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2019,03,31, Sunday
2018.5.26日経新聞 2019.1.6毎日新聞 (図の説明:左図のように、2019年10月から3歳以上の子がいる世帯と0~2歳の子がいる住民税非課税世帯の幼児教育・保育料が無償化されることになった。また、中央の図のように、高等教育への進学率も上がっているが、現在は公立も授業料が高すぎるという問題がある。そのため、世帯年収380万円未満の学生を対象に高等教育も無償化することになったのは一歩前進だが、それだけでは足りない。そのような中、右図のように、日本の財政は世界最悪であるとして消費税増税が声高に叫ばれているが、日本の財政は消費税が導入された後に悪化したのであり、消費税は解決策ではない。根本的には、複式簿記による公会計制度を国にも導入し、国民が予算の使い方を速やかにチェックして正確な対応策を出せるようにすべきだと考える) (1)教育は投資である 1)幼児教育・保育の無償化について 1953年にWatsonとCrickがDNAの二重らせん構造を発見し、生物学が科学としてかなり系統的に説明できるようになり、私が東大理科2類の教養過程でノーベル賞候補と言われた教授から習ったことまでが、現在の高校生物学にはさらりと包含されるようになった。それは、生命科学の原理が多くの人の常識となり、物事の考え方の基本として定着すると言う意味で良いことなのだが、高校生は消化するのに苦労するだろう。 しかし、生物学だけではなく、(宇宙・地球・生物・人類の)歴史で新しく解明された事実も増え、国際化で英語や他の外国語の重要性も増し、音楽・ダンス・スポーツ等の授業も充実できるようになると、生徒がこれまでと同じ授業時間数でこれらを消化するのは本当に困難になる。そのため、無理なく面白く身につけられるために、私は小学校の入学年齢を3歳にして、語学はじめ前倒しできる科目はできるだけ前倒しして教えるのがよいと考える。 そのような中、*1-1のように、消費税率が10%になる2019年10月から、「①増収分を財源に幼児教育・保育の無償化を実施する」「②高齢者向けに偏った社会保障を見直して子育て中の現役世代に財源を回し、全世代型社会保障に転換する」として、3~5歳児を持つ全世帯の幼児教育・保育の無償化が行われることになったが、それに対して、*1-2のように、「③無償化の恩恵が比較的所得の高い世帯に偏る」「④その前に誰でも希望の保育園に入れるようにして、待機児童を無くして欲しい」「⑤無償化はそれほど急ぐべき政策か」という反対がある。 私は、①②については、景気対策という名目で山ほど無駄遣いしながら、福祉財源は消費税でなければならないと説明している点は誤りであるものの、「教育・保育の無償化」は小学校の入学年齢を3歳にする前段階としてGoodだと思う。しかし、厚労省が作った政策らしく、厚労省所管の範囲内(現役世代と高齢者福祉)でのゼロサムゲームにしている点で発想が小さく、理念を欠いている。なお、高齢者は既に物価高・低金利・消費税増税に加え、年金・医療・介護の負担増・給付減で生きていけるか否かというぎりぎりの生活を強いられている人が多いため、次世代のためなら高齢者を犠牲にしてもよいという理屈は成立しない。 また、③については、必ず「所得の高い世帯に恩恵があってはいけない」かのような反対論が出るが、所得税・相続税で累進課税にし、社会保険料の掛金も所得に応じて差を付けることによって、所得の再配分は終わっているため、受けるサービスの値段まで所得で変えれば、その所得を境に可処分所得に逆転が生じる。さらに、市場主義経済では、交通費や食品の価格を買う人の所得に応じて変えてはいけないのと同様、保育料・授業料・医療費・介護費などのサービスの値段も、所得に応じて変えると経済を歪めるのである。 なお、④⑤については、安倍首相が「無償化と待機児童解消は二者択一ではない。どちらも優先的に取り組む」とされており、私もそれがよいと思うし、首相がそう言っておられるのだからできるだろう。さらに、地方には保育所の待機児童はいない自治体もあり、保育所の待機児童は都市に人口を集中させ過ぎた結果として出ている面があるため、都市計画・産業の再配置・教育システム改革などを含めた複数の改革で待機児童問題を解決した方が効果的だ。そのため、日本の将来像を正確に描いて、それに向かって進んだ方が無駄のない変革ができると考える。 2)高等教育の無償化について *1-1は、2020年4月から「⑥世帯年収の目安が380万円未満の低所得世帯の学生を対象として大学等の高等教育も無償化する」「⑦高等教育無償化の柱は、授業料減免と給付型奨学金の拡充」「⑧生活費を補助する給付型奨学金も用意する」「⑨学業成績が悪い場合は支援を打ち切る」とされており、⑥以外は妥当だと思う。 ⑥については、世帯年収が380万円以上であっても、複数の子を大学にやるには学費も生活費も高すぎる上、女子学生の場合は低所得でなくても親の反対に合って希望の大学に行けないケースがあるため、親の世帯年収は参考資料の一つに留めるべきだ。 東大の場合は、女子生徒が保護者に反対されても東大受験を躊躇しなくてすむように、女子の同窓会である「さつき会」が、会員からの寄付を元手として受験前に奨学金対象者を選抜し、合格を条件として奨学金を支給している。しかし、個人会員からの寄付だけでは支給できる金額も支給対象人数も限られるので、国・地方自治体・企業などの取り組みが望まれるわけである。 3)教育が投資である理由 *1-3に書かれているとおり、「子どもの貧困」は世代を超えた貧困の連鎖を生むとともに、未来の労働力の質を低下させるため、まず公立学校の授業料は安くするとともに、公立学校に通っても受験に不利にならないような教師陣や教育内容の充実が不可欠だ。 また、学童保育等の「子どもの居場所設置」や「学習支援」も不可欠で、親から子への虐待を防ぐためにも、母親が働いていなくても保育園に預けられたり、親が病気や出産などで子の世話ができない場合には介護制度を利用したりできるよう、既存の制度を改善することが必要だ。そのほか、「労働環境の改善」などの社会全体での雇用の質を底上げすることも重要である。 一方で、政府は、*1-4のように、AIを使いこなす人材を年間25万人育てる新目標を掲げ、文系・理系を問わず全大学生にAIの初級教育を受けさせることを大学に要請し、社会人向けの専門課程も大学に設置するそうだ。私は、ビッグデータ等として個人のデータを黙って収集するのは人権侵害だと思うが、AIやITなどによるイノベーションは不可欠であるため、幅広い人材が使いこなせるよう、98.8%の人が進学する高校までに基礎を教えておくのがよいと考える。 このように、産業を維持・発展させるためには、教育を受けた良質の労働力が必要であるため、教育は福祉ではなく投資の性格も持っており、(単なる景気対策のための支出は削って)一般会計から堂々と支出すればよいだろう。 (2)消費税増税について 1)消費税増税の是非について 「①消費税はヨーロッパで課されている税制」「②税のバランスが大切」「③消費税は安定財源」等と説明されることが多いが、①については、ヨーロッパで課されるのは、企業に対する付加価値税であり、必ず消費者に転嫁しなければならないとする消費税を課しているのは世界中で日本だけである。また、消費税は消費に対するペナルティーとして働く。そして、ヨーロッパで付加価値税を課している理由は、法人税や所得税の徴収率が悪いからだと言われており、付加価値税の徴収には完全なインボイス方式を採用して正確な計算を行っている。 ②については、法人税や所得税の徴収率が日本と同様によい米国は、国としては付加価値税を課しておらず、州のみが課しているため、税率は州によって異なる。私は、個人に対して所得税を課した上、所得に応じて増える社会保険料を課し、さらに消費税を課すのは同じ所得に対する三重課税であり、これに加えて保育サービス等を提供する場合にも所得によって対価が異なれば四重課税になると考える(参考:企業の場合は二重課税も排除している)。 さらに、③については、所得税は景気が良くなれば増え、景気が悪くなれば減るため、自動的に景気を調整するビルト・イン・スタビライザーの機能を持っているが、消費税はそうでないため財源が安定しているのであり、負担力主義で税を支払うという原則に照らせば、消費税財源の安定性は短所なのである。 しかし、*2-1・*2-2のように、メディアは消費税増税がよいことであるかのように大々的に宣伝し、消費税増税に反対する市民や政治家を「ポピュリズム」「ポピュリスト」と呼んで馬鹿にしている。「何故、そういうことが言えるのか」については、そういうことを言う人が経済・税法・家計のことをあまりわかっておらず、アンプの役割を果たしている財務省の言うことを、スピーカーのように拡散しているだけだからである。従って、多くの市民の方が、彼らを馬鹿にしている人よりも、肌で感じる真実に気が付いているわけだ。 実は、消費税増税は財務省の政策であり、財務省は自らの政策実現のために、メンツをかけてメディア対策も行っている。ただし、財務省は財務省の権限内で物事を解決しようとしがちで、全貌を見渡してよりよい方法を考えているわけではない。本当は、全貌を見渡して省庁横断でよりよい政策を考えるのが政治の役割なのだが、政治家にも経済・税法・家計の関連がよくわかっている人が少なく、財務省より弱いわけである。 その財務省は、「消費税率の引き上げによる安定的な財源がどうしても必要だ」と主張しており、安倍首相もそう言っておられる。しかし、辺野古の新基地造成を止めて離島の空港を使ったり、莫大な原発補助金や農業補助金を止めて自然エネルギーとEVに変えたり、海底資源や国有林等の国有資源を有効に使うよう速やかにアレンジしたりすれば、消費税増税を行って「個人消費が減るから(物価が上がるため当然なのである)」などとして、一時的なポイント還元やプレミアム商品券配布のため消費税1%分の約2兆円を使う必要はない上、次の時代に向けてのイノベーションを進めることもできるのだ。 つまり、「日本の国の借金はGDPの2倍超と先進国最悪の水準」というのは事実だが、「増税が延期されれば財政健全化の道は遠くなり、将来世代へのツケが重くなる」というのは、消費税増税のための理屈付けにすぎない。しかし、財務省は、既に税率引き上げの準備を完了しているため、この説明を押し通して変更することはないだろう。 2)軽減税率について 私は、消費税そのものにも消費税増税にも反対だが、消費税増税を行うとすれば、逆進性を緩和するために軽減税率は必要だと考える。これに対して、*2-3-1・*2-3-2・*2-3-3のように、軽減税率対象の線引きのみがマニアックに議論されているが、これは小売店の工夫次第で解決できる。 例えば、*2-4のように、課税後の価格を同じに設定し、持ち帰りの場合は包装代金を取る方法もあるし、店の外に休憩スペースを作って椅子や自動販売機を置いておき、そこで食べるのは持ち帰りと判定してもよいわけだ。しかし、共働き社会・高齢化社会で、外食を贅沢として増税対象とするのは、確かに現実に合っていない。 3)ポイント還元について 2019年10月の消費税増税と同時に始めるキャッシュレス決済のポイント還元制度は、*2-5のように、消費者がICカード等で支払えば中小の小売店・飲食店なら5%、コンビニ等のチェーン店なら2%のポイントがもらえ、割引や割引分を銀行口座等に振り込む方法も認められて、その対象金額には上限がつき、還元方法・上限は決済事業者ごとに決まるという、複雑な上に公正性の感じられない恣意的なものだ(税法の基本は「公正」「中立」「簡素」)。 また、増税後に消費の底上げさえすればよいというのは消費者を食い物にしており、中国や韓国でキャッシュレス化が進んでいるからといって日本の全店でキャッシュレス化を推進する必要もなく、スマホですべてができるようになればスマホを落としたら万事休すであり、リスクは分散するのが基本なのである。 4)消費税に関するその他の重要な論点 消費税は、医療費を非課税にしており、非課税収入に対する仕入れにかかる消費税はどこにも転嫁できずに病院や診療所の負担となるため、今でも苦しい病院や診療所の中には、消費税増税後に赤字となって、耐え切れずに倒産する経営体も出ると言われている。 そもそも、「医療費は非課税にせず、0税率にすればよいだろう」というのが、消費税導入当初からの税務専門家の意見であり、私もそう考える。 ・・参考資料・・ <教育は投資である> *1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190329&ng=DGKKZO43038560Y9A320C1M10600 (日経新聞 2019年3月29日) 幼児教育・保育を無償化 300万人が対象に 消費税率が10%になる10月から、増税の増収分を財源に幼児教育・保育の無償化が実施される。高齢者向けに偏った社会保障を見直し、子育て中の現役世代に回すもので、「全世代型社会保障」への転換を掲げる安倍政権の目玉施策となる。2020年4月からは低所得世帯の学生を対象として、大学などの高等教育も無償化される。幼児教育・保育の無償化は、3~5歳児は原則として全世帯が対象だ。幼稚園や認定こども園、地域型保育などが全額無料になり、0~2歳児は住民税が非課税の低所得世帯が対象になる。認可外の保育施設は0~2歳児が月4万2千円、3~5歳児は月3万7千円を上限に利用料が補助される。約300万人の子供が対象になる見通しで、費用は年間7764億円を見込み国と都道府県、市町村で分担する。ただ、無償化をきっかけとして利用希望者が大幅に増えれば、保育施設や保育士の不足に拍車がかかる懸念がある。20年4月から実施する高等教育の無償化は、授業料の減免と給付型奨学金の拡充の2つが柱になる。対象は世帯年収の目安が380万円未満の層で、年収によって支援金額が異なる。20年4月の新入生だけでなく在校生も利用できる。授業料減免の上限は国公立大が年間54万円、私立大が同70万円など。学生が学業に専念できるよう生活費も補助する給付型奨学金も用意する。金額は国公立の自宅生が年間35万円、私立大に自宅外から通う学生は同91万円など。低所得世帯の進学率が8割まで上がった場合の費用は年約7600億円で、最大70万人ほどが対象になる見通し。学業成績が悪い場合は支援を打ち切るほか、経営難の大学は対象から外す。 *1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13947484.html (朝日新聞社説 2019年3月24日) 幼保無償化 政策の優先度見極めを 10月から幼児教育・保育を無償化するための子ども・子育て支援法改正案が、衆院内閣委員会で審議中だ。子どものための予算を増やすことには、野党も反対していない。だが、2年前の衆院解散・総選挙で安倍首相が唐突に打ち出した無償化には、疑問や懸念が尽きない。政策の優先度をしっかり見極めるべきだ。多くの野党が批判するのは、無償化の恩恵が比較的所得の高い世帯に偏る点だ。例えば認可保育園の無償化に必要な4650億円のうち約半分は年収640万円以上の世帯に使われ、住民税非課税世帯に使われるのは1%程度だ。認可施設の保育料は所得に応じた負担になっているためだ。政府は、これまでの負担軽減分も合わせれば「高所得者優遇」ではないと反論する。しかし問われているのは、やるべき多くの政策の中で、無償化はそれほど急ぐべきものか、ということだ。子育てにかかる費用の軽減はありがたい。でもその前に、誰でも希望の保育園に入れるようにしてほしい。そんな声は、今年も各地に広がる。待機児童が多い自治体などを対象にした朝日新聞の調査でも、4月の入園に向け認可施設に申し込んだのに1次選考から漏れた人は4人に1人。前年からほとんど改善していない。首相は「無償化と待機児童解消は二者択一ではない。どちらも優先的に取り組む」として、保育の受け皿を今後32万人分増やすとアピールしている。だが、この計画は無償化の方針が出る前のものだ。潜在的な需要も見込んで、計画を作り直すべきだ。国の指導監督基準を満たさない認可外施設やベビーシッターの扱いも揺れている。希望しても認可保育園に入れない人への配慮から、国は5年間、無償化の対象にするとしていたが、「安全面が心配」との自治体側の反発を受け、条例で独自に対象外にできるようにした。あまりに泥縄の対応だ。消費増税を決めた12年の「税と社会保障の一体改革」では、保育士の処遇改善や職員の配置を手厚くするなどの「質の向上」を約束したが、それも置き去りのままだ。子どものための政策分野では、虐待防止のための児童相談所の体制強化や子どもの貧困対策など、予算の拡充が必要なものが多い。限りある予算をどう効果的に使うのか。無償化ありきでない、建設的な議論が必要だ。 *1-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-895577.html (琉球新報社説 2019年3月29日) 県民意識調査 子の貧困解消に全力を 沖縄戦で焦土と化し、無から復興せざるを得なかった沖縄社会が抱え続ける課題を今、克服しなければならない。県民の強い決意にも思える。県が昨夏、実施した第10回県民意識調査で、県が取り組むべき施策として「子どもの貧困対策の推進」を挙げた人が42%に上り、最多となった。子育て世代の生活の厳しさと、育児環境の整備に県民が強い関心を寄せている表れだ。世代を超え連鎖した貧困を断ち切り、未来を担う子どもを育む必要がある。調査は県民の価値観やニーズを捉えて県政運営に生かそうと、3~5年ごとに実施される。今回、県が重点施策の選択肢に初めて「子どもの貧困対策の推進」を入れたところ、過去3回の調査で1位だった「米軍基地問題の解決促進」の26%を抑え、最も多かった。行政が特に力を入れるべきこととして「子どもの居場所の設置」37%、「学習支援」36%の二つが3割を超えた。貧困により孤独や学習不足に陥らないよう、子どもに寄り添う支援が求められている。次いで「ひとり親家庭への支援」29%、「労働環境の改善」28%と、経済的な支援策を求める意見が続いた。行政以外に期待する役割は「企業による雇用促進」が48%と5割に近く、「労働関係団体による労働条件改善に向けた取り組み」39%と、保護者の就労関連が上位となった。社会全体で雇用の質の底上げを図らねばならない。暮らし向きが「良くなった」が3年前の前回調査より3・5ポイント上がった23・2%で、好況の実感が見られるとはいうものの、自らの生活を「中の下」「下」とした人は34%に及び、全国の25%を上回っている。県民が望む施策の2番目に挙げられた「基地問題の解決促進」だが、全国の米軍専用施設の7割が沖縄に集中する状況に、66%が「差別的だ」と感じている。沖縄の負担軽減が進まない状況に「差別」を見る人は依然として多い。離島住民対象の調査では8割が島に誇りを感じ、7割超が「島に生まれて良かった」と答え、強い愛着がうかがえる。一方34%が、20年先に今より発展し、輝いているとは「思わない」と不安視する。施策要望の生活必需品の価格や島外へ出る際の交通費、ガソリン価格の安定への対応も求められる。県民の要望は次世代育成や生活の質の向上、基地問題の解決に向けられている。国、県、市町村は生活に根差した県民の不安に耳を傾け、子どもの貧困の解消、非正規雇用の多い雇用環境の改善、真の基地負担軽減に取り組んでほしい。意識調査では85%が「幸せ」と感じ、82%が沖縄に生まれて「良かった」と回答している。幸福感をより多くの人に広げるためにも、私たちにもゆいまーるの助け合いの心が求められる。 *1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190327&ng=DGKKZO42932250W9A320C1MM0000 (日経新聞 2019年3月27日) AI人材、年25万人育成、政府戦略、全大学生に初級教育 政府が策定する「AI戦略」の全容が分かった。人工知能(AI)を使いこなす人材を年間25万人育てる新目標を掲げる。文系や理系を問わず全大学生がAIの初級教育を受けるよう大学に要請し、社会人向けの専門課程も大学に設置する。ビッグデータやロボットなど先端技術の急速な発達で、AI人材の不足が深刻化している。日本の競争力強化に向け、政府が旗振り役を担う。政府の統合イノベーション戦略推進会議(議長・菅義偉官房長官)で29日に公表する。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の普及やビッグデータの活用に伴い、AIを必要とする事業は、IT業界にとどまらず様々な分野に広がっている。高度な専門技術者に加え、今後は幅広い人材がAIの基礎知識を持っていなければ、競争力ある製品の開発や事業展開は難しい。一方、急速な実用化の速度に、大学や企業の人材育成は追いついていない。大学のAI教育の規模はまだ小さく、政府の調べでは修士課程を修了する人材は東大や京大、早大などの11大学で年間900人弱。全国でも2800人程度にとどまる。一般学生への対応はさらに遅れており、経済産業省によると、AIなどのIT知識を持つ人材は日本の産業界で2020年末には約30万人不足していると試算する。政府は今の教育制度では十分に対応ができないとみて体制づくりに乗り出す。様々な分野で活躍する人材が「ディープラーニング(深層学習)」の仕組みやAIを使ったデータ分析のやり方といった基礎知識を持てるようにし、日本の産業競争力の底上げを図る。目玉に据えるのが高等教育へのAI教育の導入だ。年間1学年あたり約60万人いる全大学生や高等専門学校(高専)生に初級水準のAI教育を課す。最低限のプログラミングの仕組みを知り、AIの倫理を理解することを求める。受講した学生には水準に応じた修了証を発行し、就職活動などに生かしやすくする。そのうち25万人は、さらに専門的な知識を持つAI人材として育成する。初級水準の習得に加え「ディープラーニング」を体系的に学び、機械学習のアルゴリズムの理解ができることを想定する。「AIと経済学」や「データサイエンスと心理学」など文系と理系の垣根を問わずAIを活用できるよう教育を進める。現状、4年制大学では各学年文系が42万人、理工系が12万人、保健系が6万人いる。このうち理工系と保健系を合わせた18万人に加え、文系の15%程度にあたる7万人がAI人材となる想定だ。社会人の学び直しもテコ入れする。22年までに大学に専門コースを設置し、政府が費用の一部を支援する。年間2000人を教育する目標だ。AIの活用に必要な「ディープラーニング」などの習得を目指す。教員については、まずはAI分野で修士課程や博士課程を終えた人材の協力を求めながら、将来の人員増に向けて育成する。処遇などの詳細は今回の政府の戦略を示した後に具体的に検討する。政府は大学側に一連の改革案を順次、カリキュラムに反映するよう求める。企業にはインターンシップなどを通じてAIの技能を持つ学生の受け入れ環境を整えるよう促す。企業側がAI技能を持った学生を高待遇で受け入れるようになれば、大学側も積極的に教育課程に反映していくことが見込まれる。 <消費税増税> *2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190329&ng=DGKKZO43038360Y9A320C1M10600 (日経新聞 2019年3月29日) 10月の消費増税まで半年 何が変わる? 消費急変回避へ全力 首相「三度目の正直」へ 2019年10月に予定する消費税率10%への引き上げまで残り半年となった。安倍晋三首相はこれまで2度にわたり10%への増税を見送ったが、手厚い消費下支え策で「三度目の正直」を目指す。少子高齢化が急速に進み、財政再建は待ったなし。中国など海外経済に陰りが見える中で、国内経済への悪影響を抑えられるかが焦点だ。「消費税率の引き上げによる安定的な財源がどうしても必要だ」。1月末、衆参両院での施政方針演説で、首相はこう述べ、理解を求めた。首相は14年に消費税率を8%に引き上げた後は、同年11月と16年6月に増税延期を表明してきた。だが、政権中枢では「今回は予定通り実施する」との見方が支配的だ。背景には増税が「安倍カラー」を強く帯びてきたことがある。12年6月、当時与党の民主党と、野党だった自民党、公明党の3党合意では消費税の増税分を社会保障に限っていた。首相はこれを変更し、税収の使い道を教育などに拡大。幼児教育の無償化などは10月から始まる予定で、延期すれば自身への批判にもつながりかねない。増税対策も積み増した。14年の消費増税時は個人消費が急減し、その後も景気低迷が長引いた。この反省を踏まえ、住宅・車の購入支援策に加え、キャッシュレス決済した場合のポイント還元、低所得者層へのプレミアム商品券など約2兆円の対策をまとめた。増税対策費用などを計上した2019年度予算案が27日に国会で成立したことで、住宅・保育など民間の活動は動き出しつつある。財務省幹部は「増税への条件は整った。後戻りするコストの方が大きい」と話す。消費税率10%への引き上げによる増収は政府による最新の見積もりでは年約5.7兆円。首相は約1.7兆円を教育・子育てなどに回し、半分を借金の返済に回す考え。残るリスクは海外景気だ。米中貿易戦争などの影響で中国景気は減速感が強まる。内閣府が3月に公表した景気動向指数は3カ月連続で低下した。首相は「リーマン・ショック級の事態が起きない限り予定通り増税する」と繰り返す。政権内でも「金融機能の破綻や東日本大震災並みの災害がなければ引き上げる」との意見が強い。ただ7月に予定される参院選をにらみ、景気動向を慎重に見極める動きは続きそうだ。日本の国の借金は国内総生産(GDP)の2倍超と先進国で最悪の水準。国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化は、すでに25年度に先送りされている。増税が延期されれば、さらに財政健全化の道は遠くなり、将来世代へのツケが重くなる。 *2-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201901/CK2019010302000121.html (東京新聞 2019年1月3日) <こう動く2019日本>(2)消費税増税 3度目の延期 否定できず 消費税は十月一日から、税率が10%に上がる。政府は経済危機や大災害が起こらない限り、予定通り増税すると説明するが、安倍晋三首相はかつて、増税による景気の冷え込みを懸念して、引き上げ時期を二度延期した。世界経済の悪化で日本の成長が大きく鈍るなら「二度あることは三度ある」というシナリオも否定はできない。今月召集の通常国会へ提出される二〇一九年度予算案には、消費税率引き上げによる増収を活用した幼児教育・保育無償化や社会保障の充実策などが盛り込まれた。さらに、キャッシュレス決済時のポイント還元や低所得者ら向けのプレミアム商品券発行など、景気の下支え対策としても二兆円超を計上。価格が高い車や住宅の購入を中心とした減税策も加えれば、一連の対策の規模は、増税による家計の実質的な負担増二兆二千億円を上回る。政府が増税に向けて手厚い支援を講じるのは、一四年四月に税率を5%から8%に上げた際のトラウマ(心的外傷)が残っているためだ。当時、大規模な経済対策を組んだものの、いったん冷え込んだ個人消費はなかなか回復しなかった。「財務省は景気が落ち込むのは一・四半期だけと言っていたが、実際には長引いた」(政府高官)と官邸の不興を買ったことも、税収増を相殺するほどの大盤振る舞いにつながった。消費税増税を織り込み、当初段階で初めて百兆円を超えた予算案と税制改正大綱が閣議決定されたことから、財務省では今のところ、「税率引き上げのプロセスが進んでいる」(岡本薫明次官)という見方が支配的だ。しかし、三たびの延期が完全にないとは言えない。昨年末にかけ日米の株価が急落。米中の貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱の行方など、日本経済に影響を及ぼす海外景気の不安材料が今年も多いからだ。 首相は景気重視を鮮明にしている上、「消費税率10%への引き上げを決めた一二年の民主、自民、公明の三党合意にかかわっておらず、(消費税への)こだわりが小さい」(財務省幹部)とされ、増税からの方針転換も抵抗なく決断できるとみられている。一方、三度目の正直で増税するとしても、景気の動向によっては追加の財政支出が浮上する可能性はある。夏の参院選を控え、首相が「バラマキ」の誘惑に打ち勝つことは容易でない。 *2-3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLDK51VQLDKULFA01C.html (朝日新聞 2018年12月21日) 飲料水やケータリングは何%? 難しい軽減税率を解説 来年10月から消費税率がいまの8%から10%に上がり、同時に飲食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率も導入される。増税の影響を和らげるため、来年度予算案には総額2兆280億円の臨時の対策が盛り込まれた。5年半ぶりとなる消費増税で、私たちの暮らしにはどのような影響があるだろうか。 ●軽減税率のわかりにくい線引き 消費増税にあわせて、初めて導入される軽減税率は、消費税率が10%に引き上げられた後も、酒類や外食を除く飲食料品と、週2回以上発行され、定期購読されている新聞の税率を8%に据え置く。生活に欠かせない飲食料品を中心に税率を抑えることで、低所得者の負担を軽くするねらいがある。お金持ちも低所得者も一律にかかる消費税は、低所得者ほど負担が重いとされているからだ。しかし、ひとくちに「飲食料品」と言っても、日々の買い物ではどちらの税率が適用されるのかがわかりにくいものもある。例えばみりん。アルコール分が1%以上の本みりんや料理酒は酒税法上の「酒類」に該当するため、軽減税率は適用されず、税率は10%となる。ところが、同じ棚に並んでいても、アルコール分が1%未満の「みりん風調味料」は軽減対象となり、税率は8%だ。このほか、飲料用のミネラルウォーターは軽減税率の対象だが、水道水は風呂や洗濯といった生活用水としても使われるため、飲食料品とみなされず、税率は10%になる。軽減税率の対象外となる外食の範囲も線引きが難しい。原則として、事業者がいすやテーブルなどの飲食設備のある場所で客に飲食させた場合は「外食」となり、税率は10%。例えば、コンビニエンスストアで弁当を買い、店内のイートインコーナーで食べる場合は、外食扱いだ。一方、買った弁当を客が持ち帰り、自宅で食べる場合は8%となる。レジで会計する際、従業員から店内で食べるのか、持ち帰って食べるのかを聞かれる場面が出てきそうだ。外食と同様、客が指定した場所で料理を温めたり、配膳したりする「ケータリング」も軽減税率の対象外だ。企業がパーティーなどでケータリングサービスを頼む場合は、税率は10%となる。ただ、同じケータリングでも、有料老人ホームで入居者に提供される食事や学校給食など、それ以外の方法で食事をとることが難しい場合には、8%が適用される。このほか、ピザやそばなどを出前で取った場合は単なる飲食料品の販売とみなされ、8%が適用される。こうした複数の税率に対応するため、事業者側はレジの改修などが必要になるが、対応は遅れている。導入後、店頭で混乱が生じる可能性がある。 ●プレミアム商品券で低所得者へ支援 軽減税率に加えて実施する低所得者対策が「プレミアム商品券」だ。市区町村が売り出す商品券を購入すると、購入額より25%高い商品と換えられる。購入額との差額の上乗せ分(プレミアム分)の費用を、国が負担する仕組みだ。低所得者への支援策のため、商品券を買えるのは、住民税の非課税世帯と0~2歳児がいる子育て世帯に限る。世帯内の人数(子育て世帯はこどもの人数)1人あたり2万円(2万5千円分)まで買える。1枚ごとの商品券の価格は自治体が決めるが、政府は400円(500円分)を想定している。この場合、最大50枚まで買える計算だ。使えるお店は原則、商品券を発行した地方自治体の中の小売店で、使用期限は増税後から2020年3月末までの半年間とする。政府は15年にも前回の消費増税の対策として同様の商品券を発行したが、消費の押し上げ効果は限定的だったとの指摘もある。 ●税金の使い道は 消費税率の10%への引き上げは2012年、旧民主党、自民党、公明党による3党合意で決まった。14年4月にいったん8%に引き上げた後、もともとは15年10月に10%にする予定だったが、2度にわたって延期に。来年10月の増税は5年6カ月ぶりとなる。2%分の増税で、消費税の税収は5・7兆円増える見込みだ。3党合意ではこの増収分の使い道を社会保障に限り、5分の4を既存の社会保障費の財源に充てて国の借金を減らすことに使い、残りを社会保障の充実に充てるとしていた。ところが、安倍晋三首相は昨年、この使い道を変更。一部を教育無償化などに使うことを決めた。この結果、借金減らしに充てられる額は増収分の半分の2・8兆円程度に。安倍首相が打ち出した教育無償化などには、1・7兆円程度が使われることになった。幼児教育の無償化は来年10月1日から実施予定で、幼稚園や認可保育所、認定こども園に通う3~5歳児の利用料が原則無料になる。0~2歳児は住民税の非課税世帯が無償化の対象になる。これにより、待機児童が増える可能性もあるため、同時に保育の受け皿づくりを加速。保育士の処遇改善も進める。20年4月からは大学や短期大学、専門学校などの高等教育について、住民税非課税世帯を対象に入学金・授業料を減免。生活費は返還の必要がない給付型奨学金で賄えるようにする。非課税世帯だけでなく、年収380万円未満の世帯も2段階に分けて支援する。増税分の使途変更前から決まっていた措置として、低所得の高齢者向けの支援も拡充する。住民税非課税世帯で、年金を含む所得が老齢基礎年金の満額以下の高齢者に対し、年金保険料の納付期間に応じて月最大5千円を支給。この措置によって、保険料の納付期間が短い人の方が優遇されることにならないよう、一定の所得以下の人にも補足的に給付金を支給する。所得が低い65歳以上の高齢者を対象に、部分的に実施されてきた介護保険料軽減策の拡充をさらに進める。1人あたりの平均で月約1千円が軽減される。また、人材不足となっているベテラン介護福祉士の賃金も大幅に引き上げる。政府はこうした施策により、増税による増収分の半分を「国民に還元する」とアピール。増税への反発を和らげるねらいもある。 *2-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190329&ng=DGKKZO43038410Y9A320C1M10600 (日経新聞 2019年3月29日) 軽減税率で対応急ぐ 飲食料品8% 外食10% 消費増税では新たに軽減税率制度が導入される。日々の生活に欠かせない飲食料品(お酒や医薬品は除く)と定期購読の新聞に限り消費税率を今のまま8%に据え置く。低所得者の負担増に配慮するためだが、店頭では8%と10%の商品が混在することになる。小売店の担当者や消費者が判断に迷うケースが出てくる恐れもある。お酒や雑貨も売るスーパーやコンビニエンスストアなどの小売店の現場は、対策としてレジや受発注システムなどの改修に動き出している。軽減税率は企業間の取引にも適用されるため、商社の食糧部門なども取引先との契約書の見直しなどの対応に動いている。商品が8%か10%かを見極めて分類をする必要があるが、線引きに迷うものもある。例えばアルコール度数が1度以上の「みりん」はお酒なので10%だが、それより度数が低い「みりん風調味料」は8%になる。ドリンク剤なども医薬部外品なら10%だが、清涼飲料水であれば8%になる。軽減税率は「外食」は対象外で、レストランで食事をすれば10%のままだ。スーパーのイートインコーナーなどの場合は、同じ商品でも「持ち帰り」の場合は8%になるが、店内で食べれば10%と税率が変わる。自分が指定した場所でサービスを受けるケースも外食と同じ扱いになる。例えば肉の専門店のスタッフにパーティー会場まで肉を運んで焼いてもらった場合は10%だ。価格表示の仕方はばらつきが出そうだ。日本経済新聞社が大手23社を対象に2018年12月にまとめたアンケートでは、4割が持ち帰りも店内飲食も同一の税込み価格で表示すると回答した。一方、日本KFCホールディングスのように2通りの税込み価格表示を検討しているケースもある。 *2-3-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190329&bu=BFBD9496EABAB5・・ (日経新聞 2019年3月29日) 軽減税率 適用対象か否か周知急ぐ 消費税率を8%から10%に引き上げるのに合わせ、飲食料品や定期購読の新聞の税率を8%に据え置く軽減税率制度が導入される。円滑な導入には、小売店や流通に携わる事業者にしっかり準備してもらうことが重要だ。政府は税率を判断するための事例集を公表するなど周知活動を急ぐ。外食や酒、医薬品は「飲食料品」に当たらず税率は10%だ。飲食スペースを持つ小売店やテークアウトができる外食店では、同じ商品でも店内飲食かどうかで異なる税率になる。こうした店や、食品とそれ以外の商品を扱う小売店などでは、2つの税率を打ち分けられるレジの導入や価格表示の見直しが必要になる。顧客とのトラブルを避けるためには従業員向けマニュアルの作成といった対応も欠かせない。政府が10月にとりまとめた飲食料品を扱う事業者への調査によると、レジの改修など準備を始めているとの回答は37%だった。政府は特に、街の青果店といった専門の小売店の対応がカギとみる。軽減税率に対応したレジへ買い替える際の補助金の活用を促すなど、早めの準備を呼びかける。生活に密接に関わる分野なだけに、軽減税率と関係する経済活動は幅広い。一見すると食品には関係のない事業者も帳簿を付ける際などの対応が必要になる。23年10月には、事業者が商品ごとの消費税率を記録するインボイス(税額票)制度が導入される。現在は消費税の納付が免除されている売上高が1千万円以下の事業者も、大企業や中堅企業と取引するためには対応が求められる。軽減税率は生活必需品の税率を抑えて低所得者の負担を軽くする目的だが、高所得者の方が食品への支出額が大きく恩恵があるとの指摘がある。現場からは制度がわかりにくいとの声や、自分は対応が必要なのかどうか分からないといった声もいまだに強い。円滑な実施に向けては、的確な情報発信が急がれる。ペットフード(10%)、自動販売機のジュース(8%)、みりん(10%)――。事業者から相次ぐ疑問に答えるべく、国税庁は軽減税率の適用対象になるかを事例ごとに解説する「Q&A」の改定を重ねてきた。具体的な例を示して判断に役立ててもらう。軽減税率の導入には約1兆円の財源が必要だ。このうち4千億円分は低所得者の医療や介護の負担を軽くする「総合合算制度」の創設を見送った分を充てる。3千億円程度はたばこ増税と給与所得控除の縮小で確保し、残りの3千億円分は免税事業者への課税による増収と社会保障改革の余剰分を充てる方針だ。 *2-4:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190329&bu=BFBD9496EABAB5E6B39・・ (日経新聞 2019年3月29日) 店内・持ち帰り「同価格」も 軽減税率対応 外食大手が検討 2019年10月の消費増税と同時に導入される軽減税率をめぐり、外食大手の対応が割れる可能性が出てきた。日本経済新聞社が実施したアンケートで、同一商品でも税率が異なる店内飲食と持ち帰りの扱いを聞いたところ、回答企業の4割が同一価格で提供を検討していると答えた。外食チェーンによって対応が異なれば、消費者の混乱を招く恐れもありそうだ。軽減税率は消費税率が10%に引き上げられても、食料品などに限り税率を8%に据え置く制度。外食は軽減対象にはならないため、店内で飲食した場合は10%だが、同じ商品を持ち帰った場合は8%と税率が異なる。例えば本体価格が500円の食事は税込み価格は店内550円、持ち帰り540円となる。ただ、包装代などを加味して持ち帰りの本体価格を510円にすれば税込み価格は550円になり消費者が払う額は同じになる。アンケートは、持ち帰りが一定割合以上あるファストフードやカフェなど外食大手23社に実施し、20社から回答を得た。「店内飲食と持ち帰りで同一価格を導入するか」と聞いたところ、4割にあたる8社が「検討している」と答えた。「導入には消極的」と答えた企業も8社で、「導入しない」は1社だった。姿勢が分かれるものの、現時点では最終的な対応を決めかねているようだ。同一価格を検討する企業に複数回答で理由を聞くと、「消費者にわかりやすい価格体系にするため」(87.5%)が最多で、「店頭で会計作業が煩雑にならないようにするため」「告知や店員の説明を簡潔にするため」が62.5%で続いた。 *2-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13932271.html (朝日新聞社説 2019年3月14日) ポイント還元 見切り発車するのか 懸念は解消されないどころか、ふくらむばかりだ。この状況のまま、政府は本当に実行に移すつもりなのか。10月の消費税増税にあわせて始めるキャッシュレス決済でのポイント還元策について、安倍首相は「事業者に混乱が生じないよう、また消費者が安心して購買できるよう、きめ細かな対応を行う」と述べてきた。ところが、制度の細部が明らかになるにつれ、不安は増す。この制度では、消費者がクレジットカードやICカードなどで支払うと、中小の小売店や飲食店では5%相当分、コンビニなどのチェーン店なら2%分のポイントがもらえる。買ったその場での割引や、割引分を銀行口座などに振り込む方法も認められる。不正利用を防ぐために、対象金額には上限がつく。還元方法や上限は、クレジットカード会社といった決済事業者ごとに決まる。消費者は「対象の店はどこか」「還元率は5%か2%か」「自分のカードは使えるか」「ポイントか即時割引か、振り込みか」「上限額はいくらか」を見極めねばならない。こんな複雑なしくみで、最大の目的のはずの増税後の消費の底上げに、つながるのか。制度づくりを担う経済産業省によると、店ごとのポイント還元に関する情報を載せたスマホ用の地図アプリをつくり、使える決済手段のロゴつきのポスターを店頭に貼る。「店の人に聞かなくてもわかる」というが、ある店主は、同時に始まる軽減税率の対応もあり、「困った客に質問されても、答えられない」と不安をみせる。中小企業者支援もポイント還元の目的の一つだが、これでは店主に負荷がかからないか。三つ目の目的であるキャッシュレス化の推進も、費用に見合う効果があるのか、疑問だ。2019年度予算の2798億円のうち、ポイントなどで消費者に還元されるのは1786億円。残りの1千億円強はコールセンターやポスターに使われるほか、加盟店の勧誘支援としてカード会社などにも渡る。これだけの税金を使って、中小の小売店での支払いに占めるキャッシュレスの割合は、約14%から17%程度に上がるという想定にすぎない。実施ありきで議論が進み、費用対効果の検討がおざなりではないか。財務省の査定責任も重い。参院の審議は、問題点を洗い出す最後の機会だ。予算審議の最中でも決済事業者の募集を始め、見切り発車しようとする政府に、再考を迫るべきだ。 <新元号と民主政治> PS(2019年4月1、2日追加):*3-1・*3-2のように、2019年4月30日に天皇陛下が退位され、皇太子殿下が新天皇に即位される5月1日から施行される新元号は「令和」と発表された。出典は万葉集の梅花の歌「初春の令月にして気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を香らす」から引用したと説明されているが、その説明を聞く前、私は「令は命令、させること」「和は和やかなこと」を意味し、奈良時代の「大宝律令」の令と「和を持って尊しとなす」の和がイメージされて、「国民は命令に従い、和を持って尊しとなせ」という現在の国民主権国家からは程遠い元号のように思えた。そのため、そういう価値観を持っていないのに、現皇太子の時代として歴史に残るのは、現皇太子に気の毒だと思ったわけである。私自身は、次は「光」という字を用いて、「光和」「光久」「光輝」などの明るい元号がよいと思っていたが、こうなったら計算しやすいので西暦で通すことにする。 なお、新元号「令和」の出典となった万葉集の一節は、*3-3のように、730(天平2)年に大宰府の大伴旅人の邸宅で催された「梅花の宴」で詠まれた32首の序文にある「令月」「風和」から取ったものだそうで、大宰府は博多港から20km程度の地域にあり、鳥栖や吉野ヶ里にも近く、古代史のKeyと言える場所だ。 *3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019032901001500.html (東京新聞 2019年4月1日) 新元号は「令和」、5月1日施行 出典は「万葉集」、日本の古典初 政府は1日、「平成」に代わる新元号を「令和(れいわ)」と決定した。今の天皇陛下が改元政令に署名され、同日中に公布。4月30日の天皇陛下退位に伴い、皇太子さまが新天皇に即位する5月1日午前0時に施行される。皇位継承前の新元号公表は憲政史上初。出典は「万葉集」で、中国古典でなく、国書(日本古典)から採用したのは確認できる限り、初めて。「大化」(645年)から数えて248番目の元号で、1979年制定の元号法に基づく改元は「平成」に続いて2例目となる。改元は明治以降、天皇逝去に伴う皇位継承時に行われてきた。今回は退位特例法に基づき、逝去によらない改元となる。 *3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43166560R00C19A4000000/?nf=1 (日経新聞 2019年4月1日) 新元号は「令和」 官房長官が公表 政府は1日午前、平成に代わる新元号を「令和」と決定した。「れいわ」と読む。菅義偉官房長官が記者会見し、墨書を掲げて公表した。出典は「万葉集」と説明した。日本最初の元号「大化」から数えて248番目にあたる。新元号は天皇陛下の退位に伴い5月1日午前0時から施行する。安倍晋三首相は正午ごろから記者会見を開き、首相談話を読み上げて新元号に込めた意義などを説明する。元号に用いる漢字が日本の古典から採用されたのは確認される限り初めて。これまでは中国古典(漢籍)を出典としてきた。令和は万葉集巻五、梅花の歌三十二首の序文、「初春の令月にして気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭(らん)は珮(はい)後の香を香らす」から引用した。政府は今回、漢文学や東洋史学だけでなく、国文学や日本史学を専門とする学者にも考案を委嘱したことを明らかにしている。関係者によると、平成への改元時に委嘱した考案者にも国文学者が含まれていたが、日本古典を出典とする案は「平成」を含む3つの最終案に残らなかった。政府は4月1日午前9時半から首相官邸でノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥京大教授ら計9人の有識者による「元号に関する懇談会」を開き、原案について一人ひとりから意見を聞いた。その後、衆参両院の正副議長に意見を聴取。首相官邸で開いた全閣僚会議を経て閣議で新元号を定めた政令を決定した。天皇陛下が署名し、4月1日中に公布する。3月14日に複数の学者らに新元号の考案を正式に委嘱し、それぞれ2~5つの案の提出を求めた。官房長官の下で絞り込み、5つ以上の原案から新元号を選んだ。天皇陛下は4月30日に退位、翌5月1日に皇太子さまが新天皇に即位される。「退位礼正殿の儀」は4月30日午後5時からで、三権の長や地方自治体の代表ら338人が参列する。皇太子さまは5月1日午前10時半から歴代天皇に伝わる神器などを引き継ぐ「剣璽等承継の儀」に、午前11時10分から即位後初めて国民代表の前でお言葉を述べる「即位後朝見の儀」に臨まれる。天皇陛下は2016年8月、国民向けのビデオメッセージで象徴天皇としての務めに関する考え方についてお言葉を述べ、退位の意向を示唆された。政府は天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議を設置。17年6月、現天皇一代限りで退位を認める特例法が国会で成立した。 *3-3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/culture/article/499075/ (西日本新聞 2019年4月2日) 典拠序文は大宰府ゆかり 新元号「令和」 新元号「令和」の出典となった万葉集の一節は、730(天平2)年に大宰府の大伴旅人の邸宅で催された「梅花(ばいか)の宴(えん)」で詠まれた32首の序文。宴では、対馬や鹿児島など九州各地から集められた官僚たち計32人が、「梅」をテーマに1人1首歌を詠んだ。歌は万葉仮名で序文は漢文。作者は旅人や山上憶良などと推測されている。宴の開かれた前年、時の左大臣が自死に追い込まれる「長屋王の変」が発生。「政変が起きたため、九州の引き締めを図り各地の官僚を集めたのだろう」と福岡女学院大の東茂美教授(日中比較文学)は解説する。緊張した政策議論が行われ、その後に催されたのが梅花の宴だった。令和は、序文にある「令月」と「風和」から取られた。東教授は「『令』は『好(よ)い』という意味。平成は大災害で多くの命が奪われた。不幸な時代を超え『好い和』という穏やかな時代になってほしいという願いが込められているのではないか」と話す。 <外国人の受け入れについて> PS(2019年4月1、4日追加):*4-1のように、「外国人受け入れ拡大の準備が整わないまま、新制度がスタートした」という批判が多いが、制度が導入されたからやるべきことが具体的にわかったという面もあるので、制度を導入したのはよいことだ。そして、外国人を受け入れたいが未経験の自治体は、先行する自治体から準備に必要な情報を聞き、議会で話し合って予算を作り、次第に受け入れていけばよいだろう。また、多言語対応は、すべての自治体で11言語すべての翻訳を正確にできなければならない理由はなく、来日する外国人の母国語に翻訳できればよい筈だ。大切なのは、母国で既に教育投資を受けた外国人が日本で労働を提供し、日本社会の支え手になってくれることであり、日本人よりハングリー精神があるかもしれないことである。 また、*4-2のように、熊本県では、第2次ベビーブーム時に多く採用された教職員が退職期を迎え、教職員の約4割が今後10年で定年退職する予定だそうだが、経験豊富で授業力のあるベテラン教員が学校現場を去る前に、①定年年齢を引き上げて働き方改革を実行したり ②小学校の入学年齢を3歳に引き下げたり ③クラスに副担任を置いて教員を支援したり ④学童保育の学習支援員として働いてもらったり 等々を、正当な報酬を支払って行えばよいと思う。 なお、外国人技能実習制度は、*4-3のように、外国人から搾取する手段となっていたケースが多かったため、3年間の実習を終えると無試験で1号の新資格を取得でき、資格を変更したい人は本人の意思で変更できることをアナウンスしておけば、劣悪な労働環境にある技能実習生は変更すると思われる。なお、外国人労働者に慣れておらず言語対応に不安がある自治体は、フィリピンやインドの人から始めると英語を話せるため対応しやすい。 *4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13959827.html (朝日新聞 2019年4月1日) 外国人受け入れ拡大、準備整わぬまま 新制度スタート 新たな在留資格「特定技能」を創設し、外国人労働者の受け入れを拡大する新制度が1日に始まる。政府は、技能実習生からの資格変更を含めて今後5年間で最大約34万5千人を見込む。労働政策の転換点だが、4月の制度導入ありきで進められたため、現場の準備が整わないなかでの「見切り発車」となる。政府は昨年12月、新制度の目玉として、行政サービスや生活情報の相談に原則11言語で対応する「多文化共生総合相談ワンストップセンター」を全国に約100カ所整備することを打ち出した。法務省が地方自治体に対し、多言語対応などに向けた整備費の交付金申請の受け付けを始めたのは2月中旬。補助対象は、47都道府県と20の政令指定市、さらに外国人住民が1万人以上、または5千人以上で全住民に占める割合が2%以上(東京23区は1万人以上で6%以上)の44自治体とした。だが地方議会に諮る時間が足りないなどの理由もあり、申請は37自治体にとどまった。法務省は4月1日の時点で何カ所にセンターが整備されるか明らかにしていない。来日する人から多額の保証金を徴収するような悪質な仲介業者の排除についても、政府は2018年度中に、送り出し国として想定されるベトナム、フィリピン、カンボジア、中国、インドネシア、ミャンマー、タイ、ネパール、モンゴルの9カ国と協力覚書の締結を目指していた。だが3月29日の時点で締結に至ったのはフィリピン、カンボジア、ミャンマー、ネパールの4カ国だけだ。 ■窓口整備、足りぬ財源・人材 11言語「翻訳の正確さ心配」 改正出入国管理法の施行に合わせて、朝日新聞は外国人が多く住む全国の74自治体を対象にアンケートを行った。共生に向けた対応策の目玉となるワンストップセンターについては、過半数が財源不足などを理由に開設予定がないと回答。受け入れ拡大に戸惑う現場の姿が浮き彫りになった。ワンストップセンターの補助対象となった自治体には、人口規模の小さい市町村は入らない。今回のアンケートは、外国人が多い地域の実態把握に努めるため、外国人住民が1万人以上か、全住民に占める外国人の割合が5%以上の74市区町村を対象とし、都道府県は除いた。3月中旬から下旬に調査し、70自治体から回答を得た。回答率は94・6%。今回のアンケートでは、「ワンストップセンターを開設する予定があるか」との問いに、55・7%(39自治体)が「いいえ」と回答した。理由の多くは財源不足だ。補助の対象でも「開設場所や人材の確保にめどが立たない」(東京都北区)との声が出た。大きな課題は、多言語対応だ。国はセンターで原則11言語に対応することを求めている。通訳が配置できなければタブレット端末などで対応する必要がある。岐阜県可児市は翻訳機を導入する予定だが「細かな行政用語をどこまで正確に翻訳できるのか心配。例えば日本の『住民票』という概念は外国と一致するのか」と気をもむ。 *4-2:https://kumanichi.com/column/syasetsu/922837/ (熊本日日新聞 2019年3月27日) 教員の大量退職 教育の質低下防ぐ対策を 公立の小中学校や高校などに勤める県内の教職員の約4割が、今後10年で定年退職することが明らかになった。この事態に対応するため、県教委や熊本市教委は採用数を増やしているが、授業力のあるベテラン教員が学校現場を去る一方、現場経験の少ない若手の教員が増えることになる。両教委には教育の質の低下を招かない取り組みが求められている。大量退職の要因は、1970年代の第2次ベビーブーム時に多数採用された教職員が退職期を迎えるためだ。両教委によると、2018~27年度に定年を迎える教職員は5033人で、現在の教職員全体の37・7%に当たるという。一方、採用増に志願者の減少もあって、教員採用試験の志願倍率は、小中学校を中心に低下している。小学校の場合、両教委がそれぞれ採用試験をするようになった13年度と19年度を比べると、県教委分が5・1倍から2・3倍に、熊本市教委分が13・7倍から3・2倍に落ち込んだ。志願倍率の低下が、教育の質の低下につながるとは一概に言えないが、「高い倍率を勝ち抜き、合格した」という思いは、採用後のモチベーションになることは確かだ。また、以前と比べ臨時任用教員として数年間学校現場を経験した後、本採用されるケースも減ったため、「即戦力の若手が少なくなった」という声もある。両教委は20年度の採用試験から小学校教諭の実技試験を全廃、または一部の廃止を決めた。受験要件緩和で志願者を増やすのが狙いだが、「単に採用のハードルを低くするだけでは質の低下を招きかねない」とも指摘されている。志願者減の要因の一つとして、「教員は授業や部活動で多忙。保護者対応も重なりストレスが大きい」とのイメージが定着していることがあるのではないか。両教委はタイムカード導入などで、教職員の労働時間管理の徹底を試みているが、さらに抱え込み過ぎているとされる学校や教員の業務の明確化・適正化にも力を入れ、本来の教えるという業務に専念できるようにすることが必要だろう。既に教員の年齢構成はいびつになっている。熊本市教委のまとめでは、18年度に市内の小中学校で働く教員約3千人のうち、51~60歳が半数近くを占め、若手と中堅をつなぐ世代の31~40歳は15%ほどとなっている。経験の少ない若手が増える中、身近な手本となる世代が少ないのも問題だ。「技術の伝承」に悩む民間企業に通じる課題だろう。熊本市教委は退職後に再任用された教員が若手をマンツーマンで指導する事業を実施している。県教委も優れた指導力を持つ中堅教員をスーパーティーチャーとして選び、若手の指導力向上を支援している。こうした経験豊富なベテラン世代を活用して世代をつなぐ取り組みをさらに拡充し、若手も余裕を持って児童、生徒に対応できる環境づくりを進めてもらいたい。それが教育の質の維持、向上にもつながるはずだ。 *4-3:https://www.toonippo.co.jp/articles/-/174288 (Web東奥 2019年4月4日) 廃止含め抜本策の検討を/技能実習制度 外国人就労を拡大する新制度で、新たな在留資格「特定技能1号」の取得を目指す外国人向けに受け入れ業種別の日本語・技能試験が国内外で始まる。今月中旬からフィリピンで介護、東京や大阪などで宿泊、外食と続く。これとは別に外国人技能実習制度で来日した実習生は3年間の実習を終えると、無試験で1号の資格を取得できる。政府は新制度により5年間で14業種に最大34万5千人の受け入れを見込む。試算では、2019年度は6割弱が実習生からの移行組。その後、試験の合格者は徐々に増えていくものの、5年たってもなお5割は移行組という。技能実習制度と新制度とは切っても切れない関係にある。その実習制度を巡り新制度スタート目前の先月末、賃金や残業代の不払い、長時間労働から実習中の事故死まで、過酷な労働実態が改めて浮き彫りになった。昨年の国会で野党から実習制度の問題点を追及され、山下貴司法相は17年に技能実習適正化法が施行され、それ以降は「適切な運用」が図られていると反論する一方、法務省に調査を指示していた。それ以前の実態調査がずさんだったことも明らかになり、法務省は10項目の改善策を示した。しかし、どれもやって当たり前のことばかりだ。技能実習は末期的な状況にあり、制度の廃止も含め、抜本策の検討に取り組まなくてはならない。法務省の調査では、実習先から失踪して17年1月~18年9月に不法残留などで摘発された5218人のうち759人が最低賃金以下の給料や食費名目などによる過大な控除、時間外労働の割増賃金不払い、違法な時間外労働などを強いられていた疑いがあった。このうち今回の調査以前に把握し対応していた事案は38人分にすぎなかった。例えば、縫製業の実習生は月給6万円で働かされて月60時間の残業をしても割増賃金をもらえず、建設機械施工の2人が実習計画にない家屋の解体などをさせられた。さらに12~17年に実習生171人が死亡、うち43人はこれまで把握できていなかった。実習中の事故死28人、病死59人、自殺17人など。病死の3人は違法な時間外労働をさせられ、自殺の1人は3カ月半で休みが4日だけだった疑いがある。だが不正行為はもっとあるとみた方がいいだろう。調査対象となった企業など実習先は4280に上るが、そのうち383は協力拒否や倒産などで調査できずじまい。賃金台帳やタイムカードの写しなど詳細な資料を集められたのは7割弱にとどまっている。17年11月、実習生に対する人権侵害に罰則を設け、受け入れ先への監督を強化する適正化法が施行された。しかし失踪者は年々増え続け、昨年は9052人に達した。調査結果を踏まえ、法務省は報酬支払いは支払額を確認できる口座振り込みなどで行うよう義務付けるのをはじめ、初動対応の強化や実習生の支援・保護の強化、厳正な審査・検査など改善策を提示した。ただ実効性がありそうなのは口座振り込みくらいだ。日本で働く外国人は昨年10月時点で146万人。それがこれまでにないペースで増えていく。政府は「共生社会の実現」に向け技能実習制度が障害とならないよう早急に手を打つべきだ。 <森林環境税と環境税> PS(2019年4月2、3日追加):*5-1のように、2018年に森林の適切な維持管理を目的とする森林経営管理法(「①森林の持ち主は適時に木を植えて育て、伐採する経営管理の責務がある」「②適切に手入れされていない森林は、経営管理権を市町村に集める」等を規定)ができ、2019年4月1日から施行されている。そして、「③まとめて経営すれば利益が出ると見られる森林は意欲と能力のある林業経営者に伐採や造林を委託」「④採算がとれない森林は市町村が管理して複層林化」するとされ、④には、2024年度から住民税に上乗せして徴収する森林環境税を充てるとのことだ。私は、森林はCO₂吸収源であるだけでなく、水源や自然環境の源泉でもあるため、都市部の住民も森林整備の負担を担うのは当然だと思うが、②のように、所有者が手入れすらしない森林を市町村が無償で管理をするのはどうかと思われ、管理するにあたっては相応の受託料をとるべきだと考える。また、管理委託さえしたくないような所有者には、所有権を放棄もしくは売却してもらってから公的管理に入るのが公正だろう。さらに、③については、民民の取引であるため適切な受委託関係があると思うが、状況はどうなっているのだろうか。 私は、*5-2のように、既に地方で導入されている森林環境税よりも、CO₂排出抑制効果を持ち、森林だけでなく農地・藻場・公園・緑地帯等のCO₂吸収源の保全すべてに役立てることが可能な炭素税の導入を行い、他の税収からの環境対策支出は減らせばよいと考える。 なお、林業は、*5-3のように、長野県や信州大などがドローンやICTを活用した林業の効率化に取り組んで「スマート林業」を進めているほか、林野庁が航空レーザーなどによる計測で詳細な森林情報(立木、地形など)を把握してデジタル化し、一元管理(全都道府県で導入済)する取組を推進しているので、次第にスマート化して面白い産業になることが予想される(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/nourin/dai9/siryou4.pdf#search=%27%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%88%E6%9E%97%E6%A5%AD+%E8%A8%98%E4%BA%8B%27 参照)。ただし、林野庁の見解とは異なり、林業における生産とは、植林・育成(間伐や害虫駆除を含む)・伐採の一連の行為を含むものだ。 2018.2.1朝日新聞 (図の説明:左図のように、2024年から全国規模で森林環境税が課されることになっている。しかし、私は、森林環境税は既に地方自治体が課しているため、環境税を課してCO₂対策や他の環境関係支出に充てるのがよいと思う。また、左から2番目の図のように、都市の納税者は、現在は森林の効用を無料で享受しているが、森林の手入れにも費用がかかるため、環境税には理解を示すべきである。なお、右から2番目の図のように、日本は森林資源に恵まれており、森林は財産としての価値もあるため、森林資源を無駄にせず有効に使うように工夫すべきだ。そのような中、右図のように、林業の高齢化率は他産業より高く、若者の参入が望まれている) *5-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13420454.html (朝日新聞社説 2018年3月26日) 森林経営管理 課題の検討を丁寧に 政府が、森林の適切な維持を目指す法案を国会に提出した。スギやヒノキを植えたまま、手入れされていない森林が増えているためだ。ただ、法案が描く仕組みの実行には課題が多く、丁寧な議論と検討が必要だ。提出したのは森林経営管理法案。森林の持ち主には適時に木を植え、育てて伐採する経営管理の責務があると規定した。市町村にも大きな役割を求める。適切に手入れされていない森林は、経営管理の権利を市町村に集める。そのうち、まとめて経営すれば利益が出ると見られる森林は、意欲と能力がある林業経営者に伐採や造林を委託する。採算がとれない森林は市町村が管理し、広葉樹などを交えた「複層林」に誘導する。目的は二酸化炭素(CO2)の吸収促進や土砂災害の防止、水源の維持などとされる。林野庁は管理が不十分な人工林を約400万ヘクタールと推定。人工林全体の約4割、国土面積の1割強で、放置できないのは確かだ。新制度の方向性は支持できる。農業にも、土地を集めて貸し出す「農地バンク」の仕組みがある。だが、林業は植林から伐採までの期間が数十年に及び、それだけハードルは高い。まず、長期にわたり経営管理をきちんと担える林業経営者を十分に確保できるか、そうした業者を行政が選定できるかという問題がある。木材の需給や経済状況次第で、経営者の意欲がなえたり有能な人材が集まらなくなったりしかねない。市町村には、森林の実情を把握して計画をたて、適切な委託先を選ぶ能力も必要になる。きちんと対応できなければ、森林所有者の意欲や責任感をそぐだけに終わりかねない。所有者が不明の場合や、市町村に経営管理を委ねたがらないときは、一定の手続きで同意とみなす仕組みも設ける。適正に運用できるかも大きな課題だ。一時的に伐採が進んでも、森林管理の成否が最終的に確認できるのはかなり先になる。官民ともに責任の所在があいまいになるリスクがあり、継続的に点検することが不可欠だ。市町村による複層林化には、2024年度から住民税に上乗せして徴収する予定の森林環境税をあてる。森林の機能からみて、都市部の住民も負担するという考え方は理解できる。だが、個別施策の目的税を安易に設けると「予算ありき」の無駄遣いを助長しかねない。CO2吸収源への対策なら、排出抑制効果を持つ炭素税などの導入と一体の議論が望ましい。財源については再考を求めたい。 *5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24437540Y7A201C1L31000/ (日経新聞 2017/12/9) 長野県、森林税5年継続を正式決定 説明責任重く 長野県議会は8日の本会議で、森林づくり県民税(森林税)を2018年度~22年度も続ける条例案を可決した。今年度で2期目(計10年間)の課税期間が終わり、さらに5年間継続する。森林税を巡っては税収の余剰や里山整備の目標未達成などが問題視されていた。県は景観整備などに使途を広げると活用策を打ち出したが、従来以上に説明責任を問われる5年間になりそうだ。阿部守一知事は本会議後の記者会見で「新しい形で森林づくり県民税を有効に生かしていくことができるように、体制整備・準備をしていきたい」と述べた。森林税は、森林保全などを目的として通常の税金とは別に住民から徴収する超過課税の一種。長野県では08年に導入し、個人から年500円、法人からは資本金に応じて同1000~4万円を徴収する。17年度の税収見込みは6億6000万円。森林税を活用した里山整備事業の実施面積は17年度末までの10年間で当初目標の84%(3万2210ヘクタール)にとどまる見通しだ。所有者が不明確なことなどを理由に未整備のまま残された森林がある。余った税収を積み立てた基金は同年度末に4億9000万円となり、来年度の歳入となる法人税収分を含めれば6億円にのぼる見込みだ。1年分の森林税収に匹敵する額となる。間伐面積の目標未達成に加え、大北森林組合の補助金不正受給問題を受けて予算を抑制したことも要因だ。県は3期目の新たな使途として、街路樹などの景観整備、県産材を活用した道路標識の設置、河畔林整備などの事業を追加した。市町村に自由度の高い形で森林税収から年1億3000万円拠出していた森林づくり推進支援金は県地方税制研究会の指摘を受けて年9000万円まで縮小し、市町村に事業内容や成果の詳細な説明を求めていく。税制研究会などが重視したのは県の説明責任だ。推進支援金など使途が明確でないものがあったほか、大北森林組合が不正受給した補助金に森林税が含まれていたことも県民の不信を招いた。県はみんなで支える森林づくり県民会議などで事業の評価・検証をして毎年度初めに知事が公表することを新たに条例案に盛り込んだほか、透明性向上のための庁内組織を立ち上げるとしている。国が1人当たり年1000円の徴収で導入を検討している森林環境税との関係について県林務部は「県税とは目的が違うため明らかな重複はない。もし重複する部分があれば設計を見直す」と説明している。国は24年度から導入する方向で検討を進めているため3期目とは時期が重ならない公算が大きいが、「二重取り」にならないよう慎重な検討が必要となる。県は継続の根拠の一つとして、県民・企業へのアンケートで継続賛成が7割を上回ったことを挙げる。ただ、同時に行った森林税の使途の認知度を調べるアンケートでは7割が「使い道がよくわからない」と答えた。県民の理解を深め、納得を得られる説明をしていくことが一層求められそうだ。 *5-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31787370U8A610C1L31000/ (日経新聞 2018/6/14) 長野県や信州大など、スマート林業普及促進 長野県はドローンや情報通信技術(ICT)を活用して林業の効率化を進める。同県や信州大学、林業事業者などが参加する協議会を始め、2018~20年度にレーザーやドローンを使った森林資源の把握や木材の需給状況がネット上で分かるシステムを開発する。県の林業に先進技術を導入する「スマート林業」で競争力を高める。協議会の名称は「スマート林業タスクフォースNAGANO」で、14日に南箕輪村の信州大で最初の会議を開いた。森林資源の把握では林業事業者にドローンを保有してもらい、信州大の技術を活用して木の本数や位置、高さを測定して伐採の計画・調査を省力化する。伐採した木材のデータはネット上で林業事業者や運送事業者、木材を求める事業者で共有する仕組みをつくる。リアルタイムで出荷情報を更新し、必要な材を適切に納入できるようにする。運送も効率化して費用を削減する。県の事業費は18年度が1583万円。19年2月まで効果を検証し、19年度以降の具体的な施策を決める。 <事業承継税制の大改正> PS(2019年4月5日追加):働き方改革で従業員は働き易くなるが、その皺寄せは、中小企業の場合には経営者にかかるため、事業主は大変になるだろう。しかし、*6-2のように、需要の少ない時間帯や曜日はCloseしたり、週4日勤務(週休3日)の1日10時間労働にして従業員をローテーションしたりする方法もある。 そのような中、高齢で事業承継の時期にある個人事業主が多くなっているが、後継者がおらず、良い技術を持っていたり、黒字であったりするにもかかわらず、廃業になるケースは多い。そのため、相続争いを防ぎ、個人企業が事業承継をやりやすくするために、*6-1及び下図のように、個人事業を後継者に譲るときのルールが見直されるのはよいことである。 (図の説明:左と中央の図のように、代替わりで事業の継続が困難にならないよう、2018年度から10年間の特例で事業承継時の相続税軽減要件が緩和され、2019年中に先代が早く事業資産を贈与すれば相続対象から外すことができる制度に改めるそうだ。しかし、右図の「働き方改革」は悪くはないが、役所や大企業をモデルにしているため、ぎりぎりで経営している不安定な中小企業を承継するよりサラリーマンになった方がよいと考える次世代は多いと思われる) *6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41271940U9A210C1EE8000/ (日経新聞 2019/2/15) 個人事業主、土地など承継しやすく 相続争い防ぐ 政府は個人事業を後継者に譲るときのルールを見直す。先代が生きている間に事業を引き継いだ場合、後継者の譲り受けた土地や建物などの事業資産が、一定の条件の下で他の法定相続人の手に渡らないようにする。経営者の高齢化に伴う個人事業の廃業が増える中、相続争いを防ぐことで代替わりを進めやすくする。今国会に提出する承継円滑化法改正案に盛り込んだ。2019年中の新ルール実施を目指す。現行では生前に事業を譲り受けても、先代が亡くなった後、他の相続人に資産を「遺留分」として取得され、事業の権利が分散する余地が残る。本人の兄弟を除く遺族には原則、全体の2分の1の遺産を受け継ぐ権利があるからだ。後継者に土地や建物などの事業資産を集中して贈与しても、他の相続人が主張すれば、資産が複数の相続人に分散してしまう可能性がある。他の法定相続人の「遺留分」について、相続開始前の10年間に限定した基礎財産から算定する仕組みに改める。先代が早い段階で事業資産を贈与すれば、相続対象から外すことができる。他の相続人に渡す「遺留分」についても、相当額の金銭で支払えるように改める。土地や建物、設備を現物で返還しなくても済むようになる。19年度から始まる個人版事業承継税制では、先代が生きている間に事業を引き継ぐと、相続税や贈与税の納付が猶予される。政府は今回の新ルールが加わることで、さらに代替わりがしやすくなるとみる。中小企業には既に同様のルールが適用される。帝国データバンクによると、18年(1~12月)に「休廃業・解散」した企業(個人事業主を含む)は、全国で2万3026件(前年比5.6%減)ある。中小企業系の団体から生前贈与分の事業資産の権利を確保できるよう求める声があがっていた。 *6-2:https://mainichi.jp/articles/20190316/dde/001/040/043000c (毎日新聞 2019年3月16日) 働き方改革、宿泊業だって休みたい 人材確保へ週休3日 従業員「プライベート充実」 年中無休のイメージが強い旅館やホテルで週休3日制導入など、働き方改革の動きが出ている。外国人観光客の増加や2020年東京五輪・パラリンピックに向け宿泊業界は活況だが、長時間労働が敬遠され、人手不足は深刻。労働環境の見直しで、優秀な人材確保につなげる狙いがある。「月、火、水は宿泊がお休みになります」。将棋、囲碁のタイトル戦の舞台にもなっている神奈川県秦野市の旅館「元湯 陣屋」は週3日、宿泊客を取らない。(以下略)
| 年金・社会保障::2019.7~ | 11:09 PM | comments (x) | trackback (x) |
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