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2015.5.7 経産省の電源構成比率、川内原発における鹿児島地裁の判断について – 国は、本当に国民の生命・財産を守り、基本的人権を大切にしていますか? (2015年5月8日、9日に追加あり)
    
2011.3.16福島第一原発 汚染範囲 2015.5.5東京新聞 2015.4.17佐賀新聞
                             *1-4
(1)経産省の2030年電源構成比率目標における恣意性と環境意識の低さ
 *1-1のように、東京新聞が、5月4日の社説で、経産省が2030年の電源構成目標を液化天然ガス(LNG)27%、石炭26%、再生可能エネルギー22~24%、原子力20~22%と公表したことについて、「再生可能エネルギーを抑え、原発利用を最大限に見込んで原発再稼働に頼るのでは、日本の未来は見えない」としているが、全くそのとおりだ。

 何故なら、これは、再生可能エネルギーという日本がトップランナーの先端技術を抑え、著しい公害をもたらす古い技術に逆戻りする政策だからだ。さらに、温室ガス削減目標を2030年までに2013年比で26%としたのも、クリーンでスマートなエネルギーを発展させる意欲に欠ける低い環境意識である。

 また、*1-2のように、毎日新聞は4月29日に、「原発ホワイトアウト」を書いた若杉冽氏に、2030年の原発割合を20〜22%とする政府案について聞き、「①原発事故前に戻ったようでびっくり」「②事故前に低く見積もられてきた原発のコストをきちんと見直さず、有識者委も作られたシナリオを追認するだけで茶番」「③『原発やむなし』の空気は電力会社が巨額の資金で政治家を動かす仕組みの下でできており、献金者等の名前の透明化が必要」としている。

 その様な中、*1-3のように、フランスでさえ、エコロジー省管轄の環境エネルギー管理機関(ADEME)が、「2050年に原発ゼロは実現可能」とする報告書をまとめたそうだ。報告書は、「2050年の電力供給を再生エネで全て賄った場合と原子力5割・再生エネ4割で賄った場合の費用は同水準になる」と結論づけており、再エネも普及・進歩して大量生産されればコストが下がるため、それが当たり前である。

(2)鹿児島地裁の結論ありきの再稼働差止却下について
 *1-4のように、九電川内原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働差し止めを却下した鹿児島地裁の決定内容は、上図のように、主な論点とされた避難計画や巨大噴火リスクに関する事実認定に大きな問題のあることが浮かび上がったそうだが、全くそのとおりだ。

 鹿児島地裁は、①原発の新規制基準に不合理な点はない ②避難計画の具体化や物資の備蓄も進んでいる ③多数の専門家が巨大噴火の可能性は小さいとしている などとした。しかし、②について、鹿児島地裁は鹿児島県が調整システムを整備して迅速な避難先の変更に備えていると認定したものの、地区ごとに避難先が指定されている30キロ圏内の住民でさえ、風向きによっては避難先施設が放射能汚染で使えなくなる可能性があり、その場合の対応は殆どなされていなかった。

 また、③の巨大噴火について、鹿児島地裁は、「九電の火山監視の手法や能力に、専門家から異論はなかったため問題ない」としたが、その専門家とされる当の東大地震研究所の中田節也教授らは、「曲解された」「事実誤認だ」としているのである。

 そのような中、*1-5のように、桜島の爆発的噴火は、今年の4カ月余りで昨年1年間の450回を超え、気象台は活動が活発化しているとしている。2013年8月18日には、桜島の昭和火口で噴煙の高さが5千メートルに達する噴火が発生し、鹿児島市などに大量の灰が降って交通機関に影響が出ている。

(3)日本のメディアは、まだフクシマの真実を語っていない
 *2-1のように、西日本新聞が「全電源喪失の記憶 証言・1F汚染」という特集で、2011年3月15~16日にフクシマ原発事故で起こったことを記載している。それによると、2011年3月16日、陸上自衛隊の中型ヘリで、東電社員が1〜4号機上空から状況を確認したところ、1号機は原子炉建屋上部が骨組みを残して天井が崩れ落ち、3号機は爆発でめちゃめちゃに壊れて原子炉の真上あたりから大量の白い煙がもうもうと上がり線量は毎時247ミリシーベルトを記録したそうだ。そして、これは1~3号機の使用済核燃料プールは水で満たされておらず、3号機は水素爆発ではなく原子炉爆発だったことを示す。

 しかし、こうなってしまってから原発に水をかけても焼け石に水なのだが、*2-2のように、ヘリは上空90メートルより下がると毎時200ミリシーベルトを超えるため、高度300フィート(約91メートル)を20ノット(時速約37キロメートル)で飛びながら3号機に水をかけた。しかし、原発にはあまりかからず、やはり効果はなかった。

 ビデオニュース・ドットコムでは、*2-3のように、元京都大学原子炉実験所助教は「東電が計画している格納容器を補修して水を張り、メルトダウンした核燃料を上からつまみ出す方法は放射線量が高くて不可能で、格納容器のどこに穴があいているかを調べることさえ困難な状態」「そのため、福島第一原発はチェルノブイリ原発のように石棺で封じ込める以外に収束させる方法はない」としている。

 しかし、上の写真や*2-1、*2-2の1~3号機に関する記述から、「石棺を作成する前提として1~3号機の使用済核燃料プールに残る1,393体以上の使用済核燃料を安全な場所に移す必要がある」というのは、まず使用済核燃料プールにどれだけの使用済核燃料がどういう形で残っているかに関する正確な情報が必要なのである。

(4)原発による公害について ← 憲法に環境権など作らなくても、現行憲法で「基本的人権(11条)」「個人の尊重と幸福追求権(13条)」「生存権(25条)」「財産権(29条)」などが規定されており、政府がこれを守る意志があるのか否かがポイントなのである
 *3-1のように、2011年の東電福島第1原発事故以降、北関東でオオタカの繁殖成功率が低下しており、その要因は空間線量の高まりと分析されているが、オオタカの餌は地面に住む野生動物が多いため、土壌の放射能汚染により餌となる動物が汚染され、食物からの内部被曝や巣の材料の汚染で繁殖成功率が下がった可能性が高い。

 また、*3-2のように、避難指示区域からの避難者や区域外の自主避難者、住民らの訴訟を支える「原発事故被害者支援・全国弁護団連絡会」は、原告数が2015年4月末現在で計9992人に達したと発表した。殆どの訴訟が国家賠償法に基づいて国も訴えている。これまでの公害裁判では、沖縄県の米軍嘉手納基地の周辺住民が2011年に騒音被害などを訴えた第3次訴訟の原告数が2万人を超えており、福島の原発事故も異例の大規模な集団訴訟となるそうだ。

(5)日本の世論
 *4-1のように、南日本新聞社が、九電川内原発1、2号機(薩摩川内市)の再稼働をテーマに、鹿児島県内で実施した電話世論調査によると、再稼働に「反対」「どちらかといえば反対」と答えた人が計59.9%、「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答した人が37.3%だった。

 また、*4-2のように、大間原発(青森県大間町)建設差止訴訟が争点となった北海道函館市長選でも、現職の工藤氏(65)が再選を果たし、市民は訴訟による原発差し止めを選択している。

<経産省・裁判所の恣意性>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015050402000137.html (東京新聞社説 2015年5月4日) 15年後の電源 まだ原発に頼るのか
 経済産業省が二〇三〇年に目指す電源の種類別の発電比率案を公表した。再生可能エネルギーは抑え、原発利用を最大限に見込んだ。原発再稼働に頼るのでは、日本の未来は見えない。公表された目標は、液化天然ガス(LNG)が27%、石炭が26%、再生可能エネルギーが22~24%、原子力が20~22%などとなっている。省エネと再生可能エネルギーで、二酸化炭素(CO2)の排出を減らすのが狙いだ。この案を基に、先月三十日、温室ガス削減目標が三〇年までに一三年比で26%と決まった。発電比率案はその二日前の有識者会合で了承された。再生可能エネルギーの割合が低いとの意見もあったが、事務方が「現実的な数字」と説明しただけで、議論されることはなかった。分厚いパブリックコメントの資料は無視され、坂根正弘委員長の「時間になりました」という言葉で終了。原案は一字一句変わることはなかった。「原発は稼働から四十年で廃炉」の原則を守れば、三〇年には発電比率が14~15%まで下がる。ある委員は「時間がたてば新増設の話もできる」と言った。実際には、原発は建設を計画してから運転開始まで長い年月がかかる。新増設は「現実的な話」ではない。20%超の目標は、老朽原発を四十年を超えて稼働させる余地を残すための感が否めない。再生可能エネルギーを導入すると電力料金が高くなるので、原発を使うという方針だが、これも疑問だ。計算には実際の原発ではなく、モデルプラントを使った。発電コストは三〇年で「一〇・一円以上」。各電源の中でもっとも安いが、「以上」と付くのは原発だけだ。「青天井ではないのか」と疑問を呈した委員もいたが、上限が示されることはなかった。再稼働に際しては、個々の原発の発電コストの公開を求めたい。リスクがゼロではなく、被害は電力会社だけでは負いきれないのだから、当然の要求だと考える。福島第一原発事故調査委員会(国会事故調)の黒川清委員長は「事故は『変われなかったこと』で起きた」と指摘した。有識者会合を見ていると、3・11後も政府は変わっていない。ただ、希望もある。同案は需要を過大に見込んでいるといわれる。原発の20%超は、需要の下振れと、家庭と職場での省エネで大幅に減らせるかもしれないのだ。国に頼ってもダメ、というのも3・11の教訓だ。

*1-2:http://mainichi.jp/select/news/20150429k0000m040155000c.html
(毎日新聞 2015年4月29日) 電源構成政府案:若杉冽氏はこう見る
 2030年の総発電量に占める原発割合を20〜22%とする政府案について、政官と電力会社の癒着を小説「原発ホワイトアウト」(講談社)などで描いた現役キャリア官僚、若杉冽(れつ)氏(ペンネーム)に聞いた。
−20〜22%とするには原発の増設か40年廃炉ルールを超えた運転延長が必要になる。
◆今も十数万人が避難している福島の現状と本気で向き合っているなら、そんな数字にはならない。民主党政権時の「2030年代原発稼働ゼロ」は討論型世論調査で国民の声を聞いて決まった。その決定をひっくり返すなら、同じ手順を踏むべきなのに、結論を先に設定し、やらずに済ませようとしている。
−将来の電源構成を巡る経済産業省の有識者委員会の議論をどう見たか。
◆原発事故前に戻ったようで、びっくりする。原発事故前に低く見積もられてきた原発のコストがきちんと見直されていない。経産省は「安い、安い」と言い続け、有識者委も作られたシナリオを追認するだけの場になっており、茶番だ。
−原発の再稼働に反対する声は多い。
◆官僚や電力会社社員でも原発に懐疑的な人はいる。ただ、「原発やむなし」という空気は、電力会社が巨額の資金で政治家らを動かす仕組みの下でできており、個々の力では変えられない。献金者やパーティー券購入者の名前を少額でも公表する仕組みに変えるなど、透明化を図ることが必要だ。

*1-3:http://mainichi.jp/select/news/20150417k0000m030066000c.html
(毎日新聞 2015年4月16日) フランス:「50年に原発ゼロ可能」公的機関が報告書
 【パリ宮川裕章】フランス政府所管の公的機関が「2050年に原発ゼロは実現可能」とする報告書をまとめ、波紋を広げている。仏議会は25年までに電力の原子力依存率を現在の75%から50%に削減する「エネルギー移行法案」の最終審議中で、報告書は影響を与えかねない内容だからだ。この機関の14日のシンポジウムで議論される予定が中止となり、「政府からの圧力では」と仏メディアで臆測を呼んでいる。報告書は「2050年、再生可能エネルギー100%に向けて」と題し、仏エコロジー省管轄の環境エネルギー管理機関(ADEME)が作成。複数の仏メディアが報告書の全文を入手して報じた。50年の電力供給を再生エネで全て賄った場合と、移行法案が想定する原子力5割、再生エネ4割の電力構成の場合を比べて試算し、「費用は同水準になる」と結論づけている。試算は、11年の東京電力福島第1原発の事故後、仏国内で厳格化された原発の安全基準を根拠としている。58基の原子炉は19年以降、半数近くが40年の耐用年数を過ぎるが、運転期間延長のための保守・改修費が上昇。新型炉建設でも、主力として期待される「欧州加圧水型炉」(EPR)は建設中の北西部フラマンビルで度重なる事故を起こしており、建設費が当初見通しを大きく上回っている。一方、報告書は風力や太陽光などの再生エネの発電量を今後、約5割増加させることを前提とし、気象条件による不安定さなど再生エネの不利な点も考慮した上での試算結果と説明している。報告書はADEMEが14日からパリで開催中のシンポジウムで取り上げる予定だったが、プログラムが中止されたことで、政府内からの圧力の可能性を示唆する報道が相次いでいる。ルモンド紙の取材にロワイヤル・エコロジー相は「もし政府側がADEMEに政府の政策と矛盾がないよう求めたとしても、それは正しい判断だ」と答えた。同紙は「報告書によって政府の方針や、原発ゼロに反対のロワイヤル氏の態度が変わることはないだろう」と予想している。

*1-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015050502000123.html (東京新聞 2015年5月5日) 地裁差し止め却下 「川内」事実認定に問題
 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働差し止めを却下した鹿児島地裁の決定内容を、本紙が検証したところ、主な論点とされた避難計画や巨大噴火リスクに関する事実認定に大きな問題のあることが浮かび上がった。先月二十二日の地裁決定は、原発の新規制基準に不合理な点はなく、避難計画の具体化や物資の備蓄も進み、多数の専門家が巨大噴火の可能性は小さいとしているなどとして、住民らの訴えを退けた。しかし、地裁決定には、いくつもの疑問点がある。三十キロ圏の住民は、地区ごとに避難先が指定されているが、風向きによっては放射能汚染で使えなくなる可能性がある。地裁は、県が調整システムを整備し、迅速な避難先の変更に備えていると認定した。県に取材すると、風向きの入力で避難先施設の候補がリスト化される程度のもの。必要な人数を収容できるかや、汚染状況は一件一件、現地とやりとりする必要がある。入院患者らの避難先についても、病院の空きベッド数データがないため地道な確認が必要だ。半年前、避難者受け入れに向けた計画ができていなかった鹿児島県霧島市など十二市町に取材すると、指定先の学校や公民館などへの説明や、避難所の運営方法などの協議はいずれもされていなかった。一方、巨大噴火への備えについて地裁は、九電の火山監視の手法や能力に「専門家から異論はなかった」と問題ないと評価した。しかし、専門家とされた当の東大地震研究所の中田節也教授らからは「曲解された」「事実誤認だ」との声が上がっている。住民側は近く福岡高裁宮崎支部に抗告する予定だ。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/183228
(佐賀新聞 2015年5月3日) 桜島の噴火回数、はや昨年超え、気象台が注意呼び掛け
 鹿児島地方気象台は3日、活発な火山活動が続く桜島(鹿児島市)の爆発的噴火が、ことし4カ月余りで昨年1年間の450回を超えたと明らかにした。気象台は「活動が活発化している」として、降灰や噴石に注意するよう呼び掛けている。気象台によると、爆発は4月23日、400回に達し、5月2日午後11時50分ごろに451回目を観測した。桜島の爆発的噴火の最多記録は2011年の996回。桜島の昭和火口では13年8月18日、噴煙の高さが5千メートルに達する噴火が発生、鹿児島市などに大量の灰が降り、交通機関に影響が出た。

<フクシマ>
*2-1:http://qbiz.jp/article/61204/1/
(西日本新聞 2015年5月6日) 【全電源喪失の記憶 証言・1F汚染】第1章(8) 水は、あった
 3月16日午後4時半ごろ、東京電力福島第1原発上空に北側から進入した陸上自衛隊のUH60中型ヘリコプターは5、6号機を通り過ぎ、1〜4号機の東側に差し掛かっていた。少し前まで降っていた雪はやみ、空は晴れていた。第1原発第1保全部の山下理道(43)は変わり果てた構内の様子に言葉を失った。東電社員が上空から原発の状況を確認したのは事故後、これが初めてだった。水素爆発した1号機原子炉建屋上部は骨組みを残して天井が崩れ落ち、建屋の周囲には無数のがれきが散乱していた。ヘリはゆっくりと進む。3号機は爆発でめちゃめちゃに壊れ、がれきが積もった建屋上部に、使用済み核燃料プールがある5階部分が見えた。ビデオカメラを片手に窓からのぞき込むと、原子炉の真上あたりから大量の白い煙がもうもうと上がっていた。なんだ、これは…。原子炉の構造に詳しい山下は背筋が寒くなった。炉内から何かが出てきているのではないか…。「この時は嫌でしたね。すごく気持ち悪い光景ですから」。ヘリは3号機上空で線量を測定するため、しばらくホバリング(空中静止)した。線量は毎時247ミリシーベルト。山下は生きた心地がしなかった。こんなところで止まんないでくれよ―。3号機だけではない。隣の2号機だって、いつ爆発するか分からないじゃないか、と山下は考えていた。ヘリは再びゆっくりと空中を移動する。4号機建屋からは灰色の煙が上がっていた。4号機ではこの日早朝に火災が確認されていた。煙は何かの油が燃えたのではないかと、山下は推測した。3号機に比べれば、恐怖を感じることはなかった。その時、山下の目が建屋の崩れた壁の合間の一点にくぎ付けとなった。風に揺れる水面に西日が当たりキラキラと反射していた。プールだ。水が、あった!米政府が強い懸念を抱いていた4号機プールは水で満たされていた。

*2-2:http://qbiz.jp/article/61207/1/ (西日本新聞 2015年5月7日) 【全電源喪失の記憶 証言・1F汚染】第1章(9) 「原発は最悪の状況」
 3月16日午後4時ごろ、JR仙台駅の南東約4キロ、仙台市若林区にある陸上自衛隊霞目駐屯地で、第1輸送ヘリコプター群(千葉県)の群長、大西正浩(49)の目の前を、機体の前後に大きなローター(回転翼)を付けたCH47大型輸送ヘリ2機が相次いで飛び立っていった。2機はつり下げたバケットと呼ばれる大きな容器に海水をくみ、東京電力福島第1原発の原子炉建屋に投下することになっていた。既に原発上空ではUH60中型ヘリが空間放射線量の測定を始めていた。東日本大震災と原発事故発生を受けて大西は12日、ヘリ部隊とともに霞目駐屯地に派遣された。以来、ほとんど寝ずに被災地での負傷者や孤立者の救助、緊急物資の空輸を指揮してきた。特に前日15日からは一睡もしていない。「原発に水かホウ酸、もしくはホウ酸溶液を投下するための実施要領の検討を始めてくれ」。大西にそう命令が下ったのは15日朝のことだった。ホウ酸が中性子を吸収し臨界を抑制する効果がある物質だということを、大西はこの時、初めて知った。予想外の任務だった。「原発は相当最悪な状況になっているんだなと感じました。起きていることに対応するのがわれわれの務めです。どうしたらいいか、必死で考えました」。UH60は15日にも3号機上空600メートルから下方へと高度を変えながら放射線量を測定していた。大西はデータを入手し、夜を徹して分析した。線量は高度を下げるほど高くなり、上空90メートルより下がると毎時200ミリシーベルトを超えることが分かった。大西が実施要領をまとめ終えた時には東の空がうっすらと明るくなっていた。大西の結論では高度300フィート(約91メートル)を20ノット(時速約37キロメートル)で飛ぶことが、乗員の被ばくを抑えつつ、一定の効果を上げられるぎりぎりのラインだった。これ以上遅い速度ではヘリは安定して飛ぶことができない。作戦決行か否か。間もなく現場上空から連絡が入るはずだった。

*2-3:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150429-00010000-videonewsv-soci
(ビデオニュース・ドットコム 2015年4月29日) 福島第一原発は石棺で封じ込めるしかない 小出裕章・元京都大学原子炉実験所助教が会見
 原子力の研究者でありながら原発の危険性を一貫して訴え、この3月に京都大学を定年で退官した元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏が4月25日、外国特派員協会で会見し、福島第一原発はチェルノブイリ原発のように石棺で封じ込める以外に、これを収束させる方法はないとの考えを示した。小出氏は、東京電力が計画している、格納容器を補修して水を張り、メルトダウンした核燃料を上からつまみ出す方法について、放射線量が高くてそのような作業を行うことは不可能だと指摘。東電は溶け落ちた炉心の一部は圧力容器の底に残り、残りは格納容器の底にたい積していると主張しているが、実際は格納容器内に広く散乱している可能性が高いため、取り出すことが難しい。しかも、格納容器のどこに穴があいているかを調べることさえ困難な状態で、そのような方法ではいつまでたっても廃炉にすることはできないと語った。その上で小出氏は、溶け落ちた燃料の取り出しは出来ない以上、チェルノブイリ原発のように石棺で封じ込めるしかないとして、まずは汚染水を大量に生み出している現在の水冷方式を諦め、金属冷却か空冷を採用し、上からカバーをすることで放射能の飛散を防ぐ必要があるとの見方を示した。また、その際に地下水の流れを止めるために、地下ダムが必要になるとも指摘した。ただし、石棺を作成する前提として、まずは1~3号機の使用済み燃料プールに残る1,393体にのぼる使用済み核燃料を安全な場所に移す必要があるが、その作業に何年かかるのかさえ見通しが立っていないとして、福島原発が「アンダーコントロール」と考えるのはまったくの間違いだと語った。

<原発公害>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015042201001899.html
(東京新聞 2015年4月22日) 「原発事故でオオタカ繁殖低下」 高線量影響か
 11年の東電福島第1原発事故以降、栃木県など北関東で国内希少野生動植物種オオタカの繁殖成功率が低下していることが、名古屋市立大とNPO法人「オオタカ保護基金」(宇都宮市)の研究で判明。要因を統計解析し、空間線量の高まりが大きく影響したと推計している。餌の変化など他の要因の影響は小さかった。事故前の推計繁殖成功率78%が、事故後は50%近くに低下。時間経過に伴い空間線量は下がり成功率も回復すると予想されたが、12、13年とますます悪化した。市立大の村瀬准教授は「放射線の外部被ばくだけでなく、餌を通じて内部被ばくの影響を受けた可能性もある」と指摘する。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11739289.html?_requesturl=articles%2FDA3S11739289.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11739289 (朝日新聞 2015年5月5日) 原発賠償原告、1万人規模に 福島第一事故
 訴訟を支える「原発事故被害者支援・全国弁護団連絡会」によると、原告数は4月末現在で計9992人に達した。今年に入っても約900人増えており、1万人超えは確実だ。ほとんどの訴訟が国家賠償法に基づいて国も訴えている。これまでの公害裁判では、沖縄県の米軍嘉手納基地の周辺住民が2011年に騒音被害などを訴えた第3次訴訟の原告数が2万人を超える。福島の原発事故をめぐっても異例の大規模な集団訴訟となる。原告は避難指示区域からの避難者や区域外の自主避難者、住民ら。福島県双葉郡などからの避難者が2012年12月に起こしたのを皮切りに、札幌から福岡まで20地裁・支部で25件の裁判が起こされている。原発事故の賠償をめぐっては、政府の原子力損害賠償紛争審査会が賠償の指針をまとめ、それに沿って東電は、避難生活への慰謝料や営業損害などの賠償金を支払ってきた。しかし、原告らは、これに納得せず、放射線量率が下がるまでの慰謝料や、「ふるさと喪失」への慰謝料などを求めている。

<日本の世論>
*4-1:http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=66018
(南日本新聞 2015年5月1日) 川内再稼働、59%が反対 南日本新聞世論調査
 南日本新聞社が、九州電力川内原発1、2号機(薩摩川内市)の再稼働をテーマに鹿児島県内で実施した電話世論調査によると、再稼働に「反対」「どちらかといえば反対」と答えた人は、前年の調査に比べ0.4ポイント増の計59.9%に上った。「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答した人は、0.5ポイント増の計37.3%だった。

*4-2: http://mainichi.jp/select/news/20150427k0000m010056000c.html
(毎日新聞 2015年4月26日) 統一地方選:「大間差し止め」現職が再選…函館市長選
 国とJパワー(電源開発)を相手取った大間原発(青森県大間町)の建設差し止め訴訟が争点となった北海道函館市長選は、現職の工藤寿樹氏(65)=無所属=が、訴訟の取り下げを掲げた新人で元衆院議員秘書の広田知朗氏(54)=同=を破り再選を果たした。地方自治体が国を訴える異例の訴訟への民意を問う初の選挙だったが、市民は訴訟による原発差し止めを選択した。広田氏は大間原発建設反対を掲げながらも、訴訟で市が国と対立していることについて、「国とコミュニケーションが取れなくなっている」と批判。保守層の一部有権者からは「補助金が減らされないか」などの懸念も出ていた。工藤氏は「私は『反原発』『脱原発』の立場で発言したことはない。大間原発の建設を凍結しろと言っている」と、原発再稼働を進める自民党の支持層に配慮。広田氏の主張については「訴訟の取り下げは、建設を容認することと同じだ」とけん制し幅広い有権者に浸透した。


PS(2015.5.8追加):*5-1のように、太陽光発電は、「太陽光の発電量が増えて電力の需給バランスが崩れると停電が起きる可能性がある」として何の工夫もなく出力抑制され、*5-2のように、サニックス(福岡市)は主力の太陽光発電関連部門の不振で希望退職を約600人募ることになった。これは、*1-1のように、経産省が電源構成比率を決めたために起こったことで、太陽光発電の普及には妨害となるが、種子島にはJAXAの宇宙センターもあり、科学技術先進地域であるため、離島のスマートグリッドを完結させたり、それでも余った電気で水素を作ったり、やれることは多いと考える。また、種子島では電気自動車か燃料電池車しか走らせないことにすると、鉄砲のように、それが全国に広がるかもしれない。

*5-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11741708.html
(朝日新聞 2015年5月8日) 再生エネ、送電停止を要請 九電、種子島の業者に 全国初
 九電によると、500キロワット以上の発電設備をもつ島内の事業者8社のうち1社に対して4日に出力制御を指示し、5日午前9時から午後4時まで発電を停止させた。種子島は九州本土と送電網で結ばれておらず、好天で太陽光の発電量が増えて電力の需給バランスが崩れると、停電が起きる可能性があるという。FITをめぐっては、電力の買い取り条件を厳しくした新ルールが1月に施行されたが、今回は補償なしで年間30日まで出力抑制を求められる旧ルールに基づいて九電が停止を求めた。今後も天候や需要予測をもとに、8社に順番に送電を止めてもらう計画だ。九電は先月28日、天候次第で種子島の発電事業者に送電停止を求める、と発表していた。他の離島でも太陽光発電設備の建設が増えており、送電停止の対象地域が広がる可能性がある。

*5-2:http://qbiz.jp/article/61627/1/
(西日本新聞 2015年5月7日) サニックス、600人希望退職募集 太陽光不振、拠点も削減
 サニックス(福岡市)は7日、主力の太陽光発電関連部門の不振を受け、希望退職を約600人募ると発表した。6月までにグループ従業員3625人(3月末時点)の2割近くに相当する人員を減らし、西日本地区の営業所の削減にも踏み切る計画。2015年3月期連結決算の純損益の赤字額が従来予想の1・8倍の49億9千万円に膨らむとの見通しも公表した。同社によると、希望退職は6月22日付で、5月14〜29日に募集する。対象者には特別退職金約50万円を加算支給し、再就職も支援する。九州など西日本地区(中部地方を含む)の太陽光関連部門の営業所も統廃合を進め、現在より20カ所少ない45カ所に減らすことで、年間約26億円の経費削減を見込んでいるという。15年3月期の連結業績予想も下方修正。売上高は従来予想比1・4%減の956億3千万円となり、経常損益の赤字額は従来予想の2・4倍の34億4千万円に膨らむとしている。同社は、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度が12年7月に始まったのを受け、太陽光発電設備の販売・施工業で業績を拡大した。しかし九州電力などが昨秋以降、急増した太陽光の新規契約を一時中断するなどしたことで事業環境が一変、事業の整理を余儀なくされている。


PS(2015.5.9追加):日本政府がくだらないことに時間を費やしている間に、中国は、*6のように、米国で電気バスと動力電池を本格的に製造し始めた。誰も待ってはいない。これも、“バスに乗り遅れないように”、あわてて追随する?

   

*6:http://qbiz.jp/article/61701/1/
(西日本新聞 2015年5月8日) BYDの電気バスが日本市場に続いて米国市場へ進出
 4月30日、米国ロサンゼルス市でロサンゼルス郡都市圏輸送当局( LACMTA)に大型電気バスK9を引き渡す比亜迪(BYD)の董事長兼総裁の王伝福氏(中央)。中国の独自ブランドである比亜迪は2011年10月、ロサンゼルスに北米本社を設立し、2013年にはロサンゼルス北部ランカスターに中国企業としては初めて独資で完全電気路線バス工場と動力電池工場を建設した。2014年には初めての米国現地生産の大型電気バスを生産、また米国運輸省の安全テストを通過し、2015年には米国で世界初の完全電気長距離観光バスを生産した。現在、比亜迪は多くの米国の顧客と大型電気バスk9、電気SUVのe6といった一連の新エネルギー自動車の生産と販売の契約を結んでおり、米国という伝統的な自動車王国に中国が作った自動車が進出するという夢を実現した。新華網が伝えた。


PS(2015.5.9追加):*7のように、川内再稼働反対デモは、鹿児島市の照国神社前を出発して、熊本市、熊本県水俣市、福岡県久留米市、太宰府市を通り、九電本店のある福岡市までの311キロを市民が歩くリレーにするそうで、深刻さの中にも、どこか歴史の重みと楽しさがありますね。 

*7:http://qbiz.jp/article/61723/1/ (西日本新聞 2015年5月9日) 川内再稼働反対 311キロリレーデモ 16日、鹿児島から福岡へ向け出発
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に反対する鹿児島市の市民団体「ストップ再稼働! 3・11鹿児島実行委員会」は8日、鹿児島市から九電本店のある福岡市までの311キロを市民が歩いて、再稼働反対を唱える「リレーデモ」を実施すると発表した。「川内原発で事故が起きれば九州全域に関わる問題になる。反対の機運を九州各地で盛り上げて、その意思を九電に示したい」としている。デモは16日に鹿児島市の照国神社前を出発し、27日まで12日間の日程。日替わりで20人規模が参加し、再稼働反対を唱えながら国道3号を徒歩で北上する。熊本市、熊本県水俣市、福岡県久留米市、太宰府市など11カ所に宿泊し、地域住民と意見交換もする。27日午後に九電本店に到着し、原発30キロ圏での住民説明会を九電が主催するよう求める10万人分の署名を提出する計画だ。県庁で記者会見した実行委の向原祥隆事務局長は「311キロを歩き通し、再稼働の不当性を訴えたい」と決意を語った。

| 原発::2015.4~10 | 12:01 PM | comments (x) | trackback (x) |

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