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2013,10,26, Saturday
*5の表3 2013.9.30放射線量 2013.10.1朝日新聞より (1)許容される線量基準は、本当に「年間1~20 mSv」か *1に書かれているように、国際原子力機関(IAEA)が、「年間追加被曝線量を1ミリシーベルト(以下“mSv”)とする政府の長期目標は、必ずしも達成する必要はなく、環境回復に伴う利益と負担のバランスを考えて最適化すべき」「住民との同意を得ながら復興対策とともに資金を適切に配分するのが重要」と報告したそうだが、IAEA除染専門家チームのフアン・カルロス・レンティッホ団長は、IAEA核燃料サイクル・廃棄物技術部長で、核燃料サイクルを再開したい原子力畑の人であり、人間に対する核物質の影響に詳しい医学や疫学の専門家ではない。 また、除染費用という負担を負うべき東電・国は、除染による利益を受けるべき住民とは別の主体である。そのため、環境回復に伴う利益と負担のバランスをとれば、東電・国の利益の為に住民に負担を強いることになり、不公正だ。これを解決するには、まず、年間1~20mSvの地域の住民には移住の権利を与え、そのためのコストと逸失利益は、東電・国が負担すべきである。 さらに、*2によれば、IAEAの報告を受けて、原子力規制委員会の田中俊一委員長が、10月23日の記者会見で「(1mSvという数字が)いつの間にか独り歩きしている」と、年間被曝線量限度1mSvは不当であるかのような見解を述べているが、1mSv未満というのは、*5のICRPの2007年勧告で、「平常時の一般人年間被曝線量限度は1mSv未満」と定められていることによるものだ(上図左)。そして、医療で放射線を使う場合のように、個人の中で便益がまさっている場合にのみ、それ以上の被曝を許容するものであるため、政府に都合のよい解釈が目に余る。 (2)日本の安全基準は信頼できるのか このように、「一般人の年間被曝線量限度」という健康や命に最も重要で測りやすい基準でさえ、除染費用とのバランスで(!)、なし崩し的に緩められようとしている。そして、食物や空気から受ける内部被曝の影響は、この年間被曝線量限度には含まれておらず、身体には、さらなる大きな負荷がかかっているが、内部被曝に関する基準も、経済性とのバランスを取った科学的根拠のないものだ。 その上、*3の「本来は、庭先など野外と居間など屋内の線量を実際に測って比較すべきだが、そうしていなかった」というように、命にもかかわる帰還目安線量の算出が意図的であり、精度が低い。 もちろん、*3の「実測もせずにIAEAの結果と合わせるような測り方をした」、*4の「福島原発で被曝した人の因果関係を否定して労災を認めなかった」等のように、政府が決めた安全基準外の状況では原発事故との因果関係を否定すれば、一応、「日本の安全基準は正しかった」という結論にすることはできる。 しかし、これは、科学的常識から程遠く、自然科学のいろいろな角度から自然現象を調査すれば、隠蔽したことまで含めて、すぐに明るみに出る行為だ。自然現象の結果が出てからでは遅いけれど・・。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20131022&ng=DGKDASGG2102J_R21C13A0MM8000 (日経新聞一面 2013.10.22) 年1ミリシーベルトの除染目標達成「必ずしも必要ない」 IAEA報告 東京電力福島第1原発事故に伴う除染の状況を検証した国際原子力機関(IAEA)の専門家チームは21日、報告書(暫定版)をまとめた。年間追加被曝線量を1ミリシーベルトとする政府の長期目標について、「必ずしも達成する必要はない。環境回復に伴う利益と負担のバランスを考えて最適化する必要がある」と指摘。住民との同意を得ながら復興対策とともに資金を適切に配分するのが重要だとした。報告書は同日、石原伸晃環境相に提出した。環境省は報告書を踏まえて住民の健康管理などを含めて今後の除染のあり方を検討する。国際的に許容される線量基準は1~20ミリシーベルトで、日本政府は1ミリシーベルトを目標に設定。同省は2013年度まで除染に1兆円を超す資金を投じている。政府は国直轄で行う福島県内の除染の完了時期を年内に示す方針だ。報告書は今後活動を改善するための8つの助言をまとめた。「環境回復活動が良好に進捗している」とし、政府の除染活動をおおむね評価した。ただ除染作業が遅れている。除染が終わった地域でも線量が十分に下がっていない地域もあり「年間1ミリシーベルトの追加被曝線量は、除染活動のみによって短期間に達成できるものではないことをもっと住民に説明すべきだ」と強調した。 *2:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2570666.article.html (佐賀新聞 2013年10月23日) 年1ミリシーベルト「独り歩き」 / 被ばくで田中規制委員長 東京電力福島第1原発事故に伴う除染で国が掲げる長期目標の年間追加被ばく線量1ミリシーベルトに関し、原子力規制委員会の田中俊一委員長は23日の記者会見で「(1ミリシーベルトという数字が)いつの間にか独り歩きしている」と述べた。除染を支援するため来日した国際原子力機関(IAEA)専門家チームのフアン・カルロス・レンティッホ団長が21日、年間1ミリシーベルトについて「必ずしもこだわる必要はない」と述べた見解を容認した形。 *3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013101302000097.html (東京新聞 2013年10月13日) 福島除染・帰還目安線量 算出精度に疑問 東京電力福島第一原発事故で汚染された地域で、家が放射線を遮る効果を、国がまるで環境の異なる場所の調査で計測した値を基に、算出していたことが分かった。放射線量は除染や住民帰還の目安になるが、この算出方法ではデータのばらつきが大きく、専門家も精度を疑問視している。国は、住民が避難先から帰る目安として、当面の被ばく線量を年二〇ミリシーベルト以下とし、長期的には年一ミリシーベルト以下としている。これらの目安は、除染を進めるかどうかの判断にも使われている。 問題なのは、被ばく線量を推定する際に重要となる家屋の遮へい効果の数字だ。国際原子力機関(IAEA)は、鉄筋コンクリートなら屋外の放射線を九割、木造家屋なら六割カットするとしているが、国は日本でも当てはまるかどうかを、独立行政法人日本原子力研究開発機構に調査を委託。機構は調査で、この値の正しさを確かめたという。機構はまず、福島県川俣町の五軒で、野外と屋内の窓際の線量を計測、窓際でどれくらい線量が減るかを調べた。その上で、福島市や伊達市など三市二町の百五軒について、窓際の数値から野外の数値を推計し、屋内で測った数値と比べ、家屋の遮へい効果がIAEAの値とほぼ同じと結論づけていた。 本来は、庭先など野外と、居間など屋内の線量を実際に測って比較すべきだが、そうしていなかった。統計数理研究所(東京)の石黒真木夫(まきお)特命教授によると、機構の調査方法は実測できない理由があるような場合はあり得る手法だが、川俣町のデータは少なすぎる。家によって、遮へい効果の数値が大きくばらついていることに注意する必要があるという。機構の担当者は、野外に多くの線量計を長く置くのは管理が難しいと説明。その一方、「集めたデータがまだ少なく、六割減という数値は、絶対的なものではない」とした。本紙は今年八、九月に福島県田村市や川俣町、楢葉町などの二十六軒で実測。木造家屋の遮へい効果は二割ほどとの結果を得た。計測に協力した住民たちは「避難先から帰るかどうかは、十分信用できる根拠を基にして決めたい」と語った。だが、国は本年度も機構に委託し、同様の手法で福島県内の二百軒で測り、家屋が遮る割合を算出するという。 <国の被ばく線量の推定>毎時0・23マイクロシーベルト(1マイクロシーベルトは1ミリシーベルトの1000分の1)であれば、自然界から受ける放射線を加味しても、一般人の被ばく線量限度の年1ミリシーベルトにおさまるとされる。1日のうち野外に8時間、屋内に16時間滞在する生活パターンを想定し、屋内(木造)にいれば野外の線量は6割カットされることが前提になっている。除染でも住民の帰還でも、国の長期目標の重要な目安となっている。 *4:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/dogai/499044.html (北海道新聞 2013/10/20) 福島原発で被ばく、労災認めず 厚労省、がんとの因果関係否定 東京電力福島第1原発事故の収束作業に従事した後、がんを発病したのは作業中の放射線被ばくが原因だとして労災申請した男性に対して厚生労働省が、発病は被ばくが原因ではないとして労災を認定しない決定を下していたことが19日分かった。福島事故後の原発作業員の労災申請で、被ばくとがんの因果関係をめぐる厚労省の判断が出たのは全国初。福島事故の収束作業に従事して発がんし、被ばくを理由に労災申請したのは全国で4人おり、このうちの1人。残り3人は申請に対する決定が出ておらず、このうち1人の札幌市在住の男性(55)は作業当時の様子などについて北海道新聞の取材に応じ、本紙が今月6日の朝刊で報じた。複数の関係者によると、労災が認定されなかったのは福島県外から福島第1原発に働きに来た男性。居住地や年齢は明らかになっていない。作業従事後にがんの一種である悪性リンパ腫を発症し、昨年9月以降に労災を申請していた。今年9月下旬に厚労省が開いた専門家による検討会で、《1》被ばく線量が労災認定の基準以下である《2》被ばくから発症までの期間が短い―と、被ばくと発症の因果関係を否定。これを受け今月10日に富岡労基署(仮事務所・福島県いわき市)が労災を認めないと決定。本人にも通知したという。<北海道新聞10月20日朝刊掲載> *5:http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-01-05 (2012年2月)ICRPによって提案されている放射線防護の基本的考え方 <本文> 国際放射線防護委員会(ICRP)は放射線防護の目的を以下のように定義している。 (1)放射線被ばくを伴う行為であっても明らかに便益をもたらす場合には、その行為を不当に制限する ことなく人の安全を確保すること。 (2)個人の確定的影響の発生を防止すること。 (3)確率的影響の発生を減少させるためにあらゆる合理的な手段を確実にとること。 ICRPはこれらの目的を達成するために、放射線防護体系に、正当化、最適化、線量限度という三つの基本原則を導入することを勧告している。 1.放射線防護の基本理念の変遷 (略) 2.1977年勧告以降の放射線防護の基本的な考え方 (1)1977年勧告(ICRP Publication 26) (略) (2)1990年勧告(ICRP Publication 60) (略) (3)2007年勧告(ICRP Publication 103) 主要な特徴として以下が挙げられる。(a)放射線荷重係数と組織荷重係数を更新した。(b)正当化、最適化、線量限度の適用という三つの基本原則を維持した。(c)行為と介入による防護の方法から状況に基づく方法に転換し、計画被ばく状況、緊急時被ばく状況、現存被ばく状況というすべての制御可能な被ばく状況へ三つの基本原則を適用した。(d)計画被ばく状況における実効線量と等価線量に対して1990年勧告の線量限度(表3)を維持した。(注:計画被ばく状況とは計画的に線源を導入または操業することによる被ばく状況、緊急時被ばく状況とは不測の事態または悪意の行為から生じる予期せぬ被ばく状況、現存被ばく状況とは自然放射線による被ばくや過去の行為の結果として存在する被ばく状況をいう。) また、2003年に刊行されたICRP Publication 91(A Framework for Assessing the Impact of Ionising Radiation on Non-Human Species)を踏まえ、「環境の放射線防護」の考え方を導入し、人以外の動物、植物についても参考動物と参考植物を選定して防護体系を構築する必要性を求めた。 なお、2007年勧告では主文書Publication 103は1990年勧告の報告文書に比べて簡素化され、付帯文書で個別分野に対する詳細な勧告を行う方式が採用された。例えば、医療分野における放射線防護に関してはPublication 105に詳細にまとめられている。 3.環境放射線被ばくの制限に対する考え方 (以下略)
| 内部被曝・低線量被曝::2012.9~2014.4 | 01:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
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