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2015.4.17 福井地裁の樋口裁判長は、権力におもねることなく、高浜原発再稼働を認めない仮処分を決定した。 (2015年4月18日、20日、22、23日に追加あり)
     
  福井地裁での   同規制委の主張   今後のスケジュール     他の審査中の原発
住民と関電の主張  2015.4.16日経    2015.4.15毎日      2015.4.15西日本 

(1)福井地裁の高浜原発再稼働を認めない仮処分判決は完璧である
 *1-1のように、福井地裁が高浜原発再稼働差止めの仮処分判決を出し、「新規制基準は緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない」としたのは的を得ている。しかし、上級審に上がるにつれ行政や政権の影響が強くなるため、気を抜くのはまだ早い。政府は安全が確認された原発の再稼働を進める方針に変更はないとし、福井地裁が原発を理解していないなどとしているのだ。

 しかし、*1-1の高浜原発3、4号機運転差止仮処分命令の内容は完璧で、主文で「高浜原発3、4号機を運転してはならない」と結論づけ、その理由を「A①万が一にも事故を起こしてはならないため、原発の基準地震動を地震の平均で策定するのは不合理(つまり最大に見積もって策定すべき)」「A②原発の耐震安全性確保の基礎となる基準地震動の数値だけを引き上げるような対応は社会的に許容できず、安全設計思想とも相容れない」「A③各地の原発敷地に5回にわたり到来した基準地震動を超える地震が高浜原発には到来しないというのは根拠に乏しい」「A④基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得る」「B使用済核燃料は我が国の存続に関わるほどの被害を及ぼす可能性があるのに、格納容器のような堅固な施設によって閉じ込められておらず、堅固な設備を設けるためには膨大な費用を要する」「C国民の安全が何よりも優先されるべきとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないという楽観的な見通しの下にかような対応が成り立っている」「D新規制基準に求められるべき合理性は、原発の設備が基準に適合すれば深刻な災害を引き起こす恐れが万が一にもないといえる厳格な内容を備えていることであるのに、新規制基準は緩やかすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない」としており、私も全くそのとおりだと思う。

 そして、川内原発・玄海原発を地元に持つ西日本新聞も、*1-2で、「司法が反省なき原発政策を指弾して原発政策の根本的な見直しを迫った」「関電の地震動の想定は信頼に値する根拠が見いだせない」「使用済核燃料保管施設の在り方にまで踏み込んだため、高浜原発だけでなく他の原発にも当てはまる」「決定は原発事故が『取り返しがつかない損害』をもたらす恐れがあると厳しく指弾」「新規制基準が再び『安全神話』の土壌となってはならないと警告した」としており、最近ふらふらしていた西日本新聞にしてはよくできた記事である。

 また、*2-1、*2-2、*2-3、*2-4のような報道もある。

(2)福井地裁判決に対する再稼働推進派の評価とその論理
 *3-1は、高浜原発再稼働差し止めのポイントは安全思想の違いで、「福井地裁の判断は根本的な耐震工事などでリスクを事実上ゼロにすることを求めており、リスクを抑制すればよいのかゼロにしなければならないかの考え方の違い」「東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえて刷新した原発への規制とは相いれない」「この判断に基づけば、国内の原発はどこも動かない」としている。そして、またもや「原発の再稼働が滞れば電気料金の上昇などを通じて経済への打撃が広がりかねない」と念仏のように同じことを言っている(こう書くと、「念仏は意味のあるものだ」と寺からクレームが来るかも知れないが・・)。

 しかし、規制委の田中委員長も「100%の安全はない」と述べているのであって、「絶対安全を求める樋口裁判長の論理では、事故を起こしかねない車や飛行機も使えない」などと言う人もいるが、原発が過酷事故を起こせば広い地域で長期間住めなくなり、自動車事故や航空機事故とは影響を受ける規模と期間が全く異なるため、原発は万が一にも過酷事故を起こしてはならないのである。さらに、自動車や航空機は事故の実験を繰り返して事故時の危険を小さくする機器を作っているが、原発はコンピューター上でのシミュレーションしかしておらず、配線や配管の弱さも考慮していないため、危機管理に驚くほど無頓着で、それに比べれば短期的に電気料金が上がるリスクなど取るに足りないのだ。

 そのような中、*3-2のように、経産省は、また事故の発生確率を「40年に1回」から半分の「80年に1回」として発電コストを検証し直したそうだが、このように鉛筆を嘗め嘗め目分量で机上の計算をすればよいと考えている人は、全く科学的ではなく原発の監督には適さない。また、*3-3 のように、地球温暖化問題と電気料金を口実にして、菅官房長官はここでも「粛々と」再稼働を進める方針だそうだが、思考停止も甚だしい。

 この福井地裁判決の素晴らしい点は、九州大学の吉岡教授が述べているとおり、原発事故の損害は他と比べて格段に大きいため危険性を0にできなければ再稼働すべきではなく、判決でそれを明確に述べていることである。北海道大学の奈良林教授は「『フクイチ原発事故の原因は津波だ』と原子力規制委員会が報告した」としているが、実際には地震での破壊も否定できず、原因不明とされている上、緊急時用の補助設備だけで、どれだけの期間冷却し続けられるかについても予測が楽観的すぎるのだ。

 しかし、*3-4のように、「原発再稼働できなければ電気料金を値上げする」と大手電力会社が言えるのは、これまで電力会社が地域独占して総括原価方式で電力料金を決めてきたからである。そのため、完全な電力自由化と電力消費者の選択権が必要なのだ。
  
 *3-4で、経済同友会の長谷川代表幹事は、「福井地裁の決定は最終判断ではない」「エネルギーの問題は国の経済の根幹に関わる」「こういうテーマが裁判所の判断にふさわしいかどうか疑問だ」としているが、これが日本の経済界代表がトップランナー国のリーダーに向かない理由である。

(3)鹿児島県知事の「争点回避」発言と国民
 *4-1のように、鹿児島県の伊藤知事は、鹿児島県自民党県議団の内情をつぶさに収集して、反対を抑えるには手続きを急ぐしかないと判断したのだそうだ。そして、「昨年11月に表明した川内原発再稼働への同意は、県議選で原発問題が争点化されることを避ける狙いがあり、わが国全体の経済活動などを考えれば全員が反対したとしても(原発を)やめるというわけにはいかない」「行政としてどうすれば国民の幸せにつながるか、総合的な判断が必要だ」としている。

 しかし、「国民全員が反対したとしても自分の選択の方が正しい」と考えるのは、(どういう根拠でそう思うのか定かではないが)行政官の時代遅れのうぬぼれだと考える。何故なら、現在の日本は、明治時代や終戦直後と異なり、諸外国の技術を後追いで追い駆けるのではなく、自ら新しい技術を開発しなければならない立場であり、正しく情報開示をしていれば、技術者や専門家の方が行政官よりも優れた解決策を考えることができるからだ。

 なお、*4-2に、フクシマ原発事故で放射線量が局所的に高い「ホットスポット」となった特定避難勧奨地点(避難指示区域外で年間被曝線量が20mSVを超える場所)の指定を解除したのは不当として、福島県南相馬市の住民約530人が、国に解除の取り消しと1人10万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしたと書かれており、もっともだ。何故なら、年間被曝線量が20mSVを超える場所というのは、原発作業員でも注意しながら入る場所であり、一般人が住むべき場所ではないからだ。

(4)国民や有識者の意見
 *5-1に書かれているように、災害リスクを専門とする学者と民間調査会社が、原発・エネルギーに関する世論調査を実施したところ、再稼働に対して反対が70.8%、賛成が27.9%という結果で、マスコミ調査よりも高い反対の数値が出たそうだ。避難計画については、9割近くの人が評価していないそうだが、①どういう方法で ②どの範囲の人が ③どこへ ④いつまで避難しておくのか が明確にされないままでは安心する人の方がおかしい。そして、②は「半径30~80km又は250km以内の人が」、①③は「本当はわからない」、④は「大部分の人が永久に」と言う答えになるため、一般国民の理解の方が正しいのである。そのため、段階的に縮小などという悠長なことは許されず、直ちに廃炉にすべきなのだ。

 従って、*5-2のように、原発周辺の滋賀県の三日月知事は高浜原発の福井地裁の再稼働差し止め決定を受けて、「人格権や原発の安全性に重きを置いた決定で、原子力行政にとって重大な問題提起だ」「立地自治体のみならず、影響が及ぶと想定される自治体とも協定を結ぶべきだ」と述べている。

 また、*5-3のように、全国最多の約9100人が提訴している玄海原発操業差し止め訴訟の原告団長を務める長谷川元佐賀大学長は、「司法が世論を反映してくれた」と声を弾ませ、「安全の根拠を覆した画期的な内容」と評価した。

 さらに、脱原発を目指す有識者の団体「原子力市民委員会」座長の九州大学の吉岡教授も、「他の産業施設と比べ原発事故の損害が格段に大きいことは、東電福島第1原発事故を見れば明らかだ。危険性を否定できない原発は運転すべきでなく、差し止めを認めた福井地裁の判断は適切だ。安全対策や新たな規制基準の不十分さを具体的に指摘しており、これは高浜原発だけの問題にとどまらない。電力会社や政府、原子力規制委員会は指摘を無視することなく、抜本的に基準や対策を見直す必要がある」としており、全くそのとおりだ。

<高浜原発再稼働差止仮処分福井地裁決定要旨全文>
*1-1:http://www.news-pj.net/diary/18984 (NPJ訟廷日誌 2015年4月14日)
【速報】高浜原発再稼働差止め仮処分福井地裁決定要旨全文 - 「新規制基準は緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない」
平成26年(ヨ)第31号 高浜原発3、4号機運転差止仮処分命令申立事件 2015年4月14日
●主文
1 債務者(関西電力)は、福井県大飯郡高浜町田ノ浦1において、高浜発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない。
2 申立費用は債務者の負担とする。
●理由の要旨
1 基準地震動である700ガルを超える地震について
 基準地震動は原発に到来することが想定できる最大の地震動であり、基準地震動を適切に策定することは、原発の耐震安全性確保の基礎であり、基準地震動を超える地震はあってはならないはずである。しかし、全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの問に到来している。本件原発の地震想定が基本的には上記4つの原発におけるのと同様、過去における地震の記録と周辺の活断層の調査分析という手法に基づいてなされ、活断層の評価方法にも大きな違いがないにもかかわらず債務者の本件原発の地震想定だけが信頼に値するという根拠は見い出せない。加えて、活断層の状況から地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉孝次郎教授は、新聞記者の取材に応じて、「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない。」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある。」と答えている。地震の平均像を基礎として万一の事故に備えなければならない原子力発電所の基準地震動を策定することに合理性は見い出し難いから、基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っていることになる。基準地震動を超える地震が到来すれば、施設が破損するおそれがあり、その場合、事態の把握の困難性や時間的な制約の下、収束を図るには多くの困難が伴い、炉心損傷に至る危険が認められる。
2 基準地震動である700ガル未満の地震について
 本件原発の運転開始時の基準地震動は370ガルであったところ、安全余裕があるとの理由で根本的な耐震補強工事がなされることがないまま、550ガルに引き上げられ、更に新規制基準の実施を機に700ガルにまで引き上げられた。原発の耐震安全性確保の基礎となるべき基準地震動の数値だけを引き上げるという対応は社会的に許容できることではないし、債務者のいう安全設計思想と相容れないものと思われる。基準地震動である700ガルを下回る地震によって外部電源が断たれ、かつ主給水ポンプが破損し主給水が断たれるおそれがあることは債務者においてこれを自認しているところである。外部電源と主給水によって冷却機能を維持するのが原子炉の本来の姿である。安全確保の上で不可欠な役割を第1次的に担う設備はこれを安全上重要な設備であるとして、その役割にふさわしい耐震性を求めるのが健全な社会通念であると考えられる。このような設備を安全上重要な設備でないとする債務者の主張は理解に苦しむ。債務者は本件原発の安全設備は多重防護の考えに基づき安全性を確保する設計となっていると主張しているところ、多重防護とは堅固な第1陣が突破されたとしてもなお第2陣、第3陣が控えているという備えの在り方を指すと解されるのであって、第1陣の備えが貧弱なため、いきなり背水の陣となるような備えの在り方は多重防護の意義からはずれるものと思われる。基準地震動である700ガル未満の地震によっても冷却機能喪失による炉心損傷に至る危険が認められる。
3 冷却機能の維持についての小括
 日本列島は4つのプレートの境目に位置しており、全世界の地震の1割が我が国の国土で発生し、日本国内に地震の空白地帯は存在しない。債務者は基準地震動を超える地震が到来してしまった他の原発敷地についての地域的特性や高浜原発との地域差を強調しているが、これらはそれ自体確たるものではないし、我が国全体が置かれている上記のような厳然たる事実の前では大きな意味を持つこともないと考えられる。各地の原発敷地外に幾たびか到来した激しい地震や各地の原発敷地に5回にわたり到来した基準地震動を超える地震が高浜原発には到来しないというのは根拠に乏しい楽観的見通しにしかすぎない上、基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険である。
4 使用済み核燃料について
 使用済み核燃料は我が国の存続に関わるほどの被害を及ぼす可能性があるのに、格納容器のような堅固な施設によって閉じ込められていない。使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには膨大な費用を要するということに加え、国民の安全が何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しのもとにかような対応が成り立っているといわざるを得ない。また、使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性もBクラスである。
5 被保全債権について
 本件原発の脆弱性は、①基準地震動の策定基準を見直し、基準地震動を大幅に引き上げ、それに応じた根本的な耐震工事を実施する、②外部電源と主給水の双方について基準地震動に耐えられるように耐震性をSクラスにする、③使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込む、④使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性をSクラスにするという各方策がとられることによってしか解消できない。また、地震の際の事態の把握の困難性は使用済み核燃料プールに係る計測装置がSクラスであることの必要性を基礎付けるものであるし、中央制御室へ放射性物質が及ぶ危険性は耐震性及び放射性物質に対する防御機能が高い免震重要棟の設置の必要性を裏付けるものといえるのに、原子力規制委員会が策定した新規制基準は上記のいずれの点についても規制の対象としていない。免震重要棟についてはその設置が予定されてはいるものの、猶予期間が設けられているところ、地震が人間の計画、意図とは全く無関係に起こるものである以上、かような規制方法に合理性がないことは自明である。原子力規制委員会が設置変更許可をするためには、申請に係る原子炉施設が新規制基準に適合するとの専門技術的な見地からする合理的な審査を経なければならないし、新規制基準自体も合理的なものでなければならないが、その趣旨は、当該原子炉施設の周辺住民の生命、身体に重大な危害を及ぼす等の深刻な災害が万が一にも起こらないようにするため、原発設備の安全性につき十分な審査を行わせることにある(最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決、伊方最高裁判決)。そうすると、新規制基準に求められるべき合理性とは、原発の設備が基準に適合すれば深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な内容を備えていることであると解すべきことになる。しかるに、新規制基準は上記のとおり、緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない。新規制基準は合理性を欠くものである。そうである以上、その新規制基準に本件原発施設が適合するか否かについて判断するまでもなく債権者らが人格権を侵害される具体的危険性即ち被保全債権の存在が認められる。
6 保全の必要性について
 本件原発の事故によって債権者らは取り返しのつかない損害を被るおそれが生じることになり、本案訴訟の結論を待つ余裕がなく、また、原子力規制委員会の設置変更許可がなされた現時点においては、保全の必要性も認められる。

*1-2:http://qbiz.jp/article/60237/1/
(西日本新聞 2015年4月15日) 【高浜再稼働差し止め】《解説》反省なき原発政策を指弾
 福井地裁は14日の仮処分決定で、関西電力高浜原発3、4号機の再稼働を認めず、原子力規制委員会の新規制基準は、絶対に深刻な災害は起きないといえるだけの厳格さに欠くと断じた。東京電力福島第1原発後に施行され、政府が「世界一厳しい」と自負する安全性の基準を一蹴、原発政策の根本的な見直しを迫った。決定は、関電の地震動の想定は「信頼に値する根拠が見いだせない」とし、免震重要棟がまだ設置されていないなど、高浜原発が抱える脆弱性を列挙。さらに使用済み核燃料保管施設の在り方にまで踏み込んだ。高浜原発だけでなく、他の原発にも当てはまる指摘だ。決定は原発事故が「取り返しがつかない損害」をもたらす恐れがあると厳しく指弾、新規制基準が再び「安全神話」の土壌となってはならないと警告したとも言える。政府は安全が確認された原発の再稼働を進める方針に変更はないとする。しかし「3・11」から4年が過ぎても、福島原発事故の影響で今も多くの人が避難生活を余儀なくされている。今回の決定を受けて、脱原発論議が活発化することは避けられない。再稼働に対する国民の不安を払拭するため、政府は決定の指摘に真摯に向き合うべきだ。

<判決に関する報道>
*2-1:http://mainichi.jp/select/news/20150415k0000m040142000c.html
(毎日新聞 2015年4月14日) 高浜原発:支援者ら「最高の決定」 再稼働差し止め仮処分
 想定外の地震による原発事故を「現実的で切迫した危険」と断じ、関西電力高浜原発3、4号機の運転禁止を命じる仮処分を出した14日の福井地裁決定。「合格」とした原子力規制委員会の審査とは正反対の結果に、申し立てた住民らは「最高の決定だ」「歴史的な一歩」などと高く評価したが、国の原子力政策に従ってきた地元自治体などからは疑問や戸惑いの声も聞かれた。「考えられる最高の決定だ」。関電高浜原発3、4号機の再稼働を差し止める仮処分決定が出た14日、福井地裁前には申し立てをした住民や支援者約500人が集まり、小雨の中で歓喜に沸いた。午後2時過ぎ、今大地(こんだいじ)晴美代表らが「司法はやっぱり生きていた」「司法が再稼働を止める」と書いた垂れ幕を掲げると、「よくやった!」と歓声や拍手が起こった。決定は、東京電力福島第1原発事故後に作られた原発の新規制基準を「(基準に)適合しても原発の安全性は確保されない」と否定した。同様の仮処分申し立てや訴訟に波及する可能性があり、住民側は「日本中の原発を廃炉に追い込みたい」と意気込んだ。弁護団の海渡(かいど)雄一共同代表は「日本の脱原発を前進させる歴史的な一歩。住民の人格権、ひいては子どもの未来を守るという、司法の本懐を果たした輝かしい日」と笑顔で声明を読み上げた。その後、福井市内で開かれた記者会見では、内山成樹弁護士が原発の耐震設計の基本となる基準地震動の策定方法に疑問を呈した決定に触れ、「基準地震動が1桁上がるかもしれない。費用がかかって現実的には対策は無理だ」と指摘した。河合弘之・弁護団共同代表は「新規制基準を作り直すことから出直せ、と言うのが裁判所のメッセージだ」と強調した。また、内山弁護士は、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「規制委がすることは規制。結果として安全が担保できればいい」などと発言したことを取り上げ、「安全基準と関係ない規制基準なんて、ばかを言ってはいけない」と批判した。原発3基が立地する福井県敦賀市の市議でもある今大地代表は「原発が集中立地する若狭地方の人たちは、思いを表に出せずに過ごしてきた」と慎重に言葉を選んで振り返り、「『原発は怖い』と声に出してもよいと今回の決定は伝えてくれた。多くの人が原発のことを声に出せるような若狭にしていきたい」と期待を寄せた。

*2-2:http://qbiz.jp/article/60182/1/ (西日本新聞 2015年4月14日) 高浜原発の再稼働認めない決定 福井地裁が仮処分 新規制基準の適合性審査は「合理性を欠く」
 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の安全対策は不十分として、周辺の住民らが再稼働差し止めを申し立てた仮処分で、福井地裁(樋口英明裁判長)は14日、再稼働を認めない決定をした。仮処分で原発の運転を禁止する決定は全国で初めて。決定はすぐに効力を持つ。関電は不服を申し立てるとみられ、主張が認められない限り再稼働できない。同地裁は仮処分決定で、原子力規制委員会による新規制基準の適合性審査は「合理性を欠く」と指摘した。2基は九州電力川内原発(鹿児島県)に続き、政府が「世界で最も厳しい」と強調する原子力規制委の審査に合格。しかし地裁はこれを事実上否定する判断をした。原発を「重要なベースロード電源」と位置付ける政府のエネルギー計画にも影響を与えそうだ。住民らは、関電が想定する基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)を超える地震により、放射性物質が飛散する過酷事故に陥る可能性があると主張し、人格権が侵害されると訴えていた。
■関電、速やかに不服申し立てへ
 関西電力は14日、福井地裁の仮処分決定について「到底承服できない」とするコメントを発表。速やかに不服申し立てをするとの方針を明らかにした。
■裁判長、昨年5月にも関電大飯原発3、4号機の差し止めを命じる判決
 樋口裁判長は昨年5月にも福井地裁で、関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の差し止めを命じる判決を言い渡しており、控訴審が係争中。住民らは12月、再稼働が迫っているとして、高浜と大飯計4基の差し止め仮処分を福井地裁に申し立てた。大飯の2基の審理は分離された。

*2-3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150414/k10010047951000.html
(NHK 2015年4月14日) 高浜原発 再稼働認めない仮処分決定
 福井県にある高浜原子力発電所の3号機と4号機について福井地方裁判所は「原発の安全性は確保されていない」として関西電力に再稼働を認めない仮処分の決定を出しました。異議申し立てなどによって改めて審理が行われ決定が覆らなければ、高浜原発は再稼働できなくなりました。関西電力は異議申し立てを検討するとしています。福井県高浜町にある関西電力の高浜原発3号機と4号機について、福井県などの住民9人は安全性に問題があるとして福井地方裁判所に仮処分を申し立て、再稼働させないよう求めました。これに対して、関西電力は福島の原発事故も踏まえて対策をとったと反論しました。福井地方裁判所の樋口英明裁判長は関西電力に対して、高浜原発3号機と4号機の再稼働を認めない仮処分の決定を出しました。決定では「10年足らずの間に各地の原発で5回にわたって想定を超える地震が起きたのに、高浜原発では起きないというのは楽観的な見通しに過ぎない」と指摘しました。そのうえで、原子力規制委員会の新しい規制基準について、「深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な基準にすべきだが新しい規制基準は緩やか過ぎ、適合しても原発の安全性は確保されていない。規制基準は合理性を欠く」と指摘しました。今回の仮処分はすぐに効力が生じるもので、関西電力の異議申し立てなどによって改めて審理が行われ決定が覆らなければ、高浜原発は再稼働できなくなりました。異議申し立てなどによる審理は福井地裁で行われ、決定が覆れば仮処分の効力は失われます。関西電力側の弁護士は「会社の主張を裁判所に理解してもらえず誠に遺憾で、到底承服できない」と話し、異議申し立てを検討するとしています。
●弁護側「司法の判断厳粛に受け止めて」
決定が出されたあと、住民側の弁護士は裁判所の前で「今回の決定は脱原発を前進させる歴史的一歩であり、国や電力会社は司法の判断を厳粛に受け止めるべきだ」という声明を読み上げました。
●関電「速やかに異議申し立てを検討したい」
14日の決定について関西電力側の弁護士は「会社の主張を裁判所に理解してもらえず、まことに遺憾で、到底承服できない。決定内容を精査したうえ、準備ができ次第、速やかに異議の申し立てと執行停止の申し立ての検討をしたい」と述べました。そのうえで「会社としては十分な安全性を確保しているとして科学的・専門的・技術的な知見に基づいて十分な主張・立証をしているつもりなので、引き続き、裁判所に理解を求めたい」と話しました。 

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/177731
(佐賀新聞 2015年4月17日) 高浜原発差し止め
 関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働差し止めを求めて周辺住民らが申し立てた仮処分で、福井地裁が再稼働を認めない決定をした。原子力規制委員会の新規制基準そのものについて安全性確保を担保するものではないと断じ、原発政策の根本見直しを迫る判断となった。政府は司法の指摘に真摯に向き合うべきだ。今回の決定では、政府が「世界一厳しい」と自負する新規制基準を「合理性を欠く」と一蹴。再稼働に向けた一連の手続き自体に疑問符を投げかけたという意味で非常に重い指摘といえる。全国の原発で過去10年間に想定を超える地震が5回発生した。それを踏まえて「国内に地震の空白地帯はない。想定を超える揺れの地震が起きないというのは、根拠に乏しい楽観的見通し」と関電の見通しの甘さを厳しく指弾した。さらに想定内の揺れでも外部電源が断たれ、ポンプ破損による冷却機能喪失の恐れがあることを指摘。炉心損傷に至る危険があるとした。これは昨年5月、同地裁が下した関電大飯原発3、4号機の運転差し止め訴訟と同じ判断を示した格好だ。また使用済み核燃料プールが堅固な施設で閉じこめられていない現状にも言及。「国の存続に関わる被害が出る可能性がある」との懸念も示した。「安全対策は十分」との関電の主張を全面的に退けた。新規制基準に適合するか否か判断するまでもなく「原発から250キロ圏内に住む住民は原発の運転によって人格権を侵害される具体的な危険がある」とも指摘。ここまで踏み込んだ表現は、再稼働を急ぐあまり、本来最優先すべき安全確保の議論が不十分ではないかという国民の不安を司法が代弁したといえる。原子力規制委員会の田中俊一委員長は、福井地裁の指摘について「重要なところの事実誤認がいくつかある」と反論。規制基準について見直す必要性がないとの認識を示した。法廷で多くの資料を交えながら審理した裁判官に対して「事実誤認がある」と主張するなら、国民に規制基準の安全レベルがしっかりと伝わっていないと考えるのが自然だろう。ならば、政府は国民に規制基準が求める安全レベルの妥当性を丁寧に説明すべきだ。その上で「再稼働ありき」ではない、原発の今後を考える議論を進めるのが筋だろう。政府は2030年の電源構成比率で、原発の割合を18~19%に引き下げる方向で検討している。2割を切ることで原発に批判的な世論に配慮しようという意図が透けて見える。東日本大震災前の2010年度が28・6%であることを考えれば、全国の原発を一定程度再稼働しなければ達成できない。22日には九州電力川内原発の再稼働差し止めの仮処分申請に対する決定が出る。各地で係争中の同様の訴訟に影響を与えるだけでなく、内容次第では政府のエネルギー政策にも大きな影響を及ぼす。東京電力福島第1原発事故で何を学んだのか。今回、司法が突きつけたのは根源的な問いかけだ。過酷事故が起きれば一国の経済に多大な影響を与え、その存続すら危うくしかねない。政府には、誰もが納得できる答えを示す責務がある。

<判決への反対>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150415&ng=DGKKASGG14H2A_U5A410C1EA2000 (日経新聞 2015.4.15) 
安全思想すれ違い 高浜原発再稼働差し止め、リスク、抑制かゼロか
 関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県)の運転を認めないとする福井地裁の決定は、原発の再稼働をめぐるリスクについて政府や電力会社との立場の違いを浮き彫りにした。東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえて刷新した原発への規制とは相いれない内容だ。原発の再稼働が滞れば、電気料金の上昇などを通じて経済への打撃が広がりかねない。政府は福島第1原発事故後に規制委を設置し、原発の運転に厳しい地震・津波対策や過酷事故への備えを求める新規制基準を2013年7月に施行した。電力供給や電気料金の安定のために原発を活用する方針を維持しつつ、高い安全性を求めて対応できない原発をふるいにかける狙いだ。実際に選別するのが事故対策や自然災害の専門家で構成する規制委の安全審査だ。高浜3、4号機は規制委から厳しい指摘を受けつつも九州電力の川内原発(鹿児島県)に続いて審査に合格し、再稼働に近づきつつあった。そこに待ったをかけたのが福井地裁の決定だ。新規制基準は万が一の事故を防ぐには甘いとして「合理性を欠く」と断じ、審査に合格しても「安全性は確保されていない」と指摘した。関電が最大規模の地震を考慮して見積もった揺れの想定も、ほかの原発で想定を上回る地震があったことを引き合いに「信頼に値しない」と否定した。福井地裁の判断は根本的な耐震工事などでリスクを事実上ゼロにすることを求めた。現時点では国内で最も安全対策が進む原発の一つである高浜3、4号機でさえ「運転してはならない」と結論づけた。「この判断に基づけば、国内の原発はどこも動かない」と政府関係者はもらす。現行の規制はリスクを減らすために何重もの対策を課すが、規制委の田中俊一委員長はかねて「100%の安全はない」と述べている。それでも政府が原発を動かそうとするのは、停止が続けば別のリスクが生じるからだ。福島原発の事故以降、全国で停止した原発の代わりに石油や液化天然ガス(LNG)などを海外で調達することが増え、家庭向け電気料金は震災前から2割、企業向けは3割ほど上昇した。北海道大学の奈良林直教授は「電気料金がさらに上がれば、中小企業や生活弱者には大きな打撃になる」と指摘する。司法が原発の再稼働を止める動きが続けば、政府が検討中の30年時点の望ましい電源構成(ベストミックス)などエネルギー政策の議論にも影響しそうだ。

*3-2:http://qbiz.jp/article/60433/1/
(西日本新聞 2015年4月17日) 経産省が原発発電コスト検証 事故発生確率を半減
 経済産業省は16日、電源別の発電コストを検証する有識者会議の会合で、検証の前提となる原発事故の発生確率を半減させる案を示した。東日本大震災後に設定した新規制基準に、九州電力など大手電力会社が対応した効果を反映させるためで、大筋で了承された。コスト試算は2011年末以来。原発のコストは建設や廃炉費用のほか、東京電力福島第1原発事故に伴う賠償費用などを基に、「事故リスク対応費用」や「追加安全対策費」などから算出している。11年時点では事故確率を「40年に1回」としたが、経産省は新たな安全対策に伴い、半分の「80年に1回」程度になると想定。事故リスク対応費用は、11年の1キロワット時当たり「0.5円以上」よりも低くなる見通しだ。一方、経産省の調査では、震災後に実施している追加安全対策の原発1基当たりの費用は約1000億円に達する見通し。11年試算の追加安全対策費は1基約200億円、1キロワット時当たりで「0.2円」だったので、今回の試算では大幅に増加する公算が大きい。差し引きでは、原発発電コスト総額の新たな試算は、11年時の1キロワット時当たり「8.9円以上」を上回ることになりそうだ。

*3-3:http://qbiz.jp/article/60245/1/
(西日本新聞 2015年4月15日) 【高浜再稼働差し止め】官房長官「粛々と」 規制委「事実誤認多い」
 再稼働までの道のりが見えてきた原発に、司法がストップをかけた。福井地裁が14日示した関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働を認めない仮処分決定。政府は環境問題や高騰する電気料金などを勘案して原発活用を「粛々と」(菅義偉官房長官)進める方針だが、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)とともに、再稼働の手続きが終盤に入っているタイミングでの厳しい司法判断は、国民の原発不信を再び増幅させる可能性がある。「世界最高水準の新規制基準に適合しているとする、規制委の判断を尊重し再稼働を進めていく」。菅官房長官は14日午後の記者会見で、従来の方針をあらためて強調した。東京電力福島第1原発事故の影響で、原発再稼働に対する国民の反対は今も根強い。それでも政府が「重要なベースロード電源」として原発回帰を進める背景には、電気料金を引き下げ、景気回復を全国に広げたいとの考えがあるからだ。原発の長期停止に伴い、液化天然ガス(LNG)などの火力発電所の燃料費は急増しており、2013年度の大手電力会社10社の燃料費は計7兆7千億円と震災前の2倍超まで拡大。関電や九電などが電気料金の値上げをした結果、電気料金は震災前に比べ、家庭向けで2割、産業向けで3割も上昇している。「電力料金は震災前の水準以下にすることが重要」(経団連)「中小企業のコスト負担は限界」(日本商工会議所)。こうした経済界の要請に応えるため、政府は電力会社に老朽原発の廃炉を促すなどして再稼働に向けた環境整備を進めてきた。
   ◇    ◇
 福井地裁の判断は、再稼働を認めないだけでなく、原発再稼働の根拠となる新規制基準も「合理性を欠く」と否定した。新基準は福島第1原発事故の教訓を踏まえ、規制委が約10カ月かけて策定し、13年7月に再稼働の前提となる審査が始まった。川内1、2号機に次いで審査が進む高浜3、4号機の基準地震動(最大規模の地震の揺れ)についても慎重に審査した。だが、福井地裁は「信頼に値する根拠が見いだせない」と一蹴した。規制委事務局に当たる原子力規制庁の米谷仁総務課長は14日の会見で「科学的技術的に適正に判断した」と反論。別の幹部も「(福井地裁の)判断には事実誤認も多い」と不満をあらわにした。関電は高浜3、4号機の工事計画の認可が出れば、再稼働の最終手続きとなる使用前検査を申請するとみられる。規制庁は今回の決定を受け、検査が進んでも関電が原子炉を起動できないと受け止める。22日に同様の司法判断が示される川内1、2号機でも理屈は同じだ。「国は(訴訟の)当事者ではない」。菅官房長官はこう繰り返したが、千葉大の新藤宗幸名誉教授(行政額)は「三権分立の意味を示す具体的な判決が出た。安倍政権はいつまでも司法の判断を無視することはできない」と批判している。
   ■   ■
●高浜にとどまらぬ問題
 脱原発を目指す有識者の団体「原子力市民委員会」座長の吉岡斉・九州大教授(科学技術史) 他の産業施設と比べ原発事故の損害が格段に大きいことは、東京電力福島第1原発事故を見れば明らかだ。危険性を否定できない原発は運転すべきでなく、差し止めを認めた福井地裁の判断は適切だ。安全対策や新たな規制基準の不十分さを具体的に指摘しており、これは高浜原発だけの問題にとどまらない。電力会社や政府、原子力規制委員会は指摘を無視することなく、抜本的に基準や対策を見直す必要がある。
●大飯に続き技術面誤認
 奈良林直・北海道大教授(原子炉工学) 関西電力大飯原発の運転を差し止めた昨年の判決と同様に、技術面で事実誤認がある。東京電力福島第1原発事故の原因は津波だと原子力規制委員会が報告しており、地震だけで危険性が切迫していると判断したのはおかしい。メーンの給水設備や外部電源が破損しても、緊急時用の補助設備があることも無視している。新たな規制基準にも合理性がないと言及しているが、法律と基準は福島事故を踏まえて改正されたもの。裁判所はあくまで法律に基づいて判断すべきだ。規制委は今後も、再稼働の審査や認可手続きを粛々と行えばよい。
■高浜原発3、4号機 関西電力が福井県高浜町に所有する原発。いずれも加圧水型軽水炉(PWR)で出力はともに87万キロワット。1985年に運転を開始した。原子力規制委員会は安全対策が新規制基準に適合するとする審査書を決定し、関電は今年11月の再稼働を想定していた。

*3-4:http://qbiz.jp/article/60246/1/ (西日本新聞 2015年4月15日) 【高浜再稼働差し止め】川内も22日司法判断 九電、差し止めなら値上げも
 関西電力高浜原発3、4号機の再稼働を差し止める仮処分決定について、九州電力は「当事者ではなく、コメントする立場にない」(報道グループ)としている。ただ、新規制基準下で初めて再稼働する見込みの川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)も同様の司法判断を受ける可能性があり、電気料金の再値上げも検討している。九電は原発停止で火力発電燃料費がかさみ、2015年3月期連結決算で4年連続の最終赤字が不可避。これまでは川内原発1、2号機の早期再稼働を期待して、市民生活や産業活動への影響が大きい電気料金再値上げを回避してきた。川内1、2号機は、再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査が終盤を迎えており、設備の性能などを確認する「使用前検査」を経て7〜8月にも再稼働する見通しとなっている。だが一方で、鹿児島、熊本、宮崎県の住民が再稼働差し止めの仮処分を鹿児島地裁に申し立てており、地裁は今月22日にその可否についての決定を出す予定。再稼働が認められなければ、九電は直ちに異議申し立てをするとみられるが、再稼働時期が想定より大幅に遅れる可能性が大きい。再稼働を前提とした経営黒字化もめどが立たなくなるため、13年春に続く料金再値上げに踏み切る方向という。
   ◇   ◇
■電力大手 波及を懸念
 福井地裁が14日、原子力規制委員会の新規制基準は合理性を欠くと指摘し、関西電力高浜原発3、4号機の再稼働を認めない仮処分を決定した。大手電力関係者は「審査に合格しても再稼働できなくなる。ここまで踏み込むとは思わなかった」と驚きを隠さない。大手電力は原発の再稼働が業績改善に不可欠との立場で、経営への影響に懸念が広がっている。電気事業連合会は「安全性に関する関西電力の主張に理解が得られなかったことは誠に遺憾だ」とコメントした。業界では「ほかの原発の差し止め訴訟に影響が出なければいいが」(大手電力)との声も上がった。政府は規制委の審査に適合した原発は活用する方針を変えていない。ある電力関係者は「政府の方針がある以上、引き続き再稼働を目指す」と語った。一方、経済界にも波紋が広がった。経済同友会の長谷川閑史代表幹事は14日の記者会見で、福井地裁の決定に「最終的な判断ではない」と述べ、今後の司法手続きで再稼働が認められることに期待を示した。経済界には電力コストを抑えるため原発の活用を求める声が強い。長谷川氏は「エネルギーの問題は国の経済の根幹に関わる」とし、「こういうテーマが裁判所の判断にふさわしいかどうか、少し疑問だ」とも話した。

<鹿児島知事の「争点回避」発言と社会>
*4-1:http://qbiz.jp/article/60332/1/ (西日本新聞 2015年4月16日) 鹿児島知事の「争点回避」発言、地元はどう受け止めたか【会見詳報付き】
 「再稼働請負人」が本音を吐露した−。反原発派だけでなく、賛成派もそう受け止めた。伊藤祐一郎知事の原発争点化回避発言に対しては、鹿児島県内でも賛否両派に反発が広がった。「知事は『選挙が近づけば反対が増える』と焦っていた」。県関係者は昨年11月の再稼働地元同意の一部始終を振り返った。当時、県議会最大会派の自民県議団は揺れていた。再稼働は安倍政権の方針だが、避難計画の不備が次々と明らかになり、「県議選で戦えない」と造反をにおわせる声が続出。知事は自民県議団の内情をつぶさに収集し、反対を抑えるには手続きを急ぐしかないと判断したという。県議会の4常任委員会が予定していた県内視察を中止させ、同意を表明する2日前に臨時議会を招集。自民県議団は結局、再稼働に全員賛成し、知事のもくろみは奏功した。今回の知事発言について、自民県議団の吉留厚宏会長は「県議団として、知事に同意を急ぐように要請したことはない」と困惑。知事に「視察を無視して臨時議会を招集した必要性を示せ」と迫った成尾信春県議(公明)は「知事の本音だろうが、不快だ」と怒りを隠さなかった。反対した松崎真琴県議(共産)は「再稼働ありきの地元同意手続きだったことが明らかになった」として手続きの撤回を求めていくという。臨時議会を傍聴した同県姶良市の美術家松尾晴代さん(40)は「争点隠しを公然と認めた。県のリーダーとしての資質を疑う」と憤った。知事発言をフェイスブックで知った鹿児島市の医師青山浩一さん(53)は「知事が『再稼働請負人』だったことがはっきりした。県民の暮らしや命を守ると本気で思っているのなら、県議選で十分議論すべきだった」と強調した。
◆「全員反対でも再稼働やめない」−記者会見詳報
 15日の定例記者会見で鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、昨年11月に自身が表明した川内原発(同県薩摩川内市)再稼働への同意をめぐり、県議選で原発問題が争点化されることを避ける狙いがあったことを明かした。福井地裁の高浜原発再稼働差し止め決定に対する考えも述べた。一問一答は次の通り。
−高浜原発再稼働差し止め仮処分の決定で、福井地裁は新規制基準を「緩すぎる」と指摘した。その新規制基準を知事は川内原発再稼働同意の根拠にしたが。
「原子力規制委員会は基準地震動を極めて高いレベルにするなどして新規制基準を決めた。素人の立場では言えないが、規制委は職務を全うしたと思う」
−世論調査では再稼働反対が過半数を占める。
 「わが国全体の経済活動などを考えたらエネルギーは根幹の要素。全員が反対したとしても(原発を)やめるというわけにはいかない。行政としてどうすれば国民の幸せにつながるか、総合的な判断が必要だ」
−県議選の結果に原発問題は反映されたか。
 「原発が投票結果に反映されたという見方はできない。ただ、(私は)昨年11月7日に(再稼働同意の)結論を出したが、それが遅れていたら争点化していただろう。統一選に大きな影響があるから、ぎりぎりのタイミングだった。さもないと原発がシングルイシューの争点になっていただろう。県政には地方創生や福祉などいろんな問題がある」
−民主主義の手続きとしてはどうだったか。
 「人によって考え方は違う。シングルイシューで争点化することが望ましくないとの判断はあったが、県議選だけを頭に置いていたわけではもちろんない。全体の流れの中であのタイミングしかなかった」
−原発が争点になると好ましくないのか。
 「好ましくないと言っているわけではない。県の仕事はいろいろある。(原発の争点化で)全部吹っ飛ぶのはおかしいという判断も当然ある」
−5月に実施を計画している原子力防災訓練は。
 「避難計画が出そろい、実効性を検証している段階だが、九電は使用前検査で精いっぱいで対応できない。訓練はできないと思う」
−再稼働の前には実施できないということか。
 「時間的に余裕がない」

*4-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/177908
(佐賀新聞 2015年4月17日) 避難勧奨地点解除は不当と提訴、福島・南相馬の住民
 東京電力福島第1原発事故で、放射線量が局所的に高い「ホットスポット」となった特定避難勧奨地点の指定を解除したのは不当として、福島県南相馬市の住民約530人が17日、国に解除の取り消しと、1人10万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。特定避難勧奨地点は、避難指示区域外で、局所的に年間被ばく線量が20ミリシーベルトを超えると推定される場所。避難は強制されないが、医療費の自己負担免除などの生活支援があり、慰謝料も支払われていた。原告弁護団によると、原発事故に伴う国の避難措置解除の妥当性を争う訴訟は初めてという。

<国民及び再稼働反対派の意見>
*5-1:http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0MY0JX20150407
(ロイター 2015年 4月 7日) 原発再稼働に反対70.8%、事故の懸念73.8%=学者・民間機関調査
 原発再稼働を前に災害リスクを専門とする学者と民間調査会社が、原発・エネルギーに関する世論調査を実施したところ、再稼働に対して反対が70.8%、賛成が27.9%という結果が出た。また、現状での再稼働では、73.8%が東京電力福島第1原発事故と同規模の事故が発生すると懸念。新しい規制基準の下でも、国民の間に原発への不安感が根強く残っていることが鮮明になった。調査を企画・立案した東京女子大の広瀬弘忠・名誉教授が7日、ロイターに明らかにした。広瀬氏は災害リスクの専門家で、同氏が代表を務める防災・減災の研究会社が、市場・世論調査を手掛ける日本リサーチセンター(東京都)に調査を委託。今年3月4日から16日にかけて全国の15─79歳の男女1200人を対象に調査を実施し、全対象者から有効回答を得た。同リサーチセンターは、米世論調査ギャラップ社と提携。これまでも多様な調査を実施してきた。今回の調査では、全国から200地点を選び、各市町村の人口規模に比例して性別、年齢別に対象者を抽出。調査員が直接訪問して質問用紙を渡して後日回収する「個別訪問留置き調査」と呼ばれる手法で実施した。
<避難計画、9割近くが評価せず>
 再稼働への賛否に関する質問では、「大いに賛成」「まあ賛成」「やや反対」「絶対反対」の4つを選択肢として提示した。その結果、「やや反対」が44.8%と最も多く、次が「絶対反対」の26.0%だった。「まあ賛成」は24.4%、「大いに賛成」3.5%となった。反対との回答は合計70.8%、賛成との回答は27.9%だった。再稼働した場合、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原発と同程度の事故が起こる可能性について、「起こる」「たぶん起こる」「たぶん起こらない」「起こらない」の選択肢で回答を聞いた。結果は、「たぶん起こる」51.8%、「起こる」22.0%と再発を懸念する意見が合わせて73.8%。「たぶん起こらない」24.1%、「起こらない」1.3%と再発を想定せずとの回答は25.4%だった。原発再稼働の安全性では、「絶対安全だと思う」「やや安全だと思う」「やや危険だと思う」「非常に危険だと思う」の選択肢を提示したところ、「やや危険」52.3%、「非常に危険」29.0%と危険視する見方が81.3%に達した。これに対し、「やや安全だと思う」は16.2%、「絶対安全だと思う」は2.2%だった。事故が起きた場合の避難計画に関し、十分かとの質問には「やや不十分」50.5%、「全く不十分」37.2%と9割近くが否定的な評価となった。「やや十分」9.7%、「十分」1.5%と肯定的な評価は1割止まりだった。
<原発の将来、段階的縮小論が過半数>
 短期的な再稼働問題では否定的な回答が目立つ一方、原発の将来像に関する質問では、再稼働容認派が否定派を大きく上回る結果が出ている。「再稼働を認めず、直ちにやめるべき」「再稼働を認めて、段階的に縮小すべき」「再稼働を認めて、現状を維持すべき」「再稼働を認めて、段階的に増やすべき」「再稼働を認めて、全面的に原子力発電に依存すべき」「その他」の選択肢を設けたところ、「再稼働を認め段階的に縮小すべき」が最も多く52.6%、次いで「再稼働は認めずに直ちにやめるべき」が29.7%、「再稼働を認め現状維持すべき」は11.8%、「再稼働を認め段階的に増やすべき」が2.9%だった。広瀬氏は、この点について「いま再稼働することには躊躇(ちゅうちょ)するが、過半数は再稼働を認めて、段階的にやめていくという選択を採る」と指摘する。ただ、同氏は「福島第1原発事故と同程度の事故が起こる、たぶん起こるを合わせると7割を超えている。そうした状況で、(民意は、現状での)再稼働を認めることはないだろう」と述べた。太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーの利用に関する質問に対し、大幅に増やしたほうがいい49.8%、少しずつ増やした方がいい45.3%と、回答者のほとんどは拡大に肯定的だった。だが、増やすペースでは意見が割れた。
<マスコミ調査よりも高い反対の数値>
 電話が主体の国内報道各社の世論調査では、再稼働に反対が概ね5割強から6割弱といった幅で推移しているが、今回の調査では国内報道各社の調査に比べ、反対意見が高く出た。こうした結果に対し、広瀬氏は「地域や国民を代表するよう対象者を選ぶ工夫をしている。代表性が高く、調査精度の高さが反映された結果だろう」と話している。3月実施の調査は、レジャーや花粉症、金融商品など他の調査項目と「相乗り」して行われた。「原発関連は調査全体の一部を構成しているだけなので、協力した人たちが原発問題に関して偏見があるということはない」(広瀬氏)としている。広瀬氏は2002年、東電による原発トラブル隠しの不祥事が発覚した時に同社が設置した「原子力安全・品質保証会議」の委員を務めた。2013年7月には内閣府原子力委員会で、原発世論に関して説明を行った。

*5-2:http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2015041400510 (時事ドットコム 2015年4月14日) 滋賀知事「重大な問題提起」=「安全性、説明を」京都知事-高浜原発再稼働差し止め
 関西電力高浜原発の半径30キロ圏内には、滋賀県と京都府の一部が含まれる。福井地裁の再稼働差し止め決定を受け、滋賀県の三日月大造知事は14日、記者団に「人格権や原発の安全性に重きを置いた決定で、原子力行政にとって重大な問題提起だ」と述べた。三日月知事は「今回の決定にも相通じるような形で、実効性ある多重防護体制の構築の必要性を訴えてきた」と強調。「立地自治体のみならず、影響が及ぶと想定される自治体とも協定を結ぶべきだという主張は変わらない」と述べ、引き続き関電に安全協定締結を求めていく考えを示した。一方、京都府の山田啓二知事は「詳細は承知していないが、国や事業者は安全性について、国民に丁寧かつ明確な説明を行う必要がある」とのコメントを出した。(2015/04/14-16:38)2015/04/14-16:38

*5-3:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/177066
(佐賀新聞 2015年4月15日) 玄海原告団声弾む 玄海町や経済界、工程遅れ懸念
■重い判断、評価と動揺
 関西電力高浜原発の運転差し止めを命じた14日の福井地裁の決定。九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の再稼働に向けた手続きが進む中、国と電力会社の安全対策の不備を指摘した司法判断に、玄海原発操業差し止め訴訟の原告団は「安全の根拠を覆した画期的な内容」と評価した。一方、早期再稼働を求めてきた玄海町や地元経済界などには「今後のスケジュールが大幅に遅れるのでは」と動揺が広がった。「司法が世論を反映してくれた」。全国最多の約9100人が提訴している玄海原発操業差し止め訴訟の原告団長を務める長谷川照・元佐賀大学長は声を弾ませた。原告弁護団も佐賀市内で会見し、「今回の決定は全国の原発に当てはまり、再稼働は許されない」と強調。玄海原発でも同様の仮処分申し立ての準備を進める意向を明らかにした。一方、玄海原発の早期再稼働を求めている佐賀県商工会議所連合会の井田出海会長は「原子力規制委員会の審査を覆すような決定が出たのは意外」と驚く。「仮処分とはいえ、こうした司法判断が続けば、再稼働は大幅に遅れてしまう」と懸念を示した。東京出張のため不在だった岸本英雄玄海町長に代わって取材に応じた鬼木茂信副町長は「玄海原発は歴史的に見ても地震や津波が少ない場所に立地し、安全な原発。規制委員会は粛々と審査してほしい」と求めた。佐賀県の山口祥義知事は「裁判所の一つの見解」と冷静に受け止めた上で「国と事業者は新規制基準の合理性について、しっかり説明してもらいたい」と規制基準の考え方などについて説明責任を果たすよう求めた。山口知事は規制委の適合性審査に合格し、住民理解が得られた場合は、再稼働を容認する考えを示している。玄海原発の再稼働判断への影響は「(最終的に)国の説明を聞いて決めるという考えは変わらない。玄海もいずれ国が説明する時期が来るが、今回の決定に対する見解もしっかり説明すべき」とした。また、伊万里市の塚部芳和市長は「原発周辺の住民が抱える不安を司法が認めたということではないか。再稼働を進める電力会社や国はこれを重く受け止め真摯(しんし)に向き合ってほしい」と望んだ。今回の決定に続き、22日には川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働差し止め仮処分の判断が示される。唐津市の坂井俊之市長は「玄海原発への影響の大きさを考えれば、その結果を注視したい」と述べた。
=識者談話= 指摘無視するな
■脱原発を目指す有識者の団体「原子力市民委員会」座長の吉岡斉九州大教授(科学技術史)の話
 他の産業施設と比べ原発事故の損害が格段に大きいことは、東京電力福島第1原発事故を見れば明らかだ。危険性を否定できない原発は運転すべきでなく、差し止めを認めた福井地裁の判断は適切だ。安全対策や新たな規制基準の不十分さを具体的に指摘しており、これは高浜原発だけの問題にとどまらない。電力会社や政府、原子力規制委員会は指摘を無視することなく、抜本的に基準や対策を見直す必要がある。


PS(2015年4月18日追加):佐賀県の山口知事は、4月17日に反原発を訴える市民団体と就任後初めて県庁で面会し、市民団体は「再稼働反対と意見交換の継続開催の2点」を要望し、「原発の安全性に対する認識、現在の避難計画の実効性、使用済み核燃料の処理の考え方の3点」を文書で質問したそうだ。佐賀県の市民団体は、佐賀大学元学長で素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理の研究者である長谷川氏や実際の診療を通じて玄海原発の影響で発症する病気を意識しておられる佐賀大学元医学部長等も協力して理論構成しているため、「いろいろな意見が来ている」として同じ比重で考えるべきではない。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/178242
(佐賀新聞 2015年4月18日) 知事、反原発団体と面会 「県民の意見幅広く聞く」
 佐賀県の山口祥義知事は17日、反原発を訴える市民団体と就任後初めて県庁で面会した。玄海原発(東松浦郡玄海町)の再稼働を認めないよう求める市民団体に対し、賛成反対を含めた県民の幅広い意見を聞いた上で最終的に判断する考えを説明した。市民団体は、再稼働反対と意見交換の継続開催の2点の要望と、原発の安全性に対する認識や現在の避難計画の実効性、使用済み核燃料の処理の考え方の3点を文書で質問した。面会では、市民団体世話人の野中宏樹さんが「知事の第1の職務は県民の命や安全を守ること」とした上で、「今の規制基準や避難計画では安全は守れない。知事が安全というなら自ら説明責任を果たすべき。説明の前に再稼働は認めるべきでない」と指摘した。山口知事は「県民の意見を幅広く聞くのが私の政治姿勢。原発もいろいろな意見が来ている。判断する際はできる限り多くの情報を基に考えたい」と答えた。面会は、玄海原発の運転差し止めを求める団体など6団体が1月に合同で要望していた。市民団体によると、古川康前知事にも「直接対話」を求めていたが実現しなかった。原発の再稼働に関して山口知事は、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認め、住民理解が得られた場合は、容認する考えを示している。
■「初めの一歩」双方評価
 県民世論を二分する原発再稼働問題について、容認姿勢を打ち出す佐賀県の山口祥義知事と、反対を訴える六つの市民団体の17日の面会は、終始、冷静な口調で互いの考えを述べ合った。参加者は1団体2人、時間も15分限定。意見交換というレベルではなかったが、「考えを聞けて意義があった」「初めの一歩」と、両者とも面会実現を評価した。市民団体は古川康前知事にも再三、面会を要請していた。しかし、2007年の住民投票実施を求める署名提出の時に出席した限りで、その後、面会に応じることはなかったという。山口知事との面会を終えた市民団体世話人の野中宏樹さんは「選挙公約通りに県民の声を聞く姿勢は大変評価している」と話した。ただ、「意見が分かれる問題で15分はあまりにも短い。今日は初めの一歩で、今後も面会を続けてほしい」と求めた。参加した石丸初美さんは「まずは会うことが大切。顔を見て話すことから何事も始まる」と今後の面会に期待した。一方、山口知事は「かねて幅広く県民の声を聞きたいと思っていたので、意義があった」と述べ、市民団体の質問には文書で回答する意向を示した。再稼働問題では容認する考えをあらためて語った。今後の市民団体との面会は「タイミングもあるが、できる限り、場は設けたい」と応じる姿勢を見せた。


PS(2015.4.20):*7のような発言が原発推進派から出てくるが、上の(2)で述べた「原発が過酷事故を起こせば広い地域で長期間住めなくなり、自動車事故や航空機事故とは影響を受ける規模と期間が全く異なるため、原発は万が一にも過酷事故を起こしてはならない」というのが、これに対する答えだ。この違いが理解できない人は、生物学・物理学に弱すぎ、知識のバランスを欠いている。

*7:http://qbiz.jp/article/60599/1/ (西日本新聞 2015年4月20日) 「自動車も差し止めできるのか」 和歌山知事、高浜原発仮処分を批判
 和歌山県の仁坂吉伸知事は20日の記者会見で、関西電力高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを命じた福井地裁の仮処分決定について「判断がおかしい」と批判した。仁坂氏は、今回の決定を出した樋口英明裁判長が昨年5月、大飯原発3、4号機の再稼働を認めないとの判決を出した際の根拠が生存権だったと指摘した上で「リスクのあるものは全部止めなければならないという考え方。それならば自動車(利用)の差し止め請求もできるのではないか」と述べた。さらに「なんで原発だけ絶対の神様みたいな話になるのか」と主張した。仁坂氏は樋口裁判長について「(原発の)技術について、そんなに知っているはずがない。裁判長はある意味で謙虚でなければならない」とも強調した。仁坂氏は元経済産業省の官僚で、2006年から和歌山県知事を務め、3期目。


PS(2015年4月22、23日追加):鹿児島県・宮崎県は農漁業が盛んであるため、原発で失うものが大きく、*8-1、*8-2の判決は残念だ。そして、この裁判の論点や決定内容の違いを見ると、原発事故の実態に関する見方やそれに対する新規制基準の評価が甘く、*8-3-1、*8-3-2のように、新規制基準をクリアしたから安全とは言えないのに再稼働を許すという新規制基準による新しい安全神話となっている。ただし、福井地裁の裁判官は飛ばされたそうなので、市民や約20年後には意思決定する立場になる志ある高校生、大学生は裁判を傍聴して注視するのがよいと考える。

  
 2015.4.18西日本新聞    2015.4.22日経新聞      2015.4.23西日本新聞

*8-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150422/k10010056571000.html
(NHK 2015年4月22日) 川内原発 再稼働差し止め認めない決定
 鹿児島県にある川内原子力発電所の1号機と2号機について、鹿児島地方裁判所は、再稼働に反対する住民が行った仮処分の申し立てを退ける決定を出しました。先週には福井地方裁判所が高浜原発3号機と4号機の再稼働を認めない仮処分の決定を出していて、国の新しい基準の審査に合格した2か所の原発を巡って、裁判所の判断が分かれました。鹿児島県の川内原発1号機と2号機について、鹿児島県、熊本県、宮崎県の住民12人は、「地震や巨大な噴火で深刻な事故が起きるおそれがある」などとして、裁判所に仮処分を申し立て、再稼働させないよう求めました。これに対して九州電力は、「想定される地震に対して十分な安全性があり、巨大噴火の可能性も極めて低い」などと反論していました。22日、鹿児島地方裁判所は住民の申し立てを退ける決定を出しました。川内原発1号機と2号機は、原子力規制委員会から新しい規制基準に適合していると認められ、九州電力は全国の原発で最も早いことし7月の再稼働を目指しています。原発の再稼働についての仮処分では今月14日、福井地方裁判所が関西電力に対し高浜原発3号機と4号機の再稼働を認めない決定を出しています。新しい基準の審査に合格した川内原発と高浜原発を巡って、裁判所の判断が分かれました。

*8-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150422-00050022-yom-soci
(読売新聞 4月22日) 川内原発の再稼働、差し止め認めず…鹿児島地裁
 九州電力川内(せんだい)原子力発電所1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)を巡り、鹿児島、熊本、宮崎3県の12人が再稼働差し止めを求めた仮処分について、鹿児島地裁(前田郁勝裁判長)は22日、12人の申し立てを却下した。14日に福井地裁が出した関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転差し止めを命じる決定と逆の判断が示された。鹿児島地裁では川内原発の運転差し止め訴訟が審理されており、原告団の一部が昨年5月、「訴訟の判決を待つのでは遅すぎる」と、決定後、すぐに効力が生じる仮処分を申し立てた。仮処分の審尋は4回開かれた。争点は、原発の耐震設計の基本になる基準地震動や、桜島を含む姶良(あいら)カルデラなどの火山対策、避難計画の妥当性など。九電側は「国の安全審査に合格しており、基準地震動の想定や火山対策に問題はない」と主張。申立人側は、「九電の想定は不十分だ」などと反論していた。川内原発は昨年9月、国の安全審査で「合格第1号」となった。地元同意手続きも完了し、今年3月から「使用前検査」が行われている。九電は同原発1号機について、7月の再稼働、8月の営業運転開始を目指している。

*8-3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150422&ng=DGKKASDG22H4O_S5A420C1EAF000 (日経新聞2015.4.21)規制委の基準「不合理ない」 高浜とは対照的判断
 九州電力川内原子力発電所1、2号機の再稼働の是非が争われた仮処分申請で、鹿児島地裁が運転差し止めを認めなかったのは、原子力規制委員会による専門的な安全審査に「不合理な点はない」と判断したためだ。福井地裁が14日に出した関西電力高浜原発3、4号機の差し止め決定が、規制委の新規制基準を「合理性がない」と切り捨てたのと比べ、対照的な司法判断となった。高浜の差し止めを命じた14日の福井地裁決定は、関電が想定する最大の地震規模について、この10年だけでも他の原発で想定以上の地震が複数回起きていることなどを理由に「信頼性がない」と批判。地震列島の日本で原発が冷却機能を失う危険性は「万が一という領域をはるかに超える切迫した危険だ」として、規制委の新規制基準を「緩やかすぎて合理性がない」と断じた。これに対し、22日の鹿児島地裁決定は、新規制基準について福井地裁とはほぼ正反対の評価を下した。決定は「新規制基準は自然現象の不確実性を相当程度考慮しており、九電も多重防護の考え方に基づく事故対策をしている」と指摘。「原発の安全対策に欠陥があり、事故が避けられない」との原告側主張について「的確な立証はない」と判断した。原発周辺にある姶良カルデラなどの火山は、数万年前には巨大噴火を起こしており、原告側は「多くの学者が噴火時期の予測は困難と指摘しており危険だ」と主張したが、決定は「九電の(火山リスクについての)評価は、火山学の知見に一定程度裏付けられている」として退けた。他の原発では、四国電力の伊方3号機が審査を終え近く合格する見通しになっているほか、九電玄海3、4号機などもほぼ審査が終わっている。原告側は再稼働が近いとみられている原発を中心に、仮処分申請をしていく方針を示している。

*8-3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150422&ng=DGKKASDG22H4S_S5A420C1EAF000 (日経新聞 2015.4.21) 鹿児島地裁仮処分の決定骨子
○運転差し止めを求める仮処分申請を却下する
○原子力規制委員会の原発の新規制基準に不合理な点はない
○原子炉施設の耐震安全性の評価に不合理な点はない
○九電が行った火山の影響の評価は、火山学の知見により一定程度裏付けられている
○周辺自治体の避難計画などの緊急時対応は一応の合理性、実効性を備えている

| 原発::2015.4~10 | 05:06 PM | comments (x) | trackback (x) |

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