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2017.9.17 精神障害者・ハンセン病患者に対する差別と最近の人権軽視への歩み (2017年9月21、24日、10月10日に追加あり)
  

(図の説明:左のグラフのように、精神病床の平均在院日数は日本が著しく高い。また、真ん中のグラフのように、統合失調症入院患者への向精神病薬投与量も日本が著しく高く、自閉症と診断される人もうなぎ上りに増えている。これは、日本人には特に重度の精神障害者が多いというわけではなく、診断と入院及び薬の投与方針の問題だろう)

  

(図の説明:左のグラフのように、ADHDと診断される子どももどんどん増え、子どもへの使用に関する安全性は疑問であるにもかかわらず、メチルフェニードの子どもへの処方が著しく増えている。これに加えて睡眠薬の処方も日本で著しく高いため、精神科の診断と睡眠薬を含む薬剤使用の妥当性について再検討する必要がある)

(1)精神障害者・知的障害者について
1)精神障害者を殺人犯になり易い人と理解するのは間違っていること
 植松容疑者が措置入院からの退院後に相模原市障害者施設「津久井やまゆり園」の入所者19人を殺害した事件を受けて、*1-1、*1-2のように、厚労省は、責任能力の有無を調べていると報道されている。これは、刑法第39条に、「①心神喪失者の行為は、罰しない」「②心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」という古い規定があり、心神喪失者・心神耗弱者の定義が不明確であるにもかかわらず、精神障害者や精神障害の病歴のある人がこれにあたると非科学的に決めつけているからで、これは大多数の精神障害者に対する人権侵害である。

 しかし、植松容疑者の障害者殺害事件は精神障害が理由ではないため、精神障害者に対する監視強化等は福祉目的ではなく意味のない防犯目的の差別である。私は、①精神障害者が引っ越せば、その自治体に支援計画と呼ぶ監視計画を引き継ぐ(精神障害者と殺人犯を結び付けて監視する人権侵害) ②自治体・警察・病院が参加する協議会を設置して病気の個人情報を共有する(精神障害者と犯罪者とを結び付けて個人情報を開示する人権侵害) ③障害者差別解消法の理念を啓発(共生社会の推進) ④障害者の地域生活を支援(共生社会の推進)のうち、①②は精神障害者への言われなき差別を助長して、③④をやりにくくするものだと考える。

 そして、*1-4のように、東京都港区で厚労省のキャリア官僚女性が弟に包丁で刺されて死亡した事件も、弟は精神疾患での通院歴があり、警視庁が男の責任能力の有無を調べていると報道されているが、これは刑法第39条の規定を根拠としており、このような報道が続けば「精神障害者=殺人犯予備軍」という先入観ができる。

 さらに、*1-5では、埼玉県熊谷市で小学生2人を含む6人が殺害された事件で、強盗殺人などの罪で起訴されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告について弁護側が請求して実施された精神鑑定では、さいたま地検の鑑定と異なり、「精神疾患がある」という診断結果が出たそうだが、弁護側も罪を軽減するために刑法第39条をよく使い、冤罪の際にも刑法第39条を使ってうやむやにすることがあるのは、「殺人犯=精神疾患」というイメージを一般の人につけるという意味で、精神障害者に対する差別を醸成する人権侵害である。

 そのため、今回の厚労省の精神障害者と殺人犯を関連付けて精神障害者を監視するという再発防止策は、精神障害者に対する差別や人権侵害を無くすために、これまで培われてきた精神科の歴史に逆行する程度の低いものである。

2)知的障害者施設「津久井やまゆり園」について
 神奈川県の「津久井やまゆり園」を再生する案が、*1-3のように持ち上がり、入所者の意思を尊重したものだとも評価されたそうだが、知的障害者である入所者も、自宅から離れた交通の便の悪い場所で滅多に家族にも会えず積極的に集団生活をしたかったわけではないだろう。

 そのため、公聴会で、「入所者の意向を聞くべきだ」「時代錯誤だ」との批判が続出し、大規模施設の建て替え案が撤回されたのはよかった。私は、セキュリティーが悪く、当直の職員が身をもって防衛することもなく、植松被告が殺人するに任せておいた他の職員の意識にも疑問を感じている。

3)「殺人犯=精神障害者」というイメージの社会では、精神障害者の雇用が進まないこと
 *1-6のように、佐賀労働局と佐賀県は、佐賀県の経営者協会など経済4団体に、障害者の積極的な雇用を要請したそうだが、ここで言う障害者に精神障害者は入っているのだろうか?

 「殺人犯=精神障害者」というイメージがついた社会では、トライアル雇用など労働条件の悪い雇用でも難しいと思われるが、それが政府とメディアがまき散らした精神障害者差別の大きな問題点なのである。

(2)“発達障害”について
 最近、*2-1のように、“発達障害”として、「落ち着きがない注意欠陥・多動性障害(ADHD)」「読み書きや計算など特定分野が苦手な学習障害(LD)」「対人関係をうまく築けず、限られた対象にこだわる傾向(アスペルガー症候群)」など、何でも異常だと言うことが多いが、言語や知能に遅れがなければ周囲の“常識的”な大人が理解できなくても全く問題ない。

 何故なら、将来、周囲の“常識的”な大人には想像もつかないことを行って“常識”を変える人物かも知れず、別の面でとびぬけた能力を持っている人かも知れないからである。

 にもかかわらず、*2-2のように、いちいち発達障害として病気扱いし、*2-3のように、全国学力テストの結果として文科省に報告さえせず、一人前と見做さないでいると、本当にその子の将来性をつぶしてしまう。そのため、何でも異常だとしてしまう最近の子どもへの扱いは問題であり、人権侵害である。

(3)ハンセン病患者に対する差別
 *3のように、国がハンセン病患者に対する不要な隔離政策を行い、司法が加担して「密室の法廷」で死刑判決を下し、ハンセン病患者の人権が無視された差別助長の歴史に対し、国は、元患者らを差別や偏見の中に置き続けて精神的苦痛を与えたり、人生を台無しにしたりした責任をとって損害賠償すべきだ。

 しかし、現在でも、国は「精神障害者=殺人犯、犯罪者予備軍」というレッテルを張って監視することにより、病気の人に対する人権侵害の過ちを繰り返そうとしているわけである。

<精神障害者と殺人犯の関連付け>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJD924FDJD9UBQU001.html (朝日新聞 2016年12月9日) 措置入院中から 退院後の支援計画
 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害された事件を受けて、厚生労働省は8日、再発防止策の報告書を公表した。精神保健福祉法に基づく措置入院中から都道府県や政令指定市が支援計画を作成。植松聖(さとし)容疑者(26)の退院後に事件が発生したことから、自治体や医療機関が連携して退院後も患者を孤立させない仕組みをつくることが柱だ。
■厚労省 相模原事件 再発防止策
 有識者9人による厚労省の検証・再発防止策検討チーム(座長=山本輝之成城大教授)がまとめた。厚労省は報告書を踏まえ、精神保健福祉法改正案を来年の通常国会に提出する方針。報告書では、措置入院を決める都道府県や政令指定市に対し、すべての患者について入院中から退院後の支援計画づくりを求めた。計画に盛り込む支援内容は入院先の病院や居住する自治体の職員による「調整会議」で検討。会議には患者本人や家族の参加も促す。現行法では退院後の支援体制が定まっていないため、退院後もチームで支援を続けられるようにする狙いだ。患者が転居した場合には支援計画を自治体間で引き継ぐことも明記した。
■「監視強化」の懸念も
 相模原市の事件を受けた厚生労働省の再発防止策は、措置入院患者の退院後の継続支援に重点を置いた。ただ、障害者の監視が強まることへの懸念は残った。東京都内の診療所で働く精神保健福祉士の男性(50)は、自治体や医療機関などによるチームで連携することで、継続支援をしやすくなると評価している。治療を拒否する患者は多く、措置入院と通院中断を繰り返し、通院を続けるようになって症状が安定する人もいるためだという。「治療継続の重要性を患者本人が自覚できる働きかけが必要で、ネットワークが大切になる」。一方、自身も精神障害者という「全国『精神病』者集団」運営委員の桐原尚之さんは、現行の措置入院について「『社会防衛的』に運用されることがあり、多くの精神障害者のトラウマになっている」と指摘。事件の再発防止を理由にした退院後の継続支援であることから、「福祉目的ではなく防犯目的であることは自明だ。精神障害者を監視する方向に秩序化されるのではないか」と心配する。こうした懸念に対し、報告書をまとめた厚労省の検証・再発防止策検討チームの山本輝之座長(成城大教授)は記者会見で「あくまでも退院後、孤立せず安心して暮らせる支援体制を築くもので、精神障害者の利益にもなる」と強調した。退院後にいつまで支援は続くのか――。報告書は「国が一定の目安を示す」として方向性を示さなかった。患者の症状によって期間が異なるうえ、長くなれば自治体の負担が増えるため調整がつかなかった。厚労省が別途議論を進め、年度内に結論を出す予定だ。事件における警察の対応については「法令に沿ったもの」と触れるにとどめ、再発防止につながる検証結果などは明らかにされなかった。
■再発防止策のポイント
【入院中の対応】
・国が心理検査や薬物使用に対応するガイドラインを作成し、それに基づいて治療
・都道府県や政令指定市が病院職員らを交えた「調整会議」などの意見を参考に退院後の支援計画を作成
【退院後の対応】
・保健所を持つ自治体が支援計画に基づいて支援
・患者が引っ越せば、その自治体に支援計画を引き継ぐ
・自治体や警察、病院が参加する協議会を設置し、情報を共有
【共生社会の推進】
・障害者差別解消法の理念を啓発
・障害者の地域生活を支援

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJCF6286JCFUTFL002.html
(朝日新聞 2016年11月14日) 措置入院の患者情報、自治体間で共有へ 厚労省の原案
 相模原市の障害者施設で入所者19人が刺殺された事件で、厚生労働省は措置入院をした患者の個人情報を共有できるような制度改正を盛り込んだ再発防止策の原案をまとめた。自治体間の連携強化が狙いで、14日の検証・再発防止策検討チーム(座長=山本輝之成城大教授)で提示。11月中にも最終報告書を公表する。植松聖(さとし)容疑者(26)は退院後、「東京都八王子市で家族と同居する」としていたが、相模原市と八王子市は連携できていなかった。個人情報は原則、自治体間で共有できない。そこで措置入院について定めた精神保健福祉法を改正し、特例的に患者の精神症状や住所地などの個人情報を共有できるようにする。原案には、措置入院を決めた都道府県や政令指定市が、患者の入院中から家族らの情報も踏まえて中長期的な支援計画をつくる方針も盛り込んだ。この計画をもとに、患者が居住する自治体が退院後の生活や治療の相談にのる。病院は相談員を選び、患者の地域での生活に目を配る。また、警察や病院、自治体が地域ごとに集まる協議会を設け、措置入院を決める際の仕組みを強化。措置入院や退院を判断する精神保健指定医の研修には、薬物に関する課程を加える。原案に対して検討チームでは「(措置入院患者は)年間7千人ほどいるので、自治体や病院の負担が大きい」などの意見が出た。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201709/CK2017090602000178.html(東京新聞2017年9月6日)【神奈川】やまゆり園再生案 入所者の意思尊重 評価
 昨年七月に殺傷事件があった知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)の再生基本構想案の説明会が五日、横浜市神奈川区で開かれ、全七回の説明会が終了した。この間、入所者の意思を尊重して居住先を決める仕組みを評価する意見が目立った一方、建て替え後も指定管理者が運営することに懸念を示す声もあった。神奈川区の説明会には、障害者団体の関係者ら約六十人が出席。「時間をかけて入所者の意思確認をする考えが盛り込まれて良かった」などと、構想案を前向きに捉える人が多かった。県が一月、定員百五十人規模での現地建て替えを発表した際の公聴会では、「入所者の意向を聞くべきだ」「時代錯誤だ」と批判が続出。県は大規模施設の建て替え案を撤回するとともに、入所者の意思を二年がかりで確認する仕組みを構想案の柱の一つにした。ただ、家族からは不安も漏2016年12月8日、措置入院患者の退院後の継続支援(支援と呼ぶ監視)という再発防止策を公表した。

*1-4:https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20170813-00000013-ann-soci (Yahoo 2017/8/13) 死因は出血性ショック 厚労省女性キャリア官僚刺殺
 東京・港区で厚生労働省のキャリア官僚の女性が弟に包丁で刺されて死亡した事件で、女性の死因が腹を刺されたことによる「出血性ショック」だったことが新たに分かりました。52歳の男は12日午前5時半ごろ、自宅マンションで、姉の厚労省関東信越厚生局長・北島智子さん(56)の腹を包丁で刺し、殺害した疑いで13日朝、送検されました。その後の警視庁への取材で、北島さんは腹を複数回刺されたことによる「出血性ショック」で死亡していたことが新たに分かりました。男は「私がやりました」と容疑を認めています。男には精神疾患での通院歴があり、警視庁は、男の責任能力の有無を含めて当時の状況を調べています。北島さんは男と同居する母親の介助のため、事件前夜から泊まりにきていたということです。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/462726 (佐賀新聞 2017年9月12日) ペルー人被告「精神疾患」の診断、埼玉・熊谷6人殺害事件で再鑑定
 埼玉県熊谷市で2015年9月14~16日、小学生2人を含む6人が殺害された事件で、強盗殺人などの罪で起訴されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(32)について弁護側が請求し実施された精神鑑定で、「精神疾患がある」との診断結果が出たことが12日、関係者への取材で分かった。さいたま地検が起訴前に実施した鑑定では「精神疾患なし」と診断されていた。裁判はさいたま地裁で年度内にも始まる見通し。異なる鑑定結果が出たことで、刑事責任能力が主な争点になる。事件は間もなく発生から2年となる。ナカダ被告は逮捕後の県警の調べに不可解な説明もみられた。

*1-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/460108 (佐賀新聞 2017年9月2日) 障害者の積極雇用を 労働局と県が要請
■経済4団体に
 9月の障害者雇用支援月間に合わせて、佐賀労働局と佐賀県は1日、県経営者協会など経済4団体に、障害者の積極的な雇用を要請した。他の要請先は県商工会議所連合会、県中小企業団体中央会、県商工会連合会。松森靖佐賀労働局長は県経営者協会で、前年度の県内のハローワークにおける障害者の就職件数が8年連続で増加した点を踏まえつつ、「精神障害者雇用が全体に占める割合が7・3%にとどまっている。積極的な採用を」と促した。協会側は「トライアル雇用などの多様な手段を使いながら、障害者雇用の機運を高めていきたい」と応じた。県内の障害者雇用率は2・43%で全国5位(昨年6月現在)。法定雇用率達成企業の割合は73・1%で6年連続で全国トップを維持している。

<発達障害>
*2-1:http://www.asahi.com/topics/word/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3.html
(朝日新聞 2013年2月27日) 発達障害
 生まれながらの脳の機能障害が原因と考えられ、犯罪など反社会的な行動に直接結びつくことはないとされる。落ち着きがない注意欠陥・多動性障害(ADHD)、読み書きや計算など特定分野が苦手な学習障害(LD)などがある。アスペルガー症候群は対人関係をうまく築けず、限られた対象にこだわる傾向がみられるが、言語や知能に遅れがなく、周囲が障害を見過ごすケースも少なくない。文部科学省の調査(2012年12月)は、小中学校の通常学級の子の6.5%に発達障害の可能性があるとしている。

*2-2:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/article/302604 (西日本新聞 2017年1月20日) 発達障害、進学先と連携を 総務省が文科、厚労両省に勧告
 総務省行政評価局は20日、自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害を抱える児童・生徒に対する個人別の支援計画を、進学時に引き継ぐ仕組みが不十分だとして、文部科学省と厚生労働省に改善を勧告した。全国の計42施設を抽出した調査で、中学は卒業生の15%、高校は6%しか進学先へ計画を引き継いでいなかった。小学校は79%、保育所は35%、幼稚園は47%だった。計画の作成対象が施設ごとに異なる実態も判明。文科省の通知などは「必要に応じて」計画をつくるよう学校側に求めているが、医師の診断書を必要としたり、特別支援学級の児童に絞ったりというケースもあった。

*2-3:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-570430.html (琉球新報 2017年8月30日) <“学力向上”の現場>障がいある子、全国学力テストを問う、全国学力・学習状況調査、全国学テ
◆点に入れないで/「手の掛かる子」対象外に
 「標準的な学力が身に付いていないなら、入れなくていい」。沖縄県内南部のある小学校で昨年、発達障がいがある生徒が受けた全国学力テストの結果を、文科省に報告しなくていいと管理職が断言した。担任らは「子どもたちの実力を把握するための調査なのだから出すべきだ」と主張したが、通らなかったという。文部科学省によると全国学テの対象は該当学年の学習内容を履修できている全児童・生徒。知的障がいの診断が付くと対象外にされるが「学習内容を履修できているか」の判断は学校に任される。診断が付いていないグレーゾーンや、発達障がいがある児童・生徒を一律に対象から外したり、点数によって選択したりすることが、少なくない県内学校で行われている。情緒障がいやADHD、学習障害などがある児童・生徒が、通常学級に在籍しながら必要に応じて別教室で指導を受ける「通級指導教室」。県内の設置数は右肩上がりで、2017年には過去最多を記録した。通う子どもたちに知的障がいはないが、一斉授業では力を伸ばしにくく、教科などによって得手不得手が出る場合もある。「通級の子どもは、学テを受けても結果は文科省に出さない」と多くの教員が口をそろえる。県は「数人の調査結果を抜いても学校の平均正答率は大きく上下しない。点数が悪いからと、結果を報告しないことは考えにくい」と否定するが、現場教員は「平均点が取れるなら入れて、取れないなら入れなくていいと言われることもある」と明かす。学テの目的は「義務教育の機会均等と水準の維持向上」だ。だがわずかな点差を競い合う中で、全ての子どもの学習を保障するはずの「学力向上」の現場から、平均から外れる子どもたちが排除されている。「誰かの指示というより慣例」で通級学級の児童の結果を除外すると説明していた若手の小学校教諭は、記者と話をするうち「学力向上の対象に通級の児童が入る認識がなかった。恐ろしいことをしていたのかもしれない」と表情を変えた。

<ハンセン病患者差別>
*3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/354631/ (西日本新聞 2017年8月30日 ) ハンセン病差別 司法が加担した罪を問う
 「密室の法廷」で下された死刑判決は妥当だったのか、重大な疑義があるのに司法が検証を拒むのは不当-として、国家賠償を求める訴訟が熊本地裁に起こされた。ハンセン病患者の誤った隔離政策に司法が加担し、差別を助長した歴史を踏まえ、国はこの訴えを重く受け止めるべきだ。訴えたのは熊本県でハンセン病患者とされた男性が殺人罪などで死刑判決を受け執行された「菊池事件」を巡り、裁判のやり直しを求めてきた支援者の元患者らだ。隔離施設内に設けられた「特別法廷」で裁かれた男性について、元患者らは差別的な扱いを受けた冤罪(えんざい)の疑いが強いとして、検察自らが刑事訴訟法に基づき「公益の代表者」として再審を請求すべきだと主張してきた。しかし、最高検は「再審の事由がない」とこれを拒み、元患者らは差別や偏見の被害回復を求める権利が侵害され、精神的苦痛を被ったと訴えている。再審の道が開かれない中で、国賠訴訟を通じて事件の真相に迫るのが狙いだ。熊本県の元役場職員を殺害するなどした罪に問われた男性は一貫して無罪を主張しながらも1962年、3度目の再審請求が棄却された翌日に死刑が執行された。最大の問題は、人権尊重や裁判の公開をうたった憲法に反した疑いが強い特別法廷である。最高裁が1948~72年に開廷を認めた事例は全国で95件に上る。最高検は今年3月、隔離法廷に関与したこと自体は認め、最高裁や日弁連に続き謝罪した。菊池事件は特別法廷で下された唯一の死刑事案とされる。元患者らの弁護団は冤罪の新証拠などを示すとともに、特別法廷の違憲性を明らかにしていく方針という。ハンセン病問題は、国の隔離政策を違憲とした2001年の熊本地裁判決(確定)後、元患者の救済策が進む一方、今も差別と偏見に苦しむ家族が国を集団提訴するなど、全面解決にはほど遠い。菊池事件が問うのは人権侵害に対する司法全体としての姿勢だ。真相を闇に葬ってはならない。

<共謀罪と個人情報運用も人権侵害の方向>
PS(2017年9月21日追加):*4-1のように、犯罪を計画段階で逮捕でき、そのためには監視社会になる「共謀罪」法案も国民の反対を無視して可決された。これは、安倍首相が人権侵害を好む人なのでは全くなく、官僚機構やそれに便乗して民主主義(国民主権)の理念を護るためではなく他の目的のために働く国会議員やメディアに原因がある。そのため、誰が首相になっても余程の気概と力がなければ「共謀罪」の廃止はできないと思われる。
 また、*4-2のように、総務省は、①個人が健康状態や購買履歴等の情報を一括で企業に預けて報酬やポイントを得る仕組みを作り ②データを預かる事業者は個人情報を匿名化した上で情報が欲しい企業に提供できるようにする とのことだが、民間企業の利用によって歯止めがなくなる上、個人から同意を取る形で次第に個人の選択の余地もなくなるため、この規制緩和は個人情報の過度な開示や利用による人権侵害に繋がる。
 つまり、近年は、民主主義や人権尊重の歴史に逆行する改革が次々と行われているのだ。

*4-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017091602000145.html (東京新聞 2017年9月16日) 【社会】「共謀罪」廃止へ集結 「監視を恐れず」「改憲つながる恐れ」
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の廃止を目指す市民団体や法律家団体などでつくる「共謀罪廃止のための連絡会」は十五日、東京都千代田区の日比谷野外音楽堂で「共謀罪は廃止できる!9・15大集会」を開いた。約三千人(主催者発表)が参加し、「共謀罪は絶対廃止」などと声を上げた。連絡会は今月七日、「SEALDs(シールズ)」の元メンバーらがつくった「未来のための公共」や日本消費者連盟など十四団体が結成した。アムネスティ・インターナショナル日本の山口薫さんは「今、市民活動は危機にさらされている。法は施行されたが廃止できる。監視を恐れず、萎縮せず活動したい」と話した。「共謀罪対策弁護団」の三澤麻衣子事務局長は多くの弁護士で、摘発された場合の対策や予防を考えるとした。世田谷区の会社員横山淳さん(46)は「共謀罪の強行採決はひどかった。計画段階で捕まり、監視社会が進む。改憲の流れにもつなげられるのでは」と話した。民進党など野党四党の国会議員らは、二十八日からの臨時国会への廃止法案の提出を明らかにした。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170828&ng=DGKKASFS25H54_X20C17A8MM8000 (日経新聞 2017.8.27) 個人情報 運用を一任、総務省、利用増へ事業者認定 データ利用先を自由に
 総務省は個人が健康状態や購買履歴などの情報を一括で企業に預け、ビジネスに役立ててもらって報酬を得る仕組みを作る。2020年をめどに、情報を預かって運用する事業者への認定制度を設ける。個人にとってはデータを預けて、その先の利用を運用者に任せる「簡易型」の仕組みだ。データの運用先まで個人が選ぶ「厳格型」と合わせて、政府は個人データをビジネスに利用する制度を整える。ビジネスに個人データを活用する仕組みは、実際に情報を使う企業まで個人が指定する「情報銀行(総合・経済面きょうのことば)」も政府内で検討が進んでいる。総務省が取り組むのは、運用者が一定のルールのもとで個人のデータを自由に利用できる仕組み。個人情報のビジネス利用は2本柱で設計が進む。総務省は新たな仕組みを「情報信託」と呼んで整理する。データを扱う事業者はIT(情報技術)系の企業やシンクタンクを想定する。個人はあらかじめ病院や銀行、旅行会社などのデータベースを事業者に指定し、病歴や資産情報、渡航履歴などの情報に運用担当者がアクセスできるようにする。データの開示範囲は個人が設定する。データを預かる事業者は個人情報を匿名化したうえで、情報を欲しい企業に提供する。医療や観光、金融といった企業のニーズを見込む。データをもらう企業は対価を払い、一部を特定のサービスに使えるポイントなどの形で個人に還元する。個人情報を適切に管理するため、データを運用する事業者に対し、民間が設立する団体による認定制度を導入する方針だ。提供元の個人との間ではデータを漏洩しない、提供先の企業との間では個人データを不正に使わない、などの約款を交わすことを義務付ける。18年度予算の概算要求に実験費用を盛り込む。政府はIT総合戦略本部を中心に、個人が預ける情報を管理・運用する仕組みとして「情報銀行」を検討している。ただ、「どの企業にどのデータを提供する」といった具合にデータの提供先まで個人が指定する方法が議論されている。銀行方式は最終的にデータを使う企業が分かる。個人に詳細なデータを出してもらうかわりに、大きなポイントを出すといった個別の設計をしやすい。総務省の方式はデータ運用の自由がある一方、個人がデータ提供をためらう可能性はある。政府は個人の使い勝手に応じて2案を設け、流通の仕組み作りを進める。日本は海外と比べて個人データの外部提供への抵抗感が強いとの調査もある。信託方式はデータ管理のルール作りとともに、認定制度の信頼を高めることが課題になる。

<子どもへの人権侵害>
PS(2017年9月24日追加):*5-1のように、1000人あたりの向精神薬の処方件数を算出し、年齢層ごとの処方件数の経年変化を統計解析で比較したところ、2002年~2004年と2008年~2010年の比較で、13歳~18歳のADHD治療薬使用が2.49倍、統合失調症などに使う抗精神病薬が1.43倍、抗うつ薬が1.31倍と増加し、小学生でもADHD治療薬が1.84倍、抗精神病薬が1.58倍となっており、病気も効果も安全性も確立していないのに子どもへの適応外処方や多剤併用が浮上しているのだ。また、*5-2のように、以前はADHDという名前の病気はなく、子どもに元気があるのは当たり前で、そういう人が大人になってもやはり元気に仕事をしているため、「子どもに落ち着きがないから、ADHDが疑われる」などとして、すぐ子どもを異常扱いして薬漬けにするのは疑問が多い。

*5-1:https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20150120-OYTEW54767/ (読売新聞 2015年1月20日) 「子供に向精神薬処方増」のなぜ?
 1月13日の朝刊社会面で、「子供に向精神薬処方増」のニュースを書いた。臨床現場では以前から指摘されていた傾向が、初の全国調査で確かめられたのだ。いささか硬い内容になるが、子どもへの投薬を考える上で重要なデータが多く含まれているので、今回は調査結果を詳しく紹介してみたい。調査を行ったのは、医療経済研究機構研究員の奥村泰之さん、神奈川県立こども医療センター児童思春期精神科医師の藤田純一さん、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部室長の松本俊彦さん。2002年~2010年の外来患者(18歳以下)の診療報酬明細書と調剤報酬明細書の一部、計23万3399件をもとに、1000人あたりの向精神薬の処方件数などを算出し、統計解析で年齢層ごとの処方件数の経年変化などを比較した。2002年~2004年と2008年~2010年を比較すると、13歳~18歳では、注意欠如・多動症に使うADHD治療薬が2・49倍、統合失調症などに使う抗精神病薬が1・43倍、抗うつ薬が1・31倍と増加した。2008年~2010年の同年代の人口1000人あたりの処方件数は、抗不安薬・睡眠薬が4・8件、抗精神病薬が3・9件、抗うつ薬が3件、気分安定薬が3件だった。小学生(6歳~12歳)への向精神薬処方も増え、2002年~2004年と2008年~2010年の比較では、ADHD治療薬が1・84倍、抗精神病薬が1・58倍となった。依存性のあるベンゾジアゼピン系薬剤を中心とする抗不安薬・睡眠薬は、この年代では0・67倍と減少した。同年代の人口1000人あたりの処方件数は、気分安定薬が3・6件、ADHD治療薬が1・5件、抗精神病薬が1・2件、抗うつ薬が1・2件だった。件数は少ないが、0歳から5歳の幼児に対しても、抗精神病薬などの処方が確認された。処方件数増加の背景について、調査報告書は、受診者数の増加(厚生労働省の患者調査では、未成年の精神疾患受診者数は2002年に9万5000人、2008年は14万8000人)や、思春期外来の増加(2001年は523施設、2009年は1746施設)、ADHD治療薬など新薬の承認、などの影響を挙げている。
●適応外処方と多剤併用の問題も浮上
 果たして診断や投薬は適切に行われているのだろうか。過剰診断や誤診、不適切投薬の症例はないのか。診療報酬明細書などを基にした今回の統計調査では、個々の状況が分からず、処方が適正か否かの判断はできない。だが、疑問点はいくつも浮かび上がる。特に、処方件数が増えている向精神薬の多くが、子どもに対しては「適応外」であることは認識しておく必要がある。現在使われているADHD治療薬は、子どもに対する臨床試験を行って適応(6歳以上)を得ているが、抗精神病薬や抗うつ薬、抗不安薬・睡眠薬などは、子どもを対象とした大規模な臨床試験が日本では行われておらず、有効性や安全性の確認が十分ではない。このような向精神薬の添付文書(薬の説明書。インターネットで簡単に読める)には、子ども(小児)への投与について、「安全性は確立していない」「使用経験がない」などの記述があるので、関心のある方は確認していただきたい。子どもへの薬の適応外処方は、向精神薬以外にも行われることが多く、すぐに「悪」と決めつけることはできない。本物の薬か偽の薬を、ランダムにグループ分けした子どもたちに飲ませ、効果を比較する臨床試験への抵抗感が日本では根強く、実施しにくい事情もある。大切な子どもたちを、薬の「実験」に巻き込みたくないのだ。しかし一方で、成長期の脳に作用する向精神薬が、「安全性は確立していない」「使用経験がない」とされながらも、実際には使用が拡大している。子どもたちを守りたいがゆえに、子どもたちを未知のリスクにさらす。そんな矛盾した状況が生じているのだ。子どもに対する臨床試験が行われなければ、副作用の種類や発生頻度は分からず、市販後の副作用調査も徹底されないなど、被害を組織的に防ぐ手立てが乏しくなってしまう。さらに、深刻な問題が起こった時の救済策も、適応外処方の場合は不十分になりかねず、善意で処方した医師が責任を問われる可能性もある。このような状況で、誰が得をするというのだろうか。この調査でもう一つ注目したいのが、一人の子どもに異なる向精神薬を複数処方する例が多いという指摘だ。向精神薬が、他の種類の向精神薬と併用される割合は、気分安定薬で93%、抗うつ薬で77%、抗不安薬・睡眠薬で62%、抗精神病薬で61%に上った。言い方を変えると、例えば抗精神病薬を処方される子どもの61%は、抗不安薬・睡眠薬や抗うつ薬など、他の種類の向精神薬も併用処方されている、ということになる。調査報告書は「この数値は欧米と比べて著しく高い」と指摘し、欧米での未成年への向精神薬併用処方割合について、米国19%、オランダ9%、ドイツ6%という数字を示した。医療提供体制の違いや調査対象の等質性などの点から、この結果だけで「安易に『わが国では、向精神薬の不適切な多剤併用処方の割合が異様に高い』と結論づけるのには慎重であるべき」と注意を求めたが、「今後、わが国の多剤併用処方の割合が欧米よりも高くなる理由について、検討していく必要がある」とした。当然の指摘だろう。日本では以前から、成人患者に対して抗精神病薬を何種類も使う多剤大量処方が続き、国際的にも問題視されてきた。ベンゾジアゼピン系薬剤を漫然と長期間処方され、常用量依存に苦しむ人も多い。カウンセリング技術の未熟さや診療時間の短さ、マンパワーの少なさなど様々な事情から、薬に過度に頼る医師が多いのだ。そして更に、過剰な処方が子どもたちにも及んでいるとすれば、早急に歯止めをかけなければならない。日本の子どもへの多剤併用処方や適応外処方は、どのような根拠で、どのような必要に迫られて行われているのか。処方医や患者、家族を対象とした詳細な実態調査が求められている。

*5-2:http://healthpress.jp/2015/07/adhd-1.html (Health Press 2015.7.8) 覚せい剤に似た性質を持つADHD薬。子どもへの処方は本当に害はないのか?
 近年、ADHD(注意欠陥・多動性障害)など発達障害と診断される子どもが増えている。ADHDの特徴は、集中力や注意力に欠けたり、衝動性や多動性が見られたりすることだ。詳しい原因はわかっていないが、脳の機能障害ではないかといわれている。しかし、以前はADHDという名前の病気はなく、"元気があること"はその子どもの個性だと思われていた。そして、そうした子どもたちも、たいていは成長するにしたがって落ち着いて生活できるようになっていた。今は病気というレッテルを貼られ、薬漬けにされる時代だ。メディアでこの病気が取り上げられるようになると、「この子も落ち着きがないのでADHDではないか」と、親や教師など周囲の大人が心配し、子どもを受診させるケースが多くなった。また、少しでも兆候があるとADHDとみなし、脳の中枢神経に作用する強い向精神薬を処方する医師も増えている。
●向精神薬を服用していた米銃撃事件犯の少年たち
 この向精神薬の代表的な薬のひとつに、リタリン(塩酸メチルフェニデートの一般製剤)がある。すでに、スウェーデンでは1960年代後半に同剤の発売が禁止されており、1970年代にはヘロインと同等の依存性があると指摘されていた。それにもかかわらず、アメリカではADHDの特効薬として患者への投与を継続。また、子どもへの投与だけではなく、大人の間でも「活動的になり仕事や家事がはかどる」という理由で、急激に広まっていった。リタリン生産量は1990~1999年に全世界で700%という高い伸びを示し、その9割がアメリカで使用されていた。だがそうしたなか、少年たちによる銃乱射事件が学校内で多発する。彼らは学習機能障害と診断され、リタリンなどの向精神薬を投薬されていた。コロラド州ではその後、厳密な検査を行わず安易に診断を下されたADHDの子どもに対して、リタリンを強制投与することを禁止した。日本において、ADHDはリタリンの適応外であったものの、うつ病の患者に処方されてきた。だが、2007年、ある男性が複数の病院を受診して安易にリタリンを処方され、同剤の依存に陥り自殺するという事件が起こる。このことからうつ病も適応外となり、ナルコレプシーのみの適応となった。2008年からは登録された専門医にしか処方できなくなっている。現在、日本でADHDと診断された子どもに処方されるのは、コンサータ(メチルフェニデート徐放剤*)という薬だ。しかし、このコンサータには覚せい剤に似た性質があるため、承認にあたって"コンサータ錠適正流通管理委員会"を設置し、処方できる医師や調剤できる薬局を登録制にするという厳しい規制が設けられた。また、薬局はリストにない場合は拒否しなければならないなど、流通・処方状態の管理がしっかり行われている。このように、子どものADHDに処方される薬は、厳重な規制を必要とする危険な薬だ。これを子どもに与え続けて、果たして悪影響がないといいきれるのだろうか。ADHDが疑われるからといって子どもを安易に薬漬けにしてしまう医療には、疑問を持たざるを得ない。何らかの弊害が起こらないよう、親をはじめとする周囲の大人たちが、子どもに投与される薬には、どのようなリスクがあるのかを十分理解するべきである。
○徐放剤:成分の放出を遅くし、服用回数を減らせるように開発された薬。血中濃度を長時間一定にすることで、副作用を回避できる。

<精神障害者差別>
PS(2017年10月10日追加):*6-1のように、「①ラスベガスで銃乱射事件があった」「②容疑者の動機は謎に包まれている」「③米ABCは事件の数カ月前から容疑者の精神状態が悪化していたと報じた」と朝日新聞が報道し、日本の多くのメディアは、「原因は米国が銃社会であることだ」としているが、①は事実であるとしても、②の動機は、容疑者の弟が「最近、金額の大きなカケをしていた」と証言していることから、私は「カケで破産するほどの大損をしてラスベガスに恨みを持った」のが動機ではないかと考える。しかし、この容疑者の弟の証言は相手にされず、③のように「容疑者は精神状態が悪化していた」ということになっており、この「精神状態の悪化」の定義は全く曖昧で、それが銃乱射を行う動機になるとは思えない。にもかかわらず、こういう報道が堂々となされることは、国連の「障害者権利条約」や日本の「障害者基本法」「障害者差別解消法」などに反しており、精神障害者への差別を助長して社会参加をやりにくくするとともに、その尊厳を無視する見識の低いものである。
 そのような中、*6-2のように、「農福連携」して農業を障害者雇用の場とする取り組みが始まっている。私は、衆議院議員時代(2005~2009年)に、伊万里市の障害者福祉施設で精神障害者が有田焼の絵付けをしているのを視察したことがあるが、この仕事は自閉症でも問題なく、集中する分だけ出来は上々で、高級品を作らせればそれにも対応できそうに思われた。

*6-1:http://digital.asahi.com/articles/ASKB55F2ZKB5UHBI018.html (朝日新聞 2017年10月6日) ラスベガス銃乱射容疑者、精神状態悪化か 米報道
 米史上最悪の銃乱射事件を起こしたスティーブン・パドック容疑者(64)の動機は、いぜん謎に包まれている。解明のかぎを握ると思われた交際相手の女性(62)は帰国後、「全く知らない」と困惑した。容疑者の精神状態が悪化していたとの報道も出ているが、なおはっきりしない。「こんな事件を計画していたとは全く考えられなかった」。女性が4日、事件後初めて弁護士を通じて出した声明には、突然捜査対象となった困惑とともに、容疑者への思いがにじんだ。「親切で思いやりのある、静かな人だった。私は彼を愛していて、将来をともにすることを望んでいた」。容疑者は、事件前に女性にフィリピンに帰るための航空券を買い与えていた。女性は9月15日に日本を経由してマニラに到着。その後、容疑者から「フィリピンの家族のために家を買うお金」として10万ドルの入金があった。米メディアによると、女性が容疑者と知り合ったのは、地元のカジノだった。女性は接客担当をしており、度々訪れる容疑者と親しくなり、交際を始めた。ネバダ州の地元紙リノ・ガゼット・ジャーナルによると、女性は容疑者と知り合った当時、別の男性と結婚していたという。2013年、女性は夫と暮らしていた家を出て、パドック容疑者が所有していた同州リノのアパートに引っ越した。それから2年後、女性は夫と離婚した。女性が元夫と暮らしていた当時の隣人は「家でパーティーをしたり、近所の子どもたちを家に泊めてあげたりしていた。近隣の皆に好かれ、とてもすてきな女性だった。家族に会いによくフィリピンへ往復していた」と話し、事件に衝撃を受けていたという。しかし、容疑者と暮らし始めてから、女性の近隣の人は全く違った印象を語る。「2人とも見た覚えがない」。事件直前まで2人が暮らしていた家の隣人はそう話す。他の近隣住民も、つきあいのあった人はほとんどいなかった。オーストラリアに住む女性の姉妹は米NBCの取材に「彼女は何も知らぬままフィリピンに行かされた。(容疑者が)計画を邪魔されたくないと思ったのだろう」と涙ながらに訴えた。一方、米ABCは4日、事件関係者の話として、容疑者は事件の数カ月前から精神状態が悪化していたと報じた。体重が減り、身なりも汚くなり、女性の元夫に対する妄想にとりつかれていたという。確たる動機が見えぬまま、捜査関係者のいらだちは高まっている。ラスベガス警察のロンバルド保安官は4日の会見で「1人で全てやったとは信じがたい」と話し、協力者がいた可能性も視野に入れていることを示唆した。同保安官は、容疑者が9月下旬に高層コンドミニアムの一室を予約していたことも明らかにした。その時期、今回の事件と同じように、ここから見下ろせる場所で別の音楽祭が開かれていた。警察は「理由は不明」としているが、容疑者が当初、この音楽祭を狙おうとした可能性もある。ラスベガス警察は、これまで事件での死者を59人としていたが、自殺した容疑者を除く58人に訂正。けが人も489人とした。

*6-2:http://special.nikkeibp.co.jp/NBO/businessfarm/bizseed/05/ (日経BP 2017.2.28) キーワードは“ノウフク”、浸透し始めた「農福連携」、「働き手」が欲しい農と「働く場」を求める福祉、両者のニーズが合致
 「農福連携」と呼ばれる取り組みが活発化している。農業を福祉の現場に取り入れる試みは従来からあるが、どちらかというと障がい者支援が中心だ。引きこもりやニートなどの生活困窮者への支援は、それほど多くなかった。最近になって、生活困窮者の支援にも手が広がる。また、農作物の生産・加工・販売を広く手掛けたり、農家からのニーズに応じて農作業の委託請負をしたりする法人が少しずつ増えている。一般にはまだそれほど馴染みがないが、「農福連携」という言葉がじわじわと浸透し始めている。農福連携とは、文字通り、農業の現場と福祉の現場が連携することだ。具体的には、障がい者や生活困窮者などの社会的に弱い立場にいる人たちが、農園で畑仕事に従事したり、農産物の加工・販売をしたりして、自分の働く場所と居場所を手に入れる取り組みを指すことが多い。農業の現場では、高齢化などにより担い手の減少が止まらず労働力不足が悩みの種だ。一方の福祉サイドでは、障がい者・生活困窮者の働く場所がなかなか見つからない。農業の「働き手がいない」という問題と、福祉の「働く場がない」という問題を解決し、補完してくれるのが農福連携というわけだ。
●農福連携のシンポジウムやフォーラム、マルシェ
 最近、農福連携を冠したシンポジウムやフォーラム、マルシェなどの催しが頻繁に開かれるようになった。農業・福祉関係者だけでなく、行政や一般の人も巻き込みながら、大きなうねりになろうとしている。この2月14日には、農林水産省の政策研究機関である農林水産研究所主催の「農福連携」シンポジウムが開催された。「農業を通じた障害者就労。生活困窮者等の自立支援と農業・農村の活性化」というテーマが掲げられ、障がい者や引きこもり、ニートなどを実際に引き受けている事業者をはじめとして、農業関係者、行政の担当者、自治体、研究機関など多くの人たちが集結。農福連携の最前線について報告が行われ、活発な議論が交わされた。3月には農福連携の取り組みを全国レベルで推し進める「全国農福連携推進協議会」が設立される。ここに全国の福祉事業所や農家、行政や研究者、企業など、多くの賛同者が参加する。行政の側でも、該当省庁でもある農林水産省と厚生労働省の関心度は高い。協力しながら、積極的に連携を推し進めている。「農福連携マルシェ」などはその一例だろう。2015年6月に初のマルシェを霞が関で開催。2016年5月には官庁街を出て東京・有楽町、その後全国規模で開かれている。予算面でも、両省庁に農福連携を意識したものが少しずつ目立つようになってきた。
●取り組みには2つの方向がある
 一般社団法人JA共済総合研究所主任研究員で、長らく農福連携分野の研究を先導してきた濱田健司氏は、今、農福連携の取り組みとして大きく2つの方向があると分析する。1つは、障がい者や生活困窮者が身を寄せる福祉関係の事業者が取得したり借りたりした農地で農業生産を行う方向だ。生産だけでなく、できた農産物の加工・製造や販売まで手掛けるところも多い。もう1つは、農家や農業生産法人などに対して農作業の請負契約を結ぶというもの。こちらは、障がい者や生活困窮者が農業側の田畑やハウスに出向いて、いわゆる施設外就労として農作業に従事する。直接生産を手掛ける事業者の中には、独自の工夫で、持続可能な事業にしているところもある。代表例は、農福連携のパイオニアとしても知られる農事組合法人「共働学舎新得農場」だ。共働学舎は、北海道十勝地方・新得町に約120ha(120万㎡)の農地を構え、酪農、チーズや有機野菜の生産、工芸品づくりなどを行っている。ここには障がいを持つ人をはじめ、引きこもりやホームレスなど、様々な困難を背負った人たちが集まり共同生活をしながら農業生産・販売を行う。ここで生産されるチーズなどの農産物や工芸品はその品質の高さで知られ、学舎の経営にも寄与する。共働学舎の総売上高は約2億2千万円にのぼり、代表宮嶋望氏によれば「生活に必要な経費は賄えるほど」だという。後者でよく知られている取り組みは、特定非営利活動法人(NPO法人)香川県社会就労センター協議会の例だ。生産者と同協議会が農作業の請負契約を結んで、協議会から障がい者施設に作業の参加を募集・依頼する。農作業の対価として工賃が支払われる。請け負う農作業は、野菜類の苗の植え付けから収穫、除草、出荷調整に至るまで多種多様だ。協議会を中心として、障がい者施設と地域行政、JA、生産者の間で協力し合う仕組みを構築し、上手に連携している例といえる。生活困窮者への支援をする団体も増えている。厚生労働省が2015年4月にスタートさせた「生活困窮者自立支援制度」の中には、生活困窮者に対する就労訓練事業を行う社会福祉法人や生活協同組合で条件を満たすところに対して、支援をする仕組みがある。内容も地域によって違ってくるが、固定資産税や不動産取得税などの一部を非課税にする措置や、事業を立ち上げる時の経費の補助、自治体による商品の優先発注がある。農林水産省でも、いわゆる「福祉農園地域支援事業」という、福祉農園の全国展開を支援する事業を進めている。平成29年度の予算でも、同様の施策が取られていて、「農山漁村振興交付金」といわれるものの中に、福祉農園を支援する枠が設けられた。こちらはNPO法人、民間企業、一般社団法人も申請できる。
●生活困窮者への就労訓練の場としても注目
 こうした制度の充実に伴って、引きこもりやニートなどの生活困窮者に対して就労訓練をする団体が今後増えてきそうだ。ホームレスの就農支援プログラムを手掛けるところも出てきている。JA共済総合研究所の濱田氏は、こうした一連の動きを、「単なる社会貢献や福祉という範疇を超えて、障がい者や生活困窮者はいまや農業にとって必要な人材だと見る動きだ」と語る。担い手不足に悩む農業の現場からのニーズは今後ますます高まってくるだろう。社会的な弱者といわれる人たちが、農業を通じて働く場と収入を得て自立できれば、それだけ社会保障費の削減につながる。同時に、農業の衰退にも一定の歯止めがかかり、生産の拡大に寄与する可能性もある。もちろん解決しなければいけない問題は山ほどある。現在のセーフティネットにアプローチできなかったり、しなかったりする人もまだまだ多い。受け入れる側の意識や体制もまだまだだ。しかし、農福連携には大きな可能性が秘められている。今後の進展に大きな期待がかかっている。

| 日本国憲法::2016.6~2019.3 | 04:45 PM | comments (x) | trackback (x) |

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