステムがブラックボックス化してしまうので脱知識・脱経験は無理だと思うが、多種の作物を生産する中山間地で有効なツールであり、他県も参考にできるだろう。

  

(図の説明:左図は、大豆畑のドローンによる消毒風景、中央の図は、全自動コンバインによる米の収穫、右図は、中山間地葡萄畑の自動収穫ロボットだ)

 

(図の説明:左図は、中山間地の放牧と風力発電機のある風景、右図は、カイコの付加価値の高い新しい使い方で、牛乳やカイコに新型コロナウイルスの免疫を含ませる方法もあると思う)

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p52822.html (日本農業新聞論説 2021年1月4日) [コロナ以後を考える] 食料自給率の向上 草の根の行動広げよう
 わずか、38%。1965年に73%だった食料自給率は35年間で半減してしまった。自給率の向上がなぜ必要か。どうすれば高まるか。農家は当事者意識を一層高め、国産回帰の大切さを改めて認識し、行動しよう。新型コロナウイルスの感染拡大で外食や土産物需要が落ち込み、小豆や酒米、乳製品などさまざまな農産物の在庫が膨らんだ。保管が可能な穀類などは過剰在庫を早急に解消しなければ、需給緩和と価格低迷は長期化する。しかし特効薬はない。食料・農業・農村基本計画は、2030年までに自給率を45%に高める目標を掲げる。一方で生産しても需要の減少で過剰在庫を抱え、一部作物では保管する倉庫すら逼迫(ひっぱく)。生産現場からは、自給率目標は「絵空事のように映る」(北海道十勝地方の農家)との声が上がる。自給率目標45%を政府は2000年に初めて設定したが、高まるどころか低下してしまった。自給率向上の糸口を今年こそ見いだしたい。異常気象や災害の世界中での頻発や、人口増加、途上国の経済発展、そしてコロナ禍で見られたような輸出規制などを踏まえれば、いつでも安定的に日本が食料を輸入できるわけではないことは明白だ。国内農業の衰退は国土保全や農村維持など多面的機能の低下も招く。自給率の低迷は、食料安全保障の観点からも国民全体の問題だ。一方、その向上には需要の掘り起こしと、それに見合った生産の増加が不可欠で、農家が一翼を担う。自給率向上のヒントとなるのが北海道の取り組みだ。道内の米消費量に占める道産は、90年台は37%だったが、19年度は86%まで高まった。道目標の85%を8年連続で上回る。生産振興とともに、地道な消費拡大の活動を長年続けてきたことが成果に表れた。小麦も外国産から道産に切り替える運動を展開。道民の小麦需要に対する、道内で製粉した道産割合は5割前後となった。地元産だけを使ったパン店などが人気で、原料供給地帯でも地産地消の流れを育む。コロナ禍でも地元消費の動きが目立つ。例えばJA浜中町女性部。脱脂粉乳の在庫問題を契機に牛乳消費拡大からバター、スキムミルクなど乳製品の需要喚起に活動の軸足を移し、乳製品レシピを町民に配布。地域内での需要拡大を目指す一歩だ。他にも施設などに道産の花を飾ったり、インターネットなどでJA組合長が牛乳や野菜の簡単調理を紹介したりといった取り組みを道の各地が進めた。地産地消を広げようと農家が知恵を絞り、消費の輪を広げる活動だ。JAグループ北海道がけん引役を担い、農家や農業のファンを増やす運動も昨年始めた。自給率向上は政府の責務であり、十分な支援が必要なことは言うまでもない。ただ、農家の草の根の行動が大きな力になる。自分や仲間でできることを実践することが一歩になる。

*7-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210121&ng=DGKKZO68353050Q1A120C2TJ1000 (日経新聞 2021.1.21) クボタ、デジタル農業開拓、「考える」トラクター、作付け分析ドローン エヌビディアとAI磨く
 クボタが無人トラクターを開発し、ビッグデータを駆使したデジタル農業の実現を目指している。米半導体エヌビディアの人工知能(AI)で自動運転技術を磨く。作付けを分析するドローンや農家が経営を管理できるソフトと組み合わせ、農機を売るだけのビジネスモデルからの脱却を目指す。高齢化で働き手が不足する日本の農業も変える。
●5Gも活用
 2020年11月、北海道岩見沢市。一見すると何の変哲もないトラクターが大豆畑の農道を走る。よく見ると運転席の男性はハンドルに触れていない。トラクターは自動で動くように設定され10キロメートル離れた場所からオペレーターが遠隔監視する。クボタの農機を使った自動運転の実験だ。トラクターには高精細カメラを付け、高速通信規格「5G」も駆使する。クボタの北尾裕一社長は「10年後には、さらにレベルの高い無人自動運転を実現させたい」と話す。農機の自動運転技術は、メーカーなどの間でレベルが1から3に区分される。レベル1はハンドル操作の一部を自動化して直進をキープする技術で既に普及している。レベル2は農場で人が監視する形で自動運転する。レベル2は国内でクボタが17年にヤンマーホールディングスなど競合に先駆けて「アグリロボトラクタ」を投入し、作業時間を30%短縮できる。レベル3は人や動物、トラクターの衝突を避けるため、オペレーターが遠隔で無人運転を監視する必要がある。現在は実現しておらず、無人で公道を走行できないなどの規制もあるが、クボタは将来の規制緩和を見据えて実験などを重ねる。5GでNTTグループと連携し、自動運転に欠かせないAIでエヌビディアと組んだ。今後、自動運転に必要となる莫大な走行データを集める。自動車の場合、前方の車や横断歩道、標識など多くの目印がある。農機はぬかるんだ地面を走行し、農地は広く開けた土地のため目印も少ない。あぜ道に入り込む可能性もある。「AIでトラクターが状況を賢く判断する能力が必要だ」(クボタの佐々木真治取締役)
●スパコンで解析
 そこでクボタはエヌビディアの技術を駆使し、まず農地などの映像や画像をAIに覚えさせる。高度なディープラーニング(深層学習)が可能なエヌビディアのスパコンで解析し、トラクターが自ら状況判断できるように「頭脳」を作る。トラクターには、サーバーではなく、農機の本体側で素早く動作を指示する「エッジAI」と呼ぶ技術を搭載する。駆動部分に指示を出して「走る」「止まる」などの操作を判断するイメージだ。遠隔で監視するが、基本は「自ら考えるトラクター」を作る。クボタは無人農機を軸に、データで生産性を上げるデジタル農業を実現させる。日本総合研究所は30年の農業就業人口が123万人と15年比で4割減ると予測。単に農機を売るだけではじり貧になる。日本総研の前田佳栄コンサルタントは「自動運転の農機、ドローン、ロボット、経営管理ソフトによる農家の生産性向上が必要」と話す。クボタのコンバインは収穫したコメの水分などから食味を計測できる。収穫量とあわせクラウドにデータを自動で送信する。農家はどの田んぼからどのような味のコメが収穫されるか、全地球測位システム(GPS)で情報を整理し、ソフトで作業記録と照合して確認できる。農機の自動化が進めば、人件費の削減効果を確認し、農家の経営の見える化が進む。ドローンの活用も急ぐ。昨年、ドローンの撮影画像で作付けの状態を分析し、農家に農薬散布量などを提案するイスラエルのスタートアップに出資した。無人農機との連携が期待できる。将来は天候データの分析を視野に入れる。温暖化でコメのでんぷんの蓄積不足、果樹の着色不良といった被害が出始めている。データで原因を分析し、解決手段を探る。国内農家の平均年齢は70歳近い。コメなどを作る白石農園(北海道新十津川町)の白石学代表は「限られた人数で広い面積を耕す農業が不可欠になる」と話す。デジタル農業の実現に向け、残された時間は多くない。

*7-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210121&ng=DGKKZO68353100Q1A120C2TJ1000 (日経新聞 2021.1.21) 無人農機、主導権争い
 世界では食糧不足を背景に小麦やトウモロコシの生産で大規模農地を効率良く耕す農機の需要が増える。クボタは世界のトラクター市場が27年に190万台(16年で140万台)になるとみる。世界の農機市場は10兆円を超すとの見方もある。農業では明確な自動運転のロードマップやルールがグローバルで共有されていない。無人農機で先手を取れば、主導権を握ることも期待できる。農機で世界首位の米ディア、2位の欧州CNHインダストリアルも研究開発を進め、競争は激しい。米シリコンバレーのスタートアップを中心に農作物を自動で収穫するロボットの開発も進む。課題は価格だ。クボタの自動運転農機、アグリロボトラクタは1台1000万円以上する。AIの活用で農機自体の価格が上昇する可能性もある。普及にはシェアリングの活用なども必要になりそうだ。

*7-2-3:https://www.agrinews.co.jp/p52927.html (日本農業新聞 2021年1月15日) 5G 地方展開いつ? 中山間地こそ「スマート」必要
 中山間地の農家が、スマート農業を使いこなすのに必要な第5世代移動通信システム(5G)を利用できないのではないかと、不安視している。人口が少ない地域は通信会社の実入りが少なく、電波網の整備が後手に回りがちだ。自治体主導で必要な基地局を建てる手もあるが、1基数千万円かかるなど負担が重い。「条件不利地こそ先進技術が必要だ」──農家らはスマート農業推進を叫ぶ国の姿勢をいぶかる。
●技術導入したいが 環境整わず 佐賀県嬉野市
 佐賀県嬉野市の岩屋川内地区。同地区に畑を持つ茶農家の田中将也さん(32)は、スマート農業の技術で収穫の負担が大きく減らせることに期待するが「今のままでは普及は難しい」とみる。畑に出た時に携帯電話がつながらず、連絡が取れない経験を何度もしているからだ。山間部にあるため携帯電話の基地局の電波を受信しにくく、現状でも通信環境が悪い。スマート農業で多用されるドローン(小型無人飛行機)には1~4レベルの設備環境がある。数字が大きいほど通信速度が速く安定しており、補助者がいなくても事前のプログラム通りに自律飛行できる。高解像度の画像を収集でき、利便性が高まる。高レベルの活用には最先端の5Gが必要だが、普及は始まったばかり。正確なカバー率はつかめないが、大手通信会社は5G展開の指針に、人口を基準にした目標に掲げる。そのため、大都市圏を優先した整備になり、地方は置き去りにされやすい。現在の携帯電話さえつながらない「不感地域」は全国に残っており、約1万3000人(総務省調べ、2018年度末)が不便を強いられている。総務省東北総合通信局によると、東北地方が最も不感地域が多いという。
●工事期間、費用基地局開設に壁
 嬉野市は総務省の「携帯電波等エリア整備事業」などを使いながら改善を進めるが「基地局を一つ開設するのに8000万円近くかかる」(市担当者)こともあり、早急な解決は難しい。農水省九州農政局のスマート農業担当者は「効果的に普及させるためにも高速通信は不可欠。山間部などの通信環境を整えることは必要だ」と指摘するが、通信網整備の所管は総務省となるためか、具体的な改善策については口をつぐむ。整備の遅れについて、ある通信大手は「5Gネットワークの全国整備には膨大な数の基地局が必要で、長期工事と多額の投資を伴う」とコメント。別の企業も「山間部では基地局整備に必要な光ファイバーなど伝送路の確保が難しい」とする。だが嬉野市の田中さんは「中山間農業の課題解決のためにもスマート農業は必要。本気で普及を考えるなら、通信環境を早期に改善してほしい」と訴える。
<ことば>5G
 次世代の通信規格。日本では2020年3月からサービスが始まった。大容量・高速通信が可能。最高伝送速度と通信精度は現行(4G)の10倍。一方で、5Gが使う高周波数帯は障害物に弱い。波長が短く通信範囲が狭い特性があり、従来より多くの通信基地が必要になる。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210121&ng=DGKKZO68351170Q1A120C2EE8000 (日経新聞 2021.1.21) 経産省、使用電力を脱炭素 来年度、「50年ゼロ」へアピール
 経済産業省は2021年度、庁舎内で使う全ての電力を再生可能エネルギーなど温暖化ガスを排出しない「ゼロエミッション電源」に切り替える。政府は50年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げる。実現を主導する立場の経産省が率先して脱炭素化に取り組む。経産省は使用電力の少なくとも30%以上を再生エネ、残りを原子力も含めたゼロエミッション電源でまかなう。対象となる施設は東京都内にある総合庁舎と特許庁庁舎の2カ所で、使用予定の電力量は年間で計2400万キロワット時に及ぶ。一般家庭およそ7千~8千世帯分に相当する。2月下旬にも電力の供給元となる小売事業者を入札で決める。国内外の民間企業では脱炭素社会の実現に積極的な姿勢を示すため、事業に伴う電力消費を再生エネなどに切り替える動きが相次いでいる。政府は21年度から各府省庁の電力調達で再生エネ比率を3割以上に高める方針を示している。経産省は政府方針を上回る脱炭素目標を掲げることになる。オフィスなど業務部門の脱炭素化は工場のような産業部門に比べて遅れ気味だ。1990年度と2019年度の二酸化炭素排出量を比べると、業務部門は1.3億トンから1.9億トンに増えた。産業部門が5億トンから1億トン超減らしたのとは対照的だ。中央省庁では環境省も脱炭素に率先して取り組んでいる。30年までに使用電力を全て再生エネに切り替える方針を19年に示している。本省の庁舎だけでなく、地方事務所や関連施設も対象だ。脱炭素社会に向けて中央省庁が率先して取り組み、企業や家庭など社会全体の再エネ普及を促す。

*7-4:https://www.agrinews.co.jp/p52976.html (日本農業新聞 2021年1月19日) 農業の特定技能「派遣」 広がる 短期雇用も柔軟 手続き負担減
 外国人の新在留資格「特定技能」の農業分野で認められた「派遣」が広がっている。農家は直接雇用に比べ事務手続きなどの負担が少なく、雇用期間を柔軟に調整できる。農繁期が異なる北海道と沖縄など地域間で連携した受け入れも進む。派遣に参入する事業者も増え、専門家は「これまで外国人を入れてこなかった家族経営でも受け入れが広がる」と指摘する。
●外国人材 大きな力
 畑作が盛んな北海道浦幌町の選果施設。次々とコンベヤーで流れてくるジャガイモを段ボール箱に手際よく詰めるのは、カンボジア人のレム・チャントーンさん(26)だ。「将来は帰国してビジネスを立ち上げたい。分からないことも周りに聞くと、よく説明してくれる」と笑顔で話す。チャントーンさんらは特定技能の資格を得た外国人。道内各地で農業生産・販売の他、作業受託をする「北海道グリーンパートナー」が、人材派遣会社の「YUIME(ゆいめ)」から受け入れた。8~10月の農繁期には150人もの人手が必要な北海道グリーンパートナーは、YUIMEからの提案で、技能実習生だった特定技能の派遣を2019年に11人、20年に23人受け入れた。YUIMEの派遣は、夏は北海道、冬は本州や沖縄で働くのが基本だ。ジャガイモの選果など冬場でも仕事がある場合は、道内で通年で働くこともある。直接雇用では通年で仕事を用意しないと外国人の受け入れは難しいが、派遣なら必要な時期を決めて契約を結べる。北海道グリーンパートナー代表の高田清俊さん(59)は「外国人にとっても、さまざまな農家で働くことで、より豊かな経験を積むことができる」と評価する。受け入れ側は面接や入国手続きなど事務負担が少ないのもメリットだ。北海道グリーンパートナーに組合員の農作業を委託するJAうらほろの林常行組合長は「人手不足を解消し、付加価値の高い販売に力を入れたい」と期待する。
●各地で参入の動き
 一定の技能を持ち、即戦力としての労働が認められている特定技能の仕組みは、19年に始まった。農業分野では、農業者が雇用契約を結び直接雇用する方法と、雇用契約を結んだ派遣業者が受け入れ機関となり農家に派遣する方法の、2種類がある。派遣では、繁忙期の違う地域に季節ごとに人材を送り出せる。農業分野の特定技能は、制度発足から1年半の20年9月末時点で1306人。農業分野の受け入れ事業者が加入する「農業特定技能協議会」のうち、10社ほどが派遣事業者だ。YUIMEは、農業分野の技能実習生だった外国人を採用。給料や待遇は日本人と同等の扱いで、現場のリーダーになる人材を育てている。住まいは、受け入れ農家に住宅の敷地内にある持ち家などを用意してもらい、YUIMEが借り入れる。北海道以外でも派遣は進む。アルプス技研は、2019年4月から特定技能の派遣事業に参入。現在は子会社の「アグリ&ケア」が9道県に49人を派遣する。JA北海道中央会も、特定技能のあっせん・派遣をする新組織の立ち上げを目指す。北海道稚内市の酪農家・石垣一郎さん(39)が経営する「アグリリクルート」は、21年から派遣事業に乗り出す。
●家族経営も 活用しやすい 北海学園大学の宮入隆教授の話
 入国手続きや労務管理の一部を派遣事業者に任せられるため、家族経営が外国人を受け入れるハードルが下がった。季節雇用、通年雇用問わず、広がっていくことは間違いない。一方で事業者は、各地に移動する特定技能の外国人の心理的な負担を考慮すべきだ。

*7-5:https://www.agrinews.co.jp/p53011.html (日本農業新聞 2021年1月21日) ベテランの技、JA出荷データ… クラウドへ集約し経営に“最適解” 高知で始動
 高知県は20日、産官学で連携して構築を進めてきた「IoPクラウド(愛称=サワチ)」を始動させたと発表した。農家の栽培ハウスから得られる園芸作物データや環境データの他、JAからの出荷データなどを集約。人工知能(AI)を使って地域に最適な栽培モデルを示し、営農指導に役立てる。収穫量予測もでき、作物の販売にも活用する。
●脱・経験依存、収穫予測も
 IoPは、ナスやピーマン、キュウリなど園芸作物の生理・生育情報をAIで“見える化”するもの。2018年から構築を目指し、JAグループ高知や県内各大学、農研機構、東京大学大学院、九州大学、NTTドコモなどと連携している。県は当面、①データ収集に協力する農家約30戸の作物の花数、実数、肥大日数などの作物データ②約200戸のハウスの温湿度、二酸化炭素濃度などの環境データ③園芸作物主要6品目の全農家約3000戸の過去3年の出荷データ──などを収集し活用する。農家はスマホやパソコンから、クラウドに送られたハウスの環境データだけでなく、異常の監視と警報、ボイラーやかん水など機械類の稼働状況に加え、出荷状況などが確認できる。県やJAの指導員も、戸別の経営診断や産地全体の経営分析などに生かす。22年からの本格運用を目指しており、最終的には、県内の園芸農家約6000戸のデータを連係させる。県は、「経験と勘の農業」からデータを活用した農業への転換を進めるとしている。クラウドは県内の営農者、利活用を希望する企業などが利用できるが、まずはデータの収集に協力している約200戸の農家から利用を始める。3月末から、新規利用の申し込みができる予定だ。農家がクラウドの機能を活用するのは無料。通信分野でシステム構築に協力したNTTドコモは希望者に対し、JAなどに出向いた「IoP教室」を開く。JA高知県の竹吉功常務は「営農、販売でいかに活用できるかがポイント。技術の継承、出荷予測などにも使える。農家に還元できるよう、十分生かしていきたい」と強調する。

<安全保障について>
PS(2021年1月22、24日追加):エネルギーや食糧の自給率向上は安全保障の上で重要だが、経産省・メディアは“保護主義”として自給率向上を目指すことを批判してきた。そして、*8-1-1のように、日経新聞が、①米中対立が脱炭素の足かせになる ②EVや風車は高性能磁石・モーターから材料のレアアース(希土類)に至るまで中国がサプライチェーン(供給網)の要を担っている ③中国に世界のレアアースの生産の6割強、精製工程の7~8割が集中し、EV向けに限れば精製工程をほぼ独占 ④経産省は「米欧の安定調達への対策に日本も相乗りできないか」と米国防総省も絡んだレアアース精製事業への参加を働きかけている ⑤日本は2010年に尖閣諸島を巡る対立で中国がレアアースの輸出を止めて以来、中国が9割を占めた調達先の分散やリサイクルを加速してきた などと記載している。
 しかし、*8-1-2のように、中国は尖閣諸島だけでなく沖ノ鳥島のEEZでも明らかに地下資源の調査をし、いざという時には戦闘する準備も行って、必要な資源を入手する最大の努力をしているのだ。一方、日本の経産省は、「日本は資源がない国」「調達先を分散して輸入した方が安くつく」などとうそぶき続けており、資源の価値もわからず、製造業は既に海外に移転したことも認識していない状態であるため、この結果は日本政府の政策ミスなのである。
 このような中、「日本側が無断で調査を繰り返す中国に抗議した」と主張しているのは、「無断でなければ、この調査に同意することもあり得る(これが世界標準の解釈だ)」ということなのか? さらに、「尖閣諸島に領土問題はない」と言うのなら、「この状態を認めている(世界標準の解釈)」ということだ。それでも日本側が、「米中対立がいけない」などと第三者のようなことを言うのであれば、「日本は米中対立で、むしろ迷惑している(世界標準の意味)」ということだ。しかし、自国の領土を護ることを放棄するのであれば、憲法改正どころか自衛隊もいらないのではないだろうか?
 なお、*8-2のように、中国は、5Gの通信網やEV充電設備などの次世代インフラへの投資を170兆円に大幅に増やすなど、的確な判断をしている。一方、日本は、やみくもに営業時間短縮を強制して莫大なばら撒きを行っているにすぎない。そのため、これらの結果が次にどう出るかは、誰でもわかることである。
 一方、米国務省のプライス報道官が、*8-3のように、「中国の圧力が地域の安定を脅かしている」として、台湾への軍事・外交・経済的圧力を停止するよう中国に求める声明を発表し、台湾との関係強化も表明したそうだ。台湾は独立国であるため当然の対応であり、この点で中国に同調してきた日本政府は長いものに巻かれて民主主義を大切にしないように見える。さらに、日本の政府・メディアが民主主義や基本的人権を大切にしないのは、日本国民に対しても同じであるため、これについてこそ厳しく指摘せざるを得ない。

 
 2020.6.18朝日新聞  2020.7.2.20ペリカンメモ        NNN

(図の説明:左図は尖閣諸島で、中央の図は尖閣諸島に出没して領海侵犯している中国海警局の船及びそれを追尾する日本の海上保安庁の船だ。右図は南鳥島で、海底にレアアースが大量に分布していることを東大が発見した。日本政府は、ぼーっとして現状維持を決め込んでいる間に、すべてを手遅れにしそうである)

*8-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210119&ng=DGKKZO68280440Y1A110C2EA1000 (日経新聞 2021.1.19) 米中対立、脱炭素の足かせ、EVや風車の部品・材料調達に影
 米中対立が各国の脱炭素の動きのアキレスけんになるとの懸念が広がっている。需要急増が見込まれる電気自動車(EV)や風車は主要部品の高性能磁石、モーターから材料のレアアース(希土類)に至るまで中国がサプライチェーン(供給網)の要を担うからだ。米欧は安定調達への対策を強化する。日本も戦略の再構築が急務だ。「何とか相乗りできないか」。経済産業省は日本の化学メーカーなどに、米国防総省も絡んだレアアース精製事業への参加を働きかけている。
●日本も対応急ぐ
 オーストラリア産のレアアース鉱石を米テキサス州の工場で処理し、磁石の性能を高めるジスプロシウムなどを取り出す計画。豪ライナスが米社と組み、中国依存を脱したい米政府が後押しする。ここに日本企業も加われば安定調達に役立つと経産省は期待する。中国には世界のレアアースの生産の6割強、精製工程の7~8割が集中し、EV向けに限れば精製工程をほぼ独占する。脱炭素による需給逼迫と米中対立のダブルパンチで供給が断たれるリスクに各国は対応を急ぐ。菅義偉首相は温暖化ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすると表明した。30年代半ばに全ての新車を電動車にする。欧州や中国のほかバイデン政権下の米国もEV化を進める見通しだ。カナダの調査会社アダマス・インテリジェンスは世界のEVの年間販売台数は30年に3450万台と20年の7倍になり、ネオジムやジスプロシウムの需要は代替品が普及しても5倍になると予想する。風力発電などへの需要増もあり供給が慢性的に不足し、市場価格も上昇が続くとみる。危機感を強める欧州連合(EU)は昨年11月、企業と政府による「欧州原材料アライアンス」を始動させた。30の重要資源について域内外の友好国・企業と協力し調達やリサイクルを促す。米トランプ政権も9月にレアアースの自主調達を促す大統領令を発令、カリフォルニア州マウンテンパス鉱山での採掘や精製への支援も決めた。
●川下にも「急所」
 日本も10年に尖閣諸島を巡る対立で中国がレアアースの輸出を止めて以来、中国が9割を占めた調達先の分散やリサイクルを加速してきた。だが調達先のなお6割近くは中国だ。精製もほぼ中国に頼る。米テキサスの精製事業が注目を浴びるのもこのためだが、企業には中国産と比べた採算が問題になる。サプライチェーン全体をみると、レアアースの採掘や精製で中国依存を減らせても、磁石やモーター製造など下流では中国の存在感が増している。「産業のチョークポイント(急所)は川下まで及んでいる」と対中政策を担う関係者は言う。「リスクを理解しているのか」。日本電産が中国の大連市に設けるEV向けモーターの開発拠点に経産省幹部は懸念を示す。拠点は中国の顧客ニーズに迅速に応えるのが狙い。同社は「技術情報流出を防ぐべくセキュリティーを強化している」と言うが、約千人を擁する拠点だけに経産省は「先端技術が中国側に流れかねない」と気をもむ。中国は15日、レアアースの統制を強化すると発表した。昨年12月施行の輸出管理法では、戦略物資やハイテク技術の輸出を許可制にできるようにした。レアアースの禁輸に加えて、日本企業が中国で作った磁石やモーターの技術を開示するよう迫ったり、中国外での利用を禁じたりする危険すらあると専門家はみる。おりしも米中対立が深まるなか加速した脱炭素の動きは中国を起点とするサプライチェーンの脆弱性を高めた。経済への打撃を避けるには政治利用に歯止めをかけるルールづくりが課題となる。日米欧などの効果的な連携も必要だ。むろん企業自身の取り組みもカギで、レアアース不要のモーターや代替素材の開発で日本が先行するのは心強い。市場価格しだいでは近海での資源採掘やサプライチェーンの国内移転も選択肢になると専門家はみる。米中対立が脱炭素経済の足かせにならないよう、官民が柔軟な発想で戦略を練り直すときだ。

*8-1-2:https://news.biglobe.ne.jp/international/0118/sgk_210118_1746910710.html (Biglobe 2021年1月18日) 中国の狙いは尖閣諸島だけではない 太平洋に進出し不審な調査を続ける訳
 世界中でコロナ禍が続く中、中国は今年に入っても平然と海洋覇権行動を続けている。1月13日には沖縄県尖閣諸島周辺で中国公船1隻が日本の領海を侵入。日本漁船に近づく動きをしたことから、政府が中国側に厳重抗議した。だが、「中国の狙いは尖閣諸島だけではない」と指摘するのは、ジャーナリストの宮田敦司氏だ。
    * * *
 菅義偉首相が昨年12月19日、東京都内での講演で、米国のバイデン次期大統領と電話会談した際、沖縄県・尖閣諸島が対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象になると同氏が明言したことを強調した。米安全保障条約第5条とは、日米両国が、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対し、「共通の危険に対処するよう行動する」という内容である。日本のリーダーはよほど不安なのか、菅直人政権では前原誠司外相が2010年にクリントン国務長官と、安倍晋三首相は2014年にオバマ大統領、2017年にトランプ大統領と尖閣諸島が第5条の適用対象であることを確認している。講演で菅首相は、尖閣諸島が話題になった事を強調していたが、それ以外の島嶼(とうしょ)については触れなかったのだろうか? 尖閣諸島以外にも日米の安全保障のために重要な島嶼が東京都にある。日本最南端の領土・沖ノ鳥島(東京都小笠原村)である。
●中国は「島」でなく「岩」と主張
 沖ノ鳥島を中心に設定される半径200海里(約370km)の排他的経済水域(EEZ)の広さは、国土面積の約12倍に相当する(約40万平方キロメートル)。この海底にはメタンハイドレートやレアアース(希土類)が眠っているとされる。しかし、この島は無人島で満潮時に水面上に浮かぶ面積は4畳半程度に過ぎない。この沖ノ鳥島を中国が「島ではなく岩」と主張し始めたのは2004年のことだ。日本側の同意なく調査を繰り返す中国に日本が抗議したところ、中国側が沖ノ鳥島は「島ではなく岩」と主張したのだ。しかも中国は「沖ノ鳥島」の名称も「沖之鳥礁」と呼び変えている。沖ノ鳥島は満潮(高潮)時には2つの小島が海面上にわずかに頭を出すだけだが、国連海洋法条約第121条1項にいう、自然に形成された陸地で高潮時にも水面上にあることを満たしている。しかし、もともと中国は、沖ノ鳥島が日本の領土である事について問題視していなかった。それどころか、中国軍機関紙「解放軍報」は1988年、沖ノ鳥島について好意的に取り上げていた。記事のなかで、日本が沖ノ鳥島が波で削られないよう波消しブロックやコンクリートなどで保護していることを「素晴らしいことである」と評価し、「日本は港、ビル、飛行場などを作ろうとしている」とまで書いていたのだ(引用元/平松茂雄・元杏林大学教授講演、2010年2月15日)。これは、南シナ海に進出した中国が同じような事を行っていたからだった。日本が行っていることを持ち出して、南シナ海での中国の行動を正当化しようとしていたのだ。しかし、中国の好意的な姿勢は、中国海軍が東シナ海から宮古海峡を通って西太平洋に進出するようになると一変した。2010年4月には、10隻の艦隊を沖ノ鳥島周辺まで進出させ、対潜水艦戦訓練などを実施した。このような中国の行動は、沖ノ鳥島が日本の軍事拠点となることを恐れてのことだろう。レーダーや対艦ミサイルを配備されたら、中国海軍が自由に動けなくなるからだ。中国海軍が演習を行った翌年(2011年)、日本政府はEEZの権益を守る拠点として、沖ノ鳥島を「特定離島」に指定し、港湾や道路を整備するなど開発を進めることにした。
●無断で繰り返される中国の海洋調査
 中国が沖ノ鳥島周辺海域以外で海洋調査を行ったのは2001年から2003年にかけてである。この時の調査は詳細にわたり、資源探査だけでなく、海底の地形や潮流、水温、塩分濃度などの科学的データを収集していた。潜水艦を展開させるために必要となるデータだからだ。2004年以降は、沖ノ鳥島周辺で様々な調査を行っている。2020年は7月に10日連続で中国の海洋調査船「大洋号」がワイヤのようなものを海中に下ろし調査活動を行い、海上保安庁の巡視船の警告を無視して調査を続行した。国際法ではEEZ内での調査は沿岸国の同意が必要となるとしている。したがって、沖ノ鳥島周辺で海洋調査を実施するためには日本側の同意が必要となる。中国が日本のEEZ内で海洋調査を始めた2001年当時は、田中真紀子外相が衆院外務委員会で「EEZで資源調査をしてはいけないという国際法はない」と中国側を擁護する答弁を行うなど、政府内で足並みが乱れていた。中国は、こうした日本政府の混乱に乗じて違法な海洋調査を続けた。その結果、中国は西太平洋において自由に潜水艦を航行させることが出来るようになった。
●太平洋へ向かう海洋調査船が増加
 中国の海洋調査船の動向に関して、船が位置や針路などを発信する船舶自動識別システム(AIS)の公開データから、2020年11月4日までの過去1年間にわたる追跡を行った結果、情報が確認できる中国調査船34隻(総排水量307〜2万トン)のうち、4割にあたる13隻が太平洋方面に進出していたという。中国が領有権を主張する南シナ海はすでに軍事拠点化が進んでおり、次の標的として太平洋の海洋権益に狙いを定めているとみられる。それだけでなく、中国漁船も不審な動きを見せている。IHIジェットサービスによると、4月には尖閣諸島周辺に32隻の漁船団が出没した。いずれも遭難時用の識別コードを持っていたが、中には全く別のタンカーなど約150隻の中国船と同じ番号を共有している例もあったという(引用元/「日本経済新聞」2020年11月25日)。違法な中国船の動きを日本は封じ込めなければならない。しかし、このような中国船を含む、外国船や外国人を取り締まるための日本の法律は存在せず、拿捕や逮捕によって強制的に止めることはできない。このため、日本政府は2020年7月、調査船の取り締まりが可能となる法整備の検討に入った。外国船による科学的な海洋調査の場合でも、海上保安庁による拿捕や逮捕が可能となる新法制定や法改正を想定している。
●軍事的に重要な作戦海域となる沖ノ鳥島
 中国は、海軍艦艇による大規模な軍事演習も行っている。防衛省の報道資料などを見ると、東シナ海から宮古海峡を経由して太平洋へ抜けた中国海軍艦艇と爆撃機のうち、沖ノ鳥島西方の海域で訓練を行っていると思われるものがある。沖ノ鳥島周辺で訓練を行う理由は、グアム島と宮古海峡とを結ぶ直線ルートの中央に位置しているからだ。沖ノ鳥島の周囲は、急に深くなっており、水深は4000〜7000mに及ぶ。つまり、沖ノ鳥島周辺では、日本、米国、中国の潜水艦が自由に活動することができるのだ。沖ノ鳥島周辺は、将来、米中海軍力にとって非常に重要な意味をもってくる。中国海軍にとっては台湾有事などの際に出動してくる米空母機動部隊を、潜水艦や機雷で阻止するための重要な作戦海域となるからだ。中国は2040年までに、米軍が太平洋とインド洋を独占的に支配する現状を変えようとしている。そのために米海軍と対等な力を持った海軍をつくり上げるという計画を持っている。計画は時代の変化を受けて度々見直されてきたが、基本的な枠組みは今なお引き継がれている。中国が西太平洋へ進出するにあたり、沖ノ鳥島を中国の影響下に置こうとする試みには、このような中国の戦略がある。中国のやり方は、まず海洋調査船を派遣し、軍事演習を行い、段階的に既成事実を作るという手法である。つまり、沖ノ鳥島周辺での軍事演習は、中国の実効支配に向けての新たな段階に入っていることを意味する。
●南沙諸島の二の舞になるのか
 中国が南シナ海の南沙諸島などを急速に軍事拠点化しているが、これと同じ行動を沖ノ鳥島で起こす可能性は排除できない。中国に「岩」と言われるほど小さな沖ノ鳥島に対しては、尖閣諸島で想定されるような上陸作戦は不要だ。中国は南沙諸島で主権を主張し、人工島を建設して飛行場やレーダーを設置している。フィリピンやベトナム、マレーシアと領有権を争っているなかで、今年(2020年)4月には南シナ海で一方的に行政区まで設定している。防衛省が海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を戦闘機が搭載可能な事実上の空母に改修する計画を進めているのは、これまで述べてきたような西太平洋における中国の活動を念頭に置いたものであろう。
●日本の島嶼は日本が守るべき
 人が住んでいる南西諸島の占領は、米国との戦闘に発展に進展する可能性があるが、無人島の場合は米国も簡単には中国との戦闘に踏み切れない。米国は強大な軍事力を持つ中国との戦争を望んでいない。全面戦争となれば核ミサイルの使用も考えられ、双方に甚大な損害が出ることが目に見えているからだ。無人島の争奪戦を端緒とした米中戦争に発展することを防ぐためには、自衛隊が単独で対処するしかないだろう。そもそも、中国が武力攻撃とはいえないレベルで動いた場合は、米軍は動かない。第5条云々よりも、漁民を装った私服の「海上民兵」の上陸など、「侵略」と言い切れないグレーゾーンを突いて中国に占拠された場合の措置を考えておくべきだろう。日本の領土を日本が守るのは当然のことだ。日米安全保障条約第5条は、日本に対する攻撃が自衛隊の対処能力を超えて(あるいは予想されて)、はじめて発動される性質のものではないだろうか。最初から米軍をアテにしている日本のリーダーは、自衛隊の最高指揮官であるのに自衛隊の能力をまったく信頼していないのだろうか?

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210121&ng=DGKKZO68351280Q1A120C2FF1000 (日経新聞 2021.1.21) 中国、次世代インフラ170兆円 5G通信網やEV充電設備、米との対立長期化に備え 官民投資、5年で大幅増
 中国が高速通信規格「5G」の通信網、データセンターといった次世代のインフラへの投資を大幅に増やす。官民合計の投資額は2025年までの5年間で約170兆円に達する見通しだ。米国とのハイテク摩擦の長期化をにらみ、民間資金も活用しながら産業基盤を整備する狙いだ。だが必要な部品や技術を米国に頼るケースも多く、米バイデン新政権との関係改善を探る動きもある。中国は次世代のインフラを「新型インフラ」と呼び、主に7つの技術領域に分類している。5G通信網やデータセンター、人工知能(AI)などIT(情報技術)分野の基盤に加え、大容量の電力を効率的に送る超高圧送電網や、都市圏内で都市をまたがって運行する高速鉄道や地下鉄なども含まれる。
●地方政府が主導
 中国政府傘下の研究機関、中国信息通信研究院によると、21~25年の新型インフラへの投資額は官民合計で10兆6千億元(約170兆円)となる見通し。中国での社会インフラ投資の約10%を占めるという。米調査会社ガートナーの予測では、世界での通信サービスやデータセンターなどITへの支出は21年に3兆7548億ドル(約390兆円)。単純比較はできないが、中国の投資額が世界で突出しているわけではない。ただ中国銀行は20年の新型インフラへの投資額を1兆2千億元と試算しており、21年以降は毎年、20年の2倍近い資金が投じられることになる見込みだ。新型インフラへの投資を主導するのは地方政府だ。南部の広東省では今後数年間で1兆元を投じる。5Gの基地局や電気自動車(EV)の充電設備の拡充、自動運転の実験用道路の整備、燃料電池車(FCV)向けの水素ステーションの200カ所新設など、関連事業は700件を超える。東北部の吉林省でも、新型インフラ関連の投資額は25年までに1兆元を超える見通し。北京市、上海市などほかの主要都市や各省の政府もそれぞれ個別に3~5年の計画を策定済みだ。いち早く整備が進んでいるのが5G通信網だ。基地局は累計で70万カ所を超え、すでに一国として世界最大規模だが、全土をカバーするには600万カ所超が必要だとされる。現場の担い手は中国移動(チャイナモバイル)など国有通信大手だ。ネット関連の民間企業も新型インフラの建設や運営への関与を深める。騰訊控股(テンセント)は20年5月、5年間で5000億元を新型インフラの整備に投じると表明した。クラウドやAI、5Gなど幅広い領域に投資する。アリババ集団も20年4月、データセンターの建設などに3年間で2000億元を投資すると明かした。
●経済下支え狙う
 中国指導部の狙いは、新型コロナウイルスで打撃を受けた経済の下支えと、ハイテク産業の振興だ。20年5月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の政府活動報告では、李克強(リー・クォーチャン)首相が消費促進や構造改革のため「新型インフラの整備を加速する」と言明した。共産党が20年11月に公表した21~25年の第14次5カ年計画の草案も、重点項目の1つに新型インフラの整備を明記した。米国のトランプ前政権は5GやAIに関連する中国企業への部品や技術の輸出規制を強めてきた。バイデン新政権も中国のハイテク育成を警戒する見通しで、規制が早期に緩むかどうか不透明だ。中国は官民挙げて次世代産業の基盤を整備し、ハイテク摩擦の長期化に備える。ただ水準の高い米国企業の半導体、ソフトウエアなどを活用する中国のハイテク企業は多い。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は「双循環」と呼ぶ新たな発展モデルも示し、海外依存を低めようとしているが、うまくいかなければ新型インフラの整備が遅れる可能性もある。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は2日に報じられた国営新華社のインタビューで、米中関係には「希望の扉が開かれている」と述べ、バイデン政権に秋波を送った。中国国内では過剰投資への懸念も浮上している。共産党の幹部養成機関の機関紙、学習時報は新型インフラの整備について「政府部門は(道路など)従来型のインフラ建設と同様に主導すべきではなく、民間企業に任せるべきだ」という内容の記事を掲載した。「(地方政府が)政治的な成果やメンツのために投資を実施するのは避けるべきだ」と指摘する有識者もいる。

*8-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/625561 (佐賀新聞 2021.1.24) 米政権、中国に圧力停止を要求、台湾との関係強化も表明
 米国務省のプライス報道官は23日、台湾に対する中国の軍事的圧力が地域の安定を脅かしているとして、軍事、外交、経済的圧力を停止するよう中国に求める声明を発表した。台湾との関係強化も表明した。対中強硬路線を取ったトランプ前政権に続き、20日発足したバイデン政権も台湾支持を打ち出した形で、中国の反発は必至だ。台湾外交部(外務省)は24日、米国務省の声明について「バイデン政権による台湾支持と台湾防衛重視」の表れだとして謝意を表明した。台湾の専門家は「バイデン政権は前政権の方針を引き継ぎつつ、より緻密に中国対抗策を推進していくだろう」と分析している。バイデン政権の国務長官候補ブリンケン元国務副長官は19日、人事承認に向けた上院公聴会で強硬路線を維持する考えを示し、台湾について「より世界に関与することを望む」と述べていた。米国務省声明は、中国が台湾を含む近隣国・地域を威嚇しようとしていると懸念を表明し、圧力をかける代わりに民主的に選ばれた台湾の代表と対話に臨むよう要求。台湾の自衛能力を維持するため支援を続けると強調した。また、同盟・友好国と協力してインド太平洋地域の安定と繁栄を促す方針を示し、台湾との関係強化もこの動きに沿ったものだと説明した。中国は軍用機や艦船を台湾周辺に派遣するなど圧力を強めている。台湾国防部(国防省)によると、23日にも中国の爆撃機「轟6K」や戦闘機「殲16」、対潜哨戒機「運8」の計13機が台湾南西の防空識別圏に進入した。トランプ前政権は台湾支援のため武器売却を推進。バイデン政権のオースティン国防長官も就任前、台湾の自衛能力維持を後押しする考えを示していた。

<感染症に本気で取り組まない政府の長期対策には付き合えないこと>
PS(2021年1月28、29日追加):*9-1-1のように、政府は、新型コロナワクチン接種情報を国がリアルタイムで把握するため、マイナンバーを使った新システムを導入する方針を固めて取り組みを本格化させたそうだ。これは、住民が引っ越した場合の接種状況確認や接種券(クーポン券)をなくした場合の対応のためだそうだが、このように何かをする度に新システムを導入するから、*9-1-2のように、時間ばかりかかって効果が上がらないのであって、これならワクチンの接種が目的かマイナンバーカードの普及が目的かわからない。しかし、抗体を持つ人は接種不要であるため抗体検査が必要で、新型インフルエンザの予防接種が既に終わっているため、同じやり方をした方が早い。さらに、基礎疾患のある人は通院しているので、通院する医療機関で接種券を提示して優先的に接種を受け接種証明をもらえばよい。そして、マイナンバーと医療情報をひも付けることは、個人情報保護の観点から、私も問題だと思う。
 なお、*9-1-3のように、英製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンを国内メーカーが受託生産できることになったのはよかったが、①迅速なワクチン開発は「できないだろう」という反対の大合唱(要反省・要謝罪) ②日本の大学は入れないため開発・研究不能(要反省・要謝罪) ③できたワクチンは「公平に分配せよ」の大合唱 とは、あまりに矛盾だらけで先進国のすることではない。自分の国で研究・開発して発展途上国に配るのが先進国のすることで、それが今後の産業の高度化や国際貢献に繋がるのである。
 このような厚労省・文科省・経産省はじめ政府及びメディアの失敗のつけを、*9-2のように、「緊急事態下でも意識は低い」などと国民になすりつけるのは日本の病んだ姿だ。今回は昨春の宣言時より国民の対応が鈍い理由は、2~3カ月なら政府の戸惑った対応に忍耐し自粛しても営業を存続できるが、PCR検査は制限し、治療薬は承認せず、ワクチンの研究開発もせずに、1年以上も国民に忍耐を強いるのなら、付き合いきれないということだ。そのため、この失政の尻拭いのための営業制限をさらに行うのなら、その損害は一部ではなく全部補填されるべきで、その金額は2020年の所得と2019年(orその前3年間の平均)の所得を比較した減少分の全額であるため、その金額を還付すべきだ。また、「出勤者7割減」「テレワークの実施」「自転車通勤」「ローテーション勤務の推進」「午後8時以降の勤務抑制」なども代替案はいくらでもあるため、コロナと人命にかこつけてそれを自己目的化することこそが問題である。
 なお、*9-3-1のように、「①事業者への財政支援を義務化」「②緊急事態宣言の前段階の対策を『予防的措置』から『まん延防止等重点措置』に名称変更」「③営業時間短縮や休業命令を拒否した事業者、入院拒否した患者に罰則導入」などの感染症法・特措法の改正法案を提出したそうだが、①は屁理屈をつけてもばら撒きにすぎず、こんなことに使う金があるのなら、その1/10の金額を検査充実・ワクチン・治療薬の開発、普段からの医療システム整備に使うべきだ。そのため、自民党内の「④大学病院に重症患者を引き受けるよう法改正すべき」「⑤水際対策を徹底しなければ収束できない」という意見は尤もであり、*9-3-2の日本弁護士連合会会長荒氏の「感染症法・特措法の改正法案に反対する会長声明」は全くそのとおりだ。さらに、「オリンピックを中止すべき」という意見もあるが、引き受けたものは責任を持ってやるべきであり、水際対策・検査・隔離と治療・ワクチン接種を徹底して行えばそれは可能なのである。
 最後に、米製薬大手イーライ・リリーのコロナ抗体薬LY-CoV555は、*9-4のように、2020年11月に米食品医薬品局から軽度・中程度のコロナ感染患者向け治療薬として緊急承認されていたが、治療効果と同時に予防効果もあることがわかったそうだ。予防効果を調べる治験は、米国立衛生研究所(NIH)の協力を得て進めており、日本なら厚労省・経産省・文科省が協力して積極的に開発・治験すべきものだった。
 

 2021.1.19東京新聞  2021.1.29日経新聞  2021.1.1産経新聞  2021.1.8日経新聞

(図の説明:1番左の図のように、新型コロナ特措法と感染症法の“改正”が意図され、罰則と事業者への部分的な支援が入っていた。そして、左から2番目の与野党修正協議後の法案にも罰則が入っており、私権を制限するのにその効果への科学的根拠はない。また、右から2番目の図にワクチン接種の優先順位が書かれているが、医療・介護関係者や高齢者・基礎疾患のある人の優先順位は高くすべきで、これをマイナンバーカードでどう整理するつもりか? これらの政策から、日本のコロナ騒ぎはデジタル化・時短・テレワークを推進するためにだらだらと続けているように見え、それによる国民の損害は膨大である。なお、1番右の図は、コロナ対策と日程だ)

*9-1-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/626891 (佐賀新聞 2021.1.27) 政府、接種状況把握へ新システム
 政府は27日、新型コロナウイルスのワクチンの接種情報を国がほぼリアルタイムで把握することを目的に、新たなシステムを導入する方針を固め、取り組みを本格化させた。接種を行う市区町村は住民が引っ越しをした際の接種状況の確認や、接種券(クーポン券)をなくした場合に対応しやすくなる。接種状況や履歴の一元管理を図る。マイナンバーの活用を検討している。春に見込まれる65歳以上の高齢者への接種開始のタイミングでの運用を目指し、制度設計を急ぐ。ワクチン接種の総合調整を担う河野太郎行政改革担当相は27日、高齢者接種は早くても4月1日以降になると表明。当初3月下旬としていた政府方針がずれ込むとの見解を示したものだ。新システムについて、マイナンバーをひも付けることには、自治体の業務に過重な負担が掛かる懸念が出ている。個人情報保護の観点から議論も呼ぶ可能性がある。加藤勝信官房長官は27日の記者会見で、市区町村の予防接種台帳では実際の接種から情報登録まで2~3カ月のタイムラグがあると指摘して「(国が)リアルタイムに近い形で接種状況を的確に把握できるよう新たなシステムを整備する」と強調した。システムは国が開発。市区町村や医療機関などがデータを入力する仕組み。入力情報は、住民が接種した場所と年月日、接種回数、ファイザー社製など使用したワクチンの種類や製造ロット番号などが想定されている。接種会場で混乱しないよう、接種券をスマホのカメラで撮影し情報を読み取るアプリを開発する意向。住民に対してマイナンバーの提示は求めることはないとしている。接種主体の自治体の業務を巡っては、新システムとは別に、厚生労働省が新型コロナウイルスのワクチンの流通量を把握するため、自治体や医療機関が参加する「ワクチン接種円滑化システム(V―SYS)」を開発。自治体は複数のシステムへの入力が迫られる。さらにワクチン接種の会場、医師や看護師の確保が重い課題。住民への接種券発送作業に加え、超低温保管が必要なワクチンの管理も難題で一層事務作業が増え、混乱に拍車が掛かる事態も予想される。システム開発が間に合うかも焦点だ。ワクチンは21日間空け2回打つことになる。政府は約3カ月で高齢者への接種を終える日程を描いている。

*9-1-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20210128&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO68585500Y1A120C2MM8000&ng=DGKKZO68585520Y1A120C2MM8000&ue=DMM8000 (日経新聞 2021.1.28) 高齢者への接種、4月以降に 河野規制改革相
 河野太郎規制改革相は27日、新型コロナウイルスのワクチンについて、65歳以上の高齢者への接種は「最短でも4月1日以降」と表明した。全国知事会とのオンライン会議で伝えたと記者団に語った。政府はこれまで「3月下旬以降」と説明していた。遅れる理由について「医療従事者の数や米製薬大手ファイザーとのやり取りを鑑みて」と話した。接種会場を準備する地方自治体に向けて「3月におさえる必要はない」と述べた。

*9-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210128&ng=DGKKZO68585500Y1A120C2MM8000 (日経新聞 2021.1.28) アストラゼネカのワクチン、日本で量産、9000万回分、国内安定調達へ道筋
 英製薬大手アストラゼネカは日本で新型コロナワクチンの量産準備に入る。国内メーカーが近く受託生産を始める。国内生産量はアストラゼネカの日本向けワクチンの75%に相当する9000万回分を見込む。海外での供給遅れが広がるなか、日本政府は国内のワクチン生産(総合2面きょうのことば)で一定量を確保して安定調達につなげる。アストラゼネカは2020年12月に日本政府と1億2000万回分のコロナワクチン供給契約を結んだ。近く厚生労働省に製造販売承認を申請する。コロナワクチンは完成まで3カ月程度かかるため、承認申請の手続きと並行して量産を進める。国内生産品の出荷準備が整うのは早くても5月ごろで、厚労省の承認を得たうえで出荷する。アストラゼネカのコロナワクチンは英オックスフォード大学と開発した、ウイルスベクターワクチンと呼ばれるタイプだ。風邪の原因となる「アデノウイルス」に新型コロナの遺伝情報を組み込み、体内に送り込んで免疫反応を促す。日本では20年8月から人に投与して安全性や有効性を確認する臨床試験(治験)を実施している。バイオ製薬のJCRファーマが神戸市内の工場でコロナワクチンの原液をつくる。原液はアデノウイルスを培養して抽出したものだ。JCRファーマはワクチンの生産実績はないが、細胞培養などのバイオ技術を持つ。アストラゼネカから製造技術を移管され、遺伝子を改変したアデノウイルスの提供も受けた。製造装置でアデノウイルスを培養し、精製して原液にする。培養が軌道に乗れば、原液を輸入することなく、国内でワクチン製造が完結する。できあがった原液は第一三共や明治ホールディングスが容器に充填して製品化する。アストラゼネカのコロナワクチンはセ氏2~8度の冷蔵輸送で流通できるため、コロナワクチンの中でも温度管理しやすい。新型コロナの感染者数は世界で1億人を超えた。変異種登場で、世界でワクチン争奪戦が表面化している。欧州連合(EU)はEUで製造したワクチンの域外への輸出の規制を検討している。アストラゼネカのコロナワクチンは海外では供給が計画通りに進んでいない。日本政府はアストラゼネカと契約した1億2000万回分のうち、3000万回分は3月までに輸入する考えだ。ただ現地で生産が軌道に乗らず予定通り輸入されない懸念も残る。世界各地で実施されている治験も計画に比べ遅れている。今後、調達計画や国内生産量の見直しが日本で議論される可能性もある。量産準備に入るとはいえ、実際に日本で接種が始まるまで予断を許さない状況だ。日本政府はアストラゼネカのほかに、米ファイザーから21年内に1億4400万回、米モデルナからは6月までに4000万回と9月までに1000万回を調達する契約を結ぶ。ファイザーとモデルナのワクチンはいずれも全量が輸入で、こちらも予定通り確保できるかが焦点となる。

*9-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/685110/ (西日本新聞 2021/1/27) 出勤7割減、実現せず「今回は人ごと」…緊急事態下でも意識は低く
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言で、政府が事業者に求めている「出勤者数の7割削減」。各職場でどれくらい実施されているかを問う西日本新聞「あなたの特命取材班」のアンケートには「実現していない」との回答が大半を占め、「昨春の宣言時よりも意識が低い」という答えが目立つ。企業や官公庁でのクラスター(感染者集団)発生数は全国的に医療機関を上回っており、経済団体や自治体も警戒を強めている。アンケートには、27日までに約100件の回答があった。福岡県など緊急事態宣言が発出されている11都府県からの声が9割弱を占め、大部分は削減が実現していないと回答した。その理由(複数回答)で最多だったのは「業務の都合上」。男性公務員(44)は「仕事に必要なデータを持ち帰れないし、(家だと)上司からの指示など職場の情報が伝わらない」。勤務先の働きかけに戸惑う人も。保険営業職の女性(32)は「会社が『出勤者7割減』を『(勤務する)部屋から7割減』と独自に解釈している」と困惑。同じフロア50人を3フロアに分けたが「毎日全員出社」という。福岡県の服部誠太郎副知事は25日、県内の経済団体関係者と会合。「テレワークの実施や自転車通勤、ローテーション勤務の推進、午後8時以降の勤務抑制を」と協力を呼び掛けた。

*9-3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/80639 (東京新聞 2021年1月19日) <新型コロナ>事業者への財政支援、義務化へ 新型コロナ特措法改正案 罰則も導入
 自民、公明両党は18日、新型コロナウイルス感染症対策の関連会合をそれぞれ開き、政府が開幕した通常国会に提出する新型コロナ特別措置法や感染症法の改正案を了承した。国や地方自治体は事業者に対する支援を「講ずるものとする」と明記し、先に概要で示した努力規定から義務規定に修正。緊急事態宣言の前段階の対策は「予防的措置」から「まん延防止等重点措置」へ名称を変更。営業時間の短縮や休業の命令を拒否した事業者、入院を拒否した患者らへの罰則を導入する。特措法改正案では緊急事態宣言を避けるため、前段階で対策を進めるまん延防止等重点措置を新たに規定し、都道府県知事は飲食店などの事業者に営業時間の短縮や休業を要請、命令できるとした。これに応じた事業者への支援は、当初の政府案で努力規定だったことに異論が相次いだため「必要な財政上の措置を講ずる」と義務化に変更。医療機関への支援も義務化することを盛り込んだ。
◆まん延防止段階30万円以下、緊急事態宣言下50万円以下
 知事の命令を拒否した場合、前科にならない行政罰の過料を、まん延防止等重点措置段階では「30万円以下」、緊急事態宣言下では「50万円以下」と定めた。事業者への命令前の立ち入り検査も新設し、検査拒否には「20万円以下」の過料とした。感染症法改正案では、入院を拒否したり、入院先を抜け出したりした感染者らへの刑事罰を「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」と規定した。疫学調査の拒否などにも「50万円以下の罰金」を設けた。自民党の国会議員からは「大学病院に重症患者を引き受けるよう法改正すべきだ」「水際対策を徹底しなければ収束できない」と政府対応への批判が続出。さらなる議論を求める声もあったが、改正案の扱いは自民、公明党とも党幹部一任となって了承された。野党は罰則を新設する改正案に慎重・反対姿勢を示した。政府は22日にも改正案を閣議決定して国会に提出し、2月上旬に成立させ、同月中旬の施行を目指す。

*9-3-2:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210122_2.html (2021年1月22日 日本弁護士連合会会長 荒 中) 感染症法・特措法の改正法案に反対する会長声明
 本日、政府は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」という。)及び「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下「特措法」という。)の改正案を閣議決定した。新型コロナウイルスの感染が急拡大し、医療環境が逼迫する等の厳しい社会状況の中、収束のための有効な施策が必要であることは論を俟たない。しかし、今回の改正案は、感染拡大の予防のために都道府県知事に広範な権限を与えた上、本来保護の対象となるべき感染者や事業者に対し、罰則の威嚇をもってその権利を制約し、義務を課すにもかかわらず、その前提となる基本的人権の擁護や適正手続の保障に欠け、良質で適切な医療の提供及び十分な補償がなされるとは言えない。さらに、感染の拡大防止や収束という目的に対して十分な有効性が認められるかさえ疑問である。当連合会としては、以下の点について抜本的な見直しがなされない限り、強く反対する。
 まず、感染症法の目的は第一に感染症の患者等の人権を尊重するものでなければならないところ、今回の改正案は、入院措置に応じない者等に懲役刑・罰金刑、積極的疫学調査に対して拒否・虚偽報告等をした者に対して罰金刑を導入するとしている。
 しかし、刑罰は、その適用される行為類型(構成要件)が明確でなければならない。この点、新型コロナウイルス感染症は、その実態が十分解明されているとは言い難く、医学的知見・流行状況の変化によって入院措置や調査の範囲・内容は変化するし、各保健所や医療提供の体制には地域差も存在する。そのため、改正案の罰則の対象者の範囲は不明確かつ流動的であり、不公正・不公平な刑罰の適用のおそれも大きい。
 他方で、新型コロナウイルスには発症前にも強い感染力があるという特徴が認められ、入院措置・調査の拒否者等に対して刑罰を科したからといって感染拡大が防止できる訳ではない。むしろ、最近では多くの軽症者に対して自宅待機・自宅療養が指示され、症状が悪化して入院が必要となった場合にも入院できず、中には死亡に至った例も報告され、患者に対する「良質かつ適切な医療を受けられるように」すべき国及び地方公共団体の責務(感染症法前文・3条1項)が全うされていない現実がある。しかも、単に入院や調査を拒否したり、隠したりするだけで「犯罪者」扱いされるおそれがあるとなれば、感染者は感染した事実や感染した疑いのあることを隠し、かえって感染拡大を招くおそれさえ懸念される。
 新型コロナウイルス感染症は従来からのインフルエンザ感染症と比べて、無症状感染者からの感染力が強いと分析され、深刻な後遺症が残る例も報告されている。そのため国民全体に感染に対する不安が醸成され、感染したこと自体を非難するがごとき不当な差別や偏見が既に生じている。その解消を行わないまま、安易に感染者等に対して刑罰を導入するとなれば、感染者等に対する差別偏見が一層助長され、極めて深刻な人権侵害を招来するおそれがある。
 そもそも、感染症法は、「過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である」、「感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応する」などとした「前文」を設けて法の趣旨を宣言し、過去の反省等に基づき、伝染病予防法を廃止して制定された法律である。新型コロナウイルス感染症は、その感染力の強さゆえ、誰もが罹患する可能性がある疾病である。感染者は決して責められるべきではなく、その実情を無視して、安易に刑罰をもって義務を課そうとする今回の改正案は、かかる感染症法の目的・制定経緯を無視し、感染者の基本的人権を軽視するものに他ならない。
 次に、特措法の改正案は、「まん延防止等重点措置」として都道府県知事が事業者に対して営業時間の変更等の措置を要請・命令することができ、命令に応じない場合は過料を科し、要請・命令したことを公表できるとしている。
 しかし、改正案上、その発動要件や命令内容が不明確であり、都道府県知事に付与される権限は極めて広範である。そのため、恣意的な運用のおそれがあり、罰則等の適用に際し、営業時間の変更等の措置の命令に応じられない事業者の具体的事情が適切に考慮される保証はない。
 さらに、感染拡大により経営環境が極めて悪化し、休業することさえできない状況に苦しむ事業者に対して要請・命令がなされた場合には、当該事業者を含む働く者の暮らしや命さえ奪いかねない深刻な結果に直結する。もとより、主な対象とされている飲食に関わる事業者は、それ自体危険な事業を営んでいるわけではない。いかに努力しようとも、飲食の場に感染リスクがあるというだけで、死活問題となる営業時間の変更等を求められるのは、あまりにも酷である。かかる要請・命令を出す場合には、憲法の求める「正当な補償」となる対象事業者への必要かつ十分な補償がなされなければならず、その内容も改正案成立と同時に明らかにされなければならない。
 また、不用意な要請・命令及び公表は、感染症法改正案と同様、いたずらに風評被害や偏見差別を生み、事業者の名誉やプライバシー権や営業の自由などを侵害するおそれがある。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するためには、政府・自治体と市民との間の理解と信頼に基づいて、感染者が安心して必要な入院治療や疫学調査を受けることができるような検査体制・医療提供体制を構築すること及び事業者への正当な補償こそが必要不可欠であって、安易な罰則の導入は必要ないと言うべきである。
 以上の観点から、当連合会は、今回閣議決定された感染症法及び特措法の改正法案に対して、抜本的な見直しがなされない限り、強く反対する。

*9-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN22E1F0S1A120C2000000/ (日経新聞 2021/1/23) 米イーライ・リリーのコロナ抗体薬に予防効果 治験で
 米製薬大手イーライ・リリーは、米国の高齢者施設の入居者や職員を対象に実施した臨床試験(治験)で、同社の新型コロナウイルス抗体薬「LY-CoV555」(一般名バムラニビマブ)の予防への効果が確認できたと発表した。新型コロナ患者が発生した各地の高齢者施設で、入居者や職員など約1000人にこの抗体薬と偽薬を投与し、8週間後に効果を検証した。全体では抗体薬を投与したグループのコロナ発症リスクは、偽薬を投与したグループと比べ57%低かった。同じ施設の入居者で比べた場合、抗体薬の投与を受けた方が、偽薬投与のケースよりもコロナ発症リスクが8割低かった。LY-CoV555は2020年11月、米食品医薬品局が症状が軽度から中程度のコロナ感染患者向け治療薬としての使用を緊急承認した。予防効果を調べる今回の治験は、米国立衛生研究所(NIH)の協力を得て進めた。ワクチンが体内の免疫の仕組みを利用し抗体の生成を促すのに対し、抗体薬はウイルス感染から回復した患者が獲得した抗体のコピーを作り投与することで体内に抗体を得る仕組み。予防薬としての使用が承認されれば、ワクチンに比べて短い期間で効果を得たい場合や、健康上の理由でワクチン接種できない人などに選択肢を広げることができる。

<特措法・感染症法改正による私権制限は加害者の焼け太りである>
PS(2021年1月31日追加):*10-1のように、憲法学者70人超が「改正案の罰則導入は、行政罰でも政府の失策を個人責任に転嫁するもので正当性がない」と反対声明を出しておられるのは、全くそのとおりだ。そのため、部分的で恩着せがましい“支援”ではなく、失政に対する国民への損害賠償として、逸失利益(本来なら得られた筈なのに失わされた利益)の全額を支払うべきである。
 そのような中、*10-2のように、特措法に「蔓延防止等重点措置」を新設するそうだが、ウイルステロのように故意にウイルスをばら撒いて蔓延させた人がいるのでなければ、蔓延防止を行う義務があるのは政府・地方公共団体の方である。この理念は、ハンセン病の反省を踏まえ1998年に(大学で習ったので私が関わって)できた*10-3の感染症法の前文及び第1~3条を読めば明らかなのに、感染症に関する情報収集・研究推進・病原体の検査能力向上・医薬品の研究開発推進・良質で適切な医療提供等を、政府(特に厚労省・文科省)は故意に行わず法律違反を犯したのだ。また、メディアも感染症法を守るどころか患者を差別するような報道をしていたのは「言論の自由」「表現の自由」の域を脱していた。このような中、決して忘れてはならないのは、感染症患者は悪いことをしたから患者になったのではなく、誰でも患者になる可能性があり、検査や治療を受ける権利もあるということである。

*10-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/83108 (東京新聞 2021年1月30日) 改正案の罰則導入「正当性ない」 憲法学者70人超が反対声明
 新型コロナウイルス特別措置法や感染症法の改正案を巡り、70人以上の憲法学者が30日、「政府の失策を個人責任に転嫁するものだ」とする反対声明を公表した。当初案で示された刑事罰の導入は見送られた一方、行政罰は残ると指摘し、罰則導入自体に「全く正当性がない」と強調した。声明を出したのは、稲正樹・元国際基督教大学教授ら。改正案は当初、入院拒否者を刑事罰の対象としていたが、行政罰の過料に修正することで自民党と立憲民主党が合意。声明は「修正がなされても、『罰則』を設ける妥当性の問題は解決されない」とした。

*10-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/628063 (佐賀新聞 2021.1.30) 野党、まん延防止要件の明示要求、コロナ、私権制限への一層配慮も
 新型コロナウイルス対策を強化するコロナ特別措置法と感染症法の改正案を巡り、与野党が検討している付帯決議案が判明した。特措法に新設する「まん延防止等重点措置」の実施要件に関し、客観的基準を事前に明示するよう政府に要求。私権制限が過剰に強まらないように「より一層配慮する」ことも求める。複数の与野党関係者が30日、明らかにした。与野党は文言を最終調整した上で、2月1日の改正案採決時に決議の採択を予定する。ただ、付帯決議に法的拘束力はない。決議案はまん延防止措置の判断基準について、感染者数や病床使用率など、感染状況を示す指標との関係を明確にする必要性を指摘した。措置は「学識経験者の意見を聴いた上で行う」と記し、期間の延長や区域変更、解除も含めて速やかな国会報告を訴えた。営業時間短縮などに対する支援は「要請による経営の影響度合い」を勘案するよう要求した。まん延防止等重点措置は、緊急事態宣言の前段階と位置付け、都道府県知事の権限を強化する。時短要請に応じない事業者に命令を出すことができ、拒んだ場合は過料を科す。付帯決議案は、過料を慎重に運用する必要性にも触れた。自民、立憲民主両党幹事長は改正案を巡る28日の修正協議で、国会報告と事業者支援を付帯決議に盛り込むと合意した。付帯決議案は、まん延防止措置の対象を主に営業時間変更とし、休業要請や全面的な外出自粛要請を含めないことも訴える。西村康稔経済再生担当相は29日の国会審議で、措置は特定の地域と業種に絞った時短のみを想定していると答弁した。感染者が不当な差別を受けないような相談、支援体制の整備にも言及した。

*10-3:http://www.kanazawa-med.ac.jp/~mri-cfak/yobou.html (感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 平成10.10.2 法律114号)  
(前文)
第1章  総 則 (第1条~第8条)
第2章  基本指針等 (第9条~第11条)
第3章  感染症に関する情報の収集及び公表 (第12条~第16条)
第4章  健康診断、就業制限及び入院 (第17条~第26条)
第5章  消毒その他の措置 (第27条~第36条)
第6章  医 療 (第37条~第44条)
第7章  新感染症 (第45条~第53条)
第8章  感染症の病原体を媒介するおそれのある動物の輸入に関する措置 (第54条~第56条)
第9章  費用負担 (第57条~第63条)
第10章  雑 則 (第64条~第66条)
第11章  罰 則 (第67条~第69条)
     附 則
(前文)
 人類は、これまで、疾病、とりわけ感染症により、多大の苦難を経験してきた。ペスト、痘そう、コレラ等の感染症の流行は、時には文明を存亡の危機に追いやり、感染症を根絶することは、正に人類の悲願と言えるものである。医学医療の進歩や衛生水準の著しい向上により、多くの感染症が克服されてきたが、新たな感染症の出現や既知の感染症の再興により、また、国際交流の進展等に伴い、感染症は、新たな形で、今なお人類に脅威を与えている。一方、我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。ここに、このような視点に立って、これまでの感染症の予防に関する施策を抜本的に見直し、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進を図るため、この法律を制定する。  
第1章 総 則
(目的)
第1条  この法律は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。
(基本理念)
第2条  感染症の発生の予防及びそのまん延の防止を目的として国及び地方公共団体が講ずる施策は、保健医療を取り巻く環境の変化、国際交流の進展等に即応し、新感染症その他の感染症に迅速かつ適確に対応することができるよう、感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し、これらの者の人権に配慮しつつ、総合的かつ計画的に推進されることを基本理念とする。
(国及び地方公共団体の責務)
第3条  国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じた感染症に関する正しい知識の普及、感染症に関する情報の収集、整理、分析及び提供、感染症に関する研究の推進、感染症の病原体等の検査能力の向上並びに感染症の予防に係る人材の養成及び資質の向上を図るとともに、感染症の患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。この場合において、国及び地方公共団体は、感染症の患者等の人権の保護に配慮しなければならない。
 2   国及び地方公共団体は、感染症の予防に関する施策が総合的かつ迅速に実施されるよう、相互に連携を図らなければならない。
 3   国は、感染症に関する情報の収集及び研究並びに感染症に係る医療のための医薬品の研究開発の推進、感染症の病原体等の検査の実施等を図るための体制を整備し、国際的な連携を確保するよう努めるとともに、地方公共団体に対し前2項の責務が十分に果たされるように必要な技術的及び財政的援助を与えることに努めなければならない。
(以下、略)

<女性リーダー・新型コロナ・衛生意識の関係>
PS(2021年2月7日追加):*11-1・*11-2・*11-3のように、JOC役員改選に向けた規定改正が報告され女性理事の割合を40%以上にする目標が示された時、東京五輪・パラリンピック組織委員会森喜朗会長が、「①女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」「②女性は競争意識が強いので、誰か一人が手を挙げて言われると自分も言わないといけないと思うんでしょう」などと女性蔑視の発言をされ、「③組織委の女性委員については、みんなわきまえておられ、発言も的を射ていてわれわれも役立っている」と述べられたそうだ。
 このうち、①については、時間の長短ではなく時間内でどういう議論や検討を行ったかが重要なのだが、男女の割合にかかわらず生産性の低い会議は多く、新型コロナの対策会議もその1例だ。また、②については、競争意識が強いのは女性だけではなく、男性の方がもっと競争意識が強いと思うが、競争は公正である限り決して悪いことではなく、スポーツはじめ市場主義経済は、競争意識を動機づけにして推進力にしているのである。さらに、③の「組織委の女性委員は、わきまえている」という言い方は、既に決定されたことを追認するのが組織委であることを暴露してしまっており、活発に議論し検討して意思決定に至るのではない上から目線の同調圧力を感じる。そのため、これらの発言は、五輪憲章に反する以前に、男女共同参画基本法・男女雇用機会均等法・民主主義の理念に反している。
 なお、*11-4のように、「④コロナ対策に成功した国の共通点は女性リーダーの存在」というのは、私もそんな気がしていた。また、「⑤女性リーダーは同等の立場にいる男性リーダーに比較して新型コロナウイルス流行の初期段階での対応が優れていた」というのは、ロックダウンに限らず、台湾の事例からも納得できる。さらに「⑥こうした女性たちの有能さは、女性がトップに上るのに非常に厳しい基準を満たす必要があった選択バイアスの結果であった可能性も排除できない」というのも確かだが、同等の経歴を持つ男性リーダーと比較しても女性リーダーの方が新型コロナ対策に成功したのは、「衛生」に関する学びの機会は女性の方が多いからではないだろうか。ちなみに、男性政治家が多い日本の新型コロナ政策は、東アジアに位置するにもかかわらず大失敗で、決して真似できるシロモノではなかった。

*11-1:https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/498970 (京都新聞社説 2021年2月6日) 女性蔑視発言 時流に逆行、許されぬ
 自らの立場をわきまえず、軽率極まると言うほかない。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視と取れる発言をした。批判を受けて発言を撤回し、謝罪したとはいえ、どこまで反省しているのか疑わしい。組織委会長は、五輪開会式で開催国を代表して国際オリンピック委員会(IOC)会長と並んで世界のアスリートを迎える要職である。「五輪の顔」としての適格性に疑問符を付けざるを得ない。森氏は名誉委員として出席した日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと語った。席上、JOCの役員改選に向けた規定改正が報告され、女性理事の割合を40%以上にする目標が示された。これを受けた発言で、自身が会長などを歴任した日本ラグビー協会で女性理事が増えていることを例に挙げ、「女性っていうのは競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言われると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね」などとも述べた。五輪憲章はあらゆる差別を禁じており、とりわけ男女平等の理念は近年、大きな柱の一つになっている。森発言はこうした時代の流れに逆行し、国内外から厳しい批判を浴びても致し方ない。森氏が発言した際、居合わせた出席者からいさめる声はなく、笑いさえ漏れたという。JOC評議員らの見識も問われよう。森氏は翌日、記者会見に応じ、「五輪・パラの精神に反する不適切な表現だった。深く反省している」と謝罪した。だが会長辞任は「自分からどうしようという気持ちはない」と否定した。記者の質問にいらだち、開き直る場面も目立った。何が問題視され、批判を招いたのか、理解していないのではないか、と首をかしげたくなる。森氏はこれまでも度々失言癖を指摘されながらも組織の要職に就き、さまざまな意思決定に影響力を発揮してきた。議論よりも同調を良しとする日本社会のいびつさにも目を向けねばなるまい。五輪の理念を否定する発言は多言語で配信され、瞬く間に世界に広がった。新型コロナウイルスの感染拡大で開催が危ぶまれる中、自らの言動でさらに逆風を強めた森氏は辞任に値する。開幕まで半年を切ったが、世界の共感を得ずして五輪の成功は望めない。

*11-2:https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20210207597443.html (新潟日報社説 2021/2/7) 女性蔑視発言 トップの資質欠く森会長
 女性を蔑視し、国際社会からの信用にも傷を付ける深刻な発言だ。撤回し謝罪したが、反省の色はまるでうかがえない。五輪精神に著しくもとる内容でもある。大会準備の中心を担う組織のトップとして資質を欠くと断じざるを得ない。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が3日、日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で、女性理事を増やすJOCの方針に、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言した。国内外の批判を受け、森氏は4日に謝罪会見を開いたが、「深く反省している」という言葉とは裏腹にいら立ち、開き直るそぶりが目立った。自らの発言の何が悪かったのかをきちんと理解し、反省している態度には全く見えない。発言に対し、国内ではツイッター上などで「組織委のリーダーにふさわしくない」などと抗議の声が広がった。海外では「性差別」「時代遅れ」などと批判が噴出した。森氏の発言が女性を蔑視するだけでなく、あらゆる差別を禁じるとした五輪憲章の理念を踏まえていないことも明白だ。中でも男女平等の理念は近年の大会の大きな柱で、国際オリンピック委員会(IOC)の改革指針「五輪アジェンダ2020」は参加者の男女比率を同等にする目標を立てている。男女混合の団体種目採用を奨励して女子選手の割合を高めており、今夏の東京大会で48・8%、次回のパリ五輪で史上初の男女同数を見込む。役員の女性登用にも力を入れていた。森氏はそうした五輪精神への認識があまりに薄い。蔑視発言の中で森氏は、組織委の女性委員について「みんなわきまえておられる。発言も的を射ていて、われわれも役立っている」とも述べた。女性委員を持ち上げた発言のつもりだろう。しかし「わきまえている」という表現には、自由で活発な議論を封じ、都合の悪い発言を排除しようとする姿勢が垣間見える。森氏は以前から失言癖があり、2000年の衆院選で訪れた新潟市では「態度を決めていない有権者が寝ていてくれれば」などと発言した。蔑視発言があった評議員会では、出席者から失笑が漏れたという。「またか」と思わせたにしても、誰も異論を唱えなかったのは残念でならない。指摘がなくては、問題発言を肯定しているのと同じだからだ。東京大会は、新型コロナウイルスの感染拡大で開催自体が危ぶまれているが、森氏は2日の自民党の会合で「新型コロナがどういう形であろうと必ず開催する」と強調し、国民感情との隔たりも懸念されていた。菅義偉首相は5日の衆院予算委員会で発言を「五輪の重要な理念である男女共同参画と全く異なる」としたが、政府内に辞任を求める動きはない。このままトップを任せられるのか。政府は後手に回らぬよう冷静な判断を下すべきだ。

*11-3:https://www.ehime-np.co.jp/article/news202102070005 (愛媛新聞社説 2021年2月7日) 森氏の女性蔑視発言 五輪パラの顔にふさわしくない
 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視の発言をしたことが波紋を広げている。日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」「女性っていうのは競争意識が強い」「女性を増やす場合は発言の時間を規制しないと終わらないので困ると誰かが言っていた」などと述べていた。森氏は会見を開き、発言を撤回し謝罪したが、失言で済む問題ではない。会議が長いことや競争意識が強いことは性別と関係ないのは言うまでもなく、偏見を伴う発言に国内外から批判が高まるのは当然である。多様性の尊重をうたう五輪の「顔」としてふさわしくなく、かじ取り役を任せるに値しない。問題となったのは、JOCが女性理事の割合を40%に引き上げる目標を掲げ、役員選考の見直しを進めていることを受けての発言だった。JOCの理事は25人で、うち女性は現在5人にとどまる。五輪憲章はあらゆる差別を禁じており、中でも男女平等は大きな柱である。国際オリンピック委員会(IOC)も男女同数の五輪参加を目指し、五輪を通じた理想社会の実現を目標に掲げる。森氏の発言は、これらの理念や多様性の推進に取り組んでいる人々の努力を顧みないものだ。本当に反省しているかどうかも疑問符が付く。会見で「深く反省している」と低姿勢で臨んだものの、質疑に入るといら立ちや居直りを見せる場面があった。会長としての適性を問われると「さぁ」と首をかしげるなど、重く受け止ている様子はうかがえなかった。IOCは森氏の謝罪をもって「この問題は決着したと考えている」との声明を発表した。しかし、事態が収束するかどうかは見通せない。世界のアスリートや要人らから批判の声がやまず、東京都には大会ボランティアの辞退や抗議の電話が相次いでいるという。新型コロナウイルスの感染拡大で大会の開催そのものが危ぶまれる中、政府は新たな火種が生まれたことに危機感を強めなければならない。森氏の発言について菅義偉首相は「あってはならない」と述べたが、具体的な行動で示すべきだ。ここに至って本人をその立場に居続けさせることは開催国としての見識が疑われる。森氏が発言した際、出席者からとがめる声が出ず、全員が傍観者だった。そのこと自体も問われなければならない。世界経済フォーラムが2019年に発表した男女格差を示す「ジェンダー・ギャップ指数」で日本は153カ国中121位と過去最低だった。一連の事態は図らずも日本の「遅れ」を世界に示す結果となった。性差別認識や男女の不平等を改善していくために、一人一人が現状への問題意識を持ち続けたい。

*11-4:https://forbesjapan.com/articles/detail/37299 (ForbesJapan 2020/10/4) 女性リーダーの優れたコロナ対策、実証する研究結果発表
 私が4月に公開して大きな反響があった記事「コロナ対策に成功した国々、共通点は女性リーダーの存在」を科学的に裏付ける研究結果が発表された。女性リーダーは同等の立場にいる男性リーダーと比較して、新型コロナウイルス流行の初期段階での対応が優れていたのだという。研究は英国のリバプール大学とレディング大学の研究者らが行ったもので、「Leading the Fight Against the Pandemic: Does Gender ‘Really’ Matter?(パンデミック対策の主導 性別は本当に重要なのか?)」と題した論文にまとめられた。その内容によると、女性がリーダーを務める国の方が早い段階でロックダウンを実施し、論文発表時の死者数も男性が率いる同等の国より少なかったのだという。では、その理由は一体何にあるのだろう?
●リスクマネジメント
 研究チームは第1の理由として、女性リーダーは人命を守ることに関してリスクを回避する傾向が高い点を挙げている。女性リーダーは新型ウイルスのパンデミック(世界的大流行)の厳しい現実を直視し、国民に対しても同様の姿勢を促して、経済活動よりも人命を優先した。研究チームは、この要因が女性リーダーの「リスク回避」傾向にあった可能性を主に行動学の面から示した。
●リーダーシップのスタイル
 第2の理由とされたのは、女性指導者のリーダーシップスタイルだ。多くの女性リーダーは、子ども向けの記者会見を開いたり、医療従事者の検査を優先したりと、より共感的で民主的な参加型スタイルを取ってきた。研究チームが言うように、「リスクと共感に対する姿勢や明快で断固たるコミュニケーションが重要となった今回の状況」下では、愛と慈しみをもった女性のリーダーシップが優れたコロナ対策につながったのだ。
●未来に向けて
 研究チームは、社会構造が近い国同士を比較することで交絡因子を最小限に抑え、女性がリーダーを務める国のコロナ対策の成功が単に相関関係の結果ではないということを示した。それでも、こうした女性たちが指導者に就任できたのは選択バイアスの結果であった可能性を排除するのは難しい。こうした女性たちの有能さは、女性がトップの座に上り詰めるために非常に厳しい基準を満たす必要があったことが理由である可能性があるのだ。研究チームは「多くの変数が限定的であり、完全なサンプル実現に向けた取得が困難である場合が多いため、今後も多くの研究が必要となる」と認めた一方で、統計分析には常に欠点があるかもしれないものの、新型ウイルスの流行では各国で有効だった対策を理解することが重要だとも指摘した。メディアは、パンデミックがいかに女性たちを苦しめているかをこぞって取り上げているが、それだけではなく女性の功績もたたえるべきではないか。新型ウイルスの流行は、またとない学びの機会だ。有能な女性リーダーといった明るい点に注目することで、私たちはコロナ禍から学び、リーダーシップにおけるジェンダーバランスが皆の復興に資することを世界に示すことができる。

| 経済・雇用::2018.12~2021.3 | 12:14 AM | comments (x) | trackback (x) |

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