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2022.1.26~2.2 最新の科学技術と産業 (2022年2月7、8、9、10、14、15、25日、3月4日に追加あり)
(1)火山の噴火と噴火予知
1)明日は我が身のトンガ海底火山大規模噴火

   
2022.1.16BBC 2022.1.17時事 2022.1.16毎日新聞  2022.1.17中日新聞

(図の説明:1番左と左から2番目の図のように、太平洋プレートがオーストラリア・プレートに潜りこんでいる場所にあるトンガで、2022年1月15日、海底火山が大規模噴火した。日本では、気象庁の予測に反し、右から2番目の図のように、太平洋側を中心に0.9m以上の津波が到達した地点が多かった。気象庁は、「このメカニズムは、これまで経験のない事象だった」とし、1番右の図のように、「噴火によって起こされた気圧変化が空気中を伝わりながら潮位変動を起こし、早く伝わる気圧変化の波と遅れて伝わる潮位変動の波が共振した」と説明している)

 日本時間2022年1月15日に、*1-1-1のように、南太平洋の島しょ国であるトンガの沖で海底火山が大規模噴火し、現地では火山灰による農業被害で一部の島で食糧が不足し始め、物流の停滞で石油の備蓄も底をつきつつあり、1週間経ってもインターネットも殆ど復旧していないそうだ。

 その爆発時にラジオから避難の呼びかけがあって、沿岸地域の人はいち早く高台に避難したため、津波の被害は小さかったが、雨水を飲料水にしているので水不足が懸念され、灰の付着で作物が枯れて食糧難も発生しつつあり、長期の支援が欠かせないとのことである。

 ニュージーランド政府は、1月21日、ヘリコプターを積んだ軍艦、飲料水・淡水化装置を運ぶ軍艦がトンガに到着したと発表し、1月20日には、NZと豪州が支援物資を軍の輸送機で運んだ。日本の自衛隊輸送機も、1月20日、飲料水を運ぶため日本を出発し、中国も水・食糧の輸送を表明済だが、日本から派遣された自衛隊員3人が、*1-1-2のように、新型コロナウイルスに感染していることが確認され、オーストラリアからトンガへの支援物資の輸送ができない状態になっているのは残念なことだ。

 新型コロナ禍でトンガは厳しい出入国管理をしているが、損傷した施設の復旧だけでなく将来の災害に備えた強靱な社会を作ることにも支援が必要であるため、支援しながら経験も積むために、自衛隊だけでなく、活火山のある自治体の職員は援助に参加すればよいと思う。この際、災害復興に慣れた日本の自治体が「ふるさと納税」を集め、日本国民からの寄付として一部の救援物資購入費に充てると、日本国民からの誠意ある支援になると思われる。

2)日本における巨大噴火のリスク

  
           2022.1.21朝日新聞      静岡大学防災センター

(図の説明:左図のように、日本も太平洋プレートがフィリピン海プレートに潜りこむ少し先に火山由来の海底山脈があり、海上に現れた陸地が小笠原諸島だ。また、中央の図のように、日本列島付近やその陸地にも、続きと見られる火山が多く、VEI4以上の噴火もしばしば起こる。さらに、小笠原諸島の終わりにある富士山も、右図のように、しばしば噴火しているのである)


   2021.10.23毎日新聞      海上保安庁HPより

(図の説明:左図の小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」で2021年8月に起こった大噴火は、噴煙の高さが海上16~19kmに達し、かつては島だった鹿児島県桜島が大隅半島と地続きになった1914年の「大正噴火」に次ぐ戦後国内最大級の大噴火だったそうだ。また、同じ小笠原諸島の西之島は、1973年に有史以来初めて海上で噴火して陸地面積が0.07km²だったが、1999年には陸地面積が0.29km²となり、2013年11月20日に再度噴火し始めて現在は陸地面積が2.95 km²になっている。そして、右図のように、西ノ島の陸上の標高は160mしかないが、海底から見ると3000m以上の火山だ。つまり、地球の地図から海の水を抜いた地図を作ると、小笠原諸島は日本列島と同じく火山によってできた山脈であり、ほかにも海底火山は多いことがわかる)

 トンガ諸島で発生した海底火山の噴火は、*1-2のように、噴火の規模を示す火山爆発指数(VEI)が6か5だったとみられており、トンガと同じく太平洋プレートが沈み込む場所にある日本も世界有数の火山国でこの規模の噴火を繰り返しており、小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」はVEI4、1914年に鹿児島県の桜島で起きた大正噴火もVEI 4だ。

 時代を逆のぼれば、江戸時代1707年の富士山宝永噴火はVEI 5であり、1783年の浅間山噴火はVEI4で天明の大飢饉を起こした。気象庁は、111の活火山のうち、火山噴火予知連絡会が「過去100年程度以内に火山活動の高まりが認められている火山」等の基準で選んだ50の火山を24時間体制で監視しているが、噴火予知は難しいとのことである。

 VEIは0~8の段階があって7・8は破局噴火と言われ、日本では600km³もの火山灰が放出され火砕流が九州の広範囲に広がった約9万年前の熊本・阿蘇カルデラ噴火、3万年前の鹿児島・姶良カルデラ噴火、南九州の縄文文化を火砕流で壊滅させた7300年前の鹿児島・鬼界カルデラの噴火がVEI7だったそうで、火山の噴火は原発の審査でも議論になった。

 また、政府の中央防災会議作業部会は、2020年、VEI5の富士山宝永噴火と同程度の噴火が再び富士山で発生した場合に想定される首都圏への影響をまとめ、①除去が必要になる火山灰は最大約4.9億m³(東日本大震災の災害廃棄物の約10倍) ②東向きの強い風があれば、灰は3時間で都心に届き、噴火から15日目の累積降灰量は東京都新宿区約10cm・横浜市約2cm・相模原市約30cmで ③微量の降灰でも、地上の鉄道はストップ、視界不良で道路は渋滞、降雨時には0.3cmの降灰で停電、通信アンテナに火山灰がつけば携帯電話等の通信網も寸断 ④木造家屋は降雨時に30cm以上の灰が積もっていれば重みで倒壊する可能性があり ⑤目、鼻、喉への健康被害も生じて喘息等の疾患がある人は症状が悪化する可能性が高い そうだ。

 そのほか、大量の溶岩を噴出した864年の貞観噴火クラスの噴火で13億m³の溶岩流が3県27市町村に到達して主要な交通網にも達し、火砕流も1千万m³流れ出て、静岡・山梨両県の10市町村に及ぶそうだ。現在は、日本の人口が首都圏に極端な一極集中をしているため、富士山が噴火した場合の被害は想像を絶するものになりそうである。

(2)火星と月の現在と近未来
1)火星について


  2018.10.23     2013.1.14       2018.1.28     2021.12.17
  カラパイア      カラパイア          CNN        CNN 

(図の説明:1番左の写真は、火星で火山が噴火している様子で、左から2番目の写真は、太陽系最大と言われている火星のオリンポス山《火山で標高25,000m》だが、地球の山も海底から測れば、かなり高い。右から2番目の写真は、火星の極地にある氷だが、1番右の写真のように、マリネリス峡谷を流れている液体の水も発見されている)

    
   2020.7.20        2017.9.20         2018.4.10
   AFPBB News     Academist Journal       天文学辞典

(図の説明:左と右の図のように、火星の大気は、地球の1%弱しかなく、大気の成分は、地球がN₂78%、O₂21%、Ar1%であるのに対し、火星はCO₂95%、N₂3%、Ar2%であるため、そのままでは地球の生物は住めないが、一瞬もいられないというわけではない。なお、地球にO₂があるのは、植物の光合成のおかげだ。また、中央の図のように、40億年前の火星には海と陸があり、大気は0.5気圧以上あったが、次第に気圧が下がり、水も減ったのだそうである)

 現在の火星の地表の平均気温は約-60°Cで、薄い大気(CO₂95%、N₂3%、Ar2%でO₂はない)と少量の水(極地の氷とマリネリス峡谷を流れる液体の水)があることがわかり、火星に居住することが可能かもしれないという希望になった。しかし、これは日本では全く報道されず、このようなことの連続が日本で理系に親しむ機会が少ない原因なのである。

 しかし、40億年前の火星は、*2-1-1のように、0.5気圧以上の大気と液体の水が安定的に存在できる温暖な気候だったのだそうで、それでは何故、火星の環境が大変動したのかが大きな疑問であると同時に、地球の今後に関して考察する上での参考にもなる。

 まず、①火星には多くの流水地形や液体の水が存在した鉱物証拠が発見されていた。そして、②火星を液体の水が存在する温暖な気候に保つには、厚い大気と温室効果ガスが必要で ③厚い大気を失ったことが温暖だった火星を極寒の惑星に変貌させた ④厚い大気を失った原因の1つは、火星が地球の10分の1の質量しかないため重力が小さいこと ⑤現在の火星は磁場を持たないため、太陽風が直接吹きつけて大気を宇宙空間へ流出させたこと などが考えられている。

 では、「火星の厚い大気が『いつ』『なぜ』失われたのか」については、40億年前に火星で形成されて南極で発見されたアランヒルズ84001という隕石で調査した結果、⑥40億年前の火星は、地表大気圧が約0.5気圧以上という厚い大気に覆われていたが ⑦約40億年前には磁場を持っていた火星が磁場を失ったことで、太陽風が火星の大気の大規模な宇宙空間への流出を引き起こした可能性がある とのことである。しかし、地球の磁場は失われなかったのに、火星の磁場が失われて非常に弱いものになった理由は不明だ。

 また、厚い大気に覆われ、地表には液体の水が存在していた40億年前の火星で、生命が誕生しなかったのかについては、将来の火星探査で「火星にはかつて生命が存在した証拠が発見される可能性が十分にある」とのことだ。そして、ここ数年の大きな発見は、「火星はかつて想像されていたような『死の惑星』ではなく、春や夏の比較的温暖な時期に地下から水が湧き出している地域がある」ということがわかってきたため、JAXAが2024年に火星衛星サンプルリターン機MMXを打ち上げる予定で、日本初の火星着陸探査の検討も始まっているそうだ。

 なお、「地球の歩き方」という本は私も読んだが、*2-1-2のように、研究者が人類の移住の可能性を探る火星を案内する「火星の歩き方」と言う本を出したのは面白く、開発には環境保全が課題と見据えているのにも感心させられた。

2)月について


2018.1.9朝日新聞  2019.3.19ToyoTimes       2018.2.1MRI
   
(図の説明:左図のように、月には太陽が当たっている面も含めて60億t程度の大量の水が存在することがわかり、中央と右図のような月面開発が予定されている。しかし、月面に住むには、食料やエネルギーを地球から持って行き続けることはできないので地産地消が必要になる)

 NASAの探査機LADEEが、*2-2-3のように、隕石が衝突する際に月面から放出される水を検出し、微小な隕石が衝突する際の衝撃によって、年間最大220tもの水が放出されているという論文を発表し、月面付近に大量の水が存在することがわかった。

 *2-2-3は、月に水がある理由について、①太陽風に含まれる水素が月面にある酸素と反応 ②月面に衝突する彗星や小惑星に水が含まれる ③月には太古の昔から蓄えられてきた水があり、それが長い時間をかけて徐々に枯渇してきた の3つを記載している。

 私は、月・火星・地球の水は、外気圏に移動した後に重力で元の惑星(月や地球)に戻るものもあり、宇宙に出た水(水蒸気)も消えるのではなく、H₂よりH₂Oの方が重いので重力で近くの惑星に吸い寄せられるものが多いと思う。そうすると、地球は質量が大きく空気の層も厚いため戻る水が多く、月や火星は戻る水が少ないことを説明できる。また、温暖化や火山噴火で水が外気圏に移動した後、近くの他の惑星に重力で落下することや、火星表面の水がなくなったこと、近年になって火星や月で多くの水が発見されたことなどを説明できるのだ。

 このようにして、地球の水が減ることは由々しきことだが、*2-2-1のように、JAXAを中心とした日本の月探査は、2022年2月以降に初の月面着陸を目指す無人機を米国のロケットで送り込み、2022、2023年度も無人機を計2機打ち上げるそうだ。月を巡る国際競争が激化しており、日本は、宇宙ステーションへの輸送船開発も進んでいて、国際協力で存在感を示し、産業育成に繋げたいのだそうだ。

 一方、中国国家宇宙局は、2022年1月28日、*2-2-2のように、宇宙白書の発表にあわせて記者会見し、2030年迄にロシアと共同で月面基地建設を始め、2035年を目途に地球と行き来して月面で活動するためのエネルギー設備や通信システムを基地に整備し、人類が短期滞在する場合には生命維持環境を備えた「小さな村」をつくる構想を披露し、「嫦娥7号では月面の水の分布を調べ、月面基地建設に向けた最初の一歩を踏み出す」と述べたそうだ。

 私も、O₂が豊富にない月や火星でH₂を燃料に使うことはできないため、太陽光発電がエネルギー供給の主役になると思う。また、月面で装置を動かしたり、物資を運搬したりするにも、太陽光発電由来の電力が主役になると思われる。

3)現地生産への技術開発
 農水省は、*2-3のように、月や火星に人類が進出する未来を見据え、地球上とは全く異なる環境でも農作物を生産し、現地で食料を確保する技術開発に乗り出し、大学や民間企業が参画する産官学プロジェクトを始動したそうだ。

 具体的には、①月産、火星産の農産物を現地で食べることを目指し ②人間の健康維持に必要な栄養の大部分を満たせる品目を八つ選定する そうだ。そして、③限られた面積で収量を確保し、美味しい農作物を生産することを基本テーマとし ④大気や日照条件の異なる月・火星で生産するには植物工場のような閉鎖型施設を造り ⑤収量を確保できる環境や設備の研究・実証を進める とのことである。

 また、⑥月の砂「レゴリス」でジャガイモ等を栽培する技術の開発を目指し ⑦研究成果は砂漠など地球上の過酷な条件での食料生産に生かすことも念頭に置く そうで、動物性蛋白質を接種できる食品が選抜されていないのは気になるが、全体としては素晴らしい計画だと思う。

(3)エネルギー自給率の向上と気候変動問題への対応


    Energia           Enechange        2021.3.31日経新聞

(図の説明:左図のように、2020年に78億人だった地球人口は、2100年には109億人になりそうで、1人当たりの平均エネルギー使用量も増えていく。そのため、このままでは、世界のエネルギー需給が逼迫するのは確実で、中央の図のように、エネルギー自給率が著しく低い日本は安全保障以前であるため、再エネによるエネルギー自給率の向上が急務だ。そのため、右図の脱炭素に向けた取組が示されているが、せっかくエネルギーを転換するのに、日本に欠けているのは、「できるだけ地球環境に負荷をかけずに、エネルギー自給率を上げる」という発想だ)

 岸田首相は、*3-1のように、「過度の効率性重視による市場の失敗、持続可能性の欠如、富める国と富まざる国の環境格差など、資本主義の負の側面が凝縮しているのが気候変動問題であり、新しい資本主義の実現によって克服すべき最大の課題」と言われたが、この主張は原因と結果が理論的に繋がっていない。

 しかし、2020年に衆参両院で気候非常事態宣言決議が可決されたのはよいことで、2050年のカーボンニュートラル実現は必須であるため、日本でも官民が炭素中立型の経済社会に向けた変革をやろうとしているのには賛成だ。しかし、気候変動問題を予算獲得のための枕詞にしている余裕は既になく、資金を効率よく使って最小のコストで最大の効果を挙げなければ、今度は日本の持続可能性がなくなることを忘れてはならない。

 そのため、2030年度のCO₂46%削減、2050年のCO₂排出実質0という目標実現に向け、エネルギー供給構造の変革だけでなく産業構造・暮らし・地域全般にわたる大変革に取り組むのは必要不可欠だ。しかし、①送配電インフラ ②蓄電池 ③再エネ ④水素 はよいものの、⑤アンモニア ⑥革新原子力 ⑦核融合は、非炭素というだけで他にはメリットがなく、具体的には、⑤はコスト高で無駄な投資になりそうだし、⑥⑦は日本には適地がないため、遠くの太陽に任せて太陽光発電した方が賢いわけである。

 また、発電だけでなく移動手段も、*3-2のように、EVにシフトしなければ化石燃料の使用をやめることができないが、ガソリンスタンドの廃業を受け、人口当たりのEV普及台数は、首位:岐阜県34.8台/人口1万人、2位:愛知県31.3台/人口1万人、3位:福島県30.7台/人口1万人、4位:佐賀県28.2台/人口1万人と、35府県が東京都15.4台/人口1万人を上回るそうだ。

 そして、岐阜県の場合は、「道の駅」の7割以上に急速充電器の設置を進め、高山市で環境保護の観点から乗鞍スカイラインでEVレンタカーによる乗り入れを試行し、多治見市で地元の電力小売会社エネファントが小型EVレンタカーを開始したそうだ。

 マッターホルンはじめ4000m級の山や氷河に通じる山岳鉄道の基地であるスイスのツェルマットは、環境保護のために、市街地では20年以上前から条例でEVしか走れなくなっており、市街地を走るのはEVと観光用の馬車だけだ。私は、1998年にツェルマットを訪れた時に、それを見て徹底ぶりに感心したもので、日本でも環境を大切にしたい自治体は、EVしか走らせないという条例を作って充電設備を増やせば、それも付加価値になると思う。

 また、公共交通機関や商用車もEVシフトを進めて、再エネ発電で電力を賄えば、エネルギー自給率が上がると同時に、安価でクリーンなエネルギーの普及に繋がる。なお、月や火星では、化石燃料はもちろん、O₂を消費するH₂も移動手段の燃料にまでは使えないため、再エネ由来の電力で動くEVを使うしかないだろう。

(4)食料自給率の向上と先進農業


2021.8.26       農水省            2021.11.17JAcom
 毎日新聞

(図の説明:左図のように、日本の食料自給率は下降の一途を辿って、2020年度は、中央の図のように、カロリーベース:37%・生産額ベース:67%と諸外国と比較して著しく低い状態になった。カロリーベースよりも生産額ベースが2倍近く高い原因は、カロリーの低い野菜の自給率が高いこともあるが、全体としては価格が高いことが大きな要因であり、これらの農業不振と食料自給率の低迷も、防衛以前の問題である。その解決策の一部を、右図のように、JAが中期計画として掲げており、地域と共生し環境問題を解決しながら農業の発展を目指す重要な視点を含んでいる)

  

(図の説明:1番左の図は、日本の田園に風力発電機が設置されている様子で、地域と協力して農業地帯に農家が再エネ発電機を設置して電力を副産物にすれば、エネルギー自給率を向上させ、農業補助金は削減することが可能だ。左から2番目の図はオランダのハウス栽培で、オランダはハウス栽培を主にしたそうだが、ハウスを太陽光発電ガラスで作れば電力を供給でき、中に適切な量のCO₂を放出すれば、作物の生育が早くなる。右から2番目の図は、「基盤技術研究本部」が行っているスマート農業の研究で、1番右の図のように、農業における担い手の割合は増えているものの、これらのスマート機器を導入するには一定以上の規模が必要だろう)

1)食料自給率の低迷と経済安全保障
 *4-2に、①岸田政権は経済安全保障政策としてエネルギー、情報通信、交通・海上物流、金融、医療の5分野を重点として取り上げた ②食料自給率の低さは国民の命を直接左右するのに経済安全保障政策に入らなかった ③農水省が発表した2020年度のカロリーベースの食料自給率は、輸入が増えて37.17%となり、1965年度以降過去最低 ④農水省は2030年度までにはカロリーベースの食料自給率を45%に高める目標を掲げているが、年々、減少している ⑤カロリーベースの食料自給率は、1965年には73%あったが、今や37%まで下がり、日本人の食料の6割以上を海外からの輸入に頼っているのが現実 と記載されている。

 世界人口は、2020年に78億人で2100には109億人まで増えようとしており、工業化が進んで外貨を獲得した国は食料輸入国になるのに、③④⑤の状況で危機感も感じず、①②のように、いつまでも「日本の工業化の方が上位にあり、食料などは工業製品を売った金で他国から買えばよい」と思っているとすれば、それは傲慢か鈍感、もしくはその両方だ。

 また、戦争の場合は、兵糧攻めは「兵力を損せずに、相手を負かす」ための原則的手段であり、食料やエネルギーを自給できなければ強気で交渉することもできないため、「食料安全保障」は重要である。従って、新型コロナ禍・天候不順など言い訳はいくらでもできるが、一貫した食料自給率低下と食料価格上昇は、政策による敗戦だ。

2)農林水産輸出「1兆円」達成は功績か?
 そのような中、*4-1は、①2020年の農林水産物輸出額が、政府が目標に掲げる1兆円を初めて超えた ②国内は人口減少が避けられず、政府は輸出拡大を農林水産業基盤維持の有力な選択肢と位置づけて支援を続けてきた ③食料自給率など農水省の掲げる目標の多くが未達であることを考えれば、農林水産物輸出額1兆円を達成したのは一定の評価ができる としている。

 しかし、①③のように、1兆円でも輸出できないよりはできた方がよいが、②は食料自給率が100%ならともかく、37%の国が考えることではないだろう。そのため、私も、政府の支援は、品種改良・物流の効率化・加工施設の整備・再エネとの両立によるコストダウンなど、中長期的な競争力強化につながる政策に絞るべきだと思う。

 また、*4-1は、④1兆円を超えても国内生産額に占める割合はまだ2%に留まる ⑤海外の富裕層で日本産の需要が飽和状態に達しつつあり、中間層にも販売を広げることが次の目標達成に欠かせない ⑥日本の農業生産者は、品質のよい商品を高価格で販売しようとする ⑦輸出拡大には生産者が市場のニーズを見極めて、何をどういうコストで生産するか決めることが必要 ⑧米のように輸出向け生産を助成金で優遇する政策は、生産コストを高止まりさせる結果を招く とも記載している。

 確かに、④のとおり、農林水産物全体を考えれば少ない輸出額だが、その理由は、⑤⑥のように、“品質の高い”商品を高価格で販売しようとしたことによる。しかし、外国産も日本人のニーズに合わせて“品質”を上げてきているため、決してまずくはなく、肉類はむしろ脂身が少なくて健康志向である上、全体として安価だ。

 そのため、私も、⑦のように、生産者は輸出する市場のニーズをつかんで、的確な製品を適切な価格で生産・販売する必要があると思う。そのような中、米だけを優遇して輸出向け生産に政府の助成金で優遇するのは、⑧のように、市場のニーズに合わせる努力を妨げ、米以外の生産者に対して不公平になる。

 なお、⑨中国・韓国・台湾など主要輸出先の多くがフクイチ事故後に導入した日本産の輸入規制を続けている そうだが、2011年の原発事故後は55の国・地域が輸入規制を導入し、米国も日本産の輸入規制を2021年9月22日に撤廃したばかりで、まだ15か国・地域が規制を維持している。そのため、日本政府が、大した根拠もなく安全性を主張するのは、むしろ信用をなくす行為だ(https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/chiiki/210921.html 参照)。

(5)組織再編へのいちゃもんはよくないこと
1)東芝の組織再編
 東芝が、*5-1のように、グループ全体を、①発電機器やインフラの「インフラサービス」 ②半導体等の「デバイス」 ③保有株式管理等の会社 に3分割し、中核事業を2つの新会社として分離・独立させ、①②の事業会社を2023年10月~2024年3月に新規上場させる計画の実現を目指すとした時、まるで東芝いじめのような反対論が紛糾したのには呆れた。

 その理由は、私も綱川社長の「④今般の再編により新会社はスピード感をもってそれぞれのビジネス特性に応じた事業を展開することが可能になる」「⑤この経営変革がグループの企業価値向上に向けた最善策である」という意見に賛成で、「⑥坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」といういじめ方には反対だからだ。そして、大人が行っているこのような「いじめ」は、子どもにもしっかり真似されていることを忘れてはならない。

 私が、この会社分割に賛成する理由は、ビジネスの特性が異なり、異なるタイプの人材を集めて、異なる論理で動かなければならない事業部を、一つの会社のまま、同一の経営陣や人事制度の下に置いておけば、お互いの環境や行動原理を理解しくいため意思決定に時間がかかり、両方とも足を引っぱられるからだ。従って、この会社分割を、「⑦2つの事業グループが新しいリーディングカンパニーとして進化するための準備」とするのも理解できる。

 そのため、*5-2のように、臨時株主総会を開いて議決権のある株主が賛否を表明するのはよいが、大株主といっても、会社のおかれた環境とその中で決められた中長期の経営計画を理解して意思決定できるわけではないため、注意すべきだ。

2)労働流動化の必要性とジョブ型雇用
 日本は労働の流動化ができていない国で、労働法もそれを前提に定められている。この労働市場のディメリットは、労働者に転職で不利益が生じ、企業も正規労働者を解雇しにくいことである。そして、それを回避するために、企業は非正規労働者という解雇しやすい労働者群を作って労働法を逃れ、労働者の中に犠牲になる集団があって不合理な格差が生じるのである。

 また、正規労働者は解雇しにくいため、企業は終身雇用・年功序列の前提の下、専門性の異なる人材を会社内で使い廻すことになり、生産性が低くなる。これを解決して、環境変化に対応できるためには、*5-3のように、ジョブ型雇用を行い、職務を明確化して、人材の専門性を高めることが必要だ。

 このジョブ型雇用(働き手の職務内容を明確に規定して、仕事中心に雇用する雇用方法)は、事業展開に合わせて最適な人材を配置したり、外部の労働市場からも機動的に人材を採用したりしなければならない時に、中途採用された労働者が不利益を被らないためにも必要で、欧米企業には前から当然のこととして普及しているものだ。

 そして、その特定の業務がなくなれば、担当していた人材は解雇されることも多いが、ジョブ型雇用で専門性を活かせる仕事に配置され続けていれば、他の企業に転職してもその専門性は生きるわけで、もちろん、その場合の賃金は仕事の中身と達成度で公正に評価して決められなればならず、それが労働者がさらに専門性を磨く動機づけになるのである。

 日本でも、*5-4のように、年功制や順送り人事を排すジョブ型雇用を導入する企業が広がっており、KDDI、富士通、日立製作所がジョブ型「御三家」だそうだ。そして、*5-4に書かれているとおり、職務内容や求められる能力を明記する職務記述書を柔軟にして、あらかじめ能力発揮を制限しすぎないのがよいと思われる。

 ここで気がつくことは、年功序列では機能しにくい部門を持つ企業でジョブ型雇用が進んでいることで、東芝の会社分割は、①発電機器やインフラの「インフラサービス」 ②半導体等の「デバイス」 ③保有株式等の管理会社 を別会社にし、異なる環境の下で、異なる人事制度を持ち、階層を減らして、意思決定を早めるという意図が感じられる。

 なお、*5-5のように、やっと「イノベーションの創出には、女性エンジニアが不可欠」と言われるようになったが、「『ジェンダード・イノベーション』には、優れた女性エンジニアの活躍が不可欠」というだけではなく、一般の電気製品も、発言権のある女性の混じった組織で作られたものは、よく工夫されていて、使い勝手がよく、デザインも洗練されている。

 つまり、人材の多様性の欠如が日本のイノベーションを妨げ、製品の付加価値も下げているわけで、女性や高齢者にとって、仕事を中断してもまた専門性を評価されて就職できる体制であれば、必要な時に休職や転職をしても、不利益なく仕事を再開できるのである。

・・参考資料・・
<火山噴火と噴火予知>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220122&ng=DGKKZO79462730S2A120C2EA1000 (日経新聞 2022.1.22) トンガ被害把握難航 噴火1週間、火山灰被害で食糧難、ネット通信復旧遅れ WHO現地職員に聞く
 南太平洋の島しょ国、トンガ沖で海底火山が大規模噴火してから22日で1週間がたつ。現地の住民らに取材すると、火山灰による農業被害で一部の島では食糧が不足し始めた。物流の停滞で石油の備蓄も底をつきつつある。インターネットはほとんど復旧しておらず、被害の全容把握にはなお時間がかかりそうだ。海底火山から約65キロの首都ヌクアロファにある世界保健機関(WHO)事務所で働く瀬戸屋雄太郎氏が日本経済新聞の取材に応じた。瀬戸屋氏は噴火の瞬間を「大砲のような音がドーンとした。窓が震えて耳がキーンとなった。圧のようなものを感じた」と振り返る。瀬戸屋氏は「しばらくして避難した。ラジオから『避難をしてください』と呼びかけがあった。沿岸地域にいた人々はいち早く高台に避難したと聞いた」とも語った。瀬戸屋氏は降灰による深刻な被害を指摘した。「作物が枯れたり、葉に灰が付着したりする被害が出ている。小さな島々では食糧難が発生しつつある」という。水不足も懸念される。雨水をタンクにためて飲料水とするが、タンクに火山灰が入った。重金属汚染が懸念され、WHOは飲まないよう呼びかけてきた。瀬戸屋氏は「調査で浄化すれば飲めるとわかった。いまは市販のペットボトルの水を飲む人が多い」と話す。トンガ出身でオーストラリア国立大学のジェンマ・マルンガフ特別研究員は「農産物に付着した火山灰を洗い流す水が不足しているうえ、(火山灰の土壌への影響など)安全性に不安を抱える人が多い」と指摘する。通信の復旧も遅れている。瀬戸屋氏は「一般的にはインターネットは復旧していない。国際電話はオーストラリアとの間でつながり始めた」と語った。ネットが全面復旧していないため、被害の全容把握が難航する。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、首都のあるトンガタプ島だけで最大100棟の家屋が深刻な被害を受けた。すべての家屋が破壊された島もある。瀬戸屋氏は「長期支援が欠かせない。テントやマスクが必要だ」と話す。トンガは生活必需品の多くを輸入に頼り、物流途絶が長引けば影響は大きい。国際貿易センターによると2020年、トンガの最大の輸入品は石油や石炭といった燃料でモノの輸入の14%を占め、次が肉類(9%)。瀬戸屋氏は「物流が止まっている状況は非常に深刻で、石油の備蓄も不足しつつある」と話した。ニュージーランド(NZ)政府は21日、ヘリコプターなどを積んだ軍艦がトンガに到着したと発表した。飲料水や淡水化装置を運ぶ別のNZ軍艦も同日到着した。20日にはNZや豪州が支援物資を軍の輸送機で運んだ。自衛隊の輸送機も同日、飲料水を運ぶため日本を出発した。中国も水や食糧の輸送を表明ずみだ。新型コロナウイルス禍で人的支援には難しい面もある。トンガは厳しい出入国管理を敷いており、人口約10万人の同国で感染者はわずか1人にとどまる。外国人が入国して新型コロナの感染が広がれば、医療崩壊が起きかねず、トンガ政府は海外からの支援人員の受け入れに慎重姿勢とされる。感染防止と復興支援の両立が課題になる。地域に詳しい笹川平和財団の塩沢英之主任研究員は「今後の支援は損傷した施設の復旧だけでなく、将来の災害に対して強靱(きょうじん)な社会を作るという視点が必要になる」と指摘している。

*1-1-2:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220125/k10013449821000.html (NHK 2022年1月25日) トンガ派遣の自衛隊員 複数がコロナ感染 支援物資の輸送できず
 海底火山の大規模噴火で被害を受けたトンガを支援するために派遣された自衛隊員3人が、新たに新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。派遣部隊の感染者は4人となり、防衛省によりますと、この影響でオーストラリアからトンガへの支援物資の輸送ができない状態になっているということです。トンガを支援するため、防衛省は、航空自衛隊のC130輸送機2機を、活動拠点を置くオーストラリアに派遣し、今月22日に初めてトンガに飲料水を届け、支援活動を本格化させています。ところが24日、隊員1人の感染が確認されたほか、25日になって新たに20代から40代合わせて3人がのどの痛みなどの症状を訴え、抗原検査の結果、陽性反応が出たということです。この4人に加え、濃厚接触した疑いのある36人の隊員を隔離する必要があることから、輸送機によるオーストラリアからトンガへの支援物資の輸送ができない状態になっているということです。防衛省は、代わりとなる隊員を新たにオーストラリアの活動拠点に派遣することを含め、対応策を検討していて、感染防止策を徹底し、任務を再開する予定だとしています。トンガの支援活動をめぐって防衛省は、C130輸送機のほか輸送艦「おおすみ」を25日現地に向けて出発させていて、火山灰を取り除くための高圧洗浄機や飲料水を届ける予定です。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15178929.html (朝日新聞 2022年1月21日) (時時刻刻)巨大噴火リスク、日本にも 火山大国、予知に限界
 南太平洋のトンガ諸島で日本時間15日に発生した海底火山の噴火は、噴火の規模を示す火山爆発指数(VEI)で、上から3番目の6かその下の5だったとみられる。日本でもこの規模の噴火は歴史的に繰り返し発生してきた。巨大噴火は予知できるのか。発生への備えはどうあるべきか。トンガと同じく海洋プレートが沈み込む日本は、世界有数の火山大国だ。世界の7%にあたる111の活火山が集まっている。噴火も多く、沖縄などに大量の軽石をもたらした小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火がVEI4。1914年に鹿児島県の桜島で起きた大正噴火も4で、明治以降はこの二つが最大級だった。時代をさかのぼれば、さらに大規模な噴火も起きている。江戸にも火山灰が降った1707年の富士山宝永噴火は5。そこまでの規模ではなくても、天明の大飢饉(ききん)を起こした1783年の浅間山の噴火(VEI4)や、山が崩壊して村をのみ込んだ1888年の福島・磐梯山の噴火(同2)など大きな被害が出た例も多い。気象庁は、111の活火山のうち、火山噴火予知連絡会が「過去100年程度以内に火山活動の高まりが認められている火山」などの基準で選んだ50の火山を24時間体制で監視している。2000年に北海道の有珠山で噴火の2日前に緊急火山情報を出し、住民の避難が成功した例があるものの、予知は難しい。京都大防災研究所の井口正人・火山活動研究センター長は「日本はトンガと比較すれば監視体制が整っており、地震や地殻変動などから噴火の予兆をつかむことはできる。ただ、それが噴火警報・予報に結びつくかは別問題だ。噴火の規模や噴出形態を予測することは多くの火山ではまだできないのが現状」と話す。VEIは0~8の段階があり、7と8は破局噴火とも言われる。めったに起きないが、日本では1万年に1度のペースで起きているとされる。600立方キロメートルもの火山灰が放出され、火砕流が九州の広範囲に広がったとされる約9万年前の熊本・阿蘇カルデラ、3万年前の鹿児島・姶良(あいら)カルデラ、南九州の縄文文化を火砕流で壊滅させたとされる7300年前の鹿児島・鬼界(きかい)カルデラの噴火はいずれもVEI7だった。巨大噴火は、原子力発電所の審査でも議論になってきた。160キロ圏に五つのカルデラがある九州電力川内原発(鹿児島)の審査では、九電が、運用期間中に破局噴火が起こる可能性は「十分低い」と主張した。九電は同原発が再稼働した2015年度から、破局噴火の兆候をとらえようと、カルデラのモニタリングを本格的に始めた。もし地殻変動などが観測されれば、「噴火の可能性を評価し、燃料の搬出などを実施する」という。ただ、巨大噴火自体の記録やデータに乏しく、兆候を本当につかめるのか、疑問視する研究者は少なくない。
■首都圏、微量の降灰でも交通混乱 富士山噴火、政府部会の被害想定は…
 国内で大規模噴火が起きたら、どんな被害が想定されるのか。日本に破局噴火レベルの被害想定はないが、政府の中央防災会議の作業部会は2020年、VEI5の富士山宝永噴火と同程度の噴火が再び富士山で発生した際に想定される首都圏への影響をまとめた。除去が必要になる火山灰は最大約4・9億立方メートルで、東日本大震災での災害廃棄物の量の約10倍。東向きの風が強く吹けば、灰は3時間のうちに都心に届き、噴火から15日目の累積降灰量は、東京都新宿区約10センチ▽横浜市約2センチ▽相模原市約30センチなどとされる。微量の降灰でも地上の鉄道はストップし、視界不良で道路は渋滞する。降雨時には0・3センチの降灰で停電するほか、通信アンテナに火山灰がつけば携帯電話などの通信網も寸断されるおそれがあるという。木造家屋は降雨時に30センチ以上の灰が積もっていると、重みで倒壊する可能性がある。目、鼻、のどへの健康被害も生じ、ぜんそくなどの疾患がある人は症状が悪化する可能性が高いとしている。噴火による被害は、火山灰だけにとどまらない。山梨、静岡、神奈川の3県などでつくる「富士山火山防災対策協議会」が昨年まとめたハザードマップでは、大量の溶岩を噴出した「貞観噴火」(864年)級の噴火で13億立方メートルの溶岩流が、3県27市町村に到達するおそれがあるとした。東名高速や東海道新幹線といった主要な交通網にも達する可能性がある。噴出物と火山ガスなどが混ざって地表沿いを流れる火砕流も1千万立方メートル流れ出て、静岡、山梨両県の10市町村に及ぶという。人的被害は算出されていない。では、どんな備えが必要なのか。気象庁は、同庁が発表する「噴火警戒レベル」に基づき、自治体から発表される避難情報に従ってほしいとしている。健康被害を避けるため、1ミリ以上の降灰時には外出は控えるのが望ましい。1ミリ未満でも外出時にはマスクやゴーグルをつけて体を守ることが必要で、窓を閉めるのが望ましいとする。予想される降灰量は同庁が発表する「降灰予報」が参考になる。自宅や職場にとどまることも想定し、食料や水を普段から確保しておくことも大切だ。中央防災会議も「基本的な考え方」を示しており、木造住宅に住む人は降灰が30センチに達する前に逃げるなど、早期避難が必要だと指摘する。

<先進技術 ー(その1)火星と月>
*2-1-1:https://academist-cf.com/journal/?p=5937 (AcademistJournal 黒川宏之 2017年9月20日) 40億年前の火星は厚い大気に覆われていた – 隕石を手がかりに火星環境大変動の謎に迫る
●火星環境大変動の謎
 火星は希薄な大気しか持たない惑星です。その地表は平均気温約-60℃と極めて寒冷で、荒涼とした大地が広がっています。1965年に火星探査機マリナー4号がはじめて火星地表の写真を送ってきたとき、しばしば水の惑星と形容される地球と対比して、火星は“死の惑星”と表現されました。ところが、その後アメリカを中心に行われてきた探査研究の成果として、数多くの流水地形や液体の水が存在した鉱物証拠が発見されてきました。これが意味することは、火星はかつて液体の水が安定に存在できるほど温暖な時代があった、ということです。火星をそれほど温暖に保つためには、厚い大気と温室効果ガスが必要です。厚い大気を失ったことが、かつて温暖であった火星が極寒の惑星へと変貌した原因ではないかと考えられてきました。では火星はいつ、なぜ厚い大気を失ったのでしょうか? 原因のひとつの可能性は、火星が地球の10分の1の質量しか持たず、低重力であることです。重力が小さいことは、大気が宇宙空間に流出しやすいことに繋がります。原因のもうひとつの可能性は、火星が磁場を持たない惑星であることです。磁場を持たない惑星の大気には太陽風が直接吹きつけるため、大気の宇宙空間への流出を引き起こします。私たちの研究グループでは、まず火星の厚い大気が“いつ”失われたかを解明することを目的とし、さらにはその結果から“なぜ”失われたかを推測することを試みました。
●手がかりは“火星隕石”
 失われた太古の火星大気への手がかりとして私たちが着目したものは、火星隕石と呼ばれる、天体衝突によって火星から飛び出し地球まで飛来した隕石です。これらの隕石は、含有ガスの化学組成や岩石の酸素同位体組成をもとに、火星からやってきたことがわかっています。探査研究と比較して、火星隕石を利用した研究は、その隕石が火星地表のどこからやってきたのかわからないという欠点があります。その一方で、実験室で詳細な化学分析ができるため、リモートの探査では知り得ない多くの情報を得ることができます。大気の組成は惑星全域でよく均質化されており地域性がないため、私たちの研究では火星隕石研究の利点のみを活かすことができます。南極で発見された、アランヒルズ84001と名付けられた火星隕石は、詳細な化学分析により40億年前という非常に古い時代に形成されたことがわかっていました。さらに、当時の火星大気を岩石中にガスとして含有していることが過去の研究で報告されていました。今回の研究では、この含有ガスの同位体組成が40億年前の大気量を知る手がかりとなりました。火星大気が宇宙空間に流出する時には、軽い同位体が優先的に流出することで、残る火星大気には重い同位体が濃集します。私たちは、さまざまな火星大気の時間変化シナリオに対してこの同位体組成の時間変化をシミュレートすることで、火星隕石アランヒルズ84001に記録された40億年前の大気の同位体組成を再現する条件を探りました。宇宙空間へ流出する火星大気の模式図。軽い同位体(14Nなど)が優先的に流出することで、火星大気には重い同位体(15Nなど)が濃集する
●厚い大気に覆われていた火星
 その結果、40億年前の火星は、地表大気圧が約0.5気圧以上の厚い大気に覆われていたということがわかりました。現在の地球大気が1気圧なので、当時の火星は地球程度の厚い大気に覆われていたことになります。この0.5気圧という値はあくまで下限値であり、実際の火星大気はさらに分厚かった可能性があります。大気が分厚いほど、地表はより温暖になります。一方で、現在の火星は僅か0.006気圧の希薄な大気しか持っていません。すなわち、40億年前以降に火星大気の大部分が失われたことになります。なぜ火星はかつて存在した厚い大気を失ったのでしょうか? 現在の火星に残されている古い地殻が磁化していることから、火星は約40億年前に磁場を持っていたと推定されています。現時点では厚い大気を失った原因を特定することは難しいですが、磁場を失ったことが太陽風による大規模な大気の宇宙空間への流出を引き起こした可能性があります。現在、火星大気の流出過程を観測しているNASAの火星探査機MAVENによる最新の観測結果からも、これを支持する成果が得られつつあります。
●日本独自の火星探査に向けて
 厚い大気に覆われ、地表には液体の水が存在した40億年前の火星では生命は誕生しなかったのでしょうか? 地球では約40億年前にすでに生命が誕生していたことが地質学的な証拠からわかっています。将来の火星探査で、火星にかつて生命が存在した証拠が発見される可能性は十分にあります。さらに、ここ数年の大きな発見として、火星はかつて想像されていたような完全なる“死の惑星”ではなく、春や夏の比較的温暖な時期に地下から水が湧き出している地域があることがわかってきました。火星の極寒で乾いた地表の下には、現在でも生命が存在可能な環境が広がっているのかもしれません。JAXAは2024年に火星衛星サンプルリターン機MMXを打ち上げる予定です。成功すれば日本で初めて人工衛星を火星軌道に投入して探査活動を行うことになると同時に、世界初の火星圏からのサンプルリターンとなります。そして、これに続くミッションとして、日本初の火星着陸探査の検討も始まっています。これらの日本独自の火星探査によって、火星環境の大変動の歴史や、生命誕生の有無を解明できると期待しています。
*参考文献
Hiroyuki Kurokawa, Kosuke Kurosawa, Tomohiro Usui. A Lower Limit of Atmospheric Pressure on Early Mars Inferred from Nitrogen and Argon Isotopic Compositions, Icarus, Vol.299, 443-459, (2018).

*2-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220129&ng=DGKKZO79638130Y2A120C2MY6000 (日経新聞 2022.1.29) 『火星の歩き方』臼井寛裕ほか著
■『火星の歩き方』臼井寛裕ほか著 見知らぬ土地の旅行にはガイドブックが欠かせない。宇宙航空研究開発機構などの研究者が、人類が移住の可能性を探る火星を案内する。月に似た衛星フォボスに始まる気球を用いた旅や、標高2万メートルのオリンポス山登山コースなどの紹介を通して、地形の成り立ちや特徴を概説する。一方、開発には環境保全が課題と見据え「人類に火星を旅行する権利はあるのか」との問いも投げかける。

*2-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220103&ng=DGKKZO78896410S2A100C2PE8000 (日経新聞 2022.1.3) 日本の月探査始動 無人機初着陸へ、補給船も開発急ぐ
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心とした日本の月探査が2022年に本格化する。2月以降に初の月面着陸を目指す無人機を米国のロケットで送り込むほか、22、23年度にも無人機を計2機打ち上げる。宇宙ステーションへの輸送船開発も進む。国際協力で存在感を示し、産業育成につなげる。月探査に向けた第1弾は2機の探査機で、「エクレウス」と「オモテナシ」。後者は月への着陸も予定する。JAXAと東京大学が開発した。40センチメートル角に満たない大きさで、少ない燃料で月面に向かう飛行技術や着陸技術をそれぞれ検証する。打ち上げには米国の新たな大型ロケット「SLS」を使う。米国は25年以降の有人月面着陸を目指す「アルテミス計画」の第1弾として、22年初頭に打ち上げる予定。同計画で月の近くに人を運ぶ計画の宇宙船「オリオン」の無人飛行試験と合わせ、2機の探査機を放出してもらう。JAXAがより本格的な月探査の技術実証と位置づけているのが、22年度に打ち上げる探査機「SLIM(スリム)」だ。目的地から誤差100メートル以内での月面着陸を狙う。この経験で技術を磨き、23年度にインドと共同で新たな探査機を打ち上げる。月面で氷や水が存在する可能性が指摘される「極域」を狙う。水は宇宙開発では重要な資源で将来、国際的な争奪戦が予想されている。アルテミス計画を巡っては、日本は4項目で米国と合意している。(1)月周回に建設する新たな宇宙ステーション「ゲートウエー」の居住棟への機器の提供(2)同基地への物資の補給(3)月面データ共有(4)有人探査車の開発――だ。基地への補給には、開発中の補給船「HTV-X」を使う方針だ。国際宇宙ステーション(ISS)向けに9回物資補給を担った「こうのとり」の後継機で、22年度中に初の打ち上げを目指す。まずはISSへ1年に1回のペースで3回打ち上げる。26年以降に、ゲートウエーへの物資や燃料の補給に使うことを想定する。月を巡る国際競争は激化している。20年代前半には日本やインドだけでなく、中国やロシアなども月の極域などを狙った新たな探査を計画する。民間の取り組みも始まっている。国内ではスタートアップのispace(東京・中央)が22年中に着陸機を、ダイモン(同・大田)が探査車を月面に送り込む計画だ。JAXAは月での活動も視野に宇宙飛行士の募集も始めた。政府は21年末に改定した国の宇宙開発の基本方針を示す「宇宙基本計画」の工程表で「20年代後半をメドに日本人による月面着陸の実現を図る」と明記した。月探査に向けた技術や物資、人材をそろえて国際貢献し、宇宙産業の育成に向けた技術やノウハウの取得を目指す。

*2-2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASQ1X63R0Q1XUHBI01J.html (朝日新聞 2022年1月28日) 「2030年までに月面基地」 中国、ロシアと共同で建設を計画
 中国国家宇宙局は28日、宇宙白書の発表にあわせて記者会見し、2030年までにロシアと共同で月面基地建設を始める計画を明らかにした。35年をめどに、地球と行き来して月面で活動するためのエネルギー設備や通信システムを基地に整備し、人類が短期滞在する場合には生命維持環境を備えた「小さな村」をつくる構想も披露した。会見した宇宙局の劉継忠・宇宙工程センター主任は、無人月探査機「嫦娥(じょうが)6号」で月の南極か北極の土を持ち帰り、7号では高精度な着陸とクレーターの探査を実施。「特に7号では月面の水の分布を調べ、月面基地建設に向けた最初の一歩を踏み出す」と述べた。8号で、ロシアと協力して「月面基地をつくる基本的な目標は達する」とした。6、7号は25年前後までに、8号は30年までに任務を終えるという。28日に公表した「2021中国の宇宙」と題した白書でも、「8号で国際科学研究ステーション(月面基地)を建設するという技術的な任務を完了させる」と明記した。中ロは昨年3月、月面基地建設の協力を進めることで基本合意しているが、呉艶華・宇宙局副局長は「調整は順調に進んでおり、早ければ年内にも両国で署名し、世界に向けて月面基地の建設を正式に宣言できる」と述べた。呉艶華・宇宙局副局長は基地は南極に作るとの見通しを示したうえで、「基地は小さな村を作るようなもので、エネルギーや通信、運搬システムなどが必要になる」と指摘。ソーラー発電や、地球と通信して月面での装置を動かす機能、物資運搬システムなどを指すとみられる。また宇宙飛行士の短期滞在のための生活環境も必要だという見通しを示し、これらは「35年までの重点的な任務だ」と述べた。中国はこれまで、19年に「嫦娥4号」を世界で初めて月の裏側に着陸させることに成功。20年には「嫦娥5号」が米国、旧ソ連に続いて44年ぶりに月の土を持ち帰る「サンプルリターン」を実現するなど、「宇宙強国」を目指して急ピッチで宇宙探査技術を蓄積している。米国にも将来的に月面基地を建設する計画がある。アポロ計画以来の有人月探査となる「アルテミス計画」で、日本も参加を決めている。計画では、2025年以降に男女の飛行士を着陸させ、将来的には月を回る軌道に宇宙ステーション「ゲートウェー」や、月面基地を建設することにしている。日本は宇宙ステーションに物資を運ぶ新型の無人補給船や、有人の月面車の開発を進めている。

*2-2-3:https://style.nikkei.com/article/DGXMZO44158040U9A420C1000000/ (ナショジオニュース 2019/5/11) 月の地表7センチ下に大量の水 NASA探査機が発見
 月のちりと大気を調査するために送り込まれたNASAの探査機LADEE(ラディ―)が、隕石が衝突する際に月面から放出される水を検出した。2019年4月15日付けの学術誌「Nature Geoscience」に掲載された論文によると、微小な隕石が衝突する際の衝撃によって、年間最大220トンもの水が放出されているという。月面付近には、これまで考えられてきたよりもはるかに大量の水が存在することになる。「あまりに大量の水だったため、探査機に搭載されていた機器が、大気中の水をスポンジみたいに吸収したのです」。研究を主導したNASAゴダード宇宙飛行センターの惑星科学者、メディ・ベンナ氏はそう語る。この発見は、月がそもそもどのように形成されたかを理解する新たな手がかりになるだろう。また、今後の有人ミッションにも影響を与えるに違いない。その際には、月面の水分を水分補給や推進力の確保に活用できるかもしれない。「これまでずっと、月は非常に静かで寂しい場所だと考えられてきました」とベンナ氏。「今回のデータによって、実際の月は非常にアクティブで刺激に敏感であることがわかりました」
●月に降り注ぐ流星群
 ある程度の水が月に存在することは以前から知られていた。その大半は、ずっと日が当たらないクレーターの日陰部分にある氷に閉じ込められているか、あるいは表面からずっと深いところに隠されていると考えられてきた。月に水がもたらされる経路には2種類ある。太陽風に含まれる水素が月面にある酸素と反応し、さらに月の岩石と作用して含水鉱物となる、というのが一つ。もう一つは、月面に衝突する彗星や小惑星に水が含まれるケースだ。しかし、NASAの探査機LADEEが収集した新たなデータによって示されたのは、意外な事実だった。LADEEが軌道をめぐる間、地球と同じように流星群が月に降り注ぐのを観測していた。毎年決まった時期に、地球と月は、彗星の軌道と交差する。彗星の中にはたくさんの岩屑をまき散らすものがある。そうした置き土産の大半は、地球の大気圏では燃え尽きる。この現象はふたご座流星群、ペルセウス座流星群、しし座流星群などの名称で呼ばれる。一方、空気のない月では、それらの隕石は月面に衝突する。「何百万という数の細かい岩石が、雨のように降り注ぎます」と、ベンナ氏は言う。「われわれは29回の隕石群を確認しました。そのすべてが彗星と関連していました」。こうした小さな粒子が月面に衝突する際、いちばん上にある細かい表土の層(レゴリス)を舞い上げる。そのおかげで、地表からわずか7.5センチメートルほど下の層に、予想よりもはるかに多くの水があることが判明した。「こうして放出され、失われる水の量は、太陽風によって運ばれてくる水素や、微小隕石自体によってもたらされる水では埋め合わせることができません」と、ベンナ氏は言う。「つまり、月の土壌にはこれら2つでは補充し切れないほどの水が存在することになります。これを説明するには、月には太古の昔から蓄えられてきた水があり、それが長い時間をかけて徐々に枯渇してきたと考えるしかありません」
●なぜ地球よりも水が少ないのか
 ベンナ氏のチームは、月面の数センチメートル下には、水がほぼ均等に存在していると推測している。これは、月には太陽風や彗星から運ばれてきたものよりもたくさんの水があることを意味する。太陽系ができたての頃、巨大な若い惑星同士が衝突し、宇宙空間に放たれた岩屑が2つのまとまりになり、互いの周りをバレエのようにグルグルと回り始めた。これが月と地球ができた経緯だ。結果として、月と地球は歴史の一部を共有することになったが、地球にある量と比べてなぜ月にあれほど水が少ないのかについては、これまで明確な理由はわかっていなかった。「これは重要な論文です。なぜなら、今起きている水の放出を測定しているからです」と、米ブラウン大学の惑星科学者、カーリー・ピーターズ氏は言う。衝突によって明るい色の物質が周囲に撒き散らされた様子がわかる(PHOTOGRAPH BY NASA)。研究チームのデータは、月の起源や、それほど大量の水をどのように獲得したかを解明しようとしている科学者たちの役に立つだろう。「とてもワクワクしています。研究チームはすべての経緯をとらえています。水が外気圏に移動し、それが月面に戻るか、あるいは宇宙へ消えていくまでを観測しているのです。これは本当に重要な発見です」。(文 SHANNON STIRONE、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年4月17日付]

*2-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/094be2f9738830f0bb2e06f4b084dde847e20203 (Yahoo 日本農業新聞 2022/1/5) 月でジャガイモ、火星でトマト…“現地生産”へ技術開発 産官学プロジェクト始動
 月面でジャガイモ、火星でトマト――。農水省は、月や火星に人類が進出する未来を見据え、地球上とは全く異なる環境でも農作物を生産し、現地で食料を確保する技術開発に乗り出した。大学や民間企業が参画する産官学プロジェクトを始動。植物工場などの技術を生かし、5年間で月面や火星を再現した環境下での生産実証を目指す。
●植物工場を応用
 プロジェクトが目指す将来像として、同省は「月面産、火星産の農産物を現地で食べる」(食品企業行動室)ことを想定する。人間の健康維持に必要な栄養の大部分を満たせる品目として水稲や大豆、トマト、ジャガイモなど八つを選定。大気や日照条件が大きく異なる月面、火星で生産するには、植物工場のような閉鎖型施設が必要になる。「限られた面積で収量を確保し、おいしい農作物を生産する」という基本テーマの下、2021年度から5年間の研究プロジェクトが始動。21年12月に千葉大学や農研機構、植物工場の開発企業などの参加が決まった。21年度は3億円の予算を計上。現地の環境を地上で再現し、米やトマト、イチゴを栽培する閉鎖型設備の開発を進める。植物工場の開発で蓄積された技術を生かし、収量を確保できる環境や設備の研究・実証を進める。現地資源の活用も念頭に置く。月の砂「レゴリス」を改良し、ジャガイモなどを栽培する技術の開発を目指す。政府は「宇宙基本計画」に基づき、月面や火星への進出を中長期的な目標に掲げる。現地に長期滞在する場合、食料を確保する必要が出てくる。ただ、地球から食料を輸送すれば膨大なコストがかかる。月面や火星の拠点に滞在する人が長期間、栄養をきちんと摂取できるようにすることも考慮し、同省は現地での農業生産を可能にする必要があると判断した。研究成果は、砂漠など地球上の過酷な条件での食料生産に生かすことも念頭に置く。

<先進技術 ー(その2)気候変動問題への対応>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20220118&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO79294570X10C22A1M10600&ng=DGKKZO79294700X10C22A1M10600&ue=DM10600 (日経新聞 2022/1/18) 四 気候変動問題への対応
【成長のエンジンに】
 過度の効率性重視による市場の失敗、持続可能性の欠如、富める国と富まざる国の環境格差など、資本主義の負の側面が凝縮しているのが気候変動問題であり、新しい資本主義の実現によって克服すべき最大の課題でもあります。20年、衆参両院において、党派を超えた賛成を得て、気候非常事態宣言決議が可決されました。皆さん、子や孫の世代のためにも、共にこの困難な課題に取り組もうではありませんか。同時に、この分野は、世界が注目する成長分野でもあります。50年カーボンニュートラル実現には、世界全体で、年間1兆ドルの投資を、30年までに4兆ドルに増やすことが必要との試算があります。我が国においても、官民が、炭素中立型の経済社会に向けた変革の全体像を共有し、この分野への投資を早急に、少なくとも倍増させ、脱炭素の実現と、新しい時代の成長を生み出すエンジンとしていきます。30年度46%削減、50年カーボンニュートラルの目標実現に向け、単に、エネルギー供給構造の変革だけでなく、産業構造、国民の暮らし、そして地域の在り方全般にわたる、経済社会全体の大変革に取り組みます。どのような分野で、いつまでに、どういう仕掛けで、どれくらいの投資を引き出すのか。経済社会変革の道筋を、クリーンエネルギー戦略として取りまとめ、お示しします。送配電インフラ、蓄電池、再生可能エネルギーはじめ水素・アンモニア、革新原子力、核融合など非炭素電源。需要側や、地域における脱炭素化、ライフスタイルの転換。資金調達の在り方。カーボンプライシング。多くの論点に方向性を見いだしていきます。もう一つ重要なことは、我が国が、水素やアンモニアなど日本の技術、制度、ノウハウを活かし、世界、特にアジアの脱炭素化に貢献し、技術標準や国際的なインフラ整備をアジア各国と共に主導していくことです。いわば、「アジア・ゼロエミッション共同体」と呼びうるものを、アジア有志国と力を合わせて作ることを目指します。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220122&ng=DGKKZO79465320S2A120C2MM8000 (日経新聞 2022.1.22) EVシフト、地方が先行 岐阜・愛知は東京の2倍普及 給油所廃業後の光明に
 電気自動車(EV)など次世代車シフトの「芽」が地方で育ち始めた。人口当たりの普及台数で35府県が東京都を上回った。ガソリンスタンドの相次ぐ廃業を受け「給油所過疎地」(総合2面きょうのことば)が深刻な問題となる中、各家庭で充電・走行が可能となるEVやプラグインハイブリッド車(PHV)は、光明となる可能性を秘める。環境意識の高まりも踏まえ、各自治体はハード、ソフト両面で普及を促す。2009~19年度の都道府県別の普及状況(補助金交付台数、次世代自動車振興センター調べ)を人口1万人あたりで算出した。首位は34.8台の岐阜県。以下、愛知県(31.3台)、福島県(30.7台)、佐賀県(28.2台)が続いた。東京都は15.4台だった。岐阜県は環境への取り組み強化に加え、中山間地を中心とする給油所過疎地の課題解決につなげようと普及を推進する。航続距離への不安を解消しようと県内56カ所ある「道の駅」の7割以上に急速充電器の設置を進め、全域をほぼカバーした。域内自治体も連携して取り組みを進め、高山市では環境保護の観点からマイカー規制中の乗鞍スカイラインでEVレンタカーによる乗り入れを試行。多治見市では地元の電力小売会社、エネファントが11日から小型EVレンタカーを開始した。道路の起伏や気候の状況、利用者ニーズなどの情報を市と共有し、普及への課題を洗い出す。愛知県は21年に「あいち自動車ゼロエミッション化加速プラン」を策定。EV、PHV、燃料電池車の新車販売割合を30年度に30%まで引き上げる目標を掲げ、普及に取り組む。事業者に対しては、上限40万円とした補助制度を創設。走行距離の多い事業者に手厚く配分した。個人向けには、12年から自動車税の課税免除制度を導入。新車新規登録を受けた年度の月割り分および翌年度から5年度分の全額が免除される。地域の足として欠かせない存在のガソリン・ディーゼルエンジン車は、給油網の維持自体が課題となっている。少子高齢化を背景とした後継者難に加え、人口減による需要減で採算性が悪化。全国の給油所数はピークに比べ半減した。20年度末時点でスタンドが3カ所以下の給油所過疎地は全国の2割を占める343市町村。スタンドがない町村も10を数える。維持コストの上昇に耐えきれず安定供給に支障をきたせば、地域は衰退の危機に直面する。一方、EVやPHVは設備さえ整えれば自宅でも充電が可能となる。それだけに熱視線を注ぐ地域も多い。福島県三島町では唯一のスタンドが20年5月に閉店。12月に公設民営として再開にこぎ着けたものの不安は尽きない。EVシフトを見据えた対応も検討する。鹿児島県薩摩川内市の甑島では、実証実験として17年度に島内に40台のEVが導入された。終了後、「給油レス」など利便性の高さを認識した宿泊施設などが計7台を買い上げ、現在も利用を続ける。公共交通機関もシフトを進める。甲府市がEVバスを導入したほか、那覇市などでも導入予定。北九州市を拠点とする第一交通産業は23年3月までにバスやタクシー115台を導入する。さらに災害時の「非常電源」としての期待も高まる。一般的な国産EVは電気を外部に供給できる機能があり、台風や地震などによって大規模停電が発生した際に、電力源として活用できる。現在、多くの自治体がトヨタ自動車、日産自動車などとEV派遣協定締結を進め、21年7月末時点で国内自動車メーカーと自治体が結んだ協定は少なくとも420件。2年で10倍に拡大した。

<先進技術 ー(その3)農業>
*4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15171104.html (朝日新聞社説 2022年1月14日) 農林水産輸出 「1兆円」達成の次は
 農林水産物の昨年の輸出額が、政府が目標に掲げる1兆円を初めて超えた。農林水産省によると、昨年1~11月の輸出額は前年同期比26・8%増の1兆779億円。ホタテ貝(前年同期比103・2%増)、日本酒(73・5%増)、イチゴ(73・2%増)などが大きく増えた。日米貿易協定で米国向けの低関税枠が広がった牛肉も87・7%伸びた。コロナ禍の巣ごもり消費に対応するため、ネット販売を強化したことなどが功を奏したという。日本では今後、人口減少が避けられない。政府は輸出拡大を、国内の農林水産業の基盤を維持する有力な選択肢と位置づけて支援を続けてきた。「輸出1兆円」は、最初に政府が目標を掲げた06年当時は13年に達成するはずだった。予定より8年遅れたとはいえ、食料自給率など農水省の掲げる目標の多くが未達であることを考えれば、達成できたことは一定の評価ができよう。政府は輸出を今後も拡大し、25年に2兆円、30年に5兆円をめざす。1兆円を超えても、国内生産額に占める割合はまだ2%にとどまる。米国(12%)、英国(18%)などほかの主要国を下回っており、輸出の拡大余地はまだ大きいというのが農水省の見解だ。ただ、世界の日本食ブームを追い風に拡大してきた輸出の伸びは、19年以降鈍化していた。原因として指摘されるのは、主な販売先だった海外の富裕層で日本産の需要が飽和状態に達しつつあることだ。中間層にも販売を広げることが、次の目標達成には欠かせない。日本の農業生産者は、減反政策で政府が生産量を調整してきたコメを中心に、品質のよい商品を高価格で販売しようとする傾向が強い。輸出をさらに拡大するには、生産者が自ら市場のニーズを見極め、何をどれだけのコストで生産するかを決めることが求められる。重要なのは、輸出で生産者が利益をあげられる構造をつくることだ。コメのように輸出向けの生産を助成金で優遇する政策は、生産コストを高止まりさせる結果を招きかねない。政府の支援は、品種改良や物流の効率化、加工施設の整備など、中長期的な競争力強化につながる政策に絞るべきだ。中国や韓国、台湾など主要輸出先の多くが福島第一原発事故後に導入した日本産の輸入規制を続けている。政府は、環太平洋経済連携協定(TPP)の新規加盟協議などを通じ、規制解除を粘り強く働きかけてほしい。福島第一の処理水を海洋放出するのであれば、安全性を丁寧に説明する必要がある。

*4-2:https://toyokeizai.net/articles/-/464342 (東洋経済 2021/10/30) 日本人は低い食料自給率のヤバさをわかってない、6割以上を海外に頼る状況を放置していいのか
 10月31日に投開票を控える衆院選を前に、選挙戦では、どの政党からも「経済安全保障」というフレーズが飛び交っている。岸田政権は、経済安全保障政策として今年5月に閣議決定された「中間取りまとめ」であげられたエネルギー、情報通信、交通・海上物流、金融、医療の5分野を重点分野として取り上げている。しかし、実は日本には古くから高いリスクとして懸念されている安全保障分野がある。それは「食料自給率」の低さだ。食料自給率とは、自国の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標。日本は先進国でかなり低いレベルにある。食料の自給は、国民の命を直接左右するものであり、ある意味では防衛やエネルギー資源以上に意識しなければならない。ただ、今回の総選挙では大きなテーマにもなっていない。日本の食料自給率は、本当に大丈夫なのか……。農林水産省の資料などをもとに、いま一度考え直してみたい。
●日本の食料自給率、過去最低の37%!
 農林水産省が最近になって発表した、2020年度のカロリーベースの日本の食料自給率は、前年度から0.38ポイント減少して37.17%になった。統計データが存在している1965年度以降、小数点レベルで見れば過去最低の数字だ。新型コロナウイルスによる影響で、畜産品の家庭用需要が拡大し、牛肉や豚肉などの国内生産量が増えたにもかかわらず、昨年度は輸入が増えた影響だとされている。農水省は、現在2030年度までにはカロリーベースの食料自給率を45%に高める目標を掲げている。ところが、日本の食料自給率は年々ズルズルと減少しているのが現実だ。食料自給率の考え方には、熱量で換算する「カロリーベース」と金額で換算する「生産額ベース」の2種類がある。カロリーベースでは1965年には73%あったが、前述したように今や37%まで下がっている。生産額ベースの自給率も1965年には86%あったが、2020年には67.42%にまで減少している。日本人の食料の6割以上を海外からの輸入に頼っているというのが現実だ。いわゆる「食料安全保障」と呼ばれる分野である。長い間、そのリスクが指摘されているものの、効果的な政策は出てきていない。最近になって、新型コロナウイルスによる混乱などに伴って、牛肉や小麦、チーズなどが値上げされた。さらには天候不順などが原因で、10月1日以降輸入小麦の政府売渡価格が前期比19%引上げられ、家庭用レギュラーコーヒーが20%程度、そしてマーガリンも12%程度値上げしている。食料品の価格上昇は、日本に限ったことではないものの、世界的に需要と供給のバランスが崩れてきていることは間違いないだろう。

<組織再編へのいちゃもんはよくないこと>
*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC054YT0V00C22A1000000/ (日経新聞 2022年1月5日) 東芝社長が年頭あいさつ、会社分割は「最善策と確信」
 東芝は5日、綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)による年頭あいさつを公表した。東芝は2021年11月、グループ全体を3つに分割し、中核事業を2つの新会社として分離・独立させる計画を発表している。綱川社長はあいさつで計画について触れ、「私はこの経営変革がグループの企業価値向上に向けた最善策であると確信している」などと改めて強調した。綱川社長はあいさつで「今般の再編により新会社はスピード感をもってそれぞれのビジネス特性に応じた事業を展開することが可能になる」と分割計画の狙いを説明した。その上で、「22年はビジネス特性が大きく異なる2つの事業グループが新しいリーディングカンパニーとして進化するための準備が本格化する年になる」とした。東芝が21年11月に公表した計画では、グループ全体を、発電機器やインフラの「インフラサービス」、半導体などの「デバイス」、保有株式管理などの会社の計3つに分割する。2つの事業会社は新規上場させる計画で、23年10月~24年3月の実現を目指すとしている。まずは22年3月までに株主の意向を確認する臨時株主総会を開くという。綱川社長はこの他、「(温暖化ガス排出量を実質ゼロにする)カーボンニュートラル社会の実現、レジリエント(強靱、きょうじん)なインフラの実現、社会・情報インフラの進化に向けたグループの使命を果たす」などとした。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC072SM0X00C22A1000000/ (日経新聞 2022年1月7日) 東芝、臨時株主総会の基準日は31日 3分割計画など審議 
 東芝は7日、臨時株主総会に向け、議決権を行使できる株主を確定する基準日を31日に設定したと発表した。グループ全体を3つに分割する計画について株主の意向を確認するための総会で、3月中の開催を予定している。日時や議案の詳細はまだ明らかにしておらず、「招集を決定次第開示する」としている。東芝は2021年11月に分割計画を公表し、22年1~3月の間に臨時総会を開催して株主の意向を確認するとしていた。会社側として準備を進めていたところ、6日には株主から臨時株主総会の招集請求が出された。大株主でシンガポール拠点の資産運用会社、3Dインベストメント・パートナーズは臨時総会を招集請求した上で、分割計画の実施を定款に追加するよう求める議案など2つを株主提案するとしている。東芝は3Dからの招集請求については「対応は慎重に検討中」としており、今後、会社側の議案も含め、臨時総会で諮る議案の詳細などを決めるとみられる。

*5-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC07CB90X00C22A1000000/ (日経新聞 2022年1月10日) ジョブ型雇用とは 職務を明確化、専門性を高める
▼ジョブ型雇用 働き手の職務内容をあらかじめ明確に規定して雇用する形態のこと。事業展開に合わせて外部労働市場から機動的に人材を採用する欧米企業に広く普及している。会社の業務に最適な人材を配置する「仕事主体」の仕組みといえる。特定の業務がなくなれば、担当していた人材は解雇されることも多い。日本で一般的な「メンバーシップ型雇用」は、社員にふさわしい仕事を割り当てる「人主体」の仕組みだ。新卒一括採用と終身雇用が標準で、社員を転勤も伴うジョブローテーションを通じて時間をかけて育成する。事業環境の変化が激しくなれば、企業のニーズと人材のミスマッチも生じやすくなる。ジョブ型では賃金は仕事の中身で決まる。人工知能(AI)の専門家など需要が高い職種では、年齢に関係なく賃金は高くなる。一方、人主体のメンバーシップ型では働き手の社内経歴や勤続年数が水準を左右する。技術革新が加速しグローバルな人材獲得競争が激しくなるなか、ジョブ型のメリットが増している。

*5-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK1452M0U1A710C2000000/ (日経新聞 2021年7月19日) ジョブ型「御三家」の知恵 企業が磨く変化対応力 
 年功制や順送り人事を排すジョブ型雇用を導入する企業が広がっている。この制度の眼目は激しさを増す環境変化への適応力をつける点にある。日本でいち早くこの制度の導入に動き、ジョブ型「御三家」といえるKDDI、富士通、日立製作所。3社の取り組みからは、変化への対応力を高める工夫が随所にみえる。ジョブ型の人事制度は社内の各ポストの職務を明確にし、こなす能力を備えた人材を社内外から起用する。高い専門性が求められ、それに見合った報酬をもらえる職務に就くには自らの能力を向上させなければならない。ポストの獲得競争を活発にすることで、個々の社員のレベルを引き上げる効果が期待できる。KDDIなど3社は、こうしたジョブ型の本質的な利点に着目し、自社の制度を設計してきた代表的な企業だ。組織・人事コンサルティング大手マーサージャパンは5月末~7月中旬、白井正人取締役と3社の人事担当役員・幹部との公開対談をそれぞれ開いた。そこでの3社からの発言をもとに、ジョブ型制度の設計や運用をめぐる知恵を掘り下げてみたい。
●職務記述書(JD)は柔軟に
 まず注目したいのは、職務内容や求められる能力を明記する「ジョブディスクリプション(職務記述書、JD)」のつくり方だ。個々人が担当する仕事の中身を明確にしようとするあまり、JDを精緻につくる必要があると考える企業は少なくない。だが、KDDIの白岩徹・執行役員人事本部長によれば、「JDは細かくつくり過ぎると機能しない」。経営環境が刻々と変わるなかで、やるべきことが新たに生じているにもかかわらず、JDの記載内容に縛られて手を打たずにいるリスクがあるからだ。KDDIはジョブ型の人事制度を2021年度から管理職に導入した。JDに相当する仕組みとして、「コンシューマ営業」「法人営業」「研究開発」「データサイエンティスト」など30の領域を設定し、職務内容や要求されるスキル(技能)を記している。この区分はマーサージャパンの白井氏によると、「極めて大ぐくり」だ。白岩氏は「1on1(ワン・オン・ワン)」と呼ばれる上司と部下との個別面談を、少なくとも2週間に1回開くよう求めている。対話のなかで、「設定した目標を柔軟に入れ替えてほしい」。環境変化に後れを取らないためだ。20年度に管理職へジョブ型制度を導入した富士通も、「JDを精緻につくることに労力はかけたくない」と平松浩樹・執行役員常務は話す。外部のJDの事例を参考に、これに追加や修正をする形で管理職約1万5千人分のJDを迅速につくった。「社員本人と上司は、JDに書いてある以上のことを共有している」(平松氏)。社員と上司がどれだけコミュニケーションを深められるかが一段と問われる。欧米企業では、JDに「同僚と協力しながら」といった文言を入れているケースも多い。記載された以外の業務をこなす場合もしばしばある。JDの弾力的な作成・運用はひとつのポイントだ。
●「戦略に従う」組織に
 事業環境の変化に俊敏に対応するため、権限委譲が進む点も目を引く。富士通は社内の各本部に、どんな人材をどれだけの数、確保するかという要員計画づくりをゆだねた。この権限はこれまで人事部門が握っていたが、現場に委譲して機動力を上げる狙いだ。各本部には人材採用の権限も移し、それぞれの戦略をもとに、新卒・中途とも通年で採用する仕組みにした。ジョブ型雇用が浸透した欧米では、組織のリーダーの最も重要な仕事は経営トップの方針に沿って目標を立て、その達成に貢献できる人材を社内外から集めることだ。「組織は戦略に従う」とは米国の経営史家アルフレッド・チャンドラーの言葉。富士通の取り組みは「戦略に従う」組織への改革といえる。そのためには人事部門も変わらなければならない。人材を一括して採用し、各部署に割り振るという日本特有の人事の仕事は、ジョブ型制度の導入に伴い、なくなる方向にある。「人事は事業部門のビジネスパートナー。各本部のリーダーとともに(人材の獲得などでの)課題と向き合い、解決策を提案する」と平松氏。「この本部のビジネスは私が一番わかっている」と言える人事マンを増やしていくという。21年秋までにすべてのポジションについてJDをつくり、ジョブ型マネジメントを本格導入する日立製作所。同社も「ジョブ型ではラインの管理者が主役になり、これに伴い人財部門の役割改革に取り組んでいる」(山本夏樹・人財統括本部人事勤労本部長)という。これからの人事部門の主な役割は、各職場の課題を把握し、人と組織に関する課題の解決策を管理者に提供したり、事業方針の浸透を手助けしたりすることだ。問い合わせに幅広く対応するためデータやノウハウの蓄積も進めている。
●意識改革へ対話を重視
 ジョブ型制度の導入は従来の人事や組織運営の考え方の抜本的な見直しになるだけに、社内の意識改革がカギを握る。日立は人事担当役員・幹部らがジョブ型制度の必要性や運用をめぐって、事業部長や労働組合などとのコミュニケーションを深めている。たとえば山本氏は事業部長クラスとこれまでに計24回、対話の機会を持ち、ジョブ型の人材マネジメントへの理解を促した。「求められるスキルと現在のスキルのギャップが大きい人材はどう活用していけばいいのか」「ジョブ型制度を広げるなかで、日立の強みをどのように発揮していくのか」――。答えがすぐに出るとは限らないが、議論を積み重ねることがジョブ型マネジメントの土台をつくる早道と考えている。管理職以外にもジョブ型を浸透・定着させるうえで、労働組合との問題意識の共有は欠かせない。日立は労組と、ジョブ型制度をめぐって通年で随時、話し合う場を設けている。「長い職業人生のなかではキャリア構築にポジティブ(積極的)なときもあれば、そうでないときもある。従業員が悩んだときに、どう支援すべきか、引き続き議論を深めたい」(労組)。21年の春季労使交渉で日立は、労組の本部や事業所ごとにある支部との間で、ジョブ型制度に関する議論を28回重ねた。
●社員の再教育を推進
 社員のやる気を引き出す取り組みも重要になる。人材の活性化を抜きに、企業が変化への対応力を高めることは難しいからだ。社内公募制を設けるだけでなく、努力すれば希望するポストへの異動がかないやすい環境を整える必要がある。KDDIは事業モデル変革の担い手を育てる「DX(デジタルトランスフォーメーション)人財育成プログラム」の内容を進化させている。基礎的な研修では受講者は事前テストを受け、理解度に合わせてeラーニングやワークショップ形式で無理なくスキル(技能)を習得してもらう。終了後は「コアスキル研修」「専門スキル研修」と、段階的にレベルを上げていく。人材養成拠点として181の宿泊室を備えた研修施設も20年春、東京都多摩市に開設した。3社と対談したマーサージャパンの白井氏は、「従来の日本型雇用と比べたジョブ型雇用の長所は、社員に対してリスキリング(再教育)へのインセンティブ(動機づけ)をはたらかせることができる点にある」と解説する。「デジタル分野など環境変化のスピードが速い分野の企業は、能力の高い外部人材を採用して事業の担い手の入れ替えを進めたり、いまいる社員のスキルの底上げをしたりする必要がある」(白井氏)。技術革新が活発な分野やグローバルに事業展開する企業は、時間をかけて技能に習熟することが求められる企業よりも、ジョブ型雇用を導入する必要性が高いという。
●ジョブ型導入は効果的手段
 「ジョブ型雇用の導入は単に人事制度を変えることではなく、個を重視した人材マネジメントや企業運営への転換といえる。企業にいま必要なのはジョブ型のエッセンスを取り入れた総合的な人事・組織の改革だ」。人的資源管理に詳しい守島基博・学習院大教授はそう指摘する。ジョブ型制度には課題もある。「(専門能力がまだ十分に身についていない)入社後3~5年の若手の場合、ジョブ型は本当に機能するのか。これは悩ましい問題」(日立の山本氏)。製造現場の社員は多能工化が進み、技能の多さに応じて給与が決まる面があるため、ジョブ型導入が賃下げにつながりかねないという。社内公募が浸透したとき、どのポストにも受け入れてもらえない社員は配置をどうするのかという問題もある。欧米などと異なり日本では解雇が厳しく制限され、「戦力外」の人材でも雇用を保障せざるを得ない。戦力外であることを明確に伝え、身の振り方を真剣に考えるよう促すのか。リスキリングによって「戦力内」に戻ってもらう道を探るのか。いずれにしても、企業にとって労力がかかる。だが、それでもジョブ型の導入はメリットの方が上回る。年功制や順送り人事といった日本的な慣行を断ち切って企業の競争力を立て直すうえで、効果的な手段であることに変わりはない。日本型雇用を続けていては株式市場から成長力を疑問視され、海外からの投資も呼び込めない。ジョブ型マネジメントの定着に向け、先行する企業の例も参考に、各企業の創意工夫が求められる。

*5-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220202&ng=DGKKZO79743030R00C22A2TCN000 (日経新聞 2022.2.2) 女性エンジニア、イノベーション創出には不可欠
 企業などの研究開発現場に女性リーダーが少ないことの弊害は多い。例えば、男性を前提に設計された自動車のシートベルトでは女性を十分に守れず、交通事故で女性が重傷を負う比率が高かった。性差を分析したうえで技術を革新させる「ジェンダード・イノベーション」には、優れた女性エンジニアの活躍が不可欠という問題意識が各大学の工学教育の現場を突き動かす。お茶の水女子大は22年度にジェンダード・イノベーション研究所を発足させる。「研究所と共創工学部が両輪となり、日本のジェンダード・イノベーションのハブになる」(森田育男理事・副学長)体制を築く狙いだ。いでよ、工学女子。明治期の女子高等師範学校が源流で、100年以上の歴史を持つ2つの女子大に今から工学部が誕生する現象は、人材の多様性の欠如が日本発のイノベーションを妨げている危機感を映し出している。

<“慎重”なのではなく、反対で妨害したトヨタ>
PS(2022年2月7日追加):*6-1-1に、①世間はトヨタのFCVを含んだ目標を評価しなかった ②世間とトヨタのズレはHVを主軸に置く戦略から生じている ③豊田は過去にEVを造っていたので「EVはいつでもできる」と考え、充電インフラが盤石でないことから、HVを含む全方位で電動化に臨む姿勢を崩さずEVは選択肢の一つにすぎないと認識し ④石炭を燃やした電気で走っても脱炭素にならない」と日本政府が進めるEVシフトを痛烈に批判していた ⑤この間、世界が急転回してEUはHVを含む内燃機関車を2035年に実質的販売禁止とする方針を表明し ⑥その後、ミュンヘン国際自動車ショーはEV一色になり、トヨタが世界から取り残された ⑦ソニーグループが参入検討を表明した 等が記載されている。
 ①は明らかな間違いで、水素燃料電池を使った航空機や電車は既にできており、現在は船舶への応用が待たれている状況だ。しかし、そもそも最初に水素燃料電池を使ったのは、2009年に発売された三菱のi-Mievである。また、②は正しいが、プリウスはよい車だったものの、トヨタは「HVは、EV・FCVとガソリン車との繋ぎ」と理解して、速やかに燃料を電力に変えることを考えるべきだったのだ。
 そのような環境下であるため、トヨタは、④のような言い訳を考えてEVを否定している間に、安価で便利なEVや充電設備を造って普及させれば、世界標準をとることができた筈だ。また、③のように、EVはガソリンエンジンよりも格下と位置づけ、資金を分散している間に、⑤⑥のように、環境を重視する他国に静かに置いて行かれたわけである。
 一方、*6-1-2のように、日産・ルノー・三菱自動車の3社連合が、2030年に向け新たな計画を発表したそうだが、そもそも日産の電動車を始めて市場投入して世界を牽引したのはカルロス・ゴーン社長(当時)だった。そのため、ゴーン氏の経営判断は正しかったし、功績もとびぬけて大きいが、そのゴーン氏の高額報酬を日本メディアは著しく批判した。さらに、役員報酬の未払い分を隠しで金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)・会社法違反(特別背任)で起訴し、日産を後退させたのは、経産省や警察と組んだ日産の西川広人社長だった。これらが、トップを走って先進技術を応用した人への日本社会の恥ずべき妨害方法なのである。
 なお、*6-2のように、⑦新興企業MIRAI-LABOが太陽光パネルを装備した道路舗装を開発し、2022年の実用化を目指し ⑧電気は地中の電線を通じて蓄電池に溜め ⑨中日本高速道路は道路に埋め込んだセンサーを使って自動運転で必要なデータを発信するシステムを開発し ⑩総延長約128万キロメートルに及ぶ道路の価値の掘り起こしが本格化する そうだ。
 高速道路と国道の半分を発電型舗装に切り替えれば、日本の消費電力の16.5%を賄えるそうで、電力料金は道路の所有者に入るため、道路の所有者は収入を増やすことができる。又は、道路の所有者が専門の発電業者に道路使用権を貸すことによって収入を得る方法もある。また、地面に電極を敷設して受電装置を備えたEVが上を走ると電気が送られる装置なども魅力的だ。


 2019.7.20日経新聞         2019.11.13日経新聞   2022.1.22日経新聞

(図の説明:1番左の図のように、道路を使って太陽光発電する機器もできているため、これを改良しつつ道路を選んで設置すれば、広い面積で太陽光発電可能で、国や地方自治体の財源にもなり得る。また、左から2番目や右から2番目の図のように、道路で無線やタイヤを通して充電するシステムも開発中だ。さらに、1番右の図のように、給油所の減少に伴い、より手軽に充電できる施設が、自動車が必需品の地方で普及し始めている。このように、需要は、より快適で、安価で、手軽に使え、環境にも良い製品にシフトするものだ)


 2020.9.22BBC   ドイツ    2020.9.17中央日報    燃料電池都バス
 燃料電池航空機   燃料電池電車  韓国燃料電池トラック  

(図の説明:1番左は、エアバスの燃料電池航空機、左から2番目は、ドイツの燃料電池列車だ。また、右から2番目は、現代自動車の燃料電池トラックで、1番右が、トヨタの都バスだ。いずれも、早く普及すればよいと思う)

*6-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220207&ng=DGKKZO79911800W2A200C2PE8000 (日経新聞 2022.2.7) EV急加速1 「慎重すぎた」トヨタ
 「私たちの思いがまったく通じない世界があることも思い知らされました」。1月7日の年初のあいさつで、愛知県豊田市の本社に集う従業員約500人を前に、トヨタ自動車社長の豊田章男はこう語り始めた。豊田が「通じない世界」を痛感したきっかけは2021年5月12日。30年に電気自動車(EV)200万台を販売する方針を発表したが、燃料電池車(FCV)を含んだ目標を、世間は評価しなかった。「トヨタ社長はEV反対派だとイメージ操作されている」。それ以降、豊田は不満を口にするようになった。
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 トヨタと世間とのズレは、ハイブリッド車(HV)を主軸に置く戦略から生じている。1997年に「プリウス」が道を開いたHVの世界販売は1500万台を突破。新型「ヤリス」の燃費性能は現状、世界一に立つ。豊田は過去にEVを造っていたことに触れつつ「HVはEVにもつながる。核となる技術は同じ」と説明してきた。EVの充電インフラが盤石ではないことから、HVを含む全方位で電動化に臨む姿勢を崩さないでいた。「EVはいつでもできる」選択肢のひとつにすぎないとの認識だった。だがこの間、世界が急転回する。欧州連合(EU)は21年7月、HVを含む内燃機関車を35年に実質的な販売禁止とする方針を表明。その後開かれたミュンヘン国際自動車ショーはEV一色に。30年の「EV専業」を宣言した独メルセデス・ベンツ社長のオラ・ケレニウスは「(EVシフトは)もはや意思決定ではない。実行と加速の時だ」と述べた。「脱炭素をどう達成するかが重要なのに『EVをやる』と言ったもの勝ちになっている」と冷ややかにみていたトヨタだったが、気付けば世界から取り残されていた。EUによるHV排除が決まった直後の7月24日、東京・南麻布の在日フランス大使館で豊田は仏大統領のマクロンと向き合っていた。「HVをもう少し使えるよう働きかけてもらえないか」。関係者によると選択肢を残す必要性を訴えたようだが、うなずき返したマクロンは帰国後、規制緩和には動かなかった。思うように状況を打開できないせいか、豊田は政権にも迫った。「けんか別れしたと思われないように取材には応じましょうか」。12月2日、首相の岸田文雄と面会した豊田はこう岸田に話し、「有意義な意見交換ができた」と報道陣に笑顔を見せた。その姿は以前とは大きく異なった。「石炭を燃やした電気で走っても脱炭素にならない」。豊田は政府が進めるEVシフトを痛烈に批判しており、2月に首相(当時)の菅義偉のもとを訪れた際には、取材に応じず無言で官邸を後にした。
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 世界で広がるEVシフトの波に突き動かされるように、豊田が説明会の仕切り直しを決めたのは10月下旬のことだった。12月14日、東京・お台場で開いた説明会で豊田は「30年にEV350万台販売」の新方針を示した。「これでも前向きじゃないと言われるならどうすれば前向きな会社と評価いただけるのか」。準備期間は2カ月弱。披露したEV16台のうち11台は粘土製(クレイモデル)だった。新方針の実現のため、EVに4兆円を投じると説明。ライバルの独フォルクスワーゲン(VW)、ヘルベルト・ディース社長はツイッターで「トヨタもEV。競争は歓迎だ」とつぶやいた。30年までに4兆円の投資は電動化戦略を転換したかのように映る。だが、株式市場によるトヨタの20年度から5年間の営業キャッシュフロー予測は16.7兆円。現金化しやすい流動資産で平均24兆円に上る。資金余力からみると決して高い金額ではない。EV350万台も新車販売全体の3~4割にとどまる。「社内では350万台は目標というよりあくまで基準。私たちは今まで慎重すぎた。ただEVだけにかじを切ったとは思われたくない」。トヨタ幹部は率直な思いをこう語った。12月の説明会後、トヨタの株価はじりじりと値を上げ、22年1月18日には時価総額が初めて大台の40兆円を突破した。
(敬称略)
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ソニーグループが参入検討を表明するなど、業界を超え過熱するEVシフトの最前線を追った。

*6-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220204&ng=DGKKZO79849450U2A200C2EA1000 (日経新聞社説 2022.2.4) 日産連合は着実な再出発を
 日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の日仏3社連合が2030年に向けた新たな計画を発表した。電気自動車(EV)を中心に電池やソフトウエア分野など次世代技術に関して、3社が一体となって取り組むという。着実な実行を期待したい。日産ルノーは会長だったカルロス・ゴーン被告が18年に逮捕されて以来、ガバナンスの問題が指摘されてきた。ルノー会長で3社アライアンスを仕切るジャンドミニク・スナール氏も1月末の記者会見で「3年前には最悪の危機にあり信頼が欠けていた」と認めた。そのうえでの再出発である。良くも悪くもゴーン被告の絶対的な権限のもとに運営されてきた日仏連合を、どう導くのか。スナール氏や日産の内田誠社長ら経営陣は提携の実効性を示して信頼の回復に努めることが不可欠だ。さらに3社の強みを持ち寄ることで、次世代技術で世界をリードできる国際連合にしてほしい。3社が発表した計画では、26年までに車の骨格にあたるプラットホーム(車台)を8割共通化させ、30年までには投入する35車種のEVの車台を9割まで共有するという。アライアンスを深化させる意志は伝わってくる。ゴーン被告が去った際には結束が問われた3社だが、自動車メーカーとして後戻りのできない工程表を示したと言えるだろう。EVの時代に中核技術となる電池やソフトの共有化も含めた具体的な計画には、一定の説得力がある。業界全体を見渡せば、これまでの車づくりの常識が通用しない100年に1度の大変革が起きつつある。ライバルは従来の自動車メーカーだけではあるまい。ソニーグループがEVの新会社設立を表明し、米アップルの参入も取り沙汰される。これらが実現すれば水平分業的な生産体制が広がる可能性がある。ソフトウエアが果たす役割も高まるだろう。3社には外部の知識も積極的に採り入れ、大変革期を主導する戦略も問われる。

*6-2:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52098720S9A111C1TJ1000/ (日経新聞 2019年11月13日) 道路舗装で太陽光発電、ミライラボ、EV給電も 中日本高速など、CASE対応
 「眠れる資産」とされた道路に、最新テクノロジーを実装する動きが広がっている。新興企業のMIRAI-LABO(ミライラボ、東京都八王子市)は太陽光パネルを装備した道路舗装を開発した。中日本高速道路は道路に埋め込んだセンサーを使い、自動運転で必要なデータを発信するシステムを開発している。車の電動化など「CASE」の普及をにらみ、総延長約128万キロメートルに及ぶ道路の価値の掘り起こしが本格化する。2006年設立のミライラボは非常用電源など省エネ機器を手がけ、全国の警察や自治体に販売する新興企業。今回、太陽光で発電する道路舗装「ソーラーモビウェイ」を開発した。太陽光パネルを特殊な樹脂で覆い道路の舗装材の代わりに使う。現在、道路舗装大手NIPPOと性能試験を進めており、2022年の実用化を目指す。通常の太陽光パネルは衝撃に弱く割れやすい。今回、ミライラボは柔軟性のある素材を使い衝撃に強いパネルを採用した。舗装面にパネルが露出していると車がスリップしたり路面が摩耗したりする。これを防ぐためセラミック片を混ぜた透明な樹脂でパネルを覆う。ビル屋上などの太陽光パネルは光の角度が浅いと発電効率が落ちる。開発した舗装材はセラミックが太陽光の角度を変え、1日を通した発電量を高める効果が期待できるという。電気は地中の電線を通じ蓄電池にためる。電気自動車(EV)などで使ったバッテリーの再利用も想定する。国内には総延長約128万キロメートルの道路が走っているが、車や人の移動用途が中心の「眠れる資産」だ。ミライラボの平塚利男社長は「高速道路と国道の半分を発電型の舗装にすれば日本の消費電力の16.5%を賄える」と試算する。ミライラボがにらむのは、車の電動化や自動運転など「CASE」の本格到来だ。発電した電力は街灯や道路表示板に加え、将来は走行中のEVへの無線給電や、自動運転に必要な道路状況に関するデータ通信の電力源としての活用を想定している。停電で自動運転車に情報が送れなくなると事故につながる恐れもあり、電源を道路で賄えるメリットは大きい。道路を発電基地にする利点はほかにもある。平地の少ない日本では森林を伐採してパネルを設置するケースが多く、道路を活用すれば環境破壊を防げる。災害で停電が起きてもパネルで発電すれば信号や街灯を維持できる。再生エネルギーの送電網不足が問題となるなか、道路での発電は「地産地消」につながる。国内の道路は老朽化が進み、今後大規模な改修時期を迎える。国土交通省の試算では今後30年間、高速道路や一般道で年2兆円超の工事が必要になる。老朽化対策の時期がCASEの大波と重なることから、道路に最新テックを埋め込む技術開発が広がる。中日本高速道路(NEXCO中日本)は高速道路にセンサーやカメラを整備する。すでに東名高速など主要道に地磁気センサーを埋め込み、渋滞情報などのデータを集めている。今後、高精度カメラを短い間隔で設置し、道路の運行状況を絶え間なく監視できるようにする。同社は管轄する道路の約6割が建設から30年たち、「来年度から首都圏の主要道路が改修時期を迎える」(担当者)。次世代通信規格「5G」が実用化すれば大容量の映像データをスムーズに送受信でき、自動運転車へのデータ送信など道路の付加価値を高める。大成建設は豊橋技術科学大学と共同でEVのワイヤレス給電システムを開発している。地面に電極を敷設し、受電装置を備えたEVが上を走ると電気が送られる。ブリヂストンも東京大学などと共同でタイヤを通じて道路から充電する技術開発を進めている。道路から給電できれば搭載するバッテリー量を減らし車体の軽量化にもつながる。普及に向けた課題はコストだ。ミライラボとNIPPOが試験を進める発電型の舗装材は「まだ価格を設定する段階ではない」(NIPPO)というが、大幅なコスト増は避けられない。生産規模の拡大によるコスト低減や、道路の付加価値向上による新しい収益モデルの構築が必要になる。海外でも政府や企業がCASE対応を急いでおり、今後は国際競争も激しくなる。例えば道路での太陽光発電は米国やフランスなどで開発が進むが、現時点で明確な成功例は出ていないという。

<インフラの更新と財政健全化の両立>
PS(2022年2月8日追加):*7-1-1は、①全国で道路や橋などのインフラの老朽化が止まらず ②2012年の中央自動車道トンネル崩落事故から9年経過しても、予算や人手不足で対応が後手に回っており ③トンネルの約4割は早急に手当てしないと危険な状態だ と記載している。
 しかし、ここで重要なのは、①②③が起こった理由であり、それは、国や地方自治体が所有する固定資産(インフラを含む)の数量・価格を正確に把握して、維持管理や更新を続けてこなかったからである。これは、複式簿記で貸借対照表を作り、固定資産を正確に把握して維持修繕や更新を続けている民間企業では起こらないことで、国や地方自治体は単式簿記で貸借対照表項目の管理を全くしていないと言っても過言でないくらいだから起こるのである。
 また、*7-1-1は、④人口減も見据えて優先順位をつけ ⑤ばらまきを排した投資を急ぐ必要があり ⑥センサーやドローンなど新技術を活用した保守点検の効率化もカギになる とも記載しているが、⑤⑥はよいものの、④の人口減している地方をますます過疎化させて人口集中を促したり、複式簿記による公会計制度を導入して不断に維持管理を行う根本的な改革はせずに同じ失敗を繰り返したりするのは、あまりにも“賢く”ない。
 さらに、⑦施設が劣化するスピードに修繕が追いつかず、インフラメンテナンスが崩壊する可能性がある ⑧予防保全を徹底すれば費用を3割ほどは削れるものの、近年の公共投資は国際的には見劣りする とも書かれているが、⑦⑧を徹底し、合理的な意思決定ができるためには、正確な固定資産の数量・金額の把握が不可欠なのである。
 その上、国(財務省・国土交通省)は、④のように、人口減を理由として地方を切り捨てることしか思いついていないが、*7-1-2のように、太陽光発電舗装をして路面で太陽光発電を行い税外収入を得るなど、所有する資産を利用して収入を得る方法もある。そのため、国民の自由を制限したり、予算を使ったりすることしか考えつかないのは、全く“賢い”とは言えない。
 このような中、*7-2のように、⑨政治指導者には時に「聞き入れない力」が必要だ として、⑩自民党総裁選に立候補した4人のうち年金改革に関連づけて消費税増税をにおわせたのは河野太郎氏1人だった ⑪河野氏が増税を考えているのがわかった途端、党内の仲間が離れた ⑫自民党の衆参議員の多数派が消費税嫌いという事実ははっきりしたが、「消費税増税が年金の充実をもたらす」と結論付けている。
 しかし、平成の間に行われた消費税増税によってもたらされたものは、下の図のように、家計消費支出の縮小、それに伴う民間投資の縮小、需給ギャップを補充するための景気対策と称する生産性の低い政府支出の増加と中央政府の債務増加であり、この間、経済成長率は低下の一途を辿った。政府支出が民間投資より生産性が低い理由は、「正確なデータに基づいて、最低のコストで最大の効果を挙げる」という発想がなく、「○○兆円規模の支出」というように、支出することのみを目的とするからだ。そして、経済成長率を推し上げる技術革新については、それを支える教育・研究を疎かにし、産業を育成する洗練された消費を抑え、現状維持に汲々として先端を抑えたのだから、この結果はやってみる前からわかっていた。
 年金・医療・介護の充実については、目的外の無駄遣いをせず、それでも足りなければ赤字国債を発行して、団塊の世代にも対応できる適正な積立金を積むことにより、国民負担を増やしたり給付を削減したりすることなく、保険契約を遂行することによって行うべきだったのである。


2022.2.7日経新聞  2019.3.30産経新聞 2019.4.13産経新聞     内閣府

(図の説明:1番左の図のように、平成の間に行われた消費税増税で、左から2番目の図のように、実質家計消費が落ち込み、右から2番目の図のように、その補充や景気対策と称して中央政府の支出が増え、債務は減らなかった。そして、1番右の図のように、実質経済成長率は、0近傍からマイナスまで下がり続けており、その理由は経済学で説明できるため、本文に記載する)

*7-1-1: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220206&ng=DGKKZO79905550W2A200C2MM8000 (日経新聞 2022.2.6) インフラ、とまらぬ高齢化、トンネル4割寿命 修繕費膨張、年12兆円も
 全国で道路や橋などのインフラの老朽化がとまらない。9人が亡くなった2012年の中央自動車道のトンネル崩落事故から9年。総点検して修繕・更新を進めるはずが、予算や人手の不足で対応は後手に回る。トンネルの約4割は早急に手当てしないと危険な状態のままだ。人口減も見据えて優先順位をつけ、ばらまきを排した投資を急ぐ必要がある。センサーやドローンなど新技術を活用した保守点検の効率化もカギになる。1月中旬、羽田空港と都心を結ぶ首都高速道路の1号羽田線。作業員が寒風に吹かれながら橋桁にボルトを打ち込んでいた。1964年の東京五輪にあわせて整備されてから半世紀以上たち、海水による腐食も進む。首都高会社は1627億円を投じ、品川区内の約1.9キロの区間を2028年度までにつくり直す。首都高は開通から50年以上の路線の割合が40年に65%と20年の約3倍に増える。1日100万台の交通量を支える東京の屋台骨がきしむ。21年末に設置した対策会議で前田信弘社長は「道路機能を維持するには適切な管理と大規模更新・修繕を繰り返す必要がある」と強調した。インフラは建設後50年が寿命とされる。国土交通省によると、全国の道路橋は33年に全体の63%、水門など河川管理施設は62%、トンネルは42%がその目安に達する。実際に損傷も目立つ。16~20年度の目視点検では早期に修繕などが必要との判定がトンネル全体の36%に上った。橋梁は9%、標識や照明など道路付属物は14%だった。東洋大の根本祐二教授は「施設が劣化するスピードに修繕が追いついていない。インフラメンテナンスが崩壊する可能性がある」と警鐘を鳴らす。とりわけ心配なのが自治体だ。総点検で対応が必要とされた橋梁のうち国の管理分は20年度末までに6割が修繕に着手した。市区町村分は3割どまり。中国地方の自治体の担当者は「次々に補修が必要な施設が出てくるのに予算も人手も足りない」と嘆く。国交省によると20年度の橋梁点検でドローンなどを使った自治体は20%のみ。劣化を自動検知する無線センサーなど作業を効率化できる新技術の普及は今後の課題だ。後手に回ればツケは膨らむ。不具合が生じてから手当てする従来型の対応だと国・地方の費用は30年後に年約12.3兆円と18年度(約5.2兆円)の倍以上になる。30年間の総額は約280兆円と国内総生産(GDP)の半分に匹敵する。損傷が深刻になる前に修繕する「予防保全」を徹底すれば費用を3割ほどは削れる見込みだ。岸田文雄首相は1月20日の衆院本会議で「予防保全型の投資が中長期的に費用負担を抑制する効果も踏まえ、効率的な防災・減災のあり方を検討する」と述べた。政府が20年末にまとめた対策は5年間で約15兆円を投じる。より長期の視点で財源をどう確保し、やりくりするかも問われる。近年の公共投資は国際的には見劣りする。19年の投資額を1996年比でみると約4割減と主要7カ国(G7)で唯一落ち込んでいる。この間に英国は4倍、米国は2.3倍に伸びた。超高齢化で社会保障費が膨らむ日本は公共事業費をいたずらに積み増す余裕はない。まず予算の配分や執行の無駄をなくす必要がある。財務省によると公共事業の契約率は14~18年度に87%、予算の支出率は70%。20年度の繰越額は4.7兆円に上る。財源を適切に使い切れていない。東洋大の根本教授は「すべてのインフラを同じように更新するのは限界がある」と指摘する。地域の実情に応じてコンパクトシティーの取り組みで必要なインフラを絞り込むなど「賢く縮む」戦略も試される。

*7-1-2:https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/00088/?ST=msb&P=4 (日経BP 2019/7/20) 「路面で太陽光発電」、NIPPOが2022年までに実用化
●道路法上の壁も
 世界的に見ると、こうした「太陽光発電舗装」の研究開発では、欧州が先行している。フランスでは一般公道の車道、オランダでは、自転車道に試験的に施工したケースがある(図6)(図7)。国内でも、こうした海外製品をコンビニ店舗に採用した例がある (関連記事:太陽光で発電する道路「ワットウェイ」がフランスで稼働)(関連記事:オランダの「太陽光発電する道路」、発電は好調、累計3000kWh以上に)(関連記事:セブン-イレブン、再エネで半分の電気を賄う実験店、路面と屋根に太陽光)。NIPPOでは、今後、「スマートシティ」など脱炭素を目指した街づくりが活発化していくなかで、道路に「再生可能エネルギーによる電源機能」を持たせるニーズは高まるとみている。その際、蓄電池を組み合わせることで、道路に分散配置された「独立電源」として機能したり、区画線や横断歩道などの白線部分をLEDで路面発光させる際の電源、将来的には自動運転に向けた電気機器などの電源としても期待できると見ている。ただ、現状では、道路法上、発電設備を公道の路面に敷設できないため、当面は、商業施設の駐車場や、工場の敷地内など民間所有地での利用を想定している。同社は、電気自動車や自動運転の普及も睨んで、舗装と電気設備を統合した次世代の舗装システムを「e-Smart ROAD」とのブランド名で展開しており、「太陽光発電舗装」もその1つと位置づけている。

*7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220207&ng=DGKKZO79866250U2A200C2TCT000 (日経新聞 2022.2.7) 消費税、参院選で信を問え
 政治指導者には時に「聞き入れない力」が必要だ。違反者に罰金を科す厳しいロックダウン(都市封鎖)のさなか、ロンドン・ダウニング街(英首相官邸)の中庭や執務室で開いた飲み会に、自らも加わっていたジョンソン首相の支持率が急落した。自分がつくったルールを率先して破ったのだから当然である。長らく我慢を強いられていた英国民の堪忍袋の緒は切れ、ついにロンドン警視庁が捜査を始めた。野党労働党が首相の座を即座に降りるよう求めたのは当然として、身内の保守党からもジョンソン辞めろの声が聞こえる。ここは国民受けする迎合策を繰り出し失地回復したいところだ。ところが、である。日曜紙「サンデー・タイムズ」1月30日付への寄稿で、ジョンソン氏は4月からの増税は予定どおりと表明した。自らが辞めた場合、後継候補の最右翼に擬せられているスナク財務相との連名でいわく「カネのなる木はない」。コロナ禍で滞った同国の医療体制を修復するために、増税不可欠の立場を鮮明にした。針のむしろに座らされているなかでの増税宣言である。周りが何と言おうと聞き入れない力を備えているようだ。日本はどうか。昨年9月の自民党総裁選に名乗りを上げた4人のうち、年金改革に関連づけて消費税増税をにおわせたのは河野太郎氏1人だった。政策ブレーンによると、河野氏が増税を考えているのがわかった途端、党内の仲間がサーッと離れていった。序盤優勢だった同氏が中盤で失速したのと符合する。敗因は消費税だけではなかろうが、自民党の衆参議員の多数派が消費税嫌いという事実ははっきりした。ほかの3候補が増税を否定したこともそれを裏づける。納税者は同じ考えだろうか。河野氏は長期にわたって年々小刻みに年金の実質価値を下げてゆくマクロ経済スライドによって、基礎年金の最低保障機能が果たせなくなると訴え、補強のために消費税財源を充てる改革を主張した。増税が年金の充実をもたらすという帰結がみえれば納税者もむげには反対しまい。一方で、政治家が帰結を説明し理解してもらう難しさは残る。総裁選中は「消費税増税に賛成か反対か」を4候補に○×形式で答えさせたりするテレビ番組がたびたび流れる。これだけをみた人が、○を出した候補には首相になってほしくないと思うのは致し方なかろう。日本記者クラブ主催の討論会で、岸田文雄氏が今後10年程度は消費税増税が不要と明言したのも、この文脈でとらえればわかりやすい。消費税問題はメディアのあり方も問うている。岸田氏は外相時代の2017年夏、香川県にある大平正芳の墓に詣でた。間をおかず党政調会長になり「消費税率引き上げを可能にする経済環境をつくる」と語っている。大平は宏池会の先達だ。第1次石油危機後、1975年度の補正予算編成で蔵相として赤字国債の発行に追い込まれた。当時の大蔵省官房長は長岡實氏。同氏は生前「赤字国債に頼らずにすむ強い財務体質を取り戻したいと大臣は繰り返していた」と筆者に話した。79年の総選挙で大平首相は一般消費税の導入を公約し敗北した。墓前で岸田氏が胸に刻んだものは何か。岸田氏が増税不要期間を10年と区切ったのは、安倍晋三氏、菅義偉氏という2人の首相経験者の言を踏襲したものだ。これは意味深かもしれない。5%の消費税率を8%に上げたのは14年だ。この増税の起点は与党が強行採決して成立させた04年の年金改革法だった。100年安心の名の下に基礎年金の国庫負担引き上げを法定した。それまで財務省は年金への一般財源の投入拡大に慎重だったが、04年改革を機に方針を転換した。国庫負担引き上げは消費税増税あってこそだと与党幹部らに働きかけ、歳出・歳入一体改革と名づけた増税構想を緒に就かせた。民主党政権はこれを社会保障・税一体改革と呼び変えたが、中身は不変だった。標準税率を2段階で10%にもってゆく一体改革法が成立したのは野田政権のときだ。野党だった自公両党は採決に賛成した。構想から増税実現までまる10年。岸田首相が官邸に設けた全世代型社会保障構築会議が夏にかけて方向性を示す。それはポスト一体改革の号砲たり得るのか。政治家は消費税が嫌いだ。増税分は巨額の政府債務返済にも充てねばならず、年金や医療・介護、教育サービスなど納税者の受益に直結しにくい宿命を知っているからだろう。それもあって現役世代から健康保険料の一部を召し上げ、高齢者医療費に回す「ステルス増税」は続行中だ。私たちは70兆円を超すコロナ対策費にも借金をつぎ込んだ。病院補助金の制度設計が粗雑だったために、病床を無駄に空けておく幽霊病床の存在が明らかになった。しかし使い方が賢明だったかどうかにかかわらず、その分もいずれ増税が必要になる。財政規律を重くみる英首相のように、医療充実のための増税と、大手をふれないのだ。ただしカネのなる木はないという真実は万国共通である。賢明な歳出を徹底させるかたわらで増税構想への着手は早いに越したことはない。インフレの足音が迫ってきた。金利上昇は政府の利払い負担を重くし、社会保障に回す歳出をさらに圧迫する。夏には参院選がある。聞き入れない力が試される。

<新型コロナ対応の非科学性>
PS(2022年2月9、10日追加):*8-1は、東京都発表で、①直近1週間平均の新規感染者は18,575人で前週の120.6%だった ②重症者は51人 ③累計死者数は3,258人 ④新指標の重症病床使用率は22.4% ⑤年代別新規感染者は、30代2,874人、40代2,862人、20代2,780人で、65歳以上1,649人 ⑥ワクチン2回接種済み8,121人、接種なし4,450人だったとしている。
 そもそもワクチンを接種していても、ウイルスに暴露されれば一時的には“感染”し、身体の免疫機構(自衛軍、兵隊)がウイルス(敵)に勝って撃退するのであるため、①⑥は、あまり意味のない数字だ。必要なのは、②③の重傷者・死者に占めるワクチン2回接種済と未接種の人の割合で、報道を聞く限り、オミクロン株そのもので亡くなられた方は少ないようだ。また、⑤の年代別新規感染者に、30代、40代、20代と子どもが多いことから、この年代のワクチン未接種者が発症して検査で陽性になる確率が高いのだろう。なお、ワクチンは免疫機構(自衛軍、兵隊)に敵の特徴を覚えさせる手段であるため、抗体が減ってもその特徴は覚えていて必要になれば増やすし、少しくらい変異しても敵として判別できる。また、治療薬は身体が敵と闘う時の援軍になるが、もともと自分の免疫機構が弱い人は、ウイルスに負けて重症になりやすいわけである。
 しかし、*8-2の厚労省は、⑥ワクチン2回接種によるオミクロン株に対する発症予防効果はデルタ株と比較して著しく低下するが、追加接種により回復することが示唆された ⑦入院予防効果もデルタ株と比較して一定の低下があるが、追加接種で回復する ⑧英国健康安全保障庁の報告によると、ファイザー、モデルナ製ワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果はデルタ株より低く、2回目接種から2-4週後に65~70%、20週後は10%程度に低下 ⑨効果の持続期間は引き続き情報収集する必要がある ⑩オミクロン株に対する入院予防効果はワクチン種類毎には解析されていない としている。が、⑥⑦を日本で本当に調べたようなデータは示されておらず、⑧の英国は、アストラゼネカのワクチンを接種し、マスクもせずに普通通りにしていたため、日本の状況とはかなり異なる。そのため、日本の厚労省が、⑨⑩のように、日本で使用したワクチンと種々の予防策や治療薬の効果を検証することもなく、欧米が言うから何となく⑥⑦を主張し、3回目接種を呼びかけているのは、あまりに非科学的だ。
 さらに、*8-3の山梨県の濃厚接触者の待機期間は厚労省の方針を踏襲しているのだろうが、⑪新型コロナ感染症患者に対する(疫学の名に値しない)“積極的疫学調査”をまだ行っており(!) ⑫濃厚接触者とは「患者」(「無症状病原体保有者」を含む)と同居又は長時間接触があった者 ⑬適切な感染防護なしに患者を診察・看護・介護した者 ⑭患者の気道分泌液・体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者 ⑮必要な感染予防策なく、1m以内で「患者」と 15 分以上の接触があった者 として、“濃厚接触者”は陽性者と最終接触した日を0日目として7日目までを待機期間とし、不要不急の外出を控えるよう指示している。しかし、この定義の“濃厚接触者”でも、ワクチンを2~3回接種し、症状がなく、検査をして陰性なら、このように“危険な患者”扱いする理由はないだろう。その上、“社会機能維持者”についての待機期間は短縮するそうだが、社会機能を有さない成人は少ないし、症状がなく検査をして陰性なら、一般の人も同様に“危険な患者”扱いする理由はなく、これらの対応がすべて非科学的なのである。
 なお、*8-4は、⑯新型コロナ禍が始まって2年経過したが、(留学生を含む)外国人の日本入国を原則禁止する措置が続く ⑰海外との交流遮断は経済・文化・学術など多方面に弊害が及び、日本の魅力と国力を毀損する ⑱合理性に欠ける「鎖国政策」を見直す時 ⑲今は市中感染が広がり、水際対策の意味は薄れた ⑳WHOも新型コロナに関する渡航制限は経済的・社会的な負担が大きいだけとして緩和・撤廃を求め、米国・英国・オーストラリアもワクチン接種証明と陰性証明があれば隔離なしで外国人の入国を認めつつある ㉑日本のように自国民と外国人を区別して外国人の入国を一律に差し止める国は極めて例外的 としている。
 このうち、⑯⑰は全くそのとおりだが、⑱は江戸時代ではあるまいし、今時、何をやっているのかと思う。また、⑳も当然で、「ワクチン接種証明と陰性証明があれば隔離なしで外国人の入国も認める」のが差別で、㉑のように「日本人と外国人を区別して外国人の入国を一律に差し止める」のが差別でないと考える人は科学的合理性がない。その上、⑲の水際対策は、どの国から来たか、外国人か日本人かは関係なく全員に同じ検査をし、検査結果に基づいた合理的な待機期間を設けなければ、漏れが起こって市中感染が広がるのは必然なので、何が目的でこういうことをしたのか疑問である。

 
         2022.2.7NHK               2022.1.31群馬県
(図の説明:左図のように、日本国内でワクチンを2回接種した人の割合は78.82%で、中央の図のように、高齢世代は90%以上が多い。にもかかわらず、全体の接種割合が78.82%なのは、0~11歳で接種割合が0%である要因が大きい。また、右図のように、群馬県の事例では接種割合が高くなるほど感染者割合は低くなっており、新型コロナのワクチン2回接種と重傷者・死者の割合はもっと強い相関関係があると思う)

*8-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC080EX0Y2A200C2000000/ (日経新聞 2022年2月8日) 東京都、新たに1万7113人感染 7日平均で前週の120.6%
 東京都は8日、新型コロナウイルスの感染者が新たに1万7113人確認されたと発表した。直近1週間平均の新規感染者は1万8575人で、前週(1万5397人)の120.6%だった。累計の感染者は72万2253人となった。重症者は前日から3人増えて51人だった。新たに11人の死亡が確認され、累計の死者数は3258人となっている。オミクロン型の特性を踏まえた新指標の重症病床使用率は22.4%だった。新規感染者を年代別にみると、30代が2874人と最も多く、40代が2862人、20代が2780人で続いた。65歳以上の高齢者は1649人だった。ワクチンの接種状況別では2回接種済みが8121人、接種なしが4450人だった。

*8-2:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0111.html (厚労省) 厚生労働省厚生労働省新型コロナワクチンQ&A
Q.オミクロン株にも追加(3回目)接種の効果はありますか。
A.オミクロン株に対する初回(1回目・2回目)接種による発症予防効果は、デルタ株と比較して著しく低下するものの、追加接種により回復することが示唆されています。入院予防効果も、デルタ株と比較すると一定程度の低下はありますが、発症予防効果よりも保たれており、追加接種で回復することが報告されています。2021年11月末以降、日本を含む世界各地において、新型コロナウイルスのB.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)の感染が報告されています。英国健康安全保障庁(UKHSA)の報告によると、ファイザー社及び武田/モデルナ社のワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果はデルタ株より低く、2回目接種から2-4週後は65~70%であったところ、20週後には10%程度に低下することが示されています。ここで、追加接種することにより、その2~4週間後には発症予防効果が65~75%程度に高まり、一時的に効果が回復することが示唆されています。ただし、10週以降はその効果が45~50%程度になるというデータもあり、効果の持続期間については、引き続き情報を収集していく必要があります。また、オミクロン株に対する入院予防効果については、ワクチンの種類毎に解析はなされていないものの、UKHSAの報告によると、2回目接種後25週目以降では44%であったところ、追加接種後2週目以降では89%に回復していることが確認されています(※1)。また、65歳以上の人における、オミクロン株に対する入院予防効果は、追加接種後2~9週で94%、10週以降で89%であったことが報告されており、発症予防効果に比べると、その効果は比較的保たれていると考えられます。

*8-3:https://www.pref.yamanashi.jp/kansensho/corona_taikikikan.html (山梨県) 濃厚接触者の待機期間について
●濃厚接触者とは
 新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領では、濃厚接触者を次のように定めています。「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」(「無症状病原体保有者」を含む。以下同じ。)の感染可能期間において当該患者が入院、宿泊療養又は自宅療養を開始するまでに接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。
・ 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
・ 適切な感染防護なしに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
・ 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・ その他: 手で触れることの出来る距離(目安として 1 メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と 15 分以上の接触があった者
●新型コロナウイルス(オミクロン株)の陽性者の濃厚接触者の待機期間について
 新型コロナウイルス(オミクロン株)の陽性者の濃厚接触者については、陽性者と最終接触した日を0日目として7日目までを待機期間とし、8日目に待機期間を解除します。待機期間中は、濃厚接触者の方は不要不急の外出を控えてください。
○留意事項
 濃厚接触者の方は、待機期間が解除された後も、10日目までは検温などご自身による健康状態の確認を続けていただき、リスクの高い場所の利用や会食等を避け、マスクの着用など感染対策を徹底してください。
●社会機能維持者についての待機期間短縮について
 社会機能維持者が次の全てに該当する場合、待機期間を5日目に解除します。
①待機期間中、無症状であること
②陽性者と最終接触した日から4日目と5日目の両日に当該濃厚接触者の所属する事業者(以下「事業者」という。)において実施した抗原定性検査(簡易検査キット)の結果が2回とも陰性であること
※山梨県においては、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」の「(別添)緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業者」の他、すべての事業に従事する方を社会機能維持者とします。(事業に従事していない方は対象外です。)
○留意事項
 濃厚接触者の方は、待機期間が解除された後も、10日目までは検温などご自身による健康状態の確認を続けていただき、リスクの高い場所の利用や会食等を避け、マスクの着用など感染対策を徹底してください。また、不要不急の外出をできる限り控えるとともに、通勤時は公共交通機関の利用をできる限り避けてください。事業者は職場等での感染対策を徹底するとともに、社会機能維持者に対して、上記の留意事項を説明してください。本基準を適用する方の範囲は、各事業者が御判断ください。事業者から保健所への報告や協議は必要ありません。(濃厚接触者へは、定期的の保健所から健康観察等の連絡があります。)
○4日目、5日目の検査について
 検査は、事業者の費用負担(自費検査)により、薬事承認された検査キットを用いて実施してください。適切な医療を提供するため、医療機関での検査の実施はお控えください。また、薬局等で実施している新型インフルエンザ等対策特別措置法第24条第9項の協力要請に基づく無料検査は利用できません。検査の実施にあたり、事業者は別紙2「抗原定性検査キットを使用した検査実施体制に関する確認書」の①から⑤に対応する必要があります。
○検査キットの購入について
 事業者は、検査キットを医薬品卸売販売業者、メーカー、薬局から購入することができます。購入の際には、別紙1「抗原定性検査キット優先供給に係る説明書」と別紙2「抗原定性検査キットを使用した検査実施体制に関する確認書」を購入元に提出してください。(薬局の在庫量には限りがあります。薬局での購入を希望される場合には、あらかじめ薬局へお問い合わせください。)また、適正な流通を確保する観点から、必要な量の購入にとどめていただきますようお願いします。(以下略)

*8-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220210&ng=DGKKZO80028270Q2A210C2EA1000 (日経新聞社説 2022.2.10) 水際措置を緩和し「鎖国」に終止符を
 新型コロナ禍が始まって2年たったが、外国人に対してごく一部の例外を除き、日本への入国を原則禁止する措置が続いている。海外との人の往来の制約は、日本の魅力と国力を大きく毀損する。コロナ対策としても合理性に欠ける「鎖国政策」を見直すときだ。政府は2021年11月に入国規制を緩和し、留学生の受け入れ再開などを打ち出したが、その後のオミクロン型の発生を受けて原則禁止に戻した。オミクロン型の特性が不明で、国内への流入がまだなかった時点では、「時間稼ぎ」を目的にした入国規制の強化は理解できる措置だった。だが結局はそれもたいした効果はなく、今では市中感染が広がり、水際対策の意味は薄れた。世界保健機関(WHO)も新型コロナに関する渡航制限は経済的・社会的な負担が大きいだけとして、緩和や撤廃を各国に求めている。世界を見渡しても米国や英国、さらに検疫に厳しいオーストラリアでもワクチン接種証明と陰性証明があれば隔離なしで外国人の入国を認めつつある。そもそも日本のように自国民と外国人を区別し、後者の入国を一律に差し止める国は極めて例外的だ。海外との交流を遮断する弊害は経済や文化、学術など多方面に及ぶ。日本留学を希望する外国人学生はすでに2年弱にわたり来日に「待った」がかかり、他国への留学に切り替えるケースもある。留学経験の喪失は日本と世界を結ぶ人材の喪失でもあり、将来にわたる機会損失は計り知れない。経済の面でも外国人幹部が来日できず、日本での事業拡大を見合わせる外資企業の動きが伝えられた。日本人の再入国についてもホテルなどでの7日間の隔離は大きな負担だ。海外出張がままならず、ビジネスが滞る恐れがある。入国時の隔離はそもそも必要か、必要な場合でも7日間は長すぎないか、についても科学的エビデンスに基づいた再検証が必要だ。国内感染については検査の省略などを矢継ぎ早に打ちだしているのに、水際対策は厳しいまま、というのは整合性に欠ける。島国の日本はともすれば「内向き志向」に陥りがちだが、それでは停滞が長引くだけだ。防疫に細心の注意を払いつつも、状況に応じて適切に国を開き、外部の人材や「知」を受け入れる必要がある。関係省庁が動かないなら、岸田文雄首相の決断が問われる。

<科学技術を軽視する国の将来は暗いこと>
PS(2022年2月14、15《図》日追加):*9-1-1のように、世界で新型コロナ治療薬の争奪が強まり、需給が逼迫する恐れがあるそうで、米国や欧州は新型コロナ禍でもワクチンや治療薬を実用化し、利益の機会を得ているのは感心だ。一方、日本は、金もないのに製品の争奪戦に参加しているだけであるため、そうなる理由とその解決が重要である。私は、東大医学部保健学科を卒業して公認会計士になったため、PWCで世界の有名薬剤会社の監査担当になることが多かったのだが、世界の有名薬剤会社の人たちが声を揃えて言っていたことは、「日本は治験がやりにくく、世界で使用している薬でも国内で承認されにくい」ということだった。新型コロナのワクチン・治療薬の治験については、緊急時の「条件付き早期承認」という形で解決しているが、普段から治験が必要以上に煩雑で長期間かかる割に開発者の成功報酬が少ないことは、開発者の困難を増し、国内での開発意欲を削いでいる。そのため、薬剤や医療機器については、厚労省だけでなく、経産省・文科省も参加して本気で開発していく必要がある。
 また、*9-1-3のように、①東京都の新型コロナモニタリング会議で専門家は強い警戒感を示し ②小池知事は「他国は行動規制を緩和するとぶり返す例も見られ、東京で同じことはできない」と記者団に語り ③首都圏・中部等の13都県で新型コロナ「まん延防止等重点措置」の適用延長が決まった そうだ。しかし、新型コロナ騒動から2年経過し、*9-1-2のように、浮遊ウイルスを吸着する集塵フィルターを備えた空気清浄機ができていても、寒いのに窓を開けさせ(かえって、こじらせそう)、治療薬は限定的な人にしか使わせず、日本だからできることや日本だから稼げることを無視しているのである。そのため、これらは穏やかに言っても馬鹿としか言えず、こういうリーダーが「憲法に緊急事態条項を入れるべき」などと言っているのは、「何をやるつもりなのか、恐ろしい」というほかない。
 癌治療においても、*9-2-3のように、本人の免疫細胞を培養し増やして使う免疫療法は、本人の免疫細胞なので癌細胞のみを攻撃して死滅させる。その点で、盛んに増殖する細胞すべてを攻撃して死滅させる抗ガン剤(化学療法)と異なり、副作用が著しく少ない。また、理論上、癌の種類や臓器を選ばず、同時多発性の癌も治療できる。にもかかかわらず、厚労省は外科手術(癌でない場所まで切除する)、抗ガン剤(盛んに増殖する細胞のすべてを攻撃し死滅させるため副作用が激しい)、放射線(放射線自体が身体に害)を標準癌治療とし、免疫療法はその補完としてしか認めていないため、保険適用のものが著しく限られる。一方で、*9-2-1のように、癌の9割超を占める固形がん向けに、中国のスタートアップが、免疫療法を改良した癌治療薬の製造販売の承認を、2023年に米食品医薬品局に申請する計画で、米国企業や武田薬品も治験を急いでいるそうだ。しかし、免疫療法も、基礎研究では日本が発祥だったのに、保険適用すべく国内で積極的に治験をすることなく、実用化が遅れたものなのだ。
 なお、*9-2-2の本庶佑特別教授もオプジーボを開発し、保険適用にし、特許料を認定させるのに大変な苦労をされ、現在は「基礎研究に投資を」と訴えておられるが、基礎研究も重要だが、よい研究に対し速やかに治験を行って実用化することに対し、国が下らない制限を設けず協力することも、開発者利得を増やして民間企業を投資に向かわせ、癌患者を助けるものだ。
 このように、日本では知的財産の開発や実用化への評価が低く、その結果が*9-3-1で、④日本国内の野菜・果実・花等の新品種登録の出願数がピークだった2007年の1406件に比べて2020年は713件と半減し、日本国内からの出願だけなら457件とさらに低水準 ⑤日本の18倍に達した中国に大きく水をあけられ ⑥輸出拡大のためにも付加価値の高い新品種の研究開発を支援する環境整備が急務 ⑦都道府県が保有する研究所からの出願数はピーク時と比較して6割減少 ⑧1998~2020年度の登録者別で最も多いのは種苗会社(56%)で、個人(25%)、都道府県(9%)が続いていた ⑨公的機関の人員不足や予算削減などが背景にある である。
 しかし、*9-3-2のように、「農産物の優良品種が海外に不正に持ち出されるのを防ぐ」という名目で改正種苗法が成立し、農家が収穫物から種をとって自家増殖することを制限した上、自家増殖している農家は一部だとタカをくくっていたのが、⑧のように25%もあった個人の新種開発を衰えさせた原因だ。また、地方の公的研究機関は地域に適した種苗を競争で開発していたが、これらに開発をやりにくくする変更をしたのも、④⑤⑦⑨の原因だ。従って、⑥の輸出拡大だけでなく、国民も喜んで受け入れる農産物を作るためには、初めから選抜せずに多くの人に開発の機会を与え、知的財産を高く評価して開発者に利益を与える仕組みにする以外にはないのである。

 
2021.5.13朝日新聞 2022.2.11日経新聞   2020.3.9Economist 2022.2.11日経新聞

(図の説明:新型コロナワクチンの臨床試験は1番左の図のようになっており、一般の薬剤は通常の承認が多い。しかし、患者数が多くない疾患は大規模な治験を行うことができないため、難病と同様の条件付き早期承認を行い、それなりの病院で第3相試験と治療を兼ねて行う必要がある。これらの便宜が図られた結果、左から2番目の図のように、新型コロナのワクチンや飲み薬は海外で開発・実用化され、日本で開発・実用化されたものはなかった。これは、癌の免疫療法も同じで、右から2番目の図のように、海外で開発・実用化され、日本では標準治療にも入らないため、使えないものが多い。1番右の図は、本人の免疫細胞に固形癌の細胞を選択的に攻撃させる方法で、これなら癌治療に副作用がなくなるのである)

*9-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220211&ng=DGKKZO80080260R10C22A2EA2000 (日経新聞 2022.2.11) コロナ飲み薬、世界で争奪、ファイザー製、需給逼迫の恐れ 国内薬の承認期待
 新型コロナウイルス治療薬を巡り、世界で争奪が強まっている。厚生労働省が10日に特例承認した米ファイザーの飲み薬は、米国が日本の10倍の量の調達契約を結ぶなど需要が旺盛で、当面需給が逼迫する恐れがある。感染者急増で治療薬の需要は今後も増える見通しだ。政府は一段の調達増に取り組む必要がある。厚労省が特例承認したファイザーの飲み薬「パキロビッドパック(海外名パクスロビド)」は2021年12月以降、米国や欧州で実用化された。感染初期に投与して重症化を防ぐ飲み薬は、医療逼迫を抑制する切り札となる。変異型「オミクロン型」の感染拡大を背景に、各国は飲み薬を大量入手しようとしている。米政府はファイザーと2000万人分の調達契約を結び、22年6月までに1000万人分、9月までに残りを調達する。英国政府も同社と275万人分の調達契約を結んだ。
●下旬に追加供給
 日本も飲み薬の確保を急いでいる。政府はファイザーの飲み薬について200万人分を調達することで最終合意。後藤茂之厚労相は10日、第1弾の4万人分に続き、2月下旬に追加分の供給を受けると明らかにした。量については「確定中だ」と述べるにとどめた。すでに国内で実用化された米メルク社の飲み薬については160万人分の供給を受ける。厚労省によると、10日までの納入量は累計34万人分で、このうち4万人分以上が投与された。3月末までに計60万人分の供給を受ける予定だったのが、計80万人分に増えることも明らかにした。だが、当面は需給が逼迫する懸念がある。ファイザーは22年末までに1億2000万人分を生産する計画だが、上期は3000万人分にとどまる。有効成分の原薬の合成に時間がかかるためだ。アルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は1月、年後半にかけて供給量が増える見通しだとしたものの「1~3月は入手がより制約されるだろう」と述べた。日本への供給スケジュールなど詳細についても、ファイザーも政府も明らかにしていない。足元の患者数の増加に飲み薬の供給が間に合うかは不透明だ。厚労省によると、感染力が強いオミクロン型の拡大で、国内の累計感染者数は約360万人と昨年末から倍増した。直近では2月1日までの1週間で、重症化リスクが高い60歳以上の新規感染者が約6万人に上った。
●投与患者は限定
 ファイザーやメルクの飲み薬は高齢や持病など重症化リスクのある患者に投与される。重症化を防ぎ医療の逼迫を防ぐには、飲み薬を必要な患者に適切に投与できる体制を整える必要がある。ファイザーの飲み薬に需要が集中していることも需給逼迫の解消を難しくしている。ファイザー製は臨床試験(治験)で有効性が高く、需要が大きい。重症化リスクがある感染者に発症から5日以内に投与したところ、入院・死亡のリスクが88%減った。米メルクの飲み薬「ラゲブリオ」は治験で同30%低下だった。安定調達のためにはさらに多くの治療薬が実用化される必要がある。塩野義製薬が最終段階の治験を進める「S-217622(開発番号)」は約50人を対象にした治験データでウイルス量を減らすなどの効果が確認できた。さらに多くの人で有効性や安全性が実証できれば、月内にも厚労省に「条件付き早期承認制度」を活用して製造販売承認を申請する。手代木功社長は7日の記者会見で、「2月末には40万~50万人分の製造を積み上げる」と話した。3月末までに100万人分を生産し、4月以降に年1000万人分以上の供給体制を整える。政府は有効性が明らかになれば迅速に承認審査を進めるとしている。順調に審査が進めば供給安定につながる可能性もある。

*9-1-2:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00120/00361/ (日経XTECH 2020.12.2) 浮遊するウイルスを吸着する集塵フィルターを備えた空気清浄機、飛沫対策空気清浄機  トルネックス
 トルネックスは、ウイルスとほぼ同じ大きさの粒子(0.08μm)を効率よく捕集する「飛沫対策空気清浄機」を2020年11月に発売した。空気中の浮遊ウイルスを吸着する性能が高い電子式集塵フィルターを備えた空気清浄機だ。北里環境科学センターで行った性能評価試験では、自然減衰の場合、15分経過してもほとんど減少しない浮遊ウイルス数が、5分で99%以下まで減った。処理風量が15m3/分と大きく、フィルターの捕集効率も高いので、相当換気量(空気清浄機で清浄した空気の量)が多い。空気中に浮遊する粉塵や微生物、たばこの煙などを除去する。新型コロナウイルスの検証は行っていない。会議室などに向く「ミーティング用ロータイプ」と、キャスター付きで移動が簡単な「室内循環用ハイタイプ」を用意している。
○価格は、要問い合わせ。問い合わせ先:トルネックス 電話:03-5643-5800、URL:https://www.tornex.co.jp/

*9-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220211&ng=DGKKZO80080310R10C22A2EA2000 (日経新聞 2022.2.11) 東京の自宅療養3倍 まん延防止、見えぬ出口
 首都圏や中部など13都県で新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」適用延長が決まった。10日も全国で10万人近くの新規感染が確認され、自宅療養者は各地で増加傾向が続く。「第6波」の長期化に備え、感染対策と社会活動を両立する対策の充実が急務となっている。「経験したことのない危機的な感染状況が続いている」。東京都が10日開いた新型コロナのモニタリング会議で、専門家は強い警戒感を示した。小池百合子知事は行動規制について「他国ではいったん緩和するとぶり返す例も見られる。東京で同じことはできない」と記者団に語った。都内の新規感染者の7日間平均は10日時点で1万7849人と、重点措置が適用された1月21日の3倍近くにのぼる。9日には1日あたりの感染者が今年初めて前週を下回ったが、適用開始から3週間近く右肩上がりだった。自宅療養者もおよそ9万人と開始時の3倍以上に膨らんだ。10日は千葉県や兵庫県、北海道で新規感染者が過去最多を更新した。第6波で重点措置が最初に適用された沖縄県や広島県は減少基調に転じた半面、三大都市圏は拡大傾向が続く。厚生労働省の専門家組織座長を務める国立感染症研究所の脇田隆字所長は9日、感染拡大がピークアウトする時期について「もうしばらく推移を見ていく必要がある」と述べた。大阪や兵庫、北海道など21道府県は20日に適用期限を迎える。兵庫県の斎藤元彦知事は10日の記者会見で「今すぐ解除するのは難しい」との認識を示した。政府の基本的対処方針分科会の尾身茂会長は10日、新型コロナ対策について「出口戦略を含めて議論していくべきだ」と述べた。変異型「オミクロン型」の特性を踏まえて検査や医療の体制を検討すべきだとの考えも示したが、収束のメドが立たないなかで出口を探りにくいのが実情だ。

*9-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220211&ng=DGKKZO80053590Q2A210C2TEC000 (日経新聞 2022.2.11) 免疫細胞で「臓器がん」治療 中国新興や武田が治験、血液がん向け改良で効果
 がんの9割超を占める固形がん向けに、手術や放射線、抗がん剤、免疫薬に続く新たな治療法が現れた。遺伝子を改変した免疫細胞を使い、血液がん治療で実用化されている免疫療法を改良。中国のスタートアップが2023年に米食品医薬品局(FDA)へ製造販売の承認を申請する計画で、米国企業や武田薬品工業も臨床試験(治験)を急ぐ。世界で毎年約2千万人が新たにがんを患い、約半数が亡くなる。全死亡者年間5千万人超のうち約6分の1を占める。今後も人口増加と寿命が伸びたことによる高齢層の拡大で、患者数は増えると予想されている。米調査会社のBCCリサーチによると、がん治療薬の世界市場規模は26年に3137億ドル(約36兆円)と、21年比で77%拡大する。そのほとんどが患者数が多い肺がんや大腸がんなどの固形がん向けだ。がんの主な治療法は手術、放射線、抗がん剤や免疫薬。だが、手術で切除できない転移がんなどは放射線や抗がん剤で完治するのが難しい。2010年代に使えるようになった免疫薬も膵臓(すいぞう)がんなどの難治性のがんや進行したがんの治療は難しい。白血病などの血液がんで治療効果が出ているCAR-T療法を改良した治験が相次ぐ。中国の医薬スタートアップ、カースジェン・セラピューティクスは、患者の血液からとった免疫細胞に、CARと呼ぶがんを攻撃するたんぱく質を作る遺伝子を組み込んだCAR-T細胞を作製。さらにその効果を増強させる手法を開発した。CAR-T細胞に、胃がんや膵臓がんなどにくっつくたんぱく質を作る遺伝子を追加で組み込み、転移しやすいがんを追いかけて攻撃しやすいタイプにした。中国で胃がんの第1相治験を終え、第2相を計画中だ。同社は米国でも第1相の治験を進めており、23年に製造販売の承認を申請する予定。FDAと欧州医薬品庁(EMA)から希少疾病用医薬品の指定を受けているため、治験で効果が確認できれば23年以降市場に出てくる可能性がある。同社は、21年秋の欧州臨床腫瘍学会で37人に投与した結果を発表。2種類以上の抗がん剤が効かない胃がんや食道がんの18人のうち、11人(61%)でがんが縮小するか消えた。がんの増殖を抑えた人を含めて15人(83%)で効果があった。担当者は「独自の技術を活用し、世界をリードする地位を固める」と話す。CAR-T細胞で固形がんを追う技術はほかにもある。米製薬のポセイダ・セラピューティクスは、投与したCAR-T細胞が体内で増えやすい技術を開発した。遺伝子を入れる方法を工夫した。体外で投与前にCAR-T細胞を増やす必要がない。体内でがんを攻撃する効果が持続しやすいという。転移した前立腺がんで第1相の治験を実施中で、9人に投与して3人でがんが血液中に出す「PSA」たんぱく質が半分以下に減り、画像診断でも結果が一致したと8月に発表した。1人はがんが見えなくなった。米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのスーザン・スロビン博士は「患者の(治療効果の)反応は予想をはるかに超えた」と話す。同社は23年に治験を終える予定だ。ほかの固形がん向け治験も計画しているという。国内勢も開発を急ぐ。武田薬品工業は18人の固形がん患者で第1相の治験を始めている。23年に治験を終える予定だ。信州大学は22年春に、がん治療薬開発のブライトパス・バイオの協力で骨軟部肉腫や固形がんで第1相の医師主導治験を始める。その後、同社が第2相の治験を実施し、25~26年に条件付きの早期承認を厚生労働省へ申請する計画だ。山口大学発のスタートアップ、ノイルイミューン・バイオテック(東京・港)は、体内にもともといる免疫細胞を集めて、作ったCAR-T細胞と一緒にがんをたたく技術を開発した。情報伝達を担うたんぱく質を出して免疫細胞を呼び寄せるCAR-T細胞を作った。抗がん剤などの治療を終えた約40人の肺がん患者らを対象に第1相治験をこのほど始めた。肺がんや中皮腫、膵臓がんを狙う。23年中に治験に参加する患者の登録を終える予定だ。
▼CAR-T療法 患者の血液から採取した免疫細胞にCAR遺伝子を入れて、がんを攻撃する分子(たんぱく質)を作るようにして体内へ戻す治療法。スイス製薬大手ノバルティスが17年に米国で実用化した「キムリア」は、血液がんの白血病の1種で高い効果が出た。これまで固形がん向けでは、CAR-T細胞が患部へ届かなかったり、多数のがん細胞を攻撃しきれず、効果が出ていなかった。

*9-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC131U80T10C22A2000000/ (日経新聞 2022年2月13日) 本庶氏「基礎研究に投資を」、京都賞シンポジウムで訴え
 京都大学と公益財団法人の稲盛財団(京都市)は13日、「京都賞シンポジウム」をオンラインで開いた。2018年のノーベル生理学・医学賞を受賞した京大の本庶佑特別教授が講演し、がん免疫療法で多数の臨床試験(治験)が進んでいることを紹介し、国や民間が生命科学の基礎研究に投資すべきだと訴えた。本庶氏は免疫細胞の表面にあるたんぱく質「PD-1」を見つけた。がん細胞がPD-1に結合し、免疫細胞から逃れる仕組みが分かった。本庶氏はこれを阻害する治療法により「がん治療のパラダイムシフトが起きた」と強調。既に多くの種類のがんに対して承認されており、さらに「何千という治験が進行中だ」と話した。患者ごとにがん免疫療法が有効かどうかを見分ける方法は研究途上であると指摘し、有効な患者の割合を高めていく必要があるとした。研究者の参入を促すには研究資金を充実させることが重要だと指摘し、国や民間が応用研究だけでなく生命科学の基礎研究に注力すべきだと訴えた。講演者によるディスカッションで本庶氏は「新型コロナウイルスの世界的な流行を通じて、生命科学への理解が不足していると認識した。一朝一夕に答えが出るわけではない。基礎的な研究力を育成することが国の大きな役目だ。研究者も長期的な視点が必要だ」と指摘した。京都賞は優れた科学や芸術の功績をたたえる国際賞。本庶氏はPD-1の発見などの功績で16年に基礎科学部門で受賞した。

*9-2-3:http://www.hu-clinic.net/clinic/promise.html (日比谷内幸町クリニック) 免疫細胞療法による癌治療
1.心と体にやさしい癌治療
 当クリニックが行っている免疫療法(免疫細胞療法)は、患者様ご自身の免疫細胞を最新の培養技術で増殖・活性化して患者様のお体へお戻ししますので、肉体的にも精神的にも患者様のからだにやさしい治療です。
※副作用としては、稀に投与後、発熱することがあります。免疫力が高まっている過程での発熱ですので心配はありません。発熱は個人差にもよりますが、1日程度で治まります。
2.がんの種類を選ばない免疫療法(免疫細胞療法)
 高度活性化NK細胞療法は、血液が通う限りどこに出来た癌でも必ずNK細胞が到達して働くので、癌の種類を選びません。そのため胃癌、肺癌、肺腺癌、膵臓癌、肝臓癌、大腸癌、直腸癌、乳癌、食道癌、卵巣癌など個別の癌はもとより、標準の癌治療では困難な同時多発性の癌にも治療を行えます。
3.標準の癌治療との併用も可能な免疫療法(免疫細胞療法)
 高度活性化NK細胞療法は、手術、抗ガン剤、放射線など標準の癌治療と併用でき、更にそれらとの組合せで治療全体の効果を上げることができます。例えば、外科療法との組合せが術後の再発・転移を防ぎ、回復を助けます。
4.十分なカウンセリングに基づく癌治療
 免疫療法(免疫細胞療法)を開始する際は患者様にとって最適な治療の選択と組合せの判断が重要となりますので、初診相談時に患者様やご家族の方と十分な時間をかけて話し合い、インフォームドコンセント(事前に医師が患者様に十分な説明をし、同意を求めること)を行います。また、免疫療法(免疫細胞療法)の実施中や実施後も、患者様やご家族の方と経過や今後の進め方について話し合います。
5.リラックスして受けられる癌治療
 採血や点滴を行う治療ルームは完全個室の落ち着いた空間で、リクライニングシートやテレビなどを備えており、ご家族・ご同伴の方と一緒にリラックスして癌治療を受けられます。また、完全予約制なので待合室でお待たせする事はありません。

*9-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220213&ng=DGKKZO80097900T10C22A2EA1000 (日経新聞 2022.2.13) 農産物新品種、出願数が半減、日本、中国との差18倍に 輸出増へ支援急務
 日本国内の野菜や果実、花などの新品種登録の出願数がピークだった2007年に比べて半減した。20年は457件にとどまり、日本の18倍に達した中国に大きく水をあけられた。21年の食品輸出額が1兆円の大台を初めて超えた日本は30年までに5兆円という次の目標へ動き出す。さらなる輸出拡大へ海外にもアピールできる付加価値の高い新品種の研究開発を支援する環境整備が急務となっている。植物などの新品種を保護する国際機関「植物新品種保護国際同盟(UPOV)」によると、日本で20年に新たな品種として出願されたのは713件だった。2007年の1406件をピークに約10年間で半減した。3割は海外からの出願で、日本国内からの出願だけでみると457件とさらに低水準にとどまった。特に都道府県が保有する研究所からの出願数はピーク時と比較して6割減少した。公的機関での人員不足や予算削減などが背景にある。1998~2020年度の登録者別で最も多いのは種苗会社(56%)で、個人(25%)、都道府県(9%)が続く。中国は20年の国内出願数が8329件で日本の18倍に及ぶ。10年の約7.6倍に急増した。トウモロコシや水稲の新品種が多い。登録料を無料にするなど国をあげて新品種の登録や開発を進めたのが奏功した。日本は先進国と比較しても大幅な後れをとっている。20年は欧州連合(EU)の域内での出願件数が2785件、米国は732件、韓国は632件だった。政府は農林水産物・食品の年間輸出額を2025年までに2兆円、30年までに5兆円に増やす目標を掲げる。高級ブドウの「シャインマスカット」やリンゴの「フジ」などブランド力の高い品種の農産物は海外でも人気を集める。輸出のさらなる拡大にはこうした魅力ある新品種の開発が急務だ。ただ品種の新規開発には時間を要し、開発に着手しても理想的な品種が生まれるかどうか不透明だ。育種家や企業からは「コストに見合わない」と指摘する声もあがる。シャインマスカットは国が保有する農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が06年に品種登録した。試験の開始から登録まで18年かかり、13人の研究者が携わった。農産物などの品種登録は開発した人の権利を保護するための仕組みだ。新品種の開発には専門的な知識や時間、費用などを要する一方、いったん開発すると第三者が簡単に増殖できる。品種登録で開発者が登録料を政府に支払う代わりに、栽培を25~30年独占できるようにして開発を促す。輸出しやすい品種の開発や海外での品種登録を促進するため、農水省は21年度の補正予算で国の研究開発を担う農研機構の機能強化で計約9億9000万円を確保した。農研機構は過去の品種開発の研究成果や技術に関する情報が蓄積されたデータベースを持つ。研究所と施設などとをつなぐネットワーク回線を強化し、都道府県の研究機関や企業とのリアルタイムの連携を促す。ビッグデータや人工知能(AI)などで高度な技術を使えるような環境整備も進め、輸出相手国のニーズにあわせた国際競争力のある新品種の開発や、農作物の高品質化のための栽培管理手法の確立につながるような共同開発を加速する狙いだ。農研機構はほかにも大学や都道府県などと共同で、輸送時に傷がつきにくいモモや、日持ちのいいカキなどを開発する7つほどのプロジェクトを21年4月から進めている。3年後に成果を出すのを目標として掲げる。農業分野の知的財産権に詳しい早稲田大大学院の野津喬准教授は「人気品種は海外持ち出しのリスクも高く、育成者の権利を保護するため適切な登録が重要。今後は輸出促進に向け、海外のニーズを踏まえた品種開発も求められる」と話した。

*9-3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66683570W0A121C2SHF000/ (日経新聞社説 2020年11月26日) 農業振興に資する種苗法改正
 果物などの優良品種が海外に不正に持ち出されるのを防ぐ種苗法改正案が、臨時国会で成立する見通しとなった。農産物の知的財産を守り、輸出を含めて農業を振興する契機としてほしい。改正案の目玉は、種苗の利用を制限できるようにする点にある。種苗メーカーや研究機関は開発した品種を農林水産省に登録する際、種苗の輸出を認めないと定めることが可能になる。違反すれば損害賠償などの対象になる。すでに衆院を通過した。これまでイチゴなど様々な品種が流出してきた。開発者の権利を侵害するだけでなく、日本の農産品の輸出戦略にも支障が出る。安い値段で作物が逆輸入されれば、国内生産を脅かす恐れもあった。農水省はこうした事態に歯止めをかけるため、種苗メーカーなどが海外で品種を登録するための経費を補助してきた。法改正はこれを補完するのが狙いであり、妥当な措置と言えるだろう。一方、制度改正には一部から懸念も出ていた。農家が収穫物から種をとり、次の栽培に使う自家増殖にも制限がかかるようになるからだ。登録品種を自家増殖しようとすると、今後は開発者の許諾を得ることが必要になる。ただ影響は限定的だろう。各地で昔から作られている作物など、流通している品種の大半は登録外だ。公的な研究機関が開発した登録品種に関しては、自家増殖への許諾料が高額になるとは想定しにくい。しかも重要なのは実際に自家増殖をしている農家は一部で、多くは今も種を買っている点だ。手間のかかる自家増殖と比べて効率的だからで、種の購入代で経営が圧迫されてもいない。彼らが求めるのはむしろ優れた品種の開発だ。頻発する大規模な自然災害に対応し、新たな病害虫を防ぐためにも絶え間ない品種改良が不可欠になっている。開発者の権利をきちんと守り、研究にいっそう力を入れることのできる環境を整えることが求められている。

<教育力について>
PS(2022年2月14日追加):*10-1は、①北京冬季五輪フィギュア女子団体で2月7日に素晴らしい演技でROCの金メダルに貢献したカミラ・ワリエワが、2021昨年12月のドーピング違反について団体戦後の2月8日に検査結果が判明したとしてIOC・WADA・ISUから提訴され ②CASが2月14日に提訴を却下し ③4回転ジャンプとトリプルアクセルが武器のワリエワは2月15日にショート、17日のフリー女子個人戦でも金メダル最有力候補とみられている としている。
 しかし、ワリエワは、4回転ジャンプで1度失敗したものの、フィギュアの演技のみならず顔・姿勢・音楽・芸術性・衣装まで含めて総合的に文句なしだったので、私にとって①は祝福したい出来事だった。そのため、大会中に陽性反応の出ていない選手に対し、12月のドーピング違反を持ちだして、団体戦後の2月8日に「検査結果が判明した」として提訴したのは、ライバルを利することが目的のように思われた。そのため、私は、②は妥当で、③の理由でワリエワの演技をまた見たいと思っている。
 (私もされた経験があるのでわかるのだが)トップになると「ズルいことをしたから成績がいいのだ」と言いがかりをつけて、下だった人が自分を正当化することが少なくない。ワリエワの2021年12月のドーピング違反が2月7日の団体戦後の2月8日に指摘されたのは、不自然な時期だったためこれではないかと思われ、私はCASの提訴却下が公正・公平だと感じた。
 そのような中、*10-2には、④文科省が公立小中高校などの教員不足の実態を初めて全国調査し、2021年4月時点で2,558人が計画通り配置されていなかった ⑤管理職も含めて他の教員の負担が増え、しわ寄せは子どもに及んでいる ⑥忙しすぎて「ブラック職場」とまで言われる教職の志願者が減った ⑦学校を魅力的な職場にするには、非正規依存の構造を転換して正規教員を増やすべき ⑧教員を確保しやすい年度初めに調査したので、実態より甘い調査結果が出た ⑨学力低下が騒がれて授業時間が増えた 等が書かれている。が、④⑤⑥⑧で触れているのは、教員の量の充実だけで、質の充実はない。そのため、⑦⑨は、正規職員を増やすだけでなく、正規職員の報酬も上げて教員の質を充実することが必要であり、そうしなければ、知識や具体的データに基づいて自分の頭でモノを考え、正しい判断のできる生徒は育たないのである。

 
    北京冬季オリンピックでボレロを踊ったワリエワ      ロシア大会のワリエワ

(図の説明:バレエの基礎があるらしく、氷の上で凛とした姿勢を保ち、柔らかく、正確で、手先まで絵になる演技をしたワリエワ。しかし、ここに来るまでには、人生をかけたものすごい競争と努力があっただろう)

*10-1:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6418177 (Yahoo 2022/2/14) ワリエワ 五輪個人種目の出場認める CASが発表 15日に女子SP
 昨年12月のドーピング違反が判明した北京冬季五輪フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(15、ロシア・オリンピック委員会=ROC)の個人戦出場が認められた。スポーツ仲裁裁判所(CAS)が14日、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)によるワリエワの暫定資格停止処分解除を不服とした国際オリンピック委員会(IOC)、世界反ドーピング機関(WADA)、国際スケート連盟(ISU)からの提訴を却下した。4回転ジャンプとトリプルアクセルが武器のワリエワは7日に行われた同五輪団体戦でROCの金メダルに貢献し、15日にショートプログラム(SP)、17日にフリーが行われる女子個人戦でも金メダル最有力候補とみられている。CASは13日午後8時34分(北京時間)から北京市内のホテルに設けた臨時事務所で聴聞会を実施。オンライン形式で14日午前2時10分(同)までIOC、WADA、ISU、RUSADA、ワリエワ本人、ROCを事情聴取した。ワリエワは昨年12月25日のロシア選手権の検査で、持久力向上が期待できる禁止薬物トリメタジジンに陽性反応を示し、今月8日に検査結果が判明。RUSADAが暫定資格停止処分を科したが、異議申し立てを受けてRUSADAの規律委員会が9日に処分を解除していた。WADAは裁定の理由として、16歳未満のワリエワが処分が軽減される保護対象であること、五輪期間中に陽性反応を示していない選手への考慮、今回出場を認めなければワリエワに取り返しのつかない損害を与えること、などを挙げた。団体戦の扱いに関しては裁定を要求されていないため、決定は別になるとも記した。一方でIOCからの要請を受け、WADAはワリエワらROC女子選手を指導するエテリ・トゥトゥベリゼ・コーチや医師ら周辺スタッフの調査を独立委員会に依頼すると明かしている。

*10-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/809895 (佐賀新聞 2022年2月12日) 教員不足調査 学校の悲鳴に政治決断を
 文部科学省が公立小中高校などの教員不足の実態を初めて全国調査した。昨年4月時点で2558人が計画通り配置されていなかった。管理職も含めて他の教員の負担が増え、しわ寄せは子どもに及ぶ。過去には一部の授業ができず、自習が続いた自治体もある。団塊世代の大量退職で採用が増える一方、忙しすぎて「ブラック職場」とまで言われる教職の志願者が減ったことが背景にある。穴埋めに非正規教員が担任を務めることも珍しくないが、こちらも重い負担と低賃金で人気がない。学校を魅力的な職場にするには、非正規依存の構造を転換し、正規教員を増やすべきだ。それには教育予算を増額する必要がある。調査結果は実態の一端を切り取っただけだという指摘もある。都道府県や政令市など68カ所のうち、18の自治体が、小学校と中学校のどちらかで不足数を「ゼロ」と答えたからだ。現場の実感にそぐわない結果になった最大の理由は、教員を確保しやすい年度初めに調査したためだ。産休育休や精神疾患による休職や退職は年度途中で出やすい。「年度途中では2倍ぐらいの欠員があるかもしれない」と話す専門家もいる。文科省は今後、年度の途中でも調査してほしい。財務省は増員要求をなかなか認めないが、教員不足の実態を示して「もっと教育予算を」と粘り強く迫るべきだ。国会でも地方議会でも、政治家は後押ししてほしい。これほど学校が厳しい状況になった原因は明らかだ。さまざまな「教育改革」で仕事が大幅に増えたのに、行財政改革で正規教員は減り、身分の不安定な非正規教員が増えて給与水準も下がったからだ。世代交代や社会の変化も重なった。その結果、教職が不人気になって志願者が減る悪循環が起きている。この20年で教員の仕事は急増した。学力低下が騒がれ、授業時間が増えた。小学校では英語が教科になった。思考力や判断力、表現力を求める「主体的、対話的で深い学び」の導入で評価内容や方法も変わった。いじめや不登校の指導も大変だ。だが、地方財政などの改革で小中学校の教員給与の国庫負担は2分の1から3分の1に減り、自治体の財政力の差で正規教員の比率が左右されやすくなった。現場で無理を重ねた結果、2016年度の文科省調査では中学校で6割近く、小学校で3割強の教員が過労死ラインとされる月80時間超の残業をしていた。週の平均勤務時間は06年度の調査より増えたが、この間の主な対策は業務の効率化や教員の意識改善ぐらいだ。働き方改革は必須だが、状況を改善し、教員がゆとりを持って子どもと向き合うには人手が要る。教育費の公的支出を国内総生産(GDP)比でみると、日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国で最低水準にある。教育予算を拡大し、子ども1人当たりの正規教員数や事務職員らスタッフを充実させたい。「少子化で将来教員が余ると困るから、今は非正規に頼る」という政策のままでは、事態は深刻化するだけだ。法定の教員数を正規教員で確保し、教員と子どもたちの環境を改善するべきだ。そのためには政治家の決断が必要だ。「聞く力」があるという岸田文雄首相はぜひ、学校現場の悲鳴を聞いてほしい。

<太陽光発電で市庁舎の電力自給も可能>
PS(2022年2月25日追加):*11-1のように、佐賀県小城市は本庁舎に太陽光発電設備を整備して、72時間以上の非常用電源を確保するとともに、年間約1千万円かかっていた電気料金を太陽光発電で賄い、脱炭素化の取り組みを促す国の補助金や返済の5~7割を国が負担する地方債を活用してエネルギー消費量が少ない空調やLED照明への切り替えも進めたそうだ。なお、駐車場に急速充電器を設置してEVに有料で充電したり、建物の壁面や舗装でも太陽光発電を行ったりすれば、電力料金を節約できるだけでなく、電力料金で税外収入を得ることも可能だ。
 そのような中、*11-2のように、ウクライナ情勢等も受け、「①原油価格が値上がりしたから補助金を拡充せよ」「②ガソリン税の上乗せ部分を停止せよ」等の圧力が与野党から強いが、国産再エネとEVを2000年代から速やかに普及させていれば、このようなことで「緊急事態だ」「緊急事態だ」と言って大騒ぎする必要はなかった。そのため、今でも原油高に対応して補助金をばら撒くべきなのか、再エネやEVの補助金を増して普及を促すべきかは、将来のことも考えて原油高上昇を根本的に解決する方向で予算を使うべきである。
 さらに、CO₂排出を0にすることを名目に原発を推進する動きがあるが、*11-3のとおり、「③事故に伴うコスト上昇や最終処分費用のため原発は安価でない上、将来に負担を残すこと」「④原発の生涯で考えれば気候危機対策としても限定的であること」等のため、「⑤依存度低減→脱原発」に舵を切るべきことは明らかだ。また、ウクライナを見ればわかるとおり、原発の存在は安全保障上の脅威でもあるため、「頭隠して尻隠さず」にならないようにすべきだ。

  
  2021.6.21MotorFan      2022.2.16エネ百貨    2022.2.24日経新聞

(図の説明:左図のように、2021年6月の段階で、原発がエネルギー自給率に貢献するという論調は少なくなかった。しかし、中央及び右図のように、再エネのコストはその普及とともに下がるため、2030年にはコスト競争でも太陽光発電が最も安くなる。さらに、日本では、再エネが自給率100%以上を視野に自国で完結できる唯一のエネルギー自給率向上策なのだ)

*11-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/815522 (佐賀新聞 2022年2月24日) 小城市庁舎、太陽光で電力自給 全国初、24日から本格運用
 小城市が三日月町の本庁舎に整備していた太陽光発電設備が完成した。24日から本格運用し、庁舎内の全ての電力を太陽光発電で賄う。市によると、再生可能エネルギーで自治体庁舎の全電力を自給する取り組みは全国で初めて。市は23日、2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにすることを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言した。職員と来庁者用の駐車場に設けた屋根の上に1200枚、総出力500キロワットの太陽光パネルを載せた。余った電力をためる大型の蓄電池も整備し、災害や天候不順で発電できなくても、人命救助の目安になる72時間分の電力を供給する。電力会社から電気を購入せずに自給することで年間約360トンのCO2排出量を削減でき、約1千万円かかっていた年間の電気料金もゼロになるという。総事業費は8億6240万円。脱炭素化の取り組みを促す国の補助金や、返済の5~7割を国が負担する地方債を活用し、エネルギー消費量が少ない空調やLED照明への切り替えを進めた。庁舎の東に位置し、災害時の避難所になる三日月保健福祉センターにも照明や空調の稼働に最低限必要な電力を供給する。江里口秀次市長は23日の完成式でゼロカーボンシティ宣言を行い、「脱炭素化の先進施設で、防災拠点としての機能もこれまで以上に発揮できる」と述べた。太陽光設備の導入は、自治体庁舎の非常用電源について72時間以上の稼働を促す国の指針を受けて実施した。従来は自家発電機1台を設置し、燃料を補給できなければ14時間しか稼働しなかった。

*11-2:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220222/k10013496671000.html (NHK 2022年2月22日) ガソリン高騰対策 石油元売り会社への補助金 拡充検討へ 政府
 政府はガソリン価格のさらなる上昇を抑えるため、現在、1リットル当たり5円が上限となっている石油元売り会社への補助金について、大幅に拡充する方向で検討に入りました。さらに中小企業や農業、漁業など幅広い分野向けの支援パッケージをまとめる方向です。ウクライナ情勢などを受けて原油価格は値上がり傾向で、レギュラーガソリンや灯油の価格はおよそ13年ぶりの高値水準となっています。政府は価格上昇を抑えるため、石油元売り会社に補助金を出す対策を1月下旬から行っていますが、早くも1リットル当たり5円の上限に達しています。政府はさらなる価格上昇を抑えるため、補助金について大幅に拡充する方向で検討に入りました。自民党は、緊急提言でガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する、いわゆる「トリガー条項」で示されている、1リットル当たり25円を上回る支援を求めています。政府は自民党の緊急提言を踏まえたうえで、今年度予算の予備費から手当てする方向で、5円からどれぐらい補助金を引き上げられるか、調整を進めています。また、原油価格の上昇分を中小企業が適切に価格転嫁できるような対策や農業や漁業など業種別の対策など、幅広い分野向けの支援パッケージをまとめる方向です。

*11-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220224&ng=DGKKZO80366500S2A220C2KE8000 (日経新聞 2022.2.24) 原発政策を考える(下) 依存度低減へ国民的議論を、鈴木達治郎・長崎大学教授(1951年生まれ。東京大博士(工学)。元内閣府原子力委員会委員長代理)
<ポイント>
○原発の脱炭素電源としての役割は限定的
○日本では事故に伴うコスト上昇も重荷に
○政府から独立した機関で客観的な評価を
 欧州連合(EU)は2月2日、どんな事業や製品が持続可能かを示す「タクソノミー」法案で、天然ガスとともに原子力発電が「脱炭素に貢献する電源」の基準を満たすとの位置づけを示した。これに対し、EU内や一部投資家から反対の意見が表明されており、脱炭素電源としての原発を巡る議論が続いている。だが原子力発電の世界の現状を見る限り、脱炭素への貢献は限られたものになりそうだ。日本は福島第1原子力発電所事故の教訓を踏まえ、原発の現状を客観的に評価する仕組みを立ち上げ、国民的議論を経て現実的な「依存度低減」政策へかじを切るべきだ。「世界原子力産業現状報告2021年版(WNISR2021)」によると、世界の総発電量に占める原子力発電のシェアは、1996年のピーク(17.5%)から徐々に低下し、最近は10%前後で推移する。発電量も2020年は12年以来の減少(前年比3.9%減)となり、中国を除けば減少率は5.1%に達し95年以来の低水準となった。原発比率低減の傾向は国際原子力機関(IAEA)の50年までの予測でも明らかだ。原発の伸びが高いケースでは総発電量の比率は12.3%と現状の10.2%からやや上昇するが、原発の伸びが低いケースでは6.3%と大きく低下する(21年予測、図1参照)。世界の電力供給における役割が現状程度か低下するのは明らかだ。であれば脱炭素電源としての役割も限定的なものと考えざるを得ない。停滞傾向の最大の要因として考えられるのが、原子力発電の競争力低下だ。図2は、国際エネルギー機関(IEA)による50年までの電源別発電コスト予測を示したものだ。脱炭素電源としての原子力発電コストは、再生可能エネルギーの発電コストの急速な低下に追いつかないとみられる。炭素価格が入っても、脱炭素電源としての競争力を見る限り、原子力ではなく再生エネが主役になることはほぼ間違いないだろう。IAEAの統計では21年末現在、日本で33基運用中となっているが、実際に稼働している原発は10基であり、20年の原子力発電比率は4%にすぎない。日本の電源構成で原発は「主役の座」を既に降りている。さらに原発の今後を占ううえで、重要な経済性について大きな転換点を迎えるデータが21年に経済産業省から公表された。30年時点での新設原発の平均発電コスト比較で、原発は最も低コストの電源ではなくなった。政府による発電コスト比較が公表され始めてから初めてのことであり、原子力の将来を占ううえでも重要な転換期といえる。経済性悪化の背景には、当然のことながら原発事故の影響がある。経産省の発電コスト検証ワーキンググループの推定によると、事故後の追加的安全対策費は発電コスト換算で1キロワット時あたり1.3円(15年には同0.6円)にのぼる。事故リスク対応費用も同0.6円(15年には同0.3円)に上昇している。さらに核燃料サイクルコストも上昇している。青森県六ケ所村に建設中の再処理工場の総事業費は、今や14.4兆円(15年には12.6兆円)にのぼるとされ、発電コストに換算すると同0.6円(15年には同0.5円)となっている。これらのコストは今後も上昇する可能性が高く、原発の競争力は改善する見通しが立たないのが現状だ。政府は21年6月に発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で、原子力産業も成長戦略を担う産業として位置づけた。その中で、小型炉や高速炉などの開発が改めて打ち出された。一方、政府は21年10月、新しいエネルギー基本計画を閣議決定した。この中で原子力発電については前回(18年)と同様、原発事故の反省を踏まえ「依存度をできる限り低減する」ことを再確認した。この一見矛盾する政策が現在の原子力を巡る議論の迷走を生んでいる。依存度をできる限り低減するための具体的な政策は一切示されていない。さらに高速増殖炉「もんじゅ」の廃止が決定した後も、核燃料サイクルについては議論もされていない。現実は「消極的な現状維持」政策とも呼べる。政府は30年度の原発比率を20~22%とする目標を掲げるが、とても実現できそうにない。原子力発電を主要電源と位置づける大前提だった経済性も揺らいでおり、もはや原発はいわば「肩を壊したエース」になったことを認識すべきだ。NHK世論調査(20年11~12月)によると、7割近い国民が原発依存低減を望んでおり、再稼働についても賛成が16%に対し反対は39%にのぼる。国民の信頼は全く回復していない。そうした状況で「脱炭素電源」を担う成長産業と言われても、国民は戸惑うだけだ。この状況を考えれば、70年代の石油危機以降とってきた「原発拡大」政策から、原子力依存度を低減する方向に明確にかじを切るべき時期が来たのではないか。具体的には、原発拡大政策の柱だった電源三法、特に立地自治体への交付金制度を見直す必要がある。高速炉と核燃料サイクルの推進を大きな目標としてきた原子力研究開発も、廃炉や廃棄物処理・処分を最大の柱とする方向に転換すべきだろう。使用済み燃料の最終処分の見通しもない現状を考えれば、50年代から維持してきた「全量再処理路線」の見直しも不可避だ。原発事故から間もなく11年を迎える。原発事故が残した負の遺産はいまだに重く、国民の負担となっている。何よりも事故炉の廃止措置は、技術的に最も困難な課題であるとともに、経済的にも社会的にも今後40年以上にわたり取り組んでいかなければならない問題だ。福島の復興と避難した被災者の健康、生活、環境回復なども、負の遺産として東京電力のみならず政府が責任を持って取り組まなければいけない課題だ。こうした負の遺産への取り組みが、本来は原子力政策の最優先課題であるべきだ。事故原因の全貌もまだ明らかになってはいない。これら負の遺産が解消されないまま、原子力を成長産業として位置づけるのは、事故の反省を踏まえた原子力政策とは言い難い。負の遺産の再評価も含めて原子力発電の現状を客観的かつ総合的に評価し、国民的議論を経て原子力政策を見直す時期が来ている。これまでの評価では、原子力推進を前提とする省庁・機関が中心となっていた。推進・反対のどちらの立場にも偏らず、政府から独立した機関(例えば国会に設置した東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)で客観的な評価をすべきだ。さらに原子力の将来にかかわらず最優先で取り組まなければいけない課題(福島第1原発の廃炉、福島の復興、放射性廃棄物問題、人材確保など)が山積みだ。これらの課題については推進・反対の対立を超えた国民的議論が早急に必要である。このままでは原子力政策は迷走を続けるばかりで、国民の信頼回復も重要な問題の解決も困難だ。

<最新技術と鉄道>
PS(2022年3月4日追加):*12が、「①JR九州が利用者数の減来で、来年春、佐賀県内5市町の7駅から駅員を引き揚げる方向で検討している」「②合理化する駅は筑肥線の浜崎・東唐津、唐津線・筑肥線が乗り入れる西唐津、長崎線の牛津・多良、鍋島、鹿児島線のけやき台」と記載している。私は、居住地の埼玉県では「Pasmo」を使い、自動改札を通って電車に乗るため駅員と話すことは滅多にないが、唐津線の無人駅「山本」からディーゼルカーに乗った時は、どこで切符を買ったらよいかわからず、不安な気持ちになった。つまり、切符の自販機や自動改札機があれば無人でも問題ないのだが、稀に助けが必要な人もいるため、無人駅にはコンビニやスーパーを近接させ、店員に世話係をしてもらえばよいと思う。駅に近い店は、乗客にとっても便利なので繁盛し、関係者全員にメリットがあるだろう。
 なお、JRも人員削減によるコストカットだけを考えるのではなく、ディーゼルカーをEVや燃料電池車に変更したり、列車を自動運転化したりしてコストダウンすると同時に、高架にして路線に超電導電線を引き、高架下の土地は貸し出して、運賃以外にも送電収入や土地の賃貸料を得る方法を考えた方が、持っている資産をフルに活用して収入に繋げることができると思う。

  

(図の説明:左図は、オシャレだが小さな志津川駅で、窓ガラスにシースルーの太陽電池がついている。中央の図は、現在、日本で使われている蓄電池電車で、右図は、線路もないのに自動運転で走っている中国の電車だ。現在は、このように、多様なコストダウンの方法ができている)

*12:https://news.yahoo.co.jp/articles/ad5f88602126236cc8db8f828f5bb18fb8ec2f05 (佐賀新聞 2021/12/22) 佐賀県内7駅「合理化」検討 JR九州 来春、駅員引き揚げも 営業体制、沿線市町と調整
 JR九州が来年春、唐津市など佐賀県内5市町の7駅から駅員を引き揚げる方向で検討していることが21日、分かった。人口減少や新型コロナウイルスの影響で利用者数が減り、大幅な減収になっている経営状況を踏まえ、異例の規模で合理化を図るとみられ、近く発表する。駅の営業体制を沿線市町と調整しており、無人化の回避を検討している駅もある。複数の関係者によると、JRが体制を合理化する駅は筑肥線の浜崎、東唐津▽唐津線で筑肥線も乗り入れる西唐津(いずれも唐津市)▽長崎線の牛津(小城市)、多良(藤津郡太良町)、鍋島(佐賀市)▽鹿児島線のけやき台(三養基郡基山町)。12月中旬に無人化の方針が明るみに出た鍋島、けやき台以外にも5駅が合理化の対象になっている。JR側が、佐賀県や7駅の沿線市町に駅員引き揚げなど営業体制の合理化を説明した。昨年4月に窓口の駅員を配置しない形になった多良駅では一部の時間帯に駅員が巡回していたが、これも合理化する方針とみられる。JR側と沿線市町は、それぞれ対応を調整している。8月に新駅舎が完成したばかりの浜崎駅など、各駅の個別の事情も踏まえ、人員の費用負担などの調整次第では有人駅が維持される可能性もあるという。JR九州管内の計568駅のうち、無人駅は304駅ある。県内では59駅のうち、6割近い33駅が無人になっている。新型コロナの流行やテレワークの普及などで鉄道需要は減少し、2020年度の鉄道運輸収入は会社設立以来、最低だった。

| 経済・雇用::2021.4~ | 11:47 PM | comments (x) | trackback (x) |

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