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2017.1.5 日本が先進国となり、少子高齢化した中で増える需要と雇用吸収力のある産業は何か → 高齢者いじめの年金・医療・介護の負担増・給付減は憲法違反であると同時に、国民経済を悪化させること (2017年1月6、8、10、13、15日に追加あり)
 あけまして、おめでとうございます。書くべきことは多いのですが、今日は2017年度の国家予算と高齢者いじめの年金・医療・介護の負担増・給付減の話です。


 国の借金     国の一般会計    2017年度予算案 社会保障推移  日本の人口構成
           2015.1.28Goo  2016.12.22毎日新聞

(図の説明:国の借金は1989年《平成1年》の消費税導入以降、次第に増えて2015年《平成27年》には1000兆円を超えた。これは、消費税増税を目的として税収増以上の景気対策と称する歳出増を行ってきた結果である。また、消費税は、価格を上げて消費を抑える効果もある。この結果、2017年政府予算案では、国債費が最も大きな支出項目となっているが、このうち国債の利払費は低金利の現在、国債を借り換えすることによってかなり節約できる。社会保障費の割合は大きく金額も増えているが、これは高齢者の数が増加したことが原因で一人当たりの社会保障費が増えたわけではない。特に介護は大きく不足しており、我が国の社会保障は、まだ削減するよりも充実すべき段階にある)

 
労働生産性 労働者一人当たり労働時間推移   労働時間世界比較   医師の労働時間世界比較

(図の説明:我が国の労働生産性はOECD加盟国のうち21位で決して高くないが、全員の労働生産性が低いわけではなく、公的部門や雇用対策・景気対策でなされる事業の生産性が特に低いのだろう。また、我が国の労働者1人当たりの年平均実労働時間は、1980年には2,104時間/年だったが、2012年には1,765時間/年まで減っており、これはアメリカ・イタリアより少ないため、我が国の労働者は働き過ぎだと主張する人は30年古い感覚である。しかし、医師の労働時間数は世界でもとりわけ高く、過労死認定基準を超えており、このように疲れていては治療の安全性さえ危ぶまれるが、他の職種との給与差は世界でも小さい方であり、度重なる診療報酬の引き下げは医療の質を落とす可能性が高い)

(1)国の異次元の借金と歳入・歳出について
 *1-4に、「①国の借金が1062兆5745億円に達して国民1人当たり約837万円の借金になった」「②高齢化で増え続ける社会保障費を賄うため借金が膨らんだ」「③経済対策の財源として建設国債を発行するため、2016年度末の国の借金は1119兆3000億円程度になる」と記載されている。

 このうち①は、国の負債部分しか見ておらず資産を考慮していないため正しくない。そして、その資産は使い方によっては大きな収益を産んで価値が高くなるが、金をどぶに捨てるような使い方をすれば価値がなくなり、現在は後者の使い方が目立つ。

 また、③は事実を書いたのだろうが、②の「借金が膨らんだ理由は社会保障費だ」というのは間違いだ。何故なら、社会保障費はあらかじめ予測できた支出であり、受益者たる国民は働いた期間に保険料を支払ってきたため、基本的に保険料収入から支出すべきもので財政支出すべきものではないからだ。それにもかかわらず、国民が支払った保険料では賄いきれずに財政支出しているのは、これまで監督官庁が単年度の収支しか考えておらず、保険料の徴収や積立金の管理・運用・配分等が著しく杜撰だったからである。

 そのため、その本質的な原因をなくさずに、「官は正しいことをしてきたが、少子高齢化(これも予見できた)が原因だ」などとして積立金不足の責任を特定世代の国民にしわ寄せするのは、正義に反する上、それでは社会保障が信頼をなくし、杜撰な管理・運用が今後とも改善されないのでよくない。

(2)2017年度の政府予算案について
1)予算案はまともに審議されるのか?
 一般会計歳出総額97兆円台半ばの2017年度政府予算案が、*1-1のように閣議決定されたが、これでもし衆議院が1月に解散されれば、国会のしっかりした審議もなく膨大な予算が執行されることになる。そのため、これは主権者である国民を無視した憂慮すべき事態だ。

2)国債残高と利払いについて
 大手新聞社は、*1-1のように、一貫して「社会保障が膨らみ、新規国債の発行額は16年度の34.4兆円をわずかに下回る薄氷の減額で、改革の切れ味が鈍い」という論調だが、正しくは国債増加額と国債の利払いを問題にすべきだ。そうすると、金利の低い現在は、新規国債を発行して金利の高い国債を返済し、今後の利払いを抑えるのが賢明だということがわかる。そして、「歳出の中で割合が大きいから、社会保障費を削るのが改革だ」とするのは、後で理由を書くとおり、間違いである。

3)沖縄振興と政府開発援助について
 沖縄振興は、基地を縮小し、沖縄自身が観光業・その他の産業を起こし、街づくりをして自ら稼ぐことができるようにするのが最も有効な投資であり、基地負担を強いるためにいつまでも補助金をばら撒くのは誰にとってもプラスにならない。

 また、政府開発援助(ODA)も大きいが、日本の外交は、国民に負担させて金をばら撒くばかりで、論理的に交渉する力に欠けているため、無駄遣いが多すぎる。

4)高齢者の負担増について
 高齢化による自然増6400億円の社会保障費を1400億円抑え、中高所得者とも言えない所得の低い高齢者の医療・介護負担を増やして高齢者向け社会保障費を5000億円増に抑えたのは、現在の本物のニーズである高齢者の医療・介護需要を減らさせ、命を支えている医療・介護従事者に不当な負担を強いた上、高齢化社会で必要となる財・サービスの開発・普及を妨げているため、間違った政策である。

 一方で、健康な生産年齢人口に当たる人の“働き方改革”に2100億円も充てているが、これは、脱法行為も含む労働基準法違反や男女雇用機会均等法違反をしっかりと取り締まればよいのであり、補助金を積んで改善していただくべき事項ではない。

 なお、*1-5のように、電通の新入社員である高橋まつりさんが異常な長時間労働の末に自殺した事件について、母の幸美さんが「日本の働く全ての人の意識が変わってほしい」と求める手記を公表し、一つの特殊な事例を働く全ての人に敷衍しようとしているが、これには無理がある。何故なら、(アウト・プットを見ればわかるとおり)電通は広告会社であり、東大は研究者や各界のリーダーを養成する校風であるため、東大文学部を卒業したからといって電通の仕事をする能力に長けているとは限らないからだ。

 また、上司が「目を充血させて会社に来るな」と言ったのも、本人が長くエネルギーを出し続けるためには無茶な残業をするよりも規則正しく仕事をする方がよい上、朝から他の社員に疲れを伝染させるようなことはしない配慮も必要であるため、上司として必要な注意だったかも知れず、パワハラとは決めつけられない。さらに、上司が「君の残業は電通にとって無駄だ」と言ったのも、成果があがらないので少なくとも頑張っているところを見せたいため長時間残業をする人もおり、それは本当に無駄であるため、必要な注意をしたのかもしれないからである。しかし、新入社員に、一人で責任を持つ形で困難な仕事をさせていたのであれば、それは異常であるとともに、社員を育てる意識に欠ける。

 そのため、まつりさんは、①社内の人事部などに相談する ②私もされた経験があるのでわかるのだが、東大卒など上昇志向の女性いじめの可能性も高いため、大学の就職相談室に相談しておく (労働基準監督署は、それ自体に女性差別があり、賃金と残業時間くらいしか対応できないため、このような女性差別の問題は大学の就職相談室が相談を受け付け、会社毎に挙がってくる問題を集計して対処した方がよい) ③労働問題・男女共同参画問題の専門家である弁護士に相談する ④(本当に自殺なら)母一人子一人の母親に喪失感を与えるような自殺はしない ⑤どうしても仕事や社風が合わなければ転職する など、大人としてやるべきことがあった筈なのだ。

 なお、日本社会は、「会社に入ったら辞めるのは落後者だ」という烙印を押すのをやめ、諸外国と同様、転職や中途入社をしても不利にならない雇用システムにすることが重要だ。また、本気で仕事における女性軽視や上昇志向の女性いじめをやめることも必要である。そして、この事件に対する日本社会の変な反応によって、本当に必要な時間外労働をしている人までが批判され、わかりやすい例を挙げれば、医療・介護も夜間・休日は休業しなければならないとか、メディアも生放送や朝刊をなくさざるをえないなどの負の結果が出るのは論外だ。さらに、仕事量が減らないのに午後8時や10時に全館消灯されると、家に仕事を持ち帰らざるを得ない人が増え、電車に忘れたりしてセキュリティー上のリスクが上がるとともに、それこそ仕事とプライベートの堺をなくさせ、ペースを乱させて労働生産性を下げる。なお、生産年齢人口が減る中で労働生産性を下げると、労働の量と質の両方が減ることを忘れてはならない。

 最後に、*1-2に、「1億総活躍社会の実現」として、保育士や介護職員の処遇改善に952億円を充てたと書かれているが、このやり方は保育と教育の連携や医療・介護制度の全体を考慮していないため、資本生産性が低い。

5)防衛費について
 防衛費は過去最高の5.1兆円に増やしたそうだが、東京オリンピックの競技場と同様、政府が購入する物品は国内市場価格の3~4倍であり、中国と比較すれば5倍にものぼる。そのため、多く支出する割には大したことはできておらず、公的部門の資本生産性(支出1円当たりの効果)は著しく低い。

 また、*1-2の海上保安庁の予算(2106億円)も同様だと思われるため、高コスト構造や公的部門の購入コストを何とかしなければ、無駄遣いが非常に大きいのだ。

6)土地改良事業について
 資本生産性が低いのは、4020億円を充てた土地改良事業も同じだ。土地改良費はこの20年の累積で約8兆円(4000億円/年 x 20年)近くにのぼるが、未だに大型機械が入らない区割りになって
いる場所があったり、いつまでも土地改良事業が必要だと言っていたりするのは、これまで何をしてきたのかと思われる。私は、災害で壊れた場所を治す時も、何度も同じ場所を工事する必要がないように、復旧して元に戻すのではなく、時代の要請にあったものを造るべきだと考える。

7)歳入・歳出と消費税増税について
 歳入面では、来年度の税収は今年度当初比1000億円増の57.7兆円に留まり、歳出の伸びと比較して税収の伸びが鈍いため、外国為替資金特別会計の運用益等の税外収入を2016年度の4.7兆円から2017年は5兆円超に伸ばす方針なのだそうだ。しかし、これまでに書いてきたとおり、税収増は、各生産性を上げ、国産自然エネルギーに代替したり、新産業を創出したりすることによって実現でき、税外収入は地熱・天然ガス・地下資源などの国産資源を開発する方が大きな効果が得られる。

 なお、日本の消費税は、1989年(平成1年)に導入されて税率3%でスタートし、1997年(平成9年)に5%に引き上げられ、2014年(平成26年)4月からは8%に引き上げられた。そして、一番上の左から2番目のグラフを見ればわかるとおり、消費税導入翌年の平成2年から国の歳出が歳入を大きく上回り始め、その差は増税毎にますます大きくなって、それにつれて国債発行残高が増えているのだ。これは、消費税増税のための景気対策と称して消費税増税以上の歳出をしているからで、消費税が財政に貢献するというのは消費税増税自体が目的である政府の御都合主義の神話である。なお、「社会保障費は消費税や付加価値税からしか支出してはいけない」などとする国は、日本以外にはない。

8)少子高齢化社会のニーズに合ったサービスである社会保障の削減について
 東京新聞が*1-3に記載しているように、政府が12月22日に閣議決定した2017年度予算案は、上記3)~6)の増加があった半面、高齢者関係の社会保障費の増加を抑え、高齢者に対して予算のしわ寄せを行っている。

 そして、歳出の1/3を占める社会保障費の伸びを抑えるためとして、医療・介護の分野での高齢者の負担増が多く、①一定の所得のある70歳以上を対象とした医療費の自己負担上限引き上げ ②後期高齢者医療制度保険料の自己負担増加 ③高齢中所得者の介護保険サービスの利用者負担上限引き上げ が盛り込まれ、菅官房長官が12月22日の記者会見で「社会保障と財政を持続可能にすることができるようにするということは当然」として、翌年度以降も医療・介護での負担増は避けられないとの考えを早くも強調したそうだ。

 しかし、この政策は、“社会保障”と“財政”を持続可能にするどころか社会保障の機能を失わせ、「高齢者は国民負担になるから、次世代のために早く他界してくれ」と言わんばかりだ。これは、憲法25条の「①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する  ②国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という国民の生存権と国の社会的任務を定める規定に反する。

 また、(3)で書くとおり、もともと少ない高齢者の可処分所得を削り、生産年齢人口にあたる健康な人のために景気対策と称して資本生産性の低い大きな財政出動を行って国全体の労働生産性を落としつつ、今後人口における割合が高くなる領域(一番上の右端のグラフ参照)の消費を抑えてGDPの増加(=経済成長)を阻害している点で、賢くない政策である。

(3)GDP算出方法の基準変更と実質GDPが増えない理由
 異次元の金融緩和や莫大な財政支出による景気対策を行っても、*2-1のように、実質国内総生産(GDP)の成長率は2%に満たず、①個人消費などの内需は弱くて輸出が牽引している構図に変わりない ②企業の設備投資が下方修正された ③民間在庫の減少も下押し要因となった とのことである。私は、①は税と社会保障の一体改革で人口の25%を占める65歳以上の消費を抑制した影響が大きく、その結果、国内消費が冷え込んだため、②③のように国内投資が抑制されたのだと考える。

 また、内閣府はGDP算出方法の国際基準変更に伴って、今回から研究開発費を投資に追加する変更を行い、過去分にさかのぼって数値を修正したところ、設備投資は速報値の前期比0.03%増から0.4%減と悪化し、GDPの6割を占める個人消費は0.1%増から0.3%増に改善したそうで、内閣府が国際基準の変更に伴ってGDPの計算方法を見直した結果、2015年度の名目GDP確報値は532兆2千億円になり、基準変更の影響だけで2015年度の名目GDPは旧基準と比較して31兆6千億円拡大して、安倍政権が目標として掲げる名目GDP600兆円に近づいたそうだ。しかし、これは尺度の変更にすぎない。

 このうち最も大きな変更点は、今まで費用とされてきた研究開発費を付加価値を生む投資としてGDPに加えるようになったことで、これによる名目GDPへの上乗せ効果が研究開発費だけで19兆2千億円あるそうだが、研究開発に失敗はつきもので研究開発費のすべてが付加価値を生む投資になるわけではないため、私はこの認定は甘すぎると考える。国際会計基準(IFRS)では、研究開発投資について合理的な根拠がある場合(新商品に繋がる可能性が高く、その際に特許権・商標権等が生じるなど)に限って資産性を認めて資産計上できることになっている。

 なお、*2-2に書かれているとおり、新基準では統計の基礎となる産業連関表を実勢に近い2011年分に切り替えるそうだが、日本の産業連関表は、第二次産業(製造業)が細かく分析されているのに対し、第一次産業(農林漁業、鉱業)や第三次産業(サービス業)が大雑把にしか扱われていない点で時代についていっていないため、これを改善すべきだと、私は考える。

 何故なら、先進国で高コスト構造の日本は、既に製造業による加工貿易に適した国ではなく、そのような国で雇用吸収力の高い産業は国内向けの財・サービスを生産する産業で、実際にそれらのGDPに占める割合が高くなっているからだ。さらに、人口に占める割合の高い高齢者向けの需要は増え、日本で高齢者向けの洗練された財・サービスを開発すれば、それは後に続く他国へも輸出可能な筈である。

 なお、日本で輸出を伸ばせる産業には、これまで重視してこなかったため伸びしろが大きく、工場のように移転できない農林漁業と関連食品産業、鉱業、現代の技術を取り入れた伝統産業などもある。

 そのため、(2)の予算のように、高齢者から可処分所得を巻き上げ、高齢者がQOLを高くするために自由に選択して消費することを不可能にし、それによって高齢者向けの洗練された財・サービスの開発を妨げて、一方でグローバル化と称して農業を犠牲にして自動車の輸出を計るのは、過去のやり方を繰り返そうとしているだけで現在と将来を見すえていないため愚かである。

(4)高齢者に対する給付減・負担増は日本経済にマイナスであること
1)年金について

“改革”の工程   圧縮案   年金“改革”の内容    賃金スライド    “改革”の理由
         2016.11.24   2016.10.13      2016.12.3  
           佐賀新聞      毎日新聞       西日本新聞

(図の説明:一番右の表のように少子化で支え手が減るという理由で、一番左の表のように年金・医療・介護などの高齢者向け社会保障は給付減・負担増ばかりだが、これでは社会保障の機能を果たさない。そのうち年金に関する支給開始年齢の引き上げはよいと思うが、仕事も蓄えもなければ生活保護に頼らざるを得ないため、70歳くらいを年金支給開始年齢(=定年)として、それ以前に健康で仕事がない人には失業保険で対応するのがよいと考える。なお、年金については、受託者が失敗した徴収・管理・運用の責任を国民に押し付け、受給額引き下げや賃金スライドまで取り入れて減額に専念しているが、このままでは今後も同じことが繰り返される。そのため、組織の見直しでお茶を濁すことなく、年金に退職給付会計を採用して要積立額の数理計算を行い、年金受給者のための徴収・管理・運用を徹底すべきだ)

 
 各国の公的年運用        日本は積立金運用方針変更で赤字     厚生年金未加入者

(図の説明:公的年金の積立金運用は、アメリカでは100%債権であり、そうでない国もあるものの、金融技術が進んでいるのはアメリカだ。私も、老後資金であり喪失できない年金積立金の運用は、元本が減らないような割合(80%以上)で債権による運用をすべきだと考えているが、日本では年金積立金をリスク資産に振り向けた結果、大きな赤字を出し、積立金のさらなる減少を招いた。なお、物価上昇や低金利は債権での運用に不利だが、そもそも物価上昇や異常な低金利は国民生活を害する経済政策なのだ。また、利子率は労働生産性や資本生産性などの生産年齢人口の稼ぎ方に依るため、日本は労働生産性や資本生産性を上げるような予算の使い方をしていない点でも政策が間違っている。なお、日本では厚生年金に加入できない人が多く、老後の生活に不安があるが、これらの人も厚生年金に加入させれば、厚生年金財政も少し楽になる)

 日経新聞は、2016年12月8日に経済教室で、*3-1のように、中央大学教授の山田氏の見解を掲載しているが、このように高齢者は金を使わないと言うのが、現在言われている高齢者からは金を巻き上げてよいとする根拠だ。しかし、この感覚は全く変である。

 その内容は、「①欧米と違い、家族の制約から高齢者はお金があっても消費に回さない」「②日本では家計を妻が管理しており、引退後も夫は自由に金を使えない」「③団塊世代の夫婦年齢差は平均4歳で平均寿命も6歳ほど女性が長く、妻は夫が亡くなった後の10年を1人で生活しなければならないため、金を夫に使わせたくない」「④日本では夫婦共通の趣味を持つ高齢者が少なく、共通の趣味を楽しむために2人で金を使う夫婦は少数」「⑤夫婦仲も欧米に比べて良いとは言えず、自分の趣味のために夫婦のお金を使うと相手に嫌がられる」「⑥高齢者は子との関係が悪化することに不安をもっており、資産のない高齢者は子との関係が疎遠になりがちなため、資産がなくなったら子から見捨てられるかもしれないという不安がある」「⑦そのため、金を持っていようという高齢者が増える」「⑧日本では、病気や介護状態が長期化した時、中流生活を維持しようとすれば、ヘルパーなど余分な費用がかかるので、可能性は低くてもそういう状態になった時に困らないように、お金を取っておこうとする」などと書かれている。

 このうち、①は間違いで、⑧の医療・介護需要は必需品の消費だ。そして、高齢者は医療・介護が必要になった時に、あてにできない子に頼らなくてもよいように蓄えを持っておこうとしているというのが正しい。さらに、③のように一人で生きなければならない期間に年金が減らされて貧困に陥るのを避けるため、②のように無駄遣いをしないようにしているのだ。また、④⑤は一般化できず、⑥⑦のように子との関係維持のために資産が必要だというのは、よほど子の教育が悪かった人だろう。

 そのため、私は、意図的に高齢者の消費を抑えなければ、堺屋氏の言うように高齢者が多く消費する時代が来て、洗練された高齢者のニーズが新たな財・サービスの開発に繋がると考える。

 しかし、*3-1のような世論を作った上で、将来の年金水準確保が狙いだとして、*3-2のように、政府は、「物価が下がった場合だけでなく現役世代の賃金が下がった場合にも高齢者への年金支給額を減額する」という新ルールを作って高齢者への年金支給額抑制を強化した。これにより、*3-3のように、国民年金の支給水準が現行より最大0.6%下がり、将来世代の受け取りが最大0.6%上昇する計算だそうだが、このような単純な算術しかできない人が日本経済を考えたり年金の設計をしたりするのが、大きな間違いなのである。

 なお、中小企業の従業員や非正規社員も、本来は厚生年金に加入しなければ老後の生活に困るため、ここを厚生年金に加入させることは、本人のためである同時に、年金財政上も重要である。そして、年金で生活できなければ貯蓄を増やさざるを得ず、貯蓄がなければ生活保護受給者になるのだ。

 また、私は、*3-4の「年金運用巨額赤字 国民に失敗のつけを回すな」という琉球新報の社説に同感で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がリスク資産への投資を増やして、2015年度の運用損が5兆円を超える巨額赤字になる見通しだというのは失策だと考える。そして、ここまで大きな責任に対し、誰かが引責辞任したからといって、国民にとっては何の役にもたたない。

 さらに、*3-5のように、厚労省は、75歳以上の後期高齢者医療制度で保険料徴収システムの不備があり、2008年度の制度発足時から全国的に計算ミスで保険料を過大・過小に徴収し、ミス発覚から5年間も放置していたとのことだが、これがこれまでにも多かった厚労省の杜撰さで、民間企業ならとっくに倒産しているところだ。しかし、2年を超えて請求のなかった債権債務は、短期消滅時効にかかるため請求はできない。

 なお、*3-6のように、国民年金・厚生年金を受け取るのに必要な受給資格期間が25年から10年に短縮されたのは、少し進歩だ。しかし、本来は、短い期間でも年金保険料を支払った人は、支払期間と支払金額に応じて年金を受けとれるようにするのが公正で、今まで支払期間が25年に満たないとして年金が支払われなかった分は、国の不当利得になっていたのである。

2)医療・介護について

“改革”の工程   圧縮案    医療の高額療養費    介護負担   65歳以上の介護保険料
          2016.11.24   2016.12.16 
           佐賀新聞      東京新聞

(図の説明:高齢になると病気が増えるので医療・介護費がかさむが、働いている期間は病気もしないのに保険料を支払っているので、これによって保険制度が成立するわけである。そのため、高齢者のみが入る後期高齢者医療制度を作るなどというのは、保険を理解していない人のすることだ。また、高齢になると医療・介護の出費がかさむため、大金持ち以外は75歳以上の窓口負担を1割にしたり、高額医療費の上限を低くしたりするのが当然で、支払上限は医療・介護の双方を足した金額も考慮して決めるべきだ。また、救急で近くの専門医に運んでもらったり、深刻な病気でセカンド・オピニオンをとったりする場合もあるため、かかりつけ医以外を受診すると追加負担させるというのも先進国のすることではない。さらに、入院した際に部屋代以外に高熱水費をとられるのは、ホテル代を支払う時に高熱水費を別に請求されるのと同じくらい違和感がある。そして、こうまでしてたった数百億円を節約するために既に法案提出の準備を終わったというのだから呆れる。さらに、介護については、2000年(平成12年)4月に始まったばかりで、まだ軌道にさえ乗っていないのに、上限引き上げ・利用料引き上げ・保険料引き上げ・サービスカットなど負担増・給付減の話ばかりで、40歳以上からしか介護保険料を徴収せず、利用者の年齢も制限しているという不合理で変則的な制度については改善していない。つまり、他では兆円単位の無駄遣いをしながら、命を支える医療・介護には数百億円単位でケチケチしており、倫理に反する)

 来年度から順次実施される医療保険と介護保険の見直し案が、*4-1のように決まり、それは高齢者に負担増を求める内容で、①医療は70歳以上で現役並みに所得のある人の月毎の負担上限額を現役世代と同水準に引き上げ ②75歳以上の保険料を本来より軽減している特例も段階的に縮小し ③介護では、現役並み所得者の利用者負担を2割から3割に引き上げる ④現役よりも所得の少ない人も、住民税が課税されていれば月毎の負担上限額を医療並みに上げる とのことだ。

 さらに、*4-1には、会社勤めの人の保険料は、大企業の社員は重く、中小企業の社員は軽くなると書かれている。見直しの根底にあるのは、大企業・高額所得者という分類を設けて負担を重くすることだが、「大企業」を分ける意味はなく、「現役並み」とする境界も低すぎる。また、所得の再分配は累進課税で既に行っているため、同一サービスを同一対価で受けられないのはむしろ差別にあたる。その上、高齢者は支えてもらう側というのも、働いている期間に多額の保険料を払って来た人にとっては失礼な話だ。さらに、悪影響を受けるのが高齢者だけならよいとする発想はあくどい。

 つまり、*4-2のように、高齢者の命に関わる支えをはずし、高齢者の生活を脅かす改悪をして公正さを損ないながら、社会保障費でたった1400億円を抑制するよりも、(2)に記載したとおり、抑制すべき桁違いに多額の無駄遣い予算がいくらでもあるのだ。

 さらに、*4-4のように、医療費と介護費の毎月の自己負担額にそれぞれ上限を設ける「高額療養費制度」「高額介護費制度」も上限を上げるそうだが、医療費で高額療養費制度を適用されるような高齢者は、介護も受け続けなければならないケースが多く、高齢者の収入から両方を支払うのは年収370万円(=月収約31万円だが、介護保険料や水光熱費は必ず引かれる)だったとしても容易ではないだろう。そのため、医療費と介護費を合計した上限も設定すべきである。

 また、*4-3のように、厚労省は、2017年度から予定する公的医療保険制度の見直しで、75歳以上の後期高齢者医療制度で、所得が比較的低かったり扶養家族だったりした人も保険料の特例軽減を廃止して段階的に引き上げ、70歳以上の医療費優遇措置も縮小して、国費350億円の抑制を見込むそうだが、小さな効果のために高齢者の生活を脅かすのはいい加減にすべきだ。

 そして、診療報酬削減も繰り返した結果、*4-5のように、地域医療が崩壊の危機に瀕し、居宅・特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・介護老人保健施設のニーズの見直しが進んでいるが、高齢化が進んでいる農村で、住民が住み慣れた土地で安心して暮らし続けられるためには、医療・介護の一体化が欠かせず、地域包括ケアを根付かせることができるかどうかが地域医療の試金石となるそうだ。

 なお、日本農業新聞が、*4-6の2016年11月13日に書いているとおり、介護の必要度が比較的軽い「要介護1、2」でも、社会的入院をせず自宅療養するためには在宅支援サービスの生活援助が不可欠であるため、介護保険が縮小されると介護利用者の不安が頂点に達するそうだ。そのため、現在でも足りないくらいの介護費用を数百億円削り、健康な生産年齢人口の人に対して景気対策と称する数兆円規模の無駄遣いをするのは不適切である。また、年中、制度変更と削減を繰り返されると、介護主体も経営が安定せず混乱する。その上、介護や生活支援のように毎日必要とされる重労働に報酬で報いることなく、善意のボランティアで済ませようとするのは、介護や家事労働を馬鹿にしている人の発想だ。

<国の財政支出、借金>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161218&ng=DGKKZO10806150X11C16A2NN1000 (日経新聞 2016.12.18) 来年度予算 改革の切れ味鈍く、歳出、社会保障膨らむ/歳入、薄氷の国債減額
 政府は2017年度予算案で一般会計の歳出総額を97兆円台半ばとする方針だ。5年連続で過去最高を更新する。国債の想定金利を過去最低の1.1%に据え国債費を抑えたが、高齢化で社会保障費の膨張が続く。歳入面では税収が16年度当初予算並みの水準にとどまると想定し、新規国債の発行額は16年度の34.4兆円をわずかに下回る薄氷の減額となる。麻生太郎財務相らが19日に関係閣僚と折衝し、沖縄振興や政府開発援助(ODA)、教職員定数など残された課題の予算規模や方針を詰める。22日に閣議決定し、来年の通常国会に提出する。歳出総額は前年度の96.7兆円から増やし、97.4兆~97.5兆円とする案を軸に最終調整している。夏の概算要求の段階で高齢化による自然増を6400億円と見積もった社会保障費は、中高所得者の高齢者の医療・介護分野の負担を増やし5000億円増に抑えた。その一方で、子育てや介護、年金などの充実策には新たに3000億円程度を投じ、働き方改革の予算には前年比3割増の2100億円を充てた。ミサイル防衛などを強化する防衛費は過去最高の5.1兆円に増やし、4020億円を充てた土地改良事業を含む公共事業費は5年連続増の6.0兆円とした。今年度第2次補正予算案で追加支出した農林水産関係費は20億円減の2.3兆円に、文教・科学技術振興費も微減の5.4兆円とした。一般歳出以外の経費では、財務・総務両省が地方交付税交付金を前年比3000億円増の15.6兆円前後とする方向で詰めの協議を進めている。国債費は国債の想定金利を過去最低の1.1%に据えた。5000億円程度の抑制効果があり、国債費全体でも16年度当初の23.6兆円を最大1000億円下回る。歳入面では、今年度第3次補正で税収見積もりを1.7兆円下方修正する影響で、来年度税収が今年度当初比1000億円増の57.7兆円にとどまる。歳出の伸びと比べ、税収の伸びが鈍かったため、外国為替資金特会などの運用益などの税外収入を確保し、16年度の4.7兆円から5兆円超に大幅に伸ばす方針だ。この結果、財源不足を穴埋めする新規国債の発行額は16年度の34.4兆円を数百億円程度下回る見通しだ。ただ、国債減は想定利率の大幅な引き下げや税外収入の確保といった特殊要因の寄与度が大きく、減額幅は安倍政権発足後ではもっとも小さくなった。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12719390.html (朝日新聞 2016年12月23日) 膨張予算、歯止め遠く 来年度、過去最大97.5兆円案決定
 政府が22日に閣議決定した2017年度予算案は、5年連続で過去最大になった。高齢化で年金や医療など社会保障費が膨らむ中、防衛費や公共事業費も増える。一方、ここ数年は数兆円伸びていた税収は、16年度当初比で1080億円の微増にとどまる。一般会計の歳出総額は97兆4547億円。歳入穴埋めのための新たな国債(国の借金)発行額は34兆3698億円となった。16年度当初より622億円減らすが、17年度末の国債の残高は2・4%増の865兆円に膨らみそうだ。税収は、政府の17年度の経済成長率見通し(名目2・5%、実質1・5%)が前提。米大統領選後の円安・株高も織り込んでおり、世界経済の動向によっては想定通りの税収が得られない可能性もある。社会保障費も1・6%増の32兆4735億円で、過去最大を更新した。一部の負担増で自然増を圧縮しつつ、「1億総活躍社会の実現」として、保育士や介護職員などの処遇改善には952億円を充てた。防衛力強化に向け、防衛費も過去最大の5兆1251億円とした。海上保安庁の予算は要求を上回る2106億円を認めた。公共事業費も、5年連続で前年度を上回った。政府は、16年度より新たな借金はわずかに減らせたことから、「経済再生」と「財政再建」を両立できたとする。だが、税収は伸び悩み、新たな借金に頼らない財政という20年度の目標は遠のいた。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201612/CK2016122302000143.html (東京新聞 2016年12月23日) 安倍カラー 暮らしにツケ 17年度予算案 閣議決定
 政府が二十二日に閣議決定した二〇一七年度予算案の一般会計の歳出総額は九十七兆四千五百四十七億円で、五年連続で過去最大になった。防衛費は五年連続で増やし五兆一千二百五十一億円と過去最高を更新。一方で社会保障費は増加を抑えるなど、安倍政権の姿勢を反映した予算のしわ寄せは、国民の暮らしに及んでいる。
◆膨張
 「わが国を取り巻く厳しい安全保障環境の下で、防衛の質と量をしっかり充実させることが必要だ」
 稲田朋美防衛相は二十二日の記者会見で強調した。一七年度予算案では防衛費が過去最高額を更新。予算額は一六年度当初比で1・4%増の五兆一千二百五十一億円に膨れあがった。押し上げ要因として浮かび上がるのは、米国製の高額な武器を積極的に購入していることだ。最新鋭ステルス戦闘機F35六機の取得費計八百八十億円、新型輸送機オスプレイ四機の取得費計三百九十一億円、無人偵察機グローバルホーク一機の組み立て費百六十八億円…。米国から買う武器で一七年度予算案に盛り込まれた総額は三千五百九十六億円に上る。四千億円台だった一五、一六年度よりは減ったが、一四年度の千九百五億円を大幅に上回る高水準だ。F35を巡っては、トランプ次期米大統領が「計画も費用も制御不能だ」と批判し、米国防総省による購入費の削減に取り組む考えを表明。日本政府内にも「高額であることは間違いない」(高官)との意見がある。
◆圧迫
 一方、歳出の三分の一を占める社会保障費の伸びを少しでも抑えるため、医療や介護などの分野で国民の暮らしを圧迫するメニューはめじろ押しだ。一定の所得のある七十歳以上を対象とした医療費の自己負担上限を引き上げることや、後期高齢者医療制度の保険料の自己負担を段階的に増やすこと、さらには、中所得者を対象に介護保険サービスの利用者負担上限を高くすることなどが盛り込まれた。菅義偉官房長官は二十二日の会見で「社会保障と財政を持続可能にすることができるようにするということは当然。不断の取り組みが大事だ」と話して、翌年度以降の予算編成でも医療や介護での負担増が避けられないとの考えを早くも強調した。歳出は拡大していく一方だ。公共事業は老朽インフラの更新などで五兆九千七百六十三億円と微増ながら増加を続け高止まりだ。中でも五年連続で増やした防衛費は五兆円を突破しただけでなく、一六年度第三次補正予算案でも千七百六億円を計上する大盤振る舞いだ。高齢者の医療や介護では自己負担の増加を求める一方で、防衛費や効果が見えない「アベノミクス」の柱である公共事業を優先-。安倍政権の「本音」がより鮮明になった予算の姿を浮かび上がらせている。

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/376438 (佐賀新聞 2016年11月14日) 国の借金1062兆円 過去最大、国民1人837万円
 財務省は、国債と借入金、政府短期証券を合計した9月末時点での「国の借金」が1062兆5745億円に達し、過去最大を更新したと発表した。国民1人当たり約837万円の借金を抱えている計算になる。高齢化で増え続ける社会保障費を賄うため、借金が膨らんだ。経済対策の財源として建設国債などを発行するため、2016年度末には1119兆3000億円程度になると財務省は見込んでいる。これまでは15年6月末の1057兆2235億円が最大だった。今年6月末からは9兆1069億円増えた。9月末の借金の内訳は、国債が926兆1383億円に上り、6月末に比べ7兆6619億円増加した。金融機関などからの借入金は9749億円増えて53兆6869億円。一時的な資金不足を穴埋めする政府短期証券は4701億円増の82兆7493億円だった。

*1-5:http://qbiz.jp/article/100680/1/ (西日本新聞 2016年12月25日) 過労死ない社会、母の願い 電通社員自殺1年で手記
 電通の新入社員、高橋まつりさん=当時(24)=が長時間労働の末、自殺してから25日で1年を迎え、母の幸美さん(53)が、電通の役員や幹部に「まつりの死に対して心から反省をして、見せかけではなく本当の改革を行い、二度と犠牲者が出ないよう決意していただきたい」と求める手記を公表した。「仕事のために不幸になったり、命を落としたりすることはあってはならない」とも記述。最後を「日本の働く全ての人の意識が変わってほしい」という一文で締めくくっており、過労死を招く社会の在り方を考え直すことを求める内容となっている。まつりさんが命を絶ったのは、昨年12月のクリスマスの朝。幸美さんは娘を失った喪失感を「あの日から私の時は止まり、未来も希望も失った。息をするのも苦しい毎日。朝、目覚めたら全て夢であってほしいと思い続けている」とつづる。夫と離婚後、静岡県で働きながら育て上げたまつりさんについて「困難な境遇でも絶望せず、10歳の時に中学受験をすると自分で決めた時から夢に向かって努力し続けた」と振り返り、電通に入社後も「期待に応えようと手を抜くことなく仕事を続けたのだと思う」と推察。「あの時、会社を辞めるよう強く言えばよかった。母親なのにどうして助けられなかったのか」と後悔を吐露している。今年9月にまつりさんの自殺が労災認定されると、東京労働局などが電通への強制捜査を実施。折しも政府の働き方改革実現会議の議論も進んでおり、長時間労働を抑制する機運が高まっている。こうした状況について、幸美さんは「まつりの死が、日本の働き方を変えることに影響を与えているとしたら、それは、まつり自身の力かもしれない」とする一方、「まつりは生きて社会に貢献できることを目指していた。そう思うと悔しくてならない」「本当の望みは娘が生きていてくれること」とも書いてあり、抑えきれない悲しみが伝わってくる。
   ◇   ◇
●午後10時全館消灯…改革半ば
 昨年12月に自殺した電通社員、高橋まつりさんの母幸美さんが、悲痛な思いをつづった手記を公表した。まつりさんは昨年春、電通に入社。東大在学中に就職先として広告大手を選んだのは「一流企業に就職し、お母さんを楽にしてあげたい」という思いがあったから。入社後はインターネット広告などを担当した。しかし、昨年10月に本採用になると業務が激増。月100時間以上の残業も強いられた。「死にたいと思いながらこんなストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか」。亡くなる直前まで書き込み続けたツイッターの文面を見ると、今となってはSOSにしか映らない。若者の雇用問題に取り組むNPO法人「POSSE」の今野晴貴代表は「企業の自主的取り組みだけでなく、長時間労働の法規制まで踏み込むべきだ」と、政府に注文を付けた。電通は午後10時以降の全館消灯を始めるなど改善に取り組むが「みんな仕事を持ち帰るようになっただけ」(20代社員)という声もあり、改革は道半ばのようだ。「会社の深夜の仕事が東京の夜景をつくっている」。まつりさんは生前、深夜残業がまん延している異常さを、こんな表現で幸美さんに伝えていたという。「制度をつくっても、人間の心が変わらなければ改革は実行できない」。幸美さんが突き付ける言葉が重く響く。
■電通社員の過労自殺 2015年4月に電通に入社した高橋まつりさんが、同年12月に東京都内の社宅から飛び降り、24歳で亡くなった。三田労働基準監督署は、長時間労働が原因として16年9月に労災と認定。まつりさんは自殺前「本気で死んでしまいたい」「もう体も心もズタズタだ」などの思いを会員制交流サイト(SNS)などに書き込んでいた。

<GDP>
*2-1:http://qbiz.jp/article/99717/1/ (西日本新聞 2016年12月9日) GDP下方修正、年1.3%増 内需低調、輸出頼み続く 7−9月期改定値
 内閣府が8日発表した7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0・3%増、このペースが1年間続くと仮定した年率換算は1・3%増で、速報値の年率2・2%増から下方修正した。3四半期連続のプラス成長だが、個人消費など内需が弱い中で輸出がけん引する構図に変わりはなく、景気は力強さを欠いている。速報後に公表された法人企業統計を受けて企業の設備投資が下方修正され、民間在庫の減少も下押し要因となった。内閣府は国際基準の変更に伴い、今回から研究開発費を投資に追加するなどGDPの算出方法を変更。過去分にさかのぼって数値を修正した。改定値の内訳をみると、設備投資は速報値の前期比0・03%増から0・4%減と悪化。不動産業や鉄鋼業などで減り、2期ぶりのマイナスだった。GDPの6割を占める個人消費は0・1%増から0・3%増に改善。内閣府は「テレビや飲料販売、宿泊施設関連の増加がプラスに寄与した」と説明する。一方で、大和総研の長内智氏は「引き続き内需に力強さが欠けている点には留意しておく必要がある」と指摘する。輸出は速報値の2・0%増から1・6%増に下方修正されたものの2期ぶりに増加。実質GDPへの影響を示す外需の寄与度は0・3%と、押し上げ効果をもたらした。トランプ次期米大統領の政策が見通せないことなど、世界経済を巡る「不確実性の高い状況は続く」(黒田東彦日銀総裁)中で、今後も輸出が成長を主導できるかは流動的といえる。景気実感に近いとされる名目GDPは前期比0・1%増、年率換算0・5%増で3期連続の増加だった。
   ◇   ◇
●名目GDP31兆円拡大 15年度、国際基準見直しに伴い
 内閣府は8日、国際基準の変更に伴って国内総生産(GDP)の計算方法を見直した結果、2015年度の名目GDP確報値は532兆2千億円になったと発表した。安倍政権が目標として掲げる名目GDP600兆円にやや近づいた形だ。内閣府は新基準の採用に合わせ、GDPを過去22年分にさかのぼって改定した。16年7〜9月期の実質GDPは速報値に比べ下方修正されたが、内閣府は「基準改定による影響は分からない」と説明している。計算方法の見直しは、統計の精度向上が目的だが、基準変更に伴う影響だけで15年度の名目GDPは旧基準と比べ24兆1千億円拡大した。今回、約5年に1回実施している基準改定や、統計の基礎となる産業連関表の切り替えも行った。これらの影響も含めると、15年度の名目GDP確報値は旧基準の推計値から31兆6千億円増えた。GDPは一定期間に国内でつくり出されたモノやサービスの付加価値の合計額だ。計算方法は国連が定める国際基準を基に各国が決めている。今回の見直しは国際基準が08年に刷新されたことに対応したもので、日本では16年ぶりの大幅改定になる。もっとも大きな変更点は、これまで費用とされてきた研究開発費が付加価値を生む投資と認められ、GDPに加えるようになったことだ。名目GDPへの上乗せ効果は研究開発費だけで19兆2千億円あった。この他に、特許使用料や不動産の仲介手数料、防衛装備品なども加算された。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H0R_Y6A201C1MM0000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/12/8) 15年度の名目GDP、31兆円かさ上げで532兆円、基準改定、研究開発費など加算
 内閣府が8日発表した2015年度の名目国内総生産(GDP)の確報値は532.2兆円となった。研究開発費の加算など新たな基準に切り替えた影響などで、31.6兆円かさ上げされた。旧基準では500.6兆円に相当する。安倍晋三首相は20年ごろまでに名目GDPを600兆円に増やす目標を掲げており、100兆円の開きが一気に縮まることになる。新基準は統計の基礎となる産業連関表を、実勢に近い11年分に切り替える。これまでは05年分を使っていた。また国連の最新の基準を使い、推計方法も見直し、1994年まで遡って再計算した。GDPの押し上げに大きく影響したのは研究開発費で、それだけで19.2兆円上振れした。これまでは「経費」として扱ったが「投資」とみなしてGDPに加えた。このほか、特許使用料の加算が3.1兆円、不動産仲介手数料の加算が0.9兆円のかさ上げ要因になった。新基準への切り替えで、16年7~9月期の名目GDPは季節調整済みの年率換算で537.3兆円となり、過去最高を更新した。旧基準では日本経済がデフレに陥る直前の1997年10~12月期の524.5兆円(新基準では536.6兆円に相当)がピークだった。

<年金>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161208&ng=DGKKZO10386900X01C16A2KE8000 (日経新聞 2016.12.8) 経済教室:家族の衰退と消費低迷(7)高齢者のお金は消費に回らず 中央大学教授 山田昌弘
 今回は高齢者の家族状況と消費との関連を示しましょう。10年ほど前、堺屋太一氏と対談したとき、堺屋さんは「これから高齢者消費の黄金時代が来る」と言われました。堺屋さんが名付けた「団塊の世代」が退職する。資産があり、年金もまだ高水準、時間も十分にある高齢者が消費市場に出てくるというのです。しかし、筆者は、欧米と違い、日本では「家族のあり方」が制約になり、次に挙げるいくつかの理由で、お金があってもなかなか消費に回らないのではないかと疑問を呈しました。まず、日本では通常、家計を妻が管理しています。筆者の調査では、現役世帯で4組に3組の夫婦が、夫は収入を全額妻に渡し、小遣いを妻からもらう形態をとっています。引退後も、財布のひもは妻が握るのが多数派です。すると、いくらお金があっても、夫は自由には使えません。団塊世代の夫婦年齢差は平均4歳で、平均寿命も6歳ほど女性が長くなっています。平均すれば、妻は夫が亡くなった後の10年を1人で生活しなければなりません。それを考えると、お金を夫に使わせたくないのです。さらに日本では夫婦共通の趣味を持つ高齢者は少なく、共通の趣味を楽しむために2人でお金を使う夫婦は少数派です。夫婦仲も欧米に比べて良いとは言えないので、自分の趣味のために夫婦のお金を使うと相手に嫌がられます。夫が引退後、田舎で暮らしたいと言っても、妻が反対して実現しないことが多いのです。子どもとの関係も問題になります。高齢者は子どもとの関係が悪化することに不安をもっています。現実に日本では、資産がない高齢者は子どもとの関係が疎遠になりがちです。これはいい悪いの問題ではありません。資産がなくなったら子どもから見捨てられるかもしれないという不安があるので、自分で使わずに持っていようという高齢者が増えるのです。また日本では、いざ病気や介護状態が長期化したとき、中流生活を維持しようとすれば、ヘルパーなど余分な費用がかかります。可能性は低くても、そのような状態になったときに困らないように、お金を取っておこうとするのです。

*3-2:http://qbiz.jp/article/100046/1/ (西日本新聞 2016年12月14日) 年金額の抑制強化へ、改革法成立 現役賃金下がれば減額
 年金制度改革法が14日午後、参院本会議で自民、公明両党や日本維新の会などによる賛成多数で可決、成立した。将来の年金水準を確保することを狙い、支給額の抑制を強化。毎年度の改定ルールを見直し、現役世代の賃金が下がれば高齢者への支給を減額する。中小企業に勤めるパートなどの短時間労働者は、労使が合意すれば厚生年金に加入できるようになる。現行制度では、支給額改定に際して高齢者の暮らしに大きな影響を与える物価の変動を重視している。2021年度以降は保険料の支払いで制度を支える現役世代の賃金を重視し、賃金が下がった場合は年金も必ず減額する。

*3-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/390819
(佐賀新聞 2016年12月28日) 年金新ルールで支給0・6%減 厚労省が試算公表
 厚生労働省は27日、先の臨時国会で成立した年金制度改革法に基づく支給額改定の新ルールが適用された場合の試算を公表した。リーマン・ショック時のような経済状況になり現役世代の賃金が下落すると、国民年金(老齢基礎年金)の支給水準は現行ルールよりも最大0・6%下がる。その分、将来受け取る世代は最大0・6%上昇する計算だ。支給額は毎年度、物価や現役世代の賃金を踏まえて改定されている。2021年度からは賃金が下がった場合は、その下落率に合わせて必ず減額するようルールが変更される。試算では、リーマン・ショックの影響を受けた08~09年度の賃金下落率を21~22年度に当てはめ、それ以降の支給水準を現行ルールと新ルールで比較した。賃金の下落は数年後の改定に反映される仕組みで、ルール見直しによる水準の低下は26年度に最も大きくなった。早い時期に支給水準が下がれば、その分、年金財政に余裕が生まれるため、現役世代が将来受け取る水準は上がる。43~44年度にかけての支給水準は新ルールの方が0・6%上昇した。

*3-4:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-251749.html (琉球新報社説 2016年4月6日) 年金運用巨額赤字 国民に失敗のつけを回すな
 政権の面目を保つために国民の資産を危険にさらすのは、もうやめにしてもらいたい。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度運用損益が、専門家の試算で5兆円を超える巨額の赤字になる見通しが強まっている。安倍政権が金看板とするアベノミクスと連動した投資配分の変更が、いまや全て裏目に出た。GPIFが運用する約140兆円のうち、国内株式投資は25%、約35兆円とみられる。この半分、約17兆円を売りに出すだけでも市場の混乱は必至だ。損失拡大を防ぐ株式売却すらできない。まさに袋小路だ。国民の資産を守り、混乱を最小限に抑えるため、GPIFは緩やかな退却を模索する以外にない。GPIFの資産構成割合は、かつては比較的安全な国債60%、国内外の株式に12%ずつだった。2014年10月に資産構成割合を国債35%、国内外の株式で計50%へ変更したのは、日銀の大規模金融緩和により、国債の利回りが低下したことと株式市場が上昇基調にあったからだ。その後、市場が安定したのは、ほかでもないGPIFの資金が流入したからだ。株価を下支えしたのが国民の資産だった。ところが15年8月には中国を「震源地」とする世界同時株安が進み、日本市場も乱高下した。最終的に日経平均株価は15年度だけで2400円値下がりした。運用比率変更当初から複数のエコノミストが「年金運用の安定性が損なわれる」「年金資産が株価操作に使われる」と懸念したことが現実になった。GPIFの担当者は「長期的な視点で捉えてほしい」と言う。だが客観的に見れば、損失を出した当事者が責任を取らず、次世代に先送りしているとしか見えない。責任を取るべきは、株価上昇を演出するために国民の資産を相場につぎ込んだ安倍政権だ。しかも例年、6月末から7月上旬に発表している年度の運用実績を、ことしは参院選後の7月下旬に公表するという。選挙に影響しないよう公表を先送りする意図が見え、論外だ。政府は少子高齢化時代を見据え、年金給付抑制策を強化する。積立金が目減りすれば、つけは国民に回ってくる。政府は運用比率を見直すなど「長期的な視点から、安全かつ効率的」(国民年金法)な運用にかじを切るべきだ。

*3-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/390597
(佐賀新聞 2016年12月27日) 厚労省、徴収ミス5年放置、後期医療、保険料6億円
 厚生労働省は27日、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度で保険料徴収システムの不備があり、2008年度の制度発足時から全国的に計算ミスで保険料を過大、または過小に徴収していたと発表した。ミス発覚から5年放置していた。対象者の抽出などは来年1月以降に行うが、推計では約2万人、総額約6億円に上る可能性があり、取り過ぎた分は返還、不足分は追加徴収する。厚労省によると、11年から同省には制度を運営する都道府県の広域連合から正しい計算方法に関する問い合わせがあったが、個別対応で済ませ放置してきたという。

*3-6:http://mainichi.jp/articles/20161116/dde/007/010/037000c (毎日新聞 2016年11月16日) 無年金救済法.成立 加入期間短縮 新たに64万人受給
 国民年金や厚生年金を受け取るのに必要な加入期間(受給資格期間)を現行の25年から10年に短縮する改正年金機能強化法が16日、参院本会議で全会一致により可決、成立した。来年10月から約64万人が新たに年金を受けられるようになる見通しだ。受給資格期間は保険料を納めた期間や免除された期間を合計する。2015年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げと同時に短縮する予定だったが、安倍政権による増税延期で先延ばしされていた。改正法は来年8月に施行。加入期間が10年以上25年未満の人は9月分の年金から受け取れるようになり、実際の支給は10月に始まる予定だ。無年金の人の救済につながる一方で、加入期間が短いと支給額は低く、将来低年金者が増えるとの懸念もある。国民年金の場合、加入期間が10年だと支給額は月約1万6000円、20年だと約3万2000円にとどまる。対象となるのは65歳以上の人と60代の前半から厚生年金の一部を受け取る人を合わせて計約64万人。費用は通年で約650億円。

<医療・介護>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12711673.html (朝日新聞社説 2016年12月18日) 高齢者負担増 将来像示し不安なくせ
 来年度から順次実施される医療保険と介護保険の見直し案が決まった。高齢者を中心に負担増を求める内容だ。医療では、70歳以上で現役並みに所得のある人の月ごとの負担上限額を、現役世代と同水準に引き上げる。75歳以上の保険料を本来より軽減している特例も段階的に縮小する。介護では、現役並み所得者の利用者負担を2割から3割に上げる。それより所得の少ない人も、住民税が課税されていれば月ごとの負担上限額が医療並みに上がる。会社勤めの人の保険料は賞与を含む収入に応じた負担とし、大企業の社員は重く、中小企業の社員は軽くなる。見直しの根底にあるのは「年齢を問わず、負担能力に応じた負担を求めていく」という考え方だ。4年前の社会保障・税一体改革大綱で示された方針だ。少子高齢社会のもと、社会保障費が膨らむ一方で、制度を担う現役世代は減る。高齢者は支えてもらう側、若い人は支える側という従来の考え方では、立ちゆかなくなる。高齢者でも負担ができる人には負担を求めることは必要だろう。ただ、生活の実態に照らして過重な負担にならないか、影響は丁寧にみる必要がある。とりわけ介護は、治療を終えれば負担がなくなる医療と違い、長期化する傾向にある。必要な介護サービスが利用できなくなれば、家族の介護のために仕事をやめる介護離職が増えてしまうかも知れない。影響を受けるのは高齢者だけでないことも、忘れてはならない。介護保険では、昨年夏に一定所得以上の人の利用者負担が1割から2割になったばかりだ。わずか1年あまりでさらなる引き上げを決めたのは、あまりに場当たり的との印象を与えた。負担はどこまで増えるのか。そんな先行きへの不安に応える改革の全体像と将来ビジョンを示すことが不可欠だ。政府は、社会保障費の伸びを抑えるために、さまざまな検討項目を示している。しかし、それらをどこまで、どう実施していく考えなのかが見えない。検討課題の一つだった軽度の人への介護サービスの縮小などは今回、見送りになった。今後、そうした給付の抑制にも踏み込むのか。給付の抑制が限界だというなら、今のサービス水準を維持するために、保険料や税の負担を増やすことも考える必要がある。サービスを担う人材の不足も深刻で、そのための財源も考えねばならない。社会保障制度の根本に立ち返った改革に取り組んでほしい。

*4-2:http://mainichi.jp/articles/20161216/ddm/002/010/128000c (毎日新聞 2016年12月16日) 社会保障費 1400億円抑制 高額療養など自己負担増
 厚生労働省は15日、自民党と公明党の部会で、2017年度予算で高齢化による社会保障費の自然増を約1400億円分抑制する案を提示し、大筋で了承を得た。焦点となっていた70歳以上の一般所得者(住民税が課税される年収370万円未満の人)が外来の窓口で支払う毎月の限度額を、現行の1万2000円から17年8月に1万4000円に引き上げる方針でまとまったほか、介護費の自己負担増、大企業に勤める会社員の介護保険料の引き上げなどによって抑制を図る。  医療費の毎月の自己負担額に上限を設ける「高額療養費制度」を見直し、約220億円を捻出する。70歳以上の一般所得者について、厚労省は当初2万4600円への引き上げを提案したが、引き上げ幅を圧縮し、年間上限額(14万4000円)も設ける。一方、18年8月には1万8000円に引き上げる。年収370万円以上の現役並み所得者は外来限度額を5万7600円とする。40~64歳の介護保険料は、収入に応じた計算方法「総報酬割り」による算出を段階的に導入し、収入の高い大企業のサラリーマンなどの保険料負担を増やす。来年8月の導入で500億円弱を確保する見通し。また、75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度の保険料では、負担軽減のための特例を段階的に縮小し、180億円前後を確保する。介護保険で利用者の自己負担に上限を設ける「高額介護サービス費」は、住民税が課税される一般所得者の毎月の負担上限額を3万7200円から4万4400円に引き上げる。厚労省は17年度予算の概算要求で社会保障費の自然増を6400億円と見込んだが、財務省から最終的な増加を5000億円程度に抑えることが求められている。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/381488 (佐賀新聞 2016年11月29日) 75歳以上329万人に保険料軽減を廃止
 厚生労働省が2017年度から予定する公的医療保険制度の見直し案の全容が28日、分かった。75歳以上の後期高齢者医療制度では、所得が比較的低かったり、扶養家族だったりした人ら計329万人を対象に、保険料の特例軽減を廃止し、段階的に引き上げる。医療費の自己負担に月ごとの上限を設ける「高額療養費制度」でも、70歳以上の優遇措置を縮小する。厚労省は、後期高齢者医療と高額療養費の見直しで、17年度にそれぞれ国費350億円の抑制を見込む。30日の社会保障審議会の部会で提案し、来月上旬までに与党と調整して最終決定する。75歳以上が支払う保険料の軽減措置には(1)所得に応じた部分(2)定額部分-の2種類があり、合わせて900万人以上が対象となっている。このうち74歳まで専業主婦ら扶養家族だった人(169万人)の定額部分は、最大9割の軽減を17年度に5割に縮小。18年度には77歳以上で軽減を廃止し、保険料は現在の月380円から約10倍に引き上げる。所得に応じた保険料は現在徴収していないが、77歳以上は18年度から支払うようになる。また年金収入が年153万~211万円の160万人を対象に、所得に応じた保険料を5割軽減している特例も17年度に廃止する。定額部分を9~8・5割軽減する特例(約614万人対象)は、新たに75歳になる人を含め当面存続する。「高額療養費制度」では、70歳以上の上限を見直す。「現役並み所得」の人は、17年8月から外来医療費の月ごとの上限額4万4400円を5万7600円に引き上げる。18年8月からは特例を完全に廃止し、入院などを含めた世帯全体の上限も現役世代に合わせる形で引き上げる方針だ。

*4-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/389660 (佐賀新聞 2016年12月24日) 保険料増、介護3割負担 医療・介護制度見直し
■70歳以上の高額費上限額を引き上げ
 今回の見直しは、高齢者らの支払い能力に応じ、負担増を求めているのが特徴だ。医療では、患者の窓口負担が重くなりすぎないようにするため、月ごとの上限額を定めた「高額療養費制度」があるが、70歳以上を対象に上限額を段階的に引き上げる。年収370万円未満で住民税を課税されている人の場合、外来の上限額(月1万2千円)は2017年8月に1万4千円、18年8月には1万8千円になる。ただ持病などで通院している人は出費がかさむため、年間の上限額14万4千円(1万2千円の12カ月分)も新たに設けた。入院を含めた世帯当たりの上限額(月4万4400円)は5万7600円に上がる。年収370万円以上の人は、外来が月5万7600円に引き上げられた後、18年8月に上限がなくなる。入院を含めた世帯の上限額は18年8月以降、月8万100~25万2600円になる。後期高齢者医療制度に加入する75歳以上は、これまで特例で安くなっていた保険料が増える。所得が比較的低かったり、74歳まで夫や子らに扶養されたりしていた人が対象だ。このほか慢性疾患で医療療養病床に長期入院している65歳以上の人は、光熱水費の支払いが増える。18年4月以降は一律で1日370円(難病を除く)。介護では、サービスを主に利用する高齢者と、制度を支える現役世代が負担を分かち合う。現役並みに所得が高い高齢者は、18年8月から介護サービス利用時の自己負担が現在の2割から3割にアップ。さらに医療と同様に、月ごとの上限額(高額介護サービス費)も見直す。住民税が課税されている年収383万円未満の単身世帯などで、17年8月から上限額が7200円増えて月4万4400円に。収入が少ない世帯は3年間に限り、年間の上限額を据え置く。40~64歳が支払う保険料は、収入に応じた「総報酬割」と呼ばれる計算方式に変更。20年度までに段階的に導入し、大企業の社員や公務員の負担が増えることになる。
■高額医療・介護費、合算制度で払い戻しも 
あまり知られていないが、1年間(毎年8月から翌年7月)に支払った医療と介護の自己負担額を合算して、一定額を超えた場合は払い戻しを受けられる仕組みがある。「高額介護合算療養費制度」または「高額医療合算介護サービス費制度」と呼ばれ、市町村に毎年申請しないと利用できないので注意が必要だ。数十万円が戻ってくるケースもある。井戸さんは「手続きに手間がかかるが、分からないときは市町村の窓口で相談してほしい」と話す。

*4-5:https://www.agrinews.co.jp/p39294.html (日本農業新聞 2016年10月27日) 危機の地域医療 厚生連の包括ケア期待
 地域を支える医療が崩壊の危機にさらされている。都会と農村の医療格差は拡大する一方だ。日本農村医学会は未来の地域医療をテーマに27、28の両日、第65回学術総会を三重県志摩市で開く。JA厚生連病院の課題と試みを共有し、農村再生につなぐ。成果を期待したい。玉置久雄学会長(JA三重厚生連松阪中央総合病院名誉院長)は「地域医療について国や行政は対策を講じてきたが、むしろ医療の偏在化、格差は広がっている」と指摘する。総会の主催県・三重は人口当たりの医師数が全国平均より少なく、遠隔地ほど慢性的な医師不足が深刻だ。医師の高齢化は救急医療を制限せざるを得ない事態にまで追い込んでいる。国は増え続ける医療費の削減のため地域医療構想を各地で検討するよう指示している。効率化を求めた病床数の削減などが始まっている。これから厳しい診療報酬改定、消費税増税が待ち構えている。在宅医療については居宅、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設などの需要見直しが進む。その結果、地域の統廃合で病床数の削減の影響を最も受けるのは、農山村に立地する厚生連病院である。全国の厚生連病院の多くが地方にあり、変革を迫られるのは必至だ。地域医療の崩壊は、地域社会の崩壊につながる。人口流出を生み、若い世代のU・Iターンといった田園回帰の流れを阻みかねない。高齢化が進む農村では住民が住み慣れた地で安心して暮らし続けるための医療と介護の一体化が欠かせない。この地域包括ケアを根付かせることができるか、農村医療の試金石ともなる。玉置学会長は「将来の人口減を見据えれば立場の異なる地域の病院が限られた医療資源を補完し合うことも必要だ」とし、競争から協調へ、かじを切る時期が迫っていると言う。シンポジウム「地方から発信するこれからの医療」には三重、新潟、広島、愛知の厚生連病院の取り組みが発表される。医師・看護師不足の下、救急医療や在宅医療、地域包括ケアにどう取り組んでいるか、先進的な取り組みに期待したい。一般演題は540とこれまでにない応募数となった。終末期医療、大災害時の医療、看護教育、在宅ケア、病院食の地産地消など今日の課題を網羅する。市民公開講座には関心の高い認知症を取り上げた。家族を支えるための知識、認知症患者の安全対策について報告される。ポスター発表では、韓国農村振興庁が取り組む農業労災を予定している。総会後の29日には、日本農村医学会と韓国の主催で第8回日韓合同農作業安全シンポジウムが開かれる。韓国が国家資格として今年創設した「農作業安全指導士」制度が報告される。日本の参考となろう。地域医療、農作業安全に貢献する学会となることを望む。

*4-6:https://www.agrinews.co.jp/p39431.html (日本農業新聞 2016年11月13日) 介護保険縮小 利用者の不安 直視せよ
 2018年度の介護保険改正に向けた見直し議論が進んでいる。介護の必要度が比較的軽い「要介護1、2」のサービスを中心に削減する考えだ。現場の反発は強く、大幅な改正は見送る方向だが、年末の取りまとめに注視が必要だ。要介護度は軽い順から5段階に分かれる。見直し議論の焦点は軽度者向け在宅支援サービスで、訪問介護の生活援助など。厚生労働省は、ホームヘルパーが自宅を訪れて掃除や調理などを介助する生活援助を保険対象から外し、市町村事業へ移行する改革案を示した。この案に利用者や介護関連団体は猛反発している。「自宅で自立した生活を送るために欠かせないサービス」「サービスの質が変わることで重度化を招き、かえって介護費用が膨らむのではないか」など、制度変更を疑問視する声だ。既に前回の15年度改正で、要介護よりさらに軽度な「要支援」向けサービスの一部を保険から外し、市町村事業に切り替えた。移行期間を経て来年4月には全市町村で事業を開始しなければならない。介護保険にかかる費用を国の全国一律給付から市町村の独自事業とし、NPOやボランティアなど地域住民の活用によってコストを抑える狙いだ。しかし、実際は体制がなかなか整わない。そこに要介護1、2まで市町村に移行するとなると、これまでと同様のサービスを受けるのは難しい。介護の必要性は数値では測りきれない。「要支援」「要介護1、2」は一つの基準にすぎず、高齢者を取り巻く状況は千差万別である。介護の必要度が軽い人でも、独居であったり老夫婦世帯であったり、家族が介護できない状態であるかなどで異なる。例えば、認知症なら重度化を防ぐため介護保険サービスを続ける必要性が高くなる。暮らす環境も違う。住まいが過疎の山間部にあるのか、都会なのか。「要介護度」という物差しで一律に当てはめるのは難しい。利用者の状況に合った適切なサービスが行き渡る手法を模索するべきだ。高齢者は年を取るほど心身の調子が不安定になり、要介護度は変化しやすい。利用者の環境や状況を考慮した上で支え方を見極めなければならない。在宅介護で欠かせない視点である。介護の世界で懸念されるのが“2025年問題”だ。団塊世代が75歳を過ぎ、要介護者が急増し、社会保障財政が行き詰まる事態が予測される。少子高齢化は加速し、介護サービスのコスト削減、効率化は免れないだろう。肝心なのは本当に支援を必要としている人に、適切なサービスが提供できるかだ。既存のサービス縮小を論じるだけでは介護を必要とする人や家族の不安は募る。利用者が尊厳を保ち、安心して暮らせるよう、自立を支える支援の在り方について議論を深めるべきだ。


PS(2017年1月6日追加):日本老年学会は、*5のように、心身の若返りを理由に65歳以上とされている高齢者の定義を75歳以上に見直す提言を発表したそうだ。そのため、年金支給開始年齢と定年年齢を75歳にし、前提が覆る日が来るかもしれない。しかし、人に依って若さや健康状態は全く異なるので、「超高齢者」や「准高齢者」と呼び分ける必要はないだろう。なお、仕事を続けている高齢者の方が矍鑠(かくしゃく)としているのは、よく知られているところだ。


 国の歳入・歳出    社会保障費の抑制     介護費と介護保険料の推移 高齢者の定義
 2016.12.23      2016.12.23                          2017.1.6      
  佐賀新聞         東京新聞                             佐賀新聞

(図の説明:一番左のグラフのように、国家予算に占める社会保障費は大きいが、高齢者が仕事を続けて収入があるのでなければ年金や医療・介護の軽減を受けて支えられる側にならざるを得ない。しかし、一番右の図のように、高齢者の定義を75歳以上として65~75歳の人が働ける環境を整えれば、支える側になれるので、その前提が変わる。そのため、社会保障費を節約するには、70~75歳まで仕事を続けられる環境を整えるのが、誰にも無理がいかない。一方、国債の支払利子も大きいが、これは借り換えで節約できる。地方交付税は、それぞれの地方がエンジンとなる産業を持てば節減できる)

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/392784
(佐賀新聞 2017年1月6日) 「高齢者」は75歳以上 身体若返り、学会見直し
 高齢問題の研究者らでつくる日本老年学会などは5日、現在は65歳以上とされている「高齢者」の定義を75歳以上に見直し、前期高齢者の65~74歳は「准高齢者」として社会の支え手と捉え直すよう求める提言を発表した。医療の進歩や生活環境の改善により、10年前に比べ身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断。活発な社会活動が可能な人が大多数を占める70歳前後の人たちの活躍が、明るく活力ある高齢化社会につながるとしている。高齢者の定義見直しは、65歳以上を「支えられる側」として設計されている社会保障や雇用制度の在り方に関する議論にも影響を与えそうだ。学会は、年金の支給年齢の引き上げなど社会保障制度の見直しに関しては「国民の幅広い議論が必要だ」と強調している。提言をまとめた大内尉義(やすよし)・虎の門病院院長は「高齢者に対する意識を変え、社会参加を促すきっかけになってほしい」と述べた。平均寿命を超える90歳以上は「超高齢者」とした。学会によると、日本は50年以上前から国連機関の文書などに基づき、慣例的に65歳以上を高齢者としている。学会は、脳卒中や骨粗しょう症などの病気や運動のデータを解析。慢性疾患の受診率は低下し、生物学的な年齢が5~10歳若返っているとみている。知能の検査では、最も得点の高い世代が40代から50~60代に変化。残った歯の数も同一年齢で比べると年々増える傾向にあり、死亡率や要介護認定率は減少していた。国の意識調査で、65歳以上を高齢者とすることに否定的な意見が大半であることも考慮した。昨年9月の総務省の推計によると、65歳以上は約3400万人で人口の約27%。高齢者を75歳以上とした場合は約13%に半減する格好だ。准高齢者は、仕事やボランティアなど社会に参加しながら、病気の予防に取り組み、高齢期に備える時期としている。
=解説= 保障や雇用に影響も
 現行の社会保障や雇用・労働の制度は高齢者を65歳以上とすることを前提としているものが多く、今回の提言は制度の見直しにも影響する可能性がある。少子高齢化の中、働き手、社会保障の支え手を増やす議論は加速しそうだ。高齢者の急増で国の財政負担は重くなり、現状のまま制度を存続させるのは難しい。医療保険や介護保険では、高所得者への負担増などが相次いで打ち出されている。会社員らの厚生年金の支給開始年齢は、60歳から段階的に65歳に引き上げられている途中段階だ。高齢になっても働き続ける人が増えた。高齢者の定義を巡る国民の意識も変わりつつある。40歳以上を対象にした昨年の厚生労働省調査で「高齢者と思う年齢」を尋ねたところ「70歳以上」との回答が最も多く、41・1%で、「65歳以上」は20・2%にとどまった。「75歳以上」は16・0%だった。日本老年学会などは「提言は医学的なもの」と強調するが、提言がこうした流れを後押しする可能性もある。ただ、高齢者の負担増については、反発も大きく、見直しは容易ではない。


PS(2017年1月8日追加):*6のように、確かに病院や介護施設の食器も、趣のないプラスチックではなく、軽くて強い磁器があればよいだろう。なお、年末に、一年に一度の人間ドックに行ったところ、壁に素敵な絵がかかっており、有田焼で作った絵もいいのではないか思った。

*6:http://qbiz.jp/article/101294/1/
(西日本新聞 2017年1月8日) 熟練のろくろで「くるまおろし」 有田・深川製磁
 有田町幸平の深川製磁で7日、仕事始めとなる「くるまおろしの儀」があり、ろくろ師たちが熟練の技を披露した。神職による祝詞奏上や玉串奉納の後、この日89歳の誕生日を迎えたろくろ師、深川剛さんが「ようっ」と気合の声を上げながら土の塊からつぼを形作った。隣に座る剛さんの長男、聰(そう)さん(60)は直径65センチの大皿の仕上げにいそしんだ。深川一太社長(68)は年頭あいさつで欧州での発信拠点をミラノからパリに移したことに言及。「継続性ある海外ブランディングを展開したい」と話した。高齢化社会に応じた医療用食器や葬祭用具作りにも意欲を見せた。


PS(2017年1月8日追加):*7のように、輸入チーズは伝統に根ざした美味しさがあるが、日本産チーズも負けてはいない。例えば、カルシウムや鉄分を強化した製品やワサビ・ゆず・からしめんたい・アーモンドなどと混ぜて小さく包装した製品など、日本でしか作らないような逸品もあり、これらは、どこにでも輸出できるだろう。なお、牛乳・卵はアイスクリームにすると保存がきき食べやすいが、私は、まだハーゲンダッツ以上の日本産アイスクリームに出会ったことがない。しかし、アイスクリームも、日本産の果物等を使えば工夫の余地が大きく、輸出可能だと考える。

*7:https://www.agrinews.co.jp/p39853.html (日本農業新聞 2017年1月7日) [TPP徹底報道 需要奪還 5] 乳製品 地元密着で付加価値 成長市場のチーズ
 国内での総消費量がここ10年で2割増と、需要拡大がさらに見込まれるチーズ。国産割合はまだ15%(2015年度)で、伸びしろは大きい。酪農振興の新しい柱と期待されるが、有望市場は他国も狙う。EUは、大詰めを迎えるEPA交渉で大幅な自由化を要求。欧州産のブランド力は脅威で、酪農家らは生き残りに向け、価格だけではない酪農の価値を発信しようと、地域や消費者との結び付きを強めている。150万人が暮らす大都市・神戸市の中心部から車で約20分、閑静な住宅街の一角に牧場へと続く門が現れる。酪農家が手掛ける国産チーズの先駆けとして、1985年から代表商品「フロマージュ・フレ」などを販売する弓削牧場だ。約9ヘクタールの敷地内では、放牧された牛が歩き回り、全国から訪れる年間約3万人の客がログハウス風のレストランでチーズをふんだんに使った料理を楽しむ。弓削牧場では、生乳生産部門の箕谷酪農場から加工部門のレチェール・ユゲが生乳の3割を買い取り、チーズやホエー(乳清)を使った化粧品作りなどを手掛ける。和食と組み合わせた日本人向けの食べ方提案など、欧州のチーズと差別化を図りながらファンを増やしてきた。加工部門は売り上げ全体の7割を占め、今や経営の柱だ。
●価格競争に懸念
 国内のチーズ消費量も増え、裾野は広がっている。その半面、安さを重視する中食・外食の需要で、輸入品が入り込む可能性が高い。輸入量は10年で2割以上増えたが、国産割合は思うように上がらず、むしろこの5年は4ポイント下げている。代表の弓削忠生さん(71)は「ただチーズを作って売るだけなら、輸入も国産も同じ」と言う。生産現場と切り離された商品として扱われれば、外国産との単なる価格競争に陥りかねない。TPPや日欧EPA交渉が、心配を膨らませる。外国産にはない価値をどう発信するか。弓削牧場では生乳生産を基本に置き、命につながる食料を生産する農業の本質を伝える講座や牧場での結婚式の企画などに力を入れる。近隣の森林植物園にカフェを出店するなど、地域との連携も重要視する。バイオガスプラントを設け、資源循環型農業にも乗り出した。弓削牧場と同様、同県明石市の住宅街の一角で酪農を営む伊藤靖昌さん(32)も「都市型酪農を続けていくには地域との結び付きが必要だ」と呼応し、生乳の価値を発信するため加工にも取り組む。
●取り組み発信を
 国産チーズの活路について、酪農情勢に詳しい名古屋大学大学院の生源寺眞一教授は「品質面での差別化だけでなく、発達した情報通信技術(ICT)も活用しながら、背景にある作り手の思いや取り組みを発信していくことが重要だ」と指摘する。


PS(2017年1月10日追加):*8のように、シルバー人材センターが耕作放棄地を農地として整備し、会員高齢者の就労や技能習得の場として利用するのは、アクションが速くてよいと思う。このケースなら、最終的に高齢者が月収15万円くらい稼げるようにすると、生活を支えることができるだろう。

*8:http://qbiz.jp/article/101357/1/ (西日本新聞 2017年1月10日) 耕作放棄地 高齢者に“活” 九州各地 シルバー人材センターが整備
 九州各地のシルバー人材センターが、全国的に増えている耕作放棄地を農地として整備し、会員の高齢者の就労や技能習得の場として利用する例が相次いでいる。高齢者の生きがいづくりと、低迷する農業の活性化につながる「一石二鳥」の取り組み。今後の充実・拡大が期待される。一方で、収穫物の売り上げだけでは必要経費を捻出できないなど、事業の難しさも浮かび上がっている。
●就労、技能習得の場に
 北九州市シルバー人材センターは2014年度から、会員たちに農作業の知識・技術を習得してもらう「シルバー農園」事業を開始。同市小倉南区の約1200平方メートルと若松区の約千平方メートルの耕作放棄地(放棄地になる恐れがある農地を含む)を借り、雑草を除去して事業を進めている。参加する会員は約100人で、大半が農業未経験者。月数回、シルバー農園に通い、元農家の会員らの指導を受けながら大根やジャガイモなどを育てている。収穫物はイベントなどで販売。売り上げは会員に分配せず、借地料や苗代などに充てている。会員たちはシルバー農園で稼ぐことはないが、身に付けた農業技術を生かし、センターが外部から受注した農作業の仕事に出向いている。その受注額は14年度約50万円、15年度約100万円。「シルバー農園によって農作業ができる会員が増えたので、受注に積極的に動いている。会員の就労機会拡大を図り、地域の農業活性化に貢献したい」とセンター企画課の神野譲嗣課長。
   ◆     ◆
 福岡県の築上町シルバー人材センターは、耕作放棄地になる恐れがある農地約2千平方メートルを15年度から借り、会員たちの就労の場として利用。会員15〜20人がイチゴ栽培に取り組んでいる。イチゴの売り上げで、会員の報酬をはじめ、農地の借り賃など必要経費を賄う仕組み。ただし1年目に報酬を時給850円に設定して赤字が出たため、本年度の途中から時給を定めず、売り上げの範囲で報酬を払う「出来高払い」に変更した。センター業務主任の古門敏彦さんは「会員の皆さんが頑張って売り上げを伸ばせば、報酬も増える。出来高払いに納得してもらっている」と話す。熊本県の八代市シルバー人材センターも12年度から放棄地を借り、就労の場にしている。場所は山に囲まれた同市坂本町鶴喰(つるばみ)地区で現在は約6千平方メートル。本年度は会員16人でコメ2460キロを収穫した。やはり出来高払いで、会員1人当たりの報酬は平均で約2万円(時給で800円強)になる見通しだ。 (編集委員・西山忠宏)
   ◇  ◇
●農地再生へ思惑一致 国・自治体センター
 各地のシルバー人材センターが耕作放棄地の活用に乗り出しているのは、放棄地の増加に歯止めがかからないことが背景にある。国も自治体も放棄地の解消・発生抑制に取り組んでいるが、力不足は否めず、センターが対策の加勢をしている形だ。放棄地は農家の高齢化などで増加。農林水産省の「農林業センサス」によると2015年には全国で計42万3千ヘクタールと過去最大を更新、富山県とほぼ同じ面積になっている。問題点として農地減少だけでなく(1)雑草や害虫が増え、周辺農地に影響を与える(2)鳥獣の隠れ家となり農作物への被害が増える(3)廃棄物が不法投棄される恐れが高まる−などが指摘されている。一方、センター側からすれば、農業分野に積極参入することで、主目的の「高齢者への就労の機会提供」を拡大できる利点がある。放棄地の問題を解決して地域に貢献でき、存在感を高める狙いだ。全国シルバー人材センター事業協会(東京)によると、センターは全国に1282団体(昨年3月末現在)。放棄地の活用事業に取り組むセンターの数は把握できていないが、放棄地を安く借りられることもあり、かなり広がっているとみられる。ただ、事業を拡大するには「しっかり稼ぐ手法」の確立が欠かせない。


PS(2017年1月13日追加):森林の手入れや草刈りなどの環境関連の仕事は、最近できたものであるため人手不足だ。そこで、「製造業や事務職は高給取りだが、森林の手入れは環境好きのボランティアの仕事」などと考えるのではなく、働きに応じた報酬を支払えば中高齢者を含めて雇用吸収力がある。

*9:http://qbiz.jp/article/101616/1/
(西日本新聞 2017年1月13日) 福岡県、森林環境税継続へ 保全、再生「理解得られる」
 福岡県は森林の保全や再生を目的に2008年度から導入した森林環境税について、徴収期間が終わる17年度以降も継続する方針を固めた。温室効果のある二酸化炭素を吸収し、地下水を蓄えて土砂流出や崩壊を防ぐ森林の機能は公益性が高く、県民負担への理解は得られると判断した。森林環境税は10年間の時限措置として、個人県民税に一律500円を上乗せして徴収。法人は資本金などに応じて、千円から4万円までの5通りの税額を設定している。新たな課税期間は18年度から5年間を軸に検討し、税額は変更しない。森林環境税の検証や在り方を検討する有識者委員会の報告を受けて、正式決定する。15年度までの8年間で103億円超の税収があり、間伐や植栽をする市町村への助成、森づくりに関わるボランティアの育成などに充てている。有識者委員会が昨年実施した県民アンケートでは「良い取り組みだと思う」と評価する回答が多かった。


PS(2017年1月15日追加):日本では、65歳以上の“高齢者”に対する介護と65歳未満の“障害者”に対する福祉は、サービスの内容が異なる。そのため、障害者が65歳になると、それまで受けていた自立支援サービス等を受けられなくなったりする。しかし、年齢で差別するのは不合理であるため、介護事業者は両方の指定を受けられるようにし、地域包括ケアシステムを整備して、どのサービスを受けるかについては、本人・家族・医師・ソーシャルワーカーなどが相談して決められるようにするのがよいと私も考える。また、その場合は40歳未満の人からも介護(福祉)保険料を徴収し、介護・福祉サービスの内容に年齢を理由とする差をつけないのが妥当だろう。

   
年齢階層別障害者数推移 サービス利用手続  介護サービスの内容      障害者福祉の内容

(図の説明:障害者に占める65歳以上の割合は次第に増え、2011年には2/3を超えている。そこで、介護と福祉サービスを年齢で分けず、必要なサービスは年齢に関わらず受けられるようにすべきだ)

*10:http://mainichi.jp/articles/20170115/k00/00m/040/103000c
(毎日新聞 2017年1月15日) 厚労省、介護・障害を一括サービス 18年度実施へ法案
 厚生労働省は、介護保険と障害福祉両制度に共通のサービス創設の方針を固めた。高齢の障害者が、一つの事業所で一括してサービスを受けられるようにするなど、利用者の利便性を高めるのが狙い。2018年度の実施を目指し、20日開会の通常国会に関連法案を提出する。介護・障害の両制度は、サービスを提供するのに、それぞれ指定を受ける必要がある。このため、65歳以上の高齢の障害者が、障害福祉事業所で介護サービスを受けられないなどの課題が指摘されている。そこで同省は、通所や訪問など、いずれの制度にもあるサービスについて、事業者が両方の指定を受けやすくするよう制度を見直す。同省は、高齢者や障害者、児童といった福祉分野に関し、地域住民とも協力して包括的にサービスを展開する「地域共生社会」を目指している。高齢化がさらに進む中、地域内の限られた施設や人材の有効活用を促す。実施には介護保険法や障害者総合支援法などの改正が必要で、関連法案を一括し、「地域包括ケアシステム構築推進法案」として提出する方針だ。同法案には、介護サービス利用時の自己負担について、特に所得の高い人は、現在の2割から3割に引き上げることも盛り込む。対象は、単身の場合で年収約340万円以上、夫婦世帯は約460万円以上。当初は単身で383万円以上を想定していたが、見直した。負担増になるのは利用者の3%に当たる12万人で、18年8月実施を目指す。一方、40~64歳の介護保険料について、年収の高い会社員らの負担が増える「総報酬割り」の導入も盛り込む。17年8月分からの適用を想定している。

| 経済・雇用::2016.8~ | 11:55 AM | comments (x) | trackback (x) |

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