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2021.3.10~17 平等な女性登用の効果 (2021年3月18、19、20、21日追加)
  
  日本が契約済のワクチン   ワクチン開発状況  国内使用薬剤  開発中薬剤 

(図の説明:1番左の図のように、日本が契約済みのワクチンは米国製と英国製だけで、日本製はない。また、承認済や開発中のワクチンも、左から2番目の図のように、アジアでは中国のみが承認済で、日本は下の方におり、これを慎重と言うのかは大いに疑問だ。さらに、治療薬は、右から2番目の図のようになっており、日本国内で承認されているのは上の2つだけだ。なお、効きそうな中和抗体も、1番右の図のように、米国のみで緊急使用許可が出ており、日本政府《特に厚労省》は新型コロナの治療や予防に積極的ではないようだ)

(1)政治に女性登用を増やすと、何が変わるのか
1)日本人男性を優遇するジェンダーの存在
 沖縄県と同県内の全11市へのアンケート調査をした結果、*1-1-1のように、全自治体で総務・企画に関する部署には男性が男性が67%を占め、介護・子育て・保健衛生などの福祉・医療などの部署に女性が59%配置され、管理職になると総務・企画部署の女性比率は12%とさらに低くなり、福祉医療系は34%だったそうだ。

 その背景は、「男性は企画立案が得意、女性は家事や育児に適する」というジェンダーに基づく固定観念が反映されており、行政の中でも固定化されたジェンダーバイアス(性に基づく差別や偏見)で配置先を決めることが当たり前のように行われているということが明らかになり、沖縄県内41市町村の管理職に占める女性割合は14%と全国平均の15%を下回るそうだが、これは、沖縄県に限らず地方に特に多いことだろう。

 さらに、採用でも全自治体の職員に占める男女比率は6対4と女性が少なく、非正規職員は男性が約24%で女性は約76%、配属も女性は福祉医療系に偏っており、男性にはさまざまなポジションや選択肢が用意されているのに、女性には男性より不利で限られた選択肢しか与えられていない。しかし、これが女性の方が大きな割合で都市や外国に移住する原因となっているのだ。

 具体例としては、*1-1-2のように、行政や企業のトップに上り詰めた横浜市の林文子市長が、自らの人生を「『忍』の一字で生きてきた」「1965年当時は、女性が意思決定することを誰も考えていなかった」「ほんとに日本は変わらない。企業の役員レベルに(女性が)入れるかというと、いま立ち止まっている」等と述べておられるが、忍の一字で生きたい人はいない。

 しかし、今でも、*1-1-3のように、日本経済新聞の外部筆者コラムに「女性が主婦業を徹底して追求した方がいい」などとする記述があり、男女共学の教育システムと男女雇用機会均等法の下であるにもかかわらず、「女性は、主婦業以外はにわか知識だ」などと言われることがあるわけだが、こういうことを言われる理由は重要なポイントだ。

 ちなみに、私自身は、小学生だった1965年頃から、女性差別やジェンダーに基づく固定観念は受け入れ難かったため、かなり勉強して仕事でも実績を作ることにより、ジェンダーによる固定観念は覆してきたつもりだが、それでも言って受け入れられる範囲は時代によって異なり、先入観による女性差別も受けたことがある。それでも男女平等を前に進め続け、現在は思っていることを言っても理解する人の方が多くなったという状況なのである。

 なお、2021年3月8日の国際女性デーを前に、*1-1-4のように、電通総研が男女平等やジェンダーに関する意識調査を行ったところ、「男性の方が優遇されている」と答えた女性は計75・0%に上ったのに対し、「男性の方が優遇されている」と答えた男性は54・1%で、性別によって経験に差があり、男性と女性で見えている景色に違いがあると言う結果だったそうだ。これは、私の実感とも合っているが、「女性首相の誕生は、27.9年後」というのは、そこまで遅くはないと思う。

2)政治に女性登用を増やすと、外国人(=マイノリティー)への人権侵害も減るだろう
 出生数が多く十分な雇用が準備できなかったため、日本人男性を優遇して女性を雇用から排除するジェンダーは、団塊の世代でその前の世代より大きくなった。そのため、企業戦士の父とそれを支える母の下で育った50代の団塊ジュニア世代は、私たちの世代よりむしろ性的役割分担意識が大きいのである。

 つまり、十分な雇用を準備できず、日本人男性を優遇して雇用するために使われたのが戦後の女性差別なのだが、これが生産年齢人口割合が減っている今でも続いているのだ。

 そして、帰国すれば身に危険が及ぶ難民や亡命者を国外退去処分や送還処分にすることは人道に反しているのに、難民や亡命者はなかなか受け入れないという*1-2-1のような外国人差別もある。また、日本に家族のいる人が帰国を拒むのも当然であるため、入管難民法は同じ人権を持つ人間に対する適切なものに改正すべきであるのに、これらのマイノリティーの人の痛みがわからないような行動は、自分が優遇されるのが当然だという環境の中で育った日本人男性の特性ではないかと思うわけである。

3)ワクチンも科学技術の賜物なのだが・・
 河野規制改革担当相は、*1-2-2のように、「欧州連合(EU)が承認すれば、ファイザー製ワクチンを高齢者全員に2回打てる分だけ6月末までに各自治体に供給できる」とされたが、6月末に高齢者分だけでは7月21日に始まる東京オリンピックに間に合わない。

 遅くなる理由は、EUはファイザーとドイツのビオンテックが共同開発したワクチンやアメリカのモデルナ製ワクチン、イギリスのアストラゼネカ製ワクチンを契約していたが、いずれも供給が遅れ、EUがEU製造のワクチンをEUの承認なしにEU域外に持ち出せない輸出規制をかけたからだそうだ。

 そのため、EUのハンガリーは中国のシノファームが開発した新型コロナワクチンを2月16日に入手して接種し始め、ロシアのスプートニクVワクチンの購入にも同意しており、スペインもロシア製ワクチンを拒まないとしている。

 英医学誌ランセットは、*1-2-3のように、ロシアが2020年8月に承認した新型コロナワクチン「スプートニクV」について臨床試験の最終段階で91.6%の効果が確認されたとする論文を2021年2月2日に発表し、「2020年9~11月に治験に参加した約2万人のワクチン投与後の発症数等を調べて、ワクチンが原因とみられる重大な副作用は報告されず、60歳以上でも有効性は変わらなかった」「発症した場合も重症化しなかった」としており、EUの欧州医薬品庁(EMA)への承認申請も進めるそうだ。

 日本は、残念なことに、*2-2-1・*2-2-2のように、科学技術立国をうたいながら新型コロナワクチンの開発・製造・接種でとても先進国とは言えない状況になっている。その理由は、日本では遅いことが慎重でよいことであるかのような世論形成が行われるからだが、製法も新技術を使っている上、遅いことと正確であることとは全く異なる。さらに、日本は自ら実用化したワクチンはないのに、ロシア製などのワクチンを小馬鹿にした報道がしばしばあり、製造した国や人によってワクチンの良し悪しを評価するのではなく科学的治験に基づいて評価するのが、科学を重視する国の基本的姿勢である。

(2)日本における科学の遅れは、何故起こるのか
1)東北の復興における土地利用計画から
 *2-1-1で述べられているように、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の襲来が確実視され、新型コロナ新規感染者数は人口密度に比例しており、日本における過度な一極集中は致命的弱点を抱えていることが明らかなのに、わが国の国土政策は現状維持圧力が大きい。

 災害防止の視点からは、過去に起こった災害の理由を直視して国土計画を作らなければならないが、*2-1-2のように、東日本大震災後に高台等に集団移転する住民から市町村が買い取った跡地の少なくとも27%に当たる計568haは用途が決まっていないとのことである。しかし、東日本大震災は、街づくりを考え直す千載一遇のチャンスでもあった。

 にもかかわらず、「同事業で買い取りできるのは主に宅地で企業の所有地などは対象外であり、まとまった土地の確保がしづらかった」「危険区域からの移転を第一にした制度で、跡地利用のことは考えられていなかった」などという間の抜けたことを言い、買い取った土地を点在させて一体的利用を困難にしたまま、自治体が空き地管理の維持費支出を余儀なくされているというのは、10年もかけた復興に計画性もフィードバックもなかったということにほかならない。

 被災から10年間も大規模な復興工事をし続けているのに、土地を買い取りながら農地・林地・工業地帯などに区分けしていなかったのがむしろ不思議なくらいで、区分けしなければそれにあった防災設備を造れない筈だ。そのため、いくらかけてどういう復興を行い、どういう防災設備を作ったのかに関する内訳を、復興税を支払った国民としては聞きたいし、開示できる筈だ。この10年間、何も考えずに震災復興も費用対効果の薄い公共工事にしてしまったのでは、今後10年間復興税を支払っても同じだろう。なお、(女性の)私なら(料理と同様)出来上がりを想定しながら仕事をするため、そういう無計画で無駄なことはしないのである。

2)フクイチ原発事故の後始末と原発の廃炉から

     
 事故前のフクイチ  津波来襲   爆発直後の原発   除染土   汚染水のタンク   

(図の説明:1番左の図の事故前のフクイチは、土台を高くすることもできたのにわざわざ削って低くしていたそうで、これが最初の防災意識の欠如だ。また、左から2番目の図のように、津波が襲った時に予備電源も水没するような場所に置いていたのが2番目の防災意識の欠如だ。これらの積み重ねによって、中央の図のように、激しい爆発事故が起きて周囲を汚染したため、右から2番目の図のように、土をはぎ取る除染をしたが、これも一部だけ不完全な形で行っており、さらに除染土をフレコンバッグに入れて積んだままにしているため効果が著しく低い。さらに、1番右の図のように、デブリを冷やした汚染水を浄化した後にタンクに溜めているそうだが、トリチウム以外の放射性物質も残っており、トリチウムは除去できないとして、そのまま海洋放出すると言っているのである。つまり、リスクを認識して対応することができないのだ)

 フクイチ事故では、*2-1-3のように、爆発で原子炉建屋の上半分が吹き飛んだが、炉心溶融は長いこと認めず、また、溶融して燃料デブリは落下したままだという報道を、未だに行っている。しかし、①3号機建屋上部のプール内にあった使用済燃料の取り出しが、10年後の2021年2月にやっと終わり ②原子炉内の状態は、今でもわからないことが多く ③デブリの取り出しは、2022年に開始予定で ④機器の不具合や管理の不徹底が頻発して、3号機の地震計が故障したまま放置され2021年2月の強い地震を測れず ⑤流入する地下水等から大半の放射性物質を除去した処理水に放射性トリチウムが残っており、タンクに保管しているのが作業の大きな障害となる可能性がある 等と記載されている。

 そして、①③は、残っていた使用済燃料の取り出しを10年後にやっと終えたということであり、安全第一は重要だが、ここで考えられているのは作業員の安全だけであって地域住民や国民の安全ではない。何故なら、地域住民や国民の安全を重視すれば、速やかに処理することが最優先になるからだ。

 ②は、火星の地形さえわかる時代に、目と鼻の先にある燃料デブリの状況がわからないわけがなく、わかっても言えない状態なのだろう。さらに、④は論外で、地震計を設置していることの意味すら理解していないと推測される。

 また、⑤については、凍土壁を作って地下水が流入するのを防いだ筈なので、その工事にいくらかかって、効果がどうだったかも明らかにすべきだ。このような国民の安全をかけた緊急事態に、まさか費用対効果の低い遊びをしていたのではあるまい。

 それでも、原発汚染水のタンクが1000基を超える状態になったのであれば、チェルノブイリのように石棺にするしかなかったのではないか、日本の対応が間違っていたのではないかを検証すべきだ。また、デブリに触れた汚染水は、処理後もトリチウム以外の放射性物質を含んでいたことが長く隠されていたので、フクイチの事故処理が地域住民や国民の安全を重視して行われていたとは考えにくい。

 なお、経産省の委員会がどういう結論を出そうと、トリチウムだけしか含まない状況でも、処理水の海洋放出が水産物に対して安全とは言えない。何故なら、「希釈して基準以下にすれば安全だ」という発想をしており、安全基準を下回りさえすればよく、総量はどうでもよいと考えているからだ。わかりやすく例えれば、血圧の高い人が味噌汁が辛すぎる場合に、それを薄めて全部飲むのと同じで、その上、他の料理にも塩分が含まれすぎていれば、脳卒中になる確率が上がるのと同じだ。

 そして、これを「風評被害(事実でない噂による被害)」と強弁するのなら、「総量がどれだけ多くても希釈して基準以下にすれば害がない」ということを科学的に証明すべきだが、絶対にできないと思う。また、農水産物などの食品についても、基準値以下だから単純に安全とは言えず、多くの食品に放射性物質が含まれていれば総量が多くなるため安全ではない。そして、科学的証明もなく百万回無害だと言っても無意味なのである。

 これまでの対応を見ると、すべて、*2-1-4にも書かれているように、「処理を先送りし続けるわけにはいかない」という「仕方がない」の論理と「福島の人が可哀そう」という上辺だけの優しさ(感情論)で構成されており、地域住民や国民の安全性を科学的に立証してはいない。そのため、汚染水の海洋放出も単に漁業者に補償すればすむという問題ではなく、為政者やメディアの言うことを信じる方がむしろ愚かだということになっている。

 なお、「フクイチの廃炉は半世紀先を見据えて世界有数の廃炉技術拠点として生かす発想が必要だ」とも書かれているが、日本の対応はチェルノブイリと比較しても巨額の税金を使った割には「安全だ」と強弁して国民の人権を侵害するものでしかないため、よい見本にはならない。

 ただ、*2-1-5のように、東洋アルミと近畿大学が、「アルミニウム粉末焼結多孔質フィルター」を使って汚染水からトリチウムを60℃・低真空で分離する技術を開発した。そのため、汚染物質を外部に捨てない原則を守り、東電と政府が責任を持って汚染水からトリチウムや他の放射性物質を完全に取り除く処理を行えば、処理後の汚染水は海洋放出が可能だ。従って、放射性物質を完全に取り除く処理をした水をプールに溜め、そこで魚を飼ってしばしば魚の放射線量を計測しながら、そのプールの水を海に放出すればよいだろう。

3)新型コロナの治療薬・ワクチンの開発から
 日本は労働生産性を上げるためには付加価値の高い産業を起こしていかなければならず、そのためにも科学技術立国を目指しているのだが、*2-2-1のように、日本での新型コロナワクチンの開発は世界に大きく出遅れて実用化のメドも遠い。

 そして、治療薬もワクチンも人間の身体に入れるものであるため、「有事だから品質が悪くてもよい」というわけではないが、先進国は新型コロナの感染予防に役立つスピードで治療薬を承認し、ワクチンも開発・実用化させた。一方、日本は、100年前のスペイン風邪の時代と同じ対策しか行えなかったが、これは、著しく単純化したルールを護ることを自己目的化した融通の効かない人たちの責任である。

 実際には、日本の製薬会社も、新薬の開発・治験は日本ではなく米国で行い、そこで流通させてから日本に逆輸入することが多い。その理由は、日本は、新しいものに抵抗する国で、治験は行いにくく、新薬の承認にも長い時間がかかるため、多額の投資を要する新薬開発を国内で行うと費用対効果が悪すぎるからである。

 そのため、新しいものを評価して実用化しやすい国にしなければ、外国に追随することしかできず、付加価値の高い仕事はできない。まして、厚労省のように、旧態依然として科学の進歩についていっていないのは論外だが、日本は下水道整備も遅れており、未だに整備されていない地域も多いし、古くなりすぎていて人口増加に間に合っていない東京のような都市もある。

 ただし、子宮頸癌は、ワクチン以外にも予防手段があるため安全性の方がずっと重要になるが、新型コロナは誰もがかかりやすくワクチン以外に予防手段がない感染症はワクチンの重要性が高まる。そのため、その違いのわからない人が判断するのは困ったものである。

 なお、記事は、前例踏襲の限界として「無謬性の原則」を挙げているが、科学の進歩や環境変化を認識できずに、前例を踏襲すること自体が大失敗である。

 *2-2-2のように、新型コロナワクチンは人類が使っていなかった新技術を使って素早くできたが、私も、不活化ワクチンではなく、mRNAをチンパンジーのアデノウイルスに組み込んだワクチンを免疫力の弱い人に接種するとどうなるかわからないため不安だ。しかし、体力に自信のある人なら大丈夫だろう。

 が、新型コロナのワクチンを毎年7000億円もかけて海外から買い続けるようでは先進国とは言えず、*2-2-3のように、大阪市内にある治験専門の病院で塩野義製薬製ワクチンの治験が行われているものの、流行が収まってから完成するのでは意味がない。

 このような中、オンライン形式の総会で、*2-2-4のように、IOCのトーマス・バッハ会長が「2021年の東京オリ・パラと2022年の北京冬季オリ・パラ参加者のために、中国五輪委員会の申し出により新型コロナの中国製ワクチンをIOCが購入する」と発表された。日本はワクチンもできず、海外からの観客を受け入れない決定をするような情けない有様なので、中国製ワクチンを有難く使わせていただくしかないだろう。

(3)観光の高度化へ
1)医療ツーリズム
 このように、さまざまな理由で工場の海外移転が続いて製造業が振るわない中、観光業は海外移転のできない産業であり、期待したいところだった。そのため、*3-2のように、既に日本にある高度医療サービスと観光を結び付け、観光の付加価値を上げる「医療ツーリズム」を私が衆議院議員時代に提唱して始め、中国等のアジア圏から客が来始めていた。

 高齢化と医療の充実により、日本が先行しているのは成人病(癌、心疾患、脳血管疾患)の治療・リハビリ・早期発見のための人間ドッグで、成長産業として政府も後押ししていた筈だった。しかし、馬鹿なことばかり言っている間に、他国の医療も進歩したのである。そして、今では、癌治療に副作用ばかり多くて生存率の低い化学療法を標準治療とするなど、率先して先進医療を採用して人の命を助けようとしなかった厚労省の対応によって、日本の医療は世界の中でも高度とは言えなくなってきているのだ。

 この状況は、新型コロナで白日の下に晒された。自国の高度医療を武器に「医療ツーリズム」を行おうとしている国なら、乗客の中に新型コロナ感染者がいれば入港を促して完全なケアを行うのが当然であって、患者の存在を理由に入港を拒否するなどという選択肢はない。さらに、世界が注視している中でのダイヤモンドプリンセス号への対応も、全力を尽くしてやれることをすべてやったのではなく、杜撰きわまりない失敗続きだったのである。

 その上、*3-1のように、世界は、①ウイルスの18万3000近い遺伝子配列を分析して ②ウイルスの自然な進化(=変異の連続)をつきとめ ③進化を通じた感染力の変化 を分析する時代になっているのに、日本では、イ)PCR検査すらまともに行えず ロ)病床数が足りないからとして病院にアクセスできない患者が自宅で亡くなるケースまで出し ハ)ワクチンや治療薬も作れず 二)変異株の存在も外国から言われなければわからず ホ)ウイルスがいる限り場所を問わずに起こるのに「変異株はどこの国由来か」ばかりを問題にしている という有様だ。

 これは、日本にある高度医療サービスと観光を結び付けるどころか、日本人が他の医療先進国に治療に行かなければならないくらいの深刻な問題で、早急な原因究明と解決が必要である。

2)観光ルートへの災害と復興史の織り込み
イ)ふるさとに帰れる人、帰れない人、新しく来る人
 東日本大震災は、*4-1のように、死者・行方不明者・震災関連死者が計約2万2千人に上る大惨事だったが、これに東京電力福島第1原発(以下、“フクイチ”)事故が加わり、16万人以上が避難を余儀なくされ、今も避難中の人が約4万1千人いる。

 日本政府は、原発事故の賠償や除染費用が21.5兆円にも上るとしており、除染作業は2051年まで完了しない可能性もあるそうだ(https://www.bbc.com/japanese/video-56356552 参照)。しかし、現在は帰還困難区域でなくなった場所も、避難指示解除基準が放射線管理区域並みに高い年間20mSV以下であるため帰還できない人も多く、この人たちは“自主避難者”として自己負担になっている。

 仮に、フクイチ事故がなければ、道路・防潮堤・土地のかさ上げをすれば、もっと早く現在のニーズに沿った街づくりを行い、前より住みやすい街を作ることができただろう。そのため、37兆円(うち被災者支援は2.3兆円。生活再建支援は3千億円余り)の復興予算を投入したというのは、何に、いくら使ったかについて、国民への正確な報告を行って反省材料にすべきである。

 また、3県42市町村の人口減少率は全国の3.5倍のペースで、街づくりの停滞や産業空洞化に直面しているとのことだが、廃炉の見通しも立たないフクイチ周辺は仕方がないとしても、そこから距離のある地域でも企業誘致・帰還・移住が進まないのは何故だろうか? 国民全体への所得税の2.1%分上乗せは2037年まで続くそうなので、予算が正しく被災地の再建に繋がっているか否かを監視するのは国民の責務である。

 なお、*4-1・*4-2のように、フクイチ事故は、日本における原発の危険性とこれまでの安全神話を白日の下に晒した。電力会社と経産省が原発の構造に疎く、事故時に無力であることも明らかになった。そのため、日本では、エネルギーのあらゆる視点から、脱原発と再エネへの移行が求められるのである。

 嬉しいのは、東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた仙台市東部に、*4-3のように、災害復旧と区画整理を一体的に進める国直轄事業によって農地の再生と担い手への集約が破格の規模とスピードで実現し、大区画化による大型機械の導入で作業が効率化され、受委託を含む農地集約も進み、コメや野菜を組み合わせた複合経営に取り組む農業法人も相次いで発足して、法人への就職が若者の新規就農の窓口として機能し始め、農業に新たな活力を吹き込む担い手も現れたことである。

ロ)災害と復興史として伝承すべきこと

  
                         2021.3.14日経新聞
(図の説明:1番左の図のように、日本は、ユーラシアプレート・太平洋プレート・フィリピン海プレートが押し合い、隆起・火山噴火・地震・津波を繰り返しながらできた陸地で、左から2番目の図のように、すぐ近くに海溝や海底山脈があり、地震多発地帯であることが、東日本大震災によって明らかになった。そして、これらの現象と海底地形・GPSによる測定値などを組み合わせれば、大陸移動説を目に見える形で証明できそうである。また、右から2番目の図のように、次の巨大地震や津波も予測できるようになり、海底火山が多いため、1番右の図のように、日本の排他的経済水域にはレアアース等の地下資源も豊富だということがわかってきている)

 「伝承」するにあたっては、綺麗事を並べてもすぐに実態が見破られ、リピーターは来ない。日本だけでなく世界の関心を集めるには、知る価値のある伝承にすべく、21世紀に起こったが故に残された迫力ある映像やそれが起こった原因に関する深い考察が必要だ。

 そして、東日本大震災をきっかけとしてわかったことは、上の図のように、日本はユーラシアプレート・太平洋プレート・フィリピン海プレートが押し合って火山噴火・隆起・地震・津波などを繰り返しながらできた陸地で、次の巨大地震や津波も予測できるようになり始め、日本の排他的経済水域内には海底火山が多いので、レアアースやメタンハイドレートなどの地下資源が豊富だということだ(海洋基本法:https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/16620070427033.htm 参照)。

 そのため、伝承館に残してもらいたいものは、日本で火山の噴火・地震・津波が周期的に起こった歴史的事実(歴史書・神社の記録・地層などから組織的に集める)とそのメカニズムに関する科学的な説明であり、それによって、*4-5のような、次の大地震に関する想定も信憑性を持つ。さらに、海底の地形も含めてこれらの事実をしっかり解析すれば、大陸移動説や地球の営みまで証明され、ノーベル賞級の研究になることは確実だ。また、21世紀ならではの映像と記録のものすごさもあり、世界の観光客や研究者が注目すると思われる。

 しかし、*4-4には、「黒い湖」として枯れ田に置かれた黒いフレコンバッグの山のことが書かれており、10年間も仮置き場としてフレコンバッグを積んだままにしていること、雨風に晒され続けてフレコンバッグが傷み、汚染水や内容物が外部へ漏れそうなことが書かれている。そのため、3兆円以上もかけて、何のために除染作業をしたのか疑問に思う。

 私は、ずっと前にもこのブログに記載したのだが、仮置きや中間貯蔵を行って意味のないことに多額の費用を使うのではなく、直ちに最終処分法を決めて最終処分するのがよいと考える。それには、放射線量の高い帰還困難区域にコンクリートで除染土を入れるプールを作り、そこに除染土が入ったフレコンバッグを集めてかさ上げとし、コンクリートの蓋を被せて密閉し、その上に汚染されていない土を盛って自然公園や災害記録館などを作るのが唯一の解だと思う。

 「東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)」は、フクイチから北へ3キロほど離れたところに建てられたそうだが、この伝承館は、東日本大震災・原発事故・復興の真実を21世紀らしい映像と考察を持って地元住民の率直な解説とともに開示して欲しい。そして、原発事故から再エネへの移行も含む壮大な展示をして初めて、大きな付加価値を生むと考える。

3)観光ルートへの歴史の織り込み
イ)弥生時代(約12,000年前~250年頃)の遺跡


吉野ヶ里の位置 付近の路線図  吉野ヶ里復元図     復元された吉野ヶ里遺跡

(図の説明:1番左の図に、吉野ヶ里遺跡の場所が記載されているが、ここは佐賀県鳥栖市・福岡県太宰府市・福岡県久留米市に近い。左から2番目の図に、近くの鉄道路線が書かれており、鹿児島本線の二日市駅の近くに太宰府がある。また、筑肥線は、福岡市営地下鉄との直通運転があり、福岡駅・福岡空港に直結しており、筑肥線の駅名には、日本語かなと思われるものもある。中央の図が、吉野ヶ里遺跡の復元図・右の2つが復元された吉野ヶ里遺跡で環濠集落になっている。そして、弥生時代の食事も結構グルメだ)

 「博多⇔姪浜」間は福岡市営地下鉄だが、上の左から2番目の図の「姪浜⇔下山門⇔周船寺⇔波多江⇔筑前前原⇔加布里⇔筑前深江⇔唐津⇔伊万里」は、*5-1に記載されているJR九州のJR筑肥線で相互乗り入れをしている。そして、「乗降客が少ない」という理由で、JR筑肥線は、現在、単線・ディーゼルカー・15~60分に一本 である。

 しかし、*5-2の①にあたる地域は、近畿ではなく(魏志倭人伝の方角を変更して、この倭国を近畿に誘致すべきではない)、九州北部のこの地域だということだ。②に、倭の北岸として帯方郡から倭に至る道筋に書かれている狗邪韓国は朝鮮半島にある釜山だ。

 その後、③で始めて海を渡って対馬に至り、④でまた海を渡って壱岐に着く。そして、⑤でさらに海を渡って末盧国(唐津市、九州本土)に着いており、山と海すれすれに住んで魚やアワビを捕っていたのは呼子付近だろう。魏の使者はさらに進み、⑥の伊都国(現在の筑前前原付近)が帯方郡の使者が常に足を止める場所であり、その後、⑦の奴国(福岡市)に着いている。そして、ここまでの地理には誰も異論がなく、魏の使者は、筑肥線に沿って進んでいるのだ。

 次に、⑧の不弥国(フミ国、現在の宇美町?)から水行二十日で、⑨の投馬國(投与國《豊国、大分県中津市or宇佐市》の書き違いではないかとも言われている)に着き、そこから水行十日陸行一月で、⑩邪馬壹國(女王が都とする所)と書かれているため、女王国は近畿にあるとする説が出ているが、急に近畿になるのは不自然だ。また、方角は正しく、距離の方が日数で示されて一定の基準があったわけではないため、邪馬台国は九州北部にあったと中国の学者が断言している。さらに、近畿説では、㉘の女王国の東に海を渡って千余里行く国が有って倭種だという記録とも合わないため、この海を渡って千余里というのが瀬戸内海のことだと考えられる。

 また、⑫の女王国の南にある狗奴国(クナ国、クマ国《熊本県、熊襲》の聞き違いではないか?)は卑弥弓呼素という男子が王で、㊱のように、倭女王の卑弥呼と争っていた。そして、倭女王の卑弥呼は、㉜のように、魏に献上品を送って親魏倭王として金印を紫綬されている。その後、㉟のように、245年に倭の難升米に黄色い軍旗が与えられ、㊲のように、247年に卑弥呼は亡くなって大きな塚が作られたとのことだ。

 その後に男王を立てたが国中が争ったので、十三歳の壱与(トヨ《豊、大分県》の書き違いではないかとも言われている)を立てて王と為し、国中が安定したそうだ。

 詳しく書くと長くなるため結論だけ書くと、邪馬台国は現在の山門もしくは吉野ヶ里にあり、科学的な証拠を示した上で筑肥線を日本海側のリアス式海岸を走る列車(小田急線のように、急行や特急のロマンスカーがあってもよい)にすればよいと思う。この時、伊万里を含め、それより西の松浦市、平戸市行きなども相互乗り入れして、EVかFCV電車を直通運転させれば、どこも史跡に事欠かず、リアス式海岸がきれいで、魚の美味しい地域である。

ロ)縄文時代(約16,000年前~約3,000年前 )の遺跡

     
  山内丸山遺跡(縄文時代の遺跡)       縄文時代の土器・土偶・埴輪

 「北海道・北東北の縄文遺跡群」が、*5-3のように、青森県など4道県が2021年の世界文化遺産登録をめざしているそうだ。青森市の三内丸山遺跡では、ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」の調査員が、政府提出の推薦書の内容を確認し、調査した結果をもとにしたりして、2021年5月に4段階評価のいずれかを勧告し、この勧告をもとにユネスコの世界遺産委員会が登録の最終判断をするそうだ。

 三内丸山遺跡は縄文人の生活に関してこれまでの常識を覆し、縄文人は意外にグルメな生活をいしていたのだそうで、世界文化遺産に登録されればまた新たな付加価値が加わる。

・・参考資料・・
<政治に女性登用を増やすと、何が変わるか>
*1-1-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1278848.html (琉球新報社説 2021年2月28日) 自治体人事に性差 女性登用へ組織改革を
 男性は企画立案が得意、女性は家事や育児に適する―というような固定観念が人事配置に反映されているのか。本紙が男女共同参画について沖縄県と県内全11市に聞いたアンケートで、全自治体で総務や企画に関する部署に男性が多く配置される一方、福祉や医療などの部署には女性が多い傾向にあることが分かった(23日付)。財政や人事、総合計画などに関わり「行政の頭脳」とも称される総務や企画系部署は男性が67%を占める一方、介護や子育て、保健衛生などを扱う部署は女性が59%と半数を超えた。管理職で見ると、総務企画部署は女性比率がさらに低くなる。総務企画に所属する女性管理職はわずか12%だったが、福祉医療系は34%だった。行政の中で性別が人事配置の判断材料になっている証左ではないか。子育てや介護を含めた「妻・嫁」の役割と結びつけ、固定化されたジェンダーバイアス(性に基づく差別や偏見)で配置先を決められてしまうことが当たり前のこととして行われてきた。県内41市町村の管理職に占める女性の割合は14%で、全国平均の15%を下回る。うち7村は女性管理職ゼロだ。政府が目標として掲げる「指導的地位に占める女性比率30%」の半分にも届かない。公平な採用と人事配置が当然とされる行政機関でも、女性から見ると壁があることが分かる。そもそも採用面から不利な立場に置かれている。全自治体の職員に占める男女比率はおおむね6対4と女性が少ない。ただし非正規職員は男性が約24%なのに、女性は約76%に上る。配属も福祉医療系に偏り、昇進についても同様だ。男性にはさまざまなポジションへの門戸が開かれているが、女性は男性よりも限られた選択肢しか与えられていない。自治体職員からは、激務で残業の多いイメージの職場は子育て中の女性が希望しないなどの声が上がっているが、それでは、女性医師は出産などで離職するからと女子に不利な得点操作をしていた東京医科大の発想と変わらない。男女ともに長時間労働の解消が先決で、それを理由に女性を閉め出すことはあってはならない。男性は仕事、女性は男性を支えて家事や育児を担うという性別役割分担は長く強いられてきた。それは育児休業の取得率が女性はほぼ100%だったのに、石垣と名護、宮古島の3市は取得した男性職員が1人もいなかったことにも現れている。仕事第一で激務や残業を男性側に強いるということで、男性にとっても不公平な社会ではないか。ジェンダーバイアスによる人事配置は企業や大学を含め至るところにある。行政機関が率先して長年続く不公平な仕組みを認識し、組織の中核を担う部署や女性が少ない部署での女性の配属や登用を進め、組織構造を変えていかなければならない

*1-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP2J72SYP2JULOB00J.html (朝日新聞 2021年2月17日) 「ほんとに日本は変わらない」 林文子市長、森氏発言に
 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長=辞任表明=による女性蔑視発言をめぐり、横浜市の林文子市長(74)は16日の記者会見で、行政や企業のトップに上り詰めた自らの人生を「『忍』の一字で生きてきた」と振り返り、「意思決定の現場に女性がいるのは大変重要。男性の意識改革が必要だ」と述べた。市長就任前にダイエー会長などの要職を務めた林氏は、自身が社会人になった1965年当時を「女性が意思決定することを誰も考えていなかった」と振り返ったうえで「ほんとに日本は変わらない。(女性の)中間管理職がある程度の仕事ができるところまでは来たが、ほんとに意思決定の、企業の役員レベルに(女性が)入れるかというと、いま立ち止まっている状態だ」と話した。また、「私は我慢してうまくいった例」とし、自らの課題として「言いたいことをガーンと言わない癖が付いてしまっている。バーンと言うべきですね」とも語った。組織委の新会長選びについては「(五輪までの)時間がない中で男尊女卑とかの言葉が飛び交って、重要なポスト(を誰が務めるか)が議論されているが、これはいいことかもしれない。みんなが、おかしいということに耳を傾けることが大事だ」と話した。

*1-1-3:https://www.asahi.com/special/thinkgender/?iref=kijiue_bnr (朝日新聞 2021年3月3日) 「女性が主婦業を追求した方が」日経、コラムを一部削除
 日本経済新聞の電子版で2日に配信された外部筆者のコラムに「女性が主婦業を徹底して追求した方がいい」などとする記述があり、日本経済新聞社は「不適切な表現があった」として一部を削除した。
削除されたのは、IT企業「インターネットイニシアティブ」(IIJ)の鈴木幸一会長(74)がコラム「経営者ブログ」に「重要な仕事、『家事』を忘れている」と題して書いた文章の一部。鈴木氏は東京都が審議会の委員の女性の割合を4割以上にする方針を掲げたことについて、「変な話」とし、「男女を問わず、にわか知識で言葉をはさむような審議会の委員に指名されるより、女性が昔ながらの主婦業を徹底して追求したほうが、難しい仕事だし、人間としての価値も高いし、日本の将来にとっても、はるかに重要なことではないかと、そんなことを思う」などと記していた。「口にしようものなら、徹底批判されそうだ」とも書いた。この部分は2日午後に削除され、コラムの冒頭に「一部不適切な表現があり、筆者の承諾を得て当該部分を削除しました」と追記された。日経広報室は削除の経緯について、朝日新聞の取材に「筆者とのやりとりや編集判断に関する質問には答えられない」とコメントした。IIJ広報部によると、2日午後2時ごろに日経側から「SNSなどで批判的な意見が出ているので削除したい」と鈴木氏に連絡があり、受け入れたという。広報部の担当者は取材に「社としては、女性が長期的に活躍できる環境の整備に取り組んでいる」とした。日経電子版では「経営者ブログ」について、「著名な経営者が企業戦略や日常的な発想など幅広いテーマで本音を語り、リーダーの考え方や役割も学べるコラム」と紹介している。鈴木氏の「経営者ブログ」は日経電子版で10年以上にわたって続いている。一部が削除された回では、掃除や洗濯などの家事に追われていた母親の姿を回想するなかで、家事の大変さに触れていた。鈴木氏は2月16日に配信された同じコラムで、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長(83)が「女性がいる会議は長くなる」などと発言し、その後辞任したことについて、「『女性蔑視』と騒ぎ立てる話なのだろうか」「女性にとっては、聞き捨てならない話だと、大問題になったのだろう」と書いていた。

*1-1-4:https://digital.asahi.com/articles/ASP334Q0FP32ULFA016.html?iref=comtop_Business_03 (朝日新聞 2021年3月3日) 「日本は男性優遇」 女性75%、男性54% 電通調査
 8日の国際女性デーを前に、電通総研が実施したジェンダーに関する意識調査で、男女の意識差が浮き彫りになった。社会全体が男女平等になっているかを尋ねたところ「男性の方が優遇されている」「どちらかというと優遇されている」と答えた女性は計75・0%に上ったのに対し、男性は54・1%だった。調査は、全国の18~79歳の3千人にインターネットで実施し、項目ごとに男女が平等になっているかなどを尋ねた。「社会全体」については「男性の方が優遇」「どちらかというと優遇」との回答が、男女あわせた全体で64・6%だった。「慣習・しきたり」では64・4%、「職場」では59・6%だった。「男性の方が優遇」「どちらかというと優遇」と答えた人の割合は、男女の間で差が目立った。「法律・制度」については女性では60・6%に上ったのに対し、男性では32・7%。「職場」については女性70・2%に対し男性48・8%、「家庭」は女性44・0%に対し男性22・7%だった。いずれも20ポイント以上の差が開いた。自由回答の欄では「婚姻に関わる制度が平等でない」「夫婦別姓が認められていない」といった意見があった。調査にあたった電通総研の中川紗佑里氏は「自由回答で、女性は不利な思いをしたことを書く例が多かった。性別によって経験に差があり、男性と女性で見えている景色に違いがあるようだ」と話した。政府の男女共同参画基本計画では「指導的地位にある女性」の割合を、2020年代の可能な限り早い時期に30%程度とする目標を掲げている。企業の管理職の女性比率が30%になる時期を尋ねると、平均で「24・7年後」だった。女性首相の誕生は平均で「27・9年後」、国会議員の女性比率が50%となるのは「33・5年後」だった。

*1-2-1:https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=730999&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2021/3/1) 入管法の改正案 難民認定の見直しこそ
 政府は、入管難民法の改正案を閣議決定した。国外退去処分となった外国人の入管施設への収容が長期化している問題の解消を図るのが狙いという。退去命令を拒む人への罰則規定を設けるなど、在留資格がない人の速やかな送還に主眼を置く内容となっている。不法滞在が発覚した人の大半は自らの意思で帰国している。一方で長期収容者の多くは帰国を拒んでいる。帰国すれば身に危険が及ぶ恐れがあったり日本に家族がいたりするためだ。もちろん国外退去処分となった外国人には速やかに出国してもらうのは当然である。しかし何年も収容されながら帰国を拒み続けている人に、厳罰化の効果があるかどうかは疑問だ。長期化する収容の背景にあるさまざまな事情に目を向けなければ、問題の解決にはつながるまい。人権上の観点から収容・送還制度を見つめ直し、慎重に国会審議を行う必要がある。不法残留して摘発された外国人は、送還されるまで原則として入管施設に収容される。2019年末の収容者は942人に上った。このうち462人は収容期間が6カ月以上に及び、3年以上の人も63人いた。長期収容が常態化する中、ハンガーストライキで抗議する外国人が相次いでいる。2年前には長崎県の施設でナイジェリア人男性が餓死した。これをきっかけに出入国在留管理庁が有識者会議を設け、法改正に向けて検討を進めてきた。改正案でとりわけ懸念されるのは、難民認定申請の回数制限だ。政府は、認定申請中は母国に送還しないとする現行法の定めに基づき、申請を繰り返す人が多いとみている。送還逃れを目的にした申請の乱用が収容の長期化を招いているとし、3回目以降の申請で原則送還できるようにする。自ら早期に帰国すれば、再来日できるまでの期間を短縮して優遇するという。だが日本は諸外国に比べて難民の認定率が極端に低い。19年には1万375人が申請したが、44人しか認められなかった。何度も申請してようやく認定されるケースも少なくない。本来は保護されるべき人が強制送還され、本国で弾圧を受ける恐れもある。日本が加わる難民条約にも反し、看過できない。難民認定制度の見直しこそ必要ではないか。収容の在り方にも大きな問題がある。国連の委員会などは、収容の必要性が入管の裁量で決められ、無期限の収容が可能になっていることを問題視し、繰り返し指摘している。改正案では、現行の「仮放免」に加え、一時的に施設外での社会生活を認める「監理措置」が新設される。支援者らが「監理人」として状況を報告する義務を負い、就労したり逃げたりすれば罰せられる。しかし外部のチェックが一切ないまま、入管の裁量権がブラックボックス化している根本的な問題は何も変わっていない。政府の改正案に先立ち、野党も対案を国会に提出している。難民認定のための独立機関を置き、収容は裁判官が判断することなどを盛り込んでいる。一定の透明性や人権への配慮などは評価できる。政府案の問題点を修正するためにも、積極的に取り入れるべきだ。

*1-2-2:https://toyokeizai.net/articles/-/414397 (東洋経済 2021/3/2) 日本も無視できず「EUでワクチン遅延」の大問題、域内生産しているにもかかわらず接種率が低い
 河野太郎規制改革担当相によれば、日本の最新の新型コロナウイルスのワクチン入手に関して、アメリカの製薬大手ファイザー製のワクチンが今年6月末までに高齢者全員が2回打てる分量を各自治体に供給できるとしている。ただし、欧州連合(EU)の承認次第だと付け加えた。6月末とは東京五輪・パラリンピックを控えた国とは到底思えない遅さだ。世界的に見て感染者数や死者数が少ないとはいえ、五輪開催への日本政府の本気度が海外からはまったく見えない。一方、日本のワクチン確保のカギを握るEUも、ワクチン接種は進んでおらず、批判の声が上がっている。
●ファイザー製ワクチンの供給に遅れ
 EUは2020年6月にコロナ対策の新制度を設立。加盟国に代わり、EUがワクチン購入の交渉をすることになった。これは交渉コスト削減と加盟国間の争奪戦を回避するためだった。加盟国はこの制度に参加する義務はないものの、全27加盟国が参加することを選択した。EUはファイザーとドイツのビオンテックが共同開発したワクチンやアメリカのモデルナ製ワクチン、イギリスのアストラゼネカ製ワクチンをそれぞれ契約している。ところが、ファイザー・ビオンテック製ワクチンについては、ファイザーがベルギー工場の能力を増強する間、配送が一時的に減少し、契約どおりの供給ができなくなった。さらにファイザーは契約順に供給するとして、契約が遅れたEUは後回しにされた。EUは契約違反と批判したが、ファイザー側は、納期は努力目標にすぎないと反発し、いまだに両者はかみ合っていない。フランスのサノフィがファイザー・ビオンテック製ワクチンの製造支援に手を挙げたものの、製造態勢を整えるのに夏までかかるという見通しを明らかにしている。ファイザー・ビオンテック製だけではなく、モデルナ製ワクチンにも供給に問題が発生し、フランスとイタリアでは予想を下回る供給しか受けられていない。加えて、英アストラゼネカ製ワクチンもベルギーとオランダの工場での生産が遅れており、供給は不足状態だ。実は、今年1月にEUを離脱したイギリスは、EU域内で製造しているアストラゼネカ製ワクチンを最優先に入手している。EUはおひざ元で製造されるワクチンが注文通りに供給されないことにいらだち、EU製造ワクチンをEUの承認なしに域外に持ち出せない輸出規制をかけた。例えば、日本国内にワクチンの製造工場があるにもかかわらず、そのワクチンが韓国や台湾、東南アジアに優先的に供給されれば、日本国民は不快感を持つだろう。EUの規制は当然ともいえる。ところが、この輸出規制は思わぬところでイギリスとの摩擦を生んだ。イギリス領北アイルランドとアイルランドの国境に定められたアイルランド議定書に抵触したのだ。アイルランドと国境を接するイギリス領アイルランドは、ブレグジット後も物流でEUのルールに従うことで国境検問の復活を回避している。ワクチンの輸出規制で検査が必要になれば、国境検問復活につながるとしてイギリス政府は猛反発した。
●EU域外への輸出差し止めの懸念も
 EUは2月25日の首脳会議で新型コロナの問題を集中協議し、製薬会社からのワクチン供給が契約より大幅に削減されている問題について、「企業はワクチン生産の予測可能性を確保し、契約上の納期を守らなければならない」とあらためて訴え、安定供給するよう企業側に圧力をかけた。さらにフォンデアライエン欧州委員長は「必要なワクチンを確保するためにEU製ワクチンの域外輸出を禁止する措置は取らないことにしたが、EUとの契約に背くような域外流出の監視を続ける」と説明した。つまり、ファイザー・ビオンテック製やアストラゼネカ製のワクチンがEUの署名した契約の量を満たしていない現状を考えれば、実質的には製薬会社の輸出差し止めを警告できるという理屈になる。EUを離脱したイギリスにとっては不満だ。これは日本も無視できない。冒頭の河野規制改革担当相の「ワクチン輸入はEU次第」という発言を踏まえると、日本にも調達の不確実性があることを示している。そうなると今度は交渉力が物をいうことになり、製薬会社とEU双方に日本政府がどれだけ交渉できるかに供給は左右される。ここで浮かび上がるのが、ワクチン接種にスピード感のあるイギリスと遅れるEUとのギャップだ。イギリスがファイザー・ビオンテック製ワクチンを承認したのは11月で、ワクチンの安全性を確認するEUの欧州医薬品庁(EMA)が承認した3週間前だった。アストラゼネカ製に関しても、イギリスでは昨年12月30日に1週間で承認したが、EUの承認はその1か月後の1月末だった。ワクチン獲得スピードの遅延で、ドイツのビルト紙は、メルケル独政権に対して「予防接種のカタツムリ」とノロノロぶりを揶揄している。
●EUの官僚主義に原因
 EUのワクチン接種の遅延には、ワクチン承認の厳格さと煩雑な承認プロセスが大きく影響していることは否定できない。ただ、イギリスのワクチン専門家は、EMAのアストラゼネカワクチンの承認基準は、イギリスの基準と変わらないことを明かし、単にEUの官僚主義による承認の事務的遅れが影響していると指摘している。また接種の実施に関しても、EUは事情の異なる27カ国間の調整に手間取っている。これもやはりEUの強烈な官僚主義が原因の1つだ。それを嫌って離脱したイギリスの接種が、圧倒的なスピードで進んでいるのは当然ともいえる一方、EUは激しい争奪戦の敗者となりかねない。イギリスは、ワクチンを少なくとも1回接種した人の人口に占める割合は2月26日時点で29%とイスラエルに次ぐ世界2位だ。イギリスに住む筆者の友人家庭は、同居中の30歳の息子を含め、全員が1回目の接種を済ませ、2回目ももうすぐだと言う。それに対して、EUでは最も接種人数が多いデンマークで7.1%、ドイツ4.6%、フランス4.3%と圧倒的に低い。EUによるワクチン供給の遅れに業を煮やし、独自に調達を始めた加盟国もある。日頃から独裁統治と独自路線でEUから批判されるオルバーン・ヴィクトル首相率いるハンガリーは、中国の製薬会社シノファームが開発した新型コロナウイルスワクチンを2月16日に入手し、接種を始めた。というのも、加盟国はEUが合意していないワクチンメーカーとの個別交渉が許可されている。ハンガリーはロシアのスプートニクVワクチンの購入にも同意している。スペインもロシア製ワクチンを拒まないとしている。
●ワクチンに対する不信感も
 接種遅延には、ワクチンへの不信感の広がりもある。例えば、今年1月、EUの医療規制当局は、すべての年齢層にアストラゼネカワクチンを使用することを承認した。それにもかかわらず、フランス、ドイツ、イタリアを含む多くのEU諸国の規制当局が、65歳以上の人々に使用すべきではないと勧告したことで、ワクチンへの不信感が高まった。フランスのマクロン大統領は、アストラゼネカ製ワクチンは高齢者には効果がないと発言。アストラゼネカ社は「なんの科学的根拠もない発言」と強く批判し、発言は撤回されたものの、一度広まった噂は今も影響を与えている。イギリスではワクチンに関する情報開示を随時行い、透明性を高めるだけでなく、不必要なネガティブ情報を流さないようメディアが気を付けている。一方、EUのメディアは科学的根拠のないネガティブ情報も流す。EUの官僚主義を一朝一夕に変えることは難しい。とはいえ、今回の新型コロナのような、人の生命がかかっているときのリスク対応という点では、大きな足かせとなっている。

*1-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR02EHO0S1A200C2000000/ (日経新聞 2021年2月3日) ロシア製ワクチンに91%の効果確認、英誌論文
 英医学誌ランセットは2日、ロシアで開発された新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」について臨床試験(治験)の最終段階で91.6%の効果が確認されたとする論文を発表した。ロシアは疑問視する意見があがっていたワクチンの安全性を強調し、外国への供給拡大を目指す。スプートニクVはロシアが2020年8月に承認し、世界初のコロナワクチンだと主張した。治験の完了を待たずに承認して接種を始めたため、安全性が懸念されていた。米欧製のワクチンに続いて主要な医学誌で最終段階の治験での効果が指摘されたことで、期待が高まる可能性がある。論文では20年9~11月に治験に参加した約2万人についてワクチン投与後の発症数などを調べた。ワクチンが原因とみられる重大な副作用は報告されず、60歳以上でも有効性は変わらなかった。発症した場合も重症化はしなかったという。ロシアはスプートニクVで「ワクチン外交」の攻勢を強めている。海外供給を担うロシア直接投資基金のドミトリエフ総裁は2日、スプートニクVを承認した国がロシアを含めて16カ国にのぼり「来週末までに約25カ国になる」と述べた。ドミトリエフ氏はスプートニクVが変異ウイルスにも効果があると主張した。欧州連合(EU)で医薬品を審査する欧州医薬品庁(EMA)への承認申請も進める。ランセットでは20年9月にもスプートニクVの初期段階の治験で抗体をつくる効果を確認したとの論文が発表された。欧米の複数の科学者から検証が不十分だとの指摘があがっていた。

<科学の遅れは、何故起こる?>
*2-1-1:https://kahoku.news/articles/20210306khn000042.html (河北新報社説 2021年3月7日) 東日本大震災10年/危機回避の鍵は分散にあり
 かつて東日本大震災の被害に関し「まだ東北で良かった」と発言し、引責辞任した復興相がいた。弁解の余地などない失言ではあるが、発言の後段はこう続く。「もっと首都圏に近かったりすると莫大(ばくだい)な、甚大な被害があったと思っている」。人口密集地帯が大地震に見舞われた場合に増大する危険性を指摘した。事は人命。東北と首都圏の単純な比較は非難に値するが、危機管理意識としては見逃せない視点を提供している。首都直下地震や南海トラフ巨大地震の襲来が確実視されている。新型コロナウイルスの新規感染者数は、可住地人口密度にほぼ比例することが知られている。大災害やウイルスのパンデミック(世界的大流行)に、一極集中が致命的な弱点を抱えていることが明白なのに、わが国の国土政策は旧態依然のままだ。地方分権とセットで国土構造を分散型に転換しなければならない。首都機能移転論議が熱を帯びていた1990年代、「財界のご意見番」といわれた故諸井虔さんは「防災第一」を理由に小規模な首都機能移転を提唱。最高裁判所の移転先候補地として、仙台市を例示した。阪神大震災(95年)があり新都建設の機運が盛り上がったが、景気低迷などもあり移転論は急速にしぼんだ。関東から近畿に至る大都市圏には国内GDPの7割を超える生産機能が集中している。とりわけ首都東京には国会、中央省庁、本社、大学などが軒先を並べ、有事の際に中枢機能が失われる危険性は何度も指摘されてきた。にもかかわらず、中央省庁の地方移転は文化庁の京都移転にとどまっている。90年代の首都移転論議では政官業の癒着を物理的に断ち切ることもサブテーマの一つだったが、総務省の高級官僚が霞が関周辺で利害関係者の放送関連会社から夜な夜な高額接待を受けていた不祥事が明るみに出た。一極集中は密談の培地でもある。一方で、パソナグループが東京の本社から経営企画や人事、財務などの機能を兵庫県淡路島に段階的に移すなど、事業継続計画(BCP)の観点から本社機能の分散を目指す動きが加速している。リモートワークの普及や働き方改革の必要性から、民間ベースでの「地方創生」は避けて通れない経営課題になっている。新型コロナウイルスのワクチン接種を巡っても、国の迷走を尻目に東京・練馬区や三重県桑名市などが独自の「モデル」を提示し地方自治体の力量を示している。新型ウイルスの感染拡大からわれわれが学んだのは過密のリスクだったはずだ。社会的距離の確保を国土政策に落とし込めば、出てくる解は「分散」「分権」になる。大地震と疫病の教訓から学び、行動を起こすための時間はさほど残されていない。

*2-1-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/639144 (佐賀新聞 2021/3/1) 震災移転跡地27%用途決まらず、細かく点在、一体利用困難
 東日本大震災後、岩手、宮城、福島3県の市町村が高台などに集団移転する住民から買い取った跡地のうち、少なくとも27%に当たる計568ヘクタールの用途が決まっていないことが1日、共同通信のアンケートで分かった。買い取った土地が点在して一体的利用が難しいのが要因。自治体は空き地管理の維持費支出を余儀なくされている。専門家は、災害に備え事前に土地の利用方法を検討するよう呼び掛ける。昨年12月~今年2月、土地を買い取り、津波で被災した地域の住民らに移転を促す国の防災集団移転促進事業を実施した26市町村に尋ねた。計約2131ヘクタールが買い取られていた。利用状況の集計結果がない宮城県山元町を除き、用途未定地が最も広いのは60ヘクタール程度と回答した宮城県石巻市。55ヘクタールの福島県南相馬市は維持管理に年約1千万円を要しているという。約10ヘクタールを買い取った同県いわき市は78%が未定で、率としては最大だった。岩手県では6市町それぞれで3~4割超が未定のままだ。宮城県名取市など大半の自治体が「跡地が点在し、一体的利用が難しいこと」を理由に挙げた。同事業で買い取りできるのは主に宅地。企業の所有地などは対象外で、まとまった土地の確保がしづらい。岩手県大船渡市は地権者と協力し、民間の所有地と隣接する跡地を一体化して大規模化、事業者を募る取り組みを2017年度に始めた。岩手県釜石市や宮城県岩沼市は民有地と跡地の交換による土地集約化を検討。釜石市の担当者は「民有地を買収する方法もあるが、明確な利用計画がないと難しい」と吐露する。東北大大学院の増田聡教授(地域計画)は「危険な区域からの移転を第一にした制度なので、跡地利用のことは考えられておらず、このような問題に陥りやすい」と指摘。「南海トラフ巨大地震のような災害が予想される地域では、被災後の土地利用法を事前に検討しておくことも一つのやり方だ」と話す。

*2-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210309&ng=DGKKZO69788760Z00C21A3EA1000 (日経新聞 2021.3.9) 〈3.11から10年〉半世紀先を見据え廃炉の道筋描け
 東京電力福島第1原子力発電所で爆発が起き、原子炉建屋の上半分が吹き飛ぶ。日本科学未来館で開催中の「震災と未来」展の記録映像からは、すさまじい地震と事故の記憶がよみがえる。炉心溶融(メルトダウン)で大量の放射性物質を出した原発を解体し、溶け落ちた燃料デブリを安全に取り出して管理する。除染を徹底する。一連の廃炉作業がいかに困難かは容易に想像がつく。
●やむを得ぬ計画の遅れ
 政府と東電は事故から30~40年で廃炉を終える目標を定め、今も毎日4000人前後が作業にあたる。事故直後、防護服に身を包み密閉度の高いマスクを着けないと立ち入れなかった敷地内は、大部分普段着で歩けるようになった。だが、計画は遅れ気味だ。3号機の建屋上部のプール内にあった使用済み燃料取り出しは4年半遅れて始まり、今年2月に終えた。最難関とされるデブリの取り出しは当初計画より1年程度遅く、2022年内に開始の予定だ。原子炉内の状態は今なお、わからないことが多い。スケジュールありきではなく安全第一に、段階的かつ柔軟に作業を進めるのは現実的だ。遅れはやむを得ない。ただ、頻発する機器の不具合や管理の不徹底は、大事に至っていなくても見過ごせない。3号機の地震計が故障したまま放置され、今年2月の強い地震の揺れを測れなかったのは反省を要する。今後、作業の大きな障害となる可能性があるのが、流入する地下水などから大半の放射性物質を除去した後の処理水の扱いだ。放射性トリチウムが残っているため、すべてタンクに保管している。その総数は1000基を超え、このままでは22年夏~秋には増設余地がなくなる。デブリ取り出し用の機材やデブリを保管する場所を確保できなくなるからだ。トリチウムは正常な原発からも出ており、基準濃度まで薄めて海などに放出している。経済産業省の委員会は20年2月、処理水の海洋放出が他の方法に比べ「より確実」とする報告書をまとめた。だが、水産業を営む人たちの反対は根強い。処理水はもともとデブリに触れた水で、他の原発とは違うと受け止めている。海洋放出が始まれば風評被害で再び打撃を受け、10年間の再建努力が水泡に帰すとの懸念はもっともだ。それでも、処理を先送りし続けるわけにはいかない。政府と東電は一体となって地元と向き合い、不安の払拭に全力をあげるべきだ。相応の補償措置も必要だ。時間はかかっても、信頼関係なしに問題解決はない。国内外の消費者に対しても水産物の検査数値などを示し、安全性について理解を得なければならない。「廃炉完了」がどんな状態を指すのかについても、そろそろ議論を始めるときだ。最終的に安全できれいな更地になれば理想的だ。一部除染しきれず、立ち入り禁止区域を残す道なども考えられる。政府も東電もデブリに関するデータや情報の不足などを理由に、検討は時期尚早だという。しかし、考え得るシナリオから遡り、集めるべきデータをはっきりさせる進め方もあろう。
●最終状態の議論開始を
 最終状態のあり方は避難した人たちの帰還判断にかかわり、復興計画に影響する。あらゆる可能性を排除せず、避難者も含めて率直かつ継続的に議論することが不可欠だ。福島第1の廃炉は単なる後片付けに終わらせず、半世紀先を見据えて世界有数の廃炉技術拠点として生かす発想が必要だ。世界では約500基の原発が稼働または建設中だ。万が一の事故や廃炉の際、福島の経験は役立つ。日本原子力研究開発機構は福島県内に、遠隔操作技術の開発やデブリの分析用の先端機器を備えた施設をつくった。これから魂を入れていかねばならない。新型コロナウイルス感染症のためすぐには難しいが、海外の研究者らが長期滞在し活発に国内の研究者と交流できるのが望ましい。廃炉の解析データは世界からアクセスできるようにすべきだ。政府の福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想とも連動させたい。復興推進会議が決めた、省庁の縦割りを排した分野横断的な国際教育研究拠点の計画は検討に値する。若い世代が輝ける環境を整えてほしい。

*2-1-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14827738.html (朝日新聞 2021年3月10日) 原発汚染水、先送り続く 政府、復興方針で時期示さず
 東日本大震災から10年を前に、政府は9日、2021年度以降の復興の基本方針を改定し、閣議決定した。懸案となっている東京電力福島第一原発の処理済み汚染水の処分方法については「適切なタイミングで結論を出す」などと記すにとどまった。漁業者らとの調整が進まず、決定の先送りを続けている状態だ。改定は19年12月以来。21年度以降の5年間を「第2期復興・創生期間」と位置づけ、福島の復興・再生には「引き続き国が前面に立って取り組む」とした。住民が戻らない地域に移住を促す対策などを進める。一方、処理済み汚染水の対応は「先送りできない課題」としながらも、「風評対策も含め、適切なタイミングで結論を出していく」としただけで、具体的な決定の時期は示せなかった。汚染水問題では昨年2月、専門家による経済産業省の小委員会が、放出基準以下に薄めて海洋放出する方法を有力と提言していた。これを受け、福島県大熊、双葉両町は、処分方針の「早期決定」を政府に要望。菅義偉首相も昨年9月に「できるだけ早く処分方針を決めたい」と明言していた。だがその後、海洋放出に反対する全国の漁協などとの交渉が難航している。

*2-1-5:https://www.toyal.co.jp/whatsnews/2019/06/post.html (東洋アルミ 2019.6.3) 「アルミニウム粉末焼結多孔質フィルターによるトリチウム水の回収技術」の 日本アルミニウム協会賞技術賞受賞のお知らせ
 当社および近畿大学が共同研究したアルミニウム粉末焼結多孔質フィルターによる放射性物質を含んだ汚染水から放射性物質の一つであるトリチウムを含むトリチウム水を回収する技術が『2018年度日本アルミニウム協会賞技術賞』を受賞しました。
【背景】
 東京電力福島第1原子力発電所では地下水の流入により放射性元素を含んだ汚染水が発生し続けておりますが、汚染水中に含まれるトリチウムは除去が困難であるため、保管する貯蔵タンクを増設し、広大な保管場所を確保する必要があります。このため、汚染水問題解決のために実用的なトリチウム除染技術の開発が望まれています。
【技術の概要】
 従来は、水の電気分解や高温高圧が必要でしたが、60℃・低真空での分離を実現しました。
【展望】
 現在も発生し続けている汚染水からトリチウムを除去できれば、処理後の汚染水の海洋放出も可能となり、汚染水を保管するタンクを減らすことができるため、タンクの設置・維持管理コストを削減でき、廃炉作業に必要なスペースを確保できることが期待されます。授賞式は5月29日に行われ、受賞者として当社の先端技術本部から藤本和也研究員が出席し、「我々の取り組みを評価いただき、光栄に思います。」と受賞の喜びを語りました。

*2-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210307&ng=DGKKZO69747560X00C21A3EA2000 (日経新聞 2021.3.7) コロナ医療の病巣(5) ワクチン行政、時代錯誤の罪 内向き志向、革新を阻む
 日本での新型コロナウイルスのワクチン接種は世界に大きく出遅れた。科学技術立国をうたいながら国内で実用化のメドも立っていない。時代錯誤なワクチン行政に根深い病巣がある。国内でワクチンを流通させるには「国家検定」という関門をくぐりぬけなければならない。国立感染症研究所による抜き取り検査で、品質が保たれているかどうかを出荷ごとにチェックする。製品によっては2カ月ほどかかる。日本製薬工業協会は昨年9月、ワクチンの早期実現に向け提言書を公表した。世界を見渡せば、国が威信をかけ前例のないスピードで開発競争が進む折だった。承認審査の迅速化や包装表示の簡略化に加え、焦点だった国家検定も書面審査で済むよう求めた。パンデミック(世界的大流行)という一刻を争う際に、有事向けの「ワクチンルール」が示されていなかった日本。製薬会社が多額の投資を要する開発に二の足を踏むのも無理はない。
●担当は「結核課」
 日本の感染症対策、ならびにワクチン行政は、戦後の一時期、死因トップだった結核という国民病を克服した成功体験から抜け切れていない。厚生労働省の担当窓口が今も「結核感染症課」を名のっているのもそのあらわれ。要は下水道整備など公衆衛生向上の一手段として予防接種を位置づけてきた。しかし、ワクチンを巡る世界の潮流はこの10年余で変わった。バイオ技術の進展とともに肺炎やがんを予防する製品も普及。従来型の子供向けの予防接種だけでなく、成人になってからの重い病気を防ぐことで、結果的に医療費を抑制する効果も見込めるようになってきた。子宮頸(けい)がん向けはその代表例だが、国内では安全上の問題を解消しようとしない行政の不作為で、事実上、接種は7年間も止まったままだ。新しい感染症向けのワクチンは開発に10年かかるといわれるが、新型コロナワクチンは感染拡大から1年足らずで実現した。わずか3カ月の間に世界の累計接種回数は2億6千万回を超えた。ワクチンは今や国の安全保障上でも欠かせぬ切り札である。「ワクチン外交」という言葉が飛び交い、確保と接種の進み具合が世界経済の行方を占う。投資家の大きな関心事にもなっている。時代にあったワクチン行政と改革の必要性を求める声は日本にもあった。政府内にもその認識はあり、2016年10月には、当時の塩崎恭久厚労相に対し「タスクフォース顧問からの提言」も出された。特定の製薬会社が国の主導下で生産する「護送船団方式」から抜けだす。中長期を見据えた国家戦略のもと、ワクチン産業を強化していく。さもないと世界の趨勢に取り残され、安定供給もこころもとない。まさに今の危機を予言する内容だが、政策に魂を入れることはなかった。
●前例踏襲の限界
 霞が関の官僚組織には「無謬(むびゅう)性の原則」がある。政策を遂行する際、失敗を前提にした議論が行われないというものだ。リスクをとらなくなり、建設的な政策立案が遠のく。コロナではその副作用が露呈した。流行拡大当初に大きな問題となったPCR検査体制もそうなのだが、要は、ワクチン行政では、医療という枠組みのなかで安全性が金科玉条となり、リスクを避けながら失敗を認めない姿勢を貫こうとする。正解のないコロナとの闘いに前例踏襲主義は通じない。このパンデミックはいつか必ず終息する。が、グローバル社会で新たな感染症の脅威はまたやってくる。確率は万が一でも、起きてしまえば国家的な危機を招く「テールリスク」にこの国が向き合うには、ワクチン行政を厚労省から切り離すぐらいの劇薬が必要だ。この1年、後手に回ることの多かった日本のコロナ対策から得られた教訓といえる。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20210307&be=NDSKDBDGKKZO6878523003022021TCS000%5CDM1&bf=0&c=DM1&d=0&n_cid=SPTMG002&nbm=DGKKZO69747560X00C21A3EA2000&ng=DGKKZO68785230T00C21A2TCS000&ue=DEA2000 (日経新聞 2021/2/4) 欠かせぬ国防の視点 塩野義製薬社長 手代木功氏
 米ファイザーや米モデルナのワクチンは人類が活用できなかった新技術を使っており、治験期間が半年、申請後2週間~1カ月で承認にこぎ着けた。このスピード感は製薬企業の安全性確認の常識からいえば、まだ怖いというのが本音だ。この1年、世界は大混乱に陥った。進行形で起きている難題を何とかしなければならない。ワクチン接種はとにかく「やってみよう」という段階なのだと思う。50カ国以上でワクチン接種が実施されている。日本はまだかという指摘もあるが、リスクとベネフィットとを見極めながら進めるとなれば、日本の感染状況、保健体制などを総合的にみると、そんなにおかしなことになっていない。平時と戦時の違いだとしても、何を重要と考えるかだ。例えば、ワクチン接種で因果関係のある死者が出たとしよう。99.9%の人を助けるために、1人の犠牲は仕方ない。緊急時のワクチンだからそういうこともありうるよ、といえば日本の社会は許すだろうか。10年に1度、いや100年に1度かもしれないが、パンデミック(世界的大流行)が起きたら世界が翻弄されるということをわれわれは実感したはずだ。ならば発生に備え、すみやかに対応できるような平時からの積み上げをやろうよ、というコンセンサスが要る。国家安全保障の観点からの新たな社会契約を築けるかが、今回のパンデミックで日本が問われていることだ。国はコロナのワクチンを来年も再来年も年7000億円かけて海外から買い続けるのか、と言いたい。塩野義は昨年12月に臨床試験を始めた。国から約400億円の援助を受け、リスクをとって今年末までに3000万人分を目標に工場を整備し、並行してワクチン開発を進めている。さらに1億人分まで能力をあげる。ヒトとカネとについて国レベルでコミットしてもらわないと難しい。ワクチン対策費はまさに国防費の一部。備蓄や民業とのアライアンス、国際協力も必要になる。アジアで一定の存在感を示すためにもワクチンを供給される側でなく供給する側にならないといけない。

*2-2-3:https://www.sankei.com/west/news/210217/wst2102170022-n1.html (産経新聞 2021.2.17) 「周回遅れ」国産ワクチンの実用化が急務 政府は支援を強化
 新型コロナウイルスのワクチン接種が17日から始まった。この日接種されたのは米ファイザー製。国はこの後も英アストラゼネカ製など海外産ワクチンの調達を進めており、国産ワクチンの開発遅れが指摘されている。同日開かれた衆院予算委員会でも国産ワクチンに関して質問が相次ぎ、菅義偉首相は国内生産に向けて関連産業を支援する方針を示した。国際的なワクチン争奪戦も想定される中で、国産ワクチンの実用化が急がれている。
●既存の技術を活用
 大阪市内にある治験を専門的に行う病院で、塩野義製薬(同市中央区)が開発中のワクチンの治験が行われている。214人の参加者に3週間の間隔をあけて2回投与し、安全性や、抗体ができるかどうかなどを確認中で、データは今月下旬から集まる予定だ。開発中のワクチンは「組み換えタンパクワクチン」と呼ばれるタイプで、すでにインフルエンザワクチンとしても実用化されている技術を活用。木山竜一医薬研究本部長は「副反応や安全性のデータなどについて、医療関係者もある程度把握できる利点がある」と強調する。同社は年内にも3千万人分のワクチン製造ができる生産体制の構築を進めており、「国産ワクチンの技術を確立すれば、変異種や他の感染症の発生にも対応できる」と話す。世界保健機関(WHO)のデータによると、世界で60種以上の治験が進んでおり、中でも最終段階である第3相試験に入っているワクチンは15種以上になる。「日本の開発は周回遅れ」という指摘もある。国内企業で最も進んでいるのがアンジェス(大阪府茨木市)で第2/3相試験、次に第1/2相の塩野義が続く。第一三共とKMバイオロジクス(熊本市)は、今年3月にようやく治験を始める状況だからだ。ただ、大阪健康安全基盤研究所の奥野良信理事長は「実用化の時期に遅れがあったとしても国内企業は着実に開発を進めるべきだ。国内で安定供給される多様なタイプのワクチンの中から国民が接種を選択できるのがベスト」と話す。国内では今、組み換えタンパクワクチンや不活化ワクチン、さらにメッセンジャーRNA(mRNA)、遺伝子を使った先駆的ワクチンといった複数タイプの開発が進む。第一三共も「メード・イン・ジャパンのワクチン品質は必要だと考えている」(広報)とする。
●慎重な国民性も影響
 国内のワクチン産業は長く「世界の潮流から取り残されている」と指摘されてきた。日本はこれまでSARS(重症急性呼吸器症候群)などの脅威にさらされなかったことから、国による長期的なワクチン政策や経済的支援が示されず、製薬企業も開発に時間がかかり、副反応のリスクも高いワクチン事業に力を入れてこなかったためだ。加えて安全性に対する慎重な国民性もあり、平成元年ごろから十数年間、新しいワクチンの承認が世界に比べて停滞する「ワクチン・ギャップ」も起きた。一方、現在、新型コロナワクチンとして世界で接種が進むファイザー製やアストラゼネカ製は、それぞれmRNAや、チンパンジー由来の「アデノウイルス」を活用した先駆的なワクチン技術としても注目されている。北里大の中山哲夫特任教授は「世界ではSARSなどの経験から新技術の研究を続けた国や企業があった。その延長線上に革新的なコロナワクチンの実用化がある」と指摘する。しかし、かつて日本でもワクチン研究が活発に行われていた。今も世界中で使われている水痘ワクチンは日本発だ。中山特任教授は「ワクチン研究が途絶えたわけではない。日本から新しいワクチンが出る可能性はまだある」と期待する。
●最終治験が課題、海外での実施も
 国産ワクチンの今後の課題は、治験の最終段階である第3相試験だ。数万人の参加が必要な場合もあるこの治験では、副反応の発生頻度や、発症や重症化がどのくらい抑えられるのかを確かめるため、発症者が一定程度いる流行地域で行う必要がある。しかし、日本は海外に比べて発症者が少ないため、日本だけでなく海外の流行地域での治験も想定されている。

*2-2-4:https://www.yomiuri.co.jp/olympic/2020/20210311-OYT1T50258/ (読売新聞 2021/3/11) IOC、五輪・パラ参加者のため中国製ワクチン購入へ…バッハ会長が表明
 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は11日、オンライン形式での総会で、東京五輪・パラリンピックと2022年北京冬季五輪・パラリンピックの参加者のため、新型コロナウイルスの中国製ワクチンをIOCが購入すると発表した。中国五輪委員会が提供を申し出たという。ワクチンの数量や金額は明かさなかった。東京五輪調整委員長のジョン・コーツ氏は、海外からの観客受け入れの可否について、「日本政府がどのような決定をしても、それを支持する」と述べた。海外客を受け入れない場合に備え、大会組織委員会とチケット代の返金などの検討を進めていることも明らかにした。バッハ氏は10日、会長選で再選された後の記者会見で、東京大会の観客数の上限については決定を出来るだけ遅らせたい意向も示した。コロナの感染状況が改善されることを期待し、「可能なら5、6月まで、状況の変化に対応できる余地を残しておく必要がある」と述べた。バッハ氏だけが立候補した会長選は、IOC委員による投票が行われ、有効票94のうち、賛成93票、反対1票でバッハ氏が選ばれた。2期目の任期は東京五輪の閉会後から4年間。再選は1度のみ認められている。1期目の任期は8年間で、バッハ氏は五輪での既存・仮設施設の活用や男女平等の推進、難民選手団の参加など様々な改革に取り組んだ。

<観光の高度化:医療ツーリズム>
*3-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1281173.html (琉球新報 2021年3月4日) コロナ起源巡り新たな手掛かり、ヒトへの感染でカギに【2021年3月2日WSJより】
 世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの起源に関する全容解明を目指す中、ウイルスが自然な進化を通じてヒトへの感染力を獲得したことを示唆する新たな手掛かりが浮上してきた。直近の少なくとも4つの研究から、東南アジアや日本に生息するコウモリやセンザンコウが持つウイルス株と、今回の新型コロナに密接な関係があることが判明した。これは病原体が従来の想定よりも広範囲に広がっており、ウイルスが進化する機会が豊富にあったことを示している。別の研究では、ウイルスの重要な構成要素である単一アミノ酸が変化することにより、ヒトへの感染を可能にする、もしくは少なくとも手助けするとみられることが分かった。アミノ酸はタンパク質を形成する有機化合物だ。これら最新の研究結果は、コウモリを起源とするウイルスが、おそらく仲介役となった動物を通じて自然に進化することで、ヒトへの感染力を獲得したとの見方を一段と裏付けるものだ。パンデミック(世界的な大流行)の再来を回避するには、ウイルスの起源を特定することが重要だと考えられているが、全容解明には何年もかかるかもしれない。2月に中国・武漢で4週間にわたり現地調査を実施したWHOのチームは、中国に加え、特に同国と国境を接する東南アジア諸国でもウイルスの起源特定に向けた調査を求めている。今回の新たな研究結果により、WHOがなぜ調査範囲の拡大を唱えているのかについても、これで説明がつく。バージニア工科大学のウイルス学者、ジェームズ・ウィジャールカレリ氏は、アミノ酸の変化がウイルスの自然な進化を示唆していると話す。同氏が主導したアミノ酸の変化に関する研究結果は、査読前の論文を掲載するサイトで共有された。それによると、同氏のチームはヒトへの感染を後押ししたとみられるウイルスの変化について、18万3000近い遺伝子配列を分析した。その結果、スパイクタンパク質の単一アミノ酸を変化させるウイルスの変異を特定。それが人間の細胞を感染させ、複製できることを示した。米当局者や科学者の一部は、研究室で起きた事故でウイルスが流出した可能性を完全に排除することはできないとの考えを示している。武漢ウイルス研究所は厳重に警備された施設の中で、コウモリが持つコロナウイルスについて研究を実施している。だが、パンデミック(世界的な大流行)以前に今回の新型コロナに関する研究を行っていた、もしくは保管していたとの見方を否定。最も厳格な安全基準を維持しているなどと主張している。だが、一部の科学者や米当局者は、研究所のこれまでの安全記録に加え、自然に変化したウイルスと「機能獲得」実験の双方の研究について、加工前の生データを共有するよう求めている。機能獲得とは、ウイルスがヒトへの感染や拡散する能力を強化できるか分析するために、科学者がウイルスの遺伝子を操作した実験のことを指す。専門家で構成されるWHOの調査団はこれまで、研究室内の事故が原因となった可能性は極めて低いとの考えを示している。だが、調査団のトップ、ピーター・ベンエンバレク氏は先週、研究室の仮説についても「まだ選択肢として消えたわけではない」としており、チームとしてすべての可能性を評価するだけの情報が得られていない点を認めている。WHOは近く、武漢入りした調査団が策定した報告結果の要旨を公表する見通し。ただ、報告書の全文が公表されるのは数週間先となるとみられている。

*3-2:https://www.data-max.co.jp/article/34958 (IBNews 2020年4月2日) 日本でも拡大する「医療ツーリズム」の現状
 日本の高度な医療サービスを求め、外国人が観光と合わせて訪れる「医療ツーリズム」が新たな市場として成長している。主に中国を始めとしたアジア圏を中心に、引き合いが増加。その市場規模は、2020年で5,500億円と見込まれている。
●成長産業として政府が後押し
 がんなどの生活習慣病は世界的に増加傾向にあり、その対策として、自国より高度かつ高品質な医療サービスを受けられる国に行くという「医療ツーリズム」が、1990年代から広まり始めた。医療ツーリズムを受け入れている国は、先進国だけでなく新興国も多く、外貨獲得のために国策として取り組んでいるところも少なくない。医療ツーリズムによって、自国よりも割安で受診できることや、手術など早期の治療に対応できることも利点であり、とくにアジア圏では、民間病院の新たな収益源として医療ツーリズムを積極的に導入する傾向が強くあり、市場拡大に寄与している。そのなかで日本は、優れた医療技術に加え、世界屈指の医療機器保有率から、治療・健診・検診を目的に、中国を始めとするアジア諸国からの来訪者数が年々増加している。政府も2010年6月に新成長戦略における「ライフ・イノベーションによる健康大国戦略」として、医療ツーリズム(医療観光)の積極的な受け入れを推進。11年1月に医療滞在のビザを解禁したことで、最長6カ月間の滞在が可能なうえ、3年以内なら何度でも入国することができるようになるなど、入国に関するハードルを低くした。日本の医療機関にとっても医療ツーリズムは、医療資源の稼働率向上や、より高度な医療機器・サービスを導入する契機となるほか、海外に日本の医療を展開するアウトバウンドの取り組みにつながることが期待されている。昨今のインバウンド需要拡大とともに、医療ツーリズム市場は年々拡大している。日本政策投資銀行では10年5月に医療ツーリズムの市場予測として、20年時点で年間43万人程度の需要が潜在的にあるとし、市場規模は約5,500億円、経済波及効果は約2,800億円まで伸長すると試算していた。現状では新型コロナウイルス感染症の影響で来訪する外国人が激減していることもあり、そこまでの成長は難しい様相だが、すでに市場としては成熟化が進んでおり、事態が収束すれば再び市場は戻ると見られている。一方で、医療ツーリズム推進の政策に対して、「国民皆保険制度の崩壊につながりかねない」として懸念を示しているのが日本医師会だ。一般企業が関与する組織的な活動を問題視し、「医療ツーリズムが混合診療解禁の後押しになる」と指摘する。つまり、医療に一般企業が参入することで、営利を追求した医療が一部の富裕層のためだけの混合診療を含めた医療サービスにつながることを強く懸念しているのである。
●参入増で競争激化 コーディネートに課題も
 医療ツーリズムは、観光と合わせて高度な医療サービスを受診することを目的としており、受診先となる医療施設には最先端の医療設備が完備されているのはもちろんのこと、主に富裕層を対象にしていることから、豪華さや快適さも備えていることが大きな特徴。かかる費用も1人30万円から100万円超と幅広い。たとえば、人間ドックの場合、基本的な検診のほか、がん検診でPET(※)を実施する「VIPコース」などと呼ばれる高額な検査を実施する施設も多い。また、温泉療養と合わせた医療ツーリズムが、食事と運動をバランス良く組み合わせることで心身をリフレッシュし、生活習慣病の改善と自然治癒能力を高める効果に期待が寄せられ、人気を博している。これら観光主体型の医療サービスは、その多くは地方の旅行会社が企画するもので、より多くの外国人来訪者の獲得に向けた企業間競争も激化しているようだ。ある医療ツーリズムの企画会社は、「数年前までは、反対する日本医師会の影響もあったのか、検査枠の空きがあれば受け入れる程度で、積極的に確定診断から治療へ取り組む施設は多くなかった。しかし、最近は医療施設からの問い合わせが非常に増えている」と話す。また、「現状は新型コロナウイルスの影響で受け入れを止めているが、その間に東京大学や北海道大学など著名な国立大学病院との独占的な提携を進めており、より高いレベルの医療サービスを提供する体制を敷くことで差別化を図る」と続けた。このように拡大傾向にある医療ツーリズム市場だが、課題がないわけではない。現状は検診以外の治療を目的とする場合、医療従事者がコーディネートをしているという企業は少なく、医療施設が必ずしも患者と合致しない場合もあり、治療におけるリスクがともなう可能性がある。今後、医療ツーリズム市場がさらに成長していくためには、医療機関とコーディネートする民間企業の連携の部分を、さらに深めていくことが求められる。

<観光の高度化:観光ルートへの災害と復興史の織り込み>
*4-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1285134.html (琉球新報社説 2021年3月12日) 東日本大震災10年(4) 真の復興へ不断の検証を
 東日本大震災の発生から11日で10年がたった。死者、行方不明、震災関連死は計約2万2千人に上り、残された人々が歩む人生にも震災は大きく影響している。東京電力福島第1原発事故などで今も避難中の人が、沖縄を含め約4万1千人いる。追悼式で菅義偉首相は、地震・津波被災地は「復興の総仕上げの段階」に入ったとした。しかし、10年は通過点にすぎない。真の復興に向け不断の検証が必要だ。政府は2011~15年度を「集中復興期間」、16~21年度を「復興・創生期間」と位置付けてきた。この10年で国が投入してきた復興予算は約37兆円に上る。道路や防潮堤、土地のかさ上げなど、被災地のインフラの整備は進んだ。一方で、予算の大半はハード整備に使われ、日本経済再生の名目で被災地と関係の薄い補助金などに流用された事例もある。被害が大きかった3県42市町村の人口減少率は全国の3.5倍のペースといい、街づくりの停滞や産業空洞化の課題に直面する。地域のつながりが薄れ、高齢者の見守りや心のケアも課題となる。用地取得や合意形成の難航もあって大型公共工事は長期化し、転出先での生活が定着した人々が古里に戻る機会を逸した。ハード整備に傾倒した復興のマイナス面だろう。被災者支援に充てられたのは2.3兆円にすぎない。それも仮設住宅の整備費などを除くと、生活再建支援として被災者に直接支給されたのは3千億円余りにとどまる。廃炉の見通しが立たない福島原発事故も、復興に深刻な影を落としてきた。首都圏へのエネルギー供給の役割を東北に担わせ、原発を推進してきた国の責任は重い。政府の新たな復興基本方針案は、津波被災地の復興は今後5年間での事業完了を目指し、福島原発事故の被災地再生に国の支援を重点化する方向性だ。だが、復興予算の使途や効果を十分に検証せず、復興支援からフェードアウトしていくことは許されない。復興財源は、国民全てで支えている。所得税の2.1%分上乗せは2037年まで続く。予算が本当に被災地の再建につながっているかを注視することは、納税者の責務であると同時に、東北の復興に関わり続けることになる。東北地方はアジアの中で自然景観や文化、食料供給など、比較優位を有する。そのポテンシャルを引き出し、交流人口の拡大につなげることが真の復興の道筋になる。岩手県の県紙、岩手日報社の東根(あずまね)千万億(ちまお)社長は、節目の日を地元ではなく、沖縄で迎えた。沖縄県民をはじめ復興を支える国民に向けて「県外に出向き、岩手の復興がここまで来たことを報告する行動を起こした」と語り、震災復興の今を伝える特別号外を那覇市内で配布した。震災被災地との心の距離を縮め、交流を広げたい。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14830432.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2021年3月12日) 福島の事故から10年 いま再び脱原発の決意を
 「原発に頼らない社会を早く実現しなければならない」。朝日新聞は東京電力・福島第一原発の事故を受けて、2011年7月、「原発ゼロ社会」をめざすべきだと提言した。その後も社説などで、原発から段階的に撤退する重要性を訴えてきた。主張の根底にあるのは、「再び事故を起こしたら、日本社会は立ち行かなくなる」という危機感である。最悪の場合、止めたくても止められない――。福島の事故では、原発の恐ろしさをまざまざと見せつけられた。生々しい記憶が10年の歳月とともに薄れつつあるいま、脱原発の決意を再確認したい。
■廃炉への険しい道
 原発が事故を起こせば、後始末がいかに困難をきわめるか。目の前の厳しい現実もまた、この10年の苦い教訓である。つい最近、廃炉作業中の2号機と3号機で、原子炉格納容器の真上にあるフタの部分が高濃度の放射性物質に汚染されていることがわかった。周辺の放射線量は、人間が1時間で死にいたるほど高い。炉心で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長は「作戦の練り直しが必要になるだろう」と述べた。1~3号機には800~900トンの燃料デブリがあるとみられる。だが、炉内のどこに、どんな形で残っているのか、いまだに全容をつかめていない。新たに見つかった2、3号機の高濃度汚染で、取り出し作業はいっそう難しくなるだろう。以前の工程表は「20~25年後に取り出しを終える」としていたが、いまでは年限が消えてしまった。燃料デブリが残ったままでは、建屋や設備の解体と撤去が進まない。冷却用の注水にともなって高濃度の汚染水が生じ続け、それを浄化した処理水もたまっていく。国と東電の掲げる「30~40年で廃炉完了」は不可能ではないのか、との疑念が膨らむばかりだ。廃炉の終着点が見えないと地元の復興もままなるまい。原発の事故は地域社会を崩壊させ、再構築にはきわめて長い年月がかかる。この悲劇を繰り返すわけにはいかない。
■安全神話は許されぬ
 しかし、7年8カ月にわたった安倍政権をへて、流れは原発回帰へ逆行している。事故の翌年、討論型世論調査などの国民的な議論をへて、当時の民主党政権は「30年代の原発ゼロ」を打ち出した。だが同じ年の暮れに政権を奪還した自公は、さしたる政策論争もなく原発推進に針を戻してしまう。古い原発の廃炉などで20基ほど減ったものの、安倍政権の下で総発電量に占める原発の比率は事故前に近い水準が目標とされた。事故後に設けられた「原発の運転は40年」の原則をよそに、20年延長の特例も相次いで認められている。菅政権はこの路線を継承し、「引き続き最大限活用する」との方針を示している。「原発の依存度を可能な限り低減する」といいつつ、具体策を示さぬまま再稼働を進める。その姿勢は不誠実というほかない。政府は再稼働にあたり、原発の新規制基準は「世界で最も厳しい」と不安の解消に努めてきた。これが新たな安全神話を醸成していないか気がかりだ。電力会社の気の緩みも見すごせない。福島の事故の当事者である東電も、原発中枢部への不正入室を許し、重要施設の耐震性不足の報告を怠るなど、安全に対する姿勢に問題がある。にもかかわらず、産業界を中心に原発への期待は大きい。「原子力はエネルギー自立に欠かせない」「原発の運転期間を80年に延ばすべきだ」。エネルギー基本計画の改定を議論する経済産業省の審議会では、原発推進論が相次いでいる。事故の痛みを忘れたかのようだ。破綻(はたん)した核燃料サイクルまでも「推進してほしい」という要望があることに驚く。使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出しても、高速炉の開発が頓挫したため大量消費は望めない。そんななかで核燃料サイクルを進めたら、原爆の材料にもなりうるプルトニウムの保有量が思うように減らず国際的に批判されよう。安全神話の上で国と業界がもたれあう。事故前と変わらぬ構図を解消すべきだ。
■再エネの拡大こそ
 原子力ばかりに力を注いでいては、再生可能エネルギーや水素を柱とした脱炭素時代の技術革新に乗り遅れてしまう。地球温暖化を防ぐには、安全で低コストの再エネを広げるのが筋だ。原発利用は再エネが拡大するまでの一時的なものにとどめ、できるだけ早く脱原発のシナリオを固める必要がある。40年たった原発を引退させ、新増設や建て替えをしない。そう決めれば、おのずと原発ゼロへの道筋は見えてこよう。原子力からの撤退へ向け、着実な一歩を踏み出して初めて、福島第一原発事故の教訓が実を結ぶことになる。

*4-3:https://kahoku.news/articles/20210311khn000047.html (河北新報社説 2021年3月12日) 東日本大震災10年-宮城/農業の可能性を探る好機だ
 東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた仙台市東部に、豊かな耕土と生産者の力強い営みがよみがえりつつある。災害復旧と区画整理を一体的に進める前例のない国直轄事業により、農地の再生と担い手への集約が破格の規模とスピードで実現した。一連の事業の総仕上げとなる区画整理が完了し、地区の生産基盤は震災前に比べてもより強固になったと言える。大都市として成熟していく仙台圏にふさわしい、多様な農業の可能性を探るチャンスととらえたい。仙台市東部を襲った津波は海岸線から約4キロまで達し、約1800ヘクタールの農地に土砂やがれきが流入した。藩制時代からの美田地帯は、施設の損壊と地盤沈下で排水能力を失い、まるで海水の沼のような無残な姿になった。農地の災害復旧を巡っては当時、除塩の実施や国庫負担率のかさ上げに関する制度がなかった。農林水産省は(1)農地・農業施設の復旧(2)除塩の実施(3)復旧後の区画整理-を継ぎ目なく行うため、土地改良法の特例法案を国会に提出。発災から2カ月足らずで成立した。全ての事業を通じて、約9割を国庫負担とする異例の枠組みだった。特に農地復旧に合わせて順次進められた区画整理は、通常であれば生産者に生じる受益者負担をゼロとし、ためらうことなく、農地の大区画化に応じられる環境を整えた。事業対象は被災を免れた農地を含む約1900ヘクタール。地域営農の方針に沿って高砂、七郷、六郷の三つの換地区に分け、1区画10~30アール規模だった農地を50アール~1ヘクタールに拡大していった。大型機械の導入で作業が効率化される一方、受委託を含む農地集約も進み、コメや野菜を組み合わせた複合経営に取り組む農業法人が相次いで発足。ユニークな戦略で仙台の農業に新たな活力を吹き込む担い手も現れてきた。「仙台井土ねぎ」のブランド化に成果を上げる「井土生産組合」(若林区)や、野菜の生産・販売を通じて食農教育や農福連携など多彩なコミュニティーづくりに挑む「平松農園」(同)などが典型例と言えるだろう。法人への就職が若者の新規就農の窓口として機能し始めたこともあり、担い手の多様化は今後さらに進みそうだ。ただ生産現場では、なかなか回復しない地力や耕作を妨げるがれき片との苦闘が今も続いている。引き続き国や自治体の支援は不可欠だ。コメ需要が減少する中、非主食用米への転換に向けた貯蔵施設の整備や園芸・果樹の振興など関係機関が連携し、知恵を出し合うべき課題も多い。一連の事業には約865億円もの国費が投じられた。私たちは、仙台平野に本来の生産力を取り戻し、多様な価値を産み出す営農モデルを確立する責任を負っていることも自覚しなくてはなるまい。

*4-4:https://mainichi.jp/premier/health/articles/20210310/med/00m/100/010000c?cx_fm=mailhealth&cx_ml=article&cx_mdate=20210313 (毎日新聞 2021年3月11日) 記憶と伝承~東日本大震災から10年  野澤和弘・植草学園大学教授/毎日新聞客員編集委員
 時間とはただ流れ去っていくのではなく、ある場所においては積み重なっていくものだ。1万6000人近い死者、約2500人の行方不明者を出した東日本大震災から10年。目まぐるしく世界は動き、震災の記憶は時とともに風化していく。しかし、いつまでも癒えない傷を抱えて生きている人たちがいる。福島第1原発周辺の7市町村にまたがるエリアは現在も放射線量が高く、住民が住めない帰還困難区域となっている。福島県内外に避難している人は現在も約3万6000人に上る。今の私たちの日常の幸福は、あの日からの連続の上にある。原発の街は傷痕をさらけ出したまま、2021年の日本の風景の中に存在している。
●「黒い湖」の正体
 風に舞う枯れ葉が秋の光にキラキラと輝いていた。福島市から飯舘村を通り山間の県道を南相馬へ。さらに福島第1原子力発電所のある双葉町・大熊町へと向かう。20年11月、南相馬市に住む知人に案内されて被災地を訪ねた。枯れ田に黒い塊が広がっている。晩秋の日を浴びて、黒光りする塊の表面が躍っている。湖面にきらめく波のようだ。県道の右や左の風景に現れるのは、黒いフレコンバッグの山だった。おびただしい数の袋が整然と並べられている。福島第1原発の事故で飛散した放射性物質に汚染された土壌が黒い塊の正体である。放射性セシウムは原発周辺地域の森林や草地、農地を広く汚染した。木々や草に付着した放射性物質は時間とともに次第に下方へ落ちていき、土壌の表層に集積するものもある。土壌では粘土質などが放射性セシウムを吸着するので、雨や雪が降っても、容易には流れないとされる。全国各地から集められた作業員が、放射性物質を含んだ表土を薄くはぎ取る作業を行ってきた。それが「除染」だ。人体に害を及ぼす放射能を含んだ土を取り除き、フレコンバッグに詰めて、住居や農作業をする場所から人里離れた仮置き場に隔離する。薄くはぎ取るといっても、放射性物質が降りそそいだのは広大な地域に及ぶため、はぎ取って集められた土の量は想像をはるかに超える。汚染土を詰めるフレコンバッグはどれだけあっても足りなくなる。当初はあまり人目に付かない場所が仮置き場として指定されたが、すぐにあふれるようになり、県道沿いの目立つ場所にもフレコンバッグの「黒い湖」が次々と現れるようになった。除染を実施する地域は、汚染の程度などによって「除染特別地域」「汚染状況重点調査地域」に指定されている。環境省は、フレコンバッグなどの保管物については17年3月ごろをピークに、仮置き場数については16年12月ごろをピークに、それぞれ減少しているとしている。しかし、避難期間が長びくにつれて、農業を続けることをあきらめる人が増えてきたこともフレコンバッグが人目に付く場所の農地に進出してきた背景にあると思う。先祖から受け継いできた農地ではあるが、農業ができない以上、汚染土の仮置き場として提供することで安定収入を得る方を選ぶ人もいる。農家の人々の無念さや先の見えないことによるあきらめが想起される。仮置き場のフレコンバッグは当初、福島第1原発が立地する双葉町や大熊町の中間貯蔵施設へと搬出されることになっていたが、地権者との用地交渉が難航して搬出は進んでいないものもあるという。雨風に長期間さらされているとバッグが傷み、汚染水が外部へ漏れることも懸念されている。実際、環境省の調査では福島県内の市町村が管理する仮置き場の半数以上でフレコンバッグやバッグを覆う防水シートの破損が見つかった。耐性の劣るバッグの方が安いために業者に選ばれているとの指摘もある。除染作業だけでも3兆円以上が投じられている。元請け・下請け・孫請けを通じて法外な費用が吸い取られていく「除染ビジネス」には灰色のうわさが絶えない。財務省と復興庁は7省庁が管轄する全国向けの23事業に配分された総額1兆1570億円の基金が被災地と関係の薄い使途にも充てられているとして返還を請求しているが、除染のような復興に直接関係している作業にも一般国民にはわかりにくいさまざまな利権が存在することをうかがわせる。人の気配が消えた農村の風景に広がっていく黒い塊は、故郷を追われた人々の不安や絶望をのみ込んで膨れ上がる「復興」という巨大事業の実像を暗示しているようだ。
●何を伝承しようとしているか
 東京電力福島第1原発から北へ3キロほど離れたところに「東日本大震災・原子力災害伝承館」(双葉町)は建てられた。20年9月に開館したばかりで、真新しい建物の駐車場に大型観光バスが数台止まっていた。この伝承館は福島県が建設し、指定管理者の公益財団法人「福島イノベーション・コースト構想推進機構」が運営している。総工費は約53億円、全額が国の交付金で賄われた。地上3階建て、延べ床面積約5300平方メートル。震災や原発事故関連の資料約24万点を所蔵し、うち約170点が展示されている。「原子力発電所事故後の避難、避難生活の変遷、国内外からの注目など、原子力発電所事故発生直後の状況やその特殊性を、証言などをもとに振り返ります」とホームページにはうたわれている。ガラス張りの外壁の建物に入ると、1階の左手にドーム形をした天井の高いスペースがある。展示の導入部として、震災前の地域の生活、地震と津波、原発事故の発生から住民避難、復興や廃炉に向けた取り組みに関する映像が、床面を含めた7面のスクリーンに映し出される。日曜日のわりには見学客の姿はまばらだ。最新の技術が詰め込まれている設備の印象ばかりが浮き上がって感じられる。展示スペースには、子どもたちのランドセル、学級新聞、消防服などが写真とともに並べられている。「震災前の平穏な日常が原発事故を機にどのように変わってしまったのか、さまざまな県民の思いを、証言や思い出の品などの展示を組み合わせて発信している」という。原発事故の悲惨さや放射能の恐ろしさについても解説するコーナーはあるが、進路を行くに従って「困難を乗り越えて復興に挑戦する福島県」にスポットを当てた展示物や説明が目立つようになる。廃炉作業の進捗(しんちょく)状況や福島イノベーション・コースト構想については特に力を入れてPRしていることが伝わってくる。伝承館を運営する公益財団法人の名前にもなっている「福島イノベーション・コースト構想」とは、東日本大震災や原発事故で失われた浜通り地域などの産業を回復する巨大事業だ。廃炉、ロボット、エネルギー、農林水産などの分野におけるプロジェクトの具体化を進め、産業集積や人材育成、交流人口の拡大などに取り組むという。原発事故で大きな打撃を受けた福島県のイメージを一新しようという思惑が痛いほど伝わってくる。同館には30人近い語り部がいる。自らの被災体験を見学者に語る役割を担っている。被災した地域に出向くフィールドワークと並ぶ、伝承館ならではの取り組みと言える。ただ、案内をしてくれた地元の住人は顔を曇らせる。「国や県に批判的なことを言わないように監視されている。それで本当の被災体験を伝承することになるのか」というのである。語り部が話す内容を「監視」するとは穏やかなことではない。行政に対する不信感の根強さが地元で暮らす人々にそう思わせるのだろうか。しかし、「県が語り部に、国や東電など特定の団体への批判や中傷をしないよう求め、話す内容も事前にチェックして修正してもらっている」という報道(20年11月4日、東京新聞)もある。福島から県外へ避難している住民たちが国や東電を相手に損害賠償を求める訴訟が各地で起きており、訴訟への影響を考慮してのことかもしれない。全額を国の交付金で建てられた施設であり、運営する側が細かいところまで神経を使うのもわからなくはない。しかし、未曽有の原発事故による被害の甚大さを伝承するのに、大事なものを忘れてはいないか。大震災と津波は避けられなかったかもしれない。不幸な運命にめぐり合わせたが、「困難を乗り越えて挑戦する」。そういう福島県の人々や行政の姿を伝承しようというのだろうか。それも必要かもしれないが、その前に伝えなければならないものがある。「教訓が分からなかった」「何を伝えたいのかよく分からない」。ロビーのノートには来館者の厳しい意見が書き込まれている。2月末までに約3万7000人が訪れたというが、福島の事情を知る人々からは批判的な意見が聞かれる。国会事故調査委員会などが「人災」と結論づけた原発事故についての国や県、東電の責任に関する説明がほぼないからだ。放射性物質の拡散方向を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」について、データが政府から届きながら県が削除して市町村に伝えず、放射線量の高い方向へ住民を避難誘導した自治体があることにも触れていない。「SPEEDIの取り扱いを明確に定めたものはなく、情報を共有できませんでした」との記述があるだけだった。同館を建設した県が自らの責任を覆い隠すような姿勢に批判はやまず、震災から10年を前にした今月初め、県は約30カ所で資料の追加や展示パネルの差し替えをすると発表した。SPEEDIの不手際についても国会事故調査委員会の報告を基に認めることになった。
●国と東京電力の責任
 昨年11月に伝承館を訪れた当時、私が展示のコンセプトに何か引っかかりを感じたのは、その1カ月前、仙台高等裁判所で福島第1原発事故での国の損害賠償を認める判決が出たからかもしれない。 全国で起こされている約30の集団訴訟のうち、国に損害賠償を命じた全国初の2審判決だった。福島地裁での1審判決に続いて国と東京電力の主張を退け、賠償額は総額約10億1000万円と、第1審の約5億円から倍増したことが特筆される。この訴訟で東京電力が問われたのは、原発の全電源喪失を引き起こして原子炉の冷却を不能にする津波の予見可能性および重大事故を回避できたかどうかだ。判決では、国の地震調査研究推進本部が02年7月に策定した日本海溝沿いの地震の可能性に関する「長期評価」に基づき、遅くとも同年末ごろまでには福島第1原発の原子炉の敷地の高さを超える津波が到来する可能性について東電が認識できたはずだと判断した。必要な対策を講じていれば、浸水による非常用ディーゼル発電機や配電盤など重要機器の機能喪失を防げた可能性が高いにもかかわらず、東電が対策を怠っていたことを重く見たのである。東電の安全対策義務違反の程度が決して軽微とは言えず、対策を怠ったことが「原告に対する慰謝料算定に当たって考慮すべき要素の一つとなる」として、原子力損害賠償法で定められた無過失責任原則に基づく中間指針や東電の自主賠償基準に基づく金額よりも損害賠償額を上積みし、1審判決の2倍の賠償額の支払いを命じたのだ。国に対しては、電気事業法などの法令に基づき必要な規制権限を行使せず、事故防止の努力を怠った点を「違法」だと認定した。「保安院(旧原子力安全・保安院)の対応は……東電による不誠実ともいえる報告を唯々諾々と受け入れることとなったものであり、規制当局に期待される役割を果たさなかったものと言わざるをえない」。1審は国の責任について東電の2分の1と判断したが、仙台高裁は国に東電と等しい賠償義務を認定した。「一般に営利企業たる原子力事業者においては、利益を重視するあまり、ややもすれば費用を要する安全対策を怠る方向に向かいがちな傾向が生じることは否定できないから、規制当局としては原子力事業者にそうした傾向が生じていないかを不断に注視しつつ、安全寄りの指導、規制をしていくことが期待されていたというべきであって、上記対応は規制当局の姿勢として不十分なものであったとの批判を免れない」。仙台高裁の訴訟の原告は約3650人にのぼる。最大規模の訴訟でもあり、ほかの訴訟へ与える影響も大きいとされた。事実、21年2月に千葉県に避難した住民らによる訴訟の東京高裁判決は「対策を取れば事故に至らなかった。国の規制権限不行使は違法」として、国に東電と同等の責任があると認定した。東電に計約2億7800万円の賠償を命じ、控訴審での請求額に応じ、このうち約1億3500万円は国も連帯して支払うべきだとした。1審の千葉地裁は国の責任を認めておらず、原告の逆転勝訴となった。国が被告となった避難者訴訟の高裁判決は3件目。国の責任を認める判断は、仙台高裁に続き2件目となった。
●揺らぎ、消えていく記憶
 大震災と津波は避けられなかったが、福島第1原発の爆発事故は安全対策を怠った東電の怠慢と、それをチェックしなかった国の背信行為によってもたらされた。多くの命が失われ、人々が故郷をなくした東電と国の責任は重大だ――。仙台高裁の判決はそう言っているのである。「東日本大震災・原子力災害伝承館」は、被害の実態と回復の過程について伝承はしているが、それが何で起きたのかということは抜け落ちていると思う。原発事故の原因に関する展示や説明を避けているというだけでなく、「語り部の口をふさぐ」という指摘においては覆い隠していることになる。仙台高裁やそれに続く東京高裁の判決の文脈に従えば、国や東電は原発事故を防ぐことができなかった(引き起こした)加害者であり、原発事故によって被災した語り部は被害者にほかならない。全額を国の交付金で建設された伝承館という「装置」には、理不尽な構造が潜んでいるように感じられてならない。人は誰しも過去からの連続した記憶によって自らのアイデンティティー(存在証明)を保っている。揺らいだり、薄れたり、変容したりする、蜃気楼(しんきろう)のような不確かさをかろうじて形にして残すのが言葉や文字である。原発事故で原告団に加わった被災者は年を経るにつれて亡くなっていく。語り部たちも減っていき、いずれは誰もいなくなる。原発事故の地獄を体験した生々しい記憶は語り伝えておかなければ、歴史のかなたへと消えていく。今のうちに被災した人々の記憶をありのまま残していかなければならないと思う。
●場所と記憶
 晩秋の日が静かにあるじのいない家屋に注いでいる。誰かに見られるということもなく10年もの歳月をただ太陽に焼かれて過ごしてきたのだ。戸を閉め、シャッターを下ろす余裕もなかったのだろう。洋品店はガラス戸が開いたまま、商品が店内にぎっしりと陳列されている。消防署分署の事務所は戸が開け放たれ、中には机やいすが雑然と置かれたままになっていた。ソファの表面を白いちりが覆っている。オープンしたばかりの伝承館の周辺を歩くと、10年前の震災の日のままの姿で家屋や店舗が残っていた。薬局もガソリンスタンドも、そこに人がいないというだけで、何かの拍子に止まっていた時が動き出しそうな気がしてくる。どんな傷も時間が立てば血が乾き、色が変わり、かさぶたとなるものだが、むき出しのまま変わることのない傷が目の前にある。印画紙に焼き付けた写真ならセピア色にもなろう。しかし、かつての平穏な日常は腐食して骨になることも、朽ち果てることも許されず、無残なままさらけ出されている。住みなれた家の戸を閉める余裕すらなく逃げていかざるを得なかった人々の慟哭(どうこく)が聞こえてきそうだ。個々の被災者の救済について仙台高裁の判決が大きく踏み込んだのは、この街の風景と関係している。同高裁判決は「帰還困難区域」や「旧居住制限区域」、「旧避難指示解除準備区域」など原発から近い旧避難指示区域に住居があった原告への損害賠償額について、国の中間指針や東電の自主賠償基準を超える損害額を認めた。裁判の過程で、裁判長が「現地進行協議」と称して帰還困難区域や旧居住制限区域の現状を視察したことが大きく影響したといわれる。荒廃した家屋や元に戻らない生活の実態を裁判長が自らの目で確認したことが賠償額の上積みにつながったというのである。避難指示が出なかった地域に住んでいた子どもや妊婦の原告について新たに損害を認定したのも、今回の高裁判決の特徴とされる。「過去は流れ去ってしまうのではなく、現在のうちに積み重なり保持されている」。哲学や社会学の領域では19世紀のころからそのような時間と記憶をめぐる考え方がある。E・フッサールやM・アルバックスらが提唱している。過去は空間のうちに痕跡として刻まれ、その痕跡を通して集合的に保持される。時間が場所と結びつき、記憶が空間と結びつく。「そこに近代的な時間と空間の理解とは異なる<記憶と場所>という時間と空間のあり方が見いだされる」。福島県出身の社会学者、浜日出夫・慶応大名誉教授は論文でそう述べている。風の音すら聞こえない街に立ち尽くしていると、どこからともなく恐怖が忍び寄ってくるのを感じた。「復興に挑戦する」という掛け声のかなたに忘れ去ってきた街に対するやましさなのか、被災者の記憶を封じ込めてきた後ろめたさなのか。そうしたことに気づかず安穏とこの10年を生きてきた自分自身の無為からくるおびえなのかもしれないと思った。置き去りにされた街の「場の記憶」が、ここを訪れた裁判長の心証に大きな影響を与えたに違いない。
●「そこにある事実」を見よう
 政府は13年までに原発事故に伴う避難指示区域(福島県の11市町村の計1150平方キロ)を被ばく線量に応じて再編し、「避難指示解除準備区域」「居住制限区域」「帰還困難区域」の三つに分けた。比較的線量が低い「避難指示解除準備区域」や「居住制限区域」を対象に優先的な除染作業が進められ、これまでに避難指示を解除してきた。現在残っているのは「帰還困難区域」だが、面積は337平方キロと広い。17年に成立した改正福島復興再生特別措置法では、帰還困難区域の8%にあたるエリアを復興拠点とし、除染やインフラ整備に乗り出すことになった。だが、復興拠点以外は避難指示解除の時期が見通せず、帰還困難区域の避難者は今も2万人を超える。毎日新聞と社会調査研究センターが今月実施した全国世論調査では、被災地の復興状況について、「復興は順調に進んでいる」と答えた人は20%にとどまり、国民の被災地に対する関心について「薄れた」と感じる人は79%に上った。県別では福島が84%で、宮城や岩手に比べても高かった。どんな出来事も時間とともに生々しい記憶は薄れ、忘れ去られることは避けられない。しかし、先人たちが後世に残そうとしてきたものがあり、今私たちはそれを「歴史」として知ることができている。自らの存在に永続性を求める本能かもしれないし、教訓を語り継ぐ使命感のようなものが人間には備わっているのかもしれない。いずれにせよ、伝承はどんなものであれ、伝えようとする側の意図や感情が込められる。文章でも口伝えでも映像でも。展示物でさえ、どこにどのように展示するかで、伝える側の価値観が反映される。そうした思惑や意味づけから免れているのは、「そこにある事実」だけだ。あらゆる思想性や価値観に染められるのを拒み、福島第1原発の周辺の街は時のなかにたたずんでいる。そこに足を踏み入れた人の想像力と感受性に、自らの存在する意味を投げ出しているように思えてくる。
●そこにある事実を見よう。
 巨額の復興費用を投じて建設された伝承館が何を伝えようとしているのか、置き去りにされてきた街が無言のうちに何を物語ろうとしているのかを考えよう。時間とはただ流れ去っていくだけではない。場に積み重なっていくものでもある。場の記憶」が何か質感を持ったエネルギーとなって、その場を訪れた人の感性に働きかけてくるものがあるはずだ。

*4-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210314&ng=DGKKZO69965090T10C21A3EA1000 (日経新聞 2021.3.14) 大地震想定海域を探査 東北大など無人船、地殻変動を観測 予兆つかみ備え厚く
 巨大地震を捉える調査や観測が本格化する。東北北部・北海道沖の海底は、東日本大震災で地震が起こらず、ひずみがたまって巨大地震が発生しやすいといわれる。東北大学などは無人船で予兆を探る観測調査を4月に始める。防災科学技術研究所も、被害が甚大になると懸念される南海トラフ巨大地震の発生を瞬時につかむ海底観測網の整備に着手した。日本周辺でリスクが高まる大地震への備えを加速する。内閣府の有識者会議は20年に、複数の巨大地震の発生が、日本海溝と千島海溝がある東北北部・北海道沖で「切迫している」とする想定を発表した。過去の記録などから、同地域で将来発生する地震の規模として、日本海溝の北海道沖でマグニチュード(M)9.1、千島海溝の十勝・根室沖でM9.3と想定している。いずれも東日本大震災級の大きさで、30メートル級の津波がくる地域もあると予想されている。宮城県沖が震源だった東日本大震災では、岩手県沖より北の日本海溝で断層がずれなかったため「割れ残り」と呼ぶ状態でひずみが蓄積し、巨大地震が発生しやすいとされる。地震発生前の一定期間には、海底の地殻が平時とは違う動きをすると考えられているが、具体的なデータがほとんど取れていなかった。東北大の日野亮太教授らは、無人で海底の様子を探るシステムを開発した。米ボーイング子会社の無人探査船「ウエーブグライダー」に小型装置を搭載。海底のセンサーに向けて音波を出して、海底プレートの位置の変動を把握する。地震はプレートが大きくずれて引き起こされることが多く、長期観測で地震の前触れとなる「異常」な動きを探る。初回は、4月2日に北海道根室市沖で探査船を放流して千島海溝を観測した後、南下して岩手県沖などの日本海溝を観測する。5月半ばに宮城県沖で回収する。2回目は10月にも実施し、以降継続する計画だ。無人観測船は、太陽電池で機器のエネルギーをまかなうことから、観測コストを10分の1以下に抑えられる。数カ月間連続で観測もできる。日野教授は「平時のデータを集め、異常の兆候をすぐに観測できるようにしたい」と話す。一方、防災科研は、南海トラフ巨大地震の発生を瞬時に捉えるため、海底域の観測網を拡充する。想定される震源域の西側がこれまでは観測できていない空白域であることから「南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)」の工事に着手した。高知県沖から日向灘にかけて地震計や津波計を組み込んだ総延長1600キロメートルの光海底ケーブルで結んだ観測システムを敷設する。23年度に完成させ運用する予定だ。N-netの構築によって震源により近い海底で揺れを捉えられるため、地震は最大で20秒、津波は20分、それぞれ従来よりも早く検知できることを見込む。即時に気象庁に伝送し、緊急地震速報や津波警報に活用する計画だ。防災科研の青井真・地震津波火山ネットワークセンター長は「巨大地震が起きた時に迅速に適切な防災情報を出せる社会を目指す」と話す。

<観光の高度化:観光ルートへの歴史の織り込み>
*5-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/634077 (佐賀新聞 2021/2/17) <運行情報>JR筑肥線の一部区間で運転を見合わせ
 JR九州によると、断続的な強風で、17日午前8時ごろ、JR筑肥線の加布里―筑前深江間で風規制を行っている影響で、筑前前原―筑前深江間の上下線で運転を見合わせている。また、筑前深江―西唐津間では遅れが発生している。

*5-2:http://www.eonet.ne.jp/~temb/16/gishi_wajin/wajin.htm 魏志倭人伝(原文、書き下し文、現代語訳)、解説は「魏志倭人伝から見える日本」へ、(百衲本。国名や官名は漢音で読む) より編集
①倭人在帶方東南大海之中 依山㠀為國邑 舊百餘國 漢時有朝見者 今使譯所通三十國  「倭人は帯方東南、大海の中に在り。山島に依り国邑を為す。旧百余国。漢の時、朝見する者有り。今、使訳通ずる所は三十国。」
 倭人は帯方郡の東南、大海の中に在る。山島に依って国邑を作っている。昔は百余国あり、漢の時、朝見する者がいた。今、交流の可能な国は三十国である。
②從郡至倭 循海岸水行 歴韓国 乍南乍東 到其北岸狗邪韓國 七千餘里  「郡より倭に至るには、海岸に循いて水行し、韓国を歴て、たちまち南し、たちまち東し、その北岸、狗邪韓国に到る。七千余里。」
(帯方)郡から倭に至るには、海岸に沿って水行し、韓国を通り過ぎ、南へ行ったかと思うと、いきなり東へ行ったりしを繰り返しながら、その(=倭の)北岸の狗邪韓国に到着する。七千余里。
③始度一海 千餘里 至對海國 其大官日卑狗 副日卑奴母離 所居絶㠀 方可四百餘里 土地山險多深林 道路如禽鹿徑 有千餘戸 無良田食海物自活 乗船南北市糴  「始めて一海を度る。千余里。対海国に至る。その大官は卑狗と曰い、副は卑奴母離と曰う。居する所は絶島、方四百余里ばかり。土地は山険しく深林多し。道路は禽鹿の径の如し。千余戸有り。良田無く、海物を食し自活す。船に乗り、南北に市糴す。」
 始めて一海を渡り、千余里で対海国に至る。その大官はヒコウといい、副官はヒドボリという。居する所は絶海の孤島で、およそ四百余里四方。土地は、山が険しくて深い林が多く、道路は鳥や鹿の道のようである。千余戸の家がある。良田はなく海産物を食べて自活している。船に乗って南や北(九州や韓国)へ行き、商いして米を買い入れている。
④又南渡一海 千餘里 名日瀚海 至一大國 官亦日卑狗 副日卑奴母離 方可三百里 多竹木叢林 有三千許家 差有田地 耕田猶不足食 亦南北市糴  「又、南、一海を渡る。千余里。名は瀚海と曰う。一大国に至る。官は亦た卑狗と曰い、副は卑奴母離と曰う。方三百里ばかり。竹木叢林多し。三千ばかりの家有り。やや田地有り。田を耕すも、なお食するに足らず。亦、南北に市糴す。」
 また(さらに)、南に一海を渡る。千余里。名はカン海という。一大国に至る。官は、また(対海国と同じく)、ヒコウといい、副はヒドボリという。およそ三百里四方。竹、木、草むら、林が多い。三千ばかりの家がある。いくらかの田地がある。田を耕しても、やはり、住民を養うには足りないので、また(対海国と同じく)、南北に行き、商いして米を買い入れている。
⑤又渡一海 千餘里 至末盧國 有四千餘戸 濱山海居 草木茂盛行不見前人 好捕魚鰒 水無深淺皆沉没取之  「又、一海を渡る。千余里。末盧国に至る。四千余戸有り。山海に浜して居す。草木茂盛し、行くに前人を見ず。魚鰒を捕るを好み、水、深浅無く、皆、沈没してこれを取る。」
 また、一海を渡る。千余里。末盧国に至る。四千余戸があり、山と海すれすれに沿って住んでいる。草木が盛んに茂り、行く時、前の人が(草木に隠されて)見えない。魚やアワビを捕ることが好きで、水の深浅にかかわらず、みな、水に潜ってこれを取っている。
⑥東南陸行 五百里 到伊都國 官日爾支 副日泄謨觚柄渠觚 有千餘戸 丗有王 皆統屬女王國 郡使往來常所駐  「東南陸行。五百里。伊都国に到る。官は爾支といい、副は泄謨觚、柄渠觚という。千余戸有り。世、王有り。皆、女王国に統属す。郡使往来し常に駐する所。」
 (末盧国から)東南に陸上を五百里行くと伊都国に到着する。官はジシといい、副はエイボコ、ヘイキョコという。千余戸が有る。代々、王が有り、みな女王国に従属している。(帯方)郡の使者が往来し、常に足を止める所である。
⑦東南至奴国 百里 官日兕馬觚 副日卑奴母離 有二萬餘戸  「東南、奴国に至る。百里。官は兕馬觚と曰い、副は卑奴母離と曰う。二万余戸有り。」
 (伊都国から)東南、奴国に至る。百里。官はシバコといい、副はヒドボリという。二万余戸が有る。
⑧東行至不彌國 百里 官日多模 副日卑奴母離 有千餘家  「東行、不弥国に至る。百里。官は多摸と曰い、副は卑奴母離と曰う。千余家有り。」
 (奴国から)東に行き不弥国に至る。百里。官はタボといい、副官はヒドボリという。千余りの家がある。
⑨南至投馬國 水行二十日 官日彌彌 副日彌彌那利 可五萬餘戸  「南、投馬国に至る。水行二十日。官は弥弥と曰い、副は弥弥那利と曰う。五万余戸ばかり。」
 (不弥国から)南、投馬国に至る。水行二十日。官はビビといい、副はビビダリという。およそ五万余戸。
⑩南至邪馬壹國 女王之所都 水行十日陸行一月 官有伊支馬 次日彌馬升 次日彌馬獲支 次日奴佳鞮 可七萬餘戸  「南、邪馬壱国に至る。女王の都とする所。水行十日、陸行一月。官は伊支馬有り。次は弥馬升と曰う。次は弥馬獲支と曰う。次は奴佳鞮と曰う。七万余戸ばかり。」
 (投馬国から)南、邪馬壱(ヤバヰ)国に至る。女王の都である。水行十日、陸行ひと月。官にイシバがある。次はビバショウといい、次はビバクワシといい、次はドカテイという。およそ七万余戸。
⑪自女王國以北 其戸數道里可得略載 其餘旁國遠絶 不可得詳 次有斯馬國 次有巳百支國 次有伊邪國 次有都支國 次有彌奴國 次有好古都國 次有不呼國 次有姐奴國 次有對蘇國 次有蘇奴國 次有呼邑國 次有華奴蘇奴國 次有鬼國 次有為吾國 次有鬼奴國 次有邪馬國 次有躬臣國 次有巴利國 次有支惟國 次有烏奴國 次有奴國 此女王境界所盡  「女王国より以北、その戸数、道里は略載を得べきも、その余の旁国は遠くして絶へ、詳を得べからず。次に斯馬国有り。次に巳百支国有り。次に伊邪国有り。次都支国有り。次に弥奴国有り。次に好古都国有り。次に不呼国有り。次に姐奴国有り。次に対蘇国有り。次に蘇奴国有り。次に呼邑国有り。次に華奴蘇奴国有り。次に鬼国有り。次に為吾国有り。次に鬼奴国有り。次に邪馬国有り。次に躬臣国有り。次に巴利国有り。次に支惟国有り。次に烏奴国有り。次に奴國有り。ここは女王の境界尽きる所。」
 (ここまでに紹介した)女王国より以北は、その戸数や距離のだいたいのところを記載出来るが、その他のかたわらの国は遠くて情報もなく、詳しく知ることは出来ない。次にシバ国が有る。次にシハクシ国がある。次にイヤ国がある。次にトシ国がある。次にミド国がある。次にカウコト国がある。次にフウコ国がある。次にシャド国がある。次にタイソ国がある。次にソド国がある。次にコイフ国がある。次にカドソド国がある。次にキ国がある。次にヰゴ国がある。次にキド国がある。次にヤバ国がある。次にキュウシン国がある。次にハリ国がある。次にシユイ国がある。次にヲド国がある。次にド国がある。ここは女王の境界の尽きる所である。
⑫其南有狗奴國 男子為王 其官有狗古智卑狗 不屬女王 自郡至女王國 萬二千餘里  「その南、狗奴国有り。男子が王と為る。その官は狗古智卑狗有り。女王に属さず。郡より女王国に至る。万二千余里。」
 その(女王国の)南に狗奴(コウド、コウドゥ)国があり、男子が王になっている。その官に狗古智卑狗(コウコチヒコウ)がある。女王には属していない。郡より女王国に至るまで、万二千余里。
男子無大小 皆黥面文身 自古以來 其使詣中國 皆自稱大夫 夏后少康之子封於會稽 斷髪文身 以避蛟龍之害 今 倭水人好沉没捕魚蛤 文身亦以厭大魚水禽 後稍以為飾 諸國文身各異 或左或右 或大或小 尊卑有差 計其道里 當在會稽東治之東(東治は東冶の転写間違いと考える)  「男子は大小無く、皆、黥面文身す。古より以来、その使中国に詣(いた)るや、皆、自ら大夫と称す。夏后少康の子は会稽に封ぜられ、断髪文身して、以って蛟龍の害を避く。今、倭の水人は沈没して魚、蛤を捕るを好み、文身は、亦、以って大魚、水禽を厭(はら)う。後、稍(しだい)に以って飾と為る。諸国の文身は各(それぞれ)に異なり、或いは左し、或いは右し、或いは大に、或いは小に。尊卑差有り。その道里を計るに、まさに会稽、東冶の東に在るべし。」
 男子はおとな、子供の区別無く、みな顔と体に入れ墨している。いにしえより以来、その使者が中国に来たときには、みな自ら大夫と称した。夏后(王朝)の少康(五代目の王)の子は、会稽に領地を与えられると、髪を切り、体に入れ墨して蛟龍の害を避けた。今、倭の水人は、沈没して魚や蛤を捕ることを好み、入れ墨はまた(少康の子と同様に)大魚や水鳥を追い払うためであったが、後にはしだいに飾りとなった。諸国の入れ墨はそれぞれ異なって、左にあったり、右にあったり、大きかったり、小さかったり、身分の尊卑によっても違いがある。その(女王国までの)道のりを計算すると、まさに(中国の)会稽から東冶にかけての東にある。
⑬其風俗不淫 男子皆露紒 以木緜招頭 其衣横幅 但結束相連略無縫 婦人被髪屈紒 作衣如單被 穿其中央貫頭衣之  「その風俗は淫ならず。男子は、皆、露紒し、木綿を以って頭を招(しば)る。その衣は横幅、ただ結束して相連ね、ほぼ縫うこと無し。婦人は被髪屈紒す。衣を作ること単被の如し。その中央を穿ち、頭を貫きてこれを衣る。」
 その風俗はみだらではない。男子は皆、(何もかぶらず)結った髪を露出しており、木綿で頭を縛り付けている。その着物は横幅が有り、ただ結び付けてつなげているだけで、ほとんど縫っていない。婦人はおでこを髪で覆い(=おかっぱ風)、折り曲げて結っている。上敷きのような衣をつくり、その中央に穴をあけ、そこに頭を入れて着ている。
⑭種禾稻紵麻 蠶桑 緝績出細紵縑緜 其地無牛馬虎豹羊鵲 兵用矛盾木弓 木弓短下長上 竹箭或鐵鏃或骨鏃 所有無與儋耳朱崖同  「禾稲、紵麻を種(う)え、蚕桑す。緝績して細紵、縑、緜を出す。その地には牛、馬、虎、豹、羊、鵲無し。兵は矛、盾、木弓を用いる。木弓は下を短く、上を長くす。竹箭は或いは鉄鏃、或いは骨鏃。有無する所は儋耳、朱崖と同じ。」
 稲やカラムシを栽培し、養蚕する。紡いで目の細かいカラムシの布やカトリ絹、絹綿を生産している。その土地には牛、馬、虎、豹、羊、カササギがいない。兵器には矛、盾、木の弓を用いる。木の弓は下が短く上が長い。竹の矢は鉄のヤジリであったり、骨のヤジリであったり。持っている物、いない物は儋耳、朱崖(=中国・海南島)と同じである。
⑮倭地温暖 冬夏食生菜 皆徒跣 有屋室 父母兄弟卧息異處 以朱丹塗其身體 如中國用粉也 食飲用籩豆 手食  「倭地は温暖にして、冬夏生菜を食す。皆、徒跣。屋室有り。父母、兄弟は異所に臥息す。朱丹を以ってその身体に塗る。中国の紛を用いるが如し。食、飲には籩豆を用い、手食す。」
 倭地は温暖で、冬でも夏でも生野菜を食べている。みな裸足である。屋根、部屋がある。父母と兄弟(男子)は別の場所で寝たり休んだりする。赤い顔料をその体に塗るが、それは中国で粉おしろいを使うようなものである。食飲には、籩(ヘン、竹を編んだ高坏)や豆(木をくり抜いた高坏)を用い、手づかみで食べる。
⑯其死有棺無槨 封土作冢 始死停喪十餘日 當時不食肉 喪主哭泣 他人就歌舞飲酒 已葬 擧家詣水中澡浴 以如練沐  「その死には、棺有りて槨無し。土で封じ冢を作る。始め、死して喪にとどまること十余日。当時は肉を食さず、喪主は哭泣し、他人は歌舞、飲酒に就く。已に葬るや、家を挙げて水中に詣(いた)り澡浴す。以って練沐の如し。」
 人が死ぬと、棺に収めるが、(その外側の入れ物である)槨はない。土で封じて盛った墓を造る。始め、死ぬと死体を埋めないで殯(かりもがり)する期間は十余日。その間は肉を食べず、喪主は泣き叫び、他人は歌い踊って酒を飲む。埋葬が終わると一家そろって水の中に入り、洗ったり浴びたりする。それは(白い絹の喪服を着て沐浴する)中国の練沐のようなものである。
⑰其行來渡海詣中國 恒使一人不梳頭不去蟣蝨衣服垢汚不食肉不近婦人如喪人 名之為持衰 若行者吉善 共顧其生口財物 若有疾病遭暴害 便欲殺之 謂其持衰不謹  「その行来、渡海し中国に詣るに、恒に一人をして、頭を梳らず、蟣蝨を去らず、衣服は垢汚し、肉を食らわず、婦人を近づけず、喪人の如くせしむ。これを名づけて持衰と為す。若し、行く者に吉善ならば、共にその生口、財物を顧す。若し、疾病が有り、暴害に遭うならば、便(すなわ)ち、これを殺さんと欲す。その持衰が謹まずと謂う。」
 その行き来し海を渡って中国にいたる際は、常に一人に、頭をくしけずらせず、シラミを取らせず、衣服をアカで汚したままにさせ、肉を食べさせず、婦人を近づけさせないで喪中の人のようにさせる。これをジサイという。もし無事に行けたなら、皆でジサイに生口や財物を対価として与えるが、もし病気になったり、危険な目にあったりすると、これを殺そうとする。そのジサイが慎まなかったというのである。
⑱出真珠青玉 其山有丹 其木有枏杼橡樟楺櫪投橿烏號楓香 其竹篠簳桃支 有薑橘椒襄荷 不知以為滋味 有獮猴黒雉  「真珠、青玉を出す。その山には丹有り。その木には枏、杼、橡、樟、楺櫪、投橿、烏號、楓香有り。その竹は篠、簳、桃支。薑、橘、椒、襄荷有り。以って滋味と為すを知らず。獮猴、黒雉有り。」
 真珠や青玉を産出する。その山には丹がある。その木はタブノキ(枏=楠)、コナラ(杼)、クロモジ(橡)、クスノキ(樟)、?(楺櫪)、?(投橿)、ヤマグワ(烏號)、フウ(楓香)がある。その竹はササ(篠)、ヤダケ(簳)、真竹?(桃支)。ショウガや橘、山椒、茗荷などがあるが、(それを使って)うまみを出すことを知らない。アカゲ猿や黒雉がいる。
⑲其俗 擧事行來 有所云為 輒灼骨而卜 以占吉凶 先告所卜 其辭如令龜法 視火坼占兆  「その俗、挙事行来、云為する所有れば、すなわち骨を灼いて卜し、以って吉凶を占う。先に卜する所を告げる。その辞は令亀法の如し。火坼を視て兆しを占う。」  その風俗では、何かをする時や、何処かへ行き来する時、ひっかかりがあると、すぐに骨を焼いて卜し、吉凶を占う。先に卜する目的を告げるが、その言葉は中国の占いである令亀法に似ている。火によって出来た裂け目を見て、兆しを占うのである。
⑳其會同坐起 父子男女無別 人性嗜酒  「その会同、坐起では、父子、男女は別無し。人性は酒を嗜む。」
 その会合での立ち居振る舞いに、父子や男女の区別はない。人は酒を好む性質がある。
㉑(裴松之)注…魏略曰 其俗不知正歳四節 但計春耕秋収 為年紀  「魏略(*)いわく、その習俗では正月(陰暦)や四節を知らない。ただ春に耕し、秋に収穫したことを数えて年紀としている。」《*/「魏略」…魏の歴史を記した書、現存しない》
㉒見大人所敬 但搏手以當跪拝 其人寿考 或百年或八九十年  「大人を見て敬する所は、ただ搏手し、以って跪拝に当てる。その人は寿考、或いは百年、或いは八、九十年。」
 大人を見て敬意を表す場合は、ただ手をたたくのみで、跪いて拝む代わりとしている。人々は長寿で或いは百歳、或いは八、九十歳の者もいる。
㉓其俗国大人皆四五婦 下戸或二三婦 婦人不淫不妬忌 不盗竊少諍訟 其犯法 軽者没其妻子 重者没其門戸及宗族 尊卑各有差序足相臣服  「その俗、国の大人は、皆、四、五婦。下戸は或いは、二、三婦。婦人は淫せず、妬忌せず。盗窃せず、諍訟少なし。その法を犯すに、軽者はその妻子を没し、重者はその門戸、宗族を没す。尊卑は各(それぞれ)差序有りて、相臣服して足る。」
 その習俗では、国の大人はみな四、五人の妻を持ち、下戸でも二、三人の妻を持つ場合がある。婦人は貞節で嫉妬しない。窃盗せず、訴えごとも少ない。その法を犯すと軽いものは妻子を没し(奴隷とし)、重いものはその一家や一族を没する。尊卑にはそれぞれ差や序列があり、上の者に臣服して保たれている。
㉔収租賦有邸閣 國國有市 交易有無 使大倭監之  「租賦を収め、邸閣有り。国国は市有りて、有無を交易す。大倭をして之を監せしむ。」
 租税を収め、高床の大倉庫がある。国々に市があって有無を交易し、大倭にこれを監督させている。
㉕自女王國以北 特置一大率檢察 諸國畏憚之 常治伊都國 於國中有如刺史 王遣使詣京都帶方郡諸韓國及郡使倭國 皆臨津捜露 傳送文書賜遺之物詣女王 不得差錯  「女王国より以北は、特に一大率を置き検察し、諸国はこれを畏憚す。常に伊都国に治す。国中に於ける刺史の如く有り。王が使を遣わし、京都、帯方郡、諸韓国に詣らす、及び郡が倭国に使するに、皆、津に臨みて捜露す。文書、賜遺の物を伝送し女王に詣らすに、差錯するを得ず。」
 女王国より以北には、特に一人の大率を置いて検察し、諸国はこれを恐れはばかっている。常に伊都国で政務を執っている。(魏)国中における刺史の如きものである。(邪馬壱国の)王が使者を派遣し、魏の都や帯方郡、諸韓国に行くとき、及び帯方郡の使者が倭国へやって来たときには、いつも(この大率が伊都国から)港に出向いて調査、確認する。文書や授けられた贈り物を伝送して女王のもとへ届けるが、数の違いや間違いは許されない。
㉖下戸與大人相逢道路 逡巡入草 傳辭説事 或蹲或跪 兩手據地 為之恭敬 對應聲曰噫 比如然諾  「下戸、大人と道路に相逢えば、逡巡して草に入る。辞を伝え、事を説くには、或いは蹲り、或いは跪き、両手は地に拠る。これが恭敬を為す。対応の声は噫と曰う。比して然諾の如し。」
 下層階級の者が貴人に道路で出逢ったときは、後ずさりして(道路脇の)草に入る。言葉を伝えたり、物事を説明する時には、しゃがんだり、跪いたりして、両手を地に付け、うやうやしさを表現する。貴人の返答の声は「アイ」という。比べると(中国で承知したことを表す)然諾と同じようなものである。
㉗其國本亦以男子為王 住七八十年 倭國亂相攻伐歴年 乃共立一女子為王 名日卑弥呼 事鬼道能惑衆 年已長大 無夫婿 有男弟 佐治國 自為王以来少有見者 以婢千人自侍 唯有男子一人 給飲食傳辭出入居處 宮室樓觀城柵嚴設 常有人持兵守衛  「その国、本は亦、男子を以って王と為す。住むこと七、八十年。倭国は乱れ、相攻伐すること歴年、乃ち一女子を共立して王と為す。名は卑弥呼と曰う。鬼道に事え能く衆を惑わす。年すでに長大。夫婿なく、男弟ありて、佐(たす)けて国を治める。王と為りてより以来、見有る者少なし。婢千人を以(もち)い、おのずから侍る。ただ、男子一人有りて、飲食を給し、辞を伝え、居所に出入りす。宮室、楼観、城柵が厳設され、常に人有りて兵を持ち守衛す。」
 その国は、元々は、また(狗奴国と同じように)男子を王と為していた。居住して七、八十年後、倭国は乱れ互いに攻撃しあって年を経た。そこで、一女子を共に立てて王と為した。名は卑弥呼という。鬼道の祀りを行い人々をうまく惑わせた。非常に高齢で、夫はいないが、弟がいて国を治めるのを助けている。王となってから、まみえた者はわずかしかいない。侍女千人を用いるが(指示もなく)自律的に侍り、ただ、男子一人がいて、飲食物を運んだり言葉を伝えたりするため、女王の住んでいる所に出入りしている。宮殿や高楼は城柵が厳重に作られ、常に人がいて、武器を持ち守衛している。
㉘女王國東 渡海千餘里 復有國皆倭種 又有侏儒國在其南 人長三四尺 去女王四千餘里 又有裸國黒齒國 復在其東南 船行一年可至  「女王国の東、海を渡ること千余里。復(また)国有りて、皆、倭種。又、侏儒国有りて、その南に在り。人長は三、四尺。女王を去ること四千余里。又、裸国、黒歯国有りて、復、その東南に在り。船行一年にして至るべし。」
 女王国の東、海を渡って千余里行くと、また国が有り、皆、倭種である。また、侏儒国がその(女王国の)南にある。人の背丈は三、四尺で、女王国を去ること四千余里。また、裸国と黒歯国があり、また、その(女王国の)東南にある。船で一年行くと着く。
㉙参問倭地 絶在海中洲㠀之上 或絶或連 周旋可五千餘里  「倭地を参問するに、絶えて海中の洲島の上に在り。或いは絶え、或いは連なり、周旋五千余里ばかり。」
 倭地を考えてみると、遠く離れた海中の島々の上にあり、離れたり連なったり、巡り巡って五千余里ほどである。
㉚景初二年六月 倭女王遣大夫難升米等詣郡 求詣天子朝獻 太守劉夏遣吏将送詣京都 其年十二月 詔書報倭女王曰  「景初二年六月、倭女王は大夫、難升米等を遣わして郡に詣り、天子に詣りて朝献せんことを求む。太守、劉夏は吏を遣わし、将(ひき)い送りて京都に詣る。その年十二月、詔書が倭女王に報いて曰く。」
 景初二年(238)六月、倭の女王は、大夫の難升米等を派遣して帯方郡に至り、天子にお目通りして献上品をささげたいと求めた。太守の劉夏は官吏を派遣し、難升米等を引率して送らせ、都(洛陽)に至った。その年の十二月、詔書が倭の女王に報いて、こう言う。
㉛制詔 親魏倭王卑弥呼 帶方太守劉夏遣使 送汝大夫難升米 次使都市牛利 奉汝所獻 男生口四人 女生口六人 班布二匹二丈以到 汝所在踰遠 乃遣使貢獻是汝之忠孝 我甚哀汝 今以汝為親魏倭王 假金印紫綬 装封付帶方太守假綬 汝其綏撫種人 勉為孝順 汝來使難升米 牛利 渉遠道路勤勞 今以難升米為率善中郎將 牛利為率善校尉 假銀印靑綬 引見勞賜遣還 今以絳地交龍錦五匹 絳地縐粟罽十張 蒨絳五十匹 紺青五十匹 答汝所獻貢直 又特賜汝紺地句文錦三匹 細班華罽五張 白絹五十匹 金八兩 五尺刀二口 銅鏡百枚 真珠鈆丹各五十斤 皆装封付難升米牛利 還到録受 悉可以示汝國中人使知國家哀汝 故鄭重賜汝好物也  「制紹、親魏倭王卑弥呼。帯方太守、劉夏が使を遣わし、汝の大夫、難升米、次使、都市牛利を送り、汝が献ずる所の男生口四人、女生口六人、班布二匹二丈を奉り、以って到る。汝の在る所は遠きを踰(こ)える。すなわち、使を遣わし貢献するは、これ汝の忠孝。我は甚だ汝を哀れむ。今、汝を以って親魏倭王と為し、金印紫綬を仮し、装封して帯方太守に付し、仮授する。汝は其れ種人を綏撫し、勉めて孝順を為せ。汝の来使、難升米、牛利は遠きを渉り、道路勤労す。今、難升米を以って率善中老将と為し、牛利は率善校尉と為す。銀印青綬を仮し、引見して、労い、賜いて、還し遣わす。今、絳地交龍錦五匹、絳地縐粟罽十張、蒨絳五十匹、紺青五十匹を以って、汝の献ずる所の貢の直に答う。又、特に汝に紺地句文錦三匹、白絹五十匹、金八兩、五尺刀二口、銅鏡百枚、真珠鉛丹各五十斤を賜い、皆、装封して難升米、牛利に付す。還り到らば、録して受け、悉く、以って汝の国中の人に示し、国家が汝を哀れむを知らしむべし。故に、鄭重に汝の好物を賜うなり。
㉜制詔、親魏倭王卑弥呼。  帯方太守、劉夏が使者を派遣し、汝の大夫、難升米と次使、都市牛利を送り、汝の献上した男の生口四人、女の生口六人、班布二匹二丈をささげて到着した。汝の住んでいる所は遠いという表現を越えている。すなわち使者を派遣し、貢ぎ献じるのは汝の忠孝のあらわれである。私は汝をはなはだいとおしく思う。今、汝を以て親魏倭王と為し、金印紫綬を仮し(与え)、装封して帯方太守に付すことで仮(かり)に授けておく。汝は種族の者を安んじ落ち着かせるそのことで、(私に)孝順を為すよう勉めよ。汝の使者、難升米と牛利は遠くから渡ってきて道中苦労している。今、難升米を以って率善中郎将と為し、牛利は率善校尉と為す。銀印青綬を仮し(与え)、引見してねぎらい、下賜品を与えて帰途につかせる。今、絳地交龍錦五匹、絳地縐粟罽十張、蒨絳五十匹、紺青五十匹を以って、汝が献じた貢ぎの見返りとして与える。また、特に汝に紺地句文錦三匹、細班華罽五張、白絹五十匹、金八両、五尺刀二口、銅鏡百枚、真珠、鉛丹各五十斤を下賜し、皆、装封して難升米と牛利に付す。帰り着いたなら記録して受け取り、ことごとく、汝の国中の人に示し、我が国が汝をいとおしんでいることを周知すればよろしい。そのために鄭重に汝の好物を下賜するのである。
㉝正始元年 太守弓遵 遣建中校尉梯儁等 奉詔書印綬詣倭国 拝仮倭王 并齎詔 賜金帛錦罽刀鏡采物 倭王因使上表 答謝詔恩  「正始元年、太守、弓遵は建中校尉、梯儁等を遣わし、詔書、印綬を奉じて倭国に詣り、倭王に拝仮す。並びに詔を齎(もたら)し、金、帛、錦、罽、刀、鏡、采物を賜う。倭王は使に因りて上表し、詔恩に答謝す。」
 正始元年(240)、(帯方郡)太守、弓遵は建中校尉梯儁等を派遣し、梯儁等は詔書、印綬(=親魏倭王という地位の認証状と印綬)を捧げ持って倭国へ行き、これを倭王に授けた。並びに、詔(=制詔)をもたらし、金、帛、錦、罽、刀、鏡、采物を下賜した。倭王は使に因って上表し、その有り難い詔に感謝の意を表して答えた。
㉞其四年 倭王復遣使大夫伊聲耆掖邪拘等八人 上獻生口倭錦絳青縑緜衣帛布丹木拊短弓矢 掖邪狗等壱拝率善中郎將印綬  「其の四年。倭王はまた使の大夫伊聲耆、掖邪拘等八人を遣わし、生口、倭錦、絳青縑、緜衣、帛布、丹、木拊短弓、矢を上献す。掖邪狗等は率善中郎将と印綬を壱拝す。」
 その(正始)四年(243)、倭王はまた大夫伊聲耆、掖邪狗等八人を派遣し、生口や倭の錦、赤、青の目の細かい絹、綿の着物、白い布、丹、木の握りの付いた短い弓、矢を献上した。掖邪狗等は等しく率善中郎将と印綬を授けられた。
㉟其六年 詔賜倭難升米黄幢 付郡假授  「其の六年、詔して倭、難升米に黄幢を賜い、郡に付して仮授す。」
 正始六年(245)、詔して倭の難升米に黄色い軍旗を賜い、帯方郡に付して仮に授けた。
㊱其八年太守王頎到官 倭女王卑弥呼與狗奴國男王卑弥弓呼素不和 遣倭載斯烏越等 詣郡 説相攻撃状 遣塞曹掾史張政等 因齎詔書黄幢  拝假難升米 為檄告喩之  「其の八年、太守、王頎が官に到る。倭女王、卑弥呼は狗奴国王、卑弥弓呼素と和せず、倭、載烏越等を遣わし、郡に詣り、相攻撃する状を説く。塞曹掾史、張政等を遣わし、因って詔書、黄幢を齎し、難升米に拝仮し、檄を為(つく)りて之を告諭す。」
 正始八年(247)、(弓遵の戦死を受けて)帯方郡太守の王頎が着任した。倭女王の卑弥呼は狗奴国の男王、卑弥弓呼素と和せず、倭の載斯烏越等を派遣して、帯方郡に至り、戦争状態であることを説明した。(王頎は)の張政等を派遣し、張政は詔書、黄幢をもたらして難升米に授け、檄文をつくり、これを告げて諭した。
㊲卑弥呼以死 大作冢 徑百餘歩 徇葬者奴婢百餘人 更立男王 國中不服 更相誅殺 當時殺千餘人 復立卑弥呼宗女壹與年十三為王 國中遂定 政等以檄告喩壹與  「卑弥呼以って死す。冢を大きく作る。径百余歩。徇葬者は奴婢百余人。更に男王を立つ。国中服さず。更に相誅殺し、当時、千余人を殺す。復(また)、卑弥呼の宗女、壱与、年十三を立てて王と為す。国中遂に定まる。政等は檄を以って壱与に告諭す。」
 卑弥呼は死に、冢を大きく作った。直径は百余歩。徇葬者は男女の奴隷、百余人である。さらに男王を立てたが、国中が不服で互いに殺しあった。当時千余人が殺された。また、卑弥呼の宗女、十三歳の壱与(イヨ)を立てて王と為し、国中が遂に安定した。張政たちは檄をもって壱与に教え諭した。
㊳壹與遣倭大夫率善中郎將掖邪拘等二十人 送政等還 因詣臺 獻上男女生口三十人 貢白珠五千孔 青大句珠二枚 異文雑錦二十匹  「壱与は倭の大夫、率善中郎将、掖邪拘等二十人を遣わし、政等の還るを送る。因って、臺に詣り、男女生口三十人を献上し、白珠五千孔、青大句珠二枚、異文雜錦二十匹を貢ぐ。」
 壱与は大夫の率善中郎将、掖邪拘等二十人を派遣して、張政等が帰るのを送らせた。そして、臺(中央官庁)に至り、男女の生口三十人を献上し、白珠五千孔、青大句珠二枚、模様の異なる雑錦二十匹を貢いだ。

*5-3:https://www.asahi.com/articles/ASN946Q7CN94ULUC00D.html (朝日新聞 2020年9月5日) 青森)世界遺産へ正念場 縄文遺跡群でイコモス調査
 青森県など4道県が来年の世界文化遺産登録をめざす「北海道・北東北の縄文遺跡群」が、世界遺産にふさわしいか評価するユネスコの諮問機関による現地調査が4日、始まった。海外の専門家が全17遺跡を回る現地調査は4道県にとって登録の判断に直結する「正念場」。青森市の三内丸山遺跡では、この日に備え準備を進めた関係者が真剣な表情で遺跡の価値や保存状況の説明にあたっていた。現地調査に訪れたのは、ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」の調査員で、オーストラリア人の専門家。県内を皮切りに15日までの期間中、4道県の各遺跡で政府が提出した推薦書の内容を確認し、調査結果をもとに来年5月にもイコモスが「登録」や「登録延期」など4段階ある評価のいずれかを勧告する。さらにこの勧告をもとに来夏に予定されるユネスコの世界遺産委員会が、最終的に登録するかどうか判断する。現地調査に向け、4道県は調査員役をたてて各遺跡でリハーサルを行うなど、入念な準備を進めてきた。この日、三内丸山遺跡では調査員が発掘された土坑墓や復元した大型掘立柱建物など大規模集落跡を丹念に見て回り、同行した県世界文化遺産登録推進室の岡田康博室長らに質問したり写真を撮影したりして遺跡の様子を確認していた。調査の一部は報道陣に公開されたが、審査の中立性を保つため、調査の内容や詳しい日程は非公表。イコモスの要請で、調査員への取材は認められず、調査中のやりとりが聞こえない距離からの撮影だけが許可される徹底ぶりだった。現地調査の開始を前に、三村申吾知事は3日の定例記者会見で「本当に待ちに待って準備してきて、いよいよという場面。とはいうものの、私どもは会いに行っちゃいけないし、頼むという感じ」と登録への期待を語っていた。現地調査の様子は、6日に秋田県鹿角市の大湯環状列石、13日に北海道伊達市の北黄金貝塚、15日に岩手県一戸町の御所野遺跡でも報道陣に公開される。

<無知や意識の低さは罪つくりであること>
PS(2021年3月18日追加):*6-1に、法相の諮問機関である法制審議会親子法制部会が民法の嫡出推定の見直しのための中間試案で、「①離婚後300日以内に生まれた子を『前夫の子』とみなす民法規定に例外を設け、母親が出産時点で再婚していれば『現夫の子』とみなす規定を設ける」「②女性に限り離婚後100日間、再婚を禁じる規定を撤廃する」「③見直しは離婚も再婚も成立した後に生まれた子に限られ、離婚協議もままならないケースは対象にならない」「④明治時代から続くこの規定は、母親が出生届を出さずに無戸籍者を生じさせる要因とされてきた」「⑤嫡出推定は、生まれた子と戸籍上の父親の関係を早く確定させて養育・相続等で子の利益を図る目的の制度である」などが書かれている。
 しかし、今はDNA鑑定で本当の父を特定できる時代であるため、①②は論外であるものの、③⑤も推定を根拠にしている点で誤りの可能性を残し、これでは父子ともに納得できないと思われるので、要請がある場合にはDNA鑑定で本当の父を特定することを原則にすべきだと思う。鑑定の結果、再婚相手の子でなかった場合は、親権の所在を確定した上で、養子縁組などの対応をとればよいだろう。なお、④については、前夫との離婚が成立するまでは再婚相手の子を作らないなど、女性も自分のことだけでなく子の気持ちや生育環境も考えて子づくりすべきだ。
 そのような中、*6-2のように、東京オリ・パラの開閉会式の演出を統括する佐々木氏が、開会式に出演予定だった太めの女性タレントの容姿を侮辱する内容の演出を提案したのだそうだ。開閉会式の演出をめぐって、組織委は2020年末に狂言師の野村萬斎氏を統括とする7人のチームを解散し、佐々木氏を責任者として権限を一本化していたとのことだが、佐々木氏が演出したとされるリオデジャネイロでの2016年の閉会式は、一国の首相をスーパーマリオに扮して登場させ、大人も多く見ているのに内容のない演出だと思っていた。そもそも、蔑みや侮辱で笑いをとろうとするのは見識が低いが、こういう人が日本のCM業界を代表する作り手で東京オリ・パラの開閉会式の演出統括責任者に選ばれていたというのでは、日本のTVのレベルが低いのも理解でき、選んだ人もまた意識が低い。

*6-1:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=133827 (南日本新聞 2021/3/7) [嫡出推定見直し] 無戸籍者生まぬ制度へ
 婚姻を基準に子どもの父親を決める民法の「嫡出推定」の見直しに向け、法相の諮問機関である法制審議会の親子法制部会が中間試案をまとめた。離婚後300日以内に生まれた子どもを「前夫の子」とみなす規定の例外を設け、母親が出産時点で再婚していれば「現夫の子」と新たに規定する。併せて女性に限り離婚後100日間、再婚を禁じる規定も撤廃する。明治時代から120年以上続く現行のルールは、母親が出生届を出さずに無戸籍者が生じる大きな要因とされてきた。試案は現代の家族観を反映した法律の転換点と評価できよう。ただ、見直しは今のところ離婚も再婚も成立した後に生まれた子どもに限られ、家庭内暴力で離婚協議もままならないケースなどは対象とならない。制度を充実させるために議論を深めていく必要がある。嫡出推定は本来、生まれた子どもと戸籍上の父親との関係を早く確定させて、養育や相続などで子どもの利益を図る考えに基づく制度である。海外でも採用している国は少なくない。しかし近年、離婚直後に別の男性との子どもを産んだ場合などに、前夫の子どもとみなされるのを避けるため、母親が出生届を出さないケースが増えてきた。法務省が市区町村などを通して把握した無戸籍者は1月時点で901人おり、このうち73%がこうした事例に当たる。支援団体によると、行政が捉えられていない潜在的な無戸籍者も多く、少なくとも1万人に上るという。無戸籍者は住民票の作成や運転免許の取得、銀行口座の開設などが難しく、進学や就職、結婚でも深刻な影響を受ける。本人に落ち度がないのに多大な不利益を強いられる現実を考えれば、民法の規定見直しは急務だ。中間試案は、夫にだけ認められていた父子関係を否定する「嫡出否認」の訴えを、未成年の子どもと、子の代理の母親もできるようにすることも示した。当事者への配慮がうかがえる。とはいえ、なかなか離婚できなかったり、再婚に至らなかったりした場合の対応が不十分との指摘が出ている。300日規定そのものの撤廃を求める声も根強い。事実婚など家族の在り方が多様化する中、さらにさまざまな要請に応えなければならない。例えば、科学技術の進歩を生かし、今では民間機関も手掛けているDNA鑑定で血縁上の父親と判定できれば、出生届を受け付ける仕組みなども検討するべきではないか。法制審部会が方向性を示したことで、法改正に結びつく可能性は高くなってきた。現在、生活に支障を来している無戸籍者への支援を含め、救済の枠からこぼれ落ちる子どもが出ないよう知恵を絞りたい。

*6-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14836892.html (朝日新聞 2021年3月18日) 「女性容姿侮辱の演出提案」 統括者退任へ 五輪開会式巡る報道
 今夏に延期となった東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式の演出を統括するクリエーティブディレクターの佐々木宏氏(66)が、開会式に出演予定だった女性タレントの容姿を侮辱するようなメッセージをチーム内のLINEに送っていたと、文春オンラインが17日報じた。佐々木氏は退任する方向で、大会組織委員会の橋本聖子会長が18日に記者会見し、問題の経緯や佐々木氏の処遇について説明する見込み。記事によると、佐々木氏は昨年3月、開閉会式の演出を担うチーム内のLINEに、女性タレントの容姿を侮辱するような内容の演出を提案したという。メンバーから反発があり、この提案は撤回されたという。組織委の広報担当は文春の記事について「佐々木氏本人から事実関係を確認中。事実とすれば、不適切で大変遺憾に思う」と述べた。組織委では、森喜朗前会長が自身の女性蔑視発言の責任をとって2月に退任している。開閉会式の演出をめぐっては、組織委は昨年末、狂言師の野村萬斎氏を統括とする7人のチームの解散を発表した。コロナ禍に伴う式典の簡素化や演出変更を短期間で進めるため、佐々木氏を責任者に据え、権限を一本化していた。佐々木氏は広告大手の電通出身。安倍晋三首相(当時)をサプライズ登場させた2016年リオデジャネイロ五輪閉会式での引き継ぎ式や、水泳の池江璃花子さんを起用した昨夏の五輪1年前イベントの演出を担当。日本のCM業界を代表する作り手とされる。

<これから夫婦別姓を認める必要はあるか?>
PS(2021年3月19日):私(戸籍名:平林、通称:広津《旧姓》)は、公認会計士・税理士の登録に際して戸籍名しか認められず、仕事上は戸籍名を使うしか選択肢がなくて不便だと思ったため、1995年前後に「選択的夫婦別姓制度にして欲しい」と言っていたが、その後、公認会計士・税理士は旧姓を通称として使用することを認めたため、後は銀行・公文書への記載・法律行為などに通称使用が認められるようになればよいと思っている。何故なら、ここで選択的夫婦別姓制度も取り入れると、*7-1のように、①夫婦別姓を選択しなかった人は旧姓を使えない もしくは、②旧姓の通称使用も認めると「同氏夫婦」「別氏夫婦」「通称使用夫婦」の3種類の夫婦が出現して制度が複雑化し ③ファミリー・ネームが機能しなくなり ④「子の姓の安定性」が損なわれる などのディメリットがあるからだ。また、今では、⑤殆どの専門資格(士業・師業)で旧姓の通称使用や資格証明書への併記が認められるようになり ⑥マイナンバーカード・免許証・住民票は戸籍名と旧姓の併記が認められている ため、後は、銀行口座・公文書・法律行為などで通称使用が認められればよいだろう。
 そのため、*7-2のように、選択的夫婦別姓に反対する人は「⑦望まない人にも改姓を強要している」「⑧偏見と無根拠に満ちている」「⑨選択的夫婦別姓の意味がわかってないから反対しているに違いない」と言われるのは全く事実と異なり、私自身は、妹のピアノの先生の不便を見て子供の頃(1960年代)からわかっていたため、結婚時に戸籍名が変わっても個人のキャリアの連続が示されるよう、機会がある度に旧姓で活動できるようにしてきたのである。

*7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/88122 (東京新聞 2021年2月25日) 【全文】夫婦別姓反対を求める丸川大臣ら自民議員の文書、議員50人の一覧
丸川珠代・男女共同参画担当相や高市早苗・元男女共同参画担当相ら自民党の国会議員有志が、埼玉県議会議長の田村琢実県議に送った、選択的夫婦別姓の反対を求める文書は以下の通り。
◆◇◆◇◆
 厳寒のみぎり、先生におかれましては、ご多用の日々をお過ごしのことと存じます。貴議会を代表されてのご活躍に敬意を表し、深く感謝申し上げます。
 本日はお願いの段があり、取り急ぎ、自由民主党所属国会議員有志の連名にて、書状を差し上げることと致しました。
 昨年来、一部の地方議会で、立憲民主党や共産党の議員の働き掛けにより「選択的夫婦別氏制度の実現を求める意見書」の採択が検討されている旨、仄聞しております。
 先生におかれましては、議会において同様の意見書が採択されることのないよう、格別のご高配を賜りたく、お願い申し上げます。
 私達は、下記の理由から、「選択的夫婦別氏制度」の創設には反対しております。
1 戸籍上の「夫婦親子別氏」(ファミリー・ネームの喪失)を認めることによって、家族単位の社会制度の崩壊を招く可能性がある。
2 これまで民法が守ってきた「子の氏の安定性」が損なわれる可能性がある。
※同氏夫婦の子は出生と同時に氏が決まるが、別氏夫婦の子は「両親が子の氏を取り合って、協議が調わない場合」「出生時に夫婦が別居状態で、協議ができない場合」など、戸籍法第49条に規定する14日以内の出生届提出ができないケースが想定される。
※民主党政権時に提出された議員立法案(民主党案・参法第20号)では、「子の氏は、出生時に父母の協議で決める」「協議が調わない時は、家庭裁判所が定める」「成年の別氏夫婦の子は、家庭裁判所の許可を得て氏を変更できる」旨が規定されていた。
3 法改正により、「同氏夫婦」「別氏夫婦」「通称使用夫婦」の3種類の夫婦が出現することから、第三者は神経質にならざるを得ない。
※前年まで同氏だった夫婦が「経過措置」を利用して別氏になっている可能性があり、子が両親どちらの氏を名乗っているかも不明であり、企業や個人からの送付物宛名や冠婚葬祭時などに個別の確認が必要。
4 夫婦別氏推進論者が「戸籍廃止論」を主張しているが、戸籍制度に立脚する多数の法律や年金・福祉・保険制度等について、見直しが必要となる。
※例えば、「遺産相続」「配偶者控除」「児童扶養手当(母子家庭)」「特別児童扶養手当(障害児童)」「母子寡婦福祉資金貸付(母子・寡婦)」の手続にも、公証力が明確である戸籍抄本・謄本が活用されている。
5 既に殆どの専門資格(士業・師業)で婚姻前の氏の通称使用や資格証明書への併記が認められており、マイナンバーカード、パスポート、免許証、住民票、印鑑証明についても戸籍名と婚姻前の氏の併記が認められている。
 選択的夫婦別氏制度の導入は、家族の在り方に深く関わり、『戸籍法』『民法』の改正を要し、子への影響を心配する国民が多い。
 国民の意見が分かれる現状では、「夫婦親子同氏の戸籍制度を堅持」しつつ、「婚姻前の氏の通称使用を周知・拡大」していくことが現実的だと考える。
※参考:2017年内閣府世論調査(最新)
夫婦の名字が違うと、「子供にとって好ましくない影響があると思う」=62.6%
 以上、貴議会の自由民主党所属議員の先生方にも私達の問題意識をお伝えいただき、慎重なご検討を賜れましたら、幸甚に存じます。
 先生のご健康と益々のご活躍を祈念申し上げつつ、お願いまで、失礼致します。
令和3年1月30日
衆議院議員(50音順):青山周平 安藤裕 石川昭政 上野宏史 鬼木誠 金子恭之 神山佐市 亀岡偉民 城内実 黄川田仁志 斎藤洋明 櫻田義孝 杉田水脈 鈴木淳司 高市早苗 高木啓 高鳥修一 土井亨 中村裕之 長尾敬 深澤陽一 藤原崇 古屋圭司 穂坂泰 星野剛士 細田健一 堀井学 三谷英弘 三ツ林裕巳 宮澤博行 簗和生 山本拓
参議院議員(50音順):赤池誠章 有村治子 磯崎仁彦 岩井茂樹 上野通子 衛藤晟一 加田裕之 片山さつき 北村経夫 島村大 高橋克法 堂故茂 中西哲 西田昌司 丸川珠代 森屋宏 山田宏 山谷えり子 

*7-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/88547 (東京新聞 2021年2月27日) 丸川大臣「残念すぎる」選択的夫婦別姓、反対議員50人へ質問状 市民団体
 自民党の国会議員有志が選択的夫婦別姓の導入に賛同する意見書を地方議会で採択しないよう求めた文書を巡り、市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」は26日、文書に名を連ねた国会議員50人に公開質問状を送った。事務局は「困り事を抱える国民の声を水面下で押しつぶそうとする行為だ。望まない人にも改姓を強要する合理的な根拠を明らかにしてほしい」と話す。回答結果は3月9日に公表する。文書は1月30日付で、地方議会の議員に送られた。選択的夫婦別姓の実現を求める意見書を採択しないよう促す内容で、閣僚就任前の丸川珠代男女共同参画担当相のほか、高市早苗前総務相、衛藤晟一前少子化対策担当相ら計50人が名前を連ねていた。市民団体は、国会議員50人が連名で文書を送付したことは、「国会議員が水面下で地方議会に圧力をかけて阻む行為に等しい」と問題視。さらに、文書に書かれた選択的夫婦別姓に反対する理由が「偏見と無根拠さに満ちている」と感じ、質問状を送ることを決めた。質問は、文書に名前を連ねた経緯や夫婦別姓制度への賛否、反対する理由など11問をたずねた。丸川氏など旧姓で活動する議員には、旧姓使用を続ける理由も聞いている。(記事最後にすべての質問項目を掲載)。事務局長の井田奈穂さんは「望まない改姓は、イデオロギーの問題ではない。現実的な生活上の困りごと」と指摘。別姓を選べないために結婚しないカップルもいるといい、事務局には多くの相談が寄せられているという。反対議員による文書送付について、「生活上の困りごとを抱える市民の声を、制度設計をする人たちに届かないよう封じるための行為だと感じる」と話す。
◆丸川氏「おかしい」といっていたのに…
 井田さんは昨年2月、葛飾区議の区政報告会で、出席していた丸川氏と話す機会があったという。井田さんによると、丸川氏は、選択的夫婦別姓について「2つの名前を使えるのは私は便利だと思ってますが、公文書に皆さんが投票して下さった丸川姓で署名できず戸籍姓必須はおかしいと思う」と力説。閣議決定の署名で「丸川」を使えないなど、旧姓使用の限界を身をもって理解していると感じたという。
丸川氏が文書に名前を連ねていたことについて、井田さんは「男女共同参画担当大臣として残念すぎます。職務上氏名を名乗れないことに忸怩たる思いを持つ方が、同じ思いを持つ人たちの声をつぶすことは、『個人的な信条』とは矛盾しているのではないか」と疑問を投げかけた。「選択的夫婦別姓は、選択肢を増やすだけで、みんなが別姓になるわけではない。議員の方には、これを機に勉強会を開いて当事者の声を聞いてほしい。呼んでいただければ喜んで出席する」と話した。選択的夫婦別姓・全国陳情アクションのサイトで反論なども掲載している。
◆議員への質問
1・今回の「お手紙」に名を連ねた経緯についてお聞かせください。
2・国民主権の国で、国民が国会に意見を届けるための制度が地方議会での意見書です。今回の「お手紙」は、「国会議員が生活上の困りごとを抱えた当事者の意見を国会に届けさせないようにする圧力ではないか」という意見について、先生はどのようにお考えですか。
3・選択的夫婦別姓制度に反対ですか?
4・反対であれば、それはなぜですか。お手数ですが、今回の「お手紙」に至った発端(埼玉県議会への相談)を作った当事者である井田奈穂の意見、法学者・二宮周平教授の解説を踏まえた上でご回答ください。
5・反対の根拠とされている「ファミリー・ネーム」の法的定義について、立法府の議員としてお教えください。
6・第5次男女共同参画基本計画に対するパブリックコメントに400件以上、切実に法改正を望む声が寄せられました。旧姓使用の限界やトラブル事例も多く報告されています。「旧姓使用ではなく生まれ持った氏名で生きたい」と訴える当事者が目の前にいたら、どのように回答されますか?
7「お互いの氏名を尊重しあって結婚したいが、今後も法的保障のない事実婚を選ぶしかないのですか?」と訴えるカップルが目の前にいたら、どのように回答されますか?
8・夫婦別姓を選べない民法の規定について、国連女性差別撤廃委員会から再三改善勧告を受けていることについて、どのように対応すべきとお考えですか?
9・旧姓使用に関して、法的根拠のない氏名を、今後あらゆる法的行為、海外渡航、海外送金、登記、投資、保険、納税、各種資格、特許などにおいても使えるようにしていくべきと思いますか?
10・以下は、旧姓使用をされている議員の方にお伺いします。なぜ旧姓使用をしておられるのですか?
11・「3種類の夫婦の出現に第三者は神経質にならざるを得ない」と主張する先生が、自ら旧姓を通称使用をし、社会的に生来姓を名乗っておられるのは甚だしい自己矛盾ではないかという意見があります。そのお考えであれば、生来姓を変えないのが一番ではないでしょうか?

<女性の働きやすさ・生きやすさ>
PS(2021年3月20日追加):英誌エコノミストが、*8-1のように、主要29カ国の女性の働きやすさでランキングした結果、北欧のスウェーデンが1位・アイスランドが2位・フィンランドが3位で、日本は下から2番目の28位・韓国が最下位の29位だったそうだ。そのランキングは、管理職に占める女性の割合・女性の労働参加率・男女の賃金格差などの10の指標に基づいており、18位の米国は女性の労働参加は進んでいるが政治参加が少なく、日本は、管理職に占める女性の割合・衆議院の女性議員割合が最低で、世界経済フォーラムの2019年ランキングでも153カ国中121位だったそうだ。
 国連は、*8-2のように、2021年のテーマを「リーダーシップを発揮する女性たち―コロナ禍の世界で平等な未来を実現する」に定めたそうだ。しかし、*8-3のように、日本国憲法は、1947年の施行以来、第22条で「職業選択の自由」を規定しているにもかかわらず、女性の職業は「働いていない」と言われる専業主婦以外の選択肢が狭かったり、選択できる職業は賃金が安かったり、身分が不安定だったりしてきたため、*8-1の状況は国内的にも憲法違反であることが明らかだ。まして、「子を1人も作らない女性が、年取って税金で面倒見なさいというのは、本当はおかしい」などと言われるのは論外で、この発言は女子差別撤廃条約違反でもあるが、その前に、DINKSで働いた私は、専業主婦と2人の子を持つ男性とは比較にならないくらい多額の所得税や社会保険料を支払ってきたため、そのようなことを言うのなら、税金から支出した子の教育費・保育費・医療費と専業主婦の医療費・年金支給額等を返還して欲しい。
 このように、日本社会のジェンダーに基づく人権侵害で不快な女性差別発言には事欠かないが、メディアもまた「表現の自由」「言論の自由」と称して、差別を助長するドラマの筋書きや間抜けな聞き役の女性を配した報道番組が多いため、気を付けてもらいたい。


                               2020.3.6朝日新聞

(図の説明:1番左の図は、2019年のジェンダーギャップ指数で、日本は153か国中121位であり、2018年より下がっている。左から2番目と右から2番目の図は、2020年のジェンダー・ギャップ指数で、2019年と殆ど同じだ。さらに、1番右の図は、入社1年目と4年目で管理職を目指す男女の割合を示したもので、ハードルが多いせいか女性の割合が著しく低い)


                   2017.7.28朝日新聞   2017.8.24朝日新聞

(図の説明:左図のように、出生数も合計特殊出生率も戦後は下がり続けており、1970年以降は子育てのやりにくさを反映していたのだが、著しく女性割合の小さな政治・行政は的確な対応をしなかった。また、女性の上昇志向の持ちにくさ、働きにくさ、子育てを含む生きにくさを作る原因は、右の2つの図が示すように、メディア等によって発せられ、国民の常識となっていく、ジェンダーを含む発言・世論操作・行動の影響が大きい)

*8-1:https://digital.asahi.com/articles/ASP396RLDP39UHBI028.html (朝日新聞 2021年3月9日) 女性の働きやすさ、日本はワースト2位 英誌ランク付け
 英誌エコノミストは、8日の国際女性デーに合わせ、主要29カ国を女性の働きやすさで指標化したランキングを発表した。1位は北欧のスウェーデンで、日本は昨年に続き下から2番目の28位。最下位は韓国だった。ランキングは、管理職に女性が占める割合や女性の労働参加率、男女の賃金格差など10の指標に基づき、エコノミストが独自にランク付けした。ランキングでは2位がアイスランド、3位がフィンランドと北欧の国々が上位を占めた。米国は女性の労働参加が進む一方、女性の政治参加は少なく、ランキングは18位だった。日本は管理職の女性の割合や、下院(日本での衆院)での女性議員の割合がそれぞれ最も低かった。同誌は、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相による女性蔑視発言を受けて、橋本聖子氏が後任となったことに触れ、「日本のように伝統的に遅れている国でさえ、少なくとも進歩の兆しがみられる」と指摘した。2位だったアイスランドは、世界経済フォーラムが発表している男女平等ランキングでも11年連続で1位を維持している。直近の2019年のランキングで、日本は153カ国中121位だった。英誌エコノミストが発表した女性の働きやすさのランキングは、以下の通り。
1位 スウェーデン 、2位 アイスランド 、3位 フィンランド 、4位 ノルウェー 、5位 フランス 、6位 デンマーク 、7位 ポルトガル 、8位 ベルギー 、9位 ニュージーランド 、10位 ポーランド 、11位 カナダ 、12位 スロバキア 、13位 イタリア 、14位 ハンガリー 、15位 スペイン 、16位 オーストラリア 、17位 オーストリア 、18位 米国 、19位 イスラエル 、20位 英国 、21位 アイルランド 、22位 ドイツ 、23位 チェコ 、24位 オランダ 、25位 ギリシャ 、26位 スイス 、27位 トルコ 、28位 日本 、29位 韓国

*8-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1282908.html (琉球新報社説 2021年3月8日) 国際女性デー 遅れた「平等」直視したい
 きょう3月8日は国際女性デー。女性への差別に反対し、地位向上を求める日である。国連は2021年のテーマを「リーダーシップを発揮する女性たち―コロナ禍の世界で平等な未来を実現する」に定めた。女性はリーダーシップを発揮できているだろうか。そしてコロナ禍で平等な労働環境と政治参加を手に入れているだろうか。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(当時)が「女性の入っている理事会は時間がかかる」などと発言し、辞任に追い込まれた。日本オリンピック委員会(JOC)が女性理事を増やす方針を掲げたことに関連しての発言だった。政府はあらゆる分野で「指導的地位に占める女性の割合30%」を目標とするが、達成には遠く及ばない。JOCも女性理事は20%だ。森氏の発言は困難を越えてようやく発言権を得た女性たちをけん制するメッセージだった。男性の多数決に従い、立場をわきまえておとなしくしていろと、女性たちを従来の、男性主体の社会の枠に押し込めようとした。森氏は過去に「子どもを一人もつくらない女性が、(略)年取って税金で面倒見なさいというのは、本当はおかしい」と言ったこともある。子どもを産まない女性は国のためになっていない、価値がないという発想は女性の人格すら否定している。しかし当時、問題にはなったが、進退にはつながらなかった。今回、辞任に至ったのは女性たちが世論をつくり、五輪開催すら危ぶまれたからだ。変化の兆しが感じられる。ただし、日本の女性の地位は国際的にみれば大きく立ち遅れている。世界経済フォーラムが発表した19年の「男女格差報告」で日本は153カ国中、過去最低の121位だ。特に政治分野は144位と深刻で、衆院議員10%、参院23%、閣僚も20人中2人にとどまる。沖縄でも県議会は14%にすぎない。男女の候補者数をできる限り均等にするよう求める法律が施行されたが、効果ははかばかしくない。女性候補者の割合を義務づけるクオータ制や割合に応じた政党助成金の配分など諸外国の制度を参考に導入を議論すべきだ。コロナ禍は雇用の不安定な女性を追い詰めている。働く女性の半数以上は非正規労働者だが、昨年、同じ非正規でも女性のほうが男性の2倍、減少している。正社員は増えておらず、真っ先に解雇されるのは女性だと考えられる。男性との給与格差も大きい。コロナ禍で大きな影響を受ける層に焦点を当てた支援策を講じなければならない。日本社会の男女格差は根深い。男は仕事、女は家庭などの性別役割意識が強く残り、男性に長時間労働を強い、女性の社会参画を阻んでいる。現状を直視し、いかに男女が平等な社会を築けるか、男性も共に考える日にしたい。

*8-3:http://law.main.jp/kenpou/k0022.html (日本国憲法逐条解説) 
第3章 国民の権利及び義務
第22条 【居住、移転及び職業選択の自由、外国移住及び国籍離脱の自由】
 第1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
 第2項 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
<解説>
 1項は、自己の従事する職業を決定し、遂行する自由を定めています。ただし、政策的な見地から、一定の制限を受けることがあります。例えば、開業するにつき許可制がとられている場合 ( 交通、電気、ガスなど ) がありますが、 これは合理的な制限であり憲法には反しません。
 2項は、外国移住及び国籍離脱の自由を定めています。外国へ移住する自由とともに、強制的に外国へ移住させられない自由なども含まれています。国籍については、国籍法に詳しく規定されており、国籍法11条によると国籍を離脱するには外国籍の取得が必要とされています。

<日本は感染症対策も153か国中121位程度では?>
PS(2021年3月21日追加):*9-1のように、東京オリ・パラは海外の一般観客の受入断念をすることとなったそうで、日本側は海外での変異株の出現を理由とした。しかし、ウイルスの変異はウイルスが存在する限りどこででも(日本国内でも)起き、変異したからといって従来のワクチンが効かなくなるとは限らないため、徹底した検査・治療薬の承認・ワクチン開発が重要なのであり、ワクチン接種済の外国人とワクチン未接種の日本人を比較すれば、ワクチン未接種の日本人の方がずっと感染リスクが高いのである。従って、*9-2のように、ワクチン接種済の選手を行動制限したり、ワクチン接種済の海外からの観客を排除したりするのは、非科学的すぎて誰も支持しないだろうし、五輪の精神にも反する。
 なお、厚労省主導での①検査渋り ②治療薬未承認 ③ワクチン未開発 など、感染症対策で失政をやり続けた日本政府が、海外在住者購入チケットの払い戻しやGo Toキャンペーンで莫大な予算を使うのは、国民にとっては「メンツをつぶされた」程度ではすまされない問題である。
 さらに、*9-3は、「新型コロナ変異株の広がりで、現在は変異株流行国から入国した人に要請している検査や待機の対応を、全ての国からの入国者に広げる」としているが、ワクチン接種済証明書や陰性証明書のある人の検査はどの国からの入国者であれ簡便でよく、それがない人はどの国の人であっても徹底した検査と14日間の隔離が必要なのである。そのため、これまでの水際対策もおかしかったことがわかり、このようなザル対策では国民が何度自粛してもリバウンド(再拡大)は起きるだろう。
 このような中、*9-4のように、東京都から新型コロナ改正特別措置法に基づく時短営業の命令を受けた飲食チェーン「グローバルダイニング」が、「時短命令は違法」として東京都に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こすそうだ。私も、「命を守るため」とか「緊急事態」とさえ言えば何をやってもよいとばかりに失政を積み重ねた政治・行政が、国民に過剰な権利の制約を行うのを見逃しては今後のためにならないと考える。これは、*9-5のように、東京オリ・パラで海外からの観戦客受け入れを見送るとされ、ホテルや観光業者が厚労省の不作為によって梯子を外されて大打撃を受けることとも同源であり、ここで「予約キャンセル料」等を国が税金から補填するのは一般国民が納得できないため、ワクチン接種済証や陰性証明書を持つ外国人は入国できるように、集団で提訴もしくは交渉したらどうかと思った。

怒 緊急事態の定義:東電福島第一原発事故を受けて政府が発令した「原子力緊急事態宣言」
  は、10年後の現在も解除されていない。しかし、会計での短期と長期の境界は1年で、
  人命がかかわる「緊急」は、分単位からせいぜい1ヶ月~6ヶ月だ。それ以上の期間は、
  「慢性」や「長期」と呼ぶのである。

*9-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/92715 (東京新聞 2021年3月20日) 東京五輪の海外観客受け入れを断念、チケットは払い戻し IOCなど5者協議で決定
 東京五輪・パラリンピックの海外からの一般観客を巡り、大会組織委員会、政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表による5者協議が20日、オンラインで開催され、受け入れを断念すると正式決定した。新型コロナウイルスは変異株の出現などで厳しい感染状況が続き、国民の不安も強いことから、受け入れを見送る方針で一致。海外在住者が購入したチケットは払い戻す。新型コロナで史上初の延期となった大会は、これまでにない異例の方式での開催となる。協議には組織委の橋本聖子会長、丸川珠代五輪相、小池百合子都知事、IOCのバッハ会長、IPCのパーソンズ会長が参加。終了後に橋本氏らが会見した。政府や組織委などは、海外在住のボランティアの受け入れについても原則的に見送る方針を固めた。観客数の上限は、政府のイベント制限の方針に準じ、4月中に判断する。

*9-2:https://mainichi.jp/articles/20210320/k00/00m/050/185000c (毎日新聞 2021/3/20) 「ワクチン=切り札」のIOC、日本に不満 五輪開催へ頭越し提案
 今夏の東京オリンピック・パラリンピックの海外からの観客受け入れを見送ることが20日、政府、東京都、大会組織委員会に国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表者を交えた5者による協議で正式に決まった。新型コロナウイルスの感染が続く中、開催の成否を握るのがワクチンだが、関係者間には大きな溝が横たわる。
●「日本のメンツ丸つぶれ」の理由
 ある国際競技団体の幹部が解説する。「国際オリンピック委員会(IOC)のお膝元の欧州ではワクチン接種が前提となりつつある。接種や確保の進まぬ開催国の日本で、接種を受けた選手の行動が制限されることにIOCは不満がある」

*9-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/92816 (東京新聞 2021年3月21日) 新型コロナ変異株の検査や待機、全入国者への拡大の意向示す 田村厚労相
 田村憲久厚生労働相は21日のNHK番組で、新型コロナウイルス変異株の広がりを受け、現在は変異株の流行国から入国した人に要請している検査や待機の対応を、全ての国からの入国者に広げたい考えを述べた。水際対策を強化する狙い。変異株流行国からの入国者は、出国前と入国時、入国後3日目の計3回の検査を求められている。田村氏は、入国者が待機期間中に宿泊施設などから出て行方不明になった場合は「民間の警備会社と契約して対応することも考えている」とした。首都圏1都3県の緊急事態宣言の解除を巡り「感染リスクの高い行動を避けてもらうのが重要だ」と強調。新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は「これから1、2カ月はリバウンド(再拡大)が起きやすい。高齢者のワクチン接種が始まるまで何が何でも防ぐことが重要だ」と語った。

*9-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/92736 (東京新聞 2021年3月20日) 「コロナ時短命令は〝違法〟」「狙い撃ちされた」 飲食チェーンが都を提訴へ
 東京都から新型コロナウイルス対応の改正特別措置法に基づく時短営業の命令を受けた飲食チェーン「グローバルダイニング」が、命令は違法だとして、都に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こすことが20日、分かった。時短命令の違法性を問う提訴は初とみられる。22日に提訴する方針。代理人の倉持麟太郎弁護士は取材に「緊急事態宣言下で、行政による過剰な権利制約が続いている。訴訟で問題提起をしたい」と話した。東京都は18日、全国で初めて、時短要請に応じなかった27店舗に21日までの4日間、午後8時以降の営業停止を命じた。うち26店舗を経営するグローバルダイニングは命令を受け、営業時間を短縮すると発表した。都は19日、追加で5店舗に時短命令を出した。倉持弁護士は「時短要請に応じなかった店舗は他にも多くあるのに、グローバルダイニングだけが狙い撃ちにされた印象だ。都がどのような経緯で命令対象を決めたのかも訴訟で明らかにしたい」と話した。

*9-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/92740?rct=coronavirus (東京新聞 2021年3月21日) 「五輪で回復できると思ったのに‥」 海外客の見送り決定、宿泊・観光に追い打ち
 東京五輪・パラリンピックで海外からの観戦客受け入れを見送ることが20日、正式に決まった。インバウンド(訪日外国人旅行者)を当て込んでいた都内のホテルや観光業者からは「大打撃だ」とため息が漏れる。
◆「『おもてなし』はどこに行ってしまったのか」
 「五輪で少しでも原状回復できると思っていたのに…。招致時に掲げた『おもてなし』はどこに行ってしまったのか」。浅草寺(台東区)のすぐ脇で旅館「浅草指月」を経営する飛田克夫さん(83)が肩を落とす。和風の客室やお風呂が売りで、コロナ禍前は外国人客であふれていたが、現在は客室の稼働率が1割を下回る。「もともと日本人が魅力を持つような造りではない」と、国内の観戦客の利用はあまり期待できず、「五輪特需」は望み薄という。「海外に『日本は危険』という印象を与えてしまう。コロナが収束し、観光客の受け入れが再開した後も当分人は戻ってこないかもしれない」。飛田さんは影響が長引かないかも気掛かりだ。
◆「予約キャンセルどうなる」
 観客とは異なり、各国の要人や競技団体の役員は大会関係者として入国が可能となっているが、それに対しても組織委員会は人数を最低限にするよう求めている。中央区日本橋の「住庄ほてる」は組織委と契約し、五輪期間中に全83室のうち約30室に関係者が宿泊する予定。角田隆社長(52)は「こんな状況で本当に開催できるのか。予約のキャンセルはどうなるのか」と不安を隠さない。
◆「暗闇は今後も続きそう」
 コロナ禍前は海外からの観戦客は100万人規模と想定され、観光地への波及効果も期待されていた。東京都ホテル旅館生活衛生同業組合の須藤茂実事務局長(68)は「感染状況が悪い東京への観光は国内でも敬遠されている。コロナ禍で廃業が既に40件に上った。暗闇が今後も続きそうだ」と見通す。「インバウンドを見越してインストラクター増員や施設拡充など投資をしてきた。延期になり、今年こそはと思っていた」。浅草などで人力車ツアーや日本文化体験講座を企画する「時代屋」の藤原英則代表(65)もそう残念がる一方、「最悪、無観客でも開催すればムードが盛り上がるので、国内客向けの企画を考えたい」と前を向いた。

| 経済・雇用::2018.12~2021.3 | 12:43 AM | comments (x) | trackback (x) |

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