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2013,05,25, Saturday
*3:原発避難区域と5ミリシーベルト地帯(当時) →2013.5.28 避難指示区域決定(日本農業新聞) 多くのメディアで報道していないが、*1のように、国連の人権理事会が、一般住民の被曝基準について、現在の法令が定める年間1ミリシーベルトの限度を守り、それ以上の被曝をする可能性がある地域では住民の健康調査をするよう、日本政府に要求し、国が年間20ミリシーベルトを避難基準としている点については、「人権に基づき1ミリシーベルト以下に抑えるべき。年間1ミリシーベルトを超える地域について、避難に伴う住居や教育、医療などを支援すべきだ」としているが、まさに正論である。 つまり、この勧告は、これまでの放射線防護に関する知見から見て当たり前なのだが、*3のように、日本政府は、年間20ミリシーベルト以下の地域で帰還準備を本格化しようとしており、避難に関する基準は安全性よりも、避難者数、避難地域、経済性に配慮して作られていると言わざるを得ない。ちなみに、チェルノブイリ事故のケースでは、避難地域・農業禁止区域は、*2のとおりである。 また、原発被災者支援法の基本方針の策定が放置されていることを批判している*4の記事でさえ、子ども以外には放射線被曝の影響がないかのような書きぶりになっているのは驚くほかない。さらに、*5では、暫定許容値(1キロ当たり400ベクレル)以下の牛ふん堆肥を使って、大豆づくりを始められることを喜んでいるが、そもそも暫定基準は甘い基準である上、濃度が基準値内であっても総量が多ければ、それで栽培された作物がどうなるかについては保証の限りではない。そして、そのようなことに気をつける人を、「風評被害を撒き散らす人」と決めつける論調が多いが、これは人権侵害であり、日本産農産物全体の安全性という価値も落としている。 *1:http://mainichi.jp/select/news/20130524k0000e040260000c.html (毎日新聞 2013年5月24日) 福島第1原発事故:国連報告書「福島県健康調査は不十分」 東京電力福島第1原発事故による被ばく問題を調査していた国連人権理事会の特別報告者、アナンド・グローバー氏の報告書が24日明らかになった。福島県が実施する県民健康管理調査は不十分として、内部被ばく検査を拡大するよう勧告。被ばく線量が年間1ミリシーベルトを上回る地域は福島以外でも政府が主体になって健康調査をするよう求めるなど、政府や福島県に厳しい内容になっている。近く人権理事会に報告される。報告書は、県民健康管理調査で子供の甲状腺検査以外に内部被ばく検査をしていない点を問題視。白血病などの発症も想定して尿検査や血液検査を実施するよう求めた。甲状腺検査についても、画像データやリポートを保護者に渡さず、煩雑な情報開示請求を要求している現状を改めるよう求めている。 また、一般住民の被ばく基準について、現在の法令が定める年間1ミリシーベルトの限度を守り、それ以上の被ばくをする可能性がある地域では住民の健康調査をするよう政府に要求。国が年間20ミリシーベルトを避難基準としている点に触れ、「人権に基づき1ミリシーベルト以下に抑えるべきだ」と指摘した。このほか、事故で避難した子供たちの健康や生活を支援する「子ども・被災者生活支援法」が昨年6月に成立したにもかかわらず、いまだに支援の中身や対象地域などが決まっていない現状を懸念。「年間1ミリシーベルトを超える地域について、避難に伴う住居や教育、医療などを支援すべきだ」と求めている。 ◇グローバー氏の勧告の骨子 <健康調査について> ・年間1ミリシーベルトを超える全地域を対象に ・尿や血液など内部被ばく検査の拡大 ・検査データの当事者への開示 ・原発労働者の調査と医療提供 <被ばく規制について> ・年間1ミリシーベルトの限度を順守 ・特に子供の危険性に関する情報提供 <その他> ・「子ども・被災者生活支援法」の施策策定 ・健康管理などの政策決定に関する住民参加 *2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%96%E3%82%A4%E3%83%AA%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E4%BA%8B%E6%95%85 チェルノブイリ原子力発電所事故(ウィキペディアから抜粋) およそ1週間後の1986年5月までに、当該プラントから30km以内に居住する全ての人間(約11万6000人)が移転させられた。その他、当該プラントから半径350km以内でも、放射性物質により高濃度に汚染されたホットスポットと呼ばれる地域においては、農業の無期限での停止措置および住民の移転を推進する措置が取られ、結果として更に数十万人がホットスポット外に移転した。ソ連の科学者の報告によると、28,000km2が185kBq/m2を超えるセシウム137に汚染した。当時、約83万人がこの区域に住んでいた。約10,500km2が555kBq/m2を越えるセシウム137に汚染した。このうち、ベラルーシに7,000km2、ロシア連邦に2,000km2、ウクライナに1,500km2が属する。当時、約25万人がこの区域に住んでいた。これらの報告データは国際チェルノブイリプロジェクトにより裏付けられた *3:http://digital.asahi.com/articles/TKY201305240624.html?ref=pcviewer (朝日新聞 2013年5月24日) 帰還基準厳格化、見送る 民主政権時、原発避難増を懸念 福島第一原発の事故で避難した住民が自宅に戻ることができる放射線量「年20ミリシーベルト以下」の帰還基準について、政府が住民の安全をより重視して「年5ミリシーベルト以下」に強化する案を検討したものの、避難者が増えることを懸念して見送っていたことが、朝日新聞が入手した閣僚会合の議事概要や出席者の証言で明らかになった。民主党政権が2011年12月、三つの避難区域に再編する方針を決め、安倍政権も継承。再編は今月中に川俣町を除く10市町村で完了し、20ミリ以下の地域で帰還準備が本格化する。避難対象や賠償額を左右する基準が安全面だけでなく避難者数にも配慮して作られていた形で、議論が再燃する可能性がある。 5ミリ案が提起されたのは11年10月17日、民主党政権の細野豪志原発相、枝野幸男経済産業相、平野達男復興相らが区域再編を協議した非公式会合。議事概要によると当初の避難基準20ミリと除染目標1ミリの開きが大きいことが議論となり、細野氏が5ミリ案を主張した。チェルノブイリ事故では5年後に5ミリの基準で住民を移住させた。年換算で5・2ミリ超の地域は放射線管理区域に指定され、原発労働者が同量の被曝(ひばく)で白血病の労災認定をされたこともある。関係閣僚は「5ミリシーベルト辺りで何らかの基準を設定して区別して取り組めないか検討にチャレンジする」方針で一致した。 ところが、藤村修官房長官や川端達夫総務相らが加わった10月28日の会合で「20ミリシーベルト以外の線引きは、避難区域の設定や自主避難の扱いに影響を及ぼす」と慎重論が相次いだ。5ミリ案では福島市や郡山市などの一部が含まれ、避難者が増えることへの懸念が政府内に広がっていたことを示すものだ。11月4日の会合で「1ミリシーベルトと20ミリシーベルトの間に明確な線を引くことは困難」として20ミリ案を内定。出席者は「20ミリ案は甘く、1ミリ案は県民が全面撤退になるため、5ミリ案を検討したが、避難者が増えるとの議論があり、固まらなかった」と証言し、別の出席者は「賠償額の増加も見送りの背景にある」と語った。 *4:http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2013/m05/r0522.htm (岩手日報 2013年5月22日) 原発被災者支援法 基本方針策定なぜ放置 「原発事故直後、子どもを屋外に出した。健康不安を背負っていかなければならない。早期発見、早期治療の徹底をお願いしたい。関東の被害者も見捨てないでほしい」。栃木県から横浜市に避難した女性は訴えた。「年末を迎えるたび、『来年も暮らせるだろうか』と不安になる。住宅支援がいつ打ち切られるか心配だ。支援法に基づき、継続的で体系的な支援策をつくってほしい」。福島市から札幌市に自主避難している男性の声だ。発言したのは、「原子力事故による子ども・被災者支援法」をテーマに福島市内で開かれたフォーラムの場。支援法は全会派共同提案・全会一致の議員立法により昨年6月に成立した。東京電力福島第1原発事故で被災した住民の生活を支えるのが趣旨だ。子どもや妊婦に対する医療費の減免、子どもの健康診断の実施、親と離れて暮らす子どもの支援などを盛り込んだ。自主避難者も対象に含めて、国が住宅の確保や就業を支援するとしている。しかし、成立から1年近くたつのに、施策推進に必要な基本方針策定は棚上げされたままだ。国会議員の総意でつくったはずだが、政府の腰は重い。最大の課題は対象地域の未決定。同法の対象は「避難区域に住んでいた人」か、「一定基準以上の放射線量が計測された地域に住んでいたか、住み続けている人」だが、この一定基準が決まらない。一つの目安となりうるのは追加線量が「年間1ミリシーベルト以上」の汚染状況重点調査地域。これだと本県を含む8県の約100市町村に及ぶ。設定によっては対象者が拡大し、財源負担が膨らむ。実際、被害を受けているのは広範囲にわたる。それこそが原発の過酷事故がもたらす恐るべき影響だ。支援法は、原子力政策を進めてきた国の社会的責任を明記した。住民や避難者に対して手だてを講じる努力を政府は惜しんではならない。フォーラムの実行委員長を務めた熊坂義裕・社会的包摂サポートセンター代表理事(前宮古市長)は、同センター運営の電話相談に寄せられる被災者たちの苦しい状況を紹介し、「支援法に魂を入れていかなければならない」と訴える。復興庁は3月、「原子力災害による被災者支援施策パッケージ」を公表したが、「全く不十分」(日弁連)と批判が強く、支援法が求める水準を満たすものではない。原発再稼働にシフトする政権だが、原発事故被害者の救済こそが政府に求められる優先施策のはずだ。被害者を置き去りにしたまま原発に回帰する政策は許されない。 *5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=21149 (日本農業新聞 2013/5/24) 滞留堆肥やっと日の目 大豆畑散布スタート 福島県白河市 東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で、福島県内の畜産農家の敷地に滞留していた国の放射性物質の暫定許容値(1キロ当たり400ベクレル)以下の牛ふん堆肥が、事故から2年2カ月を経てようやく動きだした。東京電力が費用を負担し、畜産農家の敷地から耕種農家の畑に運搬・散布することが決まり、23日、第1弾として白河市内で作業が始まった。他の地域でも順次作業が始まり、14年6月までには滞留が解消する見通しだ。 ●許容値以下 来年は解消 この日は作業を受託するJAしらかわの子会社、(株)JAしらかわアグリが、白河市大信地区の畜産農家3戸の堆肥舎から堆肥を運び出し、同地区の大豆畑に散布した。作業は6月7日までの予定で、堆肥277トンを大豆畑13・6ヘクタールに施用する。JA管内では、推定2000トン以上が滞留しているという。今後、管内の他の地域でも作業を始める。同地区で乳牛80頭を飼育する佐藤房義さん(39)は「これでやっと(滞留していた)堆肥が動きだす」と胸をなでおろした。同地区で大豆1ヘクタールを栽培する渡辺一男さん(64)は、散布作業を見ながら「堆肥で地力が向上すれば、いい大豆ができる」と期待を込めた。作業員として参加した、同地区で肥育牛30頭を飼育する國井孝士さん(62)は「今年は堆肥のもらい手が見付からず、自分の水田に通常の2倍の量をまいた。今回の取り組みを契機に、何とか前に進んでいくしかない」と語った。作業に立ち会ったJAの小室信一組合長は「(問題解決に向け)一歩進んだ。畜産、耕種両方の農家にとって意義がある」と強調した。県によると、県内では暫定許容値を下回っていても、作付け制限や自粛による耕作面積の減少や、「風評被害」で堆肥の利用が進まず、推計15万トンが滞留している。今後、地域ごとに設置した、市町村やJAで構成する協議会が畜産農家と耕種農家のマッチングや運搬・散布計画を決め次第、作業に入る予定だ。
| 原発::2013.5~7 | 06:06 PM | comments (x) | trackback (x) |
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