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2012.11.9 暗黒なのは、司法だけですか? メディアもでしょう。
 東京電力の女性社員殺害事件でネパール人男性が犯人として捕まった時、被告となった時点では有罪か無罪かわからないにもかかわらず、メディアは、何度も何度も、この外国人男性に対して批判的な視点からの情報を流したと記憶している。このような情報の流し方は、一般の人が裁判員になる裁判員裁判では、裁判所や検察のような故意ではないにしても、過誤の判断を生む温床となるため、メディアも疑わしいというだけの時点では、犯人や被告の名前を報道しない方がよいと、私は思う。そして、これを報道したからといって、「警察は頑張っているー」という宣伝はできるが、一般の人への社会的利益はない。

 マイナリさんの件では、*1~*3のように、再審の結果、検察も裁判所も過ちであったことが、最近わかった。検察は、そうなった理由をDNA鑑定などの科学捜査の進歩の結果と説明しているが、DNA鑑定の限界と犯人として特定できる確率については、その手法を使う時からわかっていなければ捜査には使えないため、「科学捜査の進歩の結果」というのは言い訳になる。

 さらに、直接証拠がなく一貫して無罪を訴えていたマイナリさんが、15年間もの身柄拘束と服役で人生の重要な半分と家族との暮らしを奪われたことは大きな問題であるにもかかわらず、司法は、大した謝り方も損害賠償もしないというのは、とても許されることではない。そして、冤罪を着せられる人は、外国人、身寄りのない人、嫌われている人など、有罪になっても支援者がいない人だと言われているのも気がかりだ。また、松本サリン事件のケースでは、本当の重要な犯罪を見逃し、げすの勘ぐりのような安っぽいストーリー仕立てで被害者の配偶者を犯人として逮捕したため、被害者は、二重に被害を受けた。

 そして最近は、*4のように、尼崎の連続殺人事件に関し、どのメディアも、逮捕した警察からのみ情報を入手して、何度も何度も「角田美代子被告」を鬼女として報道し続けているが、これは一般の人が聞いたからといって大した利益のない情報である。それより、公債発行特例法案の中身の方が、よほど今後の国民生活に関係があるにもかかわらず、このような報道をする場合は何か意図がありそうだ。そして、ここで、角田美代子被告は外国人女性であることにも注意しておきたい。さらに、報道された写真は間違いだったそうだが、わが国のメディアの質には呆れてものが言えない。  ぎょ

*1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012103002000115.html  (東京新聞 2012年10月30日) 東電女性再審 “暗黒司法”そのものだ
 東京電力の女性社員殺害事件で、無罪となるネパール人男性の再審公判は、司法界の“暗黒”を物語る。検察も裁判所も過ちを検証せねばならない。真犯人の追及にも本腰で取り組むべきだ。
 再審の公判で「無罪」と主張したのは、検察側だ。弁護側はずっと無実を訴えてきた。これで結審し、ネパール人男性の無罪は確実だが、もっと早く冤罪(えんざい)から救済できなかったか悔やまれる。昨年夏に被害者の体内から採取された精液のDNA型鑑定の結果が出た。男性とは別人の「X」のもので、しかも殺害現場にあった体毛の型と一致していた。この時点でも、検察は“撤退”が可能だったはずだ。ところが、今年六月に再審開始決定が出ても、検察側は異議を申し立てていた。検察が白旗を揚げる決め手になったのは、女性の爪に残っていた付着物をDNA型鑑定したところ、やはり「X」のものだったことだ。被害者と最後に接触したのは「X」である可能性が濃厚になった。爪の付着物は、被害者の激しい抵抗の痕跡かもしれない。
 だが、弁護側が爪に着目して、鑑定書を求めたのは二〇〇七年である。検察は裁判所に促されても、「鑑定書はない」「爪からは何も検出されていない」などと、虚偽に近い不誠実な姿勢だった。最後まで有罪にこだわり続けた検察の態度は非難に値する。有罪を確定させた裁判所も問題だ。一審は「無罪」だった。「別人が犯行現場の部屋を使った可能性がある」「精液の入った避妊具は、事件当日に使用したと断定できない」などと、新しい鑑定技術がなくとも、男性を犯人とすることに疑いを持ったのだ。ところが、二審はわずか四カ月のスピード審理で「逆転有罪」となった。なぜ一審が下した“赤信号”を素通りし、最高裁まで追認したのか。さまざまな証拠が「X」が真犯人だと指し示しているような現在、裁判所はどのような弁解をするのだろうか。
 当初からネパール人男性を犯人だと決めつけた捜査に問題があるのは間違いない。重要物証をDNA型鑑定しなかったのも致命的だ。被告人に有利な証拠も得られるよう、全面証拠開示の必要性も、この事件は訴えている。司法が「暗黒」と呼ばれないためには、他にも冤罪が潜んでいないか、早急にチェックすることだ。もはや正義に奉仕すべき司法の倫理さえ問われている。

*2: http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/0005490233.shtml
(神戸新聞社説 2012/10/30)  東電事件無罪へ/捜査の検証が欠かせない 
 1997年に起きた東京電力女性社員殺害事件で、強盗殺人の罪に問われて無期懲役となったネパール人ゴビンダ・プラサド・マイナリさんの無罪が確定する見通しになった。控訴審をやり直す再審の初公判が東京高裁であり、マイナリさんの有罪判決を求めてきた検察が無罪主張に転じたからだ。再審は1日だけで結審し、近く無罪が言い渡されるのが確実だ。すでに母国に戻っているマイナリさんは、支援者を通じて「今更遅すぎる。謝ってほしい」と訴えている。
 直接証拠はなく、一貫して無罪を訴えていたが、マイナリさんは15年間に及ぶ身柄拘束と服役で家族との暮らしを奪われた。なぜ「有罪」になったのか、徹底した洗い直しが必要だ。再審請求審で被害者の付着物のDNA鑑定から真犯人の存在に直結する結果が出ていた。さらに、再審前に高検が被害者の爪の付着物を鑑定したところ、同じDNA型が検出された。マイナリさんの「有罪」維持は行き詰まり、検察側は「無罪が相当」とする意見書を東京高裁に提出していた。
 検察は、「犯人として長期間身柄を拘束したことは誠に申し訳なく思う」とのコメントを出したが、捜査や公判の検証はしない方針という。それでは、冤罪(えんざい)事件を繰り返す懸念がぬぐえず、信頼回復は遠のくばかりだ。最大の問題点は、早い段階から警察や検察が真犯人につながる証拠をつかんでいたのに、開示しなかったことだ。事件直後の鑑定でも、遺体の付着物からマイナリさんと異なる血液型反応が出ていたが、再審請求審まで伏せられていたことが分かっている。被害者の体内には第三者の精液が残されていたほか、被害者の爪にも同じ第三者の付着物があった。検察がその存在を認めて最新技術による鑑定を行ったのは再審請求審以降のことだ。警察と検察が状況証拠からマイナリさんを犯人と決めつけ、その立件や立証に好都合な証拠だけを開示してきた疑いがある。DNA鑑定など科学捜査の進歩によって、そうした捜査の在り方があらためて否定されたといえる。警察と検察は、捜査の誤りを謙虚に認め、証拠開示と科学捜査による証拠の再点検に取り組むべきだ。
 法改正で時効撤廃の対象となったことで、警視庁はこの事件の再捜査を始める構えだ。真犯人の逮捕は、マイナリさんにとって何よりの名誉回復になる。

*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012110902000135.html  (東京新聞社説 2012年11月9日) 再審無罪 絶望的な司法みつめよ
 冤罪(えんざい)が相次ぐことこそ、犯罪的だ。東京電力の女性社員殺害事件で、ネパール人男性が再審で無罪となった。裁判員時代には市民が誤判しないよう、捜査や裁判の在り方を根本から見直すべきだ。 「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である」。一九八五年に刑事法の大家だった平野龍一・元東大学長は論文にそう記した。八〇年代には免田事件や財田川事件、松山事件、島田事件と、死刑囚が相次いで再審無罪となった。この論文の言葉が再び、現代の刑事司法に投げかけられているようである。二〇一〇年の足利事件、一一年の布川事件、今回の東電女性社員殺害事件と三年連続で、いずれも無期懲役が確定した人に「再審無罪」の判決が出た。状況はやはり、かなり絶望的である。
 重要なのは、なぜ誤判したのか、その原因を徹底究明することだ。しかし、今回の事件について、検察はなお「捜査・公判に特段の問題はなかった」とし、検証結果も公表しないという。不可解というしかない。捜査にも、裁判にも欠陥があったのは間違いない。むしろ警察や検察、裁判所は自らの過ちに客観的な分析ができないだろう。第三者機関を設け、法的な調査権限を付与して、冤罪を生んだ原因を明らかにすべきである。日弁連によれば、欧米諸国では誤判事件が発生すると、独立した委員会を設けることが広く見られるという。今回の事件では、とくに証拠開示に問題があった。再審無罪の決め手となったのは、女性の体内の精液や爪の付着物のDNA型鑑定だ。逮捕から十五年半。この事実に到達したのはあまりに遅い。
 裁判員時代になり、市民も「有罪・無罪」の局面に立つ。正しい判断をするためにも、被告人に有利な証拠もすべて明らかにすべきである。検察の証拠隠しを許してはならない。全面的な証拠開示は急務といえよう。冤罪事件では自白を強要する捜査手法にも原因がある。取り調べの全過程の録音・録画も不可欠だ。否認すると長期間、身柄を拘束する「人質司法」の問題も改善せねばならない。ネパール人男性は、手書きで綴(つづ)った。「日本のけいさつ けんさつ さいばんしょは よくかんがえて わるいところを なおして下さい」-。無実の人を罰しないことは、刑事裁判の最大の鉄則である。男性の訴えを真正面から受け止めるときだ。

*4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012103101001142.html
(東京新聞 2012年10月31日) 共同通信が別人写真を誤配信 尼崎連続変死事件で
 兵庫県尼崎市の連続変死事件で、共同通信が「角田美代子被告」として配信した写真は31日、尼崎市に住む別の女性(54)だったことが分かった。共同通信は「絶対にあってはならないミス」として女性に謝罪する。共同通信は23日、美代子被告の長男が小学校に入学した1993年撮影の集合写真を入手し、被告を知る関係者から「これは美代子被告だ」との証言を得た上で出稿した。しかし、30日になって女性が弁護士を通じて「写真は私だ」と名乗り出たため、写真を取り消した。その上で、31日朝まで関係者に再取材するなど確認作業を進めたが、写真が美代子被告であることを示す新たな補強材料はなく、誤配信と判断した。同じ写真を掲載した読売新聞は31日付朝刊でおわび記事を載せた。NHKと民放各局も30日夜から31日午前のニュースや情報番組で謝罪した。
 吉田文和共同通信編集局長の話:別人の写真を角田美代子被告と間違えて配信するという、絶対にあってはならないミスです。間違えられた方や関係者、読者に多大なご迷惑をお掛けしたことを深くおわびします。複数の関係者から証言を得ていましたが、結果的に確認が不十分でした。教訓を重く受け止め、今後より厳格な確認作業で再発防止に努めます。

| 報道の問題点::2012.11~ | 04:02 PM | comments (x) | trackback (x) |

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