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2017.9.12 日本に現存する差別とその目的 (2017年9月12、14、17、25、26、28、29、30日追加)
 
    高齢者人口の割合       年金受給年齢の引き上げと継続雇用
                      2017.9.7日経新聞

  
 日本人の平均余命  支えられるべき高齢者 外国人労働者  女性労働のM字カーブ 
                              2017.9.9日経新聞

(1)高齢者に対する差別
 日本老年学会と日本老年医学会は、*1-1-1のように、現在は「65歳以上」とされる高齢者の定義を「75歳以上」に引き上げるべきだと国に提言した。私も、65歳時点の平均余命は男性19歳、女性24歳と長く、75歳時点の平均余命でも男性12歳、女性15歳で、医療の進歩や健康意識の高まりで高齢者が若返った状態で平均寿命が延び続けていることを考えると、高齢者は75歳からとし、65~74歳はできるだけ社会の支え手になってもらうのがよいと考える。

 ただし、その際、高齢者に対して雇用差別を行ってはならず、平均余命や平均寿命に男女差・個人差があることも考慮すれば、職種や個人によって仕事が続けられる上限は異なるため、定年ではなく客観的評価(しかし、日本人はこれが苦手なのが問題なのである)でFairに報酬を決めて、働けるようにするのが良いだろう。

 一方、*1-1-2のように、医療制度や人口統計上の区分で「高齢者=65歳以上」が定着しているのに、公務員の定年を60歳から65歳に引き上げることに反対意見があり、役職定年の導入に取り組むべきだとしているが、これは高齢者差別そのものであるため、役職は仕事の遂行能力で決めるべきである。

 また、*1-1-3のように、60歳定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務付ける高年齢者雇用安定法改正案の成立に対し、企業は継続雇用の対象者を能力などで絞り込めなくなるため負担増に備えて対応を急いでいると書かれているが、これも働く以上は年齢で差別すべきではないと考える。そして、第一生命経済研究所の熊野首席エコノミストの「人件費の増加を防ぐため能力の高い高齢者の賃金まで企業が一律に抑制しかねない」という警鐘は現実で、人口が減り働き手が減ると言いながら、高齢者の雇用が若年者の雇用を食うと言うのはおかしい。

 つまり、私は、公務員であれ、民間企業のサラリーマンであれ、仕事をこなせる人は気持ちよく働けるようにすべきであり、年齢や性別による差別に合理性はないのに、若い男性しか働かせない状態にしているのはむしろマイナスであって、日本で自動車、家電・パソコンの説明書、銀行の書類等が高齢者や女性に扱いにくい仕様になっている原因だと考える。

(2)社会保障に関する政治・行政・メディアの主張の不合理
1)“子ども保険”創設の主張について
 幼児教育・保育の無償化を目指し、*1-2-1のように、自民党は「子ども保険」の創設を提言しているそうだが、「子ども保険」はリスクも便益もない人からも保険料を徴収するため保険ではなく、公的保険として創るべきでない。小泉氏は「子どもがいなくても年金、医療、介護の受け手となるが、その持続可能性を担保するのは若い人だ」としているが、社会保障には消費税増税か子ども保険による新たな負担が必要で、その他の膨大な無駄は垂れ流しのままでよいとする広報ばかりを受けて育った日本の若者が、真摯に高齢者に寄り添った政策を作ったり介護したりする人材になるわけがないため、外国人労働者の方がよいということになるだろう。

 そしてまさに、*1-2-2のように、「若者に比べて高齢者を優遇する“シルバー民主主義”が財政を悪化させてきたが、政治家は投票所に足を運んでくれる人の意向を気にするため、選挙制度を変えて、“ドメイン投票”や“余命投票”が真剣に議論されている」と言う人まで出てきており、これは底の浅すぎる解釈で、日本国憲法で定められた普通選挙、基本的人権の尊重、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利などを無視している。さらに、「政治家が高齢者の意向を勝手に忖度しているだけ」「新たな人気取り」などとしているのは、(ここでは長く書かないが)我が国の周回遅れの社会保障と本物の財政改革の遅れに対する合理化にすぎない。

2)介護保険制度について
 *1-2-3に、「我が国の介護保険は膨張しており、介護施設や在宅サービスの給付費は総額約9兆円に上り、2025年度には2倍以上のおよそ20兆円に膨らむ見込みで、週2回、月10回程度の訪問が常識的だ」と書かれている。しかし、自宅療養をする人に月101回(1日3.4回)は不自然ではなく容体によるため、最高利用回数が月30回というのを威張る必要はない。

 そして、ムダを生む理由の一つは「安さだ」とも書かれているが、介護保険制度はすべての人にリスクと便益があるのに、介護保険料は「40歳以上~死亡時」まで支払わなければならない。一方で、医療保険制度は世帯主が支払義務者で40歳以下でも支払っているのであり、私は「子ども保険」を創るよりも介護保険料の支払義務者を医療保険と同じ世帯主とし、保険料の支払者・受益者の年齢制限をなくすのが筋だと考える。そうすれば、病児保育も介護で賄える。

 なお、「生活援助サービスは無駄」とも書かれているが、高齢や病気で家事ができない場合は、生活援助サービスがなければ施設に入らなければならず、QOL(Quality of Life)が低くなると同時に、施設の建設コストもかかる。そのため、「回数を増やすとコスト意識が甘くなる」などと言うのは、家事が知識と体力を要し失敗の許されない労働であって、85歳の高齢者には大変な仕事であることを知らない人の主張である。

 また、*1-2-3では、サービス付き高齢者住宅(以下、サ高住)等での在宅サービスが問題視されているが、自宅を離れてサ高住に住まなければならなくなった高齢者がどういう人であるかの丁寧な考察がない。つまり、サ高住で介護保険の給付が増えるのは当然で、そのため介護サービスの内容は障害の程度に応じて専門家が判定しており、認められているケアを100%受けても足りない程度の設定になっているのである。

 このように、メディアが「高齢者は金持ちで社会保障などする必要のない人」「若者の負担になるだけの存在」などという宣伝を熱心に行った結果、*1-2-4のように、二度と稼げない高齢者から、息子を語って大金を奪うなどという詐取が増えた。私は、「子どもだとしても、甘やかしすぎだ」「見ず知らずの人に、そんな大金をよく渡すものだ」などと驚くことが多いが、詐欺は騙した人が悪いのであって騙された人が悪いわけではないため、警察は、気を付けるように広報するだけではなく、犯人を逮捕して厳罰に処し、犯罪の予防に繋げるべきである。

(3)外国人労働者に対する差別
 佐賀県は、2016年に、*2-1のように外国人数が前年比13%増の5,140人で伸び率では全国の都道府県でトップになり、県が受け入れ態勢づくりに取り組んで、「壁」の突破に努めているそうだ。

 しかし、政府は、トランプ政権の移民政策を批判する割には、*2-2、*2-3のように、技能実習でも最長3年しか働けず労働条件が悪く、国家戦略特区で認めた農業の外国専門人材も日本で働ける期間を通算3年に制限するなど、外国人労働者に対する差別的扱いを行っている。ちなみに、最長3年では、仕事を覚えたところで帰国するため、労働力として頼みにならない。そして、農業だけではなく、加工・販売・輸出入・製品企画などで、日本人労働者と同じ条件で働けることを「差別のない状態」と言うのである。

(4)高度専門職差別と女性差別
1)高度専門職に対する差別
 *3-1のように、労働基準法を改め、「残業代ゼロ」制度を作って“高度プロフェッショナル”と呼ばれる人をそれに当てはめる制度は、他の法案と一括化して出し直すのではなく、①“高度プロフェッショナル”と呼んでいる人は本当に高度プロフェッショナルなのか ②“高度プロフェッショナル”なら、残業代をゼロにするのが適切な理由は何か などについて、立法理由を明確に説明すべきである。

 しかし、私は、労働時間を自己管理できて報酬もそこそこに高い管理職に残業代がつかないことで十分であり、“高度プロフェッショナル”という職種を分けて残業代をゼロにするのは不適切だと考える。何故なら、努力して“高度プロフェッショナル”になると、プラスどころかマイナスになる社会システムにしては、智の時代に対応できないからだ。そして、現在、博士課程を修了してポスドクになっている人も同じである。

2)女性に対する差別
 *3-2のように、日本女性には、谷が緩やかになったとはいえ、まだM字カーブがある。そのM字カーブは欧米にはないが、それは保育施設が整っているだけではなく、ナニーやメイドを雇って子どもを見させることもできるからである(ただし、日本でこういうことをすると批判する人すらいる)。そのため、優秀な日本女性は、欧米に留学している間や欧米に転勤している間に子ども作る人が多く、そうした方がやり易いと言われている。

 そのM字カーブが、近年は米欧とほぼ遜色のない形に近づいたそうだが、女性は労働条件が悪く、昇進も困難であるため、賃金が低い。その理由は、生産年齢人口の男性を中心に据えて、多くの女性を補助的労働力と捉えているからにほかならない。

<高齢者差別>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKASDG05H6Y_V00C17A1EA1000/ (日経新聞 2017/1/6) 「高齢者は75歳から」 学会が提言 65~74歳は社会の支え手
 日本老年学会と日本老年医学会は5日、現在は「65歳以上」とされる高齢者の定義を「75歳以上」に引き上げるべきだとする国への提言を発表した。心身が健康な高年齢者が増えたためで、65~74歳は「准高齢者」とし、社会の支え手として捉え直すべきだとしている。社会保障や雇用制度をめぐる議論に影響を与える可能性がある。提言をまとめるに当たり、両学会は高年齢者の様々な健康データを解析。日本老年医学会副理事長の秋下雅弘東京大学教授によると、医療の進歩や健康意識の高まりで現在の高齢者は10~20年前に比べ5~10歳若返った状態にあるという。提言は、前期高齢者とされる現在の65~74歳は「心身の健康が保たれ、活発な社会活動が可能な人が大多数」と分析。健康な間は仕事を続けたり、ボランティアに参加したりするなど、支えられる側から支える側に回る必要があるとした。この世代を過ぎた75~89歳を高齢者と定義し、平均寿命を超えた90歳以上を「超高齢者」と呼ぶのが妥当だとしている。2016年9月の総務省の推計によると、65歳以上は人口の約27%。高齢者を75歳以上とした場合、約13%と半減する。日本では「65歳以上を高齢者とする」と定めた法律はないが、医療制度や人口統計上の区分などで「高齢者=65歳以上」が定着している。高齢者を65歳以上と定義した1956年の国連の報告書が契機とされる。海外でも60歳以上や65歳以上を高齢者とする国が多い。ただ、56年に男性63.59歳、女性67.54歳だった日本の平均寿命は2015年にそれぞれ80.79歳、87.05歳に延びた。内閣府の14年度の意識調査では、高齢者だと考える年齢は男性が「70歳以上」(31.3%)、女性は「75歳以上」(29.9%)が最多。65歳以上が高齢者だと答えたのは男性が7.1%、女性は5.7%にとどまった。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO20949810Y7A900C1EA1000/ (日経新聞社説 2017/9/9) 公務員の定年延長には十分な議論が要る
 安倍内閣は公務員の定年をいまの60歳から65歳に引き上げる方針だ。国や地方自治体の財政事情が厳しいなか、総人件費が膨らまないか、心配になる。民間で定着している役職定年の導入などに取り組むのが先決であり、拙速に定年延長を進めれば社会の反発は免れないのではないか。国家公務員法は定年を原則60歳と明記しており、地方公務員もこれに準拠する。定年の延長には法改正が必要で、政府は6月に「公務員の定年引き上げに関する検討会」(座長・古谷一之官房副長官補)を発足させた。早ければ来年、法案を国会に提出し、2019年度から段階的に定年を引き上げる構えだ。年金支給開始年齢が65歳になったことで、60歳からの5年間をどうやって生活すればよいのかと不安を訴える公務員が多い。内閣人事局はそう説明する。しかし、そのための措置を政府はすでに講じている。公務員が再任用を希望したら必ずそうする、と閣議決定しているのである。これは民間企業の多くが導入している再雇用制度と大差ない。再任用から定年延長へ、なぜ急いで移行させるのか。十分な説明が求められる。公務員の給与体系は民間に比べて恵まれている。成果主義が導入されたとはいえ、最低の評価を受け続けても給与が増えないだけで減りはしない。役職定年がないので、いちどたどり着いたポストの給与が定年まで続く。検討会は定年延長とセットで役職定年の導入を検討しているらしいが、役職定年は民間ではとうに常識で、周回遅れの感がある。そもそも長年の課題である公務員と民間の年金格差がなお残っている。こうした課題を早く片付けるべきだ。いまのご時世に公務員の総数を増やすことは考えられない。定年を延長すれば新規採用の抑制は不可避だ。それで組織の活力を維持できるかどうかも、疑問点だ。ベテランのノウハウの継承は大事だが、官が人材を抱え続ければ政府が目指す労働力の流動性の増大をさまたげる要因ともなる。再任用では定年前よりも給与水準が下がるのが普通だ。そうしないための定年延長であり、公務員だけがいい思いをしようとしている。そんなふうに有権者に受けとめられたら、政治への不信はますます増大することになる。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDF2800Y_Y2A820C1EA2000/ (日経新聞 2012/8/28) 65歳まで雇用、企業身構え 義務付け法 29日成立
 60歳の定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務付ける高年齢者雇用安定法改正案が29日、成立する。来年4月から厚生年金の受給開始年齢が引き上げられるのに対応し、定年後に年金も給料も受け取れない人が増えるのを防ぐ狙い。2025年度には65歳までの雇用を義務づける。企業は継続雇用の対象者を能力などで絞り込めなくなるため、負担増に備え対応を急いでいる。28日の参院厚生労働委員会で民主、自民、公明などの賛成多数で可決。29日に参院本会議で可決、成立する見通しだ。会社員が加入する厚生年金(報酬比例部分)は現在60歳から受け取れるが、男性は13年度に61歳からとなり、以降3年ごとに1歳上がって25年度には65歳開始となる。現在、企業の82.6%(約10万9千社)は継続雇用制度を持ち、定年後も希望者を雇用している。ただ、その5割強は労使協定の基準を満たす人に対象を絞っている。労働政策研究・研修機構によると、健康状態や出勤率・勤務態度のほか、約5割の企業が業績評価も基準に使っている。改正法は企業が労使協定で対象者を選別することを禁じる。ただ、企業の負担が重くなり過ぎないよう、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会で指針を作り、勤務態度や心身の健康状態が著しく悪い人は対象から外せるようにする。継続雇用する対象者の範囲は年金の受給開始年齢の引き上げに合わせて広げ、受給開始が65歳となる25年度には65歳まで希望者全員の雇用を求める。指導や助言に従わない企業名は公表する。11年6月の厚生労働省の調査では、過去1年に定年を迎えた約43万人のうち10万人以上は継続雇用を希望しなかった。年金の受給年齢が上がると定年後もしばらく年金を受け取れなくなるため、来春以降は希望者は増えると考えられる。みずほ総合研究所の試算では、継続雇用を希望しなかった人と希望しても離職していた人が全員、継続雇用されると賃金総額は来年度に4千億円増える。25年度には1.9兆円増え、総人件費を約1%押し上げる。コスト増以上に、能力の低い従業員も雇用しなくてはならず労働生産性が下がると懸念する声も多い。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「人件費の増加を防ぐため能力の高い高齢者の賃金まで企業が一律に抑制しかねない」と警鐘を鳴らす。高齢者の雇用が増える結果、企業が若年者の雇用を抑える可能性もある。「高齢者と若者のワークシェアなど柔軟な働き方を進めていく必要がある」と高年齢者雇用コンサルティングの金山驍社会保険労務士は指摘している。

*1-2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/CK2017091202000117.html (東京新聞 2017年9月12日) 子育て「共助で」 「こども保険」提言の小泉氏
 幼児教育・保育の無償化を目指す新制度「こども保険」の創設を提言した自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長=写真、小平哲章撮影=は十一日、本紙のインタビューに答え「親の自助だけに子育てを委ねるのは難しい。急速に人口が減っている中で、優先すべきは人生前半の教育だ。共助の仕組みである保険がかなう」と必要性を強調した。こども保険は、厚生年金と国民年金の保険料に一定額を上乗せし、児童手当の増額などに充てる制度。税金でなく「社会保険方式」で財源を確保するのが特徴だ。小泉氏らは約一兆七千億円あれば、実質無償化になると試算する。だが、負担が現役世代に限られることや、子どものいない世帯はサービスを受けられない点が課題と指摘され、自民党内にも反対論が強い。小泉氏は「子どもがいなくても年金、医療、介護の受け手となる。その持続可能性を担保するのは若い人だ」と指摘。二年後に予定される消費税増税の増収分を財源にすべきだとの意見には「政治的な困難、待ったなしの子どもの問題を考えたら現実的なのはこども保険だ」と反論した。こども保険は二〇一六年二月、小泉氏を中心に自民党の若手議員が参加した「二〇二〇年以降の経済財政構想小委員会」が議論に着手。今年三月に導入を促す提言をまとめた。四月に政調会長を委員長とする特命委員会に格上げされた。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170828&ng=DGKKZO20438380X20C17A8NN1000 (日経新聞 2017.8.28) 忖度しすぎ?シルバー民主主義、高齢者を優遇、財政悪化 負担増、受け入れる素地
 年金は少しでも多く、医療・介護や税の負担は少しでも小さく――。若者に比べて高齢者を優遇する「シルバー民主主義」政策が財政を悪化させてきた。お年寄りがこれからますます増えるなか、目先の痛みを強いる財政再建など、とても支持を得られない。だがこうした常識を覆す研究が出てきた。諦めるのはまだ早い。お年寄りの政治への影響力は大きい。直近3回の衆議院選挙の平均投票率は20代が39%なのに対し、60代は75%だった。2025年には、有権者の6割が50歳以上になる。病院の窓口負担を増やしたり、年金の給付額を減らしたりするのは難しくなるというのが霞が関や永田町の常識だ。
●利害・公共心カギ
 政治家は投票所に足を運んでくれる人の意向を気にする。それなら選挙制度を変えるしかない。そこで親が子どもの分まで投票する「ドメイン投票」や、年齢が若いほど1票の価値を高める「余命投票」などが真剣に議論されてきた。しかし、本当に単純な世代間対立で語れるのかと異議を唱える研究が最近、出てきた。鶴光太郎慶大教授らが全国の6128人に税制と社会保障に関する考え方を聞いたところ「増税をして社会保障を拡大する必要がある」とした人が20代では29%で、60代では40%だった。高齢になるほど高くなる。高齢者はすでに社会保障の恩恵を受けており、実利の面から増税と社会保障充実の組み合わせを選んだ可能性がある。一方、20代で最も支持を集めたのは「増税をせず社会保障を拡大する」というただ乗りで、35%を占めた。高齢者に比べてすぐに社会保障の恩恵を感じにくいため、増税への支持が少ないようだ。調査では政府やまわりの人への信頼が低く、ゴミのポイ捨てや年金の不正受給などに目をつぶる「公共心の低い人」ほどただ乗り政策を選ぶ傾向もあった。財務総合政策研究所の広光俊昭氏は仮想の国の財政政策について、負担を30年後に先送りするか、現世代と将来世代が分かち合うかを10~70代の447人に聞いた。先送りは、30年後に付加価値税(消費税に相当)が10%から25%に、年金給付が月10万円から5万円になる。分かち合いは付加価値税が20%、年金給付は7万円の状態がずっと続く。30代は67%が、60代は54%が分かち合いを支持。「将来世代」役を1人置いて討議をすると、分かち合いを選ぶ割合はさらに高まった。広光氏は「政策選択には個人的な利害と公共的な判断が併存して働く」とみる。
●若者の理解課題
 「政治家が高齢者の意向を勝手に忖度(そんたく)しているだけ。きちんと説明すれば高齢者もある程度の負担増を受け入れる」。「シルバー民主主義」(中公新書)を書いた八代尚宏・昭和女子大学特命教授はいう。
ただ、お年寄りの理解を得ても財政再建のハードルは高い。莫大な国の借金が若者の不安につながっている。鶴氏は「若い人でも目先の利益を重視する傾向がある」と話す。教育年数が短く、時間あたりの所得水準が低い人ほど、小さな負担で大きな受益を求めがちという。世界的に所得格差の不満が高まるなか、新たな人気取りは財政再建をより難しくする。

*1-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDC08H39_Y7A900C1MM8000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/9/10) 介護費膨張 3つの温床 25年度に20兆円、ムダの解消急務
 介護保険が膨張している。介護施設や在宅サービスの給付費は総額約9兆円に上り、2025年度には2倍以上のおよそ20兆円に膨らむ見込みだ。給付の伸びは高齢化だけでは説明しがたく、サービスのムダにつながる3つの温床が浮かび上がってきた。「お肉はこのくらいでいいですか」。横浜市金沢区の団地。ヘルパーの藤田博美さん(62)が菅野茂さん(81)に尋ねながら料理する。訪問は週2回。「体の状態が悪いとき、言わなくても分かってくれる」と菅野さん。利用するのは生活援助と呼ぶサービスで、全国の平均的な利用回数は月10回程度。菅野さんのように常識的なケースが多くを占めるが「家政婦代わりに使われて本人の自立につながらない」(神奈川県の中堅介護事業者)との指摘が絶えない。北海道標茶町101回、大阪市98回……。財務省が6月まとめた調査には生活援助のひと月当たりの利用ケースで驚くような数字が並んだ。介護の取り組みが先進的とされる埼玉県和光市では月平均わずか6.7回で最高利用回数も30回だ。
■安い自己負担
 標茶町によると、101回利用したお年寄りは軽い認知症を患うなどして手厚い世話が必須だ。こうしたやむを得ないケースもあるが、全国でみれば要介護度や居住環境が同じでも自治体格差が大きく広がっている。ムダを生む理由の一つは「安さ」だ。例えば生活援助なら1回約2千円。自己負担は原則1割の200円ほど。最低でも1時間925円ほどかかる民間の家事代行サービスより格段に手軽だ。軽い介助が必要な要介護1なら保険給付の月額限度額は17万~19万円程度で、上限内で何度でも利用可能。コスト意識が甘くなり生活の「援助」に使うという本来の目的を逸脱しやすい。財務省幹部は「あまりにずさんな使い方が増えた。来年度改定で厳格に対応する」という。政府内ではサービス利用の上限制導入などが課題に浮上している。介護保険の給付費は国や自治体による公費と40歳以上からの保険料(労使折半)でまかなう仕組みだ。健康保険組合連合会によると13年度から17年度にかけて労使を合わせた保険料は7千円近く増え、年9万円に迫る。15~25年の要介護の認定者数の伸びは3割強を見込むが、保険からの給付費総額は2倍になる。高齢化で重度の認定者が増える面もあるが、財務省などはムダ遣いなどの非効率が広がってきた影響だと分析している。
■規制に抜け道
 保険対象の施設などには国の総量規制があるが、ここにも死角がある。その一つがサービス付き高齢者住宅(サ高住)などによる需要の囲い込みだ。サ高住自体は一種の賃貸住宅で保険の枠外。ところが運営者の企業などがサ高住に住むお年寄り向けに自社系列の事業者を使い、頻繁な在宅サービスを供給するケースも急増した。大阪府が昨年12月公表した調査では、府内のサ高住や有料老人ホームでは給付限度額の9割前後を消化していた。全国平均は約4~6割だ。この6年で府内にサ高住などの施設数が3倍に拡大した結果、その施設と在宅などのサービスが抱き合わせで増えていたのだ。
■監視難しく
 では介護サービスの内容を定めるケアプランを厳しくすればいいかといえば、それも困難だ。ここに3つ目のムダの温床がある。介護保険の運営主体の市町村にはプランを精査して見直しを迫る権限がない。介護事業所の経営者は「ケアマネジャーと事業者が結託すれば過剰サービスは防ぎようがない」と明かす。介護保険には今年度から収入が多い人ほど多く保険料を負担する「総報酬割」が段階導入される。大企業を中心に約1300万人は負担増の見込みで、高所得者を中心に現役へのしわ寄せは拡大の一途だ。焦点は政府と与党が年末にかけてまとめる来年度の介護報酬改定だ。「要介護度が低い人向けサービスを定額制にしたり、事業者が回数を抑えたりする動機付けが必要」。日本総合研究所の西沢和彦氏は指摘する。例えば現行は状況が改善して要介護度が下がると介護報酬も下がり、事業者の経営が苦しくなる。そこで自立を後押しした事業者には努力に報いて報酬を上乗せすれば、ムダ遣いを直す余地が生まれる。近年の介護費用の伸び率は医療や団塊の世代が受給し始めた年金を大きく上回る。介護の効率化を進めながら質の高いサービスの担い手のやる気を引き出せるか。介護保険は改革を先送りできないところまで来ている。

*1-2-4:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170907-00000022-kyt-l25 (京都新聞 2017/9/7) 息子をかたり490万円詐取 大津の女性被害
 滋賀県警大津署は7日、大津市内の女性(68)が息子をかたる男に490万円をだまし取られたと発表した。
同署によると、5日から6日にかけ、女性宅に息子を名乗る男から「友人と投資をやっていて、友人が会社の金に手を出した。500万円の示談金が必要」と電話があった。女性は大阪府高槻市内で、弁護士の代理を名乗る男に現金を手渡したという。

<外国人労働者差別>
*2-1:http://qbiz.jp/article/117249/1/ (西日本新聞 2017年9月3日) 佐賀県、外国人受け入れへ態勢着々 在住者13%増、伸び率全国トップ
 佐賀県内在住の外国人数が、2016年は前年比13%増の5140人で、伸び率では全国の都道府県でトップになった。県は今後の増加を見据え、日本語教室の開設を後押しするなど受け入れ態勢づくりに取り組んでいる。全国ではごみ分別の理解不足などから住民トラブルに陥ったり、犯罪に巻き込まれたりするケースも後を絶たないが、山口祥義知事は「官民で多文化共生を進めたい」と話す。県によると、県内在住者のうち、技能実習生が1863人で前年より426人増えた。留学生も前年比87人増の744人。この両者で全体の増加(604人)の約85%を占め、伸び率を押し上げた。コンビニや工場などの労働現場は人手不足に陥っており、技能実習生は「引く手あまた」(福岡県内の機械部品メーカー)の状態。県によると、多くが製造現場で働いており、今後も増える見通しという。このため、県は外国人の受け入れの課題や対策などの助言を政策に反映させようと、国際交流の有識者や関係者を招き、2015年4月に国際戦略本部会議をスタート。8月24日に6回目の会議を開き、「外国人住民への生活支援」をテーマに約20人が論議した。この日の会議では、日本で暮らす外国人を支援する東京のNPO法人国際活動市民中心(通称CINGA=シンガ)のコーディネーター新居(にい)みどりさんが、「外国人の在住には法律と言葉、心の『三つの壁』がある」と指摘。具体的には(1)夫の暴力で骨折しながら「逃げたら在留資格を失って子どもに会えなくなる」と逃避できない(2)東日本大震災で「タカダイ(高台)」の言葉の意味が分からず避難が遅れて被災した(3)マンションの隣人から「怖い」と敬遠され孤立した−といった事例を報告した。県によると、県内には日本語での会話に支援が必要な小中高校生が50人いるといい、子ども世代へのサポートも欠かせないという。県は「佐賀モデル」として、市民ボランティアによる日本語教室開設を会場費の助成などで後押ししており、現在、13教室が運営されている。本年度からは専任のコーディネーターも1人配置し、「壁」の突破に努めている。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170909&ng=DGKKASFS06H5G_X00C17A9MM8000 (日経新聞 2017/9/9) 外国人就農、通算3年 特区で延長 総労働時間には上限
 政府は国家戦略特区で認めた農業の外国専門人材について、日本で働ける期間を通算で3年とする方針だ。技能実習制度で働く場合は最長3年だが、特区では農繁期だけ働く場合などは初めて来日してから3年を超えても働くことを認める。年間総労働時間の上限も設け過重労働を防ぐ。外国人材の活用で、高齢化などで担い手不足に悩む地方農業の活性化を狙う。農業での外国人受け入れを盛り込んだ改正国家戦略特区法が6月に成立したことを受け、受け入れの詳細をまとめた指針や政令を近く公表する。自治体の間で農業分野の外国人活用に対する関心は高く、すでに特区に指定されている愛知県のほか長崎県や茨城県、群馬県昭和村、秋田県大潟村などが関心を示している。政府は年末をめどに特区を追加指定する方針で、これらの自治体が選ばれれば、農業での外国人活用が広がる。政府・与党内には特区に限らず全国で認めるべきだとの声もある。農業で受け入れる外国人は満18歳以上で、1年以上の実務経験がある人材に限る。農業に従事するうえで必要な日本語が話せることも条件とした。派遣会社が雇用契約を結び、過去5年以内に労働者を雇用した経験がある農業生産法人などに派遣する。生産法人が直接雇用することは認めない。期間は通算で3年だ。例えば春から夏にかけて半年だけ日本で働くケースでは、初来日から6年目まで就労できる。農作業のほか加工や販売にも携わったり、複数の生産法人で働いたりすることもできる。派遣会社には日本人労働者と同等以上の報酬を払うことを義務付ける。指針などとは別に、法令の解釈通知を通じて年間の総労働時間の上限を決める。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/461590 (佐賀新聞 2017年9月8日) 外国人実習生の労働条件改善を 市民団体、県に要請
 労働組合や患者団体などでつくる「はたらくもののいのちと健康を守るネットワークさが」は7日、外国人技能実習生の労働条件の改善などを求める要請書を佐賀県に提出した。実習生の長時間労働や賃金の未払いなどの違法な労働実態の調査や、実習生に対応できる相談窓口を設けることなど4項目を求めた。要請書を手渡した東島浩幸弁護士は「外国人技能実習生の制度は『奴隷労働』と国際的にも批判されている。窓口の設置や、通訳をつけて対応するといった相談体制の充実に取り組んでほしい」と強調した。県産業人材課の担当者は「国が所管しているため、(県では)取り組みを進められない項目もある。対応できる部分は関係課に報告したい」と話した。団体側はアスベストを使用した建物の所在を掲載したハザードマップの作成も求めた。

<高度専門職差別と女性差別>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/CK2017090902000140.html (東京新聞 2017年9月9日) 【政治】働き方法案に「共謀罪」・安保法の手法 「残業代ゼロ」根幹残し一括化
秋の臨時国会に提出される「働き方改革」関連法案のうち、労働基準法を改めて「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)を創設する部分は、継続審議となっている法案を取り下げ、他の法案と一括化して出し直す。かつての「共謀罪」法や安全保障関連法と似通う手法だ。「残業代ゼロ」制度は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す。政府はこれを柱とした労基法改正案を二〇一五年の通常国会に提出したが、一度も審議入りしていない。法案要綱では、関連法案のうち「残業代ゼロ」を導入する労基法改正案は、休日確保措置などが新たに盛り込まれたが、従来の法案と根幹部分は変わらない。批判が強い法案の内容を微修正して出し直すやり方は「共謀罪」法と重なる。「共謀罪」法案は〇三、〇四、〇五年に国会提出され、「人権侵害につながる」との懸念が出て廃案に。安倍政権は構成要件を一部変更した上で罪名を「テロ等準備罪」に変え、今年六月に成立させた。また、今回の法案は残業時間の上限規制や正社員と非正社員の待遇差縮小など、性格の異なる法案と一括化して提出する。審議時間を短縮するのが狙いで、「残業代ゼロ」など個別の制度の是非を巡る審議が不十分になる可能性がある。多くの法案と抱き合わせる手法は、一五年九月に成立した安保関連法と似ている。同法も、集団的自衛権行使を可能にする武力攻撃事態法、地球規模で米軍を支援可能にする重要影響事態安全確保法など十本を一本化し、批判を受けた。政府が提出した法案を自ら取り下げるのも異例。二〇〇〇年以降では、衆参の多数派が異なる「ねじれ国会」で成立を断念するなど計八法案だけだ。一橋大大学院法学研究科の只野雅人教授(憲法、議会制度)は「政治的な思惑から法案を一括化することは、審議の充実という観点から問題がある。賛否が分かれる法案は個別に提出し、別々に議論すべきだ」と話す。 

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170909&ng=DGKKASDF29H17_Y7A900C1MM8000 (日経新聞 2017.9.9) M字カーブ 「谷」緩やかに、30~40代女性の離職に歯止め
女性の就労が増えている。労働力としてみなされる女性の割合を示すグラフをみると、30~40歳代の部分が顕著に落ち込む「M字カーブ」と呼ばれる特徴が薄れ、米国や欧州各国などに似通ってきた。育児休業など企業側の制度整備が進んだことや働く意欲を持つ人が増えたことが大きいが、待機児童の解消はなお道半ばだ。働きやすさと労働の質を高めるさらなる工夫がいる。デイサービス(通所介護)大手のツクイは従業員の75%が女性だ。働き手の確保のため介護施設内に託児所を設け、0~2歳児の子供が5人いる。ある従業員は「休憩時間をつかって子供の様子を見に行けるので安心」と語った。総務省の7月の調査によると15~64歳人口に占める女性の労働力の割合(労働力率)は69.7%で、働く女性は着実に増えてきた。年代別ではM字の谷に相当する35~44歳の労働力率が前年同月比0.7ポイント増の75.3%。10年前の2007年7月と比べると全ての年代で上昇し、全体的に底上げされている。
●米欧に近づく
 15年時点では米国や英国、北欧地域とは大きく異なるカーブを描いていた日本。近年は米欧とほぼ遜色のない形に近づいており、女性の労働市場は歴史的な構造変化を遂げつつある。女性の就労が加速した最大の理由は、企業が離職防止に取り組んできたことだ。女性の育休取得率はやや低下傾向にあるとはいえ8割超で推移している。育休中の生活を支える政府の育児休業給付金の受給件数は、06年度の13万件から16年度の32万7千件へと2倍以上に増えた。高齢化で15~64歳の生産年齢人口はこの10年で700万人以上も減った。その一方で実際に働いている労働力人口をみると同じ時期におよそ50万人増えた。女性だけに限れば約200万人増え、M字の底を押し上げるのに大きく貢献したことがわかる。働き口も高齢化でニーズの強まる医療・福祉業など裾野が大きく広がっている。大和総研の鈴木準政策調査部長は25~44歳女性の就業率について「このままのペースで伸びれば22年には80%に到達する」と話す。国立社会保障・人口問題研究所の試算をもとに計算すると22年に25~44歳女性の就業者数は16年と比べて200万人以上減る見通しだが、就業率が80%に上がることで減少幅は46万人で済む。政策努力などでさらにこの比率を高めることができれば、減少を食い止めることができるかもしれない。もっとも楽観的な見方を戒める声も目立つ。第一生命経済研究所の柵山順子氏は「M字カーブの完全解消には保育所不足などがハードルになるだろう」と分析する。ここ数年で女性の就労が政府の想定以上のテンポで進み、待機児童は減るどころか2万6千人強に膨らんだ。政府は22万人の保育枠を追加整備する方針だが、都市部の整備が遅れるミスマッチを解消するのはやさしくない。
●賃金は伸び鈍く
 生産年齢人口の急激な減少が進む中で女性の就労をさらに後押しするには企業の一段の取り組みも重要だ。オリックスは配偶者の転勤で現在の勤務地で仕事が続けられない場合、勤務エリアを変更できる制度を昨年3月に導入。配偶者の転勤で退職を選ぶ社員も多かったが「キャリアを途中で諦めなくてすむので好評だ」(同社)。ユニ・チャームは全社員を対象に在宅勤務を導入。ネスレ日本は昨年に在宅勤務の制約を緩和し、上司の許可があれば理由に関係なく会社以外で勤務できるようにした。経済成長の土台を確かなものにするにはM字カーブを解消し、労働力を底上げするのは理想的な方向だ。とはいえ夫の収入が低迷するなどしてやむを得ずパートなどで働きに出る女性もまだ多く、賃金の伸びは鈍い。さらに女性の就労を後押しするには育児休業などの整備を加速させるのはもちろん、生産性向上と賃上げなどで働き手に報いる努力が必要だ。離職者向けの再就職支援、学び直しの機会の提供など、様々な手立てを講じることも欠かせない。

<サービス付き住宅>
PS(2017年9月12日追加):*4のように、訪問サービス付き高齢者向け集合住宅に大手不動産などの参入が相次いでいるそうだが、私の叔父が入っている横浜市のサ高住には食堂があり、栄養管理した食事が出されて介護付きであるため、便利だ。中では、書道や軽い体操などのコースもあるが、高齢者が若い頃に流行っていた音楽や映画などもやると心が元気になってよいと思われる。なお、訪問サービスの内容に介護だけでなく、家事サービスを加えて間取りを広くすれば、高齢者だけではなく、独身者、共働き家庭、子育て家庭にも便利な住宅になりそうだ。

*4:http://digital.asahi.com/articles/ASK945D0FK94UTLZ00G.html?iref=comtop_list_biz_f03(朝日新聞 2017年9月9日)「サ高住」銘柄に熱視線 大手不動産など参入相次ぐ
 「足腰が元気なうちに『終の棲家(すみか)』となる新築物件に移り住もう」。郊外の持ち家を処分して都心の超高層マンションに引っ越すシニア層が増えています。一方で、看護・介護の訪問サービス付きの高齢者向け集合住宅、いわゆる「サ高住」が高い関心を集めています。利用者の需要も全国レベルで拡大。事業者向けの税制優遇や融資制度など、国や自治体が促進施策を充実させて、参入企業も増えています。登録物件をオンラインで公開する高齢者住宅推進機構によると、有料老人ホームも含めた「サ高住」は7月末時点で、全国6697棟、21万8851戸。この4年で棟数、戸数とも倍増しました。政府は共同住宅、寮、ホテル、老人ホーム、賃貸住宅など既存施設の改修を呼びかけていますが、補助事業全体に占める改修物件の割合は少なく、大半は民間企業が医療・社会福祉法人と手を組んで開発した新築物件です。「サ高住」事業に参入している民間企業で有名なのは、学研ホールディングス系の学研ココファン。神奈川県を中心に全国で117事業所を展開しています。最近勢いがあるのは、大手損害保険のSOMPOホールディングス。「メッセージ」「ワタミの介護」と介護事業者を相次いで買収し、新築物件を供給しています。大手不動産の参入も目立ちます。賃貸アパート受託など、サブリース事業を手掛ける企業が、入居者への転貸目的で働きかけを強めそう。「サ高住」は株式市場のテーマとしても今後、注目の的になる可能性があります。

<開発力・技術力とそれを支える国民>
PS(2017年9月14日追加):*5-1のように、佐賀新聞は2015年度の国民医療費が42兆円に達し、これは、高齢化に加えてオプジーボなどの超高額薬の保険適用が影響したものだと報道している。高齢化によって有病者が増えるのは自然だが、薬の飲ませすぎもあるのではないかと思われ、オプジーボの価格も、図のように、英国・米国では日本の約1/5と1/2だったので、厚労省の価格決定や過度な使用範囲の制限が問題なのだと思われる。何故なら、原理から考えると、オプジーボは、どの癌にも効き広範に使用できるのが当たり前だからだ。
 また、*5-2-1のように、英国・フランスに続き中国がガソリン車・ディーゼル車の廃止に向けた検討に入り、環境規制を強化するため、自動車大手は電気自動車(EV)の開発を急いでいるそうだ。しかし、日本の「リーフ」は、いつまでも「市街地で短い距離を走るなど、中国では独自の使われ方がある」などと、排気ガスを出さないのだから少しくらい不便でも我慢しろという態度だ。しかし、EVは、①排ガスが出ない ②静か ③操作性がよい ④燃料費がいらない など、ガソリン車と比べて欠点がないから売れるのであって、ドイツのVWは、*5-2-2のように、2030年までにEVに200億ユーロ(約2兆6千億円)を超える投資を行う計画を発表し、2025年までには80車種の新型車両を投入する方針にしたそうだ。なお、開発を始めて20年以上経過している日本は、とっくの昔にそれをクリアしていなければならない時期なのである。そして、こういう意思決定を速やかに行えるためには、文系の人もこの程度の理系の知識は必須であるため、それを高校卒業までに教えておかなければ国力をそぐことになる。
 そのため、*5-3のように、私企業である日立が英国に建設する原発に、同じく私企業である日本の銀行が融資する建設資金を、日本政府が全額補償して膨大な偶発債務を引き受け、昔帰りの技術に固執するなどという馬鹿な税金の使い方を止めさせつつ、幼児教育の無償化もよいが、それに先立って小学校への入学年齢の3歳への引下げを行い、いろいろなことを高校卒業までにマスターしておけるようにすることが必要だと考える。

   
   2017.9.13佐賀新聞      日米英の価格比較    2016.11.2朝日新聞

*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/462976 (佐賀新聞 2017年9月13日) 15年度国民医療費42兆円、過去最高、高額薬が影響
 厚生労働省は13日、2015年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の総額(国民医療費)が、前年度比1兆5573億円増(3・8%増)の42兆3644億円だったと発表した。国民1人当たりでは1万2200円増(3・8%増)の33万3300円。いずれも9年連続で過去最高を更新した。高齢化の進行に加え、がん治療薬「オプジーボ」など超高額薬の保険適用が相次いだことが要因。国民医療費が国民所得に占める割合は10・9%。年代別では、65歳以上の高齢者向けが25兆1276億円で59・3%を占めた。

*5-2-1:http://qbiz.jp/article/118672/1/ (西日本新聞 2017年9月13日) EVシフト急加速 英仏中、ガソリン車廃止検討
 英国やフランスに続き中国がガソリン車とディーゼル車の廃止に向けて検討に入った。環境規制の強化を受け、自動車大手は電気自動車(EV)の開発を急ぐ。割高な生産コストや基幹部品である電池の安定調達がEV転換への課題となる。「フォルクスワーゲン(VW)の歴史に新たな幕が開こうとしている」。フランクフルト自動車ショー開幕を前にした11日、ミュラー会長は環境規制に対応したEVを含む電動化投資戦略を発表。2030年までにグループで200億ユーロ(約2兆6千億円)超を投じる計画をぶち上げた。欧州に続いて、中国政府はEVをはじめとする新エネルギー車の普及を加速させる。EVの主戦場になると予想される中国市場で、日系メーカーは攻勢をかける構えだ。先行する日産自動車は18〜19年に複数のEVを投入する方針で、今月披露した新型「リーフ」の発売も検討する。西川広人社長は「市街地で短い距離を走るなど、中国では独自の使われ方がある」とし、現地で受け入れやすい商品展開を狙う。現地主導で開発するホンダは18年に新型EVを投入する予定。出遅れるトヨタ自動車も19年をめどにEVモデルを既存車種に設定する考えだ。規制強化をいち早く打ち出した欧州では、低燃費を売りにしたディーゼル車からの撤退が進む。ホンダは18年に欧州で売り出すスポーツタイプ多目的車の新型「CR−V」にディーゼル車の設定をなくす方針。SUBARU(スバル)は20年をめどにディーゼル車販売を取りやめる見通しだ。ある日系メーカー首脳は「環境対応車の主役にディーゼル車が今後座ることはない」と断言する。ただ、EVはエンジン車に比べると依然として割高感があり、販売が政府の補助金に頼っている面は否めない。さらに、基幹部品のリチウムイオン電池に使われるレアメタル(希少金属)の生産は中国やアフリカ、ロシアなど少数の国に偏っており「安定調達がネックになってくる」(日産幹部)との懸念もある。国際エネルギー機関(IEA)は、世界の新車販売に占めるEVの割合は35年でも1割程度だと予想。住商アビーム自動車総合研究所の大森真也社長は、EVの普及見通しについて、エンジン車の乗り入れが将来禁止されそうな都市部で存在感を示すなど「すみ分けが鍵となる」と指摘する。

*5-2-2:http://qbiz.jp/article/118559/1/ (西日本新聞 2017年9月12日) VW、電動車両に2・6兆円投資 80車種投入へ
 ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は11日、グループで2030年までに電気自動車(EV)など車の電動化に200億ユーロ(約2兆6千億円)を超える投資を行う計画を発表した。25年までに80車種の新型車両を投入する方針だ。VWの排ガス規制逃れによる欧州でのディーゼル車離れや、市場シェアが高い中国の大気汚染規制の動きに対応する。欧州最大級の国際自動車ショーが12日にドイツ・フランクフルトで開幕するのを前に、ミュラー会長が公表した。車に搭載する電池性能の向上のほか、工場設備や充電設備を整備する。80車種のうちEVが約50車種、プラグインハイブリッド車(PHV)が約30車種になるという。グループのブランド全300車種に電動化モデルを最低一つそろえる。ミュラー氏は「自動車産業の(電動化への)変換は止められない。VWがそれを主導する」と語った。また、VW傘下の高級車アウディは11日、ハンドルやペダルがない完全自動運転によるEVの試作車を公開した。1回の充電で800キロまで走行できることを想定している。具体的な実用化の時期は未定。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170902&ng=DGKKASFS01H5T_R00C17A9MM8000 (日経新聞 2017.9.2) 政府、原発融資を全額補償、まず英の2基 貿易保険で邦銀に
 政府は日立製作所が英国に建設する原子力発電所について、日本のメガバンクが融資する建設資金を日本貿易保険(NEXI)を通じて全額補償する。先進国向け案件の貸し倒れリスクを国が全て引き受けるのは異例の措置だ。国内の原発新増設が難しい中、国が全面的な支援に乗り出してメガバンクなどの協力を引き出す狙い。インフラ輸出は中国など新興国勢との競争が激しくなっており、国が他のインフラ案件でも支援拡充に動く公算が大きい。安倍晋三首相は8月31日にメイ英首相と会談し、原発建設の協力推進を確認した。貿易保険(総合2面きょうのことば)の補償対象は日立子会社のホライズン・ニュークリア・パワーが受注した、英中部ウィルファで計画中の原発2基だ。両政府と日立は事務レベルで資金支援の枠組みを詰めて2019年中の着工を目指している。試算によると、事業費は2基で2兆円超だ。英政府と日立、日本政策投資銀行、国際協力銀行(JBIC)が投融資を実施する見込みだが、巨額な資金を調達するには民間融資が不可欠になっている。NEXIは通常、民間融資が焦げ付いた場合に備えた保険を提供し、融資額の90~95%を補償する。今回の英国案件については全額を補償する方向で邦銀と協議に入る。原発事業は東京電力福島第1原発事故以降に安全対策費が膨らみやすく、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行も貸し倒れリスクが大きいと判断しNEXIの全額補償を条件にしていた。過去に途上国向けで全額補償したことはあるが、先進国では例外的な措置だ。数十年程度の長期融資などが補償の条件になる見込みだ。原発事故などが発生した場合、三菱UFJ、みずほ両行は第三者から原発事業への貸し手責任に関して訴訟を起こされるリスクもある。両行は損害賠償に関する日英両政府間の協議などを見極めたうえで最終判断する。国が資金支援で前面に立つのは大きなリスクとも隣り合わせだ。原発建設は徹底した安全対策で工程が長引く傾向にあり事業費が想定を上回るケースも後を絶たない。貸し倒れになったりすればNEXIやJBICのバランスシートを直撃し、税金投入を通じた資本増強が不可避になる。最終的に多額の国民負担が発生する危険を冒しながらインフラ輸出を推進することの是非についても議論が活発になりそうだ。一方で中国は国有企業を中心に国を挙げて大型のインフラ輸出を加速させており、日本も対抗上、相応のリスクを取らなければ激しい受注レースで生き残れない現実もある。英政府は15年、英南東部で中国製の原子炉を先進国では初めて導入することを決めた。安倍政権は今回、全額補償措置などと引き換えに英国側にも官民での資金支援を手厚くするよう要請する。

<福岡市の再開発と自動車>
PS(2017年9月17日追加):日本で5番目に多い人口約153万人を擁する福岡市で、*6-1のように、建物の高さ制限を緩和しているのは新しい街づくりが進み易くなってよいが、次はオフィスや商店を高くなったビルに集めて、広い自動車道・自転車専用道・歩道などを備えた緑多き安全な街づくりをして欲しい。なお、排ガスの出る自動車が通らなければ、ビルの中を通る道路や高速道路を作ることも可能だ。また、福岡市は市内に空港があって便利な街だが、航空法の規制緩和は危ないので、空港を能古島か糸島半島に移転してはどうかと考える。現在は北九州空港もできているため、福岡空港は西に移動してもよいのではないだろうか。
 さらに、*6-2のように、我が国では、現在の一般車を前提として高齢者の免許返納を進め、高齢者の運転を制限しているが、免許返納して外出できなくなってから認知症になる高齢者も多いため、何でも禁止するのではなく、自動運転車や運転支援車など、自動車の方を迅速に改良すべきだ。

*6-1:http://qbiz.jp/article/118957/1/ (西日本新聞 2017年9月17日) ウオーターフロント地区も高さ緩和 福岡市都心部再開発 上限100メートル、国が最終調整
 福岡市都心部の再開発を促進する一連の建物の高さ上限緩和で、国が博多港中央・博多両ふ頭のウオーターフロント(WF)地区について、現行から最大30メートル引き上げて高さ上限を最高点で約100メートルとする方向で最終調整していることが16日、分かった。高さ上限緩和を巡っては、国が「天神明治通り地区」(中央区)で渡辺通りを挟んで西側は一律約115メートル、東側は約99メートルを最高点とするレベルまで大幅に引き上げる方針を既に固めており、月内にもWF地区と合わせて正式に決定する見通し。福岡市は天神、JR博多駅周辺、WFの3地区を「都市成長の軸となるトライアングル(三角形)」と位置付け、民間を中心としたビルの新築・建て替えを誘導するため、国に対し国家戦略特区による航空法の規制緩和を要望している。7月には、天神に隣接する旧大名小跡地(中央区)の高さ上限が地上26階建て相当の約115メートルまで緩和されたばかりで、都心再生に向けた環境整備が急ピッチで進みだした形だ。WF地区は、海外からの大型クルーズ船の発着地点として注目が高まっており、市は民間活力を生かして高級ホテルや大型ホール、商業施設を集積する再整備計画を検討している。WF地区の建物の高さ上限は現在、福岡サンパレス付近で約70メートルなどとなっている。市は、地区内の博多ポートタワー(高さ約100メートル)と同じ高さを最高点とする規制緩和を求めていた。実現すれば、地上22階建て相当のビルの建築が可能となり、WF地区の再整備計画の追い風となりそうだ。また、市はJR博多駅周辺地区についても、現行の高さ上限約50メートルを最高約60メートル(地上13階建て相当)まで引き上げることを要望しており、国との協議が続いている。

*6-2:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-572995.html (琉球新報 2017年9月12日)75歳以上の免許返納14万件 改正道交法、事故対策に一定効果
 75歳以上の高齢運転者への認知機能検査を強化した改正道交法は、12日で施行半年となった。高齢者の事故が依然として高水準な一方、1~7月の運転免許証の自主返納は14万件を超え、死亡事故も減少するなど一定の効果があった。警察庁は運転できる車種や地域、時間帯を限定した「限定免許」の導入も検討するなど、さらに事故防止の取り組みを進めていく。警察庁によると、75歳以上の1~7月の免許自主返納は14万3261件(暫定値)で、昨年1年間の16万2341件を上回る勢い。過失の重い「第1当事者」となった死亡事故も1~7月に219件で、過去10年間で最少だった。

<教育は国の礎なのに>
PS(2017年9月25、26日追加):明治時代から「教育は国の礎だ」として小学校から大学まで整備してきたことは、我が国の経済発展に大いに寄与した。今、そのうちの義務教育を3歳から18歳までとして無償化し、現代に必要な基礎的知識や技能を義務教育で身に着けられるようにすることは、無駄遣いでもバラマキでもなく、必要な教育を国民全体に行き渡らせ、生産性を向上させるために必要なことである。にもかかわらず、*7-1のように、「教育無償化」「保育」と言えば、「財源として消費税増税やこども保険が必要だ」とか「バラマキだ」などという批判が出るのは間違っている。バラマキは、景気対策と称して生産年齢人口の成人が働く産業に支払う多額の支出や補助金であり、教育レベルを高めることは、国から補助してもらわなければならない人を減らして税金を多く支払う人を増やすものであるため、消費税以外の税収を財源として優先的に支出しても何ら問題ない。
 また、外国では海底油田から原油を採掘しており、日本の排他的経済水域(EEZ)にも地下資源が埋蔵されていることがわかっていたのに、*7-2のように、海底鉱物採掘は2020年代の半ば頃しか商用化できないそうで、経産省の判断の悪さと生産性の低さが問題である。遅れ馳せでも海底鉱物資源を大量採掘することに成功したのはよいが、海底資源は国有財産であるため、国交省・財務省は国の収入として教育・福祉・国の借金返済に貢献するスキームを作るべきだ。

*7-1:http://qbiz.jp/article/119372/1/ (西日本新聞 2017年9月25日) 財政健全化の目標先送り 人づくり2兆円、ばらまき批判も
 衆院解散・総選挙を決断した安倍晋三首相は25日、「人づくり革命」に2兆円を投じる方針を掲げ、政策パッケージを年内に策定するよう関係閣僚に指示した。2020年度までに3〜5歳児の幼稚園・保育所の家計負担を全て無償とし、0〜2歳も低所得世帯に絞って無償化する。財源には消費税増税分の一部を転用する方針。基礎的財政収支を20年度に黒字にする財政健全化目標の先送りを事実上認めた。19年10月に予定する消費税率8%から10%への引き上げでは、増収分のうち4兆円を「社会保障の安定化」として借金抑制に充てる計画だったが、使途見直しにより財政再建は後回しとなる。無償化で家計は助かる一方、選挙での票獲得を狙った「ばらまき」との批判も強まりそうだ。首相は25日の記者会見で財政目標の20年度達成は「困難」と説明。黒字化自体は引き続き目指すと強調したが、具体的な時期は示さなかった。人づくり革命では、低所得世帯の大学生を対象に17年度から一部導入した給付型奨学金の支給額を大幅に増やすことや、授業料減免の拡充を表明。待機児童の解消に向け、32万人分の保育の受け皿を22年度まで5年間で整備する計画を前倒しし、20年度末までに完了する方針も打ち出した。幼児教育・保育の無償化はこれまで低所得世帯を中心に段階的に進めてきた。年収を問わず全て無償化するには約7300億円の追加費用が必要になる。首相は財源の大半を消費税で賄うとした上で、企業と従業員が負担する「こども保険」の導入是非も引き続き検討すると述べた。企業の設備投資などを促す「生産性革命」についても年内に政策パッケージを策定する。20年度までの3年間を集中投資期間とし「税制、予算、規制改革を総動員」(安倍首相)する方針だ。

*7-2:http://qbiz.jp/article/119459/1/(西日本新聞 2017年9月26日) 海底鉱物、大量採掘に成功 20年半ば、商用化目指す
 経済産業省と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は26日、海底にある鉱物資源を船で大量採掘することに世界で初めて成功したと発表した。沖縄県近海では海底から熱水と一緒に噴き出した金属が堆積してできる「海底熱水鉱床」の存在が相次いで確認されており、2020年代半ばごろの商用化を目指す。海底熱水鉱床には亜鉛、鉛のほか、金や銅などの資源が含まれている。今年8月中旬〜9月下旬、沖縄近海に投入した採掘機で海底約1600メートルの鉱床を細かく砕き、ポンプで海水とともに船に吸い上げる方式で試験を実施して成功した。今回採掘した鉱床には日本の年間使用量に相当する亜鉛が存在すると分析しているという。沖縄近海の排他的経済水域(EEZ)内では過去3年間で6カ所の鉱床が見つかっており、今後も新たな鉱床が発見される可能性が高い。日本は鉱物を輸入に頼っており、経産省は「生産性の高い採掘方法を確立し、十分な埋蔵量が確認できれば資源産出国になれる可能性がある」と期待している。18年度に経済性評価を実施する予定だ。

<保育・学童保育の質について>
PS(2017年9月28日追加):*8のように、放課後学童保育は必要で、これは量だけでなく質も重要だ。私は、退職後の教諭が予習・復習を手伝ったり、エンジニア出身者が遊びを兼ねて工作を手伝ったりなどすると、子どものうちから知らず知らずのうちに役に立つ能力が身につき、興味がわいてよいと考える。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/466972 (佐賀新聞 2017年9月28日) 学童保育、定員501人増 新設や余裕教室活用
 9月定例佐賀県議会は27日、総務、文教厚生、農林水産商工、県土整備・警察の各常任委員会の質疑を行った。共働きやひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)の待機児童が増え続け、5月現在で235人に上っている問題で、県こども未来課は、市町がクラブを新設したり、余裕教室など既存施設を改修したりすることで、本年度中に定員が501人増える見込みを示した。放課後に安心して過ごせる生活の場としての放課後児童クラブを質・量ともに充実することが課題となっている。待機児童問題や、職員の処遇改善などについて、徳光清孝議員(県民ネット)が聞いた。定員増により、待機児童が出ている6市町中、佐賀市を除く5市町は施設面では待機児童を受け入れることができる見通しだが、一方で放課後児童支援員の不足も深刻化しており、「『待機児童が解消される見通し』とまでは言えない」(こども未来課)という。152人と県内で待機児童が最も多い佐賀市の定員増は50にとどまる。支援員の資質向上や処遇改善の質問に、藤本武こども未来課長は「子どもたちが安心して放課後を過ごすため、放課後児童支援員が果たす役割は大きい。市町と連携し、支援員が働きやすい環境づくり、質の向上に努めたい」と答弁した。過熱する部活動や教職員の負担軽減の観点では、武藤明美議員(共産)と古賀陽三議員(自民)が取り組みを尋ねた。牛島徹保健体育課長らは中学校の部活動に関し、「県内統一の休養日を設定する方向で調整している」と述べた。部活動の過熱化にブレーキをかけるとともに、教員の負担軽減を図る。10月初旬にも通知する。6月時点では佐賀市など6市町の教育委員会が休養日を独自に設定している。


<希望の党の小池氏への期待>
PS(2017年9月29日追加):*9-1、*9-2のように、高齢世帯の4分の1が貧困状態にあり、その生活水準は「生活保護以下」である。これは、スーパーでちょっと気を付けて庶民の高齢者の買い物かごを見ていればすぐにわかることで、買いたくても金がないから買えないのだ。にもかかわらず、経済政策は、①物価上昇を目的に金融緩和して貨幣の購買力や資産価値を低下させ ②ゼロ金利にして金融資産からの収入を無くし ③年金を削減し ④介護保険料などの負担は増やし ⑤消費税増税を自己目的化して他の工夫はせず ⑥教育・福祉の財源は消費税しかないかのような論調をはびこらせて高齢者いじめをしており、目に余る。
 そのため、安倍首相の「消費税収の使い道の変更」が衆議院選挙の争点になっているのだが、実際には、*9-3、*9-4の原発は、何十兆円もの予算を使いながら激しい公害を出すシロモノで、速やかに「原発ゼロ」にすれば多額の原発予算を削減して本物の地域再生や教育・福祉にまわすことができるため、希望の党の小池百合子氏には、具体的に、「速やかな原発ゼロと自然エネルギーへの転換」「消費税凍結」「脱世襲政治」を前面に掲げて欲しいと考える。

*9-1:http://qbiz.jp/article/118821/1/ (西日本新聞 2017年9月15日) 高齢世帯の4分の1が貧困状態 「生活保護未満」立命館大教授分析
●独居女性では2人に1人 
 65歳以上の高齢者がいる世帯の貧困率は2016年時点で27・0%−。厚生労働省の国民生活基礎調査を基にした立命館大の唐鎌直義教授(経済学)の独自分析で、こうした結果が明らかになった。1人暮らしの女性は特に深刻で、2人に1人が生活保護の水準を下回る収入で暮らしている。高齢者世帯の貧困率は上昇しており、その背景について唐鎌教授は年金受給額の減少を指摘している。唐鎌教授は、全国約29万世帯を対象に所得や家計支出などを調べた16年の国民生活基礎調査のデータから高齢者世帯の所得状況を分析。平均的な生活保護費(1人世帯で月額約12万円と想定)に租税免除などの影響を加味し、生活保護受給者と同等の生活水準になる世帯年収を1人世帯160万円▽2人世帯226万円▽3人世帯277万円▽4人世帯320万円と設定。この基準に満たない世帯の割合を貧困率として算出した。分析によると、1人世帯の貧困率が特に高く、女性56・2%、男性36・3%。2人世帯でも2割を超え、高齢者と未婚の子の世帯は26・3%、夫婦世帯は21・2%だった。高齢者世帯全体の貧困率は27・0%で、以前まとめた09年調査の分析結果と比較すると2・3ポイント増加。この間、貧困世帯は156万世帯以上増えて約653万世帯に、人数で見れば1・3倍の約833万6千人になった計算だ。背景について唐鎌教授は「公的年金の給付額が低下したため」と指摘。国立社会保障・人口問題研究所の統計から割り出した高齢者1人当たりの年金受給額は「(直近の調査結果である)14年度は年間約161万8千円で、09年度に比べ14万円減っていた」と説明する。国民生活基礎調査は、1986年から毎年実施。全国から無作為に対象世帯を抽出し、回答結果から全体数を推計している。3年ごとの大規模調査の年は、子どもの貧困率も公表しているが、高齢者の貧困率については算出していない。子どもの貧困率は、平均所得の半分に満たない家庭で暮らす子どもの割合で、今回の分析はこの基準と異なるが、唐鎌教授は「子どもだけでなく高齢者の貧困も深刻。生活保護受給者は今後さらに増えるだろう。これ以上の年金引き下げはやめるべきだ」と強調した。

*9-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170929&ng=DGKKASGF28H0R_Y7A920C1EE8000 (日経新聞 2017.9.29) 市場、財政悪化を警戒、国債の信用リスク高まる、消費増税の扱い懸念
 金融市場で日本の財政悪化への警戒感が高まっている。日本国債の信用力を映すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率が数日で急上昇し、約1年2カ月ぶりの高水準をつけた。長期金利もおよそ2カ月ぶりの水準まで上がった。衆院選を前に、安倍晋三首相をはじめ、どの政党が勝っても財政再建の道は険しいという見方が広がる。安倍首相は選挙の争点に「消費税収の使い道の変更」を掲げる。2019年10月に予定する10%への消費増税の際、もともと借金返済にあてる予定だった税収の一部を、幼児教育の無償化などに回す方針だ。基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化する目標も「達成は困難」としている。市場が意識するのは、首相の発言や動向だけではない。「希望の党」代表の小池百合子東京都知事は景気が回復するまで「増税は凍結する」と唱える。民進党はこの希望の党に事実上合流する。市場関係者は消費増税の行方を注視しつつ「自民・公明両党もそうだが、他党も輪をかけて財政拡張路線ではないか」と警戒している。具体的な市場の動きとしては、情報会社マークイットによると、日本国債の信用力を映すCDSの保証料率がここ数日で急上昇した。市場がよりリスクを意識すると、CDSの需要が高まり保証料率が上がる仕組みだ。料率は衆院解散観測さえなかった今月初めまでは0.3%程度。足元で0.4%前後と16年7月以来の水準まで上がった。長期金利も上がっている。新発10年物国債利回りは28日、国債を売る投資家が増え一時0.075%と約2カ月ぶりの高水準を付けた。この10日で0.03%上昇しており、40年物国債など償還までの期間が長い超長期債で金利上昇が目立つ。欧米の金利上昇が主因だが、メリルリンチ日本証券の大崎秀一氏は「日本の財政悪化懸念もあって投資家の買い意欲が鈍っている」と指摘する。国債の格付けにも不安は連鎖する。欧米の格付け会社は変更しない方針だが、格付投資情報センター(R&I)は28日、首相の財政健全化目標の先送り表明を受けて「政策運営の信頼感を損ね、見通しに対する懸念を高める事態だ」との見解を示した。R&Iは現在、国債の格付けの先行き見通しを「ネガティブ」(弱含み)とする。仮にここからさらなる格下げとなれば、地方自治体が発行する債券や社債などにも影響が広がる可能性もある。政府系金融機関や地方自治体が発行する債券の格付けは、日本国債をもとに決まる。たとえば日本の金融機関などの信用度が下がると、外貨を調達する際の金利が高くなる場合も発生し得る。市場関係者はこぞって「少なくとも選挙が終わるまで不透明感はぬぐえない」と語る。選挙戦で与党も野党も「痛みを伴う改革」よりも、景気刺激に重きを置く政策に傾きやすいとみる。金利動向をはじめ市場にも緊張感が当面残りそうだ。

*9-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170929&ng=DGKKASFS28H67_Y7A920C1EA1001 (日経新聞 2017.9.29) エネ政策 原発再稼働で対立
 原発政策でも溝は深い。自民党は原発について安全性の確保を前提として、季節や天候、昼夜を問わず安定的に発電できる「ベースロード電源」として活用すると主張。原子力規制委員会の基準を条件に原発再稼働を進める方針を示す。一方の小池氏は28日の会見で、新たな原発の新設は難しいと説き「30年までに原発はゼロにもっていくためにどういう工程があるか検討したい」と表明。「原発ゼロ」に慎重な連合を名指しし「膝をつき合わせて真剣に考えたい」と述べた。原発ゼロには代替エネルギーの確保が必要。エネルギーの輸入を増やすならコストがかかる。実体経済にどの程度の影響を与えてゼロを目指すのか、デメリットへの言及は乏しい。小池氏は「原発ゼロ」を唱える小泉純一郎元首相と近く、人気をとりこむ思惑も透ける。

*9-4:http://qbiz.jp/article/119749/1/ (西日本新聞 2017年9月30日) 九州の原発:玄海3号機にMOX燃料16体を装填方針 九電
 九州電力の山元春義取締役は29日、来年1月の再稼働を目指す玄海原発3号機(佐賀県玄海町)について、今年12月に想定する核燃料の装填(そうてん)時に、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料16体を使用する方針を示した。MOX燃料数は東京電力福島第1原発事故前と同じになる。29日の佐賀県議会で説明した。九電は2009年、国内で初めてMOX燃料を使ったプルサーマル発電を玄海3号機で始めた。再稼働でもプルサーマル発電を行う計画。山元氏によると、16体は3号機が10年12月の定期検査で運転停止するまで使用していた。停止中に福島原発事故が起き、保管していたが、再稼働に向け「もう1回入れる」という。さらに16体とは別に、新たなMOX燃料を「20体準備している」と説明。装填数を増やすなど今後については「検討している」とするにとどめた。

| 経済・雇用::2016.8~2017.12 | 04:56 PM | comments (x) | trackback (x) |

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